ストーリー
芥川がニュージーランド西郷のゴーストライターとして書いた作品『HOME』は
「本が売れない」と叫ばれるこのご時世で50万部も売れた。
莫大な印税を期待した芥川は前祝とばかりに借金をして、それを全てギャンブルで使い果たした。
だが本の報酬は雀の涙ほどしかもらえず、しかも編集とニュージーランド西郷からポイされてしまう。
いきなり大ヒットを飛ばした芥川をなぜあっさりと捨てたのか?
常識的に考えて、そのまま利用するかデビューさせたほうがよっぽど有益な気もするが、
芥川が捨てられた理由は詳しく語られることはなく、芥川自身も「世の中そんなもんさ」と妙に受け入れ
が早い。
とはいえ怒りが簡単におさまるはずもなく、芥川は思いきってニュージーランド西郷と自分の関係を世間に暴露しようかと考える
が、そんなことをしてもニュージーランド西郷に握り潰されるのはわかっているし、
編集を怒らせて二度と本を出せなくなるかもしれないと慎重になった。
そんな慎重な彼が次に思い付いたのが、民家にたてこもって国に金を要求することだった。
たてこもりと暴露、人生が終了する可能性が高いのはどちらかというのは個人の判断に任せるとしよう。
ちなみに何故わざわざたてこもりを選んだのかというと、ニュージーランド西郷の小説に影響されたから、とのこと。
あー…
西野知らないんだなぁ、このスレに書き込んでる98%が吉本芸人だっていう事実…
>>138 そりゃあれは西野さん本人じゃなくて、はねるメンバーとして仕事してる姿だもの
芸風が嫌いじゃないなら何も思わないんじゃない
芥川は中学時代の三年間だけ住んでいた綾瀬市にある一軒家の前で立ち止まる。
今からこの家で一人暮らしをしている女を人質にしてたてこもるのだ。
芥川がこの家をターゲットにしたのには二つの理由があった。
一つ目、たてこもり事件が起きれば警察は被害者と犯人の接点を探るだろうが、自分と被害者には何の共通点もない、だから警察が自分の正体に気付くはずはない、という高度な計算。
この理屈が通るなら、犯罪の7割は未解決ファイルに直行することになる。
二つ目、被害者の家の庭にはマンホールがあり、芥川はそこを逃走ルートにしようと企んでいたのだ。
伊坂幸太郎の小説にもありましたよね、そんなネタ。
家に侵入して家主の女、クロサワに動けば殺すと偽物の銃で脅す芥川であったが、クロサワは今まさに自殺しようとしていたらしく、ぜひ殺して下さいと芥川に祈った。
身長153cm体重90kgの体を維持するために毎月の食費に苦しんでいたクロサワはついに食い逃げを実行してしまった。
だがあっさり捕まって、当然会社にもバレて、イジメられ、夢だった映画監督の道も見えなくなったので、死ぬことにした。
首でも吊ろうとしていたその時、銃を持った男がやってきた。彼は自分を殺すぞと言っている。
きっとこの人は自分を楽に殺してくれるために現れた神様に違いないとクロサワは喜んだ。
芥川は髪をガシャガシャと掻き毟った。
家の外で井戸端会議をしている奥様たちに「この家に住む女を人質にとった。無事に開放してほしければ、身代金1000万円と逃走用のバイクを用意しろ」と叫んだばかりなのに、どういうわけかこの太った女は殺されたがっているのだ。
「殺して下さい」
「だまれ殺すぞ」
「わかりました」
「死ぬなあああ」
部屋の中ではキングコングの漫才のようなやり取りが繰り広げられていた。
場面は突然変わり、森見登美彦の夜は短し歩けよ乙女からモロに影響を受けましたと言わんばかりの語り部風の文章で、一人の女性に想いを寄せる男の物語が幕を開けた。
男の名前はクボ。穂花という女性に恋をしている。
クボの職業は警察官で交渉人。現在綾瀬市で起こっているたてこもり事件の犯人と交渉するため現場に向かっていた。
クボは携帯電話で穂花にこう伝える。
「今、生中継している事件の現場に向かっている。そこで犯人と交渉する僕の勇姿を見ていてほしい」
クボの頭の中には穂花のことしかなかった。
しかし、装飾された文章は醜いとまで言い切った西野さんにどんな心境の変化があったのだろうか。
きっと文章をもっと派手にしないと自殺するよって、舘野さんが脅迫してきたに違いない。
舞台は再びクロサワ家に。
漫才にも疲れた二人は身の上話に花を咲かせていた。
芥川は自分がニュージーランド西郷のゴーストライターをしていたこと、今巷で大ヒットしている『HOME』は自分の作品であることを明かした。
クロサワは驚いたが納得もした。
いつも難病をネタにしていたニュージーランド西郷にあんな優しい物語が書けるとは思えなかったらしい。
『HOME』はすでに若者から絶大な支持を集めている個性派俳優主演で映画化が決まっているが、自分もあんな作品を映画化したいとクロサワは語った。
さて、そんな大人気の『HOME』だが、なんとラストシーンだけではあるが本編に収録されているので、ここで紹介したい。
>>138 五月蝿い人だなぁと嫌な印象は受けるよ。
『HOME』
勘当同然で大阪の家を飛び出し、東京まで追いかけていった夢は、5年をかけてもヒロシに微笑んでくれなかった。
ある日気づけばヒロシは何の前ぶれもなく実家の玄関にいた。
母親は何の連絡もなく5年ぶりに帰ったヒロシに言った。
「夜ご飯食べたん?」
「いや、まだ」
「支度するね」
リビングのテレビは新しく買い替えられていた。夕食を並べる母親の背中を見ながら、ノロマな母親のわりにはテキパキしてるなあ、そう思っていたヒロシの隣に姉がやって来て、言った。
「帰って来るときは連絡くらい入れや」少し説教くさいトーンだったので、適当に頷いて、聞き流すことにした。
「今、アンタの分の夜ご飯、すぐに出てきたやろ?」
身体が反応した。そういえば。
「アンタがいつ帰ってきてもええようにな」
目を合わせることもなく、姉は続けた。
「アンタが東京に行った日から毎日、お母さん一人分多く夜ご飯作ってるんやで」
『HOME』完
それから芥川は「この小説で伝えたかったことは・・・」と解説をはじめた。
ここに西野さんがいたら、「つまりは結局、伝わってないじゃないか」と説教をはじめるだろうが、クロサワはその解説を聞いて「ボエエ、ボエエエ」と感動して泣き出した。
「アダジ、バガでじだ。アダジ、がんばりばず。アダジいぎばず。頑張って生きます。」
若干不自由な日本語で自殺を止めたクロサワは感謝の気持ちを込めて1000万円が当選している宝くじを芥川にプレゼントした。
金がないから食い逃げしたという初期設定はどこにいったのだろうか。
それに1000万あれば自主制作で映画も撮れるのではないか。
まぁ細かいことはどうでもいい。
とにかくこれがあれば借金の1000万が返済できると芥川は、はしゃいだ。
>>46 ま、そこまで悪意を込めてはいないだろうけど、
出版直後で芸能人が次から次へとボクに感想を言いに来てくれる!
という状況にすっかりはしゃいじゃった末に思わず飛び出した
不用意な言葉だと思う。
おそらく悪気はないけど、だからこそ無意識のうちに
「工員を代表とする一般人」を下に見ているのがより露わに。
本当に人間が無神経で幼稚にできてる人だなぁ。
すっかり和んだ二人は、実はお互い同じ綾瀬市の中学校に通っていたことがわかり、その話で盛り上がっていた。
顔に巨大なホクロがあって盗撮が趣味の変態生徒、通称ホクロマンについて熱く語る芥川とクロサワ。
一方そのころ、テレビの前で自分の勇姿を見ているであろう穂花にカッコつけたくて、交渉人のクボは単独でクロサワ家に突入した。
ついに対面する三人。
クボの顔を見た芥川とクロサワは思わず声を上げた。
「ホ、ホクロマン!?」
そう、クボはあの有名なホクロマンだったのだ。
ちなみに芥川とクボは同級生で三年のときはクラスも同じだったらしい。
イケてないグループに属していたクボにとって、イケてるグループのリーダーだった芥川は憧れの存在だった。
バレンタインデーも自分は母親からしかチョコをもらえなかったのに、芥川はクラス全員の女子からチョコをもらって伝説になったというのに・・・
と、どうでもいい情報を垂れ流すクボは、なんだかんだで芥川たちの仲間になる。
とにかくもう問題は解決したので、お前の警察パワーでなんとかこの騒ぎを丸く収めることはできないかと芥川はクボに打診するが、さすがにそれは無理だとクボは言った。マンホールも監視されているらしい。
騒ぎは収まるどころか、その激しさを増していた。
あまりにうるさいので外の様子を伺ったクボは絶叫する。
「べ、米軍!?」
地上にはジープ、上空には軍のヘリ。どうやら芥川はテロリストと認定されたらしい。
テレビをつけると、そこにはクロサワ家が生中継されていた。
絶体絶命の三人。その時テレビ中継はのんきにCMへと移った。
『綾瀬ショートムービーフェスティバル開催!』
ふいに流れたそのコマーシャルを見て、クボは立ち上がった。
「これだ!実はこれまでの騒ぎは全部このフェスティバルに応募するための映画を撮影してたことにするんだよ!」
「でもそんなの嘘じゃないか」と芥川は反論した。
するとクボはこんな話をはじめた。
世界一の嘘を知っているか?
世界一の嘘をつく人間は私達に『人に嘘をついてはいけません』と言った。
つまり世界一の嘘つきとは親のことであり、世界一の嘘とは『サンタクロースは存在する』だ。
親のその嘘のせいで私達は毎年のクリスマスを楽しむことができた。
だから俺達も楽しい嘘を作ろうぜ。
「一番楽しい嘘が、一番正しい」
親が子を喜ばせるためについた嘘と、すでに街中に迷惑をかけて逮捕されたくないからつく嘘に何の関係があるのかは不明だが、クボの言葉に感動した芥川とクロサワは『実はこれ全部映画の撮影だったのですよ』作戦を開始する。
だが早くも壁にぶつかってしまった。
「そんなことを言っても撮影機材がないぞ」
芥川の指摘にクボは絶句した。しかしクロサワはニヤリと笑った。
「アタシADだから家を倉庫代わりに使われているんです」
と言って押し入れから大型カメラをはじめ、ピンマイクや照明に監督チェアーまで出してきた。
大切な機材をADの家の押し入れに預けたりするものなのか素人にはわからないが、10年間TVの最前線で仕事をしてきた西野さんが書いているのだから、きっとよくあることなのだろう。
さらっと本文中に絵本のCMを交えながら、新たな問題が浮上。
「台本がないぞ」クボがつぶやいた。「今までの状況を全て盛り込んだ台本がないと撮影だって納得してもらえないだろ」
「確かに」とクロサワ。
「くそっ、ここまでか、どこかに一瞬でプロットを考えられるヤツがいれば・・・」
その時、近くでカタカタと音が響いた。
隣を見ると『疾走感溢れるジャック・オッフェンバックの天国と地獄を弾くピアニストのように』というピンとこない比喩の状態でキーボードを叩く芥川の姿があった。
芥川が一瞬でプロットを組めて高速でタイピングできる能力があるという設定は一行も登場していないが、きっと読み飛ばしていたのだろう。
西野さんおもしれーな
ここまでクズな人間性を
毎日毎日長文で垂れ流してる奴って他知らないわ
ついったー始めればいいのに
あ、双方向メディアでは西野さん耐えきれないか
/. ノ、i.|i 、、 ヽ
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i ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' / .|
iイ | |' ;'(( ,;/ '~ ゛  ̄`;)" c ミ i.
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ノ Y `-- " )) ノ ""i ヽ
ノヽ、 ノノ _/ i \
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こうしてなんとかこれまでの騒ぎは映画のリハーサルだったということでオチがついが。
余談だが、米軍に囲まれたと思っていたのは早とちりだったようで、ジープはたまたまそこを通っていただけで、軍のヘリだと思っていたのはTV局のヘリだったそうな。
どうやったら軍のヘリと民間のヘリを間違うことができるのか、もしかしたら綾瀬市だけは特別仕様なのかもしれない。
ともあれ、勢いで完成させた映画は綾瀬ショートムービーフェスティバルにて、
『グッドコマーシャル賞』を受賞して、芥川たち三人は映画制作会社『有限会社グッド・コマーシャル』を立ち上げて、
新たな人生をスタートさせたのであった。
『グッド・コマーシャル』終了
あとがき
もともとは舞台用に書いた作品でした。
その舞台を観に来られた舘野さんの、「よそで出したら、僕、自殺するよ」という出版社の人間とは思えないお粗末な口説き文句に笑わされ、その気にさせられて、文章を詰めました。
《中略》
納得のいかない毎日の中、それでも笑おうとするあなたを肯定して、ほんの少しの後押しをすることが僕の仕事です。
この物語はあなたにとってグッド・コマーシャルでしたか?
いつか返事をお聞かせください。
それでは次回作『Zip&Candy』でお逢いしましょう。
チョット・コマーシャルでした。
西野亮廣