次の日から私は夕方食事の支度をしているとビールを飲みたくなった。
「一缶ぐらいいいか・・・。」
私はぐびぐびビールを飲み干す。
子供ができないストレス、菊さまの態度、どうすることもできない自分。
なぜ私は妊娠できないんだろう?
その答えが出ない。
どうどう巡りの末、アルコールに依存するようになっていった。
次の月、またその日がやってきた。
だが約束したのに菊さまはなかなか帰ってこなかった。
私は夕方から酒を口にしていた。もう毎晩飲まないとやってられない。
そして菊さまが帰ってきた。
「ただいま。」
「ちょっと、早く帰って来てって約束したじゃない! どうなってんのよ!」
「いいだろ、帰ってきたんだから文句言うな! それより飯!」
私ははぶてながらご飯をついだ。
「どうしたんだその酒。」
「ああ、飲みたいから飲んでるの。」
「お前アルコールはあまりよくないんじゃないのか?」
「あなただって飲んでるじゃない。」
「お前子供ほしいほしいとか言いながら結局酒飲みすぎて 駄目なんじゃないのか?」
私はだまってしまった。
「まったく、人に早く帰れとか言う前に自分の行動を正せよ!」
その言葉で私は切れた。
残りの酒を一気に飲み干し、次の瞬間菊さまをおもいっきり殴っていた。
私の右手握りこぶしは菊さまの左頬をとても強くパンチした。
「うぅ、痛い、な、何すんだよ!」
その後も私は菊さまを殴り続けた。
倒れた菊さまの上に乗っかり、菊さまの両頬を何十回と殴った。
菊さまの高い鼻もおもいっきり殴り、両方の穴からは真っ赤な血がドバドバ
と流れてきた。
「やめてくれー!」
足をばたばたさせ、私の腹をたたいたり、つねったりした。
私はその手もおもいっきり掴み、隙をついて菊さまの胸や腹もぼこぼこに殴った。
しだいに菊さまが声を出さなくなりぐったりしてきた。
そこで私は我に帰り、とても大変なことをしてしまったことに気がついた。
私は恐くなってそのまま家から走って逃げた。
とりあえず公園まで走り、ベンチに座り込んだ。
「どうしよう。大切な人なのに・・・。」
私は菊さまを殺してしまったのではないかと思いパニックになってきた。
そして私は実家に駆け込んだ。
実家の母がびっくりして私に尋ねた。
「○○どうしたの?こんな時間に。」
「お母さん、どうしよう。」
「どうしたの?」
「秀規さんのこと私殺したかもしれない。」
「え?」
私は事の顛末を話した。
話を聞いた両親が菊さまの様子を見に行くことになった。
私には実家に居ろと両親は言った。
最悪の場合私は逮捕されてしまうのだろうか?
ああ、なんてことをしてしまったんだろうか・・・。
私はおもいっきり実家で泣き崩れてしまった。
そのころ秀規は気絶から目が覚め、ゆっくり起き上がっていた。
「痛いよー。」
秀規は洗面所に行って鏡を見た。
顔中あざだらけ、得に右目なんてお岩のように膨れて青くなっていた。
おまけに大量の鼻血。
リビングに戻り、ティッシュを鼻に詰める。
ソファに寝転んだ。
「ああ、あいつなんでこんなことを・・・。」
鼻血が喉に入っていくのが分かる。
気持ち悪い。
すると誰かが入ってきた。
「秀規さん大丈夫?」
○○の両親だった。
「ああ、ごらんの通りです。」
「あの子がこんな酷いことをするとは・・・。」
○○の父は絶句していた。
「とりあえず冷やして、病院へいきましょう。」
「いいえ、そんな大袈裟な。大丈夫ですから。」
「でも、あとで大変なことになってもいけないから。」
秀規は冷やしながら車で救急病院へ連れて行かれた。
どれぐらい時間がたったろうか。
私は実家のソファに寝転がって目を瞑っていた。
両親からの連絡を待っていた。
待っている間私は自責の念にかられていた。
菊さまへの暴力への責任を何らかの形でとらねばならないだろう。
警察に突き出されてもしかたないだろう。
そしてもう一緒に暮らすことはできないような気がした。
たとえ許してもらえたとしてももう主人に対してこれだけのことをしてしまった。
一生守る、愛していくって約束してくれた菊さま。
なのに私はひどい仕打ちをしてしまった。
電話のベルが鳴った。
「もしもし。」
「もしもし、○○?秀規さん今病院で手当て済んだから。
命に別状は無いわよ。でも鼻が折れたみたい。
今から家へ送り届けるからあんたも来なさい。」
「良かった死んでなかったんだね。本当に良かった。
でももう家には帰れないから・・・。」
「何言ってるの?ちゃんと謝ったら許してくれるわよ。」
「いいや、もう秀規さんに会わす顔がないから。
じゃあお母さんさよなら。」
「え?何言ってるの?もしもし、もしもし!」
私は電話を切った。
そして靴を履いて外へ出る。
実家のアパートの屋上へと階段を登る。
屋上は一応鍵がかかっているが、ガラスを私は叩き割った。
そして屋上へ入り込んだ。
靴を脱ぎそろえ、柵を乗り越える。
もう迷うことも無かった。
生きてたってしょうがない。
もう人間なんてやめたい。
菊さまのことは好きだけど、もうあの人に愛してもらう資格が無いもの。
だったら生きてても何の意味も無い。
子供ほしかったなあ。
だけどもう菊さまの子供を産むことも許されないだろう。
私は目を瞑りダイブした。
835 :
名無しさん:2007/08/09(木) 22:03:03
保守
数時間後、秀規は病院のベッドの上で痛々しく眠っている
○○を見つめていた。
○○の母親が、彼女の電話での様子がおかしいことを秀規に告げた。
急いで皆で彼女の実家へ戻った。
すると通行人らしき人やアパートの住人がアパートの垣根のところへ
集まっていた。
垣根は低い植え込みで作られていた。
秀規が駆けつけるとそこには彼女が横たわっていた。
「○○!」
秀規が呼んでも返事をしない。
「変な音がしたからベランダに出たら○○ちゃんがそこに横たわっていたのよ。」
1階の住人が秀規達に言った。
まもなく救急車が到着する。
救急車のサイレンで信じられない現実をいやおうなしに受け入れることになる。
運び込まれる○○と一緒に秀規も救急車に乗り込んだ。
「○○・・・。なぜこんなことを・・・。」
秀規はとても悲しくて涙がボロボロ出てきた。
病院へ到着して集中治療室へ運ばれていく。
結局命に別状は無かった。
垣根のおかげで助かったらしい。
病室で警察官に事情聴取を受けた。
「自殺する動機に心あたりは?」
「はい、実は・・・。」
秀規は今日会った出来事を話した。
自分に暴力を振るうほど彼女が子供のことで思いつめていたのだと思うと
秀規は自分の至らなさを痛感した。
秀規は彼女の手を握り締めた。
そして頬を撫でてみた。
温かい。
良かった。
生きててほしい。ずっと自分のそばにいて欲しいから。
これからはもっとお前のこと支えていくから。
お前の気持ちをもっと考えるよ。
「ここは・・・。」
彼女が目を覚ました。
「○○、病院だよ。」
「私死ねなかったんだね。」
彼女は天井を見つめたままつぶやいた。
「死ぬなんてバカなこと考えるな! 俺より先に死ぬなんて絶対許さない。」
「でも、私あなたに酷いことしたから。 もう生きてく資格なんてない。」
「そんなことない。お前に殴られたことなんて・・・。
確かに痛かったけど、お前の心はもっと傷ついていたって分かったから。」
すると彼女が起き上がろうとした。
「痛い・・・。」
腰を打撲してるから痛みが走るらしい。
「無理して起きるなよ。」
「嫌、起きる・・・。」
「今日は寝てろよ。」
「嫌だ、離してよ。もう一回死にに行くんだから。 もう生きていくの耐えられない。」
「バカ!」
秀規は彼女の右頬をおもいっきり平手打ちした。
「痛い!」
「お前、飛び降りたらこんな痛さじゃ済まないぞ! 死ぬなんて簡単に口にするな!絶対許さない。」
「だって、あなたの子供産めないなら生きてても仕方ないもの。」
「子供の居ない夫婦なんてこの世にいくらでもいるよ。 どうしても欲しかったらこれから治療すればいいじゃないか。
それでもだめだったら養子をもらえばいいし。 俺は子供が絶対ほしくてお前と結婚したんじゃない。
そりゃ、できれば欲しいけど・・・。
でもお前と一緒に生きて生きたいから。 お前を一生守りたいから結婚したんだよ。分かってくれよ。」
秀規は懇願するように彼女を見つめた。
だが、彼女はうわの空だった。
両親が説得しても尚のこと死にたいと連呼する○○。
秀規は当直の医師を呼び、薬を処方してもらった。
なんとか安定剤を彼女に飲ませ、眠らせた。
「ああ、なんてことだ。これからどうなるんだろう。」
秀規はとても不安になった。
「秀規さん、あなた明日仕事あるんじゃないの?」
「はい、でも○○さんのことが気になるから。」
「でも休むわけにはいかないでしょ。
顔に怪我させるようなことして本当ごめんなさいね。」
「明日はラジオだから顔はあまり関係ないですから。」
「でもライブ、今週もあるでしょうに。」
「ええ、まあなんとかメイクでごまかしますから。」
「今日はもう帰って、私がついてますから。」
「いいえ、僕もいますから。」
秀規は彼女がまた暴れだすのではないか、どこかへ飛び出してしまうのでは
ないかと気がかりだったのでその晩は病室に泊まることにした。
翌朝、秀規は彼女が目を覚まして診察を受けるのを見届けてから
仕事へ向かった。
放送局へ着くと相方に会った。
「おはよう。」
「お、おはよう。菊地さんその顔どうしたの?」
「ああ、ちょっと転んじゃって。」
「そうなの?大丈夫?」
「うん。」
なんとか取り繕う秀規。
スタッフも皆秀規のあざだらけの顔を見て驚きを隠せないようだった。
だがまさか妻に殴られたとは言えない。
収録中、ずっと相方がいつもより自分の顔を見ているような気がしたが
秀規は平静を装った。
そして収録が終わると足早に帰った。
それから数週間たった。
彼女の精神状態は徐々に落ち着いていった。
怪我の方も大分良くなっていた。
そろそろ退院してもいいということになった。
「私、実家に帰ろうと思うんだけど・・・。」
「ああ、しばらくその方がいいかもな。
毎日俺がお前の所に通うから。」
「・・・。そのことなんだけど・・・。」
「どうしたの?」
「来なくていいから。」
「え?」
「ねえ、ずっと考えてたんだけど私たち・・・。」
「なんだよ?」
「別れない?」
「何だって?」
秀規はなぜそういう方向に話が向かうのかよく分からなかった。
「あなたに迷惑かかるから。」
「そんなことない。夫婦なんだから。もっと俺のこと頼っていいんだよ。」
「私あなたの重荷になりたくないから。」
「重荷なんて思ってない。
なんでそんなこと言うんだよ?」
その後も話し合ったが平行線をたどるだけだった。
842 :
名無しさん:2007/08/16(木) 18:22:39
保守
それからしばらく、○○は実家に戻っていた。
秀規は彼女と別れるつもりは無かったし、彼女を支えていきたいと思っていた。
毎日電話したり、家を訪ねて彼女を励ました。
最初はあまり元気の無い声で何の話題をふっても気の無い返事しかしない彼女
だったが、しだいに秀規の気持ちが伝わり、大分元の元気な彼女に戻ってきた。
ある日仕事が終わった秀規は彼女の家を訪問した。
彼女の部屋に入ると大きなバッグが置いてあり、タンスの引き出しが開いていた。
秀規は彼女が帰ってきたくれるのかと思い、話しかけた。
「戻って来てくれるのか?」
「ああ、これ?ちょっと出かけようと思って。」
「どこへ?」
「広島。東京じゃ一人になれないから。」
「そんな遠くへ行かなくてもいいじゃないか!」
「大丈夫よ、親戚の家に泊まるから。」
秀規は彼女と離れたくなかった。
だが彼女自身が決めたことなので仕方なく送り出した。
私は新幹線に乗り広島県の尾道へ向かっていた。
私はこれからどうすればいいのかずっと考えていた。
菊さまとの結婚生活は続けるべきなのか?
菊さまは毎日私のことを気にかけてくれている。
とても助けられているのは事実。
だが、彼の負担になっているのではないか気がかりだった。
駅に到着すると、叔母夫婦が迎えに来てくれていた。
「○○ちゃん!疲れたでしょう?」
「いいえ、お久しぶりです。しばらくお世話になります。」
約20年ぶりの広島への里帰り。
でも昔とあまり変わっていない気がした。
多少近代的な建物は増えているけれども、なぜかほっとできる感じだった。
○○が東京から居なくなって数日、秀規は毎晩彼女の声を聞きたくて電話した。
彼女は元気そうな声をしていたが、彼女が何を考えているのか不安だった。
もしかしてまだ離婚のことを考えているのか?
口に出してしまうと現実に話がその方向に進んでしまいそうで恐かった。
毎日とりとめのない話をして、おやすみを言って電話を切る。
そのうちに秀規は彼女の顔を見たくてしょうがなくなっていた。
彼女に触れたい。強く抱きしめたい。
どうにかして彼女のもとへ行きたかった。
「そうだ!この日にしよう。」
スケジュールを確認したら数日後山口県へ仕事に行くことになっている。
その帰りに彼女を訪ねてみよう。
さっそく彼女に電話する。
「もしもし、俺だけど。」
「何ですか?」
「あのさあ、今度の日曜日そっちへ行くから。駅まで迎えにきてよ。」
「えっ?こっちへ来るの?」
「ああ。嫌か?」
「なぜ来るの?」
「お前の顔見たいから。」
「顔見たいなら写メール送りますよ。」
「そんなんじゃ嫌なの!何だよ!旦那にさんざん心配かけやがって!
会いたいから会いに行くんだよ!文句あるのか!」
しばらく彼女が黙った。
「・・・。分かりました。来てください。」
「じゃあ、また当日電話するから。」
「おやすみなさい。」
菊さまが私を訪ねようとしているとは思わなかったので少しうろたえてしまったが、
拒む理由も無いと思った。
私は散歩に出た。
近所のお寺の階段を登る。
途中、いつも会う黒猫に出くわした。
「ニャー。」
猫の方から挨拶してきた。
私は近くにあったベンチに座り、猫を膝の上に乗せた。
猫をさすりながら私は考えていた。
私はなぜ菊さまを好きになったんだっけ?
数年前、私はたまたま近所に住んでいると知った菊さまに握手してもらった。
それから何度もみかけるようになって、いつの間にか仲良くなって。
私の方がものすごく彼のことを好きになっていた。
けんか友達みたいな関係だったけど、そのうちに菊さまも私のことを好きに
なってくれて・・・。
その後別れて私は別の人と結婚したけど、旦那に先立たれた。
それを知った菊さまは私を慰めてくれた。
そしてまた付き合うようになって結婚した。
私は菊さまの我ままなところ、毒の強いところ、本当はとても優しいところ、
自分の意見をしっかり持っているところなど、今まで見てきた。
ここ数日間尾道に滞在して町の中を歩き回った。
尾道には25ほど寺がある。
それに神社も含めると行き先はたくさんあった。
坂道を上ったり下ったり、狭い路地を通ったり、途中犬や猫に会ったり。
そして、山の上から尾道水道を眺めて風に吹かれていると、必ず菊さまを
思い出した。
一人になりたくてこうして歩き回っていても、結局毎日あの人のことを
考えない日は無い。
でもいくら好きでも、夫の事を支えていけなければ結婚生活は成り立たない。
これから私は菊さまを充分支えていけるのだろうか?
まだあまり自信が無かった。
しかし、離婚して一人で生きていくのも自信が無い。
そうこうする内に、日曜日が来た。
叔母に菊さまが泊まることを話して了解をもらい、私は彼を迎えに駅へ向かった。
もう夜の9時前だった。
新幹線はもうすぐ到着するはず。
私は改札口で待つ。
すると見覚えのある白くて細い男が出てきた。
「菊さま!!」
「○○!!」
私は菊さまに駆け寄った。
私は人目があるのも忘れて、菊さまに抱きついた。
すると菊さまがへなへなっと地べたに座り込んだ。
「どうしたの?」
「ものすごくさっきからしんどくて・・・。」
私は菊さまの顔色がいつもより悪いことにようやく気がついた。
おでこを触ってみるととても熱い。
そういえばこの前から咳してたような気がする。
「菊さま、病院へ行きましょう。」
「ごめん。せっかくお前に会えたのに・・・。」
私はタクシーを拾い、救急病院へ向かった。
病院へ到着し、菊さまは診察を受けて点滴をすることになった。
1時間ほど菊さまは点滴により眠りにつかれた。
私はその間、菊さまの寝顔を見つめていた。
ものすごく疲れていたのだろう。
ああ、私は何してるんだろう。
彼のそばに本当はずっと居なければならなかったはず。
自分のことしか考えていなかったから彼の健康状態も把握できずにいた。
私は菊さまの手を握り締めた。
けっして頑丈ではないその体でいつも頑張っている菊さま。
すると、菊さまが目を醒まされた。
「菊さま・・・。」
「すっかり眠っちゃったな。」
「菊さま、私、東京に帰ります。」
「そうか。」
「菊さま、また私と一緒に暮らしてくれますか?」
「もちろん。俺達夫婦じゃないか!」
「ありがとう。菊さま、私もっと強くなるように努力するから。」
「あせらなくていいんだよ。俺のそばに居てくれるだけで嬉しいんだから。」
菊さまは私の手を強く握り返してくれた。
ずっとこの手を握っていたい。そう強く思った。
852 :
名無しさん:2007/08/23(木) 00:40:22
age
菊さまが一生じゃないかもしれないけれど結婚するつもりが無いと
言われてましたが、人並みに家庭のぬくもりを味わってほしいです。
菊さまみたいな可愛い人女がほっとかないと思うんだけどな。
午後11時過ぎ、私は菊さまを連れて叔母の家に戻った。
部屋には布団を敷いてくれていたので、そこへ菊さまを寝かせることにした。
菊さまはクーラーに弱いので窓を開け風を入れた。
熱が完全に下がっていない菊さまを氷枕で冷やしてあげた。
「菊さまゆっくり寝てくださいね。」
「うん。ありがとう。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
私たちは久しぶりに夫婦並んで寝た。
次の日私が目を醒ましてみると、まだ菊さまは寝ておられた。
きっと疲れているのと薬が効いているのだろう。
ゆっくり眠らせてあげることにした。
叔母にはせっかく菊さまも来たんだからゆっくり泊まっていけば良いと
言われたが、菊さまの仕事の都合もあることだし、菊さまのことが心配で
たまらないので翌日帰ることにしようと思った。
しばらくすると菊さまが起きてこられた。
「おはよう、○○。」
「おはようございます。具合はどうですか?」
「だいぶ良くなったような気がする。」
熱を測ってみると平熱に戻っていた。
すると「グー!」っと菊さまのお腹が鳴った。
軽い朝食を摂りながら菊さまが言われた。
「後で散歩してみたい。」
「大丈夫ですか?まだ疲れ取れてないんじゃないの?」
「いつまでも寝てても仕方ないし、気分がだいぶいいから。」
「分かりました。じゃあ千光寺へ行って見ましょうか。」
秀規はロープウェイから尾道の町並み、海を眺めた。
広島には何度も仕事で来ているはずだったが、こうして観光するのは初めて
だった。彼女とこうして旅をするのみ久しぶりだった。
寺に着いてお参りを済ませ、景色を眺める。綺麗な海を眺めていると泳ぎたくなる。
「今年はもう海水浴行けないな。」
「また来年きっと行きましょうよ。」
「そうだな。」
「菊さまのセクシーな水着姿また見たいですよ。w」
「何がセクシーだ!バカヤロウメ!」
「だってあの黄色のブーメランパンツ、よく似合ってらっしゃったから。」
秀規は少し怒ったけど、こうして彼女と和気藹々と会話できるようになって
嬉しかった。
電話だけよりやっぱり彼女の顔を見て話せるって幸せだと思った。
彼女の横顔を優しい風に吹かれながら見つめていた。
「どうしたの菊さま?私の顔に何かついてる?」
「いいや、別に。」
顔を赤らめ、秀規は彼女を自分の方へ抱き寄せた。
「菊さま・・・。」
「お前、また菊さまに戻ってるけど、俺のこと「ひでのり」って呼んで くれないのか?」
「ごめんなさい。つい癖がついてしまって。」
「菊さまでもいいけど、たまには「ひでのり」って呼んで欲しい。」
「分かりました。ひでのりさん!」
「○○・・・。」
秀規は彼女を強く抱きしめた。秀規にとってかけがえのないとっても大切な体。
愛しいその体を抱いて秀規は涙が溢れてきた。彼女をいつまでも大切にしたい。
二度と自分の元を離れないようにしっかり繋ぎとめて守ってやりたい。
心の中でそうつぶやくのであった。
857 :
名無しさん:2007/08/28(火) 05:18:34
あげ
858 :
名無しさん:2007/09/01(土) 16:17:39
↑妊娠の展開きぼう↑
そして啓子ママにいじめられて流産キボン!
東京に戻った私たちはまた元の結婚生活を送ることになった。
久しぶりに菊さまとの愛の巣に戻ってみて、とても懐かしく思った。
私がいない間でも菊さまはたいして不自由はしてなかったようだ。
でも、お前がいなくてすごく寂しかったよと菊さまに言われた時、とても
申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
台所に立った私は、食欲のあまりない菊さまの為にソーメンをゆがいた。
正直暑くてしょうがなかったけど今までサボった分菊さまに償いをしなければ
ならない。
ゆがいたソーメンにトマト、しそ、なすびと梅肉をのせ、つゆをぶっかけた。
あとは、玉子焼きとかぼちゃの煮物を作った。
風呂からあがった菊さまと夕食をとる。
「お前の料理食べるの久しぶりだな。おいしい。」
「菊さま、無理しないで残していいから。」
「そういえば、今度花火大会があるらしいんだけど、どう?夏の最期の思い出
に行ってみないか?」
「花火かあ。いいですね。」
「人ごみ大丈夫か?」
「菊さまと一緒なら多分大丈夫。」
「じゃあ行こうか。」
数日後、都内で盛大な花火大会が行われた。
テレビでも中継されるけど、やはり夏の思い出、いや、菊さまと出かけることに
意義があると思った。
私は夕方実家に寄って浴衣を着付けてもらった。
浴衣なんて子供の時以来。
そして菊さまと一緒に地下鉄に乗って出かけた。
会場に着くと人で一杯。
座るところなんてどこにも無かった。
仕方ないから立って見ることになったけど、人や建物が邪魔で花火の大輪を
全て見ることは叶わなかった。
だけど菊さまがはぐれないように手をしっかり握ってくれてて、私はとても
嬉しかった。
菊さまと一緒に夏を感じることができる。
菊さまの花火を見る目は少年のように輝いていた。
1時間ほど見て終了したので人ごみにまぎれて帰宅した。
帰りの地下鉄もごった返していた。
けっこうへとへとになって自宅に到着する。
「アー疲れた!」
私は浴衣の帯を外そうとした。
「ちょっと待った。俺に外させろ!」
そういうと菊さまは私の帯をひっぱり、くるくる回しながら浴衣を剥ぎ取った。
「イヤーン菊さま。」
そして菊さまに強く抱き寄せられた。
いつになく真剣な顔で菊さまが迫ってきた。
「菊さま・・・。汗臭いからお風呂に入ってから・・・。」
「別にいいよ。お前の匂い好きだから。」
「でも・・・。」
菊さまが厚いキスをしてくる。
キスしあったまま二人はベッドに倒れこんだ。
長いキスを受けた後、菊さまが私の下着に手をかけてきた。
「菊さま、やっぱりお風呂入りたい。」
「そうか、分かったじゃあ一緒に入ろう。」
私たちは久しぶりに一緒にお風呂に入り体を洗いっこした。
そして風呂から上がり、髪も乾かさぬまままた裸でベッドの上で抱き合った。
菊さまは私の感じやすい耳から順に舌で責めてきた。
丁寧に時間をかけて愛撫され、私は身も心も菊さまの愛情をたっぷり受けて
女としての喜びをかみしめていた。
花火を見た感動と、久しぶりの夫婦の営みの興奮で私たちは長く熱い夜を
すごすことになった。
864 :
名無しさん:2007/09/04(火) 18:14:12
♂×♀
865 :
名無しさん:2007/09/09(日) 00:21:05
あげ
心も体も愛で満たされ、気分良く目覚めることができた。
愛されてるって実感できると何でも頑張れる気がする。
いつもより家事もてきぱきできるようなきがする。
午前中、菊さまと一緒に近所のスーパーへ買い物に出かけた。
菊さまは冷凍食品売り場へ直行された。
「菊さま、何が欲しいの?」
「そばが食べたい。」
「そんなにそばが好きでしたっけ?」
「あまり食欲ないから。それに友達の家で食べさせてもらって美味しかった
から。」
「そば食べたいなら乾麺買ってゆがきましょうか?」
「いいよ、面倒くさいだろう?これなら電子レンジで温めればいいから。」
そういえば朝食のパンも半分残してたなあ。
痩せてるわりには大食いの菊さまだったが、今年の暑さにはすっかりまいって
いるようだった。
私は別の売り場へ行き、菊さまが元気になれるような食べ物が無いか
探した。
ステーキでも食べさせて元気をつけてもらいたいけれど、肉は欲しくないと
言ってたからだめだ。
いろいろ探していると、そういえばネバネバしたものだったら精がつくし、
食べやすいのではないかと思った。
オクラ、納豆、山芋を買った。
それと、スープ売り場にスッポンのスープの缶があったのでそれも買った。
スープなら飲めるだろう。
夕食時にさっそくざるそばと一緒にスープを出した。
「これ何?」
「スッポンのスープだって。菊さまが元気になればと思って買ったの。」
菊さまはスープをたいらげた。
夜、洗い物を片付けてお風呂に入り終わった私は寝室へ行く。
部屋に入るとベッドの上で菊さまが座っていた。
「菊さま明日仕事なんだから早く寝なきゃ。」
「それがさあ、なんだか目が冴えちゃって眠れないんだよ。」
もしや、あのスープのせいかしら?
「菊さま、体の具合はどう?」
「ああ、そういえば・・・。」
菊さまがパジャマのズボンの中を覗く。
「ものすごく元気になってる。」
抱き合って疲れれば眠れるのではないだろうか?ということになり、
私たちは夫婦の営みをすることにした。
菊さまは精力的に私を愛してくれた。
本当に夏ばてしてたのか?というほど。
翌朝、昨晩の営みで私はけっこう疲れていたが、菊さまが朝早く出かけられる
ので眠気をガマンしながら朝食を作った。
「なあ、あのスープまだあるの?」
「はい。もう一本ありますよ。」
「今日は朝飲んでみようか。そうしたら一日中元気でいられるだろうから。」
「まだ暑いからその方がいいかも。
それで仕事するのが楽になるなら飲んでください。」
菊さまはスープを飲み干した。
夜遅く、日帰りで京都から菊さまがお帰りになった。
「菊さまおかえりなさい。暑かったでしょ?」
「ああ、でもなんだかスープが効いたみたい。
いつもより疲れが少ない気がする。」
「よかった。またあのスープ何本か買っておきましたから。」
「ああ、これから当分毎日飲んでみようかな?」
菊さまがこれで夏バテから開放されればいいなあと私は純粋にそう思っていた。
それから1週間、毎朝スッポンのスープを秀規は飲み続けた。
これさえ飲んでれば大丈夫だ。純粋にそう思っていた。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
毎朝○○に軽くキスしてもらって出かける。
まだまだ新婚気分が抜け切れてない二人だが、ここ毎晩体を重ねあって、
とても夫婦としての関係が良好だ。
昔はしょっちゅう喧嘩していた二人だが、あの頃よりは年もとったし、お互い
の性格が丸くなったのもあるのだと思う。
悲しいことや苦しいことも二人で乗り越えてきた。
これからもそういうことがあるかもしれないけれど、あいつとだったら強く
生きていける。
秀規はそう確信していた。今とても結婚してみて幸せだ。
一生結婚しないって決めてた時期もあったけど、パートナーがいるってとても
心が満たされて、自分も優しくなれて・・・。
本当生まれてきて良かったと思った。
今日は都内でライブだった。
楽屋に着く。
「おはよう菊地さん、あれ?なんか鼻から血が出てるよ?」
「え?うそ?」
相方に言われてはじめて鏡を見る。
右の鼻の穴から鼻血が出ていた。
急いでティッシュでおさえる。
鮮やかな真っ赤な血がみるみるうちにティッシュを染める。
「どうしよう、もうすぐ本番なのに。」
「冷やしたらどうかなあ?」
相方が冷やしたタオルを持ってきてくれた。
鼻にティッシュをつめ、鼻の上の方を冷やしてみる。
寝転んでいると、どんどん喉に血が入っていく。
あと本番まで30分。なんとか止まるように祈った。
本番5分前、ティッシュを取ってみたが、まだ止まらなかった。
仕方ない、小さく丸めたティッシュを鼻の奥に詰めた。
スーツのポケットに沢山ティッシュを詰め込み、舞台へ出た。
「悲しい時〜!」
血の味がする口、気持ち悪いけど叫ばなければならない。
全く、なんでこんなことになったんだ!
もしやスッポンスープのせい?
秀規の体にはスッポンの成分はきつ過ぎたのだろうか?
元はといえば、○○が買ってきて俺に飲ませたのが原因だ!
秀規はだんだん腹がたってきた。
ひ弱な秀規鼻血が出ただけで、貧血になっていくような気がして倒れそうに
なっていた。
なんとか気力で持ち直し、その日のライブは終わった。
私は菊さまのただいま好物のそばを用意し、山芋や卵豆腐を用意して
待っていた。
菊さま大分食欲が回復されてるけど、まだご飯はうけつけないらしい。
そのわりには夜の営みはものすごいけど。
「ただいま。」
「おかえりなさい。今日はどうでした?あれ?どうしたのその鼻?」
「どうもこうもない!今日は大変だったんだぞ!」
「どうされたの?鼻血?」
「全部お前のせいだ!」
そういうと、菊さまは私をおもいっきり突き飛ばした。
「痛い!何するんですか?」
「お前が余計なもの飲ませるから血が止まらなくなったんだよ!」
「そんな!自分でも気に入って飲んでたじゃないですか?」
「うるさい!大体お前が最初に買ってきたんだろうが!」
「私はあなたの体が心配だからよかれと思って・・・。
ごめんなさい。そんな大変なことになってたなんて・・・。」
「ふん!お前なんか嫁失格だ!主人の健康管理もできないタダ飯食いの
豚め!」
そういうと、菊さまは寝室に閉じこもってしまわれました。
ああ、こんなことになるなんて。
せっかくここ最近菊さまの機嫌が良くて、私たちこのままいい夫婦で居られる
って確信してたところなのに・・・。
体が資本なのに、主人の健康管理に失敗してしまった。
何度も話しかけたけど、菊さまは出てきませんでした。
ああどうしよう。
874 :
名無しさん:2007/09/12(水) 19:11:10
↑ヤリマン嫁↑
875 :
名無しさん:2007/09/17(月) 19:25:30
age
876 :
名無しさん:2007/09/24(月) 07:54:31
元祖小島よしお
地味におもれーw
続きが気になるよ!
878 :
名無しさん:
その夜菊さまはドアを開けてくれず、私はソファーで夜を過ごし、翌朝お粥を用意した。
菊さまが起きてきた。
「菊さま、具合大丈夫ですか?お粥を用意しました。」
「・・・。」
「食べられますか?」
「・・・。」
「無視しないで下さい!」
秀規は無言でお粥を台所に捨てた。
「何してるんですか!?」
「お前の飯なんか二度と食わねぇ!何が入ってるか分からないからな!
俺を殺そうとしてるんだろ!」
「は?そんな訳ないじゃないですか!今後はしっかり健康管理しますから許して下さい!」
「そんなの信じられるか!バカヤロコノヤローメ!」
秀規は○○を突き飛ばし、仕事に出掛けた。
何でこんな事に・・・。今度の喧嘩はいつまで長引くだろうか。
もしかしたら今度は離婚かも知れない。
○○は悲しさで泣き崩れ、昨晩ソファーで寝た疲れからベッドで深い眠りについた。
・
・
・
「ん・・・げっ!もう11時!?ヤバい夕飯作らなきゃ!」
ガチャッバタンッ
「ヤバい!菊さま帰ってきちゃった!」