「真実の剣」最高傑作と名高い第六部のテーマは、
「自分の頭でものごとを考えず、他人の言葉をうのみにすることの恐怖」である。
それは、ついにこの部で明らかにされる<魔道士の掟>の奥義――。
”己が唯一、甘んじて支配を受ける君主は理性であるものと心得よ”
にも、如実に体現されている。
このシリーズの面白いところは、DB級にめまぐるしくスケールアップする世界と
インフレ化していくリチャードのバトルのみならず、このような現実世界をモチーフにした
現代に生きる我々が直面する問題を、テーマにしていることだろう。
<至高秩序団>の姿は、まさに”物事を理性で考えず、脊髄反射で決めてかかる”
ゆとり(特にゲームやネットにのめりこんでいる層)の姿に他ならない。
さて、第六部は<秩序団>の軍勢がダーラ軍を壊滅させアイデンドリルに迫る一方、
敵国の首都アルトゥラングで、リチャードを盟主とした反乱の火の手が沸き起こるところで終わる。
相変わらず「24」級の引きの巧さであるが、続く第七部ではリチャードやカーランは登場せず、
外伝的なストーリーになるという。
余談だが、「スパイダーマン」のサム・ライミ監督が作者の自宅に押しかけ、
本作の長編TVドラマシリーズでの映像化権を取得したらしい。
いずれ、日本にも輸入されブームとなりそうなこのシリーズ、決して万人向けではないがオススメの一作である。
表紙を彩る羽住都嬢の壮麗な画も、ラノベファンにも抵抗なく読めるはずである。