スパロボ【とスパヒロ】のヴィレッタ 第2射

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779名無しさん@お腹いっぱい。
ある日繁華街を歩いていたヴィレッタ。
ふと横を見ると、喫茶店でギリアムが見知らぬ女性とデート(?)している。
髪は茶色がかったロングヘア、顔もスタイルも割と良いその女。
(トシは十六、七歳か)
随分親しそうに話すその女性を見て爪をかむヴィレッタ。
(あんな笑顔、私にも見せてくれた事無いじゃないの…!)


「少佐、昨日は誰と一緒だったのかしら?」
「ああ、十数年前に知り合った女の子が会いに来てくれてね」
「どう言うご縁なの?」
「幼稚園バスジャック事件の時にちょっと」

(まさか少佐が過去に幼稚園バスをバスジャックをして幼女を毒歯にかけ
いろいろ弱みを握って十年以上も交際を続けているなんて!)
昨日のショックで少し頭の思考回路がおかしくなっているヴィレッタ。

「み、見損なったわ少佐!」
「何か勘違いをしてないか?」
780〜Don't be so sad〜:2005/04/27(水) 01:02:07 ID:pBERNowd
>>779のネタから思い付いた短文を。

会議室から戻ったヴィレッタの机には、なぜか花が飾られていた。
使っていないガラスのコップに活けられた、一輪の黄色いタンポポ。
「…?」
昨日から持続していた怒りに任せて、資料を乱暴に置こうとした手が止まる。
茎のあまり強くない植物だから、そんなことをすればくたりと曲ってしまうかも知れない。
謎の生け花を眺めながら、静かにヴィレッタは席についた。
「お帰りなさい、隊長」
奥の給湯スペースから出てきたのは、大きなコンビニ袋を手に持ったマイ。
そのままヴィレッタの側まで来ると、その中身を机上に次々と置いてゆく。
「あら、あなたしかいないの?」
「うん。みんなはもう一度訓練に行ってくるって」
「…そう。確かにあれでは演習にならないものね」
今日のヴィレッタは個人的な感情をひた隠すのに精一杯だった。
昨日目撃してしまった「彼」の笑顔。その視線の先にいたのは、自分の知らない可愛らしい少女。
認めたくない。認めたくはないが、この感情の源はその光景に間違いないのだ。
この激情を押さえ込むのは思ったよりも手強く、普段なら難無くこなせる事柄にすら精彩を欠いていた。
そう、例えばーPT演習で、ライどころかリュウセイにまでストレート負けをしてしまうくらいに。
「ずいぶん強くなったわね」と誤魔化した物の、他の4人は誰も喜んでいなかった。
(聞いてしまえばいいのだろうけれど…でも…)
「はい、隊長。どれにする?」
「どれに、って…え?」
プリン、シュークリーム、チョコレート、ロールケーキ、チーズケーキ。
アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー、キャンディー、アップルパイ。
物思いに耽っている間に、数多の菓子がヴィレッタの机を占拠していた。
「幾つでもいいよ。でもあんまりいっぺんに食べ過ぎるとお腹を壊すと思う」
「そ、そうね…じゃあこれを」
シンプルな板チョコを手にとると、満足げにマイは微笑んだ。
781〜Don't be so sad〜:2005/04/27(水) 01:04:24 ID:pBERNowd
ー分からない。まったくもって分からない。
ー別に誕生日でもバレンタインでもホワイトデーでもないのに、お菓子攻めに遭う理由が解らない。
困惑しきりのヴィレッタを横目に、マイは嬉しそうに言葉を繋ぐ。
「良かった。これで隊長も元気になれる」
「私が…元気に?」
「ああ。朝から隊長、変だったから。ずっと辛そうだったじゃないか」
「辛い? 私が? 怒っていて恐い…ではなくて?」
「いいや。隊長は辛そうだった。言いたいことが言えないみたいで、すごく…苦しそうに見えた」
(…! 気付かれていたのね…)
この子にまで心配をさせてしまうとは。己の心の未熟さをヴィレッタは呪った。
不安げに眉根を寄せるこの少女が気付くのだから、他の3人が気付いていないわけがない。
きっと気付いた上で、悩める彼女をそっとしておく方を彼等は選択したのだろう。
ーそれもまた、優しさの一つの形。
「だから、隊長が元気になるにはどうしたらいいかと思って、自分で考えたり、他の人に聞いたりしたんだ」
「…それで、お花とお菓子?」
「大人の女の人はお花を貰うと嬉しいんだ、って前にイルム中尉が言ってたのを思い出したんだ。
 お菓子は、アヤの読んでいる本に沢山ケーキ屋さんが載っていたから、それで…」
「そうだったの。あなたなりに考えて、色々してくれたのね。…ありがとう」
すぐ近くにあったマイの頭を、ヴィレッタは思わず撫でていた。
普段の彼女らしからぬ行動にマイは軽く驚いていたが、撫でられる心地よさに目を細める。
「よかった。隊長、もう大丈夫?」
「ええ。もう大丈夫。あなたのおかげよ、マイ」
長いこと渦を巻いていた激情はおさまり、先の問題にも冷静に対処するだけの気力が戻ってきたのがわかる。
「でもこんなには食べられないわね。みんなのところに持っていって、お茶にしましょうか」
「そうだね。えっと、隊長とライはコーヒーで、アヤがアイスティー。リュウが…玄米茶だよね?」
「ええ。今日は私がいれるから、マイは持っていく手伝いをしてくれるかしら」
「わかった。そう言えば、ギリアム少佐は何が好きなのかな」
不意に上がった「彼」の名前に、ヴィレッタはライ愛用のカップを取り落としかけた。
782〜Don't be so sad〜:2005/04/27(水) 01:07:35 ID:pBERNowd
「…どうして少佐が出てくるの? もしかして、演習に参加しているの?」
「うん、3人揃って頼みに行ってた。何だか知らないけど、みんなすごくやる気だったぞ。
『負けた方は勝った方の言う事を何でも一つ聞く』って約束までしてた」
「そうだったの。…リュウ達の残念会にならなければいいけれど」
「ギリアム少佐はすごくすごく強いけど、リュウだって沢山がんばってるんだから。だから絶対勝てるよ!」
「そうね。マイに応援されたら、きっとリュウセイも勝てるわね…」
小さなワゴンに必要な物を詰め込み、笑いあいながら二人は部屋を後にした。

ちなみにSRXチームvsギリアムの演習は、ライが善戦した物の結局3人とも大敗。
3人へのギリアムの命令は「書類整理の手伝い」となったところにヴィレッタとマイが到着した。
状況を聞いて飛び入り参加したヴィレッタが一矢報い、ギリアムへのお願い権を見事にゲット。
さて、彼女の願いとはー

「一つ聞きたい事があるから、正直に答えて欲しいの。
 実は昨日、とある喫茶店で少佐を見かけたのだけれどー」

 終