1999年2月14日から2月20日にかけて
イスラエルから次々と登場するハイテクベンチャー企業の陰には,はるかに多くの失敗プロジェクトが存在する.
イスラエル政府のプロジェクトは10に1の成功があれば,制度として成功していると考えている.
もとより,リスクが高くてマーケットからの資金調達が難しいものに対して支援を行っているのである.
例えば通産省産業科学技術研究開発制度にくらべると少額であるが,その数は1300プロジェクトにも及ぶ.
基本的に単独企業のプロジェクトには投資しない.複数の企業が集まった企画を審査する.
制度は補助金である.最大,一年間で21万ドルを支援する.
プロジェクトの実施年数はプロジェクトによって異なる.
研究成果が利潤を生じたときには,一定の割合(20%)で国庫に還付される.
失敗時には返還の必要はない.
プロジェクト毎に学界や産業界から評価委員が選定される.
おおむね時給$100の報酬によって委任される.一つのプロジェクトあたり20時間以上かけて研究計画と管理状況を評価し,
改善を提言する.評価委員は研究計画の立案やマネージメントの面からのチェックを行なうのであって,
技術上の進捗状況にはコメントを挟まない
イスラエル政府自身が分析する主な「成功の要因」は以下のとおり.
質の高い大学があること.
旧ソ連邦(東欧)から,高度な技術をもった科学者・技術者が大量に移民してきたこと.
徴兵制度によってチームワークの技術が磨かれるだけでなく,
人間関係が豊かになり,さまざまな才能が交流する機会があること.
防衛産業から民生品への転用が多いこと.
(嘘発見ソフトとして有名になった「トラスター」はテロ防止用機械の転用品であるし,
手術中の血液モニタシステムは軍の夜間行動用カメラからの転用品である.このほか,画像解析,暗号,通信,圧縮技術などに転用品の成功例が多い)
政府主導による資本投資と科学研究開発の促進政策が充実していること.
アメリカやヨーロッパとの自由貿易協定など,財務的,商業的インフラと通信インフラが整備されていること.
http://www.submit-asap.org/home/yoshinov/1999/opinion/israel/israel.html