【アトリエ】ガスト総合142【アルトネリコ】

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290 ◆P3mkcgF2L6
3:(前>>210-211)
蜃国にはいると、様相がいっぺんした。
人が多い。
兵士だけではない。それに付随する武具職人や商人、商売女といったものたちに加え、
物乞いや、はてはどうみてもこそ泥といった風情の輩まで。
そこはごったな人種のるつぼと化していた。
だが、普通の人間のすがたは、ほとんど見られなかった。
・・・戦がはじまるのだ。

この大地は、広い。
それはあまりにも、あまりにも広大だった。
ゆえに、ひとつの国家によって統一され、安定するということがなかった。
絶えず、いずこかで戦乱の火の手があがり、人が殺しあった。
何千何百という国が興り、その多くが滅びた。
時がたち、世代がうつり、国の名がかわり、新たな支配者があらわれては消え、
多くの血とともに人の想いや記憶が流れさっても、戦争だけはこの世界にありつづけた。
それは、人の心の根本まで深く食い込み、憎しみと絶望という名の傷痕を残す、巨大な獣の牙のようだった。
「獣を殺すには、魔物の力が必要だ」
ひとりの王が、そのことに気づいたのは、長い戦乱の歴史が数千年もつづいたはてのことだった。
その十数年後、百あった国の数は、わずか3つになっていた。

「鳳」・「蜃」・「鯨」。
それがいまや天下の覇権を三分し争う、3つの国の名だった。
国力は、大雑把にいうと、4:5:1。
ちょうど3すくみの関係にあるが、その趨勢は、大地の東と西の大半を手中におさめる
鳳、蜃の二大国のあいだで決せられることは、明白だった。
その中間に位置する鯨国は、最終決戦の緩衝材としてのみ生かされてたといっていい。
両国は、相手を滅ぼすための策と、軍事力の強化をはかっていた。

そして、蜃が鯨国を滅ぼした。