テイルズ オブ バトルロワイアル Part5

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85漆黒の翼・ユアン 1
ユアン達が地図上の座標D5の山岳地帯に到着した後に、第三回の放送があった。
今回の禁止エリアには彼らの現在地を直撃するものはなく、また慌しく移動する必要には迫られなかった。
グリッドはまたミクトランがしつこく自分達の居るエリアを狙ってくると思っていたらしく(我々の結束はミクトランにとって脅威に違いない!)、
些か不満げに見えなくもなかったが、ユアンは無視した。
といってもすぐ隣のエリア(D4)が禁止エリアに指定されたので、
移動の際には警戒が必要になった(特にカトリーヌ。迂闊に歩き回ったりしないように)。

そして死者達。
今回の発表は恐らく最も多くの参加者に影響を与えただろうと思われる。
というのも、五十数名からなる参加者の中で全員に名乗りを上げた人物が二人、死んでいた。
すなわちそれはゲーム開始前に殺戮行為をしゲームに乗ることを宣言したあの五聖刃マグニス、
そして島全体に停戦の呼びかけをした少女、ファラ・エルステッド。
この二人が死んでいた。ことにユアンにとってマグニスという男は世界を同じくする同種でもある。
しかしユアンにとっては、二人の死はさほど気にはならなかった。
C3村に行くことを(密かに)希望していたカトリーヌとプリムラは、
ファラの死に結構な動揺を受けた様だったが、結果的にそれでC3村行きの案は完全に絶えてしまった。
内心ユアンは危険な地域に出向く必要がなくなって安堵した。
実際の所、火事と牛と少女の騒ぎでC3行きの話はうやむやになっていたが。

そう、ミミー・ブレッドという少女についても小さな引っ掛かりを感じた。
あの炎上する村で戦った、牛と少女。
少女の名はミミーと言うらしい(名簿でも確認した)が、
あの時自分達は牛(こちらはトーマと言うらしい、どうでもいいが)を縛りつけ、吹っ飛ばした。
距離的に間違いなく牛は禁止エリアから逃れたはずだが(だからこそ牛は生きているのだ)、
どうしてあの少女が死んでしまったのかが不可解だった。
少女は確かに牛を追って行った。ならば禁止エリアのG5からは逃れたはずだ。
なのに彼女は首輪で死んだと主催者は言った。
時間、距離などの状況から考えてG5の禁止エリアに引っかかったとしか思えなかった。
何故彼女はあの場所に舞い戻ったのか、禁止エリアの場所を知らないとはいえ
大切な仲間であろう牛を残して一人村に戻る行為に何の意味があったのか、その真意は到底彼らには分からなかった。
86漆黒の翼・ユアン 2:2006/03/04(土) 01:38:13 ID:1lIJFQ6g
首輪に対する件で、グリッド達は再び主催者への対抗意識を燃やし、三人は山岳地帯の岩陰に座り込んだ。
しかしユアンは一人離れて、山岳部から島を二分する川のほとりに腰掛けていた。

他のメンバーには言わなかったが、ユアンにはもう一つ放送で思うところがあった。
「マーテル・・・」
放送で呼ばれたその名を誰にも聞き取れないくらいの声量で呟き、懐から小さな銀色に光る何かを取り出す。
彼の手の平の上で薄暗くなった陽光を受けて光るそれは、指輪であった。
『YからMへ』と刻まれた、指輪。
それを強く握り締め、ユアンは目を閉じかぶりを振る。
そしてもう一人、赤髪の剣士の姿を思い浮かべる。
かつて共に世界を巡った仲間、頼りになった剣士、クラトス・アウリオンもまた、放送で呼ばれていた。
ユアンの知り、仲間となりうる者達が二人死んだ。
つまりは残すところ、彼の仲間はミトス一人ということになる。
だが、自分と同じくマーテルを誰よりも何よりも大切に想っていた少年が、
その彼女を失った今、果たして平常心を保っているかというと、疑わしかった。
最悪の場合、ミトスがミクトランの甘言に乗せられて殺戮者となっている恐れすらある。
グリッド達と共に行動している今、迂闊に少年と接触するのは危険とすら思えた。
かつての仲間に対し、少々薄情かもしれないが・・・状況が状況だ、仕方あるまい。
つまりは、目下ユアンの行動方針は漆黒の翼と行動し続けるしかなくなったことになる。
87漆黒の翼・ユアン 3:2006/03/04(土) 01:39:07 ID:1lIJFQ6g
はぁ、とため息を付き南に向かって流れる川をみやる。
島の中央を流れる川の、山岳部付近は案外結構な深さで、
大の大人一人が丸々沈んでしまうくらいだった。
とりあえず水分の補給をし、作戦会議を行うことになった。
六時を回り、徐々に闇夜に近付いていく中、これからについて検討する必要があった。
次の拠点について話し合い、また移動して、或いはここに留まって、それから・・・
それから・・・どうする?
ユアンの頭に、今まで殆ど考えなかった疑問が浮かび上がる。
自分が守りたかった最愛の人は既に亡くなった。
自分が頼りにしていた友は既に亡くなった。
では残された自分はどうする?
ゲームに乗って最後の一人に?
馬鹿げている。第一あの主催者は全く信用ならない。
・・・ミトスならやりかねんかもしれんが。
もう、この島に自分が会って共に脱出したいと思う者は殆ど居なかった。
ミトス、それにあのクラトスの息子、ロイド・アーヴィング。
知り合いが居ないわけではない。
しかしマーテル亡き今、彼らと合流することがそれほど重大なこととも思えなかった。
言ってしまえば疲れたのだ。
これまではグリッド達と共にどたばたと慌しい事件が続いたので、気を休める余裕も少なかったが、
今こうして座っていると、溜まった疲労が(精神的にも肉体的にも)沸き起こってくるのだ。

(マーテル・・・クラトス・・・私は、これからどうすればいい・・・)

虚ろに視線を漂わせると、眼前に広がる川が揺れて見えた。
悲哀の情から、視界が潤んだのかと思い、慌てて目を強く瞑り、首を左右に振る。
(もしそんな姿をグリッド達に見られたらもう一緒に行動していけないだろう、多分)
改めてもう一度前を見た時、川は揺れていなかった。
88漆黒の翼・ユアン 4:2006/03/04(土) 01:40:20 ID:1lIJFQ6g
その時、背後から声がかかった。
「ユアンさん、そろそろこれからの行動について話し合いをしようとグリッドさんが言ってますけど・・・」
カトリーヌがおずおずと言う。ユアンの雰囲気が平常と違うことに感ずいているのだろうか。
「ん、ああ。今行く」
ゆっくりと立ち上がり、後ろを向く。
すぐ近くにカトリーヌが立っており、その奥、
三〜四メートルほどはある灰白色の岩が斜面に無造作に立ち並ぶ横から、グリッドが立っていた。
ついでに向かって右手奥方向に、プリムラが座っている。
「ユアン、何をさぼっているのだ。これから一番重要な我々の今後についての会議を行うのだぞ」
グリッドがリーダーらしい(偉そう、とも言う)声を上げる。
「お前の口は二十四時間閉じることが無いんだな」
カトリーヌがユアンの一歩前に出て、歩き出す。
「どういう意味だ、それは!リーダーたるもの、常にメンバーを纏め上げるのは当然だろうが!」
「てゆうか、二十四時間おしゃべりし続けることぐらいだったらあたしも余裕よ!」
何故か便乗してプリムラも立ち上がり声を上げる。
「グリッドさんもプリムラさんも、微妙にずれてる気がするんですが・・・」
カトリーヌが言う。
ユアンは、彼らと行動を共にするようになって何度目だろう、ため息を付いた。
そうして視界に映る三人を眺めながら、微かに笑んで、更に歩を進めようとした。

その時、背後で水の跳ねる音がした。
淡魚でも跳ねたのだろうか、しかしその音はかなり巨大なものが水に出入りしたような音だった。
妙な胸騒ぎがして、振り向き、見た。
ユアン等が居る場所から南へ十数メートルほどの水辺に佇む、緑色の影を。
人の様にも見えるその影は、巨大な右腕を自分達に向けていた。
ぱらららら、と乾いた金属音が響いた。
89漆黒の翼・ユアン 5:2006/03/04(土) 01:41:47 ID:1lIJFQ6g
「伏せろ!!」
ユアンはそう叫び、咄嗟に一番近くに立っていたカトリーヌの肩を掴むと、強引に岩場の陰に向かって突き飛ばした。
同時に、凄まじい痛みが体の中で跳ねた。
熱を持った弾丸が彼の腹部の、服、皮、肉、骨、内臓を貫通した。
胴体の所々が焼け焦げるように熱を持ち、血が噴き出した。
平衡感覚を失い、ぐらりと世界が揺れた。
その時、悲鳴が聞こえた。
ユアンは激しく揺れる視界の中、プリムラが足を踏み外したかのようにカクンと揺れ、
体が崩れ、前のめりに倒れこむのを見た。その右足から、血が流れ出ていた。
グリッドには攻撃が当たらなかった。彼は突然のことに慌てふためいて立ち尽くしていた。
そうしてユアンは地面に両膝、左腕を付き、吐血した。
強烈な痛覚の中で、ユアンは顔を上げて正面に佇むモノを改めて見た。
いつの間にそこに現れたのだろうか、全身から水滴を垂らしながらマシンガンの銃口をこちらへ向ける、シャーリィ・フェンネスの姿があった。
といっても、その姿は既に少女のものではなく、その姿はまるで、
(エクスフィギュア──!!)

ユアンもよく知るそれは、確かにエクスフィアの暴走による生まれた怪物だった。
だが、常人よりはエクスフィギュアについて詳しい知識を持ってるはずの彼でさえ、目の前のそれはかなり違った風貌であった。
頭部から流れる色あせた髪、そして右腕から飛び出している、黒い銃身。
多かれ少なかれエクスフィギュアというものに直に接することもあったが、
武器を体内に取り込んでしまうものなど、全く以って知らなかった。

どうして、こんなことに?
跡を尾けられていた?いつから?どこから?
何故ここまで一方的に不意打ちを喰らってしまったのか?
放送直後のユアンの意識が多少なりとも不安定になっており、外部への警戒が弱まったこと、
シャーリィがユアン等四人を発見してから、川の深いところを潜って四人を追跡をしていたこと、
彼らが移動したルートは川沿いに近く、シャーリィは水中を移動することでクライマックスモードを使う事無く、気付かれずに彼らを追跡できたこと、
水の民でもあり、メルネスとして特別な体質を持つ彼女は、異形と化した今でさえ、水中である程度自由自在に行動できたこと、
そして気を見計らって今さっき水面から飛び出してユアン達に急襲をかけてきたこと、
それら全てはユアンの知ることではなかった。

だがそんなことはこの際どうでもいい。
今、何よりも優先すべきは──
90漆黒の翼・ユアン 6:2006/03/04(土) 01:43:11 ID:1lIJFQ6g
シャーリィはゆっくりとユアンの居る方向に歩き始めた。
巨躯を引きずるその姿は、正に怪物と言った表現が正しいか。
いくら元が人であると分かっていても、ユアンは畏怖の念を感じずには居られなかった。
いや、目の前の異形からはユアンが知りうるエクスフィギュアの中でも、特別強烈な念を感じた。
怨念、とでも言った方がいいのか、とにかくその巨躯から発せられる気は、脅威的であった。

カトリーヌはユアンの横、岩場の影で膝を折って座り込んでいた。
「ユアンさん・・・!!」
「動くな、隠れていろ」
ユアンは血が流れ続ける腹部を左腕で押さえながら、横目で彼女をちらと見やり、再度正面の相手に視線を戻した。
血が大量に流れ出し、袖をどんどん朱色に染めていく。
シャーリィの視界にはカトリーヌは死角に入っていて映っていないらしく、右腕の銃口を向けたまま、ユアンを目指して歩み寄っていた。
「くそっ・・・!」
ユアンは呻き、膝を突いた体勢から体を引き起こそうとした。
しかし体に力を込めた瞬間、腹部に激しい痛みが起こり、血が滲んだ。
それでまた体が傾き、しかし完全に横になるのは避けて、もう一度立ち上がろうとした。
かちゃ、と硬質な音が割りと近くで聞こえた。
見れば、シャーリィがユアンに接近し、銃口を彼の頭に向けていた。
今にもその先端が火を噴くかと思われたが、不意にシャーリィの頭部に何かがぶつかった。
それはただの石っころであったが、彼女の注意を惹き付けるには充分であった。
シャーリィ、そしてユアンがその方向を見やれば、グリッドが投球後のピッチャーの様な体勢で斜面に立っていた。
「俺の大事な仲間に手はださせんぞ!こっちだ、バケモノ!!」
声高く、叫んだ。そうして大げさに手を振り、挑発する。
「グリッド、よせ、やめろ!!」
ユアンがそう叫んだ。
と同時に、シャーリィが右腕を上げて右上から左下へ斜めに振り下ろした。
ばらららら、という、今度は少し違った銃声と共に、青白い弾丸が岩壁から地面へ斜めに切り裂くように走った。
しかしグリッドは既に岩壁の陰に隠れており、青白い弾丸、いや光弾は礫岩を砕くだけだった。
そしてシャーリィは獲物をそちらに変更したらしく、
右腕を前方に突き出した体勢で、ばららららと光弾を連射しながらグリッドが隠れた岩場へ走っていった。
「くっ!」
ユアンは激痛をこらえ、強引に立ち上がった。
気付けば地面には彼の血が溜まり、小さな水溜りが出来ていた。
91漆黒の翼・ユアン 7:2006/03/04(土) 01:44:26 ID:1lIJFQ6g
しばらく歩くと、グリッドとシャーリィが走っていったほうとは反対側に、プリムラが膝をついているのが見えた。
「ユアン、カトリーヌは!?大丈夫!?」
自身の怪我も構わず、少女はそう叫んだ。
「心配するな、大丈夫だ。お前もそれほど重傷ではないようだな」
「あ、ええ。でもあんた・・・」
プリムラが紅く染まったユアンの体を見て、何か言おうとした。
しかしユアンはそれを遮り、すぐに踵を返してグリッド達を追った。
「いいか、下手に動くな。奴はこれまでの敵とは違う。迂闊な行動は即、死に繋がる」
それだけ言い残した。

グリッドが装備するマジックミストには、装備者を逃走させやすくする効果がある。
具体的な仕組みはユアンは知らなかったが、何でも不可視性の霧が発生して、敵対者の感覚器を微妙に狂わせるらしい。
だが、いくらマジックミストが逃走を支援する道具だとしても、弾丸を反らす効果は無い。
シャーリィがグリッドの隠れる岩場をグランドダッシャーで破壊した後、再度走ろうとする彼目掛けて銃を乱射した。
とうとうその弾丸がグリッドの肩を抉り、血が点々と宙を舞い、彼の体は傾いだ。
幸いにも致命傷ではなかったが、地面に倒れてしまうには充分な痛みだった。
彼を襲った痛みは、それまで彼が経験したどの痛みよりも、鋭く、熱く、痛かった。
コングマンに殴られたときよりも、おとり作戦で電撃を喰らった時よりも痛かった。
シャーリィがもう一度弾丸をばら撒いたが、グリッドが倒れたことにより彼の体が瓦礫に隠れ、着弾することは免れた。
そこでシャーリィは再度歩を進めようとした。が、彼女の背後に電撃が走った。
92漆黒の翼・ユアン 8:2006/03/04(土) 01:46:19 ID:1lIJFQ6g
ユアンが追いついたとき、既にグリッドの体は地に伏していた。
即座に手の平に電撃を溜め、エクスフィギュアに放つ。敵の動きが止まる。
そこでユアンは近場の岩に隠れようとしたが、予想外の速さでシャーリィは銃弾を発射しながら回転してきた。
青白い光弾が鮮やかな放物線を描き、ユアンの身を襲った。
今度は左腕と右胸に着弾し、血肉が弾けた。
しかしユアンは動作を止める事無く、歯を食いしばり岩の裏に隠れた。
シャーリィは獲物が皆隠れてしまったので、少し戸惑い誰を狙うか決めかねているようだった。
丁度シャーリィを中心にして、北西にグリッド、北東にユアン、南にカトリーヌとプリムラが位置する形になった。

「無事か、グリッド」
ユアンが岩越しに叫んだ。それだけで体に開けられた傷が痛んだが、気にしても居られない。
「あた、当たり前だ!リーダーであるこの俺が、この程度でくたばるわけがないだろう!!」
その声はちょっと震えて聞こえた。恐らく、痛みを堪えるだけでも手一杯なのだろう。
とりあえずまだ死人が出てないことにユアンは少し安堵した。
しかし油断すれば、即座に屍の山ができあがるだろう。
「いいかグリッド、私がこいつを引き付ける。その隙にプリムラとカトリーヌと共に逃げろ」
「な、何を言う!ならその役目は俺が・・・!」
「いいか」
ユアンは激しい痛みの中、ゆっくりと深呼吸して精神を集中させた。
「聞け、グリッド。私はもう先が長くないようだ。だから、ここは私に任せて、お前達は・・・」
「黙れ!!」
その時、ユアンはグリッドの声を聞いて、なぜかは分からないが一瞬震えた。
どうしようもない状況に陥っているはずなのに、どういうわけか、グリッドの声は今までのどれよりも力強く聞こえた。
「ユアンよ、お前は我が漆黒の翼の一員だ!」
グリッドの声は直も力強く、その場に響いた。ユアンは黙って聞いていた。
「仲間を守る事も出来ずにどうしてリーダーが出来よう!!俺は漆黒の翼を守る!!」
ユアンは、グリッドの言葉を聞いて、ああ、と思った。
確か以前にも、どこかで似たようなことを言われた気がした。あれは、いつのことだったろう?
「だからユアン、死ぬな!我々漆黒の翼は生きてこの場を脱するんだ!」
グリッドは熱弁を振るい、大きく腕を振ったが、そのせいで傷口が開き、言葉は途切れた。
ユアンは静かにその言葉を聞き、少し目を閉じて、息を吐いた。
93漆黒の翼・ユアン 9:2006/03/04(土) 01:47:34 ID:1lIJFQ6g
そう、か。私は確かに漆黒の翼の一員であったか。
逃げようと思えば逃げれたはずだった。
銃声が聞こえた時、カトリーヌに構わず、即座に動けば、或いは銃弾をかわせたかもしれなかった。
グリッドが敵を引き付けた時、後を追わずに一人この場を離れることもできないこともなかった。
しかし気付けば、自分は彼らを助けようと動いていた。
マーテルは死んだ。残された自分は、何を?
もし彼女との再会を強く望むとすれば(ユアンは知らなかったことだが目の前の少女のように)殺戮者となっても問題は無かった。
こんな一般人達を助けようとして、自身が痛手を被るのは、このゲームの本質的には効率的ではなかった。
だが、それでも。何か、自分の胸の中で引っかかるものがあった。
ただ一つ、確かに言えることがあるとすれば、彼等を死なせたくはないということだった。
だから。

シャーリィは結局、彼女の身に攻撃をしたユアンを先に始末すべきと決めたらしく、彼の居る岩場を向き、歩き出した。

自分にできることは既に限られて居る。
もし全力で敵を排除しようとしても、あの異形を倒せるだけの力が残っているとは、思えなかった。
今、自分にできることは。
奴等を、グリッド達を生かすことのみ。
「私がこいつをなんとかする!だからその隙に、お前達は逃げろ!!」
全力で、三人に聞こえるように、改めてそう叫んだ。

「ユアン!」
「ユアンさん!」
「ユアン!」
グリッドが、カトリーヌが、プリムラが、三者三様に叫んだ。
ユアンはそうした声を聞きつつ、徐々に自身に迫る畏怖なる存在の気配を感じていた。
僅かな静寂が生まれた。
地面がざくざくと踏みしめられる音と、水がさらさらと流れる音だけが妙に耳に障った。
94漆黒の翼・ユアン 10:2006/03/04(土) 01:48:49 ID:1lIJFQ6g
【グリッド 生存確認】
状態:右肩に銃創、出血
所持品:セイファートキー 、マジックミスト、占いの本
基本行動方針:生き延びる。 漆黒の翼のリーダーとして行動。
第一行動方針:漆黒の翼全員でこの場を脱出
現在地:D5の山岳地帯

【プリムラ・ロッソ 生存確認】
状態:右ふくらはぎに銃創、出血
所持品:ソーサラーリング、ナイトメアブーツ
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを磔にして島流し決定。
第一行動方針:ユアン達を助ける
第二行動方針:この場を脱する
現在地:D5の山岳地帯

【カトリーヌ 生存確認】
状態:無傷
所持品:ジェットブーツ、C・ケイジ
基本行動方針:帰りたい。生き延びる。
第一行動方針:死なないようにする
第二行動方針:ユアン達を助ける
第三行動方針:この場を脱する
現在地:D5の山岳地帯

【ユアン 生存確認】
状態:HP1/7 腹部に銃創、内臓の損傷、出血、左腕に銃創、右胸に銃創
所持品:フェアリィリング
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:グリッド達を生き残らせる
現在地:D5の山岳地帯

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ショートソード(体内に取り込んでいる)
     要の紋なしエクスフィア(シャーリィの憎悪を吸収中、ひび割れあり)
状態:エクスフィギュア化 TP35%消費
基本行動方針:憎悪のままに殺戮を行う
第一行動方針:放送と同時に4人組に襲撃
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:D5の山岳地帯
95漆黒の翼・ユアン 1 訂正:2006/03/04(土) 21:05:12 ID:JxsHvX2b
といってもすぐ隣のエリア(D4)が禁止エリアに指定されたので、
移動の際には警戒が必要になった(特にカトリーヌ。迂闊に歩き回ったりしないように)。

訂正↓

といってもすぐ近くのエリア(E4)が禁止エリアに指定されたので、
移動の際には警戒が必要になった(特にカトリーヌ。迂闊に歩き回ったりしないように)。