【やるのが】ストーリーを教えてもらうスレ Part7【面倒】

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276ゼノギアス
各まとめ人の皆さん、お疲れーです。

ちとこれからリアルで忙しくなるので、その前にブースト掛けて貼ります。
ソラリス潜入からdisk1終了まで、一気に。
もうセリフ丸写しだ〜ヽ(`Д´)ノ

>>264
おまたせ、肉です(w

ってなわけで、前回は>>260-262
277ゼノギアス ソラリス編 1/7:04/04/28 11:33 ID:DvCXKN4O
【天上の楽園 ソラリス潜入!】
ソラリスのゲートは、本土にある発生機によって完全には消えていなかった。しかしながら、その効力は
かなり弱まっており、ゼプツェンのグラビトン砲でわずかにこじ開ける事ができるとの事だった。
その一瞬にフェイ、シタン、エリィの先発隊が侵入、他のメンバーは別ルートから侵入する事になった。

一度解散し、みなが準備を整える中、シタンは妻ユイから、シタン自らが封印した剣を受け取った。
これからの戦いは、負ける事が許されない戦いなのだ。そう自分に律し、シタンは妻と別れた。

その後、フェイたちはゼプツェンに乗ってソラリスに向かった。なぜかハマーも一緒に。
フェイたち三人が最初に降り立ったのは、地上から上がってきた物資を集配する所のようだった。
とりあえず情報収集をする事になり、輸送用のコンテナを調べていたフェイだったが、突然そのコンテナが
動き出し、どこかへ運ばれてしまった。
着いた先は居住区のような所だった。第3級市民層。通称働き蜂と呼ばれる地上人たちが住んでいる区域だ。
ここに住んでいるものは、アレンジと呼ばれる洗脳を受け、昔の記憶もなくして奴隷のように働いている。
後を追ってきたエリィと合流したフェイは、とりあえずこの区画を出る事にした。シタンとはまだはぐれた
ままだったが、彼はこの街に詳しい為いずれ合流できるだろうとの事だった。

第3級市民層と第2級市民層を繋ぐ唯一の通路、監視塔。二人はそのセキュリティをエリィのIDを使って抜けた。
そこでフェイは、ソラリス市民の生活を見ることになる。隅々まで清掃の行き届いた道。その道をホバーカー
が走っている。市民は高度に発達した科学技術により病に悩まされる事もなく、何不自由なく暮らしていた。
戦に乱れる地上と比べると、まさしく天上の楽園といった趣である。
ホログラフで彩られた煌びやかな街を歩いていた二人は、アラボト広場で軍の観艦式が行われると知った。
ゲートの消失による動揺を抑えるために、何らかの情報が提示される。そう考えた二人は広場に向かった。

空中戦艦が艦隊飛行を披露するなか、天帝が壇上に現れ、市民に語りかけた。
天帝「地上ゲートの消失は、前もって計画されていた事である。"福音の劫"に向け、我々は神の眠る地、
  "マハノン"への扉を開いたのだ。愚かなる獣ラムズに我らの力を知らしめようぞ」
天帝の演説を魅入られたように聞いていたエリィは、フェイに呼ばれて我に返った。
壇上では、天帝の次に、カレルレンが演説を始めた。
カレルレンを見て、フェイはデジャヴを覚えた。そして、彼の古い記憶が揺り起こされる。

500年前のニサンの大聖堂。そこでフェイ、いやラカンはカレルレンに会っていた。
絵の具を取りに帰るというラカンに、カレルレンは護衛を買って出たのだ。当時、既にソラリスとの戦争が
始まっていた。道中、ラカンはカレルレンの変貌を語っていた。冷酷非情な軍人であったカレルレンは、
ソフィアと出会う事で学問に目覚め、人としての心を取り戻したのだった。彼は、メルキオールと言う師の
下について、分子工学を研究していた。ある日、彼は研究が結実したとラカンに嬉しそうに語ったのだった。

この記憶は、明確にフェイが思い起こしたものではない。カレルレンの姿を目にした事により、無意識下で
呼び起こされ、それがフェイにはデジャヴのように感じられたのだった。
そのカレルレンの演説は続いていた。彼はエテメンアンキに侵入した地上人を捕らえたと言った。彼の傍に、
別ルートで潜入していたバルトたちがホログラフで表示された。
カレルレン「古のガゼルを蘇らせる為に、この者たちを明後日、ソイレントシステムにて処分する」
278ゼノギアス ソラリス編 2/7:04/04/28 11:34 ID:DvCXKN4O
【逃避行 なつかしの我が家】
カレルレンの言葉を聴き、すぐにも助けに行こうとするフェイと、それを抑えようとするエリィはやがて
口論になり、警備兵に見咎められてしまう。即座に逃げ出した二人は、セキュリティに追われ、下水道に
逃げ込んだ。下水道を抜けた先は第1級市民層だった。出口から歩くと程なくしてエリィの家に辿り着いた。

家に入ると、母のメディーナが驚いた顔で出迎えた。エリィは行方不明と知らされていたのだ。
一通り言葉を交わした後、エリィたちは彼女の自室へ移動し、一息ついた。シャワーを浴び、落ち着いた所で
フェイが彼女の母親の話題を振ると、エリィの顔が曇った。彼女には地上人の乳母がいた。自分の髪の色と
外見がソラリス人のそれと違う事から、エリィは地上人の乳母が実の母親ではないかと思っていたのだ。

重くなった空気を振り払うように、彼女はバルトたちを救い出す手立てを考えようと提案した。
彼女は、自分の父の自室にある端末からソイレントシステムの情報が得られるかも知れないと考えた。
父親エーリッヒの部屋に移動した二人はネットワーク端末にエリィの名前を逆から入力したパスワード、
「MYYAHELE」でログイン。検索の結果、第3級市民層のダストシュートからソイレントに入れる事を突き止めた。

その時、エーリッヒとメディーナが部屋に入ってきた。自室にいるフェイを見たエーリッヒは、部屋の電話で
軍警に出動を要請し、フェイに銃を向けた。
エリィ「やめて! フェイは捕らえられた仲間を助けたいだけなの!」
エーリッヒ「エリィ、反逆者がどうなるか知っているだろう? 私はお前の身を案じて……」
エリィ「嘘! お父様は自分の立場が危うくなるのが嫌なだけでしょう!? 私のユーゲント入りを反対したの
   だって、地上人との間に生まれた私を皆に見せたくなかっただけじゃない!」
エーリッヒ「お前はまだそんな事を……よく母さんの前でそんな……!」
フェイ「やめてくれ! 俺のせいで親子喧嘩なんて…。俺がここから去ればいいだけだ。エリィ、お母さんの
   前であんな事言うもんじゃないよ。あの表情は決して他人の物なんかじゃない、そうだろ?」
そう言うと、フェイは部屋から出ようとした。すると、エーリッヒは窓ガラスを銃で割った。
エーリッヒ「たとえ侵入者であっても、娘を守ってくれた事は確かだ。侵入者は逃げた。それで良いだろう」
その場を去ろうとするフェイにエリィは同行しようとしたが、エーリッヒに止められた。
フェイも彼女を抑え、「今度こそ軍を抜けろよ」そう言って立ち去った。
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【孤独な狼 闇の底をかける】
エリィの家を出た後、フェイは第2級市民層の監視塔へ向かった。そこではシタンが待っていた。
彼はあの観艦式を映像で見て、フェイの行動を推測し先回りしていたのだ。
二人は、シタンのIDを使って監視塔を抜け、第3級市民層へ向かった。

その頃、エリィは家を抜け出そうとしていた。メディーナとエーリッヒはそんな娘に語りかけた。
メディーナ「貴方の思うようになさい。それと、貴方はまぎれもなく私の子よ」
エーリッヒ「私のIDカードを持って行け。…自分の選んだ道を歩く……それは、人の本来の姿なのだ……」
二人に別れを告げ、エリィが家を出ようとした時、帝室警備隊が彼らの家に現れた。
軍警よりも遥かに地位の高い警備隊が来た事で、エーリッヒはエリィがガゼルの被験体にされるのだと知った。
彼は3級市民への降格を覚悟で警備隊に反抗、エリィを逃がした。
279ゼノギアス ソラリス編 3/7:04/04/28 11:35 ID:DvCXKN4O
【疑惑 死のカレルレン研究所】前編
フェイとシタンの二人は、ダストシュートにいた。扉が開けられず思案に暮れている二人に、エリィが合流した。
エリィは一通り事情を話すと、エーリッヒのIDカードを使って扉を開けた。
ダストシュートから出て少し行くと、レトルトパックや缶詰などが保管されている倉庫のような部屋に出た。
その先がソイレントシステムと呼ばれる施設になっているようだった。
それまで飲まず食わずだったフェイとエリィは、倉庫にあった缶詰の肉で簡単な食事を済ませ、先に進んだ。
そこは、先ほどの缶詰などを作っている工場のようだった。何かの動物がプレス機でミンチにされ、ベルト
コンベアに乗って流れていた。
エリィ「いやね……何の肉かしら」
フェイ「作ってる所は見たくないな……」
シタン「待ちなさい。貴方達は先ほどあの缶詰を食べました。それをよく認識して先に進んでください」
彼の言葉に不安を覚えながら、フェイとエリィは先へ進んだ。
そこで二人が見たものは、死んだウェルス、つまりは人が、コンベアで運ばれ、ミンチにされる光景だった。
ショックを受けたフェイの脳裏に幼い頃の記憶がフラッシュバックした。
どこかの研究室の寝台に寝かされた彼。ガラスの向こうでは彼の母が冷たい目で彼を見ていた。

口を押さえうずくまるエリィ、へたり込むフェイ。シタンが淡々と語った。
シタン「ソイレントシステム。ソラリスの生体実験場とその処理施設。そして刻印<リミッター>(註1)維持の
   為の食料、薬品の生産施設。アクヴィのウェルスもここで造られたのです。エリィ。ドミニアがなぜ
   貴方を憎むのか。その答えがここです。彼女の祖国エルルの人々は、その能力の特異性故、M計画…
   つまり、ウェルスの母体とされていた。エーリッヒ卿は以前この施設の総括官であり、ニコラと共に
   研究に携わっていました。もちろん、常に良心の呵責に悩まされていた。だから出来うる限り集めら
   れた地上人を3級市民として保護し、そして身を退いたのです」
ショックを受けるエリィとフェイを促し、シタンは先へ進んだ。

工場を抜けると、建物の雰囲気は研究所のそれへと変わった。奥へ進むにつれ、様々な施設を彼らは見る事に
なる。人をウェルスへと変える現場、ウェルスに変えられた人々が入れられている檻、巨大なウェルスの
サンプルの保管庫、メモリーキューブが集められた部屋。そしてある場所では、通常の3倍(!?)はあろうかと
言うギア・バーラーを発見した。
やがて彼らは、P4と表示された扉の前に来た。そのロックを難なく解除するシタン。
フェイは彼に、この施設について尋ねた。
シタン「元々ここは、原初の刻より生き続ける御方、天帝を頂点とするガゼルの法院の延命研究の施設だった。
   原初の刻。つまり一万年前、地上にヒトが生まれた。その最初のヒトが天帝と12人のガゼルなのです」
エリィ「そんな……一万年も生きる人間なんて……」
シタン「もちろん、それは天帝一人。彼は死ねない運命にあるのです。だがガゼルの運命は違った。500年前の
   地上との戦争で、彼らは肉体を失ってしまったのです。現在ソラリスを統治してるガゼルは、メモリー
   バンク上に存在するデータ。肉体も魂もない単なる数字の羅列に過ぎない。崩壊の日(註2)の後、肉体に
   固執する彼らは自らに相応しい肉体を創る為にソイレントシステムの一つをエテメンアンキに写した。
   その後、ここは民意統制用の薬品や生物兵器の研究にも使われるようになった。
   我々が何気なく使っていたメモリーキューブも、ガゼルの肉体復活の為に地上人のデータを収集する
   目的で設置されたものなのです。
フェイ「さっきの工場で分解されてたウェルスたちも……」
シタン「使用済みの出し殻の再利用といったところでしょう」
思いもよらない話に、フェイたちはショックを隠せなかった。

註1・・・500年前の大戦後、地上人の反乱を恐れたガゼルが、カレルレンの分子工学技術を用い、遺伝子
     レベルで人々に組み込まれた精神と肉体の抑制装置。ソラリス人にも組み込まれている。
註2・・・500年前の大戦末期、突然現れたディアボロスと言う謎の第三勢力によって、地上、ソラリスの
     区別なく、世界の人口は98%が失われた。その出来事を後に人々がこう呼んだ。
280ゼノギアス ソラリス編 3/7:04/04/28 11:36 ID:DvCXKN4O
【疑惑 死のカレルレン研究所】後編
エリィ「ちょっと待って。おかしいわ。なぜ先生(シタン)がそんな事を知ってるんですか? そんな事、軍や
   政府の要人でも知らない事なのに。M計画の真相を当のマリアよりも詳しく知ってるなんて……。
   もっと早く気づくべきだった。先生……貴方は何者なんですか!?」
その時、突然辺りが暗闇に閉ざされた。

気がつくと、フェイは周囲をスクリーンに囲まれた部屋で、拘束具をつけられていた。
スクリーンに、研究室の寝台に寝かされたバルトたちが映された。正面のスクリーンには、ガゼルの法院を
背にしたシタンの姿が。
「この男はソラリス守護天使が一人、ヒュウガ・リクドウ。天帝の命を受け、お前を監視していた。そして
 お前に引き寄せられるであろう、我らが"アニムス"となりうる者を取捨選択、ここまで導いてきたのだ。
 "アニムス"は我らの復活に欠かせぬもの。この者たちは我らの肉体……拠り代。ただそれだけの存在……」
フェイ「本当なのか先生! こいつらの言ってることは!!」
シタン「この三年間、私は貴方の傍にいた。見極めねばならなかった、我々の仇となるかどうかを……」
フェイ「仇……?」
「お前は我らにとって危険な存在。もっとも、監視を命じたのは天帝だ。我々はお前の消去を目論んだが、
 悉く失敗した。それでも"アニムス"は手中に出来た。ヒュウガは良く働いてくれたよ」
フェイ「こいつらと組んで俺達を……。何が目的だ! お前達はこの世界を既に手中にしているはずだ!」
「我らが目的は神の復活。ヒトが地に満ちたとき、神とマハノンは目覚める」
フェイ「天空の楽園マハノン……。地に墜ちたと言う……?」
「我らの方舟……その中央ブロック"マハノン"。神の封印されし場所。そこは知恵の源。その知恵を使い、
 目覚めた神を復活させ、神と我らを大宇宙へと運ぶ"方舟"を建造するのだ」
「我らが大宇宙に君臨するための軍団、天使<マラーク>の創造。そのためのM計画……」
「我々ヒトは、はるか昔、他の天体からこの惑星へ来た異星の生命体なのだ。我らは新たな"アニムス"を得、
 神と一つとなりて再び星空へと還る。これは原初より運命られし事。我々の存在意義そのものなのだ」
「我らは神より大宇宙に君臨する権利を与えられた。福音の劫までに神の復活がなされぬ場合、我らは滅び
 なければならぬ。だが、"アニムス"を得、我らの復活は約束された。後は神の復活と……」
スクリーンにカレルレンの姿が映し出された。
カレルレン「この者の目覚めを待つだけ……」
彼の背後には、寝台に寝かされたエリィがいた。

カレルレンの私研究室。
目を覚ましたエリィに、カレルレンは語りかけた。
カレルレン「以前君が起した事件。原因はドライブによる力の暴走ではない。"君の中に眠るもう一人の君の
   一時的な目覚め"によって起こったことだ。……これが何か解るかね。ナノマシンの一つ、アセンブラ
   と言って、分子や原子を解体、再構築できる機械なのだ。ゼボイムで発見したあの娘を解析する事で、
   ここまで小さく精巧に作る事が出来た。従来のナノマシンでは、遺伝子の組み換えは行えても、二重
   螺旋の空隙部分…イントロンに隠された情報まではわからなかった。しかし、新しいナノマシンは、
   容易くそれを見つけてくれた。本来あるべきではない情報をね。まもなくその結果が出る」
彼のデスクのスクリーンに解析結果が表示された。
カレルレン「ふむ。確かに類似波形を描いている。そして……おお、ウロボロス環! やはりそうか、これで
   ミァン、そしてラカンの動き……全て説明が付く。エレハイム(エリィ)……君が"母"だったのだな」
エリィ「母……?」
カレルレン「これは君の遺伝子の、エクソン置換前の空隙……。本来は情報の存在し得ないイントロンを
   概念化したものだ。この環は、"ある特別な存在"にしか存在し得ない情報だ。ウロボロス…大母とも
   言われるこの概念の蛇が、自ら銜えたその尾を放せばどうなるか……君は興味がないか?」
エリィ「……」
カレルレン「エレハイム、君は美しい。"あの頃"と少しも変わっていない。"もう一人"のラカンと同様に」
281ゼノギアス ソラリス編 5/7:04/04/28 11:38 ID:DvCXKN4O
【脱出! 誰がために君は泣く】前編
フェイの拘束されている部屋にシタンが入ってきた。シタンに怒りをぶつけるフェイ。だが、拘束具は彼の
神経の伝達を物理的に止めているため、彼は身動き一つ取れなかった。
シタンは、フェイを言葉で責め続けた。
シタン「青臭い理想論など、現実の前では何の力もありません。人はより大きな力に依存して生きている方が
   いいのです。自分は独立した個人だ、と言う幻想だけを持って生きられる。なんと楽な事じゃないですか。
   抵抗したところでむなしいだけです。辛いだけです。抵抗した結果が今のあなたの姿です。友人達を
   助ける事も出来ず、エリィさえも守れない。実に無力だ、貴方は。どうする事も出来ないんだ」
フェイ「やめろ……やめて……くれ……」
やがてフェイが静かになった。それを確認したシタンは、ため息混じりに言った。
シタン「これでゆっくり話が出来ますね……イド…」

カレルレンの私研究室。寝台に拘束されたエリィは、一人考え込んでいた。
そこへラムサスが入ってきた。彼は狂気に犯された目で、エリィにフェイの居場所を詰問した。
その答えが得られぬうちに、彼は目を爛々と光らせ「フェイめ…見ていろ…」そう言って部屋を出て行った。

フェイが拘束されていた部屋。拘束を解かれたフェイが目を覚ますと、シタンとバルトたちがいた。
シタンに殴りかかろうとするフェイを押しとどめ、バルトが事情を説明した。
バルトたちの体に刻まれたリミッター。それを外すため、シタンは現時点で唯一処置が可能なこの研究所に
彼らを連れてきたかったのだという。さらに、ソラリスが何をしているのか、何をしようとしているのかを、
フェイたちは知るべきと考えたのだ。それ以外にもう一つ目的があったのだが、それは後々という事になった。
ともかく、彼らは行動を開始した。フェイたちはエリィを救出に、シタンは最後のゲートの破壊に向かった。

フェイたちが首尾よくエリィを連れ出した頃、シタンはゲート・ジェネレーターでジェシーと合流した。
彼らが爆薬を仕掛け終わる頃、ラムサスが彼らの下に現れた。裏切り者、彼はそう言った。
シタン「裏切ったわけではない。私達は立つ場所が違うだけです。私はフェイ達といようと決めたのです」
ラムサス「貴様もか…! フェイフェイフェイ、どいつもこいつもフェイフェイ! 奴だけは俺のこの手で……。
   その奴の下に行こうとする貴様らは敵だ! "俺のもの"を奪う敵だっ! 敵だっ! 敵だっ!」
彼の異常な言動に呆れたジェシーは、シタンを促してその場を去った。爆薬がジェネレーターに火をつけた。
ラムサス「この裏切り者ぉぉぉぉぉっ!!」
火に巻かれながら、彼は絶叫した。

ソラリスを脱出するため、フェイたちは格納庫に向かっていた。ハマーが連れてきたメディーナも、一行に
同行している。エーリッヒは、一足先に脱出手段を確保するために格納庫に向かった。
合流ポイントになっている格納庫前の陸橋。そこで合流した彼らは、格納庫へ向かおうとした。
だが、エリィの悲鳴が彼らの足を止めた。ハマーがエリィを羽交い絞めにして銃を突きつけていた。
ハマー「エリィさんは戻ってもらうっす! カレルレンって人と約束したっすよ、エリィさんを連れて行けば
   "変えないで"くれるって……」
リコ「ハマー! てめえ!」
ハマー「俺っちだってホントはこんな事したくないっす。でも、俺っちは"普通"の人間なんっす! フェイの
   兄貴たちみたいに"特別"じゃないんす! こうするしかないんすよ!」
泣き顔でそうまくし立てるハマーに、メディーナが歩み寄った。
ハマー「動いちゃダメっす! 止まるっすよ!」
メディーナ「止まりません。わが子の危機ですもの。私はごく"普通"の母親ですから。"普通"だからこそ、
   守らなければならないものがあるんです。さ、エリィ、ゆっくりとこっちにいらっしゃい」
ハマー「ダメっす! 行っちゃあダメっす……行っちゃ……ダメっすよぉ……」
彼の銃が火を噴いた。メディーナがゆっくりと倒れていく。ハマーが悲鳴を上げて逃げ出した。
エリィは、物言わぬ母をかき抱いて泣いた。
282ゼノギアス ソラリス編 6/7:04/04/28 11:39 ID:DvCXKN4O
【脱出! 誰がために君は泣く】中編
その時、彼らの下にグラーフが現れた。その傍には、キスレブに現れた覆面の女がいた。
グラーフ「その女は置いていってもらうぞ」
そう言ってにじり寄ってくるグラーフ。しかし、そこへエーリッヒがギアに乗って現れた。
エリィたちの盾になろうとするエーリッヒ。だが、覆面の女のエーテルが、彼のギアに強大な圧力を掛けた。
エーリッヒ「エリィ、自分の信じた道を行け! お前はなんと言おうと、私とメディーナの間に生まれた子だ」
彼のギアが圧壊した。目の前で両親を殺された怒りで、エリィのエーテルが噴出する。
だが、その力も、覆面の女のエーテルに押し戻されてしまう。強大なエーテル波が、エリィたちを襲う。
その中で、フェイだけがエーテルを物ともせずにいた。しかし、彼はそれまでのフェイではなかった。
髪が見る間に赤く染まり、彼はあの赤い長髪の男、イドに変異した。

その頃、ユグドラシルでも異変が起こっていた。ヴェルトールが独りでに起動したのだ。突如動き出した
ヴェルトールは、その外装をパージ、変形させ、赤く染まって行った。それはまさしく、アヴェの砂漠で
ユグドラシルを沈めた、あの真紅のギアだった。真の姿を現したヴェルトールは、ユグドラシルの隔壁を
突き破って飛び出し、瞬く間にソラリスのイドの下へ到達した。

ソラリス首都、エテメンアンキが、たった一機のギアによって破壊され、墜とされる。
その光景を、シタンたちはユグドラシルから見ていた。爆発に巻き込まれまいと、全速離脱するユグドラに、
ヴェルトールが迫ってきた。バルトたちが混乱する中、エリィは一人、ヴィエルジェで迎撃に出た。
イド「フフ……お前か。殺されにきたのか?」
エリィ「それで貴方の気が済むならそうすればいい」
ヴェルトールの拳がヴィエルジェの腹部を貫いた。エリィはその手を握り締め、叫んだ。
エリィ「お願い! 元のフェイに戻って!」
イドとエリィ、二人のエーテルがぶつかり合い、凄まじい波動が放たれた。
イド「チッ……こいつ…… う…う……エ…リ…… クソッ……ヤツが目覚めた……」

天帝「アーネンエルベ……なせるというのか?」
シタン「もはや管理者は不要だと結論します」
天帝「接触者……仇とならぬと?」
シタン「陛下の仰るとおり、フェイがそうであるならば」
天帝「……ならば託そう……」

シェバト。女王の間に集まったエリィたちに、シタンが事情を説明していた。
シタン「"アーネンエルベ"……。この星に生まれた人々と共に新たな地平へと進む神の人。それは"接触者"の
   運命。天帝はフェイをそう呼んでいました。理由までは教えてもらえませんでしたが」
バルト「ヤツは一体何者なんだ?」
シタン「彼はフェイです。そしてイドでもある。エルルを破壊し、ユグドラシルを沈め、リコの部下を……。
   彼は多重人格なのです。私が彼の監視を始めて三年、イドの発露は見られませんでした。しかし、
   ラハンの事件をきっかけに、その後徐々に発露の回数と時間が多くなっていった。恐らく、グラーフの
   影響でしょう。ラハンに来る前、彼はグラーフと共に暗殺者として行動を共にしていました。
   私は、イドが正体を知るため、先だってフェイが拘束された時、イドと話をしました」

シタン「実に無力だ、貴方は。どうする事も出来ないんだ」
イド「よく分かってるじゃないか。さすがはシタン……いや、先生と呼んでいたか」
283ゼノギアス ソラリス編 7/7:04/04/28 11:42 ID:DvCXKN4O
【脱出! 誰がために君は泣く】後編
シタン「会いたかったですよイド。ところで、フェイは今どうしています?」
イド「"お前達の知っているフェイ"は、俺が出ている間は寝ているよ。だから俺の事は何も知らない。ヤツは
  俺の支配下にあるからな。俺の記憶を見ることは出来ない。元々ヤツは存在しないフェイ。父親のカーン
  によって作り出された人格さ。カーンは、俺の人格を深層意識に封印した。その時にできたのがヤツだ。
  臆病者の部屋の間借り人さ」
シタン「臆病者とは?」
イド「本来のフェイ。出来損ないさ。現実から逃げ出し、生きる事を拒絶した情けない奴。虫唾が走るぜ」
シタン「なぜ貴方の心は分かれてしまったんですか?」
イド「思い出話でもしろってのか? 勘違いするな。俺はお前に質問の機会など与えてない。俺がその気に
  なれば、こんな拘束なぞいつでもぶちやぶれるぞ」
シタン「しかし出来ないでしょう。貴方はフェイを完全には制御できていない。もしエネルギーを使えば
   精神的に疲労し、フェイにステージを奪われてしまう。違いますか?」
イド「……よく解ってるじゃないか。確かに俺は……むっ……」
シタン「どうしました?」
イド「貴様に無理やり出されたからヤツが目覚めた。本来なら俺は自分でステージに立てるんだ。だが、
  あの女、エリィのせいでそれが果たせない。あの女は……みんな同じだ……だから消してやる…」

シタン「現在のフェイの人格は、イドと言う基礎人格の上に3年前に創られた、下層の模擬人格。だから、
   彼にはそれ以前の記憶が無かったんです。さらに、現実の生活を3年しか経験していない彼は未発達で、
   そのため突発的な出来事に対処しきれなくなる」
ジェシー「フェイはいつかイドに飲み込まれちまうのか?」
シタン「どうでしょうか。イドが臆病者と呼ぶ、本来のフェイの人格がネックになると思います。イドは
   その人格を軽蔑しつつ、明らかに恐れていた。イドの表出はフェイではなく、臆病者によって抑制
   されているのではないかと。なぜ臆病者が表出しないのか原因はわかりませんが、これが目覚めれば、
   分離した人格が元に戻る可能性も出るのではと、私は確信したのです。どうすれば目覚めるのか、
   それ解りません。ですが、基本的にフェイの存在が虚ろになるような事がなければ、フェイはフェイで
   いられる訳です。平穏な場所で暮らせるのが一番ですが、状況がそれを許さないでしょうね……」

その後、シェバトではフェイの処遇を決める会議が開かれた。シェバトの議会は、フェイの力を恐れた。
彼の力が、500年前、ディアボロスを率いて世界を崩壊させたグラーフの力と酷似していたからだ。
決議は下された。カーボナイト凍結。人を生きたまま石にする、シェバトの極刑だった。

その夜、エリィは投獄されたフェイに会いに行った。
フェイ「俺はかつて世界を壊滅させたグラーフの再来だそうだ。グラーフも元はラカンと言う地上人だって」
エリィ「そんなのでまかせよ! ……逃げよう? グラーフや戦いがイドを呼ぶなら、静かな所へ……」
フェイ「ダメだ。戦場から離れたとしても、イドが出ない保証はない。それに……俺はエリィを殺そうと…」
エリィ「イドと戦った私が生きてるのは、多分、どこかでフェイの意識が働いて、すんでのところで外して
   くれたからだと思うの。……もし、あなたがイドに支配されて、世界中が敵になっても、私だけは、
   あなたの傍にいてあげる……。だって…だって…… "一人じゃ寂しいものね"」

二人が格納庫に向かうと、シタンたちが待っていた。彼らは、二人の脱出を助けに来たのだ。ヴィエルジェが
修理中の為、シェバトのギア・パーラーを拝借しようと言うフェイだったが、エリィは激しく拒んだ。結局、
二人はヴェルトールに相乗りする事になった。

朝陽を浴びて飛ぶヴェルトールに、ラムサスのギアが襲い掛かった。カレルレンにより与えられたギア・
パーラーだった。エリィの奪還。それがラムサスの目的のはずだった。しかし、パーラーの凄まじい力に
陶酔した彼は、エリィごとヴェルトールを撃墜してしまった。

ヴェルトールの墜ちた森。重傷を負ったエリィを抱えて歩くフェイを、グラーフが静かに見ていた。 続く