テイルズ オブ バトルロワイアル Part2

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@お腹いっぱい。
テイルズオブシリーズのキャラクターでバトルロワイアルが開催されたら、
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。
参加資格は全員にあります。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
これはあくまで二次創作企画であり、ナムコとは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

詳しい説明は>>2以降。

前スレ
テイルズ オブ バトルロワイアル
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1129562230

テイルズ オブ バトルロワイアル 感想議論用スレ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132855244

[避難所]
PC http://jbbs.livedoor.jp/otaku/5639/
携帯 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/otaku/5639/
2名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 03:45:36 ID:0tLfww4/
【参加者一覧】
TOP(ファンタジア)  :6/10名→○クレス・アルベイン/○ミント・アドネード/●チェスター・バークライト/○アーチェ・クライン/●藤林すず
                  ○デミテル/○ダオス/○エドワード・D・モリスン/●ジェストーナ/●アミィ・バークライト
TOD(デスティニー)  :7/8名→○スタン・エルロン/●ルーティ・カトレット/○リオン・マグナス/○マリー・エージェント/○マイティ・コングマン/○ジョニー・シデン
                  ○マリアン・フュステル/○グリッド
TOD2(デスティニー2) :6/6名→○カイル・デュナミス/○リアラ/○ロニ・デュナミス/○ジューダス/○ハロルド・ベルセリオス/○バルバトス・ゲーティア
TOE(エターニア)    :5/6名→○リッド・ハーシェル/○ファラ・エルステッド/○キール・ツァイベル/○メルディ/●ヒアデス/○カトリーヌ
TOS(シンフォニア) :10/11名→○ロイド・アーヴィング/○コレット・ブルーネル/○ジーニアス・セイジ/○クラトス・アウリオン/○藤林しいな/○ゼロス・ワイルダー
                  ○ユアン/○マグニス/○ミトス/○マーテル/●パルマコスタの首コキャ男性
TOR(リバース)    :5/5名→○ヴェイグ・リュングベル/○ティトレイ・クロウ/○サレ/○トーマ/○ポプラおばさん
TOL(レジェンディア)  :5/8名→●セネル・クーリッジ/○シャーリィ・フェンネス/●モーゼス・シャンドル/○ジェイ/○ミミー
                  ●マウリッツ/○ソロン/○カッシェル
TOF(ファンダム)   :1/1名→○プリムラ・ロッソ
●=死亡 ○=生存
合計45/55

【これからの禁止エリア】
 午後九時:H6
 午前零時:B4
 午前三時:G1
 午前六時:E7

【地図】http://www.hasimoto999.aki.gs/img-box/img/858.jpg〔PC〕
http://i.pic.to/2g2oa〔携帯〕
3名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 03:45:59 ID:0tLfww4/
----基本ルール----
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
 開催場所は異次元世界であり、海上に逃れようと一定以上先は禁止エリアになっている。

----放送について----
 放送は12時間ごとに行われる。放送は各エリアに設置された拡声器により島中に伝達される。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去12時間に死んだキャラ名」
 「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。

----「首輪」と禁止エリアについて----
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
 「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。 
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
 たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
 禁止エリアは3時間ごとに1エリアづつ増えていく。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 03:46:22 ID:0tLfww4/
----スタート時の持ち物----
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ザック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」

 「ザック」→他の荷物を運ぶための小さいザック。
       四次元構造になっており、参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
 「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
 「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「支給品」 → 何かのアイテムが1〜3つ入っている。内容はランダム。

※「ランダムアイテム」は作者が「作品中のアイテム」と
 「現実の日常品もしくは武器、火器」の中から自由に選んでください。
 銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
 必ずしもザックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
 ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 03:47:03 ID:0tLfww4/
----制限について----
 身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
 (ただし敵ボスクラスについては例外的措置がある場合があります)
 治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は発動すらしません。
 キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
 しかしステータス異常回復は普通に行えます。
 その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。
 MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
 全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内ということでお願いします。

----ボスキャラの能力制限について----
 ラスボスキャラや、ラスボスキャラ相当の実力を持つキャラは、他の悪役キャラと一線を画す、
 いわゆる「ラスボス特権」の強大な特殊能力は使用禁止。
 これに該当するのは
*ダオスの時間転移能力、
*ミトスのエターナルソード&オリジンとの契約、
*シャーリィのメルネス化、
*マウリッツのソウガとの融合、
 など。もちろんいわゆる「第二形態」以降への変身も禁止される。
 ただしこれに該当しない技や魔法は、TPが尽きるまで自由に使える。
 ダオスはダオスレーザーやダオスコレダーなどを自在に操れるし、ミトスは短距離なら瞬間移動も可能。
 シャーリィやマウリッツも爪術は全て使用OK。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 03:47:37 ID:0tLfww4/
----武器による特技、奥義について----
 格闘系キャラはほぼ制限なし。通常通り使用可能。ティトレイの樹砲閃などは、武器が必要になので使用不能。
 その他の武器を用いて戦う前衛キャラには制限がかかる。

 虎牙破斬や秋沙雨など、闘気を放射しないタイプの技は使用不能。
 魔神剣や獅子戦吼など、闘気を放射するタイプの技は不慣れなため十分な威力は出ないが使用可能。
 (ただし格闘系キャラの使う魔神拳、獅子戦吼などはこの枠から外れ、通常通り使用可能)
 チェスターの屠龍のような、純粋な闘気を射出している(ように見える)技は、威力不十分ながら使用可能。
 P仕様の閃空裂破など、両者の複合型の技の場合、闘気の部分によるダメージのみ有効。
 またチェスターの弓術やモーゼスの爪術のような、闘気をまとわせた物体で射撃を行うタイプの技も使用不能。

 武器は、ロワ会場にあるありあわせの物での代用は可能。
 木の枝を剣として扱えば技は通常通り発動でき、尖った石ころをダーツ(投げ矢)に見立て、投げて弓術を使うことも出来る。
 しかし、ありあわせの代用品の耐久性は低く、本来の技の威力は当然出せない。

----晶術、爪術、フォルスなど魔法について----
 攻撃系魔法は普通に使える、威力も作中程度。ただし当然、TPを消費。
 回復系魔法は作中の1/10程度の効力しかないが、使えるし効果も有る。治癒功なども同じ。
 魔法は丸腰でも発動は可能だが威力はかなり落ちる。治癒功などに関しては制限を受けない格闘系なので問題なく使える。
 (魔力を持つ)武器があった方が威力は上がる。
 当然、上質な武器、得意武器ならば効果、威力もアップ。

----時間停止魔法について----
 ミントのタイムストップ、ミトスのイノセント・ゼロなどの時間停止魔法は通常通り有効。
 効果範囲は普通の全体攻撃魔法と同じく、魔法を用いたキャラの視界内とする。
 本来時間停止魔法に抵抗力を持つボスキャラにも、このロワ中では効果がある。

----TPの自然回復----
 ロワ会場内では、競技の円滑化のために、休息によってTPがかなりの速度で回復する。
 回復スピードは、1時間の休息につき最大TPの10%程度を目安として描写すること。
 なおここでいう休息とは、一カ所でじっと座っていたり横になっていたりする事を指す。
 睡眠を取れば、回復スピードはさらに2倍になる。

----その他----
*秘奥義はよっぽどのピンチのときのみ一度だけ使用可能。使用後はTP大幅消費、加えて疲労が伴う。
 ただし、基本的に作中の条件も満たす必要がある(ロイドはマテリアルブレードを装備していないと使用出来ない等)。

*作中の進め方によって使える魔法、技が異なるキャラ(E、Sキャラ)は、
 初登場時(最初に魔法を使うとき)に断定させておくこと。
 断定させた後は、それ以外の魔法、技は使えない。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 03:51:41 ID:+7ynLd3c
おつ
8名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 03:52:53 ID:0tLfww4/
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。(CTRL+F、Macならコマンド+F)
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
9名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 04:17:01 ID:xtWeUvdr

           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~ /|    タカクカイマース
         /           /組 .|
        /           / り  |
      /           / ぎ    | ∩
    【◎ 】      【◎ 】/ に  /■\// / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~| お  ( ´∀`)< いらないクソスレはありませんか〜?
 ∩/|   廃品回収    |  /■\∩  )  \
 \( |_________| ( ´∀`)///|     \__________
   (/≡≡≡≡≡≡≡≡≡7/   )/ /
   ///■\廿/■\  //| U /  /| クソスレ回収に参りました〜
  //(´∀` )(´∀` ) // | /  /||||
[]_// ((⌒) )(    )//[]ノ/  /
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |    /
 |     (O)       |   /
 |品○_____○__品|  /
 (__________)
10名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 04:18:22 ID:xtWeUvdr
          _,,.. -──‐- .、.._
           ,. ‐''"´           ``'‐.、
          ,.‐´                 `‐.、.
          /                        \.
       ,i´_,,.. --───‐‐.、.._ _,,─‐‐- .、.._ _,,.. - .、.._`:、
      \          |        /      /
        \        |       /       /
          \          |         /      /
            \      |      /    /
              \    |     /   /
                \    |     /  /
                  \  ∧_∧/ /
                ○( ´∀`)○
                 \ ))-))/
                   |⌒I、│
                  (_) ノ
                    ∪
11名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 18:58:51 ID:nvXLz9FG
>>1乙!
12名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/25(金) 19:07:08 ID:Alr0QimI
スレ立てとテンプレした方々乙
13転落 1:2005/11/25(金) 19:37:40 ID:nvXLz9FG
ゲーム開始以来、既に三人を手にかけたデミテルの目の前には、一人の少年が居た。
四方八方に飛び出した金髪、まだあどけなさの残る横顔は、どこか寂しげだった。
海を見下ろせる崖に両足をだらりとぶらさげ、物憂げに島の外側、水平線を見つめていた。
よくよく目を凝らせばその顔に涙の後も見える。
そして少年はそんなことが分かるほどデミテルが接近していることに気付いていなかった。
ただ前を見つめるばかりである。
年に不相応な、疲弊した(精神的にか、肉体的にかは分からなかったが)雰囲気であった。
しかし、少年のそんな様子はデミテルにとってはどうでもよいことだった。
彼はその少年を殺すつもりだったので。
14転落 2:2005/11/25(金) 19:38:35 ID:nvXLz9FG
両手に魔力を溜め、少年が気付かない程度の声で詠唱を始める。
やがて充分な威力を持ち放たれるそれは、目の前の少年を木っ端微塵に砕き、肉片は血と共に海に落ち行くだろう。
微かに笑みを浮かべながら、デミテルは詠唱を終えようとしていた。
どうせなら最期に一言声をかけてやろう。『馬鹿』と。
このゲームの最中で自然の景観に心を奪われているなんて、最早救いようの無い馬鹿だ。
詠唱を終える。目の前の少年の様子は何も変わっていない。
そしてデミテルが死の宣告を口にしかけたが、それは唐突に響いた叫び声によってかき消された。
それは少女の声に聞こえた。そして確かに「カイル」と叫んでいた。少年の名前だろうか。
一瞬で少年は我に返り、ばっと振り返った。
こちらと目が合う。少年の瞳に驚愕と疑惑と緊張とが走る。
続いて少年は声がした方を見た。そこにはデミテルが思ったとおり、少女が居た。
ショートカットの黒髪に、煌びやかな水晶玉を髪に通している。
割と幼く見えるが、少年と年はそう変わらないだろう。
「カイル!」
もう一度そう叫んだ。手に、杖・・・いや、飴か?渦巻き型の、カラフルな飴である。彼女等より更にガキが好むものだ。
少女が詠唱を始めていた。しかし既に詠唱を終え、術を放つだけの自分が早い。
そして即座に少年の方に視線を向ける。
少年は立ち上がっていたが、まだ同じ場所、崖のすれすれに立っていた。
デミテルは素早く両手を構え、少年目掛けて術を放った。
少年の周囲から熱気が舞い上がり、爆発した。
岩が砕け、少年の足場が脆く崩れた。
そして体勢を整える間もなく、そのまま海へと落下して行った。
時間にしてわずか十数秒程度の出来事だったが、彼は当初の目的を達した。
15転落 3:2005/11/25(金) 19:39:39 ID:nvXLz9FG
「カイル?カイル!!」
詠唱も中途に、少女が崖に駆け寄り、先程まで少年が居たあたりに膝を付く。
身を乗り出し、海を覗き込む。しかし彼女の視界には、乱雑する岩礁と波打つ潮しか見えなかった。
悲鳴の様に何度も少年の名前を口にしながら、少女は彼の姿を探し続けた。
「さて・・・」
デミテルはおもむろに少女に歩み寄った。
少女はこちらを見、立ち上がり後ろへ二、三歩下がった。
その表情はこわばっている様に引きつっている。
デミテルの顔に邪悪な笑みが浮かんだ。
16転落 4:2005/11/25(金) 19:40:25 ID:nvXLz9FG
少年が落下した崖の下、打ち寄せる波より少し島側の方に、小さな空洞ができていた。
島の地層が削り取られて出来たそれは、人ひとりがようやく横になれる程度の洞穴だった。
そしてそこに、ついさきほど落下した少年、カイル・デュナミスが気絶して倒れていた。


【カイル 生存確認】
状態:脳震盪により気絶中 全身に軽い打撲 
所持品:不明
第一行動方針:リアラ、ロニ、ジューダス、ハロルドとの合流
第二行動方針:父との再会
現在地:G2崖下の洞穴

【リアラ 生存確認】
状態:無傷
所持品:ロリポップ ???? ????
第一行動方針:デミテルをやりすごす
第二行動方針:カイルを探す
現在位置:G2の崖付近

【デミテル 生存確認】
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティシンボル ????
第一行動方針:リアラを倒す
第二行動方針:出来る限り最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:G2の崖付近
17リストカッター中山 ◆2Qa.wFPItE :2005/11/25(金) 22:51:11 ID:+ZSytEv8
                  
18重なる想い1:2005/11/26(土) 02:03:52 ID:SjB+ecuc
クラトスの不安は的中していた。
辺りを適当に散策しようと思ったものの、あの金髪の少年―――カイルが気になり後を付けて出していた。
まさに予感していた事が眼前で起こってしまった。
黒い法衣を纏った魔術師に魔術で攻撃され、崖から落ちていった。そしてそこには先ほど見かけた少女がその男と対峙している。
少女は恐れているのか膝を付いて硬直しており、しかも魔術師はまさに少女を攻撃しようと手を翳していた。
「――魔人剣!!!!」
クラトスの放った衝撃波が魔術師―――デミテルに向けて地面を滑走する。
「ちっ!!」
間一髪で身を引いて、デミテルはその攻撃を紙一重でかわした。
青灰の髪はそれを掠め、はらりと数本散る。
「あなたは…!」
リアラは驚く。
乱れた髪を軽く手櫛で整えながら、デミテルは言う。
「全く間が悪い、この少女も仕留めれていたものを」
眉間に皺を寄せ、鷹の様な眼で自分を睨む男に対してデミテルは薄く笑った。
「…成程、貴様はこのゲームのマーダーか」
「ええ。あの男―――ミクトランがこのゲームを中止するとは思えない。
ならばせめて盛り上げて差し上げようとね」
クラトスの表情が険しくなる。
「そうか…だがあの少年の分は償ってもらおうか」
ふ、とデミテルはまた笑った。
「少年…?名も知らぬ人間の仇討ちでもするというのか。理解不能だな」
険しく固まっていたクラトスの表情が、少し動いた。
本来ならクラトス自身も他人の為にそんなことをしようとは思わないだろう。
しかしあの少年が父さんと自分を呼んだ瞬間、その少年が自分の親しい者の姿が重なった。息子の姿が…
「黙れ。二度と口をきけないようにしてやろう」
デミテルは溜め息を吐いた。魔人剣で裂けた地面を見やる。
「かなりの実力を持っているようだな。先程の太刀筋も素晴らしい」
クラトスは無言で剣を構え、デミテルに向けて駆けだした。
「だが私は危険な橋を渡るのは極力避けたいのでね」
「何!?」
クラトスが驚いた頃には遅かった。
足元からいきなり炎が吹き出した。
トラップだった。
「ぐうっ!!」
轟音と熱がクラトスを包み、クラトスは悶える。
「いつの間に!」
リアラが叫ぶ。
クラトスは剣を大きく振り、剣風で炎を断ち切るように捲く。
そして炎を振り払った時には既にデミテルの姿はそこにはなかった。
「あの…!」
リアラはクラトスに駆け寄る。
「…私とした事が…しくったな」
19重なる想い2:2005/11/26(土) 02:08:57 ID:SjB+ecuc
炎が巻き上がった地面を忌々しげに見やる。
「回復します…えっと…」
「私の名はクラトスだ。回復なら自分でも出来るから構わなくていい」
クラトスのぶっきらぼうな態度にリアラは内心怯えつつも頭を下げた。
「助けて下さってありがとうございます。私はリアラといいます。」
安堵の表情ではあってもその瞳は曇っていた。
そしてリアラは居ても立ってもいれないという様子で掛けだそうとした。
「待て」
それをクラトスが制止する。
「あの少年か…」
「はい」
リアラは胸元で結んだ手をぎゅ、と握った。
伏せた瞼が小刻みに揺れて長い睫が震える。
「…焦る気持ちは分かる。だがあの男のことだ。まだどこかにトラップを仕掛けているかもしれない。先程トラップが発動した場所ならば大丈夫だからそこから迂回しよう」
え、とリアラが眼を見開く。
「私もお前に協力しよう。あの少年を見つけ出す。私が誘導するからお前はあの少年が無事であるように祈っていてくれ」
クラトスのいきなりの提案にリアラは驚きを隠せず、眼を丸めたままだが、その次に大きく頭を下げた。
「本当に…本当にありがとうございます。私……」
今までの緊張の糸が一気に切れて、目頭に熱さがこみ上げたが呑み込むようにそれを堪えた。
それを知ってか知らずかクラトスは行くぞ、と一言だけ掛けると先を歩きだした。北に向けて。
そしてその胸に息子を案じる気持ちが溢れていった。

一方デミテルは―――
クラトスがトラップに掛かった瞬間、なんと崖を飛び降りていた。
魔術の手練である彼は魔力で風を操り、重力の抵抗を弱めれば降りるのは造作もない事だった。目的はただ一つ
カイルに止めを刺すためだった。

【リアラ 生存確認】
状態:無傷
所持品:ロリポップ ???? ????
第一行動方針:デミテルをやりすごす
第二行動方針:カイルを探す
現在位置:G2の崖付近
【クラトス 生存確認】
状態:全身、特に足元に中程度の火傷
所持品:ディフェンダー ??? ???
第一行動方針:リアラと行動 カイルを見つける
第二行動方針:ロイドが気になる

【デミテル 生存確認】
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティシンボル ????
第一行動方針:カイルを殺す
第二行動方針:出来る限り最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:G2の崖下降中
20名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/26(土) 02:23:34 ID:ew5RLONl
ちょっと指摘。
クラトスの所持品はディフェンダーじゃなくて
フランベルジュが確定していたかと。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/26(土) 02:24:58 ID:ew5RLONl
ごめん、マテリアルブレード(フランベルジュ&ヴォーパルソード)だった
22ハッタリ作戦 1:2005/11/26(土) 04:20:45 ID:ibCoZRMr
放送がよく聞けるようにと、一同は教会の屋上に集まっていた。
「私の仲間は呼ばれなかった。お前達の方も大丈夫なようだな」
「ええ、ですがもう九名も亡くなったなんて…」
たった六時間の間に九人。それだけゲームに乗った参加者がいるということだ。
カトリーヌが、数時間前にルーティという人物の生存をここで確認している。
つまり、彼女はここからそう遠くないところで殺害されたということになる。
「今後参加者に安易に接触するのは避けるべきだな。特にグリッド…」

グリッドに注意を促そうとしたその時、町のどこかで何かが割れる音がした。
「誰か来たみたいね。接触してみる?」
「メンバーをさらに増やすチャンスだ。なに、俺が説得すれば俺たちに付いてくるさ」
相変わらず自信満々のグリッド。これは、万が一のときの戦闘離脱に関しては一流というところからくる自信でもある。
「じゃあ、危険な相手だった場合は例のように」

グリッドはジェットブーツとマジックミストを借り、プリムラはカトリーヌにC・ケイジを渡し、階下へ降りていく。
と、プリムラの制服のポケットから紙切れが落ちた。
「あれ? これって説明書ですよね?」
「あの眉唾グッズのものか? 裏面があったのか」
「でも眉唾物ならどうでもいいんじゃないですか? あれ、中身もありませんし」
「それもそうだな」

表面:商品名
チャームボトル。使えば貴方の魅力がアップ!良いことが起こるかも!

裏面:使用例
お店で使えば、きっと魅力的な客に。恋愛を夢見る少女の前で使えば、きっと魅力的な男性に。
戦いを好きな者の前で使えば、きっと魅力的な対戦相手に。
23ハッタリ作戦 2:2005/11/26(土) 04:22:09 ID:ibCoZRMr
説得が通用しそうにない相手が来た。
ここに呼ばれる少し前、勇者たる所以を見せてやろうとか言いつつ、闘技場に挑戦した。
いつもより調子が良く、見事八連戦を勝ち抜くことができたのである。
しかしチャンピオン登場。結果、三十秒と経たないうちに敗北。
いつも通り「俺様がチャンピオンよ!」と声高に宣言して、悠々と退場していった。

そのチャンピオン、マイティ・コングマンが目の前にいる。
「嬢ちゃんに男が一人か。血が騒ぐな…。そっちの男はぶっ倒さねぇと気が済まねぇ」
コングマンはそんなことを言っている。俺のことは忘れているらしい。
ヤツは俺を幾多の挑戦者のうちの一人としか見ていなかったようだ。当然か。
だが、今のヤツは、どう見ても俺と戦う気マンマンだ。
仲間を増やすのに便利かと思って使ったチャームボトルがマズかったか?
俺は一応、脅しも兼ねて尋ねてみる。
「勇者たるこの俺と戦いたいらしいが、そうなると互いに消耗してあまりよくはないだろう。それよりどうだ? 俺たちの仲間に…」
「なって欲しいのなら、俺様を倒すことだ」
ダメだ。説得は不可能。ここに来てから初めての失敗。

プリムラも尋ねる。
「あなた、このゲームに乗ってるの?」
「優勝するのはこのマイティ・コングマン様よ!」
よくよく考えたら、ヤツはいつも闘技場でこんなことをやっているのだし、
闘技場ならどんなにボコボコにされてもエリクシールで元通り。
だから、怪我とか死とかの概念が薄れているのかもしれない。
それとも、全員蘇生させてやるからいっぺん死ねとか思っているのだろうか? ならとんでもないぞ。
24ハッタリ作戦 3:2005/11/26(土) 04:27:01 ID:ibCoZRMr
「さて、早速闘り合おうじゃねえか」
コングマンが宣戦布告をする。
プリムラがランタンを掲げ、明かりを灯す。合図だ。
俺もランタンに明かりを付け、そして、俺たちは同時に別方向へ駆け出す。
広場の端にランタンを設置する。
ヤツに明かりを付けるような技術は無いはず。闘気を煉れば明るくなるかもしれないが、かなり無駄だからやるまい。
少なくとも、この光源二つが破壊されることはない。

プリムラはそこらの手頃な角材を拾って、剣の代わりとする。
「ailadnahpdrageniesdragztifseiabraclievauqa…」
俺は大声で晶霊術詠唱のふり。詠唱は適当だ。俺にとっては晶術とどこが違うんだという話だが。
「バカめが! 前衛がいない術師なんざ、サンドバッグの代わりにもならねえんだよ!」
コングマンは俺の方を潰しに来ようとする。

一発食らえば、連撃をたたき込まれて、俺たちは終わりだろう。一発も食らわずに終わらさなければならない。
「激! 魔人剣!」
瞬間コングマンの注意がプリムラに向く。当然何も出ない。ハッタリなのだから。にしても、一体どんな魔人剣なのだろう?
「チッ、ハッタリかよ。驚かせやがって」

その隙に晶術が完成した…ふりをする。
「gniwkcalb…ウィンドカッター!」
コングマンの周りの空気の様子が変わる。
瞬間、それは風の刃となり、ヤツを切り刻もうとする。
が、ヤツもさるもの。微妙な空気の変化を感じ取ったのか、すぐにその場を離れ、小さな切り傷を負うにとどめた。

俺たちが使える晶霊術の中で、唯一発動者が特定できないものがウィンドカッターだそうだ。
高位の術師なら魔力とかなんやらで発動者は分かるらしいが、相手はバリバリの肉体派。
俺が晶霊術を発動したと思い込んでいることだろう。
本来、術には詠唱が必要だ。だが、俺に注意を引きつけることで、術者は何の危険もなく術を完成できる。
俺は大声で呟きながら逃げに徹すればいいだけだ。ついでにチャームボトルの効果で本来の実力はごまかされている。

コングマンには遠距離攻撃が無い。もし披露されていれば、雑誌で特集が組まれるだろうが、見たことない。
だから、俺の体力が切れるまでは追いつけない。
だが、俺の体力が切れる前にヤツを倒せるだろうか?

「チッ、テメェら、逃げるばかりしやがって…」
コングマンは周りを一瞥し、今度はプリムラの方へ向かっていく。俺のハッタリは完璧だったはずだが…?
「術を使っているのはそっちの嬢ちゃんだな?
 よく見りゃ構え方が素人だしな。俺様としたことが、騙されるところだったぜ」
25ハッタリ作戦 4:2005/11/26(土) 04:30:52 ID:ibCoZRMr
ああ、やっぱり私の方に来るわけね。
まああんなにわざとらしい詠唱じゃ、怪しいと思うのも無理はないけれど。
武器の持ち方とか言ってるけれど、こんな木の棒にも持ち方があるのかしら?
ユアンはとにかく振り回せとか言ってたけれど、バトンじゃあるまいし。

「アクアエッジ!」
グリッドが大声で喋ってたから、私は気付かれずに詠唱できた。
水のノコギリ…とはお世辞にも言えない、水鉄砲がコングマンに発射される。
だが、コングマンはひるむことなく両腕でそれをガードし、体当たりしてくる。
当たってたまるか。人間相手に足の速さで負けたことはないんだから。それに、ナイトメアブーツもあるし。
まあでも、追いかけられて気持ちいいものではないかな。


「ウィンドカッター!」
俺はとりあえず叫ぶ。
「ヘッ、ネタは割れてんだよ! テメェの術はハッタリだってな!」
だが、やはりコングマンの周りの空気の様子が変化する。
「何!?」
やはりとっさに回避するが、今度はさっきよりも大きな傷を負ったようだ。
まあ、ヤツにとってはかすり傷にすぎないのだろうが。
「詠唱はしていなかったはずだ…。まさか、術のゼロタイム発動か…?」
まだヤツは気付いていないらしい。
術者は教会の上。カトリーヌがC・ケイジを使って術を発動しているのだ。ユアンも控えている。


「edahslliramatsercsnemrahadiemraenirhsezilyartsgniwkcalb…ウィンドカッター! ライトニング!」
コングマン目がけて、風の刃と雷が襲い掛かる。
やっぱり避けられてる。なにしろ人に向かって術を撃ったのは初めてだし…
以前王都に行く途中にモンスターに撃ったことはあるけど、その程度で技術が上がるわけでもなし。
というか、グリッドさん、あまり乱発しないでほしい。ユアンさんと違って、私の方は詠唱にちょっと時間がかかるんだから。
「アクアエッジ!」
プリムラさんの追撃。やっぱり水鉄砲で、そのあたりを濡らすにとどまったが。
「チッ…」
コングマンが教会の下に来たのを見計らってグリッドさんが叫ぶ。
「ストーンブラスト!」
屋根の上に用意しておいた、煉瓦やら石やら石人形を一斉に落とす。何個かは当たると思ったが、全部拳で砕いてしまったらしい。
さすがにチャンピオンは違う。と、そんなことを言っている場合じゃないか。
「どうやら上に誰かいるようだな…。お前らは囮だったか」

「気付かれたんでしょうか?」
「そのようだな」
石像の混じっている術なんてないだろうし、気付かれるのも仕方ない、か。

「なら、先に上を潰さねえと話にならんな」
コングマンは扉を蹴破って、教会へ侵入したようだ。
扉の上に仕掛けてあった皿の入った桶が落下し、大きな音を立てて割れたのが聞こえた。
来る。
26ハッタリ作戦 5:2005/11/26(土) 04:35:11 ID:ibCoZRMr
俺様としたことが、すっかりやられたぜ。
相手は最初に出てきた二人だけと思っていたが、まさか他にいたとはな。
誰かが塔の上にいて、そこから術を発動させたりものを落としたりしていたのだろう。

下の二人はやたらすばしっこくて、捕まえられねえ。
へビィボンバーを使うとしても、気付かれれば逃げられるだろうし、塔を壊して自分が埋まったらマヌケもいいところだ。
下の二人には当たるかどうかも分からない。
それに、この技自体あまり多用できるものではない。

上のやつを潰さない限り、術の連発でこっちがジリ貧に陥ってしまう。
扉を蹴破った瞬間、色々落ちてきてでかい音がしたが、だからといってどこに逃げられようか。
さすがに屋上から飛び降りることもできまい。逃げ場はないというわけだ。
俺様は屋上の扉を開き、叫ぶ。
「観念しやがれ!」

誰もいない。バカな…。
ここまでで、途中に隠れられるような場所はほとんど無かったはずだ。
扉を蹴破ったときの音を聞いて逃げ出したのなら、必ずどこかで鉢合わせているはずだ。
なのに、途中誰にも遭わなかった。どういうことだ?
「クソッ!」
屋上から下の奴らを見渡す。
「コングマン君、君の予想は大ハズレだよ! まあこの勇者グリッド様に奥の手を使わせたことだけは賞賛に値するがね!
 さ、速く降りてきたまえ!」
あの野郎、挑発とは分かっていても、頭に来た。ブッ飛ばしてやる!


おそらく挑発は成功していることだろう。
私達二人は屋上に仕掛けておいたロープを利用して、ヤツに会うことなく下まで降りてきたというわけだ。
ロープはファイアーボールで焼き切った。屋上への入り口からは死角だから、バレることはないだろう。
コングマンはまた下に降りてきているはずだ。
ゆっくり降りてくるがいい。そうでないとこっちが間に合わん。
27ハッタリ作戦 6:2005/11/26(土) 04:39:55 ID:ibCoZRMr
コングマンが、闘気を煉りながら、こっちに向かってきている。
私達に向かって放つつもりだろうか。キレちゃったみたいだ。グリッドの挑発がムカつくのは分からないでもない。
でも、教会の出口前は民家からくすねてきた真珠やビー玉をまいていて、さらには石鹸水を溶かした水で濡らしてある。
行きに何もなかったからといって、帰りも何もないとは限らない。
足下に注意を向けずに、全速力で突っ込むと…
「うおおおおおっ!!!」
ほら転んだ。明かりも消していて暗いから、見えなくても仕方ないけれど、すごい転びっぷりね。ある意味痛快。
あとは予定通り、ユアンがかねてから用意していた特大の電気球をコングマンに向けて発射した。
「くそっ!」
滑りながらも、コングマンはその場を離れようとするが、
私のアクアエッジで地面もコングマン自身も十分濡れているわけで。
当然、電撃は地面を伝って、コングマンにも伝わる。
「ぐああああ!」
電圧は抑えているとかいってたけれど、大丈夫なんだろうか?
とにかく、コングマンはその場に倒れた。作戦勝ち、かな。
本当はもっと早く決着が付くと思ってたんだけどな。


「ははは、楽勝だったな! 我ら漆黒の翼に敗北はない!」
4対1だが、俺たちはあのコングマンに勝つことができた。といっても前準備があったから、ではあるけれど。
それくらいは分かっているさ。
それに、これくらいでヤツが死ぬとは思えない。目覚めたとき暴れられても困るだろうか。
とりあえず、借りていたブーツとマジックミストを返し、ロープでコングマンを縛り付けることにした。
ヤツの支給品は、大層な小手と、特殊な生地でできたらしいマント。
とりあえず、小手を外そうとかがんだところ、強い衝撃を感じた。
「ぐう…」
景色が反転している。どうして? どうして俺は空中を舞っているんだ?

「やっと全員揃ったようだな。さあ、第二ラウンドと行こうぜ」

「くっ、やはりもう少し溜めておくべきだったか…」
28ハッタリ作戦 7:2005/11/26(土) 04:41:26 ID:ibCoZRMr
【グリッド 生存確認】
所持品:無し
状態:HP半分ほど。意識飛んでる。チャームボトルを使っている。
基本行動方針:生き延びる。
行動方針:漆黒の翼のリーダーとして行動。

【カトリーヌ 生存確認】
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット×2、ロープ数本、C・ケイジ
状態:ほぼ健康
基本行動方針:帰りたい。死にたくない。
行動方針:漆黒の翼の一員として行動。場を切り抜ける。

【ユアン 生存確認】
所持品:占いの本、エナジーブレット、フェアリィリング、ミスティブルーム
状態:ほぼ健康、TPちょっと消費
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
行動方針:漆黒の翼の一員として行動。休んで、仲間捜し。場を切り抜ける。

【プリムラ 生存確認】
状態:健康
所持品:セイファートキー、?、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ、エナジーブレット
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを石板に縛り付けて海に沈める。
行動方針:漆黒の翼の一員として行動。場を切り抜ける。

【コングマン 生存確認】
状態:HP半分ほど
所持品:レアガントレット セレスティマント
基本行動方針:とにかく強い奴と戦い、それらを倒して優勝する。
現在の行動方針:漆黒の翼メンバーと戦い、倒す。

現在位置:G5の町
29名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/26(土) 09:26:35 ID:SjB+ecuc

ごめん
訂正
所持品:マテリアルブレード
30名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/26(土) 15:26:05 ID:Hfn1cZUE
しかも魔神剣
31名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/26(土) 19:31:21 ID:SjB+ecuc
しまった…なんかおかしいとおもったら…
すまん…
32名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/27(日) 02:54:39 ID:corWjj5C
 
33壊れる音:2005/11/27(日) 18:28:46 ID:9wpuzU7i
放送の声が聞こえた。
ああ嫌、聞きたくないなんて思っても聞かなくちゃいけなくて。
響くように頭の中に入ってきた。
でも途中で思考が停止してしまって全てを聞くことは出来なかった。

(え…?)
今のは何?
嘘だよ。だって、そんな事、あるわけない。
(お兄…ちゃん…)
お兄ちゃんが死んだなんて。
きっと何かの間違い。間違えてしまったの。
お兄ちゃんが死ぬわけないもの。
いつも私のそばにいてくれて、いつも助けてくれて。
私のお兄ちゃん。私の大好きな人。
お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。
いかないで、私を置いて。
死なないで。死なないで。死んだなんて嘘だよね。
嘘でしょう?

おにいちゃんがしんだらわたしはどうすればいいの

マーテルは悲痛な顔をして禁止エリアを地図にかきこんでいた。
シャーリィの異変に気づかずに。
34壊れる音:2005/11/27(日) 18:29:12 ID:9wpuzU7i
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少TP消費 精神の緊張
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動

【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動
      :クラトスとの合流
      :ダオスを信用しない

【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:放送により悲しみ
行動方針:ダオス達と行動
      :ユアン、クラトスとの合流  
      :戦いをやめさせる

【シャーリィ 生存確認】
所持品:???? ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:放送により錯乱
行動方針:マーテル達と行動
35決意:2005/11/27(日) 22:48:19 ID:9mCgZhDt
出会って時間も間もない男性と1列に歩く。といってもリアラにとっては小走りになっていた。
歩幅の大きい男性を追うように。
そして考える。今のこと、先ほどのことを。
自分の戦闘能力の低さ。
(さっきの戦い、私何もできなかった)
見ているだけで回復さえも。
(本当に、これは殺し合いなんだ)
手が震えているような気がする。自分は怯えているんだ。理不尽な殺人ゲームに放り込まれて。
(怖いなんて言ってちゃだめ…)
幸運にも前方を歩いている男性―――クラトスが仲間になってくれたが
甘えてなんていられなかった。
自分のしなければいけない事を見つけなければならなかった。
(クラトス…さんはとても強くて頼れる人だけど、もしかしたら私が足手まといになって
しまうかもしれないけど、だからって何もしなくていいわけじゃない)
恐怖を必死に拭って思う。
(私にも何かをすることが出来る。戦うことも救うこともきっと)
実際攻撃晶術、回復晶術両方使えるリアラは弱いわけではない。
後衛で正しく援護する事が出来ればクラトスも幾分楽に戦えるかもしれないと考える。

いつだったかカイルの行っていた言葉を思い出す。
『自分と仲間を信じ続けろ。そうすればきっと上手くいく』
受け売りの言葉と彼は言っていた。
このゲームでどこまで人を信じられるか分からないけれど。
(大丈夫、きっと)
祈るように、しかし確かに強く思う。
つまづいてなんかいられない。
私には私の出来ることを精一杯やるしかない。
避けられない戦いは戦うしかないんだ。
一人でも多くの人を救いながら。
逃げることをやめましょう。
待っててカイル、すぐあなたのもとに行くわ。

しっかりと前を向いて。
リアラの瞳に光がやどった。


【リアラ 生存確認】
状態:決意、精神的に成長
所持品:ロリポップ ???? ????
第一行動方針:カイルを探す
第二行動方針: 避けられない戦いは戦う
現在位置:G2の崖付近

【クラトス 生存確認】
状態:全身、特に足元に中程度の火傷
所持品:ディフェンダー ??? ???
第一行動方針:リアラと行動 カイルを見つける
第二行動方針:ロイドが気になる
36名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/27(日) 23:09:44 ID:mKg0Kvwq
>>35
>>29
【クラトス 生存確認】
状態:全身、特に足元に中程度の火傷
所持品:マテリアルブレード(二刀のため、片方だけを装備中)
第一行動方針:リアラと行動 カイルを見つける
第二行動方針:ロイドが気になる
3735:2005/11/27(日) 23:52:47 ID:9mCgZhDt
>>36
訂正忘れてました。スマソ
38深き一雫1:2005/11/28(月) 05:19:42 ID:VCow8HJT
「あのさ、ジーニアス」
「何?」
「いや…なんでもないよ」
イーツー村に向かって足を進めながらもしいなは胸に秘めていた事があった。
話そうとも思うが勇気がでない。

何よりしいなには信じられなかった。

だが間違いない。
ティトレイが暴走していたとき。
胸を刺されていた時も気絶したジーニアスを背負って逃げていた時も自分の事で精一杯で構うことはできなかったが、ティトレイは明らかに何者かと戦っていた。
そしてある男は自分の知るものの名を呼んでいた。
コレットちゃんと―――

しいなは刺された瞬間、僅かに反射で振り返った際にはっきりとではないが、しかし確かに下手人の藍のマントが視界に入った。
そして胸を刺され、倒れている間残された僅かな意識の中、自分は見てしまった。
どういう事だ。
ティトレイと戦っている者の中に藍のマントをした者が居る。
暗闇で霞掛かった視界の中、金髪の少年と―――コレットとと思しき少女の姿も確かにいた。
「なんで…どうして…」
話を自分の中で繋ぎ合わせると、藍のマントの男がティトレイを刺し、コレットはその男と共に戦っていた事になる。
つまりコレットは共犯者…?
「ありえないよ…そんなこと…」
しいなの独り言にジーニアスは心配そうにどうしたの、と訪ねる。
本当になんでもないよ、と慌てて取り繕う。
言える筈がない。
何よりコレットがそんな事をする筈がない。
しかし…
自分はこの会場がどんな所か知っている。自分はこの眼でみたのだ。年端もいかない少女と少年の死体。二人とも戦っていた形跡もあった。双方とも人殺しをする様な人間には自分には見えなかった。
そしてしいなは確かに、そして今もその手を下した者を殺したいと思っている。
バトロワとは人の人格をも歪めてしまう。
もし、コレットもこのゲームの何らかの事情によりゲームに乗ってしまったとしたら…?
コレットに限ってそうなるとは考え難くても、自分自身が身をもって殺していまいたいという感情を持ってしまった事がある以上、頭ごなしに否定出来なかった。
それでも、それでも。
頑張ってそんな考えを拒絶しようとはするが、疑心という名の水滴が胸のみなもに滴り落ち、波紋となってどんどん浸食してゆく。
「だけどこのアビシオンの人形、何に役立つのかな〜」
はっとしてジーニアスを見る
39深き一雫2:2005/11/28(月) 05:29:57 ID:VCow8HJT
(ジーニアス…)
ジーニアスだってそうだ。自分を助けてくれたとはいえ、何か企んではいないか。
自分はテセアラの刺客として、コレットやジーニアス達と戦った事もある。
実はまだ恨みを持たれているとしたら?
イーツーの村に行こうと提案したのはジーニアスだ。この先には罠が待ち受けているとしたら?

「――――違う!!!違うッ!!!!!」
しいなは叫びながら耳を抑え、その場にしゃがみ込んだ。
「しいな!どうしたの!?」
数歩先を歩いていたジーニアスが慌てて駆け寄る。
「触るな!!」
しいなはジーニアスの手を素早く振り払う。
凄まじい気迫に押されてジーニアスは思わず後ずさった。
「ど、どうしちゃったの、しいな!!」
ジーニアスはただただいきなりの出来事におろおろするばかりだった。
刺された胸がまだズキズキと痛む。
少年と少女が死んでいたこと。
共にに行動していたティトレイに攻撃されたこと。
そして自分を刺した者とコレットが組んでティトレイを倒そうとしていたこと。
痛みと共にあらゆる出来事が頭の中をぐるぐるまわる。
そういえば、先程の放送で沢山の人が死んでいた。
みんな、この地で、確かに殺し合いをしているのだ。
そう、みんな。
違う。ジーニアスもコレットもティトレイも、仲間だ。
鎌首を擡げたこの短い間で起きた現実が、耳元でささやく。
どんなに耳を塞いでも、それは語り掛け、黒い波紋を押し広げてゆく。
自分が忍の里にいたときに、村人に責められた。
そんな風だからヴォルトとの契約に失敗する。
お前は心が弱い。
お前は甘い。甘い。
違う。みんな仲間だ。
じゃあなぜみんな人殺しをする。
違う。
違う。お前は甘い。甘い。甘い。甘い。

「ああああああああー!!!!」
そのまま悲鳴を上げだしたしいなにジーニアスは涙目になりながらどうする事も出来なくてただ見つめている。


しいなは、このゲームに参加するには純粋過ぎた。

「………」
「しいな?」
黙ったしいなにジーニアスは近づこうとする。しかしジーニアスはその場に硬直した。
「…なんで?」
ジーニアスは目を疑った。
冷たいそれがジーニアスに向けられる。
「…なんで、しいな?」
ジーニアスには銃口が突きつけられていた。
そしてしいなの眼は――――紛れもなく、自分がシルヴァラントで初めて見た、冷徹な暗殺者の眼だった。

サレの起爆により、また一人、踊りだした――――
40深き一雫3:2005/11/28(月) 05:35:00 ID:VCow8HJT
【しいな 生存確認】
所持品:コルトガバメント弾7マガジン4 ウグイスブエ
状態:ほとんど回復
現在位置:F4平原
行動方針:錯乱中
      :すず、セネルの仇を取る

【ジーニアス 生存確認】
所持品:ビジャスコア アビシオンのフィギュア
状態:背中がまだ少し痛む、混乱
現在位置:F4平原
行動方針:しいなを正気に戻す
41名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/28(月) 14:00:19 ID:VCow8HJT
ミスった…
一話目真ん中らへん
ティトレイを刺し→しいなを刺し


投下人生最大の間違いだ…バトロワ会場で殺されてくる
42ローグ消えろ:2005/11/28(月) 15:07:45 ID:ZyZ1h1gm
テイルズで一番はリオンくんだけ!
43残された者 1:2005/12/01(木) 17:52:20 ID:IvIMzDr5
ミント・アドネードが金髪の青年スタンと天才ハロルドと行動を共にするようになってから数時間が経過した。
それまで警戒の為の罠を仕掛けたりお互いの状況の整理、これからの行動指針について語り合い、
その間ハロルドは一人で別のことに集中していたようだったが、やがて話が終わったと見えると、
突如二人に対し強烈な行動を取り、彼女等が盗聴されていることを暴いた。
悄然とする彼女等を前に、憤然とするハロルドは紙を取り出し、ペンを握った。
そしてしばらくハロルド直筆による『いかにして私は盗聴に気付いたか?』講義が始まったが、
(要は自分がミクトランの立場だったらそうしただろうと思ったから、らしい)
それも中断せざるを得なくなった。
放送が始まったのだ。
ゆっくりと、いたぶる様な口調で淡々と死者の発表をするミクトランの言葉は、楽しんでいる様にも聞こえた。
そしてそれはスタンとミントに大きな衝撃を与えた。
44残された者 2:2005/12/01(木) 17:53:14 ID:IvIMzDr5
放送が終わって、十数分が経った。
その放送によりいきなり時を止められてしまったような、洞窟内は先程までとは打って変わって静まり返っていた。
少女は膝を曲げて地面に座り込み、うなだれてすすり泣いていた。
青年は壁に向かって両手を突きながら、顔を下に向けていた。金髪が垂れて表情が見えない。
そしてハロルドはそんな二人を気に掛ける様子は見せず、元の作業に戻っていた。
「くそっ・・・くそっ・・・」
壁に向かって小さく叫び続けていたスタンは、
「くそぉっ!」
やがて勢いよく両手を弾ませると、脱兎の如く洞窟の出口へ足早に歩き出した。
「スタン、さん?」
ミントが涙に濡れた顔を上げ、彼を見やった。
聞こえたのか、聞こえていないのか、彼は構う事無く進んでいた。
「・・・どこへ行くのよ」
机(の様な岩)に顔を向けたまま、ハロルドがゆっくりと、しかし力強く言った。
スタンは足を止め、少女と同じ泣き腫らした顔を彼女に向けると、睨むように見つめた。
「あいつが・・・ルーティが死んだんだぞ!じっとしていられるか!」
やり場の無い感情をぶつけるようにそう言い放ち、ふりむきかけた。
ハロルドは静かに顔を上げ、スタンの背後目掛けて声をかけた。
「それで?」
45残された者 3:2005/12/01(木) 17:54:06 ID:IvIMzDr5
「・・・・・・」
「それであんた、どうすんの?殺された仲間の仇打ちでもする?どこの誰がやったかも分からないのに?
 それとも、あのミクトランの言うこと信じて、全員殺す?殺して生き返らせる?」
スタンは何も言わず、半端に回転しかけて立ち尽くしている。
「それはやめときなさいよ。参加者55人の中で最後の1人になるには、
 超単純に計算しても、2%に満たないんだから。」
スタンも、ミントも何も言わない。更にハロルドは続けた。
「大体、このゲームで勝ち残ろうなんて、到底無理なのよ、絶対」
スタンはやおら顔をハロルドに向けた。その表情はまだ強張っていたものの、多少落ち着きを取り戻している。
彼はどうして、といいたげに顔を振った。
「だって、私が居るもの」
表情は変わらず、ただ口を半開きにして彼は彼女を見つめていた。彼女は「それに」と続け、
「あんたがゲームに乗ってやりたいならいつでも相手したげるけど、その時はその子もやらなきゃいけなくなるのよ」
ハロルドがスタンの後方を指差す。
彼がそちらへ視線を向けると、不安そうな顔をしてこちらの成り行きを見つめている少女が写った。
・・・そうだ、この少女もまた、大切な仲間を失って悲しんでるんだ。
・・・それなのに、俺は・・・
次第に彼の中の激情が収まると、静かに首を回しハロルドを見つめた。
彼女はふふん、と笑うと、また机に向かって手を動かし始めた。
そうして1人立ちすくんだスタンは、右手で顔を押さえ、その場に座り込んだ。
まだはっきりと気持ちの整理が付いた訳ではなかった。それは少女も同じだろう。
こんなゲーム、やっぱりどう考えたっておかしい。
何とか、何とかできないのか・・・・・・
46残された者 4:2005/12/01(木) 17:54:58 ID:IvIMzDr5
やがてハロルドは立ち上がり、つい数十分前そうした様に再度二人に紙を見せた。
「この天才ハロルドを出し抜こうなんて、凡人にはとても無茶な相談なのよ」
そう言いながら見せつけられた、その紙は次のように読めた。
『たとえ、ミクトランであろうと』

【スタン 生存確認】
状態:放送による深い悲しみ、精神の動揺
所持品:ディフェンサー ガーネット 釣り糸
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:ハロルド、ミントと共に行動
第二行動方針:仲間と合流

【ハロルド 生存確認】
状態:無傷
所持品:ピーチグミ 短剣 実験サンプル(植物やらなんやら色々)
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:不明 
第二行動方針:スタン、ミントと共に行動

【ミント 生存確認】
状態:放送による深い悲しみ TP中 軽い疲労
所持品:ホーリースタッフ サンダーマント
現在位置:G3の洞窟内部
第一行動方針:スタン、ハロルドと共に行動
第二行動方針:仲間と合流
47紅蓮天翔 1:2005/12/02(金) 17:42:35 ID:TfIj5ZTR
「うぉぉぉっっっっ!!!!!」
大地を揺るがすかのような雄叫びを上げるティトレイ。
彼の気迫を迎合するかのように、周囲の植物が爆発的に生長しつづける。
狼狽するクレスやコレットを眺め、サレは冷淡な笑みを溢した。

暴走するティトレイに対して最初に攻撃を仕掛けたのは、コレットだった。
いつも戦うときのように、双眸を閉じて精神を集中させる。
再生の神子の証である、虹色に光り輝く羽が具象化する。
「聖なる翼よ――」澄んだ声が響くとともに、手に持っていた短剣に虹の光がうつる。
コレットは目を見開き瞬時に狙いを定めると、虹を帯びた短剣をティトレイめがけて放った。
精確に、その短剣は彼の脳天への最短距離を疾る。
だが、男が唸り声をあげると、幾本のツタが猛烈な勢いで伸び、絡まり、太い幹に変じた。
その幹が盾となり、突き刺さった短剣は勢いを殺されて虹の輝きを失う。
「そんな!」コレットが驚きの表情を浮かべたその刹那。
ティトレイは再び絶叫した。コレットを外敵と認識したのか、彼の叫びにあわせるかのように、
幾十のツタが群を成してコレットを襲った。
彼女は迫りくるツタをかわそうと、いつものように翼に力をこめた。
だが、虹の翼は少女を空へと羽ばたかせなかった。
変なほうに体重がかかったのか、もつれて前のめりに倒れこむコレット。
それを、逃さなかった。隙だらけになった少女にツタは一気に殺到した。
48紅蓮天翔 2:2005/12/02(金) 17:45:17 ID:TfIj5ZTR
少女のピンチを救ったのは、サレ。
倒れこんだコレットを見るが早いか、音もなくコレットのそばに踏み込み、剣を振るった。
一本残らず輪切りにされ、ボタボタと地に落ちるツタ。
「大丈夫かい…コレットちゃん」
優しそうな言葉をかけるが、彼の心中はあまり面白くなかった。
人を助けることが嫌いだった。だが、こんな早くに死んでしまうほうが面白くない。
そんな思惑など知らず、コレットは照れたような笑みを浮かべて感謝の言葉を発した。
それも、彼を苛立たせるだけであった。

このやりとりの間の、輪切りにされ地面に落ちたツタの怪しい挙動にふたりは気づけなかった。
ティトレイの樹のフォルスの力を得たツタは、恐ろしいまでの生命力で大地を穿ち、根を張ると、
再びコレットのほうにツタを伸ばした。数は、先ほどサレが輪切りにした数。
苛立ちを覚えていたサレも、立ち上がろうとしたコレットも、不意をつかれてしまい動けない。
そのとき、サレの背後から「伏せろ!」という声が聞こえた。
半分立ち上がりかけていたコレットを無理やり倒れこませるようにサレはかばい、地に伏す。
その頭上を、クレスが通過した。全身に炎と化したオーラを纏って。
鳳凰天駆と呼ばれる、アルベイン流剣術の高等体技。
不死鳥の炎のオーラを身に纏い、敵に突進するその体技の発動のために、今まで動けなかったのだ。
たとえティトレイのフォルスで強化されていても、植物は炎には勝てない。
迫っていたツタは残さず焦がされ、そのままクレスはティトレイに突撃を仕掛けた。
49紅蓮天翔 3:2005/12/02(金) 17:49:30 ID:TfIj5ZTR
不死鳥となったクレスが、ティトレイを貫かんと迫る。
それを見たのか、ティトレイは自身のフォルスを右手に籠め、大地に打ちつけた。
瞬間的に、幾百とも思えるほどのツタが生え、それが何重にも重なり、堅牢な壁となった。
クレスの剣はその壁に突き刺さり、一気に貫いた。
しかし、壁によってひどく失速してしまい、天を飛翔していた鳳凰は地面に落ちた。
着地した大地を爆発させ、土煙を作ったのを最後に鳳凰のオーラは消えた。

土煙で外敵の姿を失ったが、ティトレイは暴走しながらも次の攻撃を行おうとしていた。
両手を後ろに回し、フォルスを練り上げるティトレイ。
しかし、それよりもクレスの行動は早かった。
即座に体勢を立て直したクレスは、ティトレイに接近した。
ティトレイの土俵である近距離よりも更に近い、超至近距離。
練り上げられた気功弾は、打ち出すための距離を完全に潰されて出せない。
そのまま、クレスは肩をティトレイの無防備となっていた胸部にあてた。
「……獅子、戦吼!!」
クレスの出した強烈な闘気が、ティトレイに叩きつけられた。
彼の身体が一気に吹き飛び、樹の幹に背中を強く打ち、そして倒れる。
ティトレイが意識を失ったことを示すように、木々のざわめきが収まっていった。
50紅蓮天翔 4:2005/12/02(金) 17:50:37 ID:TfIj5ZTR
【クレス
所持品:ダマスクスソード ????
状態:無傷 精神消費(小)
行動方針:生き残るためなら戦いも辞さない
      :コレット、サレと行動
現在位置:F4の森】

【コレット
所持品:忍刀血桜 ????
状態:無傷 精神消費(微)
行動方針:サレ、クレスと行動
      :ロイド達と合流
現在位置:F4の森】

【サレ
所持品:ブロードソード ????
状態:無傷
行動方針:コレットとクレスを利用する
      :コレット、クレスと行動
現在位置:F4の森】

【ティトレイ
所持品:不明
状態:気絶 精神消費(中)
行動方針:気絶中
現在位置:F4の森】
51砂塵の果て 1:2005/12/03(土) 16:32:06 ID:f7WLhCxU
既に空は暗く、放送があってからだいぶ時間が過ぎた。
この放送により、多くの者が嘆き傷つき動揺した。
マリー・エージェントもその内の一人だった。
あの後、ロニ・デュナミスと別れた後、武器や道具の類が無いかしばらく砂漠を探索していたが、
特にめぼしい発見も無く、時間だけが消費されていった。
そして放送を聴き、彼女の最も信頼する仲間が脱落したことを知った。
悲しみも多かったが、あえて彼女はその感情を押し込めて、生きることを優先した。
取り乱してはいけない。落ち着いて、これからどうするべきかを検討しろ・・・
自分にそう言い聞かせて彼女は砂漠を放浪し続けた。
そして彼女は今、砂漠の小高い丘の陰に独り座っていた。
もうこのまま砂漠で朝まで過ごそうか、そう考えていた時・・・・・・
52砂塵の果て 2:2005/12/03(土) 16:32:52 ID:f7WLhCxU
不吉な予感がした。
立ち上がり、周囲を見回す。
彼女の視界が、すぐにこちらを向いている二人の男の姿を捉えた。
一人は胸まで届く波打つ深い青色の髪をし、巨大な銃剣・・・いや、大砲を持った男。
もう一人は赤いドレッドヘアをした粗野な男。こちらも巨大な戦斧を持っている。
後者には見覚えがあった。恐らく今、参加者達の間で最も警戒されている男・・・
ゲーム開始前に殺し合いに乗ることを宣言し、その場で一人の男性に手を下した男、マグニスだった。
マリーの全神経が彼女の脳髄へ一瞬で指令を出した。『危険だ』と。
間違い無い、奴等は・・・やる気だ!
そう判断すると同時に、青髪の男が右手を上げた。
途端に彼女の前方の空間が歪み、闇の魔力が収縮し彼女を吸引してきた。
「くっ!」
強引に体をそこから引き剥がし、後ろ飛びに離れた。
体の前面がいくらか裂かれ、小さな血飛沫を上げた。
右手を地に着き、体勢を立て直す。反撃に出ようと杖を構えた。
だが、そこには人影が一つしか無い。赤髪の男が消えている。
刹那、左から強烈な殺意を感じた。振り向けば、男が猛烈な勢いでこちらへ突進してくる。
「うぅおらぁああ!!」
上段からの渾身の振り下ろし。右へ避ける。砂塵が巻き起こり、視界を濁した。
リーチも、攻撃力も、圧倒的に劣っている。この状況でどうする?どう戦う?
迷う暇は無かった。赤髪の男が放った斬り返しの一撃。斧の刃より内側に入り込み、杖で柄を抑えた。
「はっ、なかなかやるじゃねぇか!」
男が大口を開けて笑う。
自分が殺戮行為をしているのに、後ろめたさや罪の意識といった者は全く感じていない様だった。
「確かマグニスと言ったな、こんな殺戮に乗って、何を求めるつもりだ!」
「求める?願いのことか?俺さまはそんなちんけなもん必要ねぇ。
 ただお前等劣悪種の豚共を皆殺しに出来りゃぁそれでいいのよ!」
言葉を失い、マリーはマグニスを睨みつけた。この男は、戦士ですら無い・・・ただの殺戮者だ!
「それと、もう一つ。最初にちゃんと言っただろうが?」
じりじりと、押され始めた。マリーは足を踏ん張り、こらえようとした。
「マグニスさま、だ。豚が!!!」
そう叫ぶと同時に男が全力を込めて斧を振りきった。
マリーは体勢を崩し、後ろ向きに尻餅をついた。
手にした杖は、あっけなく折れた。更に、左肩から脇腹までが深く切り裂かれていた。
直も追撃をやめないマグニスは、数歩踏み込み再び斧を振りかぶった。
彼女はさっと左右を見ると、素早く右腕を伸ばした。
「がああああ!!!」
それは、確実に彼女を頭から割ってしまう一撃だった。
だがしかし、実際に割れたのは別のものだった。
彼女は血が出るのも構わず両手で壷を持ち、自分と男の間、前方へ突き出していた。
壷は盾の役をこなし、中に入っていた水が衝撃を緩和させた。
破片と、水飛沫が二人の間を舞う中、マリーは一気に立ち上がった。
そしてそのまま赤髪の男に走り寄り、一気に闘気を放出した。
「獅子、戦吼!!」
53砂塵の果て 3:2005/12/03(土) 16:33:53 ID:f7WLhCxU
マグニスは斧を手放し、両腕を交差させてマリーの攻撃を受け止めた。
微動だにせず、腕によって表情が隠れているが、少なくとも致命傷を負っていないことは確かだった。
「ふっ、なかなかの一撃だったぜ。だがな・・・」
マリーは咄嗟に地面に放置された男の斧を拾おうとしたが、それより速く男が動いた。
「煉獄、崩爆破ぁ!!!」
灼熱の焔と衝撃は、彼女を遥か後方へ吹き飛ばした。
そしてそのまま彼女は立ち上がらなかった。

「・・・・・・・っ・・・・・・・・・・」
残る力を振り絞り、上半身だけでも体を起こす。
斧を持ち、こちらを見下ろす男の後ろで、青髪の男が術を詠唱しているのが見えた。
・・・・・・ルーティ、どうやら・・・・・・
青髪の男が腕を上げる。彼女は地面より現れた暗黒の刃により、天高く打ち上げられた。
・・・・・・どうやらお前とは、案外早く再会できそうだ・・・・・
男が腕を振り下ろした。闇の魔力は形を変え、彼女を中心とした十字架を描いた。
そうして彼女は落ちた。もう、終わっていた。

十数秒後、二人の男は彼女の所持品を回収し、一言二言、言葉を交わした後に歩き出した。
彼らの目的地は、もうすぐそこだった。

・・・既に空は暗く、放送が終わってだいぶ時間が経っていた。
彼らが通り過ぎた後の砂漠の砂を、とめどなく流れる女戦士の血が固めていた。
54砂塵の果て 4:2005/12/03(土) 16:34:42 ID:f7WLhCxU
【バルバトス 生存確認】
状態:TP微消費
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(弾丸4発付き。一射ごとに要再装填) クローナシンボル
現在位置:E4の砂漠地帯からF4へ移動中
第一行動方針:マグニスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する。特に「英雄」の抹殺を最優先
第二行動方針:F4で起こった煙が気になり、移動する。

【マグニス 生存確認】
状態:ほぼ無傷
所持品:オーガアクス ピヨチェック
現在位置:E4の砂漠地帯からF4へ移動中
第一行動方針:バルバトスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する
第二行動方針:F4で起こった煙が気になり、移動する。

【マリー・エージェント 死亡】

【残り44人】
55名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/03(土) 16:41:26 ID:RcBdjgr0
ついに最凶タッグが動いたか…GJ!
56名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/04(日) 08:50:07 ID:49++Ja1c
>>55
こちらでどうぞ
【テイルズオブバトルロワイヤル 感想議論用スレ】
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132855244/
57分裂:2005/12/05(月) 00:23:18 ID:YGgSUsF4
お兄ちゃんが死ぬわけない。
だって私のお兄ちゃんだもん。
きっと今もシャーリィ、って私のこと探してる。
ごめんねお兄ちゃん、心配かけて。
すぐにお兄ちゃんのところにいくね。
すぐに行くから、私のこと見つけたら優しく抱きとめて。
頭をなでで「大丈夫」って言ってね。

「9人…」
なんという数だろうか。
この短時間の間にそんなにもの人間が死んでしまった。
悲しみながらも放送を聞かなければならない。生き残るために。
マーテルはしばらく言葉を発することが出来なかった。
覚悟はしていたけれど、予想以上につらかった。
私はこの戦いをやめさせることが出来るのだろうか。
少なからずもこのゲームにのった人間は必ずいる。
私の言葉は伝わるのだろうか…
クラトスやユアンは無事…この二人はきっと仲間になってくれる。
まずは信頼できる人間を…
そう考えてる最中にガサリという音が聞こえた。
敵かと身構えるがそこにはただシャーリィが立っていただけだった。
少しの安著、しかし異変にすぐに気づいた。
何かがおかしい。
「…シャーリィ?」
シャーリィは返事をせずに自分の荷物を持つ。そして歩き出す。
「シャーリィ、待って」
しまった。とマーテルは思った。
自分自身の事に気をとられシャーリィへの配慮を忘れていた。
なんていうこと。自分の落ち度だ。
こんなにも小さな子が怖がっていないはずなどないのに。
どうして気づけなかった。なんてばかな事をした。
「一人は、危険よ。待って、」
マーテルは思わず立ち上がってシャーリィの手を掴む。
「待て!マーテル!」
叫んだのはダオス。
「触らないで!!」
マーテルの手を払いナイフを向ける。緊張がはしった。
どくんとマーテルの心臓が動くのが聞こえた。
どうする、どうする、私はどうすればいい。説得を。どうやって?
「シャーリィ…」
「お兄ちゃんが私を待ってるの!邪魔しないで!!」
シャーリィの手はぶるぶると震えていた。いや痙攣していたというほうが正しいか。
この子は怖がってるだけ。混乱しているだけ。大丈夫、大丈夫。
マーテルが説得を試みようと口を開こうとした瞬間。
「姉さまに何をする!!!」
ミトスが声を発しシャーリィへ向かっていく。
「ミトス!だめ!」
シャーリィはミトスを見た。こっちにくる。走ってくる。
私を殺すの?どうしてお兄ちゃんと私の邪魔をするの?
とす、と軽い音がした。
倒れたのはミトス。シャーリィの投げたナイフが足にささった。
軽いうめき声をあげその場に倒れこむ。
シャーリィは走った。
「ミトス!」
ダオスはシャーリィを追いたかったが二人を置いてはいけなかった。
しかしいずれは殺さなければならないだろう。
今はマーテルを守るのを優先させなければ。
58分裂:2005/12/05(月) 00:24:10 ID:YGgSUsF4

誰も私の邪魔をしないで。
お兄ちゃんに会いに行くんだから。
お兄ちゃん、はやく会いたいね。
だってね、私、お兄ちゃんが大好きだもん。

【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少TP消費 精神の緊張
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動
    :シャーリィを殺す

【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足にナイフ割と軽傷
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動
      :クラトスとの合流
      :ダオスを信用しない

【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:放送による悲しみ
行動方針:ダオス達と行動
      :ユアン、クラトスとの合流  
      :戦いをやめさせる

【シャーリィ 生存確認】
所持品:サバイバルナイフ ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:錯乱
行動方針:セネルをさがす
59信じる想い 1:2005/12/05(月) 20:16:41 ID:Bas401mh
夢を見た。
父さんが居て、母さんが居た。
二人とも楽しそうに、笑っていた。
つられて、自分も笑った。
何が嬉しいのか、分からなかったが、笑った。
いや、本当は分かっていた。
一緒に居ることが嬉しいのだ。
ただ一緒にそこで居るだけで、幸せは感じられた。
それが家族なら、一層強くなるはずだった。
カイルは夢の中で暖かな空気に包まれた。
だが、突然彼の母、ルーティの姿が消え始めた。
まるで幽霊の様に、その姿が透明になっていき、やがて完全に見えなくなった。
カイルが驚き、その場に近寄る。だがそこには何も無い。
ふと足元を見ると、砕けて溶けた氷と、血痕がそこを濡らしていた。
カイルは膝を付き、泣いた。
しばらくすると、彼の父、スタンが無言でそこから立ち去ろうとした。
待って。待ってくれ。そう叫ぶも、その言葉は父に届かない。
父さん・・・父さん。
60信じる想い 2:2005/12/05(月) 20:17:54 ID:Bas401mh
デミテルは上手く着地し、眼下の少年を見やった。
崖から転落し、この洞穴に落ちた少年の様子を観察する。
頭を打ち、気絶している。常人なら致命傷を負ってもおかしくないが、
受け身でも取ったか、それほど重傷には見えない。
しかし、少年のそんな様子はデミテルにとってはどうでもよいことだった。
彼はその少年を殺すつもりだったので。

この狭い空間で規模の大きい術を放つのは得策では無い。
下手をすれば地盤が崩れ、最悪生き埋めになってしまう。
それでもデミテルにとっては大した事態では無いが、無駄な労力は避けるにこしたことは無い。
彼はゆっくりとザックから鉄製のバットを取り出した。
それこそ彼の持つ最後の支給品であり、そもそも最初に彼に支給されたものであったが、
術士である彼は野蛮なその武器を嫌った。自身の得意とする術だけで充分だと判断した。
しかしこの状況において、無防備に寝転がっている獲物を仕留めるのは、
こちらの方が効率的であると彼は判断した。
それに今はあの白髪の少年から奪った、装備者の筋力を増強するフィートシンボルがある。
脳天に一撃、いや数度殴りつければ確実に死亡するだろう。
頭の中でそう結論付けると、デミテルはゆっくりと歩を進めた。
両手に持ったバットを垂直に構え、肩に引きつける。
そしてつま先が触れるほどに接近した。相変わらず少年は意識を失っている。
「馬鹿め」
つい先程言いそびれた言葉を口にする。
デミテルは両手を大きく振り上げ、一気に少年の頭目掛け叩き付けようとした時──
61信じる想い 3:2005/12/05(月) 20:18:48 ID:Bas401mh
「う・・・」
少年が呻いた。
デミテルは瞬間的に止まってしまった。
「とう・・・さ・・・」
頭を地面にこすりつけ、体を歪ませている。そしてゆっくりと目を覚ました。
「ちぃっ!」
その面めがけバットを振り下ろしたが、少年ははっと表情を変えると咄嗟に身を転がしてかわした。
デミテルは自身を恨んだ。なぜあそこで躊躇してしまったのだ。明らかな手落ちだ。
少年は即座にこの状況を理解した、とは言いがたいが(彼の寝起きの状態をよく知るものなら納得できるだろう)
とりあえず目の前に居るのがさっき自分を殺そうとした者だとは分かったらしい。
「お前は・・・!」
「ふん、一度ならず二度までも命拾いするとはな。だがこれで最後だ!」
デミテルはそう吐き捨てると素早くバットをザックにしまい、術を放った。
ミスティシンボルによって詠唱速度は圧倒的に早くなっている。
火球が三つ、少年目掛け発射された。
だが少年は自身のザックに手を突っ込むと、円い銀色の物を取り出した。
そしてそれを前に突き出した。三つの火球はそれにぶつかると、小さな火花を残して消えた。
それは普段一般人が使う、台所に欠かせないもの、鍋の蓋だった。

・・・ナベのフタだと!?

デミテルは驚愕の余り言葉を失いかけたが、すぐに別の術を詠唱し始めた。
だが少年は瞬時にこちらに走り寄ると、そのまま鍋の蓋の一番面積が広い部分をデミテルの顔面に当てようとした。
頭を反らせ、紙一重でかわす。そこで彼は強引にでも少年を引き離すべきだと判断した。
少年の腰、鍋の蓋の死角から手を伸ばし魔力を開放した。
術とはとても言えないが、突風が起こり少年を奥の壁へ吹き飛ばした。
少年は体勢を崩している。少年が完全に目覚めた今、強引にでも勝負を決めるべきだと判断した。
デミテルは再度詠唱を開始する。
そして放った。地面が連続的に隆起し、少年の体を後方、壁側に跳ね上げた。
勢いを増すそれは、やがて岩盤を砕き、小規模な土砂崩れを起こした。
少年が崩れ落ちる砂、石、岩に埋もれていくのを見届けながら、デミテルは空気を操り飛翔した。
これで今度こそあいつは死んだだろう。死体を確認できなくなったのが残念だが。
もしまだ息があっても生き埋めだ。窒息死、あるいはいずれ禁止エリアに引っかかって死ぬだろう。
それでも生きていたら、また殺せばいい。今度はちゃんと、死を見届けれるようにしなければ。
そう結論付け、元居た場所に戻った。
当たり前だが、少女と剣士の姿は無かった。
そして歩き出した。次の獲物はどこにいるか。先程の二人が居ればいいが。
62信じる想い 4:2005/12/05(月) 20:20:44 ID:Bas401mh
カイル・デュナミスが最初に倒れこんでいたのは、
波風が島を削り取ってできた洞穴の様だと思われていたが、正確には違っていた。
長年の時の経過により塞がっていた穴が、強い衝撃を受け開けられた。
それは洞窟であった。地下に広がる、狭い坑道の様な通路。
カイルは瓦礫を押しのけ、むくりと起き上がった。今度は気絶もせずに済んだ。
またしても助かったのは、彼の持つ残り二つの支給品のおかげだろうか、
それとも、カイルの、父スタンとの再会を信じる想いが起こした偶然だったろうか、
いずれにせよ彼は生きている。そして父も生きている。
生きている限り、また会える可能性は零では無い。
その再会が、どんな結果を生もうとも。
カイルは歩き出した。

【カイル 生存確認】
状態:全身に打撲、擦り傷 
所持品:鍋の蓋 フォースリング ラビットシンボル
第一行動方針:父との再会
第二行動方針:リアラとの再会
第三行動方針:ロニ、ジューダス、ハロルドとの合流
現在地:G2崖下の洞窟から地下を移動中

【デミテル 生存確認】
状態:鼻強打 TP中消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティシンボル 金属バット
第一行動方針:出来る限り最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第二行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:G2の崖付近から北へ移動中
63修羅の継承者 1:2005/12/06(火) 18:11:37 ID:5K0zu1Pu
暗闇の中を、無我夢中で長い間走った。
自分でも何処をどう走ったか分からなかったので、もうマーテル達の元へ帰ることは不可能だろう。
ミトスに投げたナイフも、どこかへいってしまった。
一人になってしまった。本当に、一人ぼっちに。
でも、私には、お兄ちゃんが・・・
周囲を見回す。居ない。何処にも。いつも隣に居て、優しく微笑んでくれるのに、居ない。
本当に、本当にお兄ちゃんは死んでしまったの?
そんなこと無い、絶対に。きっと必ずこの島のどこかに居て私をずっと探しているに決まってる。
でも、でも、確かにあの放送で、お兄ちゃんは死んだと言った。
嘘に決まってるよね?でも何故そんな嘘をあの主催者が言うのか分からない。
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?嫌だよ、そんなの。でもやっぱりしかしそれはどうしても──

会いたい。
会いたい。
会いたいよ。
島を全部回れば、きっとどこかに居る。
でも、もしお兄ちゃんがどこにも居なかったら?
もうこの島には、この世界には居なくなったなんて、それが現実だとしたら・・・
会いたい。
会いたい会いたい会いたい。
どこに、いるの?
きっと会いに行くから。
64修羅の継承者 2:2005/12/06(火) 18:12:23 ID:5K0zu1Pu
唐突に記憶がフラッシュバックした。
あれは、そう、この魔法陣に入る少し前のことだった・・・

「シャーリィ、大丈夫か?」
「お兄ちゃん・・・」
「心配するな。俺が必ず守ってやる。こんな理不尽なことで、シャーリィを傷つけさせたりは絶対にしない」
・・・お兄ちゃんは私を元気付けてくれて、すごく安心した気分になって・・・
「セの字の言うとおりじゃ。ワイらは家族じゃ。家族っちゅうもんは、強い絆で結ばれとる。
 だからきっとワイらは会える。何が起ころうと、生きて再会じゃ」
「モーゼスさんにそう言われると、何だか不思議に説得力がありますね。
 もうちょっとこの状況に対して危機感を抱いてくださいよ」
「なんじゃジェー坊、びびっとんのか?部屋の隅っこでぶるぶる震えとるか?」
「モーゼスさんこそ、禁止エリアに引っかかって死んだりしないで下さいよ」
「そこまでアホとちゃうわ」
「おや、ある程度のアホだと認めるんですか?」
「なんじゃと!」
・・・この二人は、いつもと変わらない調子で、なんだか気が随分楽になって・・・
「ふふっ・・・」
「何笑っとるんじゃ、嬢ちゃん。セの字も!」
「わ、悪いモーゼス。けどお前等、こんな時までその調子なんだな」
「モーゼスさんに緊張感が無いだけですよ」
「なあジェー坊。一足先に始めようかの」
・・・お兄ちゃんは改めて私の顔を見つめて・・・
「な、シャーリィ。俺達には頼りになる仲間が居る。
 ここに居ないクロエやノーマ達にまた会う為にも、絶対生きて帰ろうな」
「・・・うん」

・・・他の参加者達が次々魔法陣に消えていって・・・
「セネルさん、どうやら次はあなたの番みたいですよ」
「分かった」
・・・私の元から離れて歩いていくお兄ちゃん・・・
「お兄ちゃん!」
「シャーリィ、心配するな。きっと、また会える。必ず会いに行く。だから待ってろ、シャーリィ」

・・・そう言って、お兄ちゃんは魔法陣に消えていった。そして二度と会えなくなった。
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?
そういえばモーゼスさんも死んだと言われた。また会えるって言ってたのに。
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?
モーゼスさんは死んだ。じゃあお兄ちゃんも、死んだ?
死んだの?死んだ?死んだ。死んだ
    
お兄ちゃんは死んだ

死んだ  死         シ
65修羅の継承者 3:2005/12/06(火) 18:13:41 ID:5K0zu1Pu
足元に何かが当たった。
見下ろすと、黒くて長い金属の箱みたいなものが落ちていた。
ほとんど無意識に、それを拾い上げる。
筒状のそれは、先端に穴が空いている。
どう扱うか分からなかったので、それをくるくると回しながら、最も落ち着く持ち方をした。
グリップに手の平を合わせ、引き金に指をかける。
そしてゆっくりと指に力を込めた。
凄まじい破裂音が響き、前方の木の幹を撃ち砕いた。
そうしてふと、茂みの奥に転がっている二つの人影に気付いた。
茂みをかきわけ、それらの元へ行った。それは二つの死体だった。
まず近くに居た男の顔を見た。心臓が冷える思いをした。
その顔は狂気に歪んで、笑い顔のまま硬直している。
眼球は白目をむき大きく飛び出しかけ、口元からはどす黒い血が凝固してはみ出ている。

そしてもう一人の方、少し離れた場所に仰向けに倒れている男の方に歩み寄った。
青く長い髪を後ろで束ね、前髪の一部が特徴的に飛び出している。
こちらは先程の男とは違い、いくらか安らかな死に顔だった。
その姿を見た瞬間、不思議な気分に見舞われた。
ほんの一瞬、兄、セネル・クーリッジと似たものを感じ取った。
だがそれもほんの僅かのことで、気のせいだろうと思った。
目の前の男の姿は、全身傷だらけで、ひどい有様だった。
さっきの男と殺し合っていたのだろうか。

この人はどうして死んだのだろう。
何の為に戦っていたのだろう。
ふとそんな疑問が脳裏をかすめた。
何の気なしに額に手を触れてみる。血の通った人間だったと思えないぐらい冷たかった。
そうしていて、なんだか、その人の想いや無念が自分に入り込んでくる様な気がした。
66修羅の継承者 4:2005/12/06(火) 18:14:54 ID:5K0zu1Pu
そうだ、この人は死んでいる。あっちの人も死んでいる。
これは紛れも無い現実なのだ。現実に人が死んでいるのだ。
お兄ちゃんに会いたい。その想いも、もしかしたらとうに砕かれた幻想なのかもしれない。
またフラッシュバック。
さっきのより更に少し前、あの主催者の説明。

「・・・こればかりは、私も確約してやろう。繰り返すが、このゲームの勝者は、願い事を一つだけ叶えてやる・・・」

そうだ。そうだった。最後の一人になれば、願いを叶える事ができる。
お兄ちゃんにまた会うことができる。よかった。本当によかった
微かな光明が見え始めた。そう、そうよ、どっちにしても、また会える。
この島を回っていけば・・・お兄ちゃんに会えるまで、ひたすら探し続けて・・・
お兄ちゃん以外の人は殺して・・・出来るだけ数を減らして・・・
もし私が最後の一人になってもお兄ちゃんに会えなかったら、
残念だけどもうお兄ちゃんは死んでしまっていたことになる。でも、その時は、願いを叶えることが出来る。
頭の中で、どうやって自分が最後の一人になるか、その作戦が高速に組み立てられていった。
たった今手にしたこの武器、これを使わない手は無い。これなら無駄な力を使わずに済む。
目の前に居る二人の荷物は誰かが持っていってしまったみたいだけど、
この武器に関しては少し離れた茂みに落ちていたから気付かずに行ってしまったらしい。
回復も自分で出来る。多少の無茶は融通が利く。
そうよ、私は出来る。やれる。殺せる。お兄ちゃんにまた会う為に。
決意を表明するように、静かに、けどその心は猛らせて、言った。

「お兄ちゃん、心配しないで。きっと、また会えるから。必ず会いに行くから。だから待ってて、お兄ちゃん」

【シャーリィ 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン5つ付き) ????
状態:極めて冷静
現在位置:C5の橋付近
第一行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
67名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/06(火) 21:13:40 ID:tLY9A8Z1
 
68崩壊1:2005/12/08(木) 13:09:36 ID:D/kV6C2S
「しいな一帯ど――――。」
いきなり豹変した彼女。
とりあえず落ち着かせようと思い、自分が話しかけようしたら
あの時の冷たい目で睨んできた彼女。
彼、ジ−ニアスはあまりの威圧に途中で話せなくなってしまった。
(ど、どうしよう?いったいしいなに何が起こったの?このままだと僕が殺されちゃう!)
今現在も銃口が自分に向かって突きつけられ、いつ殺されるか分からないこの状況で、
彼は打開策を考えていた。
(説得しようにも話しかけて撃たれたら大変だし・・・。)
(やっぱり、あの手しかないのかなぁ・・・。)
(まさか、これを今使うことになるとは思わなかったよ。)
そう、彼はこの世界に来る前にEXジェムLv.4、『スペルチャージ』をつけていた。
「ライトニング!」
「うぁぁぁッ!?」
69崩壊2:2005/12/08(木) 13:11:20 ID:D/kV6C2S




ジーニアスが自分のもとから逃げ出してから数分後・・・。

「うぁぁぁぁぁッ!動けぇぇぇッ!うがぁぁぁぁッ!」
彼女は痺れて動かない自分の体を動かそうとしていた。
そして、彼の攻撃によって、彼女は完全に精神が崩壊していた。
「私はあいつを殺さなきゃいけないんだぁぁッ!うあぁぁぁッ!」
彼女はもう誰も信じられなくなり、昔、旅をした仲間の事でさえも忘れていた。

昔の彼女はもう戻らない。例え最後の一人になったとしても・・・。


【しいな 生存確認】
所持品:コルトガバメント弾7マガジン4 ウグイスブエ
状態:精神崩壊 体に痺れ
現在位置:F4平原
行動方針:ジーニアスを殺す
    :出会った人間を殺す

【ジーニアス 生存確認】
所持品:ビジャスコア アビシオンのフィギュア
状態:混乱
現在位置:G3平原
行動方針:しいなから逃げる
    :万が一のため、何か術を『スペルチャージ』しておく
70名無しさん:2005/12/08(木) 17:20:30 ID:MtDAMci5
サイクロン
71分岐点 1:2005/12/08(木) 18:27:46 ID:af8LJXNk
暴走する男が鎮まった後、クレス達はその男を取り囲む様に立った。
先程までの猛っていた様子とは打って変わって、穏やかな眠り顔だった。
「どうする?」
クレスが言った。
とりあえず回収した男の支給品の一つであった、ロープ・・・
ナイロン製の丈夫なロープを適当な長さに切り、男を後ろ手に縛り、拘束した。
「今は大人しくしているけど、またいつ暴走するとも限らない。悪いけど、ここでとどめを刺すべきだと僕は思うよ」
サレが応える。するとコレットが憤慨した調子で、
「でも、そんなの駄目です!無抵抗の人を殺すなんて・・・」
と言った。サレは心の中で舌打ちしながら、表面上は変わらずに、
「でもこの男はさっき僕らを殺そうとした。その時は僕らも応戦したけど、
 その戦いの中でやむを得ずこの男を殺してしまうことと、今こいつにとどめを刺すことは同じことだと思わないかい?」
「それは・・・」
言いかけたコレットをクレスが遮った。
「確かにそうだ。僕もさっきこの男に攻撃を仕掛ける時、もしかしたら彼に致命傷を与えていたかもしれない。
 だが今こうして彼は気絶しているし、手を縛ってもある。せめて話を聞くことぐらいはできるはずだ」
サレは黙ってクレスの言葉を聞いていたが、その内心は苛立っていた。
どうしてこいつらはこう甘いんだ。
そんなことだからこの男を殺すことも出来ずに気絶させてしまったんだよ。
さっさと二人を無視して自分がとどめを刺してしまえばよかった。
しかしこの状況でそれをやれば二人に不信感を抱かせてしまう。
それはできれば避けたい事態だった。
最後の最後、その一瞬の為にも今は二人に疑惑を抱かせないことが重要だった。
「わかったよ、この男が目を覚ますまでしばらく待とう。
 ただしまたこの男が暴れ始めたら容赦はしない。それでいいね?」
クレスは黙って頷いた。コレットも小さく頭を下げる。
・・・けどティトレイは殺さなければならない。そうしないと僕があの女を刺したことがバレる可能性があるからね。
何よりこの男が目覚めた時、四星として何度も敵対してきた自分を見て、
落ち着いてものが言えるかどうかも怪しかった。
できればこの男が眠っている内にやってしまいたかった。
72分岐点 2:2005/12/08(木) 18:28:37 ID:af8LJXNk
そのチャンスは案外早くやってきた。
ティトレイをサレが見張っている間、周囲を偵察していたクレスが喋りだした。
「この血は・・・こっちへ続いている。あっちの方向へ逃げたのか?」
「本当ですか?」
コレットが言った。
二人は暴走したティトレイによって傷つけられた(と思い込んでいる)人物について、探し出そうとしていた。
それはサレにとっては非常に不愉快な話だった。自分が刺し殺そうとした相手と再会できて何が嬉しい?
いや、それも悪くないかも知れないな。サレはそう思った。
その時あの女がどんな態度を取るか、二人がどんな顔をするか、とても興味をそそられることだった。
「じゃあ、私が見に行きます」
「いや、僕が行こう。もう夜になったし、いつ何があるとも限らない。君一人じゃ不安だ」
サレはそんな会話を背中で聞きながら、これをどう利用すべきかを考えていた。
あの血痕の先にあの女は居る、それは間違いないだろう。
それが生きてるか死んでるか、生きていたら自分が立ち会うのは不味い。
混乱に乗じて皆殺しにできなくも無いが、それはまだ先のお楽しみにしておきたかった。
死んでいたなら問題は一切無い。それなら自分が居てもいいのだが・・・
「二人で行くといいよ。僕はこの男を見張っているから」
サレはそう言った。クレスとコレットは黙って聞き、
「大丈夫なのか?一人で」
「心配いらないよ、この男はまだ眠ってるだろうし、
 満足に動けもしない。いざという時も、やられてしまうほど僕は甘くは無い」
・・・君達と違ってね。
「えっと、分かりました、じゃあ行って来ます」
「道に迷わないようにね、コレットちゃん」
コレットは了解してそそくさと歩き出した。
しかしクレスはまだサレを見つめている。
「どうしたんだい?」
「いや・・・」
クレスはさっと身を翻すとコレットに駆け寄り、並んで闇の中に消えた。
そうした後、サレはゆっくりと立ち上がり、
倒れているティトレイと、二人が消えた方向を交互に見てふふっ、と笑った。
73分岐点 3:2005/12/08(木) 18:29:27 ID:af8LJXNk
【クレス 生存確認】
所持品:ダマスクスソード ????
状態:無傷 TP消費(小)
第一行動方針:負傷した人物を探す
第二行動方針:生き残るためなら戦いも辞さない
第三行動方針:コレット、サレと行動
現在位置:F4の森から東に移動中

【コレット 生存確認】
所持品:忍刀血桜 ????
状態:無傷 TP消費(微)
第一行動方針:負傷した人物を探す
第二行動方針:サレ、クレスと行動
第三行動方針:ロイド達と合流
現在位置:F4の森から東へ移動中

【サレ 生存確認】
所持品:ブロードソード ????
状態:無傷
第一行動方針:ティトレイの口を封じる
第二行動方針:コレットとクレスを利用する
第三行動方針:コレット、クレスと行動
現在位置:F4の森

【ティトレイ 生存確認】
所持品:ロープ(ナイロン製)  他不明
状態:両手を後ろに縛られている 気絶 TP消費(中)
第一行動方針:気絶中
現在位置:F4の森
74選択肢 1:2005/12/10(土) 00:17:06 ID:NI/9DeuC
「コレットさん」
闇夜の森を二人並んで歩いていたクレスが、口を開いた。
「何ですか?あ、それと、もう呼び捨てにしてもらって結構です」
「・・・コレット、君はさっきの放送の内容をメモしてるかい?」
「はい、勿論です。サレさんにそうするように言われましたから」

あの時、暴走する男に一度逃げられてから三人で男を探して、
サレが男を発見しもう一度対峙した時、放送が流れた。
幸いどちらも攻撃を仕掛ける前のことだったので、にらみ合いながらも放送を聞き逃すことは無かった。
そこでサレはコレットに放送の内容をメモするように言い、クレスと二人で男と牽制し合っていた。
やがて放送が終わった後に、クレスが男を気絶させ、拘束し、
コレットが二人に放送の内容を伝えて、彼女とクレスの二人で負傷者を探しに出た。

「悪いけど、それをもう一度見せてくれないか?」
「あ、はい、いいですよ」
彼女はザックに手を入れ、メモした紙を取り出してクレスに見せた。
彼は黙ってそれを見つめて、しばらくして紙を返した。
「ありがとう」
礼を言うものの、その顔は笑っていない。いや、それどころかどこか表情に陰が落ちていた。
「あの・・・失礼なようですけど、もしかして、その・・・」
「・・・ああ。僕の仲間が何人かやられていた」
クレスはほとんど無表情に、感情の無い調子でそう告げた。
コレットはどう言っていいか分からず、悲痛な表情のまま、祈るようなしぐさで両手を組んだ。
彼はそれ以上何も言わず、黙って歩き出した。
彼女も慌てたように駆け出す。
75選択肢 2:2005/12/10(土) 00:17:54 ID:NI/9DeuC
クレスの心は乱れていた。
あの放送で、彼の見知った人物が三人、死んでいた。
すず、チェスター、アミィ・・・
こういう状況でも決して動じることは無く行動するだろうと思っていたすずが死んでいた。
彼女なら誰かと戦闘になっても容易にはやられはしないだろうとは思っていた。
そしてクレスの親友のチェスターとその妹、アミィ。
チェスターはこの魔法陣に乗る前、クレスに向かって、必ずアミィを守ると言っていた。
その彼も、アミィも死んでいた。
彼は何とかアミィと合流できたのだろうか。
その上で、二人をまとめて葬った者が居たのだろうか。
それはクレスには分からなかった。だが、失われた命は戻らない。
あの主催者が言っていた『願い』を除けば。

忘れかけていたかつての誓いが、再び脳裏に宿った。
生き残るためなら戦いも辞さない。
それは彼以外の参加者を倒し、願いを叶えて全員を元の世界へ返すことだった。
しかし今、それが出来るのか?もう既にこうして他の者と行動を共にするようになってしまったのに?

この少女を今ここで殺してしまうのか?
76選択肢 3:2005/12/10(土) 00:18:42 ID:NI/9DeuC
だが、それは出来ない。少なくともこの少女はそんなことは望まない。
戦うことを辞さないということは、彼の仲間、
ミントやアーチェといった仲間も手に掛けなければならないことを意味していた。
やっぱり駄目だ。この少女が言うように、みんなが無事に帰れる方法はあるはずだ。

・・・しかしそれでは死んだ者は帰らない。
もしも彼以外の仲間が居なくなった時、それでもまだ殺し合いをしないで、
願いを叶えないで帰ろうと思えるか、疑わしかった。
だが・・・・・・

「クレスさん?」
コレットが心配そうにクレスに近寄り、上目遣いに彼を見上げた。
彼は笑顔を取り繕って、
「ああごめん、そんなに心配しなくても大丈夫。とりあえず今は、ケガした人を探そう」
「はい・・・」
彼女は一応納得したように頷くと、再び歩き始めた。

自分以外の参加者全員を殺して生き返らせて皆で帰るか。
まだ生き残っている者で力を合わせ何とか脱出するか。
クレスはその二つの選択肢に悩み、葛藤していた。
だが、どちらにせよ戦いは避けられない。
彼は手にした剣を強く握り締めると、前を見据えて歩き出した。
彼がいずれどんな選択をするか、それは彼含めて誰にも分からなかった。



【クレス 生存確認】
所持品:ダマスクスソード ????
状態:無傷 TP消費(小)
第一行動方針:負傷した人物を探す
第二行動方針:生き残るためなら戦いも辞さない
第三行動方針:コレットと行動
第四行動方針:コレット、サレと行動
現在位置:F4の森から東に移動中

【コレット 生存確認】
所持品:忍刀血桜 ????
状態:無傷 TP消費(微)
第一行動方針:負傷した人物を探す
第二行動方針:クレスと行動
第三行動方針:サレ、クレスと行動
第四行動方針:ロイド達と合流
現在位置:F4の森から東へ移動中
77BUMP OF CRAB 1:2005/12/10(土) 22:29:43 ID:3s3IOrL9
〜〜
「わ、やばっ、こっち来たよ!」
「ちっ、あんたの相手はアタシだよ!散力翔符!!」
「あ、ありがとう、しいな!助かった…。よし、今だ…スパイラルフレア!」
ゴオオオォォォッ!
「ふう…片付いたね。しかし相変わらずすごい威力だねぇ、あんたの魔法は…。」
「へへっ。そう?だけど僕なんて前衛が居ないと何も出来ないよ。」
「そんなことないって…。それより、このサンドイッチ、あんたが作ったんだろ?何を挟んだらこんなに美味しくなるのさ」
「ふっふ〜ん、隠し味はホワイトソディだよ。
 でもしいなだって料理上手じゃない。姉さんのなんてとても食べられたもんじゃないって。」
「……ジーニアス、何か言ったかしら?」
「わわっ!嘘!ごめんなさい!引っぱたかないで!」
〜〜

「はぁっ…はっ…はぁっ…」
彼は走りながら昔のことを思い出していた。
辛い戦いだったけど、心から信頼できる仲間達が居た。
あの頃は不安を信頼がかき消してくれた。
だが…。
さっきまでは二人。今は一人。

…あのときのしいなは明らかにおかしかった。
でもすぐに撃たなかった。銃を向けていても撃つのを躊躇したのだろう。
こちらが先制出来た事実がそれを物語っている。
まだ、まだわからなかったのかもしれない。説得すれば大丈夫だったのかもしれない。
だけど、もうだめだろう。
「ううっ…僕…。僕はしいなに…。」
攻撃してしまった。
今更謝ったって和解できるはずも無い。何しろ攻撃魔法を相手に直撃させたのだ。
そんな自分が嫌になる。己の身の可愛さのために、かつての仲間に容赦なく攻撃をした臆病な自分が。
あの頃の信頼はなんだったのだろう。
しかし、それは自分が悪い。先に仕掛けてしまったのは自分だから。
(ロイドたちに会えたら…なんて説明すればいいんだろう…。)
78BUMP OF CRAB 2:2005/12/10(土) 22:30:20 ID:3s3IOrL9
モタモタしていたら後ろからしいなが来るかもしれない。
そうなった時はもう勝ち目は無いだろう、銃で撃たれて平気な人はそう居ない。
それ以前に、肉弾戦だとしても12歳の魔術師には到底、勝機は無い。

「はぁ…はぁ…ふぅ…。」
とりあえず今は疲れた、随分な距離を走ったからだ。
続きを考えて鬱に浸るのは後でも出来る。だけどその前に安全の確保を優先しなければ。
もともと運動は得意では無い。体力だって至って普通の12歳児と変わらないし、おまけに臆病と来ている。
違う点といえば、魔法で攻撃ができることくらいだ。
しかし、それで事足りていた。自分は後ろから魔法を撃てば良いだけだったからだ。
今までの戦いではロイドやクラトス、しいな達が前で盾になってくれていた。
そう、しいなも。

「あ…。」
ジーニアスが見つけたのは、小さな岩山にぽっかりと開いた、ジースリ洞窟。
(とりあえずここに…入ってみようかな…。)
当然、中は暗い。
「そういえば確か…。」
ジーニアスは至急品に着火器具と携帯ランタンが入っていたことを思い出した。
火をつけ、中に入ってみることにした。その地下に広がる、狭い坑道の様な通路の中へ。

一方その頃、『ジースリ洞窟の反対側の入り口』にいたカイルはと言うと、
「いてっ!いててて、このっ!」
食料調達中、小さな蟹に指を挟まれていた。

【ジーニアス 生存確認】
状態:背中がまだ少し痛む、疲労
所持品:ビジャスコア アビシオンのフィギュア
第一行動方針:しいなにみつからないようにする
第二行動方針:ジースリ洞窟を進む(迷わないように)
      :万が一のため、何か術を『スペルチャージ』しておく
現在位置:G3 ジースリ洞窟を移動中

【カイル 生存確認】
状態:全身に打撲、擦り傷 
所持品:鍋の蓋 フォースリング ラビットシンボル
第一行動方針:父との再会
第二行動方針:リアラとの再会
第三行動方針:ロニ、ジューダス、ハロルドとの合流
現在位置:G2 ジースリ洞窟の地下水路を移動中
79銃声 1:2005/12/11(日) 01:28:48 ID:3rj8x0Jv
ようやく痺れが収まった。
しいなは右手に握った銃を持ち上げ、両手に構えた。
ジーニアスの姿は無い。逃げられた?否、まだそう遠くへは行っていない筈だ。
そうだ、あたしはジーニアスを探さなければならない。
自分を殺そうとした、アイツを。必ず探す。探してアイツを・・・

どうする?
ゲームが始まって以来、あまりに過酷な出来事が続いたせいで暴走しかけていた心が、ふと立ち止まる。
あたしはアイツを殺す。ジーニアスを殺す。
仲間を殺す?
ジーニアスはあたしを殺そうとした。だから殺す。
刺されて動けなかった自分を助けてくれたのに?
あたしもアイツを助けた。それをアイツは・・・
最初に武器を向けたのは誰?
あたしは・・・・・・
アイツは何も悪くないのに。あたしが勝手に悩んで、暴走してしまった。
次第に自分の中の激情が収まっていった。
後に残ったのは、苦い後悔。手足に残る痺れ。

ジーニアスを探さなければ。
会って、謝ろう。怖い思いをさせてしまった。
きっとジーニアスもまた、自分と同じように疑心暗鬼に囚われているに違いなかった。

そうして彼女は歩き出そうとした。
しかしその足は止まってしまった。
彼女の耳に、聞き覚えのある声が響いた。
まだあどけなさが残る少女の声。

「しいなー!」

コレット・ブルーネルの声だった。
80銃声 2:2005/12/11(日) 01:29:36 ID:3rj8x0Jv
しいなは振り返って見た。
やや離れた森の中から、二つの人影が現れた。
暗いのでよく見えづらいが、その内の一人の少女は間違い無くコレットだった。
その姿を見て、しいなは一瞬安堵に包まれかけた。
しかしそれはすぐに消え去った。
次にやってきたのは、再び黒い疑惑。
視線をずらして見た、コレットの隣に居る男。
マントを翻らせる彼は、剣を握っていた。
剣。
それを見た瞬間、しいなの心は真っ黒に塗りつぶされた。
剣。あたしを刺した剣。あたしを殺そうとした剣。
あの男があたしを殺そうとした。そうだ、そうに違いない。
あのマント。色は良く見えないけど、あたしを刺したやつはマントをしていた。
そしてコレットは自分を刺した男と行動を共にしていた。
共犯者。
あの男はあたしにとどめを刺しに来たに違いない。
コレットも、そうだ。絶対、そうだ。
殺される。ジーニアスの時とは違う。
あいつは、あいつらは何の言葉も無しにあたしを殺そうとしたじゃないか。
あたしを殺そうとした奴。そいつと行動を共にしていたコレット。
あたしを殺そうとした・・・コレット。
やらなければ。殺さなければ。
やられる前に、やれ。
やれ!

しいなの目に鋭い光が宿った。
再び宿った、暗殺者の眼光。
素早く銃口を二人に向けた。
駆け寄ろうとするコレットが、ピタリと立ち止まった。
そしてしいなは、ためらう事無く引き金を引いた。
乾いた破裂音が周囲に響いた。
81銃声 3:2005/12/11(日) 01:30:22 ID:3rj8x0Jv
特に二人のどちらを狙ったというつもりは無かった。
ただ二人の居る方向へ向けて発砲した。
銃弾はコレットに命中した。
少女は弾かれたように後方に跳び、半回転してうつ伏せに倒れこんだ。
しいなは一瞬、時が止まった様な感覚に襲われた。
だが、彼女の心にあったのは、仲間を撃ってしまったという罪悪感では無く、
やらなければやられるという強い衝動だった。
あの男。あの男こそ殺さなければならない。
続けてしいなは銃口を男に向けた。


クレスは突然の出来事に全く反応できなかった。
探し当てた負傷者がコレットの仲間だと分かり、安心した。
しかしどういうわけか、その女はコレットを撃った。
クレスの目の前で、背中を向けて倒れている少女。
長く美しい金髪が少女の背中を覆い隠していた。
「コレッ──」
言葉を発しかけて、瞬間的に危険を感じた。
再度響いた乾いた破裂音。
彼は咄嗟に飛び退き、首を回して女の方を見た。
女の目に宿る、冷たい光。全く動じる事無くその場に立ち、銃口をこちらへ向けている。
その銃口が再び火を噴き、クレスに襲い掛かった。
視線をずらす事無く、横跳びに避ける。
「待て、僕達は──」
四度目の銃声。クレスの左腕が別の生き物の様に跳ねた。
激痛に顔をしかめる。片目を開けて見れば、
左手の平の、ど真ん中が銃弾によって貫通されていた。血が噴き出ている。
もう一度女を見る。やはり動じることなく佇んでいる。
このままでは殺される。
死ぬのか?
いや。

生き残るためなら戦いも辞さない。

クレスは走り出した。女も狙いを定め直して引き金を引く。
だがそれは命中しなかった。適度にサイドステップを繰り返して接近するクレスに、銃弾は届かなかった。
そしてあっという間に至近距離まで接近した。女の胸に刺し傷があるのが見えた。
「もうやめろ!!」
剣を右へ薙ぎ払った。女の両手が跳ね上がり、右手に握られた銃口は天を向いた。
そのまま彼は剣を地に這わせながら振り上げた。
衝撃波を伴う斬撃により、女の体がくの字に折れた。
そして回転しながら、剣を一直線に突き出した。
剣の先端は正確に女の腹部を穿ち、奥へと吹き飛ばした。
82銃声 4:2005/12/11(日) 01:31:10 ID:3rj8x0Jv
仰向けに倒れる女を見て、クレスは複雑な気持ちだった。
少なくとも今倒した女が正気だったとは思えない。
どうしてこんなことになってしまったのか、何が彼女を変えてしまったのか。
それは彼がどんなに考えてもわからないことの様に思えた。
その答えは案外彼の近くにあったかもしれないが。

クレスは歩いてコレットに近付いた。
たった今無理をして剣を握ったため、撃ち貫かれた左手が異様に痛んだ。
少女はまだ同じ体勢で倒れていた。
クレスは少女を抱きかかえ、顔が見えるようにした。
少女の右肩が紅く染まり、熱を持っていた。
そしてその瞳は閉じていた。天使が安らかに眠っている様に見えた。
「コレット?コレット!」
必死に呼びかけた。
しかし少女の様子に変化は無い。
「くっ・・・!」
少女の頭を抱えたまま、クレスは歯噛みした。そして頭を振った。

・・・その時、不吉な映像が彼の目に映った。

改めて、その方向を見やる。
先程倒した女が立ち上がり、こちらへ銃を向けていた。
距離はおよそ十数メートル。
こちらは少女を抱きかかえていて動けない。
クレスは目を見開き、ただその成り行きを見届けるしかなかった。
そして女の銃が火を噴けば、確実に彼らに死をもたらすだろう。
だが、その時・・・

「ん・・・」
クレスの腕の中で、コレットが呻いた。
眼前の光景に目を奪われていたクレスは、はっとして眼下の少女に視線を落とした。
「コレット?コレット!!」
「クレス、さん・・・」
虚ろな瞳で、クレスを見つめる少女。
クレスは一気に安堵した。

ああ。よかった。

少し元気が無いように見えた。
少女の吐息は荒く、頬も紅潮していた。
肩に受けた傷が熱を持って悪化している様だった。
しかしそれでも少女は生きている。
微かに潤んだ瞳からは、確かな生命の光があった。
83銃声 5:2005/12/11(日) 01:32:04 ID:3rj8x0Jv
しいなは止まった。
コレットを殺したと彼女は思い込んでいた。
だが少女は生きている。
死んでいないのであれば、撃たなければ。
今度こそ、殺さなければ。
しかし、そこで再び彼女の中に疑問が起こった。
本当にコレットはあたしを殺そうとした?
そんなことは無い。襲ってきたのは男。剣を持った男。
でもそういえばあたしを刺したあの男と、今戦った男は声が違った気がした。
ということは?違う。コレット達三人は一緒に行動していた。
でも少なくともここにいるあの二人ははっきりとあたしを殺そうとはしなかった。
あたしが先に銃を撃った。
コレットは死んだ?
あたしが殺した?
だから攻撃してきた?
何が何だか分からなくなった。
でも、自分がコレットを撃ってしまったという事実は消えなかった。

「あた、し・・・コレットを・・・撃って・・・殺し・・・」
そこまで言って、銃を取り落とした。
自分がしてしまったことの重大さに、ようやく気付き始めた。
そして両手を震わせ、顔の前に持っていき、それを見つめた。
いつの間にか、しいなの目に涙が浮かんでいた。両手がぼやけて見えた。

しばらく女の様子を見ていたクレスはやがて少女を見たが、立つことすらままならなそうだった。
「この子は無事だ。あまり元気が無さそうだが、生きているよ」
彼はそう言った。
しいなはただ呆然としてこの状況を見聞きした。

死んでない?コレット、コレットが・・・
あたしは殺してないんだ。
何かが彼女の心の奥深くへ沈んでいった。

「コレット・・・ごめん・・・コレット・・・」
しいなは泣き崩れてその場に倒れこんだ。
自身の身に起こった数々の出来事のせいで、正常な判断力を失くしてしまい、
そのせいでたくさんの人を傷つけてしまった。

あたしはなんて弱い人間だろう。

でも、でももう大丈夫。ジーニアスも居るし、コレットも居る。きっとどこかにロイドやゼロスも居る。
例え男二人のどちらかがあたしを殺そうとしても、ジーニアスとコレットが自分を裏切るはずは無い。
そうだ。あたし達はたくさんの旅をして、たくさんの信頼を築いてきたじゃないか。
そんな仲間を疑うなんて、自分がやったことは謝っても許されることではない。
でもみんな居る。みんな生きている。
本当に、よか──
84銃声 6:2005/12/11(日) 01:32:51 ID:3rj8x0Jv
轟音が響いた。
凄まじい閃光が起こり、クレスの目を射抜いた。
彼は思わず右手をかざし顔をしかめた。
続いて強烈な突風。砂煙が起こり、周囲の視界を曇らせた。
何だ?何が起こった?彼はそう自問しながら、先程の少年と女が居たあたりに目を凝らした。
不意にこちらへ飛んで来るものがあった。
ゆっくりと弧を描いて彼の右方向に落ちたそれは、千切れた腕だった。
真っ赤な血に染まった肌、、焼け焦げた布。女の右腕だった。
そして砂塵が消えかかった。
女が居た場所は、血と肉片、そして変わり果てた屍が残る凄惨な場になっていた。
クレスはその光景に言葉を失い、猛烈な嗚咽感に襲われた。
「クレスさん、今の、何・・・?」
コレットが身を起こそうとした。
「見たら駄目だ!!」
咄嗟に少女の頭を抱え、自分の胸に押し付けた。
おぞましい光景だった。
どうしてこんな、こんなことが・・・

クレスは少女を抱き締めた体勢のまま、周囲を見回した。
そして北の方向に見た。
突然沸いて出たようにそこに立っている、二人の大男。
赤いドレッドヘアの男と、青いウェーブヘアの男。
青髪の男が握っている、大型の銃剣。
先程の女が使っていたものとは比べ物にならないくらいの獲物だった。
今しがた仕事を終えたばかりのそれは、銃口から黒い煙を上げていた。



【クレス 生存確認】
所持品:ダマスクスソード ????
状態:左手に銃創、出血中 TP消費(小)
第一行動方針:生き残るためなら戦いも辞さない
第二行動方針:コレットを守る
第三行動方針:コレットを連れてサレの元へ逃げる
第四行動方針:コレット、サレと行動
現在位置:F4の平原

【コレット 生存確認】
所持品:忍刀血桜 ????
状態:右肩に銃創、出血中、発熱 TP消費(微)
第一行動方針:クレスと行動
第二行動方針:サレ、クレスと行動
第三行動方針:ロイド達と合流
現在位置:F4の平原

【バルバトス 生存確認】
状態:TP微消費
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(弾丸残り3発。一射ごとに要再装填) クローナシンボル
第一行動方針:マグニスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する。特に「英雄」の抹殺を最優先
現在位置:F4の平原

【マグニス 生存確認】
状態:ほぼ無傷
所持品:オーガアクス ピヨチェック
第一行動方針:バルバトスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する
現在位置:F4の平原

【藤林 しいな 死亡】

【残り41人】
85名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/11(日) 01:54:43 ID:Krp6mU8g
『銃声』を書いたものですが訂正ですOTL

銃声5での、例え男二人があたしを殺そうと〜というのはクレスとサレのことを言ってます。
銃声6での、少年と女が居た場所〜というのは、
女が居た場所〜です。少年は居ません…
最後に、【残り41人】なんてありえません。【残り43人】です。

いろいろとすいませんでしたOTL
86名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/11(日) 02:04:47 ID:RA/rm6XA
職人方、いつもクオリティの高い小説乙。

人間誰しも間違いはつきものだと思うので、あまりお気になさらずに
87鬼がきたりて 1:2005/12/11(日) 15:13:36 ID:uzsF9wgh
「さて、どうしようかねぇ……」
サレの紫紺の瞳が、グルグルに縛られている緑の男を見つめる。
この男、ティトレイ・クロウは、自分の――残忍で冷血な四星のサレのことを知っている。
後の行動に支障をきたす前に殺してしまいたいところだが、ただ殺すのは不味い。
争いの形跡のないこの状態で死んでいては、自分が殺しましたと宣言するようなものだ。
「……それなら、こうするとしようか」
そう言って、サレはティトレイを縛っていたナイロンのロープを解き始めた。
ロープを引きちぎって暴れだしたと言えば、死んでても仕方ないよねぇ……
ククッ、と笑い、ティトレイの身体を自由にする。
そして、鞘に収めていたブロードソードを、音も無く引き抜いた。

そのとき、銃声が響いた。

はっ、と周囲を窺うサレ。音の聞こえ方からして、距離は恐らく…近い。
クレスとコレットの二人が、何かに遭遇した?
恐らく、それが正解に最も近いだろう。あの二人以外に複数の人間が近くにいるとも考えにくい。
サレは音のした方向に走り出した。だが、その表情はどこか歪んでいる。
ティトレイのときの溜飲を下げてくれる事態なのかもしれない。
その期待感が、サレにいっそう歪んだ笑いの表情を与えてくれた。
88鬼がきたりて 2:2005/12/11(日) 15:14:38 ID:uzsF9wgh
「ちっ! またテメエが仕留めやがったのか!」
大男の一人、赤いドレッドヘアーの男は不満げな顔つきで醜いスカーフェイスを更に醜いものにした。
「……反応が遅れた貴様が悪い」
赤い男の言葉も、どこ吹く風か。青い髪の男――これも赤い男に負けず劣らずの見事な巨漢である――は、
眉ひとつ動かさず、ジッと正面の二人の獲物を見て静かな口調で語った。
「ケッ! 俺様の獲物を二度も横取りしやがって……ほおっ」
怒り心頭といったふうの赤鬼は、しかし新たな獲物を前に思わず笑みを溢した。
「バルバトス。あの二匹は俺様が貰った! あンときみてえに手出しすんじゃねぇぞ!!」
そして、手前勝手な宣言を大声で喋る。その態度に怒りも失せたか
「…………勝手にしろ」
青鬼は、一歩退いた。

その会話、態度でクレスは彼らの実力の底を見ていた。
赤鬼は、まさに力任せの粗暴な戦士といったふうか。その膂力は侮れない。
しかしもう一方の青鬼。彼は恐らく赤鬼よりも実力は数段上か。
見た目はコチラも戦士だが、手に持っている何かを打ち出す兵器が怖い。
あの女性の死に方を見るに、直撃すれば即死は免れない威力だろう。
それだけではない、もう一つ二つ隠しだまを持っているような、底知れなさが青鬼にはあった。
会話からは、どうも狩り気分の赤鬼が一人で戦いを挑んでくれるようだが。
隙を見て逃げ出すか?
しかし、青鬼がもしあの兵器で援護をしたら、二つの無残な死体を野にさらすことになるだろう。
重傷のコレットを背負ってあの鬼どもから逃げるには、最低でも多少の目くらましが要る。
如何に経験豊富な熟練剣士といえども、この危機を逃れる術は思い浮かばなかった。
89鬼がきたりて 3:2005/12/11(日) 15:15:54 ID:uzsF9wgh
「どうした! まさかビビッちまって動けねぇのかァ!?」
赤鬼が罵声を響かせ、ジワジワとクレスたちににじり寄る。
「……クレスさん、ここは私に任せて……逃げて」
力ない声で、クレスに語りかけるコレット。
「駄目だ! ここは僕が食い止める、君こそ逃げてくれ!」
無理な願いだと分かっていながら、クレスは懇願した。
そしてそのまま、コレットの返事も聞かずに立ち上がると、剣を赤鬼に向けた。
「ほおッ、少しは殺りがいのある豚のようだなァ!」
赤鬼はニヤッと笑った。そして斧を一振りする。
空気を切り裂く斧の音が、クレスの耳にまで届いた。だが、自分は退けない。
ここはまだ、自分の死ぬ場所ではない。
ここで死んでは、先に往ったチェスターやアミィちゃんに向ける顔が無い。
せめてあの傲岸不遜なスカーフェイスに傷のひとつをつけなければならない。
そう思うと、左手の痛みも失せた。握り締めた剣の柄から血が滴る。

クレスの眼は、全て正面の赤鬼に注がれた。
あの鬼を、斬る。
その思いだけが、今のクレスの頭の中を支配していた。
90鬼がきたりて 4:2005/12/11(日) 15:17:05 ID:uzsF9wgh
「うおおおおおっっっ!!!!」
雄叫びをあげ、赤鬼に突進するクレス。
渾身の力を込めた剣が赤鬼を捉える。
「フンッ!!」
だが、赤鬼はオーガアクスを小枝のように振り回し難なく捌いた。
やはりこの男……只者ではない!
クレスはそう実感しながらも、気力を奮い立たせて『アルベインの型』に沿って一気に攻め立てる。
その懸命な姿を嘲笑うように、赤鬼は余裕の笑みを溢しながらその攻撃を受け流す。

森に、剣戟が響く。
数十合、斬り合いをした辺りで、赤鬼は退屈さを覚えた。
目の前の男の剣が、余りにも教科書どおりの攻め方をしていたからである。
まるで教本に載せることが出来そうな、無駄の無い攻め方。
ゆえに、赤鬼には次の相手の攻め方がなんとなく読めてきた。
つまらねェ! 所詮ブタのままごとか!!
その太刀筋に怒りさえ覚えた。そのような剣は赤鬼が最も嫌うタイプの攻め方だった。
これ以上は時間の無駄だと気づき、赤鬼はもうこの斬りあいの真似事にケリをつけることにした。
91鬼がきたりて 5:2005/12/11(日) 15:18:19 ID:uzsF9wgh
クレスの剣が、流れるような動きで幾十度目か、赤鬼の脳天を捉えた。
そのままごと剣を、赤鬼は有りっ丈の力を込めて思いっきり打ち上げる。
そして、振りあがった赤鬼の斧に焔の魔力が一気に集約する。
ハーフエルフである赤鬼だからこそ成せる、斧技と魔術の複合技。
それが、攻め込まれて無防備となったクレスの脳天を真っ二つにする……はずだった。
赤鬼の読んだ、ままごと剣士が次に居るべき位置に、彼はいなかった。

クレスは、待っていたのだ。
赤鬼が痺れを切らして攻め込んでくるのを。
そのために、タイミングも間合いの取り方も、過剰なほど基本の型通りに動いていた。
彼の狙い通り、赤鬼はとびっきりの大振りを地面にめり込ませた。
その隙こそ、クレスの唯一の好機!
「虎牙……破斬!」
基本の型から解放されたクレスの剣が、牙をむいた虎の如き勢いで赤鬼に肉薄する。
だが、赤鬼は信じられない反射神経で無理やりに身体をそらした!
クレスの渾身の二段斬りが、赤鬼の面の皮一枚を切り裂いた。
千載一遇の好機を逃したまま着地したクレス。
そこに、赤鬼が力任せに斧を薙いだ。
斧の最も面積の広い部分が、クレスを吹き飛ばす。
倒れているコレットの近くまで、クレスは弾き飛ばされてしまった。
92鬼がきたりて 6:2005/12/11(日) 15:19:27 ID:uzsF9wgh
「ゼェ……ゼェ……」
息を切らし、冷や汗を拭う赤鬼。
そして、自分の顔から赤い汗が流れていることに気づき、驚愕した。
「……この、ブタ風情がァッッ!!!」
思わぬ傷をつけられ、怒りを露にする赤鬼。
その怒号の先にいたクレスは、なんとか剣を杖のようにして起き上がろうとしていた。
だが、今になって忘れていた左手の痛みがもたげてきた。
立ち上がり、剣を構える。血が柄から滴る。
あの奇策も、二度は通用しないだろう。
だが、それでも諦めるわけにはいかない。
チェスター……僕に、力を……貸してくれ!
既にこの世を去った親友の名を心の中でつぶやき、闘志を燃やした。

パチパチパチパチ…………

不意に、拍手の音が響いた。
音の主は、鬼たちでも、クレスたちでもない。
この場の全員が、音のした方向を思わず向いた。
そこに立っていたのは、紫紺の男。サレであった。
その表情は……憎らしいほどの笑いで固められていた。
93鬼がきたりて 7:2005/12/11(日) 15:20:47 ID:uzsF9wgh
「素晴らしい、素晴らしい戦いだったねぇ。僕も思わず見とれてしまったよ」
サレはゆっくりと両者のほうに近づくと、健闘を讃えるかのような台詞を吐いた。
「何だァ? テメエもブチ殺されに来たのか!」
怒りまだ醒めずの赤鬼が、サレに怒声を投げかける。
だが、サレはそれをまるで恐れていなかった。
「嫌だなぁ……僕はただ、君たちとお近づきになりたくてねぇ……フフッ」
そういって、赤鬼のほうに近寄るサレ。
その姿に、クレスはうろたえた。彼は自分たちを助けにきたのではなかったのか?
「お近づき……だァ!? ふざけやがって! テメエみたいなモヤシブタが何をほざく!!」
赤鬼は、その痩せ身の男は口先で自分たちに取り入ろうとしているのだと思った。
「モヤシ……ねぇ。まあ、僕のプレゼントを見ればその評価も変わるさ」
「プレゼント、だァ!?」
サレの洩らした、プレゼントという言葉に、とびつく赤鬼。
「そう、加えて言うなら、実はもう渡す準備はほとんど完了している」
思わせぶりな口調ではぐらかすサレ。
クレスは、そのサレに少し厭な予感が走った。
94鬼がきたりて 8:2005/12/11(日) 15:22:27 ID:uzsF9wgh
「ほう、そこまで言うなら、まずはそのプレゼントとやらを見せてもらおうじゃねえか」
欲深な赤鬼のその台詞に、サレはにこやかに答えた。
「見せる? ……それはちょっと難しい相談だなぁ」
「ああん? ……いったいそのプレゼントってのは何だってんだァ?」
ジロジロと辺りを見回す赤鬼。だが、彼の眼には4人の人間しか写らない。
「分からないのかい? 分からないお友達は……頭上に注意」
サレのその言葉に、赤鬼は空を見上げた。
その瞬間
サレは赤鬼に向かって手を開いた。
嵐のフォルスによる風の奔流が、赤鬼を取り巻く。
予想外のプレゼントに、赤鬼は動けなかった。
風にまとわりつかれ、赤鬼の巨体が宙を舞った。
獅子戦吼、いやそれ以上の勢いで赤鬼は後ろに吹き飛ばされてしまった。

その光景を驚きの表情で見るクレス。コレットも起き上がっており、驚きの表情をしていた。
「さあ、今のうちに逃げるよ。クレスくんにコレットちゃん」
二人を誘導するような仕草で、サレは先陣を切って逃げ出す。
それに続く形で、クレスはコレットをしっかりと抱きかかえて走り去った。
95鬼がきたりて 9:2005/12/11(日) 15:24:36 ID:uzsF9wgh
赤鬼は実にタフな男であった。
サレの導術のダメージも気にせず、立ち上がろうとする。
その目の前に、青鬼がジッと立っていた。
「テメエ、ちったァ協力しやがれ! さっきからなに黙って見てやがんだ!!」
立ち上がり、赤鬼は怒り心頭のまま青鬼に突っかかる。
だが、青鬼は静かな表情のまま答えた。
「手出しはするな、と言ったのは貴様だ」
その言葉に、赤鬼は返す言葉はなかった。
確かに、獲物を取り逃がしたのは自分の油断と慢心にある。
「だ……だがよォ、逃げる獲物を追いかけねェのか!?」
そう、下敷きになっている間も、青鬼は完全に自由だった。
やろうと思えば、彼らの行く手をふさぐことも出来たはずである。
だが、青鬼の答えは赤鬼を満足させてはくれなかった。
「逃げる奴らを捕まえて、俺が殺して、貴様はそれで満足するのか?」
「………チッ」
その青鬼の言に返すものもなく、赤鬼は舌打ちするばかりであった。
96鬼がきたりて 10:2005/12/11(日) 15:26:05 ID:uzsF9wgh
舌打ちをしてウロウロする様をバルバトスは見ていたが、心中は別であった。
マグニスと正面から戦ったあの剣士のことを、彼は考えていた。
左手に怪我をしていながら、それでもマグニスと互角の戦いをしたあの剣士。
もしあのような奇策でなく、正道から戦いを挑んできていたら、マグニスはどうなっていたか。
あの剣士は、ディムロス・ティンバーとも遜色ない、生粋の剣士の匂いのする男だった。
マグニスには少し勿体無いな。
そう思うバルバトスは、人知れず笑みを浮かべていた。

「おい! サッサと次の獲物を狩りにいくぞ!!」
怒りも少しは引いたか、額の血も止まったマグニスは歩きはじめる。
そのマグニスの向かう方向に、バルバトスは違和感を覚えた。
「マグニス……奴らの逃げた方向は逆だ」
何の気なく、尋ねるバルバトス。
「……いいんだよ! 文句あるならテメエは向こうに行きやがれ!!」
そう吼えると、構わず歩を進めるマグニス。
仕方が無い男だ。そう思いながらバルバトスは、名残惜しげにマグニスと同じ方向に歩き出した。
97鬼がきたりて 11:2005/12/11(日) 15:27:46 ID:uzsF9wgh
【クレス
所持品:ダマスクスソード ????
状態:左手に銃創、出血中 TP消費(小)
第一行動方針:安全な場所へ避難
第二行動方針:コレット、サレと行動
第三行動方針:最後まで生き残る
現在位置:F4の川沿いの森】

【コレット
所持品:忍刀血桜 ????
状態:右肩に銃創、出血中、発熱 TP消費(微)
第一行動方針:安全な場所へ避難
第二行動方針:サレ、クレスと行動
第三行動方針:ロイド達と合流
現在位置:F4の川沿いの森】

【サレ
所持品:ブロードソード ????
状態:TP消費(小)
第一行動方針:安全な場所へ避難
第二行動方針:クレス、コレットと行動
第三行動方針:クレス、コレットを利用する
現在位置:F4の川沿いの森】

【バルバトス
状態:TP微消費
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(弾丸残り3発。一射ごとに要再装填) クローナシンボル
第一行動方針:マグニスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する。特に「英雄」の抹殺を最優先
現在位置:F4の平原】

【マグニス
状態:風の導術による裂傷 顔に切り傷
所持品:オーガアクス ピヨチェック
第一行動方針:バルバトスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する
第二行動方針:バルバトスより多くの人間を狩る
現在位置:F4の平原】
98Tender1:2005/12/11(日) 19:10:52 ID:zPPn470T
「・・・この位走れば大丈夫だろう」
と、ゼェゼェと息を切らしながらトーマは辺りに人の気配がないことを確認しながら呟いた

−走り続けている間、ミクトランの放送があったのだが…彼にはそれを聞く余裕は無かった様だ−

「とりあえずコイツをどこかに寝かせるか…いい加減、手がパンパンだぜ…」
そういう彼の腕を中を見ると、死んだ(と思い続けている)ミミーの姿があった。
トーマはティトレイの暴走から逃げるさい、この少女を抱えながらずっと走り続けてきたのだ。

トーマは草が生い茂っており、地面が直接露出していない場所を見つけると
そこにミミーをそっと寝かせた。
「さて、どうしたもんか…って、コイツ……」
ヤレヤレと溜息をつきながら、ミミーの顔を覗き込むとなんと…
とても気持ち良さそうに寝ているではないか!

「人が苦労して抱きかかえながらにげてるって時にコイツは…こうなったら叩き起こしてやる!」
少し頭にきたのか、トーマは思いっきり手を振り上げミミーの顔をひっぱ叩いて起そうとした
が、…その時ミミーが発した言葉に思わず手を止めてしまった。

「牛さ〜ん、どうパン?ホタテパンはおいしいパンかぁ……」
どうやら彼女は、自分の作ったパンをトーマに食べてもらう夢を見ているようだ。
その顔はとても幸せそうだった。
「……本当パン?喜んで貰えて…嬉しいパン!……それ…次…作る……待って…パンね」

その言葉を聞いたトーマは振り上げた手をそっと下ろし、ポリポリと頬を掻きだした。
「…畜生、そんなこと言われたら無理矢理起せねぇじゃねぇか。」
柄にもなく照れると、突然手を組んで考え出した。
「引っ叩けねぇと来ると、どうして起したものかなあ…」
他の起し方を考えるために、過去に自分が行った起し方を思い出してみるが…
暴力以外で起した記憶が一向に見つからない。
確かにそうだ、俺が他の誰かを優しく起してる所なんて考えただけでも反吐が出る
むしろ、力加減を間違えてそのまま永遠の眠りにつかせてしまった事があるくらいだ。
99Tender2:2005/12/11(日) 19:11:37 ID:zPPn470T
「う〜むぅぅぅぅぅぅ…」
トーマが考え続けること約10分。あることを思い出した。
「そういや、いつかジルバがアガーテにこんな話をしてたな…。」

−…眠れるお姫様は、彼女を心から愛する殿方のくちづけによって目が覚めたのです。−

「よし、他の方法も思いつかねぇしソイツをやってみるか!」
もちろんこの話は、某有名な御伽噺の一説なのだが…トーマはそんな事知るはずもなく
すっかり信じている。
「おおし、行くぞ!」
そう意気込みミミーにくちづけを行おうとするが…彼女の顔を見るとなぜか体が動かなくなった
「…?」
体が動かない事に疑問を持ち、無理矢理動かそうとするが…やはり結果は同じだった
−何故だ?このまま顔を近づけるだけじゃねぇか!何故それができない!−
そう苦悩するトーマの顔を見ると真っ赤になっており、脂汗までかいている。

…実はこのトーマ、生まれて○○年。愛のある恋愛などしたことがない。
それが原因なのかどうかは分からないが、実際彼は「くちづけ」と言う未知の行動に
戸惑っている。

「畜生…動け!動け!!動け!!!」
プルプルと体を震えさせながらキスをしようと必至になっている姿は傍から見ると
なんともコミカルだが…それは言わないでおく。

トーマは一度ミミーから身を離すと、何がいけないのか考え出した。
「…」
「……」
「………そうか、分かった!分かったぞ!!眼を瞑らないのがいけなかったんだな!!
 そうに違いねぇ!!!!」

そう結論を出すと早速行動に移る。
「ミミー…いい加減眼を覚ましてくれ。
 ……いい加減、抱きながら走るのは疲れるんだ」
最後に本音を言いながらも、トーマはミミーの唇に自分の唇を
…30センチ…20センチ…と徐々に近付けていく。
そしてその距離があと10センチとなったとき突然!
ミミーのつけているマジカルポーチから"何か"が上空へと勢いよく飛び出した。

眼を瞑っているトーマはそれに気付いていないが、その"何か"は上空へと飛び出したあと
勢いをつけてトーマへと向かっている。
「…ミミー」
トーマとミミーの距離があと5センチとなった時その悲劇は起こった。
100Tender3:2005/12/11(日) 19:12:12 ID:zPPn470T
−どごっ!−

上空に飛び出した"何か"がトーマの後頭部にクリティカルヒットしたのだ。
「…な、なんだ?」
トーマは突然の衝撃に顔をあげ手当たりを見渡すが…何も無い。
不審に思いながらも、中断した行為を再開しようとミミーに眼を向けると
そこには驚くべき光景があった。
なんとミミーの顔に透明な液体の入った瓶が直撃しているではないか。
そう、先ほどミミーのマジカルポーチから飛び出したもの…それはライフボトルであった。
ライフボトルはミミーの顔からぽとりと落ちると、コロコロと転がっていった…

そんな状況をトーマはポカンとした表情で見ていると、ミミーに変化が訪れた。
「…ン」
「なんだと?」
「…い…パン」
「胃パン?それもなんかパンの種類か?」
そういった次の瞬間、トーマの右頬に強烈な右ストレートが決まった。
「んなっ!?」
「痛いパン!何するパンか!死人に暴力振るうなんて最低パン!!」

トーマはミミーの突然の癇癪に最初はオロオロしていたが、すぐに平静を取り戻して
ここまでの状況を説明した。

−ミミーが樹の蔓に潰されかけた事−
「えっ…パン?」

−トーマが間一髪の所で救い逃げてきた事−
「ええっ…パン!?」

−そして…最後にライフボトルが齎した不幸について−
「ええええっだパン!!」

それを聞いたミミーはさっきまでの態度は何処へやら、突然シュンとなって
「ごめんなさいだパン…いきなり殴ったりして悪かったパン」
元気の無いミミーの姿を見ると…
「いっいや、いいんだ。気にすることはねぇ…眼ぇ覚ましてくれただけで十分だ」
とフォローを入れた。
「…ありがとうパン。牛さんはやさしいパンね」
「…そんなんじゃねぇよ」
照れくさそうにトーマはそう言い放ったが、その顔は真っ赤である。

「ところで、そのライフボトルは何処にいったパン?」
最初に支給されたもの以外、何も与えられないこの戦い(ミミーは楽観的に捉えているが)
このような形で新しいアイテムが手に入ったのは幸運だと思ったのか、
珍しくもミミーが正論を上げる。
101Tender4:2005/12/11(日) 19:12:54 ID:zPPn470T
「あぁ、それなら確かあっちに…ほら、あった………ぜっ!?」
トーマがライフボトルの転がっていった方へ行くと、そこには確かにライフボトルがあった。
「牛さん、突然変な声上げてどうしたパ………ンんんんんん!?」
…あったのだが、その傍らには何と別の筒状の物が落ちていた。
トーマが恐る恐る手に取ると、ミミーが尋ねた。
「それ…武器パン?」
「…あぁ、コイツはスゲェ武器だぜ!」
そういう彼の手の中にある武器は『メガグランチャー』
この戦いが始まってすぐ、自分の手にもてあましたプリムラがこの森の中に放置していった
超高威力の弾丸を飛ばす事ができる武器である。

「…ちょっと怖いパン」
ミミーが正直な感想を上げると、トーマは…
「大丈夫だ、こいつは俺と…ミミー、お前の身を守るために使う
 無闇につかわねぇと約束するから、安心しろ!」

暴君トーマのこのセリフに、何処までの真実が含まれているかは分からない。
本来ならこんな事を言うような人物では絶対にないからだ…
しかし、今まで共に行動してきて自分の感じたトーマに対する印象と、
自分に向けられるこの言葉に優しさの様なものを感じたのかミミーは…

「分かったパン。小生は…牛さんを信じるパン。」
と答えた。

トーマはミミーのその言葉に満足したのか、『メガグランチャーを』脇に抱えると
草むらに落ちていた『ライフボトル』を拾い上げ、それをミミーに差し出した。
「ほらよ、コイツはお前が…」

トーマがミミーにライフボトルを渡そうとするとミミーが言葉を遮った。
「それは牛さんに持ってて欲しいパン」

「いや、しかし…」
−俺は一人だ…だから俺には使うような機会が無い−
そう言葉を続けようとしたが、次に発せられたミミーの言葉によりそれが叶う事は無かった。

「小生は、小生のことを助けてくれた牛さんに酷いことしたパン。
 …それでも、牛さんは特に咎めることなく許してくれたパン。
 だから小生の感謝の気持ち…というかパン。…仲直りの証ということで
 牛さんにはそのライフボトルを持ってて欲しいパン」

「感謝」「仲直り」…普段自分とはかけ離れた言葉にトーマは一時呆然としたが
体のそこから暖かい何かを感じたトーマはミミーに素直に自分の気持ちを伝えた。

「有難うよ。こいつは確かに受け取った。大事に使わせてもらうぜ。
 …もちろん、このアイテムを使うような事になるのが一番だがな!」
「うん!そうだパンね!」

そうして笑い声を上げると、この戦いの場には似合わないほどの笑顔をお互いに与えあった。
そして、二人は今後のことについて話しをする事に決めたのだった。

…このライフボトルが、二人に凄惨な運命を叩きつける事をこの時は知る由も無かった…
102Tender5:2005/12/11(日) 19:13:25 ID:zPPn470T
【ミミー 生存確認】
所持品:ウィングパック×2 イクストリーム
    金のフライパン マジカルポーチ ペルシャブーツ
現在位置:G6の森林地帯
状態:おでこに小さなたんこぶ。
第一行動方針:トーマと共に今後の方針を決める

【四星トーマ 生存確認】
所持品:メガグランチャー ライフボトル
現在位置:G6の森林地帯
状態:後頭部に小さなたんこぶ。右頬に擦り傷。
行動方針:ミミーと共に今後の方針を決める
103作戦会議 1:2005/12/11(日) 22:59:08 ID:f+hmXs81
「なんだ?今の音は」

キール・ツァイベルは顔を上げて窓の外を見た。
つられてもう一人居る男も外を見る。
どこか遠く、彼らの居るB2の塔から南東の方向で大きな爆発音が聞こえた。
それより前にもその辺りからは銃声の様なものが何度も聞こていた。

「誰かが派手な術でもぶっ放したんじゃねぇのか?」
リッド・ハーシェルがそう言った。
「いや、それは無いと思う。あれは晶霊術や、あのダオスという奴が使った別の術とも違う感じがする。
 どちらかといえば、あれはフォッグが使っていた技の様な音だった」
「でもフォッグはここにいねぇぞ?ああ、そういえばチャットも居なかったような・・・」
リッドは自身無げに首をかしげ、天井を見た。
「・・・」
しばらく黙っていたキールが、深刻な面持ちで訪ねた。
「リッド。お前が言っていたあの二人、マグニスとバルバトスの装備だが・・・」
彼ははっとして、キールを見つめた。
「まさか・・・あれを撃ったっていうのか?」
104作戦会議 2:2005/12/11(日) 22:59:57 ID:f+hmXs81
あの時、リッドがカッシェルに襲われる直前に目撃した、赤髪の大男と青髪の大男。
その時彼は確かに見た。青髪の方、バルバトスが持っていた獲物、銃剣付きの榴弾砲。
あのサイズなら、例え晶霊の力を借りなくとも充分すぎるほどの威力を生むことは明らかだった。
「あの二人が向かったらしい方向といい、そう考えて間違いないだろう」
「あんなものを撃たれて無事に済む奴なんか・・・」
「まず居ないだろうな。いや、それ抜きに考えてもあの二人と正面きって
 鉢合わせたらまず生きて帰れはしないだろう」
「とんでもねぇ野郎だな・・・あいつら」
「そうだ、だからどんな事態になっても、
 あの二人に真っ向から戦いを挑んでは駄目だ。生きて帰りたいならな」
リッドは黙ってうつむき、左手を頭に当てた。
「もしファラやメルディがあんな奴等に会ったら・・・」
「・・・考えたくないケースだな」
そう冷静に言い放つキールも、どこか落ち着きが無かった。

「なあ、やっぱ今からでも探しに・・・」
「駄目だ。何度も言っただろう。こんな暗闇で外に出たら、人を探すのなんかかなり難しいし、
 それにまだ外にはあの覆面が居るかもしれないだろう。エルヴンマントすら見破ったあいつなら、
 僕達を闇討ちすることなんか簡単なはずだ。今は日が昇るまで、ここで待機すべきだ」
既に何度も繰り返されて言われた言葉を改めて受けて、リッドは力なくため息をついた。
105作戦会議 3:2005/12/11(日) 23:00:47 ID:f+hmXs81
二人が塔に着いた時、内部はひどい有様だった。
瓦礫に埋もれた山、ぶち抜かれた壁、折れた柱。
幸い、一部の部屋や二つあるうちの一方の階段は無事だった。
といっても廃墟であることに変わりは無く、荒れ放題であったが、

それでも活動拠点にするには充分だった。
キールは適当な広さを持った部屋を『会議室』として、
中にあった机に地図、参加者リスト、お互いの支給品を並べた。

「ムメイの刀に、エルヴンマントか・・・」
「なかなか使い勝手がいいぞ、これ。マントも気配を消せるし」
「だがあの覆面には効果が無かったんだろう」
「あんなやつがそうそう居るかよ。あの大男すら騙せたんだ、一人で行動するなら使えるぜ」
「一人なら、な。まあ情報収集の為に一人が外に出るというのもありか・・・」
キールがそう言い、リッドは続いてキールの支給品を見た。

「お前が持ってた杖は壊されたんだよな」
「そうだな。杖もクルーメルケイジも無い状態で戦うのは少し大変だが、何とかしよう」
彼が持っていた残り二つの支給品、その内の一つのホーリィリングは、
術を使わずに体力が回復できるので、二人は交互に装備して先程の戦いの傷を癒した。
現在は傷の深かったリッドが装備している。
そして残り一つ、見慣れない紋章がついた青い帽子。
「ベレットだな」
「でも女物じゃないか?これ」
付属の説明書には、『ガドリア王国の少女剣士の使用済み品』と書かれていた。
勿論彼らが知る国名では無かった。
他の参加者の誰かの世界にあるものなのだろう。
どちらにせよそれを装備したところで大した防御力は期待できなかった。
106作戦会議 4:2005/12/11(日) 23:01:35 ID:f+hmXs81
「それで、やっぱ術は100パーセント使えるわけじゃないんだな?」
リッドが確認するように言った。
「ああ。色々試したが、どうやら使えそうなのはせいぜい中級晶霊術までだ。
 それも、僕達が居たインフェリアの晶霊の属性しか使えなかった」
それはすなわち、水、風、火、光、元属性の五つのことだった。
「でも回復が出来るのはありがたいことじゃねぇか」
「まあ、そうだが、この理論だと、恐らくメルディは残り五つ、
 雷、土、氷、闇、時の晶霊術しかつかえないということになるな」
そこでリッドはふと考え込んで、
「じゃあメルディは回復術が使えないのか?」
キールは右手を顎の下にやりながら、答えた。
「分からないな。ナースやリザレクションの様な晶霊の組み合わせで使える術が、
 果たして使えるかどうかは、僕にも分からない。ただ、この会場は晶霊といわず
 複雑な力が絡み合ってるから、実際どうなるかは分からないな」
「よく分からないぞ」
「まあ詳しく話せば──」
「いや、それはいい。とにかく実際試してみないと分からないってことだな」

その後、二人は放送により、リッドが危険視していたヒアデスの死、
そしてファラとメルディがまだ生きていることに安堵した。
禁止エリアについては、自分達にはまだ当分関係の無い話だった。
107作戦会議 5:2005/12/11(日) 23:02:24 ID:f+hmXs81
そういった諸々の話に決着が付いた後、二人は改めて今後どうするかを検討した。
まず決まったことは、殺し合いには乗らないこと。
そしてリッドが提案した、襲われた場合の戦闘はやむをえないこと。
余程分が悪くない限り、撃退すべきだという意見を、キールは慎重に検討した後、
相手の戦力や状況にもよるが、応戦するのは仕方無いと結論付けた。
「で、肝心要の脱出方法はどうなった?キール」
「そうだな。僕はこの島の土地を流れる力の複雑さから、
 恐らくここがどこの世界にも存在しない空間だと考える」
「まあ俺もなんとなくそんな気はしてたけどよ」
「いいか、僕達参加者は複数の異なる世界から集められた者達だ」
「セレスティアみたいなのがまだたくさんあったとか?」
「それは考えにくいな。流石に文献や伝説の一つや二つはあってもいいだろう」
「完全に別世界と考えるべきなのか?」
「ああ。それぞれが絶対に干渉しあうことの無い、全くの異世界だ」
「で、それがどう関係するんだ?」
「ミクトランと名乗ったあいつが僕達をここへ集めたことから
 何らかの方法でこことそれぞれの世界に通じる扉があると僕は考える」
「・・・マジかよ?」
「ああ。僕達は魔法陣に乗ってここへ来たが、逆説的に言えば当然こちら側から向こうへ行ける方法があるはずだ。
 そして、優勝者が叶えることが出来る願い。正直僕はあまり信じていないが、
 少なくとも元の世界へ帰れることは確かだと思う。ミクトランにしても、ゲームが終わって
 いつまでも僕達をここへ留めて置く理由も無いはずだからな」
「つまり・・・どうするんだ?」
「元の世界に帰るには今のところ三つの方法がある。
 一つ目は優勝者になり願いを叶えて帰ること。だがこれはあまりにも不確定要素が多すぎる上に危険も伴う。
 二つ目は何とかしてミクトランの元へ乗り込み、奴を倒して脱出すること。一番最初に僕達が居た場所は
 どんな構造か完全に覚えていないが、恐らくあそこに脱出に関係する何かがあると思う。
 三つ目はミクトランを避けてこの島から直接元の世界へ脱出すること。
 だがこの島にそれだけのことができる装置、或いは道具があるとも考えにくい」
「でもよ、ゲームに乗らないなら二つ目か三つ目しかねぇじゃねぇか。
 それもどっちも無茶に思えることだぜ。どうにかしてってどうやるんだよ」
「それをこれから考えていくんだろう。ちょっとは自分の頭も使え」
「んだと?」
「ふん、まあどっちみち今はこうして机上の空論を立てるぐらいしかやることが無いからな。
 いや、待てよ、もしかしたらこの塔のどこかに参考になる資料の一つや二つあるかもしれない」
そう言ってキールは席を立った。
リッドはやれやれと手を振り、後に続いた。

いくつかの部屋の中に、確かに本などいろいろあったが、どれもキールの欲求を満たす物ではなかった。
崩壊した瓦礫の下にも埋まってるものもあったので、リッドが瓦礫をどけて発掘作業をさせられた。
108作戦会議 6:2005/12/11(日) 23:03:25 ID:f+hmXs81
そうしている内に響いた轟音。
こんな夜になっても、まだまだ殺し合いが続いていると思うと、リッドは気が滅入った。
それはキールも同じようで、疲れたような表情を浮かべている。
「なあ、もう今日はこれくらいにして寝ないか?」
疲れていることを隠そうともせずに提案した。
「別に構わないが、見張りが必要だぞ」
「ああ分かってる、じゃあ、次の放送の前には起こしてくれ」
そう言って部屋の隅のソファへ寝転ぶリッドを、キールが呼び止めた。
「ちょっと待て。お前一人で朝まで寝るつもりか?」
「なんで、お前まだ調べ物するんだろ?」
「僕だって睡眠を取りたいに決まってるだろう!
 いいか、寝るなら三時間ずつで交代だ。誰かが入ってこないか見張っておくんだぞ」
「わーったよ。たく・・・」

リッドは目を閉じたが、しばらく眠れなかった。
今しがた聞いた爆音が耳から離れなかった。
あの二人、マグニスとバルバトス。
あの時はギリギリで戦いを回避できたけど、あの二人が殺しを続ける限り、
またいつかどこかで出会う気がしてならなかった。
いや、どうしても戦う時が来る。そんな気がした。
最後の一人になろうとしても、脱出しようとしても、
いずれあの二人が立ちはだかるのは必然のことの様に思えた。



【リッド 生存確認】
状態:背中に刀傷(回復中) 頬に擦り傷(ほぼ回復)
所持品:ムメイブレード エルヴンマント ホーリィリング
第一行動方針:寝る
第二行動方針:キールと行動
第三行動方針:ファラ、メルディとの合流
第四行動方針:襲ってくる敵は倒す
現在位置:B2の塔 一階の部屋

【キール 生存確認】
所持品:ベレット
状態:額に切創(ほぼ回復)  全身打撲(ほぼ回復)
第一行動方針:脱出法を考える
第二行動方針:三時間経ったらリッドを起こす
第三行動方針:リッドと行動
第四行動方針:ファラ、メルディとの合流
現在位置:B2の塔 一階の部屋
109それはまるで紅き魔女のように 1:2005/12/12(月) 00:15:45 ID:fse85KNI
死。
それは、前触れも無く唐突に訪れる。


目の前で、チェスターが死んだ。
旅をしていた頃は、こいつだけは絶対に死にそうに無いと思っていたのに。
思い返せば、あの時、たった一人の親友リアが死んだ時も突然だった。

(ただでさえ生きられる時間が違うのに、何でこんなに早くあたしを置いて行ってしまうの?)

悲しみこそしても、普段ならそんな事はそこまで気にも留めない問題だっただろう。
どれだけ頑張っても、同じ長さを生きられないのは分かっているから。

――だが、今は違う。

この状況下では、死は誰にでも訪れる可能性はある。
ハーフエルフであるが故に、人間よりも遥かに長寿である彼女も例外では無い。
これは命の奪い合い。いくら寿命が長かろうが、不死では無い限り関係無いのだから。
そんな事は分かっていた。

…けれど、目の前で起こった死を受け入れたくは無かった。
復讐、というのも考えたが、肝心なその相手も動かぬ骸と化している。
残された道は二つ。
現実は残酷だった。


考えている内に思考が混乱してきた為、気分を変えようと、薄暗くなって来た風景を見回す。

改めて見ると、酷い有様だった。
変色しつつある、地面にこびりついた血。殆どが使い物にならなくなった矢。チェスターと交戦し、相討ちになったのだと思われる、もう一つの死体。
そして、元は刃が銀色だったであろう、しかし今は血溜まりという池に沈み、赤く濡れたナイフ。

闇に飲み込まれてしまいそうなのに、妙にそれが鮮明に映った。
アーチェは吸い込まれる様にナイフを見つめていた。
やがておもむろに立ち上がると、それを拾い上げようと手を伸ばす。
110それはまるで紅き魔女のように 2:2005/12/12(月) 00:18:31 ID:fse85KNI
手当ての時、既にあらゆる所に血が付着しているので、今更汚れようと気にはしなかった。

しかし、触れた瞬間、心臓が跳ねた。
拾ってどうする?
もしこれを手にしてしまうと、自分という存在が変わってしまう…そんな感情に捕らわれた。
それでも…。

答えは――決まっている。

「あたしがみんなの分まで生きれば良いんだもんね、うん」

それは、他人を手に掛けるのも厭わないという事を意味していた。
歪んだ考えだと知りつつも、彼女は躊躇わなかった。

散乱していた荷物を纏め終えてこの場から去ろうとした時、ふとアーチェの視界に入った物が存在した。
…弓だった。
魔術師である彼女に弓を扱う技術は皆無だ。持って行っても役に立つとは思えない。
そもそも、矢がまともに使える程無事では無い。
僅かながらの思案の末、彼女はそれを拾った。

放送が流れ仲間の名が聞こえたが、彼女はもう、悲しみはしなかった。


【アーチェ
状態:身体は健康
所持品:BCロッド レジストリング ダークボトル(残り2個) スペクタクルズ(1個) サバイバルナイフ 木の弓 毒(液体)
第一行動方針:ゲームに乗る
現在地:C5の橋付近】
111Escape 1:2005/12/12(月) 20:51:37 ID:f5Hq8ybH
さっきはまんまとやられたが、
どうやら勝利の女神は俺様に微笑んだようだ。
支給品のセレスティマントのおかげで電撃を軽減できただけでなく、
相手の不意を付くことにも成功した。
グリッドという男、俺様相手になかなか奮戦したが、詰めが甘かったな。
あとの相手は嬢ちゃんが二人に野郎が一人か。

「ユアンさん! グリッドさんが!」
「分かっている!」

ユアンとかいう野郎がほうきらしきものを取り出した。
この男、なかなかの強さと見た。
それなりに楽しめそうだ。
112Escape 2:2005/12/12(月) 20:56:03 ID:wWNSTFjE
「悪いが、我々は元からお前の相手をする気はない。
 怪我人が出たのでな、そろそろ失礼させてもらおう」

ヤツはそういうと、そのほうきらしきものに跨って、空に飛び立ちやがった。
俺様はてっきり棍棒の代わりにするとばかり思っていたが…。
だいたい、男がほうきで飛んでも映えないだろうが。
まあ、このまま相手が逃げるのを待つ必要など無い。
「逃がすかよ!
 グレイトアッパー!」
113Escape 3:2005/12/12(月) 21:06:25 ID:cYp3jgkE
ゴリラ男のヤツ、絶対私達のことは目に入ってないよね。
まっすぐユアンに向かっていってる。攻撃する気だろうな。
でもまだ距離はある。

「させない!」
すぐ下に落ちていたミクトランを模した彫像を投げつけてみた。
相手は技を出した直後だったらしく、ダメージこそ無いようだがバランスを崩したようだ。
その間にユアンは見事グリッドをキャッチした。
あっちはもう大丈夫かな。
こっちはヤバイかもれないけれど。


プリムラさんが号令をかける。
「みんな、作戦Eよ!」
作戦E…。

プリムラさんが高らかに宣言する。
「この作戦なら、あなたには絶対に負けないわ!」
確かに負けることはないだろうけれど。
これ、作戦、なのかなぁ?

「言ってくれるじゃねえか。
 どんな作戦かは知らないが、発動前に潰せばいいだけだろ。
 悪いが、嬢ちゃんには暫く眠っててもらう」 
「お生憎様。こっちもはいそうですか、で眠ってあげるほどお人好しじゃないの」
相変わらず強気な人だ。足はふるえているみたいだけど。

確かコングマンはグリッドさんと同じところから来たんだっけ。
それならこれが通用するはずだ。
「それ!」
コングマンの目の前にあるものを投げる。
エナジーブレット。
先ほどの攻防で相手の地面も体もまだ濡れているから、直接くらうと当然危ない。
うん、確かに投げたものの方に注意が向いている。
それをちらりと確認した私はプリムラさんの手を引いて走り出した。
作戦E。escape。成功かな。
地面もヌルヌルだし、簡単には追ってこられないだろう。


「ミンツの学生をなめんなよ!」
…ああ、プリムラさん、わざわざ挑発しなくても。

…でも、なめんなよ!
114Escape 4:2005/12/12(月) 21:14:56 ID:OdbEntPf
俺様は急いでマントで身を包んだ。
コツン、と音がした。
エナジーブレットが地面に落ちた音だ。電撃が来る!


来ない? 何故だ?
このマントに電撃を無効化するほどの強力な耐性はなかった。
弱い衝撃程度は感じるはずだが。
「エネルギー切れか…?」
ふと気付くと、いつのまにか、4人の姿は消えていた。
町のどこかから、嬢ちゃんの声が聞こえる。
「ミンツの学生をなめんなよ!」

「なめるな、か。ククッ、その通りだな」
向こうの被害はグリッドの怪我のみ。
俺様も、大した被害は被ってはいないが、主導権を握られっぱなしだった。
向こうが殺る気で作戦を練っていたなら、殺されていたかもしれない。
ここに来ているのは一癖も二癖もあるやつらばかりのようだ。
参加者全員がなんらかの形で強いのだろう。
なのに、強いヤツと優先して戦おうというのは傲慢ではないか?
全参加者に対して、全力を尽す。
これこそが、ここでとるべき態度ではないのか。
そうだ、相手は選ばない。
参加者は全員、全力をもってぶっ倒す。

「さて、そうと決まれば…」
人が集まるのは建物のある場所。
さっきの騒ぎで、人はもうここにはいるまい。
どこに行くべきか。
「やはり、この城だな」
115Escape 5:2005/12/12(月) 21:20:00 ID:hj6dZOFv
「うまくいきましたね。ハッタリ作戦」
「あれ、電気入ってないやつだったんだね。
 私も痺れさせるつもりなのかと思った。
 ところで、カトリーヌ、他の二人は?」
「森に逃げ込む予定でしたから、一番近くに見えた森に駆け込んだはずなのですけれど…
 いませんか?」
「うん、いませんね…」
「「……」」
「ここってどこ?」
「…すみません、私、方向音痴なもので」


「いやぁ、実に素晴らしい脱出劇だったな。まさに漆黒の翼にふさわしい。
 ジョンとミリーにも見せてやりたいものだ」
「あまり暴れるな。落ちても知らんぞ」
「それはそうとして、後の二人はどうした?」
「付いてきていないのか?」
「俺が見る限りではな。
 コングマンからうまく逃げ切ったのは見たが」
「まあ、森に逃げ込む予定だったのだ。すぐに追ってくるだろう」
「だが、カトリーヌは極度の方向音痴だと言っていなかったか…?
 大丈夫なのか?」
「「……」」
116Escape 6:2005/12/12(月) 21:26:39 ID:uFCvSMbl
【グリッド 生存確認】
所持品:無し
状態:HP半分ほど。チャームボトルを使っている。
基本行動方針:生き延びる。
行動方針:漆黒の翼のリーダーとして行動。

【ユアン 生存確認】
所持品:占いの本、エナジーブレット、フェアリィリング、ミスティブルーム
状態:ほぼ健康、TPちょっと消費
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。

現在位置:G5の森

【プリムラ 生存確認】
状態:健康
所持品:セイファートキー、?、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ、エナジーブレット
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを石板に縛り付けて海に沈める。

【カトリーヌ 生存確認】
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット×2、ロープ数本、C・ケイジ
状態:健康
基本行動方針:帰りたい。死にたくない。

現在位置:F7の森

【コングマン 生存確認】
状態:HP半分ほど
所持品:レアガントレット セレスティマント
基本行動方針:参加者と戦い、倒して優勝する。

現在位置:G5の町
117新・剛運な彼女 1:2005/12/12(月) 23:47:08 ID:h13jnFnV
私たちは、コングマンとかいう突然の来訪者と果敢に戦い、そして戦術的撤退に成功した。
あんなに強そうな大男を相手にして、ケガらしいケガを誰も負わなかったのだから、
長期的な視点で考えれば、あの戦いは私たちの大勝利だったといえるでしょう。
……それだけにひとつの、大きな誤算があったのが残念で仕方ありません。

「プリムラさん、どうします?」
こちらの女性、名前はカトリーヌさん。
自己紹介のときに方向音痴だと言っていましたが、まさかこれほどのものとは思いませんでした。
――ふつう、そこまで道に迷うことがある!?
「プリムラさん、聞いてるんですか?」
「えっ!? なに? もしかして何か閃いたの?」
カトリーヌさんは、なぜかフウッ、とため息を洩らしました。
なに? なんか悪いことでも言っちゃった?
「いえ……これからどうするのかと……聞いたんですけど……」
非ッ常に言いづらそうに喋るカトリーヌさん。
その優しさがまるで聞いてなかった身には辛い。
でもね、今の状態をバッチリ打破するアイテムがあるんだよねっ。
「心配ないわ、良いアイテムがあるの」
「ほ……本当ですか!?」
パッと明るい表情に変わるカトリーヌさん。
やっぱ笑った顔っていいよね。コッチまで気分がウキウキしてきちゃう。
ウキウキ気分のまま、私は背負ってきた袋をゴソゴソと探る。
あれ? たしかこの辺に入れたと……あった!
118新・剛運な彼女 2:2005/12/12(月) 23:49:20 ID:h13jnFnV
「じゃーーーーんっっ!!」
そういってカトリーヌさんに見せたもの……それは。
「セイファートキー!」
「そのとーりっ。これで迷える子羊も、一発で迷わない子羊に早変わりよ」
子羊の自覚はあるのが、なにやら悲しいけど。
でも、か弱いからこそこんな良いアイテムを下さったんですよね?
とりあえず、セイファート様に感謝しておくことにして、早速使いましょう。
「これを……こう持って……」
ちょっと前に町で持ち物確認していたときに読んどいた説明書のとおりに使ってみる。
「…偉大なる創造神セイファートよ、汝の弱き子達に、道標を指し示さん!!」
ちょっとカッコつけて詠唱文っぽく喋ったけど、これが適当だというのは内緒だ。
さあ、これでキーがピカーッて光ってドキューンって進むべき道を……道を……ヲヲヲ?
「………何も……起きませんね?」
ちょ、ちょっと待って! 確かに説明書の通りに、カッコつけの詠唱はしちゃったけど――
私は慌てて皮袋からセイファートキーの説明書を引っ張り出す。
食い入るように見る私。多分カトリーヌさんはそれを心配そうに見ている。
そして私はその説明書にちっちゃく書かれた……恐ろしい一文を見つけた。

【セイファートに選ばれた人以外が使った場合、その動作保証は一切いたしません♪】
119新・剛運な彼女 3:2005/12/12(月) 23:51:04 ID:h13jnFnV
一応、カトリーヌさんにも使ってみてもらったけど、キーからは線香花火ほどの明かりも出ない。
こんにゃろう……散々ぬか喜びさせやがって。
「ハア……これじゃあユアンさんたちと合流できそうもありませんね」
無念そうにショげるカトリーヌさんの無言の圧力が私には痛い。
せめて……最低でもこの森から抜け出ないと……
怪奇! 樹海に消えた二人の女学生! 原因は愛憎のもつれか!?
なんて記事でミンツの新聞に書かれかねない……って妄想も大概にしないと。
うーーーん、もしもキールなら……こんなときはどうするかなあ。

私はしばらくキールとの思い出を懐かしんで、そしてひとつの答えをみつけました。
「分かったわ! 私たちの行くべき場所が!」
「ええっ!? 本当に分かったんですか? プリムラさん」
この名探偵の妙案に期待を寄せるカトリーヌさん。
今度の案は間違いなく完璧に違いないわ。
「本当よ……私たちは……すぐに町に戻るべきだわ!」
堂々と言った私に対して、カトリーヌさんの視線は訝しげなものでした。
「何、その眼は? そんな可哀相な子供を見るような眼で見るんじゃないっ!」
「だって……どうやってこの森から町まで向かうんですか?」
「あっ…………」
120新・剛運な彼女 4:2005/12/12(月) 23:52:38 ID:h13jnFnV
さて、難問ね。太陽さえ出ていれば、昔読んだ冒険物の話で使ったやり方で方向が分かるけど……
今は夜も夜。指針になるようなものも一切見えないし、お空の星は見たこともない配置をしている。
うーーーーーーーーーーん、どうしようか…………

考えをめぐらせるうちにふと、私の中で全ての断片がひとつに繋がる感覚を覚えた。
「そうだわ!! 今こそあのアイテムを!!」
そういって、私は再びあれを取り出す。そう、セイファートキー。
「いったい、それでどうするつもりなんですか?」
「まあ見てなさい……名探偵の閃きは、グロビュール歪曲をも変えるのよ!」

そういって、私はセイファートキーの錘になった部分を下にして手近な切り株の上に静かに置いた。
セイファートキーは、グラグラっとゆれて、やがてバランスをとりきれなくなって、パタリと倒れた。
「よしっ! セイファート様の導きが得られたわ! 町はアッチよ!!」
倒れた向きを指差して、そう言い放つ私。
「そ……そんなぁ、それってただの運試しじゃ――」
「私の家具セットを当てた運のよさを信じなさい!」
そう言って渋るカトリーヌさんを奮い立たせる。
無謀なのは百も承知だけど、何か理由をつけて動かないと状況は悪くなる一方だわ。
そう、キールだってきっと同じ状況ならこんな森の中で勝算なくジッとし続けているわけない。
121新・剛運な彼女 5:2005/12/12(月) 23:54:31 ID:h13jnFnV
「さっ、カトリーヌさん。私に黙ってついてきて!」
「言ってることは男らしいですけど、本当に大丈夫なんですか?」
そんなやり取りのあと、ようやく移動を始めた私たち。
ブーツのお陰で、足は驚くほど軽やかなのが唯一の救いだったみたい。
ドンドン進んでいって、そして、私たちはやりました!

「アレって……もしかして町じゃないですか?」
「えっ? ……アーーーーッッ!! まちマチ!!」
本当にびっくりしたわ。まさか本当に町まで戻ってきちゃうなんて。
……そこまでツイててくれるなら、偶然ユアンさんたちと鉢合わせしてもいいんじゃないの?
そう思ったけど、でも町にたどり着けて本当によかったあ。
感激のあまり飛び上がって喜ぶ私。ヘタヘタと座り込むカトリーヌさん。
ああ、帰ってきた。そう思うと、ドッと疲れが出てきてもしょうがないかな。でも、
「とりあえず、もうひとふん張り、作戦会議した家までがんばりましょう」
カトリーヌさんに手を差し伸べる。ここじゃ人目につくかもしれないものね。
「ありがとう、プリムラさん。……疑っちゃってごめんなさいね」
「えっ? いいのいいの、気にしないで!」
手を横に振って、照れ笑いをして答えたら、
カトリーヌさんもようやく安堵の笑いをしてくれました。
122新・剛運な彼女 6:2005/12/12(月) 23:55:51 ID:h13jnFnV
「アレッ? そういえば……コレって」
そう言って、カトリーヌさんは皮袋から何か取り出す。
それって………そのまーるい物体って………ええーっと。私の勘が正しければ……
「それは……コンパスというものじゃないでしょうか?」
「ですよね。それじゃあ、もしかして……」
「そうですねえ………私の推理が間違いじゃなかったら、あのセイファートキーの活躍も……」
「徒労だった……みたいですね」
その言葉に……私にもドッと疲れが押し寄せたみたい。


【プリムラ 生存確認】
状態:疲れ気味
所持品:セイファートキー、?、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ、エナジーブレット
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを石板に縛り付けて海に沈める。

【カトリーヌ 生存確認】
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット×2、ロープ数本、C・ケイジ
状態:疲れ気味
基本行動方針:帰りたい。死にたくない。

現在地:G5の村
123闇の襲撃者 1:2005/12/13(火) 00:46:39 ID:Q7mL7gCv
海が近い。東の方角に橋が見える。
既に真夜中と化したこの島の風景は、昼のそれとはまるで違っていた。
黙って立っているだけで吸い込まれそうな闇。
黒光りする海の煌めきも、この殺戮の状況では楽しめそうに無い。
だが、それはあくまで凡人にとっての話だ。
暗闇を駆ける一人の男、破れかけた覆面をしたその男、
幽幻のカッシェルは、新たな獲物に心を弾ませていた。

二回の戦闘をこなした後、森に身を潜めていた彼だが、
しばらくして一人の少女が森から抜けて東へ進むのを見た。
カッシェルは音も無くその紫髪の少女を追跡し、やがて橋の手前までやってきた。
そこで少女は、別の参加者の死体を見つけた。
その死体も少女だった。二つ結びの髪で、
追跡している少女と似ている所もあるような気がした。

しかしそのようなことはどうでもよかった。
彼にとって重要なのは、追跡していた少女が少なからず動揺して隙を見せているということだった。
殺るなら今がチャンスだ。
カッシェルは軽やかに飛翔し、少女との間合いを詰めた。
124闇の襲撃者 2:2005/12/13(火) 00:47:26 ID:Q7mL7gCv
彼らが居るエリアにはカッシェルの好む木々も身を隠せそうな遮断物も無かったが、
この闇夜に同化して動くのは造作も無いことだった。
踵を付けずに、短い歩幅で高速に駆ける。
少女の背中が視界の中で大きくなっていく。
距離は残り数メートル。
彼は右手のショートソードを振りかざし、少女の背中に斬りつけた。
剣の軌道に添って少女の衣服が裂け、血の飛沫が飛んだ。
背中を反らせ、体を泳がせる少女。
首を回し、こちらを見る。
しかし既にカッシェルはその場から姿を消していた。
「どこからか!?」
少女は戸惑いの表情を浮かべて周囲を見回している。
死角から再度接近、そして斬撃。今度は右腕を斬った。そして離脱。
更に落ち着き無くきょろきょろとする少女。
殺そうと思えばどうとでもやれるが、それではつまらない。
じっくりと、じわじわと斬りつけてから殺してやる。
カッシェルは闇を身に纏いながら、少女に近付くたびに傷を残していった。
「あ、ああ・・・」
何度目かの攻撃の後に、少女の様子が変わり始めた。
両手を頭に抱え、うずくまるように座り込んだ。
125闇の襲撃者 3:2005/12/13(火) 00:48:20 ID:Q7mL7gCv
どうした?恐怖のあまり立っても居られなくなったか?
カッシェルは冷たい笑みを浮かべ、少女に走り寄った。
「いや・・・来ないで・・・怖い・・・」
カッシェルはハッ、とため息を付いた。
命乞いか?馬鹿が。この状況で何を言っている。
頭を隠している左手の甲を斬った。そして奥へ走り抜けようとした。
「死にたくない・・・死にたくない・・・違う・・・来ないで・・・メルディは嫌だよ・・・」
カッシェルは微かに疑問を抱いた。
この少女は自分以外の誰かに話しかけているのか?
気に入らないな。彼は内心そう思った。
「あまりに怖くて幻影とでもおしゃべりしてるのか・・・?」
彼はそうささやき、再び駆け出した。
少女は立ち上がり、しかし頭を抱えたままこちらを見た。
「死にたくない・・・怖い・・・お願い・・・助けて・・・」

──ならば我が力を貸してやろうか?

「ああああぁぁ!!」
突如少女の足元から頭上かけて二メートルはある雷の刃が現れた。
そしてそのまま走り寄るカッシェル目掛けて垂直に倒れこんできた。
「!?」
カッシェルは突然のことに驚き、回避できずに直撃を喰らった。
凄まじい電流が体中を駆け巡った。彼はそのまま大の字に倒れた。
そして彼は動かなくなった。
126闇の襲撃者 4:2005/12/13(火) 00:49:25 ID:Q7mL7gCv
「はぁ、はぁ、・・・ああ・・・いや・・・」
少女は息遣い荒く、眼前の男を見やった。
そしてほとんど間を置かずに橋へと駆け出した。
死にたくない。怖い。ただその思いが少女を突き動かしていた。
そしてその心はネレイドの干渉をあと一歩まで許すほどにまで弱っていた。
少女の心が少女で無くなってしまうのは時間の問題の様に思えた。

それからしばらくして、カッシェルは起き上がった。
そしてしばらく橋を見つめた。
あの少女を深追いする気は無かった。
それから近くに身を潜めることの出来る森林は無いかと思い、
地図を見回したがこの辺には何も無かった。
仕方なく元の北西の森林地帯へ戻ることにした。



【メルディ 生存確認】
 状態:背中に刀傷 両手足に浅い刀傷 パニック ネレイドの干渉を抑えきれない
 所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
 第一行動方針:仲間と合流
 第二行動方針:元の世界へ帰る
 現在地:C4の橋から東へ移動中

【幽幻のカッシェル 生存確認】
 状態:痺れ 全身に軽い裂傷 覆面損傷
 所持品:ショートソード アワーグラス
 第一行動方針:ゲームに乗る 
 第二行動方針:決して徒党を組まない
 現在位置:C4の平原からB2〜B3の森林地帯へ移動中
127呪縛 1:2005/12/14(水) 21:52:15 ID:0TYpSiBa
「こんな所に居ましたか」
島全体でも数少ない山岳部、その谷間に一人の少年がうずくまっていた。
ソロンは目の前のその少年に声をかけた。
少年はビクッと体を震わせると、凍りついた表情で振り向いた。
黒髪の少年・ジェイの視界に映ったのは、彼の師であった。
ソロンは大きく口元を歪ませてにやりと笑うと、数歩ジェイに近付いた。
「さて、それじゃあなたの働きぶりを聞かせてもらいましょうかねぇ」

口元を歪めたまま、嬉々とした口調で訪ねた。
ジェイは視線も虚ろに立ち上がり、うつむいて喋りだした。
「・・・・・・せん・・・」
ソロンは大げさに耳に手を当て、ジェイに近づけた。
「ああ?聞こえないなぁ?もっとはっきり言ってくださいよ、どうしてためらう必要があるのです」
「・・・してません」
「何?」
「まだ・・・殺してません」
その言葉を聞いたその瞬間、ソロンの目が異常に鋭くなった。
そして腕を振り上げ、少年を張り倒した。
「何ですって!?あなたはこれだけの時間を持て余しながら、誰一人として始末できてないのですか!?
 いや全くこれは予想外ですよ、私が島を回って苦労している間に、あなたは一体何をしていたんですか!?
 サボってたんですか!?サボってたんですね!?」
128呪縛 2:2005/12/14(水) 21:53:22 ID:0TYpSiBa
そう叫びつつ倒れた少年の腹に蹴りを入れる。少年は丸まって動かない。
「この馬鹿者が!!」
更に力強く蹴る。少年の口から嗚咽が漏れた。
「はぁっ、はぁっ、全くあなたは不孝者だ、師匠である私の為に何一つしないとはね」
ジェイは両手を地面に付き、体を起こそうとした。
「すみま・・・せん」
「やれやれ、あなたにはもう私以外に頼れる人物が居ないというのに」
ソロンの言葉にジェイは目を見開き、体が硬直した。
半端な体勢のジェイの頭に足を乗せ、ソロンが言った。
「あのセネル・クーリッジという男も、モーゼス・シャンドルという男も死んでしまいましたからねぇ。
 ああそういえば水の民の長、マウリッツも死んでましたか。
 彼の生命力は並外れていると聞いていましたから実に残念です。
 残る煌髪人の女も、一人では何もできないでしょう」

しかしそう言うソロンの顔は、全く哀愁の類も何も無かった。
ただ歪んだ笑い顔があるのみである。
ジェイの顔には悲痛の表情が浮かんでいた。
放送を聴いてから離れない、深い絶望感がまた襲ってきた。

「分かりますか?あなたにはもう私しか居ないんですよ?
 理解してますか?あなたは私抜きではとても生きられない。
 そして知っているでしょう?このゲームでの死は日常の出来事であると」

ジェイは頭を踏まれたまま何も言わずにいた。
「返事は!」
そんな少年の態度にソロンは激怒し、足に体重をかけて少年の顔を地面に擦り付けた。
「・・・はい・・・」
「声が小さい!!」
一旦足を離し、少年の側頭部を蹴り上げた。
少年はごろりと回転し、震える腕で立ち上がった。
「──はい!!」
その声も震えていた。
129呪縛 3:2005/12/14(水) 21:54:12 ID:0TYpSiBa
どうして・・・こんなことに・・・
ジェイはここに至るまでの経緯を頭の中で反芻した。

他の参加者達が次々魔法陣に消えていく。ジェイはセネルに歩み寄り、言った。
「セネルさん、どうやら次はあなたの番みたいですよ」
「分かった」
そうしてセネルは魔法陣向けて歩き出した。
彼の近くに立っていた少女が一歩前に出て声を上げる。
「お兄ちゃん!」
「シャーリィ、心配するな。きっと、また会える。必ず会いに行く。だから待ってろ、シャーリィ」
そうして彼は消えていった。

その後、シャーリィ、モーゼスの順で魔法陣に乗り、消えていった。
一人残されたジェイは、今の内に参加者達を品定めしておこうと思い、
辺りを見回し始めた。が、その時、不意に肩を掴まれ、強く引っ張られた。
「会いたかったですよ、ジェイ」
狂気の笑みを浮かべて語りかけるその男、ソロンを見た瞬間、
その時からジェイの心は金縛りにあったように正常な働きを失った・・・

・・・そういえば、シャーリィさんは今どうしているだろう。
兄、セネル・クーリッジを亡くして、どんな思いをして、どう行動しているのだろうか。
そんな疑問がジェイの脳裏に浮かんだ。手遅れになる前に彼女に会っておきたかった。
130呪縛 4:2005/12/14(水) 21:55:00 ID:0TYpSiBa
ソロンが喋りだした。ジェイは現実に引き戻された。
彼はジェイが洞窟に居た時のことを話していた。

「いやぁ運良くあなたが私の近くに居たことは幸いしました。
 おかげでじっくり作戦を練ることが出来たはずなんですがねぇ・・・」
横目にじろりとジェイを見やる。ジェイは怯えたように立ち尽くしている。
「まさかとは思いますが、あなたはあのままあの少女と行動を共にし続けるつもりは無かったですよね?」
ジェイの様子に変化は見当たらない。しかしその内情は大きく揺れていた。
ソロンは更に揺さぶりをかけるように、
「まさかそんなことはありませんよねぇ。あなたは私の弟子なんですから。
 弟子が師匠を裏切るなんてそんな馬鹿なことはありませんよねぇ。
 特に私は幼いころからあなたの面倒を見てきました。いわば私は親代わりです。
 そんな恩人である私の言うことを聞かないなんて、信じがたいことですよ、ええ」
「・・・」
「どうなんです?ジェイ」

ジェイは引き絞るような声でつぶやいた。
「ちゃんと・・・言うことを聞いて・・・やりました」
「よろしい。ちゃんとあの少女と、マウリッツを殺すつもりでしたね?」
ジェイの顔が一層こわばった。そして口を開く。
「・・・はい」
その言葉を聞いたソロンは更に狂気に歪んだ笑顔を見せた。
そして何事がぶつぶつとつぶやきながら、ジェイの周囲をぐるぐると回り始めた。
131呪縛 5:2005/12/14(水) 21:56:03 ID:0TYpSiBa
「いや、結構です。それを聞いて安心しました。しかし、しかしですよ、一つ不可解なことがあるのです」
ジェイは何も言わずにただうなだれていた。ソロンの放つ言葉を恐れている様だった。
「あの少女・・・ミント・アドネードでしたかな?私は先刻の放送で名簿に死亡者へ印を付けたのですが、
 どういうわけかこの少女は死んでいなかったのですよ、マウリッツは死んでいたのに。
 実に不思議ではありませんか?」

少年は鉄の様に押し黙っている。ソロンは構わず続けた。
「まさかとは思いますが、あなたは手を抜いたのではないですか?あるいは、意図的に少女を避けたとか」
「そんな・・・そんなことはありません!」
少年はそれまでとは違って強く言葉を発した。
ソロンが言ったことは、少年自身、不可解に感じていたことでもあったのだ。
「ちゃんと・・・二人に攻撃がいくように・・・やりました」
「本当ですね?」
「・・・はい、それは間違いありません」
「そうですか、それでもこの少女は生きている。
 この少女はあなたに殺されかけたのを覚えているでしょうから・・・どうしましょうかねぇ」

ソロンの顔は以前として嬉々としている。対してジェイの顔は青ざめて悲痛だった。
突然ソロンはジェイの頭を掴んだ。そして顔を少年の側頭部に密着させ、耳元に囁いて言った。

「この少女を殺しなさい」

その言葉は、まるで少年自身に対する死刑宣告であるかの様に響いた。
少年はただ震え、足元を見つめるばかりだった。
132呪縛 6:2005/12/14(水) 21:57:00 ID:0TYpSiBa
「この少女が生きている限り、あなたも気が散って仕方が無いでしょう。
 不安な要素は早く除去せねば。もう一度あなたがこの少女を手にかけて殺しなさい」
ジェイはただ黙っていた。ソロンは少年の頭から荒々しく手を放した。

「あなたはさっき言いましたよね?私の言うことを聞くと。だから殺りなさい。この少女を。
 私の言うことを聞いていればいいんです、あなたは。そうして二人で生き延びようではありませんか。
 このゲームで生き残るのに最も効率がいいのはどんどん参加者達を殺すことです。
 そうすることであなたの身の回りの危険は少しずつ消えていき、やがて安息の時が訪れるのです」
「はい・・・」
「さあ、行きなさい。きっとあの洞窟、或いはその近くに居るはずです。
 ああ、そうそう、分かってると思いますが、途中出くわした連中は必ず殺しなさい。
 どんな卑怯な手を使おうとも構いません。全員、殺しなさい。いいですね?」
「はい・・・」

「あなたの支給品は、その刀以外にまともな物はありませんでしたね」
ジェイの支給品、交換してしまったホーリースタッフ以外の二つは、
おもちゃのダーツセットに、厚い辞書。とても戦闘に役立つとは思えなかった。

「ではあなたにこれを差し上げましょう。あなたが得意とする武器です」
そう言ってソロンは懐からクナイを十枚ほど出した。
「私はこれを二十枚ほど持ってますので、半分渡します」
ジェイは黙って受け取ると、それらをソロンと同じように懐にしまった。
「もう夜中もいい所です。闇討ちは私たちの得意分野の一つですから、しっかり働いてくださいよ」
「はい・・・」
そうしてソロンは煙幕と共に消えた。

一人残されたジェイは、しばらくそこに佇んでいたが、
やがて操り人形の用にたどたどしく歩き出した。



【ジェイ 生存確認】
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット 辞書 クナイ(残り十枚)
状態:傷心 全身にあざ、生傷
第一行動方針:ソロンに従い、ミントを殺す
第二行動方針:ソロンに従い、遭遇した参加者を殺す
第三行動方針:シャーリィを探す
現在位置:C7の山岳地帯からG3の洞窟へ移動中

【ソロン 生存確認】
所持品:クナイ(残り十枚) ????
状態:無傷 狂気
第一行動方針:周りをかき乱し、傍観して楽しむ
第二行動方針:ジェイの監視
現在位置:C7の山岳地帯から移動
133破壊の時 1:2005/12/16(金) 23:52:23 ID:rD+3dO76
二人の少女が居た。
一人は紫色の柔らかな髪を二つに結んだ、怯えた目の少女。
もう一人は光度の低い金髪を長く伸ばした、冷たい目の少女。
二人は暗闇の中で出会い、顔を見合わせていた。
すぐ近くに森林が連なっている。少し離れれば橋もある。海も近い。
少女達はお互い止まったまま、虚ろに視線を彷徨わせた。

「ねぇ、どうしたの、あなた」
金髪の少女、シャーリィ・フェンネスが口を開いた。
紫髪の少女、メルディは身を縮めると、おずおずとした調子で答える。
「メルディ・・・死にたくないよ・・・怖い・・・」
「そう、怖いのね・・・」

シャーリィが一歩前に進む。メルディは一層怯え、後ずさった。
「やだよ・・・来ないで」
メルディの精神は乱れていた。
先程の、覆面の男の急襲により、彼女が恐れる『死』はより現実的なものとして彼女に突きつけられてた。
そんな少女の様子に、シャーリィは口元を緩ませ──しかし目は冷酷なまま──更に歩み寄った。
「怖がらないで、みんながたくさん死んで怖いんでしょうけど、逃げちゃ駄目なの。
 ちゃんと気持ちを落ち着かせて、しっかりと行動しなくちゃ。ね?」
シャーリィの言葉は年長者が年下の子供をあやすような、暖かな含みがあった。
その言葉に、微かにメルディは張り詰めた気持ちが緩んだ様に、震える手を止めた。
134破壊の時 2:2005/12/16(金) 23:53:12 ID:rD+3dO76
「怖く・・・無い?」
不思議な発音で喋る少女。
「私は怖くないの。お兄ちゃんに会えるから」
「お兄ちゃん・・・?」
「あなたにも、居るでしょう?どんなことがあっても会いたい、大切な人が」
「大切な、人・・・」

メルディはその時、たくさんの人物を思い浮かべた。共に旅をした仲間達、父と母、ヒアデス、ガレノス、故郷の人々・・・
彼らの姿を思い浮かべて、少し気分が楽になった気がした。
そうだ、また、会いたい。その思いが少女に起こった。
この島には、怖い人もたくさん居るけど、確かに少女の仲間もまた、居るはずだった。

「会いたい・・・メルディ、みんなに会いたいよ・・・」
「そう・・・私も、お兄ちゃんに早く会いたいの」
シャーリィはまた一歩少女に歩み寄った。
しかし少女はさっきの様に怯えはしなかった。黙ってそこに立っている。

二人の距離は二メートルほど離れていた。シャーリィもそこで立ち止まり、静かに口を開く。
「私はお兄ちゃんに、何があっても会いたい。だから、ね」
シャーリィはそこで言葉を一旦切り、目前の少女を黙って見つめた。そして、
「あなた、悪いけど、死んで」
そう言い放ち、手にしたマシンガンを少女に向け、引き金を引いた。
135破壊の時 3:2005/12/16(金) 23:54:05 ID:rD+3dO76
メルディは一瞬、何を言われたのか、何が起こったのか理解できなかった。
しかし自身の体に突如激痛が走ったことが、彼女を一気に恐慌させた。
「っ!痛っ!!」
銃弾によって撃ち貫かれた左腕をかばいながら、困惑の表情をシャーリィに向けた。
しかしシャーリィは冷酷な表情のまま、躊躇うこと無しに銃を乱射した。
ぱらららら、という甲高い音が響く。
その黒い金属の筒は少女が扱うにはやや重過ぎるのか、狙いはあまりよくなかった。
だがそれでも連続的に撃ち出された弾丸は、メルディの右足首をかすめ、左肩を貫通した。
「嫌だ、やめて!」
涙交じりに、叫ぶ。しかしシャーリィは全く動じなかった。
メルディは森の中へ駆け出した。
その背中目掛けてシャーリィは銃を乱射する。
今度は当たらなかった。その隙にメルディは木々の中に隠れた。

「はあっ、はあっ・・・」
メルディは一本の大きな気の裏側に隠れた。丁度シャーリィに背を向ける格好である。
「う、うう・・・」
目に涙を浮かべ、しゃがみこむ。所々傷ついた箇所が、強く痛んだ。
だがしばらくすると、再びぱららら、という音が聞こえた。
そして同時に、メルディが隠れた木の裏側でバキバキと樹木の砕ける音がした。
「・・・嫌、怖い・・・!!」
メルディはしゃがみこんだ体勢のまま、頭を抱えて縮こまった。
やがて音は止み、辺りは急に静かになった。
少女はゆっくりと顔を上げ、後ろを向く。
あの人は、どこかへ行ってしまった・・・?
そう思った次の瞬間、突然地面が揺れだした。
地震?
そうでは無かった。
草花が微かに生い茂る地面は、一斉にその姿を変え、鋭い岩盤となって隆起し始めた。
大地が走り、少女を激しく打ちつけた。
少女は全身を高速で飛び出してくる土の塊にぶつけながら、やがて派手に吹き飛ばされた。

メルディは地面に伏しながら、シャーリィがウージーサブマシンガンを片手に、ゆっくりと歩み寄るのを見た。
136破壊の時 4:2005/12/16(金) 23:54:52 ID:rD+3dO76
・・・死にたくない
──ならば我が力を貸そうか?
金髪の少女が近付いてくる。

・・・みんなに会いたいよ
─―ならば戦い、殺せ。
少女はまだ自分に息があることを確認した。

・・・怖い、嫌だ、痛い
──誰にも負けない力をやろう
少女はゆっくりと、銃口をこちらに向けた。

・・・シニタクナイ
──ナラバワガチカラヲツカエ

「あああああああああああ!!!」
メルディの体が突如光り出した。
黒い光、それは彼女の体を包み、やがて闇を生み出した。
その時、凄まじい裂帛の力が起こりシャーリィを弾き飛ばした。
そして、メルディはゆらりと立ち上がった。
その体からは、黒く禍々しい魔力が霧の様に立ち昇っていた。
137破壊の時 5:2005/12/16(金) 23:55:53 ID:rD+3dO76
シャーリィは不意を受け、やや戸惑いがちな表情な浮かべたが、すぐにウージーを構え直すと、メルディへと発砲した。
メルディ、或いは別の誰かは、右手を前に出して黒い魔力の渦を具現化した。
吐き出された銃弾は、吸い込まれる様にそこに入っていき、跡形も無く消失した。
「ブラッディハウリング!」
その声は確かにメルディから発せられたものの筈だった。
しかしその響きは、二人分に聞こえた。少女の声と、もう一人、誰かの。
先程銃弾を吸い込んだそれは、宙から飛来してシャーリィに襲い掛かった。
そして周りの木々、草花ごと消し飛ばした。
「くっ!」
シャーリィは咄嗟に防御技を発動させていた。
半透明の緑色の球体が彼女を包み、襲い掛かる術の威力を軽減した。
しかしそれでも、彼女が負ったダメージは軽くはなかった。

何が起こったのか。まるで違う少女の様子にシャーリィは幾分か戸惑いを覚える。
だが彼女の心を支配したのはもっと別の感情だった。
「何よ、あんた・・・」
再度術を放とうとするメルディに、小さく言葉を切る。
「何で私がお兄ちゃんに会うのを邪魔するのよっ!!!」

そう叫び、ウージーを収めて、両手を動かし術を唱える。
そうして二人はほぼ同時に、全く同じ言葉を叫んだ。
「インティグネイション!!」
漆黒の天より雷が生まれ、お互いの位置へ二発同時に落ちた。
先程南西より起こった爆発音より更に凄まじい轟音。
雷が走り、木々は倒れ、砕かれた土塊が舞い上がった。
138破壊の時 6:2005/12/16(金) 23:56:46 ID:rD+3dO76
シャーリィは自身に降りかかった木々の屑を押しのけ、静かに立ち上がった。
周囲を見回す。既にこのエリアの森林の三分の一は消滅したと思われる、壮絶な光景。
だがそこに目当ての少女の姿は無かった。
逃げられた?そう自問し周囲の瓦礫を探る。
しかしやがて彼女はその行為があまり意味の無いものだと気付いた。
逃げていようが力尽きていようが、どちらにせよいずれは皆死んでしまうのだ。
自分が生き残り、兄と再会できればそれでいい。
あの少女の一人ぐらい、どうということは無かった。

・・・もしかしたらお兄ちゃんはあっちの方に居るかもしれない・・・
自身に回復爪術をかけた後、彼女は橋の向こうを見つめた。そして歩き出す。
既に彼女の中で、兄のセネルは生きているのか死んでいるのか不明瞭になっていた。
しかし、それでも彼女は歩き続けるしかなかった。
止まってしまえば、耐えられない悲しみに身を潰されてしまうから。
兄が生きていようが死んでいようが、
彼女は最後の一人になるまで殺戮をする以外の選択肢は与えられていなかった。

メルディは走っていた。
──さっきの自分は誰?自分は、一体何をしていたの?──
全身が痛み、あちこちから血が噴き出るのも構わず、闇雲に走り続けた。
ネレイドの干渉をとうとう許してしまった彼女は、最早まともな精神力が残されていなかった。
ただ走っていた。また誰かに会った時、自分がどうなるか、考える気力さえ起こらなかった。
139破壊の時 7:2005/12/16(金) 23:57:33 ID:rD+3dO76
【シャーリィ 生存確認】
 所持品:TP中消費 UZI SMG(30連マガジン残り4つ) ????
 状態:極めて冷静
 第一行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
 現在位置:C5の橋付近から西へ移動中

【メルディ 生存確認】
 所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
 状態:TP中消費 全身に打撲 背中に刀傷 両手足に浅い刀傷 左腕に銃創 右足首に擦り傷
     左肩に銃創 パニック ネレイドの干渉を抑えきれない
 第一行動方針:死にたくない
 第二行動方針:仲間と合流
 第三行動方針:元の世界へ帰る
 現在地:C5の森林地帯から移動中
140ふられストーカーマン 1:2005/12/18(日) 01:04:12 ID:lTvwVmO/
ヒトとはなんと弱い存在だろう。
スールズの主婦、ポプラは自身の無力さを十二分に味わっていた。
ゲームが始まってかなりの時間が経っているのに、彼女は何も出来ずに居た。
ただ、支給品として出てきた小動物──クイッキー──を抱きかかえて震えるだけだった。
移動しようと何度も思った。しかしその度に聞こえてくる、銃声、轟音、木々が倒れる音・・・
そうした非現実的な環境は彼女をその場に釘付けにしてしまった。

初めてクイッキーが出てきたあと、改めて支給品を確認したら後一つ、別のものが入っていた。
果物の様に湾曲し、表面がデコボコした、手榴弾二つが入っていた。
説明書によれば、ピンを抜けば数秒後に爆発するとのこと。
爆発。この小さなものが、どれくらいの破壊力を持っているか、彼女はよく分からなかった。
分からなかったが、それを決して使ってはならないとは思った。
しかし捨てることは出来なかった。自分の命を守るものが無くなってしまうような気がした。

放送により、殺し合いは現実的なものとなって彼女にのしかかってきた。
やめさせようとも思ったが、誰にどう言えば殺し合いは終わるのか分からなかった。
彼女の知り合いは少なかった。ヴェイグ・リュングベルとティトレイ・クロウ。
もう後二人ほど知った顔が居た気がしたが、思い出そうとすると体が拒絶するのでやめた。

この島を大きく二つに分ける川が流れている。
その元にある、連なった山。彼女はそこの陰に座っていた。
既に真夜中である。視界もあまり良好ではない。
「クイッキー!」
突然クイッキーが鳴いた。
「クイッキちゃん、どうしたの?」
ポプラは自分より一メートルほど離れた地点で北に向かって叫ぶクイッキーを見つめた。
それから視線を上にずらす。
ポプラのは一気に緊張した。
暗闇でよく見えないが、確かに誰か居る。
誰かが横を向き、東に向けて歩いている。
恐らくクイッキーが鳴かなければ気付かなかっただろう、その人物は彼女達に気付く事無く歩を進めている。
141ふられストーカーマン 2:2005/12/18(日) 01:04:59 ID:lTvwVmO/
ポプラは恐怖で固まっていた。
もしかしたら、あれは殺し合いに乗った者かもしれない、自分を殺してくるかもしれない。
その影ははっきりと見えないが、マントを付けている様だった。
そして手に刀身の長い剣を握っている。
もう片方の手は、何か四角い小型の何かを握り、顔の前に持っていた。
どう見ても怪しい。あまり近付きたくない気がした。
その影が彼女の視界の丁度真ん中を通り抜け、更に東に進もうとした。
よかった。どうやらこちらに気付かずに行ってしまいそうだ。
彼女はほっとした。同時に、仲間になれたかもしれないチャンスを逃したという自責の念に悩まされた。

しかし・・・

不意にその影がこちらを振り向いた。
ポプラは一瞬で体が硬直し、その人物の姿をまばたきもせずに見つめた。
しばらくそのまま動かなかった。
動いたら、こちらに居ることが気付かれてしまうような気がした。
だがそんな彼女の様子もお構い無しと言うように、その影は彼女の方へ歩き出した。

「ひっ・・・!」
ポプラは身を強張らせ、腰を付いた体勢のまま後ずさりした。
その影はずんずんと近付いてくる。
「ひぃっ!」
彼女は震える足で立ち上がり、もつれさせながらも走り出した。
「クイッキー!」
クイッキーも走り、彼女の袋に飛び込んだ。
そして影も走り出した。
「ひいぃぃぃ!!」
殺される。彼女はひたすら走った。追いつかれたら殺される。
そんな思いが頭を占めた。自分を追う影が、得体の知れない殺人者の様に思えた。
「だ、だれっ、か、助け・・・!」
混乱のあまり舌がうまく回らない。
足がガクガクする。周りの様子もよく分からない。
彼女は何が何だか分からなくなっていた。
142ふられストーカーマン 3:2005/12/18(日) 01:05:45 ID:lTvwVmO/
【ポプラおばさん 生存確認】
状態:パニック 恐怖 無傷
所持品:クイッキー 手榴弾×2
第一行動方針:追跡者から逃げる
第二行動方針:皆が団結するように動く
現在地:D5の草原地帯から東へ移動中

【ロニ 生存確認】
状態:無傷
所持品:簡易レーダー なりきり剣士セット
第一行動方針:レーダーに反応のあった者の識別
第二行動方針:ゲームに乗った者の駆除
第三行動方針:仲間との合流
第四行動方針:武器の調達
現在地:D5の草原地帯から東へ移動中
143暗転入滅 1:2005/12/18(日) 18:40:05 ID:W2U03UbG
ロニ・デュナミスは焦っていた。
マリー・エージェントと別れてから、久々にレーダーに反応があった。
暗闇でよくは見えなかったが、女性だということは何となく本能的に分かった。
追おうとしたら、逃げられた。
声をかけようとしたが、相手は彼の予想以上に足が速い。
レーダーの点が画面上に表れたり消えたりした。
次第に彼の息も切れてきた。随分走った気がする。
だが、その点が不意に止まった。
向こうも疲れたのだろうか。
レーダーと前を交互に見つめながら、直も走り続けた。
「おい、そこのあんた──」
声を発しかけたが、再度レーダーを見て彼はちょっと躊躇った。
追いかけていた者のすぐ近くに、新たに別の点、反応があった。
そしてすぐに聞こえた、耳をつんざく様な悲鳴。
「ひぎゃあぁぁああ!!」
ロニは言葉を失い、更に急いで反応のあった場所に走った。

反対側へ向けて、彼の足元を何か小動物が駆けていったが、気にしなかった。
144暗転入滅 2:2005/12/18(日) 18:40:54 ID:W2U03UbG
その場の光景、赤と黒。
赤い血を流し倒れている、山羊のような外見の女性。
本なんかで読んだことのある、獣人とか亜人とかそういうものだろうか。
だが、その体が既に息絶えていることは明らかだった。

そして黒い髪、漆黒の夜に溶け込んでしまいそうな雰囲気の少年、血に染まった剣を握る彼・・・
その少年も、彼が握る剣もロニにとっては知っていることだった。
「ジューダス・・・いや、リオン・マグナスか!」
ロニは無意識の内に叫んでいた。
目の前で殺人が行われたことに対して少なからず動揺したこと、
何より手を下したのがあのリオン・マグナスであることが彼の自制心を緩めていた。
目の前の少年は名前を呼ばれたことに大して動揺はしなかった。
ただ冷たい瞳で、ロニを見つめるばかりである。
「僕を・・・知っているのか?だが、そんなことは関係無いな」
そうつぶやき、その剣、シャルティエを構えた。
ロニはこの状況を信じがたいものと思った。
自分やカイル達と共に旅をし、何度も窮地を助けてくれた、ジューダスという存在。
その彼の過去であり同一の存在である、リオン・マグナスという存在。
その彼が自分を殺そうとする。お互いの事情を何も知らないまま。

・・・こんな、こんなタチの悪い冗談があってたまるかよっ・・・!!

ロニのその思いも虚しく、リオンはこちらに走り出していた。
上からの振り下ろし。剣先が彼の肩を掠める。

彼は急ぎレーダーを片付け、距離を取り向き合った。
突きつけられた現実は、彼にとってはただの悪夢でしかなかった。
145暗転入滅 3:2005/12/18(日) 18:41:40 ID:W2U03UbG
【ロニ 生存確認】
 状態:無傷 若干の疲労
 所持品:簡易レーダー なりきり剣士セット(仮面、プラスチックの剣、マント)
 第一行動方針:リオンを倒す
 第二行動方針:ゲームに乗った者の駆除
 第三行動方針:仲間との合流
 第四行動方針:武器の調達
 現在地:D6の草原地帯

【リオン 生存確認】
 状態:無傷
 所持品:シャルティエ
 第一行動方針:ロニを殺す
 第二行動方針:ゲーム参加者の殺害
 第三行動方針:マリアンとの再会
 現在地:D6の草原地帯

【ポプラおばさん 死亡】
【残り42人】
146祈りがもたらすは 1:2005/12/19(月) 22:52:56 ID:9nCmcJde
拡声器から聞こえる声。それを聞いても、眉一つ変えない氷の青年――ヴェイグは、表情の通り何も思わなかった。
知っている人物の名は無かった。尤も、自分が命を奪ったあの女性の名はあったのであろうが、どの名前かは分からなかった。名簿を見てないのだから。
一度、両目をつむってみる。たった数秒ではあるが、祈ってみる。数秒だけ。それ以上し続けていたら、自分の誓いが揺らいでしまいそうだから。こんな形式だけの祈りに意味は無いと思うから。目を開ける。見える景色は変わらない。光宿らぬ青年は再び歩み始めた。
共に言われた禁止エリアには、丸印が付けられていた。4つの内2つは殆どが海。陸が占めるエリアも、禁止されるのはまだしばらく先だ。気にする程でもないだろう、そう思いながら歩を進めていく。
あれからヴェイグは北へ向かっていた。ルーティと戦い終えた時には、陽は傾き始めていた。それから歩き続け、辺りはもう大分暗い。大抵の人は安息を求めて、村や町に集まってくるだろう。
147祈りがもたらすは 2:2005/12/19(月) 22:57:08 ID:9nCmcJde
それを狙うのも一つの手だが、彼はそれを選ばなかった。何せ、自分は一人。このバトルロワイアルのルール上、必ず固まって行動している人物はいる。ヴェイグ自身はまだそんな人達を見たことは無かったが、簡単に予想はついた。
戦い自体こそはできるものの、やはり一対多数では分が悪い。負傷した傷もある。かといって森で暖を取れば、立ち上る煙で「自分はここにいる」と言っているようなものである(ヴェイグは実はルーティと戦う前に、西に立ち上る煙を見ていたりする)。
そこで、すぐ近くに町はあっても、少し離れた北の城を目指していた。城ならもし誰かいても、狭い町や村よりは幾分隠れやすい。
このゲームで勝ち抜くには、ただ人を殺していくだけでは駄目だ。頭を使って冷静に状況を見なくてはいけない。焦った方が負ける。
必ず戻る――。その意志が、ヴェイグを自然と冷静にさせていた。
「クレア…オレは絶対に、元の世界へと戻る…」
道の向こうで待つのは、故郷に待つ大切なヒト達。その中にいる、ヴェイグに微笑みかける女性。
今はまだ遠くにいる。だが、近付ける。この道を進んでいけば、きっと――…。
148祈りがもたらすは 3:2005/12/19(月) 22:59:31 ID:9nCmcJde
こうしてヴェイグが城に着いたのは放送から数時間後、まだ真夜中というには早過ぎる時間だった。
暗闇の中にそびえる城は不気味としか言いようがない。それでもヴェイグは体を癒す為、来たるべき好機に備えて城の中へ入っていった。

彼は幸運だったのかもしれない。彼が登城した城には、まだ誰もいなかったことが。
彼は不運だったのかもしれない。後に彼が通ってきた草原に、二人の男が現れることが。
そしてその二人の足元には…彼と同郷である女性の死体があることを、ヴェイグは知る筈もない。


【ヴェイグ 生存確認】
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(アップル、オレンジ、レモン、パイン、ミラクル)
現在位置:C6城の中
状態:右肩に裂傷、背中に刀傷、全身に軽い凍傷 。心状は冷静
第一行動方針:休息を取り、起こるかもしれない戦闘に備える
第二行動方針:ゲームに乗る。最後まで生き残る
149それは儚い夢の始まり 1:2005/12/19(月) 23:45:24 ID:c61IqUOu
ファラ・エルステッドは東の空を見やった。
つい先程南東で起こった爆発音から間もなく、更に巨大な轟音が聞こえた。
強烈な稲光も起こり、殺し合いは熾烈を極めていることを物語っていた。
「やれやれ・・・元気なことで」
いつの間にかジョニーが傍らに立ち、彼女と同じ方向を向いてつぶやいた。
「ジョニー・・・」
「だいぶ探してみたけど、この村には誰も居ないみたいだな」

二人は共に行動すると決めてから、まず北の塔を目指した。
森を迂回し、海岸線沿いに塔にたどりついた。
中は荒れており、ひどい有様だったが、人は居なかった。
その後二人は再度森を迂回し、シースリの村を目指すことにした。
村にたどりついてからは中の建物や道に誰か居ないか探したり、何か役に立ちそうな道具は無いかと探した。
充分な量の水と、食料も手にすることができ、更に多少の生活に役立ちそうな道具も手にすることが出来た。

彼女達の支給品は計五つ。
体力を増強する装備品、ブラックオニキス、
超巨大な戦斧、ガイアグリーヴァの計二つがファラの支給品だった。
そしてジョニーの支給品は、
精神力を自動回復させるメンタルリング、
稲刈りにでも使う様な鉄の刃を持つ小さな鎌、
海賊アイフリードの旗の計三つだった。
150それは儚い夢の始まり 2:2005/12/19(月) 23:46:12 ID:c61IqUOu
ファラは気落ちした。
お互いの仲間と合流し殺し合いを止めさせると言ったのに、仲間だけでなく他の参加者にすら出会えなかったのだ。
彼女達がそうしている内にも、殺し合いは行われ、大勢の人が死んでいた。
それは放送によっても明らかなことだった。
そしてその中には、ジョニーの仲間も含まれていた。
ファラに関しては該当する名前は呼ばれなかったが、とても素直に喜ぶことはできなかった。

漆黒の夜空を見上げながら、ファラはため息を付く。
「みんな、どうして、どうして殺し合いなんかするんだろう。こんなこと、絶対にしちゃいけないのに」
ジョニーが顔を下に向け、憂いある表情で唐突に言った。
「怖いからさ」
「え?」
ファラはきょとんとした表情をして、聞き返した。
「前にも言ったけど、俺は死ぬのが怖い。それは他のやつも同じだ。
だから自分以外の奴がみんな敵に見えちまうんじゃないのかな、たぶん」
「そんなこと無いよ、私とジョニーは知らない人同士だったけど、こうして一緒に居るじゃない」
「そうだけど、そうじゃない奴も居るのさ。孤独に悩まされて混乱したり、仲間だった奴等が自分を殺そうとしてる様に見えたり」
「駄目だよ、そんなの!」
リッドやキール、メルディが自分を殺そうとするなんて、ありえない。ファラはそう思いながら語気を強めて、

「きっと分かり合える時がくる、みんな本当は殺し合いなんかしたく無いって、
そうやってみんなが一緒になれる時が来るはずなんだよ」
「そうだな、そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。
どちらにせよ、こうして歩き回ってるだけでは参加者全員に俺達の声を聞かせることは出来ないだろうな」
ファラはそれ以上何も言えずに、黙って口をつぐんだ。
ジョニーは背中を向け、村の中の建物の一つに入りかける。
151それは儚い夢の始まり 3:2005/12/19(月) 23:47:06 ID:c61IqUOu
「なんだろうな・・・」
ファラがおもむろにつぶやいた。
「ん?どうしたんだい?」
「一緒に行動する様になってから度々思ってたんだけど、なんか、ジョニーって私の知ってる人と似てる気がする。
 ううん、そっくりさんとかそういうのじゃなくて、雰囲気って言うのかな、似てる気がするの」
ジョニーは表情を変えずに、ただ口を開いて、
「そいつも、このゲームに参加してるのかい?」
「ううん。その人は、ここには居ないよ」
ファラの表情が急に暗くなった。そしてうつむき、続けて言った。
「・・・私達の元の世界でも、もう居なくなった人だけど」
ジョニーは顔をそむけ、目を細めながら言った。
「そうか・・・」

それきり二人は何も言わず、村の民家で一階と二階に別れて寝ることにした。当然見張りも交代で行う。
宿屋だと敵の不意打ちを受ける可能性が高いとジョニーが判断してのことだった。
明日こそは仲間との合流を誓って、最初にファラが寝床に着いた。

彼女の頭の中は、どうやってみんなに殺し合いをやめさせるか、
戦う意思の無い者も居ることを伝えることが出来るかということで一杯だった。
誰かに会おうとしても結局出会えなければ、更にその間に人が次々死んでしまえば、意味の無いことだった。
彼女は焦っていた。せめてリッド達と合流したい。他の人たちに戦意の無い者が居ることを伝えたい。
そう願い続けて、とうとうまどろみ始めた時、彼女の頭に天啓の如き考えが浮かんだ。

そうだ。あれだ。あれを使えば──

彼女の頭は数時間前まで遡っていた。
村の調査の時、とある役所の様な建物の中にあった、ある道具を。
片手で持て、この島全体に声を響かせることが出来るそれを。
拡声器の存在が、ファラの頭の中に浮かびあがった。
152それは儚い夢の始まり 4:2005/12/19(月) 23:47:54 ID:c61IqUOu
【ファラ 生存確認】
 所持品:ブラックオニキス ガイアグリーヴァ
 状態:普通
 第一行動方針:とりあえず寝る
 第二行動方針:殺し合いをやめさせる
 第三行動方針:仲間との合流
 第四行動方針:ゲームからの脱出
 現在位置:C3の村

【ジョニー 生存確認】
 所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗
 状態:普通
 第一行動方針:見張り
 第二行動方針:仲間との合流
 第三行動方針:ゲームからの脱出
 現在位置:C3の村
153キャラ近況:2005/12/20(火) 19:08:53 ID:a984691M
現在地&キャラ近況

B2 塔内  リッド キール >103-108
B7 森   ダオス ミトス マーテル >57-58
C3 村内  ファラ ジョニー >149-152
C4 草原  カッシェル(B2〜B3へ移動中) >123-126
C5 橋   アーチェ >109-110
C5 橋   シャーリィ(西へ移動中) >133-139
C5 森   メルディ(移動中) >133-139
C6 城内  ヴェイグ >146-148
C7 山   ジェイ(G3へ移動中) ソロン(移動中) >127-132
D6 草原  ロニ リオン >143-145
F4 森   ティトレイ >87-97
F4 森   クレス コレット サレ >87-97
F4 平原  バルバトス マグニス >87-97
F7 森   ユアン グリッド >111-116
G2 崖   リアラ クラトス >35
G2 崖   デミテル(北へ移動中) >59-62
G2 地下  カイル >77-78
G3 洞窟  ハロルド スタン ミント >43-46
G3 洞窟  ジーニアス >77-78
G5 町   コングマン >111-116
G5 町   プリムラ カトリーヌ >117-122
G6 森   ミミー トーマ >98-102

Part2になってからの死者
E4 砂漠  マリー >51-54
F4 川   しいな >79-84
D6 平原  ポプラおばさん >143-145

Part2になってからまだ出てない人達
B5 森   ロイド ジューダス
D7 海岸  ゼロス マリアン
現在地不明 モリスン

・これからの禁止エリア
 午後九時:H6
 午前零時:B4
 午前三時:G1
 午前六時:E7

・地図 http://www.hasimoto999.aki.gs/img-box/img/858.jpg〔PC〕
http://i.pic.to/2g2oa〔携帯〕

・何かあればこちらまで↓
テイルズ オブ バトルロワイアル 感想議論用スレ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132855244

・前スレ
テイルズ オブ バトルロワイアル
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1129562230
154今するべきこと1:2005/12/21(水) 01:04:45 ID:/GbmMp+U
ロイドとジューダスの間には沈黙が続いていた

ロイドは相変わらず思案にふけっている
今こうしている間にも殺戮が行われていると思うとゾッとする
みんな無事なのかな…
オレ、どうすりゃいいんだよ…

「…いつまでそうしているつもりだ」
近くに座っていたジューダスが重い口を開いた
「お前にも仲間がいるのだろう?今こうしてお前が落ち込んでいる間にも、仲間達が殺されているかもしれんのも事実だ」
「…だからお前!そんな言い方やめろって!」
ロイドは激しく反発した
「だったら今自分が何をすべきか、よく考えてみるんだな」
155今するべきこと2:2005/12/21(水) 01:06:43 ID:/GbmMp+U
“今自分が何をすべきか”

ジューダスはこの言葉を、自分にも言い聞かせていたのかもしれない
ルーティは死んだ
だが、僕にはまだやるべきことがある
カイル達のこと…
もう一人の自分のこと…
そして…
ミクトランのこと…

「とにかく、いつまでもここに居ても意味は無い。情報も欲しいし、少し移動するぞ」
そう言うとジューダスは荷物をまとめ始めた

「ジューダス」
ロイドが立ち上がって言った
「ありがとう!おかげでオレ…なんかフッ切れたぜ!」
ロイドもまた、仲間達と必ず生きて帰ることを誓ったのだった
156今するべきこと3:2005/12/21(水) 01:08:32 ID:/GbmMp+U
「あ、そうだ。」
ロイドはそう言うと、荷物の中から忍刀桔梗を取り出し、ジューダスに渡した
「…?なぜこんなものを?」
「お前も二刀流だろ?構え見てりゃわかるって。それ、オレは使わねえからお前が持ってろよ」
ロイドも荷物をまとめ始めた
「…ふっ、お人よしな奴め…」
そう言いながらも、仮面の奥からは少し笑みがこぼれた

「あのさ、移動する前に飯食わねえか?“腹が減ってはナントカはできぬ”ってな!」
ロイドはそう言ってさっきまとめたばかりの荷物からパンを取り出した
「全く…やはり僕は馬鹿に縁があるようだ」
157今するべきこと4:2005/12/21(水) 01:10:31 ID:/GbmMp+U
ロイドとジューダスは二人並んでパンを食べている

「オレさ、実はトマト嫌いなんだよな…」
「今この状況でトマトなんて食材が出るわけないだろ。くだらん心配をするな」
ジューダスは呆れた顔で言った
「なんだよ!じゃあジューダスは好き嫌いないのかよ!」
「僕は…」
ジューダスは少し照れながら小声で言った

「…ニンジンとピーマンが嫌いだ…」
「あっははははは!」
「笑うな!食べ終わったならさっさと行くぞ!」

二人は移動を始めた
158今するべきこと5:2005/12/21(水) 01:13:59 ID:/GbmMp+U
【ロイド:生存確認】
状態:無傷、動揺から立ち直る
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
行動方針1:移動
行動方針2:ジューダスと共に協力してくれる仲間を探す
行動方針3:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
現在地:B5の森

【ジューダス:生存確認】
状態:無傷、悲しみから立ち直る
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)???、???(???は両方武器ではない)
行動方針1:移動
行動方針2:ロイドと共に協力してくれる仲間を探す
行動方針3:ミクトランを倒す
現在地:B5の森
159赤と黒と青と 1:2005/12/21(水) 22:41:17 ID:tHFX5CSP
薄闇に映える赤髪の男は自らに治癒術を唱えながら、意識の片隅で耳を澄ませていた。
「そんな…」
無常な放送を聞き、傍にいる少女が小さく悲嘆を零す。
彼女が仕える主ヒューゴの娘。
彼女がよく知るリオン・マグナス――否、エミリオ・カトレットの姉。
ルーティ・カトレット。
彼女の名が呼ばれた。
そのルーティの死は、黒髪の少女を深い悲しみで支配する。
皮肉にも少女が縋るように抱いている剣は、今は亡きルーティが所持していた剣――ソーディアン・アトワイトである。
『マリアン…』
「マリアンちゃん…」
マリアンと呼ばれる少女と一緒にいる二人――正しくは一人と一本だが――が声をかける。
その内の一人アトワイトも、ルーティが死んだ衝撃と悲しみに染まっていた。
だがこのような姿になったとしても、彼女は軍人だ。
人の死など、日常茶飯事に体験してきたことだ。
諦めではないけれど、覚悟は既についている。
それに、何となく予想はついていたのかもしれない。
自分が、マスターであるルーティと離れ離れになった時点で。
最初から嫌な予感はしていた。
杞憂であればいい、とは思っていたが、まさか本当になってしまうとは。
160赤と黒と青と 2:2005/12/21(水) 22:43:20 ID:tHFX5CSP
こんなことを一度でも思った自分を悔やんだ。
しかし同じく共に決意した。
こんなゲームを始めた…ルーティの命を奪ったミクトランを、必ず倒す。
そして新たなマスターであるマリアンを助ける。
そう、決意した。

「…ところで、マリアンちゃん。お願いがあるんだけど〜」
放送が終わり、赤髪の男が軽い口調で言う。
こんな怪我をしているのに、どうしてこうも笑っていられるのだろうか。
それがマリアンには不思議であり、同時に悲しみの気持ちを和らげさせていた。
「何でしょうか…?」
「俺さま、何とか動ける位になってきたんだけど〜…」
「だけど?」
「魔力が尽きちまって、これ以上回復できそーもないわ」
これは男も予想していなかったことらしい。
男の魔力は、普段より効果が低い回復力のおかげで、重ねて唱えることで尽きてしまった。
面目なさげにハハッと笑うと、何故かマリアンもつられ微かに笑ってしまう。
この男は、自然と相手の気持ちを和らげる力を持っていた――軟派みたいだけれども。
マリアンは微笑みを作り言う。
「なら少し休んでいて下さい、ゼロスさん。私が見張ってますから」
161赤と黒と青と:2005/12/21(水) 22:45:16 ID:tHFX5CSP
「ハニーに見張らせるなんて、俺さまイイ男失格だな〜…でも、お言葉に甘えて休ませてもらうぜぇ…」
男…ゼロスはおちゃらけた笑みを浮かべると、急に集中を切らしたせいからか、糸が切れた人形のようにすぐ眠ってしまった。
マリアンはそれを見届けると、腕の中にあるアトワイトに向かって呟き始める。
「あの…アトワイト、回復する術を教えてくれませんか?」
『さっきも言ったけど、あまり力は使わない方が…』
「それでもゼロスさんを回復させないと。もう回復できないと言っていましたし、こんな怪我では…。
それに、少しでも早く動けるようにしておかなくてはいけませんから」
『…初歩的なファーストエイドなら、今のあなたでも使えると思うわ。
初歩的といっても、無いより余程マシね。手助けすることも出来るし。
さ、意識を集中して…』
言われた通り、マリアンは目を閉じ精神を集中する。
何かが巡るような感覚が体を支配する。
…直後、青い優しい光がゼロスの体を包み込んでいた。
胸の傷はまだ残っているが、肩の切創はほぼ完治したようなものだ。
体にどっと疲労が襲い掛かった気がした。
元々マリアンは戦う力を持っていないのだ。
162赤と黒と青と 4:2005/12/21(水) 22:47:06 ID:tHFX5CSP
こんな場所に連れてこられ、初めて術を行使したのである。無理はなかった。
ファーストエイドといえども、彼女にとっては大変な仕事をやり遂げたような気分だった。
これで私も役に立てる。そう思うと嬉しくなった。
『上出来ね、マリアン』
「ありがとう」
『でも…残念だけど、あなたは多くは使えないと思うわ。本当ならこんな場所に来るような人ではないもの』
「そうですか…でも、出来るだけでも充分です。何も出来ないよりは…」
『そうね。少なくとも人を救うことは出来るわ。このゲームでは重要なことよ』
「…はい」
アトワイトの言葉がひしひしと伝わってくる。
――ゲーム。
そう、こんなに人が死んでいるのに、これはゲームなのだ。
再びマリアンに現実が襲い掛かろうとする。
『大丈夫』
「え?」
しかし、アトワイトの声がそれをかき消した。
『必ず、あなたを守ってみせるから』

マリアンはおもむろに空を仰いだ。
黒い空に数多の星が散らばり、その中にぽつんと青い月が浮かんでいる。
傍には正反対な、赤い星がある。
マリアンはこのような世界でも…変わらず輝き続ける存在に、安心を感じるのであった。
隣で眠っているゼロスに視線を移す。
163赤と黒と青と 5:2005/12/21(水) 22:50:46 ID:tHFX5CSP
外見とはそぐわぬ静かな寝息、というのは失礼だろうか。
それほど音も立てず眠っていた。
――この人は、どこかエミリオに似ている。
外見も内面も違うけれども、纏うものは同じような気がした。
だからだろうか、この人を信じられると思ったのは。
荷物から名簿を取り出す。
そこに写っているのは、エミリオの姿。
もし再び会えたら、彼は協力してくれるのだろうか。
同じ風を持つゼロスが協力してくれたように、彼も。
一抹の願いを持ち、マリアンはソーディアンを固く抱いた。


【ゼロス 生存確認】
所持品:壊れたけん玉 ナイツサーベル ???? ????
現在位置:D8海岸
状態:切創 (胸の傷はまだ有り、肩は回復)、ほぼTP枯渇(睡眠により回復中)、睡眠
第一行動方針:寝る
第二行動方針:マリアンと共に行動

【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×14
現在位置:D8海岸
状態:軽度のショックと疲労、TP微消耗
第一行動方針:ゼロスの回復を待って共に行動
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
164邪の風、移動 1:2005/12/22(木) 00:50:08 ID:1e7zMqLP
「どうやらあの二人はもう追って来ない様だね」
サレは東の空を見やり、そうつぶやいた。結構な距離を走った気がする。
そして視線を落とし、横たわる少女、コレットと跪く青年、クレスに声をかける。
「様子はどうだい?」
少女を見つめながら、クレスが答える。
「僕は大丈夫だが・・・コレットが・・・」
撃たれた左手に頭に巻いていたバンダナを巻きつけ
一応の処置ができたクレスと違って、コレットの方は傷が重かった。
少女の息は荒く、表情も苦しそうだった。

「コレット、ちょっとごめん」
そう囁き、クレスはコレットの肩当てを外し、傷口がよく見える様に胸の辺りまで服を脱がした。
暗闇の中で晒された少女の肩は、紅く染まり、血がまだ流れている様だった。
銃で撃たれた場合の応急処置について詳しく知らない彼等は、
とりあえず共通支給品の水で傷口を洗い、なるべく清潔な布を肩に巻いた。
「何か悪い菌でも入ったのか?」
「そうかもしれないね、せめて回復の術が使えればいいんだけど・・・」
二人は顔をあわせる事無く黙りこんだ。
クレスは自分自身の回復なら出来たが、他者に関しては不可能だった。
サレは言うまでもなく、彼等は少女に対してこれ以上の治療の手が不足していた。
165邪の風、移動 2:2005/12/22(木) 00:51:19 ID:1e7zMqLP
ふとクレスが顔を上げて、
「サレ、何か役に立ちそうなものは無かったか?」と言った。
クレスは既に、自身とコレットの支給品の中に治療に役立つものが無いか探したが、
出てきたのは怪しげな茸と、鉄製の手枷だった。
「いや・・・僕の支給品も、この剣以外に役立ちそうなものは無かったよ」
サレは少し思案してからこう答えた。
「そうか・・・」
クレスは落胆し、少女を見やった。
166邪の風、移動 3:2005/12/22(木) 00:52:07 ID:1e7zMqLP
それからまたしばらくして、サレが口を開いた。
「クレス、提案があるんだけど・・・」
「どうしたんだ?」
「僕が今から、何か治療に役立ちそうなものが無いか探してくるよ」
サレはそう言った。クレスは驚き、
「いや、それは駄目だ。この夜に単独行動は危険過ぎる。まださっきの奴等が居るかもしれない」
「大丈夫だよ、この闇ならむしろ僕にとって動きやすいぐらいだ。
 コレットちゃんをこのまま寝かしておくことも出来ないし、
 かといって僕達二人がコレットちゃんを置いて行くなんて無理、そうだろう?」
クレスは深刻な話をしているはずのサレの表情に、
ほんのわずか別の何かが混じっている様に見えるのが気になった。
しかしそこには突っ込まず、慎重にその案を検討して言葉を発する。

「いいかもしれないが、誰かに会ったらどうする?」
「みんながみんなさっきの様な馬鹿面下げた野蛮な猿では無い筈だよ。
 もしかしたら僕達に協力してくれる人達が居るかもしれない」
クレスは黙っていた。サレは彼の言葉を待った。
やがて彼は重々しく口を開き、
「・・・分かった。けど、決して無理はしないでくれ。誰かに襲われても、深追いせずに逃げるんだ
 それと、あまり長い時間動き回るのも駄目だ。次の放送までにはここに帰ってきてくれ」
「ありがとうクレス、それじゃあ僕は行くよ」
そう言い、マントを翻して自分のザックを拾い上げる。
そしてコレットの隣に片手を膝に乗せた体勢で座り込み、
「コレットちゃん、がんばってね。すぐに楽にしてあげるから」
サレは微かに微笑み、さっと立ち上がった。
クレスと目を合わせ、少し頷く。
そうしてサレは漆黒の闇に消えていった。
167邪の風、移動 4:2005/12/22(木) 00:53:07 ID:1e7zMqLP
「やれやれ・・・」
充分に二人から離れた後、サレはため息を付いた。
少し、困ったことになってしまった。
三人が逃げる途中で、元居た場所を通ったが、そこには切れたロープがあるだけだった。
拘束されていたはずの男、ティトレイがあの場所から姿を消していた。
クレスとコレットは大して気にしなかったが(というより他人を気にする余裕が無かった)、サレにとっては違った。
あの時、ティトレイを殺そうとして中途半端に拘束を解いてしまったことが裏目に出た。
結果、男は再び逃げ出し、サレにとって頭痛の種が増えた。

コレットの怪我もそうだ。
あの少女は利用価値が高い。
一緒に居るだけで大抵のものはこちらに敵意無しと判断するに違いなかった。
そういう意味で、むしろコレットが怪我をしたことはこちらにとって有利に働くかもしれないとも思った。
お人よしの馬鹿が、無条件でこちらに近付いてくる可能性もあるということだ。
例外はさっき遭遇した野蛮な族どもで、
まああの様な輩とはあまりお近づきにならない方がこちらの身の為だと思った。
サレにとってはコレットを治療する為の道具、或いは人材を探すことも重要だったが、
ティトレイの始末を付ける事も重要事項だった。

その為の単独行動であった。
サレは歩を速めた。彼のマントが翻り、闇夜に同化した。
168邪の風、移動 5:2005/12/22(木) 00:54:12 ID:1e7zMqLP
【クレス 生存確認】
所持品:ダマスクスソード 手枷
状態:左手に銃創(止血) TP消費(小)
第一行動方針:コレットの様子を見守る
第二行動方針:コレット、サレと行動
第三行動方針:最後まで生き残る
現在位置:F3の森

【コレット 生存確認】
所持品:忍刀血桜 バクショウダケ
状態:体調を崩し、まともに動けない 右肩に銃創(止血)、発熱 TP消費(微)
第一行動方針:サレ、クレスと行動
第二行動方針:ロイド達と合流
現在位置:F3の森

【サレ 生存確認】
所持品:ブロードソード ????
状態:TP消費(小)
第一行動方針:ティトレイを探し、口を封じる
第二行動方針:治療に役立つ道具または人を探す
第三行動方針:クレス、コレットを利用する
第四行動方針:クレス、コレットと行動
現在位置:F3の森から移動中
169目 1:2005/12/23(金) 00:13:34 ID:T5ISqQtW
闇の中で、二人の男が対峙していた。
どちらも剣を装備している。一人は片手に、もう一人は両手に持っている。
しかし決定的に違うことは、一方のそれがプラスチック製だということだった。
「・・・」
リオンが無言のまま駆け出した。
「くそっ!」
ロニは顔をしかめ、握った剣を振る。
だが彼の剣は空を切り、相手の剣が彼の腕を切った。
二の腕の辺りから血が滲み出す。
そのままロニは右脚を振り回した。
しかしリオンは体を屈めてかわし、彼の顔面目掛けて跳んだ。
そして跳び上がり様の左回し蹴りを彼の横面に当て、着地と同時に走り、距離を取る。
170目 2:2005/12/23(金) 00:14:20 ID:T5ISqQtW
「ちっ・・・」
口を切ったか、血が頬を伝った。
やはりこんな装備では、とても有利とは言えない。
おまけにあのリオンは、体術の心得もある様だった。
・・・ジューダスはあまりそういう事はしてなかったんだがな・・・
ロニがそう思っていると、突然頭上から石つぶてが連続して降ってきた。
「あた、あいたたた!」
リオンが術を放ったのだ。ロニは即座にその場を離れ、こちらも詠唱を開始した。
「アクアスパイク!」
ロニの全身を覆う程の水の塊が現れ、リオン目掛けて回転しながら飛んで行った。
だがリオンは慌てることなく、冷静にバックステップして水流が消滅するのを待った。
そして水流は消滅した。それと同時に、ロニがリオンの目の前に現れた。
「何!?」
ロニは水流の陰に隠れてリオンに接近していた。
そして隙を与えることなく拳をリオンの顔面に叩きもうとするも、紙一重で避けられてしまった。
リオンは軽やかにステップを取り、ロニの周囲から離れる。
離れ際に斬撃を二度ほど、ロニの脇腹と左肩に当てた。
彼が反撃に出ようとした時には、既に充分な距離を取られていた。
171目 3:2005/12/23(金) 00:15:06 ID:T5ISqQtW
ロニの心にはまだ少しの葛藤があった。
確かに目の前に居るのは自分のことを知らないリオン・マグナスで、
自分を殺そうとしているが、それを無遠慮に倒してしまっていいのものかどうか迷っていた。
自分はゲームに乗ったものは駆除すると決めていたが、
いざ知った顔が(向こうはこちらを知らずとも)そうであると知り、実際に対峙するとその決意も揺らいだ。
更にカイルやジューダス、それにスタンさんやルーティさん、それらの人々のことを考えると、
やはり何か胸につっかかるものがあった。

リオンは距離を取ったまま、こちらの様子をうかがっている様だった。
ロニは静かに前方の少年を見つめると、ゆっくりと口を開いた。
「おい、リオン・・・マグナス。お前、どうしてこんなことをするんだよ?」
今更そんな質問に意味があるとは思えなかった。
しかし、どうしてもその理由は聞いておきたかった。
彼の考えうる最悪の事態を防ぐためにも、はっきりさせておきたかった。
黙ったままでいると思ったが、意外なことにリオンは返事をした。
「簡単なことだ。それがこのゲームのルールだからだ」
「だからって、それにお前が積極的に乗ることは無いんじゃないか?」
「・・・」
リオンは黙り込んだ。ロニは緊張した面持ちで、佇んでいた。
「それが・・・」
リオンの言葉にはどこか寂しげな響きさえあった。ロニは黙ったままで居た。
「それが、今の僕の存在理由だからだ・・・」
憂いある表情でつぶやき、顔を俯かせた。
そして顔を上げ、剣を構える。
172目 4:2005/12/23(金) 00:16:04 ID:T5ISqQtW
ロニは目を見張り、叫んだ。
「何言ってんだよ、お前!これに乗るってことは、お前の仲間の、スタンさんや・・・ルーティさん達とも・・・」
そこまで言い、口をつぐむ。そして打って変わって沈痛な口調で、
「そうだ、ルーティさん・・・ルーティさんが死んだこと、お前聴いただろ!?」
「・・・」
「いくらなんでもお前がやったなんて思わないが、
 お前がこれに乗ったら、ルーティさんを殺したやつと同じになっちまうぞ!それでもいいのかよ!」
「そうだな・・・」
リオンの言葉はいくらか自嘲気味に聞こえた。そして続けた。
「あいつは幸せだったかもしれないな。僕のこんな姿を見ずに死ねて・・・」
ロニは驚愕の表情を浮かべた。
・・・こいつは・・・
「それに、お前は馬鹿だ」

リオンの言葉は続く。ロニは嫌な汗を掻きながら、静かにしていた。
少年はちらりと脇に目をやった。
ロニもつられてそこを見る。
無残な女性の死体があった。ロニが追っていた人だった。
「僕はもう、手を汚してしまった。もう後戻りなど出来ない」
そう言い放つと、ロニ向かって走り出した。
・・・こいつは、もう・・・
「馬鹿野郎が・・・!」
ロニは歯噛みしながら、拳を強く握り締めて、ひねり出すように声を出した。
そして前を見る。リオンの姿が少しずつ近付いてくる。
「だったら俺が、お前を止めてやる!!」
──スタンさん、ルーティさん、カイルやジューダスの為にも──
「・・・愚かな奴だ」
光を微塵も感じさせない目で、リオンはそうつぶやいた。
173目 5:2005/12/23(金) 00:17:15 ID:T5ISqQtW
ロニは片手で剣を握り、もう片方の手でザックに突っ込んであった仮面を取り出し、ブーメランの様に投げた。
高速で回転するそれは、弧を描いてリオンに飛んでいったが、左手で軽く弾かれてしまった。
その一瞬の間に、距離を詰める。
だが接近するには充分に足らず、リオンが先に剣を振りかざした。
対抗してこちらも剣を振る。
乾いた衝突音。
ロニの剣は真っ二つに折られた。
そのままリオンの剣が動き、右の肩から血が噴き出る。
しかしロニは動じる事無く、背中のマントを外しリオンの顔面に被せた。
「くそ、これは・・・!」
視界を奪われたリオンはもがき、マントをどけようとした。
その隙にロニは左手に獅子の闘気を纏わせ、リオンの腹の辺りに叩き込んだ。
リオンの体が歪む。
ようやくマントが落ち、リオンの視界が復活する。
そのまま剣を水平に薙ぎ払うも、ロニは跳び上がり回避した。
そして空中で右手を突き出し、冷気の刃を放った。
冷気の刃はリオンに直撃し、彼の体勢を崩した。
174目 6:2005/12/23(金) 00:18:19 ID:T5ISqQtW
──このまま一気に──!
ロニは更に空中からリオンに襲い掛かろうとした。

・・・ロニは焦っていた。
勝負を急ぐあまり、リオンのダメージを判断し損ねた。

リオンの目に鋭く、暗い光が宿った。
そして空中から襲い掛かるロニから素早く距離を取り、剣を振るった。
ロニは驚き、顔をリオンに向けようとした。
その一閃は、丁度顔を上げたロニの両目を切り裂いた。
「うあっ!!がっ!!」
両手で顔を押さえ、悶え苦しみながらロニはふらふらと足取りが不安定になった。
「熱い、痛っ、うぐぁぁぁぁ!!!」
天に向けて吼えた。両目から流れる血は、だらだらと彼の顔を紅く染めていった。

そうした極限の痛みの中で、ロニの心に恐怖心が生まれた。
殺される。このままじゃ、殺される!
痛い。熱い。怖い。暗い。
暗い。暗い。何も見えない。何も見えない!
どこだ、どこから来る?それとも、遠距離から術でなぶり殺す気か?
ロニは恐慌し、滅茶苦茶に動き回った。
175目 7:2005/12/23(金) 00:19:32 ID:T5ISqQtW
その時、彼の足元に何かがコロコロと転がって当たった。
ロニは足を止め、その正体を判断しようとしたが、その数秒後に大きな爆発音が聞こえた。
凄まじい衝撃が彼を襲い、空高く打ち上げられた。
やがて最高点から落下し始め、地面に墜落した。

ロニの姿は、凄惨なものだった。
両足が消滅し、腰の辺りはこの暗闇に場違いな程の紅に染まっていた。
焼けた地面と、彼の身体から薄黒い蒸気が上がっていた。

リオンはポプラから奪った手榴弾の残り一つを自身のザックに入れると、ゆっくりと歩き出した。
そして吹き飛んだロニの荷物を回収した。
爆発の影響で中身のほとんどは使い物にならなかったが、その中の小型の機械はさほど壊れてもいなかった。
リオンはその機械を二度三度動かし、それの機能と、正常に動くことを認めると、
シャルティエを持つのとは反対の手でそれを持った。
それを見つめる目は、この闇夜と同じ、深く暗かった。
176目 8:2005/12/23(金) 00:20:36 ID:T5ISqQtW
【リオン 生存確認】
 状態:上半身に軽い凍傷 腹部に痛み
 所持品:シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー
 第一行動方針:ゲーム参加者の殺害
 第二行動方針:マリアンとの再会
 現在地:D6の草原地帯


【ロニ・デュナミス 死亡】
【残り41人】
177空っぽのココロ 1:2005/12/23(金) 20:46:52 ID:a0qS6N9i
サレ達がティトレイのいた場所に戻ってきた時、既に彼の姿は忽然と消えていた。
ならば彼はどこへ行ったのだろうか?

時は遡り小一時間前、ちょうどクレス達とマグニス達が戦っている頃。
サレがティトレイの縄を切り立ち去った後、一つの轟音が響いた。
ちょうどそれに導かれるように、ティトレイも意識を深淵から呼び戻される。
状況を確認しようと辺りを見回すと、高くそびえる木々が静かに彼を見守っており、他には切れている縄と…赤黒くなり始めた血痕。
血。
──そう、これは一緒にいたしいなの血。

彼に異常が起きていた。
先程はしいなが刺されたことによって膨れ上がった怒りが、今は全く湧いてこない。
じゃあ悲しみか? それも違う。
じゃあ苦しみか? それも違う。
じゃあ喜びか? それも違う。
何も、湧き上がってこないのである。
喜怒哀楽の激しいティトレイの顔には、人形から取って付けたような無表情が張り付いていた。
仲間のヴェイグと似た、いやそれ以上の。
しいなの死と、それに伴うフォルスの暴走。
それが彼から「感情」を奪った要因だった。
もっとも、彼が暴走し始めた時はまだしいなは生きていたのだが、目覚めた彼は彼女の姿を見れなかった。
178空っぽのココロ 2:2005/12/23(金) 20:48:30 ID:a0qS6N9i
闇と同化し始めた血痕を目で追う。
途中で完全に同化し見えなくなると、そこで彼の動作は途切れた。
彼女が「いない」ということは、今の彼には、彼女が「死んだ」ということに繋がった。
記憶に残るしいなの姿は間違いなく瀕死だったから。
木をかき分け探そうとはせず、ぼおっと立ちすくんでいた。

彼の表情は変わらない。変わるとすれば、打ち付けられた体が痛み、微かに眉をひそめる程度だろうか。
自分でも分かっていた。感情を失ってしまったことが。
笑おうとしてみる。
心も体も動かない。
手で口元を上げてみる。
完成したのは作り物の笑顔。
離してしまえば、また元の無表情に戻る。
残念という気持ちも湧いてこない。それが残念というのも勿論ない。

ふと、視界に支給品の袋が入った。ティトレイは鈍い動きで開ける。
幸い、と言うべきなのか彼の荷物はロープ以外失くなっていなかった。
中には腕輪が一個と、薄い本。ぱっと見では大した物でなさげだ。
自分を襲った奴らが持っていかなかった理由がそれなのかは謎だが、良いに越したことはない。
立ち上がり、荷物を持ちふらふらと歩き出す。
ただ何の目的も持たず、何の意味もなく。
179空っぽのココロ 3:2005/12/23(金) 20:50:54 ID:a0qS6N9i
どこに行こうとか、誰かに会おうとか、何をしようとか、そんなのは微塵もなかった。
虚ろな彼の瞳に映るは、ただの風景。
何か存在があるというだけの事実。
彼はただ、歩き続けた。

開けてきた視界の先に見えたのは、海。
漆黒に染まった海。
得体の知れぬそれは恐怖の対象でしかなくて、しかしティトレイはそれを感じることもなくて。
さざ波の音でさえ、彼に何ももたらさない。
立ち止まる。そして考え始める。
自分は何をしたいのだろうか?
今の自分だったら、何の躊躇いもなく人を殺すことが出来る。
正義の名の下に人を守りマーダーを殺す者になろうとも思わないし、逆に人を乱し殺戮を楽しむ者になろうとも思わない。
情けも罪悪感も狂気も善悪もない、いわば只の機械。
昔の自分はどうだっただろうか。
今の自分が失ったものを、多く持っていた気がする。
しかし、もうそれらは戻らないのかもしれない。
それほど今の彼は、昔と違い過ぎていた──。


【ティトレイ 生存確認】
所持品:メンタルバングル、バトルブック
状態:感情喪失、全身の痛み、TP消費(中)
第一行動方針:海を眺める
第二行動方針:不明
現在位置:G4海辺
180人形劇 1:2005/12/25(日) 00:49:47 ID:TcSFez4V
「誰だ、そこに居るのは」
その言葉を聞き、ジェイは驚愕した。
「へぇ、すごいですね、あなた。気配を消して近付いたのに、僕に気付くなんて」
表情を戻し、平然とした口調で目の前の黒髪の少年、リオンに話しかける。
少年は振り向き、ジェイと目が合った。
その目は、希望の欠片も無いほどに、暗く沈んでいた。
一瞬ジェイはその目に奇妙な感覚を覚えたが、少年が喋りだしたので耳を傾けた。

「ふん・・・こんなものに頼りたくは無いがな」
そう言いつつ、手にした機械を掲げる。
「なるほど、センサーか何かのようですね。
 それと、さっき僕は二人の死体を見つけたんですが、あれはあなたがやったんですか?」
ジェイは首を回し、ロニとポプラが倒れていた方をちらと見る。
リオンは全く動じることなく、
「・・・何が言いたい」
とだけ言った。ジェイはやれやれと首を振り、更にリオンに一歩近付く。
「あなた、このゲームについてどう思います?」
返事をすること無く、リオンは剣をジェイに向けた。
181人形劇 2:2005/12/25(日) 00:50:35 ID:TcSFez4V
ジェイは動きを止め、黙ってそれを見つめる。
「説得するつもりか、勧誘なのかは知らないが、どちらにせよ無意味だ。僕はお前を殺すつもりでいる」
「乗ったんですね・・・?これに、本気で」
「お前だって分かって言っているだろう。あの二人をやったのが、僕ということが」
「ええ、傷口は丁度あなたのその剣と同じぐらいでしたよ」
その言葉でリオンは本格的に剣・シャルティエを構えた。
「やる気ですね。まあ僕としても、その方がやりやすいですけど」

・・・出会った者は皆殺しにしないといけないから・・・

ジェイも忍刀・紫電を持ち、正面の相手と対峙する。
二人の黒髪の少年は、走り出した。
182人形劇 3:2005/12/25(日) 00:51:33 ID:TcSFez4V
リオンがシャルティエを振りかぶろうとした瞬間、ジェイの姿が消えた。
と同時に、剣を握る腕から血が噴いた。
顔を歪め、後ろを見やると、確かにそこにジェイは居た。
たった今、血のついた刀をぶらぶらと振っている。
「どうしました?」
「・・・」
一瞬の内に移動し、交差の際にリオンを斬ったジェイは、不敵に言った。

再度リオンが剣を構える。
そして今度はその場で剣を振り、地を這う衝撃波を放った。
「この技は・・・」
ジェイは小さくつぶやき、跳び上がりその技を回避する。
そして空中からクナイを投げつけた。
リオンは一瞬不快な顔をし、黙ってそれを打ち落とした。
ついさっき似たような攻撃をあの男から喰らっていたので、対応も早かった。
ジェイの着地際を狙い再度魔神剣を放つも、驚異的な身体の反射力でそれもかわされた。
183人形劇 4:2005/12/25(日) 00:52:21 ID:TcSFez4V
そのまま横に向けて走るジェイを、リオンは追いかける。
不意にジェイが立ち止まり、クナイを投げつけてきた。
正確に顔の真ん中を狙ったそれを、体を九十度回転させて避ける。
そして更に接近。間合いに入った。
だが、ジェイは突然刀を地面に刺すと、その場から一歩飛び退いた。
リオンは怪訝な顔をしつつも、丸腰の相手に近付く。勿論クナイが飛んでくるのを警戒しながら。
しかし全く予想外のことが起こった。
地面に突き刺さった刀から、突如炎が噴き出したのだ。
「ぐあっ!」
灼熱に包まれ、リオンは身を屈め、もがいた。マントの端が、焦げた。

「・・・さようなら」
クナイを構え、隙だらけのリオンへ狙いを付けながら、ジェイはそうつぶやいた。

・・・これで、いいんだ。これで・・・

しかしクナイを投げつけようとした瞬間、炎の中から何かが飛来してきた。
「何っ!?」
咄嗟に腕を上げ、防御するも、その腕に鋭い痛みが走り、そこから血が流れ出た。
飛んできたものは、ジェイが突き刺した忍刀・紫電。
それに気をとられ、続いて炎から飛び出してきたリオンに、ジェイは気付かなかった。
あっという間に距離を詰めたリオンの一閃が、ジェイの頸部を切り裂いた。
「う、ぐっ!」
顔を苦痛に歪め、首元を手で押さえる。
致命傷には至らなかったものの、流れた血は彼の体力、精神力を消耗させた。
184人形劇 5:2005/12/25(日) 00:53:29 ID:TcSFez4V
更に追撃を仕掛けるリオンの突きを、身を沈めて回避する。
リオンはそのまま剣先を下に向け、地面に伏せる少年を刺そうとした。
少年はその場から転がり、そのまま地を這いながらの回し蹴りを撃った。
リオンの体が揺れ、こちらも蹴って応戦した。
だが、伏せた体勢からまるで踊るかのように体を回転させる少年に、その蹴りは届かなかった。
連続してジェイの蹴りがリオンの体を撃った。

──しかし、それは隙だらけだった。
リオンはすぐにそこから二、三歩離れ、隙だらけの少年へ手榴弾を投げようとした。

それより早く、直も回転を続けるジェイは、その体勢から正確にクナイを投げた。
クナイはリオンの首の付け根と肩の間の辺りに刺さった。
手榴弾を取り落とし、そこをかばう。
「──鈴鳴・苦無」
既に立ち上がったジェイが、そうつぶやいた。
動きを止めたリオンに近付きながら、言葉を続ける。
「流石に、爆発まではしてくれないようですね」
刀を拾い、相手に刺さったクナイに目をやりながら、そう言った。
185人形劇 6:2005/12/25(日) 00:55:34 ID:TcSFez4V
リオンは顔を上げ、強くジェイを睨んだ。
ジェイはその視線を受けながら、先程感じた奇妙な感覚がまた蘇っていた。
「あなたは・・・どうして殺すんですか」
あまり深く考える事無く、ジェイはそう言っていた。
リオンは刺さったクナイを引き抜き、剣を構え直した。
「下らんな。そうするより他に道が無いからだ」
その言葉は、ある意味でとても当たり前のことだった。
だがしかし、ジェイは気になって仕様が無かった。
この人の目は、何か彼の気を引くものがあった。
「・・・お前も、同じだ」
唐突にリオンが言葉を続けた。ジェイは目を見張り、彼を見つめた。
「お前の目には、純粋に人殺しをして生き残ろうという鋭く、狡猾な光が感じられない。
 まるで誰かに操られているように、暗く沈んでいる」
その言葉は、いくらか自分自身に言っているようにも聞こえた。
ジェイは何も言わず、黙って目の前の少年を見つめた。
今しがた彼が言った言葉こそ、ジェイが彼の目に感じているものだった。

・・・この人は・・・
186人形劇 7:2005/12/25(日) 00:56:26 ID:TcSFez4V
リオンが剣を構え、走り出した。
ジェイははっとし、しばらく動かずにいたが、再び接近される前に後ろに跳んでいた。
リオンはそのまま追わずに、黙ってジェイの動作を見ていた。
「どうやら、僕達はまだ出会うべきでは無かった様ですね。僕はここで一旦引きます」
そうしてジェイは走り出した。リオンも走って追おうとした。
「──鏡殺」
そう言うと同時に、ジェイの爪が光り、足が速くなった。
やがてリオンは彼を見失った。
レーダーを見ても、反応するのはリオン自身と、彼が手を下した二つの死体だけだった。

【ジェイ 生存確認】
 状態:右腕に刀傷 頸部に切傷 全身にあざ、生傷
 所持品:忍刀・紫電 ダーツセット 辞書 クナイ(残り七枚)
 第一行動方針:ソロンに従い、ミントを殺す
 第二行動方針:ソロンに従い、遭遇した参加者を殺す
 第三行動方針:シャーリィを探す
 現在位置:D6の草原地帯からG3の洞窟へ移動中

【リオン 生存確認】
 状態:全身に軽い火傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
 所持品:シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー
 第一行動方針:ゲーム参加者の殺害
 第二行動方針:マリアンとの再会
 現在地:D6の草原地帯
187抽象の現1:2005/12/25(日) 06:33:32 ID:HO/hM3fh
体の神経を鋭敏に尖らせて歩いていたはずだった。しかしその者の姿は肉眼に映された時にようやく分かった。
気づくとまさに目の前にその者は立っていた。その姿は虚ろで、高く伸びた草間から闇夜に浮かび上がる様に音もなく存在する光景はさながら幽霊の様であった。
一瞬、今まで殺してきた人々の怨念が姿を象って現れたのではないかという、柄にもなく非現実的な発想がデミテルの頭に浮かんだ。
しかし確かにその男の存在を確認すると、それはただの思い過ごしだと分かる。
相当に戦ったのだろうかボロボロの衣服。そしてべったりと黒い血であろうシミが付いている。しかし決定的な違和感があった。
眼前に現れるまで気付かなかったように、この男からはなにも気配を感じないのだ。全く、読むことができない。見るからに明らかに死闘をしていた痕跡があるのに、男にそれだけの行動が出来たとは思えないほどだった。
姿が虚ろに見えたのはそのせいだった。
男の体は確かにここにあるはずなのに、その存在がとても危うく感じる。言ってみれば魂の入れ物がそこに「ある」という感覚だった。
月がこうこうと憎らしい位に闇を照らしているが、男の眼はその光すら映しはしなかった。
「お…、おれ、」
その声の主が立っている男だと気付くのには少々間隔が空いた。
そしてその言葉を聴いてデミテルははっとする。
殺らなければ―――
しかし何故か行動に移せないのだ。
恐怖ではない。
威圧感など全くない。
ましてや慈悲でもない。
それは無機物の様だったのだ。
言うなれば、それが、人間とは思えなかったのだ。
ただカカシの様に立っているだけの存在。きっと命を奪うなんて一瞬だろう。
しかしまたもや柄にもなく躊躇をした。
再び男が口を開く。
188抽象の現2:2005/12/25(日) 06:47:50 ID:HO/hM3fh
「お、れ、は…」
男は無表情のままだ。何処を見るでもなく、怪しい口先の動き。
顔面の上で唇周りの筋肉だけが不自然に動いている様だった。
薄気味悪い光景だった。
ざわりと風が鳴く。
木の葉が男の頬を掠めるが眉ひとつ動かない。

「……名はなんという?」
絞り出す様な声でデミテルは男に尋ねた。
この男の名など本来はどうでも良いはずだ。自分でも訊いた理由は分からない。この男に少しだけ興味が湧いたのか。ただの物好きなのか。
「なまえ…?な…?
て、とれえ…?」
「……成程」
自分の名前を言えるのかも怪しい。ようやく少しだけ状況を理解した。
どうやらこのゲームで精神に異常を来したのだろう。しかもかなりの重症だ。
血塗れの姿は一見すると大量殺戮を行ってきたマーダーの様相を呈していた。しかし自分には逆にまるで親を目の前で殺された戦災孤児の様だと思えた。
見たところ、莫大な力を使ったのだろうか、相当に体力を消耗しているらしい。見れば脚が疲労の為だろう、かすかに震えている。尤もこの男はそれに気付いてないだろうが。
男は話し出す。
「ここは、へん。まっくら。でぐち、おしえてく、れ」
どうやら意識も相当怪しい。支離滅裂だ。
答えないでいると、きびすを返し、ふらふらとあてもなく歩きだした。
「――っ」
デミテルは一瞬声を掛けかけた。男の歩いている先には―――
男が数歩歩いて地面に変わりなく力ない足を付けたとたん、炎が吹き出た。
デミテルが念のために掛けておいたフレイムトラップだった。しかし、本来なら痛みを感じて叫ぶだろうが、男は傀儡のようにポーンと吹き飛んだ。
受け身を全く取らずに地面に転がる。
男はその暗い眼で虚空を見たまま大の字に倒れていた。
そこにいるのは人間のはずなのに、それはまるで出来損ないの意識を適当に詰め込んだゴム片の様だった。

189抽象の現3:2005/12/25(日) 06:58:28 ID:HO/hM3fh


真っ暗だ。
夜だからじゃない。
草も、木も、大地もみな真っ暗だ。
俺は足の進むままに歩いて行った。どの方向かとかそんなことはわからない。どうでもよかった。
足元の草が微風に靡き、俺の脚を撫でているのになんとも感じない。
感情を排出する管に蓋をされたようだ。
このゲームに巻き込まれてから様々な事が起きた。
俺は沢山泣いていた。
だけどそれはどうやるんだっけ?
色々な感情があったはずなのにそれが喉元までくると、わからなくなる。
空っぽだった。
自分がここにいるということすら、よくわからない。俺はなんなのか、わからない。
ただ真っ暗な空間に自分の確かな呼吸や心音がぽっかりと浮かんで、闇に紛れて消え入りそうな俺を白くぼんやりと俺を見つめるので、まるで自分のいのちが闇に宙ぶらりんになった様で少し気持ち悪かった。
中途半端に俺は存在するのだ。


しばらく歩くと人が現れた。
顔は灰色に塗りつぶされてしまっていてよくわからない。
名前とかを聞かれた気がする。俺の名前って何だっけ?それすらにも思考は行き届かなかった。
わからなかった。
俺はどうすればいい?
しかしそれすらも既につまらない事だった。


気付いたら俺は空を舞っていた。地面から何かが吹き上げてきた様な衝撃を感じた。
地面と俺の体がぶつかり、出会った男は俺のすぐ横に見下げる様に立ちはだかっていた。

ああ、俺は死ぬのか。

190抽象の現4:2005/12/25(日) 07:00:25 ID:HO/hM3fh
【ティトレイ 生存確認】
所持品:メンタルバングル、バトルブック
状態:感情喪失、全身の痛み軽いやけど、TP消費(中)
行動方針:なりゆきにまかせる

【デミテル 生存確認】
状態:TP中消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティーシンボル 金属バット
第一行動方針:ティトレイに若干の興味が湧く
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:F3草原
191残骸 1:2005/12/26(月) 23:56:18 ID:VvbFrlvh
ロイドとジューダスが移動を始めて、しばらくすると銃声が聞こえた。
放送前にも何度か聞こえた、ぱららら、という連続した音。
更にその後すぐに、強烈な発光、そして轟音。
かなり近い距離だったらしく、風と共に砕かれた木々などが二人に吹き付けた。
すぐ近くで戦闘があったことを感じ、警戒してそこに近付いたが、そこには誰も居なかった。

その場の光景は凄まじく、なぎ倒された木々、焼けた草花、隆起し砕かれた地面。
上空から爆撃にでもあったかの様なその光景は、正に戦場の体を表していた。

「こんな・・・」
息を呑みながら、ロイドが思わずつぶやく。
ジューダスは答えることなく、周囲を探索していた。まだ敵が潜んでいる可能性を危惧していた。
そしてしばらく離れた場所で、ジューダスは二人の死体を発見した。
どちらも男で、死後だいぶ時間が経過しており、荷物は何者かに取られていたが、
幸い(既に死んだ者に適した表現では無いかもしれないが)今しがたの戦闘の被害を受けずに済んだようだった。
192残骸 2:2005/12/26(月) 23:57:06 ID:VvbFrlvh
「・・・ひでぇ」
いつの間にかロイドがジューダスの傍に立ち、二つの亡骸を見ながら言った。
「怖じ気づいたか?」
「そんなことねぇけどよ・・・」
「名簿の写真にあった、チェスター・バークライトとヒアデスだ。
 彼等は先程の放送で呼ばれたから、それまでに死んでいたことになるな」
それを聞くロイドの顔は、沈んでいる。
先程放送を聴いたときよりも、悲哀の色が濃い。
この場で実際に戦闘後の壮絶な光景、そして屍を目撃したことが響いているようだった。

・・・こんなことで動揺していたら駄目だ。
ロイドは自分自身にそう言い聞かせた。
ジューダスからも言われたが、死者をいちいち気にしていてはきりが無い。
そう、かつて仲間達と旅をしていた時、人の死には何度も遭遇してきたではないか。
しかしそれでも、この状況は異常である。
ここで行われる殺戮は、ただ『生きたい』という想いでのみ行われているはずだった。
あるいは願いを叶える為?
どちらにせよ自分達がこうした状況に投げ込まれたこと自体が理不尽なのだ。
そしてその理不尽は、ここまでで少なくとも十人の命を奪った。
193残骸 3:2005/12/26(月) 23:57:53 ID:VvbFrlvh
「ここにはもう人は居ない様だ。移動した方がいいだろう」
仮面の男が言った。
ロイドは同意し、向き合う。
「結構暗くなったな」
「ああ。もう夜も遅くなるし、あまりふらふらすべきでは無いかもしれんな」
仮面の男は地図を見て、行動方針を立てている様だった。
ロイドはそれを覗き込み、地図から目を離して周囲を見回した。
「あっちの村か、そっちの城に行くか?」
「いや・・・できれば避けたいな。人が集まる場所には、
 ゲームに乗った者も集まる可能性があるということだ。近付かない方がいいだろう」
「でも、それじゃあ俺やお前の仲間とも会えないんじゃないか?」
「僕やお前の仲間が、それほど馬鹿ではないことを祈るんだな」
その言葉を聞き、ロイドは自分以外の仲間達、コレット、クラトス、しいな、ゼロス、ジーニアスの姿を思い浮かべた。

──ああ・・・大丈夫だ。みんな俺より、頭はいい。

「俺の仲間は大丈夫だ、ジューダス」
「そうか・・・」
194残骸 4:2005/12/26(月) 23:58:43 ID:VvbFrlvh
「で、どこへ行く?」
仮面の男は地図を片付け、腕組みをしながら答えた。
「西は障害物も無く、こちらの視界も良くなるが、敵にも発見されやすい。そっちは避けたほうがいいだろう」
「でも、そっちに仲間が居たらどうすんだよ」
「そんなことを言い出したらきりが無いだろう。あくまで僕達の身の安全を優先しつつ、仲間を探すんだ。
 いいか、このゲームではいつ誰が死んでもおかしくは無いことを覚えておけ」
ロイドは額に眉を寄せながら、しばらく黙り込み、
「・・・分かったよ」
と言った。ジューダスは横を向きながら、言葉を続ける。
「本来ならば、こういう状況において動き回るのは得策では無いんだ。
 しかし誰かとの合流を目指すなら、動かざるを得ない」
「ああ・・・」
「当然休息も必要になる。あまり夜が深くなったら、動くのをやめて休むのがいい。
 視界が悪くなる暗闇では、音をたててしまうことの方が危険なはずだ」
「・・・つまり?」
仮面の男はもう一度ロイドに向き直り、はっきりした口調で告げた。
「森に身を潜めながら、警戒しつつ移動すべきということだ」
「・・・分かった」

そうして二人はまた歩き始めた。
195残骸 5:2005/12/26(月) 23:59:30 ID:VvbFrlvh
【ロイド:生存確認】
状態:無傷
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
第一行動方針:協力してくれる仲間を探す
第二行動方針:ジューダスと行動
第三行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
現在地:C5の平原から移動中

【ジューダス:生存確認】
状態:無傷
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)???、???(???は両方武器ではない)
第一行動方針:協力してくれる仲間を探す
第二行動方針:ロイドと行動
第三行動方針:ミクトランを倒す
現在地:C5の平原から移動中
196dear. 1:2005/12/27(火) 05:21:33 ID:LWRTgRZR
放送を聞いた。知っている名は、ルーティだけだった。
自分が探していた四英雄…その内の一人が、誰かに殺されてしまった。
だからあの時カイルは、泣いていたんだろう。
カイルが無防備にやられる訳がない。
きっと何かに気を取られていたんだ。
だから、泣いていたんだろう。
多くの人が消えていったという事実と一緒に、母も消えてしまったのだと…。

「…ルーティという女性は、カイルにとってどのような存在なのだ?」
「…お母さんです。大切な」
「…そうか」
迂回し森を歩きながら、クラトスとリアラは話していた。
罠を避けて、海に落ちていったカイルを捜すために。
リアラは既に、自分やカイルが未来から来た者だと告げていた。
つまり、会場にいたルーティは母親になる以前の昔の姿なのだと。
いや、逆にルーティが過去から来たのか? とも思ったが、敢えてそこは言及しないでおく。
名簿を使って、父親であるスタンも同じだと説明した。
勿論、同じく写っているマリーやコングマン、ジョニー、そしてリオンも…と(グリットって人はどうだかよく分からないが)。
クラトスは少し驚いた様子で話を聞いていた。
その理由は、自分とスタンの容姿の違い。
197dear. 2:2005/12/27(火) 05:23:18 ID:LWRTgRZR
あの時カイルは自分のことを「父さん」と呼んでいた。
つまり、このスタンという青年と間違えたのだろう。
…全然似ていないではないか。
そう思いながら、クラトスは額を押さえていたのだった。
そんな話もあって、クラトスは尚更カイルの身を案じていた。
おっちょこちょいな一面があるのは、どうやらロイドと同じらしい。
ロイドの名が放送で呼ばれなかったことに、クラトスは不謹慎ながら安堵してしまった。
息子も同じように思ってくれているのだろうか?
──いや、それは無いだろう。少なくとも私が父親らしいことをした覚えはないのだから。
だが、どうか無事でいてほしい。
それに…
「家族を失うのは…底知れぬ辛さがある」
「え?」
「…いや、何でもない。それより、休憩は入れなくて大丈夫か?」
前を歩くクラトスは小さく呟くと、振り返りリアラに尋ねた。表情こそ相変わらず厳格だったが、奥に秘められたものは青くはかないものを発していた。
ごまかすように、クラトスは優しい言葉をかけたのだろう。リアラはそれを汲み取り、微笑んだ。
「じゃあ、少しだけ」
198dear. 3:2005/12/27(火) 05:24:46 ID:LWRTgRZR

カイル、元気?
私は元気よ。
今はクラトスさんと一緒に行動してるの。
だから私は大丈夫。
カイル…悲しいかもしれないけど元気を出して。
ルーティさんは、カイルに生き残ってほしいと思ってるから。
私もそう思ってるから。
私は、あなたが悲しみを乗り越えられるって…信じてるから。
あなたが生きているって…信じてるから。

「お前には家族はいないのか?」
「私? そうですね…いない、のかな」
自分に治癒術をかけながら問い掛ける。
しかし曖昧な返事をクラトスは不思議に思った。いる、いないにしろ、はっきりと答えられる質問だと思ったからだ。
いるのなら即答できるだろうし、いないのなら言葉に詰まるなり何なりなるだろう。
リアラの答えは両方とも違った。
その答えの意味が彼女自身から語られる。
「私は聖女…神の化身ですから」
「…それはまた随分と大層なものだな」
「驚かないんですか?」
リアラは、流石のクラトスも驚かせられるという自信があったのだろう。変わらない反応に逆にリアラが驚いてしまった。
「…私は神の御使い、天使だからな」
クラトスが立ち上がる。踏み締める地からは光が立ち上り、彼の背には美しい蒼の翼が広がる。
199dear. 4:2005/12/27(火) 05:26:27 ID:LWRTgRZR
光を放つそれは闇の中で輝いており、まるで煌めくサファイアのような蒼と瞬きだった。
思わずリアラは感嘆の息をもらす。
「…間違った表現かもしれんが。私が仕えるのは神ではなく、れっきとした一人の人間だからな」
──人間、か。これも間違った表現だな。
私が仕える人物…ミトス・ユグドラシルは人間ではなく、ハーフエルフなのだから。
翼をはためかせたまま、彼は自嘲した。
「そうなんですか…何か私達、似てるかもしれませんね」
「フ…そうかもしれんな…」
クラトスが笑った。衝撃だった。
「…何か可笑しいことをしただろうか?」
「ふふっ、いーえ。何も」
いぶかしげるクラトスを尻目に、クスクスと笑うリアラ。それを再びいぶかしげるクラトス。
リアラは初めて覚えたクラトスへの親近感で、今までのとっつき難さが一気に薄くなったような気がした。
思わず微笑みが零れる。
本当は、この人は不器用なだけなんだろうなぁ、と。
ジューダスと似ているなぁ、と。
安心からか、小さくリアラの腹の音が鳴った。
「…そういえば時間も時間か。食事にするか?」
「そうですね。お腹空いちゃいました」
支給袋から取り出したパンを食べながら、リアラはぽつりと呟く。
200dear. 5:2005/12/27(火) 05:28:58 ID:LWRTgRZR
「──…ありがとう」
その言葉の意味がどういうものなのかはリアラしか分からないが、クラトスはまた、笑った。

ロイド、無事か?
私はまだ生き長らえている。
今はリアラという娘と共に行動している。
心配はするな。
ロイド…私はお前に、父として何もしてやれていない。
アンナも駄目な父親だと情けなく思っているだろう。
私自身、思っている。
だから私は生きて…父としてお前を守ってやりたいと思う。
だからお前は生きろ…ロイド。


【リアラ 生存確認】
状態:リラックス
所持品:ロリポップ ??? ???
第一行動方針:カイルを探す
第二行動方針:避けられない戦いは戦う

【クラトス 生存確認】
状態:全身、特に足元に中程度の火傷、TP消費(小)
所持品:マテリアルブレード(フランベルジュ使用) ??? ???
第一行動方針:リアラと行動しカイルを探す
第二行動方針:ロイドのことが気になる

現在地:F2森
201Get Marionette 1:2005/12/28(水) 00:16:56 ID:KrEq3OhE
ようやく思い出した。
デミテルは眼下の男を見つつ、記憶の断片を繋ぎ合わせた。
あの時、川沿いで交戦中の少年と少女を葬った後、銃声と共に現れた、男と女。
物陰から彼は、その男女が彼が手を下した二つの死体を見て激昂するのを見ていた。
その内の一人が、目の前の男だった。
名簿を取り出し(しかしもちろん不意を突かれない様に油断無く)、
あの時目撃した男の顔と目の前の男の顔を照合した。
そしてその名前がティトレイ・クロウだということも知った。
それから行動を共にしていただろうと思われる女が居ないということは、
この男、女と殺しあったか、それとも、何者かに女が殺されたか。
その結果が今のこの男の状態だとしたら少しは納得がいく。
デミテルはそう判断した。

「・・・」
男は無表情にこちらを見上げ、黙っている。
全く生気の感じられない、抜け殻の顔。
魂を抜き取られたかのようなそれは、全てに絶望している様にも見えたし、関心が無い様にも感じられた。
恐らく今の状態ならどんなことも受け入れてしまうだろう。
この私に殺されることも、放置されて餓死することも、禁止エリアに引っかかって爆死することも。
そして、私の言うことを聞くことも。
202Get Marionette 2:2005/12/28(水) 00:17:53 ID:KrEq3OhE
「・・・男、ティトレイ・クロウ。生きたいか?」
デミテルは静かに声をかける。
これまで目の前の男の様な隙だらけの者は、ほぼ例外なく抹殺してきたが、
この状況においてはそうする気が起こらなかった。
もしかしたらこの男は、自分が期待していた存在かもしれない。
これまで出くわした参加者達は、どれも自分が望む人材では無かった。
この男は、それほど重傷を負っている様にも見えない(たった今自分が仕掛けていた罠に引っかかったが)。
シャープに鍛え上げられた筋肉は、男が肉弾戦を得意とすることを物語っていた。
そういった僅かな希望的観測が、デミテルの口を開けさせていた。
「・・・・・・・・・」
男は黙っている。
「では、死にたくないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
まだ黙っている。

デミテルは少しばかり落胆した。
やはり駄目か。身体はまだ無事そうでも、まともな口すら聞けない様では利用価値は無い。
死んでもらうしかないか。これまで手を下した四人の様に。
デミテルが手を動かそうとした正にその時、男がいきなり口を開いた。
「・・・おれ、かえりたい」
203Get Marionette 3:2005/12/28(水) 00:18:54 ID:KrEq3OhE
デミテルは動作を止め、男の言葉を聞いていた。
「・・・そうか」
男の表情は(デミテルが男に会った時から)全く変わらず、ただ口をぼそぼそと動かすのみであった。
「みんなが、いるばしょに、かえりたい。でぐ、ち、どこ?」
出口か。そんなものがあるのなら、こちらが聞きたいものだな。
デミテルはそう思いつつ、男の脇にかがんだ。
その時、炎によって出来た男の傷が勝手に修復されていることに気付いた。
どうやら無意識のうちに力を使い、体力を回復させているらしかった。
(その時デミテルは、それがティトレイの樹のフォルスの力の錬術による回復ということまでは分からなかった)

「帰りたいか。なら、私の言うことを聞いてもらおう。そうすれば、元の世界に帰れる」
少々踏み込み過ぎた言葉かもしれなかったが、男はそれを純粋な意味で受け取ったらしく、
無表情の中に微かな活気が生き返ったようだった。
「ほん、と?どう・・・やって?」

デミテルの顔に邪悪な笑みが広がったが、それは暗闇で覆われて、男の位置からは見えなかった。
「簡単なことだ。私の指示する者を殺して欲しい」
204Get Marionette 4:2005/12/28(水) 00:19:41 ID:KrEq3OhE
【デミテル 生存確認】
状態:TP中消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティーシンボル 金属バット
第一行動方針:ティトレイを操る
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:F3草原

【ティトレイ 生存確認】
状態:感情喪失 全身の痛み軽いやけど(回復中) TP消費(中)
所持品:メンタルバングル バトルブック
第一行動方針:かえりたい
第二行動方針:なりゆきにまかせる
205天才のひらめき:2005/12/28(水) 19:41:52 ID:DFE9ooif
放送が行われるかなり前のことになる。
ハロルドはたいまつを片手にジースリ洞窟内をいろいろと探索することにした。
「俺たちもついて行ったほうがいいんじゃないか?」
と、スタンはハロルドのことを気遣って言ったのだが、それに対して彼女は、
「あんた、もう一人が体力使い果たした怪我人だって事すっかりわすれてるでしょ。
私は一人でも大丈夫だからあんたはその子に付いていてあげなさい」
と言ったのであった。
そして二人の心配をしているのをよそに、彼女は一人鼻歌交じりに洞窟の奥のほうへと向かっていった。
が、予想に反して洞窟は単純な構造になっていた。
三人が休んでいた大きな空間から少し歩いたところには一回り小さくなった空間があった。
また、その空洞の奥にはかなり狭い道が続き、そのまま進むと全く別の場所へと続く出口が見受けられた。
そこから外の様子を見てみると、背の高い草に覆われていてあまり目立っていないようだった。
また、その狭い道には広い空間のすぐ近くに右に折れる通路があり、奥のほうに進むとかすかに波の音が聞こえてきた。
さらに進んでいくと途中で道が分岐しており、
ひとつは崖下の海岸に、もうひとつはさっきの狭い出口よりもさらに発見されにくい場所につながっていた。
結局、彼女の興味を引くようなものも無かったので、二人のいる空間に戻ることにした。
その間に彼女はさまざまな事を考えていた。
研究サンプルを調べることや、それを収集することも当然考えてはいたが、
同時に首輪がどんな構造になっているのかなどということも考えていた。
そして何より、この洞窟に留まる以上はマーダー対策をする必要もある。
何かトラップを仕掛けようにも材料が絶対的に足りていないのが明白であった。
「ま、いろいろ考えていても仕方ないし、サンプルを少し調べてみますか☆」
そう言った彼女は、思わずにやけてしまった。

そして、二人のいる空間に戻ってくるとミントは再び眠りについているようだった。
「戻ってきたわ。でも、今からすぐサンプルをパパッと調べちゃうから、話しかけないでね」
「な、なんて自己中心的な…」
これを聞いたスタンは、ハロルドがやっぱりルーティに似ているな。と再認識した。
そんなスタンに対してハロルドはさらに、
「あ、ちょうどいいわ。スタン、邪魔になるくらいなら見張りしてきなさいよ。
そっちのほうが私のためになるわ」
と言ってのけた。
「…え? 別に、いいけど…」
…ホント、研究に目が無いルーティそのものだよ…。と、あきれ返りながら、
スタンは大きなため息をついたのであった。
206天才のひらめき2:2005/12/28(水) 19:43:28 ID:DFE9ooif
スタンが立ち去ってから彼女はザックに入れていたいろいろなサンプルを取り出していた。
「動物系は捕獲が難しいものもあるから後に回して、先に植物から調べていこうかしら」
そんなことを言いながら、いろいろな植物をたいまつの灯りを使ってじっくりと観察していった。

・・・そして30分後・・・

「この植物は私の知ってる世界のどこにも無かった植物じゃん!あ、こっちはこっちで珍しい形で進化したものね!」
完全にハロルドは研究に熱中していた。
鼻歌は絶好調、たまにもの珍しいものを見つけると両手を大きく振ってはしゃいでしまったりと、
普段の彼女からは想像も付かない超ハイテンションになっていた。
そして、ある植物サンプルを持っているとき、観察を始めてから最大の興奮が彼女を襲った。
「これすごいじゃん!まさか生きてこんなものに巡り遇えるなんて思わなかったわ!!」
そう叫びつつ思い切り手を振っていると、植物サンプルがたいまつの炎に軽く触れた。
すると、なんと急に植物サンプル全体が激しく燃え始めてしまい、その熱でハロルドは手を離してしまった。
「アチッ!全く、いったい何が…て、あぁッ!せっかくのサンプルが燃えちゃってる〜…。
まさかこんなに引火しやすい性質があったなんて…」
そこまで言ってふと彼女はあることを思いついた。
「確かこのサンプルはこの洞窟の近くにたくさん生えていたはずだわ…。
それにこの近くには落ち葉もたくさんあったはず…。これなら使えるわね」
そう口にしたハロルドの顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
思い立ったらすぐ行動、と言わんばかりに彼女は先ほど見張りに行かせたスタンのもとへと駆けていった。
207天才のひらめき3:2005/12/28(水) 19:45:10 ID:DFE9ooif
そのころスタンは辺りを警戒しつつも、他の参加者、特にルーティの事を考えていた。
彼女に似ているハロルドと会ってから、妙に彼女のことが気にかかることが増えてきていたのだった。
「あいつ、今頃どうしているんだろうか…」
思わず口に出してしまった。
だが、口に出したところでいったい何になるというんだ…。
会えるわけでもなければ、誰かから守ることもできない…。
本当なら、今すぐにでもルーティを捜しに行きたい。
けど、それはもうできない。
俺は、ハロルドや、ミントに出会ったから。
俺は、俺は彼女達を守り抜かなくてはならないんだ。
だからルーティ、必ず生きて必ず再会しよう…。

スタンは、ただ彼女が無事であることを祈るしかできない自分の無力さを呪った。

そんなときだった。
「ちょっと、スタン!? ちゃんと見張りやってる〜!?」
後ろから聞こえた声に振り返ると、そこにはハロルドが居た。
「どうしたんだ? 人を追い出してまで、じっくりと研究する、とか言ってなかったっけ?」
スタンは多少いやみな感じに言ったが、当の彼女はそんなことには気にもかけていないようだ。
そして彼女はスタンに近づいてきたかと思うと、いきなり抱きついてきた。
「ま、またしてもどういうつもりだ!?」
スタンが困惑していると、ハロルドは彼の顔を上目遣いで見ながら猫なで声で言った。
「スタン。あんたに頼みたいことがあるのよ」
彼女が物事を頼みに来たとわかって少し安心した。
ただ、スタンはふと思った。
ハロルドはいつも頼みごとをするときにはこんな風にするのだろうか。と。
「? あんた何か変なことでも考えてるんじゃないでしょうね?」
この言葉に、スタンは顔を赤くしてしまったが、
「んなわけないだろ!」
と、彼女が言ったことを否定した。
ハロルドはスタンから離れると振り返って彼のほうを見た。
スタンがハロルドの方を見ると、彼女がえらくニヤニヤとしているのが見受けられた。
どうやら、適当なことを言ってスタンの反応を楽しんでいるようだった。
全く、タチが悪いやつだ。そう思いつつ、スタンは思わず頭をポリポリとかいてしまった。
「で、頼みたいことって何だよ?」
スタンはあからさまに不機嫌そうな振りをして訪ねてみる。
「やぁねぇ、そんな振りしてみたって無駄なんだかんね。
 で、頼みたいことなんだけど、
ちょっとそこら辺からこの草と同じ植物と枯葉、さらには薪になるような枝を
大量に、いやむしろ山のように集めてきて欲しいのよ」
「山のように!? 実験サンプルにするんじゃないのか?」
てっきりハロルドの頼みごとなんてそんなところだと思っていたスタンは、首を傾げてしまった。
「ま、ここで言うほどのことでもないわ。あ、それから鳴子の位置変えちゃって良い?」
「え? 別に構わないけど…」
「あと、あんたの釣り糸も全部渡してもらって良いかしら?」
「それも構わないけど…。いったい、何をする気なんだ?
「フッフッフッ、派手な花火を打ち上げるのよ〜」
「花火って…?」
ハロルドの言葉では彼女がいったい何をしようとしているのか全く想像がつかない。
ますますスタンの謎は深まっていくばかりだった
208天才のひらめき4:2005/12/28(水) 19:46:21 ID:DFE9ooif
それからスタンが言われたとおりに大量の枯葉と、見本に渡された植物を集めて洞窟内に戻ってくると、
ハロルドがうれしそうに近寄ってきた。
「おっかえり〜。…て、えらく疲れているようだけど、ダイジョブ?」
彼女がそういうのも無理は無い。スタンは汗だくで、肩で息をしているような状態だったからだ。
「あのなぁ…。探し出すのは楽なんだけど、大量にとなると重いわ手が痛いわで、大変だったんだぞ…
 おまけに、下手なやつに見つからないようにしてたんだから…」
そういうと、スタンはその場で崩れ落ちた。
「お疲れさん。あ、これ、返すわね」
そういってスタンが渡されたものは釣り糸だった。
だが、スタンが渡したときよりも相当束の太さが細くなっているようだ。
釣り糸からハロルドに目をやると、
彼女がスタンの持って行ったザックではないザックの中に手を入れて色々と探っている。
彼女がザックから手を出すと、その手には支給品の水が握られていた。
「この水もあげるわ。まさかそんなに疲れて帰ってくるとは思いもしなかったから」
「良いのか? それなら、ありがたくいただくよ」
スタンは、ハロルドの手から水を受け取ると勢いよく飲み始めた。
そんな彼を見て、ハロルドはとんでもないことを言った。

「気にしなくてもいいわよ。その水あなたのなんだし」

そして、一瞬にしてスタンの時間が止まった。
…さっきこいつは何て言ったんだ?
今飲んでいる水が…なんとか…。
「…オマエ、イマ、ナンテイッタ?」
思わず言葉がカタコトになる。
心なしか、自分の身体が震えているように感じる。
全く見てはいないが、おそらく自分の顔はひどく引きつっているんだろうなぁ、と思った。
「だから、その水があんたのだって言ったのよ」
ハロルドが妙にニヤけてさらりと言ってのけた。
「ふざけるなぁ〜!!お前、何てことしてくれるんだよぉぉおっ!!」
スタンはとうとう耐え切れずに叫んでしまった。
あまりの声の大きさに、隣で眠っていたミントも目を覚ましてしまったようだが、
そんなことはお構いなしにスタンは喚き続けていた。
そんな様子の彼を見て、ミントは何がなんだかわからずうろたえてしまったようなので、
ハロルドはさすがにまずいわね。と思いスタンをなだめることにした。
「ごめんごめん。さっきのは単なる冗談よ。
 あれは正真正銘あたしの水だから、心配しなくてもいいわよ」
その言葉を聞いて、スタンは喚くのをやめた。
「本当に、本当にお前の水なのか?」
「もちろんよ。何なら、確かめてみる?」
そういってハロルドはザックをひっくり返して中身のものをぶちまけた。
植物やら何やらがごちゃごちゃしているものの、確かに水入りのペットボトルが一本少なくなっているのが解った。
スタンが確認したことをハロルドに伝えると、彼女はいそいそとぶちまけたものをザックに戻していった。
その際、彼女が、
「全く、動物系のサンプルを逃しちゃったらどうするのよ〜」
とぶつくさ文句を言っていたようだが、スタンは気にしないことにした。
「しかし、何でそんな冗談を言うかな…。
タチが悪くて、本当にまいっちゃうよ…」
スタンがあきれたように言った。これから先が思いやられてしまった。
「ま、いいじゃないの。こんなときだからこそ、こういうユーモアも必要なのよ」
そういうと、またしてもハロルドはニヤけた。
そんな二人の様子を見ていたミントはますます分けがわからないといった感じになっていた。

そんなやり取りの後、ハロルドは洞窟の奥のほうにスタンが集めてきた枯葉などを持って何かをしてきたようだった。
スタンやミントがハロルドに聞いたところ、侵入してきたやつらを食い止めるための罠だそうだが、
なぜ広い反対側の通路には仕掛けないのかよくわからなかった。
209天才のひらめき5:2005/12/28(水) 19:49:09 ID:DFE9ooif
スタン 生存確認
状態:疲労
所持品:ディフェンサー ガーネット 釣り糸
現在位置:G3のジースリ洞窟内部
行動方針:他の仲間と合流する ハロルドたちと行動

ハロルド 生存確認
状態:無傷
所持品:ピーチグミ ホーリィボトルの瓶 短剣 実験サンプル(詳細不明)
現在位置:G3のジースリ洞窟内部
第一行動方針:不明
第二行動方針:他の仲間と合流する スタンたちと行動

ミント 生存確認
状態:TP消費中 軽い疲労
所持品:ホーリイスタッフ サンダーマント
現在位置:G3のジースリ洞窟内部
行動方針:他の仲間と合流する スタンたちと行動
(この話の時点での状態です)
210悪夢は近い 1:2005/12/29(木) 00:22:58 ID:DVZUigh7
マリアンはあくびをかみ殺した。
『大丈夫?』
腕の中のアトワイトが、心配そうに訪ねる。
「ふぁ、はい。大丈夫です」
そう言う彼女の言葉はあまり大丈夫とは思えなかった。
アトワイトはふぅ、とため息(?)をつき、
『仕方ないわね。普通なら一般労働者はすっかり眠ってる時間だもの』
マリアンは黙って剣を見つめる。そしてまたアトワイトが声をかける。
『ゼロスを起こして、見張りを交代してもらう?』
マリアンはふるふると頭を振り、
「そんな、大丈夫です。ゼロスさんの方が疲れてるんだから、休ませてあげないと」
『でも、あなたもがんばったわ。さっき術を使って疲れてるでしょう?』
「それでも・・・」
知らず語尾に熱がこもる。表情にも力が入る。
『・・・仕方がないわね、それじゃ、もう少しこうしていましょう』
「ありがとう、アトワイト」
マリアンは笑んで、剣を見つめた。

それからまたしばらくしてのことだった。
『マリアン』
これまでより更に厳格な雰囲気を持って、アトワイトが話しかけてきた。
「どうしたんですか?」
『適当に相槌を打って』
「え、は、はい」
『前に言った作戦のことだけど・・・』
マリアンははっと息を呑んだ。
彼女がゼロスと出会うまでにアトワイトから聞かされた、ミクトランに対抗する為の作戦。
その方法を、アトワイトは一つの可能性があると提起した。
ゼロスと出会ってからうやむやになっていたが、
この状況で話をしてしまった方がいいと思ったか、アトワイトは語り始めたのだった。
211悪夢は近い 2:2005/12/29(木) 00:24:21 ID:DVZUigh7
「そうですね、平気です」
アトワイトが言った通り、
首輪の盗聴を避けて(支給品の袋に入れられる前に気付ていたらしい)マリアンは適当な相槌を打つ。
『前に言ったと思うけど、私とあなた、それにミクトランは同じ世界の人なの』
「知ってます、Eの7ですね」
『ミクトランは恐らく、私達、ソーディアンの力を応用して今回の事態を引き起こしたんじゃないかと思うの』
「そうなんですか?意外ですね、アトワイトさんがそんなことで悩むなんて」
『彼はきっと最強のソーディアン・ベルセリオスを持っている。
 それだけじゃなくて、レンズの力、いいえ、あらゆる世界からの力を集めているのだと思う』
「すごいですね」
『それでも、今回のことを行うにあたって主要たる力は彼、
 それに私達が居た世界の力をベースにしているはず・・・』
「つまり・・・どういうことですか?ベルクラントを撃つと」
『私達、ソーディアンの力をもってすれば、或いは・・・』
「安眠できますね」
『この会場には、他にも複数のソーディアンの反応がある。
 もし参加者の中に居るマスターに合わせてソーディアンが入っているとしたら、恐らく三本。
 マリアン、確かにスタン・エルロン、ルーティ・カトレット、リオン・マグナスの三人が名簿にあったわね?』
「はい、にんじんとピーマンが嫌いでした」
『それ以外に、私が知るマスターは居なかった・・・
 つまりこの会場には、ディムロス、私、そしてシャルティエがあるはず』
「ご主人様は紅茶が好きでした」
『三本・・・三本のソーディアンが集まれば、或いは、ミクトランに対抗しうる力になるかもしれない・・・』
「でも、どこにあるんでしょうか、女の幸せって」
『・・・正直、さっきから何かを感じているの、私。もしかしたら、近くに・・・』
「それじゃあ・・・」
『駄目よ。探しにいこうなんて。今は暗いわ。
 もう少ししたら日が昇ってくるから、それからゼロスと一緒に探しましょう。
 それから、今言ったことを、ゼロスが起きたら説明しないといけないわね』
「──分かりました」

マリアンは立ち上がり、ゼロスの近くに寄った。
相変わらず目の前の男は、熟睡している。
ゼロスは、自分達と出会う前に、戦闘があったと言っていた。
もうこの人は辛い思いをしたんだ、そう思うと迂闊に眠りから起こす気も無くなった。
『いいの?』
「はい、もう少し起きていようと思います」
そうしてまた彼女は座り込んだ。
212悪夢は近い 3:2005/12/29(木) 00:25:58 ID:DVZUigh7
彼女達が居る海岸の、北。

「これはこれは、いいことを聞いてしまいました」
ゼロスとマリアン、アトワイトから遥かに離れた場所に、一人の男が立っていた。
かなりの距離があるにも関わらず、彼はマリアン達の姿を確認し、会話の一部始終を聞いていた。
この暗闇で、常人ならとても判別は不可能と思われるが、忍者として特別な身体能力を持つ彼にとって、この程度のことは朝飯前だった。
「ソーディアンが三つ・・・」
歪んだ口元を更に大きく歪ませ、ザックから一本の剣を取り出した。
それは大剣だった。赤い柄に、両刃の刀身。鍔元には、焔を模った印が刻されている。
そしてそこには、紅い血痕がいくらか付着していた。
これまで彼が斬った二人のものだった。
更に彼が先程のマリアンとアトワイトの会話を完全に聞けたのも、彼が新たなマスターとなっているから・・・

ソロンが握る大剣は、ソーディアン・ディムロスだった。

「ふふふ、私は運がいい・・・」
手にしたディムロスに向かって語りかける。
しかしディムロスは返事をよこさない。ずっと黙っていた。
彼が立つ位置は、たとえディムロスが大声をあげてもアトワイトには届かない距離だった。

「ソーディアン・ディムロス、アトワイト、シャルティエ・・・そしてマリアン・フュステル、リオン・マグナス・・・」
ソロンは黒髪の少年剣士に見覚えが会った。
あの時、ジェイと再会する前に(ジェイとは時間を決めて落ち合う約束だった)、山岳部付近で見た、少年の姿。
そして彼が握っていたのは、他ならぬソーディアン・シャルティエだった。
その時はソロン自身が持つディムロスとどこか似ているぐらいにしか思わなかったが、
たった今マリアン達の会話を聞いて、疑惑は確信に変わった。

「あははは・・・これは、久しぶりに面白いものが見れそうだ・・・はははは・・・あははは・・・あっはははは・・・!!」
あまり大声を出すと気付かれる恐れもあるので、なんとか笑いを押さえ込む。
しかし彼の激情は動き出し、止まる術を持たなかった。
213悪夢は近い 4:2005/12/29(木) 00:26:43 ID:DVZUigh7
【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×14
現在位置:D8海岸地帯
状態:軽度の疲労、TP微消耗
第一行動方針:ゼロスの回復を待って共に行動
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する

【ゼロス 生存確認】
所持品:壊れたけん玉 ナイツサーベル ???? ????
現在位置:D8海岸地帯
状態:切創 (胸の傷はまだ有り、肩は回復)、ほぼTP枯渇(睡眠により回復中)、睡眠
第一行動方針:寝る
第二行動方針:マリアンと共に行動

【ソロン 生存確認】
所持品:ソーディアン・ディムロス クナイ(残り十枚)
状態:無傷 高揚
第一行動方針:周りをかき乱し、傍観して楽しむ
第二行動方針:ジェイの監視
現在位置:C8海岸地帯
214悪夢は近い 最終回:2005/12/29(木) 19:34:52 ID:uVZgDepz
2005年糞RPG四天王決定!

●テイルズ オブ ジ アビス
●テイルズ オブ レジェンディア
●テイルズ オブ リバース
●テイルズ オブ シンフォニア

決定
お疲れ様でした

各ゲームスレに決定報告コピペをよろしくお願いします。

なお、決定が遅れましたことを各関係者ならびにROMってた皆様に
お詫び申し上げます。
来年度の議論ではよりスムーズに進むよう努力いたしますので
ご期待ください。
  
              糞ゲーRPG議会運営一同
215エンカウント 1:2005/12/30(金) 01:01:08 ID:UirY9gNX
一人の男が、漆黒の闇を身に纏い、草木を掻き分け進行していた。
油断無く周囲に注意を払い、何かを探る様な目つきをしている。
あまり音は立てたくなくとも、この暗闇の静けさでは、僅かなガサガサという草が擦れる音も大きく聞こえた。
・・・どこに居る?
既に何度も繰り返された疑問を心の中で反芻する。
目に付くものは、土、草、花、樹、鳥・・・人が居ない。
やれやれと、ため息を付く。
少し楽観視し過ぎたか?
そんな思いも頭をかすめる。

あの男を捜し、始末する。
優先すべきはそれだった。
だから道具の類が落ちていたりしないか調べる気は無かった
(まあどっちみちこの暗闇だ、落ちたものを拾うなんて無理なんだよ)。
人間が居ないか、それだけに注意して動いている。
あの男が別の誰かと接触し、べらべらと身の上話をしてしまえばあまりよろしくない事態になる。
それでも自分の存在はまだ明るみに出ないはずだが、大事はとっておきたい。
216エンカウント 2:2005/12/30(金) 01:02:04 ID:UirY9gNX
自分が刺したあの女は死んでしまった(とクレスから聞いた)が、気になるのはあの野蛮な二人。
数時間前に遭遇した時は、不意打ちで退けることが出来たが、
(まあその程度の奴等だったとも言えるのかな?)
あの二人は強敵だ。少なくとも力だけなら。
しかしいくら自身の力量に自身があるとはいえ、
ああやってなりふり構わず戦闘をふっかけていては最後までもたないのではないか?

・・・僕はあんな風に野蛮に戦うのは御免だね。
あいつらと真っ向から戦うのはもうご遠慮願いたいものだ。
勇気ある誰かが倒してくれることを祈っておこう。
どうせクレスの様な、力はあるのに馬鹿なやつが勝手に倒してくれるんだろう。
それまで僕は安全な位置でこのゲームを楽しませてもらおう。

だからといってこの単独行動中に襲われて死ぬなんて間抜けの極みみたいなことをするつもりも無い。
よっぽどの手練れでない限り、いきなり闇討ちをくらうことも無いだろう。
いやむしろ闇討ちはこっちの方が得意な気がする(事実あの女を刺したからね)。

そうして警戒をしつつ、何かに気付いた。
森の奥で、何かが光った気がする。
蒼い光、神々しいその光は、確かに彼の目に写った。
・・・こんな暗闇で、よくもまあ・・・
男の顔に微笑が広がった。
どうやら目的とする獲物では無さそうだが、行ってみる価値はあるだろう。
217エンカウント 3:2005/12/30(金) 01:02:52 ID:UirY9gNX
更に時間が経過した。
男はようやく二人の人物を発見した。
赤い髪の男、黒髪の少女。
木の陰に隠れて、様子を伺う。
二人は座り込み、休憩をしているようだった。
ティトレイの姿は無い。
二人でつるんでいるということは、こいつらもコレットやクレスと同じ、
甘い考えを捨てきれない奴等なんだろう。
例外的に利害の一致でつるんでいる野蛮な二人も居たが。

「──そこにいるのは誰だ」
どうしようかと決めあぐねている時、赤髪の男が声を上げ、こちらを睨んできた。
つられて少女もこちらを見る。
・・・おやおや、僕に気付くなんて、なかなかやるじゃないか。
「クラトスさん、誰かが・・・?」
「気をつけろ。先程の爆発と関係ある者かもしれん」
剣を抜き、こちらに構える男。少女も杖・・・飴?を構える。
・・・まあこの状況でとる道は一つか。

「待ってくれないかな、クラトスさん?」
顔に微笑を浮かべ、両手を上に掲げて陰から出る。
クラトスさんとやらは自分の名前を見知らぬ者に呼ばれて怪訝な顔をしたが、
たった今少女が彼の名を呼んだので、さほど不自然なことでは無いと結論付けた様だった。
「何者だ、貴様」
クラトスさんは以前臨戦態勢のまま、男を見つめる。
男は二人の前に全身をさらけ出し、微笑を携えて口を開く。
「まあ落ち着いて、僕の言うことを聞いてくれないかな?」
二人は緊張した面持ちのまま、男の言葉を聞いていた。

こうしてサレは、クラトスとリアラと遭遇した。

218エンカウント 4:2005/12/30(金) 01:03:55 ID:UirY9gNX
【サレ 生存確認】
状態:TP消費(微小)
所持品:ブロードソード ????
第一行動方針:クラトスとリアラを利用する
第二行動方針:ティトレイを探し、始末する
第三行動方針:コレットの治療に役立つ道具、人材を探す
第四行動方針:クレス、コレットを利用する
第五行動方針:クレス、コレットと行動
現在位置:F2の森

【リアラ 生存確認】
状態:緊張
所持品:ロリポップ ???? ????
第一行動方針:カイルを探す
第二行動方針:避けられない戦いは戦う
現在位置:F2の森

【クラトス 生存確認】
状態:緊張 全身、特に足元に中程度の火傷 TP消費(微小)
所持品:マテリアルブレード(フランベルジュ使用) ???? ????
第一行動方針:リアラと行動しカイルを探す
第二行動方針:ロイドのことが気になる
現在位置:F2の森
219漆黒の翼・グリッド1:2005/12/30(金) 04:52:38 ID:unDKWToA
「よしユアン!!あの二人を迎えに行くぞ!!」
そう声高に叫んだのはグリッドだった。
「大声を出すな。敵がいたらどうするんだ」
隠れるのに丁度よい大木の下に箒からグリッドを下ろしてユアンは言った。
「今は隠れていた方が得策だ。何処にマーダーが潜んでいるかわからないからな」
その言葉にグリッドはじだんだを踏み、まくし立てる。
「何を言う!だからこそだ」
「だから大声を出すな、じだんだするな、とりあえず落ち着くんだ」
ユアンはふう、と溜め息を吐き、さらに確実に身を隠せそうな場所に草木を掻き分けながら移動する。
そもそもなんで自分はこんな奴とつるんでいるんだ。これまで適当にペースに巻き込まれてきたが、どう考えても足手まといにしかならない。
あの大男に対する作戦も四人が最良の方法で生き延びる為のものだったし(自分の体力をセーブするためのものでもあったが)、何故私がこいつらのお守りをしてやらねばいけないのだ。
ユアンの心中には不満の渦が少しずつ巻いていった。
「……お前、何か勘違いしていないか?」
ユアンはグリッドを静かに睨んだ。
「な…なんだ。」
グリッドが今まで見せなかったユアンの冷たい目線にうろたえる。
ユアンは元々は残酷な人間だった。
目的の為ならどんなことをしても厭わないし(現に彼は元の世界ではレネゲードの長を務め、罪のない神子を何人も虐殺してきた)、その目的を遂行する為の力も知能も有していた。
彼は静かに言う。
「あの二人の事など放っておけ。殺されてもこの状況だ。仕方ない」
「な…、何を!!」
思わぬユアンの言葉にグリッドは驚嘆した。しかし黙り、ニヤリと笑う。
「は、ははーん、わかったぞ。ユアン、お前あの二人のどちらかに気があるな。それであえてピンチな目に遭わせて助けて、好感度アップという姑息な手を…」
「私の発言のどこをどう取ればそういう解釈になるんだ」
グリッドは、うっ、と言葉に詰まった。そもそもユアンのあまりの言葉に対して空気を保とうとして出た詭弁だったからだ。
「いいか」
ユアンはグリッドを真っ直ぐに見つめ、口を開く。
「お前達がどうなろうと私には関係ない。むしろ邪魔だ。こんなゲームの最中にこんな風に馬鹿共とつるんで、何を考えているんだ。」
レネゲード最高幹部、ユアン。
言ってみれば彼もまた、最もマーダーに近い男だった。
220漆黒の翼・グリッド2:2005/12/30(金) 05:04:49 ID:unDKWToA
「これはお遊びじゃないんだ、尤も貴様の様な生ぬるい環境で育った者には分からないだろうがな」
ユアンはグリッドに近寄った。眼に宿る暗い眼光は変わらず、逸らすこともなく見据えたまま。
見たこともないユアンのその様子にグリッドは僅かに脚が震え出す。
「賭けてもいい。どちらにせよお前らの様な奴らはこのゲームで無様に死ぬ。今もきっとこの会場の何処かで誰かが誰かを殺している。
お前らは運が良くたまたまその状況に陥らなかったに過ぎない。」
グリッドはじわり、と冷や汗をかいた。
その緊張感はあの大男が襲撃に来たときの比ではなかった。
そしてやっとの思いで絞り出す様に反論する。
「な、何だユアン!!だったらそれこそ四人力を合わせて生き延びればいい!!」
「本当にとんでもない馬鹿だな」
ユアンはグリッドの顔の前に手をかざした。
「私の言っている意味が分からないか?
今までは敵の襲撃もあってうやむやになって四人でつるんではいたが、私は馴れ合いはごめんだ。
つまり私はマーダーとなるには躊躇しない。
―――今すぐに、この場でお前を殺すことも出来るということだ」
その手にパチパチ、と電光が宿った。
ユアンの表情は極めて冷静沈着であり、その様子は元々殺しに慣れた者であると素人のグリッドにも分かった。
明らかに自分に向けられた殺意。
ユアンは表情にこそ出さないが、内心イライラしていた。
今まで自分はこんな奴に情がほだされていたのだろうか。
笑い話だ。
どう考えても非効率的だ。
とっとと始末して、一刻も早くマーテルを見つけねば。マーテルはこんなことは喜ばないだろうが、状況が状況だ。こんな奴でもこんな会場にいる以上、マーダーにでもなるかもしれない。
何より何故かこいつが釈に障った。
グリッドの緊張は沸点に達し、見てわかるまでにどうしようもなく脚が震えている。
喉がカラカラと乾き、唾を飲もうと嚥下させるにもただ口の奥が痛い。
心臓は本当に胸を突き破りそうだ。
それでも。
「フ、フフフ…」
グリッドは笑った。
「この場に及んでも強がりか?」
「聞いて、呆れるな、ユアンよ!」
グリッドは反論した。
しかし威勢の良い言葉とは裏腹に、声はこの上なく震え、口は死にかけの金魚のようにかぷかぷしている。
しかし、その言葉は、固く一言一言確実に紡ぎ出されたものだった。
221漆黒の翼・グリッド3:2005/12/30(金) 05:15:47 ID:unDKWToA
「お前はなんと言おうとも我が漆黒の翼の一員だ!!お前がそれを了承したのだからな!」
ユアンは眉をしかめた。
「まだそんな事言うのか。いい加減に―――」
「聞け!!!!」
グリッドはユアンに気圧されまいと――いや、気迫では完全に負けてはいたが――ユアンの言葉を遮る。
「我ら四人はこのグリッド率いる漆黒の翼だ!!!
俺は漆黒の翼のリーダーとしてお前らを悪の手から守る義務がある!!!」
グリッドは拳を握りしめた。
震えるな。
震えるな。
今にも叫んで逃走しそうだ。
体は熱くなるのに胸はこれでもかと恐怖に凍えている。
自分の中で死という文字が揺らめく。
負けるな。
負けるな。
負けるな!!!
グリッドは強くユアンを睨んだ。
そして鬱蒼とした森の中、グリッドの掠れた声がしかし高らかに響く。
「お前が悪の道に引きずられてゆくのを止めるのもリーダーとしての務めだ!!
仲間を守る事も出来ずにどうしてリーダーが出来よう!!!
俺は漆黒の翼を守る!!!!
たとえユアン!!お前に殺されてもなっ!!!!!」
グリッドの眼が見開かれた。
握りしめた拳から血が伝っている。
先ほど大男に殴られたばかりで立つのも辛いだろうに。
恐怖で呂律もろくに回ってないじゃないか。
泣いて命乞いをするかと思えば、仲間の心配か。
ふっ、とユアンが笑いを漏らした。
「どうしようもない馬鹿だ」
「な!!何がおかしいのだ!!」
グリッドは急に赤くなり、よたよたと体がよろめく。
「私に殺されたらゲームで生き延びるどころか、二人も助けれないじゃないか」
ユアンは手を下げた。
「あ!!しまった!!!」
グリッドは口を押さえてあたふたとした。
「やっぱり殺すな!!殺すなよ!!俺には使命が――――」
「成程、確かにリーダーだ」
「????」
ユアンのいきなりの態度の豹変ぶりにグリッドは戸惑う。
グリッドを見るその眼は、先程の殺意のこもったものではなかった。
くるりとユアンは踵を返した。
「グリッド、失禁しているぞ」
222漆黒の翼・グリッド4:2005/12/30(金) 05:24:42 ID:unDKWToA
「お…?ああ!!!」
グリッドの股間はしたたかに濡れ、尿が地面に水たまりを作っていた。
足元が生暖かい。
先程体が熱く感じたのはこのせいだろうか?
「ち、違うぞ違うぞ!!違うんだからな!!ビビって漏らしたわけでも体が熱く感じたのが小便の温度のせいでも…!!」
ぶんぶんと首を横に振る。
「半分ほど言っている事が意味不明だが、わかったからとりあえず脱いで脚拭いてズボン絞れ。後ろ向いていてやる」
「あ、ああ」
いそいそとズボンを脱いで傍目には情けなくお漏らしの処理をしているグリッドを背後に、ユアンは星の見えない夜空を仰いだ。
「仲間か。
トップの資質としても私よりもうわてかもしれないな」
「な、何か言ったか?」
がに股で適当な布で小便を拭くグリッドがユアンに尋ねた。
「………いや。それより早く捌け。
こんな状態で敵に襲撃されたら目も当てれないぞ」

そしてグリッドはズボンを履き、ユアンの背中を見つめた。
振り返らずにユアンは言う。
「仕方ないからもう少しお前達に付き合ってやる。
カトリーヌとプリムラを探しに行くぞ」
グリッドは一瞬きょとんとしたが、すぐに腰に手を当て、仰け反った。
「ははははは!!!!それでこそ漆黒の翼の一員だ!!!改心したかユアンよ!!!」
とんでもないスピードでテンションのチャンネルが変わり、意気揚々としだした彼を無視してかせずかユアンは続ける。
「とりあえず元に来た道を戻るのがいいだろう。あの二人も片方が方向音痴でももう片方が導くかもしれない。
うやむやに歩くよりは町に戻った方が確実だ」
223漆黒の翼・グリッド5:2005/12/30(金) 05:33:45 ID:unDKWToA
「ああ!!」
グリッドはざくざくと歩きだした。
先程まで恐ろしさに失禁していたのにタフな奴だ。
しかし大男に負わされたダメージまではそうはいかないらしく、やや体がふらついている。
「無理はするな。後に響くぞ」
やや息を切らしながらもグリッドは返した。
「そうはいかん!!我が漆黒の翼の者達が今ピンチかもしれないのだ!」
ユアンは肩を下げた。
「分かったよ。箒を使うのは体力を消耗するから気が進まないが、辛くなったら言ってくれ。
それと先程の演説はなかなかのものだったぞ。臭くて思い出すだけでもこちらが恥ずかしいが」
グリッドは、きっ、とユアンを見る。
「は、恥ずかしいだと!?」
「誉めているんだ。
行くぞ、リーダー。」
ユアンはかすかに微笑んだがグリッドはそれには気づかなかった。
「ああ!ゆくぞ!!大食らいのユアン!!!」
「……その肩書きはいつまで続くんだ?」



【グリッド 生存確認】
所持品:無し
状態:HP半分ほど。チャームボトルの効果はほとんど切れている。
基本行動方針:生き延びる。
第一行動方針:プリムラ、カトリーヌと合流
第二行動方針:漆黒の翼のリーダーとして行動


【ユアン 生存確認】
所持品:占いの本、エナジーブレット、フェアリィリング、ミスティブルーム
状態:ほぼ健康、TPちょっと消費
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:プリムラ、カトリーヌと合流
第二行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。

現在位置:G5の森
224螺旋の邂逅 1:2005/12/31(土) 02:11:13 ID:HTL0FesY
ソロンは闇の中を駆けていた。
目的地は、西南、D6の辺り。
リオン・マグナスを目撃してから彼が向かったらしいその方面で、爆発が起こった。
丁度ジェイと分かれてしばらく後のことでもあった。
ジェイが向かっているはずの洞窟とその爆心地は、
直線上にあるので、彼等が遭遇し戦闘に入った可能性は高い。
あれほどの規模、ついでに人工的な感じもした爆発を起こす術を弟子は持っていない。
つまりは相手方、リオン・マグナスの一手と見ていいだろう。
もし二人が戦ったとして、よもやジェイが負けることは無いと思うが、
できればリオン・マグナスには生きていてもらいたかった。
その理由は、単にソロン自身が面白いものが見たいという欲望のみによって構築されていたが。

目的地に近付いた。
暗闇に目を凝らす。目立つ障害物も無い、見晴らしのよい草原地帯だ。
その分視界も聞くが、常人なら夜目が利かずにいるだろう。
その点忍者である自分は有利だ。
だから、地に伏す二つの屍を見つけるのも、
近くにいたリオン・マグナスを発見するのも自分が先だった。
225螺旋の邂逅 2:2005/12/31(土) 02:12:06 ID:HTL0FesY
しかし・・・
黒髪の少年の姿を確認して間もなく、少年はこちらを振り向いた。
驚愕し動きを止めるソロン。少年はこちらを睨み続ける。
そして歩き出してきた。
「こちらの存在は感知できても、姿までは見えない様ですね・・・」
ソロンはつぶやく。
本来なら高笑いと共に襲い掛かりたいところだが、
ここはより事態を面白くする為にぐっと我慢する。
そして少年が手にしている機械、それを見つめながら歩く少年の姿を見てソロンは状況を理解した。
「あの機械、センサーか何かですかねぇ・・・?」
いずれにせよこちらの姿が見られていないなら好都合だ。

後ろに跳躍し、距離を取る。
少年も速度を上げて追いかけてくる。
そうしてしばらく追いかけっこをしながら、
ソロンは少年が手にするセンサーの有効範囲を見極めた。
「このぐらいにしておきますか」
そうつぶやき、一気に加速し、移動する。丁度、東へ向かって。
少年も走る。ソロンは煙幕と共に姿を消した。
・・・あれくらい引き付けておけば大丈夫でしょう・・・
ソロンは顔を歪ませ、次の目的地へ移動した。
226螺旋の邂逅 3:2005/12/31(土) 02:13:15 ID:HTL0FesY
マリアンは目を閉じて、うとうとしていた。
暗闇の中、聞こえるのは海岸に打ち付ける波の音と、ゼロスの寝息だけが聞こえていた。
『マリアン?』
手にした剣、アトワイトが声をかける。
「ふぁ、す、すみません。寝てました?」
『いいえ・・・けどあなた、無理してるわよ、明らかに』
「す、すみません・・・」
頭を振り、周囲を見回すマリアン。
ただ静かに波が打ち寄せるのみである。
『そろそろ、ゼロスを起こしましょうか』
「・・・そう、した方がいいですよね?」
『あなたの健康状態を考えればね』
「すみません・・・」
アトワイトはまたため息を付き、次の言葉を発しようとしたが──
『これは・・・!?』
「ど、どうしましたか?」
『シャルティエ・・・?いえ、ディムロス?近付いてくる・・・』
「は、はい?」
『これは・・・・・・いけないマリアン!すぐにここから逃げて!!』
「え・・・それって──」
227螺旋の邂逅 4:2005/12/31(土) 02:14:09 ID:HTL0FesY
マリアンの言葉はそこで途切れた。
一瞬の内に背後から何者かの腕が伸び、その右手が彼女の口を塞いでいた。
そしてもう片方の腕が、彼女の胴に巻きついて、体を拘束した。
「!?」
『マリアン!!』
アトワイトを握ったまま、マリアンは金縛りにあった様に体が硬直した。
頭は混乱している。何がどうなっているのか、まるで分からなかった。
「んっ!んん!!」
「ふふふ・・・ははは・・・うふははははは!!」
突然現れた何者かは、男の様だった。
後ろから拘束されているので、自然と何者かの体が彼女の背中に密着する格好になる。
狂気交じりの笑い声が、彼女の耳元で出された。

・・・怖い。
その時になって初めて、彼女の心に恐怖が表れた。
怯えた様に両目は見開かれ、自然と涙が両の目に浮かんだ。
口を強く掌で覆われながら、彼女は視界に微かに映るゼロスを見た。
赤髪の男は、依然として眠っている。起きる気配は、無い。

・・・・・・ゼロス、さん・・・・・・

228螺旋の邂逅 5:2005/12/31(土) 02:14:56 ID:HTL0FesY
声を出そうにも、ただ嗚咽混じりの泣き声が漏れるだけであった。
「ふふははは、あはははははは!!」
再び狂気の笑いが耳元で叫ばれ、マリアンは身をすくめて瞳を閉じた。こぼれた涙が頬を伝った。
そして次の瞬間、強烈な浮遊感に襲われた。
おそるおそる目を開けると、さっきまで自分が居た場所が遥かに遠く、小さくなっていた。
そして背後の男が彼女の口から右手を放した。
「・・・っはぁ、はぁ・・・」
ようやく解放され、マリアンは口から思い切り息を吸い込む。
だがそれも僅かのことで、男が何かを地面の向かって投げると、すぐにまた口を塞がれた。
そして何かを見届けると、男はマリアンとアトワイトを巻き込んで、煙と共に姿を消した。

マリアンが再び目を開けると、そこは海岸の岩礁地帯だった。
さっきまで彼女達が居た場所と、遠く離れているような距離。
ゼロスらしき人影も見えなかった。この暗闇と、涙が彼女の視界を曇らせていた。
彼女を拘束している男は、今度は彼女を岩場の陰に引きずり込んだ。
「んぐっ!んー!!」
残された力をもって、必死に抵抗するも、男の力は凄まじく、全く効果は無かった。
彼女の姿がすっかりと陰に隠れると、男は体制を入れ替えてマリアンの前に移動した。
彼女が見た男の姿は、正に狂人であった。
歪んだ口元から薄笑いをもらし、蛇の様な眼光は、ぎらぎらと光っていた。
拘束は解かれても、背中には巨大な岩が立ち、唯一抜け出せそうな道も、男の体が塞いでいた。

・・・・・・私、このまま・・・・・・

絶望的な状況の中、彼女の恐怖は極限まで達した。
虚ろな瞳から、涙がとめどなく流れ出ていた。
229螺旋の邂逅 6:2005/12/31(土) 02:15:57 ID:HTL0FesY
『やめなさい!その子をどうするつもり!?』
アトワイトが気丈に叫んだ。
しかし男はまるで動じる事無く、歪んだ口元を更にゆがめて、笑い混じりに答える。
「これはこれは、ソーディアンのお一人、アトワイトさんではありませんか。
 いや何、これから面白いことが始まるので、その下準備ですよ」
『その子を解放しなさい!』
「やれやれ、随分と気のお高い人だ。しかし・・・」
その男、ソロンはマリアンからアトワイトを取り上げると、近くの岩の割れ目に突き刺した。
「私の楽しみを邪魔しないでもらいたいですね」
『この・・・下衆が!』
アトワイトが張り裂けるような、悲痛混じりの声を上げた。
ソロンはあははははと高笑いを上げると、目線を上げて遠くに目をやった。

「さあこれから始まる楽しいショーを、三人・・・いや、四人で仲良く観戦しましょうか」
『四・・・人!?』
アトワイトが疑問の声を放つ。ソロンは直も笑いながら、
「あなたにとっても親しい人物のはずですよ、ねぇディムロス」
そう言って、ザックからソーディアン・ディムロスを取り出した。
『ディムロス・・・!?やっぱり、あなた・・・』
『アトワイト・・・』
ディムロスは沈痛な調子でかつての同僚、そして恋人の名を呼んだ。
そしてマリアンはただこの状況に恐怖し、震えていた。

「さぁさぁさぁ・・・そろそろ始まりますよ・・・あははははははははは!!!」
ソロンは大声で笑った。
勿論、今彼等が居る場所なら、たとえ大声を出そうとも、
向こうに気付かれない位置だということを理解しての叫びだった。
230螺旋の邂逅 7:2005/12/31(土) 02:17:33 ID:HTL0FesY
ゼロス・ワイルダーは唐突に目が覚めた。
眠っていたはずだが、突然何かが彼を狙って飛来してきた。
ギリギリで避けることに成功したが(というより元から彼自身を狙ったものでは無かったのか?)、
岩盤に突き刺さったそれは鋭い刃を持つクナイだった。
あの勢いで体に刺されば、確実に致命傷を負っていただろう。
「マリアンちゃん、も〜ちょっと優しく起こしてくんねぇかな・・・」
軽い笑いを浮かべながら、周囲を見回す。
しかしそこにマリアン達の姿は無い。
荷物もろとも、すっかり姿が消えてしまっている。
「あ〜らら、俺様、もしかして愛想を尽かされちゃった?」
二人が消えたことに全然気付かなかったのは、自分でも気付かないほど疲れが溜まっていたのか。
ゼロスは少し深く寝入りすぎたことを軽く後悔し、二人を探そうとする。
「俺様と一晩を過ごすのは危険だと判断しちゃったかな?」
自嘲気味に笑い、当ても無く歩き出す。
だが、彼の目には別の誰かが映っていた。

闇に溶け込むように佇む、一人の少年。
マントを翻し、剣を持つ、黒髪の少年。リオン・マグナスだった。
「なんだ、お前?」
ゼロスは言葉を投げかける。既に軽い響きは持っていない。
「・・・」
リオンは何も言わず、剣を構えた。
眼前の男を、始末すべき敵と判断したのだった。
「どーやら、乗った奴らしいな・・・マリアンちゃん達のことも気になるが、まずはこっちか・・・」
そうつぶやき、ゼロスもまた、ナイツサーベルを構えて戦闘体勢を取る。
闇夜のもと、二人の剣士は対峙した。

しかし彼等は知らない。
そこから幾分か離れた場所に、成り行きを傍観する存在が居ることを。
ソロンはこれ以上ない程に口元を歪ませた。
231螺旋の邂逅 8:2005/12/31(土) 02:18:35 ID:HTL0FesY
【リオン 生存確認】
状態:全身に軽い火傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
所持品:シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:ゼロスを殺す
第二行動方針:ゲーム参加者の殺害
第三行動方針:マリアンとの再会
現在位置:D8の海岸地帯

【ゼロス 生存確認】
状態:胸に切創 TP中消費
所持品:壊れたけん玉 ナイツサーベル ???? ????
第一行動方針:リオンを倒す
第二行動方針:マリアンを探す
現在位置:D8の海岸地帯

【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×14
状態:極度の恐怖 軽度の疲労 TP微消耗
第一行動方針:この状況から脱する
第二行動方針:ゼロスと共に行動
第三行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:C8の海岸地帯

【ソロン 生存確認】
状態:狂気
所持品:ソーディアン・ディムロス クナイ(残り九枚)
第一行動方針:周りをかき乱し、傍観して楽しむ
第二行動方針:ジェイの監視
現在位置:C8海岸地帯
232安息、それとも 1:2005/12/31(土) 14:15:34 ID:7wnQ+tTz
痛い。怖い。嫌だ。助けて。死にたくない。
何度も頭を巡る5つの言葉。

メルディは痛みも気にせず走っていた。止まったら追い付かれる。殺されてしまう。
今も耳で響く忌まわしき音。少女の声。

だから、悪いけど、死んで。
死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで……

背後に感じる人の気配。追い掛けてくる。あの鈍い光を放つ物を持って。そして、ぱららららっという音と放たれる弾。
「あっ…!」
体が前に倒れ込む。
あぁ、撃たれてしまったんだ。死んじゃうの?  死ぬ? 死ぬ。
嫌だ。怖い。死にたくない。
歩み寄る足音。もう駄目なの? 駄目? 駄目。
嫌だ。助けて。死にたくない。
体が震えている。目に涙が浮かんでいる。
メルディを支配していたのは、絶望そのものだった。
せめてそれから逃れるように、目を伏せた。


「なぁ、ジューダス」
「何だ?」
「なんだかんだで結局は元の場所に戻るんじゃないか」
「そうだな。だが、少しでも状況が把握できた」
「そりゃそうだけど…」
「…無駄だったとでも言いたいのか?」
「いや、そうでもないけど…」
「なら口を挟むな」
233安息、それとも 2:2005/12/31(土) 14:17:38 ID:7wnQ+tTz
少々不満げな顔で歩くロイドと、その前を歩くジューダス。
西は危険性が高いということで森を通って引き返しているのだが、つまりは元々いた場所を経由することになるのだ。
森の中はかなり暗く、目を凝らさないと前がよく見えない。
こんな中闇討ちにあったら、とも思うが、見えないのはする側も同じだろう。
ランプを使い自ら居場所を明かす訳にもいかないのである。
となると、やはりジューダスの言う通り、明るく見渡しのきく平原より暗く見難い森の方が安全なのかもしれない。
あの凄まじい跡──ただでさえこの周辺は危険なのだから。
と、前方にうっすらと何かが見えた。
「あれは…!?」
よくよく見れば、人が倒れている。
ロイドは駆け足で倒れている人物に近寄り、体を仰向けにさせて揺さ振った。
「おい、大丈夫か?」
その人──二人と同じ位の歳の少女だった──は暫くして目をゆっくりと開けたが、突然かっと見開かれた。
「…いやぁっ! 離してよぉっ!」
そしてロイドを思いっきり突き飛ばしたのだ。
「うわっ! なっ、何だよ!?」
突然のことに避けようがなかったため、もろに倒れ込む。
234安息、それとも 3:2005/12/31(土) 14:19:26 ID:7wnQ+tTz
むくりと起きたロイドが見たのは、立ち上がり一心不乱に腕を動かし、誰も近付けさせまいという少女の姿だった。
「嫌だぁっ! メルディがこと殺さないでぇっ!!」
「殺さないから! だから落ち着けって!」
「嘘! さっきも殺そうとした!」
立ち上がり、再び少女を落ち着かせようとするロイドだが、当の少女はまるで聞く耳を持たない。
後方にいるジューダスは静かに様子を見守っていたが、
「…さっき、だと?」
少女が発した言葉に1つの疑問、そして確信を持った。
少女の場所、向き、時間、言葉、混乱。それらが答えに導いていく。
ジューダスはロイドに近寄り、腕を出してロイドと少女を遮る。
「ロイド。そいつは危険だぞ」
「危険?」
「先程の荒野を見ただろう? あれはこいつが起こしたのだろう」
あの惨状を起こしたのか!? と言わんばかりにロイドは少女に目線を移す。
とてもじゃないが、そうには見えない。何かに怯え騒ぐ姿はまるで親鳥とはぐれてしまった子鳥のようで、
大地を削るような力を持っているとは、到底思えないのである。
「…だからって、放っておけるかよ!」
235安息、それとも 4:2005/12/31(土) 14:21:07 ID:7wnQ+tTz
仮に少女がそれ位の力を持っていたとしても、今の状態を黙認する能力はロイドには無かった。
ジューダスの腕を取り払い、少女に近付こうとする。
「いやぁぁあっ! 来ないでっ、助けてよぅっ!!」
少女はやって来るロイドの姿を見て、ずるずると後退りをする。
潤んだ瞳は、ロイドを恐怖の対象としか映していない。
それを分かっている上で近付いていく。
顔にはなるべく笑顔を浮かべ、相手を安心させようとして。
しかしそれも逆効果。ついさっき少女は暖かさに騙されたのだから。
嫌々と首を横に振り、少女は走り去る。
突発的にロイドも走り出し、逃げる少女を追い掛ける。
エクスフィアの力もあって、少女に追い着くのはたやすかった。
手首を掴み少女を捕まえようとするが、急に止められた反動の後に少女は再び抵抗し始め、
──突然、少女から黒い光が溢れ出す。
(…あれは!?)
真っ先にジューダスが少女から発せられる光に気付く。
しかしロイドは騒ぎ続ける少女を止めようということに気を取られ、少女の異変など気にもしていなかった。
「あーもう、大人しくしろっ!!」
ロイドは手を離して──少女を後ろから抱き締めた。
流石の少女も、これには黙る。
236安息、それとも 5:2005/12/31(土) 14:25:17 ID:7wnQ+tTz
「俺達はお前に襲いかかったりしない。何があったか分かんねぇけど、これだけは約束する」
ロイドは強く、はっきりと言葉を続けた。
──何だろう、この感覚は。前にも同じようなことがあったような…。
そう、それはあの時。闇の極光術を使う自分を、後ろから支えてくれた仲間…大切な人。
その感覚と同じような気がした。
「…キー…ル…」
少女は小さく呟くと、目を閉じ意識の糸を切断した。
同じように黒い光も弱まっていき、最終的には消えた。
ロイドは近くの木に少女を寄り掛からせる。
「…緊張が解けたんだろう。しかし…さっきのは一体…?」
「こんな…こんな風になるまで殺し合いをさせるなんて…」
今は静かだが、さっきまでの少女の混乱ぶりは普通ではなかった。
負っている傷も酷いようで、右腕と左肩、背中は服に赤く血が染みついている。
どうにかして止血が出来ないか、と思いジューダスの持っている支給品を確認したところ、
何と霊薬と言われているエリクシールが出てきたのだ。
貴重かつ効果が高いため窮地で使おうとしていたんだ、というのはジューダスの主張である。
少しならいいだろ、ということになり、ロイドは少女の口にエリクシールを含ませた。
237安息、それとも 6:2005/12/31(土) 14:26:43 ID:7wnQ+tTz
更に自分の服の一部である、首部分にある白い布を裂いて包帯代わりにして、
右腕と左肩に巻いた(背中の傷は布が足りなくて出来なかった)。
これで一先ずは大丈夫だろう。ロイドは再び眠る少女を見た。
「許せねぇ…絶対」
唇を噛み、手をぎゅっと握る。
少女との出会いは、分かっていた状況を更に再認識させた。
放送と、凄まじく荒れた大地と、傷ついた少女。
ゲームは確実に進んでいる。今更気付いた、夢なんかじゃない、紛れもない現実。
その現実の中に自分は存在しているのだ。
怖くも思えたが、それを上回る意志がロイドを支配した。

──絶対止めてやる。こんなゲームなんか。

握る手を更に強く握り、誓う少年。
それを見守るように見ていた仮面の剣士は、ロイドを一瞥すると近寄り、視線を同じく少女に移し言う。
「…ロイド」
「ん?」
「お前、やることが大胆だな。見ず知らずの人間に…」
「うっ、うるせー!!」


「…ん…」
ぼやけている輪郭が、徐々にはっきりとなっていく。
目の前に見えるのは、鳶色と赤い色。
赤が少し体をびくんとさせたが、血ではないことを確認すると、安堵の一息をついた。
238安息、それとも 7:2005/12/31(土) 14:28:18 ID:7wnQ+tTz
完全に輪郭が明瞭になると、自分が誰かに背負われていることに気付く。
赤一色の服に、つんつんの重力に逆らっているような髪が目についた。
「起きたか?」
背負っている人物が声を掛けてきた。
声に覚えがある。あの森で出会った歳が同じ位の人だ。
あの時は殺されると思った。でも、何故か今は背負われている。
生きているのだ。
「…どうしてメルディがこと、助けてくれたか…?」
「何で、ってなぁ…ドワーフの誓い第2番、困っている人を見かけたら必ず力を貸そう!
つーか…とにかく、放っておけなかったんだよ」少年は普通に答えた。
これまで会った2人とは違う、直感でメルディはそう思った。
今までは参加者全員が人を殺そうとしていると思っていた。
しかしこの少年はどうだろう。それが全く感じられず、疑う余地もない程だった。
いい人なんだろうな、と思ったが、逆にそんな人に負担をかけたくないという考えが頭を巡った。
「迷惑…かけちゃうよ」メルディが呟くと、少し前方にいる黒衣の人物が振り向き言う。
「全くだ。無傷ならまだしも、こんな怪我人と行動するとは…」
「ジューダス! そこまで言うことないだろ!」
239安息、それとも 8:2005/12/31(土) 14:30:13 ID:7wnQ+tTz
すかさず少年は反論する。ジューダスと呼ばれた黒衣の人物も納得いかないようで、顔を前に戻してしまった。
二人のやりとりを見て、メルディは再び不安そうに呟く。
「メルディ一人で行く、迷惑かけたくないよ」
「迷惑じゃないって。それにお前、怪我してるじゃんか」
それにも少年は嫌そうな含みを持たず答え、優しい言葉で返してくる。
「でも、でも…」
「じゃあ回復できる人とかアイテムを探そうぜ。それから別れたって遅くはないだろ?」
「…本当にお前はお人好しだな」
うろたえるメルディに、少年は1つの提案を持ち出す。
ジューダスはやれやれという感じで言うが、別段嫌がっている訳ではないらしい。
観念したようにメルディが呟く。
「うん…ありがとな」
そうは答えたものの、メルディの表情は完全には晴れなかった。
ここに来て初めて出会った「いい人」達。助けてくれたのは素直に嬉しい。
だが、この人達は自分がどういう人物か知らないのだ。
さっきの自分…闇の干渉を受けた自分を。
さっきも同じようになりかけた。またあんな風になったら、自分はこの人達に何をするか分からない。
そうなる前にここから離れなくては。
いい人達だからこそ、傷つけたくない。
240安息、それとも 9:2005/12/31(土) 14:47:26 ID:7wnQ+tTz
【ロイド:生存確認】
状態:メルディを背負っている
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
第一行動方針:メルディを回復できる人またはアイテムを探す
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:ジューダス、メルディと行動
現在地:B5の森を移動

【ジューダス:生存確認】
状態:無傷
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール、???(武器ではない)
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:メルディを回復できる人またはアイテムを探す
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:ロイド、メルディと行動
現在地:B5の森を移動

【メルディ 生存確認】
 所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
 状態:TP中消費 全身に打撲 背中に刀傷 両手足に浅い刀傷 左腕に銃創 右足首に擦り傷
    左肩に銃創 ネレイドの干渉を抑えきれない ロイドに背負われている
 基本行動方針:元の世界へ帰る
 第一行動方針:ロイド、ジューダスから離れる
 第二行動方針:仲間と合流
 現在地:B5の森を移動
241名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/01(日) 18:50:51 ID:WKCsJ/Eh
              (^^)」<うんこするぞー
             「||
          三   >>

    (^^)」<あたしおしっこー
   「||
三   >>

            (^^)」<うししし
           「||
        三   >>

242悪夢 1:2006/01/02(月) 01:31:30 ID:KLTzzG4Z
何度か剣を交えた後、黒髪の剣士、リオンが体勢を崩した。
赤髪の剣士、ゼロスはそれを好機と見て一気に攻め立てる。
ゼロスのナイツサーベルが空を切り裂き、リオンに襲い掛かる。
左右交互の六連切り。しかしそれらは少年の持つ剣・シャルティエに全て捌かれた。
「魔神剣!」
間髪いれずに振り上げと共に地を這う衝撃波を放つ。
リオンもまた、同じ技を撃ち威力を相殺する。
「雷神剣!」
高速の突き。相手は身を反らして避ける。そしてシャルティエを振り下ろしての反撃。
ゼロスはそれを受け止め強引に打ち上げた。そして勢いそのままに跳び上がる。
「紅蓮剣!」
空中から打ち下ろしの火球を発射。リオンは素早いステップで落下点から遠ざかった。
「あの連携を防ぎきるなんてな・・・」
ゼロスは微笑混じりにそうつぶやいた。
紅の閃光が巻き起こり、地面を焦がした。一瞬お互いの姿がはっきり見えた。
どちらも結構な戦闘をこなした、傷ついた体だった。
しかし、だからといって手を緩めることはできない。
243悪夢 2:2006/01/02(月) 01:32:17 ID:KLTzzG4Z
リオンが術を詠唱し始めた。こちらも詠唱を開始する。
しばらく静寂が周囲を包んだ。
先に術を放ったのはリオンだった。
暗黒の槍が現れ、四方八方からゼロスを突き刺そうとする。
ゼロスはそこで詠唱を止め、さっと飛びのいて避ける。
「魔神剣・双牙!」
槍が消えない間に──リオンが術を放って硬直している間に──魔神剣を二連射した。
リオンは一発目をぎりぎりで防御したが、続く二発目の直撃を受けた。
「くっ!」
ゼロスは走り、リオンとの距離を縮める。
上体を仰け反らせていたリオンの目に、鋭く暗い光が宿った。
即座に体勢を立て直し、剣を真っ直ぐに向けて走り出す。
その速度にゼロスは一瞬戸惑い、足が止まりかけた。
「空襲剣!」
高速の突進からの突き。ゼロスは紙一重で体をずらし、その先端を後方へ流す。
「ちょっと勢い乗りすぎじゃねーの?」
凄まじい速さのままで後ろに走っていくリオンの姿を後ろ目で見ながら、ゼロスは微かに笑った。
だが、それだけでは無かった。
リオンはその場で急停止し、背中を向けた体制のまま一気に後方、ゼロスの居る方向へ跳んだ。
「んなっ!?」
驚き、剣を構えようとするも、間に合わなかった。
244悪夢 3:2006/01/02(月) 01:33:03 ID:KLTzzG4Z
膝を付くゼロスの前に、リオンは軽やかに着地した。
「ちっ・・・」
ゼロスは膝を付いた体勢のまま、肩を押さえる。
上空からのすれ違い様に、右肩を斬られていた。ついでに頭も蹴られた。
「あのやろー・・・」
眼前の少年を見やり、そうつぶやく。
あの勢いのまま急転換するとは、あの体のどこにそんな力があるのか。ついでに蹴りも痛かった。
ナイツサーベルを握り、ぐっと立ち上がる。

かつてゼロスがジェストーナとの戦いでケンダマを用いたことから分かると思うが、
彼の支給品はろくなものでは無かった。(ジェストーナの支給品残り二つはその場に放置した。)
名の有る女神の彫像、セフィラ。そして黄金色に輝く種。
それらとケンダマを合わせての三つがゼロスの支給品だった。

「だからといって・・・」
剣を振り、目の前の剣士と対峙する。
次の攻防が最後になるだろう。そんな予感がした。
245悪夢 4:2006/01/02(月) 01:34:00 ID:KLTzzG4Z
「ふっふふふふふ・・・」
それより遠く離れた場所で、ソロンは一人笑った。
すぐそばにはマリアン、アトワイト、ディムロスが居た。
静まり返っている。
『これはやはり・・・シャルティエ?』
アトワイトが喋った。
『・・・そうだ、あれは確かにシャルティエだ』
ディムロスが沈んだ口調で答える。
『まさか・・・』
『あれを使っているのは・・・リオン・マグナスだ』

マリアンはその言葉を聞き、目を見張った。
ソロンはその反応を見て、顔を歪めた。
「そん・・・な・・・」
先程までとは違う、身が固まる様な感情が彼女を襲った。
「ええそうですよ、あの男と殺しあっているのはリオン・マグナス。あなた達がよくご存知のはずの男です」
『あなた・・・彼に何を!?』
「私は何もしていませんよ。リオン・マグナスはこのゲームに乗ったんです。
 事実彼が手を下したと思われる死体を二つ見つけました」
「嘘・・・・・・」
マリアンは虚ろな眼差しで、ぼんやりと前を見つめてつぶやく。
「さあて、どうやら決着が付きそうですよ」
薄ら笑いを浮かべて、視線をずらすソロン。

マリアンはしばらく呆けた様にぼんやりとしていたが、やがてきっと表情を正すと、即座に立ち上がった。
「おや・・・どうなさいましたか、お嬢さん?」
ソロンは笑みをこぼしたまま、目の前の女性を見つめる。
マリアンは黙って駆けようとした。ソロンは手を伸ばし、動きを止めようとする。
彼女はその手を強く振り払い、岩に突き刺さったアトワイトを引き抜いてそのまま走り出した。
「おやおや、案外気の強いお嬢さんだ」
ソロンは追おうとする素振りも見せず、両手を上に向けておどけた。
実際彼は彼女をどうこうする気は無かったし、これはこれで別の面白いものが見れるとも思っていた。
彼はただ面白いものが見れればそれでいいと思っていた。
「さて、どうなりますか・・・ねぇディムロス?」
手にする剣に言葉をかける。返事は無い。
246悪夢 5:2006/01/02(月) 01:34:49 ID:KLTzzG4Z
ゼロスの剣が弾かれて、宙を舞った。
右肩をかばいながらの戦闘では、やはり不利であった。
圧倒的に有利な立場にありながら、リオンは微笑一つ携える事無く、シャルティエを男に向けた。
そしてなぜか、圧倒的に不利なはずのゼロスの表情に微笑が浮かんだ。
何も持っていない状態で、右手を上に掲げる。
「エアスラスト!」
ゼロスがそう叫んだ瞬間、リオンを中心とする凄まじい量の真空の刃が起こった。
猛烈に吹き荒ぶそれは、たちまちリオンの全身を切り刻んだ。
「うぐぁっ!!」
咄嗟にバックステップをしようとするも、足を地から離したことで逆に吹き飛ばされてしまった。
・・・あの時の、詠唱か・・・!
宙を舞いながら、リオンは微かにそう思った。

そして同じく宙を舞っていたナイツサーベルを拾い上げ、ゼロスは構えた。
躊躇う必要は無い。襲ってくるものには容赦しない。
ゼロスは前方、数メートル先で倒れている少年を見下ろしながらそう思った。
だが、その時、後方から声がした。

「待って・・・待ってください、ゼロスさん!」
247悪夢 6:2006/01/02(月) 01:35:41 ID:KLTzzG4Z
その声はマリアンのものだった。
その声は少し遠い位置に居て、派手に倒れていたリオンに届かなかった。
その声は彼女に近い位置に居て、落ち着いて立っていたゼロスには届いた。
その声を聞かなかったリオンは急ぎ立ち上がった。
その声を聞いたゼロスは動作をやめて、後ろを振り向いた。

──そしてリオンは、その隙を逃さなかった。

マリアンがゼロスらしき影を見て声をあげて、すぐだった。
首だけを回して振り向いたゼロスの背中から、突然鋭い何かが生えた。

ゼロスは視線を前に戻し、至近距離まで近付いた少年の頭を見た。
体当たりするように密着した体勢のリオンは、剣をゼロスの胸に突き立てていた。
・・・丁度、心臓の辺りだった。
ゼロスが血を吐いた。少年の黒髪に、いくらか降りかかった。
少年は顔をあげ、ゼロスの目を覗き込む。
苦痛に顔を歪めるゼロスは、左手を上げ、少年の頭を掴んだ。
「この・・・ガキ・・・」
リオンが剣を引き抜いた。勢いよく血が噴き出し、地面に溜まっていった。
少年の頭を掴むその手から力がすっと抜け、ゼロスの体が崩れ落ちた。
べしゃっと血がはねる音がした。ゼロスはうつ伏せのまま、血の海に沈んだ。
248悪夢 7:2006/01/02(月) 01:36:27 ID:KLTzzG4Z
「ゼロスさん!」
マリアンはほとんどパニック気味に声を上げた。
そして急いで走り寄り、変わり果てた姿の男の脇に座り込む。
「・・・マリアン、逃げ、な・・・」
地面を向いた男の顔から、微かな声が漏れた。
いつもちゃん付けで自分の名前を呼ぶ男の、聞いたことの無い深刻な口調。
それは男の死が近いことを示していた。
「ああ・・・そんな・・・ゼロスさん!!」
『マリアン、落ち着いて!スペクタクルズを!』
そう言われてはっとし、スペクタクルズを用いて男の様子を見る。
「あ・・・ああ・・・」
マリアンの顔が凍りつく。
既にゼロスの体は、回復が困難なほど手遅れだった。
間に合わせのファーストエイドなど、全くの無意味だった。

「どうし・・・て・・・こん・・・な」
彼女は顔を俯け、静かに涙を流した。
涙が血の海に落ち、跳ねた。
そして顔を上げる。
先程から凍りついたように動かなくなった、少年の姿がそこにあった。
「マリアン・・・」
その少年はそう言った。体だけでなく、表情も凍っていた。
彼女もまた、まばたき一つせずにその目を見つめた。

時が止まり、場を支配した。
二人は固まったまま見つめ合い、この静止した時が永遠に続くかと思われた。
249悪夢 8:2006/01/02(月) 01:37:26 ID:KLTzzG4Z
【リオン 生存確認】
状態:思考停止 全身に軽い火傷 全身に裂傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
所持品:シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:ゲーム参加者の殺害
第二行動方針:マリアンとの再会
現在位置:D8の海岸地帯

【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×13
状態:思考停止 疲労 TP微消耗
第一行動方針:この状況から脱する
第二行動方針:ゼロスと共に行動
第三行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:C8の海岸地帯

【ゼロス 生存確認】
状態:右肩に切創 胸に深い切創、出血多量、瀕死、行動不能
所持品:壊れたけん玉 ナイツサーベル セフィラ 黄金の種
第一行動方針:無し
現在位置:D8の海岸地帯

【ソロン 生存確認】
状態:狂喜
所持品:ソーディアン・ディムロス クナイ(残り九枚)
第一行動方針:周りをかき乱し、傍観して楽しむ
第二行動方針:ジェイの監視
現在位置:C8海岸地帯
250Planetarium 1:2006/01/03(火) 01:27:50 ID:d6QHUxk3
月が顔を出し、夜になった。
あたしは森の中でうずくまっていた。
夜に動き回るのは危険だ。むやみにやたらに動くよりも、しっかりと休息を摂らなければ。
そんな事を考えながらも、あたしの心は別の事でいっぱいだった。

チェスターが死んだ。あたしの目の前で…――。
信じられなかった。信じられる筈がなかった。だって…思い知らされたから。
あたしはチェスターの事が…好きだったのだと…。
でももう遅い。チェスターは死んでしまった。
死んだ人が星になるというのが本当なら、チェスターはこの空の何処かに居るのだろう。
251Planetarium 2:2006/01/03(火) 01:28:41 ID:d6QHUxk3
この戦場には似合わないような綺麗な星達が、空を飾っている。
あの時‐チェスターと‐アーリィで見つけた星座も、此処に存在するのだろうか。
「チェスター…会いたいよ…」
そう呟いた時だった。

『生き残っている諸君。ご機嫌如何かな?』

「ッ…!!」
それはこのゲームの主催者‐ミクトラン‐からの放送だった。
何故?死亡者と禁止区域の発表には早すぎる。
あたしは周囲に敵が居るわけでもないのに、息を殺して放送を聴いた。
『私の放送に不思議がっている人も居るだろう。だが安心し給え。私は君達にちょっとした余興をプレゼントしようと思っているだけだ』
252Planetarium 3:2006/01/03(火) 01:29:38 ID:d6QHUxk3
余興…?
『その余興というのは…花火だ』
…?
何を言っているのだろう、こいつは。不謹慎にも程がある。
…いや、ミクトランにとってこれは楽しいゲームなんだ。不謹慎なんて思う筈がない。
『だが、ただの花火では芸が無い。そこで、だ。死亡者数と同じ数だけ打ち上げる事にした。なんとも幻想的だとは思わぬか?』
この男は平気でやるのだ。あたし達の中にある、暗く苦しい悲しみを表に出すような、酷い事を。
『北方をご覧よ。ショーの始まりだ』

ヒュウゥゥゥ…バッ…!!

一つ目の花火‐紅‐が空に放たれた。
二つ目は黄…三つ目は紫…四つ目は翠…――。
253Planetarium 4:2006/01/03(火) 01:30:25 ID:d6QHUxk3
そして…



ヒュウゥゥゥ…



蒼。



バッ…!!

「ッ…チェスター…!!」
あたしは掠れたような声で叫んだ。
行きたいよ、チェスターの所へ。今すぐにでも駆け出して行きたい。
チェスターと居られたら、真っ暗で何も見えなくても、怖くても大丈夫なのに…。
でも…どんなに想ったって、チェスターはもう居ない。
一番に…君が好きだよ。
願いを流れ星にそっと唱えてみたけれど、届くだろうか…。この綺麗な空に、神様に…。



いつしか花火は消えていて、再び静寂が訪れた。
泣きたい。でも泣いていられない。
254Planetarium 5:2006/01/03(火) 01:31:15 ID:d6QHUxk3
あたしは周囲に落ちている棒や枝、つるを集めた。

‐あたしがやらなくちゃ…あたしが皆を、チェスターを救わなきゃ…!!‐

棒にしっかりと枝を括りつけ、箒を作った。
魔導注入もしっかりした。
これで闘う…!!

その時からあたしの瞳は、冷たく紅いエルフの瞳になった。


【アーチェ 生存確認】
状態:健康 チェスター死亡により深い悲しみ、又、怒り
所持品:手作りの箒 毒瓶 ダークボトル×2
第一行動方針:ゲームに乗った人物の殺害
第二行動方針:生き残る
現在位置:B3の森 北方
255堕ちた天使 1:2006/01/04(水) 01:40:28 ID:RK1+UDcs
薄れ行く意識の中で、ゼロスは己の死を悟った。
致命傷もいいところだ。絶対に助かりはしないだろう。
不思議なことに、恐怖や絶望は無かった。
それはゼロス自身が、生きるということにそれほど執着していなかったからであろうか。
血が流れ続けるのが分かる。

どれくらいの時が経っただろう。
立ち上がったマリアンが、ようやく口を開いた。
「エミリオ・・・」
凍った表情のまま、口だけを動かして言った、少年の名前。
「・・・マリアン」
エミリオと呼ばれた少年は、再び眼前の女性の名前を呼ぶ。
そして一歩彼女に歩み寄った。
しかし、彼女は一瞬体を震わせると、同じく一歩、後に退いた。
マリアンの頭は既にまともな思考能力が働いていなかった。
目の前で一緒に行動していたゼロスが刺されたこと、
そして手を下したのが他ならぬリオン・マグナス──エミリオ・カトレットだったこと。
そうした出来事は、彼女には刺激が強すぎた。
自分が何をすべきか、どういう状況にあるのか、把握できていなかった。
256堕ちた天使 2:2006/01/04(水) 01:41:16 ID:RK1+UDcs
『・・・て』
ふと、アトワイトが何事かを言っているのに気付く。
『逃げて、マリアン!早くここから!』
言われた言葉を硬直した頭の中で反芻する。
「で・・・も、ゼロスさんが・・・」
『分かって、マリアン。ゼロスは、もう・・・』
改めて眼下に沈んでいる男を見やる。
流れ続ける血が広がり、マリアンの足元を濡らしていた。
『お願い、マリアン。あなたまで死んではいけないの』
「でも・・・でも・・・」
そして視線をずらし、少年を見つめる。彼はその場に止まったままだった。
『それにもうすぐ、あの男が来る!マリアン、お願い!!』
アトワイトの悲痛な叫び。
「マリアン・・・」
少年は腕を前に出し、声をかける。
そして彼が握る剣は、ゼロスの血でべったりと濡れていた。
「──!」
彼女は強く瞼を閉じ、脱兎の如く駆け出した。涙が数滴、宙を舞った。
257堕ちた天使 3:2006/01/04(水) 01:42:04 ID:RK1+UDcs
「待ってくれ、マリアン、待──」
リオンは走って追おうとするも、その体が崩れた。
この短期間での三連戦は、心身ともに彼をぼろぼろにしていた。
既に十分な力は残されていないのだ。
休息無しにこれ以上動くのは、危険だった。
膝に手を乗せて力を入れ、強引に立ち上がる。
そして再び走り出す。
だが、その体が今度は不自然に倒れた。
リオンの体が前のめりに倒れ、地面にうつ伏せになる。
その背中からは、小さく銀色に光る突起物が生えていた。
「ふふふ・・・あはははははは!!」
唐突に、笑い声がした。
全く知らない、第三者の声。狂喜じみた、男の声。
ソロンがクナイを投げ、リオンの背中に当てたのだった。
258堕ちた天使 4:2006/01/04(水) 01:43:14 ID:RK1+UDcs
地面に倒れる二人の男の姿を見て、ソロンは声高に笑った。
「いやいや、実におもしろかったですよ。最高のステージでした。
 お礼といっては何ですが、私が最高の結末にしてあげますよ」
幸い傷は深いものでは無かった。
しかし一度倒れると、疲れきった体が立ち上がることを拒む。
「どういう・・・ことだ!」
背筋を反らせ、突如出現した男をにらみながら、リオンは言った。
「簡単なことですよ。あなたを殺し、彼女を殺す。
 そちらの男性は既にお亡くなりのようだし、私にとっては楽な仕事ですがね」
「貴様・・・!」
怒りの混じった声で、そう叫ぶ。
だがソロンはその怒りを逆に恍惚と受け止め、にやりと笑う。
「おやおや、情け容赦なくその男を殺したあなたが、どうしてあの女性のことをそんなにも気にかけるのですか?
 あなたはこれに乗ったのではないのですか?」
リオンは返答に詰まる。確かにソロンの言ったことは、リオン自身にとって矛盾することであった。

「そうですね。では、こうしましょう。まず私があの女性を殺します」
ソロンはそう言葉を続けると、二人を無視してゆっくりと歩き出した。
「ま・・・、待て!待ってくれ!!」
先程までの怒りが消え、ただ悲痛な響きがそこにあった。
ソロンは直一層、口元を歪める。
「お土産に彼女の首でも持って帰りましょう。あなたはそこで寝ているといい。
 ふ、ふふ、ふふふははは、あはははははははは!!!」
狂喜の声を上げ、移動速度を上げるソロン。
リオンは急ぎ立ち上がろうとした。しかし膝が揺れ、体がどしゃっと倒れる。
術を詠唱しようにも、間に合わない。

そしてソロンが空高く跳んだ時──
紅く燃える火球が、ソロンの体に命中した。
体勢を崩し、その場に転落しかけるも、くるっと身を回転させ、着地する。
それまで狂喜のみがあった彼の目に、一瞬別の感情、驚愕の色が浮かんだ。
ソロンの視線の先には、赤髪の男が立っていた。
259堕ちた天使 5:2006/01/04(水) 01:44:56 ID:RK1+UDcs
だらだらと胸から血を流し続け、頭からつま先まで全身に血が付着している。
顔はうつむき、その目は虚ろで、生気の欠片も無かった。
幽霊の様に、ゼロスはそこに存在していた。
「・・・これはこれは、驚きましたね。まだ生きているとは思ってませんでしたよ」
ソロンは微かに笑い、そう言った。
その時、リオンが渾身の力を込めて立ち上がり、マリアンが消えた方向へ走り出した。
だがソロンはそんな少年の姿は気にも留めず、新たな興味の対象に視線を注ぐ。
ゼロスは剣も持たずに、息遣いも荒く、立ち尽くしていた。

朦朧とする意識の中、ゼロスの頭に様々なことが浮かんだ。
マリアンはもう充分離れただろう。
あのガキはどうか知らないけど、多分大丈夫だろう。
ただ、目の前に居る男。あいつが黒幕かどうか不明瞭だが、放っては置けないことは確かだった。

自分に残された、最後の力。
何もしないで寝てもいたかったが、少しの心残りがあることも確かだった。
マリアン、アトワイト、そしてこの島に居るはずの、自分の仲間達・・・
自分が今どうこうしたところでゲーム全体の流れには大した影響も無いだろう。
仲間を守るためか?それともかつて自分が行ってきたことへの贖罪か?
それとも──
260堕ちた天使 6:2006/01/04(水) 01:46:03 ID:RK1+UDcs
ゼロスの体が光った。そして、彼の周囲から光る羽根が舞い始めた。
「おやおや。何をするつもりですかな?」
ソロンはにやけて声を上げる。しかしゼロスは無視した。

「輝く御名の元──」
ゼロスは静かに、深く、憂いある口調で詠唱を始めた。
ソロンは黙り、男の様子をうかがっている。
「地を這う穢れし魂に、裁きの光を雨と降らせん──」
ゼロスの様子を危険と思ったか、ソロンはディムロスを構えて走り出した。
「安息に眠れ、罪深き者よ──」
ソロンが充分に接近し、剣を振り上げた瞬間。
ゼロスは顔を上げ、目前に迫った男を見据えた。
その時のゼロスの目は、それまでに無いほどに、真剣な光を帯びていた。
そして、その口が開かれた。やはりそれは重い響きを持っていた。
「ジャッジメント!!」
次の瞬間、周囲一帯に、光の束が豪雨の如く降り注いだ。
それらは地面に着弾すると、美しく散り、鮮やかな光を見せて消えていった。
「なっ・・・これは!?」
ソロンの顔にそれまでに無い明らかな戸惑いの色が浮かんだ。
赤髪の男を中心とする、全方位攻撃。逃げ場など、どこにもなかった。
やがてゼロスの輝きが消えると、絶え間なく降り注いだ光も止み、辺りには静寂が戻った。
261堕ちた天使 7:2006/01/04(水) 01:47:26 ID:RK1+UDcs
それからしばらくして、ゼロスの体がふらっと揺れ、仰向けに地面に倒れこんだ。
・・・今度こそ、ここまでだな・・・
夜空に浮かぶ星をぼんやりと見ながら、ゼロスはぼんやりとそう思った。
あの男がどうなったか、マリアンが逃げ切れたか、そういったことは既にどうでもいいことだった。
俺はもう死ぬ。このゲームで中途半端に力尽きた者と記録されて、死ぬ。

「かくして、麗しの神子ゼロスさまは、非業の死を遂げるのでした・・・」
誰も聞いていないことを理解しながら、自嘲気味にそうつぶやいた。
そして力なく笑い、虚無的な目で空を見つめる。
・・・アホらしい。思えばホント、ろくな人生じゃなかったな・・・
そうしてゼロスは己の生涯を振り返った。
生まれてから世界を救済する神子として扱われていたこと。
母親を目の前で殺され、その母親から自分の存在を否定されたこと。
教会からも疎んじられ、王室からは怯えられて。
逃げ出したかった。自分の立場から。全てから。
もしかしたら、ここで死んでしまうことも、自分にとっては丁度良かったことかもしれない。
・・・ろくでもなかった人生に、ようやくおさらばできたからな・・・
そう思った時、ゼロスの頭に何かが映った。
それは自分の仲間達。いろんな旅を共にした、ロイドやしいな達の姿だった。
・・・最後の方は、そうでも無かったかもな・・・
微かに笑み、瞼を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。
262堕ちた天使 8:2006/01/04(水) 01:49:33 ID:RK1+UDcs
そうしてふと、すぐ傍らの地面に何かが落ちているのに気付いた。
それはクナイであった。あの男が投げた、クナイ。
・・・そうだ、まだ最後にやることがあったな・・・
右手を伸ばし、それを逆手に握る。そのまま右手を頭上に高く挙げた。
そして勢いよく自分の体に振り下ろす。
剣先がゼロスの首の下あたりに装備された輝石に刺さり、砕けた。
・・・これでいい・・・

少しずつ意識が途切れ途切れになっていく。
・・・ロイド。お前ならきっと、諦めないで、みんなが助かる方法を探すんだろうな・・・
・・・悪いけど、俺は死ぬ。
・・・お前や、お前に感化された奴等がどうするのか、見ておきたかったけどな・・・
・・・ここで俺はおさらばだ・・・
瞼を開ける。だが、もう何も見えていなかった。
真っ暗な闇。どこまでも続く闇。
既にゼロスの意識は遠のいていた。
意識が闇を彷徨う。
そうしてその先に、一人の少女が居た。
帽子を被り、ゼロスと同じ赤髪をした、十五歳程の少女。
・・・よかったな、セレス。これでお前は、自由だ・・・

そうしてゼロスの意識は途絶えた。

漆黒の闇の中で、彼の髪と血だけが、ただ赤く存在していた。
263堕ちた天使 9:2006/01/04(水) 01:50:37 ID:RK1+UDcs
【リオン 生存確認】
状態:全身に軽い火傷 全身に裂傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷 背中に刺し傷
所持品:シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:マリアンを追う
第二行動方針:ゲーム参加者の殺害
現在位置:D7の海岸地帯から移動中


【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×13
状態:混乱 疲労 TP微消耗
第一行動方針:安全な場所へ逃げる
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:D7の海岸地帯から移動中


【ソロン 生存確認】
状態:不明
所持品:ソーディアン・ディムロス クナイ(残り八枚)
第一行動方針:周りをかき乱し、傍観して楽しむ
第二行動方針:ジェイの監視
現在位置:不明




【ゼロス・ワイルダー 死亡】
【残り40人】
264女神 1:2006/01/04(水) 23:21:08 ID:ZDM3Nbmt
「……っ、」
「ミトス…、大丈夫?」
「傷は浅いが…足となると不便だな。」
ダオスがミトスの足に刺さったナイフを抜き、水で消毒する。
判断通り、見た目より傷は軽いようだがいかんせん足だ。必然的に動きは鈍くなる。
靴を脱いだ素足にかかる冷たい水が刺激を生み、ミトスは小さく唸り眉を寄せた。
そんな弟の姿に、隣でただ見ているしか出来ないマーテルは悲痛に表情を曇らせる。
「あの子もきっと、怖いだけなのよ。
不安で…仕方ないんだわ。」
何とかしてあげなくちゃ…、と。
小さく呟くマーテルの傍らで、応急処置を終えて寄り添うように座るミトスは弱々しく頷く。
頷くが、そのまま顔を上げない。
「でも…、ボクは許せない。…姉さまはボクが絶対に…、命に代えても、絶対に護るから…っ!」
苦痛を吐き出すように。
まるで余裕の無い声は今にも泣きそうで、ミトスは不甲斐無い自分に唇を噛んだ。
265女神 2:2006/01/04(水) 23:24:37 ID:ZDM3Nbmt
そんなミトスに、マーテルは一瞬だけ碧の瞳に哀しみを宿し、すぐにひどく柔らかな微笑みを向けた。
慈愛に満ちた聖母の微笑。
一歩離れて姉弟を見守っていたダオスは思わず息を呑む。
ふわり、と風が若草の髪を揺らし、辺りの樹々のように流れた。
それらと何ら変わらない優しさで、マーテルはミトスの頭にそっと掌を寄せる。
「姉さ…」
「ミトス、ありがとう。」
戸惑いの色混じる瞳は、告げられた言葉に和らぐ。
しかし「でも…」と続く反意の声に、再び不安げに眉が寄る。
「命に代えて、は…困るわ。
あなたは私にとっても、何があっても護りたい大切な弟なんだもの。」
あくまで穏やかに。
包み込むような柔らかさで癖のない金髪を撫でる。
それだけでミトスの緊張はぎこちないながらも緩み、幾分ゆとりが生まれる。
知らず入っていた肩の力が抜け、白い衣服が衣擦れの音を立てた。
「だから、とにかく今は考えましょう?
ユアン達とも合流しなくちゃいけないし…、
皆に、こんな事は間違っているって伝えなくちゃ。
今、私たちに出来る事から始めましょう?」
言葉を重ねられ、ミトスは素直に同意する。
希望を見出したかのように、その瞳は輝きを孕む。
マーテルは指に光るシンプルな指輪に少しだけ微笑みかけ、それからダオス、ミトスへと頷いた。
向けられた二人は、つられるように一つ、頷きを返した。


時折微かに風に流れる鉄錆じみた香には、誰も触れたりしないまま。


266女神 3:2006/01/04(水) 23:28:01 ID:ZDM3Nbmt
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少TP消費 精神の微緊張
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動
       :打開策を考える
       :敵は殺す


【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足に軽裂傷
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動
       :打開策を考える
      :クラトスとの合流
      :ダオスを信用しない(マーテルが彼を信用し、相手も危害を加えてこない間は協力する)


【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:無傷。哀しみは残るもののいたって落ち着いている。
行動方針:ダオス達と行動
      :ユアン、クラトスとの合流
       :打開策を考える
      :戦いをやめさせる
267Scream 1:2006/01/05(木) 01:38:04 ID:LpsNLQfp
ゲーム中、唯一の知り合った者同士のパーティ‐リッドとキール‐は森の中で休息を摂っていた。
「…行けども行けども何も無し…か。くそっ…ファラやメルディは何処に居んだよ…」
「焦ると集中力が落ちるぞ。メルディ達を探すのも大切だが、まず自分の身を守るべきだろう」
「わかってるよ…それにしても、さっきの花火って…」
「…一応数えてみたんだが、死亡者が先の放送より増えていた…」
「ちっ…ファラ、メルディ…無事で居てくれ…ッ…」
二人は共に旅をした仲間‐ファラとメルディ‐の事が気掛かりだった。

敵に襲われたりしていないだろうか。
268Scream 2:2006/01/05(木) 01:38:49 ID:LpsNLQfp
行動を共にできる人物は居るだろうか。
二人とも…ちゃんと生きているだろうか。

「何故…時空を越えてまで争いを繰り返す必要があるんだろう…」
「…キール」
「何だ?」
「…“今”って…何だと思う?」
「…苦しみを絶やさないように、時間だけが過ぎてる…そんな感じだろう」
「…そうか…」

もう戻れない…楽しかった日には…。
誰もが知っている。
生き残れば戻れるのか?
だったら俺が…やるしかないのか?

‐殺すしかないのか?‐

リッドの中の、二人のリッドが傷つけ合っている。
正義は時として悪魔になる?
269Scream 3:2006/01/05(木) 01:39:31 ID:LpsNLQfp
そこまでする必要はあるのか?

「リッド…!」
キールに声を掛けられ、リッドはハッとした。
「珍しいな、お前がぼんやりするなんて。大丈夫か?」
「いや、大丈夫だ。何でもない…」
「おい、これを見ろ」
すると、キールは地面に文字を書いた。

‐誰か居る‐

「!!」
リッドはちらりと周りを見渡した。
風で揺れた木々がざわざわと音を立てている。

…風が強まった。
「な、なんだ…風渦巻いて…」
「…ッ!?リッド、逃げろ!!」
「なっ!?…ぐッ…ああぁあぁ!?」
「リッド!!」
風がリッドを切り裂いた。
それは紛れもなく、上級魔術《サイクロン》だった。
270Scream 4:2006/01/05(木) 01:40:34 ID:LpsNLQfp
「ぐぅっ…なんだ…ッ…これ…」

何処からの攻撃だ…!?周りには誰も居ないのにっ…!!

キールは詠唱を始めた。

敵が何処に居るか見当もつかない。
だけど…僕がやらなきゃ…!!

すると今度はキールの足元に紅い魔法陣が広がった。

「まさかッ…ぐああぁぁあぁっ!!」

上級魔術《イラプション》…それはキールの白い肌を焼いた。
「ッ…キー…ル…!!」
「づあ゙ああ゙ぁ゙ぁぁっ!!」
キールの肌は、再生不能な程に焼け爛れていた。
「ぐっ……畜…生…」
リッド最期、薄れゆく意識の中に人影を見た。
その人影の正体は桃色の髪の、紅い瞳をした少女だった。
271Scream 5:2006/01/05(木) 01:41:30 ID:LpsNLQfp
【アーチェ 生存確認】
状態:健康 チェスター死亡により深い悲しみ、又、怒り
所持品:手作りの箒 毒瓶 ダークボトル×2 BCロッド ナイフ 形見の弓 スペクタクルズ
第一行動方針:ゲームに乗った人物の殺害
第二行動方針:生き残る
現在位置:B2の森






【リッド・ハーシェル 死亡】
【キール・ツァイベル 死亡】

【残り 38名】
272森の中で 1:2006/01/05(木) 08:01:20 ID:3Zu8ETWi
逃げなくちゃ、逃げなくちゃ、にげなきゃ…!

マリアンは必死に逃げた。
泣きながら逃げた。
時折視界が涙で滲むと、指で強く払った。
ゼロスさんはどうしただろう、ううん、どうしたなんて考える程もない筈だ。
でも、それをしたのは自らも知る黒髪の…!
『マリアン…』
応える余裕は、今はない。

息が上がるほどに走っているのに。
前方から空気が風となって目に刺さるのに。
全く、瞳は乾かなかった。

海岸地帯から、北上する。
確か地図には森が描いてあった筈だ。
そこにいけばもしくは。
少しの間なら、隠れられるかも知れない。
273森の中で 2:2006/01/05(木) 08:02:58 ID:3Zu8ETWi
「それで、どうしようか?」
「戦わずにお話出来るのが、最良ね」
「しかしこのゲームに乗った者も少なからず…、…っ!?」
かさり。
下草が踏まれる微かな音に、ダオスは一気に警戒を強めた。
ミトスもそれは同様で、その一点を見据えて硬直している。
一瞬遅れて反応したマーテルは不安を無理矢理押し込めて、努めて優しく口を開いた。
「…どなた?私たちは危害を加えたりしないわ。出てきてくれないかしら」
再びかさりかさりと草が鳴り、やがて震えながら姿を現したのは。
泣き腫らした一人の女性だった。
274森の中で 3:2006/01/05(木) 08:06:16 ID:3Zu8ETWi
【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×13
状態:混乱 疲労 緊張 TP微消耗
第一行動方針:安全な場所へ逃げる
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:B7の森林地帯

【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少TP消費 精神の緊張
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動
       :打開策を考える
       :敵は殺す

【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足に軽裂傷、緊張
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動
       :打開策を考える
      :クラトスとの合流
      :ダオスを信用しない(姉が彼を信用し、彼が怪しい行動を取らない限りは協力)

【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:緊張、僅かな怯え
行動方針:ダオス達と行動
      :ユアン、クラトスとの合流
       :打開策を考える
      :戦いをやめさせる
275微塵の夢1:2006/01/05(木) 08:10:05 ID:wCqPXoqx
「…寝たか」
「ええ」
夜も深まりから何刻かたつ頃、マーテルの隣で金色の髪の少年、ミトスは樹に背を預けて眠りついていた。
その顔に初対面の時に感じた気迫や殺気が嘘の様だった。
この少年もかなりの力の持ち主なのは身をもって知っている。
しかしまだ十と幾ばくかの子供だ。
「足の傷…少し熱を持ってしまったみたいね。貴方はお休みにならないのですか?」
「ああ。いつ敵襲に遭うかも分からないからな。貴女こそ休んだ方がいい」
マーテルはにこり、とダオスに微笑んだ。ダオスは溜め息を吐く。
「貴女は不思議な女性だ。きっとミトスも貴女が側にいるからこそ安心して眠れるのだろう」
「いいえ」
マーテルは眼を伏せた。闇の中でもよく分かる程に長い睫が眼下に陰りを落とした。
ぎゅっと白い手が膝下で結ばれる。
「私…ミトスや貴方と違ってなにもできない。
シャーリィちゃんを止める事すらできなかった。情けないわ。」
木の葉の音を聴く様に空を仰ぐ。
「あれは仕方のない事だ。決して貴女のせいではない」
マーテルが首を振る。微かに潤んだ目が宙を流れる木の葉を映す。
「何故…こうなってしまったのでしょう。いつもそうだわ。絶えずどこかで誰かが誰かを傷つける。なんて辛い事だろうって。
色々ね、考えていたの」
ざわりと暗い木々が揺れる。まるでマーテルの心に同調するように。美しい浅葱の髪が揺れる。
今までに起きたこと――それは充分過ぎる程に清らかな彼女の心を傷つけていた。
「少女の事はもう気に病むな。過ぎてしまった事だ」
「それもあるわ。
このゲームの主催者の事もよ」
たなびく髪が闇に溶ける事なく静かに煌めく。
276微塵の夢2:2006/01/05(木) 08:19:56 ID:wCqPXoqx
「彼も、可哀想だわ。こんな事をして喜びを得るなんて。
こんな悲劇がもたらすものなんて悲しみしかないのに」
「それも仕方のない事だ。
人を殺めて楽しむ人間なら私も幾人か知っている」
マーテルはそうね、と小さく返すと珍しくやや自嘲気味に笑った。
「だけど馬鹿でしょう、私ねまだ心の奥底では彼を説得できるかもしれないって思っているのよ。
いつだってそうだった。叶わない事の方が多かったけれど」
ダオスは一、二歩進み、顔を伏せた。そして言う。
「貴女は優しすぎる。
沢山の人間がいれば何処かで行き違い、崩れてゆくのは必然だ。
人間の中には邪悪な者も中にはいる。
……私も例外ではない」
厳しい顔とは裏腹に、その声は静かで独白の様でもあった。
「奴の様に掌で人の命を転がして喜ぶ趣味はないが…私も目的の為ならば大勢を手に掛けた。これからもそうだ。そしてここでも私や貴女に手を出す者がいれば容赦しない」
「………」
マーテルは再びうつむいた。
「だが」
ダオスはそのまま続ける。
「願わくば私も貴女の想う理想であってほしい。悩まなくともいい。
貴女は正しい」
硬い表情ではあるがそう言うダオスに、マーテルはその眼を見て再び微笑む。
「貴方は優しい人ね。」
「私に似つかわしくない言葉だな」
そう言うと、ダオスはふいに黙り、森の奥を横目で睨み付けた。
そのまま踵を返し、足を進めた。
「…どうしたの?」
「…いや、少し周りの様子を見てくる。ミトスを頼む」
振り返らずにダオスは森の奥へ進んだ。
277微塵の夢3:2006/01/05(木) 08:28:37 ID:wCqPXoqx



マーテルの姿が見えなくなる程にダオスがしばらく足を進めると、立ち止まった。
一見すると木々が無造作に並ぶだけの吸い込まれそうな何もない深淵。
その闇に一言呼びかける。
「…呆れる程に馬鹿正直な殺気だな。わざわざ出向いてやった。
出て来るがいい」
樹の陰よりそれは静かに姿を現した。
一束に纏められた長い銀の髪。
一人の若い青年だった。
表情は獣の様に険しく、眼は鋭く、剣を片手にしていた。
冷たい焔の様に青年から闘気が燃えている。
「……私を殺しに来たのか」
青年は無言で剣を構えた。
「やめておくのだな。私に剣を向けるのはお前の死と同意義だ」
一言も発する事なく、いきなり凄まじい剣圧がダオスを襲う。
草花を刻み、疾走してきたそれを易々とダオスは避けた。
背後の廃木にそれは命中し、真っ二つに裂けた。なかなかの手練だ。
「それでも俺は……」
青年が初めて口を開く。
「それでも俺はこのゲームで生き残らねばいけない。相手が誰でもな」
青年はそのまま突進し、ダオスに横薙に斬り掛かる。
髪を掠ることもなく、ダオスはまたもや軽々とかわし、次に襲い来る凄まじい突きには地面を蹴って横に跳んで刃は空を裂く。
ダオスの足が地に着いた直後に地面を踏みしめ、正拳を青年のみぞおちに叩き込む。
余りの速さに青年は眼を見開くが、バックステップしようにも追いつかなかった。
しかしその拳は寸止めだった。
しかし青年は拳の衝撃波で体が後ろに倒れてしまった。
「く……っ!!」
278微塵の夢4:2006/01/05(木) 08:35:58 ID:wCqPXoqx
青年が起き上がろうとしたその直後―――
「ぐあッ!!!?」
剣を持つ右腕がダオスの足にしたたかに踏みつけられる。
それは青年が短時間休んで回復アイテムを用い、少しだけ癒えたの肩の裂傷に響いた。
閉じ掛けた筈の裂傷から再び血が流れる。
ダオスは冷たい表情で青年を見下げる。
凄まじい威圧感。その姿はまさに覇王のそれだった。
「…やめるのだな。お前では、しかも手負いでは私は倒せない」
圧倒的な実力の差――――
しかしそれを見せつけられても青年の眼光は弱まるどころかますます強くなる。
ミトスもそうだったが、ダオスはその眼に見覚えがある。この青年と同じ程の歳の剣士の眼だ。
その様な眼の者が、このゲームの上では無差別に人を殺すマーダーとなってしまう。
「相当の覚悟の様だな」
青年―――ヴェイグは歯を食いしばった。
「…ゆっくりしている、場合ではないんだ、俺は、俺はこのゲームに一刻も早くけりを付ける!!」
ヴェイグの眼が見開かれる。すると何処からか表れた鋭い氷の刃の群がヴェイグの体からダオスめがけて疾る。
ダオスは後ろに跳びつつ、マントを勢いよく翻し、氷を叩き落とした。
ダオスはマントに付いた氷を払いながら言う。
「はやる気持ちも分からないでもないが、相手が悪いな」
ダオスにはこの青年を殺すには少々ためらいがあった。
愚かな程真っ直ぐな眼
この青年はこの傷から察するに相当の戦いをしたのだろう。
279微塵の夢5:2006/01/05(木) 08:46:11 ID:wCqPXoqx
殺気からもマーダーなのは一目瞭然だ。しかし、その殺気が邪悪な、例えばあの主催者に召集された時にいた男の首を折った赤髪の男の持つような邪悪なものとは明らかに違うのだ。
情を掛けているのだろうか、いや、違う。
このバトルロワイアルという茶番の中で己と出会った事で簡単にこの青年が死ぬのは惜しいと思ったのだ。
尤も、自分と戦わずともミクトランが本気でこのゲームを実施している上ではこの青年が生き残る可能性は低いのだが。

ダオスは口を開く。
「それでも、これ以上剣を向け、ここから立ち去らぬのならば私は全力でお前を殺す。
私も生き残らねばならない。それに本当に覚悟を決めたのならば、手を抜くのは失礼だからな」

荒い息をし、血の滴る肩を押さえながらヴェイグはダオスを更に強く睨み付けた。

【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少TP消費、冷静
第一行動方針:返答次第ではヴェイグを殺す
第二行動方針:マーテルを守る
第三行動方針:マーテルと行動
第四行動方針:打開策を考える
第五行動方針:敵は殺す

【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足に軽裂傷、浅い眠り
第一行動方針:マーテルを守る
第二行動方針:マーテルと行動
第三行動方針:打開策を考える
第四行動方針:クラトスとの合流
備考:ダオスを信用しない(マーテルが彼を信用し、相手も危害を加えてこない間は協力する)

【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:無傷。哀しみは残るもののいたって落ち着いている。
第一行動方針:ダオス達と行動
第二行動方針:ユアン、クラトスとの合流
第三行動方針:打開策を考える
第四行動方針:戦いをやめさせる

【ヴェイグ 生存確認】
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(アップル、パイン、ミラクル)
状態:右肩に裂傷、背中に刀傷(治りかけ) 。興奮状態
第一行動方針:ダオスを倒す
第二行動方針:ゲームに乗る
第三行動方針:生き残る
280森の中で 1:2006/01/05(木) 09:27:50 ID:3Zu8ETWi
逃げなくちゃ、逃げなくちゃ、にげなきゃ…!

マリアンは必死に逃げた。
泣きながら逃げた。
時折視界が涙で滲むと、指で強く払った。
ゼロスさんはどうしただろう、ううん、どうしたなんて考える程もない筈だ。
でも、それをしたのは自らも知る黒髪の…!
息が上がるほどに走っているのに。
前方から空気が風となって目に刺さるのに。
全く、瞳は乾かなかった。

海岸地帯から、北上する。
確か地図には森が描いてあった筈だ。
そこにいけばもしくは。
少しの間なら、隠れられるかも知れない。

281森の中で 2:2006/01/05(木) 10:05:53 ID:3Zu8ETWi
ダオスがここを離れて、戻らない不安にマーテルが表情を歪める頃。
彼女を護ると決め、且つダオスをまだ信用しきれないでいたミトスは、姉気を気を紛らわせる為に声の調子を明るくした。
「それで、どうしようか?」
「戦わずにお話出来るのが、最良ね」
「そうだね。でも…、…っ!?」
かさり。
下草が踏まれる微かな音に、ミトスは反射的に警戒を強めた。
マーテルもそれは同様で、その一点を見据えて怯えたように硬直している。
ピリピリと張り積めた空気に、皮膚が粟立つ。
「…誰か、いる…」
ミトスの呟き。
一瞬遅れて樹々の中に潜む人影を確認したマーテルは、不安を無理矢理押し込めて努めて優しく口を開いた。
「…どなた?私たちは危害を加えたりしないわ。出てきてくれないかしら」
再びかさりかさりと草が鳴り、やがて泣き腫らした一人の女性が、その身体に似合わぬ剣を携え、小さく震えながら現れた。
282森の中で 3:2006/01/05(木) 10:08:03 ID:3Zu8ETWi
【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×13
状態:混乱 疲労 TP微消耗
第一行動方針:安全な場所へ逃げる
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:B7の森林地帯

【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足に軽裂傷、緊張
行動方針:マーテルを守る
      :マーテルと行動
       :打開策を考える
      :クラトスとの合流
      :ダオスを信用しない

【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:緊張
行動方針:ダオス達と行動
      :ユアン、クラトスとの合流
       :打開策を考える
      :戦いをやめさせる
283名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/05(木) 12:07:03 ID:itNt6eIW
業務連絡

>>272-274、「森の中で」は無効。改正版は>>280-282です。
>>267-271、「Scream」も改正版が投下されるので、これから書く人は改正版を参考にしてください。
284Scream 1:2006/01/05(木) 14:24:00 ID:LpsNLQfp
リッドとキールは塔の中で休息を摂っていた。
「…くそっ…何なんだよ、あの花火…」
「…眠れないのか?」
「さっきの花火で目が冴えた」
「…一応数えてみたんだが、死亡者が先の放送より増えていた…」
「ちっ…ファラ、メルディ…無事で居てくれ…ッ…」
二人は共に旅をした仲間‐ファラとメルディ‐の事が気掛かりだった。

敵に襲われたりしていないだろうか。
行動を共にできる人物は居るだろうか。
二人とも…ちゃんと生きているだろうか。

「なんで…時空を越えてまで争いを繰り返す必要があるんだよ…っ…」
リッドは憤りを隠せなかった。
285Scream 2:2006/01/05(木) 14:24:50 ID:LpsNLQfp
苦しみを絶やさないように、時間だけが過ぎている…。
もう戻れない…楽しかった日には…。
誰もが知っている。
生き残れば戻れるのか?
だったら俺が…やるしかないのか?

‐殺すしかないのか?‐

リッドの中の、二人のリッドが傷つけ合っている。
正義は時として悪魔になる?
そこまでする必要はあるのか?

「リッド…!」
キールに声を掛けられ、リッドはハッとした。
「珍しいな、お前がぼんやりするなんて。大丈夫か?」
「いや、大丈夫だ。何でもない…」
「…おい、これを見ろ」
すると、キールは地面に文字を書いた。
286Scream 3:2006/01/05(木) 14:25:36 ID:LpsNLQfp
‐誰か居る‐

「!!」
リッドはちらりと周りを見渡した。

閉めきった部屋に風が吹いた。
「な、なんだ…風渦巻いて…」
「…ッ!?リッド、逃げろ!!」
「なっ!?…ぐッ…ああぁあぁ!?」
「リッド!!」
風がリッドを切り裂いた。
中級魔術《テンペスト》。
「ぐぅっ…なんだ…ッ…これ…」

何処からの攻撃だ…!?周りには誰も居ないのにっ…!!

キールは詠唱を始めた。

敵が何処に居るか見当もつかない。
だけど…僕がやらなきゃ!!

すると今度はキールの足元に紅い魔法陣が広がった。

「…ファイアストーム」

キールの頭の上から声がした。
「なッ…ぐあぁ!!」
287Scream 4:2006/01/05(木) 14:26:27 ID:LpsNLQfp
キールを襲った魔術はキールの白い肌を焼いた。
「づぁ゙っ!!」
炎に焼かれたキールは火傷を負った。
「キール!!」
リッドの前に桃色の髪の、紅い瞳をした少女が姿を現した。
「ごめんね。君達に恨みは無いけど、あたしは生き残らなきゃいけないの。だから…死んで?」
キールは気を失っている。
この状況でどう対処したらいいのか、リッドには思いつかなかった。
「ぐっ……畜…生…」



【リッド生存確認】
状態:魔術による切り傷
所持品:ムメイブレード エルヴンマント ホーリィリング
第一行動方針:襲ってきた少女を倒す
第二行動方針:ファラ、メルディと合流
現在位置:B2の塔 一階
288Scream 5:2006/01/05(木) 14:27:13 ID:LpsNLQfp
【キール生存確認】
状態:魔術による火傷
所持品:ベレット
第一行動方針:襲ってきた少女を説得する
第二行動方針:ファラ、メルディと合流
現在位置:B2の塔 一階

【アーチェ 生存確認】
状態:健康 チェスター死亡により深い悲しみ、又、怒り
所持品:手作りの箒 毒瓶 ダークボトル×2 BCロッド ナイフ 形見の弓 スペクタクルズ
第一行動方針:生き残る
第二行動方針:リッドとキールの殺害
現在位置:B2の塔 一階
289マーダーアーチェ書いた馬鹿:2006/01/05(木) 15:19:12 ID:LpsNLQfp
++緊急報告++

私の書いた小説(Planetarium、Scream)についての審議が感想スレで行われました。
私の知識と語学力が行き届いておらず、不快な思いをさせてしまいました。
Planetarium、Scream(改訂版も一応投下しましたが)は除外していただいて結構です。

皆様に混乱を招いてしまい、さらには多大なレスの消費をしてしまった事を心からお詫びします。
もう投下はしません。

お世話になりました。
290名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/05(木) 18:03:51 ID:H+OE+D1E
なんかリッドが生き返ってんのはきのせいか?
ついでにキールも
291名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/05(木) 18:22:20 ID:268+9rfE
>>290
テイルズオブバトルロワイヤル 感想議論用スレ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132855244/461-
292魔術師、二人 1:2006/01/05(木) 18:40:42 ID:0dcQSzlX
 エドワード・D・モリスンは歩いていた。宿敵ダオスを探して。
 しかし探し人は見つからない。
 というよりも、彼は今まで誰とも遭遇していなかった。
「ダオス……一体どこにいるんだ……」
 片手に禍々しい飾りをつけた杖を握り締めながら、モリスンは一人心地に呟く。

 彼にとって、このゲームはダオスを倒すのに好都合だった。
 よって、自身とダオスをこの閉鎖空間へと招待した主催者ミクトランには感謝の念すら覚えていた。

 確かに、何の罪も無いのにこのゲームに参加させられた人々が死んでゆくのは心苦しい。
 一回目の放送でもダオスの部下であったジェストーナはともかく、それ以外にも多くの人々が死んだのが分かった。
 しかし、ダオスが世界にいれば、更に多くの人々が死ぬのだ。
 それを考えると、死者には申し訳ないが、このゲームは自分がダオスを倒すまでは続かなければならなかった。

 しばらく歩いていたモリスンだったが、不意に人の気配を感じ、岩陰に隠れた。
 そして隠れながら、気配の方向をこっそり見やると、その方向には男が二人いた。
 薄暗いので良くは分からないが、声が聞えてきた。
「…………か。なら…………言う…………てもらお…………ば、元の世界…………」
「ほ…………やって?」
 途切れ途切れだが、片方の声は明らかに聞いたことのある声だった。
 目と耳に神経を集中させ、改めてその方向を見る。
 すると、姿が段々はっきりと見えてきた。
 そして浮かび上がってきた男の姿は確かに知っているものだった――
「簡単なことだ。私の指示する者を殺して欲しい」
 青髪に赤いメッシュの入った頭、そして黒い服装。
 ダオスの部下であり、ハーメルの町を丸ごと滅ぼした魔術師、デミテルだった。
 一方でデミテルと話をしているのは緑色の髪、緑色の服装と緑に覆われた青年。こちらは全く知らない人物だ。
 しかし、もう一人が誰であるかなどはモリスンにとって、些細な事象だった。
 今重要な事実は、ダオスの部下であるデミテルが目の前にいるということだ。
 ダオス軍団の討伐が悲願であるモリスンにとって、彼もまた倒すべき存在。
 モリスンは、岩陰から飛び出し、デミテルに向かって走っていった――!!
293魔術師、二人 2:2006/01/05(木) 18:41:20 ID:0dcQSzlX
「デミテル、覚悟!!」
 モリスンは、走りながら詠唱をはじめ、ファイアボールを放った。
 生み出された火弾が、デミテル達の足元を襲うが、二人は難なく避けた。
(どうやらティトレイは感情を失ったものの、戦闘で培った反射神経は健在のようだ。)
「その声……エドワード・D・モリスンか?」
 世界的に活躍する魔術師、時空移動の研究等でも有名な研究者、そしてダオス討伐を掲げる男、エドワード・D・モリスン。
 そんな有名人をデミテルが知らないわけが無かった。
 そして、ダオス討伐を宣言している以上、ダオスに従事してる自分を彼がどうするかも分かっていた。
「いかにも! 私は私の命に代えても貴様達を討つ!!」
 モリスンは続けて地中から土の槍を生み出す魔術――グレイブ――を放つ。
「その程度の魔術で私が――!!?」
 デミテルは襲ってくる土槍を見て驚いた。
 グレイブは所謂、中級魔術。威力もたかが知れているはずだった――のだが、今回のは違ったのだ。
 通常のグレイブよりも土の槍が襲ってくるスピードが明らかに速く、土槍自体もその大きさが段違いだった。
 威力の大きさに気付き慌てて避けるが、そこに風の嵐が襲った。――風の初級魔術、ストームだ。
「ぐぁぁ!!」
 叫ぶデミテルが、強風に引き裂かれる。
 ストームもまた、通常のそれよりも風の強さや持続時間が段違いだった……。

 彼は知らなかった。
 そのモリスンが持つ禍々しい飾りのついた杖が、魔術の威力を非常に高めている事に。

 ストーム如きにダメージを負うとは……。
 デミテルは何とか倒れずには済んだが、焦っていた。
 相手は高名な魔術師モリスンだ。生半可な術で倒せる相手ではない。
 だが、だからといってサモンデーモンのような強力な術を発動させようとしても、詠唱中にモリスンの強化された初級魔術が襲ってくる……。
 一体、どこに勝機を見出せばいいんだ?
 デミテルが焦っている間にも、モリスンは攻撃の手を止めない。
「さぁ、これで最後だデミテル!!」
 詠唱態勢に入るモリスン。
 先ほどまで使っていた初級魔術よりも詠唱時間が長い。
 中級? いや、これはもしかしたら上級以上の高位魔術か?
 高位魔術ほど効果範囲は広いのが通例だ。
 よって、今から逃げれば助かるかもしれないという希望も詠唱の長さが打ち砕いた。
 あぁ、私もここまでか……。
 生への過剰な執着心もないデミテルは、死を覚悟した……が。
「ころしちゃだめだぁぁあ!!」
「がはっ!!」
 突如、モリスンは詠唱の途中にも関わらず吹き飛んだ。
 吹き飛ばしたのは緑の男、ティトレイだ。
「あいつがしんだら、おれ、かえれない! おれ、かえりたいぃぃ!!」
 ティトレイは悲痛に聞える叫びをあげながら、モリスンに襲い掛かる。
 起き上がったモリスンは、慌てて杖を構える。
「ぅらぁぁああ!!」
 ティトレイの素早い攻撃を何とか避けるものの、これでは詠唱が出来ない。
 強いとは行っても所詮は後衛に回る術士。
 ティトレイのような前衛で素早い攻撃を得意とする相手は分が悪い。
 ティトレイの猛攻に対し、防戦一方のモリスン。
 そして、そんな二人を見てデミテルはほくそ笑む。
「ティトレイ・クロウ……。予想通りの働きをしてくれるじゃないか……」
 そして、彼はそんな二人を尻目に詠唱を始めた…………。
294魔術師、二人 3:2006/01/05(木) 18:43:15 ID:0dcQSzlX
 【エドワード・D・モリスン 生存確認】
 状態:疲労、軽い打撲
 所持品:魔杖ケイオスハート ???? ????
 第一行動方針:デミテルを倒す
 第二行動方針:ダオス討伐

 【デミテル 生存確認】
 状態:TP中消費
 所持品:フィートシンボル ストロー ミスティーシンボル 金属バット
 第一行動方針:モリスンを倒す
 第二行動方針:ティトレイを操る
 第三行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
          :ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける

 【ティトレイ・クロウ 生存確認】
 状態:感情喪失 全身の痛み、軽いやけど(回復中) TP中消費
 所持品:メンタルバングル バトルブック
 第一行動方針:デミテルを守るためにモリスンを倒す
 第二行動方針:かえりたい

 現在地:F3平原
295夜叉は笑う1:2006/01/05(木) 21:22:08 ID:wCqPXoqx
「ふふ……あはははははは!!!!!!」
暗闇の草原の中をひたすらに走る。
闇の中を笑い声と地面を蹴る音だけが辺りに響きわたる。
長い金髪の少女の姿はロングスカートであり、片手にはマシンガン。
途中、小さな木の枝の木々が服や顔に引っかかっても、気にすることなくひたすらに走る。
眼は見開かれ、笑う口は頬まで裂けている。本来なら端正な顔の少女、シャーリィの面影はもうそこにはなく、歪んだ狂気の表情が露わになっていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん…!!!」
「待っていてね」
「生き残ればお兄ちゃんに会えるんだから…!!」
「早く、早く会いたいよ…!!ははははは!!!」
シャーリィはもう完全に気がふれてしまっていた。
唐突に繰り広げられたゲーム。
戦い。
血。
そして、最愛の兄の死―――
いつもは辛いとき、シャーリィの隣には常にセネルがいた。泣いたら優しく頭を撫でてくれていた。
今だって。
姿はないけれどセネルはシャーリィの胸の中にいた。シャーリィの中ではセネルは死んではいない。ちょっとだけ遠いところにいるだけだ。
そしていつの時みたいに優しく笑っているのだ。
今自分は沢山走っていて、そうしたらセネルは転ぶなよってちょっと心配そうな顔をしている。そんなに急がなくても、会えるからって。
「うん、分かっているよ、だけど、私は、早くお兄ちゃんの顔がみたいよ」

シャーリィはただただ兄に会いたい一心だった。
きっと誰かを殺せばそれは兄の姿に一歩近づく。それが嬉しくて仕方ない。
あの紫色の髪の少女は取り逃してしまったけど、いいや。違う誰かを殺せばいいだけだもの。
考えこそ邪悪であったが、その向こうの想いは限りなく純粋なものだった。
296夜叉は笑う2:2006/01/05(木) 21:25:02 ID:wCqPXoqx
その時だった。
空を銀の衝撃が一閃し、無我夢中で走っていたシャーリィの頬を掠める。
シャーリィは足を止めて、呆然としたように頬の傷に触れる。生暖かい血が指に絡み付く。
「………誰?」
何も見えない前方に呼びかける。
「やれやれ、また少女か…たしかお前はシャーリィ、と言ったか」
その攻撃の主の影が、シャーリィの数メートル前に立ち塞がる。
覆面をした男、カッシェルは、ショートソードを構え、溜め息をした。
血を見てシャーリィの髪がざわりと揺れた。
「まあいい。このゲームの頭数だけでも減ら――」
「私の邪魔をする奴は誰って言ってんのよぉ!!!!!!!」
「何!!!??」
いきなり火が付いたようにシャーリィは叫び、マシンガンをカッシェルに向けて撃ちまくった。
「く――!!?」
余りに突発的な事態に狼狽える暇もなく、地面を蹴って驚くべきスピードと跳躍力で横に跳ぶ。しかしいくら幽玄と呼ばれども、毎秒に幾発もの弾を発射するマシンガンを乱発されてはカッシェルもかわすのは楽ではなかった。
一見すると非力そうな少女だ。
しかし今はトチ狂ったような形相をしている。
「ふざけないで!!!」
素早く弾から逃げる影をマシンガンで追い、シャーリィは叫ぶ。
「私の邪魔をしないでッ!!!
お兄ちゃんに会わせてッ!!!!」
マシンガンの威力は凄まじいものだった。
小さな若木ならばいとも簡単に裂かせては薙ぎ、地面は衝撃で砂塵や石が吹っ飛ぶ。
自分の知っているこの娘はこんな少女だっただろうか。自分の記憶とは恐ろしく遠くて当てはまらない今のシャーリィを見て、カッシェルは些か戸惑う。
だがその戸惑いが隙を生んだ。
「私がお兄ちゃんに会うために…死んでッッ!!!!!」
「ぐああ!!」
とうとう弾がカッシェルの左脚のふくらはぎを捉えた。
弾は貫通は免れたものの、酷く筋組織にめり込んで骨を砕き、激痛が走る。
体制を崩して、だがなんとか右足を踏みしめて着地した。
あの飛び道具、見掛けだけに限らずとんでもない威力だ。
これでは右脚はもう使いものにならない。
骨の神経を傷つけた事で、全身に痺れる様な痛みがめぐり、じわりと脂汗をかく。
シャーリィは静かにマシンガンを下げた。
297夜叉は笑う3:2006/01/05(木) 21:30:46 ID:wCqPXoqx
「ねえ…、お願いなの」
左手を胸元で握り、悲しげな表情でカッシェルに懇願する。
先ほどの狂気に歪んだ顔は一気に引き、その顔は紛れもなく、小鳥の様に弱々しい少女のもの。
先ほどの荒れ様が嘘の様に辺りは静まり返り、しかし草木は殆ど原型を留めておらず、まさに一陣の嵐の後といった状態だった。
「お願い、お願い。お兄ちゃんに会わせて」
先程何か叫びながら顔を引き吊らせてマシンガンを連発してきた者と同一人物とはとても思えない。
その余りのギャップにカッシェルから言いようのない感情が溢れてくる。
体が震える。
痛みのせいだろうか。
いや、違う。
これは、今までに自分が感じた事のない類の、恐怖だった。
「貴様……」
虚勢をはり、シャーリィを睨み付ける。
いや、認めはしない。
虚勢なんて、この俺がこんな少女に遅れをとるなんて。
カッシェルは覆面の下で奥歯を噛みしめた。
シャーリィは憐れむ様にカッシェルに視線を落とす。
「そうだよね、死ぬなんて怖いもんね、ごめんね」
そして悲しげににこりと笑った。

しかし
すぐにその顔は夜叉の様に残酷に歪んだ。

笑っている。
それは、つい今し方見せた微笑みなどではもちろんなく――――

「だったら苦しまない様にすぐに頭を割ってあげる」



【シャーリィ 生存確認】
 所持品:TP中消費 UZI SMG(30連マガジン残り4つ) ????
状態:狂気
第一行動方針:カッシェルの殺害
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
 現在位置:C4草原

【幽幻のカッシェル 生存確認】
 状態:左脚損傷 全身に軽い裂傷 覆面損傷
 所持品:ショートソード アワーグラス
第一行動方針:できればシャーリィの殺害
第二行動方針:ゲームに乗る
第三行動方針:決して徒党を組まない
現在地:C4草原
298喪失1:2006/01/06(金) 03:04:30 ID:kuayob7n
「マリ・・・アン・・・」

リオンはマリアンを追おうと疲労しきった体に無理をさせて、必死に走っていた。
あの後、後方で強い光が見えたがそんな事は気にも留めずに走った。
しかしそれも長く続くはずが無い。
既に彼女を見失ってしまっていたリオンは人形のようにガクリと膝を折ってしまった。

マリアン・・・

彼女を守る為ならどんなに血で汚れてもいいと思っていた。
だが、それとは逆にそんな汚れた自分を彼女にだけは見て欲しくないとも思っていた。
彼女のあの自分を見る目・・・
あの信じられないものを見るような、脅えたあの目が心に突き刺さって離れない。
彼女は昔から自分の汚れた部分を知らなかった。
いや、自分が見せまいと必死に努力をしてきた。
例えばヒューゴからの命令での任務は、それがどんなに口に出して言いたくもない内容であっても
彼女にだけはそんな素振りも見せる事は無かった。
それは知られて彼女に嫌われたくなかったから。
己の唯一安らげた場所を失いたくなかったから・・・
しかし見られてしまった・・・人を殺して血で真っ赤に染まった自分を。
そして彼女は去っていった。
まるで心臓を重い鉄の鎖で締め付けられているように、
その現実はリオンの心に容赦なく圧し掛かっていった。
そしてその鉄の鎖は金属の冷たさを持って、内側から体を冷やしてゆく。
その冷たさにどんどん体は冷やされてゆき、その寒さにリオンは震えた。
傷からの出血は確かにあったが、この冷たさはそれによるものとは違っていた。
299喪失2:2006/01/06(金) 03:05:29 ID:kuayob7n
「嫌われた・・・な」
感情の篭らない掠れた声だった。

汚れた自分を見られてしまった。
彼女はとても綺麗で純粋だから、きっとこんな自分は酷く醜く恐ろしい化け物に見えただろう。
だからきっと、彼女はもう笑いかけてくれないだろう。
出会っても『会いたかった』なんて絶対に言ってくれない。
何故、それなのに彼女を追いかけようとしているんだろう。

再び会っても自分は何を言えばいい?

何を言ったってもう何もかも元には戻らないというのに!

絶望、という言葉は正にこのような状況に陥った時に言うのだろう。
しかしそれでもリオンにはまだ、小さな希望という種が鎖で痛みすら伴う心臓に根付いていた。
例え彼女に嫌われたとしても、彼女が生きてくれればそれで・・・

休みも無く戦い続けた体はついに限界を訴えて、リオンの意識を沈め込もうとしてきた。
もはやリオンにはこのまま思考を続けられそうなほどの精神力も残っていなかった。
だがこのまま倒れるわけにはいかないことは解っている。
それでも必死に足を立たせるとフラフラと遠くの森(体調が万全の状態なら近くに感じたのだろうが、
今のリオンにとっては酷く遠くに見えた。)まで歩いていった。
やがて森へと足を踏み入ると、倒れ込むようにその体を木に預けた。
体中が重く、もはや指を動かすのも億劫なほどリオンは疲労しきっていた。
視線をさまよわすと抜き身のままのシャルティエが血で汚れたままになっている。
あの、赤い髪の男の血だ。
300喪失3:2006/01/06(金) 03:06:15 ID:kuayob7n
・・・マリアンはあいつと一緒に行動していたのか。
ならばあの赤い髪の男はマリアンを守っていてくれてたのだろうか?

罪悪感よりもマリアンを守る人間を自らの手で減らしてしまったのかという後悔があった。
そしてよりによってマリアンの目の前で殺してしまったという 後悔。
リオンはヨロヨロと手を伸ばして、自分のマントでシャルティエの刀身に付いた血を拭った。
もしまた彼女と会っても、もうこれ以上彼女を怖がらせたくないとの思いからだった。
「すまない・・・シャル・・・」
乾いて血を落とすのには苦労したが、それでもなんとか落としきると
リオンは寒さから身を守るように体を丸め込み瞼を閉じた。
疲れきった体はあっさりと眠りについていった。

それはこの眠りが全てを忘れさせてくれる事を願っているようだった。

【リオン 生存確認】
状態:極度の疲労 睡眠 全身に軽い火傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
所持品:シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:睡眠
第二行動方針:マリアンとの再会(ただし再会を恐れてもいる)
第二行動方針:ゲーム参加者の殺害
現在位置:C7の森
301喪失3訂正:2006/01/06(金) 03:42:22 ID:kuayob7n
>300
第二行動方針が2つある・・・!
正しくは第三行動方針です。
302蛇を焼く光1:2006/01/06(金) 14:36:55 ID:bbkTbnKa
「くくくくくく…はぁっはっはっはっはっはっはっはぁ!!」
 小高い山の岩陰で、ソロンは哄笑していた。
 先ほど南の海岸沿いで見ることの出来た至高のショー。
 自らの手の内で他者を踊らせ、互いを噛み合わせて共倒れさせるという素晴らしい一幕が、彼をここまで哄笑させているのだ。
 いつまでも続くとも知れぬソロンの哄笑。夜空に不気味に響く。あの光景をまぶたの裏側で反芻させるたびに、全身の血がたまらなくたぎる。
 ソロンの人生の中で、最高の瞬間を幾度となく思い出す。
 その高笑いは、いつまでも続くとも思えた。その不協和音が混ざり込む、その一瞬まで。
「ごぶっ!!」
 くぐもった呻吟が、突如としてソロンの口から吐き出される。赤いものの混じった、凄惨な呻き声だった。
 続けてソロンの口に何度も腹の奥から熱いものがこみ上げ、彼はたまらずそれを吐き出す。ソロンの口元は、彼自身の血で汚れた。
 吐血の発作はそれで収まったが、ソロンはその後、何度も息絶え絶えといった様子で咳き込み、喉にわだかまっていた血を唾と共に吐き捨てる。
 全てが終わるまで、1分かそこらはかかった。
 荒い呼吸。ソロンの目に歓喜はすでになく、代わってすさまじい憤怒に満たされてゆく。
「糞が……ダニが…蛆虫がドブネズミがくたばり損ないのゴキブリ野郎がぁぁぁっ!!!」
 ソロンはあらん限りの語彙を駆使して、凄まじい罵りの言葉を叩きつける。
 蛇を思わせるその目元には、狂気じみた憤怒に憎悪も加わって、まさしく地獄の悪鬼もかくやというほどの凄絶な眼光が宿っていた。
 俗に「蛇に睨まれた蛙」という言い回しをするが、ソロンの視線はそんな生易しいものではない。蛙どころか、竜でさえすくみ上がりそうなほど強烈な力がこもっている。
「あの赤髪のクソ野郎…よくも私にこんな傷を負わせやがりましたね…!!!」
 ソロンの犬歯が、毒牙のようにこの会場の月…赤と青の月の光を受け、妖しくきらめいた。
ソロンは自らの腹部をかばいながら吼えたが、しかし不思議なことにそこに外傷らしい外傷は一切存在していなかった。
 時は、ゼロスの最期の一撃にまで戻る。
 ゼロスが自らの命と引き換えに放った天使術「ジャッジメント」。「ジャッジメント」を放った瞬間、ソロンはあろうことか、術者であるゼロスのすぐそばに立っていた。
 無論、油断が即座に死を呼ぶ世界など、ソロンは慣れっこである。それに最期の一撃の存在は十分予見出来ていたので、術自体への対処は迅速であった。
 天から裁きの光が降り注ぐのを見て、ソロンは即座に体内の闘気を練り上げ、防魔の障壁を展開し、難は逃れた。逃れたはずだった。
 しかし。だとすれば。この内臓を直接炎であぶられるような、体内の激痛は何なのだろう。
 ソロンはあの赤髪の男が、防魔の障壁すら貫通するようなとんでもない隠し玉を持っていた、ということまでは容易に推測出来ていた。
 しかし、その「とんでもない隠し玉」の正体は、皆目見当も付かなかった。
303蛇を焼く光2:2006/01/06(金) 14:38:12 ID:bbkTbnKa
 ソロンのあずかり知らぬその「隠し玉」…それは光。ゼロスが自らの命と引き換えに放った、極限まで高められた光の力なのだ。
 ゼロスの住まっていた繁栄世界テセアラでは、光に関する研究において、1つの事実が記されていた。
 特殊な鉱石を用いるか、さもなくば光をマナの力で極限まで強化すると、人体すら透過する不可視の光が放たれることは以前から知られていた。
 その極限まで強化された光は人体を透過する際、その体内を直接焼き払い、また種々の病を引き起こす。その性質から、その光は「死の光」、もしくは「放射線」と呼ばれる。
 そしてゼロスの天使術「ジャッジメント」は、もともと強力な光の力で敵を焼く術である。
 ゼロスの着けるクルシスの輝石、死に瀕したゼロスの覚悟、これら二者がただでさえ強力な「ジャッジメント」の光を更に強化し、結果として「ジャッジメント」に「死の光」を付与するに至ったのだ。
 ソロンの展開した防魔の障壁は半透明…すなわち「ジャッジメント」の魔力の炸裂は遮断できても、「ジャッジメント」の「死の光」は遮断できなかった。
 結果、今ソロンは、体内を直接火であぶられるような痛苦に悶えているのだ。
 もちろん、ゼロスが「死の光」の存在を知った上で、ここまで見越して「ジャッジメント」を放ったか否かは、ゼロス亡き今となっては憶測する他ない。
 だが、ゼロスの最期の一撃は、こうして確実にソロンを傷付けていたことは事実なのだ。
 この「バトル・ロワイアル」において、理不尽な死を甘受せねばならなくなったゼロスにとって、理不尽な死をもたらす男に一矢報いてやれたこと…。
 それが、せめてもの彼にとっての救いの1つになったのかもしれない。
 それでも、ソロンの内なる怒りと嗜虐心、そして生存本能の火をかき消すには到底及ばなかったのではあるが。
「はぁ…はぁ……さて…発作も収まってきましたところで…行きましょうか」
 ソロンは自らの怒りと発作がある程度落ち着いて来たところで、重い腰を持ち上げた。この発作が原因なのか、全身が妙にだるい。
 それでも、ソロンは進まねばならない。この「バトル・ロワイアル」を生き残るためには。
 ソロンの影は夜の帳の下りた岩陰に、一陣の風のように滑り込み、そして溶けるようにしてその姿を消した。



【ソロン 生存確認】
状態:外傷なし 放射線障害(吐血と内臓の激痛がたまに起き、慢性的倦怠感を感じる)
所持品:ソーディアン・ディムロス クナイ(残り八枚)
第一行動方針:周りをかき乱し、傍観して楽しむ
第二行動方針:ジェイの監視
現在位置:C7の山岳地帯
304抵抗:2006/01/06(金) 16:50:37 ID:qFs0nJ+U
一体何が起こっている?
どうして俺は地に膝をついている。
どうして俺は少女に見下ろされている。

俺はどうすればいい。
足を撃たれた。ドクドクと脈を打っているのが分かる。
燃えるように熱く痛くいっそ切り落とせば楽だろうか。
くそっなんなんだ、何故こうなる。
逃げなくてはならない。死んだら全て終わりだ。確実に殺される。
足が痛い。走れるだろうか。いや、俺は幽玄のカッシェル、大丈夫だ。
―しかし撃たれる可能性のほうが高いに決まっている。
逃げて死ぬより戦って死のうか。
結局は死ぬのか。
くそっくそっくそ!!!!
こんなところで!こんな少女に!!!

戦うか、逃げるか、死ぬか、その選択肢しか彼には残されていなかった。

カッシェルとシャーリィの距離はわずか2mほどだった。
かちゃり、シャーリィは無言でマシンガンを構えた。
やられる。俺は…死ぬのか?
シャーリィが引き金に指をかける。
「さようなら」
気味の悪い笑みを浮かべるシャーリィは本当にこの世のものとは思えないくらいで。震えた。
死ぬ。数秒後には自分の死体が出来上がってるだろう。
なんて事を考えてる場合じゃない。抵抗ぐらいしてやる。
ただで死んでなんかたまるか!!

引き金を引くというその瞬間、
カッシェルは自分の唯一の武器、ショートソードをシャーリィに投げつけた。
シャーリィの胸のあたりにそれは刺さった。
「あ…っ!」
狙いがそれマシンガンは空に発射された。
手からマシンガンが離れ、地におとしてしまった。
305抵抗2:2006/01/06(金) 16:52:42 ID:qFs0nJ+U
カッシェルは自分でも予想以上の成功に希望の光を見た。
やれる!俺はまだやれる!!勝てるんだ!!
足を撃たれたからって死ぬわけじゃない。
こんな女、武器さえなければただの小娘じゃないか。
何を恐れる必要がある。
勝てる!勝てる!!やってやる!!

落とされたマシンガンを拾うため素早く動く。
足が痛む。いや、平気だ。こんなの屁でもない。
マシンガンに手が届く。
希望の光がどんどん大きくなる。
右手がマシンガンに触れた。
勝てると確信したその時鈍い痛みが背中に走る。
「は…」
何が起こったか分からない。
見上げるとそこには胸から血を流すシャーリィの姿があった。
ショートソードを俺の背中に突き刺して。
なんだこの女は、痛みも躊躇いも何も感じないのか。
自分の胸に刺さった剣を今のわずかな時間で自分で抜いたのか。

背中に刺したショートソードを中でこねくり回す。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
言いようのない激痛。
「あなたが、抵抗しなければ、こんな、苦しまずにすんだのに」
力を込める
そして

どす

「ああああああああ!!!!!」
シャーリィは地面にショートソードを突き刺した。
そのままカッシェルの体を貫通して。

「そのまま、死ぬまで、苦しんでいてね」

【シャーリィ 生存確認】
 所持品:TP中消費 UZI SMG(30連マガジン残り4つ) ????
状態:狂気
第一行動方針:自分の傷の手当て (カッシェルを楽にはさせない)
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
 現在位置:C4草原

【幽幻のカッシェル 生存確認】
 状態:瀕死 地面に串刺し 左脚損傷 全身に軽い裂傷 覆面損傷
 所持品:アワーグラス
第一行動方針:できればシャーリィの殺害
第二行動方針:ゲームに乗る
第三行動方針:決して徒党を組まない
現在地:C4草原
306魔術師と人形 1:2006/01/06(金) 19:09:27 ID:WFR1WnRw
「うあぁぁああ!!」
「待て! 話を聞いてくれ! 私は君に危害を加えるつもりはない! そこにいるデミテルさえ倒せば――」
「でみてるころしたら、おれ、うちにかえれない!」
「な、何を言ってるんだ君は!?」
 先ほどから同じ言葉を繰り返すティトレイにモリスンは困惑していた。
 しかし、ティトレイはデミテルが島から脱出する方法を知っている、と思い込んでいるのだということは把握した。
 攻撃を避け、時に防ぎながらモリスンは説得を試みる。
「デミテルが帰る方法を知っている訳がないだろう! いい加減目を覚ましてくれ!」
「うちにかえる、おれはうちにかえる…………」
「くっ、やはり君とも戦うしかないのか…………!?」
 ダオスとその一味は倒すことを決めていたモリスンだが、他の参加者に関しては危害を加えるつもりはなかった。
 しかし、デミテルをかばっている以上、彼もまた敵と見なすしかなかった。
 そしてティトレイを倒す決意をすると、杖を薙いでティトレイをひるませ、その隙に後ろに飛んで大きく間を空けた。
 詠唱時間を作る為だった。
「これも運命だ! 君には悪いが――」
「隙だらけだぞ、エドワード・D・モリソン!!」
 しかし、唐突に聞えてきた声。
 その方向を見ると、離れたデミテルの姿。詠唱の態勢に入っていた。
「まさか、ずっと詠唱してたのか!?」
「下がれ、ティトレイ・クロウ!!」
 デミテルの叫びを聞いて、ティトレイがその場を離れる。
 そして、それと同時にモリスンのいる空間を黒い大気が覆い始め、宙に方陣が浮かぶ。
「これは……悪魔を召喚するつもりか!! くそっ!!」
 モリスンは慌てて、黒い大気の空間から抜け出そうとする。
「遅い!! 喰らえ、サモンデーモン!!!」
 しかし無情にも悪魔は召喚され、大地が引き裂かれる。
「ぐぁぁああ!」
 大地とともに引き裂かれるモリスン。
(まさか、こんなところで…………)
 視界が暗転する直前、モリスンには懐に入れていた支給品が割れる音が聞えた……。
307魔術師と人形 2:2006/01/06(金) 19:10:10 ID:WFR1WnRw
「…………見当たらないな……。地の裂け目に落ちたか?」
 引き裂かれ、無残に荒れ果てた大地の上を歩き、モリスンの死体を確認しようとするがどこにも見当たらない。
 ティトレイの方を見てみると、相変わらず無表情のまま立ち尽くしている。
 自分が命令を出す、もしくはピンチの時にのみ、先ほどのような闘志を見せてくれるのだろう。

 ――こいつなら、ダオスを倒すのにいい駒になってくれるだろう。

 それがデミテルの偽りのない本心だった。
 だが、こいつ一人でダオスが倒せるとは微塵にも思っていない。
 ティトレイはあくまで先ほどのモリスン戦の時の様に、強力な術を詠唱するまでの壁として使うつもりだった。
 先ほどは彼を術範囲から逃げるように命令したが、それはダオス戦の前に死なれては困るからであって、決して仲間意識があったわけでもない。
 彼はあくまで道具。自分の身を守ってくれる操り人形なのだ。
「…………まぁ、直撃したんだ。いくらエドワード・D・モリスンといえども……な」
 死体を捜していたデミテルだったが、面倒になったのか生死がどうでも良くなったのか、捜索を諦め、その場を後にする。
「ティトレイ・クロウ、行くぞ」
 名を呼ぶと、彼はデミテルの後をついていった。
 名前を呼ばれ、動くその姿は、まさしく『人形』だった…………。
308魔術師と人形 3:2006/01/06(金) 19:10:45 ID:WFR1WnRw
 デミテル達が、その場を去ってから幾許か。
 大地の裂け目から一人の男が這い上がってきた。
 ――モリスンだ。
 彼は、デミテルの予想通り、術発動により出来た大地の裂け目に転落していた。
 だが、運良く裂け目の途中に引っかかり、難を逃れたのであった。

 ――では何故、サモンデーモンの直撃を受けた彼は生きていたのか?
 ――その理由は彼の所持品にあった。

 遡る事、十数分前。
 裂け目に落ちた彼は目を覚ました。
「…………ん? 私は…………生きてる?」
 衣服は裂け、体には無数の裂傷やアザがあったものの生きている事は確かだった。
 その手には杖を握り締めたままだった。
「一体どういう――うぐぐ……」
 身を起こそうとすると体の節々が痛む。
 先ほどの悪魔召喚の術の直撃を受けた事を実感する。
 痛みの余り、手で胸の辺りに触れてしまうが、その時手に堅いものを触るような違和感を感じた。
「む? ……これは確か」
 懐をまさぐると出てきたのは、上下二つに割れたヒトガタ。リバースドールと呼ばれる人形の残骸だった。
 モリスンも効果は知っている。一度だけ身を守ってくれるお守りだったはずだ。
「そうか、これが私を…………」
 ダオスと遭遇するときまで温存できなかったのは残念だったが、生き長らえる事が出来たのは幸運だった。
 まだ生きているという事は、まだダオス討伐を続行できるという事だ。
「私はまだ、いける…………」
 モリスンはそう決意すると、裂け目の断崖に手を掛けた…………。

 そして今モリスンは、自分ひとりしかいない夜の平原にたたずんでいた。
 怪我により、大分体力は削られていたが、まだやる気はある。
 彼は、懐から割れたリバースドールの残骸を取り出す。
「これが救った私の命、決して無駄にはせん」
 それを握り締めると、彼はそれをお守り代わりとしてか、再び懐に入れなおした。
 そして、彼は歩き出した…………。
309魔術師と人形 4:2006/01/06(金) 19:11:22 ID:WFR1WnRw
 【エドワード・D・モリスン 生存確認】
 状態:多数裂傷およびアザ(HP大消費) TP微消費
 所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール ????
 第一行動方針:ダオス討伐
 現在地:F3平原からE3へ北上

 【デミテル 生存確認】
 状態:TP中消費
 所持品:フィートシンボル ストロー ミスティーシンボル 金属バット
 第一行動方針:ティトレイを操る
 第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
 第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
 現在地:F3平原からF2へ西進

 【ティトレイ・クロウ 生存確認】
 状態:感情喪失 全身の痛み、軽いやけど(回復中) TP中消費
 所持品:メンタルバングル バトルブック
 第一行動方針:かえりたい
 第二行動方針:デミテルに従う
 現在地:F3平原からF2へ西進
310静 1:2006/01/06(金) 22:07:52 ID:oW6/0OK1
二人の間に、冷え冷えとした緊迫の空気が流れる。
銀髪の剣士ヴェイグは、もう片方の金色の髪の男ダオスを、ジッと睨みつけたまま微動だにしない。
彼は、男の言葉の真意を窺っていた。
あれほどの実力を持ちながら、戦いを忌避するかのようなその言葉。
ヴェイグは、もちろん最初のときにダオスがミクトランに対して立ち向かった姿を見ていた。
その強さの程も判っている。だが、だからといって逃げようなどということは頭に無かった。
彼は、既にダオスを殺す方法を考えていた。
遠距離で戦うわけにはいかない。彼の術の凄さは知っている。
だからこそ先ほどは懐に飛び込んでの接近戦を挑んだのだが、拳闘の技術も並外れていた。
そうなれば………
彼は静かに、全てを凍てつかせる氷のフォルスを解放した。
蒼い、闘気にも似たオーラがヴェイグの身体を包む。
その姿を見て、ダオスも彼の意思を理解した。
戦いを避けることは出来ないのか……
もう何度思ったか判らない思いを再び抱きながら。

氷のフォルスが、ヴェイグの持つ剣に集まる。
彼の獲物は、水の属性を帯びた短剣チンクエデア。
その短い刃では、どうしても本来の大剣を用いた剣技を活かせない。
それを補うのが、彼の持つフォルスであった。
チンクエデアが、フォルスを受けて氷の剣と化す。
その氷は見る見るうちに巨大なものになり、グレートソードほどの大きさにまで膨らんだ。
スッ、と音もなくその巨大な剣を振るう。数歩先の地面がその冷気の風を受けてたちまちに凍える。
ヴェイグは凍った表情のまま、本来の構えで大剣をダオスに向けた。
311静 2:2006/01/06(金) 22:10:40 ID:oW6/0OK1
ヴェイグがダオスに向かって駆ける。
「ハァッ!!」
冷気の剣が、縦に振られる。
それをかわすダオス。
大地に叩きつけられた剣が、地を凍らせる。
そのまま、ヴェイグは横に薙いだ。
氷の剣の腹が、ダオスを襲う。
咄嗟に腕で防いだが、その腕を更に凍結が襲う。
「クッ!」
不味い。そう思うが早いかバックステップで距離を離す。
そこをヴェイグは一気に詰めた。
速度を殺さぬまま、ヴェイグが放つ瞬速の三連突きがダオスに肉薄した。

だが、ダオスはその出鼻を崩すかのように手刀で薙ぎ払った。
魔力を帯びた魔人の手刀は、そこらの剣よりも遥かに強い。
氷でコートされたその大剣が易々と砕かれ、衝撃がヴェイグを襲う。
その隙を好機とみたダオスは、踊るように拳打を加えた。
右、左、ハイキック、振り下ろしの蹴り。
流れる動きで打撃を受け、ヴェイグの身体が宙を舞った。
312静 3:2006/01/06(金) 22:13:16 ID:oW6/0OK1
吹き飛び、倒れこむヴェイグ。だが意識ははっきりとしている。
少し深追いしすぎたか……思った以上にあの男は強い。
ヴェイグは自分の焦りからの拙攻を恥じた。
氷は砕かれたが、あの程度ならまだ幾らでも再生できる。
起き上がりながら、袋からアップルグミを取り出して、口に放る。
先ほどの連続攻撃によって失った体力が、ジワッと戻っていくのを実感する。
そんな姿を見て、ダオスは悲しみを帯びた口調で言葉をかけた。
「無駄だ……もはや貴様が戦うことは出来まい」
立ち上がる自分が見えていないのか?
ヴェイグには、すぐにはダオスの言葉が理解できなかった。
その言葉の意味を知ったのは、足を立たせようとしたときのこと。

足が、動かなかった。

驚くヴェイグ。初めて表情を変え、足のほうを振り向く。
徐々に足が、色を失っていく。
もしヴェイグがダオスと同じ世界の住人なら、これが石化という現象であるとすぐに理解できたであろう。
だが、このような束縛を行う術はヴェイグの世界には全く存在しない。
だからこそ、ヴェイグはこの異常事態に恐怖した。
「………ぐっ……貴様ァ!」
ダオスに吼えるヴェイグ。
だが、石化は無慈悲にもヴェイグの身体をジワジワと石に変えていく。
「…………無益な」
吐き捨てるように言い残し、ダオスは踵を返して森の暗闇に溶けて消えた。
何度かの絶叫が辺りに響いたが、その後は静寂が支配した。
313静 4:2006/01/06(金) 22:14:41 ID:oW6/0OK1
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:TP消費(小) 冷静
第一行動方針:マーテルを守る
第二行動方針:マーテルと行動
第三行動方針:打開策を考える
第四行動方針:敵は殺す

【ヴェイグ 生存確認】
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)
現在位置:B7の森林地帯
状態:TP消費(小) 右肩に裂傷 石化(時間による状態悪化・改善なし)
314企みと狂気 1:2006/01/06(金) 23:33:27 ID:ELvM9juu
もったいぶったようにその男、サレは口を開いた。
「実は僕の仲間がひどい怪我を負ってさ、治療出来る人か
回復アイテムを持っている人を捜し回っていたところなんだよ。」
「私、治療ならできますけど…」
少女が緊張気味に答える。
「本当かい?じゃあ来てく…
「待て!その話が本当だという証拠はあるのか?」
クラトスという名の男が牽制をかける。
この男食えないな、サレは少し苛立ちを覚えたが、すぐにその思いを諌めた。
いけない、いけない楽しみは後にとっておかないとね。
幸い少女のほうは、うまいこと話せばなんとかなりそうだと感じた。
「ひどいなー、僕がそんなに危険に見えるかい?」
そういって、サレはブロートソードをその場に置く。
315企みと狂気 2:2006/01/06(金) 23:39:55 ID:ELvM9juu
「これならどうだい?」
「他に武器を持ってるんじゃないか?」
しつこい!この押し問答にはサレも苛立ちを隠せなかった。
いっそのこと二人とも殺してしまおうかとも思ったが、
クラトスの強大そうな武器を見て考え直した。
実際クラトスの指摘は当たっていて、サレは武器を隠し持っていたが
普段使い慣れていない武器ということもあったのもその要因だ。
「クラトスさんあんまり過ぎませんか?」
しばしの沈黙を少女が破る。
「とりあえず話しだけでも聞いてみませんか?
あなたもその場からでいいんで話してもらえますか?」
サレの表情に安堵が戻る。
「実はコレットちゃんっていう女の子が撃たれてしまって…
「何!?御子が??」
どうやら奴はコレットちゃんと知り合いみたいだな。
サレは確信すると先ほどの顛末を自かいつまんで話した。
「このままじゃ、彼女は危ない」
クラトスは渋い顔をした後、リアラの顔を見やりわかったと頷いた。
サレはティトレイのことが頭に浮かんだが、ここでそれにとらわれすぎると
元も子もないし、なによりこの二人を連れて行くことで確実に信用されるだろう。
ティトレイは次に発見したら始末すればいい。信用された後なら言い訳も通るだろう。
サレはそこまで考えたのち自分の武器を広いあげ
「僕についてきて」
そう二人に言い放った。
316企みと狂気 3:2006/01/06(金) 23:57:49 ID:ELvM9juu
そしてサレは歩き出したが、ふとこの男とあのクレスを戦わせたらどうなるだろうと思った。
クレスの剣技はなかなかのもだが、このクラトスとか言う男も侮れない雰囲気をもっている。
加えてあの武器。僕が殺すには手間がかかるだろう。
ならば!想像すると体が震えてくる。
サレは表情を隠すように進行方向に向かって足をすすめた。

【サレ 生存確認】
状態:TP消費(微小)
所持品:ブロードソード 出刃包丁
第一行動方針:コレットの治療と信頼を得る
第二行動方針:クラトスとリアラを利用する (出来ればクレスと戦わせる)
第三行動方針: ティトレイを始末する
第四行動方針:クレス、コレットを利用する
第五行動方針:クレス、コレットらと行動
現在位置:F2の森 から移動開始

【リアラ 生存確認】
状態:緊張
所持品:ロリポップ ???? ????
第一行動方針:怪我人の治療をしにいく
第二行動方針:カイルを探す
第三行動方針:避けられない戦いは戦う

現在位置:F2の森 から移動開始


【クラトス 生存確認】
状態:緊張 全身、特に足元に中程度の火傷 TP消費(微小)
所持品:マテリアルブレード(フランベルジュ使用) ???? ????
第一行動方針:コレットと合流し怪我の治療
第二行動方針:サレを警戒しつつ一緒に行動
第三行動方針:リアラと行動しカイルを探す
第四行動方針:ロイドのことが気になる
現在位置:F2の森から移動開始

317幽幻の名の如く 1:2006/01/07(土) 00:35:12 ID:6czN88AP
剣を背中に刺され、文字通り地面に釘付けにされた状態のまま、カッシェルはもがいた。
傍らで自身の体を回復いていたシャーリィは、首を回してこちらを向く。ついでにマシンガンの銃口も向けて。
「ねぇ、あまり変に動くとすぐに殺すよ?」
あまりに冷酷で淡白な口ぶり。
自分が何をして、何を言っているのか、この少女は本当に理解しているのか?
「そのままにしておいたら死ぬから、じっとしててね」
言ってることが支離滅裂だ。
真の狂人とは、この少女の様な人間を指すのか?
くそ。
馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な。
この俺が、トリプルカイツの一角を担うこの俺が、こんな小娘一人に・・・!!
シャーリィ・フェンネスはメルネスとなってこそ驚異的な力を発揮するのではなかったのか?
眼前の少女は、かつて自分達がつけ狙った気弱そうで非力な少女とはまるで違っていた。
人を傷つけること、殺すことなどまるで躊躇していない。
軍の過酷な訓練を受け、生死を分かつ修羅場を幾度も通り抜けてきた自分ですら、
これほど冷酷で残酷な者に出会うことは少なかった。
一体何が、何がこの少女をこうまで変えてしまったのか?
情け容赦なく死を振り撒く少女の姿は、正に修羅だった。

・・・そうだ、思い出したぞ。
こいつの兄、かつて我が軍にも在籍していたらしいセネル・クーリッジ。
あいつが死んでいた。第一回の放送で、そう告げられた。
この女の動かしているのは復讐心か?それとも、最後まで生き残って死者を蘇らせるという血塗られた希望か?
だが、いずれにせよそんな理由だけでこの俺を追い詰めるとは・・・
気に入らない。気に入らないな!!
318幽幻の名の如く 2:2006/01/07(土) 00:36:02 ID:6czN88AP
「大好きな大好きな兄の為に戦うというわけか?」
カッシェルは背中を潰された体勢のまま、首だけを上げて声をかけた。
少女の体がビクンと跳ね、ゆっくりと体をこちらに向ける。
「くだらない、くだらないな。このゲームに乗ることはいいが、誰かの為に動くなど馬鹿げている」
吐血交じりに、皮肉めいた口調で少女を非難する。
少女は凍結したまなざしを覆面の男に向けながら、ピクピクと顔の筋肉が痙攣していた。
「そして貴様は甘い。甘すぎる。この俺を殺せる時に殺さなかったのが、貴様の敗因なんだよ」
口元を歪めてにやりと笑う。既に激痛で意識が飛びそうだったが、ここが正念場だ。こらえて見せる。

「お前の兄も甘かったんだよ。だから死んだ」
「お兄ちゃんを・・・」
少女はわなわなと震えながらつぶやき、静かにウージーを構える。
銃口が覆面の男の眉間を捕らえていた。
「お兄ちゃんを悪く言わないでよっ!!!」
マシンガンの引き金が引かれようとした──その時。

少女の動きが止まった。動作から表情まで、全てが凍りついたように止まった。
いや、それだけではない。風に揺れる草花も、空を舞う小鳥も、全てが静止していた。
正に、時が止まった様に・・・いや実際に時は止まったのだ。
アワーグラスの効果により、カッシェルの視界内のもの全ては時を奪われた。

319幽幻の名の如く 3:2006/01/07(土) 00:37:21 ID:6czN88AP
「くっくっくっくっく・・・」
地面に串刺さった体勢のまま、カッシェルは不気味に笑った。
密かに後ろに回した手によって発動させた、時空を操る透器。
これまで幾多の場面であえてこれを使わなかったのは、
これは絶体絶命の危機、或いは千載一遇の好機にでくわすまでは使用することを封じていたからだった。
しかし今のこの状況、最早ためらうことは出来ない。
彼は封印を解き、時を止めたのだった。

少女の時が止まっているのを確認しながら、背中に刺さる剣を抜きにかかる。
だが、予想以上に難航した。
ショートソードと言うほどなので、刀身は短いはずなのだが、
自身を地面に結びつける力は予想以上に強かった。
あの少女のどこにそんな力があったのか、全く以って気に入らないが、あまりグズグズもしていられない。
早く、早くしなければ。時が止まる効果が途切れる前に!
「ぐぬぅぅぅ・・・」
上に横に体を反らせ、剣を引き抜こうとする。
ブチブチと筋繊維やその他諸々が切れていくのが分かる。
「くぅっ──!!」
ぶしゅっと血の吹き出る音がし、ようやく剣は抜けた。
そしてその剣を拾いにかかる。時はまだ止まっている。

少女の姿を見る。マシンガンを構え、硬直して立ち尽くしている。
彼はにやりと笑い、一気に距離を詰める。
裂けた背中と腹から血と内臓の諸々がはみ出るのも気にしないまま、走って突っ込んだ。
そして剣先を少女の首、頚動脈の辺りを狙って振る。
「・・・斬首」
カッシェルの目に、暗い暗殺者の光が宿った。
その刹那
シャーリィの目に、鋭い狂気の光が宿った。
彼女は瞬時に飛び退き、覆面の男の一閃をかわした。
「なっ・・・にぃぃ!?」
カッシェルの顔に驚愕の色が広がった。
時空の拘束から解き放たれたシャーリィは、隙だらけの男の頭に銃口を突きつけた。
「死んでね。今すぐ、ここから、永遠に」
一瞬の間に、絶望と恐怖がカッシェルの頭を支配した。
もう、ここまでだ・・・どうしようもない・・・
シャーリィが死を呼び起こす輪に指をかけ、ウージーの引き金を強く引いた──

カチッ

320幽幻の名の如く 4:2006/01/07(土) 00:39:38 ID:6czN88AP
カチッカチッ

「・・・!?」
シャーリィは明らかに戸惑いの表情を浮かべ、手にした銃を見やった。
・・・弾切れ。
既にチェスター、メルディ、カッシェルと三人に射撃を続けていたウージーサブマシンガンは、
30発の弾丸を尽かせてしまっていた。
そしてその隙を、カッシェルは見逃さなかった。
「はぁぁぁぁぁ!」
地を這いずる様な低音の声を響かせ、男は少女に無茶苦茶に剣を振り回した。
急所を狙う余裕も冷静さも既に無くなっていた。
カッシェルの腕に確かな手ごたえがあった。
咄嗟に腕を上げたシャーリィの肘から手首付近までを一直線に切り裂いた。
少女の腕には赤い一本の筋がはっきりと残る。
そのまま後ろに退く少女。

「はっ、はぁぁぁぁぁ!」
追撃に出る男。
少女が懐から何かを取り出した。
それは鉛筆に見えた。参加者全員に配られた、筆記用具。
シャーリィは鉛筆を握り締め、空中に向かって何かを描き始めた。
あっという間に、青白い光の翼──テルクェス──が生まれ、男目掛け発射された。

・・・かつてセネル・クーリッジが存命中に案じていたように、
シャーリィは筆記用具を使い水の民特有の力・テルクェスを発生させることができた。
彼女の場合は主にペンを使ってテルクェスを描き、創り出し、対象に向けて撃ちだす。
そしてその翼は威力は低いまでも牽制には充分だった。
321幽幻の名の如く 5:2006/01/07(土) 00:40:27 ID:6czN88AP
「ぬぉぁぁぁ!?」
テルクェスは男の顔面を直撃し、男は一瞬ひるんだ。
シャーリィはウージーを右手に、鉛筆を左手に構えて走った。
男の右手、ショートソードを握る手の甲に、思い切り鉛筆を突き刺した。
鋭い先端部はすぶすぶと肉に食い込み、男の掌に貫通一歩手前まで突き刺さった。
「うわぁぁぁ!!」
悲鳴を上げ、剣を取り落とすカッシェル。
少女は即座に剣を拾い、構え、突き出した。
剣は丁度カッシェルの首の付け根辺りに刺さった。
「あぐぁぁぁ!!」
男は更に絶叫し、恐慌した様に少女から逃げ出した。
首に剣が突き刺さり、血が流れ、右手の甲には鉛筆が刺さり、腹からは血と内臓がぼとぼとと落ちていく。
カッシェルはひたすら走った。走り続けた。

駄目だあいつは。襲うのは諦めよう。無理だ。
別の獲物、そう、安全に、確実に、しとめることができる獲物を探すべきだ。
そうだ、そうすればいい。他に、まだまだ、獲物はたくさん居るはずだ。
俺ならできる、俺はトリプルカイツなんだからな。
早く、早く次の獲物を・・・

息をする代わりに口から血が吐き出る。段々視界がぼやけてきた。
少女の銃が復活する前に、ここから去っておきたかった。
そしてカッシェルは飛翔した。そのまま空中で彼の姿が消えた。

幽幻の名の如く───

322幽幻の名の如く 6:2006/01/07(土) 00:41:21 ID:6czN88AP
───水に呑まれて、カッシェルは消えた。

シャーリィは静かに両手を降ろすと、自分の前方、数十メートル先に現れた渦巻きを眺めた。
それは彼女がカッシェルに放った水の上級爪術、タイダルウェーブだった。
何も無かった草原から突如大量の水が溢れ出し、複数の渦潮が流転し、あらゆるものを呑み込んでいった。

荒れ狂う海原が過ぎ去った後、カッシェルは仰向けに倒れていた。
強烈な奔流と水圧によって、彼の体は見るも無残な姿になっていた。
開いた傷口から水が入り、内と外から彼の体は壊された。
手足の間接は不自然に折れ曲がり、腹のあたりはまるで魚の干物の様にぺしゃんこに潰れていた。

シャーリィがゆっくりとカッシェルに歩み寄った。
カシャカシャと、弾を失ったマシンガンに新たにマガジンを装着する。
「・・・・・・ぅ・・・・・・」
首を動かすこと無く、カッシェルの目が僅かに少女を捉えた。
その顔はやはり、残酷で、狂気の光を見せていた。
そしてシャーリィは無言でウージーの銃口を男の頭に向けた。
「今度こそ、死んでね」
そう言い放ち、引き金を引いた。
ぱららっと小気味良い音が響き、吐き出された銃弾が三つ、カッシェルの頭部、鼻から上の辺りを貫通した。
その衝撃で彼の頭蓋が砕け、脳漿をぶちまけた。

323幽幻の名の如く 7:2006/01/07(土) 00:42:40 ID:6czN88AP
シャーリィは自身に回復爪術をかけながら、空を見上げた。
いつの間にか漆黒の空が微かに薄くなり始めていた。
そろそろ日の出なのだろう。
彼女にとってそれは、自分が兄の姿に近づけた証の様に思えた。
彼女はそれまでとは違う、無邪気な、少女らしい笑顔を浮かべて天を仰いだ。

「お兄ちゃん、私、やったよ。お兄ちゃん達ががんばって戦ってたトリプルカイツに、私、一人で勝てたんだよ」
その声も、冷酷さは無く、清々しいくらいに明るかった。ただ、残酷さだけは残っていた。
「これで一歩、お兄ちゃんに近づけた。早く会いたいよ」
シャーリィは満面の笑みを浮かべた。

彼女の足元で、男が着けていた覆面が風に吹かれて宙を舞った。
それはシャーリィの見上げている空に昇っていき、やがて見えなくなった。



【シャーリィ 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り3つ) ????
状態:TP中消費 素直な喜び 頬に切傷(ほぼ回復) 左腕に刀傷(回復中)
第一行動方針:自分の傷の手当て
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在位置:C4の草原地帯



【幽幻のカッシェル 死亡】


【残り39人】
324Maybe the name is//:2006/01/07(土) 02:28:27 ID:a4NjHnYm
「クソッたれがぁ!」
 乱暴極まりない声で、しかし辛うじて利かせた理性の歯止めで、マグニスはこの島に響き渡らない程度の大声で悪罵を発した。間に合わせの包帯を巻いた傷に若干こたえた。
 そろそろこの島でのゲーム…「バトル・ロワイアル」の一日目にも終わりが来ようとしている。
 パルマコスタ人間牧場での、退屈な間引き管理書類の判押し(人口管理などという七面倒な仕事は、普段は部下にやらせてそれを承認するだけなのだ)をやっていたとき、マグニスは突然この会場に呼び寄せられた。
 突然のことに最初マグニスはいぶかったが、事情を説明されるや否や、彼は狂喜した。
彼と同じく会場にやってこさせられた他の54人を、思う存分にぶち殺して構わないという、常人からすれば狂気の沙汰のような状況。
 しかし、刺激を求めていたマグニスにとって、これはまさにおあつらえ向きの最高のゲームだったのだ。
 ありがたいことに、ゲームが始まってすぐ、マグニスは幸運に恵まれた。
 他の参加者からしてみれば強力な武装、そして強力な仲間を得ることが出来たからだ。すでに幾名かの参加者を屠り去っているし、上々な戦果を得ている…はずであった。
 しかし。
 この上なく不機嫌なマグニスの今の心境の原因は、その仲間…バルバトス・ゲーティアにこそあったのだ。
 タッグを組んでから対峙した1人目の獲物のとどめは、バルバトスに奪われた。2人目の獲物は、バルバトスが手にした榴弾砲で粉みじんに爆砕された。
 その現場にいた残る3人の男女のとどめも、バルバトスが自分の言葉を愚直に捉えたせいで逃した。
 一応マグニスもゲーム開始前、1人の男の命を奪っている。だがあんな雑魚は獲物の頭数にも入らない。
 マグニスが望んでいるのは血なまぐさい戦い…鮮血に彩られた生々しい戦いと、そして勝利なのだ。
 無論泣きながら命乞いする相手を、一方的に虐殺するのも三度の飯より好きだが、三度の虐殺より好きなのは、血みどろの激闘。
 獣のような心性を持つマグニスにも、戦士の心は多少なりとも備わっているのだ。
「あの野郎…なめた口を利きやがって…っ!!」
 ここは川のほとり。マグニスは半分無意識的に川原の小岩を1つ取り上げ、それを握る右手に渾身の腕力を込めた。
 数瞬ののち、ビキリ、という音と共に小岩は粉砕される。
 マグニスの頭ほどもある小岩は、マグニスの右手の中で無数の石ころと化した。人一人の首の骨をへし折る握力には、さすがに耐え切れなかったらしい。
 マグニスは足元に落ちる小石には目もくれず、今度はべっ、と唾を吐き捨てた。
 3人の男女の件で憤懣やるかたないマグニスは、あれからもバルバトスへの恨みつらみを言い続けていた。
 そこについ先ほど、バルバトスに浴びせられた皮肉で、とうとう我慢が限界を突破し、喧嘩になってしまったのだ。
 下手をすればそのまま一戦おっぱじまる寸前まで煮えたぎったマグニスの頭だったが、ちょうど用事が出来たので、川の土手の上でバルバトスを待たせたまま、川のほとりまで降りてきた。
 用事といっても、ただ用を足すだけのことであったが。
 用を足し終えたマグニスは、しかしそのまま上に戻ってまたバルバトスとすぐ獲物探しにかかる気分には、到底なれなかった。
 もちろんこのままバルバトスのところへ戻っても、またぶつかるだけなのは目に見えていたからなのだが、理由はそれだけではない。
 星空を眺めていたマグニスは、柄にもなく思考の海に漕ぎ出そうとしていたのだ。
325Maybe the name is...2:2006/01/07(土) 02:30:28 ID:a4NjHnYm
 マグニスは数百年前、とある集落でハーフエルフとして生を受けた。
 母を孕ませたのは行きずりの男であったらしく、父親は分からない。母も物心付く前に死んだらしく、マグニスは親というものを知らず育ってきた。
 何せ父も母も、エルフか人間か、はたまたハーフエルフかさえ、マグニスは知らないのだ。
 刑務所や牢屋よりかは、辛うじて上等といえるような生活の中、マグニスはやたら強かった腕っぷしと、ハーフエルフの魔力をもってして糊口を凌いだ。
 集落の中で名を上げ、それが偶然やってきたディザイアンの目に留まった日を、マグニスは今でも覚えている。
 ディザイアンにスカウトを受けてからは、あとはとんとん拍子に物事は進んだ。
 他のディザイアンのメンバーで反りの合わない奴は片っ端から力ずくでねじ伏せてきたし、逆に相手にねじ伏せられたとしても、きっちり復讐は遂げてやった。
 結果、マグニスは今ではディザイアン五聖刃の一角にまで上り詰めている。
 しかしながら、マグニスの栄転の日々は、そこで打ち止めとなった。
 衰退世界シルヴァラントにおいて、最も人口数の多い港町、パルマコスタ。マグニスはそこを管理する人間牧場の所長に任命された。
 もちろん人によっては、貧民街の乞食から人間牧場の所長に成り上がったのであれば、大出世と評するものもいるだろう。
 事実、マグニスの部下の中には、彼の栄転のエピソードに聞き入り、心酔する者もいることは知っている。だが、所長任命の真実を知ってのち、マグニスの自尊心はひどく傷付いた。
(どうせ暴力を振るうしかない虐殺馬鹿には、大雑把な人口調節だけで十分なパルマコスタ人間牧場の所長程度で十分だ。
ユグドラシル様の深遠な計画などに、参加させる必要はあるまい。だからこそユグドラシル様も、マグニスをあそこの所長に任命したのだ。
まったく、ユグドラシル様の適材適所の英断には感服させられる)
 ある五聖刃の言葉。マグニスはふとしたことからそれを漏れ聞き、そして怒り狂った。
 その日から、自分は他の五聖刃達からは疎まれているという事実に、マグニスは気付いた。
 激しい攻撃性と、そしてその裏返しの密かな劣等感という、焦燥の炎に今まで焼かれながら生きてきたのだ。
 他のディザイアンからの栄誉ではフォシテスに劣る。魔力ではユグドラシルの懐刀であるプロネーマにかなわない。頭脳ではクヴァルやロディルに勝てないのは明白である。
 何より、マグニスは五聖刃の中で、一番卑しい生まれをしている。もとはといえば、マグニスは親も分からぬような乞食の生まれなのだ。
 もちろん、マグニスは自らの抱く劣等感など、決して認めるような性格ではありえない。
 彼は自分と対等の存在を認めない。認める存在は自分より上か下か。否、究極的には自分より下の存在しか認めない。常に自らが唯一無二、かつ一番でなければ済まない性質なのだ。
 そんな彼にとって、他の五聖刃の面々は、最近では目障りな目の上のたんこぶにさえ思えてくる。彼は常に一番であり、対等の者を認めない。そう、対等の者を…
 だが、そこでマグニスはふと、素直に割り切れない感情が自らのうちにある事に気付く。
326Maybe the name is...3:2006/01/07(土) 02:31:28 ID:a4NjHnYm
 本当に、自分は対等の者を認めないのだろうか? あの男はどうなのか? バルバトス・ゲーティアは?
 ここに来るまでのうちに、マグニスはバルバトスといくらかは言葉を交し合っている。聞くところによれば、彼は歴史に圧殺され、英雄になり損ねた男、らしい。
 彼もまた、自分を認めない周囲…いや、歴史そのものを恨み、その内なる憤怒で動き回っていたという。彼もその旅の最中、ここに呼び出されたらしい。
 言葉を交わし、互いの身の上やその願いを聞き合ううちに、気が付けばマグニスには、今まで感じた事もないような感情が芽生えていた。今、芽生えていたことに気付いた。
 集落に暮らしていた時代、最も頼っていた相棒にさえ覚えたことのない感情。この感情こそ、もしや…
(寝ぼけてんじゃねえぞ俺さまは!!)
 そこでマグニスは、首をぶんぶんと振った。赤いドレッドヘアーが、場違いなほど幻想的な月に照らされる中、大きく揺れる。
(俺さまはディザイアン五聖刃筆頭、マグニス! 俺さまはそんな甘っちょれぇ性格じゃねえんだ! …甘っちょれぇ……性格じゃ…!!)
「フン…マグニス、随分と長い小便だな。ついでに糞でもまとめてひり出していたのか?」
 マグニスの1人きりの観想は、その声に中断させられた。
「…バルバトスか? てめえ、何の用だ?」
「俺も小便だ。『人を殺した後は小便がしたくなる』というが、どうやら事実らしいな」
 今まで沈思黙考していたマグニスは、面白くなさそうに「けっ」と口に出してからそっぽを向いた。
(俺さまが柄にもなく頭を働かせていたのに、こいつと来たら…。ムカつくぐらい落ち着き払ってやがる!! あの3匹の豚どもを狩り損ねたときも…!!)
 マグニスの頭に、再び血が昇り始めた。額に太い血管が浮かぶ。思わず怒鳴りつけそうになって、大きく息を一吸いする。
 だが、結局怒声はマグニスの口から放たれることはなかった。先ほど芽生えた感情が…それまでのマグニスにはなかった気持ちが、それを押し留まらせた。
 今までついぞ味わったことのないような、奇妙な感情。
 戦場で覚える恐怖は、全てそれを上回る憤怒で飲み込んできた。悲しみという感情は、とうに自らの生まれたあの集落に置き忘れている。
 不満や不平は、暴力で周りの人間を全て自分に従わせることで解決してきた。退屈ならば、劣悪種の虐殺で十分紛らわせる。
 だが。この感情は、怒りでも飲み込めない。暴力でも処理できない。先ほどのように物に当たったところで、何ら紛れはしない。
 マグニスの知りうるあらゆる解決手段でもってしても、この感情は鎮められない。バルバトスに抱く、この感情は。
 もちろんマグニスは、必要になれば即座にバルバトスを裏切るつもりではいる。状況が差し迫っていれば、バルバトスの首をためらわずに引きちぎれる。向こうも、それは同じだろう。
 だがその時、自らの嗜虐心は歓喜に打ち震えるだろうか? 否、嫌がりこそしないものの、快楽を感じはしない。しないはずだ。
 その時だった。突然にマグニスの脳裏に、その言葉はひらめいた。マグニスの求めていた、その感情の名前が。
327Maybe the name is...4:2006/01/07(土) 02:32:07 ID:a4NjHnYm
 「興味」。そう、興味である。マグニスはバルバトスに、並々ならぬ興味を抱いているのだ。
 いじめたり虐殺したりして楽しむ対象でも、いずれはねじ伏せ引きずり下ろす対象でもない。純粋に、興味をそそられる対象として、マグニスの目にはバルバトスが映っているのだ。
 胸のつかえが、すっと取れた。長年苦しんでいた病から解放されたような、えもいわれぬ高揚が生まれる。
 そう思うと、バルバトスに対し今まで燃やしていた怒りが、嘘のように退いてゆく。バルバトスに抱く感情の正体が分かったことが、特効薬となったのだ。
 用を足し終えたバルバトスは、川にその両手を突っ込み、ゆすぐ。川面に移る月が、そのときの波紋で千々に乱れる。彼の背を見るマグニスには、次なる感情が湧き上がる。
 ならば、この興味深い男と共に戦えば、自分はこのゲームをどこまで勝ち進めるのか? 自分はどこまで、獣のように血みどろの死を撒き散らせるのか?
 この男自分が最後の2人となったとき、死闘を繰り広げた後にどちらが地に立っているのか? よしんば袂を分かったとして、その行き着く結果はどうなのだろうか?
 想像するだに、面白い。戦士としての、獣としての好奇心が、マグニスを支配した。
 もちろん、必要とあらば手にしたおもちゃを、即座に手放す用意はある。
 獣は命運尽きた相手をいたぶりながら殺すことこそあれ、反撃の余力を残した…もしくは残していそうな獲物を前に、呑気に舌なめずりなどしないものなのである。
 決まった。これなら、話は早い。マグニスは野太い声で、バルバトスを呼んだ。
「おい、バルバトス!」
「…何だ? 貴様、まだ先ほど獲物を逃した恨みつらみを…」
「もうぐちぐち言い続ける気はねぇ。俺さまの機嫌は直ったからなぁ」
「…どういう心境の変化だ、貴様?」
 突拍子もない言葉に、バルバトスは思わず眉間にしわを寄せる。
 妙なことを企んでいたら、すぐにでも貴様のどてっ腹にもこいつをお見舞いするぞ? バルバトスは藤林しいなを…ミズホの民の女性を屠った榴弾砲を小突きながら言った。
 だが、バルバトスの疑念は、それ以上膨らむこともなく、自然と消滅への道をたどることとなる。
「…まあいい。今日の俺は紳士的だ…運が良かったな」
 あまりあれこれ詮索するのも性に合わない様子で、バルバトスは榴弾砲を下げた。
328Maybe the name is...5:2006/01/07(土) 02:32:58 ID:a4NjHnYm
「さて、じゃあ俺の話を聞け。バルバトス、これからの作戦会議ついでに、少しここで連係しながら戦う練習をしていかねえか? 軽くでいい」
「…ますます妙な風の吹き回しだな…だが、どういうつもりだ?」
 ひとまずこの男からは、自分に向いた悪意を感じ取ることは出来ない。それに、先ほどまでの子供じみたわがままな雰囲気も、少し落ち着いたように見える。
 バルバトスは、マグニスの話を聞いてみることにしてみた。
「俺さまの世界に伝わるすげぇ戦闘流儀を、てめえにも教えてやろうかと思ってな。俺さまとてめえなら、すげぇデカイのを撃てそうな気がしてな」
「何の話だ…?」
 マグニスの顔には、いつの間にか純粋で、しかしそれゆえに残酷な笑みが、ありありと浮かんでいた。
「こいつぁある程度戦いの息のあった奴同士となら、気合十分の時にぶちかませる。
息を合わせて術技を重ね合わせて、もっと強烈な術技を生み出して敵をブチのめす切り札よ」
「…ほう?」
「生まれた世界の違うてめえと上手く繰り出せるかどうかは分からねえが、少なくとも連係プレーの練習には、これからの戦いで無意味なはずはねえからな…
試してみる価値はあるはずだぜ?」
 この男が、連係プレーなどという言葉を口にするとは。バルバトスは少し違和感を覚えないでもなかったが、それでも悪い話ではなさそうだ。
 マグニスは手にしたオーガアクスを天に掲げ、高らかに宣言した。
「この切り札はな…人呼んで『ユニゾン・アタック』ってんだ」
 月光に照らされるオーガアクスは、マグニスの手の内で、より一層の破壊と殺戮を撒き散らせる予感に、打ち震えるように輝いていた。


【バルバトス
状態:TP全快 無傷
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(弾丸残り3発。一射ごとに要再装填) クローナシンボル
第一行動方針:マグニスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する。特に「英雄」の抹殺を最優先
第二行動方針:マグニスと作戦会議、そして連係プレーの練習を行う。可能ならば「ユニゾン・アタック」を習得する。
現在位置:F4の川のほとり】

【マグニス
状態:風の導術による裂傷 顔に切り傷(共に出血は停止。処置済み)
所持品:オーガアクス ピヨチェック
第一行動方針:バルバトスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する
第二行動方針:バルバトスと作戦会議、そして連係プレーの練習を行う。可能ならば「ユニゾン・アタック」を習得する。
第三行動方針:バルバトスが興味深い
現在位置:F4の川のほとり】
329彼という人:2006/01/07(土) 07:53:41 ID:18BEPULM
「あーーーーっ!いた!!」
そう叫んだのはプリムラだった。
その視線の先にはグリッドとユアン。グリッドはユアンの箒に乗せられていた。グリッドは器用に箒の上に立ち、腕組みをした。
「はははは!!待たせたな、皆の者!!グリッド様あまたの試練を乗り越え、見参!!」
「着いたから降りろ」
ユアンはそう言うと、グリッドを箒から振り落とした。
「うがっ!!」
ユアンも箒から降りて周りを見渡す。
「お前達も無事だったようだな。とりあえずグリッドを適当な小屋で休ませてやってくれ。まだ大男のダメージが若干残っている」
「…怪我人なのに随分と扱いが悪いんですね…」

とりあえず、町の宿屋に場所を移す。
グリッドは粗末なベッドの上で横になり、その傍らで三人は座って会議を始めた。
最初に口を開いたのはユアンだった。
「…まず、結論から言う。私達は恐らく今の状態ではゲームに生き残れない」
「えーーっ」
「そんな……」
思わず声を上げるプリムラとカトリーヌ。
それをユアンが手を出して静止する。
「まあ聞いてくれ。これからはあのようなハッタリ作戦では通用しないだろう。あの時はたまたま地の理がこちらにあり、相手が頭の無い格闘系だった。
私達は本当に運良く生き残ったと言うことを自覚して欲しい。
お前達も主催者の放送を聞いただろう?確実に殺し合いは起きているんだ」
二人は神妙な顔つきでユアンを見る。確かにこのパーティーはユアン以外は戦力になるような者はいなかった。
「私は戦闘経験は深いが、今は武器もない。正直、自分だけならともかくお前達を守り通す自信はない。
だからここは漆黒の翼を解散という形で―――」
すると寝ていたはずのグリッドが勢い良くがばりと起き上がる。
「それは駄目だ!!」
「――と、グリッドが言うからな。本来はそう言いたいのだがそれは出来ない。
残る手段はひとつしかない」
「なんだ?」
三人は身を乗り出した。
ユアンはふう、と溜め息をつく。
ゆっくりと伏せた瞳を開いて、三人を見渡す。目付きはかなり厳しい。
「極力この場は離れない様にしたいが、何かの原因で離れざるを得ない時もあるだろう。その時はお前達は迷わず町から逃げるんだ」
330彼という人2:2006/01/07(土) 07:56:45 ID:18BEPULM
「ちょっと待ってよ!!」
プリムラが更に身を乗り出す。
バン、と床に手を付き衝撃で灯した燭台が揺れる。
「お前達は、てあんたはどうすんのよ!!」
「だから聞け」
ユアンは厳しい顔のまま、あくまでも冷静に言う。
「もし仮にこの町に侵入者が来たら、私が魔法で一斉にこの町を焼き払う」
いきなりの発言に三人はどよめいた。
「そ…そんな事ができるのか!?」
「私を見くびるな。
火事に乗じて敵を攪乱して逃げやすくなるし、上手くいけば敵を煙や火にまいて殺す事もできるだろう。
ただ敵から逃げて追われるよりはましだ。このメンバーは心許ない。敵の足は止めるだけ止めたい。
逃げるだけでは術やらの攻撃を受ける可能性もある。
あたりをうろついている者が火を見てこちらに移動してくるかもしれないが、それを逆手にとって目立たない進路で更に遠くへ逃げる。お前達の靴やらがあれば出来るはずだ」
しかし沈黙していたカトリーヌは不安そうにユアンを訪ねた。
「……でももし悪い人じゃなかったら…」
「甘いな」
カトリーヌの言葉をユアンは一言で一蹴する。
厳しく、何処か冷たさを感じる眼光は緩むことがない。カトリーヌはその眼を見て少々恐怖を感じた。
「侵入者が誰かを確認し、説得する様な猶予など私達にはない。
もし相手に先手を打たれたらどうする?それこそおしまいだ。
私は確実性のある方法を取りたい」
うっ、と三人とも押し黙り、辺りに沈黙の時間が流れる。
ユアンは再び溜め息をした。
「まあ…今の所お前達や私達がこの町に戻る時に誰かに接触しなかった事を考えると、恐らく周りに人はいないだろうからこの作戦は当分先の決行になるだろう。
だが油断するな。町を出て敵の頭数が減った時が勝負だ。最終的には自分の力で生き残るしかない」
少しずつ空が明るくなる。もうすぐ夜明けだ。
心境はますます重くなるのに、時間ばかり追い立てる様に過ぎてゆく。一刻一刻と、修羅の時間が迫っているのだ。
「お前達には酷かもしれないのは承知だ。
だがそれでもこれが殺し合いということは常に頭に入れておけ。
でなければ、今度こそ、死ぬぞ」
そう言い捨てると、ユアンは部屋から出ていった。
カトリーヌは今にも泣きそうな顔をし、プリムラは口を尖らせている。
グリッドは、ははは、俺がいれば心配はないと高らかに笑う。だがその笑い声は虚しく暗い空気を落とした部屋に響くだけだった。
331彼という人3:2006/01/07(土) 07:58:16 ID:18BEPULM
ユアンがベランダで何かを手で転がしながら空を見上げている。
「…誰だ」
人の気配がし、振り向かずに問いかけた。そこにいたのはグリッドだった。
「なんだ?めちゃくちゃな事を言う私を糾弾しに来たか」
するとグリッドは相変わらず高らかに笑ってみせる。
「いやいやいや!お前は本当に漆黒のメンバーの事を考えているんだな」
自分の残酷な提案に対するグリッドの思わぬ言葉。
フッとユアンが顔を歪めて笑う。
「…何の事やら」
ユアンは指で転がしていた刻印の入った指輪を胸にしまった。
「……すっかりお前に巻き込まれてしまったんだ。
どんな手段を使ってもこれからも巻き込まれてやるだけさ」

【グリッド 生存確認】
所持品:無し
状態:HP三分の二ほど。
基本行動方針:生き延びる。
行動方針:漆黒の翼のリーダーとして行動。

【ユアン 生存確認】
所持品:占いの本、エナジーブレット、フェアリィリング、ミスティブルーム
状態:ほぼ健康、TPちょっと消費
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを信用していない。
第一行動方針:漆黒の翼を生き残らせる
第二行動方針:漆黒の翼の一員として行動。仲間捜し。

【プリムラ 生存確認】
状態:健康
所持品:セイファートキー、?、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ、エナジーブレット
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを石板に縛り付けて海に沈める。

【カトリーヌ 生存確認】
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット×2、ロープ数本、C・ケイジ
状態:健康
基本行動方針:帰りたい。死にたくない。

現在地:G5の町
332小さな英雄と小さな天才 1:2006/01/07(土) 13:23:37 ID:z/x/ESsU
カイルは歩いていた。
暗い洞窟の中を。
だが元々余り計画的に事を進めるタイプではない彼が見た事もない洞窟をさまようとすれば、迷うのはある種の運命、火を見るより明らかとでも言える事だろう。
「あれ…ここってもしかしてもう地下水道じゃないよね?」
辺りを見回す。
今までいたような水路では無く、いつの間にか普通の洞窟内にいた。
現在位置が解らない事に、今更ながら苦い顔をする。
いつもなら自分の無計画な行動や無茶な作戦は、全て仲間達がフォローしてくれていた。
そう、いつもなら。
だが今はその仲間達もいない。
それどころか。
「母さん…」
ツン、と鼻の奥が痛んだ。
だが視界は滲ませない。
ジューダスがいたら、きっとそれは怒られる事だから。
視界が滲んで、前が見えなくなったら。
それこそ無意味になるのだ、と。

とにかく今は、皆と合流しなくては。
泣いたりするのは、事が解決してからでも出来る。

濡れていない両目を、ごしごしと手の甲で拭う。
はっきりと覚醒させた意識で、暗い洞窟内を再度確認するように見渡す。
「っ!?」
心臓が跳ね上がった。
見えたのは、鬼火のように揺らめく光。
「誰だっ!」
それが人為的なものだと気付いた途端に、一瞬前とは別物の皮膚が粟立つ警戒と。
誰かに会えたというほんの…、ほんの少しの安堵が広がった。
333小さな英雄と小さな天才 2:2006/01/07(土) 13:24:56 ID:z/x/ESsU

「!!」
ビクリ、と。
ジーニアスの肩が大きく跳ねた。
唐突に響いた、知らない誰かの声に。
――殺される。
とっさに照らしていた辺りを消し、自らの居場所を隠す。
そして、
「う…うわあぁぁあぁっ!!」
恐怖に押されるようにして、“スペルチャージ”していた魔術が解放された。
「ライトニング!!」
簡易な、とはいえ殺傷力を持った電撃が、声の主に襲いかかった。


334小さな英雄と小さな天才 3:2006/01/07(土) 13:26:24 ID:z/x/ESsU
【ジーニアス 生存確認】
状態:背中がまだ少し痛む、疲労、恐慌
所持品:ビジャスコア アビシオンのフィギュア
第一行動方針:殺されないようにする
第二行動方針:しいなにみつからないようにする
第三行動方針:ジースリ洞窟を進む(迷わないように)
      :万が一のため、何か術を『スペルチャージ』しておく
現在位置:G3 ジースリ洞窟内部

【カイル 生存確認】
状態:全身に打撲、擦り傷、多大な緊張とほんの僅かな安堵
所持品:鍋の蓋 フォースリング ラビットシンボル
第一行動方針:敵意がなければ一緒に行動する
第二行動方針:父との再会
第三行動方針:リアラとの再会
第四行動方針:ロニ、ジューダス、ハロルドとの合流
現在位置:G3 ジースリ洞窟内部
335小さな英雄と小さな天才書いた者:2006/01/07(土) 13:48:06 ID:z/x/ESsU
>>333
×→とっさに照らしていた辺りを消し
○→とっさに辺りを照らしていた明かりを消し

失礼しました
336名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/07(土) 14:38:56 ID:9T7COzdS
檜山修之サンとOFF会したい
http://ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1136611181/
337Tonight,I'll meet you 1:2006/01/07(土) 19:34:31 ID:WchsexXN
暗い世界。
何も見えない。自分の手すら。
ここは何処だ? 何故オレはこんな所にいる?
青年は何かを求め歩き出す。終わりのない闇の中で、恐れのない足取りで歩き出す。
カツカツと冷たい足音が聞こえる中、地を踏み締め進んでいく。
そして見えてきた一つの光。
光はヒトの姿を象っており、美しく長い金髪が纏う光に煌めいていた。
青年は口を開く。

「クレア?」

どうやら光に青年は見覚えがあるようだった。
光は青年に微笑む。しかしその微笑みははかなくて、どこか悲しかった。

「どうして?」
「え…?」
「どうして、そんな悲しいことをするの…?」

その言葉は錨のように、青年の心にずしりと沈んでいく。
深く深く、ゆっくりと彼の心に下りていく。
それと共に生まれた波は焦りとなって彼の心に広がっていく。
何のことだ、どうしてそんなことを言うんだ、オレはお前に──…。
青年は手を伸ばす。しかし、光はすぐ近くにあるのに、とても遠くて。
届く直前に、光は消えた。


それは少し前のこと。
静寂に広がる、一瞬の閃光と爆音。
ある城の部屋で、目を閉じ休んでいた青年にもそれは届いた。
338Tonight,I'll meet you 2:2006/01/07(土) 19:37:23 ID:WchsexXN
どうやら少し眠ってしまっていたらしい。
夢か何かを見ていたような気もするが、記憶は朧で、見たという感覚しか残っていない。
それよりも、覚醒させた轟音だ。いつもは静かな表情でいる青年だが、流石の彼も少々驚愕が隠せないようだった。
一体何が起きたのか?
事を確認しようと、部屋の窓を開け外を覗き見る。
──焦げ臭い。更に、鼻孔に微かに流れ込んできた香ばしい臭いに、思わず顔を背けた。
良いものではない。言うならば、異臭。
暗闇で外はうっすらとしか見えないが、逆にそれがこの臭いを引き立てている。
想像は容易につく。爆発が起きたのだろう、音も似ていた。
それに、ヒトが巻き込まれた。
誰かは分からないが、死んだ確率は高いだろう。
ヒトの燃えた臭いがそれを物語っている。
だが、起こしたのは誰だ?
自分と同じようにゲームに乗った人物か、防衛の末に爆発を起こした人物か。
ただ一つ分かることは、もし近い内にこの城に来訪者が現れるとしたら、恐らく爆発を起こした主だ。
導術…もしくは近いものを使える人物か、爆発を起こす道具を持っている人物か。
脅威にはなるだろう。しかし、そんなのは青年には少しも関係なかった。
339Tonight,I'll meet you 3:2006/01/07(土) 19:39:40 ID:WchsexXN
彼の望みは元の世界に戻ること。
いずれにしても、目的達成の為には全員殺さなくてはいけないのである。
相手が死ぬのが、早いか遅いか。それだけのことなのだ。
再び目を閉じ、精神を集中する。僅かな音も聞き漏らさまいと。
瞼の奥の瞳は、強い意思の輝きを放っていた。


…どれくらいの時間が経ったのだろうか? 少しか、それとも数時間か。
今まで彼の耳には何の音も届かなかった。新たな爆発音も、城の扉を開ける音も、話し声も、足音も。
──無駄な心配だったか…。
青年は一息零す。深く読み過ぎたようだ。
爆発を起こした主も離れていったらしい。もしくは相討ちだったのかもしれない。
夜は町や村に集まるという考えも、同じように考え敢えて近付かないような人物もいるだろう。
ならば、ヒトは外に揃っている。出た方がいいかもしれない。
青年は立ち上がる。橙と黄のグミを口に放り込み傷と精神を癒して。
そして自らの武器である小剣に一度触れると、彼は歩き出した。


そうして彼…ヴェイグ・リュングベルは今に至る。
動かない足、侵食する異常を見つめながら、自らに迫る得体の知れない恐怖を実感していた。
340Tonight,I'll meet you 4:2006/01/07(土) 19:42:27 ID:WchsexXN
既に石化は背中の少し下まで及んでおり、背負っている支給品袋もろとも固くなっている。
このまま石になってしまうのか。
やがて全身が色を失い、心臓すらも石と化してしまうのか。
様々な憶測が頭を駆け巡り、同時に自分の不甲斐なさが心を巡った。
殺そうとしたあの男はもう居ない。
あれほどの実力を持つ男が、とどめを刺さずに去っていった。
つまり、これ自体がとどめなのだ。
じわじわと石に化していき、やがて全身が包まれて死ぬ。
男がこの手段を選んだのはせめてもの情けか、それとも恐怖に落とすためか。
その答えを知る人間はここには居ない。
叫びに答える者も居ない。
ただ森に声が吸われていっては、静けさが返ってくる。
その度に自分の無力さを痛感する。
ここでもう終わってしまうのか。

不意にその時、脳裏に浮かんだ光景。思い出したのは、先程見た夢。
あの表情──。
クレアが伝えたかったことは何だったのか?
あんな悲しい表情をしてまで伝えたかったことは。
オレは悲しい表情をさせるようなことをしてしまったのだろうか?
まだ動く左手を見る。

血。
──…血で汚れた左手。
341Tonight,I'll meet you 5:2006/01/07(土) 19:44:59 ID:WchsexXN

ああ、そうか。
クレアは血で汚れていくオレの姿を見たくなかったんだ。
何で今まで気付かなかったのか。
優しい性格だから、誰かが傷つくのは、きっと嫌に決まっている。
なのにオレが、オレ自身がヒトを傷つけ、殺してしまった。
だからあんな表情をしていたんだろう。
そうなんだな…クレア?

勝手な考えだと思った。
夢なんて曖昧で、おかしくて、それが正しいかなんて誰も分からないし、思わない。
そう考えたのは、ただ単に自分の罪を誰かに許してもらいたいからだろう。
命を奪っておいて、苦しみから逃れたいからだろう。
死ぬ直前に許してほしい? 傲慢だ。
じゃあ何で殺したんだ。もう消えた命は戻りはしない。
消した命を忘れて、自分だけ救われると思うな。諦めれば全てから解放されるなんて、愚かな考えだ。
もう戻れはしないんだ。

誰かの声…否、自分の声が聞こえる。
恐らく、ヒトを殺してきた自分の声だ。
その自分が、弱くなっていく自分に「立て」と、「勝て」と、「殺せ」と言う。
だが、ヴェイグは声を振り払った。
石化はもう背中まで回っている。まだ残っているのは、肩から上と腕が少し。
342Tonight,I'll meet you 6:2006/01/07(土) 19:48:10 ID:WchsexXN
もはや全身が石になるのは、そう遅くはないだろう。
もう動けない。見聞したことのない恐怖に侵されて、自分は死んでいく。
ならせめて、ヴェイグは自分が見た光を信じた。信じたかった。
ゆっくり、目を閉じる。目の前に広がるのは暗闇だ。
光を探す。
そして目の前に、金色の光が現れた。さっきと変わらない、悲しい微笑みのままで。

──大丈夫だ、クレア。オレの手は…もう、汚れない。

手遅れになる前に彼は告げた。
光は何も言わず微笑んでいる。但し、その微笑みに悲しみはない。
いつもの優しい微笑みで見つめている。
彼も笑った。
恐怖が首から喉へ、顔へと侵食していく。
だが、彼はもう恐れはしなかった。

例え目の前の光が自分の作り出した幻想だろうと構わない。
最期に、クレアに出会えるのなら。
ヴェイグにとっては、それが死ぬ前の唯一の「救い」であり、「希望」だった。


そうして、ヴェイグの身体は色を失くした。
343Tonight,I'll meet you 7:2006/01/07(土) 19:50:54 ID:WchsexXN
【ヴェイグ 生存確認】
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)
※但し袋ごと石化したため回収は不可能。
現在位置:B7の森林地帯
状態:TP消費(小) 右肩に裂傷 全身石化(時間による状態悪化・改善なし)
344まとめ:2006/01/07(土) 21:55:28 ID:2UHW7AFJ
現在地&キャラ近況

B2 塔内  リッド キール >103-108
B5 森   ロイド ジューダス メルディ >232-240 
B7 森   ダオス ヴェイグ >310-313
B7 森   ヴェイグ >337-343
B7 森   マーテル ミトス マリアン >280-282
C3 村内  ファラ ジョニー >149-152
C4 草原  シャーリィ >317-323
C5 橋   アーチェ >109-110
C7 森   リオン >298-300
C7 山   ソロン >302-303
D6 草原  ジェイ(G3へ移動中) >180-186
F2 森   サレ リアラ クラトス >314-316
F3 平原  デミテル ティトレイ(西へ移動中) >306-309
F3 平原  モリスン(北へ移動中) >306-309
F3 森   クレス コレット >164-168
F4 平原  バルバトス マグニス >324-328
G3 洞窟  ハロルド スタン ミント >205-209
G3 洞窟  カイル ジーニアス >332-334
G5 町   コングマン >111-116
G5 町   グリッド ユアン プリムラ カトリーヌ >329-331
G6 森   ミミー トーマ >98-102

Part2になってからの死者
E4 砂漠  マリー >51-54
F4 川    しいな >79-84
D6 平原  ポプラおばさん >143-145
D6 平原  ロニ >169-176
D8 海岸  ゼロス >255-263
C4 草原  カッシェル >317-323

・禁止エリア
 第一日午後九時:H6
 第二日午前零時:B4
 第二日午前三時:G1
 第二日午前六時:E7

・まとめサイト http://talesofbattleroyal.web.fc2.com/index.htm
・地図 http://www.hasimoto999.aki.gs/img-box/img/858.jpg〔PC〕
http://i.pic.to/2g2oa〔携帯〕

・何かあればこちらまで↓
テイルズ オブ バトルロワイアル 感想議論用スレ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1132855244

・前スレ
テイルズ オブ バトルロワイアル
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1129562230

345名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/07(土) 22:03:04 ID:2UHW7AFJ
訂正
B7 森   ダオス ヴェイグ >310-313
           ↓
B7 森   ダオス >310-313
346絶対佳人 1:2006/01/07(土) 22:55:29 ID:1kh2yFPH
夜の帳が降りてからもうどのくらい経っただろうか。
時計を取り出して見ると、もう夕暮れの望まぬ形での再会から数時間経ってしまっている。
歩きながら少しづつ齧り続けたパンも、そろそろふたつめがなくなる。
睡魔も、ほんの少しばかりだが足音が聞こえる。
今日は人生で一番歩いた気がする。
普段はホウキに乗ってばかりだったせいか、靴擦れを起こした踵もひどく痛む。

最初よりも大分速度は遅くなったが、それでも休まずに歩き続けた。
このゲームに乗って、誰かの命を奪う。
そんな自分に変われなければ、この虚脱感から逃れられなかったのだ。
チェスターを失ったことで出来た心の隙間を独りで埋められるほど、アーチェは強い女性ではなかった。

歩く最中に背後から紫の不自然な稲光と轟音も聞こえたが、不思議と恐怖は覚えない。
気を多く持つ心の余裕さえ、今の彼女にはなかった。
347絶対佳人 2:2006/01/07(土) 22:57:14 ID:1kh2yFPH
C3の村には、ふたりの人間がいた。
そのひとりであるジョニーと交代し、今はファラが村の入り口を見張っている。
ちょっと横になったお陰で疲れも多少はとれたのか、彼女は暇つぶしに軽く運動をしていた。
流々と、川の流れのように無駄を取り払ったレグルス流の演舞。
武術を嗜む人が見たなら、その美しい動きに驚嘆の声をあげたであろう。
その彼女の演舞が、突如止まった。
「……そこにいるんでしょ? 隠れてないで出てきたら?」

村の外に向かって声をかけるファラ。
しばし遅れて、リズムの合っていない土を踏む音が微かに聴こえた。
段々と音は大きくなり、やがて暗がりからひとりの少女が姿を現した。
音の主は、ひどく疲れているようにファラの眼には映った。
しかし、隠すつもりがまるでないのか、それとも隠す術も知らないのか、妙な殺気を放っていた。
「私と戦うつもり……みたいね」
色々と尋ねたいこともあったのだが、その来訪者の出す空気がファラの口をつむいだ。
あの状態では、まともな話し合いにはならない。
そう思ったからこそ、ファラはこれ以上何も聞かないことにして、拳を構えた。
348絶対佳人 3:2006/01/07(土) 22:59:06 ID:1kh2yFPH
先に仕掛けたのは、来訪者のほうであった。
「………ファイア…ボールッ!!」
掛け声と共に、火の弾が杖より生み出されてファラを襲う。
だが、ファラも凡人ではない。
思いのほか大きな火の弾ではあったが、難なくそれを避ける。
杖を持っているのなら、彼女はメルディのような術士タイプなのだろう。
驚異的な瞬発力で、避けた体勢を立て直して一気に間合いを詰める。
だが、彼女の次の魔術も思いのほか早かった。
雷の魔術、ライトニング。
先ほどの火球の横の動きに対し、雷は縦の動きで瞬間的に落ちる。
避けることは不可能だと思われた。
しかし、その瞬間ファラの走り方が変わった。
来訪者がそのファラの姿に妙な違和感を覚えたかと思ったその刹那、ファラが目の前にまで接近した。
雷さえも、その彼女を捉えることは出来ず、音と共に空しく地に落ちた。

ファラの三連蹴りが来訪者を襲う。
だが、来訪者も負けていない。すんでのところでファラの猛攻をかわす。
それでもファラは地面を蹴って、来訪者のほうに瞬時に方向を変え、再び迫った。
魔術を使う隙も与えないファラの攻めによって、来訪者は慌ててナイフを取り出した。
接近戦に応じるしか、なかった。
両手に構え、ナイフを一気に突き出す。
突き出されたナイフを、ファラは即座に蹴り上げた。
綺麗な弧を描き、ナイフが宙を舞う。
来訪者はその動きに驚く間もなく、ファラの掌底を懐に叩き込まれた。
その打撃は、彼女の意識を飛ばすには十分であった。
349絶対佳人 4:2006/01/07(土) 23:01:57 ID:1kh2yFPH
ジョニーが仮眠をとっている家の扉をたたく。声がして、扉が開く。
「……おや? その娘は誰だい?」
ファラが抱っこする少女を見て、ジョニーは尋ねた。
「…………村の入り口で倒れていたの。私がこの娘を看てる間、見張り…お願いできない?」
少しの逡巡の後、ファラが答える。
ジョニーは薄く微笑むと
「麗しいレディーの頼みなら、喜んで」
と、まるで演劇のような芝居がかった言い方で快諾した。
そんなジョニーに、ファラは「ありがとう」と礼を言うと、少女を抱いて家に入った。

「――これで、よしっと」
少女をベッドに寝かせ、ファラはようやく一息ついた。
眠りやすそうな服に見えなかったから、家にあったゆったりした服に着替えもさせた。
靴を脱がせたときに、この少女が靴擦れを起こしているのを見て、布で手当てもした。
その甲斐もあって、少女は昏々と眠りについている。
ファラは眠る少女の顔を、覗き込むように見つめた。
少女の寝顔は、殺し合いを進んで行うような人間のものには見えなかった。
でも、この娘は自分を殺すつもりで襲い掛かってきた。
そう思うと、彼女は新たな怒りを覚えた。
怒りの対象は、主催者ミクトラン。
(こんな娘まで殺し合いに駆り立てさせるなんて………ひどすぎる!)
やっぱり、こんな理不尽なゲームは絶対に許すことなんて出来ない。
この出会いも、ファラの中の使命感や正義感を更に滾らせることとなった。
350絶対佳人 5:2006/01/07(土) 23:04:26 ID:1kh2yFPH
村の入り口で見張りをするジョニーは、嘆息を洩らす。
「……ふう、ファラは嘘を隠すのが下手だな」
落雷によって不自然に空いた穴。そして円形に焼け焦げた柱。
そして無造作に放置されたままのナイフと杖。
ジョニーは、ひとまず自分の荷物の中にそれらを放り込んだ。
暗くてそれ以上は状況はつかめないが、戦いの傷跡はまるで隠れていない。
しかし、実際に戦いがあったとしても、ジョニーは進んであの少女と事を構えるつもりはなかった。
「さて、あの少女は目覚めて何を思うか……殺す相手に助けられ――」
ポロロン、と弦楽器を鳴らす仕草をしながら、ジョニーは弁士のような口で詠った。


【アーチェ 生存確認】
 所持品:身に着けていたレジストリング それ以外はファラに没収
 状態:気絶 足に靴擦れ
 第一行動方針:ゲームに乗る
 現在地:C3の村

【ファラ 生存確認】
 所持品:ブラックオニキス ガイアグリーヴァ
 アーチェの支給品袋(ダークボトル×2 スペクタクルズ×1 木の弓 毒(液体))
 状態:普通
 第一行動方針:アーチェの世話をする
 第二行動方針:殺し合いをやめさせる
 第三行動方針:仲間との合流
 第四行動方針:ゲームからの脱出
 現在位置:C3の村

【ジョニー 生存確認】
 所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗  BCロッド サバイバルナイフ
 状態:普通
 第一行動方針:見張り
 第二行動方針:仲間との合流
 第三行動方針:ゲームからの脱出
 現在位置:C3の村
351名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/07(土) 23:06:32 ID:Tcv9oqhR
ドカーン

みんな死んでしまった


おわり
352名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/07(土) 23:23:18 ID:BSdt5jcd
>>352
死ね
353名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/07(土) 23:28:22 ID:sHZ5yR2t
>>352
自殺ktkr
354名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/07(土) 23:28:25 ID:z/x/ESsU
------------------------------------

  以下、何事もなかったように再開。
       ↓↓
355名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/08(日) 02:40:11 ID:LZGivMnM
テイルズ信者「ティアラたんハァハァ……うぃぃっ、ぐひぃ!!!!!!!!!」


糞テイルズ信者のザーメンがすべてを飲み込んだ…

糸冬
356名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/08(日) 02:41:14 ID:LZGivMnM
テイルズ信者「ティアたんハァハァ……うぃぃっ、ぐひぃ!!!!!!!!!」


糞テイルズ信者のザーメンがすべてを飲み込んだ…

糸冬
357名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/08(日) 08:44:06 ID:LZGivMnM
テイルズ信者「ぶひひ、ぼ、ぼくがテイルズキャラを動かしてるんだ…ぼくが神だブヒ!!」
母「あ、あの、ご ご飯、ドアの前に置いとくね…」
テイルズ信者「ぶひっ!ババア勝手にぼくの部屋に近づくな!!ご飯とお小遣い置いたらさっさと消えるぶひ!!」
母「ご、ごめんね。大切な用事邪魔しちゃって悪…」
テイルズ信者「うるせぇ!!消えろっつってるブヒ!!」
母「うう…どうしてこんな…」
テイルズ信者「ちっ、せっかく僕がテイルズリレー小説という場で才能を発揮しようとしようとしてるのに邪魔しやがって邪魔しやがって邪魔しやがって」
テイルズ信者「まぁいいブヒ!!今日はファラたんとスタンを主役に書くぶひ!!ぼくが神ブヒ!!ぶひひひひひひひひひひ」
358名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/08(日) 08:44:53 ID:LZGivMnM
テイルズ信者「ぶひひ、ぼ、ぼくがテイルズキャラを動かしてるんだ…ぼくが神だブヒ!!」
母「あ、あの、ご ご飯、ドアの前に置いとくね…」
テイルズ信者「ぶひっ!ババア勝手にぼくの部屋に近づくな!!ご飯とお小遣い置いたらさっさと消えるぶひ!!」
母「ご、ごめんね。大切な用事邪魔しちゃって悪…」
テイルズ信者「うるせぇ!!消えろっつってるブヒ!!」
母「うう…どうしてこんな…」
テイルズ信者「ちっ、せっかく僕がテイルズリレー小説という場で才能を発揮しようとしようとしてるのに邪魔しやがって邪魔しやがって邪魔しやがって」
テイルズ信者「まぁいいブヒ!!今日はファラたんとスタンを主役に書くぶひ!!ぼくが神ブヒ!!ぶひひひひひひひひひひ」
359名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/08(日) 08:46:30 ID:LZGivMnM
>>1
テイルズ信者「ぶひひ、ぼ、ぼくがテイルズキャラを動かしてるんだ…ぼくが神だブヒ!!」
母「あ、あの、ご ご飯、ドアの前に置いとくね…」
テイルズ信者「ぶひっ!ババア勝手にぼくの部屋に近づくな!!ご飯とお小遣い置いたらさっさと消えるぶひ!!」
母「ご、ごめんね。大切な用事邪魔しちゃって悪…」
テイルズ信者「うるせぇ!!消えろっつってるブヒ!!」
母「うう…どうしてこんな…」
テイルズ信者「ちっ、せっかく僕がテイルズリレー小説という場で才能を発揮しようとしようとしてるのに邪魔しやがって邪魔しやがって邪魔しやがって」
テイルズ信者「まぁいいブヒ!!今日はファラたんとスタンを主役に書くぶひ!!ぼくが神ブヒ!!ぶひひひひひひひひひひ」
360名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/08(日) 10:39:04 ID:24CiLP+8
はい終わり
361断罪の焔 1 :2006/01/08(日) 14:18:24 ID:SWACGTdC
「ライトニング!!」
ジーニアスは恐怖に後押しされ、声を掛けてきた相手――カイルに雷撃を放った。
一方のカイルは、突然の攻撃を避けられる余裕もなく、雷撃が直撃した。
「ぅわぁぁぁっ!!」
元々体へのダメージが蓄積されていた為か、その雷撃はカイルの意識を消すのに十分な威力を持っていた。

(母さん――! それにロニ――!?)
雷撃を喰らった直後、カイルには自分に向けて微笑みを浮かべる母親、そして頼れる兄貴分の姿が見えた――気がしていた。

一方のジーニアスは、魔術が相手に当たった事を確認するとランタンの火を再びつけ、恐る恐る辺りを見回す。
すると、向こうの方に人らしきものが倒れているのが見えた。
ジーニアスは、それが何であるかを確かめようとそちらへと歩いていく。
そして、それのすぐ近くまでやってきたとき、それが誰かようやくはっきりした。

それは、金髪の少年だった。
年は自分より年上だろうか、ロイドと同年代に見えた。
しかも彼は武器らしい武器を持っておらず、装備しているのは防具というのもどうかと思うような鍋の蓋だけ。
その時、ジーニアスは思った。

――もしかして彼には戦う意志が無かった?
――そして僕は、そんな彼を殺めてしまった?

正確には意識を失っているだけなのだが、恐慌状態で普段のような状況把握が出来ないジーニアスにそれが分かる余裕は無かった。
彼が今理解したのは、「自分が何の罪も無い少年を殺してしまった」ということだけ。
これでは、まるで自分を殺そうとしたしいなと同じじゃないか!? いや、殺したのだからもっと酷いのか!?
その瞬間、ジーニアスの頭を恐怖が支配した。
その恐怖は得体の知れないものを見た恐怖や誰かが襲ってくるという恐怖でもない、「人殺しの自分への恐怖」であった。
362断罪の焔 2:2006/01/08(日) 14:19:14 ID:SWACGTdC
「わぁぁぁああああ!!」
その場にいられなくなり、彼は無我夢中で走り出した。
そこにいつもの理知的な彼はいない。
道を確かめる余裕も無い。分かれ道にぶつかってもどちらに行くか悩まない。
彼は洞窟内の通路を走り続けた。
しかし、そんな彼の暴走も突然、終焉を迎えた。
道に張られていた糸のようなものに足をつまずかせ、派手に転倒してしまったのだ。
しかし、彼の災難はこれでは終わらない。
突如、草のようなものが降ってきたかと思うと、それがどこからか火に引火し、ジーニアスの体を炎が包みはじめたのだ。

これがハロルドの仕掛けた「花火」の正体であった。
彼女は、スタンに集めさせた引火性の高い草と支給品の着火器具、そして釣り糸を使って、侵入者に対する炎のトラップを作っていたのだ。
そして、ジーニアスは洞窟を走り回っている間に、運悪くその「花火」に掛かってしまったのだ……。

「ぎゃぁぁあああああ!! 熱い、熱いぃぃ!!」
炎から逃れようとのた打ち回るジーニアス。
しかし、そんな行為に意味があるわけも無く、炎は彼を焼いていった。
そして、皮肉にもその炎が彼を一瞬正気に戻し、彼はその一瞬に悟った。

――あぁ、これが人を殺めた僕への断罪なのか、と。

しかし、正気を取り戻したのも束の間、ジーニアスはそのまま暗い闇へと意識を落としていった……。
363断罪の焔 3:2006/01/08(日) 14:20:13 ID:SWACGTdC
【ジーニアス・セイジ 生存確認】
状態:過度の全身火傷 正気を取り戻す
所持品:ビジャスコア アビシオンのフィギュア
第一行動方針:自分のしたことを悔いる
第二行動方針:生きていたら償いをしたい
現在地:G3洞窟内、ハロルドがトラップを仕掛けた通路

【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:気絶 体が麻痺 全身に打撲、擦り傷
所持品:鍋の蓋 フォースリング ラビットシンボル
第一行動方針:父との再会
第二行動方針:リアラとの再会
第三行動方針:ロニ、ジューダス、ハロルドとの合流
現在地:G3洞窟内
364断罪の焔を書いた人:2006/01/08(日) 14:22:04 ID:SWACGTdC
スマソ 追加でつ。
ジーニアスの状態に「意識不明」を追加しておいてください…… orz
365本当の安息 1:2006/01/08(日) 20:30:52 ID:O4MN6A7p
「ホントにごめんな…」
メルディは改めて自分を背負ってくれてるロイドに向かって言った。
「何謝ってるんだよ?メルディが謝る理由なんて何処にもないだろ?」
ジューダスは2人の会話に割り込む事も無くただ前へ進む。
ロイドもそれを追うようにまっすぐ歩き続ける。
「だってメルディ2人の迷惑かけたくないよ」
メルディはそう言いながら先ほどの出来事を思い出した。
何があったのかは知らないが記憶が失う前の光景とは別の光景が映し出されていた。
目の前にあった木々が荒野と変わった光景を・・・
少し体が震え上がった。ロイドにもその震えが伝わる。
―これ以上彼女に辛い思いをさせたくないな―
ロイドは何回も思う。この最悪なゲームを止めなければ、と
「大丈夫だって、俺らは別に全然迷惑がってないぞ?そんな事気にしなくてもいいぜ」
「怖いのだろう?」
ジューダスは少しため息を吐いてから喋った。
メルディはジューダスの言葉を聞くと少しだけロイドの肩を握った。
「またさっきの出来事が起こり僕達になんらかの被害を与えると思っているのだろう…?」
ジューダスはロイド達の方へ向き少しずつ歩み寄っていった。
ジューダスには気づかれていた。何者かに取り付かれた自分を、もう一人の自分を。
メルディがさらにロイドの肩を強く握る。
「ジュ、ジューダス!そんな事言わなくたっていいだろ!?」
ロイドはこれ以上メルディに怯えさせることはしたくなかった。
しかしジューダスは2人にどんどんと近づき、ロイド達の目の前に立った。
メルディはジューダスの言葉に怖くなり目をつぶった。
366本当の安息 2:2006/01/08(日) 20:32:10 ID:O4MN6A7p
「ジューダス!」
ロイドはこれ以上ジューダスに何も言わせたくなかった。するとジューダスは真剣な顔をほどき、
「そんなくだらない事を考えるな、このバカがいる限りそんな事は決して起きないだろう」
予想外の言葉、すかさずロイドは自分の事をバカ呼ばわりされたことに対して反論する。
「なっ、バカはないだろ!バカは!?」
「ただ彼女を助けたいだけで突っ込む行為などバカしかいないだろ?それともお前はバカじゃないとでも言えるのか?」
「だー!もうバカバカうるさい!!」
2人の会話を聞き、メルディは素で笑い始めた。
「あはは、ロイドバカって言われてるー、アハハハ」
「メ、メルディ!お前もバカって言うなよ!」
「フッ」
「ジューダスも笑うなっていうの!」
ジューダスとメルディはロイドの顔を見て笑う。
まだこのバトルロワイアルというゲームは続いている。未だにいい方向へは進展していない。
だがこの時。この一瞬だけは
―いつもの日常的な光景に見えた―
今のメルディは安心感を覚えた。
ジューダスはどことなくキールに似てる感じがする。
ロイドはどことなくリッドに似てる感じがする。
たったそれだけの理由であったが、今のメルディにはそれだけで十分だった。
だけどまだ後ろめたい部分がある。
367本当の安息 3:2006/01/08(日) 20:33:38 ID:O4MN6A7p
「どしてそこまでメルディのこと、助けてくれるか?」
彼女の質問に少し呆然とする二人、だが直後にロイドは
「さっきまでも言ったけど、放っとけなかったんだよ。これ以上メルディが傷つく姿は見たくないしな。
大丈夫、一緒に仲間探そうぜ?」
と言われメルディは小さくうんと呟いた。
ジューダスがロイドに続く。
「確かに僕も怖い。ロイドも怖い。実際僕たちは違う世界から来た人間だ、
完璧に信じきることは中々出来ないと思う。
しかもいつ裏の自分が僕たちを襲うかもしれないという事が分かっているから余計に怖いだろう。
だがだからこそ僕らはメルディのことを助けたい。
人を助けるのに言葉とか理由とか必要ない。その人の思いで動くものだからな。
だから例え僕らから逃げたとしても」
ジューダスは一旦そこで会話を止め一呼吸をいれ、
「僕らは追いかけ続けるぞ」
メルディの乾いた瞳に雫が宿った。
嬉しかったのだ。純粋に自分を助けてくれる事に対して嬉しかった。
こんな自分でも仲間だと思っている、
傷つかれても自分の事を助けてくれる覚悟を持っている。
今は彼らを信じよう。
もう一人の自分すら受け入れてくれる彼らを…
368本当の安息 4:2006/01/08(日) 20:38:01 ID:O4MN6A7p
3人は少しばかり休憩し始めた。
あの後メルディが寝初めてロイドが一旦休憩にしないか?と提案した。
ジューダスも否定することなくその提案に頷いた。
「…ジューダス」
「なんだ?」
「お前やっぱり、いい奴なんだな」
「バカにうつされただけだ、気にするな」
「なっ、そのバカってオレか?」
「お前含めて3人だ」
「結局俺は含まれるのかよ…」
ロイドは髪をかきながら、ブツブツ呟いた。
「ほめてるつもりだが?」
「どうしてそうなるのさ?」
「いい奴、って事さ」
僕も変わったな…
だけどこっちの僕の方が好きになれるな



【ジューダス:生存確認】
状態:休憩中(無傷)
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、(上記2つ二刀流可)、エリクシール、???(武器ではない)
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:メルディを回復できる人またはアイテムを探す
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:ロイド、メルディと行動
現在地:B5の森で休憩

【ロイド:生存確認】
状態:休憩中(無傷)
所持品:ウッドブレード(自作)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆(Sの仲間及び協力してくれる仲間)で生きて帰る
第一行動方針:メルディを回復できる人またはアイテムを探す
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:ジューダス、メルディと行動
現在地:B5の森で休憩

【メルディ 生存確認】
 所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
 状態:TP中消費 全身に打撲 背中に刀傷 両手足に浅い刀傷 左腕に銃創 右足首に擦り傷
    左肩に銃創 ネレイドの干渉を抑えつつある 睡眠中
 基本行動方針:元の世界へ帰る
 第一行動方針:ロイド、ジューダスを信じる
 第二行動方針:仲間と合流
 現在地:B5の森で休憩
369小動物奮闘記 1:2006/01/08(日) 23:52:23 ID:SWACGTdC
時を少し遡って、ポプラおばさんの逃避行が、リオンの登場によって終焉を迎えた頃。
彼女が斬られ、倒れる瞬間に彼女の鞄の口が開き、そこから支給品がばらまかれた。
そして当然、彼女の支給品であるクィッキーも鞄から飛び出したものの一つだった。
クィッキーは、動物の本能で起きた事を悟ると、即座にその場から離れた。

クィッキーを小動物と侮る事無かれ。
彼は、飼い主であるメルディともどもエターニア世界を救う為に戦った、れっきとした戦士。
その脚力は半端ではない。
彼は音速を超えるような勢いで、平原を駆けていったのであった――!!

――そして、現在。
クィッキーは空腹に襲われ、とぼとぼ歩いていた。
「クィ〜〜〜……」(もはや、ここまでの命か…………)
いくら戦士といえど「腹が減っては戦はできぬ」だ。
森ならば木の実やキノコといった食料があるだろうが、現在地はだだっ広い平原。
しかも、辺りは暗く、地図を持っているはずも無いので森が何処にあるのかも分からない有様である。
クィッキー自身も食料調達を諦めかけていたが……その時だった。
動物特有の敏感な嗅覚が、食べ物の臭いを察知した。
「クィ〜、クィッキィ!」(助けに船とはまさにこのこと! 駄目もとで行ってみようじゃないか!)
クィッキーは、最後の力を振り絞って、においの元へと走っていった……。
370小動物奮闘記 2:2006/01/08(日) 23:53:33 ID:SWACGTdC
「おいしいパンを作ろ〜パン〜。 生きてるパンを作ろ〜パン〜」
ミミーは森の中で上機嫌に窯を見ながら歌う。
ちなみに、窯はトーマが運んできた岩や石を積み上げた手作り窯だ。
今夜のメニューは、森で採れたキノコとマジカルポーチから飛び出たチーズを使ったピザ。
そして、頃合いを見計らって、窯から焼きたてのピザを取り出す。
焼き加減はバッチリで、香りもいい。
「う〜ん、我ながら惚れ惚れする出来パン〜」
ピザを見ながら恍惚の表情を浮かべるミミー。
そこにはパンへの異常なまでの愛情があった……。
「お〜い、出来たのか〜?」
そして、そんなタイミングでメガグランチャー片手に見回りをしていたトーマが戻ってきた。
「あ、丁度いいところに戻ってきたパン! 今出来たところパン!」
「おぉ! そいつぁ良かった!」
これ以上に無いほどの嬉しそうな顔をするトーマ。
そして、そんなトーマの顔を見て、自分まで嬉しくなるミミー。
二人は、バトルロワイアルの最中とは思えないような明るい夕食を始めようとしていた、が……。

ガサリ――

突如、自分達のものでない異質な物音がした。
トーマはその瞬間、四星の一端を担う戦士の表情に変わった。
物音の方向を、ガジュマならではの感覚の鋭さで察知すると、音源と予測した茂みの方向に砲口を向ける。
「誰だ? こいつをぶっ放されたくなければ姿を現しやがれ!」
トーマの脅し文句につられてか、ガサガサという物音がまたしてくる。
そして、茂みから出てきたのは小さな青色の生物、クィッキーだった。
「クィッキ〜」(美味そうな臭いがすると思ったら、やっぱりアタリだったみたいだな)
トーマは正体を現したそれの拍子抜けし、砲口を下へ向ける。
「はぁ〜。ったく、驚かせやがって……。って、おいミミー、どうした?」
トーマがミミーの方を向くと彼女は、その小動物をずっと凝視していた。
「クィッキィ?」(おや? お嬢さん、そんな目をしてどうしたんだい?)
そして、クィッキーが首を傾げる仕草をした直後、ミミーはクィッキーに飛びついた!!
「かかか、かぁいいパン〜〜〜〜〜!! お持ち帰りパン〜〜!!」
「ククク、クィッキ〜〜!!」(ちょっとちょっとお嬢さん! そんなところを触らないでくださるなって!)
目をうっとりとさせ、抱き上げたクィッキーを撫で回すミミー。
そして、トーマはそれを見て呆然としてしまう。
「尻尾がフサフサだパン〜〜! はぅ〜〜パン〜〜」
「クィ〜〜……」(あ〜、も〜どうにでもなれってんだ……)
ミミーはしばらく、クィッキーを抱きかかえ、色々と触って楽しんでいた……。
371小動物奮闘記 3:2006/01/08(日) 23:54:57 ID:SWACGTdC
突然の来訪者によって少し遅れた夕食。
そこには、一人……いや一匹が増えていた。
「さぁ、クィッキー! 小生のピザを食べるパン!」
「クィ〜♪」(かたじけないねぇ、お嬢さん。……お、こいつぁ美味いよ!)
いつの間にか、クィッキーと名付けているミミー。
そして、そんなミミーを見て苦笑するトーマ。
「ちゃっかりしてるぜ、こいつも。まんまとミミーのパンにありつけるんだからなぁ」
「クィッキ〜」(旦那も楽しそうにしてると所に割り込んで悪かったよ。いつかこの恩は返してやるからよぉ)
すっかり場になじんでいるクィッキー。
そして夕食も終わりかけていた時、ミミーはトーマに尋ねた。
「牛さん、牛さん! クィッキーを連れてってもいいパン?」
ミミーはクィッキーを抱きかかえ、懇願の目でトーマを見つめる。
本来なら、足手まといになりそうな物は切り捨てていくような性格のトーマであったが、ミミーと出会ってからは少し変わった。
彼はミミーの問いかけに大きく頷いた。
「あぁ。お前がそうしたいなら、俺は反対しないぜ」
「牛さん、ありがとうパン〜〜!」
「クィッキ〜」(旦那、感謝するぜ!)

こうして、ミミー&トーマ一行に新たな仲間が加わったのであった。
そう。それは、殺し合いが行われているとは思えないほど平穏な夜のひと時であった…………。
372小動物奮闘記 4:2006/01/08(日) 23:55:35 ID:SWACGTdC
【ミミー・ブレッド 生存確認】
状態:健康 クィッキーを仲間にして嬉しい
所持品:ウィングパック×2 イクストリーム 金のフライパン マジカルポーチ ペルシャブーツ クィッキー
第一行動方針:クィッキーを愛でる
第二行動方針:今後の事を考える

【トーマ 生存確認】
状態:健康(傷、こぶは回復)
所持品:メガグランチャー ライフボトル
第一行動方針:ミミーを守りぬく
第二行動方針:今後の事を考える

現在地:G6森エリア
373I should・・・ 1:2006/01/09(月) 00:47:28 ID:WJC3V+lP
サレが移動してから、結構な時間が過ぎた。
その間クレスは、これまでのこと、そしてこれからのことについて改めて検討をしていた。
依然として寝ているコレットの体調は思わしくないが、今は落ち着いている。

「クレスさん・・・」
いつの間にかコレットが目を覚ましていた。
上半身を起こし、座ったような体勢で元気の無い顔で声を出す。
「大丈夫?」
クレスもまた片膝を付いて座ったまま、少女に声をかける。
「えと、はい、だいぶよくなりました・・・」
目を合わせずにそう答える。
どうやらまだ悪いらしいとクレスは思った。
「あの、さっきは、ありがとうございました」
さっきというのはクレス達が赤鬼と青鬼に襲われた時の話である。
あの時、確かにクレスとサレは戦い、コレットを守った。
「ああ、君が無事で何よりだよ」
出来るだけの笑みを浮かべて、クレスはそう答えた。

「あの・・・サレさんは?」
少女は周囲を見回し、不思議そうにそう尋ねた。
クレスは座ったまま首を回し、サレが消えていった方向を見やり、
「サレならさっき出て行ったよ。君の治療に役立つものを探しに」
とだけ言った。するとコレットがばっと顔を上げ、
「そんな!私、平気です!すぐにサレさんを呼び戻しに・・・」
立ち上がろうとするコレットを、クレスは制止した。
「もう遅すぎる、それにサレは長くても次の放送までには帰ってくる」
「次の放送って・・・」
コレットが時間を尋ね、クレスが今の時刻を言った。
「長いじゃないですか!そんな・・・誰かに襲われたら・・・」
「サレは大丈夫だよ。本人がそう言ってたし」
クレスは何故か煩わしそうにそう答えた。あまりサレについて喋りたくなかったのかもしれなかった。
コレットも黙り込み、沈黙が場を支配した。

374I should・・・ 2:2006/01/09(月) 00:48:41 ID:WJC3V+lP
「あの・・・」
しばらく後、再びコレットがクレスに話しかけた。
「どうしたんだい?」
さほど興味無げにクレスは聞き返した。
「・・・あの時、私が、その・・・撃たれた後・・・」
少女は言葉を出すのを躊躇っているようだった。
それもそうだ。少女を撃ったのは、少女の仲間だったのだから。

あの時のコレットはとても嬉しそうだった。仲間を見つけて、純粋に喜んでいた。
あれは私の仲間です、そうクレスに言って走り出した少女。
その直後にその仲間から撃たれた少女。
そして、その仲間もまた・・・

「私、あの辺のこと、ぼんやりとしか覚えてないんですけど、なんだかすごく大きな音がして・・・恐い人達が来て・・・」
あの時、ばらばらになった女性の死体を、コレットは見ていないはずだった。
だがあの状況、少し考えればその女性の身に何かあったことはすぐ分かることだった。
「しいなは・・・もしかして・・・」
クレスは黙っていた。
目の前に居るこの少女の仲間、それが無残に死んでしまったことを自分の口から告げることは少し辛いことだった。
しかしもうすぐかかるだろう放送で、どっちみち知ることになる。
ならば躊躇う必要は無い。そう結論付けた。
「・・・そう、死んだよ、彼女は」
感情の篭らない声でクレスはそう言った。
少女は別段驚くわけでもなく、ただ顔をうなだれてその死を受け入れている様だった。
「そう、なんですね、やっぱり・・・」
「あの二人、マグニスというやつと、もう一人青髪の男にやられたんだ」
「知ってます・・・マグニスは、私達の世界の人だから」
クレスは黙ってコレットの言葉を聞いていた。
少女は少し言葉を切った後、続けて話し出した。
「私達の世界でも、しいなは、私を殺そうとしてたんです」
クレスは少し驚き、少女の顔を見つめる。
コレットは目を伏せながら、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「しいなは、自分達の世界を守ろうとして・・・神子だった私を、殺そうとしたんです・・・」
「・・・」
「それでも最後は分かり合えて、仲間として一緒に旅をしてきたんです」
「・・・」
「でも、さっきのしいなは・・・しいなは・・・」
そこで言葉が途切れた。段々涙声になっている。
「なんで、しいな・・・私を・・・」
クレスの目に、涙を堪える少女の姿が見えた。
彼は少女を見つめたまま、ゆっくりと立ち上がった。

375I should・・・ 3:2006/01/09(月) 00:49:31 ID:WJC3V+lP
それがこのゲームのルールなのだと、彼はコレットに言ってしまいたかった。
しかしそれは言えない。今の自分にそれを言う資格は無い。
徒党を組み、守るために戦ってしまった自分は、自分達はルールに反している。
先程出会った男、女、そしてあの二人は殺し合いに乗ったのか。
やはりこのゲームでは自分以外の者を殺すしかないのか。
生き残るためなら戦いも辞さないのか。
だが・・・

「やっぱり、私達、甘いのかな。みんな、私達を殺そうとするのかな・・・」
顔を地面に向け、微かに震えながら、自身の内情を吐露するように、コレットは言葉を発する。
仲間に撃たれ、仲間が死んだことはこの純粋無垢な少女には過酷なことなのだった。
ふと、下を向くコレットの頭に誰かの手が乗せられた。
沈んだ表情のまま顔を上げる。
いつの間にかクレスが少女の傍らに寄り、頭を撫でていた。
「大丈夫」
クレスはそう言い、微笑んだ。
コレットは上目遣いに彼の顔を覗き込み、そのまま動かずに居た。

大丈夫?何が?
クレスの頭に疑問がよぎった。
仲間と合流することか?
その仲間に彼女は撃たれたのに?
生きて無事に脱出することか?
いや、何度も検討したことだ。それでは死人は戻らない。
自分も、少女も、まだ見ぬ多くの者も悲しんだままだ。
全てをあるべき姿に戻すには、やはり最後まで生き残り願いを叶えるしかない。
ここまで理不尽なことが出来る主催者だ、願いを叶えることが出来るのは信じていいだろう。
ではやはり殺すしかないのか。
今にせよ、この先にせよ、自分は裏切り者の汚名を被り、仲間を皆殺しにするのか。
いつかそうせざるをえない時が来る。そんな、気がする。
しかし・・・

376I should・・・ 4:2006/01/09(月) 00:51:47 ID:WJC3V+lP
飛んだ意識が現実に戻り、視界に映る少女を見つめる。
涙を浮かべて子犬の様に震える少女の姿を目の当たりにすると、そんな考えもどこかへ行ってしまった。
「君は、僕が守る」
気が付いた時、クレスはそう言っていた。
それは彼の本心から出た言葉か、少女を安心させる為に出した、取り繕いの言葉かは分からなかった。
ただコレットは目を閉じて力なく少し笑って、浮かんだ涙を手で擦った。
「うん・・・」
「サレが戻ってくるまで、もう一回休んでるといいよ。まだ傷が痛んでるはずだ」
「うん・・・」
少女は小さく頷いた。
傷が治りきらない内に無理して起き上がったので、また体調が悪くなった様だった。
再び少女は横になった。

最後まで生き残ると決めたのに、彼女を守る?
矛盾したことだった。いや、それは彼自身分かっていた。
だが自分が何をすべきか、最終的にどうありたいか、それが時々分からなくなっていた。
クレスもまた、少しずつ精神が壊れ始めていた。

【クレス 生存確認】
所持品:ダマスクスソード バクショウダケ
状態:左手に銃創(止血) TP消費(微小)
第一行動方針:コレットを守る
第二行動方針:コレット、サレと行動
第三行動方針:最後まで生き残る
現在位置:F3の森

【コレット 生存確認】
所持品:忍刀血桜 手枷
状態:右肩に銃創(止血)、発熱 TP消費(微少)
第一行動方針:サレ、クレスと行動
第二行動方針:ロイド達と合流
現在位置:F3の森
377名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 08:39:33 ID:xE2pnuOa
わかったわかった凄い凄いね。面白い面白いよ。












いいから糞みたいなオナニー小説はゲサロでやれ。
378逆輸入ジェラシー 1:2006/01/09(月) 16:12:59 ID:xJ5HIio+
暗い暗い森の中を、朗らかに歌を唄いながら
高速スキップで駆け抜ける女の子が居りました。

「ある〜ひっ♪ もりの〜なっかっ♪」

花飾りをつけたブロンドのサラサラヘアーとフリフリスカートを
風にはためかせ、木々の間をずんずん進みます。

「おにーちゃんにっ♪ でぇあ〜った!!!」

キラキラ眩しい笑顔を浮かべ、女の子はごきげん。
だってまた一歩、大好きなお兄ちゃんに近付いたんですもの。

……でもこの子、どこか変。
よーく観察してみると……
そう。この可愛らしい女の子は、全身血塗れ。
彼女が探しているのは、次の獲物です。
彼女は『にんげんがり』をしている凄腕ハンター(仮)なのでした!
すべては、お兄ちゃんを生き返らせるため。
お兄ちゃんのことを考えれば、睡魔なんてへっちゃら。
けなげなシャーリィは、夜遅くまで大きな機関銃を手に頑張るのでした。

おや。
シャーリィが立ち止まって、キョロキョロ辺りを見回し始めました。

「……人が居る……近い!」

シャーリィは姿勢を低く、身構えます。
どうやら、彼女は臨戦態勢に入ったようです。
379逆輸入ジェラシー 2:2006/01/09(月) 16:13:48 ID:xJ5HIio+
そろり。そろり。
出来るだけ物音を立てないように、標的に近付いていくシャーリィ。
その顔にはいつもの大人しい彼女の面影は無く、
きりりと凛々しい眉に、一文字に結ばれた口元。
彼女は一瞬にして、崇高な使命を帯びた戦士と化したのです。

そろり。そろり。
欠伸をしてしまいそうな程ゆっくりと、シャーリィは進みます。
そしてあと数メートルに近付いたとき、声が聞こえてきました。
……声の主は男の子、それも二人。
あんまり長引かせたくないな……と、シャーリィは呟きます。
少し角度を変えると、木々の合間に彼等の姿が見えました。
まだこちらには気付いていないようです。
よくよく見てみると、二人に程近いところに女の子が横たわっていました。
……シャーリィは、彼女に見覚えがありました。
そう。先程、爪術大戦を繰り広げた、腹話術師です。
あれの爪術をまともに受けては、さしものシャーリィもひとたまりもありません。

この闘い、少し不利です。
眉間に皺を寄せ、唸るシャーリィ。
そして、一言。

「一気に仕留めるしか無いわ……」

劣勢にもめげず、彼女はやる気満々でした。
380逆輸入ジェラシー 3:2006/01/09(月) 16:14:54 ID:xJ5HIio+
先ずは眠っている女の子から確実に……
そう思い、彼女に銃口を向けます。
そのときでした。
今まで雲に遮られていた月明かりが、森の中に降り注いで来たのです。
視界に映った三人が、よりくっきりと見えてきました。

不意に、片方の男の子が身に付けたヘンテコな被り物が目に付きます。
訝しげな表情のシャーリィ。これにも、見覚えがある様子。

……思い出しました!
これは、彼女のお友達、クロエが最近購入したそれにそっくりなのです。
彼女はそれが大層気に入った様子だったので、強く印象に残っていたのでした。
期せずして、ウェルテスでの楽しい思い出が、胸の中に蘇ってきます。
ほんの昨日までそうであったというのに、随時と昔のことのように感じられました。

……彼女は、それ程までに、変わってしまったのです。
381逆輸入ジェラシー 4:2006/01/09(月) 16:16:24 ID:xJ5HIio+
――クロエ・ヴァレンス。私のお友達。
負けず嫌いで、おっちょこちょい。
強がりなのに、内気で優柔不断。
でも、剣の技はとっても上手!
いつも前線に立って、私達ブレス使いを魔物の攻撃から守ってくれる。
(強くてカッコよくて頼り甲斐のある)お兄ちゃんと一緒に。
そう、一緒に……

……むかつく。
闘いのどさくさに紛れてお兄ちゃんに近付く、アイツ。
お兄ちゃんに誉められて、素っ気ないフリしてデレつく、アイツ。
奥手な癖に、私に『恋のライバル』と楯突く、アイツ。
何もかも、思い出すすべての姿がどうしようもなく……むかつく。
そして、アイツの持ってたのと同じ仮面着けたあの男の子も……
シャーリィは、腹の底が煮えくり返る思いを抑えることが出来ません。
興奮の剰り判断力を失い、彼女は照準を変えてしまいました。
骸骨の仮面を着けた男の子の眉間をギッと睨み付け、機関銃を構え直します。

…………大ッ嫌い!!!

ギリギリと歯を食いしばって、シャーリィは引き金を力一杯引いたのでした。

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
状態:狂気、TP半減、左腕に刀傷(ほぼ回復)、妄想による嫉妬
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2)、ショートソード、???
基本行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
第一行動方針:仮面男の抹殺
第二行動方針:以下二人の殺害
現在位置:B5の森
382逆輸入ジェラシー 5:2006/01/09(月) 16:17:06 ID:xJ5HIio+
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:休憩中
所持品:ウッドブレード、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:メルディを回復できる人またはアイテムを探す
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:ジューダス、メルディと行動
現在位置:B5の森

【ジューダス 生存確認】
状態:休憩中
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、エリクシール、???
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:メルディを回復できる人またはアイテムを探す
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:ロイド、メルディと行動
現在位置:B5の森

【メルディ 生存確認】
状態:睡眠中、TP中消費、全身打撲、背中に刀傷、両手足に浅い刀傷
左腕に銃創、右手首に擦り傷、ネレイドの干渉を抑えつつある、左肩に銃創
所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
基本行動方針:元の世界へ帰る
第一行動方針:ロイドとジューダスを信じる
第二行動方針:仲間と合流
現在位置:B5の森
383落し物 1:2006/01/09(月) 17:51:00 ID:Cwp621Dj
「…っ粋護陣!」
一瞬の出来事。
唐突に現れた防護壁に、相手を殺傷する為の勢いを保つ弾丸達は全て跳ね返された。
「!?」
シャーリィは慌てる。

何があったの?
また、私とお兄ちゃんを隔てるの?
どうして?どうして、何で?
悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔シイ悔シイ悔シイ悔シイ悔シイ悔シイ悔シイ悔シイ……!次コソ殺────

「殺気を隠そうともしないくせに、バレないとでも思ったか?」

思わず追撃の手を止めてしまった。
仮面の男はこちらをじっと見ていた。
否、睨んでいた。
骸骨の眼窩に開いた空洞から、しっかりとこちらを。
気が付けば奴を防護したもう一人も、こちらを睨んでいる。
身は隠している筈なのに。
「………」
それでも黙り込んで息を殺す。
じっと、睨み付け返す。

384落し物 2:2006/01/09(月) 17:52:25 ID:Cwp621Dj


ジューダスは殺気には薄々感付いていた。
だが相手が何をしてくるか解らない上にメルディが眠っている以上は、下手に逃亡は謀れない。
だからこそ相手に感付かれぬようにロイドにそれを伝え、彼が粋護陣を使う事を提案し、ものの十秒で作戦を決めたのだ。
タイミングの問題は、シャーリィが嫉妬に任せ標的を変える際に鳴った、銃器と草が奏でる小さな音で解決した。
問題は、これからどうするかだ。

だが。

385落し物 3:2006/01/09(月) 17:53:45 ID:Cwp621Dj

「ど、どうしたか…!?」
起きてしまっていた。
一番刺激してはいけない人物が。
銃声に目覚めた彼女は瞳にいっぱい怯えを溜めて、混乱しきったように信用したばかりの二人を交互に見つめている。
一歩間違えば、すぐにでも恐慌に陥るだろう。
「だ、大丈夫だ。な?」
幾分慌ててロイドがなだめる。
メルディは傍目に見ても解るくらいに震えていた。

その様子を観察していたシャーリィは。

「…っっ!!」
脱兎の如く駆け出した。

このままいては圧倒的に不利だ。
386落し物 4:2006/01/09(月) 17:54:40 ID:Cwp621Dj
こいつらは憎いけど、後ででも良い。
どうせみんな私がころすんだから、またいつだって機会は訪れる。

まだまだころさなきゃならないひとはたくさんいるんだから。

訳のわからない爪術となんて、今は張り合わなくて良い。
ね?お兄ちゃん。



先程まで彼女が身を潜めたそこにはひとつ。
皆に配布された、何の変哲もないただの筆記用具──鉛筆──のみが置き去りにされていた。



387落し物 5:2006/01/09(月) 17:56:44 ID:Cwp621Dj
【ロイド・アーヴィング 生存確認】
状態:緊張が残っている
所持品:ウッドブレード、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:メルディを回復できる人またはアイテムを探す
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:ジューダス、メルディと行動
現在位置:B5の森

【ジューダス 生存確認】
状態:緊張
所持品:アイスコフィン、忍刀桔梗、エリクシール、???
基本行動方針:ミクトランを倒す
第一行動方針:メルディを回復できる人またはアイテムを探す
第二行動方針:協力してくれる仲間を探す
第三行動方針:ロイド、メルディと行動
現在位置:B5の森

【メルディ 生存確認】
状態:恐慌間近、TP中消費、全身打撲、背中に刀傷、両手足に浅い刀傷 左腕に銃創、右手首に擦り傷、ネレイドの干渉を若干抑えつつある、左肩に銃創
所持品:スカウトオーブ、リバヴィウス鉱
基本行動方針:元の世界へ帰る
第一行動方針:ロイドとジューダスを信じる
第二行動方針:仲間と合流
現在位置:B5の森

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
状態:狂気、TP半減、左腕に刀傷(ほぼ回復)、妄想による嫉妬、慌てたため鉛筆を落とす
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2)、ショートソード、???
基本行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
第一行動方針:とりあえずここは退く
第二行動方針:仮面男の殺害
現在位置:B5の森から移動

388確認に行こう!1:2006/01/10(火) 22:06:56 ID:eJok3y6L
「かかったぁっ!☆★」
少年のものと思われる凄まじい絶叫と、炎のはぜる音。
罠をかけてしばらくの後、休んでいた彼らにそれは訪れた。
自らの仕掛けた罠にかかった獲物の声に、ハロルドが喜々として瞳を輝かせた。
そのキラキラしたオーラの後ろでは、スタンとミントが青冷めている。
ミントに至っては今にも倒れそうだ。
「さ〜て、どこのどいつかしらぁ〜?」
そんな事を気にも止めずに、鼻唄混じりのハロルドはさっさと罠の方の通路に向かう。
気が付けば絶叫が止んでいたところから察するに、相手は既にきっと…
「も、もし…、相手の方に敵意がなかったらどうするんですか?」
ミントが恐る恐る声をかければ、ハロルドはくるりと振り返る。
にぃ〜っと笑みを浮かべれば、ぐふふとか何とか、とても可愛らしい外見とは似合わない笑い声をあげて。
「ほらほら皆、行くわよ〜♪」
「え!?」
「わ…私もですか?」
正直、人間の丸焼きなんて見たくない。二人は青い顔を互いに見交わし、しばらく押し黙る。
そこに、
389確認に行こう!2:2006/01/10(火) 22:08:21 ID:eJok3y6L
「丸焦げはないはずよ?
あの葉はかなり燃えやすいけど、炎の温度は割と低いから」
ひどくても全身火傷程度よ。と白々しく追い討ち。
そしてワクワクしたように鼻唄を再開すれば、二人がついてくる事を確信しているのか振り返らずに歩いていく。

「…………」

押し黙る。
しかしこのままじゃ、埒があかない。
結局、二人は苦い顔をして頷き合い、緩慢な動作で彼の天才科学者の後に歩を進めた。






【スタン 生存確認】
状態:無傷
所持品:ディフェンサー ガーネット 釣り糸
現在位置:G3のジースリ洞窟内部
行動方針:他の仲間と合流する ハロルドたちと行動

【ハロルド 生存確認】
状態:無傷
所持品:ピーチグミ ホーリィボトルの瓶 短剣 実験サンプル(詳細不明)
現在位置:G3のジースリ洞窟内部
第一行動方針:不明
第二行動方針:他の仲間と合流する スタンたちと行動

【ミント 生存確認】
状態:TP中程度回復 軽い疲労
所持品:ホーリイスタッフ サンダーマント
現在位置:G3のジースリ洞窟内部
行動方針:他の仲間と合流する スタンたちと行動 罠にかかった人がマーダーでなければ救いたい
390Kidnaping! 1:2006/01/10(火) 23:47:23 ID:2hqvfWl5
思考が、何度も頭の中を往来する。
考える程に頭が痛い。
この有限和の殺人ゲームに措いて、自分はどうあるべきなのか。
少女を護り、闘い抜く?
全ての人を殺戮し、勝者となる?
それとも――

堂々巡り……そんな事は分かっていた。
しかし、迷わずには、居られなかった。
迷うことで……思考に溺れる事で、自分を保っていた。
結論など……今は欲しくなかった。

クレスは傍らの少女・コレットを見遣り、鼻で溜息を吐く。
彼女は再び眠ってしまい、起きる気配は無い。
彼女の為に張った虚勢も、一人になった今では底無し沼に沈んでしまっている。
サレは、まだなのか?
……いや、内心、戻って欲しくなど無いのかも知れない。
このまま、彼女の寝顔でも眺めて、ただただ時を過ごしたかった。
自分の往き着く先など……知りたくなかった。

茂みが、不自然に揺れた。
……サレか?
いや違う。彼は他者に存在を感づかせる様なヘマはしない。
たとえ、相手が仲間であろうと。
音も無く剣を構え、招かれざる来訪者の登場に備える。
再び、乾いた摩擦音が響く。
修羅の再来は近い。
戦士の勘が、そう告げた。
391Kidnaping! 2:2006/01/10(火) 23:49:33 ID:2hqvfWl5
「何者だ!」
クレスは強い語勢で問い掛ける。
「俺様が何者か……だと?」
意外なことに、相手は律儀にも返事を返した。
「常勝無敗、天下の闘技場覇者の名を知らねぇたぁ……
ちいとばかし勉強不足だな、少年」
木立の闇から姿を現す、巨大な筋肉達磨。
「俺様がチャンピオン……マイティ・コングマン様よォッ!!」
満足気に言い切ると、大男は自慢の力瘤を盛大にアピールした。
「小僧。剣を抜いたその覚悟、しかと受け取ったぜ。
チャンピオン直々に……リングに沈めてやらァ!!」
言い切るや否やこちらへ駆け出した男は、その巨大な拳に力を込めて迫り来る。
見掛けに因らず、かなりのスピードを誇る男。
クレスは剣を抜き、中段後方から振り下ろすと、地面を掠めて前方へ振り抜いた。
「魔神剣!」
距離のある相手への、牽制のひと振り。
剣先は地表を僅か削ぎ取ると、それを押し出す形で衝撃波を生んだ。
波動は地を這い、襲い来る相手の足を正確に捉え、牙を剥く。
「甘い、甘いっ!」
衝撃波が噛み付く寸前、男はその極太の足を勢い良く踏み鳴らす。
すると、男の足下に発生した激しい振動により、地の刃は跡形無く消し去られた。
初歩的な剣技とは言え、小さな蛇を踏みにじる様に魔神剣を掻き消す男。
……油断ならない。
クレスは体勢を改め、接近戦の構えを取る。
「いくぞオラァ!」
勢力そのまま肉薄し、男は体側に隠すかの如く大きく振りかぶった右腕に闘気を込めて打ち出した。
クレスはそれを軽く身を捻ってかわすと、剣を下段後方に構える。
相手の状態はさておいて、こちらの体力に余裕の無い今、長期戦は得策では無い。
出し惜しむ事無く、必殺のカウンターで勝負に出る。
……その思い切りが、勝負の雌雄を分けた。
392Kidnaping! 3:2006/01/10(火) 23:51:34 ID:2hqvfWl5
剣士の攻撃は、既にその時点で意味を無くしていた。
否、コングマンのチャンス予告としては大いに有用だったのだが。
力一杯……一般ピーポーにはそう見えたであろう右腕を、
瞬時に引き戻すコングマン。
彼にとって見飽きる程見慣れた、剣士の力強いモーション。
━━その予備動作……見切った。

腰溜めにした剣を振り上げ、威勢良い掛け声を掛ける。

「「虎牙……」」

━━違和感。
声が二重に聴こえる。

「「破ッ斬んっっ!!」」

続け様に斬り下ろしを放った時、事態は最早抜き差しを赦さない状態であった。
重なった声、それは眼前の標的に拠るものだった。
嘲けて掛け声を重ねた男。
表情は余裕綽々を強調している。
男の姿は剣を振るった先に無く、巨体に似合わない軽やかなステップを
目で追った先、拳は低く構えられていた。
「グレイト……」
「なっ……」
男の腕が盛り上がり、更に太さを増した。
「アップァァッッッ!!!」
次の瞬間、クレスの土手腹を強烈な痛みが襲い、
その身体は高く打ち上がり、宙を舞った。
「ぐぁはっっ!!」
被弾の覚悟を決める間も無く受けた、痛恨の一撃。
ダメージは軽減される事無く、直に彼の身体に打ち込まれた。
393Kidnaping! 4:2006/01/10(火) 23:54:34 ID:2hqvfWl5
──チャンピオン・コングは、半生唯一の敗戦を、片時たりとも忘れた事は無かった。
雨の日も、雪の日も、霧の日も、雑誌の取材の日も、
世界が平和になった日も……
自分を負かした相手の顔を浮かべ、屈辱を胸に稽古に打ち込んだ。

憎きツンツン頭、スタン・エルロン。
奴との出会いは忘れもしない。
あの男は有ろう事か神聖なるコロセアムに女を連れ込み
……いや、コロセアムクィーンのねーちゃんは別だ、
まぁそんなこんなで彼奴は俺様を侮辱しやがったんで、
軽く捻り潰して世間の厳しさを教えてやろうとした訳だ。
……結果、惨敗。
初めて味わった、敗者の悔しさという感情。
……俺は努力した。
奴の使った流派の剣術を扱う傭兵共を何人も打ちのめし、
研究に研究を重ねた末、遂にその極意を掴み取ったのだ。
楽な道では無かったが、その時の高揚は計り知れないものだった。
そして……
今の俺様に敗北の理由は……無い。


ドサッ

クレスの身体は重力の赴くまま落下し、
地面に強か投げ出された。
地に臥せる少年に背を向けたまま、コングマンは吐き捨てるように云った。
「俺様が、チャンピオンよ……」
394Kidnaping! 5:2006/01/10(火) 23:57:41 ID:2hqvfWl5
「……クレスさん!」
つい今し方まで眠っていた少女が声を上げた。
クレスと呼ばれた少年は、何の反応も示さない。
コングマンは少女に詰め寄った。
「何だ、小娘……?
お前の様なヒョロっちい小娘、ひとひね……」
「クレスさんに、何をしたんですかッ!!」
彼の言葉を遮り、少女が吼えた。
見掛けに因らず生意気な小娘だ……コングマンは思う。
「よくもクレスさんを……許さないんだからッ……痛ッ……」
短刀を握り締め立ち上がった少女は、声にならない悲鳴を上げ、
再び力無く地面に座り込んでしまった。
彼は気付いた。
少女の肩に巻かれた、深紅に染まった布切れ。
そして彼は、少女への感情を改めた。
健気な小娘だ、と。
「お前、そんな身体でこの俺様が倒せると思ってるのか?
阿呆が。寝言は寝てから言いやがれ」
腹を抱える仕草を見せ、ケタケタと笑い少女をからかうコングマン。
おどけた態度とは裏腹に、圧力を掛ける様に睨みを利かせる。
これで、少しは自分に対し畏れを抱くだろう。
そう考えての行動だった。

……ところが、少女の剣幕は止まる様相を示さなかった。
「確かに……私なんかじゃ、貴方に叶わないかも知れない。
……でも、仲間を傷付けた貴方を許す訳にはいかないのッ!!」
啖呵を切り、少女は手にした短刀を仇目掛けて投げつけた。
彼は短刀を篭手で易々と叩き落とすと、地面に転げたそれを拾い上げ、クルリと弄ぶ。
「どうした? まさか、今のが『復讐』だなんて冗談はナシだぜ?」
挑発を聞きもせず、少女は呪文の詠唱に入っていた。
コングマンは更に少女へと歩み寄り、その顎から頬にかけてを鷲掴みにする。
顎を押さえられ詠唱をすることも能わず、少女は突き出された唇をパクパクと動かす他無かった。
少女はその手を必死に振り解くと、今度は打って変わって、諦めの表情で彼を見た。
「……分かりました、降参です。
もう抵抗はしませんから、好きにして下さい」

──拍子抜け。
態度をガラリと変えた少女に覚えた感覚は、それだけだった。
つまらない。物足りない。
そう、彼は思う。
そして彼は、彼女の姿に何か奇異な感情を抱いている自分に気付いた。
395Kidnaping! 6:2006/01/11(水) 00:03:35 ID:6RPTHEdm
彼女は言葉を続けた。
「……だから、お願いです。
彼だけは……クレスさんだけは、見逃してあげて下さい!
あの人は、私の命の恩人なんです!」
遂には涙を流し懇願する少女。
胸の前で祈る様に手を組み、瞼を強く閉じて俯いた。
「馬鹿め。敗者に掛ける情なんざ………」
言い掛けて、止めた。

──虐めたい。
もっと、もっとこの小娘を、汚辱にまみれさせてみたい。
虐めに虐め抜いて、絶望の底に叩き堕としてやりたい───

渦巻く感情の正体に、彼は朧気ながら答えを見た。

──圧倒的に無力でありながら、狼に必死に食い下がる子羊。
それをひと呑みにあしらいもせず、その鋭利な爪と血に飢えた牙とでなぶり、眺める。
獲物は皿の上でひたすらに無駄な抵抗を繰り返し、疲弊してゆく。
やがては訪れる終焉の足音を、確かに聴きながら……──

世に『加虐趣向──サディズム』なる言葉があることなど彼は知りもしなかったが、
彼の目覚めたそれは紛う事無く、サディストの精神其のものだった。

「……良いだろう、あの小僧は見逃してやる」
濁した回答を改め、薄笑いを浮かべるコングマン。
窮鼠は顔を上げ、不幸中の幸いを見た僅かな安堵を噛み締めた。
直後に訪れる、次なる災いをも顧みず。
「但し……条件がある」
「えっ!?───」
一瞬の出来事だった。
コングマンは少女の首筋に手を延ばすと、その付け根にある気絶功を突いた。
すると少女はがくりと首を垂らし、再度虚無の世界へと墜ちていった。

持て余した短刀をさらに遊ばせながら、少女の所持品を物色する。
中身を粗く確認するや否や、ほくそ笑むコングマン。
鞄には、今の彼に誂え向きな品が用意されていた。
罪深きを、その頑強な身を以て捕らえるべく造られた道具──手枷。
元来の働きをするならば、これを掛けられる立場に在るのは
彼自身に他ならないだろう。
だが、この『バトル・ロワイアル』という法の及びもしない
異常事態に措いてはその限りでは無い。
道具は、それを用いる者に因ってその姿を変える。
悪心に駆られた者に支配された枷は、無実の少女の両手を縛り、自由を奪い取った。
396Kidnaping! 7:2006/01/11(水) 00:06:51 ID:6RPTHEdm
虜とした少女を抱え、コングマンは倒れた剣士の元へ歩み寄る。
顔中を自らの吐き出した血に汚し、深い眠りに墜ちた敗者を、眼光鋭く見下す。
少年の寝顔は強か殴られて気を失ったとは思えない程穏やかで、
先程闘り合った際に見た引き吊った表情が嘘の様だった。
束の間、眠りという形でこの悪夢を忘れることが出来たからなのだろうか。

──こいつ……血迷いやがったな……

強者と闘うことを至上の生き甲斐とする彼にとって、このゲームに
別段不満を感じる事も無く、自信とも相俟って死への恐怖など
微塵も有りはしなかった。
しかし、だからと言って、死の不安を抱える人間の心情が理解出来ない程
非人間的である訳でも無い。

そして感じていた。
少年が、このゲームに措いてどう在るべきなのかということに、迷いを抱いていた事を。
これ程までに迷いを持った剣を振るう者を目の当たりにすれば、
猛る闘志も萎えてしまうというもの。
闘いに措いては一切手抜かりを許さない彼ではあるが、
闘いを望まぬ者を倒すことが果たしてチャンピオン・シップに
乗っ取った事なのか、という疑問は、嘗てより抱いていたのである。

彼は思う。
やはり、闘志に満ち溢れた者達と闘いたい
……否、闘うべきなのだ、と。
同時に、本来中々の手練を持つのであろうこの少年と全力を以てぶつかりたい
という強い欲求を、彼は再認識した。
……強者であるからこそ、判る。
この少年は、スタン・エルロンと遜色無い実力を秘めているのだ。
再戦を想像するだけで、血湧き肉躍る。
「立ち上がれ……そして、必ず俺を追って来やがれ。
そして次に逢うときが……お前の最期だ」
沸き起こる高揚を抑えつつ、コングマンは木立の闇へと消えていった。
397Kidnaping! 8:2006/01/11(水) 00:10:00 ID:6RPTHEdm
寂寥に包まれた森の中、一人残された若き剣豪の醜態。
傍らでは、死闘の末敵に一度も触れる事無く主の手から投げ出された剣が、哀愁を物語る。
さらに隣、人の生き血で花を咲かす妖刀として畏敬を込め『血桜』と呼ばれた忍刀が、
その意匠を冒涜するかの様に地に突き立てられていた。
刀身には、乱雑に千切られた紙切れが刺さっている。
紙にはいずれ目覚める彼に宛てた侵略者のメッセージが、殴り書きに記されていた。


果たし状
やっと起きたか!
くたばり損ないの負け犬野郎!
おまえの仲間の小娘はいただいていく
返して欲しけりゃ、北西のイーツ城まで一人で来やがれ

追伸
怖じ気づいたんなら、シッポ巻いて逃げたってかまわねえぞ
こいつは俺様が、たっぷり可愛がっておいてやるからな
あ ば よ ! ! !
チャンピオン、マイティ・コングマン

【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:左手に銃創(止血)、TP消費(小)、腹部に痛み(殴られた箇所)
背面に軽度の打撲(落下に因る)、気絶
所持品:ダマスクスソード、バクショウダケ
基本行動方針:最後まで生き残る
第一行動方針:混迷(目覚めたときの書き手に一任)
現在位置:F3森

【マイティ・コングマン 生存確認】
状態:HP半分、サディスティック
所持品:レアガントレット、セレスティマント、手枷の鍵
基本行動方針:闘志のある者と闘い、倒す(強弱不問)
第一行動方針:イーツ城でクレスを待ち、倒す
第二行動方針:出会った相手は倒す
第三行動方針:コレットを虐めて愉しむ
現在位置:F3からイーツ城へ移動中

【コレット・ブルーネル 生存確認】
状態:右肩に銃創(止血)、発熱、気絶、後手に手枷
コングマンに担がれている
所持品:なし(コングマンにより鞄ごと没収)
基本行動方針:取り敢えず生き残る
第一行動方針:不明(目覚めたときの反応次第)
第二行動方針:仲間(Sキャラ及びクレスとサレ)との合流
現在位置:F3からイーツ城へ移動中
398閉幕は遥か彼方 1:2006/01/11(水) 01:50:18 ID:fQ6tXtLS
「はぁはぁ…………」
一人の男が、森の中をよろよろと歩いていた。
風の如く移動するいつもの姿からは想像も出来ないほどのおぼつかない足取り。
男――ソロンは、再び激痛と倦怠感に襲われていた。
「ぐ、ぐふぉぁ」
立ち止まり、木に寄りかかったかと思うと、吐血をする。
先ほどから、激痛と吐血に襲われる間隔がどんどん短くなっている気がする。
「あの赤髪めぇ。随分とふざけた真似を…………」
自分をこのような状況へ追い込んだ赤髪の男の姿を思い出し、忌々しくなって頭を掻き毟る。
しかし、すると今度は掻き毟った髪が、はらはらと抜けていくではないか。
まさかと思い、試しに髪を掴んで引っ張ってみるといとも簡単に掴んだ髪が抜けていった。

――そう、放射能が影響を与えたのは内臓だけではない。頭部を含め、至る所に被害を及ぼしているのだ。

「ウジ蟲がぁぁぁぁ!!」
男の憤怒の叫びが夜の山に響く。
しかし、こんな絶望的な状況でも彼は生への執着を捨てていなかった。
「私はぁ……私はこのゲームを盛り上げなければいけないのですよぉ……。ここで死ぬわけがないでしょうにぃ…………」
彼は、この殺し合いゲームをより血みどろに演出することに喜びを感じていた。
いわば、彼は島を舞台にした殺し合いがテーマの悲劇(彼にとっては喜劇だが)において、演出家を気取っていたのだ。
そして、彼には演出家としてまだまだやりたい事が山のようにあった。

――信頼で結ばれた集団を疑心暗鬼にして仲間内の殺し合いをさせてみたい。
――マーダーをゲームに乗らない連中の方へと誘導して、一方的な殺戮を観賞するのも面白いかもしれない。

彼は、そういった欲望と生への渇望を糧にして、何とか歩いてゆく。
そうしてふらふらと歩いていると、人影が見えた。
黒髪の華奢な体つきの少年…………忘れもしない、自分の演出した殺し合いで役者を務めたリオン・マグナスだ。
彼は、どうも目を閉じて木陰で横になっているようだった。
ある程度近づいているはずだが、例の機械のようなものには目もくれていない。
これは、完全に眠っている――ソロンはそう判断すると、彼へとゆっくりと近づいていった…………。
399閉幕は遥か彼方 2:2006/01/11(水) 01:51:31 ID:fQ6tXtLS
リオンを見下すような位置に立って、彼を睨みつけているソロン。
そこには、憎悪の念が立ち込めていた。

――こいつさえ、しっかりと赤髪男にとどめさえ与えていれば、自分は今苦しんでいなかったはずだ。
――結局は、こいつもジェイのように出来損ないの手駒だったのだろう……。

放射能による苦痛のせいもあって、彼の苛立ちはピークに達していた。
「殺しも満足に出来ない役者に用はありませんねぇ」
彼はぶつぶつとつぶやきながら、ザックからディムロスを取り出す。
「少し不本意ですが、役者の始末をするのも私の仕事ですし……」
ディムロスを大きく振り上げると、その振り下ろす先をリオンの頭上に固定する。
そして、無情にもそれを勢いを付けて振り下ろし、それは彼の頭を切り裂いた!

――はずだったのだが、現実は違った。

振り下ろそうとした瞬間、リオンが体を起き上がらせ、ソロンの腹部をシャルティエで貫いていたのだ。
ソロンは、ディムロスを握ったまま、滅多に見せない“驚愕”の表情を浮かべた。
「な、何故です!? 眠っていたはずな――」
しかし、彼の言葉は途切れる。
腹から抜かれたシャルティエが、今度はディムロスを握る手を肘から腕ごと斬り落としたのだ。
「散々山の中で大声をあげておいて、『何故』だって? 笑わせてくれる」
400閉幕は遥か彼方 3:2006/01/11(水) 01:52:26 ID:fQ6tXtLS

リオンは、ソロンが憤怒の叫びをあげた時に目が覚めたのだ。
忘れるはずも無い。マリアンに自分の醜態を見せるように仕向けたあの男の声だ。
音源は近い位置にあったので、すぐにでもその声の方向へ向かい、声の主を殺したかった。
だが、疲労がたまるその体がそれを許さない。
だから彼には、男が自らこちらに赴いてくるを期待する事しか出来なかった。
そして彼の期待通り、男は彼の至近距離にまでやってきた、そして今にいたるのであった。

ソロンは、普段の狡猾な姿からは想像も出来なような二つのミスを犯した。
一つは、目を瞑って動いていないだけで、彼が眠っていると確証してしまったこと。
もう一つは、クナイを使って殺さずに、わざわざ至近距離まで近づいていってしまったこと。
それは、放射能のよる倦怠感が呼んだ判断力の低下が起こした悲劇だったのだろう。
「ぐがぁぁぁあ!?!」
ともかくミスを犯した彼に待っていたのは、腕の切断という現実。
苦悶の表情を浮かべ、残る方の手で肘の断面から吹き出す血を止めようとするが、そちらの方の腕もリオンは肘から斬り落とす。
「ぐげっ!」
苦痛の余り歪みに歪んだ顔は酷く醜く、口からは放射能のせいか腹部を刺されたからか分からないほど大量の血を吐き出した。
もはや、そこには演出家としての余裕も暗殺者としての冷酷さも無い。
今の彼からは、誰が見ても“絶望”しか連想できないだろう。
そして、そんな哀れな男をリオンは見下す。
「僕は、マリアンを殺そうとしたお前だけは許さない」
しかし、それでもソロン本人は生き永らえようと必死だった。
「わ、私はまだ死ぬわ――」
シャルティエが、そんな生への渇望と止めなかった男の言葉を首ごと刎ねた。

こうして、一人の演出家が舞台から去った。
しかし演出家が一人欠けた所で、この悲劇の幕が閉じるわけが無い。
舞台が存在し、役者が二人以上いる限り、この悲劇は永遠に続くのであった…………。
401閉幕は遥か彼方 4:2006/01/11(水) 01:53:31 ID:fQ6tXtLS
首と両腕が分断された無残な骸を一瞥もせずに、斬り落とした腕からディムロスを拾うと、リオンはその場から離れた。
この憎き男の血で穢れた場所などで、一秒たりとも寝れるはずが無い。
彼は、少し離れた場所の木陰に着くと、今度こそ深い眠りについた…………。
『リオン…………』
そして、そんな眠るリオンの横でディムロスは、彼にかけるべき言葉を見つけられずにいた。


【リオン・マグナス 生存確認】
状態:極度の疲労 睡眠 全身に軽い火傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
所持品:シャルティエ ディムロス 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:睡眠
第二行動方針:マリアンとの再会(ただし再会を恐れてもいる)
第三行動方針:ゲーム参加者の殺害
現在位置:C7の森


【ソロン 死亡】


【残り38人】
402乱れる三つ巴1:2006/01/11(水) 06:46:46 ID:DdjFm7Cl
ダオスがマーテル達の居た場所へと戻ると、そこには目の下を赤く腫らした見慣れぬ女性が樹の根元にうずくまっていた。
その両腕には赤い装飾に細い刀身の剣を抱えている。
「戻られたのですね」
彼女の脇にはマーテルが宥める様に座り込み、ミトスが立っていた。
「お前、何処に行っていたんだ?」
ミトスが訝しげにダオスに訊くが、ダオスは、「いや」と軽く返事をするだけで先程の事態を話す事は無かった。
しかしダオスの外套はヴェイグの氷刃により少々痛んでおり、それはダオスが何かしらの攻撃を受けてきた事をミトスに窺わせる。
「まあいいけどさ」
「それより」
ダオスはうずくまる女性――マリアンに視線を落とした。
「う…っ、う……」
その女性は下女の格好をしており、とても戦いの場にそぐわない様相だった。
マーテルはまだ興奮から冷めぬマリアンの頭を優しく撫で、大丈夫よと声を掛ける。
そこで何者かが喋りだした。
『今…、彼女は混乱しているみたいだから私から状況を話すわ』
「誰!?」
ミトスは驚き、周囲を見渡して体を構える。
『私よ、彼女の持っている剣。大丈夫よ、驚かないで』
その剣、アトワイトは冷静に周りに語り掛けた。
「嘘…剣がお話するなんて…」
「意志を持つ剣か…。よかろう、話して欲しい」
ダオスはアトワイトにそう促した。


それは長い長い話だった。
赤毛の男との出会い、その男が襲われた事、襲った主はマリアンと親しい少年だった事、そして白蛇の髪の男―――
彼女が必死でここまで逃げてきた事も。
半刻程掛けてアトワイトは事を詳細に語った。
「…本当に…そんな戦いが……」
マーテルは悲しげに口を噛みしめる。
震えるマリアンを抱きしめ、背中を撫でた。
「よく…本当に良く頑張ったわね」
するとマリアンはマーテルの胸に体を預け、嗚咽を上げながらぼろぼろと泣いた。
そこには現実に打ちひしがれたひたすらにえづく弱々しい女性の姿があった。
「信じるに足る様だな」
「凄く可哀想だよ、この人…。どうかな、僕達と一緒に行こうよ。多分、力になれると思うから」
ミトスはマリアンに話掛ける。
一通り泣き通し、マリアンはようやく落ち着いたのか三人に頭を下げる。
403乱れる三つ巴2:2006/01/11(水) 06:50:20 ID:DdjFm7Cl
「……ありがとうございます…」
しかし眼はまだ虚ろで、どこか気の抜けた様な表情だった。

「ミトス、少しいいか」
マーテルとマリアンが何とか浅く寝付いた頃、ダオスはミトスに静かにミトスに語り掛けた。
「何?」
ミトスも静かに返す。
「少々、気になる事がある。あの女性を襲った者の事だ。お前には話しておきたい」
「…お前もそう思う?」
「やはり気付いているか」
ダオスとミトスに湧き上がった疑問。
アトワイトが先程話した出来事で登場した男三人。
特に白蛇の髪の男に至ってはダオスには心辺りがある。
彼女の話によるとマリアンは男三人の生死までその目で確認していない。全員死んでいるかもしれないし、逆に全員生きている可能性もある。
ゼロスという赤髪を襲ったエミリオという少年も、マリアンに対しては殺意があったかどうかも不明瞭だ。
何よりいくら全速力とはいえ、戦いを知らない女の脚だ。まだ近くに三人がいるかもしれない。
最悪、その内二人はマリアンを殺す為に。
「…今は極めて危険な状況だ」
「そうだね」
ミトスはそれでもきっ、とダオスを睨んだ。
「マリアンさんを見捨てようだなんて考えないでよ」
「…随分と冷たく見られたものだな」
ミトスが少しむくれてふん、と顔を伏せた。しかしゆっくりとまた顔を上げて、遠くを見た。
「正直、あんたに嫉妬してたよ。僕より強いし、…姉さんといるし。姉さんを守れるのは僕だけって思っていたから」
はあ、と溜め息を吐いてダオスを見る。
「先程…あんた本当は誰かと戦っていたんでしょ?
黙っていてくれてありがとう。きっと姉さん知ったら悲しむから」
ダオスはふん、と視線を逸らした。
「この程度で嫉妬か。子供だな」
「なっ…!」
しかしダオスは少しだけ、口角を上げた。
今までに見ることのなかった彼の僅かな微笑みにミトスは一瞬目を丸くする。
「お前が姉を守ろうとする気持ちは本物だ。
私はお前の腕も確かだと思っている。これからも協力して欲しい」
ミトスはダオスの意外な発言に暫し黙ってしまったが、うん、と素直に頷いた。
するとざわり、と風が木の陰を揺らした。
そしてその直後、二人の眼は厳しいものになる。
その眼が睨む先は―――――

四人の居る場所を、遠くから見ていた者が居た。
凄まじい殺気を押し殺して。
その者の目には、マーテルとマリアンが映っていた
「なんで…?」
404乱れる三つ巴3:2006/01/11(水) 06:53:06 ID:DdjFm7Cl
その少女―――シャーリィはわなわなと震えている。
マリアンとマーテルを映していた視界が、やがてマーテルに寄り添うマリアンに絞られる。
「やっぱり…私、見捨てられちゃうんだあ…」
マーテル。それはこの少女を最初に助けてくれた女性。
そのマーテルの横で体を預けて眠るマリアンにふつふつと嫉妬の炎が燃え上がってきた。
「ひどいよひどいよ。やっぱり私にはお兄ちゃんしかいないんだ、お兄ちゃん…」
尤も、シャーリィ自身がマーテルに刃を向けて三人の元から去ったというのに、シャーリィにはそんな事は関係なかった。
ただ、自分に初めて優しくしてくれた女性を自分の知らない女性に取られたようで悔しくて仕方なかった。
見れば見るほど、苛々する。
「私の…私のものを取るなんて…許せない…あの女…!!
お兄ちゃん、そんな人殺しちゃってもいいよね」
「どうせみんな殺しちゃうんだし」
「だけどあの女は今すぐに始末してあげるんだから」
ぶつぶつと独り言を繰り返し、シャーリィは握り締めていたマシンガンのトリガーを引く。

ばらら、と黒い音が森に響いた。





「なんだ…?」
その音を聞いて一人の少年が起きる。
眠っていたと言っても一刻ほどしか経ってはいないが。

近い。

まだ体中が痛む。
それでもその痛みよりも胸を覆ってゆく得体の知れない不安の方が恐ろしかった。
嫌な予感がする。

「マ…リ…アン?」
直感的にその予感の意味を理解し、少年は起き上がった。
そして走り出す。
その銃声を追って。

405乱れる三つ巴4:2006/01/11(水) 07:03:38 ID:DdjFm7Cl

【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少TP消費 精神の緊張
第一行動方針:マーテルを守る
第二行動方針:マーテルと行動
第三行動方針:打開策を考える
第四行動方針:敵は殺す
【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足に軽裂傷、緊張
行動方針:マーテルを守る
第一行動方針:マーテルと行動
第二行動方針:打開策を考える
第三行動方針:クラトスとの合流
【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:軽い眠り
第一行動方針:マリアンを落ち着かせる
第二行動方針:ダオス達と行動
第二行動方針:ユアン、クラトスとの合流
【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×13
状態:混乱 疲労 TP微消耗
第一行動方針:眠って頭を整理する
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:B7の森林地帯


【シャーリィ 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ????
状態:TP中消費 頬に切傷(ほぼ回復) 左腕に刀傷(回復中)
第一行動方針:マリアンの殺害
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:B7の森

【リオン・マグナス 生存確認】
状態:極度の疲労 睡眠 全身に軽い火傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
所持品:シャルティエ ディムロス 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:銃声を追う
第二行動方針:マリアンとの再会(ただし再会を恐れてもいる)
第三行動方針:ゲーム参加者の殺害
現在位置:C7の森からB7へ移動



406罪と償い1:2006/01/11(水) 12:48:09 ID:35AU4cX+
ここはジースリ洞窟。
その中で少年、ジーニアスは倒れていた。
彼を包んだ炎は消えていたが、彼の肌は酷く焼け爛れている。

痛い…熱い…
ボク、このまま死んじゃうのかな…
ロイド、コレット…みんなごめん…
死にたくない…誰か…助けて…
……?? 足音が聞こえる。誰だろう…

―少年の意識はここで途絶えた。

対するこちらはスタン組。
鼻歌を歌いながらご機嫌のハロルドにそれとは対照的に青ざめた顔のスタンとミント。
「…なあ。やっぱりまずかったんじゃないか?」
「大丈夫。最悪でも死ぬことはないはずよ♪」
スタンの心配とは正反対に怖ろしいほどの笑顔で答えるハロルド。
「ほらほら。さっさとついてくる!」
さらに足を早めるハロルド。その様子に頭を抱えるスタンとミント。
「…あら?」
洞窟の奥からうめき声のようなものが聞こえてきた。
「あいつね〜♪ほら、急ぐわよ!」
声の主のもとへ急ぐ3人。
407罪と償い2:2006/01/11(水) 12:48:49 ID:35AU4cX+
「なんだ、ガキじゃない。」
「おい、これは…」
「ひどい…」
そこには全身を真っ赤に焼いたまだ12くらいの少年が倒れていた。
「ハロルド!お前なんてことをしてくれたんだ!」
「あらら。ちょっとやりすぎちゃったかしら。」
少年の様子からこのままほおっておけば死ぬことはたしかだった。
「やめてください!まずはこの子を助けることが先です!」
興奮するスタンをミントが止める。
「でも、どうする?治療の道具なんて持ってないぞ。」
「私にまかせてください。」
そう言ってミントは杖を構えた。
『ファーストエイド!』
焼け爛れた肌が少しずつ治っていく。が、1回では効果が不十分だった。
『ファーストエイド!』
1回では不十分だが、回数を重ねるごとに火傷が治っていくのが確認できる。
そして、ミントの精神力が尽きたころには火傷もほとんど治っていた。

「…う…うん…」
「お、気が付いたか。」
火傷が治った少年は意識が戻った。
「…やった…よかっ…た…」
そして、それとは反対に力を使い尽くしたミントは気絶した。
「ボク、どうしたの?」
「火傷してたんだ。それをここのミントが直したんだよ。」
「そうなんだ…。あの、ありがとう。」
「いや、罠を仕掛けたのは俺たちなんだし。悪かったよ。」
「それは大丈夫。ボクが不注意だっただけだよ。
 ……あ…そうだ…ボクは…ボクは…」

落ち着きを取り戻した少年は同時に自分が犯した罪を思い出してしまった…
408罪と償い3:2006/01/11(水) 12:49:59 ID:35AU4cX+
【スタン 生存確認】
状態:無傷
所持品:ディフェンサー ガーネット 釣り糸
現在位置:G3洞窟内、ハロルドがトラップを仕掛けた通路
第一行動方針:他の仲間と合流する ハロルドたちと行動
第二行動方針:目の前の少年(ジーニアス)を保護する。

【ハロルド 生存確認】
状態:無傷
所持品:ピーチグミ ホーリィボトルの瓶 短剣 実験サンプル(詳細不明)
現在位置:G3洞窟内、ハロルドがトラップを仕掛けた通路
第一行動方針:不明
第二行動方針:他の仲間と合流する スタンたちと行動

【ミント 生存確認】
状態:TP0 気絶
所持品:ホーリイスタッフ サンダーマント
現在位置:G3洞窟内、ハロルドがトラップを仕掛けた通路
行動方針:不明

【ジーニアス・セイジ 生存確認】
状態:軽い全身火傷(ほぼ完治) 錯乱状態
所持品:ビジャスコア アビシオンのフィギュア
現在位置:G3洞窟内、ハロルドがトラップを仕掛けた通路
第一行動方針:自分のしたことを悔いる
第二行動方針:自分がしたことの償いをしたい
409デリス・カーラーン:2006/01/11(水) 14:16:01 ID:qX7C2KPB
 赤々と曙光に染まる空の下、鉛色の死が、マーテルとマリアンに容赦なく降り注いだ。
 ウージーサブマシンガンから放たれる弾丸は、たとえ戦士でさえ捉えることは困難なほど高速で飛来する。
 ましてや、それを受けようとしているのは、戦う力を持たないマリアンと、そして戦士としての訓練を受けていないマーテル。
 そして、不意打ちを受けたダオスやミトスには、彼女らをかばいだてするような手段は残されていない。
 たとえミトスが短距離瞬間移動を用いたところで、鉛弾はそれより一瞬速く、二人の体を貫くだろう。
「マーテル――!!」
「姉さま――!!」
 二人に下った死刑宣告は、もはや揺るぎようがない。その場にいた全員が、惨酷なほどに確信してしまった、その瞬間だった。
「させるかぁっ!! マリアンっ!!」
 その声と共に、森の南側から、二条の銀光が迸った。
 金属と金属が、互いの身を叩き合う甲高い悲鳴。銀光はマーテルとマリアンの目と鼻の先で、鉛弾の弾幕をすべて叩き落し、近くの木の幹に突き立った。
 ソーディアン・ディムロス。ソーディアン・シャルティエ。二振りの剣の刀身が、すんでのところで二人を守る盾となったのだ。
(結構身に堪えるな…このやり方は)
 その身から鉛弾の衝撃抜けきらぬディムロスは、思わず一人ごちた。そして、その声に驚愕したのは、マリアンの手の内に収まった、もう一振りの剣。
(この声は…ディムロス!? それに…シャルティエまで!!)
(何とか、まためぐり合えたみたいだ…)
 ささやき合う三振りのソーディアン達。ディムロスとシャルティエをとっさに投擲した、リオンもそこに、重い体を引きずるようにして、追いつく。
「…間に合ったか…」
 満身創痍のリオンは、二人の女性の前で、たまらずに膝を追った。
410デリス・カーラーンの赫怒2:2006/01/11(水) 14:16:39 ID:qX7C2KPB
 殺したと思った。殺していたと思っていた。
 期待してたのに。あの女の顔面が、焼くのを失敗してしまったイチゴのパイみたいに、ぐちゃぐちゃのバラバラになっていたはずなのに。
 むかつく。むかつく。むかつくむかつくむかつく…殺す!
 シャーリィは、自身の狂気と憤怒の命じるままに、再びマシンガンを掲げた。
 今ならあの女を殺せる。転がり込んで邪魔をした黒髪の奴も巻き添えだ。屠殺に失敗した豚みたいに、ドログチャのミンチにしてやる。
 死ね。みんな死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇっ!!!
 ウージーのトリガーにかかった人差し指に、力を込めようとした、その瞬間だった。
「その辺にしておくんだね」
 !? 背後を取られ…!!
 その次の瞬間には、シャーリィの右手はウージーごとひねり上げられていた。
 シャーリィの背後に、いまや立っていたのはミトス。
 姉のマーテルの死は、突然転がり込んできた黒髪の彼が阻んでくれた。
 ミトスは分かる。あんな声でマリアンを呼ぶ彼は、名簿にある名前として、マリアンの名を知っているわけではあるまい。
 マリアンは、黒髪の少年にとってとても大切な人のはず。自分にとっての、姉さまみたいに。
 ミトスは、そこで目を通しておいた名簿の記述から、あの黒髪の少年の名が、リオン・マグナスであることを思い出していたが、この際それは重要事項ではない。
 とにもかくにも、自らの姉の命の無事を確認したミトスは、即座に瞬間移動でシャーリィの背後を取り、腕をひねり上げたのだ。
「ボクにナイフを刺した上に…よくもこんなことまで!」
 自らの姉を狙った不貞の輩…一時は自分達とも手を組んだ少女、シャーリィ・フェンネスへの怒りが、ミトスのうちに膨れ上がった。
 それに呼応するかのように、ミトスの天地はひっくり返っていた。
「なっ!!?」
 腕をひねり上げたと思っていたシャーリィに、逆に投げ飛ばされて地面に叩き付けられた。
 ミトスがそう気付いた頃には、とっさにとった受身で体勢を整える中、彼の金髪が数本、けたたましい音と共に宙に舞っていた。
 あろうことか、シャーリィはひしがれたはずの腕を起点に、逆にミトスに投げ技をかけた上で、ウージーによる追撃をかけていた!
 今は亡きセネル・クーリッジが、妹であるシャーリィに教えた簡単な護身術。暴漢に取り押さえられた時の脱出の技を、シャーリィはかけていたのだ。
 彼の兄は、このゲームで最初に脱落したとはいえ、こうして今でもシャーリィの身を守っている。
 シャーリィは兄に…兄の教えに感謝しながら、今の標的を改めて見定めていた。
411デリス・カーラーンの赫怒3:2006/01/11(水) 14:17:13 ID:qX7C2KPB
「くそっ! あのシャーリィって子、体術の心得まであるのか!」
 後退して間合いを取ったミトス。だがそこに並ぶ金髪の偉人、ダオスの読みは至って冷静であった。
「あの程度の体捌きなら、精々護身術程度の心得しかあるまい。
狂気が彼女を思い切らせているとはいえ、彼女の体術の実力は、素人に毛が生えた程度のものだ」
 今度は、ダオスがずいと前に出る番であった。
「私が相手をする。格闘戦になれば、私の方が力も技術も遥かに上だっ!!」
 金色の風が、森の中を駆け出した。
 金髪を振り乱すダオス。しかしそれを迎撃するシャーリィも、ただぼうっとしていたわけではない。
 シャーリィはその爪を輝かせ、天から三つの火球を招来した。
 「ファイアボール」。滄我の加護を得た紫色の火球は、狙い過たずにダオスを狙う。
 さりとて、この程度の攻撃など、ダオスには牽制程度の意味合いすらなかった。
「甘いわぁ!!」
 肩にかけた外套に魔力を通じさせ、一気に自分の前方を払うダオス。三つの火球は、全てダオスの外套に焦げ跡を作るだけで弾かれてしまった。
 そしてその頃にはダオスも間合いを詰めている。絶対的優位性を保つことの出来る、拳の間合いへ!
「受けるがいい! テトラアサルト!!」
 青い髪のフォルス使い、ヴェイグを撃破した四連攻撃が、シャーリィの体に炸裂した。
 シャーリィが防ぎ切ったのは、初撃の一撃のみ。あとは全て、シャーリィにクリーンヒットを決めた。
「あうっ!!」
 拳に込めた魔力は、シャーリィの肉体を石化させるには及ばずとも、とどめの一撃は彼女の体を吹き飛ばし、近くの木の幹に叩き付ける。
 木の幹がほとんど真っ二つに折れそうなほどの勢いで、その身を強打されたシャーリィ。肺から空気が抜け、脳を揺さぶられる。
 思わず意識が遠のきそうになるシャーリィ。フィニッシュのポーズを維持したままのダオスの傍らには、ミトスも追いついていた。
412デリス・カーラーンの赫怒4:2006/01/11(水) 14:18:55 ID:qX7C2KPB
「さすがだね…ダオス」
「…ふん、魔術を使う相手に、格闘で敗北する方がおかしいのだ」
 ダオスはひとつ、首を鳴らした。睨み付けるは、まだ意識のはっきりしないシャーリィ。
 ダオスの目の奥に、灼熱の怒りが燃える。ミトスの言葉は、今にも火を噴きそうなほどの激情がこもる。
「…貴様…たとえ冗談であっても、マーテルを傷付けようとしたその行為、万死に値する」
「まあ、狙っていたのが姉さまかマリアンさんか…どちらであれ、君は許しがたい罪を犯したんだ」
 刹那、ミトスは胸の前に両の手のひらを掲げ、そこに魔力を集中させる。白く輝く球体が、鼓動を打ち始める。
「…ダオス、合わせて。一度ボクらのもとから離れた時使っていた、あの技を使うんだ」
「ミトス…知っているのか?」
「多分あんたも、ボクと似た技を使えるはずだろう? 僕は目も耳もいいし、何よりあの時のマナの乱れ方、ボクの技にそっくりなんだ」
「…ふん、知っているなら、まあいいだろう」
 ミトスの胸の前の球体は、すでにまばゆい輝きを放っていた。ダオスはもうそれ以上何も言わずに、ミトスに倣った。
 デリス・カーラーンの過去と…そして未来の王。
 くしくも運命がめぐり合わせたこの二人には、似通った力が与えられていた。
 純粋な魔力を両の手のひらに込め、それを光の柱に変えて撃ち出し、全てを焼き払う、その力が。
 もはやまともに目を開けていることすら困難な、光の洪水がその場には起きていた。
「お前をこの世から…塵一つ残さず消滅させてやる!」
「貴様の魂ごと、この一撃で打ち砕いてくれるわ!」
 次の瞬間、魔力の鼓動は、臨界点を突破していた。デリス・カーラーンの赫怒が、ここに炸裂した。
「受けろ! ユグドラシルレーザー!!」
「これで終わりだ! ダオスレーザー!!」
 ミトスとダオス。二人の両手から放たれた極太の光線は、射線上の木々を、草を、葉を、全てを呑み込みながら、シャーリィへ迫る。
「「滅び去るがいい!! ダブルカーラーン・レーザァァァァァァッ!!!」」
 放たれた二本のレーザーは、ちょうどシャーリィが倒れ込んでいた辺りで交差し、周囲を白一色に染め上げた。
 そろそろ「放送」まで秒読みに入るその時刻。
 この島の北東部の空は、朝焼けの赤ではなく、白い光に染まる。
 デリス・カーラーンの裁きが、この地に下ったのだ。
 膨れ上がる爆光は、呑み込んだもの全てを塵に返しながら、なおも貪欲に膨れ上がっていった。
413デリス・カーラーンの赫怒5:2006/01/11(水) 14:23:34 ID:qX7C2KPB
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:TPを中程度消費 シャーリィに激怒
第一行動方針:マーテルを守る
第二行動方針:マーテルと行動
第三行動方針:打開策を考える
第四行動方針:敵は殺す
【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足に軽裂傷、 TPをある程度消費 シャーリィに激怒
行動方針:マーテルを守る
第一行動方針:マーテルと行動
第二行動方針:打開策を考える
第三行動方針:クラトスとの合流
【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:驚愕
第一行動方針:マリアンを落ち着かせる
第二行動方針:ダオス達と行動
第二行動方針:ユアン、クラトスとの合流
【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×13
状態:驚愕 疲労 TP微消耗
第一行動方針:眠って頭を整理する
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:B7の森林地帯


【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ????
状態:????
第一行動方針:マリアンの殺害
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:B7の森

【リオン・マグナス 生存確認】
状態:極度の疲労により気絶寸前 全身に軽い火傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
所持品:シャルティエ ディムロス 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:マリアンとの再会(ただし再会を恐れてもいる)
第二行動方針:ゲーム参加者の殺害
現在位置:B7の森
414デリス・カーラーンの赫怒の作者:2006/01/11(水) 14:29:05 ID:qX7C2KPB
あ、>>413のシャーリィの項目は
【シャーリィ・フェンネス 生存確認(?)】
に直しといて下さい。
415Destroy 1:2006/01/12(木) 00:30:04 ID:1h8p558P
ミントを洞窟の脇道に寝かせ、スタンとハロルドはジーニアスから話を聞いた。
彼等が居るのは洞窟の入り口から奥に進んだところにある小部屋。
彼女が寝ているのは、ちょうどスタンが最初に彼女を寝かせた場所である。
少年から話を聞いたスタンとハロルドは、思わずため息を付いた。
「そうか・・・それで、その人は?」
「分からない・・・しいながどうなったか、僕は・・・」
語尾を詰まらせる少年に対して、スタンは頭を下げてうなだれた。
仲間を撃とうとするなんて。それも、ずっと一緒に旅をしてきた仲間を。
そしてこの少年もまた、恐怖に心が負かされて仲間を攻撃してしまったのだ。
全く、本当にどうかしている、このゲームは。
「状況から考えると、多分やる気のやつに見つかってそのままやりあった可能性が高いわね」
ハロルドが極めて冷静につぶやく。
その言葉を受けて、少年は更に表情を沈める。
その様子を見ていたスタンは慌てて明るい声を出し、
「と、とにかくさ!まだその女の人も生きてるはずだし、
 ほら、君も無事にこうしているんだから、いいじゃないか!」
しかし対する二人の反応は薄い。
「・・・ミントの様子を見てくる」
暗い空気に耐え切れず移動する。
少年の悲しい顔を見ていると、またあの自分の姿が脳裏に蘇った。
放送により大きく取り乱した自分の姿。
もしもジーニアスが言う女性が放送で呼ばれたら、この少年はどうするだろうか。
そして自分は、どうしているのだろうか。
416Destroy 2:2006/01/12(木) 00:30:56 ID:1h8p558P
「あ・・・」
唐突に声を上げる少年に、思わず立ち止まる。ハロルドも顔を上げる。
「どったの?」
「ねぇ、この辺に誰か男の子が倒れてなかった?」
急に態度を改めて喋りだす少年に圧されながら、スタンとハロルドは顔を見合わせた。
「いや・・・見てないけど」
「この辺に居るはずなんだ、金髪の、ああ、スタンによく似た・・・」
突然名前を呼ばれて訝しがるスタン。
そしてハロルドは何かに気付いたように少年の顔を見つめていた。
「僕が傷つけちゃったんだ。助けてあげて、謝らないと・・・」
そうして少年は立ち上がった。
彼の頭は、これまで自分がしてきたことへの償いをすることで一杯だった。
自分が弱かったせいで、二人の人間を傷つけてしまった。
せめてこれからは、自分の力を正しく使い、仲間を守りたかった。
彼は少し焦っていたのかもしれない。
イセリアの天才と呼ばれる彼も、この殺戮の舞台の毒にやられ、
更に人を傷つけてしまったことで冷静な判断力を失いつつあった。
それが、悔やまれる。
417Destroy 3:2006/01/12(木) 00:31:49 ID:1h8p558P
まだ不思議そうな顔をするスタンは、ハロルドとジーニアスを交互に見やっていた。
そしてハロルドはきょろきょろと周囲を見回す。
と、その表情が固まった。彼女等が通過した、洞窟の入り口側を黙って見つめていた。
「どうした?」
険しい表情を浮かべるハロルドに、スタンが声をかける。
黙って前を見続ける彼女につられて、彼もその方向を見る。
奥へと延々と続く通路は真っ暗で、闇が果てしなく続いているかと思われた。

・・・ふと、その真っ黒な闇の中から、紫色の何かが見えた気がした。
それは少しずつ拡大し、スタン達に迫ってきた。
「伏せて!!」
ハロルドが声を上げた。
次の瞬間、禍々しい極太の光線が頭上を通過し、壁面を撃ち砕いた。
ガラガラと、岩石が崩れ落ちる音が響いた。
「な・・・」
スタンが伏せた体勢のまま顔を上げ、ぶち抜かれた壁面を見やった。
凄まじい威力だった。もし直撃を受けていればただでは済まなかっただろう。
「早く起きて!」
ハロルドが続いて指示を出す。
スタンは急ぎ立ち上がった。光線が飛んできた方向を見つめる。
「・・・ごめんなさい」
険しい表情で、彼女はぽつりと言葉を発した。
「私、浮かれてたわ。罠の方に注意を向けすぎてた。
 本来ならこんなこと、すぐ気付いたのに・・・」
「誰かが、侵入してきたのか!」
スタンはディフェンサーを構え、闇を見つめた。
そして斜線軸上から離れた位置に居たジーニアスは、一人呆然と立ち尽くしていた。

そして、ゆっくりと奥から人が現れた。
赤髪のドレッドヘアの男と、青髪のウェーブヘアの男。
マグニス、そしてバルバトス・ゲーティアだった。

418Destroy 4:2006/01/12(木) 00:32:37 ID:1h8p558P
・・・二人はあの後、川沿いに南下し、西に進路を取った。
マグニスが例の必殺技について熱弁をふるいながらも、獲物が居ないか二人は注意していた。
そうしてやがて見えてきたジースリの洞窟。
そこに人が居た形跡を発見したことにより、二人は再び狩りを始めることにした。
そして中に入ってしばらくして聞こえた、何者かの悲鳴。
誰かが居ることは確かだった。
ずかずかと内部に侵入し、ようやく彼等は獲物を発見した。

「二人・・・!」
スタンが表情を引き締め、突如現れた者達を見ながら言う。
「おいハロルド、あれって・・・確か、マグニスとかいう・・・」
その時ハロルドは少し違和感を覚えた。
てっきりバルバトスの方に反応するかと思っていたが、少し考えれば当然のこと。
『バルバトスを知っているスタン』が都合よくここに連れてこられる確率なんて、かなり低い。
「気をつけなさいよ。マグニスの隣にいるあいつ、かなり強いわよ」
バルバトスを知らないスタンの為に忠告する。
けどちょっと遅かったかもしれない。既に臨戦態勢なのだ。
それからもう一つ、ハロルドは首を回し、ジーニアスを見やった。
「あんたは奥に逃げてて!」
「え・・・でも・・・」
「こいつら二人は私達でなんとかするから!」
語気を強めて少年に語りかける。少年は後ろ髪を引かれながら奥へと消えていった。
419Destroy 5:2006/01/12(木) 00:33:24 ID:1h8p558P
「さぁて・・・行くぜ豚共ぉぉぉ!!」
赤髪の男、マグニスが二人目掛け突進した。
「ハロルド、下がって!」
スタンはそう言い、ディフェンサーを構えて突進してくる男に対し、こちらも走り出した。
「うぉるぁぁぁぁ!!!」
大気を斜めに切り裂く振り下ろし。回避しきれず、やむなく剣でガードする。
凄まじい衝撃が彼を襲い、体勢を崩され後退した。
赤髪の男が持つ武器はかなりのリーチ、そして破壊力を持っていた。
こちらの武器が攻防一体を考案された剣とはいえ、接近戦では分が悪い。
ハロルドが充分に離れているのを確認してから
(ついでになぜかもう一人の青髪の男も離れて見ているだけなのが気になった)、
距離をかせぎ赤髪の男と対峙する。
薄ら笑いを浮かべて手にした刃を掲げる男は、正にマーダー、殺人者であった。

「魔神剣!」
牽制の一撃。
男は全く微動だにせず、斧を強烈に振り上げて地面ごと威力を相殺した。
砕けた岩石がスタンに降りかかった。
再度男が突進する。そして遠心力を最大限に生かした回転斬り。
大きくバックステップを取り、大振りの隙を見て接近。
「甘ぇ!」
マグニスはオーガアクスの柄でスタンの手の甲を弾き、更に前蹴りを叩き込んだ。
屈んだ体勢で後ろに後退させられる。危うく尻餅を着くところだった。
だが男の攻撃はまだ止まなかった。
男は斧を深く握り、渾身の突きを繰り出す
かろうじて剣の面で受け止めたが、その衝撃は凄まじい。
大きく吹き飛ばされ、後ろ向きに壁面に激突した。
「く・・・!」
頭が切れたのか、血が流れ出る。体の節々もじりじりと痛む。

ハロルドはなぜか援護をしようとせず、青髪の男とにらみ合っていた。
それは彼女がバルバトス・ゲーティアという男についてよく知っているからであり、
彼女がこの場で迂闊な行動をとることは命取りだったからでもある。
420Destroy 6:2006/01/12(木) 00:34:14 ID:1h8p558P
再度スタンに走り寄るマグニス。
スタンも急ぎ立ち上がり、剣を構える。
赤髪の男は身を溜め、一気に獅子の闘気を放出した。
「獅子戦吼!!」
対するスタンも大きく体を振り、同様の技を放つ。
二匹の獣が空中で噛み付きあい、消滅した。
「ふんっ!」
マグニスは斧をくるりと半回転させて両手で持ち、
刃を下に向けてスタンを頭から串刺しに・・・否、叩き潰そうとする。
咄嗟に飛び退き、回避。刃の先端は地面の土塊を砕き、中小の岩石が舞った。
マグニスは続けて足を振り上げ、舞い上がった石をサッカーボールの様に蹴り飛ばした。
それはスタンの眉の少し上辺りに命中した。
思わず顔をしかめ、手で傷口を覆う。
しかし男は追撃の手を緩めない。
斧を持つ右拳がスタンの左の脇腹を穿ち、続けて左の正拳を顔面に叩き込んだ。
スタンの鼻から血が流れ出し、体勢が崩れた。
「もらったぜオラァァァ!!」
オーガアクスを高く掲げ、一気に振り下ろそうとする。

だが、その時不意にマグニスの視界の脇に飛び込んできたものがあった。
ピンク色の髪の女だった。手に、短剣を握っている。
「なんだてめぇは!」
ターゲットを変更して斧を斜めに振り下ろす。
ハロルドはさっと飛びのき、手にした短剣を男の足元目掛け投げつけた。
「鏡影槍!」
短剣が男の『影』に刺さり、男の動きを封じた。
「なにっ!?だが、この程度ぉ!!」
「スタン!!」
ハロルドが叫んだ。
その一瞬の後、スタンが彼女の背後からばっと飛び出した。
そして炎を纏った右脚を振り上げ、男の太い首筋に叩き込んだ。
「うおぉぉぉぉ!!」
そのまま勢いに任せて蹴り飛ばす。
今度はマグニスが地面に叩きつけられた。
近くにあった石柱が折れ、砕けた石が数十センチ舞い上がった。
421Destroy 7:2006/01/12(木) 00:35:01 ID:1h8p558P
「はぁっ、はぁっ・・・」
息も荒く、地に伏す男を見下ろすスタン。
ハロルドは短剣を拾い、彼に並ぶ。
そしてハロルドに視線を移し、声をかける。
「どうする、このままじゃ・・・」
「そう、ね、残念だけど勝ち目は薄いわ」
「それと、なんで術で援護してくれないんだよ?」
「あの青い男、バルバトスはこっちが術を撃とうとすると、
 物凄い速さでカウンターしてくるのよ、だから奴の前で迂闊に詠唱はできないわ」
「そうなのか?じゃあ・・・」
「逃げるしかなさそうね」

スタンとハロルドはじりじりと後退し、そして脱兎の如く駆け出した。
「走れ!」
目的地はこの洞窟の更に奥、ミントとジーニアスがいる部屋。
そして二人と合流しそのまま洞窟外まで脱出し、
例の罠を応用させた装置で洞窟を爆破し、穴を塞ぐ手筈だった。

「あぁ?逃げんのか!?」
マグニスは立ち上がりながら二人の背中を見て吼えた。
そしてオーガアクスを垂直に立て、猛烈に走り出した。
バルバトスも後を追う。
「逃がしはしねぇぞ、この豚がぁぁぁ!!」
マグニスの体力からして、怪我を負ったスタン達が追いつかれるのは時間の問題と思われた。

422Destroy 8:2006/01/12(木) 00:35:49 ID:1h8p558P
だがその直後に、ハロルドが二人の間に向けて何かを投げつけた。
宙を舞うそれは、ホーリィボトルの空瓶だった。
否、そこには聖水の変わりに植物が大量に詰まっていた。
そしてその先端には、火が付けられていた。
その瓶が地面に落ちると同時に、凄まじい閃光、爆音が起こった。
「!!」
赤髪と青髪の男の視界が白に染まった。
それはハロルドが罠を仕掛けるのに使った可燃性の植物。
余ったそれを利用して簡易的な火炎瓶を作っていたのだった。

「よし、この隙に・・・」
スタンがそう言った、その直後。
突如上空から灼熱の火球が雨あられのように二人に降り注いだ。
「なっ!?」
両腕で上半身をかばいながら、降りかかる火球を耐えしのいだ。
爆発の陰に隠れて詠唱をしていたバルバトスの放ったバーンストライクが、二人の身を焦がした。

「くっ・・・はぁ、はぁ・・・」
ハロルドは息をつきつつ、傍らのスタンの様子をうかがった。
咄嗟に術防御した自分はよかったものの、直撃を受けた彼はどうなっているのだろうか。
「は、ハロルド、大丈夫?」
身をゆっくりと起こしながら、スタンが言った。体のあちこちが焦げている。
「なんとかね。あんたは?」
「動けることは動けるけど・・・」

「だがここまでだ、な。豚が!!」
「!!」
いつの間にか接近していたマグニスが、斧を振り上げ二人に接近していた。
もはや、回避は不可能と思われた。
そしてその凶刃が振り下ろされようとした時──

螺旋を描く炎の帯が、マグニスに当たり、その身を吹き飛ばした。

423Destroy 9:2006/01/12(木) 00:36:43 ID:1h8p558P
「させないよ!!」
スタンとハロルドが駆け込もうとする穴の奥から、一人の少年が飛び出した。
禍々しい紋様のケンダマを片手に、たった今、術を放ったジーニアスだった。
少年の放ったスパイラルフレアにより、マグニスは大きく体勢を崩していた。
そして少年は、更に詠唱を開始した。
スタンとハロルドは大きく目を見張った。
「ジーニアス!何を!?」
スタンが叫んだ。
「僕だって戦える!僕を助けてくれたあんた達のためにも、これまで僕が傷つけてきた人達のためにも・・・」
ジーニアスは興奮気味に言った。
自分がしてきたことの償いをしたい、その思いが少年を早まった行動に駆り立てていた。
「そうじゃない!」
「それにあいつはあのマグニスだ!ここで倒さないと、みんなが危ない!」
そう叫び、ケンダマを激しく打ち付ける。彼なりの詠唱の仕方だった。
「ば・・・馬鹿!やめなさいっ!!死ぬわよっ!!!」
ハロルドが絶叫した。

「え──?」
詠唱も半端に、戸惑いをあらわに、呆けた表情を浮かべる少年。
そして次の瞬間、青髪の男が動いた。
「術に頼るか雑魚どもが!!」
僅か数秒の内に詠唱を終わらせた男は、腕を大きく振るいジーニアスに向けて術を放った。
突如、闇の魔空間が少年を中心として現れ、収縮し、少年の小さな体を飲み込んだ。
「う、うわぁぁぁぁ!!」
ジーニアスの悲鳴が洞窟内に響いた。
スタンはただ目の前の光景に気を取られていた。
「屑が!」
青髪の男が再度叫び、魔空間は今度は逆にそのエネルギーを放出し始めた。
中に居るジーニアスからは、もう声が聞こえなくなった。

424Destroy 10
そして黒の魔空間が消え去ったその場に、
ジーニアスは顔を天に向け、だらりと両手を下げて立ち尽くしていた。
その着衣はぼろぼろで、彼の体も所々傷ついていた。
ハロルドは闇の魔力が消えると同時に少年に駆け寄ろうとした。
彼女が持つ、ピーチグミが希望の綱だった。
それならば術を撃たれても回避できると判断した。

そして呆然と立ちすくむジーニアスに手が届くと思われた瞬間、
少年の頭に細長い何かが突き刺さった。
驚き、手を止めるハロルド。
それは石柱だった。
先程赤髪の男が倒れた時に折れた、槍ほどの大きさの石柱。
マグニスがそれを拾い、ジーニアスに投げつけたのであった。

「あ・・・・・・」
スタンは唖然とし、眼前の光景を見ていた。
カタッと石柱が地面に落ちる音がした。
やがてジーニアスはふらりと倒れ、そのまま動かなくなった。

「はっはっは!どうだ、今度は俺さまが仕止めたぜ!」
嬉々として己の行動を絶賛する赤髪の男。
対する青髪の男は、特に動じる様子も無く静かにしていた。