46話タータと花の言葉(前編)
急遽、竜術士の寄り合いを行うことになり、マシェルに連れられ木竜家に向かうタータ。
マシェルに抱かれながら、サータ達から全員補佐竜計画を聞かされた時のことが心に浮かぶ。
タータはうれしそうなナータの様子を思い出だし笑みをこらえきれない。
木竜家の前で先代の補佐竜だったクルヤに出会う。
ラスエルのお祝いにコーセルテルに来ていたのだ。
にこやかに話すクルヤだが、上の勉強を始めたいという話になった時、
表情が変わったことにタータだけは気付く。
マシェルが上の勉強を、と言い出したのは補佐竜になるための準備だろう、
そうナータは言っていた。そして、この計画については誰にも秘密だということも。
寄り合いでは、最初にミリュウが妹のことを報告していた。
いずれ彼女は風竜術士になることになりそうだと。
すごく風の資質が強く、人の世よりこっちの方が向いているだろうと。
そして父親はいまだに過去を思い出してはいないらしい。
妹を連れてくるためにも、これからも何度か外に行くことになりそうと話すミリュウ。
その頃、不安にかられたタータは部屋の前で悩んでいた。
クルヤのことをマシェルに言った方がいいのか迷っていたのだ。
そこへロイとノイがやってきて、タータに立ち聞き用の新作植物を披露。
それは対になっている植物で、木竜の力をこめることで、片方の前で話した言葉を
もう片方の花で聞くことができるというものだった。
しかし、その会話は彼らが仕込んだ部屋の花瓶の花からカディオ達に筒抜け。
二人は花を逆に置いてしまっていたのだ。怒られた二人は、そのまま退散。
寄り合いに戻って、ランバルスが皆の意見を聞きたいことがあると話し出す。
それはマシェルが最近借りていく本の内容のことだった。
その話が始まった時、家の外にクルヤらしき人影が。
その人影は、ロイ達が作ったあの花を手にしていた。
さて、ノイロイが逃げてしまったので、タータは他の木竜の子達と一緒に外へ。
例の花がいっぱいあったので、それで遊ぼうというのだ。
その時、ロットがクルヤが向こうの木の陰にいたと言う。
タータはさっき彼が持っていた花の中に、あの花と似た物があったような気がしていた。
さらにキーニから、彼からいろいろ聞かれたと言われる。
マシェルが誰を補佐竜にしようとしているか、気になるみたいだったと。
それを聞いてタータは、クルヤが計画を知っているかもしれないと思い、
確かめるために彼の後を追うことにした。
川のほとりでシオリアとラスエル、クルヤが立ち話をしているところへタータが追いつく。
タータは手に持っていたあの花の片方を葉っぱの舟に乗せ、
そっと川に流すと上手く近くに送ることができた。そこから聞こえてきた話は…。
最近、コーセルテルに起きている異変。
大地の精霊は目覚め、他にも竜王の竜術士の幽霊達など、かつての竜の都を知る者達が、
竜王を育てられる竜術士であるマシェルの元に集まっている。
本人にその気が無くても、竜の里の期待は別だ。そのことをクルヤは危惧していた。
またここに都なんかを作ったら、今の穏やかなコーセルテルはつぶされてしまう。
シオリアは確かにそんな夢もあるが現実的ではないと、竜王が一人や二人いたくらいで
都が復活できるわけ無いと、クルヤの心配を否定する。
しかしクルヤは、全ての竜族から竜王が出たとしたら、そして全ての竜族が都の復活を願ったら、
誰がそれを止められるのか、と話し出す。
そして続いて彼が言ったことは、タータにとって恐ろしいものだった。
「今なら、まだ遅くない」
「昔…コーセルテルを裏切った風竜術士の伴侶にやったように、
ここでの記憶を消してしまって、追い出してしまえばいい」 続く