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A携帯ストラップになってもらう
「じゃあ、携帯ストラップになってもらっていい?」
「うん。いいよ」
言うが早いか、チハルは『ポン』と軽い音を立てて消える。
次の瞬間、私の手の平にはテディベアの携帯ストラップが乗っていた。
「おおおっ!!」
三人は同時に感嘆の声をあげる。
「マジでストラップになってるし……」
「これで先ほどの話が真実だと証明されたということか」
「また熊のぬいぐるみかよ」
修二君、一郎君、隆がそれぞれのリアクションをとっていた。
「大人しく、いい子でいてね」
私は小さなテディベアをギュっと握り締める。
テディベアになったチハルは手の中で苦しそうにジタバタと手足を動かした。
「い、痛かった? ごめんね」
「ははっ。携帯ストラップになっても性格は変わらないんだな」
隆は私の手の平の携帯ストラップをひょいと奪い取ると、チハルをつついた。
チハルは手足を懸命に動かして、隆の指から逃げようとしている。
「……遊んでいる暇は無い。早くしないと授業が開始していまう」
一郎君は腕時計をチラリと眺めて、ため息を吐いた。
「真面目な兄貴が遅刻だなんて、クラスの奴らきっと驚くよな」
「……うるさいぞ、修二」
一郎君はジロリと睨みつける。
「おお、怖い怖い。それじゃ、別れは惜しいけど愛菜ちゃん、バイバイ」
「大堂。また今度、詳しい話をきかせて欲しい」
私達よりも一足先に一郎君と修二君は教室へ向かった。
「愛菜。俺たちも早く行こうぜ」
隆に促され、私は走り出す。
あれ? 私、何か忘れているような気がするけど……。
私は…
@今日から隆がうちに来る事を思い出す。
Aとりあえず教室へ急ぐ
B春樹にチハルを預けにいく事を思い出す。