>>857 おぎやはぎ催眠ver.楽しみに待ってます
そして保守
>857
861 :
名無しさん:2005/12/19(月) 14:07:51
age
アイラブ矢作?
目が覚めると体育館のような所にいた。
周りには眠っている人がいる。ほかにも起きて隣に寝ている相方を気にしていたり、泣いていたり、笑っていたり。
…小木は?
そう思って隣を見た。ちょうどだるそうに起きあがった小木がそこにいた。
思い出した、自分は殺されたんだ。…小木に。
「え、矢作?ここどこ?」
「俺もわかんねぇよ…」
そうだよ。何で生きてる。あの時死んで無かった?ならここはどこなんだよ。
「おぎやはぎのお二人ですね」
背後から声がかかった。
「え、あ…はい」
その給食着のような物を着た女性は、自分達の脈をはかり持っていたボードに何か書き込んだ。事務的な行為を済ませると、"失格"とかかれたワッペンをひとつづつ自分達に渡した。
「それを胸にはって置いてください」
「はぁ…」
横にいる小木はだまって胸につける。
状況が全く理解できない。というかできるわけがない。
「…あの、これは何なんですか」
「失格者に渡すワッペンです」
「いや、そっちじゃなくて…」
「何が起こってるかでしょ」
そう、それ。ナイス小木。
「集団催眠実験です」
「はぁ?」
「皆さんを集団催眠の実験台にさせてもらいました。今までのことは夢です。死ねば起きます」
わかんねぇよ。さすがの俺でも許容量超えるよ。死ねば起きるって変な日本語だなおい。
「これ以上はいえません」
そういって、給食着の人は立ち去った。
まだ聞きたい事は残ってたんだけど。
「…アイラブ矢作、ってなんなんだよ」
とりあえず一番の疑問を聞いた。
「え…はは…」
気まずそうに笑う。
「別に…、怒ってないから、俺のが悪いし」
俺は小木に殺されたけど、多分それは、俺を助ける為、に。あの時の自分は狂ってた。狂ってたよ。
「だから、」
今、普通でいられるのも、
「ごめん。ありがとう」
小木がいたから。
「…やはぎぃ」
「泣くなって、きめぇよぉ…」
俺も泣いてるし。本当になぁ、夢でよかったよ。
泣きやんだら、謝りにいこう。
許してくれなくても、謝らなくちゃいけない。
でも、顔をふせて泣いている相方を見ると、涙は止まるのは当分先になりそうだった。
乙です!
いいですねおぎやはぎ。
本編の最後があんな感じだったのでちゃんと元に戻ってよかったです。(矢作が)
866 :
心配性:2005/12/23(金) 11:49:51
>>787 「それ下ろせよ、危ないだろ」
静かに、諭すように手を差し伸べる。
「何でよ」と冷たい返事が返ってきた。
「俺はお前を守ってやるって言うとるんよ」
「そりゃあ、死にたくないと思うのは悪い事じゃないよ。でも、人殺しだけはしないでくれ」
「今更!」
山根が感情を露わにして怒鳴った。
急に態度の豹変した相方に、田中の思考は追いつかない。
確かに自分は弱い。そのうえ気も弱い。
背だけ異様にぐんぐん伸びる一方で、おまけにこの容姿の所為で周りから気持ち悪がられろくにバイトにも就けなかった。
そんな中やっと自分の存在を主張できる仕事を手に入れた。
自分によく似た相方も一緒だ。
生きてて良かった、と心から思った瞬間でもあった。
それが何故、こんな事に。
何処で歯車が狂ったんだろう。こんな事これっぽっちも望んでないのに。
867 :
心配性:2005/12/23(金) 11:51:05
「それ、捨てて。頼むよ!」
いつもの余裕のない喋り口調が更に酷いものになる。
「うるさい」
田中は咄嗟に、小銃を拾い上げた。
村正に気を取られたときに、山根がうっかり落としてしまったものだ。
ぎこちない手つきで銃を構える。
「…撃つ?」
「撃つよ」
酷く短い、会話とも呼べない会話。
「…い、おい、そこのでかいの」
弱々しい声が、背後から聞こえた。
気絶していた陣内が上半身だけ起こしている。
「…そいつは、お前の相方か?」
「はい」
振り返らずに、銃はしっかり手に持ったまま、答えた。
「もうそいつは諦め。お前の知ってる相方やない。…殺されるで」
その刀は…、そう言おうとした瞬間。何の前触れもなく村正が振り下ろされた。
868 :
心配性:2005/12/23(金) 11:52:29
「あっ!」
短い悲鳴。ぶしゅっ、という血の吹き出る音が耳に入った。
「おい、お前っ!」
陣内が上ずった声を上げる。
うめき声を上げてうずくまったのは、田中だった。
何が起こったのか分からず、目を白黒させている。腕が赤黒く染まる。
右腕の肘から先は、少し離れたところに転がっている。その手は、しっかりと銃を握っていた。
「うう、あ、あ…」
がたがたと身体が震える。現実を受け入れたくなかった。
「何よ」
山根は返り血を浴びた顔を田中に向けた。
「…あ、…」
「何って聞きゆうやろ」
「やま…、…」
「はっきり言いよ!」
また叫んだ。今度はどこか焦っている様な、悲しそうな声だった。
村正に取り憑かれ相方の腕を切り落としたことで、山根の頭の中は混乱しきっていて、パンク寸前だった。
側に置いてあったバケツを感情の赴くまま蹴り上げる。
盛大な金属音を立て、へこんだバケツはガラガラと転がっていった。中に入っていた釘や木屑が散乱した。
869 :
心配性:2005/12/23(金) 11:53:21
「お前…、」
ゆっくりと、田中が言った。腕の痛みや痺れが酷い。
だが、今度ははっきりした大きな声だった。
一瞬何かを躊躇った素振りを見せるが、次の瞬間、叫んだ。
「お前っ、お前もう、生きてる意味ないよ!!!」
風が止まった。その場が水を打ったように静かになった。陣内は二人を交互に見比べ、目を丸くしている。
「…――――、……」
山根の声は、次の瞬間大きく吹いた風に攫われて消えた。
心配性さん、乙です。
あわわわわ((((;゚Д゚)))
た、大変なことになっとる!
うわああ!
山根、田中にまで手ぇかけちゃったのかよ!
続きが気になりすぎるよ!
保守
先輩を待つ、ある芸人の話。
−−−−−−−−−
俺がこっちに来て、何年経ったんやろか。
いや、何年、なんてもんやないな。
何十年、何百年……何千年も経ったんかもしれんわ。
けど、今の俺には、今がいつかなんて関係ない。
「健太郎さん、まだいたんですか?」
「……うん」
「いい加減生まれ変わって下さいよ。アンタ、予定通りに“死んだ”んですから」
「……うん」
この場所は、あの世とこの世の間。
ここの端っこには門があって、それをくぐると新たな命をもらって生まれ変わる。
ただし、自殺したヤツは、予定のリミットがくるまで向こうには行けないらしい。
あの『殺し合い』の中で、自殺したヤツは随分いたようやな。
ストリークさんやママレンジさん、ババリアもおった。
次課長の井上さん、後藤秀樹さんは結構最近までおったような気がする。
けど、あの人はまだ来ない。
俺を殺した、あの人。
「復讐でもする気なんですか?」
「……まさか」
そりゃ、俺かて生きたかった。
あの人を尊敬してたし、信じてた。
裏切られた時は何とも言えない気分やったけど……それでも尊敬する先輩。
俺を救ってくれた人やから。
井上さんも言うてた。
『俺は先に行くけど、あいつのこと信じたって。ほんで、また一緒にゲーセン行こうな』
井上さんがあの人の心を開いた。
『サイボーグ』なんて呼ばれてたあの人は、次課長の卒業イベントで号泣してた。
井上さんがしたように、あの人は俺の心を開いた。
楽屋の隅で、話の輪に入れず、孤独だった俺。
同じ歳やのに、かなりできた人間。
今度は、俺があの人に恩を返す。
返さな、生き返る意味がない。
「シャモ兄、早うこっちにきてな」
その声は、微かな風となり、地獄まで届いた。
>>心配性さん
山根ー!ガクブルです…
>>857さん
おぎはぎはやっぱり仲良しコンビですよね。
本来の2人にもどってよかったです。
乙です。
ああ…悲しすぎて泣きそう…
あの、はねトびメンバーで集団催眠の続きを書きたいんですけど、どうしたらよろしいでしょうか?
ぜひ書いて下さいな!
はねトび集団催眠って誰か書いてなかったっけ、同じ人?
自分の記憶違いならスマソ
881 :
446:2005/12/29(木) 02:24:13
以前にチャイマを予約した
>>446です。
ダイノジではなく、トータルテンボスを使わせてもらいます。
もし誰か予約していたり、書いている場合は番外編のようなものだと思ってください。
それでは、投下します。
882 :
446:2005/12/29(木) 02:25:15
自分以上に大事なものなんてあれへんよ。
他人を庇って死ぬなんていうのは綺麗事であって、本当にそんな事ができるならそいつは優しさとか通り越してただの馬鹿や。
俺は生き残るって決めた。
自分の為に。
でもな、俺かて人殺すのに躊躇いがない訳ちゃうから。
最初にこの中で一番、俺が殺すのに躊躇いそうな奴を殺すことにしたんよ。
……せやから、死んでくれや。
そう言って、山本は樅野の頭に銃を向けている。
「…山本らしいわ」
そう、自嘲気味に言う樅野の声は震えていた。
樅野の武器は遠隔操作可能なプラスチック爆弾。抵抗しようもない。
少しでも動けば鉛玉が体を貫くだろう。
樅野は策を講じるように銃口を睨み付けていたが、諦めてふっ、とため息を吐いた。
「……俺の分まで頑張らんかったら承知せえへんからな」
「……うん、分かった」
「……はよう、楽にして」
ぐ、と引き金に力が籠もる。
それを引こうとした瞬間、樅野が山本に飛び掛かった。
反射的に引き金を引く。
パァン!
鳴った銃声は2発だった。
883 :
446:2005/12/29(木) 02:26:26
湿った地面に叩きつけられた山本は混乱していた。
樅野が抵抗したのか?
もう一発の銃声はどこから?
腹の上には樅野がのしかかっている。
状況を把握しようと起き上がると再び銃声が鳴った。
パァン!
弾は山本の頬を掠めて地面にめり込んだ。
掠めた箇所がじわじわと熱くなる。
「樅野さん!」
弾の飛んできた方向から聞き慣れた声がした。
「……藤田?」
そこには銃を構えた藤田が立っていた。
884 :
446:2005/12/29(木) 02:27:48
まだ続きますが今日はここまでです。
>>446さん
待ってました!
トーテンとチャイマ…仲の良い2組だけに、凄く気になります。
>>446 凄く楽しみにしてましたよ!続き待ってます。
887 :
心配性:2005/12/30(金) 10:58:37
今年中に何とか終わらそうと思ってまして。
アンガ編ラスト、投下します。
888 :
心配性:2005/12/30(金) 11:00:05
―――今、俺は何を言った?
山根のあの顔。きっととても酷いことを言ってしまったに違いない。
ああ、もう駄目だ。もう終わりだ。
俺たちの関係は、完全に壊れてしまった。
片腕のない状態のまま、ゆっくりと立ち上がると、赤黒い血がどろりと溢れて地面に染みこんだ。
失血気味なのか、少し目眩がした。何とか体勢を立て直し、踏みとどまる。
風が吹くとすっぱりと切り落とされた部分がひやりとした。痛みはもう感じなかった。
銃を堅く握っている右腕を拾い上げ、冷たくなった指を一本ずつ引きはがしていく。
骨と皮しかないと思うほどの、ごつくて骨張った長い指に大きな掌。
自分の手はこんなにも大きかったのか。
なるほど、こりゃ気持ち悪がられるのも無理はないか。と他人事のように思った。
残った左手で再び銃を構える。
山根は相変わらず村正を握っていたが、その様子は先程と一変し、なんとも情けない顔になっていた。
889 :
心配性:2005/12/30(金) 11:01:16
「生きてる意味がない」という完全な不意打ちの言葉に山根の狂気は一気にはれていった。
「さっき、「今更」って言ったよな…お前が、やったのか?テツトモさんも、中島さんも」
そうだよ、と震えた声で山根が返事した。
「だましたな」
「やって、俺もう、お前以外の人のこと信じれんかったのよ」
段々と困ったような表情になっていく。
まるでゲームが始まった当初に戻ったようだ。
なんとも嬉しいことだった。たった一人の相方は、仲の良い芸人でも、先輩でも、他の誰でもなく相方である自分を選んだのだ。
もしかして彼にとって自分は特別な存在なんじゃないかと、そう思えた。
「ありがとう、山根。でも遅いんよ、もう」
対照的に田中はいつもの調子で。
腕を触る。切り落とされた部分は血の気が完全に失せ熱を持ち、変な紫色に変化しつつあった。
890 :
心配性:2005/12/30(金) 11:02:36
「…俺は、もうお前を信じない」
はっ、と山根の目が見開かれた。
かまわずに銃を向ける。地獄で詫びろ、殺人者め。
「…そーか…」
薄く笑いを浮かべて、山根は項垂れた。
「あっちで、みんなに謝れよ…」
……あれ?何かおかしいぞ。
さっきと形勢が逆転している。
山根じゃなくて、おかしくなったのは俺?
どうかしているのは、俺の方?
「な、何…?急にどうしたんお前ら…!」
陣内は動けずに、固まったまま二人の様子を見ていた。
今なら逃げられる。だがそんな思考とは裏腹に、体が動かなかった。
まるでこの二人の最後をを見届ける為のように。
891 :
心配性:2005/12/30(金) 11:04:27
「…分かった?山根」
コレが、夢を捨てた人間の末路。希望を失った人間の行く末の光景なんだよ。
引き金に指を掛けた。山根は再び元の形相に戻り、刀を構え直した。
ただ一人信じた者からあれだけ酷い言葉を浴びせられたのだ。
彼の頭の中はみるみるうちに悲しみから殺意へと変化していった。
頭の中で僅かに残った理性と本能が戦っている。
撃つな。
撃て。
撃つな。
撃て。
撃つな!
―――撃て!
「「死ねっ!」」
お互いにそう叫んだ瞬間、山根は村正に引っ張られるように田中の腹に刀を突き刺した。
全てを捨てた人間だけが持つ強い力。
刀の刃は内臓を突き破り背中から紅い刃が飛び出した。完全な串刺し状態だった。
「うっ、ぐ…、」
と、くぐもった声を漏らした。一瞬、息が止まった。唇の間から唾と混じって血が流れ落ちてくる。
892 :
心配性:2005/12/30(金) 11:06:03
喉の奥から逆流してくる血液に耐えられず吹き出すと、それが山根の顔にかかった。
彼の目から赤い滴が顔を伝って地面に落ちていった。
もしかしたらそれは、涙だったのかも知れない。
お互いの震えるような吐息の音しか聞こえない。一秒一秒がとんでもなく長く感じた。
力を振り絞って山根の腹を蹴ると、二、三歩後退した。それと一緒に刀もずるりと抜ける。
ごほっ、と咳をするとまた血の固まりが出てきた。
かまわずに、銃を構える。今度は、絶対だ。
無防備なその体に向け、戸惑うことなく引き金を引いた。
ドン。ドン。ドンッ―――。
山根は糸が切れた人形のようにゆっくりと倒れた。
目を閉じたままぴくりとも動かない。既に事切れている。
即死だった。
きっと彼は自分を恨みながら死んでいったんだろう。
山根は自分に隠れて、嘘をついて何人も人を殺した。
だが、最終的に悪者になったのは自分だった。
酷い言葉を投げつけ、撃ち殺した。
今思えばそんなことをしなくとも、もしかしたら、止められたのかもしれない。
相方が人間不信に陥って心を閉ざしてしまうのを。
893 :
心配性:2005/12/30(金) 11:09:21
銃を撃った衝撃で、傷口がますます開き、止めどなく血が流れ出てくる。
突然、視界が反転し体全体に打ち付けられたような大きな衝撃が走った。
倒れたと気付くのに少し時間がかかった。
「………、…」
声も出ない。目も見えない。もう死を待つだけの体。
痛い、怖い、寒い、悲しい…。
何をやっても俺には嫌なことばかりがつきまとう。
目を閉じた。口の中に残っている血の味しか感じない。
……………眠い。
「おい、……?」
やっと動けるようになった陣内が、フラフラと歩み寄ってきた。
血だらけになった二つの死体を見る。
共通している所は、一人は心臓付近と目玉に計4つの穴を開け、もう一人は右腕が無く腸がはみ出し、お互いに惨い死に様だった事と。
二人とも泣いていたことだった。
894 :
心配性:2005/12/30(金) 11:10:39
ふと、山根の手からガラン、と所有者を失った村正が転がり落ちた。
「こんなもんの所為で、こいつらも、川島も、みんなが…!」
陣内は立ち上がり村正を蹴り飛ばした。
村正はカラカラと地面を回りながら5メートルほど飛ばされた。
「……また死に損なったわ…」
生まれ持ってか、自らの『運の良さ』を恨みながらぽつりとそう呟き、陣内は立ったまま暫く動かなかったが。
―――― 一時間後、その場から彼の姿は村正ごと消えていた。
森の中の小さな広場に、二人の魂を攫っていくかのように緩やかな風が吹いていった。
二人の目から、再び涙が流れることは。
ついに無かった。
【田中卓志・山根良顕(アンガールズ) 死亡】
【陣内智則、再び行方不明。村正所持?】
終わりです。陣内さんは手放すことにします。
もしかしたら、また他の芸人さんで書きたくなるかもしれないので
その時はよろしくです。
896 :
心配性:2005/12/30(金) 11:19:36
>心配性さん
読みごたえありました〜!すごいですね。陣内が村正を…!?
心配性さん、お疲れ様でした。
ああ(´Д⊂)こういう末路になろうとは……。
こういう終わりに、面白かった、っていう感想も変かもしれないですが、
でも面白かったです。
もしできたら天国か催眠Verを読んでみたいです。
899 :
878のものです。:2005/12/30(金) 23:58:26
157で砂さんがはねトびメンバー集団催眠を前スレから予約されてたんですが…。これは一旦待った方がいいでしょうか?
心配性さんのを読んでから雑学王見たらなんだか切なくなりました…
乙です。゚(゚´Д`゚)゚。
豚切りスマソ。
まとめサイトってまだ更新されてる?
心配性さん乙でした。
二人の最期しかと見届けました。
>>394でキンコン催眠編予約してたのですが、
手放させていただきます。
では、失礼します。
アンガ編終わったか・・・
心配性さん、乙でした。
田中の思考が最後までネガティブで、それがすごい可哀想で
泣けたよ。時に死に際のとか。
>>882-883の続き
「…山本さん、樅野さんから離れて下さい。」
銃を構えたまま、静かに藤田が言った。声が震えている。
腹の上で倒れたままの樅野を見て、山本はようやく状況を理解した。
山本が樅野に向けて撃った弾。
藤田が山本に向けて撃った弾。
2発の弾は―――両方とも樅野に命中していた。
肩と鎖骨辺りから血を流す樅野はひゅう、と擦れた呼吸を繰り返している。
「……離れて下さい」
「……お前、樅野さんをどうする気やねん」
「……守ります」
「何から」
「今は…あなたから」
山本は藤田の目をじ、と見据えてからゆっくり樅野から離れた。
藤田が樅野のもとへ駆け寄り、肩を抱くように泣き崩れた。
最も尊敬する先輩。その人が死の淵に立たされている。
その一因は他でもない…藤田自身だ。
「…何で!何で山本さんを庇ったんですか!?俺は樅野さんを撃つ気なんてなかったのに……!」
―――庇った…。そうだ、どうして。
自分を殺そうとした、相手を?
「樅野さ…」
「……動かないで下さい!」疑問を投げ掛けようとした山本に、藤田が素早く銃を向けた。
「……何で、どうして樅野さんを殺そうとしたんですか!」
許さない、と呟いて涙を拭い、銃を構え直す。
悲愴と怒りに満ちた目で山本を睨み付けた。
「……ふじ、た……」
藤田のジーンズにしがみ付くようにして、樅野が起き上がった。
「山本……殺す、ん…?」
ひゅうひゅうと苦しげに息を継ぎながら呟く。
目は焦点が合っていないように虚ろで、傷口から流れる血液はシャツをぐっしょりと赤く染め上げている。
……きっともう、樅野は助からない。
「……はい」
「そ…か、藤田……」
ごめんな。
そう言うと樅野はとても瀕死の人間とは思えない力で、藤田を思い切り突き飛ばした。
山本のいる方向とは反対側へ。
「樅野、さん……?何を…」
驚きのあまり軽い放心状態の藤田に、樅野は言った。
「山本、は…殺させへん……」
ごめんな、もう一回呟いて樅野は手に持っていたスイッチを押した。
耳を劈くような爆音が響く。
樅野が藤田のジーンズに付けたプラスチック爆弾。
それが弾けた音だった。
【トータルテンボス藤田死亡】
907 :
446:2005/12/31(土) 21:21:25
すみません、名前入れ忘れました。
今日はここまでです。
心配性さん、乙でした。
切ない終わりでしたね…。
あわわわ…藤田が…!446さん乙です!