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B成り行きに任せる。
ピリピリと張り詰める空気に圧倒され、私は何も言えないでいた。
そんな中、最初に口を開いたのは一郎君だった。
「湯野宮に接触させるわけにはいかない」
「愛菜を離せ」
「それは聞けない」
「そうか。じゃあ、俺も言わせてもらう。お前ら何者だ?」
双子を睨みつけ、隆が一歩前に出る。
「なんの話だ?」
「しらばっくれるなよ。お前らも俺と同類だろうが」
「へぇー。湯野宮って俺たちの事、わかるんだ?」
感心するように修二君は口を挟んだ。
(隆にも二人のことを説明してなかったんだ。どうしよう、お互いが敵だと勘違いしているのかな)
なんとか話をしようと、私は前に出た。
けれど一郎君にぐいっと手を引かれ、再び引き戻されてしまう。
「ミストを使って愛菜を操るつもりなのかよ」
「ミスト?」
一郎君が眉をひそめる。
「黒い影のことだ」
「ファントムのことか。それは湯野宮が持っている能力じゃないのか?」
かまをかけるように、一郎君は逆に問いただした。
「確かにそうだよ。だけど、最近になって頻繁に愛菜を狙っているミストの存在。そして……力を感じるのは宗像兄弟、お前らだけだ」
そう言うと同時に、隆は背中からゾワリと黒い影を出す。
「愛菜をどうするつもりだ?」
「それはこっちのセリフだってのに……。言い訳もここまでくれば上等だね。どうする兄貴、ここでやっちゃっていい?」
修二君も一歩前に出て臨戦態勢に入った。
ただならない雰囲気に身が強張る。
私は……
@割って入る
A叫ぶ
B成り行きに任せる