1991年、リンカーンはもう一つ重要なことを発見した。彼は、ボルンホルム島生まれのデンマーク人
TVプロデゥーサーと接触していた。エルリング・ハーゲンは、ボルンホルム島の15か所の教会に興味を持
っていた。それは13世紀(すなわちテンプル騎士団の時代)のもので、どうも古代の巨石と
関係があるらしい――事実、巨石のいくつかは教会の壁にとりこまれていた。
さてリンカーンは常々、レンヌ=ル=シャトーのパターンの一部は巨石時代にまで遡るのではないかと考えて
いた。一方、ハーゲンセンは、ボルンホルムの幾何学図形もまた5角星型だと彼に告げた。リンカーンは彼
らがそれぞれ「同じ謎の別の部分を解き明かしつつある」と確信した。
さらにハーゲンセンは、ボルンホルムの幾何学にイギリスのマイルが用いられている事を発見した。例えば、
もしもハーゲンセンの幾何学が正しいなら、イヴスケルとポヴスケルの2つの教会の距離は、正確に7
マイル(約11・2キロ)になるはずだ。そして実際にその通りだった。
だが、なぜに「マイル」なのか?リンカーンの本の「単位」と題する章には、奇妙だが説得力ある
事実が示されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB マイル
1791年に使用されるようになったフランスのメートルは、北極から赤道までの距離の1000
万分の1だ。リンカーンによれば、イギリスの古い単位である「ロッド」「ポール」「パーチ」(1マイルの3
20分の1)「などもまた、地球表面の正確な距離に基づいていると言う。1ポール(198
インチ)を二乗すると、ちょうど1キロ(39370インチ)となる。
この古代のポール(198インチ)に1・618、すなわち黄金分割をかけると、答は320。
そして320ポールは1マイルだ。つまりイギリスのポールとキロメートル、それに黄金分割を掛け合わ
せたポールとマイルは、数学的に関連しあっているのである。
リンカーンはまた、188メートルを基準とする単位を発見し、これを「教会単位」と名づけた。
そして5角星型の測地とともに、これをフランスの雑誌で発表した。フランス在住の数学教師パトリシ
リンカーンの「聖なるパターンへの鍵」の最終章によれば――「われわれは謎に直面している。レンヌ
=ル=シャトーの地形構造、それとイギリスのマイルとの関連(そしてマイルと地球の大きさとの関連)は、
豊富な実例とともに容易に示すことができる。単位と幾何学配置の存在は明らかだ。その
パターンは繰り返し現れ、その形は深い意味を持つ。これらすべては遠い過去に作られ、それ
が今明らかになりつつある」。そして彼は、歴史家や考古学者に対して、これらの証拠に目
を向けるよう訴えている。
リンカーンの言う「パターン」とは、山々の5角形配置や教会の円状配置だけではない。
彼はレンヌ=ル=シャトー周辺に、意図的に作られたとしか考えられない数多くのパターンを発見した。
彼の言う「聖地」とは、「自然の山々による5角形、およびそれをとりまくように建てられた人工の神殿」である。
この種の話は、どうもこじつけが過ぎるとおもわれがちだ。私だって、やたらと細かい線
を引きまくった地図を見せられただけで、げんなりして本を投げ出してしまう。そんな私
だけが、リンカーンの本は実に説得力があった。例えば、レンヌ=ル=シャトー教会を中心として、周囲の
村、教会、白などに直線を引いた図。はるか彼方の教会や城からレンヌ=ル=シャトーにむかって引
かれた直線が、そのままレンヌ=ル=シャトー教会を貫通し、遠く離れた反対側の城や教会に到達す
るのだ。中でも最も説得力ある図は、格子パターンだろう。様々な場所を繋ぐ直線を引くと」、
それらは互いに平行しているのだ――右から左だけではなく、上から下にも。そしてその
直線同士の距離も等しいのである。
それだけではない。この格子の基本単位は、イギリスのマイルになっているのだ(リンカーンはマイルで
示した距離のリストを挙げている。例えば、レンヌ=ル=シャトーからブズはちょうど4マイル。レンヌ=ル
=シャトーからスランもちょうど4マイル)。
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さらに彼は、ソニエールの謎の財宝についても新しい手がかりを提示した。彼の発見した直線の
多くは、ソニエールが書庫として建てたマグダラ塔を通過していた。それはまさに、ソニエールにとっ
ての最西端にある――彼はそれを切り立つ急斜面のすぐ上に建てたのだ。これによて、リンカ
ーンの言う「レンヌ=ル=シャトー神殿」に、さらに重要な配置が追加された。
さらに興味深い情報がある。1917年の死の直前、ソニエールはもう一つの塔の建立に着手し
ていた――それも高さ60メートルのものだ。その位置は不明だが、リンカーンによれば、この
あたりで最も重要な配置の一つは「日の出ライン」、すなわちアルク教会からブランシュフォールを
通過してレンヌ=ル=シャトーに至るラインだと言う。このラインは、リンカーンが始めてイギリスのマイルに気づいたラインで、その長さはほとんど6マイル(約9・6キロ)だった。
このラインを正確に6マイルにするためには、マグダラ塔の下の斜面に終点を置かねばならない。
だが、塔の下の斜面であるために、目印としてブランシュフォールやアルクから見えるようにするため
には、マグダラ塔よりも高い塔でなければならない。ソニエールが新しい塔を作ろうとしていたの
はこの場所なのだろうか?
もしそうなら、それはわれわれの仮説をさらに裏づけるものとなる――このあたり一帯が、
ちょうどニューヨークの街路のように、幾何学的原理に基づいて意図的に配置されている、と言
う仮説だ。
例の暗号文書を発見した直後から、ソニエールは長い時間をかけて周囲の丘を歩き回っている。
彼自身は岩屋を作るための石を集めていたと述べているが、多くの研究家は財宝を探して
いたと考えている。だが、さらに可能性の高い説が浮かび上がってきた――パリ滞在中、彼は「神殿」の幾何学の秘密を知り、自らこれを習得していた。その後、彼はマグダラ塔を作
り、これによって「日の出ライン」を完成させようとしたのだ。
つまり、暗号文書の発見によって彼は「神殿」の看護者に任じられていた。それを命じたのはたぶんドビッシーで、目印を建てるための金も彼が供与したのだろう。
リンカーンの30年に及ぶレンヌ=ル=シャトーの研究によって、地球の計測に関する古代の科学の存在が
明らかとなった。中世以来、この科学は教会によって管理されてきたようだ(当然、そこ
にはテンプル騎士団も関わっていただろう)。だがリンカーンは、それがさらにはるかにふるいもの
であると感じている――まさしく、巨石時代にまで遡るものであると。これはただちに、
アレキサンダー・トムの言う「巨石時代のアインシュタインたち」を思い起こさせる。
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事実、ソニエールに金を渡していたのはどうもこのブデだったらしい。プランタールの祖父が189
2年にブデを訪ねたが、ブデはソニエールに(というか、ソニエールの家政婦であるマリ・デナルノーに)3
50万金フランを渡していたのみならず、ビアール司教にも750万金フランを渡していた。
この司教はソニエールを任命し、また明らかにこの秘密に関わっていた人物である。1金フランは
今の35フランに相当する(そして9フランが英貨1ポンド)ので、ソニエールの受け取った金
はポンドで言えば1300万ポンド(2000万ドル)以上、そして司教はその2倍以上の
額を手に入れたことになる。
リンカーンはブデの本を手にしたが、それは不可解極まりないものだった。ブデは、バベルの塔
以前の原言語は英語――というより、ケルト語であったと考えていたらしい。リンカーンはブデの
本のこの部分を「言語学的冗談」と呼んでいる。
ブデは聡明な人物であったとされているので、これは彼の韜晦ではないのか、とリンカーンは考
えた。だがその後、話は遥かに面白い方向に転ずる。ブデはその地方の巨石構造物を論じ
始めるのだ。この本の副題は「レンヌ=ル=バンのクロムレック」――クロムレックとは2個の直立する立石の
上に平らな巨石を乗せた、巨大なダイニングテーブルのような構造物を言う。
あたかもブデの役割は、その地方のなぞについてほのめかし、それが巨石時代にまで遡る
と暗示することのみにあるように見えた。だがリンカーンはこう想像した――彼の意図は、この
地方の謎を解く大きな鍵はイギリス、特にイギリス単位(例えばマイル)にあると示唆することでは
なかったのか、と。そしてブデは、人類の原単位がイギリスのもの、例えばマイルであるといい
たかったのだろうか?