733 :
釜飯:04/09/14 03:19:27
今回は以上です。
728の最初の「こ」が抜けてしまいました。
釜飯さん乙です。
ブチキレ中島w
続き期待してます。
釜飯さん乙。竹山の武器がシャベルなのが異様にワロタ。
そういえばカンニングって今まで出てきて無かったんだね。意外。
>>601 「田中……」
かすれた声で発せられたその言葉は驚きと困惑のイントネーションを含んで
廃墟の一室という小さな空間に大きく響いた。
いささか演出過剰な登場を果たした田中は、驚きを隠すこともせず呆けた顔の
水口を見ると何がそんなに可笑しいのか「クックックッ」と肩を揺らしながら笑い、
しかし水口の顔に露骨に怪訝な表情が浮かんだことに気付くと「あっ、気に障りましたか?
すいません」と柔らかい物腰でペコリと頭をさげる。スムーズな一連の動作。
その落ち着きはらった言動が逆に不気味さを与えている事に自覚はあるのだろうか?
水口は混乱する頭を落ち着かせようと現状の把握に努めると、怪訝な表情を崩さず
「なんやねん?」と問いかける。言葉はその一言で十全だった。
全ての感情や疑問がその「なんやねん?」に集約されている。
しかし田中はその問いに答える気はないらしくコツコツと足音を立てながら近づいてくると
「別に水口さんに危害を与えようとか考えてないんで安心してください」と云って
目をすっと細めた。ヒョロリと頼りない体つきと顔つきに似合わない自信に満ちた口調と
面持ちが、それを見る者に不均衡さと曖昧な違和感を覚えさせる。
田中は口元だけフッと綻ばせると「水口さんにも参加して欲しいんです」と云った。
「参加?」
「信じてください」
「宗教の勧誘か?」
「そうですねぇ…。残念ですけどそう思われても仕方ないでしょうね。
でも宗教とかそんなんじゃないんで安心してください」
「なに企んでんねん?」
「企んでるなんて人聞きの悪いこと言わんといてくださいよぉ。何も企んでませんって。
ただ楽しい計画に水口さんも参加してもらおうと思ってるだけですよ?」
「悪いけど自分らに付き合ってられるほど暇ちゃうねん」
そんな水口の言葉を受け、それまで善意的で穏やかだった田中の顔にニタリと……
確信的な嘲笑が浮かぶ。そしてその薄笑いを絶やさないまま田中は癪に障ることを
意図しているであろう…どこか演技がかった挑発的な態度をとると、声を裏返らせながら
「逃げるんですかぁ〜?」
……と云った。その一言は一瞬にしてその場の空気を凍りつかせる。
いつもの水口なら「どないしてん、お前?」で笑って流せたかもしれない。
でも【いつも】と呼ぶには現状は異常をきたし過ぎていたし、一向に全貌が見えない会話にも
いい加減イライラしていた。水口自身そんな「あざとさ」を見逃せないほど神経質に
なっていた感は否めない。田中の一言は十分過ぎるほどの威力を以って、それでなくても
ささくれ立っている水口の神経を逆撫ですると逆鱗に触れる。
「なんやねん、お前!」
その言葉と共に水口は乱暴に田中の襟首につかみかかるとグイッと上に力を加えた。
大浦が慌てて止めに入るが止まらない。知ったことか!
しかし、そんな水口も数分後には自分の行動を思いっきり後悔していた。
やっぱり暴力はあかん。あかんよ、ほんまに。……というのも、あれだけ強気な発言を
豪語していたわりに襟首をつかまれた田中はビクッと体を強張らせ畏縮するとオロオロと
蚊の鳴くような声で「す、すいません。すいません」と繰り返した。
その姿があまりに脆弱で同情を誘うものだったので拍子抜けし、同時に罪悪感に苛まれると
「どないやねん」と言って掴んでいた手を慌てて離したが、顔を紅潮させた田中は
「うっ……ケホケホ」と大袈裟なほど咳き込むと「大丈夫か?」と背中をさする水口に対し
「あっ、はい…大丈夫です。ただ水口さんに話を聞いてもらいたかっただけなんです……」と
申し訳なさそうにヒョロヒョロと頭をさげ「水口さんは生き残りたくないですか?」と続けた。
正直もうそんな話は聞きたくなかったしウンザリだったが何となく悪いことをした気分に
なっていた水口はここで話を聞いてやらなければ自分が悪人みたいではないか……と観念し
「もう……そんな話したいんやったら話しいや」と疲れた様子で田中の話を聞かなければ
いけない破目になる。『なんか腑に落ちひんわー』と思ったが「あっ、いいんですか?」と
嬉しそうにしている田中を見たらどうでも良くなった。はぁ……しんど……。
(――――――田中の話)
「えっとですね〜……水口さんも気付いてると思いますが、
このプログラムには致命的な欠点があります。わかります?」
「わからん。なに?」
「ここに集められた芸人の数が多すぎるという事です。
不謹慎な話、死亡者を告げる放送も途中から数えるのが億劫になって止めました」
田中の言葉に水口は小さく頷く。その意見に異論はない。実際、水口も放送があると
自分の知っている名前・親しい名前が出てこないかだけに注意を傾け人数なんて
もう数えていない。
「この殺し合い…戦い…試合…生き残り…まぁ、なんて呼んでもいいんですけど
それに大切なことは【勝つ】ことじゃなく【負けない】ことなんです。
裏を返せば別に負けなければ勝つ必要もないんです。
そしてこの場合【負けない】≒【死ななければ】=【生き残れる】
死なないためには……一人より何人かでいた方がいいと思いません?」
「でも、そんなん言うても生き残れるのは……」
「そう、一人です。でもさっき言ったようにこの島には芸人の数が多すぎますからね。
本当に最後の一人……一人以外の人間が全員死ぬまでにどれくらいの時間が掛かると思います?
実際結構な速度で人が死んでいってますけど、それでもある程度時間がかかると思っていいはずです。
もしかしたら……どこかで打ち切られる可能性だってゼロじゃないですし、ここに集められたぶんの
芸人が本土でどういう扱いになってるのか分からないですけど、これだけの数が向こうの世界で
いっせいに消えたことになってたら誰だっておかしいと思うでしょ?家族やファンの人達だって
黙ってないと思いますよ。憶測ですけどね。そう考えたらもしかしたら希望だってあるかもしれない。
ここに連れてこられる前……よく「死にたい」とか「消えてしまいたい」とか、別に死にたいなんて
これっぽちも思ってないのに口にして、それを免罪符にしていた事がありました。
でも今は死を想定するより生を紡ぎたいという概念のもとに動いています。人は一人じゃ生きれません。
そういう計画です。今はまだ打ち明けることは出来ませんけど……でも必ず【何か】を変えることに
なります。【何か】を……」
それから田中は一体どのくらい喋ったのだろう?
ハッキリは分からないが「シラフでもこんな喋る奴やったんや?」と半ば感心を覚えるほど、
かなりの時間しゃべり続けた。そして水口はといえば場違いなほどノンビリと
『今日コイツよう喋るな〜…』なんて考えながら饒舌に話し続ける田中をただボーっと眺め、
もうほとんど話も聞いていなかった。
最初の15分はまだ真剣に耳を傾けていたし田中の云いたいことも分からないでもなかった。
しかし確信的な部分が意図的にはぐらかされている事に気づき、表面上の絵空事な説明が
続くようになってからは聞く気も失せた。そもそも水口の経験上、あまり饒舌に喋る奴は信用できない。
それは水口自身が嘘をついた時や焦ったときに必要以上によく喋る癖がある…という
自分のことを棚に上げた教訓ではあったが、あながち的外れな持論でもないはずだ。
水口は、まだ喋り続けている田中を「悪いけど」という言葉で遮ると「やっぱり遠慮しとくわ。
さっきも言うたけど暇ちゃうねん。相方も探さなあかんし」と淡々とした口調で断り、
踵を返すと足早に出口へと向かった。しかし………
「待ってください!」
その一言が水口の足を止める。もしこの「待ってください!」が田中の言葉だったなら
恐らく水口も足を止めることはなかっただろう……しかし、水口を引き止めたのは
田中ではなく大浦だった。そしてその呼び止める声は「死にたくない」と訴えかけた
あの時と同じ響きを持っていた。
「待ってくださいよ。お願いします、水口さん」
「そんなん言われても……」
「じゃあ、こうしましょ!どうせ、もう暗いっすし今日はここで
一泊してってくださいよ。明日落ち着いて話しましょ?
それでダメなら諦めますから。一眠りしてから本坊さんを探しても遅くないでしょ」
悪い話じゃない。日はもう沈み、コバルトグリーンの闇が辺りを包み始めていた。
闇は刻一刻と深さを増していくだろう。5人もいれば交代制で見張りをすれば
1人でいるよりずっと精神的にも肉体的にも安全に安心して寝れるに違いない(おまけに
『こん中やったら一番先輩やし、あわよくば他の奴らに見張り任して朝まで寝れるわ』という
打算的な考えも頭をよぎった)
しかし本当は寝れるとか寝れないとか…そんな事より大浦のことが気にかかっていた。
先ほどクラッシュした大浦の【死の恐怖】に対する悲痛な叫びは棘となって
まだ水口の心に深々と刺さっている……。
「……一泊だけやで?」
こうして水口は廃墟で一泊していくことになる。長い夜が始まる。
そして人が死ぬ。無常にも無情にも無上なほど残酷に。
今日はここまでです。長期放置スイマセソ…三ヶ月……(((;゚Д゚)))
そして前回レスをくださった方々ありがとうございました。
>B9さん
乙です!!
読めば読む程、情景が見えてきて感嘆しました。
個人のキャラがまんま出てますよね
読んでて思ったんですが、こないだのソラシドさんのトークに行ってたんじゃなかろうか、と。
あくまで憶測ですが。
また続き期待してます。気長に頑張ってください!!
B9さん、乙!
特徴がすごく掴めていて面白いです
マターリ続き待ってますよ〜
747 :
名無しさん:04/09/18 18:24:25
age
B9さん乙。話が本当に面白いです。
特に最後の
>無常にも無情にも無上なほど残酷に。
の言い回しがウマー!
次回も楽しみにしております。ゆっくり書いてくださいな。
わー。長く待ってた甲斐ありました。
ドキドキするなー。お疲れ様です。次回作もいつでも待ってますんで。
今日初めてこのスレ発見して過去ログも読みました。
ロザン書きたい…!と思ったのですがすでに書かれていたので、
番外編としてこっそり晒させていただきます。
ちなみにランのお二人を挟んで菅と宇治原再会という設定です。
会いたかった、殺したかった。
ゲーム開始からずっと思い続けていた相方が今、自分を見つめていた。
「すが…」
宇治原が言う。俺は笑う。やあ、ひさしぶり。俺会いたかってん、おまえに。
処理の終わった先輩お二人を踏み越えて、俺の名前を言ってから言葉を失くした宇治原の前に立つ。
俺が背伸びしたらキスでもできそうやね、うわキッショ。
しかもオマエの顔、疲れと寝不足で普段以上に死神みたいな顔しとる。おもろい。
「呼んだ?」
>>751 「おま、何してんねん…。」
宇治原の顔が崩れる。涙がダラダラ流れてあーあー鼻水まで。汚いなぁ。
俺に付けんなよ、なあ。一応俺男前ランキング上位やねんから。
「どーにもならん状況で人間がやるべきは、嘆くことより楽しむことちゃう?」
何か間違えてますか?その方が精神衛生上とってもいいことでしょう。
何か間違ってるなら教えてよ京大生。俺よりずっと頭がいい、俺よりずっとアホな、
大切な大切な、この世界でただ一人きりの相方くん。
まあオマエが何を言っても、いつもみたく丸め込む自身はあんねんけど。
さっきから泣くばかりで声も出せないヘタレな相方を抱きしめ、その体温に思わず笑いがこみ上げる。
この暖かい体に血が流れなくなり冷たくなる、それがどれだけエエもんか、オマエは知らんやろ?
>>752 「オマエは俺だけを追えばよかってん。オマエの前におる敵、俺がみーんな殺しとけば、
オマエ殺されへんやろ?時にはオマエの後回って、オマエだけは、俺が守ったる、な。」
「すが…」
いかにも搾り出した声が耳元でして、抱きしめられる。
暖かい体を感じてますか?殺人鬼の僕にも血が流れてますか?
十分味わったなら、それを全身に浴びてもっと人間というものをかみ締めればいい。
京大生宇治原くん、これも一つのお勉強ですよ。アホなオマエに教えたるわ。人間てこんなにもろいんやて。
「ほな、もう会われへんと思うけど、お元気で。」
バイバイ、と耳元で言いポケットからサバイバルナイフを取り出し付きたてる。
即座に宇治原は感動的にもまわしていた腕を放しさらには俺の腕をすり抜けて、
>>753 首から赤い水。英語では水とお湯の区別はつけないけれど何処かの国では更に氷と水とお湯、
すべてが一つの単語だったと、無駄な知識が沸いた。
参考文献・高校入試のときの国語の問題。宇治原は転校生やったから、この文章知らんやろ?
俺結構びっくりして、試験中やったけど「へぇ」って言ってもーて。
だってな、高得点取ろうと血眼になって文章読むより、楽しんで文章読んだほうが得やん?
その方が出来るやん?
どうやって動いてどこに狙いを定めれば、宇治原はどうやって動いてどう避けるか全部分かってた。
数学は得意やってんて。オマエの単純な動きなんて、全部求められるわ。
だからどうやれば、「偶然宇治原が俺に致命傷を与えるか」なんて簡単に分かったし、
ダンスは苦手でもオマエの動きに合わせればええんやから、簡単に出来た。
>>754 なに、アホみたいにまた泣いてんねん。
どーせ「殺人鬼と化した相方を止められるのは俺しかいない」とか、正義感翳してたんやろ?
殺人鬼殺せたんやから、もっと喜べや。何泣いとん。キッショい顔して。吐けるで。
自分が刺したんやから、ちゃんと見ろや。叫んでないで、なぁ。うるさいって。
「菅…っ菅ぁぁっ!!!」
>>755 「ほんま、ごめんなぁ。」
俺が芸人になりたいとか言わんかったら、京大法学部、オマエやったら主席で卒業できたんやろな。
司法試験にも一発で合格して、胸にひまわりのバッジつけて、ああ、でもオマエなら検察官かなぁ。
だってオマエ、ひまわり似合わんって。何処の世界に金色のひまわりつけた死神がおんねん。
「宇治原、生き残って、な。
ほんで、これ終わったら、オマエ、かしこやねんから、こんな国、変えたって、なぁ。
そしたら、オマエが、総理になるんかな。似合わへんて。
小泉さん見てみー?今の、時代、ルックスかて、大事、やねんて。」
宇治原が駆け寄ってきて、必死で血を止めようと傷口を手で押さえる。
「アホ、か。患部を、心臓より、高く上げて、直接圧迫と、近くの脈を、間接圧迫せな。」
聞きかじった知識が口からこぼれる。こんなん話したいんとちゃうて。
もっと。色々。何話したかってんやろ、俺。
なあ俺、自分で神様に愛された子やったと思うで?めっちゃ強運やしルックスえーし。
早死にしたりちっさいころ大っきな病気する子は「神様に愛されすぎて天使として召されるから」とか、
聞いたことあるやろ。正しく俺やん?
せやったら、もう神様は俺のこと、見放してくれたかなぁ。
子供の悪戯にしちゃ、過ぎたやろ。もう地獄に堕ちてもええやろ?
それやったらええなぁ。金色のひまわりつけた死神が、宇治原みたいな、死神来んかなぁ。
757 :
名無しさん:04/09/21 14:42:04
>>756 「菅、菅ぁ…。」
途切れた意識がふ、と戻り、ああそうや、言いたかってん。
ひとこと、うじはらに、いわな。ちゃんと、めぇみて。
なんも、まっくらでみえんけど、いわな。なあ。
かみさま、さいごに、もうちょっと、じかんをください。ひとこと、だけ、いわせてください。
「うじはらぁ…あ」
時間をくれなかった神様よりも、ひまわりのついた死神と手をつないだ。
【ロザン 死亡】
終わりです…最後の最後で上げてしまってすみません('A`;)
あと、このあと宇治原ア本でおながいします。
759 :
名無しさん:04/09/21 14:44:33
うざいわ!!氏ねや!
761 :
名無しさん:04/09/21 21:09:26
番外編ですがとてもいい作品でした。
文章がとても良かったです。
りあるキッズのその後を書いてしまったのですが、
作者さん書き込んでもおkですか?
駄目なら番外編てことでいいんですが…。
過去ログを読んだところ森三中は、
村上と大島を撃った黒澤が逃亡じゃないですか?>192
てことで、勝手に黒澤書かせていただきます。
ログ置き場から張られてあるpart8が読めないのでつじつま合わなかったらスマソ
もしアレならアボンの方向でおながいします。
黒澤は走った。何処へ、どうやってなどとは考えられない。
ただ今いる場所は怖い、逃げたい、それだけが黒澤の全神経を支配していた。
走りながら、さっき銃で打った人間は誰だったろう、と考える。
よく知っているが思い出したくない。
大切な人だったと記憶してるからなおさら、どういう間柄だったか考えたくなかった。
ただあの二人は、「男」ではなかった。
背の高い方は髪が短くて一瞬「男」だと思ったがそれを否定するに十分な大きな乳房があった。
「男は嫌男は嫌男は怖い男は怖い…!」
そう、黒澤は狂ったように繰り返す。
実際狂っているのかもしれないが、それを判断する人物は存在しない。
闇雲に走り、自覚はないが蓄積した疲労が脚を重くする。
怖くて、ただ怖くて死にたくなくて何よりここには今、彼女の最も恐れている「男」が沢山いて、
黒澤は走った。
「…っあ!!!」
>764
何かにつまづき、ようやく黒澤の脚は止まった。
恐怖に支配された彼女は再び逃げようとするが、
彼女の意思に反して、膝は愚行を嘲笑うかのようにがくがくと震えて立ち上がることすら出来ない。
「くそっ!」
苛つき脚を無理やり引っ張ろうとし、そこで今まで全く見ることのなかった地面を、黒澤は振り返って見た。
「いやぁぁぁぁっ!!男っ!!!!」
彼女の脳がそこにあったものを認識し、叫ぶ。
黒澤が躓いたのは開始早々菅に殺害された西野であった。
「男男男男…!!男は嫌男は怖い男は嫌男は怖い男は男は…っ!!!!」
奇声を上げ、黒澤は偶然落ちていた包丁(ナイフとの機能性の重複や重量などを考え
菅が西野を殺害した後に捨てたものだ)を手に取ると、
西野の死体に馬乗りになり何度も何度も、既に冷たくなった体に突き刺した。
「男はあたしを傷つける男はあたしを傷つける男は怖い男は怖い男は男は嫌い嫌い嫌い…っ!!!!」
生前、西野の女遊びが激しかったことは、黒澤も知っていた。
だからなおさら黒澤は西野を嫌悪し、
包丁を突き刺した胸の肉がミンチ状になるまで何度も何度も体に包丁を突き刺す。
回数が重なるごとに細かくなった肉片は飛び散り黒澤の顔に付着したが、
「男」を抹消することに夢中であった彼女は全く気づかずにいた。
>765
西野の胸にぽっかりと大きな穴と、その中に山積みになった肉片が出来た頃、
ようやく黒澤は深呼吸してまるで害虫を駆除したようなすがすがしい気分になった。
眼鏡にこびり付いた肉片を服のすそで拭き、西野の近くに落ちていたナップザックに手を伸ばす。
「男があたしから何かを奪おうとするならあたしが奪ってやる…男は嫌い男は嫌い…。」
ブツブツと独り言を言いながら、中身を取り出す。
中には軍手とスーパーのビニール袋が一枚入ったきりだった。
「なーんだこれっぽっち?
生前ろくなことしてない男に、まともな武器なんて支給されないか。」
そう言うとナップザックの中身から視線を外し、嘲笑うかのように西野を一瞥した。
価値のない戦利品を捨て置き立ち去ろうとする黒澤には一匹の害虫を駆除したことでついた自信があり、
先ほどのように恐怖で顔を引きつらせ奇声を上げながら走ることはしなかった。
だが、優雅に数歩歩いて踵を返す。
「だめ…まだ『男』はなくなってない、胸に穴が開いたからって、『男』はいなくならない…!!」
今度は西野の顔に背を向けて馬乗りになった黒澤は、なれない手つきでベルトを外しズボンと下着を脱がした。
>766
「コレがあるからいけないんだ、コレがあたしを傷つけるコレがこわいコレが怖いコレが…!!」
武器などは入っていなかったため興味をそそらなかった西野のナップザックから軍手を取り出し、ペニスを掴む。
女遊びが激しかった割にはずいぶん小さいと嘲笑えばそれだけで西野を傷つけられたのだろうが、
それに絶大な恐怖を感じる黒澤にそんな台詞は言うことができるはずもなく、
彼女は躊躇うことなく、包丁で根元から切り取った。
「…なぁんだ、男ってこんなにも簡単に取れるもんなんだね。」
汚物に触るように親指と人差し指でそれを持ち高く掲げ、ふるふると振ってみる黒澤の表情は、
今度こそ満ち足りた表情であった。
簡単に切り取れてしまったことで恐怖は嘘のように消え、今ではただの肉片と変わらない。
持っていた油性ペンで「西野」と名前を書き、
軍手と同じようにナップザックに入っていたビニール袋にそれを入れ、
子供のように袋を回しながら鼻歌交じりで新たな「獲物」を探し始めた。
「男は嫌い男は怖い男なんていなくなればいい
おとこなんてかんたんにけせるんだからおとこなんていなくなればいい…!」
【西野亮廣・性転換w】
西野氏はもうすでにあぼんしておりましたよ。
…あ。そういうことか…w。
勘違いしました。スマソ。
(゚∀゚)イイヨイイヨー
今後の展開が凄く楽しみですw
スレもまたイイ感じに賑わってきましたね
俺もいい加減仕上げなきゃ
>>750 とっても良かったです。
文章が綺麗で感動しました。
773 :
名無しさん:04/09/22 22:17:29
762>りあるキッズのその後ですか!?
ぜひお願いします!!
>761
文章は一気に書き上げてオタくせぇwと自分自身笑ってしまったので
そういっていただけて本当にありがたい。
>768-770
ええ、そういうことです。
>771
続き書く気はないという…w
布石はばら撒くんであと好き勝手にやれや!というのは、
撒く方も好き勝手する方も好きです。
最初から自分でやるのは偏るので激しく苦手です。
>772
ありがとうございます。
文章は(以下同文
>773
じゃあ投下させていただきます。
書き上げてみたら日本全体の行方まで絡んできて、
婦人軍団が何も出来なかったように書いてしまいましたがその辺はスルーしてください。
すみません(;´Д`)
倉庫に保管されてあるりあるの話がめちゃくちゃ好きです。
「これだけはできる」と目の前が開けてから一体何回罵倒と笑いとを浴びただろう。
安田(りあるキッズ)はぼんやりと、寝起きで頭痛の残る頭で考えた。
あの日、泣き疲れた長田(りあるキッズ)が狂ったように笑い、
残された者は残された者らしく精一杯やろうと言った日以来家には帰っていなかった。
帰ったところで軍が待ち伏せしているだろうし、そこにいるはずの「家族」はとうの昔に殺されてもういない。
見せしめ、といっても過言ではない。
家族が日本の諸悪の根源である「お笑い芸人」としてプログラムにも参加せず路上で漫才をしている。
それは現代日本において一般庶民を処刑するのに十分すぎる理由だった。
「起きたんか?」
「うん。」
硬い床のせいで疲れは取れないが、それでも思考能力を一定ラインで保つには睡眠は不可欠だ。
プログラムに参加しなかったために生き残ったお笑い芸人の「りあるキッズ」が宿泊できるホテルも宿を貸してくれる人間も、存在しない。
匿えば自分たちもろ共殺される。
無関係の人を自分たちのせいで死に追いやることはできず、二人はずっと野宿を続けていた。
初めは「劇団員のみなさん」に助けてもらい、それからは空き家や廃ビル、
時には反政府軍支部で最低限の睡眠をとり、路上ライブでのわずかな施しで飢えをしのぎ、
ただお笑いをやるためだけに生きていた。
反政府軍に入らないか、とも言われたが自分たちがやるべきことは「お笑い」であり
「クーデターを起こすこと」ではないと断った。死んでいった、同志の弔いと自らの存在のために。
>775
「ほな、行こ。向こうさんもここ、そろそろ嗅ぎ付けるころやろ。」
政府から逃げるように日本全国を転々とし、お笑いをやる。覚悟はしていたが辛い日々だった。
「なあ、今度のライブ、他の芸人のネタ、やってみーひん?」
やっと落ち着けるねぐらを見つけ、ネタ合わせをしているときに長田が言った。
「え、いややんそんなん。パクりやで。」
「ちゃーうって。パクり元なんてもうおらんし。
何より紹介やで、俺らよりおもろい人もいてましたーそんなん殺した政府許しませーんみたいな、
そんなネタ安田も書いたやろ、許しませーんて直接言わんで回りっくどい言い方のヤツ。」
長年各地を転々としたせいか、最近長田の関西弁が嘘っぽくなってる、と安田は思った。
そう思ってる自分も関西方面は政府が重点警備をしいているため長く避けていたせいもあり、怪しい。
「せやなぁ。それに俺のネタも枯渇してきよったし、相方の書くネタつまらんし…。」
「それゆーたら終わりやで安田くん。」
>776
長田が茶化して、二人は小さくわらった。大声を出したら見つかってしまう。
客前以外ではもうずっと大笑いはした記憶がなく、
それすら作り半分の笑いであるから本気で大笑いしたのはいつが最後だったろうか。
ため息を吐いて、安田が言った。
「ほんなら、誰にしよか。」
もう出会うことのない顔が次から次に思い出される。
最初こそ思い出すことすら避けていたが、今では自分たちの状況を全て受け入れ、
それを「笑い」へと昇華できるまでになっていた。
「やっぱ、ダウンタウンさんやろ。」
>777(ラッキー!
そんな生活が何年も続き、今ではお笑いを志す若者がちらほら現れたと、二人は噂で聞いた。
「お二人を追って、僕らもライブやってるんです」と握手を求めてきた若者もいた。
長田は単純に喜びかつて先輩芸人がしてくれたように若手を指導し遊びを教え、
人見知りの安田は「尊敬している」と言われるたびにちょっと戸惑い、それでもやはり嬉しかった。
だがそのような若者は現れては政府に消された。
相変わらずお笑い芸人狩りは続き、最近では生息数が少ないからとある程度数が集まるまで収容所に入れ、
定期的に小規模ではあるがプログラムを実行しているらしい。
長田も安田も運良く生き残ってはいたが、巨額の懸賞金をかけられたために何度も危ない目にあい、
そのたびに匿ってくれた「ファン」と名乗るものや後輩は、二人の前から次々と消えていった。
「何のために、俺らお笑いやってんねやろ。犠牲の上に立って、やる価値あるんか?」
長田がそう言う度に安田は叱責し、犠牲があったからこそもっと多くの人間を笑かさなあかんやろ、
と泣きながら言った。
>778
長田はゆっくり、息を吸い、吐いた。
閉じていた目を開き、
かつて吉本興業本社ビルが建てられていた場所に作られた相方の墓と仲間の慰霊碑に花を添えた。
少しの間に長い夢を見たようで、空の色がまぶしく目を細める。
深く刻まれた皺が、いっそう深く長く、長田の顔の上に人生を描いた。
安田の亡骸はそこには埋葬されていず、この小さな島国のどこか土の下で、まだ眠っている。
掘り起こしたい気は山々だが、長田の記憶にそこがどこだったかは刻まれていない。
あの日、いつも以上に機嫌が悪そうに見えた安田にあえて声をかけなかったのは誰でもない、自分だった。
あのときもっと早く声をかけていれば、と悔やむことを何度繰り返したかは分からないが、
最近ではそれもしなくなった。
代わりに、思い出すようにしている。ああすればよかった、などという無駄なことは思わず、ただ、思い出す。
あの日、何も言わずにずっとうつむいたままの安田が口を開き、震える声で言った言葉だけは、
長田はあの当時していたネタを忘れた今でもまだ、一語一句間違えずに言える。
>779
「人間はな、周りの人間が笑うとる中で泣きながら生まれて、
周りの人間みーんなが泣いとる中、笑って死んでいくんやで。
笑いは、『何かが生まれる』とき、生まれんねや。
『何かがなくなる』とき、生まれるもんちゃうで。
死ぬとき笑えんのは死ぬヤツだけや。
泣きながら死んでいく芸人を見て笑うのは、間違うとる。
『笑い』は生まな。せやから、長田、ずぅっと、生み続けーや?」
「安田?」
そこで長田は、安田の肌の色が青白いことに気づき頬にふれた。冷たい。
見ればずいぶん派手な赤いシャツだと思っていたシャツは、血で濡れていた。
「安田ぁっ!!?」
>780
駆け寄り肩を抱き、既に意識を半分手放しかけている安田を乱暴に振る。
細い体は折れそうで、長田の手の下で軋む音がした。
「おまえは、生み続けーや?俺が死んでも、お笑い、ちゃんと続けんねで?」
「何ゆーてん…つか、どしたんこれ、なぁ。
…っなぁ、オマエやん、俺が書くネタおもろないっていつも言ってたんは…
俺、なんもおもろいことできんって。オマエがいっちゃん、知っとるやろ?
オマエがおらんかったら、俺、何にツッコんでええかわからんやろがい!!」
「あ、ほか。逃げぇ、長田。すぐ、追手も、来るて。
こない血ぃ流れて、ここもバレるから、なぁ。新しい相方でも探したら、よろしいがな。」
「アホはおまえじゃアホぅ!!おまっ、一人で寝れんやろ?死んだら一人やで、なあ!!安田ぁっ!!
俺の相方は、オマエじゃないと、あかんねん…なぁ、こんなときまで勝手に、逝って、わがままゆーて。
解散しましょそうかいなで、すむ関係ちゃうやろ俺ら、なぁ!!」
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「あんとき、俺にもーちょい力あったら、今頃オマエここに眠っとったんかなぁ。」
長田の目から涙が流れた。
あの日から数日後クーデターが起こり、腐りきった政府は崩壊した。
社会の害悪とされていた「お笑い芸人」という存在は
「笑い」という人間らしい感情を生む存在として認められ、圧力でもみ消された芸人たちは尊い犠牲として今、
長田の立つ場所に慰霊碑とともに安らかに眠ることの出来る場所を与えられた。
しかしここは形だけで、前政府は証拠隠滅の一環としてプログラムの行われた島を全て海に沈め、
回収された死体も破棄したため、亡くなった芸人の骨は一本たりともここに埋められてはいない。
「でもなぁ、オマエがあともーちょい頑張っとったら、今頃大御所でもてはやされとったで、俺ら。」
長田は「お笑い」が解禁された日に芸人を辞め、
自分は決して歩むことはないだろうと思っていた「普通の生活」を過ごし年を重ねた。
何人もが長田を引き止めたが、あとを継ぐ若者は何人も生まれるだろうし、何より相方がいない。
「相方探して、しんどいんやで、かなり。」
それから無意識に「お笑い」を避けてはいたが、
今年小学生にあがる孫が「お笑い芸人になりたい」と言った時には笑ってしまった。
家系からは考えられない、ずいぶんと真面目だが毒づいた子供で視力が悪い、安田によく似た子だ。
彼は誰を相方に選ぶのだろう。
できれば自分みたいな、年齢の割には女好きなマセたガキがええなぁ、と長田はぼんやり思う。
「そろそろ、そっち行ってもええか?」
心残りと言えば孫のボケがどんなものかが気になるが、暖かい光に目を細めた長田は幸せそうに、笑った。