「マズいのぉ〜!」
『カス汁』
小学校2年で両親が離婚して、新しい母親が来たのは僕が中学1年のときでした。
反抗期でね、「勝手に部屋に入るなや」とか、些細なことでいつもケンカばっかりしてました。
中でも忘れられないのが、カス汁を作ってくれた時です。
美味しかったんですけど、素直にそう言えるわけがない。
「マズいのぉ〜!」思わずそう口に出した瞬間、向こうは「もう二度とカス汁なんか作らへん!」言うて、泣きながら出て行ってしまいました。
それからホンマに1回もカス汁は作らなかったですね。
そんな風によう泣かしてました。
泣きながら弁当作るなんてしょっちゅうでしたね。
ようやく反抗が収まったんは、僕が中学を出て自分で働くようになってからかなぁ。
一人暮らしを始めると、大人になるというか、嫌でも人生の大変さとか分かってくるじゃないですか。
だんだん相手の気持ちも察するようになって、20歳の時には初めて母の日のプレゼントも贈りました。
「ありがとう」って電話かかってきて、「いえいえ」みたいな感じで、そのあと久しぶりに実家に帰ったら、なんと晩ごはんに出てきたんがカス汁ですわ。
「はい。あんたの大キライなカス汁」って出してくれて、照れ臭いんで「あったなぁ、そんなこと」って言いいながら食べたんですが、美味しかったですねぇ。