大和総研のコラム
http://www.dir.co.jp/publicity/column/050523.html 深刻なのは、過去30年の間に大阪のイメージが変質し、都市の経済力の根源
である「人を引き付ける力」が弱くなったことである(※1)。今、大阪と
いえば、騒々しい、コテコテ、ケバケバしい、信号無視、違法駐車等々、
ネガティブイメージのオンパレードである。大阪には食文化があると反論
するむきもあるかもしれないが、紹介されるのは、たこ焼き、お好み焼き、
イカ焼き、ねぎ焼きなどのB級料理ばかりである。これで食い倒れ
(食に贅沢しすぎて破産すること)を名乗ることには無理がある。
お笑い「輸出」の急拡大は、輸出先=東京で商品価値の高い「ヘン・アホ
・おふざけ」といった奇矯・露悪的な部分のみを極端に肥大させた。
これが大阪側のアンチ東京意識と結合したことで、「東京の基準(常識)
から外れているほど『大阪的』」「普通でないことが大阪の個性」という
倒錯的観念が大阪の内外に定着した。新しい「大阪ブランド」の誕生である。
2年前に、天王寺公園で不法営業するカラオケ小屋を市が撤去する騒動が
あったが、東京のあるニュースキャスターは「大阪なのだから大目に見れば」
という趣旨のコメントをしていた。大阪では違法行為OKという価値観の
転倒であり、これこそが東京が大阪に期待する姿である。
東京志向の結果として生まれたお笑いモノカルチャーは、「いわゆる大阪的」
ではない理知的な大阪人の居場所を狭め、東京に流出させていく。その結果、
大阪の都市の魅力=人を引き付ける力はどんどん失われ、代わりに東京の
魅力は増していく。大阪は、東京の需要に応じてせっせと「ヘンな姿」を
供給するうちに、「笑われる街」「常識外れの街」へと変貌する呪いに
かかっていたのである。