アンチ君(仮名)は、昼過ぎに目を覚ました。
東大(東久留米国際大学)の冠婚葬祭学部を卒業したあと、アルバイトを含め、働いたことはない。
こんな汚れた社会に出て、人と関りあいながら生きて行くには、アンチ君はピュアすぎる。
女の子とも付き合ったことがない。現代の女の子はチャラ過ぎて彼には合わないからだ。
でも、いつか、自分にあった仕事があったら、世の中に出て大きなことがしたいと思っている。
そして、そのときにこそ最愛の彼女を見つけるんだ。
アンチ君はその日を夢見ていた。自分が特別な何ものかであることを信じながら・・・
アンチ君は眠たそうに目をこすりながら、おもむろにテレビをつけた。
お笑い番組をやっている。
「品川庄司、つまんねーなー・・・」。
最近妙に痒い股間を掻きながら呟いた。
「それに何だあの不細工な面、死んだ方がいいんじゃねーか。品川なんか中卒じゃねーか、
だから不良になって、結局お笑いにしかなれないんだよ。何だかんだ言って学歴って大事だな・・・」。
アンチ君は軽い優越感に浸った。
次にオリエンタルラジオが出た。
「何だ、あのヘチマ顔とメガネ」、脂臭く湿っている髪を掻きながら言った。
客席の小娘どもは興奮してキャーキャー騒いでいた。
その黄色い声はなぜかひどくアンチ君の癪に障った。
『・・・藤森さんは明治大学卒業で、中田さんは慶應大学在学中でしたよね』。
「何がケイオーだ・・・。今の時代に学歴もクソもねーだろ」。
そんなことがすごいことのように語る司会に向けて、アンチ君は「呪いあれ」と唱えた。
「武勇伝」を披露。
「ったくつまんねーな。これが慶應ボーイかよ・・・。まあ学歴なんか関係な・・・」
『・・・カンカンカンカカンカカッキーン 童貞とオタクとデブとニートに隕石直撃!ペケポン』
聞いた瞬間、自分自身に隕石が4つ直撃した気がした。
同時に、オリエンタルラジオに対して殺意を覚えた。
あいつらは、俺の存在自体を「ペケポン」と言って全否定しやがった。
「俺なんか死ねということか・・・」。
354 :
名無しさん:2006/02/26(日) 01:26:33
アンチ君はすぐさまテレビを消した。
そして、いつものとおり2ちゃんねるにアクセスした。
しかし、どうしてもあのオリエンタルラジオというお笑いのことが頭から離れなかったので、
お笑い芸人板に行ってみた。そこで見つけた「アンチオリエンタルラジオ」というスレッドをのぞいてみた。
アンチ君は、そこで多くの「仲間」を見つけた。
こいつらも俺と同じ想いでここに来てるんだな。
一通り悪罵を書き付け、掲示板の仲間たちにウケたあと、アンチ君はやっとスッキリした。
「ザマミロ、あいつらもこれを見て、泣きながら引退するだろう。俺はいつでも勝者なんだ・・・」。
そう呟いた瞬間、興奮していた気分が静まって、われに返った。
そして、涙があふれてきた。
PCのスクリーンがかすんでもう何も見えなくなった。