■★■濃密な母性が「生きる気力」を壊す■★■

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん 〜君の性差〜
http://news.msn.co.jp/433336.armx

ニュースセレクト
『「したくない症候群」の男たち』――濃密な母性が「生きる気力」を壊す 第3回:交わした握手

ナカガワ・ユウゾウ氏、36歳、相談内容は「手を洗うのがやめられない」。行動療法が高い効果をあげると
知りつつ、カウンセリングに来る回数が減っていった彼に、私は普段ならしない自分の話をした。
「人生とは四つ葉のクローバーに手を伸ばすことでなく、CATCHしたものを四つ葉のクローバーに育てていくこ
となのだと思う」・・・。臨床心理士による『「したくない症候群」の男たち』抄出の最終回。(梶原千遠:12月22日)


2名無しさん 〜君の性差〜:03/12/23 12:20 ID:JtiJ1dem
それから一カ月の間、ナカガワ氏からカウンセリングの予約は入らなかった。
 時折、どうしているかしらと思ったが、私はもはや苛立ちはしなかった。彼が歩き出そうとするまで、
待つしかないのだ。
 一カ月後にようやくナカガワ氏がカウンセリングにやって来たとき、彼はポケットから手を出していた。
 「ある朝、手にするものが完全にきれいでなくてもいいんだよね、と思ったんです。そういうことですよね、先生」
 私は思わずうなずいた。
 「そうしたら、手を洗っててもいいんだよね、と思えたんです。それでいいんだったら、仕事に出てみようかなと思ったんです」
 彼は続けた。
 「完全にきれいなものを触れるのでなくていいんだったら、手を出していてもいいと思えるようになりました」
 二カ月ほどして、ナカガワ氏の仕事が決まった。不動産屋でパソコンに住宅情報を打ち込むというものだ。
 「除菌タイプのウエットティッシュでキーボードを拭いておけば、なんとかなると思います」
 そのうち仕事が忙しくなり、カウンセリングは打ち切られることになった。
 手を洗うのはまだ完全にやめられてはいなかったが、少なくとも手を出せるようにはなった。今の彼にとっては
それで十分なのだ。
 最後にナカガワ氏は言った。
 「先生、人生とは手を伸ばしている限り四つ葉のクローバーがCATCHできるかもしれないものだと、ぼくは思います」
 そして私たちは握手を交わした。もちろん素手で、お互いの手を握った。
3名無しさん 〜君の性差〜:03/12/23 12:21 ID:JtiJ1dem
●ナカガワ氏の処方箋

 ナカガワ氏の家族関係については詳しく知らなかった。私も触れなかったし、彼も話そうとしなかった。
はっきりしているのは両親と三人暮らしということくらいなのだが、実は彼はずっと一人っ子だったわけでなく、
十七のときに三歳年下の弟を突然亡くしていた。ナカガワ氏は淡々とその話をした。
 弟には絵の才能があり、かつて絵を嗜んでいた母親がたいそう可愛がり、自宅とは別にアトリエ用の部屋まで
持たせていた。弟はそのアトリエで亡くなった。
 これは私の仮説に過ぎないが、次男ばかりを可愛がっていた母親が、次男が夭折した後はその身代わりとして
長男に期待をすげ替えたとすれば、ナカガワ氏は自分の自由に振る舞うことは許されないと感じていたのかもしれない。
 強迫症状(強迫行為や強迫観念)を呈する人の心の奥底にある不安や葛藤とは、「完璧でないと人から受け容れられないが、
自分はそうでないから完璧にならなくてはならない」というものである。彼らは「あなたが完璧なら、受け容れる」
「受け容れないのは、あなたが完璧でないからだ」というメッセージを受けながら育ってきた。そして、そうしたメッセージを送るのは母親であることが多いのである。
 ある母親から、中学校二年生の息子(仮にTとしておく)のことで相談を受けた。Tには強迫症状があったのだ。
 その家は両親と大学生の長女、そしてTの四人家族だった。父親は企業役員、母親は専業主婦、
長女は母親いわく「そこそこの女子大」に、Tは「有名私立中」に通っていた。

4名無しさん 〜君の性差〜:03/12/23 12:22 ID:JtiJ1dem
強迫症状の背景には心理的なストレスがあるのではないかと私は母親に伝え、
本人にカウンセリングを受けさせるよう勧めたが、息子には学業を優先させたいので時間がないと断られた。
ならばと母親を通じて本人の心理的なストレスを探っていこうとしたが、母親は「あの子にストレスがあるなど
考えられない。あるとすれば成績が思わしくないことくらいで、それは成績が上がれば解決することではないか」
と言い張るばかりだった。

 Tは小学校は公立に通っていたが、受験を経てその学校に入学した。中高一貫だったが、大学の付属でなく、
大学進学の際には再び受験する必要があったので、中学校に入学してからも息子の成績から目が離せないの
だと母親は言った。

 母親から聞くエピソードからは、母親が息子に干渉し過ぎている様子がうかがえたが、それと同時に、夫婦の
希薄な関係や、母親から関心を寄せてもらえない長女が弟の問題に理解を示さない様子なども浮かび上がって
きた。私は母親に、息子の行動に干渉するのをやめるように言い、大事なことは父親から伝えてもらうようにし、
長女との時間も大事にするよう助言した。

5名無しさん 〜君の性差〜:03/12/23 12:23 ID:JtiJ1dem
話をするうちに、母親自身もそうした問題に気づいたようで、数回のカウンセリングの後には
「Tのストレスがなにか、少しわかったような気がする。それにどうすればいいのかも。家族み
んなで考え直してみる」と言うようになった。

 カウンセリングの最終回、私は「決して、無理して自分一人が変わろうとないでほしい」と念を
押し、彼女を送り出した。強迫症状を呈する本人に「あなたが完璧なら、受け容れる」「受け容れ
ないのは、あなたが完璧でないからだ」というメッセージを送っているのが母親であっても、そう
せざるを得ない状況に置かれている彼女自身についても思いやりを持つことが大事なのではな
いかと私は思うのだ。

 さて、母親から弟ばかりが可愛がられていたナカガワ氏と、自らが干渉の対象となっていたTでは、
その母子関係はまったく違ったものに映るかもしれない。だが、不干渉であろうと、過干渉であろうと
、問題は母親が子どもそのものを等身大に見ていない点にあるのである。それはナカガワ氏の弟や
Tの姉についても同様なのだ。ナカガワ氏の心の奥底に、母親から十分に愛されていないのではな
いかという不安や、その不安をすり替える形で弟への葛藤があったとしても、カウンセリングに来た
時点では、彼はまだそれに気づいていなかった。

6名無しさん 〜君の性差〜:03/12/23 12:24 ID:JtiJ1dem
自らが心の奥底をのぞきこみ、そこにある不安や葛藤に気づき、「完璧じゃなくてもいいんだ」と自分自身を
受け容れられるようになった後にはじめて、性衝動についても受け容れられるようになるのだろうが、
それまでには相当の時間がかかる。

 人はみな、心の奥底に不安や葛藤を抱えている。中にはそれを言葉でなく症状として呈する人もいるわけだが、
言葉の準備ができるまでそっと見守ることも大事なことだと私は思う。時期が必要である場合もあるのだ。

7あぼーん
あぼーん