【選民意識】アンチザ・プラン9 PART.3【有名無実】
「なに朝から大笑いしとんねん?」
「おはよぉ御座います!灘儀さん」
挨拶は何が何でも欠かさない。
「ホンマ元気やなぁ〜、感心するわ」
灘儀さんは、このプラン9のメンバーの中でも一番年上。
私とも年が一番離れてて、でも気軽に話しかけてくれる。
悩んでる時には、相談できる私の良き兄さん的存在。
まぁ、そう思ってるのは私だけやとしても、ホンマエェ人。
それだけは、確か。
「それより、浩志。ここの台詞の部分やねんけどな?」
楽屋に着くなり灘儀さんは、鞄の中から台本を取り出した。
いつも灘儀さんはゴエさんのこと、浩志って呼ぶ。
私にとったら、聞きなれない音。
でも、灘儀さんの『浩志』って呼ぶ声が好き。
きっと、灘儀さんの声自体が好きなんやと思う。
低い声でもない。勿論、高い声でも。
やからやと思う。
アンバランスな音。
●●って呼ぶ声も好きやけど、浩志には負けてる。
ちょっと悔しいかも。
「 ●●さーん。起きてますか??」
ゴエさんの問い掛けで、ふと我に帰る。
やっぱり悔しいなぁ。私も浩志って名前にしょぉカナ・・・。
本気でそう思ってまう自分がここにおった。
「何考えてんねん?顔がにやけてんでっ。」
その一言でようやく我に帰る。
「何でもないですよぉ。」
作った笑顔でそう答える。
「なんやねん、気色の悪い。。」
「気色悪くても結構ですよー。」
きっと灘儀さんは一個も悪気は無くて。
元気のない私に優しく声を掛けてくれただけ。
その優しさもホンマ好き。
やから、余計に近くに居たいんやと思う。
そして、彼は私の恋人役。
恋人役っていても、ホンマ肩書きだけ。
妹役と言ったほうがエェかもしれん。
「 ●●。それよりあの長台詞覚えたんか?」
「半分ぐらいは覚えましたよ!」
「若いってエェなぁ〜」
灘儀さんが出したその一言に驚いた。
「灘儀さん、まだ若いじゃないですか?」
「何言うてんねん。35歳のオッサンやぞ?」
だって、
あの服のセンスと、その筋肉。
そしてなにより、
あのよしもとマンスリーの『抱かれたい男』で10位にランクイン。
その3つを聞いた時、誰が『今年で35歳の男』なんて思えるやろ?
私やったら、20代にしか思いつかん。
しかも、抱かれたい男の座に10位やなんて。
正直、凄いとしか言われへん。
「私には、35歳のオッサンに見えません!」
『35歳』
それだけ聞いたら、ただのオッサンやろ。
って確かに思う。
「俺よりもですか?」
「そやな。演出家は色々忙しいから♪」
鈴木さんはめっちゃ器用で、
あれやって。これやって。って言ったら、何でも引き受けて見事にそれをこなしてくれる。
前一緒にマジック見てたら、そのマジック一瞬にして収得してた。
その時、ホンマ器用やなぁって関心した。
「今回のOPはどんなんか決まったんか?」
その灘儀さんの一言で一瞬にして、楽屋の雰囲気が変わった。
演出家である鈴木さんのOPは、見てるだけでも難しい。
『サークルS』の時は、ホンマ頭がこんがらがる勢いやった。
でも、そのOPが極まった時の嬉しさは、彼らにしか分からないだろう。
やってこそ分かる達成感。
その時の5人の姿を想像すると、自然とにやけてくる。
「決まりましたよ。」
その毎回驚かされるOP
正直、楽しみ仕方がない。
「どんなんてのは、決まってないんスけど・・・。」
「イメージってとこか。」
そうこうしてる間に、時計は6時10分になっていた。
「おはよぉ御座いますっ」
ギブソンさん登場。
「あ!ギブソンさん、ちょっと・・・」
「何、 ●●ちゃん??」
「あのぉ、これ。」
「俺に?」
私がギブソンさんに渡したもの。
それは、
誕生日プレゼント。
ギブソンさんの誕生日は、3月25日。
「えー!何々?!」
鈴木さんが興味津々に顔を覗かせた。
「誕生日プレゼントですよ。」
ギブソンさんは、プラン9の中でも最少年。
とは言っても、今年で29歳。
来年からは30代の仲間入り。
「ありがとぉ!嬉しいわぁ〜。」
「うわぁ、綺麗にラッピングされてんなぁ。」
いつの間にか、みんな周りに集まってた。
「 ●●ー。俺には?」
「?!」
その声の主は、久さん。
ギブソンさんの後ろから、いきなり現れた。
「何なんスか、久さん?!驚かさないで下さいよ!」
「何かみんな楽しそうやったから、驚かしたろと思って。」
「驚かして何の意味あるんスか?!」
ギブソンさんの鋭いツッコミが決まる。
「で、 ●●。俺には??」
「『俺ら。』ですよ!!」
「毎回プレゼント渡してるじゃないですか?」
●●はメンバー全員の誕生日覚えてて、毎回手作りのプレゼントをくれる。
「そやけど、何か悔しいわ〜。」
鈴木さんは、何故か悲しそうな顔をした。
「プレゼントの中身何やねん?!」
「駄目ですよ!俺へのプレゼントなんスから。」
「ちょっとぐらいエェやん!」
全員集まったっていうのに、稽古は一向に始まらない。
男5人集まったら、こんな感じなんかなぁ〜?
そう思ってしまう。
でもそれは、プラン9だけであって、他には当てはまらないもの。
ホンマ、全員仲エェよなぁ・・・。
私にも、こんな仲間おったらなぁ〜。。
「・・ 俊也・・・。」
自分でハッと我に帰る。
一瞬だけ、思い出した。
誰にも言えない。。
「どないしたんや。 ●●・・・?」
灘儀さんが立っていた。
「えっ、何でもないですよ・・・!」
いきなりの事で、正直焦った。
灘儀さんの顔は、とても心配そうで。
私を見据えてた。。