今までの高橋発言
Q.ユウキの母ミランダはなぜシングルマザーになったのか?
高橋 ミランダは、実は良家の箱入り娘として育ったんです。
それで、結婚というものに対して大きな憧れを抱いていたんですね。
そんなある日、素敵な青年将校と出会って、ミランダは押しかけていってしまったんです。
当然、家族には認めてもらえず、そのまま家出してしまい、ミランダが18歳のときにユウキが生まれました。
でも、ミランダが自分の結婚観を押しつけるあまり、旦那さんとうまくいかなくなっちゃうんです。
ミランダは、恋愛と結婚に絶望して、小さなユウキを抱えて街を出ていったんですよ。
その後、良家の娘だったミランダは、ひとりじゃ何もできずに苦労するんですが……ユウキのために必死になって働いたんですね。
で、手に職をつけてレンジャーとしてそこそこ働けるようになったころ、アンフォグの村にやって来た。
そのとき、ユウキは5歳という設定になっています。
Q.ユウキの父親が物語中に登場しないのはなぜか?
高橋 ユウキとミランダのふたりしかいない家庭の、いちばんいいお話をクローズアップしたかった。
だから、父親との関係や父親のその後を描くことは意図的にやめたんです。
メインとなるのは母と子の物語であって、息子が父親を乗り越えるようなエピソードはありませんでしたしね。
ミランダは恋愛と結婚のふたつの夢に破れたけど、家庭がすきなんです。
それで家庭を守るために、ユウキとふたりで円満に暮らすことを模索してきたんですよ。
その結果、ユウキは母親を「母さん」と呼ばない息子になった。
一見、あの母子ってすごくフランクですけど、半分はミランダが装っているんですよ。
フランクに接することが、彼女にとっては家族を守ることだったんですね。
そこに父親像を持ち込んでしまうと……どうしてもハッピーエンドにしづらいんです(笑)。
あとアメリカにしてもヨーロッパにしても、最近ではメチャメチャ離婚率が高いじゃないですか。
それをタブー視するのはそろそろヤメにしたいな、とは思いました。
片親であるということはもう特殊なことではなく、普通のこととして受け入れられている。
だから隠すんじゃなくて、きちんと描きたかったわけですね。
ただ、そこに父親の姿がおぼろげにあるのはいいんだけど、その姿を追い求めるという物語にしたくはありませんでした。
これはわかりやすくするためでもあったし、日本人だけじゃなく、海外の人にも理解してほしいという意図がありましたから。
母と子だけでがんばって生きていく姿を描いていくのが、やはり必然だっただろうと思っています。
ほら、ドラマなんかだと、最初はいない父親が伏線になって物語が展開するじゃないですか(笑)。
そういう風には見てほしくないです。余計なものを削ぎ落としたので力を抜いて物語の本筋を堪能していただきたいですね。
Q.ユウキが今までに製作してきた18機の飛行機の出来映えは!?
高橋 1号機から17号機までは、まともに飛ばなかった飛行機たちです。
1号機の破片は、アンフォグの村にあるガレージの中にも転がってるんですけどね(笑)。
でも、18号機は飛んだんです。ムービーで、台風の中に突っ込んでいく機体がそれですね。
基本的に『グランディア3』の世界では、飛行機に関する方法論がまったく確立されていないんです。
飛ぶという事実はあっても、どんな飛行機が飛ぶのか、どういう設計をしたら飛ぶのかっていう情報は流通していないんですよ。
だから飛んだ飛行機を写真で見て、それを真似てとりあえず作ってみるんです。
技術的なアプローチをせずに、まずやってみよう、っていうスタイル。もちろん落ちちゃうんですけど。
Q.飛行機を飛ばせるフライトユニットはどんな機械なのか?
高橋 フライトユニットは……謎の機械ですね(笑)。
でも基本的にはエンジンと燃料を足したものだと思ってもらってかまいません。
もともと飛行機というのは、エンジンとの戦いなんですよ。
エンジンっていう大きな機械をどうやって空に浮かべるか、っていう。
で、何がいちばん問題かというと、長距離を飛ぶためには大きなエンジンが必要で、たくさんの燃料がいるということ。
それを運ぶためにどう作るかっていうのが、飛行機設計ベースになるんですよ。
でも『グランディア3』はファンタジーですから(笑)。
その部分を、ユウキのアマチュアライクなアプローチでも大丈夫なように……ということで、フライトユニットの設定を作ったんですね。
これによって現実の飛行気乗りよりも少し敷居が低くなりました。
一言で言えば、フライトユニットは”飛行気乗りの魂”。
理屈はあまり重要じゃないんですよね。
空にみんなの手が届きやすくなるように、この世界にはフライトユニットがあるわけです。
Q.アルフィナはなぜコーネルに追われていたのか?
高橋 アルフィナをアークリフに近づけるな、というエメリウスからの命令で動いていたんです。
エメリウスは、このあとアークリフで起きる一連の出来事からアルフィナを遠ざけたかったんですね。
幼少のころにエメリウスが神人になると決まってから、アルフィナをこの運命の輪から外してあげたかったんですよ。
そして人知れず幸せに生きてほしいと願った。エメリウスにはそういう思いが幼少時から現在にいたるまであったんです。
でもコーネルは、ミランダたちのの思わぬ抵抗を受けてしまう。
それで、いつの間にか捕まえるということに話が変わってしまったんですね(笑)。
コーネルは、いわれたことを忠実に守ればきっと褒めてもらえるという意識があって、
それが「手柄がほしい…!」というセリフにつながっているんですが、ぜんぜん手柄が取れずにいますから。
彼はすごくプライドが高くて、自分はもっと立派な人間だと考えているわけですよ。
ですから、自尊心を傷つけられると、いとも簡単にブチ切れてしまう。
しかも、そのあたりをミランダに看破されちゃってるから、ああいう風にあしらわれてしまうんですね。
挙句の果てには「てめえら、皆殺しにしてやる!」とまで言っちゃってますし。
そんな命令はエメリウスから下されてないのに(笑)。
Q.エメリウスの同志たちはどのようにして集まったのか?
高橋 まずコーネルとヴィオレッタのふたりは、落ちぶれた野盗の一味だったんですよ。
で、あるところでエメリウスと出会って魅了され、ついていくことにしたんです。
コーネルは”男が男に惚れる”的な意味合いで、ヴィオレッタは女性として、それぞれエメリウスに心酔していったんですね。
それとロウ・イルは、何百年も生きているゾンビ化した人間なんです。
コイツはちょっと特殊で、エメリウスといっしょにいると血がたくさん流れそうだ、楽しそうだ、という理由。
あとグラウですが…
…地味ながらも、この4人のなかではキモになっている人物ですね(笑)。
エメリウスの幼少期のシーンで、名前が”???”となっている人物、実はあれがグラウなんです。
彼は最初からアークリフ神殿にいたわけではなく、アークリフを軸に世界が構築されていて、聖獣の存在を知ったからこそ潜り込んだんですね。
だから当初はエメリウスの教育係としてアークリフ神殿に入ったわけではないんですが、そこで幼少期のエメリウスと出会い、教育係となった。
目的は、世界を支える神人としてのエメリウスの人生を、大きく脱線させることだったんです。
そうすることにより、グラウは世界が大きく変わるであろうと目論んでいたんですね。
ゾーンという敵から人間たちを守らなくてはいけない、という使命を担うのがアークリフであって、そこに神人や聖獣がいるわけじゃないですか。
でもグラウは、エメリウスと同様に神に対して疑問を持っていて、「ゾーンとはいったい何なんだろう」と考えたんですね。
彼はもともとゾーンの存在を文献などを通して知っていたんです。
それで歴代の神人の中でももっとも特殊な存在だったエメリウスに近づいて、ゾーンを実体化させようとしていたんです。
幼少期のエメリウスは、すごく聡明な少年なんですよ。
で、少年というだけあって、やはりもろい部分がある。
でも神人であるが故に、誰かにすがったりはできない立場だったんです。
そこにグラウがつけ入ったという寸法ですね。
グラウは誰にもすがれないエメリウスに対し、すがってよし、という態度を取ったわけです。
これによって、グラウはいちばんの腹心になれたということですね。
だからこそ、エメリウスはグラウに刺されたとき、すごくショックを受けるんですよ。
ただグラウからしてみれば、世界の因果律を破壊してしまうほどの力を持つエメリウスが、
最後の最後で妹、つまり人間に寄り添ったということに、いたく失望してしまうんですね。
グラウ自身はとても狡猾な人間なのですが、それでいてエメリウスという存在に魅了されています。
だからグラウにとって、エメリウスは絶対的な存在でいてほしかったわけです。
グラウの心情は、非常に複雑ですよね。最後に漁夫の利を得ようという魂胆があるにはあったんですが、
人間に寄り添うくらいなら自分の手で葬り去ってやろう、と思ったのかもしれません。
そのへんの解釈は、各プレイヤーに委ねたいと思います。
でも何だかんだ言って4人ともエメリウスのカリスマ性に惹かれたわけだから、やはりエメリウスはすごい人間ですよね(笑)。
ファミ通のグランディア3公式コンプリートガイド内のインタビュー。
―――それでは最後にファンに一言お願いします。
樋口:
本気で作ってますから。
出来れば10本くらい買って欲しいですね(笑)。
それは冗談ですけど、先ほどの金田監督と同じで僕自身もメガドライブ時代からゲーツアーツのゲームがすごい好きなんですね。
その僕が1ファンとして『グランディア』やったころに思い描いていた、究極の形のグランディアが、ついに完成しました。
発売後は、制作の苦労とか嫌なこととか全部忘れて、改めて皆さんと一緒に楽しみたいと思います。
斉藤:
結局、楽しんでくださいとしか言いようがないですが、今回は幅をすごく広げて作っています。
ザクザクとプレイすることも出来ますが、やりこめば何かが起こるような、仕掛けがたくさんあるので、そちらも楽しんでもらえたらと。
高橋:
じゃあ、最後に私のほうから。
『グランディア3』では、ある種ブレーキをかけず、できることは全部入れ込んでみました。
それでも決して敷居の高い作品だとは思っていません。
僕は、むしろライトな層とかね、いろんな方に触れていただきたいと思って作っていますから。
理由は、「良質なものを描いた」という自負があるから。
あえてファンタジーに寄せず間口を広くして、性別や年齢も関係なく、10歳から40歳までもが楽しんでいただけるものを作ったつもりです。
プレイして、いい話だなぁと思っていただけたら周りの人にも勧めてください。
もちろん買っていただきたいというのがあるんですがむしろ良質の物語だというのを、他の人に伝えていただけるほうが幸福感を感じますね。
クリアした時に記憶に残ってほしいというか。何かしら人に残せるというのが、表現者としての一番の喜びですから。
ムックでの発言
斉藤「エニックスのファンならば、システムに拘るユーザーが多いと思っていたましたが、いざ発売してみると、
前作のファンがついてきてくれて、純粋なグランディアの続編がやりたいという意見も聞けました」
高橋「プレイした人には脇役まで全員覚えてもらいたいな、っていう思いが強かったんですね」
高橋「ゲームをプレイした人みんなに言われるんですよ。「コーネルは、最後に一体どうなったんですかって?」って(笑)」(質問に答えてない)
樋口「敵にも絆があるということですね」
高橋「(上の樋口の発言のすぐ後)この話は、プレイした人でないと理解できないと思いますよ。
(中略)一回目で疑問に思ったらもう一回観てくれればわかるんです。(中略)実は、そういうシナリオの組み方をしているんですね」
高橋「エメリウスがアルフィナの首を絞めるシーンがあるじゃないですか。
よくあのシーンを見た人に「エメリウスは本気なんですか?」って質問をされるんですよ」
高橋「答えは皆さんの中にあるということです。プレイヤーがエメリウスの心情に入り込んでくれれば、どういう気持ちなのかわかるはず。
(中略)我々は、エメリウスをちゃんとした人間として描いています。気が狂った人間ではないんですね」
高橋「僕は、「まあ気軽に楽しんでください」と言いたいですね。でも、できれば二回やってください(笑)。
変に重箱の隅をつつくのではなく、わかりやすく伝えようとしていることを、素直にわかりやすく受け取っていただきたい。
さっきも言ったみたいに「何だろう?」と思う部分があっても、実は本編に答えがありますので。そこでもう一回プレイしていただけると製作者冥利に尽きますね」
攻略本の発言
高橋「これがまた、金田監督のプロ魂なんですが、リハを含めて3週間で終わらせたんです。
台本は4冊分あったんですけどね。あの品質でやったら、普通は2〜3ヶ月かかっても不思議じゃないですよ」
高橋「(ミランダとの別れのシーンにて)あのシーンは、最初から映像や音響をふんだんに使うような極端な演出はしないと決めていました。」
高橋「(街キャラの会話イベントについて聞かれて)かけてる時間はそれなりですが、実際に作業したのは二人ですね」
(8月1日 スクウェアエニックスにて)
Q&A
Q・アルフィナが冒頭アークリフを離れていた理由は?
A・10年前、アルフィナに神人の過酷な運命を背負わせたくないというエメリウスの意思によって。
Q・ミランダとアロンソはどうなったか?
A・まだ見ぬ海を求めて世界中を駆け巡っている。しかし結婚はしていないらしい。
Q・エンディングでユウキとアルフィナと一緒に登場する少年は?
A・二人の子供で、名前はリティー。神人としての能力はあるが、世界が必要としてないのでその力はないらしい。