【アトリエ】ガスト総合142【アルトネリコ】

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210 ◆P3mkcgF2L6
2:(前回>>201)
男は鯨国の終着点、蜃国との境にある宿場町にたどりついた。
往時はにぎわいをみせたであろう町も、今は悲惨だった。
道ゆく人はほとんどおらず、町並みは、廃墟といってよかった。
それはけっして赤い風のせいだけではない。
鯨国はすでに2ヶ月ほど前に、この世から滅びさった国だった。
蜃軍の破壊と蹂躙のきずあとが、各所になまなましい状態でみうけられた。
炎に煽られ、奇妙な形にねじれた大木ーーかつては町のシンボルだったというーーの影が、
真っ赤な空を背に、悲しげに浮かんでいた。
男は、その木をめじるしに通りをすすんでいった。
ふと、先の路地裏で、足のふじゆうな女が兵士にらんぼうされているのが目にはいった。
女は、20台半ばくらいに見えた。
もと商売女だろうか。派手な赤い衣装をはだけ、耳に白く光るイヤリングをはめている。
そのイヤリングが、ほとんど女の耳ごと引きちぎる勢いで、むしり取られた。
兵士は、どこの国のものとも見分けられなかった。
戦がおわり、あぶれものになった浮浪兵が民をくいものにするのは、世の常だった。
男は、そのままとおりすぎた。