戸田恵梨香VS.上戸彩VS.沢尻エリカVS.榮倉奈々
飛沫をあげて、悠々と泳ぐ魚のように、いつも伸びやかで、はつらつとした印象を残す彼女。
しかし、それと同時に、そこはかとない心許なさ、不安定さ、未完成であるが故の緊張も、私たちに伝
える。
それは彼女が幼稚であるからではなく、逆に早熟であるための波動だと思う。
ほとんどの二十歳が「女優」という枠に自分をどうはめ込むかと動いているのに、上戸彩は、生身の自
分に女優という仕事を取り込もうとしている。
虚像ではなく私自身に。
そうした、生身の人間のおおらかさと頼りなさを彼女は保ち続けている。
それが上戸彩の魅力であり、色気なのだ。
セクシャルな自分を表現することに照れを持ち、自由な発言を隠さない。
それぞれを絹一枚の微妙なバランスで見せながら、人々の感情をしめつける。
これだけの仕事をこなし、たくさんの人気を手にしながらも、今までのすべてが上戸彩にとってはこれ
からのイントロに感じる。
これからも上戸彩には完成しきらない色気を持ち続け、オトナたちをハラハラさせてほしい。ダ・ヴィ
ンチの作品がほとんど未完成品であったように、完成しない色香と可能性を漂わせながら、出来上がった
女優には真似のできない魅力と迫力をさらりと輝かせ、その海を泳いでもらいたい。
「週刊ポスト」2005年9月30日号より