【アトリエ】ガスト総合141【アルトネリコ】

このエントリーをはてなブックマークに追加
829 ◆P3mkcgF2L6
外伝6:
しかし、流れでたのは、男の血でした。
乙女の自らもつナイフが、そのやわらかな首元をつらぬこうとしたそのとき、
男の手が、なんのためらいもなくその刃の刀身を握りしめたのでした。
「あ・・・」
少女が目をみひらきました。
その目を、男の強いまなざしが真正面からみすえました。
「刃は男のものです。それは、守るべきものを、守るためにあります」
男はしっかりと、心からしぼりとるように言いました。
その手から、ドクドクと血があふれでています。
「そんな、ダメよ・・・」
少女は泣き出しそうな顔をして、手にもつナイフを地面に落としました。
閉鎖された室内に、かたい金属音がなりひびきます。
そして、その瞬間、男は悟ったのでした。
なぜ、竜との戦いで、自分が敗北し、弟がそれに勝利したのかをーー。
彼は、竜を倒し国を手に入れるために、槍をえらびました。
しかし弟は、国を守るために、盾を手にしたのです。
たったそれだけのことが、決定的な勝負をわかつ、境界線でした。

今、男は自らもまた守るべきものを手にしたことを、ハッキリと知りました。
830 ◆P3mkcgF2L6 :2010/03/04(木) 01:30:23 ID:+OB1Od1b0
外伝7:
少女はわなわなとふるえる手で、彼の手をとりました。
真っ赤な血が男の手をそめあげ、まるで涙のようにその腕をつたい落ちます。
そしてその手を、いたわるように自らの頬に押しあてました。
「ああ、なんてことを・・・手は武人の命なのですよ。それを、私ごときのために・・・」
「男には、命よりも、大事なものがありますよ」
彼は優しくそう言いました。その言葉の意味を、少女もまた理解しました。
そうして彼を見上げる少女の顔は、頬を男の血で真っ赤にぬらしていましたが、瞳は潤いにみちていました。
(本当に、この少女は見るたびに美しさを増していくのだ)
彼は思いました。
しかし、今度はそれを言葉にだすことはありませんでした。
そうすることで、何か大切な感情が、言葉とともに失われていくと思ったのでしした。
その代わり、彼は声ではなく、キスをしました。
最初に、おでこにそっとふれました。
次に、今にもこぼれ落ちそうな涙の滴にあふれるまぶたにふれ、そして鼻の頭に・・・。
そのたびに、少女の鼓動が高鳴っていくのが感じられました。
最後に、くちびるにふれました。
少女の喉から甘い吐息がもれ、舌からは美しい音色が響きわたりました。

そして、二人は交わり、ひとつになったのです。