女神転生バトルロワイヤル 2

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251大人の責務:2006/09/12(火) 13:48:32 ID:BxzQBshn0
案ずるより産むが易し、とはよく言ったものだ。少し明るくなった気分で、菓子パンの棚を物色する。
コンビニまでの道程は五十メートル足らず。誰にも会わず、何事もなく通過することができた。
カウンターの奥から煙草を数箱と、予備のライターをまず入手した。
パッケージが少し違って、いつもの銘柄の煙草を探し出すのに少し苦労した。
この銘柄が存在する、しかしパッケージは違う、そんな程度のパラレルワールド。
不思議なものだと、つくづく思う。そういえばコンビニの店名も知っているものだ。
パラレルワールドというのは、過去のどこかで枝分かれして生まれたものであるはず。
自分の知っている世界と今いるこの世界は、どんな違いで生まれたものなのか。
ザインが住んでいた世界、少年が学校にも行けず秩序を守らなければならないような世界は、どうして生まれたのか。
自分のいた「現代」からそのまま時が流れたら、そんな未来に辿り着いてしまうのだろうか。
思考することは嫌いではなかった。だから、世界の繋がりを考えることはいい気分転換になった。
出会った人々の姿から垣間見た別世界は決して幸せそうなものではなかったが、考えている間は恐怖を忘れられた。

棚に並ぶパンの中から、ある程度なら日持ちしそうな物を選んでビニール袋に詰めてゆく。
何でも一緒くたにザックに放り込むのも抵抗があったので、この袋もレジから拝借した。
食品用、飲料用、雑貨用と三枚。これ以上に増やすと荷物になりすぎる。
パンを選んだ後は、奥の冷蔵棚に並んだペットボトルを眺める。
あまり多く持っては嵩張るので、ミニボトル入りの水を五本とスポーツドリンクを二本取り出して袋に入れる。
電気は通っていないのだろう、ボトルの中の液体はあまり冷えてはいない。
栄養ドリンクの棚が目に入る。適当な一本を手に取って蓋を開け、そのまま一気飲みした。
これだけで疲労が取れれば苦労はしないが、気分だけでも元気を出しておきたかった。
次に、菓子の棚を覗く。食料が乏しい時のエネルギー源と言えば、チョコレートと相場が決まっている。
この街の中に存在する量的には食料は乏しい訳ではないが、いつでも入手できるとは限らないのだ。
雪山での遭難者がチョコレート一枚で生き延びた、などという話は昔からよく聞く。
実際の栄養価がどの程度のものかは知らないが、こういう時、イメージの影響力は絶大だった。
棚にあるだけの板チョコを袋に詰める。十枚近いだろうか。
嵩張らないから持ち歩くにはいいものの、こんなにチョコレートばかり食べ続けたくはないな、と思った。
252大人の責務:2006/09/12(火) 13:49:35 ID:BxzQBshn0
最後に、店の入口近くの棚にある雑貨を見る。
タオル、剃刀、石鹸、ウェットティッシュ。あれば便利そうな物が並んでいて、どれを持っていくか悩む。
傷を負った時などは、清潔にしておくことは重要だ。雑菌が入ったりすると厄介なことになる。
それを考え、まずウェットティッシュを一パックとチューブ入りのハンドソープを袋に詰めた。
もう少し見回すと、バンドエイドと消毒液が目に入る。
この状況ではバンドエイドは大した役には立たないだろう。消毒液だけを手に取り、袋に投げ入れる。
武器になりそうな物もないかと期待したのだが、せいぜい文具店にもあった鋏やカッター程度しかない。
他に役に立ちそうな物と言えば電池くらいだ。今は電池を使うような道具は持っていないが、後々役立つかも知れない。
十本で一纏めになっている単三のアルカリ電池を、取り敢えず袋に入れる。
ここで入手できそうな物はこんなところか。
隠れ場所からは近いのだから、後で何か思い出したらまた取りに来ればいい。

店を出ようと、ドアの前に立つ。本来ならば自動ドアなのだろうが、電気の通っていない今は動かない。
手動で開けようと透明なドアに手を触れ、外の様子を窺ったところで――異変に気付いた。
来た時は人の気配などまるでなかった静かな通り。そこに、人影に似たものが見えた。
似たもの、であって人影ではない。正確には、人間の影ではなかった。
背中に、鳥に似た大きな翼――それさえなければ、その影は人間に見えていただろう。
このような生き物を何と呼ぶかは知っていた。
天使、或いは悪魔だ。
冷や汗が流れる。確かに放送の声は悪魔が出現するようなことを告げてはいたが、市内全域にではなかったはずだ。
悪魔が出現する場所はあっても、それは一部。他の場所には悪魔はいないはず。
現に、今まで移動していた間には一度も悪魔とは遭遇していない。
いるはずのない場所に悪魔がいるとすれば、理由は一つ。
新のような人間――サマナー、と言ったか。悪魔を召喚し、使役する者がいるのだ。
充分に考えられることだ。今手元にあるこのPCにも、悪魔召喚プログラムがインストールされている。
同じものを支給され、使いこなしている人間がいたとしても不思議はない。
それが新であればいいのだが、今この場からそれを判断する術はない。悪魔本人に聞く訳にもいくまい。
あの天使を使役しているサマナーが殺し合いのゲームに乗っていたなら、見付かった瞬間襲われる可能性さえあるのだ。
(どうする?)
じっと動かず、天使の様子を見守る。
これほど近くに人がいるとは気付いていないようだが、その動作からは慎重さが窺えた。
何かを探すように、周囲を見回している。幸い、このコンビニの方向には視線は向けられていなかった。
こちらには背を向け、反対側に視線を巡らせている。
(待てよ。あっちは……!)
幸いなどとは言えない状況であることに、一瞬遅れて気付く。
天使が立っているのは、つい先程歩いてきた道の真ん中。その視線が向いているのは、文具店の方向だった。
253大人の責務:2006/09/12(火) 13:50:45 ID:BxzQBshn0
戻ろうとしても、あの天使に気付かれずやり過ごすことは至難の業だ。
何しろ相手は道の真ん中に堂々と立っているのだ。来た時と同じ道は通れない。
別の通りに抜けて大回りをして戻ろうとしても、目的地である文具店の方向を奴は監視している。
再びこの通りに姿を現した瞬間、見付かってしまうだろう。
しかし、独りで逃げる訳にはいかない。
ここで身を潜めて待ち続ける訳にもいかない。天使の目的は定かではないが、文具店にはザインがいる。
無防備に眠っている彼が、奴に見付かってしまったら。最悪の事態も有り得るのだ。
いっそ堂々と出ていって声を掛けるというのも一瞬考えた。が、話の通じる相手とも限らない。
このPCに入っている例のプログラムがあれば、恐らく悪魔との交渉は可能なのだろう。
しかし、既に主人を持っている悪魔と交渉するというのは賢明とは思えなかった。
例えば、主人たるサマナーが「出会った者は全て殺せ」と命令していたら。
どんな風に話し掛けて何を提案したとしても、行動方針の優先順位を覆すことはできそうにない。
主人のいない悪魔ならば、利害が一致すれば味方に付けることも可能かも知れないのだが。

できれば見付からずに逃げたい。
しかし、奴を文具店から遠ざけておきたい。
恐怖と、仲間を助けたいという思い。二つの感情がせめぎ合う。
自分の身を守りたいなら簡単だ。奴が離れるまで、この店の奥で息を潜めていればいい。
ただし、隠れている間に何があっても――ザインが殺されようとしていたとしても、手出しはできなくなる。
文具店から遠ざけるなら? 無論、こちらに来させることだ。物音でも立てれば気は引けるだろう。
ただし当然、自分の身には大きな危険が降り掛かる。
(僕が無茶をして、共倒れになったら意味がない。いざという時に悪魔に対抗する力はザインの方が上だ)
この選択肢が、運命の分かれ目だ。テレビゲームだったらどちらかがゲームオーバーに繋がっていそうな局面。
(それに、奴があっちに向かったからと言って……ザインが見付かるとは限らない。
あの店は目立たない位置だし、店に逃げ込む前には地面に血の跡が残らないよう注意してた)
記憶を辿り、安心できる材料を探そうとする。
(でも……)
安心は、できなかった。
後から後から湧き出るのは不安と、罪悪感。仲間よりも保身を選ぼうとしていることへの。
(見張ってるから安心しろって、僕が言ったんだよな。甘えてもいいって)
その言葉を、ザインは信頼してくれたのだ。
裏切る訳にはいかないし、
(――子供を守れない大人なんて、最悪じゃないか)
彼が寄る辺ない小さな子供のように思えたことを、どうしても脳裏から拭い去れなかった。
254大人の責務:2006/09/12(火) 13:52:41 ID:BxzQBshn0
手に持ったままだったPCの電源をそっと落として、ザックに入れた。
音を立てないように振り向いて、店内を見渡す。何か使えるものはないだろうか。
――あった。家族で遊ぶような花火セットだ。
派手な打ち上げ花火こそ入っていないが、これで充分だった。
下手に派手すぎる花火を上げてしまっては、あの天使以外の危機まで呼び込みかねない。
足音を忍ばせて棚に近付き、手を伸ばす。袋を千切って鼠花火を取り出した。数は二つ。
それを手に持ったままドアの前に戻った。逃げられそうな道を確認する。
出てすぐ右手、来たのとは反対の方に曲がり道があった。隣の通りへ抜ける道だろう。
(……よし)
静かに、動かない自動ドアを手で開く。通れる程度の隙間ができたところで、ライターで花火の片方に点火する。
通りに飛び出すと同時にそれを路上に投げ出して、曲がり角へと躍り込んだ。
後ろからしゅるしゅると鼠花火が回転する音がする。煙も上がっているだろう。
「誰です!」
声がした。中性的な響き。声の主は天使と考えていいだろう。
飛び込んだ道をそのまま走る。一つ向こうの通りが見えた。確認する余裕もなく、そこへ飛び出す。
幸いこの通りにも人影はなかった。左へ曲がれば文具店からは遠ざかる。方向転換しながら、もう一つの花火にも点火した。
「そこか!」
曲がってきた道の方から、また声がする。狙い通り、こちらを追ってきてくれているようだ。
通りに鼠花火を投げて、また手近な曲がり角に飛び込んだ。
曲がった先には、ドアもなく開け放たれているビルの入口があった。そこに逃げ込み、身を潜める。
相手は翼を持つ生き物。道を走っていたのでは、空から探されたら丸見えだ。
――案の定、やがて遠くから聞こえる鼠花火の音に混じって、鳥にしては大きな羽ばたきの音が聞こえた。
静かな街の中では、そんな小さな物音もはっきりと聞こえる。
乱れた呼吸の音も聞こえてしまわないかと恐ろしくなり、荒い息を必死に抑え込む。
ふと思い出して、手に提げたビニール袋から水のボトルを取り出し、半分程度まで一気に喉に流し込んだ。
それで息は幾分落ち着いたが、それと同時にこの袋の結構な重さに気付く。
ザックの中にもまだ水は入っていたはずだ。飲料と雑貨の袋はここに置いていくことにした。

花火の音も止んでしばらく経った頃、再び羽音が聞こえた。遠くはなく、近くもない距離に思える。
今度は羽ばたく音に続いて、アスファルトを踏む音がした。着地したのだ。
ここを見付かる前に、離れた方がいい。慎重に、今見える範囲の光景を観察する。
255大人の責務:2006/09/12(火) 13:54:22 ID:BxzQBshn0
このビルの入口は曲がり道の途中にあった。その道を抜ければもう一つ向こうの通り。
コンビニのあった通りから見れば、二つ離れた通りということになる。今までの二本の通りに比べて広い。
(……待てよ?)
この光景は、見たことがあるような気がする。
そう、つい数時間前だ。ザインと共に夢崎区に踏み込んで、最初に歩いた通りではないか。
つまり、この通りのどこかには戦いの跡があり、恐らくはまだ少女の死体が放置されているのだ。
また嫌な汗が出てくる。あの金髪の男も、近くにいるのかも知れない。
天使がうろついている以上、ザインの待つ文具店に戻るのは危険が大きすぎる。
かと言って、ここに留まっていたくもない。
となれば――残る選択肢は、気付かれないように通りに出て別の場所を目指すということになる。
金髪の男はゲームに乗っている、つまり人を探して殺そうとしているに違いない。
ならば、彼は人の多そうな夢崎区に留まっている可能性が高い。
出会いたくなければそれとは反対側、元来た蓮華台の方へ進んだ方が良さそうだ。
(ひとまず、天使は遠ざけた。あいつはしばらくこの周辺で僕を探すだろう。
だったら……ここを離れて、別の仲間を探してから戻ってきた方がいいかも知れないな)
ザインの安全が確保されたと言い切れる状況ではない。しかし、天使を引き離したことで時間稼ぎにはなるはずだ。
しばらく経てばザインも多少は疲労を回復し、目を覚ますだろう。――そう、信じたい。
(必ず、戻る。だから……僕が生きて戻るために、今は)
ビルの入口から顔を出して、通りの様子を窺った。誰もいない。空も見上げてみるが、天使の姿はない。
音を立てそうなビニール袋は捨てていくことにし、食料はザックに入れた。パンが潰れそうだが仕方がない。
そっと外に出て、足音を殺しながら通りに出る。
左右を見ると、右側に少女の死体を見付けたマンションが見えた。蓮華台の方向は左だ。
あのマンションの前を通らなくていいことに安堵し、左へ曲がって歩道の建物側の端を歩き出す。
来た時は二人で通った道。独りで歩けば、蓮華台までの道はあの時より、長く感じるだろう。

【スプーキー(ソウルハッカーズ)】
状態:少し疲労
武器:マハジオストーン(残り2個)、カッターナイフ
道具:ノートPC、メモ帳、ボールペン、食料少し(菓子パン数個と板チョコ約10枚)
現在地:夢崎区から蓮華台へ移動中
行動方針:仲間を見付けて夢崎区に戻る、PC周辺機器の入手、簡易マッピングプログラム作成
256“氷の微笑”の男 後編:2006/09/13(水) 05:43:15 ID:ew/BTPnn0
「おら、起きろよ!」
鋭い蹴りが顔面に飛び込み、スプーキーは眼を覚ました。
体の自由が利かない。自分はどうやら椅子に座らされ、椅子のパイプ部分にがっちりと腕を縛られているらしい。
両足もしっかりと拘束され、食い込む縄がぎしぎしと痛んだ。
この状態ではどうやっても脱出出来そうには無かった。
鼻に嫌な臭いが付く。この臭いはガソリンだ。何故こんな所でガソリンの臭いがするのだろうか。
不思議に思いながら顔を上げると、目前に先ほどとはまるで別人のように冷酷な笑みを浮かべた鳴海昌平がポケットに手を突っ込んで仁王立ちでしていた。
「ど、どうしたんだい? 鳴海君…」
スプーキーは自分の置かれた状況がまるで信じられないと言ったように努めて明るくそう尋ねた。
「どうしたもこうしたも、ねぇ?
知らない人間を目の前に余所見をしたのがあんたの敗因ってわけだ。これからちょっとした尋問に付き合ってもらうよ。
……陸軍仕込みの、ちょっとキツイ奴。」
向けられた笑顔は残忍に輝いていた。視線は、小さな獲物を追い詰める捕食者そのものだ。
スプーキーは状況が飲み込めず、曖昧な笑みを浮かべることしか出来なかった。
「笑うんじゃねぇ!」
また、蹴りが顔面に入った。
強烈な蹴りだったから衝撃でぶっ飛ばされるのではないかと思ったが、
どうやら鳴海はご丁寧にも椅子を手近なカウンターにしっかりと縛り付けていたらしい。
準備万端で、こういうことにはいかにも慣れている様子だった。
口の中に生臭い鉄の味が染み渡る。奥歯が折れてしまったようだ。吐き出すと、不自然にへし折れた奥歯と、唾液に混ざった血液が足元に落ちた。
自分では確認することも出来ないが、どうやら鼻血も流れているらしい。
この段階でようやくはっきりと理解した。
この男――鳴海昌平はやる気になっている側の人間だったのだと。
そうなると、この先の結論は一つしか出なかった。
(僕は……此処で死ぬのか。)
だが不思議なことに恐怖という感情はそれ程強く感じなかった。
殺伐とした殺し合いの現場に何時間も置かれているのだから感覚がすっかり麻痺してしまったのだろうか。
今は恐怖よりも先に商店に残してきた友人のことが気がかりだった。彼は無事なのだろうか。
一体自分がどれくらいの間気を失っていたのかは解らないが、ひょっとして自分を探し回っているかもしれない。
深手を負っているのだから余計に心配だ。
どうして自分は彼を置いて出てきてしまったのか。
後悔することは沢山あったが、両手両足を拘束されている状態で何が出来るかと言えば、何も出来ないのだが…。
257“氷の微笑”の男 後編:2006/09/13(水) 05:44:30 ID:ew/BTPnn0
「おら、起きろよ!」
鋭い蹴りが顔面に飛び込み、スプーキーは眼を覚ました。
体の自由が利かない。自分はどうやら椅子に座らされ、椅子のパイプ部分にがっちりと腕を縛られているらしい。
両足もしっかりと拘束され、食い込む縄がぎしぎしと痛んだ。
この状態ではどうやっても脱出出来そうには無かった。
鼻に嫌な臭いが付く。この臭いはガソリンだ。何故こんな所でガソリンの臭いがするのだろうか。
不思議に思いながら顔を上げると、目前に先ほどとはまるで別人のように冷酷な笑みを浮かべた鳴海昌平がポケットに手を突っ込んで仁王立ちでしていた。
「ど、どうしたんだい? 鳴海君…」
スプーキーは自分の置かれた状況がまるで信じられないと言ったように努めて明るくそう尋ねた。
「どうしたもこうしたも、ねぇ?
知らない人間を目の前に余所見をしたのがあんたの敗因ってわけだ。これからちょっとした尋問に付き合ってもらうよ。
……陸軍仕込みの、ちょっとキツイ奴。」
向けられた笑顔は残忍に輝いていた。視線は、小さな獲物を追い詰める捕食者そのものだ。
スプーキーは状況が飲み込めず、曖昧な笑みを浮かべることしか出来なかった。
「笑うんじゃねぇ!」
また、蹴りが顔面に入った。
強烈な蹴りだったから衝撃でぶっ飛ばされるのではないかと思ったが、
どうやら鳴海はご丁寧にも椅子を手近なカウンターにしっかりと縛り付けていたらしい。
準備万端で、こういうことにはいかにも慣れている様子だった。
口の中に生臭い鉄の味が染み渡る。奥歯が折れてしまったようだ。吐き出すと、不自然にへし折れた奥歯と、唾液に混ざった血液が足元に落ちた。
自分では確認することも出来ないが、どうやら鼻血も流れているらしい。
この段階でようやくはっきりと理解した。
この男――鳴海昌平はやる気になっている側の人間だったのだと。
そうなると、この先の結論は一つしか出なかった。
(僕は……此処で死ぬのか。)
だが不思議なことに恐怖という感情はそれ程強く感じなかった。
殺伐とした殺し合いの現場に何時間も置かれているのだから感覚がすっかり麻痺してしまったのだろうか。
今は恐怖よりも先に商店に残してきた友人のことが気がかりだった。彼は無事なのだろうか。
一体自分がどれくらいの間気を失っていたのかは解らないが、ひょっとして自分を探し回っているかもしれない。
深手を負っているのだから余計に心配だ。
どうして自分は彼を置いて出てきてしまったのか。
後悔することは沢山あったが、両手両足を拘束されている状態で何が出来るかと言えば、何も出来ないのだが…。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/13(水) 05:45:11 ID:ew/BTPnn0
すいません、連投してしまいました。
259名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/13(水) 05:50:21 ID:ew/BTPnn0
鳴海は、ポケットに両手を入れたままその場をうろうろと歩いていた。
一歩歩くごとに革靴の音が広い地下室に響き渡り、これから起こる惨劇を一層引き立てているようだった。
その後ろでは、何処からか拝借してきたのだろうか、簡易式のガスコンロと、しゅんしゅんと湯気を立てるヤカンが置いてあった。
コンロの横にはポリタンクがいくつか並べて置いてある。
これらも鳴海が用意したのだろう。どうやらさっきから漂っている石油の匂いは此処から出ているらしい。
コンロとヤカンが置いてあるカウンターの上をよく見ると、ホーローのコーヒーカップまであった。
「さて、あんたには二、三聞きたいことがあるんだけど。
あ、そうだ。悲鳴は上げないでくれよ。此処は地下だから外に声が漏れるようなことは無いんだし、何より男の悲鳴は聞くに堪えない。」
足を止め、鳴海はコンロの火を止めると、ヤカンから沸騰した湯をカップに注いだ。
すぐに子香ばしい香りがスプーキーの鼻にもつく。コーヒーを入れたのだ。昼下がりのコーヒーブレイク。あ、まだ午前中か。
「何も言えないよ。何を聞かれても僕の口からはね。」
「へぇ。」
鳴海は不気味に口を歪ませ、コーヒーを一口啜ると、徐に残った中身を全てスプーキーの顔に浴びせかけた。
「ぐっ!」
沸騰していた熱湯は、まるで無数の針を顔全体に突き刺すような激痛を与えたが、声を上げることだけは堪えた。
恐れては駄目だ。こいつはそれを望んでいる……!
「俺のいた大正二十年はインスタント珈琲ってのは高価な物なんだ。だけどこの時代じゃ随分と安くなってるんだな。
さっき大特価と書かれて山積みにされてたのを見てびっくりしたよ。
それからガソリンもちょっと歩けばいくらでも見つかる。あんたが寝てる間だけでこんなに手に入った。実に便利なもんだ。
未来の帝都は安泰か――ってね。俺は嬉しいねぇ。」
そう言って、何が可笑しいのか背中を丸めて笑った。
「何も喋ってくれなかったら、苦しむのはあんたの方なんだぜ。
どうせ死ぬなら苦しまずに一瞬で逝きたいだろ? その方がこっちだって楽なんだし。」
「だが何も言わんよ。君のような人間に教えることは何も無い。」
「さっきはあんなに快くパソコンってのを教えてくれたのに。それは無いんじゃないのか?」
鳴海はその時、最速の動きでポケットに入れたままだったもう片方の手を振り上げた。
それとほぼ同時に乾いた音が耳元に聞こえ、スプーキーが目線だけそちらに向けると、外科用のメスが壁に突き立っていた。
やや置いて、頬から熱い血液が、被さったコーヒーにさっと滲んだ。
じわりと厭な汗が吹き出し、その一滴が額から零れ落ちる。
だが、椅子に縛り付けられた手で力いっぱい拳を握り締め、震えるのだけは何とか堪えた。
「で、早速聞きたいんだが、この中にあんたの知り合いは何人いる? そいつらの名前と、外見的特長。
それから性格と能力もだ。出来ればさっき言っていた友人とやらのことも詳しく教えてくれないか?」
鳴海は、今度はスプーキーの顔に支給された参加者名簿を開いて押し付けた。日本語で書かれた数十人の名前が一気に眼に飛び込んでくる。
スプーキーは文字の群れから顔を背けた。
「僕がそうやって簡単に仲間を売ると思うのか?」
「やっぱり、友人∴ネ外で生きている仲間がいるんだな。それで?」
「くっ…。」
「言わないと、大変なことになるよ。」
唐突に鳴海は名簿を避け、スプーキーの眼前には冷徹な表情の男のアップが迫っていた。
眼を大きく見開き、口は避けんばかりに歪んでいる。狂った人間の顔――。
260“氷の微笑”の男 後編:2006/09/13(水) 05:55:57 ID:ew/BTPnn0
突然、耳の中に激痛が走った。
「ぐわぁぁ!」
突然襲い掛かった激痛に、ついに声を上げてしまった。
耳に突き立てられたそれはすぐに引き抜かれ、鳴海の手の中に血にまみれて存在する。ボールペンだった。
「鼓膜を破ったよ。その左耳はもう使い物にならないだろう。安心しろ。右には手を出さない。こっちの声が聞こえなくなったら面倒だからな。」
ボールペンを突っ込まれた左耳の奥がのた打ち回りたくなるほど痛んだ。熱い塊のような血がどくどくと耳から溢れる。
「これからどう大変なことになるかと言うとだな、まずは爪を剥がす。両手両足全て。
それから指を折る。眼を抉るのも悪くない。その後は…捻りが無くてすまないが四肢切断だな。
勿論、どうしても口を割ってくれないなら全ての間接を細切れにさせてもらう。」
「何をされても絶対にこれ以上のことは言わない! 拷問なんて無駄なだけだ!
さっさと殺せばいい! 殺せ!」
のた打ち回るような痛みを堪え、スプーキーは絶叫するが、鳴海はその姿をせせら笑うだけだ。
スプーキーが何かを言い、体を捩じらすたびに耳から血が一層勢いを増して飛び散る。
「あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」
それを見て、何かが弾けたように鳴海の笑みは狂喜のそれに変化し、声高に捲し立てた。
「その後はだなぁ、手足の無いあんたを地上にぃ、出来るだけ開けた目立つ場所に放置するんだよぉッ!
勿論殺しはしないさぁ!
ギリギリで生かしといてやるよ!
悪魔とやらが出るんだから運がよければすぐに喰ってもらえるかもしれないがなぁ!
けど、運が悪ければ……あんたの仲間がやって来るかもねえぇ!!
哀れな達磨と化したあんたを見て仲間はどうなるか! 想像に硬くないだろう!? 
どんな手だれだろうが冷静さを失ってくれれば簡単に捕まえられるって寸法よ!!
後は同じことの繰り返しだ! 芋づる式に全員引っ張り出してやるッッ!!
悪 い な ス プ ー キ ー !!!
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
「――ッ!!」
心臓を抉り出されたような表情のスプーキーに満足したのか、鳴海は狂った笑いを沈め、深呼吸すると再び冷静な表情に戻った。
だが、口元だけは張り付いたように歪んだままである。血も涙も無い悪魔の笑いだった。
「だが俺も鬼じゃない。あんたが口を割ってくれさえすればそんな外道な真似はしないことを約束しよう。」
「ほ…ん…当…なのか……?」
「ああ。嘘はつかない信条だ。安心してくれ。」
ふいに優しさすら垣間見える表情を見せると、鳴海は大きく震えているスプーキーの肩にぽんと手を置いた。
「…………。
……すまない、みんな。すまない……!」
自分の仲間たち……塚本新、遠野瞳、そしてザインは強い。
たとえ情報が漏れたとしてもこんな腐れた鬼畜野郎に負けるはずが無い。だから、何とかして逃げ延びてくれる……。
仲間の強さは信じている。だが恐怖と、間抜けに捕まってしまった自分の馬鹿さと、
どう足掻いても最悪の結末しか迎えられない絶望から溢れる涙を抑えることは出来なかった。

その後スプーキーから主に塚本新と遠野瞳の情報を得た鳴海は約束通り、達磨にして放置という極刑は処さずに
(それに比べれば)比較的緩やかな方法で息の根を止めた。
それは彼が近場のガソリンスタンドで集めたガソリンでこの蓮華台ロータスごと焼き払うという手段である。
これなら止めを刺した上、完全に死体と自分が此処にいた形跡を消せる。
その上、上手く炎上してくれれば、他の者が注目している間に時間を稼げる。
まさに一石で二鳥も三鳥も得られるである。
燃え上がる真っ赤な視界で、冷徹そのものの鳴海の後姿を見送ったあと、
筆舌に尽くしがたい灼熱地獄であるにもかかわらずスプーキーは不敵に笑っていた。
261“氷の微笑”の男 後編:2006/09/13(水) 06:06:08 ID:ew/BTPnn0
ヤツはあのノートパソコンを持って行った。
僕だってただの馬鹿じゃないさ。君を頭から信用していたわけではないんでね、パソコンにちょっと細工をさせてもらっていたんだよ。
ウイルスという厄介者の存在を知らない君があの悪魔召還プログラムを起動させ、悪魔を召還したらどうなるか……。
これで君に一矢報いることが出来る。
それに僕の仲間たちは強くて…優しい。優しい彼らを怒らせたらきっと怖いんだろうねぇ……。

「鳴海昌平! こんな非道な真似をした自分の愚かさを呪いながら死んでいくがいい!!」

まるで牙を剥いた巨大な獣のような劫火は、生まれて初めて氷のような微笑を浮かべた男を一瞬で飲み込み、建物をごと焼き尽くした。


【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 打撲、擦り傷はあるが身体的には問題無し。精神的にはぶっ壊れてる。
武器 クロスボウ トンカチ マハジオストーン(残り2個)、カッターナイフ
   その他病院での拾い物多数
道具 ノートPC(何か細工がされているらしい)、メモ帳、ボールペン、食料少し(菓子パン数個と板チョコ約10枚)
   チャクラチップ他拾い物多数
現在地 蓮華台ロータス
行動方針 悪いな殺戮だ、ワハハハハハ!!

【スプーキー(ソウルハッカーズ)】
状態 死亡
武器 鳴海に全て奪われる
道具 同上
現在地 蓮華台ロータス地下

※時刻は午前11時半くらいです。
262彼と彼女の不運:2006/09/14(木) 14:34:44 ID:c9viFe5i0
余計なことは考えないよう努めながら、歩き続けた。
手掛かりは、彼女の痕跡だけ。
生命の失われた体から、ヒロコは血を流していた。今では、もう流れる血もなくなってしまったろうけれど。
血の滴った後を辿って、彼女が元来た方向へ歩く。
アスファルトの上には点々と黒ずんだ血の跡が、そして時々ガラスの小さな破片があった。
ザ・ヒーロー達に出会う前、ガラスが割れる音を聞いたことを思い出す。
恐らくヒロコはどこかで彼らと争い、ガラスに突っ込んだのだろう。
そういえば、伽耶と呼ばれていた少女が彼女を鉄パイプで刺したと言っていた。
大量の血が流れ出ていたあの傷は、その時のものだろうか。
だとしたら、血の跡を辿っても判るのは格闘の現場までだ。ヒロコがどこで殺されたかは判らない。
(……待てよ)
そこまで考えが行き着いたところで、ふと気付く。
ヒロコの体には、鉄パイプで刺された痕とガラスが刺さっていた以外、目立った外傷はなかった。
つまり――彼女は少なくとも、血の出るような殺され方をしたのではないのだ。
銃や刃物ではない。鈍器だとしても、命を奪うほどの一撃なら傷は残りそうなものだ。
火傷や凍傷の痕もなかったから、炎や氷結の魔法でもないだろう。
彼女はこの状況で見知らぬ相手を簡単に信頼するほど愚かではないから、食品類に毒を混ぜられた線も薄い。
毒ガスのような物を使われたのだとすると、相手は自分が毒を受けない方法を確保していることになる。
が、武器として毒ガスを支給された人物に、毒消しやガスマスクが運良く支給されるとは考え難い。
そんな幸運が絶対ないとは言えないし、先に別の誰かを殺して奪ったのかも知れないが、高い可能性ではないだろう。
だとすると、考えられるのは解毒の魔法だ。
或いは、武器が毒ガスでないとすれば、ヒロコの命を奪ったのはそれこそ呪殺の魔法。
どちらにしても、敵が魔法の使い手である可能性は高いと考えておいていいだろう。
魔法が使えない自分がそれに対抗するには、何が必要か――
263彼と彼女の不運:2006/09/14(木) 14:35:16 ID:c9viFe5i0
「……ここ、か」
考えながら歩く内、戦闘の現場は見付かった。
向かい合わせになった二つの店のショーウィンドウが割れて、辺りに血が飛び散っている。
ガラスが割れる音はここから聞こえていたのだろう。光景を見ただけで、戦闘の激しさは想像できた。
しかしここには恐らく、もう誰もいない。こんな場所に長居したいと思う者はそういないだろう。
そして、ヒロコが最初に血を流したのはここだ。手掛かりは途切れてしまった。
あとは、勘を頼りにこの通りを進んでゆくしかない。
そういえばザ・ヒーローは双眼鏡を二つ持っていた。
ザ・ヒーローと伽耶、二人の支給品が同じだったとは考え難い。どこからか調達したのだろう。
だとすれば、双眼鏡がありそうな店を探せば手掛かりになるだろうか?
そう考えて、また行き詰まる。この時代では双眼鏡がどんな店に売っているのか、想像もつかない。
ヴァルハラでなら、コロシアムの試合を後ろの安い席で見る客を当て込んでジャンク屋が売っていたものだが。
ここが異邦の地であることを、改めて思い知らされる。
(それこそケルベロスでもいれば、匂いを辿ってもらえるのにな)
マダムから借り受けたケルベロスを伴って、スラム街に行った時のことを思い出す。
慣れない、治安も悪い場所だったけれど、あの時は今のようには心細くなかった。
ケルベロスも、仲魔もいたし、隣にはヒロコがいてくれたから。
けれど、今は側には誰もいない。記憶を失ってただ独りヴァルハラを彷徨っていた頃に戻ってしまったような気分だ。
そしてヴァルハラのような喧騒も、ここにはない。
栄えていた街であったろうに、この街並みには自分の足音の他には物音ひとつ聞こえない。
足を止めたら、誰かの声が聞こえはしないだろうか?
ふとそんなことを思い付き、立ち止まる。足音が止み、辺りは完全な静寂に包まれた。
――いや。
(……あれは?)
遠くから、ふと何かが聞こえた気がした。
最初は赤ん坊の泣き声のように聞こえた。が、赤ん坊などいるはずもない。
耳を澄まし、神経を集中する。聞こえる声は複数。言葉ではない、ただの声――鳴き声だ。
(カラス……か?)
鳥の名前はほとんど知らなかったが、カラスくらいは知っている。ヴァルハラに住み着いている数少ない鳥だったからだ。
カラスが漁るものといえば、ゴミと――死体。
それに思い至り、はっとして歩みを再開する。声の聞こえた方向はおぼろげにだが判った。
264彼と彼女の不運:2006/09/14(木) 14:35:50 ID:c9viFe5i0
今まで歩いてきた道の中でも一際華やかな看板の並ぶストリート。繁華街と呼ばれる場所だったのだろう。
そこに人の気配がないのが、却って不自然で、不気味だった。
カラスの声の源はすぐに判った。道の片隅の何かに何羽ものカラスが群がっている。
不吉な黒い羽に覆い尽くされてはいても、それが何であるかの予想は付いた。
無言で近付く。カラスが気付いて威嚇の声を上げたが、構わず歩み寄る。
本来の住人の消えた街に、生き物はまだ取り残されていたのだろうか。
人間の出す残飯もなくなり、カラスも餓えているのかも知れない。人が近付いても飛び立とうとはしなかった。
「……どけよ」
距離が近くなり、黒い羽の隙間からちらほらと「それ」が垣間見え始める。
カラスに罪はない。彼らには人間の持つ倫理という概念はなく、「それ」もただの食料なのだ。
しかし人間の感覚は、この光景を惨たらしいものと感じる。
「どけって言ってるだろ!」
恐怖を紛らわしたかったのかも知れない。言葉が通じるはずもないのに声を荒げて、腰の拳銃を抜いた。
追い散らすには当てる必要もない。地面に向かって一発撃つと、銃声に驚いたカラス達は慌てて飛び立ち、逃げ出した。
残されていたのは、案の定――人間だったもの。
その服も長い金髪も血と泥に汚れ、体も食い荒らされて無残な姿になっているが、恐らくは女性だったのだろう。
白い肌に、カラスの爪や嘴の跡が痛々しく残っている。
首はあらぬ方向に捻じ曲がり――これはカラスの仕業ではなさそうだ――ところどころ欠損してはいるが、人の形は保っていた。
目を逸らしたくなるような惨状。しかし、逃げてはいけない。
「……ごめんな」
名前も知らない、骸となった女性に向けて、ただ一言を呟いた。
265彼と彼女の不運:2006/09/14(木) 14:36:57 ID:c9viFe5i0
「全く……ついてないわね」
ここまで来ればもう安全だろう。ビルの壁に寄り掛かり、溜息をついた。
参加者は市内のどこかに転送される、とスピーカーから聞こえた声は言っていた。
しかし、自分ほど運の悪い転送先を引き当ててしまった者はそういないだろう。何しろ、悪魔の住処の真ん中だ。
どういう訳かは知らないが、このスマル市という街は多くの場所が異界化している。
街にある普通の施設にも、悪魔に占拠されている場所は少なくないようだ。
幸い、道路にまで悪魔が闊歩している状態ではないらしい。
かなりの時間を浪費してしまったが、外に出ることができた今なら、少なくとも悪魔に襲われる心配はなさそうだ。
「悪魔にだけ用心すればいい、って訳でもなさそうだけど……こんな状態だし、ね」
また溜息をつく。悪魔の生息地を脱出するのに手間取ってしまったのには理由があった。
魔法が使えれば下級の悪魔など敵ではない。少しは消耗するだろうが、悪魔を蹴散らして出てくることは簡単だったはずだ。
――ただし、魔法を使えればの話だ。
不運が重なったと言うべきか、不覚を取ったと言うべきか、悪魔からマカジャマの魔法を受けてしまったのである。
女神の力も、魔法を封じられてしまえば無力だった。
武術の心得もあるにはあるが、人間としては強いという程度。それだけで多数の悪魔の相手ができるほどではない。
支給された武器は柄だけの剣。この短さでは棍の代わりにもならない。
この状態で戦闘という危険を冒したくはなかった。
不運続きの中で唯一幸運だったのは、その悪魔の足が遅かったことだ。どうにか逃げ延び、身を隠しながら出口を探した。
壁の陰から悪魔が通り過ぎるのを根気良く待つようなことをしなくて済めば、もっと早く出て来られたのだが。
外に出て、初めて地図と名簿を確認した。どうやら現在地は夢崎区という区域らしい。
今は人影はないが、物の溢れる繁華街。ここを目指してくる参加者は多いだろう。
そして名簿。目を引く名前が幾つかあった。相棒に、何度も戦った敵に、新米サマナーの少年に――
「……ナオミ」
名簿のその部分を指でなぞって、呟いた。
よく知っている名前だ。どこにでもいそうな名前だが、別人でないことは明らかだった。
この死のゲームの参加者が一所に集められた時、確かに彼女の姿を見たのだ。
そして、彼女もこちらを見た。互いの存在をはっきりと認識した。
再会すればこうなることは解っていたが――彼女がこちらに向けた視線には、殺意が込められていた。
殺し合いに乗った者がいるかどうか、どれだけいるかは判らない。
しかし間違いなく言えるのは、ナオミと出会ったら戦いは避けられないということだ。
今の状態で出会ったら、勝ち目はない。
266彼と彼女の不運:2006/09/14(木) 14:37:50 ID:c9viFe5i0
突然の銃声が、思考を中断させた。
誰かが発砲した。それも、音が聞こえる距離で。警戒して周囲を見回すと、街の一角からカラスの群れが飛び立つのが見えた。
銃声は一発きりで止み、再び静寂が訪れる。
(あの場所に、誰かいる……)
カラスが飛び立った場所はそう遠くはない。起こったことを確かめに行くべきか、逡巡する。
戦いが起こったのか。銃声が一発きりだったということは、それで勝負が決まったのだろうか。
それとも、銃声の主はこの状況を悲観して自ら命を絶ったのか。
確実なのは、その場所に少なくとも一人の人間がいること。生きているにせよ、死んでいるにせよ。
その正体も意図も近付いてみなければ判らない。最悪、そこにいるのはナオミかも知れない。
しかし、人に出会うのを避け続けている訳にはいかないこともまた確かだ。
この街から脱出する方法を探すとすれば仲間は必要だ。キョウジとも合流したい。
魔法を使えない状態をどうにかする必要もある。つまり、回復魔法の使い手を探すということになる。
(行くしか、ないわね)
心を決めた。できるだけ足音を立てないように、その方向へ歩き出す。
気配を殺すのは得意だ。見付からないように様子を窺って、安全そうな相手なら近付けばいい。
しかし、もし戦いになりそうならば逃げるしかない。魔法が使えないままでは、銃を持った相手と戦うのは自殺行為だ。
話の解る相手であることを、守護神に祈る。

幾つかの道を曲がり、大通りに差し掛かったところでその光景は目に飛び込んできた。
267彼と彼女の不運:2006/09/14(木) 14:40:37 ID:c9viFe5i0
人間の体を切断するというのは、思っていた以上に重労働だった。
血が付着すれば刃物の切れ味は落ちるし、脂で手が滑る。当然ながら、骨を断つには相当の力が必要だ。
道具も悪かった。今持っている刃物といえば、ベスに支給されていたチャクラムだけだ。
刃を当てた反対側から押さえようとすれば、自分の手も切れる。
かと言って真ん中の穴に指を入れて使うとなると、指一本分の力しか懸けられない。目的にはあまりに不充分だ。
何度も手を滑らせて指を傷付けながら、切断したい部分の肉を刃で切り離し、残った骨は両手で力を懸けて無理矢理に折る。
手を血塗れにして、重労働の疲労と罪深い行為を行っているという緊張感に息を荒げて、作業を続ける。
他のことは何も考えないように、一心不乱に。
五体が動く状態で放置されたら、この女性もゾンビとして甦らせられる危険性があるのだ。
それは他の全ての参加者にとって脅威だし、彼女を知る人の悲しみとショックは増すだろう。
そんな事態を避けるため、誰かが手を汚す必要がある。ネクロマ使いがいることを知っている誰かが。
(俺がこんなことしてるの、ベスが見てたら悲しむかな)
考えないようにしても、雑念は入り込む。
(ザインが知ったら軽蔑するかな)
考えずになど、いられるはずがない。
(ヒロコさんは、何て言うだろう)
ベスの仇を討ちたくて、ヒロコを解放したくて、それから街のどこかにいるザインを助けたくて、今の自分は動いているのだ。
彼らのことを忘れられるはずがない。ただの一時も。
(ごめん、みんな。許してくれないかも知れないけど、俺にはこれしかできない)
あの天使のように炎の魔法でも使えたら、こんな惨いことをする必要もないのに。
救世主と言っても、結局、殺すことと壊すことしかできないただの人間なのだ。

骨が砕ける嫌な音と感触がする。女性の白い腕が、体から切り離された。
これで両足の脛から先と、右手の肘から少し下以降を落とした。残るは左手だ。
屈んでいた体を伸ばし、深く息をついた――その時だった。
「あ……」
ふと気付いた気配の意味を、消耗した精神はすぐには察せなかった。
誰かがいる。その事実だけを飲み込んで視線を向けると、そこには見知らぬ女性の姿があった。
彼女の表情が恐怖と嫌悪に凍り付いている、というのを認識したのは一瞬後。
268彼と彼女の不運:2006/09/14(木) 14:45:19 ID:c9viFe5i0
咄嗟に言葉が出てこない。反応に迷っている内に、女性は踵を返して走り出す。
「ま……待ってよ!」
追い掛けようとして気付いた。血塗れの手、足元に転がる切断された死体。
この光景を見た女性が、その意味をどう認識したか。
自分の手に視線を落とし、呆然とした。女性の姿はもう見えなくなっている。
「違うよ……」
届く訳がないと知りながら、絞り出すように呟いた。
「違う。俺じゃないんだ。……俺は、殺してなんてないのに」
泣きたい気分だった。あの女性は、戦いを挑んではこなかった。
こんな状況で出会ったのでなければ、理解者になってくれたかも知れなかったのに。
――ああ、けれど。
(『まだ』殺してないだけじゃ、同じなのかな……)
ネクロマの使い手を見付けたら殺すつもりなのだ。まだ手を下してはいないとは言え、人殺しには変わりない。
彼女の誤解を責める権利は、自分にはないのかも知れない。
もう戻れない所まで、来てしまったのだ。
天を仰いだ。空はもう明るい。その光が心に差した影を濃くするようで、痛いほど眩しく感じられた。



【アレフ(真・女神転生2)】
状態:左腕にガラスの破片で抉られた傷、精神的落ち込み
武器:ドミネーター(弾丸1発消費)、チャクラム
道具:ベスのザック(食料・水2人分+ベスの支給品)、バンダナ
現在地:夢崎区、繁華街
行動方針:ネクロマの術者を倒し、ヒロコを解放する

【レイ・レイホウ(デビルサマナー)】
状態:CLOSE
武器:プラズマソード
道具:不明
現在地:夢崎区繁華街より逃走
行動方針:CLOSE状態の回復、キョウジとの合流
269主催者サイドの野望:2006/09/15(金) 07:38:55 ID:Nq3jIUBf0
太陽の陽光も月光も届かない闇の中、一人の少女が古ぼけたランプを片手に歩いていた。
此処は今回の『ゲーム』の主催者たちが集まっている砦≠フ一角。長く、広い廊下だ。
この廊下の行く末は少女の手にしている粗末なランプが照らす小さな灯りでは到底見据えることは出来ないほど長く、
また幅も大の大人数人が手を繋いでも届かないほど広い。
その上暗く、無機質でだだっ広く、冷たい空間は無音で、かつん、かつん、と少女の足音が異様に大きく反響した。
少女の名はトリッシュ。
ピンク色のナース服を身に着け、背中に小さな羽根が生えている美しい妖精である。
彼女は妖精王オベロンの命により、回復施設を造ってペルソナ使いたちを助ける役割を担っているはずだった。
が、少々性格に難があり、金にがめついので当のペルソナ使いからは嫌われているのだが、彼女自身はそんなことあまり気にしていないようだ。
それに今は少々事情が違う。
彼女は今回、本来サポートしなければならないペルソナ使いと敵対している存在に、文字通り『雇われた』のである。
『主催者』サイドの代表者であるルイ・サイファーが今回の話を彼女に持ちかけ、報酬として一枚の小切手を差し出したのだ。
その小切手には、彼女がいくら回復施設で訪れるペルソナ使いたちに体力回復の見返りとして高額請求をしたとしても
到底稼ぎきれないような破格の金額が記されていたのである。
彼女の心変わりはあまりにも早かった。
小切手を見た瞬間、オベロンを裏切り、あっさりとペルソナ使いたちを『主催者』に売り渡したのである。
世の中、所詮は金次第。実にシンプルな思想だ。
実際彼女もオベロンの命を全うして故郷の妖精界に出戻り、一円の得にもならない奉仕に身を捧げるよりも、
実力次第でいくらでも稼げる人間界が気に入っていたところだ。未練は微塵にも存在しなかった。
彼女にとって、今更失うものは何も無かった。金以外は。
そんな彼女の『ゲーム』における役割というのは数多いる主催者たちへの伝令役である。
270主催者サイドの野望:2006/09/15(金) 07:41:42 ID:Nq3jIUBf0
主催者サイドは代表者であるルシファーと腹心数名の下、主に大きく分けて四つの部門に総括される。
まず一つ目は主に自己回復制御部門である。
集められた参加者の中には魔法を操り傷を負ったとしても無限に回復する輩が数人確認され、
そんな連中が結託してこちら側に歯向かって来たことを考えると少々厄介である。
そこでこの部門を設けることにより、その能力を大幅に制限しているのだ。
二つ目は悪魔管理部門である。
スマル市は各地に悪魔が出現する区域があるが、その名の如くエリア別に悪魔の種類や能力を管理しているのである。
最初から強大な力を持った悪魔が出現すれば、下手をすると参加者全員が開始早々食い殺されかねない。
だから最初は弱い者を投入し、時期が来れば少しずつ強力な者を増援させる。それが主な役割だ。
三つ目は噂現実化制御システムである。
この『ゲーム』の舞台となっているスマル市は『這い寄る混沌』の影響で人々の口に昇る噂話が全て現実化してしまうという特殊な環境にある。
ゲームの参加者の中にはこの街に精通している者も何人かいるので、先手を打って噂の現実化を防止しているのだ。
ただし、ゲームの展開やルイ・サイファーら大幹部の意思によりシステムが解除される可能性もあるため、あくまでも防止であって停止ではない。
最後は刻印管理部門である。
参加者たち全員の首には、百パーセントの致死力を持った呪殺刻印が掘り込まれており、
この部門では主に刻印の発動と制御に関する操作を管理している。
また、この刻印には簡単ながら着用者の生存感知機能が搭載され、また遠隔操作も可能となっており、
着用者が何らかの方法で脱出を試みる等の禁止されている行動を取ったらこちらの意思で爆発させることが出来るのだ。
ただしそれには代表者であるルイ・サイファーの許可が必要で、管理者が勝手に爆破させたら厳重な処罰を受けさせられるともっぱらの噂である。
トリッシュが今回伝令を伝えるように命じられたのはまさしくこの刻印管理部門に対してであった。
271主催者サイドの野望:2006/09/15(金) 07:45:53 ID:Nq3jIUBf0
照明一つ存在しない暗い廊下には、一定の間隔を置いて各部門の管理室のドアが置かれ、
まだよく道順を覚えていないトリッシュはランプでそのドアの一つ一つを確認しながら進んだ。
「えーっと……えっと、ここは……ん? 業魔殿…。何だよ悪魔制御部か〜。もーっ迷子になったら労災申請してやる!」
一人大声でわめき、ジタバタとじだんだを踏みつつも、気を取り直して次の扉に進む。
次にやって来た扉は全面的に青一色の扉であった。プレートには「ベルベットルーム」と書かれている。
「あったあった、ここ! 失礼しまーっす!」
目当ての扉を見つけるや否やトリッシュはノックもせずに勢いよく青い扉を開け放った。
開くと同時にピアノ伴奏でフランスの作曲家・サティの名曲「ジムノペティ 第一番」の美しい旋律が耳に飛び込む。
そして中からはトリッシュに向かって長い鼻を持った小柄で異形の姿をした老人と、耳を塞いだオペラ歌手、目を塞いだピアニスト、
一心不乱にキャンバスに向かって悪魔を描く絵師が一斉に顔を向けた。
部屋の色彩は壁、天井、カーテンから、ピアニストのついているグランドピアノや絵師の目の前にあるキャンバスに至るまで全て青で統一されていた。
「おや、これはこれはトリッシュ様。ようこそベルベットルームへ。」
突然やって来たにも関わらず、長い鼻の老人が甲高い声でトリッシュを歓迎し、椅子を勧めた。
「やっほー。イゴール久しぶりっ。」
トリッシュは手持ちのランプをグランドピアノの上に置き、満面の笑みで小刻みに両手を振りながら差し出された椅子に腰を下ろした。
「こっち来てから会うのは初めてだね。元気してた? 相変わらず落ち着かない部屋にいるんだねー。」
「トリッシュ様こそお変わりないようで…。」
「ってゆーか、一人増えてない?」
彼女が興味を持ったのは他の三人と比べたら比較的質素な服装の絵師である。この部屋の新顔だ。
だが絵師の方は彼女に取り立てた反応は示さず、ひたすら筆を振るうことに集中していた。
「彼はフィレモン様より命を受け、本来ならば私どもと同様、この部屋でペルソナ使いたちに力を貸すべき存在ですが、今回は少々勝手が違いますので…。
彼には例の刻印を全ての参加者に描き記していただきました。」
「ふーん、この人がねぇ。ま、いーや。」
特にこちらに関心を抱いてくれない絵師の姿に飽きたのか、トリッシュはイゴールと呼ばれた老人の方に向き直った。
「所で、貴女がこの部屋に来たということは、刻印に関して何か問題でもあったのでしょうか?」
272主催者サイドの野望:2006/09/15(金) 07:54:18 ID:Nq3jIUBf0
イゴールの言葉に絵師だけではなくピアニストの耳もピクリと動いた。
耳を塞いだオペラ歌手だけは聴こえていないためか、無心で静かなハミングを響かせている。
「それとはちょっと違うんだけど…。
何かね、鈴木さんが言ってたんだけど、参加者の中に脱出を目論むバカがいるらしーんだよねー。」
「ほぉ。それはそれは大変なことでございますな。」
「うん、そーゆーことだからそいつにその事をお知らせして、ちゃっちゃと刻印爆発させちゃって!」
「かしこまりました。鈴木様の指令であればルシファー様のご意思と同意。
して、それは参加者のどの者でございましょうか?」
「うん。確かえーっと…名前は…」
トリッシュは小首を傾げて小さく唸った。今回の参加者は彼女に対して一円も落とさない。
たったそれだけでも彼女にとってはその名を覚える価値も無いのである。
少々苦心しながらも何とか頭の隅から名前を捻り出し、ぽんと手を打った。
「クズノハ! クズノハ何とか…ライ…えっとごめん。やっぱり思い出せない!」
「葛葉ライドウ様でございますか?」
「そうそう。今思い出した!」
「では早速警告を出し、それに従わないようでしたらやむを得ませんね。
刻印を爆破することに致しましょう。ナナシ、ベラドンナ、そして悪魔絵師、準備はよろしいですか?」
イゴールの声に反応するように、ピアノの伴奏が変わった。ソプラノも少し攻撃的なリズムで紡ぎだされる。
絵師も手を止め、精神集中するように筆先をじっと見つめた。
初めて見る緊迫した光景に、トリッシュもわくわくした面持ちで見守っている。
イゴールがまずは葛葉ライドウに警告を出すべくタキシードの懐にしまっていたイビルホンを引っ張り出した時、青い扉が再び勢いよく開いた。
ぴたりと演奏が止まり、一時の静寂が訪れる。
「おや?」
そこから挨拶もせずにずかずかと踏み込んできたのは一人の若いメイドであった。
ショートカットの黒髪で、美しい顔立ちと均整の取れた体つきだが、真っ白な肌からは一切の生気を感じさせない、
まさしく人形のような雰囲気の持ち主である。
「……今日は随分とお客様が多いようですな。」
「突然お邪魔したことを先に詫びておきます。」
まるで高揚の無い声でそう言い、メイドは無表情に一礼した。
色素の無い真っ赤な瞳には何ら感情を抱いていないようだった。
「メアリ、少し下がるがよい。」
そのメイドを押しのけ、赤いマントを羽織り、海軍のような帽子を被った初老の男が大股でベルベットルームに入室した。
男の名はヴィクトル・アインシュタイン。
この男もまた、人間的な熱を感じさせない佇まいだが、メイドの少女よりは感情の起伏があるようだ。
と、ここでまたピアノの演奏が始まった。ただしの男が下界で根城にしているホテル業魔殿で流しているBGMの生演奏である。
「これはこれはヴィクトル様。悪魔管理部門総括の貴方がこのような場所に何の御用でしょうか。」
「我輩の使役する悪魔の中には少々聴力に優れた者もいてな、お主たちの会話を聞かせてもらったぞ。」
「あ! 盗み聞き!」
すかさず指を刺して非難するトリッシュを尻目にヴィクトルは続けた。
「その葛葉ライドウという男についてだが、少々我輩に任せてもらいたい。」
「ほお。確か資料によりますと貴方と葛葉と呼ばれる一族には深い縁がおありのようで。
ですが、鈴木様…いや、ルシファー様の命では刻印を爆破させよとのこと。
場合によっては命令違反ということで貴方が粛清されることになりますぞ?」
「その点は問題無い。既に話はつけてある。
それに我輩は悪魔の研究が出来るのならばサンプル提供者は葛葉でなくとも大いに結構故、奴らに与そうなどとは全く思っておらん。」
「それを聞いて安心しました。では、いかなる事情で…」
イゴールの言葉が終わらぬ内にヴィクトルはやや興奮した口ぶりで自分の計画を捲し立てた。
273主催者サイドの野望:2006/09/15(金) 07:58:53 ID:Nq3jIUBf0
「聞けば葛葉ライドウはこの街の動力エネルギーを狙って動いているそうではないか。
それについては我輩よりも噂関連を管理している者の方が興味を抱いていているようだが、まぁこの際それはどうでもよい。
問題は奴が選択した脱出方法……どうやら動力エネルギーを利用して異界開きを行い、時空を超えて逃げ出す算段らしい。
悪魔が異界でどのような生態変化を起こし、そして時空移転ではどのような影響を受けるのか……実に興味深い話ではないか。
そこで最近我輩が新たに作成した悪魔を葛葉ライドウの監視役に付かせたいと思っているのだ。」
そこまで聞いた段階で、イゴールにはこの男が何をしたいのかが理解出来た。
つまり、より革新的な場面で新しく生み出した悪魔の性能をテストしてみたいということである。
その研究に対する熱意は賞賛に値するが、組織の一員としてはかなり問題があるのではないかとイゴールは思ったが、口にはしなかった。
だが、
「でもさー、それってやっぱりルール違反じゃない? 
つまりそのライドーってのが逃げ出すまで悪魔に守らせるってことでしょ?」
イゴールの言いたいことをトリッシュが代わりにずばりと言い放った。
彼女はこの男とメアリが生理的に受け付けないのか、先ほどから露骨に嫌そうな顔をしている。
だが、そんなことヴィクトルからすればどうでもいいことだった。
この男が関心を向ける事柄は唯一つ。己の研究に関することのみなのだ。
「それについては言うに及ばん。
悪魔は、監視役に過ぎん。それに葛葉ライドウに付かせるのは一体のみとする。そして決して奴の手助けはさせぬことを誓わそう。
それで葛葉が他者に破れるのなら仕方が無い。そういう運命だったのだと我輩は潔く諦めることとする。
勿論、何らかの不都合が生じるようならばすぐに刻印は爆破してもらって結構だ。
何なら監視役の悪魔にも刻印を掘り込んでくれてもかまわんぞ。
既にデビルカルテは取ってあるのでいくらでも複製は可能だからな。」
「ふむ…。貴方様がそこまで仰るならそれもまたご一興でしょう。して、どのような悪魔を?」
「この中から候補を選んでくれたまえ。我輩はそれに従うことにしよう。」
ヴィクトルがちらりと眼で合図をすると、背後に控えていたメアリがカルテの束をイゴールにうやうやしく差し出した。
イゴールはそれを受け取り、簡潔に眼を通しながらぱらりと捲る。その横からトリッシュが興味津々と言った面持ちで覗き込んでいた。
「さすがに随分と珍しい悪魔を揃えてらっしゃる。これは実に面白そうですな。」
「へー、魔人アリスにメギドラオン所持ピクシー、怪異ツチノコ、クダン、それからジャアクフロストかぁ…。
あ、イナバシロウサギかわいー! ボクこれがいい! ペットにする!
……うげ、魔王マーラって、監視にコレは無理なんじゃない? ボクだったらこんなグロいのいたら速攻でボコっちゃうよ。あとは……。
……十五代目葛葉ライホー? 何だコレ?」
「では、監視役の悪魔はこの中からこちらで決めさせていただきましょう。」
「ねーねーイナバシロウサギちょーだい! ライドーにつけるのは別のヤツにして!」
「これにて我輩は失礼する。外にメアリを待たせておくのでな。どの悪魔を監視役にするか決まったら彼女を通じて言伝を頼んだぞ。」
用件の済んだヴィクトルはマントを翻し、さっさとベルベットルームを後にした。メアリも無言でそれに従い部屋を出る。
パタンと扉が閉り、まるで何事も無かったかのように音楽が最初と同じジムノペティに切り替わった。
一方トリッシュはイナバシロウサギのカルテを見ながらニヤニヤ笑っている。
「えへへ。このウサちゃんもーらいっ!」
だが、そんなトリッシュの声が漏れていたのかどうなのか、すぐさま扉が開き、再びメアリが顔を覗かせた。
「念のために申し上げておきますが、残った悪魔を勝手に着服しないように。それはまた別の場所で利用いたしますので。」
それだけ言って、返事も聞かずに再びドアが閉る。

「ケチ! 死んじゃえ! ルイ・サイファーに殺されちゃえ!」
274主催者サイドの野望:2006/09/15(金) 08:07:30 ID:Nq3jIUBf0
【イゴール】
主催者の一人。刻印管理部門総括
【ナナシ】、【ベラドンナ】、【悪魔絵師】も同様に刻印管理担当

【ヴィクトル・アインシュタイン】
主催者の一人。悪魔管理部門総括
【メアリ】も同様に悪魔管理担当

【トリッシュ】
ルシファーらと各管理部門を繋ぐ伝令役

(時刻は午前8時ごろでお願いします。)
275名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/22(金) 00:42:04 ID:7S9Nf551O
保守
276復活:2006/09/22(金) 01:01:46 ID:sPnMtJhxO
此処は一体どこだろうか?
眼前に広がるは全てを飲み込む無
一筋の明かりも無い闇。
聴覚が、嗅覚が、視覚が、触覚が、
五感の全てが何も感じ取ることが出来ずにいた。
空を飛んでいる気さえした。
ああ此処は一体どこであろうか?黄泉の国か?地獄か?あるいは天国か?

「そうか、私は死んだのか…。」
自分でも驚くほどすんなりと、其れを受け入れることが出来た。

段々と意識がはっきりとしていくにつれ、(死んでいるはずなのに意識とはおかしな話だが)
記憶の深層の淵から「死ぬ」までの事が落葉が降り注ぐように呼び起こされてきた。
あの「ゲーム」に呼ばれてから、この地に堕ちるまで。全てが鮮明に思い起こされた。
だがもうそんな事はどうでもいいのだ。
萬に一つ。いや、億に一つの不運とはいえ、この狭間偉出夫が、この魔神皇が不覚を取り、死を迎え入れたのだ。
277復活:2006/09/22(金) 01:05:15 ID:sPnMtJhxO
しかし地獄か、天国か、其れは知らぬが、誠あの世というもはしみったれたものだな。
罰か、あるいは幸福か、そんなものは何一つ無い。あるのはただただ無ひとつ。無が在るとは矛盾しているようだが、ただそれだけだ。

自分の体勢すら分からないでいたが、何か窮屈な気がしたので軽く伸びをしてみた。その時だ。

「ぬっ…」
思わず声が漏れた。痛んだのだ。右の手首が、今確かに痛みを感じ取ったのだ。
条件反射的に抑えてみれば、なるほど血が出ている。生きている!自分は!

目が慣れてきたというのもあるが、今の痛みのおかげでハザマは完全に覚醒した
手首を傷つけたのに、今まで感じたことが無い程すがすがしい気分で起きあがった。

此処は天国で無ければ地獄でもない。スマル市とかいったか。そこのどこかだ。
木々が生い茂っている。そうだ。忌々しいが、山の斜面にたたき落とされたのだ。
そして辺りを見回していたハザマは愕然とした。一寸先には闇…ではないが、断崖の下には鮮やかなブルーのキャンパスに白い雲が浮かんでいる。
目の前に「空」がある。
原理は判らぬが、町ごと切り取って浮かべたような、そんな感じだ。
「住民はいないから好きに暴れてくれてかまわない。」確かではないが、主催者がそのようなことを言っていた事を思い出した。
このゲームとやらの為にわざわざこんな大それた事をしたのか?
まあ、そんな事はどうでもいいのだ。勝って、生きて帰るのはこの魔神皇ただ一人だ。
278復活:2006/09/22(金) 01:10:20 ID:sPnMtJhxO
それとどうやら今手首を切った木の枝、それが伸びている木がクッションになってくれたらしい。
危うく、(奇妙だが)空に落ちるところを救ってくれた上、そして何より生きていることをしらしめたこの木。

いわば命の恩人だが、手首の傷を見ると無性に腹が立った。
惨めにもこの底に蹴落とされ、また、あの二人組。一人は確かライドウといったか。落下する際に確かに聞いた。もう一人の名は判らぬがまあいい。
あのような不徳の輩によりもたらされたやもしれぬ死を、いとも容易く受け入れていた自分を想うと、一層腹立たしく思えた。

軽く「恩人」の木に手を翳すと、その根から枝の梢まで塵にしてやった。

「おのれ…この恥辱…。必ずや晴らさせてもらうぞ!
 四肢をズタズタに引き裂き、五臓六腑を引きずり出し、奈落の底に叩き落としてくれよう!」

純白の学生服に付いた泥やらなにやらを軽く払い、声高らかに一人宣言すると、狭間偉出夫は歩きだした。

【狭間偉出夫(真・女神転生if...)】
状態 手首の切り傷と、落下の際打撲等を負ったがいずれも軽傷。精神的にはすこぶる快調
武器 落下の際ザックごと失ったが、彼は何も必要無いと思っている。
道具 同上。
現在地 蝸牛山
行動方針 葛葉ライドウ、鳴海昌平 両名への復讐 皆殺し
279名無しさん@お腹いっぱい。:2006/09/22(金) 01:17:44 ID:sPnMtJhxO
やべっ
時刻は午後1時でお願いしますm(_ _)m
280憑いてる二人:2006/09/23(土) 06:32:37 ID:a8bsWaQ20
無人の街は、変わらず静かだった。
あの時、教室にいたのは何人ほどだったろう。四十人か、五十人ほどいたか。
どちらにしても、一つの街にそれだけの人間しかいないと考えると、あまりに少ない人数だった。
本来は何万もの人が暮らしていたのであろう街に散らばっていては、出会う確率は高くはないはずだ。
突然放り込まれた者達には、この無人の街はあまりに広い。
人の集まりそうな所、役立つ物のありそうな所を避けて進めば、物音一つにも出会わない。

(身の安全を確保するだけなら、そう難しくはなさそうね)
地図を片手に、道なりに歩きながらレイ・レイホウは考える。
死体を解体する男と出会って以来、人の姿は生きているものも死んでいるものも見なかった。
地図によると夢崎区から平坂区へと続くらしいこの道は、どうやらまだ戦場にはなっていないらしい。
(食べ物ならどこででも手に入るし、隠れられる場所もいくらでもある……
休む場所には困らない。誰か仲間がいれば、交代で休めてもっと安心なんだけど)
レイホウは決して気の弱い女ではない。寧ろ、多くの死地を潜り抜けてきた賜物か肝は据わっている。
並の男なら軽くいなせるほどの武術の心得もあるし、悪魔や超常現象についての知識も豊富だ。
だから、殺人者が街のどこかで獲物を探している、という事態に恐怖している訳ではない。
冷静さゆえに、彼女は慎重になっているのだ。
その辺の人家にでも隠れれば、確かに人には気付かれないだろう。しかし、探り当てる能力を持った悪魔はいる。
例えばケルベロスなりオルトロスなり、鼻の利く悪魔を連れていたら容易く匂いを辿られてしまうだろう。
人には見付かるまいと油断していては、どのような危険に晒されるかわからない。

多くの人が集まる場所は、安全のためには避けた方がいい。
しかし安心して休息できる状況を作るためには、信頼できる誰かと出会うことが必要だ。
その二つから、レイホウは結論を出した。
積極的に人を殺す意思のない者は、皆同じことを考えるはず。
ならば彼らが向かうのは、安全の確保できそうな場所だ。
281憑いてる二人:2006/09/23(土) 06:33:07 ID:a8bsWaQ20
地図を見た限りでは、この市内で住宅地が多そうなのは蓮華台と平坂区。
どちらも夢崎区とは隣接しているが、蓮華台は市の中央である。
各区の間を結ぶ場所は、通る者も多いだろう。安全を確保することを考えるなら、平坂区だ。
そう判断して歩き始めてから一時間と少し経った頃だろうか。
地図上では二つの区の境目になっている辺りまで、レイホウは辿り着いていた。
(このまま南に進めば高校に住宅地……西はカメヤ横丁、ね)
少し考えてから、道なりに南に進路を取った。
道の両側に、細い曲がり道が幾つも伸びている。横丁の方へ向かおうとすれば、どこからでも行けそうだ。
時折地図を見ながら、それ以上に注意して周囲の様子を窺う。
敵であれ味方であれ、人のいた痕跡があれば今後の指針を考えるのに大いに役立つ。
あまり歓迎はできないが、出会うのが死体だとしても情報にはなるだろう。

幾つ目かの曲がり道の前に差し掛かる。
他の曲がり道と同じように、ここも軽く覗いて何もなければ通り過ぎるはずだった。
が、予想外なことに――接触は、相手側からだった。
「誰かいるの?」
突然の問い掛けに、レイホウは足を止める。
声の主は若い女。警戒しているのか、道を曲がった先に姿を隠したままでいる。
「戦う気はないわ。安心して」
相手にもその気がないとは限らないが、先に気付いていながら不意打ちを仕掛けてこなかったのだ。
誰彼構わず殺す気になっている人物ではない可能性が高い。そう考え、穏やかな声で応える。
「……嘘じゃなさそうね」
安堵したような声がして、声の主が姿を現す。制服姿に短い髪の、高校生ほどの少女だ。
手には銃を持っているが、今のところ撃つ気はないらしく銃口は地面に向けたままにしている。
その姿勢が、この少女にも戦意がないことをレイホウに確信させた。
「良かったあ。やっとやる気になってない人に会えた」
年齢相応の表情で、少女が微笑む。この口振りだと、殺意を持った他の参加者に遭遇しているのだろう。
「こっちも安心したわ。ここに来てからついてなかったけど、やっと運が向いてきたみたい」
平坂区へ来たのは正解だったようだ。ゲームに乗る気のない参加者と出会えたのは何よりの収穫だ。
しかも、この少女は「敵」となり得る人物の情報を知っているらしい。
「ところで、やっとやる気になってない人に……って言ってたけど。そうじゃない人には会ったの?」
「うん。放送があった頃だったかな、あっちの横丁でね。悪魔使いの男の子に」
「悪魔使い?」
レイホウは眉を顰めた。やはり参加者の中には、殺戮に悪魔を使おうとするサマナーがいる。
出会ってしまったら、魔法を封じられたままで対抗するのは難しいだろう。
282憑いてる二人:2006/09/23(土) 06:33:39 ID:a8bsWaQ20
「中島……って言ってたっけ。えーと、あったあった」
民家の石塀に銃を立て掛け、少女はザックから名簿を取り出して覗き込む。
「中島朱実。女の子みたいな名前だけど、顔もそんな感じでね。黒い制服で、何とか高校の三年って」
「知らない名前ね」
名の通ったサマナーではない。しかし、レイホウは僅かに安堵していた。
サマナーの少年と聞いて、天海市で出会った新米サマナーのことを一瞬思い出していたのだ。
彼の名は確か、アラタ。ついでに間違っても女の子のように見える容姿ではない。
もとより無差別な殺戮を行う人物だとは思っていないが、一瞬の「まさか」が取り除けたのは幸いだった。
「あ、そうだ。私は内田たまき。お姉さんは?」
「ああ……言っていなかったわね。私はレイ・レイホウ」
名簿を見ていて、相手の名前を確認することを思い出したのだろう。
たまきと名乗った少女はまた名簿に目を落とし、今聞いた名を探しているようだった。
そういえば。ふと、最初に集められた教室には彼女と同じ制服を着た少女が他にもいたことを思い出す。
「お互い、知っている人について情報交換しましょうか」
「あ、賛成」
たまきが顔を挙げ、頷いた。

近くの民家を手当たり次第に見て回ると、鍵の開いている家はすぐ見付かった。
中島という悪魔使いが近くにいる可能性がある以上、長居はしない方がいいだろう。
ひとまず筆記用具を見付け、ダイニングのテーブルに二人で向かい合って座った。
ついでに、冷蔵庫に入っていたミネラルウォーターをコップに注いで並べる。
食品類もあったにはあったが、放置されて何日になるか判らないため手は付けないことにした。
「まず……葛葉キョウジ。彼は信頼できるわ。私の仕事上のパートナーだったから」
キョウジがゲームに乗ることはまずないだろう。
彼は正義の味方でこそないが、決して自分が生き残るために人を殺すのを躊躇わない人間ではない。
「銃と、サマナーとしての腕は確かだけど……」
COMPも銃も支給されていなかったとしたら大丈夫だろうか、とふと考える。
肉弾戦でも下手な悪魔程度の相手ならできるはずだが、少々不安だ。
「サマナー、って?」
「悪魔召喚師。あなたが見た中島君のような人のこと」
「あ。じゃあ私もサマナーなんだ」
たまきの意外な言葉に、レイホウは目を丸くする。
「あなたも? 悪魔を使えるの?」
「今は悪魔召喚プログラムがないから無理だけどね。どっかに落ちてないかな」
落ちていることはなさそうだが、彼女は見た目以上に頼りになる存在らしい。
中島という少年が悪魔を従えていたということは、COMPが支給されている者もいるということ。
使いこなせないCOMPを支給されている、ゲームに乗っていない人物がいるかも知れない。
そういう人物を見付け、COMPを借りられれば、たまきは大きな戦力になるだろう。
283憑いてる二人:2006/09/23(土) 06:34:20 ID:a8bsWaQ20
それから、二人は互いの知る人物の名前と特徴を教え合い、名簿にメモを記した。
たまきから聞いた名前は、先程の中島朱実の他に五名。
乗り気になっている可能性が高い要注意人物は、狭間偉出夫と神代浩次。
味方してくれそうなのが赤根沢玲子、宮本明。
それから、既に名簿上では線で消された名前――白川由美というのも、彼女の友人だったらしい。
レイホウも知っている人物のことをたまきに教えた。
キョウジ、シド、ナオミ、新、瞳、今は亡い久美子。そして、もう一人。
「この、葛葉ライドウ……って人。名前には心当たりはあるのよ」
「名前だけ知ってて、どんな人か知らない、ってこと?」
レイホウは頷く。紛れもなく、その名は葛葉の者に受け継がれている名だった。
「葛葉ライドウの名前は代々受け継がれていてね。
由緒あるサマナーの名前なんだけど……今の葛葉ライドウには、私は会ったことがないの」
「由緒……そんなに昔から、サマナーっているんだ」
たまきが驚いた顔をする。どうやら彼女も新と同様、運命の悪戯でサマナーになった新米らしい。
「COMPがなかった頃って、どんな風に召喚してたの? 魔法陣描いたり?」
「そういう方法もあるわね。あとは符とか、管とか」
「……管?」
感心したように頷いて聞いていたたまきが、突然思い出したようにザックを取り上げた。
ごそごそと中を探り、しばらくすると取り出した何かをテーブルに載せる。
「管って、もしかして……こういうの?」
テーブルの上のそれを見て、今度はレイホウが驚きの表情をした。
間違いなく、「こういうの」である。かつては葛葉の者も悪魔召喚に用いたという、封魔管。
「まさに、これよ」
たまきは当たりを引いたと言うべきなのか、外れを引いたと言うべきなのか。
封魔管は悪魔を封じ、召喚を可能にする術具ではあるが、扱うには高い霊力が必要だ。
COMPでの召喚しか経験していないたまきに扱える代物ではない。
本来のキョウジならともかく、今のキョウジでも使えないのではないだろうか。
「使い方、わかる?」
「私はサマナーとしての訓練は積んでいないから……知識だけ、ね。
霊力も必要だし、慣れていないと使い物にならないわ」
「無理かぁ……私、魔法の素質も全然ないみたいだし」
たまきが肩を落とす。これを扱える人物を味方に付けられれば、強力な武器にはなるのだが。
この名簿の中にいる葛葉ライドウならば扱えるだろうか。そうでなければ――ナオミ、はまず味方にはならない。
「課題が一つ増えたわね。これを使える味方を探すこと」
二人は顔を見合わせ、溜息をついた。
284憑いてる二人:2006/09/23(土) 06:35:42 ID:a8bsWaQ20
「知ってる人は、これだけかな」
様々なメモが書き込まれた名簿を、たまきは丸めてザックにしまう。
「名前を知ってるのは、これだけ。――姿だけ見た相手なら、もう一人いるわ」
名簿の話題になって話しそびれていたが、このことも彼女には伝えるつもりだった。
この先降り掛かってくるかも知れない危険については、一つでも多くの情報を共有した方がいい。
「……女の子が死んでいるのを見たの。そこには男がいて――死体の手足を、切り落としてた」
「な、何それ?」
信じられない、といった顔をするたまき。当然の反応だ。
修羅場には慣れているレイホウでさえ、その光景には一瞬、寒気を覚えたのだ。
正確には光景と言うより、顔を挙げた男の顔に、である。
必死の形相だった。しかし、そこに狂気の色はなかった。正気であのような行為をしていたのだ。
理解できない「正気」は、「狂気」より恐ろしい。
人間とは根本的に精神構造の異なる高位の悪魔が感じさせることもある、あの理解不能さ。
しかし恐怖を覚えたとは言っても、怯えた訳ではない。戦う力が万全にあれば挑むこともできた。
一人の少女が殺され、その体を切り刻まれている場面で、逃げるしかなかったことが歯痒かった。
「場所は夢崎センター街……ここからは遠いわね。しばらくは出会う心配はないわ。
長い髪で、SFにでも出てきそうな格好の男だった」
「……目立ちそうだね、それ」
確かに、あの出で立ちなら遠くから見ても一発で判る。
シドといい、たまきから聞いた白い学ラン姿らしい狭間という少年といい、目立つ格好であってくれて助かる。
「私は今、魔法を封じられていてね。それさえ回復すれば、戦える自信はあるんだけれど」
「じゃあ、それまでは私が戦うよ」
屈託のない表情で、たまきが言った。
「あなた、戦えるの?」
銃を支給されているとはいえ、彼女はどう見ても普通の女子高生だ。特に鍛えているようにも見えない。
そんなレイホウの心配を余所に、たまきは自信ありげに笑ってみせた。
「大丈夫。私には強い味方が『憑いてる』から」
彼女がそう言った瞬間、その背後に何か大きな力をレイホウは感じた。
偉大な悪魔――或いは神と呼ばれるかも知れない存在。
(この子も巫女?……違うわね。でも、この子は護られてる)
味方してくれているのは、この身を守護する女神だけではないらしい。
「ありがとう。でも、私だって魔法以外でも戦えるのよ」
名簿をザックに戻し、コップに残った水を飲み干して立ち上がる。ひょいと横に立って、たまきの頭に手を置いた。
「それにね、無理して笑ってなくたっていいの。泣いたっていいんだから」
急にこんな世界に連れて来られて、殺し合いに巻き込まれ、友人を失った高校生の少女。
元気に振る舞ってはいても、見せてくれたのはきっと心からの笑顔ではないだろう。
「……うん。ありがと。でも今は、泣いてる場合じゃないから」
少しだけ俯いて、それからたまきは勢い良く顔を挙げた。
285憑いてる二人:2006/09/23(土) 06:40:18 ID:a8bsWaQ20
しばし間借りした家を出て、二人は住宅街を歩き出す。
「その、キョウジさんって。どこにいそう?」
「安全な所に隠れてる、って思考はなさそうね。こんなゲームは壊す、って言って仲間を探してそう」
「アキラも同じこと言いそうだなぁ……」
立ち止まり、顔を見合わせた。
「アキラ君って、隠れて様子を見るよりまず正面に飛び出すタイプ?」
「キョウジさんって、敵が近付いてきたらぶっ飛ばすから堂々と歩いてやる、みたいな人?」
見合わせた顔に、鏡に映したように苦笑が浮かぶ。
「……人の多そうな所、行こっか」
「……そうね」


【時刻:午前9時半頃】

【レイ・レイホウ(デビルサマナー)】
状態:CLOSE
武器:プラズマソード
道具:不明
現在地:平坂区、春日山高校からいくらか北辺り
行動方針:CLOSE状態の回復、キョウジとの合流、仲間を探す

【内田たまき(真女神転生if…)】
状態:正常
武器:デザートイーグル
道具:封魔管
行動方針:身を守りつつ仲間を探す
現在地:同上
286ナオミの場合:2006/09/26(火) 22:57:42 ID:yRN4Bt8h0
「ここは…」
気がつくと、ナオミは無人の建物の中にいた。
機械の稼動音と、様々な工具。それを照らす蛍光灯も正常に働いている。
「…ここは…工場?機械類は作動しているようだけど…」
出口は――扉がある。手をかけて開けようとするも――
「…開かない。」
良く見れば、扉から配線が伸びて――モニターとレバーの方向へ繋がっている
「…電子ロック?…これは…アルゴン製じゃないわね…かなり…古いもの…」
電源らしきスイッチを入れると、あっさりとOSが立ち上がった。
「説明書があれば…何とか…なりそうだけど…使いにくいインターフェースね…」
棚の中に色とりどりの「取り扱い説明書」が収納されているので、
コントロールができなくて閉じ込められる、という事態に陥る事はなさそうだが…
(…果てしなく面倒だわ…「扉の開閉」の記述を探すだけで何時間かかるのかしら…)
(…まあ…開かない、と言う事は外からも入れない、ということで…)
「まずは…」

「主催者」から渡された『支給品』、そして『ルール』。
鞄の中のものを机の上に並べて、まずは確認してみる事にした――
287ナオミの場合:2006/09/26(火) 22:58:44 ID:yRN4Bt8h0
「…ナニコレ」

何かの…飲み物と…杯と…日傘。
「お酒?…ビャッヘーって何だろう…」
(…ちょっとだけ…)
「…甘い…これは…蜂蜜酒?…結構、いけるかも…」

杯を傾けつつ鞄の中を探り、ルールの紙束に目を通す。

「呪印…」
気に入らない。

見事ゲームに勝ち残ったとしても、主催者が誠実である保証は何もない。
最悪、願いをかなえた後も呪印だけ残して保険とする、などと言うケースも十分考えられる。
主催者と相対するまでには、何とかして無効化しておきたいところだが…

(…どの系統の呪術か…わかればいいんだけど…)
何気なく手首に目を移す。一般の紋様とは違う、特別の呪的意匠を施した刺青。
修行を終えた時半ば強制的に付けられた証であったが、これのおかげで一縷の望みが持てる。
(何の理に依って成された呪術かわかれば、これを使って無効化できるかもしれない。)
自分が呪詛を付けられるような間抜けな目に合うはずがない―――
そう考えていた今までの自分の愚かさを思い知り、刺青を強いた師の笑顔が脳裏をよぎる。
(ウチナーかヤマト系統なら呪詛返しも簡単だけど…)
呪印の形からして、西洋…あるいは中近東の神か悪魔が関わっている可能性が高い。
神のいる場所、神社、寺、教会――に出向き、それと同格以上の神々の助力を得るか。
それとも悪魔の出現場所に乗り込み、高位の悪魔と契約するか――
どちらにしろ、新たな契約のために大がかりな儀式や代償が必要になる。
では、まず何から…
288ナオミの場合:2006/09/26(火) 22:59:37 ID:yRN4Bt8h0
考えを纏めようとするが…なぜか集中できない。
(…あれ?そんなに飲んではいないはずなんだけど…)
酒瓶には、まだ9割ほどの酒が入っている。ナオミとしては、全く問題のない酒量のはずだが…
(ほとんど残っているようだし…残っている…思ったほど減らない…減らない…)
「…無限に減らない。」
やってしまった。確認もせず、支給品の酒を飲み干して見事に酔っ払って――実に

いい気分だ。

気になっていた日傘に手を伸ばし、意味もなく回転させてみる。
描かれた文様が神の旋律を奏で、自分を祝福してくれているような、そんな気がした。
「…ええと…この日傘、どこかで見たような…」
日傘と酒…この2つがナオミにとってどのような意味を持っていたのか。
「…マヨーネ」
記憶の糸が繋がり、かつて相対したサマナーの姿が浮かんだ――
これはCOMP…それも戦闘に十分耐えうるサマナー用だ。
(…どうするんだっけ…たしか、マヨーネが召喚する時には…)

左手で傘を開き、右手を天高く突き上げて悪魔の名を叫ぶ――

「ムラサキカガミ!」
289ナオミの場合:2006/09/26(火) 23:00:44 ID:yRN4Bt8h0
「…」
「…駄目ね…うふ、ふふふ…駄目ね…ふふ…」
自らの滑稽さになぜか笑いがこみ上げて来る。いつになく楽しい気分――
「そもそも仲魔が入ってるかどうかもわからないのにね…ふふ…」
とりあえずこの傘の件は後回しだ。傘を閉じて、制御室のコントロールパネルと向き合う。

「…何にせよまずはここを出て…情報を集めることね…」
人か、あるいは「悪魔」から。もしかしたら「主催者」からも――
ナオミはリストの一点、レイ・レイホゥの名に視線を落とし、何かに言い聞かせるように囁いた。

「…知ってる名もあるようだし…ね。」
290ナオミの場合:2006/09/26(火) 23:02:19 ID:yRN4Bt8h0
【時間:午前5時ごろ】

【ナオミ(ソウルハッカーズ)】
状態 酔い(Happy)、エストマ
武器 なし
道具 日傘COMP 黄金の蜂蜜酒 酒徳神のおちょこ
現在地 廃工場(制御室)
基本行動指針 呪印を無効化する 情報を集める レイホゥを倒す
現在の目標 制御室を出る
291軽子坂デストロイヤー:2006/09/30(土) 07:14:21 ID:MJTLT0ki0
「クソ野郎ッ!」
少々舐めて掛かったとは言え、こうも楽々とすっ飛ばされてしまうとはいささか腹が立つが、神代は素早く立ち直り、グラップK・Kを構えた。
「やらせねぇよ!」
だが神代が引き金を引く前にアキラは地面を蹴り、最速の動きで接近する。
そして、銃を構えた右腕をひねり上げた。
ドン、と耳を劈くような破裂音が響いたが互いに無傷だった。どうやら銃が暴発したらしい。
足元が不恰好に抉れているが銃自体の威力がそれ程でも無いお陰か兆弾は免れた。
アキラはそんなことに構う間も無く、もう片方の手で神代の尖った顎をがっちりと捕らえた。
「くっ!」
神代はその拍子に口の中をどこか噛み切ったらしく苦い鉄の味が染み出した。不快感に顔をしかめる。
何とかアキラの腕を解こうと自由な方の手で抵抗するが、アキラの腕力の方が勝っているらしく微動だにしなかった。
「馬鹿な野郎が。こんなクソゲームに乗せられやがって。
……何人殺した。」
「はっ…。馬鹿はてめーだ。こんな所でオトモダチなんか作って今更優等生気取りかよ。反吐が出るぜ…!」
そう呟いた神代がずらした視線の先には神経弾で身動きが取れないキョウジと、先ほど瞬殺したリックの死体が転がっている。
リックは腹に穴を開け、ぶちまけられた物は既に血だか内臓だか解らない状態だ。
その瞬間、顎を掴んでいる明の腕の力が強まり、神代は呻きを漏らした。
「何とでも言いやがれ。どうせてめーもすぐにあの世で沢山のオトモダチに逢えるんだからよ。」
「ああ。あの世でユミとヨロシクやるよ……なーんちゃって♪」
瞬間、反射した光がアキラの眼を捉え、アキラは大きく仰け反った。だが学生服の、胸元――鎖骨辺りが大きく切り裂かれ、鮮血が吹き出した。
それとほぼ同時に神代の握っていた銃が宙を舞い、持ち主の背後に転がり落ちる。
「てめぇ…!」
「その喉掻っ捌いてやろうと思ったが…。野生の勘ってヤツ? 凄い凄い。」
ニヤリと笑って陽気に拍手をする神代の右手にはアサセミナイフが握られてる。どうやら袖口に隠し持っていたらしい。
292軽子坂デストロイヤー:2006/09/30(土) 07:16:06 ID:MJTLT0ki0
アキラはそんな神代のあからさまな皮肉を無視して、即座にタックルを仕掛けた。
あいつの後ろには銃が落ちている。あれを拾わせてはいけない――!
「ぐぼぁ!」
体当たりからそのまま地面にもつれ込み、二人は緩やかな下り坂をそのまま転がる。
何度か体をぶつけつつも、アキラが馬乗りになって神代を押さえ込む形になり、躊躇い無く顔面を拳で殴りつけた。
「まさかてめーが由美の奴を殺したんじゃねぇだろうな!」
そう怒鳴りながらもう一発!
「……だったら…どうだってんだこの脳筋野郎がぁ! 調子付くんじゃねぇぞお!」
激しい怒号の反面、だらりとだらしなく投げ出されている神城の腕あたりからカチリと小さな音が響き、
視界が真っ白に染まったかと思うとアキラの頭上に青い物体が現れる。絶対零度の青い御霊・ニギミタマだ。
「コイツを殺っちまいな!」
「しまった!」
主である神城の命令に、生まれ持った独特の笑みを強め、攻撃体勢に入ったニギミタマだったが、一発の銃声と共に弾け飛んだ。
「なっ!」
予想外の展開に声を上げたのは神城だけでは無くアキラもほぼ同時だった。
それからやはり同時に銃声の聞こえた方に体を向けるとそこにはピースメーカーを構えた白いスーツとリーゼントの男……。
――葛葉キョウジが立っていたのだ。ただし、体は大きく傾き、シニカルな笑みを浮かべてはいるがあっさりと片膝をついてしまう。
「すまん。僕に出来るのはここまでだ…。」
「悪ぃな。だが十分だ!」
アキラは掴んでいた神代を軽く蹴り飛ばし、キョウジに駆け寄ると、
小刻みに震える手からピースメーカーを引ったくり、迷う事無く神代に向かってぶっ放した!
「ぐはあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
十分な重量とスピードと衝撃力を持った弾丸はまるでがら空きだった神代の胸を貫く。
そこから先ほどのニギミタマと同じく血を飛び散らせ、また、神代本人も数メートル先まで跳ね飛ばした。
「やった…!」
歓喜の声を漏らしたキョウジを捨て置き、アキラは冷静に、それでいて冷徹に血に染まった神代の亡骸に歩み寄った。
それからまだ熱を持っている死体から夢想正宗、アサセミナイフ、
さらには、スターグローブ、そしてメリケンサック型COMPを剥ぎ取り、
ブレザーの下の鎧にも手を伸ばしたが壊れていたのでやめておく。無駄な荷物は増やしたくないのだ。
最後に彼は血に染まったブレザーの胸ポケットをまさぐった。
「……さすがに回復出来るもんは全部カバンの方か…銃も近くにある筈だから後で拾っておこう。」
自分よりはるかに年下でありながら、いかにも戦い慣れ、人一人殺した後でも異常に落ち着き払ったアキラをぽかんと眺めることしか出来ないキョウジだが、
当のアキラはその視線すらも興味無いといった振る舞いだった。
「君は一体…」
「立てるか?」
「何とか…。」
「コイツのと…リックの荷物を取ったらさっさと行くぞ。」
「ああ。だがその前に君の手当てだ。いくら何でもその傷を放っとけないからね。」
293軽子坂デストロイヤー:2006/09/30(土) 07:17:27 ID:MJTLT0ki0
宮本アキラと葛葉キョウジが立ち去った数刻後、赤黒い血でドロドロ、憐れな屍と化したはずの神代浩次はむくりと起き上がった。
「クソッ」
ぺっ、とその場に唾を吐き棄てると、唾液と言うより殆ど血液だった。
オマケに二発も貰った顔面は本来の物よりも一回りも二回りも大きく腫れ上がっている。
さらに宮本アキラに腕を捻られた時か、もつれ合った時か定かでは無いがその時に肘が脱臼してしまったらしい。
右腕の肘から下はプラプラとぶら下がるだけで、どう足掻いても動きそうに無かった。
生温かい血で塗れていることと言い、何とも酷い有様だ。
「畜生、あの野郎ども…」
憎憎しい二人組の、憎憎しい面構えを思い出し、憎憎しげに彼は奥歯を強く噛み締める。
本当は心行くまで罵詈雑言を絶叫したい気分だったが、誰かに聞かれたら生死に関わるのでそれだけは止めておいた。
今いる彼は決してゾンビでは無い。れっきとした生きている人間だ。
実は彼はアキラからピースメーカーで撃たれた際、咄嗟の判断でもう一体悪魔を、地霊ノッカーを召還していたのだ。
彼は仲魔を盾にし、弾丸の直撃を免れたのである。
しかも幸いなことに、ピースメーカーのずば抜けた破壊力は召還と同時にノッカーを木っ端微塵に砕け散らせてくれたお陰で
アキラの肉眼ではまるで彼が本当に撃たれたかのように見せかけることが出来たのである。
さすがに弾丸を止めるには至らず、貫通したそれは数少ない防御手段である光明鎧を破壊してくれたが、本人は無事である。
後は災難が去るまで死体のフリを続けるだけと、言うことうだった。
だがそのお陰ですっかり身包みを剥がされてしまったワケだが、あの状況では贅沢も言っていられないだろう。
「甘いな宮本…確実にトドメを刺せやボケが。」
神代はやはり憎憎しげに呟くと、口元の血を左手の甲で拭い、立ち上がった。
「まぁ。ゲームなんだからこうでなくっちゃ面白くも無いか。
また別の奴を狩ってお道具を頂きましょうか。
そしたら……まず最初にあいつらをデストロイだな。」
楽天家の彼は出来る限りポジティブに独り言を言ったつもりだったが、最後のセリフだけは随分と辛辣で、凶悪な憎悪が籠っていた。
294軽子坂デストロイヤー:2006/09/30(土) 07:28:20 ID:MJTLT0ki0
<現在午前7時15分>

【宮本明(真・女神転生if...) 】
状態:右手損傷、胸元負傷
装備:ヒノカグヅチ(少し重い)、鍋の蓋、髑髏の稽古着 、スターグローブ(電撃吸収)、
夢想正宗 アサセミナイフ×2
道具:包丁×3、アルコールランプ、マッチ*2ケース、様々な化学薬品、薬箱一式 、
メリケンサック型COMP、魔石4つ 傷薬2つ デイスポイズン2つ 閃光の石版 MAG1716
行動方針:ハザマの殺害、キョウジの回復、たまきと合流しゲームの脱出
仲間:コボルト
備考:肉体のみ悪魔人間になる前

【葛葉キョウジ(真・女神転生 デビルサマナー) 】
状態:麻痺
装備:ピースメーカー
道具:なし
基本行動方針:レイと合流、ゲームの脱出
備考:中身はキョウジではなくデビサマ主人公です。

【神代浩次(真・女神転生if、主人公)】
状態:顔面を打撲、右腕脱臼
武器:アキラに全て奪われる。
防具:レザーブーツ  明光鎧(電撃弱点、衝撃吸収、ただし壊れているから防御効果は殆ど無し)
道具:アキラに全て奪われる。
現在地:平坂区
行動方針:装備を整える、レイコの回収、ハザマの探索、デストロイ(アキラとキョウジが最優先)

【現在地:平坂区】
295名無しさん@お腹いっぱい。:2006/10/02(月) 09:45:10 ID:+ideSSLO0
保守
296名無しさん@お腹いっぱい。:2006/10/05(木) 03:07:41 ID:q5KBLckbO
保守・・・
297名無しさん@お腹いっぱい。:2006/10/06(金) 11:59:35 ID:OmVFtONkO
捕手
298名無しさん@お腹いっぱい。:2006/10/07(土) 00:14:12 ID:WVgEJnp40
女神転生バトルロワイアル 3
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1160142833/

次スレです。
299名無しさん@お腹いっぱい。:2006/10/13(金) 23:51:53 ID:L+7vTbHMO
保守る
300名無しさん@お腹いっぱい。
ついでに300