最近のテレビ番組の中でも最も不気味なのは
『HYU 2』(ヒューヒューと読む。日本テレビ系土曜夕方5時10分〜)
という公開生番組の客ではないだろうか。
その客質とでも言うべきテイストは毎回ほぼ同じく統一されている。
客層は男子中高生。
アカ抜けない。
共通した心を持ち合わせていそうな彼らを毎回引き寄せている原因、
彼らの共通した“目的”とは何なのか。
彼らのお目当ては、レギュラー出演者ひとり
「伊集院光」という男であるのだ。
伊集院はラジオのパーソナリティとして人気を得
深夜帯のテレビなどにも出たりしていたのだが、
昨年TBS系の昼帯のメイン司会
(『素敵な気分De!』既に終了)
に抜擢され、一応全国区のメジャー舞台に出てきたという経歴。
身長は183センチ、体重110キロ以上と言う巨漢で、26歳である。
で、どうもさっきの観客だが、このラジオでついた
伊集院の「追っかけ」的な客(ファン)らしいのだ。
番組中に「伊集院光のくる!」という彼の持ちコーナーがある。
本人がひとりでネタを考えているという「今週くる(流行る)もの」
をテーマとしたパネルトークなのであるが、これがおもしろくないんだ。
しかしこの時の客の反応が不気味なのである。
客の男の子たちは、真剣といってもいいほどきちんと伊集院の話を拝聴し、
ちゃんとツボ、ツボで笑うのである。
それも心底おもしろそうに。
見事に統率されている。
これはたとえばのべつ笑っている『笑っていいとも!』の客の異常さよりも
一段と深い。
宗教的なものさえ感じる。とにかく不気味だ。
伊集院光が「カルト的」とまえいわれるほどの人気を得たのは
ラジオと言うメディアである。
それも平日の夜10時から深夜1時という時間帯のAMラジオ。
これは確かにマスメディアではあるが、不特定多数に向けられているとはいえないと思う。
多数か少数化は聴取率と言う数字で評価されるだろうが
少なくとも不特定多数へは向けていないはずだ。
テレビという、対「不特定多数」に関しての最強のメディアには、
必ず「出てる人」と「その客(ファン)」以外に「外野(オーディエンス)」
が居るが、ラジオの場合この外野が存在しないことが多い。
すなわち「好きな奴しか聴いてない」状態。
これは、高い密室性を生む。
それがラジオの一つの利点でもある訳だが、
これをひとたびテレビに持ちこむと、
それはとても嫌なものにしかならない。
客のほとんどが日本からのツアー客なのに
しゃあしゃあと大成功を喧伝する「五木ひろしラスベガス公演」と似た嫌気である。
で、少なくとも『HYU 2』の中の伊集院光は、
完全にこの構造にはまっている。
これを続けてると、どんどん外野の客は引いていく。
理解し難いかたくなな価値観で完結している世界がこっちへ向かってきたときの不気味さは、
統一教会のそれとも似ている。
ってちょっと唐突でしたでしょうか。
「ラジオスターの悲劇」とまとめておくか。
まとまってないか。
・・・・・・93年4月