お笑いバトルロワイアル2006 vol.2

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864ミソオデン ◆g.iUPfSfiA
>>256続き

横たわっていたのは紛れも無く小沢だった。
胸の上で手を組み、涼しい木陰で眠っているようにも見えるが
その手は乾いた血に塗れ、シャツの胸元を中心に赤黒いグラデーションが拡がっている。
彼が心臓を貫かれて死に至ったのは一目で判った。

風も吹いていないのに体中の汗が引き、背中から顔面までぞわりと寒気が走る。
「…………どういう、こった………」
震える唇をこじ開けてやっと声を絞り出した時、自らの呼吸が浅く、早くなっているのに気付いた。
(やべえ、何だこれ…)

自分が学校を発ってから3時間余りの間に何が起きたのか。
呼吸を整え、落ち着いて彼の死の手掛かりを探ろうとするが、
次から次へと込み上げる混乱や悲しみや後悔に身も心も押し潰されそうになり、堪らずその場にくず折れた。

「………何勝手に死んでんだよ……」
ふと口をついて出た言葉とは裏腹に、小沢を責める気持ちは微塵もなかった。
自分がほんの30分、ここに留まっていれば死なせずに済んだかもしれなかったから。

一番失ってはいけない人を亡くしてしまった。

865ミソオデン ◆g.iUPfSfiA :2006/09/24(日) 01:30:55
>>864続き

自分に比べて芸人の友達が多く、後輩からも慕われている彼なら
殺戮に手を染めないよう相手を説得する事も可能だっただろう。
その結果1人でも多く生き残れば、いつかこの異常な事態を打ち破り、みんなで元の生活に帰れる術が見つかるはず。
そう信じてまずは2人で安全に潜める場所と必要な物資を揃えておくつもりだった。

しかしその行動の結果、
目の前にあるのは相方の変わり果てた姿という最悪のオチ。
「クソっ…!」
何も言わずに逝った相棒より、理想ばかりを追って動いた自分の不注意を責めた。
「…考えが甘い…ってか…」

再び銃声が響く。
さっき路地で聞いた時よりも音がかなり近い。
しかし、井戸田はうなだれたまま逃げようとはしなかった。
「……やりたきゃやれよ、もう……」

小沢の死によってあらゆる望みを絶たれた今、悲惨な運命に立ち向かっていく気力は完全に失せていた。
文字通りの絶望。

こんな状態で最後まで生き残れるなんて到底思えない。
いつか死ぬのなら、今死んでも一緒だ。
誰でもいい、いっそこの場でブッ殺してくれ。

何者かに銃口を向けられているような気配を感じた井戸田は
小沢の手の上に自分の手を重ねて小さく呟くと、固く目をつむって体を貫かれる覚悟を決めた。
「…今、そっち行くから待ってろ…」