「空気を読めないなんて」 山田美保子(放送作家)
紳助さんの現場復帰のメドが一向に立たないようだ。
相手が一般の女性ならまだしも、業界を知らないという人ではなく、
ましてや紳助さんが所属する吉本興業の社員なのに
どうしてここまでこじれてしまっているのだろうか。
話し合いに応じないという彼女の狙いは何?
芸人さんがあんな会見をしてしまったら、その後どれだけやりにくくなるか。
また、冠番組を多数抱えている紳助さんの謹慎を長引かせることは、
彼女が仕事でお世話になっていた多数のテレビ局に迷惑をかけることにもなるというのに…。
とにかく私は、同じ業界で働く同世代の女として、
彼女を理解することがどうしてもできないのである。
反対に、あの涙の会見で紳助さんが言っていたことは、
わかり過ぎるくらいにわかってしまう。
「誰や、こいつ」という感じの人が馴れ馴れしく話しかけてきた。
育ての親ともいうべきスタッフのことを呼び捨てにした。
それが自社の社員だった。つい手が出てしまった。
それを「無理もない」と思ってしまった私はおかしいのだろうか。
紳助さんがキレてしまうまでには、それなりの時間があったハズだ。
ましてや紳助さんは本番前に共演者と一緒にいたのではないか。
番組を仕切るタレントさんとしてみたら、
テンションを上げるためのもっとも大切な時間だと言っていい。
そこに入っていき、紳助さんが変化していく「空気」を読めなかったというなら、
これだけは言える。
彼女はマネージャー失格だ。
先日、美川憲一さんがテレビカメラの前でこの問題について言及していた。
「(その現場にいたら)私も(暴力に)近いことはやったかもしれない」
「マネージャーとして、4、5年でしょう。そんなに偉そうに言うんじゃないわよ、って私なら言うわよ」
などなどだが、どういうわけか、放送ではこの部分が丸々カットされていた。
「女性に暴力を振るうなんて最低」ということばかり言われて、
「空気を読めないなんて最低」とは言われないのか。
私がこの仕事をやるにあたって、もっとも大切にしていることなのに…。
(本日の東京新聞より)