お笑いバトルロワイアルU inエンタの神様

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1名無しさん
舞台は全体主義が支配する大東亜共和国。あのバトルロワイアルが実際に行われている世界。

日テレのお笑い番組『エンタの神様』。
お笑い若手芸人のネタをテロップやカットで台無しにしてしまう魔の番組。
視聴率の伸び悩みに苦悩したスタッフ一同が、視聴率をとるために恐ろしい企画を打ち出した。
その名も、お笑い芸人バトルロワイアル。
元になったのは国防の為の戦闘シュミレーション、通称「プログラム」。
本来は中学三年生の一クラスを対象に行われる凄惨なデス・ゲーム。
これをお笑い若手芸人にやらせようというものだった。
この恐ろしい企画は、日テレ上層部に報告されるとすぐに実行されることになった。
退屈な毎日を送る一般国民達は、この企画を喜んで受け入れるだろう…と。
生き残ることのできるのはたったの一組。


殺らなければ殺られる――お笑い芸人達を恐怖の底に突き落とす凄惨なデス・ゲームが今、開幕する …
2名無しさん:2005/04/25(月) 20:09:41
2ゲトしたが…
またやるのか。この妄想スレは。
3名無しさん:2005/04/25(月) 20:12:02
3
4名無しさん:2005/04/25(月) 20:17:33
>>2
まだ1も終わってなんいですけどね。
5名無しさん:2005/04/25(月) 20:19:55
1さん。
反論がなければ削除依頼出させていただきます。

文章に不満など全くないのですが、重複してるので。
6名無しさん:2005/04/25(月) 20:31:34
>>1
楽しみ。ガンガレ。
7名無しさん:2005/04/25(月) 20:31:55
ここ依頼で立てられたスレなのね
8名無しさん:2005/04/25(月) 20:33:25
>>5
辞めてください。
9名無しさん:2005/04/25(月) 20:34:23
あ、じゃあ、1とは関係ない方向でいいんでつか?
10名無しさん:2005/04/25(月) 20:36:18
別バージョンで捉えて頂きたい。
11名無しさん:2005/04/25(月) 20:36:38
1との違いはエンタって所?
ならエンタ出演芸人のみ?
12名無しさん:2005/04/25(月) 20:37:19
読みたい。
13名無しさん:2005/04/25(月) 20:51:52
ただ立てただけかよ。
14名無しさん:2005/04/25(月) 20:55:47
スレッドを立てられない奴はここへ書け!Part1
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1113644865/126
15名無しさん:2005/04/25(月) 21:16:17
s
16名無しさん:2005/04/25(月) 21:28:15
なにこのスレ
17名無しさん:2005/04/25(月) 21:39:49
>>16
腐女子が居座る妄想スレ。
っつことでage
18名無しさん:2005/04/26(火) 09:18:18
重複じゃん。やりたいのはわかるけど、待て。
犬でも待てぐらいできるんだから、待て。
本スレ終わったら存分にやれるだろう。ったく、軽い頭してんな。
19名無しさん:2005/04/26(火) 16:19:13
…それは普段どおりの収録の筈だった。
ただ普段の収録と違ったのは今まで出演した芸人全員が集められていた事のみ。
幾つかの楽屋に別れ収録を待っていた芸人達は同室になった者同士で情報を交換したり、
寝転がって寛いだりと各々自由に時間を潰していた。

別室のモニターでその様子を隠しカメラで監視している者達が居た。
芸人達と何度も顔をあわせている番組スタッフ達。
彼等はモニターと手元の名簿のような物を交互に見ながら何かを確認している。
スタッフ達はその部屋に居るべき芸人全員が揃った部屋から順に、
ドアの隙間や空調機等から催眠ガスを送り込んでいった。
芸人達は突然部屋に充満し始めたガスに気付き慌てて外に飛び出そうとしたが、
部屋には外側から鍵が掛かっており誰一人外に逃げ出すことは出来なかった。
一人、また一人と芸人達は催眠ガスによって意識を失っていく。


目を覚ました彼等は学校の教室の様な部屋に居た。
首には鉄製の首輪の様な物が付けられていて己の力では外せそうにもなかった。
黒板の前には見知った顔の人物が立っている。
その人物は彼らが出演するはずだった番組のプロデューサーだった。

「今日は皆さんにちょっと殺し合いをしてもらいます」

突然男の口から言い放たれた信じられない言葉。
しかし彼等に安全な拒否権は無い。
教室の壁をぐるりと取り囲むように屈強な兵士が銃を構えている。
彼らに突きつけられた選択肢は二つは二つ。
抵抗して銃殺されるか、言葉に従いゲームに参加する意思表明をするか…
20プロデューサー:2005/04/26(火) 16:26:35
1と同じルール
「書き手はトリップ使用推奨」
「つじつま合わなかったりすることもありますが多少のことは見逃しの方向で」
「武器は結構自由。ピコハンから火炎放射器等色々…」
「あくまで「ネタスレ」です。笑って許せる寛大な心で読みましょう」

2での番組特別ルール
「スタートは各コンビごと」
「エンタ公式で出演芸人確認」
「エンタに出演してない芸人も書き手がどうしてもというときに限り、
後から送り込まれてきた設定で登場可能」(無駄に人数を増やさない為)

「ゲーム終了は1組を残して他の芸人が全て死滅すること」
21名無しさん:2005/04/26(火) 16:36:58
面白そう。
22名無しさん:2005/04/26(火) 18:36:06
>>18
犬以下の低脳腐女子が待ち切れずに妄想おっぱじめましたよ〜
同志としてきちんと注意しなさいな
23名無しさん:2005/04/26(火) 18:59:20
まだ1も終わって無いんだから勝手に始めないでってば
24名無しさん:2005/04/26(火) 19:33:39
1ってダラダラ長くやってるだけで
書き手の自己満がいつ終わるのかさえ分からんし
別に良いんじゃね?
25名無しさん:2005/04/26(火) 19:36:52
>22
おいおい
この文章力から見て腐女子ではないだろ。
叩く相手を間違ってるんじゃねえか?
26名無しさん:2005/04/26(火) 21:17:29
>>25
文章力の高い腐女子もいますよ。
何で待てないんでしょうね・・・
27名無しさん:2005/04/27(水) 00:09:35
1は中々終わらないじゃん。
28名無しさん:2005/04/27(水) 00:46:02
自分で書く能力も無い連中が…腐女子腐女子って言えば済むと思ってんなよ。
1の方はもう荒れすぎでスレに居るだけでイライラする。

書き手さん頑張れ。とりあえず。
29名無しさん:2005/04/27(水) 00:52:02
>>22
こういうのに限って腐女子だったりするww
30名無しさん:2005/04/27(水) 23:22:01
楽しみ楽しみ
お笑いバトロワ本編の方、正直芸人出尽くしてつまんないからな。
腐女子じゃない書き手さんお待ちしてますよー。
31名無しさん:2005/04/28(木) 09:00:50
エンタ限定ってのがヤダ。
32名無しさん:2005/04/28(木) 14:37:48
エンタとか指定しないで、ただ単にコンビが組んで戦うバトロワでいいんじゃね?
途中で仲間割れが起きたりとか。コンビで連携して戦うとか。
ちゃんとした書き手さんが来たら面白くなると思うよ、このスレ。
バトロワ本編は正直スカスカになってきてるし。
33名無しさん:2005/04/28(木) 14:38:46
↑sage忘れスマソ
34名無しさん:2005/04/28(木) 16:30:19
1みたいに芸人って幅広い範囲でやられると
終わらないし結局1と同じで重複になるじゃん
35名無しさん:2005/04/28(木) 16:33:01
コンビ事に闘うのは良いアイディアだね。面白そう。
36名無しさん:2005/04/28(木) 17:21:25
1の方のスレで前にアイデア書いたんだけど、50人1クラスを選抜してストーリー進めれば?
選抜はエンタに絞らずダウンタウンクラス〜今流行ってる芸人あたりで選ぶのさ。
もちろん、ピン芸人もありでコンビやトリオで40人+ピン10人とか。
その辺は適当でいいからさ。
でも、1スレ終わりそうだよ。終わりに向けてストーリー書いてるみたいだよ、書き手さん達。
37名無しさん:2005/04/28(木) 17:25:18
1ってどこにあるの?
38名無しさん:2005/04/28(木) 17:26:10
1スレってあれよ。「お笑いバトロワ10」の事よ。
39名無しさん:2005/04/28(木) 18:05:25
エンタって何組芸人出てるんだろ?
つか、>>1通りエンタ出演芸人だけで良いよ。
気に食わない人は自分の好きな芸人が出てないからか知らんけどさ。
中堅が出てくると1見てる限りでは贔屓されて
若手がそのために潰されそうだし。
40名無しさん:2005/04/28(木) 18:19:33
>>39
エンタ公式いい加減だから出たのにプロフィール載ってない芸人居るよ
41名無しさん:2005/04/28(木) 18:33:37
中堅がてらは散々な扱いだったような・・・>本家
特にミドル3とかワンナイ組とか

くずは自殺するわほとちゃんは生き埋めだわ
三村さんなどは出てきて早々に金属バットで殴られ脱落だし・・・
その三村さんを襲った上田さんすら裏切られてやられちゃうわ
見た目ここらへんは散々な予感だけど
42名無しさん:2005/04/28(木) 18:43:02
>>41
それは初期の方だったからなぁ。
まさかここまで続くなんて思ってなかったから
簡単に死なせたんだよきっと。
43名無しさん:2005/04/28(木) 19:45:33
>>31 >>32
「エンタに出演してない芸人も書き手がどうしてもというときに限り、
後から送り込まれてきた設定で登場可能」(無駄に人数を増やさない為)
>>20
44名無しさん:2005/04/28(木) 19:47:48
オンバト芸人は超若手下克上枠でつれて来られたとか、
関西芸人も出そうと思えば出せるわけだし。エンタでいいんじゃね?
じゃないとスレタイも矛盾するわけで…
45名無しさん:2005/04/28(木) 20:03:29
1青木さやか 
2赤いプルトニウム
3アップダウン 
4あべこうじ
5アホマイルド 
6あれきさんだー おりょう
7アンガールズ 
8アンジャッシュ
9アンタッチャブル 
10いつもここから
11いとうあさこ
12井上マー
13インスタントジョンソン
14インパルス
15エレキコミック
16ガッポリ建設
17ガリットチュウ
18カンニング
19きくりん
20キャン×キャン
21キングオブコメディ
22ザ・たっち
23ザ・プラン9
24塩コショー
25磁石
26次長課長
27陣内智則
28スパークスタート
29スピードワゴン
30スパルタ教育
46名無しさん:2005/04/28(木) 20:07:11
31Dice
32だいたひかる
33ダーリンハニー
34田上よしえ
35だるま食堂
36ちむりん
37椿鬼奴
38ヅラットピット
39テツandトモ
40東京ダイナマイト
41どーよ
42ドランクドラゴン
43友近
44長井秀和
45ななめ45゚
46はいじまともたけ
47波田陽区
48はなわ
49パペットマペット
50ハロ
51ハローケイスケ
52ハローバイバイ
53ビッキーズ
54ビックスモールン
55ヒロシ
56ベネと千太郎
57へらちょんぺ
58POISON GIRL BAND
59ホロッコ
60マイケル
47名無しさん:2005/04/28(木) 20:08:14
61マギー審司
62魔邪
63南野やじ
64ヤシコバ月子
65安井順平
66靖&花子
67ライセンス
68レギュラー
69レム色
48名無しさん:2005/04/28(木) 20:22:29
>>42
なるほど・・・。
でもミドルの最後の生き残りだった有田さんがいなくなったのはいつくらい?
たしか7か8じゃないか?
49名無しさん:2005/04/29(金) 16:06:03
書き手さん降臨待ちage
50名無しさん:2005/04/29(金) 19:11:12
探したのですが「お笑いバトロワ10」が見つかりません。
どこにあるのか教えてください。
51名無しさん:2005/04/29(金) 21:09:01
>>50
下のほうなので今なら簡単に見つかりますよ。
52名無しさん:2005/04/29(金) 22:39:22
>>51
ご親切にありがとうございます。
早速探してみます。
53名無しさん:2005/05/01(日) 17:12:39
書き手が来なけりゃ意味が無いage
54名無しさん:2005/05/02(月) 14:49:40
1の方が終わったらこっちに移ろうかな。書き手として参加させてもらおう。
55名無しさん:2005/05/02(月) 16:13:26
誰かはじめないとはじまらないよね
っつーわけでage
56黒 ◆rGjeURACBw :2005/05/03(火) 02:27:50
何方も投下されていないようなのでライセンスを投下させて頂きます。序章にもならないかも知れませんが文章力が乏しいため読みづらい部分等は流して頂けるとありがたいです。


暗闇に堕ちていく。堕ちていく感覚はない。ただスローモーションのようにゆっくりと、自分の体が重力に逆らう事無く暗闇へと消えていくのが分かる。何も見えない。
恐怖がないと言えば嘘になる。でも何処か安心している。何故?光の欠片も見えないこの場所で、何故自分は安心している?答えが検討もつかない。でも一つ思った。
あぁ…あの時に似てんな。関東に進出したばっかのとき、仕事も何もなくてただ“生きてた”あの時に―。

「今日は皆さんにちょっと殺し合いをしてもらいます」
こんな事になった原因はなんやった?
プロデューサーの一瞬、可笑しいと思わざるをえない言葉。突然突き付けられた現実は得体の知れない“ゲーム”だった。
ライセンスの井本 貴史は決して良いとは言えない寝起きの頭を整理しながらほんの数時間前に記憶を遡らせた。
確か久しぶりのエンタの収録でSPだからと1つの楽屋にたくさんの芸人と共に押し込められた。…そこから記憶が途切れて起きたらこれだ。
見たことのない、なのに懐かしさの溢れる教室のような部屋。記憶では数分だが実際には何時間か前に顔を合わせた芸人達。寝呆けたままの相方、藤原。首には違和感たっぷりの首輪。教室の壁を取り囲む撃つ気満々の兵士ども。
57黒 ◆rGjeURACBw :2005/05/03(火) 02:31:05

そして…ここに俺らを呼び出した番組のプロデューサー。
奴の言った一言に相変わらず俺の何かが拒否反応を示す。この状況…。悪いことが起きることだけは全ての芸人に判断できないはずがなかった。
「……どないなっとんねん」
あまりにも張り詰めた空気に横にいた井本でさえも聞き取れるか分からないぐらい小さな声で藤原が呟いた。その声は何処か震え、不安以外なにものでもなかった。
そんな図体はデカいくせに小心者な相方を励ます言葉を井本は掛けてやることが出来なかった。普段なら「こんなんでビビってんなや、アホッ!」と一括してやるのだが井本自身、正直言えば不安だった。それをせめて藤原に見せないようにするだけで精一杯だった。
今から一体、何が始まる?この見たことのある、あってはいけない“ゲーム”がゆっくりと、スタートへの駒を進めていた。
―役者ト舞台ハ揃ッタヨ。サァ、幕ハ切ッテ落トサレタ。“ゲーム”ニ勝ツノハダァレ・ダ?
58黒 ◆rGjeURACBw :2005/05/03(火) 02:36:13
本日はここまでです
突然の投下、駄文すいません。ライセンスをもってきたのはエンタ芸人っぽくないのと唯一詳しいからです
他の書き手さんを待ってからまた日を改め投下します
59名無しさん:2005/05/03(火) 18:15:33
age
60 ◆EJ0MB3jlw2 :2005/05/04(水) 15:23:25
あげ
61功  ◆V9Blnd6aVs :2005/05/04(水) 15:38:30
自分が参加していいのかわからないんですが・・参加させてください。
文章力が乏しいことはスルーして頂ければ嬉しいです。


「何で・・」
静まり返った窮屈な教室。
どうしようもない怒りに包まれた、喚き声にも似た呟きを上げた。
「何で俺らが…こんなことせなあかんねん!」
呟きが、叫び声に変わる。
叫んだ張本人・ビッキーズ木部が立ち上がる。
突然声を上げた木部に、一同の視線が向いた。
「お前らのためにな、何で殺し合いなんかせなあかんのじゃ」
木部は右手をぎゅっと握ると、近くにあった壁を思い切り殴った。
「木部ちゃん・・」
相方の須知がオロオロしている。
木部は気にせず、威風堂々としているプロデューサーを睨みつける。
「…普段の、木部らしくないじゃないか」
プロデューサーは鼻で笑った後、一歩前へ歩み出た。

「何のために、か。」
木部が言った事を復唱して、プロデューサーは歪んだ笑みを顔に貼り付けて、言った。
「数字と金のために決まっているではないか!」
両手を高らかに掲げ、プロデューサーは言う。
62功  ◆V9Blnd6aVs :2005/05/04(水) 15:46:12
プロデューサーの口から出た、非人徳的な言葉。
当たり前だろう?とプロデューサーは付け足したが、
そんな言葉で木部が納得できるはずなど無かった。
「俺にはな、嫁も子供もおんねん!お前らなんかのために殺し合いなんかしたないわ!」
木部は叫ぶと、もう一度壁を殴りつけた後走り出した。

自分のために
相方のために
他の、こんな下らない物に巻き込まれる奴のために
俺は、戦うんや

殴りかかった木部の拳を、プロデューサーは軽々と受け止めた。
「嫁と子供のために、戦え」
「無理や。そんなんできひんわ。」
「じゃあ、選択肢はひとつや。」
意地の悪い笑みを浮かべて、プロデューサーは
右隣に居る兵士に合図した。
63功  ◆V9Blnd6aVs :2005/05/04(水) 15:52:53
兵士がライフルを構えた、刹那。
木部の額に、黒く穴が空いた
「あ・・・・・」
木部は小さくうめいたあと、その場に倒れこんだ。
辺りを紅に染めて、木部はその命を絶たれた。

「木部ちゃん!!!」
相方の須知が、真っ赤な木部に駆け寄る。
「木部ちゃん、木部ちゃん!」
名を呼んで揺すっても、木部は目を閉じたまま動かない。
木部は、殆ど即死だったのだろう。
「木部ちゃん!」
須知が叫び、静寂が戻る。
やっと静まったと思った教室に、規則的で無機質な機械音が響く。
「!」
そして須知は、気付く。
その音が、自分の首輪から発せられていることに。
64功  ◆V9Blnd6aVs :2005/05/04(水) 15:58:48
「あー、ごめん」
プロデューサーはわざとらしく、周囲に聞えるよう大声で言った。
「コンビごとに戦ってもらうから。片方が死ねば自動的に相方も死ぬから」
一気に須知の顔色が変わる。
青褪めて行く須知の表情に比例するかのように、機械音の速度が早まって行く。
「あ・・」
「須知、相方の心配する前に、自分の心配しろよ。あ、勿論みんなもね」
薄っぺらい笑いを、プロデューサーは芸人たちに振り撒いた。
教室の中を須知は彷徨う。
しかしそれは、無情にもやって来た。

パン

呆気ない音と共に、須知の首輪が、爆ぜた。
首元から吹き出した血が木部の亡骸に降り注いで―――――
須知は木部の上に、倒れこんだ。
65功  ◆V9Blnd6aVs :2005/05/04(水) 16:00:23
ごめんなさい、突然現われて長々と書いて。
ビッキーズ投下しました。すいません。書けそうな人居なかったので(汗
今日はこのくらいにしておきます。
他の書き手さんも頑張って下さいね。
66眠 ◆SparrowTBE :2005/05/05(木) 00:24:27
いきなりですが、スピードワゴン挑戦させてください。
文章力はアレですが、これからも書かせて頂けると有難いです。

教室の中は静まりかえっていた。
ぐす、といつまでも子供の様にしゃくり上げる小沢の肩をぽんと叩き、井戸田は前を向いた。
周りの芸人たちも小沢同様に虚ろな表情をしている。当然の事だ。目の前で見知った芸人…ビッキーズが殺されたのである。
けして嫌なコンビではなかった。むしろ人が良く、好かれるコンビであった。
井戸田はぎり、と歯を噛み締めた。
「他にコイツみたいに『怖いから戦いたくなーい』って奴はいるか?」
プロデューサーが馬鹿にしたような声を上げる。
当然のごとく手を挙げる者はいない。
突然目の前に突きつけられた「死」に、芸人全員の頭の中に恐怖と混乱が渦巻いていた。
「小沢さん、」
井戸田は小さい声で小沢に語りかけた。
小沢はゆるゆると顔を上げる。
「どうする?」
突拍子も無い質問に小沢の表情が凍りつく。
周りの芸人を殺すのと、自分たちが即座に殺されるのとどっちがいいのか?…選べるわけが無い。
「わかんないよ…」
消え入りそうな声で答えが返ってくる。そうか、と井戸田は答えた。

井戸田は迷っていた。
「それじゃあ、皆さんに武器を支給しまーす。コンビ名呼ぶから取りに来て下さい。武器を取ったらスタートです。」
プロデューサーの声が酷く煩い。
―どうする?今すぐ死を選ぶか?生き残るか?…殺されるか?
震える手で涙を拭う小沢をじっと見つめる。
―死ぬ?俺達が?
井戸田は顔をすぐに上げた。その目に迷いは無かった。
―生き残ってやろうじゃねえか。
「次、スピードワゴン。」
67眠 ◆SparrowTBE :2005/05/05(木) 00:25:12
兵士から受け取ったナップザックには少しばかりの食料と武器が入っていた。
井戸田の武器は小型のアーミーナイフ。小沢のは何も付いていないただの鎖だった。
どうやら「ハズレ武器」というのがあるらしく、小沢のもマシな方だがその部類に入るらしい。
ともかく、ハズレだろうが何だろうがこの二つが唯一二人を守ってくれるものだった。
「スピードワゴン、出発してください」
兵士の無機質な声が響き渡る。まるで死刑宣告を受けたみたいだ、と小沢は思った。
「行くぞ。」
井戸田は振り向くこと無く教室から出て行く。小沢はちらりと教室に残っている芸人を見てから井戸田の後に続いた。


ただ無言で井戸田の後を着いていく。
そんな小沢には自分より小さい井戸田の背中が大きく見えた。
「…この先どうするの?」
「どうするも何も…とりあえず生き残るしかねぇだろ。」
自分に言い聞かせるように呟きながら、井戸田は振り返る。
「殺されそうになったら…まぁそれはその時だけど…」
バツが悪そうに頭を掻いた後、小沢の肩を強く掴んだ。
「誰も殺さない。いいな。」
井戸田のそのまっすぐな目を見て、小沢はゆっくり頷いた。


こうして、ゲームは始まった。








他の書き手さんも待ってますm(_ _)m
68プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/05/05(木) 01:33:13
「顔文字はやめる『(笑』等も厨臭いので禁止」
「謝るなら書かない」
「感想もらえなくても泣かない」

これ等も追加ルールで行こう。さぁ楽しくなってきた。
視聴率が取れるように皆精々頑張りたまえ。

「最初の脱落者はビッキーズ。まだまだ皆殺し足りないぞ。
 生き残りたければ他のコンビを殺してどんどん視聴率を上げるんだ」
69名無しさん:2005/05/05(木) 09:53:18
拙い文章かもしれませんがお付き合いください。
アンジャッシュを担当します。


まだ信じられなかった。
目の前で人が殺されたって。
自分の目に映るものが夢であってほしいと

願い
縋り
そして絶望した。

「児島…なぁ、児島。」
「え…?」

自分が意識の奥底に入り込んでいたのだと気がついたのは渡部に声をかけられてから。

(あ…夢、じゃないんだ…)

隣りに居る渡部の首、
今ここに、非情なゲームに参加させられそうになってる自分の首には
無機質な首輪。

(これが…須知さんを…)
70霧 ◇:2005/05/05(木) 10:02:14
「!!」
「おぃ!!児島!?」

無我夢中で首輪を外そうともがいた。
そのもがく手を渡部が必死に押さえる。

「児島!!落ち着け!!落ち着けよ!!」
「でも、これが…これが!!」

狂ったように首輪を外そうとする俺の腹を渡部は殴り付けた。

「ッ…!!」
「落ち着けって、言ってる」

冷たい目で俺を見下ろす渡部。

その後ろには首輪と同じ無機質な笑みを浮かべたプロデューサーが居た。

「その首輪はなぁ、無理に外そうとすると…

爆発、するぞ?」

児島はサッと青ざめ、すぐさま首輪から手を放した。

須知の時のように、またあの音が自分の首輪から聞こえてくるかもしれない。

そう思った児島は耳を塞ぎ、前に倒れこんだ。
「うわぁっ、渡…部、渡部…!!」
「しっかりしろ。児島、落ち着け。」
71霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/05(木) 10:17:45
渡部がゆっくり俺をなだめる。
「大丈夫だって…大丈夫…。」
だんだんと落ち着きをとりもどしてきた俺を見ながらプロデューサーは言った。

「本当は爆発するんだけど…あんまり殺しちゃうと怒られちゃうからな。今回は特別に見逃してやる。」
プロデューサーは後ろからナップザックを持ってこさせた。

「さぁ、お前らの番だぞ。視聴率、期待してるからな。」
ニヤリと笑ったプロデューサーを、渡部は睨み付けた。

「……行こう、児島」
渡部はナップザックを受け取り、俺の手を引きながら教室を後にした。


教室を出る瞬間俺は後ろを振り向き、最後になるかもしれない同業者達の顔を見た。

その時俺はいっぺんに悟ったんだ。

俺達は逃げられない。
これは運命なんだ。

だってほらこんなにも

狂気はすぐ側に迫っている…



今日はこれぐらいにしときます。ID(?)の出し方がよく分かんなくて名前欄が変な事になってるかもしれませんがスルーの方向でお願いします。
72名無しさん:2005/05/05(木) 15:18:53
功さん、眠さん、霧さん 乙です。
皆、漢字一文字だ…
73功  ◆V9Blnd6aVs :2005/05/05(木) 16:30:45
教室の中が、段々広くなっていく。
さっき、木部とすっちゃんが殺された。
人を犠牲にして従わせようとした、あのオッサン。
許されへん・・俺は

陣内智則はそう考えていたが、口には出せない。
心の中には怒りがあっても、表へ出せば殺される。
結局は、プロデューサーの手の中に居る。
こうして怒りを覚えた陣内も、恐怖を覚えた他の芸人も。
「死」という現実を突きつけられれば、抵抗はできない。
それは、陣内もよくわかっている。

「…さて、お前らはどうしようか」

何言うとんねん。陣内はそう思った。
けれど周りを見て、すぐに答えは出た。

「面倒だなァ。ピン芸人は。このゲームのルールに属さない」

教室には、ピン芸人のみが残されていた。
面倒だ。プロデューサーは、そう言った。
番組を栄えさせようと散々利用したくせに。

面倒だ。プロデューサーは、そう言った。
そのことが余計に、陣内を苛立たせた。
74功  ◆V9Blnd6aVs :2005/05/05(木) 16:41:04
「もう、1人で行ってくれないか?」
プロデューサーは言う。
「1人って・・俺ら、損じゃないんですか?」
向こうの機嫌を伺いながら、探り探り陣内は言った。
「損と取るか得と取るかは――お前ら次第だな」
プロデューサーが、煙草に火をつける。
教室には不似合いな煙たい空気が、残された芸人たちを包む。
「いいじゃないか。1人でも。連帯責任を取らなくて済む。違うか?陣内。」
「違…いません。その通りです」

違う。陣内は言いかけたが、言わなかった。
言って、目の前に居る“ビッキーズ”のようには、流石になりたくはなかった。
「まァ、頑張るんだな」
木部を殺した兵士が、陣内にナップザックをよこした。
陣内は両腕でそれを抱えると、ゆっくりと、外へ出る。
「・・・・覚えといてくださいね」
「何をだ?」
「・・何もないです」
陣内はそれだけ言うと、走り出す。

絶対生き残ってみせる
生き残って、アイツ殺す
この首の拘束がなくなったあと、殺す
今支給されたこの小銃で。
すっちゃんの、木部の仇取ったんねん――――
75功  ◆V9Blnd6aVs :2005/05/05(木) 16:43:01
陣さん投入してみました。
ピン芸人はどうしたらええんやろう?って思ったんですが
結局1人で行かせました。
他の書き手さん・・ガンガレ!w
76乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/05(木) 17:18:14
地を踏み歩く音だけが辺りに響く。
しかしいずれはこうして歩くことも出来なくなるだろう。
死んで幽霊になったら足は無いわけだし。

「大丈夫か?」
「・・・あぁ」

カンニング竹山は相方中島の声にほっと胸を撫で下ろす。
とりあえず出発地点からできるだけ離れることにした二人は地図を確認し、
なんとなく北の方角へと歩を進めていた。
再び二人に沈黙が訪れる。突如殺し合いを命じられ、それが現実なのだとわかった今、
お喋りをする元気は二人には無かった。

――それにしても。
竹山は怒りを覚えずにはいられなかった。
中島が倒れてから数ヶ月。病気は死に至るようなものではなく、1年で完治するだろうと言われていた。
一時はカンニングの解散を考えたが、竹山は中島が復帰するまでの間ピン芸人として活動することを選んだ。
中島の病気が治った時、もう一度2人でやれるように、と。
しかし、突然の殺し合い。
まだ完治していない中島も病院から拉致され、
1年以内に治るどころか今この瞬間に死んでもおかしくない状況だ。
無理な運動が出来ないような中島は、他の者より生き残ることが難しいかもしれない。
だから相方の俺が、コイツの分まで頑張らないと。
そしてあのクソプロデューサーをぶん殴ってやる!

キレ芸人竹山隆範は強く誓った。


77乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/05(木) 17:21:42
短めですが、カンニングさん書いてみました。
浅く薄い文章ですが、よろしくお願いします。
78名無しさん:2005/05/05(木) 17:47:05
全体的に乙です!
今までと違う感じで面白そうだと思いました。
(るーるなどはバトロワUですね)
頑張ってください!
79名無しさん:2005/05/05(木) 21:50:56
面白くなってきましたね。
書き手の皆さん、乙です。
次は誰だろう?と楽しみに待ってます。
80乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/06(金) 16:22:54
もう空は暗く、視界は闇につつまれている。
名前順の出発だったため、彼らは全参加者69組中14番目。
まだ外にいる敵は多くない。危険も少ないだろう。
インパルス堤下は自分の隣で、支給されたナップザックを漁る相方に視線を向ける。

 「板倉さん、なにやってんの?」
 「いやー武器は何かなぁーって思ってさ」

そんなに大きな武器では無いのだろう。板倉はなかなかナップザックの中から武器を見つけられないらしい。
しきりに、「あれーねぇなー」と呟いている。

 「お」

二人並んで歩いていた堤下は、板倉が足を止めたことにより同時に止まる。
 「武器あったの?」
 「…メス?」

板倉の細い指が掴んでいたのは医者が手術の時に使うようなメスだった。
暗闇の中見えづらかったが、それは月の光を反射し怪しく光っている。

 「マジかよぉ、なにこれ。すっげー楽しみにしてたのによぉ…」
 「板倉さん、楽しみに、って。これは遊びじゃないんだから…」

そう言った堤下は、板倉の様子がおかしいことに気がついた。
その華奢な肩は震え、両の手はきつく握りしめられている。

 「…板倉さん?」

堤下は心配になり板倉の顔を覗く。すると――

 
81乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/06(金) 16:31:42
「わかってんだよ!!遊びじゃねえことくらい!!」

突然大声を上げた板倉は、そのまま女の子のように泣き崩れた。

 「嫌だよ、俺まだ死にたくねぇよ!!なんでこんなことやんなきゃならねぇんだよ!!」
 「板倉さん…」
 「くそぅ!!なんだよこれ…嫌だよ…くそぅ…」

怒鳴り声は消え、代わりにすすり泣く声が辺りに響く。
どれくらい経っただろう。この泣き声がやる気のある者に聞かれなくて二人は幸いだったかもしれない。
先に口を開いたのは堤下だった。

 「板倉さん」

堤下はしゃがみ、泣き崩れた板倉の肩に手を置く。

 「顔上げて。大丈夫だから。板倉さんは俺が守るから」

堤下は板倉を立たせ、板倉の分のナップザックも持ち歩き出した。

 「…んだよおめぇ。気持ちわりぃ」
 「いやいや、気持ち悪いとかじゃなくて。俺が守るって言ってるの」

いつのまにか板倉の顔に、笑顔が戻っていた。

【残り68組】
82乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/06(金) 16:40:55
王道(?)でインパを。
板倉の扱いをどうすればいいのか迷ったので、
つっつん共々神の視点でいかせてもらいました。
やっぱり板倉は鬼畜がいいのかな…
83功 ◆V9Blnd6aVs :2005/05/06(金) 16:57:47
泣いたって
喚いたって
叫んだって
助かる方法は、ただ一つ。

完全にビビってしまった相方を連れ、アンジャッシュ児島は歩き回っていた。
物陰や建物に細心の注意を払いながら。
「渡部、しっかりしてくれよ」
「しっかりって・・無理に決まってるやろ?殺すなんてできるわけないだろ!!」
「じゃあ死ぬんか!?」
2人は、完全に喧嘩になっていた。
「俺は死にたくない。」
「俺も死にたくない!」
「じゃあ、選択肢はひとつやろ?」
児島が宥めるように言うが、渡部は近くにしゃがみこむと、ナップザックを漁った。
「渡部!」
児島の言葉も聞かず、渡部はひたすらにナップザックを、漁る。
「殺せって言うのか?仲間を?知り合いを?先輩になる人を?」
「そうさ…俺らはそうしないといけない運命だったんだからな。」
「・・・」
渡部はナップザックから、彼に支給されたナイフを出すと、自分の首元に突き立てた。
「渡部っ・・!!」
84功 ◆V9Blnd6aVs :2005/05/06(金) 17:05:53
「放棄する!こんなの!!辛いだけだ!」
「渡部よせ!俺まで死ぬんやぞ!」
「・・すまん児島っ!俺にはできへんねん!!!」
渡部は辺りに響き渡る大声で叫んだ後、ナイフを首輪の隙間から、肉に食い込ませていく。
「!!!」
児島が駆け寄った時には、既に渡部は事切れていた。

「渡・・渡部・・!!!」
急に、児島にも恐怖が湧きあがってきた。
そして――――

児島の首輪にも
あの耳につく、機械音。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
85功 ◆V9Blnd6aVs :2005/05/06(金) 17:06:56
中途半端で終わらせてみました。続きは任せますw
86名無しさん:2005/05/06(金) 17:55:49
>>85
アンジャの書き手は他にいるのに
勝手に殺しちゃって良かったのか?
87名無しさん:2005/05/06(金) 18:01:14
>>85
中途半端というか…。
88霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/06(金) 18:21:49
えー…あまりにも中途半端というか…何故関西弁なんですかね?

生きてるとして続きを書いてもいいですか?
89黒 ◆rGjeURACBw :2005/05/06(金) 19:00:37
書きなおしキボンヌ。アンジャッシュの関西弁…
そろそろライセンス編続き投下予定。
90名無しさん:2005/05/06(金) 19:11:48
関西弁はまさかカモフラージュ・・・?
91霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/06(金) 19:53:53
悲しみなんて感じてちゃいけないんだ。

だって俺達は生きるんだから。

「…なぁ渡部、」
「どうした?」
「とりあえずさ、ナップザックの中とか確認しといた方が良いんじゃないかと思って…」「そうだな…」

児島の手をひいて教室を出た渡部は、とりあえず隠れる場所を探そうと歩き回っていた。

信じたくは無いが、このゲームにのってしまうかもしれない人間に出会う前に児島とどこかで話したかった。

92霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/06(金) 20:03:22
「じゃあ一旦ここで確認しとくか。」

ナップザックを覗くのは気がひけた。

そこには少しばかりの食料と地図、方位磁石、参加者名簿、そして…

「…渡部、何だった?」
「んー、…何だこれ。」

渡部のナップザックには液体の入った小さなビンが数個入っていた。
93名無しさん:2005/05/06(金) 20:06:53
>>82
上手い
94霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/06(金) 20:25:23
「なんだろうなぁ…これ。」

渡部は何度かビンを振ってみたが、専門家というわけでも無いのでよくわからなかった。
(説明書ぐらいつけとけよな…)

とりあえずビンをナップザックになおした渡部は、児島の方に向き直った。

そしてまだ確認していない児島の武器取り出そうと、ナップザックを覗きこんだ


その時、



――パァァン!!


銃声。


それは


「っ、…隠れろ!!」


この非情なゲームがついに始まった事を知らせていた。
95霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/06(金) 20:26:42
今日はこのへんでやめときます。
それではまた明日。
96名無しさん:2005/05/06(金) 20:36:07
乙です!
とうとう始まりましたね・・・楽しみにしてます!
97プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/05/06(金) 22:05:00
「うーん。皆悪くないスタートだ。この調子で頑張りたまえ」
「ちょっと気になったのはやたら改行が多いことかな。空行を減らすともっと楽しくなると思うなぁ」
98黒 ◆rGjeURACBw :2005/05/06(金) 22:53:46
>>56-57
ライセンス編の続きを投下します。





例え自分が死んでもお前だけは…
その考えが通用しない世界。理不尽ってこういう事?

「君たちには期待してるよ」
最後から数えて3番目に出発する俺らにプロデューサーは笑顔で言った。まるで新しい玩具を与えられたガキのような笑顔で。
“期待してる”?何に?人を殺すこと?そこに「寝てる」ビッキーズみたいに他の奴も殺せって?俺らが?こんな意味ないゲームに参加して数字のために仲間殺して……
「何に期待してんねん?」
「君らはこのゲームに適している」
「あ?」
「二人の運動神経や精神力的なモノは上の人間も多少評価してるんだよ」
「人を何やと思ってんねん」
「間違ってるか?井本…お前が一番、ビッキーズの二人の“死”に動じていないように見えたけど」
藤原が何か言った気がした。でも気付いたら奴の胸ぐらを掴んでいた。
「本当のこと言われて怒ってんの?」
歯止めがきかなくなる―。
プロデューサーの顔目がけて力一杯、腕を振り下ろそうとしたとき体が宙に浮いた。
「っ!?」
全身が冷たい床の上に打ち付けられ、見上げると藤原が冷たい目で俺を見下していた。
「あははっ!藤原も相方のせいで死にたくないよな!」
奴の言葉が突き刺さる。…嘘やろ?藤原―。
99黒 ◆rGjeURACBw :2005/05/06(金) 23:02:30
「はよ行きたいんで荷物くれませんか?」
藤原の低い声が静まり返った教室に響く。
嘘やって…何で、何でお前が…
無言で兵士が藤原にナップザックを渡す。荷物を受け取った藤原は、未だ動けない俺を無理矢理引っ張り教室から出ようとした。するとプロデューサーが俺に近付き微笑みながら言った。
「精々、相方の足引っ張らないようにね」
言い返す暇も与えない力で藤原が腕を引っ張って行く。ただ放心状態で、引っ張られている状況もこの現状自体もわけが分からなくて頭が混乱して吐き気がした。
教室を出て数分も経たないうちに森へと景色が変わる。いまさら言い返せなかった悔しさで腹が立ち乱暴に藤原の腕を払う。藤原が振り返り俺と目を合わせた瞬間、俺は目の前の相方を思い切り殴り飛ばした。あまりにもあっけなく殴れた事になおさら腹が立つ。
「何、簡単に殴られてんねん!殴り返せやっ!」
「アホか」
「アホはお前やろ!何であんとき止めた?!」
「………」
殴られた頬を手で押さえ藤原は答えようとしない
「答えろや!」
「…死んでほしくないからに決まってるやろ!」
やっと答えた藤原はどうして気付かなかったのか小さく震えていた。
「ビッキーズの二人の最後…見てたやろ?俺は絶対にお前に死んでほしくない」
100黒 ◆rGjeURACBw :2005/05/06(金) 23:06:31
こいつは…こいつは何処までアホなん?
「俺、死にそうになったらお前盾にして逃げるかも知れんねんぞ」
「何時でも盾になる準備できてるわ…俺死んだらお前も死ぬしな。おあいこやから許す」
「…………」
笑いながら何言うとんねん…俺の心配ばっかして。キショいわ。本当アホ。俺が格好悪いやんけ。
気を紛らわすために放り出されたナップザックを探る。爪にカチッと鉄のような何かがあたった。取り出すと映画やゲームで何度も見た拳銃が出てくる。掌に収まる、決して見た目強そうとはいえない小銃。
「お前にピッタシやな」
「うっさいわ、ボケ」
藤原に何時ぶりか思い出せないツッコミをして空を見上げる。やっぱり腹の立つ快晴が心を擽り何故か笑っていた。
「なぁ藤原」
「ん?」
「あのクソプロデューサー、俺らがこのゲームに適してる言うたな」
「おん、それが何?」
「あいつに後悔させんねん……生き残って俺らであいつ殺すぞ」
「あぁ、当たり前や……井本」
「何?」
「生きろよ」
「………………当たり前や」

パンッ―。
空に向かって一発だけ銃声を響かせる。
かならず生き残ってみせる。
例え、どんな手を使っても…。
101黒 ◆rGjeURACBw :2005/05/06(金) 23:10:53
本日はここまでです
ライセンスは出発遅いんで他の芸人よりも時間軸ずれてるかも知れませんが…スルーして頂ければ助かります
102乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/07(土) 12:18:38
他の作者さまにちょっと確認。

・会場は原作通り島ですか?
・とりあえず今は夜ってことでいいですか?
・自分で書いた登場人物は自分で始末つける。 

最後のなんですが、ある程度人数が減ってきたら人様のキャラも使わないと優勝者が決まらないと思うのですが…。
まぁまだまだいっぱいいるから半分以下になるまでは自分のは自分で、ってことにしたいです。
あとバトロワっぽく【残り68組】とか表記つけたらどうでしょうか?新参戦出す場合は(【+○組】と表記で)
自分以外の人の死亡者をチェックし忘れなければ結構わかりやすいと思うのですが。
反応キボンです。
103霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/07(土) 16:56:08
↑良いと思います。

質問なんですがエンタにも1回ぐらいしか出てなくてあまり印象に残ってない芸人さんはどうします?
104名無しさん:2005/05/07(土) 18:58:07
103
私も思ってた。明らかに認知度低くて、どの書き手様も書けなさそうな芸人さん、いっぱい居るから…。
105名無しさん:2005/05/07(土) 19:37:32
期待してます、ガンガレ
106だるま食堂 ◆NejRXmXc5Y :2005/05/08(日) 03:34:36
「何なのよこの状況は…」
スタート地点であった廃校から離れた森で、女トリオが巨木の根元に呆然と座り込んでいた。
「あたし達は夫も居て家庭がある身なのに、なんでこんなめに遭わなきゃいけないのよ!!」
一人は頭を抱え嘆き。
「コレは…夢よ!そうよ夢に決まってるわ!!」
また一人は混乱の中頭を抱えて何度も頭を振っている。
「お、落ち着きなさい!!気をしっかり持たなきゃ駄目よ!!」
そしてまたある一人は、現実を受け止めようと支給されたバッグを開き中を確認していた。

「…殺し合いなんて私たちには無理ね」
バッグを開いた女は絶望したように呟いた。
二人の女はその様子に不安を覚え、喚くのを止めて女の手元を覗き込んだ。
各バッグに一つ必ず入っているはずの武器が無いのだ。
渡された3つのバッグの中にはスプーン、果物ナイフ、そして何故かチョコレートが入っていた。
「他の二つがハズレ武器なら分かるけど…このチョコレートも武器だって言うのかしら」
横から覗き込んだ女が無用心にそれを一つ口に放り込んだ。
「ちょ、もしかしたら毒かもしれないのよ!?何考えて…」
「大丈夫よ。落ち着くには糖分が必要だわ」
もう一方の女もそれに続いてチョコレートを一つ口にした。

「あなたも食べれば?」
二人に勧められたが女は後にするわと言って断った。
少しの休憩の後に今後を考えようと提案し三人は一度木に寄り掛かり目を閉じた。
107だるま食堂 ◆NejRXmXc5Y :2005/05/08(日) 03:35:29
「ゆ、夢なのよ…早く起きて、旦那を起こして会社に送り出さなきゃいけないの!!」
突然の仲間の声に女が目を覚ますと、目の前で泣きながら喚く女達の姿が目に入った。
「夢なら早く覚めて欲しいわ!!」
二人は何かに取り付かれたように、狂ったように同じ言葉を繰り返す。
「アナタ達どうしたっていうの!?しっかりしなさいよ!!」
女は突然の仲間の変わりように慌て大声を上げるも、
二人の女の言っている事は益々意味不明になって行く。

「夢なら…意識を失えば覚めるわよね…」
フラリと立ち上がった女が向かった先は波音のする暗闇。
「ちょっと!!そっちは崖よ!!戻りなさい!!」
夢遊病患者のようにフラフラと歩き出した仲間を止めようと女は立ち上がる。
「そうよ…アナタも起きなきゃいけないわよね」
先に歩き出した女に釣られるようにして立ち上がった女は、
一人静止を叫ぶ女の腕を信じられないほどの力で引っ張り歩き始めた。
「やめなさいよ!!コレは現実なのよ!?」
一メートル先に崖が迫る。二人掛で引きずられては逃げることも出来ない。
108だるま食堂 ◆NejRXmXc5Y :2005/05/08(日) 03:36:50
「さぁ、早く目を覚ましましょう…」
一歩一歩、確実に女達は死へと近付いていく。
「私たちは主婦なんだから…早く起きて、家事をしなきゃいけないのよ」
女達の目には愛する家族の姿が映っていた。
その顔には母親として、妻としての愛情を湛えた笑みが浮かべられていた。
一人正気で現実を理解することのできる女を除いては…
「やめて!ねぇ!!ホントに死…ッきゃぁああああああ!!!」

真っ暗な闇に包まれた森の中に女の断末魔の悲鳴が木霊した。

女は気付かなかった…
仲間達が口にしたチョコレートの中に幻覚剤が仕込まれていた事に。
ただの菓子にしか見えなかった、ハズレ武器であったはずのそれは
確かに強力な武器であったのだ。

死亡(だるま食堂) 死因(崖下への転落死/自殺)
109名無しさん:2005/05/08(日) 03:54:38


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このスレはここまでです。ご愛顧ありがとうございました



110名無しさん:2005/05/08(日) 11:18:21
>>106->>108
女トリオって誰だよ
111名無しさん:2005/05/08(日) 11:26:55
だるま食堂ですよ。書いてあるでしょ
112乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/08(日) 15:23:37
足元に転がる二つの死体。
大量の血液は大地を汚し、死の色へと染め上げる。
それらを前に、男は何一つ罪悪感など感じていなかった。
ただ一つ浮かぶ感情――爽快感。
二人もの人間が、たったこれだけのことで動かなくなる。
こうも人の生命を左右できるのは、この武器のおかげなのだろう。
これはこの殺人ゲームで支給された武器の中で最強の部類に入る。
これがあれば――。
今自分の前で無様に横たわるコンビ――スパークスタートは、
自分と実力や人気は大して変わりは無いだろう。コイツらはためしだ。
本当の目的は違う。エンタに出ている人気芸人たち――。
青木さやかや長井秀和、アンガールズ。アンジャッシュ、インパルス、ドランクドラゴンに陣内智則――。
エンタを支えていると言っても過言ではない彼らを――いや、自分以外のすべての芸人をこの武器で抹殺する。
そうすれば自分は、この若手お笑いブームでトップに立つことができるかもしれない。
そう考えるだけでぞくぞくし、口から自然と漏れてくる笑いを止めることは出来なかった。
 「ふっ――ハハハハハハハハハハハハハハっ」
森の中、不気味な笑い声が響き渡る。
木々の間に隠された血まみれの死体は、死の臭いを放っている。
それらすべてを覆い隠すかのように、闇は深くなっていった。

――スピードスパーク死亡

【残り66組】
113乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/08(日) 15:27:44
間違い発見。スマソ。うスパークスタートだよorz 
訂正 ×スピードスパーク→○スパークスタートで。
彼らを殺したのは誰なのか、っていう謎を持ってきました。
適当に予想してみてください。

あと一度くらいしか出てないような印象に残らない人は…。
今回のスパークスピードみたいに描写ほぼなしで誰かに殺させちゃうとか。
それくらいしか思いつきません。まぁ印象に残らない=脇役でいいんじゃないですか?
114名無しさん:2005/05/08(日) 19:30:44
>>113
とりあえず書き込む前に落ちつけ。
誰かがちゃんと芸人の名前挙げておいてくれてんだから確認してから書き込めや・・・
115名無しさん:2005/05/08(日) 19:33:21

   ___.                     ∩゛     ∧空∧    ((( ))) /\
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 人 ミ ,,,  ~,,,ノ  .n  THANK YOU 2ch ■■-っ ┌───────┐  \ ( ゚Д゚ )∩゛
( ゚ー゚)と..ミ,,,/~),ヽ(凸)ノ~     and..     ´∀`/. | ●        ● |     ヽ    ノ
  / ̄ ̄し'J\[Y] GOOD-BYE 2ch WORLD! /| .┌▽▽▽▽┐. |____|__||_| ))
 /     ●  ●、ヽ                  (. ┤ .|        |. |□━□ ) (゚Д゚)?
 |Y  Y       \  またどこかで会おうね.. \.  └△△△△┘. |  J  |)∧_∧
 |.|   |       .▼ |∀゚)               |\あ\       | ∀ ノ " ,  、 ミ
 | \ /■\  _人 |∧∧∩゛∧_∧∩゛∧_∧  |   \り.\     | - Å′ ゝ∀ く
 |  ( ´∀`)___/( ゚Д゚.)'/ ( ´∀` )/ (・∀・ ),. |.    \が\.    |  ). \  Λ_Λ
 \ ( O   )  冫、 U  /  (     / ⊂  ⊂.)ヽ(´ー`)ノ゛ \と.. ∧_∧/(´Д`;)<丶`∀´>
  |││ │   `   |   |   ∪ |  |  ( ( (  (  へ (゚д゚)〜⌒(゚ー゚*) (-_-) (・ω・` )
  (_(__(__)(・∀・) ∪~∪  (_(__) (_(_) く ⊂⌒~⊃。Д。)⊃⊃⊃(∩∩)(∩ ∩)







このスレはここまでです。ご愛顧ありがとうございました
116名無しさん:2005/05/08(日) 19:39:54
終わリンコ
117名無しさん:2005/05/08(日) 20:17:04
>>113
ドンマイ
ガンガッテ続き書いてね
118名無しさん:2005/05/08(日) 22:11:44
>>113
乃さんの描写好きです、ガンガッテ。
119名無しさん:2005/05/09(月) 00:03:31
69組全員参加でつか?途方もないね・・
120名無しさん:2005/05/09(月) 02:11:55
もう一つのバトロワスレ行ってみなさいよ。69組って決まってるこっちのがまだ終わりが見えるよ?
121乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/10(火) 18:59:29
非現実的な現実。
子供のころ頭の中で描いていた様々な世界。夢。
大人になるにつれて廃れていった夢を、また見ているのか?
そう考えることは自然だった。
しかし現実は残酷で、頬を抓ってみれば痛みはするし、
教室で見たビッキーズの悲惨な死。あれは紛れもなく本物だ。
夢でも無い。悪い冗談でもない。この現実から逃れることが出来ないのは、
自分の首に巻きつく艶やかに光る首輪が物語っている。
 井上マーは小高い丘のてっぺん、木の根元に腰をかけながら夜空を見上げていた。
井上はもうすでに現実を受け止めている。
ようするにこれは、自分の尾崎ネタでもある“生きる自由”の強奪。
なにが“支配からの卒業生”だ。
エンタでの自分のキャッチフレーズを思い出し、井上は苦笑いを隠せなかった。
――思えばこの支配の象徴、首輪をつけられ殺人ゲームに参加させられる前から、
沢山の芸人がエンタに支配されていたかもしれない。
漫才芸人があまり漫才をやらせてもらえなかったり、多忙である芸人に次々と出演を押し付けたり。
自分は別に構わないが、一部の芸人はそのことについて愚痴を漏らしていたりした。
番組的支配の中でやった尾崎ネタ。なんだか馬鹿らしいものだ。
どうせ自分が死んだって、お笑い界に打撃も無いだろう。どうせなら自分の代わりに
もっと有力な人材に生き残ってもらうべきだ。エンタだってそれを望んでるはず。
そんな自分がやることは一つしかない。――エンタの、そしてこのゲームからの支配の卒業。
それが新の自由じゃないか?
 井上は立ち上がった。もうすることは決まっている。
ナップザックの中に入っていた支給武器――ロープ。
これで支配から逃れてやろう。一足早く、あっちの世界に逝くのも悪くないじゃないか。

こうして“支配からの卒業生”井上マーは、新の自由を手にした。


――井上マー死亡

【残り65組】
122乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/10(火) 19:02:34
なんか私ばっかり投稿してしまいごめんなさい。
少しアンチエンタっぽいこと書きましたが別にアンチでもないです。
ネタはどんどんうかんでくるのでこれからもがんがって書いていきます。
他作者さんもよろしくお願いしますm(_ _)m
123名無しさん:2005/05/10(火) 19:25:48
GJです!乃さん。
次回も気体してるのでがんがって下さい!
124名無しさん:2005/05/10(火) 21:00:41
乃さん、ガンガて下さい。いつも楽しみにしています。
125霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/11(水) 17:09:48
「馬鹿、だな」
目の前の木にぶら下がる死体を見て、長井は嘲る様に笑った。

「死んで、無様な姿晒して…」
長井は支給されたナップザックに手を突っ込んだ。

「自分が生きるより他人が生き残った方がいいってか?」
何か醜いものでも見る様な目。

「だからお前は売れなかったんだよ」

長井は自分に支給された、恐らく“当たり”の部類に入るであろう武器を死体に向けた。
126霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/11(水) 17:16:02
───……。

長井は最早原形をとどめていない死体を見下した。

「俺は生きる。たとえ誰を殺したとしても」

そう言って長井は死体を一瞥し、今の銃声を聞き付けた奴がここにやってくる前に走り出した。



【残り65組】


長井さん書きました。とりあえず長井さんはこのゲームにのったと言う事です。
127名無しさん:2005/05/11(水) 21:14:36
乙です。
長井さん乗っちゃいましたね〜ってか、恐っ!
128名無しさん:2005/05/11(水) 21:34:46
霧さん、乙です。
長井秀和に、「気をつけろ!」
129名無しさん:2005/05/12(木) 00:10:04
妻子持ちの長井さんは乗ると思ってたけど。がんがって生き残れ!
130乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/12(木) 18:57:05
少しずつ島に吹く風が冷たくなってきた。
風は木々を揺らし、その冷たさを一身に受け撓る枝達は互いにぶつかりあい唸り声を上げる。
視界に映るのは、お払い箱になるのもそう遠くないであろう車。地面にびっしり敷かれた砂利。
ここは畑の麓にある小さな駐車場。この交通に不便な道をわざわざ車通りこの畑まで毎朝来る人たちがいるのだろう。
アップダウン安部浩貴は体を丸め体育座りをし、一人でいることの不安や恐怖と戦っていた。
 「はやく帰って来いよ〜」
不安を紛らわすためか、自然と口から言葉が漏れる。
相方の竹森といえば、この駐車場につくなりトイレに行きたいと言い出し林の中に姿を消してしまった。
 「一緒にトイレついて行けばよかった…」
民家に入りトイレを借りる行動は目立つということで、
自分はここに隠れて待っているということにしたのだが、今更それを後悔した。

――…俺達、どうすればいいんだろう?
ゲームが始まって、何度も考えたことだ。
――死にたくはない。これからもお笑い界で活躍していきたい。
けれど、だからといって進んで皆を殺していこうとはどうしても思えなかった。
たとえ生き残れるのがひとりだとしても、こうして番組で共演してきた仲間だ。
エンタ以外の番組やプライベートで付き合いがある芸人だっている。
そんな芸人達を殺してまで生き残りたいかといわれたら答えは否だ。
…それに、案外俺と同じ考えの人もいるだろうし。逆にやる気になってるヤツなんて少ないかもしれない。
そう思うと少し心が軽くなった。

「――ッ安部!!」
「竹森!」

駐車場の入り口から、竹森が姿を現した。




131乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/12(木) 19:41:44
数分の別れの後の再開。ほんの少しの間しか離れていなかったのに、竹森はなにか違っていた。
息を切らし、肩を震わせている。俯いた顔には恐怖の表情が浮かんでいた。
「――どうした?なんかあった?」
  「わ…わやだ」
久しぶりにに聞いた方言。東京での生活に慣れた二人は北海道弁をあまり使わなくなっていた。
それはともかくとして――。
  「なに?ちゃんと説明しろよ?」
「だ…だれかが殺された!!」
竹森は安部の肩を掴み叫んだ。
背中に嫌な汗が流れるのを安部は感じた。
 「な――…殺された、って…」
自分でも声が震えているのがわかる。
竹森は必死に説明しようと口を開くのだが気が動転していて言葉にならないらしい。
沈黙の中風の吹く音がやけに耳に響く。
 「と、とにかくそこに行って見よう。な?」
 「う、うん…」

二人は駐車場をでて、竹森がトイレを借りた民家まで駆け出した。
前を走る竹森の背と、その両脇の林が視界に入る。詳しいことはわからないが、
誰かが殺されたということは殺した人がいるということだ。
信じたくないが、そういうことになる。
もしかしたらこの近くにその殺人鬼がいるかもしれない、と安部は林に気を回すことを忘れなかった。
 「ここで、俺がトイレを借りたんだ。それで、トイレが終わって戻ろうと思ったら」
一呼吸置き、再び竹森の口が開かれる。
 「向こうのほうから叫び声が聞えた」
竹森の指す方向に首を向ける。今走ってきた道の先だ。この先に、誰かの死体が――?
 「けど、殺されたかどうかはわからないべ?」
 「そうだけど…」
 「したっけ確かめよう」
安部は拳を握り締め歩を進めた。

132乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/12(木) 19:59:28
念のため、ナップザックの中から支給武器であるベレッタを取り出す。
やや大きめの拳銃で、殺傷能力の高そうなこれを使うつもりは無かったが、
やはり持っておくに越したことはないだろう。危険の中に丸腰でいく理由は無い。
道幅が少しずつ広くなり、それにつれてなにかが鼻をつく。まるで“鉄”のような臭い。
嫌な予感が膨れ上がるなか、すぐに視界は開けた。
 「――っ」
安部は思わず顔を逸らした。後ろで竹森が「ひっ」と声を漏らす。
それはとても直視できるようなものではなかった。
まず視覚と嗅覚に飛び込んでくる血、血、血――。
草木を汚すそれは、あまりの量なため地に吸い込まれることなく残ったものが水溜りを作っている。
そこに横たわるものに、本来あるはずのもの――“首”が無く、その体は誰の物か判定できなかった。
さらにその血の海から少し離れた場所。木に寄りかかる死体――これは原型をとどめていた。
首には手で絞められたようなあとが赤黒く残っている。扼殺死体というのだろうか?
だらんとした頭は下を向いており、顔を伺うことは出来ない。
ただそれが誰なのかはすぐにわかった。その死体が着ている衣服には、『ガッポリ建設』と書かれている。
それがなければ恐らく誰だか判断できなかっただろう。
 「は、早く戻ろう」
竹森が後ろで怯えた声を出す。
何も言わずに頷き、安部は竹森に続いた。
 「な…なんだったんだよ、あれ」
 「わかんないけど…、たぶん一人が首絞められて殺されて、もう一人はそれで首輪が爆発したんだ」
なんとか駐車場に戻った時には、二人とも魂を抜かれたような表情をしていた。
133乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/12(木) 20:12:26
二人は駐車場のフェンスに寄りかかっている。
車の脇に隠れているので、入り口からは死角になっているはずだ。
もしあのガッポリ建設を殺した者がうろついていたとしても、すぐに発見される心配は無いだろう。
 「なぁ、やっぱりあれ、やったやつがいるのかな?」
 「そうだべ…。なまらわやな叫び声だったし」
竹森はその断末魔の叫び声を思い出したのだろう。
眼を硬く瞑り頭を抱えている。
 「なぁ、竹森。俺なんまショックだった」
 「…あぁ」
ゆっくり頷く相方を見て、安部はなんともいえない気持ちになった。
 「俺な、絶対このゲームに乗る気はないんだ。殺し合いなんてしたくない。けど――」
いつのまにやら出てきた涙を拭い、続けた。
 「――皆俺と同じ気持ちだと思った。殺し合いなんて進んでしようと思うやつなんていないと思ってた」
信じていた。やる気になるやつなんて、きっといないだろう。と。
けれどそれは甘い考えだったのかもしれない。
 「そっか」
立ち上がった竹森の表情は伺えない。しかし気づかぬうちに竹森も
支給武器であるスミス&ウェスンを握っていた。
 「いこう。ここは危ないと思う」 
 「そうだな」
安部も立ち上がり、涙を拭いて歩き出した。

――ガッポリ建設死亡

【残り64組】
134乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/12(木) 20:16:38
アップダウンさん書きました。二人とも北海道出身ってことで方言使わせてみたけど実際使ってんのかな。
まだ残り人数が果てしないですが他の書き手さんもがんがりましょう。
135名無しさん:2005/05/12(木) 21:15:25
霧 ◆ulAwgplWcUさん
乃 ◆5DYYl3NWdYさん
お疲れさまっす。
アナタたちの文章読みやすくて好きです。

次に誰が出てくるのか、最終的にどのメンツが活躍していくのか
期待して読んでいきます。がんばってね。
136霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 21:17:53
この後アメリカザリガニ投下します。
137霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:02:13
「ダメや…アカンて、平井」
138霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:04:19
「ダメや…アカンて、平井さっ…」

何が起こったのか分からなかった。ただ目の前に広がる惨劇を呆然と見つめる事しか出来なかった。


柳原と平井は街のはずるの住居に隠れていた。
2人とも、この理不尽なゲームにのる気は無かった。
139霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:08:54
「仲間を殺すなんて…常人のすることやない」
狂人になってまで生き残りたいとは思わない。
それなら皆で生き残る道を選ぶ、と柳原は考えていた。

文字通り“死ぬ気”で。
その為には仲間を集めなければ。ナップザックに入っていた名簿を見ながら二人は信用できそうな人間を慎重に選び出した。

「スピワの二人は…信用できる気ぃするんやけど…」

柳原は名簿の『スピードワゴン』のところに丸をつけた。
140霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:12:44
井戸田は正義感のある男だ。目の前で仲間を殺された以上このゲームを見て見ぬ振りをするとは思えなかった。
小沢は小沢で異常な程の平和主義者、
この二人は信用できると柳原は言った。

その意見を黙って聞いていた平井だったが、少しだけ眉を顰めて柳原を見つめた。

「その意見は一応“保留”やな。」
「!?」
141霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:15:16
柳原は思わず立ち上がった。
ここからでは平井の表情は見えない。
「この二人やったら絶対信用できるで!?」

声を荒げて訴える柳原だが、平井の表情は変わらなかった。

「ヤナ。よく見といてや」
平井は立上がり、柳原の肩を掴んだ。
「目を、背けたらアカンねや。」
「は…?」

142霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:18:47
柳原は平井の言ってる意味が理解できなかった。
しかし次の瞬間、ドアが勢いよく開け放たれ一人の男が飛び込んで来た。

「うぁぁぁぁぁ!!」

「!?危なっ、平井さん!!」

その男は恐らく支給されたのであろう釘を手に持ち、平井目掛け手振り下ろした。
しかし柳原の心配をよそに、平井はスッと男を躱し後ろに回り込んだ。
143霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:21:42

そして

「…平井、さっ…」

平井はその男の喉を、支給されたナイフで切り裂いていた。

「かっ…、かはっ!!」
首から夥しい程の血を吹き出しながらその男は倒れた。
もう絶命は時間の問題だった。
だが、まだピクピクと動く身体を平井は何度となく切り付けた。
144霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:26:32
飛び散る鮮血に、引き裂かれる肉。
「ダメや…アカンて、平井さっ…」
柳原は状況を理解できていなかった。
だがあまりにも悲惨な光景に無我夢中で平井を止めた。

ポタ、ポタと血がしたたるナイフを持った平井は柳原に向き直った。

「お前がもっているのは正義感やない。ただのエゴや。」

柳原は平井の言葉を耳の中で繰り返した。

エゴ…?
「お前がしようとしてることは「皆で助かりたい」というエゴの押しつけや」
145霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:30:22
数秒前まで人間だったモノを一瞥し、平井は続けた。

「お前は、たとえ絶望して自殺をはかろうとしてる奴が居てもとめるんねやろ?」
「当たり前やんけ、だって…」
「生きる道があるんやから、か?アホか。生きる為に人を殺すのが嫌な人間に人を殺すのを手伝わせるんか?」
柳原は怒鳴った。

「人を、仲間を殺さんでも生きる道はある!!それを今から探すんねやろ!!」
「じゃあもし、殺る気になっている奴と出会ったらどうする?」
146霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:34:11
平井はナイフを柳原に向けた。
「こうやってナイフを押しつけられて、死ぬか生きるかの瀬戸際に、殺さないなんてゆうちょな事言ってられんのか?」

平井はナイフを持つ手を下ろし、言った。
「ええか。殺る気になっている奴は容赦なく殺す。それができへんのなら…」

柳原は平井の目から悲壮に満ちた殺意を感じた。
147霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:37:18


少しの沈黙、破ったのは柳原だった。

「わかった。平井さんの言うとおりや。せやけど、もし仲間になった奴を殺したりしたら…俺──…」
「わーってる。」

二人はお互いを再認識するように見つめた。

「ほな、作戦考えなおそか。」
「その前に、ナイフ、洗ってこいや。」
「その前に、パンツ、買うてこいや。」
「ビビってるやんけ!!」
148霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/12(木) 22:40:38

“俺がお前を殺す”

言えんかった、言うべきやなかった。でも、言わんでもわかっていた。

たとえ意見や方法が違っても目標は同じ、

『生きてこのゲームを終わらせる』

二人は血の臭いが充満する部屋を後にした。

【残り63組】


死んだのは、あれきさんだーおりょうです。長々と失礼いたしました。
149名無しさん:2005/05/12(木) 22:54:54
age
150眠 ◆SparrowTBE :2005/05/13(金) 00:12:11
「ひとまず、作戦を立てよう。」
そう言う小沢の目は、真っ直ぐと井戸田を見つめている。
これが先程まで情けなく愚図っていた男なのか、と井戸田は目を瞬かせた。

歩き疲れた重い足を引きずり、スピードワゴンの二人が辿り着いたのは古い診療所だった。
中は荒れ果てていたが、いくつかの薬と包帯を見つけることが出来た。
スタートからだいぶ時間が経過している。それでようやく小沢も落ち着いてきたのだろう。
「俺達の他にも戦いを望んでないコンビもいるはずだ。そいつらにまずは接触しよう。」
「他に誰が出てたっけ?」
アンジャッシュ、エレキコミック、長井さん、いつここ…
小沢が指折り数えている所に、その場に不釣合いな明るいチャイムの音が流れた。

『おーっす、殺しあってるかー?視聴率も上がってきてるからなー、この調子で殺しあってくれー。』

響き渡るプロデューサーの声に井戸田は眉を顰める。
小沢は無言で放送に聞き入っていた。
151眠 ◆SparrowTBE :2005/05/13(金) 00:14:03
『ここで新しい死亡者の名前を読み上げるぞー。』

小沢の体が硬直した。
―新しい死亡者?…新しい?

『えー、「だるま食堂」「スパークスタート」「井上マー」「ガッポリ建設」「あれきさんだー おりょう」…以上だ。』
『残り63組になったな。んじゃ、頑張ってくれ。』

ブツ、と放送が切れた。途端に重苦しい沈黙が流れる。
「クソッ!!」
井戸田は側にあったテーブルに拳を叩きつけた。
何故彼らが死ななければならなかった?
…誰が、誰が彼らを?
死んだ者がいるということは、殺した者もいるかもしれないということだ。
さっと血の気が引く。
152眠 ◆SparrowTBE :2005/05/13(金) 00:15:29
「今俺、すげぇ死にたいかも。」
唐突な小沢の呟きに、井戸田は顔を上げた。
「小沢さん…」
「俺って前々からさ、浮き沈み激しいとこあったじゃん。…今、すげぇ沈んでる。」
硬く握り締められた小沢の手は震えていた。
「今死ぬのは簡単だけどさ…でも俺死んだら潤も死ぬんだよね。」
「だな。」
自分の命の事だというのに酷く冷静だな、と井戸田は苦笑いした。

「どうする?」
先ほどの教室でも言った質問を、再び投げかける。
死ぬか生きるか。首を吹っ飛ばされるか殺人ゲームに舞い戻るか。
井戸田が大事な事を小沢に預けてしまったということに気付いたのは、「る」の字を言った時だった。

「俺は生き残る。…潤には生きてて欲しい。」

「…わかった。」

小沢の頭をくしゃくしゃと撫で、井戸田は大きく頷いた。





スピードワゴン投下です。
小沢さんが精神的に追い詰められてきました。
ちなみに二人とも、戦いに乗る気は無いです。
153名無しさん:2005/05/13(金) 00:31:41
乙です

乃さん
アップダウン来ましたね〜この二人の話が読めるとは思ってなかったんで
かなりうれしいですv

霧さん
平井さん結構冷静で怖いですね〜
最後チラッと入ったネタが笑えました(笑)

夢さん
小沢さん沈みすぎですよ!!ただこの状況だとこうもなりますよね・・・
それでも潤さんのために死なない小沢さんがすごいなと思いました。  
154:2005/05/13(金) 00:38:40
スタートから何時間たったかわからない…
フラフラとあてもなくさまよい続けて誰にも出会わなかったのは奇跡というものだ。
まだ信じきれない現実を逃避する為に今日の収録にはどんな話をしようか、
ドッキリなのだからオーバリアクションな反応がいいかなどと
考えてしまう自分に嫌気がさした。

そっと木にもたれかかり気持ちを整理しようと深呼吸をした。
大阪も決していい空気ではなかったがここよりはましだろう。
鼻をツンとした臭いが通っていく…
それが血の臭いだと気づくのにだいぶ時間がかかった。
暫くしてナップサックに入っていたリストを確認する。
活字でかかれていた文字がこの殺風景な景色と同化していた。
なじみのコンビ名がいくつもつらなりその隣にかかれている名前。
155:2005/05/13(金) 00:40:02
『こんなの芸人殺しやで、ネタなんかそう簡単に沸くもんやないのに…』
なんていってたつい最近が懐かしい…
もし気づいていればすぐに番組を降りていただろう
なんとか生きなければ……その為には仲間が必要だ
リストを確認してかつて東京のコント番組で一緒に共演した
ポイズンガールバンド・アンジャッシュ・エレキコミック・長井秀和
・インスタントジョンソンの名前に小さく爪で跡をつけた
まずはこいつらを探そう…そしてこんな馬鹿な闘いを一刻も早くやめよう
156:2005/05/13(金) 00:42:39
一人で少年漫画のように奮起する自分を見て苦笑してしまう
昔は泣き虫で昔だってあたりさわりのないように生きていたのに
「そうと決まればやっぱり自分の身ぐらいは守らなあかんな」
司会で鍛えられた巧みな話術だって立派な武器である
ナップサックを地面にひっくり返し中身をあさる
数日の食料とサバイバルナイフこれは当たりかもしれない
「…ん?」
底に眠っていた武器を手にとるどうやらこれを主力に闘うようだ
サバイバルナイフよりもこれの方が幾分リーチが長い
飛び道具をつかわれたらおしまいだが至近距離の攻撃は危険だ
暫くはこれで闘おう

陣内の手にはしっかりとハリセンが握りしめられていた


と言うわけで陣さん投下です。
157名無しさん:2005/05/13(金) 17:28:01
>>134
文章も読みやすいし、面白くて良いと思うんだけど
北海道の方言の意味と使い方を間違えているから
分からないなら使わない方が良いよ
ガンガレ
158名無しさん:2005/05/13(金) 17:33:54
書き手乙!
で、一回くらいしか出てない芸人どうすることになったったんですか?
159乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/13(金) 18:09:48
>>157
北海道出身の友達のアドバイスのもと書いたのですが…。
どのへんが間違っているのでしょうか?
160名無しさん:2005/05/13(金) 21:09:49
起さん乙です!
リーチ長いけどハリセン(笑)
面白くなりそうです。頑張ってください!!
161名無しさん:2005/05/14(土) 02:53:17
>>159
したっけ確かめよう
なまらわや
〜だべ

したっけっていうのは「そしたら」って意味
使う例は「したっけさ〜(そしたらさ〜)」など

なまら・わやっていうのは同じような意味で
二つ重ねて使ったりしない

〜だべっていうのは今の人は使わない
使う年代はお年寄り辺り

他にもモニョる所はあるけど
北海道弁自体今の人は使わないし
分からなくて当たり前だからね
どうしても方言を使いたいなら
感情的になった時に「〜だべや!」って使うくらいで良いんじゃないの
方言っていうけど意識するほど今の北海道民は使ってないよ
標準語にアクセントが少し違うくらい
162名無しさん:2005/05/14(土) 09:37:03
細かすぎ
163乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/14(土) 13:05:51
>>161
したっけは私が間違ってたかも。
けど、“なまらわや”“〜だべ”は北海道の友達使ってる。
私の“北海道の方言普段何をよく使う?”って質問に“〜だべ”って答えてたし。
まぁ地域や年代によって違うのかもね。ちなみにその友達は小樽在住。
164名無しさん:2005/05/14(土) 20:49:38
>162
乃さんが自ら指摘を求めたんだから、親切で良いんじゃないですか?
165名無しさん:2005/05/14(土) 21:38:17
「〜だべ」は結構使ってる人多いね。なっちもやらトキオの松岡もよく使ってる。

特にこのスレの住人ってわけでもない身分なんで口出しするのもアレだけど
別に細かい方言は拘らないほうがいい気がする。
でないと神戸弁の芸人が大阪弁になってる事まで話が及ぶ。
166名無しさん:2005/05/14(土) 21:49:45
≫165
禿同。ここは方言に関するスレではない。
167名無しさん:2005/05/14(土) 21:51:58
他のバトロワスレでも何故か大阪弁とかになってた芸人いたよね。
それが邦楽板がどっかのバトロワスレから引っ張ってきて
名前置き換えただけだったからって誰かレスしてたけど。
168名無しさん:2005/05/15(日) 10:16:24
>>167
関係無い。あっちはパクリでこっちはオリジナル
169名無しさん:2005/05/15(日) 10:54:46
方言どうでもいい。続きマーダー?
170乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/15(日) 19:19:29
この戦いがグループ戦で本当に良かったと思う。
“良かった”なんていうのも不謹慎だから“不幸中の幸い”とでも言うべきか。
例えば今。夜交代で見張りを立て休息をとることが出来る。
そしてなによりも――最も戦いたくない相手と戦わずにすむことだ。
大木にもたれかかり静かに寝息を立てている弟を見て、たくや(ザ・たっち)は安堵の息をついた。
最初は殺し合いなどという非現実的な状況に二人で悲観するしかなかった。
けれどそんな状況の中でこそ、二人で一緒に協力しあうことができる。
生き残るために他者を殺すなどという選択はできないが、
“双子”という絆で結ばれた二人はきっと他のコンビよりはるかにチームワークはいい。
上手くすれば死なずにすむかもしれない。
そう考え、前向きにこの状況と向き合うことにした二人は交代で休みをとることにした。
いつ眠れるかわからないこのゲームでは、僅かな時間でも有効に利用しなければならない。
森の中、静かな風が木々を揺らす。二人が寄りかかる大木の空に大きく広げられた枝からは
時折緑の葉がひらひらと舞い落ちてくる。こうして静かに森中の自然が囁きあい――。
 「!?」
違う。この音は自然の音じゃない。
眠気と戦いつつ周囲に注意を巡らせていたたくやの耳に飛び込んできたのは、紛れも無く誰かの足音だった。
171乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/15(日) 20:39:48
 「かずや――」
声をかけ起こす間も無く、思った以上にそれは早く現れた。
木々の間、闇を纏った何者かの姿がたくやの瞳に映る。
 「だ、だれだ?!」
支給武器の金属バットを持ち、たくやは立ち上がった。
声が震えているのが自分でもわかる。誰かと遭遇するのは初めてだった。
 「その声は――ザ・たっち?」
こちらの質問に答えることなく逆に聞き返してくる。
声からすると男のようだ。
コイツは一体――。
 「なぁんだ。大物かと期待してたら。拍子抜けだな」
――な、なんだこいつ。
恐怖は消え、逆にたくやは相手の言葉に怒りを覚えた。
 「そんなこといって、君は誰なんだ?」
自然と激しい口調になる。それに反応するかのように、相手は動いた。
たくやの、金属バットを握る手に力が入る。
足音が近づき、その男の纏う闇は少しずつ薄くなり彼自身の姿を鮮明にする。
月の光に照らされにやりと笑う男の服にはまるで模様かなにかのように血痕がついていた。
172乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/15(日) 20:53:58
 「おまえは…!」
 「ハハッ。驚くのも無理ないか。さっき放送があっただろう?スパークスタートは、俺が殺したんだよ」
――な、なんだって?!
たくやは唖然とした。放送を聞いた時、ゲームは始まっているんだと絶望にくれたのは事実。
しかし本当に殺しを行ったものがいるなんて…。
矛盾しているのはわかっていた。けれど心のどこかで否定していた。殺し合いが行われていることを。
 「二組目はおまえらか。まぁいい、段々と敵のレベルを上げていけば。どうせ皆殺しにするんだ」
 「そんなこと言われる筋合いは無いよ。CMやドラマに出た僕らのが君より売れてると思うけどね。Diceさん?」
目の前の男――“Dice”にたくやは無駄に腹がたった。
殺しをしたことをまるで自慢話のようにしたこと。そして自分たちを馬鹿にしたような言い草。
珍しくたくやは強気な反論をした。
 「なんとでも言うがいいさ。おまえらなんて今すぐにでも片付けてやるよ」
そういうとDiceは背負ったナップザックの中から何かを取り出した。
――刀。 
ナップザックに入る程度の大きさだ。そこまで大きくはない。
しかし艶やかに光るそれの切れ味は一目瞭然。決して油断ならないものだ。
たくやの頬に一筋の汗が流れる。
――今自分は、死ぬか生きるかの境目に立っている。
たくやは金属バットを構えた。
173乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/15(日) 21:11:03
言葉は無い。
Diceは地面を蹴り前へ出て大きく刀を振りかぶってきた。
 「うわっ」
よく動きを見ていたため、素早く後ろへよけることが出来た。
――さすが“タッチ”だな。と、心の中で自分を褒めた。
Diceの刀は標的を失い、大きく宙を切る。
――今だ!
刀と一緒に前かがみになり隙だらけのDiceの首元を目掛け、たくやはバットを振り下ろした。
カキン。
金属音。たくやのバットは刀の嶺を叩いていた。
さっ、二人同時に一歩後ろにとぶ。
二度目は両者とも同時。振り上げた刀とバットが交差する。
 「たぁあっ」
渾身の力をたくやはバットに込めた。
宙を舞う刀。Diceが驚愕の表情を見せた時にはもう刀は地に刺さっていた。
 「もらったぁあ!」
背後に落ちた刀を拾うべく後ろを向いたDiceの背中に、たくやはバットを振り上げる。
――勝った。
勝利を確信したたくやの手はDiceの背まであとわずか20センチのところで止まる。
首だけこちらに向けたDiceの手にマシンガンが握られていた。
その黒い銃口は、たくやの額に向けられている。
 「ハッ、まさかお前なんかにこれを使うとは思って無かったよ」
その言葉を聞く前に、たくやはDiceに背を向けていた。
174乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/15(日) 21:21:35
 「かずやああああああああっ!」
バットを放り出しDiceに背を向けたたくやの叫び声は、
直後タイプライターのような銃声により掻き消された。
 「うわっ」
前のめりになって転んだたくやの背には複数の穴が空き
そこからとめどなく血があふれ出していた。
 「くそぅ…かずやぁ…逃げろ――」
それがたくやの最後の声となった。
倒れたたくやの頭に向けられたマシンガンの銃口からは煙が立ち昇っている。
それを持つDiceは満足そうな笑みを浮かべる。
 「馬鹿か。確かに俺はおまえらより売れてない、だから俺以外のやつ皆殺しにして俺が一番になるんだろ?」
たくやと連動しているかずやの首輪が点滅し、ピッピッと機会音を鳴らし始めた。
かずやは未だに眼を覚まさない。
Diceはたくやとかずや、二人分のナップザックを持つと素早くその場を離れ、闇の中へ消えていった。

――ザ・たっち死亡。


【残り62組】
175乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/15(日) 21:24:18
こないだスパークスタートを殺したのはDiceということで。
脇役はこのペースで死んでいってもらうことにします。じゃないと終わらないし。
他の書き手さんもがんがってください。
176:2005/05/15(日) 21:48:41
突然入ってきてアレですが、誰も書く気配がないようなので
あべこうじ投下させて頂きます。



暗闇の中、自分の足跡だけが響いている。


頭が痛い。

妙なことに巻き込まれてしまった。


ゆっくりと歩きながら未だ受け入れられない現実を必死に脳内に叩き込もうとしている。
こんなく何処かのツクリバナシみたいなもの、受け入れるはずもない。
まさか自分がこうなるなんて想像もしていなかったのだ。
番組に出演してるだけで人殺し?
この場で笑い叫びたくなった。
「…なぁんで、こうなっちゃったのかなぁ」
笑いのかわりにボソ、と文句を零す。

と、足に不思議な感覚を感じた。
ぐにゃ、という明らかに不自然なもの。
「っ、うわぁ!」
思わず足を上げて、踏んだモノを見た。

――死体だ。
177:2005/05/15(日) 21:49:32
もう誰のかも解らない原型を留めていないソレ。
ぐちゃぐちゃになっていて、見てると吐き気がした。
先程の放送をもう一度思い出す。
あの人でもない、この人でもない。
何となく見た事がある。ただそれだけ。
結局解らないままで、終わってしまった。
同時に自分の中でまた受け入れられないものが一つ出てきてしまった。
頭ン中こんがらがって、理解不能。
でも、一つだけ解った事実。
此れは、本物だということ。
そして、もたもたしていると自分まで死んでしまうということ。

…俺も、こうなるのか?

死にたくない。
殺したくもない。
俺は、どうすればいいんだ。

その場で立ちすくむことしか出来なかった。
178:2005/05/15(日) 21:50:54
余談ですが。
乃さんのリアルタイム投下にドキドキしてしまいました。
179名無しさん:2005/05/15(日) 22:31:28
乙です!

乃さん
アレをやったのはDiceだったんですね・・・
なぜかすごくあってる気がします・・・
頑張ってください!

玲さん
あべこうじですか〜好きな芸人なんでうれしいですv
頑張ってください!
180名無しさん:2005/05/15(日) 23:20:22
■■出演済みと死亡者のリスト■■

1青木さやか 
2赤いプルトニウム
3アップダウン(済) 
4あべこうじ(済)
5アホマイルド 
*アメリカザリガニ(済)
6あれきさんだー おりょう(死)
7アンガールズ 
8アンジャッシュ(済)
9アンタッチャブル 
10いつもここから
11いとうあさこ
12井上マー (死)
13インスタントジョンソン
14インパルス(済)
15エレキコミック
16ガッポリ建設 (死)
17ガリットチュウ
18カンニング(済)
19きくりん
20キャン×キャン
181名無しさん:2005/05/15(日) 23:20:57
21キングオブコメディ
22ザ・たっち(死)
23ザ・プラン9
24塩コショー
25磁石
26次長課長
27陣内智則 (済)
28スパークスタート(死)
29スピードワゴン (済)
30スパルタ教育
31Dice(済)
32だいたひかる
33ダーリンハニー
34田上よしえ
35だるま食堂 (死)
36ちむりん
37椿鬼奴
38ヅラットピット
39テツandトモ
40東京ダイナマイト
182名無しさん:2005/05/15(日) 23:21:33
41どーよ
42ドランクドラゴン
43友近
44長井秀和(済)
45ななめ45゚
46はいじまともたけ
47波田陽区
48はなわ
49パペットマペット
50ハロ
51ハローケイスケ
52ハローバイバイ
53ビッキーズ(死)
54ビックスモールン
55ヒロシ
56ベネと千太郎
57へらちょんぺ
58POISON GIRL BAND
59ホロッコ
60マイケル
183名無しさん:2005/05/15(日) 23:24:00
61マギー審司
62魔邪
63南野やじ
64ヤシコバ月子
65安井順平
66靖&花子
67ライセンス(済)
68レギュラー
69レム色
184名無しさん:2005/05/16(月) 19:34:05
>>180->>183
乙!アメザリってエンタ芸人じゃないんだ。
ってことは【残り62組+1組】ってことで63組((゚д゚;))ガタブル
完結させれるといいね。
185名無しさん:2005/05/16(月) 21:01:59
本当だ。
アメザリってエンタ芸人じゃないんだね。
だったら突然出てきたのは何故?
ルールで「書き手がどうしても」って場合は可とは書いているけど
特にその理由もアメザリがどうして参戦してきたのかも書いてなくない?
好きな芸人出したい気持ちは分かるけどさ
186名無しさん:2005/05/16(月) 21:55:43
1回でも出てたら出れるってことかな?
アメザリは確か出てたけど
187霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/16(月) 22:10:27
すんません。勘違いしてたみたいですわーιアメザリはエンタ芸人じゃなかったんですね…
本当にすんませんでした!!
188:2005/05/16(月) 22:27:41
二日連続であべこうじ投下させて頂きます。
189:2005/05/16(月) 22:30:42
いつまでも眺めていて、見慣れてしまった死体を見下ろしながら深く考えた。

自分が生きる確立はほぼゼロに等しい。
だが、完全なゼロではない。
生きれる…?

その時、頭の中で何かが弾けた気がした。

と、後ろからガサガサという物音が聞こえてくる。
慌てて伏せた。

早く行ってくれ。

死にたくない
死にたくない
死にたくない

俺は、

生きる。

戦うんだ。

ナップザックの中に手を突っ込んで武器を手にした。
190:2005/05/16(月) 22:32:06
ボゥっと人影が暗闇の中にうつる。
相手の様子を見て待つことにした。
自分の武器を今一度確認してみた。
安易なテレビ等で良く見るような拳銃。
相手は一体…?
身構え、相手の顔を確認するまで暫く。
すると――――

「あべ、さんっ」
「…はいじま?」

聞き覚えのある声に一瞬安堵した、が、
まだ油断はできない。
彼はこのゲームにノる人間なのか?
また自分の中の緊張の糸が張り詰めた。
「そんなに敵視したような目で見ないでくださいよ。俺、このゲームに乗るつもりはないです」
「…へぇ、本当?」
「本当ですって」
「じゃあ、武器下に置いてよ。そしたら信じる」
我ながら安易な台詞だ。
彼もこっちの要望に答えてくれるだろうか。
カシャン
何かが下に落ちた音。
「これでいーですか?」
ほんっと、単純だなァ。
191:2005/05/16(月) 22:33:29

「…ン、それでいーよ」
落ちたものを確認すると、少し大きめのカッター。
「こんなんで戦え、なんて無茶しすぎですよね」
はいじま呆れた声で笑いながらそう言った。
「でもね、はいじま」

俺は、このゲーム乗ることにしたんだぁ。

「…え?」

先ほど捨てられたカッターをゆっくりと手にして
勢い良く彼を床へ押し倒し、カッターを突きつける。
「あべさ、っ」
「ごめん、俺は死にたくないんだ。他の人が生きてくれればそれでいいなんて綺麗事もない。
 ねぇ、俺に殺してもらえるなんてハッピーなこと、きっとないよ?」
ニヤリ、と口元を歪めて見下すように笑ってやる。
彼の顔が青ざめていくのが暗闇の中でも解った。

何かが壊れていく。

俺も、みんなも、世界も、なにもかも。

「楽しかったよ。ぴん劇団も、ルミネも、色々。俺はやれるだけやる、だめだったら上で会おう?」
それだけ言い残し、彼の首へまっすぐにカッターを振り下ろした。



はいじまともたけ 死亡

残り62組
192:2005/05/16(月) 23:01:51
勝手にはいじまくんを出してしまいました。
と、いうわけであべさん投下完了しました。
193乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/17(火) 18:35:40
玲さん乙!あべも乗ったんだね。

えっと今から投下しますノ
194乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/17(火) 19:01:52
このゲームにおいて、最も大切な仲間を体を張って守ることはできない。
自らの命を捨ててまで守ろうとしてもこの連動する首輪がある限り、
自分を守ることが相方を守ることであり、相方を守ることが自分を守ること。つまり自分と相方、二人分の命を守らなければならないということになる。
そう考えた時に、“こんなもの”で果たしてそれが可能なのかとカンニング竹山は不安に思った。
歩き続けた二人がついたのは、ブロック塀に囲まれた民家だった。この辺りは住宅街らしく、いくつもの家々が連なっている。
さらにすぐ近くには商店街があり、いかにも人が集まりそうな場所となっていた。
けれどこれだけある家の中、ここに偶然誰かが来る確立なんて少ない。そう思い、竹山と中島の二人はある民家の家の庭に見を隠した。
家の中だと逃げる時などなにかと不便だし、ここからなら誰かが近づいてきたときにすぐわかる。
その考えのもと、ブロック塀の影に二人で並んで腰を下ろしてからかれこれ2時間が経つ。
途中の放送では死亡者の名前が読み上げられ、やっぱりゲームは始まっているんだと現実を突きつけられた。
そこで二人は武器の確認がまだだったことを思い出し、ナップザックを開けてみた。すると――
 「くそっ」
思わず声を漏らす竹山。そんな竹山の顔を覗きこみ中島が「どうした?」と尋ねる。
 「どうしたもくそもあるか!なんで俺の武器、フォークなんだよ!」
ナップザックを開けたときに出てきたもの、それは銀色に輝くフォークだった。
これでスパゲッティでも食べろってことか?それとも刃物として?
 「まぁそういうなって。俺のボウガン、やるから」
そういえば中島の武器はボウガンだったっけ。矢は10本くらいしか無かったみたいだけど。
というか、『やるから』って―― 
 「やるから、ってなんでだよ」
 「いや、な。おまえさっき、俺の分まで頑張るって言ってたからな」
 「これで守れ、ってことか?」
目が点になっている竹山に、中島はにやりと笑い頷いた。
 「わかった。けどこれで逆にお前が死んだら意味無いからな!
どっちかが死んだらどっちも死ぬんだからな」
 「わかってるよ」
顔を見合わせた二人に笑顔が戻ったその時――

二人のすぐ後ろで地を震わすような銃声が響いた。
195乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/17(火) 19:04:00
2分割したくなかったから改稿減らしたら読みにくくなりました。スマソ。
この続きは明後日にでも。
196乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/18(水) 17:54:40
暗闇の中で煙草の先の小さな光とそこから細く細く立ち上る煙。
ゲーム中の喫煙は煙や匂いが誰かに気づかれる危険がある。
しかしここ、商店街の一角にある八百屋の二階。
店の者が暮らしていたであろうここの台所は外からは死角になっていて、
ここなら誰かに発見される心配も無い。
 「なぁ、堤下ー」
相方の声にインパルス堤下敦は首を横に向ける。
先程から流しの下の収納庫を漁っていた板倉だったがその両手には包丁が握られていた。
 「この包丁と俺のメスで“鬼切り”が出来る!」
 「いや板倉さん、今物ボケやんなくていいから!」
こんな状況でもボケとツッコミが出来るなんて、インパルスもまだまだ健在だな――、
と堤下は思った。板倉もきっと癖でボケたんだろう。映画出演の時も葬式シーンでボケたくなったって言ってたし。
 「あ、おまえ煙草吸ってるじゃん」
堤下が煙草を吸っていることに今気がついたのだろう。
板倉は包丁を片付け立ち上がるとダイニングテーブルを挟んで堤下の正面に位置する椅子に腰をかけた。
そして煙草を取り出しライターで火をつける。
二人の煙草から出る煙が交差し、闇に解けていった。
 「そういえばさぁ、おまえ武器なんだったの?」
ふいに板倉が尋ねる。
そういえばそうだ、さっき確認してみたけどまだ見せてなかった。
堤下は自分のナップザックの中からそれを取り出した。
 「なにこれ?」
 「煙幕、みたいだね。黒い煙が出るやつ」
 「へーえ、俺のメスよりは使えそうだね」
果たしてこれが役に立つのかはわからない。
けれど誰かと遭遇しても相手を傷つけることなく上手く逃げられる。
板倉の言う通り、そう考えるとメスよりははるかに使えそうだ。
椅子の下に置いたナップザックに煙幕を戻そうと堤下が手を伸ばした時――
夜空に響くような銃声が聞えた。
197名無しさん:2005/05/18(水) 20:46:51
乙です!
ボケる板倉さんに笑ってしまいました(笑)
続き楽しみにしてます!!
198名無しさん:2005/05/18(水) 23:01:54
age
199乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/20(金) 01:09:29
その銃声からすぐに二度目の銃声。
今度は肩を竦める暇もなかった。板倉の手からは煙草が落ちて
テーブルの上で静かに煙を上げている。
堤下はその落ちた煙草と自分のをテーブルの上にあった陶器の灰皿に投げ入れ、
ナップザックを持って立ち上がった。
 「俺、止めてくる。板倉さん、ここでまってて」
すでに玄関へと体を向けている堤下の背に板倉がいつもより甲高い声を発する。
 「え、ちょっと待てよ。なになに、なんでおまえ一人でいくの?」
 「だって危険だし――」
ごく近くで殺し合いが行われている以上、様子を見に行く必要がある。
無駄な争いなんて止めるべきだし、
何より殺人鬼が近くにいるとしたら自分たちの身にも危険が及ぶからだ。
板倉を同伴させまいと思ったのは先程の怯えようから。
ゲームへの参加が告げられあれほど取り乱していた板倉を
殺し合いが行われている現場に連れて行くのはあまりにも酷だと思えた。
 「な、だっておまえが死んだら俺も死ぬじゃん。一緒だし」
 「けど、板倉さん怖くないの?」
こう会話している間にも銃声は続く。
二人の間を流れる空気もなんだか速くなっているようだ。
速くしないと、誰かが殺されるかもしれない――。もしそれが、仲の良い芸人だったら?
その思いが堤下を焦らせた。
 「怖くないわけねぇだろ。けどやっぱここは行かなきゃ」
いつもの静かな板倉とは違う。恐怖を抑え、行くと言った板倉の目には強い意志があった。
 「わかった、いこう」
二人は争いを止めるため走り出した。
200乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/20(金) 01:18:48
八百屋を出てすぐの道。
この先にある民家のほうから銃声が聞えてくる。
二人は銃声の呼ぶほうへと走り出した。
 「堤下、これはなに、戦いを止めることを前提?」
 「うん」
真っ直ぐと走ってゆくと坂道になっており、その坂の下にある二つの民家に人影がうかがえた。
片方は時折ブロック塀から顔を出し銃を撃つ二人組み。ここからだと木が死角になっていて顔が見えない。
そのうち一人だけが銃を持っているようだ。
そしてもう片方は、一瞬顔を出してはすぐに引っ込める。銃がないのだろう。
 「あ!」
思わず堤下は声を上げた。何故ならその銃がないほうの二人組みのうちの一人が
塀から体を出したのと同時に銃声が響き、その人物が後ろに吹っ飛んだのだ。
 「ねぇ、板倉さん!撃たれた!!」
 「誰が?!」
板倉は視力が悪いらしいが、自分は良い。
その倒れた人物と、それにかけよる相方が堤下にははっきりと見えた。
 「竹山さんたちだ…」
 「えっ?!」
倒れたのは中島。竹山はその中島に寄り添っている。
中島がボーガンをもっているところ、それで対抗しようとしたのだろう。
マズイ――このままじゃあ、間合いを詰められて終わりだ。
 「どうしよう。竹山さんたち、やばいよ――」
 「堤下、俺考えあるんだけど」
板倉はポケットからメスを取り出し自信ありげな笑みを浮かべた。
201乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/20(金) 01:27:58
 「おまえの煙幕あるだろ?あれを使うんだよ」
次々と、『カンニング救出作戦』が板倉の口から語られていく。
堤下は黙って耳を傾けた。
 「あれを使うだろ。で、おまえが行って、中島さんを背負って三人でその場を離れる」
闇夜の中さらに煙幕を使ったら視界はゼロに等しい。
まぁ、確かに煙幕を使った作戦ともいえないくらい単純な作戦だ。
けど――
 「板倉さんは?」
それが気になったのだ。自分がカンニングの二人を安全な場所に誘導するとして、
その間板倉はなにをしているのか――。
 「俺は、あいつらの足止めをする」
 「えぇ?!」
思わず大きい声がでて、堤下は慌てて手で口を塞いだ。
 「なに言ってんだ。危ないよ!」
 「だって必要じゃん。足止め係り」
 「だったら俺が――」
 「いや、俺のが身軽に動けると思うし。おまえは中島さんを運ぶ役があるだろ?」
驚いた。あんなに怖がっていたのに、自ら危険な役を買って出るなんて――。
けれど堤下は首を縦には振れなかった。だって、板倉さんを危険なめにあわせるなんて、もし怪我でもしたら――。
 「板倉さん、でも――」
 「だーいじょうぶ!っていうか俺がやりたいんだもん」
そういうや否や、板倉は民家に向かって駆け出した。
 「堤下!煙幕!」
仕方ない。もう板倉の無事を祈るしかない。
 「板倉さん!絶対死ぬなよ!」
そう叫んだ瞬間、辺りは暗黒に包まれた。
202名無しさん:2005/05/20(金) 17:40:50
乙です!
板倉かっこいいですね!続き楽しみにしてます。
203乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/20(金) 17:59:31
 「な、なんだ?!」
突然辺りが暗闇に包まれる。いや、段々と闇が迫ってきていると言った方が正しいかもしれない。
なにか煙のようなものが辺りを支配した。
カンニング竹山は中島に寄り添いながら辺りをキョロキョロと見回す。
突然襲ってきた誰かは、こちらに反撃する隙を与えることなく撃ちこんでくる。
しかしこのままでは終わりだと思い、ボウガンで対抗しようと
二人の盾となっていたブロック塀から体を出した中島を銃弾が襲ったのだ。
それは中島の脇腹を抉り取り、ただでさえ不利な状況をもっと悪くした。中島の怪我は致命傷といえるくらい深かった。
 「中島、大丈夫か!!?」
 「い、今のうちに――」
そういわれて気がついた。何が起こったのかわからないが今がチャンスだ。
この闇に乗じてできるだけ遠くへ逃げればこの危機的状況から脱出できる。
 「よし、中島!俺の背に――」
 「け、けど…おまえも、怪我が――」
竹山は咄嗟に左上腕部を押さえた。中島が塀の外に倒れた時、
その中島を塀の中へ戻すため一旦外へ出たのだ。
その時飛んできた銃弾に腕を貫かれ、中島とともに負傷してしまった。
 「こんなの掠り傷だ!早く――」
竹山が腹を押さえ塀に寄りかかる中島へ背を向けた時だった。
 「いい、竹山さん。中島さんは俺が運ぶから」
 「え?!」
気づかなかったのも無理は無い。ただでさえ闇夜で暗いのに、この謎の煙だ。
インパルス堤下敦がどこからか現れ、すでに中島の手をとり自分の背に乗せようとしている。
 「ななななんだよ?!これおまえが?!」
 「うん、竹山さんたちが襲われてるの見たから。いいから急いで!」
彼を信じていいのだろうか?、などという疑問は竹山には一切なかった。
それは信用の問題というよりも、藁にすがるような思いだ。
突如現れた堤下の指示に従い、堤下と中島、そして自分と三人分の荷物を持って走り出した。


204乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/20(金) 18:32:28
走れば走るほど煙は薄くなり視界も開けてくる。転ぶかもしれないという心配も無くなり徐々にスピードを上げ、
100メートルほど離れた時にはもう煙の届かないところまで来ていた。
 「あ、ありがとう――」
竹山は乱れた呼吸を整えながら、堤下にお礼を言った。
何がなんだかわからないが、助けてくれたことは事実。堤下の助けが無ければきっと撃ち殺されていただろう。
 「竹山さん!大変だ!中島さんが――」
アスファルトの上に横たわる中島の顔は青白い。
その出血量は半端なものではなく、助かる見込みが無いことは明らかだった。
中島を背負っていた堤下の服にはべっとりと血がついている。
 「な、中島!おい!!おまえ死ぬな!!」
 「た、竹山――」
中島の息遣いは荒い。声を出すこともままならないようだ。
一秒一秒時が刻まれるたびに中島の命の灯火は弱くなっていく。
 「もういい!おまえ喋るな!!」
 「竹山――」
ただ竹山の名を呼ぶだけの中島はもう生気のかけらも無かった。
そんな中島を見つめる竹山の目からは涙が溢れていた。
 「竹山さん、ごめん――」
呆然と立ち尽くす堤下が消え入りそうな声を出す。竹山は首を横に振った。
 「助けてくれて、嬉しかった。謝らなくていいから、だから――」
突如竹山の首輪が無機質な音を発しだした。それは竹山の死を目前にしていることと、
中島の命が消えたことを意味している。
 「堤下!絶対に相方を守れよ!俺が出来なかったぶん、死んでも守れ!」
死がすぐそばに迫っている男が出す声とは思えないくらい、その叫びは強く大きかった。
涙で顔を濡らす堤下は竹山の言葉にはっきりと頷く。
 「わかったらいけ!死ぬとこなんか見たくない!はやく相方のとこへ行ってやれ!」
無言で何度も何度も頷き、竹山に背を向け再び闇へと戻っていった。

――カンニング死亡

【残り61組】
205乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/20(金) 18:34:55
有名なわりに早い脱落です。個人的にこのタイミングでいいか迷ったのですが、
強敵と思っていた人が早くに死ぬってのはよくあるので。
板倉編はまた明日にでも投下します。
206:2005/05/20(金) 22:20:34
ハリセンを片手にふらついていた所に突如聞こえた爆発音に身をすくめる

誰かが爆弾を使ったのだろうか?…それとも首輪が…
「あ…あかん!!そんなん考えたら!!」
頭をよぎる想像に首をふった。
自分は妙な真似をしないかぎり首輪が爆発することはないだろうが
相方を持つ人間は相方が死ねば自分も死ぬ

戦力や知恵、はげますことも出来るが危険は二倍に増える
そんなことを思えば一人は不安もあるがなんだか楽だと思ってしまった
「今頃皆どんなことしてんのかな…」

吉本メンバーの皆もこのテレビを見ているのか
俺のことを心配していくれているだろうか…
それとも賭けをしているのだろうか…

「はよ大阪帰りたいわ…」
帰ったら何をしようか…
まず実家にいる飼い猫と思いっきり遊んでやろう
それで大好きなたこ焼きでも食べたい…


こんな極限の事態で自分の能天気さに苦笑に近い笑みがこぼれる
自分が天然と呼ばれるのが今わかった気がした


短いですが陣さん投下です
爆発音はカンニングのもので
207名無しさん:2005/05/20(金) 23:43:48
乙です!

乃さん
カンニング脱落しましたね・・・最後の竹山のセリフがすごくよかったです。

起さん
陣さんホント天然ですね(笑)面白かったです。
208乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/21(土) 14:32:16
怖くないわけなかった。
今だって手は震えているし、足は竦みそうになる。できれば回れ右をして逃げたい。
けれど――逃げちゃいけないんだ。
インパルス板倉はメスを握る右手に力をいれる。
そして顔を隠すためにさっきの民家で拝借してきた帽子を深くかぶった。
おばさんがかぶっていそうな、下が広がっているやつだ。
大丈夫。頭の中で、何度もイメージした。絶対にうまくいく。
何度も自分を励まし、何度も襲ってくる恐怖を跳ね除け板倉は走った。
すぐに目的の民家が見える。銃声も耳を覆いたくなるくらいの大きさだ。
いよいよだ――。板倉の心臓が早鐘のように鳴り出した
そっと近づいて様子を見ると。、鉄でできた門は開け放たれており門から中を覗いてみると、中には広めの庭があった。
 「あ――!」
思わず漏れた自分の声に板倉は手を口で塞ぐ。
なんと、庭の隅のほうで3軒ほど離れた民家に向かって銃を向けていた謎の二人組みが、
板倉のいる門のほうを向きこちらに歩いてきたのだ。
急いで門から一歩離れ、塀に体を貼り付けるようにして息を潜めた。
暗くて誰かはわからない。ただ二人の話す声だけは聞えた。
 「あいつらか?!このへんな煙」
 「とにかく逃げられるまえに追うぞ!」
そう言い、まず何かを手に(おそらく銃だろう)持っている人物が出てきて、
それに続き手ぶらな相方が出てくる。すぐそばの板倉に気づいていない。
チャンスだ――!
板倉はさっと一歩踏み出すと、後から出てきた人物の首に手を回しメスの峰を押し当てた。
209乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/21(土) 15:17:11
 「ひっ」
突如首に何かが絡みつき、いつもここから山田一成は悲鳴をあげた。
そしてそのまま動けなかったのは、首の左側になにかが押し当てられる感触があったから。
恐怖のあまり、山田の頭は真っ白になった。
 「どうした?」
前にいた菊地が山田を振り返る、と同時に手にもっていた銃をこちらへ向けた。
 「誰だ、その後ろのやつ」
 「や、やめてくれっ!」
突然謎の人物に捕まり恐怖でいっぱいだった山田はそれだけ言うのが精一杯だった。
菊地なら後ろの誰かを撃つために、引き金を引くかもしれない。
そしたら間違いなく俺にも当たる――。
山田の脳裏にゲームが開始されてからのことが過ぎった。
山田自身はそこまでやる気は無かった。当然死にたくない。けれど誰かを殺してまで――。
その山田の気持ちを表すかのように、支給武器は灰皿。しかもアルミ製。
しかし菊地は違う。彼に支給された武器はグロック19。拳銃。
それは菊地の“生き残りたい”という気持ちをはっきりと表していた。
山田は止めることが出来なかった。菊地はゲームに乗ってしまったのだ。
 「な、なぁ、この手、幽霊――?」
思わず手を首元まで伸ばし、自分の自由を奪う手に触れてみたのだったが――。
その手はゾッとするほど冷たく細かった。
 「刃物持った幽霊なんかいない。誰なんだ?」
振り向くことができない山田だったが、この煙幕らしきもののせいで
菊地にもその人物の顔は見えていないらしい。
すると――。
 「銃をおろしてもらえますか?」
すぐ後ろで幽霊のものとは思えないような声がした。
210乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/21(土) 15:33:41
 「だから誰なんだ?」
菊地は激しい口調で聞いた。相方山田の首に絡みつく腕の主。
煙幕と、その何者かがかぶっている帽子のせいで顔を窺うことができない。
しかしその声からそれが男であるということがわかった。
 「言うこと聞いてください。そうじゃないと――」
男は続きを言わなかった。山田の顔が青白くなるのがわかる。
銃をさげろ? 向こうの一方的な要求に頭に来た菊地だったが、
下げなければどうなるかは目に見えている。あのナイフのようなもので山田の喉を切り、首輪の連動で自分も死ぬ。
ここは言うことを聞くしかない。 渋々菊地は銃を下げた。
 「それからその銃をこっちへ投げてください。そうすればあなた達を傷つけません」
 「な、そんなことしたら俺達が困るじゃないか!」
思わず反論した菊地だったが、男がペン回しのように刃物を指先で回転させたので、すぐに口を閉じた。
どうする――?今ここで銃を渡し助かっても…いや、相手が言っていることは本当かどうかわからない。
もしかしたら銃を置かせ、そのあとに山田を殺すかもしれない。けどそれは渡さなくたって一緒だ。
むしろ相手の攻撃しないという言葉が本当ならば、銃を渡したほうがまだ死なないで済む。
銃をなくすことにより生存率はぐっと下がるが。そう思うとやはり銃を手放すのは――。
 「わかった」
頷き、菊地は山田とその男のほうにグロックを投げる。コンクリートの地面に落ちる音がした。
 「これでいいんだろ?――っあっ!!」
山田と男の後方を、菊地は指を指した。
 「え?」
二人が同時に振り返る。
――今だ!!
菊地は地を蹴り一瞬にして二人との距離を縮めた。
そして山田を刃物とは逆方向へ思い切りひっぱり、山田という盾の無くなった謎の男の腹に蹴りをいれる。
 「うっ」
今度は呻き声をあげて前かがみになった男の首にかかと落し。
がっ、と鈍い音がし、男は地面へ崩れおちた。
 「あんな古典的な方法に引っかかるなんてな」
後ろでへたりこんでいる山田をよそに、菊地は男の帽子を取り払った。
211乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/21(土) 15:56:59
煙がもう殆どなくなっている中、顔を隠していた帽子を取り払われる。
しかし痛みに呻いている最中、抵抗することができなかった。
インパルス板倉は、自分を見下ろすいつここ菊地の顔を見上げる。
 「へー、誰かと思ったら」
勝利を確信しているのだろう。菊地はにやりと笑みを浮かべる。
大馬鹿だった。まさか小学生がやるようなあんな手に引っかかるなんて。
『あ、UFO!』ってそれで本当にUFOがいた試しが無い。
これで窓の外を向いてしまった者は、“単純馬鹿”ということになる。
しかし今回は“単純馬鹿”で済まされる問題じゃない。実質馬鹿なんだろうけど。
これで待っているのは“死”でしかないのだ。
そう思った瞬間、今まで押さえつけていた恐怖が板倉の全身を駆け抜ける。
嫌だ――死にたくない――。
 「これで俺から銃を奪えると思ったんだ?」
菊地は、板倉がうっかり手放してしまったメスを拾い上げ、それを見てまた笑みを浮かべる。
 「ったく。ちょっと焦ったじゃねえか。まぁいいや」
そう言うと菊地は板倉の頭部へ銃口を向けた。
 「やめろ…やめてくれ…」
 「今更命乞いって、格好悪いよ?」
どんなに逃げようとしても恐怖と痛みで体が動かない。
菊地の人差し指がゆっくりと動く。
嫌だ、怖い、誰か助けてくれ――!!
―――。
 「え?」
すぐに来ると思っていた痛みも銃声も来ない。
どうしたんだ? ぎゅっ、と瞑っていた目を板倉はそっと開けた。
 「板倉さん!大丈夫!!??」
聞きなれた声に顔を上げると、堤下が憔悴したような表情で駆け寄ってきた。
 
212乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/21(土) 16:15:54
 「あれ?あいつらは?」
 「山田さんはやる気が無いらしくて。俺が殴って気絶させた菊地さんを担いでどっかへ行ったよ」
 「…そっか」
全身から力が抜ける。安堵の息をついた。堤下の手にグロックが握られていることから、上手く奪ったのだとわかった。
 「…怖かった」
 「俺も間に合ってよかったよ。危ないところだった。ごめんね」
堤下がすまなそうな表情をする。板倉は「いいよ」と言った。
 「大丈夫?立てる?」
まだ蹴られた箇所の痛みは治まらない。板倉は差し出された堤下の手に素直につかまった。
 「それで…竹山さんたちは?助けられたの?」
それを聞くなり堤下の表情が曇った。嫌な予感がする。まさか――。
 「俺が行った時にはもう、中島さんは殆ど死にかけてた。もちろんその場から避難したけど…」
自分の顔が引き攣るのがはっきりとわかった。
おい――なんだよそれ。冗談だろ?
 「なぁ…うそだろ?死んだなんてうそなんだろ?!なぁ!!」
思わず堤下の胸座を掴んでいた。堤下は悲痛な表情で首を横に振る。そんな――。板倉は地面に膝をついた。
 「なんでだよ…なんで死ぬんだよ…ありえねぇよ…」
カンニングの二人とはそこまで親しい間柄では無かった。
しかしエンタ以外の番組でも何度も共演したことのある顔なじみである。その二人が――。
 「竹山さんは――」
堤下の声に、板倉は涙で濡れた顔をあげる。
 「“助けてくれて嬉しかった”って言ってた。それと――」
声をつまらせた堤下の目は潤んでいた。
 「“俺ができなかったぶん、絶対に相方を守れ”って」
堤下は元の商店街のほうへ体を向けた。もう煙幕ははれていて、街燈の明かりがはっきりと見える。
そして見上げれば月も星も。今までどおりの夜空だった。
 「俺は竹山さんたちを助けに行って良かったと思う」
 「堤下…」
板倉はゆっくりと立ち上がった。
 「行こう、板倉さん」
堤下の声に頷き、二人は静かに住宅街を離れた。
213乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/21(土) 16:16:52
長かったインパ編(?)が終わりました。
いつここの行方とかそういうのは後々書いていきたいと思います。
214:2005/05/21(土) 20:47:52
やってしまったんだ。

後悔と事実が残り、現実から遠く引き離された気がした。
彼の首には深くカッターの刃が刺さっている。
ぐっと力を入れてカッターを引き抜くと血が吹き出た。
彼の自分を呼ぶ声が掠れながら聞こえ、同時にヒュッと何かが通るような情けない音。
あぁ、こんなにも人って儚いものなんだ。
そのうち音も声も何もかもが消え、あたりに静寂が訪れる。
カッターの先に光る赤黒い液体をじっと眺めた。
気持ちが悪い。
さっきの出来事で薄汚れた自分のシャツでカッターを磨く。
若干汚れは残っているが、まぁいい。
彼のナップザックを持ち、立ち上がって前へ進むことにした。

足が重い。
頭が痛い。
時々投げ出したくなったけど、構わず歩いた。
その時、ポケットから乾いた携帯の電子音が響いた。
215:2005/05/21(土) 20:48:58
マズい。
「――っ!!」
慌てて携帯を手にとって、気がついた。
ここ、繋がるのかな?
考えててもしょうがない。それに誰かに見つかったら…。
ディスプレイには「自宅」の文字。
とにかく、しゃがんで通話ボタンを押した。
「は、はい。もしもし…」
震える声の直後、
「ぱぱー?」
聞きなれた、かわいらしい声。
「華生…。」
愛しい娘の声。
「ぱぱ、いつかえってくるの?」
なんて答えたらいいのだろう。
ずっと帰ってこれない?
いつか帰ってこれる?
解らない。
悩んでいると、突然華生の声が遠くなった。
「もしもし。全部聞いてる」
「…そっか」
久しぶりに聞く嫁の声に安堵した。
216:2005/05/21(土) 20:49:51
周りを気にしながらも、最後になるかもしれない会話を少しだけ楽しんでみた。
「ねぇ」
「ん?」

「…帰って、これるわよね?」

それについては…。
「わかンない。やれるだけやる」
「そう」
やっぱり、嫁の声はどこか悲しそうで、
「俺が死んでも泣くなよ?」
「泣くわよ   あ、華生が代わって欲しいって」
はい、という声と共にまた娘の声。
「ぱぱぁ?」
「うん」
「はやくかえってきてね」
「うん」
胸が、痛い。
「かのん、ぱぱのことだぁいすき」
痛い。痛い。痛い。
張り裂けそうだ。
「…うん、パパも華生のこと大好きだよ!」

ごめんね。

バイバイって言って、通話を切った。
もう声も聞けないかもしれない。
悔しさともどかしさに、涙が出そうになった。

後悔はしない。
決めたんだ、戦うんだ。
217:2005/05/21(土) 20:51:02
引き続き、あべこうじ投下完了しました。
原作を良く知りませんが、携帯は繋がる設定でしたでしょうか?
218名無しさん:2005/05/21(土) 21:44:56
原作では使えなかったはず。
219名無しさん:2005/05/21(土) 21:59:18
乃さん長編乙です。
まさか菊池が鬼畜キャラとは…。二人の今後が楽しみ。
インパは堤下は板倉を守る役割なのがとてもリアルっぽいですね。
最後はちょっとウルッときました。
玲さんも乙です。
作家のみなさん続き期待してます。
220名無しさん:2005/05/21(土) 23:50:42
乙です!
乃さん
いつここは乗る側に回りましたか・・・菊池さん強そうですね〜
精神的に強い人っていうのは手ごわいですよね

玲さん
携帯はつながりませんが良いと思います。
(芸人同士でのやり取りやそれによって対抗策を練るなどがなければ)
というか家族との会話はさせてあげたいですよ。
221名無しさん:2005/05/23(月) 09:23:53
あべさん…!ちょっとウルッときた。
222乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/24(火) 19:25:33
芸人達が殺し合いを行う中、その管理を行う本部には穏やかな時が流れていた。
スタッフたちが各々の作業を行っている姿を眺めつつ、
このプログラムの最高責任者五味一男プロデューサーは回転椅子から立ち上がり本部のドアを開けた。
 「どうもこんばんはー」
 「あぁ、わざわざ来てくださって」
涼しげな挨拶と会釈を交わし、五味が本部に招きいれた人物――
福澤朗と白石美帆は案内のまま近くの椅子に腰をかけた。
接客用の大きめのテーブルにスタッフがいれたコーヒーが三つ置かれる音が響く。
 「どうですか?調子は?」
福澤の問いに頷くと、五味はスタッフを呼び何か紙を持ってきてもらう。
それを目の前に座る白石と福澤に見えるようテーブルに置いた。
 「…これは?」
白石の視線が紙におち、二人は静かにそれを読む。
 「今回のプログラムで“ゲームに乗った人間”のリストさ。確認できたぶんだけだけど」
紙を指差し得意げに語る五味は、二人に提案あった。
 「それでなんだけど…三人でトトカルチョしません?誰が優勝するか、賭けましょうよ」
それを聞くなり二人は顔を見合わせすぐに真剣な顔になる。やっぱりお金が絡むと違うらしい。
 「いいですよー。もちろん。じゃあ私は…」
指で名簿をなぞりながら選んでいるようだ。やがて白石が財布から福澤諭吉を一枚取り出す。
 「Diceさんで」
 「当てに来たねー」
 「当たり前です」
続いて選ぶのは福澤だ。彼の目も真剣そのもの。しばらくして決めたのか福澤も財布を取り出す。
 「じゃあ、あべさんで」
 「あー妻子持ちは強そうですよねー」
二人の選択に共感しつつも、五味はしっかりと自分が誰に賭けるか決めていた。
 「五味さんは?」
その問いに答えるように、五味が指差した名前に二人は目を丸くする。

 「次長課長…?」
223名無しさん:2005/05/24(火) 19:41:08
新参者ですが投下してよろしいでしょうか?
224乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/24(火) 19:45:50
というわけで明日くらいに次課長投下させていただきますノシ

>>223
いいと思いますよ。コテハン、トリップ推奨です。
一応それぞれの芸人の書き手とかきまっているんで今まで出てない人でお願いします。
225BRスレ初心者 ◆yOLxh0F1.c :2005/05/24(火) 20:38:02
今日か明日あたりにドランクドラゴン投下したいのですがよろしいでしょうか?
226名無しさん:2005/05/24(火) 20:44:33
>>225
ちっとは空気読めよー
書き手さんの名前は黒・功・眠・霧・乃・起・玲って来てるんだぞー
227名無しさん:2005/05/24(火) 21:11:50
>>226
そこにこだわる意味あるのか?
お前こそ空気読めてないと思うが
228音(225) ◆yOLxh0F1.c :2005/05/24(火) 21:28:37
作品投稿しちゃいけないのかと思ったら、HNの事でしたか…。
正式投稿の時は↑と名乗ります。改めてよろしくお願いします。
229名無しさん:2005/05/24(火) 22:29:33
保守
230名無しさん:2005/05/24(火) 22:50:25












231名無しさん:2005/05/24(火) 22:58:53
乙です!
まさか次課長にかけるとは・・・すごく気になります。
頑張ってください!
232音 ◆yOLxh0F1.c :2005/05/24(火) 23:59:22
ドラドラ投下させて頂きます。

「あぁもう、なんなんだよこれー。意味わかんねぇよー」
 ドランクドラゴン鈴木はそう喚くと、頭をグシャグシャと掻き毟った。
いつもと同じ情けない姿――唯一違うのは、ここがコントの収録現場ではなく、バトルロワイヤルの会場であるという事である。

 ビッキーズの死を目の当たりにして茫然自失状態の鈴木を、相方塚地がどうにかスタート地点から引っ張りだしたのが数分前。
人気のない林の中央部で、とりあえず腰を落ち着けようとした矢先、どこからか断末魔の悲鳴が聞こえてきた。
現場はどうやら近くではないようだったが、鈴木はそれをきっかけに、完全なパニックに陥ってしまったのだった。
「落ち着けや、鈴木――」
「塚っちゃんが落ち着きすぎなんだよ!!」
 なだめるように伸ばされた塚地の手を、鈴木は乱暴に振り払う。
「塚っちゃんだって見ただろ、いきなり二人が殺されたところ!
 さっきの悲鳴だって、どっかで誰かが襲われたって事だろ!? 本当に、人が死んだり、殺されたりしてるって事だろ!?」
 眼鏡の奥の目を見開いてそう叫ぶと、再び先程と同じ状態に戻り、髪を掻き毟る鈴木。このままでは作戦を立てるどころか、即誰かに見付かってゲームオーバーである。
「そりゃ確かにおかしな事になってるけども……しゃあないやん、落ち着かな」
「落ち着いたってしょうがないだろ。じゃあなんだよ、落ち着いたら『今までのは全部嘘でしたー』ってなんのかよ」
「それは――」
それは、ない。先程の悲鳴はともかく、ビッキーズはあの時、確実に死んでいる。
233音 ◆yOLxh0F1.c :2005/05/25(水) 00:07:05
「あぁー、もう」
 鈴木はまたグダグダ言い始めた。塚地はさすがに苛立ち始める。無意識にポケットを探るが、煙草は抜き取られている――それを確認した瞬間、苛立ちが堰を切って溢れ出した。
「いい加減にしろや鈴木!! いつまでグズグズ言ってるつもりや!!」
 突然の怒号に思わず口を噤む鈴木。塚地は顔を真っ赤にして更に怒鳴る。
「こんな所でぐずってたってどうしようもない、そんくらいわかるやろ!?」
 本当は、自分だって怖い。バトルロワイヤルの開始が告げられ、ビッキーズが殺された瞬間は、恐怖に精神を支配されそうになった。
 しかし――隣に座っている相方を見た途端、塚地の思考回路はどうにか繋がった。
 いつものように、間抜けな顔で硬直している鈴木。やっぱりこいつは、俺がいないとなんにも出来ん――お笑いではまったくの役立たず、実生活でも抜けた所ばかりの鈴木のお蔭で、自分は壊れずに済んだ。
 そう――鈴木には、ほんの少し……本当にほんの少しだけだが、感謝している。
 だからこそ。
「お前、一児のやないか。父親がそんなんでどうするんや」
 塚地の言葉に、鈴木は最愛の妻と息子の顔を思い出したのだろう。だらしなかった顔が、僅かに引き締まる。
「奥さんや子供、悲しませたくないやろ」
「うん」
「だったら、生き延びな」
「……うん」
 鈴木はしっかりと頷いた。落ち着いた、とまではいかないだろうが、今、この場でどうするべきかは飲み込めたようである。
「なら、まずは武器の確認や」
 使う使わないは別として、状況の確認は必要である。人の気配がないのを確認して、二人はナップザックを開けた。


今回はここまでとさせて頂きます。
本当に初心者ですので、おかしな点等あったら指摘してくださると助かります。
234名無しさん:2005/05/25(水) 00:40:50
乙です!
ドランクドラゴン本当に想像通りですよ
二人の言葉遣いも的確でいいと思います!
235名無しさん:2005/05/25(水) 00:43:49
今更この話題を持ち出すのもどうかと思ったがアメザリ
確かエンタのDVDに入ってなかったか?十分エンタ芸人の資質はあると思う
236名無しさん:2005/05/25(水) 02:58:01
今パソコン使えなくて携帯からしか書き込めないんですけど雰囲気壊しそうなのでやめた方がいいでしょうか?ちなみにだいだひかる書きたいです。
237名無しさん:2005/05/25(水) 06:35:54
>>235
資質とか言ってワロス!!ナンダよ資質ってwwwww
クソ番組の飼い芸人になる資質なんざ見出さなくて結構だwwww
238名無しさん:2005/05/25(水) 07:30:46
>>236
別に携帯からでも平気だと思いますよ。だいたさんの読みたいです
239名無しさん:2005/05/25(水) 14:05:43
>>237
別にアメザリをエンタ芸人にしたいわけじゃないだろう…。
240乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/25(水) 21:49:12
浜辺にうつ伏せに倒れている二つの体。一見死んでいるように見えるが息があるのは確かだ。
 「いやー麻酔銃ってホンマに寝るんやなー」
寄せては返す波の音の中、男前ランキング第三位を誇る涼やかな笑顔を浮かべ、
次長課長井上聡がどこからか現れた。その井上の足跡の隣に並ぶのは相方の河本準一。
 「さてどうする?海に沈める?」
普通の人間が聞いたらおかしいと思う発言。
しかしこれは殺人ゲーム“プログラム”。ある意味当然なことだった。井上も、さも当然というように頷く。
それを合図に河本が二人のうちの一人――ちむりんのなみえの体を引きずりだした。
海に向かうそれは、砂浜に大きく弧を描く。
河本が殺しを行うことに対して興味は湧かなかったため、井上は自分の持つ銃をくるくると指で回した。自分の武器はこの麻酔銃。
そして河本は防弾チョッキ。どちらも攻防でいえば明らかに防御。しかし上手く使えばこのように他の芸人を消していくことは可能だ。
今回は向こうがこっちに全く気がついていなかったのがラッキーだったな――。
 「おし、行こう」
銃に向けていた視線を上げると河本が作業を終えたのか、
ちむりんの二人の分の荷物も持ち井上の前に立っていた。
 「なんかおまえ、やっぱり女性に対しても手加減ないなー」
相方の行動に苦笑いをする井上。それに河本は同じく笑みを返す。
 「あれやな、ラジオでも言ってたやん。酒ぶっかけてきた女に蹴りかましたとか」
 「あぁ、あれはなぁ…。でもかみさんの尻には敷かれてるし」
砂浜から遠ざかる二人の背後で則末チエの首輪が爆破する音が聞えたが、二人は振り返りもしなかった。
 「そういえばあれやなー。あのラジオももう終わりやん」
 「あのって、ハイブリットアワー?」
ヨシモトハイブリットアワー。週5日、吉本の若手がパーソナリティーを勤めるラジオ番組。
次長課長の二人は火曜日担当だった。
 「うん。だって月曜と水曜、週2日も空いてしまうやん」
 「火曜は空かないだ?」
 「当たり前や。なんで俺らが死ななきゃあかんねん」
五味一男の目は間違いでは無かったのかもしれない。
二つ並んだ足跡を、月が艶やかに照らしていた。
 

241乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/25(水) 21:50:54
――ちむりん死亡。

【残り60組】
242乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/25(水) 21:52:54
ごめんなさい、死亡表記忘れましたorz
次課長のラジオエピは昨日聞いて思いつきました。
あのラジオ、火曜は見たい番組と被ってなくていつも聞いてるので。
243乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/05/25(水) 21:54:01
また途中で送信してしまったorz スマソ
明日からPCの修理に出すんで一月弱いなくなります。
他の書き手さんがんがってねノシ
244名無しさん:2005/05/25(水) 23:24:03
乙です!
次課長意外と恐いっ!パーソナリティやってるんですね。知りませんでした。
なんか二人とも冷静ですね〜
245名無しさん:2005/05/26(木) 03:15:48
だいだひかるは歩いていた。

ただひたらすら歩いていた。
どれくらい歩いたのか、もう気にならない程歩いた。

鬱蒼と生い茂る雑草も背の高い木も視界には入らない。

そういえばさっき遠くから何か音がしたような気がした。

「………あれは何の音だったんだろう」

そう思った時、だいだひかるの足は止まった。
ふと、気がつくと片手にリュック。

「これは何だっけ?」

思考回路が、ほんの少し動き出した途端、ダムが決壊したように汗が吹き出し、全身が音をたてて震え出した。
そうだ。私は何をしているんだろう。

頭の整理がつかず、何か強い力で脳が考える事を拒否しているようだ。

数時間前、とても大切な事を言われた気がする。
何か大事な物を見た気がする。


『ガシャン』

ふいに片手から滑るようにリュックが落ちた。
246:2005/05/26(木) 03:25:59
名前忘れてました。スマソ。


「落とした…」
手をひっぱられるように頭の中から現実の世界に引き戻された気がして、一つ一つを言葉にして確かめなければ、今にも精神がどこかへ飛んで行きそうだった。

リュックをかがんで取ろうとすが、膝ががくがくと震えひざまづくのにとても時間がかかった。

そして、ゆっくりと震えの止まらない手でリュックを開けてみる。
そこには見た事もない鉄の塊。
40センチ程度の大きさの黒い塊の

――――――銃だ。

とっさにだいだひかるはそれをリュックに直した。

「そうだ。」
小さい声で、しかし、しっかりと意志のある声でだいだひかるは言った。
247:2005/05/26(木) 03:37:01
思い出したように首に手をあててみると、固く無機質に自分に張り付く首輪。
目を閉じると誰かの肩越しから見た血の海が見える。
不思議と体の震えは止まり、汗が出つくした体は冷え始めていた。

リュックを背負い直し、だいだひかるはまた歩き始めた。

ついさっき出会ったばかりの背中の黒い塊が、自分を支配しているうに感じた。

今でも1から10までは思い出せない。
出したくもなかった。

だいだひかるは自分がこの黒い塊を構える姿を想像した。
「はは、似合わないなぁ」
何故だか笑えてしまう。


私は誰かを殺すんだろうか?
私は誰かに殺されるんだろうか?

だいだひかるは歩いていた。
ただひたすら歩いていた。



だいださん登場だけさせてみました。
248名無しさん:2005/05/26(木) 13:04:53
乙です!
ただトリップ付けることをお薦めします
249名無しさん:2005/05/26(木) 19:16:22
漢字一文字コテハン=腐女子→キモス!!
250名無しさん:2005/05/26(木) 21:05:53
≫249=age厨→カエレ!!
251一応書き手:2005/05/26(木) 21:54:56
質問なんですけど、他の書き手さんが使われている芸人を借りる(そちらの展開に影響を与えない程度に使わせてもらう)のってアリなんですかね?
許可を取る事、矛盾点は出来るだけ生まないように気を付ける事は前提として。
252名無しさん:2005/05/26(木) 22:15:56
素敵な文章でキャラにあってます
・・が。だい「た」ですよね;
253名無しさん:2005/05/26(木) 22:36:09
将来的には対決してどんどん登場人物は消されていくわけですよね。
担当の書き手さんがいる芸人もそのうちどちらかが消されていくわけで…。
どちらを残すか書き手さん同士の判断が今後難しくなりそうですね。
254名無しさん:2005/05/26(木) 22:47:47
>>251
許可とってちゃんと話し合ったり出来るなら良いんじゃないですか?

操さん乙です。
だいたさん表に出ないけど内心ものすごい不安定ですよね・・・
こういう独白系も好きですv
255名無しさん:2005/05/26(木) 23:14:52
>>250=初心者腐女子→キエロ!!
256名無しさん:2005/05/26(木) 23:25:51
まあまあ、マターリいこうよ。つ旦
書き手さん達もがんがってくれてることだし。
257名無しさん:2005/05/26(木) 23:26:46
マターリの意味も知らずすぐ乱用=腐女子→キエロ!!
258名無しさん:2005/05/27(金) 01:21:56
ちょっと、皆さん落ちつきませんか?
この空気の流れだと書き手さんも小説を投下しづらいと思うのですが…。
あ、気分害したらすみません…。
259名無しさん:2005/05/27(金) 12:06:57
晒しage
260名無しさん:2005/05/27(金) 17:07:16
更級
261名無しさん:2005/05/28(土) 01:11:07

まぁ、とりあえずスルーしとけ
何言っても揚げ足取るヤツが居るみたいだし
262名無しさん:2005/05/29(日) 05:08:48
書き手さんガンガレage
263名無しさん:2005/05/29(日) 12:55:59
このスレがハカロワ的なノリになりゃ良いのに、と、
考えているのはオラだけか?
そうなのか?
264音 ◆yOLxh0F1.c :2005/05/29(日) 13:48:40
ドラドラ投下させて頂きます。(>>232-233の続き)

 ナップザックの一番上に入っていた筒状の物を、塚地は持ち上げてしげしげと眺めた。隣に添えられていた木製の箱を開けると、そちらには針のような物が10本ほど入っている。どうやら、支給されたのは吹き矢らしい。
 一応武器ではあるが、銃火器と比べると射程も殺傷力も見劣りする。こんな物が、本当に役に立つのか――
 そこまで考えた所で、塚地は今までとは別の恐怖感が湧き上がるのを感じた。
 今、武器で戦う事を前提に考えなかったか?
 それはつまり、他人を――
 塚地は慌てて頭を振り、その思考を追い払った。
「……塚っちゃん? どうかした?」
「あ?」
 突然おかしな行動を取った塚地を見ていたのか、鈴木が心配そうに声を掛けた。
「いや、どうもせえへんよ」
塚地は出来るだけ平静を装って振り向く。
一瞬、今考えていた事を鈴木に話そうかと迷ったが、それは先送りする事にした。今は他にやる事がある――鈴木の武器の確認だ。
「それより鈴木、お前の武器何やった?」
「ああ……」
 塚地が訊ねると、鈴木は溜息混じりにそれを引っ張り出した。
硬い布地にプリントされた、茂みと同色のマーブル模様。
「迷彩服か……」
 今の服(鈴木はスーツ、塚地は夏用学生服)よりはずっと丈夫だし、多少は身を守る役に立つだろうが、銃で撃たれてしまったら一溜まりもない。第一、何故ヘルメットが入っていないのだろう。これでは頭部も無防備なままだ。
 吹き矢と同じで、どうも使えない“武器”である。
「……ん?」
 いや、違う。
 鈴木にはあるではないか――芸人としては欠点にしかならないが、今、この場では、最大限にその威力を発揮する武器が。
265音 ◆yOLxh0F1.c :2005/05/29(日) 13:57:05
「そうや……。でかした鈴木! それ、当たりやで!」
「え? なんでだよ」
 鈴木は塚地が喜んでいる理由がわからず、怪訝そうな顔をする。
「ええか鈴木、お前はもう既に、立派な武器を持っとるんや」
「ええ!?」
 塚地は鈴木を頭の天辺から爪先まで眺め、満足そうに頷いた。
「お前の武器はな……その『圧倒的な存在感のなさ』や!」
「……ほめてないよね、それ」
 鈴木はがっかりした様子で呟く。
「アホ! 敵に見付からんってのは大切な事やで。いざとなったら、相手の背後に回りこんで、得意の関節技でもかけたったらええ」
「無理だよそれ!」
「無理とか言って諦めてる場合ちゃうやろ! ちっとは前向きに考えろや……俺もこれ使って援護したるから」
 その言葉に鈴木は期待するような表情を見せたが、次の瞬間、大袈裟に肩を落とした。
「なんだよ、全然強そうじゃねーじゃん」
「そういうわけだから頼んだ鈴木!」
「だから無理だって!」

 鈴木は気付いていなかったが、この時塚地は、ほんの少しだけ安堵していた。
 自分のために、他人を殺せるか――その結論を出す時が、先送りされたような気がしたから。
 しかし、この時でさえ、ゲームは着実に進行している――忍び寄る足音に、二人はまだ気付いてない。


今回はここまでです。他の皆さんとノリが違いすぎる気がしますが、今は大目に見てやってください。
266名無しさん:2005/05/29(日) 20:27:01
>>264-265
鈴木の「武器」テラワロスwwwww
面白かったです。この先二人がどうなるのか楽しみ。
267名無しさん:2005/05/29(日) 20:37:27
>>264-265
確かに武器だなww
明るめの話と暗めな話を混ぜ合わせる技がネ申レヴェル。
ドラドラには頑張って欲しい。

所で、複数のコンビが合体するのはアリなんだよな?
・・・な?
268音 ◆yOLxh0F1.c :2005/05/29(日) 20:53:14
>>266>>267さん
感想ありがとうございます。感想にいちいちレス返すべきではないのかもしれないけど、やっぱり嬉しいです。
>>234さんも、遅ればせながらありがとう。

コンビ合体についてですが、私はアリのつもりでいました。
1組だけでは大掛かりな作戦とかも立てられないし、ストーリーを盛り上げるのが難しいと思うのですが。
ただ、あまり一人で多くの芸人さんを占有してしまうのは、それはそれで問題だと思いますけど。
(まあ、力量次第ではあるでしょうね。たくさん使ってても、全員をうまく生かせれば問題ないわけで)
269267:2005/05/29(日) 23:35:32
>>268
dクス!
270???n:2005/05/31(火) 21:01:16
だいだひかるは歩いていた。
ただひたすら歩いていた。
すると、遠くに古い診療所が見えて来た。
だいた・「診療所・・・・?」
少し古びていたがドアは壊れてなく、すんなりと中に入れた。
いや、正しく言えば誰かが入ったあとだった。
・・・・・コツコツコツ
小沢・「?!誰か来るっ!」
井戸田・「おちついて小沢さん!」
ギィ・・・・・
井戸田・(誰だ?)
だいた・「・・・・スピード・・・ワゴン?」
小沢・「・・・だいたさん・・・」
だいたは安心してその場にペタリと座りこんだ。
スピードワゴンはまったく殺意が無いように見えたからだ。
井戸田・「・・・だいたさんはこのゲームに乗る気は無いのか?」
だいた・「・・・・誰がこんなゲームに乗るもんですか!!!!!」
小沢・「ちょっ・・・だいたさん静かに!」
井戸田・「・・・だいたさん。俺達と組みません?
     人を一切殺さずに、一緒にゲームクリアしませんか?」
だいた・「・・・・解った。組みましょう。」
---------------------------------------------
はじめまして。
いきなりですがだいたさんとスピードワゴンをくっつけました。
三人はまったく殺意はありません。
では次の方どうぞ。
271名無しさん:2005/05/31(火) 21:09:22
>>270
スピードワゴンって他に書き手さんいらっしゃいますよね?
勝手に合体させて大丈夫なんですか?
272霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/31(火) 21:28:01
どうしても殺したい人がいた。
憎しみじゃない。

愛、故に。

(…偽善者)
長井は自身の感情に押し潰されそうだった。

このゲーム、必ず生き残ってみせる。
その為なら、かつて番組を共にし互いに高めあってきた仲間でさえも裏切る事を厭わない。

だが…、
273霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/31(火) 21:28:20

(…早く、)
長井は探していた。

(必ず、自分の手で殺めなければ)

苦しませたくない。

(早くっ…)
哀しませたくない。

(早く、お前のもとへ…)

絶望を、味あわせたくない。

「青木っ…!」

唯一無二愛
どうぞ、無事で。

GOD BLESS YOU
─貴女に神のご加護がありますように─

そこに潜むは果たして神か、それとも。

【続】
274霧 ◆ulAwgplWcU :2005/05/31(火) 21:29:06

長井さんの続きです。
長井さんは青木さんを助けるまで正気を保てるよう、自分の中の感情を極力押さえる様にしています。

まぁ、助ける=殺めるなんですけどね。

アメザリの事でお騒がせしました。
275名無しさん:2005/05/31(火) 22:05:42
>霧さん
乙です。長井さんと青木さんどうなるんでしょう…すごく続きが気になります。
276:2005/05/31(火) 23:51:16
微かに聞こえた足音に身体が反射してしまう
廃墟となった瓦礫に身を潜ませてあたりを伺う
手ににじむ汗と震える身体…荒い息遣いを極力おさえる

そういえば今回がはじめてだったな
人間と出会うのは

そっと足音が去る方向をゆっくりと瓦礫の隙間から覗いた


277:2005/05/31(火) 23:51:59
番組で時々一緒のコントをやりはじめた頃から
喋るようになった東京の芸人
もともと事務所も違うのだから
これをきっかけになかよくなれて
そして一番頼りがいのある人

「なが…」

いいかけ口をつぐむ

何かがおかしい

何故?

普段はあんな怖い顔をする人だったか

あの人もこのゲームで感覚が麻痺したのだろうか…

違う何か切羽つまったような…

どうして?



278:2005/05/31(火) 23:52:18
必死にこの狂気の地で思考を繰り返すその後ろに忍びよる恐怖に
陣内は気づかないままだった


「ねぇ…あれ陣内さんじゃない?」
「そうだね…どうする?」
「今さ…いっちばん稼いで…番組でてるのって陣内さんじゃない?」
「じゃあ…先輩だけど殺っちゃう?」
「いやいやいや……でも今日の阿部の思考…いつもよりさえてるよ」
279:2005/05/31(火) 23:54:29
と言うわけで陣さん投下です
ポイズンってまだ誰も使ってませんでしたよね?
もし使われていたのなら申し訳ございません

長井さんの今後が気になるあまり接触とはいきませんが
後ろ姿だけださせていただきました
280名無しさん:2005/06/01(水) 00:08:14
>>270
空気も読めない香具師は帰れ
だいたひかる&スピードワゴンの書き手さんに迷惑かけんなやヴォケ

↓書き手さん気にせず続きドゾー
281名無しさん:2005/06/01(水) 00:56:37
>>起さん
乙です。
ポイズンはまだ誰も使っていません。

コテハン・トリップの使用を推奨します。

>>280
言い過ぎ。
もう少しオブラートに包んでやれ。
282名無しさん:2005/06/01(水) 08:03:29
書き手さん乙です。

>>270さんは新規の書き手さんのようですが、
だいたひかるもスピワも使用されてますが…??

名前とトリップ必須のほうが良いのでは。
283乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/01(水) 09:10:18
小さな液晶画面に表示された赤い点。これは生存者がいるということを表すのだろう。
自分たち以外の生存者がすぐ近くに――しかも二組ばかりいる。
これはまたとないチャンスだった。
 「なぁ、手榴弾もっとるやろ?」
次長課長井上は歩を並べる河本に声をかけた。
 「今俺らが向かってる方向に誰かおんねん」
この簡易レーダーも手榴弾も、先程二人が浜辺にて殺害したちむりんの二人に支給されたものだった。
河本は防弾チョッキと手榴弾。そして自分は麻酔銃とレーダー。
これだけの武器を備えているものは他にいないだろう。
そう考えると、優勝というのもそう遠くない道のりかもしれない。
 「あっちに手榴弾投げればええんやな?」
 「うん」
すぐに河本はポケットにいれておいたらしい手榴弾を取り出し、思い切り投げた。
それと同時に二人は回れ右をし、地面を蹴る。
少しの間と同時に後ろから耳をつんざく爆発音が聞え爆風が走り出した二人の背中を強く押した。
 「うわっ」
隣で河本が前のめりに転ぶ。井上も転びかけたがなんとか踏みとどまった。
 「すっごい爆発やなー。ここまで強いとは知らなかったわ」
 「ハハ、でもおかげで上手くやれたみたいや。見てみ?」
手元のレーダーを河本に見せる。先程まで点滅されていた二つの赤い点は死亡者であるということを示す青に変わっていた。
こうも簡単だと殺した気もしない。けれどこちらが危険に巻き込まれることも少なく、中々良い方法に思えた。
 「こいつら誰だったんやろ?」
 「まぁどうでもええんちゃう?あと三時間で六時の放送やし」
あっけらかんとした調子で井上は笑った。河本もにやりと笑みを浮かべると、
二人は夜の闇の中へ消えていった。

――ベネと千太郎死亡
――スパルタ教育死亡

【残り58組】

284名無しさん:2005/06/01(水) 17:07:23
乃さん乙!!

次長課長がまさかこんな恐いキャラとは・・・
おもしろいですよ!!
285???n:2005/06/01(水) 19:33:08
身勝手な行動ですみませんでした。
私の話はスルーして下さい。
申し訳ありませんでした。
286名無しさん:2005/06/01(水) 19:43:29
いとうあさこ新だ?
287名無しさん:2005/06/01(水) 19:53:47
>>乃さん
次長課長の怖キャラが最高に良い。
そして後の事を考えた計画的な物語をdクス!

>>285
落ち込まずに、また他の形で挑んできてくれる事を願う。
288音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/01(水) 19:59:26
>>264-265から

 鈴木は慣れない手付きで迷彩服に袖を通した。
 お笑い芸人からレンジャー部隊へ。まるでそれは、このゲームそのものを表しているようだった。
 塚地の方も、いざという時のために、腰のベルトに吹き矢の筒と2本の矢を差してある。吹き矢なんて咄嗟に使えるものではないが、手の届く所に武器があれば、不安が少し減るような気がした。
「鈴木、上着使わないんなら貸せや」
 鈴木が脱いだ服をナップザックに押し込もうとしているのを見て、塚地は声を掛けた。
「いいけど、塚っちゃんが着るつもり?」
 鈴木は自分と体型の違いすぎる相方を見る。
「袖くらい通るやろ。こんな薄っぺらいシャツよりマシや」
「じゃあ……」
 鈴木がスーツの上着を手渡そうとした、その時。
 ガサッ――
 茂みを踏み分ける音。
 二人が振り向くと、そこには袈裟に鉢巻姿の男――南野やじが立っていた。
 焦点の合っていない虚ろな瞳、どこか恍惚としたような顔。とても戦場に立つ人間の表情ではない。しかし彼は、二人を認識した瞬間、自分の手にした武器を振り上げる――
 それは、鋭く削られた鉛筆であった。
289音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/01(水) 20:10:57
 数メートルの間合いを、南野は怯む様子もなく一気に詰める。武器が文房具だとは思えない程のその気迫に、塚地はたじろいだ。どうすればいいのか、頭が真っ白になる――
 塚地の視界を、灰色のスーツが遮った。
 上着を投げ捨てた鈴木は地面を蹴る。そして体を低く沈め、真っ直ぐ突っ込んでくる南野にタックルを仕掛けた。
 静かに舞い落ちるスーツ。塚地の視界が再び開けた時、南野は地面に背中をつけていた。鈴木はそのまま、淀みない動きで南野の腕を掴み、アームロックをかけた。
「う、あ、……いだだだっ! 痛いっ!!」
 悲鳴を上げて手足をばたつかせる南野。先程までの気迫はどこにもなく、目には涙が浮かんでいる。鉛筆は既に彼の手から放れ、木の根元に転がっていた。
 塚地が笑っていいのか迷っているような表情で、二人を止めに入った。
「鈴木、放してやれ。こいつももう、戦う気ないやろ」
 その言葉に、鈴木も南野に戦意がなくなったのを認め、腕の力を緩めた。
「うっ……うわああぁぁ!!」
 鈴木に恐れをなしたのか、関節技から解放された途端、南野は一目散に逃げ出した。

「……何やったんやろなー」
 鈴木のスーツを拾い上げ、無理矢理腕を突っ込みながら塚地は呟いた。
「不意打ちすれば鉛筆でもいけるって思ったんじゃねーの?」
 鈴木が余裕の口振りで言う。
 彼とて格闘家の端くれ、素人の不意打ちくらいでは動じないらしい。
「いくらなんでもそれはないやろ……」
 言いながら塚地は、南野が残した鉛筆を拾う。なんの変哲もない、ただの鉛筆だ。
「襲ってきた時のあいつ、ちょっとおかしかったで。お前にやられて正気に戻ったみたいやけど」
290音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/01(水) 20:14:47
「ああ……おかしかったって言えば」
 鈴木が何かを思い出そうとしているように首を捻る。
「なんや鈴木、気になる事でもあるんか」
「うーん……いや、タックルした時にさ、なんかちょっと、匂いが」
「匂い?」
「うん……」
 塚地は鈴木の服に鼻を近付けて匂いを嗅いだ。確かに妙な残り香がある。どこかで嗅いだ覚えがあるのだが、はっきり思い出せない。少なくとも薬品の匂いではなさそうだが。
「香水かなんかつけてたんちゃう? 男がつけたっておかしないやろ」
「そうかなー」
 鈴木の声にかぶさるように、ざざっ、と木の葉の揺れる音がした。奇妙なほど静まり返っていた林に、一陣の風が巻き起こる。
 その瞬間、“それ”の襲撃が始まった。
 噎せ返る様な匂いが溢れ、感覚が惑わされる。南野に纏わりついていたあの匂いだと判断するより早く、思考能力が奪われ、世界はまるで夢の中のようにあやふやになった。しかし、不思議と恐怖は感じない――むしろ、心地良いくらいだ。
 意識が闇へと堕ちていくのを、二人は止める事が出来なかった。

 我に返った鈴木が一番初めに見たものは、闇の中に溶けるような、漆黒のドレスの女性。
 そして、彼女の前に恍惚とした表情で立つ、自分の相方であった。
「ごきげんよう――椿鬼奴です」
 蠱惑的な微笑みを浮かべ、彼女はそう名乗った。
291音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/01(水) 20:16:03
今回はここまでです。
南野やじ&椿鬼奴さん使わせて頂きました。
292:2005/06/01(水) 20:17:40
287さん>>ありがとうございます。勇気ずけられました。
     別の形で参加させて頂きます。
     ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。

・アンガールズ・
「や〜まぁ〜ねぇ〜・・・・。どうする?」
「そんなこと言ったって・・・・」
アンガールズの二人は小さい部屋の中に居る。
偶然見つけた隠し扉の中に部屋があったのだ。
部屋の中には救急箱が1つあるだけの殺風景な部屋。
そんな部屋で二人は壁に寄りかかっていた。

「・・・・。田中さん。もしかして殺る気?」
「ばっ・・・・!ちょっ何考えてんの山根?!俺がそんな事やるワケ・・・」
「無いよね。」
「あ・・・うん。」
「でもどうする?殺らなきゃ殺られるよ?」
「う〜ん・・・・。でも俺こんな武器持っといて言うのもなんなんだけど
俺そんな勇気ないし。」
山根はドライバーとハンマー。田中はサブマシンガンだ。
「まぁね・・・・それよりどうする?此所しばらくは安然かもしれないけど
いつかはきっと見つかるよ?」
「そうだよな・・・。とりあえず此所から出よう。
とりあえず敵に出会って殺意があるようならすぐ逃げる。」
「で、殺意が無いようなら?」
「・・・・・その時はその時で。」
「・・・・・・あっそ。」

二人は部屋から出て暗闇へと消えて行った。

293:2005/06/01(水) 20:20:43
アンガールズのお二人。
使わせてもらいました。
294名無しさん:2005/06/01(水) 22:03:08
>>薬さん
アンガールズのうだうだ加減が巧い。

sageとコテハン・トリップ推奨です。
295起 ◆PhlgJkjSDU :2005/06/01(水) 22:37:40
早速ですがトリップつけることに致しました
色々とご指導ありがとうございます

296名無しさん:2005/06/02(木) 02:00:50
>>286
まだ登場していないと思います
297名無しさん:2005/06/02(木) 13:03:00
>>音さん
乙です。鬼奴姐さんの登場にドキドキしてます!
続き楽しみにしてます。
298名無しさん:2005/06/02(木) 18:25:48
キモスレ晒しage
299名無しさん:2005/06/02(木) 19:49:49
■■出演済みと死亡者のリスト■■

1青木さやか 
2赤いプルトニウム
3アップダウン(済) 
4あべこうじ(済)
5アホマイルド 
*アメリカザリガニ(済)
6あれきさんだー おりょう(死)
7アンガールズ  (済)
8アンジャッシュ(済)
9アンタッチャブル 
10いつもここから  (済)
11いとうあさこ
12井上マー (死)
13インスタントジョンソン
14インパルス(済)
15エレキコミック
16ガッポリ建設 (死)
17ガリットチュウ
18カンニング(済)
19きくりん
20キャン×キャン
300名無しさん:2005/06/02(木) 19:50:38
21キングオブコメディ
22ザ・たっち(死)
23ザ・プラン9
24塩コショー
25磁石
26次長課長 (済)
27陣内智則 (済)
28スパークスタート(死)
29スピードワゴン (済)
30スパルタ教育  (死)
31Dice(済)
32だいたひかる  (済)
33ダーリンハニー
34田上よしえ
35だるま食堂 (死)
36ちむりん  (死)
37椿鬼奴  (済)
38ヅラットピット
39テツandトモ
40東京ダイナマイト
301名無しさん:2005/06/02(木) 19:51:21
41どーよ
42ドランクドラゴン  (済)
43友近
44長井秀和 (済)
45ななめ45゚
46はいじまともたけ  (死)
47波田陽区
48はなわ
49パペットマペット
50ハロ
51ハローケイスケ
52ハローバイバイ
53ビッキーズ(死)
54ビックスモールン
55ヒロシ
56ベネと千太郎  (死)
57へらちょんぺ
58POISON GIRL BAND  (済)
59ホロッコ
60マイケル
61マギー審司
62魔邪
63南野やじ  (済)
64ヤシコバ月子
65安井順平
66靖&花子
67ライセンス(済)
68レギュラー
69レム色

302名無しさん:2005/06/02(木) 21:32:13
>>299-301
リストアップ乙。
でもカンニングのお二人はお亡くなりになったので、カンニング(死)ではないでしょうか。
303名無しさん:2005/06/03(金) 01:54:10
絵BBS作成してもおkと言う香具師、挙手!!
304名無しさん:2005/06/03(金) 09:17:21
>>303
絵にするとイメージが限定されるから嫌だなぁ
305名無しさん:2005/06/03(金) 17:19:14
sarasiage
306名無しさん:2005/06/03(金) 19:19:31
質問。
1・絶対に最後は1組を残して終わらなければいけない?
2・ゲーム中に本部を襲撃するのはあり?
3・書き手のいる芸人を使用するのはあり?
307名無しさん:2005/06/03(金) 19:40:36
3に関して言えば、このスレで質問出たことあるから、スレ全部読めばいいんじゃないですか
308名無しさん:2005/06/03(金) 19:59:11
>>307
3?
309308:2005/06/03(金) 20:00:31
あ、スマソ。
今更意味が分かった。
スルーしてくれ。
310一応書き手:2005/06/04(土) 00:39:49
>>306
1についてだけど、ゲームの進行具合を見て書き手同士で検討するしかないと思う。
自分はストーリー中で、別のゲームの終わらせ方を提案してみるつもりだけど、それが皆さんの納得がいく形かどうかは判断出来ないし。
とりあえず他の書き手さんも、終わらせ方のアイデアみたいなのがあったら、それを作品中になんらかの形で表してみればいいんじゃないでしょうか。
311名無しさん:2005/06/04(土) 06:57:59
もう少し発展したら会議・相談スレッドとか立てないと、混乱しそうだな。

後、スレッドを全部見ないで投下する香具師をどうにかできないものか。
・・・無理か。
312名無しさん:2005/06/04(土) 21:19:08
>>306
2もたぶんありじゃないですか?
ただそこは書き手さん同士の話し合いになると思いますが・・・
読む側の意見としてはアリだと思います。
313名無しさん:2005/06/05(日) 07:05:48
>>306
1については作者同士の相談がいると思うけど、
一組だけの優勝は確実だよ。他に生き残る場合があるなら、
原作みたく脱出するっていうパターンだと思う。
2は普通にあり。絶対にそういう作戦を取る人っていると思うし。
ただ首輪がついてて本部近づいたら爆発することとか、
本部攻撃して破壊して皆で逃げようとしても周りに見張りの船があるってこととか、
手榴弾は本部を攻撃されても平気なよう威力を弱めてあること、とか忘れないようにね。

と原作既読者のレスですた。
314名無しさん:2005/06/05(日) 15:08:33
>>313
その辺って、原作に忠実じゃないといけないのかな? 確かに本部襲撃が簡単に成功したりしたら詰まらんと思うけど・・・。
313の意見は正しいとは思うけど、「原作と違う」「原作だとこうなってる」みたいなクレームはあんまり良くないと思う。
315名無しさん:2005/06/05(日) 23:00:20
>>314
 禿 同 。

別にこのスレオリジナルのルールがあっても良いじゃないか。
書き手さんも後先のことを考えずに突然本部襲撃成功させたりはしないだろ。(荒らし除く

このスレと原作との共通点は「殺し合い」と「首輪」だけ。
それ以外のルールは全て書き手さん次第ってこった。
316書き手:2005/06/06(月) 01:25:55
>>315
とはいえ、書き手の中でルールや設定が食い違ってたりすると困るよね。
そういうのも確認したいとは思うんだけど、ストーリー以外のレスがあんまり増えすぎるのは良くないと思うし、やりすぎるとネタバレにもなりかねないし。
かといって、議論スレを立てるほど盛り上がってないしね、まだ…(現時点だと荒らしが増えるだけになりそう)
317315:2005/06/06(月) 01:36:47
>>316
もう少し盛り上がるまで我慢して、納得できる位に盛り上がってきたら議論スレを立てる

・・ってのが一番良い案かもしれない。
まぁほかにも対策はあるだろうが。
318乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/06(月) 10:32:26
殺人ゲーム、プログラム。このゲームに参加した以上、殺しあうしかない。
それが出来ない者はただ死を待つしかない。それは当たり前のことだ。
しかし、果たしてそれだけがこのゲームへ臨む体勢なのだろうか?
例えば――このゲームを不正に抜け出す。このゲームを優勝とは別の形で終わらせる。
そういったことは不可能なのだろうか?
唐沢拓磨(レム色)は元東大生の頭脳を必死に駆使し、それを考えていた。
教養学部だが東大は東大。おそらくこのプログラム参加者の中ではかなり優秀な頭を持っているだろう。
もちろん、管理側のプロデューサーを含めて。
 「なぁ、なんか思いついた?」
その声に首を傾けると相方渡辺剛太が少し疲れたような表情で唐沢の顔を覗きこんできた。
横浜国大卒業の渡辺も教員免許を持っていたりと中々の学歴だ。
二人で協力すれば、このゲームを打破する方法も見つかるかもしれない。
そう思い、考え初めて1時間が経つ。渡辺は何も思いついていないらしい。すごく不安そうな表情だ。
 「――あぁ」
 「…え!?」
唐沢の答えに渡辺は目を輝かせた。
まだ確実とはいえないが、唐沢の頭には一つの案がある。
このゲームから逃げ出せないのは、この首輪のせいだ。だから首輪そのものを外すか――
この首輪を管理している本部を壊すか。
前者は相当危険なように思えた。首輪の構成を知らない以上、下手に触れば爆発するのは確実。
そうなると考えられるのは後者だ。本部を壊す。普通に考えたら不可能に思えるかもしれない。
首輪によりこっちの位置はばれているから、本部に近づけば殺される。
しかし――



319名無しさん:2005/06/06(月) 10:32:42
もし芸人に不思議な力があったらスレみたいにさ
したらば借りたらいいんジャマイカ?
320乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/06(月) 10:53:32
 「本部は森に囲まれている」
 「あ!」
すぐに渡辺もピンと来たようだ。
唐沢の作戦。それは本部の分校が森に囲まれていることがポイントである。
かなり単純なことではあったが、唐沢は渡辺に話し始めた。
 「本部の周りに火をつけるんだ。できるだけ上手く燃える方法は考えよう。
森とかなり密接している分校なら、きっと火は燃え移る。木造だしな。
それに周りが燃えれば本部からは誰も逃げられない。間違いなく潰すことができる」
 「首輪は電波で管理されているからその電波が無くなれば平気だ!泳いで海から脱出して、後に首輪を外す!」
どんどん声のトーンが高くなっていく二人は気づけば立ち上がっていた。
 「そうなったら他の生き残ってる人を出来るだけ集めなくちゃな!」
 「あぁ、裏切らないような仲間を集めて、皆で生きて帰ろう!」
渡辺は地図を広げ、民家や商店街が密集している辺りを指差した。
ここからは(ちなみに二人は公園にいた)北へ真っ直ぐである。
 「ここなら人が集まってるだろうし、分校とも近い」
 「おし、行くか!!」
意気揚々と歩きだした二人は、重大なミスがあることにまだ気がついていなかった。

【残り58組】
321霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/06(月) 18:30:30
「場所、移そう。」
渡部は児嶋の手を引き森の中を歩いていた。

爆発音、発砲音。
自分達を取り巻く全ての現状がこのゲームを否定することを拒んだ。

誰にも会わない。
不安、だった。

誰にも会いたく無い。
それもまた本心だった。

「渡部…なぁ…」

後ろから微かに児嶋の声が聞こえた。

「……誰か…居る。」「!!」

322霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/06(月) 18:35:40
児嶋が指した方向には微かに揺れる木々。

渡部は児嶋のナップザックに入っていたスチールナイフを取り出した。

「…誰、ですか?」

静かに、
そして威圧的に。

渡部は問い掛けた。


しばらくの沈黙の後、弱々しい声が木々の間から聞こえてきた。

「アンジャッシュ…」

そこには憔悴しきった顔で木に凭れかかる青木さやかが居た。
323霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/06(月) 19:31:07


児嶋は戸惑った。
渡部の行動の意図が読めなかったのだ。

「渡部っ…!」
「退いてろ。」

渡部は青木に刃を向けていた。

「気がついたんだ…」
ナイフを向けられても一切動じ無い青木は口を開いた。

その顔に恐れは無く、

むしろ微笑みをたたえていた。

324霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/06(月) 19:38:04

「…苦しまない様に、殺してあげますから…」
渡部は
笑顔で言葉を紡いだ。

「…よろしく。」

そして青木も

笑っていた。

「どうしてっ…なぁ…!?」
児嶋は渡部の手を揺さぶり、

気がついた。
青木の身体はもう正常に機能していないという事に。
325霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/06(月) 19:46:46
「そこでね…爆発に、巻き…込まれちゃった…」

自嘲気味に笑う青木。

渡部はもう、何も言わなかった。

そして静かに青木の首にナイフを当てた。

仲間が減っていく。

殺めるんだ
人を。

児嶋は目を瞑った。
そして次目を開けた時
全ては終わっている筈だった…


だが、悪夢というものはそう簡単に終わるものではなかった。
326霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/06(月) 19:52:06

児嶋の目に飛び込んで来たのは、

肩から血を流した相方と

血相を変えて青木の前に立ち塞がる長井の姿だった──。





アンジャッシュ&長井&青木さんです。

先の読める展開でごめんなさい。
327名無しさん:2005/06/06(月) 20:08:55
乙です。
328名無しさん:2005/06/06(月) 23:09:32
乙です>霧さん
バトロワらしいストーリーでいいですね。
329音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/08(水) 01:48:50
>>288-290から

「あなたには、あんまり効果がなかったみたいね……。まあいいわ、あなたも相方を残したままでは逃げられないでしょうしね」
 椿は傍らの塚地の肩に手を掛けた。塚地は幸せそうな表情をこちらに向けたままだ。
「つ、塚っちゃんに何したんだよ!」
 尋常でない様子の塚地を見て、鈴木は怯えたような声で叫ぶ。
「見ての通りよ。彼は私のフェロモンの虜になったの」
 ゆったりとした口調で告げる椿。
「フェロモン……?」
「ほら、これ。これが私の武器。これを使うと、男はみんな私の虜になるのよ」
 椿は香水の瓶のようなものを取り出した。恐らくそれが、先程二人の意識を惑わせたのだろう。
 しかし今、鈴木は特に変調をきたしているわけではなかった。軽く息を吸ってみても、あのフェロモンらしき匂いはかなり薄い。
 もしかしたら――と鈴木は考える。あの女性の武器が香水のようなものなら、息を止めて近づけばなんとかなるのではないか。
 接近さえしてしまえば、鈴木の実力なら間違いなく彼女を倒せる。その隙に塚地を連れて、遠くまで離れてしまえばいい。安直な作戦ではあったが、鈴木にはこのくらいしか思い付かなかった。
 鈴木は椿をじっと見たまま息を吸い込み、全力で走り出した。
 あっという間に距離は縮まる。椿は同じ位置に立ち尽くしている。このままなら――
 その時、何かが鈴木に向かって警告を発した。
 反射的に横に避けた鈴木をかすめるように何かが飛ぶ。とすっ、と小さな音を立てて地面に突き刺さったそれは、投擲用のナイフだった。
「ずいぶん無茶な作戦ね。でも、こっちには人質がいる事、忘れないでちょうだい」
 言いながら椿は、右手でもう一本ナイフを抜き取り、塚地の首筋にあてがった。ドレスの飾りのせいで気付かなかったが、彼女は数本のナイフを所持していたようである。
 反則だろ、武器が二つあるなんて……。
 鈴木は心の中だけで呟いたが、どうやらそれは椿に伝わっていたらしい。
「私が最初に受け取った武器はこっちのナイフよ。香水は死んだ人のナップザックから頂いたの……殺した方は役に立たないと思って残していったのね、勿体ない」
 椿は余裕の表情で手の内を明かした。どうやら、自分の勝ちを確信しているようだった。
330音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/08(水) 01:51:25
「僕らをどうするんですか……殺すつもりですか」
 鈴木の言葉に椿は微笑む。
「まさか。そのつもりなら最初からそうしてるわ。あなたたちはただ、私のために戦ってくれればいいの――さっきの彼みたいにね」
 さっきの彼とは、袈裟姿のピン芸人・南野やじの事だろうか。自分たちも、鉛筆一本で突っ込んできた彼のように、操り人形になって敵に特攻するのだろうか。
「塚っちゃん……」
 縋るように相方の名を呼ぶ。
 ここで殺されるのも、自分の意志をなくして笑われながら死ぬのも、どちらも嫌だ。自分には、どちらかなんて選べない。
 だからいつものように、助けを求めて塚地を見た――そしてその時、鈴木は気付いた。
 塚地の視線が、彼の方を向いている事に。
「つか……」
 彼に向かって呼びかけそうになった鈴木を、塚地は視線で制した。
 椿はまだ、塚地が正気を取り戻した事に気付いていない。そして、その事は知られない方が都合が良い。
 塚地は思いっきり横目で椿を見て、声を出さずに口を動かした。どうにかして逃げ出したいんやけど、なんとかならんか――大体そのような事を伝えたいらしかった。
 その時になってやっと鈴木は、椿のナイフ攻撃を警告してくれたのが、他でもない塚地だという事に気が付いた。いくら強力なフェロモンとはいえ、時間が経てば徐々に薄れていく。そのため意識を取り戻した塚地が、今のように目と口で合図を送っていたのだ。
 そして、塚地を視界の端で捉えていた鈴木は、無意識にその警告を受け取った。予想外の攻撃にも関わらず、奇跡的に無傷でナイフをかわせたのだ。
 あの時塚地の警告がなかったら、きっと鈴木は大怪我をしていたに違いない。またしても塚地に助けられてしまった。
 だから今回は、鈴木が塚地を助ける番だ。
 ――だが、どうすればいい?
 今までずっと、考えるのも決断するのも塚地の仕事だった。お笑いの能力もなければやる気もない鈴木は、彼一人にまかせっきりだった。塚地の方も、これが仕事だと割り切っているようだった。
 しかし今、頼りの塚地は彼の隣にいない。鈴木自身が考え、決断し、行動しなければならない。
 自分と相方の命が懸かったこの場面で。
 鈴木は答えを出した。きっと正解ではないだろうが、そうするしかないと思った。
331音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/08(水) 02:02:50
「……あなたの言いなりにはなれません」
 鈴木は自らが考えたシナリオを演じ始めた。塚地は緊張の面持ちでそれを見守る。
「操り人形になって死ぬなんて、塚っちゃんは望まないと思います」
 台詞を続ける鈴木。塚地は椿が自分の方に視線を移すのを察して、慌てて陶酔した表情を作る。
 鈴木は何故か、コントをしている時の二人を思い出した。役になりきり、完璧に演じている塚地の横で、自分は何度も台詞を噛んだ。その度に舞台では失笑を買い、コント番組の収録では撮り直しをさせられた。
 しかし今、こうしてバトルロワイアルのステージに立ってみると、共演者やスタッフたちに怒られるなんて、些細な事に思えた。
 何しろここでは、失敗は即死に繋がるのだから。
 命懸けのコントは続いている。
「それなら今、ここで死ぬのね?」
 ナイフを押し付ける手に力が篭められる。しかし塚地は表情を崩さない。さすが芸人兼俳優だ。
「はい。……でもその前に、一つだけお願いさせてください」
 鈴木は真っ直ぐに椿を見る。真剣な眼差しに、椿が少したじろいだのがわかった。
「いいわよ……何かしら?」
「塚っちゃんじゃなくて、僕にナイフを刺してください」
 はっきりとした口調で鈴木は言った。
「僕は塚っちゃんに感謝しているんです……僕が芸人になれたのも、塚っちゃんのお蔭だし。だから、塚っちゃんに痛い思いをさせたくないんです」
 言いながら、鈴木は少しずつ椿に近寄っていった。攻撃の意志が感じられない、無防備な様子で。そのままあっさりと、攻撃が絶対に外れない距離まで入り込む。
 鈴木の言葉は真実だ――少なくとも、ドランクドラゴンの関係について多少は聞き及んでいる椿にはそう思えた。
「わかったわ……。あなたたちのコンビ愛に免じて、言う通りにしてあげる。感謝してちょうだいね」
332音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/08(水) 02:06:40
 椿は静かに右腕を振り上げる。怯える様子もなく立っている鈴木の心臓に向かって。
 人気芸人に自らの手で終止符を打つ、その喜びに椿が陶然と笑みを浮かべた、その時。
 彼女の虜だったはずの塚地が動いた。
 塚地は腰に手をやる。そこには彼に与えられた武器、吹き矢が差してある。塚地は針のようなその矢を抜き取ると、振り下ろされる直前の椿の右腕に突き刺した。
「あっ!」
 椿は短い悲鳴を上げた。右手からナイフが滑り落ち、無音で地面に横たわる。塚地はそのまま椿の腕を振りほどき、彼女の下から脱出した。
「塚っちゃん!」
 鈴木はほっとしたように相方の名前を呼んだ。作戦は成功したのだ。
 しかし――その直後、二人は喜びを分かち合うのも忘れて硬直した。
 塚地に引き離された椿が、まるで崩れ落ちるようにその場に倒れたのだ。
「え……?」
 信じられないという表情で、塚地は椿に歩み寄り、その体を軽く揺さ振った。
 椿はされるがままになっている。蒼白になった顔には、生気の欠片もなかった。

 椿鬼奴は死んでいた。
333音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/08(水) 02:09:32
「う……嘘や……」
 かすれた声で塚地は呟く。
「お、俺、針みたいなの刺しただけやで? 痛みでびっくりさせれば逃げられるんちゃうかって……」
 まだその手に握り締めていた吹き矢を見た塚地は、次の瞬間、恐れ戦いたようにそれを投げ捨てた。
「ま、まさか、毒が塗ってあったんか!? 一撃で死ぬような毒が……」
 塚地はガタガタと震え始めた。
 鈴木は無言で塚地の落とした矢を拾う。そして、決然とした声で言った。
「行こう、塚っちゃん」
「す……鈴木……」
「行こう。こんな所にいたってしょうがないよ」
 塚地は頷く事も出来ずに、ただ鈴木の顔を見ている。
「……仕方なかったんだよ。向こうが襲ってきたんだから。戦わなきゃ、俺たちが殺されてたんだから」
「でも……」
「塚っちゃん、殺すつもりはなかったんだろ? だから誰も、塚っちゃんの事責めないよ」
「そうか……?」
「この人だって……きっと、苦しまずに死ねて良かったって思ってるよ」
 もちろん、死ぬ事がいい事のはずはないのだけれど。
 しかし、椿の安らかな死に顔を見ると、鈴木の言葉が真実のように思えた。
 いや、今は、そう思い込むしかなかった。
「行こう」
「……ああ」
 三度目の鈴木の呼び掛けに塚地が応じ、二人はどこかに向かって歩き始めた。
 フェロモンの残り香が、まるで椿が生きた証のように、しばらく辺りを漂っていた。

【椿鬼奴――死亡】
【残り57組】
334音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/08(水) 02:12:01
とりあえずVS椿鬼奴編終了です。無茶苦茶な長文スマソ。
あと、少年漫画的な展開をどうにかしたい今日この頃。
335名無しさん:2005/06/08(水) 13:27:38
音さん乙です。
なかなか考えてある文でしたよ。面白かったです。
336名無しさん:2005/06/08(水) 21:37:51
乙です!
毒針でしたか・・・間違って吸わないで良かったですよね。
でもまさかそんなものだとは思いませんでした・・・
楽しめました!
337名無しさん:2005/06/08(水) 23:47:39
今回もおもしろかったです。
スズタクかっこいいよスズタク!!
「命賭けのコント」にはゾクゾクさせられました。
338名無しさん:2005/06/11(土) 01:50:38
質問なんだけど、バトロワの外側の世界の話って書いても良いの?
設定とか結構勝手に追加する事になりそうなんで(バトロワ本編とは多分あまり関係ないけど)、アイデアはあるけど書くべきかどうか迷ってる。
反対なら反対でもいいので意見ください。
339名無しさん:2005/06/11(土) 10:09:58
>>338
自分は良いと思うが・・・。
書き込む場合は最初に「本文とは関係ない」事を記しておいたほうが良いかと。

まぁもう少しレスがたまるのを待った方がいいのは確実。
突然すぎると叩かれるぞ。
340乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/11(土) 13:48:59
先程からあちこちで聞える銃声や爆発音。
これだけ盛んに戦闘が行われているなんて――。
いつここ山田は恐怖で手が震えた。後ろでは相方の菊地が先程から延々と何か言っている。
『あいつら絶対殺してやる』とか言っているあたり、一時間ほどまえに完敗したインパルスのことを言っているのだろう。
弱ったな――。山田は頭を抱えざるをえなかった。
島に響く銃声から、やる気なのは菊地だけでは無いということは明白だし、何しろこっちは丸腰だ。
 「くっそ――。あともう少しで殺せたんだ!!なのに邪魔しやがって!!」
そんな相方菊地の声に、銃を奪われたことは不幸中の幸いだったのかも――と思わざるをえなくなっていた。
これで銃を持っていたら菊地はきっと、再び他の参加者を殺そうとするだろう。
それは二人で生き抜くためでもあるし、山田自身の命もかかっていること。
だから表立って菊地が殺しを行うことを止められない。自分にだって死にたくないという気持ちはあるからだ。
けれどやはり、こうして今まで一緒にやってきた相方が殺しを行っているところなど見たくなかった。
菊地の手が血に染まって汚れていくのを見るのは、苦痛だったのだ。
 「けど、殺さないでくれたんだから――」
 「はぁ?!何言ってんだ。そもそもお前が板倉に捕まらなかったらこんなことにはならなかったんだぞ?」
菊地の苛立ちは止まらない。今度は自分にもその怒りの矛先が向いたのを山田は感じた。
 「わかったけどよ、取り合えず代わりの武器を調達しないと」
こんな辺鄙な島の中では貴重なほうなのだろう。
民家を抜けてコンクリートで出来た遊歩道を歩いていった先には、大きなホームセンターがあった。
ここでなら様々な物資も手に入る。こういう場所は人が集まりやすい、という危険性もあるが。
 「どけよ」
前を歩く山田を押しのけて、菊地がホームセンターの中へ入っていった。
無人の店内は夜のため暗く、さらに何故か正常に機能している自動ドアは僅かながら山田に恐怖覚えさせた。
 「誰かいるかもしれないから気をつけ――」
突如足を止め闇の中立ち尽くす菊地。一体なにが――?
そう思う間もなく嗅覚に来たソレ。ホームセンターの中は、“鉄のような臭い”で満たされていた。
341乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/11(土) 14:07:20
 「なんなんだ一体――」
噎せ返るような臭い。プログラム中ということもあり、これは当たり前のものなのかもしれない。
“血”だ。誰かの血が――半端な量では無い――この床にぶちまけられている。
 「くそっ。出るぞ」
数歩中へ入った時点で身を翻し、菊地はドアのほうへと戻りかけた。
それは正しい判断だ。こんなところ、あと一分でもいたら気が狂ってしまう。山田も菊地に続こうとした、そのときだった。
 「――どこへ行くんだよ?」
 「!?」
突如広い建物の中、声が響いた。それは菊地でも、勿論自分のものでも無い。
誰かいる――。一番危惧していたことが、現実となった。
 「だ、誰だ!?」
一歩後ろで菊地が怒鳴った。いくら強く言っても、声の震えは隠せない。
今の今まで『殺す』などという言葉を吐いていた人間の声とは思えなかった。
 「さて、問題。俺は一体誰でしょう?」
楽しむかのような声。どこかで聞いたことのある声のような気もするが――思い出せない。
呆気にとられる二人を見て、暗闇の向こうの“誰か”は笑っているような気がした。
 「いい加減にしろよ!だ、誰なんだ?!」
この血の臭いからして、ここで誰かが死んでいるのは間違いない。そしてそれを殺した犯人は、この声の主である。
何の武器を持っているのかはわからないが、相手にやる気がある以上、ここは早く逃げないとまずい。山田は命の危機を感じた。 
 「逃げよう」
小さく呟いたその声は、菊地の耳に確かに届いた。しかし――
 「はい、残念。時間切れだ」
その声と同時にぱらららららっ、とタイプライターのような音が響いたかと思うと、
目の前の菊地が血を撒き散らしながら後方へ吹っ飛んだ。

342乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/11(土) 14:32:15
どさっ、と地面に体が打ちつけられる音がした。
銃声の余韻がまだ残っている。一瞬で目に焼きついたとのは、暗闇の奥のマズルフラッシュ。
一瞬山田の頭の中は真っ白になった。
 「――菊地?」
隣でぐったりと横たわる相方の姿に、山田の声は震えた。
すると突然山田自身の首輪から、ピッピッと規則的な電子音が発せられる。
 「な――なんだよこれ?!なぁ?!死んじゃったのかよ!?おい!」
自分の首輪を引っ張るも、当然外れるはずもない。電子音の間隔はしだいに小さくなっていく。
 「なぁ!!菊地!!おい!菊地ぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
耳を劈くような絶叫。次の瞬間には爆発音。一層血の臭いが強まった。
 
 「死んだか」
満足そうに笑みを浮かべる男。
暗闇の奥から現れたのは、Diceだった。
白いシャツにまるで模様のようについた血飛沫が鮮やかだ。
トレードマークの黒いスーツとサングラスは、闇に溶け込むには充分だった。
 「いつここ、かぁ。まぁまぁかな」
死の臭いが満ちたホームセンターを出て、Diceは思いっきり深呼吸をした。
 「優勝できそうだな、この調子なら」
時計を見ると、午前4時。あと2時間後の放送の時までにどれだけ人数が減っているか、見物だな。
そうにやりと笑ったDiceは新たな獲物を探すべく歩き出した。

――へらちょんぺ 死亡
――いつもここから死亡

【残り55組】

343乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/11(土) 14:32:47
最初にしていた血の臭いは、へらちょんぺ のものということで。
344名無しさん:2005/06/11(土) 14:43:21
>乃さん
乙!リアルタイムで見てました!
いつここ脱落か・・・大番狂わせが続きますね
345名無しさん:2005/06/11(土) 17:50:49
乃さん乙です!
山田に感情移入してしまい切なかったです。
346霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/11(土) 19:18:37
「…やだ……こんなの嫌だぁぁぁ!!」

狂った様に叫ぶ児嶋の手は
血で、汚れていた。




「何を…してるんだ?」
長井は渡部に銃を突き付けたまま問い掛けた。

渡部が青木にナイフを突き付けている姿を見つけたのは、ほんの数分前の事だった。

何故、あいつらが…

青木に手を掛けてる?

あいつらが青木を…苦しめてるのか?


何かを考える事もなく、長井は飛び出していた。
347霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/11(土) 19:24:49
普段の長井ならもっと冷静に判断したのだろうが。


「…長井さっ……」

青木の声が遠くに聞こえる、

思考回路は誤作動。

「長井さんっ…!!」
渡部が何か言おうと口を開く。

思考回路、完全停止。

長井は引き金を、
348霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/11(土) 19:32:49
「……っかは!!」

なんだ…
これ。

長井は口から血を流し倒れた。


痛い…
血が……

「長井さん!!!」
青木は重い身体を奮い立たせ長井に駆け寄った。

二人とも、死期は近いようだ。

「ごめん…な、青木。本当は…苦しませたくなかった…のにっ…」「…っ喋らないで……」
349霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/11(土) 19:38:29
青木は涙と血を流しながら長井を抱き締めた。

「ありがとう…ございますっ……」

次第に呼吸ができなくなった長井はゆっくり目を閉じた。

「…………っ…」

最後に青木に声をかけたかったのに

もう…
何も見えない。

「……また……いつか…」

もう、何も…聞こえない…

「    」

青木の声は
長井にはとどかなかった。
350霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/11(土) 19:45:42

「…渡部…っ渡部…!!」

児嶋は渡部を抱え、その場から逃げて居た。

まだ
手には長井を刺した感覚が残っている。

「うぅ…えっ……」

ぽろぽろ涙を流す児嶋はまるで子供の様だった。

「…おぃっ…児嶋…。」

いつの間にか意識を取り戻していた渡部が児嶋の髪を掴んだ。

「痛っ……渡部!」
「…大声だすなっ……傷に響く」
351霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/11(土) 19:48:31
児嶋は渡部を木の根元に降ろした。

「大丈夫?大丈夫渡部…?」
「……なんとか…。」

ふぅ…と息をつく渡部を安心した顔で見つめて居た児嶋だったが、ふと我に返った様に震え出した。

「…渡部……俺っ…俺!!」
「…………」
352霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/11(土) 19:54:39
「俺、殺したんだ…。……長井さんを…この手で!!」

児嶋は渡部にしがみついた。
渡部の傷からは大量の血が流れ出していた。

「嫌だ……嫌だ……」

児嶋の赤く染まった手を渡部はしっかり握った。

「……ごめんな…児嶋。辛い思い…させて。」

そして握った手をそっと自分の傷にあてた。

353霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/11(土) 20:01:06
「お前が一人で苦しむ必要無いからな…。」

柔らかく笑った渡部を児嶋は再び抱き締めた。

「…ありがとう…っ」

二人に束の間の休息を。

再び
歩きだせるように。

長井秀和─死亡
青木さやか─死亡

【残り53組】
354 ◆/KYuPzLTFI :2005/06/11(土) 20:09:01
353・感動した
355:2005/06/11(土) 20:24:15
「・・・・どうしたらええんやろ」
暗闇の中で見つけた大きな小屋に隠れているのは
あの女芸人。友近だ。
友近の武器は細長い針が20本ほどあった。
投げれば結構強力な武器になるが友近はまったくをもって戦う気が無かった。
いままで一緒に楽しく仕事をしてきた仲間を、殺すなんてできないからだ。
「・・・誰も殺さずにクリアなんて出来ないんやろな・・・」
友近がそんな事を考えている時、ギィと小屋のドアが開く音がした。
「・・・・ッ!だっ、誰や!!」
「ん・・・あ、友近さん。」
「え、うそマジでッ!!!!友近さん?!」
「あ・・・なんやアンガールズか・・・」
友近は少し安心した。アンガールズとはレギュラー番組の共演者だったからだ。
「あー友近さんなら安心できる。まったく殺意ないからね。」
「そーそー。絶対費と殺しそうな感じしないもん」
「・・・・・なんや。二人とも殺る気ないんか。よかったわ〜」
小さな小屋に、幸せな空気が流れる。
しかしそれは、ある一つの銃弾によって書き消された。

356?o`:2005/06/11(土) 20:40:31
バリィンッ・・・!!
友近とアンガールズがいた小屋の窓に銃弾が打ち抜かれた。
「なっ・・・なんや!?」
アンガールズは警戒しながらも外の様子を見てみた。
「・・・・いとうあさこ・・・・」
357:2005/06/11(土) 20:41:05
バリィンッ・・・!!
友近とアンガールズがいた小屋の窓に銃弾が打ち抜かれた。
「なっ・・・なんや!?」
アンガールズは警戒しながらも外の様子を見てみた。
「・・・・いとうあさこ・・・・」
358:2005/06/11(土) 20:42:02
「フフ・・・・当たりのようね。」
いとうあさこの手には一つの拳銃が握られていた。
おそらくそれで窓を打ち抜いたのだろう。
「・・・・ッ!あのひともゲームにのったのか・・・!」
「友近さん!とにかく逃げましょう!!!!」
アンガールズと友近は一目散に逃げた。
「逃がさないわよ・・・」
パンッ・・・・・といとうあさこはもう一発拳銃を打った。
「・・・・・くっ・・・あぐぅ・・・」
「「友近さん!」」
アンガールズの二人は同時に叫んだ。
友近の足に、弾が命中したのだ。
「・・・くっ、くそぉっ!山根!ちょっと手伝って!」
「ん!解った!」
田中が友近をおぶり逃げるという作戦だ。
「よし!逃げるぞ山根!」
「・・・・逃がさないって言ったじゃない」
いとうあさこはまた拳銃を打った。
次は山根に向かってだ。
「うわっ!」
反応が速かったのが幸いで、山根は間一髪、弾を避けることができた。
「あー・・・ぴっくりした・・・」
「ほら山根!逃げるよ!」
ダダダダダ・・・・・
三人は暗闇へ消えて行った。
「・・・・チッ。逃したわ・・・。さっさと次の獲物を探さなきゃ。」
いとうあさこもまた、暗闇へ消えて行った。
359:2005/06/11(土) 20:53:16
アンガールズと友近は古い・・・なんらかの建物の影にいた。
「友近さん。今手当てしますからね。」
山根は鞄から救急箱を取り出した。
前に隠れていた隠し部屋から持って来ていたものだった。
「・・・・まさかこんなところで使うとわ思いもしなかったよ」
素早い手つきで友近の足を消毒し包帯を巻いていった。
「・・・・ありがとう二人とも。少し楽になったわ・・・。」
「・・・・でもこのままだと・・・。どこかに診療所でもあればいいんだけど・・」
「大丈夫や。二人のおかげて少し歩けるようになったから。」
「・・・とりあえず友近さんの安全確保!解った山根?!」
「解っとるよ。」
「・・・ありがとうね。二人とも。」
-----------------------------------------
多分アンガールズは生き残ると思う。
360名無しさん:2005/06/11(土) 21:29:55
>>355-359
うん。
これは、なんだその、一つ一つ指摘して言って良いのか?

まず一つ。
sageてくれって。
二つ。
コテハン・トリップ推奨。
三つ。
>>356
dareda
四つ。
>多分アンガールズは生き残ると思う。
先に言ったらアカン。


いや、批評ばっかりしてすまん。
文章や表現の仕方はとてもよいと思う。
好きだ。
361名無しさん:2005/06/11(土) 21:33:31
>薬さん
乙です。
でもあんまり先の展開とか書かない方がいい。(一番下の文の事ね)
362名無しさん:2005/06/11(土) 21:36:35
先に書いちゃったら、最後までだれもアンガールズには手を出せないもんね!
363名無しさん:2005/06/12(日) 00:11:25
はじめてこのスレ見ました。
自分ドランクヲタ(特に塚っちゃんの)ですが、音さんのやつすごく良いです。
なんか2人への愛情を感じます。続き楽しみにしてます。
364音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/12(日) 01:05:17
>>363
ありがとうございます。
まあ、二人への愛情で書いているようなものなのでw
これからも頑張って書きますんで、どうぞよろしくお願いします。
365:2005/06/12(日) 07:13:19
360>>ご指摘ありがとうございます。
361>>すみませんでした。以後気をつけます。
366 ◆Tvl5SCy1yg :2005/06/12(日) 07:16:43
あ、ちょっとトリップの付け方練習させて下さい。
すみません。
367:2005/06/12(日) 07:18:55
む・・・付かないな。
すみません。
368霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/12(日) 09:28:47
「…………長井さん…青木さん……」

波田陽区は人を見つけた。
否、人であったものを。

そう、
死んでいる。

二人折り重なる様にして。

「…うっ……なんでっ…っく…」
波田はギターを横に置き、
本当に二人の死を悼む様に涙を流した。

「どうして…っ、二人は……俺が殺そうと思ってたのに!!!」

369霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/12(日) 09:34:58
二人の身体を鎌でぐちゃぐちゃに刺す波田は

まるで死神のようで

「誰だよっ…誰が二人を…クソッ…絶対に見つけて殺してやる!!」

飛び散る血はまるで意思を持つかの様に
波田の顔を真っ赤に染め上げた。

「………行くか…今日中に何人殺せるかなー」

波田は振り返り、もはや原形をとどめていないものに声をかけた。

「お二人の事は…一生忘れませんから」

無邪気に笑った波田は
血をしたたらせながらその場を去った。

370霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/12(日) 09:35:44
波田陽区投下です。

371名無しさん:2005/06/12(日) 13:53:10
更新されていない芸人さんの話って、
いつになったら引き継いでいいんですか?
372名無しさん:2005/06/12(日) 14:05:26
>>371
たとえば誰?名前挙げて聞いてみたら?
373名無しさん:2005/06/12(日) 14:58:28
>>368-369
波田怖い!
いいですね
374名無しさん:2005/06/12(日) 16:52:49
>>364
音さんってすごく上手な文かかれますよね。大好きです
375音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/12(日) 20:50:04
>>374 ありがとうございます。

>>329-333から

 逃げようとしていた。
 自らの罪から目を背けて。
 しかし結局、彼らは思い知る。
 このゲームからは、逃げる事など出来ないのだと。

 ドランクドラゴンの二人は、林の奥へ奥へと進んでいた。
 椿の下を離れて以来、どちらも口を開こうとはしない。塚地はずっと沈んだ様子で考え込んでいたし、鈴木もそんな塚地に声を掛けるのは憚られるようだった。
 風の音を縫うように、時折銃声や爆発音が響く。結局、安全な場所などなく、ゲームが中断される事もないという事だろう。しかし二人には、休息が必要だった。
 仕方ない、この辺で一度休んでおくか……そう短く言葉を交わした時だった。
 突然茂みの陰から、服を血塗れにした眼鏡の男が飛び出してきた。
 油断していたせいか、心身の疲労が注意力を削いでいたのか、今の今まで彼の存在に気付いていなかった二人は、咄嗟に身を翻して逃げようとした。
 しかしそんな二人を男は止めようとする。
「ま……待ってください! 長嶋を――僕の相方を助けてください!」
 眼鏡の男――ダーリンハニー吉川はそう叫んだ。
376音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/12(日) 20:52:24
「こ、これは……」
 吉川と共に茂みの陰を覗いた二人は絶句した。
 そこには二人の男が倒れていた。
 一人は何箇所も刃物で刺されていて、既に息がないのが見て取れる。
 そしてもう一人――ダーリンハニー長嶋は、右胸から血を流し、どうにか呼吸を続けている状態だった。一応服らしきものを縛り付けてはあるものの、それほど効果がない事は、彼の真っ赤に染まってしまった右半身を見ればわかる。
 当然、二人が来た所で、どうする事も出来ない傷だった。
「どうして……一体、何があったんや」
 塚地が吉川に訊ねる。
「森を……森の中を歩いてたら、いきなり撃たれて……」
 弾は長嶋に当たり、吉川は返り血を浴びただけで済んだ。撃った人物は、どうやら長嶋を傷つけるだけで満足したらしく、吉川は撃たずに立ち去ったのだという。
「……撃った奴は、近くにいたわけではないんやな?」
 塚地は何かを考え込みながら訊いた。
「そうです……でもそんな事どうでもいいでしょう? 早く、早く長嶋を――」
「……吉川」
 その時、倒れていた長嶋の唇がかすかに動き、相方の名を呼んだ。
「な、長嶋! 気が付いた――」
「もう、いいよ、隠さなくて」
 長嶋の言葉に、吉川の表情が凍りつく。
「塚地さん……もう、感づいてるんでしょ?」
 その言葉に、吉川は恐る恐る塚地の方を伺い見た。鈴木の方はまったくわかっていない様子で、「え? なに?」などと言いながら塚地と長嶋の顔を交互に見ている。
 塚地は無言で、長嶋の言葉を促した。
「そうです。あの人……安井さんは、僕らが殺しました」
377音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/12(日) 20:54:47
 鈴木ははっと、地面に転がる死体――かつては安井順平と呼ばれていたものを見た。
 長嶋を狙った敵は遠くから狙撃してきたという。ならば、何故ナイフで――明らかに近距離からの攻撃で殺された安井の死体がここにあるのか。
 塚地と鈴木は、無言で吉川の表情を伺った。彼は俯いたまま、唇を噛んでいる。その服を紅く染めているものは、長嶋の血だけでなく、安井の血でもあったのだ。
「僕は……もう、いいんです。吉川には悪いけど……もう、諦めがつきました」
 僕は。
 人を殺したから。
「人を殺して……その罪を背負う覚悟もなくて……だからきっと、僕らはここで終わりなんです」
 突然、長嶋が激しく咳き込んだ。吉川が慌てたように、何度も長嶋の名を呼ぶ。
「結局、最後は、生き残るだけの理由がある人が……僕ら、僕らみたいに……ただ生き残りたいって気持ちは、みんな、同じで……」
「長嶋! もう、もういいんだよ!」
 吉川の頬を涙が伝う。
 塚地は静かに彼らに背を向け、鈴木を促してその場を立ち去った。
 もう、彼らに出来る事は何もない。
 後にはダーリンハニーの二人と、二人の犯した罪の証が残った。
「吉川……」
 消え入りそうな声が、必死に言葉を紡ぐ。
「それでも僕たち、間違ってなかったよなぁ……?」
「ああ、そうだよ……! 生きるためだもんな! これ、バトルロワイアルだもんな……!」
 吉川は励ますように、長嶋の手を握った。
「だからさ、諦めるなんて言うなよ……なあ!」
「吉川……。僕、一人じゃなくて良かった……。一人じゃきっと、何も出来なかったよ」
 ありがとう。
 一緒にいてくれて。
 励ましてくれて。

 塚地と鈴木は、吉川の命が消える音を聞いた。
 このゲームからは誰も逃げられない。
378音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/12(日) 21:03:26
【安井順平――死亡】
【ダーリンハニー――死亡】
【残り51組】


ドラドラ編……というかダーリンハニー編投下しました。
実はこのエピソードもうちょっと先まであるんですが、今日はちょっとそこまで書けそうにないんで。
まあ、どうせそこまで一度に投稿すると読みにくくなると思うんで、ご容赦ください。
379霧 ◆ulAwgplWcU :2005/06/12(日) 21:06:15
お疲れ様です。
上手いですね…毎回楽しみにしてます。
380名無しさん:2005/06/12(日) 22:59:52
乙です。
ダーリンハニーの気持ちすごく良くわかります。
なんかもうどうしようもない悪循環ですよね・・・それがバトロワですが
381眠 ◆SparrowTBE :2005/06/12(日) 23:00:27
久し振りに投下です。




外はすでに暗くなっていた。

小沢はうっすらと目を開けた。
二人で仮眠を取ろうと話し合ってからもう二時間経っている。
疲れを取る為にも少しでもいいから眠ろうと思ったが、こんな状況の中眠れる訳がなかった。
それでも、隣を見ると井戸田はこくりこくりと舟を漕いでいる。
気持ちよさそうな井戸田を恨めしそうに見つめた後、寝転がり固く目を瞑る。


ガタンッ
突然聞こえた大きな音に小沢は目を開けた。
―誰かいるのか?
―いや、ここには他に誰もいない、気のせいだ…。
そうは思いながらも、鼓動はどんどん早くなる。
側にあった鎖を手に握り締めて呼吸を落ち着かせる。
井戸田を起こそうかと考えたが、小沢は一人でそっと部屋を出た。
382眠 ◆SparrowTBE :2005/06/12(日) 23:01:37
がらんとした廊下に出ると、暗くてよく分からないが、やはり人の気配がする。
小沢は腰にぶら下げていた鎖を握り締める。それなりに太く長い鎖であるが今はそれは酷く頼りない。
潤の銃を持って来ればよかった、と今更ながらに後悔した。
「…誰?」
小沢は窺うように声をかける。



ガウンッ

静かだった診療所内に耳を劈くような音が響き渡る。
途端、左腕が熱くなった。
「うっあっ!?」
訳の分からないまま小沢は床に転がった。
383眠 ◆SparrowTBE :2005/06/12(日) 23:02:23
暗闇の中から現れたのは赤いテカテカした服を着た見慣れた男だった。
「マイケルっ…!?」
その手には黒光りする拳銃が握られている。
痛い、というより酷く熱い左手に触れる。たちまち右手はべっとりと赤く染まった。
撃たれた…そう気付くまでさほど時間は掛からなかった。
「なんだ、小沢さんだったんですか。」
「な…んで…っ」
小沢は愕然とした。
楽屋でもよく話していた、一緒に飲みに行ったこともあった。
そんな後輩が今、目の前で銃をこちらに向けている。
「なんでって、死にたくないからですよ。小沢さん。」
マイケルの指がトリガーに掛かる。小沢は咄嗟に身を起こした。
「何でだよ…何で!?」
小沢は叫びながら鎖を握り締め、相手目掛けて振り上げた。
まともにそれを顔に受けたマイケルが怯む。
が、すぐに体勢を立て直し、小沢目掛けて銃を構えた。
―やられる!?
小沢は思わず固く目を瞑っていた。
384眠 ◆SparrowTBE :2005/06/12(日) 23:04:43
キン、と金属と金属が擦れ合うような音がして小沢は目を開けた。
マイケルは手を押さえて蹲っている。
「うぉっ、本当に当たった!?」
素っ頓狂な声に後ろを振り返ると銃を持った井戸田がこちらに駆け寄って来た。
どうやら井戸田の撃った銃弾がマイケルの拳銃に命中したらしい。
「大丈夫か!?」
「平気…ちょっと痛いけど。」
井戸田に身体を抱え起こされる。シャツは真っ赤に染まっていたがそれほど傷は深くはないようだ。
「くっ…」
マイケルが睨みつける。井戸田も氷のような冷たい視線で睨み返していた。
お互いの手には拳銃が握られている。数秒後にどちらが事切れてもおかしくない。

ピアノ線が一本、ピンと張り詰められたような空気に包まれた。





『ピンポンパンポーン♪』
『おーっす、殺しあってるなー?この調子で殺しあってくれー。』
突然響き渡った、その場に不釣合いな楽しんでいるような声。
放送に一瞬気を取られた井戸田に向けて、マイケルは引き金を引いた。
385眠 ◆SparrowTBE :2005/06/12(日) 23:06:47
ガウンッガウンッ

『それじゃあ名前読み上げるぞー』
僅かに逸れた銃弾は井戸田の足下に突き刺さる。
殺気を撒き散らすマイケルに、遂に井戸田も銃を構えた。
『えー、結構死んでるなぁ…「ザ・たっち」に「はいじまともたけ」!…』
戦いに関しては運動神経の良いマイケルの方が圧倒的に有利だった。
素早い動きで井戸田の懐に飛び込み、腹に肘鉄を叩き込む。
井戸田が取り落とした拳銃が小沢の目の前に転がった。
『あとー、「      」。』
次の名前が読み上げられ、そしてマイケルが笑みを浮かべて引き金を引く瞬間。小沢の思考は、そこで止まった。
386眠 ◆SparrowTBE :2005/06/12(日) 23:08:16


ガウンッ


一発の銃声が響き渡ると同時に、マイケルがゆっくりと崩れ落ちた。
拳銃を握り締めた小沢が、冷たい視線を井戸田に向けていた。
「小沢さ…ん…?」
愕然とする井戸田に向けられている瞳から、涙が一筋流れ出した。
「みんな…死んじゃった…?長井さんが?菊地くんも?山ちゃんも?なんで…なんでだよぉぉぉぉっ!!!!!!」
小沢は普段聞いたことがないような大声で叫び、頭を抱えて蹲った。
ガツッと嫌な音がして、床に当たった小沢の額から赤い液体が染み出した。
井戸田の目の前で完全に小沢は取り乱していた。…否、狂い始めていた。
「小沢さん!!」
慌てて小刻みに震える小沢の肩を抱く。
苦しそうにヒューヒューと息をする小沢を見て井戸田は先ほどの言葉を思い出した。
「死んだ…?いつここが…?長井さんが…?」

途端、井戸田の視界が真っ赤に染まった。
ぐったりとした後輩の体からどんどん広がっていく赤。
自分の腕の中で何処か遠くを見つめて泣き続ける相方。そしてその腕から流れ出る赤。
何事も無く笑い合った、楽しかった昔の思い出だけが記憶から遠ざかって、井戸田の世界は赤に埋め尽くされた。
その赤があまりにも鮮やかで、酷い吐き気がした。
井戸田は堅く握り締められた小沢の手からなんとか拳銃を外して、それを胸に抱き、泣いた。

二人の何かが、あるいは全てが狂い始めていた。



【マイケル 死亡】
387眠 ◆SparrowTBE :2005/06/12(日) 23:09:15
ドロドロですね…。
自分でもどうなっていくか分からなくなってきてしまいました。
388名無しさん:2005/06/13(月) 00:21:19
>眠さん
乙です。
やっぱり壊れていくんですね、この二人も・・・。
バトロワの異常さが描かれていて、すごく良かったです。
389名無しさん:2005/06/13(月) 00:57:27
書き手さん乙です。
みなさん上手いですね。
390乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/13(月) 16:46:07
プログラムが始まって二度目の放送。それは残りの参加者全てになんらかの影響を与えていた。
残り50組。ピン芸人もいるため正確な数はわからないが、少なくとも20以上の死体がこの島に転がっていることになる。
普通に行動していたら、そのうち死体を見ることになるだろう。そんな時を想像し、インパルス堤下敦は身震いした。
 「なぁ、おまえ聞いたかよ?」  「え?なにが?」
堤下の間の抜けた答えに板倉が口を尖らせる。腰をかけた樹木の根の下に生える葉っぱを毟りながら板倉は言った。
 「何が?じゃねーよ。今放送で言ってたじゃん――」
語尾が小さくなっていく板倉の言葉に、堤下は頷く。なんのことだかすぐに理解した。
 「あぁ…いつここ、か――」
もうどれくらい経つだろう。カンニングを助けに行って、でも助けられなくて。急いで戻ったら今度は板倉が殺されかけていた。
あの時自分が助けなければ、板倉は軽い怪我では済まなかった。けど――
 「――あの時俺が銃を奪わなかったら、二人は死んでなかったのかな…」
正直あの行動が間違っていたとは思えない。自分の一番の目的は、板倉を守ることだ。
だから多少の他の犠牲は目を瞑るしかない。とは言っても命を奪うことはしたくなかった。
けれど銃を奪った自分の行動は、結局二人を死に至らしめた可能性がある。――俺のせいで、あの二人は…
 「バッカ、おまえ、あんときお前があぁしてなかったら俺死んでたからね」
 「本当?」
 「うん。ありがたかった。まぁ、若干うざかったけどね。俺が助けてあげた!みたいな態度が」
 「なんだよそれ!!俺そんな態度したぁ?!」
いつものノリの板倉に同じくいつものように返しつつ、内心板倉の言葉に感謝していた。自分がこのことを気にしないように、
板倉なりの精一杯の気遣いを感じることができたから。 俺本当に良い相方を持ったな――。堤下は嬉しくて、思わず笑顔になった。
 「なに笑ってんの?気持ちわりぃー」
そう言う板倉も、特有のすきっ歯を見せてにこにこ笑っている。プログラム中とは思えないような空気が二人の間に流れた時――
突如聞えた叫び声に二人は同時に振り向いた。

【残り50組】






391乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/13(月) 16:47:54
長かったせいで何度も『改稿が多すぎます』に引っかかって
改稿しまくったせいで若干読みにくいかも。スマソ。
392名無しさん:2005/06/13(月) 17:55:02
乃さん、乙です。
板倉の憎まれ口…リアルに目に浮かびますもん。
どこまで堤下が板倉を守りきれるか影ながら応援してます。

それにしても、書き手のみなさんホント巧いですね。
それぞれコンビにばらつきが出てきて今後の展開がさらに楽しみです。
393371:2005/06/13(月) 18:49:38
>>372
特には決まっていないのだけど、一ヵ月経ったら。
とか、今後のために決めた方がいいんじゃないのかなと思って。
394音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/13(月) 19:01:38
>>375-377から

 もう、混乱する事はなかった。
 そう、ただ、悲しい。
「なんで、殺し合いなんやろな……」
 塚地は呟く。
「俺ら、お笑い芸人やん……」
 木にもたれるようにして座っている鈴木は、俯いたまま答えない。もしかしたら、もう寝ているのかもしれない。
 塚地は寝ずの番を買って出ていた。彼の何倍も活躍した鈴木を気遣っての事でもあるが、どうせ今夜は眠れないと思ったからだ。
 今でもまだ、命を奪われた者たちの姿が目に焼き付いている。
 その内の一人は、彼がその手にかけた。右手に生々しく残る、吹き矢を刺した感触。
「結局……やってしまったんやな」
 自分のために、他人を殺した。
 そう――自分も同じだ、ダーリンハニーと。
 罪を背負う覚悟も、何かのために生きるという決意も、何もなく。
 ただ、人を殺めた。
「殺す理由も、殺される理由も、あるはずがない。……俺らはみんな同じ、お笑い芸人なんやから」
 彼がお笑いの道に進んだのは、単純に、人を笑わせるのが好きだったからだ。
 今ここで、武器を手にして戦っている芸人たちは、殺し合いが好きか?
 殺し合いをするためにエンタに出演したのか?
 そんなはずはない。みんな、塚地と同じ、お笑いが何より好きな連中のはずだ。
「なのにどうして……どうしてバトルロワイアルなん?」
 金。視聴率。権力。政治。大人の、人間の、醜い部分。
「みんな本当に、そんな番組が見たいんか? エンタ見て笑ってくれてた人たちが、殺し合い見て楽しめるんか?」
 どこかにあるかもしれないカメラに向かって、塚地は独白する。
 これは、演技じゃない。演技なんかじゃないんだ。
 俺は、心から、お笑いをやりたいと思ってる――!
395音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/13(月) 19:04:06
「鈴木」
 寝ているはずの鈴木に塚地は語り掛ける。
「お笑いやろう」
 例えブームが終わったとしても。
「こんなゲーム見て笑ってる奴らに、本当の笑い教えてやろう」
 誰一人それを求めていなくても。
「俺らのライブで、視聴率思いっ切り上げて……プロデューサー見返してやろうや……!」
 最後の最後まで、笑いのために生きてやる。
 何故なら彼は、お笑い芸人なのだから。
「……塚っちゃん」
 その時鈴木が、同じ姿勢のまま話し掛けてきた。
「塚っちゃんはもう戦わなくていいよ……俺が塚っちゃんの分まで戦う」
「鈴木……」
 途惑う塚地に、鈴木は言葉を選ぶように、ぽつりぽつりと言った。
「お笑いのために生きるんだろ? だったら、人を殺すのはおかしいよ。……だから俺は、嫁と子供のために戦う」

 そうやって、二人の力で生き延びて――
 そしていつか、最高のコントを見せてやろう。
 悲劇に満ちたこの場所で。
396音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/13(月) 19:10:40
ドラドラ編投下しました。
今回はプロデューサーが視聴率の存在を明言しているので、こういう目的もありかな、と。
どこまで実現するかは私にもわかりませんが。

とりあえずドラドラ編はここで一区切りついたので、次は他の芸人さんの話を書くかもしれません。
397名無しさん:2005/06/13(月) 21:15:38
乙です。
他の芸人さんも楽しみにしてます。
398名無しさん:2005/06/13(月) 21:45:14
音さん!ヤバイです。本気で泣きそうになってしまいました。
2人のセリフ、なんか妙にリアリティあって良かったです!
現実の彼らも、このぐらいの気概でお笑いに取り組んで欲しいw
399プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/06/13(月) 22:48:13
んー良い感じに盛り上がってるねぇ。
この調子でどんどん視聴率を上げていってくれたまえ。

ただひとつ気になるのはコテハンのセンスだ。
此処までずるずる統一されるとどうにも厨臭くて気持ちが悪い。
このスレッドは馴れ合うためのスレではない。殺し合いの場だ。
もっとさっぱりした感じで進んでいくと、もっと面白くなるとおもうのになぁ。
400名無しさん:2005/06/13(月) 23:09:33
>399
「厨臭い」連発しすぎ・自分の意見押し付けすぎ
このスレ形成してんのは書き手さんなんだから
余計な口出し不要&萎える要素だからヤメロ
401プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/06/13(月) 23:19:42
別に向こうで大暴れしてるヤツのような態度はとってないからいいだろう?
向こうのバトロワスレの昔の雰囲気が出ればと思って作ったが、
今のこの板の状態じゃ元から無理だったんだな。
来てるの全員腐女子なんじゃないかい?
漢字一文字のコテハン書き手が増殖した小説スレなんて
厨と腐女子の溜まり場と化していて見るに耐えない。
小説スレってだけで他のスレよりオタク気味になってしまうのに、
何故雰囲気だけでも2chに溶け込もうとしないんだい?
402名無しさん:2005/06/14(火) 00:16:56
>>401
向こうのやつと大差はない。
つーか同一人物なんじゃねーの?
にちゃんに溶け込めって言うなら下げろ。
このスレがあんまり上がったらいけないことくらいわかるだろ?
403プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/06/14(火) 00:30:02
これで満足か?
自分で溶け込めって言ったから下げたぞ。こっちの意見についてはどうなんだ?
昔のバトロワスレはコテハンに統一性があったか?
もう一つの小説スレだってコテハン書き手は関連性をつけずにやってるぞ?

それでもコテハンに書き手がこだわるのはなぜだ?
404名無しさん:2005/06/14(火) 00:34:20
>>403
嫌なら見なければいいだけでしょ。
なんで他スレと合わせる必要があるのか?
書き手さんのやりやすいように名前をつければいい。
405名無しさん:2005/06/14(火) 00:36:18
>>403
むしろコテハンに拘ってるのはそっちじゃないか?
コテハンの統一性で内容の良し悪しが変わるわけでもないだろ。
オタクくさいだの昔の雰囲気だの言ってるが、小説の中身ちゃんと読んで発言してるのか?
仮にもスレをまとめる立場なんだから、自分の思い込みだけで雰囲気悪くするのはやめてくれ。
406名無しさん:2005/06/14(火) 00:42:26
プロデューサー叩かれまくりワロスwwwww

因みに私はプロデューサーの意見に賛成。
今のこの統一感は気色悪いな。
どうしても腐女子な部分が感じられてしまうのだ。こういう統一感。
只でさえ腐女子向けな内容なスレだ。疑われるようなことは、避けたほうが良いと思う。
まぁ、本当に此処が腐女子の溜まり場に成ってしまったと言うのなら、後は解除依頼を出すだけだw
407名無しさん:2005/06/14(火) 00:47:50
自分が適当なコテハン(漢字一文字じゃないやつ)で書き込んだ時はこっちが叩かれたのにな。
なんつーか、面倒な所だな、2chは。
408プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/06/14(火) 00:56:01
>>404
名無しで文句言ってる分には気が楽で良いだろうな。
漢字一文字じゃなければやり難いと言う書き手がいれば
コテハン使って直接本人が言ってくればいい。
>>405
統一性で良し悪しが変わるなんて一言も言っていないはずだが?
要するに見栄え・雰囲気の問題だ。腐女子っぽい、厨臭い雰囲気が
スレにあれば今の良書き手に混じって変なのが湧く可能性がある。
文の内容見ないでこのスレざっと見渡しただけだと本当に厨臭く見えてしまうんだよ。
>>406の様に感じる人も居るんだしな。
409名無しさん:2005/06/14(火) 01:03:29
コテハンという小さなことに拘っている奴こそ厨房なんじゃないかと俺は思うがな。
腐女子が嫌なら元からこんなスレを立てるな。
少し考えればどうしても腐女子は来るってことくらい分かったはずだろ。
逆にそれくらいのことを考慮してなかったことが不思議だわ。

大体、腐女子でない女や男が長文でちゃんとした小説書くわけないだろうが。
410プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/06/14(火) 01:09:35
>>407>>225かな?本来ならば2ch的には君が合っているんだよ。
ただこの変な流れのお陰で>>226みたいな勘違いが出てしまったんだ。
こっちも毎日チェックしてるわけじゃないから見逃してしまっていた。
折角良い話を書いてくれていたのに不快な思いさせて申し訳ない。

>>409
>>225-226こういう下らないヤツが出来るだけ出ないような環境にしたいんだよ。
411プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/06/14(火) 01:11:55
向こうのスレッドじゃありえなかったことだからな。こんな下らない指摘は。

テンプレもちゃんと読んでない書き手も居るようなのでもう一度改正版を出しておく。
○書き手の心得
「書き手はトリップ使用推奨」
 ※統一性は求めません。自分のセンスご自由に。
「顔文字はやめる『(笑』等も厨臭いので禁止」
「謝るなら書かない」
 悪い例)文章下手でゴメンナサイ←だったら書くな
「感想もらえなくても泣かない」

○話の内容・つながりに関すること
「つじつま合わなかったりすることもありますが多少のことは見逃しの方向で」
「武器は結構自由。ピコハンから火炎放射器等色々…」
「スタートは各コンビごと」
「エンタ公式で出演芸人確認」
 簡単な名簿は>>45-47
「芸人が死んだら話の最後に死亡報告」
「エンタに出演してない芸人も書き手がどうしてもというときに限り、
後から送り込まれてきた設定で登場可能」(無駄に人数を増やさない為)

○読み手の心得
「あくまで「ネタスレ」です。笑って許せる寛大な心で読みましょう」
412音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/14(火) 01:42:26
>プロデューサーさん
わざわざ謝罪させてしまってすみません。
とりあえず自分はコテハンにはこだわっていないので、変えた方がいいなら変えても構いませんよ。
(今回は混乱されても困るんでそのままにさせてもらいますが)

次はアンタッチャブルの話を書こうと思っています。
ついでに質問ですが、こうやって事前に使いたい芸人さんを宣言するのっていいんですかね…?
413プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/06/14(火) 05:29:03
414乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/14(火) 17:03:54
まだ薄暗い朝、月が薄っすらと空に残っている。
そしてそんな空色を映す海も、少しずつ変化していきていた。
このプログラムが始まってから、もう一夜が明けてしまった。
あとどのくらいの時を、こうして過ごさなければならないんだろう?
いっそ、時間が止まってしまえばいいのに。
涙でくしゃくしゃになった顔を海に向け、赤いプルトニウムはため息を吐いた。
切り立った崖を叩く波は、いずれも跳ね返り海に帰ってゆく。
海岸線沿いに歩いて断崖絶壁のこの場所まで辿りついた。
それからしばらく一人でじっとしていたが、その間誰とも遭遇しなかったのは幸運と言うべきか。
 「どうしたら…」
どうしたらいいか。その質問に答えてくれる者など誰一人いなかった。
このゲームに乗るということも一瞬頭を掠めたが、バタフライナイフなんて物では、
これだけ銃声が鳴り響いている中で勝ち抜くのは、とてもではないが無理だろう。
逆に誰かと組むという方法もある。Goro’s Ber の準レギュラーである自分は、
番組の共演者である友近や青木さやか、次長課長らとはそこそこの仲だ。
けれど青木さやかは先程の放送で名前を呼ばれてしまったし、
それにそう易々と信用していいものかもわからない。
もしも裏切られたら、もしやる気だったら――。
どうしてもそれが頭を過ぎり、立ち上がろうとしても足が動かなくなる。
結局、何も決断できないままだった。
 「どうしよう…。このままだったら絶対死ぬ…」
思わず独り言を呟いた時――すぐ背後で茂みが揺れる音がした。

415乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/14(火) 17:21:09
 「…えっと」
お互いエンタ出演回数が殆ど無いせいだろう。
どうしても顔と名前が一致しない。こっちを恐怖に怯えた目で見るこの女性の名前は――。
 「赤いプルトニウムさん?ですよね?」
隣の相方、渡辺剛太(レム色)の声に、唐沢拓磨(レム色)は「あぁ、そうか!」と思わず声を漏らす。
名前を覚えていないことが明白な、かなり失礼なことを言ってしまった。
 「あ、すみません、覚えていなくって…」
 「そうだよ、失礼だよ」
 「仕様がないだろっ!!」
まるで中学生のような二人の会話を聞き、驚いたのかそれとも不信に思ったのか、
控えめながら赤いプルトニウムが声を発した。
 「あの、レム色さん、ですよね?」
 「え?あぁ、はい。そうです」
二人で頷き、座っている赤いプルトニウムの目線に合うよう二人とも腰をおろした。
土が尻につくのは気にしない。叩けばいいし。
 「えっと、レム色の唐沢です」
 「渡辺です」
それから唐沢は、自分が武器を何も持っていないことを両手をあげて証明した。
渡辺がそれに続く。
 「それで…何か?」
それは当然の質問だろう。赤いプルトニウムはやはり表情に不安の色を浮かべている。
唐沢は渡辺をちらりと見て――渡辺が頷いたのを確認し口を開いた。
 「単刀直入に言います。俺達と、仲間になりませんか?」

【残り50組】
416乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/14(火) 17:21:47
中途半端ですみません。もう出なくちゃならないので。
この続きは次回必ず書きます。
417乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/14(火) 17:23:48
連続投稿スマソ。
プロデューサーさん、乙です。
すごいありがたいです。活用させていただきます
418名無しさん:2005/06/14(火) 19:37:30
出演回数少ない同士で仲間ですか。
さらに面白くなってきましたね
419名無しさん:2005/06/14(火) 22:12:47
暗い空に昇ったばかりの月が、返り血を浴びたような不吉な色をしてひっかかっているのが
覆面の小さな窓から見えた。
逃げ惑う際に森に潜む禍々しい闇の爪にでも引き裂かれたかのように、
黒い衣装の裾がズタズタになっているのを、しなやかな指でつまんで、
悲しい気持ちで眺めている。
人一倍ケガに気を遣い、激しい労働を経験したことのない白い指が
今は殊更に頼りなげに見える。
この黒ずくめの衣装のおかげで、夜陰に紛れてここまで逃げおおせはした。
だが闇は、オレだけを隠してくれる訳ではない。
こうしている間にも、いつ背後から知らない手が伸びてこぬとも限らない。
遠くの方でまた誰かの断末魔の声がした。
その声が誰のものなのか、もう思い返すことさえ憚られる。
わかったところでその声は、もう二度と聞くことはないのだ。
420名無しさん:2005/06/14(火) 22:22:37
「もうイヤだ」
パペットマペットは抱えた膝に覆面ごと額を預けた。
悲しみを覆ったその布は、目の下が色濃くにじんでいた。
オレにはこんなことはできない。
そもそもこの芸風こそが、オレの気質を如実に物語っているではないか。
「オレには絶対できない!」
心臓をわしづかみにされて、ぎりぎりと締め上げられるような恐怖に
ずっと息を殺して、鼓動さえ押し隠すように逃げてきたが、
見えない何かに立ち向かうように、ここでそう声に出して言ってみて
初めて人間らしい、いや、自分らしい感情を取り戻す。
ここでもし生き残ったとしても、その時そこにいるオレは、もはやヒトではないだろう。
だったらオレは・・・オレは最後まで芸人パペットマペットとして死にたい。
こんなバカげたゲーム、一人ぐらいオレのような奴がいたっていいじゃないか。
殺し合いだというのなら・・・。
421名無しさん:2005/06/14(火) 22:32:39
パペットマペットは、相方同士でそれをやってのけてやる。
ウシを右手に、カエルを左手に、それぞれ立ち位置を定め、
唯一握ってきたナイフでそれぞれの喉笛を掻き切った。
すぱりと口を開けた彼らの喉元からは、紅い血が見る間にあふれだしている。
まるで本当にパペットたちがその命を流し出しているかのように。
やいばはちょうど両手首の血管を切り裂いていた。
冷たい土にその長身を静かに横たえ、ウシとカエルが胸の上で
互いに抱き合うように組まれた。
初舞台のコントを思い出していた。胸の震えるような緊張と喜び。
流れ落ちる血が、あの情熱のまま温かいことに充分満足し
覆面の中に誰も知らないとびきりの笑顔を浮かべながら、
遠のく意識にパペットマペットは静かにその目を閉じた。

パペットマペット死亡
422名無しさん:2005/06/14(火) 23:15:06
>>419-421
乙です。すごくセンチメンタルでいい話でした。
ただ、コテハン・トリップ推奨ですよ。
423音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/14(火) 23:31:26
 遠くに三つの人影が見えた。
 一人が逃げようとするのを、すぐ後ろにいた人物が金属棒を使って転ばせる。すかさずもう一人が覆い被さり、刃物で滅多刺しにした。
「二対一かよ……卑怯だな」
「……やっちゃいますか?」
「ああ」
 刃物を持った男にライフルの照準を合わせ、引き金を引く。衝撃と同時に発射された弾は、男の胸を貫いた。
「よし、当たった」
「もう一人はどうする?」
「ほっといていいんじゃねえの? あの傷ならすぐ死ぬだろうし、無駄弾使う事もないだろ」
「そうだな」
 そう言いながら、アンタッチャブル山崎はライフルを下ろした。
「これで二人……いや三人か」
 柴田は指を折って数えている。反対側の手には、サブマシンガンが握られていた。
「まだまだいるんだろうなー、人殺してる奴」
「そうだなー……ま、弾は結構余裕あるし、見つけ次第殺してこうぜ」
424音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/14(火) 23:35:46
 時は遡って、一時間前。
 ヤシコバ月子は、大木の根元に座って最期の時を待っていた。
 やっとの思いで出演したエンタの神様。彼女のネタに対する反響はそれほど大きくなかったが、それでも全国区の番組に呼ばれた事は、彼女にとって大きな励みになった。
 その後しばらく音沙汰がなく、二度目はないものと覚悟していた彼女に、再び出演依頼が舞い込んだ。今度はスペシャルだという。
 大勢の人気芸人たちに囲まれて、自分はまったく目立たない存在になってしまうかもしれない。だが、それでもいい――彼女にとって、エンタは憧れの舞台だったのだ。
 しかし、ヤシコバ月子を待っていたのは、舞台ではなく戦場だった。

 どうしてだろう――やっとあのステージに立てたのに。日本全国の人々の前で、自分のネタを披露出来たのに。
 どうして、殺し合いなんか。
 ナップザックを開けた瞬間、彼女の決意は固まった。
 終わりにしよう。苦しい思いをする前に。
 彼女は己の武器――剃刀を手首にあてがい、一気に引いた。
 出血と共に、少しずつ意識が薄らいでいく。多少は痛みがあるものの、凄惨な殺し合いの末に死ぬよりは、よっぽどマシだと思って我慢した。
 遠くから、誰かの声が聞こえてくる。
「……い、おーい、ちょっとそこのキミ、何してるのかなー?」
 力の抜けてしまった体を無理やり動かして声のした方を見ると、自分と同じ女ピン芸人、田上よしえが立っていた。彼女はヤシコバの手首から鮮血が流れている事に気付くと、ぎょっとした表情で駆け寄ってきた。
425音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/14(火) 23:39:15
「ちょ、ちょっと、どうしちゃったのよこれ」
「自分で……切りました」
「ええっ!? なんでそんな事しちゃうの!?」
「だって……私なんて、全然売れてないし……こんな武器じゃ勝ち残るのだって無理じゃないですか……」
「なーに言ってんの! あんたまだ若いんだから、そんな簡単に諦めちゃダメでしょ! ほらほらアタシなんて、ブームに乗れずに地味ーに活動してるし」
 アハハハ、と明るい声で笑いながら、田上は服を破った布きれでヤシコバの手首を縛った。
「諦めちったら終わりだよ? とりあえずマジになってやってみないと、絶対後悔するって」
 前向きすぎるほどの田上の言葉が、ヤシコバの心を奮い立たせた。
「ほら、アタシがこの武器で守ってやっから!」
 田上が小型の拳銃を見せる。
「生きてみようよ、な!」
「はい……」
 ヤシコバは静かに立ち上がった。
「私、生きたいです」
 右手を思いっ切り振り上げる。その手に握られたままの剃刀。それは一瞬の躊躇いもなく、田上の首筋に向かって振り下ろされた。
「え!?」
 驚きの表情を浮かべたまま、田上は地面に倒れた。ヤシコバの時とは比べ物にならないほどの勢いで、血溜まりが広がっていく。
「生きたいから……生きたいなら、殺さなきゃ――」
 ヤシコバは田上の拳銃に手を伸ばす。
 だが、彼女の望みはそこで潰えた。
 ――ダンッ
 鈍い破裂音が響いて、ヤシコバの側頭部から血が噴き出した。
426音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/14(火) 23:41:42
「どうしよう、撃っちゃったよ……」
 10mほど離れた所で、山崎はライフルを抱えて身震いしていた。
 そんな山崎を尻目に、柴田は慌てて田上に駆け寄る。
「田上さん、田上……クソッ、息してねえ!」
 柴田は田上の体を揺さ振ったが、彼女が意識を取り戻す事はなかった。
「ちくしょう……もっと早く気付いてたら、助けられたかもしんねーのに」
 奥歯を強く噛み締めながら、柴田は田上を地面に横たえる。
 強力な武器を持っていたというのに、彼らは後輩の命を救えなかった。
「なんでだよ……くそ……」
 地面に拳を叩きつける。その怒りが田上を殺した人物に対するものなのか、それとも自分自身に向けてのものなのか、柴田にもわからなかった。
「柴田……」
 山崎はそっと柴田に歩み寄り、気遣うように顔を覗いた。頬を伝う涙が見えた。
「……なんで殺す必要があったんだよ」
 殺す奴さえいなければ、このゲームは成り立たないのに。
 何故そんな簡単な事がわからない?
427音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/14(火) 23:47:07
 山崎は、しばらく間を置いた後。
「……戦うか、柴田?」
 ぽつり、と訊ねた。
「これとお前の銃で、人殺した奴やっつけるか?」
 柴田は顔を上げた。
 山崎の手にはライフル銃。
 柴田の手にはサブマシンガン。
 強力すぎるそれらの武器の使い道が、ようやく見えたような気がした。
「……ああ」
 柴田はぐいっと涙を拭うと、自らの武器を握って立ち上がる。
「やってやる。このゲームに乗った奴ら、全員ぶっ殺してやるよ!」

 こうしてアンタッチャブルは戦う事を決意した。
 正義のために――こんなゲームを楽しんでいる、殺人者たちを裁くために。

 田上よしえ――死亡(死因:ヤシコバ月子に剃刀で切られ失血死)
 ヤシコバ月子――死亡(死因:アンタッチャブル山崎にライフル銃で頭部を撃たれる)

【残り47組】
428音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/14(火) 23:50:48
予告通りアンタッチャブル編です。冒頭で撃たれたのはダーリンハニーです。
彼らは正々堂々と戦うのが一番合ってるんじゃないかな、と思いました。
最後にプロデューサーさん、会議板設置乙です。
管理は大変だと思いますが、頑張ってください。
429名無しさん:2005/06/15(水) 20:21:07
音さん乙です。
どんどん減ってきますね。誰が勝ち残るのか・・・。
430名無しさん:2005/06/15(水) 22:41:25
乙です
初めは乗ったのかと思いましたが違ったみたいでちょっとほっとしました。
田上さんめちゃめちゃいい人だ!!
431名無しさん:2005/06/16(木) 01:42:57
>>429
感想書くのは良いがsageろよ。
律儀に2chでメアド晒してどうすんだ。
432名無しさん:2005/06/16(木) 05:32:54
>>421
乙です。牛蛙のくだりがすごくよかったです。

>>音さん、乙です
アンタッチャブルはそっちに回ったのか、なんだかなあと思いきや、
そういう理由だったとは。彼等らしいと言ったら変かもですが。
どこまでやってくれるのか楽しみです。
田上&ヤシコバの展開含めすごく上手いと思います。
433乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/17(金) 15:38:11
>>414-415 の続き

波の行き交う音の中、目の前にいる二人――唐沢拓磨と渡辺剛太(レム色)
の話す魔法のようなことに赤いプルトニウムは我が耳を疑った。
 「――本当にそんなことできるの?脱出って…」
 「100%じゃないけど、やってみる価値はあると思うんですよ」
こんな嘘みたいな話、信じていいのかどうかわからない。
もしかしたら彼らはこれを信じ込ませ、後に殺そうとたくらんでいるのかもしれない。
いくらだって、そういった可能性は考えられた。けれど――
 「わかった。仲間になる」
赤いプルトニウムは腹を括った。
どうせこのままここに座っていたって死ぬんだ。
だったら、少しでも可能性があるほうに賭けてみるほうがいい!
 「おぉ!やったぁ!!ありがとうございます!!」
弾けるように立ち上がった唐沢の声はトーンが高く、隣の渡辺も非常に喜んでいる。
そんな二人を見て、信じても良さそうだな、と思った。
 「よっしゃ!そうと決まったら、行くかっ。
出来たらもっと仲間を見つけて、皆でこんなゲームから脱出してやる」

【残り47組】
434起 ◆PhlgJkjSDU :2005/06/17(金) 21:54:11
書き手の起です
今回環境の諸事情により
小説をUPしていくのが困難になってきました
中途半端に終わらせてしまい申し訳ないと思っております
どうか続き書いて下さる方おらっしゃれれば
継続していただけないでしょうか?
435名無しさん:2005/06/18(土) 17:09:08
>>434
そういういのはプロデューサーさんが作った
議論スレでいったほうがいいんじゃない?
ともあれ短い間だったけど起さん乙です
436乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/18(土) 18:21:34
地を踏み、蹴る足音。荒い息遣い。そして叫び。
耳に入ってくるそれらは確実に大きくなってきている。
この先で、誰かと誰かが闘っているのだろうということは容易に予想できた。
 「なぁ、この先絶対誰かおるやん。どうする?」
あまり整備されていない土で出来た道――その脇に広がる河川敷の
草原を歩く井上聡(次長課長)は隣を歩く河本準一に向け、できるだけ小さい声で呟く。
聞えてしまうはずは無いと思うが、用心に越したことは無い。
 「そんなん、麻酔銃で撃てばええやん。むしろこれチャンスや」
 「あぁ、やっぱそう思うか」
草むらに紛れているため見つかる心配は少ない。出来るだけ近づいて、確実に狙いを定めよう。
 「なぁ、あれ誰やと思う?」
河本がナイフか何かで戦いあう影を指差す。
あの存在を確認したときから、井上も考えていた。
一方はこちらに背を向け、その人物に隠れもう一方の顔もうかがえない。
 「うーん…まぁ誰でもええんちゃう?殺せばわかるわ」
もうその影との距離も近い。
そろそろ動きを起こしても良いだろう。どうやら銃は持っていないようだし。
 「撃つわ」
しっかりと両手で構え、井上は引き金を引いた。
ダァンッ、と普通の銃と変わらないような破裂音。
しかしその銃声と全く同時に、誰かの叫ぶ声が聞えた。
437名無しさん:2005/06/19(日) 13:16:47
>>435
チャソですみません。そのスレ見つかんねーんですけど、この板にあります?
438名無しさん:2005/06/19(日) 16:57:52
>>437
スレちゃんと嫁。
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/4680/#6
439名無しさん:2005/06/21(火) 18:02:18
最近止まってるね。作者さんがんがれage
440名無しさん:2005/06/21(火) 20:02:06
>>439
同意。

このスレ、全盛の時と過疎してる時の差が凄いな。
・・・寂しい。
441音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/21(火) 22:48:20
すみません、数日中に投下します。
たまたまみんな書けない時期が重なったのかな…。
442音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/22(水) 22:49:27
 逃げて、逃げて、全速力で逃げ続けて、自分が何故逃げているのかわからなくなったところで足がもつれた。その勢いのまま前方に一回転して、やっと停止する。
 追っ手は来ていないようだった。そもそも、あの状況だったら、殺す気があれば簡単に実行できただろう。しかしあの二人は彼を逃がしてくれた。今がバトルロワイアルの真っ只中である事を考えれば、それは幸運としかいいようがないだろう。
 しかし――それならば何故、彼らは自分を襲ったのだろう? 記憶を遡り原因を探ってみたが、その直前に何があったのか、自分が一体何をしていたのか、何故だかまったく思い出せない。
 いや、落ち着け。最初から考えてみるんだ。
 彼は仰向けのまま深呼吸し、これまでにあった出来事を反芻した。
 エンタの楽屋にいた事。これは思い出せる。
 教室。芸人たち。バトルロワイアルの開始。これもはっきり覚えている。
 そして、それから――
「……あっ!」
 彼は思わず声を上げ、慌てて体を起こした。
 どうしてこんな大事な事を忘れていたんだろう?
 そうだ、俺は、約束したんだ――
 彼は立ち上がり、自らのいるべき場所へ向かおうとした。
 しかし――
443音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/22(水) 22:51:53
 そう遠くない場所から悲鳴が聞こえた。
 アンタッチャブルの二人は顔を見合わせる。
「誰か襲われたのかな?」
「そうだろうな」
「行くか?」
「ああ」
 一瞬たりとも迷わずに二人は決断した。迷えばそれは即手遅れになるという事を二人は学んでいた。大切な後輩の死によって。
 木々の間から激しく人影が見え隠れする。襲われた方はどうやら丸腰らしく、上手く逃げ延びてはいるものの、徐々に追い詰められているのは明白だった。
「くっそ……こっからじゃ当たんねえな」
 ライフルを構えながら山崎が呟く。木が邪魔になる上に、目標が動いているからだ。下手をすれば、襲われている方に当たりかねない。
「いいよ山崎。今回は俺がやる」
 山崎を手で制しながら、柴田が前に踏み出した。そのままずんずん二人が戦っている方へ近付いていく柴田に、山崎が慌てて声を掛ける。
「し、柴田、そんな近くに行ったら危ないって」
 確かに柴田の武器であるサブマシンガンは、山崎のライフルに比べれば近距離戦に向いた武器である。しかし、わざわざ敵に近付いて、自らを危険に晒すのは得策とは思えない。
「大丈夫だよ、俺逃げ足速いし……間違えて撃っちゃったら後味悪いだろうが」
 襲われている芸人は、どうやら自分とはあまり親しくない人物のようである。しかしそれでも、彼を死なせるわけにはいかなかった。
 もしも自らの手によって彼を死なせてしまったら、今までしてきた事のすべてが瓦解してしまうような気がしたのだ。
 そうなったら――一体、自分たちは、何を信じて生きればいい?
 一瞬感じた心寒さを振り払うように、柴田はサブマシンガンを握り締める。
「よし、行くぞ!」
 自分を鼓舞するように声を上げ、柴田は走り出した。
444音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/22(水) 22:52:44
とりあえずここまでです。中途半端ですが、また長くなりそうなので。
445名無しさん:2005/06/22(水) 23:58:53
乙です!
久々の更新うれしいですv
チャブの二人が助けようとしている人が誰なのかわからない・・・
続き、楽しみにしてます!
446音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/23(木) 17:41:30
「うわああああ!!」
 目が合った瞬間に、そいつは武器を振り下ろしてきた。紅色に染まったそれは、外国の昔話にでも出てきそうな、巨大な斧。彼がぎりぎりで攻撃をかわすと、それは鈍い音と共に地面に突き刺さった。あれを喰らったら一溜まりもないだろう。
 敵が地面から斧を引き抜こうとする隙に彼は逃げ出した。しかし、全力疾走の疲労が抜け切っておらず、体が思うように動かない。おまけにこの服装では――
 圧倒的不利ではあったが、それでも自分のやるべき事を思い出した今、簡単に諦めるわけにはいかなかった。
 スピードを上げて横薙ぎをかわす。服が引っかかり破れる音。しかしそれに構ってはいられない。
 上から下へ。右から左へ。緩慢な動きにも関わらず、それは確実に彼を追い詰めていく。
 恐怖に負け、彼がほんの僅か後ろを振り向いた瞬間。
 彼の疲れ切った足は、小さく盛り上がった木の根につまずいた。
「あ……」
 終わりだ。
 傾いていく視界いっぱいに、斧を振り上げたそいつの姿が映った。
 瞳を閉じる事も出来ないまま、最期の時を待つ彼。
 しかし、斧が落ちるよりほんの一瞬だけ早く。

「何やってんだてめぇ!!」
447音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/23(木) 17:42:55
 柴田はサブマシンガンを構え、あらん限りの声で叫んだ。
 襲っていたのは、派手な蝶ネクタイで胸元を飾った男、きくりん。
 きくりんは斧を構えた体勢のまま振り向いた。その瞳が、柴田の瞳を捉える。
 その時柴田は、初めて殺人者の瞳を見た。
 そこには、悪意の色などなく。
 狂気すらも存在しなかった。
 あるのはただ、冷たい意志と、哀しい決意。
「う……」
 サブマシンガンを持つ手が震えた。
 ――何故だ。
 こいつはゲームに乗ったのではないのか? 悪に手を染めたのではないのか?
 こんなのは違う。これでは――これでは、まるで。
 自分と同じではないか。
「……柴田さん? どうかしたんですか?」
 きくりんの瞳が鈍く輝く。
「やる気ないならこっちから行きますよ? 僕も生き残りたいですからね」
 きくりんは振りかぶったまま間合いを詰める。柴田の眼前に、斧が迫る。
448音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/23(木) 17:44:26
「……くそっ!」
 柴田は引き金を引いた。軽快な音が響き、銃弾がきくりんの腹に吸い込まれていく。きくりんは2、3歩後退した後、何かを訴えるように柴田を見、そのまま地面に倒れた。
 柴田は呆然とそれを眺めていたが、はっと我に返ると、地面に座り込んだままの男に駆け寄った。きくりんも変わった服装だが、彼に襲われていたこの男も、負けず劣らず妙な格好をしている。お寺の坊主が着ているような――確か、袈裟とかいう服だ。
「大丈夫か?」
「え? あ、はい……」
 男――南野やじは、何が起こったのかわからないのか、困惑したように柴田と倒れたきくりんを見る。
「安心しろ、俺はお前を助けに来たんだ」
「助けに?」
「おーい! 柴田、無事かぁー!?」
 そこに、無駄に大きな声を上げながら山崎が駆け寄ってきた。
「ああ、なんとかなったよ。こいつも無事だ」
 動かなくなったきくりんが視界に入った瞬間、胸の奥で何かが疼いたが、気のせいだと思う事にした。
「あ……ありがとうございます」
 二人が揃ったところで、南野はとりあえず礼を言った。
「ああ、いいっていいって。気にすんなよ」
 柴田はひらひらと手を振り、俺らの目的はゲームに乗った奴倒す事だしな、と笑って見せた。
「お前は? 目的とかあんの?」
「僕は……」
 目的、と言えるものかどうかはわからないが。
449音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/23(木) 17:47:18
「実は今、探してる人がいて」
「え? 誰?」
「椿鬼奴さんです。黒いドレス着た女の人で……」
 南野は二人に、椿の外見や服装などを説明した。
「どこかで見かけませんでした?」
「いや……」
「知らないなー……」
 首を傾げる二人に、南野はわかりました、と頭を下げた。手掛かりがないのは残念だったが、死んだと決まったわけではないだけありがたかった。
「その人、お前の仲間なの?」
「はい、一応」
 彼と椿は同じ事務所に所属していた。特別仲が良いわけでもないが、ゲーム開始から数十分後に偶然出会い、そこで互いに協力する事を約束したのだ。
 だが、その後の記憶がない。
「次に気が付いた時には、他の芸人さんに襲われていて、気が動転して思わず逃げ出してしまったんです……そこではぐれちゃって」
「襲われたって、誰に」
「それは……」
 南野は二人の顔を見ると、言いにくそうに小声で呟いた。
「ドランクドラゴン……さんです」
「ドランクドラゴン?」
 まさかあの二人が?
 山崎と柴田は顔を見合わせる。
450音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/23(木) 17:50:32
「でも……まさかなあ」
 鈴木一人ならありえなくもないが、相方の塚地は常識的な人間だし、安易にゲームに乗ってしまうとは思えない。
「まあ、どうせ近くにいるんだからさ、とりあえず会ってみた方がいいんじゃない?」
「そうだな……」
 あの二人も、まさか事務所の先輩をいきなり襲ったりはしないだろうし。
 もっとも、南野をほぼ無傷で逃がしたという事実からすれば、二人が殺人目的で南野を襲った可能性は薄い。恐らく、なんらかの事情があったのだろう。
「お前はどうする? 一緒に来るか?」
 いかにもひ弱そうな南野を、一人で残していくのは気が引けた。
 しかし、南野は首を振る。
「いえ……僕は椿さん探して、そっちに合流します」
 確かにアンタッチャブルの武器は強力だし、味方になってもらえれば安全に目的を果たせるだろう。
 しかし――柴田の言った、「ゲームに乗った奴を倒す」という言葉が、安易に仲間になる事を躊躇わせた。
 椿がゲームに乗ったかどうかはわからない――もしかしたら、既にどこかで誰かの命を奪っているかもしれない。それをこの二人に知られたら、見逃してもらえる保証はない。
 椿鬼奴は、今度こそ自分が守り通す。
 その決意を示すように、南野はきくりんの斧を手に取った。
「そうか……わかった」
「気を付けてな」
「はい。お二人も、お気を付けて」
 そして彼らは、互いの目的に向かって歩き始めた。

 残酷な真実は、静かに明かされる時を待っている。

 きくりん――死亡(死因:アンタッチャブル柴田にサブマシンガンで撃たれる)

【残り46組】
451音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/23(木) 17:53:39
アンタッチャブル&南野やじ編でした。多少読みにくいかもしれませんがお許しを。
ついでに補足しておくと、私の話は皆さんとちょっと時間軸がずれていて、この時点ではまだ6時の放送は流れていません。
452乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/23(木) 19:15:21
>>436 の続き

自分が駆け寄るのとほぼ同時に二つの人影は折り重なるように倒れた。
今の銃声。撃たれたのはどっちだ――?
もしもあいつだったら、それは俺のせいだ。
物音がして、様子を見に行ってくるから待ってるよう俺に指示し、
隠れていた倉庫から出て100メートルばかり離れた河川敷と密接する道へ向かっていった相方――
 「竹森!!」
思わず大声で相方の名前を叫んでいた。
帰りが遅く、心配になって見に来てみたら――。
安部浩貴(アップダウン)は倒れた二つの影に走り寄った。
 「だ、大丈夫」
相方――竹森巧は自分の上に倒れる男を押しのけ、なんとか這い出てきた。
良かった――。無事だった。
 「え?けどこれって一体――」
竹森のことばかりに頭が行って、その相手となっていた男のことを忘れていた。
土や砂で体が汚れることを気にすることもなく地面に横たわっているのは、
赤いスーツが目をひく――マギー審司だ。
 「俺、何もして無いけど…」
呆然とする竹森だったが、安部は気がついた。
マギーに目立った外傷は無く、血も流れていない。
しかも少し開き気味なその口からは、スースーと安らかな音が漏れている。
 「っていうか…寝てない?」
ありえないことだ。戦闘中に突然眠ってしまうなんて。
レギュラーの西川君じゃあるまいし。
 「いや、ありえないっしょ…」
目を丸くしマギーを見る竹森。彼の目にはクエスチョンマークが浮かんでいるようだ。

 「麻酔銃使ったならありえるやろ?」

その声に、二人は同時に顔を上げた。
453名無しさん:2005/06/23(木) 22:19:21
乙です
音さん
きくりんだったんですか・・・中途半端に好きなので複雑です
南野が何も覚えてなかったのがびっくりです。

乃さん
待ってました!
ここにつながってるとは思いませんでした・・・
続き、すごく気になります。
454南の飴@荒らし◇psHGIwsrfe:2005/06/24(金) 14:48:10

[兎林檎]
大きな水筒からその透明な水を掬す。
水筒も一応は有るが、飲み口から直に飲んででもしたら、きっと明日の今頃には腐りきっているだろう。
それとも、この水が腐り切る前に死んでしまうのだろうか。
山崎はそう思いながら口をつけて水を飲むと、ごくん、と僅かながらも喉が音を立て水を吸い込んだ。
「……ふは…」
水と口が離れた瞬間に小さく息継ぎをして、残った水をざば、と掃き捨てる。
「ねえー、僕の分は?」
「自分のあるやろ」
山崎が一喝すると、山里はしゅんと肩を落とし、あからさまに落ち込んだ様子を見せ付けた。
「…たかが水でそんな落ち込む事ないやろ…しゃあない。ナイフとって。」
「ん。」
山里が少し遅れて生返事を返し、がざがざとバッグを漁りバタフライナイフを渡す。
「…よし」
手を浮かせた状態で林檎を切り、手を動かすが、寸分の狂いもなく慣れた手つきで林檎を回す。
しゃりしゃりと水の混ざった音と共に、ナイフで林檎がの兎が踊った。
「ほら、できた。一応これで水分補給ぐらいにはなるやろ。」
「ありがとしずちゃん、手先器用なんだね。」
そんな殺伐としているがどこか抜けた、という異様な空気の流れる中で、突然に西の葉の辺りからがざ、と言う葉の擦れる音がした。
455名無しさん:2005/06/24(金) 15:40:27
エレキコミック書いてる書き手さん、まだいらっしゃらないですよね?
456名無しさん:2005/06/24(金) 17:00:29
>455
そういう話題は進行会議用掲示板でした方がいい。
あと、エレキコミックは眠さんが使う予定だったはず。
457455:2005/06/25(土) 09:48:50
スマソorz
458名無しさん:2005/06/26(日) 13:46:11
なかなか進まなくなってきましたね。
急かすようですいませんが書き手さんがんがってください。
459乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/26(日) 17:17:54
>>452

  「どーも、次課長井上です」
遠目で誰なのかわからなかったが、自分が今撃った男――マギー審司らしい――
と争っていたのは、アップダウンのどちらかのようだ。
 「え?麻酔銃って…助けてくれたってこと?」
困惑したような表情の竹森は、両手で地面を押して立ち上がる。
同じく混乱の色を浮かべる安部もそれに続いた。
 「まぁ、そういうことになりますね」
自分の背後にいた河本は、一歩前に踏み出す。見るとポケットが不自然に膨らんでいる。
手榴弾が入ってること、バレバレやん――。
つっこみたくなったが、どうせ今は使えない。後でも良いだろう。
それよりも今目の前で無防備に身を晒す二人を始末しなければ。
井上は手に持つ麻酔銃を構えかけ、動きを止めた。
遠くに続くこの道の先――アップダウンの後方に、複数の人影が見えたからだ。
チッと舌打ちし、井上は不自然に上がった両の手を下ろした。
 「すいません!そこの方々!」
駆け足でこちらに向かってきた人物。
幼児向け番組出演者のような格好をした男二人に、
あともう一人は――
 「あ!次課長さん!」
赤いプルトニウム。他番組での共演もある女芸人だ。
そして男二人はレム色。まだまだかなりの若手である。
 「え?なんなん?」
少々苛立った言い方になっていたかもしれない。何しろ思いっきり邪魔されたのだから。
河本のほうへ視線を走らせると、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
 「え、あの次長課長さんにアップダウンさんですよね?」
レム色のうちの金髪のほうが尋ねる。井上も、アップダウンの二人も無言で頷いた。
 「突然なんですが、仲間になってくれませんか?」

【残り46組】
460乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/06/26(日) 17:21:37
とりあえずこのへんは一旦一段落。この続きはそのうち書きます。
あとものすごく不安なんですが、自分と音さん以外ほとんど書いてないような気が…。
>>454の方は新参作者さんみたいですが、今までの方々、たまたま忙しいだけですよね?
このまま逃亡だったら…って思ってしまうんで、もし見られてて書く暇の無い作者さんがいられましたら
議論スレのほうにでも一言生存報告してください。
461音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/26(日) 20:49:17
>乃さん
確かにそうですね・・・。
ドラドラ編はストーリー上時間軸が進みすぎると辛いんで、他の皆さんにも頑張って欲しいです。
無理強いは出来ませんが・・・。
462:2005/06/26(日) 21:39:21
「ヒロシです。
うちの子もヒロシって名前なのって言われたとです。
なんて答えればいいとですか。」
ヒロシは目の前のいつもここから山田一成、否、且て山田一成だったものに話し掛けた。
もう、駄目出しも、アドバイスもしてくれない山田一成に。
放送で、知ってはいた。
そして、それを実際に見つめても...
顔は判別がつかない。
でも、血まみれとはいえ見慣れたスーツ。
そして、傍らに横たわる菊地。
それは山田一成に相違なかった。
それでもヒロシは、その現実をどう受け止めたらいいのか、わからなかった。
人見知りが激しくて、自分から他人に話しかける、何て事は決して出来なかった。
でも、何故か山田だけには、引き付けられるように自分から話しかけた。
以来、東京では、唯一の親友だった。
「俺、本気でお笑いで売れたい。」
ホスト時代にそう言った時、親身になって、アドバイスしてくれた。
売れた時、誰よりも喜んでくれた。
単独ライブや、DVDも製作にも関わってくれた。
そんな面倒見のいい山田君が、何故...
苦しかっただろうか、痛かっただろうか、それとも全て一瞬で終わったのだろうか。
どの道こうなるのなら、いっそ自分の手で...
そんな事さえ思った。
ヒロシは武器を取り出した。
ウォッカのビン1本とライター1つ。
酒が飲めないくせにホストだったヒロシには、皮肉な武器だった。
ヒロシは乗り気ではなかった。
でも、いざとなったら、自分の身を守らなきゃいけない。
死にたくないから。
となると...
463:2005/06/26(日) 21:43:20
・ビンで相手を殴って気絶している間に逃げる。
・半分くらいに割って鋭利になったビンで相手を脅して逃げる。
・言葉巧みに相手にウォッカを飲ませて、酔っ払った隙に逃げる。
3つ目の考えは、真っ先に捨てた。
元ホスト、しかも今は芸人。でも言葉巧みには...かなり自分には無理があった。
4つ目の考え、それは考える迄も無く自分には出来ないと思っていた。
でも...
ヒロシは山田の遺体に満遍なくウォッカをかけた。
「山田君は酒、飲めるから。」
そして、ライターで火をつけた。
生きて、自分を攻撃してくる人ではなく、死んで、もう自分には決して攻撃を仕掛けてくる人ではなく。
ウォッカは、容赦なく山田の遺体を燃やした。
ヒロシは山田ではなく、炎を見つめていた。
お互いに敬愛しているバンド、スタークラブの話で盛り上がった事、
一緒にやっているバンドの練習...
走馬灯の様に、思い出が頭をよぎった。
出会った日から全てが、まるで、昨日の事だったかの様に。
464:2005/06/26(日) 21:44:36
全てを燃やし尽くし、まだ燻っている物の、炭化した山田の遺体。
それを見ても、ヒロシは不思議と涙が出なかった。
何故そんな事をしたのか、自分でもわからなかった。
弔いのつもりかどうかさえも。
本当かどうかは知らないが、韓国では、
思いを残して死んだ人は火葬に、そうじゃない人は土葬にする風習がある、
と聞いた事がある。
自分も山田君も日本人だけど。
でも思いを残して死んだだろうから、燃やしたのだろうか。
そんな思いが頭をよぎるだけで、もうヒロシには、何かを考える力も無かった。

「パン。」
一発の銃声と共に、ヒロシの背中に激痛が走り、そのまま山田の遺体の上に、崩れ落ちた。
燻っている山田の遺体は、まだ熱かった。
「山田君...山田君...!!」
あたかも、苦痛の叫びの代わりに、山田の名を叫んでいる様だった。
ヒロシは、やっと、泣き喚く事が出来た。
ただ、弾丸は心臓の近くを打ち抜いたようだ。
ヒロシが泣き喚く事も出来ず、
また元の静寂が戻るのに、そう時間はかからなかった。

ヒロシ死亡
【残り45組】
465:2005/06/26(日) 22:13:47
「ヒロシのヤロー、俺の事無視しやがって。」
いつもここから菊地は怒っていた。
「だって、あーたは斉藤(ヒロシの本名)と友達でもなんでもなかったでしょ。」
山田は、そう宥めた。
「ずるいよ、山田君ばっかり。俺の時は誰も泣いてくれなかったもん。」
「スピードワゴンの2人が泣いてくれたじゃない。」
「でも山田君のほうが感動が上だもんね。」
死んでも、相変わらずだなあと、山田は、かえって笑いたくなった。
確かに思いはたくさん残っている。
お笑い界でいつもここからというジャンルを作ること、
我ながら、パンクスな発想だと思うけど...
でももう、菊地の手が血にまみれるところを見ないで済む。
糞みたいな番組の、最悪な企画に踊らされずに済む。
これでよかったんだ。
そう思わないとやりきれないってのもあったが。
菊地はまだぶつぶつ言っていた。
「もうすぐ来るから、斉藤に言えよ。」
そして山田は、ヒロシに、ヒロシを殺したのは
インスタントジョンソンのジャイだということを教えるか否か、
考えていた。
466:2005/06/26(日) 22:20:02
勝手に番外編みたいなの作って、すみません。
後インジョン編はその内書きます。
467名無しさん:2005/06/27(月) 17:00:44
>蛙さん
乙です! インジョンの話楽しみにしてます。
468名無しさん:2005/06/27(月) 17:51:12
>蛙さん
乙!上手ですね。番外編もおもしろかったです。
これからも頑張ってください
469名無しさん:2005/06/27(月) 22:30:30
>蛙さん
乙です。
いつここは好きなので、また出てきて嬉しかったです。
470名無しさん:2005/06/27(月) 22:42:38
乙です。
こういう番外編結構好きなので嬉しいです
471南の飴@荒らし◇psHGIwsrfe:2005/06/28(火) 08:38:40
「…誰だ?」
山里が異様な気配を感じて、山崎の持っていたナイフを奪い取り、身構える。
「…僕ら、いや僕は戦うつもりはない。大丈夫。」
がざがざと音を立て、葉の間を切り傷だらけで通ってきた男が、抑揚のない口調でそう言い放った。
「そんなこと信よ―――」
「どっから来はったん。りんご、食べます?」
警戒して武器を持つ山里の言葉を遮り、山崎は緊張もなく言う。
「あ、食べるよ。」
「1個でええ?」
「…あ、あいつのもやってよ。あいつ寝てるからさ、あとで剥いてやって。」
「ん、おけ。」
山崎が手で林檎の兎を渡すと、ぺろ、と林檎の蜜でべたついた指の先を甘咬みしながら舐めあげた。
「…まぁ、寝てる相方にもやるなんて、優しいですね。」
「…別に、ふつうじゃん。」
「そんな優しいひとが死んだら、もちろんみんな悲しみますよね?」
「…?」
「静かにしてくれますか。」
きょとんとした顔で男は山崎を見上げるが、そんな男の様子に構う事もなくはっきりと言葉を続け、真摯な様子で男の目を見つめた。

・蛙さん
すごくいいです。
これからもたのしみにしてます。
472音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/29(水) 01:55:24
 同報無線から流れたチャイムの音で、鈴木は目を覚ました。眼鏡をずり上げながら塚地の方を見ると、こちらは一睡もしていないらしく、寝る前とまったく同じ姿勢で立っていた。
『「椿鬼奴」、「ダーリンハニー」……』
 放送は明るい調子で死者の名前を読み上げていく。有名な者でも無名な者でも、家族がいようがいまいが、どんな芸風だろうとどんな死に方だろうと、そこでは単なる“ゲームの敗北者”だった。
『残り50組まで減ったな。視聴率もどんどん上がってるぞー。日本全国に素敵な殺し合いをお届けしろよー』
 放送の締め括りの言葉を聞きながら、塚地は鈴木に歩み寄り、隣にすっと腰を下ろした。
 二人とも無言のまま、時間だけが過ぎる。
「田上さん、死んじゃったんだね」
 しばらくして、鈴木が呟いた。
「せやな」
 塚地も頷く。
 死者の中には知っている芸人も数多くいたが、その中でも、同じ事務所所属でエンタ以外の番組でも共演した事がある田上とは、かなり親しい間柄だった。
「他のみんなは、無事なのかな」
 鈴木の言葉に、塚地は少しだけ迷って返答する。
「まあ、放送で呼ばれてないなら、どこかで生きてるって事やろうな」
 生きている事と無事である事は、イコールではないのだけれど。
 ゲームの開始から数時間。以前と変わらぬ精神を保てている者が、果たしてどれだけいるのだろうか。
 殺す側に回った者、積極的ではないにしても殺しを容認した者――このゲームの中では、普通ならばありえない思考回路が、当たり前のように存在する。
 しかし、そんな状況でも――いや、そんな状況だからこそ、塚地は自らの目的を諦めるわけにはいかなかった。
「どうするの、これから」
「とりあえず、協力してくれる奴探さんとな」
 ドランクドラゴン一組だけでライブをしたって、それは恐らく、このゲームになんの影響も及ぼさない。
 しかし、人衆ければ天に勝つ。塚地の思惑通りにいけば――ゲームクリアの可能性だってある。
 もちろん、それは夢物語に過ぎない。
 けれど――そのために生きると、決めたのだから。
「行くか、鈴木」
 塚地は立ち上がりかけ――
「その前にご飯食べていい?」
 鈴木の言葉にガクッと脱力した。
473音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/29(水) 01:56:43
 嘘だ――嘘だ。
 放送ははっきりと彼女の名を告げていたけれど、それでもまだ、心は否定し続けていた。
 疲れきっているはずの体が勝手に走り出す。早く事実を確かめなければ、いつも不安定な彼の精神は、おかしな方向に倒れてしまうだろう。
 どこまで行っても同じような景色。しかし、無意識の恐怖と緊張が彼の鼓動を一層速め、その場所が近い事を教えていた。
 そして――
 どこか懐かしい香りが、微かに漂う空間で。
 彼女は地面に横たわっていた。目立った傷もなく、苦しんだ様子もなかった。
 しかし、彼女は死んでいた。
 誰かに殺されていた。
 苦労して持ってきた巨大な斧が、手から滑り落ちて地面にめり込む。
「……椿さん……」
 彼女の名を呼ぶ、まるで呻きのような声。
 彼は――南野やじは、椿鬼奴の死体の傍に座り込んだ。
474音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/29(水) 01:59:50
 涙は流れなかった。そこまで深い仲ではなかった。
 ただ――彼は後悔の念に苛まれる。
 なぜ逃げ出してしまったのだろう。なぜ手遅れになる前に戻ってこられなかったのだろう。
 裏切り者。弱虫。無能。お前は仲間を見捨てた。お前のせいで椿は死んだんだ――!
 誰もいないはずの空間から声がする。それは自分の声、自分が自分を責める声だった。自らの自虐的な性格によって、彼の精神は追い詰められていった。
「俺は最低の人間だ……」
 なぜ自分は生き延びているのだろう。何も出来ないくせに――生きる価値もないくせに。
「俺なんか、俺なんか、俺なんか……!」
 南野の手が、椿の投擲用ナイフに伸ばされる。
 しかし、それを握り締めた途端、彼の脳裏に、ある考えが閃いた。
「そうだ――復讐すればいいんだ」
 仲間が殺された。
 だったら自分が犯人を殺してやる。
 単純明快。当然の事ではないか。
「復讐してやる……絶対見つけ出して殺してやる」
 正しいとか正しくないとか、そんな事はどうでも良かった。ただ、自分を支えるものがあればいいのだ。
 自分自身を責める声は消えた。
 今度こそ逃げるまいと固く心に誓い、南野やじは新たな一歩を踏み出した。

【残り45組】
475音 ◆yOLxh0F1.c :2005/06/29(水) 02:07:58
ドランクドラゴン編・南野やじ編でした。
だんだん芸人さんが出揃ってきたんで、書き手同士の話し合いも必要になるかもしれませんね。
476音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/01(金) 00:04:40
連投ですが、停滞気味ですので。

「……ツイてないなあ……」
 竹内は掠れた声で呟いた。
 この世界には幸運とか、あるいは不運としか呼べないようなものが確かにあって、結局の所人生を左右しているのはそれらの“どうしようもない事”なのだ。
 竹内は相方の事を考える。
 増井歩という名のその男と出会えた事を、竹内は幸運だと思っていた。
 彼と出会わなかったら、恐らく自分が芸人として売れる事はなかっただろう。テレビ出演なんて、尚更ありえない。だから竹内にとって増井はなくてはならない存在だし、普段口に出す事はなくても、心の底から感謝している。
 だけど――増井はどうなんだろう?
「なあ……お前、今、なに考えてるの……?」
 問い掛けても答える声はない。増井は竹内をこの場に残し、一人で行ってしまった。
 無論、竹内は追いかけようとした。彼の相方、ハロの一員として、共に戦いたかった。しかし彼の体はもう、その望みを叶えるだけの力を持っていなかったのだ。
 さっきから意識が定まらず、現在の景色と過去の映像が、壊れた蛍光灯のように交互に明滅している。きっと、走馬灯というやつだ。相方の顔ばかり浮かぶのは、巻き込んでしまった事を、申し訳なく思っているからだろう。
「あーあ……あんなかっこいい事言ったくせにさー……」
 自分のせいで、増井は死ぬ。
477音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/01(金) 00:07:57
 こんなに真剣に話し合ったのは、ハロ結成以来初めてかもしれない。
 生き延びたい。
 だけど人を殺したくない。
 月並なジレンマだけれど、バトルロワイアルにおいて、避けては通れない問題。
 結局のところ、二人は武器を手に取った。積極的に戦おうなんて気はないけれど、向こうが襲ってきた場合、正当な防衛はしようと思ったのだ。
 竹内の武器は、刃渡り20pを超える牛刀。立派な武器と言っていいだろう。
 一方、増井の武器はプラスチック製のメガホン。ペ・ヨンジュンとメガホンという組み合わせが、この場に似合わなすぎるので、竹内は思わず笑みをこぼした。
「なんか武器に差がありすぎじゃない?」
 増井は自分と竹内の手元を見比べて苦笑する。
「オレが戦う役目って事でしょ」
 竹内は笑って返した。
「なんかそれ、悪いなー」
「いいんだって。元々この世界に増井さんを引き込んだのは俺なんだし――」
 銃声のようなものが聞こえたので、思わず言葉を切ってしまう。音は相当遠いし、自分たちを狙っているわけではないとわかってはいても、まだこの状況に慣れていないため、過剰に反応してしまうのだ。
「うん、だからさ、俺は責任持って増井さんの事守るよ」
「……うわっ、竹内くんってばくっさいなー」
「うるさいよ」
 照れ隠しに怒ったフリをし、増井に背中を向けて歩き出す。
 再び遠くから銃声が聞こえた――
「竹内くんっ!!」
 増井の叫ぶ声。
 竹内は、腹部から飛び散る自らの血を呆然と眺めながら、ゆっくりと後ろに倒れていった。
478音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/01(金) 00:10:58
「わ……うそ……」
 撃たれた、のか?
「た、竹内くん」
 増井は倒れた竹内の傍らに膝をついた。
「なんで……銃弾が……」
 苦しげに呟くと同時に、竹内はその事実に思い当たる。
 ――自分はなんてツイてないんだ。
 銃声は遠くから聞こえた。だから自分たちが標的になる事はないと思っていた。だけど銃弾の届く範囲は、狙いが定められる範囲よりもずっと広い。
 狙った相手から逸れた銃弾が、たまたま竹内に向かって飛び、腹部に突き刺さったのだ。
 流れ弾だから、当然急所は外していた。しかし、医者など存在しないこの島では、致命傷である事に変わりはない。負傷から死までの時間の流れが、緩慢になったというだけだ。
「……増井……」
 相方の名前を呼ぶ。しかし、掛けるべき言葉が見付からない。
 増井は無言で立ち上がった。こちらを向いた瞳は、哀しさと強さが入り混じり、どこか冷たささえも感じられた。
「竹内くん、武器、交換ね」
 増井は竹内の手から牛刀を抜き取り、代わりにメガホンを傍らの地面に置く。
「俺、ちょっと出掛けてくるから、ここで待っててよ。……戻ってくるまで、生きててよね」
 それだけ言い残すと、増井はどこかに向かって歩き始める。
「え、ま、待ってよ増井さん……!」
 竹内の声にも増井は振り向こうとしない。
 竹内は立ち上がって追い掛けようとした。しかし、体を支えられず前のめりに倒れる。傷口に石が当たって、電撃のような痛みが走った。
「増井……どこ行くつもりなんだよ……」
 地面にうつ伏せたまま、竹内は呟く。
 だけど、彼を残して去った相方を、責めるつもりはなかった。

 増井を死なせるのは、他でもない、自分なのだから。
479音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/01(金) 00:14:28
ハロ編投下です。相変わらずわかりにくい話ですが・・・。
480名無しさん:2005/07/01(金) 06:56:40
>>476-478
乙です。これからも頑張ってください。
481名無しさん:2005/07/01(金) 16:01:46
age
本当に他の作者さんはどこへ消えてしまったんだろう。
もしも他の作者さん全員逃亡だとしたら、残った四人で完結してほしい。大変だと思うけど。
まとめサイトの更新も止まってるし…。皆さんがんがれ!
482名無しさん:2005/07/01(金) 17:12:41
まあそんなにすぐ話が出来るわけでもないし。
これからの展開どうしようとか考えてたらいつの間にか
一ヶ月経ってたりみたいな。
一回自分が書き手になってみたら更新の遅い理由が分かるかも?
483霧 ◆ulAwgplWcU :2005/07/01(金) 19:31:49
「あーあ…取れないなぁ」
鎌にこびりついた肉と血を洗い流すために波田は民家に入った。

既に誰か使用したのだろうか、物が散乱した家の中はほんの何日か前まで人が住んで居たとは思えなかった。

「…こんなもんでバレないかな」

タワシや洗剤を駆使してようやく赤い物を全て洗い流した波田は周りを見渡した。

(何か武器になるものとか…)

棚や引きだしを乱暴に開け、波田はあるものを見つけた。
484霧 ◆ulAwgplWcU :2005/07/01(金) 19:37:37

「あー…イイ感じじゃ無いですか…」

ニヤリと笑う波田の手には
刃渡り20cm程の包丁が握られて居た。

「出来れば銃とか欲しいんだけど…無理ですよねー」

刀でも良かったんだけど、と呟いた波田は外へと繋がる扉を開けた。

その瞬間、
隔離されたかの様に静かだったそこ一帯に銃声が鳴り響いた。

「やってるやってるー…くーっ、早く誰かに逢いたいなぁ!」

無邪気に笑う死神は

その包丁で
その鎌で

自分以外の全ての人間を狩るために歩き出した。



------
遅くなってすみません。
先日までネット環境から離れざるをえなかったので皆様に御迷惑をおかけしてしまいました。
とりあえず波田編です。
良ければまた、私の書く話にお付き合い下さい。
485名無しさん:2005/07/01(金) 20:11:21
霧さん乙です。これからもお付き合いしますよ。
486名無しさん:2005/07/01(金) 21:56:30
>霧さん
波田怖いな〜。彼はエンタの代表格なんで、派手に暴れて欲しいです。
気にせずこれからも良い作品を書いてください。
487名無しさん:2005/07/01(金) 22:13:44
乙です
波田いいっすね
488乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/02(土) 09:28:42
突如聞えた叫び声に、思わず反射的に立ち上がった。
見ると、自分たちのいるところより奥の――穏やかな傾斜になっている木々の間の道を誰かが下ってきている。
しかもそれは、どこかのコンビがまた別のコンビに追われているように見える。
隣では、相方――板倉俊之(インパルス)も立ち上がり、その一連の光景を凝視していた。
 「おい、どうする…?」
どうする、と言われても、あれこれ迷っている時間は無い。
坂道を駆け下りるその速さからして、あと10秒くらいでこの前を通り過ぎるだろう。
堤下敦(インパルス)は返答と同時に走り出した。
 「もう助けるしかないでしょ」
すぐに例の道は近づいてきた。丁度走ってる人と鉢合わせになる形だ。
このまま、逃げている二人と追う二人のの間に入って――
 「止まれ!堤下!」
突然の板倉の制止に、堤下は道に入る手前で急ブレーキをかけた。
すると板倉に、道の脇に生えてる木の陰へ引っ張られる。
すぐ目の前を、逃げているコンビが通り過ぎた。
 「あっ!」
思わず声を漏らしたのは、その遠ざかる姿がよく見慣れた
親しい芸人――アホマイルドだったから。
驚く堤下を尻目に、追いかける側のコンビが前の道を通るか通らないかのところで
板倉がバッ、と木の陰から飛び出した。
サッ、とその二人の進行方向へ板倉が足を出すと、
見事に板倉の足に引っかかり派手に横転する二人組が堤下の目に映った。
489乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/02(土) 10:14:35
 「よし!」
引っ掛けた足に痛みを感じながらも、
板倉は素早く倒れた二人組の体をまたいだ。
二人のうち一人がグレネードランチャーのようなものを持っていて、転んだ際落としたそれを拾うためだ。
土や枯れ葉の上に落ちたそれを手に取ると、ずっしりとした重量感が感じられた。
 「だ、誰だ?」
後ろからくぐもった声がし、まずいと思い振り返ると、案の定今倒した二人組が起き上がっていた。
そしてその姿に板倉は目を丸くした。
ガスマスクのようなものをしているのだ。しかしそれで顔を隠していても、すぐに誰だか判別がついた。
飯田春雄ことベルナルド・アッカー。こっちは何度も見たし、
はねるでの水鉄砲でのお仕置きは、堤下も自分も体験済みだ。
そして相方――は名前なんて言ったか忘れたが、ともかくこの二人は塩コショーに間違いない。
その二人がガスマスクをしていることから、このグレネードランチャーの正体がすぐにわかった。
――毒ガス。
このプログラムはこんなものまで支給されているのか…。
板倉は恐怖を覚えた。
 「板倉さん!!」
堤下が駆け寄ってきた。その顔には焦りの色が浮かんでいる。
 「行くぞ!!」
堤下が来るなり塩コショーの二人を置き、坂道を下りだした。ワンテンポ遅れて堤下がついてくる。
 「これ、この武器。あいつらのだ。もう奪っちゃったから平気じゃん?」
 「う、うん。さすが板倉さん」
 「あれさっき、逃げてたのアホマイルドだったよな。おまえと仲の良い。だから早く合流しようよ」
足の速さには多少自信のある板倉だったが、グレネードランチャーの重みで堤下と並んで走るくらいの速さになっている。
後ろをチラッと振り返ると塩コショーの二人が起き上がりこちらに向かって何か言っているのが見えた。
追ってこないといいけど――。
朝の光が差し込む森の中を、二人は駆け抜けていた。

【残り45組】

 
490名無しさん:2005/07/02(土) 17:56:40
そのころようやく昼寝から覚めたマギー審司は武器をもらってないことに気づいた
491:2005/07/02(土) 21:13:16
やっぱり、誉めていただいたり、感想を書いていただけると、嬉しいですね。
ありがとうございます。
>>465の続きといえるかどうか、わからない話ですが、
492:2005/07/02(土) 21:15:17
二人は大木を探していた。
そう、ちょうどこんな木を。
ちょうどいい高さに、ちょうどいい枝が生えている、
こんな木を。
葉や小枝を掻き分ければ、下の様子は良く見えるし、
この高さなら勢いをつけて飛び降りても、怪我することは無いだろう。
そして何よりも、つるはしと業務用スコップを持った男が二人、
そこで潜んでいても、折れるどころか軋みさえしない枝。
覆い繁る葉や小枝は、二人の姿を隠してくれた。
ここなら大丈夫だ。
後は、この木の側を獲物が通るのを待つだけだ。
かなり地味な作戦だし、何時迄もこうしているつもりは無かった。
ただ、放送を頼りに、生存者がある程度の数になる迄、そうするつもりだった。
銃やマシンガンを持った相手に、つるはしやスコップは不利だ。
ただ、生存者の数が減る頃には、そいつらも弾を使い果たしているかもしれない。
そんな甘い思惑もあった。
493:2005/07/02(土) 21:16:22
最初に渡された武器は、アフロヘアーのヅラとパーティ用のクラッカーだった。
「確かに芸風にはあっているけど...これでどうしろと?」
「東急ハンズのパーティーグッズコーナーみたいな武器で...」
どうしたらいいのかわからず、二人はふらふらと歩いた。
たまたま見かけた民家のような建物。
二人は、用心しながら入った。
誰もいなかった。
ただ、つるはしとスコップが目に入った。
確かに持ち歩くには、体力的に、かなりな負担になるだろう。でも...
「今、俺達が持っている武器よりは、有利だよな。」
「そういえば、放送でガッポリ建設さん、死んだって言ってたし。」
ガッポリ建設が置いて行った武器かどうか、知る由も無いし、知ったところでどうしようもない。
確かに、ガッポリ建設らしい武器ではあるけど、でも
ただ、目の前につるはしとスコップがあるだけだ。
「!そうだ!」
金髪の方が、作戦を打ち明けた。
黒髪の方は、それに乗った。
金髪はつるはしを持った。
黒髪はスコップを持った。
494:2005/07/02(土) 21:18:34
そして二人は思惑通りの木を見つけた。
「用は、一人を殺ればいい。ピンだろうと、コンビだろうと、トリオだろうと、ザ・プラン9だろうと、かんからだろうと。」
「かんからはこのゲームに参加していないよ。」
「しっ!」
つるはしの男は、足音を聞きつけて、相方を黙らせた。
そっと、音を立てないように、葉や小枝を掻き分けて下を見る。
三人の男が、都合のいい事に、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。
つるはしの男は、その内一人を指差した。
テレビで何度か見たことのあるトリオ、その内一人が死ねば、それでそいつらは終わりだ。
つるはしの男が指をさしたのは、自分と同じく金髪だった。
ただ、俺と違って地毛だろうがな、そう思った。
金髪の男を選んだ理由は2つ。
一番やる気がなさそうだったのと、
たぶん傷を負っているだろうからだった。
ターゲットの金髪男のジーンズ、左の太股部分は少し裂けていた。
そしてその周囲にこびり付いた血。
スコップの男は、うなずいた。
つるはしの男は心の中でカウントダウンを始めた、
「5...4...3...2...」
そこ迄数えた時、ターゲットの金髪男は、
こんな状況だもん、空でも見上げなきゃやってられないや、
と言わんばかりに顔を上げた。
その時、目が合った様な気がした。
「パン。」
カウントダウンの残りの1迄、数える隙も無かった。
一発の銃声と共に、つるはしの男は眉間から血を流し、木から落下した。
つるはしと、血と、頭皮...否、金髪のヅラ。
全てが一瞬の出来事だった。
495:2005/07/02(土) 21:19:39
だから、スコップの男には、状況が飲み込めなかった。
だから、スコップを振り上げながら、その金髪男に向かって、枝から飛び降りた。
あたかも、もう、体にそうプログラミングしてあったかの様に。
首輪のセンサーは、もう反応しているのに。
つるはしで相手を殺すか致命傷を負わせ、スコップでとどめをさす。
その予定だった。
だけど金髪男はすばやく身をかわし、スコップは空しく地を叩いただけだった。
「あ...ああ...」
そう言うしか、無かった。
「出来るだけそいつから離れろ!」
スコップの男が最後に聞いたのはその言葉と、首輪の激しい爆音だった。
496:2005/07/02(土) 21:21:40
散り散りに避けた3人は、爆音の後、ほぼ同時に立ち上がった。
「あー、よかったぁ。」
ターゲットにされた金髪の男、インスタントジョンソンのジャイの、そのよかったは、
助かってよかった、
では無いことは、もうスギとゆうぞうにはよくわかっていた。
「やっぱり、人の返り血浴びた服着続けるの、嫌だしね。
俺のは自分の血だけど、それでも嫌だし。」
ジャイが人を殺すのは、これが初めてじゃない。
ただ、加速度をつけるかのように、射撃の腕は、上がっていた。
最初に、ヒロシを射殺してから...

ヅラットピット死亡
【残り44組】
497名無しさん:2005/07/02(土) 22:55:02
蛙さん乙です。読みやすくていいですね。
それにしてもインジョン怖いです・・。
498:2005/07/03(日) 00:11:46
なんか面倒くさくなってきた
あとは誰かヨロ&>>497死ね
499名無しさん:2005/07/03(日) 02:53:40
498乙!
おまい可愛過ぎ(´艸`)プッ
500:2005/07/03(日) 10:23:27
すみません、498、私じゃないです。
このままだと497さんに失礼だし。
続き、ちゃんと考えてます。
501名無しさん:2005/07/03(日) 12:17:25
>蛙さん トリップつけた方がいいんじゃないですか?
502:2005/07/03(日) 14:50:18
>501さん、ありがとう。
次回から、そうします。
503蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/03(日) 15:29:00
とはいえトリップつけるの初めてなので、
練習させてください。
504名無しさん:2005/07/03(日) 19:08:26
蛙さん乙です。頑張ってください。
505名無しさん:2005/07/04(月) 03:58:27
「デッカちゃん」、久々に新しいキャラが出た。
めちゃくちゃ笑った。
506名無しさん:2005/07/04(月) 04:05:37
ツマンネ
507名無しさん:2005/07/04(月) 04:11:12
ツマンネツマンネ
508名無しさん:2005/07/04(月) 04:11:32
ツマンネツマンネツマンネ
509名無しさん:2005/07/04(月) 05:32:49
ツマンネツマンネツマンネツマンネ
510名無しさん:2005/07/04(月) 09:58:55
だいたひかるやヒロシやデッカちゃん程度の芸で「売れるかもしれない」と思わせるようにした元凶は誰だ?
もしかしたらオレでもいけるかも程度の気持ちでやってるようなのが多すぎる。
511名無しさん:2005/07/04(月) 10:59:16
だからなんだ、失せろ
512名無しさん:2005/07/04(月) 16:42:28
イヤなり
513名無しさん:2005/07/04(月) 16:48:28
副収入で確実に儲かるノウハウを紹介!(*´∀`*)
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514名無しさん:2005/07/04(月) 18:00:44
マジか?
515名無しさん:2005/07/04(月) 23:17:05
新作まだ?
516音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/05(火) 03:20:14
 前を行く柴田の背中を見ながら、山崎は後悔していた。
 柴田に殺しをけしかけてしまった事を。
 あの場では仕方がなかったのだ、と考える事も出来る。柴田を田上の死から立ち直させるには、多少強引にでも目的を示すしかなかったのだ、と。
 しかし、きくりんと対峙した際、柴田は一瞬殺しを躊躇った。もしかしたらその時、柴田は気付いてしまったのかもしれない。
 山崎があえて口に出さず、誤魔化していた事に。
 もしも柴田がその事を悟ってしまったら、彼の正義感の強さが今度は仇となり、二倍三倍の苦しみが彼を苛むだろう。強さの反面、脆さも併せ持つ柴田が、それに耐えられるかどうかはわからない。
 ましてや――この先に待つのは、彼らの後輩であるドランクドラゴンなのだ。
 彼らが誰も殺していないのならば問題はない。
 しかし、もしも彼らが人を殺していたとしたら?
 裁くべき人間なのだとしたら?

「あ」
 突然柴田が立ち止まったので、山崎はビクッと全身で反応してしまう。
「ど、どうしたんだよ柴田ー」
 オーバーリアクションの山崎に声を潜めるよう手振りで示し、柴田は前方を指差した。
「……誰か、倒れてる」
「え? ……死んでる?」
「わかんねぇ」
 柴田は念のためサブマシンガンを構え、ゆっくりとその男の方に近付く。途中、足元に、乾きかけの血の筋がある事に気付いた。その何かを引き摺った跡のような異様な血痕は、倒れている男の赤黒く染まった脇腹まで続いている。
 どうやら彼は、負傷した体で這うようにして、数m移動したらしい。
「おい……大丈夫か?」
 柴田は銃を足元に置き、男の体を揺さ振る。
 男は微かに身動ぎした。どうやらまだ息はあるようだ。小さな声で、うわ言のように呟き続けている。
「増井さん……どこ行ったんだよ……」
517音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/05(火) 03:25:15
 結局鈴木の言葉通り、ドランクドラゴンの二人は朝食を取る事にした。
 ナップザックに入っていたビスケット状の携帯食を、少しだけつまむ。味付けがまったくされていなかった上に、首輪の圧迫感があるせいで食は進まなかったが、それでも10分もすればそれなりに腹が満たされた。
 今度こそ本当に出発しなくてはならない。しかもこれからは、今までのような“逃げ”ではなく、ある意味で“攻め”に転じなくてはならないのだ。
「あっ、そうだ」
 突然鈴木が何かを思い立ったように声を上げる。
「塚っちゃんの吹き矢、俺に貸してよ」
 昨夜鈴木は、もしも自分たちが襲われた場合、自分が戦う側に回る事を申し出ていた。
 塚地は心苦しさを感じないでもなかったが、自分と相方の性格を考えれば、そのような役割分担が正しいような気がした。
 塚地が吹き矢と筒をベルトから抜き取って手渡すと、鈴木は改めて物珍しそうな顔で眺める。
「矢の方は慎重に扱えよ、下手に触るとえらい事になるで」
 こんな事で死なれちゃたまらんからな、塚地は苦笑する。
 相方の間抜けな部分は今まで散々見てきたが、ここでそれをやられると、自分の命に直結するのだ。
「わかってるよ」
 鈴木さすがに少しムッとした様子で答える。ちょっとしたうっかりで命を落とすのは、鈴木としても避けたいところだった。
「あと、筒に口付けたまま息吸うんも危ないからな」
「それもわかってるよ!」
「いやー、お前にはきちんと言うとかんと心配やしな」
 いつも通りのやりとりだった。
 こんな風に、相方といつも通りに話せるのは、喜ぶべき事かもしれない――塚地は心の片隅で考える。
 彼らの良く知る芸人の中で、以前と変わらず話せる相手が、一体どれだけいるのだろうか、とも。
518音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/05(火) 03:42:16
 息を潜めるようにしながら、一つの影が、彼らに向かって接近していた。
 マフラーにコート、顔には眼鏡という出で立ちのその人物は、韓国の人気俳優に似ていなくもない。
 ただ一箇所、明らかに間違った場所を上げるとすれば、それは右手に握られた牛刀だった。
 和製微笑みの貴公子は、どこか冷たく悲壮な笑みを浮かべている。
「ドランクドラゴンか……見つけられて良かった」
 彼は独り言ちたが、それはどこか、この場にいない人物に語り掛けているようにも見えた。
「竹内くんも、これなら、満足してくれるかな……」
 元々は相方の武器だった、牛刀をきつく握り締めて。
 彼、ハロ・増井は、ドランクドラゴンに向かって走り出した。
519音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/05(火) 03:45:27
今回はここまでです。
この後ちゃんとまとめられるかどうか不安ですが、まあ頑張ります。
520名無しさん:2005/07/05(火) 08:19:31
最後は波田ヨークに斬られるのか?
521名無しさん:2005/07/05(火) 20:17:58
522名無しさん:2005/07/05(火) 20:34:06
↑これ、誰が生き残りそうかっていう投票?
523521:2005/07/05(火) 20:42:45
うん。いらんかったらスルーよろ
524名無しさん:2005/07/05(火) 21:56:52
乙です!
二つのことが同時進行してますね〜読みごたえがあります。
ハロ・・・なんかすれ違った感じですかね・・・
続き楽しみにしてます!
525名無しさん:2005/07/05(火) 22:55:17
音さん乙です。ドランクドラゴンどうなるんだろう…。続き楽しみにしてます。
頑張ってくださいね。
526音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/05(火) 23:00:23
>>521
なんか投票してくれた人の意見聞いてみたい気がする・・・。参考までに。
>>524-525
ありがとうございます。励みになります。
527名無しさん:2005/07/05(火) 23:15:05
>>521
スルーしたいけど…
トトカルチョなんかやって投票したら
票が伸びない芸人を担当してる書き手さんが
書きにくくなるよ。どうせ組織票だし。
票が伸びた芸人が生き残るんだなぁという
予定調和みたいな流れもなんだかな、って感じ。
528名無しさん:2005/07/06(水) 19:09:22
あれ、トトカルチョ入れなくなってる。
漏れだけ?
529名無しさん:2005/07/06(水) 20:53:31
遅レスだけど、
音さん乙です。
幾つかの話を、複線張りつつ緻密に書けるの、凄いです。
これからも、魂の赴くままに、書いて下さい。
530乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/07(木) 18:54:04
>>488-))489 の続き

早朝の森を走り、振り返った時にはもう人影は見えなくなっていた。
確かこっちだったはず。
堤下は、同期であり仲良しのアホマイルドの姿を探した。
もう走る必要はないので、ゆっくりと歩を進める。
 「――あ、板倉さん、大丈夫?」
荒い息遣いに首を回すと、肩で息をした板倉が
堤下の歩調に合わせようとなんとか頑張って足を動かしている。
そういえば板倉は、足の速さは中々だし体操も得意だが、なにより体力が無い。
一方自分は野球で鍛えた根性と体力はある。こうして疲労具合に差が出るのは当然だ。
 「ごめん、もっとゆっくり歩くよ」
 「いや、大丈夫大丈夫」
 「けど――」
 「いいってば」
 「じゃあそれ持つよ」
返事を待たず、堤下は板倉が抱えるグレネードランチャーをひょいと取り上げた。
結構重量感があり、体力的にきつい板倉に持たせるより自分が持ったほうがいいだろう。
それにしても毒ガスなんて――。
ガスマスクも無いしそもそも使うつもりが無いので、これを所持していることは無意味な気がしてきた。
まぁ結果的に塩コショーの二人の手にかかる犠牲者が減ったかもしれない。
けれど持っていても荷物になるだけだし、どうすればいいんだろう?そこらに捨ててくには危険すぎるし――。
 「おい、堤下」
板倉に肩を叩かれハッと顔を上げると、数十メートル先を歩くアホマイルドの姿が視界に入った。



531名無しさん:2005/07/07(木) 22:20:31
>>530
乃さん乙です。
2chスレ開いて疲れる今日この頃…
じゃ来なければいいんでしょうが、そういうわけにもいかずw。
乃さんたちの小説読んでリラックスしております。
532乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/08(金) 19:03:21
 「おーい!!」
堤下が手を振ると、向こうもこちらへと駆け寄ってきた。
NSCの同期であり、地元か一緒でもあるアホマイルドの二人との再会。
堤下は満面の笑顔で二人を迎えた。
 「助けてくれてありがとう」
同じく笑みを返す坂本は、少々息切れ気味だ。
結構長い距離を、あの二人から逃げていたのだろう。
 「いやいや、いいんだよ。っていうかほぼ板倉さんの活躍だし」
突然会話に名前が出てきたのに驚いたのか、
板倉は、「俺?」とでも言うように自分を指差した。
どう考えたって自分は何もしてない。上手く塩コショーを転ばして
グレネードランチャーを素早く奪ったのは板倉だ。
いつものことながら、板倉の俊敏さには驚かされる。
俺も頑張らなきゃ――。堤下は自分に喝をいれた。
 「そっか、ありがとう」
坂本に続き高橋も礼を言った。
 「取り合えずどっかに座んねぇ?」
しばらく寝てない上に先程走ったのがよほどこたえたのだろう。
けだるそうな板倉は顔色も悪い。まだ朝だが、睡眠をとったほうが良さそうだ。
 「じゃあ、せっかく合流できたことだしどっか移動しよっか?」
いつのまにかまとめ役のようになっていた堤下の言葉に他の三人は頷いた。
533乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/08(金) 19:24:02
先程の場所から少し歩いたところにある民家。
この森のすぐ近くにあった畑の持ち主の家だろうか。
ともかくそこへと入ったインパルス・アホマイルドの四人は
すぐさま鍵とカーテンを閉め、朝食をとることにした。
 「板倉さんもパン食べようよ」
ナップザックの中にあった
堤下は支給品のパンを差し出したが板倉は首を横に振った。
 「俺、いいや。ちょっと寝てもいい?」
普段食に関して欲があまりない板倉は、
ネタを書いている最中、自分が差し入れしてもあまり食べない。
そうやっているうちに徐々にやつれていくのが目に見えてわかるからとても心配なのだ。
特に今回は、体力が無ければとても生き残ることなどできない。
 「でも食べたほうがいいって。まじで今回はやばいよ」
 「いや、寝るよ」
そう言って、居間の隣にあった寝室へと姿を消していった。
高橋と坂本の二人も心配しているようだ。板倉が入った部屋のドアを心痛な面持ちで見つめている。
 「大丈夫かな?」
 「…あのさ、ここに食材とかあるよね?」
 「あると思うけど」
 「俺、板倉さんになんかメシ作るよ」
堤下は立ち上がり、台所に立った。
やはり心配だ。仲間との再会の余韻に浸りたい気持ちもあったが、まず優先すべきは相方の体。
棚を空けてみるとレトルト食品と一緒にジャガイモがあった。
これだ。――板倉の好物、ジャガイモ入りカレーを作ろう。







534名無しさん:2005/07/08(金) 21:02:03
皆さんの文章で味わえるドキドキ感が最高です。
535蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/09(土) 00:56:44
「何なんだよ、これ!!」
インスタント・ジョンソンの二人は、思わず叫びだしそうになった。
二人...そう、ゲームに参加させられてから一言も喋らないジャイ以外の二人。

どんな概観であれ、今この状況で建物の中に入るのは、ある意味賭けだ。
誰かがいるかもしれないから。
その誰かは巣を張って獲物を待っているかもしれないから。
ゲームが始まってから、スギ・ゆうぞう・ジャイの順番で一列に歩いてきた。
ゆうぞうは、他の二人と違い、あからさまに不利な武器だった。だからゆうぞうを中間にしたのだけど...
やっぱりジャイの武器をゆうぞうに渡し、ジャイを中間にして歩くべきかと、スギが思い始めていた頃、その小屋を見つけた。
用心深く、そっとスギはドアを開けた。
賭けには、勝った。一目で全て見渡せる、何も無いがらんどうの小屋。そして、誰もいない。
三人は車座になって、座った。
スギは出刃包丁、ジャイは拳銃、ゆうぞうは...玩具の方のパチンコを渡された。
三十代前半の彼らにしても、馴染みの無い玩具だった。ドラえもんやサザエさんや赤塚富士夫のマンガとかでなら見たことはあるけど、それで遊んだ事は無い。ましてや、実物を見るのは初めてだった。
「俺だけ、露骨に不利だよね。」
呟くように、ゆうぞうが言った。
「いや、そうでもないよ。相手にパチンコ当てて、怯んだ隙に逃げるとか。」
「でも俺、これで遊んだこと無いし、当てる自信なんて無いよぉー」
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。確かにそうかもしれないが、パチンコの玉は、無限にあるわけじゃない。
下手な鉄砲も...いや、それは無いだろうと思いつつ、ジャイの肩を掴んで揺すりながら
「ジャイ、拳銃って、撃った事ある?」
ジャイは首を横に振った。
まあそうだろうなと思いつつ、スギは、一応ジャイはこちらの問いかけに反応してくれた事に、ほっとした。
「念のために聞くけどゆうぞう...」
「ないよーそんなの!」
そういう意味でなら、ジャイとゆうぞうの武器の、不利・有利は変わらない。
ジャイの拳銃の弾だって、無限じゃない。命がけで俺達を殺そうとする人間に、咄嗟に当たるとは思えない。
ただ当たった時、拳銃の方が殺傷能力が高いだけで。
殺傷能力...はっとして、スギは言った。
536蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/09(土) 00:57:59
「なあ、このゲームだけど...」
「やだよ、俺、人殺すのも、殺されるのも嫌だよ!!」
ゆうぞうは、スギの言葉を遮るように言った。
「ジャイは?」
スギはジャイの肩を揺さぶりながら聞いた。
ジャイは何の反応も示さなかった。
ゲームが始まってから、ジャイはずっとこんな感じだった。
ショックのあまり、口がきけなくなった人の様に。外界に全く反応出来なくなった人の様に。
不利な武器を持ったゆうぞうを中間に、と言うより、他の二人の後をふらふらとくっついて来た、そんな按配だった。
俺だって、そんなのは嫌だ。
スギはそう思った。
でも...仮にジャイがいつも通りだったとしても、その拳銃の弾が相手に当たるとは限らない。
拳銃より不利な武器を持った相手なら、見せるだけでも威嚇になるだろうが、同等の武器だったら...
尤も、このゲームの参加者のほぼ全員が、拳銃を撃った事など無いだろう。
でも本当にいざとなったら、この包丁なのか?
そうなんだろうな。本当にいざとなったら、俺の、この出刃包丁が、実は一番有利なんだろうな。
やるのか、俺が...嫌だ。でも俺達の誰か、例えば俺だとしても、やられたら...
実際この小屋に辿り着く迄に、いくつも死体を見てきた。
銃声や爆発音や叫び声の音、血の臭い、少しでもそんなもの感じたら、それを避ける様にして、そしてこの小屋に辿り着いた。
それなのに、いくつもの死体を見てしまった。
その度に、変わり果てた自分達の姿が、スギの頭を過ぎった。
「ジャイも多分...その気はない。」
ジャイは何の反応もしなかったのに、スギは無理矢理まとめた時、銃声が聞こえた。
この小屋のすぐ側ではない。でも、そう遠くでもない。
やっと辿り着いたこの小屋、でも、ここも安息の地ではない。ここには、安息の地なんて無い。
「取り合えず、ここを出よう。」
三人は小屋を後にした。
537蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/09(土) 00:59:40
銃声が聞こえた逆の方向へ歩いていく内に、嫌な臭いが鼻を突いた。
肉の焼ける様な臭い。そしてそれに混じった、血の臭い。
「これ以上、ここに近づかない方がいい。」
スギは踵を返そうとした。が、ジャイは、その臭いに引き付けられるかの様に、その方向へ、無言で歩いていった。
「行くな、ジャイ!」
ゆうぞうはそう叫びそうになったが、ここで大声を出すのは危険だ。
仕方が無く、二人はジャイの後に着いて行った。
やっと、ジャイが立ち止まった。
そこで見た風景。ゆうぞうとスギは叫びだしそうになった。
尤も、叫んだ所で、ヒロシの心には響かなかっただろうが。

血まみれの死体は、放送でもう死んだことは知っていたが、いつもここからの菊地さんだろう。
焼死体は、山田さんなのか?
ヒロシさんが、山田さんを焼き殺したのか?
山田さんを慕っていたヒロシさんが?
だとしたら、菊地さんの首輪は炸裂しているはずだ。それ以前に、菊地さんはマシンガンか何かで遣られたかの様に、血まみれだ。
ゆうぞうもスギも、困惑している中、
「河を、渡らなきゃ。」
ずっと、一言の喋らなかったジャイが、小声で呟いた。
「ジャイ、今何て言った?」
ゆうぞうの問いに答える前に、ジャイは引き金を引いた。
ヒロシは山田の遺体の上に崩れ落ちた。
「こんな事になるんなら、ジモンさんに格闘技教わっておけば良かったって、言ったんだよ。」
ゆうぞうの問いに、ジャイはそう答えた。
「初めての練習台にしても物足りないけど...だいたいコツは掴んだ。」
こいつ誰だ?
ゆうぞうは背中に冷たいものが走った。
確かに目の前にいるこいつ、容姿も声も、何時もの、何を考えているのか何も考えていないのか良くわからない笑顔をも、俺の良く知るジャイだ。
そう思ったゆうぞうとは対照的に、スギは深い安堵を感じていた。
ジャイがいれば、俺はいざとなった時、人を殺さずに済むかもしれない。
そして...次の瞬間そんなことを考えた自分に、激しい後ろめたさも感じた。
538蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/09(土) 01:18:28
勢いで書き込んだせいか、誤字脱字を何ヶ所か見つけ...すみません。
やっぱり、ちゃんと推敲して書き込まないとね。
539名無しさん:2005/07/09(土) 01:26:50
>>◆GdURz0pujY
夜分遅くに乙華麗。
(・ω・)っ旦 お茶でも飲んで、ゆっくりお休み。
540乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/09(土) 09:27:01
>>532=>>533 の続き

食器のがカチャカチャと楽しそうに触れ合う音や、
思わず食欲をそそるカレーのにおいが小さな室内に溢れる。
板倉のために作り出したカレーは、一時間ほどかけてなんとか出来上がった。
他人の家ということでいろいろと準備に時間がかかったが
こうしてなんとかできたのは、手伝ってくれたアホマイルドのおかげだろう。
 「ありがとう」
電子レンジでチンした冷凍のご飯にカレーをかけながら堤下は二人に礼を言った。
二人はソファーに腰掛け少し眠たそうな表情を見せている。
 「今八時だから丁度朝ごはんじゃん」
先程パンを食べた三人だったが、カレーも食べるきまんまんだった。
小学生とかの言いそうなことだが、やっぱり自分で作ったものは格段に美味しく感じられる。
 「あんまり食いすぎるなよ。俺板倉さんにあげてくるわ」
そそくさと皿にご飯をよそいはじめた二人を尻目に、板倉のいる寝室のドアをあけた。
小さなベットが二つ並んでいるうち、奥側のベットの布団が少し膨らんでいる。
そこまで寒くないにも関わらず、板倉は体に布団を巻きつけ寝息を立てていた。
あまり音を立てぬようそっと近づいたつもりだったが浅い眠りだったらしく、堤下が近づくなりすぐ、薄っすらと目を開けた。
ゆっくりと体を起こした板倉は、堤下が手に持つ御盆に目をやった。
 「あ、これ朝ごはん。俺らで作ったんだけど、ジャガイモ入りカレー。食ってよ」
 「うわ、まじか。食ってもいいけどちょっとエチケット袋が必要だな」
 「いや、吐くなよ!」
ボケとツッコミが成り立ったことが嬉しいのか、ニヤニヤとしながら板倉は皿とスプーンを手にとった。
こうして手料理を振舞うことは久しぶりだ。板倉がスプーンを口に運ぶのを見ながらなんだか妙にドキドキしてしまった。
 「あぁ…若干ねぇ…おまえの汗の入ったような感じが…」
 「入ってねぇよ!!ちゃんと拭いたよ!!」
そう言いつつも驚くほどの早さで一皿完食してしまった。やっぱり、好物であるジャガイモをいれたのが正解だったみたいだ。
見ると、先程は青白かった顔に薄っすらと赤みがかかっている。
 「堤下…サンキュウな…」
 「…あぁ」
クスクスと笑った二人の笑い声が、朝の穏やかな寝室にいっぱいになった。
541名無しさん:2005/07/09(土) 21:16:17
乙です
蛙さん
複雑な感じですね〜・・・二人の言うことがそれぞれ納得できます。
すごく良かったです!


乃さん
ほのぼのとしていて見てて和みますv
ほんのひと時であってもやっぱりいいですね。
542名無しさん:2005/07/10(日) 11:21:28
乃さんさん乙です。
それじゃ話は続かないけど、いつまでもこのときが続けばいいのに、そう思わずにいられませんね。
543名無しさん:2005/07/10(日) 17:24:54
■■出演済みと死亡者のリスト■■

1青木さやか(死)
2赤いプルトニウム(済)
3アップダウン(済) 
4あべこうじ(済)
5アホマイルド(済) 
*アメリカザリガニ(済)
6あれきさんだー おりょう(死)
7アンガールズ (済)
8アンジャッシュ(済)
9アンタッチャブル(済) 
10いつもここから  (死)
11いとうあさこ (済)
12井上マー (死)
13インスタントジョンソン (済)
14インパルス(済)
15エレキコミック
16ガッポリ建設 (死)
17ガリットチュウ
18カンニング(済)
19きくりん(死)
20キャン×キャン
21キングオブコメディ
22ザ・たっち(死)
23ザ・プラン9
24塩コショー(済)
25磁石
26次長課長 (済)
27陣内智則 (済)
544乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/10(日) 17:25:14
28スパークスタート(死)
29スピードワゴン (済)
30スパルタ教育  (死)
31Dice(済)
32だいたひかる  (済)
33ダーリンハニー(死)
34田上よしえ (死)
35だるま食堂 (死)
36ちむりん  (死)
37椿鬼奴  (済)
38ヅラットピット(死)
39テツandトモ
40東京ダイナマイト
41どーよ
42ドランクドラゴン  (済)
43友近(済)
44長井秀和 (済)
45ななめ45゚
46はいじまともたけ  (死)
47波田陽区(済)
48はなわ
49パペットマペット(死)
50ハロ (済)

545乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/10(日) 17:29:15
51ハローケイスケ
52ハローバイバイ
53ビッキーズ(死)
54ビックスモールン
55ヒロシ (死)
56ベネと千太郎  (死)
57へらちょんぺ(死)
58POISON GIRL BAND  (済)
59ホロッコ
60マイケル (死)
61マギー審司 (済)
62魔邪
63南野やじ  (済)
64ヤシコバ月子(死)
65安井順平 (死)
66靖&花子
67ライセンス(済)
68レギュラー
69レム色(済)

未登場が18組。書き手が決まっていないのが15組。
【残り44組】

http://jbbs.livedoor.jp/otaku/4680/
http://www.benriweb.net/vote/vote/s/280005/obr2.htm

546蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/10(日) 20:14:01
「多分...」
ジャイが小声で話し始めた。
「俺の想像だけど、先ず菊地さんが殺された。あの状況からすると、多分、マシンガンか何かだろうな。それで山田さんが死んだ。そこをヒロシさんが通りかかった。」
「じゃあ、何で山田さんが焼かれていたんだよー。」
ゆうぞうも、小声で聞いた。
「やっぱりヒロシさんが焼いたんだろうな。足元に酒瓶みたいなのと、ライターが転がっていたから。」
「何でぇ?」
「俺、ヒロシさんじゃないからわからないけど、多分、葬式がしたかったんだと思う。それか...多分悲惨な事になっていただろう山田さんの死体を誰にも見せたくなかったか。ヒロシさん、山田さんを慕っていたから。」
確かに、焼死体の方が一見悲惨に見える。ウォッカレベルでは、骨迄焼き尽くす事は不可能だ。
でも一目で誰かはわからなくなる。そういう意味では、隠したといえるかもしれない。
尤も、傍らにある菊地の死体で、すぐに山田とわかってしまうのだが。
「多分、いつここさんの武器は奪われている。ヒロシさんも武器を使い果たしたと思う。空の瓶とライターも使えないわけじゃないし、そこに見えるホームセンターみたいな建物にも入ってみたいけど...多分あの建物は危険だ。」
何故?
何故、推測とはいえ冷静にこの状況を分析出来るんだ?
この状況を冷静に分析した上で、ヒロシさんを殺したんだ?
訓練の為だけに?
こいつは本当に俺が良く知っているジャイなのか?
ゆうぞうの困惑は深まった。
「これ以上近づくのは危険だと思う。移動しよう。」
三人はまた、スギ・ゆうぞう・ジャイの順番で歩き始めた。
ジャイが微かに震えている事に、二人が気づいたかどうかはわからない。
547蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/10(日) 20:15:07
コンビ名に引っ掛けて言うなら、二人の理性の磁場は狂い始めていた。
「俺達磁石だからって、安直だよなーこの武器。」
磁石の永沢に与えられた武器は拳銃だった。が、佐々木には、I字型の磁石だった。
ただ、大きさは警棒位あるが。
警棒と違い、角張っている為、強く握り締めると手が痛くなる。が、角がある分、殴った時の相手へのダメージも大きい。
「確かに安直だけど、十分使える武器だぜ。」
二人はニヤっと笑った。
二人は獣道の様な通りの脇の茂みの中に潜み、今後の事を話し合った。
「あのさあ、佐々木君、もしこのゲーム、思った程視聴率が取れなかったら、どうなると思う?」
「え?」
「そうなったら、即打ち切りになるだろうな。」
「まあ、そうかもな。」
「打ち切りになったら、多分その場でゲームオーバーだ。そうなるかどうかはわからないけどさ、万が一そうなった場合、そうなる前にやっておかないか?」
「やるって?」
「つまり、この先俺たちの邪魔になりそうな奴等だけでも殺しておかないかって事だよ。」
永沢の、眼鏡の奥の眼が、冷たく光った。
「いいね。」
冷たい光を放つ眼に答えるかのように、佐々木はニヤっと笑った。
初めて死体を見た時、流石に二人は怯んだ。が、それから更にいくつかの死体を見、放送を聞くにつれ、何も感じなくなっていった。
否、何も感じまいとしていたのかもしれない。敢えて、死に対する感覚を麻痺させて。
そして二十代の二人には、強い野心があった。尤も、二十代じゃなくても芸人なら誰もが、それなりの野心を持っているだろうが。
二人は参加者リストを広げた。
もう死んだやつは除外するとして...何組か殺害者候補があがった。その中でも特に
「少なくともアンガールズだけは殺っておきたいな。万が一、このゲームが途中で打ち切りになる前に。」
永沢の言葉に、佐々木はうなずいた。
磁石の理性の磁場は、相乗するように狂っていった。何時しか、自分達がアンガールズを殺す前にゲームが終わる事を、怖れる様に。
548蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/10(日) 20:18:04
磁石が潜んでいる茂みの前の獣道を、インスタント・ジョンソンの三人が歩いて来た。
二人の殺害者候補にインスタント・ジョンソンは無かった。こっちはコンビで向こうはトリオ。芸風も違うし、エンタでは番組上仕方なくコントをやっているが、元々は漫才、そして向こうは元からコント。
ただ...
「ねえ、佐々木君、拳銃欲しくない?」
永沢は佐々木に耳打ちした。
「欲しいね。」
「まさかこの歳でオヤジ狩りデビューするとはね。」
永沢は、自分自身の意気を上げようとするかの様に、そう言った。
「ああ、ジャイってオッサンが悪いんだよ、あんな、拳銃ぶら下げて歩いている方が。」
騙すより騙される方が悪い。肌を露出する様な服を着て夜道を歩いていた女が悪い。佐々木自身も、自分の意気を上げる様に言った。
インスタント・ジョンソンの三人は、所々行く手を遮る枝を掻き分けたりしながら歩いていた。がさごそと。
だから多少こちらが物音を立てても気が付かれないだろう。とはいえ極力物音を立てないように、磁石の二人はインスタント・ジョンソンの...ジャイの背後に回った。

ジャイは自分がヘマをした事に気づいた。
スギとゆうぞうは気が付かなかった。自分達が立てたのではない、木の葉や枝を掻き分ける音。それが急速に自分達の横から後ろに回りこんだ事。殆ど、動物的なカンとしか言えなかったが、
ぬかったか?
と思い慌てて振り返ると、磁石の永沢が銃口を自分に向けて、冷たい笑みを浮かべて立っている。
「パン。」
一発の銃声。何事かとスギとゆうぞうは、慌てて振り返る。
「ううっ...」
尻もちをついたように座り込み、うなだれるジャイの足からはおびただしい血が流れている。突然の出来事に何があったかのかわからないが、ただ、本能的に自分達の首輪に手を当てるだけだった。
549蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/10(日) 20:19:26
「永沢...君、永沢君!!」
佐々木にとっても、それは予期せぬ事だった。
二人はほぼ同時に引き金を引いた。だから銃声は一発にしか聞こえなかったが実際に放たれた弾は二発。
佐々木は永沢を揺すった。辛うじて生きている様だが...弾は首輪の下、左右の鎖骨の間を貫いていた。
苦悶の表情を浮かべる事さえ出来ない様な空ろな目。首から漏れる血と、ヒューヒューという空気音。
「こんちくしょう!」
佐々木は理性を失った。どの道永沢は死ぬ。そして佐々木も。ただ、永沢の仇を打つ、と言うより、目の前でぐったりしている男を殺せば助かるかもしれないと勘違いしたかの様に、武器の磁石を振りかざして、走り出そうとした。
「パン。」
走り出そうとした勢いで、腹を撃たれた佐々木はうつぶせに倒れた。
「ううっ...痛ってぇ。」
ジャイはもう顔を上げていた。スギとゆうぞうはやっと何が起こったのか、把握した。
「ジャイ、大丈夫か!?」
「痛てえよ。あ、結構血出てるね。多分傷は、弾がかすっただけだと思う。出血の割には、たいした事無い。それよりコケた拍子にケツ打って...そっちの方が痛てえ。」
ジャイは立ち上がって、よろよろと...傷というより尻が痛かったのだろうが...永沢に近づいた。
「ねぇ、スギ、包丁貸して。」
スギは、震える手で、ジャイに包丁を渡した。ジャイは、永沢の赤いTシャツを包丁で裂き始めた。
「何するんだ、ジャイ!」
ゆうぞうは思わず叫んだ。
「何って、包帯代わりに...あ、俺そんな趣味ないよ。あったとしても、こんな状況で、そんな気になれないよ。ゆうぞうのエッチ。」
勿論ゆうぞうはそんな事を想像したわけじゃない。ただ、服を切り裂くジャイが、無表情で人間の皮を裂いている様に見えた。
血の付いていない部分を裂き、包帯代わりに左の太股をきつめに縛って、二人の手から武器を奪った。
「なるべく、磁石さんから離れて。返り血浴びない様に。」
服を裂かれ、腹の手術痕が見える永沢。その永沢の心臓を拳銃で打ち抜いた。
佐々木の首輪が、炸裂した。
「どっち道ほっといても死ぬだろうけど...念の為にね。」
先に襲ってきたのは磁石の方だけど、でも何時迄も苦しませていたら、可哀想じゃないか。だったら、早く楽にしてやった方がいい。
ジャイは、その言葉を飲み込んだ。
550蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/10(日) 20:20:43
「取り敢えず、水辺に行かない?俺、傷を洗いたい。」
「ああ、そうだな。」
スギは地図を見て、
「あっちの方へ行けば河がある。そこへ行ってみるか。」
河か...ジャイは心の中で呟いた。
「ジャイ、おぶってやろうか?」
ゆうぞうが言った。
「お姫様抱っこがいい。」
「...いや、背負う。」
歩けない程の傷じゃないからと言いかけたが、
「悪いね。」
磁石のナップザックは脇の、最初二人がいた茂みの中に置いてあった。
さっき奪った武器とナップザックの中の食料と拳銃の弾と水をスギは自分のナップザックに詰めた。
そしてジャイの荷物を持ったスギ・ジャイを背負ったゆうぞうの順で歩き始めた。
ジャイは、体が震えそうになるのを、ゆうぞうに悟られまいとしていた。
それから、遠い記憶が頭を掠めた。
遠い昔...まだ自分の歳さえ把握出来ない程幼い頃。転んで膝を擦り剥いて泣き喚く自分に優しく、
「男の子なんだから、泣いちゃだめでしょ。」
そういっておんぶしてくれた人。
「母ちゃん。」
「ジャイ、今何か言った?」
「タバコ吸いてぇって、言ったんだよ。」
ジャイは、ゆうぞうの問いにそう答えた。
551蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/10(日) 20:33:59
読むのが面倒くさい位長文になってしまいました。
ああいう書き方をしてしまいましたが、磁石、実は結構好きです。
552蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/10(日) 21:01:27
今気が付いたのですが
磁石死亡
【残り43組】
553名無しさん:2005/07/10(日) 22:10:15
乙です。
すごく読みごたえがありました。
じゃいさん・・・複雑だけどいいですね。
前回とかなり印象が変わりました。
磁石、結構良かったです。
554名無しさん:2005/07/11(月) 04:48:58
続きが読みたいのであげる
555名無しさん:2005/07/11(月) 08:25:21
>蛙さん
乙です。トリオっていうのがちゃんと活きている話ですね。
ジャイさんの読めない感じもすごくいいです。
556音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/12(火) 00:24:29
「……どうする、柴田」
 山崎は声を潜めるようにして柴田に訊ねた。
「どうって……このまま立ち去るわけにはいかねぇだろうが」
 柴田はこの場にいるもう一人の人物に向かって声を掛ける。
「お前はどうしたい?」
 柴田の問いに、その人物は、今にも消えそうな声で答えた。
「オレはもう一度、増井さんに……相方に、会いたいです」
 ハロ・竹内。
 彼が何故このような傷を負ったのか、彼の相方が何故ここにいないのか、アンタッチャブルの二人は既に聞いていた。
「酷いな、怪我した相方を置き去りにするなんて……」
 思わずそう言ってしまった柴田に、竹内は首を横に振る。
「あいつの事、責めないでやってください……。あいつも、あいつなりに、何かしようとしてると思うんです」
 ハロの死亡は、既に確定してしまった事だから。
 しかも増井は、単なる道連れで。
「オレ、最後までちゃんと、ハロとして一緒にいたい……。増井さんにとっては迷惑かもしれないけど、それが、オレの責任だと思ってる……」
 苦しげにいう竹内の肩に、柴田は、もういい、というように自分の手を乗せた。
「なあ山崎、探してやろうぜ、“増井さん”をさ」
 柴田が言うと、山崎も大きく頷く。
「そうだなー、幸いこんな物もあるし」
 山崎が持ち上げたのは、プラスチック製のメガホン。増井が置いていった武器だった。
557音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/12(火) 00:25:54
「まっすいさーん! ハロの増井さーん! 相方様がお呼びでーす!!」
「おい! 大声出すなって、誰かが襲ってきたらどうすんだよ!」
「えー、でも、せっかくメガホンがあるのに……」
「あるからって使えばいいってもんじゃねぇだろうが」
 山崎にきっちりとツッコミを入れると、柴田は竹内の方に屈みこむ。
「お前、一緒に来る? それともここで待ってる?」
 動けば出血は酷くなるだろうし、死期が早まるのは明白だ。
 しかし、ここで待ってるとなると、アンタッチャブルが増井を見つけてから戻ってくるという手間が必要になる。目印も何もない林の中、迷ってしまう事もないとは言えないだろう。
 竹内は少しだけ逡巡した後、一緒に行きたい、と答えた。
 自分と相方の事なのに、ただ待っているだけなんて出来ない、というのがその理由だった。
「じゃあ、俺の肩につかまって」
 柴田は竹内を肩で支えた。その状態なら、どうにか足を動かせるようだった。
 ライフルを持った山崎が、ボディガードのように二人の前に立つ。どうにも捨てがたかったのか、メガホンをナップザックに引っ掛けていた。
「増井さん、どっちに行ったかわかる?」
 山崎の言葉に、竹内は迷う事なくある方向を指差す。それは偶然にも、アンタッチャブルが目指していた方向と同じだった。
 しかし二人は、その事について深く考える事はしなかった。
「よし、行こう」
 重傷の竹内をかばうように、ゆっくりと、しかし確かな足取りで、彼らは歩き始めた。
 もちろんアンタッチャブルの二人は知らない。
 増井がメガホンの代わりに、何を手にしたのかを。
558音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/12(火) 00:29:00
どうにもまとまった文を書く時間が取れないので、ここまでで投下させてもらいます。
新規の書き手さんが頑張っているので、自分も負けないようにしたいです。
559名無しさん:2005/07/12(火) 21:52:08
音さん乙です。
ストーリーは、叩けばわーって出るもんじゃないし、
わーって出ることもあるけど、それをまとめるのに時間と能力をえらいこと消費するし。
頑張って下さいとしか言えませんが。
560名無しさん:2005/07/12(火) 22:41:10
乙です。
山崎なんて行動だwそれはないだろう。
ホント「あるからって使えばいいってもんじゃねぇだろうが」ですよw
ハロの二人が会えることを祈ってます・・・
561名無しさん:2005/07/15(金) 20:34:12
最近書き込み少ないですね。
作者さんガンガレ あげ
562名無しさん:2005/07/16(土) 20:20:07
乙です。
新作待ってます。
563蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/17(日) 21:23:53
河辺に辿り着く前に、民家を見つけた。
一寸異様な外見の民家だった。造りは普通なのだが、壁もドアも屋根も全て暗い緑色。まあ、保護色にはなっているが。
「入ってみるか。」
スギが言った。二人は同意した。
「ゆうぞう、ここでいいよ。すまなかったね。」
ゆうぞうはジャイを降ろした。
「それから...ドアをパチンコで打ってみないか?」
「え?」
「威嚇だよ。中に人がいるかもしれないしね。気の弱い奴ならその音だけ十分威嚇になる。ただ、周りに人がいるって知られるかもしれないリスクは負うけどね。」
ジャイってこんなに用心深い奴だったっけと思いながら、スギは、
「そうだな、多少のリスクは負っても、その方がいいかもな。」
ゆうぞうはナップザックからパチンコを出し、ドアに向かって打った。
「バシッ!」
予想以上に、大きな音がした。
何の反応もない。
「誰もいなさそうだけど...スギ、出刃包丁貸して。」
ゆうぞうが言った。
「俺には拳銃を扱うのは多分無理だ。だったら、包丁の方がいい。もし何かあったら、ジャイ、援護射撃頼む。」
「わかった。」
ゆうぞうは出刃包丁を握り締め、用心深くドアを開けた。
中には誰もいなかった。一目で見渡せる、狭いワンフロアー。ただ、壁もフローリングの床も天井も、置いてあるもの全て、概観同様暗い緑色だったが。
シャワーしかない浴室、トイレ迄暗い緑色。
緑は得てしてエコロジーとか平和とかの象徴にされがちな色だが...何から何まで緑で統一されると返って不気味だった。
「まあでも、シャワーとトイレがあるだけでもよしとしなきゃな。」
と、スギが言った。
564蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/17(日) 21:25:03
「タバコもあるよ。」
コンロはないが、流しと水道はあった。ゆうぞうがその下の戸を開けると、マルボロメンソールのカートンがみっちり詰まっていた。
「あー、それが一番助かる。」
ジャイはほっとした様に言った。
テーブルはあるが椅子は1脚しかない。他には灰皿とライターと小さい箪笥と冷蔵庫と壁にかかっている時計、それ以外何も無い、妙に殺伐とした家。
「取り敢えず、一服しよ。」
三人は車座になって座って、タバコを吸った。普段吸いなれたタバコではないが、ずっと禁煙を強いられてきただけに、少し、くつろいだ気分になった。
「やっと、生きた心地がしたよ。」
と、ジャイは煙と共に深いため息を吐いた。

小さな箪笥には、引出しが4つ。開けて見ると下の3段にはそれぞれ大きさや柄は違えど緑形の色のタオル。一番上の引出しには、流石にこれは緑ではなかったが、さまざまな種類の、高価そうな石鹸。
「...この家、エンタ側で作ったのかな。」
「いや違うと思う。」
スギの疑問にジャイが否定した。
「多分、相当変わった人が住んでいたんだと思う。だって...」
「だって?」
「そう思った方が面白いじゃん。」
「...まあ、石鹸とタオルがあったら体洗えるしな。ジャイ、シャワー浴びてこいよ。」
「いや、俺は最後に入る。二人が交代でシャワー浴びてる間に、ジーンズ洗うから。」
565蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/17(日) 21:25:51
アロハシャツにトランクス一丁で、流しでジーンズの部分洗いをするジャイの後姿は、何だか滑稽だなと、スギは思った。
ここが戦場だという事を一瞬忘れそうになる程。
だが、次の瞬間、最初に感じた安堵感を思い出し、また、激しい後ろめたさに苛まれた。
「やっぱり石鹸でも血ってなかなか落ちないな。」
丁度ゆうぞうが浴室から出てきた。
「じゃあジャイ、悪いけど俺先にシャワー浴びてくる。」
「うん。」
スギは入れ替わりで浴室に入った。
「あー、さっぱりした。これで着替えがあればもっといいんだけどな。」
「まあ、贅沢言うなよ。俺なんてさ、ジーンズ破れた上にこびり付いた血、落ちないんだから。」
ジャイはジーンズの濡れた部分をタオルで押さえた後、椅子の背に掛けた。
「あ、傷、大丈夫か?」
「うん、もう血も止まったし。」
本当に傷は弾がかすっただけの様で、傷口はまだ完全に塞がっていない様だが、出血は治まっていた。
「取り敢えず、大丈夫そうで、良かったな。そうそう、何か冷たいものでも入ってないかな。」
ゆうぞうはワンドアの冷蔵庫を開けた。
「...確かに、中の物はキンキンに冷えてるな。」
「何が入ってるの?」
ジャイも冷蔵庫の中を見た。
冷凍室も野菜室も無い冷蔵庫の中には、びっしりと隙間無く、緑のラベルとキャップの、ワイルドターキーライが入っていた。
「酒、飲みたいのは山々だけど、今この状況で酔っ払うの危険だしね。」
「何本か抜いて、水冷やしておく?」
ゆうぞうはそう言ったが、
「いや、辞めた方がいい。いざここを逃げ出さなきゃいけなくなった時、ナップザックの中に水筒を入れる暇が無いかもしれないから。」
「そうだな。」
ゆうぞうはナップザックから水筒を出し、ぬるい水を飲み干すと、水道の水を入れて、しまった。
「そうそう、シャワー、ちゃんとお湯出るぜ。」
「わかった。それにしてもここに住んでた人、本当に緑色が好きなんだな。何か、俺迄緑色になっちゃいそうだ。」
「いっその事、ジャイ、髪緑色にしちゃえよ。」
「そーだね、気が向いたら。」
「それじゃロバートさんと被っちゃうよ。向こうもトリオだし。」
浴室から出てきた、スギがツッコんだ。
566蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/17(日) 21:27:35
「痛ってぇ。しみる。」
ジャイはシャワーを浴びた後、床にタオルを敷いてその上に左腿を載せ、アルコールだから消毒代わりになるだろうと、ワイルドターキーライをかけた。
それから包帯代わりにタオルを巻き、ジーンズを履いた。まだジーンズは湿ってて気持ち悪かったが、いざって時に、アロハとトランクスで逃げ出す方がもっと嫌だ。
3人とも食欲は無かったが...食える時に食っておかないとってのと体力維持の為に、食料を食べた。食事というより、餌の補給といった気分だったが。
「何だか俺、ブロイラーになった様な気分だ。」
ゆうぞうがそう呟いた。
「あ、だったら俺、和牛がいい!ビール飲ませて貰えるし。」
ジャイは何時もの、良く言えば無邪気な、悪く言えば頭が足り無そうな笑顔で言った。
「どっちにしても、終いには食われるよ。」
スギがツッコんだ。
食事終えた時、もう夜の10時になっていた。
3時間ずつ交代で仮眠をとろうという事になったが、
「1人だとうたた寝するかもしれないから、先ず3人の内誰か1人が寝て、で、2人が見張りをして、3時間経ったら起きていた方のどっちかと代わって、でまた3時間経ったら今度は寝てない奴が寝るって事にしないか。」
スギはそう言ったが、
「否、俺空想している間は起きていられるからさ、」
ジャイの趣味は空想だ。
「だから先ずスギとゆうぞうが寝なよ。俺空想している間は絶対寝ないから。その後2人で見張りした方がいいと思う。」
「でも」
と言いかけたスギを遮るようにゆうぞうが言った。
「その方がいいかもしれない。ただジャイ、お前が先に寝ろ。」
「でも、俺、おぶってもらったし、そんなに疲れてないから。」
「いいから、先に寝ろ。」
「...わかった。悪いね。」
567蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/17(日) 21:29:29
テーブルを窓の側に寄せて、外を見る様に2人はジャイに背を向けてその上に座った。
こんな状況で眠れるかよ、と、3人共思ったが、本人が自覚している以上に肉体的にも精神的にも疲労が激しかったらしい。ジャイは直ぐに寝息を立てた。
「ジャイ」
振り返って小声でゆうぞうは話しかけた。が、返事は無い。本当に熟睡しているようだった。
ジャイの足を引っ張っぱってはいけない。
その1点では、2人の思いは同じだった。
ただ、スギは、まだ後ろめたさに苛まれていた。
最初に感じた安堵感の事もあるが、汚いことを全て....殺人を全てジャイに押し付けてしまった事に。
そしてゆうぞうは、ゲームに参加させられたばかりの時の、外界にまるで反応出来なくなっていた様な時のジャイの事を考えていた。
あの時、お前は何を思っていたんだ。
沈黙に耐えかねて、ゆうぞうが口を開いた。
「あのさ、2人共黙ったままだとお互い寝ちゃうといけないからさ、オヤジしりとりやらない?」
「何だよ、そのオヤジしりとりって。」
「最後の言葉はオヤジで終わるんだよ。だから最初の言葉は"じ"か"じゃ"じゅ"じょ"でないといけない。例えば、ジャッキー・チェンの真似するオヤジとか。」
「そもそも俺達がオヤジだろ。」
「ええー、言うー。」
「何か、つまらなそうなゲームだな。」
「そんなこと無いって。絶対面白いって。」
5分もしない内に、2人は盛り上がっていた。時に大声になりそうなって、牽制しあう程に。
家の外への注意、と言うより、ジャイを起こさない為に。
そして、"し"しゃ"しゅ"しょ"で始まる言葉はNGワードだが、"じゃ"はOKだ。でもお互いに、暗黙の内に、ジャイと言う言葉は避けていた。
「ジャン・ジャック・バーネル風のオヤジ」
「えーっと...ジョーイ・ラモーンみたいなヅラかぶってるオヤジ。って、もう、3時間経ったな。」
3人の中で、一番几帳面なゆうぞうが気付いた。
568蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/17(日) 21:30:47
ジャイはあどけない顔で眠っていた。
「何だか、起こすの、可哀想だな。」
「でも、俺達も休まないとね。」
ジャイの足を引っ張らない為に、体力温存しておかないと。
ゆうぞうがそっとジャイを揺すると、さっとジャイは目を覚ました。
「あ、ゆうぞう。」
「大丈夫か?」
「うん、熟睡した。」
「そうか、悪いけど...」
「大丈夫だよ。」
「空想に夢中になりすぎるなよ。」
「わかってるって。」

窓辺のテーブルに座っているジャイの後姿を見ながら、何を空想しているのだろうと、ゆうぞうは思った。
ジャイの空想癖は知っていた。昨日今日の知り合いじゃないんだし。ただ、どうせ碌な事考えてないだろうと思って、何を空想しているのか、聞いた事は無かった。
ただ、ゆうぞうもスギも本人が自覚している以上に疲れ切っていた様だ。すぐに2人は寝息を立て始めた。

さっき迄、怖ろしい夢を見ていた。
皆で殺し合いをしなきゃいけなくなって、で、俺が人を何人か殺す夢。
それが本当に夢だったら良かったのに。
ジャイはかぶりを振った。
他の事を考えよう。例えば...以前ここに住んでいた人の事。
多分、アル中だったんだろうな。バーボン以外、口に出来るもの無かったし。
緑色が好きで、タオルと石鹸のコレクションをしてて。
多分、男だろうな。
「コツン」
ジャイの空想を破る様に、窓ガラスに小石がぶつかる音がした。
569蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/17(日) 21:36:50
仕事の関係で、週末にどかっと書いている為、何時も長文になってすみません。
本当、自分が読む側だったらたるいよなー、もっと簡潔に書けねぇのかよ、と自分に突っ込み入れながら書いてます。
570名無しさん:2005/07/17(日) 22:18:23
乙です
たるいどころかすごく早く読み終えました。
571名無しさん:2005/07/17(日) 22:34:44
乙です。
全然大丈夫ですよ!大歓迎です。
インジョン、なんかいい感じですね。最初のジャイに対するもやもや感が薄れてきてて・・・
続き、楽しみにしてます!
572乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/18(月) 16:31:06
無機質な雰囲気の小さな部屋。
何の変哲もないパイプ椅子の前には口の高さに丁度いいよう、マイクが突き出ている。
そんな狭く暑苦しい空間の中に、緊迫した表情を浮かべる2人の男がいた。
 「いくで、西川君」
 「うん」
顔をあわせて頷くと、レギュラーの2人はマイクの前に向き直った。
松本が、スイッチをオンにしようと手を伸ばした。

ゲーム開始から結構が経つが、2人がこの決断に至るまでもやはり時間がかかった。
もしかしたらこのゲームを止めることが出来るかもしれないが、逆にかなりの危険を伴う。
島の随所にスピーカーがついているのは見てわかった。
だからきっとどこかにあるはずだ。そのスピーカーを使うことができる放送室が。
「きっと皆怖がってるだけやと思うねん」
もうかなりの死者を出しているこのゲームで、今更と思うかもしれない。
けれど2人はどうしてもこの可能性にかけたかった。
 「これで呼びかけして、皆に殺し合いやめてもらおう」
松本と西川は顔をあわせ頷いた。

ブッ、と電子音がして小さなランプが赤く点灯する。
指先から出た血のようだな、といつも松本は思っていた。
スイッチが入った。あとは皆に呼びかけをするだけだ。
せーの、と合図のように一呼吸し、2人は同時にマイクに向かって叫んだ。
 「皆ー僕らの話を聞いてー!!」
573名無しさん:2005/07/18(月) 20:39:33
書き手さん乙。
>蛙さん
3人それぞれの思いが伝わってきて面白いです。続き楽しみにしています。
>乃さん
レギュラーが戦い止めようとする側でなんだか安心しました。でもこの後どうなるんだろう・・・。続き待ってます。
574音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/18(月) 22:14:48
 なんの前触れもなくそいつは飛び出してきた。
「塚っちゃん!」
 先に気付いた鈴木が塚地に呼び掛けながら立ち上がり、襲撃者とは反対の方向へ地面を蹴る。塚地もそれに倣おうとするが、トップギアで射程圏内まで突っ込んできた男は、塚地が立ち上がるより先に自らの武器を振り下ろした。
「うわっ!」
 体を傾け間一髪で避ける塚地。襲撃者の武器である牛刀は彼の左耳を掠め、背後の木に突き刺さる。その隙に塚地は腰を浮かせた。
 しかし、両足に体重が乗りかけた瞬間に再び牛刀が振るわれる。首を狙った横薙ぎ。咄嗟に後ろに反った塚地は、回避こそ成功したものの、そのまま地面に尻餅をついた。
 塚地を見下ろしながら、男は静かに、とどめの一撃を放とうとする。
「待てっ!」
 その声に襲撃者は顔を上げた。視線の先で、鈴木が吹き矢を構えていた。
 膠着状態のまま、荒い呼吸が交錯する。
「なあ――」
 先に口を開いたのは、塚地。
「――お前確か、コンビ組んでたよな?」
 塚地は増井の瞳をじっと見た。
 増井は動かない。牛刀の切っ先を塚地に向けたまま、冷たい輝きを放つ瞳で、どこか虚ろに塚地を見ている。
 塚地は乱れた拍動を抑えつけるように呼吸した。
 瞳は逸らさない。怯えてしまったら、負けだ。
「コンビなのに、どうして一人で襲ってきたんや」
 増井は無言のままだ。
 しかし瞳の奥が、微かに揺らいでいる。
「お前の相方……殺し合いなんて、望んでへんのとちゃうか?」
575音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/18(月) 22:20:38
 二対一と二対二、どちらがより勝率が高いかなど、考える間でもないだろう。
 不意打ちを狙うにしても、この状況で攻撃を仕掛けてこないのはおかしい。二対一で保たれているこの均衡を崩せば、向こう側の勝ちは確実なのだ。しかし、増井の相方は動かない。
 ならば、賭けるしかないだろう。ハロが見せた、唯一の綻びに。
「望まない殺し合いで生き延びたって、後々辛くなるだけや」
 増井の瞳が塚地に焦点を結ぶ。狂った殺戮者のものではあり得ない、澄んだ色の瞳。
「お前には、俺らを殺す理由があるんか? そうまでして生き延びるだけの理由があるんか?」
 例えば、塚地にとってのお笑いのように。
 鈴木にとっての妻子のように。
 増井は、唇の端を僅かに歪めた。どうやら、笑ったらしい。しかしそれは、甘いマスクには似合わない、自虐的な笑みだった。
「――謝られるのが嫌だったんですよ」
「え?」
 どこかずれた増井の答えに、塚地は途惑う。しかし増井は、塚地の事など気にも留めない様子で語り続ける。
「竹内くんは悪くないんだから、責任なんて感じて欲しくなかった。自分の不運のせいだなんて、そんなのあんまりじゃないですか」
 本当はそんな綺麗な理由じゃなくて、一緒にいると辛くなりそうだとか、いつか竹内を責めてしまいそうだとか、やっぱり竹内を恨む気持ちが消せないだとか、色々なものが心の中に渦巻いているんだけど。
 でもそれは自分の内側にだけあればいい。
 どうせ“犠牲”になるのなら、エゴよりコンビ愛の方がいいでしょう?
「塚地さん」
 増井は牛刀を持った右手を、きつくきつく握り締める。
「僕が求めてるのは、生き延びる理由じゃない」

 ――死ぬ理由ですよ。
576蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/18(月) 22:29:02
そして、敢えて、枝葉を揺する様なざわめきが、窓の外から聞こえた。
誰かいる。
ジャイは躊躇したが、テーブルの上に置いておいた拳銃を握り締め、そっと窓を開けた。
「クスクス、君、渡辺(ジャイ)君でしょ?」
声は、窓から2m位離れた木の上から聞こえた。枝葉に隠れて、姿は見えない。が、銃口を、声を頼りに向けた。
「僕を撃ってもいいよ。でも、僕が死んだら僕の相棒の首輪が反応するでしょ?そしたら僕達も死んじゃうけど、反応した瞬間爆発する前に君と君のお友達も死んじゃうよ。クスクス。」
「!」
「死にたくなかったら、僕の言う事聞いてね。君のお友達はよく眠っているかい?」
「...ああ。」
「じゃあピストル持ったまま、窓からこっちへ来て。よーく眠っているお友達を起こしちゃだめだよ。クスクス。」
はったりかもしれない。しかし...そう思いながら、窓から外へ出ようとした時、
「あ、でも、今の渡辺君の足で、窓枠乗り越えられるかなぁ、クスクス。」
何で俺の足の怪我を知っているんだ!?
「ああ、何とかね。」
いざという時の為に、ずっと靴を履いていた。だからそのまま窓から外へ出て、まだ傷が痛むのか、左足を軽く引き摺りながら木の下に行った。
「別にね、君と君のお友達を殺すつもりは無いよ。クスクス。ただ、僕と僕の相棒と取引しないかい?」
「取引に応じなかったら、俺達を殺すつもりだろ?」
「ピンポーン。渡辺君、見た目と違って物わかりがいいね、クスクス。」
見た目と違ってだと!ジャイは少しムっとした。
「取引の内容は後で話すよ。だから僕に付いて来て。」
ジャイは眠っている二人をそのままにしていく事に躊躇したが、男はもう、別の木に飛び移っていた。
「足が痛いの?クスクス。」
「今、行くよ。」
577蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/18(月) 22:30:11
もう15分位歩いただろうか。
男は下へ降りず、木から木へと飛び移りながらジャイを誘導した。
「まだ?俺、足痛い。」
「もう少しだよ。でもここで引き返してもいいんだよ。引き返したら、渡辺君が家に着く前に君のお友達、死んじゃうし、そうなったら渡辺君もどうなるか、わかるよね?クスクス」
「それはわかってるけど、どういう意味だよ。」
「あの家ね、元々爆弾が仕掛けてあったの。と言うより、僕達が爆弾仕掛けたの。その爆弾が破裂するリモコンは、僕の相棒が持っているの。クスクス。」
「...それで、敢えて俺を選んでここ迄連れてきたのか。」
「ピンポーン。本当に渡辺君、見た目と違ってよくわかるね。クスクス。」
男の、クスクスと言う笑い声と口調が耳障りだった。あと、見た目と違ってと言う言葉にもイラついたが。
そして、それ以上にむかついた事があった。
ともかく自分の首輪が炸裂していない以上、2人が無事でいる事を信じるしかなかった。
578音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/18(月) 22:30:21
 牛刀は塚地の首に向かって、ゆっくりと落下を開始した。



最後の一文抜かしてしまいました。スマソ。
579音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/18(月) 22:33:39
orz 本当に申し訳ない。
580蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/18(月) 22:34:17
すみません、音さんが書き途中に書き込んでしまって。
今、大丈夫ですか?
581音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/18(月) 22:39:14
ああ、はい、大丈夫です。こっちがリロードしなかったせいで・・・。
気にせず投下してください。本当にすみませんでした。
582蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/18(月) 22:40:30
本当に、申し訳ありません。
583蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/18(月) 22:42:45
あ、すっかり、入れ違いましたね。
すみません、お言葉に甘えて、続き投下させていただきます。

大男が双眼鏡で、インスタント・ジョンソンの3人が緑色の家に入っていくのを見ていた。
割と遠くで見ていたので、3人の会話までは聞こえなかったが。
「誘き出すのなら、渡辺って奴がいい。あの佐藤(ゆうぞう)って奴は案外用心深い。杉山(スギ)って奴は結構筋肉質だ。それに渡辺は背おわらなければならない程の傷を負っているみたいだし、ピストルを持っている。」
大男は双眼鏡で見た状況を伝えた後、相方の小男にそう言った。
「さて、どうやって、あいつだけを誘き寄せるかだけど...」
「ドアの前で、『あ、美味しそうな物がある』ってのは?」
小男がそう言った。
「馬鹿、コントじゃないんだ。それより」
大男は小男に思いついた事を伝えた。
「それがいいと思う。」
小男は同意した。
「ただお前の持久戦になるけど?」
「大丈夫だよ。どっちにしろ、僕達の武器、1度しか使えないんだし。」
それから小男はその家に近づいて、木に登り、双眼鏡で家の中を観察した。
その時はわからなかったが、ジャイがシャワーを浴びている時に木に登ったのが、ラッキーだった。じゃなかったら、気付かれていただろう。
そして渡辺...ジャイ1人を誘き出せる瞬間を待った。
584蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/18(月) 22:44:31
それから更に10分位歩いただろうか。
こいつ、同じ芸人でもお笑いじゃなくて、軽業師になった方がいいんじゃないかとジャイが思い始めた頃、ようやくその男が木から自分の足元にすとん、と飛び降りてきた。
随分小柄な男だなと思った。
「ここで止まって。それから、そのピストル、頂戴。クスクス。」
「...それが、取引かよ。」
「うん、その代わり、僕の相棒が持っている爆弾のリモコンあげるから。」
小男が指差す先に、随分背の高い男が2m位先の木の下に立っていた。
「俺は君達を殺す気は無い。ただ、俺達が持っている武器は1度しか使えない。ずっと使える武器が欲しかったんだよ。だから、そのピストルを、俺に相棒に渡してくれよ。」
「...わかった。」
ジャイは渋々、小男にピストルを渡した。
小男はジャイからピストルを受け取ると、クスクスと笑い、また木から木を伝い、大男の足元にすとんと降りた。
「リモコンは、俺のポケットの中にあるぜ。さあ来いよ、ククッ。」
「クスクス。」
「...っつ、痛て...」
手負いの状態で歩かされたジャイは、傷口を押さえてしゃがみ込んだ。

「まあ、その状態で随分歩かされたからね。クスクス。でも早くお友達の所に帰りたいでしょ?グズグズしない方がいいと思うよ。クスクス。」
罠だ、多分。でも、もし...もし、俺の身に何かあったら、スギ、ゆうぞう、ごめん。
しゃがんだ状態のまま、ジャイはジーンズのポケットからずっと使っていた自分の拳銃の安全弁を外し(上にアロハを着ていたのでポケットのふくらみ迄は、小男は気が付かなかった)、自分の歩1歩分だけ先の地面を素早く撃った。
銃声とともに、ポス、という情けない音。そこから見える空洞。
「ふうん、そういう事か。」
爆発物ではないことに安心したジャイは、相手を油断させるために引き摺っていた左足で地面を激しく蹴り上げた。
草や土でカモフラージュされた布が、落とし穴の中に落ち、底から突き出た何本かの鋭い竹やりに突き刺さった。
585眠 ◆SparrowTBE :2005/07/19(火) 13:06:55
スタートからだいぶ時間が経っているのに、二人とも今だ襲われていないのは奇跡に近かった。
だからこそ、今の戦いに現実味が湧かないのだ。
―目の前に、見覚えのある死体が転がっていても。

「うわぁ」
やついが顔を歪めていた。
死体はまだ新しく、血がどす黒く固まり始めていた。
そしてこちらに向けている顔は、紛れもなく長井秀和のものであった。
「死んじゃったのかぁ」
やついの声からは感情が消えていた。

拉致されてきた時も、教室で待たされている時も、やついは引きつってはいたものの笑顔で過ごしていた。
だが、目の前でビッキーズが殺された時からやついは感情を出さなくなった。
相方の今立としては、そんな姿を見るのは辛かった。

今立は迷っていた。
どうすれば、元の世界に戻るのだろうかと。どうすれば、またこいつが、皆が笑えるようになるのかと。
だがこうして目の前には死体が転がっているし、元の世界なんて望めそうにもない。
今立は迷っていた。
生き残った所で、それで幸せな世界が戻るだろうか。このまま生き続けて、彼の笑顔が戻る事があるのだろうか。

…ならば、彼を殺して俺も死のうか。
今立は迷っていた。
586眠 ◆SparrowTBE :2005/07/19(火) 13:07:40
久し振りの投下です。エレキコミック編です。
使うと言ってからかなり間が空いてしまってすいません。
587回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/19(火) 20:43:23
>>278の続き

「じゃ、頑張って、吉田」
「お…俺なの?」
阿部は吉田の背中をグイと押した。二、三歩前につんのめりながらも持ちこたえ、阿部を肩越しに横目でじろりと睨みつける。
「はっ、何で俺な訳?」
「見りゃわかるじゃん。俺の武器は小斧、お前はライフル。」
ゆっくりとそれぞれの鞄に入っている武器を指差す。
「だから、吉田がやってよ。」
「やだよそんなん。阿部君が言い出した癖に。これ貸すからさ、」
吉田がライフルを阿部に差し出すと、阿部は冗談じゃないと言った風に手を後ろに組んだ。舌打ちをして阿倍の手を無理矢理取ろうと腕を伸ばすと、「何だよ」と乱暴に払い退けられた。暫く銃の押し付け合いが続いた。
「嫌なら何で「殺しちゃう?」とか言うんだよ。」
「吉田がやってくれるかと思ったから。」
「!」
「やってよ、ねえ、やってってば。」
その言葉に吉田は面食らった。「この自己中…」そうぼそりと呟くと、観念したように銃を構えた。幸い獲物はまだ逃げていない。気付く素振りも無いようだ。
静かな森に、ガチン、と撃鉄のはずれる音が響いた。
(頼むから、気付け…!早く逃げてくれよ…!早く、早く…!)
吉田は人殺しなんかしたくなかった。自分が撃ってしまう前に、早く陣内に逃げて欲しかった。だが運の悪いことに、その願いは届かなかった。

「ちょっと何してんの…。早く撃ってよ。」
後ろで阿部が痺れを切らして急かす。少し怒っているような口調だった。吉田の銃口は確実に陣内の背中を狙っている。だが一向に引き金を引こうとしなかった。
588回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/19(火) 20:44:35
「わ、分かって……」
“分かってる”、そう言おうとした吉田の口の動きが止まった。
「どうしたの。」
吉田は目を堅くつむり、唇をきゅっと結ぶと、ゆっくり銃口を陣内からずらした。
「……阿部君。」
「何…?」

「俺と、心中しない?」
小さな、少し震えた声で、吉田は阿部に懇願した。人は殺したくないが、相方が人を殺す所も見たくなかったのだ。二人の間を生暖かい風が吹き抜けた。阿倍の長髪がばさばさと揺れ、顔を覆う。表情が読み取れない。


―――暫しの、沈黙。
「ふっ…」
阿部が、重い口を開いた。
「死んでも嫌だ」
口元をいびつに歪ませて笑った。
吉田は一気に絶望感に襲われた。何て事だろう。阿部も、このくだらない殺し合いに、まんまと飲み込まれてしまった。こういうゲームでは、壊れてしまった方が負けだということを、吉田は知っている。
これから、俺たちはどうなるんだ―――?

誰か、戻して、元に戻して。誰か、誰か、誰か誰か誰か…!!!

「貸せよ、もういい。俺がやる。」
阿倍の声に、現実に引き戻される。阿部が銃を奪おうと掴みかかってきた。
「だ、駄目だ!」
それを必死で払おうとする吉田。
「俺がやってやるって言ってるだろ。寄こせよ!」
「寄こさない!」
さっきとは反転、今度は銃の取り合いとなった。

589回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/19(火) 20:45:15
「邪魔すんな…!」
「嫌だって―――――…あっ!」
だああん。と大きな銃声が森中に響いた。銃が暴発したのだ。頭上からパラパラと木の枝や木の葉が降ってきた。木に停まっていた鳥たちが一斉に飛び立つ。

「うわあっ!何!?何なん!?」

陣内がやっと吉田たちの存在に気付く。一瞬、目が合った吉田は「逃げて」と口パクで伝えた。もちろん阿部に気付かれないためだ。
陣内はこくこくと首を縦に振ると背を向けて奥に逃げていった。

「…逃げられちゃったな。」
阿部がやや悔しそうに呟く。隣で安堵の溜息を吐く吉田を上目遣いで睨むと足下に落ちていた銃をさっと拾い上げた。
「追いかけて、次は必ず殺さなきゃ…」
「あ、阿部君っ」

いきなり駆けだした阿部を少し遅れて吉田は追いかけた。
590名無しさん:2005/07/19(火) 21:21:58
>>◆Tf0aJzcYy

・・・どちら様ですか?
起さん?
591回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/19(火) 22:25:05
あ、すみません。起さんの話を継ぐ事になった者ですハジメマシテ。
他の書き手さんの承諾は得てます。
592名無しさん:2005/07/19(火) 22:30:17
ほ、ほしゅっ
593名無しさん:2005/07/19(火) 22:55:35
GJ!>>589

いいところでポイズンが話に出てきたな
594名無しさん:2005/07/19(火) 22:57:12
すごい。。。
595名無しさん:2005/07/19(火) 23:07:47
阿部怖いけどな・・・ぉもしろーい
596名無しさん:2005/07/20(水) 23:55:42
乙です!
乃さん
レギュラーには頑張ってほしいです。
平和系でよかったと思いました。
音さん
増井さん・・・微妙な感じですね・・・
どう転ぶのか楽しみです!
蛙さん
とんでもないことになってますね〜
頑張れジャイさん
眠さん
エレキコミックですね!やっつんが怖いです・・・
今立さんの選択が気になるところです
回さん
はじめまして!頑張ってくださいね
阿部ちゃん、こっええですね・・・
吉田さん頑張れ!
597名無しさん:2005/07/21(木) 21:04:46
回さんはじめまして。起さんの続き頑張ってください
598乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/22(金) 18:31:34
今まとめサイトを作っています。
あと本編20話をHP化すれば完成なんで、近日中にできると思います。
599名無しさん:2005/07/22(金) 20:12:12
待ってます(´∀`)
600名無しさん:2005/07/22(金) 22:06:38
すげぇ楽しみ!!ガンガレ!



携帯対応とか…と言ってみるテスト
601名無しさん:2005/07/22(金) 22:51:15
まとめサイトがんがってください!
携帯対応だとものすごく嬉しいなんて言ってみる。
602回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/23(土) 16:14:34
>>589

吉田は阿部を追いかけていた。じめじめした、少しぬかるんだ地面の森だった。垂れ下がった木の蔓や低く突き出た太い枝が邪魔でしょうがない。
阿部は少しかがんだだけでも通り抜けられるのだが、180以上の身長を持つ吉田は何度も頭をぶつけそうになった。その度に立ち止まり、なかなか阿部に追いつくことができない。
ああ、畜生。何だってこんな事に。面倒くさい面倒くさい面倒くさい。家に帰してよ。
それでも吉田は走り続けた。がさがさと、草を掻き分ける音や枝が折れる音が森の中を駆け巡る。
どのくらい走ったのだろう。たった5分かもしれないし、一時間かもしれない。
ただ、阿部の走るスピードが急に落ちてきたのは確かだった。疲れてきたのだろうか、それとも陣内を追いかける事を諦めてくれたのだろうか。どっちにしろこれで阿部に追いつける。


(まったく。運動せずに、食べてばっかいたからすぐ疲れるんだ。)
心の中で悪態を突くと気力を振り絞って阿部に飛びかかった。まず腕を掴み、振り向こうとしたところをそのまま自分の方へ引き倒した。
どしゃ、と少し間抜けな音を立てて二人は地面の上に折り重なるようにして倒れた。


「はぁ、はぁ……うぇっ…!」
久しぶりに全力疾走したのが災いし、吐きそうになるが何とか我慢する。
「…コンパスの長さが違うんだ。俺を引き離すなんて無理だよ。」
吉田は上半身を起こし、荒い息を整えながら阿部に話しかけた。

603回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/23(土) 16:16:07
「……………」
ぽたぽたと汗を滴らせ、うつむき地面に手を突いて微動だにしない阿部。ぜえぜえと苦しそうな呼吸音だけは聞こえるが、その口からは何も発せられない。
右手には未だしっかりと銃が握られている。これではこっそり銃を奪い取ることも無理そうだ。

吉田は初めて自分たちのいる場所を確認した。
「ここは…」
気付かなかったが、半径5メートルほど、周りの草が綺麗に刈りとられ小さな広場のようになっていた。その中央に切り株、隣には積み上げられた薪。そして、目の前には大きな煉瓦造りの釜戸がそびえ立っていた。
わざとらしい、と吉田は思った。これも番組が遊び心か何かで用意したものだろうか。これでコントでもやれってか?
走った事ですっかりフラフラになってしまった足を引きずり、釜戸の前に立つ。煉瓦を手の平でゆっくりなぞるとパラパラと石の粒が降ってくる。

ふと、目の前の煉瓦の壁、自分の影に重なるようにもう一つの影が表れた。
髪の長い、小柄な人物の影。さっきまで地面にはいつくばっていたはずの…
(―――阿部く…)
それを悟った瞬間、がちゃり、と後頭部に固い物が突きつけられた。考えるまでもない。銃だ。一瞬身体が強ばるが、首輪の連動の事を思い出し、なるべく落ち着いた口調で話し始めた。
「…何すんだよ。」
「それはこっちの台詞。なに逃がしちゃってんの。」
ぐっ、と銃を押しつける力が強くなった。
吉田はあくまで冷静を保とうとした。大丈夫、俺が死ねば阿部君も死ぬんだから、撃つなんて真似絶対しないはずだ。少なくとも向こうもまだ死にたくはないだろうから。

「っと、危ない危ない。相方は殺しちゃまずかったんだった。」
あはは、と力無く笑う阿部の声に多少の怒りを覚える。やっぱり殺すつもりだったのか!不謹慎だが首輪連動のルールのために生き長らえたことにほんの少しだけ感謝した。
「あーでも吉田は連れて歩くのには邪魔だな。…もう置いてくか。」
頭に突き付けられていた銃の感覚が消えた。その一瞬を突き、急いで振り向こうとしたが。
阿部の手が吉田の頭を掴む方がわずかに早かった。それほど大きな手でもないはずだったのに、もの凄い力だった。ギリっ、阿部の短く切りそろえられた爪が皮膚に食い込み、吉田は小さな呻き声を上げた。
604回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/23(土) 16:16:51
いきなり後ろに引っ張られ、壁から少しだけ額が離れる。一呼吸置いた、次の瞬間――。再び目の前に壁が迫った。
―――ガツンッ
鈍い、音がした。びりびりと衝撃が走る。
頭を切ったのか、血が額を伝う。その血はぶつけられた壁にも飛び散っていた。
力が抜け、ずるずると壁にもたれかかるようにして地面に崩れ落ちた。
「ま、これくらいじゃ死んだりしねえよな。…ごめんな、吉田。俺ひとりでも頑張るから。」
ぼやけた視界に阿部の靴が映った。脳震盪を起こしたのか、身体が動かない。
「でもこんな所に転がしておいたらまた追いつかれるな。ひょっとしたら誰かに殺されるかもしれないしー…」
ぶつぶつと阿部が何かを言っている。
「聞いてる?……まあいっか。」
ふいに、阿部が後ろから吉田の大きな体を持ち上げた。「重っ」と小さな声がした。
そのままずるずると吉田の身体を引きずると、片足で釜戸の扉を蹴り開けた。ギイイ…と重い音を立ててさび付いた扉が開き、大きな穴が姿を現した。
「結構でかいじゃん。よかった。」
そこまで言うと、吉田をその中に放り込んだ。
「この……痛いってば…」
段々意識を取り戻してきた吉田が起きあがって来ようとする。阿部が慌てて脚で蹴ってさらに奥へと吉田を押し込んだ。
「おま…ちょっと、…待って、待てよぉっ」
手を伸ばしたが、もう遅すぎた。
ばたん。鉄の扉が閉じられ、視界は真っ暗に染まった。狭い上に、暑くて堪らない。
605回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/23(土) 16:17:47
「阿部君、ここから出して。」
「だめ、お前はずっと此処に居ろ。うーんそうだな、陣内さんが死んだら、また戻って来てやるよ。」
「…ふざけんなよ。」
「うっせぇなぁ…」
途端、「ガチャ」と嫌な音がした。まさか、鍵までかけたのかよ!?
「あ…阿部君。阿部君!」
狭い空間のなか何とか身体の向きを変え、扉を叩く。
足音が遠くなった。あいつ、本当に陣内さんを殺す気かよ。冗談じゃない。阿部君が誰かを殺したら、絶対に今よりもっとおかしくなるに決まってる。
それだけは、自分が止めないと、…いけなかったのに。

「阿部君、……くそぉっ!!」
暗闇の中、吉田は頭の痛みも忘れ声を荒げた。
606名無しさん:2005/07/23(土) 16:33:31
乙です
夢中で読んじゃいました
阿部くんがどんどん狂っていきますね…
今後の展開がすごく気になります
607名無しさん:2005/07/23(土) 16:54:20
うああああああ…
鳥肌立つくらい面白いです!
この先の展開がまったく読めない…
回さん、早めに続きうpして下さい
608蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/23(土) 19:39:53
月明かりと、もう目が慣れてきた事もあって、二人の表情が、さっき迄の勝利を確信したような笑顔とうってかわって、凍り付いているのがよくわかった。それを見て、ジャイは確信した。
同時に激しい憤りを感じた。あたかもスギとゆうぞうを人質に取ったような手を使った二人に対して。そんな稚拙な手に引っかかった自分に対して。
が、激しい感情を抑えようと、ジャイは何時もの、無邪気とも馬鹿とも取れるような笑顔を浮かべた。
「確かに、一度しか使えない武器だね。」
「ち、違うんだよ...ただ、びっくりさせようと思っただけなんだよ。まさか、竹槍があったなんて...」
小男は苦しい言い訳をした。
「今、君この穴のか見てないよね、なのに何で、竹槍の事知ってるの?君、エスパー?」
小男は恐怖のあまり、さっきジャイから奪った拳銃の引き金を引いた。が、恐怖のあまり闇雲に撃った拳銃の弾。避ける迄も無かった。
ジャイは小男の右手を撃った。
「うっ!」
弾かれた様に小男が手放した拳銃は弧を描いて茂みの中に落ちた。
「ひっ、卑怯だぞ、二丁も拳銃持ってるなんて。」
「僕と君じゃ、卑怯の概念が違うみたいだね。それよりさあ、僕彼に拳銃あげたよ。取引成立だよね。僕にリモコン、頂戴。」
「お、俺はリモコンを持ってるんだぞ。このポケットには、リモコンが入っているんだぞ。嘘じゃないぞ。それ押したらどうなるか、わ、わかっているだろうな。」
ジャイは確信を強めた。
「それはわかったよ。僕早くお友達の所に帰りたいんだ。」
「俺はリモコンを持っているんだぞ、俺はリモコンを持っているんだぞ、俺は...」
大男は壊れた玩具のロボットの様に、言い続けた。
オレハりもこんヲモッテイルダゾ
「じゃあ取引の前に、君のお友達楽にしてあげようか。」
ジャイは、撃ち抜かれた右手を押さえて、横たわりうめき続ける小男の延髄を撃った。
「俺はリモコンを持っているんだぞ、俺はリモ...」
大男の首輪が炸裂した。

ビック・スモールン死亡
【残り42組】
609蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/23(土) 19:41:30
人の脳は死体を見るのを嫌がる様に出来ている。
前に何かで読んだ事があるけど、とジャイは思った。それって、本当だな。
ましてや、死体に触るのなんて嫌だ。ジャイはまた震えそうになるのを堪えながら念の為に大男のポケットに手を入れた。大男の手が、自分の手に触れた。ぐにゃりとした、力の抜けきった死体の嫌な感触。
案の定、ポケットに入っていたのは男の手だけで、リモコンは無い。ただのハッタリだった。
「それにしても...どうやってこんな落とし穴を作ったんだ?」
傍らにおいてあった、二人のナップザックを探った。それぞれのナップザックから出てきた地図を見る。一枚は自分の地図と全く変わりはなかったが、もう一枚は一ヶ所だけ、違っていた。
落とし穴、そう書き込まれて丸印がつけられている。丁度、この場所だ。
そう、彼らが作ったんじゃない。エンタ側で用意した武器だ。
「こんな武器もあるとはね。」
おそらく、双眼鏡とこの地図以外の武器は無いだろう。ジャイは、ポケットの中を探るときに付いた血を、大男の服で拭うと、さっき小男が茂みに落とした拳銃を拾い上げた。
一刻も早く帰らないと、と走り出し...でもずっと走っていると疲れるので所々歩きながら...二人の元へ向かった。
まあ自分の首輪が炸裂していない以上、二人が生きていることは確かだ。そういう意味でなら、この首輪は便利だなと思った。
それから...さっきはつい激怒したけど、わかってるさ、俺だって、あんな武器を渡されたらあんな手を使ったかもしれない、と。
610蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/23(土) 19:42:50
スギは夢を見ていた。
緑の部屋、緑のテーブルを取り囲むようにして、三人で立っている。テーブルの上には、拳銃が一丁、置いてある。
「今日は三人にちょっと殺し合いをしてもらいます」
どこからともかく、そんな声が聞こえる。
これは夢だ。現実も酷いけど、現実よりも酷い悪夢だ。だから早く覚めないと。
スギはこれが夢だとわかっていた。早く目覚めたいのに、夢の中の自分の体が、全く自分の思う様に動かなかった。
「俺は降りる。俺は人を殺すなんて嫌だ。」
ゆうぞうが言った。
ジャイは拳銃を手に取ると、ゆうぞうに向けた。
「ジャイ、お疲れちゃん、それから、ありがとちゃん。」
銃声と共にゆうぞうが崩れ落ちる様に倒れた。
それからジャイはスギに歩み寄り、拳銃を向けた。銃口ではなく、持ち手の方を。
「わかってるよね、スギ。」
ジャイは何時もの笑顔で、スギの眼を見て言った。
これは悪夢だ。早く覚めないと。でも、夢の中のスギの手は、拳銃を受け取り、ジャイの肩を引き寄せて、こめかみに銃口を当てた。
何故だ?何故俺の夢なのに、俺の思い通りに体が動かないんだ?俺は何をしているだ?!
「スギ、心を揺らさないで。」
ジャイはそう言って、笑顔のまま目を閉じた。
引き金を引くな!
銃声と共に、ジャイが腕の中で崩れ落ちた。血と、もう力の無い肉の、ぐにゃりとした嫌な感触。
これが安堵感の代償なのか?

「スギ!おい、スギ!」
やっと目を覚ます事が出来たスギは、自分を揺さぶるゆうぞうの腕を握り締めた。
生きている人間の腕。夢にしては妙にリアルな死体の感触を振り払う様に。
「嫌な夢でも見たのか?随分うなされてたぞ。」
「あ...まあ。」
夢の内容を、話す気にはなれなかった。
「起こしちゃった?」
「うん、お前のうなされる声で目を覚ましたんだけど、返って良かったよ。」
「え?」
「ジャイがいない。」
611蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/23(土) 19:43:55
この状況で、黙ってジャイが一人で出て行くとは思えない。しかも拳銃が二丁共無い。
「多分、何かに巻き込まれたんだ。」
スギが言った。
「探しに行くか?」
「いや...もう少しで待とう。はぐれるとマズイ。それに俺達が生きている以上、ジャイも生きているはずだ。」
ジャイはドアに耳を当てて、二人の会話を聞いていた。そして二人の無事を確認し、ほっとした。
所々歩いたとは言え走って戻ってきた。汗もかいている。
二人に何かあった事を悟られたくない。呼吸を整え、汗が引くのを待った。夜風が、心地よかった。
二人がやっぱりジャイを探しに行こうといった頃、ジャイはドアを開けた。
「ジャイ!」
二人は叫びそうになったが、小声で言った。
「あれ、起きてたの?」
「何...してたんだよ。」
スギはなるべく声を震わせない様に、聞いた。
「いや...外でがさごそ言う音が聞こえてさ、それで拳銃を二つとも持って外に出たんだ。そうしたら茂みの中に猫がいてさ、人懐っこい猫だったんで一緒に遊んでいたんだ。」
二人共、ジャイの、常軌を越した天然は嫌という程知っている。とは言えいくら何でもこの状況で、そんな事をするわけも無い事もわかっている。ただ、言いたくない事があっただけはわかった。
「それじゃ、仕方ないな。ただ、次からは、誰か起こしてから、外に出ろよ。どんな形でもいいから」
ゆうぞうが言った。
ジャイだっていくら何でもこの嘘は無理があると思ったが、二人がこの嘘に乗ってくれた事に、ほっとした。
「シャワー浴びてきていい?すぐ、済ますから。」
「ああ。」
シャワーを浴びた程度じゃ落ちない死体の感触。でも、少しでも、洗い落としたかった。それでも、どうしようもないのに。
ジャイが浴室に入ると、ゆうぞうはジャイの靴をタオルで拭き出した。
「これ、ジャイには言うなよ。」
「ああ。」
ジャイのスニーカーには、土と血が付いていた。
「それからスギ、俺が勝手に勘ぐってるだけかもしれないけど...あんまり自分を責めるな。」
「...ああ。」
それから、一番心を揺らしているのは、俺でもゆうぞうでもなく、ジャイかもしれない、そう思った。
612名無しさん:2005/07/23(土) 23:31:20
乙です!
回さん
阿部君の狂いっぷりが・・・リアルですね〜!
殺りかけるなよ かりにも相方を・・・
続き、頑張ってください

蛙さん
心理描写がすごいです。夢の中とはいえ怖かった・・・
三人が三人とも優しいですね。
続き、待ってます
613名無しさん:2005/07/24(日) 16:18:50
乙。
ついでに保守しときます。
614名無しさん:2005/07/24(日) 17:24:10
バトロワ1のお絵描き板が消えたからこっちで作れない?
やっぱ嫌な人とか居る?
615名無しさん:2005/07/24(日) 19:06:01
>>607
急かすのとかやめろ
616乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/24(日) 19:21:06
>>614
私は構わないですよ。見てみたい。
まとめサイトのほう、>>556の音さんの作品以降をうpすれば完成です。
あと携帯での観覧希望の方いらっしゃいましたが力量的に無理ぽです。
スマソorz
617蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/24(日) 20:51:43
浴室から出ると、ジャイはタバコに火を付けた。
「まだ三時間経ってないから、二人共寝なよ。」
「嫌だ。」
思わずスギはそう言った。
「いや...よくは覚えていないんだけど、怖い夢を見て...今寝たらその夢の続きを見そうだからさ、俺が起きてるから、ジャイとゆうぞうが先に寝てくれないか。」
「俺、付き合うよ。」
ゆうぞうが言った。
「だからジャイが寝て、三時間経ったら交代しよう。スギ、オヤジしりとりの続きをやろう。」
「何それ?」
「今度教えてやるよ。」
「何か、つまらなそうなゲームだな。でも、悪いね、俺ばかり寝て。」

「三時間経ったな。」
オヤジしりとりを中断して、ゆうぞうが言った。
もう、朝日が昇り始めていた。
全てから逃避するかの様に眠るジャイを起こすのは心苦しかったが...
スギはジャイを軽く揺すった。生きた人間の肩。夢で見た、自分が殺した人ではなく、生きているジャイ。
「ん...ああ、もう三時間経った?」
「悪いね。」
スギとゆうぞうはジャイと交代して、横になった。
「また、三人でコントやりてぇな。」
ゆうぞうは、そう呟いた。
「うん。」
ジャイは、無邪気な笑顔で答えた。
618蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/24(日) 20:52:58
「スギ、ゆうぞう。」
ジャイは小声で声をかけた。返事は無い。二人共、スギも悪夢の続きにうなされる事なく、熟睡している様だ。
俺は後何回引き金を引けばいい?
磁石の永沢から奪った拳銃は同じタイプの物らしい。奪った弾も最初から持っていた拳銃の銃創にぴったりとはまった。だから当分弾切れの心配はしなくても良さそうだ。
俺の空想から出てきた様な拳銃だな、と、ジャイは思った。
最初に握り締めた時から、妙に手に張り付くような感じがした。さっき握り締めた、永沢から奪った拳銃からはそんな感じは全く無く、違和感しかなかったが。
まるで、俺の体の一部の様に...
「違う。」
ジャイは心の叫びと相反して小さく呟いた。
これは拳銃だ。俺の一部じゃない。俺じゃないんだ...
銃口をこめかみに当ててみた。勿論引き金を引く気は無いし、安全弁もかけてある。
それでも、背中に冷たいものが走った。今の俺には自殺する権利も無いんだ。
気なら、もうとっくに狂いそうだった。でも今狂うわけにはいかない。
「意気地無し!」
コントで、自殺しようとしている自分が、ゆうぞうに言った台詞を思い出した。
最初にヒロシさんを殺した時、俺はヒロシさんが怖かったんだ。あの時のヒロシさんは、まるで生きている感じがしなかった。
でもヒロシさんは大切な者を失った。ヒロシさんが山田さんの分まで生きようと考えたら、山田さんの仇を討とうと皆殺しを考えたら...そう思ったら怖かったんだ。
「また、三人でコントやりてぇな。」
さっきのゆうぞうの言葉、前なら素直にそう思えただろう。人を殺す前なら。
もしここを生きて出られる事が出来たら、今まで通り、何も無かったかのようにコントが出来るだろうか。
今まで通りの俺として生きていけるのか...
散々人を殺しておいて図々しいかもしれないけど、自分の空想の世界の中で生きていこうか。もう、それ以外、何もしないで。
ジャイはかぶりを振った。
迷うな。俺はもう河を渡った。最初に決心したはずだ。先の事は考えるな。
ジャイはタバコに火を付けた。そして、朝日を見ながら、以前ここに住んでいた人の事を考えた。
619蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/24(日) 20:58:17
614さん、私も見てみたいです。
あと乃さん、本当にお疲れ様です。
620614:2005/07/24(日) 22:31:24
でも私絵板の作り方分かんないんで。
誰か作ってくれないかなーと思ってますが。
他人任せでスマソ
621名無しさん:2005/07/25(月) 18:45:43
お絵かきーずでよければ作るよ。
622名無しさん:2005/07/25(月) 19:41:16
じゃあそれで。
623音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/26(火) 21:36:31
「おい、大丈夫か?」
 柴田が声を掛けると、竹内は俯き加減だった顔を慌てたように持ち上げ、大丈夫です、と答えた。
 先程から竹内の意識は途切れがちになっていた。服は広範囲が紅く染まり、地面にも点々と血痕が続いている。
 間に合わないのか……。
 絶望が、心の奥底から這い上がってくる。
「いや、俺が諦めてどうするんだ」
 隣の竹内は、こんな体でここまで歩いてきたのに。
 バトルロワイアルという最悪のゲームの中で、それでも希望があるという事を、柴田は信じたかった。そうしなければ、自分が崩れてしまいそうだった。

 山崎は焦っていた。
 早く増井を見つけなければ――。
 人を救えるという事、自分が正義であるという事が、柴田を支えているのは明白だった。これ以上自分の関わった人が死ぬのは、柴田にとって酷すぎるだろう。
 祈るような気持ちで前方を睨み続けた、その時。
「あれ……人?」
 山崎の視界に、人影らしきものが入った。
624音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/26(火) 21:38:07
 歩みを止める山崎。柴田と竹内も、目を凝らして前方を見た。
 人数は、3人。
 しかしここからでは遠すぎて、その人物はおろか、状況すらも掴めない。
「竹内くん――」
 判断を仰ぐように傍らの竹内を見た柴田は、息を呑んだ。
 竹内の表情は明らかに変化していた。見開かれた瞳、そこには失われかけていた輝きが戻っていた。
「……増井、さん」
 呟く竹内。山崎と柴田ははっと視線を前方に戻すが、やはり二人には、人物の見分けはつかない。
 しかし竹内は、他でもない増井の相方は、その人影の一つが増井であると確信していた。
 柴田の肩から左腕を外し、増井は自らの足で大地に立った。限界が近いはずの体は、それでも倒れたりはしなかった。
 右腕を斜め前方、山崎のナップザックへ伸ばす。そこには増井から竹内へ手渡された武器、メガホンが引っ掛かっている。
 メガホンを手に取り、口元に宛がう。
 そして、苦しいくらいに息を吸い、全身全霊をかけて、彼は叫んだ。
 相方の名を。

「増井――――!」
625音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/26(火) 21:39:53
 声が、聞こえた。
 ここにいるはずのない人物の声。
 ありえないとわかっているのに、振り向いてしまう。
 30度、60度、90度。視界の回転は、じれったいくらいに緩慢だ。
 そして、120度を通過した瞬間。
 小さな痛みが走った。
 マフラーより少し上、頸と頭の、ちょうど境目に。
 そして何故か、全身の力が奪われる。腰を捻った勢いのまま、ゆっくりと後方へ向かって、増井の体は倒れていく。
 鼓動がテンポを崩し、息を吸う事すらも出来なくなって、意識は徐々に遠のいていった。

 ――これで、良いんだ。
 増井は最後になるかもしれない息を吐いた。
 これでハロの死ぬ理由は、竹内の不運ではなくなる。増井のせいになる。ただそれだけのために、ドランクドラゴンを利用したのだ。どうせ返り討ちにされるなら、人気芸人の方がいいと――。
 そう、増井は初めから、殺されるつもりだった。
「増井さん!」
 再びあの声が聞こえた。自分が一番聞き慣れた、相方の声。耳も既に機能を失い掛けているはずなのに、その声だけは、しっかりと拾っていた。
 ――ああ、やっぱり、エゴなんだろうな。
 意識が浮遊するような感覚を味わいながら、増井は思う。
 だって、竹内を置き去りにしたのは自分なのに。
 僕の顔は今、きっと微笑んでいる。
626音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/26(火) 21:41:59
 竹内はゆっくりとメガホンを下ろした。
 叫び声の余韻もゆっくりと消え、後には静寂だけが残される。
「竹内くん……」
 沈黙に耐えかねたのはどちらだっただろう。
 先に呼び掛けたどちらかの声は、突如鳴り響いた電子音に遮られる。
 その音は、竹内の首輪から発せられていた。
「うそ……なんで……」
 震える手を首元にやりながら、竹内はゆっくりと膝を着く。
「なんで増井さん、先に死んじゃったんだよ……」
 やっと、会えると思ったのに。
 謝れると思ったのに。
 どうして――?
 絶望に染まった世界を拒絶するように、竹内は瞳を閉じた。
 そして、爆音。
627音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/26(火) 21:45:13
 ――気が付くとそこは、眩しいほどの白に覆われた世界だった。
 そう、まるで雪のような。
「竹内くん」
 名を呼ばれて顔を上げると、自分に向かって差し伸べられた手が見えた。
 そしてその先には、見慣れた顔。
「増井さん……どうして」
 二度と会えないと思っていたのに。
「竹内くんが呼んだからだよ」
 ――だからわざわざ待っていたんだ。
 そう答える増井の顔に、あの時の冷たさはない。ゲームが始まる前の、いつもの増井だった。
「ほら、今度こそ、一緒に行こう」
 ――コンビとして、さ。
「ああ!」
 増井の手を借りて立ち上がりながら、竹内は考える。

 こいつが自分の相方で良かった。
 オレってやっぱり、ツイてるんだな。


【ハロ――死亡】
【残り――41組】
628音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/26(火) 21:47:38
 柴田と山崎は沈黙したまま、動く事が出来なかった。
 二人の視線の先には、首から大量の血液を飛び散らせた竹内の死体。
 首輪の爆発が、彼の命を奪ったのだ。
「しば、た……」
 震える声で相方の名を呼びながら、山崎は目を背けようとする体を無理矢理動かし、ゆっくりと隣を向く。
 人は希望を打ち砕かれた時、こんな表情をするのだろうか?
 柴田は、十年来の相方である山崎でさえも見た事のない表情で、どこか遠くを見詰めていた。
 ――まさか。
「柴田!」
 山崎は慌てて腕を伸ばしたが、既に遅かった。柴田は前方の人影に向けて走り出していた。
 その手にサブマシンガンのグリップを握って。
 竹内の言葉を信じるならば、そこには増井と、あと二人の人間がした。
 その二人が増井を殺したのだ。

 辿り着くまでに数秒と掛からなかった。
 竹内は正しかった。確かにそこには増井がいて――死んでいた。
 外傷はほとんどない。しかし髪の間からのぞく吹き矢が、彼の死因を物語っている。
「どうして……」
 全身が震えている。
 怒りか、悲しみか、それとも――これが、絶望なのか。
「どうして殺したんだぁっ!!」
 柴田はサブマシンガンを構えた。
 ドランクドラゴンに向けて。
629音 ◆yOLxh0F1.c :2005/07/26(火) 21:53:54
今回はここまで。

遅くなりましたが、乃さん乙です。大変な仕事をありがとう。
621さんもありがとうございます。
630名無しさん:2005/07/26(火) 22:40:58
音さんお疲れさまです。
ハロの2人、凄く良かったです。
涙が止まらない・・・
631名無しさん:2005/07/26(火) 22:42:32
乙です。
蛙さん
ジャイの心情・・・痛いほど伝わりますね・・・
三人が三人とも苦しんでて泣けてきます・・・

音さん
ハロ・・・なんか良い死にかたしましたね
次、荒れそうですね・・・なんて対決だ・・・

お二人とも頑張ってください!
632乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/07/26(火) 23:37:59
http://obr2ine.fc2web.com/index.html

まとめサイトができました。
まだ途中なので、うpできてない話があるのですが
それは今後やっていきます。とりあえず形だけでもドゾー
633名無しさん:2005/07/26(火) 23:48:16
乃さん乙です!
634名無しさん:2005/07/27(水) 00:12:01
乃さんGJ!
635名無しさん:2005/07/27(水) 00:32:56
携帯でも見れる!
乃さん本当に乙!
636霧 ◆ulAwgplWcU :2005/07/27(水) 16:07:46
「聞こえるか?児嶋」
「…うん」

二人の背後に迫る足音。
必死に気配を消そうとしているのがわかるのだが渡部達の神経はいつも以上に張り詰めていた為、無駄な努力だった。

無意識のうちに長井から拝借した銃を握る手に力を込める。

(…味方か…敵か…)

どちらにしろ気は抜けないな。
渡部は立上がり、銃を足音のする方に向けた。相手が飛び掛かって来る様ならすぐにでも撃てる様にだ。

だが視線の先から聞こえて来た声はそんな緊迫した空気を打ち砕く様な、あっけらかんとしたものだった。
637霧 ◆ulAwgplWcU :2005/07/27(水) 16:20:52
「あれー渡部さん達じゃないですかー。」
「…波田…君?」

見知った相手に緊張の糸を緩めそうになったが、渡部は再度手に力を込め問い掛けた。

「波田君は…」
「僕ですか?僕はのってませんよー人なんて殺せないですから」

渡部の心を見抜いた様に、答える波田を渡部は訝しげに見たが
その返答に安心したのか児嶋が波田に駆け寄った。

「渡部、そんな顔すんなよ。波田君なら絶対味方だよ、な?」
「そうですよー僕は味方ですってー」

よくもまぁ何も考えずに近付いたもんだ…と渡部は呆れたが
(…確かに波田君から変な感じはしないし…大丈夫だよな)

「わかった…ただ少しでも変な事したら容赦ないから」
「わかってますってー」

仲間が増えたことで嬉しさを隠せない…いや、むしろ嬉しさを全面に押し出して鬱陶しい程の児嶋を眺めていた渡部は
波田の変化に気がつく事が出来なかった。


死神は怪しげに微笑む。
638霧 ◆ulAwgplWcU :2005/07/27(水) 16:22:11
波田&アンジャッシュです。
しばらく投下しない間に話が進んでいて追いつけていない感があるのですが御了承下さい。
639:2005/07/27(水) 16:26:11
『退屈だな…』
男はそうひとりごちた。

この悪魔のようなゲームが開始されてから幾日かが過ぎた。今なおこの島では芸人達が殺し合いをしている。そう考えると、心臓がドキリとした。
決していい番組とは言えなかった。この番組が“芸人殺し”と揶揄されているとの男は知っていたし、実際男もそう思っていた。芸風はそれぞれの芸人が作り出すものであり、たとえTV関係者であってもそこに踏み込むべきではない、と。
しかし今となってはあの頃の番組構成に文句一つない。それどころかエンタの神様が文字通り“芸人殺し”と化しているのだ。
どこからか銃声が聞こえた気がした。『そういえばやる気になっている芸人も多いときいたな…。』
そこまで思考が及ぶと自らの意志に関係なく体が震えだした。さっきの銃声でまた誰か死んだのだろうか。自分の荒い息づかいが聞こえる。震えが止まらない。暗闇の中男の奥歯がカチカチと響いた。

駄目だ…狂ってしまいそう…


こんな絶望的な環境の中男がかろうじて正気を保てているのは彼が他の芸人達と違いこのゲームに参加していないからだった。
640:2005/07/27(水) 17:04:44
そのことを考えると男の激しい動悸がだんだん穏やかになっていく。
別段今日が暑いわけでも、体を動かしたわけでもないのに気づけば男は大量の汗を流していた。
『そうだ…。俺は人を殺める必要はないんだ…。』
万が一のことを考えて。とプロデューサーから手渡された無機質なサブマシンガンを握りしめてはいるものの、男はこれを使うことはないだろうと思っていた。
まさか直接本拠地の廃校に殴り込みに来る馬鹿なヤツはいないだろう。
それが無駄死にだということぐらい彼らだって分かっているはずだ。
男はフゥッとため息をついた。
『全く…俺たちは廃校の警備で気が狂いそうだってのにプロデューサーは安全な所でゲームの鑑賞か…』
ニヤニヤしながら画面を見るあのプロデューサーの顔が浮かぶようだ。
『クソ食らえ』

男はそう吐き捨てるとあることに気がついた。
この廃校の警備(男は東ブロックを担当している)は二人一組であたるようになっている。
男のパートナーはさっき用を足してくると言って去っていった。しかし20分たった今、まだ戻って来ないのはおかしいではないか。

『まさか…あいつやられたんじゃ……』
641名無しさん:2005/07/27(水) 17:36:19
男は頭を振った。そんなわけないじゃないか。
プロデューサーによれば本拠地である廃校の周囲はゲーム開始から禁止区域とされているらしい。つまり彼ら芸人達はあの首輪がある限り廃校に近づくことは出来ない。
パートナーは確かに鈍い奴だが、いもしない人間に殺されるほど間抜けじゃない。
『考えすぎだな…』
男は口に出して言った。どうせ思ったより大物だったんだろう。何、心配することないさ。
しかし男の額には冷や汗が浮かびつつあった。
でもこれは遅すぎないか?普通トイレに20分かけるか?まさか…まさか……
銃を握る手に力が入る。またもや男の胸は動悸を打ち始めた。頭の中で警鐘がなっている。男の奥歯がカチカチカチカチと音をたてる。
ヤバい…。この音を聞いてパートナーを殺した奴がやってくるかも……。
そうは言っても男の震えは止まらない。銃を握る手が血ににじんできた。
止まれ!!止まれって!!
男は心の中で叫んだ。さすがに口に出して叫ぶほど正気を失ってはいなかったが、果たしていつまで正気が保てるか…。
しっかりしろ。
男は言い聞かせた。
連中のあの首輪がある限り俺らは安全だ。

あいつがやられるわけないじゃないか。
疲れてんだな。俺。だからいろいろ考えちゃうんだよ。

とにかく落ち着こう。そうでなくても気が狂いそうなのに

大丈夫…大丈夫だ……

あの首輪がある限り連中は俺には出だし出来ない。

そう
あの首輪さえあれば
642:2005/07/27(水) 20:01:02
後ろで何かが動いた気がした。体がビクッと反応する。
振り返って見たがそこには誰もいないようだ。いや、もうそこにはいないようだった。
誰かいる。
パートナーか?そうだとしたら悪い冗談だ。
そう思いながらもそんな可能性は万に一つもないことぐらい男は理解していた。
ひどいことに今俺が感じている気配は敵のものだ。それにもっとひどいことにその誰かは俺を殺そうとしている。
体全身が総毛立つ。ドッドッドッドッと心臓が波打つ。

極限状態の中男は乾いた唇を湿らせた。
どこだ?
もはや男の心臓は限界に近かった。頭がくらくらする。
敵は臨戦態勢に入っているのか、まだ移動しているのかそれさえもわからない。
そんなことを考えている内に首もとをかっ切られてしまうかもしれない。

『どこだ?』
次は口に出して言った。しかし口から出るのは震えた力のない頼りない声。
それを嘲笑うように周囲の木々は風になびき、さわさわと音をたてる。
普通ならこの音に安らぎを覚えなくてはならないだろうが、今の状況下では敵の足音を消す不快なノイズ。
男は汗を浮かべた手をサッと拭い2・3大きく深呼吸した。
『どこだ!!?』
男は叫んだ。敵を威嚇するよりもいつ襲われるかわからず今にも気が狂いそうな緊張感から逃れたいがためであった。
643回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/27(水) 20:02:07
>>605

しばらく歩いた後、阿部はちらりと後ろを振り向いてみた。吉田が追ってくる気配は感じられない。当然だ。
さび付いた扉は内側からは簡単に開けることなど出来ない上、鍵まで掛けてあるんだから。阿部はまた口の端をつり上げて笑った。
「ふ、…ふふっ、」
手の平には、吉田を壁に叩きつけたときの感触が残っている。
「はははっ」
―――ガサっ、

「…あ……!?…」
突然聞こえてきた茂みの揺れる音に肩をすくめ過敏に反応する。嘘、まさか、もう…!?そんなワケないだろ…。
「吉田?」顔を引きつらせ、何処か怯えたような表情で注意深く辺りを見渡した。
音はすぐ側の茂みから聞こえている。銃を構えたままそろそろと近づき、長く茂った草むらに手を掛けようとした瞬間――。
阿部の目の前に白い物が飛び込んできた。

「うわっ…!」
咄嗟に後ろに飛び退いた。固く目を瞑り両腕で顔をガードする。(もちろん銃は離さなかったが。)
慌てて後退したせいで木の根につまずきどしんと尻餅をついた。上げた腕はそのままで、薄く目を開ける。
目の前には、小さな白い鳥が阿部を威嚇するかのように翼を大きく広げてバサバサと忙しなく羽ばたいていた。
追い払おうと腕を振り上げると、白い鳥は上空高く舞い上がり何回か阿部の頭上を旋回し、再び先ほどの茂みの方へと戻っていった。
そして、一つの木の枝に留まった。阿部はそれを目を丸くして座り込んだまま見詰めている。

644回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/27(水) 20:03:07
「あ、巣だ……」
先ほど自分が近づいた草むらに生えていた木の上に、鳥の巣があった。高くて見えないが、かすかにピイピイと小さな鳴き声が聞こえる。
たぶん、雛がいるのだろう。あの鳥は自分の雛たちを守る為に阿部を攻撃したのだ。
「…今にも落っこちそうな巣だな。」
鳥を刺激しないようにゆっくりと立ち上がる。
「だめだって〜、ちゃんと守りたいんなら、誰にも見つからないとこに隠しておかなきゃ…。」
俺みたいに。と最後に付け加えた。最も、自分のやっていることは「守っている」とは少し違うのだが。
「見つかったら、殺されるよー。」
阿部は銃を構え直し、巣を狙った。親鳥は枝の上でバタバタと羽を羽ばたかせる。撃とうとしているのが分かるのか。へえ、賢いじゃんか。
「………」
ふいに、引き金に掛けられた指が緩んだ。眉をしかめて呟く。
「ん〜…鳥なんかに使っちゃ弾がもったいないな。ま、いっか。そのうち蛇にでも食われちゃうだろうし。」

家の瓦の下にツバメがよく巣を作っていたのを思い出した。親鳥が雛に餌をやる様子を見ることが好きだった。だがある日、突然雛の鳴き声がしなくなった。
巣の中は空っぽだった。まだ飛ぶことも出来ない雛が蛇に食べられてしまったからだと知ったのはつい最近のことだった。
645回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/27(水) 20:03:50
ふん、と鼻を鳴らし銃をおろして再び歩き出す。とんでもない所で足止めを食ったもんだ。
「…吉田は、“蛇”に食われたりしねえよな…多分。見つかりっこない。あんな所。」
吉田は何も武器を持っていないから、自殺は出来ない。だがその分、誰かに襲われたときあっという間に殺されてしまうかもしれなかった。
だから阿部は吉田を閉じこめた。誰にも見つからないように。
「さ、陣内さんはどこかな。」
「ここや。」
「…っ!!」
阿部が振り向いた瞬間、大きく振りかぶった陣内の拳が顔に飛んできた。咄嗟の事で身体を動かす事が出来ず、地面に叩きつけられる。
げほ、と咳をすると血の混じった胆と共に小さな歯がコロリと飛び出てきた。
(あ〜痛い…奥歯欠けたじゃん…。)
背後から拘束するように陣内が腕を回し、阿部の首筋にナイフを突き付けた。
「いつの間に…。」
同じ名前、同じ身長、そして自分と同じくらいトロい先輩だと思ってたけど、やるときはやるんだな。と他人事のように考えた。
「お前が近づいて来んのが見えたから、そこの草むらに隠れとった。それよりもお前、吉田をどうしたんや。何で、あいつが居らんねん。」
陣内は阿部の問いかけを遮った。少し声が震えている。
「……閉じこめた。」
その言葉に、陣内は息を飲んだ。
「何処に!?」
「さっきから質問ばっかするんですね。教えたら隠した意味がないじゃないですか。」
「う、うっさいわ。ええから答えろ!」
「…手が震えてますよ。」
「…お前…っ!!」
ぐっ、と阿部がナイフの刃の部分を掴んだ。
646回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/27(水) 20:05:04
手の平の薄い皮は簡単に切れ、真っ赤な血が手首を伝って地面に落ちる。それでもなお力を入れ続け、自分の首からナイフが少しづつ下がっていった。

「あ…―――」

奇行とも言える阿部の突然の行動に、陣内は戸惑った表情を浮かべた。ナイフの柄を掴んでいる手がぶるぶると震えている。
わき上がってくる“恐怖”からか、力を入れる事が出来ない。すっかり血に染まった刃を握ったまま、もう片方の手で陣内の手首を掴み、くるりと身体を捻って陣内の正面に向き直った。
手を離すと、陣内の手から自然とナイフもこぼれ落ちた。回りながら落下したそれは、すとん、と地面に刺さった。
「すごいでしょ?痛いのも、怖いのも、…悲しいのも。慣れれば平気になるんです。」
真っ赤な手を広げて阿部が言った。

「…可哀相やな、お前。俺は絶対諦めへんぞ。お前みたいに、呑まれたりせえへん。」
陣内の顔が悲しげに歪んだ。
「可哀相だなんて…思われたくない。余計なお世話ですよ。」
阿部が銃口を陣内に向けようとしたが、陣内が阿部の手を蹴り上げる方がわずかに早かった。
阿部の手から銃が弾き飛ばされ、カラカラと少し地面を滑った所で止まった。

「あんまトロいトロいって馬鹿にせんといてや!」
「…!」
銃をひろうべく、阿部と陣内がほぼ同時に、銃に向かって走った。
速さは阿部よりも身の軽い陣内の方が勝っている。
これだ、この銃さえ奪って壊せば、阿部はもう人を殺せない。
陣内の手が銃に伸ばされた。

どすっ
647回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/27(水) 20:05:56
「……えっ……」
背中に強い衝撃が走った。脚がもつれ、その場にうつ伏せに転ぶ。がたがたと震える手で、背中を探ると、堅い物が指先に当たった。
陣内の背中には、さっき落としたナイフが深く刺さっていた。阿部が投げたのだとすぐ分かった。

「びっくりしたぁ…。」
倒れたままの陣内の横をすたすた通り過ぎ、ゆっくりと銃を拾い上げる。
「これ、盗らないでください。荷物置いてきたんですから。」
そして、うつ伏せの状態の陣内の背中に銃口をぐっと押しつける。

「俺の勝ちですね、…お疲れ様でした。陣内さん。」
「阿部……!!」

ズドンッ

弾は背中を突き抜けて地面に刺さった。陣内の身体が一瞬跳ねると、背中はみるみる内に赤くなり、血の水溜まりが出来た。
その水溜まりをばちゃっと踏みつけ、阿部は踵を返して歩き出した。
「ふぅ……久しぶりにいっぱい動いたよ…じゃ、今帰るからなー。吉田。」
くるくる銃を回しながら元来た道を引き返し始めた
648回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/07/27(水) 20:07:12
ここまで。
書く時間がある内に全部投下出来たらいいな。
649:2005/07/27(水) 20:34:26
男の雄叫びに答えるように左前方の茂みが大きく揺れた。
男はその茂みの中に敵の姿を確認したわけではなかった。しかし男が握りしめているサブマシンガンはパララララッと軽い音をたてて茂みの向こう側を狙い火をふいた。

数十秒間男は叫びながら撃ち続けた。その声をかき消すように男の持つサブマシンガンからは空薬きょうが吐き出され続ける。
弾薬がつきた。男は銃を下ろしその場に座り込んだ。叫び続けた男の喉は潰れ、銃を握りしめた手、指は血に滲み、足は震え、汗がとめどなく溢れた。

何十分たっただろうか。男は息も絶え絶え茂みの中を確認しにいった。
いまだ足が震え茂みにたどり着くのにも数分要したが、自分を殺そうとした奴を確認しようとゼイゼイ言いながら這っていった。
茂みをかき分けて恐る恐る覗いた。男の目には焼け焦げた草や木の枝。地面にも数ヶ所銃弾が跳ねた痕が残っていた。
しかし……

『死体がない…?』
男は凍り付いた。まさか……やり損ねたのか??驚愕する男の後ろで草のなる音がした。今までよりハッキリと。
男は後ろを振り返った。すると次は右側から地面を蹴る音が。と同時に上方の木の枝が大きくしなった。
敵は複数いた!!?
男は弾の入っていない銃を構え遮二無二突っ込んでいった。
『うわあああああああああああ!!!!!!!』


男の狂ったような声が辺りに響き
そして
途絶えた。
650名無しさん:2005/07/27(水) 23:31:43
乙です。
阿部さん歪んでますね〜・・・
そこそこに相方のことは考えてますが・・・
バトル、すごく良かったです。
651:2005/07/28(木) 20:33:48
芸人たちが殺し合いを続ける中、本部では番組のスタッフたちが作業を続けていた。
「五味プロデューサー。また死亡者が確認されました。」
スタッフの一人が回転椅子に座る男に告げた。
「コンビ名は?」
近くにあるボードを取りながら五味一男は聞いた。
「ハロっていう2人組です。一人は殺されてますから、もう一人は首輪でズドンってとこですかね」
スタッフはこともなげに言った。
ハロね…。
五味一男はボードに記載されている出演者リストを指でなぞっていった。
ハロ…ハロ…
しばらくして見つけた彼らのコンビ名の上に五味一男はボールペンで斜線を引いていった。
「ハロ死亡っと。いやぁだんだん減ってきてるねぇ。このままじゃ視聴率はうなぎのぼりに違いないね。」
五味一男は嬉しそうに言った。ハロと言えばちょっと前流行った韓国俳優を模したコントをやってた奴らだ。別段面白かったわけじゃないから死んでも支障あるまい。五味はクククッと短く笑った。

「そういやさっき外で銃声がしてたけど大丈夫なのかな?」
652蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/30(土) 22:34:40
空、青いなぁ。
枝葉の隙間から見える空を見て、キング・オブ・コメディー高橋は一瞬、激しい疲労を忘れそうになった。
体力はもう限界に近かった。今野を茂みの中に隠すと、最後の力を振り絞って直ぐ傍の木に登った。
今野を担いで、木に登る程の体力は無い。
茂みの横の道から、今野の姿は見えない。が、木の上からは、薄っすらと見える。
これで、今野を見張れる。

ゲーム開始直後。
「こんなゲームぶっ潰してやる!」
「今野、叫ぶな、落ち着け。大声を出すのは危険だ。」
二人は一旦森の中に隠れた。周りに人はいなさそうだが、大声を出すのは危険だ。
「落ち着けるかよ。何で殺し合いをやらなきゃいけないんだよ。」
小声になった。
「俺も殺し合いは嫌だし、ぶっ潰してやるって気持ちでいるけどさ...」
でもやり方がわからない。
「多分、俺達と同じ思いでいる人達だって、いるはずだ。俺達二人だけじゃどうしようもない。仲間を探そう。」
と、高橋は参加者リストを広げた。
「うん。」
アンタッチャブル、ドランクドラゴン等、○は同じ人力舎の芸人が多いのは当然だろう。
こんな事をしても無駄だ。高橋は思った。
何せ自分の命がかかっている。助かりたいが為に、豹変しているかもしれない。俺達が知っている、柴田さんや塚地さんじゃなくなっているかもしれない。
そりゃ俺達と同じ思いでいる人達もいるだろうけど。
取り敢えず今野を落ち着かせる事は出来た。それに高橋自身、無駄だとわかっていても、何かせずにはいられない、というのもあった。
○と言っても、猶予付きの○だ。実際に会って見ないとわからないし、会った時が、自分達の最期の時かもしれない。
銃声が聞こえた。首輪の炸裂音も。直ぐ傍ではない、でもそう遠くない所で。
「ここから逃げよう。」
「うん。」
今野の声に、さっきゲームをぶっ潰すと叫んだとき勢いは無く、震えていた。
653蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/30(土) 22:36:11
それからどれ位歩いただろう。
歩きっぱなしでは無いが、森や茂みの中に潜んで休み、人の気配や声、銃声、炸裂音がする度に、移動した。
矛盾している。
高橋は思った。
仲間を探しているのに、人に会うのを怖れている。おかげで襲撃されずには済んでいるが。
もし首輪がシンクロしていなかったら...そしてコンビであれ何であれ、最後の一人になる迄殺し合いをするなんて事になったら...
今野は俺を信用してくれただろうか。そう言う俺も、今野を信用しただろうか。
高橋は自分自身まで疑わしくなってきた。
それを考えるのはよそう。少なくとも、今この段階で、信用出来るのは自分と今野しかいないのだから。
654蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/30(土) 22:37:36
ゲーム開始から二度目の夜。二人はまた別の森に潜み、人の気配もしないので、交代で寝る事にした。
ここに辿り着く迄に、二人共全く寝ていないわけではない。うたた寝程度なら、した。が、人の気配や物音がする度に飛び起き、移動した。
先に今野が寝ることにした。高橋は今野が渡された防弾チョッキを着て、自分が渡された、何か透明な液体が入っている小型の注射器を手にした。
注射器の中の液体は、わからない。毒かもしれないし、ただの水かもしれない。
覚醒剤だとしたら、相手が凶暴化して返って厄介な事になるな。
夜も明けかけてきた。
「おい、今野。」
「ん...あ?」
「もうそろそろ替わってくれないか?俺も疲れたし、眠い。」
「うん、俺十分寝たし。」
勿論十分寝たわけじゃない。が、高橋は一睡もしていないのとほぼ同じだ。
今野は防弾チョッキを着た。
「それにしても、中の液体なんだろうね。」
「さあな。自分で刺して確かめるわけにもいかないし。」
と、高橋は今野に注射器を渡そうとした。が、疲労のあまり、手元が狂った。
「あ...」
注射器の針が今野の指先に刺さると、そのまま崩れ落ちる様に倒れた。
一瞬で、高橋の眠気は飛んだ。
「おい、今野?今野ってば!」
今野を揺すったが、何の反応も無い。
腕に触れた。脈はある。呼吸もしている。と言うより、小さく寝息を立てている。
尤も、死んだのなら、高橋も死ぬわけなのだが。
お陰で中身が何かはわかった。睡眠薬だ。それも、指先に一寸刺しただけで眠り込んでしまう程強力な。
指先に一寸刺しただけでこれなんだから、半分でも致死量だろう。
「今野、俺を一人にしないでくれ...」

高橋は今野ナップザックを、そのまま自分のナップザックの中に入れた。
せめてうたた寝だけでもさせてくれと思ったが、遠くで、銃声が聞こえた。
引き摺ったら、やっぱり怪我するだろうな。
眠っている今野にナップザックを背負わせ、その今野を背負って、高橋は歩き出した。
655蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/30(土) 22:38:31
そうして、今野を背負って休んだり、物音や人の気配を感じてその場を立ち去ったりしている内に、その木に辿り着いた。
木のふもとには、今野一人なら隠せる位の茂みもある。
注射器は元々プラスチックのケースに入っていた。自分まで寝たら洒落にならないと、ケースに仕舞い、パンツのポケットに入れると、最後の力を振り絞って木に登った。
枝葉の間から、青い空が見えた。
極限に近い疲労も、ここが殺し合いの場だという事も忘れて、空に見とれた。
緊張から解き放たれた瞬間、それも長くは続かなかった。

道の対面の茂みから、がさがさと言う音がした。
男が二人。一人はつるはし、一人は業務用スコップを持って、斜め向かいの木に登り始めた。
二人が何をしようとしているのか、高橋にはよくわかった。この道を通る人目掛けて、木の上からつるはしとスコップで襲い掛かるつもりだ。きっと。
木から降りるわけにいかない。だが...
茂みに潜んでいる今野に気付いたら!
さっき迄、今野早く起きてくれと思っていたが、目を覚まして、起きあがらない事を祈った。
確かに今野は防弾チョッキを着ている。が、頭迄は防御してくれない。
それに、ここにいる俺に気付かれたら...今の高橋には、今野を背負って逃げる力は無い。
頼む、今野、起きないでくれ。眠り続けてくれ!
656蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/30(土) 22:39:32
何かが起きる迄、ここをアジトにする事に決めたが、そう長い時間緊張感は維持出来るものではない。
昨日今日の知り合いでもなく、営業等で一緒に過ごしてきた時間も長かったから、今更喋る事もそんなにあるわけじゃない。
ただ、放送が流れる度、スギとゆうぞうは緊張した。誰が死んだか、もそうだが、今の平穏は、ずっと続くわけではない事を思い知らされるかのように。
ジャイは放送を聞いているのか、聞き流しているのか、敢えて聞かないようにしているのかよくわからなかったが、
拳銃を持ったままテーブルに座り、何かを空想しているような顔をして、窓の外を見ていた。

ジャイは敢えて放送を聞かないようにしていた。
知っている芸人が死んでいるかもしれないのを知らされるのが嫌だったと言うのもあるが、
生きていたとしたら?
そしてその人が、俺の知っている人ではなくなっていて、戦わなきゃいけない事になったら?
磁石の時がそうだ。エンタと言うより、オンバトの楽屋で何度か喋った事のある磁石。
それから、今生き残っている奴の中に、きっといるはずだ。自分の身を守るためじゃなく、単純に、人を殺す事に快楽を感じている奴が。
殺人の快楽に酔いしれた上、言い訳も出来る。
このゲームを愛してしまった者。このゲームに愛されてしまった者。
自分が、そうなれれば、良かったのに。
そういう俺も、ある意味選ばれてしまったんだ。エンタの製作側ではなく、運命とか、そういうものに。殺戮側へ。
今迄俺がしてきた殺人が、俺達の生に繋がるが、ただの悪足掻きに過ぎないのか、わからないけど。
ゆうぞうのパチンコは論外だ。スギの出刃包丁は嫌だ。人を殺す感触が、ダイレクトに手に伝わる。
拳銃は、弾を発射した衝撃が手に残るだけだ。どっちにしても殺人には違いないけど。
でも殺人の感触から、逃げる事が出来る。

「この家の周り、一寸見てみないか?」
スギが言った。
「そうだな。この周辺の様子、よくわからないしな。いざ逃げるときに、わかっていた方がいいし。でもその前に俺一寸、トイレ言ってくる。」
ゆうぞうがトイレに行った。
「あのさあ、ジャイ、いきなりこんな事言うのもなんだけどさ...あんまり自分を追い詰めるなよな。」
「うん?」
ジャイはスギが何を言いたいのかわからないような振りをして、頷いた。
657蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/30(土) 22:42:46
木の上に上って実際はそれ程時間は経っていなかった。
が、高橋にはもう何時間も経っている様に感じた。
その時、道の向こうから見覚えのある三人が歩いてくるのが見えた。
そして、ゲーム開始の時、今野と参加者リストを見て○×を付けた時の事を思い出した。

「インジョンさんは?」
エンタと言うよりオンバトで馴染みだった。
「インジョンさんは...スギさんとゆうぞうさんは大丈夫だろうけど、ジャイさんが...」
「あー、あの人ね、」
何を考えているのか何も考えていないのか、わからない所があるからなあと、高橋が言いかけた時、
「天然過ぎる。」
「そうきたか。」
「俺見たんだよ、ジャイさんが素でスギさんとゆうぞうさんを間違えていたのを。」
「...それは、天然が過ぎるな。」
「あれだけ人数がいたら仕方ないのかもしれないけど。」
「あれだけって...三人じゃないか。」
「取り敢えず○でいいよね。」
「ああ。」

そのインスタント・ジョンソンの三人が、こっちに...つるはしとスコップを持った二人組が潜んでいる木に近づいているのが見えた。
高橋は声をかけるべきかどうか、躊躇した。
今声をかけなければ確実に、殺られる。
でももし、声をかけても殺られた場合、今度は自分達が殺られる。
それにそもそも、○にはしたけど、あくまでも猶予付だ。仮にそれで助かったとしても、そのインスタント・ジョンソンに殺られるかもしれない。
賭けだ。
高橋は思い切って声をかけた。
「危ない!」
だが、高橋の声は、ジャイの銃声に掻き消された。
658名無しさん:2005/07/30(土) 22:43:15
いいねぇ。
過疎も終止符がついてきた。
659蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/30(土) 22:44:11
その時高橋が見た光景は、ヅラット・ピットに襲撃された際に書いたので、割愛させて頂く。
他の二人はわからないが、ジャイさんが人を殺すのはこれが初めてじゃない、高橋はそう確信した。
微塵の動揺も高揚もない落ち着きっぷり。助かった事より返り血を浴びなかった事を喜んでいる事。
インスタント・ジョンソンが助かった瞬間、その時だけ一瞬だけホッとしたが、
自分の声が銃声に掻き消された事に安心すると同時に、こっちに気付くなと、必死に願った。
木の枝葉は、ヅラット・ピットが隠れていた木よりも薄い。誰がいるかはわからなくても、誰かがいるかは、よく見ればわかるだろう。
今野、目覚めるな!それから、俺に気付くな!!
高橋が頭の中のリストのインスタント・ジョンソンを、○から×に変える前に、
「ところでさっき気が付いたんだけど」
ジャイの視線と、銃口は高橋がいる木に向いていた。高橋の背中に、冷たい汗が流れた。
「パン。」
一発の銃声が響いた。
660蛙 ◆GdURz0pujY :2005/07/30(土) 22:52:52
ところで...インジョンと磁石とキングって、オンバトで一緒に出た事あっただろうか。
なかったらスマソ。
661名無しさん:2005/07/30(土) 23:29:24
インジョン好きなんだけど何かのネタ?
662名無しさん:2005/07/30(土) 23:35:49
>>661
何お前。
ある程度ROMって来いアフォが。
663名無しさん:2005/07/30(土) 23:38:50
うるさいよはげ
664名無しさん:2005/07/31(日) 00:27:23
インジョンネタに食傷気味・・・
665名無しさん:2005/07/31(日) 13:01:38
凄いな…。
蛙さん、本当に文章がお上手ですね!
とてもドキドキしました…!
GJです!
666名無しさん:2005/07/31(日) 13:35:38
乙です。
キング絡んでますます楽しみになりました!
667名無しさん:2005/07/31(日) 14:38:06
キングキタ―――(・∀・)――――!
キング好きなんで嬉しいです!
それにしても蛙さんの文章、とても上手ですね!
668名無しさん:2005/08/01(月) 00:30:37
ヤバ・・蛙さん文章上手すぎ。
どう育ったらそんな文章が書けるんですか。俺には到底無理
669回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/08/01(月) 18:13:42
>>647

銃を撃った衝撃で未だビリビリと痺れるその両手。
映画やドラマで見た時のように、勢いよく、噴水のごとく血が飛び出すのを期待していたが、思ったよりそれは静かに、音もなくじわりじわりゆっくりと流れ出てきていた。
撃ち殺した奴の髪は相変わらずふわふわとした茶髪だったし、肌の色は生きていた時と変わりなかった。
血は赤黒く、思ったより色も綺麗じゃなかった。
それでも………。


「最っ、高―――っ!」
阿部は再びくつくつと笑い出した。
―――ああ、俺って強いなぁ。


ふいに、相方の顔を思い出した。“陣内を殺したら戻ってくる”と一応は約束をしたものの、やる気でない吉田を連れて歩くのは単に邪魔にしかならない。
もし何らかの武器が彼の手に渡ろうものなら、その場で自殺してしまう可能性もある。
吉田だけ死ぬならかまわないが、なんにせよ“首輪連動”といううざったいルールのせいで、自分も道連れにされてしまう。
もういっそ彼の事は放っておいて一人でいようか。
うん、そうしよう。
戦わない奴は邪魔だし。行こ行こ。

だが、暫くの間、阿部は立ち止まったまま動かなかった。難しい顔をして、何かを考えているようだった。
そして、顔を上げて、再び元来た道を歩き出す。
吉田を閉じこめた、あの釜戸がある場所へ。
670回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/08/01(月) 18:15:21
「ん…まあ、様子を見るだけでも、してやらないと。」

カラカラ…と長いライフルを引きずり地面にまっすぐな線を引きながら鼻歌交じりに歩いていった。







阿部は自分の目を疑った。

「え……」


「何で………」


「ど う し…――――、」


銃が手からすり抜ける。
がちゃん、と無機質な音だけが響いた。
671回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/08/01(月) 18:16:35
居ない。

吉田が…。

しっかりと締めていたはずの鍵は乱暴に外されたのか、バラバラに散って歪んでいる。
錆びた鉄のドアが風に揺られて軋んだ音を鳴らしている。
その釜戸の周りには、明らかに複数の人間がいた事を示す、足跡。
―――“蛇”に、食べられちゃった…?

「!」
ばっ、と無意識に自分の首輪に手を当てる。心臓が早鐘のように鳴る。
しかし首輪が鳴る様子はない。とりあえず胸をなで下ろした。
そして、途端に冷めた表情へと変化し、呟く。


「…どこだ…」

「どこへ行った……」



「誰が、逃がしやがった!!」
672名無しさん:2005/08/01(月) 20:02:13
最近活気付いてきましたね
よいことだ
673名無しさん:2005/08/01(月) 22:50:59
672>そーですね(いいとも風)

回さん
相変わらず面白い文章を投下してきますね!
毎回ぞくぞくしながら読んでます!
674名無しさん:2005/08/01(月) 23:09:39
乙です!
続きが楽しみで仕方ありません。
頑張ってさい!
675乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/08/02(火) 10:45:23
http://obr2ine.fc2web.com/index.html
まとめサイト、本スレ更新分まで全てうp完了しました。
ところでお絵かき掲示板ってどうなったんですかね?
676乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/08/02(火) 11:06:46
12時の放送まであと 数時間。
毎回放送が近づくたびに気が重くなる。今度は誰が死んでいるのか、どれだけの犠牲者がでたのか…。
あまり同じところに(しかも家の中に)長いところ滞在しておくのは危険かもしれない。
 「ねぇ、そろそろここ出たほうがいいと思うんだけど」
インパルス堤下は目の前に座りやることもなくボーっとしている三人の仲間に呼びかけた。
ただでさえこの人数で目立つのに(プラン9よりはマシだと思うが)
必要な物資を求め人が入ってくる可能性のある民家にいるのはあまり良い考えとはいえない。
だから移動したほうがいいんじゃないか――。堤下はそう言った。
 「へーぇ、堤下のくせに結構頭回るじゃん」
 「堤下のくせに、ってどういう意味だよ!!」
板倉特有の皮肉にいつもの通り返す。
ニヤニヤと笑う板倉はカレーのお陰か大分元気そうだ。
 まぁ板倉にそう言われるのも仕方ないかもしれない。
小中高と野球馬鹿だったから殆ど頭使ってなかったし、
通ってた高校の偏差値なら、板倉と自分だと雲泥の差だ。
ネタを書くのも板倉だし。
――駄目だ、板倉さんと比べても鬱になる!!
堤下はすぐに考えを頭から払った。
 「まぁ、確かにここ動いたほうがいいな」
2人のやりとりを楽しげに聞いていたアホマイルド高橋も同意した。
坂本も頷いている。
 「よっしゃ、じゃあ移動すっか」
 「あ、待って板倉さん!!俺さ、もう一個提案があって」
ソファから腰を上げかけた板倉を制し、堤下は口を開いた。
 「こうしてさ、2人も仲間になったことだしさ、もっと仲間作らない?」

677乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/08/02(火) 11:24:09
 「仲間?」
板倉が怪訝そうにいう。
当然だ。四人なんて人数だけでも目立つし、たくさん仲間を集めれば
それだけ危険も増える。信頼できるかどうか、など問題はたくさんだ。
けど――
 「わかってるよ。あんまり良い作じゃないことくらい。
けど俺は、今まで仲良かった人達が知らない間に死んでったりするの、嫌なんだ…」
堤下は拳を握り締めた。
死ぬ前に会いたい。放送で名前を告げられて、『あぁ、死んだんだ…』ってなるよりは
危険を冒してでも出来るだけたくさんの人に会いたい。今まで仲良くしてくれた人、
お世話になった人、共に頑張ってきた人――
 「そういえばさ、死んじゃったね」
ポツリと坂本が言った。
三人はすぐに理解した。
東京NSC4期生。お笑い芸人になることを夢見て共にやってきた仲間――
椿鬼奴は数時間前の放送で、名前を呼ばれた。
 「同期のやつらには会いてーよな」
 「やつらってあと、ポイズンしかいないじゃん」
POISON GIRL BANDの2人も同期だ。
結構エンタの収録や、他番組、ルミネなんかで一緒になったりする。
あの2人はまだ、名前を呼ばれていない。
 「じゃあ、ポイズン探す?」
高橋は少し不安に顔を曇らせ言った。
当たり前だ。探すといったってまったく手がかりがない。闇雲に歩いたところで会える可能性は少ないし、
会ったところで2人がやる気になっていないという保障などどこにも無い。
だがそんなこと言っていたら何もできない。やれるだけ頑張ってみればいい。堤下は大きく頷いた。
678乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/08/02(火) 11:35:47
 「え、ちょっとまってちょっとまって」
今度は板倉が挙手している。何か異論でもあるのだろうか?
 「え、やっぱりよしたほうがいいかな?」
控えめに堤下が尋ねると、板倉は首を横に振った。
 「ちげーよ。いや、誰か探すんなら塚地さんたちも探そうと思って」
 「あぁ!」
失礼な話だか、すっかり忘れていた。
なんで忘れてたんだろ、俺。
まだお互いが無名だったころから一緒に頑張ってきた仲間なのに。
鈴木さんなんて自分らが単独ライブやったとき劇場にわざわざ駆けつけてくれたしな。
その点板倉はちゃんと覚えていて立派だ。
まぁ板倉は、ロバート馬場やキンコン西野ほどじゃないにせよ
塚地さんと一緒に飲んだりするらしいし。
 「おまえ忘れてただろ?」
痛いところをつつかれ、苦笑いするしかなかった。
 「おし、じゃあそうと決まったら行こう!!」
坂本が荷物を持って立ち上がった。

 「待て!」

板倉が片手で坂本を制し、開いた手の人差し指を唇に当てている。
静かにしろ、の合図だ。
 「今、声が聞えた」
 「――声?」
皆が耳を澄ませる。

『皆ー僕らの話を聞いてー』

電子機器を通したような、関西弁の声。
この声の主は――
 「…レギュラー?」
679名無しさん:2005/08/02(火) 15:53:48
http://w2.oekakies.com/p/obr2ine/p.cgi
です。
URLとかの貼り方もよくわからない初心者なんで、
うまくできてなかったらごめんなさい。
680名無しさん:2005/08/02(火) 15:57:50
↑の下げ忘れすみません(´・ω・`)
681名無しさん:2005/08/03(水) 10:12:30
乙!&ドンマイケル
682名無しさん:2005/08/04(木) 00:37:59
乙です!
レギュラーが動きましたね〜・・・
頑張ってほしいです・・・
683名無しさん:2005/08/04(木) 02:44:27
>>679
よく頑張ってくれた。
乙。
684名無しさん:2005/08/04(木) 17:35:37
I am a アンジャッシュ
685名無しさん:2005/08/04(木) 17:42:43
↑????
686名無しさん:2005/08/05(金) 21:22:22
な、なに!?
偽アンジャ登場か!?
687名無しさん:2005/08/05(金) 22:38:35
I am an アンジャッシュ.
688名無しさん:2005/08/05(金) 22:40:55
Really? Me,too.
689名無しさん:2005/08/05(金) 22:47:32
>>687-688
ワロタwwww
690名無しさん:2005/08/05(金) 23:22:44
遅レスな上、変な事に感心だけど。
子供の頃からそそっかしいまま大人になりまいた。
だもんで、しょっちゅう怪我しているのでよぉっくわかるんだけど、
回さん、確かに血って、あんまり綺麗な色じゃないし、勢い良く流れ出るもんでもないんだよね。
リスカ趣味がないのでよくわからないけど、動脈とか、
大きな血管を切らなきゃ勢いよく血は吹き出ないでしょう。
本当にね、赤黒くて、じわりじわり、というか、鼓動に合わせてどくどくと流れでるのよ。
ここにカキコするよりメンヘル板に逝けって感じだけど、
阿部君の動向より、吉田君の動向に期待です。
691名無しさん:2005/08/05(金) 23:37:08
>>690
生々しいな・・・。
血液にトラウマあるから、ちょっとガクブルした。
お怪我、大丈夫?お大事に・・・。
692名無しさん:2005/08/06(土) 09:53:50
>>689
ハーーン
693名無しさん:2005/08/06(土) 21:32:57
>>691
ありがd&ガクブルさせてスマソ。
さすがに学習能力がついたのか、ここ数年は病院送りな怪我はしていないので。
そうじゃない程度の怪我は、事務職とは思えないほど日常茶飯事だけど。
694名無しさん:2005/08/06(土) 23:01:12
チラ裏行けよ
つまらんレスでスレ消化すんな
695蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/07(日) 21:48:41
今野は幸せだな。
と高橋は思った。
何もわからないまま死ぬんだから。
が、次の瞬間、聞き覚えのある間延びした声が聞こえた。
「そこにいるの、キング・オブ・コメディーの高橋さんでしょ?」
弾はその衝撃で枝葉を揺らし、そこに潜む高橋の姿が見えた。そして、高橋の右頬を掠めただけだった。
俺...生きているのか。助かったんだな、取り敢えず。
取り敢えず助かった事にはほっとしたが、ここにいる事は完全に気付かれている。
「何でそんな所にいるの?」
「...隠れてるんだと思うよ。」
ジャイの間抜けな質問に、スギが代わりに答えた。
「あ、そっか。」
ジャイは拳銃の取っ手で頭を掻き乍言った。
「ごめん、さっきのは威嚇射撃だよ。そんな所で震えていないで、降りて来たら?もう撃たないから。」
もう撃たないから。そう言われても、あっさり信用するわけにはいかない。
殺す気なら、威嚇射撃ではなく本当に、殺しているだろう。さっき見たあの腕前なら、今の俺位簡単に射殺出来る筈だ。
だけど...
と逡巡している高橋にジャイが又声をかけた。
「降りて来ないと撃つよ?」
高橋は飛び降りんばかりの勢いで木から降りた。
「あ、本当に降りて来た。そんなに慌てなくても、さっきの、冗談だったのに。」
高橋の背中は又凍り付いた。ジャイの笑顔が、虫けらを嬲り殺す、無邪気に残酷な子供の笑顔に見えた。
696蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/07(日) 21:49:32
「ジャイー、その冗談今の高橋さんには重過ぎるよぉー。」
ゆうぞうが言った。
「冗談って?ああ、別に降りてこなかったらその侭ほったらかしにしたって意味だけど。」
高橋はほっとして、脱力しそうになると同時に、ジャイに対して怒りを感じた。
多分、悪意とか無くてこれが素なんだろうけど...人の気持ちを弄びやがって!
「高橋さん、その頬の傷、ジャイにやられたの?」
「え?」
スギに聞かれる迄、緊張のあまり気が付かなかったのだが、確かに右頬が少しひりひりしている。
右頬の赤い一本の線は、薄っすらと血が滲んでいた。思わず押さえた手に、少し血が着いた。弾が掠めた跡だ。
「え、ええ...多分。」
「ジャイー!」
「だって、これ位やらないと威嚇にならないし、これ位やっておけば戦意喪失するだろうと思って。」
「だからって、やりすぎだろ!」
スギはコントでツッコむ時の様に、ジャイの頭を叩いた。
「戦意なんて...俺も今野も最初から無いです。」
高橋は控えめに言った。
「そう言えば相方の今野君は?」
ゆうぞうが聞いた。
躊躇したが、こうなったら、話すしかないだろう。
「実は...」
高橋はゲーム開始からここに至る迄の事を話した。但し、ゲームをぶっ潰そうとしている事、でもやり方がわからなくて、仲間を探している事は伏せて。
「だから高橋さん、憔悴しきっていたんだ。」
誰が憔悴させたと思っているだよ!と、そう言ったジャイに対して思った。確かにその前から憔悴しきってはいたけど。
インスタント・ジョンソンの三人はその茂みを掻き分け、今野を見た。
「あー、まだよく眠ってるね。当分起きそうに無いね。」
スギが言った。
「王子様のキスで目を覚ますんじゃない?」
ジャイが、何時もの笑顔で言った。
「誰が王子様やるんだよ。」
「そりゃあやっぱり、相方だし、この面子の中でルックス的にも...」
三人の視線が一斉に高橋に向かった。
「...そんな事する位なら、今野がこの侭一生目覚めなくてもいいです。」
697蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/07(日) 21:50:58
「取り敢えず、高橋さんその気は無さそうだし、休ませてあげない?」
ゆうぞうが言った。
「この辺に、俺達がアジトにしている家があるんだけど、一緒に来る?少しの間は、逆にこの周辺にいた方が安全だと思うし。」
スギが言った。
確かにそうかも知れない。銃声、首輪の炸裂音、血の臭い、そして何よりも二つの遺体。大抵の奴なら、怖れをなすだろう。
出会った時よりは、高橋の警戒心も薄らいでいた。でも、
何故さっき人を殺したばかりなのに、平然としているんだ?特にジャイさん。確かに、あの状況じゃ、殺してなきゃ、間違いなく殺されていただろうけど。
慣れるとこんなものなのか?と言うより、こんな事に慣れてしまったのか?
それが引っかかっていた。
「一寸待って。」
と、ジャイが言った。
「まだお互いに、そんなに信頼関係は無い。正直俺も高橋さんを100%信頼しているわけじゃないし、高橋さんはもっと俺達...つうか俺を信頼していないと思う。だから、お互いに人質を取り合うってのは?」
「え?」
高橋にとって、意外な言葉だった。
「つまり、俺たちの誰がか今野君を背負う。で、俺が高橋さんの人質になる。その方が逆に高橋さんも休めるでしょ。」
ジャイは拳銃の取っ手を高橋に向けた。
「高橋さん、疲れてるとこ悪いけど、これ位持てるよね。」
「...はい。」
高橋は震える手で拳銃を受け取った。
「それから、」
ジャイはジーンズのポケットから、磁石から奪った拳銃を出し、安全弁を外すと、高橋が隠れていた隣の木の枝を撃った。
手に馴染まない方の拳銃とは言え、細い木の枝を撃ち落す位なら出来た。木の枝は、その細さの割に大きな音を立てて茂みの中に落ちた。
「ジャイ、今のは?」
スギが聞いた。
「証明。これでこっちの拳銃も、変な細工とかしていないって、わかるっしょ。」
と、ジャイはその拳銃も高橋に渡した。
「これで俺、丸腰だから。」
698蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/07(日) 21:51:58
「それはいいけどさ、ジャイ。」
と、スギが言った。
「さりげなく俺達に今野さんを背負う役、押し付けてねぇか?」
「その代わり、スコップとつるはし、両方共俺が持つよ。いらない武器だけど、誰かに使われると厄介だしね。」
ふと、高橋が急に気付いた。
「ジャイさん、その足...」
どうしたんですか?と聞きかけた時、スギとゆうぞうの顔が引きつった。ジャイ本人は涼しい顔をしていたが。
深く詮索しない方がいい、高橋はそう思って、
「大丈夫ですか?」
「あーこれ、ただのかすり傷。」
本当に普通のかすり傷でジーンズがこんなに裂ける訳は無いし、こんなに血の染みが出る訳無い。
「あのー、スコップかつるはし、どっちか俺持ちましょうか?」
「大丈夫、もう治ったから。」
磁石は、俺達より高橋さんの方がよく知っているだろう。エンタと言うより、オンバトで。
その磁石を、殺らなきゃ殺られてた状況とは言え、手にかけたなんて。
言えない。
三人ともそれは思ったが...それを一番強く思ったのはジャイだった。

今野を背負ったスギ、出刃包丁とスギのナップザックを持ったゆうぞう、スコップとつるはしを持ったジャイと拳銃を二つ持った高橋の順で歩いた。
ジャイはスコップとつるはしが重いのか、天然とは言え人質としての自覚が在るのか、疲れきった高橋と同じ歩調で、少し遅れて歩いた。
お互いが人質を取り合ったんじゃない。ある意味、お互いがお互いの人質になったんだ。
高橋はそう思った。
でもそうじゃないと、そしてこんな血生臭い所でないと、安心出来ない状況なんて、皮肉だな。
ジャイは小声で、
「さっきはありがとちゃん。」
ゆうぞうの持ちギャグを言った。
聞こえていたんだ、俺の声。尤も、あのタイミングを考えると、聞こえて無くても助かってただろうが。
高橋はどう答えたらいいかわからなかった。
699蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/07(日) 22:01:58
プラン9を書く人は大変だろうなと思ってましたが...人数だけなら今自分がその状況ですね。
尤も、今野さんは眠りっぱなしで喋らないのでまだ楽ですが。
何とか、上手くまとめられるといいのですが。頑張ります。
700名無しさん:2005/08/08(月) 01:03:38
乙です!
危ない綱渡りをいくつもやってて面白いです!
頑張ってください!
701音 ◆yOLxh0F1.c :2005/08/08(月) 23:08:13
「柴田くん……」
 増井の死体の傍らで、塚地は柴田の突然の登場に驚いていた。鈴木の方は、吹き矢の筒を下ろしかけた中途半端な姿勢で、ぼんやりと柴田を眺めている。
 二人は、逃げ出そうとはしなかった。そうしても無駄だとわかっているからだろうか。
 しかし柴田は、引き金を引けない。
 ゲームに乗った裁くべき相手なのに、仲間を殺した憎むべき相手なのに――
「柴田!」
 背後から名前を呼ばれた。振り向く間もなく、声の主――山崎は、柴田とドランクドラゴンの間に割り込む。
 柴田の銃口の前に。
「やめろ、柴田……」
 山崎の言葉は、悲痛な響きを持っていた。
「どけよ山崎!!」
 それに答える、絶叫に近い柴田の声。
「こいつらは……ドランクドラゴンは、増井さんを殺したんだ!」
「……わかってる」
 小さく呟いて、山崎は俯く。
「だったらなんで止めるんだよ! 俺たちは、正義のために戦うって……ゲームに乗った奴を倒すって、決めたじゃねえか!」
「正義なんてないんだ柴田!!」
 山崎は柴田の顔を正面から見据えた。胸の奥から、鈍い痛みが広がってくる。
 これから、相方を支えていたものを壊さなくてはならない。自らの手によって。
「俺たちも同じだ……自分たちの決めたルールで、ゲームに乗っていただけなんだ」
702音 ◆yOLxh0F1.c :2005/08/08(月) 23:11:35
 柴田は一瞬呼吸を忘れた。次に溢れた言葉は、呻きのような響きを持っていた。
「なんで……だってお前……」
「そうしなきゃ、どこかで戦う事に折り合いつけなきゃ、生き延びる事なんて出来ないんだ」
 このゲームに参加した人間は、誰だってそうだ。ヤシコバ月子も、ダーリンハニーも、きくりんも――それからきっと、ドランクドラゴンも。
 生き残るために、殺人を容認した。
“ゲームに乗った奴”という条件が付いた所で、自分たちも同じだという事に、山崎は初めから気付いていた。気付いていながら、柴田には伝えなかった。
 それで良かったのだ。相手が知らない芸人なら。
 しかし今は違う。柴田が銃を向けた相手は事務所の後輩だ。彼らを殺してしまったら――そしてその理由が間違った正義のためだと知ってしまったら、今度こそ柴田の精神は潰れてしまうだろう。
 だから山崎は、自らの言葉を否定した。取り返しのつかない事態になる前に。
「そんな……俺は……」
 きくりんを殺した。ドランクドラゴンを殺そうとした。
 正しいと思ってそうしたのだ。
 右手からサブマシンガンがすり抜け、地面へ落下していく。自分の意識も、どこか暗い場所へ引き込まれていくように感じた。
 山崎は柴田の肩に、そっと手を置く。
「いいんだ、柴田。俺たちが誰かを助けるために戦ってたのは事実なんだからさ。……だから今度は、ドランクの二人を助けよう」
 山崎はちらりと後ろを振り向いた。二人は動いていない。山崎は完全に背中を向けていたのに、逃げてすらいなかった。
「あの二人を、殺したくなんかないだろ?」
 柴田は頷いた。今更言われる間でもない。あの時引き金を引けなかった事が、全てを物語っている。
「……柴田くん。それから、山崎くんも」
 その時、今まで沈黙を保っていた塚地が口を開いた。
「殺し合いは、したくないんやな?」
 柴田と山崎は同時に首を縦に振る。
「だったら、聞いて欲しい話がある。そんで、もし良かったら、俺たちに協力して欲しい。二人の力が必要なんや」
 少し怪訝そうな表情のアンタッチャブルに、塚地は一呼吸間を置いて、言った。
「もしかしたら――殺し合いなしで、このゲームを終わらす事が出来るかもしれん」
703音 ◆yOLxh0F1.c :2005/08/08(月) 23:14:05
「え? どういうこと?」
 何故か相方の鈴木が訊き返した。
 ――そういや、こいつにはこっちの計画は話しとらんかったな……。
「ああ、ついでにお前にも説明するわ」
「ついでって……」
 不満そうな表情の鈴木を無視し、塚地は話し始める。
「……覚えとるか? ゲームが始まった時に、プロデューサーが言うとった言葉」
「プロデューサー?」
「そう。この芸人バトルロワイアルには、普通のバトロワとは決定的に違う点があるんや」
 普通のバトルロワイアル――中学生に殺し合いをさせるゲームの存在は、この国の人間ならば誰もが知っている。しかしそれは、ゲームの参加者とその家族以外にとっては、人生に全く関わりのないものだった。
 ただ、ゲームの開催と、結果だけが告げられる。
 ――そうだ、このバトルロワイアルと普通のバトルロワイアルの違いとは、つまり。
「視聴率――?」
 山崎の答えに、塚地は頷く。
「そう。このゲームの様子は多分、電波に乗って全国に流れとる」
 あのプロデューサーが“視聴率”と言うたんや、間違いない――塚地は確信のこもった口調で言った。
「ちょっと待ってよ」
 そこで口を挟んだのは鈴木だ。
「視聴率の話は前にも聞いたけど、それとゲームを終わらすのとなんの関係があるんだよ」
704音 ◆yOLxh0F1.c :2005/08/08(月) 23:17:27
「まあ待て、順番に説明するから……要するに、プロデューサーは“視聴率を取るために”このゲームを開催した。それはええな?」
 塚地を囲んだ3人が頷く。
「だったら、殺し合い以外のもの――例えば、俺たちのネタが、バトルロワイアルの視聴率を上回ったらどうや?」
「……殺し合いさせる必要がなくなる?」
「せや。むしろ、本来の芸で高視聴率が取れるんなら、死なすのは惜しい――そうなるんちゃうか?」
 塚地を除く3人は押し黙った。
 塚地の言葉は、理屈的には正しい。視聴率絶対主義のあのプロデューサーなら、ゲームルールを捻じ曲げる事だって厭わないだろう。
 しかしこの考えも、所詮は机上の空論に過ぎない。何故なら――
「……わかっとる」
 沈黙の意味を察した塚地が、再び口を開いた。
「プロデューサーかてそこまでアホやない。本当にネタそのもので視聴率取れるんなら、初めから殺し合いなんてさせへんやろな」
 思わず沈んだ声音を元に戻すように、塚地は声を張り上げた。
「だけど、やってみる価値はあると思うんや。何もしなくたって、最後の一組まで殺し合うってルールは変わらん。だったら、少しでも違う可能性に賭けるべきやないか?」
「……ネタをやるって事? ここで?」
「そのネタで……バトロワの視聴率を超える?」
「ああ」
 ニヤリ、と、塚地は顔に似合わない笑みを浮かべて言った。
「いわば――エンタの神様・イン・バトルロワイアルや」
 柴田と山崎は視線を交わす。
 何も言わなくても、互いの考えはわかっていた。久々の笑顔が、その答えだった。
「その話、乗った!」
705名無しさん:2005/08/08(月) 23:26:36
>>701-704
塚地の芸人魂が、良い。
706音 ◆yOLxh0F1.c :2005/08/08(月) 23:27:24
今回はここまで。
実は芸人同士の関係に詳しくないんで、互いの呼び方とかおかしかったらご指摘ください。
707名無しさん:2005/08/08(月) 23:45:38
音さん乙です。続き楽しみにしてます。
個人的にアメリカザリガニ、スピードワゴンのその後が気になる。
708名無しさん:2005/08/09(火) 00:37:15
乙です!
あれだけの恐怖の中、良くこんなことが思いついたなと思いました。
頑張ってほしいです。
709名無しさん:2005/08/09(火) 15:19:16
うるさいこと言わしてもらうなら人力舎の人はチャブの柴田を『柴田さん』『柴っちょ』って呼ばれてるそうです。
でも音さん(?)の呼び方でいいと思います。
ていうかそのままの呼び方でお願いします!!!
710回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/08/09(火) 19:54:26
吉田サイドです。レギュラーが呼びかけの放送をする前の話です。



(………あー…何時だろ、今…)
蒸し暑い釜戸の中に置き去りにされてからどのくらい経ったのだろう。
真っ暗で自分の手すら見えない狭い空間で、吉田は身体を折り曲げて横になっていた。
身体からだらだらと尋常でないくらいの汗が背中を伝ってくるのが分かる。目に汗が入り、ぐいっと乾いた泥の付いた腕で額を擦ると、明らかに汗とは違った、ぬるりとした嫌な感触がした。
少し鼻にくる、血液独特の鉄の匂い。それは汗と同じように、いやそれ以上に、じわりと溢れては顔をなぞるようにゆっくりと頬を滑っていく。
顎の所でいったん止まり、小さな赤い玉となってぴちゃりと地面に落ちた。
(やばっ……血が止まんねぇ…)
傷は想像以上に深いらしく、一向に固まる気配はない。最初はそうでも無かった痛みも、徐々に酷くなり、今にも気絶してしまいそうだった。

(……………)
ほとんど密閉状態だからだろうか、息が苦しい。耳の中で変な音がする。
もう何も考えられなくなり、何もかも諦め、瞼が閉じられようとした。


「ここ、ちょっと広なってるなあ、西川君。」
「せやな。色んなセットみたいなんが置いてあって、なんかまとまり無い島やな。」
二人組の声がうっすらと耳に入った。閉じかけられていた目が薄く開かれる。
あの特徴ある一生懸命な声はレギュラーの二人だろう。某番組で共演している事で吉田はすぐに察知した。
あまり話をしたりはしないが、今のびくついた話し声からしてあの二人がゲームに乗っているとは思わなかった。
吉田は力の入らなくなった身体を何とか起こし、手探りで扉を探し当て、泥の付いた手の平でぱんぱんと叩いた。
711回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/08/09(火) 19:56:16
「……だ…れか……」

蚊の鳴くような枯れた細い声だった。体制を変えた事で額から一気にどろりと滴る血が汗と共に地面に吸い込まれる。
手放しそうになる意識を必死で手繰り寄せる。
「……っ」
二度目はもはや声にはならなかった。異常に息が上がり、ついに扉に寄りかかるようにして目をつむってしまい、腕はだらりと地面に落ちた。


「…西川君、西川君。聞こえた?」
「うん、聞こえた。あっちから変な声がしたな。」
「もしかして、死んだ芸人さんのお化け…?」
「お…脅かさんといてや!とにかく、行ってみる?」
奇跡的に吉田の声は届いていた。
レギュラーの二人が、退け腰になりながらも恐る恐るその釜戸に近づいていく。

「あれ?鍵かかってんで?」
「ホンマや。でもこの中から確かに聞こえたよなあ。」
がちゃがちゃと鍵を引っ張ってみるが、全く取れるようすは無い。
「あ、松本君。あれあれ!さっき茂みに落ちてた鞄!あん中に小っちゃい斧入っとったやろ?あれ使おうや。」
落ちていた鞄とは、皮肉にも先ほど吉田が阿部を追いかけていったときに、うっかり置き去りにしてしまった鞄だった。
その中から斧を取り出し、西川が大きく振りかぶる。大きく息を吸い、狙いを鍵のつなぎ目に合わせて、勢いよく振り下ろした。

ガキンッ!という金属の軽い音を立て、衝撃でいくつにも分解された破片があちこちに飛び散った。
「凄い凄い!やったなー西川君!」
松本が喜んで駆け寄ってくる。あとは扉を開けるのみだが、サイズが微妙にずれているのを無理に閉めたのか、隙間無くピッタリとはまっていて西川が少し力を入れただけではびくともしない。
それを見た松本が一緒に扉の取っ手に手をかける。

712回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/08/09(火) 19:57:30
「じゃ、開けるで…。」
「おう。」
「「せえ〜〜〜〜のっ」」
顔を見合わせて頷き、一気に後方に体重を掛ける。
ぎしっ、と軋んだ音を立てたかと思うと、扉が一気に開き、二人は勢い余って背中から後ろにひっくり返った。
それと同時に扉に寄りかかっていた吉田が倒れ込んだ。

「うわ痛ったあ!!腰打った!腰ぃ!」
「え…あ、ちょっと松本君!あれ見て!」
尻餅をついてやかましくぎゃあぎゃあ叫ぶ松本の肩を、西川が叩く。
「ポイズンの吉田君やない?」
それにやっと気付いた松本も神妙な顔で「うんうん」と頷く。四つん這いになってそろそろと倒れたままの吉田に近づく。
見ると、身体から異常な程の汗を流し、頭が血まみれになっているのが分かった。死んでいるのかと思い、遠慮がちに身体を揺すってみると、吉田が苦しそうに息を吐き出した。
目は堅く閉じられ、眉間にしわが寄っている。

「脱水症状起こしてんのとちゃう?多分ずっとこん中に閉じこめられてたんやで。」
「…誰にやと思う…?」
「そりゃあ…」
辺りを見渡す。普通ならいるべきはずの人物がそこにはいなかった。頭の中に一人の顔が思い浮かべられる。
「あ…阿部君…?もしかして…」
「相方にこんな事する訳無いやろ、いくら何でも…。」
「と、とにかく、吉田君早よ助けてやらな!西川君、水は!?」
松本は頭を振って、話を切り返した。今は、誰がやったかよりも、目の前の吉田を助ける事が先決だ。
713回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/08/09(火) 19:58:41
「水、水…どうしよ、もう空やん!」
西川が取り出した小さなペットボトルには、もうほとんど水は残っていなく、とても足りているとは言えるものでは無かった。
「とりあえず、涼しくて水のある所連れていかな。出来れば建物がええな、血いっぱい出てるし。」
「了〜解っ。もうちょっと我慢してな、吉田君!」
吉田の頭に自分のタオルを押し当ててやる。白いタオルはすぐに血を吸って赤く染まったが、一応出血は止まり、二人は安心した。

途端、どこか離れた所で言い争うような声が聞こえ、それが一瞬止まり静になったかと思うと、

―――ずどんっ、と重い銃声がした。二人の心臓が跳ねる。
「ひっ…!」
「なあ、早よ逃げようや…こっち来られたら嫌やもん…」
西川が吉田を背負い、松本が荷物を持つ形で、三人はその場から逃げるように立ち去った。


「………ばいばい、阿部君……」
西川の背中でぽつりとそう呟くと、再び気を失った。
「ん…?何か言った?吉田君。」


―――お前なんか、この薄気味悪い森のなかで、ずっと俺を捜し回ってろ。
阿部が戻ってくる、わずか10分前の話だった。
714回 ◆Tf0aJzcYy. :2005/08/09(火) 20:00:30
ここまで。ちなみに、二人が聞いた音は阿部が陣さんを撃った音です。
715名無しさん:2005/08/09(火) 22:53:17
乙です!書き手さんのレベルもさることながら、
読み手の皆さんも落ち着いていて雰囲気のいいスレですよね

落ちそうなんで一旦age
716名無しさん:2005/08/10(水) 00:15:45
蛙さん、いつも楽しく見てます。
ジャイがいいね。
717名無しさん:2005/08/10(水) 07:27:31
まとめサイトとかないんですか?
718名無しさん:2005/08/10(水) 08:29:29
>>717
もう一度スレ全部見直して来い。
探しても無いのに聞くんじゃねぇ。
719名無しさん:2005/08/10(水) 09:58:54
現在生き残ってる人&登場してない人等の情報希望
720霧 ◆ulAwgplWcU :2005/08/10(水) 21:24:43
「アカンなー…完璧騙されとるやないか。」「助けた方がエエんとちゃう?平井さん。」

木の上で身を隠し、アメリカザリガニの二人は今まさに波田陽区とアンジャッシュのやりとりを見て居た。

いや…正確には、波田が長井達の身体を切り刻む一部始終から、この二人は取り乱すわけでも無く波田を観察して居た。

たくさんの死体を見た。
自分達だって、不可抗力だとはいえ人を殺めた。

その事が幸を為したのか、二人は狂気に支配されるでも無くここまで生き続ける事が出来た。

(渡部さんなら…気付くと思うてんけどな…)
波田の笑顔に隠された狂気を。

「とりあえず、下りて接触した方が…」
「いやそれはアカン。児嶋さんは波田の事えらい信用しとるみたいやし、混乱に紛れて逃げられるかもしれん。」
「じゃあ…どうすれば…」
721霧 ◆ulAwgplWcU :2005/08/10(水) 21:37:56
このままだとアンジャッシュの二人はいつか必ず波田に殺されてしまうだろう。

その前になんとかしなければ…。

「とりあえず追うか。何かエエ考えが浮かぶかもしれんしな。」

充分に距離をとり、二人は波田達を監視し続けた。


どれぐらい歩いただろうか、前を歩く三人は一向にペースを落とすわけでも無くひたすら歩みを進めている。

(なんや…おかしないか?)

平井がその違和感に気がついたのは、30分程歩いた時だった。
そして後ろにいる柳原の方を向き、小声で話しかけた。

「ヤナ、なんか違和感感じんか?」
「え?…そういえば…渡部さん、怪我してるみたいなんに一向に休まへんなー…」

(違う…そんな事じゃ…)

平井は少し目を細め、波田達の方へ向き直った。

その瞬間(とき)
平井は自分の目を疑った。
722霧 ◆ulAwgplWcU :2005/08/10(水) 21:48:11
(居ない!?)

確かに今迄そこに居た筈の三人が姿を消していた。

(まさかっ…!!)

「逃げろ、ヤナ!!」
「え…?なっ、…!!」

後ろを振り向いた時にはもう遅く、波田の振り上げた鎌が、柳原の腕を血で染め上げていた。

「ぐぁっ!!……波田…!」
「なんで僕達の後を付けてたんですかー?」

柳原に気を取られている隙に、平井の前には児嶋のナイフが突き付けられていた。

「児嶋さん…」
「…」

児嶋は何も言わずに、ただ目を逸らした。

波田は尚も話続ける。

「気付いてたんですよ?ずっと、僕達の後を付けてましたよね?」

波田は鎌に付いた血を振り払いながら平井を睨んだ。

723霧 ◆ulAwgplWcU :2005/08/10(水) 21:48:58
すみません、中途半端ですが今日はここまでです。

アメリカザリガニ久々投下です。
724名無しさん:2005/08/10(水) 21:51:56
>>723
リアルタイムだったのでかなり興奮してました。
アメザリどうなるんでしょう…。
乙です!
725名無しさん:2005/08/10(水) 23:11:08
乙です!

回さん
吉田結構危なかったですね・・・脱水症状はきついですよ。
なるべく憎く思わないでほしいですが、あんな目に合わされたのでなんともいえません。

霧さん
うわ〜とんでもない展開ですね。
騙し騙されが醍醐味ですがこれは・・・
アメザリの尾行がふたりを思っての行動だったので余計に・・・

お二人とも続き、待ってます。
726霧 ◆ulAwgplWcU :2005/08/11(木) 12:03:20
「僕達を殺すつもりだったんでしょ?」
「違っ…、俺達は」
「言い訳しても無駄ですって」

ジリ…っと柳原から目を離し詰め寄って来る波田。
三人の視線が一気に平井に突き刺さる。
柳原は当分動けないと思っているのだろう、誰も気にかけるでも無かった。

だが、平井は気がついていた。
先程から柳原がチラチラ視線を送って来る事に。

(…なんやエエ作戦でもあるんやろか…)

柳原の考えている事はわからないが、時間を稼いだ方が良いだろうと平井は声を発した。
727霧 ◆ulAwgplWcU :2005/08/11(木) 12:21:00

「…渡部さん…気がつきませんか?」
「…何を?」
「違和感に、ですよ」
「……」

(この人は何か感づいとる。ただ、俺達と同じで実行できへんだけや)

「渡部さん…!!」
「黙ってください」

再び波田に睨まれたが、平井は続けた。

「波田は渡部さん達を殺すつもりです!!」
「……!!」
「渡部さん!聞いちゃ駄目です!」

渡部の目が平井を映す。
隣りにはとまどい顔の児嶋。

その様子に明らかに波田は焦っている。

(今や、ヤナ!!)

波田が鎌を振り上げるのと柳原が素早く立ち上がるのはほぼ同時だった。
728霧 ◆ulAwgplWcU :2005/08/11(木) 12:25:46
今日はここまでです。

いつも短くてごめんなさい。
729名無しさん:2005/08/12(金) 01:38:48
乙です!
短いのなんか気にしないでください!
いよいよ戦闘開始ですかね?ヤナさんの作戦が気になります。
児島・・・しっかりしろよ(笑)
730名無しさん:2005/08/13(土) 01:09:56
しかしそんな若手芸人の凄まじい殺しあいをしていたその瞬間!
ドカーン!
島が一瞬で吹き飛んだ

そうこれは全てスタッフに作られた策略だったのだ

笑うスタッフたち

そこに現れたのが…そう石橋貴明であった
石橋「ジャマな芸人は全て排除出来たか?」
スタッフ「はい全て計算通りであります」
石橋「次に消すヤツは誰だ?」
マネージャー「……」
石橋「誰だ?」
マネージャー「木梨さんです…」
石橋「!」
しばらく沈黙が続く

石橋「木梨は…殺さなきゃイケナイか?」
マネージャー「あの人はこの石橋再生プロジェクトを知りすぎている一番先に消さなくては」
マネージャーに掴みかかる石橋

石橋「なんで俺がアイツを殺さなきゃいけないんだ!」


続く

来週から「エンタバトルロワイヤル」改め
「天才芸人TNバトルロワイヤル」を放送いたします
勿論UNやDTもストーリ後半に登場!
皆さんご期待下さい
731名無しさん:2005/08/13(土) 01:16:27
若手芸人オタが2ちゃんに迷惑をかけて申し訳ございません
732名無しさん:2005/08/13(土) 03:04:18
気持悪いなここ
733名無しさん:2005/08/13(土) 03:05:34
気持悪いなここ
ここのやつみんな氏ねばいいのに
734名無しさん:2005/08/13(土) 05:24:07
アメザリとアンジャッシュの続きが気になる…!
波田も好きだけどアメザリとアンジャには死なないでほしいよ
2組とも逃げて!
735名無しさん:2005/08/13(土) 10:26:25
若手芸人殺して盛り上がっているって異常では?
736名無しさん:2005/08/13(土) 11:09:47
そう?今更何いってんの。
バトロワスレなんて此処以外にもいっぱいあるじゃん。
737名無しさん:2005/08/13(土) 11:39:28
【エン神で、ネタが面白く安定して楽しい芸人】
長井秀和、だいたひかる、アンジャッシュ。
(個人的には、アンガールズ、インパルス、ネゴシックスも含めたいと思う)

【多分、一発屋。でも、一発屋にすらなれない奴らより、全然マシ】
波田陽区、魔邪。(居て悪いわけじゃない。全盛期は面白いし。ヒキ際を考えてくれれば…)

【週間少年ジャンプでいうと『王様はロバ』的の存在】
はなわ。(まさに、このポストに付くのはコイツしかいない! って感じ)

【ネタは面白い時もある。でも名前チェックしたいほどじゃない。】
その他。

【つまらん、もう出演しないで欲しい】
ドクターハロー。
738眠 ◆SparrowTBE :2005/08/13(土) 13:55:21
「なあ、あそこに建物がある。」
やついの声に思考を中断され、顔を上げた。確かに木々の向こうに古びた建物が見える。
もしかしたら誰かいるのかもしれない、と言うとやついは口元を上げた。
「行ってみねえ?」
顔は笑っていたが、その声に感情は感じられなかった。

あの建物にいる『誰か』、それはすなわち『敵』なのだ。
相手はおそらく侵入者を狙ってくるだろう。そうなったら殺すか殺されるかのどっちかだ。
それでも、与えられた選択肢に今度は迷わなかった。
「行ってみるか。」
渇いた口からようやく絞り出せた声は冷め切っていて、自分でも驚いた。
が、やついはそんな俺の事を気にせずさっさと歩き出す。
その背中を追いながら、背負ったバックに手を掛けた。

支給されたやついの武器はハズレ。使いようのない造花の花束だった。
その一方で俺は、今だ自分の武器は確認していなかった。
―殺そうと思えば腕一本でも人間は殺せる。そんなおかしな考えが頭にあったからだ。

しかし、バックを受け取った時に当たりを引いたとは感じていた。
もちろん直感的なものであって根拠も何もなかったが、その考えはたった今確信に変わった。

鞄の中に入っていたのは小さな小瓶。
そのラベルには『青酸カリ』と書かれていた。
739眠 ◆SparrowTBE :2005/08/13(土) 13:58:20
おじゃましまーす、とやついの声が響き渡る。
中は思っているより薄暗く、自分達の他に人影は見えない。
心霊番組に出てくるような、廃墟。そんなイメージだった。
よくよく見回してみると、どうやらここは昔病院だったようだ。
「誰もいねえじゃん。」
独り言のように呟きながら、一歩足を進める。

その時、足元に何かが触れた。
ガシャンという大きな音が響く。
慌てて足を上げると、細い糸が張られていた。どうやらそれを踏みつけたらしい。
糸を辿ると鎖が結び付けられていて、糸を踏んだ時に落ちて音が鳴るようになっていたのだった。
「トラップ…。」
このささやかな仕掛けが、『敵』がいることを表していた。
しまった、と思った時にはもう遅かった。

「誰だ!?」

やついに状況を知らせる間も無く、勇ましい声が響く。
頭では逃げようと思っていても、身体は動かない。
暗がりにいた人物が、段々と歩み寄ってくる。その姿勢から、どうやら拳銃を持ってるらしい。
拳銃と丸腰の勝負だったら、どちらがゲームオーバーになるのは明らかだ。

しかし段々とはっきりしてきた背格好を見て、やはり俺はついている、と確信した。
「やっつん…だっつんも…!?」
驚いた声を上げたその男は、エレキコミックの親友であるスピードワゴンの井戸田だった。
740眠 ◆SparrowTBE :2005/08/13(土) 14:00:22
「おお潤ちゃん、まだ生き残ってたか。」
やついの声に井戸田は笑顔を浮かべ、銃を下ろした。
まだ多少は警戒しているのだろうが、どうやら殺しはしないらしい。
「やっつん達も無事でよかった。」
「オザは?」
ふと、彼が一人っきりという事実に気付く。
俺の問いに井戸田の表情がさっと翳ったのがはっきりと分かった。
「潤が生きてるって事は、オザもいるんだろ?」
「いや…いるんだけど…。」
井戸田は廊下の奥の方に目線を向けた。
その瞳に悲しみの感情が含まれているのが見えて、少し動揺してしまっている自分がいた。


廊下の真ん中に座り込んで、井戸田は全てを話してくれた。
小沢は今部屋に閉じこもっている事。
精神的にかなりショックを受けていて、ずっと体調が優れない事。
…そして、小沢がマイケルを殺したこと。
最後の話を聞いた時、俺は眉を顰めたがやついは表情を崩さなかった。

「なんで?マイケル殺したからって別に気にする事ないじゃん。」

この言葉には、流石に俺も井戸田も驚いた。
後輩の命が失われた事に、やついは悲しんだ様子はない。
「だって、正当防衛だろ?しょーがないじゃん。」
「しょうがないって…」
井戸田は言葉を詰まらせる。が、突然思いつめた表情になった。
そしてしばらく俯いて何か考えた後、口を開いた。


「こんな時にこんな事頼むべきじゃないかもしれねえけど…一緒に戦ってくれないか?」
741眠 ◆SparrowTBE :2005/08/13(土) 14:01:15
久し振りの投下、エレコミ&スピワゴ編です。
そういえば最初の話で井戸田の武器がアーミーナイフになってましたが拳銃の間違いです…申し訳ないです。
742蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/13(土) 19:55:26
大丈夫だろうと思ったが、念の為、何時もの様に、用心深くアジト代わりに家に入った。
やっぱり、誰かに入られた形跡は無かった。
四人は車座になって、タバコを吸った。
「あのさあ、高橋さん、人質からの忠告。」
ジャイが口を開いた。
「もし襲撃された時は、抵抗があると思うけど、頭を狙った方がいい。心臓に当てるのは、初心者には先ず無理。腹でもいいけど、そっちの方が当てやすいけど、防弾チョッキ着てたら意味無いから。」
嫌だ!人を殺すなんて...
でもさっき見た光景。そしてジャイさんがあの二人を射殺してなかったら俺達はどうなっていたか。
言えない、そんな事。
そんな高橋の心情を察したのか、
「まあ、いざって時だよ。殺さないに、越した事は無いしね。あ、後、これだけは絶対出来た方がいい。かなり高度なテクニックで、俺も出来ないんだけど。そっちの方の拳銃貸して。」
貸してと言っても、元々ジャイの拳銃なんだが。
ジャイは使い慣れた方の拳銃を受け取ると、カウボーイの様に人先指で引き金の部分をくるくると回そうとして、失敗し、落としかけた。
「高橋さん、これは練習しておいた方がいいよ。」
「...それが出来ると何か」
「これが出来ると...かっこいい。」
「それ意味無いじゃない。」
ゆうぞうがツッコんだ。
「じゃ、スギ、ゆうぞう、人質交代して。俺、この辺の様子、見に行って来る。」
「一人で行くのか?」
スギが聞いた。
「うん、大丈夫だよ、そう遠く迄は行かない。何かあったら銃声で知らせるから。そっちも何かあったら銃声で知らせて。その範囲内より遠くへは行かないから。」
「でも、」
「じゃ、行って来なよ。気を付けろよ。」
スギを遮る様に、ゆうぞうが言った。
「うん。それに、俺がいない方が、高橋さんも休まるっしょ。」
そう言って、ジャイは出て行った。
743蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/13(土) 19:56:21
ジャイが出て行って間も無く、今野が起き上がった。
「今野、良かった、今起きてくれて。」
本当に、さっき、茂みの中で起きなくて良かった。
「あ、高橋...」
まだ睡眠薬が抜けきっていないのか、トロンとした眼をしていた。
「俺、さっき、怖い夢を見たんだ。何でか知らないけど、皆で殺し合いをしなきゃいけなくなって。」
空ろな、ぼんやりとした声で言った。
「今野、それは夢じゃなくて、現実だ。」
「何で、インジョンさん達がいるの?」
はっきりと目覚め切って無くて朦朧としている所為か、高橋の言葉もよく飲み込めて無い様だった。
「俺達、席外すよ。」
ゆうぞうが言った。
「え...でも。」
と高橋が言った。
「俺達がこれ迄の状況話すより、高橋さんが今野さんに話した方がいいと思う。」
「ああ、そうだな、俺達も俺達で作戦会議するから、一旦外に出るよ。話が済んだら、呼んで。」
俺達の前じゃ、言い難い事もあるだろうしな、と、スギは思った。
ジャイが人を殺した事とか。
二人は外に出た。

高橋がこれ迄の事を話す内に、今野の意識もはっきりしてきた様だ。
ただ、高橋は、多分自分達と出会う迄に、既に何人かジャイが人を殺している事は伏せた。
「じゃあ、ジャイさんが俺達を助けてくれたって事?」
「ある意味そうかもしれないけど。」
「状況が状況だから仕方無かったんだしさ、信用してもいいんじゃない?」
「俺も、そう思うけど...取り敢えずまだ、ゲームをぶっ潰すことは伏せとこう。」
「...わかったよ。」
744蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/13(土) 19:57:52
外に出たスギとゆうぞうは、別に作戦会議何かしちゃいなかった。
「ジャイ多分、この周辺の様子見に行ったんじゃなくて、高橋さんがいた木に行ったな。」
スギが行った。
「何で。」
「高橋さんと会った時、登りたそうにちらちら見てたから。あと、何で、あの木の枝を打ち落としたのかな。」
「証拠じゃないの?」
「あの枝の太さの割には、落ちた時大きな音がしたからさ。」
「相変わらずよく見てるな。」
「それからさ...」
「ん?」
「否、何でもない。」
あの悪夢を見てから、スギには気にかかっている事があった。
が、それを言ったら、ジャイが今迄自分達を守る為にやってきた事が何だったのか、と言う事になる。
それを思うと、ゆうぞうにも言えなかった。
「なあ。」
ゆうぞうが言った。
「俺達の方だけでも武装解除してもいいんじゃない?」
「ああ、そうだな。ジャイは真っ先に武装解除してると思うけど。」
745蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/13(土) 19:58:32
実際ジャイは、高橋が隠れていた木に行っていた。
なるべく、二つの遺体を見ない様にして。
そして茂みの中に入り、さっき打ち落とした木の枝の先に括り付けられていた物を見た。
たまたま真下にあった大きな石の上に落下し、二つに割れてもう機能しないそれ。
ジャイは今迄押さえていた怒りをぶつけるように、勢いよく、ありったけの力で踏み潰した。
執拗な位何度も、もう壊れているそれを更に、踏み壊した。
そしてもう、ただの機械の屑同然になったそれ...かつて小型のテレビカメラだった物をもう一度踏み躙ると唾を吐きかけた。
わかっている、これ一台位壊したって無駄な事位。この島のあちこちに、何台も取り付けられているだろう。それらを一々壊して周る訳にも行かない。
でもジャイには、それまで押さえ込んでいた感情を叩きつける物が必要だった。
それから、スギの思っていた通り、高橋が隠れていた木に、登った。
高橋さんが隠れていたのは、この辺だな。これより高い所迄、登れるかな。
結構丈夫な木で、天辺まで登る事が出来た。
森の中、その周辺に細い道があるのは知っているけど、ここ迄登ると、それも見えない。屋根迄緑色の、自分達のアジトは、葉に隠れる蛙の様に見えた。
島の全貌を見渡せる程背の高い木では無いけど、この周辺は森や茂みが多い事は、わかった。
一見平和に見える風景。でもそこで、こうして見ている今でも殺し合いが行われている。
それこそ唾を吐きかけたくなる風景。
でもその唾は俺自身にも降りかかるな。俺自身が、殺し合いに荷担しているんだから。
昔読んだマンガで、一度羊を殺した者はもう羊に戻れない云々、書いてあったっけ。
あの時は、まさか俺がそんな苦悩を負うとは思わなかったけど。
俺は狼になれる程の精神的に強くない。でも、羊には戻れない。
ふと上を見上げた。自分が溶けて行きそうな程、空は青かった。
羊を羊の侭にして置く事は出来るかもしれない。それ位なら...その為にも、足を引っ張らないようにしないとな。
もう、ジャイの心に迷いは無かった。
そろそろ、戻るか、二匹の、否、四匹の羊の元へ。
ジャイは木から降りて、アジトにしている家に戻った。
746名無しさん:2005/08/13(土) 21:27:28
>>730
ワロスww
747名無しさん:2005/08/14(日) 13:39:37
乙です

眠さん
小沢さんがそうなるのもわかります・・・
会えたのがお互い親友でよかったと思いました。
どっちに転ぶかは解りませんが・・・

蛙さん
カメラでしたか・・・ジャイさんも複雑な立場ですね・・・
スギさんはそんな細かいとこよく気づきましたね〜
インジョンは変な意味じゃなく頑張ってほしいです。
748名無しさん:2005/08/15(月) 04:10:05
クソスレだな
恥じさらしアゲ
749名無しさん:2005/08/16(火) 12:39:57
乙。書くペース早いなー。
がんがってください。
750ランド:2005/08/16(火) 15:26:45
初めましてのついでにage。
皆さん頑張ってください。
751名無しさん:2005/08/18(木) 02:59:16
続きが気になる…(*´Д`)
752名無しさん:2005/08/19(金) 11:16:56
早く続き書いてー
753名無しさん:2005/08/19(金) 11:17:49
せかすなsage
754蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/20(土) 20:18:12
どうして人を殺しちゃいけないの?
よく聞く、ありきたりなフレーズだ。
はなわは血の海の中に立っていた。
でももし、将来あいつに聞かれたら、俺は答えられるかな。
ちゃんと、あいつの眼を見て。
だけど俺は生き残らなきゃいけないんだ。最後迄生き延びて、家族の元へ帰る為に。

はなわに渡された武器は、長方形の箱だった。
但しそれは折り畳んだ時の状態だが。
はなわは乗り気ではなかった。
正確に言うと、襲撃された時はともかく、今乗るのは時期尚早と考えていた。
放送を聞いて、ある程度の人数になったらそいつらと戦えばいい。
それ迄は雑魚どもで殺し合いをしていればいいと。
ただ、当然だが最後の方迄残る奴はかなり手強い奴だろう。
そいつらと戦う為には、この武器の扱いに...人を殺す事に、慣れておいた方がいい。
はなわは、練習台を求めて歩き回った。

どれ位歩き回っただろう。
見たのは死体ばかり。生きている人間には出会わなかった。
ちっ、探している時程、人に会うもんじゃねえな。襲撃さえ、されやしねえ。少し休むか。
と思った矢先、格好の獲物を見つけた。
755蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/20(土) 20:19:27
休憩しようと、たまたま入った洞窟に、その獲物がいた。
ザ・プラン9は、五人という人数故、意見がまとまらず、身動きが取れなくなって、その洞窟の中に潜んでいたのだ。
ザ・プラン9か、用は一人を殺ればいいわけだな。
五人が身構える隙も無く、はなわは無言で箱を...折り畳み式ボックス型サブマシンガンを素早く展開させた。
「パンパンパンパンパン...」
血まみれの浅越ゴエ。ほんの数秒の出来事に、何があったのか飲み込めない侭四人の首輪が炸裂した。
ザ・プラン9死亡
【残り41組】

意外と、手に衝撃が無いな。はなわは思った。
後、結構飛距離が短い事も。
ほんの何秒もかからずに素早く展開する事はわかっていたが、引き金を引くのは初めてだった。
他のサブマシンガンを持った事が無いからわからないが、多分軽量な方なんだろう。だからこんなものかもしれない。
とは言え、普通の銃や、ナイフより有利なのは確かだ。
でも俺の一番の武器は...
はなわはジーンズのポケットから一枚の写真を出した。
幼い息子を抱きしめている妻の写真。
色々と没収されて、代わりにナップザック一つを渡されたが、これ迄没収されないでよかった。でも...
もう俺は、息子の眼をまともに見られないかもしれない。
それから、五つの死体を見た。
こいつらにだって、親はいるんだろうにな。
感傷に浸っている場合じゃないんだ。俺は、生きて帰らないと。
妻と、息子の為に。

はなわはザ・プラン9のナップザックを漁った。
碌な武器は無かった。辛うじて、バタフライナイフがある位だ。
後は食料位しか、役に立たないな。
少し休むか。
死体の傍で寝るのは正直、気持ちが悪い。
でも血の海を越して更に洞窟の奥に入った。
返って、ここの方が少し位寝ても安全だろう。それに、死体に慣れた方がいい。
血生臭いな、そう思いながら、はなわは眠りに落ちた。
756蛙 ◆GdURz0pujY :2005/08/20(土) 20:27:55
連投スマソ。
後かなり遅レスですが、乃さんのまとめサイト、679さんのお絵描きサイト、本当に乙です。
頭が下がる思いです。
757名無しさん:2005/08/22(月) 01:01:03
乙です!
そんなに生き残る気はしなかったですが(人数的に)ほんとにあっさりやられちゃいました。
家庭のある人はいろんな意味で強いですね・・・
758名無しさん:2005/08/24(水) 11:03:43
ageるぽ。
759名無しさん:2005/08/24(水) 11:07:41
クソスレハケーン(・ω・)
760名無しさん:2005/08/24(水) 22:02:37
せかすつもりはないけど、でも続き読みたい。
蛙以外の書き手さんで。
761名無しさん:2005/08/24(水) 22:24:38
>>760
そう無神経な言い方するな。
どの書き手さんもお前の為に書いてる
わけじゃないんだから

蛙さんも他の書き手さんも頑張ってください。
楽しみに待ってます
762名無しさん:2005/08/26(金) 15:20:49
保守
763名無しさん:2005/08/27(土) 02:45:06
おー廃れてる廃れてる。
そりゃ廃れるよこんなにペース遅いんじゃ。

どーせ書き手も書くのに飽きたんだろ?
書き手やめたいならこの本スレで公言してやめちまえ。
764名無しさん:2005/08/27(土) 04:58:41
エロい話書いてください
765名無しさん:2005/08/27(土) 05:06:11
おまんこおまんこ!
766名無しさん:2005/08/27(土) 07:42:55
>>763
夏休みの宿題に追われてるんじゃないの?
767名無しさん:2005/08/27(土) 08:44:35
>>763-766
佐木さんですかw
768名無しさん:2005/08/27(土) 08:50:52
>>767
バレたかw
769名無しさん:2005/08/27(土) 08:58:10
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
エンタ死ね
770乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/08/27(土) 17:06:01
夏休みがあまりにも忙しく、書く時間が中々とれませんでした。
すみません。近いうちに書こうと思います
771名無しさん:2005/08/27(土) 21:02:27
おぉ!がんがれ!
772名無しさん:2005/08/27(土) 21:07:32
>>770
インパ&次課長のその後、期待してます
773名無しさん:2005/08/28(日) 03:21:29
アメザリとアンジャのその後が気になります・・・
霧さんどうかがんばって下さい。
774音 ◆yOLxh0F1.c :2005/08/29(月) 00:09:51
 ドランクドラゴンとアンタッチャブルは、ひとまず街のある方へと向かう事にした。人数が増えると、やはり森の中では動きにくい。それより、何かの建物を拠点にして動いた方がいいというのは、全員一致の意見だった。
「でも、危ないかな、街の方は……」
 山崎は不安そうに呟く。
 街に現在どれだけの人間がいるかはわからないが、林の中よりずっと敵に発見されやすいのは確かだ。彼らの目的からすると、隠れてばかりいるわけにもいかないのだが、殺されてしまっては元も子もない。
「まあ、アンタッチャブルの二人は銃を持ってるわけやから、向こうものこのこ出てきたりせえへんと思うけどな」
「ああ、逆にね。威嚇ってわけっすね」
 塚地の言葉に、山崎は大袈裟に首を振って頷いた。
「ま、人が多ければ、それだけ仲間も見付かるって事で」
 事務所の後輩であるキングオブコメディの名は、まだ放送されていない。
 別の事務所でも、ドランクドラゴンと共にコント番組に出ているインパルスは、仲間になってくれる可能性が高いだろう。アンタッチャブルの共演者であるカンニング竹山は、残念ながら既に死んでしまったようだが。
「さてと……柴田、そろそろいいか?」
 山崎は後ろを振り向くようにして、少し大きな声で呼び掛けた。
「ああ、もう済んだよ」
茂みの向こうから返事があり、柴田が姿を見せる。その少し後ろには、迷彩服のせいで見えにくいが、鈴木が立っていた。
「鈴木、手伝ってくれてありがとな」
 首だけ振り返って柴田が礼を述べると、鈴木は小さく頭を振った。
「……俺がやった事だから」
 二人の足元には、ハロの遺体が、寄り添うように並べられていた。土を掘る道具がなく埋葬する事は出来ないが、せめてもの弔いだった。
「ごめんな……結局、こんな事しか出来なくて」
 全身を真っ赤に染めながら、それでもどこか微笑むような表情の竹内に向けて小さく呟き、柴田は相方たちの方へ向き直った。
「じゃ、行こう」
 柴田が歩き出したので、鈴木もそれに従うように一歩踏み出した。何かを踏んだ感触があったが、特に気に留めはしなかった。
775音 ◆yOLxh0F1.c :2005/08/29(月) 00:14:23
「はあっ、はあっ、はあっ……」
 走っているわけでもないのに、南野の息は上がりっぱなしだった。斧を持った右手も、ナイフを握った左手もひどく汗ばんでいたが、南野の精神にはそれを気にするだけの余裕はない。
 ――殺さなくては。
 そんな衝動的な思いが、今の彼を支配していた。だが、頭に血が昇っているのは、ついネガティブな方向に考えてしまう彼にとって都合が良かった。
 ――自分が戦ってなんになる?
 自分も、椿鬼奴も、誰にも注目などされていないのに――。
 こうして歩いている間は、今の自分を根本的に否定する、そんな考えに囚われずに済む。
 しかし、体力と気力の限界は近かった。考えてみれば、自分はゲームの開始から一度も休んでいないのではないだろうか(もちろん、記憶のない時についてはわからないが)。それでも自分の考えに押し潰されるのが恐くて、立ち止まる事が出来なかった。
「犯人……早く見つけ出さないと……」
 しかし、手掛かりは非常に少ない。
 殺された時間は午前6時の放送とその一つ前の放送の間なのだろうが、それは南野が記憶をなくし、椿とはぐれて彷徨っていた時間帯と重なっている。
 殺害方法もよくわからない。傷痕は、せいぜい針の先くらいのものしかなかったから、銃や刃物の類ではないだろう。だが、それ以外の方法で、どのようにして死に至らしめるというのだろう。
 少し冷静になりかけていた南野だが、次の瞬間その思考回路は完全に吹っ飛ばされる。目の前に、血塗れの死体が転がっていたのだ。
776音 ◆yOLxh0F1.c :2005/08/29(月) 00:15:15
 叫び出しそうになる口を必死で押さえる。死体なんていくらも転がってるのに、いちいち悲鳴を上げるわけにはいかない。
 落ち着いて見ると、その死体は明らかに不自然だった。相方らしい人物と並んで倒れているのだが、その並び方が、まるで寄り添っているようなのだ。
 おまけに、血塗れの方は腹部から出血している上に首輪が爆発しているのだが、横の相方は、無傷のようにしか見えない。状況からして、無傷の方が先に死んだはずなのに――
 南野はそこで気付いた。この男の死に方は――まるで、椿鬼奴のようではないか。
 ならば、と、南野はその死体を隈なく観察する。死体に触れるのは気持ち悪かったが、ここは我慢するしかなかった。
 そして彼は、死体の首の後ろにそれを見付ける。
 針で差したような、小さな傷痕。
 南野は素早く辺りを見回した。人影はない。しかしその代わり、重要な手掛かりが落ちていた。
 誰かに踏まれでもしたのか、地面に減り込みかけていたそれは、針によく似た吹き矢だった。
777名無しさん:2005/08/29(月) 01:02:53
乙です!
とうとう南野に見つかってしまいましたね・・・
彼がどう出るのかすごく気になります。
778名無しさん:2005/08/29(月) 17:22:05
>>774-776
乙。

最近投下が少なかった所為か、感想も少ないな。
779名無しさん:2005/08/30(火) 02:42:40
クソが!
780名無しさん:2005/08/30(火) 07:41:45
781蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/01(木) 11:31:00
ジャイがアジトに帰った時には、既に高橋は熟睡していた。
まあ、今野が起きているから大丈夫だろうと、拳銃を渡して。
「あ、ジャイさん。」
今野は楽屋等で何度か会った時と変わらない侭のジャイに、安心した様に少し笑った。
確かに高橋から、身を守る為とは言え、人を殺している事は聞いていた。でも実際にその現場を見たわけじゃないので、実感が湧かない。
お互いがお互いの人質なんて、そんな必要ないんじゃないの?
今野はそう思った瞬間、テーブルを見てある事に気が付いた。
武器が人数分以上に多い。
ジャイは寝ている時を除いて、安全弁をかけて慣れた拳銃を常にジーンズのポケットの中に入れていたが、スギとゆうぞうはテーブルの上に武器を置いていた。
壁に立て掛けてあるスコップとつるはしの事は聞いていたが、テーブルの上には、I字型の大きな磁石、出刃包丁、玩具のパチンコ、高橋が持っていた注射器の入っているプラスチックケース。
そして、ジャイが今持っている拳銃と、自分が渡された拳銃。
高橋の言った意味が、少しわかった気がした。
「あー、今野君、おはよう。高橋さん、よく寝てるね。」
その時、放送が流れた。四人は黙り込んで...ジャイは何時もの様に聞いているのかいないのかよくわからない表情で...聞いた。
高橋は目を覚まさなかったが。
「この音で、よく目を覚まさないもんだな。」
今野は一人ごちた。自分は睡眠薬で眠っていたんだけど。
「疲れ切っているとね、意外とこの程度の音じゃ起きないもんだよ。俺達も昨日の夜、交代で寝たんだけど、起きなかったし。」
と、ジャイが言った。
俺も、最初に寝た時、放送に気が付かなかったもんなと思った時、今野ははっとした。
「三人に聞くのもあれだけど...今の放送ではいなかったけど、人力の人で死んだ人っている?」
田上さん!
スギとゆうぞうは、顔に出さない様に気を付け、言うべきかどうか、躊躇した。
「さあ、俺あんまり放送聞かないようにしてからさ。多分、いないと思うけど?」
ジャイは涼しい顔をして、答えた。
田上さんの事を言うべきか否か、高橋さんが決める事だ。俺達が言うべき事じゃない。それは、責任逃れかもしれないけれど。ジャイはそう思った。
782蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/01(木) 11:32:30
目覚めたばかりの高橋に、今野は聞いた。
「ねぇ人力の先輩で、死んだ人いる?」
今野は知らないんだ、田上よしえさんが死んだ事を!
「さあ...俺も、ずっと修羅場状態だったから。放送聞いている余裕が無くて。多分、皆生きていると思うけど。」
今野にそれを話すべきかどうか、躊躇して、一旦保留にする事にして、そう言って高橋は誤魔化した。
「それより、俺が寝ている間は?」
「いなかったよ、誰も。良かった、皆生きているんだ、柴田さんも、塚地さんも、渡部さんも、田上さんも。」
高橋は、かなり失礼な会話をしている事に気が付いた。
高橋はインスタント・ジョンソン以外、この島にいる人間で、誰が太田プロか知らない。
もっとも、芸人だからって、誰と誰が同じ事務所か、詳しく知っている必要は無いのだけれど。
先輩や後輩の芸人がもう死んでいるかもしれない。
実際、太田プロではダーリン・ハニーが死んでいる。
田上さん、死んじゃったんだ...今になる迄、悲しんでいる余裕も無かったなんて。
と思った時、高橋ははっとした。
インスタント・ジョンソンが...ジャイさんが田上さんを殺したのか?
彼らだって知らないはずは無い。インスタント・ジョンソンも、田上よしえも、何度か同じ舞台に立っている。
783蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/01(木) 11:33:35
だから、今野に黙っているのか?
複雑な心境の高橋に、
「はい、高橋さん、これ。」
と、ジャイは拳銃を渡した。

「インジョンとキングか。」
双眼鏡は、よく知らない芸人の死体の首にかかっていた。もう気持ち悪ささえ、感じなくなっていた。
はなわは双眼鏡でその家の窓の中を覗いていた。
馬鹿な奴らだ。五人じゃ目立つし、意見が割れたりして、身動きが出来なくなりかねないのにな。
プラン9の様に。
肩慣らしに、殺っておくか。
はなわはその緑の家に近づいていった。
784蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/01(木) 11:40:11
以前、音さんも書いていましたが、私も芸人同志の関係に疎いので、
呼び方等含め、間違い、例えば○○はタバコを吸わないとか、
「キング・オブ・コメディー」じゃなくて「キング・オブ・コメディ」
(本当にスマソ。好きな芸人なのに...バカだ)だとか、等、あったらご指摘してください。
785名無しさん:2005/09/01(木) 11:54:19
乙。焦らずドゾ

っ旦゛
786名無しさん:2005/09/02(金) 04:46:09
今のところ呼んでないと思いますが、今野氏は高橋氏を呼ぶ際「パーケン」と呼びます。
御存知でしたらすみません。
787名無しさん:2005/09/02(金) 13:33:57
>786さん、ご指摘ありがとうございます。
言い訳がましくなりますが、「パーケン」というあだ名と由来は存じていたのですが、
うっかりしてました。
後、タバコ吸いませんね、確か。これもうっかりしてました。
割と最近好きになって、ネタ番組とインタビューはチェックしていたのですが、すみませんでした。
788蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/02(金) 13:52:07
本当にうっかりしてましたが、787、コテハン・トリップ入れ忘れてました。
スマソ。
789名無しさん:2005/09/03(土) 01:15:04
乙です!
今野さん知らないんですね・・・知らぬが仏って、この場合通用するんでしょうか・・・
塙に見つかりましたね。確かにプランの例があるから危険っぽいですよね。

ところで高橋さんパーケンって呼ばれてるんですね。初めて知りました。
もしよければ、由来教えていただきたいです。
790名無しさん:2005/09/03(土) 05:11:52
786です。
蛙さんの文章読みやすくて好きです、頑張って下さい。
煙草は二人とも吸わないですね。
でも以前、今野氏が煙草の販売機の前で何かしてるのをみたので、最近吸い始めたのかもしれません。
現場を見てないし、プライベートなので詳細は知りませんが。


>>789
確か、元々「タカケン」と呼ばれていたのを誰かが聞き違えて「パーケン」になったんだったと。
791名無しさん:2005/09/04(日) 20:22:55
age
792名無しさん:2005/09/04(日) 21:32:47
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/4680/

感想・意見用のスレを立てました。何かありましたらどうぞ。
793乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/09/05(月) 14:53:10
>>677->>678の続き

 『皆ー!!僕らの話を聞いてー!!』
この聞き覚えのある声、関西弁のなまりはレギュラーとしか考えられない。
2人は一体どこで、なにをやっているんだ――?
 「放送室だ」
冷静な、けれど焦りを隠せない声で板倉が言った。
 「地図にあったよ。ここ小さな島だから、
きっと島中に伝達ができるようになってるんだ。その放送室から、2人は呼びかけしてんだよ」
 
『僕ら戦う必要なんかないはずや!!皆ー!僕らのとこまで来てー!
仲間になって、皆で一緒に生き残ろうー!!』

これだけ大きな声だ。当然島中に聞えているはず。
堤下は地図を広げ、放送室の位置を確認した。
 「行こう」
のんびりしてはいられない。あの2人が勇気を出してくれたお陰で出来た、仲間をつくる最大のチャンスだ。
しかしあの2人にも危険が伴う。早く行って仲間になって、安全な場所へ行かないと――。
地を蹴った堤下の腕に、逆向きの力がかかる。急に制止され、体のバランスを崩しかけた。
見ると板倉が堤下の腕を引っ張る手を離したところだった。



794乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/09/05(月) 15:05:20
 「なにすんだよ?!」
 「おまえ馬鹿か?!どこ行く気だよ!!」
 「どこって決まってんだろ!!あの2人のところへ行かないと――」
突然制止されたことと焦りでつい口調が激しくなる。
こんなところで話してる場合じゃないんだ!レギュラーの2人の命がかかっている。
 「あいつらが危険だからか?仲間がほしいから?いいか、放送室へ行くまでかなり距離がある。
その間にだれに会うかわからないし、もしかしたらあの放送につられて出てきたやつらを
片っ端から殺そうと待ち構えているやつがいるかもしれない。危険すぎるんだよ!!」
焦りが見える、怒鳴るような言い方だったが
板倉の冷静さは健全のようだ。周りの状況をしっかりと判断し、危険を予知している。
こんな状況下で大したものだとは思った。が、むしろそれが余計に腹を立たせた。
 「じゃあなに、危険をおかしてまであいつらを助ける必要は無いっていうのかよ!?」
 「んなこと言ってねぇだろ!!銃貸せ!!」
板倉は、堤下の手から銃をひったくるとそれを自分たちの頭上へ向けた。
両手でしっかり構え、ピンと腕を伸ばしている。
 「なにすんだよ!?板倉さん!!」
堤下の問いには答えず、板倉は黙って引き金をひいた。
バァン、という破裂音。アホマイルドの2人は事前に耳を塞いでいたのだが、
それを忘れた堤下は、銃声をもろに耳にひびかせてしまった。一気に広がる火薬のにおい。
見ると板倉は衝撃でふっとばされ地面に背をつけていた。
795乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/09/05(月) 15:13:21
 「これで引っ込んでくれれば…」
そうか――!! 
やっと堤下は板倉のこの行動の意味を理解した。
銃声ほどの大きさならきっとレギュラーの2人にも聞える。
この音を聞いて驚き、呼びかけをやめてどこかへ隠れてくれれば――。
しばしの沈黙。

『銃なんて撃たんといて!!皆、僕らのとこまで来てー!!』

駄目だ。意外に根性があるのかレギュラーの2人は引っ込まない。
早く、早く隠れるんだ――!!
 「板倉さん!もう一発!!」
 「無理だよ。今ので俺達の場所が誰かに知られたかもしれない。俺達だって危ない」
 「くそっ!じゃあどうしたら――」


『パラララララララッ』


古いタイプライターを叩くような音。
島のどこかで時々響く音。
この音の正体――。
ブッ と電子音がして、放送は切れた。
――マシンガン
このプログラムで支給されたうちの武器で最高の部類に入る。
一度で何発も弾丸を吐き出すことができる、弾丸のシャワー。
その音を最後に、放送が再びかかることはなかった。
796乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/09/05(月) 15:14:41
かなり久しぶりの投下となってしまいごめんなさい。
あとまとめサイトのほう、今回更新分まですべてうpしました。
http://obr2ine.fc2web.com/index.html
797名無しさん:2005/09/05(月) 15:46:07
テラテラワロッシング!!(* ̄Д ̄)y−~~~
798名無しさん:2005/09/05(月) 16:20:34
名無し部首宇の特徴 第四版(現時点で最新版)

1.削除依頼は何故かケータイから書き込む
2.煽るネタなくなったら下ネタへ
3.ヲタスレにて長文で書き込む
4.ヲタスレで連投する(その場合ageてからsageる)
5.かつて管理側にIP晒された時、アンチ・反応するヲタ・それを制するヲタを一人三役でこなせた
6.何を調べたかったのか、夜中に「内村 セックス」と検索にかける
7.風水家につけてもらったという”自慢”のコテハンは、自演がバレてから使ってない
8.今はアンチ内村だが、元信者だから実は南原も大嫌い、ウンナン自体も嫌い
9.IDが出る板ではバレバレ
10.テレビ板の某スレでは「w」を多用してスレ住民からバカにされてる
11.ホストアドレスにkyotoと示されている
12.興奮してる時に日本語が変になるので、ジンガイ疑惑発生中、発病が火病にソクーリだから、チョン疑惑発生中
13.2chにて24時間待機、無職でひきこもりだからずっとネットで荒らしをしている
14.「ハローワーク」「ニート」「危機」という自分にピッタリな言葉を好む傾向
15.ウンナンニュースなど、ヲタより熱心に探している
16.荒れてる時は頭の回転が止まり、言葉で書き込めず、AAを貼りまくる
17.各板の内村関連スレやウンナンスレを監視している
18.頭に血が昇って、いろいろなスレに一気に書き込むが、40代で体力の限界もあり、しばらくするととっさに静かになる
19.厳密な計算により、IQが僅か25しかないと判明
20.また常にオムツをしており、薬缶を乗せたらお湯が沸きそうな温度つまり
21.常に失禁状態である。
22.馬鹿なのに自己主張意識が強く、名前欄やメール欄を変えたがる、しかしそれが恥さらしの原因となってしまう
23.ネタがなくなるとワンパターンの低脳コピペに変わる
24.時々句読点が使えなくなる
25.主食は糞尿
26.よほど芸人を攻撃しないと気が済まないのか、さんまや木梨まで攻撃する
27.毎日精神安定剤を飲んでいると自ら告白
28.親まで気持ち悪い
799名無しさん:2005/09/05(月) 16:49:12
>乃さん
乙です。戦いをやめたいという気持ちは同じなのに、それが伝わらないのが切ないですね。
まとめサイトも、大変だと思いますが頑張ってください。
800名無しさん:2005/09/05(月) 22:48:56
798 アホ?
801名無しさん:2005/09/05(月) 22:53:04
乃さんお疲れです。
無理せず、のんびり続けてください。
いよいよインパルスも動き出しますか…展開、期待しています。
802蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/06(火) 15:16:48
「そろそろ、食糧の事も考えないとね。飲み水の確保は出来たけど。」
とジャイが言った。
食糧は日持ちしそうな物だ。でも、近い内に尽きる。
「アンデス山脈の墜落事故みたいな事になるもの勘弁だしね。」
「何それー」
と聞くゆうぞうに、そんな事も知らないの?と言うような顔で、面倒臭そうにジャイが答えた。
「俺達が生まれた頃の話なんだけどさ、あ、今野君はまだこの世にいなかったか。
アンデス山脈に飛行機が落ちて、奇跡的に生存者が何人かいたんだけど、救助隊が来る迄に二ヶ月位かかってね。
その間、餓死したりした人の死体を食べて、生き延びたって話。」
「嫌な事言うなあ、この人。」
と高橋が言った。
地図を見れば、どこへ行けば食糧がありそうかは、わかる。でも、当然それがわかるのは自分達だけじゃない。行けばそれだけ、リスクもある。
「でも万が一そうなったら、キングさんの方が有利だよね。ゆうぞうなんて、特に食べでありそうだし。脂身も多いけど。」
ジャイは何時もの、無邪気とも馬鹿とも取れる様な笑顔で言った。
「やだよー、ジャイさんは、ヤニ臭そうだし。」
そういう問題では無い事位高橋もわかっていたが、リアルな話だからこそ、そう言って流したかった。
ある意味、今の状況に似ている。適格者が生き延び、不適格者には死があるだけだ。
誰が適格者で誰が不適格者か、自分達が適格者か否か。
流石に食われはしないだろうけど。と、高橋が思いかけた時、
「しっ。」
ジャイが人差し指を立てて唇に当てた。
803蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/06(火) 15:18:12
「誰かいる、窓の方に...否、窓の方からドアの方に回ってきた。」
明らかに風が立てたのではない、茂みを掻き分ける音が聞こえた。警戒をしている様子も感じられない。かなり大胆な、相当自信のある奴だ。
「一旦窓から外へ出よう。」
五人は素早くナップザックを背負った。高橋と今野は拳銃を持っている。テーブルの上の武器...ジャイはプラスチックケースに入った注射器を、ゆうぞうは出刃包丁を、スギはI字型磁石を掴んだ。
ドアの対面にある窓は、外側へ左右に開けば、一度に二人は出る事が出来る。
先ずスギと今野が外に、それからゆうぞう、そしてジャイと高橋が外に出ようとした時、その誰かは勢いよくドアを開け、無言でサブマシンガンの引き金を引いた。
「パンパンパンパンパン...」
幸い高橋は無傷で外に逃げられた。ジャイも、流れ弾が左手の甲を掠っただけで...磁石に襲撃された時よりは深手だが...致命傷を負う事は無かった。
「二手に分かれて逃げよう。」
ジャイはそう言った。
襲撃してきた奴が、ドアの方から窓の方へ追って来る迄に若干のタイムラグがある。が、それから先の事を話し合う程の時間は無い。
そして今野・スギ・ゆうぞうと、ジャイ・高橋の二手に分かれて、それぞれ逆の方向へ走った。

「ちっ、逃したか。カンの良い奴め。」
はなわが窓の方へ回り込んだ時には既に、五人の姿は無かった。
深追いは、辞めておくか。少なくともサブマシンガンレベルの武器は持って無さそうだったし。
と、一瞬思ったが、ある事に気付き、走り出した。
ジャイと高橋が逃げていった方向へ。

あれは、はなわさんだったな。それにしても...糞、どこ迄逃げたらいいんだ。
ジャイは茂みを抜け、その脇の小道を走り続けた。もう息が上がっていた。左手も、激しく疼いた。
普段タバコばかり吸ってるから、すぐ息が上がるんだ、畜生!
この時点で、ジャイは二つ、ミスを犯していた。
804蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/06(火) 15:22:09
一つは何時の間にか高橋と逸れていた事。
これはすぐに気が付いた。
高橋さん、ごめん。でも、俺にはスギとゆうぞうの命もかかっているんだ。何とか高橋さんも無事に逃げてくれ。
そう、祈るしかなかった。それに、拳銃がある分、まだ自分よりは有利だろうと。
そしてもう一つのミス...高橋と逸れた以上の致命的なミスには、気が付かなかった。

はなわは茂みの中の、葉や地面に付いた血を頼りに、走った。
ジャイの左手から滴り落ちる血、それが彼の通り道をマーキングしている事に本人は気付いていなかった。
だから途中でジャイと逸れた高橋は、実はラッキーだった。
血の跡は茂みを抜け、小道の上に、ジャイが走った足跡の様に、付いていた。
この道の先は確か...
はなわはニヤリと笑った。
後は、血を頼りに、追うだけだ。

小道は途中で途絶え、目の前には人の背丈より高い茂みがあるだけだ。
ジャイはその先へ行こうと茂みに飛び込んだ。
「!」
805蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/06(火) 15:22:52
地図をよく観ればわかった筈なのだが、そんな余裕は無かった。茂みの向こうは、断崖絶壁の崖だった。
あともう少し、勢いよく飛び込んでいたら、落ちていただろう。
そう高い崖ではない。崖の下の様子も、よく見える。底に横たわる白骨死体は、多分、このゲームでの死者ではなく、以前この島に住んでいた人なんだろう。
崖の下迄そう高さは無いが、底が地面ならまだしも、岩場だ。飛び降りて安全とは思えない。
崖に、取っ掛かりになりそうなものは無く、その辺の知識が無いのでよくわからないが、ロッククライマーでもかなりハードルが高いのではないだろうか。
道の脇の茂みの中へ逃げ様とした時、足音が聞こえた。
「渡辺だろ、そこにいるの。」
はなわの声だ。
「ここで、血の跡が途絶えているからな。それに、この辺の地理は、よく調べて、頭の中に叩き込んであるんだ。」
しまった!
ジャイはやっと、自分が犯したもう一つのミスに気が付いた。
「お前らとは、よくライブで一緒になったよなあ。だから特別に選ばせてやるよ。俺に撃ち殺されるか、その崖から飛び降りるか。」
サブマシンガンで撃たれたら、確実に死ぬ。崖から飛び降りても、多分、運が良くても致命傷、カラスの餌になるのを待つだけだ。そこの、白骨死体の様に。
命乞いをして、助かる相手なら、幾らでもする。死ぬのは自分一人じゃない。でも、今のはなわに命乞いはするだけ無駄だ。
ジャイの全身に、冷たい汗が流れた。
「今からカウントダウンしてやるよ。5...4...3...」
806蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/06(火) 15:32:08
>790さん、
ありがとうございます。これから先は、二人共タバコを吸わないと言う設定で書いていきます。

>乃さん
まとめサイトもやりながら、御自身の方でも書き綴っていくのは本当に大変だと思います。
レギュラーが気になりますが...気長に、楽しみに待ってます。
807名無しさん:2005/09/06(火) 18:46:32
>蛙さん
乙です。ジャイさんいきなりピンチですね。
これからどうなるのか…楽しみにしています。
808名無しさん:2005/09/07(水) 09:48:36
蛙さん乙!
凄い、夢中になって読んでしまいました。
本当にドキドキします。がんがってくださいっ!
809名無しさん:2005/09/10(土) 04:08:30
保守だこのやろー
810名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 18:01:38
アホ?
811名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 02:38:51
あのー、回 ◆Tf0aJzcYy. さんもうこちらへは来られないんでしょうか?
スレも過疎ってるみたいなんでちょっとポイズン&レギュラーで書いてみたくなっちゃったんですけど・・・。
(;・∀・)ダダイジョウブ・・・?
812名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 11:20:31
ほっしゅ
813回 ◆.daECyU2ao :2005/09/11(日) 12:36:45
>>811
ちょっと事情があって此処に来られませんでした。
パソも初期化してトリップが変わったんですが、まあ気にしないで。
続きは今書いてます。
814回 ◆.daECyU2ao :2005/09/11(日) 12:39:57
sage忘れスマソ
815蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/11(日) 12:49:07
正確に言うと、高橋は逸れたわけではなかった。
茂みを抜け、道に出て少し経った時、高橋は転んだ。
ジャイを呼び止めようと思ったが、ここで声を発するのは、自分にとってもジャイにとっても危険かもしれない。
すぐにジャイの後を追おうとしたが、後ろから足音が聞こえる。
咄嗟に、道のすぐ脇の茂みに身を潜めた。
すぐ目の前の道を、足音の主...はなわが自分に気付かずに走り去った時は、ほっとした。
自分達を襲撃したのは、はなわさんだったのか...ジャイさんには悪いけど、何とか、助かった。ジャイさんも、何とか逃げ切ってくれ。
それにしても...何か変だ。高橋は思った。
普通なら、左右を見ながら、回りの様子を探りながら、探す筈だ。だけど明らかに、何かの跡を辿るかの様に走っている。もうジャイの姿は見えないのに。
高橋はそっと茂みから顔を出して、地面を見た。
血だ!ジャイさん、左手怪我してたから。
高橋は血の跡を頼りに、でもはなわに茂みを掻き分ける音を聞かれない程度の距離を置きながら、後を追った。

急にはなわが立ち止まった。そしてはなわの言葉で、ジャイが文字通り窮地に立たされているのを知った。
高橋の位置からは、はなわの後姿が見えた。
確かに拳銃を持っている。が、引き金を引いた事は無い。だから自信は無い。
人を撃つのが嫌だと言うのもあるが...
引き金を引いて、弾がはなわに当たのならまだしも、そのはなわの正面の、茂みの向こうにいるジャイに当たったら...
かと言って、これ以上はなわに近づくのは危険だ。道に出たとしても、その際の、茂みの枝葉を掻き分ける音を聞かれ、自分と今野の命が危うくなる。
でももう時間は無い。はなわはカウントダウンを始めた。
「5...4...3...2...」
高橋が下した結論。
どうにでもなれ!
高橋は青空を撃ち抜くかの様に、銃口を上に向け、引き金を引いた。

不意を付かれ、はなわは銃声が聞こえた方を向いた。
今だ!
ジャイは瞬時にプラスチックケースから注射器を取り出すと、はなわの腕の中へ潜り込む様にして抱きつき、その胸に顔を押し付けた。
「今、俺を撃ったらどうなるか、わかりますよね。」
胸に顔を押し付けている所為か、声がくぐもっていた。
816蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/11(日) 12:50:05
確かに今ジャイを撃ったら、死ぬだろう。だけど、貫通した弾ではなわ自身も致命傷を負う事になる。
「じゃあ、茂みの向こうのあいつを撃つだけだ。」
「彼を殺しても、俺は死なないから無意味ですよ。多分彼は、俺の相方じゃない。」
糞、(はなわの)ナップザックが邪魔だな。
左手は、痛みを通り越して、痺れ始めていた。頼む、もう少し持ってくれと、願いながら。
ジャイは、さっき拳銃を撃ったのが高橋だと言う事に気付いていた。そして高橋が自分の援護をしようと動き出した事も。
高橋さんに、そんな事をさせるわけには行かない!
はなわはジャイを振り払おうとしながら言った。
「じゃあ何で、お前らは助け合おうとするんだ。」
ジャイは、必死でしがみ付いた。
「さあ、彼は何ででしょうね。俺は、羊を羊の侭で置きたいからです。」
ジャイの右手が、何とかはなわの延髄に届いた。そして、その右手に持った注射器で、延髄を刺した。
はなわはジャイの腕の中から、滑り落ちる様にして倒れた。

高橋はもう、茂みから出ていた。
ジャイははなわからサブマシンガンとナップザックを奪うと、高橋に右手を差し出した。
「高橋さん、拳銃。」
あんな事があったすぐ後、当然だがジャイの呼吸は荒かった。
高橋は手を震わせない様にして、ジャイに拳銃を渡した。
延髄を注射器で刺された時点ではなわは既に死んでいたが、念の為にと、ジャイははなわの心臓を打ち抜いた。
高橋は目を逸らし、ただ、銃声を聞いた。

はなわ死亡
【残り40組】

「ありがとちゃん。」
ジャイは呼吸が整った後、ジャイはゆうぞうの持ちギャグを言った。それから何時もの、何を考えているのか何も考えていないのか、よくわからない笑顔で、
「でも、どうせなら美人に抱きつきたかったな。」
と。
高橋はジャイが震えている事に気付いた。そして、顔は笑っているのに、眼は笑っていない事も。
817蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/11(日) 12:50:51
深い絶望と悲しみが入り混じった様な、やり切れない眼。
軽口を叩いて、強がる事で、今にも狂いだしそうな精神状態を支えてきた。そうじゃなかったら、とっくに崩れ落ちていただろう。
だったら、俺もそう返さないとな。
「本当、不細工なホモの抱擁シーンみたいで、キモかった。」
「不細工はよけいだろ。」

「...っ!」
ジャイはナップザックからバーボンを出し、左手にかけた。傷口が、焼ける様に沁みた。
それからタオルを出し、口と右手を使って、傷口を合わせる様に縛った。緑のタオルは、すぐ血で赤く染まった。
「大丈夫?」
「んー、縫わないと多分綺麗に塞がらないだろうけど、自然治癒力で何とかなるっしょ。」
そう言いながら、はなわのナップザックの中の物を、自分のナップザックの中に詰め始めた。
高橋は紙が1枚、落ちている事に気が付いた。拾い上げて見てみると、幼い男の子を抱きかかえて笑っている、女性の写真だった。
ジャイと格闘している時に、ポケットから落ちたのだろう。
これ、はなわさんの奥さんと子供なんだろうな。
やりきれない気持ちになって、ジャイに気付かれないよう、そっと、はなわの遺体の下に、滑り込ませた。
ジャイにこれ以上の、精神的苦痛を与えたくなかったから。
ジャイはサブマシンガンとその銃弾を高橋に渡した。
「え、俺がこれ持つの?」
「俺はこっち(拳銃)の方がいいし、そっちは見せるだけでも威嚇になるからね。」
高橋は銃弾をナップザックにしまった。

「どうする?三人を探しに行く?」
と高橋が言った。
「否、あまり動かない方がいいと思う。こっちはほら、俺の血痕の、手がかりがあるけど、あいつらは何も手がかりが無いからさ、行き違いになるといけないし。あいつらが俺達を見付けてくれるの、待とう。」
「そっか。」
「でも、ここで待つのもね。」
二人は血痕を辿りながら、はなわの姿が見えなくなる所まで歩いて、木の下で、立ち止まった。
「ここで待つか。」
と、ジャイが言った。
818蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/11(日) 12:52:02
二人は、木にもたれて、座った。
当然と言えば当然だが、ジャイはかなり疲弊している様子で、タバコを吸い始めた。
「高橋さん、もう気付いてると思うけどさ...」
ジャイは投げやり気味に言った。
「俺はもう何人か殺してる。高橋さんと合流する前から。でも...信じようと信じまいと高橋さんの勝手だけど、田上さんを殺したのは俺じゃないよ。」
高橋はドキッとした。さっき、自分が抱いた疑問だ。
「...それは、信じるよ。」
ジャイの眼に、薄っすらと涙が浮かんでいた。が、すぐに、右手で拭い去った。
本心から、高橋はジャイのその言葉を信じた。
その時、遠くから爆音が聞こえた。
二人は顔を見合わせた。
819蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/11(日) 12:56:01
連投&長文スマソ。
820名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 17:32:45
蛙 ◆GdURz0pujY サン乙です
GJ!!!
821回 ◆.daECyU2ao :2005/09/11(日) 19:28:20
書き手さん戻って来ないみたいなので…アンガの続き、行きます。

何処までも続いているかのように感じる長い川に、綺麗な透明の水がさらさらと流れている。
そこに、バケツを持った山根(アンガールズ)が走ってきた。
友近の傷は何とか塞いだものの、その傷口が熱を持ってしまい、足首が赤く腫れてしまったのだ。
その為に冷たい水が必要になり、田中とのじゃんけんに10回のあいこの末負けてしまった山根が一人で水汲みにやってきたという訳だ。
「はあっ、はあ…疲れた〜…。」
がらん、とバケツを放り投げると川沿いに座り込んだ。
思ったより早く水のある場所が見つかったし、ちょっとゆっくりしていこう…。
懐から煙草を取り出し、口に咥え火を付ける。
「う、っめぇ〜…!」
幸せそうにぎゅっと目を瞑り真っ白な煙を吐き出す。
スズムシの声と、星の光と、小川のせせらぎと、煙草の煙で体力回復。一瞬だけ、山根の心から『恐怖』の二文字が無くなった。

「あ〜……喉乾いたな」
喉を押さえて身を乗り出すと手のひらで川の水を掬いあげ、それを飲み干す。
冷たい天然水はボンヤリしていた頭の思考回路を一気に覚まさせた。
走って来たことで喉がカラカラに乾いていた事もあり、続けて何度も掬って飲む。すると、
「にゃあ」
「…………んぉ?」
山根の隣に寄り添うように、一匹の黒猫が歩み寄ってきた。
金の瞳をきらきらと輝かせ、もう一度綺麗な声で鳴く。
822回 ◆.daECyU2ao :2005/09/11(日) 19:30:44
「猫…?こんなとこにまで居んのか。」
その猫の頭をゆっくりと撫でる。

暫くすると猫は山根の手をすり抜けて川の水に口を付け、ぴちゃぴちゃと飲み出した。
「ああ、お前も喉乾いてたんだな。」
くすくす笑うと、猫の隣にしゃがみ込んでバケツに水を汲んだ。
あまりたっぷり入れすぎるとまた喉が渇いてしまうかもしれないから半分しか入れなかった。
水を入れ終わっても猫はまだ飲んでいる。よっぽど喉が渇いていたのか、それとも空腹を紛らわす為だろうか。
山根はポケットを漁った。収録の合間に食べようと思っていた二枚入りのビスケットの袋が出てきた。
それを猫の側にこっそりと置いてやった。
「おーい猫、悪い人間に鉄砲の的にされんよう気ぃつけよ。」
そっぽを向いたまま水を飲み続ける猫に小さな声で忠告する。
「…よしっ」
ふーっと息を吐き、腕捲りをして細い腕で重いバケツを持ち上げる。
ふらふらと危なっかしい歩き方だった。途中で何度も水をぶちまけそうになるも、少しずつ、確実に田中たちの待つ建物に向かっていった。
道のりの途中で何度も銃声を聞いた。あの、レギュラーの放送も。その度に足を止め、座り込んで耳を塞いだ。
「うう…俺ら…只の芸人やのに…。…死にとうないわぁ…っ」
悲しくは無かった。むしろ、一瞬嬉しいとまで感じた。
このまま自分たちに気付かずに勝手に殺し合ってくれたら。もしかしたら生き残れるかもしれないと思ったのだ。
「はは…最低やな、俺…」
自嘲めいた笑みを浮かべ、項垂れる。
そんな山根の後を付けてくる小さな影があった。
823回 ◆.daECyU2ao :2005/09/11(日) 19:32:06


「おー、山根お帰り〜!」
「俺もう絶対行かんから…」
にこやかに手を振る田中をキッと睨み付け、息も絶え絶えな山根は中に入ってくるや否やバケツを渡してその場に座り込む。
「あらー、山根君どうしたん?可愛い子連れて来ちゃってぇ」
芝居がかった口調で友近が言った。
「え?何?」
「にゃあ」
山根の背に、さっきの黒猫がすり寄ってきた。
「あれ…ついてきたみたい。」
「や〜、ほんま可愛いわあ。」
「俺も俺も。触らせて!」
女子高生のように田中と友近が目敏く寄ってくる。この島で飼われていたのだろうか。猫は全く人間を怖がろうとしなかった。ごろごろと喉を鳴らし、みゃあ、と甘い声で鳴く。三人とも、思わず顔が綻び、笑いあった。
再びまったりとした幸せな空気が流れた。

824回 ◆.daECyU2ao :2005/09/11(日) 19:34:20

「随分と楽しそうじゃないですか。」

山根の背後から、何者かが銃を突きつけてきた。
「山根……あ!」
よく知ったその人物の顔に、田中が目を大きく見開いた。友近がさっと猫を抱き寄せる。
背を向けているせいで山根はその男の顔が分からない。ただ、自分の頭に堅いものが押し当てられているのは分かっていた。
目を堅く閉じ、今にも泣きそうな表情だった。

「いいなあ、こんなに仲間がいて。…俺には…何も、無いのにさぁ…」
男が顔を俯けてると、長い髪が覆い被さった。肩が震えている。泣いているのか、笑っているのか。
田中も友近も、山根も。身動き出来ず息を呑んだ。

山根に銃を押しつけたまま、男―――阿部智則は独り言のように続けた。
「吉田も、陣内さんも、何でみんな俺を嫌いになる…?俺は正しいのに、…何が足りないんだ…」
やばい。死ぬかも。田中の頭にそんな言葉がよぎった。

825名無しさん:2005/09/12(月) 21:03:30
蛙さん、いつも楽しみに
読ませてもらってます。
本にして欲しいぐらいですわ。
826名無しさん:2005/09/12(月) 21:24:30
うわーついに再登場ですね阿部くん、待ってました!
気持ちがどう動くのか。山根くん本当に殺されちゃうの??気になります
827車 ◆t2l8Buzwsg :2005/09/13(火) 14:51:27
長井秀和と折り重なるようにして倒れる青木さやか。
それを見て嘆く波田陽区。
二人の死を嘆いているのではない。
二人を先に殺されてしまった事に彼は嘆いているようしか見えなかった。
そんな波田陽区を背後から見ている二つの影。
冷静な表情で波田陽区の後ろ姿を見据えるのは東京ダイナマイト、松田大輔。
そんな松田の冷たい目と目の前で起こっている現実に震えるハチミツ二郎。
しかし彼はあまりリアクションを表に出さないために震えている事など相方ですら気付かなかった。
波田陽区が去るとすぐに飛び出す松田。
その目は元相方、青木さやかだけを見ていた。
「…仇…とってやるからな…」
周りを警戒しながら恐る恐る影から出るはちみつ二郎。
「どうする?」
「やるしかないんじゃないの?」
はちみつ二郎が無表情に問うと松田は当たり前とばかりに即答。
「やるっていったってさー…」
「二郎ちゃん、何持ってる?」
「鍋の蓋」
「おいおい使えねぇなぁー」
松田の乾いた笑いが場に広がる。
はちみつ二郎の背後で足音がした。
「ねぇ、誰か…誰かいるの…?」
怯えきったような女性の声。
いつもと違う雰囲気の声だが間違いない、と松田は確信した。
スタジオとは違う普通の女の子の顔をした摩邪がそこには立っていた。
松田がにわかに妖笑を浮かべるのをはちみつ二郎だけが見た。
そして、はちみつ二郎だけが知っていた。
松田の後ろに隠された手が日本刀の柄を握っているのを。
現状に混乱している摩邪には気付く余裕が無かった。

*東京ダイナマイトで参戦
828車 ◆t2l8Buzwsg :2005/09/13(火) 15:46:28
コンビはいいな。二人で。私はピンだから一人。他のピンの人は大丈夫かな。
長井さん、青木さん、波田さん、だいたさん、はなわさん…
あの人たちを仲間に出来れば心強いんだろうな。
・・・一人は嫌・・・

東京ダイナマイトと出会う前、摩邪は洞窟に隠れてじっとしていた。
横に散らばる少しの食料と包丁。
恐る恐る包丁に手を伸ばす摩邪。
「駄目・・・出来ない・・・」
すぐに包丁を手放す。
「殺すなんて出来ない・・・!死ぬなんて出来ない・・・!」
頭を抱えてはっとする。
「きっとみんな同じ思いだよね。まさか殺し合いなんて・・・」
遠くで爆音と悲鳴が聞こえる。
慌てて耳を押さえる摩邪。
「嘘・・・嘘だよ・・・殺しあうとかありえない・・・!」
耳を押さえて首を振るが何も変わらない。
彼女はいつ殺されるかわからない状態。精神的に戦力はゼロ。
829車 ◆t2l8Buzwsg :2005/09/13(火) 15:47:07
『皆ー!!僕らの話を聞いてー!!』
彼女にとって心地の良い関西弁が響く。
「・・・レギュラー・・・?」
『僕ら戦う必要なんかないはずや!!皆ー!僕らのとこまで来てー! 仲間になって、皆で一緒に生き残ろうー!!』
表情を明るくする摩邪。同じ思いの人がいるという事が彼女の勇気になった。
これでみんな安心する。
しかし、無謀にも銃声が響く。
「なんで・・・?なんで終わらないの・・・?」
『銃なんて撃たんといて!!皆、僕らのとこまで来てー!!』
「そうだよ、放送室に・・・!」
摩邪は慌てて地図を出し放送室を捜す。
希望が見えた、そう彼女は思っていた。
しかし、無謀にもその希望はマシンガンの音と放送の切れる音に阻まれて消えた。
「やだ・・・殺されちゃったの・・・?」
彼女は怯えるように頭を押さえてうずくまった。
頬を流れる涙はレギュラーのために。

そして彼女は洞窟を出、東京ダイナマイトに出会った。
830車 ◆t2l8Buzwsg :2005/09/13(火) 15:49:57
二郎には相方の動きが予測できていた。
しかし、摩邪がどうでるかは予測が出来なかった。
相方を見守るが吉か、はたまた殺人者となろうとしている相方をとめるべきか。
止めるのなら命がけでいかないと駄目だという事も彼は心得ていた。
「長井さん…!青木さん…!」
はちみつ二郎が葛藤しているうちに摩邪が先に動いた。
「どうして…何で…?」
がくっと膝を落として両手で顔を覆う摩邪。
「私たち芸人だよね…?人を笑わせるはずの芸人が何でこんな事しなくちゃいけないの?」
この回答を持っている者は恐らく誰もいないであろう、松田はそう思っていたが答えなかった。
「こんな事して誰が笑うの?私はこんな事したくてこの道を選んだんじゃない!」
摩邪の言葉は痛いくらいに二郎に響いた。
松田にも届いていたのだと思う。
「…だからこそ俺は生き残る」
膝をつく摩邪に向けられた松田の冷たい視線と冷たい日本刀の刃先。
「人を殺して人を笑わせる事なんて出来ると思ってんの!?」
ヒステリックに叫ぶ摩邪。はちみつ二郎はただその場を見守る事しか出来なかった。
「…誰だって望んじゃいないさ」
「じゃあ何で長井さんや青木さんが…!」
「生き残るためだ」
「みんなで生き残る手だってあるじゃない!」
「レギュラーの二の舞になりたいのか?」
摩邪の脳裏でレギュラーの心地良い関西弁とマシンガンの音が交差する。
831車 ◆t2l8Buzwsg :2005/09/13(火) 15:50:54
「レギュラー以外にもいるよ!きっと・・・戦いたくない人が・・・」
松田の日本刀を掴む手の力が徐々に弱まる。
「芸人として人を笑わせたい気持ちはみんな一緒だもん!」
まるで子どものような言い方だが二人には理解出来ていた。
「二郎ちゃん、行くぞ」
「え?」
「殺る気失せたわ」
日本刀をしまいながら摩邪に背を向けて歩き出す松田。戸惑う摩邪と二郎。
「私も連れてって・・・!」
「どっかに隠れてな。今のあんたは足手まといだ」
摩邪はそれ以上何も言えなかった。
一人その場に残された摩邪。


「・・・私も殺るしかないのかな」

彼女の手にはしっかりと包丁が握られていた。
832車 ◆t2l8Buzwsg :2005/09/13(火) 15:51:46
しょっぱなから連投&長文スミマセン
あとレギュラー引用スミマセン
833名無しさん:2005/09/13(火) 22:48:06
>>車さん
台詞がとてもいいですね。ひとつひとつが胸にしみる…。
今後期待してます。
834名無しさん:2005/09/14(水) 22:17:17
乙です!
蛙さん
なんだか友情芽生えてますね。
じゃいさんはほんとにギリギリ・・・高橋さんが解ってくれて良かったです。

回さん
のんびりした雰囲気いいですね。
阿部ちゃんは悲惨です・・・確かに大事なものが消えていってますもんね・・・

車さん
台詞使いがうまいですね〜
松田の気持ちを考えるとやり切れませんね・・・
835名無しさん:2005/09/15(木) 23:53:01
ホシュ
836名無しさん:2005/09/17(土) 09:10:21
今日、初めてこのスレに来て最初から此処まで読みました。
皆さん凄いですね!
陰ながら応援します。
837蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/18(日) 15:10:13
「やっぱり三人を探しに行く?」
高橋が立ち上がった。
「否...ここで待とう。俺達二人共生きている以上、あいつらも、今野君も生きている筈だ。それに、三人とは無関係の爆発かもしれないし。」
「でも!」
「高橋さん、もう一寸小声で。大声出すのは危険だよ。とにかく、ずっとこの侭離れ離れでいるわけにも行かない。」
「ごめん。でも、爆発に巻き込まれて、身動きが取れなくなっているかもしれないし。」
「それでもだよ。逆にあいつらと今野君が、俺達が爆発に巻き込まれたと思い込んで探し回っているかもしれない。お互い動き回れば余計に合流するのが難しくなる。」
高橋は無言で座った。
「俺達には探して貰える手がかりがあるけど、あいつらと今野君を探す手がかりは、こっちには無いんだから。」
ジャイは高橋に、と言うより、自分に言い聞かせる様に言った。

ジャイも、何かせずにはいられないけど、何も出来ない状況に苛立っている事に、高橋は気付いた。
何事も無かったかの様な、何時もの涼しい顔をしている。
が、ずっと貧乏揺すりをして、何本もタバコを吸っては消し、吸っては消しと繰り返している。
そして、時折漏らす、
「俺達が生きている以上、三人とも無事な筈だ。」
と投げやり気味な呟き。
さっきは取り乱しかけたけど...俺も落ち着かないとな。
ふっと高橋はジャイのある言葉を思い出した。
「ところで、さっき言った、羊は羊の侭でって、どういう意味?」
「ん?俺そんな事言ったっけ?」
ジャイはすっとぼけた。

二手に分かれてから、今野・スギ・ゆうぞうは森の中を歩いていた。
襲撃してきた者が追って来る気配は無いが、どこ迄逃げればいいのか、わからない。
それに、自分達に襲い掛かって来るのは、さっきの者だけとは限らない。
「さっき、襲撃してきた人、誰だったんだろうな。」
と言うゆうぞうに今野が、
「さあ、一番最後に出たパーケン(高橋)とジャイさんなら、見たかもしれないけど。」
でもその二人は今此処にいない。
838蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/18(日) 15:11:22
五人で逃げたら目立つから二手に分かれたものの...やっぱり二人を探す為に、用心しながらアジトの方迄戻ってみようかとスギが言いかけた時、
「女の人の、泣き声が聞こえる。」
と今野が言った。
「行ってみようか」
と、スギ。
二人は頷いた。

「百ちゃん...百ちゃあん!」
「あの...」
スギは泣きじゃくる女に、そう声をかけるのが精一杯だった。
大丈夫ですか、は愚問だ。三人には馴染みの無い芸人だが、女の傍らで、血塗れで倒れている男はおそらく彼女の相方だろう。
女の方の首輪が炸裂していない以上、男は辛うじて生きているのだろうが...生きている方が不思議な状態だった。
「百ちゃんに触んなー!」
女は、座った侭男を庇う様に、両腕を広げて、三人を睨み付けた。窮地に追い込まれて、獰猛化した小動物の様な眼で。
「百ちゃんを殺すんなら、あたしを殺せ!百ちゃんを、二度も殺させやしない!!」
三人は武器をパンツのポケットにしまうと...戦意が無い事を示す為だが...ホールドアップされたかの様に、両手を頭の所迄上げた。
「もう...いいんだ、こまり...守ってやれなくて...ごめん。」
か細い声だったが、喋れる事自体が、奇跡的な状態だった。
「百ちゃん...」
「自分勝手な...話だけど...俺達は二人で...死んでいける。でも...はなわさんは...奥さんと子供....残して来たから。」
此処から緑の家迄の距離と、腹部をマシンガンで撃たれたような男の惨状で、自分達を襲撃したのがはなわだと、三人は推測した。
こまりは振り返って百太郎の姿を見ると、又三人を睨み付けた。

百太郎とこまり、エンタ出演を記念して、入籍したホロッコと言うコンビ。
自分達が死ぬのも当然嫌だが、人を殺すのも嫌で、ずっと森の中に潜んでいた。
だけど....突然目の前に現れた男、ホロッコの方はすぐにはなわだとわかったが、はなわの方は面識が無かったので念の為に確認した。
「お前らコンビか。」
はなわが手にしているのは長方形の箱だ。大丈夫だろうと思ったが、百太郎は恰も自分が盾になるかの様に、こまりの前に立ちはだかった。
「ああ。」
たかが箱だ。たいした事が出来る筈は無い。そんな油断も、あったのかもしれない。
839蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/18(日) 15:12:26
「そうか。」
はなわは素早く長方形の箱を展開させ、サブマシンガンの引き金を引いた。
「うっ...」
腹を撃たれ、百太郎は崩れ落ちる様に倒れた。
「流石に、女を撃つのは気が引けるからな。」
こまりの首輪は炸裂しなかった。百太郎は辛うじて生きている様だ。
が、この状態なら放って置いてもやがて死ぬだろう。百太郎は勿論だが、こまりも。
これ以上撃っても、弾の無駄だ、とはなわは思った。
「とどめは刺さないでおいてやるよ。せいぜい、二人で最期の時を過ごすんだな。」
こまりは呆然と、立ち去るはなわの後姿を見ていた。ポケットの中の武器を使う事も出来ずに。
はなわの姿が見えなくなった時、こまりは....それを我に返ったと言って良いのかどうかはわからないが...呆然とした状態から急に泣きじゃくり始めた。
緑の家が襲撃される、数十分前の事。

「そこに...いるの...桶田...さん?」
百太郎の意識は既に朦朧としており、視界も、ぼやけて殆ど見えなくなっていた。ただ、その弱い視線は、今野に向かっていた。
桶田敬太郎。ホロッコの二人と交友のある、元フォークダンスDE鳴子坂の、元芸人だ。
スギとゆうぞうは、ホロッコと桶田に交友関係がある事を知らなかったが、桶田なんてそうそうある苗字じゃない。すぐに察しが付いた。
年齢も容姿も大幅に違う。が、体型ならこの三人の中で今野が一番近いだろう。
でも...スギとゆうぞうは顔を見合わせた。
スギとゆうぞうは年齢的に元フォークダンスDE鳴子坂の桶田敬太郎を知っている。会った事こそ無いが、全盛期の頃のネタを、何度かテレビで見た。だけど今野は...
「最期に...桶田さんに...会えて...良かった。」
百太郎は左手を今野に差し出した。左手の握手、別れの握手だ。
「百ちゃん...」
こまりはもう、両手を下げ、その眼も、敵意は失せていた。
これなら今野君も見た事があるだろう、と思い、ボキャブラに出ていた、フォークダンスDE鳴子坂の背の高い方、とゆうぞうが今野に耳打ちをしようとした時、今野は百太郎に歩み寄り、しゃがんで、差し出された左手ではなく...右手を両手で握り締めた。
「何馬鹿な事言ってんだよ、お前が死ぬわけ無いだろ!」
「桶田...さん。」
「なあ、またうちに飲みに来いよ。絶対だからな!」
百太郎は頷いた。

「もう、行って。」
840蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/18(日) 15:14:00
こまりは、意を決した様に、言った。
「最期の時位、二人きりで過ごしたいから。」
今野はそっと、百太郎の手を離した。そして三人は、無言で立ち去った。
こまりは、遠ざかる三人の後姿を見ていた。ここ迄離れれば、もうあの三人を巻き添えにする事は無いだろう、そう思った時、
「いい人...だった...ね。あの...桶田さんの...振りを...してくれた人。」
「百ちゃん!」
今野の声を聞いた瞬間、百太郎は混濁していた意識が明瞭になった。そう、ここに桶田さんがいる筈は無い、と。
視界はぼやけ、もう殆ど見えない。だからその人が誰かは不明だが、桶田の振りをしている。
俺の為に...
「最期に...いい人に会えて...良かった。あの人...生き残れると...いいな。」
「百ちゃん、もう何も言わないで!」
こまりは百太郎を抱き寄せると、ポケットから武器を出した。
誰にも...はなわにも、どうしても投げ付ける事の出来なかった、手榴弾のピンを抜いた。

ホロッコ死亡
【残り39組】

爆音で、思わず三人は振り返った。
もう、百太郎とこまりの姿は無かった。
今野は下唇を噛んだ。
「よくやったよ。」
ゆうぞうは、泣き出しそうな笑顔で今野の肩を叩いた。
「...一旦、アジトに戻らないか?高橋さんとジャイを探さなきゃいけないし。俺達が生きている以上、二人共無事だろうが。」
スギは感情を押し隠す様に言った。
「そうだな、何時迄もはなわさん...多分はなわさんだと思うけど、そこでぐずぐずしているとは思えないしな。」
と、ゆうぞうが言った。
三人は、やり切れない気持ちを抱えて、緑の家に向かった。
841蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/18(日) 15:18:17
地味な上に長文で、ネタ的に、わかりにくい話でしたね。
842名無しさん:2005/09/18(日) 22:59:48
蛙さん乙です。

40組を切りましたね。

皆さんどうなるんだろうか…
843名無しさん:2005/09/19(月) 19:55:09
誰かアンタッチャブルの書いてください。
844843:2005/09/19(月) 19:56:35
わがままいっちゃってすいませんが宜しくおねがいします。
845名無しさん:2005/09/19(月) 20:23:02
>>843
音さんが書いてますよ?
846名無しさん:2005/09/19(月) 20:59:02
>>845
マジですか?探してもなかったようか気がしてたんですが。
過去スレは携帯からなので見れなくてorz
もう一度探してみますね!
847846:2005/09/20(火) 12:36:58
すいません。ありました。本当にすいませんorz
848車 ◆t2l8Buzwsg :2005/09/20(火) 13:00:20
「失礼します!五味さん、到着しました。」
五味一男プロデューサーの元に一人のスタッフがかけこんできた。
そのスタッフの言葉に首を傾げる福澤朗と白石美帆。
「誰が来たんですか?」
福澤の問いに椅子を回す五味。
「残り40組をきったお祝いにちょっとしたイベントですよ」
「イベント…ですか」
五味の説明に口元に笑みを浮かべる白石。
その笑みはまるで状況を楽しんでいるかのようだ。
「どんなイベントですか?」
「大型新人を投入してみようかと思っています」
そういうと五味は一台のテレビに近付いていった。
画面を見て福澤も白石も納得するように頷いた。
「オリエンタルラジオ…ですね」
そこに映ったのはあっちゃんこと中田敦彦。そして、相方の藤森慎吾。

「あっちゃん、どうする?」
「決まってんじゃねぇか…」
二人に慌てる様子はなかった。むしろ落ち着いていた。
まるでそれが当たり前のように。
中田の視線の先には二人に背を向けて歩く摩邪。
「あっちゃんいつものやったげる?」
クスクス笑う藤森の手には鎖のついた鎌が握られている。


オリエンタルラジオの参戦により
【残り40組】
849名無しさん:2005/09/20(火) 17:16:26
>車さん
乙です。ついに途中参戦コンビが出ましたね。これからの活躍が楽しみです。

ところで、そろそろ次スレの事とか考えた方がいい?
850名無しさん:2005/09/20(火) 18:38:28
>>849
まだまだ当分先だろ。
気が早すぎる。
851回 ◆.daECyU2ao :2005/09/22(木) 13:30:50
>>713から

大きい吉田を背負っていると、どうしても息が続かない。
レギュラーの二人は偶然見つけた灯台のような建物に入っていった。

「どっこいせ…っと。」
手が塞がっている為、足で器用にドアノブを開ける。
「重かったぁあ〜!」
吉田をちょうど置いてあったソファの上にゆっくりと寝かせる。
頭に押し当てていたタオルに付いた血は乾いて赤黒く変色していたが、出血はどうやら止まっているようだ。
ほっと息を吐き、すっかり堅くなってしまった肩をポキポキと鳴らした。
未だ吉田が目を覚ます気配は感じられない。
「さってと…なあこれからどうする?…松本君?まつもとくーん?」
いつの間にか自分の隣から松本が居なくなっていることに気付いた。
「西川くーん、来て来て!」
西川はドアを開けた。すると、二つ隣の部屋から松本の声がした。
出て行く直前にちらりと後ろを向き、吉田が寝ているのを確認してドアを閉めた。
「どないしたん?」
さっきまで居た所と比べると随分狭い部屋に入ると、西川はあっ、と声を上げた。
ごちゃごちゃと訳の分からないボタンやランプがあり、足下にはコードが伸びている。
大きなガラス窓の側にある机のような物からは細いマイクが伸びていた。
852回 ◆.daECyU2ao :2005/09/22(木) 13:33:38
「ここ、放送室?」
西川は松本を振り向いて言った。
「なあ、コレでみんなに呼びかけてみん?」
その松本の声に少し戸惑う西川。
放送なんかしたら確実に自分たちの居場所がばれてしまう。
この呼びかけでみんなが集まってくれれば吉。逆に運が悪ければ…。
一種のギャンブルのようだな、と西川は思った。
「西川君、嫌か?やっぱ止める…?」
少し考えて、西川は言った。
「…いや、やろう!何もせんよりかは百万倍マシや。俺は可能性のある方に賭けるで。」
「よかった!」
満面の笑みで笑う松本を見て、つられて笑った。

そして、置いてあったパイプ椅子に腰掛ける。
「帰ったら、何したい?」
「う〜ん、ネタやりたいかな、やっぱ。舞台に立って。」
「俺はゆっくり寝たいわ。」
「ええー何でぇ〜!」
ひとしきり笑った後、真剣な表情で二人はマイクを見つめた。


>>572 乃さんの話に繋がってます。
853音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 19:49:57
だいたひかる編引き継がせていただきます。

>>245-247から
『封印エピソード』

 田上よしえは、ナップザックから取り出した自らの武器を、僅かな月明かりの中で眺めた。
「これ、ピストル? ……うっわ、本物じゃん。弾入ってんじゃん」
 他人に見付かってはまずいはずなのに、わざわざ声に出して確認してしまう。その声も口を噤んだ途端暗闇に溶けて消えて行き、残ったのは寒々しいまでの孤独だった。もう随分長い間ピンでやってきたけれど、相方のいない不安をこれほどまでに感じたのは初めてだ。
 首筋に張り付いた機械にそっと触れる。この首輪の存在は、ピン芸人とそれ以外を、はっきりと線引きしていた。
 自分が生き残るために必死で相方を守る。相方を死なせたくないから、自分も必死で生きる。自分を繋ぎとめてくれる存在――それが、ピン芸人にはない。
 だから、自殺する? あるいは、殺人鬼になる?
「そんなんどっちも嫌だっつーの」
 田上は立ち上がった。小型の拳銃を、お守りのように握り締める。
「あたし、諦めねーかんな……」
 手探りしながら進むしかないのは、いつだって同じだった。それでも女一人で、ここまでやってきたのだ。
「絶対諦めねー」
 男勝りの口調で決意し、田上は戦場を歩き始めた。
854音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 19:51:33
 だいたひかるは歩いていた。少しずつ深くなる夜を、その肌で感じながら。
 風が吹くたび、木の葉の揺れる音が響いて、体の奥がぞくりとした。
 お願いだから、誰もこないで――このまま、何もないまま、終わらせて。
 叶わぬ願いを抱きながら、曖昧な恐怖から逃げるように、一歩、一歩と歩いていく。
 また、物音が聞こえた。
 近くから? 遠くから? 風の音? 違うもの?
 いくつもの疑問符が、頭の奥で、ゆっくりと舞って――本当は、答えを知ってるはずなのに。
 がさり、と、足音が。
「……だれ……?」
 振り向こうとして足がもつれ、思わず木の幹に縋った。後ろに傾いた重心で、背中にあるナップザックを思い出す。
 あれを……使う?
 私が、あれで、人を殺すの?
 また、足音が聞こえる。震える指が、ナップザックをあけて、その中身を取り出す。
 それは、ずしりと重くて、そして冷たかった。まるで、だいた自身すら拒絶しているように――味方なんて誰一人いないのだと、教えているように。
「来ないで……」
 両手で握った銃を、ゆっくりと持ち上げる。銃口は、小刻みに震えていた。力を込めようとすればするほど、それは酷くなっていく。
「こっちに来たら、撃ちます……!」
 喉の奥の微かな震動が、脅迫にもならない、か細い声を絞り出す。
「――そんな震えた手で、ほんまに当てられる思うとるん?」
 関西訛りの甲高い声が聞こえた。
855音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 19:52:49
「撃てるもんなら撃ってみぃや。でも、あたしには絶対当たらんと思うでー」
 恐怖など欠片も混じっていないような、のんびりした声。再び足音が近付いてくる。殺し合いにすら微塵も動じていないこの態度が、だいたひかるを震撼させる。
 来ないで。殺したくないから。殺したくないのに。どうして。こっちに。そんな――
 声の主が――山田花子が、姿を現す。ボウガンが、だいたひかるを狙っている。
「……いや……!」
 意識のすべてが、右手に集中するような、感覚。
 銃声と同時に、だいたは後方へ弾き飛ばされた。反動を支えきれず手放した銃が、宙を舞っているのが見える。銃弾は狙いから大きくそれたのだろう、高い梢の奥で、がつっという音がした。
「ほーら、当たらんかったやないの」
 からかうような調子で言いながら、山田はボウガンを発射した。だいたの右の太腿に、矢が深々と突き刺さる。激痛に言葉をなくしながら、だいたは木の幹で背中を擦るように、その場へ座り込んだ。
 山田が近付いてくる。
「体も張らんと売れるからこんな風になんねんで」
 テレビで見た時と同じ明るい声で、楽しげな表情で、うずくまるだいたを見下ろす山田。
 逃げ出したい――けれど、体を動かせない。
「痛いやろ? もっと痛がりや。それとも――痛がり方もわからんの?」
 迫ってくる山田の顔を見ても、悲鳴すら上げられなかった。怖い――傷の熱など掻き消すくらいの、冷たい恐怖に体が震える。
「あたし、最近の子のそういうとこ、大っ嫌いやわ。ブームかなんかに乗っかって、ぽっと出のくせに売れよって。せやから――」
 山田はちらりと後ろを見た。
「靖さん、この子、二度とテレビに出れんようにしたってや」
856音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 19:54:27
 山田の視線の先で、石田靖が立ち上がる。彼の手の中では、月の光を浴びたナイフが無慈悲な輝きを放っていた。
「ほんまにええの? 俺が思ってる通りにしたら、俺も花子も鬼畜やで」
 言葉とは裏腹に、石田の眼は、これから起こる出来事への期待にぎらついている。
「何言うてんの。バトルロワイアルなんて、鬼畜のためのゲームやで。――あたしらが勝者になるためのゲームや」
 山田の言葉に、石田は満足そうに頷く。
「おし、花子がその気なら、俺も思う存分やらしてもらうわ」
 石田がだいたに歩み寄り、ナイフを眼前に突きつけた。だいたは立ち上がろうとしたが、右足の痛みがそれを妨げた。
「ほら、逃げても無駄やで」
 屈み込んだ石田は、ナイフをだいたの首筋に沿わせた。すう、と、背筋の寒くなる感触。浅く破れた皮膚が、外気に触れてひりひりと痛む。
「……あなたたちには、プライドとか、ないんですか?」
 指先で地面に触れながらだいたは問うた。石田はその問いを、鼻で笑う。
「プライドがなんぼのもんや。んなもんが、生き残るための役に立つんか」
「そんなもん、一番先に捨てたもんの勝ちやねん――芸能界でも、バトロワでもな」
 一歩離れて見守る山田の言葉が、石田の答えに重なった。
 その答えに、だいたは笑う。絶体絶命の状況だというのに、笑う。
「言い訳ですか? そうする事でしか、自分を保てない事への」
 だいたの手が、動きを止めた。
「あなたたちは――こんなゲームで若手芸人に殺されるのが、怖いだけだと思う」
 ぐっ、と左手を、握り締めて――
857音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 19:56:01
「やかましいわ」
 腕を持ち上げようとした瞬間、左肩にナイフが突き刺さった。力の抜けた左手から銃が滑り落ち、ガシャン、と音を立てる。
「アホやなぁ、油断してる思うたんか?」
 石田はだいたの肩を踏みつけ、ナイフを引き抜いた。痛みで体が引き攣り、後頭部が幹にぶつかる。
「ナメんのもたいがいにしぃや」
 石田の足が傷を蹴り付ける。堪え切れず涙を流すだいたを見て、石田と山田は声を上げて笑う。
「もう強がりは終わりか?」
 ナイフが左の頬を切り裂く。熱い液体がどろりと溢れて顎を伝った。
「ほら、テレビに映れん顔になるでぇ!」
 右頬にも同様の傷が付けられる。
「やっ……、やめて」
 やっとの思いで搾り出した叫びを、石田は鼻で笑い飛ばす。
「やめるかい。こっから先が最高のショーや」
 だいたの鳩尾に向けてナイフが振り下ろされた。しかしそれは、だいたの皮膚を切り裂く事はなく、その紙一重の位置を滑り降りる。
 切り開かれた衣服が大きくはだけ、だいたの素肌が晒された。
「ハハッ……わかっとるやろ? このバトルロワイアル、テレビ中継されとんのや。今、日本全国のお茶の間に、お前の裸が映されとるんやで?」
 だいたは言葉にならない悲鳴を上げた。残った右手で衣服を掻き合わせ、大きく首を振る。唇だけがうわ言のように、もう、許してと繰り返していた。
「なんでやねん。ここまで来たら、もう最後までいったって同じやろ……なあ?」
 石田の手は、ゆっくりとだいたの腰へと伸びていく。
 だいたはきつく瞳を閉じ、全身の力を抜いた。抵抗なんて無駄なのだと、そう悟ってしまったから。

 どこかでパン、と乾いた音が響いた。そして、石田の動く気配。
「なんやおま――」
「そっから離れなさい! 今すぐ!!」
 この場にいなかったはずの誰かの声に、だいたは目を開いた。視界に入ったのは、体だけ振り向いた石田と、ボウガンを構えた山田、そして――
858音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 19:57:41
 田上は震える右手に左手を添えるようにして、銃を構えていた。
 一発目の衝撃がまだ残っている。当てるつもりはなく、警告のために真上に向けて撃っただけなのに――あれが人を殺せる武器だと認識した瞬間、恐怖が神経を伝って全身に巡った。
 でも、逃げるわけにはいかない。見過ごすなんて出来ない。
 田上はだいたに視線を送る。座り込んで震えているだいたは傷だらけで、切り裂かれた顔は、まるで血の涙が流れているようだった。
「あ、あんた、この子と同じになりたいんか!?」
 山田はボウガンを田上に向けようとした。しかしそれよりも早く、銃弾が山田の右腕を抉る。
「あ、痛ぁっ!」
 山田は悲鳴を上げてうずくまった。
「花子――てめっ!」
 石田が立ち上がり、ナイフを振りかざして迫ってくる。
 田上は迷わず引き金を引いた。石田がだいたにした事など、一目見ればわかる。石田の脇腹から鮮血が散った。しかし石田は、何事か喚きながらさらに突進を続ける。
 紅く染まったナイフと石田の形相の恐ろしさに、思わず上げそうになった悲鳴を、田上は歯を食いしばるようにして耐えた。こんな所で「女」の自分を見せるわけにはいかない。
 連続で引き金を引く。2度の銃声と、石田の叫び声。一呼吸置いて恐る恐る目を開けると、石田は胸から血を流し、仰向けに倒れていた。
「や、靖さん! 嘘やろ!?」
 山田は既に動かなくなった石田に縋りつく。首輪は電子音を発していたが、山田はそれに構う事もなく、石田の名を呼び続けていた。
「靖さん……嫌や、こんなところで――」
 首輪が爆発し、山田は石田の上に倒れ伏した。
859音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 19:59:21
「だいた!」
 田上はだいたに駆け寄る。
「良かった、間に合って――」
「近寄らないで!」
 突然、だいたが叫んだ。田上も、他の誰でも見たことのない、すさまじい剣幕だった。
「こっちに、来ないで……」
 だいたの右腕が持ち上がる。
 その手に握られた銃の、その先は、田上に向けられている。
「……どうして」
 途惑いながらも、田上は足を止める。
「あ、あなたも……田上さんだって、同じでしょう?」
 立ち尽くす田上にぶつけられた、ネタ中の口調からは想像も出来ない、高く、震えた声。
「私が、売れたから……エンタで有名になったから、妬んでるんだ」
「ちが――」
 田上は否定しようとして、止めた。
 震えて狙いが定まらない銃口と、涙すら枯れ果てたかのような真っ赤な眼。
 今のだいたには、きっと誤魔化しは通用しない。
「――そうだね。そうかもしれない」
 だいたが息を呑むのがわかった。
 オンエアバトルで言えば、だいたは田上の後輩に当たる。だいたがテレビに出始めた頃の田上は、既に女ピン芸人でありながら何度もオンエアを獲得していた。
 しかし、他でもないエンタによって、二人の立場は逆転した。だいたや青木、摩邪らエンタに推された芸人たちに、田上はあっという間に追い抜かされてしまった。
 その事について、何も感じなかったと言えば嘘になる。
「だけど、一人で戦わなくちゃいけないピン芸人の気持ちはわかるよ。失敗して落ち込んだ時も、成功して妬まれる時も――いつだって孤独なのは、アタシも同じ」
 田上は一歩だけ、だいたに近付く。
860音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 20:03:01
「だからさ、こうやって銃向け合うのは、やっぱおかしいって。こんな時こそ、一緒に戦わなきゃ――協力しなきゃ、生き残れないじゃない」
 出会った人間全てを殺す事が、ピン芸人が生き残るための正しい方法だろうか?
 田上にはそうは思えない。周りの人間全てを敵に回して、勝ち抜けるはずがないではないか。それに――田上は知っている。最大の敵は、孤独なのだと。
 誰かと一緒に生き延びる事など出来ないのかもしれない。だけど、信頼できる仲間がいるなら――ほんの少しだけ、「この先」に希望が持てる。
「……田上さんは、怖くないんですか? 裏切られる事が」
「そりゃ怖いよ。でも――仲間がいないって事の方が、ずっと怖いね」
 田上はだいたに背を向けたかと思うと、いきなり芝居がかった様子で振り向いた。
「あれっ、こんな所にいるじゃんちょうどいいのが! 良かったー、これでもう怖くない!」
 田上の言葉に、だいたは微かに笑った。
「嬉しいです……そんな風に言ってもらえるなんて」
 こんなに穏やかな気持ちになれたのは、久々のような気がする。
「私、ずっと一人でやってきたから……仲間だなんて言ってくれたのは、田上さんが初めてでした」
 だいたは静かに、銃を握った右手を引き寄せる。
 そして、自分のこめかみに当てた。
「ちょっ、何して――」
「でもやっぱり、あんな姿を日本中の人に見られて、生きている事なんて出来ない。たとえこのゲームで生き残ったって……顔の傷も、あんな事をされたって過去も、消す事は出来ないでしょう?」
 ぽたり、と、紅い雫が顎から落ちる。赤黒く染まった頬の上に、鮮やかな紅色が一筋走っている。
 あるいは――それは本当に、だいたの流した血の涙だったのかもしれない。
861音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 20:04:21
「だいた……」
 田上は、両手を握り締めて俯く。
 悔しかった。結局自分も無力なのだと、思い知らされたようだった。
 けれど、どうすることも出来ない。一度起きてしまった事は、なかった事になど出来ないのだ。
 このゲームで死んだ人間が、二度と生き返らないように。
 田上はだいたに背を向ける。
「あたし、また、一人ぼっちだ」
 だいたを責めるつもりはないけれど、呟かずにはいられなかった。
 その言葉を、だいたがどう受け止めたのかはわからない。ただ、だいたの最期の言葉は、田上の耳にも届いていた。

「弱い人間で、ごめんなさい」

 銃声が響くと同時に、田上は再び歩き始めた。
862音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 20:06:02
「残念だなあ、実に残念だ」
 無数のモニターが並べられた本部の一室で、プロデューサーの五味はそう口に出した。
 彼の視線は一つの画面に向けられている。何故かそこには何も映し出されておらず、灰色の砂嵐が延々と流れているだけだった。
「あれがきちんと映っていれば、高視聴率間違いなしだったのになあ」
 その画面には、だいたひかると靖&花子、そして田上よしえの戦いをベストアングルで撮影したカメラの映像が映るはずだった。
 しかし、五味の期待は思わぬ形で裏切られる。だいたが山田花子に向けて放った銃弾、反動のせいで大きく狙いからはずれたその弾が、隠しカメラに当たってしまったのだ。
 そこから先は、当然映像を見る事は出来なかった。しかし、首輪には盗聴器が仕掛けられているから、音声を聞けばそこで起こっている出来事くらい容易に想像が付く。
 普段のエンタならば当然放送出来ない内容である。しかし、バトルロワイアルをしている今なら――最大の禁忌であるはずの殺人ですら放送している今なら、あの出来事も視聴率上昇に一役買ってくれたに違いない。
 いっそ音声だけでも流そうと提案したスタッフもいた。しかしその方法は、テレビの良さを最大限活かすという五味の信条に反していた。自分の信念を曲げる事は、五味にとって一番許せない事だったのだ。
「まあ仕方ないさ、生放送にハプニングは付き物だからな」
 エンタ芸人の中でもわりあい知名度の高いだいたが、かなり早い段階で死んでしまったのは残念だが、視聴率を上げてくれそうな芸人はまだまだたくさんいる。プロデューサーが芸人一人の死をいちいち惜しんでいるわけにはいかないのだ。
「だいた抜きでも視聴率の上昇はすごいしなあ。どこまで行くか楽しみだ」
 スタッフの一人に呼ばれ、プロデューサーはモニタールームを出て行った。
863音 ◆yOLxh0F1.c :2005/09/22(木) 20:09:01
 田上よしえは歩いていた。ただひたすら歩いていた。
 右手には、残り一発になってしまった拳銃。
 あたしはまた誰かを殺すのだろうか。今度は誰かを救えるだろうか。
 武器がこれだけでは、生き残るのは難しいかもしれない。
 どうせ残り少ない命なら、誰かのために生きて、誰かのために死のう――田上はそう決意する。
 そして――出来る事なら、自分と同じピン芸人に、教えてあげたい。あなたは、独りじゃないってことを。
 滲んだ視界を左手で擦る。
 泣いてちゃ駄目だ、笑顔じゃなきゃ。明るく強気が田上よしえの良さなんだから。
「あたしは、諦めねーかんな」
 空の彼方に向けるように、顔を上げて、田上は呟く。
「だから……出来れば、見守っててよ」
 たった一人の仲間に向けて。

【靖&花子――死亡】
【だいたひかる――死亡】
【残り38組】

>>423-427に続く。

むちゃくちゃ長くなってしまいましたが、どうしても一気に投下したかったので…。
読んでくださった方、お疲れ様でした。
864名無しさん:2005/09/22(木) 21:15:00
音さん、乙です!
一気に夢中で読んじゃいました
もう一度田上さんの話を読み返し、感動して泣いてしまいました…
865乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/09/22(木) 22:22:25
今日何故かまとめサイトにログインしようとしてもできず、結局うpできませんでしたorz
現段階で103話です。100話超え、作者の皆さん乙です。
オリラジも名簿に加えとく予定です。残り40組もきったし(でもこれから途中参戦が3組ほどくkるかも)
完結目指してこれからもがんがりましょう。
866蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/23(金) 17:26:40
「今思ったんだけどさ。」
ジャイがタバコの煙を吐き出しながら言った。
「一寸、耳貸して。」
ジャイは高橋の耳元に顔を寄せた。
「もしもの話だよ。もしプロデューサーの奴らがそこ迄考えていなかったら、このゲームを盛り上げるいいヒントをあげる事になっちゃうから。」
ジャイは、ここにも仕掛けられているだろうマイクやカメラに、声を拾われない様に、唇の動きを読み取られない様に、ひそひそ声で、口元を手で隠しながら言った。
「最後の一組迄殺し合えって奴ら、言ってたけどさ、最後の一組になったら、何が待っているんだろう?」
「え?」
「その最後の一組は、無事に家に帰してやるなんて、奴ら一言も言ってないよね。」
「...」
「最後の一組になったら、今度は最後の一人になる迄殺し合いをさせるとかさ、ピン芸人だったら、それはそれで別に新たな殺戮の場を設けるとかさ。公開処刑とかね。俺の、聞かれたらマズイ話は此処迄。」
今度は高橋が、ジャイの耳元に顔を寄せ、口元を手で隠し、ひそひそ声で話し始めた。
今野の承諾無しにこの話をするのは一寸躊躇ったが、思い切って話す事にした。
「俺と今野で最初に話したんだけど、このゲームをぶっ潰そうって。でもやり方がわからなくて、仲間を探してて。ジャイさん、この話、乗らない?俺も、聞かれたらマズイ話は此処迄。」
「いいのかよ、俺なんかが...俺、もう何人か殺して、番組にある意味貢献しちゃってるのにさ。」
もう此処から先はマイクで声を拾われても意味がわからないだろうと、普通に...と言っても小声で、何時もの笑顔を浮かべて言った。
だけど、その眼からは、闇しか見えない。だからこそ...高橋は力強く、でも小声で、
「だからだよ。それに死ぬのはジャイさんだけじゃないよ。」
「...そうだったな。俺も、今の所いい案は思い付かないけど。続きは、あいつらと今野君と合流してから、アジトで話そう。あの緑の家の中には、マイクもカメラも仕掛けられてないみたいだしな。」
三人も俺達も無事、生きて合流出来たら...二人共、そう思った。
「それにしてもジャイさんさあ...息がヤニ臭い。」
「悪かったよ。」
ジャイは又タバコに火を付け、不貞腐れ気味に言った。

今野、スギ、ゆうぞうは用心深く、緑の家に戻った。
867蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/23(金) 17:27:52
用心しながら、ドアを開けた。家の中には、誰も居なかった。壁には、マシンガンの弾丸が食い込んでいたが。
「取り敢えず、二人を探さないと。」
今野が言った。
「ああ、俺達が生きている以上、二人共生きている事は間違いないんだけどな。何か手掛かりがあるといいんだけど。」
ゆうぞうが言った。
「此処の茂み、掻き壊されてるね。確か、高橋さんとジャイ、こっちの方へ走って行ったし。」
スギが見つけた。
三人は、茂みを抜け、道に出た。
が、道の左右、どっちの方向へ走っていったか、わからない。
「せめて、足跡でもあったら...」
とゆうぞうが言った。
「取り敢えず、こっちの方へ行ってみる?」
と言う今野に、スギが、
「否、こっちだ。多分これ、ジャイの血だ。あいつ、手怪我してたから。」
と、道にこびり付いている血痕を指した。
「もしかすると、はなわさん、この跡を着けて行ったかもしれない。」
三人は、無言で、でも襲撃に遭わない様気を付けながら、走り出した。

「そう言えば、顔の傷、綺麗に跡形もなく治ったね。」
高橋は右頬を撫でた。確かに、傷の凹凸もなく、何時もの肌だった。
「いやー、良かったね、せっかくの男前がねえ。」
「だーれーが、やったと思ってるんすか。」
「俺。」
「全く。それに相方がああだから、男前に見えるだけ。実際もてないし。タバコ、一本貰ってもいい?」
「あれ、タバコ吸わないんじゃなかったっけ?」
868蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/23(金) 17:29:45
「うん...何となく吸ってみたくなってね。」
三人の事、それからさっきのジャイが言った事。高橋は不安感を紛らわせたくて、吸えないタバコを吸ってみたくなった。
中学の時以来だな、と高橋は思った。
ヤンキーになったり、暴走族に入ったり、シンナー吸ったりする程ではないが、一寸悪い事をしてみたくなる年代だ。
と言っても、仲間内で缶ビール一本位で盛り上がったり、拾って来たエロ本を見てわーわー言ったりと、大人になった今となっては、他愛の無い事だが。
その時も、試しにタバコ吸ってみて、思い切りむせて、吐き気がして、それ以来吸ってなかった。
そう言えば夜中こっそり家を抜け出して、白ポストの中を漁った事もあったな。そう思いながら、タバコに火を着けた。ゴミしか入っていなかったけど。
吐き気こそしなかったが、思い切りむせた。
「無理矢理タバコ吸ってる、中坊みたい。タバコなんて、おぼえない方がいいよ。」
むせながら高橋は、
「上から物言うね。」

咳が治まると、高橋が、
「この十年か二十年位で、白ポストって、見なくなったよね。」
「白ポストかあ...」
ジャイは遠い眼をした。
「あれでしょ、未成年に有害な書物・雑誌類は此処に捨てて下さいとか何とか書いてあるポストでしょ?で、漁ってみるとゴミしか入ってないの。」
「あ、ジャイさんもやったんだ。」
「大人になった今考えると、ゴミ箱代わりにされるの、当たり前なんだけどね。だからだろうね、白ポストなくなっちゃったの。」
それをきっかけに、二人は猥談を始めた。
白ポストで、何かコント出来ないかな...今の若い子にはわからないか。
ジャイはそう思った瞬間、はっとした。
俺...まだコントやりたいって思っているのか...あれだけ、人を殺しておいて。
否、今は考えるのをよそう。ジャイは気を紛らわす様に、敢えて猥談に意識を向けた。
高橋さんだって、不安で、走り出しそうな気持ちを紛らわす様に、猥談に意識を向けているんだから、と。

「あれ、あっちから走って来るの、今野君じゃない?」
869蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/23(金) 17:31:16
今野、スギ、ゆうぞうが駆け寄って来るのが、見えた。
「本当だ。」
高橋は今野に駆け寄った。ジャイは涼しい顔をして座っていたが。
「良かった、無事で、本当に。」
喜ぶ高橋に今野はむっとした様な顔で、
「こっちは必死に探してたのに、何楽しげに話してたんだよ。」
スギは座っているジャイに駆け寄った。
「おせーよ。」
と言うジャイに、スギはツッコミを入れる時の様に頭を叩いた。
「お前の方からも歩み寄れよ。」
「ひでーな、怪我人に。」
「あ、そっか、怪我、大丈夫か?」
「今の、スギのツッコミの方が痛てえよ。」
今野は、高橋が持っているサブマシンガンに気が付いた。
「パーケン...」
「ん?」
「否、何でもない。」
何でそれを持っているの?誰か...多分はなわさんを、殺したの?その言葉を飲み込んだ。
五人は、緑の家に向かって、歩き始めた。
ジャイは今野の服の袖を引っ張って、他の三人に聞こえない様に声をひそめて言った。
「高橋さんは命がけで俺を守ってくれた。で、俺がはなわさんを殺した。」
それだけ言うと、ジャイは又涼しい顔をした。
それだけだと状況はわからない。でも、ジャイが何を伝えたかったのかは、わかった。だから今野はただ、こくん、と頷いた。でも、
「それにしてもジャイさんさあ...息がヤニ臭い。」
「悪かったよ。」
ジャイは不貞腐れ気味に言った。
870名無しさん:2005/09/23(金) 19:58:24
>>853->>863
田上姐さん・・・。
音さん、乙です。
871名無しさん:2005/09/23(金) 23:06:43
蛙さん乙です。
話の前に、前の話のアンカーをつけてくれたら嬉しいです。
どこからの続きか分かりやすいし…
872名無しさん:2005/09/24(土) 14:34:10
音さん乙です。
田上さんやっぱ好きだー。
文章が普通にうまいです。
長文乙です。今後も頑張ってください。

蛙さん乙です。
続きが読めなくていいです。
今後も頑張ってください。


873872:2005/09/24(土) 18:43:28
あ、勘違いしてたらごめんなさい。
>>蛙さん
先が読めない、ってことです。
874アんガールズ:2005/09/24(土) 19:53:23
ジャンガジャンガジャンガジャンガ
875IQ30:2005/09/24(土) 22:07:12


お笑いブームのさなか、お笑い芸人さんの名前と顔が一致し無いどころか


名前を聞いても顔を見ても判りません。



どうしたらよいのかアドヴァイスおねがいします。
876乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/09/25(日) 01:52:35
http://obr2ine.fc2web.com/index.html
まとめサイト更新しました。お絵かき掲示板や投票も凍結状態なので
皆さん利用してください。
877蛙 ◆GdURz0pujY :2005/09/25(日) 13:56:51
>871さん
ありがとうございます。確かに、アンカーつけないと読みにくいですね。
次回から、そうします。

>873さん
勘違いしてませんでしたので、大丈夫です。
ありがとうございます。

>乃さん
まとめサイト更新、乙です。
何時もありがとうございます。
878名無しさん:2005/09/29(木) 22:52:05
乙!
皆さん相変わらずいい文章書かれててとても読み応えがあります。
879回 ◆.daECyU2ao :2005/09/30(金) 10:25:58
>>824から

「殺す前に、いっこ聞いときたいのがあんだけど。」
淡々とした口調で、阿部が言った。田中は、目の前の光景とその現実に頭が混乱し、阿倍の声は耳に入らなかった。
山根も、身動き一つとらずに堅く目を瞑っている。
「…吉田を連れて行ったのはあんたら?」
その言葉に少しだけ田中が反応し、顔を上げた。
よく見ると襲撃してきたのは阿部一人のようで、普通なら、ましてやこのゲームなら尚更隣に居るべきはずの相方の姿が無かった。
はぐれたのだろうか?“連れて行った”と言っていることからもしかしたら誰かに拐われたのかもしれない。
ただ、知っていると答えても、知らないと答えても、目の前の小鬼はためらいなく引き金を引いてしまうだろう。
…今の彼は、そんな奴だ。

(あー、もう駄目だ…!短い人生だったよ…)
「何だ、知らないんだ。…じゃあもう死んでいいよ。」
阿部が引き金に指を掛けた、その時、

「あ…わ、私っ……!」
友近が声を上げた。多少上ずっているものの、いつもの凛々しいはっきりとした声だ。
その声に阿部の指がぎりぎりで止まり、山根は恐る恐る眼を開けた。
息を整え、友近は続ける。
「私…知っとるよ。あんたの相方さんの居場所。…探してんのやろ?あの〜…吉田君を。」
「本当ですか…?」
僅かながら、阿部の目の色が変わった。彼も意外だったようだ。
「うん、だから、そこに連れて行ってあげるから、この子たちは見逃したってくれんかな…?」
田中と山根の視線が友近に向けられる。
880回 ◆.daECyU2ao :2005/09/30(金) 10:28:10
「友近さ…」「えいから黙っとき」
ネタ中の極妻のようにぴしゃりと田中を叱咤する。
阿部は暫く眼を伏せて考え込んだ。そして、山根の頭からゆっくりと銃口の硬い感触が消えた。
それを見た田中は、阿部の気が変わらない内にと、山根の手をグイッと引っ張り、自分の後ろに隠した。
「…いいですよ。どうせこの人たち、ほっといても途中で死ぬのが眼に見えてるし。」
「良かった…助けてもらえるんやね…」
友近がほっとした表情を浮かべる。そして、立ち上がると、抱きかかえていた猫を山根の膝に乗せる。
猫は煩く鳴くこともなく、大人しかった。
「この子の事、宜しくね」
田中は、はっと息を呑んだ。自分たちは、彼女の機転のおかげで生き長らえることが出来た。しかし、彼女の方はどうなる…?

「待って…、待ってください!友近さん!」
友近はもう一度しゃがみ込んで「大丈夫」と手を振ると、外に出ようとしている阿部の目を盗んで、置いてあったサブマシンガンをこっそりナップザックの中へ忍ばせた。
「田中君、これ借りるで。あと、こっからはもう離れた方がええ」
そう言うと、友近は踵を返して阿部の元へ向かった。

森の奥へ消えていく阿部と友近の姿が点になって見えなくなるまで、田中と山根は声を上げる事もなく、力なく座っていた。

「みゃあ」
と、猫が一声鳴くと、山根はその小さな頭を撫でながら言った。
「女の子に助けられてしもうたなぁ…」
「言うな、それを。」
田中も、やっと言葉を紡ぐ。
「はあ〜……情けねぇ〜……」
二人の姿がこの建物から消えるのは、これから一時間も後のことだった。
881名無しさん:2005/10/01(土) 22:04:55
保守age
882名無しさん:2005/10/02(日) 10:42:33
>回さん
友近、男前やねぇ、いい意味で。
今後の展開が楽しみです。
883名無しさん:2005/10/03(月) 07:29:00
書き手さん乙です!
ドキドキしながら読んでます。
個人的には次課長の続きが気になる…
884乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/10/03(月) 14:41:34
>>793-795の続き。


再び島に静寂が訪れた。昼間だというのに少し薄暗い。
曇り空はまるで参加者達の心を映しているかのようだった。

無機質な金属の小さな小屋。
その扉が開き、中から姿を現した男の服は血で染まっていた。
マシンガンを片手に持ち、辺りを見回す。
あの放送に釣られてここへ来た者はどうやらいないようだ。
Diceは自分のナップザックから地図を取り出し広げた。
ここは放送室。ここから近くて人が密集していそうな場所は――。
次の計画を考えるDiceは、
たった今、レギュラーの2人をマシンガンで撃ち殺した罪悪感など微塵も感じていなかった。
むしろ久しぶりの殺人に快楽を感じ、次の獲物を求め人が溜まっていそうな場所を探していた。
優勝。
ただそれだけが彼の揺ぎ無い目標であった。

 「!?」
地を踏むような物音に、素早く体を回転させマシンガンを構え引き金を引いた。
ぱらららららっ とリズミカルな音を発し、マシンガンが火を噴く。
もうこの衝撃にも慣れてきたところだった。
これくらいでいいだろう――。
そう思い発射を止めた銃口の先には蜂の巣になった塩コショーの2人が転がっていた。
 「よし!次行くか!!」
撃ち殺したのは誰なのかの確認すらせず、Diceは立ち上がり動きだした。

――塩コショー死亡

【残り37組】
885乃 ◆5DYYl3NWdY :2005/10/03(月) 14:44:57
>>884 訂正。レギュラーも死んでたので

――レギュラー死亡 【残り36組】

でした。スマソ

>>883
次回は次課長らを書くのでお楽しみに。
といっても結構先になる予感。事情により、PCに触れる時間が激減するので。
でも今後も執筆は続けていくんでよろしくお願いします。
886名無しさん:2005/10/03(月) 22:54:58
乃さん乙カレー!
レギュラーらしい死に方でした。
文才ありますね、読みやすいし、国語力があるなぁ…と関心です。
次回次課長楽しみに待ってます!!
887名無しさん:2005/10/04(火) 17:35:52
>>885さん
えっと、ポイズン吉田くんは運よくDiceに気付かれることなくソファーに寝たままなのかな?
だとしたらその後の吉田クンの展開が面白くなりそう ワクワク
とりあえず乙です。
888現在生存者:2005/10/06(木) 18:22:54
29スピードワゴン          
9アンタッチャブル
14インパルス
26次長課長
42ドランクドラゴン
アメリカザリガニ
7アンガールズ
21キングオブコメディ
67ライセンス
4あべこうじ
8アンジャッシュ
47波田陽区
13インスタントジョンソン
61マギー審司
63南野やじ
51ハローケイスケ
62魔邪
69レム色
11いとうあさこ
2.赤いプルトニウム
3アップダウン
5アホマイルド
15エレキコミック
17ガリットチュウ
20キャン×キャン
889現在生存者2:2005/10/06(木) 18:31:21
31Dice
39テツandトモ
40東京ダイナマイト
41どーよ
43友近
45ななめ45゚
52ハローバイバイ
58POISON GIRL BAND
*南海キャンディーズ
*オリエンタルラジオ
計35組  
うはwwww人数アワナサスwww

途中参加予定者:18KIN,くりぃむしちゅー,U字工事
上記3組足したら38(39?)
890名無しさん:2005/10/07(金) 01:49:44
なんでエンタの神様なのにくりぃむが出るの?なんでもあり?
891名無しさん:2005/10/07(金) 12:01:23
>>890
エンタ以外からの途中参加者もありなんだって
最初の方のレス読んだら多分あったはず
でも途中参加者なんていらないと思うけどね
結局書き手の自己満足なんだし
だったらエンタって囲わなくても良いんだし
892名無しさん:2005/10/07(金) 12:34:52
くりぃむはエンタじゃないからここには書くなよ
エンタで囲う意味ないじゃん
893名無しさん:2005/10/07(金) 12:40:53
>>892
禿しく同意。
くりぃむはエンタとはカテゴリ違う。

最終的には書き手同士の話し合いだってしなきゃいけないのに、これ以上に増やしたら(ry
894プロデューサー ◆NejRXmXc5Y :2005/10/07(金) 18:01:01
2での番組特別ルール
「エンタに出演してない芸人も書き手がどうしてもというときに限り、
後から送り込まれてきた設定で登場可能」(無駄に人数を増やさない為)

エンタに送り込まれてくるのはエンタ芸人レベルの知名度の芸人。以上。
895回 ◆.daECyU2ao :2005/10/07(金) 18:46:08
>>884 吉田サイド

耳をつんざくようなマシンガンの轟音に、吉田はハッと目を覚ました。
しかし怠さから身体を起こすことが出来ない。目をきょろきょろさせ、ようやく此処が建物の中だということに気付いた。
段々と五感がはっきりしてくると、硝煙の臭いが漂ってきた。それと同時に、ゆっくりとした革靴の足音も聞こえた。
足音は段々と近くなり、部屋のドアの前でぴたりと止まった。
……さっきマシンガンを撃った人物が、目と鼻の先に居る。
吉田がゆっくりと上体を起こした、その時――。

ガチャガチャと部屋のドアノブが乱暴に回された。だが鍵が掛かってあるのか、ドアは開かなかった。
それでもドアの向こうの人物は執拗に、先程より激しく、苛ついたようにドアノブを回し続ける。
吉田は恐怖からうっかり声が出ないように、慌てて手で口を押さえ息を潜める。
気付かれたら最後、助からない。

――ドンッ!
「………っ!」
今度は大きな打撃音と共に、ドアが大きく軋んだ。思わず立ち上がり後ずさりをすると、ソファの腕に躓き尻餅を着いた。
その状態のまま尚も後ろに下がると、壁に背中が当たった。扉の向こうから足で蹴っているのだろう。
何度も、何度も蹴られたドアは、次第にヒビが入り、木屑が散り、白いペンキの塗装が振動に合わせて剥がれていく。
メキメキ、と音を立て壊れていくドア。多分もう二、三発蹴りを入れれば、完全に壊されてしまうだろう。
ドアが壊れていく音に、吉田は目を瞑り耳を塞いだ。心臓が今まで経験したことが無いくらいに大きく響く。
896回 ◆.daECyU2ao
すると突然、ドアを蹴る音がぴたりと止んだ。
ちっ、という舌打ちと共に、再び足音がし、階段を下りる音が聞こえ、段々遠ざかっていった。
どうやらあと少しの所で諦めたらしい。

助かった―――?
静寂が訪れた部屋の中で、吉田は乱れた息を整えながら何とか精神を落ち着かせようとした。

ふと、二つ隣の部屋から物音が聞こえた気がした。
脱水症状で一時的に弱った身体を何とか支えながら部屋を出ると、そこには血の足跡があった。
吉田はその足跡をゆっくり目で追う。一つの小さな部屋からその足跡が始まっていた。
その部屋のドアは開けっ放しで、生臭い血の臭いが廊下中に広がっていた。
手で壁を伝いながらよろける足を引っ張り、部屋の中を覗いた。そこには、二人の人間が椅子に座っていた。
「あ……松本さん、西川さん!」
椅子に座ったままぐったりとしている二人に駆け寄り、身体を揺する。
「松本さ、……っ!」
ぬるりとした感触が手を伝い、驚いて自分の手の平を見る。
そこには、赤黒い血がべっとりと付いていた。
吉田は息を呑み、ゆっくり手から視線をずらしその光景を見つめた。

身体に無数の穴を開けられ、机に突っ伏しているレギュラーの二人。自分を此処まで運んできてくれた人たちだ。
床には大きな赤い水溜まりが出来ており、机の端からピチャン、ピチャンと血が滴り落ちている。
壁やガラス窓には血の手形がいくつも付けられ、苦しんで死んだであろう形跡が残っていた。
そして、ようやく吉田は二人が「死んでいる」事に気付いた。