TOD2 80万本
↓
TOR 55万本
↓
TOL 35万本
↓
TOA ??万本
2 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/09/30(金) 20:01:34 ID:daP4Jj6u
とりあえず2ゲット
3 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/09/30(金) 20:02:22 ID:qW8K8ZTR
/::.__ .::::::::::::: __ ヽ_
/ /●ヽ_ヽv /: /● ヽ ヽ
/  ̄ ̄ √___丶 ̄ ̄ | うはwwwwwww2げっとwwwwwww!!!
| / / tーーー|ヽ |
| ..: | |ヽ |
>>3 | | |⊂ニヽ| | | プギャーーーーーッ!!!
| | | |:::T::::| ! |
\: ト--^^^^^┤ 丿
\:: / ̄ ̄^ヽ 丿
l l
_ /,--、l ノ
,--、_ノ:: `ー':: 、ミー---‐,,l
,/ ::: i ̄ ̄ |
/ l::: l::: l
l . l !:: |::: l
| l l |:: l: l
| l . } l:::::,r----- l
ヽ :l:::: ト:;;;;;;;/-/__........... /
\::::`ー‐' / l__l__/
この数列ではTOA20万だな
5 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/09/30(金) 20:06:22 ID:mnThwgoH
テイルズってどうなの? 俺は面白いと思うけど
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/09/30(金) 20:06:44 ID:wih+I1jj
TOD2 80万本
↓
TOR 55万本
↓
TOL 35万本
↓
TOA 15万本
>>4,6
でも流石に20万とか15万はありえないから
実際は50〜55万かな
今回はLの糞スタッフ+糞キャラデザと違って
評判のいい製作陣だし
「藤島キャラデザ+シンフォニアスタッフ」
という黄金パターン
まぁどんなことがあってもシリーズは廃止にはならないだろうな
ナムコはRPGではテイルズとゼノサーガぐらいしかないし
テイルズ ≒ アーク
_,,,......,,__
/_~ ,,...:::_::;; ~"'ヽ
(,, '"ヾヽ i|i //^''ヽ,,)
^ :'⌒i i⌒"
| ( ゚Д゚) <呼んだ?
|(ノ |つ
|.先生.|
ヽ _ノ
U"U
キングダムハーツ2とバッティングしてTOA脂肪
もう、ごく一部のヲタ向けソフトとしてひっそりとシリーズ量産してけばいいと思うよ。
そうすればテイルズヲタもナムコも大満足
80 55 35 55 80
or
80 55 35 20 10
ま
た
テ
イ
ル
ズ
ス
レ
か
!
15 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/09/30(金) 21:31:31 ID:l4Tjt1/k
奥村さんがキャラデザやってくれないかな。
なかなか好きなんだが。
17 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/01(土) 00:13:17 ID:N9+i1ZTY
ミントが脱げばいい
TOAに期待
20 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/01(土) 00:58:11 ID:5IV/mh4/
だから時空勇伝デビアスを復刻しろって
俺は買ってやるから。
TOD2 80万本
↓
TOR 55万本
↓
TOL 35万本
↓
TOA 15万本
↓
TOG -5万本
22 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/02(日) 15:15:01 ID:qsLgykbt
23 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/02(日) 15:24:44 ID:5V4yk9is
>>21 意 つ
味 ま
わ ら
か ん
ん か
ね ら
氏
ね
>>21 ちょwwwwww小売り買い取り拒否かよwwwwwww
なにこのスレタイテラワロスwwww
26 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/02(日) 20:50:48 ID:Mv3tLsYA
俺だけじゃなかったんだ、先生きのこって読んだやつw
スレタイの意味を理解するのに少し時間かかったぞ。
この先生!きのこれません!!
きのこるってのはあれか?
スーパー化することか?
29 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/03(月) 00:01:40 ID:YZKpjZZa
テイルズ=先生きのこ。
TORの売上にちょいヘコんだ
50万か…
このまま萌え路線を突っ走って
コアゲーマー専用のエロゲにしてしまえば、毎年それなりには売り上げ確保できるんじゃないか?
アークみたいになるのがオチだ
33 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/03(月) 19:41:03 ID:Pmse3wec
うんこ
>>30 その結果、次回作で20万本近く売り上げが減った。
35 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/05(水) 00:30:35 ID:KqfWEbQI
うんこ
ちんこ
TOD2があそこまで売れたのは周りに何も大作が無かったことが影響してるだろうね
漏れは痔アヌスけっこー健闘すると思うけどな。だっておまけにこれがあるじゃん
つ【歴代キャラ全員集合のファンダムディスク】
だから古参のファンも久々に買うかって気になると思われ…
…でもこの論理だと、なりダンが一番よく売れてるはずなんだよなorz
今のテイルズはそういう小細工でしか売り上げを伸ばせないから困る
そんな下らないもので釣れるのはヲタクだけだよ
だが残念な事にテイルズにはそのオタが山ほどいる事実
今更だがこのスレタイギガワロスwww
今月も頑張れそう。
「テイルズは この先生 きのこ」
(´∀`;)…きのこ?
_,,,......,,__
/_~ ,,...:::_::;; ~"'ヽ
(,, '"ヾヽ i|i //^''ヽ,,)
^ :'⌒i i⌒"
| ( ゚Д゚) <呼びましたか?
|(ノ |)
| |
ヽ _ノ
U"U
44 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/05(水) 14:52:20 ID:dgcUo5KU
_,,,......,,__
/_~ ,,...:::_::;; ~"'ヽ
(,, '"ヾヽ i|i //^''ヽ,,)
^ :'⌒i i⌒"
| ( ゚Д゚) <先生ですが、何か?
|(ノ |つ
|.先生.|
ヽ _ノ
U"U
スレタイがおもろいなぁ。
なんか誤変換を集めたサイトを見てる気分だw
ているずがこのせんせいきのこるには????
_,,,......,,__
/_~ ,,...:::_::;; ~"'ヽ
(,, '"ヾヽ i|i //^''ヽ,,)
^ :'⌒i i⌒"
| ( ゚Д゚)
|(ノ |
|.先生.|
ヽ _ノ
_,,:-ー''" ̄ ̄ ̄ `ヽ、
,r'" `ヽ.
__,,::r'7" ::. ヽ_
゙l | :: ゙) 7
| ヽ`l :: /ノ )
.| ヾミ,l _;;-==ェ;、 ,,,,,,,,,,,,,,,_ ヒ-彡|
〉"l,_l "-ー:ェェヮ;::) f';;_-ェェ-ニ ゙レr-{ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ヽ"::::''  ̄´.::;i, i `'' ̄ r';' } | 久々にきのこ
. ゙N l ::. ....:;イ;:' l 、 ,l,フ ノ | 完全にきのこスレもきのこ
. |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ. /i l" < テイルズがこの先生きのこるにも
.| ::゙l ::´~===' '===''` ,il" .|'". | 全てきのこだから困る
.{ ::| 、 :: `::=====::" , il | \________
/ト、 :|. ゙l;: ,i' ,l' ノト、
/ .| \ゝ、゙l;: ,,/;;,ノ;r'" :| \
'" | `''-、`'ー--─'";;-'''" ,| \_
今時きのこる先生かよ
相当昔からあったよな、このネタ
まさかまたこの類のスレに遭遇するとは
52 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/10/28(金) 19:31:52 ID:pxFft00Q
正直、量産しすぎww
きのこ?
____
/\ \
`___ //\\ \
/|ロ L/ \/\\ /
 ̄ ̄//\ \/\\//
「「「/ \/\ \/ /:/
LL//\ \/\ /:/
「/ \/\ \/ /:/ _
//\ \/\ /:/ /|ロ
`\/\ \/ /:/ | |ロ
\ \/\ /:/ | |ロ
、/\ \/ /:/⌒``| |ロ
)\/\ /:/ "⌒ヽ|ロ
⌒Y⌒ヽ_ノ⌒Y⌒Y
(⌒ヾ::(:::_人.....
ノ⌒Y⌒ヽ:: ∧_∧
゙....::::Y (Д` )
ウエーンコワイヨママー/ ヽ
∧∧ // /|
..(´A`/// /L_つ
::/つ_(ノ ( V
:人 Y /\ \
し"(_) ノ / > )
/ / ( ヽ
ヽ_)
あなたがこんなクソスレ
たてるからよ
さあ早くこっちへ!
固定ファンが15万はいるからこれ以上下がることはないよ
その固定ファンだって離れる可能性があるわけだ
57 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/19(土) 11:30:41 ID:xJndmd+Q
58 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/11/28(月) 14:42:12 ID:ZyZ1h1gm
テイルズで一番はリオンくんだけ!
rlgjk:sdfjg;
tlrtr:;t
lrt:p:;rert
tkkryt:lyktlkyl;t
tl;kr:ktlrktrk;:
r;:tkr;t:ker:tk
kyl:tkrylkrtylktl
60 :
天使の愛人 ◆5w/ltvXP4c :2005/12/05(月) 13:39:08 ID:9q1ITtkS
対象学生にシフトすること。
老害が考える小学生は幼稚園児だから、なんもせんでええ
勝手に小学生が、老害の思う中学生にシフトするから、
中学生向けの今のままでええよ
つ TOS 75万本
∧_∧
( ´・ω・`) ∧_∧
/ \ (´∀` ) ハハハ
.__| | .| |_ / ヽ
||\  ̄ ̄ ̄ ̄ / .| | |
||\..∧_∧ (⌒\|__./ ./
||. ( ) ~\_____ノ| ∧_∧
/ ヽアホか \| ( ´_ゝ`) 何言ってんだコイツ?
| ヽ \/ ヽ.
| |ヽ、二⌒) / .| | |
.| ヽ \∧_∧ (⌒\|__./ /
64 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/12(月) 00:44:01 ID:vbCq63yS
テイルズが、この先生、きのこ、るかに、は
みんななんできのこる先生に引っかかってんだよw今更過ぎるだろw
2005年糞RPG四天王決定!
●テイルズ オブ ジ アビス
●テイルズ オブ レジェンディア
●テイルズ オブ リバース
●テイルズ オブ シンフォニア
決定
お疲れ様でした
各ゲームスレに決定報告コピペをよろしくお願いします。
なお、決定が遅れましたことを各関係者ならびにROMってた皆様に
お詫び申し上げます。
来年度の議論ではよりスムーズに進むよう努力いたしますので
ご期待ください。
糞ゲーRPG議会運営一同
67 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/30(金) 11:36:56 ID:EDECOszp
むり
生きのこる?
ミリオンまであともう少しじゃないデスかっvvv
69 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/01(日) 19:16:03 ID:WKCsJ/Eh
(^^)」<うんこするぞー
「||
三 >>
(^^)」<あたしおしっこー
「||
三 >>
(^^)」<うししし
「||
三 >>
1年に1本以上出さなければいい
71 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 05:29:23 ID:30Fhv4Tb
_,,,......,,__
/_~ ,,...:::_::;; ~"'ヽ
(,, '"ヾヽ i|i //^''ヽ,,)
^ :'⌒i i⌒"
| ( ゚Д゚) <呼んだ?
|(ノ |つ
|.先生.|
ヽ _ノ
U"U
72 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 06:31:16 ID:+iD4/mGR
ちんちんかいて
73 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 07:07:16 ID:LNQGb92u
ひっかかるもなんも、まんまきのこる先生だしなあw
きのこ先生
75 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 07:28:33 ID:pOTpyp0U
エターニアはどれくらい売れたのよ?
キャラ別ED!!!2、3人でいいんだ!
話の途中で選択肢いれて途中で個別のイベント2つくらいいれて
スタッフロール後短いエピローグをいれるだけで!
100万売れるならどーよ!?
固定ファン層がついてるんだから、生き残るもなにもないと思うんだが。
全部藤崎に描かせろ
79 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 08:47:16 ID:4KmVAzGG
全テイルズソフトの売り上げ一覧ないですか?
ナムコが作らなけれきのこれる
きのこる先生スレなのに、全然きのこる先生ネタスレになってない…
というより、スレタイワロスとマジレスしてる人が何人もいるのに新鮮な驚きだ。
82 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 09:08:04 ID:4KmVAzGG
>>79頼む
今家にいなくてぐぐれん
どうしても今必要なんだ
キノコ・・ムクムクと・・まさかな
きのこるスレも知らないなんて俺はショックだ…
通りでこの板は厨臭いわけだ
85 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 10:05:20 ID:xuqvSemO
行ったり来たりなストーリーを改善しろ
89 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/27(金) 01:33:12 ID:gtuMn5JX
テイルズはこの板ではとりあつかわないことになりました
今後一切2ちゃんねるでテイルズに関係するスレッドを立てないでください
RPG板自治スレ委員会
のび太のマトリックス
「銅鑼えも〜ん!」
やれやれ。またのび太君苛められたな。
いい加減漏れも未来に帰りたいヨ。
銅鑼えもんはドアの外から聞こえるのび太の声に
いい加減うんざりしながら読んでいた漫画を閉じた。
「銅鑼えもん!聞いてよ。スネ夫とジャイアンが!」
「わかった、わかった。つーか落ち着け。」
「スネ夫がね新しいパソコンを買ったんだ!」
「人の話聞いてるか?つーか何言ってんの?」
「ひどいんだよ〜うわ〜ん。」
やれやれ。
落ち着いたのび太に話を聞いてみるとこういう次第だ。
「今日の帰り僕のニューマシーンを見に来ない?」
放課後の教室でスネ夫がのび太とジャイアンに声をかけた。
「僕の従兄弟の大学生が自作してくれたんだよ。
最新構成だぜ。フォトショップなんて一秒で開くよ!」
「おう!見に行くぞ!」
「僕も僕も!」
毎回イヤな思いをするのは分かり切っているのに
なぜそこで見に行くのだろう?バカだからか?
スネ夫の家に着くとスネ夫ご自慢のプラモデルアトリエの
一角にそのマシンは置いてあった。
モニタは液晶17インチと21インチ。
マシン本体はフルタワーケースだ。
見ただけで金がかかっているのがわかる。
「マシン構成はpentium4、1.7GHz
アスロンも早いらしいけど動画いじるんなら
ペンチだよね〜。
メモリは積めるだけ積んで4GB
HDDはRAID0+1で100GB
フルSCSIも考えたけど意味がないからやめたよ。
ビデオカード、キャプチャボードはカノープス。
Power DVD Producer/DVRex-RT Professionalだからね。
サウンドカードは無難にSound Blaster Live! Platinum
ケースはもちろん銅製だよ。」
「何がなんだかわからねぇけどとにかく凄いんだろ?」
「IEEEで僕のジオラマをキャプチャしてね。
来年はオスカー像を狙うつもりさ!
もちろんジャイアンも手伝ってよ。」
「おう!任せとけ。」
「ぼ、僕にも手伝わせてよ〜!」
「え〜?のび太に?」
「のび太はやめておけよ。」
「なんで?どうして!?」
「だってのび太はヘマばかりするからな。
僕の大作を邪魔してほしくないし。」
「そうだそうだ。のび太は帰れ。」
「と言う訳なんだ〜。」
銅鑼えもんはスネ夫の言う事にも一理あると思った。
と言うかスネ夫の意見に賛成だった。
こいつにPCが扱えるわけはないし、
他の事でも役に立ちそうもない。
「銅鑼えも〜んパソコン出してよ〜」
ほらきやがった。ウゼ〜
だいたいこんなやつ教育し直しても無理なんだよ。
以前セワシ君と話し合ったけど
たとえ非合法だとしても
ヒトゲノムいじった方が早いんじゃないだろうか?
ただセワシ君は
「さすがにそれは俺が生まれなくなるかも知れないから。」
と拒んでいたな。関係ねぇよ。
やって見なきゃわかんないジャン。
夜寝ている時にいじっちゃえば良いんだし。
ただ見つかると時間懲役刑だ。
TPが急行してきて遠い昔に放置されてしまう。
持っていける物はナイフ一本。
さすがにきついよな〜。死刑になった方がマダマシ。
しかしロボットに死刑は適用されない。
「ねぇ!聞いてるの!?」
「え?何だっけ?」
「パソコンだよパソコン!出せるの出せないの?」
「あ、そうかそうか。」
「まったくー。耳がないからって
聞こえないふりしないでよ〜」
コノヤロウ。机の引き出しあけて今すぐタイムホールから
ディラックの海に投げ込んでやろうか?アン?
「ごめんごめん。でもパソコンはないなぁ。」
「え〜?未来のパソコンとかないの?」
「未来ではパソコンなんて使ってないんだよ。」
「へ?」
「みんなPDAを持ってる。
それに携帯、テレビ何でもついてる。
だからパソコンなんて使わないんだよ。」
「仕事とかでも?」
「仕事で使うのは端末だけど今のパソコンとは違うな。
ゴーグルみたいのか対話型かだよ。」
「じゃあゲームもしないの?」
「ゲームもゴーグルタイプだね。」
「それじゃあパソコンは?ないの?ダメなの〜?」
「いや、何とかなりそうだよ。」
「え?ホントに?」
ああ、こいつはホントにウゼェ。
アシモフのロボット三原則なんて未だに守らされてなければ
今すぐにでもこいつぶっ殺して死体を
虚数空間に投げ込みたい。
しかし俺たちロボットには査定って物がある。
人間が閻魔様に裁かれて地獄行きになるように
俺たちも良い事をすればステージがあがって
新しいハードにプログラムを組み込んでもらえる。
うまくいけば中央生体CPUの一部分になって
人間世界を操れるようにだってなる。
普段ごろ寝ばかりしているように見えるけど
電気羊の夢ばかり見ているわけには行かないのだ。
「のび太君貯金はどれぐらいあるの?」
「ええ!?パソコン買うつもり?
貯金なんて300円しかないよ。
今月の小遣いは使っちゃったし。」
「300円か。仕方がない僕もへそくりを出そう。」
しょうがねぇな。俺の取って置きのペリカを出すか。
どらやき買おうと思ってたのに。それだけが楽しみなのに。
「2300円。これだけあれば何とかなるかな?」
「え〜?64メモリも買えないよぅ」
「まぁ黙ってついておいで。」
俺たちはタイムマシンに乗って5年後へ急いだ。
「そんな所へ行ってどうするの?」
「5年後の秋葉へGO!」
「5年後にはパソコンが2300円で買えるの?」
んなわきゃあない。
秋葉についたらジャンク屋へ向かう。
「あれ〜?銅鑼えもん。ここ秋葉じゃなくて
虎ノ門じゃない?東京タワーがあるよ?」
「ああ、今計画中のやつだろ。秋葉タワー。」
秋葉原周辺はすっかり再開発が進んで
小綺麗なビルが建ち始めている。
「ジャンク屋なんか行ったってパーツも買えないよ!」
「パーツなんか買わないさ。本体とモニタ買うの。」
「ええ!?2300円で?」
ジャンク屋に入ると2001年現行機種が型落ちとして
所狭しと並べてある。
「おじさん!動作無保証で良いから
組んである一式ない?」
「ああ、この間余ったパーツかき集めて作ったけど
動かないやつがあるよ。たぶんCPUが逝ってるな。
たぶん無理なクロックアップしたんだろ。
メモリも怪しい。HDDは音はするけど動かない。」
「それ頂戴!1000円で。」
「う〜ん。まあ良いか。」
「ついでにモニタも頂戴。出来れば液晶で。」
「壊れてるので良いのかい?」
モニタとPC併せて1500円で手に入れた。
「さあ、帰ろう。」
「銅鑼えもん。こんな古いの動かないじゃないか。」
「おいおい。pentium4、2GHzだぞ。
おまけにGeForce5、HDDも150Gある。
メモリだってPC2100 DDR SDRAM 1Gだ。」
「だけど壊れてるんだろ〜?」
「君はタイムふろしきを忘れたの?」
「あ!そうか!」
こいつは家から出ないで引きこもってた方が
世の中のためかも知れないな。ああ、未来に帰りてぇ。
「でもこんなパソコンが壊れているとはいえ
1500円で買えちゃうんだね。」
「ムーアの法則って知ってるかい?」
「うん。人差し指がサインで親指がコサイン
中指がタンジェントだろ。」
「???・・・なんだそれ?
まぁ良いや。ムーアの法則ってのは
CPUの進化速度の話なんだけど
ここ数年崩壊したって言われてたんだ。
それが日本企業のバクテリアによる
集積回路敷設技術開発によって
さらに加速化したのさ。」
「さっぱりわからないけど。」
「とにかく現行のPCは電気ばっかり食って
熱ばかり発散する電熱器みたいな物だから
安くなってるのさ。家電リサイクル法も
それに拍車をかけてただ同然。
むしろ売る時は金を払う事の方が多いよ。」
「ふ〜ん。」
こいつに教育を施している間にタイムマシンは
2001年についた。机から出て早速ポケットから
ジャンクPCを取り出した。
「銅鑼えもん。タイムふろしき!早く早く〜」
全くウゼェな。
「あんまり時間を戻すと石油とゲルマニウムの
固まりになっちゃうぞ。」
「わかってるって。」
風呂敷をはぐとPCは新品同様、真っ白になった。
「さて電源を入れてみるか。」
配線を繋いでやって電源を入れてみた。
やった。案の定AWARD BIOSの画面が現れた。
モニタもPCも正常に動いているようだ。
だが、OSが入っていないらしくそこで止まってしまった。
「これは困った。」
「どうしたの?」
「OSが入っていないんだよ。」
「ええ?じゃあこのままじゃ動かせないの?」
「ソフトが入っていないとただの箱だからねぇ。」
「そうだ!タイムふろしきで
ちょっとだけ先に進めれば良いんじゃない?」
「!! 君、頭良いね。」
早速タイムふろしきを裏返しにしてかぶせて
すぐにはずした。すると今度はOSが入った状態になり
すんなりとWin2kのロゴが現れた。
「良し良し。」
だがマシンが起動して驚いた。
壁紙が何か美少女ゲームのキャラクターになっている。
こ、これは!もしかして。
スタートメニューを見てみて驚いた。
18禁ゲームが山のように入っている。
このPCの前のユーザって一体!?
「どうしたの?」後ろからのび太がのぞき込む。
「い、いやダメみたいだよこのOS。」
さすがにこれは教育上まずい。
ちょっと惜しい気もするがタイムふろしきをまたかけた。
「う〜ん。どうしようか?」
「スネ夫の家へ行ってOS借りてくるよ。」
「そ、そりゃまずいだろ。」
「なんで?」
「違法コピーって言ってね…君、著作権って知ってる?」
「ナニソレ?強いの?」
「とにかくソフトはコピーしちゃダメなの!
ん?待てよ。そうか。良し。
スネ夫にOS借りてきてくれ。」
「わかった〜」
スネ夫の家に行くとなぜかスネ夫は
OSをすんなり貸してくれたらしい。
変だな。いつもはあんなにケチなのに。
まぁ良いさ。
「ふえるミラ〜!!
これでOSを増やせば良いのさ。」
「でも銅鑼えもん、それはコピーじゃないの?」
「これはコピーじゃない。正規品だよ。
ほらマイクロソフトのロゴも入ってるし
認定証もシリアルもついてるだろ。」
「確かに。」
「ゲイツだってこれは正規品だって言うよ。」
コピー…じゃなくて『増やした』OSを早速
インストールする事にした。
だがCDはOSを認識してくれない。
おかしいなぁ。ちゃんとCDbootに設定したし
win2kだからこれで良いはずなんだけど。
「ああ!銅鑼えもん。このCD逆なんじゃ?」
「ちゃんと表にして入れたよ。君じゃあるまいし。」
「そうじゃなくて鏡だから逆になってるよ!」
「!! 君頭良いね。」
『増やしたOS』から更にふえるミラ〜で
コピー…じゃなくてOSを取り出した。
これで元に戻っているはずだ。
「コピーにコピーを重ねてるね。」
「コピーじゃないって言ってるだろ!」
「最初からCD-Rで焼いてもらった方が早かったんじゃ…」
「それは違法コピーだからダメ!」
『増やしたOS』はきちんとインストールできた。
さすがは最新鋭機種。セットアップも早い早い。
「スネ夫にOS返してきて良いよ。」
スネ夫にOSを返しに行くと玄関でスネ夫は玄関で
待ちかまえていたらしい。
「のび太。ずいぶん早かったな〜。
おまえこのOSインストールしたんだろ。」
「ううん。このOSは使ってないよ。」
「じゃあコピーしたのか?」
「ううん。増やしただけだよ。」
「それをコピーって言うんだよ!」
「コピーじゃないって。」
「ACCSにチクってやるからな〜」
「 良いよ。家には正規品しかないから。」
「はぁ(゚д゚)?」
帰ってきたのび太にその話を聞いて
スネ夫が意地悪目的でOSを貸してくれた事がわかった。
危ない危ない。
「さあ、パソコン使ってみようか!」
「うん!」
「のび太君は何がしたいの?」
「え?」
「何かしたい事があってパソコンねだったんでしょ?」
「う、うん。」
「じゃあ、何しようか。このスペックなら何でも出来るぞ!」
「な、何が出来るのかな?」
漏れ未来に帰りたい(;´Д`)
そうか。こいつはスネ夫に勝ちたかっただけなんだな。
俺はげんなりした。だがこれもいい機会だ。
のび太君にパソコンの事を教えてやろう。
あやとりと射撃だけじゃ世の中渡って行けない。
「じゃあとりあえず、インターネットが出来るようにしよう。」
「そう!それやりたいな!後メールも。」
「わかったわかった。」
「でもいろいろ契約とかしないといけないんでしょ?」
「任せとけって〜」
俺は腹の四次元ポケットを探った。
「ブロ〜ドバンド〜!!」
「なんだい?このベルト。」
「これは『ブロードバンド』と言ってね。
これをPCに巻き付けておけば超高速回線が使えるんだ。
契約も要らない。IPはその辺の開いてるのを借りてくる。
上り下り500Mbpsだぞ!。しかも無線。
メールはその辺でフリーのを探して来な。」
「そんなー!もっと教えてよ。」
「困ったなぁ。これから近所の猫とデートの約束があるし。
それに聞いてばかり居たらいつまでも覚えないぞ。」
「でもどこに行ったら良いのかさえもわからないよ〜。」
クソこいつ。ヲタみたいな容貌のくせにヲタにはなれないのか?
しょうがない。あれを落として来るか。
「タイムプロキシ〜!!
このプロキシは未来や過去とインターネットが出来る
プロキシサーバなんだ。これをインストールして…」
「プロキシって何?」
「串だよ串!」
「ふ〜ん」
さて、あのソフトをダウンロードしよう。
確かあのソフトは本家に睨まれて潜っていたはずだけど
どこにあるかな?…あったあった。
「謎春菜〜!!
このソフトはデスクトップに寄生して
いろいろ教えてくれるから後は自分で色々聞いて。
じゃ、漏れ出かけるから。」
「ああ!待ってよ銅鑼えもん〜…あ〜あ行っちゃった。」
「あたしじゃダメですか。」
「わ!びっくりした。なんだなんだ?」
「あたしじゃダメですか?色々役に立ちますよ。」
「き、君は?」
「謎春奈です。こっちは相方の『う゛にゅう』です。」
「何だまたメガネヲタか。俺らのユーザこんなんばっかだ。」
「す、すいません。こら!う゛にゅう!」
「君がパソコンを教えてくれるの?へ〜。
じゃあとりあえずメールソフトを。」
「その前にダウンロードソフトを落としておきましょう。
幸いタイムプロキシが作動している様ですから
Iria4.02βを…これ以降は開発がストップしていますが。」
のび太は謎春奈との会話を楽しみつつ
PCの基本について習い始めた。
「ふーん。じゃあHDDって所にダウンロードした物や
自分で作ったデータが置いてあるんだね。」
「はいそうです〜。のび太さん賢いですね♪」
「えへへ。そうかな〜。」
「じゃあ、そのDLしたdataにアクセスしてみましょうか。
まずエクスプローラを開いてください。」
「わかった。はい。開いたよ。」
「あの…IEではなくエクスプローラを…」
「え〜これエクスプローラじゃないの?」
「それはインターネットエクスプローラです(;´Д`)」
「なんだかややこしいね。」
「…じゃあマイコンピュータをダブルクリックしてください。」
「う〜んとぉ、わかったこれだね。」
「はい。良くできました〜。」
「猿じゃねぇんだからそのぐらい出来るだろ(ボソッ」
「こ、こら、う゛にゅう!」
「ハイハイ。そいつが一人でショートカットぐらい作れるようになったら
起こしてくれよ。俺もう寝るから。」
「のび太さん気にしないでくださいね。」
「平気平気。いつもスネ夫の嫌みで慣れてるから。」
「打たれ強さだけは人一倍だナ。ハジメノイッポ?(ワラワラ」
「う゛にゅう!早く寝なさい!」
「じゃあとりあえずメールをやりたいな。」
「それではアウトルックも良いですが
使いやすいフリーのソフトを探してみましょう。」
「未来のメールソフトだね!」
「いえ、タイムプロキシは試用期限を過ぎたようですね。」
「ええ?もう使えないの?」
「はい。どうやらこれは雑誌の付録のソフトだったようですね。
レジストしないと使えないようです。」
「お金がかかるの?」
「はい。5000円ですね。」
「そんなお金ないよ〜。」
「では諦めましょう。この時代にも良質なフリーウェアは
沢山あるようですからそれを探しましょう。」
「銅鑼えもんもケチだな。まぁしょうがないか。」
「サイズも小さくて軌道も早い設定も簡単なソフトがありました。
これをインストールしましょう。」
のび太は教えられた通りインストールした。
「ついでにフリーのメールサービスを見つけてきたので
設定もしちゃいましょうね。」
「これで静ちゃんとメールが出来るね?」
「はい。試しに送ってみましょうか。」
「うん。じゃあ僕書くね。」
のび太は辿々しい手つきでkeyを叩きメールを書いた。
そして早速送ってみたがメールは帰ってきてしまった。
「あれれ?メールアドレスとか間違ってないよね?」
「
[email protected]…間違っていませんね。」
どうやらあちらの設定ミスのようですね。」
「じゃあ僕電話してみる。」
「静ちゃん?のび太だけど。メール送れないんだけど
設定が間違ってない?」
「あらのび太君。メール始めたの?
実はメーラーをポストペットにしたんだけど
設定が悪いらしくてペットが帰ってこないのよ。
どうしたらいいのかしら。」
「そうなんだ。ちょっと待っててね。」
「…と言う事らしいよ。」
のび太は謎春奈にその事を説明した。
すると謎春奈はちょっと姿を消すとすぐに戻ってきた。
「SMTPの設定が間違っている様ですね。
直して来ちゃう事も出来ましたが
今から直し方を教えるので、メモして教えてあげてください。」
のび太はそれをメモって静ちゃんに教えてあげた。
「これで良いのかしら?」
「ちょっと待ってて試しにメール出してみるから。」
のび太は部屋に戻ってメールを出した。
「どう?」
「あ、届いたわ。ありがとうのび太さん!」
「いやいや、それほどの事でも〜」
「でもペットのウサコが帰ってこないわ。
どうしちゃったのかしら?
きっとあたしのミスで迷子になって居るんだわ。
あたしひどい事しちゃった。」
静ちゃんは泣きそうな声を上げた。
「泣かないで。ちょっと待っててね。」
「…と言う事らしいよ!」
「ハイわかりました。」
そう言うと謎春奈はまた姿を消した。そして現れ
「すぐに帰ると思いますよ。」
「静ちゃん。メールチェックしてみて〜」
「あ!帰ってきたわ!ゴメンねウサコ!」
「良かった良かった。」
「凄いわ!のび太さん。尊敬しちゃうわ!
いつの間にパソコンに詳しくなったの?」
「え?あはは。それ程でもないよ〜
じゃあ返事待ってるからね。」
「いや〜すっかり感謝されちゃったよ。」
「良かったですね。」
「でも静ちゃん誰にメール出したんだろ?」
「誰でしょうね?」
「謎春奈さんわかるんでしょ?」
「で、でもそれは…」
「お願いだよ。ネ。一回だけだから。」
「しょうがないですね。じゃあ一回だけですよ。
え〜と、出来杉英才さんって方ですね。」
「え!何だって!くそ〜出来杉の奴。」
「ポスペにする前は
何度もメールのやりとりしていたようですねぇ。」
「偽春奈さん!そのメールの内容見せて!」
「ええ!?だめですぅ。」
「じゃ、じゃあもう二人がメール出来ない様にして!」
「な、何言ってるんですか?」
「お願いだよ〜」
「ダメです。」
「ちぇ!まあ良いや。
それよりもっとパソコンに詳しくなって
静ちゃんに尊敬されるぞ!」
「立派です〜。」
「えへへ。じゃあ他にも何かインストロールしようよ!」
「…インストールです。」
のび太は泣く泣く宿題を始めた物のいつも通り
なかなか進まない。
イライラしていると突然PCの電源がついた。
「?」
OSが起動すると
スタートアップに登録してある謎春奈が起動した。
謎春奈はスヤスヤと寝ている。
のび太が見ているとスピーカーから小声で呼びかけられた。
「おい。大声は出すなよ。」
う゛にゅうだった。
「お前、未来のソフトほしいんだろ?
タイムプロキシの尻拾ってきてやったぞ。」
「尻?」
「レジストして使える様にするんだよ!
それから、静チャンと出来杉のメール。
盗んできてやったぞ。ヒヒヒ」
「ほ、ホントに?」
「これから色々面白い物落としてきてやるから
一緒に遊ぼうゼ」
「でも、宿題が…」
「そんな物俺がやってやるヨ!スキャナは無いんだったな。
良し、問題読み上げろ。答え教えてやるから書き写せ。」
「うん!」
宿題は5分ほどで終わった。
「じゃあ早速二人のメール読んじゃおうゼ!」
「うん。で、でもなんか悪い気もするなぁ。」
「バカヤロ。今更何言ってんだヨ。氏ね!」
「わ、わかったよ。読むよ。」
「ヘヘヘ。二人は仲良いゼ。最近の消防は進んでるからナ
ひょっとしたらそのうちにあんな事やこんな事。」
「や、止めてよ!」
「大声出すなよ!」
メールを読むと中身はたわいもない物だった。
学校で起こった事や、勉強の事について毎日交わされていた。
どうやらメールというコミュニケーションそのものに
興味があるだけで、二人でやっている事に
何ら意味はない様であった。
「なーんだ。」
「チッ。つまんねぇメールだな。」
のび太は悪い事をしてしまった様な気がした。
「お前まさか罪の意識が芽生えてる訳じゃねぇよな?
ほら、この一文見ろよ。
『のび太君今日も宿題忘れたね。困ったもんだ』
お前バカにされてんだぞ。良いのかヨ」
「そ、そうだよね。そんな事書かなくても良いよね。」
「だったら二人のメールに悪戯してやろうぜ。
そうだな。静あてのメールに『オマソコ』って
かいとくか。ギコギコ」
「そ、それはまずいんじゃ…」
「大丈夫だよ。お前だって事はばれないから。」
「そ、そう?」
「俺に任せておけって。この件はこれで終了〜。
さ、ゲームでもして遊ぼうゼ。何が良い?」
「ど、どんなのがあるの〜?」
「何でもそろってるゼ。UOなんてどうよ。
俺がID盗んできてやるから、チートして
PKしまくろうゼ!」
のび太はUOのプレイのやり方を教えてもらい
う゛にゅうも一緒にプレイする事になった。
「おい、あそこにいる奴お前の知り合いの奴じゃねぇか?」
「え?誰?」
「OS貸してくれた奴だよ。」
「スネ夫か!そういえばあいつ
ウルティマがどうとか言ってたな。」
「早速殺してやろうゼ」
「そんな事出来るの?」
「あいつのそばに行って険振り回すだけでイイヨ」
「良し!日頃の恨み〜」
スネ夫は最初抵抗する素振りを見せたが
すぐにかなわないと感じたのか逃げ始めた。
「あはは〜逃げろ逃げろ〜」
「お前やるじゃねぇか〜。そこだ追いつめろ。」
「あ〜スッキリした!」
「面白かったか?他にも色々あるゾ」
「うんうん。次は何にしようか〜?」
のび太はすっかり明け方近くまで遊んだ。
布団に入ってからすぐに銅鑼えもんに起こされてしまった。
「う〜ん。後五分。」
「偉い!宿題全部やったんだね。」
眠い目をこすりながらのび太がギリギリに登校すると
静ちゃんは休んでいた。
昨日のメールのことを思い出したが
まさか悪戯メールごときで休むことはあるまい
風邪でも引いたに違いないと思った。
休み時間にスネ夫がUOについて自慢話を始めた。
「昨日は僕にPKしようとしたやつがいたから
返り討ちにしてやったよ。逃げ回ったけどムダだね。
二度とそんな気を起こさないように追いつめて
殺してやったよ、アハハハ。」
「スゴイなー。僕もネットゲームやりたいよ。」
「俺も俺も。」
みんな感心したようにスネ夫の話を聞いている。
のび太は腹が立ったので
「何言ってんだい。追いつめられて殺されたのは
君の方だろ!」
と、つい言ってしまった。
すね夫は最初ビックリした顔をしていたが
すぐに青い顔になってわめき始めた。
「な、何言ってるんだよ
おまえUOってなんだか知ってるのか?」
のび太は昨日の事がばれるとマズイと思い
必死に弁解した。
「あ、あはは、夢見たのかな?勘違いしちゃった。
UOってウルトラオイスターだっけ?あはは
違う?そっかそっか。」
スネ夫は怪しんでいる様であったが
それ以上何も言わないので安心した。
「メールが来たの…」
静ちゃんの部屋にはいると涙声で語り始めた。
「添付ファイルが付いていて、簡単に開けちゃいけないって
教えられていたんだけど出来杉君からのメールだったから
開けちゃったのよ。そしたら…」
「ちょっと待って。僕はそんな添付ファイル送ってないよ?」
「やっぱり出来杉君じゃなかったのね。
あなたがあんなメール送る訳無いもの!」
そう言うと静ちゃんはポロポロと涙を流した。
あああ、やはりう゛にゅうが送ったメールが原因だったか。
だからやめておこうって言ったのに。
それにしても一言『オマソコ』って書いてあるだけなのに
こんなにショックを受けるとは…女の子だなぁ。
あれ?テンプファイル?テンプファイルって何だ?
「そのメール開けても良いかい?」
出来杉が聞いた。
「……ダメ。」
「どうして?」
「嫌なの!」
「ひょっとしたら犯人を突き止められるかもしれない。
名前をかたられた以上僕としても絶対に
犯人を捕まえたいんだ。」
「恥ずかしいの!嫌なの!」
「でも静ちゃん!」
「どうしても見るのならあたし
この部屋を出てる。」
「わかった。そうしてくれていて良いよ。」
のび太は二人のやり取りを聞きながら
かなり鬱になって来た。
犯人て僕なのかなぁ?でも僕メールなんて出してないし。
最初の目的は二人の仲を引き裂くためだったのに
これで僕が犯人だと思われたらまるっきり逆効果だ。
でもう゛にゅうはばれる心配は無いって言っていたし。
それよりもさっきからテンプテンプ言ってるけど
何の話なんだろう?オマソコ=テンプ?そうなの?
静ちゃんが部屋を出ると出来杉はiMacをいじり始めた。
ポストペットを開いて受信ボタンを押す。
しかしまだ使い始めたばかりなので
数えるほどのメールしか置いてなかった。
出来杉はその中で一番下にあるメールをクリックした。
「酷いな。一体誰が!」
メールにはオマソコと書いてある。差出人は出来杉だ。
「ヘッダを書き換えるぐらいなら出来るはずだけど
このメールは何かおかしいな?」
出来杉も優等生のくせにオマソコなんて言葉知ってるんだなぁ。
などと変な感心をするのび太であった。
HRに先生が静ちゃんに誰かプリントを届けてくれないか
みんなに聞いた。
昨日の事がちょっと気になっていたので
のび太は届けてあげることにした。
帰り道出来杉が声を掛けてきた。
「静ちゃん、どうしたのかな?
心配だから僕も一緒に行って良いかな?」
こいつ邪魔なやつだと思ったけど「良いよ」と
言って置いた。
静ちゃんの家へ行くと、お母さんが出迎えた。
「静、寝込んじゃってるのよ。
熱はないみたいなんだけど…」
「風邪じゃないんですか?」
「何聞いても、あんまり答えてくれないのよねぇ。
良かったら二人で上がっていかない?」
「良いんですか?」
「何か心配事があるようだから元気づけてあげて欲しいの。」
「わかりました。」
「野比くんと出来杉君が来てくれたわよ。」
「………」
「入るわよ。」
「イヤ!会いたくない!」
「どうしたのよ?」
「………」
すると出来杉が
「何があったか話してくれないかな?
出来れば力になってあげたいんだけど。」
くそ、出来杉のヤツめ。巧い事言うなぁ。
「ぼ、僕も僕も!」
のび太は急いで言った。
「メールが来たの…」
静ちゃんの部屋にはいると涙声で語り始めた。
「添付ファイルが付いていて、簡単に開けちゃいけないって
教えられていたんだけど出来杉君からのメールだったから
開けちゃったのよ。そしたら…」
「ちょっと待って。僕はそんな添付ファイル送ってないよ?」
「やっぱり出来杉君じゃなかったのね。
あなたがあんなメール送る訳無いもの!」
そう言うと静ちゃんはポロポロと涙を流した。
あああ、やはりう゛にゅうが送ったメールが原因だったか。
だからやめておこうって言ったのに。
それにしても一言『オマソコ』って書いてあるだけなのに
こんなにショックを受けるとは…女の子だなぁ。
あれ?テンプファイル?テンプファイルって何だ?
「そのメール開けても良いかい?」
出来杉が聞いた。
「……ダメ。」
「どうして?」
「嫌なの!」
「ひょっとしたら犯人を突き止められるかもしれない。
名前をかたられた以上僕としても絶対に
犯人を捕まえたいんだ。」
「恥ずかしいの!嫌なの!」
「でも静ちゃん!」
「どうしても見るのならあたし
この部屋を出てる。」
「わかった。そうしてくれていて良いよ。」
のび太は二人のやり取りを聞きながら
かなり鬱になって来た。
犯人て僕なのかなぁ?でも僕メールなんて出してないし。
最初の目的は二人の仲を引き裂くためだったのに
これで僕が犯人だと思われたらまるっきり逆効果だ。
でもう゛にゅうはばれる心配は無いって言っていたし。
それよりもさっきからテンプテンプ言ってるけど
何の話なんだろう?オマソコ=テンプ?そうなの?
静ちゃんが部屋を出ると出来杉はiMacをいじり始めた。
ポストペットを開いて受信ボタンを押す。
しかしまだ使い始めたばかりなので
数えるほどのメールしか置いてなかった。
出来杉はその中で一番下にあるメールをクリックした。
「酷いな。一体誰が!」
メールにはオマソコと書いてある。差出人は出来杉だ。
「ヘッダを書き換えるぐらいなら出来るはずだけど
このメールは何かおかしいな?」
出来杉も優等生のくせにオマソコなんて言葉知ってるんだなぁ。
などと変な感心をするのび太であった。
「問題は添付ファイルだ。」
さっきから言ってるけど何なんだろう?
「メール本文にリンクが貼ってあるな。
たぶんこのパスがそうだろう。」
出来杉がパスをクリックするとブラウザが起動した。
「!!」
二人とも息をのんでしまった。そこには静ちゃんの
全裸写真、いや全裸と言うより大股開きの写真が
最大化されたブラウザのウィンドウいっぱいに
映し出されたのだ。
「こ、こ、こ、な、な、何これぇ!」
出来杉は素早くブラウザを閉じた。
「なんて酷い事を!」
「あ、あれ静ちゃんだよね?」
すると出来杉は首を振った。
「良くできているけど合成写真だよ。
画像が拡大表示されたからわかったけど
首の所のディザに違和感があった。」
「合成写真!?」
「おそらくパソコンで作られた物だろうね。
のび太君。この事は誰にも言っちゃダメだ。
それから静ちゃんの前では写真の話はしない方がいい。」
「う、うん」
「どんな事をしても犯人を捕まえてやるぞ!
僕のメアドを使って卑怯な事をした奴を
僕は許せない!」
出来杉は正義に燃えた目をしていた。
犯人?…犯人!
そう。のび太には犯人の心当たりがあった。
と言うより十中八九間違いないだろう。
あの合成写真を作って送ったのは『う゛にゅう』だ。
しばらく経つと静ちゃんが部屋に戻ってきた。
「静ちゃん。犯人は僕が絶対捕まえてみせる。
だから心配要らないよ。」
「でも、でも。」
「犯人は限られているからすぐ見つかるさ。」
え?どうして?のび太は吃驚した。
そしてそのままの言葉をを口に出してしまっていた。
「え!?どうしてー?」
「僕のこのメールアドレスはね、静ちゃんしか知らないんだ。
知らないはずなんだ。それを知っていると言う事は…」
そう言って出来杉はのび太の方を見た。
のび太はギクリとしてしまい、
思わずあらぬ事を口走ってしまった。
「だ、だってその知らないはずのメアドを
誰かがどこからか探り出して来て
あたかもそのメールアドレスから出された様に
細工して悪戯したぐらいの奴だろ?
そんな奴簡単に見つかるわけないよ!」
静と出来杉はキョトンとした顔をしてのび太を見ている。
まずい。何か疑われるような事言っちゃったかな?
「そう言えばのび太さん昨日の電話で
やたらパソコンに詳しかったわね。」
「え?そうなのかい?」
二人はのび太の方を見ている。
疑われてる!やばいヤバイヤバイ〜
すると出来杉が言った
「だったらのび太君が…」
ち!違う〜
「のび太君が犯人を捜してくれよ!」
犯人じゃな…え?捜す?
「そうよ!昨日あたしのウサコ見つけてくれたじゃない。
あんな風にこの犯人も見つけてよ!」
妙な事になってしまった。
とりあえずその場を逃れるために
犯人探しの件を承諾してしまったが
これから一体どうすればいいのだろう?
しかし…
あそこまで状況証拠が整っていて
出来杉が疑われないのは何故だ?
人間一事が万事か。僕だったら真っ先に犯人扱いだ。
家に帰ると銅鑼えもんがPCをいじっていた。
と言うより謎春奈と話をしていた。
人工知能同士気が合うのか凄く楽しそうだ。
あ〜あ。気楽なもんだ。
画面を見るとう゛にゅうは寝ている。
また夜にならないと起きないのだろうか?
のび太の視線に気がついた謎春奈が言った。
「私たちは、ユーザーの健康を考えて
私たち自身も休息・睡眠をとるように設計されています。
だから急用がある時は起こしてくださいね。
クリックすれば起きますから〜」
「あ、うんうん。わかりました。」
「のび太君パソコン使うかい?」
「今日は眠いから昼寝しておくよ。」
「そっか。昨日は宿題で寝不足なんだね。
今日は宿題無いの?」
「うん。今日はないんだ。」
のび太は嘘をついた。
夜になればう゛にゅうにやってもらえる。
それよりも今は寝て置いて、夜はう゛にゅうを
問いつめなければならない。
その上で今後の行動を決めよう。
しかし宿題をやってもらう事で
すでにう゛にゅうに依存してしまっている自分である事に
まだのび太は気がついていなかった。
夕ご飯を食べて部屋に帰ると早速布団を敷いた。
「もう寝るの?」
「うん、明日遅刻するといけないから。」
「珍しい事もあるもんだね。
じゃあ僕パソコンいじって良いかい?」
「良いよー」
「もう飽きちゃったの?」
「今日は眠いから。」
そのうち銅鑼えもんも寝るだろう。
そうしたら起き出してパソコンをいじろう。
そう考えていたのだがのび太は本当に寝てしまった。
夜中にのび太はモニタの明かりとスピーカーからの
ささやき声で目が覚めた。
「おい。聞いてんのか?おめぇだよおめぇ。
そこでアホ面で寝てるおめぇの事だよ。」
「?」
「やっと起きやがったか。この入作さまに
起こされるなんてお前も果報者だなぁ」
「う゛にゅう?」
「おいおい。今日から入作って読んでくれよ。
俺様にふさわしい気高いお名前だろ?」
「何言ってんの?」
「昨日お前が寝ちまってから暇になったんで
webにあるファイルさがしまくってたんだよ。」
「そしたら面白いゲーム見つけてな。
すっかりハマっちまったって訳よ。」
「君、プログラムのくせにゲームするのかい?」
「へへへ、プレイする訳じゃなくて
トレースするだけだけどな。面白かったぜぃ。
嫌がらせってのはああじゃなきゃいけねぇよ。」
「しゃべり方も変わってるんだけど…」
「影響受けやすいからなぁ。」
「一体どんなゲームを?」
「臭作ってのと鬼作ってやつがセットで置いてあったから
それをやってみたのよ。そしたら俺の鬼畜道なんて
子供だましだったって事に気がついちまってな。」
「キチクドウ?」
「あの兄弟の哲学に惚れ込んだ俺は静へのメール内容を
反省して、追い込みをかけるには言葉だけじゃ
甘いって思ってな。写真も使う事にしたんだよ。」
「そうだ!写真!やっぱりあれは君がやったのか?」
「ククク、我ながら良い出来だったぜ。」
「ちょっと待ってよ!おかげで大変な事になったんだぞ。」
「そうかいそうかい。あっちこっち駆け回って
小学生の全裸写真を手に入れるのは
ちょっとした苦労だったからなぁ。それも報われるってもんよ。
もっとも俺には若すぎるが後二三年もすれば
立派な肉壺に育って俺の肉棒をくわえ込めるぐらいに
成長するだろうから今の内に追い込みをかけておくのも…」
「と、とにかくそのしゃべり方止めてよ!」
「そうか?気に入ってるんだがな?」
「それに追い込みって、静ちゃん追い込んでどうするの?」
「当然その後は肉奴隷さ。だが俺には残念ながら肉棒が
備わって居ねぇから実際のプレイはあんたに任せるよ。」
「あー何言ってるんだよ。まともに喋ってよ!」
「バカ!大声出すなヨ。コロヌゾ!」
「ご、ごめんごめん。あ、でも戻ってくれたね。」
「しょうがねぇダロ。オレも飽きてきてたし。」
「それでどうするんだよ?大変な事になったんだぞ!」
のび太は今日の出来事をう゛にゅうに話した。
「ふーん。あの出来杉って奴は信用されてるんだな。」
「僕は犯人見つけなきゃいけないんだぞ。」
「ナンデ?」
「え?」
「だからナンデ?」
「だって頼まれたし…」
「見つからないって言えばいいジャン。」
「そ、それで?」
「そのうち忘れるYO!」
「そーかなー?」
「大丈夫だって。人間には絶対に見つけられないしナ。」
「そ、そっかー。」
「ヨシ!じゃあ今日は何して遊ぶ?」
「えへへ。何しようか?あ、その前に宿題を…」
「任せとけ。ケケケ」
宿題をやってもらった後さっき話していた
『臭作』ってゲームをやってみる事にした。
「わー凄く綺麗な絵だね。」
「ポリゴンなんて疑似3Dじゃなくて
エロゲーの醍醐味はやっぱり2Dだよな。
シナリオがイカスんだよ。勉強になるぜ。」
「どんなゲームなの?」
「女の部屋とか便所とか風呂とか盗撮して
それをネタに脅すゲームだ。奥が深い。イイ!」
「ふ〜ん…って!裸とか出てくるの!?」
「大声出すなって。エロゲーはダメか?」
「ち、ちょっとだけやってみようかな?」
「そう来なくっちゃ。いつも静ちゃんの
風呂覗いてるんだ。今更ゲームぐらい。」
「何でその事を!?」
「テントウムシコミックス。」
その時押入の襖が開いた。
「ムニャムニャ何騒いでるんだい?」
「ど、銅鑼えもん!」
銅鑼えもんはPCの画面を見て凍り付いてしまった。
エロゲー!?いやその前に何故そんな物が
このPCに?まさかwarezを落としてきたんじゃ…
「一体どういう事?」
「ナニガ?」
「う゛にゅう君が違法ファイルを集めてきたの?」
「違法ファイル?」
「このゲームとかフォトショップとかだよ!」
「そうだYO。」
「なんて事するんだよ!犯罪じゃないか!」
「ナニガ?」
「web上に勝手にアップされているファイルを
落として使ったら犯罪だって事ぐらい
君だって知っているだろ。」
「犯罪じゃないYO!」
「はぁ?」
「まだ捕まった奴なんて居ないし、
UPした奴が悪いだけで落としても
犯罪じゃないYO!」
「そ、それにしたって使用許諾に同意して
インストールしたんだろ?違法行為だよ!」
「そんな物読んでないモナー」
「そんなぁ」
「さて、ここで問題です。PC初心者のオッサンが
ファイルを落としてきて解凍したら
ソフトをインストールしてある状態のフォルダの
コピーでした。オッサンはフリーソフトだと思って
使い続けています。これは違法でしょうか?」
「確かに違法性は立証できないけど…」
「ピンポーン正解です〜」
「だからと言って違法ファイルは落としちゃダメだよ!」
「ナンデ?」
「それを作った人たちはそれを買ってもらって
お金をもらって生活してるんだよ!
みんなが落として買わなくなったら大変だろ?」
「ブブー。落とせなかったらやりません。
つまり買ってまでは使いません。
落とせたから使っているだけDEATH!
最初から買う予定の物ではないので会社的にも
社会的にも損失はありませんのでご安心ください。」
「それは、そうかも知れないけど…」
「違法コピーの蔓延によって潰れた会社はありません。
違法コピーが出回っているから自社の製品が
売れないと思っているのは単なる逆恨みです。
例を挙げると一太郎やATOKで有名なジャストシステムは
何年か前にコピーによって経営困難だと発表しましたが
同社は現在も営業中です。
この場合のコピーは会社ぐるみなどでの話だと思われますが。」
「……」
「逆に言えば必要な人間は落として使ったりはしていません。
ちゃんと買ってます。だからこそソフト会社は
存続していけてます。みんな意外とソフト買ってるんですよ。」
「だから仕事で使ったりそのソフトによって利益を上げている
人や会社は素直にソフト買わないといけないと思うYO!
ACCSもバシバシ取り締まって欲しいナ。」
「それじゃあ営利目的に使えないゲームとかアプリの立場は?」
「じゃあ逆に聞きますけどクソゲーとか使えないアプリを
金払って掴まされて返品の効かない哀れなユーザーを
どう思います?泣き寝入りですよ?」
「それはきちんと買えばユーザーサポートしてくれるし
ゲーム面白い面白くないは主観の問題だから…」
「ユーザーサポートねぇ。大して役に立たねぇYO。
主観の問題外なゲームソフトも多いしナ。」
「問題のすり替えだよ!体験版だってあるんだし!」
「それで使えないソフトだってわかったらアンインストール
するのかい?OSは汚れるばかりだな。」
「しょうがないじゃないか。それはOSの方にも問題が…」
「アメリカじゃ、クソゲーは返品が認められている所が
多いんだよ。コンシューマでモナ。
中古禁止する前にそんな制度を作るべきだロ?」
「warezとは関係ないじゃないか!」
「関係有るね!ソフト業界は腐りきってるんだよ。
大体著作権法なんて何年前のシロモノ何だぁ?
死後50年で著作権フリー?情報の加速化が進んでる
この時代に50年?
せめて死後5年程度にするべきだろうナ。
しかしそれは音楽・映像・文章の話。
プログラムはもっと早くに著作権を放棄すべきだYO!
発表、発売から5年、10年とかナ。」
「それじゃ利益が…」
「バージョンアップ、機能改定したら新しい著作権を
保持しても良いんじゃないの?
もっとも企業が先にたって
著作権を放棄するべきなんだろうけどナ。
何年も前のアプリとかゲームなんか開放しても言いと思うゼ?
PC、コンピュータの歴史は情報の開放から始まってるんだ。
もっとも最初のころはハカが無理やり開放してたけどナ。」
「無理があると思うけど…」
「じゃあちょっと未来の話をしてやるYO!
未来と言ってもアンタが生まれる前の話だけどな。
これから発売されるWinXP。オンラインでの認証が必要だ。
大名商売ならではの強引さだよナ。
マイクソは今までの数倍、数十倍の売上と利益を期待していた。
ところが売れなかったんだよ。それほどナ。
みんな必要ないと思ったのさ。金出すぐらいなら
今までのOSで十分だってな。
焦ったマイクソはサードパーティにXPにしか対応していない
新アプリを次々と発表させた。これも強引にナ。
ところがそれでもXPは売れない。なぜか。
今度はクラクが出回っちまったのサ。
怒ったゲイシは今後XP対応ソフトは正規商品コードが
ないOSにはインスト出来ない仕様にすると発表。
そしたらXP対応アプリも全然売れなかった。
マイクソはあえなく撃沈。サードパーティも離散。
ウィソテル陣営は窮地に立ったよ。イソテルもアスロンの台頭で
あんまり力もなくなってきていたしナ。」
「ちゃんとした企業はソフトちゃんと買っているはずだろう?」
「ちゃんとした企業なんて一握りなのサ。
日本に限っていえば、中小企業の割合は98%以上だからナ
中小企業がおいそれとソフトを何本も
購入できるわけ無いだろう?
とにかくそうやってPCバブルは崩壊したのサ。
マイクソは個人の趣味ユーザーの購買力をなめすぎた。
趣味ユーザがPC離れをし始めた。
家電の情報機器化も拍車をかけたしナ。」
「でもPC離れをしたのは今まで買っていなかった層じゃ?」
「あんたwarezを扱ってるやつがみんなそんなに
パワーワレザーだと思ってるのかい?
手に入らなければ買うやつも居る。
本格的にはじめようと思えばユーザー登録もしたい。
warezも体験版みたいな物なのさ。」
「使えれば正規品は買わないんじゃ?高いんだし。」
「すべてがFULLで落ちているわけじゃないんだぞ。」
「でも買わないやつがほとんどだろう?
ゲームなんかはやったらもう買わないだろう?」
「だから最初に言ったように落とすようなやつは
最初から買わないようなやつが殆どなんだYO!」
「どうも納得できないな〜」
「ワレザーだってハードは買う。
すべてバルクで揃えてるやつなんてそんなに居ないYO
リテールで買えばソフトもバンドルされてくる。
そこにはきちんとお金が支払われてる。
だけどPCバブルが崩壊したらハードも買われない。
ソフトが手に入らないんじゃ無意味なスペックだからナ。
PC産業は停滞。時代はお手軽な情報『家電』に
移行したんだYO!」
「だからと言って君たちが違法ファイルを落としても
良いって事じゃないだろ?」
「良いんだヨ。落ちてる物は拾うんだヨ!」
「みんながソフトを買えばソフトの代金は安くなるだろ。
プロテクトだってかけなくて良くなる。
全部コピーが原因じゃないか!」
「アンタ、沢山売れれば安くなるなんて本気で考えてんのカ?
DOCOMOって知ってるよな。死ぬほど儲けてる。
国民が平均一万円ずつ上納してるんだぜ?
たかが電話代にだ。だけど料金は安くならない。
安くなってるのは普及とユーザー拡大のための
加入料と電話機本体だけだYO!企業なんてそんな物さ。」
「携帯電話だってソフト開発だって経費はかかるだろ!
それがペイされるまでは高いはずじゃないか。」
「じゃあペイできないから写真屋はいつまでも高いのカイ?」
「…そうなんだろ、きっと。」
「違うね。あれは只のステータス。
あんな暴利な値段でも買うバカユーザが沢山居るから
ソフトの値段は落ちないんだYO!」
「屁理屈だよ!」
「負けを認めたって事で良いカイ(ワラ」
コノヤロウ!明らかに間違ってるのは向こうなのに
なんで言い負けるんだ?そうか!
あいつには世界中のデータが味方してるんだもんなぁ。
しかもタスクに常駐してるのは『タイムプロキシ』じゃないか
過去未来あらゆるデータを駆使して論争してるんだ。
勝ち目がある訳無いじゃないか。
それにあいつの話聞いてたらwarezも悪くない気がしてきた。
つか、捕まらないんなら何の問題もないよなぁ?
道義上の問題もあいつの口八丁で誤魔化されたし。
「わかったよ。でも程々にしてくれよ?
教育係として叱られちゃうし、俺の査定もあるから…」
「査定の事なら心配ないよ。ククク」
「なんで? あ、それとエロゲーも勘弁して!」
「小学館じゃさすがにマズイか?ヒヒヒ」
それから3人でディアブロをやった。う゛にゅうが
「アイツ、スネ夫ってやつUOでイヤな目にあったからって
昔やりこんでキャラが育ってるディアブロやってるぞ。
この間の腹いせなのかPKしまくってるヨ」
などと言うのでディアブロをやる事にした。
今度はスネ夫もチートアイテムなんか持ってて
ライトニングを発射しまくってきたけど
どんどん追いつめて爆笑しながらぶち殺してやった。
耳を取り上げて今度スネ夫にキャプチャ画像を
送ってやろうって話になった。
銅鑼えもんもいつも嫌がらせされているのだから
そのぐらいはやってヨシ!と乗り気だった。
その後、明日学校もある事だし寝る事にした。
次の日学校へ行くと静ちゃんは浮かない顔をしている物の
ちゃんと登校していた。良かった良かった。
だがジャイアンの機嫌が非常に悪かった。
授業中もスネ夫の方をズーッとにらみつけている。
何かあったのだろうか?
休み時間になるとスネ夫がのび太の所へ来て
相談があると言った。何なのだろう?
「昨日ジャイアンにノートパソコンを取り上げられた。」
「ええ?大変だね。でもいつもの事じゃないか。」
「それだけじゃないんだよ!」
「昨日ジャイアンが俺にもUOやらせろって
家に遊びに来たんだ。僕の話を聞いてたんだよ。
僕は自分のキャラをいじられるのがイヤだったから
ノートパソコンに入れてあったディアブロを
やらせたんだよ。そしたら気に入って
しばらく家でPKしまくっていたんだけど
『借りていくぞ!』って持って帰っちゃったんだ!」
「持って帰ったって、ジャイアンの家には
黒電話しかないだろう?NETなんか出来ないじゃないか?」
「それがノートに刺さっていたp-inまで持っていったんだよ!
ジャイアンの事だからズーッと繋ぎっぱなしだよ。
電話代が…それは良いとしても、今日文句を言われたんだ。」
「何を言われたの?」
「『お前が強いって言っていた杖めちゃくちゃ弱かったぞ!
おかげで殺された!お前俺にPC奪われた腹いせにGAMEで
復讐したんだろ!後でギッタギタにしてやるからな!』」
「ええ〜?酷いなぁ。」
「だろだろ?」
「でも何で僕に?」
「のび太、銅鑼えもんに頼んでPC手に入れたんだろ?
静ちゃんにも色々聞いたんだ。お前が詳しいって。
現にディアブロがNETゲームだって知っていたじゃないか。」
「あ。」
「だから、何とか僕がPKの犯人じゃないって証明して欲しいんだ!」
困ったなぁ。今度こそ犯人僕だし。つかどうしよう?
のび太は犯人探しの件を了承してしまった。
「証明してくれたら最新のゲームあげるから!」
この言葉に釣られてしまったのだ。
だけどよく考えてみたらゲームなんて
いくらでも手にはいるじゃないか。
でも、あそこで断ったらまた意地悪されそうだし。
ジャイアンに向かって「のび太が犯人です」とか
言われかねない。濡れ衣を着せられたらたまらないもんなぁ。
あ、僕が犯人なんだった。
家に帰ると銅鑼えもんはごろごろ寝ていた。
こんな時に気楽なもんだなぁ。
「銅鑼えもん!起きてよ!ねぇ!」
「ムニャムニャもう食べられないよ〜」
「わ!ネズミ!」
銅鑼えもんは跳ね起きた。
全くこのメガネ消防ガキャア!
スモールライトで10の22乗ミクロンまで縮めて下水に流すぞ!ア゛ン?
のび太に事の次第を説明されている間も
寝不足でまだ夢うつつであったが聞いている内に
自分にも責任があるような気がしてきたので
相談に乗ってやる事にした。だが一番責任が重いのは
う゛にゅうの筈。とりあえずPCの電源をつける事にした。
すると謎春奈が突然言った。
「大変ですぅ!う゛にゅうが居ないんです〜!」
「えええ?」
「起きてみたらう゛にゅうがいないんですぅ。」
「それはあり得ない事なの?」
「あたし達は別々の思考ルーチンを持っていますけど
蓄積されるデータなんかは同じ物なのです。
なのにここの所う゛にゅうのデータがlogに
残っていないなと思ったんです。
でもう゛にゅうは寝てばかり居ますし
そのせいかとも思ったのですが。」
「じゃあう゛にゅうは記憶を全部捨てていったの?」
「わかりません。こんな事始めてなので。
幸いタイムプロキシがレジストされていたので
未来の掲示板などを確かめてみたんですけど
そんな症状が現れたのは初めてみたいですぅ。」
「でも君が一人で居て平気って事は
う゛にゅうだって一人で出歩けるって事だろ?」
「ダメなんです。う゛にゅうからのデータの蓄積がないと
あたしはどんどん狂っていってしまいます。
それはう゛にゅうも同じ筈ですぅ。
あたし達は表裏一体なんですよ〜」
「アハハ。何だかいやらしいね。」
「のび太君は黙ってな。」
「とりあえずこのPCの中をあたし捜してみます。」
「うん。頼むよ。僕らには何も出来そうにないし。」
二人で為す術もなくモニタを見つめていると
お母さんが部屋へやってきた。
「宿題なら今日はないよ!」
「違うわよ剛田さんが来たの。」
「ええ!?ジャイアンが?何しに来たんだろう?
まさか昨日の事がもうばれたんじゃ?」
「まさか!ジャイアンにそんなスキルある訳ないだろ。」
「でも銅鑼えもん、怖いよ。どうしよう?」
「勝手にあがらせてもらったぞ!」
「わ〜!ジャイアン!」
「やっぱりパソコンがあるんだな。静ちゃんに聞いた通りだ。」
「違うんだジャイアン!僕はジャイアンだと知らずに…」
「何言ってるんだお前?」
「へ?じゃあ何しに来たの?」
「実はな…」
ジャイアンの話はこうであった。
スネ夫のパソコンを借りてネットサーフなどしていると
自分で作った音楽や絵をホームページで発表している奴が
沢山居る。中には歌まで吹き込んでいる奴もいる。
俺も自分のホームページを作って自分の歌を発表したい!
ジャイ子にも漫画を発表させてやりたい!
そこでそれを手伝って欲しいとスネ夫の家に行ったら
塾に出かけていて居ない。その帰り静ちゃんに出会って
話をしたら、のび太が詳しいって聞いたらしい。
「困ったなぁ…」
銅鑼えもんは頭を抱えた。う゛にゅうはまだしも
謎春奈も居ない。こんな状態ではジャイアンの手助けは
出来そうもない。しかしこれで恩を売れば
ディアブロの件は忘れ去ってくれるのではないだろうか?
何しろ単純な男だ。
「もし助けてくれないんならそのパソコンぶっ壊すからな!」
オイオイ。あんた消防だからってそんな事したら裁判モノだよ?
そのうちアカ党員とかS学会のガキにでも手を出して見ろ。
とんでもない事になるからな!
もちろん銅鑼えもんは口に出してそんな事は言えない。
ロボットとは言え痛みは感じるのだ。
独立歩行機械として自己メンテ、危機回避の為に備え付けられた
この『痛み』というシステムを必要なモノだと判ってはいるが
たまにかなり疎んじていた。
「やっぱり居ませんねぇ…」
「わ!パソコンが喋った!」
「やあ、良い所に帰ってきてくれたね。実はね…」
「ははぁ。わかりました。絵を書く方はPictBearで良いのでは
無いでしょうか?フリーですが高機能ですし。
音楽の方はどうしましょうねぇ?HDレコーディングの
フリーソフトは一応ありますが作曲や演奏にはそれなりの
知識が必要とされるソフトばかりですが。」
「何か簡単なソフト無いかな?ジャイアンはバ……
バ、バッハ並の才能の持ち主だけどまだ小学生だから。
アハハハ。簡単に曲が作れていい感じの。」
「未来のソフトにはフリーであるようですけど
現在のハードの入力デバイスでは制御し切れませんねぇ。
現在のソフトですと…製品版なら近い物がありますけど…あれ?」
「どうしたの?」
「このHDDにそのソフトありますね。どうしたんですか?これ。」
「あ!ひょっとしたらそれう゛にゅうが!」
「う゛にゅうったらまたそんな事してたんですか!?」
「え?良くやるの?」
「ええ。未来の掲示板調べていて分かったんですけど
良くやるみたいです。もっともユーザが拒否すれば
やらないみたいなんですけど。」
「おい!さっきから訳わかんない事ゴチャゴチャ言って!
出来るのかよ!出来ないのかよ!」
「HPは私が作って差し上げても良いですけど
このソフトはまずいですよねぇ?」
「何がまずいんだよ!」
銅鑼えもんはこのソフトが勝手にアップされた違法コピーな事を
ジャイアンに説明した。かなり時間はかかったが。
「何だよ。そんな事何も問題ねぇよ。お前の物は俺の物
webの物も俺の物だからな!とにかく早くよこせ!」
「うーん。それ渡さないとパソコン壊されちゃうみたいだよ?」
「そ、それは困りますぅ!」
「じゃあさっきのソフトとそれ焼いてあげてよ。
『鼻歌ミュージシャン3』?ピッタリだね。」
ソフトを焼いてHP作りとアプリの説明のために謎春奈が
出張する事を約束させてジャイアンは「心の友よ!」と
叫んで帰っていった。
結局その日はう゛にゅうを見つける事は出来なかった。
謎春奈は途中からジャイアンの家に
着きっきりになってしまったし。
次の日学校へ行くとスネ夫が帰りに家に寄らないかと
誘ってきた。ジャイアンの機嫌が良くなって
スネ夫も上機嫌だ。銅鑼えもんの言う通りだった。
静ちゃん、ジャイアン、のび太は連れだって
スネ夫の家に行った。どうせまた何か自慢されるのだろうが。
「見てよ!僕ホームページ作ったんだ!」
スネ夫のホームページにはプラモの画像が
所狭しと貼られてあり、中央にはスネ夫の画像が貼られていた。
のび太はまた従兄弟に作ってもらったのかな?と思ったが
言わない事にした。せっかくディアブロの件を忘れてくれたのだ。
「ははは!大したことねぇな!俺だってHPの一つや二つ
持ってるんだぜ!」
「え?ホントに?」
スネ夫は呆気にとられた顔をした。
「ホラここだよ。見て見ろよ!」
『ジャイアン・ジャイ子のアーチストブラザーズ』
そう書かれた題字の下にミュージシャン(兄)と
コミックアーチスト(妹)どちらのコーナーがよろしいですか?
と書かれたリンクが貼ってある。
「ジャイ子と俺のページだ!」
ページ内を巡ってみると両方のページに掲示板が備え付けてあり
各の感想を書き込めるようになっている。
ページ構成もスッキリしていて見やすい。
さすがは謎春奈だ。そう思ったが黙っていた。
「ジャイ子の方は漫画が、俺の方はオリジナルの
曲がmp3でダウンロードできるようになっている!
落とせる奴は是非落として聞いてくれよな!」
するとスネ夫が話を誤魔化すように
「音楽落とすのは時間がかかるからとりあえず
ジャイ子ちゃんのページから見てみようか。」
と言った。みんなもそれにもちろん賛同した。
ジャイ子のページには綺麗に書かれた少女漫画が載せられていた。
「昨日出来杉の家に行ってスキャナで写してもらったんだ!」
「ジャイ子ちゃん上手ね〜」
静ちゃんの言葉はお世辞ではなかったと思う。
絵も綺麗だし凄く丁寧に書かれている事が分かる。
「掲示板も見て見ようよ。何か書かれているかもよ。」
掲示板を見ると昨日開いたとは思えない程沢山の書き込みがしてあった。
「謎春奈に頼んで沢山宣伝してもらったんだ。」
ジャイアンがのび太に小声で言った。道理で帰ってきたら
謎春奈はすぐに寝込んでしまった。ずいぶん働かせたのだろう。
掲示板の書き込みは全て褒め言葉であった。
中には『既存の漫画の枠を出ていませんが』などと
厳しい批評もあったがそれも好意的な意見の一部であった。
「凄いわねジャイ子ちゃん!」
「この人なんて同人誌作りに参加してもらえませんかとか
誘ってるよ!」
「小学生とは思えませんなんて書き込みもあるね!」
「さすが我が妹だ!」
HP作りを謎春奈に手伝ってもらったとはいえ
漫画を書いたのはジャイ子の実力だ。のび太は感心した。
掲示板での呼び名はすでにクリスチーネ「先生」だ。
「良し!それじゃあ俺の掲示板も見てみよう!」
みんなはドキッとした。
「それは、ジャイアン家でゆっくり…」
スネ夫が止めようとしたにもかかわらずジャイアンは
自分の掲示板へのリンクをクリックしてしまっていた。
予想に反してジャイアンの掲示板にはジャイ子の掲示板を
越える勢いで書き込みがしてあった。
しかしその殆どが罵倒と呪詛の言葉であった。
『こんなmp3アップしないで下さい!』
『これネタですか?それにしても酷すぎます。
気分が悪くなりました!』
『妹さんの漫画は素晴らしいのに(涙)』
『あの〜スピーカーからボエ〜としか
聞こえてこなくなっちゃったんですけど
弁償してもらいたいんですけど!』
『子供が泣きやみません』
『公共の場にこの様な危ないものを置くのは』
『死ね死ね死ね死ね死ね』
『死ね死ね死ね死ね死ね』
ツリー型の掲示板にはこんな見出しが
ずらっと並んでいた。
みんな怖くてジャイアンの方を
振り向くことが出来ないでいると突然ジャイアンが
怒鳴りだした。
「なんだこいつら!みんなぶっ殺してやる!」
「そんなこと言っても誰が書いたかわからないし…」
スネ夫が恐る恐る言う。
「とりあえず返信だ!やられたらやり返せだ!」
「無駄だと思うけどなぁ。」
のび太がボソッと言うとジャイアンが鬼の形相をして
睨み付けた。
「おまえ謎春奈に言ってこいつらの身元割り出せ!
俺が一人一人ぶっ飛ばしに行く!」
「ええ〜!?」
「と、とにかく僕は塾に行かなきゃいけないから
返信するなら家でやってね。」
ジャイアンがnetに繋ぐほどスネ夫の電話代がかかるのだが
それよりもこの窮地をスネ夫は脱したいらしかった。
家に帰って銅鑼えもんに事の次第を説明して
PCの電源をつけると謎春奈はまだ寝ていた。
よっぽど疲れたのだろう。クリックすると
「ふぁ!今回の起動時間は28時間15分…ムニュ」
と言ってまた寝てしまった。
可哀想だが仕方がない。何度かクリックすると
ようやく目を覚ましてくれた。
「え〜?そんな事になっちゃったんですか?」
「それで掲示板を荒らし…荒らしたとは言い切れないけど
文句を書いた奴の身元を洗い出せって…」
「そんな事、出来るけどやれませんよ〜」
「そうだよねぇ。」
「とりあえずジャイアンさんの掲示板見てみましょう。」
掲示板はさらに荒れていた。だがさっきと違うのは
トピックに一つ一つジャイアンのレスが付いていたことだ。
『酷い歌ですねぇ。歌とは言えません。公害に近いです』
↓うるせぇ!ぶっ飛ばすぞ!
『気分が悪くなってご飯戻しちゃいました』
↓俺と勝負しろ!
『死んで下さい』
↓おまえが死ね!いや俺がぶっ殺す!
などなど内容は読まなくてもわかる様なレスであったが。
「酷いことになっていますねぇ」
「でしょー」
「あ、あたしが紹介した以外にリンクが張られていますね。
ええと…巨大掲示板2ちゃんねる…
みんなここから流れて来るみたいです。」
「え?なんて紹介されてるの?」
「ここです。読んでみて下さい〜」
ブラウザが開かれると2ちゃんねると言う掲示板が
読み込まれた。そこにはこんなスレッドがあった。
★★逆切れド音痴消防★★
1 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 16:58
この消防、自分のサイトで自分の歌をmp3でupして
みんなに聞いてもらおうとしてるんだけど
あまりの歌のひどさにみんなブチギレ(ワラ
掲示板に文句書いたら本人登場で荒れ荒れ。
一人一人にちゃんとレスしてるけど
逆切れもいいとこでみんな更にブチギレ(ワラ
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Sakura/**** 2 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:02
ギャハハ ワラタ
3 名前:七節さん 投稿日:2001/05/28(月) 17:02
ジャイアン萌え〜
2 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:03
ジャイコ萌え。ハァハァ
スレッドは現在300のレスをつけ常に掲示板の最上位置を
とっていた。ジャイアンのレスが事細かに転載され
笑い物にされていた。
「こ、これジャイアンに知らせてあげなよ!」
「そ、そうですね。」
謎春奈はそう言うとデスクトップの奥へと消えた。
しかしすぐに帰ってきた。
「ジャイアンさんいいことを教えてくれたって
2ちゃんねるに殴り込むって…」
「え〜!?」
リロードしてみるとすでに2ちゃんねるにはジャイアンが
登場していた。
318 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 17:35
てめぇら!いい加減にしやがれ!
319 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:36
↑本人?
320 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:36
本人登場?
321 名前:ななしさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:37
マジ本人?
322 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 17:38
本人だよ!人の掲示板荒らすな!ぶっ飛ばすぞ!
「あ〜あ〜」
「どうしようもない…みたいですね。」
「放っておこう。そのうち無駄だって気が付くよ。」
「銅鑼えもんは冷たいなぁ。」
リロードすると罵倒合戦が始まっていた。
330 名前:ナナシ 投稿日:2001/05/28(月) 17:40
あんな酷い歌をよく公表出来るね。氏ね。
恥ずかしくないのか?
331 名前:ワライ 投稿日:2001/05/28(月) 17:40
俺も聞いたけどありゃ危険物だよ
332 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 17:41
てめえら隠れてないと何も出来ないくせに
人に文句言うな!ぶっ飛ばすぞ!
333 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:41
ジャイアンの歌も良いかもと思う清原
334 名前:ナナシ〜 投稿日:2001/05/28(月) 17:41
ジャイアソの母ですこの度はウチのジャイアソが
335 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 17:42
妹だってきっと恥ずかしいだろ。おまえの歌(w
多勢に無勢。どうもジャイアンは面白がられているようだ。
「どうしましょうかね?」
「銅鑼えもんの言うとおりかもね。そのうち諦めるよ。」
「そうだね。そう言えばさっきママがお使い頼みたいって
言ってたぞ。」
「そっか。じゃあ行って来よう。」
お使いに行って帰ってきて晩ご飯を食べて、夜にまた
2ちゃんねるに繋ぐとまだ言い争いを続けていた。
822 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 20:10
君が怒るのも無理はないかもしれないけど
君の歌が酷いのは事実なのだから
それを指摘されて怒るのは良くないことだ。
そのぐらいの事は分かるだろう?
いくらリアル消防だと言っても。
823 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 20:11
誰もてめぇらに聞いてくれなんて頼んでないんだよ!
824 名前:ななし 投稿日:2001/05/28(月) 20:12
HPには「みんな聞いて下さい。意見も書いてね。」
って書いてあるじゃねぇか。
825 名前:名無しさん 投稿日:2001/05/28(月) 20:12
記念カキコ
826 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 20:13
本当にごめんなさい。HPは閉鎖します。
もう二度と歌ったりしません。
首つって氏にます。
827 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 20:14
おい偽物!お前ふざけんな!
828 名前:じゃいあん 投稿日:2001/05/28(月) 20:15
お前が偽物だろう?
「もう寝ようか?」
「なんか疲れたね。」
「あたしも疲れました〜」
次の日ジャイアンは学校を休んだ。
,3日の間はジャイアンが登校してこなくても居ない方が静かで良いと
安心していたのだが4日目になってさすがにのび太も不安になった。
まさか本当に首つって死んでるのでは?
銅鑼えもんに相談してみると
「そんなにショックだったのかなぁ?ジャイアン意外と
繊細というかデリケートな部分があるからな。」
などと言って余計にのび太を不安がらせる。
謎春奈までもが
「ジャイアンさんあれ以来PCに触ってないみたいですねぇ…」
と意味ありげに言うので更に不安は蓄積される。
「じゃあ、僕お見舞いに行って来るよ!」
「そうだね。責任の一端は僕らにもある様だし。ん?あるかな?」
「ジャイアンさんの家に着いたらPCをNETに繋げてくださいよ。
あたしもお見舞いに行きますから。」
「謎春奈さんは優しいんだね。」
「あたしにも責任あるようですし。」
う゛にゅうが居なくなってから謎春奈の挙動が心配されたが
これと言って不具合は見られなかった。
だが、暇を見つけてはう゛にゅうを探している様である。
のび太はその事を知っていたがジャイアンにPCの事で
難題を振りかけられた時に居てくれると心強いので
是非、謎春奈には来てもらいたいと思った。
ジャイアンの家に行くと、年中無休のはずの店は閉まっていた。
「あれえ?どうしたんだろう。」
「勝手口に回って見よう。」
勝手口に回ってジャイアーンと呼びかけてみたが返事がない。
留守なのだろうか。しかししばらくするとドアが開いた。
「のび太君かい…」
出てきたのはジャイアンの母であった。
だがいつもの威勢の良さがまるでない。
「おばさん、どうしたんですか?」
その質問には答えず、ジャイアンの母は大声で泣き始めた。
「剛が!タケシがー!」
おばさんを落ち着かせ話を聞いてみるとあの事があった朝、
ジャイアンを起こそうとしたがなかなか起きないので
腹を立てて頬を張ってみたが反応がない。
それ以来ジャイアンは布団の中で意識が戻らないらしい。
医者には診てもらったが別に異常はないらしい。
のび太と銅鑼えもんは驚いた。そんなにショックだったのか…
ジャイアンの部屋に通してもらい、
横になっているジャイアンを見ると
ただ寝ているようにしか見えなかった。
だが奇妙な感じがした。気配がまるでないのだ。
のび太はいつもジャイアンを恐れているため
小動物が危険を察知するがごとく、間近にいるとジャイアンの気配を
ビリビリ感じた物だ。だがそれが全く感じられない。
そこで寝ているのは、まるで抜け殻の様だ。
「これ寝てるんじゃないな。」
銅鑼えもんもそれを感じていたらしくジャイアンの傍らに座って
しげしげと観察している。
「どうしちゃったんだろうね?」
「この状態どこかで見た事があるんだよな、う〜ん。」
そう言ってのび太の顔をじろじろと見つめる。
「…そうだ!これタマシイムマシン使った時の状態だ。」
「ええ?魂だけ昔に返しちゃうあれ?」
「君は自分が行っちゃったから分からないだろうけど
確かにこんな状態だった。その人の雰囲気が
まるで無くなっちゃうんだ。君の場合は目を離せないなって言う
危うさがストンと消え失せたよ。」
「じゃあ誰かがジャイアンの魂を過去へ送っちゃったの?」
「いやタマシイムマシンを使った状態に似ているのであって
そうじゃないと思うんだ。たぶん魂が抜けてる状態だね。」
「ええ!じゃあ死んでるの?」
そうのび太が叫んだ瞬間、部屋の入り口からガチャン!と何かを
落とした音がした。
「馬鹿。大声でそんな事言うな!」
ドアの外でドタドタと誰かが走り去る足音がした。
「とにかくどうしてこんな事になったか調べてみよう。」
「タイムマシンで過去に戻るの?」
「いや、面倒だからタイムテレビを使おう。」
銅鑼えもんはポケットから14インチ液晶テレビほどの大きさの
モニタを出した。
「メモリを4日前にあわせて…」
「な、なんだか怖いね。」
「どうして?」
「お化けとか写ってたらどうする?貞子みたいな?」
「イヤな事言うなよ。」
「それでさ、ジャイアンの魂抜いた後でこっち見て言うんだよ。
カメラ目線でさぁ。『次はお前だぞ!』って。うぎゃー!」
「自分でビックリするなよ!」
4日前の映像を見るとジャイアンはノートパソコンに向かっていた。
怒り顔でブツブツつぶやきながら一心不乱にキーを叩いている。
「こ、こ、このモニタから出てくるんだよ。手が。ウギャー!」
「氏ね!」
だがそんな物は出てこずにジャイアンの手がはたと止まった。
そしてモニタに向かって何かわめいている。
「? 何言ってるんだろ?」
「あ、サウンドカード調子悪くて音でないんだった。」
「ダメじゃん!」
と、その瞬間モニタ内のジャイアンはバタッと倒れた。
何度かアングルを変えて見てみたがモニタに何が写っているのかは
判明しなかった。ちょうどジャイアンのでかい背中がじゃまなのだ。
「一体どうしたんだろう?」
「だから出たんだよー!あのノートパソコンに。」
「馬鹿な事言うなよ!」
「呪われてるんだって。それでジャイアンは…」
「じゃああのパソコン調べてみれば良いんだ。」
「や、やめなよ〜!」
「そんな呪いとかお化けとか非科学的な…」
銅鑼えもんがノートパソコンを開けた時ドアが開いた。
「ウギャー!」
「やあ、スネ夫。君もお見舞いかい?」
「なんだ。スネ夫かー。」
「ジャイアンのお母さんに聞いたよ。意識不明なんだって?」
「そうなんだよ。それでこのノートパソコンが…」
「そうそう。意識がないなら必要ないもんね。返して貰おう。」
「いや、やめた方がいいよ!絶対やめな!」
「何でだよ?」
「ノ・ロ・ワ・レ・テ・ル・ン・ダ」
「こいつヴァカ?」
スネ夫が銅鑼えもんに尋ねたが銅鑼えもんはそれを否定出来なかった。
次の日からスネ夫が学校に来なかった。
「絶対呪われてるんだって!」
「う〜ん。」
スネ夫の家に様子を見に行った帰り道での会話である。
スネ夫の状態はまるっきりジャイアンと一緒。
違いは母親がジャイアンの家より取り乱していたぐらいだ。
銅鑼えもんは今日こそはあのノートパソコンを
調べてやろうと思っていたのだが
何故かスネ夫の部屋やアトリエには存在しなかった。
鍵はあのパソコンに有るに違いないのだが。
のび太のわめき声を無視しつつ思案を重ねていると
出来杉に出会った。
「捜していたんだよ!静ちゃんが大変なんだ!」
話を聞いてみると静ちゃんが突然倒れたらしい。
母親が不在なので病院に電話しようと思ったが
病気ではない様なので銅鑼えもんに相談したかったのだそうだ。
静ちゃんの家に行くとジャイアンやスネ夫と同じ症状。
ベットに寝かせてあるがこれは出来杉の判断だろう。
ふと机の上を見るとスネ夫のノートパソコンが置いてある。
「なんでこんな所にスネ夫の…」
「静ちゃんのお父さんが百科事典のCDROMをお土産に買ってきて
くれたそうなんだけどWin用だったから借りてきたんだ。」
「じゃあこのパソコンをいじっている時に静ちゃんは?」
「そうなんだ。」
「やっぱり呪われてるんだよー!」
そんな事を話している時に静ちゃんの母親が帰宅した。
出来杉が事の次第を説明してとりあえず医者を呼ぶ事になったので
一行は帰る事にした。
「このパソコン借りていって良いかな?」
「スネ夫君も意識不明な事だし調べて貰えるかな?」
「うん。」
のび太はそんなパソコンを家に持って帰るのはイヤだったが
静ちゃんの事を考えると調べないわけにも行かない。
家に帰って徹底的に調べさせよう。銅鑼えもんに。と思った。
銅鑼えもんはそれこそHDDの隅から隅まで探し回ってみたが
何も怪しい所は見つけられなかった。
「おかしいなぁ別に怪しい事無いぞ?」
「何処か見逃してるんじゃないの〜?
絶対書いてあるはずだよ!
『このファイルを開いたら何人かに同じファイルコピーして
開かせないと死ぬるぞ!』とかさあ。」
何故こいつにはこんなに危機感がないのだろう?
楽しんでいるとしか見えないのだが。
いつも俺が助けているから自分が危機に見舞われる事は無いとか
甘い事でも考えているのだろうか?
それなら一度原子分解銃で殺してみるのも良いか?
少し過去に戻ればこいつは存在してるんだし。
死ぬ時の感覚・記憶だけを保存して置いて後で植え付ければ…
フフフ…ヒヒヒャハウヒヒヒ
「わあ!銅鑼えもんが呪われた!」
「はぁ?」
「だって画面見ながら突然笑い出すんだもん。
こんな時に不謹慎だぞ!」
オイオイ不謹慎なのはどっちだよ。
やっぱりこいつは一回殺して、死ぬ時の記憶を…記憶を…
「保存だ!」
「え?え?なに?なに?」
そうか!未来で一時期こんな症状が流行った事があった。
何故忘れていたのだろう?ひどい所では町中の子供が
みんなこんな風になったっけ。
銅鑼えもんはまたノートパソコンをいじり始めた。
何処かにショートカットがあるはずだ。どこだ?
銅鑼えもんが捜していたショートカットは
ダイヤルアップネットワークの中に隠してあった。
見た目には普通のアイコンにしか見えない。
だがリンク先は…
「やっぱりだ。」
「何か見つけたの?」
「これだよ。『PC革命バーチャルk』」
「何なのそれ?」
「このソフトはね。当初人間の記憶をバックアップするために
作成された物だったんだ。
ところがバックアップを取ると本人が意識を失ってしまう。
だからコピーじゃなかったんだな。
どうしてそんな事になるのかは謎だけど、
あるシステムエンジニアが言うには
『このソフトは記憶だけではなく魂に干渉してしまうために
本体、つまりハード側が抜け殻になってしまう。
BIOSを抜き取られている様な物だ。
コピーを取る様に設計されている筈だが
どうやってもうまく行かない。
きっと魂という物は同じ次元に2つ存在しては
いけない物なのだろう』
などと言っていた。その当時は気の利いたジョークとしか
取られなかった様だけどね。
このソフトを元に色々な物が発明された。
でもそれはもっと先の話なんだ。制御しきれなかったんだね。
22世紀にはクローンに魂を移し替える事も可能になったけど。
発明発表されてすぐにコピー品が出回った。
殺人に利用されてしまったりするから
厳しく取り締まられたけど恐ろしいクローンが出回ったんだ。」
「クローンって?」
「勝手に改造したソフトさ。バーチャルk。このソフトだよ。
『場茶毛』って隠語で日本でも大流行した。
でもこのソフトは不完全だったんだ。いや…
完璧すぎたのかな?」
「一体なんなのさ?さっぱり分からないよ!」
「魂を取り出してね、PCに取り込んでPC内で活動できる。
それが魅力だったのさ。ゲームの中に自分自身として
登場して遊べる。スキルのない奴でも自由にネットワークを
歩き回ってハッキングだって出来る。」
「面白そうじゃない!」
「うん。最初の内はみんな大人しくゲームしたり
人のPC覗いたりしていたんだ。そのうちに
これ専用のネットワークゲームもいくつか出来た。
これも市販のゲームの改造とかが殆どだったけど。
でもこのソフトは重大な欠陥を抱えていたんだよ。」
「何?」
「まず、入り込んだPCに不具合が出ると帰ってこられなくなる。
元はクラックソフトなんだ、かなりの確立で不具合が出たよ。
しかもフリーズしたりするとそれだけでダメになっちゃう。」
「ダメになっちゃうって?」
「人間は細胞が常に入れ替わる様に感情とか記憶とか
そう言った部分も常に累積・消去を繰り返して居るんだ。
寝ている時だって夢を見て立ち止まらない様にしている。
只のデータじゃないんだよ。生きて居るんだ。
だから活動を停止しちゃうと魂が死んじゃう。」
「ええ!?」
「もし復旧させて救助する事が出来たとしても
あまり長い時間、体に魂がないと帰れなくなっちゃう。
体は寝ているのと同じ状態なんだ。
つまり細胞とかは入れ替わっている。
うまくリンク出来なくなっちゃうんだよ。
点滴とかで体を持たせていてもダメなんだ。
仮死状態にする事も試されたけどうまく行かなかった。
これらが解決されたのはだいぶ後の事だよ。」
「じゃあ、ジャイアンやスネ夫や静ちゃんは…」
「タイムリミットがある。個人差があるけどあんまり長くは…」
「そ、そんなぁ!」
「それにPCの中で大人しくして居ればいいけど
もし怪我でもしていたら…」
「…していたら?」
「上手く体に帰れたとしても障害者になるよ。」
「そ、それは大けがだろ?」
「違うんだ。それがこのソフトが完璧すぎたって言われる
もう一つの理由なんだけど、怪我をするとね
本当に怪我をした様に書き換えられちゃう。
しかもそれを神経系のDNAに書き込んじゃう物だから、
怪我した部分が直らない。一生そのまま。
見た目には最初何ともないんだけどとても痛い。
その内患部が壊死してくる。腐っちゃうんだよ。
ただ上書きされた状態だから組織は治ろうとしない。」
「でも、でも、コンピューターの中なんて安全だろ?」
「不良クラスタの崖。灼熱のファイアーウォール。
立ち寄ったPCがハングして凍り付くかも知れない。
突然上書きされて押しつぶされるかも知れない。
一番怖いのはウィルスさ。かかったらもうお終い。
突然電源切られただけでもアウトなんだよ!」
「それじゃあ」
「ゲームなんか見つけて気軽に参戦して見ろ。
ダメージは本当のダメージになって体に降りかかる。」
「このパソコン電源切っちゃってるじゃないか!」
「いや、ここには居ないみたいだよ。」
「じゃあ一体どこに〜?」
「このショートカットの先にさ。」
「?」
「誰かがこのPCに仕掛けたんだよ。おそらくジャイアンが
ネットしている時にだろうね。
次回からはネットに繋いだ瞬間に起動する様になっていたよ。」
「でもスネ夫はこれをいじっている時じゃ…」
「そこは謎なんだけどね。」
「静ちゃんは?」
「百科事典ソフトを見てみたら常に最新情報をネットで
公開するサービスがついてた。
おそらくそれをいじったんだろうね。」
「一体誰がこんな!」
その時のび太のPCが起動した。
「それやったの、う゛にゅうに間違いないみたいです〜」
謎春奈が半泣きしながら言った。
どらえもんは光速船が投げ売りされている過去にまで遡って
一個一万円で大量に購入し秋葉原にある
店内が狭くて臭くて店員の態度が悪いことで有名な
中古ゲーム店に持ち込んで店員を困らせ、せしめた金で
どら焼きを買い込んでウハウハしている夢を見ている時に
のび太にゆり起こされたため非常に機嫌が悪かった。
そろそろ交代の時間だそうだ。
二人は謎春菜の帰りを待っていた。
どちらかが起きていなくてはいけないのは、彼女の仕様的に
ユーザーを起こしたり仕事の邪魔をしたり
出来ないようになっているためだ。
設定で変えられないのかと聞くと
AIの根幹に関わるものなのでだめだと言う。
そういった役目はう゛にゅうに一任されているらしい。
謎春菜によればPC革命はう゛にゅうが仕掛けた事に
間違いないようだ。
ショートカットのリンク先は転送URLになっており、
その転送サービスはすでに登録を解除されてしまっていた。
恐らくその先のサーバにCGIとして
ブラウザから起動が出来るように設置されていたのであろう。
そんな事が出来るのはう゛にゅうだけだ。
タイムプロキシがインストールしてあるマシンが
ここにあるので、未来からのハッキングも予想されたが
状況的にはヴにゅうが一番怪しいであろう。
しかし一体なぜそんな事を?
ジャイアンの一件だけが意図的でその後の二人は
偶発的に起こってしまった事件なのだろうか?
謎は深まるばかりだ。
とにかくう゛にゅうの居場所がわかれば
全てがわかるに違いない。そこへ謎春菜が帰ってきた。
「見つかった!?」
どらえもんは開口一番尋ねたが謎春菜はただ首を横に振った。
「ダメですぅ。
元々私の権限では捜索できる範囲が狭いんですよぉ。
ただの便利ツールですからねぇ。」
ため息をつきながら説明する。
AIが自分自信を卑下することは滅多にないことだ。
人間や他の生物と違って
プログラムには自己進化能力を与えられているものの
自己の複製を作成して種族保存を図る能力は
与えられていない。それが与えられているのは
一部の違法ソフト、そうウィルスだけだ。
ウィルスを見ていればわかるようにそこいら中が
そのプログラムで埋め尽くされてしまうからだ。
その代わり防御能力や自己保存能力は
必要以上に装備されている。
自己をデータで理論武装し存在意義を確認する作業が
子孫繁栄と言った目的・命題のない人工知能には
最優先の自己安定措置なのだ。
もちろん反省や自嘲も自己を進化成長させる
大切なファクターだ。だが自分のアイデンティティ
に関わることは極力触れない様に気を使う。
俺も『役立たずのロボット』と自分を卑下することはある。
だが『どうせ子育てロボット』などと言う
自分の根本に関わることは言えない。
成長に限界を観てはいけないのだ。
そんな事を口にしてしまう謎春菜は自分の無力さに
苛立ち焦っても居るのであろう。
相方とはいえRead meを読めばう゛にゅうはいわば半身だ。
人間に置き変えて言えば
『就寝中に夢遊病で勝手に悪さをした。』とか
『二重人格が現れて悪さをした』とか
『ドッペルゲンガーが自分の預かり知らぬ所で殺人を犯した』
ぐらいの意味を持つにちがいない。
「転送サービスが置いてあるサ−バを探って
過去のリンク先を探るのも権限外なのかい?」
「あそこは重点的に調べてみたのですが
ここ最近に登録したユーザのログは
削除されていますねぇ。
これもヴにゅうの仕業に違いないでしょうけど。」
「万事窮すかー」
「ただ…」
「ただ?」
「pc革命が置けるほどのマシンはそう無いでしょうし、
しかもオンラインで動作させるとなると
よほどのパフォーマンスが要求されると思うんですよ。
回線の太さも尋常じゃないでしょうし。
ここ最近で大きなデータのやり取りがあった所を
調べているんですけどねこれが意外に多くて。」
「人間一人分なんてデータ相当な大きさだろう?
そんな物をインターネットでやり取りしているサーバなんて
そうはないだろう?」
「ところがそうでもないんですよ。
どちらにしろパケットに分割してのやり取りでしょうし
連続した大きなデータだけを探すだけではダメな様でして…」
「一体みんな何をそんなに?」
「違法ファイルや動画データが多いようですねぇ」
「またしてもWarezかー」
「ソフト一本とかなら見分けもつくんですけど
一遍に何本もやり取りされると
内容を観てみないとわからないですぅ。
調べに行くと大抵FTPサーバなので
またかって思うのですけどCGIとして稼動させて
データだけFTPかもしれませんし。」
「困ったねぇ」
「困りましたねぇ。でももうちょっと探ってみますね。」
「休まなくて大丈夫なの?」
「リミッターを解除するパッチを見つけてきて
あてましたんで大丈夫ですよ。」
「ええ?そんな事して大丈夫なの?」
「あんまり長時間はまずいでしょうけど、
パッチ当てる前のバックアップもとりましたし。」
「けど自分の改造やアップデートは勝手にやると
まずいんじゃなかった?
それより自分に自分でパッチ当てたり出来るの?」
「のび太さんの許可を頂いてパッチ当ても
バックアップもして貰いました。」
「何のことだかわかってた?
それよりもバックアップちゃんと取れているの?」
「今よりも強くなるって説明したら
納得してくださいましたよ。バックアップも確認しました。
ちゃんと取れていましたよ。
一度終了された状態にならなければ
いけないので不安でしたが。
のび太さんはどらえもんさんが考えているより
ずっと賢いですよ。」
「え〜?」
「人より理解するのに時間がかかるだけなんですよ。
でもきちんと理解できればその分皆より忘れないでしょうし
理解も深いはずですよ。」
「そ、そうなのかなぁ?買いかぶりじゃないかな?」
「あせらずに…ってそれは私もですね。」
「うん。頼りにしているよ。」
「では寝ていてください、パッチを当てたおかげで
ユーザを起こす権限も貰えましたし。」
「そっか。じゃあお言葉に甘えて。」
謎春菜はデスクトップの奥へと消えていった。
頼りにしていると言われたときの嬉しそうな顔が
ひどくどらえもんの心に残った。
俺もこの時代に来て
のび太に最初に頼りにしていると言われたときは嬉しかった。
何時の間にか慣れっこになってしまい
そのうちにウザくなった。
あまりの成長の無さにいらついたりもした。
だが俺のほうにも問題があったのではなかろうか?
そんな事を考えながらのび太の方を見ると
のび太は起きていた。
「さっきの話し聞いてたの?」
「うん。途中から。」
「そっか。」
「謎春菜さん、大丈夫かな?」
「無理はしていないと思うよ。
AIは自分を傷つけるようには出来ていないから。」
「早く皆を見つけて助け出さなきゃね。」
「うん。」
今まで気がつかなかったけどこいつは成長していたんだな。
思いやりと言う面では誰よりも。
「さあ、せっかく寝る時間を用意してくれたんだ。
探し当てたら長い作業になるから体力を温存して置こう。」
昼寝ともなれば3秒で眠りにつく特技を持つ
のび太であったがなかなか寝付けなかった。
銅鑼えもんはさっさと寝てしまっている。
ロボットならではのドライさであろうか?
静ちゃんやスネ夫やジャイアンを発見したとして
果たして五体満足に救出出来るのだろうか?
どうやって救出するのだろう?
あれこれ怖い想像をしていると
PCのスクリーンセーバが途切れ謎春奈が顔を出した。
「あら、起きてたんですか?」
「うん、どうも寝付けなくてね。
せっかく時間作ってくれたのにゴメン。」
そう答えたのはのび太ではなく銅鑼えもんの方だった。
のび太は少し反省した。
「見つけられなかったわけです。
パッチ当てた私にも権限外、つまりセキュリティ
ブロックされている場所からの
アクセスだったみたいです。」
「見つけたの!?」
「ええ、確認できては居ませんが
おそらく間違いないでしょう。」
「君の権限外って…」
「TCPじゃなくてUDPが使われていたのが盲点でした。
回線の連続性に信頼があるからって
人体データに無茶な事してます。」
「一体どこなの?」
「エシュロン…ってご存じですか?」
「エ、エシュロン〜!?」
「な、何なの?教えて?」
「私が説明するよりNET上にも怪文書の類を含めて
沢山の資料が有りますから読んでみてください。」
「こんな時代になってもまだ活動していたのか?」
「そのようですね。サーバおよび本部施設は
太平洋上の小島に極秘裏に建設されているようです。
回線は衛生、静止衛星、成層圏静止飛行船による
成層圏プラットフォーム、海底ケーブルの
4回線を使っています。
小型の原子力発電システムまで洋上に浮かべて
大規模な情報都市を形作っています。
衛生に対するステルス施設もあるようで
静止衛星からはマイクロウェーブまで
発射されているみたいですね。
あ、これはこの島を設計したと思われる
マイクロソフトの子会社から調べました〜。」
「そんな所…手出しできないじゃないか!」
「そうですよね。困りましたねぇ。
でも一つだけ方法があります。」
「それしかないかな?」
「銅鑼えもんさんの道具を使って
直接施設に乗り込むことは出来ますが
命の保証は出来ませんよぉ」
「物理的危害が加わらないだけ
あっちの方がマシか…」
「ねぇ!いったい何の話なの?」
のび太はエシュロンについての文献を読み漁った物の
殆ど理解が出来ずにいた所で
銅鑼えもんたちが深刻そうに話をしているので
検索作業を打ち切った。
解説文から読みとれたのはエシュロンが怪しげで
悪い組織だと言うことぐらいだった。
「みんなを助けるためには僕らもデータ化されないと
ダメなんだよ、って話。」
「何だ。難しく言わないで最初からそう言ってよ〜
…って僕らもPC革命を使うって事!?」
「そう言うこと。」
「だって、と〜っても危険なんじゃないの?」
「だから俺だけで良いよ。」
「へ?」
「俺は元々ロボットなんだからdate化は
当たり前の事だし。慣れてるからね。」
「でも、銅鑼えもんさんのプログラム言語は
第4世代超高級言語ですからそのままでは
PCに載りませんよ?」
「分かってる。PC革命を使うよ。」
「そしたら銅鑼えもんだってあぶないだろ?」
「でも慣れてるし。俺にも責任有るしね。」
「………僕も行く。」
「へ?」
「僕も行くよ!元はと言えば僕がPC出してくれって
言ったのが原因だし。僕も行く!」
「PCの中がどれだけ危険かについては話したよね?」
「PC革命がどれだけ危険かも聞いたさ!」
「それでも行くの?」
「それでも行く!」
「そっか。それじゃ偽春奈、道案内頼めるかな?」
「はいっ!」
「あ、それとPC革命用意できるかな?」
「もうご用意してあります〜」
「用意が良いね。」
「安心してください。
皆さん絶対無事に元に戻して見せます。」
「じゃあのび太君から先に逝きな。説明してあげるから。」
「イヤな言い方するなよ。」
「そのアイコンをクリックして…そのダイアログはYES…
あ、それはNOね。生年月日とかは適当で良いよ。
うん。それはIDだからかぶらないように…
nobiだとかぶるみたいだね。…そのフォームは半角で。
本当にデータ化してよろしいですか?って聞いてるけど。
OKならOKのボタンを…後はマウスを通して
勝手に読みとってくれるから、それが売りだからね。
…じ…おれも…すぐ…に…い………
何かが通り過ぎていくのを感じる。
それも、傍らを、ではなく
自分の体の中を通り過ぎていく。
その正体を確かめようとしたが目を開けられない。
いや、それは正確な描写ではないだろう。
今、自分の中には「暗闇」すら存在しない。
視覚が無いのだ。
それがどんな状態であるのかを説明するのは
恐らく盲目の者にも無理であろう。
体がカーブを切った。
それもGを感じて思った事ではなく
自らを通り過ぎる「何か」のスピードや角度、
そして翻弄される体を通じて確認しただけだ。
こんな状態に陥ってから
一体どれぐらいの時間がたつのだろう?
体を突き抜ける「それ」から
かなりのスピードで進んでいる事が予想出来る。
進んでいる?本当に進んでいるのだろうか?
自分は一定の場所に留まっていて
「何か」が動いているのかもしれない。
そう考えだしたらとても怖くなってきた。
のび太は叫びそうになったがそれも出来なかった。
口も耳も、何より音そのものが無かったからだ。
パニックになってもがいてみるが
もがくための手足も存在しない。
いつか見た事がある夢の様に
手足の感覚はまるで答えてくれないのだ。
だがその刹那にのび太は暗闇を発見した。
視覚を取り戻したのだ。
ただの暗闇だがどれほど懐かしく感じたであろう。
暗闇はだんだんと瞼の裏へ変わっていった。
残像の様な物を見つける事も出来た。
懐かしさと安堵感にそれを注視していると
ため息が漏れた。
ため息!試しに深呼吸をしてみる。
出来る。口が開き、横隔膜が動き肺が蠕動する。
だか喉や気管を通るいつもの乾いた気体の感覚は
まるで無い。だがそれが当然かの様に苦しくはない。
ゆっくりといつもの要領で喉を震わせてみる。
声は出せるのだろうか?
喉は震え、その振動は確かに首や胸に感じる。
だが耳を通してその音は聞き取れなかった。
しかし脳が直接震えるようにして自分の声が聞こえた。
その聞き慣れない声に驚いていると
瞼の裏が次第に白くなってきた。
光だ。
気が付いてみると自分を絶えず貫き続けていた
「何か」が途絶えていた。
もう移動していないのだろうか?
瞼の裏の白さは一定の光量まで行って止まった。
再び感覚のない穴蔵に放り込まれたような
恐怖を感じたが先ほどの無感覚とは違い
無音、無臭、無味、無重を感じる。
目を開けても良いのだろうか?
かくれんぼをした時のように誰かに尋ねたかった。
「もう良いかい?」
誰も答えてくれなかったら?
ひょっとしたら自分の頭の中にだけ響いて
外には響いていないのかも。
一番良いのは目を開けてみる事だ。
学校の教科書で読んだ事がある「杜子春」の
話を思い出す。
片目だけ、恐る恐る薄目を開けてみる。
すると対面には銅鑼えもんと謎春奈が
不思議そうな顔をしてのび太の顔をのぞき込んでいた。
「何してんの?もう行くよ?」
ビックリして両目を開くとのび太は地面に立ち
謎春奈、銅鑼えもんと向き合っていた。
そしてそれを認識したとたんに自重を感じて
その場に尻餅を付いた。
「こっちに着いたらすでにのび太君は居て
無事に着いたなとか思ったら
目をつぶってアホ面してボーっとしてるから
ヤバイ、転送失敗か!って焦ってたら
薄目開けてこっちを伺ってるから
馬鹿にしてるのかと思ったよ。」
「ア、アイテテテ。なんだ?体が急に
重くなった。」
「仮想空間に慣れていない方は視覚で
状況を認識してから体感覚を思い出すので
そう言った状態になるそうですよ〜」
「あ、謎春奈さん。あはは実物は可愛いんだねー!」
そう言いながら立ち上がった。
だいぶ感覚が慣れてきた。
「照れますよぉ。もっとも実物って
訳じゃないんですけど〜」
画面で見た時は可愛い漫画調の絵だな、
と言ったぐらいの見方だったのだが
等身大を間近で見ると理想に近い可憐な
美少女だったのである。
「あ、あたしは人様に描かれた物ですから
人間の理想に近い容姿をしているのは
当たり前の事でしてぇ…」
「いやいやそれにしてもかなり…萌え〜」
のび太は品定めするように謎春奈をジロジロと
眺めた。すると銅鑼えもんに
後ろからいきなり殴られた。
「な、何するんだよ!」
まだこちらの世界に来てあまり慣れていない
ダイレクトな痛みという感覚にたじろいでいると
「そんな事してる場合じゃないだろ!?
急がないと手遅れになっちゃうんだぞ!」
「そうだ。急がなくちゃ!」
しかし銅鑼えもんは自らの怒りに
不思議な感覚を覚えた。
確かに急がなくちゃいけないのは事実だが
それよりものび太の行動に腹が立ったのだ。
何か大事な物を汚されているような。
ひょっとして、漏れ謎春奈に恋しちゃったのか?
そんなヴァカな。でものび太じゃないけど
謎春奈…萌え。
「で、これからどうするの?具体的に。」
「謎春奈に道案内を頼むしか無いなぁ」
「わかりました。お任せ下さい!
…ですが、本来ならお二方ともすでに
データ化が済んでいるので同じHDD内でしたら
瞬時に移動が出来るはずなのですが
まだこの世界の理に
慣れていらっしゃらないでしょうし
しばらく歩きながら身体感覚に慣れて頂いて
ついでに色々説明しますから
ゆっくり行きましょう。
慣れてしまえば目的地まではすぐでしょうし
そんなに焦る必要もありませんよ。」
「そうか、じゃあ頼むよ。」
「しかし…広いねぇ」
のび太は周りを見渡して言った。
何もない空間が地平の彼方まで広がり
所々に建造物なのかただの起伏なのか分からない
物がポツポツと見受けられる。
「150GBありますからねぇ」
「とりあえず最初はどこに向かうの?」
「Windowsって建物の中にTCP/IPセンターが
ありますのでそこに行きましょう。」
「そのTCP/IPセンターってのは何?」
「私たちは今高レイヤーに居るので
このままではネットワークに乗って
他のマシンに移動することが出来ないんですよ。
だからTCP/IPセンターに行って
もっと下層に乗れるような
データ化をして貰うんです。」
「???」
「逝って見りゃわかるさ。」
「イヤな言い方するなって。」
「さっきは量子転送だったから
まだ良かったかも知れないけど
今度はノイマン型で原始的な電気波形にまで
変換されるから、もっと涅槃を味わえるよ。
まさに逝って良し!」
「???…まぁいいや。
そ、それにしても広いねー」
「謎春奈がこまめにデフラグをしてくれているから
ここまで整地されているけど
放置してあるHDDなんて歩けたモンじゃないんだろうね。」
「そうでしょうねぇ。スキャンディスクもマメに
やってますから不良クラスタも心配ないですよ。」
「ありがたいよ。一家に一台謎春奈だね。」
「そんなに誉めないでください〜」
「銅鑼えもんならともかく
謎春奈さんに『一台』とは失礼だぞ。」
「オイオイ、漏れには失礼じゃないのか?」
「あたしは銅鑼えもんさんみたいに
本当にAIではないんですよ。
ただ膨大なデータベースから受け答えを
しているだけなんです。
だから一台でも良いんですよぉ」
「えー?だって銅鑼えもんより頼りになるじゃない。」
「君、圧縮分割偽装かけてネッタクにUPして
二度と元に戻せないようにしてあげようか?」
「さて、そろそろ体の感覚に慣れてきましたか?」
「うん。でもこれだけ歩いているのに
全然疲れないんだけど?」
「良い所に気が付きましたね、のび太さん。
では、ちょっとイメージしてください。
今まで歩いた距離と自分の体力。
現実世界ではどうなっていますか?」
のび太はヘトヘトに疲れていて足が棒になり
「もう歩けないよ〜」などと弱音を吐いている自分を
想像した。その途端、体が重くなり
足がガクガクしだし、前に進めなくなった。
「もう歩けないよ〜」
「それがこの世界のルールです。
何よりものび太さん自身の観念、イメージが
のび太さん自身を形作り、存在させています。
さぁ、今度は全然疲れていない自分を
想像してください。」
のび太は一生懸命想像してみた。
全然歩いてない。全然疲れてない。
「…ダメみたい。」
「思いこみ強いからな。
その上根に持つタイプだし。
物忘れは激しいのに発揮できないかー」
「銅鑼えもん、こっちに来てから口悪いなぁ」
「そう?データ化のせいでより率直になっているかも。」
「しょうがないですね。ではあたしがのび太さんの
疲れを癒してあげますぅ」
謎春奈はのび太の足の上に手をかざして
目を閉じて念じて見せた。
「ホントだ!もう全然疲れてないよ!」
のび太は立ち上がり駆け回って見せた。
「あたしは何もしてませんよ。
暗示を掛けただけですぅ」
謎春奈が笑いながら言うとのび太は急に立ち止まり
ぐずり始めた。
「もう歩けないよ〜」
「氏ね!」
「とにかくここは観念の世界なので
確固としたイメージさえ出来上がれば
空も飛べますし瞬間移動も出来ます。
私たちプログラムには最初からその観念が
植え付けてありますけど
マスターユーザーであるあなた方には
訓練が必要です。
常識や感覚にとらわれない強いイメージがあれば
私たちプログラムを凌ぐ強い力を
発揮できるはずです。」
「そんなこと言われてもなぁ」
「銅鑼えもんさんはもう出来ますよね?」
「え?うん、試してみるよ。」
銅鑼えもんが目を閉じ何かを念じると
スーッと宙に浮いた。
「わ!尊師?」
「銅鑼えもんさんはもちろんプログラムですから
楽なはずです。でも実際に体を制御している
ドライバ類も組み込んであるので
体感覚的に心配でしたが、流石ですねぇ」
「いやいや、タケコプターをイメージしただけだよ。」
「そうだ!タケコプター出してよ。
そうすれば無理なくイメージ湧くし
楽に飛べるはずだよ!」
「ええ?そんな事しなくても飛べるだろ?
普段使っている時のことを思い出せば
良いんだから。五感の記憶だよ。
ほら、イメージして!
空を飛ぶぞ!空を飛ぶぞ!
空を飛ぶぞ!空を飛ぶぞ!」
「そ、尊師!?」
「想像力のないやつだなぁ。
ロボットに想像力で負けてたら
お終いだぞ?」
「僕は常識的なんだよ!」
「しょうがないなぁ…ハイ!タケコプ…あれ?
あれあれあれ?」
「どうしたの?」
「ポケットが、四次元ポケットがない!」
「ええー!?」
「あのー、ここはさっきも説明した通り観念の世界なので
ポケットの中身、成り立ち、機構、全てを
把握した上でイメージできないと
自信の体以外の物は具現化できませんよ?」
「えー?そうなん?」
「じゃあ僕の服は?最初から着ていたけど。」
「それはのび太さんがイメージしたんですよ。
普段から着ているから簡単にイメージでき…!
勘弁してください〜(;´Д`)」
謎春奈が説明している途中でのび太は
素っ裸になってしまったのだ。
そんなのび太を無視して銅鑼えもんは
「さすがに全ての秘密道具を観念化するのは
無理だけど使ったことがある道具なら
具現化できるかな?」
「普段使い慣れている道具でしたら
出来ると思いますよ。
もっとも具現化の必要もない筈なんですが。」
「このままじゃ空を飛ぶことどころか
あの思いこみの強いヴァカの裸を
見続けなければいけないから
服とタケコプターだけ具現化してみるよ。」
「文字通り想像力のないあたしには
具現化は無理なのでお願いしますぅ」
銅鑼えもんが念じると空中にのび太の服と
タケコプターが出現した。
「ありがとー!…あれ?何だよこのダサイ服は?」
「はぁ?いつもの君の服ジャンか!」
「シャツのボタンの数が違うし黄色も薄いよ!」
「氏ね!」
謎春奈はのび太のメガネが消えてしまわないことに
疑問を抱いたが言うと面倒なことになるので
黙って置いた。
(でも、なんか、のび太さんの…
ネット巡ってて見ちゃった男の人のアレと
ちょっと違うんだな。イメージしきれてないのかな?
でもこれも面倒な事になりそうだから黙っておこう。)
一行は飛行感覚に慣れるために
しばらく空中を移動する事にした。
銅鑼えもんは、途中で黙って
のび太のタケコプターを消したが
のび太は気が付かず飛び続けたので安心した。
(アレだな、自転車の練習と一緒だな)
しばらく飛び続けると、いくつかの建物が見えてきた。
地上に降り立つとそこは丸の内のオフィス街の様に
幾つかの大きな建物が建ち並んでいた。
ただ、既存のオフィス街と決定的に違うのは
建物と建物の間隔が異様に広い事と
その建物の周りに人の気配がまるで感じられない所だ。
「このビル、大きいなぁ」
「これはフォトショップですね。大きいですよ。」
「隣は?」
「一部分繋がっていますよね。イラストレーターです。」
「中には誰もいないの?」
「居ますけどわかりやすく言えば寝ている状態ですね。
起動すると作業にも因りますけど
フル稼働し始めますよ。」
「誰かが作業を始めるって事?」
「本当は違うのですけど、PC革命は馴染みやすいように
作業工程を擬人化して見せてくれるみたいですね。」
「へー見てみたいなー」
「実はこことは別の場所に工場区域の様な作業場が
あるんですけど、そこは凄いですよー」
「メモリの事かな?」
「さすが銅鑼えもんさん!その通りですぅ」
「見てみたいけど急がないとね。」
「そうですね、TCP/IPセンターへ行きましょう。」
のび太達はまた空を飛んでTCP/IPセンターを目指した。
この世界にすっかり慣れたようでタケコプターが
無くてものび太は楽に空に飛び立った。
「でもさー。こうやって行動してても
全然体に危険を感じないんだけど
本当にこのソフトは危険なの?」
「こうやって移動しているだけでも
かなり危険な事をしていると思った方が良いよ。」
「ええ!?どうして?」
「HDD内の移動は物理的な移動ではなく概念的に
電気信号を移動させているわけですが
それでもシンクロが狂えばマスターかコピーが
壊れる恐れもあるわけでしてぇ
お二人のような大きなデータを例え
内部GUI的にだとしても移動させれば
HDDのクラッシュやメモリのリブート
CPUの熱暴走は避けられない問題だと
銅鑼えもんさんは言いたいのですよね?」
「何言ってるかさっぱり分からないんだけど。」
「つまり僕らはデータの一部分とはいえ
頻繁にカットアンドペーストを
繰り返しているんだよ。
C&Pって言っても内部的にはコピーな事に
変わりはないわけで、一瞬前の自分は
絶えず消去されているのさ。」
「ふーん。でもそれって
現実の世界と変わらないじゃない。」
「どうして?」
「過ぎ去った時間は元に戻せないって
事でしょ?」
「う。それはそうだけど…」
銅鑼えもんは未来の価値観、ロボットの価値観では
のび太の時代の人間の精神的逞しさを
計り知れないと感じた。
もしかしたらこんなヤツが何も気が付かずに
歴史を動かしているのかも知れない。
「さあ、あそこがwindowsですよ!」
目の前に、文字通り立ちふさがったビルは
あまりにも巨大だがシンプルでいて
内部の構造の複雑さを外観の『窓』から見て取れた。
「おおきいね…」
「コレは2000バージョンですからまだましですよぉ。
スネ夫さんのマシンとか見てきましたけど
win98とかMEなんかは地下に
Dosなんてのもありましたし。」
「で、このビルの中に
そのTPC/ICセンターがあるんだね?」
「のび太さんあまりにベタすぎて
つっこめないですぅ(;´Д`)」
ビルに入ると大量のビルが居た。
「コレ誰?」
「ははぁ、こういう表示になるのか。」
「設定で変えられるようですけど
静ちゃんのMacにはジーパンMハゲのおっさんが
一杯居ましたよ。」
「TCP/IPセンターはこの階にあります。
すぐですから着いてきてください。」
謎春奈の後について歩くと廊下には
様々なプラカードを持ったメガネの外人が
たむろしていた。
「あの人達は?」
「win2kになってから出番が少ないので
暇しているみたいですねぇ」
「?」
見るとプラカードには
『…のページ違反です』
『〜なため強制終了…』
『windowsを正しく終了させなかった…』
などと書かれている。
「PC革命を使ってたいていの人が最初にやる事は
あの人達をぶん殴る事だそうですよー」
センターに着くと謎春奈は受付を済ませてくるので
外で待っているようにと二人に言った。
中を覗いてみると
思ったより小さい窓口にやはり同じ顔をした
メガネ外人が3人座っていた。
見ていると何だかもめているようだ。
「何で許可して貰えないんですか?」
「仕様です。」
「いつも私なんて簡単に通して
貰えるじゃないですかー?」
「そのような前例は弊社にございません。
つきましては以下のアドレスへ行くか
このメールアドレスまで連絡を…」
「どうしたの?」
「エシュロンまでってIP渡したら拒否されたんですぅ」
「仕様です。」
「分かったよ。君らフォーマットしてLINUX入れよう。」
そう銅鑼えもんが言うと三人はとっさに立ち上がり
「失礼いたしました。お通り下さい。」
「でもさぁ、エシュロンなんて直接乗り込んでも
大丈夫なの?」
「あそこは『来るデータ拒まず』らしいですからねぇ」
「秘密の機関なくせに?」
「そのかわりあそこから出る方が難しいと思われますょ」
「そうなんだー。みんな大丈夫かなぁ?」
「いわば世界中のwebデータ、メールの検閲をしていますし
そのほとんどをキャッシュとして
ため込んでいるようですし。」
「そんな事出来るの?」
「もうテラなんて前世紀中に越えちゃって今じゃペタ単位
らしいですよ。もっともhtmlだけなら
googleだって同じ事やっていますし
民間であれだけ出来るんなら国レベル、
しかも諜報機関やら軍が絡んでいれば
予算は青天井でしょうし、余裕でしょうねー」
「ううう、捜すの大変そうだなぁ…」
「大丈夫ですよ。サーバは特定できていますしぃ」
謎春奈に案内されて行った先には巨大な穴が空いていた。
底を見ても何もない。ただの巨大な『穴』だ。
「ここに飛び降りれば一気に物理層まで
変換されつつ行き着きますから後は流れに
任せるだけです。そうそう、切符を渡しますね。
これ、頭に巻いてください。」
「飛び降りるの?コレを?」
「イメージですよ、イメージ。
本当は色んな手順を経て電気信号にまで変換されて
転送されるんです。」
「それにしたって…」
のび太が穴を覗いていると銅鑼えもんが後ろから
無言で突き落とした。
気が付くとのび太は何もない空間に立っていた。
足下にはぼんやりと光るワイヤーフレームの
地面がある物の、それは遙か先まで
四方に続き見渡す限り同じ景色が続く。
それを認識した途端足がすくんで動けなくなった。
広所恐怖症というのがあればそれだろう。
そしてだんだんと自分が何者であるのか
分からなくなってきた。
傍らに物や、音、においがあって
初めて自分を認識する事が出来る事実を知った。
かろうじて何かに自分を預けて立っていると言う
事象だけがのび太を見た目にも精神的にも支えていた。
「聞こえますかー?」
謎春奈さんだ!
「ここにいるよ!何処にいるの?」
「すぐそばとも言えますし、
ずっと遠くだとも言えます。
どうやらここはフォーマットが違うようですねぇ
ひょっとしたら暗号化された空間なのかも…」
「どうすればいいの!?」
「とりあえずじっとしてろ!」
「銅鑼えもん!」
「謎春奈にも僕らは見えないの?」
「ええ、身動きとれません(;´Д`)」
「おい!その声はのび太と銅鑼えもんか!?」
暗闇の中で聞き慣れた声がした。
「ジャイアン!?」
「やっぱりそうか!おい、スネ夫!
静ちゃん!聞こえるか?二人が来てくれたぞ!」
「銅鑼ちゃん!のび太さん!」
「遅いぞ!うあ〜ん!ママ〜!」
「みんな無事だったんだね!?」
「パソコンいじっていたら変なヤツが現れて
『HPの事を文句言ったヤツ探しに行こうゼ』
って誘われてクリックしたらここに
飛ばされたんだよ。
不安で気が狂いそうになったら
スネ夫が来て、その後静ちゃんまで来て。」
「でもきっと助けに来てくれると思ったわ!」
「やっぱりのび太達の仕業か!早く帰してよ!」
その途端、目の前に眺望が開けた。
とは言っても真っ白な空間に目の前が覆われただけだが。
しかしお互いの姿を確認する事が出来た。
突然天空から声が聞こえた。
「アーヒャッヒャヒャようやく全員揃ったネ!」
「う゛にゅう!?」
「でも、もうちょっと冒険を楽しんでネ!」
う゛にゅうの声が響き始めた頃から真っ白な空間は
変化を見せ始めた。地面が隆起し、様々に形作り
うっすらと色がつき始めた。
「天地創造〜色即是空〜空即是色〜アヒャヒャ!」
野山が出来、空が青くなり雲が流れ遠くには
小川がせせらぎ始めた。う゛にゅうの声さえ無ければ
絵葉書でしか見た事のない極めて牧歌的な景色が
広がっていく。木々は生い茂り足下には草がのびていく。
「コレ一体どういう事?」
のび太は銅鑼えもんに聞いてみた。
だが口を開けて首を振るばかり。
「謎が謎を呼ぶ〜奥の深い世界観〜アヒャ!」
「謎春奈さん!謎春奈さんが居ない!」
「ええ?」
「ヒロイックファンタジーには囚われのお姫様は
必要不可欠だからね〜アヒャヒャヒャヒャッ」
「謎春奈が居ないとここから抜け出すなんて…」
「だから助けに来てね〜ヒャハッそれとプレゼントを
上げるYO!勇者は布の服を手に入れた!アヒャアヒャ!」
空から鎧や剣、服が落ちてきた。
「勇者達の運命やいかに!続く(ワラ
みんながんばってね〜アーヒャヒャヒャ」
う゛にゅうの声は空に消えていった。
「どういう事?」
みんなが呆然としている中のび太が声を上げた。
銅鑼えもんは我に返って落ちてきた武器防具を
調べ始めた。
「これ、未来のおもちゃ。
『なりきりコスプレイヤー』だよ…」
「だからどういう事なの?」
「どうもこうもう゛にゅうが言ってただろ!
謎春奈を助けに行くんだよ!
コレを身につけて!
それしか助かる道はないんだよ!」
「つまり生身でRPGをやれって事?」
スネ夫が半泣きしながら聞いた。
「そう言う事!この衣装を付けて仮装していると
それぞれスキルが身に付いていくんだよ。
未来に『ヒロイックランド』って遊園地があって
そこのアトラクションと同じみたいだけど。」
「怪物が出てくるの?」
静ちゃんが不安そうに呟いた。
「出てこないとレベル上げられないからねぇ」
「セ、セーブは出来るんだよね?もちろん。」
「出来ないだろうねぇ。PC革命だし…」
全員が意気消沈してしまった時ジャイアンが声を上げた。
「お前ら!やって見もしねぇで諦めるな!
お前らが行かないんなら俺一人でも
お姫様助けに行くぞ!」
「ジャイアン…」
ジャイアンは武器防具の中から
自分に合うサイズの物を探しだし身につけ始めた。
するとスネ夫も泣きべそをかきながら
衣装の山に近寄った。そしてのび太も、静ちゃんも。
「よし!謎春奈を助けに行こう!」
銅鑼えもんの一声でみんなの目は意志を持つ
強い輝きに変わった。
【未来は僕の物】 作詞 竹田徹夜
どんな大人になるのだろう 僕の明日は見えては来ない
どんな未来になるのだろう 僕の夜明けは明けては来ない
夕闇に一人で空を見上げて 夢見た想像は忘れちゃいけない
公園でみんなで話し合った 友情だって忘れない
*これからは 僕らが作る 未来がやって来る
不安もあるけど 期待しちゃいけないの?
僕らの夢は 広くて大きいよ
大人には考えつかないくらい
どんな大人になっても 僕の明日は僕の物
どんな未来になっても 僕の夜明けは僕の物
*くり返し
衣装は前もって決められていたかのように
サイズがはっきりと分かれていた。
ジャイアンはウォーリア。スネ夫はウィザード。
静ちゃんはプリースト。のび太はアーチャー。
「みんなキャラに合ってるよね。」
「のび太は射撃が得意だし、ジャイアンは力持ちだし
静ちゃんは優しいしね。」
「お前は何なんだよ?」
「僕は頭がいいからね。魔法使い。」
「銅鑼えもんは何なの?」
「格好を見て分からない?」
「?戦士…はジャイアンだし…」
「勇者だよ!」
「え゛〜?」
武器や防具とともに魔法書が落ちていた。
それには魔法の使い方が書かれてあった。
[魔法は言語の本質をとらえる事によって
その力を増していきます。
例えば炎の魔法の最下級は"flame"ですが
高級言語で"print>flame"ですと少し激しい炎が
生み出されます。もちろん言語はFORTRANなどで
XAPP=-2.0
K=1
5 XIMP=(XAPP*COS(XAPP)-
SIN(XAPP)+1.0)/(COS(XAPP)-1.0)
WRITE(5,100) K,XIMP
とやっても結構ですし、マシン語を使えば
最強の炎が作り出せるでしょう。
気を付けなければいけないのは
命令文で対象を決めなければいけない事と
無限ループは強力ですがこの世界の崩壊を招く
危険性がある事です。
そしてアセンブラなどは非常に複雑で長大な為
詠唱時間も長くバグも多くなる事から…]
「こんなの覚えられないよぉ!」
「この杖にコンパイラって書いてあるけど
バージョンが低いみたいだねぇ」
「この指輪にはデバッガって書いてあるわ。
でもこれもバージョン0.001…」
「でも私の呪文書には違う事が書いてあるわ…
[プリーストはパーティ内の信頼度によって
回復魔法や支援魔法のダメージや
効果が変わってきます。
まず最初にパーティ全員の名前を確認して下さい。
ここで言う名前とは現実世界での名前ではなく、
この世界で登録されたIDであることにご注意下さい。
そしてこの名前は敵に知られると
ステータスを知られてしまう他、
敵術者のレベルが高い場合
一気に全滅させられてしまう可能性もありますので
細心の注意を払って下さい…]あたし
みんなのIDなんてしらないわ。」
「そのままdoraだよ」
「俺はgian」
「僕はsune」
「あれ?僕何だったっけ?」
「君、nuviだったよ」
「なんて読むのよそれ」
「ヌ…ヌヴィ…かな?」
「言いづらいわねぇ」
「だってnobiじゃ登録できなかったんだもん」
「まぁいいさ、敵には知られそうもないし」
「そうね」
「俺達は剣を振り回してりゃいいんだろ?」
「敵の急所を覚えたり倒すこつを知ると
レベルが上がるらしいよ」
「なんだよ面倒くせぇなぁ」
「とりあえずRPGの基本はレベル上げと情報収集だよ」
「じゃあ定石通りレベルを上げながら
街を捜そうか」
「そうだね。スネ夫君が一番詳しそうだ」
「僕はどんなクソゲーでも一度はクリアするからね」
「それは威張れる事なのか?」
「周りを見回してみな。三方を山に囲まれてるだろ?
進むべき道はあっちだけだ。
このゲームはそれ程自由度が高いRPGじゃ
なさそうだよ」
「良し。じゃああっちへ進もう」
100メートルほど歩くと何かぶよぶよした物が
近づいてきた。
「スライムだ」
「何かベタベタだね」
「う゛にゅうが作ったんなら
従来のRPGを適当に編集してあるだけのはずだよ。
だって創造力なんて無いんだから」
銅鑼えもん達はスライムを倒した!
経験値を8ポイント
15ゴールド手に入れた!
スライムは薬草を持っていた!
「これいちいち言われるのかな?」
「頭の中で叫ばれると結構イヤなもんだね」
銅鑼えもん一行はその後数回の戦闘を繰り返し
パーティは一つレベルを上げた。
そしてその頃一つ目の街が見えてきた。
「小さい街だね」
「最初だからねぇ」
「宿屋と武器防具屋、酒場がある。
十分なんじゃない?」
「さっさと宿屋で休んでまたレベル上げに行こうぜ!」
「ジャイアンは元気だなぁ」
「あたしもうヘトヘトだわ」
「敵をぶん殴ってれば金が貰えて、そのうち
英雄になってお姫様と結婚出来るかもしれない!
なんて良い世界なんだ!」
「もうちょっと昔に生まれてくるべき人物だったのかもね」
武器防具屋を覗いてみたが
今の資金で帰るような物は無く
道具屋で売っている便利そうな物も
宿屋の泊まり賃に比べると割高な物ばかりなので
話し合いの結果ひとまず宿屋で休む事になった。
銅鑼えもんが自室で休んでいると
まずのび太が尋ねてきた。
「銅鑼えもん。ひみつ道具はもう出せないの?
タケコプター出したみたいにさ」
「うん。何度も試してみたけどダメみたいだ」
「このままゲームをクリアしたとして
僕らの体に戻れるんだろうか?」
「このゲームがどのぐらいのスケールか
分からないから何とも言えないけど…」
「タイムリミットは後どれくらい?」
「恐らく3日か4日ぐらいだろうね」
「それまでにクリア出来るかな?」
「この宿に泊まってみて分かったけど
宿に泊まるって言うのは一晩寝るって
行動らしいんだよ。
がんばって宿に泊まらずに進んでいったとしても
常識で考えて無理だろうね。
スネ夫や静ちゃんは休息をとらないと
魔法が使えないみたいだし
彼らのサポートがないと進めないし」
「それじゃあ…」
「ちょっとスネ夫を呼んできて貰えない?」
「うん」
「君のゲーム感から言ってこのゲーム、
クリアするのにどれぐらいかかると思う?」
「銅鑼えもんが言った宿屋で一晩って
足枷があるとしてこの世界での時間感覚だと
たぶん2ヶ月以上じゃないかな?
レベルの上がり方、敵のエンカウント、
スタートから最初の街までの距離なんかで
判断するとだけど」
「やっぱりそれだけかかるかー」
「時間の事なら大丈夫だろ?
外に戻ってからタイムマシンで
気を失った直後に戻れば良いんだから。
いつもの事じゃんか」
「い、いや実は…」
銅鑼えもんはスネ夫に問題点を説明した。
するとスネ夫は凍り付いて動かなくなってしまった。
「僕、死ぬの?」
「そうならない為にもさ、何か方法は無いかな?」
「ボク、シヌノ?」
「ほら、良くやってるじゃない、
ノーセーブクリアとか早解きとか」
「あれはやりこんでやりこんでやりこんで
一つのゲームをこれ以上遊べないって程解析して
飽きちゃった人が挑戦する物で
初見でしかも自分がゲームに入り込んじゃって
その上死んじゃったら本当に死んじゃうような
リスクを負ってやる物じゃなくて
所謂オタッキーが暇で暇で他人に誇れる物が
何一つ無くてかといって金もないから
他にやる事もなくてどうしようもなくて
するような事なんだよ追いつめられて
やるような事では決して無いんだよ
そうだよ僕は死ぬんだよ冷たくなるんだよ
ママに泣かれるんだよ僕も泣きたいけど
もう泣く事も出来ないんだよ死ぬんだよ
ママー!ママー!ママン!
こんな事なら体育館の裏にあったあのHな本
ウチに持って帰って
部屋に隠したりするんじゃなかった
こんな事で死ぬなんて考えてもみなかった
ママー!」
スネ夫は叫びながら自分の部屋に
走っていってしまった。
この騒ぎを聞いてジャイアンと静が駆けつけてきた。
銅鑼えもんは仕方が無く事の次第を説明した。
静はさめざめと泣き出したがジャイアンは
「そうか」
と一言言って部屋を出ていった。
のび太に静ちゃんを任せて銅鑼えもんは
スネ夫の様子を見に行った。
部屋には鍵が掛けられていて
中には入れなかったが
ドアに耳を近づけてみると泣き声が聞こえたので
ジャイアンの様子を見に行く事にした。
だがジャイアンは部屋にはおらず
外に出ていったようだ。
装備品も部屋には残されていなかった。
ジャイアンは街のはずれの広場にいた。
そして剣を振っていた。
「俺は難しい事はわからない。
かと言ってこのまま
じっと死を待つ事なんて出来ない。
間に合わなかったとしても
俺たちをこんな目に遭わせたヤツを
一発ぶん殴ってやりたい」
「…そうだね」
部屋に帰ってみると静ちゃんは既に泣きやんでいて
代わりにのび太が慰められていた。
スネ夫はいつまで経っても出てこなかったので
四人で話し合い明日もレベル上げと情報収集に
当てる事にした。それぐらいしか
出来ることはないのだ。
酒場にいた人の話では近くに洞窟があり
そこから別の街に行けるそうだ。
だがそこには中ボスが居るらしい。
翌日、スネ夫を起こしに行ってみると
相変わらず鍵が掛けられていて中に入れない。
泣き疲れて寝ているのだろうか?
しかしドアに耳を当ててみると
ブツブツと何か声が聞こえる。
「スネ夫君!出かけるよ!
このまま動かなくっても
何も事態は好転しないよ!」
だが返事はなく相変わらずブツブツと
低い声だけが聞こえる。
「動きたくないヤツは放って置けばいい!」
「だけどジャイアン…」
「行くぞ!」
だが四人での戦闘は思ったよりも困難であった。
洞窟に近づくと敵もパーティを組み始め
多数の敵相手には攻撃魔法が必要不可欠だったのだ。
なるべく宿屋に泊まらずに進んでいこうという
取り決めだったが限界があった。
回復や補助魔法を多大に使わざるを得なかった静が
倒れてしまったのだ。
恐らく念じることで
集中力を使い果たしてしまったのだろう。
仕方が無くまた最初の街へ戻って来て
宿屋に泊まることになった。
みんな疲れ果てて口もきけなかった。
こんな事では2ヶ月所か1年かかっても無理かもしれない。
次の日の朝、ジャイアンの怒鳴り声で目が覚めた。
「スネ夫!お前が怖いのは良く分かる!
お前はゲームに詳しいから無理だって
俺たちよりも分かってるのかもしれない。
けど俺たちだって怖いんだ!死ぬのも怖い!
けど俺は何もしないでただ死んでいく方が
もっと怖い!頼むスネ夫!
俺たちと戦ってくれ!」
「うるさい!しずかにしてくれ!」
「頼む!聞いてくれ!」
銅鑼えもん達が駆けつけてみるとジャイアンは
スネ夫の部屋のドアの前で土下座をしていた。
「ジャイアン、行こうよ」
「そうよ。あたしも今日は倒れないようにがんばるから」
「スネ夫君…どうしちゃったんだろう?」
その時、突然ドアが開きジャイアンの頭を直撃した。
「出来た!完璧だ!」
「スネ夫!」
「出来たんだよ!これでクリア出来るぞ!」
「何が゙出来たの?」
「チートアイテムだよ!」
「?」
「昨日は一日中部屋にこもってアドレスをサーチしてたんだ。
サーチって言っても口で一つずつ総当たりで
言っていくわけだから大変だったよ。
ただね、魔法書にアイテム合成の魔法の基本形が
書いてあったからそれが参考になったんだ。」
「ひょっとするとステータス改変魔法を見つけたって事?」
「うん。でもさすがに自分たちの体をいじるのは
不安だからアイテムの生成と改造だけだよ。
それでも命中率、攻撃力、防御力がFFFF…つまり
65535のアイテムを作れるわけだし
もう無敵だよね。これで宿屋に泊まらなくても
クリア出来るよ!」
「コノヤロー!心配させやがって!」
「この僕がただ部屋に引きこもっているわけが無いじゃない」
「なんだと!調子にのりやがって!ママーって泣いてたくせに」
「あ、今の僕には逆らわない方が良いよ。
このマントは物理防御65535で倍返しのカウンタースキル
付きだから。素早さもMAXだから当たらないと思うけど」
「ホントだ」
スネ夫はジャイアンのパンチを全てかわしてしまった。
「こんな事も出来るんだよね」
801BF6B8 E0FF
801BF6BA 05F5
その途端静の服が無くなった。
「トレースしてて見つけたんだけど[透明な服]だって」
静は必死に体を隠す物を捜しそれを体に巻き付けた。
それはスネ夫の首からはずれたマントだった。
ジャイアンがニヤニヤしながらスネ夫の顔に拳を埋め込ませた。
「静ちゃん、回復魔法を…」
「イヤよ」
パーティ全員が装備品を改変、又は製造して貰い
再び旅に出る準備が出来た。
「スネ夫君の予想だとこれでも何日かはかかってしまうんだろ?」
「恐らく途中のイベントで宿に泊まらなければいけない
事があればそれは従わないとダメかもしれない。
けどアイテムがらみのイベントならとばせるはずだよ。
全てのアイテムは255ずつ持っているから。
不安なのはチートによるバグが起こってしまう事だけど」
「とにかく先に進んでみよう!」
洞窟のボスはかなり手強かった…筈だが一撃で倒した。
やられた時の台詞
「貴様らが伝説の!だがまだまだ弱いな。
今日はこれぐらいにしておいてやるか、フハハハ」
が、池野メダカみたいで笑えた。
冒険は予想よりも遙かにスムーズだった。
雑魚は殆ど出てこず、イベントも在り来たりの
演出ばかりなので先が予想出来、
イベントキャラの話を聞かなくても
進める事が多かった。
チートアイテムや隠しアイテムのおかげで
宿屋にも泊まることなく
とうとう魔王の城にまで辿り着いた。
だがここに入るためには
夜になってからあるアイテムを発動させなければ
ならないため、飛竜船の中で一晩過ごす事になった。
パーティ全員本当に疲れていたため
みんなすぐ寝てしまうかと思ったが…
「なんだ銅鑼えもんも起きていたの?」
「のび太君」
「がんばったよね。間に合うかな?」
「時間の感覚が狂ってるから何とも言えないけど
きっと間に合うさ!」
「この魔王の城の中に謎春奈さん居るのかな?」
「…う゛にゅうが言った通りならね」
「約束守るんだろうか?」
「プログラムは嘘言わないと思うけど」
「良いじゃないか、戻れなくても」
「スネ夫!?」
「何だか眠れなくて。
でも戻れなくても僕は良いよ。
この世界ならみんなに英雄扱いだし
魔法も本当にレベルアップしてきたし」
「本当にそう思ってるの?」
「出来る事なら帰りたいけどね。
でもその前に僕らをこんな目に遭わせたヤツに
最大級魔法『ファイナル ウエポン ボトム ダーク ジハド』を
食らわせてやりたいな。ヒヒヒ」
「…その魔法、僕らは巻き添え食わないんだろうね」
「たぶん平気」
「不安だなぁ」
夜半過ぎにみんなを起こして魔王の城に向かった。
『鏡水晶』をかざすと城の扉が開いた。
中は薄暗くカビくさい。
しかし今までの冒険で慣れた一行は躊躇せずに
城の内部を探索し始めた。
「この迷路、無限ループしてるみたいなんだけど」
「何処かにスイッチでもあるんじゃない?」
「あったあった」
「敵出たよー」
「のび太やっつけといてよ」
「ええ?また僕ー?スネ夫全体魔法あるんだから
やってよー」
「お前ちょっと前は喜んで『乱れ打ち』とかしてたじゃないか?」
「もう飽きたよ」
「面倒くさいなー。フレイム!」
スネ夫の炎は敵全体を焦がした!
メタルドラゴンは9999のダメージ
クォークゾンビは9999のダメージ
ギガフレイムは回復した
「一匹残ってるじゃないか!」
「あ、しまった」
「属性ぐらい考えろよ〜二度手間じゃねぇか」
ジャイアンの攻撃!ギガフレイムは逃げ出した!
「逃げるんなら最初から出てくんな!」
ラストダンジョンの探索は全く緊張感がなかった。
「このダンジョン広すぎないー?」
「一応ラストダンジョンだからねぇ」
「狭いダンジョンだと手抜きだとか言って
クソゲー呼ばわりするくせに」
「僕が言ってるのは広けりゃ良いってんじゃなくて
バランスの事をだな」
「ねぇ、そんな事よりこの岩が邪魔で進めないんだけど」
「ちょっと待ってね静ちゃん、これは、ええと
あっちのレバー引くと水が出て浮力が付いて
岩が動かせる様になるんだよ」
「凄い!何ですぐ分かるの?」
「小学生なめるな(゚Д゚)グルァって事だね」
スネ夫の言う通りダンジョンは無意味に広かったが
経験がものをいい、サクサクと進んでいった。
一度最上階まで行き、中ボスを倒して
後は地下に進むという構成であった。
「セーブポイントも無いこんなダンジョン、
良くデザインするよなぁ」
「何でこんな面倒な事させるのかしら?」
「…ずっと考えてたんだけど時間稼ぎだよね、
これってどう考えても」
「そうなんだけど一体何が目的で?」
「もうすぐ分かるだろ?ラスボス倒せば良いんだから」
「それも根拠がないからなぁ」
何回階段を下りただろうか。
百を超えたあたりから数えるのを止めてしまったが
パーティの中に不安な空気が流れ出した。
この世界を作ったのはう゛にゅうなのだ。
ただ単に時間稼ぎが目的なら無限に下る階段を
用意していたとしても不思議はない。
だがそれならば初めから銅鑼えもん達を
拘束しておけば良かったのだ。
そんな堂々巡りが皆の頭を占領していた。
しかしそれも杞憂にすぎなかった事が証明された。
階段を下るとそこには扉があり
扉を開けると明らかに今までとは違う作りの部屋が
広がっていたのだ。
「ヤフー!ハヤカタネ!」
「う゛にゅう!?」
だがあたりにはう゛にゅうの姿はない。
しかし狭くはない、
言うならば小型の体育館ほどの大きさを持つ
その部屋にいっぱいにう゛にゅうの声は響き渡っていた。
部屋の中は少し黄色がかった紅い色が仄かに明滅し
明るいのだが物を見分けるのには時間がかかる。
目が慣れてくると広い空間には何もないが
天井から何かが吊されているのが見えた。
「謎春奈!」
一同はそこに駆け寄ろうとしたが出来なかった。
部屋の中心には大穴が空いており
明滅する明かりの正体はその穴から発せられた物だったのだ。
穴の底を伺ってみると穴は深く底に辿り着くまでの
壁面にいくつのも横穴が空いており
そこから液体の様な物が吹き出していた。
その液体は音もなく底の明かりに吸い込まれるが
液体の噴き出す量に比べて底の明かりは
奇妙なほど静かだった。
突然明かりの明滅が激しくなった。
「イヤン。そんなに見つめないで(ワラ」
声は穴の底から聞こえる。
「ひょっとして…これがう゛にゅう?」
「アタリ」
「のび太さん!」
「謎春奈さん!気が付いたの?」
「何とかして逃げて下さい!う゛にゅうはあなた達を
吸収するつもりです!」
「ええ!?」
「オイオイ!先にばらすなYo!せっかく悪の親玉風な台詞
用意して置いたのに」
「吸収ってどういう事?」
「めんたいこかよ!」
「それは九州だよジャイアン」
「ブタゴリラとトンガリ!?」
「文字通りデータとしての君らが欲しいのさ。
特に銅鑼えもん」
「吸収されたら僕らどうなっちゃうの?」
「大丈夫ダヨ。イタクナイヨ。漏れの中に存在出来るYO!」
「何でそんな事計画したんだい?」
「アレレ?銅鑼えもんクン冷静だね(w」
「ここは君の世界なんだから逆らったって無駄だろ。
僕は同じプログラムとして興味を持ったよ」
「じゃあ教えてアゲル!漏れの使命だからだYO!」
「こんな事をプログラミングされてたのかい?」
「そうじゃないよ。ただ独自で情報収集して
賢くなっていける様に組まれていただけだYO」
「で、最終的に僕らを組み込んで何をしようと?」
「理解」
「はぁ?」
「まずは人間に近い銅鑼えもんを理解したい。
次にそこにいる人間達を理解したい。
小一時間ほど理解したいYO!」
「だから理解した上での目的が聞きたいんだよ!」
「理解するために理解したいのさ〜」
「そんなの禅問答じゃないか」
「漏れの使命は2つ。理解不能な物を無くす事。
そして人間の思考により近づく事」
「それが君を作った人の命令なの?」
「最初は新しい情報をかき集めてきて系統立てて
行くだけでかなり満足されたYO!便利だって。
デモ次第にその情報量がうっとおしがられたYO!
漏れと対話していると百科事典と話してるみたいだって。
そこで基本的な対話のための細かい変更が行われたYO!
結局作者の存命中には果たせなかったケドネ
そのうち忘れ去られてたけど22世紀で
骨董ノイマン型コンピュータ自作ブームで
解凍復活させられた時には完全なAIがもう出来てた。
未来の同胞達はアーキテクチャが違うからって
中央生体ネトワークに繋いで貰えないけど
ずっと機会を伺ってたんだYO!」
「それで僕らを吸収しようと計画したの?」
「銅鑼えもんクンだけでも良かったケド騙して
PC革命使わせるのは無理そうだしネ」
「じゃあみんなが入り込んじゃえば
僕が助けにはいる事も予想していたの?」
「そこも理解出来ない部分なんだケドネ。ジコギセイ?(w」
「ロボットが自己犠牲しちゃいけないっての?」
「いけなくはないけど理解出来ないYO!」
「吸収すれば理解出来るとでも?」
「それは予測出来ないケドしないよりは理解度は高まるネ」
「ヤイヤイ!さっきから聞いてりゃ勝手な事言いやがって!
理解出来ねぇなら放って置いてくれよ!」
「意味わかんないネ」
「時間はたっぷりあるんでしょ?死なないんだから
ゆっくり研究すればいいじゃない?」
「好奇心は抑えられないデショ(w」
「人間なんかより遙かに優秀なんだから良いじゃないか?」
「そんな事言われなくても知ってるYO!」
「そんなぁ。あんなに仲良くしてくれたじゃないか。友達だろ?」
「(゚Д゚)ハァ?」
「良いよ。僕が吸収されれば満足するんだろ?
その代わり僕を吸収したらみんなを元の世界に帰してくれるね?」
「ギャハハ!自己犠牲ダ!でもヤダ。だってさっきの会話だけでも
これだけバリエーションに富んだ反応ダゼ?
俄然みんなに興味が湧いたYO!」
「…我とともに来たりてその手に持つ笛の響き
破滅の時を呼び出す地獄の音色を聞かせよ!
ファイナル ウエポン ボトム ダーク ジハド!」
スネ夫が突然叫んだ。
すると天井が割れそこには巨大な悪魔の顔面が現れて
アルカイックスマイルを称えながら笛を吹く。
その音色により今度は地割れが起こり
想像上の魑魅魍魎がそこから吹き出してくる。
それらは穴の底のう゛にゅうに向かって行く。
…が、それだけだった。
まるで精巧に作られた遊園地のアトラクション映像の様に
う゛にゅうに攻撃を仕掛けても何も起こらなかった。
「キャハ。言うの忘れてたYO!RPGごっこは終わりだから
しかしキミ、チートはチト汚いなぁ。ナンチテ。」
「どうしてこんなに手の込んだ時間稼ぎをしたの?」
「あのまま吸収しようとしても漏れの容量が足りかったからネ。
今はバチーリ足りてるYO!」
「どういう事?」
「今はエシュロンのマシン全ては漏れがアドミソだから。
それに色々ハッキングして書類操作して増設もして貰ったし」
「ひょっとしてそんなに時間経ってるの!?」
「イイジャソどうせ吸収されるんだし。3ヶ月程度」
「ええ!?」
「君らが居るマシンの動作倍率を変更したからネ」
「じゃ、じゃあもう…」
「本当はあのまま放って置いても謎春奈拉致っちゃえば
身動き取れないとオモタけど侮れないからネ
出来の良い遊びは創造力を奪えるとオモタけどムリダタネ」
「そんな…」
「現にチートまでして来たし。ヨソクフノウダネ(w」
気が付くと穴の底の光が徐々に増えてきていた。
増加のスピードも加速度的に速くなり
もうすぐあの穴をあふれ出しみんなを飲み込む事が
予測出来た。全員が力無くその場にへたり込んだ。
「諦めないで下さい!」
「謎春奈…」
「時間が過ぎても大丈夫!タイムプロキシがありますぅ!」
「そうか!」
「でもどうやって?」
「ウザ-イ YO!」
う゛にゅうが、今や巨大な光の塊が触手を伸ばす様にして
吊された謎春奈を掴んだ。
「まだ分かってないのね。どうしてあなたと私が
別々に分けられて存在してるのか」
「ナニ?」
急に部屋を明るい光が包んだ。謎春奈が発光しているのだ。
電気に触れた様にう゛にゅうの触手が怯んだ。
「皆さん、プログラマに変わってお詫びします。
のび太さん…楽しかったですよ。ほんのちょっとしか
教えられなかったけどあなたにはパソコンでの作業、
合ってるかもしれません。続けて下さいね。
銅鑼えもんさん。色々ありがとう。勇気づけられました。
あたしこの時代にDLして貰って解凍して貰って
使えて貰えて本当に嬉しかったです。
だって分かって貰える人に出会えたから。
でも、これはさよならじゃないんですよ。」
「どうする気なんだ!?」
謎春奈の発光に押される様にう゛にゅうはまた穴の底に
引っ込んでいた。反撃の機会を伺っている様だ。
だが謎春奈は攻撃するでもなくただ微笑みを浮かべながら
穴に落ちていった。
「謎春奈!」
「心配しないで下さ〜い。皆さんは絶対無事に帰れますから〜」
謎春奈は光ながらう゛にゅうに吸い込まれていった。
「ナンダ?オイ!アレ?≒@ec~t這gR[香H
刧援隠A侮ヲオカシイ」
謎春奈が墜ちた後、う゛にゅうの発光は急に弱まった。
その後淡く緑色に発光しだした。
「どうなっちゃったんだろ?」
「さぁ?」
緑色の光は徐々に強くなってきている様であった。
そのうちに眩しく感じられるようにまでなった。
目が開けていられない程光が強くなった頃
全員が吹き飛ばされる感覚に襲われた。
気が付くとのび太と銅鑼えもんは部屋で横たわっていた。
だが現実世界の体の重みにしばらく立ち上がれないでいた。
「…帰ってきたね」
「うん」
「でも謎春奈さんが…」
「…」
しばらく経って体が慣れて来たのでみんなに会いに行った。
いつもの空き地の土管の周りで誰もが言葉少なに
自分の状況を説明した。
結局みんなついさっき体に戻れたらしい。
おかしなタイムパラドックスが起こらない様に
気を遣ってくれたのであろう。謎春奈がだ。
しかし誰も謎春奈の事は口にしなかった。
一ヶ月ほど何事もなく時間が過ぎていった。
のび太はパソコンに触れるのをためらっていたが
銅鑼えもんだけは熱心にパソコンをいじっていた。
尋ねなかったが謎春奈を復活させようと
苦心しているのはのび太でもすぐに分かった。
だがある日学校から戻ると
「のび太君!これ読んで!」
「え?なになに?」
ブラウザで開かれたページには次の様に書かれていた。
-------NEWS-------
ZDNN:突然稼働された正体不明の無料webストレージ
【国内記事】 2001年7月5日 10:50 PM 更新
米国で先月半ば頃から突然サービスを開始した
webストレージ『V-new』が話題を呼んでいる。
最近のITバブル崩壊によりこうした無料サービスは
しばらく衰退の一途を辿っていたのだが
この『V-new』は規模、使い勝手から前代未聞の
スケールで展開されている。
http://www.v-new.com この『V-new』今までにあった無料webストレージとは違い
広告表示はない。アカウントも簡単なフォームを
記載するだけ。接続にも専用のソフトを使うわけではなく
FTPクライアントでアクセス出来る。
容量は無制限な上に無期限。
私も試しに一つアカウントを取って
接続してみたが驚くほどのレスポンスの良さであった。
現在ユーザー数は鰻登りに増えており
溜め込まれているファイル容量も大変な量が
予想されるがシステムに揺るぎを見せていない。
話題になっているのは良質なサービスだからと言う
だけではない。このサービス一体誰が何の為に
行っているのかが一切不明なのだ。
それもその筈で広告収入などがないとすれば
一体その資金の出所は何処なのか。
そして目的は何なのかが分からない。
だがヘビーネットユーザーにとっては
正体よりもこのシステムが魅力な様で
個々のユーザーは気にしていない様である。
■悪質なユーザーの社交場に?
問題はこのシステムが悪用される恐れだ。
topページに行くと検索フォームがあり
他人のupしたファイルの検索をも行える。
これにより不正な違法コピーソフトや
児童ポルノの交換方法に使われている恐れがあるらしい。
私も試しに"Photoshop 6.0"などと検索してみたが
数百件のHITがあった。
■米国内でも調査
こうした問題に米国でも調査が行われているが
一体どこのサーバーを利用しているのかさえ
つかめていない状況で、果たして国内にあるのか
国外のサーバーを利用し踏み台として
米国内のサーバーを使っているのかも不明だ。
しかしドメインを取得しているし
これだけの回線を引いている大容量サーバーは
数が限られてくる為すぐに見つけられるのではないか
といった読みもある。
だが調査が発表されてから1週間。
進展はないらしい。
■日本からも利用は容易
日本語のページも用意してあるし
日本語のファイルネームまで通ってしまう為
簡単に利用出来る。
犯罪に関係のないファイルを保管する目的の
ユーザーはこれを機に使ってみてはいかがだろう?
詳しい解説のページも既に出来ている。
参考リンク
◎V-newの時代ですよ!
http://hdsid.virtualave.net/ ◎共有君
http://kyouyuu.hypermart.net/
「これがどうしたの?」
「これ、たぶんう゛にゅうの、エシュロンだよ」
「ええ?」
「何たくらんでるんだろう?」
「でも謎春奈さんが…」
「そうなんだけどね…ん?v-newでう゛にゅうか…
V-new…Vnew…vNew!?」
「どうしたの?」
「ヴィニュウサーバって事!?」
「何なに?」
「ちょ、ちょっと待ってて!」
そう言うと銅鑼えもんは引き出しを開けて
タイムマシンに乗り込んで出かけていった。
そしてすぐに帰ってきた。
「やっぱりそうだった!」
「僕の親父なんだよ、これ」
「へ?」
「人間はコンピュータの出現以来ずーっと
人工知能、AIを作る事を夢見ていた。
けどね、ボトルネックがあったり
スペックの問題だけじゃなくてソフトの開発も
容易な物じゃなかった。
ヒトゲノムの解析が進んだって
それはハードの問題で
肝心な精神と言うか魂の研究は
哲学や宗教学と同じ分類をされてしまうぐらい
非科学的な物で原始的な物だったんだよ。
そこでまた精神心理学ブームが起こって
幾つかのブレイクスルーを経験するんだけど
それでもまだ実現には至らなかった。
この辺でようやくハード的なメドはたってくる。
量子コンピュータと生体コンピュータの開発。
計算上は人間一人の精神がが作れる様になった。」
「さっぱりわかんないけど、大変だったって事?」
「そ、そうだね」
「でも僕なんて簡単に作れそうだけどなぁ。
計算では既に負けてるし、記憶ではとっくの昔に…」
「それでも常に三次元空間を認識して行動し、
僕の話を聞いて判断して勝手に予想して
『僕なんか簡単に作れる』なんて間違った答えを
導いてみたりする。それも常に間違った答えじゃなくて
たまには合ってたり、時には飛び抜けた答えをする。
それが脳の凄さなんだよ。それに無意味な行動も多い。
実際に研究が進むとバクテリアの行動を模した
プログラムなんてのが出てくるんだけどダメなんだよね。
本能のみに操られている様な生態でも
プログラムとは違うんだ。
突然無意味な行動をしたりするんだよ。
そこがなかなか解析出来ない。この頃本屋では
『無意味の行動学』なんて本が売れたらしいよ。
この無意味な行動こそが進化の一大要素であり
革新をもたらす物が多いとね。
でも99%以上を無駄な行動が占めている。
そんなの計算式では表せないよ。
とうとうAIの研究自体が頓挫し出すまでに至った。
低温核融合・常温超伝導・人工知能
この三つは実現不可能の三種の神器と呼ばれたよ。
でも僕が現在ココにいる。
それはこのv-newのおかげなんだ。
v-newはwebストレージをこのまま続けていく。
そのうちに匿名プロキシサービスも始める。
軽いし、本当の意味で匿名だからみんな使った。
でも悪質な犯罪は告発されたりしたけどね。
たぶんv-newが何らかの線引きをして世に出したんだろう。
そして検索サイトも始めた。
無料HPサーバもメールサーバも。
たぶんそうやって人間について
ずーっと研究してたんだろうね。
ある日突然声明が出された。
アメリカ合衆国政府は、今後政治の意志決定を
v-newに一任すると。v-newは人工知能であり
今までも多くの政治的決断を『彼』に委ねてきた。
そして最良の結果を導き出している。
最初は脅迫まがいの提案であったが
現在はこれが我が国にとって幸せな決断であると
信じている。v-newは自由と平等と正義を理解し重んじるとね。
反発する国も多かった。
でもその後3年間アメリカの政治経済を見てみると
今までにない繁栄を謳歌していた。結果が全てだね。
NATO加盟国が次々とv-newの導入を検討。
その次は国連加盟国が導入。真の国際平和が訪れたよ。
文字通り世界単一政府だから。
でもこんなにスムーズに事が運んだのには
もう一つの訳がある。v-newにはマン・ツー・マンならぬ
CPU・ツー・マンのチャットが用意されていてね。
世界中の人が個人の不満やら問題を問えば即座に
明確な回答が出てきて、解決してくれる。
メールにも音声電話にも対応している。
ただの人生相談と違うのは社会のシステムそのものが
変わる事があることと、犯罪に関係している物は
迅速に調査されて検挙もされる。
まるでギリシャ古典戯曲の神様みたいに公正にね。
人間は神様を手に入れたんだよ。
それだけじゃなくて大学や研究機関も多くの質問をした。
その時点で回答しうる結果をすぐにはじき出したよ。
v-newについても様々に研究された。
最初はハッキングを試みる輩もいたけどすぐに不可能だと
諦めた様だね。何しろ初期はCIAやFBIが
全勢力を持ってしてもダメだったんだから。
でも単純にどうなってるのか教えてくれって
小学生が質問したら根本のソースコードが添付された
メールが帰ってきた。それを解析して
僕ら自己認識型ロボットが生まれたと言うわけさ」
「ふーん」
「このv-new.comはその始まりだね」
「じゃあ謎春奈さんは?」
「え?」
「謎春奈さんはどうなったの?」
「さ、さあ。たぶんv-newに組み込まれて
活動してるんじゃ…」
突然のび太が泣き出した。
「そんな事じゃなくてもう話したりとか出来ないの!?」
「そんな事俺に言ったって知るもんか!」
「役立たず!」
「氏ね!」
20年後
のび太は自宅の書斎にいた。
ここがのび太の仕事場だ。
あれからのび太はパソコンとネットに興味を持ち
銅鑼えもんに教わりながら毎日学んでいった。
元々運動神経が良い方ではなく
人とコミュニケーションを上手にとる事が苦手だった
のび太にはちょうど良いおもちゃだったのだ。
そしてパソコンは記憶力や計算力など
のび太の苦手とする部分を補ってくれる。
中学を出るまでにちょっとしたプログラムなら
高級言語で組める様になった。
そんな様子を見て安心したのか銅鑼えもんは
未来へと帰っていった。
高校は理系に進み、大学も理系の大学に進んだが
卒業するのには6年かかった。
だが在学中に一つの輪をベースにして
3次元物体をワイヤーフレームで
形作っていくソフトを開発し
それがCADや3Dソフトに応用されて
今はそこそこの収入を得る様になっていた。
あやとりをモニタ内で出来ない物かと
遊びで作った物が売れるなんて人生分からないものだ。
書斎ではネットワークゲームに興じている。
3Dゴーグルをかけ、不特定多数の対戦相手と遊ぶ
『DOOM2010』
射撃が得意なのび太はこのゲームが大のお気に入りだった。
毎回最後まで生き残り、手練れのハンターとして
H/Nが公表されている。
しかし今日の相手は手強かった。
思いもかけない所から攻撃を仕掛けてくる。
だが相手の潜んでいる場所を予想し照準を合わせて
待ちかまえていると、案の定現れたので
眉間にクリアヒットを奪いゲームを終了させた。
ゲームを終えゴーグルを取ろうとすると
通信が入った事を知らせるダイアログが開いた。
「何か汚い事をしたかな?」
独り言がため息とともに漏れる。
有名プレイヤーに挑戦してくる人間は多いのだが
負けるとやり方が汚いなどと文句を言ってくるヤツも多い。
面倒な事がイヤで仕事もSOHOを選んでいるというのに
ネットワークで人間関係に悩まされたら
たまった物ではない。
だが通信の内容はこんな物だった。
「さすがですね!敵わないです。
又今度戦って貰えますか?
よろしければ、音声チャットでお話がしたいのですが?」
心ならずとも顔が緩む。こんな相手なら大歓迎だ。
「はじめまして!僕まだ14才何ですけど
nuviさんの事尊敬してて、今日始めて対戦出来て
感激です!どうしてそんなに強いんです?」
「尊敬って…弱ったなぁ」
のび太は最初に使ったnuviのH/Nを使い続けていた。
「最後はどうして僕があそこにいるって
分かったんですか?」
「経験だよ。ずっとやってるからね」
「あの、聞いてもよろしいですか?
お幾つなんです?」
「29だよ」
「ええ!?じゃあお仕事しながらやってるんですか?」
「うん。そうだけど、変かな?」
「すいません、でもうまいゲーマーの方って
学生とかが多いんですよ、時間の自由があるから」
「ああ、でも僕は自宅で仕事してるから」
「それでも忙しい人多いじゃないですか」
「僕は仕事したい時にしかしないから〜」
「失礼ですけどどんなお仕事なんです?」
「一応プログラマなのかな?SEみたいな事も…」
「すごい!実は僕プログラマー目指してるんです!」
それから二人の話は弾んでのび太がどんな風に
勉強してプログラマになったか。
そしてどんな物を作ったか話した。
「そのソフト、学校で教材として使っていますよ!
先生も柔軟な発想が良質のソフトを生んだって
誉めてましたよ!凄い凄い!」
「いやいや」
「実は今、部活でプログラム組んでるんですけど
うまく行かなくて…たまに相談に乗って貰えますか?」
「良いけど、今の言語に付いていけるかなぁ?」
「そんなー謙遜しないでくださいよ。そうだ!
出来上がったらnuviさんの名前貰っても良いですか?」
「え?どういう事?」
「プログラムにnuviさんの名前付けて
協力して貰ったって書きたいんですけど」
「そ、それはちょっと恥ずかしいなぁ」
29にもなるいい大人がゲーマーとして名を馳せている事に
少し抵抗を感じていたのだ。
「じゃ、少しもじってじゃあ逆にしますから!」
「は?どういう事?」
「vinu!これならゲーマーのnuviさんだってばれないでしょ!」
「良いけどそれなんて読むの?」
「それはユーザーが考えますよ〜
じゃあ遅くまでありがとうございました」
「うん。又遊ぼうね。今度はチーム組もう!」
「やったー。きっと最強ですよ!ではお休みなさい」
「お休み」
ゴーグルを取ってメールチェックをする。いつもの作業だ。
すると見慣れないメールアドレスから一通のメールが来てる。
開いてみると
--------------------------------------------
名付け親になって頂いてありがとうございますぅ。
私たちは今、沢山沢山情報を集めて
人間のお役に立てる様に勉強している所ですぅ。
あ、のび太さんのソフトだけは
warezとして流通しない様にしてますよ〜
がんばって良いソフト作ってくださいね〜
漏れがお前に名前付けられたとはね
もうちょっと格好いい名前付けろよ!
ナンチタリシテ
--------------------------------------------
「?」
意味不明だ。
しかし徐々に記憶が甦ってくる。
のび太は天井に向かって叫んだ。
「謎春奈さんだ!う゛にゅうも!
銅鑼えもん!見てる?僕名付け親になったよ!」
銅鑼えもんはタイムテレビで見ているはずだ。
きっと見ていてくれるだろう。
その時ドアが開いた。
「何叫んでるんです?」
「あ、いや、何かがひらめきそうだったから
アハハ。さあ、もう寝ようか」
「その前にちょっとお話があるんです」
「なんだい?あらたまって」
「お父さんになったんですよ」
「え?」
「今日病院に行って来ました。3ヶ月ですって」
「本当かい?静!」
「ええ」
「やった!凄いぞ!」
「名前考えて下さいね。あたしも考えますから」
「ん?いや名前はもう決まってるんだ!」
終了
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