私はある国の王女で16歳。腕に自信のある私は、男装して国の剣術大会に出場するのです
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私のお付きは横で腕を組んで渋い顔をしているけど、本当は兄のように心配してくれているのがわかる。
でも、私には強くならなければいけない理由がある。それは…
実は私は第二王女。第一王女だった姉は、幼少時刺客に襲われ、傍にいた護衛官とともに命を散らしてしまった
だから私は姉さんの分まで生きて、誰よりも強くなる。私の大切な国、そして私の大切な人たちを失わせないために…
生まれつき病弱な双子の弟を守るためにも、今日は絶対負けられない!
私は長い髪をひとつに結び、師匠からもらった双剣を腰に帯びると控え室に入っていった。
控え室にはすでに人が入っていた。「そんな細い腕で剣なんか持てるのか?」
黒髪に黒い瞳、鍛えられた厚い胸板が印象的な青年が話しかけてきた。
彼の名はブラック。国でも名高い剣豪として知られている。
13 :
名無しって呼んでいいか?:2007/08/20(月) 06:31:58 ID:D4d4L/ST
ブラックは、昔姉を死に追いやった刺客の息子だった
ムッとした私は、ルパーンの石川五ェ門の如く双剣でブラックの服を切り裂いてみせた
「またつまらぬものを斬ってしまった…」決めセリフも忘れない。
ブラックの服の下からクマさん柄のパンツが見えた。
「あら、かわいいパンツ」私は侮蔑をこめて笑った。
「フッ。やるな」そう呟くと、ブラックも剣を一閃!ハラリと私の服が真っ二つに!…ヤバイ!
…と思ったら、誰かに私の体を隠すように後ろから抱きしめられていた。誰?
「女性に乱暴はよくないですよ?」後ろでニコッっと笑うのは風になびくような金髪の青年。彼の名は…
21 :
名無しって呼んでいいか?:2007/08/20(月) 19:02:05 ID:D/aTXTud
藤崎さん
東洋人とのハーフでゴールド・藤崎というらしい。彼も出場者なのだろうか?
しかし私は今男装中のはずこの男にバレては困る。「気安く触るなッ僕は男だ!」パンッとその手を振り払った
藤崎さんは無言で私に上着を投げるとにっこり笑ってどこかへ行ってしまった。
「危ない危ない」 服を直してトーナメント表を見る。私の一回戦の相手は誰だろうか。
1.隣の国の第二王子で弓の使い手・アレン
2.エルフとのハーフですばやい身のこなし・ローランド
3.正体不明で流れものの腕っ節の強い男・ジャン
1、第二王子アレン。ふーん…王族対決って訳ね。面白いじゃないの。
アレン「俺が王族だからといって手加減する必要はない。お互い正々堂々やろう」
「上等!」私は不敵に笑ってみせた。さすがは王子、なかなかの度量の持ち主のようだ
そして、一回戦が始まった。
アレンはいきなり間合いを取り、弓で私を狙ってきた。私はそれを剣でなぎ払う。
私の予想外の行動に驚いているアレン王子との距離を一気に詰めて一撃
しかし彼は私の剣を自分の左腕の甲冑だけでふせぎ、身じろぎもしない。
彼の紫がかった青い瞳が私を捉える。見たこともないような綺麗な色。
外野から側近が声を荒げた。「その瞳を見てはいけません、幻術です!」
その声に反応して私は飛びそうになった意識を繋ぎとめる。そして目の前の王子に
頭突きを食らわせた。私は体術にも自信があった。
「グゥェボッ!」王子は何とも奇妙な声を出し、鼻血を散らしながら倒れた。どうやら会心の一撃だったようだ。
38 :
名無しって呼んでいいか?:2007/08/22(水) 16:41:34 ID:phfyIMaC
「もう終わりか?」私は王子を見下ろして言った。しかし…
王子は目を見開き、ひるんだ私にすばやく弓を放った。
弓は私の肩をかすめていった。剣を王子の喉もとにつきたてると、王子は降参を告げた。
苦戦を強いられた私の次の対戦相手は何とあの人…
という感じでどんどん勝ち進みいよいよ決勝。相手は・・・
控え室で私を挑発してきたブラックだった。まさか決勝の相手がクマさんパンツなんて、これは負けられない戦いだ。
だがそう思っているのは相手も同じのようだ。クマさんパンツを見られた屈辱を晴らそうというのだろう。
そういえば藤崎は?負けた?それとも出場者じゃなかったのか?
藤崎は出場者ではなく救護班で魔法による治療を行っていた。
藤崎はかなりの魔法の使い手のようで、我が国でも数少ない高位魔術師の紋章を襟につけていた。
よそ見していた私に苛立ったのか、ブラックは「先程の恥辱、この剣で返礼してやろう」と挑発してきた。
私は余裕の笑みで「弱い犬はよく吠える…大観衆の中で丸裸にされたいか?」と更に挑発してやった。
藤崎はにこにこしながら「もし死に掛かってもだいじょうぶですよ」とか言っている。
藤崎「あなたは私が守ります。…私の命にかえても」
私の正体は側近しかしらないはずだが。もしやコイツ…そう思った瞬間、試合開始の合図が響いた。
ブラックの剣を受けて驚愕する。なんて重い剣筋…!先程は手を抜いていたとしか思えない剣捌きだった
押され気味な私に、側近が泡噴いて卒倒しそうになっているのがチラリと見えた
相手の剣筋を読み隙を突いて攻撃するのだが、ブラックの頑強な体から繰り出すパワーに軽く跳ね返されてしまう
どうしても彼の重い剣を受け流しきれず、左脇腹を焼け付くような痛みが走った
「つっ…!」私は
1 剣の手応えに一瞬油断したブラックを相討ちにした
2 ただ負けるのは癪なので、ブラックのパンツの秘密を会場中に知らしめた
3 その場に倒れこんだ
1 ブラックを相討ちに。 この試合は引き分けに終わり、私たちは二人とも表彰された。
試合後、ブラックは私を呼び止めた。話があるらしい。
「お前の腕を見込んで頼みがある。俺の妹は人攫いにあってもう三年行方不明なんだ」
「この辺を荒らしまわる海賊団が犯人だって噂がある。俺と一緒に奴らを探して欲しい」
「めんどいなぁ」
すると「あぁんまぁぁりだぁぁ!」と大声でブラックは泣き出してしまった。
「…しょうがないなぁ…クマさんパンツに免じて一緒に探してやるよ」
「回復キャラは冒険につきものです。及ばずながら僕も力になりますよ。」何故か藤崎さんがニコニコしながら仲間に加わってきた。どうやら強制らしい。
「私が勇者で、ブラックが戦士、藤崎は僧侶だから、あと魔法使いがいればパーティは完璧ね」
「それなら俺様にまかせろィ!!」突如として現れた男。それは…
そういえば王子は幻術が使えたような。
しかし目の前で鼻血をダラダラ流しているこの男が本当に頼りになるのだろうか。不安だ
王子「俺にだって魔法の心得はある。城の生活も退屈だし、たまにはそういうのも悪くない」
カッコイイ台詞のわりに出血で足元はフラフラだ。でも暇らしいのでコイツも連れていこう。
おいおいこんなボンボンで大丈夫かよ、と思いながらも他に役に立ちそうな奴もいなかったのでとりあえず仲間に入れてやる事にした。
「あ、ありがとう!絶対仲間に入れてくれると思っていたけどね!」道楽王子がほざいている間に私たちはささっと出発した。
とはいえ私は王女。まだ名前もついてない側近が止めに来た「王女!いけません勝手に城を出るとは」
しかし子供の頃から脱走に慣れている私。追いかけてくる側近を上手く撒いて、街の入り口にたどり着いた。
ブラック「王女って何のことだ?あの爺さんお前を止めたがってたようだが」
やっべーばれたら面倒だ!とりあえず側近のことはちょっとボケてる知らないお爺さんってことにしといた。
よし、隣の国まで行ってみよう。
王子「おい、馬車はどこにいるんだ。」
私「そんなもんないよ。馬鹿ならいるけど」
藤崎「誰がうまいことを言えt(ry…いえ、そんなピクニック気分では今から不安ですね…」
王子「ん?何コレ?この扱い、俺王子だよ?偉いんだよ?」
私「疲れたらブラックがおんぶしてくれるってさ。だからそれまで頑張って歩いてよ」
ブラック「エェェェェェ?!ちょっおまっ勝手に決めてんじゃネェよ!!」
揉めているうちに夜になった。今日は小さな村の宿屋に泊まることに。
宿屋「すまんねぇ。今はベット二つしか空いてねぇから二人ずつで寝てくれぃ。」
マ、マジかよ…。誰と一緒に寝よう…?
1、藤崎さん
2、クマさんパンツ
3、ボンボン
2、 クマさん コイツへたれっぽいし大丈夫だろ
「どうした? 早く寝ないと明日が辛いぞ」躊躇している私にブラックが話しかけてきた。
ブラック「あとさ・・本当に感謝してる。お前にもあいつ等にも。改めて礼を言うありがとな。」急に真剣になって見つめてきた。
優しそうに見えても、姉を殺した刺客の息子だ。気を許してはいけない。
気分が落ち着かなくて眠れないのでお風呂にはいってこよう。
あー気持ちいい。大浴場でもお城のお風呂よりは狭いけど、悪くないじゃない。
「おい、誰か入ってんのか?」 王子の声だ!!
ウホっ!しかし私は女ここは息を止めて潜るしかない
あわてて浴槽に体半分漬かったところで見つかってしまった「なんだお前か」
王子「狭い風呂だが侍女はどこにいるんだ?」
「いるわけねーだろ。僕の半径2メート以内に入ってきたら殺すからな!」浴槽の端っこで叫んだ
王子「じゃお前でいーや、背中を流させてやるから光栄に思え」そういって王子は後ろを向いた
王子「わかったよ…うん?お前ずいぶん細いな。いいもの食べてないのか?」
私はパニックになって風呂桶にお湯をためて浴槽の中から王子へ投げかけた。
というか投げた。しかし投げたのは桶の方で見事王子の後頭部にヒットした。
王子「お前っ!!」 泡だらけの王子がすごい勢いでこちらへ走ってくる。やばい!
藤崎「あれ?お二人とも入浴中でしたか。ははは私もちょっと失礼します。」なんと藤崎さんまでやってきた。
藤崎「王子、大浴場では前を隠すのがマナーですよ」
藤崎さんはタオルを王子の腰に巻きながら目配せをした。私はそのすきに風呂から逃げた。
やっぱり藤崎さんにはバレているんだろうか、あの胡散臭い笑顔といい・・。とりあえず私は足早にブラックのいる部屋に戻った
涼んでいると「無茶が過ぎますよ。次から私が見張りに立ちます」と藤崎さんにたしなめられた。
私「藤崎……勘違いしてないか?僕は男だぞ」
藤崎「おおそうでした、失礼」 藤崎さんはにっこり笑って自分の部屋へ消えた。
「風呂から戻ったか…って、お前、男のくせに髪を下ろすと色っぽいのな」ブラックの顔が真っ赤になっている。
藤崎・・・食えないやつ・・・私はブラックの高いびきの横で一晩を悶々と過ごした。
朝になった。支度をして村を出ようとすると、村人たちが困った顔をして集まっている。
どうやらあの海賊団がこの村にも出たようだ
さらに話をきくと、その残党が隣町で好き放題あばれているらしい。私たちは隣町へ急いだ。
ブラック「妹がいるかもしれない!!妹が!!」
お前はギアス使いかよ、と思ったが本当にいたら助けなきゃなので私たちは隣町へと急いだ
王子「本当に荒れ放題だ。ショッピングモールもアミューズメントパークもないじゃないか」
おめーは黙ってろ!と馬鹿を黙らせてる間にブラックは先に走って行ってしまった。
ブラックとはぐれたとたん、盗賊団の手下らしき集団に襲われた。
藤崎さんは回復役だし、王子はアホそうだし、私がやるしかない!!
意外とこいつら手ごわい。しかし早くブラックを追わなければさすがに一人は無茶だ!
そのとき、私の周りの世界がぐにゃりと歪み、異国の風景に変わった。
ひるんだ海賊たちを弓が次々と射抜く。王子の幻術だった。
王子「心得くらいあると言っただろう。先を急ぐぞ」
港へ急ぐとそこには倒れた海賊と船長らしき男と今まさに剣を合わせているブラックがいた。
ブラック「妹はどこだ!お前の顔は覚えているぞ、キャプテンピエール2世!!」
ピエール「ああ?あの女なら売っちまったよ!海を渡った国の王様んとこにな!」
ピエール「フン熱くなりやがって、やれやれだぜ。」精悍な顔立ちのピエールが不適に笑った。
ブラック「売った!?売っただと!お前もう許さん!!覚悟!!」
これは助っ人に入るべきだろうか?ブラックは完全に押されている。ふざけた名前だがピエールは強い
後ろから弓を構える王子を藤崎がそっと止めた。「様子を見ましょう」
今にも勝負がつきそうになったその時、「やめて!!お兄ちゃん!!」声が響いた
「そいつ殺せない!」
名言ktkrではなく何だこの子。ブラックはびっくりして固まってるし、ピエールに至っては笑っている。
バットを持って仁王立ちしているその女の子は、ゴスロリ服を着ていてフーフー言っている。
バットを持って仁王立ちしているその女の子は、ゴスロリ服を着ていてフーフー言っている。
↑二重投稿スマソorz
王子「すまない、さっき間違えてその子に幻術をかけてしまったようだ・・・」
私「お前何やってんのー!!」どうやら女の子はブラックの妹らしく、売ったというのはピエールのブラックジョークだったらしい。
ピエール「ブラックなだけにね(^_-)b-☆」
どうやら妹のホワイトちゃんはピエールの部下といい仲になってフツーに書置きして出てったらしい。
ブラック「なっ…!その部下とやらはどこのどいつだァァア!今すぐ出てこい!東京湾に沈めたるわゴルァ!!」
「沈むのはてめーだァ!!」私達がブラックをたタコ殴りにしていると
ピエール「おい。てめーら随分腕がたつみたいじゃねぇか、いい儲け話があるんだが乗らねぇか?」ニヤッと笑ったピエールは意外と若かった
私「ブラックの妹が無事なら、話は終わりだ。海賊と馴れ合う気はない。それに(王族だから)金に興味もないんでね」
王子「おまえ、金に困ってるのか?金がなくなったら銀行に行けばいいじゃないか」
藤崎「王子、そんなこと言ってるといつかギロチンにかけられますよ」
王子様はその物騒な言葉を聞いてわんわん泣きました
ピエール「どんな病でも治る万能薬の草が南にあるっていうんだ。お前らだって興味あるだろ」
病弱な双子の弟のことが頭をよぎった。
私の沈黙を肯定ととったピエールは早速出発する支度を手伝えと言ってきた。ピエール「そういやお前ら、俺の部下どうした?」
王子「俺の兄は原因不明の病で倒れて以来ずっと眠ったままだ。治るだろうか?」
私「はいはい治る治る」王子のトンデモ発言を恐れて私は彼を船に押し込めた。
藤崎「こんなこともあろうかとちゃんと蘇生しておきましたよ。」どうやらピエールの部下も無事のようだ。
ホワイト「あのー、助けていただいてありがとうございます!」私を見る目がハートになっている。
私「助けるも何も、別につかまってたわけじゃないんだろう?」
ホワイト「硬いこと言わないでください!綺麗なお顔が台無しです」
ホワイトは突然抱き着いてきた。
藤崎「も・・・もてるんですね、さすがです」 苦しそうに笑いをこらえている。
うわぁぁぁ!バレる!!と思ったら、「おい、そこのちょっと来い」とピエールに呼ばれた
ピエール「おまえらの寝床はいちばん奥の二部屋だ。ちょっとゆれるが上等だ」
「あぁ、ありがとう」ピエールに礼を言い出て行こうとした時、ピエール「あとそれともう一つ…」
ピエール「お前のツラどっかで見たことあるんだよなァ。」私の胸倉を引き寄せてピエール小声でニヤっと呟いた。顔が近い!!
私「気のせいだ!外国人はみんな同じに見えるんだろ」私はピエールを突き放した。
ピエール「フッ…。ま、そういう事にしとくわ。んじゃ、おやすみ」ピエールはニコッと笑うとどこかへ行ってしまった。
藤崎「食えない野郎ですね、あの男。あ、ちょっといいですか?いいですよね。」いつの間にか背後来ていた藤崎が黒い笑顔で微笑んだ。
相変わらず逆らえないオーラを放ってるな…と思いつつも彼の話に耳を傾けた。「ん?何だ?」
藤崎は突然私を壁際に追い詰め、突然眼鏡をクイっとあげながらとんでもないことをいいだした。
藤崎「私を覚えていませんか。城の専属医の息子で、小さいときはよく遊んだものですが」
ま、まさか私の初恋だったあの優しいお兄ちゃん?!そうか・・だから私が女だと気づいていたのか
藤崎「いつだったかあなたのすりきずを治そうとして、腕にキノコを生やしてしまったこともありましたね…」
藤崎「責任を取ってお嫁さんにすると言いましたが、男に変装しているなんて」くすくすと笑う。
藤崎「だから僕はあなたを守る義務があるんですよ。無茶はしないで」
そう言って微笑む彼の顔は、とても綺麗で思わず見とれてしまった。
すると突然おでこにチュっとキスされた。藤崎「あんまり可愛いものでつい、すみません。」ニコっと笑って彼は私を解放した。
ふらふら歩いていると甲板でボーっとしている王子がいた。「おい、ホームシックか?」
王子「違う、悩んでるんだ!兄に治ってもらわなければ、私は政略結婚させられるんだ」
王子「隣の国の第二王女で、女のくせに剣ばかりの変人らしい。そんな熊みたいな女絶対に嫌だ」
ちょ、それ!つかこっちだってお前みたいなアホはごめんだ。ムカついたのでとりあえず殴っといた。
王子「なんで殴るんだ!大会でもしかして一目見られるかもと思ったんだが腐っても姫だしな・・・」
私「じゃあ聞くけど、お前は一体どういう女が好みなんだ?」
王子「できれば高貴な血の生まれで、ちょっと気が強い細身で整った顔立ちの髪の長い美人だ」
私「意外と…お前の近くにいるかもしれないぞ」
王子「へ?近く?…何処にもいないじゃないか!」…真性のアホだ。とりあえず今度は2発殴っといた。
しかし、私のあずかり知らぬところで結婚の話が出ていたとは。恐ろしい・・・
そういえばブラックはどうしてるかな?あれから音沙汰ないが・・ちょっと様子を見にいこう。
寝床に行くとブラックがこの世の不幸を全て背負ったような顔をして座っていた。妹の件で相当なダメージを受けたらしい。
私「大丈夫か? そんな顔をしていると剣豪の名が泣くぞ」
ブラック「あいつはまだまだお子様なんだ。妹に手を出したら承知しないぞ」
どうやらブラックは私を男だと思って誤解してるらしい。
女だとハッキリばれているのは藤崎だけなのでそれはしかたがない。
私「妹が心配なんだな。僕にも弟がいるから、お前の気持ちは少しわかるよ」
凄もうとして近寄ってきた所で大きく船が揺れた。「うわっ!」ブラックが私にのしかかって来て二人で倒れてしまった。
ブラック「痛っ・・・悪い・・。っつ!?」何と一瞬だが唇が触れてしまった。ブラックはバッと飛び起きる。
ブラック「え、いや、あああのあの、そ、その…っ」顔を真っ赤にしているブラックは相当なテンパり具合だ。
ブラック「わ、悪かった!!本当に!(お、俺は何で男相手にこんなにドキドキしてんだ!)」ブラックは口を押さえてこれ以上ないくらい真っ赤だ。
1、「お前の唇やわらかいな」
2、「…いや、気にするな」
3、「ファーストキスだったのに…」
3、「ファーストキスだったのに…」私は思わずつぶやいた。
ブラック「えっ・・・い、いやお前、女みたいなヤツだな。そんなの気にするなよ」
ブラック(赤くなるな!なんだこの動悸は。相手はいくら可愛くても男だぞ!静まれ!!)
私「顔が赤いぞ。気分でも悪いのか?」
ブラック「船に・・・酔ったみたいだ。俺はもう寝る」ブラックは二段ベッドの下に潜り込んだ。
私もベッドの上段に寝たが、船が揺れるのと、ブラックがずっと寝返りしているので眠れなかった。
早朝起きると、甲板で誰かが一人ヒゲをそっていた。
「お、早いな。俺も気分転換に身だしなみチェックってわけだ」 キャプテンだった。
私「誰だかわからなかった。意外と若かったんだな」
昨日の事もあってか少し警戒して近寄る私。
ピエール「俺まだ21なんだ。ちゃんとすれば結構見られるんだぜ?」
私「へー、おじさんだと思ってた。だってキャプテンなんていうから」
ピエール「オヤジは去年、航海途中に別の船の奴らに襲われて死んじまった。それからは俺が船長だ」
「ふぅん。あ、そんなことより朝メシは?」
ピエール「ちゃっかりしてんな。朝飯はこれだよ」そういって釣ったばかりの魚をみせびらかした。
ピエール「海の上では毎日これだかんな。好き嫌いすんなよー?」
王子「おい、タルタルソースはどこだ」
私「ねーよハゲ王子。あ…ブラック…おはよ。」
ブラックは真っ赤な眼をしている。寝づらそうだったもんな。
ピエール「眠そうだな。昨日あまり寝れなかったのか?」
ブラック「俺が男なんか好きになるわけないだろ!」 寝ぼけているようだ。
王子「お前、まさかこっちなのか!?」と、王子がオカマポーズをした。
ピエール「坊主、差別はだめだぜ差別は。俺はノーマルだけど理解あるから。なっ!」とブラックの肩をポンっと叩いた。
「ち、違っ!誤解だッ!でもコイツの唇、妙に柔らかくて―ッ」慌てまくり口を滑らせまくりのブラックだった。
藤崎が少し驚いた顔で私をつついた。「どういうことですか」「後で!」
王子「ホモって初めて見た!スゲー!!」
「ハイハイそれくらいで騒がない。おそらく事故、きっと事故、絶対に事故ですよ、ね?」藤崎の目つきが非常に怖い…
ブラック「違う!!俺がホモなわけないだろ!!お、お前のことなんか好きじゃ・・じゃなくて!な、何でもねぇ!!」
空気の読めない王子がまたギャーギャー騒ぎ出した。このガキ、明日あたり痛い目に合わせとこうか。
藤崎「・・・・そろそろ黙って座れよ、バカ共が。」藤崎の地を這うような声と笑顔で静かな食卓が再開されることになったのだった。
後で藤崎から、ブラックは油断がならないから自分が部屋を代わると打診があった。
正直藤崎の方がよっぽど喰えない男だと思うのだが、これ以上正体がバレたくない私は渋々承諾した。
ブラックと同室になってしまった王子は「ここから入ってくるな」と線を引いて大騒ぎしている
231 :
名無しって呼んでいいか?:2007/08/27(月) 00:10:31 ID:XtAJUICc
隣室の騒ぎを尻目に、部屋に入るなり藤崎は「先程の件は一体どういう事ですか?」とやんわり問い詰めてきた
口調は穏やかだが、メガネの奥の瞳は全然笑っていないのが怖い。
私「この部屋ゆれるから・・・足場が悪くて。ほらあの、”事故チュー”だよ!」
藤崎「へー、そうですか。あなたはそんな要因で男に唇を許してしまうんですか」
こ、怖い!私は(剣よりも、鬼畜メガネ対策を学ぶべきだった…!)と禿しく後悔した。
私「だって急で避けられなかったんだ!ブラックだって嬉しくなかったんだしいいじゃない」
藤崎「あなたは大事なお姫様なんですよ?もっと自覚を持つべきだ」彼の手が私の髪をなでる。
藤崎「もしそれが僕だったら・・・。いえ、これ以上あなたを責めてはいけませんね。すみませんでした。」ニコっと笑ってナデナデされた。
隣室から、ゴロゴロドシーンという騒音と王子の「ギャーホモ来るなアアー!」という悲鳴が聞こえる。煩い事この上ない。
どうやら寝相の悪いブラックが境界線を越えてしまったらしい。
その日の晩は嵐で、私は上段ということもあって船に酔ってしまった。
下に降りて丸くなっていると、藤崎さんが目を覚まし、「どうかしましたか」と声をかけてきた。
私「な、なんでもな…はあはあ…」目が回る。気持ち悪いのを必至で我慢する
私「あ、ううん。ただ眠れないだけ・・・。」
藤崎「気分が悪いんでしょう?こっちへいらっしゃい。大丈夫、何もしません。添い寝ですから」
藤崎「気分が良くなるよう魔法もかけておきますね。」
藤崎「覚えてますか?よく昔はこうやって、あなたを抱いて一緒に昼寝していたんですよ」
藤崎の腕の中、懐かしい情景と柔らかな匂いに包まれる。
私は思わずぎゅっと藤崎を抱き返した。
眼鏡のない藤崎の顔は、いつもよりも繊細で優しく、本当にきれいだ。
私「藤崎さん…ありがとう…」そう言って私は深い眠りに落ちた。
私は悪夢を見た。
姉が、死んだ日の、夢。
姉を最期まで守ろうとした護衛官と姉。二人は密かに…恋仲だった。
私はお互いを支えあうような二人が憧れで、自分にもいつかそんな人が出来ればいいなと思っていた
でも二人は――。無残な情景が鮮明に蘇る。「…………あああああッ!!」自分の悲鳴で飛び起きた。
私は涙を流していた。その時、優しい腕に力強く包まれる。
藤崎「大丈夫です。もう誰も…あなたの大切な人は失わせません」決意のこもった声音が耳元に落ちる。
藤崎「…そしてあなたも。命に代えても私が守ります」
深く優しい声色に力が抜けそうになる。でも違う。私が男装してまで強くなりたかったのは…
藤崎「だから泣かないで。」私の頬に優しくキスを落とす彼もまた辛そうだった。
私「違うんだ、藤崎。今度は私が守りたいんだ」
藤崎「・・・・・。」少し驚いて私を見つめる藤崎に続けた。
私「私は守られる必要がないくらい強くなりたい。誰かが私の為に死ぬなんてイヤなんだ…!」
藤崎「だから男装を?…でもどんなに男のふりをしても、あなたは女性なんですよ?」包むように、そっと私の手を握られた。
藤崎「それに私だって想いは同じです。あなたを先の王女様の様に失いたくなくて…あらゆる魔法を習得し、この地位まで登り詰めたのです」
「藤崎、じゃあ私もだ。私も大切な人たちをお前や仲間を守る。」私は藤崎の小指に小指を絡めた。誓いのつもりで。
「あなたという人は・・・。誰よりも強く、そして優しい人ですね。」頬を少し染めた藤崎が今まで見たことないような笑顔を見せた。
「おーいウスターソースどこか知らないかー?」その時突然王子が朝食を右手に持ちながら部屋に入ってきた。
「ああウスターソースなら、海底2万里にありますよ」藤崎は王子を指でつまむと海へ投入した
藤崎「もう少しだけ、眠りましょう」小さい頃のように額を合わせて眠る。悪い夢は、もう見なかった
「アレンどこだてめぇ!!人の鼻の穴にピーナツ詰めやがって!!」朝私たちはブラックの怒号で目覚めた。
「ホモは鼻でツマミ食ってろ!この船ホモばっか!ホモ船かよ?!」王子は無事海底から還ってきたようだ
「何いってやがる!おい!ここか!お前らアレンしらねぇか・・・って?!お、お前ら・・・」ブラックは私たちを見て青ざめて固まっている。
王子「げッ?!この船ホモ祭りでもやってんのかー?!」
「…チッ。煩いですね…」藤崎は毒づいて「ええ私達はホモです、愛し合ってます、だから邪魔したら殺しますよ?」と爽やかな笑顔で言い切った
私「はいいー!?!」ブラック「fkさhfkぁがー!!」王子「ギャー変態祭りかよー!!」
「おいおい人んちの船で勝手に妙な祭を開催しないでくれよ」騒ぎに気付いたのかいつの間にかピエールが私達の部屋に来ていた。
藤崎「あなたに危険が及ばないようにするための方便ですよ。」小声で呟かれたが、3人は本気で信じてしまったようだ。
王子「ぎゃー!ホモのキャプテン!!」ピエール「俺はノーマルつっただろ!」ブラック「・・・・・・嘘だ」
私「ついていけねえ……」
ドンチャン大騒ぎの一行を乗せて、船は南へと進んで行った。
ピエールの言っていた、どんな病でも治る万能薬の草は、本当に南の地にあるのだろうか?
そんな事を一人甲板で考えていたら、「おーい!南の国が見えてきたぞー!」と、ピエールの部下の声が聞こえた。
私は北国出身だからこんなに緑の多くて商業の栄えた街は初めてだ。
ピエール「とりあえず街に下りて情報収集しないことには始まらないな、お前ら観光も兼ねて行って来いや。」
はーい、と皆それぞれ自分の好きなように街の中に散って行った。
さて、情報収集もしなきゃだし、私は何処にいこう?
1、何故か猫耳を付けたメイドがたくさんいる喫茶店
2、武器強化も兼ねて鍛冶屋
3、様々な情報が飛び交ってそうな市場
2、武器強化も兼ねて鍛冶屋 そういえば最近戦ってないしちょっと手入れでもしてもらうか
ブラック「か、鍛冶屋に行くのか?俺もそういやそろそろメンテが必要なんだった。偶然だな」
そんなデカい剣、よく扱えるなと言ったらブラックは赤くなって「鍛えてるからな」と言った。
ブラック「俺の親父・・・っていってももういないんだけどな。子供の俺からしてもろくでもない奴でさ。母親も物心つく前に死んじまって、妹はいつも泣いてたな。」
ブラック「これはよ、オヤジの肩身なんだ」 その言葉を聞いて身を堅くする。あの刺客の?
ブラック「親父は食うに困って、なんでもやった。・・・人も殺した」
ブラック「あいつが俺に残したのはこの剣だけだ。俺はこの剣をもっと有意義に使ってみせる。オヤジのようにはならない」
ブラック・・・こいつは悪い奴じゃない・・・。そんなこととっくに分かっていた。私はブラックの横顔をじっと見つめる。
ブラックは照れた様に微笑むと、鍛冶屋の看板を見つけて指をさした。「行こうぜ」
鍛冶屋のおじいさんは何か半透明のものを鍛えていたが、私たちに気づくとふと目をあげた。
鍛冶屋「禍々しい匂い・・・血をたくさん吸った匂いのする刀が・・・」
鍛冶屋「お前さんのその剣、浄化しないと怨念に呪い殺されるぞ」鍛冶屋はブラックに話しかけた。
私「浄化って、どうすれば?」
鍛冶屋「その剣で大切な人を救ってあげなさい。それが一番の浄化じゃろうて。」とにこっと笑った。
鍛冶屋「それから、お前さんの心配していることは杞憂に過ぎないから、自分に正直になりなさい」
ブラックは驚いたような顔をして私のほうを見ると、少し赤くなった。
ブラック「爺さん鍛冶屋なのに何でそこまで…」ブラックが誰にも聞こえない声でボソッとつぶやいた。
ブラックは私の方に向き直ると、照れくさそうに言った。「その・・・昨日は悪かったな。ちょっと動揺しちまった俺が言うのもなんだが、お互いに犬に噛まれたと思って忘れようぜ」
「おう!」私が笑って言うと、「あ、あとよ・・・昨日藤崎と付き合ってるとか何とかって・・あれ・・マジか?」ブラックが悲しそうにきいてきた。
私「うん、ついでにいうと藤崎さんとも何ともないんだ。ふざけてるだけ。」
ブラック「そっか、そうだよな!それならいいんだ!」
よかったぜーとかなんとか呟いているブラックは急にニコニコして上機嫌になった。
振り返るとおじいさんはいなくなっていて、弟子のようなおじさんが働いていた。
おじさん「あんたたち、剣を鍛えにきたんだろ?ボっとしてないでさっさと出しな」
私たちはおじいさんについて質問したが、そんな人はいない、と変な顔をされてしまった
帰りに喫茶店の前を通りかかると中から聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえてきた。
王子「だからぁ、俺がご主人様なのになんであいつにもご主人様って言うんだよ!?」
王子はメイド喫茶の意味がわかっていなかったようだ。
ブラック「あいつ・・・本当に兄貴助ける気あるのか・・・?」私は額に手をついて思わずため息をついた。
「…おーい」 市場のほうから、紙袋をたくさん持った藤崎さんが歩いてきた。
藤崎「面白いものを見つけました。この国の果物は、食べると驚くほど疲れが取れるんです」
王子「クエン酸だ!教育係に習った」 空気読めないことを言い出すので腹に一発食らわせた
くおぉぉ・・・と地面で身もだえしている王子はほっといて私たちは情報収集にあたることにした
藤崎「薬草って事ですから、ここはまず単純に薬屋に聞いてみましょうか」
「薬草? それなら村人の家のタンスや壷を探せば出てくるんじゃないか?」
薬屋の話に、某大作RPGじゃあるまいし…と思っていると、近くの民家に入っていく王子の姿が
「きゃー何なのあなた!?」「おい今月分はもう全部払ったはずだぞ!」「ママー!ママー!」…何だか大変な騒ぎになっている。
王子「邪魔をするな!(薬草を)出せ!」
「キャー強盗ーー?!」「くっ子供は、子供だけは手を出すな…ッ!」「ママー!ママー!」どこの誘拐組織ですか…
とりあえず、最凶アフォ王子の首根っこを掴み、ダッシュで逃走しておく。
私「薬草ってバカにも効くかな。こいつに使って試そうそうしよう」その時、シマを荒らされたとチンピラ共が現われた!
王子が幻術を使い、ヤツらをまいた。「俺だって役に立つんだ。見直せよな」
私・ブラック・藤崎「もとはといえばお前のせいじゃないか!!」 王子をタコ殴りにした。
藤崎「フルーツの事といい、この土地には人を癒す特殊な力があるのかもしれませんね」
私「どこで栽培を行っている地域があるか聞いてみないか。秘密があるかもしれない」
市場の人にここの野菜はどこで取れるのですかと聞いてみた。すると・・・
ここの野菜の種はもとはこの街から東にいった所にある森にあったものじゃった、じゃがな・・・
商人「畑はみんな山の奥だけど、あぶないから近寄らないほうがいいわ。竜がいるの」
ブラック「竜?そんなの俺の剣でひと薙ぎすればあっというまだろ」
私たちははやる気持ちを抑えられず、大騒ぎしながらピエールに報告に戻った。
ピエール「手を引くぞ。」私たちは手に入れた情報を伝えた後、ピエールが神妙な顔をして放った言葉に耳を疑った。
王子「なんでだ?せっかくの手がかりなのに、何もしないであきらめるのか?」
何でだよ?!っと今にも食いかかっていきそうなブラックと王子を藤崎が手で制する。ピエールはガシガシと頭を掻きながら説明しだした。
ピエール「南の森に住む竜は、俺たち海のやつらにも恐れられてる魔物で、関わったら生きて帰れないんだ」
ピエール「ものすごい凶暴でな、その上その瞳を見たら石にされちまう」
ピエール「お前らの力は十分分かっているつもりだ。だがな、こればっかりはしゃれにならん。お前らを死なせるわけにはいかないだろ。」
ピエールはちらっと私のほうを見た気がしたが、その視線はすぐに逸らされた。
王子「俺の幻術で骨抜きにしたあと、遠くから弓で射ればいいじゃないか」
藤崎「竜は目が弱点であるが故に、直接攻撃でもない限り絶対的に防御されています。王子のつまらない幻術なんか効果ありませんよ。」
ブラックと私は笑いを堪えるのに必死になった。
王子「つまらないって言うなー!!このヨン様もどき!!」
私「本当にだめかなあ・・・」 弟は生まれてから一度も城の外に出たことがなく、ずっと寝たきりだ。
小さい頃は母上をとられてずいぶん寂しかったが、今はなんとしてでも元気になって欲しい。
私「お願い。僕の一生のお願いだから、手伝って欲しい。本当に無理だと思ったら帰っていいから。僕一人で行くから」
ブラック「・・・俺は行くぜ。なに、最初から行くつもりだったんだ。おまえのためじゃない」
ブラックは顔を赤くしてそっぽを向きながらも優しく私の肩に手を置いた。
藤崎「あなたが行くのに僕が行かないなんて選択肢はありませんよ。一人になんか、絶対しません。」
藤崎は私に微笑みかけ、次にブラックに鋭い視線を向けた。
王子「俺だって行くさ。俺だってやれるんだ。やらなきゃヒグマみたいな姫と結婚しなくちゃいけねーもんな」
お前なんか本物のヒグマと結婚しろ!と言いたかったが私はみんなの気持ちが嬉しくてにっこりと笑った。そして決意を込めながらピエールを見る。
「はぁ・・・ったく、やれやれだ。」そう言うとピエールは大きな銃を担ぎ上げ部下に声をかけた。「お前ら船頼むぜ!」
南の森まではかなりの距離があるとのことで、私達は麓の村で馬車を借りていくことにした。この中で馬車を扱えるのは・・・
ピエール「任せろ。少し荒っぽいがな。」
こうして私達は馬車で南の森へ向かった。私の隣の席に座ったのは…
王子だった。
王子「おい、何なんだこのすわり心地は!尻が痛いじゃないか!」
お坊ちゃんはこれだから、というと「お前だってけっこういい家の生まれなんじゃないか?仕草でわかる」と言ってきた。
王子「ものの食べ方とか姿勢とか、庶民とは全然違うぞ。本当のところお前、何者だ?」
私「かいかぶりすぎだ。ある程度教育を受けたものなら、それなりに見えるって事だろう」
と言って隣を見ると王子はいつの間にか寝息をたてていた。その頭はゆっくり私にもたれかかってきたが王子は目を覚まさない。
柔らかくウェーブのかかった薄い茶色の髪、長いまつげ、通った鼻筋、桜色の頬。まさしく”王子様”そのものだ。
幸せそうな寝顔が憎らしくて頬をつつくと、「んーっ・・・」と呻いてその後、にへらっと笑った。
だまってればきれいな顔してるのになあ。私は王子のきめの整った肌をそっと指で押した。
「ん・・・」王子はねぼけて起き上がると、「あなたが私の姫だ」と言い、いきなり私の唇を奪った。
一連の流れを正面に座って複雑そうに見ていたブラックは「うわぁぁぁ!!」と言いながら寝ぼけた王子をバッっと私から引き剥がした。
すると今度は「姫、よいではないか!!」と言いながらブラックにキスを迫る。
その時馬車の車輪が外れ、車が大きく傾いた。
私たちは雪崩れて重なり合い、特にブラックと王子はしっかりと抱き合う格好になっていた。
王子「いたた・・・!!さっきキスしたのって・・・ブラック・・・お前!?」
ブラック「違・・・いや、あ、ああそうだ。お前は俺を姫だって言ったんだ」 ブラックはとっさに嘘をついた。
王子「げぇぇぇ!!気持ちわりー!!!うぇぇぇぇ・・・・」
ブラック(俺だって気持ち悪いけど、本当のことなんか教えるもんか。ムカつくクソガキめ)
王子「お、お前・・・なに黙って・・・はっ!!む、無理無理無理ー!俺は絶対無理だからなー!!怖ェェェ!」
王子「おかしいなあ・・・超可愛い華奢な女の子がいた気がしたんだけど・・・」
呆然としている私のところへ藤崎がゆっくりやってくる。
藤崎の殺人的な目がお肌を刺激する。
私はそれを右から左へ受け流す
藤崎「消毒です」そっぽを向いた私を仰向かせて唇を塞いだ。
なんだか無性に腹が立ってきた。「みんなしてなんだよバカッ!」私はその場から走り去った
ピエールが遠くから大声で呼んでいるけれど立ち止まる気にはなれない。みんなおかしすぎる。
港まで走ってきたと思ったけど、様子がおかしい。道に迷ったみたい。
そのとき、うしろから低い声で獣が鳴くような声がした。
とっさのことで剣を抜くまもなく振り返った私を大きな魔獣が襲い掛かって来た。やばい!やられる!!
しかし、その時魔獣を一筋の剣筋が薙ぎ払った。獣の咆哮があたりに響き渡り、そしてしばらくするとそれは絶命した。
私はぺたりとその場に座り込んだ。剣の主を見ると、彼は・・・
必死で追いかけてきたブラックだった。かなり走ったらしく肩で息をしている。
ブラック「バカヤロー心配させんな!」
ブラック「お前っ・・・・!!!」彼は私を見ると睨んで声を更に荒げた。
私「だって、だってみんな・・・みんなが・・・」
私は近寄ってきたブラックに怒鳴られると思ってギュっと目を瞑ったが、しかし・・・「心配・・・したじゃねぇか・・・・。」
ブラック「お前がやなら、俺はお前に触ったりしない。だから離れるな、そばにいろよ!」
私「うん・・・だけど手を貸してくれるかな、腰が抜けちゃって・・・」
ブラックの傍にいれば安心かもしれない。とりあえず藤崎と王子の半径一メートル以内には入らないことにしよう。
私「なあブラック。お前はもう妹もみつかったのに・・・どうしてこんな面倒につきあってくれるんだ?」
ブラック「その・・・お前が妹を探すのを手伝ってくれたからだ。海も渡ってみたかったしな」
ブラック「とりあえずお前らといれば退屈しないだろ?」強面に似合わない、かわいい笑顔だ。
それに・・・とブラックは続ける「お前ほっとくとなにやらかすかわかんねぇしな!」ニカっと笑って私の頭をグシャグシャなでる。
それからすぐにブラックははっとして私の頭から、悪い!!と言って手を放す。どうやらさっきのことを気にしているようだ。
私「いいよ。ちょっとくらい。変な下心とかないんだろ」
ブラック「ああたたあたりまえだ!お前は男で俺も男で子供とかも生まれないし、じゃなくて」なにやらテンパっている
私は何だか慌てているブラックが可愛くてつい笑ってしまった。
ブラックに連れられてさっきのところへ戻ると、藤崎と王子とピエールがあきれた顔で待っていた。
王子「お前らはしゃぎすぎだ。団体行動中は単独行動は慎めよな、全く常識がない奴らはこれだから困るんだ。」
全員「お前がいうな!!」
総ツッコミを食らい涙目になる王子。
藤崎「すみませんでした。思わずあんなことしてしまって・・・。守ると言いながらあなたを傷つけてしまった。」藤崎はこちらがびっくりするくらい落ち込んでいた。
「僕は・・・もうあなたにとって不要でしょうか?」藤崎は目線を逸らし苦しそうにわたしに問う。
私「そんなことないよ。ただ、オモチャにされてるみたいでイヤだったんだ」
私「っていうか、勝手にベタベタ触んな!俺はお前に守ってもらう必要なんてない。自分の身は自分で守る。分かったな!」
ピエール「お?反抗期か?またそんな時もあんだろ」
この日は結局、馬車の調子が悪くて近くの町に宿泊することになった。
寝静まった頃、ピエールが私を誘いに来た。「お前、酒場までちょっと付き合えよ」
私は昼間の子供っぽい自分の態度を反省して、少し落ち込んでいたので気晴らしにピエールに付き合うことにした。
私「・・・なんか僕騙された?なんでこんな服着なくちゃいけないんだよ!」私は彼の用意したワンピースを着せられていた。
ピエール「似合ってるじゃねえか。この店、女つれて入るとサービスで一人ぶん無料なんだ」
女なんだから似合うのは当たり前だと思ったがこらえた。それにしてもみんながじろじろ見すぎる。
「だ、だからってこんな衣装・・・・!」それはかなり大人っぽいセクシーな服で私は思わず真っ赤になった。
ピエール「ほんとーに女にしか見えない、よなあ?」含みのある笑顔だ。
私「女に見えなくてもいいならブラックにでも着せればよかったじゃないか。」
ピエールはくくっと笑った。「まぁ、確かにそれも面白いかもしれないけどな。悪かったよ、似合うって言いたかったんだ。」
そこに酔っ払いがからんできた。「お前、このへんで見ないようなイイ女だなあ。色が白いが北の生まれか?」
ピエール「俺の連れなんだ。なれなれしくしないでもらえるか?」
ピエールは私を酔っ払いから庇うように立つ。酔っ払いのたちの悪そうな男は一気に機嫌を悪くする。
私「あ、ありがとう…でも僕、自分の身は自分で…」
ピエール「いいから。そんな格好なんだから、レディとして振舞ってくれよな」
「おうやる気か?女の前だからって格好つけたことを後悔するんだな!」と男が拳を振り上げた
その拳をピエールは軽々と腕一本で押さえつける。瞳は面白がるような色さえあり、口元は僅かに笑っている。
ピエール「なんだ?やる気あんのか?」 腕を逆側にねじりあげ、男は悲鳴を上げた。
ピエールはそのまま足をかけ、男をうつぶせに倒し、背中にまたがった。「命は大事だよなー?ごめんなさいは?」
男「だ、誰が?」 ピエール「いいのかなー、腕折れちゃうよー?」 さらに力を込めると男はさらに大きく叫ぶ。
私「やめてやめて、もういいから。もうこの人も反省してるでしょ。ね?」
男「ぐおぉぉおおめんなさああぁぁあいい!!」
ピエールはパッと男の腕を離すと「あー、わかってくれてよかったよかった。」と爽やかな笑顔で男の肩を叩いた。
ピエール「あー、悪者退治した後の酒はうまいねぇ。今日は美人も一緒だしな」
私はドキっとしながらも「男だけどね」と言ったが、ピエールは「周り見てみろよ。みんな男がこっち見てる。気分いいな」
私はこんなところは初めてなのでキョロキョロと辺りを見回した。それにしてもさっきからいろんな人がピエールに声をかけていく。
ピエール「昔、住んでた事あるんだ。オフクロが生きてた頃だけど」
だから店のことも知ってるし、自分はこの街を調べるとき一緒に来なかったのか。
「ピエール、久しぶりね。いらっしゃい。」突然美女がピエールに話しかけてきた。どうやらここの店主のようだ。
女の人「さっきはありがとう。あいつ最近うろついてる盗賊の一味でね。他のお客さんに絡むから困っていたの。」
ピエール「あんなんで盗賊がつとまるのか。ウチの船じゃ皿洗いもさせられないぜ」
「ふふっそうね。あなたっていつ会っても全然変わらないのね。ところで」彼女は私を見るとにっこり笑った。
店主「あなたもいらっしゃい。ピエールの彼女?」
私「彼女なんかじゃ・・・」 ピエール「ああ、今口説いてるんだよ」ピエールはニヤニヤしながら言う。
店主「ピエールももう海賊なんかやめちゃって、この街に戻って結婚しちゃえばいいじゃない」
ピエール「んーまあ、夢半ばだからなー。俺、まだ全部の海渡ってないし、オヤジ殺したやつも見つけてないし」
ピエール「ま、先のことはおいおい考えるさ。挿し当たっての目的は、コイツらと南の森へ辿りつくことだしな」
店主「南の森・・・あんな恐ろしいところへ?しかも女の子が一緒なんて!」
私「フフ・・・心配ご無用ですよ。今の時代、女が闘ったっておかしくない。大切なものは自分の力で護らなければならないんです!そのために私は剣の腕を磨いてきた!」
「南の森にある薬草がどうしても必要なんだ・・・少しでも治る可能性があるなら・・・それに賭けたい・・・・・」
「まぁ、ふふ頼もしいのね。」すると店主は伏し目がちに続けた。「この人のことお願いね・・・。いつまでも子供みたいな人だから。」
(この図体デカイのに子供って…てかお願いって何だ??)と思いつつ、「承知した」と無難に答えておく
ピエールがトイレに立つと、店主が話しかけてきた。「私、昔ピエールとつきあってたの」
店主「私は結婚したかったんだけど、ピエールは船を捨てられなかった。だから別れることになったの」
店主「今は私、別の人と一緒になったけど…ピエールにも心の休まる相手がいたらなと思ってるの」
「あの人大人ぶってるけど本当はすごくさみしがり屋なの。船の皆のこと家族だって言って大切にしてるし、それにあなたの事好きみたい。」
店主「何か目が離せないって感じだもの。ねぇ、あなたもしかして前にピエールが・・「なーに長話してんだコラ。」そこにいつの間にか帰ってきたピエールが割り込んできた。
ピエール「ホラ帰るぞ」私を小脇に抱えて酒場を後にした。
宿に帰ってきて、こっそり部屋に戻ろうとするとトイレに行こうとした王子とハチ合わせた。
王子「あ、あなたは・・・あなたは・・・名前を・・・」ヤバイと思った私は王子のみぞおちに蹴りを入れ、気絶させた。
次の朝。 ブラック「王子様っつーのは廊下でねっころがってパンツをはいたまま小便するのか?つか、お前いくつだ」
王子「あ、あまり失礼なことを言うと首が飛ぶぞ!急に襲われたんだ!」
王子「俺、昨日すごい美人を見たんだ。それでびっくりして、話を聞こうとしたら殴られて。ほらここ、アザになってるだろ?」
ブラック「お前寝小便が恥ずかしいからって適当なこと言うなよ」
王子「違うんだ!年のころは俺と同じくらいで、色白で・・・俺、あの子のことが頭から離れねえ」
藤崎「それは一目ぼれですね。ほら王子、このお茶を飲みなさい。夜尿症に効きます」 王子「だから違う!」
やいのやいの騒いでいる傍らで、ピエールが私に向かってニヤリと目配せしてきた。(二人の秘密、か)
馬車の中、王子が私たちに話しかけてきた。「お前らは恋をしたことがあるのか?」
ブラック「悪いモンでも食ったのか?」 王子「違う、本気で聞いてるんだ」
藤崎「どうやら流行りの熱病のようですね。どれ私が治療を」
王子「だから違うっつってんだろ!」
藤崎「ふふ、恋というか、守りたい人がいます。昔からずっと。それは変わらないでしょうね」
藤崎「守るというと嫌がられてしまうのですが…側にいたいんです」藤崎は私を見て微笑んだ。「あなたは?ブラック」
ブラック「俺のは・・・これを恋と呼ぶなら、実ることはない恋だ」
ブラック「でも止められないんだ。どうしても気になっちまうし、そいつのためには何だってしてやりたい」
王子「お前はどうだ?」私に聞いてきた。 私「私は・・・まだわからない」
王子「俺はいままで城の中で、決められた相手と結婚するって思ってたから恋なんてしようと思わなかった」
王子「だけど一目見て、頭の中からあの子のことが離れないんだ。あんなに理想どおりの人はいないんだよ!」
ブラック「ふーん、まぁ好きなヤツができてよかったじゃねぇか。(俺のなんて一生叶わない恋だもんな・・・)」
藤崎「頑張ってくださいね。(私なんかすっかり嫌われちゃいましたからね。他人の恋なんかどうでもいいです)」
ブラック・藤崎「はぁ・・・・・・。(切ない・・・)」
王子があまりにほめちぎるので私は居心地が悪くてずっと下を向いていた。
山のふもとまで来て私たちは馬車を降りた。ピエール「こっから先、畑のある辺りまでなるべく危険地帯を迂回する」
地図を広げて指をさす。「この三叉路までは安全、右の道が歩きにくくて畑までいちばん遠いけどこっちへ行こう」
ピエール「最後の1キロくらいはドラゴンの生息地だから気を抜くなよ。そこを抜ければ目的地ってわけだ」
私達は途中、小休憩を挟みながら山道を歩き続けた。そしてやっとのことで、ドラゴンの生息地と思われる谷に辿り着いたのだった。
王子「なに、たかだか1キロじゃないか。駆け足でも抜けられる」
ブラック「アホかお前は。物音立てたら寄って来るに決まってるだろ」
藤崎「竜は耳もいいですからね。物音を立てないようにそぉーっとそぉーっと行きましょう。」
王子「そうだな。お前ら静かにしてろよ…ん?うおおおお!見ろよ!こんな所にヘラクレスオオカブトが!!」
全員の手が王子に伸びる。「ん…ん〜っ!!」その時どこからか竜の呻きが轟いた。
ドラゴンは結構近そうだ。この場合はどれが得策か!?
1.一気に駆け抜ける
2.息を殺して留まる
3.真っ向勝負!
2.息を殺してその場に留まり、竜の気配を探った。
しかしさっきまでひしひしと感じた竜の気配が消えていた。一体・・・その時「っっ!!上だ!!!」
恐竜のような大きな肉厚の翼と大きな鉤爪、長く伸びた喉元が目に入る。
その影ははるか上空だというのに、私たち5人をすっぽり覆い隠すほど大きい。
その時、雲がにわかに晴れて太陽が出た。運の悪いことに王子の胸についた王家の紋章がキラリと光ってしまった!
竜はその紋章を目印とばかりに一直線にこちらへ向かって来た!
ブラック「アレンそれ捨てろ!」 王子「これは一族の誇りだ!」 ブラック「埃でもゴミでも死ぬよりマシだ!」
「もう遅い!!来ます!」藤崎が私たちには聞き取れない不思議な言葉で詠唱を始めていた。そしてその手から凄まじい冷気が溢れ出す。
キシャーッ!!必死で走る私たちの後ろからドラゴンがせまっている。藤崎は強力な呪文のため、詠唱時間が長い。
「あっ!」私は地面の草に足を取られて転んでしまった。もうだめだ!
ふいにすさまじい冷気があたり一面を覆った。 ギャギャギャーーーーーッ!!ドラゴンの咆哮が響く。
竜は藤崎の呪文で動きを止められたようだ。ブラックはそれに真っ向から斬りかかる。「くたばりやがれ!!」
ピエール「バカ!目を見るな!!」 ブラックの大きな剣がドラゴンの両目を一文字に斬り、ブラックは・・・
こちらを見て少し微笑み、「無事でよかった」と言うと、足元からだんだんと色が変わり、ついには動かなくなった。
私「あ・・・ああ・・・あ・・・ブラック!!嫌!嫌だーーーーー!!」
私は急いで駆け寄ってその頬に触れる。人間の肌の感触はなくブラックはただただ冷たかった。
涙が頬を伝って止まらない。「なぁ・・・嘘だろう?・・・ブラック?・・・何でお前が・・・う・・うっ・・」
”俺はこの剣を有意義に使ってみせる” その言葉がよぎった。
私「僕のせいだ。僕の。僕がわがまま言ったから・・・」
そのとき視力を失った竜が痛みに暴れだした。まだ生きていたというのか・・・。その怒り狂った様子をみてピエールが叫ぶ。
ピエール「俺たちを見失っているうちに行くぞ!来い!」 私「嫌だ・・・嫌だ!!!ブラックを置いてなどいけない!たとえ死んでも私はここを離れない!」
泣き喚く私をピエールは小脇に抱え、ドラゴンの谷を抜けた。
私「離せバカっ!!」私は泣きながらピエールの頬を叩いた。ピエールは何も言わずにそれを受ける。
私はそれに苛立って詰め寄った。「どうしてだ!!!あ、あんなところに・・・あいつを・・・一人ぼっちで・・・」言葉が続かない。
藤崎「落ち着いてください。石にされたとはいえ、助かる見込みがないわけではないでしょう?私たちまでやられたら、それこそ彼を誰も助けてあげられなくなる」
ピエール「石化を戻す方法・・・もしかして、俺たちが探してる薬草が何か関係してるかもしれない」
王子「そうだよ、その草なんでも治してくれるんだろ?きっと石化も治せるって!!」
三人に諭されながら、私は森の奥にあるという畑まで連れられていった。
王子「すっげぇ・・・」 そこは色とりどりの果実や野菜がたわわに実り、楽園のようだ。
浮かれて実をもぎ取ろうとした王子を制するかのように誰かが声をかけた。「ちょっとちょっと、勝手に持ってかないでよー!」
細身の少年が木の上から何か言っている。プラチナブロンドで、睫毛までが金色。あの色素の薄さはエルフだ。
少年「これは全部おれが管理してるの!ドラゴンをよけて麓の村まで持って行くのだって、エルフじゃないとできないんだぜ?」
藤崎「私たはち病気が治ると言われている草を探しています。このあたりの土地は特殊だし、何か知りませんか?」
少年「草ぁ?うーん、薬草はおれじゃなくて、爺ちゃんの分野」 少年は木から飛び降りる。顔が小さく手足が長く、透き通るように美しい。
少年は私を見て言う。「おまえはなんで泣いてんの?なんかやなことでもあった?どっか痛いのか?」
ピエール「仲間が竜に石にされちまったんだ。石化をとく方法知ってるか?質問ばっかで悪いけどよ」
少年「んー、治療は全部爺ちゃんが…そうだ!お前ら爺ちゃんに会いに行ってみるか?」
少年に連れていかれた先にいたのは驚くほどの美形のかなり若い青年、銀髪の青い目のエルフだった。少年「じいちゃんだよ!エルフの長なんだ!」
私たちが来たときには閉じられていた瞼をそっと開いて彼はじっと私たちを見つめる。「人間・・・か。」実に穏やかで耳に優しい低音だ。
エルフは、人間と関わるのを嫌がる種族と言われているが…この青年?は大丈夫だろうか。
爺さん「・・・ここは人間が容易に入れないよう、竜が守っている。お前達は何故、ここまで来た?竜の警告を無視したのか」
私「治療法が分からない弟の病を治したくて……それに、そのドラゴンに仲間が石にされてしまった!」
エルフ長「ドラゴンの警告を聞かなかったのだろう。自業自得だ。…薬草は決まった日に一定量を麓の村に届けさせている。欲しければ村で調達するがいい。例外はない」
藤崎「しかし、随分お若いですね、エルフは歳をとらないとは聞いていましたがこれほどとは…。」
長「薬草の効能だ、毎日世話しているからな。だが人間に使いすぎると毒になることもある。だから我々エルフにしか管理できない」
「話は以上だ。お引き取り願おう」 エルフの長は音もなく立ち上がると、部屋を出て行った。
王子「麓の村って、誰も薬草のことなんか知らなかったじゃないか。まさか誰かが隠し持ってんのか?」
少年「んー、城の王様っつー人にいつも届けてるけど。あいつ、村人が困ったら分けるから自分が持ってるって言ってたよ」
ピエール「王様がモノを分けるだって?冗談だろ。税金は高くなる一方だし、あいつは搾り取ることしか考えてねえ」
私「そんなっ・・・一刻も早くブラックを元に戻さなきゃいけないのに城にいっている暇なんかない!教えてくれ、どうにか長を説得できる方法はないのか?!時間がないんだ!」
長「では・・・今、お前が身につけている物の中で最も大切だと思うものを差し出せ。それと薬草を交換してやろう」
私は大事なものは何も持っていない。困っていると王子が言った。「・・・俺は海を渡った先にある北の国の王子だ。この紋章は王家の誇りなんだ。これを差し出すから、仲間を救ってくれ」
藤崎「アレン、それは・・・」 王子「俺のせいでブラックはあんな目に遭ったんだ。あいつを救うためなら、俺は王子の証明なんか捨ててやる」
藤崎「私は・・・この高位魔術師の紋章を差し上げます。私はこの資格を手に入れるため、何年も辛い修行に耐えてきました。なければ私は職を失います。でもどうぞ、かまいません」
ピエール「俺は船をやるよ。オヤジから譲り受けた唯一の形見だがな。もう冒険はできない、だけど仲間の命には代えられねえからな」
私「僕は何も持っていません。だけど何でもします。この命を捧げたってかまわない。仲間を救いたいんです」
エルフの長は静かな海のような青の瞳で私たちを捉えた。私たちは心変わりはないとでもいうようにもう一度しっかり頷いて彼を見る。
彼は一瞬私たちを眩しそうに見つめ、気のせいかほんの少しだけ微笑んだような気がした。その笑顔はまるで彼の素顔の全てを語っているようだった。
長「よかろう・・・この薬草を持っていくがいい。ただし、一つ条件がある。この国の圧政をお前達の知恵で封じてみせるのだ」
王子「いや、俺ら一休さんじゃないから・・・」
王子空気嫁と思ったが、たしかに簡単にできることではなかった。
少年「じーちゃん、それはまた別の話として、とりあえず石になったヤツのぶんだけあげてもいいんじゃねえ?」
長「かわいい孫の頼みならば聞かねばなるまいて。いいだろう、お前達の友情に免じて特別に薬草をくれてやろう」
長「石化した者に薬草を飲ませるのは至難の技でな・・・誰かが良く噛んで口移しにして飲ませるのが一番だが」
王子「ブラックとキスか・・・無理だ・・・そうだお前!ブラックとキスしたことあんだろ!お前でいいじゃん」
私「うう…っ。わ、わかった。僕がやる……でもこれはキスじゃなくて人命救助だ!このアホ王子!!」
私たちはブラックのところまで戻った。石になった逞しい体と精悍な顔立ちはオブジェのようだ。
私は薬草を噛みくだき、柔らかくした。苦くてえづくような感覚がしたがぐっとこらえ、ブラックの頬に触れる。
息を止めてかたい唇に口づける。前の柔らかな感覚とはまったく違う。薬草はなかなか思うように入っていかず、私は舌を使って彼の喉近くまで押し込んだ。
彼の体にじわりと体温がよみがえる。ブラックは私から唇を離すと、まじまじと私を見つめて強く抱きしめ、深いキスを返してきた。
私は腕を外そうともがいたが、折れそうなくらいの力で抱きすくめられたままだ。
ブラック「どう思われてもいい。触らないって言ったけど無理だ。離したくない」
「は、放せ!」思わず右ストレートを繰り出すと、ブラックは呆気なく吹っ飛んだ。ちょっとだけ飲み込んでしまった薬草の効果が発揮されたようだ。
ブラック「なんでもいいよ。俺、もう死んでもいいくらい幸せなんだ」
私「せっかく助けたんだから、長生きしろよ、バカ」 私は笑った。
ピエール「お取り込み中のとこ悪いが、城の様子を探ってみないか?薬草独り占めとか、ふざけた王様だぜ」
王子「ところでそれってどこの国の王様だ?この辺の近くで一番大きくて圧政を強いている国って・・・おい、まさか・・・。」
ブラック「この辺の近くっつーより、この国だろ。武術大会で集まった俺たちには分からないが、国民は圧政に苦しんでいるのかもしれない」
設定まとめ
私(主人公)…A国の第二王女。暗殺された姉の第一王女と病弱な双子の弟王子のために、男装して剣を振るう。王族であることは秘密。
ブラック…主人公の姉を暗殺した刺客の息子。A国でも名高い剣豪。鍛え抜かれた身体を持つパワータイプ。ホワイトという妹がいる。
ゴールド・藤崎…魔法使い。数少ない高位魔術師の紋章を持つ、かなりの使い手。A国の専属医の息子で主人公とは顔見知りだった。
アレン…B国の王子。弓と幻術を使う。世間知らずで空気読めないアホの子。主人公と政略結婚の話が出ているらしいが…?
ピエール…海賊団のキャプテン。父親を殺した相手を探している。幼い頃C国に住んでいた。21歳。
A国…北方にある国。物語の発端である武術大会が開催された。
B国…海を渡った先にある北の国。
C国…南方の暖かい国。ドラゴンが守るエルフの村がある。
ピエール「ああ、この国は貧乏なヤツが多いんだ。俺のオヤジが海賊になったのも生活のためだ。オフクロが生きてた頃はまっとうに働こうともしてたんだがな」
藤崎「確かに買い物をしても物価が高かったです。消費税は20%だと言ってました」
少年「今から30年位前かなー、あの王様きゅうに感じが変わっちゃったんだ。なんかあったのかもね」
私は少年が30年以上生きていることに驚いたが、長老の顔を見て納得した。
ピエール「それは俺も聞いたことがある。オフクロが、王様は昔はあんな人じゃなかったって言ってたな」
アレン「よし、俺がじかに会ってこの目で確かめてみるよ。俺の国とも国交がある。会いに行っても不自然じゃないだろ」
藤崎「だけどあなたは今、王家の紋章を持っていません。王子と言っても信用されないでしょう」
長老「それならば心配ない。お前たちが本気なのはわかった。先ほどの宝物はみな返そう」
ブラックはそれを見て驚いた顔をしたが、藤崎がにっこりと笑ってブラックがものを言うのを止めた。ブラックは下を向いて少し微笑んだ。
王子「紋章・・・王家の誇り!」嬉しそうに紋章を光にかざす。”エストレラ・プラタ”の国名が目に入る。私の国の”ソル・ドラド”とは、ちょうど色違いになっているようだ。
長老「竜の渓谷から西に向かう道がある。それをまっすぐ進めば城にたどり着くだろう」
目を凝らすと、星の描いてある国旗が見える。あれを目印に進もう。
私「アレンはこの国の王様に会ったことあるの?」
王子「俺がまだ5歳くらいの頃、俺の国の王位継承があって。父上が新国王として、国交のあるこの土地を訪れた。そのとき俺と兄上も一緒に来た」
王子「ほとんど覚えてないけど、怖くて兄上の手をずっと握ってたな。あれが兄上と一緒に国の外へ出た最初で最後だった」
ピエール「ま、その紋章があれば門前払いにはならんだろ。頼むぜ、アレン王子!」
城の門番に王子が話しかける。「俺はエストレラ・プラタの第二王子、アレンだ。近くまで来たのであいさつに来た。国王にお会いしたい」
門番は私たちを少し待たせ、再び中から出てきた。「お入りください。ただしお付きの方は二人まででご遠慮願います」
アレン「失礼があってはいけないから、一人は教育を受けていそうなお前にする。もう一人は・・・」
1.ブラック
2.ピエール
3.藤崎
2、ピエール 「ん、俺か?いいけどこの格好じゃあちょっとまずくないか?」確かにピエールはどうみても賊だ。
少しはマシになるだろうと着替えさせられたピエールを見て私たちは開いた口が塞がらなくなった。
服は大して高価でもないのにいつもボサボサの赤い髪をあげ、無精髭もないピエールはまるで雄雄しくも気高い王のような風格があった。
「ではこちらへどうぞ」 兵士の案内で王が座する間へ向かう。日当たりのせいか、城内は薄暗い雰囲気に包まれていた。
謁見の間に通された私たちを迎えたこの国の王、短く切りそろえた赤髪をがその気性の激しさを物語っているようだ。しかし、誰かに似ている気が・・・
王子「久方ぶりでございます。エストレラ・プラタの第二王子、アレンと申します」
王「ふむ・・・王位継承のとき以来とすると、13年ぶりか。すっかり立派になられたものだ」
王子「はい。今年で18になりました」 猫をかぶっているせいかちゃんと王子様に見えて、妙に感心してしまった。
王様は私たちの方にチラっと目を向けて何故かピエールを見て驚いた顔をした。王「お前っ・・・いや何でもない。残りの二人は付き人か・・・?」
王子「いえ。共に旅している仲間、ピエールとナナシーです」王子に促されて私達も一歩前へ出る。
私は王子の足を見えないように蹴り、旅とかめんどくさいこというな、側近でいいだろ!と囁く。見直したが王子はアホだ。
王「ところでプラタ王から話が通っているかもしれないが、プラタとソル・ドラドとわが国を統合しようとする動きがあるようだ」
私は驚いて一言も言葉が出ない。どうやら、財政の厳しいプラタと跡取りのいないドラドをこの国が吸収するという話らしい。
王子「俺・・・わ、私は、何も伺っていませんが」王子も顔面蒼白だ。
王「まあ、良い関係を保とうじゃないか」王は不気味な笑いを浮かべると、王子に握手を求めた。
王子は手を握り返すと絶句し、あわてるように手を引っ込める。顔色がいっそう青い。
城を出ると藤崎とブラックが駆け寄ってきた。 藤崎「この城・・・嫌な感じがします。なにか禍々しい魔力のような」
王子「ああ・・・俺、さっき握手したとき、全身がだるくなるようなイヤな感じがした。あいつは人間であってそうでないような、不思議な感じだ」
私「それに三国統合なんて、一体どういうことなんだ…?確かにソル・ドラドは裕福とは言えないけど、他の国に救援を求めなければならないほど貧困じゃないのに」
ブラック「どうだろな、庶民の俺らからしてみれば国の財政なんかわからねえし」 いや、私も王族だけど知らないよ!と心の中で突っ込んだ。
ふと見るとピエールが思いつめた顔をしている。 ピエール「俺、何だか不思議な感じがした・・・懐かしいような」
王子「気分悪いじゃなくて懐かしい?変わったやつだな。そういや髪の色王様とカブってたな」
王子「しかもあいつとアンタ似てたしな!もしかして血が繋がってたりするんじゃねぇの?」ダハハっと笑う王子と静まり返る私たち。
ピエール「いや、俺のオヤジは海賊だぜ?オフクロが死んでからはオヤジが一人で育ててくれた」
ピエール「そりゃ俺は、オヤジとは似てなかったけど、海賊にまでなってよその子供を育てるなんてありえねえだろ」
私たちはエルフの村まで戻り、長老に一連のことを報告することにした。
王子が幻術を使い、王様との会話の一部始終をスライドのように映し出した。
王「この顔つきは・・・何かに憑かれている顔だ。それもかなりタチ悪いものに」エルフの王は厳しい表情で言った。
少年「そういえばあの王様、人間なのに全然歳を取らないんだ。他の人間ならもうじいちゃんだよ!」
王「城全体が魔物にとりつかれている可能性もあるな・・・よし、私も見に行こう」
エルフの長老をパーティに加え、私たちは城へ向かう。長老は外観を見るなり、やはり城が呪われていると言った。
王子「よし、じゃあもう一度入れてもらおう」 長老「いや、呪いの源を確かめるため城の中を見てまわりたい。ここは忍び込もう」
藤崎「それでは私の転送魔法で」藤崎は長い呪文を詠唱しだした。周りに白いもやがかかり、場面が切り替わる。
私たちは城の一階に飛んだ。さきほど通された大理石の廊下とは違い、石の壁で出来ている。召使がいるようなエリアかもしれない。
どうやら一階の中央付近に出たようだった。行く手は三つに分かれている。さて、どっちへ進もうか。
1.中央突破
2.右の暗い廊下
3.左の下り階段
2、王子「中央突破だ!王子だからなっ!」意味わからないことを言いながら王子が走りだした。
「うわぁ!」いきなり王子の姿が消えたので驚いて近づくと、王子は落とし穴にはまって1フロア落とされていた。
藤崎「どうします?」 ブラック「見殺しにする選択肢があんのかよアンタ・・・」仕方なくみんなで飛び降りた。
王子「ヒミツっていうのはこういうとこにあったりすんだよ」全員「おまえがいうな!」
地下は薄暗く、足元がおぼつかない。私は隣にいる誰かの袖をぎゅっと握った。
ブラックだった。ブラックは私を見て少し赤くなったあと、「大丈夫。」といって私の手をそっと握った。
長老「危ない!何か来る!!」 長老は暗闇から気配を察し、その声に反応してピエールが銃を連発する。
ギャーッという断末魔の叫びがし、恐る恐る覗き込むとガーゴイルが倒れていた。よく見ると鍵を持っている。
藤崎「向こうから明かりが漏れていますね」 どうやら牢があるようだ。
中には老人が閉じ込められている。「ピエール様!ああ、戻ってきて下さったのですね!」
ピエール「誰だ?」 老人ははっとした顔で言う。 老人「そうですよね・・・あまりにもお顔が似ていらしたので。ピエール様がまだこんなにお若いはずは…」
ブラック「お前、本名ピエール2世って言ったよな。オヤジの名前もピエールなんじゃねえの?」
ピエール「ああ、俺の父親はピエールだ。しかしなぜそれをお前が知ってる?」
老人「やっぱりあなたは・・・!そのご様子だとご存知ないのですね。あなたのお父上のピエール様はこのシエロ・アズール国の第一王子様です」
老人「私は小さい頃よりピエール様のお世話をしていましたハンスと申します。30年ほど前、国王様が突如乱心なさって、後継者のピエール様を手にかけようとしました」
老人「私はピエール様をこっそり逃がしました。その時の罪で一生をこの牢の中で過ごす事になりました。本来なら死刑ですが、この国の法律で老人は死刑にすることができませんので」
老人「…お父上のピエール様はお元気でいらっしゃいますか?こんな立派な御子息までおられるとは…この老いぼれの身と引き換えならば安いというものでございます」
ピエール「オヤジ・・・父は、去年亡くなりました。」 それを聞いたハンスの目に大粒の涙が膨れ上がる。
ハンス「ああ、まだお若いのに。逝くのは私のほうが先ですのに・・・」 私「泣かないで。早く、今のうちに外へ」
ピエール「じゃあ、あの国王は俺のじいさんってことになるのか・・・くそっいきなりそんなこと言われてもな。とりあえず俺の肩につかまって下さい。行くぞみんな!」
王子が近くの門番へ話しかける。「おい、王様に話がある。もう一度通してもらえないか」
門番「王様はさきほど、三国統合のお話をしにプラタの国へ出発されました」
ハンス「いけません!統合といっておきながら、国王は三国とも手中におさめるおつもりです!」
騒ぎに気付いたのか、城の者達が何事かと集まってきた。
「なになにどうしたの?あたいにもおせーて」
長老「ちょっと厄介になってきたな。逃げるぞ!」 私たちは城の外へと再び逃げ出した。
王子「俺の国が・・・俺の国が乗っ取られる。ピエール、早く船を出してくれよ!」
藤崎「無理です…船が占拠されている!」岸に固定された船の上で、船員たちが圧倒数の兵に囚われていた。
私「みんな!ソル・ドラドに行こう。ドラドなら陸続きだし、それに…ドラドの王が力を貸してくれる」
ブラック「だがドラドだって、自国の兵力を上回るこの国を敵に回したくはないんじゃ」私「…大丈夫。僕を信じて」
長老「私はこの土地のエルフの長ゆえ、この地からは離れられない。代わりといってはなんだが、馬車に魔法をかけておいた」
長老が指した方向の空を見ると、ペガサスの馬車がこちらへ向かって走ってくるのが見えた。
ピエール「すげえ!空が飛べるのかよ!」 ということはプラタにも行けるけど・・・
1.プラタに直接乗り込む
2.ドラドへ援軍を頼みに行こう
3.アズールにやりのこしたことがある
2.ドラドへ行こう
王子「援軍なんか頼めんのかよ、お前みたいな一般人が」
ブラック「俺はこいつを信じるぜ。」 王族のことを言えず、言葉に詰まる私にブラックが笑いかけた。
ピエール「よし、じゃあ出発するぜ。飛ばしていくからな」
ペガサスは雲の中を軽やかに駆け抜ける。ここから見えるたてがみは太陽にキラキラ輝き、大きな羽根が大空を舞う。
私「うわぁ、地面があんなに遠い!船が豆粒みたいだよ!」こんな事態なのにはしゃいでしまう。
王子「バ、バカと煙は、たたたたた高いとこが好きだなあ?」 王子は高所恐怖症だった。
藤崎「ほら王子もよく見て」 王子「ギャア落ちる!!落ちるから離してくれ!!」
藤崎「離していいんですか?そーれ」王子「うわぁああ、いきなり離すなー!!」藤崎は随分王子でお楽しみのようだ。
雲間から下を覗いていると、次第に懐かしい街並みが見えてきた。北側にひときわ大きくそびえ立つ城がある。
ブラック「空から見ても立派な城だよな。まったく、どんな奴が住んでるんだ」 私は肩をすくめた。
藤崎「どうでしょうね」 王子「ヒグマみたいな姫がいるってさ!」
私は王子を逆さづりにして景色をよーく見せてあげた。
王子が気絶している間に私たちはドラドについた。長老「どこから入るんだ?」
私「あれ?長老は来られないって…」
どうやら幻覚えだったようだ。長老元気かな・・・。さぁ早く城にはいろう。私たちは近くの森に降り立った。
私「私が話をつけるから、皆はここで待ってて」 王子「いや、お前一人で入れてもらえるわけないだろ。俺もついていってやる」
うーん、ここは知らん振りして王子のあとについていったほうがよさそうだ。
王子は門番に話しかける。「エストレラ・プラタの第二王子アレンだ。国王にお会いしたい」
門番は私の顔をチラチラ見ているが、私の空気読めオーラを察し、城の中へ王子と私を入れてくれた。
廊下を歩くと城の者が皆敬礼していく。 王子「隣の国だから顔がわかってるのか?召使の教育がしっかりしているんだな、感心感心」
もちろん敬礼しているのは私にだ。話し掛けようとする者もいたが、私が王子の三歩後ろから怖い顔をしながら歩いているのでみんな空気を読んでくれた。
謁見の間に辿り着くと、重い扉が開かれた。奥の玉座に座っているのがソル・ドラド国王―私の父だ。
「おおアレン王子、すっかり逞しくなられて…お父上もさぞや鼻が高…ブフーッ!!」私に気付いた父様がワインを噴いた。
それを顔面にまともに受けた王子と吹きそうになる私。
王「し、失礼した。ところで王子、何か御用があったのでは」 父上は私をチラチラ見ている。
王子「シエロ・アズール国王がソル・ドラドとプラタを制圧しようとしているので、そこで対抗できるだけの武力を集めています。ドラドの軍をお貸しいただけないでしょうか」
私「私からもお願いします。アズールに対抗するにはこの国の力が必要です」
父「・・・立派になったな。まるで本当の息子のようだ。可愛い我が子のお願いを聞かないわけにはいかないな。協力しよう」
王子「そんな風に思ってくださっていたのですか。・・・結婚のお話、大切に考えさせていただきます」 何か勘違いしているようだ。
王子「俺、覚悟が出来たよ!こんなに思ってくれる王様のためなら、ヒグマの嫁くらい我慢できる!!」
私「頭のネジが何本も足りてない王子なんてヒグマの姫でも願い下げだと思うぞ」
父「コホン。アレン王子とその連れの方々、本日は我が城にて体を休めてはいかがだろうか」
気が付けば日が沈んでいる。久々の我が家だし、今日はゆっくりするとしよう。
そうだ。こっそり弟に会いに行こう。私は急いでお風呂に入ってドレスに着替えた。
ドン!!急いでいたので曲がり角で誰かとぶつかってしまった。「おっと・・・悪い!」その人は転びそうになった私を抱きとめた。ブラックだ。
ブラック「危ないな・・・お、お前・・・!?」ブラックはすごく驚いた顔で私を見つめる。(バレた・・・!?)
ブラック「コンタクトレンズを探してるんだ。悪いがちょっとの間動かないでもらえるか」
返事をしようとして気が付く。しゃべると私だと悟られるので声を出すわけにはいかない。「ウー」なんとか擬音のような声を出す。
私は足元にキラリと光るものを発見した。「ウー」 ブラック「ありがとう。助かった。水道はどこだ?」 私「ウーウー」
ブラック「口が利けないのか。だけどお前は優しい娘だな。顔が見られないのは残念だが、きっと美人だ」
ブラック「そうだ、エルフの長老にお前のぶんの薬草も貰ってこよう。そうしたら・・・おい、どこへ行くんだ」
私は駆け出した。コンタクトを入れてしまえば私だとバレてしまう。その前に逃げなければ。
(ブラック・・・知らない子にもあんなに優しい言葉をかけるんだ。私だけじゃなくて、みんなに優しいんだ・・・)胸がしめつけられるように痛んだ。
この気持ちは…(でも現状では私は世継ぎ。国のためにアホ王子と政略結婚することになるだろうし、どのみち…無駄でしかない)
(そうだ、王子だって嫌なヤツじゃない。バカだけど。なのに何なんだこの気持ちは・・・)私は涙を強引に拭って弟の部屋のドアを開けた。
「姉様、戻ってきてくださったのですね」豪華な天蓋のベッドに横たわったままの弟が嬉しそうに微笑んでいる。
私とそっくりの大きな瞳はきらきら輝き、きめ細かい白い肌は、嬉しそうに紅潮している。手前味噌だけれど、エルフと並べても遜色のない美少年だ。
弟「今回はどんな冒険をしてきたの?僕、姉上のお話聞くのいつも楽しみなんです」
弟は私に外の話を聞き、私は弟の読んだ本の話を聞く。それが私たちのいつもの会話だった。
「うん・・・南の国へ行ってきたよ。エルフやドラゴンにも会った」
私はできるだけ全てを弟に伝えた。楽しかったことや怖かったこと、そして仲間のこと。
そして俯いた私の頬に弟が手を添えた。「姉上・・・泣いていたんですか?何か辛いことがあるのですね。」私はハっと顔を上げる。
私「な、なに言ってるの。私はホラ、いつも通り、元気元気!」私は無理矢理笑顔を作りガッツポーズをした。
弟「それなら安心しました。」 私「そうそう、最近は 何の本を読んだの?面白いのあった?」
弟「恋愛小説です。身分違いの二人の報われない恋。きれいだけど悲しくて、僕泣いてしまいました」
弟「・・・姉上は、恋をしたことがありますか?僕は恋を知らずにこのまま死んでしまうのかな」
「そんなわけない!絶対・・・絶対私が死なせない・・・待ってて。」私が弟の手をギュっと握ると彼は嬉しそうに笑った。
弟「では、姉上も。好きな人ができたら絶対その人をあきらめないで下さいね。今恋をしているんでしょう?」
弟「出来ることなら僕も姉上の傍に居て、姉上を守りたい。…待つ事しか出来ない自分が、情けないです」
724 :
723:2007/09/15(土) 17:34:38 ID:???
すまん被った。スルーよろ
弟「でもその人は姉上を守ってくれる人なんですよね?」
私はブラックの一挙一動を思い出す。私の頭を撫でてくれた。ドラゴンの目を自分を犠牲にして斬りに行った。私を抱きしめて深くキスを返してくれた。暗闇で手を握ってくれた。
私「うん、彼は強くて本当に優しい。だから私は、彼を好きになった」
守られたくないと、自分の身は自分で守るとずっと思っていた。けれど私は知ってしまった。広い背中に守られる心地よさ、あたたかさを。
想うたびまた、ぽろぽろと涙がこぼれる。「あれ…嫌だな、なんだか私弱くなってしまったのかもしれない」
弟「そんなことない。姉上は強いです。その上きれいになりました。眩しいほどです。僕にもいつかそんな人ができたらいいな」
私「ありがとう。きっとできるよ」 涙をぬぐってにっこり笑う。生まれて初めての恋と嫉妬。いつかすべて笑って話せたらいい。
ドンドン!!「姫様!陛下がお呼びです!至急謁見の間に来るようにと!!」何かあったのだろうか・・・私と弟の顔が青ざめる。
動揺する王子をなだめ、私はドレスを着替えて謁見の間に急ぐ。
謁見の間にはみんなが集められていた。 王「奇襲だ。アズールの軍が攻めてきた!」
ピエール「どうやら、俺たちの行動読んだみたいだな、先に攻撃を仕掛けてくるとは。」
ブラック「作戦を立てよう。ピエールは城の二階から銃隊を指揮してくれ。王子は城の一階で弓を頼む。俺は城の外で攻めてくる軍を押さえる。藤崎は救護を」
私「私は?ブラック」 ブラック「お前は、俺の側で一緒に戦ってくれ」 私はうなずいた。この人になら、ついてゆける。
ブラックが囁く。「そばにいろ、離れるな。俺はお前を信じる」
ブラックは私を引き寄せ抱きしめた。私も我慢できずにその背中にしっかりと腕を回す。「生きて帰ろうな」
私の身の丈ほどの剣を担ぐたくましい腕、鍛え抜かれた厚い胸板。こんな時だというのに、心の底から側にいられる嬉しさを噛み締めた。
ブラック「さあ、行こう」回した腕で背中を押され、私は門の外へ出る。真っ暗な闇の中、松明をかかげた敵の軍が、馬に乗って城を取り囲んでいる。
私たちの軍も馬を駆りながら、剣で敵を迎え撃つ。
遠くでは、二階から発砲した銃で人が次々死んでいるのが見える。平和なドラドの国に、一瞬にして濃い血の匂いが充満した。
私は剣を鍛えてきたけれど、戦争なんかどこか遠い国の出来事、どこかでそう思っていたのだろうか。先ほどまで人間だったものが人間でなくなる光景が信じられず、気が遠くなる。
幼い頃から一緒に剣を習ってきた城の兵士が止めをさされる。けれど泣いている暇はない。戦わなければならない。これが戦争。異様な世界だ。
後ろに殺気を感じた。しまった!っと思う前にブラックが私を狙った敵をなぎ払う。ブラック「馬鹿!油断するな、今は・・・耐えろ!」
私は向かってくる兵士と目を合わせないよう、事務的に剣をあわせ、そして倒す。私はこの人たちの顔も性格も生い立ちも知らない。ただ、敵の軍に属しているから倒すのだ。
こんなに戦争とは辛くて苦しいものなのか。私は涙を堪えて周りを見た。藤崎ももう攻撃魔法で対応している、ピエールと王子の姿は見えないがきっと私たち押されている。
正面から敵軍の大男の剣を受ける。懸命にこらえるが、すでに数十名と戦ってきた私の剣は、衝撃に耐え切れず折れてしまった。
ザクッ!! 私は防具ごと大きな剣で胸を斬られ、落馬して地面に叩きつけられた。
ブラック「おい!!」 あわてて駆け寄ると、彼は私を抱きかかえ、敵の攻撃をくぐって城の中へと避難した。
ブラック「藤崎は外へ出ちまったか・・・応急処置をするから、お前、服を脱げ」
私「大丈夫だよ。かすり傷・・・」言う側から、血がどんどん滲んでくる。 ブラック「バカ、敗血症になったりしたら大変だぞ!」
ブラックは抵抗する私を押さえつけ、防具をあっというまに外し、上着を脱がせた。さらしはすでにボロボロになっており、私の胸があらわになった。
ブラック「お前…」 ブラックは私の顔と、傷ついた胸を見比べる。恥ずかしさで顔が赤くなるのがわかり、私は目をそらして両腕で胸を隠す。
ブラック「女・・・だったのか・・・」呆然とブラックが呟く。「ご、ごめんなさい!ずっと・・・か、隠して・・・」嘘をつき続けた罪悪感で涙が滲む。
ブラック「ばか、何で謝ってるんだよ。」ブラックはふわりと笑って私にそっと触れるようなキスを落とした。
彼は私の体を優しく抱きしめた。「俺が側にいたのに、ごめんな。こんなにきれいな体に、傷つけちまって」
ブラック「何か事情はあるんだろうが、女の身で戦場は辛かっただろう」
「っ…」私がこの国の王女だということを言えば、ブラックは私を今までと同じようには扱ってくれないだろう。
ブラック「無理に話さなくなっていい」 ブラックは私の表情を読んで優しく言った。
ブラック「こんなこと、言うのは自分でもどうかと思うが…俺は、お前が女で嬉しい。気がどうにかなりそうなくらい嬉しい」
ブラック「俺は、お前がどこの誰でもかまわない。お前のことが好きなんだ」
私はブラックの言葉が嬉しすぎて声が出ない。ブラックは私に応急処置を施し確かめるようにもう一度抱きしめると立ち上がった。ブラック「行ってくる。」
私たちは深いキスを交わした。私が石化したブラックに命を吹き込んだ、あの日よりももっと深く。
その後、救護に戻ってきた藤崎が魔法で傷口の治療を行ってくれた。痕が残らないと聞いてほっとした。
藤崎「応急処置がよかったからですよ。・・・誰にしてもらったんですか?」藤崎の目がキラリと光った。
私「自分でしたんだよっ。あんまり見ないでくれる?」藤崎が治療と称してやたらとジロジロ見たり触ったりするので私は怒った。
藤崎「ふふふ、可愛い胸が真っ赤です。そうか、姫ももう16歳ですよね。…あ、動くと傷が開きますよ?」私は涙目になりながら服を着た。藤崎にはかなわない。
私「このままでは城が落とされてしまう。だから…お前と王子とピエールの三人に頼みたいことがあるんだ」
私「ブラックがこの城を死守している間に、ペガサスに乗って空から奇襲をかけてくれないか。お前の氷結魔法、王子の幻術、ピエールの銃の腕がどうしても必要なんだ! 」
藤崎「わかりました、言うとおりにしましょう。具体的な作戦を聞かせてもらえませんか。」
私「成功するとは言い切れないけれど…」藤崎に私の考えを伝えると、彼は「いいでしょう。このままおめおめやられるよりずっと希望がある」と乗ってくれた
ブラックと王子とピエールを呼び、作戦の内容を伝える。私「まず…藤崎、王子、ピエールはペガサスに乗ってくれ。乗ったところで、王子の幻術で自分達の姿を消して欲しいんだ」
王子「姿消しの幻術・・・王子の喉元がゴクリと鳴った。難度の高い術なのだろう。 王子「わかった。俺、やるよ」
私「次にギリギリまで地上に近づいて、ピエールが銃を使って威嚇して、敵を城の西にある森まで追い込んで欲しい」
ピエール「仕留めなくていいのか?」 私「うん、むしろできるだけ殺さないようにやって欲しい」
私「最後に藤崎が、森に最大級の冷気を送り込んで欲しい。知っているかもしれないが、この国の木は、厳しい寒さから己を守るために、一定の気温以下になると葉や枝が伸び始める」
藤崎「ええ、太陽の光を吸収する面積を増やすためですよね。なるほど、そうやって兵を森の中に閉じ込めてしまうのですね」
私「ああ。きっとアズール王はプラタ城を乗っ取っていると思う。兵を閉じ込めている間に、プラタ城へ向かおう」
王子(姿消しの幻術・・・俺の力ではものすごく集中しても15分しか成功したことがない。でも、やるしかない)
ピエール(銃を使って人を殺すより、人を避けて撃つほうがずっと難しい。しかも追い込む場所が決まってるときた。・・・でも今やらなけりゃ)
藤崎(森はかなり大きいし、この国の木は寒さに耐性がある。最大の魔法で、森が人を閉じ込めるまで冷やすことができるのか。でも・・・やってみせる)
ブラック(みんなかなりの負担だ。俺が少しでも前に出て、時間を稼いでいく。森への誘導、しっかり手伝うぜ)
私「難しいことを言っているのはわかってる。だけど僕はもう罪のない人を巻き込むのは嫌だ。」
私達5人は互いの眼を見てしっかり頷き合った。彼らの信頼が私の心に満ちてくる。…大丈夫、きっと作戦は成功する。
三人はペガサスの馬車に乗りこむと、こちらへ目配せをした。私が軽く手を上げると、三人とも手を振り返し、やがて闇に溶けるように見えなくなった。
ブラック「お前は城の中にいろ。なに、大丈夫だ。俺を、仲間を信じてくれ」
「うん、信じてる」私はブラックの手を握った。大きくてごつごつとした無骨な手。戦いを知る手。だけど優しい手。
「ブラック・・・死なないで。伝えたいことがいっぱいあるの。私あなたと生きたい。あなたと一緒に未来が見たい。」
彼はゆっくり指を解くと、こちらを向いて微笑み、戦いの中へ戻って行く。私はその広い背中が見えなくなるまで見送った。
パンパン、という音がして、兵が逃げ惑うのが城の窓から見える。王子の幻術と、ピエールの銃。こんなときに見ているだけなのがはがゆい。
ドラド王「そんな顔をするな。お前はよくやっている」 私「父上…でも私、ずっと訓練してきたのに。こんな肝心なときに」
ドラド王「剣で戦うだけが強さではない。お前は仲間を導いて信じてきた。仲間もお前のことを信じている。その絆の強さは鍛錬で身につくものではない」
ドラド王「私はお前を誇りに思う。こんなに心が強く、優しいお前を誇りに思う」 父上は私の頭をゆっくりとなでた。
私「父上・・・。」ドラド王「・・・お前にはまだ告げてなかったが、わしはお前とアレン王子との結婚を考えておる。彼ももう立派な青年じゃ。」
王「知らぬ者同士だったお前たちが共に城に連れ立ってきたときは驚いたぞ。」
私「待ってください、アレンはアホ・・・じゃなかった、政略結婚をいやがっています。そのためにお兄様の病を治そうとしています」
王「うむ、アーサー殿の病か。あれは手の施しようがなく、実は呪いではないかと言われている。呪いの元を調べないことには・・・」
確かに異常がないのに13年も眠り続けるとなると、何かの呪いがはたらいているのかもしれない。
王「そういえば確かうちのナナシスも同じ頃から病状が悪化したな・・・」そうだ、弟も生まれつきとは言われながらも本格的に悪くなったのはその頃だ。まさか・・・
私はいやな感じがした。ドラドもプラタも跡継ぎの王子ばかりが病気になっているし、アズールもピエールの父親が殺されている。
ふいに遠くの空で、獣が高く鳴くような声が聞こえた。目を凝らすと、ペガサスが地上から何かで攻撃されたようだ。王子の幻術が解けてしまったのか?
「おおおおおおおおおおおらぁ!!」森の周りですごい勢いで剣を振り回している男がいる。ブラックだ。剣の峰を使って気絶させたあと、森の中へ兵を次々放り込む。
ブラック「藤崎!!こいつらが起きちまう前に早く森を封鎖してくれよ!!」
藤崎(森の中まで冷やしては兵が死んでしまう。外側だけを覆うように…)
藤崎「フゥゥゥゥーホワァ!」藤崎が放った青い球体が森を覆う。どうやら成功したようだ。
翼の折れてしまったペガサスが、地面に向かって急降下する。
私はあわてて落下地点まで駆けつけた。
三人は無事だったが、藤崎と王子は魔力を大幅に消費したので、全身フラフラになっていた。
私「大丈夫か?少し休んで・・・」 王子「いい。こうしちゃいられない。俺の国が危ない」
おぼつかない足取りだが、青紫色の瞳は強い意志をたたえ、月の光を浴びていっそう美しく輝いている。
王子「それじゃ、行こう」 ブラック「うん?馬車を呼ばないのか?」 王子「馬車?隣の国だ、歩いて行けるだろう」
私たちは顔を見合わせて微笑み、プラタの国へ急いだ。
プラタはひどく閑散としており、夜中だということを差し引いても気味が悪いほど静かだ。
王子が国王と話をしている間、私は考えていた。弟のナナシスのこと、王子の兄上のこと、ピエールの父君のこと…もしや全て…
藤崎「やはりこちらには護衛の兵を少し残しただけで、大半はドラドに攻めてきていたようですね」
私は父上と王子がしている会話を遮った。「アズール王は、もしかして周到に時間をかけて三国統合の計画を考えていたのかも・・・」
ドラド王「うむ。ピエール殿を殺したのも、海賊に見せかけて反乱因子を消す意味があったのかもしれない」
藤崎「では、プラタ王もすでに囚われているのでは・・・」
王子「父上は魔術にも体術にも長けているので囚われていたとしてもあまり心配はしていない。それよりも心配なのが兄上だ。」
ドラド王「アーサー殿か。もう長く眠ったままなのだろう?」
王子「はい。数名の世話係と共に、城の奥の隠し部屋で眠っています。アズール王が兄上を見つけていなければいいのですが」
王子が門番に話しかける。「只今戻った。門を開けてくれ」 門番「アレン様のご命令でもいたしかねます。お許しを」
やはり城はアズール王が支配しているようだ。こうなったら無理に突破するしかない。
私は門番のみぞおちを蹴り上げて気絶させた。騒ぎに気づいた護衛たちの服を王子が矢で射抜き、壁に串刺しにする。
「さぁ急ぐぞ時間がない!私に続いてくれ!」私は先頭を切って走り出した。
兵士「ぐはっ…!」廊下や階段で見回りをしている兵士たちを次々気絶させ、私達はアーサー王子のもとへ向かう。
城の突き当たりの石造りの塔まで来ると、王子は足を止めて壁をさわり、その中のひとつの石を抜いた。
ゴゴゴゴ・・・壁がうごき、人がかがんで通れるほどの道ができた。先ほどの石がカギになっていたようだ。
私たちはかがみながら道を通り抜け、ひとつの部屋へつきあたった。
「アレン様!」そこにはお付きの者数名と、天蓋つきの大きなベッドで眠る若者の姿があった。
王子「良かった、兄上は無事だな」 ベッドには王子とそっくりな薄い茶色の豊かな髪と長い睫毛の、繊細な美しさを持つ若者が微動だにせず眠っていた。
アレン「ドラド王はここには来ていないのか・・・一体どこに」
私「父上と悪者の名前をごっちゃにしないでよ!」 私は王子を二・三発殴っておいた。
ブラック「アズール王に関しては俺らで引き受けるから、アレンとドラド王はアーサーを頼む」
私とブラックと藤崎とピエールはアズール王を探しに行くことにした。二手に分かれよう。誰と組む?
1.ブラック
2.ピエール
3.藤崎
2.ピエール
私「ピエール行こう」ピエール「おう!」ブラックが一瞬、複雑な色を含んだ目で私を見た。
しかし剣使い同士ではペアのバランスが悪くなってしまう。遊びに来ている訳ではない、これは戦いなのだ。私はブラックの手をぐっと握ると「死ぬなよ」と言った。
ブラック「後で必ず会おう」彼は私の手を握りかえすと、ピエールを一瞥して手を離した。
ピエール「お前らデキあがってんなあ。まあ、こいつが本物の女なら俺もお願いしたいところだけど」
「ククク…これはこれはナナシー姫、誰を探しでおいでかな?」 突然、部屋に響く声に一同は身体を強張らせた。その中でアレンが真っ先に叫ぶ。「ち、父上…父上なのですか!どこにいるんです!?」
壁のひとつが動き、中からがっしりした体躯の男性が現れた。厚い胸板は衛兵を思わせるが、顔立ちは気品があり、青紫色の瞳はアレンとそっくりだ。
王子「父上!」 どうやらこの男性がプラタ王だ。私の父上とあまり歳は変わらないはずなのに、鍛えているせいかずいぶん若々しい。
ドラド王「お久しぶりですな」 プラタ王「久しぶりなのにこんな再会で感動もクソもありませんねー、なんのもてなしもできませんが寛いで下さい」 …なるほど、アレンの父だ。
王子は頬を高潮させながらプラタ王になにやら話している。 それを横目に、ピエールが私に囁いた。「おい、ナナシー姫ってどういうことだ?お前・・・」
私「しっ!内緒にしてて。私、いちおうあいつの婚約者なんだって。知られると面倒でしょ」私は小声で言い返した。
ピエール「わかったよ。やっぱり女かー、・・・へぇ」 ピエールは私をジロジロ見ながら妙に嬉しそうに笑った。
私「それよりピエール、お前の父親を探さないと…」とその時、アレンの叫び声が響いた。「ちっ、父上!!」
プラタ王の瞳から光が消え去る。そしてその口から発せられた声は、もはやプラタ王のものではなかった。「・・・これでアズールとプラタは手に入れた・・・」
藤崎「どうやらアズール王に憑いていたものがプラタ王に憑依したようですね。プラタ王は体力があるだけに厄介です」
王子「おい、体は父上のなんだぞ。まさか殺そうとしてないだろうな!」
王子は魔物のとりついた自分の父親を目の当たりにして、激しく動揺していた。
魔物「残るはドラド…貴様のところだけだ」 魔物がドラドの王を見据える。私は剣を構え、父の前に立ちふさがった。「父上、危険です!逃げてください!!」
藤崎がなにやら呪文をとなえ、父上の体の周りに結界を張った。「これでしばらく攻撃も憑依もできないでしょう」
「ドラド王、行きましょう」ブラックが父上を促し、外へ導く。 ブラック「こっちは俺に任せてくれ!」
王子「無理だ。俺、父上を攻撃するなんてできない」王子が青い顔で涙ぐんでいる。
プラタ王の周りを包む黒い霧のようなオーラが膨れ上がっていく。それに触れた部屋の石壁や天井が粉々になって崩れ落ち始めた。慌てて外に脱出すると、プラタ城はすでに黒い霧に覆われていた。
王子「俺の城が!俺の城!!」 パニックになる王子を押さえつけ、顔を一発強く殴る。「しっかりしろ!」
私「お前がしっかりしなくてどうする。この城には今、お前しか頼れる者がいないんだぞ!」
王子は頬を押さえて、赤く充血した瞳で私を見た。「・・・わ、わかったよ俺。どうかしてた。ごめんな」
王子の青ざめた顔に生気が戻る。私「アレン、父君に幻術をかけろ。憑依しているものを引きずり出すんだ!」
藤崎「無茶です、アレンはさっきの姿隠しでもう力が」 藤崎のフォローを遮るように王子が言った。「大丈夫だ。やるよ」
アレンの青紫色の瞳がフッと透明感を帯びるように輝き、プラタ王を見据える。プラタ王の周りに激しい炎が燃えさかる。
もちろん本物の炎ではないけれど、側にいる私たちもめまいがするほどの熱さだ。
プラタ王「ああ・・・熱い!!クソッ!!」 プラタ王の顔が邪悪にゆがみ、背後の黒い霧がいっそう濃くなる。
プラタ王の背後から黒い塊が人のような形になって立ち上り、プラタ王はそのまま前のめりに崩れ落ちた。
力尽きたのか、アレンも同時に膝をつく。戦えるのは、残った私達だけだ。奴に剣は通用するのだろうか?私は腰に挿していた小刀を抜くと、黒い塊に向かって投げつけた。
刀は黒い塊に飲まれるように吸い込まれて消える。「ダメだ、物理攻撃が効かないなんて!」
藤崎も立ってはいるもののすでに魔力を使い果たして満身創痍。銃も剣も効かないなんてどうしたらいいのか、私とピエールは途方にくれた。
「熱だ・・・魔物は熱を感じることはできるんだ」起き上がることもできないまま、王子が言った。「城を燃やせ」
私「だめだよ!そんなの」 アレン「このまま国ごと渡すことになるよりはマシだ!」
アレン「城なら・・・城だけならまた建てられる。だから頼む。魔物を焼き尽くしてくれ」
私はとまどった。王子は城のことでパニックになったばかりだ。それに生まれ育った城に火をつけるなんて考えるだけで胸が張り裂けそうだ。
だが、考えている暇はない。魔物が吐き出す黒い霧は、徐々にこの国を蝕んでいく。 「…やるしかないのか」 私は唯一使える呪文を唱え、掌に炎を生み出した。
魔法の勉強は苦手で、この炎をひとつ出したらいやになってもうやめてしまったっけ。使うことはないと思っていた魔法に、この国のすべてがかかっている。
私は黒いもやに覆われた城に向かって炎の球を放った。魔物はそうはさせじと抗い、小さな炎はすぐに消えてしまいそうだ。
ふいにあたりに強い風が吹き、私の火の球は大きくふくれあがった。 藤崎「消させない」 最後の力を振り絞り、彼が風を起こして火を大きく煽ってくれたのだ。
火は城に着火し、またたくまに燃え上がった。炎は夜明けの近い薄い紺色の空を明るく照らし、ある種の狂気的な美しさがあった。
城の黒い霧は晴れるように一箇所に集まり、物凄いスピードで移動を始める。「待て、逃がすな」まだ動ける私とピエールはその霧を追う。
霧は、城の中の大広間まで流れ、その場に倒れていた人物の体にとりついた。「あれは・・・!」 アズール王だった。
速度を上げてピエールが飛び出す。アズール王が立ち上がる隙を突いて羽交い絞めにすると、そのまま床に押さえつけた。ピエールに憑依される危惧を抱いたが、魔物はそれ以上動けないようだった。
魔物「ふん、知ってるんだぞ。この体に私がいる限り、お前は私を殺すことなどできない。血の繋がったじいさんなんだからな」
嘲り笑うアズール王の顔が一瞬ゆがみ、老人に変わる。「ピエール、私のことはいいからこいつを撃ち殺してくれ」
老人の顔はすぐさまアズール王の若い顔に変化する。「こしゃくな・・・」 アズール王の意識の下で、二つの魂は戦っているのだ。
老人の意識が再び表面へ出てくる。「ピエール、私はこの体を乗っ取られて30年も経つが、片時もお前の父親のことを忘れたことはない」
「息子を殺された恨みは消えようもないが、お前に国の未来を託したい。どうかこの魔物をやっつけてくれ」
ピエール「あんたを撃って魔物が消滅する確証はどこにもない。そんな危険な賭けは出来ないね。・・・それにあんたはまだ国民のためにやることがあるはずだろう」
「ははは!片腹痛いわ!!」顔がアズール王のそれに変化する。「お前のその甘さがある限り、すべては私の思い通りだ!!」
気づけば、炎は私たちを取り囲み、じりじりと、しかし確実に動ける範囲を狭めていっている。
このままいけば魔物は熱にやられて消失する。けれどそれは、一緒にいる私とピエール、そしてアズール王の死を意味する。
私は唇を噛み目を閉じた。初めて会ったときのブラックの意地の悪い笑顔が浮かぶ。ごめんブラック、私もうだめかもしれない・・・
「ピエール!そいつから離れろ!!」叫びと共に入ってきたのは、ブラックとドラド王だった。ドラド王はすでに呪文を唱えていて、ピエールが離れるのと同時に魔物自身に結界を張った。
私「父上!危ないから避難してください!」 ドラド王「みんなが戦っているときに、私だけ逃げることはできんよ」
ブラック「俺も言ったんだがあまりにも聞いてくれないからお連れしたんだ。バカにするなって言われたよ」 苦笑しながら話す。
しかし状況はよくなったとはいえない。アズール王への憑依をといたものの、私たちは炎に囲まれ、逃げることもできず今にも焼け死にそうだ。
じりじりと壁際へ追いやられていると、階段の側に王子が立っているのを見つけた。「王子、助けて!!」
王子はこちらを見ると、壁のボタンを押して階段をまた下っていった。「おい、アレン・・・」 その声をさえぎるように、足元がゆれだした。
ピエール「自爆装置かよ?」 私「まさか、王子に限って」 ブラック「ダメだ!崩れるぞ!」 私たちは身を寄せ合い伏せる。足元が崩れ落ちた。
体を強く打ち付けられ、痛みをこらえて目をあけると、そこはステンドグラスと繊細な意匠が施された、荘厳な部屋・・・聖堂だった。
「この城の大広間は、カラクリで聖堂とつながっているんだ」王子が、奥からゆっくり現れた。
魔物の様子がおかしくなっていく。逃げようとのたうちまわるが、結界のため動けない。王子は祭壇の火をとり、こちらへ歩いてきた。
王子「聖なる炎だ。今度は幻覚じゃないぜ!」王子はそう言うと、魔物にキャンドルの火を放った。
「ギャアアアアアアアアアアア」目を開けていられないほどのまぶしい閃光があたりを照らす。魔物が耳の奥まで刺すようなすさまじい悲鳴を上げた。
生きているのか死んでいるのか、暑いのか寒いのかわからないような不思議な感覚にとらわれる。どこまでも白く、意識は朦朧と―
「・・・シー。ナナシー・・・、ナナシー」頬を軽く叩かれ、私は目覚める。目の前にはブラックの心配そうな顔があった。
「ブラック・・・魔物は?」 ゆっくり起き上がると、黒い霧は嘘のように晴れ、東の空が明るくなり始めていた。
ブラック「魔物は消滅した。全部終わったんだ」彼は私の髪を優しく撫で、にっこり笑った。
私「ち、父上は…!?みんな無事なのか?」 立ち上がって周りを見渡す。みんな疲れた顔はしていたが、晴れ晴れとした表情を浮かべていた。戦いは終わったのだ。
遠くの空から影が飛んで来る。ペガサスだ。エルフの少年「おーい無事かー!?怪我してんじゃないかと思って薬草持って来たぞー!」
藤崎「ごらんなさい。朝日が昇りますよ」 金色の光が差し込み、きらきらした太陽が東の空からゆっくりと顔を出した。
召使「アレン様!アーサー様が目を覚ましました!!」遠くから召使が走ってくる。
アーサー王子の寝ていた天蓋のベッドは、城の瓦礫の中でも何かに守られるようにしてきれいに残っていた。アーサー王子は仰向けのまま、青い目をきょろきょろ動かしている。
「兄上!兄上!」すがりつく王子をアーサーはきょとんと見ていたが、やがて優しい顔でゆっくりと手を握った。
プラタ城の者はドラド城に集められ、城の再建の間一緒に暮らすことになった。そして今日は、私が姫として初めてプラタの人々に挨拶をする日。
私は父上に名前を呼ばれ謁見の間にドレスを着てゆっくりと現れた。ドレスの端を持って深々とおじぎをする。
顔を上げると王子が真っ赤な顔をしてこちらを見ているのを発見した。「アレン、今まで黙っててごめん」「!?ナナシー!?」声を聞くまで気づかなかったようだ。
「あqswfrtgyふじこ」声にならない言葉を発し続ける王子に、父上が声をかける。「縁談の話なんだが・・・」「お受けします!!」即答だ。
「あ、いや、その事なんだけど・・」 今言わなければきっとすんなり縁談は決まってしまうだろうと思い、意を決して私はあの事を言おうとした。
私「私、心に決めた人がいるんです!だからアレン王子との結婚はできません!!」
王子「そんなこと言わないでくれよ!熊みたいだとか言ったのは悪かったよ!」 プラタ王が横からアレンに大きなげんこつを落とした。
私「ごめん、アレン。そういうことじゃないんだ。もうこの気持ちは変えられないから…。でも、これからも隣国同士…ううん、友人として仲良くしていけたらって思ってる」
王子「俺・・・でも・・・」 プラタ王「よさないか。しつこい男は嫌われるぞ」 王子は耳まで赤くしてうつむいた。
ドラド王「ナナシー、心に決めた人とは・・・私はそんな話は一度も聞いたことがない。どこの誰なんだ」
私「その人とはまだ長い時を過ごしたわけではないけれど、短い間でもお互いをちゃんと見つめ、理解してきました。私が辛い時には支えてくれて、強く頼もしく私を守ってくれた。」
そのとき、階段から藤崎が駆け上がってきた。「姫!ブラックが城中探してもどこにもいません。こんな手紙が部屋に置いてありました」
”短い間だったけど楽しかった。俺はここには場違いみたいだ。お前のことは忘れない”
私は反射的に走り出していた。「ブラック!」彼を失うなんて耐えられない。後ろからみんなの声がするけど振り向かず走る。
「もう、ブラック・・どこに居るの・・っ!」 そこではっと私の脳裏に、ある風景が思い出される。ブラックはもしかしたら・・。
私は二人が出会った場所、武道会の会場へ来ていた。
ここで私たちは剣を交え、互いの力を競った。男として。同じ剣士として。すべてがここから始まった。
騒がしかったあの頃と違い、今は静まりかえっている。一歩一歩歩く音でさえ響き渡る程だ。
カシャン。舞台の奥のほうから、金属音が聞こえてくる。防具と剣がぶつかるような音。私は目を凝らしてその人物を見る。
「・・・お前」 予想通りブラックだった。「やっぱりここだったんだ」私が笑顔で駆け寄ると、彼は私に背を向けた。
私「私のこと嫌になった?黙ってたから・・・」 ブラック「違う。そうじゃないんだ」
ブラック「お前はこの国のお姫様で、背負うものだって立場だってあるし・・・いくら俺が好きだって言ったところで叶わない。身分違いだ」
それは覚悟していたことだった。だが頭では理解していても、感情がそれに追いつかない。今まで守ってきたものと、初めて芽生えた思いが、私の中でぶつかり合って行き場をなくしている。
私「・・私の服を真っ二つにした。ファーストキスを奪った。強く抱きしめてくれた。胸だって見たんだよ?・・ブラックは私にこれだけの事をしたのに、今更身分が関係ある?」 私は少し照れ臭くなって笑いながら、ブラックにそう言った。
ギャーなんというタイミング・・繋がれば良いが、繋がりにくかったら939はスルーして下さい
再び口を開き何か言おうとしたブラックだったが、それを止め、私を抱きしめた。「…愛してる」「ブラック…」「だから俺を忘れて、幸せになってくれ」
去っていこうとするブラックを私が追いかけようとしたその時、後ろから声をかけられた。「ここにいたのか。ナナシー姫とブラック”王子”」
振り返るとピエールが立っている。ブラックは吐き捨てるように言う。「お前か。王族になるとイヤミのパンチまで効いてるんだな」
ピエールは肩をすくめて言う。「そう言うなよ。お前の働きを買って、アズール国王が身寄りのないお前を養子にしたいと言ってるんだ。もちろんホワイトもな。」
ピエール「ほら俺、王子様ってガラじゃないし、まだ海全部渡ってないし・・・ちゃんとしたヤツが、どこかの国のお姫様でももらって国を継いでくれるのがありがたいんだよな」
ブラック「な…にを、馬鹿な…。俺だって王族なんてガラじゃ…」 ピエール「これを逃したら、チャンスはもうないぜ?愛する女のためにお前に何が出来るか、よく考えるんだな」
ブラック「だってこんな・・・こんなうまい話が・・・なあこれは夢なのか?目が覚めたら全部消えちまうんじゃないのか?」
私「夢じゃないよ。少なくとも私はどこにもいかない。ずっとあなたを、ブラックを愛してる」
私「うんって言ってくれなくても、私はブラックについていくから。どんな生活だって大丈夫だよ。もう決めたんだから」
950 :
名無しって呼んでいいか?:2007/10/01(月) 23:24:33 ID:hyCIvh50
そこで(もうこのスレも残り少ないのに)謎の赤い箱と青い箱を見つける
いつのまにか来ているドラド王が言った。「それは私と王妃の結婚指輪だ。若いお前たちに託そうじゃないか。もし、結婚する気があるのなら、な」
ブラックと私は視線を交わした。「もちろんです。ナナシーは俺が幸せにします。一生幸せにします」
その言葉に私も答える。「私もブラックを幸せにします。一章幸せにします」
こうして私たちの冒険の旅は幕を閉じる。今日は私とアズール王子・・・ブラックの結婚式だ。
フワラーシャワーを浴びながら、ふと仲間たちの姿をみつけた。まず真っ赤な目をしたアレンの側に寄る。「最後、格好よかったよ。ヒグマじゃないお嫁さん、きっと見つかるよ」
956 :
名無しって呼んでいいか?:2007/10/01(月) 23:59:11 ID:hyCIvh50
すると! 赤い箱の方から
結婚指輪を取り出して見せると、アレンは「幸せになれよ」と言ってくれた。
車椅子に乗ったままのアーサー王子とも握手を交わす。「もう少し回復したら、剣を教えてくれないかな?」私は快く微笑んだ。
959 :
名無しって呼んでいいか?:2007/10/02(火) 00:24:01 ID:hFD1VUUf
そしてアレンは「…こっちの…青い箱の方も…開けてみないかい?」と言った
アーサー「バカだなあアレンは。婚約指輪は二つあるんだよ。」目覚めたばかりの兄にも突っ込まれるアホぶりは健在だ。
ピエール「よろしく兄弟。」 ホワイト「お姉さまができて嬉しいです。・・・ナナシス様を紹介してくださいね」
962 :
名無しって呼んでいいか?:2007/10/02(火) 00:41:45 ID:hFD1VUUf
「チッ……やなこった」小声が冷たいホールにこだました。
ブラックはやっぱり妹離れしていないみたい。でも仕方がないかな。私は苦笑した。「もちろんいいよ。よろしくね」
藤崎がフラワーシャワーを盛大に風の魔法で吹き上げる。「私たちの大切な姫君に、これからもずっと幸せが訪れますよう」
965 :
名無しって呼んでいいか?:2007/10/02(火) 00:59:27 ID:hFD1VUUf
そこで突然、それまでの緩かな空気のホールに、大きな怒声が響いた
「姫!!! あんたの幸せって何だよ!!!!!」
私とブラックは顔を見合わせて微笑む。「私たちは今、最高に幸せだよ」
私「ねえ、ブラック。キスしてもいいかなあ?」 ブラック「え、ここでか?」たじろぐブラックの首筋にからみつき、私は彼の唇を奪った。
968 :
名無しって呼んでいいか?:2007/10/02(火) 01:01:24 ID:hFD1VUUf
「人生はメルヘンじゃねー!!!!! だからこそ、おれが姫を守りたいんだよ!!!!!!!!!!!!」
外野なんかもう見えない。私たちの幸せは何物にも邪魔されないのだ。 FIN
嵐が来る前に終了しました。
971 :
名無しって呼んでいいか?:2007/10/02(火) 01:04:04 ID:hFD1VUUf
「ブラック様……御命頂戴します!」
サーベルを引き抜き、危機迫る勢いの1人の家臣がブラックへ!!!!!
終わり?お疲れー
974 :
名無しって呼んでいいか?:2007/10/02(火) 01:57:58 ID:hFD1VUUf
>>972-973 一般人のキミ等田舎者にはどうでも良いのだ
以下は東京某所のマニヤ達だけが買いあさり、そして知ることの出来た初回特典ボーナス映像である。
…静けさが静けさを呼ぶ宮殿ホール
飛び散った血糊だけが赤く映える
ほんの数分前まで、暖かく、この上無い平和な風の吹いたこの空間は虚像だったのか
転がった大量の死体の山の中
ただ1人佇むホワイト
「オレ……歴史に残したよな、この世に生を受けたからには歴史に名を残したいってオレ……」
これ以上、言葉が出ない。出せない。出るのは涙だけ。そして、とめどなく。
ホワイトは自らの首にもサーベルを当てたのだった。
【完】
乙。
3スレ目はけっこうシリアスな展開だったなー
ストーリーも破綻しなかったし、面白かったよ
終わってるーw
伏線回収すごいね
今回は形になってて面白かったよ。お疲れです
最初のベッドで藤崎フラグ立った?と思ったけど、
やっぱりブラックで収まったなーという感じ。
普通に面白かったし、
王子のお馬鹿っぷりも良いスパイスだった。
次は何系で行くかね?
王子なにげに成長してるよね。
お笑いだけど好きなキャラだった。
自分はドラゴンのあたりが好きだったな。
適当に書いた設定がつじつま合ってるし、3スレのうちで一番良かったよ。
・女子高生と宇宙人もの
・芸能もの
・ファンタジー
ときたから、次は何が残ってる?
和風モノとか中華モノ?
ホラー、ミステリー…うーん、何だろ。
社会人設定だと上手くいかなかったから学生年代が
いいのだろうね
たしか理想の乙女ゲスレで前に見たんだけど
戦隊ものとかどうだろ?
主人公ふくめクラスメイトとか先生がなんとかレンジャーみたいになってるの
遅れたけど乙
キスしたことでフラグの折れた藤崎に泣いたw
次はホラーものがいいな
ブラックが禿げたオッサンにしか想像できなかった自分は負け組www
自分もホラーがいいかな
藤崎に頑張ってほしくてキスさせた自分通ります…
ほんっとごめん!滝涙流した…マジで
次こそは眼鏡に軍配が上がれば嬉しい
ホラーだと、かまいたちみたいなの?
ホラーだと運動部の合宿での泊り込みで来た男女が
なんかのトラブルに巻き込まれて〜みたいなやつとかどうかな。
主人公は女子マネで。
ホラー、高校生よりは大学生設定がいい気がする。
車に乗れるし。
藤崎のフラグの折れ方は私もビックリしたけど、
胸の傷の治療はエロくてなかなかそれらしいと思ったw
私は最後までフラグたたない王子びいきだったんだけど。
車乗れる、それは確かに(引率の先生オンリーでも可だけど)
大学→運動or文系サークル→今からの時期だと紅葉とか雪山?
クリスマス頃終了を狙うと乙女っぽいかな
王子にしろピエールにしろ各キャラ立ってたと思う。
王様の名前が頭の中でごっちゃになったときもあったけどね
国の名前をつけた私が通りますよ
ソル・ドラド=主人公の国
エストレラ・プラタ=王子の国
シエロ・アズール=ピエールの国
由来はそれぞれ「金色の太陽」「銀色の星」「青い空」をスペイン語に直したものです。
金銀と来て普通は銅なんだけどなんか微妙だったので。
混乱する人も多かったみたいでごめんなさい。
新スレはホラーで大学生でいいのかな?
ホラーなら雪山がいいけど時期的にどうだろ。
大学生で雪山って、まんまかまいたち
さすがにそれは遠慮したいかな
でも、他にないしな‥‥閉鎖的な空間なら電車とか病院とかかな?
電車は狭すぎる気がする。
病院は一般人多すぎじゃなかろうか。
廃校になった母校をみんなで訪れるとか
途中でそれまでの設定をまとめたレスが欲しいかも。
>>300、
>>600あたりで二回くらい。
ありきたりだけど、通ってる大学の取り壊される旧校舎の幽霊退治に出るミステリー研究部のみなさん、とか
廃校舎で同窓会は?