トンデモ言語学の世界

このエントリーをはてなブックマークに追加
155出題者
結論から言うと、連濁という異形態交替が、すべての行において、一貫した同じ原理で説明される子音の交替によって引き起こされる、と記述することは、不可能です。

私が拙い解説をするよりは、次の著書を御参照いただくほうがいいでしょう。
小松英雄『日本語の世界 7 日本語の音韻』中央公論社, 1981: pp.101-130 (第四章 清濁のしくみ), pp.249-283 (第九章 ハ行音の変遷).

ただし、同書 p.274 に、
「音素は語の識別に役立つ音の単位である。たとえば「滝」 [taki] と「柿」 [kaki] とは [t] と [k] との対立によって識別され、/t/ と /k/ とが、それぞれ音素として設定される」
とあるのは、誤りです。日本語の [t] [k] はあとの母音と結合した姿でしか現れませんから、最小の音韻的単位は /ta/ /ka/ ととらえるべきです。
/t/ /k/ を設定するためには、例えば英語の bat と back、try と cry に見られるような、音声的環境に拘束されない子音の振る舞いが指摘されなければなりません。