お笑いバトルロワイアル2006 vol.2

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255ミソオデン ◆g.iUPfSfiA
前スレ900あたりからの続き

路地を曲がって、広い道に出る。
スクールゾーンに降り注ぐ日差しの強さに井戸田ははっと我に返った。
「…何言ってんだ俺!?」
慌てて来た道を戻ってみるが、既に今立の姿はない。
「だっつん……!!」
呆然と立ち尽くしていると遠くで銃声が数度轟き、咄嗟に身を竦める。

「マジでやってやがる」
誰が誰に向けて撃ったかなんて考えたくない。
それどころか、昨日まで共に笑い合った仲間が今は殺し合いを行っているなんて信じたくない。
こんな事をする為に芸人になったんじゃないのに。
自分以外にも、妻や子、家族とか大切な人が帰りを待ってる芸人も居るだろうに。
理不尽な運命に腹の底から怒りが沸き起こる。
やがてそれは、井戸田の喉を震わせながら一気に噴出した。
「やめろ―――――――――――!!!
みんなやめろおぉぉぉぉおおおおお――――――――!!!!!!」
芸人の中でも屈指の声量を誇る彼だが、その叫びが誰かに届く事はなく、
入道雲と焼けたアスファルトにただただ吸い込まれていくだけだった。
「…………………………畜生」
息の続く限り叫び、軽い酸欠でくらくらする頭で小さく悪態をつくと、井戸田は再び歩き始めた。
256ミソオデン ◆g.iUPfSfiA :2006/09/13(水) 00:59:04
>>255続き

ようやく校舎が見えてきた。
昔からウォーキングをやっていたので歩く事には自信があったが、
ジリジリと照り付ける太陽は帽子もかぶらずに徘徊う者を容赦なく焦がし続けた。

あいつを捕まえたら少し休もう。きっと怒られるだろうから言い訳も用意しないと。
そんな事を考えながら学校の周りを見渡すが、目当ての人影はない。
それどころか、今でも続々と出発している芸人達の顔つきは
どれも多かれ少なかれ殺気や狂気が漂っているような気がして、目を合わせるのも躊躇われる。
茂みや植え込みに身を隠しながら、なるべく目立たないように小沢を捜す事にした。

やがて、少し離れた所に立つ一際大きな木の陰に
人らしきものが横たわっているのを見つける。
上半身は木の根元に隠れてよく見えないが、足先は脱力し切って倒れているのが遠目でも分かった。
「げ、何だあれ…まさか死んでんの?もう??」
興味を満たす為に少しだけ早く歩く。今の井戸田の体力ではこれが限界かに思われた。
しかし木に近付くにつれ、疲れも忘れて一気に駆け出した。
投げ出された足には見覚えがある。

あのラバーソール…

同じ靴を履いた別人である事、
又は退屈の余り寝ているだけである事、
せめて命が有る事を強く願いながら
井戸田は全速力で木に駆け寄り、太い幹の向こう側を覗き込んだ。


願いは何一つ叶わなかった。

【8/15 15:30頃】