【君に届け】椎名軽穂70

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754花と名無しさん
ばかじゃないの。
ピンのバカ。
でも、当たってる。
正直、今、ある出来事のせいで、つらくてしょうがない。
でも、誰のせいでもない、自分のせいなんだからと、胸のうちを誰にも打ち明けずにいた。
ちづや爽子が側にいたら、違ったのかもしれないけど、意外と人見知りのあたしは、札幌での新生活で、心を打ち明けられるほど親しいひとをまだ見つけられていない。
「うん・・・・」
いつになく、素直な気持ちで、答えた。
「そろそろ時間だな。戻るか」
車はUターンして、もと来た道を戻っていく。
いつの間にか日は沈んでいて、ヘッドライトが、懐かしい故郷の道を照らしている。
約束の店まであと15分くらいだから、そのころには涙も乾いてるに違いない。
あたしは化粧を直すために、ハンドバックからコンパクトを取り出した。