あれは、中学2年生の秋の中間テストのときのこと。確か社会(歴史)のテスト中
ではなかつたか...
試験開始後、十数分で答案を書き終へた拙は、自分の席でぼけつとしてをつた。
テストのときは、男女別、出席番号順に席に着く決まりである。拙の席はたまたま
教室の一番後であつた。所在なく過ごすこと数分。すると突然、静まり返つた室内に
「ぶぅぅぅぅぅ〜」
と言ふ音が響き渡つた。誰かが放屁したのである。これは畢竟、屁をすかすつもりが
失敗し、若干のビブラートを伴つた放屁音が期せずして生成されてしまつたに違ひない。
数瞬ののち、教室内には爆笑の渦が巻き起つた。試験監督の数学教師なんどは、窓際で
ハンカチを手に、涙を流しながら笑つてゐた。
が、拙はこのとき、右手やや前方の女子席のあたりで顔を真赤に染めて俯く一人の
美しい女生徒の姿を見逃しはしなかつた...
「あれか...」
つづく