【やるのが】ストーリーを教えてもらうスレPart14【面倒】

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31名無しさん@お腹いっぱい。
>>29-30
気にせずにお願いします
32名無しさん@お腹いっぱい。:2005/03/24(木) 01:24:31 ID:9P5lIrk+
ゼノサーガep1、行きます。

文章構成上、ストーリー展開が前後したり、
結構話に絡んでるのに文中に出てこないキャラ(アレン、キルシュバ等)が
いたりしますが、ご容赦下さい。
33ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:25:18 ID:9P5lIrk+
星団連邦に所属する惑星アリアドネが、突如として謎の消失を遂げた。
その調査に赴いた巡洋艦ヴォークリンデは、本来の目的である調査もそこそこに、
当該宙域に浮遊していた謎の物体ゾハルエミュレーターを収容し、帰還することになった。
その収容作業中、ゾハルに触れた作業員が消滅すると言う事故が起こっていた。

この巡洋艦ヴォークリンデには、14年前より突如として現れ人類の脅威となった、
グノーシスと言う怪物群に対抗する為のヒト型アンドロイド、コスモスが配備されていた。
しかしながらそのコスモスは、未だ実働試験すら行われておらず、
仮想空間(エンセフェロン)におけるテストをしている段階であった。

ヴェクターインダストリー1局所属のシオン・ウヅキは、そのコスモスの開発主任だ。
彼女は、コスモスに対して、母親や姉のような感情を持っていたが、一方で恐れてもいた。
数年前の実験中、コスモスが暴走し、同僚や愛する人を殺されてしまったからだ。
そのせいか、シオンは実働試験に対して二の足を踏んでいる状態だった。

対グノーシスの切り札として配備されたコスモスが、起き上がる事すら出来ない。
調査に同行した軍関係者からは、その事を毎日のように責められていた。
この日も、試験を終えたシオンは、ブリッヂから呼び出しを受け、開発室を出た。
ブリッヂへ向かう途上、ゾハル格納庫を通った彼女は、そこで少女の幻影を見た。
少女は、何か言いたげな、哀しみを裡に秘めた表情でシオンを見つめていた。
シオンが歩み寄ると少女の幻影は消え、そこには金色に光るゾハルがあるだけだった。

不思議な感覚に囚われながらも、彼女はレアリエン調整室へ向かった。
レアリエン。それは、様々な用途に応じて造られた人造人間のことだ。
シオンは、このレアリエンとの交流を好み、エリート中のエリートが集まる1局から、
レアリエンを扱う3局に転属願いを出しているほどだった。

彼女がレアリエンの調整を手伝っていると、バージルと言う中尉が現れた。
彼はレアリエンを極度に嫌っており、この時も居丈高に見下し、罵った。
現在、レアリエンには人権が認められていると反論するシオンだったが、
それを商品としている事を指摘されると、彼女は言葉を詰まらせた。
「お為ごかしは反吐が出る」そう吐き捨て、中尉は立ち去った。

いい加減寄り道が過ぎたので、かなり遅刻してブリッヂに着いたシオン。
アンドリュー中佐は、それも含めて毎度の如くネチネチと小言を繰り返すが、
緊急呼び出しの通信が入ったため途中で切り上げ、ブリッジを出て行った。
運良く開放されたシオンは、艦長に労われ、自室で休む事にした。


アンドリュー中佐は、画面の向こうのマーグリスに叱責されていた。
U−TIC機関。ゾハル研究の為に創設された政府直属の機関であったが、14年前の
ミルチア紛争を機に、反政府武装集団の色を強め、各方面に工作員を潜入させていた。
マーグリスはそのU−TIC機関の司令であり、アンドリューは工作員の一人だった。
惑星アリアドネの消失も、この組織がゾハルの起動実験をその地で行った結果であり、
調査隊が事件の調査もそこそこに帰還したのも、連邦軍に潜入していたアンドリュー達
の目的が、ゾハルの回収であったからなのだ。

ゾハル。それは、局所事象変異を引き起こし、グノーシスを呼び寄せる。
その危険性から、それを確保して封印しようとする者と、兵力として利用しようとする
者との間で激しい争奪戦が繰り広げられていた。
この非常に危険な物体の取り扱いには、細心にも細心を重ねた注意が必要だった。

しかし、アンドリューたちはその扱いを間違った。
ヴォークリンデには、すでにグノーシスが迫ろうとしていたのだ。
コスモスを使え。その命令に狼狽する中佐を無視し、マーグリスは通信を切った。
34ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:26:16 ID:9P5lIrk+
ブリッヂに警報が鳴り響いた。艦隊前方にグノーシスが出現したのだ。
母船タイプのグノーシスから射出された怪物たちが、次々と艦内に侵入してくる。
対グノーシス用兵器エイグスが出撃するが、通常兵器の効果は無く、撃破されてゆく。
グノーシスに掴まれた人間は白化し、砕け散った。
有効な対抗手段も無いまま、ついにヴォークリンデのブリッヂが沈黙した。

アンドリュー中佐は、宇宙服を着込み、ゾハル格納庫へ向かっていた。
格納庫ごとパージし、ワープさせる。無謀な作戦だったが、中佐にとっては、
コスモスを起動させるよりも遥かにマシな作戦だった。
なぜならば、中佐も、コスモスの暴走事故に立ち会っており、その恐ろしさを
身をもって知っていたからだ。
そもそも、実験中のコスモスを起動させたのも、彼らだった。
コスモスの強奪を目論み、内通者から起動用ギアを受け取ってラボを襲撃した彼らは、
しかしコスモスの暴走により惨殺され、唯一アンドリューだけが生き残った。
今、中佐は死を覚悟しながら、格納庫に向かっていた。

その中佐の覚悟も、無駄となりそうだった。コスモスが自律モードで起動を始めたのだ。
開発室のメンバーが恐怖で凍りつく中、ゆっくりと身を起したコスモスは、シオンを
保護するために動き出した。

その頃シオンは、グノーシスに追われた所をエイグスに乗ったバージルに助けられていた。
しかし彼の攻撃は効果が無く、逆に反撃を受け仲間を失ってしまった。
なにか手段が無いものかと考えた彼は、シオンの携帯端末を奪い、レアリエンを
自爆させる緊急制御コードを起動させた。
爆風が晴れると、彼は歯噛みした。仕留め切れなかったのだ。
反撃を受け、倒れこむバージル。そして、グノーシスはシオンに襲い掛かった。
足元から白化してゆくシオン。彼女が死を覚悟した時、閃光がグノーシスを貫いた。
コスモスの攻撃だった。グノーシスを実数空間に固着するヒルベルトエフェクトを展開
した彼女は、その圧倒的な戦闘能力でグノーシスを掃討した。

ゾハルの格納庫では、アンドリュー中佐が必死で乱れたシステムと格闘していた。
そこへ、脱出艇に乗るためにシオンたちが駆け込んできた。
グノーシスは途切れなく襲い掛かり、抗戦を続けるシオンたち。その中で、
コスモスがバージルごと敵を撃った。バージル、「フェブ…」とうわ言を言いながら即死。
シオンは、コスモスの非道な行動に怒りを露わにしたが、コスモスのプログラムでは、
ヴェクター関係者の保護>敵勢力の殲滅>>>>>それ以外の人間の保護であったため、
コスモスはそのプログラム通り、確実な方法を選択しただけなのだ。
「私は人間ではありません。ただの兵器です」
その言葉にショックを受けるシオンは、鬱然として脱出艇に乗り込んだ。

シオンたちと中佐の乗った脱出艇を見送ったコスモスは、もう一つの目的である
ゾハルの確保の為、周辺に群がるグノーシスを除去しようとした。
しかし、いかにも多勢に無勢であり、結局はゾハルを持ち去られてしまう。
彼女はゾハルが収容されたグノーシス母船にマーキングを施し、その事を本社に報告、
次の司令を受け、第二ミルチアへ向かう事とした。

ヴェクターCEOのヴィルヘルムは、赤の外套者からその報告を受けていた。
「全ての事象は、この"秩序の羅針盤"の示すとおりに動く……」
そう、彼はつぶやき、デスクの上の構造物に目をやった。
35ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:27:52 ID:9P5lIrk+
クーカイ・ファウンデーション所属の不定期貨客船エルザが、ヴォークリンデの
遭難現場に向かっていた。だが、目的は救助ではない。艦の残骸を回収し、
それを売って船長の借金返済の足しにするためだ。
そんなエルザに、コスモスが襲い掛かった。キャノピーにパンチでヒビを入れられ、
第二ミルチアまで乗せてけと脅迫された船長はしぶしぶ承諾した。

ブリッヂにコスモスが入ってくると、脱出艇で漂流していたシオンから通信が入った。
エルザに収容しろと言うシオン。そのまま漂流していれば助けが来ると言うコスモス。
二人が押し問答していると、エルザの乗組員ケイオスが仲裁に入った。
彼は船長の信頼も篤く、その彼の取り成しでシオンたちもエルザに収容され、
第二ミルチアへ向かう事になった。

収容された後、ブリッヂへと挨拶に訪れたシオンたち。そこへ、グノーシスが現れた。
アンドリューが掴まれ、白化して行く。慌てふためくシオンたち。だが、ケイオスが
グノーシスに手をかざすと、グノーシスは霧のように消えてしまった。
これが、ケイオスが船長に信頼されている理由だった。

騒ぎが落ち着いた頃、そのケイオスが、ヴォークリンデでの戦闘で不具合が出たため
エルザの設備で調整をしていたコスモスに近づいていった。
機能を停止して眠っているコスモスに、彼はそっと呟いた。
「やっと会えたね……本当の君はどこに眠っているんだい……?」


プロジェクト・ゾハル。ゾハルの研究を進める事により、全ての事象を論理的に解明し、
また、人類の悲願であるロスト・エルサレム(地球)への帰還を目的とした研究である。
そのプロジェクトを推進する接触小委員会の会議が、連邦主星フィフス・エルサレムの
衛星軌道上のコロニーで開かれていた。

オリジナル・ゾハルが眠る、閉ざされた旧ミルチアへの道。その道を開くための鍵となる
Y資料がU−TIC機関に奪われた。
U−TIC機関の責任者であり、彼以外にゾハルを解明する事は不可能とさえ言われた
天才ヨアキム・ミズラヒ。彼が遺したY資料なくしてもまた、ゾハルの研究は進まない。

その奪還の為、U−TIC機関の拠点への潜入を命令されたのは、ジグラット8と言う
型式番号のついたサイボーグだった。彼が見せられたのは一人の少女の写真。
百式観測用レアリエン。ヨアキムの最後の発明であり、対グノーシス用の索敵能力と
ヒルベルトエフェクト展開能力を付与されたレアリエンだ。
百式は、彼と、その元妻であり現接触小委員会委員であるユリ・ミズラヒの亡児サクラを
モデルとして創られ、そのプロトタイプであるモモには、Y資料が封印されていた。

成功の報酬として、ジグラット8は、自らの生体脳を人工部品に換装する事を望んだ。
彼は生前、ある男に妻子を殺され、それを苦に自殺を遂げていた。
サイボーグとして蘇ってからも、その記憶が彼を苦しめ続けていたのだ。

小惑星プレロマ。古代宗教の聖堂だったこの場所に、U−TIC機関は拠点を構えていた。
そこへ潜入し、モモを見つけ出したジグラット8は、モモに「ジギー」などと愛称を
つけられたり、マーグリスと一戦交えたりしながら脱出。作戦を成功させた。

追っ手を撒いた後、モモは早速フィフス・エルサレムへ船を向けようとした。
だがユリの指令では移送先は第二ミルチアとなっていた。その事をジギーから告げられ
ると、モモは寂しそうな顔をした。彼女は「ママ」に会うのを楽しみにしていたのだ。

その頃エルザではシオン特製のカレーが振舞われ、皆、ひと時の休息を取っていた。
そんな中、アンドリュー中佐は、未だ機能を停止したままのコスモスに見入っていた。
彼女に銃を向けるが、恐怖で手が震え撃つ事ができなかった。
36ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:28:44 ID:9P5lIrk+
シオンは、本社への連絡の中で、局長に対して声を張り上げた。
第二ミルチア到着後、コスモスを2局に引き渡すと言われたのだ。
シオンは、コスモスが何の命令も無く独自に稼動しており、実戦配備は時期尚早と説明、
コスモスの監察を続ける事を局長に認めさせた。

エルザが第二ミルチアへ向けてハイパースペース内を航行していた時、同じくジギー達も
その中にいた。しかも、U−TICの無人兵器に張り付かれている状態だった。
ジギー達からエルザに向けて救難信号が発せられた。
初めは日和見を決め込んでいた船長だったが、エルザが被害を受けるや一変、
ジギーたちを援護して敵勢力を掃討、彼らを船内に収容した。

落ち着いた所で話を聞くと、ジギー達も第二ミルチアに行くというので相乗りする事に。
だが、先の戦闘でダメージを受けた船を修復する為、まず手近なコロニーに向かった。

その途上、アンドリューはプレロマに通信を入れていた。百式を確保したと。
だが、マーグリスは帰還命令を伝えただけで、早々に通信を切った。
そのマーグリスの下に、謎の男アルベドが現れた。彼はモモを連れ戻すと言い残し、
狂ったような笑い声を上げながら立ち去った。
「……モモ…か……。可愛いペシェめ……」
マーグリスの副官ペレグリーは、アルベドに任せることの危惧を口にしたが、
利用価値はあると、マーグリスは言う。目的は違うが、必要な物は同じなのだと。


惑星アリアドネのあった座標に、クーカイ・ファウンデーションの武装艦デュランダルが
停泊している。この宙域の調査をするためだ。
クーカイ・ファウンデーション。14年前のミルチア紛争の事後処理の為に設立された、
財団法人である。紛争後の武力衝突に対抗するために備えた武装は、連邦艦隊にも
匹敵するとまで言われているが、現在は副業として始めた事業展開を中心としている。
しかしながら、ゾハル・エミュレーターの回収もその役割としている為、ゾハルの影響と
思われるアリアドネ消失事件の調査に赴いたのだった。

ファウンデーション理事ガイナン・クーカイの養子であり、副理事でもあるJr.は、
現場を見て唖然とした。そこに惑星があったと言うあらゆる痕跡がなくなっていたのだ。
さらに調査を進めるため、次に彼らは、ヴォークリンデの遭難現場に向かった。
そこでようやく、ゾハルの残滓を発見する事が出来た彼らだったが、現場に潜伏していた
U−TICの戦艦から攻撃を受けてしまう。
反撃に転じ、戦艦内部を制圧。U−TICの情報を得るために艦のマザーフレームに
アクセスしたJr.だったが、敵残存勢力に阻まれ、結局徒労に終わった。


一方その頃、シオンたちを乗せたエルザは、ドックコロニーに入渠していた。
修理が終わるまで、船外へ出て休息を取る一行。しかし、このドックコロニーは、
ミルチア紛争の頃から軍関係者への反感が根強く残っている場所だった。
住民の話から、地元の青年達にアンドリュー中佐が連れて行かれたと知り、後を追った
シオン達は、人間業とは思えぬほど無残に惨殺されている青年達を発見した。
一方の中佐は既にエルザに戻り、傷の手当てを受けていた。
結局、事件はうやむやのまま、エルザはコロニーを離れた。

この一件以来、中佐に変調が表われ始めた。人知れず体を苦痛に悶えさせ、その度に
薬剤を注射して抑える。彼の脳裏に、エルザでグノーシスに襲われた時の記憶が
フラッシュバックする。彼の発作は時間を追うごとに悪化しているようだった。

シオンは夢を見ていた。ヴォークリンデで見た幻影の少女が、彼女に語りかける。
「彼の最後の気持ちを理解できるのは貴方だけ。それが彼の安らぎ……」
37ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:29:41 ID:9P5lIrk+
不可解な夢から目覚めたシオンは、突然の振動に襲われた。
エルザが、ハイパースペース外から干渉を受け、引き寄せられていたのだ。
通常空間に引きずりだされたエルザは、周囲を莫大な数のグノーシスに囲まれていた。
さらに引き寄せられたエルザは、巨大なグノーシスに飲み込まれていった。

この異変は、デュランダルも察知していた。艦内に保管されている11機のゾハル・
エミュレーターが共鳴を始めたのだ。デュランダルは、波動の発生元へと急行した。

気がつくと、シオン達は生身でグノーシス内部に放り出されていた。
はぐれてしまったエルザと中佐を探すために移動を始めた彼女達は、その途上、明らかに
人工的な看板や、自動車の残骸を発見した。

シオン達とはぐれ、一人さまよっていた中佐は、それらに見覚えがあった。
そこは、彼らがゾハルの実験をしたアリアドネの市街そのままだった。
悪夢を見ているような気持ちで彼はさまよい続けた。

グノーシスの中心部まで到達したシオン達は、そこでゾハルと、前後不覚になった中佐を
発見した。中佐は、ゾハルを背にするとグノーシスと化した。
「同じだ……あの時と……」ジギーが呟いた。
襲い掛かる中佐を、やむを得ず撃退したシオン達。
中佐が断末魔の叫びを上げる中、シオンは彼の心に触れていた。

戦争の道具としてこの世に生を受けた彼は、戦後の社会に適応できなかった。
社会に受け入れられない孤独から、彼は凶悪犯罪を重ね、その度に人格矯正処置を受けた。
そして最後には収容所の職員と連邦軍三個小隊を一人で壊滅させてしまった。
そこでマーグリスに拾われた彼は、マーグリスの信頼を受け心酔し、忠実な部下となった。

今、彼は虚無の浜辺に佇み、安らいだ顔をしていた。
「ここは良い…、怒りも悲しみも、喜びも未来も…俺以外のものは何も存在しない……。
その俺自身もやがて消える…。……シオン、遠からずお前もここに来る……きっと……」
そう言って、彼は消えていった。

アンドリュー中佐を殺してしまった事にショックを受けるシオン。
だが、感傷に浸る間もなく、その場所が崩壊を始めた。
逃げ出したシオン達は、エルザに救出され、その場を離脱した。

グノーシスの包囲網を抜けようと全力で航行するエルザ。それを、駆けつけた
デュランダルが援護する。しかし、そのデュランダルも包囲されつつあった。
その時、コスモスがたった一人で船外へ出ようとしていた。
無謀だと止めようとするシオン。だが、コスモスはそれを聞き入れなかった。
「シオン、痛みは……私を満たしてくれますか……?」

今まさに迫らんとしているグノーシス群の前に立ちはだかったコスモス。
腹部から拡散ビームを発射し、一瞬のうちにグノーシスを吸収してしまった。
自分の知らない兵装が搭載されている事に呆然とするシオン。
「ケヴィン先輩……これが貴方の望んだ、本当のコスモスの姿なんですか……?」

彼女の戸惑いをよそに、エルザとゾハル・エミュレーターはデュランダルに収容された。
そして、エルザの補修の為、一行はクーカイ・ファウンデーションに帰港する事になった。

ワープするデュランダル。その後姿を、シメオンに乗ったアルベドが見ていた。
38ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:30:23 ID:9P5lIrk+
デュランダル内の隔離格納庫。そこに、シオン達は案内された。そこには、ゾハル・
エミュレーターが保管されていた。さらには、グノーシス変容体となり生命活動を
停止した人達も。グノーシスに接触された人間は、ほぼ例外なく変容体となる。
シオンはヴォークリンデでの出来事とアンドリューの最期を思い出し、背筋を凍らせた。

一方モモは、そのグノーシスをこの世界に呼び寄せた元凶が、当時U−TICに所属し、
ゾハル研究の途上で暴走したヨアキム・ミズラヒである事を知り、ショックを受けた。
彼女にとってヨアキムは、自分の誕生を心待ちにしてくれていた優しい「パパ」であり、
世間一般が評価する「狂人」とは程遠いものだったからだ。
暗く俯くモモ。しかしシオンは、ヨアキムの全てが否定される訳ではないとモモを慰めた。

ファウンデーションに入港するデュランダル。Jr.と良く似た理事がシオン達を迎える。
彼、ガイナンは、シオンに奇妙な感覚を覚え、執務室に戻った後、Jr.にそう告げた。
プロジェクト・ゾハル。その最重要機密であるコスモスの開発に携わるシオンが、
何らかの特殊な素質を持っているのではないか。ガイナンはそう考えたのだ。


プレロマ。マーグリスが、セラーズと言う男と通信している。
U.M.N.。その非局所性を利用して、全宇宙を時間的空間的束縛に囚われず結ぶ
ネットワークシステム。その特性により、現在のワープ航法が可能となっている。
オリジナル・ゾハルの眠る旧ミルチアは、14年前の紛争時にU.M.Nの転移コードが
消失しており、Y資料にはそのコードが記録されている。
「いずれにせよ"総帥"をお待たせする訳にはいかん。プラン401を発動する」
マーグリスは、強攻策をとる決断をした。

その事は、アルベドにも伝えられた。
「場合によっては、ネピリムの歌声……使うやも知れん」
その言葉に、アルベドは笑い声で答えた。


デュランダル。先ほどイヤな話を聞かせたお詫びにと、Jr.がモモにペンダントを贈る。
二人の間に、気恥ずかしい空気が漂ったその時、衝撃が彼らを襲った。
ファウンデーションが、連邦艦隊に包囲されていたのだ。

連邦政府議会では、先のヴォークリンデ遭難が、デュランダルの攻撃によるものだとして、
ファウンデーションの強制捜査、及び既得権益の剥奪が議論されていた。
政府内に入り込んだU−TICの工作であった。証拠として、デュランダルがヴォーク
リンデを攻撃する映像が映されたが、それは、U−TIC戦艦と戦った時の映像を
たくみに合成したものであった。

デュランダル内に入り込んできた連邦兵士に拘束されるシオン達。だが、その兵士達は、
ファウンデーションと繋がりのある政府関係者が送り込んだ者達だった。
彼らの手引きを受け、シオン達は、嫌疑を晴らすために行動を始めた。
ヴォークリンデでの戦闘を記録しているコスモスのメモリーを回収し、反論の材料とする。
そのために彼女達は、コスモスのメモリー内にエンセフェロンダイブした。
39ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:31:06 ID:9P5lIrk+
気がつくと、Jr.は銃弾の飛び交う戦場に立っていた。彼は、そこがどこか知っていた。
14年前のミルチア。彼と同じ顔をした少年達が、銃を乱射し虐殺を行っている。
彼は、悪夢を見ている気分になりながら、そばにいたモモに話し始めた。

Jr.やガイナン、アルベドは、U.R.T.V.と呼ばれる生体兵器だった。
彼らは、U.M.N.のオペレーションシステムであり、局所事象変異の源である
ウ・ドゥに対する反存在として生み出された。
14年前、彼らは暴走したウ・ドゥを抑える作戦に就いていたが、U.R.T.V.達の
精神リンクの中心であったJr.は、ウ・ドゥに恐怖し、リンクを拒絶してしまった。
結果、Jr.とガイナンを除いた者たちはウ・ドゥに汚染され、暴走を始めたのだ。
この時の事を、彼は今でもトラウマとして心の裡に持っていたのだ。


気がつくと、シオンは14年前のミルチアの公園に居た。幼いシオンが、父に連れられて
行く。彼女が、父と過ごした最後の日の記憶だった。
重篤神経症治療施設。そこにシオンの母は入院していた。そして、そこで悲劇が起こった。
しかし、それはシオンとって心の奥にしまい込んだ、思い出したくない記憶だった。


気がつくと、シオン達は古びた教会に居た。祭壇の前に立つレアリエンを見て、シオンは、
再びトラウマを思い出した。フェブロニア。彼女が無残に食い殺される様を、シオンは
目の前で見ていた。

フェブロニアに促され、奥へ進んだシオン達は、幻影の少女ネピリムと出会った。
虚数世界と現実世界の狭間に住み、現実世界には僅かな時間しか干渉できない彼女達は、
その僅かな時間を使い、シオン達を導き、この仮想空間で会える時を待っていたのだ。

シオン達は、未来のビジョンを見せられた。くびきを離れ、暴走するウ・ドゥ。そして、
それに対抗する、本来の姿となったコスモス。二者の激突は銀河をも消滅させる。
しかし、未来は変えられる、シオン達に変えてほしい。ネピリムはそう言う。
グノーシスに触れられながら、グノーシス化しないシオンにはその力がある。
だが、心に弱さを持つ彼女達に、過去のトラウマを乗り越える強さを持って貰いたかった。
ネピリムが、シオンとJr.に過去を追体験させたのは、その為だったのだ。

別れ際、フェブロニアがもう一つ、彼女達に願いを託した。
フェブロニアの二人の妹、セシリーとキャス。ゾハル制御の媒体として、旧ミルチアで
今も呪縛に囚われている彼女達を開放して欲しい。フェブロニアはそう訴えた。
「ミルチアへ行けば全て分かるわ……」
ネピリムが最後にそう言って、彼女達は消えた。

エンセフェロン最奥部でコスモスの記録を回収したシオン達は、現実世界へ戻って行った。
その中で、ネピリムがケイオスに語りかけた。
「本当にこれで良かったの……? もう後戻りはできないのよ……?」
「分かってる……でも、"彼女"にはシオンが必要なんだ……」


シオン達の持ち帰った記録は議会で審議にかけられ、デュランダルの嫌疑は晴れた。
その事をマーグリスはアルベドに伝えた。ネピリムの歌声を使う時が来た、と。
40ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:31:56 ID:9P5lIrk+
ファウンデーションが艦隊と共に第二ミルチア上空まで達したとき、ケイオスが、
狼狽えて叫んだ。歌声が聞こえたのだ。その歌声は、グノーシスを引き寄せ、聞く者を
狂わせる。14年前のミルチア紛争でも、この歌声が人々を狂気へと駆り立てた。
歌声は、ヴェクターCEOのヴィルヘルムの元にも届いていた。
「……始まったね……」彼はそう呟いた。

そして、ファウンデーションがグノーシスに包囲され、市街地が襲撃を受けた。
迎撃態勢を取った連邦艦隊も、アルベドのシメオンによって壊滅させられていく。
混乱を極める市街地に飛び出し、住民の避難と敵の掃討にシオン達が奔走する中、
モモがアルベドに連れ去られ、その居城であるネピリムの歌声に囚われた。

ネピリムの歌声。元はヨアキムの研究施設であり、14年前はミルチアにあった物だ。
シオンも、当時母親の病室から見たことがあった。
それが、アルベドの手によってこの宙域まで持ち込まれていた。

モモの助けを求める声を感じ取ったJr.は、すぐさまシオン達と共に歌声へ向かった。
哄笑をもって彼らを出迎えるアルベド。14年の時を経て自らの分身と対峙したとき、
Jr.は冷静ではいられなかった。
激昂するJr.を挑発しながら、アルベドはモモの意識を侵食して行った。
最後のプロテクトに到達した時、彼にヨアキムのイメージが流れ込んできた。
「もう私には、これから起こる事を止められない。だからせめて、お前に託そう……。
時は交差する……。いずれお前は、彼女達と出会う……その時の為に……」
それは、モモが誕生する直前、ヨアキムが彼女に語ったメッセージだった。

Jr.の放った衝撃波と、Y資料のプロテクトがアルベドを弾き飛ばした。
アルベドはさも愉快そうに笑った。彼がプロテクトに触れた時、そこにコスモスと
シオンのイメージがあった。ヨアキムが最後に残したY資料のプロテクトに、彼女達が
現れる意味。それを知って彼は笑っていたのだ。

アルベドの笑い声に激昂し、ポテンシャルを開放して挑みかかるJr.。彼の本質を
知っているケイオスが、顔色を無して止めようとする程のエネルギーが弾けようとした時、
突然の乱入者が二人の間に割って入った。

青の外套者。この時は正体を隠していたが、彼はヴォークリンデでコスモスに殺された
筈のバージル中尉だった。
彼は、アルベドにその役割を指摘して退去させると、後を追おうとするJr.を攻撃した。
その物理法則を無視した力に、なす術もなく膝を付くJr.達。
「無駄だな。貴様らと俺とは、この世界に存在する法則が違う。そうだろ、"大将"?」
ケイオスに向かってそう言い残し、彼は消えた。

歌声の機能が完全に停止している事を確認し、シオン達はデュランダルへ戻った。
歌声を破壊するため、デュランダルの主砲が向けられたとき、異変が起こった。
残存していたグノーシスが、歌声に集まっていく。その中心には、アルベドのシメオン。
「なんだか遊び足りなくてな……戻ってきたぜ」
シメオンから莫大なエネルギーが発せられ、歌声の下に遥かに大きな建造物が出現した。

天の車。元々は宇宙の真理の解明の為に作り出された施設だったが、ヨアキムによって
モモを生み出すためのプラントとして使われていた。この施設と歌声、そしてゾハルが
一体となった時、ミルチア紛争以上の悲劇が起こる。そのため、この施設は旧ミルチアが
封じられている二重ブラックホールへと廃棄されたはずだった。
アルベドは、先にY資料に接触した時、この天の車の存在と使い方を知ったのだ。

その天の車が青い光を放ち、グノーシスを吸収し始めた。それは、以前コスモスが
腹部から発射したビームと同質のものだった。
グノーシスをエネルギーとした天の車は、主砲の発射準備に入った。目標は第二ミルチア。

それを阻止するため、シオン達はエルザと共に天の車へと向かった。
41ゼノサーガep1:2005/03/24(木) 01:33:11 ID:9P5lIrk+
「遅ぉい! 待ちくたびれたぞ」
天の車の動力炉で、アルベドは彼女達を出迎えた。
なぜこんな事を。Jr.のその問いに、アルベドは憎憎しげに答えた。
14年前の作戦の時、Jr.が心を閉ざした事で、歌声の浸食に身を任せるしかなかった
U.R.T.V。消えていった仲間達の為にも、貴様を断罪してやる。そう言いながら、
彼はこうも言った。
「だが、俺は感謝してるんだ。おかげで俺だけは新たなる世界への道を見つけられた」
コスモスとシオンに目をやり、彼は笑い声を上げた。
「ついさっき、それを確信した。これはそれを確かめる為の余興さ。精々楽しんでくれ」

アルベドが姿を消した直後、動力炉と直結した巨大なグノーシスが姿を現した。
死力を尽くして動力炉とグノーシスを破壊したシオン達。
爆発が始まり、彼女達が脱出を始めたその時、天の車がミルチアに向けて降下を始めた。

地上への被害を最小限に食い止める。その為に、天の車を最小ブロックにまで分解する
方法を探し出した彼女達だったが、システムを起動してから脱出までの猶予が、わずか
1分しかない事が分かった。
これでは脱出できない。一同に絶望感が漂ったとき、コスモスが残ると言い出した。
コスモスの能力ならば1分で脱出できる。そう信じて、シオン達はその場を彼女に任せた。

天の車が崩壊を始めた。ギリギリまで内部で待ち続けるエルザ。しかし、崩壊はエルザの
直上まで及び、苦渋の決断をするJr.。エルザは離岸した。
ハッチ上で待っていたシオンは取り乱し、戻るように懇願した。
その時彼女にネピリムの声が届き、走るコスモスのイメージが流れ込んできた。
左舷前方400メートル。シオンがエルザを誘導した先に、コスモスが飛び出してきた。

コスモスを収容し、最高速で離脱を図るエルザ。そのままミルチアの大気圏へ突入する。
しかし、先の脱出でダメージを受けていたエルザは姿勢制御にトラブルが発生。
大気との摩擦で船が炎に包まれた。このままでは、エルザは消し炭になってしまう。

そんな状況の中、ケイオスは一人、悩んでいた。
「あなたは、どうするの……?」ネピリムの声が、彼の脳裏に響いた。
その時、コスモスが彼の前を通り過ぎた。
「"君"が……? 待って!」慌てて止めようとするケイオス。しかし、
「あなたの痛みを、私に下さい」そう言って、コスモスはハッチに向かった。

コスモスが、エルザを守るように船首に立った。彼女の瞳が青く輝いた時、ケイオスの
腕が光を放ち、ネピリムが空を仰ぎ、アベルが振り返り、秩序の羅針盤が共鳴した。
そしてエルザの船体を6枚の光り輝く翼が包み込み、船は大気圏を突破した。


「いい見物だった。あとは、ペシェとU.M.Nがリンクすれば……」
そう言って、狂った笑い声を上げながら、アルベドは去った。

その情報は、ヴィルヘルムにも伝えられた。外套者は、彼を自由にする事を危惧した。
「アベルの方舟へと至る扉を開けるのは、彼だけだからね。しばらくは……」
「ウ・ドゥと再びリンクする可能性が残りますが」
「彼にそこまでの力はないよ。あとは鍵の役割だけ……。まぁ、局所事象変異ぐらいは
覚悟しないといけないけど、その為に"君達"がいるわけだし……ね。……でも、彼を
このまま端役にしておくのは惜しい……。彼の意思は素晴らしい輝きを持っている……」

ミルチアの海に、日が沈もうとしている。その夕日を傷ついた船体に浴びながら飛行する
エルザのブリッヂで待つシオン。彼女の下に、コスモスが戻ってきた。

「任務完了しました、シオン」
「…………お帰りなさい」

Xenosaga Episode1 END