テイルズオブバトルロワイアル2nd Part3

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1名無しさん@お腹いっぱい。
テイルズシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドの2周目です。
参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、ナムコとは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

詳しい説明は>>2以降。

【前スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd Part2
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1220284765/

【過去スレ】
テイルズオブバトルロワイアル2nd 感想議論用スレ
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1217252638/

【避難所】
PC ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
携帯 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/

【2ndまとめサイト】
PC・携帯両用 http://www.symphonic-net.com/tobr2/mobile/index.html


【1周目のスレ(現在アナザールート進行中)】
テイルズ オブ バトルロワイアル Part14
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1213507180/

【1stまとめサイト】
PC http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/
携帯 http://www.geocities.jp/tobr_1/index.html
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:40:52 ID:z+jlWf1o0
----基本ルール----
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
 開催場所は異次元世界であり、海上に逃れようと一定以上先は禁止エリアになっている。

----放送について----
 放送は12時間ごとに行われる。放送は各エリアに設置された拡声器により島中に伝達される。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
 「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。  
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
 たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:42:33 ID:z+jlWf1o0
----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」
 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。       
 四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」、「マスコットキャラ」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 エクスフィアを出す場合は要の紋つきで支給するようお願いします。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。

----マスコットキャラの扱い----
 マスコットは「支給品」一つ分相当とカウント。
 なお、ロワでの戦いにおいて全く役に立たないマスコットキャラは、この限りではなく、「支給品」一つ分とは見なさない。
 ミュウを支給する場合はソーサラーリングを剥奪した状態で支給すること。コーダ、ノイシュ、タルロウXの支給は不可。
 マスコットキャラはプレイヤーではありません。あくまでも主役はプレイヤーという事を念頭に置いて支給しましょう。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:43:58 ID:z+jlWf1o0
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法、即死術は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。 (短距離のテレポート程度なら可)
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内(半径100mほど)ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。

----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要なので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェルシーの死天滅殺弓のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェルシーの弓術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:45:49 ID:z+jlWf1o0
----魔法の使用に関して----
 ロワ会場ではマナが特殊な位相をとっており、魔法使用者の記憶によって指向性を持ち、様々な形態となる。
 すなわち魔法の内容が術者の記憶にあるのならば、
 周囲のマナが晶術・フォルス・爪術など各々に最適な位相を勝手にとってくれる、ということである。
 それゆえ術者は元の世界のものと寸分違わぬ魔法を再現できる。
 召喚術や爪術など、厳密に言えばマナをパワーソースとしないタイプの魔法でも、
 会場のマナが変異して精霊や滄我の代役を務めてくれるため、発動に支障はない。
 ただしこの位相をとったマナは回復魔法とは極めて相性が悪く、回復魔法はもとの一割ほどしか効果がない。
 気功術などによる回復さえマナに妨害されるため、会場内では傷の回復は至難。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 使用する前提条件として、「精神集中が可能」「正しい発声が可能」の条件を満たしていること。
 舌を切り取られているなどして、これらの条件を満たせていない場合、使用は不可能。
 仮に使えても、詠唱時間の延長や威力の低下などのペナルティを負う。
 「サイレンス」などで魔法を封じられた場合、無条件で魔法は使えなくなる。
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。
 術者が目標の位置をきちんと確認できない場合、当てずっぽうでも魔法を撃つことはできるが、命中精度は低い。
 また広範囲攻撃魔法は、範囲内の目標を選別出来ないため、敵味方を無差別に巻き込む。

----時間停止魔法について----
 ミトスのタイムストップ、アワーグラスなどによる時間停止は、通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。
 ただし、広範囲攻撃魔法と同じく目標の選別は不可であり、発動者自身以外は動くことが出来ない。
 TOLキャラのクライマックスモードも、この裁定に準拠するものとする。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:47:17 ID:z+jlWf1o0
----秘奥義について----
 秘奥義は一度だけ使用可能。その際、発動したキャラが持つ未使用の秘奥義も使用不可となる。
 使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 また基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。
 秘奥義に類する強力な術技は秘奥義扱いとする。
 該当するのはシゼルのE・ファイナリティ、レイスの極光、TOLキャラのクライマックスモードなど。
 Iの覚醒はSB・OLと同じ扱い(何度でも使用可)だが、前世の姿に戻ることは秘奥義扱いとする。
 SRの追加秘奥義は2つ合わせて一つの秘奥義とする。TP消費は普通の秘奥義より増える。
 またリヒターのカウンターは秘奥義扱いとする。その前に普通の秘奥義を使っていたならば、当然カウンターは発動不可能である。

----TPの自然回復----
 会場内では、TPは戦闘ではなく時間経過で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。
 なお、休息せずに活動している状態でも、TPは微量ながら徐々に回復する。
 回復したTPをすぐさま回復魔法にあてれば、ある程度ダメージの回復は見込める。
 しかし、かなりの集中力を割くためこの作業中は不意打ちに弱くなる。事前に鳴子を張っておくなどの対策は可能。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:48:59 ID:z+jlWf1o0
----合体技の再現(SのU・アタック、R仕様秘奥義など)----
 ロワを通して仲良くなったキャラや、同作品から来た仲間同士であれば、協力して合体技を使うことも出来る。
 合体技を編み出せる仲間、ならびに魔法・特技の組み合わせは各原作に準拠するが、
 このロワ中では次の条件を満たしている場合でも合体技の発動が可能。

  例1:異なるキャラ同士で、同名の魔法・特技を組み合わせた場合。
   例えばSの複合特技である「プリズミックスターズ」は、リフィルの「レイ」とジーニアスの「グランドダッシャー」などで発動するが、
   同名の魔法を習得しているので、フィリアの「レイ」とシャーリィの「グランドダッシャー」でも、「プリズミックスターズ」は発動する。

  例2:「それっぽい」魔法・特技を組み合わせた場合。
   例えばSの複合特技である「襲爪雷斬」は、本来ロイドの「虎牙破斬」とジーニアスの「サンダーブレード」などで発動するが、
   ジーニアスの「サンダーブレード」をジェイドの「天雷槍」などで代用することも可能。
   また常識の範囲内で考えて、それなら合体技が成立しそうだと考えられるなら、まったく新規の組み合わせも可能。
   例えばシャーリィの「タイダルウェーブ」で発生させた水を、ルビアの「イラプション」で加熱し、高温の蒸気を発生させて、
   もともとはジーニアスの魔法である、高温の蒸気で敵をあぶる魔法「レイジングミスト」を合体技として編み出すことも出来る。

  補則1:なおクレスなどは単体で「襲爪雷斬」を放つことは出来るが、同名の技でも合体技の方が威力は上である。
  補則2:新規のキャラ同士の新規の魔法・特技の組み合わせは自由に考えて構わないが、
       それにより成立する合体技は必ずシリーズのどこかから「本歌取り」すること。
       世界観の維持の観点から、まったく新規の合体技を編み出すことは禁止する。
  補則3:もちろん合体技を繰り出す当事者達は、ある程度以上気心が知れあっている必要がある。
       小説中で「仲良くする」ような描写を予め挟んでおくこと。
  補則4:合体技は当然大技であるため、発動させるためには上手く隙を作らねばならない。
       同じく小説中で「隙を作る」ような描写を予め挟んでおくこと。
  補則5:AのゲームシステムであるFOFを用いた、術技のFOF変化も上記のルールに準拠するものとする。
       FOFの属性と変化する術技の組み合わせは原作に準拠するが、上記のルールに違反しない限り、
       書き手は全く新規の組み合わせを考案してもよい。下記も参照のこと。

ケースバイケース、流れに合った面白い展開でお願いします。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:51:08 ID:z+jlWf1o0
----ゲームシステムのクロスオーバー----
 ロワ参加者は、デフォルトの状態では原作世界の知識しか持たないものの、
 ロワで他世界のキャラと交流を持ったり、何らかの方法で他の世界の知識や技術を得た場合、
 その世界特有のシステムを使いこなすことが出来るようになる。
 例えばリオンが事前にジェイドから説明を受けていれば、ジェイドの「タービュランス」で発生した風属性FOFで、
 自身の「双牙斬」をFOF変化させ、「襲爪雷斬」を放つことも可能。上項も参照のこと。
 ただしRのフォルスやTの獣人化など、その世界の住人の特異体質によるシステムのクロスオーバーは、
 原則として不可とする。
 ただしSのハイエクスフィアを用いた輝石による憑依などで、
 R世界やT世界の出身者の肉体を奪うなどした場合は、この限りではない。

----状態異常、変化の設定について----
 状態異常並びに変化追加系は発生確率を無視すると有利すぎる効果なので禁止とする。
 Rの潜在能力やフォルスキューブ(マオ)、Dのソーディアンデバイス、D2のスロット、一部のエンチャントが該当する。
 D2のFOEも禁止。ただし術技にデフォルトで付加されている能力は有効とする。例として
●ヴェイグの絶・霧氷装
●ミトスのイノセント・ゼロ
●ダオスのテトラアサルト
●ジルバのシェイドムーン・リベリオン
 等が挙げられる。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:52:36 ID:z+jlWf1o0
----シリーズ特有の強化スキルやシステムについて----
シリーズのシステムに関わらず、特技・奥義は単独で発動可能とする。ただし連携の順番は原作に倣うこと。

P・・・なし。
D・・・ソーディアンデバイス、リライズは全面禁止とする。
E・・・潜在晶霊術は禁止とする。
D2・・・スロットは全面禁止とする。エンチャントは追加晶術、連携発動、リカバー(D2にはリカバーを使えるキャラがいないため)、
     特技連携、晶術追撃、秘奥義、追加特技、通常技連携、空中発動のみ有効とする。
S・・・EXスキルの「一定確率で」系、ガードステータス、ゲットウェル、スーパーガード、ライフスティル、メンタルスティル、
   グレイス、ステータスキープ、エンジェルコール、レジストマジック、 メンタルサプライ、コンセントレート、オートメディスン、
   スペルコンデンス、サプレスダッシュ、サプレスロウアー、MCディフェンド、ラッシングラン、パフォーマー、グローリー、
   HPリバース、レストアピール、アーマードブロウ、ガードアウェイは禁止とする。
R・・・フォルスキューブのドレインは禁止。潜在能力も禁止とする。
L・・・我流奥義は使用可。ただし副極意による追加効果の付与は禁止とする。
A・・・ペインリフレクト、アクシデンタル、ライフリバース、エンジェルコール、ピコハンリベンジ、オートメディスン、グローリー、グレイス、
    ADスキルの「一定確率で」系は禁止とする。
T・・・なし。
I・・・武器カスタマイズ、アビリティは全面禁止とする。
   (リジェネ、リラックス、悟り、グミの達人、踏ん張り1〜4、封印防御等を除けば能力アップなどしか残らないため)
SR・・・スキルはアビリティのみ有効。例外としてエミルが支給品のコアを入手した場合、アトリビュートの特技変化系を使える。
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:54:22 ID:z+jlWf1o0
----TOAの設定について----
 会場の音素量が少ないため、ルークの音素乖離は参戦時期に関わらず行われない。
 ただしルークが無茶をして第七音素を大量に使ったときはその範疇に属さないものとする。
 コンタミネーション現象は禁止とする。これはビッグバンの議論を防ぐためである。
 超振動は秘奥義扱いとするが、会場の音素が少ないため威力は半減される。
 それでも一撃必殺級の上、他の物を巻き込んでしまうのでよく考えてリレーしましょう。
 ティアの譜歌ナイトメアは、声に魔力が宿っている訳ではないため拡声器を使っても効果範囲は変わらない。
 また敵がある程度弱ってないと無効とする。
 カースロットは原則有りとする。ただし同じエリアに居ないと使えない、一人しか操れないといった制限を課す。
 勿論操られた者が憎しみを抱いている対象がいなければ効果は現れない。
 また導師の力のためレプリカのイオン、シンクには相応の疲労が襲うものとする。
 第七音素注入で怪物化はロワのバランスを崩してしまう為禁止とする。譜術式レプリカ製造も同様である。
 アンチフォンスロットは有り。ただし効果は一日。
 

----その他----
 *作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
  断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
 *クラースは精霊(の力)を呼び出せるが、精霊自体は召喚できない仕様とする。
  理由はSのオリジンとロイド等との設定の兼ね合いが複雑なため。
 *Pのディストーションやカメレオン、Dエクステンションはあまりにも強力なため使用不可能な設定とする。
 *スタンの空中魔法変化技は下級は特技、中級と上級は奥義の扱いとする。
 *キールにはフリンジ済みのインフェリア晶霊が入ったCケイジを最初から与える。勿論これは支給品枠の一つとして考える。
 *Rの聖獣の力は参戦時期に関わらず有効とする。
 *アニー、ジルバの陣術は厳密に言うと魔術ではない為詠唱を必要としない。地面に方陣を描くことで発動させる事。その方法は問わない。
 *ジルバの月のフォルスは、対象が限りなく弱っていないと使用できない仕様とする。
  また乗り移っている間は一切のダメージを受けないため確かに無敵だが、
  逆に言うと本体は実に隙だらけ(同時に二人操るのは無理があり、こっちは操られている方が入っている)なため制限対象には入らない。
 *エミルはコア化をもって死亡扱いとする。このコアには莫大な量のマナが含まれている。破壊も可能。
 *リバイブは危険になったら自動でHP回復大の扱いとする。
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:56:03 ID:z+jlWf1o0
【書き手の心得】

1、コテは厳禁。
(自作自演で複数人が参加しているように見せるのも、リレーを続ける上では有効なテク)
2、話が破綻しそうになったら即座に修正。
(無茶な展開でバトンを渡されても、焦らず早め早めの辻褄合わせで収拾を図ろう)
3、自分を通しすぎない。
(考えていた伏線、展開がオジャンにされても、それにあまり拘りすぎないこと)
4、リレー小説は度量と寛容。
(例え文章がアレで、内容がアレだとしても簡単にスルーや批判的な発言をしない。注文が多いスレは間違いなく寂れます)
5、流れを無視しない。
(過去レスに一通り目を通すのは、最低限のマナーです)

〔基本〕バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 01:58:08 ID:z+jlWf1o0
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。(CTRL+F、Macならコマンド+F)
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
※投下宣言は「○○分後に投下します」など時間を指定するのではなく、宣言後すぐに投下するよう心がけて下さい。

※基本的なロワスレ用語集
 マーダー:ゲームに乗って『積極的』に殺人を犯す人物。
 ステルスマーダー:ゲームに乗ってない振りをして仲間になり、隙を突く謀略系マーダー。
 扇動マーダー:自らは手を下さず他者の間に不協和音を振りまく。ステルスマーダーの派生系。
 ジョーカー:ゲームの円滑的進行のために主催者側が用意、もしくは参加者の中からスカウトしたマーダー。
 リピーター:前回のロワに参加していたという設定の人。
 配給品:ゲーム開始時に主催者側から参加者に配られる基本的な配給品。地図や食料など。
 支給品:強力な武器から使えない物までその差は大きい。   
      またデフォルトで武器を持っているキャラはまず没収される。
 放送:主催者側から毎日定時に行われるアナウンス。  
     その間に死んだ参加者や禁止エリアの発表など、ゲーム中に参加者が得られる唯一の情報源。
 禁止エリア:立ち入ると首輪が爆発する主催者側が定めた区域。     
         生存者の減少、時間の経過と共に拡大していくケースが多い。
 主催者:文字通りゲームの主催者。二次ロワの場合、強力な力を持つ場合が多い。
 首輪:首輪ではない場合もある。これがあるから皆逆らえない
 恋愛:死亡フラグ。
 見せしめ:お約束。最初のルール説明の時に主催者に反抗して殺される人。
 拡声器:お約束。主に脱出の為に仲間を募るのに使われるが、大抵はマーダーを呼び寄せて失敗する。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 02:00:34 ID:z+jlWf1o0
【参加者一覧】 
TOP(ファンタジア)  :4/4名→○クレス・アルベイン/○クラース・F・レスター/○藤林すず/○ダオス
TOD(デスティニー)  :7/7名→○スタン・エルロン/○ルーティ・カトレット/○フィリア・フィリス/○ウッドロウ・ケルヴィン/○チェルシー・トーン/○イレーヌ・レンブラント/○ミクトラン
TOE(エターニア)   :5/6名→●リッド・ハーシェル/○キール・ツァイベル/○チャット/○フォッグ/○レイス(レイシス・フォーマルハウト)/○シゼル                  
TOD2(デスティニー2) :8/8名→○カイル・デュナミス/○リアラ/○ロニ・デュナミス/○ジューダス/○ハロルド・ベルセリオス/○ナナリー・フレッチ/○バルバトス・ゲーティア/○エルレイン   
TOS(シンフォニア)  :7/7名→○ロイド・アーヴィング/○クラトス・アウリオン/○リフィル・セイジ/●リーガル・ブライアン/●プレセア・コンバティール/○マグニス/○ミトス・ユグドラシル
TOR(リバース)   :7/8名→○ヴェイグ・リュングベル/●クレア・ベネット/○マオ/●ユージーン・ガラルド/○アニー・バース/○サレ/○ジルバ・マディガン/○アガーテ・リンドブロム
TOL(レジェンディア) :6/6名→○セネル・クーリッジ/○シャーリィ・フェンネス/○クロエ・ヴァレンス/○ノーマ・ビアッティ/○ワルター・デルクェス/●ステラ・テルメス
TOA(アビス) :8/8名→○ルーク・フォン・ファブレ/○ティア・グランツ/○ジェイド・カーティス/○アッシュ/●イオン/○シンク/○ディスト/○アリエッタ
TOT(テンペスト) :2/2名→○カイウス・クオールズ/○ルビア・ナトウィック
TOI(イノセンス)   :4/5名→○ルカ・ミルダ/●イリア・アニーミ/○スパーダ・ベルフォルマ/●リカルド・ソルダート/○ハスタ・エクステルミ
TOSR(ラタトスクの騎士):5/5名→○エミル・キャスタニエ/○マルタ・ルアルディ/○リヒター・アーベント/○アリス/○デクス

●=死亡 ○=生存 合計57/66

禁止エリア

現在までのもの
無し

【地図】
http://www.symphonic-net.com/tobr2/img/map.JPG
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 02:04:16 ID:z+jlWf1o0
テンプレは以上です。
前スレでの件を考慮して、マスコット支給禁止の部分にノイシュを追加しました。
それと投下宣言についてもお願いの部分に追加しておきました。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 02:25:15 ID:ZL91IIm+0
スレ立てと追加修正、乙です
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 11:47:23 ID:I18MfzjT0
乙です
17名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 11:58:25 ID:RgPaVojEO
>>1乙。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 15:23:50 ID:zCyOhHcw0
投下します。短いです。
19カインド・リスナーズ・オブ・ラブソング:2008/09/08(月) 15:24:54 ID:zCyOhHcw0
カインド・リスナーズ・オブ・ラブソング




 黎明の空。熱を持ち始めた砂の海。
 それらを渡る、絶望的なほど熱い愛の歌。
 けれど、その矢は狙った相手には届かないのさ。



草原の向こうから、聳える砂丘を越えて届いた大音声にティア・グランツは形のいい眉を顰めた。
それは、割れのひどい音質のためというだけではない。

「信じられない。……あれじゃああの人、危険だわ」
「だね。俺たちが行って教えてあげなきゃ。南って言ってたよね?」
「ええ。でも、追いつけるかしら……」
「今すぐ追いかければきっと追いつけるよ。急ごう、ティア!」

躊躇う少女を勇気づけるように、あっさりと言い切った少年は踵を返す。
少女もまたそれに倣って目的地だったはずの塔に背を向けた。

【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:HP100%、TP100%
所持品:アビスレッドのコスチューム(仮面は外してます) ブリザードマグ 他アビスマンのコスチューム、カイルの服
基本行動方針:殺し合いを止める。仲間にもアビススーツを着させたい?(強制はしない)
第一行動方針:声の主に危険を知らせる。
現在位置:D5→南へ

【ティア・グランツ 生存確認】
状態:HP100%、TP100%
所持品:アビスピンクのコスチューム(仮面は外してます) ロリポップ メロン一個 ティアの服
基本行動方針:ルーク達と殺し合いに乗ってない人を探す。
第一行動方針:声の主に危険を知らせる。
現在位置:D5→南へ
20カインド・リスナーズ・オブ・ラブソング:2008/09/08(月) 15:27:26 ID:zCyOhHcw0
以上です。1行目で早速ミスがorz
まとめさん、申し訳ないですが本文とタイトルの重複は削除してくださいです……。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 15:50:07 ID:RdCJOfkp0
投下乙です。が……デクスは南に行くとは一言も言っていない覚えが。
あくまで南というのは書き手としての視点なんで
南に行くとするならデクスに新しい描写を追加するなり、声以外の別の理由が必要になってくるかも。



 黎明の空。熱を持ち始めた砂の海。
 それらを渡る、絶望的なほど熱い愛の歌。
 けれど、その矢は狙った相手には届かないのさ。



草原の向こう、視野の左下半分を占拠して聳える砂丘越しの大音声にティア・グランツは形のいい眉を顰めた。
それは、割れのひどい音質のためというだけではない。

「信じられない。……あれじゃああの人、危険だわ」
「だね。俺たちが行って教えてあげなきゃ。」
「ええ、でも……」
「追いつけないかもってこと? 大丈夫、今すぐ行けばきっと間に合うよ、行こうティア!」

躊躇う少女を勇気づけるように、言い切った少年は声の方へと歩き出す。
少女もまたそれに倣い、北西へ向けていた爪先を直角分だけ翻したのだった。

【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:HP100%、TP100%
所持品:アビスレッドのコスチューム(仮面は外してます) ブリザードマグ 他アビスマンのコスチューム、カイルの服
基本行動方針:殺し合いを止める。仲間にもアビススーツを着させたい?(強制はしない)
第一行動方針:声の主に危険を知らせる。
現在位置:D5草原・南西へ方向転換

【ティア・グランツ 生存確認】
状態:HP100%、TP100%
所持品:アビスピンクのコスチューム(仮面は外してます) ロリポップ メロン一個 ティアの服
基本行動方針:ルーク達と殺し合いに乗ってない人を探す。
第一行動方針:声の主に危険を知らせる。
現在位置:D5草原・南西へ方向転換
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 18:51:30 ID:RgPaVojEO
投下乙です。
島中央の人口密度の薄さがw 誰かいましたっけ?


ふと気になったんですが、エアリアルボード使用によるTP減はありでしょうか?
原作準拠だとありませんが、長く使うなら違和感ある気がするんで、念のため。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 18:56:37 ID:ldN9J9h4O
>>23
アニメ版の小説では
活力が途中で尽きるから
島からの脱出は出来ない
とあったよ

だからTPじゃなくて晶霊の活力依存だと思う
(晶霊が弱って効果が切れるシーンもあった)

あとアニメ版はボードっつか空中浮遊できる靴みたいな感じだった。
上手く言えないけどとてもボードとは言えない
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 19:00:42 ID:I17l843AO
前スレって埋めるべき?
26名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 19:42:34 ID:X9TkbSzi0
ほっときゃ落ちるから気にすんな
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 19:52:34 ID:s7y5yzh+0
投下します
28真昼のポラリス 1:2008/09/08(月) 19:53:50 ID:s7y5yzh+0
昇りきった太陽が眩しすぎて、星の輝きはもうどこを見上げても見えることはなかった。
まるで其れを写しとったかのような、少女の掌の中の小さな小さなプラネタリウム。
北極星のように其の中心で動かぬ其れは、彼女の名の如く金色の光をいつまでもいつまでも輝かせていた。

「そん、な」
『……ステラさんは、目を、覚ましてくれました』
「おねえ、ちゃん……?」
『私達は遠くから……何らかの術による襲撃を受けました』
「おねえちゃん、おねえちゃん」
『嗚呼、どうして私は、私は、ステラさんを置いてきてしまったのかっ……』
「おねえちゃーーーーーーんッッッ!!!!」

照りつける太陽が、白い砂のキャンバスに泣き崩れる二人の影を黒く落とす。
少女の悲鳴、女の嗚咽、波の音、風にそよぐ木々の擦れ。
それらの隙間から遠くに響く、戦いの音。







「――Fe-s Qe-n(水鳥の飛翔)!!」
「輪舞爆牙弾!」

ワルターは押されていた。前に出した腕でセネルの蹴りをなんとかガードしながらもその表情は苦々しいものだった。
セネル・クーリッジの格闘術は、ワルター・デルクェスのそれよりも僅かながら優れていた。
実際にワルターは生前、彼の格闘術の前に倒れている。
しかしその程度の差は、決意の差で補えると感じていた。
それにこちらには切れ味こそ頼りないものの拳に遥かに勝る殺傷力を持つダガーも存在する。
だというのに、ワルターの足を引っ張っていたのはほかでもない、あの少女の形をした自動人形だった。
セネルと戦いながら彼女を操るということは想像以上にワルターの精神をすり減らした。
ワルターは舌を打ち唇を噛み締める。
真っ直ぐに見据えてくる男の瞳とそれと同じ色に輝く爪を忌々しく思いながら。

セネルもまた、焦っていた。
自分があの少年――もとい少女に押し付けたものが、まさかワルターの操るカカシだったなんて思いもよらなかったのだ。
チャットは今どこにいるだろうか。無事に街に着いただろうか。
あのカカシに何かされていないだろうか。
それとも、彼女が『カカシ』だということ自体が、ワルターのハッタリかもしれない。
(――クソっ、こんなことしている場合じゃないのに!)
雑念を払うように、セネルは頭を振る。

お互いがお互い以外のことに神経をすり減らした結果、この因縁の対決は既に数時間に渡っていた。

29真昼のポラリス 2:2008/09/08(月) 19:55:09 ID:s7y5yzh+0

「――しつこいぞ、ワルター! ――竜皇天駆!!」
「黙れっ!! Fe-l Qe-s Te-s(滄翼天翔)!!!」

爆音の交差。舞い上がる砂埃。
滄我を思わせる穏やかな海の上に、白い雨が降り注ぐ。
その雨が止んだとき、ワルターは服を焦がし脇腹を押さえ唇を噛んでいた。

「――俺はチャットを助けに行く」

セネルもまた全身に切り傷を拵えていたが、しっかりとその足は砂を踏みしめていた。
ワルターに背を向け太陽を仰ぐ。
太陽は高い位置からセネルを見下ろしていた。
――チャットがこの場を走り去ったのは、いつだっただろうか?
押し寄せる不安の波に、セネルは己の拳をぎゅっと握り締める。

「チャットだけじゃない。――シャーリィも、ステラも。俺が守ってみせる」
「ほざけ、セネル!! 貴様ら陸の民の言葉など……信じられるかっ!!」

血を吐くように言うワルターは、ダガーを握り締め砂を蹴った。
日光に輝くダガー。溢れ出す殺気に振り向いたセネルは反射的に銀の篭手を差し出す。
間に合うか、間に合わないか。

「もうやめてーーーーーーーーーッッッ!!」

割り込んだ少女の悲鳴に、二人の動きはぴたりと止まった。
ワルターとセネル、二人の視線が同じ方を追う。

「メル、ネス」
「シャーリィ」

それは二人が共通して探した少女。
ぷつりと糸の切れたように崩れ落ちるシャーリィの身体。
咄嗟に駆け寄った二人に支えられ、シャーリィの美しい煌髪は砂に汚されずにすんだ。

「メルネスっ!! 俺が傍にいながら……っ!」
「良かった……どこにも怪我はしていないみたいだ」
「――ッ! 何が『良かった』だ! 貴様がいるからこんなことにっ!」

言いかけたワルターの唇を塞いだのは力なく差し出されたシャーリィの手だった。
「お兄ちゃん、ワルターさん、ふたりとも、この殺し合いに乗ったの?! 違うよね? そんなことするのは、もう、止めてよ……っ」
涙をとめどなく零しながら掠れた声で言うシャーリィにセネルとワルターは殺気を削がれる。
ワルターのダガーを握り締めた手が、砂浜へむけて下ろされる。
「シャーリィ、今まで、何があった? 他に誰か、一緒にいた人は?」
「――ッ!」

セネルのその言葉に、シャーリィは視線を逸らしまた涙を溢れさせる。
その様子でようやく、ワルターもセネルもその場にいたもう一人の人物に気付くのだった。
30真昼のポラリス 3:2008/09/08(月) 19:56:28 ID:s7y5yzh+0

巨大な角を頂いた、異形の人。
血に塗れ焼け焦げた服に、切り裂かれたような傷跡。
背中に着せ掛けられた、見慣れたシャーリィのベスト。
シャーリィと同じく涙に濡れた金色の瞳。
その女が抱く『それ』は。

「……ははっ、まさか……まさかそんなわけないよな?」

セネルの頬が引き攣る。
シャーリィの瞳に映ったのは、笑う兄の姿。
シャーリィもまた、笑う。その目に涙を溢れさせながら。

「お姉ちゃんと、ジルバさんを襲って――お姉ちゃんを殺したの、ワルターさんでも、お兄ちゃんでもないよね? そうだよね?」

服に焦げを作ったワルター。
――青と白を基調とした服を焦がし、皮膚を火傷で爛れさせ。
切れた皮膚から血を滲ませるセネル。
――何かで刈られたような、首の切り傷。

――血に塗れた異形の女の抱く『それ』は、けれどあまりにも、愛しい人の面影を残しすぎていた――。

「―――ステラァァアアアアアアアアアァァァァァアアアアァァァァァァ!!!!!」

身を裂くような絶叫は、波の音すらかき消した。


【ジルバ・マディガン 生存確認】
状態:HP85% TP100%  身体中に裂傷、背中に軽度のやけど
所持品:睡眠薬 遅効性の毒薬(回りきるまで3時間?4時間程度) 草刈鎌  ???  ステラのザック シャーリィのベスト
基本行動方針:ステルスマーダーとして行動。ゲームに優勝する
第一行動方針:シャーリィを利用する
第二行動方針:他の参加者と合流し、利用する。
現在位置:G4砂浜

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
状態:HP100% TP95% 姉の死によるショック 精神的に疲労大 ベストなし
所持品:首輪探知機 
基本行動方針:ゲームからの脱出、殺し合いに乗る人は止める
第一行動方針:ジルバと行動。
第二行動方針:兄とワルターを信じたい。けど…
現在位置:G4砂浜

【ワルター・デルクェス 生存確認】
状態:HP40%、TP30%、憎しみ、強い決意 多少の混乱 服に焦げ
所持品:黒髭ダガー、支給品1個(本人確認済み)
基本行動方針:メルネスの護衛をする。可能ならセネルとその仲間を殺す
第一行動方針:シャーリィを守る
第二行動方針:セネルを殺す
現在位置:G4砂浜
 
【セネル・クーリッジ 生存確認】
状態:HP60%、TP60% 全身に擦り傷、切り傷 ステラの死へのショック
所持品:シルバーガントレット(TOR)、本人確認済み支給品2個
基本行動方針:仲間を探し、この状況を何とかする
第一行動方針:ステラアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!
現在位置:G4砂浜
31名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 19:57:58 ID:s7y5yzh+0
以上です。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:03:24 ID:VLMbwjvyO


ステラァァアアアアアアアアアァァァァァアアアアァァァァァァ!!!!!
33名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:07:49 ID:Lr2cMqa60


ごめん、状態表で吹いた…
ステラアアアアアアアア!!
34名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:10:07 ID:M+YWYMeaO
投下乙です
シャーリィ繋がりでセネワルもジルバを信用しちゃいそうだな…
そしてステラァァァァァァァァ!!!
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:12:58 ID:a3NJZTF60

ステラアアアアアアアアアアア
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:38:55 ID:Lr2cMqa60
投下します
そこそこ長いので一応支援をお願いします
37C2ブリッジの戦い1:2008/09/08(月) 21:40:38 ID:Lr2cMqa60
チャットはタバサの手を引き必死に走っていた。
セネルの想いを無駄にしないためにも。

街はもう目と鼻の先だった。橋を渡り切ればすぐそこだ。
ここまで何も行く手を阻むものは無かった。
そしてタバサを街に送ったら自分は海岸に戻る。セネルを援護しないと。
「タバサさん、大じょ………ッッ!?」
走り始めてから一言も発しないタバサを気遣い後ろを振り返ったチャットは絶句する。
タバサの背には禍々しい黒い翼。
――なんですか、それは?
新しいファッションですか?

その二言すらチャットの口から出てこない。
何とも言えない恐怖を感じた。ぞくり、と身の毛がよだつ。
酸素を求めて水面に上がってきた魚のようにぱくぱくと口だけが動く。
体中が逃げろ、と警告しているのにその意に意に反して動かない体。
蛇に睨まれた蛙、とはこういうことを言うのでしょうか。
それを知ってか知らずかタバサはチャットの首へと手を伸ばす。
「――――――ッッッッ!!」チャットは声にならない叫びをあげる。
ぎりぎりと首を絞められているから声が出せない。
チャットはばたばたともがき抵抗するが所詮子供の力、タバサに敵わない。息ができないせいか徐々に意識が薄れていく。
タバサは自動人形と思えないほどリアルな、勝ち誇ったような笑みを顔中に貼り付けていた。
チャットはその笑みを見た瞬間、意識を失った。もう命はないと悟ったのか、顔には涙が一筋伝っていた。



38C2ブリッジの戦い2:2008/09/08(月) 21:42:03 ID:Lr2cMqa60
「アッシュさん、大丈夫ですか?」
医者の卵は目の前の怪我人を気遣う。
「うるさい、さっきから何度同じ質問をしている?大丈夫だ」
普通だったら「心配してるのになんだその言い草は」とか言いながらぷんすか怒っているところだろうがアニーはわかっていた。

―――アッシュさんは強がっている。

顔色は貧血のせいか青ざめているし傷もちゃんと消毒してないから菌が体内に入っているかも。
自分は卵とはいえ医者だ、わからないわけが無い。

彼等は物影に隠れて街から遠ざかろうとしていた。
街に誰もいない事を願って。
「アッシュさん、あそこにいる人に街に入らないように伝えたほうがいいんじゃないですか?」
アニーはあのバルバトスが入って行った方と真逆の入口を示す。
確かにそこでは褐色の肌の少年と黒い翼を生やした少女が街に続く橋を渡ろうとしていた。
「行きましょう、アッシュさん早く行かないとバルバトスが……」
出てきてしまうかも。
続きは言わずともアッシュに伝わった。
心配そうな顔でアッシュを見つめるアニー。
「わかったからさっさと行くぞ」
二人を警戒しつつも橋へ向かって早足に歩を進める。


すると。橋の上にいる少女が少年の首を絞めにかかっていた。
二人は仲間じゃなかったのか?
少年は必死で抵抗しているがどう見ても押し負けている。
それを見るや否やアッシュの体調を気遣いゆっくりと歩いていたアニーが駆け出す
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:44:11 ID:0wi3yXGl0
支援
40C2ブリッジの戦い3:2008/09/08(月) 21:44:23 ID:Lr2cMqa60
―――せめてもう少し様子を伺ってから。

アッシュはそうも考えたがそんな悠長に事を構えていたらあの少年は確実に生き絶えるだろう。
現に今少年は意識を失った。だらり、と腕が垂れ下がる。
それ以前にアニーだけを行かせるなんて男が廃る。
アッシュも続けて駆け出す。

「なにをやってる、女!」
そう叫びながら勢いに任せて女の足を払う。
思ったよりあっさりと決まり女は無様にすっ転び少年の首から手を離す。
すかさずアニーは少年に駆け寄り応急処置に入る。

女はなんとか体制を立て直そうとしたが、遅い。
アッシュの持つ小剣が彼女の首筋に突き付けられていた。

「抵抗するな、女。死にたいというなら止めないがなッ?」

女は起きぬけにアッパーを放つ。
水の民の用いるアーツ系奥義、水神戦吼。
「がァッ!?」
アッシュの体が宙に舞い、地面に勢いよく叩きつけられる。

「アッシュさん!?」
アニーの悲痛そうな叫びが響き渡る。
「俺に構うな、そいつ連れて西に逃げろ」
軽く後ろを振り返りアニーに向けて囁く。
「なんで、自分を大事にしないんですか?そんなアッシュさんを見殺しにするようなこと、わたしはしたくありません!」
「なら、好きにしろ!」
まったく本当にナタリアに似た奴だ、と毒づきながらアッシュは目の前の少女と対峙した。
まったく気配が読めない。
譜業でできたガーディアンや何かじゃあるまいし。


少年の応急処置はした。
アニーはアッシュを援護すべく少年を自分のそばに横たえ、陣を描く。
「パワー・クラフト!」
アッシュの残りの体力は少ない。攻撃力を底上げして短期決着を狙う!


41C2ブリッジの戦い4:2008/09/08(月) 21:46:28 ID:Lr2cMqa60
「この陣、第五音素か?」
アッシュは呟く。
ならば、この陣が消えるまでにFOF変化技でこの女を片付けるまで。
「魔王、絶炎煌!」
迫りくる少女の足を払うと剣に炎を纏わせ一気に振り落とす。

またもやあっさり攻撃を食らいダウンする少女。
どうやら攻撃手段はあっても回避手段防御手段は知らないらしい。
そしてさらにこの場に炎の力が満ちる。

「これで、決めてやる。斬魔飛影斬ッッ!」
斬り斬り上げ連続蹴りの連続攻撃。
女は一気に空中へ押し上げられる。
そして力なく地面へと落ちていく女。

「決まったか?」
アッシュが着地すると女はのそのそとまた起き上がろうとしていた。後ろの三つ編みもほどけ服も薄汚れているが彼女はそれを気にする様子も無い。

「っ、しつこい奴だ……」
アッシュは再度女へ向かって駆けてゆこうとしていた。
頭の中に妙な違和感を残しながら。



暖かい。天国ってこんなところなんでしょうか?
うとうとこんなところでまどろむのもいいかもしれませんね…。

……なんで剣を打ち鳴らすような音がするんですか、ここは天国じゃないんですか?
とりあえず目を開けて周りを確認してみましょう。
「ん?」

そこはついさっきタバサに首を絞められた橋の上。
「生きてるッ!?」
思わず彼女は叫んでしまいました。
彼女は状況を確認しようと辺りをきょろきょろと見回します。

「よかった、目を覚ましたんですね」
そこにいた第三者。

「あなたは、誰ですか?」
チャットはその自分よりも2,3歳年上に見える少女に問いかけました。
42C2ブリッジの戦い5:2008/09/08(月) 21:47:24 ID:Lr2cMqa60
「私はアニー。アニー・バース。そしてあそこで戦っているのがアッシュさんです」
遠くを指差し言った。
なるほど、確かに戦っています。

「タバサさん?」
「それがあの女の人の名前ですか?」
「はい。なんで、あの人……ワルターって人から逃げてるだけって言ってたのに……。ボクは、セネルさんは騙されたんでしょうか」
チャットはぽつりぽつりと誰に問いかけると言うわけでもなく呟きました。
「と、いうことはあの方はチャットさんの味方でも仲間でも友達でもなんでもないんですか?」
「そう、なりますね。なんで僕はあんな人に騙されてしまったんでしょう?」
「なら、私もアッシュさんの援護をしてあの人を倒します」
アニーはきっぱりと言った。
「チャットさんは下がっていてください」


下がっている?
よく考えたらボクはずっと誰かに守られていた。
今回もアニーさんとアッシュさんに守ってもらっている。
ただ通りかかっただけでしょうに。

ボクは、
    ずっとこのまま自分より強い誰かに頼ってこのゲームを生き延びていくんですか?
    ずっと人の背中に隠れて過ごしていくんですか?



ボクは、このままの弱い海賊でいたいんですか?


「アニーさん、ボクも戦います!!」
自分のサックの中にあるのは撃ったら反動でひっくり返ってしまうような銃とただの旗しかないけど、
ボクは、もう怖いことを人に押し付けて逃げたくは無いから。

43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:48:22 ID:0wi3yXGl0
支援
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:48:26 ID:s7y5yzh+0
支援
45C2ブリッジの戦い5:2008/09/08(月) 21:48:53 ID:Lr2cMqa60
「ボクは、もう人に厄介なことを押し付けて逃げたくないから!だから!」
「チャットさんの気持ちはよくわかりました。じゃあ行きましょう。早くしないとアッシュさん、怪我してますから」


偉大なるご先祖アイフリード様。
非力だからって逃げているだけじゃあなたを超えられませんよね。

【アッシュ 生存確認】
状態:HP35% TP75%
支給品:クリスダガー ??? ???
基本行動方針:アニーは守る
第一行動方針:女(タバサ)を倒す。
第二行動方針:バルバトスを追いかける?遭遇しないように通り過ぎる?
第三行動方針:レプリカの野郎はどうしたんだ…?
現在位置:G2街(サニィタウン)入り口付近

【アニー・バース 生存確認】
状態:HP85% TPほぼ100%
支給品:ハヌマンシャフト 本人確認済みアイテム1〜2個
基本行動方針:アッシュに守ってもらった恩を返す
第一行動方針:タバサを退ける。
現在位置:G2街(サニィタウン)入り口付近

【チャット 生存確認】
状態:右頬にやや腫れ、TP100%
所持品:スタンダードマグ(残り装填5発) 銃弾50発 ??? タバサ
基本行動方針:勇気を持つ
第一行動方針:タバサに立ち向かう
第二行動方針:セネルが心配
現在位置:G2街(サニィタウン)入り口付近

【タバサ 生存確認(?)】
状態:三つ編みがほどけている


※アッシュとアニーは例に漏れずチャットを男だと思っています。

46名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:50:55 ID:Lr2cMqa60
投下終了です
サニィタウンって入り口のところに橋ありましたよね?
何か問題がありましたら修正しますので指摘お願いします

量が多いかと思ったら案外そうでもありませんでした
支援させてしまって申し訳ありませんでした
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:53:30 ID:0wi3yXGl0
投下乙です
チャットが死ぬかと思ってハラハラしたぜ……助かってよかった
数の上ではタバサが不利だが……街にはリフィルもいるしなぁ
そして>※アッシュとアニーは例に漏れずチャットを男だと思っています。
の一文にワロタw
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:09:28 ID:Lr2cMqa60
タイトルミスってた orz
吊ってくる

誤:C2ブリッジの戦い
正:G2ブリッジの死闘
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:12:29 ID:RuU9Wwci0
投下します
50名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:13:27 ID:RuU9Wwci0
スタンの姿が西に消えてから、どれだけの時間が経過しただろう。
イレーヌ・レンブラントは鬱蒼とした森の中で目を閉じていた。
既に太陽は中天に差し掛かかり、昨夜の惨劇達を容赦なく照らし出していた。
しかし、背を預けた木が影を作り出し、イレーヌにその残酷な陽光は届かない。
知らぬ者が、この島で起こっている事を何も知らない者が見れば。ピクニックに来て少し休憩している。
或は優しい恋人が、彼女の為に花を摘んで来るのを待っている。そんな風に見えるかもしれない。
彼女が腕に抱えている物を見なければ。彼女の服に付着した、赤茶色に乾いた染みを見なければの話だが。
もちろん彼女が待っている者が携えて来るのも、可憐な白い花などではない。
スタンは、彼女の待ち人は。彼女が殺した少女の持ち物を回収に行っているのだ。
死体を見る事が無いように、自分だけこの場所に残して。

ふと、意識が浮上する。
誰かが走ってくる。それも複数。
息を殺し、木々の間から様子を伺う。
獣道を駈けて来るのは、黒衣を纏い仮面を被った少年ともう一人。
(あの子は!!)
思わず声を上げそうになり、慌てて樹の後ろに隠れた。スタンと、あの娘と、そしてもう二人の姿は忘れようがないものだったから。
豊かな緑色の髪をお下げにし、白い神官服に身を包んだ少女。
フィリア・フィリス。スタンと共に自分と戦ったソーディアンマスターの一人だ。
「待って、下さい、ジューダスさんっ・・・・」
切れ切れに言う少女の声に、急いでいるのだろう、苛立たしげな声が答える。
「急げフィリア」
追われているのか、この先で誰かと合流するのか。どちらにせよスタンの仲間がこの辺りにいては非常に行動が取りにくい。
「海岸の火を確認すると言ったのはお前だろうが」
(見られていた!?)
一瞬だけ、自分達の姿を見られていたのかと思い呼吸が止まりそうになった。
(いいえ違う。恐らく彼らは高台に居て海岸で何かが燃えているのに気付いた)
海岸で炎が上がってから、既に一時間以上経過している。あれから、少女の遅い足にあわせて移動しているのだろう。
望遠鏡でも支給されていない限り、彼女等が自分達の姿を確認した可能性は無いだろう。
(ああ、でもあの赤い髪の子がいる)
彼が、何が起きたかを話したら。
(どうしよう)
二人はスタンを探すだろう。見つければ、スタンと一緒に居る自分を詰り、スタンを取り返そうとするかも知れない。
(追いかける?)
もう一度彼女達の様子を伺う。
きつい物言いをした少年は、それでもフィリアがゆっくりと自分に追いつくのを待って、少し速度を落として駆け出した。
(追いかけてどうするの?)
また、あの娘のように?
(嫌!)
そもそも無理だ。相手は二人。自分一人で今から追いかけても感づかれる。
上手く片方を仕留めてもどちらかには確実に逃げられてしまうだろう。
(じゃあ、二人で?)
浮かんだ考えの恐ろしさに、握ったままだった槍を取り落としそうになった。
(駄目!あの子はスタン君の知り合いなのよ!?)
邪魔をするものはいらない。そのはずだった。けれどまさか、こんな早くにスタンの仲間に遭遇するなんて。
(あの子達とスタン君がもし顔をあわせたら、どうしたらいいの?)
彼女等は、決して自分を許容しないだろう。だからこそ天上で、彼らは相まみえたのだから。
(スタン君は、どうするの?)
自分を追いやった現実を、許さないといったスタン。少し前までの彼と同じく、その現実の守り手だった者に会ったら。
彼はどうするのだろうか。
そして自分は、どんな顔をしてスタンを見るのだろうか。


結局イレーヌは、スタンが少女の荷物を回収して戻ってくるまでずっと槍を抱えていた。
尋常では無い様子を見咎め、どうしたのかと問うスタンに先刻見たものの話をする事も出来ず。
イレーヌは震える手でスタンに縋り、すぐに移動するよう乞うばかりだった。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:16:14 ID:RuU9Wwci0
【ジューダス 生存確認】
状態:HP、TP100%
所持品:ロイドの仮面セット、レーザーブレード
基本行動方針:お互いの仲間を探す
第一行動方針:フィリアを守る
第二行動方針:A7で何が起きたか確認する
現在位置:b6→A7へ移動中

【フィリア・フィリス 生存確認】
状態:HP、TP100%
所持品:マジックミスト、確認済み支給品0?
基本行動方針:お互いの仲間を探す
第一行動方針:
第二行動方針:ジューダスと共に行く
第三行動方針:ジューダスに既視感
現在位置:B6→A7へ移動中


【イレーヌ・レンブラント 生存確認】
状態:精神不安定 頬に傷 魔剣の声が聞こえる エクスフィア装備
所持品:魔槍ブラッドペイン スターダストリング 要の紋付きエクスフィア マグニスのサック(内容不明支給品一個)
基本行動方針:スタンと共に答えを探す
第一行動方針:スタンの仲間から逃げる
第二行動方針:魔剣の指示を遂行するか考える
現在位置:B6東→?へ移動中

【スタン・エルロン 生存確認】
状態:現実への絶望 精神不安定 理想崩壊 エクスフィア装備 ルークに妙な感情
所持品:魔剣ネビリム 要の紋付きエクスフィア ネクロノミコン センチュリオン・イグニス クレアの支給品一式(内容確認済み)
基本行動方針:イレーヌを最後まで守る。イレーヌを許容しない世界を許さない
第一行動方針:イレーヌを守る
第二行動方針:障害は斬る
現在位置:B6東→?へ移動中
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:18:18 ID:RuU9Wwci0
終了です
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:30:40 ID:s7y5yzh+0
乙です。
合流はナシか…だがルークにとっては救いの手が!
54名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:34:32 ID:ABlNjTy9O
乙です!
修羅場回避よかった…
全員Dシリーズキャラでの修羅場…想像するのも躊躇われる惨状しか思い浮かばなくてすみません…
55足音、そして軋む歯車:2008/09/08(月) 22:35:26 ID:RuU9Wwci0
緊張しすぎてタイトル入れんの忘れた自分バカス。
まとめ氏にはあとでメールしときます。
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 22:39:38 ID:0wi3yXGl0
投下乙です
ルークはやっとこさ不運から脱出できそうだな、よかった
フルボッコされたマグニスさまもいるから安心はできないけど
しかしこのすれ違いがどうかかわるのやら…
57名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 23:33:37 ID:hYWgevkhO
投下乙
ニアミスだけで済んでほっとしたような残念なような

それと一つ気になったんだけどフィリア達はB6からA7方向に向かってることとイレーヌ達の現在位置を考えると
スタンがクレアの遺品回収に向かった方向は西じゃなくて東じゃない?
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 23:40:36 ID:RuU9Wwci0
西だな。指摘ありがとう。
まとめ氏にメールする前でたすかった
59名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 00:02:55 ID:HSTPbIo9O
皆投下乙です!
カイティア…そっちはいっちゃらめぇぇぇ
ワルターはセネルへの不信感とメルネスレーダーでジルバの危険に気付けるのか?そしてステラァァァァァァァァァ!
キャプテンはアッシュとアニーに助けられたか。タバサの存在を知ったらミトスはシスコンパワーを発揮するのか?
ジュダフィリ組とスタイレ組はニアミスか。ルークは助かりそうで何より。てゆうかマグニス様はユグドラシル様が居るのに何も躊躇いも無くゲームに乗ったのかww…あれ?そういえばマグニス様はミトスの事を知っていたっけ?
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 00:43:34 ID:K+vOeLSZ0
クラトスに気がついていないんだし知らないだろ
61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 00:48:21 ID:HEUB1hxv0
ユグドラシル様のことは知っててもミトスのことは知らないんじゃね
名簿見てなさそうだし、姓で気づくこともなさそうだ
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 01:03:25 ID:aWj6IXe4O
かなり細かいんだけど支給品入れてるのってザック(リュックサック)?サック(袋)?
63名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 01:43:35 ID:hG0OsOSe0
>>62
どちらでもよい。究極的には書き手の自由。

有名な四次元支給品袋メーカーであるザック社とサック社が、
このロワの水面下で熾烈なシェア争いをしていると脳内補完しよう。


俺はフードサックを開発したサック社のファンなんで、好んでサックを使っているけど。
64名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 09:15:22 ID:epyUrj1h0
移転したんですね。
投下します。
65砂漠よりも渇いた欲求 1:2008/09/09(火) 09:16:15 ID:epyUrj1h0
ハスタは足を止め、適当な砂地に座ると、水と食料を取り出しかぶりついた。
真夜中から活発に活動し、砂漠地帯を駆け回っていたハスタは、本当の意味で一次欲求を満たしたくなったようだ。

「腹が減っては殺しができぬ!っていうだろ?」
強い日差しを反射する細身の剣に声をかけるが反応はない。
リオンには散々煩いと言われていたシャルティエだが、今自分を手にする男とは話したくなかった。
何度か説得しようかと考えたこともあったが、どうせ通じないだろうと諦めた。
自らのせいで獣人の男を死なせてしまってからシャルティエは無言を貫いていた。


きもちわるい。狂ってる。
人を殺して喜ぶキチガイじみた思考回路、ふざけた口調、おどけた態度、全てに嫌悪を感じる。

初めて話した時、彼には自分を使いこなす資質が無いと確信した。
波長が合わないとかそういうレベルではない。彼の価値観、嗜好は正常な人間のそれとして全く理解できない。
かつて人であった『シャルティエ』の本能が全力でこの人格と同調することを避けているのがわかる。
ソーディアンは自分と同じ波長を持つ者が使い、お互いの人格がシンクロすることで本来の力を発揮するのだ。
こんな快楽殺人者と同調できる人格はシャルティエのコアクリスタルに投影されていなかった。


だが、あの時ハスタは晶術を使った。
シャルティエは晶術を使おうなどと考えてもいなかったし、ましてやハスタを守ろうなど1ミリたりとも考えていなかった。
寧ろそのまま死んで殺し合いに乗った報いを受ければいいとまで考えていたかもしれない。
それなのに、光の刃が彼の頭上に現れ、彼が「避けたい」と願った瞬間、あの男の前の地面が隆起し岩はその命を守る盾となった。
この世界では、ソーディアンは使い手を選べないのだ。
66砂漠よりも渇いた欲求 2:2008/09/09(火) 09:17:14 ID:epyUrj1h0

「それにしてもキミ、面白い力もってんのねー。」
人を殺すのに役立つ新しい力を手に入れてハスタは上機嫌だった。
「…ソーディなんちゃらぴょろりんりん?…あー、つまり誰でも術を使えるようになる剣?」
無視するシャルティエを気にもせず、ハスタは今になって初めてシャルティエについての説明書きを読む。
シャルティエは『誰でも術を使えるようになる剣』呼ばわりされカチンときたが、相手をすると厄介なので何も言わなかった。
食べ物を胃袋につめ終わったハスタは、他にも何か無いかとサックをあさったが、
彼に与えられた殺し合いのための玩具はシャルティエだけだったらしい。
機嫌のいいハスタはそれを不満に思うこともなく、立ち上がって靴に入った砂を落とした。

「さーて食欲は満たしたから、次は殺人欲だな。どうやら喋る剣が腹ペコのあまり喋れなくなっちゃったようでゴザイマス。」
乾いた血と砂にまみれた靴を受け止める大地。
その続きにはちらほらと植物が見え始め、遠くにはもう草原が広がっている。
夜中より随分気温が上がったが、緑の見えるほうへ近づく程過ごしやすい気温になっていった。
まるで太陽が照りつける場所を選んでいるような不思議な気候。
世界中から色んな部分を切り取って貼り付けたような不思議な地形。

「赤ん坊にはミルクを、生きた剣には血を!おまえにもすぐ朝飯を用意してやるんだポン☆」
ハスタはそんな事を気にするわけもなく、移り変わる環境に新しい出会いを求めて走り始めた。


…なるほどね。僕はここでは『誰でも術を使えるようになる剣』なのか。
思考も性格も全く違う男に使われ、無意味な殺人の道具にされるのか。
これから何人の罪も無い人間が自分の術で苦しみ、自分の刃で血を流すのを見なきゃいけないんだろう。

やあ、僕シャルティエ。誰か早くこいつの魔の手から救ってください。 そしたら一生ついていくよ…。






【ハスタ・エクステルミ 生存確認】
状態:HP75%、TP70%、血まみれ、脇腹に痣、体に焦げ、殺しへの喜び、上機嫌
所持品:ソーディアン・シャルティエ(ハスタに激しい嫌悪)
基本行動方針:脳内裁判に基づき皆殺し
第一行動方針:次のお楽しみさん待ってるんだりゅん。
第二行動方針:皆殺し、殺しを楽しむ
現在位置:D4砂漠→東の草原へ
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 09:19:03 ID:epyUrj1h0
投下終了です。
ソーディアンはロワでは誰でも使えるんでおkですかね
68名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 10:04:01 ID:SwPQqRHk0
最後のセリフは旧Dのボツセリフか…
69名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 10:08:30 ID:20T1+BnK0
乙です。
やあ、僕シャルティエ!坊ちゃんの魔の手から僕を救ってくれてありがとう!
一生ついていくよ!吹いた。
70名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 11:40:47 ID:20T1+BnK0
投下します
71判別式D 1:2008/09/09(火) 11:41:54 ID:20T1+BnK0
「ぐふふふふ♪」

彼の背後に現れた桃毛の女は相変わらずの不気味な笑みを零しながら、彼と彼の前に鎮座する巨大な装置を見た。
「誰だい、お前?」
振り向かぬままユグドラシルは素っ気無く言う。こちらは相手の正体を既に握っている。しかし先ほど出合った女に、ユグドラシルの正体は未だ割れていない。……筈だった。
「んー、アンタ、さっきのガキんちょね!」
早速見破られて、ユグドラシルはぴたりと一瞬動きを止めた。
振り返ると、目の前にあったのはレンズ越しに己を観察するハロルドの顔。「データ採取♪」と口にする彼女はたいそう上機嫌だ。
「ミトス・ユグドラシル。天使。年齢不明。――ミトス・ユグドラシルはこのつまんないゲームに1人しかいない。なるほど、年齢不明ってこゆことね。天使とは即ち体内時計と自然成長を自由に調整変更することが可能な種族又はシステムってところかしら」
使い捨てのスペクタクルズを放り投げ、両手を胸の前で合わせうっとりとした様子でハロルドは自分の世界に入っている。
そういえばコイツ、スペクタクルズを持っていたんだ。
ユグドラシルは聞こえない風に舌を打つ。しかしおそらく彼女であればスペクタクルズを使わなくともミトス・ユグドラシルの正体を看破していただろう。
「ねね、じゃあヨボヨボのおじいちゃんにもなれるわけねー♪」
「……僕はなりたくないよ」
思わず素の口調が出る。
「いい実験材料が手に入ったわー、後で解剖させてね」
とんでもないことを朝食のメニューを言うのと同じ風に言いながら、ハロルドの視線もユグドラシルと同じ、眩い光の粒を収束させ何処かへ放出している装置――パッセージリングへと向かう。
「見たことのない材質だわ。レンズとも違う。晶力とも。神の眼? ううんそんなわけないわね。この島の大気に混じるもっと別の何か……あーこんなことならデータ解析君2号を持ってくるんだったわね。今作っちゃおうかしら」
「何を作ろうと構わないがコイツは壊すなよ」
「破壊しないと生まれないものもあると思うけど? ま、コイツは壊さないほうがよさそうね。操作盤見るに扱い厄介そうだし。動かなくなったらおもしろそーな謎解けなくなっちゃうし」
ミトスはパッセージリングから溢れる記憶粒子の流れをじいと見た。上へ向かっている。地上は確か天を射抜くほどの峰。
空にはこんな粒子は伺えなかった。ということはあの峰を通り、遥か上空へ噴出している――?
「ああそうそう、コイツもどうにかしなくちゃ。窮屈でたまらないわ」
思考を中断させるようにハロルドが言う。普段はペースが崩されるのを嫌うユグドラシルだが、何故か彼女の言動は気に触らない。それどころかいい気分転換になっている気がした。
「首輪、か」
「ツールさえあればすぐ解除できるのに。分かっちゃいるけど盗み聞きされてるのはいい気分じゃないわ」
――首輪に盗聴装置がついている。そのことを知りながらも、ハロルドはまるで盗み聞きしている相手に宣言するように笑った。
「へえ。そんなこと言うとお前、あの赤毛の男みたいに首吹っ飛ばされるかもよ」
皮肉を篭めてユグドラシルも笑う。
「それはないでしょ。向こうがやる気だったら私達がここに入った時点で頭と胴体がサヨナラしてるわ。解除させる気、謎解かせる気満々よアイツ。用意された答えを導くのはつまんない。けどそれ以上の面白い何かが私を待ってる気がするの。たとえば、アンタとかね」
生き生きと輝く女の笑顔に、ユグドラシルも高らかに笑った。
「じゃあ僕も言わせてもらおう。探偵が真犯人を追い詰めるような華麗な謎解きをね」
「真実はいつもひとつ! って?」
「解は常に一つとは限らない」
ぐふふ、ふふふ。
二つの嗤いが、地下空間に反響する。

「――さあ、そろそろあの道化師のふざけた声が聞こえる時間だ」

時計を開き、ユグドラシルはその秒針を眺める。
定時放送。おそらくこの地下空間に聞こえてこないということはないだろう。この空間に入られることも奴の想定済みだから。
その声がどのように聞こえてくるかで、また謎の解へと一歩近づくことができる。
既にゲームのシステムに組み込まれた哀れな子羊の名に興味はないが、もう二度と見ることはないと思っていた名簿を眺める。
その束ねられた紙に、記憶粒子の残滓がひとつ、溶けて染みこんでいった。

――そう、解などない場合もある。
――けれどその「ないはず」の解を見つけることこそ、学者としての永遠の命題ね。
72判別式D 2:2008/09/09(火) 11:43:07 ID:20T1+BnK0
【ミトス・ユグドラシル@ユグドラシル 生存確認】
状態:HPTP100% 全てにやる気が無い 何かをキープスペル中 ある重大な何かに気付いた? 
支給品:ローレライの宝珠 ジェットブーツ エリクシール
基本行動方針:取り敢えず死ぬ気は無いけど生きる気も無い
第一行動方針:この島の舞台裏の解明
第二行動方針:この女、一緒に居ても不便では無いな
現在地:B4(霊峰ファロース/TOE)地下、ラジエイトゲートセフィロト内、パッセージリング前(TOA)

【ハロルド・ベルセリオス 生存確認】
状態:健康
支給品:天才ハロルドの杖 スペクタクルズ×96
基本行動方針:面白くないのでゲームに乗らない
第一行動方針:スペクタクルズで未知の種族のデータ採取! 首輪もどうにかしたい。
第二行動方針:結構話合うみたいだし、こいつと一緒にいて謎を解きつつ隙をみて解剖開始!
現在地:B4(霊峰ファロース/TOE)地下、ラジエイトゲートセフィロト内、パッセージリング前(TOA)
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 11:44:25 ID:20T1+BnK0
以上です。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 12:52:45 ID:l1k2pjQHO
乙です。
バーローwww
ミトスハロルドは何気にいいコンビだなw
知略派のこれからに期待
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 14:01:06 ID:pZ8SSnqAO
投下します。
76サバイバルな日々 1:2008/09/09(火) 14:03:20 ID:pZ8SSnqAO
「やったぁ!また釣れたよ、シンク」
「……凄いじゃないか」
ぴちぴちと生きの良い銀色の鱗を纏った魚が、空中へと舞い上がった。
シンクの足元にはそれと同種と思われる魚が2匹並んでいる。
太陽がてっぺんに昇りつつある空を仰ぎながらシンクは思った。
一体僕は何をしているんだろう、と。


ナナリーの眠りは深かった。怪我の治療は済ませたが、体は睡眠を欲していたようで一向に目を覚まさない。
規則正しい寝息を聞きながら、シンク達は軽い会話を交わしながら休む。
こんな所でのんびりとしていていいのかは疑問だが、ナナリーをたたき起こす訳にもいかない。
まったく周りに人の気配がしないので、付近には誰もいないのかもしれない。
することもなくなって来た時、誰かが朝食を取ろうと言い出したのがきっかけだった。
支給されていたのは何の変哲もないパン。……これが全ての始まりだった。
単刀直入に言うが、パンはもの凄く不味かった。
固く、味もなく、パサパサと喉にまとわりつくように飲み込めない。
日持ちを優先させた結果なのだろうが、こんなものを食べて力が湧くだろうか。いいや、否!
時間はあった。周りに湖があった。一人は凄く張り切っていた。
そうさせる要因はいくつもあった。
そして冒頭に話は戻る。
皆が皆、それなりのサバイバル経験はあったので物事は円滑に進んでいった。
木の枝を折り、蔓を取り付けただけの簡易な釣り竿。
湖に落ちたというリアラが魚を見たという証言はあったが、まさかこうもあっさりと釣れるとは思っていなかった。
照りつける太陽はいつの間にか頂上だ。

「そろそろ戻るよ」
「うん、でもあと一匹なんだ。僕はもう少しここに残るよ」
「……分かった」

気を紛らわしたいのか、一心に集中しているルカに、シンクはそれ以上何も言わず離れた。


【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP、TP100% シンクを信頼
所持品:アビス女性陣の水着セット、デッキブラシ、魚三匹、手製の釣り竿
基本行動方針:みんなで力を合わせて帰りたい。
第一行動方針:イリア他仲間を探す。
現在位置:D7 湖付近


「ルカは?」
「直ぐ来るみたいだよ……」

シンクがリアラ達の元に戻ると、随分と光景が変わっていた。リアラ達は服が乾いたようで、普段着に着替えていた。
そして、

「あんたがあたしを助けてくれたんだって? ありがとう」
77サバイバルな日々 2:2008/09/09(火) 14:05:05 ID:pZ8SSnqAO
随分と顔色の良くなったナナリーがシンクに笑顔を向けている。

「……どういたしまして。その代わりに」
「うん?」

そう言ってシンクはとある剣を取り出した。ナナリーの支給品だった聖剣ロストセレスティだ。

「知り合いの武器なんだ。貰ってもいいかい?」
「あたしは構わないけど……」

元々ナナリーは剣の扱いは上手くないが、それではナナリーの武器がなくなってしまう。
ナナリー?とリアラが顔を覗き込みながら話しかけるとナナリーは困ったように笑った。
襲われた時の光景が鮮明に脳裏に蘇る。自衛のためにも何か武器はあった方がいい。
その心配事に気が付いたリアラは、己のタガーナイフをナナリーに差し出した。

「私はこういうの必要ないから」

リアラは主に術を使う。
ナナリーの得意武器は弓だが、リアラよりは上手く扱えるだろう。
ありがとう、とナナリーが口を開くと同時にシンクが顔を上げた。
ナナリーの言葉は最後まで紡がれない。
―――道化師の囁きが、周り全ての音を掻き消した。

【リアラ 生存確認】
状態:HP100%、TP85%、
所持品:南国の蝶(ナタリア水着)、レンタルビューティー(ティア水着)
基本行動方針:みんなで力を合わせて帰りたい。
第一行動方針:カイル他仲間を探す。
現在位置:D6 森の中

【シンク 生存確認】
状態:HP、TP100%
支給品:すず 未完のローレライの鍵、??? 聖剣ロストセレスティ
基本行動方針:ルーク達を引っ掻き回して楽しむ
第一行動方針:とりあえず周りを信頼させて、利用する。
現在位置:D6 森の中

【ナナリー・フレッチ 生存確認】
状態:HP60%、TP100%、両腕に斬り傷&顔と体に打撲傷(処置済み)
所持品:タガーナイフ、
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
第一行動方針:リアラ達と行動し、仲間を探す。
現在位置:D6 森の中
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 14:07:10 ID:pZ8SSnqAO
投下終了です。魚が駄目でしたら破棄します。
79名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 16:59:29 ID:TO+yTTBc0
投下します
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 17:06:27 ID:TO+yTTBc0
(畜生)
それは生きていた。到底助からないほど全身を焼かれてもなお。
(畜生っ)
それは認める事が出来なかった。己の敗北を。
(畜生畜生畜生)
それは到底許せなかった。己が逃げた事。恐怖を覚えた事を。
(俺はマグニス様だ、優れた種であるハーフエルフだそれが人間ごときにっ)
失態は繕わなければならない。
(この俺が劣悪種を恐れるなんて、あっちゃいけねぇんだ)
ならば無かった事にしなければならない。
(化け物みてぇなヤロウを殺す。俺が逃げるのを見た女も、ガキも殺す)
立ち上がろうとあがく。炭化した葦が手の中で砕けた。
化け物の炎はかなり深くそれの身体を焼いていた。関節が、筋肉が最早思うようには動かない。
痛覚も最早死んでいる。動くたびに身体に走るのは電気のような何かだ。
(認めてたまるか)
高温に、目を潰された。耳朶も焼け落ちている。だが、獲物の吐息が確かに聞こえた。
(このマグニス様が逃げるわけがねぇ)
恐らくは赤毛のものだろう微かな寝息を頼りに、それは這った。



ふと、肌に不快なかさかさしたものが触れた。
金髪と紫髪の男女を見送って、結局疲労と痛みに逆らえず意識を失っていたルークは、その感触に心地よい眠りを奪われた。
僅かに浮上した意識に、今度は気色悪い荒い息遣いが割り込んでくる。
(もう少し寝かせてくれ・・・・・)
不意に、瞼越しに突き刺さっていた陽光が遮られた。
さすがに不審に思い、目を開ける。そこにあったものに思わずルークは悲鳴を上げた。
最早男女の別も分からない焼け爛れた顔が自分を見下ろし、喉に炭と化した様な両手を伸ばしている。
(死体がっ)
とっさにそれの腕を掴んだ事で、頚動脈を押さえられる事こそ防いだが、圧倒的に体制が不利だ。
締め付けてくる手に、さっきまでの恐ろしい力こそないが、体重を掛ける事を許してしまえばそれで終わりだ。
それが、何か喚く。煤の臭いがする飛沫が顔に散る。
(嫌だ!)
必死に暴れ、締め付ける力が僅かに緩んだ隙に、それの顔に掌底を叩き込む。
とっさの事で、込めた気は到底技と呼べない程度のものだったが、それでも頬骨を砕く感覚は伝わった。
指が首から離れ、それの上体が泳いだ所を更に蹴り飛ばす。
咳き込み、転びながらも放り出した剣のところへたどり着き、柄を握り締める。
咆哮が耳を裂いた。
這いずり、がむしゃらに手を振り回しながらそれが吼えている。血と唾を撒き散らしながら。
自分を捜しているのだ!
(嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ)
81名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 17:06:48 ID:D3jKIc7sO
皆さま投下乙です!
どこも時間進みましたねぇ。
ミトス様とハロ様の謎解きwなんという最強探偵団ww
ルカも暢気に釣ってる場合じゃないぞw放送後リアルに吊ったりしないか心配…←
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 17:07:19 ID:TO+yTTBc0
「ぅああああぁぁああぁぁ!!」
かつて、初めて人の命を奪った時のように。がむしゃらにルークは剣を振り回した。
真っ黒に焦げたそれの首元に剣が引っかかり、振り抜いた勢いで地面に叩きつけられる。
「っがぁ!あっあああああぁ!!」
獣のように叫び続け、何度も何度も何度も。剣を突き刺す。二、三度、刃が骨につっかえる。
何度目かに剣を振り上げた拍子に、鉄錆の匂いのする生暖かいものが頬に跳ねた。
(俺・・・・・)
我に返り、喉を引き攣らせてルークはそれから離れた。みっともなくも膝から力が抜け落ち、尻餅をつく。
剣が何時手から離れたかは、分からなかった。
(俺は・・・・・)
目の前にあるのは見るも無残な死体だった。
焼け焦げた手足。叫んだままに凍った顔。ぐちゃぐちゃに切り刻まれ、臓物や骨が覗いた胴体。
殺される所だった。それは事実だ。けれど殺す必要があっただろうか。否。
あの様子では目も見えていなかった。
(俺は何をした・・・・?)
何も出来なかったどころの話しでは無い。
追いかけられている女性も助けられず(スタンの力を考えれば問題なかっただろう)
追いかけてきた者を止める事もできず(規格外のそれの力に振り回されて、嬲られるだけだった)
助けられて情けなく気絶していただけだ。
(俺は、俺に出来る事をしようと・・・・。)
その結果が、目の前の吐き気をさそう死体だ。
(俺には・・・・・何が。何も、出来ない?)



人の気配が近づいてくる。
ルークはその髪よりも赤く染まった身体を大きく震わせ、傍らの剣に目を走らせた。



【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP40% TP95% 全身に傷や打撲、痣 イレーヌとスタンへの不思議な感情 強い恐怖
所持品:メロメロコウ ミスティシンボル ソウルブラスト
基本行動方針:今自分に出来る事をする(ほぼ瓦解)
第一行動方針:また敵か!?
第二行動方針:安全な場所へ移動したい
現在位置:A7

【マグニス 死亡】
83足音、そして軋む歯車〜sideL〜:2008/09/09(火) 17:09:30 ID:TO+yTTBc0
終了です。
だからお前タイトルを・・・・・。orz
84名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 18:00:19 ID:l1k2pjQHO
投下乙だ、豚が
マグニスさまああああああああorz
全身を壊死するまで火傷しても尚立ち上がるのは最早執念…
マグニスさまも可哀想だが死んだと思ってたそんな状態の人間が襲いかかってきたらルークじゃなくても取り乱すわな

>>81
だれがうまいこといえとw
ヒロインが死んだ主人公の放送前の状態は対照的だなー
85名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 18:12:14 ID:mYxcg47XO
投下乙ですの。さらばマグニスさま…
ルークはほっとくと深淵にハマるなw 仮面ストーカー+神官なら良い保護者になれそうだが、さてどうなるか…期待!
86名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 18:27:26 ID:goAQOyA6O


ルークが赤鬼倒したならば、アッシュが青鬼倒すのを願おう

87名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 18:30:08 ID:CYEkja7EO
投下乙!
マグニスさまが……
ルークはホントに不幸だなぁ、仮面&神官組とどう接するか心配だ
ルカ組はそんなの関係なしにほのぼのw
ステルスマーダー混じってんのにw
88名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 18:44:34 ID:PyXU07/vO
投下乙
バーローwwwこのコンビは脱出の鍵になりそうだな
気も合いそうでなによりだ

シンクは完全に信用されてるみたいだな
このほのぼのが欝の前兆っぽくて、逆に恐ろしい

目を開けたらマグニス様の顔……これは怖ぇwwww
ルークが折れそうで心配だ
89名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 19:41:57 ID:D3jKIc7sO
投下乙でーす^^
マグニスさまはあのまま焼豚火葬かと思っておりましたが……ル、ルーク!!!
最初の決意はいずこへ…!orz
でもパニックに陥るのはわかるよルーク。
あんなんが「豚がー…どこだぁー…」とか言いながら蠢いてたら…gtbr
今思ったんですが、これで超振動が暴走して舞台崩壊・参加者全滅→ロワ終了、なんてこともあるのかな?

ところで『GD脱出用ロープ』を使って吊ったら首はどうなるんでしょう…?←
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 20:00:08 ID:20T1+BnK0
>>89
自分が言うのも何だが、2chで「^^」とか「←」とか使わない方がいい。
>>89のためにも他の住民のためにも
91名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 20:08:09 ID:D3jKIc7sO
何時もの癖でやっちまった…orz
肝に命じとくよ>>90
あーちょっと吊ってくる…
92名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 21:38:24 ID:l1k2pjQHO
>>83
今更だけど残り人数を書いてくれ
93足音、そして軋む歯車〜sideL〜:2008/09/09(火) 21:47:17 ID:sLMyQsTr0
【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP40% TP95% 全身に傷や打撲、痣 イレーヌとスタンへの不思議な感情 強い恐怖
所持品:メロメロコウ ミスティシンボル ソウルブラスト
基本行動方針:今自分に出来る事をする(ほぼ瓦解)
第一行動方針:また敵か!?
第二行動方針:安全な場所へ移動したい
現在位置:A7

【マグニス 死亡】

【残り56人】
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 21:52:39 ID:sLMyQsTr0
人数すまんかった。
色々と駄目だ俺・・・・・・。
95名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:04:00 ID:epyUrj1h0
マーダー
 ├― 問答無用で全員殺すよ派(皆殺し派)…ミクトラン
 |         ├― とりあえず殺したいよ派(快楽殺人派)…ハスタ
 |         └― ぶるああああああああ派(穴子)…バルバトス
 ├― 優勝したいよ派(優勝派)…ジルバ
 |         └― 蘇生させたいよ派(蘇生希望優勝派)…シゼル
 ├― 特定の人だけ守りたいよ派(愛は盲目派)…ワルター、スタン、デクス
 |         └― 特定の人を優勝させたいよ派(奉仕マーダー)…すず、アリエッタ
 ├― 魔剣の声が聞こえて仕方ないよ派(中二病)…イレーヌ
 ├― 人の苦しむザマが可笑しいよ派…シンク、サレ
 └― 強さを証明したいよ派(力試し派)…アリス
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:07:03 ID:epyUrj1h0

非マーダー
 ├― ゲームを止めたいよ派(元祖対主催)
 |         ├― 現状把握が優先だよ派(調査派)…ジェイド、リフィル
 |         ├― 障害は討つしかないよ派(PKK派)…ウッドロウ
 |         ├― 味方を探したいよ派(同志募集派)…クレス、ティア
 |         ├― 殺し合いなんてしちゃだめだよ派(人道主義)…シャーリィ、クラトス、アガーテ、
 |         └― とりあえずアビススーツを着るべきだよ派(外見重視派)…カイル
 ├― ここから帰りたいよ派(元祖脱出派)
 |         ├― みんなで帰りたいよ派…リアラ、ルカ
 |         ├― 今のところどうすればいいか見当もつかないよ派…リヒター、クラース
 |         ├― 仲間だけでとっとと帰りたいよ派(自己中心的脱出派)…エミル
 |         └― それより謎解き楽しいよ派(暇つぶし派)…ハロルド、ミトス
 ├― サイグローグを倒したいよ派(反ピエロ派)…カイウス、マオ、スパーダ、クロエ、ロイド
 |         └― リッドの敵討ちだよ派(エターニア連合)…フォッグ、レイス
 ├― 元の仲間を探したいよ派(パーティメンバー派)…セネル、ジューダス、フィリア、ナナリー、チェルシー、ロニ
 ├― とりあえず今大変だよ派(序盤から苦労派)…アッシュ、アニー、チャット、ルーク、マルタ
 ├― 特定の人だけ殺したいよ派(バトロワ便乗派)…エルレイン         
 ├― 死にたくないよ派(本能派)…ディスト
 |         └― 死にたくないし殺し合いもいやだよ派(漠然とした願望派)…ルーティ、ノーマ、ルビア
 ├― サイグローグの言葉を信じかけてるよ派(あの人が忘れられない派)…キール
 └― 特定の人や物が気になるよ派(一途派)…ダオス、ヴェイグ
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:09:46 ID:tX47HssR0
とりあえずアビススーツを着るべきだよ派wwwwwww
カイルさんマジパネェwww
98名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:12:15 ID:mnfsz5sB0
>>95-96

中二病イレーヌと外見重視カイルで不覚にもフイタwww
99名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:14:25 ID:20T1+BnK0
樹形図クソワラタwwww
そうか、イレーヌさんは中二病だったのか…妙に納得してしまったぞww
100名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:18:08 ID:gCNoBnh0O
乙!分かりやすくて助かる!

残る犠牲者は誰だろうwwそれまで頑張れよカイル!
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:24:31 ID:D3jKIc7sO
ロワ完全把握したw素晴らしい!
キールバカスwww
『あの人が忘れられないよ派』
↑これだけ見るとキールがピエロに一目惚れしたみたいに思えて紅茶噴いたw
カイルはそんなにアビスーツ気に入ったんだろうかww
102名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:36:11 ID:5U5tNv3+0
カイルは正義の味方大好きだからな、仕方ないw
投下乙!
テラバーローww真実はひとつ吹いたwハロルドが灰原さんに見えます・・
ルカwwwなんでここはほのぼのしてるんだw放送まで行ったか・・こわいな
マグニス様乙。マーダー枠の活躍はジルバ様とイレーヌさんが頑張ってくれるよ。ルークにトラウマ残しての死亡はGJだ
103名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:51:24 ID:k/58k3Sx0
投下します
104紙一重の頭脳:2008/09/09(火) 22:52:41 ID:k/58k3Sx0
それは、突然に起こるモノである。

「……ぶへっくし!」
「やだ、ディストさん汚い……」

突如、大きなくしゃみをしたディストに、ルビアが冷ややかな視線を送る。
鼻から一筋の液体が煌めきながら垂れる様は、一応お年頃な少女でなくともさぞかし汚く見えるであろう。

「黙らっしゃい小娘!……ふふ、これは誰かがどこかで私の素晴らしい話でもしていますね……」
『そういう話は、大抵悪口なのだがな』

ディストの細腕に引きずられる様にして運ばれるディムロスが呟く。
実際は素晴らしい話でも悪口でもなく、ディムロスと同じソーディアンの一本と現在それを所持している女性が、ディストに哀れみの感情を抱いた為なのだが。

「黙らっしゃい剣!……それにしても何ですかこの施設は。同じ廊下が延々と続くだけで……いつになったら中枢区画に辿り着くんですか」
『純粋に、補給や駐屯の為だけの施設なのかもしれないな』
「あ、補給施設だったら食糧とか回復アイテムとかも手に入るかもしれませんよ?」
「あー……食糧はともかく、回復アイテムの可能性は希薄でしょうねぇ」

相談とも雑談とも愚痴ともつかない会話を繰り返しながら、長い廊下の扉をまた開ける。
先頭を意気揚々と歩いていたルビアが……悲鳴を上げてディストの後ろに逃げ込んだ。

それは、突然に起こるモノである。

「なっ……何なのよこれ?」

扉の向こう側にあったのは、今までの代り映えのない廊下とはまったく違う光景。
薄暗い空間の中に立ち並ぶ、緑の液体をなみなみと満たした透明の円柱。
105紙一重の頭脳 2:2008/09/09(火) 22:55:08 ID:k/58k3Sx0
百は越すであろう円柱に照らされ、室内全体が薄緑に光り輝いているようだった。

「ほぉ、ここは何らかの研究施設だったわけですか」
『僥倖だな、首輪の解除には工具か何かが必要だろうしな』
「なんでそんなに冷静なの二人とも!?」

躊躇いもなく近づいて円柱を調べ始めるディストとディムロスに対し、部屋の入口でルビアが叫ぶ。

「無人の機械に脅える必要がどこにあるんです?」
「だって……気味悪いじゃないですか」
『子供なら怖がっても仕方ないだろう。気にするなルビア』
「子供じゃないですし別に気にしてませんっ!」
「それよりも、私はこの奥を調べたいんですが……いつまでそこで震えてる気です?」

円柱を調べながらメモを取るディストが、横目でルビアを見やる。
対するルビアは、高速で首を横に往復。

『しょうがない……ディスト、私はここに置いていけ』
「構いませんけどね、一人の方が調べ物も進みますし」

了承すると、入口の壁にディムロスを立て掛ける。
つい先ほどの脅えっぷりはどこへやら、悠然とした足取りで円柱の林の奥へと進んでいく。

「ま、せいぜいお子様はそこでビクビクしてることですね」

ハーッハッハッハーと嫌味な笑い声を上げながら去っていくディストに、ルビアは歯ぎしりせんばかりの表情。

「うぐ……凄く馬鹿にされてる……悔しい……っ」
『なら、追いかけて奥に行ってみるか?』

ディムロスの提案に対し、再び高速で首を横に往復させるしかないルビアであった。
106紙一重の頭脳 3:2008/09/09(火) 22:56:41 ID:k/58k3Sx0





(ふむ、この容器は液体ではなく、本来この液体に使っていた物が重要なんでしょうね。
 中に入っていた物は……サイズ的に言って人間でしょうか)

立ち並ぶ円柱のいくつかを調べ、サックに入っていた筆記用具でメモを取るディスト。

(となると、中身はどこへ行ったのかが問題だ。これから入れる可能性もありますけれどね。
 というか何故、こんな所に建てた?不便すぎるにも程があるでしょう)

サイグローグの造った研究施設と知れたら、一部の血気盛んな参加者にぶっ壊されるかもしれない。
考えられる可能性は……サイグローグ以外の存在によって建築された物だということ。

(その場合、誰が……となりますけどね)

堂々めぐりの思考回路。
頭を捻って考えながら、奥の扉を抜ける。
抜けた先は、再び似たような廊下。

(やれやれ、またコレですか。おや、窓から光が……とっくに夜も明けていたようですね。
 まったく、一晩中小娘と剣に付き合っていたんです……か……あれ?)

自分でも驚くほどの速度で、窓に張り付いて外を見る。

「な……レムの塔ですって!?」

柔らかな陽ざしに照らされ、遥か遠くの草原の先に見えるのは……間違いなく、かつてディストが自爆(未遂)したレムの塔。
当然、こんな所にあるはずもない物である。

(わざわざオールドランドから運んできた……ということですか。となると、この施設もどこからか運んできたのでしょうね。
 いや、私はこんな施設も技術も見た事がない。もしや信じられませんが、別世界―――?)

思いついた考えをまとめ、メモを走らせる。
107紙一重の頭脳 4:2008/09/09(火) 22:58:00 ID:k/58k3Sx0

(そうすると別問題が生まれますね……こういう事、いやこういう事か?
 その場合この問題がこうなるわけで……ほう、そういう事ですか。
 ふっふっふ、面白くなってきましたよサイグローグ……この薔薇のディストを欺くなど、不可能と知りなさい―――!)

次々と推測をメモにまとめながら、ディストは高らかに笑う。





―――ハーッハッハッハッハッハ……!

「何だろ、凄く笑ってる……」
『……何か見つけたのなら、いい事なのだがな』

ディストが帰ってくるのを待ちながら、ルビアとディムロスは互いの知り合いについて話をしていた。

「それでね、カイウスったら一緒に来てくれってあたしに頼んだんですよ。
 でもウジウジしてたからあたし『聞こえないわね』って……」
『……カイウスは、そうとうよく出来た性格なんだろうな』

幼馴染の少年についての、マスターとその仲間たちについての、たわいない話。
殺伐とした殺し合いの中に放り込まれていても、過去の思い出は色あせてはいない。

「にしてもコレ、何に使うんでしょうね。ハズレかな?」
『新手のリバースドール……ではないだろうな。ハズレだろう』

ルビアが眺めているのは、ディストに支給されたもう1つの支給品。
半裸のヘンな赤い髪の男を模した人形。
説明書きによると『アビシオンのフィギュア』というらしい。
間違いなくハズレの一品故に、ディストがいらないと言ってルビアによこした物だ。
108紙一重の頭脳 5:2008/09/09(火) 22:58:56 ID:k/58k3Sx0
「あのピエロも何考えてるんだろ……あ、ボタンがついてる」

ポチッ
―――甘い、甘いぞォ!

「うひゃあ喋った!?ディムロスさんの親戚!?」
『なわけないだろう!一緒にするな!』
「何やってんですかあんたらは……」

ふと気がつけば、ディストが帰って来ていた。

『何か見つかったか?』
「そうですねぇ……目ぼしい物品はコレぐらいですね」

そう言って、手にした工具箱を軽く持ち上げる。

「それだけかぁ……」
「ですが小娘、本当に重要な物は目に見えないモノですよ」

がっくりとうなだれたルビアに対し、ディストがやけに自信満々に語る。

「披露して上げましょう、この薔薇のディストの素晴らしい考察をね!」





「まず一番始めに……ここにいる二人と一本は、まったく別の世界から来ています」

ルビアとディムロスと共に床に座り(当然ディムロスは置かれているだけだが)語り始めたディスト。

「へ……?どういうこと?」
『……根拠はあるのか?』
109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 22:59:48 ID:20T1+BnK0
支援
110紙一重の頭脳 6:2008/09/09(火) 23:00:06 ID:k/58k3Sx0

突拍子もない話に呆気にとられるルビアに対し、ディムロスは冷静に問いかける。

「第一に、ここから外を見た時に見える塔、あれは私もよく知る建物です……当然、こんなところにある筈もない」

確かに外を覗くと、草原を渡った先に大きな塔が見える。

「それに、私は技術者でしてね。この施設の技術はまったく未知の物体です」
「でも……それって、単にディストさんが知らないだけって場合もあるんじゃ?」

信じがたい理論を否定したいかの様に、ルビアが首を傾げて問う。
ディストはそれを鼻で笑って、一言。

「それじゃあ第二の理由ですが……小娘、あなたはあの部屋でサイグローグが言った言葉を覚えていますか?」
「え?」
「優勝者の褒美の説明の時にあのピエロはハッキリ言いましたよ。『勝者が願えば、参加者の皆様を全員、生き返らせ〈元の世界〉に送り届けることも可能です』とね」

あ、とルビアが声を上げる。なるほど、とディムロスが納得する。

「我々が同じ世界の出身ならば、わざわざ元の世界などといった表現をする必要はありません。
 しかしその場合、別の問題が発生します」
『別の問題?』
「ええ、なぜ我々は普通に会話できているんでしょうね?」
「そりゃあ……口があるから」
「馬鹿ですねぇ」

思いついた答えを呟いたルビアに、心の底から馬鹿にした表情で返すディスト。

「全ての世界が、ご丁寧に同じ言語、同じ文字をしていると思いますか?」
「あ、そっか……」
『となると考えられるのは、首輪に翻訳機を仕込む事……いや、違うな』
「その通り。恐らくは……」

勝手に話を進め、勝手に納得するディストとディムロス。
111紙一重の頭脳 7:2008/09/09(火) 23:01:07 ID:k/58k3Sx0
「え、えっと……?どういう事?」
『ようするにだな、ルビア。異なった言語を自分が理解できるようにする為には、何らかの方法で言語を変換する必要がある』
「はあ、その為の機械が首輪に入ってるって事ですか?」
「あのですね、小娘……あなたの目の前にある剣に、首はありますか?」
「え……?あ、そうか……!ディムロスさんは首輪が無いのに普通に話せてるのか……!」

ようやく納得したように、何度も頷くルビア。

「直接、頭に翻訳する機能を刷り込まれているんでしょう……まったく、たいした技術です」
「頭に直接……何だか気持ち悪い……」

頭を押さえ、不気味さに体を震わせるルビア。

「そこでさらに別の問題が生まれます。首輪の必要性についてです」
『首輪は……禁止エリアに入った者を殺すためではないのか?』
「そもそも頭をいじれる技術があるんなら、もっといい方法がありますよ。
 直接爆弾でも仕込むか『禁止エリアに侵入次第、舌を噛み切って自害しろ』とでも命令を刷り込めば十分です」
『なるほど、それなら手の込んだ首輪を造る必要もなくなるな』
「じゃあ、首輪は何の為に……?」
「それについてですが……」

そこでディストは言葉を区切り、メモに何かを書いてみせる。

「目に見える物体の方が、恐怖として捉えやすいでしょう?」

メモに書かれた内容は、それとは違う物。

――首輪に、盗聴器が仕掛けられている可能性があります。

「……?」
『……!』

わけがわからない様子の一人と、息を飲む一本。
ディストはメモにペンを走らせながら、さりげなく会話を続ける。
112名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:01:15 ID:5U5tNv3+0
支援
113名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:01:19 ID:ZEnUYxAm0
支援
114紙一重の頭脳 8:2008/09/09(火) 23:02:07 ID:k/58k3Sx0
「分かりやすい恐怖の方が殺し合いを促進させるのには、効果的でしょうしね」
――殺し合いへの反逆者を見つけ、首輪の解除にいたる寸前までいったなら爆殺。これが用途でしょう。
『……なるほど、それならば納得がいくな。他に理由として考えられる物は?』

会話と筆談の内容に対し、どちらとも取れるディムロスの返答。
やはりわけのわからない様子のルビアは質問しようとし……ディストのメモで止められた。

――貴女はボロを出しそうなので、黙っていて下さい。

そう示すと、ディストは呆れた様子の芝居と共に言う。

「にしても困ったお子様ですねぇ。話し合いの途中で居眠りするとは」
『夜中からずっと行動していたからだな、その方が静かになるし寝かせておこう』

……確かに、これならば黙っていても怪しまれる事はない。
そっとサックから筆記用具を取り出すと、メモに質問内容を書く。

――つまり、あたしたちが話してる内容は全部聞かれてるんですか?
「他の理由としては、我々のように反抗する者にとって『解除』という分かりやすい目標を作る事です」
――たった一人で60人以上の会話を聞くのは無理です。他に手下がいるか、一部は聞き洩らしているかのどちらかです。
『それは、サイグローグにとって不利益な事ではないのか?』

ルビアとの筆談と並行して、ディムロスと普通の情報交換も行う。
相当難しい事だろうが……特に苦にする様子もなく、ディストは二重の会話を続ける。

――それと先ほどの剣の質問ですが、おそらく死者の確認にも使われているでしょう。
「いえ、むしろ目標を持たせて徒党を組んだ反抗勢力に対抗する為に、殺し合いに乗った者達が手を組むのを狙う為です」
――首輪に生死の判断をする機能を付け、放送で名を呼ぶ人間を調べるのでしょうね。
「大人数vs大人数の、血で血を洗う大乱戦……傍観している存在には、その方が面白いでしょうね」

他に質問は?と書かれた紙を見せられ、特に無いので首を横に振るルビア。
115紙一重の頭脳 9:2008/09/09(火) 23:02:59 ID:k/58k3Sx0

『そうだな、これからの行動方針はどうする?』
「私としては、一回目の放送までここで待機。その後は向こうに見える塔……レムの塔へ行きたいですね」
『やはり、元の世界の物は気になるのか?』
「それもありますが、サイグローグが運んでくる時に残した形跡があるか調べたいです。
 上手く形跡を見つけて、異世界の移動手段をそこから逆算できれば、脱出にも役立つでしょう」

と、ルビアが静かにメモを見せた。
そこに書かれていたのは、簡素な一文。

――カイウスに、会いたいです。

ディストは、冷静にペンを走らせる。

――アテが無いなら、我慢しなさい。

静かに顔を伏せるルビアを見ると、ディストは簡潔に宣言する。

「それでは放送後、F6のレムの塔へ向かうという事で……ほら、起きなさい小娘!」





ルビアはF6に向かうと再び説明された後、座り込んでぼんやりと考え事をしていた。
考えるのは、この地のどこかにいるはずの幼馴染の事。

(カイウスに会う為に……あたしは、何もできてない)

ディストは鋭い考察と推理を見せ、ディムロスはそんなディストを説得し仲間に加えた。
自分は、ただ脅えたり、考察を聞くだけだった。

(あたしは……何ができるのかなぁ……)
『……ルビア』

心配したのか、自分の隣に立て掛けられたディムロスが声をかけてきた。
116紙一重の頭脳 10:2008/09/09(火) 23:03:57 ID:k/58k3Sx0

「ディムロスさん……あたし、何もできてないですよね」
『心配せずとも、お前にできることもきっとある……あの考察は、ディストの奴が異常なのだ』

そのディストは地図を広げ、ぶつぶつと呟きながら何かメモしている。

「ディストさん、本当に頭良かったんですね」
『ああ、いまいち信用はなかったがな……頭脳は本物だ』
「聞こえてますよそこッ!褒めてるんですか、けなしてるんですかどっちですかッ!」

ぽつりと呟いた本音に対し、即座にツッコミが入れられる。
なかなかの地獄耳のようだ。

「まったくしっかりして下さいよ小娘!私はジェイドよりも早く、この首輪の解除をしなければならないんですからねッ!」
「はいはい……え?ジェイド?」
「そうですッ!」

ディストはバンッ!と重ねた地図とメモを叩く。
その振動が壁に伝わり、立て掛けられていたディムロスが倒れたりしているが気にはしていない。

「あの陰険で、嫌味で、私を見下してばっかのジェイドに……目に物見せてやる時です!
 アイツの目の前で外した首輪を見せて付けてやるんですよ!フッフッフ……見てなさいジェイド!」

メモのまとめに戻りながら、ハーッハッハッハと高笑いを続けるディスト。
ルビアの心から、今まであった不安が一発で消え去った……代わりに、怒りが湧き上がる。

「人が、真面目に、悩んでるのに……」

押し殺した声と共に、サックから赤毛の人形を取り出す。

「何を考えてるんですか、この、馬鹿ーーーーーッ!!!」

そう叫びながら、大きく振りかぶって……振り向いたディストの顔面に、人形を思いっきり投げつけた。

117紙一重の頭脳 11:2008/09/09(火) 23:05:21 ID:k/58k3Sx0


【ルビア・ナトウィック 生存確認】
状態:HP、TP100%
所持品:旋風、ポイズンパウダー、フリーズリング、アビシオンのフィギュア
基本行動方針:死にたくない。殺し合いには乗らない。
第一行動方針:放送後、F6レムの塔に向かい探索。
第二行動方針:カイウスはどこ……?
現在位置:E7、ナーオス基地

【ディスト 生存確認】
状態:HP、TP100%
所持品:ソーディアン・ディムロス、考察メモ
基本行動方針:とりあえず、死ぬ気はない。
第一行動方針:放送後、F6レムの塔に向かい探索。
第二行動方針:ジェイドよりも先に、首輪の解除方法を探す。
現在位置:E7、ナーオス基地
118紙一重の頭脳 :2008/09/09(火) 23:06:18 ID:k/58k3Sx0
投下終了です。
支援ありがとうございました。
119名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:07:41 ID:o7135nV7O
投下乙
ディストがかっこよく見えた
120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:08:12 ID:5U5tNv3+0
投下乙です。
ディスト超かっけえ……見直した!
ルビアは普通の子な感じでかわいいな。見た目だけならシリーズで一番好きなんだぜ!
転生者用の入れ物があるなんてこれはきっとギガンテスフラグ……!
121名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:08:40 ID:20T1+BnK0
乙です。
ディスト頭いいな…行動方針がアレだが。そしてまたアビシオン人形かwwwwww
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:09:04 ID:l1k2pjQHO
乙です
なんという水を得た魚w
ルビアが等身大の少女で可愛いなあ
バーロールドといい今日は考察系が豊作だね
123名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:09:29 ID:ZEnUYxAm0
投下乙です。信じがたいがディストに後光が見えるw
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:10:47 ID:D3jKIc7sO
投下乙です。
初めてディストが頼もしく見えました…理由がなんともディストらしいww
というかアビシオン人形w何故か和む…w
にしてもレムの塔が来ましたか…wktkします
125名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:11:19 ID:20T1+BnK0
>>122
バーロールドwwwマオレインに続きカッコイイ呼び名だ。使わせてくれw
126名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:38:53 ID:aafszJMy0
ディストってそういえば頭良かったんだなwww
文体も読みやすくて面白かったです!乙!
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:56:28 ID:QA5ni6KvO
投下します。支援がギリギリ要るかな。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:58:54 ID:20T1+BnK0
支援
129名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:59:28 ID:ZEnUYxAm0
wktk
13060マイルと10マイル -start!- 1:2008/09/10(水) 00:03:04 ID:QA5ni6KvO
【8:25】




照り付ける白い太陽の残滓が目の中を泳ぐ。
木製の桟橋は軋み、男が短剣を振るう度水面は揺れた。
「で、あいつの背中の羽」
器用に掌底を短剣で往なす赤毛の男、アッシュは口を開いた。
「ありゃなんだガキ。新しいファッションかッ!?」
無表情のまま少女がゆらりと回転し、機械的な動きの追撃ハイキック。
緑の髪がさらりと風に流された。
一方でピンチの筈のアッシュは、だがしかしニヤリと笑う。人形の少女は目の端で“それ”を確かに見た。
―――黒くて小さい、影。
小さな海賊がするりと間を滑り抜け、思い切り遠心力を利用して勢いが出たデイバックを……首に一撃。
支給品のサックは、彼女にとって実に都合の良い武器だった。
彼女の武器は、本来鞄なのだ。チャットは内心ほくそ笑む。
リッドを殺した事を許すつもりは断じて無いが、これだけはサイグローグとやらに感謝せねばならないだろう。
(ほぉ……やるな、ガキの癖に)
端の外の湖へと楽に吹き飛ばされる少女。
男、鮮血のアッシュは眉をぴくりと動かした。少女も立派な戦闘要員だ。
慢心創痍のアッシュにとって、この状況で贅沢はとてもでは無いが言ってられなかった。
……内心、己に嫌気が差したアッシュは悪態を吐く。
(甘いのは誰だ、畜生が)
ほんの少しでも残るプライドが非常に呪わしい。
そんな事だからアッシュという個をルーク・フォン・ファブレとして認められないのだ。何と愚か、何と脆弱。
下らなさ過ぎて笑えてくる。
「失礼な人ですね貴方は! 僕はこれでも女ですよ!」
一方、少女は文句を垂れながらも上機嫌だ。
元々、弄られて伸びるタイプなのだろうとアッシュは鼻で笑う。
「で、翼の件ですが」
横目で一瞥。男に話の矛先を向けながらも油断しない。
小さな海賊チャットは、仮にも世界を救う為ネレイドと戦った英雄だ。
「来ますよ、アッシュさん、チャット!」
131名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:06:26 ID:jxUgzePm0
支援
13260マイルと10マイル -start!- 2:2008/09/10(水) 00:06:23 ID:z9T8bHHLO
虚ろな目の少女がゆっくりとした動作で湖から這い上がり――――常人ではとても考えられない加速で迫る。
「あれは、僕も分かりません、よ――――ッ?」
そして少女はそのまま……盛大に前のめりに突っ伏した。
三人は目を疑う。アッシュは急ブレーキを掛け(罠か?)、チャットは繰り出そうとした鞄に身体を遊ばれ(ドジっ子ですか?)。
故に一部始終を極めて集中して見ていたアニーだけが冷静にその状況を分析出来た。
「……“止まった”」
そう、少女は止まった。躓いて突っ伏した訳で無ければ、罠ですら無い。
まるで操り人形の糸が切れたかの様に、あまりにも不自然な停止だった。
到底人間に出来る芸当では無い、とアニーは怪訝な表情を浮かべる。
筋肉の動き、関節の動き、彼女の目線、消えた翼。
それら全てから判断して、アニーは一人ごちる。
「違う、この人、人間じゃない」


*****


緑の髪をだらりと下げた少女は力無く民家の影で眠る。
アッシュが背負ってきたのだ。移動を提案したのも彼だった。
戦闘してしまった以上、物音を聞き付けた“例の奴”が何時現れるかもわからない故にだ。
眠る少女はそれはとても奇妙だった。心音はせず、瞼も開いたまま。
怪談や幽霊の類を極端に嫌うアニーからすればそれは最高の恐怖の対象であり、アニーだけが少女に背を向ける形で座していた。
アッシュはその人形を一瞥する――――傷から血は流れて居ない。
「やっぱりだ」
小さな海賊、チャットは震える声で呟いた。手元には中途半端に折目が付いた参加者名簿。
心配そうに名前を呼ぶアニー、先を急かすアッシュ。
チャットはごくりと温かい唾を飲み込むと、か細い声で呟いた。
「信じられますか? タバサなんて人、何処にも載ってないんですよ」




【9:45】




『それが誰かの為なら……それが永遠に選ばされ続ける悪夢だとしても?』




“あのワカメは、放っておけ。いいな。放っておくんだ”
タバサはザックに入れる事が出来たから支給品――――そうアッシュが結論付けた後、アニーはずっと迷っていた。
「それでも、それでも私には見過ごす事なんて、絶対に出来ません」
ひゅう、と苦しそうに息をする赤毛の男、アッシュに少女は告げる。
曇った表情が壊れた煉瓦の隙間から覗いた。目と目が合う。
少女には全く男の思考が分からなかった。目を見れば分かるとは誰が言った言葉だっただろうか。
13360マイルと10マイル -start!- 3:2008/09/10(水) 00:08:48 ID:z9T8bHHLO
小さな海賊は黙って二人を見比べている。俯いた顔は体育座りで半分隠れていた。
窓から差し込む光が肌を刺す。男は口を開かない。
幻想的な朝焼けとドラマティックな男女――と勇敢で小さな海賊――の静寂は、しかし残酷だった。
“その一言”を言う為にぐっしょりと濡れた少女の背中は酷く冷たい。
小さな海賊は眠そうに目を擦ると、不釣り合いな程に巨大過ぎるな帽子を深く下げた。ふわりと羽が揺れる。
男は何を言うわけで無く、サックに手を入れた。
少女の宝石の様な眼球は、相も変わらず男の瞳の中の光を真直ぐに射抜いている。
見つめられた男の目は僅かに細くなり、昇り掛けの太陽が彼の表情に影を差す。
それはほんの僅か。僅かだが、男の口から漏れる息の音の異変にアニーは気付いていた。
己は臆病で脆弱だ。しかし仮にも医者。
故に理解出来る。男の症状は、想像を絶する重症。
少女アニー・バースは、先の二度の攻防で理解させられていた。
いや、或いは最初から自覚していたのだろうか。
動揺の少なさは何処かで僅かに、しかし確かに感じていた諦観から来るのかもしれない。
最も自分が非力で頼り無く、それ故に必ず脱落するであろう人間だ―――そう理解してしまった。
茫漠とした、けれども強大な恐怖、知ってしまった天井。
それは如何しようもなく少女の前に横たわり、心を締め付けて放さなかった。
挫けそうな弱さを繋ぐのは、身を呈して己を守ったアッシュに少女が彼を感じたから、なのだろう。
ユージーン・ガラルド。
勇敢で優しい黒豹が、アッシュに重なる。
けれども、だけれども。守られれば守られる程に少女は理解するのだ。素敵な悪循環だった。
「本気で、言ってるのか」
うつらうつらと頭を垂れる海賊を尻目に男は言う。
確かに、ならばと少女は一度は思った。思ってしまった。
逃走を選択すべきだと。
思ってしまった、と文章にしたが、語弊がある。
それは間違いで無く正しい選択であるからだ。
居るかも分からない、他人の為に命を投げ出す必要性は皆無。そんな事をするのは空気を読めないお人好しか、唯の阿呆かだ。
力があれば、と少女は決断する前に悔いた。
聳え立つ切実な現実。少々には、嘆いても足らぬ程に力が無かった。
重々理解しているのだ、しかし。
「ええ」
しかし―――――。
「私は、脆弱で無力な存在で在る前に、医者で在り、一人のヒトです」
134名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:10:52 ID:PK+r+G0H0
支援
13560マイルと10マイル -start!- 4:2008/09/10(水) 00:11:51 ID:z9T8bHHLO
少女は一人のヒトだった。心に問い質した式が導かれた解は、こんなにも無垢だ。
無論、それはエゴ以外の何物でも無かった。甘んじて非難を全身に浴びる覚悟だって在る。
「……一つ」
がくん、と鈍器で殴られた様に一際鈍い音がした。男は一瞥をやると海賊が妙な声で呻きながら頭を抱えている。
大方煉瓦に頭をぶつけたのだろう。
小さく舌打ちをすると、男は気を取り直して少女へと視線を戻し、再び口を開いた。

「……一つ訊く」
ぽたり、と少女の顎から滴が墜ちる。
男はゆらりと立上がり、地平線の彼方に上がった陽に輝くそれを取り出した。
少女は素直でもあり、悪く言えば傲慢だった。
その生き方を選べなかった男にとって、その疎ましい程の傲慢さは、非常に癪に障って仕方が無い。
男は、少女に強く嫉妬していた。そんな自分に腑が煮えくり返る。
「それは俺に死ねと、そう言っているのか」
残酷な問いが少女の脳をぐわんと揺らす。堪え難い沈黙が全身を覆う。
眠気を痛みで冷ました海賊も、目を伏せて膝を抱えている。膝を抱える手は心なしか皿への圧迫が強く見えた。
……理解していた筈の、答え。
想定していた筈の質問が、一度結論を出した筈のそれが、胸を締め付けて離さない。
男が紺碧の空を仰いで舌打ちをし、そして―――少女を勢い良く押し倒す。
派手な音が、虚空に吸い込まれた。
「驕るな、女」
額に突き立てられたそれが僅かに揺れる。
震える呼吸と柑橘系の香水の甘い匂いを目と鼻の先に感じながら、男は少女を睨む。
「ち、ちょっ!? アッシュさん!?」
「お前は黙ってやがれ小僧ッ!! ……死にてェなら別だがな」
ぎらりと光る目が小さな海賊を射抜く。
窓から差し込む陽光を浴びて妖艶な紫に輝くそれに、小さな海賊は息を飲んだ。
立ち上がってはみたものの、男を前にして言葉が出ない。
「……ッ」
先の二つの無様な戦闘と圧倒的な差を見ていながら、さも当然そうに意見を吐く少女(ガキ)。
男は実に、実に我慢が成らなかった。
唯でさえ空洞で残り少ない人生を少女に捧げようとしている、己の呆れる偽善っぷりに対してもだ。
だが、その偽善は虚飾でも無い、男の本心だった。
故に、男は酷く、腹立だしく思っていた。泣けてくる程に。
(――――アイツの影をこんな甘ったるい屑に重ねている辺りが特にだッ!!)
衝撃に揺らぎ舞う土埃に隠す様に男は歯を軋ませた。
「余り、俺を舐めるな」
13660マイルと10マイル -start!- 5:2008/09/10(水) 00:15:34 ID:z9T8bHHLO
男はそして漸く気付くのだ。
腕から伝わる少女の鼓動が、とても静かである事に。
少女は何も言わず、男を見つめた。目線が再び合う。
“何かを試されて、訊かれているのは自分である様な瞳だった”。
「俺はお前の自殺に付き合う気も、死ぬ気も更々無い」
少女は違和感を感じた。
そこに在る何かが、嘘である気がした。
男も違和感を感じた。
此所に在る何かが、違う気がした。
挙動不審に慌てる小さな海賊が二人を忙しく見比べている。
しかし男と少女は自分達の世界で、小さな海賊は酷く寂しく感じた。
――――なら、とその瞬間に少女が口を開く。
男は眉をぴくりと動かした。一瞬、波線を描いた紫の刃が揺れる。

「私一人でも、“いきます”」


『如何して?』
……実に酷い戯言だ、聖人君主でも中々言えない!
拍手喝采、偽善と虚栄の結晶! 典型的な屑の台詞!
何とか出来ると思っている? 笑止! 阿呆か、又は馬鹿か!?
**だと知っている。知っていて、それでも吠える!
下らない、嗚呼下らない! 莫迦莫迦しい!
現実を知ってるかい? そんな莫迦は先ず間違い無く*ぬんだ!
だから(……だから、何?)!
『例えば、希望が無くても行く? 死ぬと理解していて、その薬をわざわざ取るの?』


「―――ええ、確かに私には何も出来ません」
少女は目を閉じる。男は黙って刃を首元に降ろした。
「分かってるんです」

私の道は、彼……アッシュさんの道とは全然違う。
色も、広さも、長さも、障害物だって全てが。
私には私の理想があって、夢があって、天秤がある。
そして、それは貴方との仲間と云う境界線よりも少しだけ切り進んだ所にある。
だから人は誰しも虚飾を持つんだ、と。そう思う。
だって、それは自己中心的で他人の事をまるで考えていない事にほぼ等しいから。
言ったら、全てが終わっちゃうから。
貴方との線引きも、仲間との絆も、全部。
無論、例外はありますよ。でも今回のは確実に私の我儘。
でも、だからこそ、私は敢えてそれを言いました。
逃げてる訳じゃない、逃げたくないと貴方に伝えたいから。
貴方も分かってるんですよね、アッシュさん。そんな顔して私も見ても、分かっちゃうんですよ。
だって、貴方は優しいもの。
それに――――女の子の勘は絶対に外れないんだから。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:18:48 ID:uwkCqPp6O
支援さまだ、豚が
13860マイルと10マイル -start!- 6:2008/09/10(水) 00:18:54 ID:z9T8bHHLO
アッシュさん、貴方今私を試してますよね。そう云う、事なんでしょ?
けれど、私は曲げません。その刃が例え私を貫いても、絶対に棄てません。棄てたくない。
アッシュさん。私は甘いですよ、分かってます。
でもそれが私です。最後まで貫きます。
貴方には、それを理解して欲しいから。
“だから今度は、私が貴方を試します”。

「“私はこの先、まず絶対に生き残れません”」

男は、な、と中途半端な声を漏らし息を飲んだ。小さな海賊も動揺だ。
それは、この世界での絶対の禁句だった。
匙を投げたにも同義で、他人の希望をも容赦無く切り裂く残酷な言葉でもあるからだ。
「でも、それでも、だからこそ最後までヒトである事は、“悪”ですか」
――――チェックメイト。完璧な詰みだね、鮮血のアッシュ。今のキミはそれを“悪”だと絶対に言えない。
……そもそも、男が彼女を重ねてしまった時点で詰んでいたのだ。
その少女が彼女と同じ事を吠える。無論どの口が言う、と非難するのは簡単だ。
しかし男にはその気力がまるで湧かなかった。
口から溜息が一つ漏れる。瞼は下りていた。
短剣を懐にしまい、無言で立ち上がる。
小さな海賊は複雑な表情で――彼等の話を半分も理解出来なかった事に依るが――男を見た。
少女はくすりと笑い、金髪の髪を優しく撫でる。
小さな海賊は温かいそれに少しだけ頬を膨らませて目を床に泳がせた。
銀のイヤリングが少しだけ陽光を反射して、アニーは眩しさに目を細める。
「それにしても」
中腰になった少女が首を傾げてチャットの顔を覗き込む。
な、ななな何ですか! と、妙に上擦った声。
それに微笑むと、少女は続ける。……可愛い妹が出来たみたいで嬉しいものだ。
「ううん。何度見ても不思議だと思ったの、エラーラ……ライト替わりや仲間の危険を知らせたり、色々出来るんでしょう?
 どう考えても唯の石じゃないし、不思議だわ……本物に」
小さな海賊は頬を染めて目を伏せた。
メルディとは少し違う、優しさと包容力。大人の匂いと、女性らしさ。
チャットは母親を善く知らない。
大した思い出も無く両親と死別した彼女にとって、それはとても不思議な感覚で、激しい羞恥を覚えた。
13960マイルと10マイル -start!- 7:2008/09/10(水) 00:23:25 ID:z9T8bHHLO
心臓が“いつもの跳ね方”とは違う。チャットは動揺を、そして一抹の恐怖を隠せなかった。
アニーに覚えた未知の感情の正体を、チャットはまだ知らない。
暴れ馬の様に身体を駆け巡るそれを、チャットは上手く乗りこなせないで、ただただ少女の裾を握っていた。



『おい……おい屑! 聞こえねぇのか劣化レプリカ!』
男は苦虫を噛み潰した様な表情のまま唸る。
(クソ……駄目か。畜生、レプリカの奴……真逆死んだりしてねぇだろうな!?)
回線が上手く繋がらず、彼は組んだ腕の中で右手人差し指をとんとんと動かす。
堪る焦躁。募る苛立ち。許容したく無い感情、“心配”。
無意識に鳴らされた舌打ちが口の中で反響する。
もう一度接続をと思った……その刹那。ふと、微かな魔力の接近を感じてアッシュは飛び退く。
(敵襲! 何処から?)
飛び散る瓦礫、目線を上げつつ扱い慣れぬ短剣を抜く。
(アイツか? 違うッ、ワカメの殺気は感じなかった!?)
揺れ動く景色の一枚絵、その中に高速で現れた緑の“線”。
土埃、地面の皹。アッシュは水に構わず水路に飛び退き市街地を見渡す。
(アニーとチャットは扉の向こう、まだバレていないがアイツら馬鹿だ。この音で急いで出て来るだろう)
影から見渡すが気配を感じない。地面に刺さった緑の槍も僅かな殺気の余韻すら残さない。
男、鮮血のアッシュは本日何度目かの舌打ちを鳴らした。
緑の槍から感じる魔力は大男のそれでは無い。
仮に魔力の匂いを変えられる使い手だとしても、あの大味な怪力男がこんなに粘着性と卑怯に溢れた手法を使うとは思えない。
(畜生、何時から見られてた? まだ敵が居たなんて、俺とした事がしくじった!)
「どうしたんですかアッシュさんッ!?」
バタンとまるで警戒心が感じられない強い音。アッシュは内心で頭を抱えた。
「馬鹿野郎ッアニー! 死にたくなければ隠れてろ、屑女がッ!」
同時に市街戦への期待は自分にしか出来そうにもないと確信する。
「え? でもあれ矢文ですよ?」
「今度はお前かチビガキ……って、何、矢文ィ?」
だから一応女なんですけど! 失礼な人ですね! と叫ぶ海賊を無視し、アッシュは顔を出す。
―――成程。緑の矢の先に何かが括ってある。
警戒しつつもずぶ濡れのズボンを絞り、アッシュは刺さった槍――どうやら近くで見ると矢の様だ――を抜く。
ふわりと大気に溶け込む様に魔力が霧散し、手中には文だけが残った。
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:23:34 ID:mCheWoh3O

14160マイルと10マイル -start!- 8:2008/09/10(水) 00:27:00 ID:z9T8bHHLO
「誰からです?」
覗き込む医者の卵を鬱陶しがりながら、アッシュは文を開いた。

“―――詳細は後程。貴方が本物の卑屈我儘アッシュなら、洟垂れ馬鹿の自称二つ名を知っている筈です。
 『青い屋根の民家の玄関』にそれがある場所を探して下さい。そこの中に、作戦を記した手紙があります。
 私の場所は言えませんが、今男を見つけ知らぬ世界の女性と二人で行動しています。
 まぁ、詰まる処が我々に力を貸して頂きたい。
 見たところ貴方もあの大男に襲われた様ですし――それに赤い髪の男云々とアレが喚いていますし――、アレは厄介だ。
 では、失礼”

アッシュは眉間に皺を寄せた。嫌な予感、もとい確実に嫌な奴がこの街に居ると知ったからだ。
アニーは目をぱちくりさせ――チャットはぴょんぴょんと跳ねながら見ようとしている――手紙を見ている。
(本物のアッシュ? ……ちッ……あの悪趣味ネクロマンサーが……何考えてやがる)
「おい、ガキに女! 薔薇だ。青い屋根と薔薇を探せ、可及的速やかにな」

……こんな状況でも皮肉とは、いい身分だぜ、全く。




【5:12】




地平線の彼方から日が姿を見せる頃。
澄み切った空気に、網の目の様に張り巡らされた水路を流れる水のせせらぎ。
路地裏で少々不釣り合いな剣を掲げて歩く女性教師、リフィル・セイジは―――


「クレメンテ老、詰まり貴方は古代文明の優れた道具だと、そう言う訳だな!? ふはははは! ……素晴らしい、素晴らしいぞッ!!」


―――目の色を変えて恍悦に浸っていた。
いや……まぁ、その、遺跡モードだ。
彼女の目の中に輝く星に老骨は苦笑いしか浮かばない。
『いや、まぁ、うむ……というかリフィルや、お主キャラが180度変わっとらんか?』
二重人格かのぅ? そう呟くコアクリスタルの中のラヴィル・クレメンテ老は少々失笑気味だ。
「細かい事は気にするな、クレメンテ老!
 時に、この凄まじいマナ…うむ、混沌としているのにも関わらず収束している…真逆とは思うが、お前は術の媒介になるのか!?」
142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:31:04 ID:PK+r+G0H0
支援
14360マイルと10マイル -start!- 9:2008/09/10(水) 00:32:30 ID:z9T8bHHLO
『いや、まぁ……うむ。ところでリフィ「素晴らしい!! となれば私もありとあらゆる魔術を使用可能と云う事だな?
 ハーフエルフやエルフにも魔術に対する得手不得手、限界は在る……しかしソーディアンがあれば解消出来る訳だな。
 興味深いぞ……嗚呼、実に興味深い!
 見る限りこのコアが全ての中枢の様だな……周りは飾りか? 否、この金属、恐らくはレアメタルだな?
 加工には相当の技術を要する筈だが……はッ! つまりコアからの情報伝達率が最も高くシンクロ率―――」
クレメンテは左耳から右耳に流しながらリフィルの声を聞く。
(貧乏クジを引いた様じゃのぅ……とんだ災難だわい……)
深く吐かれた溜息は、その三秒後に男の咆哮に掻き消される訳なのだが。




【10:05】




「全く心配しましたよ。日は既に上がっていますよ? 全く何処で油を売っていたんです?
 貴女なら“分かった”でしょうに。
 まあそれは後で話せば良いのですが、成程。私は声は聞こえませんでしたが、それで此所へ来たと。
 矢張りあの気配は敵でしたか。……勿論、気配は消してきましたよね?」
教師、リフィル・セイジは静かに頷く。
興奮が何処か抜けていない様子だが、ジェイドは無視して続けた。
「奴は強大過ぎる。いずれ我々に気付き―――必ず殺されます。それ程までの覇気と殺気だ。これは決して過大評価ではありません、軍人としての判断です」
一息置かれた間に、剣がコアを輝かせながら儂もそう思うのぅ、と述べる。
ジェイドは静かに頷くと、テーブルの上にある数十枚のメモのうちの一枚を取り出した。
「此所に、私が書いた作戦が在ります。記してある通り―――いえ、訂正ですね」
リフィルはジェイドの嫌らしい笑いに首を傾げる。
目線を追うと……一人の男。




【10:59】




空に上がる狼煙代わりの火の玉。
ジェイドはそれを認めると椅子からゆっくりと起き上がる。
「来ました、合図です。ウインドアローの矢文が上手く伝わりました……それではリフィル、作戦開始です。
 落合う場所は例の場所。互いに検討を」
剣を担いだリフィルの眼光は鋭い。生死を掛けた大勝負、しくじれば後は無い。
「ええ、貴方も」
そう呟いて瞼を降ろしたリフィルは表情を少し和らげた。


*****

14460マイルと10マイル -start!- 10:2008/09/10(水) 00:36:02 ID:z9T8bHHLO
リフィルが消え、取り残されたジェイドは窓辺に垂らされた壁掛け時計を一瞥する。
(放送まであと一時間。問題無い。ギリギリではありますが確実に奴を殺せる筈だ。……しかし)
ペットボトルを手に取る。窓から入った陽光がゆらりと揺れる水面に反射した。
ジェイドはそれを黙って見る。
(もし、万が一作戦途中に放送が始まってしまえば―――そして我々5人のうち誰かが取り乱していまえば?
 そう、形成は簡単に逆転されてしまう。気配がバレれば後は芋蔓式だ。
 軍隊の作戦に下らない仲間意識は在ってはならない……しかし、彼等は悲しいかな、一般人だ)
とくんと斜めにしたペットボトルの水が鳴る。
ジェイドはキャップを外し、ゆっくりと口に水を流し込んだ。
「もし仲間想いの優しい人物が我々の中に居るなら、この作戦――――失敗の可能性もある」




物語は廻る。廻れど廻れど、変わらないデバイス。
物語は廻る。廻れば廻る程に、表層と深層のロールの境界線を曖昧にしてゆく。
悪夢は廻る。廻れば廻る程に、可能性は減り行く。
廻れど廻れど、完結している内容は繰り返す。

――――紡いでも、それが一頁に過ぎぬならば。

145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:41:55 ID:qng1NQGQO
支援
146名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:47:30 ID:jxUgzePm0
さらに支援
14760マイルと10マイル -start!- 11@代理:2008/09/10(水) 00:49:18 ID:k9aTovEX0
【バルバトス・ゲーティア 生存確認】
状態:HP80% TP95%
支給品:プラズマカノン ソウルイーター ???
基本行動方針:赤毛を殺す
現在位置:G2街東

【アッシュ 生存確認】 状態:HP50%(アニーの治癒による) TP85%
支給品:クリスダガー ??? ??? ジェイドの作戦メモ二枚
基本行動方針:アニー、チャットを守る
第一行動方針:作戦開始、北へ
第二行動方針:レプリカの野郎はどうしたんだ…?
現在位置:G2街内部南

【アニー・バース 生存確認】
状態:HP85% TP75%
支給品:ハヌマンシャフト ??? ???
基本行動方針:アッシュに守ってもらった恩を返す
第一行動方針:作戦開始、北へ
第二行動方針:治療道具は支給品にあるのかな…確認しよう
現在位置:G2街内部南

【ジェイド・カーティス 生存確認】
状態:HPTP100% 僅かな不安
所持品:ヴォーパルソード セレスティアルマント ダーツセット 知り合いと死者についてのメモ等
基本行動方針:この島について調査、ゲームの打破。
第一行動方針:作戦開始、船を降り南へ
第二行動方針:死者に対しては慎重に(アッシュが本物だと分かり多少緩和)。
現在位置:G2村南、バルエンティア号内部

【リフィル・セイジ 生存確認】
状態:HPTP100%
所持品:ソーディアン・クレメンテ ??? ???
基本行動方針:殺し合いの打破
第一行動方針:作戦開始、西へ
第二行動方針:死者に対しては慎重に接する。
第三行動方針:ロイド達が心配
現在位置:G2村南

【チャット 生存確認】
状態:右頬にやや腫れ、首に絞められた痕跡あり、TP95% アニーに母性を感じている
所持品:スタンダードマグ(残り装填5発) 銃弾50発 旗の形をした『何か』 タバサ
基本行動方針:勇気を持つ
第一行動方針:作戦開始、北へ
第二行動方針:セネルが心配
現在位置:G2街内部南
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 00:55:54 ID:k9aTovEX0
さるさんとのことで代理投下。乙でした
一気に市街戦になりそうですね…アニーの強さに泣いた
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 01:07:29 ID:m4hq75CC0
乙!
超乙!!
同じくアニーに泣かされた。
が、チャットの親は健在だよな?
150名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 01:09:34 ID:iNLIkvqk0
両人共に乙です。アニー…ジェイドも結構危険な賭に出たな

ところで、チャットの両親は疎遠になっているだけで
死別ではなかったような記憶が…
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 01:22:50 ID:uwkCqPp6O
乙です
アッシュはロワでも損な役回りだなw
先生と爺のコンビがいい味出してて好きだ
バルバトスは1stでの戦友マグニスの分も頑張ってくれ
152名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 01:54:59 ID:cZ5BqUucO
皆投下乙。
>バーローwwwwwバーロールドって良いなwwwマオレインに続き良いあだ名だ。
>ルカ組はステルス混ざってるのに平和だなwwwでも放送後のルカが心配。
>マグニス様、マーダー枠なのに一人も殺せずに逝ったか…しかし相手が悪かったな。ルーク…君にも出来る事はある筈だ。ジュダフィリ組
>カイル自重wwwww穴子とイレーヌさんにも吹いたwww
>あれ?ディストなのにカッコ良いぞ?レムの塔にはすずちゃんも向かっているからどうなるやら。
>てんてーwwこんな状況でも遺跡モードになるのかwww穴子はこの人数相手にどう戦うのか?マグニスさまの分まで頑張れ。
153名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 01:58:07 ID:cZ5BqUucO
>>152連レススマソ
一部抜けてたorzルークはジュダフィリ組との接触に期待。
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 02:03:43 ID:LshGR8z40
投下します
155背中合わせの二人1:2008/09/10(水) 02:04:33 ID:LshGR8z40
項垂れる少年。
目の前に転がる三箇所が欠けた死体を見ながら、拳を握り締めて項垂れていた。
蓋の無くなった首からは血が流れた跡があり、おどろおどろしいガオラキアの地に染み込んでいた。
手錠が繋がったまま無造作に転がっている。
時が遅過ぎた。歯を食い締めるだけで、少年は…クレスは何も出来やしなかった。

雨の降る村。
煙の満ちた視界。
焼け落ちていく家々。
煤と鉄の香り。
水溜りに溶け込んでいく血液。
血の滴る剣。
転がる、見知った人達の亡骸。
父さん、母さん、アミィ――――――

僕はまた、同じ悲劇を繰り返してしまった。


がさりと草が擦れる音がした。
ハッとしてクレスが振り返るとそこには先程の少女が立っていた。
瞬時に身構えるも傷が痛み立ち上がれない。しかし彼女は何の攻撃もしてこなかった。
予想外の行動にクレスは少しだけ拍子抜けするも、それでも警戒は解かない。
彼女は力の無い子供を演じて自分を刺したのだ。もしかしたら同じ手法かもしれない。
そう思えばこそクレスの行動は当然だった。
睨みつける強い眼光に少女・アリエッタは本来無い人形を抱くようにして両腕を抱き、身体を縮めた。

「…さっきの人は」
「…分からない。多分、ここから離れたんだと思う」
156背中合わせの二人2:2008/09/10(水) 02:05:22 ID:LshGR8z40
アリエッタの短い質問にクレスは端的に答えた。
張り詰めた空気が簡単に解かれる事はなく、クレスは彼女から少しも目を離さない。

「君は、僕を殺すのか」

そう問い掛けるクレスの目は何時になく鋭い。同時に悲しくもあった。
アリエッタの目線は座り込んだクレスより少し上の位置にあった。それでも下とは感じさせない。
アリエッタは更に強く腕を抱いた。

「…ママがね」

幼い言の葉にクレスは思わず「え?」と上擦った声を出す。

「ママがね、あなたはとても優しい人だから、殺しちゃダメだって。
 イオン様みたいに優しい人だから、殺しちゃダメだって」

思いがけぬ答にクレスは何を言うべきか、言葉を失った。
アリエッタは俯いたままだ。沈黙が包み込んで、やっとクレスは少女の乱れた息遣いに気付く。
まさかこの子もさっきの襲撃で傷を負ったのか?
瑞々しい身体の、柔らかそうな腹部からは血が流れ出している。
眼光が緩む。クレスは少女の武器を確認するより先に彼女に駆け寄った。

「血が出てるじゃないか…!ダメだよ、安静にしてなきゃ!」

クレスはとりあえず少女を無理にでも座らせた。
だが肝心の治療する術を彼は持ち合わせていない。おまけに治療道具もない。
とりあえず傷だけは塞がないと少女の体が危ないだろう。傷口から菌が入っては熱も引き起こす。
何かないか…と考え、彼は本当にすぐ近くにある物に気が付いた。
157背中合わせの二人3:2008/09/10(水) 02:06:51 ID:LshGR8z40
クレスのトレードマークでもある、赤いマント。
彼はそれの裾を引き千切り止血用の布を咄嗟に作り出した。
量が心もとないが、幼い女の子の胴を巻くには十分だろう。
「ごめん」とクレスは小さく呟きアリエッタの服を軽く捲くり、布を傷口に巻き付けた。
大人しくしている少女にクレスは一抹の安堵を覚える。

「…あり、がとう」
「大丈夫だよ。とりあえず傷を治せる人か道具を探そう」

しかしアリエッタは小さくふるふると首を振った。
それにクレスは怪訝そうな表情を返すと、

「アリエッタは、諦めてない」と答えた。「ライガママが殺しちゃダメって言うから、あなたは殺さないだけ」

アリエッタの言葉に目を大きくするクレス。
俯きがちになった彼女は再び両腕を抱いている。癖なのかもしれないが、何だかクレスには震えを抑えているようにも思えた。
何故こんな幼い女の子が殺し合いに乗らなければならないのか。何か理由はあるのだろうか?
あったとしても、そうせざるを得ないこの状況に理不尽さを彼は覚えた。

「君はどうしても人を殺さなきゃいけない理由があるんだね」
「…イオン様を守らなきゃいけないから、アリエッタは、死ねない」

アリエッタはこくりと頷いてそう答えた。
大切な人がいる。その為には自分は死んではいけない――――そういう事なのか。
クレスはふっと目を閉じ暫く黙り込んでしまった。アリエッタは不思議そうに彼を見つめる。
少しして、彼はゆっくりを瞼を上げた。

「イオンって人は、それほど君にとって大切な人なんだね」
「うん」
「分かった。じゃあその人を見つけられるまで、僕が君を守る」

「え?」とアリエッタはぽかんと、心底驚いたように言った。
対照的にクレスは穏やかで優しそうな笑みを浮かべている。
158背中合わせの二人4:2008/09/10(水) 02:07:54 ID:LshGR8z40
「そんな傷じゃ一人で身動き出来るかも分からないし危ないよ。
 それにきっと君が戦うのは、一人じゃ自分の安全を完全に確保できないからだ。
 さっきの僕みたいに不意打ちを喰らう可能性だってある訳だから。
 けど、二人ならある程度は安全は保てるし、君が戦う理由もないでしょ?…僕じゃ不安かな?」

思わぬ申し出にアリエッタは困惑しぱなっしだった。
ぎゅうと身を抱き締め、円らな瞳の上目遣いでクレスを見遣る。

「…わかんない」
「はは、そうだよね。なら…尚更頼りにしてほしいかな。言ったよね、さっきも守るって」
「どうして?アリエッタは、さっきあなたの事殺そうとしたのに」

最もな質問だった。先程この少女に刺されたばかりだと、自分自身で思っていた。
アリエッタが疑問に思うのも仕方が無いだろう。
彼自身、ついさっきまではアリエッタの事を警戒していたのだから尚更だ。
「そうだね」と彼は頷いて答えた。

「確かに君は僕の事を殺そうとした。それは許される事じゃない。
 …でも、大切な人を失う時の気持ちは、僕も分かってるつもりだよ」

彼の記憶の、あの鳴り止まない鐘の音と煙が上る村が頭の中で想起される。
そして目の前で転がる頭と腕と足が欠けた体。
誰かの命が無意味に、無差別に奪われるなど、あってはならぬ事なのだ。
159背中合わせの二人5:2008/09/10(水) 02:08:56 ID:LshGR8z40
「それに、君が手を汚してまで守ろうとするなんて、大切な人は願ってない筈だ」

それはアリエッタにも言える。
彼女が誰かを殺せば、その誰かの関係者は悲しむ。
何よりもイオンが悲しむ。イオンが悲しむならば彼女自身も同じだろう。
きっと僕も誰かを殺せば、例えば此処にいないチェスターやアーチェや…ミントは悲しんでしまうだろう。
そうやって悲しみの連鎖は続いていくのだ。そしてそれは何処かで断ち切らなければならないものだ。
だから、僕がその一人目になる。

それに傷付いた姿を見ただけで何か薄暗いものは吹き飛んで行った。
つまり、要するに――――クレス=アルベインという人は実に甘ちゃんなのである。

薄暗いガオラキアの森の葉がざわざわと音を立てる。
アリエッタは身体を抱き締めたまま、重い口を開けた。

「…分かった。アリエッタはあなたについてく。あなたに守ってもらう。
 でも…もしも、もしもの時は…アリエッタは、ガマンなんてしないんだから」
「分かった。そしたらその時は…僕は全力で君を止めるよ」

「うん」とアリエッタは小さく頷いた。
ここに生まれた協定は小さなお姫様と彼女を守る盾のものであり、戦場に立つ者二人のもの。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 02:09:04 ID:m4hq75CC0
支援
161背中合わせの二人6:2008/09/10(水) 02:10:04 ID:LshGR8z40
大きく聳え立つ世界樹ユグドラシルの麓。
かつてミント=アドネードの母・メリルをここに埋葬したように、クレスはリーガルの遺体を埋葬する。
土を掘る手段など二人は持ち合わせていなかったが、幸いリーガルのサックから一本のスコップが見つかったのだ。
武器としては鈍器としてしか使い様が無いが、この時ばかりは非常に助かったのは言うまでもない。
あの大柄な体を入れる穴を掘るのも運ぶのも大変だったがあのままでは忍びない。
手負いの体に若干の疲労が重なるが、そこは自身が扱える『集気法』でカバーした。
(とはいえやはりこの技も制限下にあるのか、大した効果は望めなかった)
アリエッタは傍でずっと彼の様子を静かに見ていた。

そして二人は彼の墓の前に立っている。
クレスの手には、リーガルの首から外した銀細工の輪が握られていた。
それを容易く外せたのはやはり、あの穏やかな表情故だろう。

「リーガルさん…きっと、あなたは僕達の事を守ってくれたんですね」

僅かばかり後ろに立ち沈黙するアリエッタの両腕には、少しばかり大きいがピンク色のねこの着ぐるみが包まれていた。
「あんまり可愛くない」と本人は零していたが、こうしているのが癖であり、今は落ち着けるのだという。

「僕も、この子を…誰かの事を、守れる人間になりたいです。いえ、なってみせます」

やっぱり自分は守る存在がなければ安心できないんだと思った。
彼の脳裏に浮かぶのはとてもぼんやりとした光景。
アリエッタに刺され、地に倒れ込み、見えたものは――――青い光と長い金髪。
クレスの手が強く握り締められる。
内から巻き上がる憎悪に、本当にトーティスと同じじゃないかと彼は苦笑した。

「あなたを殺した人は…絶対に見つけ出します」

彼はマントを翻し墓の前から離れる。風が少しだけ千切れたマントを靡かせた。

「行こう、アリエッタ」

暗闇のガオラキアの森に若干の朝の光が差し込んだ。
その光が、若き虎と小さな虎の道を照らすものとなる事を心から願おう。
162背中合わせの二人7:2008/09/10(水) 02:10:55 ID:LshGR8z40
【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:HP50%(集気法により) TP90% 失血による貧血 僅かな葛藤
   右横腹に深い裂傷(止血済み) マント破損 若干の疲労 決意
所持品:デュナミス パナシーアボトル×3 オベロナミンEX 首輪
    リーガルのサック(スコップ ???)
基本行動方針:ゲームを止めるため同志を募る。守る側の存在になる
第一行動方針:アリエッタを守り、共にイオンを探す
第二行動方針:傷を回復するための道具や人を探す
第三行動方針:リーガルさんを殺したのは誰だ…!?
現在位置:D1(ガオラキアの森-大樹ユグドラシル根元/TOS) →森を抜ける

【アリエッタ 生存確認】
状態:HP55% TP95%以上 アニスへの対抗心  腹に銃跡(×2 処置済み)
所持品:ソードブレイカー ねこねここねこ ??? ???
基本行動方針:イオンを守る。イオンを優勝させる?
第一行動方針:イオンの事を探す
第二行動方針:今はクレスに守ってもらう
第三行動方針:もしもの時は…
現在位置:D1(ガオラキアの森-大樹ユグドラシル根元/TOS) →森を抜ける


※リーガルの遺体はD1(ガオラキアの森-大樹ユグドラシル根元)に埋葬されました
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 02:12:29 ID:LshGR8z40
終了です
アリエッタの口調って難しい…
164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 02:13:21 ID:AwhCUlGoO
夜遅くに本当に投下乙です。
ううっ、アリエッタ…おまえの守るべきイオンはもういないんだぞ…!
すげー切ないよ…
しかしまさかの共闘。ああだめだ涙が止まらん…
165名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 02:14:27 ID:m4hq75CC0
乙!
クレスの優しさとかアリエッタの無垢っぷりとか泣けた。
でも、この協定が結ばれてる時間は短いんだろうな・・・・・・。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 02:45:51 ID:7eQht8JVO
乙。
目の前の少女が1つ下とは気付かなかったようだなクレスよ
しかし放送怖い組だな…ここ
そして回復アイテムってオベロナミンオベロナミン!説明無くて分からなかったのかな?
167名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 02:58:01 ID:mCheWoh3O
投下乙
どんなに格好良くてもディストはディストで安心した
アニーとアッシュは、……すごく……いい感じです……
五人いても穴子に勝てる気がしないのは何故だろう
アリエッタは……こうきたか。やっぱりクレスは騎士が似合うな
ここは放送後がすげー気になる
168名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 05:39:12 ID:uwkCqPp6O
投下乙
動物が懐いてるみたいな感じだな
クレス格好いいよクレス。
だがアリエッタは幼い少女じゃないぜw
169名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 11:08:43 ID:NRGbvM5xO
投下乙!
アニーの言葉にぞくぞくした。これで5対1の構図が出来たのかー…
先生かわいいよ先生
大佐の一言が不穏だなぁ…
アリエッタかわいいよアリエッタ
青年とロリコンビと思いきや、一歳差…だと?
イオンがとっくに死んでるのが波乱の予感!
なんか放送後爆弾持ち多すぎw
170名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 11:20:57 ID:cZ5BqUucO
投下乙です。クレスはやっぱりこうでなくちゃなwwそしてアビスマン組に続いて奇跡の一歳差コンビwwでも放送後がヤバいな…。
171名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 13:18:48 ID:v5YeCq040
>>166
アッー!すっかり失念してた…orz
ってことで修正版投下します
172背中合わせの二人3@修正:2008/09/10(水) 13:20:10 ID:v5YeCq040
クレスのトレードマークでもある、赤いマント。
彼はそれの裾を引き千切り止血用の布を咄嗟に作り出した。
量が心もとないが、幼い女の子の胴を巻くには十分だろう。
「ごめん」とクレスは小さく呟きアリエッタの服を軽く捲くり、布を傷口に巻き付けた。
大人しくしている少女にクレスは一抹の安堵を覚える。

「…あり、がとう」
「大丈夫だよ。あと、これも」

そう言ってクレスは一本の小瓶を取り出した。オベロン社製の回復薬が波打つ。
しかしアリエッタそれをいわゆる野生の勘で何か理解したのだろう。小さくふるふると首を振った。
それにクレスは怪訝そうな表情を返すと、

「アリエッタは、諦めてない」と答えた。「ライガママが殺しちゃダメって言うから、あなたは殺さないだけ」

アリエッタの言葉に目を大きくするクレス。
俯きがちになった彼女は再び両腕を抱いている。癖なのかもしれないが、何だかクレスには震えを抑えているようにも思えた。
また殺し合いに乗る人をわざわざ回復させる理由はないでしょ…彼女が言いたいのはそういうことだろう。
拒絶するような素振りに、クレスはこの子も本当はいい子なのかもと思った。
何故こんな幼い女の子が殺し合いに乗らなければならないのか。何か理由はあるのだろうか?
あったとしても、そうせざるを得ないこの状況に理不尽さを彼は覚えた。

「君はどうしても人を殺さなきゃいけない理由があるんだね」
「…イオン様を守らなきゃいけないから、アリエッタは、死ねない」

アリエッタはこくりと頷いてそう答えた。
大切な人がいる。その為には自分は死んではいけない――――そういう事なのか。
クレスはふっと目を閉じ暫く黙り込んでしまった。アリエッタは不思議そうに彼を見つめる。
少しして、彼はゆっくりを瞼を上げた。

「イオンって人は、それほど君にとって大切な人なんだね」
「うん」
「分かった。じゃあその人を見つけられるまで、僕が君を守る」

「え?」とアリエッタはぽかんと、心底驚いたように言った。
対照的にクレスは穏やかで優しそうな笑みを浮かべている。
173背中合わせの二人5@修正:2008/09/10(水) 13:21:24 ID:v5YeCq040
大きく聳え立つ世界樹ユグドラシルの麓。
かつてミント=アドネードの母・メリルをここに埋葬したように、クレスはリーガルの遺体を埋葬する。
土を掘る手段など二人は持ち合わせていなかったが、幸いリーガルのサックから一本のスコップが見つかったのだ。
武器としては鈍器としてしか使い様が無いが、この時ばかりは非常に助かったのは言うまでもない。
あの大柄な体を入れる穴を掘るのも運ぶのも大変だったがあのままでは忍びない。
手負いの体に若干の疲労が重なるが、そこは自身が扱える『集気法』でカバーした。
(とはいえやはりこの技も制限下にあるのか、大した効果は望めなかった)
アリエッタは結局クレスから差し出されたオベロナミンEXを飲んだ後、傍でずっと彼の様子を静かに見ていた。
傷が塞がった以上殺し合いに戻っても構わなかったが、こうして守ってもらえるのもいいかもと彼女は思っていた。
余計な労力を使わなくて済む意味でも、安全の意味でも、守ってもらうという感触の意味でも。
イオンもこんな感じだったのだろうか。

そして二人は彼の墓の前に立っている。
クレスの手には、リーガルの首から外した銀細工の輪が握られていた。
それを容易く外せたのはやはり、あの穏やかな表情故だろう。

「リーガルさん…きっと、あなたは僕達の事を守ってくれたんですね」

僅かばかり後ろに立ち沈黙するアリエッタの両腕には、少しばかり大きいがピンク色のねこの着ぐるみが包まれていた。
「あんまり可愛くない」と本人は零していたが、こうしているのが癖であり、今は落ち着けるのだという。

「僕も、この子を…誰かの事を、守れる人間になりたいです。いえ、なってみせます」

やっぱり自分は守る存在がなければ安心できないんだと思った。
彼の脳裏に浮かぶのはとてもぼんやりとした光景。
アリエッタに刺され、地に倒れ込み、見えたものは――――青い光と長い金髪。
クレスの手が強く握り締められる。
内から巻き上がる憎悪に、本当にトーティスと同じじゃないかと彼は苦笑した。

「あなたを殺した人は…絶対に見つけ出します」

彼はマントを翻し墓の前から離れる。風が少しだけ千切れたマントを靡かせた。

「行こう、アリエッタ」

暗闇のガオラキアの森に若干の朝の光が差し込んだ。
その光が、若き虎と小さな虎の道を照らすものとなる事を心から願おう。
174背中合わせの二人7@修正:2008/09/10(水) 13:22:16 ID:v5YeCq040
【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:HP50%(集気法により) TP90% 失血による貧血 僅かな葛藤
   右横腹に深い裂傷(止血済み) マント破損 若干の疲労 決意
所持品:デュナミス パナシーアボトル×3 首輪
    リーガルのサック(スコップ ???)
基本行動方針:ゲームを止めるため同志を募る。守る側の存在になる
第一行動方針:アリエッタを守り、共にイオンを探す
第二行動方針:リーガルさんを殺したのは誰だ…!?
現在位置:D1(ガオラキアの森-大樹ユグドラシル根元/TOS) →森を抜ける

【アリエッタ 生存確認】
状態:HP100% TP95%以上 アニスへの対抗心  腹に銃跡(×2 処置済み)
所持品:ソードブレイカー ねこねここねこ ??? ??? 空のビン
基本行動方針:イオンを守る。イオンを優勝させる?
第一行動方針:イオンの事を探す
第二行動方針:今はクレスに守ってもらう
第三行動方針:もしもの時は…
現在位置:D1(ガオラキアの森-大樹ユグドラシル根元/TOS) →森を抜ける


※リーガルの遺体はD1(ガオラキアの森-大樹ユグドラシル根元)に埋葬されました
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 13:23:56 ID:v5YeCq040
以上、部分的ですが修正お願いします。結局アリエッタに飲ませました
あと今投下した5の部分は6でしたorz
お手数かけます
176紙一重の頭脳 11@修正:2008/09/10(水) 15:43:24 ID:pMoRmitB0
ディストの状態表をちょっと修正させていただきます



【ディスト 生存確認】
状態:HP、TP100%
所持品:ソーディアン・ディムロス、考察メモ、工具箱
基本行動方針:とりあえず、死ぬ気はない。
第一行動方針:放送後、F6レムの塔に向かい探索。
第二行動方針:ジェイドよりも先に、首輪の解除方法を探す。
現在位置:E7、ナーオス基地
17760マイルと10マイル -start!- 6 @修正:2008/09/10(水) 17:10:40 ID:z9T8bHHLO
男を見た〜〜少女はくすりと笑い、の間に描写がすっぽり抜けてました。コピペしわすれです、すみません。アッシュが瞬間移動してる…

男を見た〜〜〜少女はくすりと笑い、の間に以下を追加します。

―――――


「何をしている」
揺れる鮮血の様な紅の髪。
その持ち主のアッシュは背を見せたままそう呟いた。
「え」
「はい?」
アニーとチャットは目を丸くして頭を傾ける。
アッシュさんは何を言っているんだろう、と疑問符がアッシュに言う。
アッシュは小さく舌を打ち横顔を見せた。心無しか表情は柔らかい。
「だから行くぞと言っている、屑共が。……言っておくが、勘違いするなよ。
 お前らに納得させられた訳じゃねぇ……死にたきゃ勝手に死ね。俺は助けねぇぞ屑!
 邪魔だったらお前らごとワカメを斬る。自分の身は自分で守れ、分かったな馬鹿共」
これは俺が、“ルーク・フォン・ファブレ”の選んだ道だからな―――そう呟いて男は扉を軋ませる。
意図を掴み兼ねたが、少女二人は問う事をしなかった。それは無粋な質問だ。
木製の扉が空き、ふわりと吹いた微風が海賊の帽子を飛ばす。
慌てて転がる海賊帽を追いかけるチャットを尻目に、アニーは満面の笑みを浮かべた。
「有り難う、アッシュさん」
ぎゅうと杖を握って走る少女の足は軽い。
「ま、まま待って下さいよう!」
埃と蜘蛛の巣を払いながら、慌てた声。
サイズオーバーの帽子を上手く被れずぽてぽてと可愛く近寄る小さな海賊。
「全く、ボクを置いていくなんて!」
頬を張って帽子の位置を直しながらも、左手はしっかりとアニーの服の裾を掴んでいた。
178名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 17:18:11 ID:z9T8bHHLO
sage忘れ申し訳無い。
179名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 21:14:28 ID:tqswG/S6O
まとめさん乙です!
いよいよ放送後が楽しみになってきたぜ…
180名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 21:22:55 ID:jmtMUTht0
そろそろ放送案を誰か書き始めてもいいんじゃないか?
半分ぐらいは昼に達したみたいだし。マオレイン組とバルバトス組は間に放送挟みそうだから。
描写必須はセネル組とリヒター組とジューダス組ぐらいかな?
他は移動とか放送後の描写で足りそうだから。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 21:32:51 ID:PK+r+G0H0
セネル組も時間昼間だから大丈夫じゃない?
あれ、昼間だよね?
182名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 22:19:57 ID:qng1NQGQO
ダオスはいずこや ユグドラシェルへビューン?
183名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 22:28:16 ID:5ZR5f5YZO
セネル組は時間は大丈夫だがタバサが停止した理由の説明描写が必要かも
184名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 22:49:19 ID:uwkCqPp6O
タバサ停止と便利連絡網通じないのは理由付けないとね
あと空気魔王ダオス…
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 22:50:21 ID:PK+r+G0H0
タバサ停止はワルターがセネルに押されてたから集中が途切れて…
ってのが理由にはならない?そう脳内補完したんだけど
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 23:16:22 ID:NRGbvM5xO
シゼルはずっと昼まで海を見てたって事でいいんだろうかw
ロイドやシャーリィ達見てるかもな
シゼルの普通の戦い方がよく分からん
闇の極光使えるのはでかいが
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 23:21:42 ID:AsVB7pje0
投下します。
188Latency:2008/09/10(水) 23:24:15 ID:AsVB7pje0







聖峰の麓、ファロース教会地下・最深部。
殆どの参加者が知るべくもないその場所で、数少ない例外たる青年の上の目の前へ、影が落ちる。
ブックレットを繰る指を止め、面を上げかける。その途中で、少女の声が耳朶を打った。

「助けてくれたことに、お礼は言う。

 ……でも、」

「『ここを出ていきたい』? その体でか?」

頤の先まで、上げきって彼女の言葉を彼女より先に継ぐ。
途端、思い詰めたような青い瞳がどうしようもなく雄弁に、彼のそれをじっと射た。
されど、思いの強さは彼も同じか、それ以上だ。
青い視線が、絡まり合うこと数瞬。
一挙動では互いにけして届かない距離の向こうで、先に目をそらしたのはやはり少女の方だった。



そして訪なった沈黙が、ランタンの輝きの合間をそっと埋める。
少女は、ばつの悪そうな顔でもってそこ、ここと視線を彷徨わせていたが、
やがてらしからぬ態度を続行することに我慢がならなくなったらしい。
何故か癒されないままの肩を庇い気味に立ち上がり、思い切って青年の爪先のさきですとんと腰を下ろした。

「そういえばまだお礼、言ってなかったよね。 助けてくれて、ありがとう。 ええと……?」

「キールだ。キール・ツァイベル。

 マルタ・ルアルディ、エミル・キャスタニエが気になるところ悪いが――僕らが動くのはまだ先だ。

 そうだな、少なくともあと四時間。運が良ければ、さらに三時間。それまでは人違いで悪いが、せいぜい僕で我慢してくれ」

思わず立ち上がりかけた少女の鼻先を抑えたグランドセプターを再び後ろ手に戻すと、
青年は悪びれもせずにそう持ちかけたのだった。


【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP100%、TP65% マルタにメルディを重ねている。
所持品:グランドセプター、クレーメルケイジ、血塗れた鬼包丁、ザック二つ、レンズ×30
基本行動方針:殺される気はない。サイグローグの言葉を信じかけている。
第一行動方針:可能な限りこの場で籠城しつつ、マルタの話し相手をして情報を集める。
第二・三行動方針:???
現在位置:B4ファロース山麓・ファロース教会地下(マクスウェルの間)

【マルタ・ルアルディ 生存確認】
状態:HP70%、TP60%、右肩の傷は行動を阻む程度まで治療後、放置。他については治療済み。
   出血により、まだ満足に動けない。片袖なし。
所持品:エミルのマフラー
基本行動方針:エミルと再会したい。
第一行動方針:キールと話をする。
第二行動方針:休んで体力回復をする。
第一行動方針:エミルにあったら、マフラーの件を謝りたい。
現在位置:B4ファロース山麓・ファロース教会地下(マクスウェルの間)
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 23:26:40 ID:AsVB7pje0
短いですが、以上です。
ファロース教会、だめだというなら潔く括ります。




聖峰の麓、ファロース教会地下・最深部。
殆どの参加者が知るべくもないその場所で、数少ない例外たる青年の上の目の前へ、影が落ちる。
ブックレットを繰る指を止め、面を上げかける。その途中で、少女の声が耳朶を打った。

「助けてくれたことに、お礼は言う。

 ……でも、」

「『ここを出ていきたい』? その体でか?」

頤の先まで、上げきって彼女の言葉を彼女より先に継ぐ。
途端、思い詰めたような青い瞳がどうしようもなく雄弁に、彼のそれをじっと射た。
されど、思いの強さは彼も同じか、それ以上だ。
青い視線が、絡まり合うこと数瞬。
一挙動では互いにけして届かない距離の向こうで、先に目をそらしたのはやはり少女の方だった。



そして訪なった沈黙が、ランタンの輝きの合間をそっと埋める。
少女は、ばつの悪そうな顔でもってそこ、ここと視線を彷徨わせていたが、
やがてらしからぬ態度を続行することに我慢がならなくなったらしい。
何故か癒されないままの肩を庇い気味に立ち上がり、思い切って青年の爪先のさきですとんと腰を下ろした。

「そういえばまだお礼、言ってなかったよね。 助けてくれて、ありがとう。 ええと……?」

「キールだ。キール・ツァイベル。

 マルタ・ルアルディ、エミル・キャスタニエが気になるところ悪いが――僕らが動くのはまだ先だ。

 そうだな、少なくともあと四時間。運が良ければ、さらに三時間。それまでは人違いで悪いが、せいぜい僕で我慢してくれ」

思わず立ち上がりかけた少女の鼻先を抑えたグランドセプターを再び後ろ手に戻すと、
青年は悪びれもせずにそう持ちかけたのだった。


【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP100%、TP65% マルタにメルディを重ねている。
所持品:グランドセプター、クレーメルケイジ、血塗れた鬼包丁、ザック二つ、レンズ×30
基本行動方針:殺される気はない。サイグローグの言葉を信じかけている。
第一行動方針:可能な限りこの場で籠城しつつ、マルタの話し相手をして情報を集める。
第二・三行動方針:???
現在位置:B4ファロース山麓・ファロース教会地下(マクスウェルの間)

【マルタ・ルアルディ 生存確認】
状態:HP70%、TP60%、右肩の傷は行動を阻む程度まで治療後、放置。他については治療済み。
   出血により、まだ満足に動けない。片袖なし。
所持品:エミルのマフラー
基本行動方針:エミルと再会したい。
第一行動方針:キールと話をする。
第二行動方針:休んで体力回復をする。
第一行動方針:エミルにあったら、マフラーの件を謝りたい。
現在位置:B4ファロース山麓・ファロース教会地下(マクスウェルの間)
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 23:31:32 ID:AsVB7pje0
レス内容削除忘れマジ自分バカスorz すまない、吊ってくる。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 23:37:33 ID:7eQht8JVO
投下乙。
大事な話なので二回投下しました。
なかなか施設が充実してるな今ロワは…
キールはこんな可愛い子と二人きりでこんちきしょう
192Latency 修正:2008/09/11(木) 01:09:15 ID:9SUEFHF3O







聖峰の麓、ファロース教会地下・最深部。
殆どの参加者が知るべくもないその場所で、数少ない例外たる青年の目の前へ、影が落ちる。
ブックレットを繰る指を止め、面を上げかける。その途中で、少女の声が耳朶を打った。

「助けてくれたことに、お礼は言う。

 ……でも、」

「『ここを出ていきたい』? その体でか?」

頤の先まで、上げきって彼女の言葉を彼女より先に継ぐ。
途端、思い詰めたような青い瞳がどうしようもなく雄弁に、彼のそれをじっと射た。
されど、思いの強さは彼も同じか、それ以上だ。
青い視線が、絡まり合うこと数瞬。
一挙動では互いにけして届かない距離の向こうで、先に目をそらしたのはやはり少女の方だった。



そして訪なった沈黙が、ランタンの輝きの合間をそっと埋める。
少女は、ばつの悪そうな顔でもってそこ、ここと視線を彷徨わせていたが、
やがてらしからぬ態度を続行することに我慢がならなくなったらしい。
何故か癒されないままの肩を庇い気味に立ち上がり、思い切って青年の爪先のさきですとんと腰を下ろした。

「そういえばまだお礼、言ってなかったよね。 助けてくれて、ありがとう。 ええと……?」

「キールだ。キール・ツァイベル。

 マルタ・ルアルディ、エミル・キャスタニエが気になるところ悪いが――僕らが動くのはまだ先だ。

 そうだな、少なくともあと四時間。運が良ければ、さらに三時間。それまでは人違いで悪いが、せいぜい僕で我慢してくれ」

思わず立ち上がりかけた少女の鼻先を抑えたグランドセプターを再び後ろ手に戻すと、
青年は悪びれもせずにそう持ちかけたのだった。


【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP100%、TP65% マルタにメルディを重ねている。
所持品:グランドセプター、クレーメルケイジ、血塗れた鬼包丁、ザック二つ、レンズ×30
基本行動方針:殺される気はない。サイグローグの言葉を信じかけている。
第一行動方針:可能な限りこの場で籠城しつつ、マルタの話し相手をして情報を集める。
第二・三行動方針:???
現在位置:B4ファロース山麓・ファロース教会地下(マクスウェルの間)

【マルタ・ルアルディ 生存確認】
状態:HP70%、TP60%、右肩の傷は行動を阻む程度まで治療後、放置。他については治療済み。
   出血により、まだ満足に動けない。片袖なし。
所持品:エミルのマフラー
基本行動方針:エミルと再会したい。
第一行動方針:キールと話をする。
第二行動方針:休んで体力回復をする。
第一行動方針:エミルにあったら、マフラーの件を謝りたい。
現在位置:B4ファロース山麓・ファロース教会地下(マクスウェルの間)
193名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 02:11:48 ID:nCc7vQHC0
参加者名簿のディストの名前って本名で載ってるのだろうか
そんな気にするほど重要でもないけど
194名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 02:51:44 ID:HsknHbwxO
それだとルーク・フォン・ファブレが2人いることになるから、アッシュ表記してあるようにディストでいいと思う
195名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 03:06:44 ID:9ouVhwfbO
そういや新要素の銃使いが揃って死んじゃったな
形は違うがフォッグ頑張れ
196名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 05:18:41 ID:mOJ2kEBZ0
銃はマーダー補正を正当化するのにかなり役にたつからね
自分の知る限りではロワにおいて生き残った対主催のガンマンっていないし
197名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 06:37:41 ID:EMP1ZhbtO
>>186
普通に術使うよ(試練で操作できる)
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 07:32:33 ID:yzO7dL/jO
素の状態では、キュア、プリズムソード、グレイブ、スパークウェーブが使えてたっけ。
何気に攻撃、回復とバランスいいよな。
199名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 08:34:40 ID:BTw6RMzOO
ヴェスペリアで格好いい秘奥義使ってたなぁ
若返っててワラタ
200名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 08:47:47 ID:L2KEyTFqO
Vで出たゲストキャラの新技、新秘奥義ってありなのか?
201名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 09:07:48 ID:zAkKSWUX0
スーパーダオスレーザーなんて撃たれたら笑い死ぬ
202名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 09:35:31 ID:BTw6RMzOO
久しぶりにシンフォニアやったらミトスの瞬間移動にいらいらしたわw
これはうざいw
203名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 10:19:09 ID:EMP1ZhbtO
>>198
オートだと他にも使えるらしいよ
まぁセレスティア系全般とプルートとフィアフルフレアと回復で
良いんじゃない?
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 13:28:38 ID:BFjd3w7TO
Vのゲストに限らず登場作品が複数にまたがってるキャラの技はどうなんだろう?
SRで新秘奥義できたロイドにリオンでもあるジューダス、ゲスト登場で技の増えたダオスやバルバトスとか。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 14:19:39 ID:BTw6RMzOO
別にいいんじゃない?そのゲームでたまたま使わなかっただけで実は使えてたのかもしれないし
書き手の自由だろ
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 17:43:34 ID:R7CqoWlAO
制限しすぎたりしたら書き手にも読み手にもつまらんからね
207名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 18:54:32 ID:+3wUroGxO
空気魔王ダオス
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 19:52:58 ID:EMP1ZhbtO
ダオス「なに、気にする事は無い?私が能天気な魔王に見えるかね?」
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 21:21:20 ID:9ouVhwfbO
エドワード「黄泉の門開くところに汝あり…出でよ神の雷!」
空気魔王「何、気にすることはない」
210ルームメイト@修正:2008/09/11(木) 22:09:21 ID:4cJtG+HaO
76話「ルームメイト」修正です。
…ミトスが発見したのはラジエイトゲートではなくアブソーブゲートでした……すみません。
矛盾してしまう。
211名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 22:16:07 ID:iVcde0FX0
アブソーブゲートが収束してて、ラジエイトゲートが放出するんだよね?
だとすると89話「判別式D」も修正しないとおかしくなる
212名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 22:46:07 ID:4cJtG+HaO
えぇ。えらいすんませんです。
逆だと思ってました。申し訳無い。
213名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 22:51:28 ID:zAkKSWUX0
全スレ梅乙です
ストレス解消確認ワロタw
214名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 22:53:16 ID:zAkKSWUX0
全スレじゃなくて前スレだよ_| ̄|○
215名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 00:01:14 ID:iVcde0FX0
89話「判別式D」修正版投下します。
誤字なども直したので全修正になってしまってすみません
216判別式D@修正:2008/09/12(金) 00:05:34 ID:y3O8O2Ak0

「ぐふふふふ♪」

彼の背後に現れた桃毛の女は相変わらずの不気味な笑みを零しながら、彼と彼の前に鎮座する巨大な装置を見た。
「誰だい、お前?」
振り向かぬままユグドラシルは素っ気無く言う。こちらは相手の正体を既に握っている。しかし先ほど出会った女に、ユグドラシルの正体は未だ割れていない。……筈だった。
「んー、アンタ、さっきのガキんちょね!」
早速見破られて、ユグドラシルはぴたりと動きを止める。
振り返ると、目の前に在ったのはレンズ越しに己を観察するハロルドの顔。「データ採取♪」と口ずさむ彼女はたいそう上機嫌だ。
「ミトス・ユグドラシル。天使。年齢不明。――ミトス・ユグドラシルはこのつまんないゲームに1人しか存在しない。なるほど、年齢不明ってこゆことね。天使とは即ち体内時計と自然成長を自由に調整変更することが可能な種族又はシステムってところかしら」
使い捨てのスペクタクルズを放り投げ、両手を胸の前で合わせうっとりとした様子でハロルドは自分の世界に入っている。
そういえばコイツ、スペクタクルズを持っていたんだ。
ユグドラシルは聞こえない風に舌を打つ。しかしおそらく彼女であればスペクタクルズを使わなくともミトス・ユグドラシルの正体を看破していただろう。
「ねね、じゃあヨボヨボのおじいちゃんにもなれるわけねー♪」
「……僕はなりたくないよ」
思わず素の口調が出る。
「いい実験材料が手に入ったわー、後で解剖させてね」
とんでもないことを朝食のメニューを言うのと同じ風に言いながら、ハロルドの視線もユグドラシルと同じ、眩い光の粒を何処かから収束させ吸い込んでいるように見える装置――パッセージリングへと向かう。
「見たことのない材質だわ。レンズとも違う。晶力とも。神の眼? ううんそんなわけないわね。この島の大気に混じるもっと別の何か……あーこんなことならデータ解析君2号を持ってくるんだったわね。今作っちゃおうかしら」
「何を作ろうと構わないがコイツは壊すなよ」
「破壊しないと生まれないものもあると思うけど? ま、コイツは壊さないほうがよさそうね。操作盤見るに扱い厄介そうだし。動かなくなったらおもしろそーな謎解けなくなっちゃうし」
ユグドラシルはパッセージリングから零れる記憶粒子の流れをじいと見た。上から下へと絶え間なく流れ込んでいる。地上は確か天を射抜く峰。
空にこんな粒子は一粒たりとも窺えなかった。ということは肉眼では見えないほど遥か上空から、あの峰を通り、ここに吸い込まれている――?
「ああそうそう、コイツもどうにかしなくちゃ。窮屈でたまんないわ」
思考を中断させるようにハロルドが言う。普段はペースが崩されるのを嫌うユグドラシルだが、何故か彼女の言動は気に触らない。それどころかいい気分転換になっている気がした。
「首輪、か」
「ツールさえあればすぐ解除できるのに。分かっちゃいるけど盗み聞きされてるのはいい気分じゃないわ」
――首輪に盗聴装置がついている。そのことを知りながらも、ハロルドはまるで盗み聞きしている相手に宣言するように笑った。
「へえ。そんなこと言うとお前、あの赤毛の男みたいに首吹っ飛ばされるかもよ」
皮肉を篭めてユグドラシルも笑う。
「それはないでしょ。向こうがやる気だったら私達がここに入った時点で頭と胴体がサヨナラしてるわ。解除させる気、謎解かせる気満々よアイツ。用意された答えを導くのはつまんない。けどそれ以上の面白い何かが私を待ってる気がするの。たとえば、アンタとかね」
生き生きと輝く女の笑顔に、ユグドラシルも高らかに笑った。
「じゃあ僕も言わせてもらおう。探偵が真犯人を追い詰めるような華麗な謎解きをね」
「真実はいつもひとつ! って?」
「解は常に一つとは限らない」
ぐふふ、ふふふ。
二つの嗤いが、地下空間に反響する。

「――さあ、そろそろあの道化師のふざけた声が聞こえる時間だ」

時計を開き、ユグドラシルはその秒針を眺める。
定時放送。おそらくこの地下空間に聞こえてこないということはないだろう。この空間に入られることも奴の想定済みだから。
その声がどのように聞こえてくるかで、また謎の解へと一歩近づくことができる。
既にゲームのシステムに組み込まれた哀れな子羊の名に興味はないが、もう二度と見ることはないと思っていた名簿を眺める。
その束ねられた紙に、記憶粒子の残滓がひとつ、溶けて染みこんでいった。

――そう、解などない場合もある。
――けれどその「ないはず」の解を見つけることこそ、学者としての永遠の命題ね。
217判別式D@修正:2008/09/12(金) 00:07:17 ID:y3O8O2Ak0



【ミトス・ユグドラシル@ユグドラシル 生存確認】
状態:HPTP100% 謎解きにちょっとやる気が出てきた 何かをキープスペル中 ある重大な何かに気付いた? 
支給品:ローレライの宝珠 ジェットブーツ エリクシール
基本行動方針:取り敢えず死ぬ気は無いけど生きる気も無い
第一行動方針:この島の舞台裏の解明
第二行動方針:この女、一緒に居ても不便では無いな
現在地:B4(霊峰ファロース/TOE)地下、アブソーブゲートセフィロト内、パッセージリング前(TOA)

【ハロルド・ベルセリオス 生存確認】
状態:健康
支給品:天才ハロルドの杖 スペクタクルズ×96
基本行動方針:面白くないのでゲームに乗らない
第一行動方針:スペクタクルズで未知の種族のデータ採取! 首輪もどうにかしたい。
第二行動方針:結構話合うみたいだし、こいつと一緒にいて謎を解きつつ隙をみて解剖開始!
現在地:B4(霊峰ファロース/TOE)地下、アブソーブゲートセフィロト内、パッセージリング前(TOA)
218名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 00:09:30 ID:y3O8O2Ak0
以上です。
219名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 01:04:21 ID:mZiIBNIiO
貧弱男にディムロス
天使にジェットブーツw
220名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 02:13:31 ID:G7ZCDwoU0
そのちぐはぐな感じがまたいいんだよなw
221名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 08:05:30 ID:8crDpu/6O
ミトスは移動力ピカイチすぎるwww
222名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 08:07:56 ID:QCBP+CrQO
今さらだが2chパロロワ辞典に登録乙!ジルバ事件とか詳しく乗っててワロタwww
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 12:57:59 ID:pmu5GPk00
質問だがイグニスコアの悪影響を受けないのは
マーテルかラタトスクの加護を受けたキャラって解釈でおk?
エミル、マルタ、リヒター、ロイドは大丈夫だとして
ミトスとかも含まれるのか気になったので・・・
224名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 13:01:37 ID:8s01VQ8LO
ミトスにマーテルの加護が無かったら泣けてくる
報われなさ過ぎる
225名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 13:18:11 ID:+BnQWGbCO
ミトスにはマーテルの加護を貰う前に死んでるんじゃない?
ミトスの死後にマーテルが大樹の精になったんだろ?
後、ミトスがラタトスクの加護を貰って、それがまだ効果あるなら、クラトスもあるのでは?
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 13:29:11 ID:p0EssAky0
デリスエンブレムの件からしてミトス一行にはラタの加護はもう無いと思う
マーテルの加護も無いだろうけど、どそういえばここにはユグドラシルあるんだよな……
マーテルがいるかいないかで話が変わりそうな予感
227名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 13:50:26 ID:zt8GHXfvO
第一回放送案、誰かありますでしょうか。今私が書いてるのですが、他に候補が無ければ投下したいと思います。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 13:55:12 ID:kB/17HGtO
おお放送か、お願いします
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 14:21:23 ID:fASXy2BrO
プリーズ
230第一回放送案:2008/09/12(金) 15:08:01 ID:zt8GHXfvO
一応、投下させて頂きますね。
231第一回放送案 1:2008/09/12(金) 15:11:19 ID:zt8GHXfvO
アンテイーク調の琥珀色のランプをサイグローグは見ていた。
廊下を照らす艶やか灯は中の蝋燭の炎の所為か、不規則に明度を変化させる。
それに伴い溢れる影も様々な形に変化し、メルヘンティックな部屋は大層恐ろしく見えた。
サイグローグは黙したままスクリーンを見ていた。
仮面の下の表情は窺い知れない。
静寂を時計の音が規則的に切り刻む。短針は直に12を刻もうとしていた。
徐に道化師サイグローグはぬりいぐみを一つ優しく抱き寄せた。
てらてらと炎を映す黒硝子の眼球を毟る。
ぷつりと何かが切れた様な高音が小さく響き、その瞬間時計の短針は12を刻んだ。
道化師はぬいぎるみの首を引き千切る。
中から出て来た紅のマイクは少々湿っていた。
ゆっくりとリボンに飾られたそれを抜き取り……道化師は静かに切り出した。
「……皆様、ご機嫌よう……御用意させて頂きましたこのゲームは……フフ……お気に召しましたでしょうか……」
参加者人数分のぬいぐるみから様々な声が溢れた。首が取れた10の人形は黙したままだ。
「……実に順調で素晴らしい……ですが」
残念そうな声で道化師は呟いた。
チェス盤に目を落とす。そこに在るのは実に、失笑モノの素敵過ぎる予定調和だ。
キングは二体のポーンを殺め、白きナイトは黒に裏返り。
ルークは骸に恐怖し、ポーンは黒きクイーンに抉られ。
クイーンはナイトを裏返し、若きビジョプは鉄を以て水の迷宮に彷徨う。
「……選択の余地すら無く……従わざるを得ないのでは……そう、結果は変わらないのですよ……」
唯の雛型通りの展開、そこに面白みが幾つ存在すると云うのか。
道化師は溜息を一つ零し、モニターを凝視した。
誰もが自分の言葉に耳を傾けているのだろう。誰もが動きを止めている。
「想定内の思考は……それが喩え悩む姿であろうと面白みに欠ける……。
 葛藤の結果さえ雛型通りならば……過程も要らないもの……貴方はそう思いませんか……?」
道化師は聞こえる多種多様な声に笑い、そして続けた。
「……さて、他愛ない前座は此所まで……先ずは禁止エリアから発表致しましょうか……」
何処か狂気を秘めたオルゴールの音を聞きつつ、道化師は何本かのダーツを手に取る。
ダーツには数が記してあった。
凝視して漸くわかる程に小さいが、間違い無くそれはセミコロンで区切られた時刻を表している。
パチンと道化師の指が鳴ると、鮮血をも上回る紅のカーテンが開く。
232第一回放送案 2:2008/09/12(金) 15:13:38 ID:zt8GHXfvO
顔が無い操り人形が垂らす地図に向かって、道化師はすうと腕を動かした。
関節が実に滑らかな動きでしなる。
適当な方向へ風を切りながら進んだ四本のダーツは、小気味好い音を上げて地図へと刺さった。
「……確認ですが……禁止エリアはルールブックに記してある様に……三時間毎となります……。
 ……さて、それでは御待ち兼ね、発表としましょう……。
 先ず……16時にB1……次に19時にF5…22時にG7……最後に24時にC3となります……。
 ……指定された時間まではエリア内行動も自由です……フフ……メモをお忘れにならないよう……」
さて続いては死亡者発表でございます―――道化師はそう言いつつ個々の反応を聞く。
漸く調和が崩れるかと思うと、笑いが堪え切れない。
仮面の下の弧を必死で押さえ込み、道化師はマイクへと優しく語り掛けた。
「……哀れな小羊は計十名……プレセア・コンバティール……リーガル・ブライアン、マグニス……ステラ・テルメス、
 イオン、ユージーン・ガラルド……リカルド・ソルダート、リッド・ハーシェル……そしてイリア・アニーミ」
道化師は敢えて此所で一旦言葉を切る。
フリルで飾られた棚を一瞥すればざわざわと騒ぐ並べられたぬいぐるみ。
奏でられる不協和音は道化師にとって最高に心地良いものだった。

「おや……約一名、名前を言うのを忘れていました……フフフ……」

わざとらしく道化師は呟き、笑う。
チェスの駒を左手で動かし――――そして静かに呟いた。

「さて…その前に…ではそこの貴方……私の館に立ち寄った事がある貴方ですよ、ヴェイグ・リュングベル……フフフ……。
 貴方の目の前には今、白い道と、黒い道があります……貴方はどちらかを選択しなければならない……ならばどちらを選択しますか……?」
一部のぬいぐるみが静まり返る。
道化師は愉快そうに笑うと、赤児に語り掛ける様に優しく、しかし確かに強い狂気を孕んだ声色で続けた。
233第一回放送案 3:2008/09/12(金) 15:16:29 ID:zt8GHXfvO
「……本当はどちらでも良いのですよ……何故ならば、どちらも一本の道に……紅と肉で飾られた素敵な道に辿り着くのですから……。
 ……御待ち兼ね……最後の死者は……クレア・ベネット…。
 ……貴方は今この名を聴き考えた……脳内の回路を経て……そしてどのような答えを出すか……それこそが……私の楽しみ……。
 では引き続き……ゲームをお楽しみ下さい……」
勿論参加者には見えないが、道化師は丁寧に深々とお辞儀をする。
手に握られたマイクはふわりと蕩ける様に霧散した。
ぬいぐるみに囲まれた部屋で、道化師はゆっくりと顔を上げる。

そうして仮面の下で嗤うのだ――――さぁ、皆様の苦悩と選択を、存分に、と。
234名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:18:28 ID:zt8GHXfvO
投下終了。
個人に干渉し過ぎるのはどうなのかと不安になりましたが、キールの件もあるしサイグロらしいかなと思ってやってしまった。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:42:33 ID:cAtVib90O
乙です!
俺はこれでいいと思います。
しかし『案』ということは、まだ放送前の話投下しても構わないのだろうか?
別に供養所行きならそれでもいいんだが、後ステータス書くだけだっただからどうしたもんかと。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:47:07 ID:xsBtWbsQO
いいんじゃないか?
死者が出てもちょいと追加するくらいだし。
237名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:47:15 ID:kB/17HGtO
投下乙!クレア最後に言うとかサイグロさん外道w

>>235
別に投下してもいいと思うよ
てかGO!
238名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:49:24 ID:I4S7vRSUO
乙です。…予定調和か、今後が楽しみかつ不安だ
ダーツで禁止エリア決めるのに笑ってしまった
239名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:51:18 ID:mZiIBNIiO
うーん素晴らしいんだけど
個人的にはキールと違って目立つ行動を取ったわけでもないのにヴェイグを唆してるのは主催としてやってほしくないなあ
240名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:59:39 ID:I4S7vRSUO
俺はこれでいいと思うけどな。OP同様ロワ主催らしさより
サイグロらしさ優先で。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 16:03:22 ID:FhFtPjPaO
サイグロは問い掛けた相手の迷いを楽しんでるだけだから、唆してはいないと思うけどどうかね?
個人的には主催の個性が出てて好きだが、ダメならまぁ放送後の独り言にするとか?
242名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 16:06:36 ID:PP5/TY2r0
名指ししなきゃ良いんじゃないか?
問いかけ自体はサイグロらしいし。
俺自身は名指ししたって良いとおもう。

修正するかは書き手任せでさ。
243名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 16:06:41 ID:cAtVib90O
>>235で書いた放送前の話、投下してもいいんですよね?
お言葉に甘えて投下します。
一応時間経過表現をつけてみました。
244槌と兜と 1:2008/09/12(金) 16:10:20 ID:cAtVib90O
 
 
「「じゃんけんぽん!」」
 
 
彼らに支給された灯りとは別に、煌々と燃える炎。
その傍で、真剣な面持ちで向かい合い叫ぶ二人の少年少女──ロイド・アーヴィングと、ノーマ・ビアッティ。
数秒毎に彼らの手に握られているのは……安全ヘルメットと、ピコピコハンマー。
 
 
「「あいこで……しょっ!」」
 
「「しょっ!」」
「「しょっ!」」
「「しょっ!」」
 
「でぇいっ!」
「よゆー!」
 
ぴこっ
 
数秒毎に、ぴこっ、と間抜けな音がする。
彼らと炎を挟む形で座っているもう一人の少女クロエ・ヴァレンスが、それを眉間に皺を寄せて見ていた。
 
 
「「じゃんけんぽん!」」
 
「くらえー!」
「へっ、そうはいくかよ!」
 
ぴこっ
 
「「じゃんけんぽん!」」
 
「「あいこで、しょっ!」」
 
「げげっ」
「でやぁっ!」
 
ぴこっ
 
「あ、あっぶなー……!」
「まだまだいくぜ!」
「へんっ、望むところよっ!」
「……い、」
 
「「じゃん、けん……
 
 
「いい加減にしろーーーーーーーーッッ!!!!!!」
 
「ひゃいっ!?」
「うおっ!?」
 
 
──少女の怒号が岩場に響いた。
その声に、少年少女が肩をびくっと跳ねさせて、固まる。
245槌と兜と 2:2008/09/12(金) 16:11:41 ID:cAtVib90O
怒鳴った張本人は、肩を上下に動かしてぜぇぜぇと息をしていた。
 
「なっ、何だよクロエ……」
「そーだよクー! せっかくいいとこだったのにー……」
「のに、じゃない! 静かにしろノーマ、アーヴィング!」
 
硬直から回復した二人はクロエに抗議の声を上げたが、二人の口答えは彼女の再びの叱責によって一蹴されてしまった。
 
「おまえたちはさっきから……もしおまえたちの声が誰かの耳に入っていたらどうする気だ! 襲われたら私たちはひとたまりもないんだぞ?! わかっているのか?!」
(クーの声の方がよっぽどうるさいじゃんねぇ?)
(だよなぁ……)
「何か文句があるのか……?」
「「何でもありませーん……」」
 
小声でひそひそ話すロイドとノーマに怒りを煽られたのか、クロエが更に声を低くして二人を睨み付ける。
 
「大体、今はこんなことしている場合じゃないだろう! 万が一奴が追ってきたらどう責任を取るつもりだ!」
 
『奴』という言葉にロイドが「あっ」と声をあげた。
 
「何だ?」
「なぁ、訊きそびれてたんだけどさ」
 
クロエは説教も忘れて、真剣な表情になったロイドの次の言葉を待つ。
 
「クロエ、さっきの奴知ってんのか?」
 
──そういえば。
クロエははっとした。
 
「アーヴィングには奴のことを話してなかったな」
 
しかし、ノーマには二人の会話に着いていけず。
 
「ちょっとどういうことよー? クー、さっきの襲撃者知ってんの?」
「おまえも知っている奴だ、ノーマ」
 
二人の視線がクロエに集中する。
彼女の形の良い唇は、ある人物の名前を紡いだ。
 
「ワルター・デルクェス」
 
「は……ワ、ワルちん?! うそ!」
 
ノーマが自分同様に彼女独特のあだ名で襲撃者を呼んだことに苦笑しながら、ロイドはクロエに「それって誰なんだ?」と問うた。
クロエはノーマに目配せすると、言い辛そうに切り出した。
 
「ワルターは……私たちが旅をしていた頃対立していたんだ」
 
そう言って、クロエ達の仲間であるセネル・クーリッジ、シャーリィ・フェンネスとワルターの関係を簡潔に説明し、自分達とワルターは分かり合えないまま彼と戦い倒した、と結んだ。
 
「そうか……」
 
当事者のクロエやノーマは勿論、ロイドも沈痛な面持ちでそれを聞いていた。
 
「でもあたしら確かにワルちん倒したのに……どうしてここにいんのよ〜?!」
246槌と兜と 3:2008/09/12(金) 16:13:54 ID:cAtVib90O
「私にもわからない……」
 
岩場を沈黙が支配する。
聞こえるのは、薪が炎にパチパチと爆ぜる音だけだ。
 
「だーーーっ! 要するに、そいつは今クロエ達のこと殺そうとしてるってことなんだな?!」
 
突然大声を出したかと思うと、ロイドはまだ湿っている頭をぐしゃぐしゃっと掻き毟ってそうまとめた。
 
「……まー、確かにそういうことかもしんないけどさぁ……」
「アーヴィング、おまえ……」
 
結論を出したロイドに哀れみの視線を送るクロエとノーマ。
 
「な、なんだよっ! 俺が馬鹿だって言いたいのかよっ!」
「いや、何もそうは……なぁ?」
「ねぇ?」
「ぐっ……!」
 
悔しそうに顔を歪めていたロイドだが、

「……ってことは、クロエやノーマは危なくねぇか?」
 
と真顔に戻る。
 
「そーゆーことだね」
「……ああ。おまえもこの先私たちと一緒にいるとワルターに殺されてしまうかもしれないぞ」
 
改めて現実を突き付けられ──特にノーマは先程ロイドに遭遇した際の自分の無様さが思い出されて──、だがロイドに迷惑は掛けられないと暗に告げた。
だが、残念なことにその人物はとんだお人好しで。
 
「けどそれで、はいそうですか、なんて言えない。いくら剣があっても女しかいなかったらきついだろ?」
「そ、そりゃそうだけど〜」
「俺なら体力もクロエ達に比べたら断然上だしさ!」
「だが、この剣はおまえには渡せないぞ……?」
「じゃあピコピコハンマーを譲ってくれないか? それなら何とか使えそうだし」
 
そう言いながら、ロイドはいつだったかプレセアが斧の代用品として使っていたのを思い出した。
 
「それなら構わないが……」
「それに、俺だってずっとここでじっとしてるわけにはいかないしな」
 
ニカッと笑ったロイドに、ノーマはまるでおもちゃを与えられた悪戯っ子のような質の悪い笑みを浮かべて言う。
 
「確かにそれもそうだね〜。んじゃ、これからもヨロシクね、“ロイどん”♪」
「だから“ロイどん”はやめろって!」
「ノーマもアーヴィングもやめないか!」
 
再び開幕しそうになった二人の言の葉合戦をクロエが制する。
溜め息を一つ吐くと、
 
「とりあえず、彼処に見える塔へ行かないか? あの塔に着く頃には……第一回の放送が始まる」
「……だな」
「セネセネとリッちゃん、無事かな……」
「……無事に、決まっている」
 
 
先程とは一変した雰囲気の中、三人は歩き出した。
247槌と兜と 4:2008/09/12(金) 16:16:22 ID:cAtVib90O
塔に着く頃には、もう太陽は彼らの絶望を照らし出すことが使命と言わんばかりに真上からぎんぎんと照り付けていた。
 
道化師の不気味な声が響いてきたのは、まさにその直後のことだった……。
 
 
 
 
 
【ノーマ・ビアッティ 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、生乾き
所持品:ホイッスル、本人確認済み支給品1〜2個
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。死にたくない
第一行動方針:クロエ・ロイドと共に行動する。放送を聞く
第二行動方針:セネル達と合流する
現在位置:F6レムの塔入口付近
 
【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、帽子紛失、生乾き
所持品:オブシディアン、安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:ノーマ・ロイドと共に行動する。放送を聞く
第二行動方針:セネル達と合流する
第三行動方針:同志を探す
現在位置:F6レムの塔入口付近
 
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、生乾き、すけべ大魔王
所持品:本人確認済み支給品1個、エリクシール、ソーサラーリング、ピコピコハンマー
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:ノーマ・クロエと共に行動する。放送を聞く
第二行動方針:同志を探す
現在位置:F6レムの塔入口付近
 
248名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 16:18:19 ID:cAtVib90O
投下終了です。
くだらない話なのは自覚してる。
もし駄目なら供養所行きでも構いません。
249名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 17:16:29 ID:ebpPDdS3O
あまり卑下するのはよくないぜ、何故ならここに十分面白いと思った奴がいるからだ…
放送共々投下乙。
ロイドの装備が貧弱だが必殺ピコ破斬が見れるかもしれんな
250名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 17:23:36 ID:/XeZw9FrO
ジューダス様殺したらこのスレ荒らすね^^
251名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 18:05:08 ID:2rfoPzDMO
今死亡フラグたった気がした。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 20:24:39 ID:ZPzePuIT0
放送案投下乙
0時までに特に反論、意見、他の案が出なかったら、明日の0時から放送後の作品投下開始って風でいいかな?
ちょうど土日に突入するし。他パートも放送挟まないと書けないパートばかりだからちょうど良いかと。
サイグロに関してはらしくて良いと思うんだけど、個人的には。
ついでに今回だけでなく次の放送でも「サイグロのきまぐれピックアップコーナー」を恒例化させても面白そうだw
253名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 20:25:56 ID:ZPzePuIT0
あ、投下の方も乙
なんというほのぼのコンビwwロイドが遊んでる間に仲間二人死んだぞww
この三人組が好きになってきたw
254名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 20:40:34 ID:k6UwS0dfO
>>252に同意
牽制はいいが、早く先が見たいしな。
ところで放送後は丸一日あけるのか?
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 21:16:51 ID:ZPzePuIT0
放送前に暫定地図。いつもの地図氏程の技術はないのですまん。あくまで暫定版で。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1024.jpg.html

>>254
23時59分までに意見→問題なければ0時から投下開始
っていう意味で書いた。
別に一日開けなくても、今日放送が来るなんて思ってた人は少ないだろうし即投下でも問題ないと思った
256名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 21:45:39 ID:k6UwS0dfO
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1033.jpg.html
避難所から地図の人の。
257名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 21:47:27 ID:YQq4RtKL0
放送後にも、未リレーなら放送前の時間軸で投下してもいいんなら別にいいけど、
ダメなら、食卓に突っ込んだマオをクールダウンさせる話を噛まさせてくれ。

放送が予想外すぎて、今から書いてるよチクショウ。
あの引きの前後に放送なんて、間抜けすぎてマオが焼身自殺しちゃうよコンチクショウ。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 21:54:46 ID:ZPzePuIT0
>>256
地図氏乙 余計なことしてすまんかった
見やすくてありがたいですGJ
259名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 21:58:47 ID:I4S7vRSUO
別に放送後でも放送前描写挟んだ話書いていいと思うけどな。
ただし放送後描写が必須になるけど。マオが突入と同時に放送はさすがにねーよwww
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 22:10:18 ID:x/gJiQER0
>>257
おk、がんばれ!
261名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 23:58:40 ID:YQq4RtKL0
やったよ、頑張って三時間で書いたよ。
状態表を書いて、投下します。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:00:13 ID:zt8GHXfvO
投下します。
263distort one's love -鏡の向こうの家- 1:2008/09/13(土) 00:03:27 ID:yPGnEPnmO
「ね」
彼女が落ち葉を俺に見せながら呟く。
伸びた葉脈は血管の様で少し気味が悪く思えた。
俺の曇った目を彼女は覗く。
その目は矢張り、曇っていた。
「太陽って、時々眩し過ぎて嫌にならない? 影が少し恋しくなるの」
だから俺は笑ってそうですね、と応えた。
今日一番の上手い笑顔が作れて、少しだけほっとした。
笑顔を作るコツを理解出来た気がした。

彼女はそんな下らない事を考えている俺の前へ、身を翻して走り抜ける。
酷く小さく見える背中だった。
「でも、光が恋しくなる時もあるのよ。我儘よね、人間って」
彼女が振り向いて言った。
「ニーチェが言った様に昼の光の中に居ては夜の闇の深さが計れないからなのかしら。未知は好奇心を擽るわ」
その言葉を聞きながら、俺は立ち止まって空を仰いだ。
木々の隙間から漏れる綿の様な光が眩しくて仕方が無い。
俺はイレーヌさんの顔に視線を落とす。そうですね、と俺の口は発音した。

俺は、先程から奇妙な感覚に全身を包まれていた。
ぶよぶよとした薄皮に外界と遮断されている様な、妙な、けれど具体的に例えようの無い何か。
その何かが俺に纏わりついて仕方が無かった。
俺はそれを振り払う様に彼女の方を向き、休みましょうか、と問いを投げた。
彼女は弱々しい微笑みを俺に見せた。
優しいのね、と呟いて膝を曲げる彼女はとても、とても真っ赤だ。
俺はごわごわとしたグローブとグローブを擦って、彼女と対角線上に位置していた木の根元に腰を降ろす。
彼女は側に流れる川に手を入れる。
ねぇ、凄く冷たいわよ、と俺に微笑む彼女は、やっぱり素敵な程に真っ赤だった。
俺がぎごちなく微笑むと、彼女は目を細めて川に目線を戻し、水底の石を弄る。
心地良い音が俺に眠気を誘う。
ふと、彼女が水から左手を出し、髪を耳に掛けた。水面に同心円状の波紋が広がる。
彼女の髪は、よく見ると何だかよく分からない赤で少し固まっていた。
少しだけ、赤が濡れた手に滲んでいる。
もう慣れたけれど、やっぱり鉄の匂いが鼻をついて仕方が無かった。
「飲めそうですね、その水」
俺は彼女の横顔に微笑む。
彼女は俺の方を向き、如何して分かるの、と不思議そうに頭を傾けた。
「綺麗ですし、湧き水なんですよ、多分。それに周りにミツバやセリが生えてます」
綺麗な川辺にしか生えない山菜なんですよ、と言うと彼女はへぇと唸った。
「私、都会育ちでろくに自然と触れ合ってなかったから」
264distort one's love -鏡の向こうの家- 2:2008/09/13(土) 00:07:03 ID:yPGnEPnmO
彼女は両手で水を掬う。
揺れる水面に顔を近付け、ゆっくりと口付けする様子を俺は黙って見ていた。
頬が少しだけ染まった彼女の横顔は、息を飲む程に綺麗だった。
「新鮮だわ、そういう知識」
喉を潤し、彼女は三拍程空け、そう言った。
吸い込まれそうなまでに柔らかで艶っぽい唇から、俺は目を滑らせる。
いけない想像をしてしまいそうだったからだ。
横目でちらりと一瞥を投げる。彼女はこちらを見てくすりと笑っていた。
きっと、御見通しなのだろう。どうにも俺は、年上の女性には敵わない。
小悪魔の様な彼女の顔から目を離し溜息を一つ。

ふと、記憶を辿る。

……俺は、あの男、マグニスを業火で焼いた記憶が曖昧だった。
彼女に今、骸を見せるべきで無い。だから見逃す。
それがスタン・エルロンの思考で在り決断で在った事に疑いの余地は微塵も無かった。
鋭利なナイフでさえ切り崩せない固い決断だ。
けれども、男の言葉を聞いた瞬間。俺の中の何かが烈火の如く滾った。
燃え上がり過ぎた炎は、中々水では消えない。
けれども、それを範疇に入れてもあれは“異常行動”だった。
何かが、俺の中の本能とも呼べる野性的な何かが、俺の理性を飲み込もうとしているのだろうか。
そう仮定を立てた時、得も言えぬ漠然とした恐怖が、俺を束縛した。
俺が俺で無くなるなら、俺は一体誰なのだろう。
そこに存在価値は在るのか。在ると一体誰が言えるのか。
そうして思案して漸く気付くのだ。我ながら馬鹿だと思った。
“現在進行形で、スタン・エルロンという個が、少しずつ、けれども確かに切り崩されている”
俺は奥歯を軽く軋ませる。弱い圧迫感を感じたのはスタン・エルロンの脳だった。
ふと、強い視線を感じて俺ははっと我に返り彼女を見る。彼女は無表情で俺を見ていた。
漆黒の瞳は永遠の夜を、無を思わせ、俺は少しどきりとした。
彼女は、俺を見ていた。
不自然な程に、瞬きも忘却の狭間に置いてきてしまった様な顔でずっと見ていた。見ていた。見ていた。
森は寒気を覚える程にとても静かで、静寂を時折崩す揺れ踊る水の音が少しだけ救いだった。
俺が彼女の突き刺す様な目線に原因不明の激しい動悸を覚えて口を開こうとした時、それは空気を揺らした。

『……皆様、ご機嫌よう――――』

彼女が空を仰ぐ。何処からともなく聞こえるそれはあの道化師のもので。
265distort one's love -鏡の向こうの家- 3:2008/09/13(土) 00:11:02 ID:yPGnEPnmO
不安そうに俺に近寄って袖を握る彼女に、俺は大丈夫ですよ、と頭を撫でながら囁いた。

放送を聞いて先ず驚嘆した事は、マグニスと言う男が死んだ事だ。
俺の中に僅かに残った理性(そう呼べるかは甚だ疑問ではあるが、他に形容出来兼ねるのでこう記す)は、あの男、マグニスを殺す事を拒んだ。
あの少年に“何か”を見た俺は、けれどもそうして少年に、アレを委ねた。

結果は、男の死。俺はとても残念に思えた。
彼に見た一抹の光は、間違いだったのだろうか。
今度会えば彼は如何なる反応を示すだろう。俺を殺すだろうか。
「真逆、感謝されたりしてな」
俺は自嘲気味に呟く。水辺の花を弄る彼女は俺を不思議そうに見た。
何でもないですよ、と俺が呟くと、彼女はそう、と返して透き通る水に手を沈めた。

ふと、彼女が水面を見たまま俺の名前を呼ぶ。
何ですか、と俺が呟くと彼女は一拍置いて口を開いた。

「スタン君は、私の為に死んでくれるかしら」

吹き抜けた冷たい風が甘い匂いを俺へ運ぶ。
はっきりと分かった。俺は、言葉を俺に盗まれていた。
母音も、子音も、全て。
ありとあらゆる音を発する行為を、俺の声帯は尽く拒否していた。
唯々少し荒い呼吸だけが、虚しく虚空に吸い込まれて行く。
空気が鉄の様に硬化し、氷の様に冷たくなっていた。
水のせせらぎが、酷く耳に障る。
彼女は、その間ずっと俺を見ていただけだった。
訴える様でもあり求める様な、しかし何処か優しい目線は、俺の肉を、臓物を深く深く抉る。
彼女はゆっくりと瞼を閉じた。そして木の根元に座る俺に近付く。
彼女は俺の首筋に指を這わせ、甘い吐息を何処かに吹き掛けた。
目の前の恍惚の女性の熱が肌から伝わる。
俺は不思議とそれを冷静に見る事が出来た。
「ね」
ふと、彼女が俺の頬を愛撫しながらそう呟く。
ふわりと彼女の髪が泳いだ。唇に塗られた水々しい紅が俺の目を盗む。
それは麻薬の様に、俺の心を魅了して。
頬に覚える暖かで絹の様にさらりとした感触が、何故か残酷だった。
266名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:11:39 ID:Ywkqj+1AO
支援
267distort one's love -鏡の向こうの家- 4:2008/09/13(土) 00:12:43 ID:yPGnEPnmO
確かに、彼女は此所に居るのに。隣でずっと向こうを見ているのに。
俺はきっと、まだノイシュタットの桜を見ている。
その差異は足掻いても埋めようが無い様に思えて、俺は息を飲んだ。
そして彼女は矢張り全てを見据えた様に優しく、残酷に微笑み。
そしてゆっくりと口を開くのだ。
「そういうものなのよ、きっと」
雪の様に柔らかで儚い微笑みは、そうして俺の弱い所に深く溶け込んだ。

俺はスタン・エルロンを呪った。
あと少しでそれに届かなくて、とても歯痒いからだ。
狂おしい程に醜い何かは、まだ隅に、確かに在る。
それでも彼女を欲する自分は、如何しようも無い程にスタン・エルロンだ。
同様に彼女が欲する自分も、矢張りスタン・エルロン。
俺は一種の自殺衝動に駆られた。
いっそ死んでしまえば、無駄な人間味のある思考なんて無くなるのに、と。
そこに存在する確かな矛盾。
俺は俺を失う事が怖いのに、俺は俺を殺そうとしている。
一義的なものを見失ってしまうのは、きっと時間の問題だった。
恐らく、スタンで居る事に疲れたのだろう。
俺は苛々した。ぶよぶよとした紅い薄皮は、未だに身体を離れない。

首を後ろに30cm程下げて、空を仰いだ。白くて、鋭くて、目が眩む。夜が少しだけ恋しく感じた。
ふと隣の彼女に目線を落とすと、酷く悲しそうな微笑みを上手く造って俺を見ていた。

俺も、試したけれど。
上手く造れなくて彼女は単なる悲しそうな表情を俺に返す。

そんなスタン・エルロンは早く死ねばいいのに。

そう、思った。


268distort one's love -鏡の向こうの家- 5:2008/09/13(土) 00:14:55 ID:yPGnEPnmO
【イレーヌ・レンブラント 生存確認】
状態:精神不安定 頬に傷 魔剣の声が聞こえる エクスフィア装備
所持品:魔槍ブラッドペイン スターダストリング 要の紋付きエクスフィア
    マグニスのサック(内容不明支給品一個)
基本行動方針:スタンと共に答えを探す
第一行動方針:暫く休む。休んだら南下
第二行動方針:魔剣の指示を遂行するか考える
現在位置:D6西

【スタン・エルロン 生存確認】
状態:現実への絶望 精神不安定 理想崩壊 エクスフィア装備 ルークに妙な感情
   精神へ僅かにイグニスの影響
所持品:魔剣ネビリム 要の紋付きエクスフィア ネクロノミコン センチュリオン・イグニス
    アンチフォンスロット ヒールバングル サファイア
基本行動方針:イレーヌを最後まで守る。イレーヌを許容しない世界を許さない
第一行動方針:暫く休む。休んだら南下
第二行動方針:障害は斬る
現在位置:D6西
269名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:16:13 ID:yPGnEPnmO
投下終了です。
270名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:16:30 ID:vxcU66cW0
乙。
ちょっとだけ目こぼし頼みながら投下。
271いらっしゃいませ こんにちは 1:2008/09/13(土) 00:17:22 ID:vxcU66cW0
「……はい、少し調子に乗ってました」
「……ゴメンナサイ」
ここはモリスンの家。フローリングに正座させられている二人の少年が居た。
マオとカイウス。二人とも、髪飾りの真っ赤なトマトスライスが良く似合っている。
「もうっ、折角の私の料理が台無しじゃないですか、ホラっ」
膨れっ面のチェルシーが指し示したテーブルは、見るも無残な廃墟と化している。
なお、トマトの臭いに悪戦苦闘しながらも、クラトスが布巾で綺麗にしていることも付け加えておく。
「……ごめんなさい」二人とも、ただただ頭を下げるばかりであった。

なぜ、現在の状態になってしまったのか?
少しばかり時間を戻して、確認してみよう。


クラトスは金のフォークをガタガタと震わせていた。
トマト嫌いというのは、まずスライストマトから放たれる臭いによって、食う前からダメージを受けるのである。
顔面蒼白した男は、思わず可愛い料理人のほうを見た。少女は、口にする瞬間を今か今かと待っている。
見つめたガールの期待に、流石のクラトスは応えざるを得ない。かつてない絶体絶命の窮地は、平和な食卓にこそあった。

マオは、既に本能が出す命令に従うのみの存在と化していた。
無音歩行で、キッチンの方向へと直行する少年。壁に張り付き、サッと顔を覗かせる。
少年の目には、まさに今、一人の漢によって食されようとしている馳走が映った。
もはや躊躇のヒマは微塵もなし。マオの足が撥ね、食卓への突撃が敢行された。

そして、これ以外にも……なんとも恐ろしいダークホースが居たのだ。
第三の男、カイウス・クオールズ。彼は腹が減っていた。
フォッグのような底知らぬ体力を持たない彼は、長時間の行軍によってすっかり腹ペコになっていた。
休みながら走るという、何とも無茶な移動をしたせいで時間と体力ばかりが消費されてしまい、
もはや自分の命運もここまでかと思い、走馬灯のように彼の脳裏を、過去の幸せな光景がよぎった。
養父と共にルビアの家族とささやかな晩餐会をした時の記憶が思い出されたその時。
……料理の匂いがした。自分が向かう、あの洋館のほうから。
カイウスの意識は、そこで途切れた。そして……彼の中の獣が目覚めた。
272いらっしゃいませ こんにちは 2:2008/09/13(土) 00:18:24 ID:vxcU66cW0

リビングのガラスを破って颯爽と現れた存在は、まさに獣と形容するしかなかった。
狼のような容姿だが、骨格は二足で歩行する人間のそれだ。それは獣人――ガジュマのようであった。
が、マオがそれに気がつくのはもう少し後の話である。ヒトの少年も、精神は獣のように猛っていたのだから。
そして、トマトの臭気にノックアウト寸前だったクラトスは、突然の二人の来訪者に全く気づくことはなかった。

獣人の少年も、ヒトの少年も、狙うものは同じだ。狙うは、チェルシーの作った美味しそうなブランチ。
「うぉおおおおおーーーーーッッッッ!!」マオは暴走している。
「がうがうがーーーーーーーッッッッ!!」カイウスはイグナイト状態になっている。
もはや、誰もこの二人を止められないかと思ったその瞬間。

「ターンオーバー!!(意訳:そこまでですぅ!!)」

チェルシー・トーンは、エイミングステップの歩法を駆使し、フライパンで両者の頭を一発ずつ叩いた。
「フギャ」「がうっ」と、短い悲鳴を上げて、二人は体勢を崩し……そして――

ガッシャーーーーンッッッ!!!!!!!

全ては終わった。
マオの暴走も止まった。
カイウスの獣人化も終わった。


唯一の救いは、破局の際に飛び散ったトマトの残骸をクラトスは驚くほどの俊敏さで回避したことだろう。
また、この哀しき死闘の間に、エルレインとフォッグが何故か意気投合してしまったことも補足しておこう。
フォッグの純粋さを一目で理解したエルレインと、来るもの拒まずのフォッグが仲良くなるのは、むべなるかな。
後から普通に玄関を潜って入ってきた彼らには、説教を受ける少年二人を、ただ見守るしか出来なかった。
273いらっしゃいませ こんにちは 3:2008/09/13(土) 00:19:56 ID:vxcU66cW0

「……チェルシー」自主的に掃除夫となったクラトスが、頬を膨らましているチェルシーに声をかける。
振り向いた少女は、綺麗になった食卓を見て笑顔に変わった。
「わぁ……有難う御座います、クラトスさんっ」
場が一瞬だけ和んだが、少年二人に向き直った瞬間、空気がまた変わりそうになる。
しかし、少しばかり怒ってはいるものの、チェルシーの小さな身体から立ち上っていた怒気は無くなっていた。
「……反省、しました?」少女の言葉に、正座の二人はコクコクと頷く。
ここで機嫌を損ねてはいけない。同じ境遇の二人は、面白いほど同じことを考えていた。
「それじゃあ……御風呂場で汚れを何とかしてきてください。それから改めて、御飯に致しましょうっ」
チェルシーは、トマト塗れの二人の顔を見て、笑いながら言った。
二人も、お互いの酷いトマト顔を見ながら、笑い合った。

風呂場に行った少年二人と、改めて食事を作り始めた少女。食卓に残されたのは、三人の大人。
「……フォッグに、エルレイン……か」掃除夫の衣装を脱ぎ捨てたクラトスは対面の二人を見る。
珍しく張り詰めた表情のエルレインと、相変わらず豪快な空気と共にあるフォッグ。
「おう。よろしくな、クラトス」豪快な大男は、既に全員が仲間になった気でいる。
「よろしくおねがいします、クラトスさん」エルレインは、目の前の剣士をやや警戒していた。
それはクラトスの、牽制の意味を持った表面的な警戒の合わせ鏡のようであった。
「…………」無言のクラトス。大男は不思議そうな顔を浮かべており、女性は張り詰めた表情を崩さない。
クラトスは思わず自嘲しそうになった。チェルシーは料理をメチャクチャに(クラトスからすれば命拾いしたが)されて、
それでも仲良くなり始めているというのに、自分たちは歩み寄る姿勢すら、見出せる気がしない。
バトルロワイアルでは、チェルシーたちのほうが圧倒的少数派なのだろうが、それでも情けないことだと己を恥じる。
チェルシーの頑張りに期待するしかないのかと、クラトスが諦めようとしたとき、フォッグが立ち上がった。
「どうした? 辛気臭い顔して、そんなんじゃ旨いメシがアレだぞ、アレ」
何の警戒もなく、クラトスの側に行って、豪快に笑い飛ばしながらバンバンとクラトスの背中を叩いた。
「ガッハッハ! どうだ、アレだろ?」笑いかけるフォッグ。エルレインも、優しげに笑みを浮かべていた。
何を言ってるのかは全く理解出来なかったが、これが彼なりの励まし方だということは、クラトスにも理解出来た。
随分と長いこと生きてきたつもりだったが、ここまで豪放に人と接する人間を、彼は知らなかった。
苦笑いをしながら、クラトスはフォッグに仕返しをするかのように、背中を叩き返した。
274いらっしゃいませ こんにちは 4:2008/09/13(土) 00:20:48 ID:vxcU66cW0

風呂場のシャワーからは、気持ちのいい冷水が飛び出てきた。
ひゃあっ、と思わず飛びのくマオ。すかさずシャワーを手に取るカイウス。
ベトベトの服を着たままの二人は、恐ろしいことにシャワーと洗濯を一緒にするという暴挙に出ていた。
カイウスはシャワーをマオに向ける。いたずら少年の顔で、思いっきりマオに冷水を噴きつける。
「うわッ!! やったなァーーーっ!」
マオは桶で風呂釜の冷水を掬い、次々とカイウスに浴びせかける。

二人とも、バクショウダケを食ってもいないのに笑いが止まらなかった。
マオにも、そしてカイウスにも、年の近い同性の友人というのは今まで居なかった。
こんな場所で、二人は初めて、思いっきり遊び合うような友人を作ることが出来たのだ。

「これでも喰らえっ スプレッド!!」
「まだまだっ スプラッシャー!!」

仲間の技を言い合いながら、何とも微笑ましい水浴びをする二人。
しかし、これも少年のサガというのもだろうか、それは徐々に白熱していく。

「オレは負けないっ! ディバインレーザー!!」
「ボクも負けないヨっ! アクエリアススフィア!!」

より高度な技名を言い合う二人。
しかし白熱しすぎたのか、もはや狙いも覚束ない。風呂場は水の大戦場と化していた。
そのせいで――

「……マオ。タオルを」

不意に入ってきたエルレインは、アクエリアススフィアの洗礼を受け、びしょ濡れになってしまった。
275いらっしゃいませ こんにちは 5:2008/09/13(土) 00:21:40 ID:vxcU66cW0

「ごめんね、エルレイン」
マオは、ほんの少しだけ申し訳なさそうに謝る。
エルレインは、優しく微笑んでそれを許した。子供らしく遊んだ結果なのだから、許す事柄すらも無いのだろう。
「でもどうするんだ? オレたちは少しぐらい濡れてても平気だけど、エルレインさんは」
心配そうに言うカイウス。マオほど彼女のことを知らない彼は、マオよりも責任を感じてるように見える。
「平気だヨ。ボクのフォルスがあるからね」
だが、マオは平然と言い放つ。そして、汚れも落ちたカイウスと濡れたエルレインを、自分の側に近寄らせる。
「ちょーっとアツいかもしれないけど、少しだけ我慢してネ。チチンプイプイ☆」
炎のフォルス。そのちょっとした応用。
衣服を着たまま、炎のフォルスの熱で一気に乾燥させる。相手は乾燥機に入ったようになる。

「あつッ、アツッ。焦げる焦げる!」
この食事時にカイウスがこんがり焦げたら、少しばかり洒落にならない。マオは炎を消した。
先ほどまでの湿り気は、全て取れていた。トマト汚れも落ち、綺麗さっぱりとしている。
「乾燥だけならこんなモンかな。いつかアイロン掛けも出来るようになってみせるヨ」
ビシッとグーサインを決めるマオ。カイウスは、レイモーンの丸焼きにならずに済んでホッとため息をついた。


チェルシーの料理は、佳境に入ろうとしていた。
相変わらずトマトだけはあるが、流石に同じ料理は出せない。
人数が増えたから、クラトス一人に作ったときのように、一品に手は凝れないのだ。
「と、いうことで。メインはパスタ。サラダはポテトサラダにしましょう」
6人前のパスタと、ジャガイモを茹でる。手馴れた所作で、料理が進んでいく。
(ウッドロウさま。チェルシーは乙女なれど、三日会わざる間に刮目して見るほどに精進しておりますっ)
かつてウッドロウに初めて手料理を振舞った日から、チェルシーは鍛錬の欠かすことなきを心中で誓った。
――同時に、祖父の慈愛というものと、それが常にチェルシーのためになるとは限らない事を学んだのだが。
その結果が、今の家庭的なチェルシーを生んでいるのだ。天才でこそないが、一般的には十分ハイレベルである。
しかし、そのハイレベルさゆえに、パスタソースを作るときに新たな選択肢が生まれた。
(……リリスさんから伝え聞いた究極のパスタ。今が試すときっ!)
味マスターと称された、スタン・エルロンの妹君から教わったパスタ。今ならそれを作る技術がある。
「紫電流秘包丁奥義(見よう見まね)! 虚空蒼破斬!!」
アクアヴェイルで見た至高の包丁一刀流を用いて、チェルシーは作る。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:22:31 ID:POgiUFBc0
投下乙
スタンが女々しさと狂気を行き来する危うい青年剣士になっているな。
話は変わるがエルレインの救済対象ってガジュマも含むのかな?
277いらっしゃいませ こんにちは 6:2008/09/13(土) 00:22:45 ID:vxcU66cW0

「こ……これは!」食卓についたクラトスは驚愕した。
確かに、最大の危機は脱したはず。それなのに目の前に再び現れた代物は。
「流石クラトスさんですっ。これぞ究極の料理のひとつ、懐かしのペスカトーレ!!」
ついに、チェルシーは味マスターを目指すだけの資格を得た。
それはまさに究極のパスタ料理、懐かしのペスカトーレ。味はビストロシャンバールのお墨付き。
ふゆトマトこそ無いが、リリス仕込みの素朴な味わいは『懐かしの』の冠をつけるに相応しい。
このペスカトーレは、実にトマトがふんだんに使われているのである。なおクラトスはソースの色で悟った。
「これは旨えぞ。まるでファラのアレだな」
豪快にパスタを掻っ込みながら、フォッグが褒める。
「こっちのサラダも、メチャクチャ美味しい!」
カイウスも、カラフルな赤色サラダを食べながら褒める。
「ふふっ、そのサラダはボクが一味加えたからね。名づけてカラフルサラダ!」
褒められて得意げに語るマオ。もちろんクラトスの表情など気がついてもいない。
ポテトサラダにトマトを加えると、見ためも鮮やかなカラフルサラダになる。全く余計な一味もあったものだ。

クラトスに、もはや逃げ道は無いかに見えた。
敵は4人もエンカウントリンクして総勢5人。自分ひとりだけが食わないわけにはいかない。
そしていよいよ、最後通牒の一言が届いた。
「……どうしたんですか? さっきから一口も食べてないみたいですけど?」
カイウスの何気ない一言で、全員の食が止まる。いよいよもって、クラトスの命運は尽きた。
だが、クラトスはまだ死んでは居なかった!!
「ホントだ。どうしたの、エルレイン?」
278いらっしゃいませ こんにちは 7:2008/09/13(土) 00:23:49 ID:vxcU66cW0

エルレイン!? クラトスが彼女を見ると、確かにフォークすら握っていない。
「……私は、食事をしたことがありません。私にとって食事は、必要がない行為なのです」
事態は更に風雲急を告げる。
「私は人間ではありません。ゆえに、人間が行う食事は、可能ですが必要ではないのです」
静かにエルレインは語る。みんな、それを黙って聞いていた。
半日近く行動を共にしていたマオですら、それは気がついていなかった。
確かにマオはちょくちょくサック内の食料をつまみ食いしていたが、エルレインは水一滴飲んでいなかった。
エルレインの突然の告白によって、場が沈みかけたそのとき。
「おう、そうなのか? でもまあ食え。旨いぞ」
全てを解決したのは、フォッグの豪快な一言だった。

「そうだ。食べられるんだったら、一緒に食べようヨ!」
「そうですよ。エルレインさんもどうですか?」
「味は、このチェルシー・トーンが保証致しますっ!」

口々に、少年少女が彼女に食事を促した。
それを受けて、エルレインは――恐らく生まれてから初めて、食物を口にした。
「…………おいしい」それは、着飾ることの無い一言。
エルレインは、このとき初めて心から笑みを浮かべた。
279いらっしゃいませ こんにちは 8:2008/09/13(土) 00:24:53 ID:vxcU66cW0

そして、エルレインが初めての食事を行っていた最中。
クラトスはまさに起死回生の一手に気がつかされていたのだ。
天使化。
エクスフィアの力によって無機生命化することで、味覚と嗅覚を遮断する。
これで表面上は、何事もなく食事をしているように見えるはずだ。
エルレインのことなど露も知らず、嬉々として味覚遮断をして、ペスカトーレを食う。
ゴムのような触感だけが口中に広がるが、トマトの味をマトモに喰らうよりはマシだ。
堪えるように、食べ続けた。

そしてしばらくの後、安心しきったクラトスに情け容赦のない言葉が襲い掛かることとなる。
「クラトスさんどうですか? 《お味》のほうは?」


チェルシーの納得する、詳細な味の評価の捏造に、クラトスは苦心することとなった。



【クラトス・アウリオン 生存確認】
状態:HP100% TP100% 精神的な疲労
所持品:マジカルポット バスケット(中:ストロベリークレープ リンゴ) フォーク 模造刀
基本行動方針:仲間達に会う。争いを極力避けつつゲームを止める
第一行動方針:チェルシーには悪いことをしてしまった。
現在位置:A-4モリスン邸(現代)

【チェルシー・トーン 生存確認】
状態:HP100% TP100% ご機嫌
所持品:包丁 レッドランタン 手作りの弓 手作りの矢×30 チェスターの矢
基本行動方針:仲間に会う・ウッドロウ様を守る
第一行動方針:これで全て解決、一件落着です
現在位置:A-4モリスン邸(現代)
280名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:26:24 ID:hBczBBNPO
支援
281いらっしゃいませ こんにちは 9@代理投下:2008/09/13(土) 00:29:46 ID:tbvv54PK0
【カイウス・クオールズ 生存確認】
状態:HP100% TP90%
所持品:サック一式(ランタンなし)、スタンドファーム、マゴノテ
基本行動方針:サイグローグを倒す。
第一行動方針:料理が超旨かった。大満足。
第二行動方針:ルビアを探したい。
現在位置:A-4モリスン邸(現代)

【フォッグ 生存確認】
状態:HP100% TP100%
所持品:聖杖ユニコーンホーン、パナシーアボトル、メガグランチャー
基本行動方針:リッドの仇を取る。
第一行動方針:おう、アレはどっかで食った気がしたな
第二行動方針:キールやチャットが心配。
現在位置:A-4モリスン邸(現代)

【マオ 生存確認】
状態:HP100% TP95% エルレインを僅かに警戒しながらも信頼
所持品:忍刀・東風 エクスカリバー ファルステヴェルン 拾ったピクルスストーン
基本行動方針:ヴェイグたちと合流してサイグローグと戦う
第一行動方針:ボクはお腹一杯だよ
第二行動方針:仲間になりそうな人を探す
第三行動方針:カイル・デュナミスが気になる
現在位置:A-4モリスン邸(現代)

【エルレイン 生存確認】
状態:HP100% TP100% 少しばかりの安寧
所持品:???
基本行動方針:カイル・デュナミスの死
第一行動方針:カイルとその仲間達の抹殺
第ニ行動方針:罪無き弱きヒトを幸福へと導く
現在位置:A-4モリスン邸(現代)
282名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:33:30 ID:hBczBBNPO
投下終了かな?乙です。
まさかエルレインさまに萌える日が来るとは…!
283名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:35:28 ID:Ywkqj+1AO
投下乙です!
イグニスが本領になりつつあるな。ドキドキしてきた。

ちびっこたちも大人組も平和すぎる。
あとが怖いです、マジで。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:38:02 ID:tbvv54PK0
投下乙です。代理投下した者だけど、終了宣言忘れた…ごめん
スタンイレーヌは南下か…下手したらディムロスと再会か?
イレーヌさんに背徳的なエロさを感じたぜ
そしてクラトスはなんという天使化の無駄遣いwww
少年組&エルレインさまがえらく可愛いなぁ
285名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:39:48 ID:XkCK1c0L0
投下乙です。
スタン組がいろんな意味で怖い・・・(ガクブル)
それにしてもクラトス必死すぐるwww
286名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 00:54:38 ID:8bMxGwjqO
クラトスが完全にネタ要員でふいた。そしてエルレイン様が可愛い
一見平和な大所帯だし、エルレイン様さえなんとかすれば対主催の要になれるか…?

スタンの精神が良い感じにぐちゃぐちゃだな
ルーティ頑張れ、超頑張れ
287名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 02:05:55 ID:aM+GIwxqO
そーいやコアって徐々に人格狂わすんだったっけ
288名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 02:10:47 ID:J4DcRQZCO
ん?コアになっちゃったら大丈夫なんじゃなかったっけ?
あー既に記憶が曖昧だな……
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 02:14:00 ID:MBnVkl/MO
コアの状態だと力が制御できないから危険、だった気がする
290名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 02:45:05 ID:J4DcRQZCO
今ちょっとwiki見てきたらあの蕾みたいなやつがコアで孵化させた玉?みたいなやつはコアじゃないんだな
あの玉がセンチュリオンそのものなのか
どっちもコアだと思ってた
教えてくれてありがとう
291名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 09:32:24 ID:Ywkqj+1AO
でもラタトスクだけはオレンジの玉がコアみたいだよな、作中描写だと。


コアで思い出したが、現状マルタはコアへの耐久力あるんだろうか?
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 09:49:51 ID:D2Xo2aCM0
ないんじゃないか?
ラタトスクの加護があるから影響が無かったみたいだし
現状のマルタにはラタトスクコアが張り付いてない
293名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 10:00:05 ID:yPGnEPnmO
でも確か実際はマルタがラタトスクの騎士だったんですよね。なら加護もあるんじゃ…
294名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 10:32:30 ID:vSTEL/gWO
『ラタトスクの騎士』ということになってたのはエミルだよな。
そもそもラタトスクの騎士という設定自体が、コア孵化によるラタトスクの力の復活をカモフラージュするものじゃなかったか?
295名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 11:08:39 ID:2WE2A31zO
特に言及はなかったから、その時の書き手次第でいいと思うんだけど
加護がある理由もない理由もどうとでもこじつけられるし
296名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:01:42 ID:U140p9Bp0
流れ断ち切ってみる。
ギートの登場はありだろうか?
戦闘力ありそうだし、センサーにもなるっちゃあなるし。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:21:10 ID:Ywkqj+1AO
書き手次第か。確かにな。
ないなら無いで手を出すとは思えないし、どちらでもいいんじゃね?

>>269
出せる隙間あるか?
298名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:38:09 ID:wZXG1PuWO
投下します。
クソ長いので支援お願いします。
299灰色:2008/09/13(土) 12:40:36 ID:wZXG1PuWO
その名が呼ばれなかった事にあからさまに安堵を見せた青年が、名指しで呼ばれたとたん戸惑い、そしてそれを聞いて手にしていたフライパンとおたまを取り落とした。
金属がぶつかる甲高い音が笑みを含んだ道化師の声に重なる。
「あーあ、死んじゃったんだ。クレアちゃん」
残念だなぁ、と呟き(本心だ。是非とも自分自身の手であの聖女然とした顔をどす黒い感情で染めてやりたかった)目の前の青年が動こうとしないのを見て取って、ゆったりと忍ばせていた筆記用具を取り出した。
わざわざ青年に背を向けて、禁止エリアとその他の死者を控える。
「ヴェイグ、どうしたんだい?ほら、見てのとおり僕は隙だらけだよ。そこに転がってるオトモダチの仇を取らなくて良いのかい?」
指先で、ペンを優雅に回転させながらヴェイグに向き直り、軽く両腕を開いた。
しかし青年は、放送も、己すらも目に入らないとでもいうように放心している。可笑しい姿ではあるが、少々物足りない。
マリオネットで遊ぶ時に一番楽しいのは、それを壊す時なのだから。他人の手に繰り糸を奪われ、一番のクライマックスをこうもあっさり演じられては立つ瀬がない。
「それにホラ。優勝すればクレアちゃん、生き返らせる事もできるじゃないか」
左手に掴んだ大剣の柄を差し出す。ペンでも貸すように何気なく。
「使うかい?」
折角の心遣いにも反応を示さないヴェイグに、サレは不愉快を顔に刻む。
ならば、と右手で一度鞘に収めた細身の剣を抜き、わざと空気を切る音を鳴らし青年の首に突きつける。銀髪が微かに揺れる。
「それとも「それでも殺し合いなんて許せない」かい?だったら早く続きをやろうよ」
左手には黒い道、右手には白い道。サレはプレゼントの包みを開ける時の様に胸を高鳴らせて青年が選択するのを待っていた。

血の気を失った青年の唇が微かに動く。
返答を、目を輝かせて待つサレをよそに、ヴェイグは突きつけられた刃をゆっくりと握りしめた。
300名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:42:08 ID:U140p9Bp0
支援。
301名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:42:28 ID:D2Xo2aCM0
支援
302灰色:2008/09/13(土) 12:47:04 ID:wZXG1PuWO
+++++++++


『.....皆様、ご機嫌よう.....』
割れた男の声に、ロニ・デュナミスは非常に不愉快な覚醒を強いられた。
重い頭を二、三度振り、ようやくこれが定時放送なのだと気付く。慌ててザックから名簿と地図を取り出し、読み上げられる禁止エリアと死者の名を控える。
「ひどいな.......」
知った名前こそ(残念ながらそれはエルレインやバルバトス。ミクトランも含む)無かったが、既に十名もの参加者が命を落としている。
この次の放送では彼の仲間や、スタン達の名が呼ばれる可能性も皆無ではないのだ。
「何とかしねぇと、やばいよな.......」
カイル達を見つけ出してから、全てはそれから考えるつもりだった。
何しろ自分達は神をも倒したパーティーであるし、その内の一人は凡人には理解できないほどの明晰な頭脳を持っているのだ。
自分が合流する頃にはハロルドがあっさりと首輪を解除している。そんな願望を抱きさえしていた。
だが、あどけない少女が自分を刺した事実。そして見知らぬとは言え十名の死者の羅列が、悠長に構えている暇が無い事をはっきりとロニに語りかけていた。
「だーーーー!どうしろって言うんだよ」
苛立ちが頂点に達して頭髪を掻き毟る。
部屋の片隅で何かが外れる音と、そして「みゅっ!」と言う奇妙な鳴き声がしたのはその時だった。



+++++++++



今、何て言った?


プレセア・コンバティール、マグニス、リッド.ハーシェル。違う。
イオン、間に合わなかったのか。リカルド、俺には何も出来なかった。ユージーン、あんたが死ぬなんて。けれど違う。
禁止エリア、B1、C3。そんな事はどうでもいい


クレア・ベネット


クレア・ベネット?


クレアが死んだ?


303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:50:04 ID:wN6y09XvO
支援
304名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:50:49 ID:U140p9Bp0
支援
305名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:51:20 ID:hBczBBNPO
支援って言ってるだろ、こんちくしょうがー!
306灰色:2008/09/13(土) 12:52:24 ID:wZXG1PuWO
嘘だ。
反射的に否定する。しかし理性がそれを更に否定する。
傍らに倒れているリカルドの名も呼ばれていた。なんらかの方法で参加者の生死を確認しているのは間違いない。


クレアが死んだ。


殺された。


誰に?
知ってどうする。仇を取るのか?
そんなのは駄目だと善人面をした自分が囁く。


ならばいっそゲームに乗るか?
最後の一人になれば、クレアを蘇らせる事が出来るのだろう?
サレが目の前に居るのだから、あの道化師はその力を持っているはずだと、顔の見えない知らない(筈の)自分が囁く。


五月蝿い、


サレが嫌らしい笑みを顔に貼り付けて何か喋っている。
実に嬉しそうで、衝動的にその顔と胴体を泣き別れさせてやりたくなる。
そこでまた理性が嫌味ったらしく囁くのだ。
お前の持っているそんな玩具では無理だと。
だからこそリカルドは、盾であるはずの自分の前に立ち、倒れたのだと。


五月蝿い黙れ


目の前に使い慣れた愛剣の柄が差し出される。
取ってはいけない。その道はクレアを悲しませる。


サレのもう片方の手が、細剣を自分の首筋に突きつける。
クレアを諦めるのか?彼女を助ける手段を捨てるのか!?


五月蝿い!


+++++++++


307灰色:2008/09/13(土) 12:54:30 ID:wZXG1PuWO
一瞬、罠かと迷ったが、結局耳(?)の長い奇妙な生物を追って隠し通路を抜けたロニの目に映ったのは、血塗れになって事切れている少年と、箒に縋って立とうとしているこれまた血塗れの少年だった。
「大丈夫か!?」
またも迷ったが、結局面倒見の良さが骨の髄に染み込んでいるらしい。少年に駆け寄り、声をかける。しかし、殺気だった表情で睨まれた上に、どうやら武器らしいとうもろこしを突きつけられ、ロニは再び己の認識の甘さを後悔する事になった。
「........。悪い、殺し合いに乗ってる訳じゃ無さそうだな」
反射的に諸手を上げると、少年はばつが悪そうな表情になり、すぐにとうもろこしを下ろした。
「おいっ、本当に大丈夫かアンタ...」
そのまま崩れ落ちた少年は、それでも再び箒を手にして立ち上がろうとする。
「まだ.....ウッドロウとヴェイグが、戦ってる筈なんだ....」
「ウッドロウさんが!?」
見知らぬ少年が知っている名を呼んだ事に、思わず声をあげた。
「知ってるのか?」
「ああ、まぁ多分一方的に」
名簿にあった四英雄の姿が、何故か神の目の騒乱当時のものだったため、ロニの返答は歯切れの悪い物になる。
「細かい事は後だ!行くぞ」
訝しむ少年に強引に肩を貸し、ロニは移動を始めた。
畜生、俺の肩は美女専用なのに......。と、改めてこのゲームを恨めしく思いながら。


+++++++++


放送に一度足を止め、踊り場に駆けつけたウッドロウは、ヴェイグが刃を突きつけられているのを目にし、慌ててねぎに矢をつがえた。
しかし、彼が狙いを定め、それを引き絞るよりも早く、サレが奇声を上げて飛び退る。
(気付かれたか!?)
一瞬焦りが浮かぶが、違う。サレは目をぎらつかせ、ヴェイグに視線を向けたままだ。
そのヴェイグの顔はその銀髪で隠れて、見えなかった。放送に衝撃を受けて落としたのだろう。武器であるはずのフライパンとおたまは傍らに転がっている。
そして、青白く発光し、血を滴らせている彼の手の平に握られている刃は・・・・。
308灰色:2008/09/13(土) 12:58:04 ID:wZXG1PuWO
本来ウッドロウの手にあるべき剣は、薄く氷に覆われていた。柄にはサレの手袋が張り付いたままだ。そして、うめき声を上げているサレの右手にはあるべき皮膚が無い。
凍りついた所を無理引き離したのだろう、剣を握った形のままの手の平は皮が剥がれて赤く染まり、しかし血は滴っていなかった。
ウッドロウは心中で呻いた。サレの手首から先、いや、肘を曲げない所を見ると右腕全体。血液から何から何までが、完全に凍結しているのだ。
ヴェイグは氷使いだと言っていた。だか、生きている人間の身体を完全に凍らせるような、そんな事が出来るのだろうか。
(愚問だ。現に奴の腕は完全に凍っている。だがヴェイグ君はそこまで出来るとは一言も言っていなかった。隠していた?いや、クレアさんの死で箍が外れたのか)
ウッドロウの足元にも、冷気が押し寄せている。ヴェイグがまとう燐光は、もはや彼の全身に及ぼうとしていた。
「悲しいんだぁ、ヴェイグ。クレアちゃんが死んじゃって」
脂汗を浮かべながらも、なおサレはその顔を笑みの形に歪めて吐き捨てた。
「あぁんなに良い子でも殺されちゃう。ヒトなんてそんな愚かなものなんだよ。ねぇ、クレアちゃん。どんな気持ちだったのかなぁ。あの子らしく、綺麗に死んだのかな?それとも、恨みに塗れてたのかなぁ!!」
サレの戯言は、少女を直接には知らないウッドロウの耳にも聞くに堪えないものとして届いた。限界まで引き絞ったままの弦を放せば、少なくとも男を黙らせる事は出来るだろう。
しかし何か、正確には黙したままのヴェイグから放たれる、鬼気とでも呼んだ方が相応しい冷たさが、ウッドロウを圧倒して、それを許さないでいた。
「ねぇ、ヴェイグ。どんな気分なんだい?こんな所に居るって事はクレアちゃんに会えなかったんだろう?守れなかったんだろう!?」
銀髪の青年の内側で爆発するのを待っている「何か」に気付かぬように(或は煽るように?)サレは一歩、二歩と青年に近寄る。
止めろ。そう叫びたかったが、喉がひり付いていて声が出せない。
サレが、また一歩。そこがヴェイグの間合いなのだろう距離まで近づく。唇が歪な三日月のようだ。
ヴェイグが、何か呟く。
309名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:58:15 ID:QvB1pSG00
支援連脚!
310灰色:2008/09/13(土) 12:59:25 ID:wZXG1PuWO
「ウッドロウ!」
「ウッドロウさん!?」
弾ける!と思った瞬間。背後に二つの気配が現れた。
ようやくこちらに気付いたのか、サレが再びバックステップを取りヴェイグから距離を開ける。
弓弦を離し、追撃する。不利と見て取ったのだろう。大剣のみ抱えてサレは身を翻した。
「逃がすか!」
客間で眠っていたはずの青年が、それを追う。そして、彼に肩を借りていたスパーダは悲鳴じみた声をあげ、崩れ落ちた。
「リカルド!!」
背中から夥しい出血を見せ、ヴェイグの側に倒れている男から応えが帰ってくるはずは無い。嘆くスパーダの声を背中に受け、ウッドロウはゆっくりとヴェイグに近づいた。手にしたねぎに、新しい矢をつがえて注意深く。
サレの腕と、イクティノスを凍らせた青年は、突き付けられたイクティノスを握った姿のまま、自身も凍り付かせているかのように動かない。
「ヴェイグ君........」
あれだけ案じていた少女を、自分の預かり知らぬ所で亡くしたのだ。何と声をかければ良いのか分からなかった。
だが、その無力の痛みよりも気にかけなければならない事が、ウッドロウにはあった。
彼の手に握られているイクティノスと、そしてサイグローグの問いかけに対する返答だ。
『ウッドロウ.....。一体どうなっているんだ?』
イクティノスが、漸く落ち着いた、と言った風情で問いかける。普通の感覚なら剣が喋れば驚くだろうに、やはりヴェイグは全く反応を見せない。
マスターの素養が無い故に聞こえないのか、それとも.....。
「......ァ」
青年の、血の気を失った唇が微かに動く。
「クレア......ッ」
一度は収まりを見せていたヴェイグを包む燐光が再び輝きを増した。
同時に、ファンダリアの厳しい冬ですら此処までではないと思わせる冷気が押し寄せ、たまらずウッドロウは後退る。
「ヴェイグ君!」
呼び声に答えるように、光を纏ったまま青年が向き直る。しかし、その顔は俯いたまま、呼吸は、何かを押さえつけるように乱れていた。
『ウッドロウ、こいつ!』
イクティノスが声を上げる。ヴェイグが、震える手でゆっくりと、彼を持ち直した。
「ヴェイグ君!落ち着くんだ!!」
吹き付ける冷風は、うかつに吸い込めば肺を凍らせてしまいそうだ。両手で顔を庇っても、頬を切り裂かれるような感覚が走る。
青年が、聞こえない大きさで何かを呟きながらイクティノスを振り上げる。
「ヴェイグ君!!」
呼び声が通じたわけでは無いだろうが、ふと、青年の瞳に光が戻る。
揺れる視線が、確かに自分を映した。呼吸が慄くようなものに変化する。
「俺は.....っ」
311名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 12:59:55 ID:hBczBBNPO
支援
312灰色:2008/09/13(土) 13:01:28 ID:wZXG1PuWO
血が滴る手でイクティノスを振り上げたまま、ヴェイグが二、三歩と後退する。
そのまま、青年は身を翻し駆け出した。
入れ違いに、サレを追った青年が戻ってくる。ヴェイグに驚いたのだろう、壁に張り付いて彼が駆け去るのを見送っていた。
「ウッドロウさん、一体何が.....」
銀髪を短く刈った青年は、自分を知っているのだろう、何度かヴェイグが走り去った方向を振り返りながら殆ど無防備に歩み寄る。
すぐに青年に答える事はせずに、ウッドロウは大きく息を吐くとねぎを背中に戻した。





「それで、これからどうします?」
ロニ・デュナミスと名乗った青年がごく簡潔に自己紹介を終え、ウッドロウを見やる
「ヴェイグ君を追おう。イクティノスを取り戻さなければ」
己の前世と同じような意志持つ剣が異世界(道化師の言い回しと、ウッドロウやヴェイグとの知識のずれを考えるとそうとしか思えなかった)にもあると言うのは驚きだった。
彼らの時代より遥かに発展していた前時代の遺物だと言うなら、それが持つ知識に頼りたくなるのも当然だろう。
だが、
「分かった。オレは降りる」
驚きを見せたのはロニだけだった。
「ルカが、仲間が心配だ」
あの青年への問い掛けは、そのままあの放送で愛する誰かの死を告げられた者への問い掛けはでもある。
それでなくても、一番大切な少女と、頼りになる年長者を失ったのだ。どれだけ衝撃を受けているだろうか。
それに、と傍らで不安げに鳴いているミュウを見やる。
「こいつを、主人のとこに連れていかなきゃならねぇからな」
脳裏に、嬉しそうにミュウを抱えあげたイオンの姿が蘇り、歯噛みした。アリス、あの女を許す訳には行かない。
「分かった。だがせめて城を離れるまでは同行しよう。サレは戻ってこないだろうが、あのアリスという少女がどう出るか分からない」
不愉快だろうが、と見透かしたように苦笑してみせるウッドロウに、スパーダは理不尽と分かっていても苛立ちを隠せなかった。


313灰色:2008/09/13(土) 13:03:59 ID:wZXG1PuWO
【スパーダ・ベルフォルマ 生存確認】
状態:HP10% TP85%、身体中に裂傷、擦り傷、凍傷、麻痺
所持品:苦無×29、ミスティブルーム とうもろこしミュウ
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:ルカを探す
第二行動方針:ルーク・フォン・ファブレを探す
第三行動方針:仕方ないのでもう少しウッドロウ達と行動を共にする
第四行動方針:アリス、サレは見つけたら必ず殺す
現在位置:C2・ハイデルベルグ城、階段踊り場

【サレ生存確認】
状態:HP50% TP65% 胸部に痛み(傷はない) 右腕に凍傷(肘上まで完全に凍結) 左足に裂傷
所持品:ペイルドラグ ガーネットミックスグミ×2 イオンに支給された水、食料
基本行動方針:ゲームに乗り、ヒトの心を否定する
第一行動方針:ヴェイグがどの道を選ぶのか興味がある
第二行動方針:ヴェイグらへの復讐
第三行動方針:アリスは殺さない。
現在位置:C2→?

【ヴェイグ・リュングベル生存確認】
状態:HP99% TP100% 右手に切り傷 クレアの死にショック。フォルス暴走。かすかに理性有?
所持品:金のフォークソーディアン・イクティノス
基本行動方針:クレアアァァァァァァ!!
第一行動方針:クレアを探す
第二行動方針:クレアを殺した者を殺す。サイグローグも殺す。手段は選ばない
第三行動方針:殺し合いに乗ってはいけない
現在位置:C2→?

【ウッドロウ・ケルヴィン生存確認】
状態:HP100% TP100%
所持品:ねぎ さつまいも 木製の矢(10本) 尖った柵
基本行動方針:同士を募り脱出への道を探す。障害となるものは討つ
第一行動方針:イクティノスを回収する
第二行動方針:ヴェイグを止める、もし殺し合いに乗った場合は殺害も持さない
第三行動方針:仲間との合流
現在位置:C2・ハイデルベルグ城、階段踊り場

【ロニ・デュナミス 生存確認】
状態:HP65%、TP100%、脇腹に刺し傷(応急処置済み)
所持品:GD脱出用ロープ ??? ???
基本行動方針:スタン、カイル、他仲間と合流 現状をどうにかしたい(具体案なし)
第一行動方針:ウッドロウと行動を共にする。
第二行動方針:仲間を探す。
現在位置:C2ハイデルベルグ城、階段踊り場

【ミュウ】
基本行動方針:みんなと一緒に帰る
第一行動方針:今自分に出来る事をする
第二行動方針:ご主人様が心配ですの。
現在位置:C2ハイデルベルグ城、階段踊り場
314名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 13:04:42 ID:U140p9Bp0
支援
315名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 13:09:51 ID:U140p9Bp0
投下乙。しかしスペースを入れてくれ、とうもろこしミュウに噴いてしまったぞ。

ヴェイグは闇へと消えていったのか、恐ろしいな。
316名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 13:12:07 ID:NE3yUoWo0
支援
317名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 13:19:45 ID:hBczBBNPO
終了宣言ないけど終了かな?
ヴェイグの状態欄が矛盾と葛藤だらけで泣けそうだ…
ウッドロウには頑張ってもらいたい、というか作者さんとは気が合いそうだ
(プロットほぼ被った的な意味で)
318名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 13:58:25 ID:+2NMKpRAO
投下乙、とうもろこしミュウにふいた人間その2だ!
ヴェイグはまた恐ろしい方向に行きそうだな…
イクティノス&ロニはウッドロウと会えておめでとう
スパーダはルカが不安定な今、イノセンスの良心として頑張ってくれ!

>>317
避難所で待ってます
319名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 14:22:49 ID:wZXG1PuWO
今更だけど終了
昼休みが終わっちまったので遅くなってスマン。
そしてスペースもスマン
帰宅したらPCから修正するわ。
320名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 15:20:11 ID:oiVSVHvXO
乙!緊張感ありすぎてドキドキした…ヴェイグの描写リアルすぎるぞ。
あと支援で吹くからやめてw
321名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 16:18:56 ID:g3llI7UF0
投下します
322リアル 1:2008/09/13(土) 16:20:49 ID:g3llI7UF0
巨大な塔に入る直前に響いたのは、サイグローグと名乗った道化師の声だった。
「外で聞いてから、中に入ろう。塔の中じゃ放送が聞こえないかもしれない。――俺が見張りしてるから、メモ頼む」
なんだかんだで頼りになる赤い服の男はピコピコハンマーを手に塔の入り口から少し離れた場所に立つ。
遊び&歩き疲れたノーマが塔の壁にもたれかかり、ザックの中を適当に漁った。
「あー……しんど。名簿……名簿ねー……おっこれか? あれ違ったールールブックだった!」
「早く名簿を出せ!」
道化師の声が聞こえている最中だというのにボケるノーマにクロエが厳しいツッコミを入れる。
ようやく名簿を取り出したノーマは、放送の内容よりもその内容に心を奪われた。
「……そういえばあたしたち、名簿見るのはじめてかも」
サイグローグに最初に集められた部屋の中で、仲間の何人かが共にこの殺し合いの舞台に参加させられているということは分かっていた。
しかし正確に、知人が何人参加していて、見ず知らずの人物がどれだけいるのか、それをノーマたちは知らなかった。
道化師の声は響く。
「禁止エリアか……そういえばそんなルールもあったな」
何処からともなく響く声に合わせて、地図に指定された時刻を記入していく。
今まで特に意識していなかった首輪が、急に窮屈に感じられた。
同時に連想するのは首輪を爆破され散った名も知らぬ青年。名簿を捲れば、彼の名が写真とともにそこに載っていた。

『……プレセア・コンパティール……リーガル・ブライアン、マグニス……ステラ・テルメス―――』

「クー、ステラって!」
聞き覚えのある名。ノーマが弾かれたように身体を起こす。
「ああ……」
「リっちゃんのお姉ちゃん……だよね。死んじゃったはずなのに……」
項垂れるノーマを見守りながら、クロエは名簿に印をつけていく。
(クーリッジは……無事だろうか)
ステラを守れなかったことを悔いていた彼はこの放送を聴いて何を思うだろうか?
彼女との再会は果たせたのか。否、果たせなかった方が良いかもしれない。
クロエは知っていた。セネルがどれほど、ステラを想っていたのか。
最後に何故か1人だけ遅れて名が告げられた犠牲者を書き込み終え、クロエは立ち上がる。つられてノーマも立ち上がり、ロイドに向かい手を振った。
「おーい、ロイどーん!! メモ終わったから、早くこの塔の中、探検しよ……」
一陣の風が、ノーマたちとロイドの間を裂く。強い日差しが照りつけているはずなのに、その風はやたらと寒く身震いするほどだった。
323リアル 2:2008/09/13(土) 16:22:35 ID:g3llI7UF0

「……ロイどん?」
ノーマとクロエがいた、塔の入り口の日陰になった部分より少し先。ワルターの襲撃に備え見張り役を買って出てくれたロイドの様子が、おかしかった。
ピコピコハンマーを持った手をぶるぶると小刻みに震わせて。肩も震えている。背中越しに見えた彼の表情は――笑っていた。
「……嘘……だろ?」
もう片方の手に、ぐしゃぐしゃになるまで握り締められた名簿。落ちた鉛筆。
「プレセア、リーガル」
ロイドが名を呟くのに、ノーマとクロエはようやくロイドの異変の原因に気付いた。
あの砂浜で、お互いの持つ情報を交換したとき。確かに出た名前なのだ。プレセア・コンパティールとリーガル・ブライアンの名は。
――そして今、クロエの持つ名簿の、彼らの名前は、赤く塗りつぶされたばかりだ。
「アーヴィング……」
喉が勝手に動いて溜まった唾を飲み込む。
クロエが肩を叩く前に、ロイドは振り返った。
「なあ、俺はまだ、プレセアとリーガルが死んだって言われても、全然実感わかねぇよ……っ!
 目の前で死んだわけでもないのに! でも……でもな。たぶん、そうなんだろうって、思っちまうんだ……」
皮膚が割れそうなほど唇を噛みしめるロイドを、クロエとノーマはただ見ていることだけしかできなかった。
放送で名の呼ばれたクロエとノーマの知人はステラ・テルメスのみ。
彼女たちにとってのステラは「既に死んでいる人物」という印象が強かった。だから、名が呼ばれてもそれほど動揺することはなかった。
襲撃してきたワルターも同じく。ワルターとは敵対関係にあったとクロエもノーマも認識している。だから襲撃は当然のことだったし、驚きも少なかった。
しかしどうだろう。
この島で、初めて出合ったロイド・アーヴィングは。
クロエとノーマの脳裏に浮かぶものも、ロイドの脳裏に浮かんでいるものも、きっと同じ。
リッド・ハーシェルの亡骸。全員の目の前で首輪を爆破され、胴と首を別れさせた、勇敢な青年。
彼の死すら、彼女たちはどこか絵空事のように感じていたのかもしれない。
それなのにあの道化師のねっとりと鼓膜にまとわりつくような声は、記憶の中の彼の死をより鮮明に染め上げた。
彼と同時に名の呼ばれた仲間の死にも、絶対的なリアリティを添えて。
「俺が……俺が……っ」
言いかけた言葉をロイドは喉の上の方で飲み込む。
――俺が遊んでた間に、何があったんだよ。プレセア、リーガル!!
掌の中のピコピコハンマー。それで何をしていた? じゃんけん?
思い出すのはもっと巨大なそれで敵をなぎ倒してきた少女戦士。そして彼女と背中を預けあって戦った優しい格闘術使い。
瞼に張り付いて消えないのは、鮮血に塗れたリッド・ハーシェルの首から下。
何もしていなかった自分。笑っていた自分。その間に殺された、10人。
無情にも照りつける太陽は、3人と――そしてもう1人の影を地に刻む。
324リアル 3:2008/09/13(土) 16:24:35 ID:g3llI7UF0


「――先客がいたようですね」
少女は僅かに片足を引きずりながら、低く絞った声で呟く。
クレスの名も、クラースの名も、あの道化師は読み上げなかった。少女の心を落ち着かせるにはそれだけで十分だった。
けれど未だ10人。10人しか死んでいない。宿敵であるダオスの名も呼ばれていない。
視線の先には無防備な男女が3人。手負いの忍でも、討てなくてどうする。
巨大な塔の影に隠れるように、音もなく、少女は駆けた。



【ノーマ・ビアッティ 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、生乾き 現実に対する不安
所持品:ホイッスル、本人確認済み支給品1〜2個
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。死にたくない
第一行動方針:クロエ・ロイドと共に塔を散策する
第二行動方針:セネル達と合流する
現在位置:F6レムの塔入口
 
【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、帽子紛失、生乾き 現実に対する不安
 所持品:オブシディアン、安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:ノーマ・ロイドと共に塔を散策する
第二行動方針:セネル達と合流する。セネルが心配。
第三行動方針:同志を探す
現在位置:F6レムの塔入口
 
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、生乾き、すけべ大魔王 プレセア、リーガルの死にショックと後悔
所持品:本人確認済み支給品1個、エリクシール、ソーサラーリング、ピコピコハンマー
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:ノーマ・クロエと共に行動する。
第二行動方針:同志を探す
現在位置:F6レムの塔入口付近

【藤林すず 生存確認】
状態:HP70%、TP60% 一部内臓損傷、足に大きな裂傷(処置済み)
所持品:ソーディアン・アトワイト、時を駆ける少年の人形
基本行動方針:クレスかクラースを生き残らせる
第一行動方針:ノーマ、クロエ、ロイドを殺す
第二行動方針:殺し損ねたエミルが気になる
第三行動方針:ダオスを自分の手で殺す
現在位置:F6レムの塔入口付近
325名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 16:26:31 ID:g3llI7UF0
以上です。
よく見たらこれで放送後は3連続で主人公絡みになってしまっていたが
なに、気にすることはない。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 16:34:29 ID:tbvv54PK0
投下乙です
ロイドの後悔は…ですよねーとしか言えねぇよ…orz
覚悟完了のすずちゃんに立ち向かえるのかこのトリオ?
327名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 16:37:12 ID:Ywkqj+1AO
投下乙です。がんばれすずちゃんと何故か言いたくなりますぜ。
328名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 17:10:32 ID:T8RRVzTeO
スタンイレーヌ組とすずちゃんとピコハン組とディムロス持ちルビアディスト組
レムの塔下手したら大激戦だなw
329名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 17:26:22 ID:n1iseFQJO
投下乙。
やっとイクティノスがしゃべりましたよ!でも即離れ離れ、せつねえ
ロイド達は本当に気の毒だな…だがシリアスモードだな、今後に期待
ところで、ロニって治療晶術使えてなかったっけ、みんな回復してあげれないか
330名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 17:29:58 ID:g3llI7UF0
回復だーっ!ヒール!
…まあ治療必要なのスパーダだけだからな。スパーダはまだ麻痺してるのかな?
331名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 17:48:22 ID:T8RRVzTeO
間に合わなかったか…!フラグですねわかります
まぁ冗談は置いといてD2陣のヒールはリカバー機能付きだしロニ便利だな
332名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 20:31:21 ID:ATKnfIKo0
灰色の作者です。
帰宅したので修正投下しようと思ったんだが、
ロニ(ってかD世界の連中)ってレンズ無しで晶術使えるの?
触媒が何にもないから駄目かと思ってたんだが・・・・・。
333名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 20:39:31 ID:g3llI7UF0
D2の連中って服の装飾の一部がレンズだからそれさえ没収されてなきゃ使えるんじゃない?
カイルは服のベルトにレンズついてるし。
リアラもED後参戦ならペンダントしてないはずだけど普通にヒールしてるし
334名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 20:41:43 ID:tbvv54PK0
ナナリーが登場話で普通に術使ってたけど
リアラも普通にヒール使用してたし
335名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 21:01:34 ID:ATKnfIKo0
了解。
台詞抜かしちまったり、ラストが余りにもやっつけだったので、後半再投下します。
よく見たらイクティノスと金のフォークもくっついてたしな!

ってかロニ登場話しか読み返さなかったよママン・・・・
336灰色@修正:2008/09/13(土) 21:04:28 ID:ATKnfIKo0
(あれは、イクティノス!)
本来ウッドロウの手にあるべき剣は、薄く氷に覆われていた。柄にはサレの手袋が張り付いたままだ。そして、うめき声を上げているサレの右手にはあるべき皮膚が無い。
凍りついた所を無理引き離したのだろう、剣を握った形のままの手の平は皮が剥がれて赤く染まり、しかし血は滴っていなかった。
ウッドロウは心中で呻いた。サレの手首から先、いや、肘を曲げない所を見ると右腕全体。血液から何から何までが、完全に凍結しているのだ。
ヴェイグは氷使いだと言っていた。だか、生きている人間の身体を完全に凍らせるような、そんな事が出来るのだろうか。
(愚問だ。現に奴の腕は完全に凍っている。だがヴェイグ君はそこまで出来るとは一言も言っていなかった。隠していた?いや、クレアさんの死で箍が外れたのか)
ウッドロウの足元にも、冷気が押し寄せている。ヴェイグがまとう燐光は、もはや彼の全身に及ぼうとしていた。
「悲しいんだぁ、ヴェイグ。クレアちゃんが死んじゃって」
脂汗を浮かべながらも、なおサレはその顔を笑みの形に歪めて吐き捨てた。
「あぁんなに良い子でも殺されちゃう。ヒトなんてそんな愚かなものなんだよ。ねぇ、クレアちゃん。どんな気持ちだったのかなぁ。あの子らしく、綺麗に死んだのかな?それとも、恨みに塗れてたのかなぁ!!」
サレの戯言は、少女を直接には知らないウッドロウの耳にも聞くに堪えないものとして届いた。限界まで引き絞ったままの弦を放せば、少なくとも男を黙らせる事は出来るだろう。
しかし何か、正確には黙したままのヴェイグから放たれる、鬼気とでも呼んだ方が相応しい冷たさが、ウッドロウを圧倒して、それを許さないでいた。
「ねぇ、ヴェイグ。どんな気分なんだい?こんな所に居るって事はクレアちゃんに会えなかったんだろう?守れなかったんだろう!?」
銀髪の青年の内側で爆発するのを待っている「何か」に気付かぬように(或は煽るように?)サレは一歩、二歩と青年に近寄る。
止めろ。そう叫びたかったが、喉がひり付いていて声が出せない。
サレが、また一歩。そこがヴェイグの間合いなのだろう距離まで近づく。唇が歪な三日月のようだ。
ヴェイグが、何か呟く。
「ウッドロウ!」
「ウッドロウさん!?」
弾ける!と思った瞬間。背後に二つの気配が現れた。
ようやくこちらに気付いたのか、サレが再びバックステップを取りヴェイグから距離を開ける。
弓弦を離し、追撃する。不利と見て取ったのだろう。大剣のみ抱えてサレは身を翻した。
「逃がすか!」
客間で眠っていたはずの青年が、それを追う。そして、彼に肩を借りていたスパーダは悲鳴じみた声をあげ、崩れ落ちた。
「リカルド!!」
背中から夥しい出血を見せ、ヴェイグの側に倒れている男から応えが帰ってくるはずは無い。嘆くスパーダの声を背中に受け、ウッドロウはゆっくりとヴェイグに近づいた。手にしたねぎに、新しい矢をつがえて注意深く。
サレの腕と、イクティノスを凍らせた青年は、突き付けられたイクティノスを握った姿のまま、自身も凍り付かせているかのように動かない。
「ヴェイグ君........」
あれだけ案じていた少女を、自分の預かり知らぬ所で亡くしたのだ。何と声をかければ良いのか分からなかった。
だが、その無力の痛みよりも気にかけなければならない事が、ウッドロウにはあった。
彼の手に握られているイクティノスと、そしてサイグローグの問いかけに対する返答だ。
『ウッドロウ.....。一体どうなっているんだ?』
337名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 21:04:49 ID:2WE2A31zO
リアラは普通にナナリーと会ってたし、カイルロニもスタンがどうたらと言ってたからD2勢はみんなED前なんじゃないの?
IとD2はその方が楽だし
338灰色@修正2:2008/09/13(土) 21:06:01 ID:ATKnfIKo0
イクティノスが、漸く落ち着いた、と言った風情で問いかける。普通の感覚なら剣が喋れば驚くだろうに、やはりヴェイグは全く反応を見せない。
マスターの素養が無い故に聞こえないのか、それとも.....。
「......ァ」
青年の、血の気を失った唇が微かに動く。
「クレア......ッ」
一度は収まりを見せていたヴェイグを包む燐光が再び輝きを増した。
同時に、ファンダリアの厳しい冬ですら此処までではないと思わせる冷気が押し寄せ、たまらずウッドロウは後退る。
「ヴェイグ君!」
呼び声に答えるように、光を纏ったまま青年が向き直る。しかし、その顔は俯いたまま、呼吸は、何かを押さえつけるように乱れていた。
『ウッドロウ、こいつ!』
イクティノスが声を上げる。ヴェイグが、震える手でゆっくりと、彼を持ち直した。
「ヴェイグ君!落ち着くんだ!!」
吹き付ける冷風は、うかつに吸い込めば肺を凍らせてしまいそうだ。両手で顔を庇っても、頬を切り裂かれるような感覚が走る。
青年が、聞こえない大きさで何かを呟きながらイクティノスを振り上げる。
「ヴェイグ君!!」
呼び声が通じたわけでは無いだろうが、ふと、青年の瞳に光が戻る。
揺れる視線が、確かに自分を映した。呼吸が慄くようなものに変化する。
「俺は.....。クレア・・・・・っ」
血が滴る手でイクティノスを振り上げたまま、ヴェイグが二、三歩と後退する。
そのまま、青年は身を翻し駆け出した。
入れ違いに、サレを追った青年が戻ってくる。ヴェイグに驚いたのだろう、壁に張り付いて彼が駆け去るのを見送っていた。
「ウッドロウさん、一体何が.....」
銀髪を短く刈った青年は、自分を知っているのだろうか、何度かヴェイグが走り去った方向を振り返りながら殆ど無防備に歩み寄る。
すぐに青年に答える事はせずに、ウッドロウは大きく息を吐くとねぎを背中に戻した。


+++++++++


「それで、これからどうします?」
ロニ・デュナミスと名乗った青年がごく簡潔に自己紹介を終え、ウッドロウを見やる。
何度か雀の涙程度の切ない効果しかないヒールをかけられ、全身の傷に簡単な手当てをしたスパーダは、黙して男の返答を待っていた。
「ヴェイグ君を追おう。イクティノスを取り戻さなければ」
力強く頷くロニを見る自分の瞳は、酷く冷めていた気がする。
己の前世と同じような意志持つ剣が異世界(道化師の言い回しと、ウッドロウやヴェイグとの知識のずれを考えるとそうとしか思えなかった)にもあると言うのは驚きだった。
なるほど、それが彼らの時代より遥かに発展していた前時代の遺物だと言うなら、それが持つ知識に頼りたくなるのも当然だろう。
だが、
「分かった。だがオレは降りる」
驚きを見せたのはロニだけだった。
スパーダは、そんなロニからも、眉一つ動かさなかったウッドロウからも視線を逸らして言葉を続けた。
「ルカが、仲間が心配なんだ」
あの青年への問い掛けは、そのままあの放送で愛する誰かの死を告げられた者への問い掛けでもある。
それでなくても、一番大切な少女と、頼りになる年長者を失ったのだ。どれだけ衝撃を受けているだろうか。
それに、と傍らで不安げに鳴いているミュウを見やる。
「こいつを、主人のとこに連れていかなきゃならねぇからな」
脳裏に、嬉しそうにミュウを抱えあげたイオンの姿が蘇り、歯噛みした。
アリス、あの女を許す訳には行かない。
「分かった。だがせめて城を離れるまでは同行しよう。サレは戻ってこないだろうが、あのアリスという少女がどう出るか分からない」
不愉快だろうが、と見透かしたように苦笑してみせるウッドロウに、スパーダは理不尽と分かっていても苛立ちを隠せなかった。




339灰色@修正3:2008/09/13(土) 21:06:58 ID:ATKnfIKo0

【スパーダ・ベルフォルマ 生存確認】
状態:HP30% TP85%、身体中に裂傷、擦り傷、凍傷(全て応急処置済み) 若干麻痺が残っている
所持品:苦無×29、ミスティブルーム とうもろこし ミュウ
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:ルカを探す
第二行動方針:ルーク・フォン・ファブレを探す
第三行動方針:仕方ないのでもう少しウッドロウ達と行動を共にする
第四行動方針:アリス、サレは見つけたら必ず殺す
現在位置:C2・ハイデルベルグ城、階段踊り場

【サレ生存確認】
状態:HP50% TP65% 胸部に痛み(傷はない) 右腕に凍傷(肘上まで完全に凍結) 左足に裂傷
所持品:ペイルドラグ ガーネット ミックスグミ×2 イオンに支給された水、食料
基本行動方針:ゲームに乗り、ヒトの心を否定する
第一行動方針:ヴェイグがどの道を選ぶのか興味がある
第二行動方針:ヴェイグらへの復讐
第三行動方針:アリスは殺さない。
現在位置:C2→?

【ヴェイグ・リュングベル生存確認】
状態:HP99% TP100% 右手に切り傷 クレアの死にショック。フォルス暴走。かすかに理性有?
所持品:金のフォーク ソーディアン・イクティノス (ちょっ、何なんだよこの偽者!ウッドロウゥゥゥ!!)
基本行動方針:クレアアァァァァァァ!!
第一行動方針:クレアを探す
第二行動方針:クレアを殺した者を殺す。サイグローグも殺す。手段は選ばない
第三行動方針:殺し合いに乗ってはいけない
現在位置:C2→?

【ウッドロウ・ケルヴィン生存確認】
状態:HP100% TP100%
所持品:ねぎ さつまいも 木製の矢(9本) 尖った柵
基本行動方針:同士を募り脱出への道を探す。障害となるものは討つ
第一行動方針:イクティノスを回収する
第二行動方針:ヴェイグを止める、もし殺し合いに乗った場合は殺害も辞さない
第三行動方針:仲間との合流
現在位置:C2・ハイデルベルグ城、階段踊り場

【ロニ・デュナミス 生存確認】
状態:HP70%、TP70%、脇腹に刺し傷(応急処置済み)
所持品:GD脱出用ロープ ??? ???
基本行動方針:スタン、カイル、他仲間と合流 現状をどうにかしたい(具体案なし)
第一行動方針:ウッドロウと行動を共にする。
第二行動方針:仲間を探す。
現在位置:C2ハイデルベルグ城、階段踊り場

【ミュウ】
基本行動方針:みんなと一緒に帰る
第一行動方針:今自分に出来る事をする
第二行動方針:ご主人様が心配ですの。
現在位置:C2ハイデルベルグ城、階段踊り場

340灰色@修正4:2008/09/13(土) 21:09:21 ID:ATKnfIKo0
※フライパンとおたまはハイデルベルグ城階段踊り場に放置されています。


終了。
結局やっつけのままだ。だが私は謝らな(ry
341名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 21:11:36 ID:tbvv54PK0
修正乙。相変わらず自重しないなイクティノスw
スパーダのHPもホントにちょっとしか回復してない…
342名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 21:19:18 ID:g3llI7UF0
修正乙。自重しないイクティノスに吹いたwww
喋れたのにまだそこで叫ぶかww

>>337
D2がああいうEDだということを失念してたw
IもED後だと天術使えないからED前じゃないとだめかもね。まあロワ世界だから
そこらへんはなんでもありだろうが
343名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 21:22:31 ID:vSTEL/gWO
投下・修正乙です。
スパーダの姿がヴェイグよりも痛々しく見えたのは内緒だ。
だがHP30%までしか回復してないのに再び単独行動に戻ろうとするのは…自 殺 行 為 だ ぞ ! orz
イノセンス勢修羅場の予感…
つーかイクティノスww
ロイド…。頑張れ、頑張るしかないんだぜ…
クラトス・リフィルの名前が呼ばれなかったことが唯一の救いか…親父はトマト死しそうになって、先生はワカメ警報発令中だが。
344名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 21:56:25 ID:Xp/vruwp0
投下します
345魔人1:2008/09/13(土) 21:58:30 ID:Xp/vruwp0
太陽が照り続ける中、この場はあまりにも冷たいものだった。
「…」
「ロイどん…元気出しなよ!ねっ!」
「…」
ノーマの声にすら耳に入っていないのか、ロイドは未だ俯いたまま。

そこから監視されているとも気付かずに。
忍び―すずは片手で武器、ソーディアン・アトワイトを握り締めると静かに息をひそめる。
塔の影から除けばなにやら不穏な空気の様子で。
それにあの赤い服を着た少年は首を下に垂れ下げている。
まったくもって隙だらけだった。
奇襲をかけるなら今か?
再び強く剣を握り締め足元の砂をならした。

「…」
「ロイどん…ほらあ塔見にいこう?」
「悪い…俺、今…っ!?」
クロエは、ロイドがすべてを言い終わらぬうちに突き飛ばした。
それはいきなり剣士の勘か女の勘か。
嫌な予感、殺気がうずまいている。そんな気がして思わず突き飛ばした。
なにやら胸のあたりがあつい。あつい。いや、痛い?
そしてクロエはふっと全身の力が抜け思わず膝をつき前に倒れこむ。
それをロイドが支え叫ぶ。
「誰だおまえは!」
そこにいたのは、ほんの幼い血でぬれた剣をもつ幼い少女であった。
「すみません心臓を一突きするつもりでしたが…」
謝罪を微塵も感じさせないその行為にロイドは肩をふるわせ突っ込む。
「てんめえっ!」
ロイドがピコピコハンマーを少女に思いっきり振り下ろす。
しかし怒りで血がのぼったせいか、やすやすと横っとびにさけられ剣で突かれるがなんとか服を割かれただけでよける。
しかし、そこで少女は、体勢を崩したロイドの横を通り抜けると、後ろでクロエの回復詠唱をしていたノーマの背後に周り…。
「やめろー!!」
「い、や…」
その背中―ちょうど心臓がある部分―を貫く。
「…痛っ!」
「ノーマ!!」
「なるべく傷つけたくはありません。一瞬で終わらせてください」
そのとき重症のクロエも立ち上がり剣を抜こうとする。
「まだ体力がありましたか」
再び少女はクロエに剣を向けるが、寸でのところでロイドがすべりこむ。
「くそっ!魔神剣!」
ピコピコハンマーから流れ出る技はとても微弱なものであった。
しかし、たまたま少女がけがをしていたのか顔をゆがめたすきに剣を奪おうとクロエが動く。
「クロエ!早まるな!」
少女がなんとか力を振り絞ると、クロエの身体に剣を突き刺す。
「ぐぁっ…!!」
体勢を崩したクロエにもう一撃くらわすと、少女は顔を歪め、剣を落とすと、低く呻きながらも膝をついた。
それと同時に胸のあたりを押さえ持っていた剣をおとす。
346魔人2:2008/09/13(土) 21:59:37 ID:Xp/vruwp0
「クロエっ!!もうやめろ!なんで…!!」
「アーヴィン…ぐぐぅっ!」
「もういい!!しゃべるな!」
しかし、そこでゆっくりクロエは目を閉じると再びもう開けることはなかった。
「そ、ん、な…なんでノーマ?」
ゆっくりとロイドは顔をノーマに向けるが彼女も顔をぴくりとも動かさず、仰向けになったままだ。
「な、んでおまえは…」
「…」
「俺達を襲ったんだよっ!」
思い切り胸倉を掴み殴りつける。
「仕方…がないんです。これが”正義”…――
ある言葉が差し金となり、ロイドの身体はがくがくと震え出す。
どくん
―いやだいやだその言葉だけは聞きたくなかった
どくん
―俺はまた仲間を誰一人助けることが出来なかったのか?
どくん
―リーガル、プレセア、クロエ、ノーマごめんごめんごめんごめんごめんなさい
どくん
―<<優勝者が願えば、参加者の皆様を全員、生き返らせ元の世界に送り届けることも可能です……>>
どくん
ゆっくりロイドは少女がおとした剣を拾った。


【ノーマ・ビアッティ 生存確認】
状態:HP5%、TP100%、生乾き 現実に対する不安 心臓一部損傷 気絶
所持品:ホイッスル、本人確認済み支給品1〜2個
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。死にたくない
第一行動方針:クロエ・ロイドと共に塔を散策する
第二行動方針:セネル達と合流する
現在位置:F6レムの塔入口

【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP90%、TP100%、生乾き、すけべ大魔王 多くの仲間を殺されたことによる半精神崩壊  色々と情緒不安定
所持品:本人確認済み支給品1個、エリクシール、ソーサラーリング、ピコピコハンマー、ソーディアン・アトワイト
基本行動方針:優勝すれば皆を救える?
第一行動方針:とりあえずこの少女を殺す?
現在位置:F6レムの塔入口付近

【藤林すず 生存確認】
状態:HP50%、TP60% 一部内臓損傷の悪化、足に大きな裂傷(処置済み)
所持品:時を駆ける少年の人形
基本行動方針:クレスかクラースを生き残らせる
第一行動方針:とりあえずロイドから逃げる
第二行動方針:殺し損ねたエミルが気になる
第三行動方針:ダオスを自分の手で殺す
現在位置:F6レムの塔入口付近

※ロイドはノーマが死んだものだと思っています。

【クロエ・ヴァレンス 死亡】


【残り55人】
347名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 21:59:44 ID:g3llI7UF0
おーい24時間制限どうした。あとsageてくれ
348名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:00:38 ID:Xp/vruwp0
投下終了
なんかロイドをやさぐれさせてみた俺。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:07:17 ID:M8TYlhOsO
24時間制限は?
350名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:09:17 ID:PKPyWpXlO
>>345ー346
制限あるし廃棄じゃないか?
351名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:12:25 ID:T5vIw1k7O
今気付いたんだけど、テンプレに24時間制限のこと書かれてないね。

まあどっちにせよsageては欲しいが。
352名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:13:24 ID:KF6PZMxfO
D2キャラはジューダスだけはED後っていう描写あったよな。
ついでに各キャラのレンズつけてる位置
カイル・ナナリー…ベルト
ロニ・ジューダス…武器
リアラ…ペンダント(だけどなくなった後も使ってる、ま、レンズから生まれたんだし)
ハロルド…不明
353名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:26:30 ID:Ms9AIuSkO
>>345-346
24時間制限を守ってないから、残念ながら廃棄だな
ルールは確認しようぜ?
354名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:29:33 ID:QvB1pSG00
投下します
短いんで支援は必要ありません
355H(igh).K(ing).ミクトランは反逆者なのか? 1:2008/09/13(土) 22:31:00 ID:QvB1pSG00
鬱蒼と生い茂る木々の中を一人の男が進む。
「…気に食わん」
男は苛ついていた。己への処遇に、己を取り巻く状況に、そして何より己自身に。歩みは止めない。
「……気に食わん」
再び同じ言葉を吐き捨てる。そのまま進むとあるものに目が留まったため、男の足が止まった。
目印として手折った木の枝。幹に自ら付けた傷があるのでまず間違いない。眉間に皺が寄る。
無言のままそれを無視して尚も進むと、不意に視界が明るく開けた。
背後には鬱蒼とした森、目の前に広がる草原、その右斜め前方にはまた森の影。眉間の皺がさらに深くなる。
「………気に食わん」
太陽はそろそろ中天にかかろうとしていた。

天上王ミクトラン。
どうやら彼は、このガオラキアの森の二つ名に囚われてしまっていたようだった。

何故このような事態になったのか。それを説明するには少しばかり時間を遡らなければならないだろう。
まず、彼が最初に降り立った地。それがこの森であった。それから二時間ほど経った頃に"人形"と接触している。
その"人形"の荷物を入手してさらに森を歩き回っていると大樹が聳える開けた場所に着き、"王子"と二人の"虎"に出会った。
この時点で、彼はあるミスを犯している。まず『方位磁針を全く見ていない』ということ。
もしほんの一瞬でも見ていたならば、この森の異常性にすぐ気づいたであろう。しかし、彼はそうしなかった。
それは何故か? 答えは簡単。『ピエロの思惑通りに動くのは癪に障る』、この一言に尽きる。
同様の理由で名簿にも目を通していない。そもそも"自らの意志で"ピエロ含む全員を殺すつもりなので見る必要がない。
さすがに地図は後に言い渡されるであろう禁止エリアの事も考えて一通り目を通しているが、それだけである。
その結果、現在に至る。

(忌々しい首輪め…)
そして己を苛立たせる要因の一つでもある首輪。これにいつまでも縛られているつもりはさらさらない。
それを解除する手がかりとするためにも他人の首輪を入手する必要がある。のだが。
(血に酔いすぎたか。流石に今後は気を付けねば)
某少年漫画の表現を借りるならば『最高に「ハイ!」ってやつだアアアア』という状態だったために、
"人形"は兎も角、"王子"は首を斬り落としさえしたというのに入手することをすっかり失念していたのである。
だからといってわざわざ取りに戻るのは天上を統べる王としての誇りが許さない。というか、二度とあの森の中に入りたくない。
だから新たな"協力者"が欲しいところなのだが、自ら求めて動き回るのも癪だ。
欲を言えば、可能な限り一ヶ所に留まってじっくりと"協力者"を待ちたい。
「ここは…C1、のようだな」
頭の中に地図を思い浮かべる。
(先ほどの森には大樹があった。という事は向こうの森の中には城がある、か)
王たる自分が待ちかまえる場所としてなんとも相応しいではないか、と思いながら城へ向けて歩みを進める。
そして森にさしかかった時。一回目の放送が、始まった。
356H(igh).K(ing).ミクトランは反逆者なのか? 2:2008/09/13(土) 22:32:01 ID:QvB1pSG00


「想定内の思考はそれが喩え悩む姿であろうと面白みに欠ける…か。云ってくれるではないか」
(ならば私が城へ行こうとするのも想定済みだと? …驕るな、ピエロ風情が)
言い渡された禁止区域の情報を地図に手早く書き込みながら思う。死者に対しては何の感慨もない。
「…いいだろう。そこまで云うのなら、何処までが貴様の想定内なのか試してみようではないか」
地図を見て数瞬。その視線は砂漠地帯の塔で止まった。
(…あれか)
地図から目を離してその方角を見てみると、天まで届かんばかりに高く聳える影。
(頂上へ登るには骨が折れそうだが…遠くまで見下ろす事ができるな)
城ほどではないが、幾分か己の自尊心を満たす建造物へ向けて歩き出す。
(私の読みが上か、貴様の読みが上か。…貴様にとってはこれすらも娯楽なのだろう? サイグローグとやら)
首輪に関しては向こうへ着いた後から考えても支障はない。
(ならば、私も楽しむしかあるまい)
城のある森を離れ、砂漠の方へ。背後の森の上空が急に曇り出す。
(…尤も、最後に笑うのは)
それを気にも留めずに歩くミクトラン。
(この私だ)
視界の端に、氷の結晶を見た気がした。



【ミクトラン 生存確認】
状態:HPTP100% 血塗れ 歩き回ったことによる多少の疲労 頬にかすり傷(銃弾による)
所持品:フランヴェルジュ ブルーキャンドル
    イリアのサック(デザートイーグル 銃弾×20 ??? ???)
基本行動方針:ピエロ含め皆殺し
第一行動方針:塔を登り、周囲の状況の確認
第二行動方針:首輪の確保
第三行動方針:サイグローグとの腹の探り合いを楽しむ
第四行動方針:あの森(ガオラキアの森)には二度と足を踏み入れたくない

現在位置:C1 → D3(黎明の塔)へ



其処に在るは道化の冠
<There is the Crown of the Clown>

其を手にするは何者ぞ?
<Who'll be the owner?>
357名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:33:06 ID:QvB1pSG00
投下終了です
ミクたんを迷子にしてみたかったんだ…
358名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:35:03 ID:g3llI7UF0
乙です。タイトルでもう既に爆笑したwww
あのミクトラン様をギャグキャラへと貶めるとは…これもサイグローグの思惑通りなのか
つか第四行動方針も酷いwww
359名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:38:36 ID:tbvv54PK0
投下乙
みっくんアホスwww迷子になるなよ期待のマーダーがwww
あとC2付近がまたカオスになるかと思ったらそんなことはなくて安心した
360名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:39:16 ID:8bMxGwjqO
みくたんは萌えキャラだと確信した
361名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 22:59:55 ID:oQfeWvx90
投下乙!
ハイキングって散歩するハイキングだと思ったけどよくよく思えば天上王だよなw
みっくんかわいいよみっくん

24時間制限についてだけど、
とりあえず同パートの24時間の投下は禁止、って新しく来た人のためにも改めて書いておく
途中かも来たかもしれない>>345ー346には申し訳ないが、そういうルールなんだ
362名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 01:17:21 ID:xK/P/wEP0
投下します
一応、支援お願いしたいです
363水面のグリニッジ 1:2008/09/14(日) 01:19:03 ID:xK/P/wEP0
『マグニス……ステラ・テルメス、イオン、ユージーン・ガラルド……』

その名が呼ばれた時、シンクの心は僅かにざわめいた。

「嘘でしょ、もうこんなに……」
「……十人も、か」

悲痛な表情を浮かべるリアラとナナリー同調するように、シンク自身も悲しみという仮面を付ける。

「二人の知り合いは、いたのかい?」

そう訊くと、ナナリーが首を横に振った。

「ううん、あたし達の仲間はみんな無事だったよ……シンクは?」
「いや……いなかったよ」

わざわざ、イオンの死を伝える必要もない……根掘り葉掘り質問されて、余計な事を知られるのも厄介だ。
あんな甘ちゃんの導師サマが、こんな所で長生きできる方が驚きだ。
まぁ、あのお優しい顔付きが絶望や嘆きで歪むのを見れなかったのは残念だが。

「そう、よかった……」
「……その割には、まだ顔色が優れないみたいだけど?」

俯いたままのリアラを心配する様な口ぶりで尋ねる。

「さっき呼ばれた人の中に、ルカの仲間がいたの……イリアと、リカルドって人」

ああ……そういえば、ルカがそんな事言ってたかもしれない。

「それは……ルカも、悲しんでるだろうね」
「私、ちょっと様子見てくる」

そう言って、リアラは立ち上がる。
364水面のグリニッジ 2:2008/09/14(日) 01:19:56 ID:xK/P/wEP0
「そうだね、行っておいでよ」
「じゃあルカが来たら、そろそろ行かないかい?ナナリーも起きた事だし」

この言葉は本音だ。
いつまでもこんな所でサバイバルごっこをしているのは勘弁したいし、他にも仲間―――もとい、手駒は多い方がいい。
リアラは頷くと、湖の方へ駆けていく。

「それで、これからどうする?人を捜すんなら、やっぱり島の中央に行った方がいいと思うんだけど」
「……僕は、あそこに行きたいな」

ナナリーの問いに、シンクは南を指さす。
その先に見えるのは、高くそびえる塔。

「あそこかい?まぁ、確かに人も集まりそうだけど」
「それなりに近いし、中央部には危険人物も集まると思う。一気に大勢を集めるより、少しずつ人を集めて行った方がいい」

提案の理由は本音もあるが、一番の理由は別。
地図上で言えばF6の塔、あれは間違いなくレムの塔だ。
何故こんな所にあるのかは分からないが、何かまた使えそうな物があるかもしれない。
勿論ルーク達がいる可能性もあるが、その時は……ルカ達を利用させてもらうとするか。

「そうだね、じゃあリアラ達にもそう言って……」
「ナナリー!シンク!」

ナナリーの同意の言葉は、横合いからの叫びに途切れる。
ルカの様子を見に行ったはずのリアラだ。

「ど、どうしたんだいリアラ!?」
「……ルカの姿が見えないようだけど」

ルカがいない事に、やっかいな事が起こった事を予感しながら尋ねる。
全速力で駆けて来たリアラは、息切れしながら告げた。

「……いないの」
「え?」
「ルカが……いないの!」

365水面のグリニッジ 3:2008/09/14(日) 01:21:07 ID:xK/P/wEP0
◇  ◇  ◇


時は、数分前まで遡る。

「……おかしいな、さっきまではよく釣れたんだけど」

静かな水面を見つめながら、ルカは呟いた。
先ほどまで魚がよく食いついた竿はぴくりとも動かない。
そろそろ戻ろうか、いやせっかく粘ったんだからもう少し……と考えていた矢先。

『……皆様、ご機嫌よう……』
(放送!?もうそんな時間に……)

慌ててサックから地図を取り出す。
放送内容に耳を傾け、地図に禁止エリアを書き込む。
地図をしまうと、名簿を取り出す。次は……死者が告げられる番だ。

『……哀れな小羊は計十名……プレセア・コンバティール……リーガル・ブライアン、マグニス……』

十人も死者が出たことに悲しみながらも、唇を噛み締めながら名簿に線を引いていく。
仲間の名が呼ばれない事を祈りつつ、一人、また一人と線を引き―――

『イオン、ユージーン・ガラルド……リカルド・ソルダート』
(え?)

ペンを持つ手が止まる。

(リカルド……?)

震える手で、呼ばれた仲間の名に線を引こうとする。
しかし、引き切るよりも前に……残酷な道化師の声が、耳に飛び込んで来る。

『……そしてイリア・アニーミ』

(イ……リア……?)

手からペンが落ちる。
死んだ?イリアとリカルドが?
366名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 01:21:59 ID:7/IKezuI0
支援
367水面のグリニッジ 4:2008/09/14(日) 01:22:19 ID:xK/P/wEP0
そんな馬鹿な、信じられない。
イリアは……どんなピンチの時だって明るく勝気に笑い、落ち込む自分の背中を叩いてくれた。
リカルドは……傭兵しての落ち着きを持ち、旅の中ではいつも頼りになる存在だった。

じゃあ、どうして……彼らの名前が呼ばれたんだ?

(イリアとリカルドが、死んだ?)

信じられない……違う、信じたくない。
自分が何も出来ないまま、大切な少女と大事な仲間が……死んだなんて。

(嘘……嘘だ……)

目の前が暗くなる。
おかしい……今は真昼のはずなのに。
最初にここに来た時のように、真夜中のように真っ暗だ。

「イリア……リカルド……」

体がぐらりと揺れる。
一瞬の浮遊感の後、全身を飛沫の感触が襲う。

心地よい水の冷たさに身を預け……ルカは、意識を手放した。


◇  ◇  ◇


そして、時は元の時間を進みだす。

「ルカ……」

穏やかな湖の水面を見つめながら、リアラは心配そうに呟く。
ルカがいたと思われる場所には、釣ったらしい魚、手製の釣り竿、そして名簿が残されていた。
368水面のグリニッジ 5:2008/09/14(日) 01:23:32 ID:xK/P/wEP0
「特に争った形跡も無いし……それに、この名簿」

シンクはルカの物らしき名簿を開き、二人に見せる。

「死者の名前に線が引かれてるけど、さっき言ってたルカの仲間には線が引かれてない。
 多分……仲間の死が信じられなくて、いてもたってもいられなくなったんだろうね」
「……もっと、早く様子を見に行けばよかった」

リアラが俯く。

「しょうがないよ、リアラのせいじゃないさ」
「そうだよ、ルカを置いてきた僕も悪いんだし」

そう慰めの言葉を掛けながらも、シンクは心の中で苛立ちの悪態を呟く。

(チッ、せっかく信用させたと思ったのに……勝手に何処かに行くとはね。
 正直思い通りに動かないんなら放っておきたいけど、この二人の手前そうはいかないし……)

遠くに見えるレムの塔も気になるが、信用を失うような事はできるだけ避けたい。

「とにかく、ルカを探そう。まだ遠くには行っていないはずだから」

心とは正反対の仮面を付けたまま、リアラとナナリーに提案する。
すぐさま頷く二人を見、考える。

(もう少し、有能な駒を手に入れたいね……意のままに動いてくれるようなのを、さ)


◇  ◇  ◇


ほぼ同時刻、湖の対岸にて。

(導師イオンが死にましたか……ま、こんな所で長生きできそうな人じゃないですからねぇ)
369水面のグリニッジ 6:2008/09/14(日) 01:24:29 ID:xK/P/wEP0
地図に禁止エリアを書き込み、名簿の死者に線を引くとディストはサックを背負う。
情報交換で得た、ルビアとディムロスの知り合いの名は呼ばれていない。
自分やディムロスの知り合いは七人いるにも関わらず、ルビアの知り合いが一人しかいない事は若干不思議に思ったが……
知らないだけで、同じ世界出身はまだいるかもしれない。

(さて、レムの塔へ行くには森を突っ切る必要がありますが……襲われた場合、こちらは戦力が無いし……)

現時点での一番の問題は、戦力の無さだ。
自分は頭脳労働担当。ディムロスの持つ能力で晶術とやらがあるらしいが、慣れない物はアテに出来ない。
ルビアは一応戦いの経験もあるらしいが、もっぱら後衛での支援担当だそうだ。

(逃げ足は私よりも速そうですし、囮に使うのも無理。誰にも出会わない事を祈るしかありませんか……)
「ディストさんっ!大変、大変ですよっ!」

外の様子を見てくると言い、ディムロスを引きずって出て行ったルビアが騒ぎながら戻ってきた。
何やら慌てている様子だが……

「……何ですか、騒々しい」
「いいから、早く来て下さい!あたしじゃ引き上げられないんです!」
「は?引き上げ……?」
『湖に、人が浮かんでいた』
「水死体ですか?」
『……それは分からないが』
「でも、生きてたら大変ですよ!早く助けてあげないと!」

落ち着く様子の無いルビアに手を引かれ、ディストは半強制的にマラソンを開始する。


◇  ◇  ◇


「……っ……っ」
『大丈夫かディスト……少しは、体を鍛えた方がいいんじゃないのか?』
「大きな……お世話……です……」
370水面のグリニッジ 7:2008/09/14(日) 01:25:20 ID:xK/P/wEP0
基地の裏手の巨大な湖。
そこの岸に水草に埋もれるようにして漂っていた少年を何とか引っ張り上げた後、ディスト達は森へ移動していた。
理由は、少年が何者かに襲われていた場合の為。
その何者かが殺し合いに乗っていた場合、さらなる獲物を求めて付近にある施設に行く可能性が高い。
少年から目立った外傷は見られなかったが、用心するに越したことはない。

「にしても……どうするんですか、コレ?」
「どうするんですかって……起きるまで待ちましょうよ」

さも当然なように言うルビアに対し、ディストは溜め息をつく。

「ほぅ……つまり、もしコレが殺し合いに乗っていた場合、貴女が何とかして下さるワケですか」
「え……だってこの人、特に危険な物も持ってないし……持ってたの、水着とデッキブラシですよ?」
「そんなモノ、支給品がハズレだっただけでしょう。現に私達だってハズレを引いてるでしょうが」

う、と言葉につまるルビア。

『……ルビア、確かにディストの言う事にも一理ある』
「そんな、ディムロスさんまで……」
『だがこうして助けてしまった以上、放って置くわけにもいくまい……殺し合いに乗っていない可能性もあるのだからな』

ディムロスの指摘に対し、ディストは眉根を寄せる。

『もしかしたら戦力になってくれる可能性もあるしな……お前とルビアでは、戦力的に心もとないだろう?』
「乗っていた場合は、どうするんです?」
『殺すしか、あるまい』

ディムロスの言葉に、ルビアが小さく息を飲む。

「随分と簡単に言ってくれるじゃないですか、自分じゃ殺せないくせに」
『……すまない。だがそれが最もいい方法だろう。お前達や、仲間を守る為にはな』
「……ふん、まぁ殺すのには反対しませんがね。首輪も手に入りますし」

そう言ったきり、ディストは黙ってしまう。

『ルビア、一応その少年を拘束しておいた方がいい……拘束には、スカーフを使えばいいだろう』
「……はい」
371水面のグリニッジ 8:2008/09/14(日) 01:26:15 ID:xK/P/wEP0
ルビアは未だ目覚めない少年のスカーフを外し、後ろで少年の両手を拘束する。

(殺すなんて……やだな)

申し訳ないと思いながらきつく少年の手を縛り……ルビアは思い出す。
両親が死んだ時の事……ロミーとルキウスに激しい怒りを覚え、仇を討とうとやっきになっていた事を。

(あんな辛い思いをする人は……絶対に、いない方がいいに決まってる)

誰だって、死んだら悲しんでくれる人がいるはずだ。
放送で名前を呼ばれた人にも、そんな人はいるに違いなくて。
もしも、カイウスが死んだら……そんな思いを、またするかもしれなくて。

「本当にやだよ、殺し合いなんて……」

呟いた声は、木に背中を預ける男にも、隣に立て掛けられた剣にも、聞こえはしなかった。


【リアラ 生存確認】
状態:HP100%、TP85%、
所持品:南国の蝶(ナタリア水着)、レンタルビューティー(ティア水着)
基本行動方針:みんなで力を合わせて帰りたい。
第一行動方針:ルカを探す。
第二行動方針:カイル他仲間を探す。
現在位置:D7 湖付近

【シンク 生存確認】
状態:HP、TP100%
支給品:すず 未完のローレライの鍵、??? 聖剣ロストセレスティ
基本行動方針:ルーク達を引っ掻き回して楽しむ
第一行動方針:面倒だが、ルカを探す。
第二行動方針:とりあえず周りを信頼させて、利用する。
第三行動方針:F6レムの塔が気になる。
現在位置:D7 湖付近

【ナナリー・フレッチ 生存確認】
状態:HP60%、TP100%、両腕に斬り傷&顔と体に打撲傷(処置済み)
所持品:タガーナイフ、
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
第一行動方針:ルカを探す。
第一行動方針:リアラ達と行動し、仲間を探す。
現在位置:D7 湖付近

372名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 01:27:16 ID:7/IKezuI0
支援
373水面のグリニッジ 9:2008/09/14(日) 01:27:55 ID:xK/P/wEP0
【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP、TP100% シンクを信頼 スカーフで両手を拘束 イリアとリカルドの死に大きなショック
所持品:アビス女性陣の水着セット、デッキブラシ
基本行動方針:みんなで力を合わせて帰りたい。
第一行動方針:???
現在位置:E7 森

【ルビア・ナトウィック 生存確認】
状態:HP、TP100%
所持品:旋風、ポイズンパウダー、フリーズリング、アビシオンのフィギュア
基本行動方針:死にたくない。殺し合いには乗らない。
第一行動方針:少年が起きるまで待つ。
第二行動方針:F6レムの塔に向かい探索。
第三行動方針:カイウスはどこ……?
現在位置:E7 森

【ディスト 生存確認】
状態:HP、TP100% 疲労(小)
所持品:ソーディアン・ディムロス 考察メモ 工具箱(基地から持ち出した)
基本行動方針:とりあえず、死ぬ気はない。
第一行動方針:少年が起きるまで待つ。
第二行動方針:F6レムの塔に向かい探索。
第三行動方針:ジェイドよりも先に、首輪の解除方法を探す。
現在位置:E7 森

※魚三匹、手製の釣り竿はD7湖付近に放置
374名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 01:30:56 ID:va3d74kVO
さるさんになったので、携帯から投下終了宣言
ルカは湖流れすぎかな……
流れすぎなら修正or破棄します
375名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 01:44:42 ID:ZwqdsGnm0
投下乙!
ディムロスとディストのやり取りがワロスw体力無さそうだもんなあ
ルカは、D7からE7くらいだったら別にいいと思う。
376名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 06:05:14 ID:27H2QCstO
投下乙!
シンクとディストがニアミスだったな。ルカが目覚めた後どう出るか楽しみだ。
というわけで俺も投下します。
377真実を求めて 1:2008/09/14(日) 06:09:02 ID:27H2QCstO
 
 
ぶつん、とノイズがした。
それでも尚耳から離れぬ薄気味悪い声。
深淵を思わせる程に深い溜め息が一つ、少年の口から漏れた。
 
「……いたか?」
 
彼は知る者が誰も呼ばれなかったとわかったが、自分が十八年後の未来から来ていることを踏まえ、敢えてフィリアに訊く。
彼女は聡い。
この三文字でも彼女なら何を問われたのか分かるはずだ。
 
「いえ、誰も」
 
彼女も短く返す。
知り合いが誰も死んでいないにもかかわらず彼女の顔が常よりも若干青ざめているのは、たったの半日で参加者の約六分の一が既に命を落としているという事実が大きい。
だがそれだけではない。
“誰も”死んでいないからだ。
仲間が生きている。勿論それは喜ぶべきことだ。
しかし、誰も死んでいない、ということは仲間の生存と同時に敵対人物の生存も意味するのだ。
イレーヌはもしやすると説得することも可能かもしれない。
だが、ミクトランは。
これはイレーヌにも言えることだろうが、この放送で呼ばれた中にもミクトランに命を奪われた者がいた可能性は決して低くない。
 
「そうか……僕もだ」
 
そしてそれは、ジューダスにも同じことが言えた。
神の化身エルレイン。
凶戦士バルバトス。
両者とも憂いは尽きない。
 
「禁止エリアはこの4つか」
 
十の罰点が記された参加者名簿を閉じ、ジューダスは傍に広げたままだった地図を見遣った。
 
「はい……この付近での該当エリアはないようですね」
「ああ。だから少なくとも現時点では、次の放送まで僕達は今まで通りの方針で行動するぞ。異論はないな?」
 
フィリアが頷く。
それを確認すると、ジューダスは荷物をまとめて立ち上がり、行くぞ、と言って歩き出した。
フィリアも彼に続く。
下山した際に見えた海辺の炎の正体を確かめる為に、彼らは北へ歩を進める。
 
二人は炎の正体を確認した後、ここからほぼ真南にある施設を目指すことにした。
人工施設には自ずと人が集まる。
それは則ち情報が集まるということでもある。
二人は、「同じ危険でも、この島を無闇やたらと歩き回って危険に晒されるより、殺戮者が集う危険を承知の上で情報を得て仲間を探す方が効率的だ」という結論に、揃って辿り着いたのだ。
 
やがて潮の匂いと、何かが焼けたような臭いがしてきた。
炎の発生源はすぐそこだ。
 
「あ……ジューダスさん!」
「ああ」
378真実を求めて 2:2008/09/14(日) 06:14:41 ID:27H2QCstO
 
フィリアが声を上げて前方を指差す。ジューダスにも見えていた。
──人、青年だ。
青年が一人、佇んでいた。
名簿に載っていた記憶がある。確か、名を『ルーク』と言ったか。
朱色の髪が印象的だった。
だがそれ以上に目を引く“物”がある。
元は白かったと思われる、緋色に染められた青年の上着。
彼の左に落ちている、刃の紫を緋へと変えた剣。
そして、彼の目の前に転がる、緋に塗れた黒焦げの“何か”。
その周囲の雑草も同様に真っ黒に焼けている。
青年の表情は見えない。
 
「だ……」
 
大丈夫ですか、と声を掛けて走り寄ろうとしたフィリアを、ジューダスは右手で制し、左手で柄を掴んで引き抜く。
ヴン、と光の刃が具現される音。
青年はそれに過剰なまでに肩を揺らして反応したかと思うと、血塗れの剣を掴み奇声を上げてジューダスに襲い掛かってきた。
 
「フィリア、下がっていろ!」
 
そう言ってジューダスは青年の剣を受け止めた。
ギッと刃と刃が拮抗する。
非常に力が強い。
パワーよりもスピードで戦うジューダスにとって、パワーファイターとの戦闘を長引かせると不利になる。
しかし、いくら力があろうと、がむしゃらに力を込めるばかりで迷いを含んだその剣を弾くことは、ジューダスにとって容易いことだった。
剣は青年の手の届かない位置まで吹き飛んだ。
青年がよろめき、その場に崩れ落ちる。
彼は二人が見つけた時と同じように、膝を着き項垂れる姿勢となった。
青年の碧の瞳に、ジューダスは映っていないようだった。
涙が彼の頬にべっとりと付着した血を洗い流している。赤い雫が止めどなく頬を伝い落ちていくが、青年はそれにすら気付く様子もない。
自分達の身の安全を考えると、ここで青年に止めを刺すべきなのだろうが、ジューダスは青年の状態から彼が殺戮者ではないと判断した。
何より此処に来た理由──炎の正体を確かめること──を果たすには、当事者とおぼしきこの青年に訊かねばならないだろうと考えたのだ。
黒焦げの“何か”が作り出された経緯を知るためにも。
 
「ああ……ああああっ、う、あ、ああ、お……俺がっ、俺……ッ、俺はッ……俺はぁあああぁあぁぁああぁッ!!」
 
青年は、顔や服と同様血に染まった手で頭を抱え絶叫したかと思うと、そのままうつ伏せに倒れた。
ぴくりとも動かない。
だが死んだわけではなく、気を失っただけだとわかった──勿論、青年の全身に刻まれた傷も軽視できるものではなかったが。
そして、不安そうな表情で彼らを見守っていたフィリアは今度こそ青年に駆け寄る。
 
「ああ、どうしましょう……」
 
慌てふためくフィリア。
なぜなら彼女達は晶術を含め回復手段を持っていないからだ。
 
「その男のサックの中にグミか薬があるかもしれないな」
379真実を求めて 3:2008/09/14(日) 06:16:52 ID:27H2QCstO
 
そう言ってジューダスは青年と同じく血に塗れたサックを無遠慮に開けた──と。
 
「な、」
「っ」
 
思わず声が上がる。
 
「何だ、この異臭は……っ」
 
鼻を抓みながらも臭いの発生源を探る。
探り当てたそれは、いかにも怪しい紫色の小瓶。
残念ながら、彼らの知る滋養ドリンクでも万物の霊薬でも命の水でもなかった。
『良薬は口に苦し』というが、いかな良薬でもこれ程の悪臭を放つものは存在しないだろうと思う。
せめてグミを、と思うも、それらしき物体は見当たらない──皮肉にも彼の姉がお約束とでも言うかのように支給されたグミ尽くしのサックを持っていることを、彼らは勿論知るわけもない。
悪臭を放つその小瓶をサックな放り込みすぐさまサックの口を締めると、若干臭いが和らいだ気がした。
ジューダスは自分と青年のサックをその場に置き、
 
「治癒術や薬品がないなら仕方がない、これでとりあえず応急処置をする」
 
自らのマントを引き裂き始めた。
 
「わ、私も手伝います!」
 
思ったよりもがっちりした青年の応急処置を二人で協力し、手際よく行っていく。
包帯がわりにマントで応急処置を施され黒ずくめとなった青年は、悪夢を見ているのか、時折小さく呻き声を上げていた。
一段落着き、フィリアは小さく溜め息を吐くと、青年の様子を窺いながら呟く。
 
「それにしても、何があったのでしょう……」
「さあな。こいつから話を聞かないことには何もわからん。今はこいつが目を覚ますまで待つしかない」
 
青年の取り乱し方は尋常ではなかった。
先程剣を交えた時は恐慌状態に陥っていたためまるで素人のように剣を扱っていたように見えたが、青年は本来相当の剣の使い手であるようだった。
精神面がどうかはともかく、そのような剣術に長けた人物があれ程錯乱するということは余程の事がこの場で起こったに違いない。
 
ここで何があったのか。
この付近で燃え上がった炎は何だったのか。
傍に転がる黒焦げの“何か”は何なのか。
これを誰が“殺”ったのか。
 
……訊きたいことは山程ある。
ジューダスとフィリアは、青年ルークが目を覚ますのを待ち遠しく思いながらその時を待った。
 
 
 
 
380真実を求めて 4:2008/09/14(日) 06:18:21 ID:27H2QCstO
 
【ジューダス 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、若干の焦燥
所持品:ロイドの仮面セット、レーザーブレード
基本行動方針:お互いの仲間を探す
第一行動方針:青年から話を聞く
第二行動方針:南の人工施設(E7ナーオス基地)に行く
第三行動方針:フィリアを守る
現在位置:A7
 
【フィリア・フィリス 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、不安
所持品:マジックミスト
基本行動方針:お互いの仲間を探す
第一行動方針:青年から話を聞く
第二行動方針:南の人工施設(E7ナーオス基地)に行く
第三行動方針:ジューダスと共に行く
第四行動方針:ジューダスに既視感
現在位置:A7
 
【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP40%、TP95%、気絶、恐慌状態、放送を聞いていない
   強い恐怖、全身に傷・打撲・痣、イレーヌとスタンへの不思議な感情
所持品:ミスティシンボル、メロメロコウ
基本行動方針:今自分にできることをする(ほぼ瓦解)
第一行動方針:???
現在位置:A7
 
 
※ソウルブラストは、ジューダス達から数メートル離れたところに放置されています
 
381名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 06:19:50 ID:27H2QCstO
投下終了です。
ルーク頑張れ、超頑張れ…
382名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 06:22:46 ID:FU+if/AzO
投下乙です。
主人公勢が続くな。そしてレムの塔人気過ぎw
383名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 06:24:34 ID:wZKYRXFuO
乙です
ルーク精神的にも体力的にもかなりやばいな
放送聞けたんだろうかw
ジューダスとフィリアがついていれば安心か
384名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 06:29:34 ID:wZKYRXFuO
言い忘れたw
投下します
385境界線上のアリエッタ 1:2008/09/14(日) 06:31:12 ID:wZKYRXFuO


『……哀れな小羊は計十名……――』
小さな膝に押しつぶされた腐葉土がくしゃりと軽い音を立てる。
可愛らしい猫の着ぐるみには容赦なく泥が付着する。
少女はそれっきり壊れたオルゴールの上の人形のように動かなくなってしまった。
これからこの少女を守り、共にその人物を探そうと歩き始めた矢先のことだった。
少年はその痛々しい姿を横目で見つつ、歯を噛み締めながら次々と呼ばれる犠牲者の名前に斜線を引いた。
一緒に禁止エリアを書き込んでいた少女の名簿は涙と黒鉛でぐちゃぐちゃになっている。
代わりに自分が聞いて、後で教えてあげなくてはならない。
『――……そして、イリア・アニーミ。』
最後の犠牲者らしき女性の名が呼ばれ、クレスは何も言わず名簿を上から眺めた。
参加者数66人、開始12時間で死者10人と言ったか。許せないことだが、意外に少ないなとクレスは思った。
大抵の人々と同じく殺し合いなどした事がなかったクレスは、それに近い経験としてヴァルハラ戦役の雰囲気を想像していた。
多くの戦死者を出した大規模な戦争を見ていた彼は、もっと沢山の人が死んでいるものだと覚悟していたが、
戦場とは違って、全員が全員相手を殺すために行動している訳ではないのだ。
それを考えると安堵する反面、不安も大きくなる。
彼にはまだ守らなくてはいけない人が沢山居るのだ。
二人がその死を目の当たりにしたリーガルの名前も呼ばれたことから、放送の信憑性は高い。
きっと何らかの装置か魔法等で参加者の生死を判別できるようにしているのだろう。抜かりない主催者だ。
嗚咽と共に嘘、嘘、と呪文のように呟くアリエッタもそのことは解っているだろう。
彼女の愛するイオンという人物が早々に呼ばれてしまったのはクレスにとっても辛いことだった。
愛する人を亡くした悲しみは耐え難いものだ。
クレスはまたしても崩壊したトーティスの村を思い描くが、感傷に浸っている場合ではない。
少女は今、一本の線の上にゆらゆらと立っている。
最初から殺し合いに乗ってきたような性格だ。一挙一動に細心の注意を払わなくてはならない。
相当動揺して頭を抱えながら愛する人の名を呼んでいるアリエッタを、クレスは強く抱きしめるような思いで見つめた。
386境界線上のアリエッタ 2:2008/09/14(日) 06:32:42 ID:wZKYRXFuO

『おや……約一名、名前を言うのを忘れていました……フフフ……』
わざとらしくおどけた不快な声が鼓膜を揺らし、クレスは慌てて鉛筆を取った。
名簿をもう一度見直してみると確かに一人足りない。
イオンの名が呼ばれてしまった手前表に出すことは無かった安堵感に再びちくちくと針が刺さる。どこまでも悪趣味なピエロだ。
ゆっくり、焦らす様に喋る男の声が段々と聞こえ辛くなってくる。
気づけば、アリエッタの泣き叫ぶ声は今までのおどおどした態度から想像も付かない程大きくなっていた。
どこにスピーカーがあるのか知らないが、放送はクレスたちの居る森の中でもきちんと耳に届く適切な音量で響いていたはずだ。
その声は、何をそんなに泣く必要があるのかと問いかけたくなる赤ん坊の泣き声のように音量を増していく。
「嘘なんだから!!嘘なんだから!!!信じないんだからぁ!!!」
『…ェイグ・…ベル……フフフ……。 』
「アリエッタ!気持ちはわかるが静かにしてくれ!放送は聞かないと!」
誰かの名前が呼ばれたようだが聞き取れなかった。重要な話は聞こえず気色の悪い笑い声の残響だけが耳に入る。
クレスは腹が立って思わず大声で頼んだが、アリエッタ自身の高い声にかき消されて彼女の耳には届かない。
いくら愛する人を失ったからといっても、これはちょっと異常ではないか。
このくらいの歳の少女なら仕方の無いことなのだろうか。完全に自分を見失ってしまっている。
依存とも取れる彼女のイオンへの想いの重さを出会ったばかりの少年が知るわけもなく、
こうなったら無理矢理口をふさいでしまおうと思ったその時、

「イオンさまあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

小さい体のどこにその声量を隠し持っていたのだろうか。
それは母を呼ぶ迷子の子供のように。躾けられていない犬の遠吠えのように。
現実を受け入れ切れなかった少女はありったけの声と感情を吐き捨てて、ついに走り出してしまった。
クレスはその凄まじい金切り声に怯むことなく、すぐに後を追った。
思っていた以上に彼女の精神は不安定で、彼女の立つ境界線は細長いものだったのだ。
風に煽られればどちらの方へでも簡単に堕ちてしまうだろう。
そうなる前に自分が掴み止めなくては駄目なのだ。
彼女を守ると、彼女を止めると約束したのだから。
387境界線上のアリエッタ 3:2008/09/14(日) 06:34:19 ID:wZKYRXFuO


「アリエッタ!!そっちは駄目だ!!」
名前を呼んでも耳も貸さず、振り向く様子も立ち止まる素振りも見せない。
だが男女の走力の差か、二人の姿は段々と近づいていった。
クレスはアリエッタよりもそのずっと先を見ていた。
前を走る少女の更に向こうに見える、小指の爪程の小さな人影。
自分でもよく気づいたな、と感心するほど遠く、それはゆるやかなウェーブの長い金髪をなびかせ、ゆっくりとこちらへ向かってくる。
身体が強張る。
見間違えるはずが無い。
怒りと、焦りと、悪意に溢れた僅かな喜び。言い表せない複雑な感情の波が一気にクレスを襲う。
(どうする…!?)
それは幸運か。はたまた不運か。
(この状態で戦うか…?)
決着。チャンス。両親の仇。平和の為。様々な単語が脳裏に浮かんでくる。
(でも、アリエッタが…)
目の前を走る少女は遠く木々の間に見える人影に気づいていないようだ。

『……脳内の回路を経て……そしてどのような答えを出すか……それこそが……私の楽しみ……。 』
そんな少年の葛藤をあざ笑うような放送は続けられていた。
道化師の言葉は断片的に耳に入ってくるが、名前らしき単語は聞き取れなかった。
もう最後の死者は呼ばれてしまったのだろうか。放送自体が終わってしまったのかもしれない。
真面目な少年は、どんな警告やルールが説明されているかもわからない放送を最後まで聞かず、
他人の為に走り出してしまった自分は馬鹿なんじゃないかと自虐した。


【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:HP50%(集気法により) TP90% 失血による貧血 葛藤  不安
   右横腹に深い裂傷(止血済み) マント破損 若干の疲労 決意
所持品:デュナミス パナシーアボトル×3 首輪
    リーガルのサック(スコップ ???)
基本行動方針:ゲームを止めるため同志を募る。守る側の存在になる
第一行動方針:今、成すべき事を早く考える
第二行動方針:リーガルさんを殺したのは誰だ…!?
第三行動方針:放送の続きが知りたい
現在位置:D1南東(ガオラキアの森/TOS)
※ 第一回放送で最後に呼ばれた死者が誰だか知りません。

【アリエッタ 生存確認】
状態:HP100% TP95%以上 アニスへの対抗心  腹に銃跡(×2 処置済み) 
    深い悲しみと怒り 大混乱 極度の精神不安定 暴走
所持品:ソードブレイカー ねこねここねこ ??? ??? 空のビン
基本行動方針:???
第一行動方針:イオン様
第二行動方針:イオン様
第三行動方針:イオン様
現在位置:D1南東(ガオラキアの森/TOS)
※ 第一回放送でイオンより後に呼ばれた死者の情報を書き写していません。

【ダオス 生存確認】
状態:HP、TP100%
所持品:聖弓ケルクアトール、矢30本
基本行動方針:D1にあるのがユクドラシルか確認する
第一行動方針:ユクドラシルの確認優先、邪魔しなければ殺しはしない
現在位置:E2北西
388境界線上のアリエッタ@代理:2008/09/14(日) 06:58:20 ID:27H2QCstO
代理で、投下終了宣言です。

というわけで投下乙!
タイトルに反応したなんて、そんなことは…ナイヨ。ないんだからねっ!
主人公・ラスボスがまた邂逅しましたね。
アリエッターーー!
389名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 06:59:04 ID:U3WrasyFO
投下終了です
390名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 10:08:53 ID:va3d74kVO
皆様投下乙です
ルークはホントにカワイソスだな…
ジュダフィリ組で不幸から脱出できるか?
アリエッタはいきなり殺戮しなかっただけまだマシか…
そして空気魔王がやっと復活w
391名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:09:38 ID:zNS4giyYO
投下します。支援必須なので頼みます。
39260マイルと10マイル -Water&Iron- 1:2008/09/14(日) 11:11:57 ID:zNS4giyYO
覚悟は、強くて歪な恐怖だ。
悲鳴を上げる僕の潤んだ目玉を、それは嗤いながら容赦無く抉るんだ。
鋼の様に強靱で美しい意志を、僕はショーケースの向こう側から指を咥えて見る。
華やかな毒とグロテスクな薬に挟まれた拙い僕は、笑える程に不自由だ。
趣味が悪いパステルカラーの幻想が僕に唄う。
『さよならばいばいじゃあ*んで』




【12:45】




最後までヒトで居る事は悪ですかと、彼女は、アニーさんは言った。
僕に問われた題では無い、それは理解しています。けれど、僕には分かりませんでした。
……僕は、子供だから、仕方無いんでしょうけれど。
だからアニーさんの言う事も、アッシュさんの言う事も半分理解出来たかどうか。
仕方無いですよ、何度も言うけれど、だって僕は子供なんだから。

“それは免罪符には成り得ないと知りながら?”

別に? それで良いんです。僕だけ百花斉放の舞台に上がれなくても、結構なんですよ。
だってそんな資格、きっと僕には無いから。
リッドさんもキールさんもあの時動いたのに、僕は恐くて一歩も動けなかったんですよ?
弱さは、きっと罪なんです。
だって僕の中に一握りの勇気さえあれば、リッドさんの未来は変わっていたかもしれないから。
「……ぜびゅうぅっ……がひゃうッ……」
何処か懐古的な木製壁掛け時計の音に抱かれる様に、僕は静かに瞼を閉じていた。
一定時間毎に流れる機械的な音が僕に迫る。
責められる原因も、心当たりさえもが皆無なのに、あんなにも僕に迫る。
まるで選択を迫るかの様に、僕の脳内を、無垢で純粋な結晶体を。
時計の音が鋼鉄製のハンマーとなり、これでもかと思い切り叩くんだ。
あんまりだと、思った。

それは、時計の音だったから。
時間が無いぞ、と言われている様でとても気持ちが悪かった。吐き気がした。
如何して、貴女方はそれを、よりによってこの僕に聞くんですか。
フォッグさんと違って、物理的な力も、ファラさんと違って、決断力も。
リッドさんと違って、判断力も、キールさんと違って、理解力も、何も無い凡な僕にぃッ!
「……ぁえ゛っ…っぐはあッ…!」
僕はゆっくりと膝に顔を埋めた。赤い服はごわごわとしていて、とても気持ちが良い物とは言えない。
何時もならこんな僕を元気付けるファラさんも、お腹が減ったと喚くリッドさんも。
歌を唄うメルディさんも、僕に突っ掛かるフォッグさんも、何かとぶつぶつ呟いてるキールさんも。
39360マイルと10マイル -Water&Iron- 2:2008/09/14(日) 11:14:36 ID:zNS4giyYO
今は誰も、誰も誰も誰もぉッ! ……此所には居ない。
それは凄く心細いもので、部屋が何故かとてつもなく窮屈な犬小屋か何かに感じた。
御先祖様の帽子をくいと下げ、ぎゅうと膝を強く抱く。関節が少しだけ悲鳴を上げた。
窓から差し込んだ朝日は四角く切り取られ、木製の床を白く照らす。
部屋を漂うハウスダストは光を反射し、四角く切り取られた陽光の部分だけは幻想的に見えた。
黴臭さを強く鼻孔に感じて、僕は更に深く顔を膝に沈める。
ふと片足に妙な温もりを感じた。帽子に切り取られて狭くなった視界で一瞥を投げやる。
左足が何処からか漏れた光に照らされていた。僕は少し慌てて光を避ける。
行動理由をイマイチ理解出来なかったので、少し考えてみた。
……それが忌避すべき最高のリアルだと、何処かで無意識に理解していたからに他ならないからだと、僅かに感じた。
同時に、何て卑怯で矮小な、とも感じた。
心が、確かに悲鳴を上げた。

ふと瞼を下ろすと、リッドさんが*んだ姿が網膜の裏側へと鮮明に蘇る。離れないのだ。
さて、ここで質問。
僕は……僕は、先ず最初に、どう思ったと思いますか?
一緒に抗いたいと思った……違います。
キールさんを援護したいと思った……違います。


嗚呼、答えはですね。
僕は、逃げたいと思いました。


被害を被りたくないから、*にたく無いから。
だからリッドさんの仲間だと思われない様に、僕はキールさんに対して見て見ぬ振りを演じた。
笑っちゃいますよね? 僕にとっての仲間なんて、この程度のうっすぅいものだったんだから。

そして……まるで己が濃霧の中の迷宮に居る様だと、刹那に感じた。
僕の周りの人を、ぬいぐるみを、道化師を、全てを意識する都度、到底拭えぬ違和感を覚えるのだ。
嗚呼、“僕は如何しようも無い程に一人なのでした、はい僕終了”。
周りの人は面白い程に僕を見ていない。
僕の勝手な自意識過剰、最初から破綻している自己防衛。
薄い個性、願望だけの石像、脆くて仕方が無い仲間意識。ははッ、最ッ高。
ふと、冷や水の様な視線を感じた。僕は肩をびくりと揺らして視線を感じた先を見る。
道化師は、仮面の下から確かに僕を見ていた。“僕にはそれが分かった”。
そして嗤う。漸く気付いたのかと、お前なんて無くても一緒なんだぞと、誰も見ないんだぞと。
ははは、そうかそうか。そうだったんだ畜生、と自嘲。
39460マイルと10マイル -Water&Iron- 3:2008/09/14(日) 11:18:58 ID:zNS4giyYO
僕には決定的な弱点があった。僕は要素に属さない。否、僕は要素に“属せない”。

だから、歯牙にすら、僕は掛けられないんだ。

とても、言葉では表せぬ程に巨大となった漠然とした罪悪と劣等の感情。
それらが僕の身体を責め、鉛の塊にした。
僕の正体は、実に下らないものだったんだと気付いたのが、この時だ。
唯の無価値で薄くて空っぽの抜け殻が、僕の本性だった。

死にたいと、切に願った。

そうして馬鹿は気付くんですよね。

死ぬ勇気さえ、そこには無い事にさ。

「…っぐばッ! あ"ぁッ……!」
ぎしりと、小さく軋む音が鼓膜を刺激する。
床から一本だけ半端に飛び出た釘を、僕は指で押し込む。
“まるで僕の様だ”と思った。
待て、と少し思考する。すると僕を押し込む後押しも、僕自身が持っているとでも言うのか。
笑止笑止、莫迦莫迦しい。
それを見つける事が出来ていたら今頃、僕は僕をきっと止めている。

……アッシュさんとアニーさんは、その間にも何かを話していたけれど。
僕は正味な話、どうでもいい話だと、関係無いと思った。
大方加わっても蚊帳の外だろうし、僕に出来る事なんて蚊程も無いんだ。
だから耳を傾けなかった。我ながら最低な人間だと、少し思った。
何だか全てが鬱陶しかったので、僕は更に海賊帽を深く深く下げる。
はっとした。何も見なくなれば、とても安心すると気付いたからだ。

そうするとホラ、下らない、下らないんですよ何もかも!
下らないで全て片付けられるから尚更可笑しいんですよ!
ほらァ、気付けばそれすら下らないじゃないですか! 素敵!

……だから僕は直ぐに自己正当化ファイルに手を伸ばした。
アプリケーションのハッキングが笑える程に簡単で拍子抜けする!
高性能ブルートフォースで約二秒! はァ、パスワードが三桁あぁぁァ?
おい、お前ですよお前、僕の脳! 泣きたくなりますよ!?
ふざけるな海賊崩れチャット、アンタどれだけ不用心なんだよ、単純な構造なんだよと!
空っぽだから当然なんですけどね、にしてもあんたは限度ってモノ知らないんですかァ!?
三桁ですよ三桁ァッ!? 何ともまぁ笑い種じゃないですか!

……取り敢えず、ターミナルを起動、現実逃避ファイルを書き換える!
右クリック、メニューからパッケージの内容を確認!
現実逃避ファイルをトラッシュ・カンにD&D、ドラッ、ドロロッッップ!! 嗚呼! 単純だから冷静にィッ!
395名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:22:25 ID:nWKRPtdJ0
支援
39660マイルと10マイル -Water&Iron- 4:2008/09/14(日) 11:23:21 ID:zNS4giyYO
そしたらオプションを押しながらト・ラッカンシュををくクリッククリックくり九ああぁぁあっクッ!!
はァいおしまい! はいはいそうですそうですデウスエクスマキナですよぉおぉッ!
自己構成が単純明快故脳内改竄処理は呆れ返る程にィ! 簡単なんだッ!
あぁ嗚、エクエ区エクストラトラッラメムメーシションマーク多くて多くてななに何にながなァんだか! あがばあぁがっぐ!
「ぜばぁッ! ……ぜひゅッ………ひォ……ぁにー……んッ、あぁぁ!
 あ"に……ぃさッ! ガあぁひぃぎゃうああぁ"ッ!」
そォうだそうですよ! だから僕はチャットは退屈になって無理矢理眠気をし召召喚したんだッ!
退屈退屈退嗚呼屈退屈たた愚かでた屈過ぎて嗚ッ呼、反吐が出ますねぇッ!
み無力、りょくむりょ無力無力ゥ無りょッむ無力ッく無力むりょうあぁいああぁぁあ馬鹿馬鹿しいッ!
子供、僕は子供だからああぁ? んなもぉ、関かかん関、関係係ッなあぁあッう苦いイ"ッガぅ!
びゃああうッ! クククッキィーッが残ッ、のゴォッててえあぅッああああぁぁ!
現んげん現実げ現実現実現実現実実実現実ッ、とう逃避ファイルがッ! しょう消きょ不かあぁぁであぁッ!
アニィさ!! アッシさュ! 僕く僕ボクぼくぼあぁくゥッはあぁわぁっ!
ぜッぱあぁ嗚ぁ呼ッ! たッ、誰がッ、海賊ゥああぃフリィッダのぉああぁしそぉゥん!?
下らなぁい、下らなぁアイデンティティッ、いだ偉大いだいいだだ偉大偉偉大だい偉大なァッ、しぞんッ!?

――――汝は、何故逃げた?

しし死知らない知らない知らなァいぃあッ!
何もォかも下らない下らなァい下下らなああぁくゥぁらぁ逃げイィアガッッ!!?
「ぜびゅゥッ……ひゅ、あにぃ……い! ああッしゅさ、あッ! ぜッハ、ひゅうッ……びゃああぁぁゥ"がぶェッ!?」

降り止まぬ恐怖が空の涙となり、体と心を容赦無く打ち付ける。
前が見えず、だがひたすら走り抜ける少女の全身は故にズタズタだった。
何度転んだだろう。何度壁に身体を打ち付けただろう。
血と涙、涎と鼻水と雨で顔を濡らした少女は、再び石に躓いてバランスを崩す。
市街は、サニイタウンは、夥しい量の水で氾濫していた。
少女チャットは盛大に地面へと倒れ込む。
身体が上げた派手な音。地から上がる泥水の飛沫。
同時に下らないアイデンティティーの塊が、海賊帽が脱げ落ちる。
397名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:25:13 ID:Xen/qNz7O
支援
39860マイルと10マイル -Water&Iron- 5:2008/09/14(日) 11:26:53 ID:zNS4giyYO
空には墨の様にどす黒い暗雲が立ち籠め、凄まじい勢いの雨と風は彼女の身体を衰弱させ、精神を削る。
絶えず身体を叩く泥水が中途半端に開けられた口に流れ込み喉を通った。
妙な味と砂利の不快感。気管に少々侵入し、水っぽく咳込む。唾が口から溢れて仕方が無い。
だらりと垂れた舌に細かい硝子が刺さり、電気の様に痛みが走る。
朦朧とする意識の中で、彼女は自嘲しながら思う。
情けない、と、それだけを。
たった四文字のそれが脳内に焼き付いて離れないのだ。数千ものそれが全身を容赦無く焼く。
情けなくて、情けなくて、悲しみと呆れを通り越して笑うしか無いじゃないか。
震える華奢な腕に力を入れ、痙攣する筋肉に鞭を打ち、少女は立ち上がろうと試みた。
堪った乳酸が関節を軋ませる。奥歯ががちがちと音を立てた。水がとても冷たくて、寒い。
チャットの中のシナプスが止めろと信号を紡ぐ。
「ひはぁ……あ"ぁッ」
ずるり、と一瞬の虚を突いて濁流が震える腕を盗んだ。
鋭利な砂利が掌を切り、その痛みを感じる前に全身を打つのだ。
水路を越えて溢れる激流が少女の帽子を遥か彼方へと流した。
少女は目を見開いて必死に手を伸ばす――――駄目です、それは僕の宝物でッ!
「……ひぁぐッ! ま、待っで、ぞ、ば、その帽子ィッばひゃああぁッ………あああぁあ"ッああぁがあッ!」
咄嗟に起き上がろうとした事が不運だった。
あえなく少女の小さな身体は流され、全身を民家の壁に煉瓦に打ち付ける。
海賊帽は遥か彼方、チャットは声を裏返して泣き叫んだ。
身を丸くし、濁流に当たる面積を可及的削減。消耗率をカット、同時に保温も開始。
「ひゃ……も、もう……ひっぐ、いや、嫌だ、えぐっ! 嫌ッ! 嫌だだい嫌だいや嫌いやいやや嫌だっぐ、ああぁッ!」
全身で息をする少女はとても痛々しく、だが神々は憐れな目で少女を見るだろう。
僅かな憐憫の情すら湧かぬ、確かにそれは最高に憐れな姿だった。
全身が悲鳴を上げる。チャットは鼻水とも涙とも泥とも言えぬ何かを啜った。
その姿は、実寸大よりも遥かに小さく見えた。
「はひゅぅ、ふひゅーッ……びゃッひ、えぐッ……」
アニーさんは、僕の目の前で、悲鳴を上げながら数歩後退りました。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:29:01 ID:FewARXtN0
支援
40060マイルと10マイル -Water&Iron- 6:2008/09/14(日) 11:29:59 ID:zNS4giyYO
ユージーン、嘘、クレ、アさん、とアニーさんは小さく呟いていて。
何事なのかと近付く僕をアニーさんは容赦無く突き飛ばします。
痛かったです。アニーさんは力の加減を知りません。
僕は泣きそうになりました。打撃攻撃力高過ぎです。ラベンダー食べ過ぎですよ。
アッシュさんがこちらに気付いてどうしたんだ屑、と舌打ちをしながら駆け寄ります。
この人は屑しか言えない生物なのでしょうか。異世界の人は不思議です。
ふと気付いた時にはアニーさんの周りに水が浮遊していました。
無重力って奴でしょうか。セレスティアにキールさん達を迎えに行く時に、艦内で見た球体の水です。
そして……一気に弾けたんです。
瞬く間に空が暗くなって、僕は怖くなりました。
遥か彼方のバルバトスという男を一瞥します。
こちらを笑って見ていました。
多分怒っています、とても。ぶるあ! とか喚いてて非常に怖いです。
頭の血だらけのワカメは食べれるのでしょうか。手頃に食物繊維が摂取出来て健康的ですね。
さて、これは気付かれてはいけない術誘導作戦だったのに、アニーさんの悲鳴で何もかも台無しでした。
アニーさんは酷い人だなぁと思いました。はいはいはいはい僕が一番酷いですけどね分かってますよ。
さて、僕の心の中に先ず浮かんだのは、“*にたくない”という言葉でした。
僕の視界がくるりと180度変化しました。前後方向に綺麗にです。
素晴らしい。完璧な“回れ右”だったと自負しました。お母さんに褒めて貰わなきゃ。
同時に、あれ? と疑問に思いました。
景色が走り抜けて行くのです。とっても不思議でした。
このサニイタウンとか云う市街地の建物は動くとか、アニーさんは一言も言ってなかったのに。
驚かせたかったのでしょうか? 真逆そんな筈無いですし。
じゃあ、とゆっくりと僕は自分の手を見ます。アニーさんから私にはいらないから、と突き付けられた支給品があります。
続いて足を見ます。凄まじい勢いで回転していました。
目を疑いました。かつてないスピード、なんですかこれは。
如何して、僕は誰も居ない方向に走っているんですか。アニーさんとアッシュさんは何処ですか。
あはァ、成程成程ォ。納得しましたよ。


    僕は、逃げているんですね。


笑いが込み上げてきます。寸分の迷いもありませんでした。マッハの決断です。
40160マイルと10マイル -Water&Iron- 7:2008/09/14(日) 11:34:25 ID:zNS4giyYO
僕はアッシュさんとアニーさんを光の速さで見捨てたのです。僕らしくて最高でしょ。
リプレイでした。リッドさんの時と全く同じです。神様の失笑が聞こえました。
そうして今に至ります。
僕の中は混沌としていました。悲しみや驚き、憐れみや喜び。一種の清々しさすら底にはありました。

死にたいと切に願いました。

でもやっぱり、その勇気すらまるで無いんです。
何だか全てが分からなくなりました。どうでもいいんじゃないかなとか思っちゃいました。
「ご、ひゅー……殺し……ひゅー、あにーさ、ひゅー……アッシゅさぁ…ッ!」
……ええ。飛び切りの馬鹿ですよ、僕は。誓ってもいい。
誰一人守れない。守ろうともしない。プライドすら無い空っぽの単なる馬鹿だ。
アニーさんもアッシュさんも、あの瞬間の僕は唯の駒としか見ていない。断言しますよ。
やったぞと、*なずに済むぞと。アッシュさんとアニーさんを囮にすれば僕は助かるんだと。
ならやってしまえと僕の脳内法律は許容した。“過半数”で。打算的でしょ。
だから僕はアッシュさんとアニーさんを*したんです。
簡単ですよ、仕方無いじゃないですかぁ。
だってぇ、ねぇ? 仕方無いよなぁ。
逃げちゃったんですからねーぇ。ははひゃ。
えぇ? あっは!
今更戻ってわざわざ死ぬなんてとんでもないじゃないですか、命が勿体ないでしょ馬鹿ですねェ!
「……ひゅう……ひゃは、ひゃはァ! ひゃふゅぅー、あっはゃばびゃばはははひィー、あッヒャヒャ!!
 ……ひゅう、さ最い低だナぁ、ゲボッ、ああぁぁ"ッ、馬鹿だな"ァー……僕はァ……ッ…ぎゃばぁ…ひゅう」
少女は街の中央に立っていた。笑いながら、涙を流し。実に脆くて弱々しい表情だった。
全身を雨が叩く。少女は汚く笑って空を仰いでみせた。
息も、鳴き声も、笑いも絶叫も唯の言葉も。
全てが嵐に書き消されて何処にも届きはしない。自己証明不可能、何も無い。
少女は涎を無様に零しながら自嘲する。証明出来ないなんて、自分が居ないなんてなんて悲しい事だろう。
そうやって気付いてみれば、己の居場所は誰の側にも無い。
見渡してみても、僕の周りは尽く濃霧だ。
震える声が呪わしい。それでも生きようとしている醜い自分が憐れだ。
少女は奥歯を軋ませた。
誰かの為でなければ、誰かと居なければ生きられない屑人間の癖に。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:39:07 ID:QKuSLQ+A0
支援
403名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:40:17 ID:wZKYRXFuO
支援
40460マイルと10マイル -Water&Iron- 8:2008/09/14(日) 11:41:54 ID:zNS4giyYO
「ひゅう……あはは、ひゅー、僕、ふひゅ……ひ、ひと、一人だ…ひゅうッ」
嫌だ、一人は嫌なんだ。
嗚呼、烏滸がましいと思ってますよ、貴方さっきからずっと話し掛けてますよね。誰ですか。
そうですか、意地悪ですね。
ええ……それでも、僕は一人は嫌なんです。だって弱い、弱いから。
だから一人じゃ駄目なんです。だから“守りたいんだ”と今思えた!
無茶は承知です。現に僕は逃げている。現実から、幻想からさえも!
中途半端で脆い覚悟だから、僕はこうして道を戻って、前にも後ろにも進めてない!
情けない、情けないですよ!
憐れで下らなくて馬鹿で最高に笑える! 最低ですよ僕は、愚の極みだ!
“誰かが後押ししてくれれば、誰かが言ってくれれば”行けるのに! 畜生ッ!



―――ならば、私に愚かな提案が一つあるのだが如何だね。のぅ、此所で一辺、*んでみるのは如何だろう?



そして、“全てが凍った”。淡い光と浮かぶ滴、モノトーンの世界。
空白の“二時間”は、少女以外に誰も知らない。




【13:45】




「今、僕が」
少女はがむしゃらに駆ける。同じがむしゃらでも、先程までとは違う事が幾つかあった。
一つ、向かう方向。少女は来た道を戻っていた。
二つ、その表情。凛とした顔と鋭い目は、目標をしっかりと捉えていた。
そして三つ、さて、皆に問を質そうか。
「僕がやらないと」
真相は今は語れない。ヒントは非表面上。
オルバースの中にある解を貴方は果たして掴めるか?
挑み、そして廻せ。さすれば意志を“与える力を与えん”。
「誰が」
左の邪、右の雷。唸る風。
轟く咆哮、響く雷鳴。身体を打つ雨。少女の眼光は鋭く、未来を居抜く。
脳内で演算、全てのプロセスを仕掛けと認識。
攻撃、防御。全ては巧妙な絡繰り。
螺旋仕掛けの戦闘人形、力だけの脳無し戦士。
40560マイルと10マイル -Water&Iron- 9:2008/09/14(日) 11:46:02 ID:zNS4giyYO
予測不可能? 笑わせる!
仕掛けの天才、名はチャット。アイフリードの子孫なりッ!
僕はそれを誇りに思うッ!
……不可能なんてッ、在りはしないんだあああぁぁッ!
「何時」
チャットの脳内には僅かな染すら無く、清々しい程に真っ白だった。
―――動ける、分かる、どう動けばいいか、完璧に見える!
姿勢を低くし、最低限の動きで行動。“半ば本能で絡繰りを打破する”。
靴に魔力が宿る。人間の限界を超えた脚力は、スピードとジャンプ力を少女に差し出した。
するりと邪を避ける。懐に手を入れ、瞼を閉じたまま跳躍。
空振りした雷を視界の端に認めながら、懐のそれを、鉄のワイヤーを図太いそれに巻き付けた。
「やるんですかあぁああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁああぁぁあぁあぁぁぁッ!!」
この刹那、少女は、チャットは。
その仕掛けに対する天賦の才を余す事なくフルに活用し――――覚醒したのだった。



406名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:46:24 ID:miGJ5xbRO

407名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:47:39 ID:9cUb5MZp0
支援
40860マイルと10マイル -Water&Iron- 10@代理:2008/09/14(日) 11:57:09 ID:z+ItVOpTO
【チャット 生存確認】
状態:HPTP90% 右頬に腫れ 首に絞められた痕跡 アニーに母性を感じている 体中に傷 決意
所持品:スタンダードマグ(残り装填5発) 銃弾50発 旗の形をした『何か』 タバサ
ナイトメアブーツ イクストリーム
基本行動方針:アニー、アッシュを守りバルバトスを倒す
第一行動方針:セネルと合流したい
現在位置:G2街内部、東地区
【バルバトス・ゲーティア 生存確認】
状態:HP50% TP90%
支給品:プラズマカノン ソウルイーター ???
基本行動方針:赤毛、英雄を殺す
現在位置:G2街内部、東地区
【アッシュ 生存確認?】
状態:HP50%? TP85%?
支給品:クリスダガー ??? ??? ジェイドの作戦メモ二枚
基本行動方針:???
現在位置:G2街内部、東地区
【アニー・バース 生存確認?】
状態:HP85%? TP75%? フォルス暴走
支給品:ハヌマンシャフト
基本行動方針:???
現在位置:G2街内部、詳細位置不明
409名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:59:31 ID:z+ItVOpTO
代理投下終了。

一行あけるの忘れた。スマン。
41060マイルと10マイル -Water&Iron- 10@修正:2008/09/14(日) 12:11:38 ID:zNS4giyYO
代理して頂いたのにすみませんorz

【チャット 生存確認】
状態:HPTP90% 右頬に腫れ 首に絞められた痕跡 アニーに母性を感じている 体中に傷 決意 帽子無し
所持品:スタンダードマグ(残り装填5発) 銃弾50発 旗の形をした『何か』 タバサ
    ナイトメアブーツ イクストリーム
基本行動方針:アニー、アッシュを守りバルバトスを倒す
第一行動方針:セネルと合流したい
現在位置:G2街内部、東地区

【バルバトス・ゲーティア 生存確認】
状態:HP50% TP90%
支給品:プラズマカノン ソウルイーター ???
基本行動方針:赤毛、英雄を殺す
現在位置:G2街内部、東地区

【アッシュ 生存確認?】
状態:HP50%? TP85%?
支給品:クリスダガー ??? ??? ジェイドの作戦メモ二枚
基本行動方針:???
現在位置:G2街内部、東地区

【アニー・バース 生存確認?】
状態:HP85%? TP75%? フォルス暴走
支給品:ハヌマンシャフト
基本行動方針:???
現在位置:G2街内部、詳細位置不明

※海賊帽は街の何処かにあります。


投下終了です。
411名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 13:00:16 ID:UVbfulN00
うお・・・おおお・・・なんだこれ・・・!投下乙!
412名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 13:45:27 ID:va3d74kVO
投下乙です
す、凄すぎて感想が書けないだと…!?
なんかもう、圧倒されました
413名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 14:10:35 ID:ruq6h+Bc0
投下乙
ヴェイグに続きアニーも暴走したか…
チャット頑張れ、超頑張れ
414名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 14:28:06 ID:ZIbQY97RO
投下乙。
すごすぎてびっくりだ…
アニーかわいそうだ
そして対ワカメ戦の計略は崩れるのか、悶えるぜ
415名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:12:37 ID:uV1sLB9gO
なんでチャット発狂したの?
416名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:19:28 ID:9872Ce0ZO
投下します
支援してくださると助かります
417決意と困惑 1:2008/09/14(日) 16:21:11 ID:9872Ce0ZO

俺が知らないうちに仲間が殺されていた
いや、知らないなんて言い訳はできない
ここが…このゲームがどういったものか、理解していたはずだ
なのに俺は、その現実から目を背けるように…
一体俺はどうすればいい?
教えてくれよ、リーガル、プレセア……



膨れ上がる殺気。
ロイドは思考を止め、反射的に顔を上げた。

「アーヴィング!」

クロエが剣を抜きながら叫んだのと、ロイドが身を捻って幼い少女の一撃を避けたのはほぼ同時であった。

「……くっ!」

少女は悔げに顔をいがめると、瞬時に間合いをとる。
一瞬前まで彼女がいた場所に、ピコピコハンマーが振るわれた。

「な、何!?」

慌てて身構えたのは、一番反応が遅れたノーマ。

初撃が外れたことに少女は忌ま忌ましげに呟いた。

「またしくじりました…」

「また、だと…?」

その言葉に、ロイドは眉をひそめる。
“また”。この言葉が暗示していることは一つ。

418決意と困惑 2:2008/09/14(日) 16:22:27 ID:9872Ce0ZO
「お前、今までにも人を襲ってきたんだな…?」

「……答える必要はありません。覚悟してください」

そう言ったと思った瞬間、少女は…すずはロイドの視界から姿を消した。

「きゃあ!!」

悲鳴が上がり、彼とクロエは弾かれたようにその方を見やる。

肩を押さえて怯んでいるノーマに、すずは剣を振りかぶっていた。
ノーマの肩を斬った剣が、今度は脳天に振り下ろされる。

「……!」

その剣は何か固い物に当たり、弾かれた。
ノーマの頭蓋が固かった訳ではない。
すずの見張った目に入ったのは、金色のヘルメット。
まだクロエに返していなかったそれを、ノーマは咄嗟に被っていた。

「あ、案外強度があるのね」

自分でも驚いたのか、ノーマは目を白黒させている。

419決意と困惑 3:2008/09/14(日) 16:23:52 ID:9872Ce0ZO
「魔神剣!」

ノーマのヘルメットに気をとられていた すずは、背中に走った衝撃で我に帰る。
痛みに表情を歪めながらも、すずは体勢を立て直す。
剣を振るった姿勢のまま、クロエはすずをきつく睨みつけた。
その瞳を燃やすのは、静かな怒り。
すずはその瞳を冷たい目で見つめ返し、一気に疾走する。
クロエの顔に一瞬躊躇いが浮かんだが、向かえ打つべく剣を振りかぶる。

(躊躇いは命取りです)

持ち前の素早さをいかし、振るわれた剣を避けると同時にクロエの背後に回ったすず。
ハッとして振り返ったが、遅い。
すずはアトワイトを怪しく光らせ、突き出した。が、

「なっ…」

痺れる手の中にはアトワイトがなかった。
固まるすずとクロエから少し離れた大地に、その剣は突き刺さった。
420名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:24:01 ID:ZwqdsGnm0
支援
421名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:24:37 ID:QKuSLQ+A0
支援
422決意と困惑 4:2008/09/14(日) 16:25:57 ID:9872Ce0ZO
「…ピコ破斬」

たっ、と軽い着地音。
同時に吐かれた言葉に、吐いた本人以外眉をひそめる。

「答える必要はある。俺がそう決めた」

ピコピコハンマーを突き付けたまま、ロイドはすずとアトワイトの間に立ち塞がった。

「…襲った、と私が言えば、貴方はどうしますか?」

得物のないすずは、無表情で淡々と返す。

「またしくじった、ってことは、まだ殺すことはできてないみたいだな」

「そういうことになりますね」

じりじりと、ロイドはすずに歩み寄る。すずは逆に後ずさっていた。
彼が手に持っているのはただの玩具のはずなのに、後ずさるをえなかった。
それほど彼の放つ威圧感は凄かった。

「仲間はいるのか?」

「……答えません」

「お前、もし人を殺したら、その人の仲間がどんな思いをするかわかってるのか?」

「………」

とん、と塔の壁がすずの背中に当たった。
すずはロイドを正面から見据える。
クロエとノーマは離れて様子を伺っている。
小さな唇が、小さく動いた。
423決意と困惑 5:2008/09/14(日) 16:27:35 ID:9872Ce0ZO


「忍者は常に、非情でなければいけないのです」


頬を撫でる風。響く轟音。
すずは何があったのか理解に時間を要した。
ぽかんとロイドを見る。
そのまま瞳を動かし、顔のすぐ横を見る。
彼の拳が分厚い塔の壁にクレーターを作っていた。
装着している腕輪と、手の甲の宝石が日光を反射する。

「わからねぇなら教えてやるよ。俺は二人も仲間を殺られた。悲しくて悔しくて不甲斐なくて仕方ないさ」

すずは動くことができず、凍り付いたまま話を聞いていた。

「言葉にできないぐらい辛いんだ。こんな思いをする人が、何人も何人もでてくるんだぜ?」

拳が震える。壁のひびが、少し伸びた。

「俺はお前みたいに皆殺して優勝しようなんて、どんなことがあっても思わない」

すずに語りながら、ロイドは先程考えていた問いの答えを自らの力で出しはじめる。

「こんな思いをする人をこれ以上増やしたくないし、たとえ優勝して皆を生き返らせたところで、皆がそれを喜ぶとは思えない」

そうだよな、リーガル、プレセア…

「だけどもし俺の前で人を殺そうとする奴がいたら…全力で立ち向かってやる。死んだ仲間の分まで、俺は俺の意志を貫き通す」

すずの表情が若干引き攣る。

「さぁ、お前はどうする?」
424名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:28:47 ID:ZwqdsGnm0
ロイドかっけえな支援
425決意と困惑 5:2008/09/14(日) 16:30:03 ID:9872Ce0ZO


一瞬間を置いてから、すずは駆け出した。
ロイドに突進するわけでもなく、
呆然としているクロエやノーマに向かうわけでもなく、
アトワイトを取りに行くわけでもなかった。
彼女は脇目も振らず、河に向かって走り去っていった。



「……ノーマ、大丈夫か?」

ロイドは塔から離れ、ノーマに歩みよった。

「う、うん、平気。ちょっと斬られただけだよ」

肩に自分で治癒術をかけ始めるノーマ。
クロエはロイドに小さく頭を下げた。

「ありがとう、アーヴィング。助かった」

ロイドは変わらない笑顔で、気にすんなよ、と言う。
安心して小さく息をついた後、クロエは真顔になった。

「だが、良かったのか?逃がしてしまって…」

「わかんねぇ…。ただアイツ、迷ってた。泣きそうな顔してた」

少女が走り去った方を、ロイドとクロエは黙って見ていた。



すずは河に飛び込んで、無我夢中で泳ぎ始めた。
傷をおして、無理に戦闘を行ったため、足は少し痙攣していた。
脳内に、ロイドの顔が浮かぶ。
彼の真っ直ぐな瞳は、彼女にクレスを思い出させた。

(私は……私は一体どうすれば?)

今の彼女に、忍びらしく冷静にいることは難しかった。

426名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:31:40 ID:nldRwAyQ0
支援。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:34:01 ID:QKuSLQ+A0
支援!
428名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:36:01 ID:A5clPsV3O
支援
429名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:36:42 ID:NVyMoNi8O
430決意と困惑6@代理投下:2008/09/14(日) 16:37:19 ID:QKuSLQ+A0
【ノーマ・ビアッティ 生存確認】
状態:HP95%、TP95%、左肩に裂傷、生乾き 現実に対する不安
所持品:ホイッスル、本人確認済み支給品1〜2個
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。死にたくない
第一行動方針:とりあえず落ち着き、傷の手当
第二行動方針:クロエ・ロイドと共に塔を散策する
第二行動方針:セネル達と合流する
現在位置:F6レムの塔入口
 
【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP100%、TP95%、帽子紛失、生乾き 現実に対する不安
 所持品:オブシディアン、安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:ノーマ・ロイドと共に塔を散策する
第二行動方針:セネル達と合流する。セネルが心配。
第三行動方針:同志を探す
現在位置:F6レムの塔入口
 
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、生乾き、すけべ大魔王 これからに対する強い決意
所持品:本人確認済み支給品1個、エリクシール、ソーサラーリング、ピコピコハンマー
基本行動方針:打倒サイグローグ。死んだ仲間のためにも、ゲームには乗らない意志を貫く。
第一行動方針:ノーマ・クロエと共に行動する。
第二行動方針:同志を探す
現在位置:F6レムの塔入口付近

【藤林すず 生存確認】
状態:HP65%、TP60% 一部内臓損傷、足に大きな裂傷(処置済み)、足の痙攣、これからに対する困惑
所持品:時を駆ける少年の人形
基本行動方針:クレスかクラースを生き残らせる?
第一行動方針:どうせれば?
現在位置:F6河の中


※ソーディアン・アトワイトはクロエ達の傍に放置されています
431名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:40:30 ID:QKuSLQ+A0
代理投下終了です
432名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:41:21 ID:NVyMoNi8O
ミスった
>>415作者の気まぐれじゃないか?それまでは明るかったし。
まぁ心の中ではそうだったと言われればそれまでだが
433名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:45:48 ID:nldRwAyQ0
投下乙です。引き続き投下します。
434名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:47:23 ID:ZwqdsGnm0
気まぐれなのは分かるにしても
前回の矢文の話と繋がらない気がする…
ツッコミは野暮だとは思うがどうしても気になった
435彼の選んだもの:2008/09/14(日) 16:49:52 ID:nldRwAyQ0
ちりんちりんと小気味よい、クラースさんの鳴子の音。
魂の底まで優しく撫でるようなそれに耳を傾けながら、僕は記憶を辿る。

あの川辺で出会ったばかりの僕らが交わしたのは、刃ではなく言葉だった。
『術』の話題を中心に、互いの知り合い、危険と思しき人物、それから先ほど僕と一戦交えた少女のこと。
その中には、驚くべき事がいくつかあったけれど、最たるものは間違えなくクラースさんが南ではなく、北へ向かうと言うことだった。
すずという少女のこともあって、少なくともクラースさんとは一緒に行けないだろうなという予想をあっさり裏切った彼は、
心配ではないのですかという僕の問になお首を振って言ったのだ。

「心配さ。だがね、エミル君。今からでは到底追いつけまいし、それに」

「それに?」

「仮に追いついたとしても、彼女は私に会いたがらないだろうから、ね
 ……さ、そろそろ行こう皆。どうしても気になる場所があるのだよ。
 禁止エリアになる前に是非とも調べたい場所が。な、いいだろう?」

そう言ってクラースさんは広げた地図の北、A4と区切られたエリアに立つ屋敷を指さした。
ここから見ると北西になるその場所へ向かうなら、イグニスのことは後回しにしなければならなかったけれど――

(イグニスの気配が追えてるんだから、後に回すことに決めたんだったよね?)

そこまで思いだし、僕は僕へと問いかける。
返答は、すぐにあった。

(ああ。だが、失敗だったかもな。段々遠ざかってるぜ)

(大丈夫だよ。イグニスの気配自体は追えてるしさ)

(確かにそうだけど、よ)

どこか心配そうな声音が胸の奥で小さくはじけ、消える。入れ違いに耳から入ってくる声。
内側へと傾け気味だった意識をそっと外へ押し戻す。

「おっさん、やっぱりそれ、五月蠅い」

「……ルーティに同意だな」

「えっ、そうですか? 僕はなんか心地よいんだけどなぁ」

ちりりと鳴るクラースさんの鳴子を顎で示しながら言う、ルーティとそれに頷くリヒターさん。
そんな二人に僕は首を傾げながら反対意見を述べ、……あれ、何でそんな変な顔するんです?
そう問いかけようとした瞬間だった。

「……皆様、ご機嫌よう……」

異様な存在感をもって意識へ滑り込んだその声に、
僕ら(いや、リヒターさんたちもみんなそうに違いない)は仕方なしにそれに耳を奪われ、やがて。

「嘘、でしょ……? ……プレセア……、……リー、ガルさん……」

僕の口から転げ落ちた、呼ばれたばかりの二つの名。
気がつけば、甘美な響きは最初からなかったみたいに絶え果てて、
クラース(さん)みたいに出来るのかと言う声が、内側から変わりに響いた気が、した。

436彼の選んだもの2:2008/09/14(日) 16:50:50 ID:nldRwAyQ0
  ◇


「……禁止エリアを聞き逃した者はいないな?」

リヒターの上げた声に、青年と少女がこくりと頷く。
ついで、一呼吸遅れて同じ所作を取った少年に、更にかけるつもりだった言葉を飲み込むと、
彼は上着の内側に忍ばせたソレを悟られないようそろりと握った。

そして一行は、あと僅かに残った屋敷への行軍を再開する。



【エミル・キャスタニエ 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、マナの希薄さに困惑、マフラーなし、マルタと封印の件で焦り気味(現在は非顕在)。
    リーガル、プレセアの死に衝撃。クラースの行動へやや尊敬の念。
所持品:クィッキー、紫電、???
基本行動方針:マルタ、リヒター、イグニスとともに一刻も早く元の世界へ帰還する。
第一行動方針:屋敷へ向かう。
第二行動方針:マルタがとても心配。
第三行動方針:イグニスが気になる。
現在位置:B5 モリスン邸付近

【リヒター・アーベント 生存確認】
状態:TP50%、健康
支給品:ストライクアクス、エバーライト、鎮魂錠
基本行動方針:ゲームに乗る気はない。ギンヌンガ・ガップの封印に戻りたい。
第一行動方針:屋敷へ向かい、クラースの言う転移術について調べる。
第二行動方針:元の世界に帰る方法を探す
第三行動方針:イグニスはどうにかしなければまずいな……。
現在位置:B5 モリスン邸付近

【ルーティ・カトレット 生存確認】
状態:HP100% TP100% 半乾き 真剣
所持品:強力グミセット BCロッド
基本行動方針:死にたくはないがゲームは乗りたくない。
第一行動方針:屋敷へ向かう。
第二行動方針:3人とともに行動する。
第三行動方針:スタン、アトワイト達を探す。
現在位置:B5 モリスン邸付近

【クラース・F・レスター 生存確認】
状態:HP100% TP100% 徹夜での野外活動によりお疲れ
所持品:ピヨノン 破魔の弓 グミセット
基本行動方針:ゲームには乗らず仲間を集め打開策を図る
第一行動方針:モリスン邸にある転移術の研究文献を探す。
第二行動方針:すずのためにも自分に出来ることをする。
第三行動方針:3人と行動を共にする。
現在位置:B5 モリスン邸付近
437名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 16:53:54 ID:nldRwAyQ0
以上です。
438名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 17:01:17 ID:UVbfulN00
なーる。エミルは精霊だから心地いいんだな
439名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 17:15:50 ID:FU+if/AzO
投下乙!
すず見てると涙腺がやばくなるね。
クラースさんも急いであげて!
440名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 17:23:10 ID:FU+if/AzO
連投スマソ。
まとめ氏相変わらずの超速ですね。感謝してます。
441名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 19:13:50 ID:va3d74kVO
投下乙
すずちゃんは改心フラグが見えてきたけど…そっちにはシゼルがー!
クラースさん達、そっちいったら凄い大所帯の対主催チームができそうw
442名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 19:40:39 ID:RjYgVDoD0
皆様乙です!
ディストらしすぎる描写に吹いた。
ルークの不幸は何処まで続くんだw
クレス頑張れ、超頑張れ。
フォルス能力者はどいつもはた迷惑すぎる。
ロイドは主人公勢の中で今一番安定してるな。
お前等もA4に行くのかよ!密度高すぎ!!w
443名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 21:15:48 ID:zgONidPOO
ダオスが空気魔王になったのはやはり空気の象徴の弓キャラになったからか?
444名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 21:37:11 ID:27H2QCstO
投下乙!
尻敷かれラタトスク組被ったorz
エミルの放送聞いた後のセリフが「、」の数以外まるまる同じで噴いた。これぞデスティニー!
それはさておき、ロイドの格好よさにマジ泣きした。しゅ、主人公…!ブワッ
すずちゃんも頑張れ…!
エミルが鳴子心地よいと感じたのがすげー上手いなと思った。
正直俺も唐突すぎて前回の話とどう繋がってチャットが発狂したのかよくわからんが、チャット発狂に涙した。
アニーも暴走しちゃったんだな…
みんなまじでGJ!
445名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 22:01:57 ID:uV1sLB9gO
>>432
そうか、気まぐれなら仕方ないな。しかし繋がらな(ry
446名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 22:35:03 ID:FewARXtN0
投下します
447パイにはたっぷりジャムを 1:2008/09/14(日) 22:36:16 ID:FewARXtN0

【瑞瑞しく湿った黒いジャムの右腕】

狂った様な速さで彼は城から出てきたと思えば石造りの堅牢なそれを取り囲む鬱蒼とした森に入ると同時に速度は落ち、まるで手負いの獣のようにまるで幼児のように覚束ぬ足取りになった。
刈上げた銀髪の男に(あの城は彼を始め銀髪だらけだった)追われた際は流石に焦ったが一歩城の外にさえ出てしまえば後は森。森。森。身を隠すには充分過ぎた。
薄氷色の燐光を身に纏ったまま目的の彼はぶつぶつと何かを呟き続けている。
彼の思考なんて手に取るように分かる。どうせあの女の名を飽きもせず懲りもせず口にしているのだ。以前からずっとそうだった通りに。
「何処へ行くのさヴェイグ?」
後ろから問いかける。街ですれ違った友に行く先を尋ねる様に。フォルス能力者は互いのフォルスを多少なりとも感知しあう。だから彼の位置を把握するのも実に簡単だったし(暴走状態の彼のフォルスは無防備にもだだ漏れだ)彼も当然こちらの位置を知っているだろう。
しかし彼は振り向かず答えず肩を細かく震わせて内側から襲い来る何かに恐怖しているのか藻掻き足掻き低く呻くばかり。
「クレアクレアクレアクレア馬鹿みたい」
制御しきれず溢れ出す彼の凍気は皮膚ごと奪われた風の力を宿す長剣(不思議と奪い返したいとは思えなかった。このシチュエーションがあまりにも可笑しいからだろうか)によって増幅され雪嵐を生み森に吹き荒れる。
城の尖塔の先に蠢く暗雲。そろそろ城も森も雪化粧が施される頃合だろう。
吐息をも凍てつかせる嵐を自身の生み出す嵐によって幾分か和らげながらその足取りを眺める。
ふと面白い遊びが思い浮かんだので実行に移してみる。現在の天候、雪嵐。己のフォルスも嵐。折角だからそいつを此処に足してやろうと。
淡い翡翠色の光が身体を包む。制御できていない隣を歩く“友”の其れとは違い幾分か大人しく研ぎ澄まされた光。彼の蒼い光にそれをぶつけると想像通り、嵐は勢いを増して吹き荒れた。
この異常気象は確実に人の目を惹く。(殺し合いに乗った人物でも乗らなかった人物でもどちらでも構わない)誰かが釣られてやってくる。
さて見ず知らずの“クレアを殺したかもしれない”参加者が現れたら彼は如何するだろうか。
逃げ道は残さない。【選択せずに(出来ずに)終わる】なんてことは許さないし態々名指しまでしてくれたあの道化師に申し訳ないだろう(面識あったみたいだし余程愛されていたんだねご愁傷様)。散々心の力の尊さとやらを説いた男は如何するか?
黒を選ぶならば喜んで協力しよう、ようこそこちら側へ。もう戻れない(逃がさない)よ。
白を選ぶならば喜んで殺してあげよう、さようなら。彼の世でクレアちゃんとお幸せに。
動かぬ右手(凍傷で細胞が壊死するとかいう次元じゃない、完全に「凍って」「停止」している)が彼の左手に触れるか触れないかの位置で嵐に吹かれて揺れている。
背後から見るものが居れば(居たとしてもあの城の面子だろうから具合が良い)手を繋いでいるように思えるだろう。
「さあ既に僕らは運命共同体さ、聞こえていないかもしれないけれどヨロシク頼むよ」
壊れかけの操り人形は何を見何を感じ何処へ彷徨う。少なくとも自分に向けられる冷気の激しさから言って歓迎されていないのは確かだろうが。
吹雪の中でも優雅に、外套に雪片の一粒も付着させず男は歩く。
 
 
448パイにはたっぷりジャムを 2:2008/09/14(日) 22:39:15 ID:FewARXtN0

【ナイフを入れられた灰色のパイの心臓】

心臓を直接鷲掴みにされたような衝撃が今でもまだ胸に残り続けている。
(嘘だ嘘だ有り得ない嫌だ現実で在って欲しくない)
剣を握り締めた掌の出血は何時の間にか完全に停止していた。正確には凍結だ。剣を覆った薄氷は既にグローブの上どころか内側の皮膚まで侵食しびっしりと霧氷がこびりついている。
しかし当の本人にはそれを気に掛ける余裕なんて細い針で刺した一穴分も存在しなかった。
元より不安定な彼の精神の均衡を崩すには何もかもが御誂え向きだったのだ。

「クレア。クレア。クレア。クレア。
 如何して
 【当然だ俺達は殺戮を強いられて此処に立っているのだから】
 誰に
 《恨むな憎むな考えるな、それをクレアは望んでいるのか》
 何処で
 【間に合わなかった。俺がこんなところで呑気に遊んでなんか居るから】
 《だがウッドロウの言うことを正しいと俺が感じたのは間違いない》
 俺は如何すれば良い
 【折角剣が手に入ったんだ、殺せばいいじゃあないか、手始めに其処の五月蝿い男から、次は城の中に置いてきた奴等を】
 《それをクレアが望む筈が無いクレアが悲しむ顔なんて絶対に見たくない》
 【なら何故俺は逃げた】
 分からない、でもこれだけは分かる
 《殺し合いに乗ってはいけない絶対に》
 【クレアを殺した奴だけは絶対に許せない見つけ出して必ずこの手で】」

ぴしぴしと何かが軋み歪み皹割れる音が頭の中に響いていく。足を踏みしめた場所の草が花が全て凍り硝子が割れる様に粉々に砕けていく。
このままでは拙いと解っている筈なのに身体の奥底(其処はきっと誰かが大好きな力の源、心の在り処)から溢れる不安定な力の奔流は幽かに残った理性すら押し流して行く。
手にした剣に埋め込まれた半球状の装飾が碧と蒼の混じった色に輝く。肌を切り裂くような凍気と氷の結晶。
(巻き込む、間違いなく、目立ちすぎる、判っている、離れなくては、殺される、いっそ死んだ方が楽なんだ、
 【だが俺には未練がある】、《死んで彼の世で再会出来たとしてクレアはそれで笑ってくれる筈がない》、
 下手をすれば、俺が殺す、逃げなくては、誰から、探さなくては、何処へ)
ふらりと足が傾いたのは城から離れるという選択肢。
幽かな理性が憶えている。
『砂漠みたいな暑い場所は得意じゃない』
その科白を吐いたときにはもう彼女は死んでいたのだろうか。
『私も雪国の出でね』
それでもきっとあんたは殺してない。初めて会ったのに他人のような気がしなかったあんたは。
砂漠の砂にも氷の華は咲くだろうか。ただ感覚のみで暗雲を従え目指すは先は何処。
 
 
449パイにはたっぷりジャムを 3:2008/09/14(日) 22:40:50 ID:FewARXtN0

【不安に輝く白銀のナイフの刀身】

状況把握に努めた彼を待っていたのは本来のマスターからは考えられぬ使用方法。まるで一代前のマスターを自身の刃で殺めた際と同じ狂気が其処には渦を巻いていた。
柄に貼りついた白手袋の持ち主はこの刀身で名も知らぬ男の心臓を抉り、レンズを以って彼の知らぬ強大な風の術を増幅し操った。
今現在柄を握り締め刀身をファンダリアの万年雪よりも冷たい氷で覆った男は晶術とは違うエネルギーに因った雪嵐をレンズを媒体に増幅し発生させ続けている。
一分にも満たない間だが見えることの叶った本来のマスターの張り詰めた表情。
今まで耳にした情報と目にした情報を合わせ剣が出した推測はこうだ。
《現実とは異なる世界で殺し合いが行われ己は其の道具として支給された只の剣なのだ》
己の意思とは無関係に術の媒体として使われる理不尽はそうでなければ結論付けられない。
先程から何度語りかけても小さく何かを呟き続けるだけで反応は返ってこないウッドロウに似た銀髪の男はともかく声もマスター以外に難なく聞こえるようだ。
「へえ、お前喋れたんだ。最初から話しかけてくれれば良かったのに」
直ぐ隣を歩いている男が話しかけてもいないのに代わりとばかりに相槌を打ってくる。それを無視してそいつよりはまともであろう(しかし今は如何考えても発狂に近い状態だ)男に囁き続ける。
《落ち着け、何があった、今此処は一体どうなっているんだ?》
何度語りかけようと彼は長い前髪に瞳を隠したまま一向に答えを返さない。
よもや本当は矢張り素養のある人物にだけ声が届いているだけで、隣を歩く三日月の狂気をべったりと張り付けた男にマスターの素養があったなんて思いたくなかった。
直ぐ傍にいる筈のウッドロウと一刻も早く合流したい(しかし身体が剣である限り自分の意思で行動するのは不可能だから仕方なくこの男達についていかなければならない)。
そうして其れを諦めかけたとき、彼は気付いてしまうのだった。
忘れられない(忘れてはいけない)、隣の男なんて比較にならないほどの狂気に。
《聴こえているんだろうそこのお前は!》
気取られぬように声を潜める。
「なんだい?」
《今すぐ此処を離れろ、さもなくば二人とも――――死ぬ》
雹すら混じった雪嵐で遮られた視界の先、確かに居る、彼を二度に渡り苦しめた圧倒的な存在。
其れは因縁在る故感じられた狂気だろうかそれとも。
距離は未だ離れている筈だ、今から逃げれば(或いはこの場に留まり向こうが此方を無視する可能性の場合)間に合う筈だ。
「へえ誰か人がいるんだってさ、ヴェイグ、かなり強いらしいよ。こっちが殺さなきゃ殺されちゃう。さあ如何するヴェイグ。前をしっかり向いて選ぶんだよ?」
嗚呼、言うことを全く理解してくれない、意思疎通の出来ない人物は嫌いだ。
己の身への不安も抱きつつ、剣は只其処に握られ運ばれるだけ。
 
 
450パイにはたっぷりジャムを 4:2008/09/14(日) 22:42:31 ID:FewARXtN0

【―――そしてそれら全てを呑み込む血塗れの王の口】

(態々此方から下賤の民如きに出向いてやる必要も在るまい)
王は手にした獄炎の剣に氷の欠片が付着しゆっくりと蒸発していくのを眺めた。
(だが此方へ来るならば歓迎しよう、“協力者”よ)
真白のテーブルクロスの上に運び込まれるフルコースを待つが如く天上を統べる王は砂漠の先に霞む塔を見上げる。歩みは止めない。其れが王たる者の道。

彼がピーチパイにブルーベリージャム(若しくは楽しい楽しいフランボワーズジャム)を塗りたくって食べるほどの甘党かどうか、誰も知らない。



【サレ 生存確認】
状態:HP50% TP65% 胸部に痛み(傷はない) 右腕に凍傷(肘上まで完全に凍結) 左足に裂傷
所持品:ペイルドラグ ガーネット ミックスグミ×2 イオンに支給された水、食料
基本行動方針:ゲームに乗り、ヒトの心を否定する
第一行動方針:ヴェイグがどの道を選ぶのか見届ける
第二行動方針:ヴェイグらへの復讐
第三行動方針:アリスは殺さない。
現在位置:C2森→東(砂漠地帯)へ

【ヴェイグ・リュングベル 生存確認】
状態:HP99% TP100% 右手に切り傷 クレアの死にショック。フォルス暴走。かすかに理性有
所持品:金のフォーク ソーディアン・イクティノス(俺オワタ/(^o^)\ 助けてウッドロウ)
基本行動方針:クレアクレアクレアクレアクレア
第一行動方針:クレアを探す
第二行動方針:クレアを殺した者を殺す。サイグローグも殺す。手段は選ばない
第三行動方針:殺し合いに乗ってはいけない
第四行動方針:ウッドロウ達を巻き込みたくない、ウッドロウ達から逃げる
現在位置:C2森→東(砂漠地帯)へ

【ミクトラン 生存確認】
状態:HPTP100% 血塗れ 歩き回ったことによる多少の疲労 頬にかすり傷(銃弾による)
所持品:フランヴェルジュ ブルーキャンドル
    イリアのサック(デザートイーグル 銃弾×20 ??? ???)
基本行動方針:ピエロ含め皆殺し
第一行動方針:塔を登り、周囲の状況の確認
第二行動方針:首輪の確保
第三行動方針:サイグローグとの腹の探り合いを楽しむ
第四行動方針:来るもの拒まず去るもの追わず我が道突き進む
第五行動方針:あの森(ガオラキアの森)には二度と足を踏み入れたくない
現在位置:C1 → D3(黎明の塔)へ。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 22:43:59 ID:FewARXtN0
投下終了です。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 22:48:00 ID:va3d74kVO
投下乙です
ヴェイグがホントに不安定だ…ウッドロウ達を巻き込まない為に城を出たのか…
サレは楽しそうだなー、ヴェイグがどちらを選ぶか1番知りたいのはコイツかな
最後の自重しないイクティノスで、いろいろとふいたけどさ!
453名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 22:58:18 ID:wZKYRXFuO
投下乙です
名言とイクティノス吹いたw
サレはヴェイグおちょくるのはいいが暴走させて勝算はあるんだろうかw
みっくんは何も考えず襲いには行かないか
彼らしい判断だけどガオラキアの森歩き疲れちゃったのかなとか思ってしまうw
454名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 22:59:50 ID:FU+if/AzO
投下乙です。イクティノス自重
だがすごすぎて胸が痛いよ、誰かとめてww
455名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 23:01:27 ID:ZwqdsGnm0
投下乙です!
R未プレイだからサレがどんなキャラか全く知らないんだがこいつ面白いなw
ヴェイグの理性と狂気のせめぎあいも凄い…
そんで>>452読んでイクティノスに気付いて吹いたw
いつか元の持ち主の元に戻れるといいなww
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 23:36:04 ID:va3d74kVO
まとめ氏、登場アイテムの説明欄の更新乙です
草刈り鎌やら拡声器やらの説明でふいたw
457名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 00:11:51 ID:EKjQlOUcO
同じく更新乙です。



気になったんだが…キールのケイジは水、風、炎、源と光も入ってるのでは?
458名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 01:51:22 ID:8IbBGr7M0
なんかようやっと動きがありそうなんで、まあ最後の地ならしだと思って投下
459ラ・マールハート 1:2008/09/15(月) 01:52:37 ID:8IbBGr7M0
突如として響き渡る声が、平穏だった午後のくつろぎカフェタイムを散り散りに引き裂く。
『……皆様、御機嫌よう……』
道化師サイグローグの声は、この屋敷の中にまで何処からとも無く浸透してくる。

クラトスは既に予期していたのだろう、慌てることなくサックから地図と名簿、それと筆記具を取り出す。
カイウスはビクリと反応して、声の出所を探しているのだろうか周囲をキョロキョロと見ている。
チェルシーは食器を洗っていた手を止めて、慌ててみんなの居るリビングにやってくる。
マオは最初驚いた顔つきだったが、クラトスが迅速に行動しているのを見て安心したように息をつく。
エルレインは特に気にしていないのだろうか、ふと頭上を見上げただけで、特に何か行動を取る様子は殆ど無い。
そしてフォッグは……真剣な表情に変わった。普段の豪快さはなりを潜めたかのようだ。

各々の思惑の中で、サイグローグの放送は続く。
あれほど賑やかだった屋敷はしんと静まり返り、クラトスがペンを走らせる音だけが響く。
そして、サイグローグの放送は終わった。

クラトスから動揺を見て取ることは出来ない。しかし、その表情は僅かに険しさを増している。
カイウスはやや不謹慎ながらも、ルビアの名前が挙がらなかったことにホッと胸を撫で下ろす。
チェルシーはウッドロウの名前が無かったのだが、想像以上の死亡者の数に表情が陰っている。
マオは……俯いている。クレアとユージーン、見知った仲である二人の名前があったからだ。
エルレインはカイルの名前が無かったことを残念がっているのだろうか、顔に変化が無いので判断はつかない。
フォッグはリッドの名前が改めて挙げられたことで、しょげ返っている。

サイグローグの放送は、見事なまでに彼らの安らかなる団欒を破壊し、打ち壊していった。

放送の後も、しばらく誰も言葉を発することが出来なかった。
誰かの大切な人の名前が挙がったかもしれないと思うと、自然と口を開くことが憚られる。
その空気の中で最初に動いたのは……マオ。

ガタッと音がして、少年が座っていたイスが動く。
先ほどまでなら気にもならなかったはずなのに、今はやけに五月蝿い。
驚くように、察するように、周囲の視線が全てマオに集中する。
マオは一言だけ「……外の空気を吸ってくる」と喋り、席を外した。
460ラ・マールハート 2:2008/09/15(月) 01:54:07 ID:8IbBGr7M0

マオが出て行ってからしばらく経って、クラトスがようやく場の沈黙をかき消す。
「……プレセアとリーガルは、私の友人だった。そしてマグニスという男は、曲がりなりにも部下だった」
それは、突然の宣言。
「もしも仲間の名前が挙がっていたのなら、抱え込まずに話してしまったほうが良いだろう。
 これから先も……我々が互いに協力し合うというのならな」
それは裏を返せば、ここで別れるのなら、喋らなくても良いということ。
そしてクラトスは……この六人と協力する意思があるということを、暗に示していた。

クラトスの言葉に呼応したのは、まず一人。
「リッドは俺のアレだった。アレを殺したアレは、俺がアレしなきゃあならねェ」
珍しく多弁だった。もっとも、フォッグの普段の口数さえ、この中に知る人間は居ないのだが。
「私の仲間は誰も死ななかったんですけど……でも、誰かが死ぬのは悲しいことです」
チェルシーはその境遇ゆえか、人の死に対しては敏感なところがある。
両親を早くに亡くした彼女は、誰かが死ぬことを無意識的に嫌っている。例えそれが悪人だったとしても。
「……ごめん。俺、少し勘違いしてた」
周囲に感化されてか、カイウスも言葉を紡ぐ。その第一声は、謝罪。
「ルビアしか知り合いが居なかったから、俺はルビアが無事だったことで『良かった』って思ったんだ。
 でも、そういう俺が居る側らで、このロワイアルに参加してる誰かが必ず悲しんでるんだ。そんなの、考えもしてなかった……」
カイウス・クオールズは、この凄く簡単なことに気がついた。
それは、他人を拒絶することが常道であるバトルロワイアルにおいて、学べるはずの無い感情。
様々な幸運の巡り合わせが、カイウスの未だ発展の途上にあるココロを少しだけ成長させていった。

最初に切り出したクラトスの心中は、穏やかではなかった。
非協力的な人間が混じっていたら、同盟は即座に崩壊していた。それは一種の賭けだった。
しかしクラトス個人にとっては、分が悪いという程ではない。
賭けが成功すればそれはそれで良いし、もしも誰かと仲違いする結果になるなら、それは早いほうが良い。
だが、それはあくまでも合理的な思考での話しである。心情的な面から言えば――
たとえトマトを食うハメになったとしても――食事を共にした人間がムザムザと死ぬのを止めない道理は無かった。
461ラ・マールハート 3:2008/09/15(月) 01:55:37 ID:8IbBGr7M0

カイウスが喋り終えてからしばらく、周囲は再び静まり返った。
4人の目は、謎の女性エルレインに注がれる。マオという少年と共にやってきた、見知らぬ女性。
優しいジアイに満ちている女性であるものの、何を考えているのかはよく分からないところがある。
その彼女は……自分の言葉に期待がかかっていることを意識したのか、立ち上がりそして口を開いた。

「……宿罪も、自罪も負わぬ人々。彼らにも幸福を与えられる権利は等しく持っていたでしょうに……
 幸福の甘受を許されず、この地で命を終えてしまったことを、私は深く悲しんでいます……」

奇跡としかいいようが無かった。エルレインがマトモに(聞こえる)言葉を発したのも勿論であるが。
カイルとその仲間たちの一人でも放送で名前が挙がっていたなら、彼女はフォルトゥナ神への深い感謝を口にしたに違いない。
彼女の処刑対象が一人として死なず、無関係な人間だけが死んだ。それを奇跡と言わずに何と言えば良いだろうか?

「……マオが心配です」喋り終えたエルレインは、マオを探しに出た。
それを止めようとするものは、この中には居なかった。
462ラ・マールハート 4:2008/09/15(月) 01:57:22 ID:8IbBGr7M0

マオは、館の庭に居た。
照りつける太陽は、これから先は落ちていくだけ。
何の気も無く手をかざした。自分にも血潮が透けて見えるのが、不思議だった。

(ユージーンに……クレアさん、か)
放送で聞いた知人の名前を反芻する。
(あのピエロの言うことを信じるってのは、正直イヤなんだけどネ)
実感が湧いていないが、サイグローグがウソを喋る理由も無い。
マオには、二人の知り合いの死を受け止めるしか無かった。
(……ボクって、意外と冷静に考えられるタイプだったんだ)
恐らく死ぬのではないかと思っていたことで、覚悟と準備が出来ていたのだろうか。
フォルスが暴走するかもしれないと思って抜け出したのだが、至って心のバランスが崩れる気配は無かった。
(そういえば……フォルスのコントロールなら、ボクは誰よりも上手かったんだ。だってボクは――)
ガジュマと、ごく少数のヒューマしか持ち得ないフォルス能力。
ラドラスの落日によって、ヒューマの中でも能力者は大量に出現したが、マオは落日によって目覚めたわけでは無い。
彼は生まれながらにして炎のフォルスを操ることを、運命付けられた存在なのだから。

マオは更に回想する。それはユージーンとの出会いと旅の記憶。
フォルス能力を使うときは決して心を乱すな。と、始めはユージーンによく叱られたものだ。
王都を出奔してからの旅路では、行く先々で様々な文化や風習を聞かせてくれた。
そして、マオはスールズで氷のフォルスの青年ヴェイグと、クレアという少女に出会った。
(ヴェイグは……)
思い出されるのは、旅の中でのヴェイグの数々の叫びのシーン。
クレアはヴェイグにとって、本当に大切な家族だということは、叫ぶたびに痛いほど伝わってきた。
(クレアの死を受け止められるんだろうか?)
彼女を地の果てまで探しに行ったヴェイグは、クレアの死に心が耐えられるのだろうか。
(……もしも思いが伝わるなら、どうか……早まらないで)
マオは……ヴェイグの強さを信じたかった。しかしそれはマオの精神をもってしても、余りにもか細い願いだった。
463ラ・マールハート 5:2008/09/15(月) 01:58:35 ID:8IbBGr7M0

「マオ……」
声がした。振り向くと、エルレインが居る。
心配して来てくれたのだろう。マオは今出来る精一杯の笑顔で応える。
「大丈夫ですか? もしや貴方の友人の名前が――」
続くエルレインの言葉を、マオは元気な声で遮る。
「ボクは平気だって。友達の名前があったのはホントだけど、でも辛いのはボク一人だけじゃないもんネ」

マオの言葉は虚勢でしかない。
だが、虚勢を張ることも時には大切なことだ。
……それで少しでも、辛い気持ちが受け止められるのなら。


【クラトス・アウリオン 生存確認】
状態:HP100% TP100%
所持品:マジカルポット バスケット(中:ストロベリークレープ リンゴ) フォーク 模造刀
基本行動方針:仲間達に会う。争いを極力避けつつゲームを止める
第一行動方針:現状を把握し、状況を取りまとめる
第二行動方針:仲間を増やす、首輪を解除する、脱出方法を探す
現在位置:A-4モリスン邸(現代)

【チェルシー・トーン 生存確認】
状態:HP100% TP100%
所持品:包丁 レッドランタン 手作りの弓 手作りの矢×30 チェスターの矢
基本行動方針:仲間に会う・ウッドロウ様を守る
第一行動方針:これ以上の人死にを許さない
現在位置:A-4モリスン邸(現代)
464ラ・マールハート 6:2008/09/15(月) 01:59:39 ID:8IbBGr7M0

【カイウス・クオールズ 生存確認】
状態:HP100% TP90%
所持品:サック一式(ランタンなし)、スタンドファーム、マゴノテ
基本行動方針:サイグローグを倒す
第一行動方針:他人を助けられる強さが欲しい
第二行動方針:できるならルビアを探しに行きたい
現在位置:A-4モリスン邸(現代)

【フォッグ 生存確認】
状態:HP100% TP100%
所持品:聖杖ユニコーンホーン、パナシーアボトル、メガグランチャー
基本行動方針:リッドの仇を取る
第一行動方針:キールやチャットが心配
現在位置:A-4モリスン邸(現代)

【マオ 生存確認】
状態:HP100% TP95%
所持品:忍刀・東風 エクスカリバー ファルステヴェルン ピクルスストーン
基本行動方針:ヴェイグたちと合流してサイグローグと戦う
第一行動方針:ヴェイグが心配だが……
第ニ行動方針:カイル・デュナミスが気になる
現在位置:A-4モリスン邸の庭(現代)

【エルレイン 生存確認】
状態:HP100% TP100%
所持品:???
基本行動方針:カイル・デュナミスの死
第一行動方針:カイルとその仲間達の抹殺
第ニ行動方針:罪無き弱きヒトを幸福へと導く
現在位置:A-4モリスン邸の庭(現代)
465名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 02:08:59 ID:8IbBGr7M0
投下終了。
幾らなんでもマオすぎた。しばらく休もう。

次は8作品10人が集う予定なんだけど、ちゃんと書ける人が居ると信じていいんですよね?w
466名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 02:14:53 ID:6+l2CDmFO
投下乙。
今考えてみると、エルレインのスタンスは自分でカイル達を付け狙うのは当たり前だが、一緒に居る奴らを信用さえさせちゃえばD2メインキャラへの誤解フラグが立つな。
467名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 02:30:13 ID:LsgFJ1V30
でも逆にエルレインが心変わりすれば丸く収まる状況でもあるな
D2勢はエルレインの後始末つけてたら結局戦うことになったって感じだったし
むしろ バルバトス関係でエルレインに誤解フラグ立つ方が有り得る気が
468名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 03:15:06 ID:NmaF1U2O0
投下乙です
おかしいな、エルレインが普通の対主催に見えるよ…
それぞれが死者に対して色んな思いを抱いてるんだなぁ、感動した
しかし、対主催10人そろったらやっかいだな
469名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 04:25:25 ID:PcO/Ls7x0
投下します。
470歯車の欠如 1:2008/09/15(月) 04:27:28 ID:PcO/Ls7x0
僕は大きな思い違いをしていたのかもしれない。
イリアが死ぬ。リカルドが死ぬ。仲間が死ぬ。その意味をよく理解できていなかった。
最初に赤い髪の人の首輪が爆発したときも、僕はぼんやりとそれを眺めているだけだった。
恐怖、驚愕、そして少しの夢見心地な気分。あまりにも非現実すぎて、僕の脳は理解を拒否していた。
実際、殺し合いの舞台で出会ったのは優しいリアラ、その仲間のナナリー、人助けをしていたシンク。
襲われたナナリーだって、結果的に助かっている。僕は心のどこかで『殺し合い』なんて起こるはずがないと侮っていたんだ。
それは結局、間違いだったみたいだけど。
僕はどうすればいいんだろう。


(イリア?)
水の中にいたはずの僕は、不可思議な空間でイリアに会った。
強気な表情は常のままで、僕はなんだか泣きたくなった。さっきまでの殺し合いはすべて夢で、こっちが現実ならいい。
きっとそうだ、そうにきまっている。僕は自分を納得させるように呟いてイリアを見た。
急に現実味を増した世界で(現実味?)僕とイリアは向かい合う。
(ごめんなさい)
イリアの口がそう動いたような気がした。
くるりとその場で回転して見せたイリアは、その勢いのまま僕の元へと倒れこむ。
僕はそれを受け止めようとして気がつく。胸に感じる焼けるような熱さを。


抱きしめた筈の女は少女でなく女性だった。鮮やかな桃色の髪がルカに触れ、ぐちゃりと水音を立てて剣が重力に従って胸を抉った。
(イリ、ア?いや、違う)
並みの武器では傷一つつけられない鋼鉄の肉体が、至高の剣デュランダルによって貫かれている。
(え? デュランダル……なんで、)
こんな光景をルカは知らない。でも迫る来る死の感覚は酷くリアルだ。頑丈な分、致命傷の傷でも即死とはいかなかった。
悲鳴すらあげることができない。どうしてかルカは口を噤んだまま、何も発しない。
まるでそこに自分の意思など介入する隙間もないような未知の感覚。
ぐちゃぐちゃにねり混ぜられるような痛覚らしき何かに目の裏が灼熱をもってはじけ散る。
火山でハスタに襲われた時とは比べものにならないような感情がルカの内から湧き出てくる。
ルカであってルカでないような得体のしれない何か。怒り、悲しみ、絶望、憎悪、狂気。
(あああぁあぁぁああぁぁぁぁああああああぁぁああああぁあああああああぁぁぁぁ!)
感じたことのないような感情の濁流に、ルカは飲み込まれた。

◇  ◇  ◇
471歯車の欠如 2:2008/09/15(月) 04:28:47 ID:PcO/Ls7x0
「あ、起きたみたい」
ルビアが顔をあげると、黙ったまま目を開いている少年に気がついた。
湖で拾った少年を放置しておく訳にはいかず、目覚めを待っていたのだが思ったよりも少年の起床は早かった。
ディストは気に背を預けたまま、特に興味はなさそうに一瞥しただけだ。ルビアとディムロスに少年を任したので積極的に干渉するつもりはないらしい。
ディムロスは近寄ろうとするルビアに注意を呼びかける。少年はまだ安全な人間かどうかわからないからだ。
少年はぼんやりと虚空を見つめたまま反応はない。
ルビアは木に掛けてあったディムロスを持つと、恐る恐る少年へと近づいた。
「安心して。あたし達は殺し合いに乗っていないわ。あなたは?」
色よい答えが返ってくれば、拘束をすぐにでも解くつもりだった。ルビアは殺し合いなんて嫌だし望んでもいない。
少年はそんなルビアの声に顔を上げ、途端、目を見開いた。
少年の唇から単語にすらならない音の塊が漏れる。どう見ても異常な状態だった。
『いかん、様子がおかしいぞ……』
「え―――きゃああああああぁぁぁぁっ!」
不穏な雰囲気の少年に気がついた時にはもう遅い。ルビアは突進してきた少年に木の幹まで突き飛ばされた。
後頭部を強く打ち付けたルビアはそのまま木の根元へと落ちる。
小さく呻きスカーフから両腕を解放した少年は、ルビアが衝撃で手放したディムロスを手に取った。
慌てて立ち上がったディストは少年の放った魔神剣の情撃波により、あっけなく地面へと叩きつけられる。
数秒も経たないうちにパーティは全滅する。ディムロスはただただそれに呆然とするしかなかった。
状況は、―――最悪だ。

◇  ◇  ◇
472歯車の欠如 3:2008/09/15(月) 04:31:14 ID:PcO/Ls7x0
意識が浮上したルカはまず困惑した。腕が動かない。―――拘束されている!
その事実はルカをパニックに陥らせるには十分な出来事だった。
心臓がどくどくと激しく脈打っている。
それだけならまだ、何事もなかったかもしれない。しかし起こりえてしまった出来事に仮定は意味を為さない。
これは不幸な事故でしかなかった。
拘束されたその先には、鮮やかな髪を持つ女と意思を持つ剣が存在していたのだから。
夢の続き。いや、あれは現実でそれがまだ続いているのかもしれない。
剣と女が何かを言っている。『あた   ち  殺し   にの    ない   なた  』
断片的に言葉が入ってくるがうまく理解できない。あか。赤。紅。アカ。直前に見ていた女を連想させる色。
(あ、……あああああああぁぁぁぁぁあああああっ!)
蘇ってくるのは死への恐れ。少年はただ恐怖した。
先ほどの光景は夢でもなく現実だったのだと、疲れた精神は判断を下してしまった。
(――死にたくない!)
少年が動かしたのは誰もが抱く純粋な生きる意志だった。

ルカはがむしゃらに女へと攻撃を仕掛けた。今度は先手を取って、殺されないように。
「え―――きゃああああああぁぁぁぁっ!」
無防備だった女は簡単に衝撃と共に後方へと飛ばされる。
「デュランダル、お前もか……」
ルカの唇から無意識に言葉が零れた。恐ろしい空気を纏うルカにディムロスは絶句する。
殺し合いに乗っていたら殺すしかない、といったのは誰だったか。ディムロスは己の甘さを自覚した。
少年の外見や拘束したことで油断がなかったとは言わない。現状がその結果だ。
殺すことすらできやしない。
どうにか止めなくてはならないのに、己は剣。自ら動くことも、誰かのために戦うことも守ることも何もできない。
ディムロスはされるがままにルカへと握られ、視界の隅で動いたディストを敵だと判断し邪魔だというように簡単に吹き飛ばした。
ルカの恐怖は男より、眼前の女にあった。鮮烈な色を瞳が映すたび、胸を抉られた感覚が蘇るようだ。
熱に浮かされたようにルカは迷いなく、剣を女に振りかざそうとした。そこで意識が浮上した女は驚愕したように瞳にルカの姿を映した。
(あれ?)
今、剣を振り上げてるのは誰だ?ルカは鬼神が乗り移ったような表情を浮かべた己に違和感を覚えた。
止まったのは一瞬。だがすぐに剣の叫びが、―――ルカの鼓膜を揺るがした。
少女の絶叫が剣のそれと重なる。ルカに制止を求める悲痛な声は、あと一歩のところで少女を救い、救えない。
振り下ろされた剣を止めるには時間が足りなかった。
出来たのは確かに少女の体を一刀両断するはずだったエネルギーの向う先を僅かにずらすことだけだ。
(あ)
気がついた時にはすべてが遅い。ごとりと肉の塊が地面に落ちるのをルカは呆然と他人事のように見つめる。
473歯車の欠如 4:2008/09/15(月) 04:32:29 ID:PcO/Ls7x0
(何が、起こった?)
急速に思考が冷えていく。冷却。鼻につく鉄の匂いと複数の声、そのすべてを感知してルカはやっと正気を取り戻した。
血が固まったような感覚がルカを襲う。
体が重い。筋肉は急に硬くなり、このまま動かなくなってしまいそうだった。
それなのに、足は勝手に後退していく。
「あ、あああ……ああああああぁぁぁぁ」
ルカの纏っていた空気が、途端に霧散する。強靭な巨人の皮を剥いでしまえばそこに残るのは未だ未成熟な少年のみ。
持っていた剣の血痕に気がついて、ルカはディムロスを地面へと落とした。
(ち、違う。僕は、こんなことするつもりじゃ……ただ、僕は)
――自分を守るために人を そうとしたんだろう?
(僕は、僕は……)
反論の言葉は傷つく少女を眼前にして出てこなかった。
どんな言い訳を並べても、怖かった。少女はルカの行動の結果だった。
血が地面を侵食する。足元まで血が迫ってきて、ルカは恐怖に震えた。
(僕は一体何を、した)
自分で手を汚してようやく、ルカはこの殺し合いを正しく理解した。
そして、もう戻れない。ルカはその場所から逃げるように踵を返して走り去った。

◇  ◇  ◇

ディストが目覚めたのは、ルカが去ってから少し時間が経った後だった。
むせ返るような血の匂いにディストは顔を歪め、辺りを見回す。
そこには既に少年の姿は泣く、血濡れの剣と大粒の涙を流しながら狂ったように回復術を唱え続ける少女だけ。
「ヒール!ヒールッ!ヒール!ヒールッ!」
危惧していたことが起こってしまった。殺しあいに乗った輩に襲われたら心許ない戦力だと、ついさっき話し合ったばかりだった。
「だから私は忠告したのに」
助けた人間が殺しあいに乗っていたらどうするつもりなのだと。
ディストの言葉に返ってくる声はない。ディストは地面に落ちたままのルビアの腕と、ルビアを見据えた。
何度も重ねてかけられた治癒術のおかげで血はあらかた止まっていた。
鮮やかな切り口を見せている傷口は、今なら繋げることができるかもしれない。だが、そんな設備も医者もこの場にはいない。
断言できるのは、心優しい哀れな少女が左腕を失ったということだけだった。

【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP100%、TP95% シンクを信頼 スカーフで両手を拘束 イリアとリカルドの死に大きなショック  色々混乱中
所持品:アビス女性陣の水着セット、デッキブラシ
基本行動方針:???
第一行動方針:???
現在位置:E7 森 →???

【ルビア・ナトウィック 生存確認】
状態:HP50% TP20% 左腕切断(血はほぼ止まっています)
所持品:旋風、ポイズンパウダー、フリーズリング、アビシオンのフィギュア
基本行動方針:死にたくない。殺し合いには乗らない。
第一行動方針:痛い……痛いよ、カイウス…
第二行動方針:F6レムの塔に向かい探索。
第三行動方針:カイウスはどこ……?
現在位置:E7 森

【ディスト 生存確認】
状態:HP、TP100% 疲労(小)
所持品:ソーディアン・ディムロス 考察メモ 工具箱(基地から持ち出した)
基本行動方針:とりあえず、死ぬ気はない。
第一行動方針:……だから言ったのに。
第二行動方針:F6レムの塔に向かい探索。
第三行動方針:ジェイドよりも先に、首輪の解除方法を探す。
現在位置:E7 森
474名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 04:35:30 ID:PcO/Ls7x0
投下終了です。指摘があったらお願いします。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 05:06:45 ID:rZ6BO6MP0
投下乙
各地の主人公が今面白い
476名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 06:19:59 ID:vaX3ewVu0
起きるの間に合って良かった。投下します
477胎盤の記憶 1:2008/09/15(月) 06:21:29 ID:vaX3ewVu0
赤い赤い揺り籠の中で青年は目を覚ました。まるで胎盤の中を思い出すほどの(嘘だ。彼は胎盤に入って生まれてきた記憶も経験も何一つとしてない)赤。血の色。
暗い暗い闇の中だと言うのにその赤だけはまるで己の名と同じ焔の様に明るく鮮明に輝いた。
両の掌を恐る恐る開く。赤い。真っ赤に染まっている。
身体を見る。白かった筈の服が赤い。丸出しの腹の腹筋の割れた部分にも臍の窪みにも赤がこびり付いている。
顔を見る。青年の座り込んだ床は鏡だった。焔の燃えるような赤。頬にかかる赤が何時もより多い。頬にべとりと貼りついた赤。
翠の瞳に映り込む其の全てが補色で原色の赤。赤。赤。赤。赤。赤。赤。
青年は高く奇声を上げる。(嫌だ怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)
ずぶり、と床に着いた掌が沈んだ。鏡だと思っていた床は水面(水面? 水面にずぶりと沈む訳がない。沈むのは沼だ。底なしの)だった。水面から何かがはみ出ている。
(水草? 糸? 違う)
ぬるりとした赤黒い水に漂っていたのは赤い毛髪だった。良い具合にドレッドな其れは見る見るうちに上昇していき滴る赤と共に人の形を取った。
(あ、ああああ、ああ、ああ、あ、ああ)
赤い液体が滴りきって現れたのは赤鬼だった。人の形は辛うじて取っているが皮膚は黒く炭化し全身が糜爛になり白い骨なんかまではみ出している。序でに腹に刺さっているのは剣。
そう青年がこの鬼を刺し殺した剣。
(あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ)
其の剣の柄に繋がっているのは青年の指。掌。手首。腕。肩。身体。心臓。
低く低く呻りながら赤という赤を滴らせながら鬼は追いかけてくる。赤い泥の沼に手足を捕られながらも青年は逃げた。逃げた。唯只管に逃げた。
哀しいかな其処は出口の見えぬ闇の中。逃げども逃げども鬼は追いかけてくる。リアル鬼ごっこなんて正にこの事じゃないか。余裕じみた考えすら浮かんだその矢先、青年の足首はぬるりとした何かによって囚われた。
(えっ、がっ、ああ、ああ)
鬼は随分遠くにいるのに何故。青年が振り返る。其の足を掴んでいたのは沼から這い出した別の“手”だった。鬼の手じゃない。ちゃんと皮膚(のようなもの。赤過ぎて肌色をしているかなんて判らない)は付いている。じゃあ何だ。
ずるり。ずるり。赤い沼から這い上がってきた其れは神託の盾騎士団の鎧の形になった。矢張り腹に刺さっているのは剣。
そう青年が初めて人を殺した際の剣。
(ひぐっ、うあああ、あ、な、ん、で)(忘れられる筈も無いあの生々しい肉の感触そのまま胎内へ沈んでいく引き摺り込まれていくような感覚)
其の剣の柄に繋がっているのは如何し様も無く青年の指。掌。手首。腕。肩。身体。心臓。
ほら周りを見渡してみれば何時の間にか青年は取り囲まれていた。赤い沼から次々に赤を滴らせて這い上がってくる人の群れに(それらは例外なく誰もが皆腹に剣を突き刺して、其の柄に繋がっているのはどいつもこいつも青年の真っ赤に染まった掌なのだ)。
青年が生れ落ちてから身体の構成要素が分解されて泡沫となって消えるまでに殺した人が人が人が全員雁首揃えてご挨拶に来ている。
先ずは握手を。
(握手は手と手を握るんだろう其れくらい知っているなのにこいつらの手は俺の手じゃない所を好き勝手に湿った手で掴んでるし俺の手はこいつらの手じゃなくてこいつら全員の腹に刺さった剣の柄を握っている)
そうして青年は何時しか何処も彼処も赤一色に染まっていたのだ。元の色が残っている部位なんて、恐怖で必死に閉じていた瞼で隠れた瞳くらいだ。
赤い沼に溶けていく。此処に来る前最後の記憶と同じ感覚。
溶けて溶けて沈んでいく。心地よい揺り籠の様。そう記憶も経験も無い筈の胎盤に包まれた気分。人は皆其処から生れ落ちてくるという(しかし残念青年にはその経験は無い)。
 
478胎盤の記憶 2:2008/09/15(月) 06:24:08 ID:vaX3ewVu0

(―――ああ)
沈んでいく身体が急に浮上した。無数の手は未だ赤い沼の中で蠢いている。
(分かった)
薄っすらと瞼を開ける。視界は空を見ていた。空だ。そう。闇の中に「空」が在った。
(俺は此処から、《はじまった》んだ)
焔が燈る。聖なる焔の光が闇を裂く。赤しか無かった世界が広がっていく。
(俺の旅のはじまり。生まれて初めて屋敷を出て、生まれて初めて人を殺した。
 怖かったけど。怖かったけど。
 あれがなかったら。あの恐怖を感覚を味わってずっと覚えていなかったら。
 あそこで血の赤さを知っていなかったら。
 俺は此処にいない。
 ティア、ジェイド、アニス、ガイ、ナタリア。皆の中に俺はいない)
血の沼が沈んでいく。反対に浮き上がっていく身体。沼に接しているのはもう身体の裏側だけだ。
(俺はまた生れ落ちたんだ、今此処に)
赤い掌に未だ残っている、赤鬼を無我夢中で刺し貫いた感触。
唇に未だ残っている、押し付けられた瓶の硬さ。
喉に未だ残っている、命の水が伝っていく清涼感。
心に未だ残っている、あのボサボサの金髪の剣士に憶えた妙な感情。
(俺は)
やるべきこと(やれること)はきっとまだたくさんある。
(何も出来ないなんて思うのは未だ早すぎる)
それじゃあ自分で何も考えず何も知らず言われるがままに妄信し人の命だけを只奪っていったあの頃の自分と変わらない。
(精一杯頑張るから。俺が奪った皆の命の分、頑張るから。だから俺は探し続ける)
ゆっくりと身体を起こす。赤い水面に足を踏みしめる。沈まない。もう其処は底なしの沼ではなかった。
(俺は此処に立っている)
光に手を差し伸べる。無数の手が、鬼の(あんたも人なんだってちゃんと知ってる憶えてる)手が、まるで旅立つ背中を見送るように手を振る。
(皆のことを俺は忘れない。皆の上に俺は立ってる)
空の光に手を伸ばす。もう少し。もう少しで手が届く。
(今自分に出来ること。絶対に探してみせるから)
血に塗れて、人は生まれてくる。
青年の決意は大きな産声を上げた。


【ルーク・フォン・ファブレ 生存確認】
状態:HP40%、TP95%、気絶、放送を聞いていない、強い決意
   強い恐怖、全身に傷・打撲・痣、イレーヌとスタンへの不思議な感情
所持品:ミスティシンボル、メロメロコウ
基本行動方針:今自分にできることをする
第一行動方針:目を覚ます
現在位置:A7
479名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 06:25:58 ID:vaX3ewVu0
投下終了です。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 07:01:37 ID:f9JYa6U4O
投稿下乙!
ルークが!ルークが立った!
481名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 07:19:16 ID:6uJW4j9mO
投下乙
マオかっこいいよマオ
いつの間にかマオレインが癒しコンビになってるw
他キャラの台詞もらしくていい感じです。
ルビアアアアアアッ!
ルカしっかりしろ!まるっきりマーダーだと誤解されたが、マーダー?
あとディムロスは持って行けよw
ルークかっこいいよルーク
不甲斐ない主人公が多い中頑張ってるな。
ティアが無事だからなのかもしれんが応援してるぜ!
482名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 08:05:17 ID:zsCTQwFbO
投下乙です
ルカー!しっかりしろお前何やってんのー!
ルビアは優しさが裏目に…死ななくてよかったよホントに
そしてルカが落ちたらルークが立った!
頑張れ期待の主人公、各地の主人公が不安定な分お前とカイルが頼りだ
483名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 08:51:19 ID:2AaNJFp4O
>>482
志村ー!
ロイド、ロイド!
484名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 08:56:29 ID:zsCTQwFbO
>>483
アッー!
すまんロイド、そして今思い出したカイウス……
にしても銀髪主人公はみんな修羅場だなぁ
ルカがイリアの名を叫んでくれたら全員絶叫で揃ったのにw
485名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 09:01:39 ID:6uJW4j9mO
後はセネルか…
486名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 09:12:09 ID:UUz8P4CWO
投下乙です。
そういやセネルも銀髪、か…。
487名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 10:03:43 ID:6+l2CDmFO
投下乙!
ルカが沈んでルークが浮上したか。そしてルビアァァァァァァァァ!ルークはまだジェイドとティア、アッシュが生きてるから大丈夫かと思ったらイオンが死んじゃったからまた沈まないか少しだけ心配だな。
>>467エルレイン様は心変わりするかな?なんとなく今のままならしそうな感じだけどね。
主人公勢でまだ出てないのはセネルとカイルだけかな?セネルはジルバにワルター、カイルは追ってるのがデクスだから不安要素は尽きないな。
488名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 12:42:14 ID:bYXFRkeoO
よーし、投下します
489mind of the weapons 1:2008/09/15(月) 12:48:08 ID:bYXFRkeoO

「そんな……導師、イオン……」

分かっていた。
彼がここで生き残れる可能性は、限りなく低かったと。
イオンという既に死んだ筈の人間が生きていた事実は非現実的だった。
しかし。
自分達がこうしてこの場にいること、イオン以外にもルーク・シンク・アリエッタがいること、そして主催者と対面した部屋で殺された青年の名と共にイオンの名も呼ばれたこと。
それらを纏めると、やはり「イオンは間違いなくこの異空間に存在していて、死んでしまったのだ」という結論にしか辿り着かなかった。
同時に、死者をも生き返らせ得る力をサイグローグが持っている、という推測の信憑性も限りなく高くなった。
そこでふと思う。
“もし、ルークが殺されたら?”
キムラスカ王国、ひいてはオールドラントでは、ルークは世界を守って“死んだ”英雄として称えられている。
皆、皆、皆。
ルークを過去の存在に仕立て上げたのだ。

〈セレニアの花が咲き誇る中〉
“私はルークが消えてから2年間ずっと待っていた”
〈滝の流れ落ちる音。そこには、清涼な空気が漂っていて〉
“彼が帰ってくると約束してくれたから”
〈崖から見える海の向こうには、崩壊したエルドラントが浮かんでいる〉
“そして、形こそ違えど、ルークは同じ世界にいる”
〈私は今日も此処からそれを眺める〉
“だけど……ルークがまた死んでしまったら?”
〈あなたが初めて外の世界を見たこの場所で〉
“今度こそ本当に再会のチャンスは失われてしまうかもしれない”
〈けれど……一年前も、一ヶ月前も、一週間前も、一昨日も、昨日も、今日も。あなたは帰って来なかった〉
“そんなことになったら、私はきっと耐えられない”
〈あの約束はあなたの優しい嘘? いえ、そんなことない〉
“二度と果たされないかもしれない約束が果たされる時を待つしかできないなんて”
〈約束は果たされる。そう信じていないと……きっと、私は──〉

“絶対に、嫌”


「ティア、大丈夫?」

風景が、ぐんと近くなった気がした。
目の前にあるのは、崩壊したエルドラントでもセレニアの花畑でもない。
ボサボサの金髪と力強く輝く青の瞳。
現実に戻ったのだとわかる。

(私……今、何を………?)

少なくとも自分の知り合いはまだイオンだけだった。
しかし、いずれその時がやってきてしまったら……自分はどうするだろうか?

「……いえ、何でもないわ」
「そっか……無理しちゃダメだよ?」

カイルは何も訊かなかった。
先程のティアの言葉で何となく察したに違いない──ティアの仲間の誰かが死んでしまったのだろうと。
名簿をぱたんと閉じる。
490mind of the weapons 2:2008/09/15(月) 12:50:48 ID:bYXFRkeoO

「さぁ、さっきの人を追い掛けましょう」
「だね。急がないと!」

サックを背負い南へ歩き出す……















「やあやあコンニチハ」





突如聞こえた挨拶。
続いて、何故今まで気付かなかったのかと舌打ちしたくなる程の、殺気。
それぞれ二人の武器を構える。
草原の若草を踏み締め彼はやって来た。
あっ、とカイルが声を上げる。

「カイル、この男を知っているの?」
「いや、あの剣……シャルティエ!」

シャルティエと呼ばれた剣は、刀身を赤で染めていた。
この世界ではソーディアンの資質など何のことはない。あろうがなかろうが、ソーディアンの本来の用途での使用を誰でも問題なく許されてしまうのだから。
しかし、つい自分のマスターのように資格を持つ者にしか聞こえないといういつもの感覚で話してしまうのが、“人情”というものだろう。

『カイル! よかった!』

「剣が……喋ってる…………?」

呆然とするティア。
顔が青ざめ震えてしまうのも、彼女の性癖を考えれば仕方のないことと言えよう。
そんな彼女のことなど意に介さずカイルはシャルティエに話し掛ける。

「シャルティエ! ジューダスは?」
『僕にもわかりません……それよりも

「おしゃべりタイムはそこまで」

シャルティエの声は、彼を持つその男によって遮られた。


「…………え?」


おしゃべり、タイム。
491mind of the weapons 3:2008/09/15(月) 12:54:09 ID:bYXFRkeoO
つまりそれはシャルティエの声が男にも聞こえていたということを示している。
ということはこの男にはソーディアンの資質があるのか?
確かに、シャルティエを扱える資質の持ち主がこの世にジューダスしかいないと断言すること等できない。
それでも、ジューダス以外にシャルティエを扱える者がいるという事実は、カイルにとって俄に信じ難いことだった。

「あなた、何者なのッ?!」

流石は軍人と言ったところか、ティアが殺気を漂わせながら男に問う。
男が気をつけをして口を開いた。

「よくぞ訊いてくれましたっ!」

男はそのまま名乗るかと思えた……が。

「さて、問題です」

何の脈絡もなく始められた、なぞなぞ。

「オレは何をしに来たでしょ〜うか?」
「シャルティエ!」

それを、付き合っていられないとばかりに無視し、シャルティエに尚も話し掛ける。

「一体こいつは何なのさ!」
『……こ、この男は
「お〜っと!」

シャルティエは若干声を震わせながらもカイルに答えようとした。
が、またも男に遮られることになる。
もしもシャルティエに口があったのなら、間違いなく口を噤むという表現がぴったりだったことだろう。

「最後まで人の話を聞かない礼儀知らずのバカ発見。躾のなってないお子様にはお仕置きが必要デスカ? 必要デスヨネ?」

口の両端をくいっと上げ、ケタケタ笑う。
異常だ。
狂っている。
それがこのゲームに依るものなのか、それとも元からなのかはわからなかったが、これだけは二人にも分かった。
“間違いなくこの男に殺される”と。

「というわけで、お前らシシカバブの刑だポン」

ひっ、とシャルティエの声が聞こえた気がした。
自分の刃に二人を突き刺し串焼きにすると言われたのだから、無理もない。
出来ることなら、あの男からシャルティエを取り戻し、いずれきっと再会できるだろうジューダスに渡してやりたかった。
そして、ジューダスと再会するまでの間だけでも自らの得物としておきたかった。
しかしどうだろう。
今、自分の得物である剣はなく、使ったこともない銃しか手元にない。
ティアの武器もロリポップという実に頼りないものだ。
その状態の自分達が、最高級の切れ味の剣を手にした頭のおかしな男にどうして敵うだろう?
否、敵うまい。
散々バカだのアホだのと仲間から言われ続けたカイルでも、それぐらいはわかる。
492名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 12:59:12 ID:zsCTQwFbO
支援
493mind of the weapons 4:2008/09/15(月) 12:59:52 ID:bYXFRkeoO
そして、ティアも同じことを考えていたようで。

「カイル、逃げるわよ!」

その言葉が合図となり、二人は南西へと駆け出した。

「ッごめん、シャルティエ!」

全速力。

「逃がさないぷー」

二人の背中を見たハスタも、ニマリと笑ってそう呟くと彼らを追い掛け始める。
走る、走る。
男はランニングをしているかのように軽やかに走っているにもかかわらず、距離は縮まるばかり。

「くそっ……ティア!」
「何?!」
「ここはオレに任せて、先に行っててくれないかな?!」
「そんな、一人じゃ危険よ! それなら私も残るわ!」
「でもさっきの声の人もこのままだと危ないよ! だから、ティアは先に行って伝えてあげてよ! オレも絶対に後から追い付くからさ!」

どうするべきだ?
無理矢理残って、カイルを援護するか。
先に行って、先程の声の人物に危険を伝えてやるか。
迷う。
もう答は出ているのに。




「──残るわ」

「テ、ティア?!」
「どれだけ待っても待ち人が来ない……その辛さを私は知ってる! だから、もう待つだけなんて、絶対に嫌なのよ!」

ティアの瞳から涙がふわりと舞った。

……そうだ。
ああわかってるよ、そんなこと。
確かにオレは「信じる」って言ったさ。
だけど辛かった。
リアラは“私達が再び会える未来を信じたい”って言ってくれた……でも、信じてもその未来は来ないかもしれない。
そしたら……リアラは?
『永遠の別れ』。
そんな非現実的で恥ずかしい言葉そのままの未来しか来ない。
もうリアラと二度と会えないかもしれないって思うだけで怖かったんだ。
わかってるよ。
その恐怖を、その辛さを。
“冒険に出てる”はずの父さんが二度と帰って来ることはないって現実を、突き付けられた。
わかってるよ!
その時の寂しさを!

……ティアも同じなんだ。


「……わかったよ」

走りながら、それでもティアが息を呑む。彼女は小さく、ありがとう、と言った。
494mind of the weapons 5:2008/09/15(月) 13:01:29 ID:bYXFRkeoO

「ねぇ、カイル! あなたの武器は本来剣なのよね?!」
「そうだけど、どうしたの?!」
「術使える?!」
「ちょっとなら!」

何故そんなことを訊くのだろう?
それではまるで自分に術を使えと言っているようではないか。

「その銃を貸して! 私が時間を稼ぐから、術で攻撃して頂戴!」
「どうして?! それじゃティアが危ない「剣のないあなたに何ができるのッ!!」

一際大きくティアが叫んだ。
聞こえるのは、二人と男の足が草原を蹴る音だけ。

「私は仮にも軍人。訓練は受けてる」
「……でもっ」
「行くわよ、カイル!」

ロリポップを仕舞うとティアは、カイルの返事も聞かずにカイルの両手から銃を引ったくり、立ち止まった。
そして男に向き直る。
男も同様に立ち止まった。
カイルは仕方なく静かに詠唱を開始した。
ハスタも剣をティアに向け、

「さて、と……少しは楽しませてくれるかなっ?」

(教官……)

彼女の教官リグレットは譜銃使いだった。
彼女に師事していた士官学校時代は勿論、彼女や兄と対立し戦った時にも、ティアは彼女の技を見てきた。
誰よりも長く、間近で。
そして考えたのだ。
譜銃とは異なるが、音素力を打ち出すという点で、一つだけ譜銃と似た技をティアは持っていた。
その要領で音素力を銃の弾丸に込めることで擬似的な譜銃になるのではないか、と。
勿論ティアとて銃を使うのは初めてだ。
しかし、乗り切るにはこれしかない。

(私に力を貸してください!)

銃を構え、連写。
幸い女性にも使えるサイズだったために反動は小さめだが、やはり銃に慣れていないと辛い。
そして、照射を合わせにくい。
男は独り言を言いながらそれらを全弾難なく避けていく。
弾は男の背後で弾け、細氷となり消えた。
二人は知るわけもないが、転生者故の身体能力に加え、かつて男が銃の本来の持ち主と戦った経験があったことは、男にとって幸運だったかもしれない。

(氷?! なら第七音素に含まれる第四音素で強化できるかも……?)

出来るかどうかはともかく、弾丸と音素を組み合わせれば、それだけでも幾分か威力の底上げを望めるはずだ。

(やるしかない!)

男の剣が迫ってくる。
だがティアは冷静にその軌跡を見極め。
495mind of the weapons 6:2008/09/15(月) 13:10:49 ID:bYXFRkeoO
そして。

「ふっ!」

ティアの音素を宿した弾丸が剣の刃へ向かって一直線に飛び、命中する。
弾丸と音素が同時に弾け、衝撃で剣が男の手から離れて後方へ吹き飛んだ。

「カイル、今よ!」
「よし! ……バーンストライク!!」

火炎弾が男を目掛けて降り注ぐ!
男は「ぴょろーん」と奇声を上げながら、それらもひょいひょいと避けるが、真の狙いは火炎弾ではない。

「いっけぇぇぇぇぇぇッ!!!」

草原に着弾した瞬間、火炎弾が爆発し炎がぶわっと大きくなった。
あらゆる方位からの爆風が男を襲う。
男も流石に爆風を避けることは出来ず、剣同様に吹き飛ばされた。

「カイル、今のうちに逃げましょう!」
「……ッ!」

シャルティエを奪い返せなかったのは悔しいが、命を落とすわけにもいかない。
カイルは強く唇を噛み締め、一度だけ燃え盛る炎の方を見た。

(ホントにごめん!)

二人は再び南西へと走り出した。


  *  *  *


むくり。
男が起き上がる。
服は所々焼け焦げ、火傷も見られたが、本人はけろりとしていた。
立ち上がって喋る剣を拾う。

「何だか物足りない、実に物足りないなぁ……」

男は抑揚もなく言った。
それを聞きながらシャルティエは男がカイル達を諦めることを祈った。
しかし。

「折角見つけたのに見逃す手はなーい!」

目に快楽と狂気を宿して力強く宣言した。
シャルティエはカイル達が逃げたことを恨んではいなかった。
カイルが死ねば、ジューダスは間違いなく悲しむ。
ジューダスが守ったものを失わせる等、自分の意志でなくとも到底できない。
カイル、そして何よりジューダスを想い、シャルティエは男──ハスタとの意志疎通を再び試みる。

『あの子達を追い掛けるのはやめろ! 意味もなく殺して楽しむなんて……狂ってるよ』

勇気を振り絞り、率直な気持ちを言う。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:13:09 ID:jWt1TpEE0
支援
497mind of the weapons 7:2008/09/15(月) 13:13:09 ID:bYXFRkeoO
シャルティエを含む6本のソーディアンは元来資質がなければ使えない。
シャルティエの場合は、その永き“生”の中でもマスターは未だに二人しか存在しなかった。
一人は、オリジナルの自分──ピエール・ド・シャルティエ少佐。
そしてもう一人は、エミリオ・カトレット──リオン・マグナスでありジューダスでもある少年。
自分で言うのもなんだが、シャルティエは自分を正しく使ってくれる人間にしか巡り会ったことがなかった。
しかし、この舞台に呼ばれたことで自分はこの男の手に渡り、こうして無意味な殺戮に使われようとしている。
かつてグレバムの手に渡って悪用されたイクティノスもこのような気持ちだったのだろうかと思う。
他のソーディアン達のレンズの晶力が島中から感じられた。
今、他のソーディアン達はどうしているだろう?

「んん〜? そういや前にもそんな奴がいたっけな? あー……デュラ、デュラ……何とか。アイツもそんなこと言ってたなぁ」

遠くを見るように、だが何の感慨もなくハスタは記憶を探る。
シャルティエにハスタの言葉を聞く余裕などない。

「まぁ、そんなことオレにとってはどうでもいいワケでして。さーて、ティータイムの続きだりゅん♪」

そうしてハスタは、少年達が消えた方へとスキップするのだった。





【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:HP100%、TP90%、緊張、焦燥感
所持品:アビスレッドのコスチューム(仮面は外してます)、ブリザードマグ、他アビスマンのコスチューム、カイルの服
基本行動方針:殺し合いをやめさせる。仲間にもアビススーツを着させたい(強制はしない)
第一行動方針:ハスタから逃げる
第二行動方針:先程の声の主に危険を知らせる
第三行動方針:シャルティエを取り戻す
現在位置:E4

【ティア・グランツ 生存確認】
状態:HP100%、TP95%、緊張、焦燥感
所持品:アビスピンクのコスチューム(仮面は外してます)、ロリポップ、メロン1個、ティアの服
基本行動方針:ルーク達と殺し合いに乗っていない人を探す
第一行動方針:ハスタから逃げる
第二行動方針:先程の声の主に危険を知らせる
現在位置:E4

【ハスタ・エクステルミ 生存確認】
状態:HP65%、TP70%、服に所々焦げ、火傷(小)多数、殺しへの快楽
所持品:ソーディアン・シャルティエ(ハスタに激しい嫌悪・自分の存在意義への疑問)
基本行動方針:脳内裁判に基づき皆殺し
第一行動方針:カイル・ティアを殺す
第二行動方針:皆殺し。殺しを楽しむ
現在位置:E4北端

498名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:14:57 ID:bYXFRkeoO
投下終了です。
某戦闘シーンのアレの表現が許されるかどうか不安だぜ…orz
ハスタ難しくて途中涙目になった俺。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:16:35 ID:jWt1TpEE0
投下乙。
ハスタキター!!!
どうなることかと手に汗握ったよGJ!
500mind of the weapons 7@修正:2008/09/15(月) 13:17:16 ID:bYXFRkeoO
内心無理だろうなと分かっていたが、それでもこの男に聞き入れられればいいと密かに願いつつ。
されど、その願いも虚しく。

「えっと、シャル何とかさん? お前、武器のクセに命の遣り取りを楽しめないってのは立派な病気だな〜」

あまりにも的確にシャルティエ達“武器”の存在意義を言われて、ないはずの胸がズキッと痛んだ気がした。
シャルティエを含む6本のソーディアンは元来資質がなければ使えない。
シャルティエの場合は、その永き“生”の中でもマスターは未だに二人しか存在しなかった。
一人は、オリジナルの自分──ピエール・ド・シャルティエ少佐。
そしてもう一人は、エミリオ・カトレット──リオン・マグナスでありジューダスでもある少年。
自分で言うのもなんだが、シャルティエは自分を正しく使ってくれる人間にしか巡り会ったことがなかった。
しかし、この舞台に呼ばれたことで自分はこの男の手に渡り、こうして無意味な殺戮に使われようとしている。
かつてグレバムの手に渡って悪用されたイクティノスもこのような気持ちだったのだろうかと思う。
他のソーディアン達のレンズの晶力が島中から感じられた。
今、他のソーディアン達はどうしているだろう?

「んん〜? そういや前にもそんな奴がいたっけな? あー……デュラ、デュラ……何とか。アイツもそんなこと言ってたなぁ」

遠くを見るように、だが何の感慨もなくハスタは記憶を探る。
シャルティエにハスタの言葉を聞く余裕などない。

「まぁ、そんなことオレにとってはどうでもいいワケでして。さーて、ティータイムの続きだりゅん♪」

そうしてハスタは、少年達が消えた方へとスキップするのだった。





【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:HP100%、TP90%、緊張、焦燥感
所持品:アビスレッドのコスチューム(仮面は外してます)、ブリザードマグ、他アビスマンのコスチューム、カイルの服
基本行動方針:殺し合いをやめさせる。仲間にもアビススーツを着させたい(強制はしない)
第一行動方針:ハスタから逃げる
第二行動方針:先程の声の主に危険を知らせる
第三行動方針:シャルティエを取り戻す
現在位置:E4

【ティア・グランツ 生存確認】
状態:HP100%、TP95%、緊張、焦燥感
所持品:アビスピンクのコスチューム(仮面は外してます)、ロリポップ、メロン1個、ティアの服
基本行動方針:ルーク達と殺し合いに乗っていない人を探す
第一行動方針:ハスタから逃げる
第二行動方針:先程の声の主に危険を知らせる
現在位置:E4

【ハスタ・エクステルミ 生存確認】
状態:HP65%、TP70%、服に所々焦げ、火傷(小)多数、殺しへの快楽
所持品:ソーディアン・シャルティエ(ハスタに激しい嫌悪・自分の存在意義への疑問)
基本行動方針:脳内裁判に基づき皆殺し
第一行動方針:カイル・ティアを殺す
第二行動方針:皆殺し。殺しを楽しむ
現在位置:E4北端

501名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:17:46 ID:zsCTQwFbO
投下乙です
ティアに教官繋がりで銃…その発想はなかった
シャルはやっぱりカワイソス…ハスタさんノリノリだな
しかしコイツら、このシリアスな戦闘をアビスマンでやってるんだぜ!
502名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:18:21 ID:bYXFRkeoO
ヒィ、最後数文抜かしてた!orz
ご迷惑お掛けしてすいません。最後のはこちらをお願いします
503名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:25:35 ID:TtYdPef+O
乙です
シャルはD2から参戦か!
ティアが軍人で良かったなカイルw
504名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:40:29 ID:vaX3ewVu0
投下乙です。
ティアも結構不安定だな。ところで
>(氷?! なら第七音素に含まれる第四音素で強化できるかも……?)
ってあるけど「なら第七音素に含まれる」の下りはいらないんじゃ?
第七音素は第七音素で独立していて第四音素が含まれてる訳じゃ無いと思うんで
505名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:46:48 ID:3pEGN966O
七つの音素の中の第四音素って意味なら通じるな。
506名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:56:10 ID:bYXFRkeoO
>>504
本 当 だ … !
自分でもなぜこんな表現入れたか思い出せない…んなもん書くなよ俺! このうつけがぁっ!(穴子風)
マジ理解不能だ…
というわけで、後でまとめ氏に訂正嘆願メールを送っておこうと思います…
本当にすまない…orz
ご指摘感謝します
507名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 15:03:50 ID:6+l2CDmFO
投下乙です。カイルとティアは良いコンビだなwwwハスタ相手に無傷で逃げ切ったのかw
シャルティエはD2からかw無事ジューダスの元へ渡れば良いなww前門にデクス、後門にハスタか…これから大変そうだな。カイル達超頑張れ!
508名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 15:31:08 ID:6+l2CDmFO
連レススマソ。ティアの言い回しからヴァン戦後〜ED後の赤毛が戻ってくる前っぽいのに>イオン以外にもルーク・シンク・アリエッタがいること、の所にアッシュが抜けてね?
509名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 17:02:27 ID:EUeyclDCO
今更だがカイルらD2組の参戦時期はいつ?
神の卵突入前だったらエルレインと会った時に話がかみ合わなさそうだが
エルレインは一度敗れたらしいから死んだ後からの参戦だろ?
510名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 17:07:29 ID:zi9NAVcE0
いやいや、D2キャラの参戦時期がみんな同じである必要は無いだろ
511名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 17:13:56 ID:UUz8P4CWO
というかどの作品にもそれは言えるよ。
判明キャラはわかりやすく一覧にでもした方がいいんだろか、ひょっとして。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 18:46:05 ID:D5HWmyq9O
>>511
激しく希望だ
我ながら人任せだなww
513名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 18:48:17 ID:UUz8P4CWO
おk
頑張ってみる
514名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 19:14:14 ID:cEZ+iZJm0
P
クレス:ED後(ダオスを倒している)
D
スタン:ED後(英雄と称えられている)
イレーヌ:死亡後
E
フォッグ:ED後(リッドが世界を守った発言)
シゼル:ED後(メルディ達のために死んだ)
D2
カイル:ラスボス撃破前(仲間のことを覚えている)
リアラ:カイルと同じ
ロニ:カイルと同じ
ジューダス:ラスボス撃破後(神を倒した)
ナナリー:カイルと同じ
エルレイン:死亡後
S
リフィル:SR前(エミル達を知らない)
ミトス:死亡後
R
マオ:聖獣の力を手に入れた後(自分の出自を知っている)
アガーテ:ED後(死んでいる)
サレ:死亡後
A
ルーク:ラスボス撃破後(消滅している)
ティア:ラスボス撃破後〜ED前(ルークを待っている)
イオン:死亡後
シンク:死亡後
T
ルビア:ED後(カイウスと旅に出ている)
SR
エミル:グッドED後(ラタトスクと別れ、ラタトスクはギンヌンガ・ガップにいる)
リヒター:ED後(ギンヌンガ・ガップにいた)
デクス:死亡後

>>511じゃないけど、>>511を見た後に調べ始めてしまった
ざっとでしかないけど明確にそうと判断できる描写があったキャラだけ
未プレイのLとIは悪いけど割愛
他に前提として時期が分かってないキャラも同作品のキャラとは既に知り合ってる
515名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 19:24:15 ID:w/5/+/KtO
Sについて矛盾が生じない?
>>514によるとリフィルはエミル達を知らないこと(SR前)になってる。でも、デクスからアガーテを逃がすときにプレセアはデクスを知ってるって会話があった
516名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 19:28:14 ID:NmaF1U2O0
>>515
別に作品内で参戦時期に違いがあってもいいんじゃないかな
そういうのからの誤解フラグもおいしいし
517名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 19:42:28 ID:6uJW4j9mO
そこらは書き手に任せろよw
D2だってED後とか前とかいるんだからさ
俺らが決めることじゃない
518名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 20:32:01 ID:6+l2CDmFO
ロニは神を倒した〜発言があるから少なくてラスボス撃破後じゃね?
519名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 21:07:48 ID:94W+QYoUO
神を倒した直後にリアラが消えて皆の記憶が無くなるんだよな
つまりそこで神を倒した記憶自体もなくなる
ってことは、ロニは神を倒して、リアラが消えるちょっとの間の状態って事か!?
520名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 21:11:35 ID:dBlN/Vh30
ちょwそれは際ど杉ないかww
521名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 21:23:43 ID:cEZ+iZJm0
まあ調べといてなんだけど、ガチガチに決めちゃうよりは書きやすいのが一番だよね
522名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 21:32:24 ID:R54t+b0NO
それも正しいけどリヒターのこともあるし
523名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 21:33:55 ID:94W+QYoUO
そうだね。自分もツッコミ入れておいてなんだけど
読み手になんとなく伝われば、それで充分かもね
524名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 21:48:42 ID:kMmC2f1J0
ロニはジューダスみたいに神のたまごで消えた直後に呼ばれたんじゃね?
本当は記憶も消えてしまう筈だったのに何故か…みたいな感じで。
525名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 21:59:43 ID:6uJW4j9mO
まあ大きな矛盾がなければ多少曖昧でもいいよ
526名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 23:08:34 ID:IqO2kx+A0
というわけで参戦時期をまとめてみた。意志持ち支給品は考慮してない。
抜けてる部分とか補完頼む。
TOP
クレス:ダオス撃破後
クラース:全精霊と契約以後
すず:?
ダオス:エンディング前(なさねばならない事がある発言)
TOD
スタン:エンディング後(世界を救った)
ルーティ:リメイク版のシナリオ最終盤?(アルカナルイン発生後)
フィリア:エンディング後(旅をする中で鍛えられた、四英雄発言への反応)
イレーヌ:死後
ウッドロウ:リメイク版リオン死後(23話「私の仲間に、それで戦う勇敢な娘がいた」から エンディング後?)
チェルシー:ストーリー後半前(15話『普段はモンスターの蔓延る世界を冒険(中略)仲間が居た。』、リリスと面識あり)
ミクトラン:?
TOE
リッド:?
キール:?(タイムストップを知っている)
チャット:エンディング後?
フォッグ:エンディング後
レイス:セレスティア渡航後
シゼル:死後
TOD2
カイル:シナリオ最終盤?(mind of the weapons 『リアラは“私達が再び会える未来を信じたい”って言ってくれた』から)
リアラ:カイルを英雄と認めた後
ロニ:フォルトゥナ撃破後
ナナリー:天地戦争時代以降(アトワイトを知っている)
ジューダス:エンディングでの別れの直後?
ハロルド:?
バルバトス:?
エルレイン:撃破後(77話「私がこの世に再び現れたのは女神フォルトナの御意志。」から)
527名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 23:09:35 ID:IqO2kx+A0
TOS
ロイド:リーガル加入後ある程度時間経過
リフィル:エンディング後(TOS-Rエミルたちを知る前)
リーガル:エンディング後(大樹のことを知っている)
プレセア:TOS-Rレザレノ第二社屋以降(デクスを知っている)
クラトス:マグニス死後
マグニス:?
ミトス:死後
TOR
ヴェイグ:サレ死亡以降(36話『事を急ぎすぎると昔ユージーンにも言われたことがある。』 からエンディング後?)
マオ:エンディング後(アガーテの死を知っている)
ユージーン:?
アニー:?
クレア:?
アガーテ:死後
サレ:死後
ジルバ:?
TOL
セネル:ヴァーツラフ軍との戦い以後(ワルターが操るカカシを知っている)
シャーリィ:ステラ死後
クロエ:水の民との争い以降
ノーマ:水の民との争い以降
ステラ:死後
ワルター:死後
TOA
ルーク:消滅後
ティア:エルドランド脱出〜ルーク・フォン・ファブレ帰還前(脱出二年経過)
ジェイド:ルーク消滅後(2話)もしくはアッシュ死後(45話)?
アッシュ:?
イオン:死後
ディスト:レムの塔で自爆(未遂)後
シンク:死後
アリエッタ:?(レプリカのイオンが死ぬ前?)
TOT
カイウス:?
ルビア:エンディング後
TOI
ルカ:シナリオ終盤(医者志望以降)
イリア:?
スパーダ:ハスタ死後
リカルド:エンディング前(天術使用可)
ハスタ:死後
TOS-R
エミル:グッドエンディング後
リヒター:グッドエンディング後(エミルとラタトスクの分離を知っている)
マルタ:エンディング後?(コアがない)
デクス:死後
アリス:?
528名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 23:41:28 ID:kMmC2f1J0
アリスは3話で「――3Kデクス! アンタも生きて(略)と言っていことから、死後だと思う。
529名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 23:45:21 ID:6uJW4j9mO
死後多すぎワラタ
530名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 23:46:35 ID:UUz8P4CWO
早速訂正ですまん。
クラースはすず加入後以外には参戦時期不明、が正しいです。
531名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:09:47 ID:mY6IntDxO
ロイドやセネルみたいに、ハッキリしてないキャラは別に変えても大丈夫だよな?
例えばロイドだと今リーガル加入後になってるけど、ED後にするとか
532名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:14:34 ID:ErN4GFJ5O
や、指定ってわけでなくSS中の描写からありうる場合の中で、
一番最初にプレイヤーが目にできる場面をメモしただけだから、
変えるとかではないような。
533名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:21:36 ID:R9reneOuO
このまとめをどう取るかはそれぞれだろ
とにかく>>526乙。
534名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 00:24:09 ID:mY6IntDxO
ふむ・・・
最低これ以降だよっていうラインみたいなもの、と解釈しておk?



こうやって見ると、ホント参戦時期とかややこしいのな
改めて、まとめ乙です
535名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 09:30:36 ID:SYwNC4rDO
チャットはキルメル迎えに無重力体験してるからエンディング後セレスティア渡来後だな。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 10:50:46 ID:keAsOQIAO
作品ごとに参戦時期を固定したほうがいいんじゃないか?
でないとキャラ達に矛盾が…
デクスとロイドが対峙した場合、ややこしくないか?
デ「お前は、俺のファンの少年と一緒に行動していたツンツン頭!」
ロ「あんた誰」
ってなことにならない?
537名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 10:57:45 ID:d2Q8h+nEO
それはそれでいいじゃないか。
参戦時期を合わせる必要ない。
そういうのがおいしいと思うぞ。
538名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 11:10:14 ID:Bpmor7UgO
だから参戦時期は俺たちが決めることじゃないと何度言えば(ry
話に合わせて書き手が設定するし、時期が違うことから考察に繋げることもできるんだぜ
539名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 11:54:19 ID:SYwNC4rDO
投下します。
540霜降り腐肉、お味は如何?:2008/09/16(火) 11:58:26 ID:SYwNC4rDO
  目前に広がった色は、何色?
  確認したら、焼き加減を選ぼうか。ミディアム、レア、ウェルダン。僕の好みはどれだっけ。




誘蛾灯か何かから必死に逃げる様に、僕は醜く蠢動する。
どちらだ。輝くそれは誘掖な光なのか。唯の誘蛾灯か。
何が鷺で何が鴉? どちらをどちらに言い包めているんだ。
目茶苦茶だ。目茶苦茶過ぎて、遁走したくなる―――否、もう遁走している。
峻別出来ない、区別不可能、分けられない。
正と悪も真と偽も、現実と妄想も、何もかもが。
誘蛾灯ならば僕の行為は正しい筈だ。闇に逃げれば何とかなる。誘掖な光なら、僕は闇に突っ込んで……あれ?

ぶつん、と頭の中でアコースティックギターの弦が切れる様な音。
何か、今、想像を絶する巨大な瑕疵を、視界の端に認めた気がした。

ぐん、と視界の揺らぎ。足が縺れ、僕は地面にキスをする。
それも御丁寧に口を開けていた所為で深い方をだ。
ファースト(ディープ)キスが腐葉土で溢れた薄汚い地面だなんて、土産話にしても笑えない。
黄煙が立ち込め、荒い息を呑吐する喉に埃が付着する。
「ぐッ……くふふふ…んは…ひゃ、ははッ……あッははははひゃッ!」
腐葉土と砂塵の異常な不味さを舌の上で持て余しながら、少年ルカは哄笑した。
膠状な唾液が口の端からどろりと垂れる。
意味を忘却の狭間に置いて来てしまった涙が、頬を伝って膠状液と共に掌を汚す。
あらゆる感情が交錯し、混沌とした思考は、ルカの箍を確実に外す様に順到していた。
「ははは……あああああぁぁあA嗚呼あぁくそくそくそォおあああッ!!」
頭を毟り奇声を上げ、調った銀髪を乱すルカはまさに狂人だった。
「嘘だッ、全部嘘だ……嘘だあああぁッ!」
何が何だか分からない。イリアが死んだ? 馬鹿馬鹿しい!
ああ、糞ぅ。脳内に余計な屑が堵列する。
鈍物みたいに正直に一人一人処理する自分を殺したい。
何て下らないトランザクション。何て愚かなアンインストール。
片っ端から否定して殺すだけなのに、実にご苦労様、精が出ますねルカ・ミルダ!
嗚呼、理解出来ない。僕は何を信じればいい?
誰が敵で誰が仲間? 僕が斬ったあの少女は、唯の善人?
僕の早とちり? 彼女は死んだのか? イリアとリカルドは本当に?(嘘だッ!)
「は…はは…くそォ……ひゃは、イリアぁ……僕は如何すれば良いって言うんだァ……ッ!」
ルカは大粒の涙を零しながら、くしゃくしゃの汚い表情で自嘲する。
541霜降り腐肉、お味は如何? 2:2008/09/16(火) 12:03:08 ID:SYwNC4rDO
草臥れた身体を実にゆっくりとした動作で起こし、一本の木へ力無く寄り掛かる。
くつくつと笑ってみせた。途中から何だか本気で可笑しくなって哄笑するから困る。

……ああ、AA、嗚呼、aa、嗟、僕は今最ッ高に惨めだ。
何が医者。何が勇者、何がアスラ。何が愛、何が友情、何が正義。
下らなさ過ぎて笑うしか無い。一寸先は“闇”とはよく言ったものだ。
動揺して人を斬って僕はそれでも逃げてる。
何処まで逃げる気だよ。答えを見つけるまでかい。
答えって何だい。
それすら分からないってのかい。
……素敵だ。
「はひッ、あはッ……嘘ばっかだ……っ待て、嘘ばっかなら僕も嘘なのかな。
 矛盾してるじゃないかァ……あッは! はは!」
瞼を閉じればほら腕が飛ぶ。
真っ赤な部屋に僕は居る。イリアもリカルドも守れず(それは嘘だよ)、魚釣り。
「……いや」
発想の逆転?
もし“それが”嘘なら?
「待てよ……」
お?
おお……?
何だこれ。逆に冷静になってきたぞォ……?
「待てよ……。“本当に嘘かも知れない”」
浩然と四方を見渡し、ルカは静かに呟いた。
浩然が昂然となり、公然となる。
奇妙な感覚が全身を包み、ふと世界を一瞥すると紅の暗幕、偽者の世界。
あらゆるものが、もしもフェイクだとすれば、或いは“それすらフェイク”ならば。
「いいぞ……何か……何か見えて来た…冷静になれてるぞ僕ゥ!」
親指の爪を噛み、ふと凭れ掛かる木を見る。
「例えばこの木だって、偽者の可能性が有る……」
怪しい、怪しい、益々怪しい!
あッは、よく見れば、ほらやっぱり唯の少女の出来たてほかほかトルソー。

「……お?」

ばつん、と脳内に電流。

「……おお?」

ばつん、ばつんって。
ばつん何かばつん大切なばつん事にばつん気付ばつん忘ればつん!

「……おおお?」
……お!
お、おお!
おおおおお!?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
おおお?
おおおおおおおおお!
おおおお!?
おおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおお?
お、おお!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
542霜降り腐肉、お味は如何? 3:2008/09/16(火) 12:06:17 ID:SYwNC4rDO
キテる、何かキテる何か! キテるキテるキテるよォ!?
そう考えると可能性無限に広がるくないか?
むしろ僕もう神の境地じゃない? 僕だから辿り着けたくない?
すッご。すげえ、僕すごいよ僕、今すごく賢い! まさに天才、流石医者志望!
ハイパーウルトラグレイトだ。スーパーだ。エクセントリックだ!
ま、待てよ、そしたら色々と見解が変わって来る気がするぞ?
考えろ、考えるんだ僕。今何か尻尾が見えた気がする!
クールだルカ・ミルダ。クールになれ!
今の僕冴えてるから七百六十五次方程式だって一般多項定理無しで簡単に解けそうな気がする!
イケる、イケるぞ……!
お!
おお!
おおおおおおおおおおおお!?
分かる、分かるよ、僕今頭良くなってきた!
例えば……そう、このデッキブラシ。
実はこれ“デッキブラシだ”って先入観の所為で僕がデッキブラシとして認識してるだけかも!
つ、つまりつまり、リアラが主催者の手先の可能性がある!?
飛躍し過ぎじゃないぞ! 可能性は考慮すべきだ。
……そっか。そうかも知れないぞ……僕すごいぞ!
仮定すれば中々イイ所までイケる気がするぞ!
大体不自然だったんだ、湖の上に転送だなんて!
色仕掛けで僕に近寄ってそして殺すつもりだったのかも知れないぞ……!?
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
拍手喝采だ。納得出来るぞ、辻褄が合う気がしてきた!
嘘の放送で動揺してる僕を一突き、うわぁ……今日は冴えてるぞォ!
そうだったに違いないよ!
待てよ……じゃあシンクだってわざとあの状況を造って差し出したと考えられる!
ナナリーを利用すれば僕を信用させる何て簡単じゃないか……くそっ、そうだったのか、迂闊だったなァ……!
普通に考えて不自然じゃないか、怪我人を介護するならあんな目立つ場所でする筈無い!
いや待て、するとナナリーも共犯の可能性が無いか?
シンクと協力して……そ・れ・だッ!
いいぞ、証明可能かも!
全てが一本に繋るぞ!
ん? いや、リアラとナナリーは知り合いだったよね……?
リアラとナナリーが知り合いで事前に打ち合わせしてたのなら……!?
ん? するとシンクは利用されただけなのか?
おお……? おおおおおおおおお?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぅ!?
何か見えてきた。いいぞ僕そのまま速度維持だ!
543名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:08:31 ID:D8rSKNUM0
支援
544霜降り腐肉、お味は如何? 4:2008/09/16(火) 12:12:20 ID:SYwNC4rDO
リアラとナナリーはグルで、シンクもナナリーとグル。
僕を殺そうとしたけどリアラとナナリーは女だったから、もしもの為にシンクを利用したんだ!
そういえば僕だけ刃物持って無かったしさ……!
シンクに僕を殺させて…そうに違いないよ!
もしかしてナナリーとリアラはジョーカー……?
う、うわ! うわあああ!
うわあああああああああああぁぁあぁ!?
こ、これすごいよ、僕もしかして主催者の思惑に気付いてしまったんじゃないか!?
イリアもリカルドも生きてる。これは僕を落とす巧妙な罠としか考えられないよ……ッ!
さて此所で根拠の提示……いくよ、刮目!
……お!
おおおお!
おおおッ!?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
おおおおおおおおおおおおおおお!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
すっご!
よく見るとやっぱり剣だよこのデッキブラシ!
剣だよこれ! す、すごいよ、剣だよオォォ!
世紀の大発見だよあッは!
リアラが幻術使ってたんだ、支給品を使えないと見せる為に!
はッは……残念だったね、僕はもう騙されない、刮目したからねッ!
「よし……よし、大丈夫。もう惑わされない……。
 僕は大丈夫、大丈夫だよイリア……必ず助けるからね、リカルド……」
そうして僕は、僕を騙すトルソーの間に神を見たんだ。
「僕がヤれば……イリアとリカルドは……“いきかえる”」
実に形骸な単語に思えて、僕は意味を確かめる様に呟く。
「“いきかえる”」
ゆらりと、確かに、血が湧いた。
けれど、と僕はトルソーに剣を突き刺す。生々しい温度の飛沫が頬を伝う。
それは不快でも快でも無く、唯の感触でしか無かった。
……先ずは“答え”を見つける。
その為なら、余計な感情は遮断すべきだ。
必要なのは凍て付く氷の様な冷血さと、猛る焔の様な行動力。
「……違う、イリアは死んでなんか無い……リカルドも……死なない……死ぬ筈無いんだ……」
五臓六腑、蠢く心臓。それを切り開け。
その果てにこのフェイクだらけの世界の“答え”―――唯一無二の“正解”が待つなら、僕は手段を選ばない。
545霜降り腐肉、お味は如何? 5:2008/09/16(火) 12:17:04 ID:SYwNC4rDO
答え以外がフェイクならば、この剣の先で躍動する心臓も。
定期的に上がる飛沫も、全てがフェイクだ。
ならば躊躇の必要性は皆無。
残念道化師、キミのタネは上がった。もう僕は絶ッ対に惑わされない。
「もし、死んでたら“いきかえる”方法を取らないといけない……だけどまだそうと決まった訳じゃない」
そうして僕は脊髄の先に座る二人の神を見る。
金に靡く彼、緋色の彼女。
対照的な男女は、不思議な雰囲気を醸し出していた。
―――あの人達は間違い無く“真”だ。
なら、僕の答えを一緒に探してくれる。




  答えは鮮血の緋。燃え上がる峻烈な恐怖と、揺れ踊る幽邃な死の色。
  ほぉら、僕の腹から飛び出てる。好みはウェルダン、香ばしくて素敵でしょ。
546霜降り腐肉、お味は如何? 6:2008/09/16(火) 12:19:22 ID:SYwNC4rDO
【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP100% TP95% 冷静 重度疑心暗鬼 精神的衰弱大
   物事を便宜的に誇大解釈 極度且つ集中的短時間精神ストレスにより統合失調症の兆し
   スタンとイレーヌが絶対的存在に見えている デッキブラシを剣と錯覚
所持品:アビス女性陣の水着セット デッキブラシ
基本行動方針:「こたえをみつけてなかまとかえる」
第一行動方針:あの人達にその方法を訊き、手伝って貰う
第二行動方針:囚われのイリアとリカルドを見つける。死んでいたら多分皆殺し
第三行動方針:シンクやリアラ達は絶対に信用しない。見つけたら殺られる前に確実に殺る
現在位置:D6西
547名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:20:56 ID:SYwNC4rDO
投下終了。問題作である事は承知です。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:25:53 ID:D8rSKNUM0
乙!
GJだが昼飯噴いた。
スパーダ頑張れ、超頑張れ・・・・・。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:26:17 ID:saYr7jhXO
乙です!
あややー…ルカ、随分とキちゃってますなw
スパーダと再会できたならルカはその時どうするんだろう…?
ルカよりもむしろスパーダカワイソスwww
問題作バンザイ!
550名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:28:42 ID:R9reneOuO
スパーダを全力で支援ww
551名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:31:03 ID:+JXGeE5L0
乙です。
あーあついに現実逃避しちゃったか…
まさにダメだコイツ…早く何とかしないと…ってやつだなw
頑張れスパーダ

現実を認めないスタイレと現実を錯覚してるルカ…やばい予感
552名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:33:01 ID:Bpmor7UgO
ルカテラL5ww
問題作かはどうだろう……
スタンイレーヌを崇拝する理由がよく分からなかったけど俺の読解力の問題かもしれない
553名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:48:08 ID:CkNrJ8rZ0
>>552
統合失調症だし、基本行動方針似てるからだと思う。
あんだけ混乱しててあの雰囲気の二人が現れたら・・・そりゃあ信仰しちゃうなw

何にせよ乙。予想の斜め上の展開だ。K1乙
554名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:51:57 ID:ErN4GFJ5O
投下乙! 食事時なのは狙ってか?w

キたのはいいけど、邪魔ととられたら怖くもあるな。
とにもかくにもスパーダ超がんばれ。
555名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 12:57:45 ID:4Q3PzWW70
発狂はいいと思うんだけどスタイレを信仰するのは何か違う気が。
元々アスラは神に対していい印象を持ってなかったし
自身が信仰の対象だったし、絶対的存在だったイナンナとデュランダルには
裏切られてるし殺される可能性もあるから排除にかかると思うんだけど。
ルカがアスラと混同してるわけじゃないからそういう訳でもないと思うけどさ、
ルークといいスタイレに対する過度のマンセー臭がする

個人的な好みの問題かもしれないけどね。
556名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:00:31 ID:8gFlUPbMO
投下乙
スパーダテラ涙目w
ルカは戻れないところまで行っちゃったな…だがそれがいい
そしてこれから昼飯食べる気だったが、食べてる最中に思い出してふきそうだw
557名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:07:47 ID:Bpmor7UgO
>>553
有難う。分かったような分からないような…
違和感があるのはルカが基本自虐的な性格だからな気がする
発狂や作品自体は面白いけど、もう少し痛めつけてからの積み重ねがあってからこの作品が読みたかったかな
でもロワだし、ありといっちゃあありな気もしたり
558名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:09:18 ID:IwKHO3YdO
投下乙!ルカがL5になってて吹いたwww
でもまあ、シンクに関しては正解だなww
559名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:10:37 ID:RftRu2SdO
投下乙です

ぷっつんキタ!
なんだが、何だか、スタイレが・・・

二人にはもうルークがいるし、ルカは別に信仰しなくてもいいんじゃないか?

ルークとルカって
どこかちょっと情けないみたいなイメージがかぶってるし違和感

むしろルカが二人を利用してやる勢いで
560名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:15:13 ID:KgMcHjIyO
投下乙。
むう、もしやチャットの話と同じ人か?
凄く急展開斜角75度でぶっ飛んでるッッッ!!
561名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:15:39 ID:CkNrJ8rZ0
ルークのは信仰じゃなくて単なる違和感だと思ってる。人間じゃない雰囲気への不思議な感覚っつーか。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:18:40 ID:Bpmor7UgO
ルカ「僕は新世界の神となる!」
563名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:22:15 ID:4Q3PzWW70
ルークは信仰じゃないと思うけどさ。
なんか不思議な人達だなと思うだけで周りの人全員が特別視するようなコンビか?
と思うんだよね。特にルカの場合いきなり神扱いだしさ。
それこそルカが「スタイレを通じて魔剣の声が聞こえて仕方ないよ」状態でもないと。

>>562
神はルカじゃなくてスタイレなんだぜ
564名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:26:11 ID:ByTxxYWrO
これはなんというミルダ教の予感
「この世界は現実じゃないんだよ!」なんて言ったらスタイレさえ取り込まれそうだ
565名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:37:33 ID:mVlHaWmC0
投下乙
ルカついに発狂w取り返しのつかない主人公二人目w

スタイレの神格化については…ちょっとやりすぎ感がするな
類は友を呼ぶ的な感じならともかく、絶対的な存在ってのはどうかと思う
566名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:42:49 ID:SYwNC4rDO
作者です。うん。やりすぎました、すみません。
そのうち修正して投下します。お騒がせしました。
567名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 13:55:34 ID:qZVRyWUmO
というか、「問題作」は、避難所に一回投下して、議論したりするんじゃないの?
書き手さん自身が問題ありそう、って認識してるなら、本スレで議論になるより向こうで話し合った方が良かったんじゃないだろうか…

初心者なのに偉そうにすまん…
568名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 14:08:28 ID:SYwNC4rDO
>>567
ぐぅの音も出ません…その通りです。以後気をつけます。
569名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 14:12:17 ID:Bpmor7UgO
結局修正待ち扱いでいいの?
それとも一度撤回で再度投下?
570名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 14:23:03 ID:KZxfzl2qO
面白かったんだけどなー
571名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 14:29:41 ID:Urgc0cXV0
修正待ちでいいんじゃないか?
問題があるのは最後の部分だけなんだし

あと、これは指摘というより心配なんだが…
細かいかもしれんが「統合失調症」って具体的に書かない方がいいと思う。
症状自体がまだ不明瞭な部分が多い上に、詳しくない人にいらぬ誤解を生みつけてしまいそうなのが怖い。
572霜降り腐肉、お味は如何? 4@修正:2008/09/16(火) 14:37:33 ID:SYwNC4rDO
リアラとナナリーはグルで、シンクもナナリーとグル。
僕を殺そうとしたけどリアラとナナリーは女だったから、もしもの為にシンクを利用したんだ!
そういえば僕だけ刃物持って無かったしさ……!
シンクに僕を殺させて…そうに違いないよ!
もしかしてナナリーとリアラはジョーカー……%
573霜降り腐肉、お味は如何?4@修正の修正:2008/09/16(火) 14:43:13 ID:SYwNC4rDO
リアラとナナリーはグルで、シンクもナナリーとグル。
僕を殺そうとしたけどリアラとナナリーは女だったから、もしもの為にシンクを利用したんだ!
そういえば僕だけ刃物持って無かったしさ……!
シンクに僕を殺させて…そうに違いないよ!
もしかしてナナリーとリアラはジョーカー……?
う、うわ!
うわああああ!?
こ、これすごいよ、僕もしかして主催者の思惑に気付いてしまったんじゃないか!?
イリアもリカルドも生きてる。これは僕を落とす巧妙な罠……ッ!
さて此所で根拠の提示……いくよ、刮目!
……お!
おおおッ!?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
すっご!
よく見るとやっぱり剣だよこのデッキブラシ!
剣だよこれ! す、すごいよ、剣だよオォォ!
世紀の大発見だよあッは!
リアラが幻術使ってたんだ、支給品を使えないと見せる為に!
はッは……残念だったね、僕はもう騙されない、刮目したからねッ!
「よし……よし、大丈夫。もう惑わされない……。
 僕は大丈夫、大丈夫だよイリア……必ず助けるからね、リカルド……」
そうして僕は、僕自身を騙して止まないトルソーの間にキミ達を見たんだ。
「そう、僕がヤれば……イリアとリカルドは……“いきかえる”」
実に形骸な単語に思えて、僕は意味を確かめる様に呟く。
「“いきかえる”」
ゆらりと、確かに、奥深くで鮮血が湧いた。
けれど、と僕は首を振りトルソーに剣を突き刺す。生々しい温度の飛沫が頬を伝う。
それは不快でも無ければ快でも無く、唯の感触でしか無かった。
……先ずは“答え”を見つける。
その為なら、余計な感情は遮断すべきだ。
必要なのは凍て付く氷の様な冷血さと、猛る焔の様な行動力。
一義的なものは脆くて仕方が無い心なんて馬鹿馬鹿しいモノでは無く。
誰にも縋る事無く、切り開く事が可能な純粋で固い結晶、即ち絶対的な力――――!
「……違う、イリアは死んでなんか無い……リカルドも……死なない……死ぬ筈無いんだ……」
五臓六腑が弾け飛ぶ。滴る粘液、蠢く心臓。乳白色の肋。其を尽く切り開け。
その果てにこのフェイクだらけの世界の“答え”―――唯一無二の“正解”が待つなら、僕は手段を厭わないだろう。
574霜降り腐肉、お味は如何? 5&6@修正:2008/09/16(火) 14:50:37 ID:SYwNC4rDO
答え以外がフェイクならば、この剣の先で躍動する心臓も、踏み付けている腎臓もフェイクだ。
ならば躊躇の必要性は、そうッ、面白い程に皆無ッ!
残念道化師、キミのタネは上がったよ。もう僕は絶ッ対に惑わされない。
「もし、死んでたら“いきかえる”方法を取らないといけない……だけどまだそうと決まった訳じゃない」
ずるりとたん汁を浴びた剣を抜き。
そうして僕は脊髄の先に座るその人達へと目線を移す。
金に靡く男性、紫と緋色の女性。
対照的な男女は、不思議な雰囲気を醸し出していた、が。
あの人達が“真”か“偽”かは分からない。当然だ。僕はあの人達を碌も知らない。
なら、僕はこの剣を、デュランダルを以て無理矢理にでも質すだけだ。
“真”――――さすれば、最果てに眠る絶対の解を。
“偽”――――さすれば、血肉を啜られ贄と成れ。




  答えは鮮血の緋。燃え上がる峻烈な恐怖と、揺れ踊る幽邃な死の色。
  ほぉら、僕の腹から飛び出てる。好みはウェルダン、香ばしくて素敵でしょ。


【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP100% TP95% 冷静 重度疑心暗鬼 精神的衰弱大
   極度かつ集中的短時間精神ストレスにより幻覚、幻聴、便宜的誇大解釈の兆し
   デッキブラシをデュランダルと錯覚
所持品:アビス女性陣の水着セット デッキブラシ
基本行動方針:「こたえをみつけてなかまとかえる」
第一行動方針:デュランダルで見定める
第二行動方針:囚われのイリアとリカルドを見つける。死んでいたら多分皆殺し
第三行動方針:シンクやリアラ達は絶対に信用しない。見つけたら殺られる前に確実に殺る
現在位置:D6西
575名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 14:53:27 ID:SYwNC4rDO
修正作投下終了です。
576名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 15:23:03 ID:CkNrJ8rZ0
個人的には前の展開の方が良(ry・・・と言いたいが、乙。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 15:55:05 ID:xvTLi3S/0
チャットの時もそうだったけど、視点となってるキャラが正確変化しすぎで違和感感じるのと、
ぶっ飛びすぎなキャラの脳内解釈と台詞のせいで内容が把握できないのは俺だけ?
なんかぶっ飛びすぎて逆に引くよ…。読んでる側にももう少しわかりやすくしてほしい。
578名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 16:43:13 ID:R9reneOuO
>>577
俺は根性で全部読むが、気を抜いて読み流すとたまに話について行けなくなるからな…その辺は書き手の自由だと言われたらそれで終わりだが。
579名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:08:56 ID:DYAX734vO
まぁ1stでもよくあったし、テイロワはこれがあるって認識だけどね自分は。
好きな人もいるだろうし要は使いどころじゃないか?こういう精神状態が不自然じゃない流れならありだとは思うが。
580名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:16:53 ID:Bpmor7UgO
普通は発狂?はフラグ立てやるものだからね
仲間の死とルビアの腕切ったもそうなんだろうが、気持ち的に外的要因があとひとつぐらい欲しかった
581名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:19:35 ID:N0R66vwGO
1stでも序盤からあそこまで狂ったのはいたか?
ああいう発狂は色んな積み重ねがあってこそっつーか
ぶっちゃけ発狂者数が多すぎるような気がする
スタイレにチャットにルカとクレアァァァの五人だ
582名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:25:19 ID:4Q3PzWW70
クレアァァはまだ発狂してないだろ。ヴェイグを発狂に入れるならアニーも発狂だ
スタイレも発狂というか現実逃避?そこに入ってないけど発狂はルークが一番近かったかも
583名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:45:57 ID:R9reneOuO
ルークは発狂っていうかパニックじゃない?
584名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:48:14 ID:vu90r1ygO
順調に進んでたここにもついに読み手様が湧いたか……
585名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:48:37 ID:RftRu2SdO
投下乙です

たまに分からなくなりそうだけどセンスあっていいと思たよ

スタイレは発狂とは違う気がする。ただ上であったぷっつんきちゃっただけで
何と言うか・・・どこか自暴自棄なかほりがする・・・?

ルークは結構近かったんじゃないか?持ち直したけど
こいつの場合ED後ならフラグは充分だし

ルークにはなぜか不幸なのが似合うって思った自分は酷いと思った

ヴェイグには頑張ってほしいなあ
586名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:57:59 ID:RftRu2SdO
すまんかった
以後自重して気をつける

失礼しましたm(__)m
587名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 17:59:14 ID:wCLxhXc1O
投下乙です
書き手のみなさん、いつも力作ありがとうございます

自分はチャットの人のもルカのも力あっていいなぁと思うよ
まぁいきなりジョジョ口調になるのはまだ慣れないけど
588名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 18:01:33 ID:LHg3FYha0
とりあえずみんなしっかりSS読み込もうぜ
発狂なんて言えるのは正直誰もいないと思うんだが
スタイレは現実への失望、ヴェイグは発狂というかフォルス暴走状態で不安定なだけ、
ルークは人殺しへの恐怖とかでパニックになっただけ、ましてやチャットなんか発狂じゃなくて持ち直してるし
ルカだって発狂というよりは現実逃避だと思うし…
発狂って言葉を便利に捉え過ぎてるよ。
589名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 18:24:00 ID:ErN4GFJ5O
読み返してみたけど、なんか惜しいというか、
もうヒトオシは確かに欲しいかもしれんなとは思った。
590名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 18:43:47 ID:hdi9zUha0
みんなテイルズロワが大好きすぎて議論に熱が入っちゃってるんだな。
でもこれ以上この流れ続くとせっかく書いても投下しづらい空気になりそうだし、
そろそろ落ち着いて、wktkしながら新作を待とうぜ。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 18:50:49 ID:R9reneOuO
>>590の包容力に感動ww
大人しくwktkします。
592名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 18:55:30 ID:LHg3FYha0
>>591
とりあえずsageてほしい
企画内容が内容なんだから
593名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 18:58:50 ID:lf5u5w9lO
そうだな、いかがわしいお店状態のシンクを羨ましがる作業に戻るとするか
594名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:08:10 ID:R9reneOuO
すまん
ナチュラルにsage忘れてた
気をつけます。
595名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:13:36 ID:DYAX734vO
ルカがアニスの水着とデッキブラシ持ってフラフラしてると思うと面白いなw
596名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:45:15 ID:ErN4GFJ5O
>>595がギシアンに見えた自分は末期

ところでリプレイの参加者は構わない?
597名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:48:54 ID:Bpmor7UgO
リピーターってこと?
相当上手くやらないと難しいぞ
598名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:52:22 ID:8gFlUPbMO
リピーターは個人的に無しにして欲しいな
違和感がどうしても出ると思うんだ
599名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:59:59 ID:NVS7HxcA0
個人的にはアリだけどなぁ・・・
いったん仮投下して反応見るなりした方がいいと思う
600名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:00:05 ID:MUT57qtGO
今の進行状況でリピーターにできるキャラいるか…?
601名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:27:08 ID:4Q3PzWW70
投下しづらい空気になろうともはっきりさせて欲しいな。
書き手の人だってリレーの際困るよ正直。
今後もこういうことあったら議論されてもこういう風に有耶無耶のまま
普通に通って行くんだと思うと悲しくなってくる
どうせ「もうまとめサイトに載ってるから」で今回も通るんだろうけどね
602名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:35:52 ID:GSaAgydT0
601に同意。
議論になるのも初めてってワケでも無し、
まとめに乗ってるからはいつまでも免罪符にならないと思うぞ。
603名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:38:02 ID:KgMcHjIyO
皆もうスタンス出揃っちゃってるもんな
ところでリピーターって1stから…?
604名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:40:53 ID:3UXaH4JnO
リレー小説だからね。 
自分の書きたいものを書くのも大事だけど、 
それまでの作者たちの話の流れを尊重するのも凄く大事だと思う

というわけで、ここまで話が進んでしまった状態でリピーターを出すのは自分は反対だな
605名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:41:07 ID:ErN4GFJ5O
考えてないわけじゃないから聞いてみたんだけど、
隙さえあれば捩じ込めそうなのは何人かいるよ、まだ。

まあ、ファーストかどうかは伏せるが。
606名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:44:04 ID:xNcFEvkuO
リピーターは個人的には反対だな。
ロワなんて代物に出たら1を見てみれば分かるように、何かしらキャラの性格に影響なんか出るよ。
原作のままのキャラを出してもらいたいな。
607名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:47:35 ID:Mewc0TeoO
実際に読んで納得できれば良いかな、かなり難易度高いだろうけど
608名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:52:51 ID:4Q3PzWW70
議論内容がすり替わってるな、言い方悪くてすまんが
はっきりさせて欲しかったのはリピーターの件じゃなくてルカ話の件です。
リピーターも個人的にはナシでお願いしたい。
キャラの性格が最初からロワ仕様なんてわざわざテイルズロワやる必要ないと思う
原作のままのキャラがいかにして壊れていくかっていう過程を楽しみたいんだ
609名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:53:02 ID:NOv8HajBO
リピーターは放送終わった後にでてきてもなぁ

議論システムは今のうちに話あったほうがいいんじゃない?
リヒター事件やジルバ事件、Lキャラ集中事件だって誰かが矛盾を指摘してれば起こらなかったし
テイルズロワの持ち味も大事にしたルール作りが出来ればいいんだけど難しいな
610名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:55:20 ID:4Q3PzWW70
>>609
Lキャラ集中事件は指摘してた人がいたにも関わらず
最序盤の投下ラッシュだったせいもあって全部「集中しすぎwwww」で済まされてしまったイメージ
611名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 20:56:05 ID:NOv8HajBO
ルカ話は急ぎすぎだと思うんだよな
書き手さん達が問題ないって判断するなら俺はこれ以上口出ししないが
612名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:04:57 ID:lf5u5w9lO
ルカは元々精神的に弱いしゲームに乗るか考えてたり、イリアとリカルド死亡で不安定フラグバリバリだったから急でも無いと思うぞ
ただ今回の話が濃い心理描写メインだったから急にルカが発狂したように見えただけで
613名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:20:30 ID:ErN4GFJ5O
チャットのあれもだけど、濃い心理描写だから人によっては急に見えたのかもな。
かくいう自分もその一人だし。


いろいろレスついてるみたいだけど、書き手氏的にはどうか聞いてみたくもある。
614名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:22:50 ID:+vjJSFPC0
発狂してるキャラに言うのも無駄なことかもしれんが、キャラが違いすぎる気がする。
ルカは天界が滅んだ事実を知ったとき、真っ先に「自分なんて消えてしまえばいい」なキャラだから。
ロワだからでおkと言われればそれまでなんだが
615名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:30:12 ID:4Q3PzWW70
>>612
読解力がない読み手と他書き手が悪くて濃い心理描写できる書き手様SUGEEEEってことか
フラグバリバリなのは分かるけど俺は文章力ないから仕方ないのか、と僻んでるよ正直
616名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:30:37 ID:ByTxxYWrO
この話の問題は最後のスタンイレーヌの部分だろ?それはもう修正されたんだぞ。
何でもかんでも発狂にしようとするところがまずおかしいよ。
これから濃い心理描写が来てマーダーになったらみんな発狂なのか?

リピーターに関しては、1stとかから来るなら反対かな…。把握が大変になる。
以前にもロワが開かれたことがある、というならうまく理由付ければ考察にも幅がでるけど、ここは書き手さんの力次第かな。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:39:52 ID:vu90r1ygO
展開にケチつけたいなら自分で書いて修正しろよ
それもできない戦力外住民はROMってろ
618名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:44:13 ID:N0R66vwGO
リピーターを今更出すのは無理だろ、出したいのなら最初の議論の時に言うべき。
あと発狂に関してはデッキブラシを剣と勘違いしてる奴を狂ってないとするのは無理だと思う
619名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:44:47 ID:+vjJSFPC0
発狂してないんだったらキャラの性格がおかしいんじゃ・・・タミフルw
すみませんでした。ROMに戻ります。
620名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:46:43 ID:xvTLi3S/0
つかルカもそうだけど、やっぱチャットがなあ…。先にアニーとアッシュ視点の部分があればまだ理解できるけど、
ジェイドが考えた作戦ってどんななの?とか今キャラは何処にいてどう行動しててどうなったのかが全然わからん。
アニーの放送によるショックやフォルス暴走だって、視点となってるチャットが思考から外してるから
どうなってんのか全然分からんよ。
あの場所が多くの作品のキャラが入り乱れてるから書きづらいかもしれないけど、もう少しなんとかしてほしい。
最後の状態表で補完するしかないような状態だと次に書くほうも大変だからさ。
621名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 21:51:43 ID:Bpmor7UgO
指摘を気軽に出来ない空気なんだよね
ここはロワの為にも直した方がいいと思う

ルカは続き書ける人がいるならいいんじゃないの
622名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:02:56 ID:4Q3PzWW70
続き書かれる→スタイレ神格化→めでたしめでたし
623名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:09:49 ID:Gz8yRwJ90
>>617>>622もお前ら落ち着け。
624名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:12:00 ID:NVS7HxcA0
>>622
本当にそうなりそうだから困る
一応書き手だけどスタイレのパートはもう書ける気がしない
神格化はないわ
625名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:18:00 ID:mVlHaWmC0
>>621
自分も書き手だけど、あんなよく分からない狂い方されても続き書くのは無理
スタイレはまだイグニスの影響でなんとかなるけど、ルカは狂った動機が曖昧で困る
もう少し落としてからにするか、スタイレとの絡みだけでも何とかなんないかな
626名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:21:56 ID:Gz8yRwJ90
同じく書き手だが、自分もアレには手を出せる気が今はしない。
もう少し情報を出して欲しいってのは贅沢なのか?とか思ってしまう。
文章力高いのは悪くないんだけどな。
627名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:23:50 ID:SYwNC4rDO
ルカ話書き手です。
猛省しています。書き手、読み手含め多大な迷惑を掛けました。本当に申し訳無いです。
発狂フラグは十分に立っててルカも不安定なキャラだと思い、投下しました。
スタイレ神格化も、一応修正と言う形を取ったものの、本当にすみませんでした。イっちゃった思考ならフィルター掛かってこれも有りなのか、どうなんだろうと悩んだ末に書きました。
結論ですが、今回の話は破棄にしたいと思います。チャットの話も以前から話題に上っている様なので同様に破棄します。

迷惑お掛けしました。申し訳無くいです。
二度とこの様な事が無い様に、尽力したいと思っています。
本当に申し訳ございません。
628名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:37:18 ID:mVlHaWmC0
>>627
苦渋の決断ありがとうございます
氏の文章はすごく好きですので、勝手かもしれませんがこれからも頑張って欲しいです
629名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:40:47 ID:IwKHO3YdO
破棄か…
ルカ話はL5っぽくて面白かったが、続き書けと言われたら無理っぽいからなぁ。次の作品に期待しています。

あと放送後に出てないキャラはどのくらい居るんだろ?
630名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:43:15 ID:4Q3PzWW70
>>627
散々に言ってしまって済みませんでしたが決断ありがとうございます。
初の破棄なんで決断も辛かったと思いますが。

日頃の鬱憤が溜まってたのかもしれない…俺も反省してくる
631名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:49:51 ID:xvTLi3S/0
>>627
俺も色々言ってしまいましたが、決断ありがとうございます。
リレーをするにはきついですが、貴方の話は読んでて面白かったので、これからも頑張ってください。

…俺も他ロワのも含めて頑張ろうかな。
632名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:50:03 ID:Gz8yRwJ90
>>627
感謝します。そしてごめんなさい。
反省はすべてSSにこめらたら、と思います。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:51:09 ID:bsUkRa6V0
>>627
お疲れ様です。
破棄という結果になってしまったのは残念でありますが、それが書き手氏の決断ならば止める理由はありません。
ですが、この話をよかったと言ってくれた人もいたことを、どうか忘れないでください。


破棄という結果になってしまった以上、作品についてはあれこれは言わないけど、
とりあえずこれを通して見えた問題点があるから言っておく。長くなるけど…。
ルカのキャラ違いとスタイレの贔屓を結びつけてごっちゃにしている人が多い。
これは本来別々の問題。ごっちゃにして単に書き手叩きの理由を作っているようにしか見えない。
おまけにチャットのSSとも関連付けてるあたり、更に悪質と言わざるを得ない。
あくまで問題はルカのキャラ違いなんだから、そこは認識してほしかった。

ただし、だからといって書き手さんを擁護するわけではない。
確かに今回のやチャットの話など、読み手やリレーする側に不親切な要素があることは否めない。
スタイレの神格化も個人の感情が入り過ぎているきらいがある。
キャラが好きなのは構わないこと。だがこれはあくまでリレーなのだから、次にバトンを受け取る側のことも考えなくてはいけない。
次の人に委ねてみるのもリレーの醍醐味。
これは素直に反省すべき点であり、改善していかなければいけないところ。

で、まとめると。
書き手さんも読み手さんも足りない部分があったとは思うので、反省してこれからに生かすべき。
スタイレの部分は修正されているのだから既に論じる部分ではなかった。
それをいつまでも引っ張るのはただのアンチと同じ。

指摘しにくい空気が、って人もいたけど…。
指摘自体は別に構わないと思う。ただ、それが一方的な批判では駄目というだけで。
冷静に問題にあたれるならそれはいいことだと思う。それがテイルズロワをよりよくできるものなら。

なんだかんだいったけど、荒れるのは誰だって嫌だろうから。
今さら意見を言うのもちょっと遅いかもしれないけど、これだけは言ってみた。
とりあえず、問題が起きたときは、冷静に問題点を見てほしい。
で、建設的な意見を出して対処していかなくてはいけない。
今回、問題があったのは確かだが、ヒートアップしすぎた。
634名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:57:09 ID:vu90r1ygO
あーあ、これで減速して終了か
635名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:58:33 ID:J6ZWcwOP0
>>633に全面的に同意。
まあ一応、10の書き手がいれば10の書き方があるのと同じように
10の読み手がいれば10の読み方があるんだからね。
それに主観的な批判と客観的な指摘を区別するのも難しい。

とにかく板が荒れるのは誰だって嫌だな。
次の投下を皆でwktkしようぜ
636名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:59:47 ID:lf5u5w9lO
>>627
決断乙です
この雰囲気がキャラの紆余曲折の後に来たら鳥肌だと思う
是非これからも頑張って盛り上げてください

>>615
別に読み手の読解力とか他書き手を貶したかったわけじゃない。そう捕らえてしまったならすまん
ルカについては
今回の書き手さんの作風として心理描写が大袈裟だけど、実際ルカは発狂といえるほど自分を見失ってはいないんじゃないか
ルカがこの先不安定になってしまう要素が今までに充分出てるから、自分は急だとは思わなかった
って言いたかっただけ
言葉足らずで余計なこと言って申し訳ない
637名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 23:27:20 ID:DYAX734vO
放送後で出てないキャラ
サニイタウン組
レイス&アガーテ
シゼル
キール&マルタ
セネル&ワルター
ジルバ&シャーリィ
ミトス&ハロルド

かな?
638名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 23:32:21 ID:NVS7HxcA0
ダオス抜けてね?
639名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 23:34:25 ID:mVlHaWmC0
レイス&アガーテに接近してるデクスもいるな
640名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 23:35:41 ID:NVS7HxcA0
ごめん、勘違いだったスルーしてくれ
641名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 23:51:32 ID:nQHMjzQgO
>>640
何きにすることは(ry
642名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 23:57:09 ID:8sXZgXa70
アリスは?
643名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 00:21:39 ID:4XCZC7TUO
ほんとだスマソ。大好きなデクアリを忘れるとは
644名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 00:39:37 ID:skgKRpAeO
>>637
乙。
これでアガレイ組とデクスとカイティア組とハスタが遭遇か…?
645名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 01:34:37 ID:7U+m4nrx0
投下します
646voice1:2008/09/17(水) 01:37:21 ID:7U+m4nrx0
声が聞こえた。

残念ながらそれはセレスティアにいるはずの愛娘のものでも、遙か昔に黄泉路へと旅立った夫のものでも、また幸いにも彼女を長らく支配していたバテンカイトスからの声でもない。
それは、女の内側からではなく、外側から。丘の向こうから実際に空気を震わせて届いていた。
男の声だ。機械を通しているらしく、時々ノイズやハウリングが混ざって、不快この上ない。
誰かを呼んでいる。女の名だ。
(恋人と共に参加させられたのか?哀れな)
殺し合いに乗る事を決めて、歩き出してからどれだけ時間が経っただろう。ようやくその第一の獲物が現れたというのに、彼女の心は弾まなかった。
後で蘇らせてやる。そんな事は言い訳にもならない。その上自分が他の者に倒されてしまえば、それで仕舞なのだから。
しかし、それでも彼女はやらねばならないのだ。
(メルディ、許せとも、分かれとも言わぬ。だが必ずお前の元へ二人を生きて帰して見せる・・・・)
ザックから槍を取り出す。本来彼女の細腕で扱える獲物ではないが、何故か杖のように術の媒介になるらしい。
息を殺し、丘の上から様子を伺う。件の男は戦斧を担いで一直線に歩いている。
そして、その視線の先には・・・・・。


(あれは、レイシス・フォーマルハウト。あの時の極光術使い・・・・)
遠目ではっきりとは確認できないが、他に金髪で帽子を被っている参加者など居ない。
そしてもう一人、女がレイシスに庇われるように走っている。
レイシスと相見えた時、シゼルの精神はネレイドに封じ込められていたがそれでもあの男が相当な剣の使い手である事はわかった。
それが抵抗せず、女を連れて逃げているとなるとあの男は武器を持っていないのだろう。
(と、なるとあの下品な声の男は殺し合いに乗っている側か・・・・)


放っておけ。と声がする。
確かに声の主は卑怯だ。だが全ての参加者を一度殺すと決めたのだから、誰に如何して殺されようと変わらない筈だ。
あの極光使いとて素人ではない。剣が無くともそれなりの抵抗を示して、追っている男にそれなりの痛手なり、消耗なり与えてくれるだろう。
男を屠るのはその後で良い筈だ。

647voice2:2008/09/17(水) 01:38:56 ID:7U+m4nrx0
だが、
(バリル・・・・・・・)
彼女の意識が、純粋に彼女だけで構成されていたその最後の瞬間。彼女の精神をズタズタに引き裂いた記憶が蘇る。
あの時逃げていたのはシゼル自身だった。幼いメルディを連れ、屋敷を脱出した時の悲愴な決意。謀反の濡れ衣をかけられた情けなさと屈辱。夫一人置いて行かねばならない不安。
そして、己を庇い銃弾に倒れたバリルの腕の強さ・・・・・。


余計な事は考えるな!
今はメルディの元に仲間を生きて帰す事だけを考えろ。
その為に全員を、キール・ツァイベルをも一度殺すと決めたのでは無いのか!


逃げ切れないと判断したのだろうか。極光術使いが足を止め、男が近づきつつある方向へ向き直る。
女が、男に取り縋る。引き止める女の肩に男は手をやり、諭す。
そんな状況でいう事は決まっている。先に行けとか、或は後で追いつくと言う実の無い約束なのだ。
あの時の、バリルのように・・・・・。

(私は・・・・・・)






追撃者に見つかり、アガーテだけでも西へ逃がそうと覚悟した矢先の事だった。
見覚えのある閃光が走り、近づきつつあった男がそれに撃たれ倒れた。
一撃で致命傷を与える事こそ出来なかった様だが、立ち上がった男が深いダメージを受けているのは見て取れた。男はそのまま立ち止まり、術者を捜している。
(あれはスパークウェーブ・・・・?まさか・・・・)
彼が一度命を落とす直前、リッド達と戦っていた女が使っていた術だ。そして、その使い手がこのゲームに参加させられている事も確認している。
(まさか、な・・・・)
だが、彼女が自分を助けるはずが無い。
都合の良い妄想を振り払い、アガーテの手を取ってレイスは再び西にその碧眼を向ける。
その視線の先に、雨雲に覆われた街が小さく映った。





「ほーう、まだ生きていたか」
丘陵を渡る風にドレスの裾をたなびかせ、シゼルは男に向き直った。
戦斧を構える姿は男がなかなかの使い手である事を物語っている。本来なら一対一で勝てる相手ではないが、どうやら既にかなり疲労していたらしい。足元はふら付き、雷撃の所為で動きも鈍っている。
「本来なら捨て置くべきなのだろうが、お前の様な輩は好かぬのでな・・・・」
槍を構え、精神を研ぎ澄ませる。男はまともに戦える状況では無さそうだが、それでも接近戦に持ち込むわけには行かない。
「お前から先に倒させてもらう!」
「お前、何なんだよっ・・・・・。オレが、アリスちゃんの所へ行くのを、邪魔するなら・・・・・。さっさと死ね!!」
殺気で目を炯炯と光らせ、男が吼える。



648voice3:2008/09/17(水) 01:40:42 ID:7U+m4nrx0
そして、声を追って来た者がもう一組
「ティア!あれ!!」
金髪の少年が指を指した先を、栗色の髪の女は風に煽られる髪を押さえながら見据えた。
そこにあるのは対峙する男女の姿。
「襲われているの・・・・?それとも・・・・・」
今更ながらに疑問が起こる。そもそも声の主は何故こんな島で平気で誰かを呼んで廻っているのか。そして、何故誰かを呼んで、捜しているのに一直線に(そう、自分達が声の主を追おうとしてからずっと西に)移動しているのか。
守るべき人が居て、彼自身には殺し合いに乗った者を呼び集めても何とか出来るだけの力があるから?
だが、もし・・・・・。
「ティア、行くよ!」
それが、殺し合いに乗っていない事と必ずしもイコールではない事。それを口に出そうとした矢先、少年が駆け出す。
ティアは胸に浮かんだ疑惑を無理やり締め出し、カイルの後を追った。







【シゼル 生存確認】
状態:HP100% TP95%
所持品: ロンギヌス(TOA)本人確認済み支給品0〜2個
基本行動方針:優勝してリッド含む皆を蘇生させる。
第一行動方針:優勝を目指す。
現在位置:F4西端

【デクス 生存確認】
状態:HP30% TP60% 疲労。 血塗れ。 術によるダメージ
所持品:拡声器、グレートアクス シーブズマント ネコ耳 サポートハンド プレセアのザック
基本行動方針:アリスを守る。
第一行動方針:アリスを探す。
第二行動方針:アリス以外の参加者は殺す。
第三行動方針:シゼルを殺す。
現在位置:F4西端

649voice4:2008/09/17(水) 01:42:16 ID:7U+m4nrx0
【アガーテ・リンドブロム 生存確認】
状態:HP85% TP100% 疲労 深い悲しみ 犠牲を出す事への嫌悪(ドレスは裂いてミニスカートっぽくしてます)
所持品:ホーリーリング、メンタルリング、クローナシンボル、ペルシャブーツ
基本行動方針:殺し合いを否定し打開する道を探す
第一行動方針: わたくしの思いを、他の皆に伝えなければ・・・・
第二行動方針: プレセアの死にショック
現在位置: E3→G2の街(サニイタウン)を目指して移動中

【レイシス・フォーマルハウト 生存確認】
状態:HPTP100% 帽子に花飾り無し
所持品:セイファートキー フェアリィリング トレインケイジ
基本行動方針:アガーテを守り、サイグローグを倒す
第一行動方針:アガーテを守る
第二行動方針:同士を探す。或は武器を確保する
現在位置:E3→G2の街(サニイタウン)を目指して移動中

【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:HP100%、TP90%、緊張、焦燥感
所持品:アビスレッドのコスチューム(仮面は外してます)、他アビスマンのコスチューム、カイルの服
基本行動方針:殺し合いをやめさせる。仲間にもアビススーツを着させたい(強制はしない)
第一行動方針:ハスタから逃げる
第二行動方針:声の主に危険を知らせる
第三行動方針:シャルティエを取り戻す
現在位置:E4西

【ティア・グランツ 生存確認】
状態:HP100%、TP95%、緊張、焦燥感
所持品:アビスピンクのコスチューム(仮面は外してます)、ロリポップ、メロン1個、ティアの服 ブリザードマグ
基本行動方針:ルーク達と殺し合いに乗っていない人を探す
第一行動方針:ハスタから逃げる
第二行動方針:状況を見極める
第三行動方針:先程の声の主に危険を知らせる ?
現在位置:E4西
650名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 01:43:18 ID:7U+m4nrx0
終了。
さて、寝るとするか。
651名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 01:45:17 ID:NQ413+F30
投下乙です
デクスその人に喧嘩売っちゃダメー!
カイルとティアが来てるといっても、おまけでハスタが来てるからなぁ…
さて、没スレに行ってくるとするか
652名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 02:49:16 ID:O25TcTeaO
投下乙!
アビスマン絶体絶命フラグ!
そして体力的にはこの中でさりげなく一番ピンチなデクス
シゼルだけでなくぴょろ〜んも来たら…gtbr
そういえばマーダー同士のバトルってこれが初めてなのかな?
653名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 03:14:41 ID:Za2z78maO


これ放送前・・・だよね?
654名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 05:06:05 ID:pZaAtTWqO
投下乙です。
これでハスタさんきたら一気にカオス。

>>653
放送後でしょ。描写はないだけで。
655名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 05:08:22 ID:pZaAtTWqO
連投ごめん。
西の街は結局放送後はまだ未定になってるんだよね。
昨夜の破棄でさ。
656名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 05:23:23 ID:NQ413+F30
チャットその他組が破棄になったから、未定になったんだろうね
657名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 08:21:10 ID:dRq53ccrO
携帯から作者です。
アニー暴走も無かった事になったんですよね、失念してたぜ。
レイスのモノローグの部分、最後の一行「水に浮かんだ街が見えはじめた」的に変えさせてください。

ようやく修正なしで投下できたと思ったのに甘かったぜ
658名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 08:32:13 ID:Fi5+dKASO
投下乙です!マーダー同士のガチバトルか…デクスとシゼル、そしてハスタも向かって来ている。大乱戦必須か?
てゆうか、対主催組の武装がティア以外絶望的過ぎるwwそしとカイルは新たなアビスマンを産み出すことに成功するのか?
まあなんにせよE-2の悲劇みたいなことになんなきゃ良いな。
659名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 08:57:29 ID:ZxJK0dAxO
乙!
マーダーばっかでアビスマン増えないだろw
シゼルさんはやはりグラグラしてますな
カイル、ギアスで説得ヨロ
デクスはやばいなぁ
相手は術師だとしても元ラスボスの格とHPの差がキツいw
アリスちゃああああん会いに来てー
660名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 13:35:46 ID:3wMocCiPO
だからギアスとか言うなって言ってるだろ腐女子。
661名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 13:43:39 ID:WMjwjW5C0
まーた変な空気か。昨日と言いうんざりだ。もう勝手にしろよ。
662名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 13:48:59 ID:h+OE2JZ50
ネタをネタとして(ry
とりあえずギアス見てる人が全員腐女子なわけではないと思う。

とりあえずみんなクールになれ
663名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 13:55:00 ID:ZxJK0dAxO
なんだ、まあすまんかった
664名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 13:55:18 ID:pH+FPVTH0
まあ作品全部破棄して追い出すのはやりすぎたな
マシな話書くならまた迎え入れてやらんでもない
665名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 14:01:11 ID:+8hKEikc0
>>664
それはいくらなんでも書き手にも他住人にも失礼すぎ
666名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 14:01:47 ID:cqwlfCAUO
>>664
なんでそんな上から目線なのか小1時間程(ry
スルーすべきなんだろうが何様なんだ。
667名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 14:03:58 ID:RGBsckTvO
いい加減にしてほしい。いくらなんでも、その発言は頂けない。
668名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 14:10:14 ID:FWxJS2Vo0
単発IDで煽ってるような分かりやすい奴に釣られないこと。
馬鹿な発言をする奴は馬鹿なんだから構っても仕方ないでしょ?
放置して次の作品をwktkしながら待とうぜ。
669名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 14:11:03 ID:+8hKEikc0
短いですが避難所に投下してきました。意見その他あれば避難所の方にお願いします。
670名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 14:20:04 ID:pH+FPVTH0
釣れ過ぎワロタ
やっぱ民度低いな
671名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 14:25:48 ID:h+OE2JZ50
みんな昨日からのことでピリピリしてるのかもしれないけど
こういうのは釣られて感情的な反応するだけで、民度が低いと思われるよ。
冷静に対処しろと言われた意味を考えてほしい。
672名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 15:06:59 ID:Fi5+dKASO
あまり民度低いとジャンプロワみたいになるぞwwまぁ…予約とかが無い分予約荒らしされたりはしないだろうが。
テイルズロワはコテやトリップが無い分、書き手さんも「以前の作品が問題作だから今作も破棄」とかいうレッテルを貼られにくいのが長所だと思うし。まぁずっと問題作書き続けるようなら短所になっちゃうけど。
>>669今から見てくる。
673名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 15:19:03 ID:Wmtn28+N0
そういえばテイルズロワって結構特殊だよな。トリップない予約制でもない、
まとめサイトもwiki方式じゃない上携帯サイトの方が更新されやすい。
他のロワも違うものとか色々あるけど、こうも特殊なのも珍しい。
まあそれが悪いわけではないけどな。
674名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 15:47:21 ID:1RDPNKmD0
コードギアスとテイルズは絵が似てるからね。
どちらもナナリーって名前とシャーリーって名前のキャラいるし。
ルルーシュはリオンと顔似てるし。

だからと言って、ギアスを絡めてくるな!!
675名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 16:11:10 ID:mjAODdFbO
そういえばここ毒吐きも無いのな
別館だけで足りてるのかな?
676名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 16:13:31 ID:WMjwjW5C0
ところで現在地まとめを誰か頼む・・・! 他力本願で申し訳ないがorz
677名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 16:14:40 ID:Fi5+dKASO
軽い声優ネタぐらいなら良いと思うけどね。ギアスに関してはカイルが超頭良くなったり、ティアが不老不死になったりしない限りは。
声優ネタに過敏に反応したらミクたんとリーガルで0083とか、これから遭遇するかもしれないクレスとジェイドでケロロだとかスタンとアリエッタorティアでフルメタだとか言い出したらキリがないし。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 16:18:47 ID:O25TcTeaO
バーローもアウトということになるしなw
ま、ギアスだとか声優ネタ云々の話はこの辺で終わっとこうぜ。
もう「ある程度空気読めよ」としか言えないと思うんだ。
679名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 16:27:41 ID:+8hKEikc0
現在地まとめ

A4:フォッグ、カイウス、チェルシー、クラトス、マオ、エルレイン(モリスンさんち組)
A7:ジューダス、フィリア、ルーク
B4:ミトス、ハロルド(アブソーブゲート)、キール、マルタ(教会)
B5:クラース、ルーティ、エミル、リヒター(モリスンさんちに向かう組)
C1:ミクトラン(黎明の塔へ、多分今C2かC3あたり)
C2:ウッドロウ、ロニ、スパーダ(城組)、アリス(城の外)、サレ、ヴェイグ(森→東へ)
D1:アリエッタ、クレス(ガオラキアの森)
D6:スタン、イレーヌ(南下中)
D7:ナナリー、リアラ、シンク(泉)
E2:ダオス(ガオラキアの森)
E3:アガーテ、レイス(サニイタウンへ)
E4:ハスタ(南下中)、カイル、ティア
E7:ルビア、ディスト、ルカ(森)
F4:デクス、シゼル
F6:すず(川の中)、ロイド、クロエ、ノーマ(レムの塔)
G2:バルバトス、リフィル、ジェイド、チャット、アッシュ、アニー
G4:ワルター、セネル、ジルバ、シャーリィ
680名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 16:50:10 ID:Fi5+dKASO
現在地まとめ乙です!
>>678そうだな。やたらギアスだとか騒がないようにするべきだな。あんまりうるさいようならNGワードに登録するとかすれば良い話だしな。
>>676必要なら避難所にでも建てれば良いんじゃね?
681名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 17:04:01 ID:8YrXuSpf0
しかしやっぱりモリスンさん家が圧巻だ
現在6人でもうすぐ4人追加、しかもそのうち9人はゲーム反対
682名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 17:07:19 ID:n48lGFP+0
>モリスンさんち組
>モリスンさんちに向かう組

なんだかピクニックみたいで和んだ
しかし対主催多いし波乱が起きたら楽しそうだなー
683名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 17:12:54 ID:O25TcTeaO
現在位置まとめ乙!
エミル&リヒターとマルタがさりげなくニアミスしてるんだな。
モリスンさん家が対主催の拠点になるのも時間の問題だ…いや、不安要素は1人いるが既に拠点かw
684名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 17:21:18 ID:mjAODdFbO
1stの今頃は居場所もあやふやだったモリスンさん(の家)がこんなに注目を浴びる日がくるとは
一体誰が予想出来ただろうか……
685名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 17:26:28 ID:xfXN1AZVO
逆にA7組は微妙に孤立気味?
地形上向かってくるグループいないから周りからどんどん人減ってる
ルークはまだ寝てるし
686名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 17:54:00 ID:vWU44y1lO
こういうバランスの悪さが好きだww
687名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 20:17:53 ID:+8hKEikc0
避難所に投下したルカ話、投下します。
誤字脱字など加筆修正有です。
688目覚まし時計はいつ壊れた? 1:2008/09/17(水) 20:19:41 ID:+8hKEikc0
(嫌だ、嫌だ、嫌だよぅ!! 助けて! 助けて!! イリア、リカルド、スパーダ、アンジュ、エルマーナ!! シンク! リアラ!! ナナリー!!!!)

僕は走った。目の前の赤が怖くて怖くて仕方なかった。
イリアと同じ髪の色の女の子が肩から流す血の先に僕はいた。
そのどろりとした粘る血が、地面に染みて僕の足に伸びて、そうして僕を血の海の中に引きずりこんでしまうのだ。
追ってくる何かが怖くて後ろを振り返る。草原に残った僕の足跡は真っ赤にはっきりくっきり僕の軌跡を示している。
「いやだ、やだよ!! こんなの嫌だ……っ!!」
僕はまた走る。血を滴らせた“僕”が追いかけてくるのだ。イナンナにデュランダルで貫かれたアスラの瞳の色と同じ足跡を残して。
目の前が霞んでぼやける。涙とか鼻水とか涎とかが顔を汚すのが嫌で手で拭ったら、視界が何故か赤く染まった。
(あ、死んだのかな僕)
けど僕の足は止まらない。どこにも痛みは感じない。ふと目に入った思い切り振りかぶった青いジャケットの袖がいつもより濃い色をしているのに気が付いた。
「え……あ」
左手の染みを右手で触る。どろりと粘つく感覚が指先を支配する。指先を見る。赤く濡れていた。
「嫌だ、嫌だ、やだよ、こんなの、嫌だあああああっ!!」
血に濡れた手を必死に袖で拭う。お行儀が悪いと両親には注意されるだろうけど今はそれどころじゃない。
皮が擦り切れて痛いほど拭ったはずなのに、どうしてだろう、赤色はこびりついて全然とれないしさっきよりも増えている気がした。
戦場を幾度と駆け抜けて、何度も何度も血とか赤とか見慣れてて、医者になっても血が怖くなくて平気そうだなと思っていたのに、何でこんなにこの赤は僕を恐怖させるんだろう!
「落ちない、落ちないよっ……」
皮膚が裂けてそこから出血していることにも僕は気付かないで手をこすり続ける。
へたりこんだ足のブーツの裏も革をはりかえたみたいに赤くなっていて。
草むらをかき分けて泥をほじくるように僕は足をこすりつける。
ああそれでも僕の身体から溢れる赤は止まらない。
「ねえ、どうすればいい、イリアっ、リカルドっ……」
僕はこの悪夢で奪う側に回ってしまったのだ。
イリアもリカルドもきっと誰かにこんな風にして腕をもがれて死んでいったのだろうか。
酷い、酷すぎるよ。そんな残酷な人がこの島にいるなんて!
そうして僕が腕をもいだ彼女の大切な人も、きっと同じように僕を酷いと思うんだ。
「イリアとリカルドの命、返してよ」
一度考えた道。優勝すればイリアとリカルドは生き返ることができる。
『――――の命、返せよ』
顔の見えない誰かが僕の命を狙いにやってくるんだそうして。
酷い、酷すぎるよ。こんな残酷な人がこの島にいるなんて! って。
「シンクっ、リアラ、ナナリーっ!」
優しく殺し合いを否定する彼らは血まみれの僕をどう思う?
どこからどう見ても殺し合いに乗ったに違いないよ。他人の血でどろどろの男なんてさ。
このデッキブラシで撲殺したの?
心を入れ替えたんじゃなかったの?
そんなことを言いながら僕を蔑むような憐れむような目で見るよきっと。僕もきっとそうするもん。
「そんな目で、僕を見るなよっっーーーー!!」
気付けば僕は絶叫していた。泥だらけの地面に抱えた頭をはりつけて。
銀髪が赤と泥に汚れるのなんて知らない。
涙と赤がごっちゃになって僕の顔を身体を心を全てを汚していく。
泥が口の中に入って吐き気すらもよおす。
689目覚まし時計はいつ壊れた? 2:2008/09/17(水) 20:21:48 ID:+8hKEikc0

もういやだよこんなところ。
このままなきつかれてねむっておきたらゆめだったなんてつごうのいいはなしがあればいいのに。



うふふ。あはは。

目覚まし時計の鐘のように、僕の意識を現実に引き戻したのはどこかから聴こえる笑い声。
寝起きのように僕はぼんやりとした頭で小さな子どもみたいに辺りを見回す。

真っ赤な僕の見たものは、切り株と倒れた木の幹に座って、パンをちぎって優雅にお茶会している二人の男女。
一人はボサボサの長い金髪で、剣を片手にお茶を淹れてあげている。とても幸せそう。
一人はウェーブのかかった紫髪のお姉さんで、胸も大きくて、どこかぼんやりとしてるけどとても綺麗な人だった。パンくずを一粒もこぼすことなく口に運んでる。
周りには蝶が飛んでて、足元にはかわいい花も咲いていて。
男の人が女の人の髪に小さな花束を作って飾ってやっているんだ。
(すごく似合ってますよイレーヌさん)(ありがとうスタンくん、優しいのね)
そうやって悲しく微笑みあう二人は、王都レグヌムの大きなお屋敷の庭園でも見たことないような、お伽噺にでも出てくるようなシチュエーションで。
二人とも身体のどこかに僕と同じ赤がこびりついてるのに、なんともない顔をしてる。

やっぱり殺し合いなんて、夢だったんだ。
だってほら、目の前に広がる光景はこんなにもメルヘンチック。
目の前で首を飛ばされた赤毛のお兄さんも夢。
優しいリアラもナナリーも頼れるシンクも夢。
イリアとリカルドが死んだとかいう放送も夢。
僕が女の子の腕を切ったのも夢。
この赤は夢の証拠。赤い夢を見てるんだ。赤色は夢の住人の証。
全部全部夢なんだ。
ほら頬をつねってみたよ。ぜんぜん痛くない。むしろつねった手の方が痛いくらい。
じゃあ僕はこの悪夢から醒めるまで、何をして遊ぼうか。
手にしているのは取っ手があちこち赤いデッキブラシ。
夢なんだから、全部僕の思い通りになるはずだろう? そう例えば我が愛剣デュランダルとかに。
夢の中なら僕は誰もが恐れるアスラで、悪しきを踏みにじり弱きを守ることもできるんだから。
 
 
690目覚まし時計はいつ壊れた? 3:2008/09/17(水) 20:23:26 ID:+8hKEikc0

【ルカ・ミルダ 生存確認】
状態:HP95%、TP95% シンクを信頼? イリアとリカルドの死に大きなショック  夢心地  両手の皮がずる剥け(出血)
所持品:アビス女性陣の水着セット、デッキブラシ
基本行動方針:夢ならなんでも僕の思い通りになるよね
第一行動方針:なにをしようかな
現在位置:D6南

【イレーヌ・レンブラント 生存確認】
状態:精神不安定 頬に傷 魔剣の声が聞こえる エクスフィア装備
所持品:魔槍ブラッドペイン スターダストリング 要の紋付きエクスフィア
    マグニスのサック(内容不明支給品一個)
基本行動方針:スタンと共に答えを探す
第一行動方針:昼食をとる。休んだら南下
第二行動方針:魔剣の指示を遂行するか考える
現在位置:D6南

【スタン・エルロン 生存確認】
状態:現実への絶望 精神不安定 理想崩壊 エクスフィア装備 ルークに妙な感情
   精神へ僅かにイグニスの影響
所持品:魔剣ネビリム 要の紋付きエクスフィア ネクロノミコン センチュリオン・イグニス
    アンチフォンスロット ヒールバングル サファイア
基本行動方針:イレーヌを最後まで守る。イレーヌを許容しない世界を許さない
第一行動方針:昼食をとる。休んだら南下
第二行動方針:障害は斬る
現在位置:D6南
691名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 20:25:05 ID:+8hKEikc0
以上です。問題点などありましたらご指摘下さい。
いつでも修正する覚悟です
692名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 20:26:53 ID:3oc/NX3X0
乙、そして……供養に行ってきますw
693名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 20:30:11 ID:pZaAtTWqO
まずは投下乙。昨日の今日でここやる心意気はすげえとは思った。
賛否は正直半々な印象だけどね。
694名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 20:33:26 ID:bLAXHZhn0
投下乙です。このパートを書いたあなたに敬意を表したいと思う。
感想についてはほぼ避難所に書いてるけど…スタイレの優雅な昼食に吹いたw
695名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 20:42:53 ID:hHJVho0NO
少しは学習しろよ
696名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:01:23 ID:Yq8aWcWz0
投下します。
697スペシャ〜ル スマイルッ!:2008/09/17(水) 21:02:02 ID:Yq8aWcWz0
ゆらゆらと青い炎が揺らめいている。
かつて高位大晶霊であるマクスウェルが居た場所。こんな形で再び訪れることになるとは夢にも思っていなかった。
主の居ない間はどこか寂しげだ。あの軽快な笑い声が部屋を満たすこともない。
マクスウェルもいない。メルディも、ファラも――リッドも。
暗雲とした感情が胸の内から湧いて出る。
キールはずっと考えていた。どうしてあの時うまく立ち回れなかったのかと悔いていた。
キールは唯一あの場所でサイクローグと対話をした人間である。
動かなかったのは、リッドの力を信じていたからに他ならない。
だが、リッドの危機には変わりなかった。
あの時、サイクローグに助けを懇願していたら!状況が悪かった。体制を立て直すためにも一度引くべきだった!
見ず知らずの内にキール達を拘束できるような力をもつ人物の仕業である。
あそこには数多くの人間が居た。その人たちとともに、戦力を整え反抗するべきだった。
しかし、キールは突然の事態に混乱し、些か慢心もあったかもしれない。
世界を救った自負。未知の力を極めた親友を持つという誇り。すべてが邪魔をした。
サイクローグに掛け合ったとしても何も変わらなかったかもしれない。だが、キールはやらなかった。
後悔とは後にするからそう呼ばれるのだ。
―――キールはリッドを見殺しにした。残ったのはその事実だけ。

僕はこの場所で何を成せばいいだろうか。
戦闘力で劣るキールはみじめに隠れ潜むしかない。
リッドのように大手を振って歩けるような実力は、
(――違う!僕は『僕』だ)
比べ、卑下することはとっくの昔にやめたはずだ。
リッドやファラは武に長け、キールは知。それで納得したし、間違っているとも思わない。
リッドはこの殺し合いを止めようとしていた。ならば、せめて生き残った自分はそれを継ぐべきではないのか?
同じようにはできないが、自分自身のやり方で。
(僕には情報が必要なんだ。まずは、)

◇  ◇  ◇
698スペシャ〜ル スマイルッ! 2:2008/09/17(水) 21:02:36 ID:Yq8aWcWz0
体が痛い。怪我はまだ治りきっていないらしい。キールの言う通り、悔しいが休むしかないようだ。
(エミル、……ユージーン)
最愛の人。そして、マルタを守ってくれた人。生存はおそらく絶望的だ。
逃がしてもらったマルタさえこのような傷を負っている。そんな相手にマルタを逃がしながら戦うなんて……無謀だ!
身を抱きしめるようにしてマルタは座る。目を覆い上を向く。泣かない、泣いてなんていられない。
マルタがそう思いつつ休んでいると「おい」と考え事をしている風だったキールが突然立ち上がった。
「な、何……?」
近寄ってきたキールにマルタは若干戸惑った。手元に武器はない。相手は男だ。
だけど、キールはマルタを助けてくれたのだから安心していい人間だ。
なのに落ち着かないのはこの場所の薄暗い雰囲気のせいだ。キールはマルタの問いに答えることはなく、じっとマルタを見据えた。
あまりにも熱心に見詰められて、マルタは少々戸惑う。
いくらなんでも見すぎではないだろうか。接近した二人の間に隙間はほとんどない。
戸惑っているマルタをよそに「ん?」とキールは声を漏らした。
キールの瞳が輝いたのは錯覚だっただろうか。ふと、キールの腕が動く。
それが伸ばされる先など一つしかない。
注意。赤信号。危険。アラート。外敵確認。防衛システム起動。
「わ、私にはエミルがいるんだからねっ!」
口より先に手が出た。
ばちーん!と無意識に出た言葉と共にマルタはキールに平手打ちをお見舞いする。
筋肉もなくその年頃の男としては軽すぎる部類に入る男は、簡単に倒れた。
「あ、」
「……っ!いきなり何をするんだ!」
「そ、それはこっちのセリフよ!エッチ!」
うたれ強いのか直ぐに起き上がったキールはマルタに言われた言葉にデジャヴを感じる。
いつかのあの時。初めてメルディと出会った時にも同じことがあったような。
思考をその思い出に取られているとマルタがぶつぶつと何かを言っている。
エミルがどうとか。エミルだけだとか。とんだ誤解だ。
「勘違いするな。僕にだってその、…恋人ぐらいいるさ」
え、とマルタの瞳が好奇心に光った。が、今はそんな話をしている場合ではない。
「……言っておくが僕はただ首輪を見ていただけだ」
「首輪?」
「自分では見られないだろう」
考えに没頭していると言葉を忘れてしまう。今度は許可を貰い、再びキールは首輪を眺めた。
何の変哲もない首輪。だが、キールはその表面に妙な模様が刻んであることに気がついた。
意味を理解することはできない。ただの模様か、何かの暗号か、文字か。
「何かあるの?」
「首輪の表面に何か書いてあるが、……」
「名前じゃないの?」
「名前、か」
キールは同じように自分の首輪にも指を走らせた。マルタの物とは手触りが違う気がするが、やはり名前か識別番号でも刻まれているのだろうか。
外観から得られる情報はこれぐらいだ。キールの専門ではないので一見しただけでは分からない。
後は実物を手に入れて中身を調べない限りは進展しないだろう。
699スペシャ〜ル スマイルッ! 3:2008/09/17(水) 21:03:19 ID:Yq8aWcWz0
「君はこれからどうする?」
「どうするって……もう少し休んだらエミルを探しに行くわ」
迷いなく答えた少女にキールはため息を吐いて言った。
「残念ながらそれは却下だ」
「なんでよ!」
「エミルとやらを探して、合流して、それからどうするんだ?」
「どうするって……」
マルタは口を閉ざす。エミルに会う。エミルに謝りたい。エミル。
マルタの心はそればかりでその先のビジョンは未だなにもない。
黙ってしまったマルタにキールは『提案』を持ちかける。
「僕はこれから首輪の解除方法を探す。マルタ、僕に協力してくれないか」
「え?」
「エミルと合流しても首輪の存在がある限り、僕たちは永遠にサイクローグの手の上だ」
命をサイクローグ一人に良いように握られ、常に恐怖との戦い。自由などどこにもない。
サイクローグは言った。
『あなたが思う存分、迷い、苦しみ、その果てにあなたが『選択』することを、わたくしは心から願います……』
選択。仲間を裏切り確実に脱出するか、仲間を信じ先の見えない脱出の道を探すか。
こんなふざけた催しを開くほどに、サイクローグは狂っている。狂人の思考は理解できないが、推測は可能だ。
彼の言葉が真実なら「首輪を解除する方法は確実に存在する」はずなのだ。
正直、こんな首輪をつけられている時点で選択の幅など限られている。
リッドの死はほかの参加者すべてに大きな恐怖を与えたに違いない。サイクローグに逆らってはいけない、と。
だがサイクローグが、悩み、苦しみの果ての『選択』を望むなら首輪の解除の可能性は残っているはず。
希望を奪っておいては選択肢は広がらない。可能性が無限にあるから人は悩み、生きるのだ。
きっと、たぶん、おそらく。すべては甘い推測の域を出なくても、キールはあいまいな可能性に縋るしかない。
「僕は先が見えなくても仲間を信じる……!」
キールの選択は後者だ。仲間を信じることの尊さを彼は学んだ。
「……私は、」
エミルと合流した未来。その後。考えてもいなかった。エミルと合流すればなんとかなると根拠もなく思っていた。
……エミルはいつもマルタを助けてくれる。それはマルタにとって絶対の根拠ではあるが、そんな理由が通用するような相手ではないのは分かっている。
「なにもエミルを探すなと言っている訳じゃない。首輪の調査も同時にするだけだ」
「……分かった。それなら私も、協力する」
信じていた未来に小さな影が射す。
それでも少年と少女は手を結ぶことを選択した。

◇  ◇  ◇
700スペシャ〜ル スマイルッ! 3:2008/09/17(水) 21:04:21 ID:Yq8aWcWz0
『では引き続き……ゲームをお楽しみ下さい……』
そう言い残し道化師の声はそこでぱったりと途切れる。地下まで響いてきた声はどういう仕組みなのか、キールには未だわからない。
休憩を挟みながら情報交換に励んでいた二人は、向かい合いながら放送を聞き終えた。
「……ユージーン、そんな」
呆然とマルタは双眸に涙を溜めた。覚悟はできていたが、もしかしたらという気持ちも確かにあったのだ。
マルタが俯き拳を握り締める姿を視界の端に捉えつつ、キールは地図と名簿に印を刻んでいく。
ハスタ・エクステルミ。ユージーン・ガラルドの殺害犯。要注意。
アニー・バース、ユージーン・ガラルドとの関係は家族……いや、恋人?(不明)
エミル・キャスタニエ 、マルタ・ルアルディの「王子様!」……。
リヒター・アーベント、封印の人柱(どうしてこの場所にいるのか不明)
アリス・デクス・シゼル・レイシス(死んだはずの人間)
マルタから聞いた情報の他にも禁止エリア、死者名を書き込んでいく。

「ヴェイグ・リュングベル……クレア・ベネット…」
キールは名簿を見比べながら考えを巡らせるように呟く。写真には金髪の美しい女性と、整った顔立ちの青年が映っていた。
サイグローグの口ぶりから推測するに、このクレアとヴェイグは浅からぬ関係だったのかもしれない。
そして、そのクレアの死亡。ヴェイグとやらはこれからどうするのだろうか。
同じくサイクローグから呼びかけられた人間としても気になるし、あの口ぶりからしてサイクローグと旧知の関係ということも窺える。
情報を得たいところだが、ヴェイグの行動は予測できない。
サイクローグの死者蘇生も可能という言葉が胸にこびりついたように離れない。
キールはそれを嘘だとも本当だとも言うことができない。甘美な響きだ。油断していたら堕ちそうになる。
だけど、今、この時のキールはサイクローグの言葉を切って捨てた。
希望ならまだ失われていない。

「さあ、行きましょう!」

名簿に記入が終わったマルタはキールを促した。数時間休んだおかげか、普通に動くぐらいなら平気だ。
キールは地図を眺めながら次の目的地を模索する。
北には屋敷、西には城、南には塔、候補はいくつもあるが―――
「ハスタ・エクステルミに襲われた場所に案内してくれ」
「え?」
「……おそらく首輪が残っているはずだ」
マルタは閉口する。酷なことをいっている自覚がキールにはあったが、必要なことだ。
「あれから時間も経ったし、ハスタの心配はしなくていいだろう。それに、……彼を弔ってやろう」
―――マルタを守って散った、ユージーン・ガラルドを。
キールの言葉にマルタは目を見開いた後、俯きながら頷いた。
701スペシャ〜ル スマイルッ! 4:2008/09/17(水) 21:06:18 ID:Yq8aWcWz0
【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP100%、TP90% マルタにメルディを重ねている。
所持品:クレーメルケイジ、レンズ×30
基本行動方針:殺される気はなく、脱出の道を探す。サイグローグの言葉を信じかけている。
第一行動方針:首輪解除の方法を探し、仲間を集いたい。
第二行動方針:
現在位置:B4ファロース山麓・ファロース教会地下(マクスウェルの間)

【マルタ・ルアルディ 生存確認】
状態:HP70%、TP85%、右肩の傷は行動に支障がない程度まで治療。片袖なし。
所持品:エミルのマフラー 、グランドセプター、血塗れた鬼包丁
基本行動方針:エミルと再会したい。
第一行動方針:エミルを探す。キールに協力する。
第二行動方針:エミルと再会してからどうするか考えてみる。
第一行動方針:エミルにあったら、マフラーの件を謝りたい。
現在位置:B4ファロース山麓・ファロース教会地下(マクスウェルの間)
702名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:07:38 ID:Yq8aWcWz0
投下終了です。おかしいところがあったら指摘があったらお願いします。
タイトルがどうしても思いつかなくて…とても内容と(ry
703名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:12:37 ID:pBErqOOA0
支援
704名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:13:50 ID:O25TcTeaO
投下乙!
タイトルと内容のミスマッチ加減に、俺はあえて拍手を送るよw
真に綺麗なキールが見られるかもしれない2ndに期待!
最後のキールの台詞かっこよすぎる…!
マルタ、王子様は近くにいるぞ!
気付け、マルタ…!
705名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:13:56 ID:+8hKEikc0
投下乙です。
OPといい第1回放送といいサイグローグはたくさんのヒントを提供していたのか。
外に出たら多分ご心配の猛吹雪が迫ってるぞ!
706名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:22:13 ID:/3ViR5320
投下乙!
格好良いキールに惚れたw先が期待できそうだ

さて、供養してくるか
707名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:24:35 ID:PgOUqKsR0
投下乙!
首輪解除を目指す…ということは脱出…なのか?
なんにせよ今西に戻るのは危険だぞw
708名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:29:17 ID:ZxJK0dAxO

そういや1stでもリッド死亡時はこんな感じだったな。
状況がきつくなってメルディが絡んだら修羅になったが
しかし目的地は場所がやばいな
709名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 21:29:42 ID:pZaAtTWqO
投下乙ー、ついにキールキター!
しかしなんというデジャブ。
お約束なビンタに和んだw
710名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 23:28:37 ID:Fi5+dKASO
まとめサイト行ったら参加者現在位置更新されてたwwまとめさん乙です。
そしてキールかっこいいよキール。
711名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 23:31:58 ID:xdtNGm/bO
投下乙です!
でもプレセアとリーガルの死には何の感慨もないの?
712名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 00:11:10 ID:azxoHCm+O
作者です。指摘有難うございます。
あとで修正版をまとめサイトの方に送ります。
713名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 00:19:21 ID:EDoQQYWj0
投下乙です
キール格好いいな。かなり頼りになりそうだ
そして自分もプレセアリーガルの事すっかり忘れてた…
714名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 00:37:06 ID:IFj33Hsv0
投下します
715交錯する物言う剣 1:2008/09/18(木) 00:40:37 ID:IFj33Hsv0
白い腕が落ちる足元が、流れ出る血でとろとろと埋め尽くされていく。
とは言えまだ血色も良く、まるで異常の見られない腕だった。
持ち主から切り離されていることを除けば。

「ううぅ……っ!」

痛みと涙が止め処なく溢れてくる。
目の前にころりと転がる自分の腕を見つめる。
今までどおり自分の意のままに動いてくれそうな錯覚すら覚えた。
だが、切り離されたソレはただの肉塊。
ぴくりとも動きはしなかった。


「この天才的頭脳に傷がつかなかったのが救いですかね……アイタタ……」
「……ああ、あ、あぅ……」
「……やれやれ……危険は承知だったのでしょう?早く立ちなさい、彼が戻って来たりしたらどうするんです」

ディストの言葉も、ルビアの耳には届かない。
確かに、彼女は戦いの中に身を置いていた。
負傷の経験も度々ある。
しかし、この喪失は大きい。
傷口から煮えた油を流し込まれたように痛む。
治癒術の連発は、確かに痛みを和らげはした。
だが、その痛みは心に恐怖の楔を深々と打ち込んでいったのだ。
震える唇は、彼女に返答を許さない。

「……ぅぅ、ぁ、ああぁ……」
「……いつまでモタモタしてるんですか?置いてっちゃいますよ」

投げかけられる言葉は、温かくはなかった。
ディストの眼鏡の下の眼差しは低温そのもの。
早々に荷物をまとめ始めている。

『ディスト!少しはルビアの……』
「あなたの判断が甘かったのも理由なんですよ」
『っ……!』

ディストの言い分も尤もで、物言う剣が言葉を詰まらせる。
あの時、もっと動きを拘束させていれば。
剣─つまり凶器である自分を、遠ざけてさえいれば。
ディムロス・ティンバー中将らしからぬミスだったと言えた。

「……それに、腕一本ですんだだけでも幸運でしょう?」
「!……ぅ……腕、一本で…って」
「おや、やっとまともに口を利いてくれましたね」

自分の身体のことなんて、ディストは気にかけてくれないのか。
ルビアは傍に誰かがいるのにも関わらず、孤独を感じずにいられない。

─このひとは、私がどうなろうと構わないのかな。

転がる腕が無価値にすら感じ、再び涙が眼に滲む。
716交錯する物言う剣 2:2008/09/18(木) 00:42:33 ID:IFj33Hsv0

「命があるだけでもラッキーじゃないですか、あのまま頭を真っ二つにされてても……」
『いい加減にしないかッ!!ルビアの傷を抉るような真似はもう止せ!!!』
「……ディムロスさん、ありがとう……もう、いいの」

か細い声が一人と一本に届く。
破れた左袖で、傷口を固く締め付けていた。
落ちた、左腕の。

「……ちょっと、待ちなさい……その左手、持って行くんですか?」
「……」

ルビアの行動は愚かかもしれない。
だが、すぱりと切れた腕をここに捨て置く気になれなかった。
まだ微かに希望を持っているのかもしれない。
万が一、この腕が繋がるのなら、と。

「ハァ……『お荷物』をまだ増やさなきゃならないんですか?」

ディストの言葉に再度心の傷口を穿り返される。
自分は彼の『お荷物』なのだ。
仲間とすら、見てもらえない。

「……あなた、氷系の術は?」
「え?」
「このナマクラさんは炎しか能がないんです、氷系の術は使えますか?」
『ナマ……!!』

イライラしているのか、ディストは組んだ腕を指でトントンと叩く。
ルビアの虚ろな思考が、自身の使える技術を辿った。

「……はい」
「なら良かったじゃありませんか……」

唐突に転がる腕を拾い上げ、付着した土を軽く払う。
踵を返し、先程の少年を引き上げた泉まで一人で向かった。
ルビアは追いかけようとするが、片腕でディムロスは持ち上げられない。
剣一本置いていくわけにも行かず、待つしかなかった。
程なくして、湖で洗ってきたのか濡れた腕を持ってきた。
機械的な扱いで、それを比較的綺麗な草の上に転がした。
717交錯する物言う剣 3:2008/09/18(木) 00:43:33 ID:IFj33Hsv0

「さ、早く」
「え?」
「傷口を凍らせろ、と言っているんですよ物分りが良くありませんね」

ディストが転がる腕を指差す。
どういうことだろう。
なんで『お荷物』をますます重たくするんだろう。

「いいですか?保存状態を良好に保つならこの方がいいんですよ」
「……」
『お前……』
「『たまたま』お医者さんがいて私達に出会うまで『たまたま』死なないでいて
 『たまたま』あなたの腕を善意で縫い合わせてくれると、信じているならそうしなさい」

まあ、ありえませんがねと、鼻で笑いながらそっぽを向く。
その仕草を見て、ルビアはなんとなくおかしかった。
この男は冷たいのではない。
とことん、ひねくれているのだ。
そう、まるでルビア以上に小さい子どもみたいに。
よく見れば、先程からの態度は突き放しているわけではないのだろう。
極限まで、おどおどしていただけだったのだ。
根っからの悪人というわけでは、ないのかもしれない。
ルビアは、途端に目の前の男に温かみを感じる。

「─ありがとうディストさん」
「フン、さっさとしなさい……もうまともに戦闘もできないんですから、我々は」

ディストはへっぴり腰でディムロスを持ちあげ急かす。
片腕の少女は、精一杯の笑みを見せてアイシクルを自らの腕に詠唱した。






「……そうなのか、さっきの女の子は……」
『ええ、迷ってたみたいだった……』
「それが本当なら、追いかけてもう一度説得したいところだが」
「それっぽい痕跡無いねぇ〜……さっすがシノビだね、ジェージェーみたい」

ロイド一行に、喋る剣という奇妙な連れが加わった。
突然の襲撃を仕掛けてきた少女が落とした短めの剣。
口を利いたのだから、それはそれは驚いた。
驚きのあまり、丁度拾い上げようとしたロイドはノーマの方へ蹴っ飛ばしてしまった。
ノーマも金属音を上げて滑る剣を、咄嗟にロイドへと蹴り返す。
2、3度続いたところでアトワイトとクロエが『いい加減にしろ(なさい)!!』と声を荒げたために無益なラリーは終わりを告げた。
そこでこれまでの少女の行動、アトワイトの情報をロイド達は得たのだ。
散策もするべきだったが、先程の少女のこともあり早めに切り上げ塔を後にしたのだ。
何より、塔を上ってしまうと逃げ道が無くて危ないというのもあった。
718交錯する物言う剣 4:2008/09/18(木) 00:45:27 ID:IFj33Hsv0
「南は海だし、森に来たはずなんだけどな?」
「いや……私達のように、こちらの川を渡るかもしれないな」
「でもさ、そこ禁止エリアじゃない?やっぱこっちっしょ」

地図を囲んで、どちらかと言えば直感行動型の3人は頭を巡らせる。
塔を後にして森に足を踏み入れるも、少女の足取りはまるで掴めなかった。

「仕方がない、とりあえずもっと北へ行って他の人間を探そうぜ」
「ん〜…でも不安だね、ワルちんといいあの子といい、私達ってば運無いねー…」
「二度あることは三度あるからな、気を引き締めていこう」
『気をつけて、森の中は奇襲を受けやすいから』

クロエとアトワイトは気が合うのか、彼女を腰に挿すのはクロエの役割になった。
代わりに少々大きめの剣がロイドに渡される。
ようやくピコピコと音を立てる玩具から解放されたロイドであった。

「一刀流はあんまり得意じゃないんだけどな」
「じゃーコレ持ってなよ、さっきちょびっとカッコよかったからさ」
『合わせると、とてもかっこ良いとは言えないと思うわ……』

解放されるのはもう少し先だったようで、剣とピコピコハンマーの不ぞろいな二刀流が完成する。
アトワイト、クロエ両名が頭を抱えた。






「ヒィ、ヒィ……」
「だ、大丈夫ですかディストさん?」
『お前が心配されてどうするのだ……』
「キィィ、黙らっしゃい!!あなたがむやみやたらに重たいせいですよっ!!」

大剣ディムロスに遊ばれるかのようにフラフラしながら、ディストは歩く。
片腕の少女が逆に心配するほどだった。
サックに収納してしまえば良いのかもしれないが、それでは突然の襲撃に対応不可だとディムロスが提案した。
先程の反省を踏まえ、今後は徹底的に警戒するつもりのようだった。
平原を突っ切る最短距離を取っているとはいえ、それでもディストの歩みではけっこうな時間がかかる。
普段からイスにばかり座っていたせいか、まるで歩きなれていないのだ。
やっと森に着くまでに、随分な時間を費やしてしまった。

「ディストさん、しー、しー!!」
『見通しが利かないのだ、そう音を立てるな』
「ハイハイ、まったく……ぶつぶつ」

へっぴり腰と手負いの少女の歩みはやはり遅く、森に入ってさらにその速度は落ちる。
今はどこまで来ただろうか、というところでディムロスが驚きの声を漏らす。

『むっ……!?』
「え、どうしました?」
『……この声は……』
「ハァハァ……こ、声?」

ディムロスは、確かに木々の向こうから聞いた。
オリジナルの自分の恋人の声を。
何も聞こえませんね、と首を傾げるルビアは、少々遅れて何人かの声を聞く。
間違いない、複数の人間が接近している。
719交錯する物言う剣 5:2008/09/18(木) 00:47:29 ID:IFj33Hsv0


「お?……今、何か……」

ロイドが、何やら耳にして顔を上げる。
クロエたちの耳にも届いたようだった。
先程、アトワイトが何か聞こえたと言うのは彼らには気づかなかったようだったが。
ただ、彼女には確かにあの熱血漢の声が聞こえたのだ。

「……声、だな……男の」
「どうする?逃げよっか?」
『待って、さっきの声が間違いじゃなかったら……』
「?」
『この声の主は、貴方達のようにソーディアン、つまり…武器を持っているわ……』

三人の歩みが止まり、声の方向を向いて考える。
武器を持った男。
これは逃げるべきか、接触するべきか。
やがて、口を開いたのはロイドだった。

「……行こう」
「え、でもロイどん……」
「逃げてばっかじゃ、何も始まらないさ」

何かあっても俺が守るから大丈夫、と笑顔を見せてロイドは茂みを掻き分ける。
クロエとノーマも頷きあって、後に続いた。




ざ、ざ、ざと足音が近づいてくる。
どうしよう、どうしようと考えると自然に足は後ろへ向かった。
ディストに至っては、剣を放り出してすたこら逃げ出しそうな腰つきだ。
対して、握られたディムロスは抵抗も辞さない、といった様子で息を呑む。
しかし、その緊張が一つの声に破られた。

『ディムロス!!』
『!……アトワイト!!』
「え……?」


炎と水の、物言う剣。
二人は、出会ってしまった。
そして、ディストの言う『たまたま』。
剣、という形ではあるが、ほんの少しだけ当たってしまったのであった。
720交錯する物言う剣 6:2008/09/18(木) 00:48:15 ID:IFj33Hsv0
【ルビア・ナトウィック 生存確認】
状態:HP60% TP18% 左腕切断(血はほぼ止まっています)
所持品:旋風、ポイズンパウダー、フリーズリング、アビシオンのフィギュア 左腕
基本行動方針:死にたくない。殺し合いには乗らない。
第一行動方針:目の前の三人組に対応
第二行動方針:カイウスを探す
第三行動方針:F6レムの塔に向かい探索。
現在位置:E7 森 南西端

【ディスト 生存確認】
状態:HP、TP100% 疲労(大)
所持品:ソーディアン・ディムロス 考察メモ 工具箱(基地から持ち出した)
基本行動方針:とりあえず、死ぬ気はない。
第一行動方針:ヒィィ!どうしよう!?
第二行動方針:F6レムの塔に向かい探索。
第三行動方針:ジェイドよりも先に、首輪の解除方法を探す。
現在位置:E7 森 南西端


【ノーマ・ビアッティ 生存確認】
状態:HP95%、TP90%、左肩に軽症、生乾き 現実に対する不安
所持品:ホイッスル、本人確認済み支給品1?2個
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。死にたくない
第一行動方針:目の前の二人組に対応尾
第二行動方針:すずと会い、説得する
第三行動方針:セネル達と合流する
現在位置:F7森 北西端
 
【クロエ・ヴァレンス 生存確認】
状態:HP100%、TP95%、帽子紛失、生乾き 現実に対する不安
 所持品:ソーディアン・アトワイト、安全ヘルメット
基本行動方針:打倒サイグローグ
第一行動方針:目の前の二人組に対応
第二行動方針:すずと会い、説得する
第三行動方針:セネル達と合流する、セネルが心配
現在位置:F7森 北西端
 
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:HP100%、TP100%、生乾き、すけべ大魔王 これからに対する強い決意
所持品:オブシディアン、本人確認済み支給品1個、エリクシール、ソーサラーリング、ピコピコハンマー
基本行動方針:打倒サイグローグ。死んだ仲間のためにも、ゲームには乗らない意志を貫く。
第一行動方針:目の前の二人組に対応
第二行動方針:ノーマ・クロエと人を探す
第三行動方針:すずと会い、説得する
現在位置:F7森 北西端
721名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 00:49:21 ID:IFj33Hsv0
投下終了しました。
722名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 00:55:01 ID:EDoQQYWj0
投下乙!
ディストいい奴だな!第一行動方針には吹いたがw
行動派三人に頭脳派が加われば、強力な対主催チームが出来そうで期待だ!
723名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 01:00:12 ID:1RGWWs6W0
投下乙、ディストがかっこいいだと…許せる!
アトワイトはさりげなく、ディムロスがかつて通った道を通ってるw
そして剣とピコハン二刀流ふいたw
724名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 01:08:43 ID:ztd82K5LO
投下乙です
なんか最近ディスト輝いてんなw
腕は1stだとエリクシールでくっつけてたっけ
アトワイトの知識と回復能力があればルビアにも希望が見えるかもね

アトワイトはクロエが気に入ったみたいだけど
ソーディアン二刀流とかしたらチートすぐるw
725名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 01:38:13 ID:qMwm+1Ix0
それなんてメドローア
726名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 01:55:23 ID:vchLGvrR0
ディストの発言はおどおどしてるようには見えないが面白かった
727名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 02:06:24 ID:Kn+2GykfO
そろそろ次スレたてないとまずくないか?
728名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 03:09:51 ID:araSI/+c0
そういやクレメンテって元生物学者だったとジューダスが言っていたな
無かったことになってるっぽいけれど
729不幸の連鎖 1:2008/09/18(木) 11:59:30 ID:C8OnpYSG0
ステラ、ステラ、ステラ、ステラ、ステラ、ステラ、ステラ、ステラ、ステラ、ステラ、ステラ。
出会いは嘘から始まった。メルネス奪還の任務を受けて俺はステラとシャーリィに接触した。
任務のつもりだった。でも、二人の優しさが、ステラの優しさ温かさが、シャーリィの無邪気さが俺の気持ちを変えていった。
守りたかった。守れなかった。……これで一体何度目だ?
一度目は、街を襲撃されて、それでステラを置いて逃げるしかなくて、
二度目は、やっと助けたのに、今まで何度も助けてくれてたのに、俺は最期までステラに守られたままで、
三度目は、どうだ?なんだこれ。どうなってるんだ?

名簿を見て、ステラの名前が載っていることが不思議だった。
でも、細かいことは考えなかった。生きているなら会いたい、とだけ思った。
『――お姉ちゃんを殺したの?』
そのステラはやはり生きていて、殺された?また、死んだ?意味が分からなかった。

「誰かに襲われて、私はお姉ちゃんのテルクェスに助けられて、」
ぽろぽろと大粒の涙を流しながら、シャーリィは痛みをこらえるように声を絞り出す。
話す内容が要領を得ない。だが、ワルターは真摯にセネルはステラの亡骸に目を奪われながら黙って聞いている。
シャーリィにとっても大切な姉だった。二度と会えないと思っていた姉に、どうしてかまた会えて、一緒に殺し合いを止めようと――!
それなのに、この悲劇!シャーリィの涙は止まらない。
「お姉ちゃんは最初から具合が良くなかったの、ジルバさんもお姉ちゃんを守ろうとしてくれたけどこんな怪我を負って、」
ステラの亡骸を優しく抱きしめたジルバはぽろりと透明な涙を流した。
ワルターは全身傷だらけな異形な存在を見た。ジルバは肩を震わしながら静かに涙を流している。
「妹を頼む、とステラさんに言われて、……私は逃げることしかできなかった」
ジルバはステラの遺体の上に涙を落す。
「お姉ちゃん……」
「私は、私は……」
震えるジルバをシャーリィが慰めるように寄り添う。ステラは未だ温かいのに生きてはいない。
不思議な光景だ、とセネルは思った。

「メルネス、」
ワルターは大切な少女に掛ける言葉を持たなかった。女性二人がステラの死を悲しみ、泣いている。
セネルに抱いていた戦意など、今はなくなっていた。
悔しいがワルターは理解している。シャーリィの涙を止めることができるのはセネルだけだと。
だが、セネルは未だ呆然と立ち尽くしているばかりだ。

「ステラ……」
ジルバからステラの遺体を渡された。お互いに宝物を扱うような仕草でそっと、セネルの腕の中へとステラは戻ってくる。
最期の言葉なんて、まさにステラらしい。自分より他人のことばかり気遣って、いつも自分は後回しで、ずっと歯がゆく思っていた。
あんなに美しかったステラが今は全身の皮膚が爛れ、酷い有様だ。どうしてステラばかりこんな目に合わないといけないのだろう。
彼女はとても優しく素晴らしい人間なのに、どうして。
でも、全身に火傷を負っていたステラを醜いとは思わなかった。思えるはずがない。
「生きてて、くれたのに」
死なせたのはセネルだ。この近くで襲われたなら、助けにいくことだって出来た。
だが、セネルはワルターとのくだらない因縁に囚われステラの危機に気がつくことができなかった。
「ステラ、ステラ……!」
二度目の生がこんな無残な形で終わるなんて、あまりにもステラが不憫だ。
こんな風に殺されるために、ステラはここで生きていたのか?―――ふざけるな!

◇  ◇  ◇
730不幸の連鎖 2:2008/09/18(木) 12:01:07 ID:C8OnpYSG0
どれほどそうしていただろうか。ずいぶんと長い時間だったと思う。
シャーリィの涙は止まらず、ワルターはそれを見守ることしかできない。
ジルバも俯いたまま後悔の言葉を繰り返している。
セネルはステラを抱きしめたまま、放心し続けていた。
こんな状態の四人は襲われたらひとたまりもなかっただろう。だが、幸運なことに誰も襲い掛かってくることはなかった。
人すらも通らない。嗚咽と呟きと呼吸音と波の音が混ざりあう中で、ピエロの放送が四人の鼓膜を震わした。
道化師の笑い声が響く。ステラの名前が呼ばれた時には、その場の音が一切途切れた。
悪魔の声が何度も脳裏を反復する。

「白い道と、黒い道……」
セネルが静かに呟いた。最初に集められた空間でサイクローグに言われた言葉を思い出す。
あの時はふざけるな、と気にも留めなかった言葉が今は大きく胸の内を占めている。
『最後の1人……バトル・ロワイアルの輝かしき優勝者には、わたくしからひとつ、ささやかな贈り物を……。
 優勝者にはわたくしが、ひとつばかりですが、願いをかなえて差し上げましょう……富……名誉……不死の肉体……愛するものの蘇生……優勝者が願えば、参加者の皆様を全員、生き返らせ元の世界に送り届けることも可能です……』
そんな言葉に踊らされるものか、と思っていた。だが、死んだはずのステラは生きていた。生き返りはまったくの虚言ではない。
本来のセネル・クーリッジは立派な正義感を持ち、確かな倫理感を持つ真面目な少年である。
ステラがこの場に呼ばれて死んでいなければ、こんなに近くで死んでいなければ、未だ温かい死体に触れていなければ、助けられる位置にいなければ、
このどれか一つでも起こらなかったら、彼はそんな愚かな選択をしなかっただろう。
だが、悪魔の策略によりステラは殺され、道化師の気まぐれにより二人は同じエリア内に飛ばされた。
この偶然は誰が意図したものだったのか。それも道化師の手の内だったのか、誰にも分かることはない。
セネルの中では己の価値観より、後悔の方が勝った。苦渋の選択だった。
でも、まだ止められればセネルは思いとどまれたかもしれない。

「シャーリィ、ワルター、俺は」
シャーリィを優勝させる、と呟いた声に他の三人は大きく目を見開いた。
それがセネルの出した結論だった。セネルはそれでもシャーリィだけは殺せない。
だから、最後の二人となったらセネルは自殺する。そして、シャーリィが皆の生き返りを願ってくれればいい。
勝手な考えだった。それは先ほど仲間になったばかりのチャットまで殺すということだ。ノーマもクロエも、全員。
そこまで考えて痛みがなかった訳ではない。仮にもずっと共に戦ってきた仲間だ。一人ならきっとこの決断を押し通すことができなかった。
「セネル・クーリッジ!!!」
ターバンを巻いた青年が大きく声を上げた。その顔は驚愕とやや喜色に満ちている。
「俺はお前に協力しよう」
元々ワルターの優先事項第一位はメルネスであるシャーリィだった。
セネルが掲げた方針は、ワルターの目的と重なる。
セネルは気に入らない相手ではある。メルネスを守るのは自分の役目だという自負もある。
だが、そのような自分の気持ちをすべて押し殺すことにワルターは決めた。
認めたくないが、悔しいが、メルネスは大きな信頼をセネルに置いているのだ。
一人ではこの殺し合いを戦い抜くのは厳しい道ではある。やり遂げる自信はあるが、これはワルターだけの問題ではないのだ。
メルネスであるシャーリィを守りつつの戦いは厳しい。彼女の安全だって確保しなければならない。
セネルの腕は不本意ながらも認めている部分もある。昨日の敵は味方だ。
シャーリィを優勝させる、これが揺るがない限りワルターはセネルを受け入れる。
え、と涙を拭っていたシャーリィは話の展開についていけない。泣きすぎて耳がおかしくなったのかもしれない。
そう思いたくもなる内容だった。だって、それは『殺し合いに乗る』ってことで、
呆然としすぎて制止すら忘れたシャーリィを置いて話は進んでいく。次に口を出したのはジルバだった。
731不幸の連鎖 3:2008/09/18(木) 12:03:52 ID:C8OnpYSG0
「セネルさん、なら私を利用してください」
未だ目元に涙を光らせながらジルバは言った。シャーリーは驚愕に顔を上げ、ワルターとセネルはジルバを見た。
「ステラさんを生き返らせるためなんですよね……ステラさんのことは私にも責任があります。私は、ステラさんに謝りたい。
 私は決して強くありません。だけど、シャーリィさんを守る盾ぐらいにならなれます。こんな体です。ヒューマよりは頑丈なんです」
「ジルバ、さん……」
ジルバはシャーリィに近寄り優しく肩に触れた。
「もちろん、最後には私を殺してシャーリィさんを優勝させてください。
 それまで私はシャーリィさんの傍にいます。私はステラさんから頼まれたんですから」
「……ステラ、が。―――分かった」
セネルの背中は完全に押されてしまった。ここにいるのがシャーリィだけだったら、きっと止められた第一歩。
しかし、現にワルターとジルバはそこに存在しセネルに賛同している。
ノーマが、クロエがいればなんとしてでも止めただろう。だが、二人はワルターから逃れるため海を渡った。
すべてが仕組まれたように悪い方向へと転がっていく。
坂道を転がり続けるセネルを、止めるだけの力をシャーリィは持ち得なかった。
ステラが死んだばかりで、突然の事態で、力が及ばなかった。それはシャーリィだけを責められはしない。

「ま、待って!お兄ちゃん!ワルターさん!ジルバさん!それって、人を殺すってことなんだよ!
 ……お姉ちゃんを殺した人と同じになるってことだよ!そんなの駄目だよ、私はお兄ちゃんに……」
「―――シャーリィ」
「お兄ちゃん……」
「俺はお前を守りたい。死なせたくないんだ。ステラも、……もう後悔したくない」
「でも、みんなを殺すんだよ?そんなことって、」
「全員生き返らせる。シャーリィがそう願えばいい」
頑なな兄の様子に、シャーリィは再び瞳から涙を零す。
セネルはそんな妹を強く抱きしめた。シャーリィの呟きは波に消える。
大好きな兄に抱きしめられて、嬉しいのに、悲しくて、辛くて、こんなに暖かいのに冷たい海底にいるような不思議な気分だ。
お兄ちゃん、という少女の小さな叫びは悪意ある意志と純粋な願いと忠誠によって聞き入られない。
浜辺の海は青く、澄み切っている。だが、シャーリィの心は真っ暗だ。
732不幸の連鎖 4:2008/09/18(木) 12:05:35 ID:C8OnpYSG0
【ジルバ・マディガン 生存確認】
状態:HP85% TP100%  身体中に裂傷、背中に軽度のやけど
所持品:睡眠薬 遅効性の毒薬(回りきるまで3時間?4時間程度) 草刈鎌  ???  ステラのザック シャーリィのベスト
基本行動方針:ステルスマーダーとして行動。セネル達を利用。上手く立ち回る。
第一行動方針:シャーリィを利用し、外敵から守ってもらう。同時に参加者排除へと誘導する。
現在位置:G4砂浜

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
状態:HP100% TP95% 姉の死によるショック 精神的に疲労大 ベストなし 大きな迷いと混乱
所持品:首輪探知機 
基本行動方針:お兄ちゃんたちを止めたいけど、どうすればいいの?
第一行動方針:セネルについていく。止めたいけど……?
現在位置:G4砂浜

【ワルター・デルクェス 生存確認】
状態:HP40%、TP30%、強い決意 服に焦げ
所持品:黒髭ダガー、支給品1個(本人確認済み)
基本行動方針:メルネスの護衛をする。メルネスを優勝させる。
第一行動方針:シャーリィを守る。
第二行動方針:セネルが目標を違えたら殺す。シャーリィを守るなら殺さないで利用(協力)する。
現在位置:G4砂浜
 
【セネル・クーリッジ 生存確認】
状態:HP60%、TP60% 全身に擦り傷、切り傷 ステラの死へのショック 僅かに迷いだが強い決意(混同)
所持品:シルバーガントレット(TOR)、本人確認済み支給品2個
基本行動方針:シャーリィを優勝させて皆生き返りを願う。
第一行動方針:シャーリィを守りながらシャーリィを優勝させるために動く。
現在位置:G4砂浜
733名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 12:06:35 ID:C8OnpYSG0
投下終了です。同作品トリオはこのために集まったとしか思えなくて書きました。
734名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 12:15:41 ID:ddVYCvYlO
投下乙。セネルはステラをこんなに近くに居たのに守れなかったから後悔が強いんだろうな…でも個人的にはシャーリィをも一度殺す覚悟を持って欲しかったかも。
何はともあれワルターと協力か。何気にマーダー同士のパーティって初?ジルバもうっかり殺人が嘘のような演技だしww
そしてまさかシャーリィに期待する事になるとは…シャーリィ超頑張れ!
735名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 12:20:38 ID:xJoYT8InO
投下乙
セネル…あんたって人はー!
シャーリィは綺麗な方向に行ってるのにカワイソス
ジルバはやっぱり立ち回り上手だな
ワルターとセネルの共闘とか考えたら燃えてきた
同作品の遭遇を上手く利用してるぜこの展開!
736名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 12:21:01 ID:Kn+2GykfO
投下乙です。
ヒロイン死亡組はほんとに三者三様だな。
そして、ジルバさま上手いな。
737名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 12:44:19 ID:+8IjZagHO
乙です。銀髪主人公三人、三者三様すぎる。
まさかヴェイグが一番マトモ(?)とは…シャーリィ頑張れ、超頑張れ
738名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 12:55:16 ID:kMePB44pO
乙!Lキャラ集合が面白い展開になってくれて今後が楽しみです。
739名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 13:23:07 ID:RoeLAvHFO
アトワイトが来たから腕治るとか思ってるみたいだけど
ルビアは範囲内全回復魔法もリバイブもレイズデットもリキュペレートも
持ってるんだけどな
まぁ精神錯乱しててヒールしか使えなかったとかなら仕方ないが
740名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 13:27:02 ID:92VrvvIO0
流石にリザレクションでもエンジェルハイロゥでも切り落とされた腕はつながらんだろう。
ルビアの単体回復魔法はヒールが一番強力だから妥当じゃないか?
741名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:00:30 ID:Ts53jfJPO
ワルターは変装の服だったんだね
ずっと水の民の服だとおもってたわ
742名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:07:50 ID:Tf6hXEZe0
もう容量が無いぞ
743名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:12:26 ID:92VrvvIO0
744名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:14:08 ID:92VrvvIO0
スマンテンプレ貼り誰か頼む…
どっかに24時間制限のことは書き加えてくれるともっと助かる
745名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:28:12 ID:Dmrp7QB20
シャーリィ「今度は綺麗な方向で頑張ろうと思ったら兄貴がマーダーになりました、どうしたらいいんでしょうか?」
746名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:33:10 ID:Tf6hXEZe0
>>743
うわあ、重複しちまった
747名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:37:49 ID:B+DBJZAq0
>>743
テンプレ貼っといた。

>>746
次スレに再利用すればいいんじゃないか?
10日くらいで1スレ使うんだし、保つでしょ
748名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:38:47 ID:Tf6hXEZe0
>>747
そうだね、もったいない。
すまんね。
749名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 14:42:59 ID:B+DBJZAq0
どんまい。こういう時もあるさ。

さて、今回もエキシビジョンマッチは来るのかな、と
750勇者の雄叫び:2008/09/18(木) 19:18:39 ID:ddVYCvYlO
適当に書いてみた。戦闘開始まで行かないけど適当(ry
「クレアァァァァァァァァァァ!」
銀髪の青年――ヴェイグ・リュングベルは、ここが殺し合い――『バトルロワイアル』の会場だというのに大声で叫んでいた。青年にとってクレアが全てだ。なので殺し合いに乗った参加者が潜んで居ようとお構い無く叫び続けた。
「クレア!何処に居るんだ!?クゥレアァァァァァァァァ!」
「さぁ、モニターの前の君も一緒に叫ぶんだ!クレアァァァァァァァァァ!」

「ステラァァァァァァァ!」
一方、こちらも銀髪の青年、セネル・クーリッジも最初からクライマックスだった。「ステラ?ステラァァァァァ!何処に居るんだ?ステラァァァァァァ!」
拡声器を使い、ステラァァァァァァ!と叫び続けているのだ。
自分は以前、ステラを守る事が出来なかったのだ。だから、今度こそステラを守りきってみせる。ただその事だけを考えて、セネルは拡声器を使っていた。それに、他に殺し合いに乗った奴を誘導出来るかも知れない。
751勇者の雄叫び:2008/09/18(木) 19:22:35 ID:ddVYCvYlO

「ん?あれは拡声器か?」
クレアァァァァァァ!と叫んでいたヴェイグの元に大音量でステラァァァァ!なる声が聞こえてきた。
ヴェイグはあの拡声器を使わせて貰えないか?と考え、接触する事に決め、向かった。

ステラァァァァァァ!と叫んでいたセネルの元に早速人が現れた。残念ながら彼が求めたステラではなく銀髪の男だったが。
セネルが「何だ?ステラについて何か知っているのか?」と問うと「…いや、それより拡声器を貸して貰えないか?」
今、何て言った?この男はステラを探す大事な手段である拡声器を渡せと?答えは決まっている。「だが断る!」
「ならば、無理矢理奪うまでだ…。」
その答えを聞き、両者間合いを取る。
「うぉぉぉぉ!クレアァァァァァ!」
「うぉぉぉぉ!ステラァァァァァ!」
二人の雄叫びを戦闘開始の挨拶とし、剣と拳、クレアとステラ、二人の意地をかけた戦いが、今始まる。
【セネル・クーリッジ@TOL】
状態:ステラパワー
所持品:ホタテギア@TOL、拡声器@現実、アロンダイト@TOD2
基本行動方針:ステラ以外を殺し、最期に自害。
第一行動方針:ステラァァァァァ!
現在地:F-6:レムの塔最上階

【ヴェイグ・リュングベル@TOR】
状態:クレアパワー
所持品:ソーディアン・イクティノス(ウッドロウ…?)、ゲイボルグ@TOI、ブウサギ@TOA
基本行動方針:クレアを見つけ出し、守る。
第一行動方針:拡声器を奪い取りクレアする。
現在地:F-6、レムの塔最上階
752名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 19:24:04 ID:EDoQQYWj0
ちょw吹いたわww
二人ともうぜえええwww
753名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 19:26:58 ID:AIq0/IzXO
クレアするで吹いた
754名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 19:34:22 ID:hb+TCWOL0
何気にヴェイグの支給品が全部意思ありで吹いたw
ブウサギカワイソスwww
755名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 19:38:04 ID:ddVYCvYlO
投下終了。現在のヴェイグとセネルの状態がアレ過ぎるのでせめてエキシビションマッチぐらいはハッチャケさせてみたw
756名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 19:40:43 ID:xJoYT8InO
これはwww
絶叫に定評のある主人公の夢の共演w
ていうか「クレアする」って何w
757名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 20:38:35 ID:92VrvvIO0
乙www爆笑したwwww
モニターの前の君ってサイグロのことか?wwww
758名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 20:42:58 ID:mG3wwEC6O
水指してスマソ
次スレの方に投下中なんですが、こっちの方が良かったでしょうか?
投下始めてから気付いたorz

一応向こうに全部投下します
できたら支援頼みます
759名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 20:46:00 ID:EDoQQYWj0
投下はあっちでいいんじゃないか?
前スレの時もそういう流れだったよ

ヴェイグの「モニターの前の君」はイノセンスか何かの特典DVDネタだなw
このDVDを見てる君も一緒に叫ぼう!クレアアアァアァアアア!!!!って感じだったww
760名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 20:50:37 ID:YG2XmY/nO
セネルのアロンダイトは中の人繋がりだな!
761名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 09:55:39 ID:YgQDaOu1O
埋め
762名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 12:49:12 ID:Cx37XAdI0
あと7KBもあるからなかなか埋まらないと思うぞ
763名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 13:16:55 ID:zR1iLIiz0
イクティノス哀れwwwwwwww
764名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 19:25:38 ID:a7+FPLPC0
次スレでもイクティノスとシャルティエが哀れな事になってるなw
まさかロワでソーディアンに萌える日が来るとは…
765名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 01:19:06 ID:V7R53S9n0
こっちのスレ埋めなくていいのかな
766名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 09:04:54 ID:zwL5q0ExO
ヴェイグVSセネルのネタ書いた人だけど、埋めついでに次回のエキシビションマッチの希望とかある?誰と誰をバトらせたいとか。
もし良さげな対戦カードがあれば採用して次スレでバトらせるかも?
767名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 09:26:42 ID:gkGszVS6O
ロイドVSジューダス!
ソーディアン無し!
768名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 12:16:08 ID:O7IWPvqj0
ミュウvsクイッキー
769名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 12:44:51 ID:R82vFv4n0
クレアVSイレーヌ
ステラVSジルバ
リーガルVSプレセアVSアニーVSマオによる友人争奪戦
770名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 17:43:34 ID:UZLzJkI6O
タバサ対アビシオン人形
771名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 18:15:45 ID:AthhWv6H0
ジルバvsシンク
ステラvsクレア
ミクトランvsサイグロ
772名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 18:31:43 ID:5ubP5GvnO
イオンVSシンク
デクスVSサレ
ヴェイグVSウッドロウ
ひとりmeaning of birth
773名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 19:25:11 ID:V7R53S9n0
ひとりmeaning of birth って何だw見てみてぇw
すでにリク上がりまくってるが自分も
ハロルドvsジェイドの最強術師バトルとか
カイルvsロイドお馬鹿対決が見てみたい
774名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 21:38:32 ID:wLPBNOz0O
終始ガオラキアの森から出られず
禁止エリアになって悲しみの最後を遂げるミクトランの話
775名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 22:01:30 ID:297knjg9O
ミクトラン涙目ww
776名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 22:41:24 ID:cbpRlozhO
ダオスとエミルの会話が見てみたい。
777名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 22:44:06 ID:gkGszVS6O
Pキャラとエミルの会話見たいかも
778名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 22:56:43 ID:R82vFv4n0
>>774
それは是非みたいwwwww
779名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 23:05:27 ID:UuBzDmLkO
>>774
wwwみたいwww
780名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 00:58:08 ID:suEcCm5M0
と、そんな楽しい雰囲気を読まずに俺様、投下、マルカジリ。
こんなネタ、ここ以外じゃ某所の猛者ぐらいしか喜ばんぜと思いながらも書いた。

じゃ、エキシビジョンマッチ。第二回はプレセアを頑張らせる。ぶっちゃけプレセアは頑張ってないけど。
(追伸:親切な優しい人が居たら、ロワ2ndの過去ログdatファイルうpしてください。PC飛びました)
781エキシビジョンマッチII 1:2008/09/22(月) 00:59:02 ID:suEcCm5M0
「…………」
それは斧というには余りにも異形なカタチをしていた。
刃ではなく目と口を持っている、ギラギラとした悪魔斧。
振るう主はうら若き少女。しかしその瞳は血の赤色が渦巻いている。
もしも彼の少女の持つ武器を知る人間が居たなら、こう言うだろう。
『少女は魔装備に魅入られてしまった』と。

悪魔に魅入られている少女と相対するのは、もう一人の斧使い。
そう、ロニ・デュナミスと見せかけてマグニスさまである。
彼の持つ斧は、皮肉にもセントハルバード。至高神の祝福を受けた聖戦斧。
ここに、悪魔に魅入られた少女と、神の戦斧を持つ鬼の戦いが始まった。


始めに動いたのは、悪魔の少女。得物は鈍重極まりない魔斧。
しかしその魔斧と一体化している彼女は、かつてないスピードで攻め寄ってきた。
何の小細工もなく、ただ斬り付ける。マグニスは意外と繊細な斧捌きで受け流していく。

『――斬る、斬る、斬る斬るきるきるkillkillkillkillkillkill!!!!!!!!』

魔斧の命令のままに、ハンターの身体が動いていく。その度に激しい金属音が鳴った。

マグニスは、少女の切れ目無い攻めに舌打ちをした。
己の筋量と目の前の少女の筋量では、絶望的なほどに差がある。
少女の身に着けているのがどれほど上等なエクスフィアだとしても、この差は埋めがたい。
埋めがたいはずなのだが、マグニスの両腕は休憩を要求し始めていた。
782エキシビジョンマッチII 2:2008/09/22(月) 01:00:04 ID:suEcCm5M0

チッ、と再び舌打ちをする。
守勢に回っていることも気に食わないし、このまま攻めきられるのは我慢できようはずもない。
マグニスはヤマを張った。次が縦斬りなら勝ち、横薙ぎなら負けの二択勝負。
知性派を自称する己にとって、このようなギャンブルは恥ずべきことだが、今は仕方が無い。
ドレッドヘアーの豚面男は、確かに冷静に少女を強敵と認めるだけの知性は持っていた。

はっちゃけ娘の魔斧がマグニスを襲う。
それは脳天を叩き割る縦斬り。しめた! マグニスは瞬時に己の天運を喜んだ。
思いっ切り、聖なるハルバードで魔斧の横っ面を叩き付ける。
一瞬、斧っ娘は体勢を崩す。その隙に一気に仕切りなおしを図るマグニスさま。
そのハーフエルフとしては驚異的に恵まれた体躯をフルに使い、体当たりする。
――獅子戦吼。百獣の王の咆哮にも似た爆音と共に、少女は吹き飛ばされた。

額から汗が流れる。しかしマグニスには拭う暇も無かった。
吹き飛び、間が空いた今この瞬間が、最大の好機。あれを殺すには今を逃すほか無い。
マグニスは詠唱に入る。見せ掛けではない、本物の魔術。
風貌で魔力は決まらないものだ。マグニスはディザイアンの統率者に相応しい力量を備えている。
彼の得意属性は火。全てを焼き尽くし、劣悪種を消毒する浄化の炎。
フレイムランス。炎が槍となって、闘技場に咲く花を散らす。
マグニスの術はまだ終わらない。更に高度な術へと昇華していく。
セントハルバードを振るう。爆炎地獄がそこに生まれた。それはエクスプロード。
火属性最強と言われる上級魔術すら、マグニスは制御を行うことが出来る。
エルフの眷属としてはまだ若輩者と呼ばれる若さで、これほどまで修練を積んでいることが恐ろしい。
爆炎地獄は寡黙な娘の居た空間の全てを焼き尽くし、そして吹き飛んだ。
783エキシビジョンマッチII 3:2008/09/22(月) 01:01:05 ID:suEcCm5M0
マグニスは、ようやく汗を拭った。
セントハルバードを持っていた、ゴツゴツした無骨な手が血に滲んでいることに気がつく。
どれほどの力を持った攻撃を受ければ、彼の強靭な皮膚が破れるのだろうか。
しかしそれも、少女が死んだいまとなっては確認のしようがない。
綺麗に消えてなくなった少女、魔斧も全て木っ端微塵に吹き飛んだか――
――いや、幾らあの爆炎地獄といっても、これほど綺麗になくなるはずが――
そこまでマグニスが思索を巡らせた瞬間、背中を激痛が襲った。

――斬られた!?
思わず飛び退けるマグニス。石の飛礫が追撃として飛んでくる。
いくらかは弾き、いくらかがマグニスの身体を襲う。だが筋肉の鎧の前には致命傷にはならない。
そんな追撃よりも、マグニスは目の前の少女の姿に目を疑った。
桃色の髪の色は、先ほどよりも赤みが増している。
瞳は深紅に染まっており、表情は冷たい笑みを浮かべている。
ゾクリと、斬られた背筋が寒くなった。悪寒が走る。
マグニスの脳裡に撤退の二文字が浮かんだ。

しかし踏みとどまるマグニス。
五聖刃の意地だけではない、ここで退いたら死ぬことを、彼は悟っていた。
今一度、セントハルバードを握り締める。気合を籠め、怒号のような雄たけびをあげた。
マグニスが攻める。炎の魔力も携えて、斧による連撃を加えていく。
しかし、だがしかし……目の前の少女は身じろぎ一つせずに必死の攻撃をいなす。
彼の少女の斧は、まるで鋼鉄の牢獄の壁を叩くような感触だった。
そこに希望は無く、在るのはただ絶望のみ。経験で埋めるには、あまりに力量が異なりすぎた。
少女は……笑った。そのまま、マグニスの聖戦斧もろともに切り裂く。

血が、全てに彩を添えた。
784エキシビジョンマッチII 4
斧が、食事をする。
マグニスの頭を喰らう。噴出す血が、少女の身も心も穢していく。
マグニスの腸を喰らう。地面に染み入る血は、魔斧の支配を唯一逃れることが出来た。
マグニスの魂を喰らう。その生命の輝きこそ、彼の魔装備に奉げる最大のニエ。

食事を済ませると、魔斧の瞳が少女に命令をして閉じる。
その命令は、全くもって理解しやすい、簡単な命令だった。
『――次の食事を寄越せ』
穢れた魂に命令を刻み込み、少女は闇色の外套を纏って歩みだした。

プレセア・コンバティールとかつて呼ばれた、その虚ろな器は新たなる供物を探す。
それは、この殺し合いに参加する人間の中では、比較的安寧な生き方なのかもしれない。
ただひたすら、殺し合いを続けることほど、このゲームで楽な道も存在しないのだから……


【プレセア・コンバティール 生存確認】
状態:HP90% TP95% 魔装備に魅入られちゃったよ
所持品:魔斧ディアボロス イノセントブラッド ヴォーダンマント
基本行動方針:魔斧の導くままに、全てを斬る
第一行動方針:近寄るもの、動くもの、生あるもの、その全てを斬る
現在位置:知らないほうが身のためだ


【マグニスさま 死亡】