よしもとばななさんの「ある居酒屋での不快なできごと」 『人生の旅をゆく』(よしもとばなな著・幻冬舎文庫)より。
この間東京で居酒屋に行ったとき、もちろんビールやおつまみをたくさん注文したあとで、
友だちがヨーロッパみやげのデザートワインを開けよう、と言い出した。
その子は一時帰国していたが、もう当分の間外国に住むことが決定していて、その日は
彼女の送別会もかねていたのだった。
それで、お店の人にこっそりとグラスをわけてくれる? と相談したら、気のいいバイトの
女の子がビールグラスを余分に出してくれた。コルク用の栓抜きはないということだったので、
近所にある閉店後の友だちの店から借りてきた。
それであまりおおっぴらに飲んではいけないから、こそこそと開けて小さく乾杯をして、一本の
ワインを七人でちょっとずつ味見していたわけだ。
ちなみにお客さんは私たちしかいなかったし、閉店まであと二時間という感じであった。
するとまず、厨房でバイトの女の子が激しく叱られているのが聞こえてきた。
さらに、突然店長というどう考えても年下の若者が出てきて、私たちに説教しはじめた。
こういうことをしてもらったら困る、ここはお店である、などなど。
私たちはいちおう事情を言った。この人は、こういうわけでもう日本にいなくなるのです。
その本人がおみやげとして海外から持ってきた特別なお酒なんです。どうしてもだめでしょうか?
いくらかお金もお支払いしますから……。
店長には言わなかったが、もっと書くと実はそのワインはその子の亡くなったご主人の散骨旅行の
おみやげでもあった。人にはいろいろな事情があるものだ。
しかし、店長は言った。ばかみたいにまじめな顔でだ。
「こういうことを一度許してしまいますと、きりがなくなるのです」
いったい何のきりなのかよくわからないが、店の人がそこまで大ごとと感じるならまあしかたない、
とみな怒るでもなくお会計をして店を出た。そして道ばたで楽しく回し飲みをしてしゃべった。
もしも店長がもうちょっと頭がよかったら、私たちのちょっと異様な年齢層やルックスや話し方を見てすぐに、
みながそれぞれの仕事のうえでかなりの人脈を持っているということがわかるはずだ。
http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=20090808
(つづき)
それが成功する人のつかみというもので、本屋さんに行けばそういう本が山ほど出ているし、
きっと経営者とか店長とか名のつく人はみんなそういう本の一冊くらいは持っているのだろうが、
結局は本ではだめで、その人自身の目がそれを見ることができるかどうかにすべてはかかっている。
うまくいく店は、必ずそういうことがわかる人がやっているものだ。
そしてその瞬間に、彼はまた持ち込みが起こるすべてのリスクとひきかえに、その人たちが
それぞれに連れてくるかもしれなかった大勢のお客さんを全部失ったわけだ。
居酒屋で土曜日の夜中の一時に客がゼロ、という状況はけっこう深刻である。
その深刻さが回避されるかもしれない、ほんの一瞬のチャンスをみごとに彼は失ったのである。
そして多分あの店はもうないだろう、と思う。店長がすげかえられるか、別の居酒屋になっているだろう。
これが、ようするに、都会のチェーン店で起こっていることの縮図である。
それでいちいち開店資金だのマーケティングだのでお金をかけているのだから、もうけが出るはずがない。
人材こそが宝であり、客も人間。そのことがわかっていないで無難に無難に中間を行こうとしてみんな
失敗するのだ。それで、口をそろえて言うのは「不況だから」「遅くまで飲む人が減ったから」「もっと
自然食をうちだしたおつまみにしてみたら」「コンセプトを変えてみたら」「場所はいいのにお客さんが
つかない」などなどである。
(中略)
というわけで、いつのまに東京の居酒屋は役所になってしまったのだろう? と思いつつ、二度とは
行かないということで、私たちには痛くもかゆくもなく丸く収まった問題だったのだが、いっしょにいた
三十四歳の男の子が「まあ、当然といえば当然か」とつぶやいたのが気になった。そうか、この世代は
もうそういうことに慣れているんだなあ、と思ったのだ。いいときの日本を知らないんだなあ。
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その他前スレで話題になった日記
新幹線で子供が騒いだら周りのキチガイ共が何故か親の私に注意し始めたでござるの巻 2006.07.07
新幹線に乗って仮眠していたら、その間にチビがとりかえしのつかないくらいはしゃいでいた。といっても席から離れていないし、大声を出している程度。
もちろん公共の場で騒ぐのはよくないこと(お店とはわけがちがう)なので、ぱしっと叩いて叱ったが、もうあとの祭り。周囲のふたりの人から極端なクレームが来た。
もちろん悪いのはうるさい子供、それを放っておいて寝ていた親、それは大前提だ。
しかし、ひとりはとなりの奥さんにあたりちらし、舌打ちをし、毛布を丸めて投げつけて席を替わっていたし、もうひとりはヒステリーのおばさんみたいに
「いいかげんにしてください」とどなりこんできた。芸能人の付き人だった。
そのふたりが、三歳の子供に向かっていやな顔をしながら自分を正しいと思っている表情の醜さといったら、日本の未来は絶望だと思った。
もともといらいらしていて、そのうっぷんをこの出来事に飛びつくようにしてはらしているのだ。
「大の大人の男がこれじゃあ、日本はほんとうにいやな国になっちまったな」
と私は正直あきれて思った。きちんと言い争ってあげるほど親切ではないし、別に傷つきもしない。
まあ、いずれにしても日本は私にとって単に行ったり来たりする国になるのでいいのだが、子供が小さいあと十年くらいはこれ
(子供が少なく、みなが子供嫌いな雰囲気)に耐えるのかと思うと、ぞっとする。少子化を憂えているひまがあったら、そういうときに
「電車の中でさわいじゃだめだぞ!」とちゃんと子供の目を見て言えるか、「すみません、私の上司が疲れていて寝たいのです、
静かにしてもらえますか?」と親におだやかに言えるか、そういう大人を育てたほうがいい。うるさい子連れ=バカ親=怒りをぶつけていい、
というふうに、彼らはすでに思いこんでいるのだろう。いつから夜の電車は全車両寝台車になったんだ?
バブルのとき、キチガイみたいにはしゃぎながら新幹線で携帯をかけまくり、酒を飲みまくるおじさんたちに耐えたと思ったら、
今度はこういう風潮か、とまことにうんざりする。
http://www.yoshimotobanana.com/cgi-bin/diary/diary.cgi?page=5&yy=2006&mm=07
2009.08.04 運送業の人って仕事に生き甲斐もてなくて可哀想wの巻
〜中略〜
ヨドバシカメラの下請けの配送業者さんがやってきて、冷蔵庫も洗濯機も階段の幅がどうだ、カウンターがどうのこうので入らないと言っている。
成田さんがすかさず「手伝ってやるよ、カウンターを越えて運べばいいんだろ、男5人いたら簡単だ」とかっこよく言う。
しかし先方は「お客さんに手伝ってもらうことはできない、だから、カウンターの手前に置くから、自分でやれ、こっちの人手は貸せない」などと言っている。
〜中略〜
ヨドバシの人に「あほじゃないか?」と文句を言ったら、「こちらではなんとも、業者さんの会社の責任でして」などと言っている。
いやな世の中だね〜、分業にしちゃってるから責任のたらいまわし、まあ、それにつけこむ客もいるからってか。
そして増員なら今から手配するから3時間待てとか言っている。意味なく炎天下の3時間、外においてある冷蔵庫と洗濯機。男手が意味なく5人、その場でぶらぶらしている。
ほんとにばかみたいな世の中になっちまった…。
自分にはなんの権限も判断もしない、ロボットみたいな変な仕事を毎日汗水たらしてする人たち。
持ってきたものの無事やその家庭に家電が入って喜ばれることよりも、責任問題のほうが大事な人生。かわいそうだなあ。
で、結局、カウンターの前までその人らが運んで、成田さんと蓮沼さんとヒロチンコさんで冷蔵庫を入れた。それをじっと立って見ている力のある若い配送の人たち。
そのあと洗濯機をその人らがふたりでなんとか運んで、手伝うなと言っているので、みんなでじっと見つめる。
ほんと〜にばかみたい。
怒っているのではなく、狂ってるなと思うだけだ。
人生を、助け合ったり、自分で判断したり、決めたり、失敗したりする権利を持っている俺たちはそのあと楽しく浜に行き、夕陽をみたり花火を見たり、
あじ平でおいしいラーメンを食べたりしたが、その人たちは責任問題はいろいろ大変だから、クレームをつけてくれるなよと説明して、汗だくで帰っていった。
うまい酒が飲めなさそうでかわいそうだ。その仕事に生きがいを求めろというほうがむりだろう。
http://www.yoshimotobanana.com/diary/2009/08/
タクシー代わりに救急車使用 注意されるとクソババ〜は医療に携わるな!の巻
2009.05.06
一日中39度。解熱剤を飲むと一瞬下がる熱。この中で読む「三国志」臨場感爆発!
でもたいていは読めずに寝込んでいる。顔がボコボコで面白いくらいだ。
家の中で急にバタンと倒れたので、救急車を呼んで、点滴でもしてもらおうと思ったら、日赤は「もうできることないから
じっと辛抱しろ」と拒否。まあそりゃそうなんだけど。これはまだ、説明があっただけまし。
そして近所の有名な恐ろしい外科病院に運ばれた。入院しろというが、まずいきなりくそババーに「あなたこのくらいで救急車呼ばないでね!」
と怒鳴られ、「子供じゃないんだから自分で熱はかって38度以上あったら座薬を入れなさい!」と怒られ、そいつの下手な点滴でおおアザが
できたので、むかついてきて、絶対帰る!と言い張って帰った。だって(多分換えるのが面倒だからっていっぺんに)2リットルの点滴を下げ
ながらトイレに行けっていうんだけど、トイレが狭すぎて入らねえんだよ!点滴のスタンドが!しかたなく戸をあけてしました。
廊下はものすごくタバコくさいし、ババーもタバコくさいし、喫煙所の隣にすっごい咳の人が入院してるし、長屋みたいな衛生状態だし、冷蔵庫には「他の人の食べ物を盗まないで!通報します」
と書いてあるし、ベッドには得体の知れない血や膿がついたままだし、死ぬと思って。「帰るので、ごはんはけっこうです」と言ってるのに、「ごはんですか!おかゆですか!」しか言わない。それは
まだいいとしても、ナースコールをしたら、がちゃっと切るんだよ!
くそババ〜、医療にたずさわるんじゃねえ!
他にもほんとうに顔が真っ赤で熱が高そうな青年に、大雨のなかお金をおろしに行かせていた。「そこ出て10分も歩けばセブンイレブンがあるから!」って。
後日にしてやれよ!
…ああ、すっきりした。ゆるしのない、非スピリチュアルな私です。
http://www.yoshimotobanana.com/diary/2009/05/index_5.html
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名無しさん 〜君の性差〜:2009/08/16(日) 23:49:07 ID:N4YTkFQ8