【\(^o^)/】オグマ隊長すれ☆【\(^o^)/】

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52助けて!名無しさん!
Q8:カシムが詐欺師とよばれたのはなぜ?

 カシムはタリスの猟師です。
 シーダより三つほど年上で、タリスの城下でも孝行息子と評判でした。
 彼には、いわゆる貧乏人の子沢山というやつで、幼い弟や妹が七人もいました。
 父親も猟師でしたがあまり仕事熱心とはいえず、昼間から飲んだくれている事も多かったようです。
カシム家は働き者の母とカシムによって支えられていました。

 しかし不幸は突然やってきます。母親が九人目の子供を出産し、そのまま寝込んでしまったのです。
産後の肥立ちが悪かったのでしょうか。
いくら情けない父親でもさすがに一家の柱、俺にまかせろと言ってガルダへ出稼ぎに行くのですが、そのまま消息は途絶えました。
カシム家の十人の運命は、長男であるカシムの手に委ねられることになりました。
これではタリスで猟師をやっていただけでは、とても食べてはゆけません。
やむなく上の妹、リーンに後を託し、タリスを出る決意をします。

 「お兄ちゃん・・・・・・」
 「ごめんよリーン、お前にばかり辛い思いをさせて」
 「ううん、それはいいの。あたしでできることなら何だってする。
おかあさんの看病もできるし、弟や妹たちのめんどうもみれる。でもお兄ちゃんお願いだから早く帰ってきて。
おかあさんの薬が買えたら、すぐに帰ってきて、あたしたちなら我慢できるわ、みんなで働けばいいんだもの」
 「うん、分かっているよ。でもガルダで一仕事したら、いい金になるんだそうだ。
そしたら、かあさんの薬も買えるし、お前に女の子らしい服もかってやれる」
 「あたしの服なんてどうでもいいの。ね、だから無理をしないで。
 あたし、お兄ちゃんが好きだから・・・お兄ちゃんを失いたくないから・・・」
 「ばかだな、泣く奴があるか!。俺は親父とは違う。あいつは俺達を捨てたけど俺は必ず帰ってくる。
リーン、約束する。お兄ちゃんを信用しろ!」

 こうしてカシムはガルダの海賊に身を落としました。
 しかし後に、シーダの命がけの説得に心を打たれ、同盟軍に参加します。
 シーダがくれた、いくばくかのお金は、薬とともにリーンにとどけられました。
 その後もカシムは、シーダへの恩義(と、憧れ)のために故国へかえろうとはせず、同盟軍の一員として戦い続けたのです。

 暗黒戦争終結後、カシムはようやく家族が待つタリスへ帰ります。
 その手には、苦労して買い求めた、粗末な服が握られていました。
 「リーン、よろこんでくれるかな・・・あいつならきっと似合うだろうな」
 そんなことを考えながら、タリスへの道を急いだのです。

 しかし、家に帰ったときには、すでに何もかも遅かったことがわかります。
 リーンは、病気の母や幼い兄弟たちのために、自らを奴隷商人に売ったのです。
 カシムからの仕送りが途絶えたとき、もはや彼女には、他になすべき方法がなかったのでしょう。
カシムは半狂乱になって妹を探し求めます。

 ワーレンの薄汚い酒場で、妹の変わり果てた姿を見つけたのは、寒い冬の日の事でした。
身も心もボロボロになって、リーンは冷たい床の上に寝かされていました。
 カシムは彼女を力一杯抱きしめて、泣きながら何度も何度も、詫びました。
 リーンは優しく微笑んで、そして最後に、一言だけ言い残して息絶えたのです。

 カシムが守銭奴とか詐欺師とか呼ばれるようなったのは、英雄戦争が始まってからの事です。
カシムは仲間に軽蔑され、世間に笑われても、決して本心を明かそうとしませんでした。ただひたすら、金を稼ぎ、家族に送り届けたのです。

 彼の行動をどうとるかは、人それぞれです。
 カシムが経験した悲劇は、この当時の世界ではよくあった話です。
 取るに足らぬ事だと、笑うこともできるでしょう。
 ただカシムにとって、世界を救うことや、祖国を守ること、歴史に名を残すこと等本当はどうでもよかったのかも知れません。
そんなことは裕福な者が考えることで社会の底辺にあって妹一人守れない自分に、いったい何ができるというのか。
 そう考えたとしても不思議はないのです。

 リーンが最後に言った言葉、
 「お兄ちゃん・・・約束・・・忘れないで。みんなを・・・守って・・・」
 が、すべてを物語っているように思えます。