膝を抱えて温かい湯に身を浸し、理解したばかりの事を心の中に書きとめた。
今わかっていることのいくつか。
あたしの中には、暴れ馬のような「おんな」の部分がひっそりと眠っていて、いちど起こすと止めようがない。この遊びには強烈な磁石みたいな魅力があって、どんなに恥ずかしくてもやめられない。
感じて乱れてしまうのは、冷静さを欠いた行為でひどく恥ずかしい。どんなに深く穴を掘って埋まっても足りないくらい。あたしを好いてくれる人にも、あたしが好きな人にも、見せられるものじゃない。自分に悪戯していることは、絶対に誰にも内緒。
書きとめただけでなく、ひそやかな罪悪感、自分に対する嫌悪感といっしょに、あたしは心の内にしまった。
仲の良い友達にも話せない秘密を抱えながら、それでも事もなく月日は過ぎていく。学校生活最後のイベントに突入しようとしていた。
「で、直子はどうするの? 卒業式のあと」
「ん……ぜんぜん自信ないけど、小林に第二ボタン、貰いにいく」
「そっか。泣いても笑っても、もう最後だもんね。直、がんばれっ」
友達にドンッと背中を叩かれた。
うわあ。そんなに応援するなよ。成功確率どう考えてもすっごく低いんだから。
脳内コンピューターが弾きだした告白成功率は、10パーセント以下。桜井さんと小林は「ほとんどつきあってるも同然」と、もっぱらの噂だ。
それでも気持ちの区切りをつけたい。欲しいのはボタンじゃなくて、多分それ。