お笑いバトルロワイアル〜No.10〜

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365佐木ビデ男 ◇9Ce54OonTI

 膝を抱えて温かい湯に身を浸し、理解したばかりの事を心の中に書きとめた。
 今わかっていることのいくつか。
 あたしの中には、暴れ馬のような「おんな」の部分がひっそりと眠っていて、いちど起こすと止めようがない。この遊びには強烈な磁石みたいな魅力があって、どんなに恥ずかしくてもやめられない。
 感じて乱れてしまうのは、冷静さを欠いた行為でひどく恥ずかしい。どんなに深く穴を掘って埋まっても足りないくらい。あたしを好いてくれる人にも、あたしが好きな人にも、見せられるものじゃない。自分に悪戯していることは、絶対に誰にも内緒。

 書きとめただけでなく、ひそやかな罪悪感、自分に対する嫌悪感といっしょに、あたしは心の内にしまった。



 仲の良い友達にも話せない秘密を抱えながら、それでも事もなく月日は過ぎていく。学校生活最後のイベントに突入しようとしていた。
「で、直子はどうするの? 卒業式のあと」
「ん……ぜんぜん自信ないけど、小林に第二ボタン、貰いにいく」
「そっか。泣いても笑っても、もう最後だもんね。直、がんばれっ」
 友達にドンッと背中を叩かれた。
 うわあ。そんなに応援するなよ。成功確率どう考えてもすっごく低いんだから。
 脳内コンピューターが弾きだした告白成功率は、10パーセント以下。桜井さんと小林は「ほとんどつきあってるも同然」と、もっぱらの噂だ。
 それでも気持ちの区切りをつけたい。欲しいのはボタンじゃなくて、多分それ。