☆女を擁護する新聞への投書☆3

「マザコン男は振られて当然」
　那智　文江（保育園園長　61歳　東京都）

　先日、我が園に勤める男の保育士が愚痴をこぼしていた。探りを入れてみると、交際していた
女性に突然振られたらしい。真剣に付き合っていたのに、なぜ振られたのか理由が分からないと
嘆いていたようだが、私には、何となくその女性の気持ちが分かるような気がした。当の部下は
職場でも、幾度か自分の母親の自慢をしていたことがある。母親の手料理や家事の手際の良さを
褒めちぎっていた。つまり、この男はマザコンだったのだ。子供が母親を尊敬するのは悪いこと
ではないし、父親を貶すのもまた当然のことではあるが、ものには限度というものがある。この
男は恐らく、交際相手の女性の前でも同様の発言をしてしまったのだろう。女性はいつだって、
いくつになっても夢を見る女の子だ。どんな女性でも、恋愛関係になった男との将来を、わずか
でも頭の片隅で想像せずにはいられない。それなのに、相手の男が自分の人格を無視して母親の
ようになって貰いたいと考えているとしたら、これは悪夢以外の何物でもないだろう。しかも、
マザコン男というのは大抵が幼稚で子供嫌いだ。「子供は苦手」などと惜しげもなく口にして、
相手の女性が子供を欲しがっていても、「自分は君だけで満足なのに、子供を欲しがるなんて、
本当は自分のことを愛していないんだ」などと意味不明な切れ方をするという。息子を欲しがる
女性ならともかく、可愛い娘を産みたい女性には非常に気の毒である。そして、何よりも決定的
なのは、何でも母親任せにしてきた為に、いざ結婚という段になると挙式を面倒臭がって、入籍
だけで済まそうとする傾向があるようだ。このような典型的なダメ男が女性に振られるのは当然
なのである。ところで、この部下は「子供嫌いのマザコン男」の筈なのに、なぜ保育士の仕事を
しているのか。一方で、マザコン男の中には性倒錯者が多いとも聞く。私は一瞬、背筋に冷たい
ものを感じて、この部下を即刻解雇した。男の園児はどうなってもいいが、女性の園児に何かが
あってからでは遅いからだ。