【アトリエ】ガスト総合141【アルトネリコ】

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外伝9:
二人は起きると、ベッドの上に並んで腰かけました。
「私の父が、恐ろしい人だってことは、言ったでしょう?」(※)
少女が、沈うつな面もちで話しはじめました。
男もまた、それに対しては、いきどおりを隠せませんでした。
「あの男は、はじめて私を客人にだしたとき、私がそれを拒むと、ムチ打って豚小屋に閉じこめたわ」
その声は、ふるえていました。
「そして、一週間がたつと扉をあけはなち、こういったの」
ーーどうだ。例えどんな男と寝ることになろうと、豚のクソにまみれて寝るよりはまだマシだろうよ。
それとも、豚とでも寝かせたら”はらん”でくれるか? お前は壊れている。壊れたものは、けっして文句をいわんものだ。
その頬に、涙が流れるのを、彼はなにもできず見つめていました。
今は、すべて話させ、涙を流しきるのが、少女のためだろうと思ったのです。
「ここでは、子供を産めない女は、人間として扱われないわ。・・・特に、それが部族の長の娘では。
 彼は、それを恥だと思っているの。自分の長としての尊厳が、踏みにじられたのだと。
 だから、きっとあの男は私を許さないわ。いずれ、殺されてしまうわ・・・」
少女の手が、救いをもとめるように彼の手を握りしめました。
男もまた、それを強く握りかえしました。
「いっしょに逃げましょう。・・・あなたも、追われているのでしょう?」
彼は自らの出自を語らず、彼女もまたあえて聞きませんでしたが、事情は察せられているようでした。
男の決心は、最初から決まっていました。
なぜなら、この少女を守ることが、自分の運命だと今は強く信じていたからでした。
そして、男もまた自らを語りはじめました。

二人は大洋川を越えて、北の大地を目指すことを決心したのです。