片瀬那奈を調教したい

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53不定期連載
 調教師の狙い通りに那奈は実力をつけ、裏中央競馬で重賞を制して行った。しかし、好事魔多し、彼女はシーズン最後の裏G1レースのゴール後に転倒した。それも、ただ転んだというのではなく、陸上競技を遙かに凌ぐ裏競馬界最高のスピードで疾走していたところを転倒したのだから、当然、騎手は再起不能の重傷、那奈自身も複雑骨折のためなんとか命だけは取り留めたものの……二度と走れないからだになってしまったのだ。
 通例なら走れなくなった牝馬は薬殺し、その偉業を称えるために剥製にして飾られることとなっていたが、……数多い彼女のファンたちは除名を嘆願した。そのさまはあたかも名馬テンポイントを惜しむファンたちの声を彷彿させたという。
 結局、手術が行われたが……彼女は両手両足の大部分を失ってしまった。悲しみの涙にくれる那奈。

 両手両足の先に義足が装着され、今度は全裸に首輪で繋がれるという姿になった那奈。そう、今度は彼女は牝犬としての生活を始めることになったのだ。
 「……かわいそうだとは思うが、仕方がないんだ。……ほら、お前はもう犬なんだから「ワン」と鳴きなさい」
 悔し涙をぼたぼたと床に落としながら「ワン……」と吠えるしかない那奈だった。

 数日後、彼女は競売にかけられ、牧場を後にすることになった。今度は犬として新しいご主人様に仕えなければならないのだ。辛い思いでばかりの牧場だったけれども、何故か涙がこぼれてくる。
 ある晴れた日曜日、市場へ続く道。荷馬車がごとごと那奈を乗せていく。可愛い那奈、売られていくよ。悲しそうな瞳で見ているよ。