せっかくだから今回の発端になった(と思しき)この件を書き残しておこうか。
聞き取りにくいけど重要な内容だから。小沢事件の辺までね。
三井環インタビュー
https://www.youtube.com/watch?v=ebohbi0qacE&list=PLBDF3DADA42761E79 --------------------------------------------------------------
岩上安身「平成13年のところからお願いします…」
三井環「どういうことかと言いますとね、当時大阪地検検事正の加納駿亮(しゅんすけ)、これが検察の裏金づくりで刑事告発されとったんですよ。」
岩上「検察の裏金づくり?」
三井「ええ。検察の裏金づくりというのは、法務省には調査活動費というエサがあるんです。本来の用途は、情報提供者に対する謝礼なんです。
しかし全国の、地検高検も最高検も、実際には情報提供者というのは検察は誰も使っていない。架空の情報提供者をでっち上げるわけですよ。
そこに3〜5万円を支払った形の架空の領収書を検察事務官が書くんですよ。作るんです。そうしたら金が浮きますね。
地検の規模によって、年間予算が決められるんですよ。東京地検なら年間三千万円。大阪地検なら二千万円くらい。中小地検は大体400万円前後。
だからそれらを全て裏へ回して、地検であれば事務局長が浮いた金を金庫に保管する。
そしてそのカネを使えるのは、地検であれば検事正。高検であれば検事長。最高検であれば検事総長。で、法務省であれば事務次官と検事局長と官房長。その一身専属的な金なんですよ。」
岩上「イッシンセンゾク?」
三井「だから他の人は使えない。その人しか使えない。」
岩上「トップしか使えないということですか?」
三井「うん。」
三井「私も次席検事を高知と高松で通算六年間やりましたけどね。例えば冠婚葬祭というと、次席は自分の費用で支払わないといけない。
検事正は、その調査活動費の裏金で全部払うわけですね。そういう違いがある。
で、やっぱり六年間した中でいつも裏帳簿。事務局長が、いつ、誰が、どこで、誰と飲んだ(か書く)。で、相手方の請求書、領収書(を貼る)。
市販の金銭出納帳と同じなんですけど。それが裏帳簿なんですよね。」
岩上「『裏帳簿』…」
三井「それを見れば、全て分かるんですよ。
請求書も帳簿も領収書もあるから。
その裏帳簿は、毎月初めに次席検事が決済して、検事正が決済すると。
だから次席検事になれば、裏金がどうやって使われておるか、全て把握できるんです。」
三井「まあ、六年間やったからね。裏金づくりのカラクリは全部知っておる立場なんですね。
で、私も、検事正と例えば最高検とか法務省の幹部のね、事務会に行きまして、夜は接待しましたけれど、その場に同席しますんで、私も共犯みたいなもんなんですよ。
それが検察の裏金づくりなんです。
年間、私らが現職当時、約6億円。
岩上「6億。6億円というのは検察全体で…」
三井「検察全体で。全部使い切った。」
岩上「ほとんど飲食代とか、遊興費に消えるんですよね?」
三井「飲食代と、ゴルフする人は、ゴルフ代ね。
で、麻雀する人は、麻雀代で月10万円ほどいくんですよ。
年間120万円じゃないですか。」
岩上「120万くらいですね。」
三井「検事正の一身的な金だから、毎月事務局長が10万円ずつ渡しても、領収書を切る必要がないんですね。
麻雀やるとき事務局長が渡しても、領収書を切る必要がないんですね。裏帳簿も『10万円・検事正渡し』 それだけですよ。
まあ、観光する人は観光代に使うし、まあ、検事正によって趣味に合ったことで自由に使えるわけですから。
僕は(同席したときの)遊興・飲食費ですね。」
岩上「麻雀なんてのは、これ、賭博罪に引っかかるような話でもありますよね?」
三井「まあ、テンピン(1000点で100円)くらいで、負けてもそこで飲み食いした分で払うからね。裏金の10万円でね。
それが検察の裏金問題。」
岩上「実は検察というのはダーティーなところだと…」
三井「うんうん。
で、刑事告発されとったんですよ。その加納駿亮という恐ろしい検事正ね。」
岩上「刑事告発したのは、誰なんですか?」
三井「刑事告発したのは、実質的に私。
当時はまだ実名を出していない時期ですから。
表では、『四国タイムズ』の川上(道大・みちお)という男です。」
岩上「記者ですか?」
三井「『四国タイムズ』のメインコミッショナー。出版社の社長です。実質的には私です。そして私が(告発)したというのをマスコミ連中が嗅ぎつけましてね。
週刊文春は西岡研介ね。週刊朝日は朝日新聞の落合(博実)さんね。
何回も接触して来まして、取材しまして、そしてまあ実名を出さんということで、『けものみち』当時に、大々的に報道したんですよ。
で、法務省は加納を大阪地検検事正から、福岡高検の検事長に(昇格させようと)森山法務大臣に上申したんですよ。しかし森山法務大臣のほうが、(加納駿亮が)刑事告発されとるので難色を示したんですよ。」
岩上「こっちに行くってのは出世の道なんですね?」
三井「そう。もちろん、もちろん。難色を示しました。」
岩上「森山(眞弓)法務大臣が難色を示したと。」
三井「うん。刑事告発されているために難色を示した。
そこで報道が過熱し始めたんですよ。一気に表へ出る可能性が出てきましてね。
当時の原田(明夫)検事総長は慌てたんです。そこで選択したのが『けものみち』なんです。」
https://www.youtube.com/watch?v=JHjWmQIGBns -------------------------------------------------------------------------
三井環「そこで選択したのが『けものみち』なんですよ。」
岩上安身「この『けものみち』とはどういう意味なんですか?」
三井「『けものみち』というのは(2004年)10月末頃に、麹町に後藤田正晴の事務所があったんですよ。で、原田検事総長と当時の松尾(邦弘)(法務省)事務次官、古田(佑紀・ゆうき)検事局長。現在最高裁判事ですけれどね(2010年当時、2012年4月7日退官)。
この三人が訪ねまして、『このままでは検察が潰れる』という泣きを入れたらしいんです。検察が潰れるというのは、このまま報道が過熱して裏金問題が公表されれば、当時検事総長以下70名の幹部検事が懲戒免職処分を受けますよ。そして国民から刑事告発を受ける。
そして使ったお金は国に返さなきゃいけない。
そうなりますと検察は一時機能が麻痺しますよ。それで国民から検察の信頼は一気に失墜しますね。そういうことを言っているんですね。潰れるというのはね。
それを防止するために原田が取った行動が、加納の刑事告発を『嫌疑なし』としたんですよ。真っ白な『嫌疑なし』と。
で、検察の裏金づくりというのは、内部の者はみんな知っている公知の事実なんですよ。真っ黒なんですよ。だから真っ黒を真っ白にしたんですね。
まあ、検察としてやっちゃならんことですね。
真っ白にすると、内閣が承認しても責任問題に発展しないんですよ。そういう形で11月13日の閣議決定で加納人事が承認されたんですよ。」
岩上「先ほどの、加納駿亮を福岡高検の検事長に昇進させるという人事ですね。」
三井「そこで検察当局は内閣に大きな借りができたんです。裏金問題が表に公表されなかったけれども、内閣に大きな弱みを握られた。これが大きな事件に影響してくるわけです。
これが原点なんです。出発点ね。」
岩上「逆に言うと、後藤田さんだけでなく、自民党の幹部は検察というのは実はそういうダーティな側面があるということを承知のうえで、それを飲み込んだ。だからその貸し借りができたということですよね?」
三井「そうそう。
だから森山法務大臣は、当時の小泉内閣は検察の裏金問題をもちろん承知のうえですよ。」
三井「その影響は、どう現れるか。具体的な事件で説明いたしますと、日歯連事件というのがありましたね。一億円の政治資金規正法違反事件なんですけどね。」
岩上「日歯連事件をまず簡単に説明してください。」
三井「橋本(龍太郎)総理と青木(幹雄)参議院議長、野中広務自民党幹事長の三人が主体になって、日歯連からの献金一億円を記載しなかったという事件なんだけれども。
特捜部は捜索の結果、(関与した)自民党議員約20名、自民党三役に約5億円の金が手渡されているという物証をつかんだんです。いわゆる診療報酬改定問題の贈収賄事件なんですよ。
これは捜査が進むと、大疑獄事件に発展します。当時の検事総長が松尾(邦弘)です。『けものみち』に関与した総長ですよ。」
岩上「さっきの裏取引に関与した人ですね。」
三井「うん。
それでどうしたと思いますか? 東京地検はやろうとしたんですよ。捜査中断じゃないですか。中断したおかげで、自民党の三役、20名の議員は助かりましたよ。
いやいや、自民党が潰れていたかもしれないですね。
もう一つ。政治資金規正法の事件は、最終的に村岡だけが起訴されたんだけども。」
岩上「村岡兼造(元衆議院議員)さんですね。」
三井「在宅で起訴されたんだけどね。
特捜部は、野中(広務)も起訴方針であったわけですよ。すると松尾検事総長は、『二人も起訴する必要はない』と言うんで、村岡一人を罪に問うてね。約6ヶ月で捜査を終えたんですよ。だから大疑獄事件は上から中断ですよ。
でね、野中さんとか、平成14年の3月末に、京都駅前に京都みやこホテルというのがあるんですよ。そこに野中さんの事務所があったんですよ。
そして野中さんの京都の青木という人から連絡があって、『裏金問題について話を伺いたいと言っている。来てくれまへんか?』というんで、行ったんですよ。
ちょうどこれくらいの事務所ですよ。一対一で約一時間話して、『けものみち』の件も、裏金の実態の件も、全部話したんですよ。
だから『けものみち』も、裏金の話も、野中さんはよく知る人物なんですよ。」
岩上「それはいつなんですか?」
三井「平成14年の3月末、京都府知事の応援演説に来た日、たしか日曜日だったと思う。
ここからは推測になりますが、自分が野中さんならどうします? 自民党を救うためにはどうします? 自分自身を救うためにはどうします?
『検察の組織的な裏金問題、公表しましょうか?』と一言言えば、捜査は中断されるでしょう。自分は起訴されないでしょう。だったらそうするんじゃないですか?
『けものみち』でああいうことやったわけだから。弱点があるんだから。それが日歯連事件。」
https://www.youtube.com/watch?v=c3pvXv4mZV4 -------------------------------------------------------------------------
三井環「元 公安調査庁長官をしていた緒方(重威・しげたけ)さんだね。
例の朝鮮総連のビルを巡る詐欺事件。これはあきらかに安倍内閣主導。
安倍内閣は当時、北朝鮮に強硬姿勢を取ってましたよ。」
岩上安身「はい。」
三井「それに反して緒方さんは、朝鮮総連に対して味方だったじゃないですか。」
岩上「北朝鮮というか朝鮮総連に対してですね。」
三井「元長官は反対の方向にいた人ですよ。
そしてこれは緒方さんの本にも書いてますけど、官邸主導で特捜検察に暗に指示してやられた事件で、(官邸から)指示されて検察はそれを断ることができないんですよ。断れば『けものみち』があるから、断ることができない。」
岩上「はい。」
三井「だから『けものみち』は捜査を中断させたね。そして官邸主導で検察を利用して道具として使って、都合の悪い人間を(排除する)。そういう役目を果たしておる。」
岩上「あー、なるほどなるほど。」
三井「次は平成20年の3月3日の、小沢元代表の公設秘書の政治資金規正法違反ですよ。
3月といえば、いつ解散してもおかしくない時期ですよ。検察のこれは良き伝統なんですけれどね。『選挙に影響を及ぼす時期には強制捜査をしない。』これは検察の不文律で鉄則なんですよ。それを破ってまでやったでしょう。」
岩上「はい。そうですね。あからさまに…」
三井「…破りましたね。
麻生総理はね、『けものみち』に一番関心を示した人物なんですよ。当時は自民党の政調会長だったんです。
『けものみち』を私が知ったのは、四国タイムズの川上のオヤジね。高松では有名な右翼だったんですよ。で、検事正が着任赴任する場合の、挨拶に行く先の一人だったんですよ。昔ですからね。」
岩上「要するに、地元の有力者だったんですね。」
三井「そうそう。後藤田(正純)が最初、衆議院で落選しましたよね。その時のいわゆる応援部隊でもあるんですよ。亡くなった親父(後藤田正晴)の時代から、親しい付き合いをしておった。その息子ですから。ずっと付き合いしておったんですよ。
そういうことで彼(川上)が(自分の代わりに)表へ出て刑事告発をしましたよね。私も何回か事務所へ行きましたよ。
後藤田(正純)さんだけには私の実名を出して、大阪高検公安部長 三井環という実名を出して、検察はこういう裏金をやっておりますと、FAXを送って、やり取りをしておったんですよ。
後藤田さんは秘書が徳島出身なんですよ。窓口がね。それでやり取りしておった。その過程で『けものみち』というのが向こうから入ってきたんですよ。
それで今日はね、朝日(新聞社)の落合(博実・ひろみつ)が来た。『けものみち』の件を訊かれて一回それを否定しましたと。
今日は(週刊)文春の西岡(研介)が来たと。否定しました。今日は自民党麻生太郎政調会長が来ましたと。否定しました。
ということで、政治家の中で興味を示した人物の一人なんですよ。」
岩上「これは何年頃なんですか?」
三井「『けものみち』の件があったのが10月の末で、こちらが知ったのは平成13年の11月10日頃ですね。」
岩上「麻生さんが来たというのはその頃?」
三井「そう。その頃。まあ興味を示した人物の一人。そして麻生政権としてはもう断崖絶壁状況ですよ。支持率も10%くらいになってね。政治権力というのは一度握ったら離したくないですよ。歴史が証明してますわね。
そういうことがあったからか知らないけれども、これは臆測だけれども、それ(裏金問題)がなければ、あの時期に強制捜査は絶対にしない。これは断定してもいい。」
岩上「ようするに、どちらかに有利になったり不利になったりする政治的な捜査の仕方は、やはり中立を保たなきゃいけない検察としては通常ならしない。影響を与える時期じゃないときにやるもんですよね?」
三井「そうそう。あの事件も、慌ててやるような事件ではないし、いつでもできますよね。何か別件(逮捕)を狙った事件でもない。それだけの事件ですよ。何も強制捜査まであの時期にする必要はないわけですよね。」
岩上「形式犯ですからね。」
三井「うん。その流れを踏まえてでないと、小沢の不動産取引を巡る事件というのはそれだけを捉えてもなかなか意味が分からない。」
岩上「となると、麻生政権のときに麻生さん本人が『けものみち』という、内閣と検察トップとの間で裏取引をした。
検察の弱みを自民党の政権のトップが握ったというこの事実について自民党全体が知っていたわけではなくて、一部の人達が知っていた。で、麻生さんも、ある時期から気がついた。
そしてご自身が取ると、また政権を維持するというときに、これを利用して強力なライバルである民主党の中核である小沢さんに対してダメージを与え、民主党に対してダメージを与えるために検察の弱みをてこにして捜査をかけさせたという可能性があると?」
三井「それしか考えられない。その事件に関しては。検察の鉄則を破ってやっているからね。それ以外、考えられない。
検察のOBとか、いろいろ新聞にコメントしてますよね。この事件についてね。」
岩上「はい。」
三井「私と同期の熊崎(勝彦 元 最高検察庁公安部長)なんか、『検察は苦渋の決断をした』とか、何とかね。『選挙に影響を及ぼす時期に強制捜査はしない』とか、誰でも知ってるんですよ。ある程度、指揮した人間であればね。
まあ、ちゃんと発言してないわね。」
岩上「熊崎さんとはテレビに私が出たときゲストで来られて、一度だけお会いしました。可視化のことについて(話を)振ったら、『どう思いますか?』と言ったら、すごい長い時間かけて可視化反対ということを仰ってましたけど…」
三井「みんなそう言うでしょう。現職もOBも。現職とOBは、持ちつ持たれつの関係ですからね。
小沢の不動産取引を巡る話に戻るとね、だからそういう流れを把握して、初めてこの事件の意味が分かるんではないかと、私は思うんです。」
岩上「今の段階で、あくまで推測ではあると? 麻生さんがそういう圧力をかけたという証拠があるわけではない?」
三井「それは推測ですよ。」
岩上「でも、その可能性があるのではないかと。」
三井「うん。」
岩上「そうでないと、この捜査の仕方は非常に不自然だと。」
三井「どう考えてもね。
さっき話しましたようにね。強制捜査をあの時期にしたわけですから。
何もなければ検察は何もしません。」