1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
■ローカルルール■
○書き手用○
・どのレスの続きかを必ず明記する事。文章の最初に >>レス番号 をつける。
・文中で芸人が死亡または同盟を組んだ、仲間になったなどの場合は、最後に必ずその旨を明記。
・文章が長くなる場合は、一度メモ帳やエディタで作成、確認してから連続コピペを推奨。
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドルを使用する事を推奨。
・これから書こうと思う人は、必ず過去ログに目を通す事。
※専属の書き手がいる芸人は無闇に動かさない。
※専属芸人の続きを書きたかったり、自分の話と繋げたい場合は、スレ内で呼びかけ確認を取る。
※長期間放置されたままで、明らかに前の書き手がいないと思われる場合は、新たな書き込み可。
○読み手用○
・コメント、感想、励ましメッセージ、注文などはsage進行で。
・書き手に過度の期待は厳禁。書き手さんだって、書けない時もあります。
○共通用○
・死んだ芸人は原則として復活禁止です。
・「あくまでもここはネタスレッド」です。まったりと楽しみましょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>1
スレたて乙カレー
スレ6
>>871-873 の続き
十数回目の挑戦で、ようやく車のエンジンが動き出す。
バッテリーを新品と交換し、ガソリンやオイルを詰めたとはいえ、
それを行ったのは整備士でなく素人、しかもこの車は元々廃車だったのだ。
何とか動くだけまだ幸いと思わないといけないだろう。
「どこに行くん。」
後部座席に一人放り込まれた村田は、ボソッと助手席の桶田に問う。
「まずはちょっとだけ、ドライブや。」
律儀にシートベルトを締める松丘を、横目でチラと見やりながら。
桶田は座り心地の悪いシートに身体を沈め、軽い口調で村田に答える。
「・・・答えになってへんぞ。」
納得がいかず、詳しく説明を求めようとバックミラー越しに桶田を睨み付ける村田を。
「じゃ、行こう。まず、そこを右に曲がって。」
当の桶田はまったく相手にせず、隣の松丘に指示を出した。
「・・・・・・・・・。」
無言のまま松丘は小さく頷いて、アクセルを踏み込む。
ギシッと軋む音を一度上げ、それからゆっくりと車は動き出した。
>>5 さすがは文明の利器、だろうか。
30分も経たない内に、3人を乗せた車は島の中央よりは北寄りにある山の中腹にある、
一軒の畜産家の裏口へと辿り着いていた。
道中の途中、何人かの芸人の姿も見たけれど。
時速ン10kmで走る車に即座に攻撃を仕掛けてこられる奴などいない。
何なら轢いちゃっても良いんだけどな、とどこか他人事のように桶田は言っていたが。
幸か不幸かそのような事態にも陥る事もなかった。
早速何かの作業をするために車を出て行った桶田と松丘に対し、
周囲に漂う独特の臭いと、車の中に居るという安堵からの空腹で、村田は外に出る気にもならず
二人の作業が終わるまで車の後部座席で眠っていようとしたが。
不器用そうに作業用の一輪車で黒い乾いた物体を運んできた松丘が、村田の側の窓をガンガン叩いて
それすらも村田に許さない。
「何やの。」
「これを車中に詰めぇて・・・桶田さんが。」
ドアを開け、顔を外に出して。
明らかに不機嫌が露骨に声色に現れている、その口調で問いかける村田に。
松丘は虚ろな表情のまま、ぽつりとそう答えた。
「車中に・・・?」
「はい。運転席以外の場所に・・・トランクにも、入るだけ詰めぇと。」
当然の話であるが、松丘の運んできた分だけで早々車内は黒い物体に埋まる物ではない。
ならば、どこかにこの黒い物が車を埋められるほどに大量にある、という事だろうか。
そう思って村田が松丘に訊ねてみると。
「・・・ええ。」
こくりと松丘は頷いて、村田の場所からは母屋の関係で死角になる、その向こうの。
サイロの下にこの黒い物が山のように積み上げてあるのだ、と村田に説明した。
>>6 「言っただろ、仕込みが終わったって。」
ここはいつの間に、と言えばいいのか何のために、と言えばいいのか。
数秒ほど思案する村田の耳に、ふとそんな声が聞こえて。
村田は声の主・・・桶田が何かを片手から下げながら近づいてきていた事に気づいた。
「それをみんなこの車に積んで・・・松丘にある場所まで運んで貰う。それで、大体上手く行く。」
薄く笑いながら桶田はそう言って。だから、悪いがその車から出てくれと続ける。
その桶田の言葉に、何とも言えない違和感と気味の悪さを感じながらも。
だからといって村田は何も答えることが出来ず、素直に従って車から降りた。
そして気づく。
桶田がその手からぶら下げていたのは、一羽の首のない鶏。
切断面からは赤い血がぼたぼたと地面へと滴り落ちている。
その瞬間、村田は露骨に厭な顔をしてしまったのだろう。
桶田は浮かべていた笑みを呆れたような表情に変えた。
「どうしたんだよ、これはメシだ。鶏を喰うには殺して・・・さばかないと駄目だろ?」
「そりゃ・・・そうやけど。」
桶田の、その言葉は決して間違ってはいない。
理屈としては村田も理解できる。でも。
・・・何か、変や。
それが何に繋がるのかさえ疑問に感じることもなく、自分が退いた事によって生まれた空間に
早速黒い物体をモタモタと詰め始める松丘の、生気のない横顔を視界の端に留めながら。
村田はその内側に、桶田を起因とする得体の知れない不安が湧き出してきたのを確かに感じていた。
>>7 「そぉか。じゃ、終わったら呼んでや。俺ちょっと・・・辺り、見て回ってくるから。」
・・・このままあいつと一緒におったら訳の分からない事を口走ってしまうかも知れへん。
ここはとりあえず、冷静になろう。そして、どうすれば良いのかゆっくりと考えよう。
「大丈夫。そんな遠出はせんし、危なそうなトコも行かへんから。」
村田はそう言うと、二人・・・いや、桶田の返事を待たずに背を向けて、走り出していた。
9 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/23 23:20
あげ
10 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/24 20:14
age
11 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/24 22:45
あげます
______________
|\________|___|__/|
| | /____\. | |
| |  ゚̄" ,,,,. "゚ ̄ | |
| | _/ ヽ | |
| | /;' /""ヽ ヽ. .|__
|. / :i ノ ゙:、 iヽ ||△| <新スレおめでとうございま〜す♪
|(,,,.-ーi,,,,/__,..--、_ \,,,ノi | ||▽|
| | | ~"" ゙゙゙゙~ |:l |  ̄
| ノハヽ ._ノノ |
|.(´д`,i`ー-、.,_______,..-ーフj|. |
|.(つ⊂)、 |___| ノμ |
| _)__(__( ヽ,,,,,,,,八,,,,,,,,/ | |
|∠三三:三三 三三:三三\|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
水道水に毒って設定あったっけ。PC壊れてて携帯からなもんで自力で調べられないからいつごろ誰が入れたか誰か教えて。 でももしそうだったら三拍子の話おかしくねえ?あ、毒入れられる前に起こったか、川か井戸から直接水引っ張ってきてると思えばいいのか。
>>13 清水ミチコが2スレ目の後半に入れてたよ
どうやって入れたのかは不明となってるけど
でも時間的にも毒の量的にもそろそろ限界かと・・・
陣内、引き継がせて頂きます。
前スレ
>>536の続き。
「ああもう、またかいな・・・」
仲の良かった芸人が、また一人。
陣内の目の前で死んだ。
目の前に、頭から血を流して山下が倒れている。
(コバん時とおんなじやな)
何度頼りにしないと決めても、やっぱりそこに行き着いてしまう自分のヘタレ具合に、少し笑う。
少し笑って、こんな状況でも笑える自分に気がついて、また笑う。
しばらくの間、陣内はずっと笑っていた。
(なんでこんなテンション上がってんねやろ、俺)
あんなにたくさん、目の前で死んだのに。
あんなにたくさんの人間がいて、一人も守れなかったのに。
自分だけは、のうのうと生きていて。
「ごめんなさい」
この期におよんで何を言うてんねん、と
自分の甘さに、陣内はまた、笑った。
すいません!前スレじゃなくてスレ5の536です。
>>16 ひとしきり笑うと、陣内はゆっくり立ち上がった。
もう、何が出来るかなんて考えてもしょうがない。
考えたところで、結局何も出来へんやないか。誰も助けられへんやないか。
助けられないなら、壊してしまえばいい。
誰も死なないように、このアホらしいゲームを終わらせてしまえばいい。
陣内は、ひとつ息を吐いて、南に向かって歩き出した。
少し歩いたところで、さっき麒麟・川島を殺した場所に出た。
川島の死体。竹若の死体。渡辺の、Jrの死体。
ほんの十分ほど前の惨状が、遠い昔の出来事のように思える。
「すんません、俺、なんも出来ませんでしたわ。後で絶対埋め合わせするんで、もうちょっと
待ってて下さい」
もちろん、返事をする者はいない。
死体に向かって、陣内は静かに手を合わせた。
そのとき、
何かがきらりと光を反射した。
近づいてみると、それは川島のもっていた刀だった。
陣内は、引き寄せられるように、その刀を手に取る。
頭の中で、誰かの囁く声がした――――。
18 :
名無しさん@腹いっぱい:03/01/25 23:10
を。陣内が村正か?
期待age
19 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/26 14:04
村正って何だっけ。ネプ原田が持ってた刀?
>19
うん。
ネプ原田→川島って来た例のブツ。
詳細はコモさんとこのログ参照。
陣君まで!?続き気になります〜!!
桶田さん編、陣内さん編描き手さん、乙です。
2つとも続きが気になります。
当方は・・・・(略
村正に限って言えば、掴んで何ともなかったのネプ名倉位じゃない?
後はもう、言わずもがなと。
島では真剣にバトロアやってるというのに、お茶菓子まで出てこのノリ
は…(汗)。
前スレ>859から。
「お邪魔します」
長井の妻がお茶菓子持参で光代と夏美のいる居間に入って来た。
「学生時代の友達が送ってきてくれた、六花亭のレーズンバターサンド、
紅茶にはちょっとくどいので合わないかもですが、コーヒーか何かと一
緒に食べませんか」
「レーズンバターサンドね、後数分したら事務所の子が来るからその時
に食べましょう」
お湯は沸いているからと静かに光代は言った。
「何夏美ちゃん顔引きつらせているの? 」
夏美の左横に座った長井の妻は言った。
「裕ちゃんのバカー! 裕ちゃんね、レーズンバターサンド独り占めし
て私にあんまりりくれなかったの」
どうやらその様子から察するに、田中が差し入れにもらって来た六花
亭のレーズンバターサンドを独り占めして数枚程度しか自分に渡さなかっ
たのを思い出したようだ。
らしいというか何というか……。
光代と長井の妻は顔を見合わせて納得とため息を付いた。
「ごめんくださーい! 」
事務員の声がした。
「はーい、あがんなさい」
光代が返事をすると、その声通りに彼女は玄関から居間に上がった。
「すみません、お邪魔します」
「いえいいのよ、気にしないで」
「あ、社長。沸かしたお茶どうしますか」
「じゃ夏美ちゃん、お茶入れて」
それぞれ座りたい場所に座る位置をずらして床に座り、お茶を飲みな
がら話をしましょうと光代が棚の中にしまっていた紅茶を夏美が棚から
出してお茶を入れた。
「で、社長。話とは」
コーヒーを運んできた夏美からコーヒーを受け取った事務員が向かい
に座っている光代に話を切りだした。
「ねえ、単刀直入にいうとね。このバトロア潰そうかと思ってるんだけ
ど、手伝ってもらえないかしら」
はあ?
光代からおおよその内容を聞いていた美奈子はまだ冷静だったが、
はっきりと本題を聞いていなかった夏美と事務員はお互いの顔を見合わ
せた。
「女の私達だから、出来る事もあるでしょう」
光代は静かに言った。
「確かに私達は、社長にはお世話になっています、お役に立てるなら立
ちたいです。けど今やっている芸人バトルロワイヤルは政府の発表によ
ると国家で制定されているBL法の扱いですし、一体どこから手を付け
れば……」
「そうですよ、社長。あれを潰すのはまさに国家に楯突くような物なん
ですよ、失敗したら、刑務所に確実に入れられちゃいますし、下手した
ら本当に命失いかねないんですよ、本当にやるんですか」
事務員と夏美は本当にやるんですか。と、光代に聞いた。
「由香里ちゃん、夏美ちゃん。言おうとしていることは確かに分かるわ。
私だって自分は確かに可愛いもの、だけどね、誰かがやらなければこれ
は終わらないし、これが終わって最後の1人が決まっても、BL法が続
く限りはまた繰り返されるから、また同じ苦しみを味わう人が増えるの
はもう私は嫌なの」
光代は言った後で、この場にいる3人を見た。
「社長、すみませんと共に聞きたいのですが、長井の携帯に残っている
連絡先携帯見つけられなかったので、あの人のことだから住所録もない
し、取り合えず年賀状の今年の残してあった全員分、持ってきたんです
が、あれは何でですか」
美奈子は光代に聞いた。
「それはね、その芸人の奥さんいる人だけに連絡取ってバトルロアイヤ
ルに反対なのかどうか、その連絡先の電話を調べ上げて確認取って欲し
いの」
夏美ちゃんにも似たようなこと言ったけど、そう言う事よ。
返事をした光代は、美奈子と夏美の2人を見た。
「それなら私達でも出来ます。そして、最終的にはどうするんですか社
長」
「流れ的にはこうね」
少しずつ言葉を切り出すつもりで光代はこの場にいる他の3人を見て
から話の続きをし始めた。
「期日は1週間後までに連絡取れる芸人の妻のみでどれだけ集まるかそ
の集まり具合を確認して、更にそれまでにピーちゃんがお世話になって
いた出版社に最終的に仕上げとしてやるつもりの国会議事堂に入っての
デモ記事掲載、どの出版社がデモ記事関係に関してはOKくれるか分か
らないし、もしそれで数社からデモ記事掲載取れたとしても、デモ記事
掲載された雑誌が発売されるまで日にちは約1ヶ月と見て、更に1週間
位掲載から実際のデモにかかる日にちを計算して、どの位一般市民が集
まるか分からないけれど──やってみるしかないわね」
大まかな流れを説明し終えた後、光代は喉が渇いたからとコーヒーを
一息で飲んだ。
「どれ位、人が集まるのががポイントですね」
夏美は光代の顔を見直した。
「まあ、他力本願の所もあるでしょうけども、出版社がこの辺りの鍵ね。
後、出来るんだったらネット系の新聞にも記事掲載お願いしましょう」
出版社とネット系のデモ掲載記事のお願いはあなた──出来るわよね。
確認の為に光代は事務員に言った。
「ネット系のデモ記事掲載と、雑誌社へのデモ記事掲載のお願いはあら
かじめそれぞれ文面のテンプレートさえ作っておけば、会社名をそれぞ
れ変えてBCCでまとめ送りすれば何とかなるんで、ネット系の新聞社
のメールアドレスなら私も調べることが出来ますんでそれで良かったで
すか、社長」
社長の話を聞いて、今自分が出来る所はここまでですが。
事務員は光代を見た。
えーっと、長井の奥さんの美奈子さんに関しては、ファンサイト系で見たの
をネタ帳コピペしている内に思い出してしまったんでそのまま気付いた時点
で直しましたのと、後事務員さんの名前に関しては出ていないので勝手に名
前付けさせていただいてますゴメソ。
では…ミス晒しまくったまま逝って来ます。
29 :
ライセンス@悪あがき:03/01/26 23:36
すいません、ライセンスを書いていた者ですが。
あの・・・なんか申し訳ないんですけど、ライセンスの集団催眠編も書いていいですか?
殺されっぱなしでかなり不憫なもので・・・。
もちろん「しつこい」て話でしたらやめます。
レスいただけると嬉しいです。
今回はこれで失礼します。
それでは。
>29
漏れは読みたいが、何か?
31 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/27 09:19
>>29 思う存分、足掻いて下さい。
読んでばかりで、書き手さん方は大変だと思いますが、
出来る限り様々な方の話が読みたいです。
base系芸人集団催眠編と天国編を書きたいとコッソリ思っていますが…。
この機会に便乗しまつ。
>29 >33
他の人のもとにかく読みたいんでお願いします。
それに自分の入っているプロパイダ今全板規制なってしまって、当面書き込
めないんで(今も他のプロパイダのからギリギリで書き込み中)…。
私も三拍子集団催眠編書きたいと思っていたのですが・・・書かせていただきます。
三拍子集団催眠編
「ん?・・・うわぁぁあぁぁあぁぁ!!びっくりした〜。」
「何その反応。失礼じゃない?」
「っても目覚め一番にお前の顔はキツいだろ。・・・え、目覚め?」
死んだはずなのに。俺もこいつも。
なのに今俺は目が覚めて。そしてこいつが眼力全開で俺をのぞき込んでて。
ってことはここあの世?マジかよ・・・。
でもそれにしては殺風景だな。体育館みたいだし。
ふと高倉を見ると「失格」と書かれたワッペンを持っている。
「なあ、それ何?」
「あー、これ?なんかね、失格らしいよ。」
「んなこた見りゃわかるよ。」
「給食当番みたいな人が・・・あ、来た。」
「三拍子・久保さんですね。お疲れさまでした。」
背後から女性の声がした。
そして簡単な問診の後、給食当番みたいな女性は高倉が持っているのと
同じワッペンを俺に渡した。
「あの、これ一体・・・」
「集団催眠実験です。それ以上は答えられません。」
そういって女性は去っていった。
「久保、これ集団催眠実験なんだって。」
「たった今聞いたよ。ってことは俺達生きてるんだよな。」
「そうなんじゃない?たぶん。」
「そっか・・・。」
「・・・。」
沈黙。
・・・正直気まずい。
「実験」の中で俺はこいつのことを信じることができなくて殺してしまった。
「ごめん」とか言えばいいんだろうか。
でも謝るのも何か今更って感じだしな。
隣りに座っている高倉の顔を見上げた。
お前も何か言えよ。もしかして怒ってるのか?
「・・・何?」
「え・・・べ、別に。」
「そう。」
俺の視線に気づいて話しかけてきた。
でもなんとなく何も言い出せなかった。
・・・何か言えばよかったかも。
しばらくして高倉がポケットの中からパンを出した。
「これお前が起きる前にパン配ってる人が来てさ、
そん時にお前の分としてもらっといたやつなんだけど。食う?」
「え、ああ。ありがと。」
受け取った。
なぜか俺が袋を開けてパンを食べる様子を笑顔で見ている高倉。
「何だよ。」
「・・・今度は信じてくれたんだな、って。」
「・・・・・・うるせぇよ。」
38 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/27 13:42
乙彼
「眼力全開」にワロタ!
書き手さん、乙です。
なんかほのぼのとしてていいね。
>>900の続き
内村が階段を駆け上がると短い廊下に出た。
奥の部屋から出てきた大男と出合い頭にぶつかりそうになる。
途端、白刃が煌めき、内村はとっさに後ろへのけ反った。
前髪の一部が舞い落ち、額には微かな痛み――。
男は日本刀を手にしたグレート義太夫だった。
狭い廊下でじりじりと間を取りながら互いに睨みあう。
義太夫が剣道の有段者なのを内村は思い出していた。
冷や汗が背中を伝う。
自分も剣道の経験はいくらかあったが、腕が違う。おまけに今は丸腰。
こちらに分がないことは明白だった。最初の一撃をかわすことが出来れば
勝機はある。出来なければ負け。おそらく勝負は一瞬で方が付く。
全身全霊。
相手のいかなる動きも見逃すことがないよう感覚を研ぎ澄ませる。
――と、
微かに耳鳴りがした。
次いで細かい振動、ゆらりと眩暈のように揺れる感覚。地震だ、
と気付いた刹那、
義太夫が動いた。
>>41 気合いと共に咽喉元目掛けて突っ込んでくる義太夫を、
紙一重で右へかわす。
完全に除けきれず切っ先が左の頬と耳をかすったが、
そのまま右手で相手の腕を押さえ込み、左で咽喉を思いきり突いた。
咳き込み、刀を取り落としたところへ
今度は背後から膝裏と背中に強烈な二段蹴りを入れる。
義太夫は突き当たりの壁に激突すると反動でよろめき、
そのまま階段を転がり落ちていった。
相手にもう起き上がってくる気配がないのを確かめると、内村は
北側の窓から刀を捨てる。
気が付くと先ほどの揺れはもうおさまっていた。
地鳴りのような微かな音が続いているような気もしたが、それは
まだ興奮している自分の身体のせいなのかもしれなかった。
2階の部屋を慎重に調べ、
ビートたけしがいないことを確認してから内村は3階に続く階段
へと向かった。
今回は以上です。
続きます。
小蠅さん、地震入れておきました。
成子坂編の展開を楽しみにしています。
>37 >39
おつです!
「眼力全開」、自分も笑った!!
プラン9天国編
『俺もう、助からへんやろうな…』
絶望的観測のまま、眠りについてから何時間たったかは全く解らなかった。
朝日のように差し込んできた光に、恐る恐る目を開けると、
意識を失う寸前までいた岩場とは違った風景に変わっていた。
目の前にかかる長い橋。そして、透き通った川の流れ。
これが、昔から言う「三途の川」という奴かと…鈴木は思っていた。
「俺、死んでしもたんやなぁ」
お笑い芸人バトルロワイヤルに参加して、人間の死をリアルに感じた彼にとって、
今自分がおかれている状況もごくごく当たり前の事だったのかもしれない。
「ゴエと久さん…それに、宇治原はまだ来てないみたいやなぁ…俺だけ一人ぼっちか」
起き上がり、辺りを見回したけれど…広大な荒野には鈴木ただ一人だけだった。
いつも周りには誰かがいて、一人になることは決して無かったのに。
別に鈴木も一人になることが、怖い訳ではない。
仲間だから、一緒にユニットを組んでいるから、死ぬ時も一緒だなんて誰が決めた訳でもない。
「一人ぼっち。か。賑やか過ぎた俺には丁度いい静けさかもしれへんわ」
これは、強がりなんかじゃないと、自分に言い聞かせ目の前にある木製の橋を渡り始めた。
一歩一歩、確かめるように歩き出すと、橋もそれに呼応してギシギシと軋み出す。
ふと橋の中程で、死ぬ間際に流れるように見た映像を思い出した。
まだ、2丁目劇場があった頃…初めてオーディションを受けた頃の自分達だった。
今はいない相方が当たり前のように隣にいて…。
一緒に笑い、一緒に泣き…、そして、一緒に喜びを分かち合った。
だけど、いつしかすれ違うようになり、いつの間にか疎遠になり、
そして望んではいなかった解散を向かえた日の事も…。
昔コンビを組んでいた時代の事が一本の映像となって頭の中を流れていった。
木製の欄干を握り締め、記憶を打ち消すように頭を何度も横に振った。
忘れてしまいたい事なのに、どうして忘れられないのか。
過去を振り返る性分じゃないと、自分で思い込むようにして、
心の奥に残る小さな傷を忘れるように…「ザ・プラン9」としての
ユニット活動に全力を注いでいたはずなのに…。
「…もう、終わった事や!…やのに、なんで忘れられへんねん!!」
「…忘れたらあかんやろ?」
後ろから聞こえる声に、鈴木は慌てて振り返る。
いつもの様に、優しい笑顔で自分を見守っていてくれたリーダーの久馬と、
そして何も言わずただ黙ってその言葉に頷く浅越が立っていた。
「久さん…」
「鈴木、それは忘れたらあかんで。あいつがいたから、今のお前がいる。
お前がいたから、今のあいつがいる。どっちも、自分達の過去の事を否定したらあかんで。
それに、解散は終わりじゃない、新しいスタートや」
鈴木をゆっくり諭すように、久馬は言葉を続けた。
「俺も、解散した時は正直戸惑った。だけど、一人で自分の道を見つけた相方を見て、
自分も頑張ろう、そう思ったんや」
「そうですよ、鈴木さん。こうやって3人で新しいスタートをきったばかりですし、
これからも3人一緒に歩いていきましょうよ…時間はこれから沢山あるんですから…」
ひび割れたレンズ越しに見えた浅越の目も、
先程までとはうって変わってにこやかな物になっていた。
今まで心の奥を痛めていた小さな傷が、今やっと癒された…鈴木はそんな気がしていた。
「ほら、お前らこんな場所で止まってたら、審判には間にあわへんわ…行こか?」
「あ、久さん待って下さいよ〜自分だけ天国行こうとしてるでしょ?」
「ほんまですよ、俺らも天国連れてってくださいよ〜」
これから先は希望に満ちたものだとは言えはしないが、
自分達が希望に満ちたものに作り変えていけばいいのだから…。
「…今まで、ありがとう…」
今来た道を振り返り、鈴木は誰にも聞こえないほどの声でそう呟いた。
その声は前を歩く二人には届かず、川のせせらぎによってかき消されていた。
いつか、言おうと思って言えなかったその一言が、ようやく…言えた。
もう、彼には届かないとはわかっていたが…。
「…何か、言ったか?」
何度見ても変わらないパソコンの液晶画面を追いかけるのを止めていた彼は、
自分の後ろを歩いていた後輩作家に声をかける。
後輩は、ただ黙って首を横に振った。
空耳にしてはやけにはっきりと、懐かしい声が聞こえた…そんな気がした。
3人は長い橋をようやく渡り終え、審判の時を待つのであった。
コッソーリ、長文でスマソ…。どうしても、プランの3人と森さんを救いたかったのでつ…。
集団催眠編、天国編好きだ。
プラン9イイ!!
三拍子もいい感じ。名無し太郎氏のこういうほのぼの文なんとなく好き。
集団催眠麒麟田村編、川島編その1とか。
ほのぼのではないけど三拍子本編も良かったよ。
51 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/28 21:10
age
いい物見させてもらったよ・・・安らかにプラン9・・・。
新喜劇での収入なんてものは些細な物だ
小薮の生活費はほとんどバイトからの物である。
その中で大半を占めているのはこの「くらげBAR」でのバイトである。
たいしておいしくも無い料理と愛想の無いマスター
こんな店でも以前は仕事帰りの芸人達の溜まり場になっていた。
「古高、俺買出しに行ってくるわ」
そうマスターに告げ、小薮は外に出た。
外は薄暗く風が強かった。
ガサッ
突然、物陰から小さい影が飛び出てきた。
「誰や!」
返事はない。
小薮のコンビ時代の事を知ってちょっかいかけにきた素人か?
絡まれるのも厄介なのでその場を立ち去ろうとした。
「・・・・小薮さん・・・」
物陰から聞こえてきた声
「・・・・融季か?」
そこには小さな少年が二人、りあるキッズが座り込んでいた。
「おい、お前ら どうしたんや?こんな所で・・・」
「小薮さん・・・なにか食べさせてください・・・」
そういい残し二人は倒れた
54 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/29 15:01
3ヶ月くらいこのスレから離れていて、久しぶりにここまで読んでみたけど
ラストに向けて面白いことになってきてるね。
どの芸人の今後も楽しみだ。
いいです!!
覚えている方がいるかどうかは分かりませんが、
どうもお久しぶりでございます。
一度は引退するなどと言っておきながら、
このスレが恋しくなり、約半年ぶりに帰ってきてしまいました。
相変わらず本編とは絡まない話を延々ダラダラ書いていくことになると思いますので、
本編完結までのおつまみにでもして頂けたら幸いです。
今回の登場人物は、
マイマイカブリ(五十嵐/高橋)
ダブルブッキング(川元/黒田)
ビーム(今仁/吉野)
です。
ちなみに、今仁・川元・五十嵐・高橋は同居しているという
予備知識があったりするとより楽しめるかもしれません。
というかそのような前設定で書きます。
それでは参ります。
突きつけられた選択肢は二つだった。
狭い箱の中に閉じ込められていた時と同じ、
前にも後にも進めない状況に、彼はひとり置かれていた。
違っているのは、その二つが「出られるか出られないか」ではなくて
「掛けに出るか、今ここで死ぬか」だということ。
敵の息遣いはすぐ近くから聞こえている。
この藪の中に身を隠していられるのにも、限界が近付いていた。
何度読み返したか知れない、小さな包み紙の裏を
彼は改めて一読してみた。
基本的に人間は信用できるものではない、というのが彼の信念だった。
ましてやこんなものを信じることができるはずはない。
しかし、このまま何の行動を起こさずにいれば確実に息の根を止められてしまうことは、
平常心を失くしかけている今の彼にも充分に分かっていた。
「誰だ、そこにいるの」
生い茂った緑色の向こうで、低い声と足音とが響いた。
人影の手には鉄パイプが握られていて、こびりついた血痕が見え隠れしている。
事態は切迫していた。
「…一か八かだな」
彼は小声で呟いた。
そして、手から伝わる体温でべたつくその赤い飴玉を、一息で飲み込んだ。
「──そういうわけだから、何かあったら一か八かお前が戦ってみてよ。
誰がいつ襲ってくるか分かんないけどね」
「ちょっと、勝手に決めないで下さいよ」
「だって…こんな武器で俺どうやって戦えばいいのさ!」
半ば叫ぶようにそう言い放つと、五十嵐は緑色をした煙草の箱を今仁の目の前に突き出した。
肌荒れ気味の顔をより一層むくれさせながら、五十嵐は続けてまくし立てる。
「そもそも武器じゃないじゃん、こんなの。
吸いたくてもライターもないし、ほんっと何の役にも立たねえよ」
「そんなの俺のせいじゃないっすよ。
だいたい俺の武器だってこれですよ?俺は一昔前のダイエーファンかっつうの」
今仁の手に握られているのは、何の変哲もない生卵1パック。
どちらの”武器”も、この状況を生き抜いていけるような
攻撃力や防御力は皆無に近い。
なのに、ある種の開き直りか、それとも仲間と合流できた安心感からか、
二人は不思議と取り乱すこともなく、
普段と変わらぬどこか抜けたやり取りを延々と繰り広げていた。
「ちーがーうーの、お前の力技を頼りにしてんだって。
こういう時にこそいつもの蹴りを生かすべきじゃないの?
ね、攻撃されたら俺、適当に隠れるからさ。ちゃんと守ってね」
今仁の眼を覗き込んでくるのは満面の笑顔。
軽い口調で彼が押し付けてきているのはよく考えずともとんでもない要求なのだが、
先輩らしさの欠片もないような、人を頼り切ったその表情に
今仁はそれ以上反論する気力をすっかり奪われてしまった。
雑林の中、今のところ周囲に人の気配は無い。
どこか隠れることのできる場所を探して、二人は歩き回っていた。
「ねー今仁〜」
「何すか」
「お腹すいたー」
「……」
嫌な予感が当たった。
あからさまに迷惑そうな顔を向ける今仁だったが、
五十嵐はそれに構うそぶりすら見せない。
「ね〜その卵一個ちょうだい、一個位いいでしょ。
あ、でもそれって生?それともうでてあんの?」
「どう見たって未開封でしょうよ」
「生なんだ…でも別に気にしなくていいよ、何とかして食うし」
「……いや、別にあんたの心配してるんじゃないんですけど…」
「頼む!一個、一個でいいから!」
手を合わせて懇願してくる五十嵐の顔を、今仁は改めてまじまじと見た。
卵を武器に使おうという発想は、彼の頭には存在しないらしい。
単に意地汚いと言ってしまえばそれまでかもしれないが、
彼のそういう考え方が今仁は嫌いではなかった。
「じゃ、一個ですよ」
結局いつもこのパターンで押し切られている。
彼の押しにはなぜか弱い自分にため息をつく間もなく、
やった、ありがとー、というハイトーンの声が今仁の耳に届いた。
「どうやって食うつもりですか」
「ん、何か忘れたけど外国のお祭りであるじゃない、
卵の殻に穴開けて中身だけ抜いて飾るやつ。
あの方式でいけんじゃねえかなーと思ってさ…あれ、しゅっぱいしちゃった」
「”失敗”ね」
思いのほか大きく開いた殻の穴から、間髪を入れずに半透明の白身が流れ出てくる。
舌の回らなさに対する今仁のツッコミも聞こえているのかいないのか、
五十嵐は白身だらけになった両手で、かろうじて原形を留めている卵の下半分を抑えて
必死にその中身をすすり始めた。
不意に落ち込んできた妙な沈黙。
それまで続いていた会話が急に途切れたことで、一瞬隠れていた不安が顔を出しかけたが
隣で不定形な液体を相手に悪戦苦闘する五十嵐を何となしに傍観しているうち、
そのあまりにもプライドの無い姿に、今仁の頬はいつの間にか軽く緩んでいた。
「そういえばさ、吉野はどうしてんの?」
白身のまとわりついた細い指先を舐めながら、五十嵐は今仁を見上げて尋ねた。
突然相方の名前を出され、咄嗟に周囲を見渡す今仁。
心配ではないといえば嘘になる。
しかし、ゲーム開始以来一度も目にしていない彼の消息など
今仁には知る術もなかった。
「んー、分かんないっすね…俺らのだいぶ後に出たはずだから。
たぶん誰かと組んでるんじゃねえかな。
え、高橋さんはどうなんすか」
「あいつ?うーん、俺も分かんないけど、
たぶん誰か先輩に取り入ってお世話になってると思うよ。大竹さんとか三村さんとかね」
あいつそういうの上手いから、と小声で付け加えると、
残った白い殻を投げ捨てて、五十嵐は苦笑いした。
「誰かいねえかなー、大竹さんとか三村さんとか…」
散策を始めてから数時間。
その間に何度この言葉を口にしたかは、既に高橋自身にも分からなくなっていた。
「この際もう誰でもいいんだけどな、
強くて頼りがいがあって優しくて、あと食い物とかくれる人なら誰でも」
この状況の中で果たしてそんな人間がいるのかどうか、
いたとして出会えるのかどうなのかは甚だ疑問ではあったけれど、
ただ一つ支給された武器がマッチ一箱である彼は、
僅かな可能性を信じてひたすら歩き回る他なかった。
「ていうか、どこなんだここ」
立ち止まって辺りを見回すと、あり過ぎるほど見覚えのある景色が視界を埋める。
途端に、脚の重みがどっと増した気がした。
「…やっぱ同じとこぐるぐる回ってるっぽいな……
おっかしいな、なんで何回歩いてもここに来ちゃうんだ?」
幾度首を傾げてみても、原因も脱出方法も到底見つかりそうもない。
途方に暮れた高橋は、とりあえず先ほど進んだ方向とは少しズレた方角に
歩を進めようとして、ふと立ち止まった。
「……あ」
人間が転がっているのが見えた。
それが後輩の屍であることに彼が気付くまで、そう時間は掛からなかった。
仰向けに倒れていた身体には、
生きている人間には決して見られないような薄暗い陰が落ちていた。
かつての面影は残しつつも、
生気も血色も消え失せてしまっているその顔に、自然と声が掠れる。
「あつし…」
今までも何人かの芸人の死体を目にはしていたが、
その度に高橋は目を反らしてきた。
これだけ身近な立場の仲間の死体を、それも間近で見たのは初めてだった。
頭では理解していても、気持ちがついていかない。
軽い眩暈がした。
「……何だよ、もう殺されちゃったのか」
それ以上何も言えず、その場にいるのもいたたまれなくなって
高橋が立ち去ろうとした、その時だった。
生い茂った雑草の陰で、
何かが光ったのが目に入った。
それは飴玉だった。
「飴……?あつしが落としたのかな?」
引き込まれるようにして橙色の包装紙の端を摘み、拾い上げる。
いかにも駄菓子屋で売っていそうな、しごくありふれた物だったが
腹の虫が泣きっ放しだった高橋にとっては思わぬ収穫だった。
「…ひとまず毒とかは入ってなさそうだし、貰っちゃってもいっかな」
念のため包み紙を取ってくまなく観察し、不都合がないのを確認すると
高橋は躊躇することなくそれを口内に放り込んだ。
口から鼻にかけて一気に、人口的な柑橘系の香りが広がる。
久しぶりに戻って来た味覚は涙が出るほど嬉しかったけれど、
それでも、素直に顔を緩める気にはなれなかった。
「それにしてもあつし、なんで死んじゃったんだろうな…」
オレンジ味の硬い球体を舌の上で転がしながら、
高橋は外傷の全くない死体のことをぼんやりと思い返していた。
「あつしはなんで死んじゃったんだろう…」
吉野の頭からは、先ほど目にした仲間の死体の姿が未だ離れずにいた。
今でも鮮明に思い出すことのできる、
天を仰ぐ形で横たわっていた、傷一つついていない身体。
それは鮮血にまみれた屍よりもずっと不気味なものだった。
吉野には懸念があった。
あつしの露出した肌に見られた、ひとつの異常。
凝視しなければ気付かない程度のごく微かなものだったけれど、
それにはある恐ろしい可能性が考えられた。
「まさかとは思うけど、もしかしたら…あれが……?」
ほぼ同時に、先ほど偶然耳にした会話が脳裏に思い起こされる。
その意味を反芻する間もなく、本能的な身震いに襲われて
吉野は頭を振り、浮かびかけたビジョンをすぐさま打ち消した。
──もしそれが本当なら、大変なことになる。
それは想像するだけで鳥肌が立つような事態だった。
「…駄目だ、しっかりしねえと。
頼りになるのは自分だけなんだから」
そう己に言い聞かせることで、何とか気を取り直す。
そしてふと前方に視線を移した時、
吉野は寸でのところであっ、と声を上げそうになった。
しゃがんで繁みに身を隠しているその後姿は、間違いなく黒田のものであった。
(続く)
【あつし(自転車こぐよ)・死亡】
なるべく死体役は作らないつもりでしたが…
今回だけ、勘弁して下さい ⊃д`)・。
ヒマナスターズキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
お帰りなさい!
お待ちしておりましたっ!!
68 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/01/30 19:59
ヒマナスターズさんお帰りなさい、そして新作おつ。
ヒマナスターズさんの文章はやっぱりカコイイ・・
いかんせん、自分は…(後略)
あげ。
えっ、あっ、ヒ、ヒマナさん!?嘘!?
お、お帰りなさいませ!
ヒマナスターズさんお帰りなさい!
ヒマナスターズさんだ!
お帰りなさいまし。
マジ!?ヒマナスターズさん!お帰りなさい!
しかも今回はホリプロ若手?
ホリファンの友人が見たらめっちゃ驚くだろうな…。
第一この人らに目をつけるヒマナスターズさんも凄い。
楽しみにしています。
73 :
名無しさん@お腹いっぱい。ちょこバト!:03/01/30 21:55
ぜんっぜん知らない方たちのお話だけど、何かひきつけられます。
順番違うけど、お帰りなさ〜い。
えれー人気だなオイ
うをっ!!ヒマナスターズさんお帰りなさい!このスレもいっそう盛り上がりそうですね!
ヒマナ氏(この呼び方もなつかしいわ)おかえりなさい。
また書かれるんですね。楽しみです。
>>5-8 の続き
取りあえずのあてもなく。
場所柄もあり、仕方のない事かも知れないが、周囲を飛び回る蠅を鬱陶しげに手で払いながら。
村田は目に付いた近くの林の中へと駆け込んでいった。
そのまま、桶田と松丘が残る畜産農家の建物の位置を木々の間から確認しつつ、
まずは一人きりになれる場所を求めて歩き続けていると。
ドォ・・・ン
山の方からそんな爆発音が微かに聞こえて、村田は思わず立ち止まった。
やはり、今もどこかで戦いは行われているのだ。
『こんな馬鹿なゲームぶっ潰したらなアカンやろ? 』
桶田は確かにそう言った。それはこのゲームに放り込まれた村田の望みでもあった。
それは、今も変わりはない。
何度も聴かされた死亡者を伝える放送で、一体何人の知り合いの名前がそこで告げられていた?
GAHAHAの頃に、ボキャブラの頃に、そしてピンになってからそれぞれ出会った連中。
これ以上の死者は出したくない。出て欲しくない。
でも、殺されたくもない。狙われたら先手を打つしかない。殺すしかない。
「それは、わかっとんねん。それは・・・・・・」
一つ溜息をついて、村田は薄暗い木陰で一旦腰を下ろす事にした。
殺す事も殺される事も止めさせるには、ゲーム自体を潰して終わらせるしかない。
その為に、桶田が思いついたという計画を早く実行する必要がある・・・けれど。
果たしてこのままで良いのか、というどこか奇妙な不安を村田は改めて感じざるを得なかった。
・・・何を、躊躇う必要があるっちゅーねん。阿呆らし。
ふぅ、と村田は再び溜息をつくと、タバコを取りだしてライターで火を付ける。
自分が持っていた奴はとっくの昔に吸い尽くしてしまっていたため、
このタバコは廃車置き場の側の仮設事務所に残されていた奴であった。
決して好みの味ではないが、これもまた仕方のない所だろう。吸えるだけまだマシなのだ。
>77
一本をゆっくりと吸い終えて。ニコチンが補給され、少しばかり村田の感覚がハッキリしてくる。
ついでに腰を下ろして視界が変わった事もあって、立って歩いていた時には気づかなかった
下草の藪の間から、うつ伏せになって倒れている若い男の姿が見えた。
自分にとって脅威になるかならないかを見極めるために、村田が男の側に近づいてみると
男の背中には銃に撃たれたのだろう傷が複数見られて、流れ出て服を染めた血は
すでに変色して固まってしまっている。もちろん、息はしていない。
「こんな所でも・・・」
彼の顔はどこかで村田も見た覚えがあったが、名前は生憎思い出せなかった。
むしろ、思い出さない方が良いのかも知れない。
下手に名前を思い出してしまえば、彼にまつわる記憶までもが蘇ってきてしまうだろうから。
それが、必ずしも幸福なものとは限らないから。
けれど尚も、村田は男の・・・死体の様子をジッと見やる。
そう言えば、今までは長い間死体を見ている余裕はなかった。
桶田と一緒にいる時は、桶田が松丘の拳銃でサクッと撃ち殺しても、観察する間もなく
先を急いでしまっていたから。
男は死んでもまだ、何かを右手に握りしめていた。
それはさして長くはないが、棒状の・・・
そうだ。時代劇でよく武家の娘が懐中に隠し持っている、そんな一振りの小刀。
これが彼の武器だったのだろう。
「刃物か・・・・・・。」
悪いけど、と小さく前置きしてから村田は小刀を男の手から抜き取った。
ついでに鞘から刀を出して光に翳してみると、どうやらサビも大きな刃こぼれもないようだ。
これは、使える・・・そう判断して村田は小刀を鞘に戻し、今度は鞘ごとズボンのベルトに挟んだ。
その上から被せるように、着ていたグレーのトレーナーの裾を下へと引っ張ってみる。
フードの付いた、薄地のそれは村田の力に従って伸び、腰の小刀をきれいに隠匿した。
>78
「ん、エエ感じやな。」
・・・せやけど何で俺、こいつを隠さなアカンのやろ。
満足したと同時に、ふと村田の脳裏を疑問がよぎる。
別に、桶田や松丘に堂々と「これ拾ってきたで」と言えば良いのに。
やはり、内心のどこかで桶田達を信用しきっていないとでもいうのだろうか。
・・・そうや。
俺は今も・・・いや、今だからこそ。どこかであいつら・・・違う、あいつを恐れとる。
それに決して俺は忘れた訳やない。あの日あの時あいつが何を選んでいったかを。
そのあいつが、何で今になってこの場に・・・そう、この芸人達の墓場に現れた?
・・・何や、そういう事やったのか。
それを自覚した途端、村田の口元に思わず苦笑が滲んだ。
「要は『オレは・・・オレに依って立っているっ・・・!』・・・やな。」
いつか読んだ漫画の、主人公の台詞が口をついて出る。
「その通りやな、忘れる所やった。俺も・・・もうちょっと俺に依って立っとかな。」
一度目を閉じ、自身の心に、全身の細胞にまで刻み込むように村田は呟いて。
ずっと漠然と感じていた不安や違和感を、ぬぐい去ろうとする。
桶田の計画が果たしてどういうモノで、どんな結末に終わるのかは定かではないが。
それに縋るだけではなく、どんなトラブルが途中で発生しようとも
逆に自分の力で前途を切り拓いて行くぐらいの自覚と意志を持たなければ。
そう言えば、変に安全策に走るよりも無謀と思えるほどに強気でいる方が、
えてして良い牌が転がり込んでくるものだ。
いつしか村田の顔に浮かんでいた苦笑は、自然な笑みに変わっていた。
>79
その後、適当に時間を潰してから、村田が畜産農家の建物まで戻ってくると。
桶田は青いタオルを首に掛けたまま、母屋の壁により掛かって一人鼻歌に興じているようだった。
「お帰り。」
「ん、あぁ・・・。」
早速の桶田との対面に、村田は腰の小刀の存在がバレないか一瞬不安を覚えたけれど
変に取り繕おうとすれば、その分逆に怪しくなってしまう。
「松丘は? もう作業は終わったンか?」
バレたらその時はその時だ、ぐらいの意識でいればいい。そう村田は平然と桶田に訊ねる。
「あれなら・・・まだ裏の方にいると思うけど。」
桶田の言葉に「あ、そう。」と小さく応え、村田は彼の指さした方向へと歩を進めた。
母屋を通り過ぎ、家畜小屋の角を曲がればすぐに裏手へと出る。
「・・・・・・松丘?」
煙突から煙を吐いている焼却炉の側で、地面に座り込んでいる松丘の姿が視界の中に映って。
思わず村田は松丘へと呼び掛けた。
「・・・・・・・・・!!」
けれど、その何の気ない村田の声に、過敏なほどに松丘は反応して俯き気味だった頭を上げた。
向けられるのは、食傷気味なほど見慣れてしまった、潤んで充血した瞳。
>80
・・・相変わらずこいつ、林の事を吹っ切りきれてへんのか?
1時間前ほどの自分を棚に上げて思わず呆れそうになる村田だったけれど
松丘に近づくにつれて、少し彼の様子が先程までとは違っている事に気づいた。
彼の表情から伝わってくるのは呆然と抜け殻になっていたが故の奇妙さではなく、過剰な怯え。
さっきまでは決して、彼の唇は小刻みに震えてなんかいなかった。
「どないしてん? 何か不味い事やらかしたんちゃうやろな。」
「・・・いえ、何でも、ホンマに、何でもないんです!」
敢えて冗談混じりに訊ねてみた、村田の言葉の語尾に被さるように。
松丘はそれが『何かがあった』証明にしかならない事もわからないぐらいの
テンパリきった口振りで叫び、慌てて立ち上がると村田から逃げるように走り去っていく。
走る事すらおぼつかないのか、数m毎に転びそうになる松丘の後ろ姿がやがて見えなくなり。
一人残された村田は訳が分からない、といった様子で小さく首を振った。
「一体・・・何があったんや?」
ただ一つだけ村田にもわかっているのは、桶田は何も答えてはくれないだろう事、だけである。
>蟹座さん
例の件、こちらの我が侭に応じていただいてありがとうございます。
期待に添えるようがんがりつつ・・・ウンナン編も楽しみにしています。
えっと、あと・・・>78の死体の男にはちゃんと名前があるのですが、
その死亡報告は次回の話で行いますので、今回はスルーでお願いしまつ。
83 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/01/31 11:17
>桶田は青いタオルを首に掛けたまま、
>母屋の壁により掛かって一人鼻歌に興じているようだった。
ドラえもんネタを思い出すなぁ…
遅くなったけど、ヒマナスターズさんお帰りなさいです。
ホリプロよく知らないけど面白い!続き期待します。
86 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/02/01 17:44
あげ
87 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/02 13:46
Base芸人 〜天国編〜
「はぁ〜・・これからどうしろっちゅうねん・・梶ぃ・・」
キングコング西野はため息をついた。
彼は、芸人バトルロワイヤルに参加し、いち早く死んでしまった若手である。
ここは天国である・・というより、明らかにもとの世界ではないところだ。
とても気持ちがよく、悩みも無くなってしまうような雰囲気。
西野はそこでずっとため息をついて考えていた。
自分を殺したのは大親友で、仲間で、ライバルのロザン菅。
そのことで西野はショックを隠しきれないでいたが、死んでしまったものは仕方がない。それよりも心配なのは、相方梶原の身である。
自分たちキングコングは、デビュー2.3年ほどですぐにテレビもラジオもばんばん出演し、そのことで先輩芸人にはあまりよく思われていなかったし、少し天狗なところもあった。だから、殺されるのなら真っ先に標的になるのは自分たちかもしれないという恐怖があった。
88 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/02 13:47
西野は、梶原と一緒にいたかったが、それも叶わない。
もう一度漫才をするというのも、もう二度と叶わない。
せめて最期は共にしたかった。あいつなら自分を信じてくれるという思いもあったし、2人で自殺するのもきれいだと思った。
でも、できなかった。
最期を共にするどころか、姿を見つけることさえできなかった。
そうして今、自分はここにいるのだ。
「早く・・だれか来てくれへんかなぁ・・」
またため息が出た。
そのときだった。
「西野ぉ〜!!」
向こうから1人の男が走ってくる。・・・いや、1人じゃない。たくさんいる!
「もぉ、西野どこおってん?俺たちずっと探しててんぞ!」
「ほんまや。心配かけすぎやで。後輩のくせによ〜!」
「みんなそろってんで〜!」
最初に目に付いたのは、自分の人生で一番のパートナー、相方の梶原。
「梶・・?」
89 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/02 13:48
「西野、お前めっちゃ死ぬの早いわ。芸人やったらもっとおもろく死なな!」
梶原だけではない。かつて、一緒の舞台に立った仲間がそろっている。
「FUJIWARAさん!ランディーズさん!ビッキーズさん!徳井さん!プラン9さん!後藤(秀)さん!!」
みんなが西野を囲んで笑っていた。
温かく、優しい笑いだった。
それは、楽屋での団欒の様子を思い出させた。
ひどく懐かしい気がする。30分前?1日前?それとももっと遠い昔?
「西野、お前もう1人じゃないで。みんな一緒や。」
梶原のその言葉に、西野は胸が熱くなった。
「ありがとう!おれ、めっちゃうれしいわ!!」
涙がこぼれそうになったが、必死にそれを止めて、みんなにいつものため口で礼を言った。
「西野、け・い・ご!!!」
「ええやん。実際問題、俺の方が人気あるし。」
「なんやと!だからアカンねん、おまえわ〜!!」
みんなでまた笑った。
ずっと笑っていた。
西野は思った。
(そうや!これが、俺の、『居場所』なんや!)
この場に、西野を殺した菅の姿はなかったが、それはまた別の話。
「完」
・・・
91 :
ライセンス@復活:03/02/03 00:11
お言葉に甘えてライセンスの集団催眠編書かせていただきます!
レスくださった方々、ありがとうございます!!
92 :
ライセンス@復活:03/02/03 00:12
藤原。藤原。
あぁ、井本の声が聞こえる。
今、そっちいくわ〜・・・。
いや、別に来んでもええねんけどな。
なんでやねん、行かせろや。
お前俺がおらへんとまた無茶するやろ。
天国とか行けへんくなるんちゃうん。
別にええけど。
お前の方が俺の傍にいたいんちゃうん。
・・・うん。
げ、気持ち悪〜。
気持ち悪いてなんやねん!・・・井本・・・そっち、明るい?
めっちゃ明るいで。
ほんなら、行くわ・・・。
93 :
ライセンス@復活:03/02/03 00:13
>>92 べち!!
「痛っ!!」
顔面に置かれた手からジンジンと痛みが広がってくる。
驚いたように体が跳ねて、無意識に上半身を起こした。
少し大きめの手がどいて見えたのは井本。
藤井にやられたはずのぱっくりと大きく開いていた傷口はなくなっていて、代わりに『失格』と書かれたワッペンのようなものがくっついている。
「なに、それ。どこ、ここ」
「いっぺんに質問すなや」
「なに、それ」
とりあえず嬉しそうな井本に、肩のワッペンを聞く。
すると思いついたように少し大きめに目を開き、あぁ、と呟いた。
「失格」
「だからなにがよ!」
「うるさい、大きい声だすな。皆に見られるで」
注意を促されて回りに目をやると、ちらほらと動く影。
寝たままの人。
「これっ・・・」
「え〜・・ライセンスの藤原さんですね」
「はい?」
大声を出そうとした瞬間、後ろからぽんぽんと肩を叩かれる。
ぽかんとその白い人を見ていると、その女は無言でなにやら検査的なことを始め、勝手に納得していた。
最後に何かボードにはさまれた紙に何かを書き足して、思いついたように井本と同じワッペンを貼り付ける。
94 :
ライセンス@復活:03/02/03 00:15
>>93 「では」
「お疲れさん」
俺の変わりに井本が返事をして、給食のおばちゃんみたいな人はふらりと消えていった。
説明しろ、と目を向けると、井本が笑って。
一瞬そのまま不自然に固まってから、困ったような顔になった。
作りそこなった笑顔を俺に向けて、項垂れる。
下向いた口からぼそりぼそりと声が聞こえた。
「実験・・・なんやって。集団催眠ていうの?そんで・・・俺らは失格で。この世界戻ってきて。・・・マジで悪夢とかあったんやなぁって・・・」
「井本?」
「いや・・まだ混乱しとる」
ぐしゃぐしゃって髪の毛かき混ぜて、疲れたようにため息をついた。
95 :
ライセンス@復活:03/02/03 00:15
>>94 「催眠、て」
「うん、ようわからん。さっきの女に聞いたんやけど『いえない』の一点張りで」
「そ、か」
「よかった・・・」
「うん?」
ずいぶんやつれたように見える井本。
また笑顔を作ったらしい顔が、情けなく俺のほうへと向いた。
ぽこ、て足を叩くと、痛くて。
あ〜、生きてるなぁなんて思いながら、井本の真正面にずっと座っていた。
「ネタ、でも作る?」
またぼそりと呟かれた言葉を拾って、俺はにやりと笑った。
それにつられるように井本もにやりと笑って、頷く。
でも紙もペンも無いから。
とりあえず。
俺をかばってナイフの前に飛び出した相方を見ていた。
96 :
ライセンス@終了:03/02/03 00:16
これで本当に終わりにします。
尻切れトンボになってしまいましたが・・・。
お目汚し、すいませんでした!!
ライセンス編、乙です!よかったです。
98 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/02/03 09:22
コッソーリさん、名無し太郎さん。蟹座さん、ライセンス催眠実験編の書き手さん
・・・・乙です。
私もがんばります(謎)
99 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/03 19:33
チュートリアルの福田さんの天国編書きたいのですがダメですか?
100 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/03 19:48
>99
オケだと思いますよ。
お言葉に甘えてチュート福田さんの天国編書かせていただきます。
長くなってしまう事を深くお詫びします。
自分は許されない罪を犯した。
そして自ら命を絶った。
自分の【死】が逃げだった事は自分が一番わかっている。
でもあの時、自分にはその道しかなかった。
命を消すのは簡単だった・・・自分のも・・・あの人のも・・・。
「ここは?」
チュートリアル福田は光の中にいた。
死の瞬間、視界が真っ暗になった。
これが【死】なんだと思った。
しかし今、自分は光の中にいる。
ここはどこなんだろう?俗にいう死後の世界という所なんだろうか?
「福田?」
背後から聞き覚えのある声――――。
低く響くその声は自分が銃をつきつけ自分が思い違いをし自分が殺した先輩の声。
福田は体を硬くし目をつむり、並びがあまりよいとはいえない歯を噛み締める。
まだ心の準備ができていない。
パニックと罪悪感が混じりあい混沌とした感情が福田の中に渦巻く。
振り返るのが恐い・・・。しかし逃げる事もできない。
「コバヤシさん・・・。」
福田は振り返ると同時に土下座する。
目からは止めどなく涙が流れる。
「す・・すいませんでした!・・ふぅ・うぅう・・僕、コバヤシさんが徳井君
のこと、こ・・殺したと思い込んで・・ほんで先輩の陣内さんとコバヤシさんに
銃向けて・・コバヤシさんを・・・・。ほんまに、ほんまにアホですわ。
許してもらえるなんて思ってません!!でも謝らせてください・・・すいません
でした!すいませんでした・・ほんま・・ごめんなさい・・ごめ・・ん・な・ふぅう
・うっう・・わぁーーーーーー」
地面に額をこすりつけながら泣き崩れる。
しばらく福田の嗚咽だけが虚しく響く。
「許さん」
コバヤシは地面に泣き崩れてる福田を見下ろしながら怪訝な顔で
そう言い放った。
許してもらおうなんて思ってないし許してもらえるはずがない。
だってあんな事態の中とはいえ自分はお世話になってる先輩を殺したのだ。
しかも間違いでした勘違いだったんです、だから殺しました。なんて言い訳になるはずない。
しかし分かっていながらもコバヤシの一言は福田の心を深くえぐる。
「福田、お前なぁ。俺が死ぬ前に言うた事聞いてなかったんか?」
「へっ?」グチャグチャになった顔を上げコバヤシを見上げる。
「これでええ、気にするなって言うたやろ?もちろん陣内に対してでも
あったけどお前に対してでもあってんぞ。それやのに何自分で死んどんねん!
かっこつけか!お前!!」
福田はコバヤシが何を言っているのか理解できない。
「何言ってはるんですか!僕はコバヤシさんを殺したんですよ!
殴ってくださいよ!ボコボコにして・・お前は最低やって言ってくださいよ!」
とヒステリックに叫ぶ福田をコバヤシはジッと見つめる。
「何度も言わすな。俺は気にしてへん」
「だって!!」
「俺は陣内にも福田にも生きててほしかった。それだけや。
俺は自分が取った行動に悔いはない!辛いのはお前が俺に責任感じて死んだ事や。」
「コバヤシさん・・・。」
「お前が会いたい人間は俺ちゃうやろ?アイツもお前に会いたがってるから、
はよ行ったれ」
コバヤシが指差す方には徳井が立っている。
「コバヤシさんは?」
「俺は会いたい奴が2人ほどおるし、まだここおるわ。ほんまは
ここに、こおへん事祈ってんねんけどここに来た時は一番に迎えてやりたいからな」
「そうですか・・」
福田はふと菅のことを考える。自分は菅を許せるだろうか?
相方徳井を殺し、自分を裏切り利用した菅を・・・。
しかし目の前にいるコバヤシと遠くでこちらを窺う徳井の顔を見たら
そんな事どうでもいいような気がした。
「ありがとうございました」と福田は最後にコバヤシに頭を下げた。
コバヤシは「おう」と短く答えそれ以上何も言わなかった。
地上で行われてる意味のない殺し合いはきっとまだ続くのだろう。
死人(しびと)になった福田にできる事は何もない。
だけど・・いやだからこそ祈ろう。全ての芸人に救いの手が訪れますようにと・・・。
☆おしまい☆
107 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/03 21:40
書き手さん乙です。福田天国編面白かったです。
コバはやっぱりかっこいいですね〜。
書き手さん方、お疲れさまです。
ああ、コバがカッコいい・・・(w
大滝編、進めてみました。
長くてすみません。やっと終わりが見えてきました。
あの、実は今まで桑原が負傷していたことをすっかり忘れていたので
展開が強引になってしまったかもしれないんですが。
そこのところカンベンしてやってください;
言い訳はこのくらいにして、書き込みさせていただきます。
大滝の相方 ― 今泉の名前は、放送で今村の次に呼ばれていた。
「久仁人と一緒に名前呼ばれてたやんか。一緒だったんかと思ったんやけど。」
ギリ、と大滝が唇を噛みしめた。
「もしかしてお前・・・」
桑原の心に不安がよぎる。
「あいつも・・殺したんか?」
大滝は何も言わない。
書き手さん乙です。
天国編、催眠実験編はやっぱりいいですね
私も無事に終わったらやってみたいです
(無事に終わるかどうかは今のところ不明です。いかんせん・・・)
「・・・殺してませんよ。」
しばらくの沈黙の後やっと口を開いた大滝の言葉に、桑原はほっと胸をなでおろす。
だが続く大滝の冷ややかな声が、その一瞬の安堵を覆した。
「見捨てただけです。」
「は?」
思わず耳を疑う。
「確かにあいつに会いましたよ。久仁さんと一緒にいましたから。
でも、使えないと思ったから見捨てた。それだけです。」
信じられない言葉を聞いた気がした。
「俺いつも言ってたじゃないですか。あいつは使えないって。」
今泉の名前を出した桑原を責めるような視線が向けられている。
なぜこんなことを語らせるのか、と。
「案の定、それからすぐに放送で名前を呼ばれてましたよ。
あんな足手まといを抱えて戦えるわけがない。俺の判断は正しかったんです。」
どうしてそこまで割り切れる?
麻痺したはずの感情が、再び熱を帯びるのを感じた。
「使えんて・・・確かによお言うとったなぁ。・・・でも。
それでも!お前は、あいつを見捨てるような奴やなか・・ッ」
激昂しかけた桑原の体から、突然力が抜けた。
ガクッと地面に膝をつく。
「?」
大滝が訝しげな目で桑原を見やった。
腹が熱い。
体に力が入らない。
急にどうしたというのか。
熱を持った腹部に、冷たい鉄の感触が蘇った。
自分を庇った山崎の体を貫通して自分の体に突き刺さった刀。
しかし傷はそんなに深くなかったはずだ。
なんで・・・と口に出そうとして、桑原はある回の放送を思い出した。
『どんな小さな傷も感染症につながりますので、十分注意してくださいね。
感染症で自滅されても面白くありませんから。』
放送の声は確か、おちょくるような口調でそう言っていた。
「負傷・・・してたんですか。」
大滝は少し驚いたようにそう呟いた。
「山崎が殺された時、俺もやられてん。」
「返り血かと思ってましたよ。」
お前とは違う。
そう言おうとして、やめた。
「それでよく俺のこと殴れましたね。」
「根性が違うわ。」
痛みに顔をしかめながらもニヤリと笑ってみせた桑原に、
大滝が苦笑しながら手を差し出した。
その手につかまろうとして、寸前で止める。
「・・どうしてこの手を、あいつにも差し出してやれなかった?」
桑原の問いに大滝の目が冷たさを取り戻した。
差し出されていた手は下ろされ、大滝は答えないままくるりと背を向けた。
しょうがなく自力で体を引きずるようにして這い、ひんやりとした岩壁に背中を預ける。
再び沈黙の戻った洞窟に、荒くなってきた自分の呼吸だけが響くのを感じた。
「先に裏切ったのは、あいつなんです。」
沈黙を破ったその声が悔しげに聞こえたのは、
やっと大滝が感情を見せてくれたからなのか
それとも朦朧としてきた自分の頭のせいなのか。
桑原には判断できなかった。
一体こいつらに何があったというのだろう。
聞きたかったが、体を侵蝕しつくした熱はすでにそんな気力さえも桑原から奪っていた。
霞むような頭の中で、何年も見てきた二人の姿を記憶の中に探す。
確かにこいつらは仲が悪いと公言してはばからず、
実際仲が悪いわけではないのに、意識的に距離をとろうとする所があった。
(まぁ芸人のコンビなんてのは大概そんなものだが。)
しかし20年来の幼馴染と言うものは、時々思いも寄らない絆を見せることがある。
多分それは、共有した思い出が多いほど強いものかもしれない。
それを少しだけ、うらやましいと思っていた。
だが、このゲームは20年以上かけてこいつらが積み上げてきたもの・・・
信頼という名のそれを、いとも簡単にぶち破ったのだろう。
大滝が口にした「裏切り」という言葉から、それだけは想像できた。
自分達だったらどうだったろうか、と考えてみる。
大学で今村に出会ってから10年と少し。
もしこのゲームで運良く今村と合流できていたとして、自分たちはうまくやれただろうか。
ゲームが始まった時、無条件で信頼できるのはあいつしかいないと思ったけれど
裏切りと憎しみが満ちたこの島で、疑心暗鬼にならず信じ続けることができただろうか。
・・・確信は、持てない。
それでも。
できることならもう一度会いたかったと、そう思う。
なぁ、久仁。
決して答えの返らない相手に心の中で呼びかける。
大学で知り合って意気投合してから、何すんのも一緒だったやんか。
バンドやるのも、東京出てきたのも、お笑い始めたのも。
なのにこんな時ばっか先に行きよって。ズルイわお前。
この島に来て初めての泣き言だった。
先に根をあげたのは気持ちなのか体なのかはわからない。
けれど面白いくらいに、桑原からは「生きよう」と思う心が消えていた。
白川が自殺しようとするのを必死で引き止めていたのは何だったのだと思うほどに。
久仁、ともう一度相方の名を呼ぶ。
もう、俺もそっち行ってええやろ?
・・・限界や。
背を向けている後輩に、桑原はひとつの決心をして声をかけた。
「なぁ、もうええわ。もう・・・何も聞かん。
その代わり、ひとつだけお願い聞いてくれへんか。」
その言葉に大滝が振り返る。
「・・・俺のことも、殺してくれ。」
死のまぎわに笑みを浮かべた白川の気持ちが、やっと理解できた気がした。
今回はここまでです。
もう今泉編とはどんどんかけ離れていってます;
書いた方、申し訳ありません。
あと2回ほどで終わりにできるかと思いますので
もう少しばかりお付き合いのほどを・・・。
書き手見習いさん、乙です
リアルタイムで読ませていただきました。
大滝さんはこれからどうするのか気になるところですが・・・
で。途中で乱入(
>>110)してすみませんでした・・・。
これから「新着レスの表示」を見てから書き込みます・・・
>119
お気になさらずにー(w
連続すみません。
どこからの続きか書くの忘れました。
>>109,111〜117は前スレ
>>838の続きです。
>>120 ありがとうございます。
続き、楽しみにしてますね。
123 :
名無しさんお腹いっぱい。:03/02/04 11:50
あげとこ
…天国編、書きたい人がいるんですが、話を考えても
救われない天国編になってしまうのはこのスレ的にいかがなもんでしょうか…。
ちなみに、プラン9からの派生で出てくるあの人です…。
救われない天国編は前にもあったし、いいんじゃない?
たまにはそういうのもアリかと。
では…コッソリ。マイナーでスマソ。
〜後藤秀樹・天国?編〜
水と同化する感覚にゆっくりと目を閉じて…意識を失った。
不思議と、苦しくは無かった。
もう二度と元の世界に戻る事が出来ない絶望から…死を選んだわけではない。
ただ、後藤が唯一無二の相方だと思っていた人間…久馬がその存在を失った時に、
自分が芸人として一個人として後藤秀樹である存在価値も無くなってしまう…。
その強い疎外感と残された者の寂しさが後藤を動かしたのは紛れも無い事実だった。
『…自分から命を絶つなんて事、怖いから絶対できへんと思ってたのにな…』
後藤が目を覚ましたのは、2つの大きな鉄製の扉の前だった。
多分、三途の川も途中で省略している様子だったので、
生死の淵を彷徨うことなく…すんなりと死ぬ事が出来たのだろう。
こんな状況下で、やけに落ち着いた判断を下せる自分自身に驚かされる。
扉のまわりを見ると、テレビ局や劇場で見たことのある芸人が何人もやってきては、
開く扉の中へと入って行った。
天国のような楽しい雰囲気も、地獄のような心根から怯えてしまいそうな雰囲気も無く、
ただ淡々と…まるでお役所仕事のように名前を呼ばれた人間が2つの扉へと振り分けられていた。
待っていればそのうち自分も呼ばれるだろうと、
そう思った後藤は焦ることなく自分の番を今か今かと待ち構えていた。
けれど、一向に名前を呼ばれる気配も無く、後から来た人間が次々とドアの中へと消えていく。
後輩のランディーズ、ケンドーコバヤシ、そして浜辺で別れたはずの宇治原。
皆、すぐに名前を呼ばれ、ドアの中へと入って行った。
何かがおかしいと思ってはいたが、確かめるまでは半信半疑だった。
すぐに、名前を読み上げていた人間を捕まえ、真実を問いただす。
後藤が捕まえた人間は、渋々名簿をめくり今の彼の状況を端的にだけ述べ、
再び作業を開始した。
自分の置かれている状況に唖然となる間も無く、
人ごみの中に見知った顔があることに気がついた。
昔の相方久馬と、そして一緒にユニットを組んでいる鈴木、浅越で構成されている、
プラン9の3人だった。
彼らもまた、扉の近くで名前が読み上げられるのを今か今かと待ち続けていた。
「…後藤?」
先に、後藤に声をかけたのは久馬の方からだった。
「…久さん…順番待ちか?」
「やっぱり人が多いわ…いつまで待たせるねんって感じや…」
死ぬ間際に、2人で会話をしたことを思い出し後藤は妙に気恥ずかしくなる。
死ぬまでにもう一度だけコンビに戻って欲しい、もう一度漫才がしたい等…
どこのメロドラマでもやっていないような、陳腐な台詞のやり取りだったが。
「さっき、ほんま我侭でごめんやったで?」
「別にええよ。俺らは色々ありすぎたから…」
2人が顔を見合わせて笑ったその時に、プラン9全員の名前が呼ばれた。
審判とはいえ、本当に簡略化された物で名前を読み上げられ姓名を確認し、
奥の鉄製の扉のどちらかに通されるという者であった。
名前を呼ばれ扉の前に立つ3人への審判はあっという間に終わってしまった。
もちろんだが、3人とも天国への扉が開かれた。
「後藤…、お前も一緒とちゃうんか?」
自分と浜辺で再会するまでの後藤の行いを久馬は知らなかったが、
後藤が人を殺めるような人間でも、人を陥れるような人間でもない事は十分わかっていた。
だが、一向に名前を呼ばれる気配が無い後藤に、慌てて久馬は声をかけた。
「…あんな…久さん、言うの忘れてた」
大きく一度だけ深呼吸をし、後藤は気持ちを落ち着かせた。
「ここで、審判される順番もあらかじめ決まってるらしいわ。
予定外の行動は嫌がられるって。俺の事らしいわ。
まだ生き永らえるチャンスがあったのに、自分の手でそのチャンスを
潰してしまった人間には大きなペナルティがあるんやってさ」
「…ペナルティ?」
「…天国でも地獄でもないこの無為の空間で半永久的に一人で過ごすことやって。
ま、どっちにしろ行き場所を失うっていう事やわ。
そのうち、生前に悪い行いが無かったら天国に連れてってもらえるらしいけど。
いつになるかわからへんってさ」
そう言うと、後藤は静かに笑った。
笑い事ではないという事は後藤自身が一番よくわかっていた。
だが、ここで何も言わないまま、絶望感を抱えたまま久馬を見送るわけには行かなかった。
涙で別れるぐらいなら、いっその事笑顔で送り出してやろう。
そう思わずにはいられなかったからだ。
「でも、解散した日と一緒やなぁ…お前がこんなしんみりしてるのは…
いつも隙あらば、ボケようと思ってるやろ?美味しいとこばっかり持って行って…なぁ」
本当は、辛くて、悲しくて、誰よりも一人になる孤独が怖かった。
だがそんな事を、見せまいと必死で後藤は明るく振舞う。
最後の最後まで自分の我侭の為に、久馬を引き止めるわけにはいかなかった。
「ほら、早く行かな…扉閉まってしまうで」
急かすように、扉に向かって三人の背中を強引に押す。
「ベタな言葉やけど、さよならはいわへんわ。ほな。俺も後から行くし…」
階段を上り始めた三人に背を向け、後藤は片手を上げた。
本当に天国へ行ける確証は無かったが…。
自分達を見送るその小さな背中が震えていたのを、久馬は気付いていたが…、
声をかける間も無く…無常にも鉄製の扉は重厚な音を響かせ閉じていった。
「あと何人、俺はこうやって知っている人間を見送るんやろうな…」
そう、呟いた後藤の声は審判を待つ人々の雑踏に紛れて消えていた…。
> 118
書き手見習さんお疲れ様でした。
毎回大滝変楽しみにしているものですこんにちは。
あと少しで終わってしまわれるのですか。
完結編楽しみなような、少しだけ残念なような。
頑張ってください。
> 129
コッソーリさんお疲れ様でした。
「救われない天国?編」、後藤サンよかったです。
プランも…。
まともに感想を書いてしまった。ああ。
131 :
名無しさんお腹いっぱい。:03/02/05 19:10
age
132 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/06 01:30
>>132 もう既に>103-106に書いてあるじゃん。
134 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/06 14:55
笑い飯のお話を書きたいのですが…いいですか?
まとめサイトの掲示板で尋ねたところ、本スレで聞いてみては
というご回答をいただいたのでここにやってきました。
レスいただけると嬉しいです。
136 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/06 18:21
読みたいっす!
>>134 まとめて書いてくれると更に助かります
137 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/06 18:48
>134
(・∀・)イイ!読んでみたいです。
>>135-137 レスありがとうございます。
ではお言葉に甘えてうpさせていただきます。
森の中にひっそりと身を隠す一人の男がいた。
その姿は敵から身を守るために自然と同化し身を隠すカメレオンや
その他の生物さながら森に溶け込んでいる。
笑い飯西田だ。
彼は教室を出てから一目散に森の中へ入り、多くのメンバーが死んでいく中
今日まで生き延びてきた。
他のガブンチョメンバーは川島の集合で集まっていたようだが
(西田も声はかけられたが)そこには行かなかった。
基本的に人間はあまり信用できない性質だし、ましてやこんな事態のなか
で人を信じるという事が危険な事になることくらい分かりきっている。
それに過去、ひきこもってた時期があるせいか孤独というものに
そんなに恐怖感もないし、なんなら大勢で群れるよりも一人でいるほうが
妙に落ち着く。
生活には困らなかった。サバイバルの知識もひきこもり時代たしなんだし
支給された武器である鉈の他に自分がいつも肌身離さず持っているナイフ
(空港で見つかり大騒ぎにもなった事のある代物)も役にたった。
食料に困るとそこら辺に生えてる草を食べた。
食べていて発見したのだが草も一つ一つ味が違う。
苦いのもあれば酸味がきいてるものもあった。
何も味がしないものも多かったが一番驚いたのはマーガリンの味が
したものだ。「なんでマーガリンやねん!?」とツッこんでみたものの草が
答えるはずもなく、その時はさすがに≪何してんねん…俺≫と憂鬱になった。
まぁ、そんな事をしながら西田は森の中で時を過ごしていた。
幸い誰かに見つかり殺し合いになることも芸人同士の殺し合いに巻き込まれる
ことも今のところなかった。
しかし遠くで銃声が響くのを聞くとハッと息を呑み心拍数が上がるのを
感じた。
正直、西田はまだ自分の感情をうまく把握できていなかった。
教室で鉄拳の頭にナイフが刺さり死んでいく姿を見た時
「うわぁ」と思ったものの「うわぁ」が恐怖の感情だったか?と考えると
そうじゃない。ハラハラドキドキというのか、興奮に近かったように思える。
あの感情はなんだったんだろう?
放送で仲間やお世話になってる先輩の名前が呼ばれても何も感じなかった。
悲しみも殺した奴への憎しみもなかった。
まるで業務連絡のようにそれらの名前は西田の中を通過しただけだった。
≪俺ってこんな人間味のない奴やったか?こんな中でおかしなってもうたんか?≫
考えるが思考回路はまともなような気がするし、考えてみたら昔から
こんな人間だったような気がしないでもない。
そんな事を考えていたその時!!
ガサガサ ガサガサ ガサガサ
と草をかき分けながら歩いてくる音がする。
西田は咄嗟に鉈を握り体を低くし身をひそめた。
向こうからガサガサ音をたてながら歩いてくるのは西田が誰よりも
見覚えのある男――――相方の哲夫だった。
なんていう偶然なんだろう。
しかし西田は躊躇していた。この場合、どう動くのが賢いのだろう?
西田の頭の中で『相方やぞ。はよ声かけな』と天使の西田が囁くと
悪魔の西田が『なに言うてんねん。相方といえどお前アイツの何知って
んねん。信用できるかいな。』声をあげる。
『お前、何年も一緒にやってきた相方信じられへんのか!』
『そんなん言うてもこっちは命かかっとんねん!』
『こっちも命かかっとるわ!』と喧嘩を始める始末・・・。
西田の葛藤は続く。
哲夫が西田の少し前を通り過ぎた時
プゥ〜〜〜〜〜〜〜
間の抜けたその音は臭いと共に辺りをつつむ。
「誰や!」哲夫は武器らしいヌンチャクを香港映画さながら
かまえ音がした方に向かって叫んだ。
≪わ、最悪や。屁で見つかった≫
もう隠れる事は不可能だ。
「哲夫、俺や」諦めて名乗り出る。
「なんや、お前か。驚かすなよ。」
「おぉ」
と、なんともあっさりとした再会を果たした。
そうだ考えようによってはラッキーだ。きっと
哲夫じゃない他の誰かなら今ごろ殺し合いになっていても
おかしくない。結果オーライで天使君の勝ちだ。
142 :
名無しのB9さん@お腹いっぱい。:03/02/06 22:53
えっと…一応今日はここまでにします。
とっても中途半端な変なとこで終わってるんですが堪忍してください。
レスくださった方、本当にありがとうございました。
>>42の続き
ガダルカナル・タカが隠れ家に戻ってくると、建物の手前に
そのまんま東が倒れていた。
顔に火傷のあとがあり、両手をベルトで後ろ手に縛られている。
同じように2階へ続く入り口のところにも、まるでそこから
先への進入を防ぐバリケードのように、軍団が何人か折り重なって
倒れているのが見えた。
「行かせませんよ」
行く手に立ちふさがる細身の男。手にしたブーメランは彼自身が
流す血で既に赤く染まっていた。
「南原か…」
タカは意外そうな表情を浮かべた。そして気を引き締める。
「まさかおまえらが特攻してくるとは思わなかったよ……。
いつから宗旨替えしたんだ?」
>>143 タカはウンナンのもう一人の片割れ、内村の顔を思い浮かべた。
その気になったとすれば、あいつは手強い。
南原がこうしてここにいる以上、おそらくもう建物の中だろう。
野放しにはしておけない――。
タカの心中を察したのか南原が言い添えた。
「別に、たけしさんをどうこうするつもりはありませんよ。ただ…」
南原は呼吸を整え、血でぬめるブーメランを握り直す。
「内村の話が済むまで、みなさんにはここにいてもらいたいだけです」
「そうはいかない」
タカは南原の手元を注視しながらゆっくりと言葉を返す。
「こっちにも殿を守るというお役目があるんでね……」
いくら普段が温厚な男でも、人間切羽詰まるとどんな行動に出るかは
わからない。南原の言葉を鵜呑みにするわけにはいかなかった。
ナイフを構え、タカがじりじりと間を詰める。
「あんまり時間がないんですよ。タカさんにばっか時間をかけると
残りの人たちが戻ってきちゃうんで」
そう言うが早いか、南原はブーメランを大きく一振りした。
>>144 相手がのけぞったところを出足払いでバランスを崩し、
ブーメランでしたたかにこめかみを打ち据える。
赤い飛沫が飛び、タカがよろけて数歩後ろに下がった。
間を置かずナイフを持つ右手に一撃加える。
タカが取り落としたナイフを南原が遠くへ蹴り飛ばしたところで、
建物の中から銃声が聞こえた。
二人の動きが一瞬止まる。
「行かないのか…?」
タカが南原の顔を見る。南原は動かない。
「ここで踏ん張るのが僕の役目なんで…。背中を見せるわけには
いかないんですよ」
タカを見据えたまま視線さえ微動だにしない南原。その面魂を見て、
目に入ってくる血を拭いながらタカはにやりと笑った。
「たいしたもんだよ…、おまえら」
もう内村のことなど吹き飛んでいた。
目の前のこの男を倒さない限り、自分が先へ行けることはありえないのだから。
今回は以上です。
続きます。
147 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/07 19:20
蟹座さん乙ー。
うーん、南原死にそうだ。
上がってると思ったら新作だ。
蟹座さんオツです。
南原が激しく気になる。。
>>コッソ-リさん
思い起こせば自分がシェイクに興味持ったのもこのスレだった・・・。
後藤とプラン天国編乙です。また泣きそうになったよ・・・。
>>141 とりあえず哲夫を自分の隠れが(といっても草むらの中)に
招き入れ自分が一番美味しいと感じた草を差し出した。
哲夫は躊躇する様子もなく草を口に放り込み≪さすが俺の相方≫
「マズっ」と言ってペッと吐き出した。≪なんて失礼な奴≫
そして哲夫はなにくわぬ顔で自分のカバンからパンを出す。
「おい!なんやねん、それ」
「ああ、これ?街が開放された時かっぱらってきてん」
「クリームパンやん・・・」
哲夫は西田を気にする様子もなくパンを食べ始める。
「ちょい一口くれや、ってクリームだけ先ねぶるな!!変われ」
西田は哲夫からパンを奪い取る。
「ちょお返せや・・・食いおわるなーーー!!ってなんでお前と
こんなとこで漫才せなあかんねん」
「ええやん、腹もふくれたし」
「俺のパン食うたからやろ」
その時、哲夫が顔をしかめ西田の後ろを指差し
「あれ・・・なんや?」と言った。
西田は哲夫の指差す方を見るが何も変わった所はない。
「何もないやんけ」と哲夫の方を振り返った時、
ブンと音をたて何かがすごい勢いで降りてきた
ガン
ヌンチャクが西田の頭をかすめ木にぶつかる。
木の幹はその衝撃でえぐられる。
「いたい!いたい!いたい!いたい!いたいわ、アホ!!」
ヌンチャクの鎖の部分に西田の髪がからまり引っぱられたのだ。
「あっ、ごめん。ジッとしてて取ったるわ」
西田は哲夫の膝の上に無理やり寝かされ、哲夫はヌンチャクに
からまった髪を器用にほどいていく。
「とれたで」哲夫は西田の頭をはじいた。
「ありがとう・・やない!お前、危ないやないか!?」
「うん」
「うんて何やねん!」
「あぁ、ごめん。殺してええか?」
≪何言うてんねん・・・こいつ≫
考える間もなく哲夫のヌンチャクが飛んでき西田の頭に命中する。
「たっ」
頭に手をやると激しい痛みと共にジュクジュクとした手触りが
手の中に広がる。
「俺、天才やからな、死んだらあかんねん。選ばれた特別な人間やねん」
哲夫が再びヌンチャクを振り上げる。
しかし西田の意識は別の世界へ飛んでいた。
≪血血血血血血血血血血血血血血血血皿
血血血血血血血血血血血血血血血血血―――死。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死
ジーザス≫
全てが一瞬だった。
西田が脇に置いてあった鉈を拾い上げ哲夫の首の
左側つけ根から胸にかけて振り下ろした。
味わった事のない手触り―――それはまるで電気が走ったようだった。
哲夫は「あ」と言うと西田を見ながら立ち尽くし
そのまま、ゆっくり後ろに倒れた。
「うわぁぁーーーー哲夫!哲夫!」
西田は倒れた哲夫に駆け寄った。
哲夫は左肩からドバドバ血を流し
まるで赤い服を着ているようだ。
「めっさ痛いわ」表情を変えずポツリとつぶやく。
「アホぉ!もっと痛がれ!」
「お前がやっといて・・何言うてんねん」
哲夫の顔は血の気が引き人形のようだ。
「なぁ・・最後に頼みごとしてええか?」
「言え!みな 叶えたるわ」
「殺してくれへんか?」
「・・・な・なに言うてんねん。そんな事できるわけないやないか!?」
「頼むわ・・意識あるうちに死にたいねん」
「意味わからんわ!変われ!・・・変われ。
俺が肩に鉈刺して倒れてボケるからお前ツッこめ。変われぇぇーー」
はっ――――哲夫が笑ってる。
「ええねん、もう。それよりマジで痛いから、はよやれ、お前。
どうせこのままやったら・・痛い思いしながら死ぬねん・・・ふぅ。
それやっ・・たら、一思いに・はよ死にたい・・。」
「哲夫・・・ええんか?」
哲夫は何も言わない。
言葉なんてなくても目が全てを語っている。
血まみれになって転がっている鉈を拾い上げる。
「俺、天才やろ?」
「お前は天才や」
ザシュ
哲夫が死んだ
哲夫が死んだ
俺が殺した
涙・・・?
「お前は天才ちゃう・・アホや・・アホやーー!」
息絶えた哲夫を抱き寄せる。
今わかった鉄拳が死んでいく姿も放送で流れる知り合いの死も
すべて【リアル】じゃなかったんだ。
だから第三者でいられた。今までの自分はテレビを見て
「かわいそうやなぁ〜あんた気つけなあかんで」と軽く言い放つ
だけど実際危険な事なんて起こるわけないと思い込んでいるオカンと
なんら変わりなかったのだ。
しかし今、目の前に【リアルな死】がある。
最後に自分が切り裂いた哲夫の腹に手をもっていく。
そして切り裂かれた傷口の中に手を入れる。
「あったかい・・・」
死・死・死―――これが死だ。
腹の傷に入れていた手を引き抜く。
手は血まみれだ。
血まみれの手を顔にやる。
そして血を顔に塗りつける。
ここは死にあふれた地だ。
数限りない芸人の魂が消費される、死の百貨店だ。
≪そうや・・死や。いろんな死を探しに行こ≫
西田は哲夫を木陰に引きずっていき人目につかないようにし
自前のナイフで木を削り棒のような板のような物を
作った。そして支給されたボールペンでそこに
『哲夫の墓 哲夫ここに眠る』
と汚い字で書きなぐり地面に刺した。
「ほんなら行くわ」西田はポツっとつぶやき
自分と哲夫のバックを肩にさげ歩き出した――――。
【笑い飯 哲夫 死亡】
156 :
名無しのB9さん@お腹いっぱい。:03/02/08 20:25
長くなってスイマセン・・・。どこで切っていいか分からなくて
一気に上げてしまいました。西田氏が歩き出してしまったので
話はもう少し続けさせていただきます。ほんとスイマセン。
笑い飯キタ━━━(´∀`)━━━!!!
変われ!っていいな。おつ!
159 :
名無しさんお腹いっぱい。:03/02/10 11:42
前スレの方が上がっているのでage
乙です。2人の会話が想像できて楽しい。
「みな、〜わ!」とか「変われ」とか言う言うって感じです。
粘着ウザー
‘д‘
別に使い切ってなくともしばらく書き込みがなきゃ落ちるよ。
でも粘着がウザイから埋め立ててくる。
だから2度と来ないでね。>粘着クソ
笑い飯いいすね。二人の関係がリアル。乙です。
169 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/12 20:12
続き期待age
170 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/12 20:55
笑い飯の話、血がいっぱい並んでるとこ一つだけ皿になってるんだけど
わざとなのかな?真面目な場面なのにワラタ。打ち間違いはさすがにないだろうから
わざとなのかな・・やっぱり。
おお、芸が細かい!
気づかなかったよ
ほんとだ! なんか笑い飯のネタっぽい!
笑い飯の哲夫とケンコバが会う所見たかったな…
と思ったけど、よく考えたらケンコバもう死んでるんだった。
とにかく笑い飯乙。
>>173 天国編、集団催眠術編なら可能でしょ。
哲夫さんとケンコバあってたらどんな展開になってたんだろう・・?
すごく久しぶりにバトロワスレ来た。以前毎日のように読んでたのは川島が狂ってる真最中ぐらいでスレ消費異様に早かったあの頃だからすっかり変わっててびっくりしたよ。保管サイトさんで読んでやっと追い付いた。最近のだったら三拍子と笑い飯特に良い。
176 :
名無しさん@お腹いっぱい :03/02/14 19:09
笑い飯イメージぴったりだ。
笑い飯の書き手の者です。前回の続きをうpしたいとおもってるのですが
うpする前に、ごめんなさいと謝らせてもらいます。
もしかしたらこれからうpする話で気分を害される方もいるかもしれないです
が、おおらかな気持ちで受け止めていただけると嬉しいです。
それと感想レスくださった方々ありがとうございました。普通に嬉しかったです。
>>155 西田は歩き続けた。森を抜けるとここが「戦場」なんだという現実が
西田にも否応に突きつけられた。転がる死体・・・。
銃殺、刺殺、絞殺、撲殺、自殺、さまざまな【死】
その一つ一つを吟味していく。
山林で見覚えのある服が見えた。慌てて駆け寄る。
「木村さん・・・」
そこにはバッファロー吾郎の木村が倒れていた。
もちろん息はしていない。そんなことは放送を聞いていたので
知っている。ずっしりとした体にポツリと小さな穴が開き
そこを中心に赤黒く服が変色している。
木村は笑い飯にとって一番お世話になった先輩だ。
自分達のネタを褒めてくれ舞台のチャンスを多く与えてもらい可愛がってもらった。
バッファロー吾郎がいなかったら今の自分達がいなかったといっても
過言じゃない。(といっても相方はもういない)
そんな木村の【死】が目の前にある。
≪なんでや・・・なんでや・・・何でなにも感じひんねん!
おかしい、おかしい、おかしい・・そんなはずない≫
頭をかきむしる、ボサボサの髪がさらにボサボサになる。
「ねぇ・・木村さん?木村さん?そうですよね・・そんなはずないですよね。
答えてくださいよ。ねぇ・・ねぇ・ねぇ!!答えろ!答えろぉぉーー!」
木村の襟首をつかんで揺さぶるが、もちろん木村は答えない。
≪なんで答えはらへんねやろ?そうか・・コレは木村さんちゃうんやわ。
ほんなら関係ないわ≫
西田は木村を乱暴に突き飛ばし、またゆっくり歩き出した。
西田は歩いた。歩けば歩くほど一つの疑問が西田の中で大きくなっていった。
≪なんでや―――なんでや!!≫
目の前にある死体、こんなにも【リアルな死】が目の前にあるのに
何も・・・何も感じない。
ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ
なんでや?なんでや?なんでや?
死体・死体・死体―――こんなに死体が転がっているのに、
そこには間違いなく【死】が溢れているのに・・
西田の心は錆びついて動かなくなった機械のように
これっぽちも動かない。
その一方で、もどかしい気持ちが渦巻き激しい苛立ちがこみ上げてくる。
ギリ ギリ ギリ 歯が音を鳴らす。
目の前に転がっている死体を鉈でズタズタに切り裂く。
ハァ ハァ ハァ
ふぅ・・脱力したようにその場にへたりこむ。
疲労感と共に空腹感が襲ってくる。
考えてみれば哲夫を殺し森を出てから数日間、何も食べてない。
カバンを漁るが食べれそうな物は何もない。
その時、西田の目にズタズタになった死体――いや肉塊がうつった。
西田は笑みを溢しながら立ち上がった。
それからの西田の行動は語るまでもない。
エヴァがエデンの園で禁断の果実をかじってしまったように
西田も禁断の味を知ってしまっただけのことである。
知識の果実を食べたエヴァは永遠の命を失ってしまった。
西田は・・・―――――――。
今日はここまでで・・・。えっと、ごめんなさいです。
あんな素晴しい顔面の持ち主の西田さんだから少々無茶な事を
さしてみたくて・・。反省してます。話はもう少し続きます。
>180
ヨカッタ!
マスノ関連以外で初めてかな。
よかったですよー。
あ、人を○べるってのがです。
>>145の続き
出合い頭の発砲を受け、内村はその場にたたらを踏んだ。
3階に続く階段の踊り場、
待ち受けていたのは階段に座り込み、ライフルを構えたラッシャー板前。
防弾チョッキの恩恵で内村に怪我はない。
それでも衝撃で胸の辺りが軋んだ。一瞬息が詰まる。
一方、至近距離で胸を撃ち抜かれても倒れない内村にラッシャーは狼狽した様子だった。
本来ならば安静にしていなければならないほどの負傷なのだろう、
すぐには次の動作に移れない。
蒼白な顔に脂汗が浮かび、呼吸もままならないその様子を見て、
内村が一気に間を詰める。
ライフルの銃身を両手で掴み、ラッシャーの身体ごと思いきり下へ引っぱった。
拍子に銃弾が内村の右足をかすめる。
二人は諸共に階段から転がり落ち、踊り場の壁に激突した。
訪れたしばしの静寂。
その静寂を破り、
荒い呼吸でライフルを杖代わりに、その場に立ち上がったのは内村だった。
>>184 階段から落ちる衝撃に備え、とっさに防御の体勢をとったものの、
やはり身体のあちこちが悲鳴をあげていた。初日に負った古傷が再び
痛み出す。被弾した右足は脛の辺りが出血し、感覚が鈍かった。
傍らに横たわるのは、苦痛に顔を歪め、動かなくなったラッシャー。
その姿に内村は黙って頭を垂れた。
最後の階段を登りきり、杖代わりにしていたライフルをしばし見つめる。
自分がもはや清廉潔白な傍観者でないことはわかっていた。
それは眼下のラッシャーが証明している。
それでも……。
内村は迷いを振り払う。
ライフルを近くの窓から投げ捨てた。
目標まではあと少し――。
自分はたけしさんに会ったらいったい何と言うつもりなのだろうか。
それは内村自身にもわからなかった。
実際に会い、
ビートたけしの顔を見るまでは――。
【ラッシャー板前 数時間後に死亡】
今回は以上です。
少し長くなりますが、次回でUN編完結の予定です。
187 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/15 21:12
蟹座さん乙です。
いよいよウンナンも……ですか。
ミッちゃんはどうなるのかしら。
蟹座さん乙カレです
次回でUN編完結しちゃうのか…続きは読みたいけどチョト寂しい。
自分もUNとあとミッちゃんが気になるyo
蟹座さんおつです.
UN編完結。ああああ。どう言う風に終わるのか気になります
>>179 アレから何かがおかしかった。
哲夫を殺した時から少しづつおかしくなっているのは感じていたが、
段違いだ。自分じゃない自分が自分を喰い荒したような・・・
とりあえず、もうマトモじゃない。理性などどこにもない。
目についた芸人は殺した。そこら辺に何体も転がっているモノも
全部潰してやった。なんにも思わなかった。
そう、アレからだ・・・人もモノも顔がない。
普通に考えるとそんな事ありえない。でも顔がついてないのだ。
まるで肌色のクレヨンで塗りつぶしたみたいに顔がなかった。
顔がないモノを傷つけるのに抵抗はなかった。
いや・・楽しかった。
西田は欲望のおもむくままに鉈を振り回し続けた。
小さな小屋が一つポツリと建っている。
人が住むというより倉庫のような感じだ。
その中に一人の男が膝を抱え座っている。千鳥のノブだ。
「遅いな〜あいつ・・。」ノブは相方の大悟とおちあい、この小屋で
生活していた。「ちょお便所してくるけ、お前ここおれ」と言って
この小屋を出てから大悟がなかなか帰ってこない。
一人というのがこんなに心細いということを思い知り
相方にこっそり感謝しつつ、それ以上に相方に何かあったんじゃ
ないかと不安になりながら一人先ほどからソワソワしていた。
その時 ギィーー と扉が開く音がした。
「お前、遅いんや」とパッと顔を上げたが、そこに立っていたのは
相方ではなかった。「わぁ、びっくりした!誰じゃあ!?」
逆光になってて顔がはっきり見えないが目を凝らし、
その人物を確認するとノブは安堵の表情を見せた。
「西田さん・・・」
千鳥は笑い飯の後輩で、その昔まだインディーズで漫才していた頃から
お世話になっており今でも共にbaseよしもとの舞台に立っている。
(いや、こんな状態では立っていた。と表現する方が正しいのかもしれない)
その分、他の芸人よりその絆は深い。なんと言ってもノブは西田の相方・哲夫と
一緒に住んでいる。(いや、もう哲夫は死んだからこの表現はおかしいのだが)
それほどの仲なのだ。
目が慣れてくるとノブは西田が血まみれな事に気付いた。
「どないしたんですー!?怪我でもしたんですか?」
西田はピクリとも動かない。
「西田さん?ワシですよ!ノブです」
ノブは西田に駆け寄り手を握った。
ぬるっ
生ぬるい感触が手の中に広がる。
その感触はノブを一気に冷静にさせた。
≪こんな血出てて生きとる人間おるわけない・・≫
次の瞬間、ノブに鉈が襲い掛かってきた。
ノブは間一髪でそれを避けたが腕をザックリと切られた。
(避けてなかったら首が飛んでいただろう・・)
「いっ・・た・・なんなん・・」
西田は表情を変えない。いや、もう表情なんてない能面のようだ。
「ノブです!西田さん!西田さん!!」
必死に呼びかけながらも、どこかでもう全てを理解できてる
冷静な自分がいる。
≪狂っとる。ワシはここで殺されるんじゃ≫
だけどそんなこと受け入れられない。
「嫌じゃ。死にとうない・・・嫌じゃあぁぁーーーーー!!」
サクっ
小気味良い音が響いた。能面の西田の顔に笑顔が生まれる。
そして西田は小屋を後にした。
【千鳥 ノブ 死亡】
結局、西田は森の中に帰ってきた。
遊び(殺し)は飽きたし疲れた。
死は楽しかったけど、そこに何もないことに気付くと
なんだか全てが無意味に思え虚しさを覚えた。
捨てたはずの犬がボロボロになりながらも飼い主のもとに
帰ってくるように西田も気がつくと森に向かって歩き出していた。
隠れがに戻って西田は唖然とした。
≪どういうことや・・!!?≫
顔がある、顔がある、顔が―――哲夫に顔がある。
≪お・・俺は・・・ウッ≫
激しい吐き気が襲い掛かる。
う・・うっぷ・おえっ・・げぼっ・・・
まるで自分の中にいるナニカを必死に吐き出そうとするかのように
嘔吐し続ける。
涙が溢れてくる。
凍りついていた心が一斉にとけだしたように、いろんな感情が一気に
動き出す。
≪ハァ・・ハ・・う・ふぅぅ・・≫
感情達はジグゾーパズルのように一つの形を作り上げようとしている。
―悲しい―
悲しい・悲しい・悲しい・悲しい・・・
誰かの死やなくて【哲夫の死】が・・悲しかったんや・・。
なんでこんな単純な事わからんかってん・・お・俺は何てことしてもうたんや!
あいつは「選ばれた特別な人間」って自分で言うとったけど
俺にとってはアイツは特別やったんや。
お互い感情、表に出すの下手くそやったから・・・
こっ恥かしいかったから・・俺は・・俺は・・俺は・・
ドン
後ろから何かが、ぶつかってきた。
背中に鈍い痛みが走る。
西田は振り返ろうとし、
体をひねったひょうしに血がスプレーのようにほとばしった。
ドサっ
そのまま西田は前方に倒れた。
西田の背中からは包丁がはえていた。
急所は、ずれているのか意識はまだある。
≪俺死ぬんか・・・?何もできひんでこのまま・・・≫
哲夫の顔が目にうつる。
西田は激痛に耐えながらも必死に手を伸ばした・・あるものをつかむために。
「ぐうぅう・・」
もう少し・・もう少し・・
ガシっ――西田は哲夫の固く冷たくなった手をつかんだ。
「やっぱり、お前はあったかいわ・・・」
その言葉を最後に西田は息絶えた。
しかしその顔には安らかな笑みがこぼれていた。
【笑い飯 西田 死亡】
小屋から一人の男が出て行くのが見えた。
遠目では『千と千尋の○隠し』に出てくるばけもんかと思うたが
その後姿には見覚えがあった。
「西田さん・・?」
鉈を片手にフラフラと歩く姿に嫌な予感を覚え、急いで小屋へ戻った。
しかし全てが遅かりしだった。小屋の中には血まみれのノブが倒れていた。
「ノブ!ノブ!!しっかりせい!!ノブ!」
ノブは「ぐぅ・・」と呻くと薄く目を開いた。
そして大悟を見ると軽く笑い「気ぃ・・つ・け・・ぇ」と言うと
目を閉じた。それからノブが目を開けることはなかった。
「ノブーーー!!!・・・おめぇ、自分が死ぬ時になに人の心配
しとるんじゃ・・アホか・・・アホか・・うっうう・くぅぅ・・」
涙が出た。男は泣くもんじゃねえ、という考えの大悟が見せた数年ぶりの涙だった。
そしてノブに復讐を約束し西田の後をこっそりつけてチャンスを
うかがっていたのだ。
殺意・殺意・殺意・殺意・殺意・殺意・殺意
それだけが大悟の心を覆った。
先輩、後輩、義理、人情・・そんなもの関係なかった。
「覚悟せいや」
そう呟くと武器である包丁を西田の背中に刺しいれた。
それだけだった。あっけない死。
復讐を果たしたというのに心にぽっかり穴が開いたような虚無感、虚しさに襲われる。
「ノブぅ。仇はとったったからのぉ、成仏せいや。寂しがらんでもワシもすぐそっちに逝っちゃる。
ろくでもねぇ人生じゃったけど、てめぇと漫才できてよかった」そう言うと大悟はノブの武器である
劇薬を取り出し口の中に放り込みガリガリと乱暴に噛み砕いた。
味なんてあるわけないのに何だか甘く感じた。
きっとこれが死の味なんだろな・・・と柄にもない事を考えながら
大悟はゆっくりと目を閉じた。
【千鳥 大悟 死亡】
一気に終わらそうと思ったらめちゃめちゃ長くなった…愕然。
本当にすいません。千鳥というまだマイナーなコンビを使うのは躊躇したんですが
(岡山弁もむずいし)でも笑い飯といえば千鳥なので出してしまいました。
本当に申し訳ないことだらけですが勘弁してください。
読んでくれた人&レスくれた人本当にありがとうございました。
198 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/17 21:22
乙です。笑い飯面白かったです。千鳥?ってコンビは知らないですが
楽しく読めましたーーー
おつですー
壊れていく西田さん すてきぃでした
笑い飯もちょっとしか知らないし千鳥も知らないんですが
すごく面白かったです。文章も無駄がなくて読みやすい!
おつかれさまです
笑い飯&千鳥の絡み最高じゃけぇ
西田はこんなの似合うねぇー(・∀・)
笑い飯乙でした。よかったす。二人のキャラが違和感なく読めました。
千と千尋のばけもんワラタ。
204 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/02/18 15:47
笑い飯&千鳥、とてもヨカッタです!!とても2組のキャラなど、よく分かったうえで書いておられるので、すばらしかったです!!
お笑いバトルロワイアル Vo1はどこにあるのでしょうか?
よかったら、教えてほしいです。過去ログみても、なかなかさがせないので。お願いします!!
>204
保管サイト行きんさいや
206 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/02/18 21:07
教えてちゃんですんません。保管サイトとは??
>>1も読まずにカキコか。
教えてチャソ以前の問題だな。
>>77-81 の続き
心臓が、痛い。頭が、重い。身体が、全身が、意識を拒んでいる。
家畜小屋の角から牧場の方へ駆け抜けようとして、また足元をもつれさせて。
松丘はもう立っている事が出来ず、大地に跪く。
過呼吸による眩暈と共に吐き気を覚え、口元にやったその手の指の隙間より
胃から逆流した液体が流れて落ちた。
・・・げほっ、げほぉっ
ひとしきり咽せ込んでも、松丘の呼吸はなかなか楽にならない。
背後から村田の気配が近づいてこない事を確認して。
松丘はそのまま、汚れるのにも構わずに前のめりに倒れ込んだ。
遠くから、地鳴りのような音が聞こえる。
さっきから身体が揺れているような気がするのは、もしかしたら気持ち悪いからではなく。
今も何処かで地震が起こっているからなのかも知れない。
「・・・・・・ど・・・う・・・・・・スマン、な・・・」
松丘の口元が、微かに動く。
松丘の、ただでさえ弱っていた意識に更なる打撃を与えたのは何だったのか。
それは・・・村田の知りえる筈のない、彼が牧場から走り去った後の挿話である。
ドォ・・・ン
山の方から火薬の炸裂する音が微かに聞こえたような気がして。
松丘は一輪車を押す手と、足を止めた。
・・・今度は誰が死んだのだろうか。
爆発の被害にあったのが、せめて自分の知っている芸人でない事を祈りながら、
松丘はまた一輪車を押そうと全身の筋肉に力を込める。
早く、あの車に・・・この黒い物体を詰め切らなければ。
何もできない自分だけど、せめて桶田さんの計画が早く始められるようにしなければ。
その想いが、今の松丘を動かす原動力となっていた。
しかし、そんな松丘の意気込みとは裏腹に。
一輪車を止めた拍子に泥に引っかかったのか、車輪はなかなか動き出そうとしない。
それどころか、強引に一輪車を押し込もうと勢いと力を込めた途端。
一輪車はバランスを崩して、盛っていた黒い乾いた物体を周囲にぶちまけてしまう。
「・・・・・・あー・・・何やねん、もうっ!」
思わず口に出してから、松丘は反射的に周囲を見回した。
桶田さんはいない。そして、村田さんも。
誰も見ていない・・・それは松丘を咎める者はいないという事。
松丘は安堵して散らばった黒い物体を、また一輪車に盛ろうとしゃがみ込んだ。
そして、ふと気づく。
いつもなら、松丘が何か些細なミスをしでかしてしまっても。
周囲には誰かしらがいて。笑ったり呆れたりというリアクションを返してくれた。
それが・・・今はもう、ない。
・・・これが遺される、という事なのだろうか。
黒い物体を拾いかけた、その姿勢のままで松丘は動きを止めた。
南の方から吹いてきた風が、前髪を揺らすその音すら聞こえそうなぐらいに。
周囲がシンと静まり返る。
長い沈黙や静寂はどうも怖く感じられて、松丘が立ち上がろうと足に力を込めようとした時。
鈍い、こもったような音が微かに聞こえた。
「・・・・・・・・・?」
気のせいかと思いながら立ち上がり、それでも松丘はもう一度意識して耳を澄ませてみる。
ごん、ごん、ごん
確かに、小さな音が。どこか近くから聞こえてきていた。
「・・・村田さん? ・・・違うな・・・・・・・・・なぁ、どこやっ!」
「・・・・・・・・・・・・!」
恐る恐る呼び掛けると、声のような音も聞こえる。
黒い物体を拾う事を一旦止め、松丘は音の発生源を捜して、視線を巡らせた。
・・・回りには誰もいない。何もない。
けれど、確かに松丘の耳には何かを叩いている音が届いてくる。
更に松丘は周囲を注意深く見やった。
・・・まさか、コレ・・・か?
松丘の視界にある中で、唯一何か怪しいと思えた物。それは焼却炉だった。
日々の中で生じた雑多なゴミを処理しているのだろう。大型で、使い込んでいる様子が見受けられる。
近づいてみると・・・心なしか音は大きくなっているように感じられた。
不気味ではあったが、訳の分からないまま放置するよりは正体を知っておく方が良い。
吸い付けられるように松丘は焼却炉に取りつくと、閂を外し、扉を開けた。
「う、うわああぁぁ!!」
重い扉を何とか開けきった途端、絶叫と共に焼却炉の中から黒ずんだ物が飛び出してきて、
松丘を突き飛ばす。
強烈な体当たりに、思わず尻餅を付いてしまった松丘が、何とか焼却炉の方を見上げてみると。
小柄な人間が身体を小刻みに震わせながら、立ち上がっているのが見えた。
「・・・・・・・・・っ!?」
・・・何故、焼却炉の中から人間が?
当然のように、松丘はそう考えるけれど。
それ以上の思考を紡ぐ前に、まず松丘の口から言葉が放たれる。
「・・・須藤っ! お前、須藤やろ!」
手や顔も、衣服も髪も、焼却炉の中のススで真っ黒に染めた人物が
赤く充血した瞳を大きく見開いて松丘を見た。
彼は、松丘の事務所の後輩にあたる、須藤 祐。
元はチョーダイ、そして今は魚でFというコンビを組んで、笑いの道を進んでいる人間である。
死亡者を告げる放送で、彼の名は聞いていなかったから。
どこかで生きているとは松丘も漠然と考えていた。
けれど、まさかこんな所で出会えるとは。
「まつ・・・・・・松丘さん・・・? ぅあああああああ・・・マッチョぉっ!」
相手が知っている人間だとわかって、のそっと身を起こした松丘に。
須藤は叫ぶように声を絞り出しながらしがみ付いてくる。
松丘の腕に食い込むその指は、普段の強気な彼が嘘のように小刻みな震えを隠そうとしなかった。
「須藤・・・・・・良かった。お前、生きとったんやな・・・・・・」
そんな須藤の素直さが妙に嬉しく思えて。
松丘は告げながら、子供をあやすように彼の背中をさすってやった。
須藤が顔を擦り付けてくるお陰で、松丘の服は汚れるけれど。
そんな事、どうでも良い。生きている人間の温もりにまさる物はない。
けれど。
・・・何で須藤はこんな所に?
こんな狭くて暗い所。
ダブルブッキングの川元ならいざ知らず、長時間入って気持ちのいい居場所ではない。
いや、TVの企画としてある程度の環境は保護されていたあの箱よりも、
こちらの方が確実に劣悪な環境である。川元でも一体どれだけ耐えられるだろうか。
正直、松丘には1時間と耐えていられる自信はない。
松丘が気づくまで、今までずっと内側から壁を叩いていたのだろう。
須藤の拳の皮はベロッとめくれ、肉の赤がススの間から覗いている。
そうだ、7人の子ヤギを気取るにしては焼却炉の戸の閂は外から閉められていた。
須藤はここへ逃げ込んだというよりも閉じこめられていた・・・と考えた方が良いのだろう。
「マッチョ、なぁ、みんな・・・無事なのかなぁ。」
須藤の声が、松丘の思考を現実に引き戻す。
「そうだよ・・・富田も、無事に逃げ切れたかなぁ・・・」
「・・・お前、富田と・・・一緒やったんや。」
松丘が訊ねると、須藤はコクと頷いた。
富田 鉄平。彼はチョーダイの時の須藤の相方だった男である。
彼らがコンビを解散して以来、松丘は彼の姿は見ていないけれど。
コンビ別れした成子坂もここで出会っているのだ。
彼らも同じように出会っていたとしてもおかしくはない。
「なぁ・・・須藤・・・・・・」
・・・お前も、一緒に来るか?
思わず口に出しかけた、その言葉を松丘は無理矢理押さえ込んだ。
林に同じ事を持ちかけて・・・その揚げ句、林に首を絞められた時の事を
もう忘れているほど、松丘もトリ頭ではない。
ただ、曖昧に笑みを浮かべながら。
松丘は須藤の震えが収まるまで、もう少しだけじっとしている事にした。
トリップ付けてみますた。
あと、人死にのトコまで話が進まなかったので、それはまた後にて。
ま、誰が死んだかもうバレバレでしょうが(w
>210 さん
乙です。
そちらも盛り上がると良いですね。
218 :
名無しさん@お腹いっぱい :03/02/20 23:52
あげ
>>210のコバケンに不覚にも萌えてしもた
小蝿さんオツー
>>185の続き
銃声と誰かのうめき声に続き、何かを引きずるような音。
たけしは部屋の入り口に向け銃を構えた。
「内村か…」
現れた小柄な黒い影。その白い面は汗と血にまみれ、右足を引きずっている。
「よくここまで来れたな。相方はどうした」
「オレがここにいるってことは……、」
呼吸を整えながら内村は答える。
「南原がやるべきことをきちんとやってくれたんだと……
そういうことだと思います」
たけしは内村を改めて見た。武器らしきものは何も持っていない。
着ている黒のパーカーに被弾の痕があるにもかかわらず大したダメージ
もなさそうなのは、防弾チョッキを着込んでいるからだと思われた。
「武器は? 丸腰で俺と一戦交えようってのか…?」
「……たけしさん」
内村はたけしをまっすぐに見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「オレは信じてるんです」
「デビューしてから今までいろいろあったけど…」
「オレたちを見て笑ってくれた人たちは、オレが人を殺すとこなんか見ても
喜ばないって…」
たけしは黙って内村を見ていた。表情は読み取れない。
「オレ、間違ってますか」
内村も目を逸らさない。辛抱強く相手が口を開くのを待つ。
「なんで今更そんなこと俺に聞くんだ?」
たけしは少し顔をゆがめて笑った。
「それぞれ自分のやり方を通せばいいんだよ」
次の瞬間、たけしが脇に身を除けた。
>>220 銃声を聞き、内村は前にのめった。
後ろからの衝撃。赤い飛沫が視界を掠め、右の二の腕が粉々に砕け
散ったかのような激痛を感じた。遠のこうとする意識を気力で引き戻す。
なんとか倒れずに踏みとどまる。自分の背後に軍団の一人が立っている
のが見えた。
南原…。
残してきた南原。
一瞬その顔を思い浮かべ、その次の瞬間には内村の身体は宙を舞い、
たけしのアゴを蹴り上げていた。たまらずよろけるたけしの右手に再度
蹴りを入れて拳銃を弾き飛ばし、腕と右足の痛みにバランスを崩しながらも
後頭部に回し蹴りをなんとか決める。たけしは顔面から床に突っ伏した。
そこへ二度目の銃声。
内村が再び前にのめる。今度は持ちこたえられずに膝を付いた。腰の
辺りに焼かれるような激痛が走り、鮮血がほとばしる。
「殿、大丈夫ですか?」
「ああ、」
ダンカンが駆け寄る。倒れていたたけしがゆっくりと立ち上がった。
銃を拾う。銃口をピタリと内村の眉間に合わせた。
内村は痛みに耐えながら、黙ってたけしの顔を見つめている。
「甘いよ、内村」
三度目の銃声が辺りに響いた。
>>221 (また、銃声だ…)
大地に横たわりながら南原はぼんやりと思った。
何度目だろう…。
内村のことだから最後まで何かしら抵抗しているのだろう。
(ごめんな…、一人取り逃がしちまって…)
建物の前にはガダルカナル・タカをはじめ数人のたけし軍団が倒れて
いた。南原が仕掛けた足止め工作のために無傷なものは一人もいない。
自らも致命傷を受けながら、誰をどう倒したのかは覚えていなかった。
ただ、ひとりだけ建物の中に入れてしまったこと、それだけが心残りだった。
内村…。
目を閉じて18年来の相棒の顔を思い浮かべる。浮かんだ顔は笑顔だった。
前髪が目にかかった、
思わずウザったいとかき分けたくなる相方の…。
(ちぇ…、これじゃアイツの言ってた通りじゃねえかよ…)
南原は笑った。
悔しいような、うれしいような、妙な気分のまま、意識を混沌にゆだねる…。
大量の失血にもかかわらず不思議と寒さは感じなかった。
まるで大地が温かく南原の身体を包んでくれているかのように…。
訪れた夜の闇の中
南原に最後の時が静かに訪れようとしていた。
>>222 「男前が台無しだな…」
倒れた内村を見下ろし、たけしはつぶやいた。
血の海に沈んだ内村の横顔。
黒髪に白い肌が映え、それを今彩るのは鮮血の赤。
薄く目を見開き、どこか遠くを見ているような、
まるで一片の絵画を思わせるような、そんな死に顔だった。
「甘いよ、おまえは」
続けて何かを言いかけ、しかし、その先は口には出さず、
たけしは内村に背を向けた。窓の外に目をやる。何かに気付いた
ようにしばらく窓の下を見つめてから軍団を呼んだ。
「おい、」
「あとで内村の死体、そこの窓から放り出しておけ」
「え、ですが、殿……」
窓の下は山の斜面に面している。何故もう死んでしまった者に
そんな仕打ちをするのか。意図が飲み込めないで戸惑うダンカンに、
たけしは窓の外を見るよう促す。
ダンカンが近寄ると窓の下、山の斜面に、建物から漏れる微かな
明かりに照らされて、もはや動く気配のない南原の姿が見えた。
ダンカンの返事を待たず、たけしは黙って部屋を出る。
やがて、どさりと、何かが落ちる音がした。
それはたけしが部屋を出て、わずか数分後のことだった。
【ウッチャンナンチャン・内村、南原 死亡】
これでUN編は完結です。
今回UN特攻編を書くにあたって目標としたことがありました。
それは、なるべく男性受けする物語を心掛ける、ということです。
そのために「男は黙って自分の仕事を全うし、死んでいく」という
テーマのようなものを設けました。
うまく表現できたか、目標を達成できたのかはわかりませんが、
ともあれ、お付き合い下さったみなさん、ありがとうございました。
225 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/22 19:48
>224
漏れ男だけど良かったと思うよ。
ラストが好き。完結おつかれさまです。
蟹座さん完結乙でした!
UNさんは最後までまっすぐだ・゚・(ノД`)・゚・
蟹座さんお疲れさまでした。
UN格好良かったです。ナケマスタ
蟹座さん、お疲れさまでした。
そして良い作品ありがとうございました。
まず蟹座さん。
完結乙です。こういった重厚で泣けてしかも続きが気になるストーリーを書くのは
私にはまず無理…。そもそも自分はシリアスが得意じゃないんで
とりあえず、乙です.
で、小蝿さん。
謝らなければならないことが.
須藤さんの元相方の富田さんをコージー富田だと
「富田」という文字を見た瞬間勘違いしてました
アホだよ…自分。続き、楽しみにしてます.
名無しのB9さん。
私は笑い飯をMー1で初めて知ったので
知識は浅いです。それでも楽しめたのはなんでかしら。
(特に千と千尋のバケモン。)
完結乙です.
こう言った感じで後からまとめて講評するものぐさな私って一体、
私もいい加減続きを書かなければ。
230 :
アムロ零 ◆2H6dLT3oqA :03/02/23 00:29
蟹座さん、乙でした。
私も遠い昔、ちょっとだけ書かせていただいたことがありましたが
たとえ死んでも相方を思うかっこよさ、大変すばらしかったです。
ぜひ、蟹座さんの描く別のコンビの物語も、機会があれば読んでみたいと
心から思いました。本当に乙でした!
>>65の続き
藪で隠れた入口の奥には、思いのほか広い空間が広がっていた。
一見、周辺の草むらの延長としか思わせないようなその玄関は、
よほど注意して探さない限り、普通の人間なら気にも留めることなく通り過ぎてしまうことだろう。
ぬか喜びしそうになる気持ちを抑えつつ、先客がいないことを確認しながら
隠れるにはおあつらえ向きな洞窟の中へと、二人は吸い込まれていった。
「誰かいる?大丈夫?」
「…たぶん誰もいないと思…うわっ!」
「な、何?何?」
暗がりの中、今仁の服の裾を掴んでいた五十嵐の手の力が増す。
絶対的に光源の足りない空間で、頼れるものは聴覚と触覚ぐらいだった。
「何、どうしたの?」
「大丈夫です、ちょっと脚ぶつけちゃって…ってーな……
気を付けた方がいいですよ、そこら辺、岩とかいっぱい転がってるみたいだから」
さほど大きな声は出していないのに、軽い湿り気と狭さが拡声器の役割を果たすので
互いの小さな息遣いでさえもが当てつけがましく耳に届く。
それが余計に恐怖感を増幅させて、
暗さに目が慣れるまで、二人の足取りが早まることはなかった。
「あ、ここで行き止まりっぽい」
安堵の混じったため息とともに、
今仁がやっとのことで辿り着いた硬い壁をコンコン、と叩いた。
五十嵐もその言葉に息をつき、ぺたりと座り込む。片手をついた岩肌が冷たい。
そのうち目の前に浮かび上がり始めたのは、限りなく明度の低いコントラスト。
決して明瞭ではないけれども、周囲の物がかろうじて黒い影として認識できる程度に
視界は深い闇へと馴染みつつあった。
「でもこんな場所ってあるもんなんだね〜。びっくりした。
入口とか、今仁が見つけなかったら俺全然分かんなかったもん」
「ここにいればしばらくは安全でしょうね」
「でも何かこう灯が欲しいよな。こんな暗いんじゃ周りもよく見えないし。
あー、俺が持ってるのがライターとかマッチだったらなー…」
宙に向かってぼやいた声が、乾いた音となって薄く何重にも反響する。
いまいち距離感は掴めないが、その音で洞窟の大体の広さが把握できた気がした。
「……マッチか」
マッチと煙草。
声に出すことなく、五十嵐は口の中だけでそう呟いた。
これといって何ということのない単語の組み合わせが、五十嵐の心の琴線を震わせる。
ポケットに突っ込んだ煙草の箱の輪郭を布の上からなぞりながら、
五十嵐は脳裏に相方と演じたコントの光景を思い巡らせた。
自分が煙草に、彼がマッチになって、
薄暗い照明の下、たわいのないやり取りを淡々と繰り返す。
それだけ。
華やかな山場はおろか、これといった起伏も特にないけれど、
たとえ客の印象には残り難くても、
自分たちにとっては、これ以上ないほど濃密な数分間。
あのコントのような”それだけ”の日々が、これからもずっと続いていくと思っていた。
しかし、平和な日常は思いがけず不確かで脆かった。
彼の顔を見ないまま、どのくらいの時が経っただろう。
今頃、彼はどうしているだろうか。
考えたくないことに触れそうになり、五十嵐は慌ててフードを被る。
昔からの現実逃避の癖がまだ生きていた。
ふと隣に視線をやると、腰を下ろした今仁と目が合う。
ただそれだけのことなのに、不安定なままの潜在意識がそうさせるのか、
まるで自分の胸の内を読まれたように思えて、
妙に気恥ずかしくなった五十嵐はおもむろに立ち上がった。
「…俺、その辺に落ちてる枝とか拾ってくるわ。火、起こせるように。
お前はさ、その間にそこのでかい岩とか適当にどけててよ。こういう時のためにいるんだから」
「ぶん殴りますよ?」
「やめてよ!まあいいや、とにかく行って来るからね?」
そう言って出口への一歩を踏み出そうとした瞬間、
五十嵐の笑顔が急に途絶えた。
「……どうかしました?」
つられるように今仁にも真顔が戻る。
それを察してか、五十嵐は慌てて表情を今までの物に戻して言った。
「ううん、今、なんか声みたいのが聞こえた気がして……あんま気にすんなよ」
吉野の声に似ていたとは言わないでおいた。
不確かな憶測は、いたずらに不安を煽るものでしかなかったから。
それ以上問い詰められて逃げる自信のなかった五十嵐は、
あいまいな作り笑いを翻して、そのまま外の白い光の中へ飛び出した。
小枝拾いという目的は、既に頭から消えかけていた。
微かにしか聞こえなかった声。
それも普段の声とは違う叫び声だったのだから、
簡単に仲間のものだと仮定してしまうのはあまりにも迂闊だ。
でも、なぜか胸騒ぎが止まらない。
頭に浮かぶ悪い想像を振り払いきれない。
嫌な予感がする。
草の匂いを掻き分けて道無き道を突き進んでいく間中、
五十嵐の心は一向に凪ぐことはなかった。
それでも、”落ち着け”、という自分への警鐘だけは忘れずに打ち鳴らしていた。
唯一の頼りである方向感覚と勘だけでも、せめて狂ってしまわないように。
「黒田さん」
「うわっ!」
その大げさなのけぞり方は、声を掛けた吉野の方が驚いてしまうほどだった。
背後から肩を叩いてきた人間の顔を見て、
黒田はほっとしたように息をつく。
「吉野!何だよ、びっくりした〜」
「あの、何してんですか?こんなとこで」
「……」
「…あれ」
ためらいがちに黒田が指差した先には、一人で佇んでいる川元の姿があった。
いや、一人ではない。
足元には人間が一人うずくまっていて、
その少し先には彼と対峙しているもう一人の人間が立っている。
ナイフを構えるその人影。
対して、川元は丸腰のようだ。
「え…?」
思わず黒田の顔を見やる吉野。
しかし黒田は動こうとする気配もなく、繁みに身を隠したまま
じっと一点を見つめている。
状況が理解できず、吉野はすがるようにその肩を揺すった。
「ちょ、何やってんですか!川元さんがっ」
「しっ!」
黒田が必死の形相で人差し指を立てる。
有無を言わせぬその勢いに押され、
吉野も急遽声のボリュームを落とし、囁くような声で喋った。
「……な、何で…」
「…あのさ、ちょっと静かにして、見ててみ」
言われるがままに、吉野は視線を黒田と同じ方向に向ける。
あまり体勢を考えずにしゃがんだせいで、膝が少し痛い。
その痛みさえも忘れさせるかの如く、
きつく張り詰めた空気に押されて、鼓動が激しく胸を打った。
それから先は、全くの沈黙の中での出来事だった。
相手との距離をゆっくりと縮める川元。
その手が後ずさりする胴体にそっと触れるや否や、
人影は瞬く間にその場にくずおれて、うずくまってしまった。
地面に伏している死体はとうに見慣れていた。
けれど、目の前で人が倒れたのを見たのはこれが初めてだった。
声一つ出せずに、ただただ唖然とするしかできない吉野。
その耳元で、黒田がそっと囁いた。
「……なあ、さっきから考えてるんだけど」
「あいつ、どうやって人を殺してるんだと思う?」
「…え?」
短い間を置いて、吉野は黒田の方を振り返る。
「俺さ、たまたま見かけてからずっとあいつの後付けてんだけど…
どうも武器らしい武器は持ってないみたいなんだよね。
でも、あいつに近付いた人間はみんな、今の調子でバタバタ死んでってんの」
それを聞いて、背中に鋭い悪寒が走った。
ひとつだけ胸に刺さっている虫ピンのような心当たりが、
懸命に目を背けているのに、否が応でも眼前に迫ってくる。
考えないようにすればするほどより近くに寄せてくるその現実に、
吉野は自分が何か壮大な罠に引きずり込まれていくような感覚を覚えていた。
「それがすげえ気になって…」
言いかけて、黒田は言葉を止めた。
向こうへと歩き始めた川元のポケットから、小さな白い紙が舞い落ちたのが見えた。
「今の紙、何だろう」
「え、あの、まだ近づかない方が」
制止の前に黒田は繁みを抜け出していた。
まだ完全にその場を離れてはいない川元の陰に注意を向けつつ、
吉野も恐る恐るその後に続く。
と、
「………!!」
拾い上げたその紙を数秒眺めていた黒田の表情が変わった。
そして、視線を一瞬前へ戻したかと思うと、
突然踵を返して走り出した。
「黒田さん!?」
慌ててその背中を追いかける吉野。
その瞳に一瞬映った黒田の青ざめた顔に触発されて、
先ほど消したはずの疑念が、一気に勢いを持って湧き上がり始めた。
『あの噂、知ってる?』
『噂って?』
『このバトロワ。ホリプロがさ、なんか裏工作したらしいって話…』
盗み聞きした他芸人たちの会話。
頭の中で何度も回り続けるそのやり取りに気を取られていた吉野は、
木の影から現れた何かに思い切りぶつかった。
「痛って!な、何だ!?」
返ってきたその声を聞いた途端、顔を見るまでもなく名前が口をつく。
「…高橋さん!」
「あれ?吉野?」
「すいません、あの、黒田さんが…!」
事情を説明している時間はない。
吉野はそこまで言うと、遠ざかっていく背中を再び追い始めた。
「おい!ちょ、待てよ!!」
背後に高橋の声と足音とを聞きながら、
呪文のように吉野は繰り返した。
どうか、嘘であってくれ。
自分の考え過ぎであってくれ。
それだけは、それだけは本当に洒落にならない。
疾風のように流れていた景色が静止した。
やっと掴むことの叶った黒田の腕を離さないまま、
吉野は乱れた息を合間に挟みながら尋ねた。
「………どうしたんですか、一体…」
「吉野…」
同じく息切れした黒田が振り返る。
と同時に、痛いほどの力で吉野の肩を掴み返してきた。
黒田は顔面蒼白になっていた。
「……ヤバい!!」
「あいつの武器は、…細菌だ……!」
(続く)
相関図の絵、ヒマナさんが描いたの?ウマー
絵も文も書ける人なのな。
お疲れ様です。いつも楽しみにしています。
ヒマナスターズさんは文章もそうだけど、
マスノ→あのシチュー、川元→細菌兵器とか
イメージにあった設定を付けるのがうまいですね。
新作乙です。
えと、ヒマナさん作の相関図に勝手に一つ補足入れますと
「馬車馬」とは、ホリプロコムの若手、
ビーム(今仁・吉野)とダブルブッキング(川元・黒田)に
魚でF(及川・須藤)とプロペラZ(キーボー君・岩澤)を加えた
4組8名によるユニットでつ。
(なお、結成時はビーム・ダブルブッキング・ポプラ並木・チョーダイ・プロペラZ)
お節介かとは思いますが、参考までにドゾ。
ぶっとうしで最初から読んでしまいました・・・
陣内・コバ編最強!かなり泣きました・・!
個人的に残念だったのがロザン編。天国編と言うことで続き書いてもよろしいでし
ょうか?
245 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/25 15:24
やっぱヒマナさんはウマイ!
読んでてドキドキします。
勝手にプロペラZは解散してたと思ってた…
ちょっくら逝ってきま〜す
ヒマナさん、読ませてもらいました。
川元さん、いいですね!
臨場感満点の文章にはいつもハラハラします。
うちの友達、馬車馬好きだから教えたいけど、
2ちゃん好きじゃないからな…あ〜ジレンマ。
VOL、3>183の続き
走っていた。体中を流れる汗、無数の切り傷、胸を打つ鼓動。
繰り返し前へと飛び出る足を止めることが出来なかった。
ただ走っていた。誰かを追っているのだろうか、いや、追われているのだろうか?
よく分からないがなんだか楽しかった。
踏み込む土がとても柔らかくてそのまま空へと飛べそうだ。
空を飛べたらもう走ることはないだろう。青い空の中、下でもがき苦しみながら
前へと進む人間を笑いながらだって自分は前へと進んでいける。そうだ、俺はスゴイ
人間なのだ。そこら辺にいる奴らと同じに考えられるなんてどうかしてる。
いつだって俺は他人より強い力と才能を持って生きてきた。
俺は空だって飛べるはずだ・・・
>>247 クスクスと笑ってしまう自分を抑え、ふと顔を上げた瞬間何か石のようなものに躓き
思い切り前へと倒れこんだ。
『あれ、おかしいな、今まで何ともなかったのに異様にのどが渇いたなぁ。水分が
足りんのか?』少しそんな事を考えただけだった。突然体が力を失い疲れが増した。
うつ伏せに倒れた体をゆっくり起こし、そのまま今度は仰向けになった。
そうして異変に気付いた。
今まで森の中にいたはず・・・なのに今自分の目の前に広がるのはいつしか闇だった
土の柔らかさも、体に当たる葉も枝もない。青い空ももうどこにもなかった。
夢から覚めたような気分・・さっきまで勢いよく走っていた自分と、今倒れこんで
疲れている自分とを区別する事が出来なかった。
>>248 『俺は一体今まで何をしてきたんだ・・・?』
ぼんやりと今までのことを思い返す。
『ずっと走っていた。・・・なんで?なんでやろう?ただ走らなあかんかってん。
・・・なんで?なんでや?なんで走っててん・・俺』
辺りを漂う空気がやけに冷たくて体中がピリピリと痛む。特に胸の痛みが強い。
『どうなってんねん、これ』
何もない暗闇の中、一人倒れこんだまま一生懸命今までの事を思い返した。
しかし何も思い出せない。少しでも心にひっかかりがあるのではなく、自分の心の
中もこの暗闇のように何もなかったのだ。
>>249 落ち着いて深呼吸をしてみると体がギシッときしんだ。
あまりの激痛にたまらず声が出た、と思った。だが腹の底から出た声はのどを通って
言葉になる前に、胸のあたりで「ヒュウ」という頼りない音とともに消え去った。
目を見開いた。とにかく声を出した。ありったけの力を込めて叫んでいるのにまた
「ヒュウッヒュウッ」と空しく音を立てただけだった。
一体自分の身に何が起こったのか?
恐る恐るきしむ体を抑えながら自分の胸へと手をやった。
ベタッ・・・ドクドクドク・・・・・・
もう、胸は胸でなかった・・・
指を打ち返す肌と肌の弾力がなく無数に空いた穴へと指がズズっと入った。
柔らかい肉を触って、もう少し奥へ指をやると固いものが指に触れた。
冷や汗が体を濡らし、早まる自分の鼓動がすぐ近くに感じた。
そして液体が流れ出た。それは鼻を突く生臭い匂いで血だとすぐ分かった。
血は止まることなく流れ出て、いつしか自分の身を浸している事に今気付いた。
>>250 手がパタンと地に落ちると血たまりがしぶきをあげて周りに散った。
不思議と痛みはなかった。そのかわりに嵐のように不安が渦巻き言い知れぬ絶望感
がじわりと襲った。
ただ怖かった。怖くて恐ろしくて、叫んで取り乱す事も出来ず、動かない体に刻々と
近づく何かをゆっくりと感じていくことが耐えられない・・怖い・・!
夢中で周りを見渡していた。
『俺は、誰かを探してるんか?・・・一人では怖いというんか・・・?』
必死で目を凝らした。何度も瞬きをして、その度流れる涙にも気づかず何かを探して
いた。だが、目に映るのはただの闇。
針であけた穴のような光さえもない、完全な闇だった。
『嘘や・・嘘や・・嘘や・・!!何なんだ一体!?体が動かへん!何も思いだせん!
嫌や!!俺はこんな所で終わる人間とちゃう!!誰か・・誰か助けてくれ・・!
まだ見てない、知らん世界が光があるんや!!まだ死にたく・・ない。死にたくな
いんや!!!誰か助けてくれっっ!!ここから連れ出してくれーーーっっ!!』
>>251 「あははははははははははは!!!はーーーっはっはっはっはっ」
『!? 誰や!?誰かいんのか?』
「あはははは!!おかっ・・・おかしいっっ・・・くくく・・ははは!!」
『誰や!?何笑てんねん!何がおかしいねん!!』
高らかに笑い転げる声の主を見つけ出せない。だけどその笑い声は確かに自分の耳へ
と届いている。左後ろで聞こえたかと思うと、次は足元で聞こえる。今度は耳元で聞
こえる!人を馬鹿にしたような欺いた笑い声。
闇にむけ広がり、大きな苦しみとなってやがてまた闇に溶ける。その淀んだ闇が体を
包み、心までをもまとい、中から殺されていく。姿のない悪魔に支配されそうになる
ふと、笑い声がやんだ。ヒュウ、ヒュウと胸に開いた穴から音が漏れる。血は止まる
ことなく流れ出ている。痛みがない。不安もない。ある事に気付いてしまった・・・
>>252 『俺は・・死んだのか?』
耳元で誰かが口から息を吸い込んだ音が聞こえた。ニイッとのびる口元だけがかろう
じて見える。
「そうや」
狂ったように笑う声ではなく、低く深い声が響いた。きっとさっきの笑い声の主と
同じだろう。そして、その声はどこかで聞いたことがある・・よく聞いた事のある
懐かしい声。
「お前は胸をナイフでめった刺しにされて死んだんだ。死んだんだ。死んだんだ」
どこまでも深く深く体の中から響き渡る。
>>253 『殺されたのか・・?』
クスリと声の主が笑う。きっと男だろう。そしてきっと歳も若い。
「そうや。どうや?気分は」
消えそうになる自分の意識をつかみながら感じていた。
体も動かない、声も出ない、血も止まらない、もう何もする事が出来ない。
でも・・でもこうしたまだ自分は自分としての意識も考えもあるじゃないか・・
きっとこれは夢なのだろう。
朝目が覚めて、汗に濡れた体を拭いて悪い夢を見たんだと、ホッと息をつく。
そうしてまたいつものように、仕事場へむかってあいつと・・いつものように・・
仕事・・・?あいつ・・?
「クスクスクス・・・ははは・・・」
俺は・・・一体俺は何なんだ?
今まで何があったんだ!?どうしてこんな夢を見るんだ!!こんな・・ひどい・・
こんなひどい殺され方があっていいのか!?いつもの毎日って何なんだ!?!?
「ふはははは・・・はーッはっはっはっはっはっはっは!!!!!」
『!?』
>>254 沈黙を守っていた男が急に高らかに笑い出す。
心底おかしいといったふうに笑いが止まらない。口元が笑いながら目の前をうろつく
この口もよく見た口だ・・・ぼんやりそう思った。
すると突然脳裏に強い光とともにある風景が浮かんだ。
『なっっ・・・なんだ!?目が覚めたのか!?』
生い茂る草木、柔らかな土、どこまでも高く青い空。あぁ飛べると信じて疑わなか
った俺の世界がある。こんなにすがすがしい場所があったなんて。思いっきり空気を
吸い込んだ。
「あーいい気分」
声も出る。間抜けな音はもうしない。体も動く!足も!首も!手も・・・!!
「何や・・?」
自由に動く手を空にかざし、じっくりと見つめた。・・血だ。手が真っ赤に染まって
いる・・・。
「何やねん!!?」
>>255 あわてて血を拭おうと服で手を擦った。するとどんどん腕までも血で染まっていく。
「!?」
ようく自分の姿を見た。するとどうだろう、全身血にまみれ、赤く染まっているでは
ないか。
「・・・何や?何やねん!何でやねん!!」
錯乱しながら血を拭おうと必死だった。拭いても拭いても血で染まるだけ。泣き出し
そうになりながら、遠くに川があるのを見つける。
水につかってしまえば血はとれる。あわてて一歩足を踏み出した。
ムニッ
石ではない、土でもない柔らかい何かを踏みつけた。
ゆっくり、踏みつけた足元を見た。・・・どうしただろう、足元には無数の死体が
転がっていた。全員が見に覚えがある顔で・・・いや・・この人達は・・・
「うわああああああああああああああああああ!!!!!!」
泣いていた。声が水のように流れ出て足がガクガクと震えた。
「ウっうっうわああああああぁぁっ・・あぁっっ・・あーーーーーーーっっっ!!」
>>256 踏みつけた死体を無我夢中で胸元へ抱き寄せた。その死体は徳井だった。
近くにある死体は皆、仲の良かった芸人だ。高井、中川、木部・・皆苦楽を共にして
きた仲間だった。どうして?一体どうしてこんな酷い事に・・
「あああああ・・うっ・・うっ・・・うわあああ・・・・・うじ・・宇治原・・?」
たくさんの仲間達の中に一人だけいないのにはっと気付いた。相方だ。誰よりも一番
大切な相方。宇治原の姿がどこにもない・・。
「宇治原ぁぁーーー!!宇治原ぁぁーー!!」
抱き寄せた徳井を地へ寝かせ、気がつくと夢中で走っていた。草木を掻き分けて、川
を渡って行く当てもなく、ただ宇治原の姿を求めて・・・
走っていた。体中を流れる汗、無数の切り傷、胸を打つ鼓動。
繰り返し前へと飛び出る両足を止めることは出来なかった。
ただ走っていた。誰かを追っているのだろうか、いや、追われているのだろうか?
よく分からないがなんだか悲しかった。
踏み込む土がとても柔らかくてそのまま空へと飛べそうだ。
>>257 空を飛べたら・・空を飛べたらいいのに。早くもっと早くあいつを見つけれるのに。
今もどこかで倒れているかもしれない。誰かに襲われて傷だらけになっているかも
しれない。早く早く死ぬ前に・・宇治原が死ぬ前に!!俺が見つけてやらなきゃ!
空を飛べたら、あいつを見つけてやれるのに・・・
分かったんだ・・・俺はこんな時だって魔法は使えない。強い力もない。
ただ走って、汗を流して、走るしかない。そうして笑って泣いて怒って、同じ事を
情けない位繰り返しながらあいつと走ってきたんだ・・
俺は普通の人間だったんだ・・俺は・・空は飛べない。
>>258 ゆっくりと目が覚めた。涙でぐちゃぐちゃになっていた。体はやっぱり動かなかった
・・なんだか笑いたくなった。
『皆を殺してきたのは俺だったのか・・』
「クスクス・・・そんなに泣く事はない。傷付く事もない。・・悲しむ事もない。」
声の主は近づいてきた。闇に目が慣れたのか、背格好が見て取れる。
少し背の低い中肉の男。よく見た姿だ。よく知っている、この男を。
『お前は・・・俺だな』
ニイィっと口元が伸びると、男の姿がはっきりと目に映った。
誰でもないさっきぬけるような青い空の下で血にまみれていた自分の姿だった。
「そうや。俺はお前だ。」
『お前が皆を殺したんやな?』
「何言うてんねん・・はは。俺が殺した奴はお前が殺した奴やろ?
あんなに楽しそうにしとったやんか。たくさんの人間を虫けらみたいに殺してきた
んはお前やろ!!」
『うるさいうるさい!!黙れ!お前が俺ん中に潜んどったんや!息を潜めて、笑い出
すのをこらえて、大切な仲間を次々と殺していったんや!!』
「あははははは!!大切な?仲間?笑かすなや。そのセリフ、お前が一番嫌っとった
やないか!誰かがそのセリフを言う度笑い転げとったやないかぁあはははは!!」
『黙れぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっっ!!!!!』
>>259 動かなかったはずだ。力ももう残っていなかった。けれど何かが俺をつき動かした。
震えるほどの力が手に余って足に伝わって体が持ち上がった。
気付くと俺は俺の首元へとつかみかかっていた。
『ハァッハァッハァッ・・・』
「あんま動かん方がいいでぇ?気付かんうちにパッタリと終わってまうでぇ?
そしたら俺がお前を支配する事になんでぇ?ギャハハハ!!もうなってるけどなぁ」
『ハァッ・・ハァッ・・お前なんか・・お前なんか死んでしまえ!!』
ありったけの力を込めて俺の首を締め付けた。とたんに自分の首が苦しくなった。
・・・なんてことはない。さっきから体はもう限界だ。これしきの痛み・・・皆の
と比べたらなんともない。
「お前が俺を殺すという事は、どういう事か分かってんねやろうなぁ・・・?」
『ハァッ・・ハァッ・・ハァッ・・』
「そうか・・そうやなお前はここで死ねばいい。悲しくも辛くもないやろう。
大切な者なんてお前にはいーひんかったはずや。」
『・・お前が死んでも・・俺は死なへん・・俺には大切な人間が・・かけがえのない
人間がいてるんやぁぁ!!』
>>260 「ガハァァァッッ・・・」
渾身の力が尽きた。今まで何回も限界を感じてきたけど、これが本当に限界を超えた
のだろう。足から腰から全てが消え失せた。
空っぽになって体が浮くのを感じた。最後に俺の首がやみに笑いながら溶けていった
のを見たような気がする。そんなついさっきの記憶ですら落ちていく。
『宇治原・・俺は、お前に追われててんな・・。俺を助けようと追ってくれててんな
・・俺・・今頃気付いたわ・・あほやで・・・ありがとう』
体がどんどん軽くなる。天へと昇っていきそうだ。
『やっぱり。俺空飛べるんちゃう?』
「菅・・」 「宇治原・・?」
俺を呼ぶ声がした。目はもう開かないけど。なんだか暖かい。優しくて、柔らかで、
気持ちがいい。いつものように俺の横で笑ってる気がした。・・それでいい。
以上です・・話の中の二人が可哀想だったんで続きを書いてみたんですが、よく分か
らなくなってしまいました・・・すいません。
あと以上に長くなってしまいました・・重ね重ねすいません。
確かにロザンの終わり方はちょっとアレだったからなぁ・・・。
こういう話があると、あの終わり方でも救われるよね。
>>264 禿同。ロザンは書き手さんが非常に秀逸だっただけにね。
とにかく乙。
あの、誰もが納得できないロザンのラストから約一年、
ラークさん、あなたの作品で
ようやく『この世界』での二人が救われたような気が私にはしました。
良いお話ありがとうございました。
263,264,265,266さん
ありがとうございます。素直に嬉しいです・・
もっと二人を絡ませたかったんですが菅が切れ過ぎてたんで(笑)もう一人との自分
との戦い・・という形にしてしまいました。
とにかくハッピーエンド(?)で終われて良かったです。
個人的にFUJIWARAのファンなので即効死んでたのがショックでしたw
まだ登場していないみたいなので・・・・
「みんなエライ簡単に死んでんなぁ。」
放送された仲間の、先輩の、後輩の名前を書き出しながら
フットボールアワー後藤は乾いた笑いを浮かべた。
森を、街を、海を大量の芸人たちが必死で彷徨っているのに、
後藤は一人優雅に一服している。
誰がどこに行ったかなんてどうでもよかった。
始めは相方やみんなに合流する事を少しは考えたものだが、
冷静に考えて、合流したところで無意味だという結論に至ったのだ。
どうせ生き残るのはたった一人。
「あーあ、早よ終わったらええのに。ごっつ暇やわ。」
後藤はスタート地点からほとんど動いていなかった。
使われていないプレハブ教室らしき場所にずっと滞在していた。
ナップザックの中にはS&Wが入っていたが、
一度もそれを手にしていない。
拳銃が入っているなんてラッキーな方かもしれない。
けれど後藤は興味を示さず、
この退屈な時間が早く終わる事だけを望んでいる。
「頭良くても運動できても死ぬねんて。」
まだほとんど吸っていないタバコをもみ消すと、
ナップザックを枕にして、ゴロンと寝転がった。
(相方は生きてるんよな。)
天井をぼんやり見上げながら、後藤は考える。
後藤が思い当たる限り、岩尾は決して器用な方ではない。
余程武器に恵まれたのか、マグレか。
どちらにしても運のいい男だ。
「なんや、このプレハブ。」
この殺し合いが始まって、後藤は初めて他人の声を聞いた。
心臓が一気に高鳴る。
関西弁、どこかで聞いたことのあるような声ではある。
「おいー、そんな気軽に近付くなや。」
「大丈夫やって、いざとなったら武器もあるし。」
2人だ。
「baseで生き残ってる人、減ってもたやん。
もう味方に出来る人ごっつ少ないねんぞ。」
「うっさいなぁ。
もし誰もおらんかったらここで休めるやんけ。」
この声を自分は知っている。この声は・・・
「とりあえず入ってみよーって。
そんな恐かったら津田はここで待っときぃな。」
ダイアンだ。
後藤は初めて武器を手にし、壁際に静かに寄った。
銃口をドアに向けると、静かに深呼吸を繰り返す。
(悪いけど、死ぬんはゴメンやしな。)
「そこにおるん誰や!?」
外から聞こえる叫び声に、後藤は息を飲む。
「西澤っ、誰か俺らのこと見てた!」
「どこから?」
「あっちの茂みや。でも俺の声聞こえたはずやのに、
攻撃して来ぇへんかった。baseの誰かかも・・・」
どうやら2人の注意は小屋から逸れようとしている。
「・・・分かった。ちょっと様子見に行こ。」
西澤の言葉で、2人の足音は遠ざかって行った。
後藤は安堵のため息をもらすと、銃を床に置いた。
手のひらにはじっとりと汗がにじんでいた。
その日の夕方の放送でも、相方の名前は呼ばれなかった。
その時は突然やってきた。
翌日の昼の放送の時である。
とうとう相方の名前が呼ばれた。
「岩尾が、死んだ・・・」
数分前にさかのぼる。
岩尾はbaseの後輩数人と行動を共にしていた。
仲良しこよし、互いに守りあいながら。
ところが一人の後輩がふと疑問を口にし、
仲良しの輪は簡単に崩れてしまった。
「これって最後、どうなんの?」
「え?」
「こんな風に徒党組んでて、でも優勝者は一人なんやろ?」
「ああ、そうやけど・・・」
その言葉で全員に敵対心は生まれた。
そしてそれぞれが相手を殺す心の準備をし始めたのだ。
しかし岩尾は焦っていた。
ナップザックに入っている武器は「おたま」だ。
そんなもの、どう工夫しても殺人兵器にはなりえない。
「殺し合いするん?じゃあ、俺の勝ちかなぁ。」
後輩の一人が嬉しそうに笑った。
「っていうか、ある意味全員ゲームオーバーかな。」
「は?」
全員が訝しげにしていると、その後輩が武器を手に取った。
「ほな、さようなら。」
あたりを大きな閃光が包んだ。
その後輩の武器は、手榴弾だった。
会話を進めながら、すでに手の中でピンは抜かれていたのだ。
「早よ、baseに帰りたいなぁ。」
そう呟いた後藤は、大粒の涙を流していた。
後藤の潜伏しているプレハブの建物は、
あまりにもスタート地点、つまり本部と密接しすぎていた。
当然の心理として、
参加者の殺意の矛先はこのゲームの本部にも向けられる。
「アホやなぁ、みんな。」
T・K・O木本は手押し車にポリタンクを積んで、
そのプレハブの前で立ち止まった。
そしてその中身を次々とプレハブの前にぶちまけると、
手にしたガスバーナーを点火する。
木本の武器はガスバーナーだった。
始めは案外使い勝手が悪いとは思ったが、
古びた民家に置き去りにされたポリタンクと出会って、
この作戦を思いついたのだ。
人目を避けながら、ゆっくりと木本は準備を着実に進めた。
このプレハブと本部は隣接している。
ポリタンクの中身はガソリン。
このプレハブが爆発すれば、本部も大打撃を受けるはずだ。
木本は軽く深呼吸をして、プレハブから離れる。
できるだけ離れると、プレハブに向かってバーナーを投げた。
瞬く間にプレハブは炎に包まれ、大爆発を起こした。
木本は満足そうに頷くと、足早にその場から走り去った。
後藤は突然の火災に泡を食った。
そして慌ててナップザックを持ったが、
息をついてその場に腰を下ろした。
そしてタバコをくわえようとした瞬間、プレハブは爆発した。
合方が死んだ瞬間に、すでに生きる事を諦めていたのかもしれない。
だから後藤は、タバコを手に取ったとき、
諦観の笑みを浮かべていた。
長く書いてしまってすみませんでした。
フットボールアワーの2人を書きました。
拙い文章、失礼いたしました。
18さん乙。でもこれ、番外編ってことになるのかな?
vol.1に、「岩尾は正当防衛とは言え、相方の後藤を刺し」っていう描写があるんだけど。
275 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/02/27 14:13
後藤ファンの私としてはあの死に方は
悲しすぎたんで番外編でもうれしいです。
ダイアンが出てきたのもうれしい!!!
「刺し」とはあったけどどんな経緯で、なぜ刺したか、そして刺したからといって
死んだかどうかは書かれてなかったんだよな。
前に書きたいって言ってた人居たような気もしたんだが。
漏れは哲夫ヲタなのだが笑い飯の話では哲夫は不思議君のまま
淡々と死んでしまったので番外編ということで哲夫目線で書かせて
もらいました。
哲夫は鼻歌を歌いながら軽い足取りで歩いていた。
その姿は花柄ワンピースでショッピングにいく乙女のようで、殺し合いが行われてる
場にいるようには到底見えない。というのも哲夫には奇妙な自信があった。
タコ・イカ芸人にこの俺が殺されるわけあらへんし
俺を殺せる奴は俺を殺せるくらいすごい奴やから殺されてもしゃーないわ。
でも、厄介な事に巻き込まれるのは面倒なのでなるべく人に見つかりにくい森の方へ
行く事を決め、その足を進めていたのである。
森の中を音を立てないように歩いていると見覚えのある後姿が見えた。
あれ?西田やん。
西田はきょろきょろと辺りを見回しながら歩いている。
容姿も手伝って、その姿は怪しい奴以外の何者でもない。
なにやってんねん、あいつ。よし、後つけたろ。
西田は茂みに入っていった。どうやらそこが西田の隠れ場所のようだった。
哲夫は好奇心が湧き、しばらく西田を観察してみることにした。
気持ちの悪い話だが西田は見てて飽きる事はなかった。
10分に1度の割合で口をポカンと開け放心状態になったり
気がついたかと思うと鼻くそほじったり、突然「ジャガバタ」と呟いたり
普通に草を食べだしだ時にはさすがに笑ってしまった。(あいつ草食うとるで・・ぷぷ)
だが哲夫の脳裏に再び好奇心がわいた。
あいつ俺を見つけたらどういう反応するんやろ?
声をかけるのだろうか、かけないのだろうか、はたまた襲いかかってくるのか。
それらの疑問は時間が経つにつれ哲夫の中で大きくなっていった。
よし、試したろ。
哲夫は荷物を持つとわざと音をたてながら西田のほうに向かって行った。
声はかからない・・・ぷぅぅ〜〜〜
その音に哲夫は思わず噴出しそうになるのをこらえ「誰や」と西田の方に向かって
叫んだ。西田が草むらからショボクレながら出てくる姿に哲夫は
心の中で大爆笑。こうして哲夫の実験は屁でアピールされるという想像もつかない結果で
幕を閉じた。(大満足)
相方は近くで見ると前以上に痩せていた。(草ばっかり食うてるから)
哲夫は自分のパンを西田にあげようかと思ったが恥かしくて自分で食べだして
しまった。(結局西田に取られたので結果オーライ)
そうしてるうちにまた好奇心が湧いた。
俺がこいつ殺そうとしたらこいつどうするんやろ?
深く考える間もなく気がつくと体が動いていた。最初の一振りは失敗したが二度目は頭に当たった。
「たっ」と言ってよろめく。哲夫は狼狽している西田にすこしガッカリした。
もっと面白いリアクションをこいつなら返してくれる、と期待していたからだ。
西田が顔を上げた時、哲夫は不覚にも恐怖を覚えた。
その目には狂気とタナトスが渦巻いて深い闇を作り出していた。そしてザシュと左肩で音がした。
熱い、めっさ熱い、ごっさ熱い。左肩が燃えるように熱い。
哲夫は重力に引っぱられ後ろに倒れた。
「うわぁぁ、哲夫!哲夫!」そう言いながらかけよって来た西田はいつもの
西田だった。西田は泣いていた。哲夫は西田の涙を初めて見た。
今まで感じたことがないほどの罪悪感がこみ上げてきた。
そんな時、ふと哲夫の頭に浮かんだのは幼い頃の記憶。
奈良のそうめん屋の息子だった哲夫はサッカーが得意なやんちゃ坊主だった。
何でも器用にこなせるので、その頃から自信過剰ぎみではあったものの
ごくごく普通の男の子だった。哲夫には幼馴染のみっちゃんという女の子がいた。
みっちゃんは小さくて、いつも真っ赤なホッペをしていて、とても可愛かった。
ある日、哲夫が友達と遊んでいるとみっちゃんがウサギのぬいぐるみを
大切そうに抱きながらトボトボ歩いているのが見えた。
「なにやってるん?」哲夫が聞いたが、みっちゃんは何も言わずうつむいた。
何も答えないみっちゃんに「何持ってるん?」と顔を覗き込みながら尋ねたが
みっちゃんはやっぱり何も答えない。哲夫は「ちょお、これ貸して」と
みっちゃんの持っているウサギのぬいぐるみを指差した。
すると、みっちゃんは過剰なまでに反応した。
「いやや!!これはあかんの!」
その反応に哲夫は無性に腹が立った。
「ええやん、少し見せろ言うてるだけやろ!」
「あかんったらあかん!!」
哲夫はみっちゃんのぬいぐるみを無理やり奪い取り仲間うちで回して遊んだ。
「やめてぇ〜やぁ」泣きながら取り返そうとする、みっちゃんをからかった。
哲夫らが飽きてぬいぐるみをほっぽり出すとみっちゃんはボロボロになった
ぬいぐるみを拾い上げ真っ赤な目で哲夫を見ていた。
その目は悲しみでもなく憎しみでもなく・・・幼い哲夫はそれがなんていう
感情なのか分からなかった。ただその目は今でもはっきり思い出せるほど
哲夫の胸に突き刺さった。母親にそのことを話すと「人の大切なモノを
奪ったら心が痛くなるもんなんよ、でも奪われた方はもっと痛いんやで」と
言われた。数日後、病弱だったみっちゃんのお母さんが死んだ。あのヌイグルミは
みっちゃんのお母さんの手作りだという事を知った。
でも哲夫は謝れなかった。そのまま、みっちゃんは引越しした。
「人の大切なモノを奪ったら心が痛くなるもんなんよ、でも奪われた方は
もっと痛いんやで」
今さらながらに母親の言葉がフラッシュバックする。
なぜだろう?西田の目がそうさせたのかもしれない。
今の西田の姿はどこかみっちゃんとかぶる。
この場合、どっちが奪った方でどっちが奪われた方なんだろう・・・。
いや、俺が奪わさせたんやな。大切なモンかはわからんけど。
そう思うと、このまま自分が苦しみながら死んでいく姿を、これ以上
西田に見せるのが辛くなった。
「殺してくれへんか・・?」
自分でもびっくりするほどスンナリ言えた。
西田にこんな事をさせたのも、こんな結果を招いたのも全部哲夫が
原因を作ってしまった。みっちゃんに言えなかった分も含め今言わなければ
言える日はもう一生ないだろう。
「ごめんな」――――その言葉の代わりに出たのは「俺、天才やろ?」
あいつは少し驚いた顔をした後、キュと目をつむり深く息をはき
微笑を浮かべ「お前は天才や」とはっきり言った。
やっぱり謝れへんわ。恥かしい。
ほんま、ごめんなぁ・・・別にお前を悲しませるつもりも、残酷なこと
押し付けるつもりもなかってんで、ただ「どうなるかな〜」て思てん。
それと、お前に殺されるのも悪ないなーって・・・ほんま、ごめん。
お前が気病ます事ないで、これは俺が願った結果なんやから。
あかん・・伝えたい事ぎょうさんあるけど、どれ一つ言葉にならへん・・最悪や。
あ、考えてみたらこの死に方めっちゃ普通やん!!なんかおもろい事・・・
えっと・・・銀歯の抜けたお婆ちゃんは・
ザシュ
お前・・ツッコミ早い・・ね・ん・・・・・か・わ・・・れ・・・・・・
(268〜273)すみません。番外編のつもりで書いて、
番外編と書くのを忘れてしまいました。
名無し@お腹いっぱいさんありがとうございました。
>277
良かったです!!
哲夫・・・・゚・(ノД`)・゚・。
あげます。
285 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/03/02 00:51
しまった・・・
>vol3の802の続き
○月×日
今日は妖精に会った。妖精さんは僕の所に来ると「あなたは
選ばれた人間なの。私と一緒に花の世界へ行きましょ」と言った。
僕が「僕、花粉症やから無理ですわ」と言うと妖精さんはどっか行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書き終わると男はノートを静かにとじた。
レギュラー松本の精神もそろそろ限界にきていた。
狂った世界で一人でいるというのは想像以上に人間をおかしくさせる。
人は他者に認識され認めてもらい、また個人も他者を意識することで
自分と世界との距離をうまくとりながら自分を形成している。
しかし今の松本は相方・西川の死、そして耐え難い孤独にさいなまれ
自分である自分を持ち続けるには不安定だった。
「あっ、西川君やん。どこ行っててんな〜心配したんやで。」
松本は薄暗い洞窟の中、突然一人で喋りだす。
もちろん答える者はいない。しかし松本は一人で「今日は魚2匹も釣れてんで、
西川君。見て、見て。」と見えない誰かに語り続ける。
そう、松本は現実が受け入れられず自分の中に西川を作り出してしまったのだ。
そうすることで松本はかろうじて自分の精神の安定、バランスを得ていた。
架空の西川に語りかけニンヤリ笑う松本はもうこの世界とはかけ離れたどこかに
足を踏み入れていた。
「あれぇ、確かに誰かこっち見ててんって」
「お前の見間違いちゃうんか?お前そういうとこあんで、ほんま」
「っさい!見ててんて、絶対。」
口論をしながら歩いているのはダイアンの二人。
プレハブに入ろうとした所、ツッコミ津田が「森から誰か見てた。攻撃して
こおへんかったからbaseの誰かかも」と言い出し、森に入ってきたものの
人影はなく森の中を彷徨っていた。
ダイアン、ツッコミ津田篤宏・ボケ西澤裕介。
津田が教室を出るときに西澤にこっそりメモを渡し合流した。
正直、津田は躊躇していた部分もあった。学生時代からの親友とはいえ
西澤は沈着冷静・ポーカーファイス・何考えてるかいまいち分からない・
人も平気で殺せそうな容貌・・をもち備えている男なので合流しても
殺されてしまうのではないか、という不安は拭えなかった。
しかし、その一方でこれ以上頼りになる男もいないのも事実だった。
舞台に出るとき緊張する津田の隣にはいつも表情を一つも変えない
西澤がいた。よくネタが飛んでしまう津田をうまくフォローし笑いへ
持っていくのも西澤だった。津田にとって西澤は本当にいいパートナー
(相方)なのだ。そんなこんなで津田は西澤と合流し今に至るというわけだ。
「ほんまにおってんて〜〜〜」津田は口をとがらせる。
その時「シッ!!」突然、西澤が津田の口を押さえた。
津田は軽いパニックに陥りながら「なに!?なに!!?」と西澤を見る。
西澤は腫れぼったい目で辺りを慎重に見回しながら「人の気配がした」と
小声で津田に伝えた。津田は体をこわばらる。
見通しの悪い森の中とはいえ銃やボウガンなどで撃たれたら命中しないとも
限らない。西澤の指示で体を低くする、が幸い銃弾や矢が飛んでくる様子は
ない。その時、津田の目に見覚えのある顔が映った。「松本さんや・・・」
西澤は津田の見る方を見るとそこにはレギュラー松本が木陰から顔を覗かせて
いた。津田と西澤は松本の真意が分からないので動けない。下手に動くと
どうなるかは分かりきっている(殺し合いのゴングになるだけの話だ)
『敵か味方か』判断をミスることは=死を意味する。冷汗が西澤の頬を伝った。
僕はいつものように森の中を散歩していた。
最近、運動不足だったこともあり少し遠出をした。
「空気すんでて気持ちええわ〜」大阪の雑踏の中では味わえない空気を
思いっきり吸い込む。煙草で黒ずんでしまった肺の汚れも落ちていく
錯覚さえ覚える。爽やかな時間もつかの間、僕は少し遠出をしすぎて
しまったようだ。気が付くと森の最端まで来ていた。
「!!」声がする。人がいる。しかも2人。関西弁?baseメンバー?
目を凝らすと見覚えのある顔―――ダイアンだ。
「どないしょお。そない仲良かったわけでもないし・・・でも仲間おったら
心強いし・・・でも向こうは2人やし・・・わからへん、もぉーわからへん」
鼓動が早くなり呼吸が荒くなる。
そうしてるうちにダイアンもこっちに気付いたのかこちらを指差し何やら話している。
『ニ ゲ ロ』僕の耳元で誰かが囁いた。それはきっと僕にしか聞こえない声。
「wwwwwwwww!!」叫びにならない叫びを上げながら僕は
ひたすら走った。洞窟に戻って僕は自問自答した。
本当に自分のとった行動は正しかったのだろうか?
自分は何故逃げたんだ?怖かったから?なにが?
自分は『生』への執着はとうに捨てたのではなかったのか?
そういえば何故捨てたんだろう?
西川君?西川君はいる。いつも僕のそばにいる。
西川君は・・・嫌や、これ以上考えたくない。
手の甲に爪をたて力を込める。痛みがゆっくり広がっていく。
ギチギチと手の甲は音を立て赤く変色した皮膚は爪の力で裂け血が滲み出ている。
しかし、その痛みが逆に僕を少し落ち着かせる。
「ダイアンどこ行ったんやろ?」
僕は夢遊病患者のように気がつくとダイアンを探しに森を歩いていた。
ダイアンは思いのほか早く見つけた。けど会ってどうするかなんて考えて
なかったので対面した時どうすればいいのか分からなかった。
でもとりあえず戦う意思がない事を表さなければいけないと思い。
「戦う気ないで、武器も持ってへん」と手を上に上げた。
ダイアンの2人は微妙な顔をした後、僕を信じてくれた。
僕は僕を信じてくれたダイアンを洞窟に案内した。
懐かしいな〜昔はよく後輩を家に呼んだりして鍋とかしたなぁ。
津田は「わー・・こんなとこあったんすね。」と感嘆し
僕は少し気持ちよくなった。こんな気持ちになるのも久しぶりだ。
西澤がさっきから一言も発しないのと、相変わらずの無表情は気になるが
僕は心が広いので気にしない。
そして僕は西川君にダイアンに会った経緯を報告した。
「あんな、西川君。森で会ってんけど2人とも僕信用してくれてん。
僕もなかなか先輩として格好ついてきたんちゃう?へっ?なに言うてんねんな。
西川君は意地悪やなぁ」
そんな僕をダイアンは急に変な顔で見てきた。
「ん?どないしたん?そんな顔してたら2人とも変な顔がさらに変になるで。」
「あの・・・松本さんさっきから誰と話してはるんすか?」津田が引きつった笑顔で
言う。「誰って・・西川君やがな。」
「だって西川さんはもう・・・・」
何言ってるんや、津田は?西川君はここにいるのに。なぁ西川君、津田が
変なこと言うてるで。
「西川さんもう死にましたやん」
西澤の低いその声は洞窟に鳴り響いた。
プツン 松本の中でなにかが壊れた音がした。
>>211-216 の続き
やがて、少しずつ落ち着いてきたのか、須藤はポツリポツリと喋りだした。
自分に与えられた武器は、ハンズで売っているようなバズーカ型のクラッカーだった事。
「ゲーム」のスタート直後、その160cmを切る身長が災いしてか
及川や他の馬車馬のメンツ、いや単に同じ事務所の芸人との合流にすら
ことごとく失敗してしまった事。
「でも・・・僕、まだ運が良かったのかも・・・しれない。」
「何でや?」
松丘の支えを借りながら、何とか焼却炉から這い出てきて。
須藤はここで緊張が途切れたのか、膝から崩れ落ちるように地面にへたりこんでしまった。
幾らサッカーで鍛えてあったとはいえ、これも仕方のない事だろう。
松丘も須藤の向かいによっこらせとまた腰を下ろして、彼の言葉の続きを待つ。
「見ちゃったんです、僕。及川さんと・・・青木さんとが・・・殺されてた・・・・・・。」
「え・・・ホンマ、なんか?」
その情景を思い出してしまったのか、唇を噛みしめて須藤は頷いた。
「あいつらを誰が殺ったんか・・・わかるか?」
殺した奴が誰かわかったところで、何が出来る訳ではないけれど。
続けざまの松丘の言葉に、今度は須藤の首は横に揺れる。
「で・・・形見って言うか・・・何か持って行けそうなのを捜してたら、人が来て。」
「それが、富田やったんか?」
「違います。多分、あれは・・・あの格好は鳥肌さんだったんじゃないかな。」
・・・それで、僕、怖くなって逃げて。ようやく、富田に逢えたんです。
少し口振りに安堵の色を滲ませつつ、けれど表情は強張ったまま。
須藤はそう言うと、力無く俯いた。
その姿からは、松丘が羨望して止まない若さと自信を漲らせたいつもの須藤は想像できない。
「・・・大変やったんやな。」
そんな須藤にどう声を掛けて良いのかわからず、
結局松丘は当たり障りのない言葉を選んで口にする。
坂道コロンブスもチョーダイも、互いにコント屋であるにも関わらず挑戦した
初めてのM−1の2回戦で揃って敗退してしまったあの時は。
なけなしの金でメシに誘い、酒の勢いで気炎をあげたりもできたけれど。
これはそんな生易しい状態ではない。
傷付いた自信は、何かあればすぐに蘇る事もあるが。
死んだ人間は、何があっても生き返りはしないのだ。
あの日、あの時。この「ゲーム」に連れて行かれる事も知らず、
事務所の五階の稽古場に集められた面々の。一体どれぐらいがもうこの世にいない?
もう2度と彼らとは喋られない、笑いあえない。
その事実に、松丘は改めて事態の重みを実感せざるを得なかった。
「しっかし・・・何で、お前。こんな所におってん?」
気まずさに黙っていると、気分が滅入るどころの状態ではなくなりそうなので。
松丘はチラッと焼却炉の方を見て、それから須藤に尋ねた。
「え・・・あぁ・・・それ、なんですけど。」
すると途端に須藤は眉をしかめて、数秒ほど思案して。
これもおかしな話なんですけどね、と前置きしてからまた喋りだした。
富田と一緒にこの畜産家の牧場の近くの森を歩いていた時。
ある人に、手を貸すように頼まれた事。
他にやる事もないので、と彼に従った須藤と富田は、その人の言う通りに
この牧場で軽油と彼が持ってきた何だかよくわからない薬品を延々混合していた事。
「・・・もしかして、コレ、作っとったのって、お前らやったんか?」
須藤の喋る内容に引っかかりを覚えて、手と目線で一旦須藤を制すと、
松丘は近くに散らばる黒い物体を指さして彼に問う。
「あ、はい。そうです。」
須藤は素直に頷いた。そして続ける。
「その人の言う事には、それはダイナマイト並の破壊力のある火薬なんだそうですけど。」
「何で、また、そんな・・・」
突然の飛躍ぶりに、どうリアクションして良いかわからず、どこか呆れたように松丘は呟いた。
「助けるのに、必要だったらしいですよ。」
今思えば、何であの時は素直に言う事聞いちゃったんだろう・・・とでも言いたげな口調で、
須藤は松丘に言う。
「一体そいつはそんな物騒モンで・・・誰を助けようとしとってん。」
今まで松丘が車に積んだ分、そしてまだ積みきれずに残っている分を合わせて、
ここには大量な黒い物体が存在していた筈である。
松丘は怪訝そうに須藤にさらに尋ねた。そして須藤はまた、その問いに対して答える。
「村田・・・あの、成子坂だったあの村田 渚さん、を。」
「・・・・・・!?」
まさかここでその固有名詞が出てくるとは思わず、ハッと松丘は須藤の方へ視線をやった。
「笑わないで聞いて下さい。僕らにあの時声を掛けてきたのは・・・
そして僕をあそこに閉じこめたのは、全部、成子坂の・・・桶田さんだったんです。」
須藤の話を聞いて、松丘は何かと何かが結びつきそうな感じを漠然と覚えた。
全体を把握できそうで出来ない、そのもどかしさが何とも言えず辛いけれど。
「・・・お前、見てないからって何サボってるんだ。」
遠くから降ってくる声に、松丘の中のもやもやは即座に四散する。
ただ、顔を強張らせる須藤を、反射的に雛を守る親鳥のように抱きかかえていた。
294 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/03/04 22:30
小蝿さん、ラークさん、18さん
全員おつです.
私はナントカ書いているところで…
でもうまくいきません。
・・・とほほ
295 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/05 11:32
ダイアン〜!!
早く続きが読みたい!!
>>289 ダイアンは松本に連れられ洞窟にやってきた。
津田はこんな所があるのかと心底感心した。
津田は西澤が不機嫌だということを雰囲気で感じていた。
(本当は気が抜けないという緊張感を張っていたのだが津田は
機嫌が悪いと解釈した。それでも西澤は表情一つ変えていないのに分かったのは
長年の付き合いからだろう)
洞窟は薄暗く寂しげでこんな所で1人でずっといた松本を津田は同情し
同時にすごいと思った。自分なら絶対できない。
そんな時、突然松本が「あんな、西川君。森で会ってんけど2人とも僕信用してくれてん。
僕もなかなか先輩として格好ついてきたんちゃう?へっ?なに言うてんねんな。
西川君は意地悪やなぁ」と一人で話し出した。
?????津田にも西澤にもまったく意味がわからなかった。
2人は互いに目を合わせ『なに言うてはんねん、この人?』『わからん』と
言葉なしで会話する。
「あの・・・松本さんさっきから誰と話してはるんすか?」恐る恐る聞くと
「誰って・・西川君やがな。」と何を言い出すんだばかりに不思議そうな顔で
平然と言う。
津田はまだ理解できていなかったが、この時点で西澤は全てを理解できていた。
激しい同情が西澤を襲ったが「この人とは共に行動できひんな」と冷静な判断も
西澤の中で下された。きっとこのまま西川の幻と生活することが松本にとって
幸せなんだろうが、西澤の内に生理的嫌悪感が沸々とわいてきた。それは松本に対して、
というよりこの狂った世界で狂ってしまった人に対してのものだった。
津田は西澤をえらく頼りがいがあると思ってるようだが、『殺す・死ぬ・狂う』と
いった事象に実は人一倍恐怖を覚えているのは西澤だった。
相方・津田は落ち着きがないし、おっちょこちょいだし、どんくさいし
西澤がいなければとうに死んでいただろう。だからこそ虚勢を張っていられたが
松本を前にして、その虚勢は揺らいだ。『自分はこんなふうになりたくない。
気持ち悪い』拒絶・拒絶・拒絶・・・・
「西川さんもう死にましたやん」
「西澤!」という津田の諌めも意味なく
「ぐわぁああーーーーーギィギィ・・うおぉぉぉぉぉぉーーーー」
松本はすごい勢いで西澤に襲いかかってきた。
顔は真っ赤で青筋がたっている。
「つっ」西澤は松本の押され洞窟に頭をぶつけた。
血がゆっくり西澤の顔を流れる。
「西川君はぁぁぁぁ、西川君は生きてるぅぅー、ふっ、死んで・・うわぁぁぁーー」
「松本さんやめてください!やめてくださぁい!!!」津田は必死に松本を
止めるが松本は尋常じゃない力で津田を跳ね飛ばし西澤を殴る。
その時、津田が「松本さん!!!止めんとこれ使いますよ!!」と言って
手榴弾を取り出した。松本は津田を一瞥した後西澤の頭を持って壁に
ぶつけ始めた。手榴弾なんてこんなせまい洞窟の中で使ったら自分達まで
ふっ飛ぶ可能性がある。
「どうしたらええねん・・もう・・どうしよ」
カチっ・・・手元で音がなった。
「わーーーー手榴弾のピン抜いてもうた!!!」
津田の叫びに西澤の脳みそは今までにないくらい的確かつ冷静に動いた。
西澤はポケットから自分の武器だったコンパスを取り出し松本の胸に突き刺した。
松本は「ぐぅあ」とよろめいた。その隙に西澤は松本に一発くらわし
手榴弾を持ったまま立ち尽くす津田から手榴弾を奪い地面に置いた。
そして津田の手をひっぱり慌てて洞窟を飛び出た。2人が洞窟から飛び出たのと
手榴弾が爆発したのはほぼ同時だった。爆風に押され2人は倒れこんだ。
体中が痛い。でも生きてる。自分も津田も生きてる。言いようのない充実感が西澤を襲う。
しかし津田は違った。「わぁぁぁーーー」とわめき頭を抱えうずくまる。
「どないしてん」だるそうに西澤が聞くと「俺が手榴弾のピン抜いてもうたから
松本さんが・・松本さんが・・」と焦点の合わない目で言う。西澤は面倒臭いな・・・と
おもいながら「お前がおらんかったら俺が殺されてたかもしれんねん。もう気にすんな」と言った。
津田は目に涙を溜めながら「ほんまか?」と聞く。ふぅ、とため息をつきながら
「ほんまや。このゲームの・・いや試合のルールは元々こういうことやし皆してることやから
お前が気にする必要ない。もう終わった事は気にすんな」
「お・・おぉ」
津田はまだ納得しかねる顔をしているが、とりあえず落ち着いたので2人は一息ついた。
「誰が・・こんなアホな事考えたんやろな?」
アホな事・・もちろんこの殺し合いゲームのことである。
「・・・・・・・。」
西澤は答えられない。誰が考えたかなんて知らないしこんな状態の中、着目すべき点は誰が考えた
かよりどうやって生き残るかなのだ。やっぱり相方は注目する点がおかしい。
その時「いやゃぁーーーーー」と甲高い女の声が近づいてきた。
2人とも何事かと構える。と、女ピン芸人友近が走ってくる。
腕から血を流し顔も傷だらけだ。「友近!!!??」と津田が呼んだが友近は必死の形相で
ダイアンに気付くこともなく走り去ってしまった。
「なんやってん・・・」呆然とする津田に首を傾げる西澤。
その時「おーダイアンやん」とポッチャリした男が声をかけてきた。
見ると天津のボケ、向清太朗が立っていた。「向さん!生きてたんすか!?」驚く津田に
「失礼やな〜生きとる、生きとる。武器これやのに頑張ったわ、ほんま」と満面の笑みで向が取り出した
のは漫画『きんぎょ注意報』だった。baseのオタク向にピッタリのその武器に津田は
爆笑。西澤も安心の笑みを漏らした。(漫画では人は殺せない)
「それより、お前らも、よー今まで生きてたなぁ」
パン
ドサっ・・「へ?」
見ると津田が倒れている。心臓に近い部分に穴が開き血がどんどん溢れている。
「つ・・だ?」
「に・し・・・・・・・・」
「ダイアン津田君は死にました〜〜」
「あんた・・・っ」
小さい身長、色白の肌、ぽっちゃりした体型、キラリと光るめがね、
向の手には銃が握られていた。
「なんで・・・」
「あぁ、この漫画?これ俺の私物。お前アホちゃうねんから分かるやろ?
学校でもなんでもキレたら怖いのは俺みたいなタイプやろ」
その時、ゴロンと向のカバンから何かが転げおちた。
ゴロンゴロンと転がり西澤の足元で止まった。
それは向の相方・木村の生首だった。
「ヒッ・・」
「俺の宝物って何か知ってる?ファンの子とかにも聞かれても『相方』って答えんねん。
大切な相方を知らない誰かに殺されるなんて耐えられへんやろ?だから俺が殺して
大切に持ってんねん。」
「狂ってますわ・・・・」
「お前もやろ?じゃあ、そろそろ死のか」
ニッコリ笑い銃口を西澤に向ける。
友近が傷だらけで走っていくときに気づくべきだったのだ。
松本の一件が済んだとこで気を抜いてしまったのが西澤の非だった。
兆候を見破れなかった。それが津田を死なせる結果になってしまった。
津田を見る。瞳孔の開いた目を西澤の方にむけている。もうその体が動く事もない。
狂った世界で狂うというのは順応してるのではないか?
狂った世界で狂ってない自分こそ狂っているのではないか?
もうどうでもいい。津田が死んだ、自分も死ぬ、それだけだ。
最後くらい思いっきり弾けて死ぬか・・・。ふぅ〜〜深く息を吐くと西澤は
コンパスを片手に向にむかって走り出した。
パン パン
乾いた音が響く。胸と腹に衝撃が走り体が吹っ飛ぶ。
しかしコンパスは西澤の手を離れ向の頬にかすり地面に突き刺さる。
向の頬に血が滲む。
西澤の体からはドクドクドクと血が溢れてくる。
『走れる人間やってんな・・俺。忘れてたわ』
楽しい・・死ぬというのに楽しいし気持ちいい。なんでもっと早く
走り出さなかったんだろう。もっと速くもっと高く飛べたはずなのに。
「ク・・ハハハハハハハっ」
パン
ブブッと西澤の口から血が吹いた。
一人の男と転がる2体の死体。
向は「くそっ」と吐き捨てると頬の血を手で拭い
木村の首を拾い上げると大切そうにカバンにしまいこみ
その場を後にした。
広がる青空の下、西澤はいつもは見せない爽快な笑みを漏らしながら
息をひきとっていた。
【ダイアン津田・西澤、レギュラー松本死亡】
301 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/07 19:51
落ちますよー
302 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/03/07 20:29
age
>>300 西川の話を書いた者です。
自分が西川を出したから、レギュラーも参加している設定になってしまったけど
まっちゃん話乙でした。
西澤のキャラ良いなあ・・・。
304 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/03/08 18:11
age
天津死んだと思ってたからでてきて嬉しい。
ぽっちゃりめがねの暴走もイイ!
306 :
宇治原 です:03/03/08 23:33
これ、すっごいおもしろい!!!!!!!!(いいのか?)
サイコーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
金魚さん乙です。
自分も天津を使って話作りたいと思っていたのですが金魚さんの
話はこれで完結ですか?もしそうなら天津を(できたら友近さんも)引き継がせていただきたいのですが。
>303>305
ありがとうございます。
>307
自分の話はこれで終わりです。向を切れキャラにしたり
木村を殺したりしてますがそれでかまわないのなら
自分は天津・友近手放しますのでどうぞ使ってください。
309 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/11 10:21
age
金魚さん乙!
さて、本日うp予定でつ。
311 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/03/14 10:55
とりあえず、うpします・・
今回も自信ありません・・・。
312 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/03/14 10:57
前スレ543続き
「伊藤のヤツ・・・大丈夫かな・・・」
森の中の小道。ユリオカはふと呟く。
「…見た感じ吹っ切れたっぽいけど本当はまだ…」
心配そうな表情を浮かべ田上は言う。
「ああ。どうしてもあの時の記憶が伊藤の中で・・・」
「何かできることないかな…」
と、田上。
「ダンディ、伊藤ちゃんを励ましてみようかな。…ジョークで!」
お得意のジョーク、「ゲッツ」をしつつダンディは言う。
「ジョークぐらいで吹っ切るかなぁ…」
「だいじょーぶ!僕のジョークを聞けば悲しみなんて吹っ飛ぶはずさ!」
「・・・・・」
ただただきょとんとする田上を尻目にダンディはジョークを言い始めた
「それじゃ,早速。彼の名は上ミノ・・・」
と、このように会話を繰り広げる3人のピン芸人を後ろに伊藤は歩いていた。
森の中の小道を歩くその足取りは速い。
伊藤の心を覆う悲しみを見せないように。
その前の道を見る瞳は大きく見開いている。
悲しみによる涙をこぼさない為に。
時々その目から涙が出そうになるが手に力を入れ堪える。
大切な相方が目の前で斃れた時、悲しみが心を覆った。
けどこれ以上へこんでいるわけにいかない。先を行かなければ。だって今は・・・。
今は鈴樹さんの大切な仲間のケンカを止めなくちゃいけないし。
・・・・急がなきゃ。
ー伊藤は足取りを速め歩き出した。
「あ」
突然立ち止まる鈴樹。お約束通り、後ろを歩いていたテツが鈴樹の背中にトモがテツの背中に激突する。
「一体どうしたんだ、いきなり立ち止まって。」
と、テツ。
「思い出したんです!」
「思い出したって・・・何を?」
「杉林さんたちがけんかをしている場所です!」
「・・・やっと思い出したみたいだな」
テツはため息混じりに呟く。
「早く行きましょう!」
と、鈴樹。そんな彼女にトモは問う。
「なぁ、鈴樹さん!ケンカの場所ってドコなんだ?」
「この先を真っ直ぐ行った海岸です!」
「俺たちは田上達を待っているから先に行っててくれ!」
「はい!」
鈴樹はそう言った後そのまま駆け出していった。
「てっちゃん」
鈴樹が立ち去ったのを見送った後トモは話し掛ける。
「ん?」
「もし・・・俺が先に逝ってもてっちゃんは俺のことずっと覚えていてくれるか?」
不安げに話し掛ける相方を見、テツは笑う。
「だいじょーぶ。覚えてるって!」
「本当に?」
「ああ。例え何があろうとテツトモは永遠だからな!」
と、テツ。
「てっちゃん・・・」
少々涙ぐんでトモは呟いた。
「トモ君?」
「いや、ちょっと目にゴミが・・・」
月並みな言葉がトモの口から出る。そんな相方の顔をテツは見ながら少し笑った。
以上です。
回が進んでいくごとに次第に駄文っぷりがましています。
もうやだ・・・
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuycさん 乙です。全然駄文ではありませんよ。
金魚さんに譲っていただいた天津話をうpしたいと思います。長くなる事を
あらかじめお詫びしたいと思います。すいません
天津・向清太朗は修道院の礼拝堂に一人座り賛美歌を口ずさんでいる。
窓の外を見るとそこには非現実的な世界が広がっている。
「美しい・・・」恍惚の表情を浮かべながら窓の外をながめポツリとつぶやいた。
向は教室を出るときガブンチョメンバーに声をかけた。
「僕にええ案あるんすわ。修道院にみんなで集まりましょ」とそう言うと
先輩も後輩も嬉しそうに集まった。集まったのはストリーク、ランチ、
ママレンジ、ババリア、足軽エンペラー、中山功太・・・我ながらよくこんなに
集めたものだ。(他にもNONSTYLEやブロンクスに声をかけたが
来なかった・・・、とりあえずこんだけ集まればまずまずだろう。)
教会に集まった皆は「どうすんねん。ええ案て何やねん」と
つめよったが「まぁ、まぁ、慌てんといてください。こんだけ集まったら
簡単に殺される事ないですし、力合わせてゆっくり準備していきましょ」と
なだめた。本当は【ええ案】なんてない。ただ向には試したいことはあった。
それを果たすために集めたといっても過言ではない。本当は相方、木村卓寛も
呼びたかったのだけど木村に関してはもっと慎重に動きたいので別の場所に閉じ込めてある。
身長も低くやや肥満気味で色も白くメガネにおかっぱ。
どっから見ても強そうには見えないし生き残れそうな容姿ではない。
しかし殺し合いの場に放り込まれ怯えているか?と言ったらそうではない。
向はいつだって退屈だった。舞台に立ち笑いを取ることは快感だったがソレダケだった。
漫画やゲームの世界は楽しくてたまらなかったけど、それも2次元の別の世界と
気づくと虚しさを覚えた。【特別】であることを夢見て心を焦がせば
焦がすほど平凡な自分に嫌気がさした。
なんで自分は漫画の主人公のように・・ゲームの勇者のようになれないんだろう。
そんな時この世界に放り込まれた。興奮した。やっと自分にも
【特別】が降りてきたのだと・・。殺す(倒す)ことや死ぬ(ワンキ減る)こと
は怖くなかった。漫画やゲームの世界ではそんなこと日常茶飯事だ。
もちろん漫画やゲームと現実は違う。違うからこそ試したいことがあった。
「俺は絶対的存在になれるんか?」
漫画の主人公のようにゲームの勇者のように・・・わからへん。
でもなれる気がする。俺はただ殺すなんて芸のないことせえへん。
さて準備しよか、木村君も待たせたら悪いし・・・ニヤっと笑うと立ち上がり歩き出した。
「おい!なにすんねん。ええ案あるんとちゃうんか?」そうブーたれるのは
ストリーク吉本。彼が文句を言うのも仕方ない。突然、向が神父の格好を
しだし、何をするかも聞かされないままロウソクしか灯っていない礼拝堂に全員が集められたからだ。
(しかも向の神父姿はコントの衣装にしか見えない)
「違うんですって、これから僕が話ししますんでちょっと静かに我慢して聞いてください。」
そこから向は話しだした。【死】についてのこと【死後の世界】についてのこと
【幸せ】についてのこと。最初は馬鹿馬鹿しいと退屈そうに聞いていたメンバーだったが
語り続けること数時間が経つ頃にはみんな真剣に向の話に吸い込まれていた。
「死ってなんですか?苦しいもの?
悲しいもの?怖いもの?本当に?
何であなたは生まれてきたんですか?
何で人間は生まれてくるんですか?
あなたの価値はなんですか?
あなたの望みはなんですか?
あなたはあなたを必要とする人がいますか?
人は人を憎みます。人は人を妬みます。人は人を殺します。
あなたは綺麗な人間ですか?あなたはなぜ生きてるんですか?
人はみな生まれ、そして死ぬのです。死は永遠です。
汚れた世界で綺麗な存在になりたくありませんか?
嫌な事や面倒くさい事はもう考えなくていいんです。
そこには恐怖も憎しみもありません。全てから解放され自由な存在に
なるのです。みんな一緒に幸せになりましょう?
唯一の誰でもないあなたになりましょう?」
漫画のうけうり、ゲームのうけうり。
そんな安っぽい言葉を大げさに並べ語った。
次の日も次の日も・・また次の日も。
数日たった頃には自分のつらい体験を語りだし泣き出す者も出てきた。
向は、そんな者にも温かいうわべだけの言葉を真面目に投げかけてあげた。
毎日その繰り返し。
「死ぬって俺らが思ってたみたいに怖いもんちゃうんやなぁ」
ババリア溝黒がポツリと吐いた一言を向は聞き逃さなかった、そしてニンマリと微笑んだ。
「ん・・うぅん・・・・あ、寝てた」寝ぼけ眼をこすりながら
辺りを見渡すのはママレンジの弟、健太。健太はこの戦場に放り込まれてすぐ熱を出し
療養ということで寝てることが多かった。昔から慣れない環境や緊張状態が
続くと熱を出すことはよくあったがこんな長い間臥せっていたのは久しぶりだ。
そんな健太を看病してくれたのは主にママレンジ兄、公平と天津、向だった。
向はなんだかよく分からない話をしていつも帰っていくので、ちょっと
迷惑でもあったが近くに誰かがいて看病してくれるというだけで、
こんな緊急事態のなか熱を出し弱りきっていた健太にしてみればありがたい事だった。
熱もだいぶん下がったようだ。そういえば今日は誰も見ないな。
みんな何してるんだろう?体調もええしブラっと散歩でもするか・・・と思い
立ち上がり部屋を出た。しばらく探し回ってみたものの修道院の中には誰もいない。
なぜ?「誰かおらへんの〜〜〜??向〜?」
健太がガラっと宿直室を開けると何かがブランと揺れた。
「なっ・・・・」絶句。健太の目の前で揺れるソレは確かに見覚えのある者だった。
「た・ぐちさん?」首を吊ったランチ田口は体をダランとさせ、ゆらゆらと揺れていた。
失禁しているのかひどい臭いがする。
「うわぁぁーーー」健太は腰が抜け尻をつきながら部屋から出た。
「健太なにしてんの?」そこにはランチ風藤が立っていた。
「ふ・・風藤さん!!!田口さんがっ」
風藤は健太が指差す方を見ると「あ、首吊りにしたんや」と軽く受け流した。
「な・・何言うてはるんすか!?田口さん死んで・・」
「そんなん、どうでもええねん。それより健太お前はどうすんねん」
「へっ?」
その時、健太は風藤がびしょ濡れな事に気がついた。
「風藤さん・・?」
「俺と一緒にいくか?」
『いく?』意味が分からなかったが健太は反射的に顔を横に振った。
「そうか〜じゃあ俺は逝くわ」
風藤はライターを取り出し火をつけ自分の体に近づけた。
ボウ―――火は風藤の体にそって一気にまわる。
肉の焦げる臭いが健太の鼻をつく。何が起こっているだ???
火だるまになった風藤はドサっと倒れそのままボウボウと燃え続けた。
「い・・あ・・・わぁぁぁーーーーーーーーーー」
何なんだ、ここは?俺達、芸人は「お笑いバトルロワイヤル」に参加させられ
殺し合いをさせられるのではなかったのか?こんなの殺し合いより狂っている。
「うっ!」肉の焦げる臭いは依然あたりに充満し健太は胃液がこみ上げてくる。
「おぅえっ・・」もう嫌だ・・家に帰りたい。
口うるさいオカンがいて新聞読みながら朝食をとる親父がいて
相方でもある兄ちゃんがいる。平凡だけど暖かい家、日常・・・。
涙が次々溢れてくる。
「あ・・・兄ちゃん」そうだ兄・公平はどこに行ったんだろう。探さんと・・・。
『屋上や』背後で声がした。その声に振り返る。
しかしそこには人の形をかろうじてとどめて、まだかすかに火が
ちらついている焦げたモノしかない。
「屋上・・・」健太は走り出した、振り返ることなく・・・。
バンっ―――屋上の扉を開くとそこにはランチの二人を除く全員がいた。
しかし、その異様な光景に健太は言葉を失った。
みんなが半円を描きその先には向とストリーク山田が立っている。
ストリーク山田は顔にタオルを巻き目を隠している。手は後ろで縄で結ばられあと一歩踏み出せば
もうそこには地面がない。向は山田の耳に顔を近づける。
「怖がることないんですよ。だって1歩先には楽園が待ってるんですから。
こんな死に怯える世界は切り捨て自由が溢れた世界に旅立つんです。
あなたは一人じゃない。僕らは一つの大きな共同生命体なんです。
あなたを一人にしません。みんな一緒です。さ、理想郷に旅立ちましょう。」
目隠しをした山田はコクっと頷くとトンと飛び跳ねた。もうそこには
山田の姿はなかった。
その様子を黙って見ていたババリアの溝黒が突然、向にすがりついてきた。
「俺、めっちゃ怖かってん。夜も誰かが俺を殺すんやないかって寝れんかった。
仲間を信用できんかったこんな俺でも楽園行けるんか!?もう俺こんな世界で生きたくないねん」
「安心しろ、神は誰にでも優しいねん。見たやろ?山田さんの背中、羽がはえとった。
溝黒も山田さんも俺もみんな一緒やねんて。さ、神様に会いに行こ」
「ありがとう」
そう言うと溝黒は目隠しもせず飛び降りた。
「次は誰逝きます?」向は静かに呟いた。
「ぼ・・僕行きます!」と名乗り出たのは足軽エンペラーの山里。
「僕、学生の頃イジメにあってたんですよ。だからここでも怖かった。
みんなが僕をイジメた奴らみたいに僕に矛先むけるんじゃないかって。」
「俺も学生時代はそうやった。でも大丈夫や、向こうには恐怖や憎しみといった
概念がないねん。誰もお前をイジメへん。お前は必要な人間になんねん。
イラナイ自分とはさよならしよな。みんな今日誕生日をむかえ新しい自分に
なれんねん。永遠の魂を得にいこ」
「ハイ!!」山里は日本兵のように向に敬礼すると飛び降りた。
「次は?」
「僕行きます」足軽エンペラーの西田。
「僕、昔、暴走族のヘッドしてたんですけど正直もう虚勢を張るために
人を傷つけるのはまっぴらなんです。こんな状態でも誰かを殺すなんて考えられません。
いろんな意味で僕は償わないといけないんすわ」
「そうか・・・なら償おか。大丈夫や、怖くない」
西田は何も言わず落ちていった。
「なんやねん、これ!!!!おかしいって、こんなん」
これまで呆然と見てた健太は声を上げた。
そこに「健太は黙っといて俺も行くねんから」とママレンジの兄、公平が
健太を押しのけ前に出た。
「おい・・何言うてんねん。なぁ、どこ行くねん。兄ちゃん!!嫌やって・・
兄ちゃん!」
前に出てきた公平の肩を向はポンと叩いた。公平は健太の方をむき
「健太、兄ちゃん先行って待ってるからな」と笑顔で言うとそのまま後ろ向きで
地面に向かって倒れいった。
「兄ちゃーーーーーーーーーーん!!!!!!!!」
ドクン ドクン 「嫌や・・・嫌や・・・兄ちゃん・・兄ちゃん・・・」
健太の顔は涙でぐちゃぐちゃだ。
『健太、兄ちゃん先行って待ってるからな』
公平の言葉がぐるぐると健太の周りを回る。なんて勝手な話だろう。
兄はいつもそうだ。でも気がつくといつも、その兄の後をついて行く自分がいた。
「わかったわ、行けばええんやろ?ふっぅぅ・・・」
泣きながら一歩一歩歩いていく。
「くそっ、くそーーーーーーーーーーーー!!!」
トン・・・
「次」
「・・・・・・。」
誰も名乗り上げてこない。
「三浪・・」
「お前、俺がこんな子供騙しに引っかかるとでも思ったか?
お前のちんけな暗示なんてかからへん。死ぬんは俺やなくてお前や」
ババリア三浪はナイフを取り出した。
そんな三浪を向は冷ややかな目で見つめる。
「ふん、いつまでそんな顔してられるかな?」三浪がナイフを構えると
三浪の後頭部でカチっと音がした。
「・・!!」三浪の後ろでは中山功太が銃を構えていた。
「優秀な後輩持つと便利やなぁ」向は煙草を吸いだす。
「功太・・・お前!」
「三浪さん、すいません。僕、向さん尊敬してるんで」
「三浪、同期で仲良かったけど俺の方が一枚上手やったみたいやな。功太、やっちゃって」
パン―――ドサっと三浪の巨体が崩れ落ちる。
煙草をふかす向、銃を持ち立ち尽くす中山功太、死んだ三浪
状況がわからずオロオロするストリーク吉本。
「どうします?」
「あ・・・え?あっ・ど・・」
「頭悪いんですか、吉本さん?落ちるか撃たれるか、どっちがいいですの?」
「なんで俺が死ななあかんねん」
「絶対的タナトスですよ」
「何言うてんねん。そんなん・・わからへん。」
「理解できないならする必要ないですよ。死ぬだけですし。どうするんです?
ここで功太に撃たれるんですか?それとも皆と一緒に死ぬんですか?山田さん待ってますよ」
「山田が・・・?」
「見てください」
向はみんなが落ちていった場所を指差す。
そこにはみんなが立っている。満面の笑みを漏らしこっちを見ている。
みんなの先頭には山田が立って手招きし吉本を呼んでいる。
「や・ま・・だ」
足が勝手にそっちに向かう。
「まいどーーーーーーー!!」そう叫ぶと吉本は飛んだ、みんなの元に。
「さよなら」向は形だけの弔いの言葉を吐いた。しかしその口には笑みが浮かんでいた。
「おつかれさまです」中山功太が煙草をもう一本、向に渡した。
「お前は俺を裏切らへんか?」
「当たり前です。」
「そうか・・・」向は中山功太が差し出した煙草を口にくわえ満足そうな顔をする。
「悪いけどみんなから・・・・・・・」
「・・・わかりました。」
功太はテキパキと動き出す。
「ははっ・・ははははははははははははは」愉快でたまらない。
みんな死んだ。俺の言葉で死んだのだ。俺にはそれだけの力がある。
理想郷?楽園?自由な世界?糞食らえ。理想郷はココだ。死の先にあるのは無だ。
みんな自分から無の存在になったのだ、俺の力で。
みんな俺の語る甘い死と再生の物語に心を酔わせ死んでいったのだ。
死んだ。みんな死んだ。俺は特別な力があるんだ。俺は神だ。
やっぱりだ・・・最後に生き残るのは俺だ。
「死ねばいいんだ・・・みんな。死ねばいいんだーーーはぁはははははははは」
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死みんな死ぬ俺は生きる
そして新しい世界を俺が築くのだ。誰も俺を馬鹿にしない。なぜなら俺は絶対的存在だから。
向は膝をつき高らかに笑い続ける。空には月が煌々と輝いていた。
もう、書き込んでよかったのかな?
B9さん、お疲れ様でした。
向の壊れっぷりがよかったです。
ガブの面々はあまり詳しくないのですが、とても楽しめました。
続きも期待してます。
324さんありがとうございます。誰が死んだか書き忘れてました。
ストリーク山田、吉本 ババリア溝黒、三浪 ママレンジ健太、公平
ランチ風藤、田口 足軽エンペラー山里、西田 死亡です。
326 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/03/15 21:00
>>325 お気になさらずに.
に、、しても向さんはこれからどうなるんでしょうか?
続きが気になります.
そして…あげ.
327 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/17 16:55
age
B9さんお疲れ様でした。
ガブ好きの私にとっては最高でした!
中山功太はまだ死んでないんですよね?
大好きなんでもっと活躍してもらいたい。
スレ違いの質問ですが実際に向と功太は仲いいんですか?
それとも物語上の中だけ?
ネットTV電話レディー募集中!顔出しはしなくてもOK!
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貴女も今まで欲しくても手に入れられなかった物をそっと手に入れませんか?
お問合せは・・・
[email protected]まで!
330 :
名無しさんお腹いっぱい。:03/03/22 18:40
ほしゅ。
最近さみしいね。
待つのみ。
332 :
名無しさんお腹いっぱい。:03/03/24 19:45
落ちそうで怖いのであげ
333 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/24 19:54
マイマイカブリ解散って本当?
当人は勿論だけどヒマナ氏の話に影響がないか心配だ。
334 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/25 18:54
あげ
335 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/26 09:59
>>333 みたいですねー。
ホリの中では好きなコンビだったので残念。
>>290-293 の続き
「ン・・・どうしたんだ、そんな怖い顔して。」
木屑とか紙ゴミとか、そういった雑多な物を腕に抱えながら近づいてきた桶田が松丘に問う。
その気さくな口調とは裏腹に眼光は鋭く、油断はならない。
「怖い顔に・・・見えますか?」
須藤を庇うように抱えながら、松丘は桶田に答えた。
焼却炉の中で過ごした時間の恐怖を思い出してしまったのか、
須藤の身体がそれと明らかにわかるように、小刻みに震えだしている。
「なンっで・・・ココにいるんだよっ・・・!」
歯をガチガチ言わせながら、何とか吐き捨てるように絞り出した須藤の声が、微かに松丘の耳に届いた。
そう言えば、自分が成子坂の二人と行動を共にしているとは伝えていなかった。
先に須藤にその旨を告げておいたら、また違った展開になったのだろうか。
今となっては遅すぎる話だけれど。
「・・・須藤から、聞きました。」
変な緊張から跳ね上がる鼓動と恐怖を何とか押さえ込むように、低い声で松丘は告げた。
「須藤と富田に爆弾を作らせて・・・それを僕に車に詰めさせて・・・
あなたは一体何を考えてはるんですか。」
「・・・いずれ、わかる。」
「須藤を、そこに閉じこめた事も・・・ですか?」
最初の質問にこそ何となしに答えたものの、重ねての松丘の問いかけに、
桶田の表情が僅かに不機嫌げな物へと変わる。
「何で・・・何でみんなで一緒におられへんの? 大勢でおった方がエエやないですか!」
「じゃあ・・・須藤の代わりに、お前が死ぬか?」
「・・・・・・・・・・・・!」
「この『ゲーム』ではな、必要最低限の手駒さえキープしておけば十分なんだよ。」
須藤にも聞こえているだろうにもかかわらず、サラッと言い放った桶田に対し。
僕はあなたの手駒ですか、という松丘の言葉は、辛うじて喉元で押さえ込まれた。
ゲームの雰囲気に飲まれ、テンパったまま村田を殺そうとして、返り討ちに遭ったあの時。
それでも松丘が殺されなかったのは、決して先輩後輩のよしみからではない。
命を助けられた恩に報いるために、成子坂のお二人の手駒であろうと決めたのは自分自身だった筈。
けれど。だからといって松丘にはここで須藤を見捨てる訳にも行かなかった。
自分が助けられたように、須藤も何とか助けて貰えないだろうか。それが彼の希望だった。
これが甘っちょろい考えなのは、松丘自身よくわかっている。
でも、まったく見知らぬ連中ならばともかく、
良く見知った、そして特に恨みを抱いている訳ではない相手が殺されそうな状態で。
差しのべ掛けた手を引っ込めるような真似は、どうしても松丘には出来なかったのだ。
その、気質から。
優しい事に関しては、松丘は意外と定評があった。
イベントでMCを担当している同じ事務所のアイドルの卵達とかからはもちろん。
どこかの芸人にもラジオで心配がられるぐらい、気を使ってこの世界をずっと渡り歩いてきたのだ。
弱肉強食なこの世界では邪魔にしかならない優しさが、それがよりによって今、顕現しただけで。
けれど。一方で桶田の中には4人で、と言う選択肢はまったく存在しないらしい。
「だったら、こうしようか。須藤。松丘を殺せたら、お前を助けてやるよ。」
須藤を庇ったまま動かない松丘に業を煮やしたのか、桶田は対象を変えて、また口を開いた。
「よく考えたら、お前の方がずっと若いし・・・使い勝手良さそうだもんな。」
内容の物騒さとは裏腹に、優しく響く桶田の声は不安な心に良く浸透する。
松丘は、その腕が触れる須藤の筋肉に力が加わる様子を俄に感じ取った。
「・・・須藤、ノったらアカンぞ。」
警告するように松丘は須藤に囁く。
桶田にまったくその気がないのなら、須藤を守るには村田が戻ってくる事に期待するより他になかった。
彼が須藤の合流を認めてくれさえすれば、桶田も不承不承とでも受け入れてくれるかも知れない。
その為にも、ここで安易に桶田の誘いには乗ってはいけないのだ。
しかし、松丘の囁きから数秒の間があって。
須藤の首は横に揺れた。
「須藤・・・お前・・・。」
「悪い、マッチョ。やっぱり僕、生きたいんだよ、死にたくねーんだよ。」
須藤はギュッと松丘のナイロンの上着を掴みながら、ずっと及川の死に顔を思い出していた。
穏やかとは到底言い難い形相に、元々色の白い肌にこびりついていた黒く変色した血の色さえも。
「待てや、須ど・・・」
「そうだよ、俺は生きる! このチャンスを無駄にはしねぇ!」
呼び掛けようとする言葉を松丘が言い終えるより早く、
内心の何かを吹っ切るように叫んだ須藤の声と共に胸部にニーキックが入る。
加わる衝撃に、松丘はこれ以上須藤を抱えている事が出来ずに地面に転がった。
それでいいのだと言わんばかりに、桶田の口元に笑みが浮かんだ事など知る由もなく。
須藤は今までとは逆に松丘に馬乗りになり、両手の拳での更なるラッシュを浴びせかけてきた。
辛うじて腕でガードして、身を護ろうとする松丘だったが。
マウントポジションを取られたという不利はどうしようもなく、
幾度と無くガードを破った一撃に見舞われる。
お互いに人前に出る仕事の人なのだという事をすっかり忘れ去ったかのように
遠慮なく顔面を狙ってくる、ツッコミとは当然の如く質の異なる本気の拳は
たった数発で松丘の思考を酷く混濁させた。
キャットファイトと呼ぶには余りにも一方的すぎる、面白味のない展開に。
松丘には目前の須藤の姿が、記憶の底で蠢く無数の何かと溶け合いながら重なって見えて。
ソリの合わなかった中学の時の同級生とか、高校の時に振られた彼女とか、バイト先の先輩とか。
そんな人々からも次々と殴られているような錯覚に、
あり得ないからと首を振るその様が、命乞いをしているように須藤には映った。
獲物をいたぶる猫の心境はこういう物を言うのだろうか。
加虐心が刺激され、須藤のテンションはどんどん高まって行く。
「なぁんだ・・・最初っからこうすれば良かったんじゃん・・・ねぇ。」
ハハハハーハハ、とどこか歌うように音階を付けて笑いながら。
須藤は松丘の腹の上から退いて立ち上がり、松丘の首輪に指を掛けると強引に引っ張り起こした。
膝立ちにさせられた松丘の顔は、須藤から見ればちょうど見下ろせる位置。
喉に食い込む首輪から離した手で、すかさず裏拳が松丘の頬に往復で打ち込まれた。
「・・・・・・・・・っ!」
「前々から言おうと思ってたけど。ほんっと不っ細工な顔。」
口の中を切ったのか、じわりと広がる血の味に顔をしかめる松丘に。
須藤は薄く不気味な笑みを浮かべながらポツリと洩らす。
「不細工と・・・ちゃう・・・!」
それは須藤の本音なのか、それとも興奮のあまりの暴言なのか。
掠れた声で何とか否定しようとした松丘だったが、須藤の赤く濡れた手が
首元に伸びてくるのが見えて。大粒の目を更に見開いて、逃げようと身じろぎする。
とは言え、上半身の至る所から伝わってくる鈍い痛みは松丘の動きを易々と阻害して。
生温い指先が、ギュと松丘の喉を締め上げてきた。
体躯とあいまった、少し小振りな須藤の手だったけれど。
人を一人絶命させるにはそれでも十分だろう。
息が詰まり、松丘は何とか振り解こうと須藤の手首を掴んだ。
視界がたわみ、自らを鼓舞するためか、吼える須藤の声が遠くなる。
・・・僕はここで死ぬ、んやろか。
桶田さんが本当に須藤を助けてくれるんやったら。
確かに僕はここで死んだ方がエエのかも知れへんけど。
ぼんやりと、そこまで思考を巡らせていると。
『せやけど情けないなぁ・・・。こんな奴に今まで人生預けてたんかと思うとホンマ阿呆らしいわ。』
呆れたように吐き捨てる、誰かの声が松丘の脳裏に響く。
刹那、連鎖的に松丘の記憶が走馬燈とはまた違う形でフラッシュバックした。
挑発するような涼しい目が、松丘の心を深々と射抜く。
「お前かて・・・お前かて口ばっかりで結局何も出来ひんかったんやないかぁっ!」
不意に松丘の口から絶叫が迸り、そのまま、強引に須藤を突き飛ばした。
須藤の小さい身体は松丘から簡単に剥がされると、蹌踉めく間もなくバランスを崩して。
勢い良く仰向けに倒れ込む。
ゴン。
変にハッキリとした、鈍い音があがった。
揉み合っている内に、周囲の環境など意識の中から抜け落ちてしまっていたのだろうが。
ただ須藤を引き剥がそうとするために、松丘が彼を突き飛ばした、その先に。
今までずっと彼を内側に捕らえていた、焼却炉があった。
その角の、比較的尖った部分に後頭部をしたたかに打ち付けて。
地面に横たわった須藤は、ピクリともしない。
「す・・・ど・・・ぉ?」
酸素が確保されて呼吸が落ち着いてくると共に、我に返ってきたようで。
松丘は急いで須藤に駆け寄ると、上体を抱え起こして呼び掛ける。
頬をぴしゃぴしゃ叩いてみても、須藤に反応は見られない。
「・・・これで気を失っているだけならエエねんけど。」
先ほどまで一方的に殴られていた人間の言いぐさとは思えないが。
不安一杯に呟く松丘の、須藤の頭部を支えている右腕に。
彼の後頭部から流れ出た血が伝い、染みを作り始めていた。
・・・ねぇ。そりゃあそんなに長い間じゃなかったけどさ。
及川さん、僕とコンビ組んでた事も。あんたは少しぐらい誇りに思ってくれたのかな?
当初の予定より遙かに長くなってしまいましたが、
須藤さん絡みは次回で終わりです。
マイマイに関しては、自分も残念の一言です。
去年のポプラ&チョーダイ同様、余りにも急でしたし・・・。
小蠅さん、乙ですー。
久々の書き手様降臨だったこともあいまって画面に釘付けでした、
桶田さんはどうするのか・・。
小蝿さん、乙です。
だんだんクライマックスに近づいてきたのを感じ、
どの話をみてもドキドキです。
うーん、桶田さん不気味で似合うなー。
345 :
名無しさんお腹いっぱい。:03/03/28 13:57
ほしゅあげ
346 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/28 14:59
さんま何処で死んだかわからない
>>346 初代スレが立って間もない超序盤でふかわに殺られた
348 :
相沢みんと:03/03/28 21:17
これから別バージョンで書いていきます。
349 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/28 23:12
18KINとSPWの続きが読みたい1人です。
待ってまーす。
350 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/03/28 23:17
初期設定の100組の方がおもろいことになったと思う。
なんか最近グダグダなような・・・
351 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/03/29 00:07
最終的に誰が優勝すんのよ?
352 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/03/29 00:53
小蝿さん、乙!
やはり続きが気になる終わり方です・…
ヒマナスターズさんやB9さんともども尊敬しています
どうしても私のは自信が持てなくてうpできずにいます。
すみません…
マイマイカブリ。解散していたんですか。知りませんでした
あのタバコとマッチのネタお気に入りです。
353 :
名無しさんお腹いっぱい。:03/03/29 18:52
>350
みんな自分の好きな芸人は出したいだろうからしょうがあるまい。
数を限定したら誰を登場させるかで大モメにモメたのは容易に想像がつく。
別に1組を除いて全員死亡という展開にする必要もないんだから、
出したいだけ出しても構わないだろう。
このスレも長いこと続いてるんだし、
膨大の数の書き手と読み手がやってきて色々あって
現在この形におさまってるんだから、今更ルールに文句つけたり
過去ログ読めば分かることを聞いたりするやつは放っとけ。
書き手さんの士気をそぐようなことをしないでくれ。
>>356 格好いいー。
好きな編を絵板でとか、何かで再現されると二倍楽しい。
ストーリーをこういう風に見れるのも面白いですね。
色々な編のを見たくなってきた。
お久しぶりです。
光代社長バージョンは煮詰まっています、ごめんなさい。
外の世界途中経過、パックンマックンやってみましたんで、なおこの2
人に関しては、パックンが外国人という事で外交の関係で2人とも免除
扱いになっていますんで、よろしくお願いします。
「はあ……。ここまで来ると芸人だという自覚無くなってくるな」
パックンマックン吉田は、日本テレビの指定の楽屋でため息を付いた。
「今じゃ殆どニュース読みしか仕事無いですよね」
吉田の向かいに座っていた相方のパックンことパトリック ハーラン
はその通りだと吉田を見た。
「こうなるとお前絡みで日本にいるけど、無理にでもバトロアに参加し
た方が良かったかな」
相方のパトリックが外国人である関係上、外国人にバトルロワイアル
に参加させるのは外交政策上まずいという事で吉田は、本来バトルロア
イアルに参加しなければならない所を、パトリックの世話役代わりに免
除されていた。
「芸人が芸しなくてニュース読みだけやっているってのもなあ」
今の状態が人間としては生きている物の、芸人としては死んでいると
しか思えなかった吉田は、いっその事爆笑問題のラジオでも本人が言っ
ていた通り、祖国であるアメリカにパトリックを帰らせ、今からでも遅
くはないから、自分はバトルロアイアルに参戦しようかと思い詰めてい
た。
「パックン、悪いこと言わないからお前国帰ってくれないか」
吉田は申し訳なさそうな顔をした。
「何でですか! コンビが離れてどうするんですか! 」
パトリックはいきなり何をと真剣な顔で吉田を見返した。
「芸が出来ない芸人なんて、死んでいるような物じゃないか。それだっ
たらいっその事、あれに参加した方がマシだ」
吉田は続けて言った。
「あれに参加すると言う事は、死にに行くような物でしょう。現にこの
間ラジオに出させて貰った爆笑さんだって太田さん死んでるじゃないで
すか! 」
命あっての物種だとでも言うようにパトリックは反論した。
「あれは最後の一人までの殺し合いだから、死にに行くような物だとは
分かっている。それでも今の状態だったら行った方がマシだ」
他の芸人達が戦っている様子を夕方のニュース番組で読み上げている
だけの自分は何なんだと、思い詰めて吉田は続けた。
「命あっての物種でしょう。厳密に言えば全部が全部あそこに行ってい
るのではなく、未成年は行ってないでしょう」
パトリックは全員が全員あれに参加している訳ではないと、今すぐに
でもバトルロアイヤルの会場に行こうとする吉田を止めた。
「それにしたって……」
話をしていく内に少し冷静になって来た吉田は、仲間達が死んでいく
情報を番組で読み上げて行くのが辛くなってくるとパトリックを見た。
「マックンは、私の相方。今我慢したらきっと好きなだけコントや漫才
できる。だからあそこに行くのだけは止めて下さい」
パトリックは慣れない正座から土下座をするつもりで言った。
「パトリック……」
真剣に頼み込むパトリックに、今の自分はどうするべきなのかと吉田
は座り直した。
「行きますか、行きませんか」
「行かないとして、俺はどうしたらいい。そしてどうするつもりだ、パッ
クン」
吉田はお前はどうするつもりかと聞いた。
「私が今分かっているのは、爆笑さん所の光代社長が動き出している事と、
この政策に反対者がこのゲーム開始直後から増えて来ているという事。多
分今後反対運動が出てくるでしょうから、うかつに動くのは危険です。だ
から、行かないで下さい、置いていかないで下さい」
今はこのゲームの参加者として、動かない方がいいでしょうとパトリッ
クは返事をした。
「爆笑さん所の光代社長、動き出しているのか。ネットとかで見た限り
何も動きないから、何もないと思っていた。もう少し詳しく教えてくれ」
少しはその動きもあるのかと吉田は少しほっとした顔でパトリックを
見た。
「ネットでないですか。光代社長、オフラインメインでする気ですね。
光代社長、私が爆笑さんと親しいからって、電話で教えてくれました」
オンラインではオフラインよりも言論統制がされている以上、それは
仕方がないとパトリックは納得した。
「光代社長がああいっている以上は、動くつもりなんだろうな」
「あの人の性格から言ってそうでしょう。今出版社や放送局に動き掛け
ているみたいですね」
光代社長の性格ならそれしか考えられないとパトリックは返事をした。
「だとすると……俺とお前、うかつに動かない方がいいか」
これは動かない方がいいと納得した吉田は落ち着いた顔でパトリック
に言った。
「その通りです、動かないで下さい」
嬉しそうな顔でパトリックは返事をした。
>>315 ありがとうございます。
B9さんの作品も面白かったです。
続き待ってます。
あと、亀レスごめんなさい・・・
なんつーか、私鈍感でつ。
>356
青さん、フラッシュ拝見しました。
カッコよかったです。
文字とBGMだけで結構表現できるものですね。
自分の文章が使われていることにちょっと感動しました。
ありがとうございます。
そして、今更ですが、
ウンナン完結編の感想を書き込んで下さったみなさん、
ありがとうございました。
実はウンナンの催眠実験編もあるのですが、
蛇足っぽいので…。
学園裏の林、もう夕方になる。意味のない殺し合いが続く…恐怖と絶望感だけが吉田敬を襲う。
相方の小杉竜一とは3日前にはぐれたっきりで会っていない。まっすぐな人間性でぶつかって行っても
真剣に受け止めてくれる奴だった。バッテリーの切れたケータイの電池パック。屈託のない笑顔でプリクラに写ってる小杉がいた。
入学の時から好きで、付き合っていた。キスまでしかやってないけど、それ以上の事もしたい。したかったのに…
もし、また小杉に出会えたらここから逃げ出して、遠くに逃げて2人で生活して行きたいよ…
幸せな空想ばかりもしていられない、ポケットからジャックナイフを取り出し、戦闘体制をとる。しばらく歩いてる。
グチャ
何か踏んだ。それは…
To be continued
…………見た瞬間、言葉にならなかった。自分の足元にあるのは、今まで捜し求めていた小杉竜一だった…
ゆっくりとひざまつき、冷たくなった小杉の亡き骸を抱き上げ揺さぶってみる。
何もアクションを起こさない… 背中にバタフライナイフが刺さったままだった。そっとそのバタフライナイフを抜くと一気に押し黙っていた物が止めどもな
く出てくる。ナイフを握り締めながら、話しかける。
「お前の事だったから、マシンガン持ってても怖くて後ろまで気がまわらなかったんやろ?そうだろ?びく付いてるお前の背
後から…俺が付いていながら…謝っても謝りきれねぇよ!小杉・・このバタフライナイフの持ち主絶対に突き止め、敵とって
やる。そしてその後俺も…」
泣き崩れてる場合じゃない。まだ泣きたりないけど…
怒りに打ちひしがれ、ただ、もうもうとしてるだけだった。制服のブレザーの上着を脱ぎ、小杉の亡き骸に掛けるとそこには
吉田敬はいなかった。一匹の殺人鬼がいるだけだった…最後に小杉の体を抱くと、さっきは気付かなかったが何か硬いものが
入ってる。取り出すと、レミントンだった。弾は2発までしか込められないが殺傷能力は高い銃だ。
薬莢も一緒だ。でも30発しかない…それでもいい、探せばあるかもしれない。殺人鬼化した吉田敬が、ふと後を見ると人影
が…走って行くとそこには…
To be continued
ブラマヨはもう死んでたはず。フットとかパックンマックンとか
ネタスレのころに死んだ芸人ならまだともかく
ちゃんと話が書かれているのに再登場すると正直萎え。
つーか801はヤメロ
>357さん >蟹座さん
レスありがとうございます。
蟹座さんのウンナン完結編は読んだ時目がはれるほど涙しました。
その蟹座さんから私のようなしょぼいフラッシュに
直に言葉をいただけるとは感激です。
>367
うわっちゃあ、パクマク既出でしかもネタスレ時代に死んでるのか…。
爆問とパックンの共著数冊で頭打ち付けて逝ってきます、スマソ。
コモさん、もしこれ読んでましたら、自分の>359-362まとめサイト行きの時は
番外編行き指定でお願いします。
>>323 向は相方木村を閉じ込めている倉庫にむかった。
「んーん・んーー」木村は口にタオルを巻かれ何を喋ってるか分からない。
向は木村の口のタオルを取る。「お前、なにすんねん!縛ってる縄も解けや!!」
向は笑みを浮かべる、がその目は笑っていない。
「俺、勇者になってんで。これから残酷な事するけどお前の
ためを思ってのことやからちょっと痛いの我慢してな。」向は計画にとりかかる。
「な・・なにすんねん?嫌やって!な、向!おい!向!!向君??なにすんねんて・・
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー」
思いのほか力がいる作業だった。
その時、ガタッ・・・と物音がした。
「誰や!!!」見るとそこには女芸人、友近が顔面蒼白で立っていた。
「おー、友近やん」血まみれのまま向は友近に近づいていく。
そして逃げようとする友近を捕らえる。「なにすんのよ、あんた!!」
騒ぐ友近を縄でしばり木村の作業にもどった。
友近を修道院につれて帰ると中山功太は少し驚いた顔をして
「どないしたんですか、それ?」と尋ねてきた。「見つけたから捕まえてん、
こうやって遊ぼ思てな」向は友近を椅子にくくりつけナイフを使い、いたぶり始めた。
「怖いやろ?怖がれや」向のそんな言葉にも友近は強情な表情を変えない。
「あんた、最低やな」友近の言葉に向のナイフが友近の頬を一文字に横切った。
真紅の血が友近の頬を伝う。「怖いんやろ!泣けよ!!」向が怒鳴っても
友近はその意思の強い大きな瞳で向をじっと直視するだけだ。
「くっ」向は友近を殴った。友近は椅子ごとひっくり返る。
その時、中山功太が「向さん、言われてたやつ用意しました。」と向に告げた。
向は一息つくと「そうか・・じゃあ入ってくるわ。この女見てて」と言うと
部屋を去った。向が消えると功太は友近の縄をといた。
そして頬の傷に消毒液をかけ絆創膏を貼る。(修道院の備品に救急セットがあった)
「逃げ」と功太は囁いた。
「なんでうちのこと助けるんや?」
「しらん。気ぃ向いたからちゃうか?」
「今まで誰か殺したんか?」
「三浪さん・・・ババリアの」
「あの男に命令せれてか?」
「おぉ」
「あんた・・・ほんまにそれでええんか?」
「ええねん!・・それよりお前の方が年上でも俺のほうが先輩やぞ。
もうちょい敬意はらえよ」
「ふん。なに言うてんの。あんたなんて・・・」
ふいに訪れる静寂
「ほんまに、あの男についていくんか?」
「おぉ」
「うちと一緒に逃げへんか?」
「・・・・・・。」
「あんた、このままやったら殺されるで。な、逃げよ」
友近の大きな目は真っすぐ中山功太を見つめる。
「愛の逃避行か?」功太は皮肉っぽく笑う。
「せや。年上の美女と逃げるんも悪ないやろ?」友近も
イジワルそうな笑みを返す。功太は地図を広げ一点を指さした。
「じゃあ、5時間後にココで会お。生きて会えたら友近と
一緒に行動するわ」
「まわりくどいなぁ。まぁ、ええわ。絶対生きるんよ。約束やで。
じゃあ、うちは行くわ。逃がしてくれておおきに。ほな、後で」
友近が去った部屋で一人、中山功太は遠い目をする。
何を考えているのだろう?いや何も考えてないのかも知れない。
「ふぅ・・」と憂いを含んだため息をもらすと急に立ち上がり駆け出した。
チャプチャプ水音が響く。向は気持ちよさげに鼻歌をうたっている。
「木村君とお風呂入るの久しぶりやな〜」
向は丁寧に木村の顔を洗う。木村の生首を・・・。
「乱暴にしてもうたもんなーごめん、綺麗にしたるな」
木村の顔は真っ赤に染まっていく。それもそうだ、向が入っているのは
血の風呂なのだから。中山功太に言って用意させた。
「気持ちええな〜」
友近も放ったままやし、そろそろ出るか・・。
体を拭き、服を着る。その時ふと窓から人が走っていくのが見えた。
「友近・・・」向は慌てて後を追った。
ここを出る前に中山功太にはするべき事があった。
屋上に急いでかけ上がる。そこには放り出されたまま放置されている
ババリア三浪が横たわっている。功太は三浪をかかえ引きずっていく。
それでなくても大きい三浪の体は生命を失いよけいに重たく感じる。
呼吸を乱しながら三浪を一階に運び外に引きずり出すと皆の死体が
折り重なっている場所まで引きずっていく。
「はぁ・・・三浪さんめっちゃ重い」止めたくなる気持ちを抑え
みんなの死体を横一列に並べていく。そして一人一人の胸の上に
花を添えていく。
「でけた・・」
死んでいく先輩や同期を黙って見ていた、そして自らの手で殺めた
三浪へのせめてもの償いだった。今まで功太は自分さえ良ければ
他はどうでもいい自己中心的な人間だった。
幼い頃から裕福な家庭で自由奔放に育てられたこともあり
面倒くさい事も嫌いだし、力仕事も嫌い、人のために何かを
しようともあまり思わなかった。でも今は友近の誘いにのる前に
絶対しなければいけない・・したくてたまらないとさえ思った。
なにが功太をそうさせたかは分からない。
さぁ、のんびりしてる暇はない。向に見つかる前に逃げなくては・・
そう思ったその時、「功太は優しいなぁ」と背後から声がした。
そこには向が立っている。
「向さ・・」
「ん?友近が逃げてもうたみたいでな〜でも途中で
ダイアン見つけて殺してきたからスッキリした。」
「ダイアンを・・・」
ダイアンは中山功太と同期だった。功太が昔「7」というコンビを
組んでいた頃から共にライブに出たり交流があった。そのダイアンが・・
眩暈がした。≪あかん。やっぱりこの人にはついていけへん≫
「力仕事して喉かわいたやろ?そう思って水もってきてん」
向は功太にペットボトルを放り投げた。
眩暈はまだ続いている。気分も悪い。喉を潤し落ち着きたかった。
功太はペットボトルを開け水を乱暴に口の中に流し込んだ。
「どうや?」向はニコヤカに訊ねる。そして功太は次の瞬間、
向の口から信じられない言葉が発せられるのを聞いた。
「うまいやろ?死に至る薬」
ボトン――功太の手からペットボトルが落ちた。
「なんで友近逃がしてん?裏切らへんて言ったやんな?」
「ぐ・・・ぅぅ・ぐぁ」
≪苦しい・・気持ち悪い。≫功太はその場に倒れこむ。
「残念やなぁ。功太はかわいい後輩やと思ってたのに」
≪俺、死ぬんか?≫
『絶対、生きるんよ。約束やで』そう言った友近の顔が脳裏に浮かんだ。
≪友近ぁ・・すまん、行けそうにないわ。お前と逃げるんもおもろそうやと
思ってんけどなぁ・・・≫
「心配せんでもお前への花は俺が捧げといてやるわ」
そう言うと向はダイアンを殺した銃を取りだし功太に向けて発砲した。
「ぐあっ」・・・数秒後、功太は動かなくかった。
向はそばに生えていた花を摘むと功太の上にそっと置いた。
あれだけ人を殺す、死に追いやるのを楽しんだ向だったが、
功太を殺したその顔の眉間にはしわがよっていた。
「ユダ・・・」と呟き、小さなため息をつくと向は修道院に戻っていった。
友近は中山功太と会う約束をしていた小屋にいた。
もうあれから10時間経っている。もう待ってても来ない事は
友近もわかっている。なにがあったかも何となくだが想像できる。
でも待っている。0.01ミリの可能性を信じたかった。
しかし時間は無常に過ぎていく・・・。
「アホや・・・。あいつアホや・・。ふっ・ぅう・・。
女との約束ブッチとかっ・・・最悪やわ。しかも、こんな
ええ女との約束を・・」友近の目から涙がこぼれ落ちた。
静かに夜は更けていった。
[中山功太死亡]
あいかわらず長くてすいません。
レスくださった方ありがとうございます。
328さんごめんなさい。流れ上、中山功太さんはご臨終という形で・・・。
ダイアンの話とつなげさせるためにやむおえなかったんです。
勘弁してください。
>365、366
は、ネタ?
続きを書く気なら止めてくれ。
そしてB9さん、乙です。
向が悲しいな。
377 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/04 05:18
ホシュ
378 :
コモ ◆hcbh0U7bsY :03/04/04 23:48
365−366はまとめに載せたほうがいいんでしょうか…
379 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/05 12:19
水玉のアキとケンはお互いのことどう呼び合っているか知っている人いますか?
>>378コモさん、いつも乙です。
個人的にはスルーキボンヌです。
381 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/05 22:23
382 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/05 22:56
小蝿さん。乙です。
ますます続きが気になります。
奥様は社長さん。
私も似たような失敗をしたことがあるんで・・・(歌丸さんの武器)
気にしなくてもいいですよ
B9さん。
乙でございます。やはり、知識が浅いため
知らない芸人が多いですが毎回楽しみです。
続き、待ってます。
384 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :03/04/08 11:53
保守age
お絵かきスレ、皆さん凄く上手い
…でも、ほぼ全員爆弾首輪を描いてない(w
386 :
デッド→ご意見番:03/04/09 11:24
すいません。ハリガネロックの二人を殺す作品募集中。ごめんなさい。
お絵かきスレ初めて見ました。
貼ってくれてありがとう。
みんなのうまさにびっくり。
一番笑ったのは笑い飯西田・・
>>336-341 の続き
須藤はなかなか目を覚まさなかった。
五分、十分。もしかしたらそれ以上の間、松丘はひたすら須藤に呼びかけ続けていたけれど。
彼はうめき声や手足の動きなどで松丘に反応してみせる事すらなく。
ただただ死んだように身動きせず、じっと松丘の両の腕の中に収まっていた。
「・・・気が、済んだか。」
持ってきていたゴミ類を足元に置き、自身は腕を組んで松丘の様子を眺めていた桶田だったが
さすがにそろそろいい加減に飽きてきたのか、ポツリと口を開く。
音量こそ小さいものの、妙に良く通る・・・そして圧力を帯びた桶田の声に
松丘はビクリと身を震わせ、それから彼の方へと首を巡らせた。
「気が済んだて・・・どういう・・・事、ですか。」
「別に、そのままの意味だ。」
桶田は答え、組んでいた腕を解くと松丘に近づく。
「それを渡せ。」
松丘の正面に彼を見下ろすように立ち、桶田は右手を伸ばした。
彼の意図をおぼろげに察知したのか、松丘は須藤を抱えたまま庇うように身を丸める。
「何でそこまで執着する。もうこれ以上粘っても無駄だろう。」
更に首をふるふると横に振って、須藤をなかなか手放そうとしない松丘に、
桶田はどこか不思議そうに呼び掛けた。
「まさか・・・この期に及んで自分だけは綺麗な身でありたいとか考えてるんじゃないだろうな。」
「だとしたら、随分と自分勝手な話だな。人が横で誰かを撃ち殺す事は大丈夫で・・・
自分は誰も殺しません殺したくありません・・・というのは。」
「違う・・・それはこいつやから、須藤やったから・・・っ!」
「だったら見も知らぬ奴だったらどうなっても構わない、と。 ・・・最悪やな。」
俯きながら何とか反論しようと口を開く松丘がそれを言い終えない内に桶田は更に言葉を綴る。
「でも、こいつは、須藤は僕に助けを求めてきたんです。だから・・・ただ助けたかってん・・・」
「あ、そう。 あと、先に言っておくけど、俺を恨むのは筋違いだからな。
実際にそいつを突き飛ばしたのは・・・間違いなくお前なんだから。」
根本的な所で温度差も含んだ食い違いがあるのだろうか。
必死な松丘の言葉をさらりと流して、桶田は一度右手を引っ込めると松丘との間合いを少し詰める。
反射的に身を強張らせて、何とか須藤を死守しようとする松丘だったが
今度はカチ、と硬い物がふと頭部に押しつけられる感触を覚えた。
「・・・・・・・・・・・・!」
金属質の硬い物。それは桶田の右手が握りしめる物の先端部分でもあって。
本来自分に与えられた武器であった筈の拳銃の銃口の冷たい触感に、松丘は言葉を失った。
逆に内股が生暖かく濡れるのが、おぼろげな感覚で何となくわかる。
「もう一度だけ言う。それを、渡せ。」
そして、冗談を言う時のそれからは明らかにかけ離れた声と口調でそう命じられてしまえば
もう、松丘にはこれ以上の駄々をこねる余地などありはしなかった。
まるで何でもない普通の物を扱うかのような手つきで桶田が須藤を焼却炉の中に押し込むのを。
松丘は地面にぺったりと座り込んだまま、ただじっと眺めていた。
きっとその動作は、最初に須藤を閉じこめた時とさほど変わりはしなかっただろう。
一瞬、焼却炉に入れられるそのショックで須藤が目を覚まさないだろうか、と
未練たらしく松丘は祈ったが、そんな都合の事もないようで。
「・・・富田は。こいつと一緒におった富田はどうなったんです?」
「・・・・・・あいつか。」
ふと漏れた背後の松丘の言葉に、僅かに表情に苦いものを入り混ぜて桶田は呟く。
「須藤が身を挺して逃がそうとしていたようだったが・・・逃げられると困るから、撃った。」
「・・・・・・・・・・・・。」
最早彼の言葉に驚くといった反応すら取れず、けれど松丘は桶田を見上げ続けた。
「背中から3発だったか・・・まあ、あいつを見逃して計画を漏洩させる訳にはいかないしな。」
普通に世間話でもするかのような口振りで桶田は言いつつ、須藤の肢体の上に可燃性のゴミを積んで。
ライターで着火した紙ゴミを投じ、焼却炉に火を入れる。
バチバチと火が燃え広がっていく音と共に煙が立ち上るのが見えて、
それを見たくない、認めたくないが為に松丘はきつく目を閉じた。
どれぐらい経っただろう。次に松丘がその目を開けた時、桶田は既にそこにはおらず。
代わりに、今一番松丘にとって現れて欲しくない人物がひょこりと戻ってきていた。
「・・・・・・松丘?」
さり気なく掛けられた彼の声は、松丘の心を易々と貫く。
所詮、すぐに明らかになってしまう事かもしれなかったが、
まだ村田にだけは須藤の事を知られたくなくて。
そう思うや否や、松丘は慌ててその場から逃げ出していた。
まさか、その村田が外の雑木林で富田の死体と鉢合わせていたとは、彼も知る由のない事だけれど。
【須藤 祐(元 チョーダイ/現 魚でF)・富田 鉄平(元 チョーダイ) 死亡】
392 :
アマゾン ◆o/2dZU.KSc :03/04/10 18:50
ダウンタウンの松本はとにかく走った。
最近、体を鍛えただけあって
体力は十分ある。とにかく走った。
キム・・ジュニア・・アキ・・
誰でもいいから出会いたかった。
気の弱い松本は誰かといないと、
自分が壊れそうな精神状態であった。
深い茂みの中に人影が見えた。
「誰や・・・殺したろか。」
口ではこういうが、殺す気なんてそうそうなかった。
>>392 見たことある体・・はれた上唇。
「浜田やんけ!!!」
大きい声で叫んでしまった為、
浜田に見つかってしまった。
「松本・・・お前一人か?」
浜田は武器の長いナイフを振り回しながら近づいてきている。
あの顔はいつも見てきた顔、
松本に不安はなかった。浜田はニヤニヤ笑いながら
向かってくる。松本も浜田の方へ歩み寄る。
「まぁ、今からオレはお前を殺すけどね。」
「なんでやねん!」
松本の言葉に浜田がつっこむ。
二人でいつものように笑いあう。
「こいつしかおらへん。こいつや」
今、松本が必要としていたのはキムやジュニアではない。
そう、今までずっと一緒だった浜田だ。
いつか、「お前が死ぬなんて考えられへん。」
などとボケをかましたが、その言葉が妙にリアリティーを持つ。
「松つん、生き残ろうや!こんなとこで死にたない。」
こんな風に松本を呼んだのは久しぶりだ。
中学時代、ずっと遊んでた記憶が蘇る。
お笑い界のトップに君臨した二人だが、
あの頃の楽しさは忘れてはいなかった。
395 :
アマゾン ◆o/2dZU.KSc :03/04/10 19:00
>>394 二人は武器を片手に走った。
ある崖に出た。
崖から見る景色は最高なモノだった。
二人はその景色に見とれた。
「松つん・・・綺麗やなぁ。」
松本は口をポカンとあけたままその景色を見つめた。
尼の家族はどうしてるだろうか・・・
いつもはそんな事、考えもしないのに。
松本は浜田を見て、ニヤッと笑った。
「まぁオレのチンポはこんな景色より綺麗やけどね。」
「なんでやねん。」
浜田はつっこみで松本を崖から落とした後、
自分も松本の後を追った。
396 :
名無しさん@お腹いっぱい :03/04/10 19:24
≫392
前スレ読んだか?
397 :
デッド→ご意見番:03/04/11 19:02
それさー。前読んだ気がする。
デットUZEEEEeeeeeeeeeeeeeeeeee
399 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/12 21:55
>398
スルーしる
ほっしゅ
401 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/04/17 07:31
あげます
(^^)
403 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/17 22:53
a
書き手さん待ち。
それぞれ続きが気になります。
∧_∧
( ^^ )< ぬるぽ(^^)
406 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/20 11:59
ほしゅあげ。
・・・もうちょっと待ってください。
407 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/04/21 19:49
age
408 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/04/21 20:38
hoshu?
>406 さん
書き手の方ですか? 楽しみにしてます。
蟹座さん、催眠実験編素敵でした。
二人の信頼関係がある上で、あの会話が成り立つんですよね。
かっこよかったです。
今頃、内P軍団は戦いの内容と愚痴と、戦いの中で出た本音を肴に
居酒屋で飲んでるんでしょうね(w
412 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/25 16:07
保守上げ
413 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/04/28 17:18
書き手待ちage
保守カキコ。
415 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/03 10:41
落とすのは惜しい。
416 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/04 23:24
ほしゅ
417 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/04 23:35
ぼしゅ
>>374 向は礼拝堂で眠りに落ちる。
そして赤子のように聖母マリアの胸に抱かれる夢を見る。
心地良い夢―――しかし、その心地良さも途中で断絶される。
聖母マリアはその憂いを帯びた瞳から血の涙を流し、砂になって消えていった。
一人になった向を無数の唸り声、呻き声がつつむ。
≪怖い≫
向は逃げるがその声は追いかけてくる。
そして、向はそのまま深い闇へと落ちていく。
「はぁっ!!」
目が覚めると全身冷汗でびしょびしょだった。
頭が痛い・・・まだ心臓は早鐘のように激しくうち、言いようのない感情が
向の中を渦巻いていく。誰もいない静寂につつまれた礼拝堂の中に一人・・。
頭の中で声がする。聞き覚えのあるようなないような声。
「うるさいっ!黙れ!!!」向は銃を発砲する。弾は十字架に吊るされた
キリストの像の胸に命中した。
≪なんで俺が恐怖を感じんねんな。俺に怖いものなんてないやろ?≫
「ククククク・・・ハハハハハハハハハ・・・はぁ・・うぅ」
頭をかきむしる・・・向は自分の中の恐怖と孤独と戦いながら長い夜は時を刻んでいった。
『お〜い。みんな、生きてるか〜?』
機械的な声が頭上を響く。
『死んだ奴ら発表していくからよく聞けよ〜。
・・、・・・、・・・、ランチ田口君、ランチ風藤君、ストリーク山田君、ババリア溝黒君、
ママレンジ公平君、ママレンジ健太君、足軽エンペラー山里君、足軽エンペラー富男君、
ババリア三浪君、ストリーク吉本君、・・・、・・・、・・、中山功太君、・・、・・・、
いや〜読み上げるだけでも大変だ。みんな頑張ってる証拠だな。この調子で頑張れよー。
じゃあ、立ち入り禁止区域になる場所読み上げるから皆メモとれよ〜』
ガシャン
破片が周囲に散らばり1人の男が崩れ落ちる。
「みんな死にはった・・・。」
茶髪で幼さの残る顔立ちの男が崩れ落ちた男の襟首を持ち
「唐戸・・・ガラス危ない」と抑揚のない口調で呟く。
その2人の傍らでは黒髪で長身の男が立ち入り禁止区域を地図に丹念に書き込んでいる。
3人はお揃いのツナギを身にまとい、それぞれの胸には1、2、3と番号が振られている。
1、崩れ落ちてる男、ブロンクスのツッコミ担当、唐戸浩二。
2、地図に書き込んでる男、ブロンクスのボケ担当、中岡倫基。
3、茶髪で幼さ残る顔立ちの男、ブロンクスのおふざけ担当、野口拓郎。
「田口さんとかっ!中山さんとか!みんな死にはった!!」
唐戸はガラスの破片が散らばる床に拳を叩きつける。
目はもう散々泣き腫らしたが、それでもまだ涙が溢れてくる。
「唐戸!!手、血出てるよ!」野口は何度も何度も叩きつけられる
唐戸の腕を押さえる。野口の目も赤い。キングコング西野の死を知った時
泣き明かしたからだ。
そんな2人を眺めながら中岡は考え込むように手を口に置き黙りこむ。
ブロンクスも天津・向に誘われた1組だった。
しかしブロンクスは修道院には行かなかった。
それは中岡がかたくなに行く事を拒んだからだ。
ブロンクスの指揮は中岡が取っていた。我がままな唐戸と野口も
中岡のことは信頼していたしこのトリオの要は中岡だった。
だから2人ともしぶしぶ了解した。
中岡にとって向はいい先輩(兄さん)で交流もあった。
だからこそ向の中に潜むナニカにも気付いていた。
それは今まで感覚でしかなかったが今の放送で確信に変わった。
≪あ、向さんがやりはったな≫
フッ―――中岡の顔に微かな笑みが浮かぶ。
仲間が死んだというのに何だか心が弾む。
「中岡、中岡?」
≪あぁ・・・同じだ≫
「中岡っ!!!!」
「え?なに?」
「さっきから呼んでるのに・・・なにボサっとしてるん?」
「え?あ〜、いや、別に何もないけど」
「唐戸が怪我したからなんか消毒できるもんない?」
「あ〜・・とりあえず水で流してガラスが傷口入ってないか確かめよ」
「わかった」
野口が唐戸の方へ向かうと中岡は呆然と立ち「あれ?俺、なに考えてたんやっけ?」と
首をひねる。「忘れた・・・ま、いいか」と頭をかく。
自分自身がよく分からないことなんて今に始まった事ではない。
そして「唐戸くん大丈夫?」といつもの爽やかな笑顔で中岡は唐戸に近づいていった。
「誰が・・・誰がみんなの事殺したんやろ?」
唐戸が腫れきった目をシパシパしながら、ガラスの破片を取る中岡に尋ねた。
≪向さん≫
心の中ではそう思うものの口からは「誰やろうな?自殺かもしれへんし」と素知らぬふり。
「自殺とかしはる人らちゃうやろ?許せへん・・・こんなん」
「そうだね。≪でもそれがルールだってこと分かってる?≫」
「向さんの名前・・・呼ばれてないよな。あの人生きてはるんかな?」
「生きてるやろ、名前呼ばれてないんやったら≪だってアノ人が殺したんやから≫」
「どうする?俺ら?」
「どうするって?」
「これから・・・・」
「唐戸君はどうしたいん?」
「俺は・・・・殺した犯人見つけて・・・仇討ちたい」
「仇討つって・・・殺すってこと?殺せるの?唐戸に人が」中岡が冷淡な口調で尋ねる。
「殺せっ・・・!!」唐戸は言いかけて押し黙り、うつむく。
そして「分からへん・・・」とポツリと呟いた。
≪まぁ、無理だろうな≫中岡は心の中で思う。こいつは良い意味でも悪い意味でも
人を殺せるような奴じゃない。
ただ中岡自身興味があった。向がどのような手を使い一度にあれだけの
人間を殺せたんだろう?気になる。
「修道院行くわ、俺」そう切り出したのは中岡ではなく唐戸だった。
「お前らはここおれや、命落としてまうかも知れへんし、お前らのこと巻き込まれへん」
「唐戸ぉ〜〜・・・何もこんな時にイキらんでもええよ。格好つけたところで
女の子もおらへんし」
そんな野口の言葉に「うっさい!イキってへん!」とツッコミを入れる。
「俺も唐戸と一緒に修道院行こかな・・・」
向の事が気になっていた中岡は唐戸の意見に便乗する。
すると「ええぇぇぇぇぇーーー、いや、ちゃうやん、そこは中岡が止めてくれな俺ほんまに
いかんとあかんようになるやん!」
「・・・・は?・・・唐戸?」
「そこは空気読んで〜『行くなよ!俺ら何やかんや言うても唐戸がいないとダメなんだ!』
『お前ら・・・仕方ね〜な〜。お前らがそこまで言うなら行かねーよ。だって俺達3人で
ブロンクスだもんな』『唐戸・・そこまで俺達の事考えて・・・。唐戸は男の中の男だ!』
みたいなさ、あるやん、そんなん」
「野口君、馬鹿は放っておいて修道院にでも行こうか?」
「そうやね。馬鹿は放っていこ」
「おい!お前ら、あかんて!危ないって、ここいようや。オイ!オーーイ!!待ってー。
俺一人でこんな所に置いてきぼりとかいややーー!!」
こうして3人は修道院へと向かうことになった。
今日はここまでにします。
本当に申し訳ないんですがまだ話続きます。
ブロンクスとか知らない人多いんでしょうね、すいません。
424 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/05/05 23:14
B9さん、乙!
他の小説スレでもB9さんの作品を見うけましたが
すごいです。これからもがんばってくだちい。
続き、楽しみにしてます。
小蝿さん。…まずは感想が遅れたことをお詫びします。
まさにすいますいまs)以下略
こちらも緊迫の展開が続いてますね。
私のほうは緊迫感の「き」の字も見当たらないほどの
のろのろ展開なんで…ずーん。
続き、待ってます。
425 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/06 22:06
なんか関西でこの間やってた深夜番組で麒麟川島が切れたらしいね。
仕込みらしいけどかなり恐ろしい演技だったそうで。
関西に住んでる兄から「バロトワスレ思い出した〜。やっぱ奴怖ええわ」ってメールが来た。
426 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/06 22:58
陣内とか友近が出てた駐在さんのやつだね
428 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/06 23:25
>>427 あぁ!あれか。。みようと思って寝てしまったやつだ。
芸人小説でも川島さんガンギレしてます。
「駐在さんダァ〜!」じゃないんですよね?
九州在住の自分が恨めしい・・・。
B9さん乙です。
ブロンクス大好きなんで続きがすごい楽しみです。
私もきれた川島を見てここを思い出したよ。
まじで怖かった。
431 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/09 22:19
おちそう
今は書き手さん待ち?
自分書きたいけどほとんどの芸人さんがもうすでに
登場しちゃってるのが悲しい。
433 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/12 22:20
>432
このスレも長いしね。
でも、天国編や催眠実験編という手もあるよ。
>>432 放置されてる人も多いので、その中で書きたい人が居たら
是非とも書いてほしい。
読みたいです。
435 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/05/12 22:41
>>432 とんでもなくスランプ中です…
いつまでスランプすれば気が済むんでしょうか…私。
436 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/05/13 12:18
私も書きたいんだけどいいかな?はりけーんずってまだでてないよね?
437 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/05/13 16:22
438 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/05/13 18:23
漏れら極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧_∧ ∧_∧ age
(・∀・∩)(∩・∀・) 職人age
(つ 丿 ( ⊂) age
( ヽノ ヽ/ ) 降臨age
し(_) (_)J
…スマソ、ジブンガショウセツカケナイダケナンデスウア゛ァア ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ ア゛ァアァ゛
ageブラザーズニテンマデアゲラレテイッテキマツ。
スランプ沈没中です…スマソ。
あせらなくてもいいですよ
職人さんは確かにいらっしゃってますので、ネタ作れない当方としては
マターリ保守しつつお待ちしてます
441 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/05/14 07:51
>>439 私もスランプ中ですから・・・今後の展開が・・・あ〜〜〜〜。
>>388-390 の続き
何となく捌いたニワトリを塩と胡椒の味付けで焼いたモノと
同じく焼いた、カビてなさそうだったパンで、食事を取る。
適当に塩と胡椒をふったお陰でニワトリは酷く辛く、しばらく喉がヒリヒリしたが
ぬるい缶ビールで何とかそこら辺は誤魔化しておく。
水道から流れる水は一時期に比べれば透き通っているように見えるけれど、
まだ何があるかわかったモノじゃない。それだったらまだビールの方がマシという話だ。
この島に連れてこられてから初めてアルコールを口にした村田は
今まで酒断ちさせられていた反動か、何かのスイッチでも入ったかのように
この畜産農家の主が所蔵していた酒の数々を持ち出して、一人酒盛りに入っているようだった。
こんな殺し合いの最中に何を呑気な、とも思えなくもないが
ここで彼から酒を取り上げて、不機嫌にさせるのも後々の事を考えればあまり得策でもない。
しかたなく、桶田は村田の事は一旦黙認する事にして。
西日の射す出窓に腰掛け、一人本を読んでいた。
桶田が手にしている本は、街の図書館から拝借してきた物だった。
どうやら何かの乗物…ヘリコプターを操縦するための教本のようである。
その他にも、桶田の足元の鞄からはまだ何冊もの本の姿が覗いている。
それらは船を操縦するための教本、地質学の本、サバイバル入門書などといった類。
さらに、まだ携帯が繋がり、インターネットが可能だった時間帯にプリントアウトした
爆発物の製造方法が刷られたA4のペラ紙までもが数枚、鞄の周囲に散らばっていた。
ペンを片手に、少し読んでは思う所を直接本に書き記し、また少し読んでは
しおり代わりに付箋を貼ってメモを書き・・・という動作を延々繰り返していた桶田の耳に
ふとズルズルと何かを引きずって来るような音が届いた。
桶田は黙って本から顔を上げ、部屋の入口の方へ視線をやる。
「・・・・・・・・・。」
アルコールの酔いとはまた違うおぼつかない足どりで、松丘が歩いてきていた。
「どうした?」
声を掛けると、松丘は蹌踉めくような力無い仕草で床に座り込む。
そう言えば、元々その体格の割には小食だという事を差し引いても、
松丘はさっきの食事に殆ど口をつけてはいなかった。
「だからちゃんとメシは喰っとけって・・・」
「桶田さん。」
松丘は床に座り込んだまま、クッと顔をもたげて桶田へと呼び掛ける。
桶田の言葉を遮ったその声は、衰弱しきったような頼りない挙動に比べると、
まだしっかりしているように聞こえなくもない。
「これが、車のワイパーの所に挟まってました。」
ゴソゴソとポケットから折り畳まれた紙を取り出して、松丘は言う。
その紙は本来武器と一緒に配られた地図だった。
表面にも裏面にも、ボールペンで何やら図や文字が書き記されている。
「・・・僕への次の指示、という事でエエんですよね?」
その一言で、桶田には松丘が何の用事でここに来たかを少し察する事が出来た。
ふぅ、と一つため息を付いて、手にしていた教本を閉じる。
「そうだが・・・それがどうしたんだ。」
「やっぱり、そうやったか。」
力無く笑って、松丘は紙をまた丁寧に折り畳んでポケットに仕舞った。
「ようやく僕も・・・お払い箱と言う事やねんね。須藤や富田と同じように・・・」
「その言い方は少し違う。それは重要な仕事。お前にしか出来ない役目だ。」
「どこが違いますか! 死ねぇいう事の、どこが重要な仕事や言うんですか!」
桶田の言葉に思わず声を荒げた松丘だったが、すぐに首を振って深く息を吐く。
「この『ゲーム』の中では、死も意味があれば無駄じゃない。」
須藤の件で十分理解したつもりだったが、やはり松丘と桶田では死に対する価値観が異なっていた。
どうしてもまだ、桶田のように全てを割り切る事が出来ずにいる松丘は
反論する代わりに黙って悲しそうに眉を寄せる。
とりあえず相手が黙り込んだのを見て取って、桶田は改めて口を開いた。
「お前、宮沢賢治は読む方か?」
「生憎やけど。」
いきなり話題を変えられた事も手伝って、どこか棘のある松丘の返事に桶田は苦笑する。
「だったら・・・こっちで説明した方が早いか。」
屈み込んで足元の本を一冊手に取って、桶田はこの島の郷土史についてまとめられたその本の
しおり代わりに付箋が貼られているページを開くように、と手渡しながら松丘に告げた。
そこは岩肌を写した白黒写真と、小難しい文章の並ぶページ。
「そこが、お前が行く場所だ。」
何ですかこれ、と言わんばかりの松丘に桶田は言い、再び出窓に腰を掛ける。
無言のままページに目を通す松丘の表情が僅かに強張った。
「桶田さん・・・これ、もしかして・・・」
数ページほど捲り、年表のような物に付記された桶田のメモを見て。
信じられないと言わんばかりの口振りで、松丘の乾いた声が上がる。
「阿呆の子じゃなければ理解できるだろう。お前に期待している事や役割を。」
静かに、どこか言い含めるように松丘に告げる桶田の眼差しからは、
迷いといった類の物は殆ど見て取ることは出来なかった。
いや、これまでだって桶田は自身の計画とそれを遂行するための信念に
揺らぎを垣間見せた事などないのだ。
それが回りからは頼もしく・・・・・・そして同時に恐ろしく映る訳なのだけれど。
「・・・・・・・・・・・・。」
唇をぐっと噛みしめて、松丘は険しい表情でしばらく黙っていた。
あまりの松丘の長い沈黙に、桶田が閉じていた本をまた読み出して、しばし。
「わかりました。ホンマはわかりたないけど・・・わかった事にします。」
という、か細い松丘の呟きが桶田の耳に届いた。
「どうせやから、ついでに全部教えて下さい。
桶田さん、あなたが企んどる事・・・そしてあなたが思い描いとる未来を。」
続けられる松丘の言葉に、再び本から顔を上げ、桶田は問う。
「聞いてどうするんだ? 長くなるぞ。」
今までずっと『いずれわかる』『お前が知る必要など無い』といった対応だった桶田から、
初めて話を聞き出せそうな言葉を掛けられて。
ずっと無気力げであるか、もしくは沈痛げであった松丘の表情に、久しぶりに微笑が浮かんだ。
「長ぁても構わへん・・・ただ、それで納得しようと思うんです。僕が死ぬ事も、あなたの真意も。」
そして・・・『ゲーム』を潰すためのその計画に於いて、僕に出来る限りの事を果たしたいねん。
それが、僕に出来る弔いやとするのなら。
松丘の想いは声にこそ出されなかったけれど。
桶田は軽く肩を竦め、そして読みかけの本を鞄の中へとねじ込んだ。
>>小蠅さん
乙です。
成子坂編、楽しみにしていたのでとても嬉しく読ませていただきました。
書き手さん方、大変でしょうし、焦られなくても大丈夫ですよ。
のんびり待たせていただきます。
...
449 :
名無しさん@お腹いぱttい。:03/05/19 14:34
あげ。
「2chは5,6人以上逮捕された犯罪者が居るので
2chは全員、犯罪者だと思っていいと思います。
私の友達と私が被害を受けたのは本当の事実なので。」
(HPより抜粋)
http://members.tripod.co.jp/nichkirai/index.htm この2ちゃんねるを罵倒しているサイトである
2003年5月21日午前0時を以て
攻撃開始。
他のスレッド・板にコピペしてくれ。
これは我々2chねらーに対する挑戦であり
善良な2chねらーを巻き込ませようとしている悪の芽を摘むことを決定した
間引きをすることにより、2chの秩序を保つのだ
hosyu
452 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/05/24 15:45
あげ
保守。
当分先になりますが、DT浜田さん&K2堀部さんを登場させてみようと思います・・・。
小蝿さん乙!
松岡さんや桶田さん…そこはかとなくカコイイ…
んで、新作。新しい展開が期待できそうです。
蟹座さん。
催眠実験編、読ませていただきました。感想遅れました。…すいません
カコイイです…特に内村さん。あああああ〜!(狂)
・・・あげます
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
457 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/30 19:57
もうお笑いバトルロワイヤルは終わったの?
458 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/05/30 21:10
優勝者のいないまま??
ていうかもう一回最初からやりてえなあ
460 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/31 15:06
461 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/05/31 15:06
まだ終わってないのに新しく始めるなら、
住人の多数の賛同を得て(ジサクジエン厳禁)このスレでやるか
したらばなどを借りて新しく場所を作るか
(新スレを立てると、事情を知らない人に重複スレと言われるだろうし、
削除されないまでも荒らされる可能性は大いにある)。
新しくスタートした後、きちんとスレを盛り上げられる自信がないなら
ノリだけで新規スタートなんかするなよ。
今の書き手さんの続きが見たいし、
新規でスタートしても、もう過去の盛り上がりはないと思う。
止めはしないが、このスレはこのまんま続けて欲しい。
リセット、やり直しは書き手さんが大変だと思われ。
いい文章を考えるのは難しいだろうし、全て終わってからまた考えよ。
えらそうでスマソ
私は新スレ立てて欲しいです。
個人的にロザン菅さんの死とかも納得できてないので。
それにこのスレではもう殆どの芸人さんが既に死んでしまってるし、
もう一度始めから全部やり直して欲しいです。
>465
もう一度始めから全部やり直して欲しいって、
そんなに気軽に言えることじゃないと思いますよ。
1年以上かけてたくさんの住人によって作られてきたものですから。
アラシのせいで納得のいかない終わり方をしたものもあるでしょうが、
それは2ちゃんという場所でやっている以上、しょうがないことです。
リセットした後だって十分起こり得ることです。
芸人バトロワを、まっさらな状態からやり直す事を悪いとは思いませんが、
やるなら別の場所でやっていただきたい。
もしくは現行の芸人バトロワが終わってからやっていただきたい。
(エラそうに語りましたが、所詮一個人の意見ですので、リセットが大多数のスレ住民の
意見であるなら、それに従おうと思っています。)
長文レス、スマソ。
新規で始める、始めないという問題以前に、
まず書き手さんがいるのかどうか・・。
最初にやり直しを希望した方々は「自分で新しく書きたい。」と思って
提案されたんでしょうか。
「新しいのが読みたい」から「誰か書いてくれ」という人たちが
新規を始めようと盛り上がり、何らかの形で始めたとしても、
それではどうにもならないのでは。
新しく書きたいという方が何人も居られるのならば、
やる価値は十分あると思いますし、賛成です。
ウザくてスマソ。
468 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/05/31 22:40
じゃあ、結論として、
すべて終わってからまた考える
ということで。
せっかく続いてるんだから、リセットはあんまりかと。
したらばとかで、これとは別のバトロワ小説を書くのならいいと思う。
書き手がいるかどうかは別として。
ここにスレを立てるのは反対。
ここでこういった話し合いをしている限り書き手さんは現れないと思います。
しかし書き手さんを待ち続けても来なかった場合、このスレは退廃していまうの
ではないでしょうか。それがすごく心配です。
このスレを無くしてしまわない為にも、私は新スレを立ててほしいです。
新スレ立てる必要ないと思う。
それならコモさんのとこで話し合った方がいいんじゃないかと。
まだ終わってない話があるのに今終わらしたら書き手さん大変でしょう。
>470
>このスレを無くしてしまわない為にも、私は新スレを立ててほしいです。
この理論がよくワカラン。
新スレを立てる
↓
書ける芸人が増える
↓
書き手が集まってきて、スレ繁栄ウマー
ってこと?
↑
そんな感じ
したらばに小説スレ出来てると思うんですけど、
書きたい方はそちらで書いたらいいのでは?
したらばってお笑い関係のところ??
こっそり、新しい芸人を登場させたいのですがいかがなもんでしょうか…?
はじめまして、バトロワ小説読ませてもらってます。
すごいですね、書き手のみなさん…ドラマみたい。
読んでいくうちに、好きな書き手さんも増えてきました。
476さんの意見すごくいいと思います。
私は書き物屋さんの小説(ロザン・ランetc.)がとても好きになったので、
是非また書いてほしいと思います…
極楽加藤さんの小説も好きです。
こんな事今ここに書いてよかったのかわかりませんが。
すみません。
>>477 いままで書かれていない芸人ならいいんじゃないでしょうか。
>478の可愛らしい書き方に萌えつつ。
自分は書けないけど、確かに素晴らしい小説ばかりですよね。
>477
見てる側ではありますが良いと思います。どんな芸人なのかが楽しみでして。
>>443-446の続き。
廊下の窓辺に佇み、松丘は一人ぼんやりと空を眺めていた。
彼の虚ろな瞳が捉えるのは澄み渡った一色の広がり。
きっとそれは松竹を辞め、東京に出て。
それでも芸人としてあり続けようと決意した、あの日によく似た青い空。
「僕、ホンマに死ぬねんな・・・。」
ボソっと松丘の唇から乾いた呟きが漏れて落ちた。
桶田の長い長い講義が終わって。
彼が松丘に望む事、村田に望む事、そして世界に望む事の一端を知る事が出来たけれど。
それはどこか、限りなく勝ち目の薄い博打にも似ているように松丘には思えた。
とはいえ、全てのスタートを切る役目は松丘にしっかりと課せられていて、
彼が動き出さない事には、何も始まらず、そしてきっと誰も救えないのだろう。
松丘は右手に握っていた桃色のビニールの羽飾りを光に翳した。
「死ぬて…どんな感じなんやろ。やっぱり痛いのかな、それともそんな苦しないのかな。」
…なぁ、教えてや。
独り言というよりも誰かに問いかけるような調子で松丘は呟いて。
そこで自分の行為に気づいてふっと自嘲気味に苦笑を浮かべてみせる。
結局、まだ“彼”に縋りたいのだろうか。
頼って、寄りかかって、とことん迷惑を掛けまくって。
愛想尽かされて、死なれても。それでも、尚。
羽根飾りをズボンのポケットにねじ込み、松丘は何かを振り払うようにその場から離れる。
窓ガラスがうっすらと反射させた松丘の首元には、“彼”の指が締め上げた、赤い痕がまだ残っていた。
「…松丘ぁ?」
相変わらずどこか頼りない足どりで、松丘が畜産農家の母屋を出ようとした、その時。
上の方から素っ頓狂な、どこか間延びした声が降ってきて。
松丘は思わず足を止めて、声のした方を見上げた。
声の主…村田は母屋の2階のバルコニーにいて、その手には封の開いたワインの瓶。
「そんなキッツイ顔して、どこ行くのん?」
既に随分酔っていると容易に見て取れる顔、そして声で村田は地上の松丘へと呼び掛けてくる。
「ちょっと…行かなアカン所があるんで…。」
まさか、これから死んできますとは言えず、松丘ははぐらかしながら曖昧に笑ってみせた。
「急ぎ?」
「…そう…でもないと思います…けど。」
「やったら…一緒に呑もや。」
ここの住人、めっちゃエエ酒コレクションしてやんの。これは呑まなきゃ嘘やって。
躊躇が松丘を僅かに口ごもらせた所に、無邪気に笑いながら村田は呼び掛けてくる。
笑顔の中でもまさかお前厭とは言わないやろな? と言外に告げるその黒い瞳と。
最期に少し良い思いするのも悪くないか…という松丘の内側でふとわき起こった考えが。
松丘の足の向かう先を道路沿いの車からバルコニーへと変えていた。
バルコニーには、既に数本の空瓶が転がっていた。
村田はどこかの部屋から運んできたのだろうイスに腰を下ろして、
森や街の向こうに僅かに海が見られる島の南側を眺めながら、さっきあまり食べられなかった
塩辛いだけの焼いた鶏肉をつまみに、ワイン瓶を傾けている。
普段から嗜む程度にしか酒を飲まず、高い品々は和田アキ子宅で見た事がある程度という松丘でも
ラベルの古び方や、微かに漂ってくる匂いで、村田が呑み散らかしている物は
すべて上等の品だという事を察する事が出来た。
それを村田はグラスを用いず、瓶から直接ラッパ飲みという
はしたない飲み方をしている訳ではあるが、今現在がこうやって常軌を逸した状況なのだから。
今更常識も上品も何もないのかも知れない。
「さっきまで、どこ行っとったん? どこにもおらんかったやん。」
呑んでいた瓶を一旦脇に置き、松丘の分として傍らに並べてある未開封のワインの中から
一本瓶を取りだし、その封を開けながら村田は松丘に訊ねてきた。
「…桶田さんの所に。」
「そうやったんや…どぉりでな。」
素直に松丘が村田に答えると、村田は表面にうっすら埃がまとわりついた、
フランス語のラベルが貼られた瓶を松丘に手渡して
納得したようなしないような、と言った口振りでそう呟く。
「えっと、これは…」
「何言うとんの、お前の分や。ほら、遠慮なく呑み?」
戸惑いがちに松丘が村田に訊ねると、村田は満面の笑みで松丘にそう答える。
正直なところ、松丘はグラスに少し注いで貰って、それを軽く口を含むだけかと思っていたけれど。
どう考えてもこれを…少なくとも半分は呑まないとならない状況のようであった。
「はぁ…ありがとうございます…。」
松丘にはこれから、桶田の計画を遂行するために車に乗らなければならない用事がある。
この島では警察がネズミ取りをしている事はあり得ないから、
飲酒運転での減点に関しては気にしなくても良いだろうが。
もしハンドル操作を誤って事故を起こしてしまった場合、完全に取り返しの付かない事になる。
とはいえ、ここまで来てやっぱり呑めませんと言うのもどうにも気が引けて。
意を決したように松丘は瓶に口を付ける。
喉仏を上下させてワインを一気に流し込も…うとして、上等なワインの持つ独特の渋みに
思わず派手にむせ返る松丘の様子を、村田はどこか可笑しそうに眺めていた。
「何…焦っとんねん、ホンマに阿呆やな。」
「済みません…。」
口の回りに飛び散ったワインの飛沫を手で拭って、一つ松丘はため息を付く。
「そういや、さっきもそうやったな。突然慌てて逃げ出したりして。」
さっき脇に退けた瓶を再び取り上げて、ワインを口に含んでから。
村田は何気ない調子で松丘に言った。
「…………。」
「どないしてん。何か、あったんか?」
酔いからか、ほわんとした村田の表情だったけれど。
その口振り、眼差しにはまだ酔い潰れてなどいない、普段の村田のそれが入り交じっている。
今の村田を上手く煙に巻けるかどうか、数秒ほどシミュレーションしてみた松丘だったけれど。
結局、無理だと。この人には叶わないと判断せざるを得なかった。
「……人を、殺しましてん。ホンマは…殺したなかってんけど。」
さすがに誰を…須藤を殺したとはまだ口には出せなかったけれど。
強張った表情と口調で松丘は告げて、村田のリアクションを伺おうと、そっと視線をやる。
「そう。」
瓶の中に残っていたワインを飲み干し、空瓶を足元に転がして。
村田は納得したようなしていないような、微妙な調子で一言だけ呟いた。
「お前がそう言うんやったら、そうなんやろな…お前、嘘つくの下手やし。」
「…村田さんは、今までに誰か殺した事、あるんですか?」
「あるよ。まぁ、桶田にも言ってへんし…僕のあれが致命傷になったとはあまり思えれへんけどな。」
確かに、この手で。
血を流しながら倒れる男の姿が脳裏をよぎる中、
グッと一度右手を握りしめ、村田はその手を空に翳してみる。
自らを縛する不可視の鎖がジャラリと音を立てたのが、村田には微かに聞こえたような気がした。
小縄さん乙です。
森の奥にある薄暗いじめじめとしたログハウスの中で、
柳谷は大阪に残したたった一人の親族である祖母へ想いを募らせていた。
「…おばあちゃん、俺ほんまに帰られへんかもしれへん…。
おばあちゃんを残して、俺が先に召されてしまうんかもしれへん…
やっぱり、薮田と別れたときにもうお笑いやめたらよかったんかな?」
「ギブソン!お前、湿っぽいことばっかりさっきから…イライラする…う〜ん…イライラする…」
膝を抱えたまま座り、顔を伏せる柳谷とは対照的に、
オーバーアクション気味にソファーの上へ寝転びログハウスの天井を仰いでいる灘儀。
「灘儀さん、そんな事言いますけど、もう久馬さんも鈴木さんも浅越さんも、
みんなこの世にいないんですよ!?生き残るのなんて、絶対無理ですって…」
確かに、柳谷の言う通り・・・彼らにとって残された道は今すぐにでも閉ざされようとしていた。
生き残る術も、希望も、未来もすべてどこかに落としているようだった。
「誰かに殺されるくらいなら、自分の手で自分の人生に幕を下ろしたいやろ?」
「でも、俺苦しんで死ぬの嫌ですよ…死ぬなら一瞬で楽に死にたいですよ」
それでも、柳谷はやはり顔を伏せたまま…声にも生気が感じられなくなっていた。
いつも、落ち着いていて誰にも干渉される事なく、
独自の世界を保っていた柳谷が見せた意外な一面に、灘儀も甚だ驚いていた。
人間、追い詰められると普段の自分とはかけ離れた行動に出る。
…と、昔誰かが言っていたなと、灘儀は遠い昔の話を思い出していた。
「ギブソン、お前ちょっとは前向きになれへんのか?」
「そんな事言ったって…いいんですよ…俺も早く三人の元へ旅立ちますわ…」
「全く…お前、おばあちゃんおるんやろ?おばあちゃんの為に帰りたいとおもわへんのか?」
「何で、そんなに灘儀さんは冷静でいられるんですか!!」
柳谷に指摘されるまで、灘儀はあえて自分がこの状況下にいる事を深く理解しようとは思わなかった。
否、理解をしようとする事をわざと避けていたといった方が正しいかもしれないが…。
だが、あえて現実を直視しない事が灘儀の冷静さに繋がっていたのだろうか。
「…まあ、今更逃げ出したいとか思っても、無理やろ?
人間ってな、どうしようもない絶望感に襲われると意外と冷静になれるもんや。
それに、今帰ったからといって一人で舞台にたっても仕方ないやろ?
俺にはもう帰る場所がない。俺はやっぱり、お前らと一緒にやりたかったことがあったからなぁ」
「灘儀さん…」
僅かに震える柳谷の声。そして、ただ淡々と喋り続ける灘儀。
「だからと言って、このままあかんとわかってて、むざむざ運命を受け入れられるほど、
俺は大人とちゃうしなぁ…。ギブソン、俺もお前も最後の最後まであがいてもええんとちゃうか?」
「でも、灘儀さん…万が一…万が一、ありえへんと思いますけど、
俺と灘儀さんが最後まで残ったら……。俺…灘儀さんと戦えないですよ…」
「ま、そうなった場合は、俺は俺の手で人生の幕引きをする。
最後に自爆ボタンでも『ボチ〜ン』って押したりするから、
お前はおばあちゃんの為に生き残ってやれ…」
灘儀は床に転がったままの小型の銃を拾い上げ、銃口をこめかみに当てがう。
声は多少笑みを含んでいたが、柳谷を見つめる瞳の奥は本気だった。
その真っ直ぐな灘儀の視線に、思わず柳谷も自身の武器である荒縄をぎゅっと握り締めていた。
「…やっぱり、灘儀さんは凄いッすわ。こんな時でも、芸人忘れてへんから…」
「おまえ、人がめちゃくちゃカッコいい事を言ったのに、それで流すな!!」
つい灘儀は、普段からの癖で大袈裟なリアクションをとりながらツッコミを入れてしまう。
今まで、恐怖のあまり震えていた柳谷の声が今にも笑い出しそうだった。
しかし、冷静になって現状を把握してみたものの、この状況を打開する名案が浮かぶはずでも無く…。
無為に時間が流れていく、ただそれだけが事実だった。
だが、進展が無い二人に転機が訪れるのは、そう遅いものではなかった。
すみません、書き忘れていましたが、ザ・プラン9の灘儀さん、ヤナギブソンさん編でした。
乙です>小蠅さん、コッソーリさん
コッソーリさん >プラン9、これで五人揃いましたね。
小蠅さん>自縛が・・。
乙です。がんばってくらさい。
492 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/06/07 21:35
小蝿さん乙です
松丘さん、村田さんカコイイ…
続きがますます気になります
コッソーリさん。
転機って一体…?!そう言う言葉に弱いのさ私って
乙です。
hosyu
494 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/10 06:48
age
495 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/11 10:29
vol.4と5が読みたくなった。
早くhtml化して欲しい・・・。
前スレ 354-363の続き
「畜生、腹減った・・・・・・。」
一体、この言葉を口にするのは浜田にとって何度目になるだろう。
武器の刀を杖代わりにしながら、民家の壁にもたれ掛かってギラギラとした眼差しを周囲に向けながら。
それでも全身を支配する酷い疲労感と空腹感にだけはかないそうもない、そう言った様子である。
「っくしょう、何か喰えるモノぐらい置いとけや・・・阿呆が。」
無茶だとはわかっていつつも、先ほどから浜田の口から漏れる言葉はそんなモノばかりであった。
この『ゲーム』が始まって、そしてこの街が芸人達に開放されてもう随分と経つ。
それぞれの民家、もしくは店舗にあった殆どの食料は、既に持ち去られ、食された後なのだ。
今なら、普段・・・彼がMCを勤める歌番組の収録中に度々登場する、アイドルの女の子が作ったという
どんな口に入れるのも躊躇われるような珍妙な料理でも、浜田には喜んで平らげられそうな気がした。
むしろ、頭を下げてでも食べさせて貰いたい気分ですらあって。
「お好み焼き・・・」
うわごとのように、浜田はポツリと呟く。
途端に、浜田の脳裏にギターをつま弾くどこぞの馬鹿兄の姿がよぎったような気がして
力無く、呆れたように苦笑を漏らした。
「阿呆や・・・腹減りすぎて、ロクな事思いつかん・・・」
そういえば、その馬鹿兄の弟は何げに今も無事のようだった。
直後の放送を必死に聞き取って、浜田にもそれだけは何とか確認できていた。
まぁ、あいつがふかわ如きに殺されるようなしょうもない奴だとは思いたくもなかったし。
告げられる名前にその男の名前が入っていなかった事に、
浜田は安心したような、そしてどこか気恥ずかしいような気分になったものである。
「・・・・・・アカン、マジヤバイわ。」
刀に縋って立っているのも辛くなって、浜田はズルズルと地面に腰を下ろした。
ガキの使いで結構色々な企画に挑戦してきたような気もしていたが、
ここまで力を使い果たした事は、そうそうなかったように浜田には思える。
・・・まさか、俺、このまま死ぬんちゃうやろな?
今までなるべく考えないように無意識下で制御していた言葉が。
ついに浜田の内側でわき起こってきた。
今まで必死に生き延びようとしてきて。大勢の奴を殺してきて。
いざ自分は飢え死に致しました、では本当に洒落にならない。
これは、何とかせな・・・・・・
浜田も何とか打開策を考えようとはするのだが、妙案がどうにも思いつかない。
時間だけが、ただただ過ぎていっていた。
「・・・・・・・・・・・・。」
ふかわりょうを完璧なまでに分解し終えて。
堀部は虚ろな表情のまま、次の分解対象を求めて歩いていた。
間もなく見つかった、それは。壁により掛かったままピクリともしない男。
その顔には、見覚えがあると。冷静な頃の堀部には判断できたであろうけれど。
今となっては、それが誰であっても一向に構わなかった。
堀部は出刃包丁の柄を握り直し、その男の元に近づく。
すぐ傍らに立ち、包丁を振り上げて。
まずは無防備なその頭部を叩き割ろうか。そんな仕草を見せた、その時。
「・・・なァにしとンねん、自分!!」
どこか聞き慣れた声が、堀部を一喝する。
これも悲しい性であろうか。瞬時にして堀部の中の正気が・・・反射的に、もしくは半ば本能的に蘇った。
「あああっ、浜田さんっ! す、すみませんでした!」
素っ頓狂に叫びながら、堀部は慌てて振り上げた出刃包丁を投げ捨てる。
包丁の刃が床に跳ねて、カランという音をたてた。
「・・・堀部、メシ! 五秒以内に用意せぇ! さもないと!」
堀部の仕草から不気味な敵意や殺意のようなモノが消えたのを肌で察知し、
いつもの傲岸不遜な調子を崩さないように、ありったけの力を振り絞って浜田は堀部に命令した。
さっき、ふかわの前で僅かばかりとは言え取り乱した姿を見せてしまった、
その事に対する恥ずかしさを再び味わったりしないように。
「あ、はいっ! わかりました!」
慌てた口調で堀部が浜田に返答してから一時間と少し。
彼が浜田の前に運んできたのは、ロールキャベツじみたモノ。
コンソメとケチャップの匂いが空腹の身を更に刺激するため、
一口堀部に毒味させる事すら忘れ、浜田は器に盛られたそれにかぶりついていた。
「美味しいですか?」
マナーなどどこ吹く風、と言った様子の浜田の食べっぷりに、
堀部がそっと問いかけてみると、浜田はコクコクと首を縦に振って応じる。
空腹は最高のソースである、とは一体誰の言葉だっただろうか。
確かに、間違いなく。この料理は浜田の人生でも屈指の美味しさと、
生きている事の喜びを教えてくれていた。
「それは、良かったです。僕も頑張った甲斐がありました。」
あの包丁も、本来の使われ方をされてきっと喜んでるでしょう。
そう言って、堀部はにっこりと微笑む。
「しっかし・・・・・・良ぉ材料を調達して来れたな。」
俺なんか、無理やってあきらめ掛けとったのに。
口をモゴモゴさせながら、くぐもった声で浜田は堀部に訊ねた。
「まぁ・・・キャベツは裏の家庭菜園にあったのを遠慮なく使いまして・・・」
視線を一旦窓の外へやり、堀部は浜田に答える。
「肉なら、新鮮なのがそこに転がってましたから。」
正気に返ったとは言え、まだ狂気がどこかで燻っているのだろうか。
悪びれることなく、むしろ微笑すら湛えて告げた堀部のその言葉に。
浜田は思わず口の中のモノを目一杯吹きだしてしまっていた。
【DT浜田・K2堀部 合体】
>>453で当分先と書いた割には早速浜田さん登場。
結局浜田さんがロールキャベツを全部平らげたか、堀部さんに作り直しを要求したかは
それぞれ御想像にお任せします(w
ひえええw
このシリーズの蟹さん(深読みして)
はもう珍しい事ではないが、
正気に戻った(と思われる)人にやられると
やっぱりぞくぞく来るなー。
小蝿さん、乙でしたー。
504 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/17 06:29
ほしゅ
505 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/18 23:41
age
☆ゅ
507 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/21 20:40
ほしゅあげー
そろそろ生存者まとめませんか?
509 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/06/22 14:39
小蝿さん。
・・・・堀部さん怖いです・・・
一体誰の肉をロールキャベツに・・・
そしてギターを爪弾くどこぞの馬鹿兄って一体誰・・・?
今回も面白かったです。乙です。
現在の生存者
浅草キッド・水道橋 /玉袋
今田耕治
海老一染之助染太郎・染太郎
海老一染之助染太郎・染之助
カンカラ・石田 /入山 /杉林 /鈴樹 /松井
木村祐一
5番6番・猿橋 /樋口
坂道コロンブス・松丘
DT浜田
DT松本
立川談志
田上よしえ
ダンディ坂野
電撃ネットワーク・ダンナ小柳
爆笑問題・田中
ハリガネロック・大上 /松口
130R・板尾
冷やし中華はじめました・鈴木 /高崎 /能海
フォークダンスDE成子坂・桶田 /村田
メッセンジャー黒田 /曾原
中田カウスボタン(コンビ二人とも?)
The PLAN9・灘儀 /ヤナギブソン
堀部
とりあえず書き出してみたが、だいぶ間違っていると思う。
511 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/06/22 19:35
テツトモと、北陽の伊藤って氏んだっけ?
ハリガネや陣内も生きていたような・・・。
>510
冷やし中華はじめましたは解散したけど、この場合続けるとしたら
続行?
>510
ココリコ田中っていつ氏んだっけ?DT松本と行動を共にしたままだと・・・
気づいてないだけだったらスマン
現在の生存者
浅草キッド・水道橋 /玉袋
今田耕治
海老一染之助染太郎・染太郎
海老一染之助染太郎・染之助
カンカラ・石田 /入山 /杉林 /鈴樹 /松井
木村祐一
5番6番・猿橋 /樋口
坂道コロンブス・松丘
DT浜田
DT松本
立川談志
田上よしえ
ダンディ坂野
電撃ネットワーク・ダンナ小柳
爆笑問題・田中
ハリガネロック・大上 /松口
130R・板尾
冷やし中華はじめました・鈴木 /高崎 /能海
フォークダンスDE成子坂・桶田 /村田
メッセンジャー黒田 /曾原
中田カウスボタン(コンビ二人とも?)
The PLAN9・灘儀 /ヤナギブソン
堀部
ココリコ・田中
陣内智則
北陽・伊藤
テツandトモ・テツ/トモ
他に抜けている生存者がいたら、更にご指摘お願いします。
>>515 ルートの増田も生きてたような・・・
違ったかな?
517 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/23 21:36
大滝って死んだ?
大滝は生きてるよ。
ユリQも死んでないような気が。
519 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/24 00:29
染之助染太郎は(理由はよー分からんが)戦線離脱ってことになったんじゃなかったっけ?
あと談志は死んでる。
片方リアルでお亡くなりになってるからなぁ…
ビートたけしとダンカン、高田文夫も生き残ってますね。
あと、進行中の話では天津・向 も健在ですし・・・。
ただ、スピードワゴン・井戸田 / 小沢は
書き手さんが生存とも死亡ともどっちとも取れる終わり方にしてるのと
時間軸的には過去にズレるモノの
ヒマナさん所のビーム・今仁 / 吉野、ダブルブッキング・川元 / 黒田
マイマイカブリ・五十嵐 / 高橋 も一応生存って事で良いのでしょうかね・・・。
ともあれ生存者の一覧表、乙です。
ブロンクスってまだ三人とも生きてるよね?
ブロンクスも天津向も生きてるよ。
私はその続きをずっと待ってる。
友近も生きてたよーな。
ブロンクス気になる。すごく彼ららしい感じで好き。
たけし軍団はダンカンの他に、死亡と明記した枝豆、ラッシャー以外の、
グレート義太夫、松尾伴内、そのまんま東、ガダルカナル・タカ、井手らっきょも
生きています。
怪我をしてぼろぼになってるとは思いますが…。
あと、清水ミチコも生きてます。
>>422 ブロンクスの3人が修道院に着く頃にはどっぷり日は暮れていた。
結構距離があったし他の芸人達の戦闘シーンに出くわし終わるまで
草むらで隠れていたせいだ。
修道院の様子を伺うために周囲をグルッと回る。
その時「うわぁ」と声をあげ唐戸がこけた。
「どないしたん?」と中岡が尋ねると「何かにつまずいて・・・」と言って
立ち上がる。中岡がライターを点けかざすとそこには何体もの死体が並んであった。
死体の上には律儀に一輪一輪花が置かれている。
もちろんそれらはストリークやババリア達のものである。
トクン・・トクン・・と中岡の中で心拍数が上がる。
≪やっぱり・・・やっぱり・・・≫奇妙な心地良さ、しかし
「わあああああぁぁぁぁあああああ」という野口の悲鳴で我に返り
「静かに!!」と野口の口を手でふさぐ。
唐戸は腰を抜かし金魚のように口をパクパクさせるだけで声も出ない様子だった。
中岡は辺りを見回す。虫の音が響いてる以外物音はしない。
向はもうここにはいないんだろうか?
いや、油断は出来ない。しかし中岡はライターの灯りを頼りに冷静に一つ一つの死体を
吟味していく。≪頭が割られている・・。殴られたか強い衝撃を受けたか?≫
「うっ・・・おえっ」ビチャビチャと音がしそちらを見ると唐戸が嘔吐していた。
中岡は「大丈夫?」と声をかける。唐戸は苦しそうに「中山さんが・・・」と唸るようにつぶやいた。
中山功太は顔が青く変色しており額に小さな穴が開いており、そこから流れた血は赤黒く固まっていた。
「なんで他の皆と違うんやろ?」
答える者はいない。唐戸はまだ気分が悪そうにへたれこみ、野口は呆然と立ち尽くしている。
≪功太さんは向さんと仲良かったはずやのに・・・。そういえば功太さんだけ名前呼ばれるんも遅かったし
死に方も違う≫
どういう事やろ??
ガサガサガサ
物音に3人の視線が一点に集まる。そして人影が走り去っていった。
中岡は影を追って走り出す。
「おい!どこ行くねん!!危ないて」
後ろで唐戸の声がするが、かまわず中岡は走り修道院の中へ消えていった影をひたすら追う。
しかし暗闇のなかで中岡は影を見失ってしまった。
「ふぅ〜〜・・・」
溜息を漏らし引き返そうと、もと来た道を戻る。
「あれ?」
どこまでも続く同じような廊下、同じような窓。
「ここ曲がるんやったっけ?あれ?」
一筋の汗が中岡の頬をつたった。
「あいつ・・どこ行ってもうてん。」
「唐戸、ノンビリしてる場合じゃないって、中岡探しに行かないと」
「そうやなぁ〜・・・ほんまどこ行ってん、あいつ」
――――ドサっ
草むらから何かが倒れてきた。
「「!!!!!」」
唐戸と野口は互いに目を合わせ倒れたまま動かない者に
恐る恐る近づく。男は「うぅ・・」と苦しそうに唸り声を上げる。
「「向さん!???」」
「ブ・・・ブロン・ク・・ス?」
「どないしたんすか!??」唐戸は向を抱え起こしリュックから水を取り出し
向の口に注ぎ込む。「ゴクゴクゴクゴク・・・ケホゲホ。」
「大丈夫ですか?」と覗き込む野口に頷きながら息を整える(ふりをする)。
「お前ら2人だけ?」
「いや、中岡がおったんですけど物音追っかけていってもうて・・・それより向さんどうしたんですか?」
「あんだけ集まれば大丈夫だと思って油断してた所襲われて・・・。お前ら武器持ってる?
まだ残党が残ってるかもしれんし危険やぞ、ここら」
「武器は・・・こんなものしか」
そう言って唐戸はバタフライナイフと小さな銀紙を見せる。
「中岡は鎌を持ってるんですけど・・・」
「そうかぁ〜じゃあ安心やな。」
そう言うと向は薄暗いなかでもはっきりソレだと判別できる黒く光るものを取り出し
2人に銃口をむけた。
「!!・・いや、向さん?冗談きついっすわ」苦笑いを返す唐戸に
「ん?冗談?冗談ちゃうよ。ストリークもランチも
ママレンジもババリアも足軽も功太もダイアンもぜーんぶ俺が殺したし。
お前らもその仲間入りするだけの事やん。」自分の言葉に酔いしれるようにニンマリ笑うその顔は
狂気そのもので笑うというより歪んでるように見える。
その顔だけで向が言っている事これからしようとする事が2人の中で真実味を帯びていく。
「さ、どっちから殺していこうかな〜。」
「・・・俺からやってくださいよ。やれるもんならね。」
そう言い放ったのは野口だった。
「お前っ・・なに言うてんねん」野口の言葉に慌てる唐戸。
「なんや〜野口は死にたいん?えらい挑戦的やけど」
「別に・・・。」
そう『別に』だった。もちろん死にたくなんてない。
だけど生きていてどうなるんだろう、という考えもどこかであった。
このゲームに勝ち残り、なんだかしらない名誉を貰いたいとも思わない。
(そもそも人殺しゲームで勝ち残ってどんな名誉があると言うのか。そんなのただの罪人だ。)
でも自分にとって芸人という道を選んだことには何の後悔もなかった。
トリオという形はコンビの倍の難しさもあったけど倍の楽しさもあったと野口は思っている。
唐戸と中岡に出会えた事は野口にとって最高の幸せだった。
NSC時代から現在に至るまで、いろんなコンビを見てきたがその多くが喧嘩や悩みを持って解散したり辞めていった。
でも自分達は3人で舞台に立ち笑いをとってきたのだ。
その楽しさや悔しさや短いながらも歩んできた道のりに後悔なんてあるはずがない。
もちろんこれから芸人としてのし上がっていきたいという願望はあったが
唐戸と中岡と一緒でないと意味がないと思う。
でもこんな事になってしまった今ではもう叶わない夢だ。
唐戸と中岡が死ぬ所を見ることが今の野口にとって一番怖い事だった。
それなら自分が先に死ねばいい。
どうせいつか死ぬのだ。相方達が死ぬとこを見る前に自分が死ねばいい。
「撃てるもんなら撃ってみてくださいよ!向さんなんて怖くないっすもん」
「やめろって、お前!」
「唐戸は黙ってて!」
「えらい威勢がええやん。野口のその自信はどこから出るんかな」
「ほんまにやめてください!向さん!!俺ら向さんに危害加えるつもり全然ないですから!
お願いします。なんでもしますから銃口下ろしてください」
「なんでも・・・?」
銃を構えたまま向はニンマリ笑う。
「じゃあ唐戸、野口を殺して」
「は?」
「聞こえんかった?野口殺せって」
「な・・なに言うて」
「野口は撃てくださいってなんか死にたがってるみたいやし
どうせ殺せなくても俺が2人とも殺すから。でも唐戸が野口殺したら
唐戸だけは殺さない。」
「そ・・そんなこと出来るわけないでしょ!?」
戸惑う唐戸を尻目に野口は小さな溜息をついた。
考えようによってはラッキーな展開だ。
向が約束を守るかどうかは微妙だが自分が殺される事は確定してるようだし
自分一人死ねば唐戸は死なずにすむかもしれない。
犠牲者は少ない方がいい。やっぱり唐戸と中岡には生きていてほしい。
最低に糞野郎な先輩に出会ってしまったのが運の尽きだ。
しかし唐戸が自分を殺すとは考えにくい。ここは一芝居うつしかなさそうだ。
「やれよ!正直、唐戸に偽善者面されても迷惑やしムカつくねんな。ほら殺せよ。」
「野口・・・ええって止めろって」
「なにが?はよ殺せって。」
「もうええからっ!!冗談でもそんな事言うな!!」
いつのまにか雨がシトシトと降り出している。
唐戸の頬を伝っているのは雨なんだろうか?それとも・・・。
≪何してんねん・・・俺ら≫
馬鹿馬鹿しい。
でももうこの方法しかないのだ。
「早く殺せって、唐戸」
唐戸はうつむいたまま動かない。
その時、向が唐戸に近づき何かを呟いた。
「約束ですよ」
唐戸は向の方をむきそう言うと鋭利なバタフライナイフを自分の首へと押し当てた。
その行動にはなんの迷いもなかった。
真紅の血が飛び散り
ゆっくりと倒れゆくそのさまはスローモーションを見ているようだった。
ナニガオコッタン?アカイ、アカイ、カラトガアカイ。
唐戸?なんで?なんで?なんで?
「あ゛ぁぁぁぁーー!!!唐戸っ!!唐戸ぉぉ!!!」
野口は倒れている唐戸に慌てて駆け寄る。
「ぉ・まぇのせぃちゃぅ・か・ら・・」
かすれた搾り出すような声。
ゴボゴボと口から血が溢れ出る。
「なんで!??嫌や!嫌やって!!唐戸!からとーーーーーー!!」
「おぉ〜ほんまにやりおった。」
「唐戸に・・・なに言うたんですか?」
「『野口じゃなくてお前でもええねんで』
でもほんまにやるとはなぁ・・他人のために自分が死ぬとか気持ち悪いわ。
ま、でも唐戸も無駄死にやけどな。俺が約束なんて守るわけないし」
再び銃口をあげ焦点を野口にピタリとあてる。
「さよなら、野口」
グサっ――――。
小気味良い肉の裂ける音
「ぐぅぁぁ」
倒れこんだのは向。
背後に立つのは中岡。
向の背中にそそり立つ鎌。
中岡は向を踏み鎌を引き抜く。飛び散る鮮血。
中岡は唐戸を見て苦悶の表情を浮かべた後、驚くほど
冷たい笑顔で向を蹴り上げた。
そして笑顔のまま馬乗りになり何発も何発も殴り飛ばす。
「ははははははは、死んでください。」
「やめっ・・・」
「止めて?あなたにそんな事言う権利あると思ってるんですか?
消えてください、この世から」
どれだけの時間が経ったのだろう?向の顔は原型を留めていないほど
ボコボコになり動かなくなった。
足元には折れた歯が転がっている。
はぁ・・・はぁ・・・・
我に返った中岡は唐戸と野口のもとに駆け寄る。
「シュゴー・・ヒュウヒュウ・・・」唐戸は血まみれで、かろうじて息の漏れる音だけ発している。
でもその音さえも弱くなっていっている。もう手の施しようがない。
血が雨で流され赤い水溜りをつくり、それでもあふれ出す血は止まらない。
自分は何て無力なんだろう・・・中岡は歯を食いしばりながら思う。
幼い頃、近所に住んでいて自分を可愛がってくれたお婆ちゃんがいた。
でもある日お婆ちゃんはいなくなった。死んだんだと親が言った。言葉で聞いただけなので実感がなくて
ただ死ぬともう会えなくなるんだって思った記憶がある。
大人になって【死】の意味も知った上でこの試合に参加させられ
学生時代からの付き合いの大切な相方が今自分の目の前で死を迎えようとしている。
でも自分は何もできない。【死】の前に人間は無力なんだ。
なのに【死】を楽しむ人間がいる。向やこのゲームの参謀者達。
そして向を殺したいという殺意を抱きつつ、先輩達の【死】に僅かながら興奮を覚えた自分もまたそうなのだろうか?
その瞬間ガツっと頭に激しい衝撃が走る。
振り返ると向が石を片手に立っている。
滴る血液は中岡の顔を伝い濡れた地面にポタリと落ちた。
「ぬぁぁぁぁあああーーー」中岡は鎌を向にむかって振り回す。
雨の中で繰り広げられる壮絶なバトル。
どこかでこの絵を見て喜んでる馬鹿がいるんだろうか?
向は中岡にむかって石を投げつけると、そのまま走りだした。
「待て!!」と中岡が慌てて追おうとすると「もういいよ・・・中岡」と野口が止めた。
中岡が駆けつけてからピクリとも動かず一言も発しなかった野口が発したすすり泣くような弱々しい言葉だった。
「大丈夫・・・?」中岡は野口に近づく。野口は放心状態だった。
いつものやんちゃさはなく、からっぽで触ったら脆く崩れてしまいそうだった。
虚ろな目からは涙が次々溢れ、止まる気配はない。泣いている、というより
自然と涙が出て止まらないみたいだった。
中岡は野口の隣に座りヒュウ・・・ヒュウ・・・・と微弱ながら息吹を続ける唐戸を
じっと見守る。そしていつしかその呼吸も途絶える・・・。
「あぁぁぁあぁぁぁ。俺の・・俺のせいで唐戸がっ!!ごめん・・ごめん・・・唐戸」
野口はうずくまり嗚咽を漏らす。
中岡は体温の失われた唐戸の手を握る。
憎い、憎い、憎い。
≪憎いんだったら殺せばよかったのに。向さんの血綺麗だったし≫
不意に頭に響く声。その声は間違いなく自分の声。
そんなこと・・・
≪なに今さらいい子ぶってんの?先輩達が死んだことを知った時興奮したんだろ?≫
違う。それは・・・
≪お前が興味本位でココに来たから唐戸が死んだんだ。≫
違う、違う。
≪唐戸を殺したのはお前さ≫
違―――――っ!!
「・・・ぉか?中岡?」
「え?」
「頭・・・血出てる。」
「ん、平・・気。」
そうだ。野口がいる。失いたくない存在がまだ自分にはいるのだ。
その事実が少し中岡を正気にさせる。
≪野口も*******のに≫と頭の奥で声がしたが気付かないふりをして
野口と手分けして唐戸を埋葬する。
雨は降り続き、心は悲しみが染み渡り、ポッカリと埋めることのできない
穴が開き、傷口は開いたまま、口ずさむは鎮魂歌なり。
【ブロンクス唐戸浩二死亡】
今日はここまでです。恐ろしいほど長く遅くなってごめんなさい。
前回感想をくれた人、待ってると言ってくれてた方々ありがd。
ブロンクスイイ!!中岡が実物よりちょっと男前すぎるけど(笑)
537 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/28 15:44
スピードワゴンは、潤さんがおざーさんに銃口を向けて、
選択させたところで終わってた気がしますが。
どうなるんでしょうか。
このバトロワに、宮迫とかって、出てる?
539 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/28 18:35
540 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/06/28 18:47
読まねーのかよ!
出てるんだ!?ほー
宮迫とか、出てた!!グッサンと組んでたっぽく・・・。
なんか、メッチャ泣けたよ。くずのとこしか重視してないけど、言えば、くずのところがメチャ泣けた。
お笑いバトロワって終わったの?どーーーーーなのーーーー?
改めまして現在の生存者
浅草キッド・水道橋 /玉袋
今田耕治
カンカラ・石田 /入山 /杉林 /鈴樹 /松井
木村祐一
5番6番・猿橋 /樋口
坂道コロンブス・松丘
DT浜田
DT松本
田上よしえ
ダンディ坂野
電撃ネットワーク・ダンナ小柳
爆笑問題・田中
ハリガネロック・大上 /松口
130R・板尾
冷やし中華はじめました・鈴木 /高崎 /能海
フォークダンスDE成子坂・桶田 /村田
メッセンジャー黒田 /曾原
中田カウスボタン(コンビ二人とも?)
The PLAN9・灘儀 /ヤナギブソン
堀部
ココリコ・田中
陣内智則
北陽・伊藤
テツandトモ・テツ/トモ
天津・向
友近
>>545 ビーム・今仁 / 吉野
ダブルブッキング・川元 / 黒田
マイマイカブリ・五十嵐 / 高橋
ブロンクス・中岡/野口
ビートたけし
ダンカン
高田文夫
18KIN・大滝
ユリオカ超特Q
グレート義太夫
松尾伴内
そのまんま東
ガダルカナル・タカ
井手らっきょも
清水ミチコ
他に抜けている生存者がいたら、続きまして更にご指摘お願いします。
生存者リスト作成乙!
続きが気になる・・・・
>546
さりげなく「井手らっきょも」になっててワラタ
>>481-484 の続き(成子編) &
>>496-499 の続き(DT編)
この『ゲーム』が始まったばかりの事。
配られた地図を眺めていて、松丘は不思議に思ったものだった。
遊園地やスキー場といったレジャースポットが整備され、市街地も都会のそれと比べる事は出来ずとも
それなりに栄えているように思えた、この島で。
島全体から考えると不自然なほどの広い範囲が自然公園となっていた事。
しかし、桶田に見せられたこの島の郷土史をまとめた小冊子によって。
そして今、松丘の目前に存在する「それ」からも、その理由も判明する。
島全体で見られていた豊富な緑はどこへやら。この周囲では大地の茶色が剥き出しになっていて。
微かに漂うのは卵が腐ったよう、と俗に称される、あの臭い。
島の中央に座す山の中腹。松丘が立っているのは、かつて江戸時代の末期にこの島で起こった
大噴火の影響で生まれた、第4火口跡と呼ばれる切り立った岩肌の前だった。
『どうやら・・・ここ数年ほど、この島の火山活動がまた活発になりつつあるらしい。』
そんな桶田の言葉を裏付けるように、度々この島は地震に見舞われていたし、
火口の側にはどこかの研究者達が置き忘れていったのだろう、観測器材が残されている。
「・・・・・・・・・・・・。」
松丘は先ほどからずっと、ただただ火口を眺めていた。
桶田から話を聞かされた時点では、まだ漠然としたイメージしか松丘には抱く事が出来なかったが。
こうやって現場に立ってみると、いかに無謀な賭けに自分が踏み出さねばならないかが、痛感される。
・・・果たして、僕にあの扉を叩き割る事が出来るのやろか。
これがゲームなら、何度失敗してもその度にやり直す事が出来て。
経験を生かして何とか目的を達成する事もできるだろう。
けれど、これはもちろん『ゲーム』であってもゲームではない。
一発勝負。
万が一の事があったら・・・全てが無駄になってしまうのだ。
山のような廃車の中から使える車を捜しだした、あの努力も。須藤と富田の頑張りもその命も。全部。
そう考えると、松丘の気持ちはどうにも沈んでいってしまう。
よりにもよって、一番プレッシャーに弱く臆病な自分が、こんな事をやる事になってしまうだなんて。
一つ深いため息を付いて、松丘は一旦火口に背を向けると。遠く離れた箇所に停めてある車の元へと戻った。
空はうっすらと紅がかってきている。
このまま日が沈んでしまうと周囲は暗闇に包まれてしまい、尚いっそう成功率は落ちてしまうだろう。
とはいえ、明日の夜明けを待つ事にするには、松丘には爆薬の詰まったこの車以外には
身を守る道具など何も持たされてはいない。
万が一、誰かと遭遇してしまったら・・・・・・そう考えれば、日が沈むよりも早くに
それを為さなければならないのはもう明白であった。
歪んだドアを開け、運転席に身を滑らせて。
ハンドルにもたれ掛かるようにしながら、松丘はなおも岩肌・・・火口を見やった。
それは、松丘が今まで芸人として生きてきて、結局越える事のできなかった壁のようにも映る。
本気が空滑りするのが怖い。カメラに内心が見透かされるのが怖い。舞台に立つ事が怖い。怖いのは厭。
だからくだらない自尊心を守る為に小細工を施して。目の前の壁を何とか意識しないようにして。
いつかは売れよう、てっぺんを取ろう。そんな言葉を口先だけで何度も呟きながら。
何人何組もの若い芸人達が、自分達の頭上を軽々と通り過ぎていく様を、いつもぼんやりと眺めていた。
その、逃げ回っていたツケをここで払う事になったのならば。それも一つの運命なのかもしれないけれど。
「・・・・・・・・・あ。」
ふと、いつものポケットにねじ込んである携帯を取り出そうと手を伸ばしてみて。
そこに触れ慣れた硬い感触がなかった事に気付き、松丘は小さく声を上げた。
どこかで落としたんやろか、と慌てて他のポケットを探ろうとするけれど
すぐに、携帯は村田の元に残してきた事を思い出し、松丘は苦笑する。
急にこの島が圏外になったその時まで、何通ものメールが松丘の携帯に届いていた。
それらや、島に来る以前から携帯のメモリーに収まっていた他のメールなど。
何度もそれまでに見返したはずのそれを、松丘はもう一度見ておきたくなったのだったが
結局、突き詰めればその行為も、現実逃避のひとつにしか過ぎない訳で。
松丘は仕方なく目を閉じて、想った。
慣れ親しんだ、東京の街並み。愛用の金色の原付。ライブ会場までの近道。稽古場の風景。
結局裏切り通しだったけれど。少なからず自分らに期待してくれた人々の顔。
家族。地元の友人。そして・・・・・・・・・
まさかこんな芸人だらけの島で死ぬ事になるのだったら。もっとやっておくべき事があったのかもしれない。
・・・後悔先に立たずとはホンマこの事やな。
瞼を閉じたまま小さく呟いて。そして松丘は気付く。
「せやけど、ここで芸人として死ねるんやったら・・・それも案外悪ぅないかも知れへん。」
下手に生き残った所で、村田と違って松丘には一人で舞台に立てるような根性もネタももう残されてはいない。
残っているのは潰しの聞かない30過ぎの男・・・ただそれだけである。
だったら、芸人のみが集められたこの島で。大勢の芸人の一人として死ねるのならば。
芸人でい続けた自分の末路としては申し分ない・・・そう、松丘には思えた。
途端に気分が楽になったように感じ、松丘は身を起こす。
エンジンは驚くほどスムーズに、一発で掛かった。
「早ぉ逝け・・・いう事か。」
せっかちで口喧しい誰かの横顔がふと松丘の脳裏をよぎる。
口に出さずに呟いて松丘は滲んだ涙を拭い、改めて火口を睨みつけるように見た。
・・・今までずっと避けてきた壁。
でも、僕はこれからアンタを砕く。僕が死んでも、目的が果たせるんやったら・・・僕の勝ちや!
アクセルをベタに踏み込むと、軋むような音を上げつつ、車は動き出した。
未体験の速度と悪路から車を制御する為に、松丘はハンドルを握る手に力を込め、そして叫ぶ。
松丘の、その人生の中でも稀有なる咆哮と。テールランプの緋色の輝きをその場に残して。
車は一直線に火口へと吸い込まれていった。
ドーンと遠くで何かが爆発する音が響き渡る。
しかし、爆発音自体は何度も聞いていたため、堀部はそれには大したリアクションは見せなかった。
寧ろ堀部は今、彼の行っている行為・・・出刃包丁を研ぐという動作に熱中していた為に
周りで何があったとしても、気づく事は難しかったのかもしれない。
けれど、続いて思わず宙に投げ出されそうになるほどの強い揺れに襲われてしまったとなれば
さすがに堀部もそれを無視する事もできなかった。
床を跳ねる研ぎ石と、自由にならない自分の身体に異変を覚え、堀部が周囲を見回してみると。
まわりの家具は揺さぶられ、物によっては倒れてゆく。
食器類が砕け散るその音色がどこか心地よく堀部には思えたけれど、それに酔っている訳にはいかない。
・・・浜田さんが!
そう。浜田は飢餓から脱したその安堵からか、眠気に取り付かれてしまったようで
さっきから堀部のいる隣の部屋のベッドの中で泥のように眠っていた。
もしも、その頭上に箪笥でも倒れてきてしまった日には。
まだ振動は続いていたが、堀部は慌てて浜田の眠る部屋へと向かう。
「浜田さんっ! 大丈夫ですか!!」
扉が開けっ放しになっていたのも幸いし、堀部はさほど苦もなく部屋を移動する事に成功した。
叫ぶように呼びかけながら、堀部が部屋の中を覗いてみると・・・
浜田は相変わらずベッドの中で身を丸め、すやすやと眠っていた。
その周囲では箪笥やら鏡台やらが倒れていて、窓ガラスなどの破片すら散らばっている。
けれど、浜田の周囲だけはまったく地震の起こる前と変わっているようには堀部には思えなかった。
「・・・さすが、浜田さんですね。」
自分の取り越し苦労と浜田の強運に思わず苦笑を浮かべ、堀部は呟く。
神か悪魔かはわからないけれど、何か強い存在に護られたこの人ならば。
自分の事もきっと守ってくれるに違いない・・・何となくそんな頼もしい思いにかられた。
やがて揺れは収まり、堀部は出刃包丁の研ぎに戻ろうかと一旦部屋に背を向けたけれど。
そうだ、と小さく呟いて堀部は振り返り、ベッドの傍らに落ちている浜田の日本刀を拾い上げた。
「ついでだから、これも研いどいちゃいましょう。」
浜田が眠る少し前、一度見せてもらったその刀身が随分と痛んでいたのを思い出して。
ニッコリと微笑むと堀部はゆっくりと、今度こそ部屋を後にした。
そして数時間後、浜田は恍惚の表情で一心不乱に刀を研ぎ続ける堀部の姿を目にする事となる。
「・・・一体何があったんだ! 報告しろ!」
最初はビートたけしの手によって。続いては自らの手で己の身を置く本部を破壊してきた高田文夫は
第三の本部として定めた山間の洞窟の中で苛立たしげに怒鳴った。
まぁ、爆発音が聞こえたかと想うと強烈な揺れに襲われ、固い床に投げ出されたかと思うと
身体を強かに打ち付けてしまったのだから彼のイライラも仕方がないといった所か。
「総本部の方から・・・通信が入りました。」
慌しく動き回る、兵隊のうちの一人が口を開く。
「今度は何だ。」
「我々への島からの撤退命令です。
どうやら今の揺れは島の火山の・・・第4火口で小規模な噴火が起こったのが原因だと。」
高田のように感情を表に出さない平淡な口調で、彼は高田に告げる。
「撤退って・・・待て、この島の山は資料によると休火山じゃなかったのか?」
「詳しくは調査中です。ただ、この噴火が大規模な火山活動の呼び水にならないとは言い切れません。
そうなって我々も巻き込まれてからでは遅いのです。そのための、撤退です。」
ジィ、と高田は兵隊を睨みつけた。
まったく、一番現場に近い場所で『ゲーム』を楽しむ為にこの島に来たにも関わらず・・・
何で自分ばっかり、こう面倒な目に遭わねばならないのだろうか。
「・・・・・・撤退と口では軽く言うが・・・具体的にはどうする? ヘリは撃ち落されているんだぞ?」
「新規に呼び寄せます。具体的には島南部の・・・廃校のグラウンドなら、複数のヘリが離着陸できますから。
そこに島中に散った仲間と、ヘリを集めようと。」
「そうか。ならそうすれば良い。」
どうせ、そういった方面に関しては高田も口出しのしようがない。
憮然とした口ぶりで告げると、高田は足早に洞窟の外へと向かって歩き出した。
「どちらへ?」
「南の廃校へ行くに決まっているだろう。こんな薄暗い場所はもうコリゴリだ。」
一度立ち止まるとわざとらしく肩をすくめて見せ、そして相手の次の言葉を待たずにまた高田は歩き出す。
そして、その姿が洞窟の外に消えて、数秒。
また強い揺れが周囲を襲い、高田のものとおぼしい絶叫が洞窟の置くまで切れ切れに届いた。
慌てて兵隊達が洞窟を出てみると。
落石で頭部を強打し、事切れ倒れている高田の姿がそこにあったという。
「・・・・・・やった、か。」
バルコニーに立ち、夕焼けの中に山の中腹から吹き上がる煙を眺めながら桶田は小さく一人呟く。
「まったく、手間を焼かせやがって。」
「おい、何やねん今の揺れ!」
桶田の背後から、バタバタと足音を立てて村田がバルコニーへと駆け込んできた。
その顔や声や所作からは、村田の酔いは随分と醒めているように見受けられる。
「・・・計画の第二段階の始まりだ。」
村田の方を振り向くことなく、桶田は静かに答えた。
「あいつは躊躇のない奴だからな。急いで移動の準備をしろ。さもないと・・・死ぬぞ。」
「そぉか・・・でも松丘は? さっきからぜんぜんおらへんし、どないすんねん。」
相変わらず計画の重要な部分は桶田が握っていて、村田にはそれを知る事はできないらしい。
半ばその点では諦めかけつつ、きょろりと一度地上を見回して。村田は桶田に問うた。
「その事ならアレも了承済みだ。気にするな。」
すぐに桶田は村田に返す。
その言葉に、桶田から話を聞いていた、という松丘の言葉が思い出され、
村田はそう言うものかと何とか納得する事にした。
「・・・わかった。」
小さく頷き、荷物をまとめるべく部屋の中へと消えていくそんな村田の後ろ姿を、桶田は数秒ほど横目で見やる。
しかし、すぐに目線はまた山の方へと向けられた。
「頼んだぞ・・・・・・。」
そう、桶田の唇はかすかに言葉を形作って。声にならないそれは夕暮れの風に流されていった。
燃え上がる焚き火の炎をトーチに移す。
五本のトーチにまんべんなく火が行き届いたのを確認し、彼は口を開いた。
「皆も見た通り、『狼煙』は上げられた。ここからは俺達の出番だ。」
どこか確認するように遠くの空に上がる煙をちらっと見やり、それから彼は周囲を見回した。
四つの見知った顔。それぞれこれまでのサバイバルで疲弊してはいたけれど、
その瞳の奥の精気はまだ決して途絶えてはいない。
「小林くん、大渡くん。」
名前を呼ばれ、若者の二人が彼の方を向く。
「風向きに変化はない・・・予定通り、東回りルートをお願いします。」
トーチを手に、二人はコクリと頷いた。
「キー坊くん、岩澤くん。」
また別の名前が呼ばれ、二人が彼の方を向く。
「二人は北回りルートで。」
前に呼ばれた二人と同じように、この二人も首を縦に振る。
キー坊くんと呼ばれた方の若者の金色の髪がふわふわと揺れた。
「俺は西回り・・・そして、集合場所は、覚えてるな?」
彼はそう言うと、島の南側に目をやる。
無言のうちに若者達は頷き、そして、誰が言い出した訳ではなかったが、トーチの先端を一点に突き合わせた。
一瞬何の事だかわからず、キョトンとする彼であったが、
すぐにその意図する所に気付き、自身のトーチもそれに添える。
三銃士宜しく、火のついたトーチを翳した五人の男達は、改めて互いの顔を見合わせた。
「絶対・・・絶対にあの場所で、生きて・・・会うぞ!」
限りなくそれが実現する可能性は低い、と誰もが心の底で思っていただろうけれど。
「・・・おぅっ!」
男達の口からはしっかりとした掛け声が漏れ、周囲へ広がった。
火のついたトーチ、そして予備のトーチを携え、足早に立ち去っていく四人の若者を見送って。
彼は、一つ吐息をついた。
この四人は、彼がこの島で呼び止め、計画を実行させる為の仲間に引き込んだ面々である。
彼らがどれほどの間生き延び、期待していた働きをしてくれるか・・・
こうなったら、後は天に祈るのみであろうか。
「ったく、俺に山火事を起こせなんてあの人も無茶をさせる・・・。」
・・・だが、それが『ゲーム』を終わらせる手段であるのなら、やるしかない。
口元にかすかな笑みを浮かべ、彼は・・・佐野ただひろは呟いて。
彼もまた、予備のトーチと武器である日本刀を束ねた物を背負い、森の中へと駆け出していった。
【坂道コロンブス・松丘 高田文夫 死亡】
長々と投稿スマソ。
どうしてもここは途中で切らずに一連の流れにしたかったので・・・
小蝿さん、乙です。
いつも楽しく読ませていただいています。
本部の高田文夫も死んじゃったのか・・・・
乙です。
坂コロ林を殺した高田文夫は、
間接的であるけれども、松丘の起こした行動によって死んだ。
ある意味、敵討ちだと思えました。
松丘をこんなに格好よく書いてくれて嬉しかったです。
563 :
浪漫 ◆pHJTWwF8rk :03/07/05 19:02
私も見ましたーーーー!!過去ログから。
宮迫たち、けっこう最初のほうで死んじゃっててカナリ泣けた!!!
564 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/07/07 18:52
小蝿さん乙。
松丘格好よすぎです。
>>545 遅レスだけど元ピートム桑原はまだ生きてる。
COWCOW多田も殺されてはなかったはず。
生存芸人表は出たけど生存書き手さんが気になる。
小蝿さんとB9さんしかもう残ってないのか?
565 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/07/07 19:09
B9さん。
…何度読んでもドキドキ
やはり戦闘描写はドキドキします…
ああああ…なんで私はブロンコスなどに対する知識が…(以下略)
小蝿さん。
ま,松丘さんカコイイ…
なんていうか…文章読みつつ顔が真っ赤になりました。
これって…(違)
両者とも乙でした〜
>>564 …書き手です…。メモ帖に書いてみているんですが…
だめだ〜…カコイイ描写はどうも苦手…
でもがんばります
>>536 ありがとうございます。中岡が男前なのは私のイメージの中の中岡が男前だからですw
>>565 ブロンコスではなくブロンクスですw
ガブンチョメンバーというまだマイナーなコンビばっかり出してるので
わからない人が大半だと思います。なるべくキャラを出すよう心がけてはいるんですけど。
自分も催促のレスがつくまで放置していた身なんで申し訳ないです。
でも一応生存しておりますし天津話は責任持って終わらせるつもりです。
567 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/07/07 21:20
>>566 うおうっ!
またまた私の無学っぷりが・…
ご指摘サンクスコ・…
専属書き手さんが居る芸人ってどれ?
まだ作りかけなのですが書き手表を作ってみようと試みてみました。
生存者の状況
【見方】
芸人名―専属書き手の有無/有の場合は名前
〔共に行動している芸人名〕
(その芸人の話の状況)
DT編関係
今田耕治 ―-無
〔単独行動中〕
(【DT松本、木村祐一、ココリコ・田中】の様子を伺っている)
130R・板尾―-無
〔単独行動中〕
(【DT松本、木村祐一、ココリコ・田中】のところへ向かっている)
DT松本、木村祐一、ココリコ・田中 ―-有?(継続中か不明
〔DT松本、木村祐一、ココリコ・田中〕
(街へ向かっている)
DT浜田・堀部―-有/小蝿さん
〔DT浜田・堀部〕
(人肉ロールキャベツ食事中)
〔フォークダンスDE成子坂・桶田 /村田〕―-有/小蝿さん
〔天津・向 、ブロンクス・中岡/野口〕―-有/B9さん
友近―-有/B9さん
〔田上よしえ ・ダンディ坂野、北陽・伊藤、テツandトモ・テツ/トモ、
ユリオカ超特Q、カンカラ・石田 /入山 /杉林 /鈴樹 /松井〕――有/◆gvBXpGyuycさん
〔爆笑問題・田中 、5番6番・猿橋 /樋口〕―-有/奥様は社長、さん
〔ビーム・今仁 / 吉野 、ダブルブッキング・川元 / 黒田 、マイマイカブリ・五十嵐 / 高橋 〕―-有/ヒマナスターズさん
〔18KIN・大滝 ・ピーピーングトム桑原〕―-書き手見習いさん
〔ハリガネロック・大上 /松口 、メッセンジャー黒田 /曾原、中田カウスボタン〕
陣内智則
〔冷やし中華はじめました・鈴木 /高崎 /能海〕
〔The PLAN9・灘儀 /ヤナギブソン〕
〔ビートたけし 、ダンカン、グレート義太夫、松尾伴内、そのまんま東、ガダルカナル・タカ、井手らっきょ〕
清水ミチコ
〔浅草キッド・水道橋 /玉袋〕
電撃ネットワーク・ダンナ小柳
>569は事前にまとめてみていたもので、見方通りです。
>570は行動を共にしている芸人名と書き手さんの名前です。
>571は行動を共にしているグループわけと芸人名のみです。
書き手さんがその芸人を継続して書くのかどうか分からなかったもの
は>571に入れました。(たけし軍団、清水ミチコ>蟹座さん)
中途半端にまとめられていなくて申し訳ない。
新しく書こうとしている方の手助けになれば幸いです。
そして訂正お願いします。
すみませぬ、プラン9のナギオ&ギブを書いているものです…。
1ヵ月ほど続きが書き込めていませんが、続きを書いてます…。
なんとか早くうぷできるようにしますので、保留してもらってもいいですか??
>>572さん、お疲れ様です。
今更ですが、ほったらかしはよくないので、
ビートたけし及びたけし軍団、清水ミチコを手放します。
ちょっと思い出したのですが、
マギー師弟ってどうなりました?
まだ生きてるような気がするんですが。
hosyu
576 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/07/12 17:07
ロザンのトコが読みたいんだけど見つかんない〜!
>>576 まとめてあるサイトシカーリ見れば…。
結構わかりやすいと思うよ
578 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/07/13 13:11
永らくお久しぶりでございます。
まさか自分が殺すより先に実在のコンビの方に死なれるとは思ってもみなかったもので、
動揺通り越して普通にポカーン状態になっておりました。
幸いなことに時間軸を遡った設定でしたので、話の展開には特に影響なしなんですが
なにぶん書き手の脳味噌の方に予想外の打撃が来てしまい(ニガワラ 、
随分と続きを凍結させてしまったことを心からお詫びいたします。
そういう経緯でして申し訳ないんですけども、
今回はリハビリも兼ねて書いたダーリンハニー編をお送りします。
一応これを区切りとして、改めてホリプロ下層編の続きを書こうと思います。
マイマイカブリというコンビが作り出していた、温かくておかしな世界が心から好きだったという気持ちと
それの一切の停止を意味する”解散”という事実を惜しむ気持ちを、
こんな形ででもいいから何とかして残したいと思えるようになったので。
(もう自分で書いてて激しくサムイです今回だけ見逃して下さい v(゚∀゚)vニンニン!)
※今回、作中にギターコードが出てきますが
当方ギターなど弾いたことも触ったこともありません。
そんななんで間違い等見つけた場合も脳内スルーでよろしくお願いします。
雨が降り出していた。
レンズで仕切られた視界にぽつぽつと貼り付いてくる水滴と、
その向こうに座る岸辺一徳似の男を、長嶋はうつ伏せの体勢で眺めている。
決して自分から立ち去ってくれることのないその水の粒は
彼にとってはただただ邪魔なものでしかないのだが、
拭う気も起こらないような数に多少苛々するくらいで、
未だに痛みの消えない腕を動かしてまで消してしまいたくなるほどのものではなかった。
そんなささやかな障害物は頭の中ですっかり拭き取ってしまうと、
あぐらをかいてギターを抱える彼の相方、吉川の姿がはっきりと見える。
薄い茶色に滲んだ彼の髪は、絶え間なく落ちてくる水分を含んで
元あった質量をだいぶ落としていた。
それは長嶋の脳裏に浮かぶある予測を、確信へと染めていく。
切り出さなければならない時が迫っていた。
少しずつ確実に染み込んでくる雨水に、
長嶋はくしゃみが出そうになるのを堪え、代わりに軽く身震いをした。
暗く塗り潰された空から零れてくる雨は、
当分の間止むことのないように思われた。
──救いようもない事態に陥ることということはあるものだ。
そして事の重大さが深刻であればあるほど、
何かを恨んだり、悔やんだりする気力は逆に失せてしまう。
それでも長嶋はその時の光景を、まるで一秒前のことのように鮮明に、
コマ送りでと言ってもいいくらい、事細かに思い出すことができた。
「あ…!!」
耳を塞ぐ轟音。
手の平に当たる固いギターの一端、薄い背中の感触。
その時点で長嶋に理解できたのは、
途方もなく固く重い岩の大群が、頭上から襲ってきたということだけ。
次の瞬間、視界は暗転し、意識は途絶えた。
意識が戻った時には、茫然と座り込む吉川の姿が目の前にあった。
「……って…だ、大丈夫だった…?」
長嶋は立ち上がろうとして両手をついた。
そして、そこで初めて彼の相方の表情の理由、
彼の体の下半分が岩の群れに埋まり、びくともしなくなっていることに気付いた。
それからしばらく姿を消していた吉川が、
突如として戻って来たのは数時間後のこと。
”何で戻ってきたの”
長嶋にそう突っ込む余裕も与えず、彼はおもむろに白いタッパーを差し出した。
「これ、よかったら食べなよ」
表面の固まりかけたシチューらしきものが、丸い容器の中を埋めている。
本当はそれよりもっと根本的な疑問が山ほどあるはずなのだが、
それからは目を反らすことにして、長嶋は吉川に尋ねた。
「……こんなの、どうしたの?」
「さっき豊本さんたちに会ったんだ。それで貰ったの。
もう冷めてるけどさ、そんな不味いこともないよ」
言われるがままに長嶋が容器を受け取ると、
はずみで傷めたらしい長い腕がずきずきと疼く。
冷め切ったシチューは美味しいのかそうでないのかもよく分からない、
何とも不可解な味がした。
「元気そうだった」
武器にならない武器に手を掛けながら吉川は言う。
多少素っ気ない口調ではあったけれども、
文頭に”まだ”と付けられなかったことに、長嶋は内心ほっとしていた。
吉川は空白を埋めるのが上手だった。
八方塞な状態の人間を目の前にして、先の見えない時間を刻んでいくというのは
並みの人間ならそれだけで気を違えてしまいそうな作業だが、
彼は武器として支給されたギターを使って
ある時は奥田民生や、またある時はピアノ曲の旋律などを奏でて、
細い指で器用に時間を縫い合わせていくのだった。
C Em7/B Am7 Em/B C6 C/B Am-addF
CM7/G F6 Em Am Am/G F6 Am7/E G7/D ……
まるで真夜中にルームランプのスイッチを探す時のようなたどたどしさで
一つずつコードを抑えていく吉川。
その手がひとつ和音を鳴らすごとに、長嶋の記憶は後を追う。
暗鬱な表情を浮かべながら、子供が白と黒の鍵盤をなぞって行く光景が
退屈しきった脳裏にぼんやりと浮かぶ。
クレメンティの長い運指練習曲を皮肉ったあの曲。
曲の名前は何だったか。
「グラドゥス・アド・パルナッスム博士?」
自信のないまま長嶋がそう尋ねると、
吉川は驚いたように「よく噛まなかったね」と言って笑っていた。──
雨が心なしか強くなってきている、と長嶋は思った。
彼の体を埋めている巨大な岩と土砂の山は
相も変わらず彼の肩から下を固く押さえつけたままで、
その状態で幾度陽が昇り降りしたのかは、彼自身にももう分からなくなっている。
下半身が岩と同化したかのような彼の体の感覚は、
もはや錯覚ではなく現実になりつつあった。
自分にとって非常に大切な対象がいるとして、
既に朽ち果てた姿を突然見せつけられるのと、
目の前でゆっくり朽ち果てていかれるのと、どちらがましだろうか?
一向に出ない結論に頭を抱えながら、長嶋はなお言葉を浮かべ続ける。
これ以上、吉川をこの場に残すわけにはいかないと。
彼がいないと生きていけない、なんて
今時C級映画でもお目に掛かれない台詞を、
意味はだいぶ違えど、現在進行形で自分は体現している。
でもそれは決して、「彼がいるから生きて行ける」とイコールではない。
たとえ彼がどんなに手を尽くしたとしても、この体は絶対に生き残れない。
知っていて自分は今まで、彼を追い出すことができずにいた。
腹が減れば食べたいと思うし、ぎりぎりの死に際まで生きたいと願う。そんなものだ。
自分が人間であることを、こんな状況に追い込まれて嫌というほど知らしめられた。
けれど、
いくら視線を反らしても、
いくら瞼を閉じようとしても、
無数の雨粒で光る蜘蛛の巣は、否応無しに視界に入ってくる。
自分はあの糸に絡め取られてしまった昆虫と同じ。
気付くのが少し遅れてしまっただけで、選択肢なんて最初から一つしかなかった。
手元にある時間は残りわずかだ。
死ぬと決まった運命を、切り開くことなんてできない。
「そのギターで鎮魂歌を弾いて欲しいんだけど」
間違っても聞き返されたりしない程度の声量で、
長嶋は吉川の目を見て言った。
風に煽られた雨が、横たわった体に対して斜めの角度で降りかかり始めた。
「そんなつもりないよ、俺」
長嶋の真顔が映る眼を、吉川は見開いて言葉を濁す。
しかし長嶋は一瞬のそれをも許さなかった。
「真剣に言ってるんだ」
自然と重くなる己の口調が、長嶋自身をなお追い詰めた。
「雨がかなり降ってる。土砂崩れがいつ起きてもおかしくない。
もうじき、…ここ一帯が崩れると思う」
何が言いたいのか分かるよな、と、長嶋は声に出さず訴えた。
頼むから何も言わずに目の前から消えて欲しい。そう思った。
「ここから逃げろってこと?」
抑揚のない調子で吉川が言葉を返す。
「うん」
「…お前を見殺しにしろって言いたいの?」
「……」
「そうだよ」
長嶋ははっきりと言い切った。
一番言われたくないことに触れられても、そこで首を縦に振らないわけにはいかなかった。
「じゃあ分かった、でも一つ条件を付ける」
長い無言の時間の後で、唐突に吉川は提案し出した。
「今から歌う曲の名前をお前が言い当てられたら、ここから逃げるよ」
そう言うと、無表情のままで体勢を変える。
眼鏡の奥に沈んだ瞳が、いくつかコードを確認したかと思うと
長嶋が何も言えないままに前奏が始まってしまう。
彼が何をしようとしているのかを飲み込めないまま、長嶋は咄嗟に尋ねた。
「…俺が知ってる曲?」
「勿論」
餌付は日に三度
すぐ壊れちゃうからねえ おまえら
安く見られてるよ
容易く言える方が怖いのさ
曲目が浮かんだ次の瞬間に、長嶋は吉川の意図を理解した。
そして、たまらず地面に顔を突っ伏した。
柔らかな地面の感触が額を冷やす。
湿り気を含んだ土の匂いが鼻を突く。
思い出したくもないあの時の光景を、改めて突きつけるように。
「……言えるわけ…」
言葉をつまらせながら、長嶋は心の中で叫んだ。
ああ、何て頭の回る奴なんだろう。
”ナポリを見て死ね”
そんなこと、
言える訳ないじゃないか。
近いうちに
ナポリを見て死のう
──ひときわトーンの上がる部分で、
不意に声が掠れた気がした。
原因はほら
すべて他人の所為……
そこまで歌った所で、不意に音が止んだ。
周囲には再び、雨垂れの音だけが響き始めた。
「こんな唄、歌わせんなよ…」
半ば吐き捨てるようにして、吉川は言った。
長嶋はもう顔を上げることができなかった。
「ごめん」
「謝って欲しいわけじゃない」
吉川は冷静に言葉を紡ぐ。
だがその中には、堪えきれない感情の激流が見え隠れしていた。
「お前は優しいから、そんな風にごめんとか言ってくれるけど…」
「違うよ」
長嶋は手で頭を押さえつけ、半ば泣き叫ぶように、何度も首を振った。
黒い髪にこびり付いた沢山の雫が、
いくつかは手の平を濡らし、そうでないものは同心円状に飛び散った。
「俺は自分のことしか考えてないんだ」
「俺は自分が、お前を巻き込むのが嫌で、
お前を巻き添えにした人間になるのが嫌なだけなんだ、
最初からそうだったんだよ、あの時、お前の背中を押したのだって……!」
声は遂にそこで途切れた。
吉川は何も言わない。
雨音だけが急に強くなった。
風がいつの間にか止まり、雨は地面に直角に降り注ぐようになっていた。
「……だったら俺も一緒だよ」
地面を見つめていた吉川は、間に沈黙を挟みながら口を開いた。
「俺だって、ただ自分が独りになりたくないだけだから」
「本当はグーで殴って欲しいんだけど、…無理だろ?」
そう呟いて、吉川は長嶋に近付き、その手を取った。
自分に出来る限りの力を込めながら、
まもなく消えることになる互いの体温を、静かに握り締めた。
長嶋は言うべき言葉を一つも見つけられないまま顔を上げた。
そして、もう水で侵蝕され尽くそうとしている自分の視界を
どうすることもできない不自由さの中に、
揺るぎない吉川の決意と思いを感じて、激しく震えていた。
”孤独という地獄がどれだけの痛みを持つかなんて、
解らずにいた方がずっと幸せだ。
たったひとりでこの世界に残されることのかなしさを知るくらいなら、
たとえそれが降り続く雨と同じ冷たさになったとしても、
溶け合わないこの温度を共有していたい”
吉川は強く強く心の中でそう唱えていた。
耳を貫くようなあの轟音が再び聞こえ始める前に、
体や服やギターや眼鏡や、自分と彼の何もかもが土の中に沈む前に、
どうか砂粒ほどでもいいから、この気持ちが彼の中に届きますようにと。
「あーあ、俺、馬鹿!」
おそらくもう二度と光の筋を見ることのない空を仰いで、吉川は叫んだ。
「こんな場でみすみす逃げないままでいるなんて、有り得ないよねえ?」
長嶋の視界に飛び込んできた吉川の顔は、寂しげな影を落として笑っている。
情けないほど自嘲的で、でもどこか満足げな笑顔。
たぶんきっと今、自分も同じ類の表情を浮かべているのだろう、と長嶋は思った。
水鏡のような建物の群れがここにはないから、それを確かめる手段は一つもないのだけれど、
幼馴染と言っていいほど長い付き合い故の確固とした根拠が、自負が、
広大な大地に押し付けられた胸の中にあるのを感じた。
「このギター、やっぱり武器だったみたいだ」
重く落ち込んだ雲に向けて、吉川の声は響き続けた。
顔を濡らす雨が、額、頬、顎を伝って弦に落ちていく。
「これは生き延びる意欲を殺す武器だったんだよ」
吉川の笑顔は消えない。
長嶋の顔からも笑みがこぼれた。
崩落の時が近付いている。
訴えられた望みを知りながら、あえてそれを叶えてやらない。
自分の願いを裏切った、その気持ちをいとおしく思う。
そんな倒錯的な残酷さが、ドトールのコーヒーぐらいに長嶋は好きだった。
歌はやっぱりちゃんと歌うよ。二人分。
仕切り直すようにそう言った吉川を見て、
長嶋は今なら、濁った夜空に一粒の美しい星を見つけた時のような気持ちになれると思った。
「…さ、早くしないと」
その言葉と同時に、長嶋の手の平へ冷えた風が当たる。
血の通った細い手が離れて、ギターの上でひとつのかたちを作る。
長嶋はレンズの水滴を気にしながら、それをじっと見守っている。
「歌います。『ラブ・ゲッチュー』」
吉川が弦に指を掛けた。
E♭。
何度となく上がった舞台の上と全く同じように、相方の目の前で。
幾多の透き通った雨粒に混じって、
乾いた小石が一つ、彼の横に落ちてきたことに
長嶋は気がついていた。
【長嶋智彦・吉川正洋(ダーリンハニー)死亡】
(一応コピペ元→
http://that.2ch.net/gline/kako/1042/10426/1042628237.html)
ヤバイ。お笑いバトルロワイヤルヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
お笑いバトロワヤバイ。
まず長い。もう長いなんてもんじゃない。超長い。
長いとかっても
「黒柳徹子の雑談くらい?」
とか、もう、そういうレベルじゃない。
何しろ7スレ目。スゲェ!なんか休みとか無いの。何話とか何章とかを超越してる。無限だし超長い。
しかも登場人物増殖してるらしい。ヤバイよ、増殖だよ。
だって本家バトロワは人数とか増えたりしないじゃん。だってビートたけしがだんだん増えてったら困るじゃん。話聞くのとか超大変とか困るっしょ。
クラスの人数が増えて、最初は42人だったのに、一瞬にして数百人とか泣くっしょ。
だから人数とか増殖しない。話のわかるヤツだ。
けどお笑いバトロワはヤバイ。そんなの気にしない。増殖しまくり。集計屋さんが頑張ってまとめてもよくわかんないくらい多い。ヤバすぎ。
無限っていったけど、もしかしたら有限かもしんない。でも有限って事にすると
「じゃあ、日本のお笑い芸人の総人数ってナニよ?」
って事になるし、それは誰もわからない。ヤバイ。誰にも分からないなんて凄すぎる。
あと超内容濃い。約2,271KB。レス数で言うと5,070レス。ヤバイ。濃すぎ。ショック受ける暇もなく次々死ぬ。怖い。
それに超泣ける。超ボロボロ。それに超のんびり。1年とか平気で経つ。1年て。月刊誌連載でも続かねぇよ、最近。
なんつってもお笑いバトロワは住人が凄い。荒らしとか平気だし。
うちらなんて荒らしとかたかだか事務所スレに出てきただけで上手く扱えないからスルーしたり、煽ってみたり、AA使ったりするのに、
バトロワスレ住人は全然平気。荒らしを荒らしのまま扱ってた。凄い。ヤバイ。
とにかく貴様ら、お笑いバトロワのヤバさをもっと知るべきだと思います。
そんなお笑いバトロワを書いてきた書き手さん達とか超偉い。心底オツカレチャン。超オツカレチャン。
…というわけで書き手の皆さん、応援してます。自分も頑張ります。
>>593の名前直すの忘れてましたヽ(`Д´)ノ バカー
名無しさまダーリン編お疲れ様でした、そして有難う御座います!
まさか読めるとは思っていませんでした、ダーリソ好きなので大感激!
泣きました〜・・・
__∧_∧_
|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
|\⌒⌒⌒\
\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
~ ̄ ̄ ̄ ̄
・゚・(ノД`)・゚・
ダーリンハニー編感動した…。素晴らしいです。
ダ、ダーリンハニーとここで会えるとは…。
しかも泣けるよ・゚・(ノД`)・゚・
バインも大好きなので余計泣けますた…。
書き手の皆様、いつも上質な小説ありがとうございます。
600 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/07/16 06:11
さがってるのでage
601 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/07/20 01:52
書き手さん募集age
爆笑太田の最期以来に泣いてしまった…
リハビリでこのレベルかよ!!
関東若手書いてくださる書き手さん少数派なんで
毎回楽しみにしております。
>>594さんのお言葉お借りして
超オツカレチャ―――ン!!
>580を見て疑問に思ったのだが、誰か亡くなったのですか?
激しく遅レスなうえに無知でスマソ
604 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/07/21 21:53
ほしゅあげ
>603
実際に誰かが亡くなったんじゃなくて、ヒマナスターズさんが
書いてらっしゃる話の中に出てくるマイマイカブリってコンビが
最近解散されたのでその話かと…。
「コンビが亡くなった」って意味じゃないですか?
勝手な予測でスマソ。
606 :
悪魔の叫び:03/07/22 17:35
今回、テスト明けに考えた作品です。作品名「死へのカウントダウン」です。
殺人ゲームを行わなきゃならない羽目になったハリガネロック。
灼熱地獄による体力の消耗、残された食料はわずかそれを巡って喧嘩するハリガネロック。
そんなある日、ユウキロックが倒れて脱水症状になってしまう。どうする大上!!!
↑
は?
>605タン補足アリガトン、その通りです
紛らわしい書き方してしまってすいませんでした
>605さん、ヒマナさん
解散の事だったんですね。
読解力が乏しくてスマソです;
説明マリガトン
λ λ
(´θ`) <バトルロワイアル・・・ロワイヤル?・・・ロワイアル?・・・?ロワイヤル?
久しぶりに来てみたらギブソンと灘儀が・・・。
自分は元書き手ですが、一度だそうとしてましたw
頑張ってください。
612 :
悪魔の叫び:03/07/24 10:53
あー・・。やっぱり・・・。すいません。
作品ですが一ヶ月後の完成を目途に書こうと思います。
一応、606は、予告という形を取りました。
すいません。かならず夏休み中に完成をしますので、宜しくお願いします。
613 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/07/24 18:55
番外編として書くならともかくハリガネはそれなりの経路を辿ってきてるから
書くならそこらへんを考慮してから書いて欲しいな。
606を見る限り何だかなぁ〜・・・読み手が文句言うのもどうかと思うが。
こういう言い方したら失礼だが、ハリガネは巧い書き手さんに書いて
欲しい。615と似たような意見(読み手が〜)スマソ。
606さんは今までのハリガネの経路をちゃんと把握してるんでしょうか?
それをちゃんとわかっててそれでも書く自信があるならいいんだが・・スマソ
618 :
悪魔の叫び:03/07/25 14:08
〔ハリガネロック・大上 /松口 、メッセンジャー黒田 /曾原、中田カウスボタン〕
の4人と共に行動しているんですよね?!
違うんでしょうか?!
すいません。
言い方が酷すぎてすいません。
書く自身はあるんで・・・ちょっと内容変えるかもしれません!!!≪キッパリ≫。
凄い大作を書くんで期待してください。
>>618 自分で大作と言い切られるほどなので、かなりの自信をお持ちなんですね。
一ヵ月後を楽しみに待たせていただきます。
それと、!の多用や、≪キッパリ≫というような表現は
2chでは厨房と見られることが多いので、控えられたほうが良いと思いますよ。
なんにせよ新しい書き手さんに来ていただけるのは
読み手としては嬉しいことなので、頑張ってください。
>>618 いや、そうじゃなくて(w
現在のハリガネの状態でなくハリガネがバトにおいて今まで辿ってきたの経緯は
わかってるよね?という意味で聞いてるんでしょ617は。
あと、お笑いバトロワ内でのルールと状況(ケータイ使用は不可・今誰を勝手に殺してはいけないか
武器状況・禁止エリアなどの設定)などを把握しているのか?という事。
今、頭の中を瞬時に駆け抜けていった文字はハロハロ(略)な訳だが(w
>621
漏れも。
もう夏休みかぁ。
623 :
悪魔の叫び:03/07/25 16:06
そうですか。言葉遣いに注意します。
すいません。これを参考に作品を作ろうと思います。
アドバイスありがとう。
625 :
悪魔の叫び:03/07/25 16:18
sage
>悪魔の叫び
いやいやいや620は読みましたか?
それからsageる時はメルアド欄に「sage」って入れましょうね。
つかこいつ荒手の嵐なんじゃないか?w
OKです。新手の嵐ではございません。
じゃあ今回初めての新作です。
「死へのカウントダウン」
〈お笑いバトルロワイアル〜vol.3〜前スレ718&オリジナル
ハリガネロックは今田さんを探しに出かける途中だった。
仕方が無く工場らしき建物で一泊する事になった。
今田さんは今日一日見つからなかった。
そんな時、朝を迎えた。
なんとこの工場は爆笑問題の田中のフィールドだった。
田中「ここは俺達のフィールドだ。殺人ゲームだからお前らを見殺しにする」
と田中はジェイソンのようにハリガネロックに襲い掛かった。
大上「しゃあないねん。ただ、此処で一泊泊まりたいだけだよ。」
祐樹「しゃあない!!大上、戦うで!!」
大上の武器は、以前ゲットした角材と祐樹は以前ゲットしたバッドで応戦した。
田中「お前ら、このチビを倒せるのかよ。アハハ、お前らには地獄しかないんだよ。ハリガネロックさん!!お前ら、ビリな癖に、M−1も中途半端でやめちゃって!!お前らには、此処がお似合いなんだよ。」
田中の手にはなんと猟銃があった。
田中「どっちが死ぬんだ。大上かそれとも祐樹か。ふふ〜〜ん。」
祐樹「俺が死ぬ。俺が死ねばええんやろ、なぁ大上!!」
大上「良くないわ!!お前に死なれて貰ったらこまるんや。」
祐樹「ええんや。俺は、お前に生きていて欲しい。田中、俺を殺せ!!」
大上「だったら俺も殺してくれ!!!」
不敵な笑みを零す田中。
田中「二人をお望みどおり殺してやる。1時間後、此処で待ってろ。逃げないように、イスに手錠を掛けるからな。さぁ早く!!」
素直に従うハリガネ。
椅子に手錠を括り付けられたハリガネ。
祐樹「俺ら、一時間後には居ないだろ。」
大上「うん。祐樹、目を瞑れ」
祐樹「なんでやねん。」
祐樹にキスをする大上。
大上「俺は、お前の事が好きだ!!死ぬ前に言いたかった。」
祐樹「えっ!!なんでやねん。俺達、男や。やめろ、最後にキスするなんて。俺もだよ。」
大上にキスをする祐樹。
〜終わり〜
[田中とハリガネロックの対立&男同士の恋]
うわぁ・・・・あかん!!!やっぱりアホです。完全にハリガネロックをホモティカルに表現してしまった。
634 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/07/26 14:35
あのね、以前ヤオイ小説を書き込んだ奴が叩かれてたのは
ちょっと過去ログ読めばわかる事でしょ?
そういう小説を書き込むところじゃないの、ここは。
それに、
名前「セリフ」
なんて書き方してあるものを小説なんて言えません。
中学を卒業するまではロムってなさい。
脱力。
期待した人が気の毒だ。
あまりの酷さに久々にワロタ。なんだこれはwこれが凄い大作なのか?
やっぱりハロハロ(ry
書きたい物書くのは結構だけど、ちゃんとそれぞれの性格を把握してから書け。
爆笑田中に愛着ある奴だっているんだ。
中途半端に名前を使うな!
そうだよ。性格を悪く書く・・。それが悪魔だ。
だから一見いい人そうでも悪い奴がいる。だから田中さんを悪魔っぽく書いた初の小説だ。
性格がどうとか以前の問題だよな、もう。
だれかネタだと言ってください。
まあまあ、こんなもんだろう。
最初から、みんなうすうす予想していたことじゃないか。
皮肉も罵倒も通じないだろうから、スルーということで。
つか完全荒らしだろ。もし本人が荒らしているつもりなくとも他人が荒らしだと思えば荒らし。
ヤメロって言っても多分コイツ書き続けるでしょうしw
>>640の言う通りスルーしましょう。
いやいや、今読んだが面白かったYO!w
>田中「ここは俺達のフィールドだ。殺人ゲームだからお前らを見殺しにする」
見殺しって、殺されかけているのを敢えて見ぬ振りして放っとく時に使う言葉ではないのか?
あとワラタのはハリガネとそんな面識ない爆笑の田中が松口の事「ゆうき」って読んでることだ。
ここは合コン会場かと小一時間問い詰めたい。
じゃあこれは番外編っていう扱いでスルーって事でいいんでしょうか?
でもこればっかりは自分一人の意見ではどうとも言えんので住人さんの意見も聞きたい・・・。
>>642 合コン会場ワラタ
確かに不条理さと矛盾を全面に押し出したギャグだったね。
祐樹「やめろ、最後にキスするなんて。俺もだよ」>どっちだよ。
関西弁と標準語の気持悪い混ざり方といい、
話の流れとしての突っ込みどころの多さといい、最強だな。
自分もスルーに一票。
それと反応の多さに住人がまだまだ居るんだなあということが
分かったので、ちょっと嬉しかったよ。
今更かも知れないですが、ロザンの天国編をかいてもよろしいでしょうか?
文句無しにスルーだろ。ありえん・・。
ここで発表する前に散々忠告されて
それに一切耳を貸さなかったあたり
「“自覚無しのリア厨”を装った荒らし」だと思いますが
どうでしょうか
こんな事だろうと思ったよ。
上のヒマナスターズさんを含む書き手さんの作品を
読んだかい?おそらく読んでないでしょ。
人並みの読解力と理解力があるならば、それに続く作品として
こんなモノあぷしようなんて思わないでしょう。恥ずかしくて。
ある意味で露出狂だね。マジならば。
スルー出来なくて申し訳ない。
私も厨だ。なのでsage
――びっくりした。ハリガネ完結か!と思って喜んでたら。
間違ってスペースキー押しちゃったけど結果オーライだ。
>644
確かに今更な気もしますが、是非お願いします。
どなたかスピワの続きを書いて頂けませんか?
歯切れの悪い終わり方になってるみたいなので…
ぜひぜひ。
>>650 そういや、てっきり二人とも死んだものだと思っていたけど、
今、読み返してきたらそこまで書かれてなかったね。
続きがあったのかな。
>>550-559 の続き。
「むぅ・・・・・・・・・。」
地震の影響で家具があり得ない傾き方をしている畜産家の母屋の一室で。
村田は腕を組み、小さく唸っていた。
これまで大した手荷物を持ってきていた訳ではなかったが、
いざここから離れるという事になると、男と言えども身支度に案外時間が掛かる。
今までの体験から考え、ここから着替えを持って行くべきか。
それとも荷物が多いといざという時不便だから、やはり着の身着のままで居ればいいのか。
酒蔵で発見したヘネシーの高そうな奴と子供部屋で見つけた漫画本、
そしてタバコの類は頼まれずともとりあえず持っていくつもりだけれど。
「・・・まだここにいたのか。」
怒っているとも呆れているとも判断できない、ボソッとした呟きと共に桶田が部屋に入ってくる。
「早くしないと・・・ここからは一刻を争うのだから。」
「・・・悪い。」
村田は小さく答えて、手早く半ば手当たり次第に荷物をバッグに詰め込むと
最後にそこに落ちていた白いタオルを拾い上げて頭に巻いた。
「何だ、それ。」
クスリと笑みを洩らし、桶田が問う。
「大竹さんの劣化コピーでも気取りたいのか?」
「いや、そのつもりは無いんやけど・・・何か頭そのまんまやと落ち着かんから。」
しょうがないやん、もう年なんやし、と。唇を尖らせて村田は反論して。
「それはともかく、準備できたで。次はどこ行くん。」
雑多な物で膨らんだバッグを拾い上げながら桶田に訊ねた。
「そうか。 ・・・あぁ、そうだ。ついでにこれも持っててくれるか。」
軽く頷くと、桶田は付け加えるように言いながら、村田にスポーツバッグを手渡してきた。
村田が持っているバッグも、このスポーツバッグも、小振りではあるため
彼が両方を持ち歩く事に対し、特には反論はないけれど。
「・・・・・・・・・・・・?」
村田は一瞬スポーツバッグを手にしたまま、不思議な感覚を感じていた。
・・・・・・これ、どこかで見た事があるような。
『・・・村田さん、おはようございまぁす!』
明るく言い放つ誰かの声が村田の脳裏に響く。
「・・・どうした?」
「いや、何でもない。」
とは言え、別にこれ自体はどこにでもあるデザインの物。
偶然一致しただけだ、と自分に言い聞かせ、村田は不思議そうに覗き込んでくる桶田に答えた。
「それよりも・・・どうしたん、これ。」
「下の階に落ちていた。 じゃあ、行くぞ。付いてこい。」
そう言い残すと、スタスタと歩き出した桶田の後ろ姿を追い掛けながら
村田は早速ファスナーを開けて中を覗いてみる。
どうやら中にはバズーカ砲が入っているようであるが・・・・・・バズーカ砲?
「何、これ・・・・・・って、玩具やないか・・・。」
バズーカ砲が無造作に入っているその様に驚いて。村田は思わず声を上げるけれど。
実際に手に取ってみれば軽く、そしてプラスティックの手触りが
コレは決して恐ろしい物ではない事を如実に村田に教えてくれる。
「使い方によっては何とかなるだろう。」
先に階段の下から、桶田が答える声がした。
確かに遠目からだったら本物のバズーカ砲と勘違いして貰えるかも知れない。
・・・ハッタリの世界やな。
村田は呆れたように呟き、バズーカ砲をしまい込むと、桶田の後を追い掛けた。
車は松丘が乗って行ってしまった事もあり、畜産農家からの移動は徒歩である。
日が沈み掛けた薄暗い中、鞄を肩から下げ、彼の定めた目的地へと黙々と歩んで行く
桶田の後ろを追い掛けながら、村田は歩きで急いで遠くまで移動する事のもどかしさと、
暗闇への恐怖をひしひしと感じざるを得なかった。
・・・そういや、逢魔が時てこないな時間帯を指すんやったっけ。
そんな事をぼんやり考えながら、ふと振り向いて山の方を見れば煙が上がっており、
山火事だろうか。うっすら赤く染まっているようにも見える。
「なーぁ。」
桶田の方へと向き直り、早足になって追い掛けながら。村田は前方の男へと呼び掛けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
桶田からの返事はない。
「なぁーったら!」
もう一度、今度は大きめの声で呼び掛けてみるも、また桶田は言葉を返そうとはしない。
「おい、聞いとんのか? 返事せぇよ!」
最後にややキレ気味に声を上げると、ようやく渋々といったように桶田は後ろを振り向いた。
しかしその歩みが弛まる事はない。
「・・・何だ? 何か聞きたい事でも?」
必要以上に素っ気ない口調で訊ねられ、村田は安堵すると同時に逆に困ってしまった。
こちらは単に沈黙が厭で、声を掛けたに過ぎないのだ。
どうせここからの行き先やら何やらを訊ねても桶田は答えてくれないのだろうし。
かと言って、このシチュエーションで呑気に世間話を始める事もできない。
「なぁ・・・そう言えば、どうやってここまで侵入して来られたん?」
しばらく考えて、村田はこれなら、と思った疑問を桶田にぶつけてみた。
「そもそも俺らかてこないな事になるとは知らんかったのに・・・」
「それは・・・言えない。」
しかし、その疑問も桶田にとっては答える事の出来ないモノだったらしい。
「ただ、離れているからこそわかるモノもある、という話だな。要は。」
そんなフォローもあったけれど。村田の知りたい答えにはなっていない。
仕方ないか、と思うと同時に
・・・こんな時、松丘が居てくれれば。
ふと、そんなタラレバ思考に村田は襲われる。
あれも孤独とか沈黙とかを嫌う傾向があるから、一応話を振れば何かしら返してくれたはず。
そう考えれば奴がいた事でも、一応エエ効果があったという事だろうか。
「じゃあ・・・その・・・・・・松丘の奴、無事かな。」
「・・・・・・・・・。」
仕方なく捻り出した次の話題にも、桶田は無言のままで応じすらしなかった。
何とも言えない気まずい空気が漂い始めている事に、村田は気づく。
「あぁ、もうエエわ。悪い。俺なんて邪魔なだけやったな。」
向こうに聞こえるような音量で言い放ち、村田はため息を付いた。
何でこんな事してるんだろう。
これから何をするかすらわからないまま。
いや、何をさせられるかすら知らされないままで。
・・・ホンマに、俺、このままで大丈夫なんやろか。
路上を覆う闇が、村田の思考にも静かに忍び寄ろうとしていた。
前回UP分の自己フォロー。
>>559で登場した『小林くんと大渡くん』は元ブラジル代表の、
同じく『キー坊くんと岩澤くん』はプロペラZのお二人です。
佐野さんに関しては次辺りで説明しますので、ここではパスという事で。
あと、毎回レス返しできませんけれど、感想のレスには感謝感激しています。
ようやく後半に入った遅筆ぶりですが、どうぞよろしく見守って下さいませ。
今、陣内の話書いている方いますか?
>>657 もう先に宣言した人がいるYO
書き手の会議板を見れ。
小蝿さん
新作キタ〜!(AA略)
おもちゃのバズーカ砲.これがいかに活躍して行くか
そして今後の動向が気になります.
ちなみに元ブラジル代表はオンバトで前説をしたそうです
いつか彼らのネタを見てみたいです
ヒマナスターズさん。
やっぱりヒマナさんの作品はステキです.
状況描写もせりふの言い回しも
サムイわけないです。むしろカコイイ!
ホリプロ下層編.続き楽しみにしています.
すんません。
ハリガネの話とかって、書いてもいいんでしょうか?
自信はサパーリですが…(あ、荒らしじゃないです…)
イーのでないでしょうか?
誰もキープしてる人いないみたいですし。
>>660 最期まで書き切る気が無いのならヤメトケ。
最期まで書ききらなくてもいいじゃん別に。進めれば。
書き手さんにも時間とか予定の都合あるんだから無茶言うなよ…w
(^^)
書き切れなかったらスマソ。出来るだけ、やってみますので。
スレ6 >>595 続き です。
荒い、息遣いだけがその場を支配する。
誰も喋らない事が、緊張した間をさらに誇張していた。
重たく圧し掛かる間。自分から臭う血の臭いが、吐き気を誘った。
『今田ぁ?』
『はい』
眉間に皺を寄せ、カウス師匠は訝しげに自分を見つめていた。
『それ、信用出来るんか?』
『…判らん』
黒田の言葉に、かぶりを振る。
『でも』
『行くしか、ないやんけ』
先の見えない戦闘。
気の違った同業者が、恐怖に怯えながら憎みあう。殺しあう。
記憶が無いとはいえ自分も、殺しているのだ。きっと。
どうすればいいかなんて、知らないから。
ただそこにある”もの”を追う事しか、今の自分たちには出来ない。
考えを察したのか、反論を何も考え付かないのか。
誰も、否定も肯定もしなかった。
歩きながら話すのは危険だ。考えなくても判る。
相手に気付かれ、銃で撃たれたらそこでお終いになってしまう。
…生きて、どうする訳でも無いけど。
いや、そんなことよりも、大上が心配だった。
―――多田。
『あの時、殺しといたらよかった。』
大上が、あいつに、傷を負わされた。
不意に、目の前に赤く、フィルターがかかった様な視界が広がった。
心臓が脈打つ音が徐々に早く、大きくなる。
体が、毒々しい憎しみに侵食されていく。
…嗤い声が、聞こえる。
「松口!!」
後ろから肩を掴まれ、ハッと我に帰った。
「大丈夫か?お前―――」
曾原が、心配そうな声をかけてきた。
「…おん」
振り返らずに、返事をする。
首を横に振って、必死に理性を取り戻そうとする。
口元に浮かんだ笑みが、消えない。
歩き始めて、数分。
意外と近い所にそれはあったが、気付かないまま皆通り過ぎたのだろう。
マンホールの中。
どう開けたのかは知らないが、これは身を隠すには最適だと感心した。
外からの分析もそこそこにして、中に入り、目を凝らす。
後ろからの明かり。黒田が、手に持った懐中電灯で中を照らしていた。
「大上!」
「おー」
気の抜けた返事に、へらりとした笑い。
大上や。
壁にもたれかかって、別れる前よりもどこか弱々しいが。
長い腕で脇腹を押さえている。刺されたのか。多田に。
苦々しい思いで大上を見つめると、癖のように悪態をついた。
「ホンマにお前は、先輩に迷惑掛けよって…
どんだけパッパラパーやねん、ボケ」
近づいて、頭を軽く叩いた。
安心感。顔に張り付いていた笑みも、消えうせていた。
自分にとって、絶対的な存在。
良くも悪くも、全てを握っているのは、大上。
唯一の気の拠り所。きっとこの男がいないと、自分はここまで
出来なかっただろう。
別れた後の自分の不安定さが、それを確信させる。
「…感動の再会はそれまでにして、や」
ボタン師匠が、ぽつりと呟くように言った。
「これからどうするか、考えよか」
皆、無言で頷いた。
一番傷ついている大上の元に集まり、地図を広げる。
隅には見覚えのある芸人の名前。
共通点は、皆、もうこの世にはいないという事。
視線に気付いたのか、地図の所有者である曾原が頭を掻いて、溜息を吐いた。
「途中まで、せめて知っとる奴の名前書いとったんやけどな…」
アホらしなって。
自嘲するかのように吐かれた一言に、誰も何も言えなくなってしまう。
曾原はまた頭を掻いて、
「まぁ、とにかく考えましょか」
と師匠2人に促した。
「そやなぁ…」
「あ、あの」
「何や」
所在無さげに、大上が声を上げる。
「俺ら、今田さん所向かおうと思うんですけど…」
その言葉には、皆はどうするのか、という意思が込められていた。
「俺は行ってもええけどなぁ」
黒田が、軽く言いのける。
「ええんか?」
「…宛てがある訳ちゃうし」
な、と曾原に同意を求める。
彼も慌てて頷いて、それからカウボ師匠に視線を向けた。
「俺は、ごめんやで」
もう感想を書き込んでも大丈夫なのでしょうか?
>>665〜
>>668 乙かれです。
ちょっとした騒ぎの後だったので少し不安に思っていたんですが、
読みやすく、とても面白かったです。
これからの展開も気になりますし、できたらハリガネ編の終わりまで
読ませていただければ嬉しいです。
ありがとうございます。
初な上に自分の不出来に、内心心配だったのですが。
本当に、ありがとうございました。
では。
>>668 続き
カウス師匠が、驚いて隣を見やる。
冷めた目で俺らを一瞥して、一言。
「…手負いを連れてくほど、俺らにも余裕無いわ。
それに、メッセ持ってかれるのも困る。行くんやったら二人で行け」
びく、と隣の大上の身体が揺れた。
視線が、自然と大上に集まる。
「…そうですか」
大上を庇うように、わざと感情を殺した声で、言う。
誰も声を発さない。音すら、たてられる雰囲気では無い。
酷く、可笑しかった。
「じゃあ、ここでサヨナラですね」
ちゃっ。
銃を、構えた。弾は装填してある。
今度こそ、顔の笑みは消えなかった。
「…お前、」
信じられへん、といった口調で曾原が声を上げた。
大上は声も上げられない程狼狽しているようで。
さぁさぁと雨が降る音がする。
聞こえるはずが無い。外はきっと晴天だ。
脳裏に浮かぶ。真っ赤な、鮮血のような雨。
なぁ、誰か教えてくれや。
増田を殺したとき、どんな顔しとった?
大上を殴った奴を、どうしたんや?
手が震えているのは、恐怖からなのか。
それとも、ヒトを殺せる喜びからなのか。
「まぁ、待てや」
黒田が、重い溜息を吐いた。
「松口。ええから銃下ろせ。」
「…アホか。何いうてんねん」
「そんなんせんでも、どうせ死ぬがな」
凛、とした黒田の目が、松口を捕らえた。
「お前普通にヘタレやんけ。俺ら殺して、保てる神経無いやろが。
…最期は、適当にそこらの奴にしてもらうわ」
苦笑い。
「お前は、大上と行け。
お前に、殺させたく、無いねん」
そう言った黒田の目は、優しさに満ちていた。
「…似合わん事言いよって」
俺は、気が抜けて銃を下ろした。
〔ハリガネロック、メッセンジャー・中田カウスボタンと分離〕
672 :
名無しの新星☆:03/08/04 04:25
活気を取り戻したな、バトロワスレ。
書き手さん乙かれさん。読みやすく、簡潔だ。
ここで提案。もう解散したコンビは参加から外した方がいいのでは。
冷やし中華とか。まだ生きてるが。
出張ったマネしてスマソ。逝ってきます。
既に参加して生存中なら外すとややこしいことになるんでは?
柵原
675 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/04 09:37
鬱欝蔚
>>671 続き
「…で、や」
二人を見送っていた黒田が、振り返って、3人を見やった。
不安そうな曾原。
それと―――
腰ベルトに手を掛けるカウス師匠。
「どうするつもりで?」
相変わらず冷静な黒田に、曾原は驚く。
冷たく師匠を見る相方の目に、少しぞっとした。
しかし、師匠も黒田を睨みかえしている。
いや、睨んではいない。
その瞳は、慈愛に満ちている。
まるで、自分の子供を見るような親の目。
悲しそうに光っているのに、黒田は気付いてはいない。
「…もう、潮時や」
安全装置が、外される音。
自嘲気味に笑っているカウスは、どこか狂気じみたものを感じる。
ボタンはただその相方を、見ているだけ。
黒田は目を見開いて、背中に冷や汗を流した。
「何、しとんねん…!」
頭に突きつけた銃口。
このまま引き金を引けば、確実に、カウスは死ぬ。
「待って下さいよ!何してんすか!!」
「うっさい!黙らんかアホ!」
混乱した曾原の声をボタンが遮る。
気付けば、ボタンも手に、出来の良いとはいえないナイフを握っている。
―――胸を刺すぐらいなら、出来そうな。
瞬間的に感じる。
二人の決意は、固い。
>>534 ≪はぁ・・・はぁ・・・なんやねん、あいつ!!!くそ!!!!!!≫
中岡に鎌を突き立てられた背中に手をやる。ヌルッとした感覚とともに激痛が背中に走る。
≪痛っ!!≫
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い
突然視界がグラリと揺らぎ、世界が向を突き放したかの様に遠ざかっていく感覚に襲われる。
フラフラとした足取りのまま向は舞うようにその場で体を左右に揺らし、そのままその場に
ドサっと倒れた。倒れた向を迎え入れるように赤い血が広がっていった。
【死】というモノを初めて知ったのはいつだったか?
向は広島県福山市という所で生まれ育った。
向はあまり外に出るタイプではなく外で泥だらけになりながら遊ぶのなら家で漫画を
読んでいる方が好きな少年だった。ある夏、それでは不健康だと親に小さな森へ
麦わら帽子に虫取り網というスタイルで虫取りに連れて行かれた。
最初は乗り気ではなかった向も次第に必死になりだし網を振り回しながら虫を追いかけまわした。
しかし運動神経の優れてるとは言えない向には蝉の一匹しか取れなかった。
取れた一匹の蝉は小さなカゴに入れられ、はちきれんばかりの鳴声を上げていた。
向は嬉しそうにカゴを胸に抱え、蝉は向の初めての『従者』になった。
しかし次の日、向がカゴを覗くと『従者』は物の様にカゴの中で転がっていた。
二度と動く事もなかったし声を上げることもないんだなって感じた。
母親が「あら、死んじゃった?寿命ね、蝉は一週間しか生きられないの。埋めよっか」と言って動かなくなった『従者』を
ティッシュで汚い物を触るかのように包みつまみあげ、庭に放り投げ軽く土をかぶせると
何事もなかったかのように台所でスパゲティーを作り始めた。
その夜、向は自分が冷たくなり埋められる夢を見た。
「あら、死んじゃった?」という声が向の頭の中をグルグルと回った。
朝が訪れ、向は母が『従者』を埋めた場所へ行ってみると『従者』は埋めかたが浅かったせいか
地面から体が半分のぞき大量の蟻がそれに群がり『従者』の体を蝕んでいた。
その残酷な姿に一歩引き下がろうとした向は指を生い茂る草で切ってしまい
指に赤い線が引かれチリチリとした痛みが広がった。
プクっと溢れた血が死者である『従者』の上に落ちた。
群がっていた蟻が大げさに逃げていき『従者』の上に血が広がっていく。
その光景が幼い向にはなぜか美しいモノとして映った。
それから虫や動物に自分の血をたらして遊ぶのが向の楽しみになった。
痛みはあったが生物が血に濡れるさまは甘美で幸福だった。
いつしか向は恋を覚えお笑いを知って夢中になり、幼い頃の遊びなど
忘れていった。戦場(ここ)に来て人を殺るまでは・・・・。
「ん・・・痛っ」
かすれる視界に木目の天井が入ってくる。
痛みは相変わらずだが疲れは不思議とない。
「大丈夫ですか!?よかった〜、意識戻ってくれて」
ギシギシと機械のようにぎこちない動きで首を声のした方に動かすと
そこにはNONSTYLEのツッコミ井上が立っていた。
「めっちゃ血出てたからもうあかんて思いましたよ。でも出血のわりに傷は浅いみたいです」
井上は起き上がろうとする向を「無理したらダメですって」と諌め
向を見つけた経緯から今に至るまで事細かに語り始めた。
ここは井上が隠れ家としていた民家らしく向はどうやら丸一日眠っていたらしい。
井上は向をゆっくりと起こし服を脱がして傷口にお酒をかける。
「いっ・・・」
「我慢してください。消毒液があったら一番ええんですけど・・代わりになるもん
これくらいしかなくて。だいぶん傷口ふさがってきてますよ」
井上は清潔そうな布を探し出しそれを裂いて向の背中に巻きつけた。
「あ・・向さん、せっかく教室でるとき誘ってくれたのに行けなくてすいませんでした。
その・・・俺、相方石田と待ち合わせしてたんですよ。石田と相談して行くか行かないか
決めようと思ってたんですけど、その・・石田が来なくて・・・名前は呼ばれてないから生きてるはず
なんすけど・・・あいつ弱い奴やからノイローゼにでもなってなきゃええけど」
井上は以前の井上ならしないハハッと嘲笑を含んだ自虐的な笑いかたをした。
「俺・・あいつと一緒に今まで精一杯やってきたつもりやったんすけどね。結局、信頼されて
なかったんかな・・みたいな。基本、疑りぶかい奴やったんですけど俺はさすがに・・って
変な自信持ってて・・アホですよね。・・・あ、すいません」
井上はうつむき急に黙り込んだ。向はなぜだか理解できなかったが相方木村が死んだ向に
相方の話をするのは申し訳ないと思ったのだ。もちろん今、目の前にいる向が木村を殺したなんて
井上は夢にも思っていない。
「俺が寝てる間の放送・・・。」
「あ、メモっときましたよ。ここがEの〜〜で禁止エリアには全然引っかかってません。」
「ブロンクスは?」
「え?あ・・唐戸が・・呼ばれて・・・・」
井上は辛そうに顔を背ける。
「唐戸だけ?」
「はい。」
「そうか・・・」
遠い目をする向を井上は不思議そうな顔で見つめる。
「あっ!!!!」
「どないしたんですか!?」
「俺のカバンは?」
「あ、そこに・・・」
井上の指差す方に見覚えのあるカバン。
痛みも忘れてカバンに駆け寄り中身を確認する。
カバンを開けた途端かるい腐臭が向の鼻を突き、そこには木村の首が変わらず入っていた。
腐臭は向の暗い部分を増大させていく。闇は波となり向の心を跡形もなく飲み込んだ。
「中・・見た?」
「いえ。勝手に見るんはこんな状態でも失礼かと思って」
見ていたら自分をここに招き入れ看病するなんて芸当できなかっただろう。
井上の言葉に嘘はなさそうだ。
井上は嬉しそうに「あ、向さん僕と一緒に行動しませんか?実はねー、僕も一人で寂しかったんすよ。
西野も唐戸も死んでもうたし・・ね、一緒に行動しましょ」と向に誘いかける。
一緒に行動
笑える。何人もの仲間を殺した人間と共に行動?
喉が渇き水を欲するように心が渇き血を欲する自分と共に行動?
何も知らずニコニコしてる井上の白い首にナイフを突き立ててやたい願望に駆られてる自分と共に行動?
「寂しかったんや?じゃあ、皆のとこ逝くか?」
「えっ?」
「皆死んだ。俺が殺した。でも皆生きてる。俺の中で真っ赤に染まりながら幸せに生きてる。
お前もその仲間入り・・しよか」
「な・に・・言うてはるんすか・・?」
向の冷たい手が井上の頬を撫でる。
向の手に付着していた血が井上の顔につき引きずった跡のように赤い螺旋を描く。
≪気持ち悪い≫
ゾワゾワとした感覚が腕に走り、鳥肌がたつ。
拒絶したいが気づくと向の逆の手にはナイフが握られ矛先は井上の腹にむけられている。
「人を切り裂くのってな手応えないねんで。まるで豆腐に包丁を入れるように
ナイフは人の体に収まっていく。真紅の血が噴出し、あたりは薔薇が咲いたかのように
色鮮やかに染まる。美しいと思わん?」
井上は声がでない。恐怖でガクガクと震え、見ようによっては頷いているようにも見える。
向は狂気に満ちた笑顔を見せるとナイフを井上の腹に押し当てた。
手応えはやっぱりなかった。井上はゆっくり倒れていった。
それから向は井上が死んでいくさまを、じっくりと観察した。
心が躍った。自分の中で自信と狂気が満ち溢れるのを感じる。
興奮した。今までにないくらい興奮した。それは性的興奮にも似ていた。
背中の痛みなどすっかり消えていた。
人を殺す=完全体へのステップ
人を殺す=最高の快楽
人を殺す=自己実現の手段
この構造に贖うことはできない。
向は快楽に酔いしれながら、この瞬間を永遠にするために井上の首を切り落とし
木村の首と同様、カバンの中にいれた。
カバンがずっしりと重くなったが、それがあの瞬間の結果だと
思うと重さなんて感じなかった。それより至福の瞬間の余韻を楽しみながら向は
うっとりと恍惚の表情を浮かべた。
以上、需要があるのか分かりませんが天津の続きです。
相変わらず長いしまだ続きそうです。
とりあえずブロンクスがツナギを止めてしまったのどうしよう・・・。
B9さん>>
乙です。
いつも楽しみにしています。
向がますます狂っていってますね・・・。
B9さん、かなりいいです!!
出して頂きたいガブがまだけっこういてるので楽しみに待ってます。
ブロのスーツはこれからもなんですか?
ツナギのイメージが強いから変な感じだ。
B9さん、乙です!ガブ好きなのでいつも楽しみにさせて頂いてます。
向…。また情景がリアルに浮かびそうで凄いですね。
個人的には中岡がカコイイキャラで嬉しいです。
中岡には亡き唐戸の分まで野口と強く生き残って欲しいです…。
乙
【NONSTYLE 井上死亡】だよね?
690 :
名無しの新星☆:03/08/12 03:15
書き手さんどした?また放置状態突入かこのスレ。
>>690 ・コメント、感想、励ましメッセージ、注文などはsage進行で。
・書き手に過度の期待は厳禁。書き手さんだって、書けない時もあります。
作品うpの間隔がこれぐらい空くのはこのスレにとっては普通だろう。
書き手さんには何の異変もないと思われ。
あのう…飛石連休+福田哲平の天国編を書いても良いでしょうか?
693 :
名無しさん@お腹一派い:03/08/12 22:58
スマソ。終わった事だが叫ばせてくれ
何でハリガネファソには勘違いイタタが多いんだ!
悪魔の叫びは知らないが、ハロハロとかデッドロックとか…
漏れもハリガネヲタだが、ハリガネスレ外に厨が多杉。
激しくスレ違いスマソ。流して下さい。
>>650さんに便乗するみたいですが
スピードワゴンの続きを書いてもいいですか?
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
>>695 終わった事だが禿同。同じハリガネヲタとして恥ずかしい。
>>696 是非お願いします!
気になっていましたので有難いです。
699 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/15 21:29
青空は、生きてますか?
>>699 シュガーライフと共にすでに殺されてる。
>>699 まとめサイトのレギュラー西川編に出てきてるから見てみたら?
それでは僭越ながら、スピードワゴンの続きを書かせて頂きます。
前スレ814の続きになります。
ヘタレっぽい文章かもしれませんが、生暖かく見守ってやって下さい。
井戸田の手の震えは一向に止む気配を見せない。それどころか、
その震えは体中あらゆる箇所へ伝播し、もはや立っているだけで精一杯だった。
それだけではない。精神的にも、彼は限界だった。
彼の精神を成す様々なものが――道徳やら倫理やら、果ては夢や希望に至るまで――
音を立てて、崩れだしてしまっている。
自我の残骸の中で、ただひとつ分かるのは
何もかも分からなくなった、ということのみ――。
「ほら早く、いつまで待たせんだよ。」
事も無げに小沢が言う。俺の相方であるこの男も、今となっては恐怖の対象、そして
混乱の元凶でしかなくなっていた。憎たらしくも不自然な笑顔で、彼は続ける。
「お笑いで天下取るんでしょ?それが潤さんの望みなんでしょ?
お客さん、みんな待ってるよ。早く俺を撃ち殺せって。」
ふっ…と、俺の脳裏に、何かがゆらめいた。まるで白昼夢のように。
…そうだ、俺は芸人だ。客が見ている。今まで経験したこともないほどの人数が
このショウを見ているはずだ。この殺人ショウを。この客のためにも…
俺は、小沢を殺さなくてはいけない。
がたがたと震え続ける脚に無理やり力を入れる。焦点を、相方の目に合わせる。
滑稽な事だが、銃身は小沢が支え続けてくれている。外す訳がない。
ふと、銃身を握りしめる小沢のその手が、異常に汗まみれなのに気付く
…それが、何だ?
息を整えるべく、俺は空を仰いだ。
目を潰し身を焦がす太陽。青い空。その下で相方を殺す俺。俺に殺される相方。
埋められた3つの死体。青い空に映える赤い血。伝う汗。数多の客。視線。拍手。
「殺せ」の声。「死ね」の声。笑い声。哂い声。俺の望むもの。
気づけば、俺を囲んでいた…下卑た喚声が。耳を突く嬌声が。歪んだ笑顔が。
…俺の、望むもの?
ほんのささやかな疑念が、俺の中の何かを引き裂き――
「うあああああああああぁぁぁっっっ!!!」
俺の相方、井戸田が急に悲鳴を上げた。一体何が起きた?
…途中まで上手くいってたはずだ。間違いなく、俺を殺そうとした…。
「違うっ!こんなんじゃない!笑い声を上げるな!黙れ!」
――彼には、何が見えているのだろうか、何が聞こえているのだろうか?
何かを避けるように、何かを罵倒するように、頭を振り、耳をふさぎ、奇声を上げ、
今にも発狂せんばかりの勢いだ。これ以上騒がれては、他の奴等に見つかってしまう
…それどころじゃない。こいつそのものが、やばい。
俺は声をかけながら、名前を呼び、頬を叩き、両肩を強く揺さぶった…やがて
彼は頭を擡げ、がくんと後ろに反らした。と同時に、操り糸が切れたように崩れ落ち、
俺の腕をするりと抜け落ちた。…奇声は、どうやら止まったらしい。
しかし、彼の恐怖は、まだ覚めないようだった――彼は呟き続けていた。
「黙れ…黙れ…黙れ…黙れ…黙れ…黙れ…黙れ…」
見開いた彼の目に、俺の姿は映らない。
ぺたりと座り込み、表情を失った彼の顔は空に向き続けている。
もし彼の両手を組ませれば、神に祈りを捧げているようにも見えた。
――今だから言えるし、今だから分かるけど、俺はお前に生き抜いて欲しかったんだぜ。
本当に。そもそも初めっから、こんなモノでお茶の間を沸かせてやろうなんて
思いもしなかった。だってさ、よく考えてみろよ。
こんなの、全然面白くないじゃん。
なのにみんな芸人魂とか言っちゃってさ。人殺しの何処が芸だって言うのか…。
だから、俺が考えた事は、ただ一つ。お前を生き残らせるって事だよ。それだけ。
それだけ思いついて、でももう俺半分ぐらいイカレてて、変に慌てて、まともな事
思いつかなくて、ただ一つ分かったのは、お前は人を殺せる強さを身に付けて、
俺はお前より先に死ななくちゃいけないっていう、そんぐらい、しかもあんな状況で…そう、
俺は、助けようとした、助けようとした、助けようとはしたんだ……
彼は泣いていた。頬をすべる雫もそのままに。
彼の相方は、生きてはいるが、もう「この世界には」生きていなかった。
――これも、見る人が見れば、青春って事になんのかな。
愛とか、友情とか、暴力とかって勝手に言ってさ…残酷だよな…
だって俺は、お前を生かそうとしたのに…
彼は手の中の拳銃を見た。相方から奪った銃。彼の相方が、彼を殺すはずだった銃。
――こんな形で、お前を助けなきゃいけないんだもんな。
小沢は、井戸田の眉間に向け、銃を構えた。
それに気付いた井戸田が顔を上げて、小沢を見つめた。
視界がぼやけて、小沢にははっきりとは見えなかったが、それでも、感じた。
自分を見つめる瞳が、とても穏やかなものである、と。
ごめん、などとはとても言う気になれず、
その代わりに彼は真っ直ぐ、その瞳を見つめ返した。
ぱぁん。
乾いた音。この異常な世界で、聞きなれた音。 …そして、もう一度、同じ音。
しかし、その音を聞けた者は、そこにはもういない――――
【井戸田潤・小沢一敬(スピードワゴン)死亡】
どうでしょうか?
何かあったら、遠慮なく言ってください
乙です。
キチンとした形で彼らに終わりが付いてよかった。
小沢がカコイイね。潤も最後は正気っぽくて彼らしいや。
全然ヘタレ文じゃないですよ。
709 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/16 11:02
まとめサイトどこー?
710 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/16 12:42
まとめサイトハケーンしたのでいいです。
青空のいきさつ(?)が見たいっす・・・・
そこおしえて〜
712 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/16 12:58
ありがと!!
714 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/16 17:29
保守アゲいん
715 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/16 20:14
>>702-
>>706 お疲れ様でした。
ちゃんとした形で、ワゴンの最期が見届けられて良かったです。
ザァさん…ロックですねえ…。
うわー!
飛石連休+鳥居嬢の遺体は
スピードワゴンの二人が埋葬したものだと勝手に思い込んでたー!
>>703の「埋められた」は、削って読んでください。本当スミマセン。
718 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/18 08:43
保守age
保守。
続きが気になる。
それでは、飛石連休+福田哲平の天国編、書かせて頂きます。
ヘボです。期待しないで読んで下さい。
ゆっくりと死んだ藤井宏和(飛石連休)は、ゆっくりと沈んでいった。
水の中、なのだろうか、少し息苦しい。
しかし温かい水温が心地良かった。
藤井は、ゆっくりと沈んでいった。
……なんか見える。
走馬灯か…?
目を開いて、少し、息を吐いた。
吐き出された空気が泡になって、藤井の顔を撫でながら浮かんでいった。
NSC。同期の奴ら。後輩。先輩。
吉本。初舞台。2丁目劇場。
東京。二度目の初舞台。渋谷の劇場。銀座の劇場。
三度目の初舞台。ネタ見せ。舞台。舞台。
何度も何度も繰り返される。
解散。
!
ごぼっ、とたくさんの泡が口から吐き出され、浮かんでいった。
無意味だと分かっていても、無意識に手を伸ばした。
夢中で、三人の腕を掴もうとする。
けれど三人の元相方は、藤井の伸ばした手をすり抜けて、消えた。
息を吐きすぎた。
苦しくなって、藤井は目を閉じた。
水の中をゆっくりと、漂う。
…なんの声やろ…。
『僕とコンビ組んでよ』
ああ、岩見か。
『…はあ?』
覚えてんで。パチンコ屋の、トイレ掃除の途中や。
そんなもん急に言われてもすぐ答えられへんわ。
『……また今度な』
コンビ解散して、悩んだ。
新しいコンビ組むか、ピンでやっていくか。
このまま、この世界におるか。大阪帰ってまうか。
ピンでやってくって決めたけど、ネタ見せで落ちまくって。
最悪やったな、あん時。
でも、もっと最悪なんは、お前やった。
適当にあしらって「今度な」言うたら、お前、「今度っていつや」て。
毎日聞いてくるし、毎日電話してくるし、ほんまストーカーみたいやった。
あん時訴えてたら、俺ぜったい慰謝料取れるで?
うざかった。
『飛石連休って、どういう意味なん?』
ああ、アホがおる。
それって日本で生きていく上での基礎知識ちゃう?
あのね、飛石連休て、休日の間に平日が挟まってる、あの中途半端な連休のこと。
ね、分かった?
あの中途半端なわくわく感がええやん。お前の考えたやつよりはな。ははっ。
またなんか見える。
四度目の初舞台。ビタミン寄席。
サンミュージックの事務所。宣材写真の撮影。合ってへんスーツ。
前説。オンバト合格。初連載。
M−1。学園祭。遅刻。ライブ。
セレナーデ。単独ライブ。平日返上。
…楽しかったなぁ…。
『ここにいる皆さんの中で、たった一名の"優勝者"が決まるまで殺し合いをしてもらいマース!』
は? 何言うてんねん。
プログラムに? 何で俺らが参加せなあかんねん!
血。死体。凶器。
死。痛い。狂気。
逃げろ。
ペーパーナイフ。リボルバーの銃。
…高枝切り鋏。
『岩見! 逃げろ!!』
かっこええなあ、俺。
って何やってん? 俺こんなキャラちゃうやんっ。
『これで藤井くんのこと、守ったるから』
何言うてんねん、自分。
小市民のくせに。ビビってたくせに。
なあ。そんなちっさい体で、俺を守るて。
……嬉しい事言うてくれるやん。
『…ええよ、俺がやる…』
お前に銃口向けるなんて。
『…藤井くん…』
『…なんやねん…』
『僕から無理やりやったのに、コンビ組んでくれて、ありがとぉ』
『…遅いわ…言うの…』
『向こうでもやろうや、漫才』
『………ぉう……』
これほど嫌な感覚はあらへん。
出来ることなら、ずっとやっていたかった。
バカバカしいけど、楽しいこと。
漫才やって、笑わせたり、笑ったり。
ずっと。
ほんまに、ほんまに思ってんで?
俺も、
お前とコンビ組めて、
よかった、
て……。
ごぼっ、と、また息を吐いた。
これで、もうずっと、延々と沈んでいくはず。
ずっと。
――……ん?
突然、ぐんっと体が引っ張られた。
どんどん引っ張られていく。
どんどん、どんどん。
何や!?
どんどん、どんどん。
光る水面に向かって。
どんどん。
何? 何これ!? 何!?
ばしゃんっ
「…あれ?」
ぶらん、と宙吊りになった藤井は、目の前の二人を見た。
釣り竿を持った、二人。
「…福田くん、藤井くんが釣れた」
「見りゃ分かるよ」
岩見欣正(飛石連休)と福田哲平、だった。
ひょっとして三途の川でも泳いでたん? 俺。
「……お前ら何してん」
「いや、魚釣りしよて、福田くんと約束したから」
いつものぼぉっとした岩見。
ああ、そうか。そういう約束してたもんな、お前ら。
続きだ。前の続き。
いつもの笑顔をしている福田くん。
「藤井さんこそ、何してんの?」
「…さあ」
だから俺も、いつものように話す。
いろいろ話したいことがある。
バカバカしいけど、楽しいこと。
また出来ると思うと、嬉しくなる。
…でもまずは。
俺を降ろせや。岩見。
・強制終了・
以上です。駄文ですいません。
乙。飛石と福田いいねえ。
ところでブロンクススレのライブ報告より。
803 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:03/08/20 22:39
唐戸がお笑いバトロワのこと話してますたね。
友達から電話があって「唐戸くん、死んだん?」と言われたとか。
野口守って死んだことになってる、と。
あらら…
ノンスタイルもラジオで
>「2ちゃんねるってサイトにお笑いバトルロワイアルってあるらしくって
>見たら俺殺されとってん。しかも主役は天津の向さんやで!」
>みたいなこと話してた。石田も
>「名前出てきたしそろそろ俺も殺されるんちゃうん」って話してた。
と言ってたそうな。
原専も前に日記で書いてたな。(2chで〜とは書かれてなかったけど)
base関連の人間は知ってるんじゃないの?
でもかっこよく死んだコバ、久馬と後藤みたいなのはいいが、
川島、菅あたりはどう思ったんだろうw
川島はショック受けてそうだなw
そうでした2ちゃんは巨大掲示板で、迂闊にもご本人の目に触れる可能性も
十分ありえる事だということを忘れてました(((((゚Д゚;))))
>>729>>730がどんな感じで語られてたのか分かりませんが
内容が内容だけにきっと本人さん(以外の人もでしょうが)が読んだら気分を害する可能性も
あるんですね。ネタと笑い飛ばしていただきたい所なんですが・・・
とりあえず額はちきれる勢いでごめんなさい。回線切って逝ってきます(´・ω・`)
川島一時期凄かったからね。へこんでるかもw
案外ガラスのハートっぽいし…。
>>733 そうなんだよね。でもまあ2chのネタスレだし。
彼らが洒落の通じる人間かどうかはわかんないけどさ。
続き楽しみにしてます。
>729
その後、「俺かっこいいやん」と言ってたみたい(w
気にしてないんじゃね?
もう続きないん??タイタン妻達めちゃ気になる・・・
age
お久しぶりです。
>27の続き、タイタン奥様達ネタです。
「へー。BCC使えばメールのまとめ送りできるんだ」
夫である田中同様、あまりネット関係に詳しいとは言えない夏美は
事務員の説明を聞いてなるほどと思った。
「夏美さん、そういう事です。社長、ネット系のデモ記事掲載のテン
プレートはいつまでに作ったら良かったでしょうか」
「そうね、今出版社に関してはピーちゃん絡みでツテのある出版社の
メールアドレスを写し取った紙渡すけど、さっき話したけどだいたい
芸人達の妻から協力するって返事が来そうなメド、1週間位までにお
願いね」
一応自分の方も文面作って、照らし合わせるのが一番いいんでしょ
うけど。
光代は横に座っていた事務員に出版社のメールアドレスを書いた紙
を渡した後、長井の妻から受け取った六花亭のバターサンドの包みを
開け、軽くその端をかじった。
「ミナさん、これ美味しいですねえ」
バターサンドを半分位まで食べ終えてから夏美は言った。
「ありがと夏美ちゃん。そこまで言ってもらえて嬉しいわ」
長井の妻は嬉しそうに返事をした。
「ミナちゃん、夏美ちゃん、ここ1週間何だかんだで電話掛けまくる
事になるでしょうから、喉は確実に痛くなるかもだけどここを外した
らまずい大事なポイントの一つだからお願いね」
光代は2人の顔を見た後、お話はここまでだから後は世間話をしな
がらゆっくりお茶にしましょうねとその場にいる全員をもう1度見た。
「社長、事務所、話進めるんでしたらもう一度開けるんですか? 」
事務員は光代に聞いた。
「そうね、ここだとネットでの作業も電話掛けるのもやりにくいでしょ
うからそっちが無難かしらね」
「社長、事務所いつ開けるんですか? 」
夏美はいつ事務所を開けるのかと光代の顔を見た。
「大体ねえ、この手の作業は早い内からの方がいいから、明日の開いて
いた頃と同じ時間、朝の10時からにしましょうか」
遅刻は無しでお願いねと光代は3人に言った後、3人のそれぞれの返
事を聞いた光代はでは早速お茶にしましょうと再びコーヒーを飲んだ。
ピンポーン。
そんな時家のチャイムが鳴った。
『宅急便です』
宅急便の声がした。
「はーい、今行きます」
光代が何かと玄関先に出ようとしたが、
「いいですよ、社長。私出ますから」
気を使って夏美がいいですからと言って玄関先に出た。
「じゃ、夏美ちゃん、ボールペン渡して置くからお願いね」
光代はテーブルの上にあったボールペンを夏美に渡した後、
何か嫌な予感がしたが、大丈夫だろうと思い直した。
「はーい」
荷物を受け取ろうと、夏美は玄関に出た。
「荷物、政府から届いてますので、ハンコか、サインお願いします」
玄関前に立っていた宅急便のドライバーが、夏美に話しかけた。
「はい、分かりました。サインで良かったですか? 」
「じゃ、サインはここにお願いします」
ドライバーが受領書を指さして夏美にサインを書かせた。
「ここで良かったですか」
これで良かったかと夏美は聞いた。
「良かったです。じゃどうもー」
そのままドライバーは玄関先から出て行った。
「なんだろう……」
夏美は思った。
「でも宛名読んだら社長宛だし……」
社長宛だから、社長に見てもらわないとまずいと思い直した夏美は、
そのままその荷物を持って居間に戻った。
「夏美ちゃん、何の荷物」
光代が戻ってきた夏美に話しかけた。
「社長宛だから、社長に見てもらわないとと思ったんですけど……
社長、開けてもらえますか」
「あら、ピーちゃん宛でなくて私宛? 」
ネットで本を通販しているのは太田だからと思った光代は、何故
私宛と不思議そうな顔をした。
「あ、太田さんじゃなくて、社長宛になってるからそれでいいと思
いますけれども」
「それもそうね。じゃ、開けてみましょう」
光代が荷物の封を解くと、白い布に包まれた箱と、封筒が入って
いた。
「封筒が入っているけど、何かしらね」
気になった光代は、封筒の端をハサミで切り、その中に入ってい
た手紙を読み終えた途端、そのまま床に倒れた。
「社長! 」
「大丈夫ですか、社長! 」
何故かと思った美奈子は、倒れている光代が手に持っている手紙
を読んだ。
「美奈子さん、どういう内容ですか」
夏美は聞いた。
「えっとね。白い箱の中身は太田さんの骨。中身の具体的な内容は
その話の詳細」
言い終えた美奈子は、同じような状態で夫の長井のもその内来る
のだろうかと、心の底から辛そうな顔をした。
すみません、今回はこの辺りで撤収します。
>>652-655 の続き。
島に火を放つためのトーチの炎を明かりと変え、佐野は漆黒の山道を進んでいく。
頬張った木の実をモゴモゴと咀嚼し、甘苦い果実で乾いた喉を潤す。
立ち止まって食事をしたり、休息をとっている暇など彼には無い。
彼と・・・そして彼の仲間達が放った火により、島の中央にそびえる山からは煙が上がっている。
目を凝らせば赤く燃え上がる炎も見えて。
以前降っていた雨や何やらの影響で、延焼速度は予想していたよりも遅かったが
それでもじわじわと山火事は麓の方へ向かって広がっているのであった。
「・・・・・・・・・。」
プップッと果実の種を口から吹きだし、佐野は一つ息を付く。
トーチを掲げる彼の右手は乾いて固まった血で黒く汚れており、
何も手に持っていない左の腕は、紫色に変色して腫れ上がってしまっている。
仲間達と別れ、単独で行動するようになって。
彼も幾人かの芸人と鉢合わせ、時に交戦する羽目になっていた。
何とか致命傷こそ負わずに済んでいるが、この左腕の骨はヒビが入ったか折れたかしたようで。
感覚が遠く、今や指一本として思うように動かす事が出来ない。
ジンジンと今も腕から痛みは伝わってくるが、
その為に七転八倒して泣き叫んでいる余裕が佐野にないのも事実で。
作戦を実行しているその興奮から生じる脳内麻薬で何とか誤魔化している、と言った塩梅だった。
・・・あいつら、無事だろうか。
燃やすのに具合の良い藪を見つけ、トーチの火を燃え移らせて。
小枝がはぜる音をどこか遠くに聞きながら、佐野はふとそんな事を考える。
しかし、携帯も封じられ、向こうの様子を知る事が出来ないこの状況ならば。
もう佐野には信じるしかないのだ。
彼らと、それぞれ一度は離れそうになったお笑いという世界に改めてしがみ付き、
今まで挑戦し続けた彼らの信念を。
「ここは武道館よりも広いですけど・・・走り回って見せますよ。今度は・・・捕まったりはしない。」
ネタ中でのテンションの高さからは想像もできない、落ち着いたトーンで呟くキー坊の言葉が
ふと、脳裏に甦った。
「それじゃ、今回も全裸になるか?」
相方の岩澤が冗談めかしてキー坊に振ったら、わかったと言わんばかりの勢いと真顔で
キー坊が着ていた衣服を脱ぎだしてしまって。
ちょっとした騒ぎになった事が連鎖的に思い出される。
『ゲーム』の場には似つかわしいその様子を思い出し、佐野の口元に笑みが浮かんだ。
・・・大丈夫だ。
根拠は全くないが、彼は小さく一人呟く。
大丈夫。あいつらは、俺が心配するまでもなく強い。
それよりも。まずは自分が生き延びる事。
生きて、彼の元へと辿り着けなければ。
何のためにこの『ゲーム』に乗ったのか、わからないのだから。
佐野ただひろ。
元ピテカンバブーの佐野忠宏と呼んだ方が通りは良いだろうか。
互いにコンビを解散して後、渋谷の路上で行われた村田渚のトークライブの相手を勤め
今も尚、中野で行われるようになったそれに関わっている男である。
しかし、芸人として表舞台から身を引いた、限りなく一般人と等しい彼が。
何故こうやって芸人達の墓場まで侵入する事が出来たのか。
それにもまた、そのトークライブが関係していた。
それは、一ヶ月ほど前。
この日も無事にトークライブを終わらせて、会場であるtwlを出てしばらく経ってからの事。
どうも財布をtwlの楽屋に置きっぱなしにしてきた事に気づき、佐野は単車をUターンさせた。
中野の駅にほど近い、住宅地のただ中にある小劇場。
楽屋裏に通じているマンションの階段ではなく、佐野は劇場に直通する階段を下る。
まだこの時間なら、事務室にはスタッフの女の子達が残っているはず。
彼女たちに顔を合わせないように財布だけを拾って帰るためには、
ステージから直接、こっそり楽屋へと侵入した方が良い。
別に自分の物を堂々と取りに来ているのだから、そこまでする必要もないのだろうけれど。
息を殺し、気配と足音を消しながら楽屋に忍び込み、
佐野は鏡の前に無造作に置かれていた財布を手に取る。
財布をポケットにねじ込んで、そのまま立ち去ろうとした、その時。
隣の事務室から、スタッフ達の会話が微かに聞こえてきた。
「・・・・・・でも、これから大変になるわよね。」
「そうね。来月からはお笑いで劇場を使って貰えなくなるんだもの。」
「・・・・・・・・・?」
一瞬、会話の意味が理解できず、佐野はその場に固まった。
・・・来月からは、お笑いで劇場が使えない?
「しょうがないわよ、あれは政府直々の指示だし。ウチだけじゃないし。」
「刃向かいようがないものね、芸人がみんな死んじゃうって言うんだから・・・。」
「とにかく学生さんの演劇でも良いから、とにかく売り込んで行かなきゃね。」
続く彼女らの会話に佐野の背には冷たい物が走る。
・・・普通の日常会話のようなトーンで、何て訳の分からない事を口走っているのだ、彼女らは?
弾かれたように佐野は事務室への扉を開けた。
まさか隣に人間がいるとは思っていなかったらしい、彼女らは呆気にとられたような表情をしている。
「・・・今の、もっと詳しい話を聞かせてくれませんか。」
佐野は身を乗り出して、彼女らに乞うた。
「芸人がみんな死んでしまうって・・・聞き捨てなりませんから。」
丁寧な口調の割には、酷く興奮しているように伺える佐野の口振りに、
彼女たちは一斉に顔を見合わせ、口をつぐんだ。
確かにこんな話は堂々と出来る物ではない・・・つまりは結構なシークレットな話題だという事だろうが。
佐野だってここで何も見なかった、聞かなかったという訳には出来るはずがない。
熱心にスタッフ達を説得する事数十分。
佐野は関係者以外で初めて、『お笑いバトルロワイアル』の存在を知る事となった。
もちろん、誰にも・・・特に村田を始めとした彼の知る芸人達には口外しない事を固く約束させられて。
それからどうやって自宅に戻ったのか、佐野にはまったく記憶がない。
ともかく悩みに悩んだ揚げ句、佐野が桶田に連絡を取ったのは、その1週間後の事だった。
そして。
twlの預かり芸人による大規模なライブを行うためのネタ見せ・・・
そんな名目で、バトルロワイアルに送られるべく芸人達がtwlに集められた、その片隅に。
明らかに周囲とは違う空気を放っている二人組が混じり込んでいた。
コンビを解散してから随分経つが、それでもかつて一線級で輝いていたその残滓は、
夢多き若者達の中ではそれでも一際眩く映る。
「本当に、彼以外には口外していないでしょうね?」
不安げに、スタッフの子が佐野に問う。
もしも情報漏れがあった場合、その原因が自分らの所だと明らかになってしまえば
当然のように彼女らの身が危険に晒される事になる。
彼女らの不安さや必死さも当然と言った所か。
「・・・あぁ。」
佐野はしっかりと頷き、それから傍らの桶田を見やった。
桶田はずっと仏頂面でその内心は容易には伺い知れないけれど。
少なくとも、誤って彼に情報を漏らしてしまったから・・・口封じも兼ねて
俺らもバトルロワイアルに混ぜてくれ。
そんな無茶な佐野の要求が、間もなく訪れた突然の催眠ガスの散布により叶えられる事となったのだ。
hosyu
750 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/26 18:36
age
>>702-706 お疲れさまです。
さいたまさんありがとうございます。
オザーさんらしいロックさが最高です。
不覚にも目に涙がぁ・・・。
752 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/08/29 22:06
教えて厨、スマソ。
本物のバトロワのラストってどうなるんですか?1でも2でも
いいので教えてください。
>>752 1でよければ。
ネタバレなのでメール欄に。ものすごくはしょってるけど。
754 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/08/30 11:30
>>682 小高い丘から少し森の中に入ったところにある小屋のような小さな家。
薄暗い部屋の中でロッキンチェアに焦点のあわない虚ろな目をしたまま
一人の男が腰をかけている。傍らには目を真っ赤に腫らした野口が毛布を身にまとい
三角座りをしたままピクリとも動かない。
人間は強くて脆い生物だと言いますがその通りやと思います。
深い悲しみを越える事なんて簡単なことじゃないです。
唐戸君がいなくなった隙間を埋める事なんて不可能で
放送で死亡者として『唐戸浩二』の名前が呼ばれてもなお振り返れば
唐戸君がいるような錯覚を覚え、そのたびに現実をつきつけられ胸が苦しくなります。
憎い、憎い、憎い
放送であの先輩の名前はありませんでした。
おかしいな〜・・・手応えはあったのに。
中岡はチラっと野口を見る。
相変わらず三角座りしたまま動く様子はない。
ただ思い出したかのように瞳からポロポロと涙がこぼれ始める。
「野口君のせいじゃないよ」と声をかけるも何の反応もない。
もう野口の目には中岡も世界も映ってなく、中岡の声も野口には届いていないようだった。
中岡は立ち上がり窓際に立つ。
カーテンを少しめくり外を覗くと日も落ちかけ薄暗い中に木々が立ち並んでるのが見える。
カタっ・・・中岡のひじに何かがあたって倒れる。
写真たて、中岡は「ふぅ」とため息を漏らすと写真たてを起こす。
それは家族写真のようだった。中岡の目に写真の傍らに映る二人の少年が飛び込んでくる。
兄弟なのか?中学生くらいの幼さのこる2人の少年がふざけあいながら映っているのを見て
再び唐戸の事を思い出す。中岡が唐戸と出会ったのはこれくらいの歳だった。
ノスタルジックな感傷に浸る間もなく野口が「わぁぁーーーー」と突然頭を抱えながら
泣き崩れる。「大丈夫やから」中岡は落ち着いた態度で野口の背中をさする。
しばらくすると野口は廃人のようにからっぽになり遠くを見つめ、それが終わると
暴れだし手当たりしだい物を壊し始める。中岡は冷静に野口を諌める。
こんな事をもう何度も繰り返していた。
暴れる野口を羽交い絞めにして止める。
「はなせや!唐戸が・・・」
「唐戸君はもうおらんねん。」
「いやや!いやや!!」
あがく野口のひじが中岡の顔にあたり「痛っ・・・」と中岡はうずくまる。
唇を切ったのか口からツツッと血がたれる。
その血を見て野口は真っ青になり、その場に崩れ落ち
「ごめん、俺・・・俺のせいで!!」と呼吸を乱しながら混乱した様子を見せる。
血があの光景を思い出させてるんだろうか?
中岡が「ええよ。」と優しい口調で言うと野口の目が再びドンヨリとよどみ
三角座りを座るとまた虚ろな目でピクリも動かなくなる。
中岡はロッキンチェアに座り深いため息をついた、その時・・・
ガタッ
「!!!!!!」
突然の物音。中岡は鎌を握り音のした方に構える。
扉がゆっくりと開く。
「ブロン・・クス?」
「和田さん?」
そこには手を上に上げ無防備なヘッドライト和田が立っている。
互いの動きを探るように固まったまま動かなかった二人だが
和田の方から「俺はお前らに危害を与えるつもりはないから」と
中岡に向かって言う。確かに武器を持ってるようにも見えないし
この上なく丸腰な顔をしている。
中岡は恐る恐る鎌を持った手を下ろす。
「信じていいんですか?」
「信じるか信じひんかはお前が決める事やろ。俺はお前らには危害は加えへん、そんだけや」
見ると和田は肩あたりが赤黒く変色している。
「入ってください」
中岡は和田を招き入れロッキンチェアに座ってもらう。
「町田さんは?」
「知らん。元気にやってるんちゃうか?別にコンビやからって一緒におらなあかんわけやないし
一人の方が落ち着くからなぁ。」
「そうですか・・・」
「大変やったみたいやな」
和田は野口をチラリと見てため息をつくように言った。
「まぁ・・・。それより和田さんこそ血でてますよ。」
「ん〜たいした事ないよ。流れ弾があたっただけで
殺されかけたり襲われたりしたわけやないから。
面倒臭いから戦う気はないし襲われてたら命なかったやろうけど」
こんな状態で落ち着きはらってる和田はすごいと中岡は和田をマジマジと見つめる。
今まで同じ劇場に出ていながら和田と話す機会はあまりなかった。
お互い近寄りがたい存在であったようだが話しだすとこんな状況にも関わらず意外と
会話が弾む。皮肉なものだ。今までの過程などを話す。
向の話には和田も驚いていたようだ。気がつくとすっかり日も暮れていた。
ふと中岡があたりを見回すと野口の姿がない事に気付く。
「あれ?野口君どこ行ったんですか?」
「さっきまで此処におったのになぁ。」
「すいません、ちょっと探してきます」
「野口君?野口君?」
返事がない。高鳴る心臓。嫌な予感。
家を一周するが野口はいない。あと残された場所は屋根裏だけだ。
トクトクトクトク・・・静まれ心臓。細く狭い階段を駆け上がる。
「野口君!!!!??」
屋根裏は小窓がついており、そこから月明かりが差込みうっすら明るい。
野口はそこにいた。しかし地面にひれ伏したままピクリも動かない。
手首から血が流れ、唐戸が首をかっ切ったあのバタフライナイフが落ちている。
「野口君っ!?野口君!!」
中岡は野口を抱き起こし頬を叩く。
中岡の声にかけつけた和田は必死に止血を施す。
かわいそうな仔羊ちゃん。
3匹仲良く散歩した。
一匹食われて消えちゃった。
残った二匹
一匹自ら死を選ぶ。
残った一匹
狂って謳ってどうなるの?
≪ほら言っただろ?野口もお前が殺すって≫
「ああああああぁぁぁぁ!!!!」
耳の奥で何かが壊れる音がした。
野口は一命を取りとめた。
しかし中岡の中で大切な何かは取り返しがつかないほど崩れきっていた。
生と死が入りまじっているこの世界で自ら命を絶つことを選ぼうとした野口君の気持ちが
シンクロしたかの様に絶望感とタナトスが中岡をつつむ。
「死の」
唐戸の首を切り裂き野口の手首を傷つけたナイフを手にとり己の手首へもっていく。
「止めろ!!」
怒鳴り声と共に手を叩かれナイフが転がっていく。
「わかってるんです。でもっ!あの頃とは状態が違いすぎる。
あの頃は唐戸君がいて元気な野口君がいて当たり前のように漫才ができる環境があって
でも、もう俺には何もないんです。失いすぎました。生きていても仕方ない・・です。」
「・・・・これ。」
そう言うと和田は一枚の紙を中岡に手渡す。
最初に供給されていた地図だ。特に変わった所は見受けられない。
「こっち」と和田に促され地図を裏返すとそこには血痕と共に
見覚えのある弱々しい丸い文字。それは野口の字。
【ごめん、生きて。】
カチャンと中岡の手からナイフがすべり落ちる。
「はははっ。なんですか、これ?こんな事言われたら死ねないじゃないですか。
自分は死を選ぼうとしといて人には死ぬななんて・・ずるい・です・・。」
「『死ぬな』やなくて『生きて』や」
中岡は唇を噛みしめ苦悶の表情でうつむく。
「後はお前が決めることやから好きにし」
和田はそういい残すと去っていった。
ポタリ・・・ポタリ・・・と熱いものが中岡の頬を伝って地面に落ちた。
無意識のもので中岡はそれが涙であると気付くのに時間がかかった。
中岡がこの地に連れて来られて初めて見せる涙だった。
堰をきったように溢れだす涙は悲しみを洗い流すかのように中岡の眼から流れ続けた。
日があけた。
「復讐がしたいです」
真っすぐ和田を見据えたまま中岡は強い口調で自分の願望を告げた。
和田はふっと軽く微笑み立ち上がり「これやる」と中岡に銃を渡した。
キリストが十字架に吊るされている細工がなされている銀色に光る美しい銃だ。
「え・・・でも和田さんは?」
「何回も言うてるけど俺は面倒臭いから戦う気ないしソレも使う気ないからええよ」
「面倒臭いって・・・」
「戦う時、銃を撃つ時、人を殺す時、相手のこと・・・生き様とかそいつの家族の事とか
いらんこと一杯考えてまう。知ってる奴ならなおさらで、思い出とか変に思い出すしな。
俺な、相方を殺そうと思ってん、この戦いが始まってすぐの頃。俺らこんな所におるような人間やとは
思われへんかったしこんな多くの中で生き残れるとも思われへんかった。
みんなが殺し合い死んでいくなんか耐えられんくて、誰かの手で惨殺されるくらいなら俺の手で
楽に死なせてやろって・・・。でも撃てんかった。いらんことばっかり考えたり思い出してもうて。
そんな事考えるんも面倒やし相手の人生奪って罪の意識を背負うのも面倒臭いやろ?」
「・・・・・・。」
中岡は何も答えられない。これから向を殺しに行こうとしてる自分に答えられる事はない。
和田も銃を渡した限りすべてを分かっての上の言葉なんだろうし答えを求めてるようにも見えなかった。
「野口君のこと頼んでいいですか?」
「まかしとけ、その変わり生きて帰ってこいよ。野口のためにも」
「はい。」
ドアを勢いよく開ける。
眼球を貫くような日差しが中岡を照らし
中岡はグイっと顔を上げる。その顔には何の迷いもない。
目指すは唐戸君を殺し野口君を壊したあの先輩。
復讐という名の炎を胸に秘め中岡は歩き出した。
唐戸と野口の顔を瞼の裏に思い浮かべながら・・・。
>>684 ありがとうございます。ブロンクスとノンスタの事がある上
向氏本人がもしこれを見てたらとガクガクブルブル震える毎日です。(向氏なら十分ありえそう)
>>686 続々とは言いがたいですがまだ元ガブメンは出てくる予定です。
>>687 ブロンクススレでは格好よく書きすぎだと書かれてましたw
>>689 すいません、また書き忘れてました。【NONSTYLE井上 死亡】です
>>735 ありがd
>>736 そうならいいんですが・・・。
以上天津話の続きです。一旦止めることも考えたんですが中途半端すぎる上
どっちつかずになってしまう気がして続きをうpさせていただくことにしました。
長くてスマソ。
>>B9さん
乙です。
いよいよ中岡が動き出しますね。
あと個人的にヘッドライトが出てきたのも嬉しいです。和田さん好きなので。
B9さん乙です!
待ってました〜目が離せないですね
中岡マジカコイイなぁ。
これからも楽しみにしてますが、
自分のペースでノビノビ書いてってください
765 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/08/31 08:29
B9さん乙です〜。
中岡さんカッコイイです!いや、文がカッコイイです!
↑スイマセン、ageてしまいました・・・・。
すいません。759と760の間に以下の文章が抜けてました。
そこには和田が立っている。『この人、大きな声出せたんや』と中岡は
場にそぐわない感心をしながらナイフを拾い上げる。
「止めないでください。もう・・生きてる意味なんてないんです」
「生きるのに意味なんていたか?俺ら、ここに連れてこられるまで淡々と
過ぎていく日常を当たり前のように生きてきてただけやろ。
そこに意味なんてあったか?」
/⌒ヽ
/ ´_ゝ`) 少しばかり保守をさせてもらいますよ・・・
| /
と__)__) 旦~
先日メモ帳を開いたらお笑いバトロワ@長井編の番外の
話を発見したので、ここのスレッドを久しぶりに見ましたが
いいペースでレスがついていていいですね。
個人的にはタイタン妻達の続きが気になります。
770 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/06 06:44
hosyu age
昨日のライブで向の腰ぎんちゃくしてた中岡見て
ここ思い出してギャップに一人で笑ってたよ。
大阪へ出張ついでにbase行ったもんだから
天津ブロンクス生で初めて見たんだけど
中岡かっこよかった。声やしゃべりかた可愛らしいけど。
続き楽しみにしてます。
772 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/07 11:04
B9さんめっちゃ(・∀・)イイ!!
ということであげ。
773 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/07 20:43
age
はじめましてこんばんわ。
あの、大分前に完結していらっしゃるのですが、
時間軸も結末も変えないので、ホムチの穴埋め的な話書いてもいいでしょうか?
感想…
778 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/08 21:21
盛り上げよう!
…
☆B9さん
中岡さん、行動に出る!と言うカンジですね。
一体どうなるのかしら…と思う今日この頃。
…富山でももっとお笑い番組放送して欲しいよう。
中岡さん…。そして向さん怖い…。
☆小蝿さん
松丘さんと村田さんも行動開始ですね。
おもちゃのバズーカ。コレをどう使うのかが見物です。
続いて、バトロワ開始前?の話。
このような出来事もあったんですね。小蝿さん、わっしょい〜!
☆奥様は社長さん
光代さんの驚愕と言うかなんというかがしっかり伝わってます。
3人の奥さんがこのあとどうなるのか気になります。
☆福田哲平&飛石連休天国編書き手さん
「俺を降ろせや、岩見」。
なんとも藤井さんらしいツッコミです。こういうラストを私も飾れたら…
☆さいたまさん
小沢さん…ネタではボケばかりなんですが
ここではまさに男ですね・・ラストはやはり泣けます
☆森月さん
・…黒田さん…カウボ師匠…このあとどうなる?
そしてユウキさんと大上さんの運命は?
☆ヒマナスターズさん
ダーリンハニー…まさにウワアアアアアン…
ヒマナスターズさん…書き方カコイイです。
感想は以上です。小蝿さんとヒマナさん…毎回カコイイです。
そしてパソコンのデータが吹き飛んで今まで書き溜めていたデータが消し飛びました。
バックアップしておくべきでした。
次はフロッピー作っておいてそこから書きこもうかな…。
そのためには書いていたデータをなんとか思い出して…コレから大変です。
※前回までのあらすじ
【今仁(ビーム)&五十嵐(マイマイカブリ)】
合流(・∀・)人(・∀・)ナカマ!→洞窟キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
→五十嵐一時離脱「よもや吉野(;゚д゚)マズー?」
【川元(ダブルブッキング)】
「殺されるかもΣ(゚д゚lll)」→飴玉服用→殺人開始(゚∀゚)アヒャ!
【高橋(マイマイカブリ)】
後輩の死体発見→飴玉拾い食い(゚д゚)ウマー
→逃走中の黒田(ダブルブッキング)と衝突、吉野(ビーム)ともども合流(・∀・)人(・∀・)ナカマ!
【吉野(ビーム)&黒田(ダブルブッキング)】
川元(ダブルブッキング)の殺人現場観察→黒田逃走、吉野「(゚Д゚)ハァ?」
→高橋(マイマイカブリ)合流(・∀・)人(・∀・)ナカマ!
→2人黒田に追いつく、黒田「川元ヤバー((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
詳しくは
>>57-65と
>>232-240に。
>>240の続き
−−−−−−−−4351-C『コルト』使用説明書−−−−−−−−
●大人一人につき一錠を服用して下さい。
●極めて殺傷能力の高い細菌が体内に棲みつくことにより、
接触するだけであらゆる生物を殺すことが可能になります。
●服用と同時に身体に特殊な免疫がつくため、
服用者自身が細菌に感染することはありません。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「落ち着きました?」
背中をさすっていた手の動きを止め、吉野は黒田の顔を覗き込んだ。
露出した肌に陽の光が斑模様を落とす木陰の中、
不意に一筋の風が吹いて、足元の草や髪をくすぐっていく。
「ありがと、…ゴメン、何か一人でテンパっちゃって」
鼻にかかったその声には、先ほどまでの震えは見られない。
黒田は膝に突っ伏していた顔を上げ、かすかな笑顔を見せた。
あまりにも衝撃的な事実を一瞬にして繋ぎ合わせてしまった、一枚の紙片。
ショックで一時はその場にへたり込んでしまった黒田だが、
時間の経過と共にようやく平静を取り戻してきたようだった。
「ねえねえ、俺いまいち話が読めないんだけどどういうことなの?」
吉野から非常に簡単な事情説明しか受けていない高橋が、後ろからしきりに喋り掛けてくる。
しかし吉野はそれも耳に入っていない様子で、黒田の様子を窺っていた。
そして同時に、今もなお自分の頭をもたげ続けている疑念を
目の前の人間に伝える方法を必死に探し続けていた。
頭の上には果てしない青空。
目を刺す直射日光に手の平をかざして、
見えない地平線に向かって明度を落としていくその色を見る。
雲の流れが速い。
こうしている間にも、この島は確実に時を刻んでいく。
そしてこの空に吸い込まれていく命の数も、おそらく増えていく一方なのだ。
「あの、急にこんなこと言うのもアレですけど……」
短いためらいの後、吉野はついに口火を切った。
思わせぶりな振り方に、黒田が首を傾げる。
「何?」
「自転車のあつしって、
…もしかして川元さんに殺されたんじゃないんですか?」
黒田の顔色が変わった。
どう返して良いかわからない、という表情の後で、
たどたどしい答えが吉野の元に返ってくる。
「なんで知ってんの?…っていうか俺、見てた、殺すとこ…」
「やっぱり」
吉野は瞼を閉じ、頭をもたげた。
その動作はますます黒田を動揺させるばかりだった。
「…俺さっき、その死体間近で見ちゃったんですけど」
頭の中での推敲作業に極力神経を使いつつ、吉野は慎重に言葉を進めた。
そして自分の吐き出した言葉が、黒田の顔に次々と波紋を生みつけていくさまを見ていた。
「全身に赤い斑点が出てたんですよね。はしかみたいな。
それがずっと引っ掛かってて」
状況説明をするうち、今さっき目にした忌まわしい光景が嫌でも頭に蘇ってくる。
二度と動く事のない死体、独特の腐臭、何度思い出しても胸が悪くなった。
「…………それが、コレの症状だってことか」
そう言うと、黒田は折癖の付いた小さな紙片に目をやった。
細かい文字が事務的に打ち込まれただけのその紙切れは、
ただただ無表情に黒田の手の中に収まっていた。
静けさが続く。
その合間を縫うように、時折優しく吹いてくる風に乗って
今もどこかで殺し合う人々の声が聞こえてくる気がする。
迷いがないわけではなかった。
だがずっと自分一人で考えていても仕方がない。そう判断し、
吉野は今まで心の奥底で絡まっていた疑念を打ち明ける事を決意した。
「ちょっと聞いただけなんで、本当のことなのか分かんないんですけど…
なんかこれ、事務所の謀略っぽいんですよ」
「……え…?」
予想通りの黒田の反応を受けて、
吉野は冷静に、一言一言を選びながら、
未だ纏めきれずにいる思惑の概要を話し始めた。
「所属芸人を生き残らせるために、
事務所が仕組んだって話をたまたま聞いたんです。
どっかの製薬会社と契約して、研究中の薬品を凄い金額でやっと二つ買い込んで、
ウチの芸人の誰かのナップザックの中に武器として潜り込ませたらしいんですよ」
気が遠くなりそうな内容である。
あまりにも突飛な展開に、
黒田は半信半疑の表情を浮かべたまま、やっと一言声を上げるので精一杯だった。
「…うっそぉ」
「まあ噂は噂だから、そのまま鵜呑みにはできないんだけど…
大事なのは、どんな裏があったにしろ、現に危ない薬が武器として支給されてるってこと。
それと、」
その時、吉野が続けようとした言葉を、黒田が咄嗟に遮った。
「ん?待って待って。
今、……”ふたつ”って言った?」
吉野は静かに頷いた。
「そうです」
「つまり、
誰かに取られてない限り、うちの事務所の芸人の中にもう一人、
同じような薬を持ってる人がいるかもしれないってことなんです」
黒田は言葉を失った。
あらゆることが一度に起き過ぎ、また色々なことを一度に聞き過ぎたせいでもあるのだろうが、
姿の見えない巨大な不安が、妙な説得力をもって身に迫ってきた気がした。
「…それも細菌兵器なのかな」
「いや、そこまでは俺も知らないんですけど…」
肝心な部分で、吉野の言葉は途切れる。
そこから先は吉野としても考えあぐねていたところだった。
「とにかく、仲間に引き込めるなら引き込んどいた方がいいと思うんですよ。
たぶんヤバい薬だろうから、どうあっても敵にだけは回すべきじゃない」
その最後の一言が、黒田の心に引っ掻き傷のような感覚を残した。
敵に回す?
武器そのものへの恐怖で隠れかかっていたもうひとつの震えの原因が、
徐々に体積を増してくる。
「吉野」
自然と声が揺れた。
向こうで、草の海がざわめく音がした。
「俺、あいつから逃げてきちゃったよ」
急に声色が変わったのに気付き、吉野は思わず顔を上げた。
黒田は斜め下の一点をじっと見詰めたまま、機械的に口だけを動かしていた。
「あいつ、俺に気付いてた。一瞬振り返った時に見たんだ。
すごい真っ直ぐこっち見てて、…恐かった…」
「……」
「ねえ」
強張った笑みが吉野の方に向く。
連動して、吉野の背に鈍い寒気が走った。
「これって、裏切ったとか思われてるのかな」
吉野は言葉を詰まらせた。
何か言わなければならないのに、言うべき言葉が何も見つからなかった。
いつからこの人はこんなに猫背になってしまったのだろう。
彼から明朗さを奪ったものは一体何だろう。
黒田の内心を顧みながら、吉野は頭の片方でその虚ろな瞳の奥を掴もうとしていた。
脳裏には、黒田を追おうと振り返る直前の数秒間に視界を横切った川元の姿が
糊付けでもしたかのようにぴったりと張り付いて離れなかった。
「どうしよう……」
そう呟くと、黒田は再び膝に顔を埋めてしまった。
それが川元の復讐を恐れてのことなのか、
それとも別の思いからなのかは
伏せられた黒田の顔から読み取ることはできなかった。
ただ、彼の口から発されるあまりにも重く篭もった言葉のひとつひとつに
軽々しく返答することなどできるはずもなく、
吉野はただそんな黒田の背中を眺めていることしかできなかった。
「ね、ちょっとその紙見せてくんない?」
もう何度目かと思われる沈黙の後。
二人の会話を眺めているだけだった高橋が、突如として割って入ってきた。
「俺さ、この裏の模様に見覚えあるわ…」
「え?」
思わぬ言葉に吉野が反応する。黒田も反射的に首を持ち上げた。
そんな二人の動向をよそに、高橋はおもむろにポケットから
数センチ四方の紙切れを取り出して、ゆっくり差し出した。
「ほら、これと色違い」
「……」
確かにそこには、黒田が手にしている紙と同じストライプが
鮮やかなオレンジ色で描かれている。
二人は顔を見合わせた。
交わす言葉は無かったが、互いに嫌な予感を感じ取っているのだけは分かった。
「どうしたんですかこれ」
吉野が恐る恐る尋ねると、高橋はあっけらかんとした調子で答える。
「あのね、飴拾ったのよ。その、あつしの死体のすぐ側で。それの殻」
「…はい?」
「ちょ、ちょっと待って!
じゃあまさか、さっきからすんげえいい匂いしてるのは…」
「その飴だけど?」
「はぁ!!?」
全く同じタイミングで、吉野と黒田の声が揃う。
「……ん!」
次の瞬間、高橋は眉間に皺を寄せて俯いた。
「あ、…飲んじゃった……」
「…………」
二人の血の気が音を立てて引いた。
「貸して下さい!」
なかばひったくるようにして、黒田は高橋の手から小さな包み紙を奪い取った。
既に手にしている物と同じく、二つ折りにされた中に打たれた
無機質な文字を懸命に目で追う。
「嘘!それ二つ折りになってたの!?」
高橋の驚く声も、ほとんど耳に入らなかった。
「4351-M、『ヘロン』使用説明書…」
俯いていた黒田が低い声を立てたのは、しばらくしてからのことだった。
「高橋さん、お願いがあるんですけど…」
ずっとどこからか聞こえ続けていた、乾いた草の擦れ合う音が止んだ。
「吐いて下さい。その飴玉」
「は!?」
滅多に聞くことのできない高橋の大声をものともせず、
黒田は吉野に向かって半ば命令口調で叫んだ。
「吉野、抑えて!」
「え、俺が!!?」
目を見開いたその顔が、より一層顔色を無くし始める。
しかし黒田の切迫した口調は、吉野に戸惑う余裕すらも与えなかった。
「大丈夫、それはあいつが飲んだ薬とは違う。触っても感染したりはしないよ。
ていうか、ひょっとしたら高橋さんに飲ませるのには勿体ないぐらいの威力があるかもしれない。
…ああもう、説明は後だ。とにかく早く!」
訳も分からないままだったが、今は行動と理由を結び付けている時間はないらしい。
ただ勢いに急きたてられるままに、
吉野はすんでのところで逃げ出そうとしていた高橋の腕を捕まえて、
背後に回り込み、羽交い絞めにした。
「すいません、何かよく分かんないんですけど…」
「何だよ、おい、ちょっと!離せって!!ちょ、やめ…」
必死の形相を浮かべて吉野の腕の中でもがく高橋の顎に、黒田が手を掛ける。
「じっとしてて下さい」
「なっ……!」
声を上げることもままならないままの高橋が見た、
しごく落ち着いた動作で人差し指を突っ込もうとしてくる黒田の表情は
冗談という言葉など全く入る隙もないほどの真顔だった。
こいつ、本気だ。
高橋の中で何かが弾けた、その時だった。
「うあああああああああっ!!!」
叫び声が大きく響いた。
何羽かの鳥が甲高い鳴き声を上げて枝の中から飛び出し、
薄い木の葉を一枚、二枚、ひらひらと落としていった。
どのくらい時が経っただろう。
まるで時間の流れが急激に速度を落としたかのようだった。
辺りには焦げ臭い匂いが満ち、薄い煙が立ち込めていた。
「…あ、……」
微かに痺れの残る、力を加える対象を失った手。
自分が電気ショックを受けたという認識を頭の中でおぼろげに展開させつつ、
黒田は眼前に繰り広げられている光景を唖然として眺め続けていた。
目には先ほどの閃光の残像が焼き付いている。
悲鳴をあげた主である吉野は、密集した草の中に仰向けに倒れて動かない。
そして、
目の前で、
高橋の体が、
ゆっくり浮き上がっていく。
「うわ、あ、あ、あ……!!何!?何これ!?」
自分の身に何が起きているのか、高橋自身も理解しきれていなかった。
どうしていいのか分からず、苦し紛れに手足をばたばたと動かすが、
精一杯のその動作も空を横切るばかりで何も掴めない。
被っていた帽子がいつの間にか地面へ舞い落ちていたことも、
その先にある草むらから相方である五十嵐が飛び出してきたことすらも、
かろうじて視界には入っていたが、気に留めることができなかった。
「……タ、カハ…シ…!?」
その場に立ち尽くし、高橋と吉野、黒田と繰り返し視線を泳がせては
目を白黒させる五十嵐を尻目に、黒田が小声で呟いた。
「…これが、『ヘロン』の効能……」
再び吹き始めた弱い風に、高橋は反射的に頭上の帽子を探していた。
そして当惑気味に引きつり笑いを浮かべながら、
見降ろした先、棒立ちになっている黒田たちに向かって、やっとのことで言葉を発した。
「…ラムだっちゃ…?」
(続く)
795 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 16:58
思いついたので書いてみます。あまり上手くはないのですが・・・。
名前を呼ばれたのは檜山の方が先だった。
ついて行きたいけれどそれが許される筈もなく、
俺たちはいつも舞台裏でやっている合図をしてから別れた。
それから、自分の名前が呼ばれるまで、時間が凄く長く感じた。
自分の名前が呼ばれた瞬間、俺は一気に外へと駆け出した。
「待ってるから。」
別れる直前、小さく告げられたその言葉を信じて。
796 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 17:05
「・・・っても、どこで!?」
勢いで外に出てしまってから気付く。待ち合わせ場所聞いてないじゃん!
辺りを見回すが人影はない。でも、遠くで銃声が響いている。
「・・本当、なんだ。」
バトルロワイヤル。今でも冗談のように聞こえるこの言葉。
けれどこれは紛れもない現実、なんだ。
「檜山は、どこに・・・・」
檜山はそう簡単にやられる奴じゃないと思って、
既に殺されているかもしれないという考えを無理矢理削除する。
それでもこんなに広い場所で、たった一人特定の人物と出会うことはかなり困難だ。
「檜山が行きそうな所は・・・」
もしくは、俺が行きそうだと想定して檜山が先に行動している場所は。
時間は無かった。こうしている間にも、ゲームに参加する人数は確実に増えていく。
急がなければ。
与座は、少し考えてから、また走り出した。
797 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 17:09
「だからツメが甘いって言われるんだよなー・・・」
草の間に隠れながら、檜山は一人自己嫌悪に陥っていた。
「待つ」とは言った。
でも「待つ」にはそれなりの「場所」が必要だということまでは頭が回らなかった。
「与座ぁ。」
口の中で呟く。こんな状況ではうかつに探しに出る事も出来ない。
とりあえず、少しは与座が来そうな方向を選んだつもりだが、確立は余りにも低い。
・・・何が怖いって、この状況自体十分すぎるほど恐怖だが、
このまま与座に出会えない事が一番怖かった。
「与座。」
今度は小さく声に出す。絶対、今は死なない。与座に会うまでは死ねない。・・・・・・よし。
意を決した檜山が立ち上がったのと、与座が檜山を見つけたのはほぼ同時だった。
798 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 17:17
「檜山ぁ!?」
驚きの声の先を見ると、与座が嬉しそうな顔でこちらに走ってくる。
「よかった檜山無事だったんだねって・・・・もがっ。」
「声!!声大きい!」
与座の口を手で塞ぎながら草むらの中に引きずり込む。
「ったく、心臓止まるかと思った・・・。」
「あ!あー・・ごめん。」
「ゴメンじゃねえよ。・・・でも、」
檜山は一息ついて、
「会えてよかった。」
本当に、そう思った。
799 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 17:23
なんか長くなる気配がします。ごめんなさい・・
「なあ、どうしてここだって分かったんだ?」
檜山の素朴な疑問に、与座は笑って、
「ええっと、もうなんか、過去の記憶とか無駄知識とか総動員して、五感も第六感も霊感も全部使って、
で、なんとなくここ来た。」
「最終的にはなんとなくなんだ。」
苦笑しながらも、檜山は心の底から感謝した。
「あ、でも。檜山も俺が来そうな所選んでてくれたでしょ?」
思い出したように与座は言った。
「え、何で?」
「太陽の向き。ここは、えーっと、南方向になるのかな。
俺なら太陽に向かって歩いてくるっておもったんでしょ?」
にいっ、と与座は笑った。
「別に太陽の事までは考えてなかったんだけど・・・・・」
「あ、そーなの?」
「ただこの方角なら・・・・・このずーっと先には、お前が生まれた島があるんだなあって思ってさ。」
「・・・・・そっか。」
与座は小さく呟いた。
「ありがとう。」
もう帰ることはないかもしれない、遠い遠い自分の故郷を思い出して、
与座は少し、泣いた。
800 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 17:29
「ところでさ、お前武器なんだった?俺のは・・・・」
「あ、そだ。これも言おうと思ってたんだ。檜山、あのさ、そのー・・・」
「・・・そういやお前、何も持ってねえな。
まさか、他の奴らにやられたのか!?」
「いや、そうじゃなくて、そのー・・・」
与座は檜山と目を合わせないようにして話を続ける。
「檜山が先に外行っちゃって、俺すげー不安で、
檜山を追う事ばっか考えてたから名前呼ばれた瞬間飛び出してきちゃって・・・だから・・・」
「まさか・・・」
「・・・もらってくんの、忘れちゃった。」
へへっ、と与座は笑った。
「この、バカー!!!」
檜山のツッコミがむなしく響いた。
801 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 17:38
「わー檜山っ、声大きいっ!!」
「ってかお前、マジで言ってんの!?俺の武器もハズレなのに・・・」
「ごめん、本当にゴメン!」
一生懸命謝られてもどうしようもない。
「コントじゃねーんだからさぁー・・・」
「ね。俺もそう思った。」
真剣な顔で言われてしまっては、檜山はもう脱力するしかなかった。
その時。
sage推奨ですよ
803 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 17:47
――――パンッ
わりと近くで銃声がした。
「!!」
二人は息を飲む。
「・・・どうしよ、気付かれたかな?」
「檜山があんな大声出すからだよー。」
「あれはお前がっ!」
「シーッ!静かに。」
「・・・・これ以上近づかれる前にここから離れた方がいいな。」
「でも!もし知り合いだったら?」
「知り合いなら、俺らの声聞いて撃ってくるってのは避けていただきたいけどな。」
「・・・そうだね。」
二人の間に緊張が走る。
「で、どっち行く?」
「うーん・・・、どうせなら海の方、行きたいかなあ。」
「――了解。」
そして二人は静かにその場を離れた。
804 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 18:00
この時檜山は、たいした武器も持たない自分達の運命を、なんとなく察していた。
――なあ与座、わかってんの?海に向かうって事は、
もう、逃げ場はないって事なんだよ?
生き残るには、自分以外を殺さなきゃいけない。
なんなんだろうこれは。こんなのおかしいよな。間違ってるよな。
けど、俺達は今必死に走っていて、みんな必死に走っていて、
間違っている道を必死に生きていて。
生きたい。生きていたいよ。だけど、
だけどそれが、人を殺す理由になんかならないのに。
805 :
中谷@ホムチあなうめ話:03/09/09 18:23
目の前を走る相方の背中をみる。
コイツは今、何を考えているのだろう。何か考えているのだろうか?
俺がお笑いの道に連れ込まなければ、コイツはこんな目にあう事はなかったのに。
・・・・・・もう、遅いけど。
それでも、と檜山は思った。
それでも、こんな異常な状況の中で自分達が一寸も相方の事を疑わないでいられるのは、
幸福な事なのではないか。
走りながら、檜山は少し笑った。
絶対に与座と離れない。そう心に誓いながら。
それは二人の名前が放送される、少し前のお話。
相方が死んだ芸人軍団ってありましたよね?
あの方達の集まってきた話を書いてみたいんですけど。
全員は無理なんで、一人くらい。
ただ、そこの部分を探すのが大変だ・・・
>806
それってカラテカの矢部じゃない方とか?
もう殺されてなかったっけ?
ヒマナスターズさん、
物凄く緊迫した事態なのに、
あの落とし方…不覚にもワロタ!
809 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/09 21:14
B9さんあげ
ホムチあなうめ素敵でした
>ヒマナスターズさん
新展開・・・乙です。
何げに試験薬の制式番号(?)が4351(よさこい=ホリプロのFC会報)ですねw
>807
殺される前を書きたいんです。
813 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/15 02:15
保守age
中岡はとりあえず向との死闘があった修道院へ戻ってみることにした。
向の行方をしる手がかりがあるとすればそこしか思い当たらなかった。
それに中岡はやり残した事があった。
修道院へはそう離れてもないので意外とすぐについた。
まず中岡は唐戸を埋めた場所へと足を運んだ。
そこは野口と共に唐戸を埋めた日から何も変わってはいなかった。
冷たい土・・・この下に冷たくなった唐戸が眠っているのだ。
そんな実感はまだ湧かないし信じることも認めることもできないけれど
中岡はあぐらをかき手のひらを地面につけて唐戸に語りかける。
「唐戸さ、野口君かばって死ぬなんて格好つけすぎ。中学ん頃から変わらへんね、そういうとこ。
『俺、ちょっとイケてるんちゃうん』とか思ってるでしょ?
でも言うけど全然かっこよくないからね!
・・・残された俺らの気持ちも考えへん唐戸くんはアホ!ほんまにアホ!!
だいたいさ・・・なんで・・・なんで死ぬん?・・なぁ?なぁ!?答えてや!!」
中岡は拳を握り締め地面に叩きつける。
何度も、何度も、強く、強く。
今まで野口がいたから我慢していた感情が溢れてはじけた。
悲しくないはずがなかった。
拳に血が滲み、涙が溢れ嗚咽を洩らす。
≪お前が・・・≫
「うるさい!!」
頭に響く声は次第に強くなっていた。
狂ってしまえば楽になれるのか?でも頭の中の声に身を委ねるともう自分は
自分でなくなってしまうことは分かっていた。それは嫌だった。
「唐戸・・・」
その時、温かい風が吹き中岡の涙を伝う頬をくすぐった。
中岡は顔を上げた。
『ごめんて』手を前で合わせ苦笑いで謝る唐戸が見えた。
そして次の瞬間には消えてしまう。
幻だ、わかってる。しかしあまりにも「らし」すぎて笑ってしまう。
「・・・ばか」
わかってる。唐戸だって別に死にたくて死んだわけじゃない。
中岡は立ち上がるとカバンから銀紙を取り出す。
これは野口の武器として支給されたものだった。
銀紙をひらく。
そこには小さな袋が束になっていた。
そこには様々な花の種が入っていた。
何故、武器としてこんな物が入っていたのかは謎だが中岡はその種をまく。
この地に誰もいなくなっても美しい花が咲くように・・・。
この花が自分達が生きた証となるように・・・。
「バイバイ」
唐戸に別れを告げる中岡の顔には悲しそうではあるがいつもの笑顔が戻っていた。
唐戸との別れの儀式を終えると中岡は向の背中に鎌をつきたてたあの場所へ行く。
この広い場所で普通に向を探して見つける事は困難である。
わずかな手がかりでもいい、中岡は必死に探す。
すると赤黒い血痕がわずかだが残っている事に気付く。
雨で流されてしまい見失いそうになるくらい小さなものだがそれは間違いなく続いて道となっていた。
それはヘンゼルとグレーテルが落としたパンくずのようだった。
中岡はお菓子の家へ導かれるように血痕の跡を辿る。
血はある所で円のように広がっていた。向がここで力尽き倒れたであろうことを物語っていた。
そして不思議なことに円から引きずったような跡がずっと先まで伸びている。
「ん?」
怪訝な顔をしながら中岡は引きずった跡にそって歩いていく。
引きずった跡は民家の前で消えていた。
中岡は銃を構え、窓から中を覗く。人の気配はない。
足音を消してゆっくりとドアを開き中へ入る。
「うっ」中岡は咄嗟に口を手で覆った。
鼻をつく鉄臭い血の匂い。そして目の前には首のない男の死体。
さすがの中岡も吐き気をもよおす。
足に何かがあたる。足元に目をやると見覚えのある赤いキャップ。
それはどこにでもあるような帽子であったが・・・。
よく見ると男の着ている服や靴も見覚えがある。
「井上さん・・・?」
修道院から続いた血の跡。
引きずられた形跡。
そして井上の死体。
中岡の中でピースが一つの形になっていく。
「向さん・・・」
一足遅かった。でも向は間違いなくここにいた。
中岡は井上に手を合わす。せめてもの供養だ。
「敵はとりますから、安心して眠ってください」
向はここからどこへ行ったんだろう?
自分が向さんなら・・・と中岡は考える。
背中の傷も痛むはずだ。そんな向がむかう場所。
勘でしかないが中岡は足を進める。
しかし確信はある、自分は絶対向に会えると。
運命というものがあるとすれば歯車はかならずそう動いていると・・・。
―――和田と野口のいる小さな家。
そこはまるで殺し合いの場に存在してるのが嘘のように平和だった。
平和なんて突然いとも簡単に壊れてしまう脆い物であることも和田は知っていたが
だからといってピリピリすることもなかった。
自分にできることをすればいい。今は野口の世話をすることだ。
この場所に来て和田は自分が意外とマメな性格だということに気付いた。
面倒臭がり屋の和田にとってこれは意外な発見で「悪くない」と思った。
不思議なものである。
野口はあれからずっと眠っていて目を覚まさない。
眠り姫のようでこの世界から離れたどこかで存在しているようだった。
このまま眠り続けている方が野口にとっては幸せなのかもしれない。
しかし中岡が戻るまでには目を覚ましてほしい。
中岡が戻ってくる保障なんてどこにもないけど和田は中岡は必ずもどってくると信じていた。
和田はコーヒーをたてると野口の様子を見ようと部屋のドアを開ける。
野口は起き上がりベットの上に座り外の風景を眺めていた。
「野口!目覚ましたんか!よかった・・・野口・・・?」
駆け寄った和田の方に顔をむけると野口はゆっくりと口を開く。
「***********」
「お前・・・・。」
閉めていたはずの窓が風で乱暴に開いた。
疾風が部屋を渦巻き、和田は固まったように動けなかった。
またヘマしてしまった・・・814は
>>761です。
前回感想くれた方々ありがd。長々と続いたこの話ももうすぐ終わります。
よければもう少しお付き合いお願いします。
B9さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
いつも楽しみに読ませて頂いてます。
うー、続きが気になる…(*´Д`)
823 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/15 19:06
B9さんめっちゃ(・∀・)イイ!!
824 :
名無しさんですよー:03/09/15 21:49
B9さんおつかれさまです。
あいかわらず素晴らしいですね!!
私は中岡さんファンなんで毎回楽しみにしています
もうすぐ終わっちゃうんですね、、、さみしいです。
最後まで無理せずがんばってください!!
野口に何が!?ウワー!!やな終わり方ー!!気になる!!
町田がどんな登場するのかも気になる。わー!気になることだらけ。
827 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/21 22:31
あげます
>>744-748 の続き
丑三つ時を過ぎ、ほんのりと東の空が白み始めてきた、そんなひとときに。
村田は一本の樹の根元に腰を下ろしていた。
俯き加減のその様子は、何か深く考え事をしているように見えなくもないが。
規則正しく頭が上下に揺れている所を察するに、少なくともそういった状態ではないようである。
「・・・・・・おい。」
桶田が呼び掛ける声も、村田の耳には届いていない。
仕方なく桶田は村田の肩を揺らし、彼の意識を現実へと引っぱり出す。
「・・・・・・・・・・・・。」
ゆっくりと目を開いた村田は、自分の身に何が起こったのかも理解できないほどの呆けた顔。
今まで充分に休息をとっていたとは言え、
明け方に差し掛かったこの時間帯となれば、さすがに少しは眠くもなる。
しかも、慣れない山歩きをずっと強いられているのだ。
休憩がてらにうつらうつらも仕方ないところであろうか。
「何かなぁ、昔の夢を見てたわ。ほら、ネタ見せの為に上京してた頃の。」
ぼんやりした様子のまま、一人呟く村田に桶田は軽くため息を付く。
「まぁいい。休憩は終わりだ。移動するぞ。」
「・・・・・・・・・あぁ。」
「夜明けまでには・・・南の市街地に出ていたいからな。」
桶田に答え、村田は島の中程にある山の方を見上げてみる。
一際大きい地震が起こって煙が山から上がって以降、山の中腹からは常に煙が上がり、
山火事だろう赤い炎も見る事が出来ていた。
前に見た時よりは燃えている範囲が広がっているようだったが
遠近法の魔術も手伝って、まださほど燃え広がってもいない様子である。
とはいえ、風向き次第では一気に辺りにまで延焼してくる事も考えられて。
「せやけど確かに目が覚めて・・・ローストされてたら、洒落にならんもんな・・・。」
ポツッとまた村田は呟き、早くも先へ進もうとしている桶田の背中を追い掛けた。
「そういや・・・また誰か、死んだん?」
腕時計で今の時刻を確認し、それから村田は桶田に訊ねる。
「言うても、もうみんな死んでしもたからな・・・もう気にする方が変なのかも知れへんけど。」
自嘲気味に付け加え、再び村田は山の方へと視線をやった。
今火が燃えさかっているだろうあの場にも、きっとどこかの芸人の死体が転がっているのだろう。
随分早い時期に殺された面々の死体は、今となってはもうどうしようもない状態に違いない。
それらをあの炎は包み込んで、焼き払って。
もしかしたら村田も良く知る芸人の物かも知れないそれを、浄化してくれているのだろうか。
・・・無数の才能の昇天。
そんな綺麗な言葉で片づけられるような光景でもないのだが。
美化して何かのオブラートを掛けでもしない限り、やはり精神的に来る物がある。
「・・・松丘が、死んだ。」
ふと考えに没頭しかけた村田の耳に、桶田の言葉が届いた。
「・・・・・・何、やて?」
「二度も言わせるな。松丘の奴が死んだ。」
瞬時に我に返って問い直す村田に、桶田は淡々とした口調で答える。
「正直な所、生理的に受け付けなかったが・・・役には立ったな。」
表情にも哀悼の意をまったく示す事なく、涼しげに言い放った桶田に、村田はしばし言葉を失った。
実際に放送を聴いていないという事もあるのだろうが、
松丘が死んだ、という意味がどうにも村田の頭にしっくりこない。
「僕らのようなのは、これから沢山でてくるやろ。」
畜産農家の二階のベランダで。
酔いから顔を真っ赤に染めながら、呟く松丘の言葉が村田の脳裏に甦る。
「で・・・僕らよりもっともっと何でもできる人らが、僕らよりもっと立派にもっと美しく、
笑ろたり笑わせたりして行くんやろな。」
せやけど、と。
松丘は村田を見据えて言葉を続ける。
「そいつらの為にも、そいつらを待っとる人の為にも・・・道標が、必要やと僕は思うねん。」
「みち・・・しるべ?」
「村田さん達なら、きっと・・・その役目も果たせると思う。」
そこまで口にして、松丘は照れたように目を細め、苦笑を浮かべて俯いた。
「全部僕の買い被り過ぎなのかも知れへん。それに・・・アカンな、酔ぉてる。」
一体、あのやり取りからどれだけ時間が経ったのだろう。
何で今、自分が生きて松丘が死んでいるのか。
村田の頭の中は寝起きという事を差し引いても混乱の兆しを見せ始めていた。
「随分と・・・冷たい口調やな。」
冷静になろうと一度深呼吸して、それから村田は桶田に言う。
「もう少しは気を使ったらどうなんや? 一応は仲間やったんやし。」
「仲間ぁ?」
いかにも意表を突かれました、と言わんばかりの素っ頓狂な桶田の返しが、どうにも村田の癪に障る。
「そんな、仲間な訳ないやろ。あれはあくまで便利な手駒。」
免許も持ってたし、絶対に刃向かってこないヘタレだし。アレは言う事なかったな。
付け加えて桶田は小さく笑った。
「お前、そんな・・・・・・。」
確かに、松丘には拳銃を突き付けられて村田も危ない思いをさせられたけれど。
あれはこの『ゲーム』に惑わせられていた、それだけの話。
松丘の村田も怪我はしなかったし、あの事件以降の松丘はちゃんと仲間として
行動できていたはずじゃないか。
何とかして桶田に反論したかったが、村田の頭の中では思考が言葉の体を表さない。
村田の見ていた限り、松丘は常に桶田にゾンビか何かのように従っていて。
確かに手駒と言われればそうだったのかも知れない、そんな気にさせられる。
逆に。
「大勢の人間に何かをさせるためには、どうすればいいと思う?」
村田の方を向く事なく、薄い笑みを湛えたまま前方を見据えながら。
桶田が村田に訊ねてきた。
いきなり違う話題に変えられ、村田にはその答えを出す事も難しい。
「・・・みんなを集めて、説明するしかないんちゃうん?」
しばらく無言で考え、ようやく村田はそんな言葉を口にした。
それが何よ、と続けて桶田に訊ねたい気分に駆られたけれど。
ほど近くで草木が揺れる不自然な音が上がって。
村田の言葉は見事にその喉元で留まった。
音が上がった方へと視線を向けると、男が一人、ポツンと立っている。
暗がりの中、辛うじて判断できたシルエットだとその男は華奢な体格で、髪型は坊主頭のようだ。
もっとも、この『ゲーム』の最中で髪を切る余裕もないようで、
性格には五分刈りに近い様子となっていたけれど。
「・・・誰や!」
村田は反射的に声を張り上げ、人影に呼び掛けた。
こいつ阿呆かと言わんばかりに桶田が舌打ちをするが、もう遅い。
「その声は・・・・・・村田さん!? 僕です! 僕ですよぉ!」
どこか朴訥とした素っ頓狂な声が闇の向こうで上がると同時に、人影がガサガサいう音と共に
村田らの方へと駆け寄ってきた。
明らかに聞き覚えのあるその声に、村田は声の主の顔を思い浮かべて安堵するけれど。
桶田は無言のままズボンのポケットから拳銃を引っぱり出し、人影の方へ向けて構えた。
元々は松丘に与えられ、彼から没収して以降は常に桶田の手元にある、愛用の武器。
無造作に、そして自然に執り行われる桶田の所作に、村田の表情が引きつった。
「何、やって・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・。」
桶田は村田には構わず銃の安全装置を外し、トリガーに指を掛ける。
「・・・・・・お前、止めぇや!」
怒鳴るような大声を上げて、村田は咄嗟に桶田の腕にしがみ付く。
それと殆ど同時に銃声が鳴り響いた。
銃弾こそは村田の行為によって大きく逸れたようだったが、彼は銃声に酷く驚いたようで。
思わずその場にぺたりと尻餅を付いてしまう。
「早ぉ逃げや! お前、死にたいんか!」
俄に険しい表情になる桶田には構わず、村田は桶田の腕を掴んだまま更に喚いた。
「・・・末高!」
自分を撃とうとした人物と、自分を守ろうとしてくれた先輩。
桶田の姿を目視できていない今、何故その二人が一緒にいるのかは
さすがに彼・・・末高 斗夢には理解できなかったけれど。
自分に銃口が向けられたのは紛れもない事実で、彼は村田の言葉に従い、慌てて逃げようとする。
「しまって・・・行けないか。」
尻餅を付いた拍子に辺りに散らばった私物に構う余裕など有るはずがない。
小さく呟いて末高が立ち上がり、村田らに背を向けた、その時。
背後から何かに貫かれる、そんな衝撃を受けて。
末高は手で腹部を押さえ、つんのめるような形で再び地面に倒れ込んだ。
数秒送れて彼の耳に届くのは、銃声。
起き上がろうにも腕や足に力が入らない。
地面に這うような体勢のまま、末高は何とか首だけ村田の方へ向けた。
「・・・・・・・・・!」
末高の目に映ったのは腕にしがみ付いていた村田を軽々と振り解いた桶田が、
末高へ銃口を向けたまま平然と次弾の照準を合わせている所だった。
・・・危ない。
そう思う間もなく銃口が火を噴き、凝縮された熱が末高の身体を貫く。
「・・・末高ぁ!」
叫ぶ村田も口だけでなく、何とかして桶田を止めようとしていたようだったけれど。
それは結果として末高の余命を十数秒ほど長らえさせるだけでしかなかったらしい。
何とかして立ち上がろうとする彼の身体が、力無く地面に崩れおちた。
「・・・・・・何で、こいつまで殺さなアカンねん! こいつが殺されなアカンねん!」
今までずっと、人の来ないような場所で身を潜めて生き延びていたのだろう素直で優しい青年の。
もう何も・・・駄洒落すら言えぬ死体の傍らで。
村田は両こぶしを固く握りしめ、怒りを露わにして桶田に問いかける。
その怒りには、迂闊に末高に呼び掛けてしまった自分のミスへの怒りも含まれているのだけれど。
「だが・・・味方のフリをして駆け寄ってきて・・・襲ってくる奴だったらどうするつもりだったんだ?」
桶田の言葉に、村田はそれはない、と首を横に振る。
「こいつは・・・松丘以上に人を傷付けられる奴やない。」
「・・・知り合いなのか?」
「あぁ、お前は知らないやろけどな。純粋で・・・みんなから愛されとる奴やったんや・・・。」
村田の熱っぽさとは対称的に、そう、と素っ気ない口調で桶田が呟く声が聞こえた。
「さっき言った『大勢の人間に何かをさせる』方法だけどな。
答えは・・・そいつらの目の前で、具体的な成功例を示してやる事だ。」
そうすれば、後は連中が真似して追随するのを高見から眺めていればいい。
目の前の末高の事などもうどうでも良いのか、村田も忘れかけていた話題を桶田は引っぱり出してくると
拳銃の熱を冷ますためか、微妙に手元で振り回しながら村田に告げた。
「・・・・・・できるんか? そんな真似が。」
視線を足元の末高に落としたまま、村田は桶田に問う。
「誰かを自在に笑わせる事が出来るのなら・・・泣かせる事も、怒らせる事も。
思い通りに操る事も出来るはずだろう?」
「そうやなくて!」
桶田の言葉を遮り、村田は大声を上げた。
「人の気も知らんで・・・殺してばかりの人間に! 仲間一人新しく抱える度胸もない人間に!」
村田は桶田を睨み上げる。
「そんな真似、出来るはずがないやんか!」
桶田は一度肩を竦め、くってかかってくる村田を軽く手でいなした。
「・・・別に仲間はもう必要ない。寧ろここから必要なのは・・・切羽詰まった群衆だ。」
その為の疑似噴火、そして山火事。
『ゲーム』を破壊するための『舞台』は着々と整いつつある。
あとは二人で『舞台』に立てば良いだけというのに。
顔を赤銅色に染め、キーキーとしつこく喚く村田の様子に、桶田はため息を付かざるを得なかった。
それが更に彼の怒りを煽る事になるとわかっていても。
【末高 斗夢 死亡】
村田編は終わりが見えてきそうでまだ見えてきませんね・・・w
今年中に完結できればいいのですが。
小蝿さん、お疲れ様です。
837 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/09/23 19:50
粋なりってもう死にましたか?
すみません、あげます
>837
登場してないと思ったが・・・
もしかして、書くのか?書くんだな?書いてください!おながいしまつ(*´д`)w
誰かダイアン死んだ描写書いてくれないかなぁ…
と、イタタなのは分かってるけど自分新生base周辺詳しくないんで
呟いてみるテスト
>841
もうダイアンは死んだんでは?
たしかレギュラー松本の話で出てきたはず。
☆B9さん
毎回いいカンジです。
文章の書き方とか台詞回しとか参考にしたいです
本編の方はいよいよクライマックス。目が離せません。
中岡さんの動向が気になります
☆ヒマナスターズさん
…あの武器にはああ言う効能があったのね…
で、「ラムだっちゃ…」。ワラタです。
☆中谷さん
あのラスト?の前にはあんな出来事があったんですね
私も過去話を構想中なわけですが…うまくいくかどうか。
☆小蝿さん
終わりの見えない話の方がよけいおもしろかったりします。
あせらなくてもオッケーです。ゆっくりと書いていってください。
そんなわけで無事前期試験も終わりバトロワ再び書ける状況になりました
とはいえ、前にデータが盛大に消えてしまったんで・・
また構想しなおしでつ(涙)
>842
うわっ、本当だ!スンマソン!!⊃д`)・。
ダイアンヲタの自分には嬉しいほどの…。
こんなアイタタちゃんに教えてくださって有難うございます。
過去ログ見ずに教えてチャン…ほんまにイタいわ自分。
逝ってきまつ…・゜・(ノД`)・゜・
>>812 亀レススマソ。
もしよかったら書いてください。
うへ・・・バトロワスレまだあったのねんι(´Д`υ)
当方、Part2の時に入り浸っていた者です。。
>>847 まとめサイト行って続き読めばまた嵌まるやもしれん
不謹慎すぎるが、バトロワのいとこい師匠の話が好きだ。
殺し殺されあいの雰囲気の中でさえ、お二人のほのぼのさを感じる。
師匠のご冥福を心よりお祈りいたします。
850 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/10/06 07:25
age
>>820 大きな木にもたれかかり死んだように動かない男がいた。
白い服(といっても汚れてもう白ではない)に股上の浅いズボン、NONSTYLEの石田だ。
薄っすらと開いた目にはもう何も映っておらず微かに動く渇いた唇だけが
彼が生きて呼吸をしてるというのをかろうじて示している。
「死にたい・・・」
石田がこの言葉をつぶやくのはもう何度目だろう。
目を閉じて世界との交渉を絶ってみる。するともうこのまま解放されるような気がした。
意識が遠のく・・・・。
「・・・だ!石田!!」
自分の名前を呼ぶ声に意識を揺さぶられる。聞き覚えのある懐かしい声。
この地で自分の事を知っている人間なんて限られている。
ゆっくり目を開くとそこには天津の向が立っていた。
「む・・かい・・・さん?」
だんだんと意識が戻り、頭がはっきりしてくる。
石田は腰に隠してあった自分の武器である銃を慌てて向に突きつけ「近寄らんといてください!!」と
怒鳴った。がくがく震える手でしっかり銃を握ったまま「俺・・・もう誰も信じないことにしたんです!
近寄ったら・・・たとえ向さんでも殺しますから!だからもう何も言わず俺の目の前から消えてください。」と
声を裏返らせて石田は叫んだ。
向もさすがに、いきなり石田が銃を突きつけてくると思ってなかったのか驚いた顔をしたあと冷静に
「冷たいな。井上とは違って」と抑揚のない声で言い放った。
【井上】という言葉に石田の眉がかすかに動き、怪訝な顔をする。
「あいつに・・・井上に会ったんですか?」
「んー、おぉ、まあな」
「あいつ何か言うてました?」
「なんか石田と待ち合わせしとったけど石田がこうへんかったから一人で
寂しかった、俺の事だけは信じてくれてると思ってたからつらい、とか言うてたな」
石田は下唇を噛みしめ「そう・・・ですか」とうつむく。
「なんや?石田、井上に会いたいん?」
「えぇ・・そりゃあ、まぁ。でも・・もう井上は・・死・ん」
途切れ途切れつらそうに喋る石田を尻目に、向は何やらカバンをごそごそと漁りだす。
そして「はい、井上」と言って石田の目の前にかつて井上であったものを提示した。
石田は視界が真っ白になりふたたび意識が遠くなるのを感じた。
石田は井上と約束をしていた。
石田も井上もそれぞれ仲良くしていた芸人はいたけど結局「殺し合いの場」で
信用できるほどの人なんていなく気がつけばコンビで目配せしていた。
石田が教室を出るとき井上に紙を渡され、そこには待ち合わせ場所が書かれていた。
石田は井上との約束の地へとむかった。
息を切らし誰かと会わないように焦りながら、ただひたすら走った。
しかし土地勘のない地は石田の方向感覚をくるわせ、すぐ到着するはずだった待ち合わせ場所に
なかなか辿りつけずに彷徨うはめになってしまったのだ。
石田は泣きそうになったがグッとこらえ、見えない敵に怯えながら地図と自分のいる場所を
照らし合わせ目的地を探していた。
石田を悲劇が襲ったのは、そんな時だった。
森を抜け平原を走っていると、石田の足元で『カチッ』と音がした。
なんの音か分からなかったが嫌な予感が全身に走り鳥肌がたつ。
そして次の瞬間、閃光が石田の体をつつんでいた。
「 !!!!!!」
石田の叫びは爆発音にかきけされ、爆風で体が吹っ飛ばされる。
気がつけば石田は地面に伏していた。
「うっうぅ・・・・」
最初、痛みはなかった。痛みさえ感じなかった。
しかしショックで麻痺していた感覚がだんだんと取り戻されてくるとその激痛に石田は転げまわった。
こんな痛みは味わった事ない。全身がちぎれるような痛みだ。
特に右足が燃えているかのように熱く、激痛が襲ってくる。
「ぐ・・ッ・・あぁぁ・・・」
体を動かそうとしても全然動かない。
『なんで俺がこんな目にあわなあかんねん。』
歯をくいしばり、こぶしを強く握る。
そして肘をつき上半身だけなんとか起こす。
白いシャツと白いズボンと白いネクタイ、石田を象徴するそれらは土や泥ですっかり汚れてしまっている。
「痛っ!ぐぅ・・・はぁ・・」
痛みをこらえながら、激痛の酷い足へと目をやる。
「!!?」
ドクドクと全身の血が逆流しているような感覚にとらわれる。
『なんで・・・』
石田は目に映るソレを信じることができない。
『なんで俺の右脚ないねん・・・』
石田の股上の浅いズボンは血で染まり細い右足は長さがたりない。
痛みさえも忘れるほどの恐怖が石田を襲う。
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!」
喉がはちきれんばかりの悲鳴が辺りに響きわたった。
『なんやねん、何がおこってん!?なんで俺の脚ないねん!もう、嫌や!なんやねん、どないなってんねん!!!』
「ひっかかった〜♪ひっかかった〜♪」
混乱した石田をよそに妙にマッタリとした弾んだ声がして、ドシドシという足音が石田に近づいてくる。
「なんや〜、ノンスタかぁ。もっと大物やったら良かったのにぃ〜」
石田の顔を覗き込みながら残念そうな声をあげたのは元西中サーキット(現すずらん改め南海キャンディーズ)の
山崎静代だった。山崎は巨体を揺らしながら「わ〜〜!脚ないやん!血いっぱい出てるしグロぉ」と緊張感のない
喋りを続けている。
石田は激痛と朦朧とする意識に耐えながら『お前の言動のほうがグロいやろ・・』と心の中でツッコミを入れる。
「なー武器ちょうだいやぁ。私の武器、地雷だけやってんやんかぁ〜。自分、何?」
その山崎の言葉で、やっと石田は自分が山崎の仕掛けた地雷を踏んだという事に気付く。
「何?死んだん?生きてるんやったら返事し〜やぁ」
「武器・・ほしいん・か?」
「そう言うてるやん」
「ほんならくれてやるわ」
石田は腰に隠していた小型銃を取り出し山崎にむけて発砲した。
バン!!銃口から煙が立ち上がる。
「痛っ!!」小型銃とはいえ反動で脚に響き激痛が走る、石田は歯をくいしばり何とか耐える。
山崎は「わーー、撃ったぁ。怖ぁ〜〜。今ちょっと顔にかすったやーん。
顔に傷ついたらどうしてくれんのよぉ。別にいいけどさぁ。」と銃を向けられたとは思えない反応で
口を尖らせている。石田が2発目を構えると山崎は「わぁ〜〜殺されるぅ〜〜」とやっぱり
緊張感のないままドシドシと逃げて行った。
「はぁ・・はぁ・・・」
とりあえず助かった(のか?)
さっきまでパニックに陥っていた石田だが緊張感のない山崎との遭遇でずいぶん冷静さを
取り戻すことができた。脚の痛みは酷いが早くこの場を去る必要がありそうだ。
自分の右足をスーツの上着でくるみ激痛に耐えながら体を引きずり移動する。
ナメクジが通った後のように石田が体を引きずった跡には血の道ができる。
血の量は半端じゃない、いつ死んでもおかしくない。地雷を踏んだ時点で死んでいても不思議じゃないのだ。
なんとか人目につかない木陰までやってきて一息つく。
体温が下がってきているのか寒い。意識も何とか自分にとどめているが
気を抜くとそのまま魂ごとどこかに飛んでいきそうだ。
『井上と約束した場所行かな・・・』
そんな状態じゃないことは分かっている、しかし石田の頭をまっ先によぎったのは井上との約束だった。
視界がぼやけ痛みさえ感じなくなっている。真っ白だった衣装は血で真っ赤に染まっている。
『あぁ・・・俺、死ぬんかな・・・』
全身から血の気が引いていくのがわかる。
その時、石田の耳に「ズッズッチャ、ズッズッチャ・・・」という変なリズムが届いてくる。
その音(?)はだんだんと石田に近づいてくる。
『ん?なん・・や?もしかして死ぬってこういうことなん』
かすれていく意識の中でそんな事を考えていると石田の前に見覚えのある小柄でスケッチブックを小脇にかかえた
年齢不詳の男が現れる。
「どうも〜どうも〜どうも〜、もうどー、モード学園!!!!・・いや〜、ラジカセ漫談の
ネゴシックスですけども〜。今日はね、いろいろ教えちゃるから聞いてって!!!
はい、じゃあQ&AってこれP&Gじゃねーかよ!!アホか!お前!!はい、じゃあ最初の質問、ヒーターは
いつ出したらいいんですかっ!!これ!!みんな迷うよね・・・・」
そう、石田の前に現れたのはピン芸人ネゴシックス(根来川 悟)。
突然現れた彼は石田の前で淡々とネタを始める。
「ネゴ?・・なにしてんの?ネゴ??」
朦朧としながら石田が尋ねても「パックマン描いてしまいましたぁ!」とネゴシックスは石田の声なんて
聞こえないかのようにネタを続けるだけである。
「みんなぁ!!気をつけてね!!!どうも、ありがとうございました」ネゴシックスは
ネタが終わると頭を下げた。石田は訳もわからず拍手を送る。
するとネゴシックスは石田に近づいてきた。石田は銃を取ろうとしたが
「いや〜、ね!これねアフターサービスだから!!ね、ね。気にしなくていいYO!
ほんの、真心っ!!!なかなかないよ〜ここまでしてくれる所!!でもね、聞いてる?お兄さん?」
そういうとネゴシックスは石田の脚を水で洗い消毒液をかけ包帯を巻いた。(どうやらネゴシックスに
支給された武器は救急箱のようだった)そして「あ〜ん」とネゴシックスは石田に口を開けさせ
「痛み止めだけんね!!」と言い薬を石田の口に放り込んだ。
「よしっ!!!」ネゴシックスは立ち上がり「スケッチブック漫談のネゴシックスでした!!
ズッズッチャ、ズッズッチャ」と言いながらスケッチブックと救急箱を肩に抱え去っていった。
「ありがとう、ネゴー!!」石田が礼を言うとネゴシックスは後ろを向いたまま手をヒラヒラさせ消えていった。
『いや、かっこええな!!なんやねん・・・あいつ。助かったけど、変な・・奴』
急な展開に石田は呆然としながらも突然現れ突然去る戦場の看護婦ナイチンゲールことネゴシックスのおかげで
なんとか一命を取りとめたのである。そして今に至る。本当は井上の所に行こうと何度も試みたがやはり無理だった。
井上とは友達だった。イキった格好つけで本気でミュージシャンになれると思ってるちょっと痛い奴だったけど
いい奴だった。一緒にストリート漫才を始めてあのコブクロと人気を二分しbaseよしもとの
オーディションを受けるようになった。
最初はお揃いのノンスタTシャツを作って出たりベタな事もした。今、思い返すと恥かしいがあれもいい思い出だ。
楽しくネタをする。それだけを意識して今まで頑張ってきた。
気がつけばそれなりに自分達のスタイル、自分達の足場の確保もできてきていた。
でも井上は友達から相方(ビジネスパートナー)へと変わっていった。
もちろん相方は井上以外考えられないが仕事が絡むと意見がすれ違う事もあって、時に井上が煩わしく感じる事さえあった。
それなのに、こんな状態に陥り井上との約束がこんなに自分にとって糧になるもんだとは思ってもみなかった。
「現金やなぁ・・・人間て」
そんな言葉を呟きながら痛みを堪え24回目の試みの途中で井上の死を放送で知ったのだ。
「井上・・・?嘘・・や・ろ・・・」
石田は泣き虫だ。かなりの泣き虫だ。ちょっとした事で泣いてしまい芸人仲間にもよくからかわれたりもした。
でも【相方の死】には涙は出なかった。なぜだか自分でも分からない。
悲しいとか・・そんなのではなくて空っぽになった、という表現が一番近い気がする。
体が自分ではなくて、ただの器になった・・・そんな感じだった。
目を閉じると井上との思い出が次々湧いて・・・そして消えていった。
もし、俺が地雷なんか踏まんかったら
もし、井上と会えとったら
もし、・・・・・
もし、・・・・・
もう終わってしまってどうすることもできない仮説ばかりが頭をグルグル回る。
もし・・・・だったら、井上は死んでなかったんじゃないのか?
もちろん、そんな事わからない。
だが『俺のせいや!!!』その想いだけが石田の中で波紋のように広がっていく。
石田が悪いわけではない。しかし自分のせいにでもしないと心が壊れてしまいそうだった。
でも、やっぱり涙は出なかった。石田はそんな自分を心底恨んだ。
『相方が死んだのに涙の一つも出えへんなんて・・・俺は・・俺は・・』
今、冷静になって考えてみると相方の死はショックだったけど
こんな世界で死んでしまうっていうのは十分ありえる話で(現に石田も生と死の狭間を彷徨ったわけで)
どこかで覚悟を決めてる自分もいたはずだ。だけどやっぱり井上の死はショックで
それはいつしか石田の生きる意味・頑張る力を井上との約束に託してしまっていたからだという事に気付く。
そこからの石田はもぬけの殻のようだった。物も食さず、水も飲まない。
木陰で放心したまま、ただ時間が過ぎるのに身をまかせる。
「死にたい」何度も呟く言葉。
【生】への執着がまったく感じられず痩せこけ、もともと出ていた頬骨はより強調されていった。
そんな廃人同然の生活を過ごしている時に向がやってきたのだ。
別に死んでも構わなかった。でもそれ以上にもう誰かと関わりを持ちたくなかった。
関わったってどうせこんな世界では皆死ぬのだ。つらい思いはもうしたくない。
「俺の目の前から消えてください」これは石田の切実な願いだった。
しかし、向は去るどころか目の前に信じられないものを提示してきた。
最初ソレがなにだか解らなかった。だって・・・そんな・・・
「ぃ・・のぅ・・・ぇ?」消え入りそうなかすれた声でソレの名前を呼ぶ。
かつて井上であったソレは瞳孔の開いた焦点の合わない目で石田の方を見ている。
口は半開きで何か言いたげである。でも、もうその口が動き石田につっこみを
入れることは恐らく・・いや、絶対にない、二度とない、一生ない。
・・・・涙が出た。泣き虫な石田のこの戦いに参加させられて初めて涙。
脚を失っても相方の死を知ったときも出なかった涙が今、堰を切ったように流れ出す。
「泣き虫やなー、石田は」向がからかうようにニンマリ笑う。
「向さんが・・・井上殺したんですか?」
「おぉー」
「許しませんから・・許しませんからぁぁーー!!!」
石田は小型銃を何発も乱射する。しかし、それでなくても脚への負担が
かかる上に物も食さず水も飲まずのふらふら状態の石田は上手くあてることが出来ない。
(しかも山崎をあんな至近距離でもあてれなかった石田は銃の扱いが下手だ)
「下手くそやなぁ・・・狙いはココやろ?」向は自分のひたいを人差し指でコンコンと指す。
呼吸を乱しながら石田は向を睨みつける。こんな他人を憎いとと思ったのも
こんなに他人を殺したいと思ったのも初めてだ。
スゥ〜〜と息を吐きゆっくり向のひたいに銃口をむける。
バン!!!
渇いた銃声。
しかし「ぐっ・・ぅ・・」と唸ったのは向ではなく石田だった。
脚に走る激痛。向は冷ややかな目で相変わらず石田を見ている。
石田はすかさず2発目を撃とうとする。
しかし・・・・カチャ、カチャ、ガチャ
『弾切れ・・・』絶望感が石田を襲う。
予備の弾はカバンの中に入っているはずだがもう取り出して補充している暇はない。
そうしてる間に向は石田の方に近づいてきた。そして石田が膝にかけていた上着を
剥ぎ取り少し驚いた顔をした後「ふーん、逃げへんし立たへんし変やと思ったけどそういうことか」と
納得の表情を浮かべる。
「とりあえず冥土の土産にコレやるわ」向は井上の頭を石田に渡す。
そして口元を歪ませ「楽になろか」と銃口をピッタリと石田の額に当てた。
石田は井上をじっと見る。涙が再びこみ上げてきて井上の顔がぼやけた。
そして額に突きつけられた銃を見上げる。
その先にある向の感情のない瞳。
『殺される』
石田の腕にブワッと鳥肌が立つ。
「嫌や・・・死にたくない」
感情が意識とは無関係に石田の口からこぼれ落ちた。
この場において生にすがり付く石田を向は哀れむように一瞥した後
「考えてみろや、生きててどうなるん」と物分りの悪い子を諭すような口調で尋ねる。
「でも俺、生きてるんです。ここにいるです!」
「ほんまにそう思てた?一度でも『死にたい』って思わんかった?」
向の言葉に何度も自分の中で呟いた『死にたい』の言葉が今さらのように石田に纏わりついてくる。
「・・・・思いました。それでも生きたいって思うのは傲慢ですか?」
「生きたいんやなくて死ぬのが怖いんやろ?」
「・・・・生きていたいです。」
「みんなが死んでいった世界でも?」
「・・・・。」
「泣くなや。なんも怖いことないて」
「なんでっ・・・なんでなんすか?あんなに・・・優しかったのに。
向さんはあんなに優しかったやないですか!!」
「俺は此処で二度目の誕生を迎えた。自由になれた。特別な存在に・・・」
「ここはゲームの中じゃないんです!向さんは向さんでしかないですよ!いいじゃないですか、それで」
「うるさい!」
「向さんが殺戮を繰り返すのは【死】が怖いからでしょ!!」
「違う!!」
「死ぬんが怖いから人を殺すんや!」
「うるさい!黙れ!!」
パン!!
「ぐわぁぁぁぁーー!!うぅ・・・・」
向は感情をあらわにすると石田の太ももにむかって発砲する。
銃弾は見事に石田の左足の太ももにめり込み石田はその痛みに転げまわる。
「はぁ・・・はぁ・・・うるさい、うるさい」
歯をギシギシといわせながら向は血走った目で石田を睨みつける。
そんな向を負けじと睨み返す石田は「怖いんでしょ?弱いんでしょ?
でも向さんだけちゃいますって、皆そうです。だから認めて受け入れてあげましょうよ!」と
痛みに顔を歪めながら一身に叫ぶ。
「うるさい・・・うるさい!!」
「「パン!」」
向の放った銃弾は石田の右下腹部を貫通する。
しかし向の撃った銃声に重なるようにもう一つ銃声が鳴り響き、背後から飛んできた銃弾が
向の左腕をかすり肉をわずかにもっていく。
「痛っ・・・!!」
向が振り返るとそこには銀色に光る銃口をむけた中岡が立っていた。
「やっと見つけましたよ、向さん。」
「おま・・え、なんで!?」
「向さんを殺しに来ました」中岡は笑顔でさらりと言い放つ。
「て、ことで死んでください」
笑顔を崩さず中岡は2発目を発砲する。銃弾は向の肩に命中し肩の骨を打ち砕く。
「ぐあぁぁぁ!」
向は跳ね飛ばされ転げまわるとヨロヨロと立ち上がり慌てて逃げる。
「逃げれると思ってるんですか?」
中岡はさらに妖艶な笑みを見せると数発続けざまに撃つ。
しかし木陰を縫うように逃げる向になかなか当たらない。
追いかけようとした中岡を「なかぉ・・か・・・待・っ・・て」と消え入りそうな声が呼び止める。
「石田さん!?」
「頼むわ・・・」
向を追いかけて行きたい所だが血だらけの先輩を置いていくわけにもいかない。
たとえもう生きる望みがなかろうが…。
「大丈夫ですよ。ここにいますから、どうしました?」
急所はかろうじて外れているのか苦しそうではあるが石田は何とか息を整え中岡の服をキュっと握ると
「ごめん・・・な・・もぅ・俺・・死ぬから・・・最後に頼んで・・ぇぇか・・?」と力を振り絞り
喉から声を絞り出す。
「はい、なんでも」
「いのぅ・・ぇ・は?」
中岡は壊れやすい物を扱うように井上を拾い上げ石田のもとへと運ぶ。
「いの・・ぅぇ・・・・」
井上を前にして石田は言いたい事がありすぎて言葉に詰まる。
でも、もう言葉なんていらないような気がした。
自分が井上のことを理解しているように井上もきっと自分のことを分かってくれているだろう。
それがコンビであり相方というものなんだと思う。
「なかぉか・・・ごめん・な」
「なんで石田さんが僕に謝るんですか」
「だってさ・・・か・はっ・・・」
微かに笑うと石田は口から大量の血を吐く。
「大丈夫ですか!?もう喋らんほうがいいですよ」
ダラダラと血を流す石田が唐戸と一瞬かぶり中岡は下唇を噛みしめると石田から目をそむける。
「ぁほゃ・・・俺、幸せ・ゃった・・のに・・・・」
石田は木々の隙間から覗く雲ひとつない青い空だけをその瞳に映し涙を目に溜める。
「・・・ぁの頃に・・もどり・た・・・」
「石田さん!石田さん!」
全てを言い切らぬうちに石田の息吹は消えた。
もう息をしていない石田の目から一筋の涙が伝い、そして落ちた。
死体になった石田の体を抱え中岡は石田の瞼をそっと下ろす。
手のひらに涙の滴が付着した。
中岡は唇を噛み締めると拳をギュっと握る。
そして立ち上がり向が逃げていった方をきゅっと睨みつける。
地面を見ると血がポタポタと道を作っている。
向の肩口の傷からこぼれた血の跡だ。
それは中岡を導く聖道のようだった。
終わりの鐘の音が近づいてきている事を中岡は感じた。
そして血の跡を辿って歩き出す。
【NONSTYLE 石田死亡】
今日はここまでにさせていただきます。
長くてすいません。あと山崎静代は絶対出そうと思っていたんですが
現相方の山里さんが足軽エンペラーとしてご臨終させてしまったのでややこしいんですが
元西中サーキット、元山崎・二宮の現すずらん改め南海キャンディーズの山崎静代さんです。
山崎さんとネゴシックス他メンバーに関しましては
ttp://www.fandango.co.jp/base-yoshimoto/のプロフィールの欄で 写真つきで見れます。あと前回もう少しで話が終わると言いましたが前言撤回さしてください。
終わるつもりでいたんですが【天津】話としては終われるんですが、どうしても出したいコンビが
できてしまったのと他のメンバーの事を考えると話はまだ終われないです。
無責任な発言すいませんでした。もうしばらくお付き合いください。
>>B9さん
乙です。
天津編ラストスパート頑張ってください。
あぁ、ネゴがかっこいい・・・(w
ネゴ・・・バトロワでもいい人なんだな・・・。
どこまでいい人キャラなんだ、奴は。
B9さん、今回も乙です。
ネゴシックスさん…ああ、ニューカマー(謎)。
かっこよさに少々ドキドキ。そして彼のネタをいつか見てみたいと思ふのです。
B9さんをはじめいろいろな書き手さんの文章が
私のお手本になっています。
とはいえ…データが…今だに落ち込んでいます。(´・ω・`)
B9さん乙です。
個人的意見としては終わらせずにもっともっと書いて頂きたいです。
すごく真剣に読んでたのにネゴが出てきた瞬間爆笑してしまいましたw
ネゴ最高だ。
どうしても出したいコンビというのが気になってます。
新タレプロで是非書いてほしいコンビがいてるので。
続き楽しみに待ってますね。
B9さん、待望の続編乙です!!
皆さんと同意見ですが、ネゴ良いですね。緊迫した場面の連続の中、ネゴの登場にほっこりしました。泣き虫石田が死ぬ前に、ネゴと中岡に会えて良かったです。石田には、1人で死んでいって欲しくなかったので。
これからも楽しみにしてます!催促するつもりではないのですが、ジャンクションて・・出て来てませんよねぇ?
B9さん乙です!
そしてネゴキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
いやー、ネゴがいいヤシ過ぎで一瞬和みましたね(w
私も皆さんと同じ意見で、もし出来るならばまだ終わりにして欲しくないですね…。
私の贔屓にしてるコンビもまだ未登場で、何気に気になるので…。
勝手な意見で済みません。続きを楽しみにしてます。
今更ですが、すげーなネゴw。
また、ここがきっかけでファンになりそうな芸人が出てきたよ。
ネゴを知らない人達はどんな芸人を想像してるのか気になるw
>>874 そりゃあもう、何か良くわからないなりに凄いモノをw<ネゴ像
それはさておき、そろそろスレ容量を気にした方がよさげですね。
確か500KBが限界でしたっけ。あと30KBちょっとだけど。
>>828-834の続き
末高の荷物から見つかった、彼の武器は壁掛け時計だった。
「…時計って。」
呆れたとも哀れむとも取れる、ボソッとした口調で村田は時計を手に呟く。
「壁掛け時計ってのもありえへんけど、何よ、これ。秒針止まってしもとるやん。」
これじゃ時計としてぜんぜん意味ないやん、と続ける村田を、桶田は黙って眺めていた。
「しかも7時ぃて。また中途半端に微妙な時間に揃ってしもて。
こう言うのはせめて12時か3時って決まっとるモンやろ。自分、何がしたいのか良ぉわからんわ。」
思いつくままに次々と言葉を吐き出していた、村田の口がそこで止まる。
彼の視線の先には、大地に横たわる末高の姿。
桶田が放った銃弾の一発が急所を貫き、彼は既に息絶えている。
『成子坂さんの事、小学生の時、TVで見てましたよ!』
彼が興奮気味にそんな事を村田に言っていたのは、一体いつの事だっただろう。
そんな彼は銃器や刃物、そして爆発物といった多様な武器が芸人達に配られる中、
壁掛け時計という外れ武器を引き当てて。
これまでの長い間、一人で。狂う事…実際に彼が狂気に侵されていたかは
彼の死んだ今となっては知りようもないが、村田はそうではないと信じたかった…もなく。
耐えて耐えて生き延びてきた、『ゲーム』から救われるべきだっただろう人物の一人だったのに。
「…気が済んだか?」
相変わらず、桶田の口振りは平淡で。
罪悪感の欠片も感じられないのが、村田としては信じられない。
「先を急ぐぞ。」
「待てや。」
相変わらず片手に壊れた時計を持ったまま、村田は桶田へと呼び掛けた。
「もしも、や。」
「………。」
「もしも、次…また、ホンマは敵意も何もない芸人が俺らの目の前に出てきたら。
そいつが俺らに助けを求めてきたら。お前はその時どないするつもりや?」
言葉を選びながら、ゆっくりと村田は唇と舌を動かす。
「愚問だな。」
ぼそぼそと漏れた村田からの質問に、桶田は即座に答えた。
「いくら策があるとは言え、俺達は人であって神じゃない。
手を差しのべられる人数は自ずと限られてくるし、確実に助けられる人間は…片手の指でも多いぐらいだ。」
「……よぉわからんけど…要するに、殺すんか。」
「仕方ないだろう。アレもこれもと欲張って、当初の目的が果たせないのが一番馬鹿馬鹿しいからな。」
それよりも、先を急ぐぞ。
そう小さく言い残して、早速歩き出していく桶田の背中をようやく村田は振り向いて見やる。
・・・撤回や。こうなったら全部撤回や。
村田の唇が、音を立てずにそう言葉を紡いだ。
お前がおらんと俺は何もできない、そんな気がしたのも。
この『ゲーム』が終わったら、お前ともう一度コンビ組むのもエエなと思った事も。
…お前は、危険や。
お前は『ゲーム』を終わらせるフリをして、芸人を殺しまくっているだけやないか。
今までの奴のように、末高のように、そして……確証はないけど松丘のように。
そうや。お前は、敵や。 俺 ら 芸 人 の、敵や。
一度そうと思い込んでしまったら、もう容易に収拾をつける事は出来ない。
朝方近い最後の闇が、村田の思考をどんどん侵食していく。
お前の敗因は、俺を側に置いた事。
さしずめ、俺に人を殺す所見せて・・・ビビった様を楽しもう・・・そんなトコなんやろけど。
生憎、俺はいつまでも昔の俺やない。
お前と別れて一人になって。色々味わって、俺も変わったンや。
せやから。今の俺は・・・
今の俺はお前かて殺せんねや!
村田は時計をバッグの中にしまうと、ベルトに挟んでいた懐刀にそっと服の上から触れる。
一度固い手触りを確認し、それからゆっくりと先を行く桶田の所作に注意を払いながら
懐刀をベルトから抜いた。
小振りで見た目では頼りない刃物ではあるけれど。人を一人あやめるぐらいの役には立つはず。
鞘から刃を抜き放ち、低く腰だめに構えて。
村田は息を殺して駆け出した。
「…………?」
背後から急に近づいてくる気配に、桶田はふと立ち止まって。
振り向こうとした、その視界の中に小柄で見慣れた影を捉える。
彼がそれが何なのかを理解する間もなく、桶田の懐に入った村田は刃を目前の脇腹に突き刺していた。
「お前・・・。」
「仇討ちや!」
柔らかい手応え。冷たい刃がもたらす灼けるような痛み。
呟く村田の黒い瞳の奥で淡く狂気の光が揺れている。
村田は一度桶田に突き立てた懐刀を抜いた。
途端に傷口から血が滲み出て、桶田の衣服を汚す。
「お前が今まで殺してきた芸人のォ!」
叫びながら村田は再び、桶田に懐刀を突き刺した。
「そしてこれ以上お前に殺させへん為に・・・俺が先に殺ったンねん!」
今の村田の脳裏には、悪を打ち倒す正義の味方という図でも浮かんでいるのだろうか。
強引に桶田を押し倒して馬乗りになると、村田はひたすら遮二無二懐刀で桶田を刺しまくった。
村田の一刺し毎に桶田の血が周囲に飛び散ってゆく。
桶田も何とか村田を沈めようと腕を伸ばすけれど。
生暖かい液体に濡れた手は虚空を滑り、返り血で汚れていく村田へは届かない。
やがて、それが何度目になるのかはもう数えられないけれど。
懐刀を振り下ろそうとした時、血で濡れる村田の手から懐刀が滑って飛んで。
ようやく村田は桶田の上からのろのろと離れた。
一仕事が済んだかのように深く息をつくと、生臭いにおいが鼻につく。
「あは・・・はは・・・・・・殺ったったで・・・・・・」
高揚状態からどんどん素へと戻っていく、その過程で。
酷い脱力感に教われ、村田は呆けたように桶田の側の木の根に腰を下ろした。
そかしそれは腰を下ろすと言うよりも、足が身体を支えきられなくなった様に似ていて。
コトッという微かな音が村田の耳に届いた。
桶田が動き出したのか、と村田は即座に視線をやるけれど、そうではなかったらしい。
村田の傍らに、携帯が一つ転がっていた。
携帯のデザイン、そして付けられているストラップからして、それは村田の物ではない。
地面に落ちたショックで閉じられているべき携帯は僅かに開いていて、液晶が弱々しく光を放っている。
随分前・・・といっても実際は昨日一昨日といったレベルではあるが・・・に急に圏外になって以来
村田は携帯になんて触ってもいなかった。
何だか懐かしい感じを覚えながら、光に吸い寄せられる虫のように村田は携帯へと手を伸ばす。
見れば、液晶の画面は送信メールボックスのままになっていた。
メールの送信先から推察する辺り、この携帯は松丘の物らしい。
赤岡、島田、磯山、野村・・・・・・と、既に死んでしまった芸人達の携帯へメールが送られている。
しかし、一つ村田が気になるのはメールボックスの一番上にある、作成中の未送信メール。
件名は「村田さんへ」。
これだけでも厭な予感が村田の脳裏をよぎるけれど。
思いとは裏腹に、指は止まる事なくなおも携帯を操作する。
「・・・・・・う・・・嘘や、嘘や・・・こんなん、嘘に決まっとるわぁっ!」
メールの本文に目を通しきるまでもなく大声で喚き、村田は携帯を投げ捨てた。
樹木の根っこに命中したそれは、乾いた音を立てて真っ二つに分解される。
まずはこんな形でメッセージを残す事を許して下さい。
僕はこれから死にに行きます。
何でや言うとそれが桶田さんの計画の一つやからです。
桶田さんが言うにはどうしても僕がやらなアカンようなんです。
正直死ぬのは怖いです。死なずに済むならそっちがエエです。
でも僕が死んで誰かが助けられるんやったら我慢してみようと思てます。
これを読んで桶田さんが僕を殺しただとか思わんといて下さい。
あくまでも僕は僕の意志で死にに行くんやから。
それよりもどうか桶田さんと協力して一緒にみんなを助けたって下さい。
桶田さんは本気でみんなを助けるつもりでおらはるし
あの人の計画なら実際みんなの事も助けられるはずや思います。
そして僕らがおった事を忘れないで下さい。お願いします。
その先にも、最初に誤って襲ったりしてすまなかっただとか色々打ち込んであったけれど
そこまで読みとる余裕は村田にはない。
さっきまで懐刀を握っていた村田の手が小刻みに震えだした。
空はうっすらと青みを帯び始めていて。
夜の終わりと新しい・・・そして生き延びていく上で重要になるだろう
一日の始まりを告げる鳥の鳴き声が遠くで響いている。
「・・・どこまで鈍くさいねん、あの阿呆! 空気読めや!」
その一方で悲鳴に似た叫びが村田の口から放たれ、周囲の空気を震わせていた。
ここで松丘に八つ当たりしても意味がない事ぐらい彼自身わかっている。
しかし、もっと少し早くこのメッセージに気づいていれば。
どんなに疑心暗鬼になろうとも、桶田の事を信じていられたかも知れないのに。
最も、疑心暗鬼になっていたあの時は、このメッセージも無理矢理打たされた物だと
考えたかも知れないけれど。
今の村田には、これが松丘の切なる本心だと断言できる気がしていた。
それだからこそ。松丘に、そして自分に怒鳴らないと精神の平静を保てそうもないのだ。
何せ、今さっき、自らの手で桶田を刺し殺してしまったのだから。
「何で・・・何で俺は・・・・・・」
桶田へ襲いかかった時の勢いと興奮はどこへやら。
拳の震えは今や村田の全身に及び、震えを止めようと肩を掴もうとしても、
その手は、服は血で濡れていて。否が応でも更なる震えを呼び起こしてしまう。
「・・・ようやく落ち着いたか、坊主。」
だから、こうして微かに上がった声に。
村田は悲鳴を上げて後ずさるというリアクションを取る事しかできなかった。
「まったく・・・無様な真似を・・・・・・晒してんじゃ・・・ねぇよ。」
掠れた声でぼやきながら、桶田は刺し傷だらけの上半身を起こすと座り、樹の幹にもたれ掛かった。
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・どうした? 幽霊でも見るツラして。まぁ・・・そういや俺が幽霊になったコントもあったっけな。」
言葉のでない村田に向けて桶田が浮かべる笑みはあからさまに痛々しい。
「しっかし・・・痛かったぞ・・・・・・死ぬかと思ったし・・・な。」
「殺す気で・・・刺したからな。でも、何で俺は・・・・・・」
ようやく村田は桶田に告げ、彼のもたれる樹まで歩み寄ると、立ったまま樹に寄りかかった。
「・・・結果はともあれ・・・お前がてめえで選択した行動なんだ。だから・・・・・・もっと胸を張れ。」
「そんなん・・・・・・」
「できなくても、やるんだ。」
そんな事、出来る筈がない。そう言おうとした村田の言葉を桶田は先に遮る。
しかしキッパリと言い放ったせいでだろうか。
桶田は急にむせ返り、口元を押さえた指の隙間から血がこぼれて落ちた。
やはり、彼の負ったダメージは尋常の物ではない。
「・・・・・・・・・・・・!」
日が昇ってきたのに伴って、今までは黒っぽい物としかわからなかった血が
やはり鮮やかな赤だという事を認識させられる。
腹部や胸部を中心に刺されたため、桶田の上半身はすっかり血で汚れていて
流れ広がった血は彼のズボンまでも変色させてしまっていた。
「気にするな・・・。」
そんな事が出来るはずないのだろうけれど、言葉を失う村田に桶田は告げて。
俺の知っている村田渚という男なら・・・こんな時でももっと堂々としている筈だと続けて笑った。
そして桶田は、今までの秘密主義が嘘のように、最後の力を振り絞って喋り続けた。
佐野にこの『ゲーム』の事で相談を受けた事。
考えた結果、『ゲーム』をぶち壊すために佐野と『ゲーム』に参加する事にした事。
計画を進める上で須藤や冨田を利用し、切り捨ててきた事。
その他、彼が黙して語らなかった計画についての話を。
そして、村田はそのいずれをも黙って聞いていた。
口を開く度に力を失っていく桶田の声を、記憶に焼き付けようとしているかのように。
決して涙する事なく、歯を食いしばって。
朝日が、木々の枝の隙間から射し込んでくる。
遠くでは・・・島の中央の山では佐野達が起こした山火事がまだ燃え広がっていた。
「そういや・・・もう・・・・・・これも・・・邪魔だな。」
力無く呟いて、桶田は自らの首に巻き付く首輪に指を掛ける。
そのまま腕が重力に引かれるのに任せて首輪を引っ張ると、首輪はするりと桶田の首から外れた。
「それは・・・。」
カチャリと音を立てて地面に落ちた首輪を見やり、村田は目を丸くする。
「俺の武器の・・・スタンガン・・・使ってな・・・外したンや。」
桶田は虚空を見上げて村田に答えた。
「途中で・・・底ぬけ・・・・・・古坂と小島の死んでるの見つけた・・・その側に・・・ヒントが落ちてたんだ。」
首輪は強引に外そうとしたり、水に濡れたりした時の備えは万全だったけれど。
強力な電圧を加えて内部の回路を破壊してしまえば、あっさりと外す事が出来るのだという。
古坂達が武器として与えられた機械を改造する際に書き残したメモなどからそれに気づいた桶田は
スタンガンを使って確かに首輪を外す事に成功した。
しかし、彼らと同じ轍を踏まないために、かみ終えたガムで金具を止めて。
今までやり過ごしてきたのだと桶田はゆっくりと語った。
「そういや、あいつらは・・・本部の判断で殺されたんやったな。」
火薬や刃物、鈍器と言った類はこの島の芸人達に大量に配られているけれど。
ゲームや漫画ならいざ知らず、電撃を武器にできる人間などいるはずがない。
首輪にそんな欠点があったにせよ、運営側からすれば深刻な問題と取られる事はなかったのだろう。
「・・・・・・・・・・・・。」
村田は息を付いて天を仰ぎ見た。
古坂達と言えば、ライブのエンディングでバナナマンの日村にイチャモンを付け、
舞台上の面々で襲いかかっては日村に返り討ちにされる・・・というプチコントを仕掛けたりして。
必然的にスタッフ側から入る巻きをも無視して伸び伸びと振る舞っていた、その姿が思い起こされる。
・・・そう言えばその日村も、結局死んでしまったんだったか。
見上げた空は青く、村田は鼻の奥がツンとなるのを感じた。
「阿呆やな・・・ホンマ、俺。」
村田は微かに呟く。
みんな、この島で何とかしようと藻掻いていたのに。自分と言えば、桶田にノコノコと付いて行くだけで。
あまつさえ、あの畜産農家で酒盛りをするなどといった馬鹿な真似までしでかして。
「・・・気付けたんなら、次はもう・・・・・・同じ間違いは・・・しない・・・だろ?」
「さぁ、どうやろな。」
力無く答えて、村田は空から桶田へと視線を戻した。
樹に寄りかかっていた桶田の身体は、地面の方へずれてしまっている。
それでも姿勢を正そうとしない辺り、それどころではないと言った所なのだろうか。
桶田の顔色は蒼白で。瞳には力などなく、唇も小刻みに震えているように見えた。
「なぁ。」
村田は桶田へと呼び掛けた。失われつつあるだろう彼の聴覚でも拾えるように、はっきりと声に出して。
「・・・何、だ?」
「なぁ、もし・・・例えば、ここにギターがあって、俺がおって。」
・・・お前は、今度はどっちを選んで持っていく?
そう、村田がおずおずと訊ねると。桶田は微かにその顔に笑みを浮かべたように見えた。
「 。」
何とか掠れがすれに言葉を絞り出し、桶田は一つ深呼吸をする。
そして、目を閉じると。それっきり、彼は何も喋らなくなってしまった。
「・・・・・・阿呆。」
村田は桶田から視線を外し、乾いた言葉を洩らす。
「いや、阿呆は・・・・・・俺やな。」
呟いて、村田はズルズルと滑り落ちるように地面に座り込んだ。
口を閉ざし、俯いて。周囲を風が通り抜ける微かな音を耳に聞く。
空腹も睡魔も彼を避けていったようで、ただ酷い絶望と深い虚脱感だけがそこにある。
村田にはもう何一つ身体を動かす事など出来なかった。
それからどれぐらい時間が経ったのかはわからないけれど。
彼が良く知る声が、慌てた様子で彼と桶田の名を呼ぶまでは。
【桶田敬太郎・元フォークダンスde成子坂 死亡】
小蠅さん乙です!
うぅ、悲しきすれ違い(つД`)
これから村田はどうなってしまうのでしょう…
888 :
:名無しさん@お腹いっぱい :03/10/14 22:43
かなり初期の方で伏線だけ張られて放置されてたネプホリケン&TAKE2東の天国編、もしよければ書きたいんですけどいいでしょうか?
>888
オケーじゃん?
890 :
:名無しさん@お腹いっぱい:03/10/15 23:15
許可(?)も頂けたようなので、ネプホリケン&TAKE2東の天国編、書かせて頂きます。
「〜〜〜♪」
三途の川に架かる橋の、終着点。
行儀悪く橋の手摺りに座り小さな声で歌っている誰か・・・・・・ネプチューンの堀内だ。
「〜〜〜♪」
「何してんの?」
数メートル先から掛けられた声に振り向いた堀内は、そこに立っている人物を見ると不服そうに眉根を寄せ、睨みつけた。
「『泰造止めて』って言ったのに・・・・・・・」
「あ、いや・・・・・・一応相方に引き継いでもらったから、そんなに怒んないでよ」
睨まれた人物・・・・・・TAKE2の東は苦笑いと共にそう言うと、堀内の隣まで歩き手摺りに寄り掛かった。
「深沢さんに?」
「あぁ。あの人だったら大丈夫だと思うけど?」
「ふ〜ん・・・・・・でも、ここ通るなんて珍しいね。三途の川に架かってる橋って幾つかあるらしくてさ、ここは門まで一番遠いから来る人もあんまり居ないんだけど・・・・・・」
「そうなんだ?」
その反応で一応は堀内の機嫌が直ったらしい事を察した東は、改めて質問した。
「・・・・・・で、何してんの?」
「泰造待ってたの。こっからだと門の方もよく見えるし、審判終わって直ぐに扉の向こうに行かなきゃいけないわけじゃないみたいだから。・・・・・・俺、天国行きだって。これでも結構殺したのにさ、おかしいっしょ?」
自嘲気味に笑いながら、堀内は目を細めて橋の向こう側を見つめている。
東は黙ってそれを聞いていた。
891 :
:名無しさん@お腹いっぱい:03/10/15 23:17
「――――最初はトリオにするの反対してたんだけど、実際一緒に仕事してみると楽しいんだよね、2人の時よりずっと。だから、やっぱり3人揃いたくて・・・・・・」
語ると言うよりは独り言のように呟いた堀内は、再び視線を東に向けた。
「潤ちゃんはともかく泰造は地獄行きだろうから、チャンスはここだけだしね。・・・・・・でも、もういいや」
「・・・なんで?」
「2人ともまだまだ来なさそうだし、待ってるだけってすっごい退屈でさぁ・・・・・・それに、泰造が来てからなんとかした方が手っ取り早いじゃん?」
その瞳に「プログラム」前にはなかった剣呑な光が宿っているのに気付いて、東は僅かに顔を引き攣らせながら心の中で呟いた。「今のこいつ、目的の為なら神様だろうがなんだろうがお構いなくぶっ飛ばしそうだ」と。
その後数分の沈黙が訪れる。それを破ったのは、堀内の言葉だった。
「そっちはどうするの? 深沢さん待つ?」
「え?・・・あぁ、一応待ってみようかな。出来れば来て欲しくねぇけど・・・・・・待ってなかったら文句言われそうだし」
そう言って浮かべる笑みは、どこかぎこちない。
「そう・・・・・・じゃあ俺、もうそろそろ行くから」
「おう、じゃあな」
去って行く堀内の背中に手を振って、東は溜め息をついた。
門の方へ歩きながら、堀内は一度だけ橋の方を振り返った。
『出来れば来て欲しくねぇけど・・・・・・』
(ホントは心の隅で来て欲しいって思ってんじゃないの? 嘘ついてる時左眉が少し上がる癖、気付いてない? まぁ、分からないでもないけどさ)
自分に家族が居るように相手にも家族が居て。
幸せな家族を間近で見ていただけに、引き裂きたくないと思う。一方で早く会いたいと思う気持ちもあって・・・・・・コンビ仲が良い程大きくなる矛盾を抱えて、待ち続けなければいけない。
(俺だって、全然心が痛くないわけじゃないんだよ?・・・・・・・・・・・・俺は『家族の為に生きて欲しい』なんて純粋に言える程いいヤツにはなれないだけで・・・・・・)
「〜〜〜♪」
視線を門に戻すと唇の端を上げ、堀内は小声でさっきの歌の続きを口ずさみながら歩を進めた。
もしここにこの歌を知っている人物が居たら、気付いただろう。
居眠りしてうなされて
飛び起きたら 泣けてきたのさ
今頃はみんな どこで生きてるの?
あんなに毎日面白かったのに
――――今門へ向かう彼の笑顔が、決して心からのものではない事に。
あてのない切符をポケットに入れて
何を待っているの
老けない顔をして
また3人で再会する為、ただそれだけの為に仲の良かった事務所の後輩や知り合いさえ殺して、その末に彼が手にしたものは一体何だったのだろうか。
堀内が門をくぐると鉄の扉が音を立てて閉まり、歌声はそこで途切れた。
東は何をするでもなくただ目の前の景色を見ていた。既に審判は終わり、待つ許可は取ってある。
耳に入る音は殆ど無く、これなら元々我慢強い方ではない堀内が音を上げるのも頷けるだろう。
『そっちはどうすんの? 深沢さん待つ?』
堀内の言葉を思い出して、東は眉を寄せる。
――――そう質問された時一瞬答えに詰まったのは、急に話を振られたからではなくて。
大きく溜め息をついて、俯く。
その目に、暗い翳りが生じた。水に一滴のインクを垂らした時のように、それは透明な瞳を一瞬だけ曇らし、やがて拡散して行く。
しかし、インクを垂らした水がそうであるように、彼の瞳にもわずかな濁りが消えずに残っていた。
(・・・・・・なんだろ、この感じ)
その後しばらくの間水面を眺めていた東は、訝しげに眉を寄せて視線を上げた。
――――さっきから、心のどこかで粗ついたノイズが鳴っている。奇妙に胸を騒がせる何か・・・・・・嫌な予感にも似た、雑音が。
「大丈夫かな、あの人・・・・・・」
「――――貴博・・・?」
民家を出て歩いていた深沢は、聞き慣れた声がかすかに聞こえたような気がして振り向いた。
思わず口をついて出た相方の名前に、そんな筈はないと思い直して再び歩き始める。
――――それは、放送で原田泰造の名が呼ばれる5分前の出来事――――
長くなってしまってすいません。一応纏めてみようと頑張ってはみたんですが・・・
稚拙な部分も山ほどあるかと思いますが、そこら辺は生温い目で見てもらえたら幸いです。
それでは長文失礼しました。
895 :
名無しさん@お腹いっぱい:03/10/18 19:12
age
896 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/10/22 04:48
hosyuage
久々に来たけどスレがあって、安心したよ。
乙です書き手さん方。
関係ないのですが、芸人小説スレのURL知っている方居られませんか。
どうなっているのか気になって。
スレ違いだが、そこの孤島のオニを今初めて見て鳥肌立った。
面白い。書き手さん上手いなぁ・・・
関係無い話スマソ。そして
>>898ありがd
>>900 同じくスレ違いだが、「孤島のオニ」は凄かったよ。
リアルタイムで見てたけど
毎日毎日あぷされるのを心待ちにしてたもの。
902 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/10/26 11:32
久しぶりにお絵かきのほう見たが、盛り上がってるね〜。
小説も、以前の賑わいぷりーず。
■ローカルルール■
○書き手用○
・どのレスの続きかを必ず明記する事。文章の最初に >>レス番号 をつける。
・文中で芸人が死亡または同盟を組んだ、仲間になったなどの場合は、最後に必ずその旨を明記。
・文章が長くなる場合は、一度メモ帳やエディタで作成、確認してから連続コピペを推奨。
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドルを使用する事を推奨。
・これから書こうと思う人は、必ず過去ログに目を通す事。
※専属の書き手がいる芸人は無闇に動かさない。
※専属芸人の続きを書きたかったり、自分の話と繋げたい場合は、スレ内で呼びかけ確認を取る。
※長期間放置されたままで、明らかに前の書き手がいないと思われる場合は、新たな書き込み可。
○読み手用○
・コメント、感想、励ましメッセージ、注文などはsage進行で。
・書き手に過度の期待は厳禁。書き手さんだって、書けない時もあります。
○共通用○
・死んだ芸人は原則として復活禁止です。
・「あくまでもここはネタスレッド」です。まったりと楽しみましょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
生存者の状況
【見方】
芸人名―専属書き手の有無/有の場合は名前
〔共に行動している芸人名〕
(その芸人の話の状況)
DT編関係
今田耕治 ―-無
〔単独行動中〕
(【DT松本、木村祐一、ココリコ・田中】の様子を伺っている)
130R・板尾―-無
〔単独行動中〕
(【DT松本、木村祐一、ココリコ・田中】のところへ向かっている)
DT松本、木村祐一、ココリコ・田中 ―-有?(継続中か不明)
〔DT松本、木村祐一、ココリコ・田中〕
(街へ向かっている)
DT浜田・堀部―-有/小蝿さん
〔DT浜田・堀部〕
(人肉ロールキャベツ食事中)
その他継続中の話と書き手さん
小蝿さん
村田渚、佐野ただひろ、元ブラジル代表、プロペラZ
B9さん
天津・向 、ブロンクス・中岡/野口、ヘッドライト・和田、
The PLAN9・灘儀 /ヤナギブソン、南海キャンディーズ・山崎、ネゴシックス
◆gvBXpGyuycさん
田上よしえ ・ダンディ坂野、北陽・伊藤、テツandトモ、ユリオカ超特Q、カンカラ
奥様は社長、さん
爆笑問題・田中 、5番6番、太田夫人・田中夫人・長井夫人
ヒマナスターズさん
ビーム、ダブルブッキング、マイマイカブリ
書き手見習いさん
18KIN・大滝、ピーピーングトム・桑原
森月さん
ハリガネロック、メッセンジャー、中田カウスボタン
書き手不在の生存芸人
陣内智則
冷やし中華はじめました
ビートたけし 、ダンカン、グレート義太夫、松尾伴内、そのまんま東、ガダルカナル・タカ、井手らっきょ
清水ミチコ
浅草キッド
電撃ネットワーク・ダンナ小柳
とりあえず、こんな感じでどうでしょうか。
問題なければvol.8スレへって事で。
マギー師弟も生きてなかったっけ?
The PLAN9・灘儀 /ヤナギブソンはB9さんじゃないだろ?
テンプレ乙!
久々にまとめサイトでハリガネを通しで読んでキタが、
書き手さんが多数いるせいか、全体を通して松口の躁鬱が激しいな。
こいつ集団催眠術編とかでも救われ無さそう。
陣内って書き手不在なの?
一時期キープだとか言ってなかった?
漏れハリガネはハリ陣書いてた人が1番好きだったなー。
その他継続中の話と書き手さん
小蝿さん
村田渚、佐野ただひろ、元ブラジル代表、プロペラZ
B9さん
天津・向 、ブロンクス・中岡/野口、ヘッドライト・和田、
南海キャンディーズ・山崎、ネゴシックス
◆gvBXpGyuycさん
田上よしえ ・ダンディ坂野、北陽・伊藤、テツandトモ、ユリオカ超特Q、カンカラ
奥様は社長、さん
爆笑問題・田中 、5番6番、太田夫人・田中夫人・長井夫人
ヒマナスターズさん
ビーム、ダブルブッキング、マイマイカブリ
書き手見習いさん
18KIN・大滝、ピーピーングトム・桑原
森月さん
ハリガネロック、メッセンジャー、中田カウスボタン
コッソーリさん
The PLAN9・灘儀 /ヤナギブソン
K2さん
陣内智則
書き手不在の生存芸人
冷やし中華はじめました
ビートたけし 、ダンカン、グレート義太夫、松尾伴内、そのまんま東、ガダルカナル・タカ、井手らっきょ
清水ミチコ
浅草キッド
電撃ネットワーク・ダンナ小柳
マギー四郎、マギー審司
-----------------
レスを参考に直してみたけどこれでどうかな。
あとは絵掲のアドレス(
http://w2.oekakies.com/p/warabato/p.cgi)も>>1辺りに入れとくぐらいで。
修正ありがとうございました。
あとは特に更に修正箇所はなさそうだったので、新スレ立てようと思ったのですが
ホストが弾かれて駄目ですた・・・。
どなたかスレ立てお願いします。
age
新スレdat落ちしてるぞ
じゃあこっちをageとくわ
922 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/08 18:33
書き手さん待ち?
また新スレ立てる?
おながいします
925 :
名無しさんお腹いっぱい ◆gvBXpGyuyc :03/11/14 12:38
テンプレ乙です。
最近(というか今日)ようやく執筆再開しました。
しかし、前以上に自信がありません。(´・ω・`)
でもがんばります
ついでにあげ。
926 :
名無しさん@お腹いっぱい。:03/11/15 20:32
ガンガレ!!
あなたが頼りだ。
君たち一体何をしているんだ?
僕達は本当にいまするべきことも、自分がやりたいことさえも
見失っているんではないだろうか…。
みたいなキャラを登場させてほしい。
ログまとめサイトも一通り見たのですが、死んだ方を出すとまずいので、一応確認します。
磁石、カリカ、モジモジハンターはまだ登場していないでしょうか?
もし登場していないのなら書かせていただこうと思うのですが、よろしいでしょうか?
書き手不在の芸人さんたちも盛り込んでいきたいと思っております。
ただ、こちらの都合で2週間ちょっと忙しい日々が続きますので、
本格的に執筆するのはそれ以後となってしまいそうなのですが、
もしよろしければお願いします。
931 :
名無しさん@挙動不審:03/11/18 23:34
あ、一応ageときます。
どなたか新スレよろしくお願いします…。(自分はたてられませんでした)
932 :
名無しさん@挙動不審:03/11/19 20:29
あ、あと意外にだいたひかるも出てないですよね?
書いてみようかなあ…。
ってか、連続カキコですね。スマソ。
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