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【黄門】
細川智栄子作『王家の紋章』(秋田書店刊)を指す略語として、関連スレで
ごく短期間使用された。それ以前に『王紋』の表記が確認されているので、
恐らく語呂合わせで『黄門』が出現したのだと推測される。だが『黄門』は
「一つ間違えると『声に出して読みたくない日本語』の某単語と同じ音価」
に読めてしまうので、おげれつを嫌うオトメ回路の働きで廃れたようである。
作者の細川智栄子は竹宮惠子の著作『竹宮惠子のマンガ教室』(筑摩書房)
にて「後から追いかけている私たちがいつかは追い越したいと思う標的」
と評されるほどのハイキャリアを誇り、その画風は太い描線・硬質な筆致・
密度の高い描き込みの『硬・濃・密』が特徴で、最早死語と化した『劇画』
の残滓すら感じさせる。読者からは『超合金』『絞ると墨汁がほとばしる』
『原稿一枚当たりのインク使用量なら日本一』などと評され、多くの逸話が
まことしやかに語られている。
『王家の紋章』は他に類を見ない長期連載作品だが、ストーリーのループが
甚だしいのも特徴で、単行本を通読するとしばしば強い既視感に襲われる。
それでも終了する気配が全く感じられないので『難攻不落』『生きた化石』
と揶揄され、読者から「シーラカンス」「少女漫画界のセパストポリ要塞」
などの迷言を賜っているようである。
同じ秋田書店で最長不倒記録を競う中山★加が、日頃の言動とPNに因んで
『スターリン』と評されているようだが、細川はさしずめド・ゴールに喩え
られるかもしれない。ルーズベルトとチャーチルは各々エロイカとクリドラ
の作者が当てはまるだろうが。