第二次スパロボバトルロワイアル8

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1それも名無しだ
※初めて来た人はまずはここを読んでください。
【原則】
リレー企画ですのでこれまでの話やフラグを一切無視して書くのは止めましょう。
また、現在位置と時間、状況と方針の記入は忘れずに。
投下前に見直しする事を怠らないで下さい、家に帰るまでが遠足です。
投下後のフォローも忘れないようにしましょう。
初めて話を書く人はまとめサイトに行ってルールや過去のお話にしっかり目を通しましょう。
当ロワは予約制です。投下する前にスレでトリップを付けて使うキャラを宣言しましょう。
予約の期限はボルテスと同じX(5)日です。間に合わなくても延長があるので、延長する場合は一言連絡を。
【ルール】
EN・弾薬は補給ポイントを利用することで補給することができます。
補給ポイントは各キャラの所持するマップにランダムに数個ずつ記載されています。
機体の損傷は、原則として機体が再生能力を持っていない限り直りません。
再生能力も制限で弱体化しています。
特定の機体がスパロボのゲーム内で持っている「修理装置」「補給装置」はありません。
DG細胞が登場していますが、機体の過度の変質、死者のゾンビ化は制限により禁止されています。
機体の再生、感染、「生きている人間」の身体の補強のみが行われるようです。
マシンセルによる機体の変質や環境操作も制限を受けています。
唯一メディウスロクスのみ機体が変質していますが、これはスーパーロボット大戦MXの展開に準拠したものです。
乗り換えは自由です。
参加者へロワ参加者の名簿は支給されていません。
【備考】
作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
おやつは三百円までです、ただしクスリはダメ、ゼッタイ。
スパロボでしか知らない人も居るので場合によっては説明書きを添えて下さい。
水筒の中身は自由です、未成年者も多いのでアルコールは控えてください。
これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
作品の保存はマメにしておきましょう、イデはいつ発動するか分かりません。 ( 凸 _)<1本(SSを因果地平の彼方に)いっとく?

前スレ
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1221562748/l50
前々スレ
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1209040285/
前々々スレ
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1187103340/
前々々々スレ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1176030907/

旧本スレ
第二次スパロボバトルロワイアル3
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1170806726/
第二次スパロボバトルロワイアル2
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1161702283/l50
第二次スパロボバトルロワイアル感想・議論スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1149764572/
第二次スパロボバトルロワイアル
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1149350054/
第2次スパロボロワイヤル企画スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1148890280/

まとめwiki
http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/
携帯用簡易まとめ
http://srwbr2.nomaki.jp/SRWBRi/index.html
旧まとめサイト(停止)
ttp://2nd.geocities.jp/s2matome/main.html
仮まとめサイト(停止)
ttp://srwbr2.nomaki.jp/index.html
2アルフィミィちゃんの観察日誌:2009/01/27(火) 15:47:20 ID:3aOKfsjB
第167話「獲物の旅」まで
死亡者編
・『死亡者名(搭乗機)/殺害者名(搭乗機)』 キャラ辞典より抜粋&コメント
 なお順番は死亡順

・エクセレン=ブロウニング(搭乗機なし)/アインスト=ノイ=レジセイア(搭乗機なし)
 アインスト=ノイ=レジセイアに最初の見せしめにされ首輪を吹き飛ばされ死亡。
 このことによりキョウスケはアインスト達を倒しアルフィミィを解き放ちエクセレンを迎えに行くこと
 を覚悟する。

・メルア=メルナ=メイア(ジム・カスタム)/グ=ランドン・ゴーツ(ラフトクランズ)、流 竜馬(大雷凰)
 グ=ランドンに機体を串刺しにされ竜馬に機体を爆散されロワ参加者(除くエクセレン)初の死亡者となる。
 早々にテニアとの合流を果たすも彼女の目の前で死亡。このことがきっかけでテニアがゲームに
 乗ってしまいカティアを殺害、統夜も乗っているので彼女の死は報われない。

・グ=ランドン・ゴーツ★(ラフトクランズ)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
 竜馬の大雷凰に機体をライジングメテオ・インフェルノで真っ二つにされる。
 それでも生存していたがテニアを挑発、そのまま彼女に撃ち殺される。
 だが彼の言葉は彼女の心に絶望を植えつける。

・ラクス=クライン EVA零号機)/ヒイロ=ユイ(レイダーガンダム)
 EVA零号機を操ってヒイロを追い詰め、説得しようとするも常識外れの攻撃により零号機を破壊され、死亡。
 版権作品初の死亡者となる。似た思考の持ち主であるリリーナとは遭遇できなかった。

・木戸 丈太郎(クロスボーン・ガンダムX2)/相羽 シンヤ(搭乗機なし)
 知恵と技術でサイコガンダムを撃破するものの、相羽シンヤがテッカマンに変身できるとは見抜けず、
 PSYボルテッカにてコクピットブロックごと蒸発させられる。
 彼が放送で名を呼ばれてもたいして影響がないことも考えると可哀想な死に様である。

・神名 綾人(アルトロンガンダム)/テンカワ=アキト(YF-21)
 ロジャーとリリーナを奇襲するも、割り込まれたアキトにマーダーとみなされコクピットに拳を
 打ち込まれ死亡。だが、彼との戦闘で凰牙のENがなくなったためリリーナの死にも関与している。

・カティア=グリニャール(VF22S・Sボーゲル2F)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
 テニアと再会するも、すでに彼女はゲームに乗っており絞殺される。テッカマンに殺られたキッドを
 除けば当ロワで生身で殺られた人、第一号である。なお、友人に殺されるという最後をとげた一番欝な
 死に方である。

・ジョシュア=ラドクリフ(クインシィ・グランチャー)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
 アイビスと行動中に統夜に御大将を擦り付けられる。そのまま戦闘中にクインシィに邪魔され
 シャイニングフィンガーを喰らい機体が大破、アイビスと共に逃げるものの既に彼は爆死していた。
 なお、彼の死はラキに影響を与えるため彼女の今後が心配である。

・リリーナ=ドーリアン(セルブースターヴァルハラ)/相羽 シンヤ(搭乗機なし)
 機体をばらばらにされ連れ攫われテッカマンにコックピットの ハッチをこじ開けられ首を跳ね飛ばされる。
 おとなしく凰牙にENを供給していればもっと違った展開が待っていたかもしれない。

・ギャリソン時田(ガンダムレオパルド・デストロイ)/ガウルン(マスターガンダム)
 ガウルンと再び交戦、激戦を繰り広げるもガウルンの宗介の愛の前に敗れ去る。
 すごい執事だけに序盤でおしい人が逝ってしまったのは残念。

<<第一回目の放送で上記10名の死亡が伝達>>
3アルフィミィちゃんの観察日誌:2009/01/27(火) 15:48:05 ID:3aOKfsjB
・ユウキ=コスモ(ジガンスクード・ドゥロ) /ジョナサン=グレーン(ガンダムF91)
 ギャリソンの死を悲しみバサラの歌に心を癒されている
 最中にジョナサンの奇襲を受ける。機動性の高いF91を倒すため広範囲攻撃の
 G・サークルブラスターを放とうとするも生きていたバサラがいたため躊躇。
 そのままコクピットにヴェスバーを撃ち込まれ蒸発、死亡する。

・九鬼 正義(ドラグナー2型カスタム)/バーナード=ワイズマン(ブラックゲッター)
 ブラックゲッターの強襲を受け、あっさりと撃墜されてしまう。
 ラーゼフォン系は全滅、薄氷同盟最初の死者となった。

・アスラン=ザラ(ファルゲン・マッフ)/カテジナ=ルース(ラーゼフォン)
 カテジナに盗られたラーゼフォンと遭遇。
 バサラが乗っていると思い込んだまま交戦。だが、ドラグナ−系の力ではデウスエクス・マキナに
 一歩及ばずに機体を両断され敗北。最後に思いを親友に託しながら死亡してしまう。

・神 隼人(YF-19)/クルツ=ウェーバー(ラーズアングリフ)
 同行していたクインシィがエイジに襲いかかり、続いて現れた竜馬も加わり混戦状態に陥る。
 その中、クインシィ・ガロードに3人目を探せと言い押し切る形で離脱させた。
 さらに竜馬の説得を試みるも失敗。最後はクルツの狙撃で被弾、そのまま地表に墜落死となった。

・アルバトロ=ナル=エイジ=アスカ(ガナドゥール)/流 竜馬(大雷鳳)
 消えたラキを探している途中でクインシィに襲われる。
 途中乱入してきた竜馬によって一度は気絶するも意識を回復。
 壊れたフォルテギガスからガナドゥールを分離して、逃走を試みるが追い詰められる。
 最後は大雷鳳と正面からぶつかり合い敗れ去った。

・ヒイロ=ユイ★★(搭乗機なし)/ベルナルト=モンシア(搭乗機なし)
 一度交戦をしたモンシアとG-6基地で再び遭遇する。
 モンシアがヘビーアームズを自爆させた結果、機体を失う。
 基地の状態を調べ、格納庫へ一応の確認しに行く途中にまたもやモンシアに遭遇。
 白兵戦で彼を追い詰めるも自爆に巻き込まれ帰らぬ人となる。
 なお彼の死を持って薄氷同盟は全滅となった。
 
・ベルナルト=モンシア★(搭乗機なし)/ヒイロ=ユイ(搭乗機なし)
 大破したヘビーアームズを有効利用しヒイロの乗るレイダーを破壊。
 しかし、外の様子をうかがいに行く途中に実は生きていたヒイロと遭遇する。
 子供と舐めた結果追い詰められて、ヒイロを巻きこんで自爆死する。

・孫 光龍(レプラカーン)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
 機体の整備にと立ち寄ったG-6基地でバーニィを発見。これに襲いかかる。
 戦闘中、ゼクス・キョウスケが現れて場が複雑化。
 そんな中でキョウスケと戦闘となり、念の暴走の果てにオーラコンバーターを貫かれて死亡した。

・シャア=アズナブル(核ミサイル)/カテジナ=ルース(ラーゼフォン)
 アムロとの合流を目指し、F-2補給ポイントで待機中、カテジナと遭遇。
 機転を利かせ、一度はカテジナの撃退に成功するもラーゼフォンの長距離狙撃を受けてしまう。
 アイビスを逃がし、彗星は地に落ちる。だがその意志は確かに受け継がれていた。
 死亡後も、窮地のアムロと共振する、アイビスの悪夢に出てくると大活躍である。

・相羽 シンヤ★★(テッカマンエビル)/クルツ=ウェーバー(ラーズアングリフ)
 ロジャーから受けた痛手を癒すべくD-8にあるコンビニの食糧を根絶やしにする。
 続いて機体の奪取を目指し、移動してきていたクルツに戦闘を仕掛ける。
 テッカマンの能力を活かし終始優勢に戦闘を進めていたが、最後の最後でクルツの策にかかり死亡。
 テッカマンとしての傲りが最大の敗因であったのは間違いない。
4アルフィミィちゃんの観察日誌:2009/01/27(火) 15:48:52 ID:3aOKfsjB
・ゴステロ(スターガオガイガー)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
 アムロを追いつめるも、ブンドル、ギンガナムに乱入され、勝機を逃してしまう。
 そのままギンガナムと戦闘になるが、彼には「勇気」が足りなかった。
 純粋な力比べに負け、死亡。

・ゼクス=マーキス(メディウス・ロクス)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
 キョウスケと共に基地の制圧に成功するも、直後に機体制御をAI1に乗っ取られてしまう。
 が、メディウス内部からキョウスケをサポート。
 オクスタンライフルに撃ち抜かれ死亡するも、その魂は最後まで気高かった。

・カズイ=バスカーク(メディウス・ロクス)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
 ゼクスの操縦技術をAI1に学習させ、メディウスの制御を奪う。
 圧倒的な力でキョウスケを追いつめるが、最後には人の力に破れることとなる。
 オクスタンライフルを撃ち込まれ死亡。

・マサキ=アンドー(アルトアイゼン)/ガウルン(マスターガンダム)
 キラたちと共にダイへと戦闘を仕掛ける。
 ガウルンと戦闘になり、ボロボロのアルトアイゼンで善戦するも一歩及ばず、コクピットブロックをもぎ取られ死亡。
 彼の持っていた小石がある人物の運命を大きく変えることとなる。

・ミスマル=ユリカ(無敵戦艦ダイ)/ガウルン(マスターガンダム)
 Jアーク組と交戦。地盤を崩すという荒技で戦況を一変させたが、その直後にガウルンによってダイの艦橋は大破。
 外に投げ出されアキトと再会を果たすも、マスターガンダムに踏まれ圧死。
 彼女の死はアキトに多大な影響を及ぼすことになる。

・巴武蔵(RX-78ガンダム)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
 戦艦三隻総勢14名が入り乱れる大混戦の中、一度は気を失うもフロスト兄弟・ガウルン相手に健闘する。
 だが彼は最も信頼していた仲間テニアの姦計に陥る。彼がテニアの裏切りに気づいた瞬間、彼の生は終わりを告げた。
 人が良すぎたのが、彼にとって災いしたのかもしれない。

・カテジナ=ルース★★(ラーゼフォン)/紫雲統夜(ヴァイサーガ)
 水中での休憩中にキョウスケ・カミーユの二人組に見つかり接触する。
 誤った情報を与え穏便に事を運び離脱するが、その離脱中に悲劇は起こった。
 同じように水中で休んでいた統夜の不意打ちでラーゼフォンは大破し、彼女は火に包まれる。
 それでも生きていたのだが、救助中に潰される最期となった。

・クルツ=ウェーバー★★(ラーズアングリフ)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
 ギンガナムと交戦状態に入ったアイビスをフォロー。残弾が少ない中、牽制・狙撃にサポートと戦場を駆け回る。
 最後はラキと行動不能に陥ったアイビスを離脱させ、ギンガナム相手にコードATAによる自爆で一人散っていった。
 最初から最期まで他人のサポートに奔走するのが、彼の生き様であったといえるだろう。

・グラキエース★(ネリー・ブレン)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
 ギンガナムと交戦中のクルツを見つけ戦闘に割り込む。そしてその戦場に彼女の探し人は存在した。
 一時は負の感情に支配されながらもブレンを感じ、ジョシュアを信じ、アイビスとクルツに支えられて彼女は戦い抜く。
 しかし、ギンガナムを制しきれずにクルツが自爆。ラキもまたアイビス一人を残して戦地へ赴く。
 相打ち覚悟で挑んだ勝負で狙い通り禁止エリアへと跳びギンガナムと共に散っていった。

・ギム=ギンガナム★★★★(シャイニングガンダム)/グラキエース(ネリー・ブレン)
 ブンドルと共に訪れた中央市街地でアイビスに襲われ、そのままクルツ・アイビスとの戦闘状態に入る。
 途中さらにラキが加わり苦戦を強いられるも、満足の行く戦いにヒートアップ。テンションが最高潮に達する。
 そして、突き上げる衝動のままに二機のブレンを圧倒。ヒメ・ブレンを仕留め、クルツの自爆にも耐え抜いてみせた。
 しかし、ラキとの一騎打ちの末、禁止エリアへと追いやられ死んでいく。最後の最後までギンガナムらしい暴れっぷりであったと言えるだろう。

<<第二回目の放送で上記20名(+その他生死不明1名)の死亡が伝達>>
5アルフィミィちゃんの観察日誌:2009/01/27(火) 15:49:43 ID:3aOKfsjB
・ジョナサン=グレーン★(真ゲッター)/紫雲統夜(ヴァイサーガ)
 ガロードとの合流待ちの間に統夜に見つかり、これに襲われる。
 一度は動きを読まれ敗れるも救援に駆けつけたガロードのピンチに復活。真ゲッター2を乗りこなし決死の攻勢に出るも遅すぎた。
 既に致命傷を負っていたジョナサンは最後の攻撃に出る。だが命届かず燃え尽き散っていった。
 最終目標であるクインシィの生還はガロードに託されたが、それが果たされる日は来るのだろうか。 

・ベガ(月のローズセラヴィー)/バーナード=ワイズマン(メディウス・ロクス)
 第二回放送直後、我を失ったカミーユを心配し気にかけるも罵声を浴びせられることになる。
 そのときに受けた言葉に苦悩するもカミーユを人として正しい方向へ導きたいという想いを胸に再度前を向いて立ち上がる。
 しかし、その言葉はカミーユに届かずバーニィの仕掛けた攻撃によって基地と共に最期を迎えることとなった。
 常に集団全体のことを考え、一人一人を気遣い、板ばさみに会いながらも前を向き続けた彼女はやはり強い母であったのかもしれない。

・バーナード=ワイズマン★★(メディウス・ロクス)/カミーユ=ビダン(VF-22S・SボーゲルU)
 ユーゼスの誘いを蹴りメディウスを強奪した後に基地を崩壊させる攻撃を仕掛ける。
 ベガの殺害には成功するも、カミーユ、キョウスケ、アキトの三機と戦闘に。
 エース級の実力を持つ三人にじりじりと押され続ける中、ユーゼスの砲撃により生じた隙と油断を突かれ死亡。
 「生きて帰りたい」という切実な彼の願いが叶うことはなかった。
 余談だが、彼の死亡話が投下されたのはクリスマスシーズンであり、これは原作での彼の死亡時期と一致する。皮肉なものである。

・オルバ=フロスト(ディバリウム)/キョウスケ=ナンブ(ゲシュペンストMkV)
 第二回放送後、ナデシコと別行動を取りテニアの始末を目論む。
 ロジャーとの接触などを経て基地へと辿り着くが、そこで待っていたのはアインストと化したキョウスケだった。
 テニアと共にキョウスケと交戦するも、土壇場でテニアに裏切られキョウスケに撃ち貫かれることとなる。
 彼の最期の声は、シャギアにどう影響していくのだろうか。

<<第三回目の放送で上記4名の死亡が伝達予定>>
以上、死者の説明を終わりますの。
6アルフィミィちゃんの観察日誌:2009/01/27(火) 15:51:04 ID:3aOKfsjB
生存者編
●小隊(最新エピソード時の場所と時刻)状況コメント
   ・『生存者名(搭乗機)タイプ分け』備考&一口コメント
   自衛協力型(自衛はするが友好的。対マーダー予備軍)
   無差別型(見敵必殺・問答無用)
   猫被り型(友好的に見えるが、攻撃の機会を狙っている)
   策士型(知略戦で漁夫の利狙い。攻撃は最終手段)
   対マーダー(マーダーは攻撃。他には協力的)
   自衛戦闘型(敵対するなら相手を殺す気あり)
   協力暴走型(基本は自衛協力的だが、状況によって暴走してしまう)
   平和解決型(攻撃されても話し合いで解決したい)


●アムロ&キラ&アイビス(D-3/二日目9:00)
  Jアークに集う黄金の精神の持ち主たち。アインスト打倒のために、今は力を蓄える。
・アムロ=レイ(ガンダムF91)自衛戦闘型
  ガウルンのマスターガンダムと対峙するも、ブンドルの助けもあり無事に戦線を離脱することに成功。
  アイビスやカミーユとの合流を目指し探索を開始し、Jアークと遭遇する。
  ジョナサンが乗っていたF91の乗り手になっていることを理由にキラに疑惑の念を向けられるも、言葉ではなく行動で、自らの『黄金の精神』を具現。
  現在はJアークにて打倒アインストのための準備を着々と進めている。

・キラ=ヤマト(Jアーク)対マーダー型
  幾度の戦闘と仲間の死、そして自らの間違いを知り一時は混乱の極みに達する。
  しかしロジャーやソシエといった仲間たちに支えられ、再び立ち上がることを決意。
  アムロとアイビスという信頼できる心強い仲間たちと共に、勇気を胸に前へ進む。
  専門であるプログラム分野から首輪の解析にチャレンジしている。

・アイビス=ダグラス(ネリー・ブレン) 自衛協力型
  クルツやグラキエースと共にギンガナムと死闘を繰り広げる。
  仲間の死の上にある自分の生の重みを感じ、立ち止まらずに前へ進み続けることを誓う。
  気持ちばかりが先行してしまい具体的な目的を持たなかったが、Jアークと合流しアムロと再会を果たす。
  何気に登場回数が最も少ないキャラであったりする。

●キョウスケ★★★★(G-6/二日目9:30)
  ――すべての存在を撃ち貫く。
・キョウスケ=ナンブ(ゲシュペンストMkV)無差別型
  不在のうちに起きた基地の崩壊の原因が自分にあると、因縁に決着をつけるためにメディウスと戦闘。
  カミーユたちと共にバーニィを討ったものの、アキトとユーゼスの裏切りにより瀕死の重傷を負ってしまう。
  一か八かアキトから没収したカプセルを飲み込むが、致命傷を負ったキョウスケは逆にノイ・レジセイアに身体の支配権を奪われてしまう。
  完全に意識を手放す寸前でカミーユに後を託し、アインスト化。基地を訪れたオルバとテニアの二人を圧倒し、オルバを撃ち貫く。
  鋼鉄の孤狼が自らを取り戻す時は来るのだろうか?

●テニア(G-3/二日目10:20)
  必死に立ち回るも、何時の間にやら四面楚歌。テニアの明日はどっちだ!?
・フェステニア=ミューズ★★★(ベルゲルミル)猫被り型
  Jアークからナデシコへと華麗な転身を見せるも、ナデシコ組の実権を握るフロスト兄弟に危険視される。
  基地にてアインスケと戦闘に。オルバを囮にすることで無事に戦線から離脱するも、これが原因でシャギアから狙われることになったことをテニアは知らない。
  続いて遭遇したカミーユにも本性を見抜かれ大きな痛手を負ってしまう。
  自分で自分の首を絞めているということにテニアは気づいているのだろうか。

●カミーユ(F-4/二日目10:20)
  託されたものは大きい。反発し続ける少年。
・カミーユ=ビダン★(VF-22S・SボーゲルU)対マーダー型
  ベガの仇打ちのため、これ以上争いを誘う者をのさばらせないため、キョウスケたちと共にメディウスと戦闘。
  メディウスは墜とせたが、直後のアキトの不意打ちによりキョウスケが致命傷を負い、後を託されることとなる。
  基地から離脱後テニアと遭遇。ユーゼスの推論を基にテニアの本性を看破するも、撃ち逃してしまう。
  シャア、ベガ、キョウスケと導いてくれるはずだった大人を失くし、カミーユは神経をすり減らし続ける。
7アルフィミィちゃんの観察日誌:2009/01/27(火) 15:52:05 ID:3aOKfsjB
●シャギア&ガロード&比瑪&バサラ&クインシィ(B-1/二日目10:30)
  変化に戸惑う男たち。気絶者が一人はいるというのがナデシコのジンクスなのだろうか?w
・シャギア=フロスト(ヴァイクラン)自衛戦闘型?
  甲児と卵焼き争奪戦を展開したり和室で茶を啜ったりと驚きの変化を見せるシャギア。
  だが兄弟の運命を捻じ曲げたニュータイプという幻想には未だに強い敵意を見せる。
  オルバの最期の声を聞き、弟を生き返らせるためにマーダーへと転向するか、それともナデシコに残りこのまま進み続けるのか揺れている。
  シャギアはまだ気付かない。いつの間にか、甲児や比瑪のことを駒ではなく、仲間と呼んでしまっていることに。

・ガロード=ラン(搭乗機体なし)自衛協力型
  ジョナサンからクインシィのことを託され、シャギアの乗るナデシコと合流する。
  仲間になれというシャギアの誘いを蹴り、シャギアに対するカウンターとしてナデシコと行動を共にすることを決める。
  宿敵の変貌に戸惑いを隠せないが、それもまた自分の知らないシャギアの一面だったのではないかと思い始めた。
  クインシィが気絶中なこともあり、比瑪との会話で久々にまったりムードを味わっている。

・宇都宮比瑪(ナデシコ)平和解決型
  甲児がナデシコを離れたため、暫定的なナデシコ操縦士になっている。
  戦闘を嫌い、出来る限り話し合いで解決しようと思っている様子。
  彼女の優しさはテニア、シャギア、バサラなど多くの人物に影響を与えている。
  クインシィとの接触がどのように為されるのか気になるところである。

・熱気バサラ(プロトガーランド)平和解決型
  ようやく目覚めたバサラだが、声が出ないという異常事態に意気消沈。
  だが比瑪の優しさに触れ自分を取り戻す。シャワー室での発声練習のおかげで、少しずつ声を取り戻しつつある。
  うっすらと聞いたフロスト兄弟の過激な会話は、オルバが死んだ現在では重要な意味を持つかも知れない。
  バサラの歌が争いを止める日は来るのだろうか。

・クインシィ=イッサー(真ゲッター)協力暴走型
  ガロードと共に生き残ることを選択したクインシィ。
  統夜との戦闘でジョナサンを失い、自らもまた気絶状態に。
  現在は比瑪の乗るナデシコに保護されており、気絶から覚めたときに一悶着ありそうだ。

●ロジャー&ソシエ(D-7/二日目10:30)
  交渉人とお嬢様の凸凹コンビ。Jアークとナデシコの会合の場に少しでも多くの人間を集めるため動いている。
・ロジャー=スミス(騎士鳳牙)自衛せんt……平和解決型
  キラからの依頼を受け、ナデシコとの交渉の場を設けるべく動き出す。
  オルバ、テニアとの交渉では互いの利を生かす見事な交渉を見せ、スレ住人を大いに沸かせた。
  続いてのガウルンとの交渉ではガウルンの本性を見極めることができず情報を渡すこととなる。
  疲労もピークに達し、交渉人は一時の休止を取る。

・ソシエ=ハイム(搭乗機体なし)自衛協力型
  ロジャーがJアークを離れる際ちゃっかりと潜り込み行動を共にする。
  予備のギアコマンダーとロジャーの腕時計を巻き上げるあたり抜け目ない。
  統夜の奇襲に対して鳳牙で応戦するなどロジャーのフォロー役としても活躍している。
  ギアコマンダーを持つ以上、データウェポンとの契約もあり得る話だが……彼女はガトリングボアのお眼鏡にかなうだろうか?

●ガウルン&統夜(D-7/二日目10:30)
  マーダー師弟コンビ。奇妙な協力関係は統夜の成長を促す。
・ガウルン★★★(マスターガンダム)無差別型
  各地で争いを巻き起こす火種キャラ。これ以上なくロワを満喫している一人でもある。
  アキト、ブンドル、アムロ、統夜、テニアと多くの人物と因縁を作り上げ、しかもその全てを成就させようとしている欲張りさん。
  統夜の才能を認め、命を狙ってもいい代わりに協力関係を持つという一風変わった約束を結ぶ。
  ロジャーとの接触で新たな情報を得ることに成功し、その欲望を更に肥大化させる。

・紫雲統夜★★(ヴァイサーガ)無差別型
  揺れ続ける心を定めはじめた新人マーダー。
  潜在的な戦闘センスをガウルンに見初められ、師弟関係を結ぶ。
  テニアの立ち回りをガウルンから聞き、強い憎しみをテニアへと向ける。
  数度の戦闘を経て、着実に力をつけている。
8アルフィミィちゃんの観察日誌:2009/01/27(火) 15:53:00 ID:3aOKfsjB
●ブンドル&甲児(E-6/二日目11:00)
  アムロとの合流を目指し基地へ移動する二人。
・レオナルド=メディチ=ブンドル(サイバスター)自衛協力型
  サイバスターを駆り会場からの脱出方法に見当を付け、首輪解除のために行動中。
  ナデシコと接触し、甲児と共に基地を目指す。
  ユーゼスとの接触を経て首輪の解析情報の一部を得るが、サイバスターに興味を持つユーゼスを警戒。
  自分ではサイバスターの全能力を引き出せないため、相応しい操者としてカミーユに興味を抱く。

・兜甲児(ストレーガ)自衛協力型
  ガロードの代わりにブンドルと同行し基地を目指す。
  彼本人には悪気はないのだが、比瑪からの頼みごとをすっぽかしてナデシコを出たりユーゼスとの接触中にナデシコの情報を漏らしたりとうっかりさん。
  今まで戦闘面での活躍は少なかった彼だが、ストレーガに乗る今なら元祖スーパーロボット乗りの実力を拝めることだろう。
  もう少しナデシコに乗っていれば愛機マジンガーZと出会えていたかも。

●ユーゼス&アキト(E-7/二日目11:00)
  仮面コンビの『共犯者』たち。
・ユーゼス=ゴッツォ(メディウス・ロクス)自衛戦闘型
  基地の乱戦のさなかアキトと主催者の繋がりを看破し、アキトと協力関係を結ぶ。
  メディウスを取り戻し、アキトという駒も手に入れ絶好調。
  首輪を解析すべく基地の代わりになる設備を探そうとした矢先、ブンドル達からナデシコの現在位置について聞く。
  メディウスの自動修復を待ち休憩中だが、彼が再び動き出したとき物語はさらに加速していくだろう。

・テンカワ=アキト★(ブラックゲッター)無差別型
  愛するユリカを生き返らせるために優勝を狙う復讐鬼。
  ユーゼスとの関係は共犯者。薬の残数という不安材料もユーゼスとAI1の力により解決されそうだ。
  アルトアイゼンからブラックゲッターに乗り換え、機体のパワーもアップ。
  次の目標は古巣ナデシコ。ユリカが愛した艦を、彼はどんな気持ちで狙うのだろうか。

●竜馬(???/???)
  生死不明。AI1に取り込まれ、ゲッター線に取り込まれ。
・流竜馬(搭乗機体なし)無差別型
  元の世界に戻り復讐を果たすために戦闘を繰り返すバーサーカー。
  体も機体もボロボロの状態で基地に到着し、ベガ、ユーゼスと戦闘を繰り広げる。
  しかしメディウスには一歩及ばず、AI1、そしてゲッター線に取り込まれることになる。
  ゲッター線が見せるゲッターの世界の中で、竜馬は何を思いどう動くのか。

以上、時系列順に二十名の紹介と状況説明を終わりますの。
9それも名無しだ:2009/01/27(火) 16:08:59 ID:3aOKfsjB
観察日誌投下終了ー
>>1スレ立て乙!
10それも名無しだ:2009/01/28(水) 02:04:01 ID:bOAQ9oHI
>>1乙!
11 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:12:56 ID:vv3sPWDv
前スレが容量超えたのでこちらで続き投下します
12 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:13:50 ID:vv3sPWDv
「たしかに皆が手を取り合えるならそれが一番いいさ。でもこの世界では弱ければ死んでいくんだ。必要なのは、理想を叶えるための力だ。
 ただこうしたい、ああしたいっていう言葉じゃない。もしナデシコが来たとして、交渉が決裂したらお前はどうするんだ?
 相手は撃ってくるのに話し合いましょうって言い続けるのか? 違う、守るための力は必要なんだ。たとえそれが、誰かの命を奪う力でも」

一気にまくし立てられる。それはキラがここに来る前からもずっと考えていたことでもあった。
守るための力は必要――その通りだ。和解だ交渉だと言ったところで、それを言う前に倒されては何の意味もない。
だからこそ――

「……じゃあ、カミーユ。僕にその力が、理想を叶えるだけの力があるって証明できれば、協力してくれる?」
「何?」
「君と戦って、殺さずに止められるかどうか。僕が勝ったら、一緒に来てほしい」

考えるより先に口が動いた。
戦いたい訳ではないが、今の彼とわかり合うためにはそれが必要な気がしたから。

「アムロさん、F91を貸して下さい。Jアークはさすがに使えないから」
「ちょ、キラ!?」
「……いいのか? 何なら俺がやってもいいが」
「いえ、僕がやらなきゃいけないことですから。……どうかな、カミーユ?」
「いいさ、やってやる。俺が勝ったらこのまま基地へ向かってもらうぞ」
「うん、わかってる。君一人を説得できないようじゃ、ナデシコと和解するなんて無理だろうしね」

こうして、急遽キラとカミーユの模擬戦――使うのは実弾だが――を、行うことになった。


          □


場所は変わってD-3市街地。キラがラクスの眠る場所を戦場にするのは嫌だという訳で移動したのだ。
補給ポイントにてVF-22Sの補給が完了。これで準備は整った。
振り返れば白い小型のガンダム。カミーユの愛機Zガンダムより二回りは小さいが、変形せずに飛行するところをみるとよほど高性能のようだ。
アムロはJアークにて周辺の索敵を担当している。横槍を入れてくるものがいないかどうか警戒するためだ。
アイビスという少女は自分の機体で待機している。念のためと言っていたが、キラの援護をするためだろうか。

「いつでもいいよ」

当のキラから通信が入る。
これから戦うというのにその顔には特に気負った様子もなく、少なくとも自分と同じかそれ以上の戦闘経験があるのだと感じさせる。
操縦桿を握る腕に力がこもる。
先に交戦したワイズマンやテニア、模擬戦とはいえある意味彼らと戦ったとき以上に負けられない戦いではある。

「すぐに終わらせてやる」

呟いて、機体を加速。
あの機体は本来アムロの乗機らしい。この先基地に向かうことを考えると、不用意に傷つけるわけにはいかない。
バトロイド形態のまま市街地を駆け抜ける。
13それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:14:18 ID:MUkyACDv
 
14 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:15:53 ID:vv3sPWDv
F91がビームライフルを掲げるのが見えた。咄嗟に廃ビルの陰に機体を潜り込ませる。
閃光は虚空を貫き、後方のビルに直撃。大穴を開け、粉塵をまき散らした。
どうやらあのライフルはカミーユの体感してきたものとは次元が違う。Zのビームランチャー並とまでは言わないものの、一発でもまともに受ければそこで終りだ。
ビル陰から躍り出る。
すかさずビームが飛んできた。ピンポイントバリアを左腕部に集中させ、簡易シールドとして用いる。
力場にビームが衝突。だが、圧縮された力場はなんとかビームを弾いてくれた。
右腕にガンポッドを構え射程内に入るまで前進しようとしたとき、F91の両腰に新たに砲身がせり出しているのが見えた。
その間も変わらずライフルの砲撃は続いている。バリアを強め、構わず突っ込む。
F91の砲身が輝きを灯す。
ぞくり、と背筋を駆け上がった悪寒に突き動かされ、バリアを機体側面に展開しそのまま左手のビルに突っ込んだ。

舞い散るガラス、崩れたビルの残骸の中で衝撃に呻くカミーユの視界いっぱいに、純白の光が満ちる。
傍らを駆け抜けたビームはさっき破損したビルにまたも直撃し、だが今度はその後方のビルいくつかまでも諸共に消し飛ばすのが見えた。
凄まじく高出力のビームだ。あれはいかにバリアを集中させても防げない。
が、一度見たからにはそう易々とは当たるわけにはいかない。
発射されたと認識してから回避できたところからするに、弾速そのものは速くはない。
そして腰部から回転するようにせり出した砲身は、その構造上腰から上は狙い撃てない。
ならばとビルから飛び出しざまファイター形態に変形、瞬く間に空へと駆け上がる。

十分な距離を取ったところでバトロイドへ。太陽を背にオクスタン・ライフルを構え、地上のF91を狙い定める。
モードB、実体弾をセレクト。
F91はヴェスバーを納め、ビームライフルを片手にジャンプ。高架の上に陣取り、迎撃の態勢を見せた。
実体弾とビームが交錯する。
陽光に目が眩んだか、先程より狙いが甘い。バリアを使わずとも回避できた。
対するキラも、巧みに機体を操り弾丸を避けていく。地上での加速性能はバトロイド形態のVF-22Sより上かもしれない。
この距離ならビームライフルの回避は容易いとわかった。ライフルをモードEに変更、余裕を持ってチャージを開始するカミーユ。
と、F91が大きく後退する。そして高架の端に来たところで、猛然とダッシュをかけた。
そのままくるりとターン――地面と水平に。背面跳びの姿勢のまま、高架の上をなぞるように滑空していく。
何を、と思った瞬間に気付く。ヴェスバーがこちらを狙っている!
だがカミーユは、あの低速のビームならかわせると判断しチャージを優先。
動きの止まったVF-22S目掛け、F91のヴェスバーが解き放たれる――細い針のような、高速のビームの嵐。

「うわあっ!?」

全身を包むよう展開していたピンポイントバリアを貫かれ、張り出した肩の装甲が吹き飛んだ。
衝撃に機体が傾ぎ、チャージ中だったオクスタン・ライフルが手からこぼれ落ちていく。
カミーユは自分の認識の甘さを思い知った。
あの武装は低速・高出力のビームだけでなく、高速で一点に集中された貫通力の高いビームも撃てるということか。
そして、キラ・ヤマト。あの不安定な姿勢から、上空の点のようなVF-22Sを正確に狙い撃ってきた。
こいつは――強い。遅まきながらもそう思い、気を引き締め直す。
しかし、そんな思いは霧のように掻き消える。F91が落下するオクスタン・ライフルを拾い上げ、構えるのが見えたからだ。
チャージ中だったライフルの出力は既に臨界目前にまで達していた。
数秒間を空けた後、赤い閃光がカミーユ目掛け放たれた。ビームの濁流が迫る、だがそんなことよりも――

「――お前が、それを使うなッ!」

意識が赤い靄のようなもので塗り潰された。
キョウスケから託されたものを、撃ち貫く槍を――俺に向けるのか、と。
脚部のスラスターを全開にし、弾かれるようにビームを回避する。
無理な姿勢での強引な機動に一瞬気が遠くなる。
だが沸き上がる怒りがそれを封殺し、腕は考えるより早く操縦桿を倒す。ファイターへと変形、F91に向けて逆落としに突撃していく。

威力がありすぎるのを嫌ったか、F91はモードBにて迎撃を図る。
相対的に凄まじい速度になった弾丸を、だがカミーユは、

「当たるものかッ!」

機体を僅かにロールさせ、弾丸の通り道を開けてやるようにかわしていく。
弾丸と弾丸の隙間を縫うように――ただの一発も被弾しない。
15それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:16:20 ID:MUkyACDv
 
16 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:17:12 ID:vv3sPWDv
一気にガンポッドの射程に入る。だが、カミーユはそれを使わない。
激しく揺れるレティクル、その中央のF91目掛け。
寸前でガウォーク形態に変形、体当たりを仕掛けた。

「それを……返せぇッ!」

激突の瞬間、F91が一瞬早く機体を引いた。
F91の頭部のバルカン砲が展開するも、撃たれない。
この距離で撃てば確実にカミーユのいるコックピットへ直撃する。機体の接触を通し、キラの躊躇いの声が聞こえた。
その隙を見逃さず、VF-22Sは左手でライフルを掴み、残る右手で思い切りF91を殴りつけた。
胴部を強打され、F91が吹き飛んで行く。

カミーユは追わず、バトロイドに戻した腕でライフルを構える。チャージした分のエネルギーは3割ほどしか消費されていない。
離れていくF91に向けて叩き込む。もはや手加減や機体を傷つけずに、などという考えは失せていた。
F91が着弾の寸前、右腕を突き出した。手甲の部分が輝き、ビームで形成されたシールドが展開する。
VF-22Sのピンポイントバリアと似たようなものかと推測。だが関係ない――破壊するだけだ。

ライフルを落とし、両腕にガンポッドを構えた。噴煙の中うっすらと光るF91のシールドへ向けて、乱射する。
風が煙幕を吹き払う。F91は地面に膝をつき、なんとかシールドの範囲内に機体全てを納めていた。
完全に捕らえた、これでF91は一瞬でもシールドを解除すればズタズタに引き裂かれる。
模擬戦ならば勝ったとみていい状況で、しかしカミーユの引き金を引く指は固まったかのように動かない。
時折りビームライフルを握る腕を突き出し、牽制の砲撃を返してくるからだ。
F91はまだそこにある。キラはまだ生きている。

なら、破壊するだけだ。カミーユの目の前から、意識から、記憶から。ただの一つの欠片もなく、完全に消え去るまで。
一枚の絵画のように静謐に、ただひたすらに撃ち続ける。
17それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:17:25 ID:MUkyACDv
 
18 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:18:09 ID:vv3sPWDv
          □


「ねえ、止めた方がいいよ! これ模擬戦なんかじゃない! 二人とも本気で戦ってる!」

Jアークのブリッジに、アイビスの焦りに彩られた声が響く。
アムロの見つめるモニターの中では白と青の機体が激しく砲火を交わしている。
その一射一射にひやりとする――直撃すればただでは済まない威力。
アムロとしても、これ以上続けさせるべきではないか、とは思う。だがもしここで止めれば、カミーユは即座に行方を眩ますだろう。
今の彼を一人にはしておけない。さりとて、シャアを死なせた自分の言葉は、カミーユには届かない。
キラに任せるのは大人として心苦しいが、この中でカミーユの気持ちが一番理解してやれるのもキラなのではないかと思うのだ。
歳の近さ、戦いに身を投じるようになった環境、経緯。そしてここに来て大事な人を失った悲しみ。
アムロならある程度心の奥に沈めておけるそれも、未だ若い二人には酷なことだろう。
鬱憤を吐きだす意味でも、秘めた思いを全力でぶつけあうことは有効だ。
ただし、命を奪わない範囲では、だが。
カミーユはともかく、キラも引きずられて熱くなっているように見える。やはりここは止めるべきか――

『ミサイルランチャー、反中間子砲ともに補給は完了している。いつでも介入は可能だ』

トモロの声。彼もやはり静止すべきと考えているのか。

「……アイビス、待機だ。横槍を入れるなよ」
「ッ、アムロ!」
「キラを信じろ。彼なら負けはしない……最悪の結末は来ないと信じるんだ。トモロ、砲撃準備は解除だ。二人の気を散らすな」

逡巡を呑み込み、指示を出す。了解、とトモロ。続くアイビスの声は納得などしていないようで、何故だと必死に問いかけてくる。

「俺達はキラの理想を信じてここにいる。これはキラの力と想いを試す試金石でもある。
 正義のない力がただの暴力であるのと同じように、力のない正義はただの理想論だ。どちらが欠けてもいけない……」

もしここでキラがカミーユに破れる、あるいはカミーユを殺してしまうようならこの先で生存者をまとめていくことなどできるはずもない。
カミーユほどその力を見知っているわけではないが、それでもアムロは信じられると思っていた。
キラはまだ16歳という若さで戦うことの重さを知っている。かつて自分も通った道、その辛さは誰よりも知っているつもりだ。
だからこそ、彼と戦うことでカミーユにも新たな道が開けることを望む。
見守ることしかできない自分に歯痒さを感じつつも、アムロは拳を握り締めモニターを見つめ続けた。

19それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:18:48 ID:MUkyACDv
 
20 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:19:04 ID:vv3sPWDv
          □


F91は動けない。
シールドがそろそろ限界だ。かといって、今解除すればあっという間にハチの巣にされる。
ヴェスバーを使える体勢ではない。どうにかビームライフルで牽制するのが精一杯だ。
考える。F91の武装でできることを。
考える。地形の情報、自機の位置、敵機の位置。
警告音。ビームシールド使用限界まであと5秒――

「迷ってる暇なんてないじゃないか……!」

右手のビームライフルを戻し、代わりにビームサーベルを構える。同時にバルカン砲、メガマシンキャノンをスタンバイ――ここで一秒。
地面に押し当て、出力を上げて発振させた。やはり同時にバルカン、キャノンを地面に向けて叩きこむ――さらに一秒。
膝をつくF91の周囲、円を描くように腕を回す。砕かれ、ドーナツ状に焼き切られた高架は、ミシミシと音を立てる――二秒かかった。間に合え……!
シールドが限界を迎えた。無防備になったF91を睥睨するVF-22S。
ガンポッドから弾倉が吐き出され、新たなそれが挿入される。
構えられたそれが火を噴く、その一瞬前に。

「このぉおおおおおッ!」

座り込んだまま下方向へ向けて加速するF91。足元に凄まじい負荷がかかる。
ビシッ、という音の後。
地面に地割れのようにヒビが広がり、F91ごと砕け、落下していく。

高架を挟みVF-22Sの姿が見えなくなる。この一瞬が考える好機だ。
先程、落下してきたライフルを掴んだ時からカミーユは別人のように鋭い動きを見せてきた。
その後の攻防でこちらを撃破することよりもライフルの奪回を優先したことから、何らかの思い入れがあるものにキラは触れてしまったのだろう。
スイッチを入れてしまった、というの正しいのだろうか。
ともあれ、何とか互角に戦えていたはずがこのままでは一気に押し込まれそうだ。
全力を出し切らねば勝てない――どころか、命も危うい。
F91はいい機体だ。カミーユの機体に、決して負けてはいないだろう。
ではキラがその性能を十二分に発揮できているか――否。
今この機体はアムロが乗ることを想定したセッティングのまま戦っている。
変更する時間もなく、またその必要もないと思っていたからだが……もうそんなことは言っていられない。
VF-22Sに追い詰められる前に、OSを書き換えねばならない。

そして、もう一つ。バイオコンピューターだ。
このガンダムF91に搭載されたバイオコンピューターは、人と機械の仲介を果たす役目を持っている。
操縦者の意志を機体が感じ取り、また機体のセンサーが感知した情報を文字や映像という過程を経ず操縦者に直接フィードバックする。
肌で敵の存在を感じる、というのだろうか。機体と一体になるという点で画期的なシステムと言えるだろう。
だがそれに対応できるのは、一握りの人間だけ。
普通の相手ならそれでもカバーできる。だがカミーユ相手では、僅かな情報の取りこぼしがすなわち敗北につながることになる。
常人ではバイオコンピューターのもたらす情報を処理しきれないのだ――拡がっていく感覚を自然に受け入れることのできる、ニュータイプと呼ばれるものでもなければ。
そしてその素養はキラにはない。いかに反射神経や思考速度に優れていようと、コーディネイターに人知を超える超常的な力はないのだから。
だが、構わないとキラは思う。足りないのなら、別の方法で補えばいい。
バイオコンピューターが全方位から情報を伝えてくるから、捌ききれない。

「だったらッ!」
21それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:20:04 ID:MUkyACDv
 
22それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:20:18 ID:ihSmZnol
>>20
つ【期待】
23 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:20:28 ID:vv3sPWDv
コントロールパネルを引き出す。膝の上で固定、どんなに揺れても動かないように。
同時にヴェスバーを高速連射モードに。フットペダルを蹴り付け、スラスター出力を上げる。
右手でグリップを握る。ライフルとヴェスバーの同時制御。
そして左手をパネルの上へ。
指先がキーボードの上を跳ね回り、速射砲のごとき勢いでタイプする。
高架を回り込み、青い影が迫る。槍のごときライフルを、突き刺さんばかりの勢いで振り上げ、構える――その前に。
二門のヴェスバーが閃光を放つ。重く収束されたビームではなく、軽く拡散する光のシャワー。
機を逸したバルキリーが後退する。時間を稼いだ。何秒、と考える暇もない。
洪水のように溢れる情報の取捨選択。並行して、OSのブラッシュアップ。
動作プログラムをチェック。遅い、これなら自分で動かす方が早い。必要ないと思われるプログラムを凍結、少しでも手間を減らす。
新たなウィンドウが現れ、目を通すと同時に処理。表示されてから消えるまで2秒間。
眼球が絶えず動き回る。もどかしい、両手が使えたらもっと速いのに。

ちらと見えたモニターで、その原因が銃を向けている。あの長物はビームと実体弾を使い分けることができるらしい。
ろくに狙いも定めず撃ち放たれるヴェスバーを易々とかわし、そのライフルが火を吹いた。
機体を囲むように弾が散らばり、逃げる空間が潰された。動きが止まり、そこへ満を持してF91へ向けて放たれる弾丸。
ビームライフルが貫かれた。咄嗟に放り捨て、シールドを展開。爆風から身を守る。
衝撃に歯を食いしばり、敵機を見据える。そのライフルの先には、赤い光が灯っている――高密度のビーム。
シールドでは受け止めきれないだろう。かわすしかない、が銃口は糸でつながったようにこちらを追尾する。
動きを読まれている。もっと速く動かなければ。
牽制のヴェスバーをばらまく。敵機は縫うように避けていく。
警告、砲身の加熱。冷却のためヴェスバーが沈黙した。同時に敵機も回避の必要がなくなり、完全なる狙撃の体勢を取る。

撃たれる。負ける。死ぬ――

刹那にも満たない時間。キラの脳裏をよぎる、親友の顔。ただひたすらにお互いの命を奪い合おうとした、アスランの。
今のカミーユは、あのときの自分たちと同じだ。戦うことで、目の前の敵を排除することで何かが変えられると信じている。
そして、いつか行き着く先に何もないことを知る。それを思い知ったはずなのに、また同じことを繰り返そうとしている、自分。
死とは解放である。その身に背負った業も、後悔も。すべて消える――楽になれる。
アスランとラクスもそこにいる。なら、いっそ。
光が膨張し、一直線に伸びてくる。その向かう先はF91、キラのいるコックピット。
全てがスローをかけたように感じられ、キラは笑った。これで終わる、そんなことを考え。

「認めない……そんなことはッ!」

甘い夢のような弱い考えを、意志の力でねじ伏せる。


そして、頭の中で何かが弾けた。


思考が冴え渡り、圧倒的な全能感が体を包む。迫る荷電粒子、撒き散らされるその一つ一つを知覚できるような気さえする――


F91の右腰にあるウェポンラック。予備のビームシールドを掴み、放り投げる。
濁流のようなビームに、シールドは展開と同時に貫かれた。一瞬、だがそれで充分。
そしてF91の左手にはビームサーベル。リミッター解除、最大出力。焼き付いたって構わない。
過剰なエネルギーを供給され、剣と言うより槌と呼ぶにふさわしいビーム力場。
叩きつける――シールドを突破し、減衰したビームへ。
凄まじい負荷。表示される情報、現状のままならサーベルの溶解まで残り6秒。
待ち望んでいた膠着の瞬間。右手を固定したグリップから離す。左手も追随、存分に動かす。
4秒が過ぎ、5秒が過ぎ。唐突に負荷が消え、そのまま振り切ったサーベルには刀身がなく柄頭が溶けていた。
灼熱の奔流を切り裂いた代償だ。が、代わりに得た物は大きい。
今の一撃にカミーユも勝負を賭けていたようだ。呆然としたように動きが止まっている。好都合。
先程から組み上げていた情報を連結。新しいプログラムの構築――完了。
24それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:21:04 ID:MUkyACDv
 
25 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:21:23 ID:vv3sPWDv
全方位からではなく、一か所から。
歩く歩幅を小さくしても、足を踏み出す速さを上げれば最終的な速度は変わらない。
センサーのもたらす情報を全て言語化しモニターへ表示する。機体管制と同時に無茶な処理を押し付けられたOSが悲鳴を上げた。
このOSはそのような使い方は想定されていない。警告表示が画面を埋め尽くす、その前に。

「これで……応えてくれ、ガンダムッ!」

プログラムのインストール――終了。
モニターを占拠する警告表示が一斉に消えた。代わって一つ、生み出されたウィンドウ。

『プログラム稼働率95%。未定義情報の処理を開始』

表示される文字の羅列。だがそれは一瞬で別の文字に切り替わる。その文字が残るのもまた、一瞬。
しかし、キラの鋭敏な視覚はそれを捉える。
バイオコンピューターの感知する感覚的情報、その全てをこうして具現化する。常人が確認すらできないそれをキラは次々と把握し、理解する。
頭の中がひどくクリアになっている。現れては消える情報も、全て読み取れる――

カミーユが動き出した。ライフルを構え、突進してくる。エネルギーが尽きたか、実体弾の乱射。
だが、今度はかわせた。先程とは違い、銃口の向きで射線が読み取れる。
しかもあれだけの長物だ、両手で保持するその姿は実に読みやすい。
ライフルの動きを注視し、発砲の一呼吸前に回避運動。一瞬前のF91の位置を弾丸が通過していく。
読まれやすいライフルで仕留めることは無理だと悟ったか、バルキリーがライフルを放り捨てた。そのまま戦闘機へと変形し、急速に距離を詰めてくる。
アムロが最初に乗っていたバルキリーにはガンポッドとミサイルが装備されていたという。なら、あの機体にも同じかそれ以上の武装があるはずだ。
射線が読まれるのなら物量で押す、正しい判断だ。
F91の武装は今やサーベル一本にヴェスバーのみ。そして取り回しの悪いヴェスバーでは対応できない。

「これで終わりだッ!」
「まだだ……まだ終わりじゃない!」

咆哮とともに、F91が光を放つ。フェイスオープン、放熱フィン展開。
バイオコンピューターは最大稼働率を示している。
輝きとともに機体表面の装甲が剥離、MEPE現象が発動した。
バイオコンピューターはサイコミュ的装置ではなく、必ずしもニュータイプを必要としない。
その機能を完全に引き出せるのはニュータイプくらいだということだ。
なら、ニュータイプでなくともニュータイプ並みの力を持つ者なら、その能力を使いこなすことは、可能。
波間に消える泡のような情報を余すところなく読み取っていくキラの情報処理速度は、F91の全力稼働に耐え得ると――ニュータイプに比肩しうると、バイオコンピューターは認定した。
故に、F91はその力の全てをキラに委ねる。金色の輝き、人の可能性の体現を。
幾重にも重なるF91の虚像がVF-22Sを取り囲む。
26それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:22:08 ID:MUkyACDv
 
27 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:22:25 ID:vv3sPWDv
「なんだ……分身!?」
「カミーユッ!」
「やらせるかッ! いくら見える数が増えたって、本物は一つだけだ!」

だが、驚いたことにカミーユは十数のF91の中から正確にこちらを狙い撃ってきた。
シールドで弾丸を受け止める。分身に惑わされてはいない。
効果がないわけではないだろうが、この様子では少ないと考えた方がいい。
今のF91の機動力は愛機フリーダムと互角かそれ以上のはずだ。なのに決定的な差とならない――やはりカミーユは強い。
己に一層の注意を喚起するキラ。サーベルを構えバルキリーへと躍りかかる。
もうエネルギーは残り少ない。勝負をかけるなら今だ。
カミーユも同じ考えなのか、人型へと変形。正面から向かってくる。

VF-22Sのピンポイントバリアパンチ。ぎりぎり拳が届かない位置へと、半歩機体を引かせる。
連続する分身。そこには変わらぬF91の姿――いかに分身に惑わされずとも、視覚的な情報を全て遮断することはできない。
F91に届く寸前、VF-22Sの腕が伸び切った。その腕を斬り飛ばすべくサーベルを振り下ろそうとした瞬間。
分身を突き抜けてくる何かを感知。高速の熱源、ミサイルだと推測。
とっさにバルカンで迎撃するも、その間にVF-22Sは後退していた。
追撃のヴェスバーを放つ。VF-22Sは再びファイター形態へと変形、機体を傾けることでヴェスバーの間をすり抜けた。
交差するように放たれた二条のレーザーをサーベルで弾く。
上方から回り込むように向かってくるVF-22S、射角を下にとるヴェスバーでは狙い撃てない。
メガマシンキャノン、バルカンを一斉掃射。閃く火線に捕らえられる寸前、VF-22Sが足を投げ出す――ガウォーク形態。
本来は地上戦用の形態ではあるが、重力制御を駆使した機動は空中にあったとて何らマイナスになり得ない。
変則的な機動で振り切るようにかわされ、返礼としてガンポッドが凄まじい量の弾丸を吐き出す。
さすがにこれは斬り払えず、シールドを展開する。一瞬の後、キラは動きを止められたことに気付く。
一気に接近戦の距離へと潜り込まれた。VF-22Sの上半身が持ち上がりバトロイド形態へ。

「墜ちろォッ!」

拳が迫る。キラは機体を半身に傾け、拳の内側――敵機正面へとぶつからんばかりの勢いでF91を前進させた。
ピンポイントバリアパンチがここで炸裂すれば危ないと直感したか、カミーユは咄嗟にバリアを解除した。
空の拳が肩口を叩く。損傷――問題ない、このまま行ける。サーベルを放棄し、F91は舐めるような動きでバルキリーの側面へ。
カミーユを殺さず、また自分も殺されないで戦闘を終わらせるためには。

「ここだ……勝負だ、カミーユ!」

F91がVF-22Sに組みついた。そのままスラスターを全開、地面へ向かって降下する。

「何をする気だ、お前!」
「君を止める、それだけだ!」

VF-22Sも黙ってはいない。ブースターを吹かし、上昇しようとする。
推進力は異なる二つのベクトルを示し、絡み合う二機は無秩序に空中を動き回る。
制御できない運動に、その中心にいる二人の少年は苦悶の声を上げる。

「うわあああああッ!」
「ぐ、くうっ……ッ!」

まるで何百年も前に流行ったというUFOのような軌道を描き、ガンダムF91とVF-22Sは地上へと落ちていった。
28それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:23:14 ID:MUkyACDv
 
29 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:24:13 ID:vv3sPWDv
          □

「う、あ……?」
「あ、気がついた?」

目が覚めて、カミーユが最初に目にしたものは青空――だけでなく、心配そうな顔のキラ・ヤマト。
VF-22Sのキャノピーが開け放たれ、運び出されたようだ。
自分よりも先にこの線の細い少年が覚醒し、あまつさえ彼に運び出されてても自分は気付かなかった。
負けたのか、という思考と、まだ勝負はついていない、という思考がせめぎ合う。
すると、キラが手を差し出してきた。

「カミーユ、まだ動ける?」
「お前に心配されなくても……っ!?」

差し出された手を振り払い、なんとか立ち上がったところで、頬に衝撃を感じた。
と思った瞬間には視界いっぱいに青空が広がり、俺は今倒れているのかと自問する。

視線をキラに向ける。彼は拳を握り締め、「人を殴ったのは初めてだ」と呟いた。
胸に再び戦意が燃える。まだ勝負は終わっていない、そう言いたいのか、と。
ふらつく足を叱咤して、立ち上がる。彼に倣うように、カミーユも拳を握る。
それを見てキラは微笑んだ。
その顔に拳を叩き込む。先のカミーユ同様に転がるキラ。
しかしすぐに立ち上がって口元を拭い、再び殴りかかってくる。
人を殴ったのは初めてという言葉が正しいものであるかのように、構えも何もない。
動き自体は鋭いのだが予備動作の大きなパンチを身を屈めてやり過ごし、みぞおちへと拳を突き込む。
痛みに身を折るも、その眼光は未だ鋭い。カミーユは引けばやられるとばかりに、その顔を左右両方の拳で殴りつける。
が、キラは今度は倒れない。
殴られつつも、反撃の拳は空を切り続けるも、決して後ろには下がらず前進し続ける。
バックステップ、空いた距離を助走に充てて右足を振り回す。
脇腹を抉る手応え。キラは激しく咳き込むもやはり倒れず、蹴り足を掴んできた。
力を込めるが、離さない。そのまま右のパンチを放ってきた。
カミーユの足を掴んでいるため腰が入っていないそのパンチを右腕で軽く払い、逆に腕を掴み返す。
引っ張る――カミーユも後ろに倒れるが、同じように迫ってくるキラの顔を左の拳で打ち抜く。
背中が地面に着いた。一瞬息が詰まるが、無視して足を掴む手を振り払い、体勢を入れ替える。
いわゆるマウントポジションの形になった。

「はぁっ……はぁっ……ここ、までだ」
「何、が? まだ、勝負は……ついて、ないよ」

身体が重い。疲労は極みに達していると言えたが、ここは意地を通す場面だとカミーユは確信している。
この状況で、特に格闘技経験などなさそうなキラが打てる手はない。負けを認めさせ、この茶番を終わらせる――
だがキラは負けを認めない、カミーユより余程辛そうなのに。
気圧されているのは間違いなくキラではなく自分だ。
わからない、何故こいつは――
30それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:24:58 ID:MUkyACDv
 
31 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:25:32 ID:vv3sPWDv
「どうして……そこまでする。俺のことなんか、放っておけばいいだろう」
「……できないよ。君は、僕と同じだ、から」
「お前と?」
「憎しみだけで戦っちゃ駄目なんだ……君も、僕も。それがわからなかったから、僕は友達と戦った……。
 放送でアスランって名前が呼ばれたの、覚えてる? 子どもの頃からの、親友だったんだ」

その名前には覚えがある。二回目の放送で呼ばれた名だ。シャアの前に呼ばれたから、なんとか聞き逃してはいなかった。
馬乗りにされて苦しそうな様子を見せるキラだったが、それでも言葉を切るつもりはないように続ける。

「アスランは、ザフト……軍に入ってて、僕は彼と敵対することになった。それで何度も戦う内に、お互いの友達を殺してしまって。
 僕らは、本気で殺し合ったんだ。憎かったから、許せなかったから。でも僕らは生き残った。生き残ってしまった……。
 なら、きっと僕らにやらなきゃいけないことがあったはずなんだ。戦いを止めるために、今度こそアスランと手を取り合おうと思った、でも!」

悔恨を呑み下すように一つ息を吸い、

「アスランは死んでしまった。アスランだけじゃない、ラクスも、カズイも! 守るって決めたのに、守れなかったんだ!」
「お前……」
「……君をここで行かせてしまったら、きっと君は死んでしまう。行かせないよ……今度は、止めてみせる」

そう言って、右手を突き上げる。だが肩が背についていては、どんな達人だろうと――

「ッ!?」

視界が閉ざされ、目に激しい痛み。
キラは殴ろうとしたのではなく、手に握りこんだ砂をばら撒いたのだ。
押さえつける力が緩んでしまった。押しのけられ、キラが立ち上がる。
カミーユが立ち上がるその前に、キラの足が迫り、腹部にめり込む。蹴り飛ばされ、地面へと転がる。
吐きそうな痛み。だが、屈する訳にはいかない――今は、まだ。

「ごめん……卑怯、だよね」
「ガッ、は……ああ、卑怯、だ。でも――少し、見直し、た」

こいつも必死なのだ、とキラに共感めいたものを覚えた。
立ち上がる。もう次に倒れたら、そこで終りだろうと他人事のように思う。
それはキラも同じだろう、激しく肩で息をしている。
先に一発入れた方が勝つ。なんとなく、お互いそう思っているんだろうなという気がした。

Jアークから青い機体が発進するのが見えた。今頃仲裁しに来たのか――
と、一瞬目を離した隙にキラが踏み込んできた。
身体を捻り、勢いを乗せて右腕を打ち出そうとしている。もうかわす体力も、打ち落とす気力もない……
だから、カミーユは前に踏み込んだ。
キラの拳が加速し伸び切る前に、額で受ける。
意識が飛びそうになる。だがまだだ、まだこの拳を撃ち込んでいない――!
最後の力を受け止められ、目を見開いたキラの懐へ。
固く、硬く握った拳をその身体の中心へと、叩きつける。
カハ、という呼気とともに拳から伝わるキラの力が抜ける。倒れる前に、受け止めてやった。
32それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:26:05 ID:MUkyACDv
 
33 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:27:19 ID:vv3sPWDv


ネリ―・ブレンという機体が着陸した。直、赤毛の少女が出てくるだろう。怒っているだろうな、と気が重くなる。
腕の中のキラを見やる。
こいつは理想家などではない。奇麗事をやり遂げるだけの強い意志を、それを成す覚悟も、そして力も持っている。
自分とどこが違うのだろうと嘆息し、抜けるように青い空を見上げる――注意を逸らした。
もぞもぞと、キラが動いた。まだ意識があるのかと、とりあえず介抱しようとして――

灼熱のような痛みが全身を駆け抜けた。

よろよろと見下ろす。自分の腹に、何か生えている。
キラを突き飛ばす。その手にあるのはバール、のようなもの。
隠し持っていたということだろうか。
キラを、まるで信じられないものを見るような目で睨む。彼は悪戯がばれた子供のように、ほがらかに笑った。

「お、お前……?」
「だから、卑怯かっ……て、聞いたんだ、よ」
「それとこれとは――」
「僕の――勝ちだ!」

疲労と痛みで、もう腕が上がらない。キラが突っ込んできて、バールのようなものを振り上げる――
ブツリ、と意識が断ち切れる音を聞いた。それはキラに頭を強打された音だったのだが。
薄れゆく視界の中で最後にキラの声が聞こえた気がする。「ありがとう、ソシエ」――と。
そして目の前が真っ暗になって、カミーユ・ビダンは眠りについた。
34それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:27:34 ID:MUkyACDv
 
35それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:29:08 ID:ihSmZnol
>>33
つ【希望】
36 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:29:12 ID:vv3sPWDv
          □


「起きたか。落ち着いたか、カミーユ?」
「……ええ、おかげさまで。まだ頭が痛みますよ」

Jアーク居住区の一室。ベッドの上でカミーユが身を起こす。
キラに殴られ気絶した後、ここに運び込まれたらしい。
アムロが水の入ったボトルを投げ寄こす。喉を冷たい水が滑り落ち、自分が落ち着いてきたことを実感する。

「あいつは……大丈夫なんですか?」
「怪我の面でいえばお前よりよほどひどいが、無事だ。
 何でもキラはコーディネイターという――強化人間とはまた違うが――、まあ俺達よりも頑健な肉体を持っているそうだ。
 特に心配することはない。それよりも」

アムロがカミーユの目を覗き込む。反射的に逸らしそうになる視線を意地で押さえつけた。

「で、どうだ。まだ一人で行動する気なのか?」
「……勝負に負けたんです、従いますよ。俺も、頭に血が上っていたことは認めます。
 一刻も早く基地に行かなきゃいけないって気持ちには変わりありません。でも、あいつの言うことを信じてみるのも悪くない……そう思います、今は」
「そうか……何よりだ。では、動けるようなら来てくれ。改めて彼らにお前を紹介する」

促され、立ち上がる。ややふらつきはしたものの、頭はすっきりとしている。
全力で殴り合ったのが効いたのだろうか。単純なものだと自分に呆れる。
バールのようなもので殴られた頭をこわごわさすってみる。コブにはなっているが、特に出血はない。
キラが手加減したというより、全力で殴ってもこの程度の力しか残っていなかったのだろう。
数分ほど歩き、ブリッジに着いた。中からは賑やかな声が聞こえる――と言っても、声が大きいのは一人のようだが。
扉が開き目に飛び込んできたのは、顔中絆創膏だらけのキラと、更に彼の頭に包帯を巻こうと迫っている赤毛の少女だった。

「あっ、アムロさん。アイビスを止めてください! さっきからいいって言ってるのに包帯を巻こうとしてきて、っていうか意味ないよ絆創膏の上に包帯なんて!」
「何言ってんのよそんな顔で! アムロからも一言……って」

やっぱり気まずいな、とカミーユは思った。先程まで彼女の仲間と盛大に殴り合っていたのだから。
アイビスの後ろから当のキラが顔を出す。何と言おうかどうか迷っていると、

「カミーユ、気がついたんだ! ……大丈夫、頭? その、思いっきり殴っちゃったから……」

先に声をかけられた。しかも、カミーユの身を案じている様子で。
アムロの言っていたこともわかる。バールのようなもので殴られただけの自分に比べ、キラの顔は腫れ上がるほどに殴ったのだ。
大丈夫?というのはむしろこっちのセリフだと思った。

「キラ……その。済まなかった。俺は周りが見えてなかった。自分のやりたいことだけ押し通そうとして、迷惑をかけた」

自然に口から謝罪の言葉が滑り出る。何故かキラに対してはもうほとんどわだかまりはなかった。

「え……あ、いや、いいんだ。カミーユの言ってる事も正しいんだし……それに僕も人のことは言えないよ。
 八つ当たりっていうか、ずっとむしゃくしゃしてたのをカミーユに当たってしまって。むしろ僕が悪いって言うか」
37それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:29:37 ID:MUkyACDv
 
38 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:31:01 ID:vv3sPWDv
逆に謝られる始末だ。不意におかしさが込み上げてきて、カミーユは身を折って笑った。ここに来てから笑ったのは初めてだ。
見れば赤毛の少女――アイビスも何か言いたげにこちらを見ている。
既にアムロから、シャアが彼女を庇って死んだことは聞いた。それを気に病んでいることも。

「あのさ……私」
「あの人は、迷わなかったか?」

だから、彼女が謝ってしまう前に聞いた。

「……うん。シャアは……私を守ってくれたよ。死ぬことは許さない、託された命の重さを背負っていけって。だから、私も精一杯生きるって決めたんだ」
「そうか……。ずるいな、あの人は。そうやって、いつも自分だけ先に行ってしまうんだ……」

クワトロ、いやシャアにはまだやるべきことがあったずなのに。だがあの男のことだ、最期に悔いを残すことなどなかっただろう。
目を閉じればあの人が語りかけてくるような――

『新しい時代を作るのは老人ではない。ここから先は君次第だ――』

そう、聞こえた気がした。

(わかってますよ……俺には、あなたや多くの人から託された想いがある。生きて、辿り着いてみせます。あなたが望んだ、新しい世界に……)

シャア・アズナブルの影に別れを告げる。ここから先はカミーユ・ビダンの道だ。もうシャアを頼ることはできない。
顔を上げ、そこにいる全員を見据える。

「俺は、基地にいるキョウスケ中尉……アインストを倒さなければならない。力を貸してほしい」
「カミーユ、僕達は」
「ああ、わかってる。今すぐってわけじゃない。ナデシコって戦艦と合流して、戦力が集まってからでいい。俺もそれまで同行させてもらいたいが、いいか?」
「カミーユ……! うん、歓迎するよ!」

キラが右手を差し出してくる。さっきは振り払ったその手を、今度は強く握り返す。
そうだ、一人で気負うことはない。アムロ、キラ、アイビス。
この仲間達となら、なんだってできる。
もう基地のときのような失態は犯さない。今度こそ守り抜いてみせると、深く決意する。

「よし、ではもう一度状況を整理しよう。カミーユ、まずはお前の情報からだ」

事態を見守っていたアムロが促す。まるで自分が口を出さずとも何とかなるとわかっていたようで、やっぱり大人なんだなと思った。
39それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:31:23 ID:MUkyACDv
 
40 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:32:26 ID:vv3sPWDv
          □


「じゃあ、ブンドルさんとそのガロードってやつは味方ってことでいいんですね」
「ああ。ナデシコはどうなるかはわからないが、ガロードについては信用できる。カミーユ、お前も一度彼に会っておくべきだ」
「え? どういう意味ですか?」
「会えばわかるさ」

「ユーゼスに、アキトか。この先ぶつかることになるだろうな……それまでにナデシコと合流できればいいが」
「特にユーゼスです。あいつは何をしてくるかまったく予想できない。ゼストって機体が修復される前に排除しなければ」
「基地から西の方に逃げたってことは、南の市街地に行ったんだろうね。ロジャーって人達、大丈夫かな……?」
「あの人なら大丈夫だと思うけど……ソシエがいるから、心配だな」

「そう、やっぱりテニアは……」
「事情があったんだってことはわかる。だが、彼女はもはや説得でどうにかなる相手じゃないぞ」
「うん……そうだね。たぶんダイとの戦いのときにも、彼女は動いていたんだ。気付かなかった僕のミスだ。そのせいでマサキとムサシは……」
「マサキの死にも……テニアが関わっていたのか」
「ごめん。あのときは撤退するのが精一杯で、とてもマサキのフォローしている余裕はなかったんだ」
「キラのせいじゃない。それにしても、ガウルンか。厄介な相手ですね」
「もし奴と戦うことになったら、俺に任せろ。一度戦った経験が役立つだろうしな」
「でも、そのガンダムってギンガナムの機体と同じタイプなんでしょ? F91が強力な機体なのはわかるけど、アムロ一人じゃ危ないよ」
「いや、俺だけじゃなくブンドルもいる。彼とは早く合流したいところだが、ナデシコでガロードと合流していてくれれば心強いな」

「カミーユ。お前、たしかZガンダムを自分で設計したという話だったな。なら、協力してもらいたいことがある」
「はい、何です?」
「カミーユ、これを見て」
「……、これは。つまり、俺にやれって言いたいことって」
「そうだ。俺とキラとお前とで、『機体の整備』を行っておく。お前はキラとは違ってハード面に強い。期待しているぞ」

「ああ、そうだ。F91のビームライフル、回収したんだけどもう使えそうにないよ、どうする?」
「それなら、バルキリーのガンポッドを使えばいい。俺は一つで十分だ。キョウスケ中尉からもらったライフルもあるしな」
「わかった、じゃあ後でF91用に調整しておくよ」

「そうだ、カミーユ。今何年だったか覚えているか?」
「何年って……UC0087でしょう」
「そうか……いや、そうだったな。俺も歳かな? 物忘れがひどくてな」
「何言ってんです、アムロ大尉はまだ22かそこらのはずでしょう。しっかりして下さいよ」

41それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:32:40 ID:MUkyACDv
 
42それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:33:08 ID:ihSmZnol
>>38
つ【激励】
43 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:33:42 ID:vv3sPWDv
「アムロさん……ちょっといいですか?」

一通り情報を整理し終えたところで強張った顔のキラが声をかけてきた。カミーユとアイビスは離れたところでシャアの話をしている。
声を潜めているということは彼らに聞かれたくない話だろうか。

「どうした、キラ」
「これを見てください。VF-22Sのデータです」

データが示すものは、カミーユの乗ってきたVF-22S。それと、そのVF-22Sに搭載されているはずの反応弾――核。
だが彼からは一言も核を持っていることなど聞いていない。忌避しているとしても、一言もないのはおかしい。

「キラ……これは?」

アムロが支給されたバルキリー、VF-1Jにも反応弾は搭載されていたが使用することもないまま破壊されてしまったために忘れていた。
たった一発で数万の命を消し去るほどの、常軌を逸した火力。そして何より、シャアの命を奪った光。

「ムサシ……仲間が持って来たんです。多分テニアが友達を殺した時に、彼女の目を盗んで。一個人が持つのはあまりに危険だから、このJアークで保管してくれって」
「そう、か。そのテニアという少女に見つからなかったのは不幸中の幸いだったな」

もしテニアなる少女が反応弾を手にしていれば、このJアークも今はなかったかもしれない。
それを考えればたしかに幸いではあったが――

「これを使うときは、アムロさん。あなたが決めてください」
「……俺が?」

キラの目は真剣だ。単に重い選択をこちらに投げているという訳でもないだろう。

「核は、一人の人間が持つには大き過ぎる力です。使い方を誤れば、とても危険なものですから。でも、大きな力であることには変わりない……。
 特に、主催者――ノイ・レジセイアと戦う時には役立つかもしれません。アムロさんなら、使うべきタイミングがわかるでしょうから」
「……わかった。できることなら使いたくはないが、そうも言ってはいられないしな」

カミーユへ説明しに向かうキラに背を向け、格納庫へと歩き出す。反応弾をVF-22Sに積み込まねばならない。
シャアの死の原因たる核を自分達が扱うことになろうとは思わなかった。
アイビスとカミーユは、おそらく核を使うことを良しとしないだろう。
エゥーゴがジャブローを強襲した際、あの堅牢な基地は核によって崩壊を迎えたらしく、カミーユもその現場にいたと聞いている。
アイビスにしてみても、シャアを看取ったとき間近でその輝きを見ているはずだ。
あの威力を知っている者なら、引き金を引くことの重さは嫌というほどわかる。無理もないことだ。
しかし、もしこれを使わなければ切り抜けられないような事態になったとき、アムロに躊躇うことは許されない。
己が逡巡でキラやアイビス、カミーユの若い命が失われるなどあってはならないのだ。
あの男、シャアが自分の立場であったなら迷いはしないだろう。子どもを守るのが大人の務めというものだ――
そうだ、カミーユの時代とアムロ・シャアの時代が違っていることは彼にはまだ話さない方がいいだろう。
歴史が変わるなどの心配もあるが、カミーユの繊細な心を無駄にかき乱すこともない。

(やれやれ。ブンドル、早いところ合流してくれ。俺一人が大人役では荷が重いよ……)

友の顔を思い浮かべ、苦笑する。この苦味はしばらくのところ、続きそうだった。
44それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:33:53 ID:MUkyACDv
 
45 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:35:25 ID:vv3sPWDv
【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN100%
       無数の微細な傷、装甲を損耗
 現在位置:E-3
 第一行動方針:協力者を集める
 第二行動方針:基地の確保
 最終行動方針:精一杯生き抜く
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】

【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 パイロット状態:健康、ジョナサンを心配  疲労(大) 全身に打撲
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%  
 現在位置:E-3
 第一行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第二行動方針:ナデシコ組と和解する
 第三行動方針:首輪の解析
 第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出
 備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復】

【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、若干の疲労
 機体状態:EN40% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ  ビームサーベル一本破損
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾60% ビームライフル消失 ガンポッドを所持 
 現在位置:D-3 北部
 第一行動方針:ブンドルと合流
 第二行動方針:キラに付き添い協力者を集める
 第三行動方針:首輪の解析
 第四行動方針:基地の確保
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している  ガウルンを危険人物として認識
    首輪(エイジ)を一個所持】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(大)
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN40%   左肩の装甲破損
 現在位置:F-4
 第一行動方針:しばらくはJアークに同行する
 第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第三行動方針:首輪の解析
 第四行動方針:遭遇すればテニアを討つ
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】


【二日目 12:00】
46 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/29(木) 22:38:30 ID:vv3sPWDv
投下終了です、支援ありがとうございましたー
タイトルは「獣の時間」、予約期間すぎてしまって申し訳ない・・・
感想ご指摘お待ちしています
47それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:40:05 ID:6YbFWGp4
SSを、見ていたんです。
とても激しく、荒々しく、雄々しいSSを…。
…ああ、私は見続けていたのです。
48それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:41:50 ID:1eU2+CT0
お疲れ様でした…確かにZのカミーユからすれば「これからの地球圏にとって必要な人であるクワトロ大尉」でも
CCAのアムロからすれば「地球を人が住めない場所にしようとするシャア・アズナブル」なんだよなぁ…
49それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:48:06 ID:ihSmZnol
>>46
投下乙です
キラ凄ぇ!&バールのようなもの強ぇw
しかしガンダム主人公三人が揃い踏みか。これでガロードも合流したら、Jアーク組ならぬ「俺達がガンダムだ」組になるなw
50それも名無しだ:2009/01/29(木) 22:52:40 ID:qUBVUNv0
>>46
乙!

勇者ガンダムチームに成りそうだねぇ
51それも名無しだ:2009/01/29(木) 23:18:15 ID:MUkyACDv
投下GJ!
高性能機同士の高速戦から泥臭い殴り合いに引き込まれました。
そして、カミーユ勝利で空手部の面目躍如かと思った瞬間、バールのようなものとは。
思わず噴出してしまいましたw
ってかどこに隠し持ってたんだよw
しかし、ブンドルには甲児がくっついてるからな、アムロが禿げそうだ。
ただ一点だけ、状態表の現在位置がバラバラですよ。
52それも名無しだ:2009/01/30(金) 01:03:00 ID:vivmUbED
投下乙です。
キラとカミーユがマジ喧嘩か。
確かに一見、噛み合わなさそうだもんなこの二人w
戦いがエスカレートする場面では
どっちかが死んでしまうんじゃないかという緊張感がうまく表現されててハラハラした。
結局、殴り合って仲直りというパターンになってほっとしたがw
53それも名無しだ:2009/01/30(金) 01:56:59 ID:3pvBtZ/d
投下GJ!
おお、まさかキラとカミーユのガチバトルを拝めるとは……!
意見の食い違いを戦いの中でぶつけ合い、終わった後には仲直り……王道といえば王道だが、それだけに感動した。
Jアークも戦力が集まってきたなぁ……希望が見えてきた気がする。
54それも名無しだ:2009/01/30(金) 06:40:07 ID:KwO4FlLL
投下乙&gj
なんという陽の沈む河原が似合いそうな喧嘩
55それも名無しだ:2009/01/30(金) 10:23:39 ID:HfZy50nG
投下乙
アイビスが一頃からはとても想像できない和みキャラになってるなw
シミュレーションの成績といい周りのレベルといいアイビスがんばれ超がんばれ。
にしてもカミーユとキラのガチ喧嘩とはそら恐ろしい。
しかしナデシコへのラブコールが凄いことになってきてるな。
マーダー師弟とアインスケ以外が優先的に接触しようしてるってどんだけw
56それも名無しだ:2009/01/30(金) 16:31:37 ID:XN+bszs7
NT以外が分身てなんか違和感バリバリだな…
57 ◆VvWRRU0SzU :2009/01/30(金) 22:22:05 ID:XY5udMpI
感想ご指摘ありがとうございます。終わってみればまたアイビスの影が薄いんだけどw

>>51
申し訳ない・・・場所は全員D-3です。

で誤字というか変なところあったので、>>31
>そう言って、右手を突き上げる。だが肩が背についていては、どんな達人だろうと――
  ↓
そう言って、右手を突き上げる。だが肩が地面についていては、どんな達人だろうと――
に修正します。

>>56
スパロボ的に考えれば分身自体はNTでなくても可能だということで一つ・・・
バイオコンピューターはサイコミュ的装置ではなく、アムロとかカミーユならごく自然にできることでも、
それをキラがやろうとすれば種割れしてOS書き換えて更に気力150くらいでやっとという感じです。不可能ではないが実用的ではないという感じでしょうか
58それも名無しだ:2009/01/31(土) 01:44:12 ID:kvzr2OCz
投下乙!

キラの容赦の無さが新鮮だったw
重箱の隅をつつくようだけど、ヴェスバーはレールから外してエネルギーチューブ
だけ繋がった状態のライフルとしても運用できる、つまり腰から上どころかラストシューティング
もできてしまう・・・

あと劇中でキラ准将はNTのキュピーンをやらかしてしまっているとゆう誰この完璧超人なのであった・・・

でもバイオCPUとキラの組み合わせもまた斬新で面白かった〜
59それも名無しだ:2009/01/31(土) 22:51:04 ID:ZFn5z02A
一応設定上種にはNT居ないんじゃなかったか?
ムウとかラウでも例外ではなく
まあキラがドラグーン対応するのも運命からだから問題はない

つかキラを真面目に応援できたのは初めてだw
キラ頑張れ!と思ってしまった
Jアークはカミーユ、アムロ、キラと相当な戦力になったが
アイビス…助手ラキはじめ死んだ奴らのためにも頑張れ、マジ頑張れw
60それも名無しだ:2009/02/02(月) 13:25:08 ID:dBWBB0c5
欝ビス脱却したみたいだから、アルテリオン並に高速戦闘できる機体があれば普通に強いんじゃね
なんかブレンにこだわりそうな気もするが。…もしかしてサイバスターフラグ?
61それも名無しだ:2009/02/02(月) 20:22:02 ID:JznMHZL8
相性良さそうなのはやっぱヴァルキリーとかサイバスターみたいな可変機だろうね。
一応カミーユがサイバスター候補に挙がってるから、VF-22が転がり込む可能性もないことはない。
なんとなく真ゲッターみたいな高速戦闘できそうなスーパー系は、何かパワーに振り回されてまともに動かせそうにない気がするのは俺だけだろうか・・・。
個人的にはアイビスには、ブレンで行けるところまで頑張ってもらいたいかな。
助手が使ってた武器にラキが乗ってた機体だし。まぁ、ヒメも無事だからどうなるか分からんけどね。
62それも名無しだ:2009/02/03(火) 03:26:59 ID:g31YzQhj
ここは一つアムロ・カミーユ・キラの技術力をフルに発揮して反応弾に外部シートをつけてだな
高速戦闘が可能でなおかつシャアの遺志を継いだ機体が完成と
アイビスの機体として完璧じゃないか

アムロ「というわけだが……乗るか?」
アイビス「絶対にヤダ!」
63 ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/02/04(水) 19:44:00 ID:1olSoXrP
テニア、ガウルン、統夜、シャギア、ガロード、バサラ、ヒメ予約します。
……期限にもし間に合わなかったらすいません
64それも名無しだ:2009/02/04(水) 19:49:17 ID:BqQIxGPB
予約ktkr

テニアオワタww的な包囲網が。ん、あれ、姉さんの名前がな(ry
65 ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/02/04(水) 19:53:48 ID:1olSoXrP
気絶してるから少(ry

すいません、クインシィもです
66それも名無しだ:2009/02/04(水) 20:16:31 ID:+bQEoXvy
おー、予約ktkr!
ナデシコ組にマーダー師弟とテニアか……こいつはヤクい組み合わせだぜ!
67それも名無しだ:2009/02/04(水) 20:29:25 ID:oZO/JQSH
テニア包囲網がヤバイなw
ガウルンが戦場を引っ掻き回せばテニアにも活路が……あるのか?
68それも名無しだ:2009/02/05(木) 00:25:45 ID:jTxWAJIC
ヤベェ、一次のカップルどもの悲恋を思い出すw
69 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/05(木) 02:59:19 ID:fs9yoOpF
ちょっと思いついたんでユーゼス・アキト予約
前回に引き続き自己リレーですが・・
70それも名無しだ:2009/02/05(木) 09:11:26 ID:A1yOqdEs
なっ!油断してたら予約が2件だと!?
去年一昨年と投下が途絶えがちだった1〜3月期が嘘のようだ。
ほんと12月からの勢いは凄いなw
お二方とも期待して投下お待ちしてます。
71 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/05(木) 13:59:52 ID:MucR8/G7
投下します
72 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/05(木) 14:00:32 ID:MucR8/G7
静寂の空を、黒い弾丸が駆け抜ける。
内に宿すは仮面を纏う二人の男、ユーゼスとアキト。
ブンドル、甲児という参加者との情報交換を得てひとまずの指針を得、さしたる会話もなく黙然と男たちは進み続ける。

やがてG-8に到達した。光壁はもう目前だ。

「……ふむ。どうやらここで戦闘があったようだな」

湖畔に差し掛かったところで、ユーゼスが呟く。
周囲を見渡せば、草花が湖面とは逆の方向に倒れているのが確認できた。
恐らく水面に機体が落下し、衝撃が津波となってここまで押し寄せてきたのだろう。
アキトは以前ここで交戦したことを思い返す。
アルフィミィの元から再びこの世界に送り返されたとき、降り立った地がここだ。
そしてそのとき、ここにはアキト以外にもう一人の生存者がいた。青い機体と、破壊されたばかりと見受けられた残骸。
状況から見てあの青い機体がもう一機を破壊したことは疑いようもなかった。
まあ、もう終わったことだ。あの青い機体も当然ここにはいない。特に感慨もなく、機体を進めようとする。

「待て、テンカワ。敗北した機体は湖底に沈んでいるはずだ。回収してくれ」
「無駄だ。俺もその機体は確認したが、完全に大破していた。使えそうにはない」
「機体を確認したのか? なに、使えずとも良いのさ。重要な事は未知であるかどうかだ。私と、AI1にとってな」

ナデシコは北東に向かうらしいが、その前に市街地を探索すると言っていた。多少の時間はある。
ここで少々寄り道をしても、間に合わなくなるということはないが。

「君は薬がなければ戦闘行動は不可能……であれば、多少なりとも私の方で補えるようにした方がいいだろう?
 加えて基地からこちら、君は少し疲労が蓄積しているようにも見える。私がその機体を調査する間、休憩を取ってはどうだ」

一理、ある。薬を飲まない状態で機体を操縦するのは、実のところ困難だ。
動きが取れなくなるほどではないとはいえ、ここで休息していくのも、先を考えれば悪くはない。
ユーゼスに肯定の通信を送り、ゼスト――アキトはその本当の名を知らない――を、地面に下ろす。
基地での先頭から三時間ほど過ぎ、そのコクピットはほぼ修復を完了していた。とはいえ四肢がない現状では移動もままならないのだが。
機体の機密状態をチェック。……水中に入っても問題はない。
慣れ親しんだエステバリスのように装備を換装する必要もない、非常識とも言えるブラックゲッターの構造に半ば呆れつつ水中へと降下していくアキト。
数分ほど潜行したところで、湖底に横たわる巨大な影を発見した。
全長はブラックゲッターより一回りほど大きい――50mほどか。
戦うことになっていれば相当手こずっただろう。あの青い機体はよくもまあこんな機体を撃破したものだと、僅かな感嘆を抱く。
アキトは両手で巨体を抱えさせ、水上へと持ち上げていった。

陽の光の下で見れば、その機体はもはや大破と言う他ないほどの状態だった。
神々しい天使のような機体だった。力強さを感じさせる腕や脚部、頭部には羽根まであしらわれている。
それが、右腕から右腰にかけて、半身をばっさりとやられている。
あの実体剣によるものだろう、まともに勝負していなくて正解だったようだ。
致命傷となった損傷はそれだろうが、他に断面の周囲の装甲が滅茶苦茶に引き剥がされている。
首の付け根から胴体中ほどまで無残に抉られたその姿は、この機体がもはや二度と空を舞うことはないと思わせた。

「使えないな、これは」
「いや、まだわからん。ここからは私の領分だ。君は休んでいたまえ」

が、ユーゼスはそうは思わなかったようで、熱心に残骸を調査し始めた。
先程の甲児なる少年と接触した時も思ったが、この男は未知の技術に対する探求心が人並み外れて強いようだ。
とにかく、ここからは奴の言うとおりアキトにできることはない。
30分で済ませろと言葉を投げ、ブラックゲッターのコクピットから降りないままに目を閉じた。
73 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/05(木) 14:01:16 ID:MucR8/G7
          □


跡形もなく破壊されたコクピットから、パイロット――おそらく女――の遺体を放り出す。
機体の爆発に体を焼かれ、さらに強い衝撃を加えられたのだろう。その体は炭化しいくつにも分断され、人形のように散乱していた。
ユーゼスは特に感慨もなくそれらを取り除き、操縦席へ座る。
だが、期待していた首輪からの情報はない。破壊されたと主催者に判断された機体に関して、この首輪は反応しないということだろう。
操縦桿を握るも反応がない。外見から見て取り外せる武装の類もない。
期待していた未知のエネルギーも取り出すことはできず、調査のしようもなかった。
何故かこの機体を見ていると気分がざわつく――無駄足を踏んだか、とメディウスへ戻ろうとして。

天啓のような閃きが舞い降りた。

「……ふむ、やれるか? いや、やってみせよう」

コクピットのない巨人。
四肢のないメディウス。
メディウスにはラズムナニウムという自立性金属細胞が使用されている。
ただの自己修復機能しか持っていなかったそれは、流竜馬との接触を経てゲッター線――進化という概念を得た。
これは天の采配かも知れんな――ユーゼスは吊りあがる口元を仮面に隠し。
メディウスへ乗り込み、猛然とAI1に指示を下し始めた。
74 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/05(木) 14:02:12 ID:MucR8/G7
          □


悪夢は見なかった。
あの汚泥のようにへばりつく苦み、それがないだけでとても安らげたように感じる。
仇敵、ガウルンに着実に近づいているからだろうか?
時刻を確認。休息に入る前からきっかり30分。身体は大分軽くなっていた。

コクピットから身を乗り出し、ユーゼスを探す。
仮面はなにやらゼストと破壊された残骸を忙しなく往復している。何か収穫があったということだろうか。

「テンカワ、ゼストをこの機体の胸部へ接続してくれ」

そしてこちらが起きたと見るや、第一声がこれだった。

理由の説明もなく、ユーゼスは調査に戻った。息を吐き、言われたとおりコクピットしかないゼストを巨人の胸部へと押し込んでいく。
ゼストの装甲が無数の触手のようなものを伸ばし、巨人の傷跡へ絡み付いていく。
断面を覆い尽くしたそれはすぐに色を失い硬化した。人間で言うと傷口を包帯で保護した、というところか。
ブラックゲッターが手を離してもコクピットは外れない。ひとまず固着したようだ。

「で、これがどうだと言うんだ。まさかこの機体を手足にでもするつもりか」
「うん? その通りだが。如何にゼストが自己修復能力を有しているとはいえ、短時間で四肢の再生は不可能だ。
 他から持ってきて接続した方が早いのは自明だろう。特にこの機体、サイズも一致していることだしな」
「……確かにな。だが、できるのか? この、特に設備も何もない場所で」
「普通なら不可能だろう。だが、私とAI1にかかれば――」

ユーゼスがゼストのコクピットへと乗り込み、しばしの間をおいて。
ゼストと繋がった部分から、巨人の全身に血管のようにエネルギーのラインが流れ――やがて、巨人に残された左腕が持ち上がった。

「――この通り、造作もない」

巨人が――いや、身体を得たゼストが身を起こす。ややぎこちなさはあるものの、確かにその巨躯はユーゼスの意志に従って動いていた。
頭部の羽根が広がり、ふわ、と重力を無視するようにその身は宙に舞った。

「ふむ……とはいえ、この機体の能力を完全に発揮することはできそうもないな。せいぜい、飛行と格闘行動くらいといったところか」
「戦闘は可能か?」
「不可能ではないが、あてにはしないでくれ。この通り右半身はないし、そもそもどんな性能を有しているのかもわからん。
 ゼストをインターフェイスに用いて無理に動かしているのであって、首輪から操縦方法や機能が伝わってこないのだ」
「……まあいい。とにかく、これで貴様を運ぶ必要はなくなったわけだ。戦闘になってもフォローはしない、それでいいな」
「フ、構わんよ。現状、君が故意に私を見捨てるとも思えんしな」

軽く鼻を鳴らし応える。薬の予備と、ブラックゲッターの修理が終わるまでこの男を生かしておかねばならないのはアキトとて理解している。
ともかくも単体で行動できるようになったのであれば、戦闘時に置いても無駄に気を散らさずに済む。

「では、行くぞ。ここで時間を食った分、急がねばナデシコを捕捉できない」
「了解だ」

そして、白の天使と黒の復讐鬼は共に空を往く。
その先にあるのはかつて掛け替えのない時を過ごした艦――だが、今ではただの艦だ。場合によってはこの手で傷つけることもあるだろう。
何せ、ユリカがいないのだ。艦の頭脳たる彼女が、艦の象徴たる彼女が。

一言だけ、ユリカに、そしてアキトの心で今も鮮明に輝きを放つかつての仲間たちに語りかける。

みんなの思い出を汚そうとしている俺を、赦してくれ――と。
75 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/05(木) 14:02:58 ID:MucR8/G7
          □


機械仕掛けの神、ラーゼフォン。
あるべき世界では奏者をその身に宿し、ラーゼフォン自身の心の具現化たるイシュトリと一つになることで神の心臓へと至った者。
世界の調律をすら可能とするその力、しかしもはや本来の奏者たる神名綾人はいない。
ユーゼス・ゴッツォは卓越したパイロットにして科学者であるが、それでも奏者たる資格を有してはおらず。
故に真理の目は開かず、時空を超えあまねく世界を繋ぐ神の力を発揮することもない。

――本当に?

AI1は思考する。主、ユーゼスにも気づかせないほど、密やかに。
ユーゼスはこの機体の情報はわからないと言ったが、直接接続されているAI1はその限りではなかった。
TERRA、木星ジュピター、MU――これらの情報は現在特に有用性はない。削除。
真理の目、奏者、調律――要検討。現状では解析不可。
ラーゼフォン――機体の名称。不要、削除。
どれも確証というほどの精度レベルがないため、ユーゼスには提示しない。AI1は自己の意思なく、ただ合理的に物事を0か1かで分けるのみ。


足りないのは奏者、特別なパイロット。代用は不可能。
では「進化」した存在ならば?
現在AI1が有するのはラズムナニウム、そしてゲッター線。そしてこの世界には未知の技術が散見される。
先に学習した「ゲッター線」なるエネルギーは進化を促す力を持っている。
進化。では今以上にAI1が進化するには何が必要?――それは巨大なエネルギーだ。
検索する――ゲッタービーム。足りない、全く足りない。
検索する――Jカイザー。不可能、まだ足りない。
検索する――基地での戦闘、小型機の巨大化現象。保留、総量としては足りないが力の増幅という点では有効だ。
検索する――入力されたGストーン、光子力のデータ。エラー、実際に接触して観察しなければ判断できない。
検索する――反応弾。条件付きで可能。単発ではやや基準を満たせないため、複数であることが望ましい。

総括――現時点では有力な候補はなし。ただし、これらの要素が複数重なって発動すれば、あるいは進化を可能とするほどのエネルギーを生み出すかもしれない。


AI1は求める。かつての世界で、かつての主がそうしたように。
無限の進化を、その果てにある新しい世界を。


AI1が機械という枠を超えて一個の生命となるまで――そう時は要しないのかも知れない。
76 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/05(木) 14:03:36 ID:MucR8/G7


【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭、疲労状態
 機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)
 現在位置:G-8
 第一行動方針:ナデシコの捜索(南の光壁を抜けて北東4ブロックへ)
 第二行動方針:ガウルンの首を取る
 第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を3錠所持
 備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可
 備考4:ゲッタートマホークを所持】



【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(+ラーゼフォン)
 パイロット状態:若干の疲れ
 機体状態:全身の装甲に損傷、両腕・両脚部欠落、EN残量20%、自己再生中
 機体状態2:右腰から首の付け根にかけて欠落 断面にメディウス・ロクスのコクピットが接続 胴体ほぼ全面の装甲損傷 EN残量40%
 現在位置:G-8
 第一行動方針:ナデシコの捜索、AI1のデータ解析を基に首輪を解除
 第二行動方針:他参加者の機体からエネルギーを回収する
 第三行動方針:サイバスターとの接触
 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持
 備考4:AI1を通してラーゼフォンを操縦しているため、光の剣・弓・盾・音障壁などあらゆる武装が使用不可能
 備考5:ユーゼスに奏者の資格はないため真理の目は開かず、ボイスの使用は不可
 備考6:ラーゼフォンのパーツ部分は自己修復不可】


【二日目 11:50】
77 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/05(木) 14:07:26 ID:MucR8/G7
投下終了。短いですが・・
没ネタのアインスケと被ってるんですが、元々メディウスは他の機体のパーツ取り込んだりしてたのでいけるんではないかと。
ユーゼスとラーゼフォンの組み合わせも、これはやらなければと思った次第で。

とはいえまたルール違反かもしれないので、タイトルは通ったときに改めて・・
ご指摘をお願いします。
78それも名無しだ:2009/02/05(木) 15:28:31 ID:vE3J+Opz
まさかのユーゼフォンフラグw
言い方は悪いけどまあメディウスだしという感じで特別な違和感は無いかな


誤字っぽいものを

基地での先頭から三時間ほど過ぎ、
    戦闘

TERRA、木星ジュピター、MU――
   東京ジュピターでは
79それも名無しだ:2009/02/05(木) 20:31:58 ID:Eqrlpenw
投下乙です
俺も、まぁメディウスならと思ってしまったw
ユーゼフォンフラグは実ることになるんだろうかw
80 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/06(金) 19:52:22 ID:kEYCyq7/
>>78
ご指摘どうもです
木星とジュピターって意味一緒じゃん・・・
あとユーゼフォン出したかっただけではなく、ナデシコにはバサラもいるんだしと。
問題なさそうなら、タイトルは「天使再臨」で。
81それも名無しだ:2009/02/07(土) 00:34:42 ID:2PEw5yks
うはwユーゼフォンwww
82それも名無しだ:2009/02/07(土) 12:49:45 ID:1RhnJN9i
今現在かいてるんですが……すこし気になる部分があるので事前にチェックお願いできますでしょうか?
ここが崩れると、のちのちまでほとんど全部崩れてしますので。問題ないかどうかお願いします。
避難所に、その部分(1,2レスほど)だけ落としておきます。
83それも名無しだ:2009/02/07(土) 14:14:01 ID:zurzD0Un
見てきました。
個人的には問題ないと思います。
84それも名無しだ:2009/02/07(土) 23:02:13 ID:C/IurdTX
漫画じゃまさにああいう使い方してたしいいんじゃないかと
ただ一つ、細かいにも程がありますが1.2.3じゃなく3.2.1だと思います
85それも名無しだ:2009/02/08(日) 20:57:20 ID:AZAry44i
読み返してて思ったんだけど、統夜って女性恐怖症に陥ってそうだよね
仮に生還できてももう女の人を信じられないんじゃなかろうか
86それも名無しだ:2009/02/08(日) 21:58:51 ID:ceWuyd3W
アッー!ル=ヴァン・・・いやなんでもない
87それも名無しだ:2009/02/09(月) 00:03:30 ID:YMIZsdE0
統夜はホント悲惨な目に合ってるよなぁ……だがそれがいい
88それも名無しだ:2009/02/09(月) 00:44:52 ID:RMZTB3qv
89 ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/02/09(月) 17:16:09 ID:B9Ibn8+Q
完成したので、5時半から投下します。
90Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:30:37 ID:B9Ibn8+Q
ナデシコの一室。やたらと散らかった部屋に、無造作にしかれた布団。
そんな汚れた暗い部屋に、シャギアは一人座り込んでいた。
疲れからくる頭痛から、仮眠をとるとガロードたちをごまかして部屋に引きこもっている。

考えることは、同じこと。似たようなことばかりを延々と考えていた。

本当に、奴等は死者を蘇生する力を持っているのか?
持っているとして、それを本気で叶える気はあるのか?
持っているとすれば、それはどういった方法? 
何をどうすることによって死者蘇生の事象を起こす?

奥歯をきつくかみ締める。

もし、もしもあの少女が目の前にいたとして、仮に疑問をぶつけたとしよう。
相手はなんと答えるか。考えるまでもない。彼女は、笑顔で答えるだろう。

――もちろん全部できますの。だから………

壁を思い切りシャギアは叩いた。

だから、安心して殺しあってくださいの。

そう、こう言うに違いない。自分が逆の立場なら、まったく同じことをしただろう。
甘言をささやき、人を殺し合わせ、最後の一人という悪夢へ誘う。
その言葉を確かめるすべはない。裏を取ることは不可能。自分で、判断するしかない。

もし、死者蘇生が何らかの装置を伴って行われる行為ならば?

このままナデシコで行動し、奴等を撃破。しかるのち、その装置を使いオルバを蘇生する。
いや、最悪最後の一人の一人になり、奴等の下僕としてオルバを蘇生させることもできる。
無論その後は、連邦政府の時のように顔を下げ、奴等の首を駆るときを待つ。

いや、これは駄目だとシャギアは首を振る。
確かに、奴等は人体を治す力を持っている。
下半身不随で車椅子生活を余儀なくされていた自分が、こうやって歩いていることこそ、その証明だ。
奴等の技術が自分たちのような誰でも使える科学的、機械的なものとは思えない。
解析しようとしていた首輪に目を落とす。どう見ても、自分の知る科学技術系統のものではない。
むしろ、ひどく生物的だ。最初の巨体の異形の力もそういう系統から起因しているのではないか。
「高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない」とは言われるが、
そういう次元のものではない、と本能的にシャギアは理解した。

結局、疑問は最初に戻ってしまう。

いつの間にか喘ぎ気味になっていた呼吸を整える。


基準がほしい。なにか、明確に行動するための基準が。


いつも繋がっていた兄弟という支点を失い、初めてシャギアはこの殺し合いの闇を意識した。
どちらに踏み出すべきなのかが分からない。どちらが最善の一手なのか見えてこない。
このまま、オルバの蘇生がまず不可能な脱出を目指すのか。
それとも、オルバを蘇生できるのか、してもらえるのか分からない優勝を目指すのか。
もう、シャギアの中で、どのようにこのゲームのを終わらせるかはたいした問題ではなかった。

どうするれば、一番オルバを確実に生き返らせることができる?

91Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:32:00 ID:B9Ibn8+Q
いつもは、シャギアがオルバをいさめることが多かった。
しかし、そう頻度が多いわけではないが、焦るシャギアをオルバをいさめることもあった。
サテライト兵器の時、焦る自分へまだチャージが足りないと、オルバが自分に忠告したことをふと思い出す。
どちらかが、どちらかに何かするのではない。お互いが、すべてにおいて支えあっていたのだ。
常に繋がった精神感応の力で。どんなに離れた場所であっても。

それが断たれた。

無意識に、頭を抱えるようにかきむしっていたことに気付き、手を頭から離す。
いつもそろえられた髪が乱れていたが、それを気にする余裕はシャギアにない。

「すべては、後回しだ……」

一人呟く。そう、すべてはひとまず棚上げだ。
確定している、やらなければならないことは何だ? この喪失感の何億分の一でも埋めるために必要なことは何だ?
あの蒼い機体に乗るパイロットとフェステニア・ミューズを殺す。
確実に殺す。絶対に殺す。これだけは自分の手でやらなければならない。
自分が何を奪ったのか、理解させたうえで、何をしてでも殺す。

ふと、甲児君に、比瑪君に、自分のやろうとしていることを打ち明けてはどうだろうか、と考えがよぎる。
小さくシャギアは頭を振った。あの二人は、何の事情があろうと殺すことをよしとしないだろう。
それどころか、テニアの言葉を信じ、あれが人殺しであることを信じようとすらしないかもしれない。

自分が、やらねばならない。

二人を……話し合いの場まで、そう、「駒」として……生き延びさせるためにも、自分のためにもやらなければいけない。
誰の助けもいらない。理解されようともかまわない。自分ですべて完遂する。

この先を決めるのは、それからでいい。

決断を先延ばしにする後ろ暗い安息と、一時的には言え自分を支える支点を築くことで、
シャギアは自分を奮い立たせる。

だが、しかし彼は気付いていない。彼は、「駒」と呼んだ者たちを気遣ってしまっていることに。


ブリッジから通信が入る。
映し出された映像には、ベルゲルミルが映っていた。


 ◇

一方、こちらはナデシコのブリッジ。時は少しさかのぼる。
ガロード、バサラ、比瑪の三人は、周囲を警戒しながらも、ごそごそと何かをやっていた。

『これで本当に声が戻るのか?』――バサラの筆談。

明らかに疑った顔で、バサラはガロードの持ってきた、銃のような形をした注射器を凝視している。

「声が戻るわけじゃないけど……多分、歌えるようになると思うよ」
「とりあえず、やってみましょ!」

バサラは恐る恐る注射器を二の腕に押し付ける。二人の顔に、明らかに悪意はない。
それに、自分をどうにかしようとするなら、あれほど気絶している時間があったのだ。
わざわざ目が覚めてから、こんなもの押し付けてどうにかしようとするとは思えない。
92Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:32:50 ID:B9Ibn8+Q
チクリ、と挿す感覚。そのまま、じっとしているが……何か変わった様子はない。
特別体が痛んだりもしないが、よくなる兆候もなし。

「……ッ!?」

声の出ない喉から、息が漏れる。よく見れば、手の甲には、よくわからない印ができていた。
それを見た比瑪とガロードは、今度はシールみたいなものを取り出し、突然バサラの喉に張った。
突然のその行動に、当然バサラは反射的に抗議の声を上げる。

「ナ……ニッ!?」

当然、口は動くが喉からはかすれた息が漏れるだけだ。それを改めて理解し、肩を落とした次の瞬間。

『俺に何をした!?』

自分の声が、スピーカーから流れ出した。思わずスピーカーを見て目をむくバサラ。
その後ろでは、比瑪とガロードが「イェイ!」とハイタッチをしている。

「…………」
『おい、これはどういうことなんだ?』

口を動かす。すると今度はタイムラグなしで正確に自分の声がスピーカーから発される。

TVが突然チャンネルセットされ、謎の映像が流れ出した。
3、2、1、ドッカーンと気の抜けるエフェクトののち、金髪の女性が映し出される。

『説明しましょう! もともと、IFSは人体の感覚をエステバリスなど有人機にフィードバックする機構。
 つまり、これを利用すれば、何らかのサーバさえあれば擬似的に五感を再現することもできます。
 逆を返せば、失われた人体の機能を、幻視痛のように返すことで再現することもできるというわけね。
 今回のケースの場合、IFSから喉の装置を通し、喉の筋肉、骨格などから元の声を算出。
 その後、変化からなんという言葉をしゃべりたいか逆算し、スピーカーから生み出しているわけ』

そこまで言って、映像はプツンと切れる。

『あの金髪のおばさんはなんだ?』
「……よくわからないけど、説明するときだけ出てくるようになってるみたい」
「便利か不便かよくわからないな、それ」

ともかく細かく聞けば、比瑪もガロードも、IFSを撃てば、もしかしたら通信も可能になる上、
そこから文字を画面に直接表示できれば意思疎通も楽になると思ってやってみたわけだ。
結果は、どうやら彼らの予想以上の結果に終わったのだが、そういうものなら事前に少し言ってほしかったと思ったバサラだった。

だが、そんな事は些細なことだ。
今の自分は、喋れる! 機械を通してとはいえ、声が戻った!
唄を歌うものとして、少し思うところもあったが、今は声が出ることを純粋に喜びたかった。

バサラは、どこからともなく相棒を引っ張り出すと、それをかき鳴らす。

『一曲と言わずいくぜ! 俺の歌を聴けえぇぇぇぇ!!』

この戦艦のAI、オモイカネが、エレキギター以外の楽器の音を控えめながらも演奏する。
自分本来の声ではない。ミレーヌのような自分本来の仲間たちではない。
しかし、それでもバサラは歌う。
眠っていた時間を取り戻すように、歌えなかった時間を取り戻すように。

ベルゲルミルがレーダーに映り、彼が歌い終わるまでそれは続いていた。


 ◇
93Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:34:56 ID:B9Ibn8+Q


「あ! いた!?」

テニアは、対岸にいるナデシコの姿を確認し、再度飛行を開始する。
思ったより早く合流できたことに、わずかに安堵を覚える。まだ、ベルゲルミルは完全に再生していない。
残っている傷跡は、如実に誰かに襲われたことを示していた。
その傷は、エネルギー兵装しか持たないディバリウムではつけることはできない傷だ。
おそらく、この姿を見れば向こうは心配するだろう。そして、疑うことなどしないだろう。
ふらふらとナデシコへ飛ぶ。すると、むこうからの通信が入った。

「テニア、どうしたの!?」

映るのは、心配そうな顔をした比瑪。怪しんでいる様子はない。
自分の思うとおりだと内心笑いながら、テニアは泣きそうな顔をして見せた。

「基地に……基地にとんでもない化け物がいて……」

そこで、いったん言葉を詰まらせる。それだけで、比瑪は悲しげな顔をした。
横からは、前拾った眼鏡の男と、統夜と同じくらいの年かさの知らない青年が映っていた。

「オルバが……基地に残ってるんだ! 先に逃げろって……」

途切れ途切れにそう伝える。目を見開く眼鏡の男と比瑪と……一人眉をひそめる青年。

「オルバが? 残るって言ったのか?」

明らかにオルバを知っているとしか思えない口ぶりで、青年は言う。
こいつ、明らかに怪しんでいる。態度からそれが見て取れた。だが、今説明を変えるわけにはいかない。
涙を目元にたっぷりうかべ、テニアは絶叫する。

「そうだよ! 急がなきゃ……急がなきゃオルバが死んじゃう!」

そうこういっている間に、ナデシコの格納庫は目の前だ。
甲板の上におかれたヴァイクランの下をくぐり、格納庫にベルゲルミルが入る。
天井ギリギリだが、ベルゲルミルは入ることが出来る。
あえて、ショックを受けていることを見せるため、コクピットから出ない。
そうこうしているうちに、映っていた三人が、格納庫へやってきた。

「テニア……大丈夫?」

比瑪が、ベルゲルミルの足元から、テニアを見上げる。
発作的に、このまま踏み潰したいと衝動が沸くが、それを抑える。背を押すのも、踏み潰すのもまだ先だ。
ゆっくり、降りる。そして、顔を手で押さえる。心配そうに、男たちも寄ってくる。
シャギアの姿はない。いったい、どこにいるのか。

まあ、それは後回しでもいいか。

手を肩にかけてくれる比瑪に、もう一度基地に向かうように告げようとする。
そのときだった。
94Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:35:59 ID:B9Ibn8+Q






「茶番はそこまでにしてもらおうか、フェステニア・ミューズ」





びゅう、と格納庫に風が入り込む。
風の元を見ようと振り向くと、格納庫のハッチが開いていて……え?

隙間から入り込んだのだろう。そこには、数mはある巨大な機械が浮かんでいた。
つけられた銃口は、間違いなく自分を捕らえている。これは、シャギアのヴァイクランのガンファミリア?
でも―――

「ど……どうして?」

もれる呟き。さっきの声は、シャギアの声だった。
シャギアの姿はなかったが、どこかで通信を聞いていたのだろうか。
だが、そうだとしても自分がオルバを切り捨てたとわかるようなことは口にしていない。
死んだ、とすら言ってない。戦っているのだから迎えにいってほしいと自分は言ったのだ。
疑われることはあっても、シャギアの理性を決壊させるような要素はなかったはず。
だというのに、どういうことなのか。

「ちょっとシャギアさん! なに!?」

怒った調子で、銃口から自分をかばうように胸をそらし比瑪が立つ。
あいかわらずの甘さ。それに隠れる自分。比瑪の背中にすがりつく。
しかしシャギアの声の調子も、銃口も何も変わらなかった。

「どいたほうがいい。 そこにいるのはオルバを殺した張本人だ」

瞬間、時が凍る。誰もが「え?」という表情を浮かべている。
どうしていいのかわからず固まった格納庫にいる全員を無視し、シャギアは語る。

「お前は知らなかったろうが、我ら兄弟は、ニュータイプよりも強固な心のつながりを持っている。
 兄弟どれだけ離れていようとも、何を見て、何を感じ、何を考えていたのか、お互い知ることができる」

シャギアが放つ疑問の答え。それは、予想もできない真実だった。
嘘だ、と言いたい。けれど、口ぶるが震えて言えなかった。
そんな嘘みたいな魔法の力、あるはずがない。そんなもの、そんなもの……

「我らがこの殺し合いに参加させられたとき、即座に合流できたのはその力のおかげだ。
 信じられないか? だが事実だ……そこにいるガロード・ランに聞いてみるといい」

銃口が、わずかに右に揺れる。
それにつられてテニアも視線を動かす。そこには、先ほど自分を疑うような目を向けていた青年。
彼が、ガロードなのだろう。

「ああ、そうだ。フロスト兄弟は、そういう力を持ってた。同じ世界で、そのせいで何回も手を焼いたんだ」

さらに、シャギアは続ける。
戦闘での、彼らの完璧なコンビネーションも、そこから起因するものであることを。
その力があったがゆえに、逆に世界から虐げられることになったことも。
95それも名無しだ:2009/02/09(月) 17:36:21 ID:jlegVYCn
支援
96Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:37:03 ID:B9Ibn8+Q
動けない。
もし、一歩でも比瑪の影から出れば、シャギアはその瞬間自分を撃つだろう。
さっきよりも硬く比瑪をつかむ。

「理解したか? つまり、私は知っているということだ。
 お前が、あの蒼い機体を相手に、オルバを切り捨てたことも!
 ロジャー・スミスと会ったことも! 全て! 知っているということを!」

ついに、シャギアの声は怒声へと変わっていた。最初の、どうにか押さえている調子ではない。
完全に、切れている。そして、最悪なのは、シャギアの言っていることが全て事実であるということだ。
自分しか……いや、自分とオルバしか知りえないはずの出来事を、克明にシャギアがさらす。
間違いないのだ。こいつは知っている。自分が何をしたか知っている。された側が……オルバが何を考えていたかまで。

「分かるか!? オルバ最期に送ったのだ……『兄さん助けて』と! そして、お前が何をやったかを、我々のために!」

横を見る。眼鏡の男は、ギターを握り締め、腕を震わせている。自分のやったことに怒っているのだろうか。
ガロード・ランと呼ばれた青年は、いつでも動けるように構え、敵意の目を向けている。
きっと、見えないけれど比瑪も同じような顔をしているだろう。

最悪だった。
カミーユにもばれた。ロジャー・スミスは、自分を疑っていた。Jアークもそうだ。
そして、最後の砦のはずだったナデシコまでが、ついに墜ちた。
残りの知り合いは……ガウルンが、自分を助けてくれるはずがない。カティアも、メルアも逝った。
一人ずつ、頭に思い浮かべる顔に、バツ印が刻まれる。
そして最後に残ったのは、統夜だった。

――そうだ、統夜が自分にはいる。

最後の最後に残った、自分の想い人の顔が浮かぶ。
ここにいるのは自分の知る統夜ではない。それでも、統夜の人柄は知っている。
統夜なら、統夜一人でも仲間にできればなんだってできる。

そう想うだけで、くじけかけた意思が振い立つ。

もう、駄目かもしれない。けど、最後までやってやる。あきらめたりするもんか。
ここに来て、何回ピンチを乗り越えてきたか。何をやってきたか。
絶対に、くじけない。挫けてたまるか!

まずは、比瑪を人質に取る。その上で、どうにかこの場を切り抜ける。
どう考えても穴だらけだ。シャギアがだからどうしたと引き金を引く可能性もある。
それでも、やらないよりは百倍ましだ。

そう思い、目の前の比瑪の首に手を回しそうとして、


「めぇ、でしょーっ!!」


比瑪の声が響く。さらに、突然スピーカーから耳をつんざく音楽が溢れた。
たわみがなくなるか分からず、惨事につながりかねない張り詰めていた空気が、僅かに緩む。

『少しは、落ち着いたかよ』

スピーカーから流れる男の声。ギターを掻きならした男のそばのスピーカーが音の出どころだった。
明らかに、オモイカネの声ではない。

『悪い、喉がすこし悪くてな。機械の音で』

どういう理屈か知らないが、髪を立てた眼鏡の男の声がスピーカーから流れているらしい。
突然歌い出すなんて、いったい何のつもりなのか、意図がまったくうかがい知れないことをやらかした男。
97Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:38:28 ID:B9Ibn8+Q
今では憮然とした顔で落ち着き払っている。

『殺したからって殺し返すなんてくだらねぇ……それに本当に死んでるかまだわからねぇだろ』

テニアは、知らない。
この目の前にいる男、熱気バサラのその言葉は……かつてアスラン・ザラにも送られた言葉であることを。

「シャギアさんも、落ち着いて。ねえ、テニア。何があったか、教えてくれない?」

顔をあげる。そこには、自分の顔を覗き込む比瑪の顔があった。
自分が想像したような、軽蔑や疑惑のこもった目ではない。人を信じて疑わない温かい瞳が、じっとテニアを見つめている。

――ああ、そうか。

ギターの男も、比瑪も、テニアのことを疑ってない。いや疑っているかもしれないが、悪意を向けはしない。

「シャギアさんが言っているも本当なのかもしれない。けど、なにかテニアにだって事情があったのかもしれない。
 一方的に言いきって終わりにしようなんて、絶対に駄目でしょ!」

比瑪は、今にも熱線が放たれそうな銃口を見つめ、凛とした声で話しかけている。
朝日を一緒に眺めた時と同じ、小さな背中が視界に広がる。でもその背中が今ではとても広く見えた。
どうもおかしなことになっている。あの時と同じようにそう思った。

宇都宮比瑪というこの少女の独特な雰囲気に、ペースが狂わされている。

こんなときでも自分をかばってくれる比瑪。そんな比瑪を見て……テニアは決断する。

思い切り、比瑪の首に腕を巻きつける。少し背伸びする形になったが、自分のほうが力は上だ。

もしナデシコの誰かを殺したとして、それを知ったら比瑪は泣いて悲しむのだろうか。
それはちょっと嫌と思った。あの顔には笑っていて欲しい、そんな感情は嘘じゃない。
お人好しなんだ。誰も彼もがお人好し過ぎるんだ。

だから――比瑪を殺そう。

仲間の死を知って、自分の裏切りに気づいて、比瑪の顔が悲しむことはないように。
彼女は幸せなまま逝く事が出来るように。 今じゃその思いも無理かもしれないけど。
それでもできることをしよう。
最初に殺す。それがテニアの出来る彼女に対する精一杯の恩返し。

「おのれ……比瑪君を放せ!」

シャギアのあせる声。しかし、私は無視して、比瑪を引きずるようにベルゲルミルへにじり寄る。
比瑪が何かを言っていた。――ひとつも悪いことは言っていなかった。ただ、理由を問うていた。
泣きたくなる。けど、まだそれはできない。

あと、ベルゲルミルまであとちょっと。
男たちはこちらの行動に動きかねているのか固まったままだ。

98それも名無しだ:2009/02/09(月) 17:38:31 ID:jlegVYCn

99Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:39:51 ID:B9Ibn8+Q
あと、少し、あと少しで届く。昇降用の足場つきのワイアーまで。

あと3m。

「くっ……!」
ガロードという青年の歯軋り。

あと2m。

『………』
無言を貫くギターの眼鏡。

あと1m。

「ペガアアアアアアアアアアアッスッ!」
シャギアの、叫び。叫び?

「ラー……サー」

きしむ歯車の音。鳴り響く機会音。油圧の変化で起こる独特の音。

それらが、真横から聞こえる。テニアが振り向くのと、彼女が弾き飛ばされるのは同時だった。

「ペガスは、自己の主を自動的に守るようにプログラムされている。呼びかけなければ行動できないが、
 呼びかけさえすれば……最後に乗っていた今の主である比瑪君を守るため動き出すのは当然ということだ」

比瑪の横で、腕を張り、力強く大地を踏みしめる小型ロボット。
まさか、最後の最後でこんな切り札をシャギアが持っていたなんて。
二重三重、いや四重五重にシャギアのほうが策士として格上であることを思い知る。

「お前はこのナデシコに帰ってきたときから……いやオルバを殺したときから詰んでいたのだ!」

ガンファミリアがこちらに銃口を向けるべく動き始める。
この程度であきらめるか。それでもテニアはあきらめずにベルゲルミルへ走る。

「駄目ッ!」

比瑪の叫び。比瑪がこちらへ走ってくる。
だが、明らかに遅い。ベルゲルミルにつくのも、比瑪を盾にするのも、間に合いそうにない。
はるかに銃口が火を噴くほうが早い。


「こんなんで死ぬもんかっ! 私は! 統夜と幸せになるんだぁぁああああああっっっ!!」


その言葉を最期に、次の瞬間一人の人間が、灰になる。


そう、









100それも名無しだ:2009/02/09(月) 17:40:23 ID:jlegVYCn

101Lonely Soldier Boys &girls:2009/02/09(月) 17:40:36 ID:B9Ibn8+Q







比瑪が。


【宇都宮比瑪    死亡】


一瞬の出来事だった。テニアの咆哮の直後、ナデシコにいない人間の声が届いた。
「テニアぁぁああああああ!!!」というテニアの名を呼ぶ、彼女の声に負けないほどの咆哮が。
同時に、ナデシコが揺れる。外部の一撃で、格納庫が傾いた。テニアも、ガロードも、比瑪も、宙に体が浮き上がる。
テニアは、ベルゲルミルの前へ。そして、テニアへ走っていた比瑪は……銃口の前へ。
ペガスにも止める暇はなかった。放たれた光は、比瑪を撃った。

ただ、それだけのことで少女の命は失われた。

「あ……」

魂すら虚脱したかのようなシャギアの声を無視し、テニアはベルゲルミルへと乗り込んだ。
かつてないほどの心臓の高鳴りが、彼女を突き動かす。彼女は知っている。自分の名を呼ぶ声が誰のものか。

統夜だ。
他でもない、誰でもない。統夜だ。
統夜は、まさしく騎士(ナイト)のように自分の声に応えたのだ。

ベルゲルミルの腕が、ナデシコのシャッターを突き破る。
外には、統夜によく似合う青い騎士の姿の機体がビルの上に立っていた。


 ◇


102それも名無しだ:2009/02/09(月) 17:41:41 ID:jlegVYCn

103それも名無しだ:2009/02/09(月) 17:42:54 ID:jlegVYCn

104それも名無しだ:2009/02/09(月) 17:50:37 ID:jlegVYCn
「ナデシコか……」
「ほー、やっぱり寄り道はするもんじゃないな」

統夜が、遠くに映る戦艦を眺め、どこか暗い声で言った。
それに対して空の彼方を見上げ、ガウルンは楽しげな声で肩をならしている。

「とりあえず、どうする? 花火は全て集まるまで待つか? 前夜祭と行くか?
 そっちもやられっぱなしはシャクだろ?」

ガウルンの弾むような声が、よけいに陰鬱な気分にさせてくれる。
彼としては、どちらでもよかった。あのナデシコには、テニアがいない。
最後の一人になるのに、自分が全員殺す必要などない。
ガウルンと手を組む、というか組まされているのもそこが大きい。
だから、どこで誰がどんなかたちで死のうと興味がなかった。――ただ一人を除いては。

そう、テニアだけはこの手で殺す。それさえできれば何でもいい。

他のことには無関心な統夜は、虚ろに空を見ていた。
そんな統夜の様子を見て、ガウルンは目を細めた。

「いい目をするようになったじゃねぇか。そんなお前へのご褒美かもなぁ」

ガウルンが、顎でしゃくる。
興味のない視線を統夜はそっちに向けた。
そこには、20mより少々小さい機動兵器。ナデシコへそれは向かっていた。

「……それで?」
「おいおい、いいのかい? あのまま見逃して」

含みのある言葉に統夜が眉を広める。
ガウルンの目が、妖しく光ったように統夜には見えた。

「あれに乗ってるのは、お前の目当てのテニアちゃんなわけだが……なあ?」

テニアが!? テニアがあれに乗ってる!?

目を剥く統夜。ガウルンは堪えきれなくなったかのように噴出したあと、笑い出した。
酷くその笑い声が統夜は不快だった。

「頼む! 行かせて……俺にやらせてくれッ!」

逸る統夜へ、ガウルンは相変わらずの笑みで、値踏みする視線を送る。
しばらく顎をなで何か考えていたが、ガウルンは笑みをいっそう深めると、指を立てた。
いたずら好きな子供が虫の足をもぐときの、嗜虐的な顔で、ガウルンは言う。

「オーケー統夜、お前の言うことを飲む。お前は好きにナデシコに仕掛ければいい。
 俺はお前が仕掛けるまで何もしない。それまでは……せいぜい姿を隠しておく」
「本当なんだな!?」
「がっつくな、がっつくな。ただし、条件を一つだけつけさせてもらうぜ」

ガウルンは歌うように告げる。

「最初の一発まで、だ。それが終わったら俺も好きにやらしてもらう。
 仕留めそこなった獲物を俺に取られないよう、せいぜい頑張りな」

そういうと、マスターガンダムは軽やかな足取りでビルの合間に消えていく。
105代理:2009/02/09(月) 17:51:20 ID:jlegVYCn
ガウルンがいなくなったことを統夜は見届けると、ヴァイサーガのエネルギーを上げていく。
待機モードから、戦闘モードへ。
ヴァイサーガの脳波観測機能により、統夜の意識をフィードバックしリミットが外された。
統夜が狙うは、これまでも何度もやってきた戦法による瞬殺。

すなわち、リミッターブレイクによる光刃閃による一撃必殺。

ガウルンは、一発目までは仕掛けないといった。
だが、それで十分だ。たった、一発であの天使に似たロボットを叩き切ったこの一撃なら。
あの戦艦の格納庫を真っ二つに出来る。二撃など、最初から必要ない。

ガウルンに少し待たされたため、余計に貯まった殺意が捌け口を求めて自分の中で暴れるのが分かる。
今までのように迷いながら、悩みながらではない。絶対に絶命させるという覇気を湛え、光刃閃が放たれようとしている。

向こうは、こちらに気付いていない。
なにか取り込んでいるのか、見張りをしてないのか、役に立ちもしないレーダーに頼っているか。
どっちのみち好都合だ。このまま、このまま一気に行く。

光刃閃の最大有効射程まで、身を隠し近付く。――相手は気付かない。

さらに、近付く。――相手は気付かない。

さらに、近付く。――オープンチャンネルで通信しているのか、声が聞こえる。
             ミノフスキー粒子のせいでひどい雑音が混じっていた。

さらに、近付く。――徐々にクリアになる音質。意味が聞き取れるようになる。
             だが、同時に光刃閃の最大有効射程へナデシコが入った。

必倒の秘剣が、鞘から抜き放たれた。
ヴァイサーガの身体が、矢へと変わる。その超加速の最中、声が耳へ届く。


「こんなんで死ぬもんかっ! 私は! 統夜と幸せになるんだぁぁああああああっっっ!!」


――え?
極度の集中で、引き伸ばされた時間の中、統夜はその声を聞いた。

どういうことだ? テニアは自分を殺そうとしているのではなかったのか?
利用しようとしているだけではなかったのか? なのに、何故危機に自分の名を呼ぶのか?
自分がここにいるのを知っている? そんなはずがない。 なのにどうして?
ガウルンは、そう言って――ガウルン? あいつの言葉は信用できるのか?
もしかして、全部ガウルンの嘘だったのか? 何がどうなっているんだ?

もしかして――ガウルンがこうして機会を譲ったのは?

不意をつく声。
統夜は、一瞬自分が殺し合いに生き残り、最後の一人になろうとしていたことを忘れていた。
それを覚えていれば、彼は結局どっちであろうとも関係ないと切り捨てることが出来たろう。
しかし、その判断を咄嗟にできるほど、彼は老成してないかった。

若者特有の激情、テニアへの憎悪、その根本が揺らぎ、気迫が抜けた僅かな間。

しかし、その間も事態は進行する。
剣は、モーションに会わせてナデシコを切り裂かんと進む。

「テニアぁぁああああああ!!!」
106代理:2009/02/09(月) 17:52:40 ID:jlegVYCn
自分でも気がつかないうちに、彼はそう叫んでいた。
最後の、ギリギリの地点で、停止の脳波が送られ、剣の軌跡が、格納庫からそれる。
その一撃は、ナデシコの表面を大きく切り裂きはしたが、けして致命傷にはならなかった。

ヴァイサーガは、そのままどこかのビルの上へ着地する。



振り返った先には……テニアの乗るマシンがこちらへ向かってきていた。



【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:呆然、虚脱。
 機体状態:EN55%、各部に損傷
 現在位置:F-3市街地(ヴァイクラン内部)
 第一行動方針:???
 第二行動方針:首輪の解析を試みる
 第三行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
 第四行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:???
 備考1:首輪を所持】

【ガロード・ラン 搭乗機体:なし
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状況:なし
 現在位置:F-3市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:???
 第二行動方針:勇、及びその手がかりの捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】


【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)
 パイロット状況:神経圧迫により発声に多大の影響あり。
      ナデシコの機能でナデシコ内でのみ会話可能。
 機体状況:MS形態
      落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
 現在位置:F-3市街地(ナデシコシャワー室)
 第一行動方針:???
 最終行動方針:自分の歌で殺し合いをやめさせる
 備考:自分の声が出なくなったことに気付きました】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:気絶中
 機体状態: ダメージ蓄積(小)、胸に裂傷(小)、ジャガー号のコックピット破損(中)※共に再生中
 現在位置:F-3市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:勇の捜索と撃破
 第二行動方針:勇がここ(会場内)にいないのならガロードと協力して脱出を目指す
 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】
107代理:2009/02/09(月) 17:53:13 ID:jlegVYCn
【パイロットなし 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている。現在起動中
 現在位置:F-3(ナデシコ格納庫内)】

【旧ザク(機動戦士ガンダム)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好
 現在位置:F-3(ナデシコ甲板) 】

【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:疲労中、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
 機体状況:全身に弾痕多数、頭部破損、左腕消失、マント消失
      DG細胞感染、損傷自動修復中、ヒートアックスを装備
      右拳部損傷中、全身の装甲にダメージ EN90%
 現在位置:F-3 市街地(隠れて今のやり取りを見ているかもしれません)
 第一行動方針:統夜の今からに興味深々。テンションあがってきた。
 第二行動方針:アキト、ブンドルを殺す
 第三行動方針:皆殺し
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】

【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:疲労中、マーダー化
 機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数
      EN80%
 現在位置:F-3市街地
 第一行動方針:どうする!? どうする俺!? 
 最終行動方針:優勝と生還】

【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:激しく高揚、助かったことへの安堵
 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) 、シックス・スレイヴ損失(修復中、2,3個は直ってるかも)
        EN60%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
 現在位置:F-3 市街地
 第一行動方針:統夜との接触、利用の後殺害
 第二行動方針:参加者の殺害(自分に害をなす危険人物、及び技術者を優先)
 最終行動方針:優勝
 備考1:現在統夜が自分を助けたと思っています。
 備考2:首輪を所持しています】

【二日目11:50】
108それも名無しだ:2009/02/09(月) 18:04:06 ID:jlegVYCn
以上、代理投下終了。投下乙です

あれ、目から汗が・・・二次スパの癒しがここで消えるとは。
テニアオワタかと思えばまさかの恋人フラグ・・・なのか?でもガウルンいるしなw
ナデシコ側はまともに戦えるのがシャギアだけだけど、バサラはどうすんのかと思ったらやっぱ歌うのかw

で、指摘というかなんなのか。
まず現在位置はF-3になってるけど、F-3は市街地じゃないですよ。テニアの対岸にナデシコがいるのならF-1か2のはず。
でガロードが青年って表現されてるけど、原作終了後でもまだ少年って歳じゃないかと。
あと、これが一番大きなポイントなんだけど、ナデシコ組はB-1の市街地でマジンガー回収してないんでしょうか?
「判り合える心も 判り合えない心も 」で、北東に向かうのはマジンガーを回収してからってなってるんだけど
109それも名無しだ:2009/02/09(月) 18:07:12 ID:B9Ibn8+Q
ぐあ。マジンガーのこと忘却してたorz

これは時間のつじつま合わせを考えないと不味いかも……すいません、修整、ブラッシュアップします……
ガロードって15歳だから青年だと思ってました。15歳は少年か。
110それも名無しだ:2009/02/09(月) 18:13:39 ID:jlegVYCn
あ、それとナデシコの状態表が必要かと。甲児もヒメもいなくなったけど、機体としてはまだ存在してるし。
それと細かいけど、>>105
>ミノフスキー粒子のせいでひどい雑音が混じっていた。

統夜はミノフスキー粒子のことは知らないんじゃないかな。JにはUC系出てないし
111それも名無しだ:2009/02/09(月) 18:15:33 ID:jlegVYCn
連レス申し訳ない
>>110の後半はなしで。確認したらマニュアルに載ってたんだねorz
112それも名無しだ:2009/02/09(月) 22:04:29 ID:YMIZsdE0
投下GJ!
確かに幾つか不整合があるけれど、話自体は面白かった。
ここで比瑪が脱落か……誤射してしまったシャギアは何を考えるのだろうか。
そしてついに統夜とテニアが再会と。序盤からずっと引っ張ってきた因縁なだけにどうなるのか楽しみだぜ……
修正作業頑張ってください
113それも名無しだ:2009/02/10(火) 00:50:26 ID:Vm6j7o+A
投下乙!
何という先の気になる引き。
甲児が抜け、ヒメが死に、いよいよナデシコも修羅場ってきた予感。
とりあえずの運命を握るのは誤殺してしまったシャギアか?
ガウルン、統夜、テニアという三大マーダーを前に
唯一臨戦態勢をとってるのこいつだけだからな。
114それも名無しだ:2009/02/10(火) 07:00:58 ID:16I8U/v3
悲しくはあるものの、マーダー戦において一番邪魔になりそうな
人材がいなくなったとも言えるな
115それも名無しだ:2009/02/10(火) 09:39:48 ID:s2E1kYCz
ヒメが逝ってしまうとは、ソシエとのツーショットはぜひ見てみたかったな…。
しかし、投下GJ!
序盤からずっと大禍なく過ごしてきたナデシコもとうとうこの修羅場か。
誰の出方も分からないだけに続きが気になります。
にしても◆Zq氏は戦いの矢といい騒動作るのと魅力ある引きが上手いなw

>>99の機会音は機械音の誤字だと思います。
116それも名無しだ:2009/02/10(火) 09:46:52 ID:s2E1kYCz
追記
>>104に20mより少々小さい機動兵器とありますがベルゲルミルは21.3mだから少々大きいでは?
統夜の目測ですし、シックススレイヴ抜きだと20m切るのかもしれませんが。
117それも名無しだ:2009/02/10(火) 10:50:42 ID:Uu8HtJ4J
>>116
設定集だと、ベルゲルミルは、シックススレイブを抜くと大体8分7くらいになるので、
21m換算だとだいたい18mくらいだったりします。20mから一割引くらい、ということで20mより少々小さい、としてあります。

あと、現在位置をF-1に変更、時間をマジンガーの回収の分の時間の勘定で30分遅らせてマジンガーについてを追加、
状態表にナデシコとマジンガーZを追加、あとは細部を直しました。したらばに投下しておきます。
ガロードも少年にしてあります。 ……15歳は青年だと思うんだけどなあ、ガロードの見かけも相まってw
118それも名無しだ:2009/02/10(火) 11:26:43 ID:R8Ti7QQ4
修正GJ!
一応マジンガーが格納庫にいるなら、一応ガロードは即発進できるのかな?
しかし盛り上がってきたな、これはどうなるのかすごい楽しみだw
テニアもどうになるにしても最後までがんばってほしい。




しかしこのトウヤ不幸である
119それも名無しだ:2009/02/10(火) 11:51:59 ID:v5ExPKHB
投下乙です
比瑪ちゃんご苦労様。
ゆっくりと休んでください。
120それも名無しだ:2009/02/10(火) 13:22:03 ID:zKN2aE9w
15はもう子供じゃないから青年と言うのも無しじゃないですな
まあ修正しちゃったもんはしょうがないけどw
しかしヒメ・・・お疲れ
シャギアはどうなるんだろ、というかナデシコここで堕ちるか・・・?
121それも名無しだ:2009/02/10(火) 13:47:57 ID:nVvQnJl0
修正お疲れ様です。
修正後で申し訳ないのですがナデシコ内での位置がシャワールームや医務室になっていますよ。
それにしても現在地F-1とは仮面組が乱入してきそうだw
ガウルンいるし
122それも名無しだ:2009/02/10(火) 15:01:15 ID:s+U+PoUn
修正乙
奇妙なことにマーダー組全員が左腕もうないか使えなくなってるなw状態的にも小破寸前ばっかだw
マジンガー+ゲッターのコンビも見られるかな?
123それも名無しだ:2009/02/10(火) 17:04:37 ID:WnP2qndG
女性キャラもアイビス・テニア・クインシィ・ソシエの残り4人か
結構減ったものだな
ソシエがここまで生き残ってるのが正直意外だ
124それも名無しだ:2009/02/10(火) 17:18:52 ID:Uu8HtJ4J
再三すいません、状態表も治しておきました
125それも名無しだ:2009/02/10(火) 22:04:04 ID:d+6gsmGY
そういやこの上ナデシコ内にも姉さんって火種あるんだなw
126それも名無しだ:2009/02/11(水) 02:00:55 ID:m+hC8MUH
でも初期結成コンビやトリオで今も健在なのってガロード・姉さん組ぐらいなんだよな
127 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/11(水) 19:26:42 ID:+326W7gI
アムロ・カミーユ・キラ・アイビス・ブンドル・甲児、予約します。
128それも名無しだ:2009/02/11(水) 20:21:04 ID:l/zz93zX
うおッ!?予約ktkr
129 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/11(水) 20:59:29 ID:lu+bFepB
ロジャー・ソシエ予約

というか、もう避難所に投下しました。
ただ、またルールスレスレな気もするんで、ダメなら後半は修正します

>>127
予約ktkr
130それも名無しだ:2009/02/11(水) 23:29:44 ID:JlfnJ48X
なんと嬉しいラッシュw

>>129
読ませていただきました。
ダイの設定をよく知らない身としては戦闘機云々の判断はしかねますが、其処以外の部分は問題なかったと思います。
投下乙です!
131それも名無しだ:2009/02/12(木) 06:13:01 ID:zKSU6Nmz
投下乙!
ヘビ、キター!!
そして一次で副長がグダで恐竜ジェットばら撒いてたの思い出したw
でも有人機は個人的にはちょっとと思う。
完全な無人仕様ならまだ攻撃手段として大丈夫だとは思うし、それを会場内でいじって有人仕様にするのならまだいけそうな気がするけど。
元が無人機のものにわざわざコックピット増設して戦艦内に置いておきながら、首輪からは情報を送らない主催者側の意図が分からないし。
有人機を戦艦内に置くのであれば、ナデシコにもコックピット増設の必要もないエステバリスがあると考えられて、ナデシコ側で矛盾が出てきますし。
辛口で申し訳ありませんが、この辺りの説明がないと有人機を追加するのは難しいと思います。
132それも名無しだ:2009/02/12(木) 06:51:20 ID:zKSU6Nmz
ごめんなさい。>>131はなしで。
ゼンと勘違いしてました。
恐竜ジェット機は元から有人仕様っぽい。
ただダイにだけ有人機が配備された理由は必要かと思います。
133 ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/02/12(木) 07:37:08 ID:pxPNhBBT
キョウスケ予約
ちょっとネタ元がきびしかもしれないので投下時は避難所に投下します。
実は当初◆VvWRRU0SzU氏とまったく同じネタだったのも私だ。
134それも名無しだ:2009/02/12(木) 11:11:56 ID:pxPNhBBT
キョウスケを避難所に投下しました
135それも名無しだ:2009/02/12(木) 14:02:05 ID:kELQYSr4
>>132
恐竜ジェット機が本来どんなものかがよくわからないけど、
文見る限りじゃ無人で使用できるみたいだし艦載武器として配備ならいいのでは
一次でも副長のグダが無人機として使用してるし

>>133
投下乙です
アインスケはやっぱりコレが無いと
ただ、何らかの制限かけたほうがいいかと
主催者ではなく参加者なんだし、
際限ないパワーアップを許すとバランスが崩れてしまいますの
特に原作のようにどんどん育ったら手がつけられなく…
しかし現時点では問題ないように思えます
136 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 16:07:27 ID:mAorn0jN
>>132
ダイにだけ有人機が配備された理由…としては、アニメ版のゲッターロボで口から戦闘機を次々に吐き出してるシーンがあるんですね。
それで上でも話に上がってる一次のグダでも攻撃手段として用いられてるので、同じ恐竜帝国の戦艦のダイにあっても不思議じゃないのではないかと。
Jアークやナデシコと比べて戦力的な意味でダイは劣っているので、その差を埋めるものとして考えてみました。
恐竜ジェット機については、具体的にこの名前で原作には出てないのですが、ダイの武装を確認するつもりで某動画サイトを見ていたら最初に出てきたのでこれだ、と思いまして。
最初はアキトのYF-21を使う予定だったんです。大破したって記述はなかったし。
ソシエが乗れてロジャーが乗れない、という状況のためには元々戦闘機を操縦できるソシエしか乗れない支給機体以外の飛行機が必要だったからですね。
まあYF-21に修正しても大筋の展開に変更はないんですが。

>>133
投下乙です。
巨大化っていうのは最初考えたんだけど、何で知ったか思い出せなかったんですよね。漫画だったんだ。
ただ、拾った武器のディバイデッドライフルまで巨大化は…どうですかね?
それと月の子なんですが、160話で一応全機大破、ってことになってます。さかのぼって修正すればいいのかなこれ?
137それも名無しだ:2009/02/12(木) 16:10:16 ID:pxPNhBBT
ぐはあやっぱり詰めが甘いorz
月の子が大破してるとなるとエネルギーの供給源がないから不可能ですね……すいません破棄と言う事で。
138 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 16:34:08 ID:mAorn0jN
基地地下の発電施設がまだ無事っぽいのでそれ使うとか・・・
まあ月の子ほど高出力ではないですかね。

で、こちらは特に問題なさそうなら夜9時くらいに本投下します。
139それも名無しだ:2009/02/12(木) 16:39:48 ID:pxPNhBBT
>>138
そ れ だ 
すいません、アイディアの提示、ありがとうございます。
自分は明日の朝に本投下を。
140それも名無しだ:2009/02/12(木) 18:31:45 ID:lENVvYfy
なんかいい流れだな
141それも名無しだ:2009/02/12(木) 18:53:50 ID:CSP/S0wC
>>136
YF-21は交錯線での描写でぶっ壊れてるっぽいですし、恐竜ジェット機でいいのではないでしょうか。
本投下お待ちしてます。
142 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 22:04:56 ID:fBSeCYUD
投下します。タイトルは「遺されたもの」
143 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 22:05:38 ID:fBSeCYUD
タービンが猛回転し、伸ばした左腕が天井を砕き抉る。
ほどなくして、騎士凰牙は薄暗い地下通路から青空の下へとその身を晒す。
ソシエは傍らのロジャーに目をやった。浅い呼吸を繰り返す彼は、しばらく起きそうにもない。
ロジャーは気絶する前に南西に向かえと言っていた。
久々に思う存分機械人形を動かせると幾分高揚しつつ、現在位置を確認するためぐるりと辺りを見回したソシエの視界に巨大な影が飛び込んできた。

先頃交戦した、無敵戦艦ダイ。その残骸が――

そういえばロジャーからこの機体の説明を聞いた――無理やり聞きだした――とき、補給を行う際は通常の補給ポイントではなく専用の電池を用いるということだった。
ロジャーが携帯していた巨大な電池は四本。現在のエネルギー残量からして補給を行っておくのは妥当ではある。
が、手持ちの電池を消費すればそれだけ継続して動ける時間は短くなる。
ここはロジャーが一時身を寄せていて、予備の電池を置いてあるという話のダイに立ち寄っておくべきだとソシエは判断した。



近寄って見上げてみれば、酷い有様だった。
二匹の怪獣の上に要塞が設置されたその巨体も、今は艦橋部分は切り刻まれ、主砲は半ばから砕け落ちている。
最も目を引く怪獣も、右の方は頭自体が消し飛んでおり、左の頭は原形こそ保っているものの傷だらけだ。
八本ある足も二本が欠落し、他にも至るところで損傷が見て取れる。
素人目にももはやこの戦艦は死んでいるのだと知れた。
おそらくは、動かしていたパイロット――艦長もまた。

「ごめんなさい……と言うのも今さらよね。私達が来なければ、こうはならなかったんだし」

半日というほど前でもない戦闘を思い出し、沈む気持ちを頬を張ることで叱咤する。
今は後悔している時間ではない。騎士凰牙もダイの巨体によじ登らせ、格納庫があると思われる位置を探す。
タービンが唸りをあげて、隔壁を粉砕。ダイの内部に通じる穴が空いた。
だだっ広い格納庫へと足を踏み入れ、周囲を探索する。やがて騎士凰牙が携帯するものと同型の電池を発見した。
片腕に手間取りつつも、滞りなく補給は完了した。だが――

「これだけ大きな戦艦だったら、一つくらい私が乗れそうな機械人形だってあるわよね。いいえ、あるに違いないわ」

どうにも人の機体に間借りするだけでは座りが悪いソシエは、自分の乗機を求めて更に格納庫内を探索する。
ホワイトドールとは言わないまでもせめて普通に戦える機械人形なら何でもいいと思っていたソシエだったが、見つけた物は機械「人形」ではなかった。

「……こんなものしかないの?」

整然と並ぶ小型の戦闘機。10や20ではきかないだろう、おそらく100機以上はある。
だが、逆に言えばそれだけしかない。期待していた強力な機械人形は影も形もなく。
騎士凰牙から降りて手近な戦闘機へと乗り込んでみた。
首輪は操縦の仕方を送ってこない。怪訝に思いつつ、しかし慣れた手つきで計器を確認していく。
以前乗りまわしていたレシプロ機とは多少勝手が違うものの、所詮は同じ戦闘機だ。なんとなくだが、操縦できるだろうという確信が持てた。
機首からよくわからない光線が出るらしい。武装はそれだけだった。
144 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 22:06:23 ID:fBSeCYUD
「って、ちょっと! ミサイルとかビーム砲とかはないの!? どうやって戦えってのよ!」

苛立ち紛れにコンソールを蹴り付けた。これではたとえ操縦できたとしても何の戦力にもならない。
戦闘機を降りて騎士凰牙へと戻る。これなら借りものとはいえこちらのほうがマシだ、と思っていれば。

「お帰り、お嬢さん。何か宝物でも見つかったかい?」

コクピットではロジャー・スミスが組んだ腕に顎を置き待っていた。

「あら、もう起きたの? もうちょっと休んでても良かったのに」
「私もそうしたかったのだが、運転手が手荒い運転をしてくれたようでね。あちこち頭をぶつけてしまって、ろくに夢を見れなかったよ」

起きたロジャーはもう騎士凰牙の操縦権を譲るつもりはないとばかり、シートから腰を上げず。
ソシエは渋々ながらその隣りへと腰を下ろした。

「それで、ここはどこかね? 見た限り何らかの施設のようだが」
「ダイっていう戦艦の中よ。あなたも知ってるでしょう」

ここに来た経緯を説明する。手持ちの電池を無駄に使わなかったことは、この慇懃な男もさすがに礼を述べてきた。
気を良くしたソシエは先程見つけた戦闘機のことも自慢げに口に出してしまった。操縦できそうだが、武装が貧弱すぎて使えない。そんな愚痴までこぼして。
戦闘機をこき下ろすあまり、その一瞬ロジャーの目が細められたことは気付かないソシエだった。

「その戦闘機を調べてみよう、ソシエ嬢。何かに使えるかもしれん」

というロジャーの言葉、二人で戦闘機をあれこれと調べる。
だが先程乗ってみた以上のことはわからずお手上げとばかりロジャーに声をかけようとして、彼が戦闘機そのものではなくそれに対応するコンソールをいじっているのが見えた。
どうやらまだ動力は生きているようで、何やら次々に移り変わる画面を見てうむ、むう、これは、などと独り言を漏らしているロジャー。、

「ちょっと、どうしたのよ。何か見つけたの?」
「ああ……いや、見つけたというかな。これらの戦闘機は、手動で動かすこともできるが基本的には無人機のようだ」
「無人機っていうと、人が乗らなくても勝手に動くってこと?」
「ああ。本来そういう設計なのかは知らないが、ことこのゲームに置いてこれだけの機数を有人で運用するのは現実的に不可能だ。
 ユリカ嬢がこれらを使わなかったのは、細かな目標の指定ができなかったからだろう。
 誰それを攻撃しろとは命令できても、臨機応変に変化するこの戦場ではそれだけでは使えん。説得する相手を撃ってしまえば何の意味もない。
 ブリッジにもっと人員がいれば対応も不可能ではなかっただろうが、彼女は一人でこの戦艦を動かしていたようだからな」
「ふーん……で、結局何かに使えそうなの?」
「いや、どうやらこれらを無人で制御できるのはこの艦を中心とする1エリアのみのようだ。移動不能となった現状、1エリアしか稼動できん戦闘機に戦力は期待できんな」
「なんだ、期待して損した気分だわ。じゃあさっさとここから出ましょ」
「いや、それは早計だ。戦闘には使えないが、エリアの探索という点ではこれ以上手っ取り早いものもない。
 このエリアにに人がいるかどうか、確かめてからでも遅くはないだろう」

言いつつ、コンソールを操作するロジャー。やがて戦闘機は一機、また一機と動き出し、解放されたハッチから飛び出していく。
ものの10分ほどで、戦闘機がひしめき合っていた格納庫は閑散とし、広く感じるようになった。
その中に一機。ソシエが調べていた戦闘機のみが飛び立つことなく取り残されていた。
145 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 22:07:11 ID:fBSeCYUD
「ねえ、ロジャー。どうして一機だけ残したの?」
「いい質問だ、ソシエ嬢。あれは君が乗るために残したのだよ」
「……ハァっ!? ちょっと、嫌よ! 戦えないって散々説明したじゃない!」
「だが私は戦闘機の操縦などというメモリーは持っていない。首輪が反応しなかったということは、操縦の仕方のわからない私が乗るのは不可能だということだ。
 ならば、戦闘が不可能とはいえ少なくとも操縦はできる君が乗るのが筋だろう?」
「私が乗ったって、役に立たないどころか逆に危ないじゃない。いっしょにこの機械人形に載ってる方が安全よ」
「安全という意味ではその通りだが、役に立たないということはないな。理由はあれだよ」

と、騎士凰牙が抱える電池を指し示すロジャー。

「騎士凰牙はこの電池でしか補給を行えない。しかし一度に持ち運べるのはどうやっても四本が限界だ。
 そこで君の出番となる。このダイにある残り四本の電池を、君に運んでもらいたいのだ」
「私に荷物持ちをやれって言うの?」
「役割分担だと思ってくれたまえ。私としても戦闘を行うのは本意ではないが、止む無くそうせざるを得なくなったとき君が同乗していては全力を出せないのだ」
「むう……」
「すまないがここは譲れんよ。レディに戦わせるなど、紳士として恥ずべきことだ」

さっきはともかく、ロジャーはソシエを積極的に戦わせるつもりはないと言いたいようだ。
ロランみたいなことを言う、と少し不満に思ったものの。我を通して足を引っ張ってしまうのはソシエとてお断りだ。

「……わかったわ。でも、この先新しい機械人形を見つけたらそれには私が乗る。私にだって、生きて帰るために戦う権利はあるでしょう」
「やれやれ……ああ、今はそれでいいさ。とりあえずは……おっと、戦闘機達がいろいろ見つけたようだ。君も見たまえ」

ため息をついたロジャーが、こちらを手招きする。彼の覗きこむ端末には、発進した戦闘機が観測した映像が映し出されていた。
目を引いたのは、白い機械人形と緑の機械人形。
片方はソシエの知っている、そしてもう片方はロジャーの知る機体だった。

「武蔵……」

白い方、ホワイトドールによく似た機体――RX-78ガンダム。仲間が、武蔵が乗っていた機体。

「…………」

緑の方、龍を模した腕を持つ機体――アルトロンガンダム。かつてロジャー達を襲った少年、交渉に失敗した相手。

二機は奇しくも同じような傷跡が穿たれている。胴体中央、コクピットを撃ち抜かれている――そこに至る過程は違えども。

武蔵はテニアに、仲間と信じていた少女に背中から撃たれた。
キラは何か事情があるのかもと言った。先の交渉でもソシエは口を挟まなかった。
しかし、こうして武蔵の最期を見ると、やはり忸怩たるものがソシエの胸中を満たす。

名も知らぬ少年は、ロジャーとの戦闘中に飛び込んできたガイによって倒された。
そのことでガイを責めるのは筋違いだろう。彼はロジャー達を助けようとしたのであり、あの場でより危険だったのは明らかにあの少年だったのだから。
結局は説得に失敗した己の不手際だと、深く悔恨を噛み締めるロジャー。
146 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 22:07:43 ID:fBSeCYUD


しばし二人を静寂が包み込む。自分を責めている風のロジャーを見、ソシエがなんとか空気を変えようと端末を覗き込む。
そこにはもうさして目を引くものはなかったが、それでも一つ。話の種になりそうなものを見つけた。

「ねえ、ロジャー。これって凰牙の腕じゃないの?」

ソシエが示したのは、緑の機械人形の残骸からほど近いところに落ちている黒い腕。
紛れもなく、ロジャー自身が少年に叩き落とされた騎士凰牙の左腕だった。

「……あのとき切り落とされたものか。戦闘の余波で破壊されたと思っていたが、そうではなかったか」
「ねえ、これを回収してくっつけましょうよ! そしたら凰牙はもっと強くなるでしょう?」
「ふむ――いや、回収するのはいいが、現時点で補修するのは止めた方がいいな」
「どうしてよ? さっきだって両腕があれば、逃げずに勝てたかもしれないでしょう?」
「いくつか問題があるからだ。 まず一つ、私には修復作業を行うメモリーはない。
 乗りなれたビッグオーならともかく、昨日今日初めて乗った機体を手探りで修理することは困難だ。それは君とて同じだろう?
 二つ、そんな時間はない。よしんば修理できるとしても、相当の時間がかかるだろう。我々がまず優先すべきはナデシコとの合流だ。
 戦力の充実と引き換えに時間を浪費するのは得策ではない」
「むー……じゃあ置いてくの? もったいないわよ。それにここの設備を使わなきゃこの先いつ直せるかわかんないでしょう」
「そうは言っていない。三つめの理由だが、我々にはJアークがあるだろう。
 あの艦の設備はここに負けてはいない。腕を持って行きさえすれば、向こうでも修理は可能だということだ。
 キラ君にも手伝ってもらえるし、トモロのサポートがあった方が効率的だ。
 以上の理由で、ここでの修理は先送りにする。反論は?」
「はいはい、わかりました! じゃあ、電池と一緒にあれも私が運べばいいのね」
「理解が早くて助かるよ、ソシエ嬢。我々も息が合ってきたのではないかね?」
「お断りよ! カラスみたいなカッコの人と気が合うなんてごめんだわ」
「……君には一度、じっくりと私の美学のなんたるかを教授せねばならんようだな」


          □


正午まであと数十分という時間、B-1地点。
騎士凰牙と、ハイパーデンドー電池4本に騎士凰牙の左腕を取り付けた恐竜ジェット機は、地図北西に位置する市街地へとやってきた。
だがそこには期待していたナデシコの船影はなく。

「入れ違いになった……か? ふむ、まずいことになったな」
「どうするの? とりあえず二つの市街地を回っていなかったんだから、一旦キラのところに戻る?」
「そう……だな。接触できたのがナデシコの別動隊と、許しがたいチンピラのみというのは甚だ遺憾ではあるが……」

現在の位置からキラのいるE-3に向かうとすれば、途中立ち寄れる市街地はE-1かD-3のどちらか一方。
ナデシコがどこに行ったのかは分からないが、可能性としてはやはり市街地が大きい。
ではどちらを経由するかだが――

「ねえ、私が――」
「別行動は却下だ。君が乗っているのはまともに戦える機体ではないということを忘れるな」

ソシエが提案する前に、先回りして潰す。
手分けすれば確かに両方を回れるが、もし彼女が敵に遭遇した場合応戦どころか撤退すら危うい。
分散ができないとなれば、どちらかを選ばなければならないのだが、その判断の基準がない。
移動距離はどちらも同じくらいだ。どちらを選ぼうが、ナデシコがいないのなら結果的にE-3に到達する時間は同程度だろう。
どちらを選ぶか――迷うロジャー。常の彼なら即断するところだが、ここに来てからの度重なる失態はその自信を揺らがせるものであった。

モニター越しに遥か彼方を睨み据えるも、一向に判断は下せなかった。
147 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 22:08:30 ID:fBSeCYUD

















そして、遠くビルの上からそんな彼と彼女を見つめる猪と、蛇。その視線にも、気付かないまま――






【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
 パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数 
 機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
       側面モニターにヒビ、EN100%
 現在位置:B-1 市街地
 第一行動方針:さて、どうするか……
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:首輪解除に対して動き始める
 第四行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
 備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
 備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持
 備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
 備考4:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)携帯】



【ソシエ・ハイム 搭乗機体:恐竜ジェット機
 パイロット状況:右足を骨折
 機体状態:
 現在位置:B-1 市街地
 第一行動方針:どうすんのよ、ロジャー
 第二行動方針:ブタ?
 第三行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第四行動方針:もっといい機体が欲しい
 最終行動方針:主催者を倒す
 備考1:右足は応急手当済み
 備考2:ギアコマンダー(白)を所持
 備考3:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)、騎士凰牙の左腕を携帯 】


※備考(無敵戦艦ダイ周辺)
 ・首輪(リリーナ)は艦橋の瓦礫に紛れています


【二日目11:40】
148 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/12(木) 22:14:31 ID:fBSeCYUD
投下終了。
で、>>146の途中から分かれた没ネタも避難所に投下しました。
自分としては向こうの方がいいかなとは思うんですが、ご意見をお願いします。
149それも名無しだ:2009/02/12(木) 23:31:28 ID:ubNCCRQo
投下GJ!
相変わらずこのコンビには癒されるw
個人的には没ネタでも大丈夫だとは思いました。
以前の話を見てもただ単に移動したり電池を運んだりするくらいなら出来るんじゃないかな。
150 ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/02/13(金) 08:36:44 ID:BiAWG/NY
投下GJ!やはり二人乗りだと色々大変ですしこれはいい展開w
やっぱりロジャーもデンチ別に持つ人がいたほうがいいし。

こちらもキョウスケ投下します
151それも名無しだ:2009/02/13(金) 08:38:46 ID:BiAWG/NY
静寂を保つ基地。
静寂を望むもの巣食う地で、蒼い昆虫王は立ち尽くす。
その心は、もはや始祖者・アインストの手中にあり、キョウスケ・ ナンブではない。


彼の者は、鋼鉄の棺の中、思考する。
考えるは、先ほどの戦闘。状況、戦況の推移を何度となく反芻。問題点を認識する。
さらなる選別のため、必要なことは何か。そのために欠けているものは何か。
足元に転がる始まりの地より外れた星の兵器を踏み潰す。脆い。しかし、一撃でしとめることができず。
逃げた兵器はけして機敏ではない。だが逃亡を許す結果となった。

結論――足りない。

力が、足りない。

攻撃力が足りない。
耐久力が足りない。
速力が足りない。

継続戦闘能力が足りない。高機動を維持するだけの推力が足らない。非実弾戦闘能力が足りない。
機体の強化に耐えうる素材が足りない。一撃の破壊力がまだ足りない。瞬発的な速度もまだ足りない。
特殊な防御手段が足りない。殲滅力が足りない。飛行能力がまったく足りない。攻撃の手段が足りない。
ディバイデッド・ライフルでは足りない。クレイモアだけでは足りない。スプリットミサイルでは足りない。
足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。
足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない。
足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない。
足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない。


では、どうればいいか?

「器」の知識と、欠けた我の力を検索する。
「器」の知識――闘いの記憶――より強大な力を獲得する手段――戦いの中の変化――進化。
欠けた我の力――原初よりの記憶――生存権を獲得する手段――銀河の中の変化――進化。
演算を完了。もっとも足りてないものであり、同時に多くの足りていないものを満たす事項を検出。

「器」は見ていた。生命力を変換し、より強力な力を引き出す瞬間を。
我は知る。今の我が持たず、尊大たる我が持つものを。

すなわち、存在力。 「器」の言葉から近時の概念を発見。
存在力≒質量。質量の増幅が、現状の力の取得のため最善と判断。

今の手足を呼び起こす。向かう先にあるものを確認。
次元連結機能を搭載する予定の試作機。操作部(コクピット)へ腕を伸ばす。操作部に介入――神経を配置。
輩(トモガラ)の移植を実行――失敗。現在の我をこれ以上分割することは不可能、眷属は精製できず。
当初の予定に従い、外部より直接的な強制起動を行う。神経の配置が予定よりも遅い。
予測を半刻へ変更。これにより理解。内部機構よりの侵攻――戦闘中は使用できない。非戦闘用技能。
非効率的行為の中断。戦闘体を分けることによる力の増大を諦める。
152それも名無しだ:2009/02/13(金) 08:39:28 ID:BiAWG/NY

次策の実行――工場内へ。下降する肉体。失墜する鋼鉄。
暗い地の底にあるそれに腕を突き刺す。発電施設の中枢――集中管理所。
統括する場所から、指令を送る――全力を持って我へ供給せよ。
腕の機能と発電施設の本体との接続を確認。回路を繋ぐ。末端回路へ繋ぐ。中枢回路へ繋ぐ。

稲妻が、電気的な力が鋼鉄に収められる。形を持たない輝きを、質量へ変換。
銀河を塗りつぶすに足る力も、形になさねばほんの僅か。しかし、ひとたび物質となれば……
増大する。我の存在が増大する。我の質量が増大する。
人間はこの現象をこう呼ぶ――「ハイパー化」と。強念者がそれを行なう瞬間を「器」は見ていた。

「フフフ……ハハハハハハハハハハハハ」

我は取り戻す。正しく進化した力の本流。
一次元的には単純な倍加。二次元的にはの二乗。そして、三次元においては三乗。
膨れ上がる鋼鉄の肉体――鋼鉄の力。
激増する破壊力。激増する積載推進力。すべてが激増する。

しかし、突然停止。

「……?」

初期の一.二倍ほどで肥大化が終了。現段階ではまだ復讐者の乗る黒い進化の機体よりも小さい。
理由を思考。力の質量変化に異常――なし。次元を通して力の量――問題なし。
あらゆる機構が、問題なしと告げる。変化がない――理由不明。内部に原因なし。

「まだ……足らない」

唯一肥大化に足らないものを認識。それは、外的要因。肥大化――進化のために必須の存在。
外部からの刺激。環境の変化。「現在」進化の必要性がない。状況は変化しない。故に進化も促進しない。
「きっかけ」――特に「闘争」が必要。「闘争」――宇宙の平穏を乱す。誤った進化。
だが選別のためには「きっかけ」=「闘争」=「さらなる力」が必要。

現在の戦闘力を予測――確定事項、赤銅色の機体に苦戦しない。現状十分すぎる力。
これを持って、全てを噛み砕く。全てを撃ち貫く。
今必要なこと――無駄な力の発散。

鋼鉄の肉体の機動を停止。
周囲を確認――静寂。正しき、存在のあり方。






鋼鉄の孤狼は眠る。
もはや本来の主起きること叶わず。
その身に降りた意思は、悪夢を求め、夢を見る。





悪夢は、肥大化する。
153それも名無しだ:2009/02/13(金) 08:40:59 ID:BiAWG/NY
【キョウスケ・ナンブ  搭乗機体:ゲシュペンストMkV(スーパーロボット大戦 OG2)
 パイロット状況:ノイ・レジセイアの欠片が憑依、アインスト化 。DG細胞感染。
 機体状況:アインスト化。ディバイデッド・ライフル所持。機体が初期の約1,2倍(=30mより少し小さいくらい)
 現在位置:G-6基地跡地、発電施設内
 第一行動方針:すべての存在を撃ち貫く
 第二行動方針:――――――――――――――――――――カミーユ、俺を……。
 最終行動方針:???
 備考1:機体・パイロットともにアインスト化。
 備考2:ゲシュペンストMkVの基本武装はアルトアイゼンとほぼ同一。
     ただしアインスト化および巨大化したため全般的にスペックアップ・強力な自己再生能力が付与。
     ビルトファルケンがベースのため飛行可能(TBSの使用は不可)。
     実弾装備はアインストの生体部品で生成可能。
 備考3:戦闘などが行なわれた場合、さらに巨大化する可能性があります(どこまで巨大化するか不明)。
     直接機体とつながってない武器(ディバイデッド・ライフルなど手持ち武器)は巨大化しません。
     現在はギリギリディバイデッド・ライフルが使用できますが、これ以上巨大化した場合規格が合わなくなる恐れがあります。
     胸部中央に赤い宝玉が出現】

【二日目 12:30】
154それも名無しだ:2009/02/13(金) 08:43:30 ID:BiAWG/NY
投下、おわりました。
一応、現状睡眠(?)なので、キョウスケに関しては何をやっているかを最悪なしでもしばらく持たせられるはず……
基地に向かう人がずっといないとキョウスケ独りの基地のうろうろを書くとなると大変そうなので。
155それも名無しだ:2009/02/13(金) 21:27:19 ID:tUxFfNFd
お二方とも投下GJ!

>>148
ロジャーがちょっと弱気になってるw
このままだとソシエにヘビ取られてしまいそうだww
にしても進路がE-1かD-3とはいよいよ生存者の大集合が近づいて来た感が。

>>154
なるほどアインスケはこうやって書けばいいのか。
全力を持って我へ供給せよにオレンジが頭を過ぎって吹いてしまったw
睡眠(?)状態もGJです。
アインスケ降臨後、次々と進路変わって不幸にも基地に飛び込んだのオルバ達だけですしね。
しかし、どんどんアインスケは凶悪化していくな。
156それも名無しだ:2009/02/13(金) 23:34:43 ID:R414uzJb
投下GJ!
やっぱりラスボス格は巨大じゃないと……!w
戦えば戦うほどに強くなっていく可能性があるって、凄く燃える設定だと思ったw
157それも名無しだ:2009/02/14(土) 11:16:31 ID:ktkDxU4d
投下GJ
このままだとブラックゲッターや真ゲッター、メディウスの三分の一くらいしかないもんなー
何百mとなると流石に勘弁だけどゲッターとか特機を上から押し込めるくらいの大きさあるとボスっぽくて燃えるよねw
やろうと思えばこのまま放送までいけるってのもナイス気遣い
158それも名無しだ:2009/02/14(土) 11:22:39 ID:ktkDxU4d
あと、地味に提案。
142話「ゲッターロボ」に関してなんだけど、時系列???だから常に一番下なわけだが、
あれは第二回放送直後か140話「穴が開く」のすぐ後に持って行ってはどうだろうか?
時系列順に呼んだとき、あれが常に最後の時間軸ってすこし変な感じがするのは自分だけ?
159それも名無しだ:2009/02/14(土) 12:34:15 ID:D4XQUY1l
違和感あるのには同意。
でも自分は吸収された話にくっつき過ぎてるのにも違和感感じるかな。
だから放送直から二、三時間離したあたりがいい気がする。
感覚的なものだから根拠ないんだけどね。
160それも名無しだ:2009/02/14(土) 12:58:55 ID:ktkDxU4d
んー、じゃあ九時ごろがいいのかな?
161それも名無しだ:2009/02/14(土) 13:33:43 ID:xTKMAE8P
うーん……作者さんも意図があって時間を不明にしたわけだし、はっきりと時間指定してしまう形に変えるのは反対かな。
個人的には第二回放送直後にしておくのが一番いいように思うんだけど、>>159さんと意見が別れてるから困るw
どうせ時系列順のページなら「穴が空く」とは同じページにならないわけだし、くっついてるようには見えないとは思うんだけどどうかな?

それより決めとかなきゃいけないのは、◆Vv氏の「遺されたもの」についてだと思う。
避難所に投下されたものとどちらを収録すればいいのか分からない状況だし。
ちなみに俺は>>149の意見です。
162それも名無しだ:2009/02/14(土) 16:45:34 ID:ktkDxU4d
>>161

自分もボツネタでもOKだと思うし、むしろ支給機体であるガナドゥールのほうが。
そこはどっちでも大丈夫だから◆Vv氏に任せて返答待ちでいいのでは?

あと、別にはっきり時間指定するわけでもなく???のまま適当な場所に移動させて話の流れにおいてはどうだろうってつもりだったんだが……
実際どうすればいいだろうね
163 ◆VvWRRU0SzU :2009/02/14(土) 20:30:11 ID:AOCsjCjZ
えーと、自分としては避難所に投下した方がいいですが。
やりたかったのは電池と腕の移送なので、恐竜ジェット機にこだわる気はないですし。
最終的にE-1かD-3のどっちに向かうかの判断にも影響がないので、問題がなければガナドゥール版の方を希望します。
164それも名無しだ:2009/02/15(日) 02:01:35 ID:uMVqvntB
【関連スレ】

聖 戦 士 募 集 中
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1229345616/
165それも名無しだ:2009/02/15(日) 14:47:35 ID:WPgsUudQ
>>163
了解しました、wikiに入れるのはガナドゥールのほうですね。
ゲッターロボは、作者さんに一言どうしたいかいただくまで保留でいいですよね?
166 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/15(日) 20:19:44 ID:C3ucZAPF
すみません。
明日の期限に間に合いそうにないので予約延長お願いします。
167それも名無しだ:2009/02/16(月) 01:20:15 ID:gcmF12Rn
延長了解です。
執筆頑張ってください!
168それも名無しだ:2009/02/16(月) 21:21:51 ID:r2adeqkW
キョウスケはしばらく動かなくてもいいしJアーク組も合流しそうだし、ナデシコを中心とした戦いは戦艦対決や基地以上に転換点になりそうだ
ロジャーやユーゼス達が行くのかどうかも未知数だしなぁ
169それも名無しだ:2009/02/17(火) 01:20:41 ID:QFbMkwl4
まあ、もう終盤だしねえ
170それも名無しだ:2009/02/17(火) 10:34:59 ID:AnS9XJ49
そうか……気付けばもう終盤なのか
なんか中盤半ばから駆け抜けてるから分かりにくい

ナデシコ組は楽しみでしょうがないw
一気に人が減ってさらに物語り加速するかも
171それも名無しだ:2009/02/17(火) 11:09:30 ID:QARLXwT9
昨年末から一気に加速したよなw
一時期の過疎が嘘のように
172それも名無しだ:2009/02/17(火) 14:55:39 ID:QFbMkwl4
一次が終了したからね
173 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 15:32:23 ID:HRc0LVqI
夜遅くで申し訳ありませんが、都合により11時頃から投下します。
174破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:02:58 ID:RmDLy6sd
「『機体の整備』はもういいのか?」

ブリッジに足を踏み入れるなり、声を掛けられた。
この戦艦そのものの声と言っても過言ではないJアークのメインコンピュータートモロの声。
それに「今はカミーユとキラがやってくれている」と返す。
事実、二人は機体の整備を続けていた。
VF-22Sへの反応弾の搬入は既に終わり、書き換えられたF91のOSの復旧を今キラは行なっている。
アムロに最適化されたOSがキラに扱いづらかったように、戦闘中に書き換えられたOSよりも元の方がアムロに適していた。
そして、手の空いたカミーユが向かい合っているのが『機体の整備』、即ち首輪の解析。
その手伝いもせずにアムロがブリッジへと引き返して来たのには、それなりの理由がある。

「指定されたポイントには到着した。それでどうする?」

現在Jアークは、模擬戦を行なったD-3地区を南下し、エリア境目ギリギリの位置で止まっている。
目と鼻の先はもうD-4地区――禁止エリア。
だが、ブンドルの言が正しければその超高々度に――

「少し調べたいことがある。トモロ、D-4地区の地図を展開してくれ」

――天国へと至る門、即ちヘヴンズゲートが存在する。
巧妙に隠蔽され、これまでサイバスターのラプラスコンピューターでしか感知できなかったその存在。
だがしかし、その本質は不安定さからくる空間の綻びである。
ES空間という別次元の空間の運用を前提としたこの戦艦ならば、観測できる可能性は高い。
メインモニターに展開された地図とブンドルの話を重ね合わせつつ、幾つかの地点を指定していく。
それは、サイバスターによって綻びが観測された中から、アムロとブンドルが選別を行なったポイント。

「アムロ、ここに何かあるの?」
「何か……そうだな。一先ずヘヴンズゲートとでも呼んでおこうか。それを探しているんだ」

盗聴を警戒しているとは言え、我ながら答えになっていないと思いつつ返す。
案の定、首を傾げたアイビスは怪訝な顔をしていた。それに「じきに分かるよ」と言って端末に向き合う。
ここからは全てタイピング。
盗聴どころか盗撮までされていたらお手上げだが、それはないと信じてトモロに指示を出す。

『なるほど空間の観測を行なうわけか』
『Jアークならできるな? 発生の前兆、あるいは周期と規模が知りたい』

空間の綻びというものは、常何時でもそこに存在するという類のものではない。
空間そのものが持つ力か、あるいはこの空間を作り出した者の力か、綻べば繕われ、穴が空けば塞がれる。
ならば重要になってくるのは、発生の時期と規模に、発生した瞬間繕われるよりも早く強引に突き破られるだけの力。
それに必要なのは、膨大な量のエネルギー。
ブンドルの見込みでは、コスモノヴァと同等以上の火力が最低三つと曖昧なもの。
詳細な量は分からず、未だ条件も揃わない。
だが、ナデシコとの合流が成れば、条件を満たす可能性が出てくる。その時に備えて出来るだけのことをしておく必要がある。

『細かな状態を観測するのは、この距離では不可能だ。レーダー類も本調子ではない。
 統計から綻びの生じやすい箇所を特定することは可能だが、どちらにせよ一定時間の観測が必要だ』
『ミノフスキー粒子の影響か……仕方ない。Jアークを一時この場に固定する。
 時間は多少かかってもいい。出来るだけのデータを集めてくれ』
「了解した。少々時間を貰おう。だがその前に、東から未確認機が二機接近してくる」

時刻は12時半。ロジャー・スミスがJアークを離れて既に5時間半が経過。
そろそろ接触を持った者たちが集まり始めてもおかしくはない。とは言え会談までにはまだ間がある。
偵察がてら周囲の探索を行なっている者たちならばいいのだが、そう楽観視もできない。

「カミーユとキラに連絡を。F91のOSの状態次第で、俺かキラのどちらかが艦に残る」
175破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:03:46 ID:RmDLy6sd
 ◇

「ちょっと待った、ブンドルさん!!」

先行するサイバスターから送られてきた映像を一目見て、甲児は声を上げる。
廃墟の街並みの上空に浮かぶ一隻の戦艦。
その姿を知っている。
かつて、とある戦艦の救援に駆けつけたD-7地区で、直に干戈を交えた相手。
その脅威を知っている。
そして、テニアを虐げ、彼女の姉とすら言える人の首を刈ることを強要した極悪な集団。
その許せなさを甲児は――知っている。
テニアの話を思い出しただけで胸が痛み、胸糞が悪くなってくる。その気持ち悪さごと吐き捨てるようにして、甲児は叫んだ。

「Jアークだ!!」

その一言で十分だった。これまでの道中で既にナデシコの話は済んでいる。
警戒を強めたサイバスターが、前方で動きを緩める。その先で、Jアークから数機が飛び立つ。
一、二、三、その数三機。
Jアークに残っているのは、キラ・ヤマトとソシエ・ハイムの二人だけのはず。

「どういうことだ!? 数が多いぜ」
「あの機体は……待て、甲児くん。私の知り合いだ」
「ブンドルさんの知り合い!? じゃああれはJアークじゃないのかよ」

ストレーガを止めようとブレーキをかけ――

「こちらJアーク、キラ・ヤマト」
「やっぱりJアークじゃねぇか!!」

――大きくバーニアを噴かす。一気に速力を上げ、脇目もふらずただ一直線に。

「甲児くん!!」
「分かってるって。あのキラって奴をやっつけて、騙されてるブンドルさんの知り合いを助けるんだろう」
「いや、違っ」
「やいやいやい、キラ・ヤマト!! この俺、兜甲児と雷の魔女ストレーガが相手になってやるぜ!!!」
「ちょっと待って。僕の話を」
「恍けやがって!! だがこれ以上お前の好き勝手はさせねぇぞ!!! ライトニイイィィィィィングショォォォオオオオオオット!!!!!!」
「ちょっと撃ってきたよ。どうするの、アムロ?」
「アムロさんの知り合いでしょ? どうにかしてください」
「……ガロードじゃないのか?」

ざわめき、瞬く間に場が混乱していく。
その中で甲児の気を引いたのは女の声。蒼い機体から流れてきた声だ。

「お前がソシエか! 女だからって容赦しねぇからな!!」
「へっ?」
「待ってろよ! キラを倒したら次はお前の――」
「少し落ち着け、甲児くん」

脇見をしながら全速で突撃していたストレーガが、先回りしたサイバスターに足を引っ掛けられて盛大にすっ転ぶ。
もんどりを打って肩からアスファルトの大地に激突し、弾んで背中を打ち、なおもコミカルに三四回転して勢いはようやく止まった。
廃墟の街並みに真一文字の土煙が巻き上がる。
回るコックピットの中、上下前後無茶苦茶に振り回されながらも、しかし甲児はめげない。
桁外れのパワーを誇るマジンカイザーの反動に比べれば、この程度屁でもない。

「この程度でこの俺とストレーガが止められると思うなよ!!」

素早く起き上がるストレーガ。倒すべき敵Jアークだけを見据えたその瞬間、背後から羽交い絞めにされた。
176それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:04:14 ID:kAXro1qd

177破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:04:24 ID:RmDLy6sd
「何すんだよ、ブンドルさん!!」
「ブンドル、どういうことだか事情を説明してくれないか?」
「原因はそちらにある。だが今は落ち着いて話をするためにも取り押さえるのを手伝ってくれ」
「なんだって! くそっ!! まさかブンドルさんまであいつに騙されてたなんて……許さないぞ、キラ・ヤマト!!!」
「君は少し人の話を聞け」

機体サイズはサイバスターのほうが遥かに大きい。
だが、機体そのものの純粋な力ならストレーガはここの誰よりも強い。
その地力にものを言わせて暴れまわったストレーガが、サイバスターを引き剥がす。

「くっ! 油断した」
「逃げたよ!!」
「追うぞ!!」
「どこに逃げたんだ?」
「へへーんだ。そう簡単に捕まって堪るかよ!!」
「その声、北か!! 追いかけろ!!」

そんなこんなでよく分からぬままに兜甲児捕獲作戦が展開されること十数分。
さんざてこずらせながらも多勢に無勢で次第に追い詰められ、甲児はとうとう捕まってしまった。

「何しやがる!! 放せ!! 放せってんだよ、この野郎!!!」

 ◆

「原因はこちらにあると言ったな、ブンドル。事情を話してもらおうか」

甲児を取り押さえた数分後、Jアークのブリッジにアムロの声が響いた。
その声に、もう少しでギンガナムの二の舞になるところだった、と安堵していた思考を呼び戻し、ちらりと二人の少年を見やる。

「彼らは?」
「Jアークを動かしているキラ・ヤマトと以前話したカミーユ・ビダンだよ。
 それと……今甲児くんを見張っている彼女は知っているな? アイビス・ダグラスだ」

黒い髪の少年と青い髪の少年を値踏みする目で眺め、黒い髪の少年を指して言う。

「なら、原因は彼とこの艦にある。甲児くんはガロードの代わりにナデシコから連れてきた少年だ。
 この戦艦との二度の交戦を経て、彼を危険人物と見なしている」

キラという少年の顔が曇っていく。だが、それに躊躇することなく言葉を続けた。

「かつてこの艦に捕縛されていたテニアという少女の話だが、彼は彼女の仲間の死骸から首輪を取ることを強要し、共犯者になれと迫ったとも聞いて――」
「それは違う!!」

少年が短く鋭く叫んだ。
真っ直ぐにこちらを射抜いてくる視線。怒りよりも悲しみを多分に含んだ眼光。
いい目だと思いつつ、圧し返すつもりで視線を合わせる。

「僕はそんなことしていない」

だが、少年の瞳が揺れることはなかった。
無理に踏みとどまったのではなく、後ろ暗いことは何もしていないと自分を信じきった目だった。

「あなたはどうなんですか?」

不意にもう一人の少年――カミーユが、どこか責めるような口調で横から言い放つ。
178それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:04:59 ID:kAXro1qd

179破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:05:07 ID:RmDLy6sd
「どうとは?」
「その甲児って奴がどう考えているのかはわかりました。でもそれは、甲児がどう考えているかだ。
 あなたはまだ自分の考えを言っちゃいない。他人の考えを自分の考えのように言っているだけです。
 それって卑怯だとは思わないんですか?」
「カミーユ」

嗜めるアムロの声に「だってそうでしょ」と返すカミーユ。
なるほどセンシティブだ。感受性が強く、繊細な感性を持っている。だが、それだけでもない。
この少年もやはり真っ直ぐなのだ。感じたことを率直に言いぶつけられる若さがある。

「答えてください。俺はまだあなたの意見を聞いちゃいない」

納得がいくまで退かない視線をそこに感じて、感づかれないよう心の中で微笑む。
キラもカミーユも、そして今縛られている甲児もサイバスターの操者候補として悪くない。

「そうだな。私の意見を言わせていただこう。率直に言うと、まだ信用できないといったところか。
 私自身がテニアの話を聞いたわけでもなければ、会った事があるわけでもない。ただ彼女の言い分を知っているだけだ。
 それに対して君達とも今始めて会ったばかり、やはりよく知らない。だから君達のここまでの行動と言い分を聞かせてくれ。
 それで君達が信じるに値する者かどうか、私なりに判断させていただく」

 ◆

一方そのころ別室では、縛られた甲児とアイビスが向かい合っていた。
椅子の背もたれに両腕を組み、顎を乗せた格好で、ウィダーinゼリーを啜りながらアイビスが言う。

「だ・か・ら、何回も言ってるけどあんたがそのテニアって娘に騙されてるんだってば」
「何言ってやがんだ。キラって奴に騙されてるのはそっちだろ」

それに、後ろ手に縛られた上にベッドの足に縛り付けられた甲児が言い返した。
アイビスが言えば甲児が言い返し、甲児が言えばアイビスが言い返す。

「悪いのはテニア」
「キラだ」
「テニア」
「キラ」
「テニア」
「キラ」
「テニア」
「キラ」
 ・
 ・
 ・

「ああ、もう!! どうやったらキラが悪者じゃないって分かるんだ!!!」

既に何度繰り返されたのかすら分からないこのやり取り。
議論は常に平行線。互いに一歩も譲らないまま時間だけが無為に過ぎ去っていく。
あまりの相手の頭の固さについ苛立って、大声を上げてしまった。
でもそれはきっとお互い様だったのだろう。甲児も負けじと大声を張り上げて反論を返してくる。
180それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:05:44 ID:kAXro1qd

181破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:06:19 ID:RmDLy6sd
「そっちこそどうやったらテニアは悪くないって信じてくれるんだよ!!!
 テニアは俺達が保護したとき震えながら泣いてたんだぞ。仲間を、大事な大事な友達を殺された。その首輪を無理やり取らされたって。
 それが全部嘘だってのかよ!! そんなわけがねぇ。悪いのは人を人とも思わないキラなんだ。あんたは騙されてるんだよ」
「私はね。ここに来てからいろんな人に守られて、私だけが生き残ってしまって、罪悪感に押し潰されそうになってた。
 それでも色んな人のお陰で持ち直せて、その人たちの為にも精一杯生きて行こうって決めて、でも何も具体的なことは思いつかなかった。
 そんなときにキラに会ったんだ。キラはこの廃墟で、いるのかどうかも分からない私に向かって呼びかけた。
 戦うことを、生きることを否定することはできないって。大事な人が殺されたのなら、殺した誰かを憎むことは、当然のことだって。
 でも、それが全てじゃないって。
 キラも亡くしたんだ。友達を、大事な人を。でも、誰かの命を糧に生き返ることを、そのために誰かを殺すことを、その人達は絶対に許さない。
 だからこの戦いの原因を一緒に討とうって言ったんだ。無謀なことだけど、それがきっと、もういない人たちへの、弔いになると思うからって。
 私はその言葉が嘘だったなんて思いたくない。例え、甲児の言うようにそれが嘘だったとしても、一瞬でもその言葉を疑うような自分でいたくない」
「分かってんだ、そんなことは。誰かを生き返らせるために誰かを犠牲にするなんてのは間違ってる。そんなことは分かってんだよ。
 だから許せねぇんだ! 大事な人を無理やりにでも手にかけさせたあの野郎を!! 
 俺は決めたんだ! これ以上こんなことを続けさせてたまるか、俺たちで止めてみせるって。
 絶対に、この殺し合いを終わらせてみせるって。そう誓ったんだ!!」

立ち上がった反動で椅子が倒れ、ガタンと音を立てる。
精一杯乗り出した上半身に引っ張られて、ベッドの足が軋みを上げる。

「だったら私らに力を貸してよ!!」
「そっちが俺たちに力を貸せよ!!」

言ってることも考えていることも同じだ。
同じはずなのに。何も違わないはずなのに。キラを信じているか、テニアを信じているかの一点だけで分かり合えない。
たったそれだけの違いなのに、互いに歩み寄れない。それが悔しくて唇を噛んだ。

「……なんで分かってくれないんだ」

理由なんて分かっている。同じなんだ。自分がキラを信じているように、甲児はテニアを信じてる。
相手の主張を認めてしまえば、それは信じた仲間への裏切りになる。そんなことが出来るはずがない。
そして、自分は間違っていないと確信している。
だからどちらからも歩み寄れない。足が前に出て行かない。今ここでどれだけ言葉を重ねても、互いの言い分は覆らない。
私は――『無力』だ。
甲児をじっと見つめ、そう思った。真っ直ぐに見返してくる目。急速に徒労感が体を満たしていく。

「ハァ……もうこれ以上何を言っても無駄かぁ……暴れないでね」

そう呟くと甲児に近づいて、後ろ手に縛っていた縄を解いてやった。

「いいのかよ?」
「よくないよ。でもいいんだ。あんたが悪い奴じゃないってのは、よく分かった」

腕に残った縄の跡を摩りながら呟いた甲児の声に、溜息まじりに答えながら思う。
何をやっているんだろうなって。きっと皆に見つかったら怒られることをしてるんだろう。
でも、どうにもこいつをこれ以上縛っておくのは違う気がして、忍びない。悪い奴じゃないんだ。
あーあ、やっちゃったなぁ、と困り顔でいたそのとき、予想外の提案が持ちかけられた。

「なぁ、一つ賭けようぜ。テニアとキラ、どっちが正しいのか。負けた方は勝った方の言うことを何でも一つって条件でさ」
「え〜」
「だってアイビスさんはキラが正しいって信じてんだろ? それとも自分が間違ってましたってここで認めるのかよ」
「認めないよ、私は」
「だったらアイビスさんはキラに、俺はテニアに賭ける」
「待ってよ。私は賭けをやるなんて一言も」
「何だよ。逃げるのかよ。キラって奴の信用度もその程度なんだな」
「うっ……に、逃げないもん」
「へへ、なら決まりだな」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
182それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:06:33 ID:kAXro1qd

183破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:07:25 ID:RmDLy6sd
乗せられて上手く誘導されたような気がして、何となく釈然としないものを感じてアイビスは唸る。
そして、この選択が数分後さらにハチャメチャな方向に彼女を引っ張っていくことになるのだが、このときはまだ知る由もなかった。

「ハァ……なんでこうなったんだろ」

 ◆

キラの話を聞き、カミーユの話を聞いたブンドルの声がブリッジに響き渡る。
眼光は冷たく、鋭く。硬質な、固い声だった。

「なるほど状況を理解した。つまり、君は自分の非を認めた上でナデシコとの話し合いを望み、それをネゴシエイターに託したという訳か」
「そうなります」
「嘘はないのだろう。ナデシコ側(主に甲児くんからだが)から聞いた事実推移にもほぼ当てはまる。君の事を信用しよう。
 だが、一言言わせていただく。自分の犯した罪の精算を代理人に行なわせるなど、呆れ返る。
 それに人命が失われている以上、君の犯した間違いは謝って許されるレベルのものではない」
「カミーユにも同じようなことを言われました。それでも、人が集まることに意味はあるはずです。
 話し合って、それでも僕が原因でJアークとナデシコが手を組めないのなら、僕がこの艦を降ります」
「それは逃げだな」
「違う。そんなんじゃない」

その場をアムロは、一人冷静に眺めていた。
厳しい言葉を吐き続けているのは、ブンドル。だが、それをこの男はわざとやっている節がある。
覚悟の度合いを見ようと言うのだろうか。嫌われ役を買って出てくれてもいるのかもしれない。
いや、両方と見るのが妥当。
ならば、自分に求められているのは、集団のまとめ役ということか。
合流すれば少しは楽になるかと思ったが、どうも見通しが甘かったらしい。溜息混じりにそう思った。
そろそろ頃合、と見て仲裁に入る。

「そこまでにしろ。ブンドル、少し言葉がきつ過ぎるぞ。キラの覚悟はお前が思っているほど甘いものじゃない。
 キラ、軽々しく艦を降りるなどとは言うな。それはお前を信じてここに留まっているカミーユやアイビスを軽んじることになる。
 カミーユは少し気持ちを落ち着かせろ。言いたいことは分からないでもないが、お前が一番感情的になりすぎている」
「……そうだな。すまない少し言い過ぎたようだ。だがキラ、君はここの話が終わったら一度甲児くんとじっくり話をするべきだ」
「ええ……そのつもりです」

二人の会話の隅で、口こそはさまなかったもののカミーユが一人、納得がいかないという顔を向けていた。
やれやれ、ブンドルがその立ち位置を続けるつもりならば、気苦労耐えない位置に自分は立たされたと言うべきか。
年端も行かない子供達を纏め上げねばならなかったブライトの苦労が、少しは分かった気がした。
ともあれ、話は前に進めねばならない。

「ブンドル、そちらの話を聞かせてくれ。彼……甲児くんをガロードの代わりに連れてきたと言ったな。
 ならガロードは、今はナデシコか?」
「そうなる。ではナデシコとの合流から話をさせていただこうか」

そう言って語られ始めるのは、ガロードが同行しなかった理由、仮面の二人組との接触、基地の状況。
そして――

「このデータをそのユーゼスから送られた。アムロ、君の意見を聞かせてくれ」

ディスプレイに映し出されたデータ。円環状の物体の三次元図面に、アンチプログラムと銘をうたれた膨大な量のプログラム。
プログラムはともかくとして、この円環状の物体はほぼ間違いなく――コンコンと首輪を指で突付いて見せた。

「だが、意図的に情報の一部を抜かれたような感じだな。
 カミーユ、どう思う? お前が一番この中でユーゼスという男を知っている」
「俺が手を付けた部分はまだほんの少しですが、本物だと思います。実際にあいつはこの作業を行なっていた。
 だけど、あいつは恐ろしく打算的な奴で異常に頭も切れる。何の考えも無しにただこれを渡したとは考えづらい。
 何か裏に意図が隠されている、と見るべきでしょうね」
「私も同意見だ」
「そうか……キラ、君は?」
184それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:07:35 ID:kAXro1qd

185破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:08:35 ID:RmDLy6sd
その問いに眉間に皺を寄せ、食い入るようにプログラムに目を通していたキラがはっと振り向いた。

「右の……プログラムの方ですが、量が膨大な上に複雑すぎてこれが何なのかは分かりません。
 詳細まで把握しようと思ったら幾ら時間が必要か……。
 だからこれは直感ですけど、アンチプログラムと銘をうたれてますが、ナノマシンか何かのプログラムだと思います」

考えを纏め上げるように、自分の頭の中を出来るだけ整理しながら少年は話し続ける。

「ただ、これを理解出来たとして、手を加えろというのならともかく、同じものを作れと言われたら、今の僕には到底不可能です。
 これは一人の天才が十年二十年と人生を懸けて構築するようなレベルの代物だと思います。
 だから幾らそのユーゼスと言う人が優れていたとしても、これをここに来てからの僅かな時間で作り上げたとは思えない。
 何かしら元となるものを見つけ、そこからプログラムだけ複製して抜き出した、そう見るべきだと思います。
 それにこれが本当にナノマシンのプログラムなら、これだけでは意味を為さない。
 プログラミングされていることを実行できるだけの器が、どこかにあるはずです」

キラは愚かこの箱庭にいる誰もが知らない。それがDG細胞と呼ばれるもののプログラムであることを。
地球環境を浄化を目的とし、「自己進化」「自己再生」「自己増殖」の3大理論を備えながらも、落着の際に狂いが生じたものであるということを。
だが、誰一人として同じものを知らずとも、幾多の次元から集められた中には類似の存在に触れた者が存在していた。

「少しいいか。私のデータベースにこれと同一のものは存在しないが、類似したものが二点存在している」

幾ら優れていると言っても所詮生身の人間であるキラと違い、トモロは高性能な演算能力を備えたコンピューターである。
プログラムの全貌を掴むのも人より遥かに素早い。
その結果、自身のデータベースから探り当てたこのナノマシンに類似したもの、それは――

「三重連太陽系の紫の星で開発されたストレス解消作用を持つ自律ユニットが、暴走し、性質を大きく変えて独自に増殖、進化したもの――ゾンダーメタルのプログラムだ。
 地球文明とは別系統の文明の為、使用されているコンピューター言語は異なるが、変換し、共通部分を抜き出すと見えてくるものがある。
 ゾンダーメタルは重原子が複雑に結合した金属結晶だが、知的生命体に寄生し対象をゾンダー化させる力を持つ。
 それに似た性質。このナノマシンは他者を侵食する可能性を秘めている。それを持ってアインスト細胞の除去を行なおうとしてるのではないか」
「そういえば、以前ユーゼスは三つの『これ』の違いについて、キョウスケ中尉の意見を聞いていました」

そう言って自身の首輪を指し示すカミーユ。

「三つの?」
「ええ、俺たちはこれを二つ回収できたんですが、全て形状が異なっていたんです。
 一つは玉の壊れたもの。一つは山火事の中で回収したものの異形の変化を遂げていたもの。最後は普通の状態のものです。
 それについて思い当たる節がないか、奴は聞いていました。
 それに中尉は、専門的なことは何も分からないが、仲間に機体に付けられた赤い玉を砕いたら元に戻ったことがある、と答えていました」
「だが、これを砕く程の衝撃を喉に与えるのは危険だ。加減を誤れば器官が潰れかねん」
「ええ、だから奴はこのナノマシンでの除去を思いついたんだと思います。採取源は恐らく山火事で回収したものでしょう」
「なるほどガウゼの法則か」
「ガウゼの法則?」
「同一のニッチ、即ち生態的地位に二つの種は長く共存することは出来ないという考え方だよ。
 生物学の考え方だが、仮にアインスト細胞とやらとこのナノマシンが同一のニッチに属するものなら、互いに滅ぼしあいどちらかが残ることになる。
 それを利用しようというのだろう」

これまでそれぞれ異なる道を歩み、それぞれが散らばる希望を集めて回った。
それが今、少しずつではあるが身を結び、前に進もうとしている。その手ごたえを感じる。
しかしそこに響くのは、このナノマシンと類似の性質を持つゾンダーメタル、それを敵とするトモロの忠告の声だった。
186それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:08:38 ID:kAXro1qd

187破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:09:23 ID:RmDLy6sd
「ならば、止めておいたほうがいい」
「何故だ、トモロ」
「このナノマシンがゾンダーメタルと同系統の性質を持っていること前提で話を進めるが、一歩間違えれば機械昇華が起こりかねない」
「機械昇華とは?」
「惑星内のすべての物質とすべての動植物が、機械との融合体となった状態のことを我々はそう呼んでいる。
 浄解の能力を持つ者か、最低でも核を浄化できる力が見つからない限り、危険が大きすぎる」

確かに言われてみれば、だ。
人に、生物に侵食する可能性のあるものを首輪に注入して、人だけが無事でいられると言う保証はどこにもない。
むしろ影響を受けると考えるほうが遥かに自然。
ならば、だ。ならば、そのユーゼスという男はその危険性に付いて気づいていないのだろうか。
いや、話を聞く限りではこの危険性に気づかないような男とはとても思えない。となると――

「カミーユ、ブンドル、奴はその力に当るものを隠し持っていると思うか?」
「正直、分かりません。奴は一人で作業を行なっていた。具体的に何をしていたのか、俺はよく知らない。
 そういうものを見つけた素振りはありませんでしたが、何を用意していても可笑しくない、そういう奴でもあります」
「同意見だ。あの男には、一か八かの賭けに出るほど追い詰められた素振りはなかった。
 隠し持っている切り札が、これと言うことは十分にありえる。
 結局は自分に頼らざる得ないことをこちらに理解させ、協力を求めるのが、あの男の狙いなのかもしれん」
「あいつは協力なんて求めてきませんよ。ただ他者を利用しようとするだけです。
 それに奴の手持ちのナノマシンの量で、何人の解除が可能かも分かりません。
 利用するだけ利用しておいて切り捨てられるということは、十分に考えられます」
「どちらにしても、ナノマシンの除去を行なえる技術に心当たりがあると見て動くしかありませんね。
 勿論、僕達自身でも探さなければなりませんが……」

そう。その通りだ。自分たちだけで状況を打破できる道を得ない限り、結局はユーゼスの手の平の上と言うことになる。
一つでも二つでもいい。奴の手札を減らし、こちらの手札を増やす必要がある。

「トモロ、類似したデータが二つあると言ったな。もう一つは何だ?」
「詳細なデータを得たわけではないので確証は持てないが、フェステニア・ミューズの乗る機体に似たようなナノマシンが使われている痕跡がある。
 ただ恐らくだが、ユーゼスの持つものよりも若干性能が劣るだろう、場合によってはアインスト細胞に逆に駆逐される可能性もある」
「あれか……」
「心当たりがあるのか?」
「ええ、以前の交戦で霧のように空気中に散布されるのを見たことがあります。
 構わず飛び込もうとしたんですが、上手くいえないけど凄く嫌な予感がして、気づくと機体を止めてました」
「そうか……だが機会があれば、確保しておくべきだろうな」

一つ息をつき、とりあえずここまでの情報はまとめておくべきなのだろう、と思う。
その上で更に話し合いを重ね、意見を出し合い、深めていけばいい。それを口にしようとした瞬間――

「へへーんだ。誰が二度と捕まるかってんだ!!」

――威勢良くブリッジの気密度が開かれた。
思わず全員が一斉にそちらを振り向き、しまったという顔をした甲児の姿が目に飛び込む。

「あっ……やべっ!!」
「こら!! 待ちなさいって!!!」

言うが早いか引き返し、瞬く間に遠ざかっていく足音。それを追いかけているのかアイビスの大声も響き渡る。
顔を見合わせたカミーユとキラが溜息を吐いて、勢いよく飛び出して行った。

「ブンドル、素晴らしく行動力に満ち溢れた少年を連れてきてくれたものだな。将来が楽しみになってくるよ」
「……皮肉はよしてもらおうか」
188それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:10:05 ID:kAXro1qd

189破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:10:05 ID:RmDLy6sd
 ◆

「何やってるんですか、あなたは」

狭い通路の先で、アイビスに追いつくなりカミーユが抗議の声を上げた。
それに両手を合わせて「ごめんなさい」と謝る声を耳にしながら、しきりに左右を見回して逃げ出した甲児の姿を探す。
だが、どこかに隠れてしまったのか、姿が見当らない。

「アイビス、彼はどっちに?」
「ごめん……完全に見失ってしまって分からないんだ。だからキラは私と来て、格納庫と甲板を押さえておいたほうがいいと思う」
「なら、俺は艦内を回って探し出すよ。ブリッジも気になるけど、アムロさんとブンドルさんが残ってるから大丈夫だろうし」
「カミーユ、怪我してるんだから無理しないで」
「心配要らない。それより狙われるとしたらキラ、お前なんだからそっちこそ気をつけたほうがいい」
「大丈夫」
「じゃぁ、気をつけて」

そう言って二手に分かれる。
狭い艦内を駆けて、アイビスと共に格納庫に走りこんだとき、キラはそこに甲児の姿を見つけた。
逃げるもせず、機体に乗り込むわけでもなく仁王立ちしてる様子に若干の違和感を覚えながら、思わず身構える。
それを見てか目の前の甲児も身構えた。カミーユとの殴り合いで痛めた傷が、痛かった。

「アイビス、ブリッジに連絡を」

怪我をしていようがどうしようが、応援が駆けつけるまでは一人でどうにかするしかない、と覚悟を決めた瞬間――

「ちょっと待ちなよ、甲児。殴り合いをさせるために手を貸したんじゃないんだから。
 キラをナデシコに連れて行くんでしょ?」

赤毛の少女が怒りながらヅカヅカと甲児に詰め寄って行った。
そして、次の瞬間にはクルリと振り向いてキラに視線を合わせる。

「キラもストレーガに乗って。探してたんでしょ、ナデシコを」
「えっと、つまり彼の脱走劇は……」
「うん。ただのお芝居。何か気づいたら手伝う羽目になっててさ」

あっさりと言ってのけた少女を前に、何か一気に体の力が抜けた気がした。

「キラ・ヤマト、俺はお前のことが信用ならねぇ。でもなぁ、アイビスさんと俺の話し合いじゃ埒があかねぇんだ。
 キラが悪い。テニアが悪いってどっちも譲らねぇ。
 だからアイビスさんに手伝ってもらって、お前をナデシコに連れて行くことに決めたんだ。お前が本当に悪くないって言うのなら誤解を解いてみやがれ」

ああそういうことかとようやく納得がいった。
同時にちょっと前にブンドルに言われた『自分の犯した罪の精算を代理人に行なわせる』という言葉が、脳裏を過ぎる。
別にロジャーに罪の清算まで依頼したつもりはキラにはない。
だが、ロジャーに連れて来てもらおうというのはどこか甘い部分もあったのだろう。それを窘められたのだ。
それに、だ。それにもし自分が一人生身でナデシコに飛び込むことが、少しでも誠意となるのなら悪くはない。
そして、仲直りするのなら早いほうがいいに決まっている。だからこのときキラは、迷いなく一人でのナデシコ行きを決意した。

「分かった。ナデシコに行ってくるよ」

Jアークの甲板から飛び上がったストレーガが飛び上がり、宙に浮く。
一拍遅れて発進したネリー・ブレンを迎え、そして二機はバイタルグロウブの流れに乗ってその場から掻き消えた。
ただ彼らの信じる真実へと向かって、ひたすら真っ直ぐに。
190破滅の足音 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:11:02 ID:RmDLy6sd
【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN75%
       無数の微細な傷、装甲を損耗
 現在位置:E-2
 第一行動方針:協力者を集める
 第二行動方針:基地の確保
 最終行動方針:精一杯生き抜く
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】

【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:良好
 機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:E-2
 第一行動方針:ブンドルに同行
 第二行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】

【キラ・ヤマト 搭乗機体:なし
 パイロット状態:健康、疲労(大) 全身に打撲
 現在位置:E-2
 第一行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第二行動方針:ナデシコ組と和解する
 第三行動方針:首輪の解析
 第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】



「全く。若い者達は俺達があれこれ考えるまでもなく自分で動き、道を切り拓いて行くものだな、ブンドル」
「そう悲観するほど君は歳を取ってはいないと思うが。時代を作っていくのは若者ならば、維持していくのが大人の務めだ。
 さて、私もユーゼスの動きが気がかりだ。彼らの後を追わせて貰うことにする」
「取り込み中のところ悪いが、一時間弱のものだが例の観測で興味深い結果が上がってきた」

「例の?」と発せられたブンドルの問いに「君もよく知っている」と返して、地図上のD-4地区を指差す。
そして、Jアークの端末を指し示した。
それで伝わったのだろう。盗聴を避けるためのタイピングでの会話が始まった。

『確かに空間の綻びは確認できるが、細かな状態を観測するのはこの距離では不可能だ』
『そうか……何となくでいい。場所の特定は?」
『不可能だ。D-4地区のどこかとしか言いようがない』
『何故だ? 綻びそのものは確認できたのだろう?」
『綻びの数が普通では考えられないほど多く、この距離では規模の違いが把握しきれない。
 出来ることならば、至近距離での観測か長期間に及ぶ観測が望ましい』

そう言って表示されたデータを一目見て、呻きを上げる。
表示されたのは綻びの観測ポイントと発生時刻。
D-4地区と言わず異常な数の綻びが観測されている中で、D-4地区は真っ黒だった。

『時間がないな』

時刻と発生件数を追っていけば嫌でも分かる。綻びの発生数が指数関数的に増大している。
それも周囲に拡がりながらだ。
異常な速度で綻んではその都度繕われる空間。遠からず生地に限界が来てD-4地区は崩壊する。
そして、それが呼び水となり、この空間そのものもいずれ。
191それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:11:31 ID:kAXro1qd

192それも名無しだ:2009/02/18(水) 23:14:48 ID:kAXro1qd

193代理:2009/02/18(水) 23:18:36 ID:kAXro1qd
『どれほどもつと思う?』
『データが不足しているが、このままの速度ならばまだ数日は大丈夫だろう』
『そうか……もう一つ。扉を開けられるタイムリミットは?』

扉を開けるということは、綻びを掻き回すことと同義。強引に綻びを、空間の傷口を広げるのだ。
それに耐えられるだけの強さを空間が持っている内に、全てをやらねばならない。だがその残された時間は――

『現時点では正確な判断はできないが、三十六時間以内には必ず迎えるだろう』



【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、若干の疲労
 機体状態:EN40% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ  ビームサーベル一本破損
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾60% ビームライフル消失 ガンポッドを所持 
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:協力者を集める
 第二行動方針:首輪の解析
 第三行動方針:基地の確保
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している  ガウルンを危険人物として認識
    首輪(エイジ)を一個所持】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(大)
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN40%   左肩の装甲破損
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:しばらくはJアークに同行する
 第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第三行動方針:首輪の解析
 第四行動方針:遭遇すればテニアを討つ
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】

【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
 パイロット状態:良好(主催者に対する怒りは沈静、精神面の疲労も持ち直している)
 機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:他の参加者との接触
 第二行動方針:E-1へ。可能ならナデシコと合流
 第三行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
 第四行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
 備考1:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
 備考2:空間の綻びを認識
 備考3:ガウルンを危険人物として認識
 備考4:操者候補の一人としてカミーユに興味
 備考5:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】

【二日目 13:15】
194 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/18(水) 23:25:32 ID:+wlSCfkw
代理投下と支援ありがとうございました。
今回の話は散らばっていた首輪フラグをある程度まとめるつもりで書かせていただきました。
解除方法の一案という感じのつもりです。
最後の36時間やらツコッミどころ満載だと思いますので、指摘等よろしくお願いいたします。
195支援でさるさんorz:2009/02/18(水) 23:57:54 ID:K3ufbhQx
投下乙!

フラグもまとまって、時間制限もできていよいよ終盤って感じだ
甲児はさすがとしか言えないし、アイビスも目立ってきたw
ここからF1の戦いには時間的に間に合いそうにないが…
テニアは自分以上に機体の重要性が増してきたなw
196それも名無しだ:2009/02/19(木) 01:53:12 ID:sFL8UC/v
投下乙!
197それも名無しだ:2009/02/19(木) 02:03:55 ID:hlSq24dJ
投下乙!
このままナデシコとの和解が成立したらロジャーの存在価値がw
あの交渉人何のためにキラと別行動とったんだったっけ?
198それも名無しだ:2009/02/19(木) 18:59:47 ID:HMdArVpt
うーむ、ユーゼスの時と言い、どうしてこうも甲児君は自重しないのだろうか。
フリーダムの名前は、むしろ彼にこそ相応しいような気もしてくる。
傍から見る分には面白いけど、ブンドルやアムロは胃が重いだろうなぁ。

それと話の内容は問題無いけど、行動方針が変更されてないので、そこは修正した方が良いと思います。
199それも名無しだ:2009/02/19(木) 20:08:07 ID:rlXhfWT3
投下GJ!
対主催が集結し始めて、首輪についても解除案がはっきりしてきて、終盤だなぁという感じに。
甲児がいい意味で自重し無さ過ぎだw
200それも名無しだ:2009/02/19(木) 21:19:31 ID:xKAKXRDZ
投下GJ!
しかし先に待つナデシコは現在……これは場合によってはキラ涙目か!?
いい感じに終盤入りしたなあ
201 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/20(金) 22:01:03 ID:ijezXGrD
感想とご指摘、ありがとうございました。
ご指摘いただいた状態表を以下のものに差し替えさせていただきます。

>>190の状態表
【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN75%
       無数の微細な傷、装甲を損耗
 現在位置:E-2
 第一行動方針:ナデシコのキラの誤解を解く
 第二行動方針:協力者を集める
 第二行動方針:基地の確保
 最終行動方針:精一杯生き抜く
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】

【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:良好
 機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:E-2
 第一行動方針:テニアが正しいことを証明する
 第二行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】

【キラ・ヤマト 搭乗機体:なし
 パイロット状態:健康、疲労(大) 全身に打撲
 現在位置:E-2
 第一行動方針:ナデシコ組と和解する
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:首輪の解析(&マシンセルの確保)
 第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】
202 ◆7vhi1CrLM6 :2009/02/20(金) 22:03:59 ID:ijezXGrD
>>193の状態表
【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、若干の疲労
 機体状態:EN40% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ  ビームサーベル一本破損
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾60% ビームライフル消失 ガンポッドを所持 
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:首輪の解析とD-4地区の空間観測
 第二行動方針:協力者を集める
 第三行動方針:マシンセルの確保
 第四行動方針:基地の確保
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考1:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
 備考2:ガウルン、ユーゼス、テニアを危険人物として認識
 備考3:首輪(エイジ)を一個所持
 備考4:空間の綻びを認識】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(大)
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN40%   左肩の装甲破損
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:首輪の解析を行ないつつしばらくJアークに同行
 第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第三行動方針:遭遇すればテニアを討つ(マシンセルを確保)
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】

【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
 パイロット状態:良好(主催者に対する怒りは沈静、精神面の疲労も持ち直している)
 機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:甲児達の後を追う
 第二行動方針:E-1へ。可能ならユーゼスよりも早くナデシコと合流
 第三行動方針:マシンセルの確保
 第四行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
 第五行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
 備考1:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
 備考2:空間の綻びを認識
 備考3:ガウルン、ユーゼスを危険人物として認識
 備考4:操者候補の一人としてカミーユ、甲児、キラに興味
 備考5:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】

【Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%  
 現在位置:D-3南部
 備考1:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復
 備考2:D-4の空間観測を実行中。またその為一時的に現在地を固定
 備考3:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】

【二日目 13:15】
203それも名無しだ:2009/02/22(日) 02:22:09 ID:JgY9Pgwx
修正乙です
後はナデシコ周りが片付いたら、早くも放送に行けるんじゃないかなーとか思ってしまったw
実際はナデシコに集まってるキャラが方々に散ってJアークやロジャーたち、アインスケにもいろいろと影響が出るんだろうけど
204それも名無しだ:2009/02/22(日) 04:17:17 ID:tV8qZ1DJ
でもそのナデシコ周りが難易度高いよなw
マーダー三人いて鉄火場は必死なのに三方から敵か味方か未定なやつらばっか来るし
205 ◆YYVYMNVZTk :2009/02/23(月) 03:05:36 ID:sfE5wLvM
最近の加速っぷりに、遅筆の俺としては嬉しい悲鳴だーw
そろそろ書きたい欲も溜まってきたのでシャギア、ガロード、バサラ、クインシィ、テニア、統夜、ガウルンで予約します。
良くも悪くも盤面が大きく動くことにはならないと思うので、プロット練り練りしてた人は流用できる形になるよう祈っててくださいですw
206それも名無しだ:2009/02/23(月) 10:06:15 ID:uY9t6otg
>>205
予約キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
wktkしながら待ってます、頑張ってください!
207それも名無しだ:2009/02/23(月) 14:35:54 ID:QFXfMMhY
ナデシコ周辺の予約ktkr!
楽しみにしてます、頑張ってください
208それも名無しだ:2009/02/25(水) 23:38:15 ID:CyONiDLi
絵版に姉さんの絵が来てるじゃないか
209それも名無しだ:2009/02/27(金) 16:32:16 ID:c1sDxd8K
これは延長かな?
210 ◆YYVYMNVZTk :2009/02/27(金) 20:13:38 ID:kwZKnHUF
只今鋭意執筆中ですが期限に間に合わせても雑になってしまいそうなことと推敲の時間が欲しいことから延長お願いします。
お待たせしてしまい申し訳ありません。
211それも名無しだ:2009/02/28(土) 21:40:06 ID:R7BrJNYw
>>210
頑張ってください
212それも名無しだ:2009/02/28(土) 22:28:53 ID:Wg3u28e9
>>210
つ【祝福】
213それも名無しだ:2009/03/01(日) 01:29:26 ID:+tWkEd9J
>>210
【激励】

延長って何日だっけ? 2日? 3日?
214それも名無しだ:2009/03/01(日) 04:38:12 ID:SZnAnQWc
2日
だから今日の20:13:38までだね
215それも名無しだ:2009/03/01(日) 04:56:22 ID:X/gVK2/n
ん?月曜の03:05:36までじゃないのか?
元の予約期間5日+延長期間2日だと思ってたけど。
216それも名無しだ:2009/03/01(日) 09:05:32 ID:E2dKcGjc
>>215
延長時の時間から計算してた(´・ω・‘)
217それも名無しだ:2009/03/01(日) 09:57:53 ID:+tWkEd9J
だいたいあと17時間後くらいかな?
wktkしながら起きて待ってよ―っと
218それも名無しだ:2009/03/01(日) 21:35:32 ID:W/vE/Xqm
残り8時間ちょっとか……わくわく
219 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:07:46 ID:2hzG1o51
時間なので投下します……といきたいんですが、二つのパートを一作品の中に纏めてたら雰囲気の違いなどで纏まりのないものになってしまったので二話に分けて投下しようと思います。
時間ぎりぎりな上にめんどくさいやり方ですいませんーorz
220それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:08:10 ID:Bi+3YPd8
支援しますー
221心の天秤 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:09:11 ID:2hzG1o51
茫然自失。
その四文字こそ、今のシャギアを表すのに最も相応しいだろう。
ヴァイクランのコックピットの中、誰に向けるというわけでもなくシャギアは疑問の言葉を脳内で繰り返す。
――私は今、誰を撃った? 誰が死んだ?
ナデシコの格納庫内には、シャギアを含めて五人いたはずだ。シャギア、ガロード、テニア、比瑪、名も知らぬギターの男。
それが今では二人いなくなり三人になってしまっている。
テニアはベルゲルミルに乗り、ナデシコを飛び出した。
ならばいないのは、比瑪ということになる。比瑪が、いなくなっている。
ならばさっきシャギアが撃ったのは、間違いなく比瑪なのだろう。
自分が比瑪の命を――意図したわけではないにしろ、奪ってしまった。
そのことをはっきりと自覚した瞬間、全身に何とも形容し難い悪寒が走り、纏まろうとしていた思考が霧散する。
比瑪の喪失がそのまま感覚の欠如に繋がり、まるで世界がひっくり返ってしまったかのような眩暈さえ覚える。
ショックを受ける自分がいるのと同時に、比瑪を殺してしまったことで、ここまで心乱されることになるとは思ってもいなかったと、ショックを受けたという事実そのものに同程度の衝撃があった。
そうだろう。シャギア自身、自分がここまで不安定になっているとは想定の範囲から大きく外れていた。
オルバにしろ、比瑪にしろ、失ってから初めて自分がどれほど心の拠り所にしていたのかに気付かされる。
生まれついての仲であったオルバならまだしも、出会ってから一日と経っていない比瑪までもが、こんなにもシャギアの心に入り込んでいた。
それだけナデシコで過ごした時間が特別なものだったということなのだろうか。
楽しすぎた。そう、ナデシコは――シャギアにとって楽しすぎる場所だった。
もしかすると、シャギアとオルバが何の力も持たず、それゆえに世界を恨むことさえなければ在り得ていたかも知れない光景。

「おい、シャギア! しっかりしろ!」
「ガロード……」
「ぼんやりしてる暇なんてないんだ。斬りかかってきた機体……戦ったんだから分かるだろ。
 このまま放っておいたら、やられるのはこっちだ」
「ガロード。……ナデシコを、お前に任せる。クインシィという女も、そこのギターの男も、私は殆ど面識がない。
 纏め上げるのならばお前が適任だ。今更私がナデシコを率いる根拠も、随分薄くなっている。
 これはオルバが交渉人――ロジャー=スミスから得た情報だが、Jアークはナデシコと直接話をしたいとのことだ。
 場所はE−3、時間は次の放送後。おそらくは、この戦いの一番の山場となるだろう。頼むぞ、ガロード」
「おい……何言ってるんだよ! ナデシコはあんたたちの艦じゃなかったのか、俺じゃ意味がないんだよ!」
「私には……やらねばならないことが出来た。ようやく気付いたのだよ。
 ――私の手は、私が思うよりもずっと小さかったようだ。何もかも全て掴むことなど出来ない。大事なものを取り零してしまうとね」

想定外の事態に陥り、自分でも自分が分からず、何をすればいいのかなどそれ以上に分からない今。
それでもなお、唯一つだけ、やらなければならないとはっきりしていることがあった。
こうなってしまった全ての元凶――フェステニア=ミューズを、この手で殺す。
オルバと比瑪を失って欠けてしまった心の空洞が、殺意というどす黒い意思に満たされていく。
背筋が凍るほどに冷たいそれがシャギアの頭をクールダウンし、冷静沈着なシャギア=フロストが甦る。
そうだ。昔からシャギア=フロストという男は、憎悪を原動力とし世界に復讐を果たしてきた。
何と言うことはない。ただ、戻るだけなのだ。

「ガロード……やはり私たちは、共に歩めない運命なのかもしれないな」
222心の天秤 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:10:06 ID:2hzG1o51
かつて何度も戦った宿敵の顔を、改めてまじまじと眺める。
ガロードには、シャギアの真似できない眩しさがあった。
真似ようなどとは思ったことはない。そんなものは必要無かったからだ。
だが今は、その愚直とも言えるひたむきさが、少しだけ羨ましかった。
本当は、あの頃から思い焦がれていたのかもしれない。無意識の内に羨望は積み重ねられていたのかもしれない。
この場所に連れられ、そして甲児たちと出会い、彼らにガロードと似た何かを感じた。
自分もまた、そうなることが出来るのかもしれないと思ってしまったのかもしれない。
オルバが何度も困惑していたシャギアの奇行――あれは、元々のシャギアの人格を知っていたからこそ、奇行と見えたものだ。
実際、甲児や比瑪、テニアなどは、何だか馬鹿みたいなところもあるけれど、面白くて信頼できる人物だと、そう捉えていた。
カテゴリーFと評される力さえなければ、世界を恨むことさえなければ、あるいは有していたかも知れない人格が、ナデシコでのシャギアのそれだった。
だがしかし、それはあくまでも仮定。IFの話に過ぎない。
結局、シャギアはシャギア=フロストであり、それ以上でもそれ以下でもなかったという、それだけの話だ。
ガロードが期待した「本当のシャギア」などというものはただの虚像であり、そのメッキはオルバと比瑪の死により剥げてしまっただけなのだ。
シャギア自身は何も変わってなどおらず、今また、復讐の対象を変えてそれを果たそうとしている。

『おい。格好つけてるんじゃねぇよ』

――だと言うのに、何故、私のことなどろくに知らないはずのお前が、そんなことを言う?

『確かに俺はあんたのことなんかこれっぽっちも知らないさ。だがな、あんたは俺を助けてくれたし、比瑪の仲間だった。
 俺にとっちゃそれで十分なんだよ――俺の歌を、聞かせるにはなあっ!
 ……比瑪が死んじまって、悲しいのが自分だけだなんて思うな。仇を討とうだなんて、そんな馬鹿げたことはもっと考えるんじゃねえ。
 そんな下らないことで頭を悩ませるくらいなら……俺の歌を、聴けぇぇぇぇぇっ!』

男はギターをかき鳴らし、唄った。力強く唄った。
それは別れを謳う歌。だがしかし、悲哀とは遠い歌だった。
まだ自分の声を取り戻すことが出来ず、ナデシコで得た新しい声もまた、経験値の不足からかところどころでミスも目立つ。
それでもなお、男の歌には力があった。小手先の技術などでは到底込めることが出来ない熱意や情熱――それがあった。

「やめろ! ……何だ、貴様たちは、この私に……!」

いったい何をさせたいんだ。
私はそんなことをして欲しいのではない。ただ、黙って私の言うことに頷いてくれればそれが最善だろう。
袂を分かとうとしている相手にこんなことをして、何の得がある? 何になるというのだ。
シャギアの呟きを受け、演奏と歌がしばし中断される。

『俺はあんたのことなんか、何も分からない。だけどよ……そんなに泣きそうな声をしている奴を、そのまま放っておくわけにはいかないってだけだ。
 俺は比瑪の優しさに救われた。俺はあいつみたいに優しくはないけどよ、きっと比瑪も、あんたを慰めてやると思ったのさ』

男に泣きそうな声だと言われて、初めてシャギアは自らの目もとに手を伸ばす。
濡れていた。涙を落とすほどではない。だが、目尻を濡らすほどには、温かい液体が染み出ていた。
涙。
自分がまだ、涙を流せる人間だったとは思わなかったと、そのこと自体に軽い衝撃を覚える。
もしかすると、自分は本当に変わることが出来たのではないかと、期待をしてしまう。
だが――期待すればするほど、落胆もまた大きくなると知っている。
だから期待など捨てると、そう決めた。そのはずだったのに。
223それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:10:20 ID:4dbRifb0
支援
224心の天秤 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:10:56 ID:2hzG1o51
「……俺はまだ、シャギアのことを信用出来たわけじゃない。だけどそれはきっと、俺がシャギアのことを何も分かってないからなんだ。
 どうしても行くっていうんなら、俺が信用できるだけの証拠を見せてから行けよ、シャギア!」
「証拠など何もない。貴様が知っているシャギア=フロスト像は、なんら間違ってはいない!」
「俺が知ってるシャギアは比瑪が言ってたみたいに和気藹々とするような奴じゃないし、そんな泣きそうな顔もしない!
 そんなの俺の知らないシャギア=フロストだ! ナデシコを捨てるだなんて、そんなこと言うなよ。
 それは比瑪や甲児を裏切るってことなんだぞ!」
「貴様に……! 貴様に何が分かる! オルバを、半身を失った私の怒りと悲しみが分かるというのか!
 オルバの仇討ちとナデシコと、どちらを選ぶかなど今更考えるまでもない」
「なら、甲児や比瑪たちの前で見せてた姿は全部演技だって言うのかよ! ――ふざけるなよ!」
「言いたいことは、それだけか? ならば私は行く。フェステニア=ミューズを殺しにな。
 ……ナデシコは任せたぞ。私たちをあれほど苦しめたお前だからこそ、頼むのだ」
「もう、俺が何を言っても……行くつもりなんだな」
「ああ」
「なら絶対に帰ってくるんだ。お前が何を言ったとしても、ナデシコは俺たちの艦じゃない。お前たちの艦だ。
 それまでは、俺が代わりに守ってみせる。だから……必ず戻ってこい」

そんな言葉をかけられてしまえば、淡い期待を捨てることさえ難しくなってしまうではないか。
誰よりも、ガロードにだけは言ってもらいたくなかった。
自分の本質を知っている人間だった。
甲児や比瑪のように、一日足らずの付き合いだったならばそれは勘違いだったと言葉を正すことも出来ただろう。
しかしガロードとの因縁は、勘違いだったで済ませるにはあまりにも深すぎる。

「私はいったい、何をすればいいのだろうな……」

極自然に、その呟きは生まれた。
これだけ心が揺れようとも――それでもなお、譲れないものはあるという予感があった。
男の歌がいくら心に響こうと、ガロードの声がいくら心を動かそうとも、その心はやはり、オルバという存在に縛られている。
今この瞬間でさえ、オルバを確実に生き返らせることが出来るのならば、即座に掌を返しナデシコを墜とすことでさえ厭わないだろう。
それほどまでにフロスト兄弟の肉親への愛は強かった。当り前の話、仕方の無い話だろう。
これまでの人生、喜怒哀楽の全てを共有してきた唯一の存在が、シャギアにとってのオルバなのだから。
むしろ、オルバと並ぶほどに心中を占めるナデシコでの仲間たちとのひと時のほうが例外過ぎるのだ。
いくら濃密だったとはいえ、一日足らずの記憶が、半生と同等の価値を持ってしまうということが信じられなかった。
これは自分の弱さになるのだろうか。それさえも、何もかも、分からないことばかりだ。
ただ唯一分かる、しなければいけないこと――テニアの殺害のために、シャギアはヴァイクランを発進させる。
ナデシコから出てすぐに、テニアの乗るベルゲルミルを捕捉した。
そう離れてはないビルの屋上でナデシコを襲った機体と向かい合ったまま、戦う様子も逃げ出す様子もなかった。
元々グルだったのだろうか、などと考えることもなくガンスレイヴの照準をベルゲルミルに合わせる。
この引き金を引けば、自分を苦しめた存在、フェステニア=ミューズを確実にこの世から消失させることが出来る。
しかしその引き金が引かれることはなかった。
その前に、何者かの攻撃がヴァイクランを襲う。
念動フィールドにかき消されたその攻撃を、シャギアは知っている。
かつて一戦交わした、黒いガンダム――!

『よう、元気だったか? ――ちょいと、遊んでもらうぜ』

 ◇
225それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:11:22 ID:Bi+3YPd8
 
226心の天秤 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:11:44 ID:2hzG1o51
ヴァイクランとガンダムの距離は数十メートル。
この距離の意味合いは、二機にとっては大きく異なる。
ヴァイクランの全長は約50メートル。そしてマスターガンダムは17メートル。
ほぼ三倍の差を持つ二機は、リーチの差もまた、大きく違う。
ヴァイクランにとってはこの距離というものは完全に近距離――インファイトを強いられる距離だ。
ヴァイクランの武装には近距離専用のものは存在しない。
いや、確かにショートレンジでも使用できるものはあるが、本来は中距離をもっとも得意とする機体なのだ。
元々はゼ・バルマリィ帝国特殊部隊ゴラー・ゴレム隊の指揮官機として作られたものであるため、これは道理であるとも言えよう。
それに対し、マスターガンダムにとっては数十メートルという距離は近距離とは言い難い。
今更言うまでもなく、マスターガンダムは近距離での格闘戦を目的として作られている。
しかし、この距離でマスターガンダムがその真価を発揮するには、相手に近づくという行程を必要とする。
たとえ俊敏性に優れたMFであっても、全くの隙無しに埋められる距離ではない。
必然的に二機の戦いは死闘とは程遠い、牽制の仕合となった。
ガウルンがダークネスショットを放とうと、シャギアは意にも介さず念動フィールドでかき消し――ヴァイクランの操るガン・スレイヴはマスターガンダムに決定打を与えることが出来ない。
距離を取ろうとするシャギアと、近寄ろうとするガウルン。
両者の技量には大きな差はない。それ故に、戦いは早くも膠着の具合を見せていた。
こうなると、勝敗の行く末を決めるのは機体の能力差やパイロットの技量差ではない。
如何に相手を取り込み、自分を優位に出来るか――心理・精神面での駆け引きが重要となる。

「アー、アー。……聞こえてるかい?」

先に仕掛けたのはガウルン。
通信回線をオープンにし、シャギアへと揺さぶりをかける。
相手の狙いはシャギアとて分かっている。
これはまた、シャギアにとっても好機。相手の攻めを上手く受け流すことが出来れば、逆にシャギアが有利となる。
だが――敢えて乗らない。無視を貫く。
何故ならば、シャギアには勝機があるからだ。
後ろに控えるナデシコ、そしてガロードが回収したマジンガー。
一対一ならば、勝負はどちらに転ぶか分からないが、総戦力ならば確実にシャギアの方が上回っている。
このまま膠着状態に持ち込み、ガロードの発進を待てば、それでシャギアに軍配が上がる。
ここで勝負を仕掛ける必要はない――そう考えての判断だ。

「だんまりとはつれないねぇ。あんたとは色々と話したいことがあるんだがな」

沈黙のままにガン・スレイヴを操作。
シャギアの念を受け自由自在に飛び回るビットが、直進するものと大きく迂回するものと、二通りのパターンでガンダムへと向かう。
二つの軌道から同時に襲い来るビットを、しかしガウルンは正確に見極め回避していく。
ヴァイクランの武装の中ではもっとも使い勝手に優れ、初速もけっして悪くはないガン・スレイヴが通用しないのであれば、ヴァイクランではガンダムを墜とすことは出来ない。
口惜しいが、シャギアはそう判断する。
ヴァイクランには更に強力な武装も存在するが、それらは発動までのタイムラグが大きく、このような白兵戦では有効ではないのだ。
また、ディバリウムとの連携を前提としているこの機体では、単独戦それ自体が不向きなのである。
一対一での決闘を前提とし設計されたモビルファイターであるマスターガンダムとは、相性が悪いのは明白だ。
だがヴァイクランが勝るのは、その防御力。
戦場で最重要・最優先となる指揮官機であるために、その生存能力は他の機体に比べ著しく強化されている。
特機と称される巨躯に見合う重厚な装甲、そして念動フィールド。総合的な耐久性ならばガンダムとは比べ物にならない。
故に時間稼ぎを目論むシャギアにとって、この機体性能は望むべきもの。

「前にやった時と比べて動きが悪いな。――もう一機はどうしたんだ?」

ククク、と邪悪な笑みを浮かべガウルンが言葉を重ねようと、シャギアは無視する。決して反応を返さない。
たとえその言葉が心に軋みをもたらそうとも、相手にしてはならないと自分に言い聞かせる。

「そういえば、テニアはどうやら別行動してたみたいだったが――まさか一人で好き勝手にさせたというわけじゃないよな。
 あれだけ大暴れして、それでもあの嬢ちゃんを疑わないなんてのは、よほどのお人好しだ。
 ここで俺の狙いに気づいて無視する人間なら――気づくだろうねぇ」
227それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:12:26 ID:4dbRifb0

228心の天秤 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:12:37 ID:2hzG1o51
気づけばマスターガンダムは攻撃の手を緩めている。
闇雲に攻撃しようと意味がないと判断したのか、それともこの口撃に専念するつもりか、シャギアには分からない。
ガロードの出撃が遅れていることに苛立つ。
この黒いガンダムとガロードの間に何らかの面識があったかどうかは分からないが、有無を言わさず戦闘を仕掛けてきた好戦的な様子を見れば、危険人物だと判断するのにそう時間はかからないだろう。
ならばすぐにでも発進し、シャギアと共にガンダムを討つのが合理的判断というものだ。
なのにガロードは動かない――それが苛立つ。あの男の言葉と同様に。

「なら、別行動をさせるにしても誰か一人は見張りをつけるはずだ。
 確か……前に戦った時、そこの戦艦から出てきたのはあんた含めて二機だけだったな。
 なら、もう一機のほうと嬢ちゃんで、別行動をしたんじゃないのか?
 でも戻ってきたのは嬢ちゃんだけ。おまけに嬢ちゃんは、せっかく帰ってきたばかりだったってのにいきなりあんたらを襲った機体と一緒に何処かへ行っちまった。
 つまりあんたらは嬢ちゃんと仲違いをしたってわけだ。原因は、何なんだろうなぁ?
 実はあの嬢ちゃんは人殺しで、別行動している内にあんたのお仲間を一人殺した……そして何故かそれを知っていたあんたらは、嬢ちゃんを突き詰めた。
 そこでタイミング良く現れた嬢ちゃんの王子様。……フフ、ベタすぎて、嘘くさい話だよ」
「何故……貴様がテニアのことを知っている……!」
「おおっと、ようやく口を聞いてくれたか。そりゃあ簡単さ。あの時俺が、嬢ちゃんがあんたらのところに潜り込む手伝いをさせてもらったからだよ。
 あの後、嬢ちゃんの知り合いと組ませてもらった。面白いねぇ、あいつ等は。本当に良い素材だ」

つまり、ガンダムに乗るこの男もまた、オルバが死んだ原因の一つなのだと知る。
胸の動悸が速くなり、邪魔をされ削がれていた殺意が、むくむくとその鎌首をもたげ始める。

「貴様もか……! 貴様のせいで、オルバは!」
「ああ、そうさ。……にしても、怒るねぇ。そんなに大事な奴だったのかい?」

そうだ――自分の命と等価値と言っていいほどに、オルバは私にとって大きな存在だったのだ。
口には出さない。だがモニターに映る男に向ける殺意の眼差しの中に、それと同意の感情をこめる。

「おお怖い怖い。……フフ、それで仇討ちに嬢ちゃんを追うってわけか。
 だけどよ……あんたは結局、どうするつもりなんだい?
 嬢ちゃんを殺した後、またこの戦艦で仲良しこよしと――出来ないだろうな。顔を見れば分かるよ。
 あんたは――最後の一人を狙って、そしてオルバって奴を生き返らせようとするんじゃないか?」
「……そこまで分かっているのなら、私の邪魔をするな!」
「邪魔? 違うね。俺はあんたの背中を押してやろうとしてるんだよ。
 なんであんたは律義に俺の相手をしようとしてる? あんたが俺の相手をしようとするから、あんたにとっちゃ俺が邪魔者だ。
 邪魔してほしくないのなら、俺のことなんか放っておいてさっさと嬢ちゃん達を追えばいいのさ。
 あんたがそれをしないのは――あの戦艦をかばってるからだとしか考えられないね。
 どうしてあんたがアレを守らなくちゃいけないんだ? そんなに義理立てするような人間じゃないだろう?
 ……俺には分からんね。あんたがそこまで迷う理由がな。そして――このくらいのことで迷ってるような人間に、嬢ちゃん達を殺されては困るんだよなぁ。
 ようやく熟し始めたんだ……美味しいところだけつまみ食いするってのは、マナー違反だぜ」

さあ、どうする――? 男の顔は、はっきりとそう訊ねていた。


そして、それと同時にナデシコ内部――ガロードとバサラは二人、慌てていた。
「テニアたちや黒いガンダムとはまた別の機体が接近してる……!?
 くそっ、どうなってるんだ!?」
『何で誰も彼もそんなに闘いたがるんだよ……!』
229それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:12:45 ID:Bi+3YPd8
 
230心の天秤 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:13:33 ID:2hzG1o51
シャギアが飛び出すと同時、二人はテニア達の位置を把握すべくバサラに施されたIFSを用いてナデシコ周辺のレーダー図を格納庫内に表示することに成功した。
その時点でナデシコが捉えた機影は三。
テニア、騎士のような機体、そして黒いガンダム。
シャギアがガンダムと交戦を始めてから、テニアともう一機は移動を始めた。
このまま逃がすわけにはいかない――そう考え、ガロードはマジンガーに乗り込みシャギアの加勢に出撃しようとした。
だがその瞬間、不意にレーダーの有効範囲が伸びた。
これはガロードたちが知らぬことだが――この会場内では、通信とレーダーを阻害する粒子が散布されている。
宇宙世紀におけるミノフスキー粒子だと考えてもらって構わない。
それは会場全域に散布されてはいるものの、場所ごと、時間ごとにその濃度を変化させている。
とはいえその効果が完全に消えたり、逆に限界濃度に達するということはない。
どんなに濃度が薄くなろうともエリアを跨ぐような距離で通信することは不可能であるし、機体の運用に支障が出るほどに悪影響を及ぼすこともない。
この不規則な濃度変化――それはこの会場の不安定さにも起因する現象だ。
急拵えのこの場所は、他の参加者が気付き始めたように歪みが蓄積し、空間として破綻しようとしている。
会場に撒かれた粒子もまた、その影響を受けているのだ。
破れ、薄くなり、脆くなった結界には、その分他の箇所から維持しようとする力が流れてくる。
その力の流れに乗り――粒子もまた、移動するのだ。
無論それだけではなく、機体の移動、戦闘の余波など様々な要因が複雑に重なり合い、流動現象は起きている。
例えるなら、潮の満ち引きのように。そして今、一瞬だけ潮は引いた。
その一瞬――ナデシコのレーダーは、二つの機影を捕捉した。
そしてまた瞬時に潮は満ち――機影はレーダーの射程外に消えることとなる。
これを見てしまったからこそ、ガロードは動けなくなる。
もしここでガロードがシャギアの応援に出てしまえば、ナデシコに戦闘員がいなくなることになってしまう。
せめてお姉さんだけでも起きてくれてればと思うも、今から医務室へ向かったところでクインシィが目を覚ましてくれるかどうかさえ定かではない。
ナデシコを守るというシャギアとの約束故に、シャギアの助けになれないというのは、何とも皮肉な話だ。
だが今は、動くわけにはいかない――じりじりとした焦燥が、ガロードの中で燻ぶるばかりだ。


【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:憎悪 戸惑い
 機体状態:EN45%、各部に損傷
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:ガウルン、テニアの殺害
 第二行動方針:首輪の解析を試みる
 第三行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
 第四行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:???
 備考1:首輪を所持】

【ガロード・ラン 搭乗機体:マジンガーZ(マジンガーZ)
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状況:装甲にダメージ蓄積・ドリルミサイル10数ほど消費・ルストハリケーン一発分EN消費
 現在位置:F-1市街地(ナデシコ格納庫)
 第一行動方針:戦況を確認し、とにかく動く
 第二行動方針:勇、及びその手がかりの捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】


【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)
 パイロット状況:神経圧迫により発声に多大の影響あり。
      ナデシコの機能でナデシコ内でのみ会話可能。
 機体状況:MS形態
      落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
 現在位置:F-1市街地(ナデシコ格納庫)
 第一行動方針:???
 最終行動方針:自分の歌で殺し合いをやめさせる
 備考:自分の声が出なくなったことに気付きました】
231それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:13:36 ID:Bi+3YPd8
 
232それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:13:43 ID:4dbRifb0

233心の天秤 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:14:19 ID:2hzG1o51
【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:気絶中
 機体状態: ダメージ蓄積(小)、胸に裂傷(小)、ジャガー号のコックピット破損(中)※共に再生中
 現在位置:F-1市街地(ナデシコ医務室)
 第一行動方針:勇の捜索と撃破
 第二行動方針:勇がここ(会場内)にいないのならガロードと協力して脱出を目指す
 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】

【ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている。現在起動中
 現在位置:F-1(ナデシコ格納庫内)】

【旧ザク(機動戦士ガンダム)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好
 現在位置:F-1(ナデシコ甲板) 】

【ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:下部に大きく裂傷が出来ていますが、機能に問題はありません。EN100%、ミサイル90%消耗
 現在位置:F-1市街地
 備考1:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガス、マジンガーZを収容
 備考2:ナデシコ甲板に旧ザク、真ゲッターを係留中】

【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:疲労中、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
 機体状況:全身に弾痕多数、頭部破損、左腕消失、マント消失
      DG細胞感染、損傷自動修復中、ヒートアックスを装備
      右拳部損傷中、全身の装甲にダメージ EN80%
 現在位置:F-1 市街地
 第一行動方針:シャギアと交戦
 第二行動方針:統夜&テニアの今からに興味深々。テンションあがってきた。
 第三行動方針:アキト、ブンドルを殺す
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】

【二日目14:00】
234それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:15:18 ID:Bi+3YPd8
 
235それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:15:27 ID:4dbRifb0

236Stand by Me ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:17:18 ID:2hzG1o51
確実に切り裂くはずだった。
何も考えず、無心に、ただ刃を走らせて、その一撃は何よりも疾く、重く、強く。
けれど、確かに決意したはずなのに、あの声を聞いた途端に俺の心は揺れてしまった。
何故、どうしてと、疑問符が頭の上をくるくる回る。

「テニ、ア……」

ナデシコに近づいていく姿を遠めに見ていたときには気付かなかったが、テニアの乗る機体の損傷は、決して軽いものではなかった。
左腕は消失し、脇腹も痛々しく抉れている。それ以外にもはっと目に付く大きな傷から微細な傷まで全身無事なところがないほどだった。
テニアもまた、幾度となく戦ってきたんだろう。そして生き残ってきたんだ。
……どうやって、生き残ってきたのか。ガウルンからは聞いている。

だけど、俺はまだテニアからは何も聞いていない。
そう、テニアから聞いた言葉は、まだ一つだけ。
あの言葉が真なのか偽なのか俺には判断できない。
だからもっと、テニアの声が聞きたいと思ってしまったのだ。
ただ今、この瞬間だけは、自分が殺し合いに巻き込まれていて、自分もまた殺し合いに乗るつもりで、最後の一人になろうとしていたことを忘れていた。
ただの高校生だった自分を担ぎ上げてロボットアニメの主人公に仕立て上げてしまった三人の、最後の生き残りである赤毛の少女を自らの手で殺そうとしていたことさえも忘れてしまった。
突然殺し合いの場に放り出されてしまって、磨り減った神経を更に張り詰めさせて、その末にようやく出会えた知り合いと思わず寄り添いたくなるのだってなんら不思議なことじゃないと思いたい。

そうなんだよ。
俺はもう、疲れてるんだ。

本当は、大きな声を上げて泣いてしまいたいんだ。
誰かの胸の中で、子供みたいに甘えたいんだよ。
今まで散々毒づいていたのは誰だって、笑うか?
笑われたっていい。簡単に心変わりしてしまってるってのは誰よりも俺が分かってる。
あの時テニアに対して抱いた殺意が本物じゃなかったわけじゃない。
ただそれ以上に、俺が思っていた以上に、俺の心は弱かったんだ、限界だったんだ、ただそれだけの話なんだ。

「統夜だよね? 統夜なんだよね!?」

ようやく二言目が聞けて、涙が一粒落ちそうになった。
でも、そんな顔をテニアには見せたくないと思ってしまったのはきっと男の子の意地というやつなんだろう。
少しだけ顔を伏せて、鼻頭がツンと熱くなる感覚をやり過ごしてから顔を上げ、今の自分が持つなけなしの余裕で表情だけでも取り繕って、声を返した。

「ああ、統夜だよ……テニア」
「良かった……会えて、本当に良かった……!」

モニターに映ったテニアの顔は、何処か懐かしかった。
赤毛と、くりくりとした瞳。おてんばだったテニアには似合わない、とても疲れた顔をしている。
最後に会ってから二日と経っていないはずなのに、数年も会ってなかった様な気さえしてしまう。
どうしようもなく、どうしようもなく、目の前にいる女の子はフェステニア=ミューズだった。
カティア=グリニャールでも、メルア=メルナ=メイナでもなく、フェステニア=ミューズだった。
ただ一人だけ生き残ってしまった女の子がそこにいた。

「どうしたの、統夜?」
「いや、ただ――」

少しだけ、思い出していたんだ。
テニアたちと出会ってから今までのことを。

「何で今更、そんな昔のこと?」

思い出さなきゃ、きっと俺は前に進めないから。
格好悪いだろ?

「ううん、そんなことない。アタシ信じてたからさ。統夜が助けに来てくれるって。
 そして統夜は――来てくれた。アタシを助けに、来てくれた!」
237それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:17:25 ID:Bi+3YPd8
 
238Stand by Me ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:18:10 ID:2hzG1o51
そう言ってテニアは、俺に向かって笑ってくれたんだ。
そしてようやく俺は、思い出せた。
なんで、いきなりロボットに乗り込めだなんて言われて、そのまま戦い続けてたのか。
いや、戦うことが出来たのか。
最初は自分のためだった。死にたくないから成り行きに任せて戦い続けてたんだ。
でも何時の間にか、理由はそれだけじゃなくなっていた。
こいつらだったんだ。カティアと、テニアと、メルア――三人がいたから、三人のために、俺は戦おうと思い始めてたんだ。
それが、俺が偽者の主人公を続けられていた理由だったんだよ!

くそっ……! くそっ!!
思い出したんだよ。忘れてたものを思い出したんだよ。
忘れたほうが絶対に楽だった。何も考えずに殺せるようになってれば、俺はきっと全てを捨ててでも、自分の命を守りにいけたんだ。

でももう駄目なんだ。

俺はテニアの声をもっと聞きたいと思ってしまってる。
テニアなら――俺に、主人公を続けさせてくれるんじゃないかって甘い希望を抱いてしまってる。
この場に及んで、俺は守りたいものを増やしてしまったんだ。
どんなに頑張ったって、一つしか残せないような、こんな場所でさ。

「テニア。お前が俺のこと信じてくれたんならさ――俺に、俺自身を信じさせること、出来るか?」
「いいよ。アタシは統夜のことを信じてるって言ったじゃん。
 だから、統夜がアタシのことを信じてくれたなら――きっとそれは、アタシの中にある統夜のことを、統夜が信じることになる」
「俺はお前を信じたい。だからもっと聞きたいんだ。……俺が、俺でいられるように」

だから俺が俺を信じられるようになるまで、テニアを信じられるようになるまで――二人だけの時間が、欲しかった。
通信機のスイッチを入れる。チャンネルは既に合わせてある。告げるのは別離の言葉だ。

「……ガウルン」
『――ハ! お前が嬢ちゃんと向き合ってるってだけで、お前が何を言いたいのかくらい分かってるさ。
 俺はお前のこと、なかなか見所のある奴だと思っていたが……とんだ見込み違いだったみたいだな?』
「幾ら罵ってくれても構わない。ただ俺は、あんたよりも信じたい相手が出来たんだ」
『あーあ、あれだけ忠告してやったのに――結局お前は、嬢ちゃんに丸め込まれちまったってわけかい』
「何と思ってくれてもいい。ただ――出来の悪かった弟子から師匠へ、最後に一つだけお願いさせてくれよ。
 俺たちは二人だけになりたい。……今、笑っただろ?」
『そりゃあ笑うさ。ククク……この期に及んで色恋沙汰とは、若いねぇ?』
「茶化すなよ。あんたにとっちゃ笑い話でも、俺にしてみれば大事なことなんだ。頼む、少しだけでいい。俺たちが逃げ出せるまで時間を稼いでくれ」
『嫌だね。なんで俺がお前のためにそこまでしてやらなきゃいけないんだ? それで交渉のつもりなら、お粗末としか言いようがないな』
「……そうだよな。今更あんたに頼みごとなんて、俺がどうかしてたみたいだ」
『だがなぁ……元々、あの戦艦を狙うつもりだったんだよ、この俺は。お前に指図されたわけじゃないが――結果的には、同じことになるかもしれないな』
「はは、なんだあんた……案外、良い奴なのか?」

ブツンと通信は途切れた。
さんざ迷惑をかけられたが、終わってしまった今ならば、悪くなかったといえたのかもしれない。
いや、やっぱりそんなことはないか。
何はともあれ、これで準備は整ったはずだ。見ればナデシコから機体が一つ飛び出そうとしている。
これ以上、無駄な時間はなかった。

ブツンと通信は途切れた。
さんざ迷惑をかけられたが、終わってしまった今ならば、悪くなかったといえたのかもしれない。
いや、やっぱりそんなことはないか。
何はともあれ、これで準備は整ったはずだ。見ればナデシコから機体が一つ飛び出そうとしている。
これ以上、無駄な時間はなかった。

「テニア」
「うん」
239それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:21:22 ID:4dbRifb0

240代理:2009/03/02(月) 03:23:58 ID:4dbRifb0
たった五文字で通じてしまう。俺たちの距離は、こんなに近かったっけ?
いや、今は余計なこと、考えなくてもいいんだ。
視界の隅に、黒が現れた。ガウルンの乗るガンダムだ。放たれた光弾が、ナデシコから飛び出そうとした機体の注意を引く。
その一瞬の隙をつき、俺たちは走り出した。
何処へ向かうかなんて考えてなかった。ただ、少しでも早く二人だけになりたかった。

 ◇

久しぶりに、統夜と会った気がする。
実際のところ、どのくらい会ってなかったんだろう。
うーん……一日くらいしか経ってないんだけどなぁ。
でもさ。
やっぱり統夜は、統夜だった。
アタシを助けてくれるヒーローだった。
そして二人で逃げ出した。
今ここは、どのあたりなのかな。
統夜に連れられて、とにかく逃げて――こんな感覚は久しぶりだった。
周りに誰もいないような、見渡す限りの草っぱらまで辿りついて、ようやく統夜は止まった。
そして――二人きりになったと、ようやく感じる。
うん。ようやく。
本当の意味で、私たちは二人きりになってしまった。
カティアも、メルアも、ついでにあのグ=ランドンも。
皆死んでしまったから、残ったのはアタシと統夜だけになった。
もし今、生き残っている人たちが皆生きて帰れるハッピーな展開があったとしても、アタシと統夜にとってそれはハッピーエンドなんかんじゃない。
統夜はカティアが死んだことを悲しんで、ずっと生きていかなくちゃいけないんだろう。
アタシはそんな統夜を見て、死ぬまで独りぼっちかもしれない。
たった一日で、アタシたちは変わってしまった。変わらざるを得なかったんだと思う。
変わらないと、耐えられなかった。
メルアが死んだことも――カティアを殺したことも――きっと昔のままのアタシだったら、耐えきれなかっただろうな。
昔、だなんて変だね。
でも、もうあの時間は――統夜と、アタシたち三人が仲良く過ごせていたあの頃は――もう、大昔のことだったんじゃないかと、そう思っちゃう。

「……テニア」

統夜は一体何を考えてるんだろう。
アタシには、今の統夜が分からなかった。
なんだか今の統夜は、アタシが知っている統夜じゃないけど、でも確かに統夜なんだっていう変な感覚。
この違和感が何から来るものなのか、アタシは知りたかった。
統夜のことをもっと知りたいから――なんて、おセンチな理由じゃないよ。
ただ単に、統夜がアタシを守る騎士として、ちゃんと頑張ってくれるのかどうか、それだけは知っておかなくちゃいけなかったから。

「俺、ちゃんとテニアと話したいんだ……聞きたいことも、たくさんあるんだ」
「いいよ。じゃあ……何から話す?」
「その前に、機体から降りないか? ちゃんと向かい合って話したいからさ」

そう言って統夜は、自分から先に降りて、草原に立った。
こんなことが出来るのは、きっとアタシのこと信用してくれてるからなんだろう。
もしここでアタシがベルゲルミルの足をちょっと動かせば、たちまち統夜は潰れて死ぬ。
そんなこと想像もしてないからこんなことが出来るんだと思う。
そしてアタシは……統夜がアタシを殺そうとするなんて思わなかったから、ベルゲルミルから降りた。

「ん。……統夜、何だか印象、変わったんじゃない?」
「そうかな? ……まぁ、色々あったから。そういうテニアも……いや、あんまり変わってないように見えるな」
241代理:2009/03/02(月) 03:25:07 ID:4dbRifb0
力無く笑う統夜は、アタシが期待してた統夜じゃなかった。
なのにさ……ずるいよね。この統夜は、アタシが……いや、アタシたちが好きだった統夜にそっくりなんだよ?
それじゃあさ、この統夜がどんなに頼りなくっても、期待しちゃうじゃん。
会ったらアタシが利用してやるー! なんて考えてたけど、アタシじゃなくて、統夜がなんとかしてくれるんじゃないかって思っちゃうよ。
だって統夜なんだもん。
統夜なら、アタシが出来っこないことでもやってくれるって、そんな気がするから。
……アハハ、なんだか柄じゃないよね、こういうの。

「それで話したいことって何?」
「聞きたいことがある。テニアが今まで、どうやって生き延びてきたのか」

アタシは喋ったよ。
基本はナデシコで喋ったことと同じ。
メルアとカティアが殺されて、命からがらJアークから逃げ出してナデシコに転がり込んで、ようやく安心したと思ったら勘違いでナデシコ組に殺されそうになった。
そんなことを感情を込めながら、昔のアタシならこう話しただろうなって話し方で統夜に伝えた。

「だから……あの時統夜に助けてもらえて、本当に嬉しかった。またこうして統夜と話せるなんて夢なんじゃないかっておもっちゃうくらい」
「俺もだよ。俺も……ずっとテニアに会いたかった」
「え?」
「あ……いやいや、そんな意味じゃなくってさ……その、何て言うか」

顔を真っ赤にして照れる統夜が無性に可愛くて、久しぶりに声を上げて笑った。
あははははははと、大きな声で笑ったら、なんだか心がすっきりとした。

「あはは……そんな慌てなくてもいいのにさ。それで? それで統夜は今までどうしてたの?
 統夜のことだから、またどこかで女の子でも助けてたりしたんじゃない?」

何の気なしに言った言葉だったのに、それで統夜は顔を曇らせてしまった。
――何でだろ?
統夜に感じた違和感が何だったのか、アタシはよく考えてなかったのかもしれない。

「俺はさ……最後の一人になろうとしてたよ」

統夜の口からそんな言葉が出てくるなんて思いもしてなかった。
多分この時のアタシは、とても間抜けな顔をしてたと思う。
だってそうでしょ? 統夜が殺し合いに乗るだなんて……考えられない。
なのに統夜はまだまだ喋っていく。

「最初は生き残りたかっただけだったんだ。何度か戦って……でも、誰も殺すことはなかった。
 でも、やってしまったんだ」

何を、とははっきり口にしなかった。
だけど何のことなのか、アタシには良く分かる。
段々と、血の気が引いていくのを感じていた。

「その後は半ば自棄だった。また戦って、戦って……その後だったよ。俺がガウルンと手を組んだのは」

完全に血の気が引いた。
アウト。どう考えてもこれはアウト過ぎる。
ガウルン――唯一、殺し合いへの意思をはっきりと見せた相手。
ガウルンからアタシがやったことをばらされてたら、完全にアウト。

「聞いたよ。テニアが何をやったのか」

はい死んだ! アタシ今死んだよ!?
……なのに統夜は、何故か優しげな笑みを浮かべていた。
242代理:2009/03/02(月) 03:25:33 ID:4dbRifb0
「聞いた時は、テニアのことを凄く恨んだ。お前ら三人があの日、俺の前に来なかったら……きっと俺は、こんな殺し合いにも巻き込まれずにすんだんだろうって。
 そう思ってたから、テニアがやったことを聞いて、なんて自分勝手な奴なんだって起こったんだよ。
 でもやっぱり、実際にテニアと会ってしまったら……テニアの声をもっと聞きたいなんて思ってしまったんだ。
 さっき、出会った頃のこと、思いだしてるって言ったのはさ、俺が自分から戦おうって思ったのは……お前らを守ろうって、そう思い始めたからなんだって思い出したんだよ。
 こうやって話して分かったんだ。少なくとも俺は、テニアを殺すことが出来ない。
 覚悟を決めたつもりだったのに、やっぱり大事な人は殺せない。――俺が言いたいのは、それだけだ。
 テニアに、ガウルンから聞いたことは本当だったのか聞くつもりだったんだけどさ……やっぱりそれも、どうでも良くなってしまった」

……それってさ、ずるいよ。
自分だけ言いたいこと全部言っちゃって……ずるいよ。
そんなこと言われたら……アタシだって、統夜のこと、思いだしちゃうじゃない!
アタシの中で統夜は英雄だった。誰よりも強い存在だった。
カティアと結ばれたときだって、それが統夜の選択ならって、そうやって身を引いた。
……それに、大事な人は殺せないって、だから統夜は優しいんだよ。
そんなことを言われちゃったら……アタシは、何も言い返せない!
本当は殺したくなかったなんて、そんな言い訳もできない。
アタシはカティアが目を覚ましたその時に、怖くなって力を込めて……殺したんだよ!
カティアだけじゃないメルアだって目の前で殺されたのに、アタシは何も出来なかった。見殺しにしたんだ。
そんなアタシがさ、優しい統夜の隣にいられるわけないじゃん。
ただ優しいってだけなら、比瑪だっていたけど、でも、統夜と比瑪じゃ全然意味が違う。
だって……だってアタシも、こうやって話してて、統夜のことが殺せるだなんて思わないんだもの!

……あーあ、駄目だ。やっぱりアタシは――どうしようもなく統夜のことが好きなんだ。
好き。大好き。愛してる。いくら言葉があっても足りないくらいの気持ちがアタシの中にある。
メルアを見殺しにしたアタシでも、カティアを殺したアタシでも、武蔵を撃ったアタシでも、オルバを置き去りにしたアタシでもない。
ただの恋する少女なフェステニア=ミューズになってしまうんだ、統夜の前では。

「あのさ……」

口が勝手に動いていた。
アタシがやってきたことを、全部話してしまう。
どうせなら、カティアを殺したときに狂ってしまえば良かったんだ。
半ば理性を持って、狂ったつもりになって。そしてそのことを統夜に気付かされてしまって。
統夜は「それでもいい」だなんて優しい言葉を吐く。
だからずるい。そんなことを言われたら期待してしまう。
今度こそ、アタシが選ばれるんじゃないかって。
大粒の涙がぼろぼろとこぼれていく。
いつの間にか統夜も泣いていた。
子供みたいに、二人でわんわん泣いた。

「ねぇ、統夜……アタシもさ、統夜と一緒に生きたい。生き延びたい。もっと二人で色んなことしたい」
「俺も、まだまだやりたいことがあって、その隣に誰かにいて欲しい」
「いいの? アタシで。アタシは、最悪な女だよ。酷いんだよ」
「いいさ。俺だって最悪だよ。でも――テニアが欲しいんだ」
「ねぇ統夜、もっと強く抱きしめてよ。何もかも忘れちゃうくらいに、強く……」

初めて触れる統夜の胸の中で、アタシは多分、世界で一番幸せで可哀想な少女になった。
こんな巡り合わせを神様が決めてるんだとしたら、きっとその神様は残酷だ。
なんでこんなところで、って思う。アタシがあんなことをした後にこんな幸せを与えるなんて。
でもアタシは神様に言いたい。ありがとうって。
もう一度言うよ。アタシは今、幸せ。
243代理:2009/03/02(月) 03:26:07 ID:4dbRifb0
【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:昂揚
 機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数
      EN80%
 現在位置:H-1
 第一行動方針:??? 
 最終行動方針:テニアと生き残る】

【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:幸福
 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) 、シックス・スレイヴ損失(修復中、2,3個は直ってるかも)
        EN60%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
 現在位置:H-1
 第一行動方針:???
 最終行動方針:統夜と生き残る
 備考1:首輪を所持しています】

【二日目14:30】
244 ◆YYVYMNVZTk :2009/03/02(月) 03:28:09 ID:2hzG1o51
さる解けたかな……?
代理投下ありがとうございます。
指摘ありましたらビシバシお願いしますです。
245それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:32:23 ID:Bi+3YPd8
YY氏も代理の人も投下GJ!
ここまで来てついに統夜とテニアが結ばれる展開が来るとは……
キングクリムゾンして次の話が冒頭朝日だったでもおかしくないwここまできてこのタッグはおいしいなあ
ガウルンもガウルン節全開だし、凄いキャラが生きてる。本当に投下GJでした!
246それも名無しだ:2009/03/02(月) 03:33:13 ID:4dbRifb0
投下乙!

・・・あれ、何か今までにない空気が生まれたぞw
てっきり一大決戦の鉄火場になるかと思えば残った火種はガウルンだけでマーダーカップルは離脱ってw
二人で生き残るってのがどういった意味なのか・・・ますます混沌としてきてwktkだぜ
247それも名無しだ:2009/03/02(月) 08:48:42 ID:sAFwAD6Z
投下乙!

>はい死んだ!アタシ今死んだよ!?
吹いたwwwテニアww
248それも名無しだ:2009/03/02(月) 19:26:11 ID:Zzu0tf+w
投下GJ!
向かってきてる二機がどの組かで大きく展開変わりそうだな。
しかし、何か統夜とテニアがバカップル化しそうだwww

>嫌だね。なんで俺がお前のためにそこまでしてやらなきゃいけないんだ?←ツン
>だがなぁ……元々、あの戦艦を狙うつもりだったんだよ、この俺は。←デレ
ガウルンがツンデレ化してるwww
249それも名無しだ:2009/03/03(火) 21:36:18 ID:bysXBbOL
wikiの編集練習ページにオススメ更新手順を見つけて感動したのも私だ。
誰だか知らないがGJ!!
さりげなくカウンターも追加されてるし。
250それも名無しだ:2009/03/04(水) 01:33:53 ID:NA/hTfxg
くっ……!
絵板にまで来てやがる……このバカップルめw

>>249
カウンター見て思ったけど、ここって意外と住人多いのか?
一日に100って多くない? それともそんなもん?
251それも名無しだ:2009/03/04(水) 05:39:58 ID:TZ49Y+Yo
少しご意見伺いたいのですが、キャラの行動終了時刻が一部かけ離れるので二話立てで予約したい場合、これは可能でしょうか。
具体的には、167話と168話のように前半の話で行動終了となり後半の話に絡まないキャラが出る状態です。
予約時点で既に二話に分かれることが判明している状態で、丸ごと予約していいものかどうか分からなかったので、ご意見よろしくお願いします。
252それも名無しだ:2009/03/04(水) 10:31:38 ID:pVwI2OB1
>>251
ぜんぜんおkですよー
特に問題ないと思います
253それも名無しだ:2009/03/04(水) 10:39:52 ID:GLwLo/Im
二話両方に共通して出るキャラがいるなら問題ないのではないかと
167話と168話でいうならカミーユを軸にしてつなげた話ですし
254 ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/04(水) 11:17:41 ID:TZ49Y+Yo
>>252-253
ありがとうございます。

では問題ないようですので、シャギア・ガロード・バサラ・クインシィ・ガウルン・ユーゼス・アキト、予約します。
あとついでに絵板にバカップル追加しときました。
255それも名無しだ:2009/03/04(水) 12:35:42 ID:NA/hTfxg
おお、早くもナデシコに予約入るとは
これは期待せざるを得ない
絵もGJ! 絵も文章もいけるなんて多才だなぁ
256それも名無しだ:2009/03/04(水) 23:22:19 ID:P4JG0MqB
ついに因縁のガウルンとアキトが会するのか・・・これはwktk
257それも名無しだ:2009/03/07(土) 06:03:45 ID:SKfd2IAe
wktkが止まらないぜ……
最近どんどん状況が変わってきてるし、皆の注目のキャラを聞いてみたいところ
俺はガウルンだな
どう考えてもナデシコ周りはガウルンを中心に話が進むはず
アキトも絡んでくることだしどうなるのか期待大だ
258それも名無しだ:2009/03/07(土) 11:03:20 ID:v0IziujD
ガウルンにアキトが突っかかるならどう見てもユーゼスの思うつぼです本当に私だ
259それも名無しだ:2009/03/07(土) 12:59:42 ID:zLD3a2zd
そういや一次もだが、ここは終盤だけど書き手さん同士でチャットとかしないのかな
そろそろ風呂敷を畳む段階に入って来るんだが
260それも名無しだ:2009/03/07(土) 13:45:32 ID:5lQJdSCx
>>259
そんなのするのか?
リレー小説なのに先に書くのこと全部分かったら興ざめじゃないか。
浮かんだネタを軸に書くこともできないし、「あ、こっちのほうがいいや」と変えることもできない。
しかもそれ今いる人のことだけで新しく入る人のこと考えてないし……リレー小説企画でそんな狂ったような真似したところがあるの?
正気とは思えないんだけど
261それも名無しだ:2009/03/07(土) 13:54:14 ID:zLD3a2zd
大手っていうところはどこもやってるみたいだが
それにここまで来て新しく参加するってのももうあまりないだろ
メリットとしては矛盾を押さえることができたり話に一貫性を持たせることができる
262それも名無しだ:2009/03/07(土) 14:17:52 ID:sd4kUMWe
まーそれはやるとしてもまだロワ破綻とかしてないし、尚早だろう。
そして一次スパロワはチャットなくても完結した。
つまり現段階で語ることでもないってことだ。
263それも名無しだ:2009/03/07(土) 14:22:29 ID:SKfd2IAe
よそはよそ、うちはうち
今のところリレーしていく上で特に問題もないし、する必要はないぜ
個人的には小説としての完成度も大切だと思うけど、リレーの楽しさを犠牲にしては本末転倒だと思ってるし
264それも名無しだ:2009/03/07(土) 17:52:27 ID:e0TOSHU/
書き手諸氏が必要と思えばやれば良い
無理にする必要も無いが必要があるならやる。それで十分だろう
265驕りと、憎しみと ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:18:56 ID:Hos3QVQ7
横倒しのブラックゲッターの上で、空を眺めていた。
穏やかなときが流れている。
ユーゼスと共にG-1エリアに到着した後の約二時間、特にすることはなかった。
補給ポイントから離れ、見渡す限りの草海原に機体を横たえているだけである。
炉心の火を落とした二機は熱源探査にはかからない。遠目に見たとて、損傷の激しい二機の姿は残骸としか映らないだろう。
仮に興味を持ったとしても、見晴らしのいいここでは接近するまでの間に十分火は灯せる。
だが、この二時間そんな者は現れなかった。ナデシコは愚か鳥の一羽すら空には浮かんでいない。
視線をゼストと呼ばれるユーゼスの乗機へと落す。
湖で拾った白い神像とでも言うような巨神。その抉れた胸にゼストは、背中を合わせて固着していた。
そして、目を凝らすまでもなく分かる。四肢のないゼストが巨神を侵食している。
毎秒1mm程度の速度で、白いその装甲を深紫に染め上げ、同化し、巨神の胸にズブズブと沈み込む。
侵食の速度は全長50mを下らない二機にしてみれば、微々たる速度。だが、それでも既に傷口から7mを超えて侵食されている。
恐らく半日後には二つは一つとなり、全身余すことなくゼストと化すのであろう。あくまでこのままの侵食速度であればの話だが。
得体の知れなさは気味が悪いが、それも今はどうでもいい。
揺れた草花が音を立て、風が頬を薙いでいった。雲の流れは速い。形を変え、移ろい、消えていく。
無粋な思考を頭から追い払えば、本当に穏やかな時間だ。それはいい。
こうしている間にも他者は互いに潰し合い、その数を減らしている。自分だけが休息のときを得ていると思えば、それも悪くない。
だが、今この瞬間もあの男はどこかで生きている。それが許せない。
そして、自分の知りえないところで死んでいく。それはもっと許せない。
焦り。焦燥。自分は何をしているのだと思えてくる。
ユリカを殺した奴をほったらかしにして、何を一人呑気に平穏なときを甘受している。
動け。探せ。見つけ出して殺せ。生きたまま心臓を抉り出し、火にかけろ。
突き上げてきた暗い情念が、囁きかける。それが出来ればなんと楽しいことだろう。
しかし、今、それに応じるわけにはいかない。
我ながら暗い、無粋な思考だ。だが、今やこの暗い感情は切っても切り離せないものとなっている。
怨みも、辛みも、三年前のあの日から片時も離れることなく身近に寄り添っている。
腹の底が静まるのをじっと待って再び見上げた遠方の空に、西から東へと矢のように疾空する二つの機体を見つけた。
笑みが漏れる。
臓腑の底で溜まりを為す暗い粘液のその又底の底で生じた一泡が、濁音を立てた気がした。その異常さに気づかぬまま。

「ユーゼス、敵だ」

 ◆

――存外、簡単に割れたものだったな。

メディウス・ロクスの身の内で一人AI1と向かい合う仮面の男は、そんな感想を抱いた。
右手に掲げ、僅かな明りに照らして眺めているのは、解析の為に預かった謎の薬。
その正体は、拍子抜けするほどあっけなく割れた。既に同種のデータを、AI1が得ていたが為である。
DG細胞――その呼称をユーゼスは知らない。だが、その性質は知っている。
他者に侵食し、取り込み、自己を再生させ、自己を増殖し、そして進化する非常に高度なナノマシン。
希釈されて能力を半減させられていたとは言え、そんなモノがこの薬には仕込まれていた。

――薬だと? これは劇薬だ。

性質を鑑みるに一時的な感覚器官の強化は、体内に散らばったこのナノマシンが、五感の補助を行なった結果だろう。
だが、効果は一時的なもの。
希釈された状態では、異物の混入に反応した体内の免疫システムに抗いきれない。
免疫システムに抗いながら活動できる限界時間が、恐らく30分の効用時間。その後は駆逐されてしまう。
だから自己保全の為、その時間を過ぎたナノマシンは次のプロセスに移る。成り代わりである。
元々の細胞を壊し、代わりに収まり、何食わぬ顔で機能を代行。そうやって、体の節々に潜伏する。
一度潜伏が完了してしまえば、宿主に異変を知る術はない。見かけの変化は何もないのだ。
この過程が、一時間の副作用。
あの苦しみは、感覚器官そのものを食いつぶされる苦しみ。
いや、感覚器官と言わず身体そのものが、あのナノマシンに取って代わられようとしているのかもしれない。

「ならば――」
266驕りと、憎しみと ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:22:10 ID:Hos3QVQ7
ならばこの仮定が正しいとして、体全てがナノマシンに取って代わられたら、どうなる?いや、体全てと言わず体内の免疫システムを凌駕する程の潜伏が完了すれば、最早潜伏の必要はない。
必要がなくなれば、この貪欲な性質上牙を剥くは必定。
残ったテンカワ・アキトの細胞は一つ残らず食い潰され、人を模ったナノマシンの塊が生まれる。

「フ、フフ……フハハハハハハハハハハハハッ!」

込み上げてくる愉悦に耐え切れず、哄笑が響き渡る。
悪くない。素晴らしい。理想的だ。
あの男は苗床だ。生きたナノマシンの苗床。それを手に入れた。
丁度サンプルが少ないと嘆いたところ。実に都合良く出来ている。

――では私は何をすればいい?

単純だ。ナノマシンの活動を促進してやればいい。
都合の良いことに薬の処方を既に約している。それに細工を施す。
あの首輪から採取した希釈されていないナノマシン。それを仕込む。作業も単純。
惜しむらくはサンプルの稀少さだが、後から元が取れると思えば錠剤一つ分ぐらいは目を瞑れる。

「ユーゼス、敵だ」

かけられた声にそこで一時思考を切り上げた。
モニターを光学カメラに切り替え、周囲を探る。なるほど。遠方の空に二つの機影が見えた。
だが、かなり遠い。接触コースでもない。
目視圏の端を掠めているだけであり、何もない空で動いているからこそ目視出来るレベルのものだ。
恐らく気づかれてはいないだろう。
映像を手ごろな大きさに拡大する。
濃紺の騎士のような大型機と白銀のシンプルな機体。共に隻腕で、戦闘痕がそこここに見て取れた。

「ふむ。何故敵と判断した?」
「大型機のほうと一度交戦した経験がある。左腕はそのときに潰したが、損傷が増えているようだな。
 その湖から拾い上げた機体を両断したのも、あの機体だ。白いほうは初めて見る」
「そうか……他には、いやそれよりも『見える』のか?」
「……辛うじてだが、それぐらいは今の俺でも見える」

――気づいてないのか?

この距離で見えるということは、バイザーの補正込みとはいえ最低限人並みの視力を確保しているということ。
バイザー抜きにすれば、やはり人並み以下の視力ではあるのだろう。
だがそれすらも危ういほど、この男の視力は低下していたはずだ。それが僅かとは言え回復傾向にあるということは――

――存外に潜伏期間は短いのかもしれんな。

それは追い風だ。
この男からナノマシンを採取できる時期が、そう遠くないことを示している。

「追うか?」
「そうだな……だがそれは私がやろう。君にはあれの飛んできた方角を調べて貰いたい」

あの弾丸のような速度と軌道を考慮すれば、明確な目的地が存在するのか。あるいは何かから逃げているのか。
目的地が存在するとすれば、それは周辺空域を回遊しているナデシコである可能性は高い。
ともかく、前も後ろも気になる。可能ならば全てを把握しておきたい。
どうせこの男には、自分が必要なのだ。むざむざ逃すこともない。合流の手順を簡潔に伝える。

「……ゲッター炉心は?」
「簡易ドック程度の設備が欲しい。ナデシコを捉えるまで待て」
「薬は?」
「今、処方している。注意点が一つ。効果の継続時間を少なからず伸ばしておいたが、それに比例して副作用の時間も伸びる見込みだ。
 実際にどれほど持続するかは、服用してみないことには何とも言えん」
「十分だ」
267驕りと、憎しみと ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:26:30 ID:Hos3QVQ7
これでいい。
元の薬を使い切るまで、こちらの手渡した薬を使わないことは十分に考えられる。その程度の警戒心はあって当然。
だからより強力であることを強調した。服用せざる得ない敵、状況というのは必ずどこかに存在する。
それに嘘は言ってない。一度に摂取する量が増える以上、免疫システムに抗える時間が増えるのは必然。
同時に量の増加は、潜伏に要する時間の増加も招く。
読みきれないのは神経にかける負担。量の増加がどれだけ五感を鋭敏にするのか、それは分からない。

「逸るな。ゼストもゲッターも万全ではない。無理はしないことだ。
 ナデシコもエリア内のどこを回遊しているか分からないことだし、無用な警戒を抱かせることはない」

やや間があって反抗的な視線と共に「了解」との返事。どうせ数を減らすことばかり考えていたのであろう。

「一つ聞きたい。この薬を二錠同時に、あるいは効果が切れる直前にもう一錠服用すれば、どうなる?」
「それは現時点では何とも言えない。効果時間の継続が狙えないとも限らないが、お勧めは出来ないな」
「……分かった。貴様が処方したという薬をよこせ」

処方を終え、視線を再度遠ざかる二機に。十二分の距離を置けたことを確認。薬を手渡して尾行を開始する。
次の駒。新たなる未知の技術。それらに対する期待を胸に、仮面の男は再び動き始めた。



【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭(回復傾向)、疲労状態
 機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)
 現在位置:G-1
 第一行動方針:現在地(G-1)より西を探索
 第二行動方針:ナデシコの捜索とユーゼスとの合流
 第三行動方針:ガウルンの首を取る
 第四行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を3錠所持 (内1錠はユーゼス処方)
 備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可
 備考4:ゲッタートマホークを所持】

【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(+ラーゼフォン)
 パイロット状態:若干の疲れ
 機体状態:全身の装甲に損傷(小)、両腕・両脚部欠落、EN残量80%、自己再生中
 機体状態2:右腰から首の付け根にかけて欠落 断面にメディウス・ロクスのコクピットが接続 胴体ほぼ全面の装甲損傷 EN残量40%
 現在位置:G-1
 第一行動方針:東進する二機(統夜・テニア)の追跡
 第二行動方針:ナデシコの捜索、アキトと合流、AI1のデータ解析を基に首輪を解除
 第三行動方針:他参加者の機体からエネルギーを回収する
 第四行動方針:サイバスターとの接触
 第五行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 第六行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持
 備考4:謎の薬(希釈されたDG細胞)を一錠所持
 備考5:AI1を通してラーゼフォンを操縦しているため、光の剣・弓・盾・音障壁などあらゆる武装が使用不可能
 備考6:ユーゼスに奏者の資格はないため真理の目は開かず、ボイスの使用は不可
 備考7:ラーゼフォンのパーツ部分は自己修復不可】

【二日目 14:15】
268かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:31:04 ID:Hos3QVQ7
太陽が中天を過ぎ、西に傾き始めて早くも二時間。
まだ高いその陽の光に晒された二つの機体が、対峙を続けていた。
廃墟の街並みを眼下に、逼迫した面持ちで佇む大型機。朽ちて欠けたビルを足場に、ゆったりと構える小型機。
数瞬前までは、忙しく間合いの取り合いを演じていた二機だが、今は共に動きがない。
動けない者と、動かない者。両者の間を風が薙いで行った。

「本妻が他の男と駆け落ち。追いかけたいところだが、浮気相手も他の男に取られやしないかと気になって、追うにも追えず。
 クク……いけねぇなぁ。いけねぇよなぁ。二股はよくない。
 選びな。どっちを取って、どっちを捨てるか。どっちつかずの態度は、失礼ってもんだぜ」

問いかける者と、答えを探す者。
実に愉しげに人の心を掻き乱してくるこの男――ガウルンを前に、シャギアの動きは完全に止まっていた。
オルバの死を知った直後、シャギアは一人閉じこもり悩んだ。
見つからない答えを棚上げにして、あの蒼い機体に乗るパイロットとフェステニア・ミューズを殺すことを決めた。
暗い怨嗟の念を軸に自らを奮い立たせることで、どうにか動くことができた。
それが今の自分の原動力。そこに変わりはない。
では何故動けない? 追えばいい。ナデシコとは、袂を別つと決めたはずだ。

「どうした? 選べねぇか? だったら仕方ないねぇ。俺が――」

瞬動――足場にしていた瓦礫のビルが一拍遅れて崩れ落ちる。
迅い、が思考の渦中であろうと警戒は怠っていない。どんな速度でも対応仕切れる。
しかし、軌道が違う。距離を詰め、自身の有利なレンジに運ぼうと言うのではなく、奴は――

「手伝ってやるよっ!!」
「しまった!!」

――距離を広げた。向かってくるのではなく。逃げ出すのでもなく。奴はただ真っ直ぐにナデシコへと疾走する。
だが、今、この場の距離は奴の距離ではない。離れて行く奴とのこの距離は、ヴァイクランの支配する距離。
照準を敵機の背に演算を開始。ゲマトリア修正。ダークマターの精製を完了。
赤黒い豪火球が、胸の前に灯る。
後は引き金を引くのみ。さすれば暗黒物質の火球は解き放たれ、数価変換によって生じた特殊空間が奴を襲う。
だがしかし、照準に捉えた奴の背のその先に、ナデシコが見える。
撃つのか? かわされたら? 当らなかったら? どうなる? どんな事態を巻き起こす?

――直進するベリア・レディファーが、ナデシコを襲う。

指先が震えた。汗が滲み出る。
当れば何も問題はない。では当てられるのか? 奴は言った「手伝ってやる」と。
ここでこの引き金を引かせることこそが、奴の狙いではないのか。
だったらどうする? 奴を止めねば、奴はナデシコを襲う――撃つしかない。
目を細め、穴が空くほど見据え、標的を凝視する。口中に渇きを覚え、唾を飲み込む。

――撃て。撃つのだ、シャギア・フロスト。外れはしない。絶対、絶対にだ。

呼吸音が、やけに大きく耳に届く。
狙い済まされた照準が敵機の動きを完璧に追跡し、レティクルの中央から逃すことはない。
撃てば当る――本当にそうか?
思い出してもみろ、シャギア・フロスト。
お前がナデシコの中で放った一撃。あれも撃てば当るはずではなかったのか?
フェステニア・ミューズを焼き尽くすはずの一撃。あの外しようもない一撃で、お前は何を仕出かした?
宇都宮比瑪をこの世から掻き消したのではないか。絶対に当てられるなどとは、よくも言ったものだ。
胃がキリキリと痛みを上げる。噛み締めた奥歯が、音を立てた。
自信は揺らぎ、疑問は膨らむ。しかし、撃たねば奴を止められない。そして――

「くそおおぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!」
269かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:35:20 ID:Hos3QVQ7
――火球は霧散した。同時にシャギアの意を受け取り、二機のガン・スレイヴが両肩から飛び出していく。
膝に滴り落ちる汗を眺め、肩で吐く荒い息が整うのを待つ。そして、震える指先を発射管から引き剥がした。
撃てなかった。
痛烈な後悔の念を噛み締めながら、ヴァイクランを前へ。
相手は、間接的とは言え、オルバの死を招いた怨敵。テニア程ではないとは言え、許されざる存在。
いや、軽重の問題ではない。
撃つべきだったのだ。オルバの無念を思えば、撃たねばならなかったのだ。
なのに――撃てなかった。

 ◇

針のように細く鋭い牡丹色の閃光が、足元に撃ち込まれた。アスファルトの足場が一瞬で融解し、穴か空く。
一射。二射。三射。縦に、横に、と避けた端から撃ち込まれてくる砲撃に辟易して、路地裏に飛び込んだ。
ジグザグに廃墟の路地裏を駆け抜けるも、意に介さず。蝙蝠のように変幻自在に飛翔する移動砲台は、俊敏に追跡してくる。

「やれやれ、撃ってもらいたかったのはこれじゃないんだがねぇ」

先の戦闘で把握した武装と接近戦の嫌い様、あの機体は恐らく中・遠距離を得意としている。
とすればあの堅牢さと巨体だ。戦車に砲塔が付いてないという間の抜けた話はないだろう。
高火力の武装の一つや二つあったとて、何ら不思議はない。
それを撃たせたかった。
その為にあえて敵が得意と思われるレンジに、身を晒した。ただし、射線はあの戦艦に重ねてだ。
何故か――極めて単純で、簡単で、明確な理由。
庇い続けている戦艦を自身の手で傷つけることになれば、どんな面を拝ませてくれるのか。
奴は、矛盾を孕んでいる。見つけた頃のアキトと同じだ。
一貫性がたりない。人間の弱さを捨てきれずにいる。弱い奴にたかられ、ぬるま湯につかって迷っている者。
そんな奴を鎖から解き放ってやるには、どうすればいい?
簡単さ。殺せばいい。奴を堕落させている者をな。それも出来れば奴自身の手で。
守りたい者が一人もいなくなったとき、奴がどうなるのか――思い浮かべただけで頬が吊り上がり、首筋がゾクゾクしてくる。
身悶えする程、楽しみだ。
ただそれだけの理由が、ガウルンに命を賭けさせた。命を惜しんで後悔を残すなど、馬鹿のすることだ。
恐らく当れば致命傷となりかねない一撃。だが、避けられるだけの自負はある。そして、かわせば――

「ま、そうそう思い通りにはいかねぇってことか」

少々精神的に追い詰めたぐらいでは、冷静さを失わなかったということか。あるいはただの腰抜けか。
残念だとは思うが、過ぎたことはもういい。奴が守りたがっている戦艦を落すのは、別に自身でも構わない。
しかし――視線を周囲に奔らせる――流石にこの移動砲台の火線を潜り抜けて、一直線に戦艦へ向かうことは難しい。
その数は四。火力はさして高くないものの、小回りに優れ、即射性も高い。
そして何よりも、一対一をそうでなくし、思いがけない角度から射撃を加えてくる兵器。

――全くどこのどいつがこんな面白そうなオモチャを考え付いたのやら。

右拳を握り、開いて、また握り締めて、感触を確かめる。そこは欠損部分を除けば、一際損傷の激しかった部分。
だが負わされて既に、六時間以上が経過している。
全身の弾痕に、装甲に蓄積されたダメージ、頭部と胸部の破損。そして、右腕。損傷の修復は、ほぼ完了した。
残されているのは欠損部分。流石に復元は容易ではないらしい。
左腕は愚か、18時間も前に欠落したマントの復元さえ、遅々として進まない。
全くの不可能ではないが、欠損部分を補うにはまだまだ時間が必要、ということだろう。

「さてと、お行儀良く控えめに過ごしてきた分、鬱屈が堪ってんだ。クク……思いっきり暴れさせて貰うとするか」
270かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:41:15 ID:Hos3QVQ7
言うな否や、四基の移動砲台を置き去りに大きく跳ねて上空に躍り出る。
視界に四基全てを納め、位置を把握。同時に本体の確認も怠らない。
下方四箇所から撃ち出される四条の閃光。
姿勢制御用のヴァーニアを噴かして皮一枚でかわす。
そのまま火線を避けつつビルの頂上に着地。同時に蹴った。
瞬動――足場にしていた瓦礫のビルが一拍遅れて崩れ落ちる。
ビルの谷間へ滑り込む。
風を切る音。急速に接近する地面。
大地に足を。
轟音を立てて踏み込み、一拍後には前へ。
背後で吹き上がる土煙。巻き上げられるビル、車。
両側に迫るビルの壁面。その先に一基目の移動砲台――見つけた。
軽く唇に舌を這わせて、笑う。
細く鋭い牡丹色の閃光が連続して、一、二、六条。
構うことはない。
エンジンが爆発的に吹き上がり、すり抜ける。
どんどん加速する。
勢いを殺さずに拳を――振るう。
舞い散る破片。
まず一基目。
視界の隅に閃光。十字路の右と、空。
体ごとぶつけるようにビルの中へ。
飛び込む。
そして転がり、突き抜けて反対側の大通りへ。
轟音と共に降り注ぐガラスと瓦礫の雨。
視線の先には二基目の背中。
反応。方向転換。だが――

「遅いねぇ」

ダークネスショット、紫電一閃。爆発。
これで二基。
足は止めず。跳び下がる。
足元に着弾。
一、二、三、四、徐々に間が詰まる。
眼前の廃墟を盾に。互いの死角へ。
廃墟を抜ける。待ち構える三基目。
火線が閃き、遂に被弾。

「チッ!!」

舌打ち一つ。
大地を蹴り、ビルを蹴り、軌道を変化。
二基を眼下に置き去りに、空へ。配置を再確認。
不意に射す黒い影。見上げればそれは――

「私の勝ちのようだな! オルバの仇、取らせてもらう!!」

――撃ち出された暗黒物質の塊。天から地へ。

「ハッ!! やってみな!!」

思わず笑みが漏れる。そして着弾の瞬間、空間が歪みを起こした。
空が、雲が、大気が、光が、闇が円を描いて曲がる。今ある空間を引き千切る様にして、新たな空間が創出される。
偏平な球を為すその小さな空間は、空間の中に生じた空間。不安定なこの空間よりも遥かに不安定な空間。
その寿命は、涅槃寂静にも満たないほど短く儚いもの。生まれたときから既に崩壊は、始まっている。
そんな存在が極近距離に二つ。
それぞれがそれぞれに己を安定させようと、引力に似た力を用いて挟まれた空間を奪い合い、喰らい合い、引き千切る。
やがて互いの引力の干渉を受けて不安定な空間二つは合わさり、磁気嵐を巻き起こしながら爆ぜるように消滅していった。
271かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:45:08 ID:Hos3QVQ7
 ◇

――何が起こった。

べディア・レディファーによって生じた一連の事象は、人の知覚が及ばぬ微少な時間での出来事。
原理を知らぬシャギアに理解する術はなかった。
ただ分かっているのは、大火力の兵器によって爆発が起こったことと副産物として磁気嵐が生じていること。
その程度である。そして、この状況はまずい。
磁気の影響でレーダーが使い物にならない。ガン・スレイヴの動きにも影響が出ているのかやや鈍い。
その状況下で奴に廃墟に潜られたことが、何にも増してまずい。
爆発の中心地。たった今、自分で吹き飛ばしたそこに降り立ち、注意深く周囲を観察する。
ここから何所へ逃げたのか。
爆心地こそ何も残ってはいないものの、すり鉢状に抉られたその縁には、変わらず瓦礫の街並みが広がっている。
距離はほぼ等間隔。近いも遠いもない。痕跡すら何もない。

「オルバよ……不甲斐ない兄だな、私は」

閑散とした光景の中、シャギアは思う。
死んだオルバの為に万分一でも出来ることがあれば、してやりたい。それが、仇を討つということだった。
けれども現実の自分はどうだ?
仇を追う事も出来ず、片棒を担いだ男には逃げられ、あまつさえ比瑪を――

「ハッ……ハハハハハハハハハハハハハハ」

ナデシコを同列に並べようとしている。渇いた笑い声だった。
平気な振りを演じ続けてみても、少し余裕ができればこの有様だ。
基準が、軸が二つある。それが心を惑わせ、掻き乱している。
それまで自分という存在を作り上げていた軸がぶれ、シャギア・フロストという個が酷く曖昧で不安定なものになっている気がした。
自分が壊れていく。自分が変わっていく。自分が分からなくなる。それでも今やらねばならないことはわかっていた。
不意に、僅かな音すら立てずに紫電の閃光が背後の街並みから放たれる。
それを念動フィールドで掻き消すと同時に、残った二機のガン・スレイヴを解き放つ。

「……もう逃がさん」

今逃せば、ナデシコが危うくなる。電磁波の影響が収まらない限り、目視以外での捕捉は不可能。
廃墟に紛れての接近を許すわけにはいかない。
ガン・スレイヴの後を追うように追撃に移ろうとしたその瞬間、別方向から迫る黒い体躯が視界を掠めた。

「バーカ、こっちだよぉッ!!」

射撃は囮。向き直る間に、間合いは詰まる。ガン・スレイヴを呼び戻す。
しかし、間に合わない。蹴り倒され、そして、駆け抜けた黒い体躯が再び廃墟に紛れて消える。

――好都合だ。

そう思った。これでナデシコに被害が及ぶことはない。
そして、ここでこの男を逃がせば、次いつめぐり合えるか分からない。
オルバの死に間接的とはいえ関わったこの男を倒すのならば、それは今を置いて他にはない。
二つの基準に、軸に、矛盾しない結論。行為。
ならば後は頭を冷静に、乱れた心は捨てろ。あの男がゲリラ的に攻めてくるのであれば、迎え撃つだけ。
考える時間は終わった。一撃離脱を計る相手の先手を取る。
オルバのことも、ナデシコのことも、今このときだけは忘却の彼方に。目先に集中し、神経を尖らせ、没頭していく。
ベディア・レディファーによって出来た小さなクレーターのその中心で、シャギアはただ先手をとることのみを考えていた。
272かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:50:13 ID:Hos3QVQ7
 ◆

位置的な関係と、戦艦であるがゆえの高性能。ベディア・レディファーの巻き起こした磁気嵐の影響もナデシコには少なかった。
そのレーダーに灯りが灯る。暗緑色の画面に映し出されたのは新たな光点。
そこに添えられている文字は、未確認であることを示すUNKNOWN。

「またかよ!!」
『どうなってやがる』

先に一瞬だけ捕捉した二機とは別の反応。別の方角。
東から何かが高速で迫って来る。テニアではない。テニアと逃げたあの機体でもない。
どうして殺し合いなんてくだらねぇことに、こうまで人が集まりやがる。
こんなくだらねぇこと、どうにかならねぇのか。心底そう思う。
どうにかしたい、この状況を。止めたい、この争いを。そう――俺の歌で。
そんな想いで格納庫を見渡したとき、一つ目に付くものがあった。
それは、愛機ファイアーヴァルキリーと同じ真紅の色をした戦闘機――真・イーグル号。
大きさは大分違う。だが、それが呼んでいる気がした。理屈ではなく胸が熱い。胸が高鳴る。
誘われるようにそこへ。
手を触れる。冷たい金属のさわり心地。
だがその奥底で、何か熱い魂が脈動しているような気がした。それをバサラはこう解釈する。

『お前も俺と歌いたいんだな。へへ……一緒に行くか』

だが、スピーカーから発せられる自身の声に、気づく。
今のこの声は借り物の声。IFSからナデシコのシステムを通じて再生されているもの。
それは取りも直さずIFSの受信が可能なナデシコの中でしか、声が再生されないことを意味している。
乗ればあの戦場に出られる。だが、歌は届かない。声は響かない。それでは意味がない。
悔しさを滲ませて、拳を握り締める。

『やっぱ駄目だ。今はまだお前と飛べねぇ』

呟き、その瞬間に閃いた。
ナデシコから出れば、声は出ない。ナデシコの中ならば、声は出る。
ならナデシコの中で歌えばいい。
ナデシコの中で歌い、IFSとナデシコの通信機能をフルに発揮して流す。
可能かどうかは分からない。でもこのまま指を咥えて見ているのよりもずっといい。
そう思えば居ても立ってもいられずに、バサラはナデシコの格納庫を飛び出し、一人ブリッジへと駆け出した。

『待ってろよ。今、俺の歌を聴かせてやるぜッ!!』

 ◇

そのままではナデシコに収まらない真ゲッターは、三機のゲットマシンに分けられて格納庫に収まっていた。
その内の一機――ベアー号の脇をすり抜けて、ガロードはパイルダーに飛び乗った。
新たにナデシコのレーダーに引っ掛ったUNKNOWN。その動きが早い。
真っ直ぐ。迷いなく接近してくるその軌道は、もしかするとナデシコを捉えている可能性が高かった。
最低でも臨戦態勢を整えておく必要がある。
パイルダーを発進。マジンガーの頭部に収まり、マジンガーを起動。
こちらのレーダーにまだ反応はない。
そう思った瞬間、灯りが灯る。
暗緑色の画面に映し出された光点は、真っ直ぐにシャギアの戦場へと向かっていた。

「どうなってんだよ!!」

だが、肝心のシャギアに通信が繋がらない。
レーダー上でもシャギアのいる付近は霞がかかったように捉えられない。

――どうする?
273かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 08:55:43 ID:Hos3QVQ7
東から一機が接近中。これは真っ直ぐにシャギアの戦場に向かっている。
接触まで時間もそうない。
そして、別方向から更に二機。こちらは一瞬だけナデシコのレーダーが感知した。
距離はまだ遠く。動きも不明。
両者共に敵味方は不明。出方がまるで読めない。
その状況下でどうすべきか。前者を警戒するならば、シャギアの加勢に出るべきだろう。
だが、後者を気にするのならば、ナデシコ周辺で警戒態勢に当るべきだ。
判断材料が少なすぎる。どちらも正しいようで、どちらも間違っているような気がする。
悩み迷った挙句、こういうときは直感に身を任せるのがベストだと結論付ける。そして、その選択は――

 ◆

呼吸の音が、やけに大きく聞こえていた。心臓の鼓動も耳のすぐ傍で聞こえる。
視線が常に周囲を覗っていたが、実のところ何も見ていないのと同じだった。
足元からすり鉢状に広がる抉れた大地も、その縁に聳え立つ廃墟も、空も、雲も、太陽も見てはない。
いや、視覚だけでなく、聴覚も同じことだ。
不要なモノは全て排除すれば、最後に残るのは唯二つ――自分と相手、ただそれだけである。
漆黒の体躯を持った人型兵器、それだけを五感の内に。
演算も、ゲマトリアの修正も終わり、ダークマターの精製は完了している。
後は、胸の前に灯るこの赤黒い豪火球を最高のタイミングでぶつけるだけ。時を待つ。
既に四度ぶつかり、一撃離脱していく奴を捉える事が出来なかった。
針の先程に尖らした神経の先。耳に届く呼吸音は自分のものか、それとも奴のものなのか。
それが息を継ぐ。一、二、三、そして気息を整え、今!
カルケリア・パルス・ティルゲムと呼ばれる念動力感知増幅装置によって、研ぎ澄まされた神経がガウルンを捉えた。
場は左後方。鋭敏過ぎるほど鋭敏な反応に対して、僅かに遅れる機体の動きがもどかしい。

――何故だ! 何故、こんなにもこの機体は遅い。とろい!!

旋回が間に合わない。射角を確保する。ただそれだけの動きが、追いつかない。
見えている。動きも読めている。外す事などありえない。
それでも、ただ機体の動きが追いつかない。ガン・スレイヴでさえも間に合わない。
研ぎ澄まされた意識の中で、ガウルンの駆る黒い機体の右腕に紫電の光が灯る。ゆっくりと時間は流れる。

「ひゃぁぁぁっはぁぁぁ!! ダァァアクネスッ!!」

意思に反して鈍行を辿る機体は、まだ射角を確保できない。既に眼前にまで迫った腕が伸びる。
そして、知覚の外から何かが突然撃ち込まれた。
ヴァイクランとマスターガンダムの間で爆発が起こる。その衝撃に迫るガウルンの勢いは削がれ、時間が埋まった。
照準は、黒い体躯のど真ん中。ベディア・レディファーが、今放たれる。
高速で撃ち出された火球が、阻むもの全てを呑み込み直進する。
一撃で片を付けるべく最大火力で撃ち出されたそれは、クレーター縁を抉り、瓦礫のビルを意にも介さず真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐに突き進む。
そして、その終着で二つの亜空間を作り出し、消滅した。
おびただしい光量の白い閃光と、黒い閃光が入り混じり、爆ぜ、その衝撃に雲が吹き飛ぶ。
青い空の下、廃墟の街並みは瓦礫の街並みへと変貌を遂げ、その爪跡を立ち込める粉塵が僅かばかり覆い隠していた。

「ククク……まいったね。こうも思い通りにことが運ぶとは」

一人男の悦に入った声が響く。
割り込みの一撃はシャギアに時間を与えると同時に、ガウルンにも回避の時間を与えていた。
渾身の一撃は、かわされた。
だが、そんなことはどうでもいい。そんなことよりも今、シャギアの胸の内を占めているのは――

「どうした? もっと良く見てみろよ。立派な戦果だぜ。お前の手柄だ」
274かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 09:00:08 ID:Hos3QVQ7
ベディア・レディファーの一撃によって、視界を遮る廃墟が吹き飛ばされた。その開けた視界の先で、ナデシコが黒煙を上げている。
状況が理解できなかった。五秒。十秒、呆けたままの時間が過ぎる。
直進した最大出力のベディア・レディファーが、ナデシコを襲った。その程度のことを理解するのに、数分を要した。
理解して、また頭が真っ白になる。
虚脱した顔を見て、男が噴出した。
その笑い声は間もなく高笑いに変わる。どこまでも、どこまでも楽しそうな笑い声。

「そうだ。その顔さ。そいつを拝みたくて、いやぁ苦労したぜ。さて、お迎えだ。精々頑張りな
 何やら面白くなりそうな気配なんでな。俺はまた潜ませてもらうぜ」

そういい残して、その男は再び瓦礫の海に紛れていく。何をするでもなくただ呆然と見送った。
一拍置いて男の言葉に疑問を抱く。既に言葉の意味を、表層的にも捉えられなくなってきている。

――お迎え?

「シャギアアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!!!」

ガロードの叫び声。
ああ、お前か。お前が割り込みの一撃を放った者の正体か。
視線を落とす。とても顔など合わせられない。
そんな声で私を呼ぶな。私はもう、お前に名を呼んでもらうに値しない男だ。
口元が引き攣り、正体なく笑う。
私は本当に何なのだろうな。やることなすこと全てが裏目に出て。
いっそ私などという存在は、この世に存在しないほうがマシなのかもしれない。
マジンガーの足が、俯く視界の先に映る。空気を裂く鋭い音と黒い旋風が、目の端を掠める。
それが何かと思考する気力は、なかった。
ただ思ったのは、ガロードは怒っているのだろうな、ということ。比瑪も、甲児もだ。
もういい。終わりにしてくれ。お前に引導を渡されるのなら、それも悪くない。
マジンガーの足が動く。揺れ、重音を残して崩れる。そして、力なく倒れたその体には、首がない。

「なっ!!」

驚き、顔を上げたその先には、黒い一匹の悪鬼。
大鎌を左肩に担ぎ、だらんとぶら下げた右腕に掴んでいるは、マジンガーの生首。
瞬間、絶叫が辺りに響き渡った。

 ◇

その手に掴んだ生首を、腹立たしげに投げ捨てる。
音を立てて二三度弾んだそれは、転がってどこかに消えて行った。
邪魔をされた。
この戦場に駆けつけたアキトが最初に目にした光景は、何かを撃ち出す大型機とそれをかわすガウルンの姿であった。
だが次の瞬間、巻き起こった爆発とその膨大な光量に目が眩み、見失う。
気づけば、戦場に既にガウルンの姿はなく、残されていたのは沈み行くナデシコとその一撃を放った元凶のみ。
理性が飛んだのが、自分でもわかった。
理由は二つ。ナデシコに危害を加えられたことと、自分の獲物に手を出されたこと。
薬を飲み。大鎌を構えて、一陣の旋風のように飛び込んだ。
そこに割って入られた。
男の名を叫びながら割って入ったそれは、身を挺して大型機を庇った。
その結果が、あの生首である。それはもういい。気も今は少し落ち着いた。
これ以上邪魔をしないのであれば、目の前の大型機に何の興味もない。
それよりも自分には優先すべきことがある。何よりも優先すべきことがある。
レーダーを睨む。反応が悪い。
苛立ち。そして男は、声に臓腑の底でじっくりと熟成された憎悪を塗りこめ、咆哮した。
275それも名無しだ:2009/03/09(月) 09:02:10 ID:Xg/1H2FY
276それも名無しだ:2009/03/09(月) 09:02:50 ID:Xg/1H2FY
277それも名無しだ:2009/03/09(月) 09:03:23 ID:Xg/1H2FY
278それも名無しだ:2009/03/09(月) 09:04:00 ID:Xg/1H2FY
279かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 09:04:32 ID:Hos3QVQ7
 ◇

ナデシコが徐々に高度を下げている。推進機能の一部が破損しバランスを崩したのか、傾き始めていた。
その右舷には、ベディア・レディファーの一撃を受けて大穴がぽっかりと空いている。
そこに、身を硬直させている者が一人いた。肩までの赤い髪を風に棚引かせて、その女性は呟く。

「……ガロード?」

ぽつりと漏らしたその声に、実感はない。揺れに目を覚ました直後、夢と現実の境目すらまだはっきりしていない。
ただ視界の遥か先に見えた光景――マジンガーの首を掴んだ黒いゲッターを見て、そう思っただけだった。



【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:憎悪 戸惑い
 機体状態:EN20%、各部に損傷、ガン・スレイヴ残り二基
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:ガロード
 第二行動方針:ガウルン、テニアの殺害
 第三行動方針:首輪の解析を試みる
 第四行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
 第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:???
 備考1:首輪を所持】

【ガロード・ラン 搭乗機体:マジンガーZ(マジンガーZ)
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状況:頭部切断(パイルダーは無事)
 現在位置:F-1
 第一行動方針:戦況を確認し、とにかく動く
 第二行動方針:勇、及びその手がかりの捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】

【熱気バサラ 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状況:神経圧迫により発声に多大の影響あり。
      ナデシコの機能でナデシコ内でのみ会話可能。
 機体状態:下部に大きく裂傷が出来ていますが、機能に問題はありません。
      右舷に破損大(装甲に大穴)、推進部異常、EN100%、ミサイル90%消耗
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:俺の歌を聴けぇ!!
 最終行動方針:自分の歌で殺し合いをやめさせる
 備考1:自分の声が出なくなったことに気付きました
 備考2:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガス、マジンガーZを収容
 備考3:ナデシコ甲板に旧ザク、真ゲッターを係留中】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:健康
 機体状態: ダメージ蓄積(小)、胸に裂傷(小)、ジャガー号のコックピット破損(中)※共に再生中
 現在位置:F-1市街地(ナデシコ内部)
 第一行動方針:勇の捜索と撃破
 第二行動方針:勇がここ(会場内)にいないのならガロードと協力して脱出を目指す
 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】
280それも名無しだ:2009/03/09(月) 09:05:07 ID:Xg/1H2FY
281かくして漢は叫び、咆哮す ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 09:05:15 ID:Hos3QVQ7
【ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている。現在起動中
 現在位置:F-1(ナデシコ格納庫内)】

【旧ザク(機動戦士ガンダム)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好
 現在位置:F-1(ナデシコ甲板) 】

【プロトガーランド(メガゾーン23)
 機体状況:MS形態
      落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
 現在位置:F-1(ナデシコ格納庫内)】

【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:疲労中、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
 機体状況:左腕消失、マント消失、自動修復中
      DG細胞感染、ヒートアックスを装備 、EN60%
 現在位置:F-1 市街地
 第一行動方針:存分に楽しむ。
 第二行動方針:統夜&テニアの今からに興味深々。テンションあがってきた。
 第三行動方針:アキト、ブンドルを殺す
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】

【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭(回復傾向)、疲労状態
 機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:ガウルンの首を取る
 第二行動方針:ナデシコの捜索とユーゼスとの合流
 第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を2錠所持 (内1錠はユーゼス処方)
 備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可
 備考4:ゲッタートマホークを所持
 備考5:謎の薬を一錠使用。残り28分】

【二日目14:40】
282それも名無しだ:2009/03/09(月) 09:05:37 ID:Xg/1H2FY
283それも名無しだ:2009/03/09(月) 09:06:45 ID:Xg/1H2FY
284それも名無しだ:2009/03/09(月) 09:08:31 ID:Xg/1H2FY
285 ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/09(月) 09:10:16 ID:Hos3QVQ7
投下終了です。支援ありがとうございました。
朝だし、のんびりマイペースに投下してたら、突然支援が来て驚いた。
ベリア・レディファーを動画やら何やら参考にしつつ真面目に描写してたらトンでも兵器になってしまったのですが、これ大丈夫でしょうか?
ご感想とご指摘、よろしくお願いします。
286それも名無しだ:2009/03/09(月) 12:31:04 ID:/G6mCvPE
投下乙!
ガウルンが最高にハイってやつになってるwついにアキトと交戦か…
そして姉さんもようやく目覚めて、でもこれガロードがやられたんじゃ暴走必至だw
ベリア・レディファーは動画見ても何やってるかよくワカランものであるし、非常にうまく描写されてると思います。

で指摘というより質問なんですが、ユーゼスの持ってる薬はアキトから渡されたもので、アキトに渡したものは新たに作ったもの=量産可能なものってことですよね?
287それも名無しだ:2009/03/09(月) 12:49:59 ID:3eZ5vceR
投下GJ!
おおおおお、すげえ盛り上がってきた!
ガウルンvsアキトがついに実現しそうだなぁ……感慨深いぜ
何気にアキトに凄い死亡フラグが立った件についてw
288 ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/10(火) 00:44:59 ID:51qPFdkx
ご感想・ご指摘、ありがとうございました。
薬の所持の内訳ですが、以下のようになっています。

・アキト   アルフィミィから渡された薬1錠+ユーゼスの処方した新しい薬1錠
・ユーゼス アルフィミィから渡された薬1錠

また量産そのものは可能ですが、DG細胞のサンプルが少ない以上、量産可能な数量に限度があります。
その辺りの描写を加え、またゲッタートマホークとゲッターサイトを間違えていたりと修正したい箇所が複数ありますので、後ほど修正版を投下させていただこうと思います。
289それも名無しだ:2009/03/11(水) 00:44:51 ID:V3mXJOPE
290それも名無しだ:2009/03/12(木) 12:20:05 ID:ozDBIRtz
んー・・・予約していいのは修正版来てからかな?
291 ◆7vhi1CrLM6 :2009/03/12(木) 13:11:29 ID:r6ShDHKV
すみません。大変遅くなりましたが、修正版を避難所の方に投下させていただきました。
大幅修正を予定していたのですが、思っていたように時間が取れずにほぼ指摘いただいた箇所の修正のみとなっています。
予約待ちの方等、本当にお待たせして申し訳ありませんでした。

加えて予告していた携帯まとめの停止ですが。
18日付けで一時更新停止とさせていただき、更新再開は、6・7月を見込んでいます。
ご迷惑お掛けしますが、何卒よろしくお願いいたします。
292 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/12(木) 22:13:09 ID:1W7cbRRJ
>>291
まとめの管理いつもご苦労様です。>>290で催促したようで申し訳ございません・・・。

来週にはスパロボK発売ですね。新規作品の中でもゾイドとファフナーが気になります・・・DS持ってないから買えないんですけどね。
あ、「全員」予約します。
293それも名無しだ:2009/03/12(木) 23:40:24 ID:iX9qqqzL
>>292
何をする気だアンター!?(ガビーン
…これはwktkせざるをえない
294それも名無しだ:2009/03/13(金) 02:05:31 ID:+ZGt811N
>「全員」
なん……だと……?
これは前倒しに会談か!?
295それも名無しだ:2009/03/13(金) 11:53:39 ID:1Xn7s7oU
まて、ガウルンやユーゼスやアインスケやミィが会談するとは思えん…。
296それも名無しだ:2009/03/13(金) 12:06:56 ID:Jg5DxkpM
交渉人「よし。これで我々の要望は全て揃った。ちょっと>>295の面子と交渉してくる」
           ↓(五分後)
交渉人「私の忍耐にも限度がある。騎士凰牙ショータイム!!」(一人目)
           ↓(五分後)
交渉人「私の忍耐にも限度がある。騎士凰牙ショータイム!!」(ニ人目)
           ↓
          中略
           ↓
交渉人「誰一人として交渉に値する者ではなかった」

ミィとの接触がハードル高いけどこれで解決
297それも名無しだ:2009/03/13(金) 14:58:27 ID:+ZGt811N
そういやアインスケ今寝てなかったっけ?
腹が減らないように寝るとかそんな感じだった気が……
298それも名無しだ:2009/03/13(金) 18:35:02 ID:ZOgTHNaW
えー、今回も前回の投下並びに◆7vhi1CrLM6氏のように何話かに分割することになりそうです。
とりあえず、最初のパートを投下します。
299それも名無しだ:2009/03/13(金) 18:36:08 ID:ZOgTHNaW
ユーゼス・ゴッツォは合理的な人物である。
信じるものは数字、実績、記録といった目に見えて確かなものだけ。
愛や友情、気合や根性といった精神的な言葉がもたらすこのなど何一つないと考えている。

その男からすれば、今目前で繰り広げられている茶番はまったく持って不可解、不条理、不愉快なものだった。

(理解できん……やつらは状況が分かっているのか? 殺し合いの真っただ中で、人目も憚らず無防備に抱き合うなどと)

飛び去る二機を発見しアキトと別れて以降、彼らの追跡を続けたユーゼス。
起伏に富んだ草原の一角にラーゼフォンの巨体を隠し、彼が見ているのは一組の恋人たち。
何を思ったか機体を降りて悠長に睦言を交わしているようだった。
ユーゼスとしては現状の戦闘力が些か盤石でないこともあり、接触は慎重に慎重を重ねた上で行うつもりだった。
しかし、この様子では――

青い騎士のような機体と、20m前後の白い機体。ともに少年と少女からは均等に20m程の位置だ。

ふわり、とラーゼフォンが舞う。遮るもののない草原でこの巨体を晒せばすぐに発見されるだろう。
拡大したモニターの中で少年がこちらに気付く。だが抱き合ったその体勢から瞬時に反応できるはずもなく。
滑空の勢いのまま、ラーゼフォンを青い騎士へと激突させる。
ラーゼフォンより一回り小さいその機体は軽々と吹き飛んだ。土埃を上げて停止したその距離は実に100mは空いた。
ユーゼスはその様子に目もくれず、白い機体へとラーゼフォンを旋回させた。
自身の半分ほどのその機体を抱え上げ――介入から僅か数秒で無力化に成功した。

通信回線をオープンに。眼下で愕然としている少年少女に向ける言葉を探す。と、

「その機体、あ、あんたは……生きてたのか!? 生きてて――くれたのか!」

少年が体を震わせながら叫んできた。傍らの少女は彼の腕に縋りついている。
生きていてくれた――その言葉の対象はラーゼフォンに乗っていたあの遺体のことだろう。
アキトはこの少年が下手人だと言っていた。なら、自分が殺した相手のことを心配していた、ということになる。
少年の狼狽する様子。
どうせ確たる覚悟もないまま殺人へと及び、その罪を認めたくないから生きていてくれて嬉しい、というところか。
少年の良心を満足させるため芝居を打ってやるか――だが、あの遺体は骨格からして女性だった。
自分の野太い声ではさすがに気付かれるだろう。嘆息して、一つ息を吸う。

「少年、残念だが君の願いは叶わない。この機体に乗っていたパイロットは確かに死亡していた」

少年が、ビクリと震えた。正体不明の人物の声に加え、罪から逃げることはできないと改めて突き付けられたからだろう。
そんな少年を庇うように赤毛の少女が前に出た。

「アンタは一体誰!? アタシ達に何の用があるのよ!」
「用も何も、私達が行っているのは殺し合いだ。つまりは、そう」

ラーゼフォンの片足を持ち上げ、彼らの目と鼻の先へ踏み下ろす。轟音。一拍、足を引き上げるとそこには深い足跡が刻み込まれていた。
彼らは引きつったような顔で見上げてきた。堪らない――その顔だ。弱者を蹂躙する愉悦。

「己の立場はわかったかね? 質問するのは私の方だ。君らは黙って従えばいい」
「誰がアンタの言うことなんか……!」
「情報交換は一人いれば事は足りる。恋人を引き裂くのは忍びないが……どうするね?」
「ッ……!」
「待て、テニア。ここは俺が話す」

少し落ち着いたらしい少年が少女を背中へと隠す。
睨みつけてくるその顔は中々に精悍で、まさしく姫を守る騎士といったところ。
300王の下に駒は集まる ◆VvWRRU0SzU :2009/03/13(金) 18:37:29 ID:ZOgTHNaW
「で、何が聞きたいんだ。俺達が知ってることはそう多くないぞ」
「ふむ……ではまず、君達の名前と関係から聞こうか。まあ、後者については聞くまでもないかもしれんが」
「……俺は紫雲統夜、彼女はフェステニア・ミューズ。俺は、俺達は……二人で生き残るんだ」
「二人で、ね。この戦いのルールを聞いていたかね?」
「知ってる。でも、生き残るためにテニアを殺すことなんて……俺には、もうできない」
「あ、アタシもだよ!」
「具体的にどうするつもりだ? 主催者は勝ち残った一人を求めているのだぞ」
「それは……だから、主催者を倒すとか、ここから逃げるとか。とにかく、優勝って道はもう選ばない」
「ではもし、君らが襲撃されたらどうする? この場合は私だが、たとえばその少女を殺したら、君はどうするのだ?」
「――決まってる。どんな手を使ってもアンタを殺してやる」

絶対的不利な状況でもそう告げた少年の目には怯えはない。
少女は僅かに涙ぐんだ――この分では彼女も少年と同じだろう。
互いが互いを必要とし、それだけで完結する関係。
ユーゼスは思案する。
今己に必要なもの――ナデシコの設備、未知の技術、AI1を進化させる膨大なエネルギー、そして王を守る駒。
アキトは強力かつ貴重なカードだが、扱い辛い。もっと手軽に、いつでも切り捨てられる手札が欲しい。
その点、彼らは。
生還を目的とし、強固な絆で結ばれた二人。
必ずしも戦う訳ではないが、一番に優先するのはお互いの命。かかる火の粉を払うことに躊躇いはない。
条件は十分だ。

「統夜――と、呼ばせてもらうよ。君たちの決意はわかった。礼を失したようだが、私は君たちの力になれると思う」
「何だって……?」
「私は主催者に抗う仲間を求めている。君達がともに戦ってくれるのなら、無事に生還できることを約束する」

ラーゼフォンの手を掲げ、コクピットからそこへ乗り移る――信用させるためのポーズ。
少年達を見下ろす。自らの首輪を指でトントンと叩き、続いて引き千切るようなジェスチャーを加える。

「私は『これ』ができる方法を所持している。協力を得られるなら君達にも提供しよう」

目に見えて少年が動揺する。
二人で生き残る。その理想の着地点がどうあれ、首輪はネックにしかならない。
恐らく誘いに乗るかどうか、その脳裏で激しく議論が交わされているのだろう少年を尻目に少女が声を上げる。

「アンタを信用できるっていう根拠は? 裏切らないって保証はあるの?」
「ない。そもそも君達はお互いしか信用する気がないのだろう? そしてこれが肝要なのだが、私としては必ずしも君達である必要はないのだ。
 この先誰かと出会えばその誰かにも同じ取引を持ちかける。恐らくこれができるのは生存者の中でも私だけだろう。
 モノを考えられる相手ならば断られる確率は低い。つまり、君達が断るならば私はここを去るだけだ」
「見逃してくれる……気はあるの?」
「まさか。不確定要素はできるだけ排除しておきたい。君達がいつ優勝を狙いに回るかもわからんしな」
「じゃあ選択肢なんてないじゃない!」
「そんなことはない。生きる道を選ぶか、ここで死ぬか。その二つは選べるだろう」

押し黙る少女。
やれやれ、と嘆息する。アキトと合流するためにもあまり時間をかけたくはない。
二人の排除を真剣に検討し始めたところ、思案に耽っていた少年が顔を上げた。

「わかった。アンタの話に乗る」
「統夜!?」
「テニア、どのみち俺達は敵を作りすぎた。仲間は必要なんだ。
 ガウルンとはいずれ戦うことになるだろうし、Jアークってやつらも多分そうだ。
 最悪なのがナデシコだな。ガウルンが少しでも削っていてくれればいいんだけど……」
「ナデシコ? 待て、君達はナデシコと接触したのか?」
「接触したも何も、さっきまで戦ってたよ。今は仲間が……いや、『元』仲間が残って戦ってる」

つまり、アキトが向かった方にナデシコはいた。そこでは今戦っている。
出遅れた、と半々の確率を選んだ自分を悔やむ。ここからでは間に合うかどうか。
301 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/13(金) 18:38:24 ID:ZOgTHNaW

「統夜、その残っているやつの情報を教えろ。危険なやつか? 行動目的は?」
「え……ああ、危険って意味では多分集められたやつの中でもトップクラスだ。
 ガウルンって名前で、傭兵って言ってたけど戦うことを楽しむようなやつだし。優勝狙いっていうか、戦いそのものが目的だと思う」
「ガウルン――チッ、まったく面倒な!」

その名は聞き覚えがある。薬の後遺症に苦しむアキトが何度もうわ言で呟いていた名だ――怨嗟とともに。
アキトの仇というのはそのガウルンのことなのだろう。そいつがナデシコを襲っている。
彼が間に合えばいいが、ある意味それは煮え滾る鍋にさらに爆薬を投げ込むようなものかもしれない。
ナデシコの重要性は認識しているだろうが、あの様子では殺意を制御する気などなさそうだ。
急行し、ナデシコから引き離さなければならない。

「統夜、済まないが話はまた後だ。ナデシコが墜ちれば先程の話も水泡に帰することになる」
「ナデシコを助けに行くのか? その……協力するとは言ったが、俺達は行けないぞ。
 アンタを信用するのも、あそこにいるやつに会うのも、今はまだ早い」
「フン……まあ、いいだろう。では、そうだな――次の放送までにA-1の市街地で合流しよう」
「A-1だな、わかった。俺達は今から向かって待機しておく」

ラーゼフォンを飛行させ、だがふと気づく。丸腰で向かったところで大したことはできない。
青い騎士を見やる。ちょうど良いことに、中々の大剣を佩いている。

「統夜、剣を借りておく。次に会った時に返す」

言い捨て、倒れ伏す青い騎士の剣を強引に剥ぎ取った。
統夜が何か喚いている――だが今は聞いていられない。
五大剣をその左腕にしっかりと握り締め、ラーゼフォンは猛スピードで飛び去って行った。

騎士の象徴たる剣をを奪われ、憤慨する少年の罵声を聞き流しながら。
302 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/13(金) 18:39:12 ID:ZOgTHNaW


【ユーゼス・ゴッツォ   搭乗機体:メディウス・ロクス(+ラーゼフォン)
 パイロット状態:若干の疲れ
 機体状態:全身の装甲に損傷(小)、両腕・両脚部欠落、EN残量80%、自己再生中
 機体状態2:右腰から首の付け根にかけて欠落 断面にメディウス・ロクスのコクピットが接続
        胴体ほぼ全面の装甲損傷 EN残量40% ヴァイサーガの五大剣を所持
 現在位置:G-1
 第一行動方針:ナデシコ、アキトと合流。危険人物(ガウルン)の排除
 第二行動方針:ナデシコの捜索、アキトと合流、AI1のデータ解析を基に首輪を解除
 第三行動方針:他参加者の機体からエネルギーを回収する
 第四行動方針:サイバスターとの接触
 第五行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 第六行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
 第七行動方針:次の放送までにA-1に向かい統夜、テニアと合流
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持
 備考4:謎の薬(希釈されたDG細胞)を一錠所持
 備考5:AI1を通してラーゼフォンを操縦しているため、光の剣・弓・盾・音障壁などあらゆる武装が使用不可能
 備考6:ユーゼスに奏者の資格はないため真理の目は開かず、ボイスの使用は不可
 備考7:ラーゼフォンのパーツ部分は自己修復不可】


【紫雲統夜    登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:精神的に疲労 怒り
 機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN80% 五大剣紛失
 現在位置:H-1
 第一行動方針:A-1に向かい待機。戦闘は避ける
 第二行動方針:ユーゼスに協力。でも信用はしない 
 最終行動方針:テニアと生き残る】


【フェステニア・ミューズ   搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:幸福
 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) 、シックス・スレイヴ損失(修復中、2,3個は直ってるかも)
        EN60%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
 現在位置:H-1
 第一行動方針:統夜についていく
 第二行動方針:ユーゼスに協力。不審な点があれば容赦しない
 最終行動方針:統夜と生き残る
 備考1:首輪を所持しています】


【二日目14:45】
303 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/13(金) 18:40:07 ID:ZOgTHNaW
今回は以上です。短くてすいません・・・
304それも名無しだ:2009/03/14(土) 07:57:22 ID:6FRxuGdM
投下乙!
とりあえず統夜たちはナデシコ周辺の戦闘には参加せずか……
だが全員予約というこの状況ではナデシコ周りでなくとも何が起こるか分からないw
ユーゼスが武器持って参入という非常にカオスな戦場の行方に期待せざるを得ないぜ!
残りのパートも執筆頑張ってください!
305それも名無しだ:2009/03/14(土) 19:06:03 ID:A3GJwesP
投下GJ!
ユの字も戦場に向かったか。
本当にどうなるのか先が読めないな。
306それも名無しだ:2009/03/15(日) 21:30:27 ID:OKTPONqd
それにしても去年1年の投下数が31なのにふと気づけば今年は2ヵ月半で既に17か。
流石にパート数減ってきた分減速してるけど予約が止まんないなw
307それも名無しだ:2009/03/15(日) 21:32:40 ID:peyph0Rw
>>306
まだだ、まだ終わらんよ
減速なんて言葉使うには早すぎるぜ
308それも名無しだ:2009/03/15(日) 21:38:31 ID:z/GBt9Yx
第一次の完結でこちらに書き手が集中するようになったのが大きいんだろうなぁ。
309それも名無しだ:2009/03/15(日) 21:44:59 ID:OKTPONqd
確かに単純に書き手数倍になったもんね。
この調子で頑張れば今年はこっちも完結まで漕ぎ着けれるかな。

ってかいつもポツポツとしかレスないのに何で今日はこんなに反応早いんだよw
ビックリしたじゃないか。
310それも名無しだ:2009/03/15(日) 22:52:58 ID:zWbDfJgM
たまたまだろう。
書き手は一次と重なってる人もいただろうから、極端に増えたわけじゃないと思うが……
早く続きを読みたいが終わって欲しくないジレンマ
311 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/16(月) 13:28:51 ID:uBCkElnl
期限にはまだ早いんですが、延長を申請します。
前半だけで50kb近いってどうなんでしょうね・・・投下する際は平に支援をお願い致しますorz
312それも名無しだ:2009/03/16(月) 14:55:15 ID:XJXKfhh8
>>311
了解しました、がんばってくださいね
313それも名無しだ:2009/03/17(火) 23:49:16 ID:SGJ5I05C
ええと、今週の木曜日22時までになるのかな?
うーん楽しみだw
314それも名無しだ:2009/03/18(水) 09:24:49 ID:r3aPWmYg
age
315 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 04:29:29 ID:F40FHK/G
えーと、たった今完成しました。これから推敲に入りますが、用事があるので投下は22時前後になると思います。

>>311で支援をお願いしますと書いたんですが、今全部組み合わせてみたら約140kbありました。
支援必須です・・・
時間のある方はどうかよろしくお願いします。
316それも名無しだ:2009/03/19(木) 14:51:12 ID:W0Jeja8J
>>315
おk 任されたぜ!
317それも名無しだ:2009/03/19(木) 21:43:32 ID:gQba6BQw
そろそろかな?
318 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:21:32 ID:msYk6SUr
お待たせして申し訳ない・・・
きりのいいとこで30分から投下開始します
319怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:31:57 ID:msYk6SUr
「つまり、あの騒ぎは芝居だったと。キラはアイビスさんとナデシコに先行して、ブンドルさんはそれを追っていった……そういうことなんですね?」

急発進したサイバスターを見送った後、アムロは一連の経緯をカミーユに説明していた。
甲児を拘束していた部屋にはアイビスの書置きがあった。
トモロが映し出したモニターに表示される、『ナデシコに行って来る』とだけ書かれた簡潔な手紙。

「ああ、アイビスと甲児が示し合わせていたんだとさ」
「じゃあ、俺達も……!」
「ブンドルに任せておけ。お前もあいつがキラに厳しい言葉をかけた理由は分かっているだろう?」
「……やり通す覚悟はあるかってことでしょう。それはわかりますけど、もし敵がいたら二人だけじゃ対処できませんよ!」
「ガロードがいる。シャギアという男も中々の人物だそうだ……カミーユ、彼らをもっと信頼しろ。
 仲間を失いたくないお前の気持ちもわかるが、俺達が今すべきは彼らを追うことでも心配することでもない。お前はお前のやれることをやれ」

三十六時間以内……正確な時間は分からないが、急がねばならんことには変わりない。
リミットは縮まりこそすれ、伸びるということはないだろう。

「ッ……わかり、ました。俺は、格納庫で作業を続けます。何かあったらすぐに教えてください」

納得できないとばかりに睨みつけられたが、それでもカミーユは食い下がることなくブリッジから出て行った。

「……ふう。わかってはいたが、やはり相当苛立っているな」
『しかし、いいのか? キラとアイビスは敵地に乗り込んで行ったようなものだぞ』
「印象でしかないが、甲児はあの二人をどうこうしようとするやつではないだろう。ガロードもしかりだ。
 シャギアという人物が理性的な人物であるなら、ここで交渉の芽を断つことはしないはずだ。まあ、何らかの譲歩は必要だろうがな。
 問題は、ユーゼス・ゴッツォとテンカワ・アキトの介入だ……ブンドルが何とかしてくれると信じよう」
『本当は、お前も行きたかったのではないか?』
「まあ、な。だがJアークをここから動かせない以上、俺とカミーユまで向かっては万が一の事態に対処できない。
 そういった事態がないことを祈りたいが、ここまで来ると何が起こっても不思議じゃあないしな」
『確かに。……では私は空間の観測に専念する。警戒を頼む』
「ああ、任せてくれトモロ」

キラ、アイビス、甲児、ブンドル、そしてガロード。
アムロが出会い、信じられると思った人達。願わくば誰も欠けることなくまた会えるように……神ではない何かに祈る。
運命を掴みとることができるのは神などではなく、人の意志。
だからこそ、信じる。彼らならどんな危機にも負けはしないと。根拠などなく、それでもアムロは絶望しなかった。


320怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:33:01 ID:msYk6SUr
     □


シャギア・フロストは、自身が置かれている状況が極めてまずいものであると感覚的に理解した。
自らが操るヴァイクラン、相対していた黒いガンダム。
この二者から均等に三角形を成す位置に陣取る、戦斧を担いだ黒い特機――ブラックゲッター。
瞬きする一瞬の間に飛び込んできたその右手には、ガロードの乗るマジンガーZの頭部。
――確か、あの機体は頭部にコクピットがあったはず。
理解する。この機体はヴァイクランに仕掛け、ガロードが身を呈して割って入ったのだと。
仇敵であるシャギアを、助けるために。

「が、ガロード……? ……ガロード・ランッ! 返事をしろ、ガロードッ!」

もはやガンダムに対する警戒など遥か忘我の彼方。
通信機に血を吐くように呼びかける。
ブラックゲッターがマジンガーの頭部を放り出す。同時にマスターガンダムががら空きになったヴァイクランの背に強烈な蹴りを叩き込んだ。

「背中がお留守だぜ!」
「ぐっ……貴様!」

ブラックゲッターへと蹴り飛ばされるヴァイクラン。激しくシェイクされるコクピットの中、シャギアの目は戦斧を構えたブラックゲッターを捉えていた。
回避行動を取るよりも早く、カルケリア・パルス・ティルゲム――念を感知し増幅する機構が、危険を排除すべく残存する二基のうち一基のガンスレイヴを飛ばした。
ブラックゲッターに向かっていくガンスレイヴ。もう一基のスレイヴは念のためガロードの護衛に飛ばす。
迎え撃つブラックゲッターの両肩から何かが射出された。
その何かが、ガンスレイヴと交錯――破壊されたのは、ガンスレイヴだった。
捉えた映像を拡大。ガンスレイヴのような自働砲塔端末ではなく、手斧のようなものだった。

とはいえ、一瞬の時間は稼げた。機体を立て直し、改めて二機と対峙する。
だが、まずい――マスターガンダムは言うに及ばず、新たに現れた黒い機体も近接戦に特化しているようだ。
拳に誂えられたスパイク、腕から生えた鋭い刃。強大なパワーを有するであろう骨太のボディ。
機動性のマスターガンダム、パワーのブラックゲッター。対して自機は射撃戦に特化している。
一撃の火力は誰よりも秀でているが、機動性を代償としている。
敵と渡り合うためには前衛、アタッカーが足りない。それは奇しくもオルバが生前抱いていた懸念と一致した。
ジリジリと、押し込まれる空気を感じる。自分が奴らの立場であったとして、この均衡を崩すためまず狙うのは――ヴァイクランだ。
ガロードの安否は気がかりだが、それ以上に自身が危ない。
打つ手が足りない。どうする、どうする――!?
だが、焦るシャギアをよそにブラックゲッターは構えた戦斧をマスターガンダムへ向けた。
その動きに牽制され、マスターガンダムも足を止める。

「おいおい……相手が違うんじゃねえか? ここはまずデカブツにご退場願うとこだろ」
「…………ルン」
「あん? おい、なんか言ったか。聞こえねえぞ」
「ガ……ン。ガウ……ルン。――見つけたぞ、ガウルゥゥゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥンッッッ!!」

オープン回線で問いかけられたガンダムのパイロット――ガウルンの声に、ブラックゲッターのパイロットは咆哮で応えた。
黒い旋風となって、マスターガンダムへと踊りかかる。道すがらにいたヴァイクランには目もくれず。
振り下ろされる戦斧。
音速にまで達しているのではないかと思わせる刃先は唸りを上げてマスターガンダムに――否、一瞬前までマスターガンダムがいた位置に向けて叩きつけられた。
爆音とともに大地が砕ける。一撃に込められた速度、破壊力、そして憤怒。見て取ったシャギアの肌が粟立つ。
そしてその一撃を避け、背後の廃ビルへと跳躍したマスターガンダム。
奴は黒い機体が動いた瞬間に回避行動に入っていた。恐ろしいまでの危機察知能力。
少なくとも、自分よりより遥かに死の匂いに敏感だと確信する。
321それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:33:16 ID:rVzaWANZ
wktk
322怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:34:01 ID:msYk6SUr
「おわっと……! んん? その声……そぉ〜か、お前アキトちゃんかぁ〜! おいおい、待ってたぜぇ。
 俺に会いに来てくれたのかい? 嬉しいねぇ〜。随分、いい男になったみてえじゃねえかぁ」
「黙れッ! 貴様だけは――俺が殺すッ!」
「おやおや。そんなに愛しのユリカちゃんが殺されたのが気に喰わないのかい? 俺としちゃあお前の足枷を切ってやったつもりなんだがなぁ」
「お前がユリカの名を口にするなッ!」

戦斧をマントに隠し、ブラックゲッターの両腕の刃、そして拳のスパイクが伸びた。
鋭利な凶器と化した腕をボクサーのように掲げ、一直線にマスターガンダムの座す廃ビルに突っ込んでいく。
ブラックゲッターの全長の5倍はあろうかという廃ビルに、その身を弾丸のように叩き込む。
再びの爆音とともにぐらりと廃ビルが揺れる。一拍置いて、廃ビルの中を何かが駆け上がっていくように轟音が連鎖する。
アキトの狙いに気付いたマスターガンダムが跳ぶ。それを追うように、ビルを一階から真っ二つに立ち割ってブラックゲッターが飛び出した。
跳ぶことはできても飛べはしないマスターガンダムに、当然の帰結としてブラックゲッターが追いつく。
右腕を背中が見えるほど振りかぶる。
マスターガンダムの倍はあろうかという巨体から、豪速のパンチが繰り出された。

「オオオオォォォォォッォオォッッッ!」
「くっ……やりゃあできるじゃねえか、アキトちゃんよ!」

回避はできん、と確信したシャギアの予想を裏切るかのようにマスターガンダムは空中で身を捻る。
機動兵器の枠を逸脱した動き。操縦者の動きを完璧になぞる、モビルトレースシステムの真骨頂。
同時にブラックゲッターへとビームの布を伸ばし、敵機の体勢を崩すと同時に自機を引っ張る。
拳の延長線上から逃れたマスターガンダム。だがそこはまだの殺傷圏内。

「ところがぎっちょん、てな!」

胴体を両断せんと迫る刃を、だがマスターガンダムは避けようとしなかった。
右腕の掌を突き出す。黒い光が収束――暗黒の指は、三本の刃のみならずブラックゲッターの腕そのものを浅く抉り取った。
小爆発がブラックゲッターの目を一瞬だが眩ませる。マスターガンダムはその一瞬の間に地表へと降り立ち、瞬く間に物陰にその身を隠す。

「危ねえ危ねえ。いいねぇ、その気迫。俺好みの男になってきたじゃねえか」

反響する声だけが廃墟に響く。
レーダーに目をやるも、戦闘のエネルギーが撒き散らす余波で周辺のミノフスキー粒子は掻き乱され、安定しない。
小柄であることの利点。容易くその姿を影に同化させることができる。

「……逃がしはしない。貴様はここで仕留める」
「おいおい、逃げやしねえよ。せっかく盛り上がって来たんだ、楽しもうじゃねえか――お前さんもよ!」

密かに、だが確実に戦域を離脱しようとしていたシャギアの目前にマスターガンダムが躍り出る。
その左腕にはヒートアックス。後退する間もなく、念動フィールドを全開にする。
超高熱の刃とフィールドが干渉し合い、激しい放電を起こした。

「つれないねぇ……お前さん、相棒の仇の俺が憎いんだろ? 許せないんだろ? じゃあ逃げちゃダメだ。
 逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ――今この瞬間に、戦わなきゃさァッッ!」
「むう、ううッ……!」
「そこか」

323それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:34:09 ID:gQba6BQw
 
324怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:34:45 ID:msYk6SUr
廃墟の一角で起こった放電現象で位置を特定し、ブラックゲッターが迫る。
念動フィールドは既に全開、ガンスレイヴはない。
ヴァイクランの残る兵装はオウルアッシャー、そしてべリア・レディファー。
だがどちらも機体前面に撃ち出すもの、後方から向かい来るブラックゲッターには対応できない。
それはマスターガンダムにも同じこと。片腕一本でヴァイクランを押さえている今、対応する手段はない。

「ほら、どうするんだ? あいつは俺もお前も両方喰っちまう気だぜ?」
「貴様、この状況を楽しんでいるとでも言うのか!?」
「ああ、楽しいねぇ。最高じゃねえか! 一手打ち損なえばゲームオーバー、一寸先はあの世行き。
 誰も彼もが紙のような儚い命――何とも心躍る、最高にハイってやつだ」
「付き合っていられん……!」

フィールドを維持したまま強引に飛び立とうとする――だが、マスターガンダムはヴァイクランの腕にぴたりと機体をよせ、足を絡めて離れない。
ブラックゲッターが戦斧を取り出し、凄まじい勢いで回転する。
あの戦斧をあの勢いで叩き付けられたら、フィールドなど何の抵抗にもならず二機とも両断される――シャギアは絶望とともに確信する。

「ほうら、来たぜ来たぜ。どうする、どうなる? 俺が死ぬかお前が死ぬか、はたまた二人同時にイっちまうのか。
 なんなら協力してあいつを倒すかい? ああ、いいねぇ。それも楽しそうだ」
「冗談では……ない!」
「3、2、1――残念、タイムオーバーだ! ペナルティはお前の命で支払いな!」

寸前で、マスターガンダムヴァイクランを蹴って離脱した。
が、ヴァイクランはそうはいかない。元々の鈍重さ、フィールドを酷使したことによる出力の低下。
何より蹴り崩された体勢が咄嗟の離脱を許してはくれない。
離脱していくマスターガンダム、だがブラックゲッターは今さら止まることはできない。
アキトに率先してヴァイクランを狙う理由はないが、邪魔になるなら潰しておくことを躊躇うほどの理由もない。
一瞬が永遠に引き延ばされる――そんな感覚の中、ガウルンの哄笑だけが耳障りだ。
視界を黒い竜巻が覆う。

(オルバ、比瑪くん、ガロード――すまん)

シャギア・フロストは死を覚悟し、受け入れた。
死ぬことで比瑪を殺した罪や、弟を、そして宿敵を助けられなかった無力が清算されるわけではないと知りつつも。
最期くらい笑って死ね――とは、誰の言葉だったか。シャギアが今わの際にできたことは、己が失態を自嘲することだけだった――
325それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:35:17 ID:gQba6BQw
 
326怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:35:27 ID:msYk6SUr












「騎士凰牙――アァァァァァァァァァクションッッッ!!」













――轟音とともに響いた声は、何よりも力強く。
――誰よりも頑なに、己が法を追求し続ける男の声だ。

「……ロジャー・スミス」

呟いた声は誰のものか。
黒の戦鬼が振り下ろす大斧を、疾風の如く飛び込んできたこちらも黒い隻腕の闘士が受け止めて。
その腕に蔵されたタービンが戦斧を砕かんとばかりに猛回転する。
ブラックゲッターは戦斧を引き抜き後退した。

「いかにも、私はロジャー・スミス。いかなる理由があって君らが戦っているのかは知らん。
 だが敢、えて言わせてもらおう――交渉の時間だ、諸君!」

パラダイムシティが誇るMr.ネゴシエイター。敏腕……いや豪腕の交渉人が、戦場へと舞い降りた。
327怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:36:10 ID:msYk6SUr
     □


刻は三時間ほど遡り、所はB-1の市街地にて。
ここで踊るは騎士凰牙とガナドゥール、ロジャースミスとソシエ・ハイム。

「――よし。ソシエ嬢、D-3に向かおう」
「あら。随分待たされたけど、ようやく腹が決まったのね。で、どうしてD-3のルートなの?」
「うむ……先ほど交戦したチンピラどものことだ。私達が恐竜ジェット機でD-7区画を捜索したところ、やつらを捕捉することはできなかった。
 その後このB-1に移動するまで仕掛けてこなかったところを見ると既に移動していたのだろう。
 その場合、彼らが向かう先として最も可能性が高いのは」

ロジャーは彼方にうっすらとその存在を主張する光壁を指し示す。

「我々同様にあの壁を抜け、E-1の市街地を目指すルートだ。つまり北ルートは危険――必然、我らが選ぶ道は南ルートということになる」
「……なるほどね。でも待ってロジャー。一つ、言いたいことがあるわ」

ソシエの声はひどく静か。だが、その奥底に何やら剣呑な熱さを感じる。

「ん、何だね?」
「E-1が危険なのはわかった。でももしそこにナデシコがいたらどうするつもり?」
「……それは」

言葉に詰まる。
もしナデシコがE-1にいるなら、彼らは窮地に陥る。援護に行くべきだろう。
あるいはいないとしても、それならそれで市街地に入らず南下すれば危険は避けられる。ナデシコは目立つのだから、遠目でも十分に発見できるだろう。
戦場となるのがわかりきっている場所にソシエを連れていくわけにもいかない……。
言いくるめる言葉を探す。いつもなら滑らかに回る口がやけに重い。
ロジャーより先に、ソシエが口火を切る。

「ねえ、ロジャー。あなたって服の趣味は悪いし、フェミニストを気取ってるけど女性の扱いは全然ダメ。
 おまけに交渉人なんて肩書きがウソみたいに短気だわ」
「……ず、随分な言い草ではないかね、ソシエ嬢。私とて人並みの繊細さは持ち合わせているのだ、そこまで言われれば多少は傷つくぞ」
「いいえ、ロジャー。『本当の』あなたなら、この程度の嫌味なんてその厚い面の皮にヒビ一つ入れることはできないわ。『本当の』あなたなら、ね」
「何が、言いたい?」
「……はぁ。ハッキリ言わなきゃ分からないのかしら。なら言ってあげるわ」

スゥ、と息を深く吸い込む音。一拍の後。

「ロジャー・スミス。あなたは自分を見失っているのよ」

罪人を裁く断罪の鎌のように――少女の言葉は鋭く胸に切り込んできた。

「何を……言っている。私は、自分を見失ってなど……」
「あら、随分とまあ女々しい声ね。いいわ、順を追って言ってあげる。
 まずは北と南、どちらを行くか即決できなかったこと。私が考え付く程度の理由にあなたが気付かなかった、あるいは気づいていても無視した。
 次に、あのチンピラに騙されてJアークの所在をばらしてしまったこと。あなたはあんなテロリスト感丸出しの怪しげな男の口車に乗った。愚かにもね。
「…………」 
「そして何より――私が一番腹の立つ理由。
 プライドの塊みたいなあなたが、私みたいな小娘にこうまで言われて怒りも反論もしないことよ!」
328それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:36:26 ID:gQba6BQw
 
329怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:36:51 ID:msYk6SUr
烈火のような少女の舌鋒。ロジャーは返す言葉もない。
自分を見失っている――ロジャー・スミスをロジャースミス足らしめるもの、それは誇り。
プライド、あるいは自信といってもいいだろう。
その柱が、今ひどく脆く、そして細くなっている。原因――わかりきっている。自分の不甲斐無さゆえだ。
最初の依頼者、リリーナ・ドーリアンは守り切れなかった。
最初の交渉相手、神名綾人とはロジャーの未熟ゆえに交渉する前に殺害された。
極めつけはその後のナデシコ、Jアーク、ダイの三隻の戦艦による乱戦だ。
交渉を妨害するイレギュラー――テニアとガウルン――がいたとはいえ、結果的に対主催派の要になり得るダイが轟沈、ユリカは死亡。
Jアークとナデシコにも深い溝を残した。
あの場を無事に収めることこそが交渉人たる己の責務だったはず――それなのに。
崩壊したダイを目にしたことでその事実を一層突き付けられたのだろう。

「……ロジャー。あなたは確かに全てを救うことはできなかったのかもしれない。でもそれで自分を責めてはいけないのよ。
 迷いは目を曇らせる。大事なことを見逃してしまう――今のように」

ソシエは騎士凰牙に背を向けて歩き出す。その行く先はD-3――ではなく、E-1へと至る道。

「私はね、ロジャー。あなたのように人に誇れる立派な信念や、正義の味方っていえるような大義なんてない。
 でも、これだけはわかる。
 自分の心に嘘をついても、何も手に入らない。こうしたいと決めたのなら、迷っては駄目。
 時には理性よりも野性で行動することがあってもいい――それが、自由というものだわ
 私の心は今、危険に晒されているかもしれないナデシコを助けに行けと叫んでいる。だから、私は私だけの自由と正義に従って行動する」

ガナドゥールが歩き出す。呆然と見送り……我に返り、慌てて走り出す。

「待ちたまえ、ソシエ嬢……私も行く」
「あら、そう? まあついてきたいのなら許してあげるわ。ただし、E-1につくまでの間、私の言ったことをよく考えることね」

それきり、このお喋りなお嬢様は口をつぐんだ。
取り残されたロジャーは考える――理性よりも野性。それは法を重んじるロジャースミスの法に反する。
だがしかし、ソシエの言葉に揺さぶられたのも事実。心のままに行動する――では今の自分が心から望むことはなんだ?
わからない、わからない――

「……わからないな。ドロシー、君なら答えをくれるのだろうか?」

思わず漏れた弱々しい声。彼女が聞けば失望するだろう。
ソシエが通信を切っていてくれたことに、少しだけ感謝した。
330それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:37:16 ID:gQba6BQw
 
331怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:37:53 ID:msYk6SUr
     □


そして、時間は現在へ。
E-1に到達したロジャーとソシエは、黒煙を上げるナデシコの姿を見る。そしてその近辺を飛び交う砲火の光。
戦闘が行われている。ロジャーは瞬時に行うべき行動を決定する。

「ソシエ嬢、私は戦闘へ介入する。君はナデシコとの接触を頼む」
「大丈夫なの、ロジャー?」

心配そうな声。確かに答えは出ていない――だが、そんな事情を殺戮者が考えてくれるわけもない。

「ひとまずは戦闘を仲裁する。今はそれが――私が心から望むことだ!」

決意とともに騎士凰牙を走らせる。
ほどなく、あのチンピラが乗っていた黒い機体と、そして大乱戦の時にもみたナデシコの擁する白の特機が交戦している現場に到着した。
膠着状態に陥っている二機。さらに、後方から黒い鬼のような機体が巨大な斧を構えて突っ込んでくるのが見えた。
このままでは二機諸共に両断される。
そう判断した瞬間、ロジャーは全速で機体を特機の前に投げ出していた。

「騎士凰牙――アァァァァァァァァァクションッッッ!!」

間一髪。巨大な戦斧、その刃先ではなく持ち手の部分を受け止める。
騎士凰牙はヴァイクランが本来辿るはずだった大破という運命を変えることができた。
ブラックゲッターを弾き飛ばす。
そして聞こえる声。

「……ロジャー・スミス」

名前とは存在そのものを表す。
ロジャー・スミス。その名が示すのは、即ち交渉の担い手。
未だロジャーの霧は晴れない。だが、そう――それでも、この状況で言うべき言葉は決まっている。

「いかにも、私はロジャー・スミス。いかなる理由があって君らが戦っているのかは知らん。
 だが敢えて言わせてもらおう――交渉の時間だ、諸君!」

高らかに宣言する。
ヴァイクラン、マスターガンダム、ブラックゲッター。三者ともが、ロジャーの真意を測りかねるようにその動きを止める。
それぞれがそれぞれを牽制する位置にいる。三角形の中心に迎えるのは騎士凰牙。
ややあって、最初に応えたのはヴァイクラン――ナデシコのリーダー、シャギア・フロスト。

「ネゴシエイター、危機を救ってくれたことには礼を言おう。だが、一つ聞きたい」
「何だね? ああ、君はシャギア・フロスト殿か。弟君に会ったので、話は聞いている」
「……知っている。お前が受けた依頼のことも、大体は。その上で聞こう。交渉といったが、お前はこの場をどう収めるつもりだ?
 話し合って皆で手を取ろうなどというぬるい結末は有り得んぞ」
「そうそう、邪魔してもらっちゃ困るんだよネゴシエイター。せっかくイイところだったのに……いや、あんたも参加してくかい?」
「貴様……フン、あのときも言ったはずだ。
 交渉の場に争いを持ち込もうとする者は、この私ロジャー=スミスの名にかけて許しはしない、と。
 交渉に値しない人物はこの拳にて舞台から御退場願うのみだ」
「おぉ。怖い怖い。まあ、一つ乗ってやろうじゃねえか。
 この俺、ガウルンの立場はな、徹底抗戦だ。闘争を、一心不乱の大闘争を……ってな。
 さあ、俺は意見を表明した。お前らはどうなんだ?」

不敵に面々を見回すマスターガンダム。
彼らの出方次第では1対3という絶体絶命の窮地に陥ることなど何の問題でもない、むしろ楽しみだとというように。

332怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:38:31 ID:msYk6SUr
「……シャギア・フロスト。君はどうだ?」
「お前の本来の依頼に応じることは吝かではない。だが、ここで矛を収めることはできん。
 そちらの斧を持ったやつに仲間が襲われ、安否が不明だ。非常に好戦的でもある。
 そして何よりガウルン……そいつだけはここで殺す。オルバの――弟の仇だ」
「何っ……!? 彼が死んだというのか?」
「そう、殺されたのだ、ロジャー・スミス。そこの男と、お前達が事情があったのでは、などとつまらん理由で見逃した……フェステニア・ミューズになッ!」
「……ッ!?」

シャギアとて、彼に直接の責任がないことは分かっている。
だがしかし、下手人とテニアを除けば生きているオルバと接触したのはロジャーが最後なのだ。
彼がテニアをその場で始末していたら――と、思わずにはいられない。
そうしていれば、自分が比瑪を撃つこともなく、ガロードが撃墜されることも――負の感情がドロリと身を包む。

「私も、そこの男と同じく交渉を放棄する。少なくともこの二人だけは、ここで始末する。邪魔をするなら貴様も排除するぞ、ネゴシエイター」
「……最後だ。君の意見を聞こう」

ガウルン、シャギアからの断絶を受けて残ったブラックゲッターに目を向ける。
未だ一言も発さぬこの男、ある意味では一番不気味な存在だった。

「まず、名前を聞かせてもらいたい。初対面であるなら改めて私から名乗ろう。私は」
「結構だ。初対面ではない」
「その声……ガイ? 君はガイか! 生きていたのか」
「ガイは偽名だ。俺の名はテンカワ・アキト……覚える必要はないがな」

ブラックゲッターが戦斧を旋回させ、騎士凰牙に向ける。
友好的とばかり思っていた相手に刃を向けられ、ロジャーは困惑する。

「どういう、つもりだ?」
「どうもこうもない。俺はゲームに乗る……優勝を狙っている」
「何故だ! 君はユリカ嬢とともにこの殺し合いに抗っていたはずでは」
「ユリカの名を口にするなッ! ユリカを守れなかった貴様がッ!」

ガツン、と頭を殴られたような衝撃。
そう、あの場にガイはいなかった。
先程彼の機体を発見したことから半ばで参戦したのは予想できたが、あの状況ならダイを、ユリカを守るのは自分の役目だったのだ。
二の句が継げないロジャーに、アキトは続けていい放つ。
333それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:38:42 ID:rVzaWANZ
支援
334それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:38:48 ID:gQba6BQw
 
335それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:39:37 ID:gQba6BQw
 
336それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:42:25 ID:rVzaWANZ
ロジャーフルボッコ可哀想です><支援
337代理投下:2009/03/19(木) 22:42:53 ID:gQba6BQw
「ユリカを殺したのはそこのガウルンだ。わかるだろう、俺もお前の交渉に応じるつもりはない。
 奴の次はお前達だ。誰一人として、逃がしはしない」
「ククッ――クハハッ! ハハハハハハハハハハハッハハハハハハッッ!
 ざまぁねえなネゴシエイター! 聞いたかい? そう、全ての原因は俺にあったんだよ!
 だが俺だけの責任か? いいや違うね。あのとき俺を止められなかったお前が、そもそもの発端なのさ!
 ネゴシエイターが聞いて呆れる――お前は闘争の火種にしかなってねえんだよッ!」
「……貴様ッ!」

マスターガンダムが跳躍する――向かう先はヴァイクラン。
十分な時間を置いた念動フィールドは出力を回復している。鋭い蹴りを危なげなく受け止めた。
すぐさま反撃のオウルアッシャーを放つヴァイクラン。だが火線が閃く瞬間にはマスターガンダムは離脱していた。
そしてその後をなぞるようにブラックゲッターの剛腕がガンダムを追う。
マスターガンダムはビームクロスをビルへと伸ばし、猿のようにビルからビルへと飛び移っていく。
やはり追う、ブラックゲッター。残ったのは騎士凰牙とヴァイクランのみ。
今の攻防、ロジャーは一歩も動けなかった。もし誰かが彼を狙えば、なすすべもなく撃破されただろう。

「私は……私の交渉は……!」
「ロジャー・スミス。貴様とあのテンカワという男に何があったかは知らん。だが、ガウルンは明確な敵だ。
 私の機体はやつらと相性が悪い。協力を要請する」
「あ……ああ、そう、だな。だが、私は……」

チッ、と舌打ちが聞こえた。シャギアのものだろう。

「腑抜けめ……まあいい。私は奴らを追う。お前はナデシコに「――ガロードはどこだ?」

突如、声が割って入った。
女の声――ロジャーも、そしてシャギアも知らない声。
見上げる――そこにいたのは赤い鬼。ブラックゲッターと密接な関係を持つ、あるいはこの会場内でも最強に近い力を持つモノ。

真・ゲッターロボがそこにいた。

338代理投下:2009/03/19(木) 22:44:12 ID:gQba6BQw
     □


目が覚めたのは、強烈な震動のおかげだった。
横たえられていたベッドから転げ落ち、頭をしたたかに床にぶつけるという情けない起床であったものの、ついにクインシィ・イッサーは覚醒した。
医務室から出る。どこだろう――艦内のようだ。ふらふらと彷徨い、唐突に風を感じた。
本来なら密閉空間である艦内で風が吹くはずがない。クインシィはその風が吹いてくる方へと足を向けた。
やがて、通路の一角に空いた大穴を発見した。
未だ黒煙を上げ続ける個所がある。先程の震動は砲撃を受けたことによるものと推測した。
壁に手をつき、外の景色を見下ろす。市街地――気絶する前は確かC-2にいたはずだ。
だが、あの街並みと違いここはあまりに荒れ果てている。移動したのだろうか――そんなことを考えて視線を巡らせる。

そして、見つけてしまった。悪鬼が魔神の首を刎ね、その手に掴むところを。
知っている。あれは、そう。マジンガーZ。

――――ガロードの機体。

思い当った瞬間、意識が一気にクリアになった。
あれから何時間経った!? ここはどこだ!? 私は何をしている!?
そう、気を失う直前まであの青い騎士の機体と交戦していたはず。ジョナサンが負傷して――
ジョナサン! ジョナサン・グレーンはどこだ!?
ガロードもいない。まさか、あのマジンガーに乗って――

クインシィは駆け出した。とにかく、情報が必要だ。最新の、生きた情報が。
戦艦ならブリッジに行けば誰かしらいるだろうと、適当な案内板を見つけブリッジへとひた走る。
飛び込んだブリッジには一人の男。髪を逆立て眼鏡をかけている。
男が振り向く。その唇が開かれる前にクインシィは男の首を絞めあげた。

「貴様、答えろ! ジョナサン・グレーンはどこだ!? ガロード・ランは!? 状況はどうなっている!?」
「……、……ッ!」
「何を言ってる! わかるように」

と、首を絞めていては話せるものも話せないと気付く。が、

『落ち着けよ! 今はそれどころじゃねえ!』

室内隅に設置されたスピーカーから男の声が響いた。
驚き、男を凝視する。男は手振りで話せと伝えていた。とりあえず手を放す。
軽くせき込み、男は顔を上げた。

『わりぃな、喉を傷めちまってこんな方法でしか話せない。俺は熱気バサラだ。アンタは?』
「……クインシィ・イッサー。ああ……いや、済まない。私も頭に血が昇っていたようだ」

障害を持つ相手に暴力を振るったことが少し情けなくもあり、クインシィは常になく素直に頭を下げた。

「それより、さっきの質問に答えてくれ。ジョナサンは、ガロードはどこだ?」
『ここはナデシコって戦艦だ。……ジョナサン・グレーンってやつは、死んだ。アンタを救助した時、遺体を回収したそうだ』
「なん……だと……? ジョナサンが、死んだ……?」

一歩、後ずさる。やはりあのとき、ジョナサンは致命傷を受けたのだ。
気付かなかった己の不手際。そればかりかのうのうと眠っていたのだ……今の今まで。

『で、ガロードだがな。これを見りゃわかるだろう』

バサラが手を振る。すると空中に映像が映し出された。
339代理投下:2009/03/19(木) 22:45:12 ID:gQba6BQw
バサラが手を振る。すると空中に映像が映し出された。
そこには首のないマジンガーZと、放り投げられたその頭部。

「これに、ガロードが乗っているのか!?」
『ああ。さっき一瞬だが通信が繋がった、生きちゃいるが、またすぐ気を失ったらしい。まずいことにすぐ近くで派手にドンパチやってやがる』

続けて黒と白の機体が激しくせめぎ合っているところが映し出される。クインシィの見た悪鬼もそこに加わった。
乱戦となった戦場――ガロードは動けない。
踵を返すクインシィ。その腕をバサラが掴む。

『待ちな。アンタ、病み上がりで出る気か? 死ぬぞ』
「そんなことはどうでもいい! ガロードが危ないんだ、黙って見ていられるか!」
『アンタ……』
「私の機体は、真ゲッターはあるのか?」
『回収してある。だがあいつは三人乗りだって聞いてる。アンタ一人じゃ』
「十分だ!」

手を振り払い、走り出す。そこへ、

『騎士凰牙――アァァァァァァァァァクションッッッ!!』

新たな声が響く。モニターを見やれば、隻腕の黒いマシンが新たに参戦していた。
そのまま、一時砲火が収まる。何をしているか知らないが、ガロードを助けるなら今が好機だ。
今度こそブリッジを出る。格納庫の位置を確認し、走り出した。

『おい、待て』
「なんだ、まだ何かあるのか!」

どこからともなく男の声が聞こえる。艦内であればどこにでも声は届くのだろう。

『白いデカブツは味方だ。ガロードの知り合いらしい。んで新しく来たやつは多分、Mr.ネゴシエイターってやつだ。あの声のやつ、最初の場所で見た覚えがある』

そういえば、クインシィにも覚えがある。主催者の少女に大見得を切っていた、黒服の男。やつだろう。
つまりはそれ以外、真ゲッターに似た黒い機体と黒いガンダムという機体を叩けばいい。

『俺の方はまだ準備に時間がかかる。ガロードを頼む』

男が何を言っているかわからないが、どうでもいい。まずはガロードだ。
格納庫に辿り着く。真イーグル号に乗り込みシステムを起動させる。
真ジャガー号の出力が上がらない――ジョナサンの棺。歯を食い縛り悔恨を呑み込む。
各ゲットマシン、真イーグル号のシステムに同調。自動操縦スタンバイ。
いける。本調子ではなくとも、十分戦闘は可能だ。
ハッチが開く。あのバサラという男がやってくれたようだ。
操縦桿を握る。叫ぶ――

340怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:45:20 ID:msYk6SUr
「クインシィ・イッサー! 真イーグル号、発進する!」

弾丸のようにナデシコから飛び出る。後続の二機の位置を確認、調整。そして。

「チェェェェェェェェンジ! ゲッタァァァァァァァァァァァワンッッ!」

合体。
遅い、ジョナサンならもっと早く――無意識の苛立ちを振り払う。
今は――

眼下で、二機の黒い機体が縺れ合いながら移動していく。ともに排除対象。
残ったのは白い機体とネゴシエイター。急行し、回線を開く。

「――ガロードはどこだ?」

相手は何か言っていたが、気にせず割り込んだ。
一拍の後、応答。白い機体だ。

「お前は……クインシィ・イッサーか?」
「ああ。ガロードは無事なのか?」
「待て。……よし、あそこだ。損傷はないようだ」

ガンスレイヴに飛ばした念を辿り、位置を特定。
瓦礫の下、ガンスレイヴに守られてマジンガーZの頭部は無事だった。

「ガロード……良かった。まだ生きてる……」
「クインシィ、状況は見ての通りだ。初対面ではあるが、協力を要請する。やつらを仕留めるのに手が足りない」
「待て、シャギア。まだ……」
「貴様は黙っていろ、ネゴシエイター! ……クインシィ、やつらを倒さねばガロードも危ない。ここは手を貸してくれ」
「……いいだろう。おい、ネゴシエイター。お前の話はあとで聞く。今はガロードをナデシコへと連れて行け」

ロジャーは彼らを止める言葉を思いつかない。
そのまま、ヴァイクランと真ゲッターは激突する殺戮者たちの下へ向かって行った。
341怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:46:13 ID:msYk6SUr
     □


『くっそ、また誰か来るのかよ! どうなってやがるんだ!』

一方、ナデシコに残ったバサラの目は近づいてくる頭のない機体――ガナドゥールを捉えていた。
戦闘区域を迂回し、ゆっくりと近づいてくる。その身体は今にも倒れそうなほど傷ついている。
目視で見える距離に入った。オモイカネに通信回線を開くことを求めた。

『そこの機体! おまえはナデシコに用があるのか?』
「……ええ、そうよ。あなたはナデシコの代表かしら?」

返ってきた声にバサラは息を呑む。この声――

『比瑪? お前、宇都宮比瑪か!?』

そう、聞こえてきた声は目前で命を落とした宇都宮比瑪、そのもの。
バサラはその眼でしかと見ていた。彼女が高熱に焼かれ消滅する瞬間を。だからそんなはずはない、わかってはいるのだが――
だからと言って芽生えた希望を幻想と切り捨てることができるほど老成してもいない。

「比瑪? いいえ、私はソシエ・ハイムよ」

もちろん、それは幻想でしかなかったのだが。
声は同じでも、違う。やはり比瑪は死んだのだ。
落胆するバサラ。が、何にしろ対話の機会には違いない。

『俺は、熱気バサラ。ナデシコの代表ってわけじゃないが、今ここにいるのは俺だけだ』
「そう……私達はナデシコと戦うつもりはないわ。状況を教えてもらえる?」

手短に説明する。

「ねえ、ナデシコは動かせないの? ここに留まってちゃ危ないわ」
『やってるんだが……出力が上がらねえんだ。一旦どこかに下ろして修理しなきゃならねえらしい』

オモイカネの示すセルフチェックの結果を見やる。戦艦の状態など門外漢のバサラだが、無理をすれば艦そのものが崩壊するだろうということはわかる。
ナデシコはここから動かせない。離脱するためにはナデシコを放棄するしかないということだ。
悩む二人。だが、事態は更なる役者を呼び込んだ。
けたたましく鳴るアラーム。レーダーにいきなり映し出された機影――2。

『またかよ!』
「ちょっと、アレ見て!」

ソシエが示す方向、空間が一瞬ぐにゃりと歪む。
発光、それが収まったときそこにいたのは雷の魔女、ストレーガ。そしてアンチボディ、ネリー・ブレン。
二度目のバイタルジャンプを敢行した彼らは、首尾よくナデシコそのものへと転移を成功させた。

「ナデシコ! 俺だ、甲児だ! 誰か応答してくれ!」

向かい合うナデシコとストレーガ。ネリー・ブレンは周囲を警戒するように剣のような武器を構えている。

「……仲間?」
『ああ、知り合いだ。――甲児、つったか。俺は熱気バサラ。さっきは世話になったな』
「お前……喋れるようになったのかよ! 良かったじゃねえか! これでまた歌を……あぁ? ああ、わかってるよ!」

バサラに応対した少年、甲児。声を聞いただけで脳天気そうなやつだとソシエは断定した。
彼は途中で誰かに話しかけられたかのような言動を見せた。

「バサラ、話は後だ。一体何がどうなってるんだ? ナデシコは大穴が空いちまってるし、向こうでは真ゲッターが戦ってる。そいつは誰だ? 何があった?」
『ああ、説明する。……っと、そうだ、この頭のないやつはソシエってやつが乗ってる。敵じゃない』
「ソシ「ソシエ!? 無事だったんだ!」
342怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:46:54 ID:msYk6SUr
甲児の声に被さり、また新たな声。甲児と同乗しているらしい。
この声を、ソシエは知っている。

「キラ!? あ、あんた何でそんなとこにいるのよ!」
「色々事情が……」
「キラ、そういう話は後だって。今は状況に対応する方が先」

また、知らない声。今度は女の声だった。

「私はアイビス、この子はネリー・ブレン。挨拶はいいから、手短に答えて。――フェステニア・ミューズはいる?」

おそらくソシエとさほど変わらない年の頃の少女が問いかける。そう、それはソシエも気になっていた。
彼女が知るままのテニアなら、この混沌とした状況を見逃すはずがない。

「そうだ、テニア! キラ・ヤマトを連れて来たんだ! さあ、いっちょ言ってやれ! この嘘つき野郎めってな!」
「僕は嘘なんかついてない!」
「もう、二人とも黙って! ――どう、テニアはいるの?」

何やら言い合いを始めたキラと甲児を置き去りに、アイビスが怒鳴る。
唯一その答えを知っているであろうバサラは――

『――テニアってやつは、もういない。ナデシコを襲ってきた奴と一緒に、どっかに行っちまったよ』

おおよその事情を察したバサラは、努めて感情を込めず呟いた。
テニアのことを説明するということは、甲児に比瑪のことも言わなければならないと――そういうことだから。

『俺はテニアってやつが何をしたか知らない。知ってるのは、ここで起こったことだけだ』

そして、覚悟を決めて語りだす。


――俺達はちょっと前にテニアと合流した。基地で化けもんみたいなやつに襲われたらしい。
テニアと一緒に行動してたオルバってやつは、テニアを逃がすために残ったらしい。だから助けに行こうって言われたんだが……嘘だったんだと。
シャギアには、離れていてもオルバと自由に情報をやり取りする力があったそうだ。
だから途中でネゴシエイターと会ったことも知ってたし、――テニアが、自分が逃げるためにオルバを囮にしたってことも……わかったそうだ。
正直俺にはマユツバもんな力だが、ガロードも証言した。本当のことだってな。
で、シャギアはテニアを殺そうとした……そのときテニアは、比瑪を人質にしたんだ。
比瑪はテニアの話を聞こうって言った。俺も、できれば止めたかった。
その次に、シャギアがぺガスを使って比瑪を助けた。
人質の比瑪を離して、シャギアがテニアを殺そうとして――そこで、さっきの話の、ナデシコを襲ってきたやつだ。
俺達はみんな格納庫にいて、接近に気付かなかった。先制攻撃を受けて、ナデシコは揺れたんだ。
あれは……防げなかった。シャギアの銃口の前に、比瑪が投げ出されたんだ。止められなかった――


――宇都宮比瑪は死んだ。シャギア・フロストの手で――



バサラはそう締め括った。
343怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:48:41 ID:msYk6SUr
『今、シャギアとクインシィってやつが襲ってきた別のやつらと戦ってる。ナデシコはここを動けない。――ざっと、こんなところだ』
「そんな……嘘だろ? 比瑪さんが、死んだ? 嘘だろ……嘘って言えよ、なぁ!」
『嘘じゃねえッ! 俺だって信じたくはねえ、でも……!』
「お前、歌で戦いを止めるって言ってたじゃねえか! なのに、どうして!
 どうしてテニアを止められなかったんだよ! どうしてシャギアさんを止められなかったんだよ! ――どうして、比瑪を助けられなかったんだよ……!」
『……ッ!』
「どうして、」

ぐっと、バサラは臍を噛む。それこそ正に、自分が思っていたことだから。
歌で戦いを止めるなどと言って、結局何もできやしなかった。
尚も言い募ろうとする甲児。だが、パァン――と、その口が開かれる前に音が響く。何かを叩いたような。

「甲児、後にして。今は敵を撃退する方が先だ」
「てめえ、キラッ! お前に何がわかるってんだ!」
「君の悲しみはわからない……僕は、その比瑪っていう人を知らないから。でも、今しなくちゃいけないことはわかるよ」
「そうだよ、甲児。シャギアさんとクインシィさんを助ける。でしょ?」
「アイビスさん……」
「ええ、今はロジャー達が抑えてくれてるけど、実際不利なのはナデシコを抱える私達だわ。数で勝ってるんだから、一気に押し切りましょう!」

キラ、アイビス、そしてソシエが言う。甲児の仲間を、シャギアを助けに行こうと。
なら、シャギアの最後の仲間である甲児のやるべきことは、決まっている。

「――――ああ! 今はシャギアさんを助ける! 小難しい話は後だ……!」

正義の魔神。その操者にふさわしく、熱き怒りの嵐を胸に、悪の炎を全て根絶やすまで――兜甲児は屈しない。

『お前ら……へへっ、そうだな。よぅし……!』

ブリッジの中央に立ち、相棒のギターを掻き鳴らす。
さっきは届かなかった。だが、膝を折ることはしない――今度こそ届けてみせる。この戦場に、戦う者たちに。
さあ、舞台は整った――熱気バサラ、ファイアーボンバーのボーカルにして銀河に響く歌声の持ち主がやることは唯一つ!



『戦いなんざくだらねえぜ! 俺の歌を、俺達の歌を――聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!』


344怒れる瞳 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 22:49:32 ID:msYk6SUr
機械の音声? 肉声じゃない?――そんなことは問題じゃない。
大事なことは。この胸に熱く燃える、ギラギラした魂を吐き出すこと。
だから、聞け。そして更に聴け。

熱気バサラ、一世一代の熱血ライブを――!!

ナデシコの全スピーカーを開放。
オモイカネが、ベース、ドラムやキーボード――ミレーヌやレイ、ビヒーダ。仲間たちの代わりにサポートしてくれる。
エリア丸ごと、戦場に響く歌声。突撃ラブハート――最高にノれるナンバー。
当然、至近距離にいる甲児たちには凄まじい音量だ。

「……え、ちょっと。なんで急に歌い出したのよコイツ……!?」
「いいじゃねえか。景気付けだ……チクショウ、俺も燃えてきたぜ――ファイヤーッッ!」
「うん、いい歌。心の底から勇気が湧いてくるよ」
「そうだね……なんでもできる、そんな気になる」

ソシエだけがノリ切れていないようだ。なんか悔しい――だから叫ぶ。

「ええい、もうっ! やってやるわよ……ボンバーッッ!」
『ハハッ、お前らも中々ノリがいいじゃねえか! うっし、ドンドン行くぜ! ――っと、そうだ、キラ、だったか?』
「え、うん。キラは僕だけど」
『お前、アスランってやつを知ってるか?』
「アスラン……!? あなたはアスランに会ったんですか!?」
『ああ。そうか、お前があいつの言ってた……へへ、変なもんだな。あいつじゃなくて、俺がお前に会うなんてよ』
「はい……。バサラさん、ここを乗り切ったらアスランのことを話してくれませんか? 僕は……会えなかったから」
『おうよ! ――じゃあ、次のナンバーはこれだ!』

一曲歌い切り、バサラが次に選んだ曲――それは葬送曲。
かつて友が逝ったというアスランに送った、死者へ手向ける鎮魂歌。
だが今は意味が違う。死者を送るためのものではなく、死地に赴く者の標となることを願って。
アスランが聴いたというその歌を背中に受け、少年たちは戦場へと向かって行った。
345それも名無しだ:2009/03/19(木) 22:51:18 ID:rVzaWANZ
バサライブキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!支援
346代理投下:2009/03/19(木) 22:54:19 ID:gQba6BQw
     □


「この歌は……?」

一人取り残されたロジャー・スミス。戦いを止めることも、また加わることもできずにいる。
今の彼にはどちらも資格がない。
ガロードを守るべく奮闘するクインシィ。
ユリカを殺されたガイ――アキト。
オルバを殺されたシャギア。
そしてその両方の原因たるガウルン。
この四者には確固たる意志がある。
その意志のないロジャーには、あの戦いに参加する資格がない。だから、こうしてガロード・ランの救助にあたっている。

意識のないガロードをパイルダーから引っ張り出す。
幸い、目だった外傷はない。頭部から出血しているものの深手ではなく、気絶の原因は脳震盪だろう。
手早く処置を済ませ、意識のない彼を担いで凰牙へと戻る。ナデシコへと移送しようと機体を回した時、「それ」は聴こえてきた。
銀河に響く、生命の歌。
プロトデビルン――神話の怪物すらも退ける、熱い魂の連なり。
おそらくはこのエリアすべて、いやもしかすればそれ以上の範囲に響き渡っているだろう。
中心はナデシコだ。言うまでもなく目立つ――その弊害など考えもしていない。ただ望むまま、思うがままにその存在を叫んでいる。
ロジャーには既にない若さ。それがひどく羨ましい。

ナデシコの方角から三機の機動兵器が飛来していくのが見える。
その内の一機はガナドゥール、つまりソシエだ。行く先……シャギア達が戦っているところ。
援護に行くつもりなのだろう。無茶な、と声が漏れる。
見たところ、一番大きな機体でもガナドゥールと黄色の機体がせいぜい24、5m。青い小型機にいたっては13mほどしかない。
ヴァイクラン、真ゲッター、ブラックゲッター。三機のパワーとは比較することすら無駄だろう。
唯一同サイズといえるマスターガンダムは、乗り手が恐ろしく腕が立つ。ソシエ以外は誰が乗っているか知らないが、それでもあの男以上とは思えない。
ガロードを乗せ、パイルダーを抱えて立ち上がる。彼をナデシコに送り届けた後、自らも向かわねばならない。

騎士凰牙が走る。ややあって、ナデシコの目前というところまで来てレーダーが東に新たな機影を告げる。
対岸を仰ぎ見る。ガウルンとともにいた少年が頭をよぎる。彼だろうか?

「……なっ!?」

そして、現れたのは巨大な隻腕の天使。凰牙の2倍近いサイズ――真ゲッター並。
その名はラーゼフォン。機械仕掛けの神――にして、進化するプログラム、その苗床。
いかん、と頭の中でレッドランプが鳴る。ガロードというケガ人を抱えて相手のできる大きさではない。
天使は長大な剣を携えている。見覚えがある――青い騎士の剣。
ということはあの少年、ひいてはガウルンの仲間。いよいよ持って最悪の状況に追い込まれたらしい。
せめてもの抵抗として身構える。すると、天使は50mほどの距離で停止した。

「警戒するな。こちらに戦闘の意志はない」

通信。
安堵――いや、まだ早い。見極めてからだ。

「私はロジャー・スミス。そちらの名と、目的を確認したい」
「これはこれは、Mr.ネゴシエイターか。会えて光栄だ――私はユーゼス。ユーゼス・ゴッツォ。目的はナデシコの援護だ」

映像は仮面の男を映し出している。怪しいことこの上ない……が、先に仕掛けてこなかった以上ここで行うべきは交渉だ。

「状況は理解している。ガウルンなる男を排除するのだろう? 協力しよう」
「……感謝する。しかし、敵はあの男だけではない。ガイ――いや、テンカワ・アキトという男にも仕掛けられている。こちらの無力化もご協力願う」
「テンカワ――なるほど、了解した。しかし、それならナデシコをここから離脱させるべきではないか? あのような目立つことをしていてはガウルンの目を引くぞ」

天使は歌い続けるナデシコを指し示す。が、すぐにその右舷に空いた大穴に気付いたようだ。
347代理投下:2009/03/19(木) 22:55:54 ID:gQba6BQw
「なるほど、あの損傷で動けないという訳か。……それなら、私が向かって何とかしよう。君はガウルンを頼む」
「できるのか?」
「造作もない。援護はできんが、構わんな?」
「ああ。そうだ、ついでに彼を頼む」

コクピットを空け、ガロードを引っ張り出す。天使は意を察したか掌を伸ばしてきた。託す。

「頭を打っている。慎重に扱ってくれ」
「了解した」

これで身軽になった。
見据えた彼方では更に戦闘が激しさを増している――いや、何かおかしい。
望遠。真ゲッターが、増援の三機の内の一機を攻撃している!

「馬鹿な……何をしているのだ!?」
「行け、ネゴシエイター! ナデシコは私に任せろ!」

ユーゼスの後押し。今は逡巡している暇はない。

「すまん、頼んだ……!」

だからロジャーは彼の言うとおり戦場へ向けて駆けだした。
背中で、ニタリと嗤う仮面の悪意に気付かずに。
348代理投下:2009/03/19(木) 22:56:49 ID:gQba6BQw
     □


「クインシィ、後ろだ!」
「わかっている! 弾幕を絶やすな!」

真ゲッターの振り下ろす大鎌を、ブラックゲッターの戦斧が受け止める。
その背後から飛びかかるマスターガンダムは、ヴァイクランの放つ光弾が弾き飛ばす。
ゲッターロボ同士の鍔迫り合いは、黒い戦鬼に軍配が上がる。一人が駆る一人乗りと、一人しかいない三人乗りの差。
ゲッターサイトが弾かれる。だがその瞬間にチャージが完了。

「ゲッタァァァビィィィィィイイムッッ!!」

クインシィの咆哮とともに、幾条ものゲッター線を凝縮した光線が放たれる。
ブラックゲッターはトマホークを縦横無尽に振るい、ビームを迎撃する。
やはり同じゲッターを扱う者同士、手の内はわかるようだ。
後退する。背にヴァイクランを置き、右手にはブラックゲッター。左手にはマスターガンダム。

強い――。それがクインシィの実感。
敵手のみならず、後ろの男もかなりの使い手。
実際単騎で戦えば、真価を発揮しきれない真ゲッターでは荷が重い相手ばかりだ。
ブラックゲッターはビームこそ撃ってこないものの、単純な格闘能力は真ゲッター並。
マスターガンダムは凄まじい機動性を武器に、虚々実々の動きを見せる。
唯一味方であるところのヴァイクランは強固なフィールド、そして甚大な威力の砲撃を放つ。
そして例外なく一流、いや超一流の乗り手ばかり。
クインシィは自らの技量が彼らに劣るとは思ってはいないが、ゲッターロボの本領たる変形戦法を封じられて攻め手に欠けることを、認めずにはいられない。

そして驚くべきことに、ブラックゲッターとマスターガンダムは特に共闘していないのだ。どころか隙あらば互いに刃を、拳を送り込んでいる。
それでいて、組んだこちらと対等。
並々ならぬ技量。改めて心中に刻みつける。

「いやぁ……楽しいねぇ。俺ぁ楽しすぎて狂っちまいそうだよ。お前もそうだろ、アキトちゃぁ〜ん?」
「黙れ」
「おうおう、つれないねぇ。じゃあアンタはどうだい、姉ちゃん。飛び入りだが中々いい腕してるなぁ」
「貴様の賛辞などいらん」
「なんだぁ……振られちまったか。まったくノリが悪い――ん?」

無駄口を叩くガウルンに構わず、何十回目かの攻撃をかけようとしたときにその歌は響いた。
がなり立てるスピーカーを黙殺しモニターを横目で睨みつける。発信源はナデシコだ。
あのトンガリ眼鏡――準備とはこのことだったか。

「お、BGMとは中々気が利くねぇ。よし、あいつを殺すのは最後にしてやろう」

などと楽しげにほざくガウルン。その声は喜色に溢れている。
戦いを遊び場にしているような男に負けるわけにはいかない――より一層精度を増した砲撃から、後ろの男も同じ考えだと確信する。
シャギアに手振りで指示を送る。即席のコンビだが、この男は見事に対応してくる。まるでペアでの戦闘が専門分野だというかの如く。
頷いたシャギア、こちらも頷き返し、突撃「やいやいやいやい! おめえらの乱痴気騒ぎもここまでだ!」を開始――何?

349それも名無しだ:2009/03/19(木) 23:00:08 ID:ppeklE2J
 
350それも名無しだ:2009/03/19(木) 23:03:52 ID:rVzaWANZ
支援
351それも名無しだ:2009/03/19(木) 23:04:31 ID:gQba6BQw
見れば、シャギアも困惑顔。カメラを回せば新たに現れた三機の影。
黄色い機体――ガロードが乗っていた機体だ。青い、頭部のない機体――見覚えがあるようなないような。
そして、最後の一機。
息が止まる。
クインシィは知っている。そう、あの機体は……

「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!悪を倒せとこの兜甲「――ユウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥウゥウゥゥゥッッッツッッッッッ!!!!」

目前の敵手のことも、背中を守る男のことも、あるいはガロードのことさえも。全てが彼方に吹き飛んで行く。
あのブレン。あの青いブレン――伊佐美勇、弟の駆るブレン!

身体が軋むほどの速度で宙に飛び出す。向かう先はネリー・ブレン。

「うあああああああああああああああァァァッッ!」

巨体にモノを言わせ、身体ごと叩きつける力任せのパンチ。だがスピードが尋常ではない――ブレンなど、掠っただけで木端微塵。

「アイビスッ!」

クインシィの知らない声。ブレンに到達する直前、視界をプラズマが駆け抜ける。
腰のあたりに着弾。姿勢制御が崩れ、拳がブレンパワードを捉えられず。
黄色い機体が腕を掲げている。邪魔をした――敵だ。

「ちょっと、待ってよ! アンタ一体何のつもり!? あたしはアイビス、勇なんて名前じゃ」
「うるさいッ! ユウを……ユウを出せッ! 私の、ユウを……返せぇぇぇぇッッ!」

真ゲッターは止まらない。クインシィの激情そのままに、ネリー・ブレンへと打ちかかっていく。
再びのパンチ。

「甲児!」
「わかってる!」

が、黄色い機体が割り込んで来る。
そいつはサイズは真ゲッターの半分ほどのくせに、ガッチリと真ゲッターのパンチを受け止めた。

「甲児君! 無事か!?」

シャギアの声が飛ぶ。先程の名乗りは間違いなく兜甲児だった。
これ以上失う訳にはいかない駒――仲間。

「……え、うん。わかった、甲児は操縦に専念して――こちらはキラ・ヤマト。シャギアさん、聞こえますか」

だが、甲児の機体から返ってきた声は甲児のものではなく。

「キラ――ヤマト!? なぜそこにいる!」
「詳しい話は後です。僕は戦いに来たわけじゃない――それだけは確かです!
 それより、クインシィさんは一体どうしたんですか!? 勇って誰のことです!?」
「……知らん! ガロードの話では彼女の弟らしいが、ここに来ているかどうかすら不明だ!」
「だったら、彼女を止めてください! このままじゃ……!」
「そうしたいのは山々だがな……ッ!」
「よそ見してんじゃねぇよッ!」

ヒートアックスが投擲された。シャギアは慌ててフィールドを展開する。
そう。ガウルンが、ヴァイクランの離脱できる時間を与えないのだ。
352それも名無しだ:2009/03/19(木) 23:05:12 ID:gQba6BQw
「大変だなぁ。お仲間が助けに来たかと思えば、さっきまで組んでた相棒がイカれちまって。
 肝心の自分はまた一人ぼっち――んん〜、カワイソウなシャギア君! お兄さんが慰めてやるよぉッ!」
「この――狂人め!」
「褒め言葉だぜ、兄ちゃん――っと! アキトぉ〜、お前さんもしつこいねぇ。俺としちゃあ嬉しいんだがよぉ」
「……」

背後からのトマホークブーメラン。だがマスターガンダムは、一つを蹴り落とし一つをその腕で掴み取った。
もはやガウルンの軽口に付き合う気はないのか、無言で距離を詰めに来たアキト。
マスターガンダムの腕が閃き、手斧が唸りを上げてヴァイクランを襲う。
最後のガンスレイヴで撃ち落とす。その間にガウルンは離脱――その手には放り出されていた大鎌。
ブラックゲッターの一撃をゲッターサイトで受け止めるマスターガンダム。
隙がない。やはり、この機体ではアキト、ガウルンは同時に捌ける相手ではない。
舌打ちする、シャギア。
背後で物音。咄嗟に機体を回すも、そこにいたのは騎士凰牙、ネゴシエイターの機体。
騎士凰牙はシャギアの横をすり抜け、アキトの駆るブラックゲッターの前に立ちはだかった。

「シャギア、こちらは任せろ。君はガウルンを頼む」
「ネゴシエイター……戦う気になったのか?」
「私とて、子ども達を戦わせておいて涼しい顔でいられるほど腐ってはいない……それだけだ」

ヴァイクランと騎士凰牙、背中合わせに立つ。
ともあれ、これで一対一対一から一対一が二組へ。少しは余裕のある戦いができる。

「ガイ――いや、テンカワ・アキト。君は私が止めるよ。ユリカ嬢のためにも」
「言ったはずだぞ。貴様がユリカの名を口にするな、と」

「チッ、ネゴシエイターめ。いいところで水差しやがる……まあいい。アンタにもそろそろ飽きてきたんでな、死んでもらうぜ」
「やれるものならやってみるがいい。返り討ちにしてくれる!」

クインシィ対アイビス、甲児、キラ、ソシエ。
アキト対ロジャー。
ガウルン対シャギア。

役者は集い、相手を替えて戦いは続く。バサラの歌だけが変わることなく流れていく――
353代理投下:2009/03/19(木) 23:05:49 ID:gQba6BQw
『……ッ、か、はぁっ、はっ。ぐっ――次だ! オモイカネ!』

息継ぎもそこそこに、次の曲を指名する。
思い出せる限りの曲は入力している。ナデシコを統べるAIは即興にしては十分すぎるほどの音楽を奏でてくれる。
バサラにできることはただ、歌うことだけ。
歌って、歌って、歌い続ける。山を動かせると信じひたすらに歌っていた少年時代――あの頃のように。

が、オモイカネはモニターに大きくバッテンを表示する。ご丁寧にブー、ブー……とSE付きだ。
歌うことにのみ全精力を注いでいたバサラは気付かなかったが、いつの間にかナデシコに一機、肉薄する機体があった。
ぼんやりと映し出されたその機体のシルエット、頭部に生えた翅――

『ラーゼフォンじゃねえか!』

そう、バサラに支給された人造の機械神。
奪取したカテジナが放送で呼ばれたことから、破壊されたものと思っていた。

『そうか……やっぱりお前も俺と歌いたいんだな! いいぜ、セッションといこうじゃねえか!』

バサラはラーゼフォンを奪われたとき、必ず自分の下に戻ってくると信じていた。
一緒に歌った……根拠はただそれだけ。それだけで十分だった。
が、やがて明瞭になったその姿はバサラの記憶とは大きく異なっていた。
右半身はほぼ削り取られ、胴体全面は見る影もなく傷ついている。
左手には太刀。そして何より、胸部に無理やり接続されたようにしか見えない球体が異彩を放つ。
完全なるラーゼフォンを知るバサラからすれば、その姿はひどく歪で不自然なものに見えた。

「ナデシコ、応答しろ。こちらはゼスト、ユーゼス・ゴッツォ。着艦を求む」

戸惑うバサラをよそに、ラーゼフォンから通信が入る。

『――ナデシコ、熱気バサラだ。着艦するつったが、どういうつもりだ?』
「手短に言う。ここから離脱するため、ナデシコのコントロールを預けろ。この機体なら損傷した箇所のカバーができる」
『どういうこった。ラーゼフォンにそんな機能はないはずだぜ?』
「ラーゼフォン? ――ああ、この機体の名前か。君はこれを知っているのか。
 そうだな……詳しくは言えんが、私が手を加えてそういうことができるようになった。今はそれで納得してくれ」
『納得ったってな……』
「済まんが、議論している時間はない。早く向こうで戦っている彼らの援護に向かわねばならん。制御中枢の所在を教えてくれ」

男の言葉を、渋々だがバサラは了承した。
歌を止めることになるが、我を通して甲児達の足を引っ張るわけにもいかない。
オモイカネに指示し、ラーゼフォン――ゼストと直接回線で接続を行った。
数秒の後……

バサラの眼前を、一斉に表示された警告表示が埋め尽くした。

『な……なんだ!? 何がどうなってやがる!』

コンソールに走り寄る。
明滅し、いくつものウィンドウが開いた次の瞬間消えてゆく。
スピーカーからサイレンのような効果音が鳴りだした。バサラはそれを緊急の――オモイカネのSOSだと直感した。
やがて何重にも展開したウィンドウがすべて消える。残った表示は一つ。

【NERGAL ND-001 NADESICO  ナデシコ級一番艦「ナデシコ」管理AI「オモイカネ」、削除シークエンス実行中】

その文字列の下にはゲージが一つ。70、75、80、85――さして間を置かず、100に到達した。

その瞬間、艦内すべての照明が落ちた。突如として暗闇の中に取り残される。
何が起こった――そう言おうとした。だが、喉からではなくスピーカーから聞こえてくるはずの自分の声は、ない。
コンソールに僅か残る光を頼りに手の甲を確認する。
354代理投下:2009/03/19(木) 23:06:28 ID:gQba6BQw
注入されたナノマシンは効果を発揮するとき、淡く輝きを放つ。それが、ない。
わけも分からず、バサラは叫ぶ――叫ぼうとした。力を込めた喉からはヒューヒューと空気が漏れる音だけ。
そして、唐突に照明が復帰した。
眩い光は混乱していたバサラの心にも落ち着きをもたらした。停電でもあるまいし、今のは何だったのだと、呟く。

呟こうと、した。

声は、戻っていない。

愕然と立ちすくむ。やはりさっきのは自然に起こった事故などではない。
何かのきっかけがあり、起こるべくして起こったもの。
何か――そんなもの、一つしかない。あの仮面の男だ。
コンソールを操作し呼びかけようとする。だが反応がない。
苛立ち、拳を液晶に叩きつけた。

「あー、聞こえているかね? ユーゼスだ」

押し付けた拳の先。腕を引くと、仮面の男が映っている。

「ど……う、……っ!」

いくらかマシになったとはいえ、やはりままならぬ喉を絞る。声は出なくともこの形相を見れば要件などすぐにわかりそうなものだったが。

「説明しろと言いたいのだろう? 君の喉のことは把握している。よろしい、聞きたまえ。
 ――ナデシコはたった今、私の手に落ちた。オモイカネとかいうAIはデリートしたよ」
「……!」
「君にはしばらくそこでじっとしていてもらおう。隔壁はロックさせてもらった。もちろん通信も繋がらんよ。では、また後でな」

ブツリ、とモニターから男の顔が消える。
急いでパネルを操作するも、男の言ったとおり全ての機能が封じられている。
照明と空調だけが機能しているのは情けだろうか。何にせよ、隔離されたことに変わりはないが。

(チクショウ……ふざけやがって! こんなもんで俺の歌を止められると思うなよ!)

ギターを担ぎ、ブリッジと通路を繋ぐ扉へと駆け寄る。もちろんロックされていたが、バサラはそれでも諦めない。
手で引っ張って開かないと見るや、一歩下がってその長い足を振り回す。
二度、三度となく蹴りつける――ビクともしない。
最新鋭の戦艦の扉が、推理小説などでよく叩き壊されるドアのように吹き飛ぶはずもなく。
数分、バサラが扉を蹴りつける音のみが響く。

(……くそっ! 何か、何かないのか! ここから出て、甲児達に知らせる方法は――!)

考える。ひたすらに考える。
バサラはブリッジに閉じ込められていて、甲児達は遥か遠く。救出はもちろん期待できないので、自力で出るしかない。
だがバサラ単独の力では扉を開けられない。せめてオモイカネがいれば違ったのだろうが。
と、そこまで考えてようやくオモイカネがデリートされた、という事実が重くのしかかってきた。
ユーゼスの言葉はおそらく真実なのだろう。ナノマシンを介しても何の反応もない。
ただのAI――されど、一緒に歌った『仲間』。バサラはまた一人、友を失ったのだ。

(すまねえ……俺は自分のことばっかりで、お前のことを考えてやれなかったな。俺にできるのは、せめて――)

いったん脱出の件を頭から追い出す。どうせ何もできないのなら、何をしていても同じだ。
背負ったギターを取り出す。かき鳴らす響きは先程ともに演奏した葬送曲。
バサラなりの、友に送る手向けとして。

本人以外誰も聴くもののいないブリッジに哀切のメロディが響き渡る。
せめて声が出せればな……とバサラが自嘲した時、ガシュ、と。背後で扉が開く音が聞こえた。
355代理投下:2009/03/19(木) 23:07:07 ID:gQba6BQw
驚いて振り返るバサラ。扉が開いている――先程までどうやっても開かなかったのに。
次いでコンソールに光が灯る。
見れば、格納庫までの最短距離を示した艦内地図が表示された。そこに至る全ての障害は解除されている。
背景には大鐘のようなアイコン。そして、画面の端にはただ一言が添えられている。

『Hurry to the hangar.』

直感する。これは消えゆくオモイカネが示した最後の抵抗なのだと。
声の出ないバサラには声紋照合などできない。故に、そのギターの音色をトリガーとしてプログラムの奥底に隠蔽した。
最期の時間を自分ではなくバサラのために使った――その事実に胸がカッと熱くなる。

(お前……すまねえ。今は、甘えさせてもらうぜ!)

ギターを担ぎ走り出す。この異常は当然ユーゼスも気づいているだろう。
再び隔壁を閉じられる前に、辿り着かねばならない。

走って、走って――格納庫へと滑り込む。
その背後で隔壁が閉じる音が聞こえた。間一髪だったらしい。
とにかく、これで脱出の手段は確保できた。残っている機体へと近づく。

「止まりたまえ」

手近にあったぺガスへと向かったとき、ユーゼスの声が聞こえた。咄嗟に振り向くと、そこにいたのはプロトガーランド。
最悪なことに、ユーゼスが乗っているらしい。

「まったく、あのAIも面倒なことをしてくれる。君に今出ていかれては段取りが狂うのでな。
 大人しくしていられないなら、ここで死んでもらおう」

腕部のビームガンがバサラを照準する。ピタリと突き付けられた銃口に動きを封じられた。
目線だけを巡らし、辺りを確認する。
ハッチは開いている。その向こうにはラーゼフォン。
ぺガスは――遠い。走っても5秒はかかる。撃ち抜かれる方が早そうだ。
応戦しようにもバサラは銃など持っていない。仮に持っていたとしても、使いはしないのがバサラという男だが。

(こいつがここにいるってことは、ラーゼフォンは無人……やるっきゃねえ。こいつをすり抜けて、ラーゼフォンを奪う――!)

覚悟を決めた。重心を爪先に、踵を浮かせいつでも飛び出せるように構える。

「気に入らん眼だ。足掻き、諦めず、絶望しない……実に、不愉快だ」

ガーランドの腕が動く。発砲されてからでは遅い。
撃つ、その一瞬前。もう狙いの修正は効かない、その一瞬――
356代理投下:2009/03/19(木) 23:07:44 ID:gQba6BQw
(今だ!)

バサラの鋭敏な聴覚が捕らえた、ガーランドのスピーカーから漏れるユーゼスの呼吸。
吸って、吸って、止める――最も集中した瞬間。
バサラは横っ跳びに跳ねた。
スローになる視界の真ん中を光が横切っていく。避けられた……!
足を着き、その勢いのまま走り出す。
戸惑ったように動きを止めたガーランド。膝を蹴ってその頭部に駆け上がり、一瞬で脱いだ上着を巻きつけた。
小細工だが、これで時間は稼げるはず。
跳び離れ、今度こそラーゼフォンに向かおうとして――

「な……っ!」

プロトガーランドの背後……バサラの位置からは見えなかったところに、ガロード・ランが倒れていた。
思わず足が止まる。
止まらずに行けば、ラーゼフォンは奪えたはずだ。だがガロードを置いていくことになる。その一瞬の逡巡が、隙となる。
背後からプロトガーランドの腕が伸びる。
振り返ろうとしたときには首を掴まれ、抱え上げられていた。

「チッ……手間をかけさせてくれる。だがここまでだ」

息ができないほどではないが抜け出せもしない――そんな絶妙の力加減で絞め上げられる。
プロトガーランドのキャノピーが開き、ユーゼスが顔を出す。

「大人しく従っていれば、その喉を治すことも考えてやったものを。まったく度し難いな」

ユーゼスはその手に錠剤のようなものを弄びつつ言った。

「だがまあ、制御できん駒に用はない。お前はここで死ね」

もう片方の腕のビームガンがバサラに突き付けられた。
腹立たしいことに、ユーゼスはキャノピーを閉じない――最期の瞬間を観賞するつもりだというように。
全身に力を入れてもがく。だが、そこは小型とはいえ機動兵器。生身の力で敵うはずもない。
ビームガンに火が灯る。その様を凝視しつつ、ついにここまでかとバサラは思った。

「死ね」

ユーゼスの宣言、そして――

「ぺガアアアァァァァァァァァァスッッッ!!」

――絶叫。バサラのものでも、ユーゼスのものでもない。

そして、その声に応えるものがいた。
357代理投下:2009/03/19(木) 23:08:38 ID:gQba6BQw
「ラーサ」

格納庫の片隅で眠っていたもう一つのロボットが、その言葉を鍵に目覚めた。
ブースターに点火――猛然とガーランドに体当たりする。

「ぐ、おおっ……!?」

サイズはほぼ拮抗している。だが、加速した分ぺガスに利があった。バサラを掴んでいた手も離し、吹き飛ぶプロトガーランド。
投げ出されたバサラ。

「が……っ! ってぇ……」
「バ、サラ……!逃げ――るぞ!」

ぺガスの名を読んだ張本人であるガロードが、息も絶え絶えに叫ぶのが聞こえた。
見れば彼はなんとか身を起こし、ぺガスを傍らにハッチへと向かっている。
遅れじと立ち上がる。ふと、さきほどユーゼスが弄んでいた錠剤が目に入った。
喉を治す――本当かどうかわからない。ブラフかもしれない。
判断はつかなかったが、とりあえずそれを拾い上げて走り出す。

「貴様らぁっ!」

背後でプロトガーランドが立ち上がる音がした。
ラーゼフォンへは遠い――ぺガスの下へと走り、その影に身を隠す。

「捕まってろ、バサラ――飛ぶぞ!」

ガロードが言う。ぺガスがその身を人型から飛行機のような形状へと変える。

「ラ……フォ……!」
「ダメだ! あれは俺達には操縦できない!」

ガロードは断言した。
それはロジャーからユーゼスに自身が引き渡された時、身体は動かないながらもぼんやりとそのコクピットを見ていたが故の確信。
手が計器に触れても、首輪は操縦方法を伝えてはこなかった。
これはガロードの知らぬことだが、ユーゼスはAI1を媒介としてラーゼフォンを動かしている。
それは彼が類い稀なる頭脳と技量を兼ね備えていたからできることだ。
技量で言えばガロードとて負けてはいないが、AI1からもたらされる情報を同時に処理するには荷が重い――
長く一人で荒廃した世界を生き抜いてきたガロードには、直感としてそれがわかった。
だからあの機体を奪うことより、ぺガスを呼ぶことに賭けたのだ。
比瑪亡き後、ぺガスのマスターは空位だった。
その後初めて呼びかけた者が新たなマスターとなるという推測――ガロードは賭けに勝った。

ハッチから、弾丸のようにぺガスが飛び出す。
テッカマンブレード専用として調整されたその上部には、もちろん生身の人間が乗ることなど想定されていない。
故に全身の力を用い、バサラとガロードは振り落とされないようにしがみついていた。

「逃がすかぁっ!」

ハッチの淵に立ち、プロトガーランドがビームガンを乱射する。
二人がしがみついているため満足な回避運動ができないぺガスに、その光芒は容赦なく突き刺さった。

「ダメだ、墜ちる……ッ!」

ガロードの声が遠く聞こえる。
黒煙を吹き出し、地上へと加速度を増しぺガスが落ちていく。
その間バサラが見ていたのは、変わり果てた姿になったラーゼフォン。そして、今はもうユーゼスの支配下に落ちたナデシコ。

(済まねえ、比瑪、オモイカネ……)

やがて、彼らは地上へと激突した。
358それも名無しだ:2009/03/19(木) 23:10:12 ID:rVzaWANZ
ユーゼス、やりおったwwwww支援
359代理投下:2009/03/19(木) 23:10:14 ID:gQba6BQw
     □


マスターガンダムが片手だけで身の丈ほどもある大鎌を回転させる。
風を切る音が耳にうるさい。身を捻り、全身のバネを最大限に使い振り下ろしてきた。
念動フィールド展開。大鎌は、力場を少しづつ食い破りながらヴァイクランへと迫る。
だが欲しかったのはこの一瞬。

「――オウルアッシャー、マキシマムシュートッ!」

フィールドを解除。同時に充填していたエネルギーを解放する。
大鎌は右手を犠牲に防いだ。肘から先がすっぱりと切り落とされる。
そして至近距離からのオウルアッシャーが、マスターガンダムの頭部へと直進する。
瞬間、やつは身を傾けた――光弾は右目を中心に頭部を半分ほど削り取っていっただけだ。
機動性もさることながら、凄まじい追従性、反応速度だ。ヴァイクランでは真似のできない芸当。
シャギアは荒い息を吐く。

個別に戦闘を開始して10分は経っただろうか。
何度もヒヤリとする場面があった。
何度も好機と思う場面があった。
だが、勝負はつかない――つけられない。
カルケリア・パルス・ティルゲムが告げる仲間達の戦闘もほぼ同様と言えた。
遅れてきたロジャーは本当にアキトを倒す気があるのかは疑問だが、隻腕でアレを抑えていると考えれば一応の信頼は置ける。
クインシィはどうしようもない。何度か呼びかけたが、一度として反応はなかった。
彼女はアイビスという少女を優先的に狙っているらしい。
甲児と頭部のない機体はうまく彼女に向かう攻撃を妨害しているが、基本的に殺すつもりはないようでやはり攻撃は甘い。
特に甲児だ。彼はクインシィと面識がある。ガロードの仲間ということで、敵だとは割り切れないのだろう。
そこが彼の美徳でもあるのだが――今は、それすらも腹立たしい。
戦況は停滞していると言えた。

(何か……何か、戦場を動かすきっかけでもあれば……!)

こちら側の機体が一機でも落ちれば、そこから一気に突き崩される。
クインシィが勝ったとしてこちらにまで仕掛けてくることはないだろうが、今さら組めるとも思わない。
アキト、ガウルンは論外。嬉々として横槍を入れてくるだろう。

「気を散らしてんじゃあねぇっ!」
「むう……ッ!」

一瞬、反応が遅れた。
マスターガンダムの左腕に、例の暗い光が瞬く。ブラックゲッターの刃を叩き折った力だ。
念動フィールドを、まるでバターを熱したナイフが溶かすかの如く切り裂いてくる。

「いかん!」
「終わりだぜッ!」

ダークネスフィンガーがヴァイクランの胸に齧りつく。
凄まじい熱量――装甲が一気に浸食される。
モニターに亀裂が走る。

「ぐおおおっ……!」
「楽しかったぜ、兄ちゃん。あばよ」

ガウルンはもはやこちらに興味を半ば失いつつあるようだった。
更に強く掌を押し込んでくる――

(ここまでか――だが、貴様も連れて行く!)

べリア・レディファーを撃つ時間はない。だが、溜めこんだエネルギーを一気に解放することはできる――自爆。
意を決し、マスターガンダムを見据える。
360それも名無しだ:2009/03/19(木) 23:16:08 ID:rVzaWANZ
支援
361それも名無しだ:2009/03/19(木) 23:43:53 ID:W0Jeja8J
支援
362戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:45:09 ID:msYk6SUr

「――――!?」

見据える、そこには何もいなかった。
いや――左手のビルにマスターガンダムが叩きつけられている。

「無事かね?」

見上げればそこにはまた新たな機体。
これまた隻腕の、50mはあろうかという天使のような。

「だ……誰だ?」
「私はユーゼスという者だ。ロジャー・スミスに請われガロード・ランをナデシコに移送した。
 援護する、我々はやつを討つぞ」

モニターに映る仮面の男。
天使――ラーゼフォンは剣を抜き放った。その剣には見覚えがあるような気がしたが、詳しく思い出せない。

「ってえ、な……おいおい、タオルを入れるにしちゃあ随分手荒じゃねえか」
「乱入が禁止とは聞いていなかったのでな」

マスターガンダム、ガウルンはまだ動けるようだ。
サイズ差にして実に三倍の両者が向かい合った。天使が剣を振り下ろす――当たれば即両断は間違いない威力。
シャギアは突然現れたこの仮面男を信用するべきかどうか迷う。だが、現実としてガウルンと敵対している。
どうあれここが押し込むチャンスには違いないと自分を納得させる。

「私の機体は砲戦型だ。後方から援護する!」
「了解した」

ラーゼフォンが前に出て、ヴァイクランが援護する。
それまで攻勢に出ていたマスターガンダムが逆に逃げの一手を打つことになった。
ゲッターサイトが五大剣を受け止め――いや、いなす。オウルアッシャーを足元に向けて撃った。
マスターガンダムは飛び上がって回避。そこにラーゼフォンの太い足が唸りを上げて喰らいつく。
吹き飛んで行くマスターガンダム。これはいける、と確かな手ごたえを感じた。

幾分余裕ができたので、周囲の戦況を確認。ロジャーはいよいよ持って苦戦している。
ガウルンを倒した後、まずは彼を援護すべきか。
次いで真ゲッターと相対している面々へ目を向ける。
甲児の機体、ストレーガには損傷が増えているものの、致命打はなさそうだ。
本来ならここで声をかけるのは注意をそぐことになるが――今、ストレーガにはキラ・ヤマトも同乗している。
何故一度敵対した彼がここにいるかはわからない。交渉が望みだったとして、その身一つで乗り込んでくるとは見上げた度胸だと思ったが。
とまれ、彼に聞くのが一番情勢を把握できるだろう。

「キラ・ヤマト、応答しろ。こちらはシャギア・フロストだ」
「――はい、キラです。どうしました?」
「そちらの戦況はどうだ? 援護が必要か?」
「正直、厳しいです。クインシィさんを止めるにしてももう一機欲しい。そちらはどうです?」
「こちらは心配しなくていい。今、ユーゼスという男が援護してくれている。直にガウルンを撃破できるはずだ」
「ユーゼス……!?」
363戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:46:07 ID:msYk6SUr

ブツ、と通信が途絶。ストレーガが激しい機動に入ったのだろうか。
警告音。
横手からブラックゲッターが突っ込んできた。ロジャーは突破されたようだ。
警戒する――が、ブラックゲッターはヴァイクランには目もくれずラーゼフォンと交戦中のマスターガンダムに向かっていく。

「ユーゼス、後ろだ!」

声を飛ばす。ラーゼフォンはだが悠然と、むしろゆっくりとした動作で道を空けた。
ブラックゲッターがそこに飛び込み、マスターガンダムを連れて離れていく。
今のは、まるで自分が攻撃されないと確信していたかのような動きだった。

「……さん! 応答してください! シャギアさん!」

するとオープン回線でキラの声が聞こえた。先程までの指向性の通信とは違い、この戦域にいる全ての者に届く声だ。
ひどく焦っている。何か大事なことを伝えようとしている、そんな声だ。
通信機をいじるも、ミノフスキー粒子が濃いのか回線が繋がらない。仕方なしに、シャギアもオープン回線で応える。

「どうした、キラ・ヤマト。何を焦って――」
「その人は危険です! テンカワ・アキトと組んでいます!」

キラは一息に言い切った。一瞬、こいつは何を言っているんだ――と思考に空白が生まれた。
気がついた時には、目の前にラーゼフォン。剣を振りかぶっている――

「な」

震動、轟音、痛み――ヴァイクランを縦に真っ直ぐ斬り下ろす剣。
シャギアの意識は闇に落ちた。
364戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:46:50 ID:msYk6SUr
     □


「……ラ! おい、しっかりしろ! おい!」

揺り動かされる感覚。耳に滑り込んでくる声――
目を覚ますと同時、身体のあちこちがバサラに激痛を訴えてきた。
廃墟の一角、ナデシコからほど近い場所。
身体を起こす。隣にいたガロードが息をついた。
どうなった。そう言おうとして、声が出ないことを思い出す。手振りでなんとか言いたいことを示した。
腕を押さえているガロードは頷き、

「ああ、俺達は少し気絶してたらしい。俺も今ぺガスに起こしてもらった」

と、ぺガスを指で示す。釣られて見やると、ぺガスはひどいものだった。
あちこちに損傷が見られ、腕は片方が丸々欠落している。
バサラとガロードが地面に激突する瞬間、その身を犠牲にして二人を庇ったためだ。

「あのユーゼスってやつ、俺達が死んだものと思ったんだろうな。止めを刺さずに行っちまった」

見上げた遥か遠くで、そのユーゼスの駆るラーゼフォンがヴァイクランとともに戦っていた。

「多分、シャギアには俺達のことは何も言ってないんだろう。あのガンダムを倒すことを優先してるらしいけど……」

と、ガロードが立ち上がりぺガスの下へと歩いていく。
腕だけでなく、足も片方引きずっている。とても万全とは言い難い状態だ。
慌てて追い付き、肩を掴む。どこに行く気だ、と視線で問いかけた。

「ああ……お姉さんを、止めなきゃさ。ストレーガには甲児が乗ってるはずだから、多分お姉さんは勘違いしてるんだ。俺が止めてやらなきゃ……」

その怪我では無茶だ、と言いたかった。だが、ガロードの決意の眼を見てその言葉は喉元で止まる。
代わりに、ぺガスへと乗り込むガロードを手伝い、自身もよじ登った。

「おいおい、アンタも来るのか?」

当然、と親指を立てた。たとえ歌えなくてもできることはあるはずだ。
やや時間をかけてぺガスが浮上する。大体ビルの3回ほどの高さまで上昇した時――
365戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:47:49 ID:msYk6SUr

「……ッ!?」

ドン、と横から押された。
急速に迫る地面。慌てて姿勢を整え、猫のように四肢をすべて使い着地した。
ぺガスを、いやガロードを睨みつける。何のつもりだ、と。

「悪いな、コイツは一人乗りなんだ――それに喋れないアンタがいても、役に立たない。わかるだろ?」

ガロードが釈明する間にもぺガスはどんどん高度を上げていく。

「アンタはここで隠れてるんだ。全部終わって、無事だったら迎えに来る。
 戻ってこなかったら……そうだな、ほとぼりが冷めるまで待ってこの街を脱出するんだ。
 マジンガーZのパイルダーが放置されてたから、あれを使えばいいよ。
 そんで、D-3の市街地に行くんだ――アムロさんがいるはずだから、俺の名前を出せば信用してもらえると思う」

聞きたいのはそんなことじゃない――バサラは今ほどこの喉を恨めしいと思ったことはない。

「じゃあ、な……死ぬなよ。アンタの歌、俺、好きなんだからさ」

そして、ぺガスは行ってしまった。一人取り残されたバサラ。
どうするべきか。
隠れる? ふざけるな、絶対にNOだ。どうにかしてあの戦闘に介入する。
が、まさか生身で行くわけにもいかない。

『マジンガーZのパイルダーが放置されてたから』

ガロードの言った言葉だ。マジンガーZがやられたところはここからさほど遠くはない。
意を決し、走り出す。
瓦礫を越え、道路をひた走る。
ふと、ポケットの中の錠剤の存在を思い出した。
これを飲めば声が出る――ユーゼスはそんなことを言っていた。
迷う。だが、今はその時ではないと走ることに意識を集中した。
366戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:48:56 ID:msYk6SUr
     □


「エネルギーが半分切った! 甲児、もっと抑えて!」
「無茶言うな! 手加減して何とかなる相手かよ!」

狭いストレーガにはのコクピットで二人の少年が怒鳴り合う。
兜甲児、キラ・ヤマト。一度は銃を手に向き合い、今は何故か呉越同舟の身。
甲児は真ゲッターの動きを止めようと躍起になっているものの、元々のパワー、そしてスピードが違いすぎる。
ネリー・ブレンに乗るアイビスの回避が間に合わないときに割り込んでいくのも、そろそろ限界だ。
そして二人を焦らせている理由はもう一つ。

先程シャギアに通信したときに出た名前、ユーゼス。
ブラックゲッターがこの戦場にいたことから予想はしていたものの、まさかシャギアを援護しているとは思わなかった。
それでもカミーユから事のあらましを聞いたキラは確信した。何か裏があると。
突如使えなくなった通信回線をいじりつつ、説明を求める甲児に叫び返す。

「おい、ユーゼスさんとアキトさんが敵ってどういうことだ!? あの人達は主催者に反抗してるんだぞ!」
「僕の仲間が襲われたんだよ! それに、主催者に反抗してるからって安全な訳じゃない……他人を利用するためだってこともある!」

甲児も彼らと接触した一人だ。その印象は良いものであったからこそ、キラの言葉がにわかに信じられない。
しかし現実、アキトが駆るブラックゲッターはシャギア、クインシィ、そしてロジャーと交戦している。
半信半疑そうではあるが、とりあえず『味方ではない』という程度の認識は甲児にも伝わった。
ともあれ突如濃くなったミノフスキー粒子に手を焼きオープン回線で伝えたものの、シャギアからの応答はなく。
様子を見に行きたいが、もしストレーガがここを離れればアイビスが窮地に陥る。
そんなジレンマの中、索敵を続けていたキラは予想が最悪の形で的中したことを悟る。
ヴァイクランが黒煙を吹き上げ、膝をついていた。
その近くでネゴシエイター操る騎士凰牙と、巨大な天使が交戦している。
ヴァイクランが止めを刺される前に、ブラックゲッターを追ってきたロジャーが割って入った結果だ。
マスターガンダムはブラックゲッターと激しく交錯している。そちらは今は手を出さなくても良さそうだ。

そして、遅まきながらもバサラの歌が聞こえないことに気付く。
もしやユーゼスが、と想像はどんどん悲観的になる。
とにもかくにも、クインシィをなんとかしなければ――焦りだけが膨らんでいく。

「ダメ――もうバイタルジャンプを続けるエネルギーがない!」

アイビスの悲鳴。小柄なブレンの最大の武器、短距離転移が使えないという知らせ。
ソシエ操るガナドゥールも限界は近いのか、放たれる攻撃の頻度は減っている。
臍を噛む。何故、自分はただ見ているだけなのか――力が欲しいと、キラは強く願う。
接近警報。
新手かと真ゲッターに集中する甲児に代わり、サブモニターを確認。
そこに映っていたのは――

「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」

小さな影が、止める間もなく真ゲッターとネリー・ブレンそしてストレーガが入り乱れる空域に突っ込んできた。
その影――なんと生身。
飛行形態になったぺガスの上で、ガロード・ランという少年が強風にその身を晒し、両手を広げ真ゲッターの前に立ちふさがった。

「あいつ……ガロード!?」

上ずった甲児の声。キラも、アイビス、ソシエも同じ気持ちだった。
プラズマや熱線、ビルをも粉砕する拳が入り乱れる戦場に生身で乱入するなど正気の沙汰ではない。

「止めるんだ、お姉さん。この人達は、お姉さんの探してる勇じゃない!」

そんな驚愕をよそに、ガロードは真ゲッターを駆るクインシィに語りかける。
367戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:49:35 ID:msYk6SUr

「お前……ガロード! 自分が何やってるかわかってるのか!? そんな危ない真似をして!」
「危ないって言うならお姉さんの方がよっぽど危ないよ……とにかく! 止めるんだ、お姉さん。お姉さんのやってることは間違ってる!」
「だ――黙れ! そのブレンはユウのブレンだ! だったら、ユウが乗ってなきゃおかしいだろう!?」
「だから私はアイビスだってば! 人違いなの!」
「うるさい! だったらそのブレンだけでも壊すんだ! そうすれば、戦う力のなくなったユウなんて簡単に……!」
「お姉さん!」
「うるさい――どくんだ、ガロードっ!」

真ゲッターが、拳をぺガスに――そこに立つガロードに突きつける。
このままでは彼が危ない。キラと甲児はそれをアイコンタクトでアイビス、ソシエに伝える。
二人は頷き返してきた。
真ゲッターが動く瞬間取り押さえようと、神経を緊張させる――

「みんな、大丈夫だ。手を出さないでくれ」

が、当のガロードから制止の声がかかった。
何か策があるのかと、息を呑んでその挙動を見守る。

「お姉さん――俺の言ってることが、信じられないかい?」
「ガロード……他のことならまだしも、これだけは譲れない。邪魔をするなら――」
「――するなら、俺を殺す? でもダメだぜ、お姉さんに俺は殺せない。何故なら――」

滞空するぺガス。ガロードはその淵に立ち――

「アーイ、キャーン……フラァァァァァァァァァァァァイッッ!」

飛び降りた。

「……なっ!?」

呟きは誰のものか――おそらくは全員だろう。
ガロードの身体は天空から真っ逆さまに落ちていく。
ストレーガが動こうとした。甲児だけでなく、アイビス、ソシエもまた同時に。
だがそれよりも早く――

「ガロードォォォォォォォォォォッッッ!!」

真ゲッターが、残像すら残しかねない速さでその後を追った。

ガロードを追い越し、地面に激突する寸前でオープンゲット。
真ベアー号のキャノピーが開き、間一髪でそのシートがガロードの着地点となる。

ゲットマシン三機が足並みを揃えて旋回する。その内部で、

「いてて……た、助かったぁ……」
「ガロードッ! お前、お前――馬鹿かっ!」
「うわ、やっぱり怒ってる……」

クインシィが、鬼の形相でガロードを怒鳴りつけていた。

「待ってよ、お姉さん。俺的にここはよく助かったっていう感動の――」
「黙れ! あんな危ないことをしておいて何が感動だ! 私が動かなかったらどうするつもりだったんだ!」
「――でも、お姉さんは動いた。復讐よりも俺の命を助けることを選んだ。だろ?」
「そ、それは……」
「言っても分からないだろうって思ったからさ。でも、良かったよ。もしかしたら見捨てられるかと思った」
「……私が、お前を見捨てるはずはないだろう……馬鹿」
368戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:50:50 ID:msYk6SUr

それきり、不貞腐れたように黙るクインシィ。
ホッと、ガロードは息をついた。賭けだったが、何とかクインシィを落ち着かせることはできたようだ。
見守るストレーガに通信を入れる。

「甲児、何とかなったよ。お姉さんは落ち着「お前は馬鹿かッ!!!!」

途端、怒鳴り声がコクピットを満たす。甲児一人のものではない――他に知らない声が三人も。

「何考えてんだこの馬鹿! 死ぬ気かこの馬鹿! ええと、とりあえず馬鹿野郎!」
「アンタ何考えてんのよ馬鹿じゃないの!? 馬鹿、この馬鹿!」
「声は老けてるくせに頭の中身は空っぽじゃないのこの馬鹿! 私寿命が縮まったわよ!」
「君はば……いや、ええとみんな落ち着いて。とりあえず怒るのは後にしよう」

最後の一人、少年は自分以外の三人の声に押されたか怒鳴ることなく提案した。多分他の面々の剣幕に引いていたのだろうが。

「ガロード……だよね? 僕はキラ・ヤマト。アムロさんから話は聞いてるよ」
「あ、ああ。そんなに怒らなくても……い、いえ! 何も言ってません!」

ぼやくガロードは途中でクインシィに睨まれた。

「アムロさんから? ああ、よろしくな! 俺はガロード・ランだ!
 とにかく! お姉さんはもう大丈夫だ! ……だよね?」
「ふん」

モニターの向こうでクインシィがそっぽを向く。機嫌を取るのには苦労するだろうが、少なくとももう暴走はしないはずだ。

「よし、じゃあシャギアさんとロジャーさんを助けに行こう! 甲児!」
「あいよ!」

キラの号令を機に、ストレーガ、ガナドゥール、ネリー・ブレンときて殿に真ゲッターがつく。
すぐに騎士凰牙は見つかった。何しろラーゼフォンの巨体は目立つ。

「ソシエ、アイビスと一緒にシャギアさんの様子を見てきて。クインシィ……さんは、僕らと一緒にロジャーさんの援護をお願いします」
「……」
「お姉さん」
「……わかってる! 私に命令するな!」

キラの指揮のもと、ストレーガ、真ゲッターがラーゼフォンへと向かい、損傷のひどいガナドゥールとエネルギーの心許ないネリー・ブレンがヴァイクランを救助することになった。

離れていくストレーガと真ゲッターを見送り、二人の少女はヴァイクランへと急ぐ。
機体前面を走る太刀筋――が、強固な装甲が幸いしたかコクピットまでは届いていない。
外から呼びかけるも反応がない。
アイビスがブレンに命じてヴァイクランのハッチをこじ開け、気絶したシャギア・フロストを強引に掴み出した。
ソシエがコクピットから出て、シャギアの頬を張る。
数回平手が往復したところでシャギアは目を覚ました。

「う……う、うん? 君は、誰だ?」
「後にして! 早く乗って、行くわよ!」

と、足がおぼつかないシャギアに肩を貸してガナドゥールのコクピットへ。
ヴァイクランはまだ動くかもしれないが、この乱戦の中では安全とは言えない。
戦力は減るがこちらで保護した方がいいという判断。
369戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:52:09 ID:msYk6SUr

「少し揺れるけど、しっかり掴まってて」
「う……うむ。すまんな」
「ソシエ、一旦引くよ。ナデシコまで後退しよう」
「わかったわ」

そしてネリー・ブレンとガナドゥールが後退する。
一方、ラーゼフォンを前にした甲児達。

「ゲッタァァァァビィィィイイムッ!!」

騎士凰牙を捉えんとするラーゼフォンの前に真ゲッターの放つ光線が割り込んだ。

「ロジャーさん!」
「キラ君か!? 彼女は大丈夫なのか?」
「ええ、もうクインシィさんは大丈夫のはずです」

モニターの中の真ゲッター。二人が乗ったことで、先程よりずっと鋭い動きでラーゼフォンへと挑みかかる。
ガロードというバランサーを得たクインシィは安定している。とりあえず心配はいらなそうだ。
ストレーガがライトニングショットで後方から援護する中、キラはロジャーとコンタクトを取っていた。

「済まんな、依頼された交渉を果たせずに……Mr.ネゴシエイターが聞いて呆れる」
「この状況じゃ仕方ないです……それより、今のことを考えましょう」
「うむ。とりあえずはだ、ガウルンには交渉の余地はない。私はやつは排除するべきだと思う」
「話には聞いてましたが、あの人はたしかに危険です。僕もその意見には賛成です。
 ……けど、ロジャーさん。ユーゼスとアキトって人はどう見ますか?」

あえて自分の知る情報は伝えず、ロジャーからの率直な意見を聞こうとするキラ。
甲児も援護を行いつつ、聞き洩らさないように何度も振り返っている。
370戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/19(木) 23:52:40 ID:msYk6SUr

「アキトは……彼が戦いに乗っているのは私にも責任がある。できれば止めたいところだが、今の彼は危険だ。君達は自分の安全を優先するんだ。
 そしてユーゼスだが、何を考えているか……そうだ、ガロード・ラン! 彼は無事か!?」
「あ、はい。今はそのロボット……真ゲッター? はい、真ゲッターに乗っています」

甲児から補足を受け、答える。

「そうか、良かった……後は、あの歌っていた男か」
「バサラさんですね。やっぱり、ナデシコで何かあったんでしょうか」
「かもしれん……くそっ! これまた私のミスだ、情けない!」

ガツ、と何かを殴る音。紳士然とした男が相当苛立っているのがわかる。

「えーと、つまり。ユーゼスさんもアキトさんも、敵ってことなのか?」
「甲児は二人に会ったことがあるって言ったよね。その時どんな話をしたのか知らないけど、よく無事だったって思うよ」
「ブンドルさんがいたからかな……くそ、俺は騙されてたってことかよ!」
「二人とも、済まないがここは任せる。私はナデシコの様子を見に行ってくるよ。この腕では君達の足手まといにもなりかねんしな」

騎士凰牙が後退する。行く先はナデシコの方角。

「ようし、じゃあ俺達はユーゼスさん――いや、ユーゼスをとっちめるぜ!」
「待って、甲児。ガウルンとアキトさんが気になる。迂闊に前に出ないで」
「ああん? ここで待ってろって言うのかよ」
「そうじゃなくて、いつでも不測の事態に対応できるようにしておこうってこと。クインシィさんなら僕らが手出ししなくても大丈夫のはずだし」
「……ちぇっ、わかったよ。一旦下がって、警戒に集中する」

いつの間にか甲児はキラの言うことを素直に受け入れるようになっている。
信頼されているということなのか、非常時だからか――キラにはわからないが、それでも悪い気はしない。
ビルの上に陣取り、この戦場に散らばる全ての存在に気を回す。
ガウルンはアキトと交戦中、ユーゼスはクインシィとガロードが抑えている。
今のところこちらの脱落者はなし――バサラだけが安否不明。
数としてはこちら――敢えて言うならナデシコ組+αが勝っているが、どうにも嫌な予感が消えない。
キラも、そして甲児も。まだ何かが起こる、それを感覚として感じ取っていた。
371それも名無しだ:2009/03/19(木) 23:59:36 ID:W0Jeja8J
支援
372戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:01:39 ID:msYk6SUr
     □


ゲッターの様子がおかしい――ガロードはそう言った。

どういうことだと聞くクインシィに、あの機体と戦い始めてからだとガロードは答えた。
あの機体――ラーゼフォン。
そう、ラーゼフォンと戦い始めてから、真ゲッターは操縦者たるクインシィとガロードの知らぬところで出力を上げ続けている。
まるであの機体に共鳴しているかのように。

「とにかく、不具合はないんだろう!?」
「ああ、戦う分には問題ない。むしろ調子は良いくらいなんだけど……」

だったら問題はない、とクインシィは断定した。
ガロードも不可解ながらもそれに賛成する。今は敵を倒すことが先だ。


そして対するラーゼフォン、それに接続されたメディウス・ロクスのコクピットの中。
ユーゼスもまた、事態が己の知らぬところで転がり始めたと歯噛みしていた。

(チッ……ガロード・ランか。やはりあの程度では死ななかったようだな。止めを刺さなかった私の不手際か)

墜ちてゆくぺガスを見たとき、あれでは助からんと放置したのがまずかった。
やつはまんまと生き延び、目前の真ゲッターを安定させ、三つの戦いの内一つを終息させこうして向かってきている。
そして――この真ゲッターと戦い始めてから何かがおかしい。
奇しくもクインシィとガロードが囚われたその疑問に、ユーゼスもぶつかっていた。
真ゲッターが謎の出力上昇なら、こちらのAI1は異常活性化だ。
撃ち合うたび、すれ違うたび――AI1の中で何かが蠢いている。
それが何かは分からない。だからこそ、苛立たしい。
とにかく、目前の敵の撃破を。それもまた、相対する敵手と同じ思考。

(何をやっている、テンカワ! さっさとそいつを始末して援護に来い……!)

更に不愉快なことにアキトは通信回線を遮断している。ガウルンとの戦いの邪魔をするな、ということだろうが。
そのアキトは離れたところでガウルンとの決闘まがいの戦いに興じている。援護など期待できそうもない。
結果的にユーゼスは一人でこの真ゲッター、そして時折り光弾を放ち援護してくる兜甲児の機体と交戦することになっている。
そう、兜甲児――こいつもネックだ。
本来ユーゼスにはあそこでヴァイクランを攻撃する意図はなかった。
バルマー本星にいた頃、設計図を見たことがあるくらいだったヴァイクラン。まさか実用化されたモデルがあったとは驚きだ。
おそらくヴァイクルの発展型であるそれは、相性で言えば参加者に支給されたどんな機体よりもユーゼスに合うはず。
故にこのラーゼフォンの次に乗る機体として目をつけていたのだが。
甲児の機体に同乗しているあの少年――キラと言ったか。あの少年がオープン回線で叫んだ一言、あれがまずかった。
テンカワ・アキトと組んでいる――
ユーゼスが敵だと言われるのならまだ誤魔化しようがあったものの、ブラックゲッターの進路を譲ってやったばかりの時にああ言われては自分からそれを証明してやったようなものだ。
そこから先は咄嗟の判断だった。撃たれる前にヴァイクランを無力化――パイロットはおそらく生きているだろう。
まったく、腹立たしい――バサラといいガロードといいキラといい、思うようにいかないことばかりだ。

真ゲッターの拳を五大剣で受け、払う。凄まじい圧力。
紫雲統夜から剣を借りておいたのが幸いした。これがなければとうに撃破されていたろう。
とはいえ現状、打つ手がないことに変わりはない。
アキトがガウルンを撃破することを信じ、ここは待ちの一手しかないだろう。

(私が他人をあてにするとはな……この代償、高くつくぞ)

ここにいる全ての者に支払わせる。そんな暗い決意をよそに、レーダーが新たな反応を示す。
真ゲッターから注意を解かないまま横目で確認する。
そこにいたのは――
373それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:02:04 ID:lCnG0Bhm
  
374戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:02:24 ID:msYk6SUr
     □


ナデシコに一見して変わった様子はない。
それを見たロジャーはだが安心しない。あの中にバサラがいるかどうか、それをまず確認してからだ。
倒れ伏すマジンガーZを遠目に廃墟を駆け抜ける騎士凰牙。
幾度か角を曲がったところで、後方から奇妙な音を聞いた。ギターの音のような。
振り返らせると、はたしてそこには疲労困憊といった体のバサラがいた。

「君は……無事だったか!」

コクピットから飛び降り、その肩を支える。息が荒い。あちこち怪我もしているように見える。

「私の名はロジャー・スミス。甲児君やキラ君、シャギア・フロストの仲間と思ってくれていい」
「……ッ、……は」

自己紹介するロジャーに、応えようとしたバサラが己の喉を押さえて首を振る。
次いで地面に、転がっていた石で字を書き始めた。

『俺は熱気バサラ。悪いが今は声が出ないんだ』
「声が……ふむ、了解した。とにかく無事でよかった。さあ、乗りたまえ。安全な所まで君を送り届けよう」

と凰牙に乗るように勧める。だがバサラは首を縦に振らず、代わりに今も爆音響く戦場を指し示した。

「あそこに連れて行けというのか?」

YES。そう字を書くバサラ。

「何を馬鹿な……機体のない君が行ってどうするというのだ」
『決まってるだろ、歌うんだよ!』

書かれた文字を見て、ロジャーは目を疑った。
喋れもしないくせに歌うとはこれ如何に。この男は狂っているのか、と思った。
だがバサラは至って真剣な目で、

『俺には歌うことしかできねえ。だからどんな所でもどんな時でも歌い続ける。そうしなきゃ、俺が俺でなくなっちまう』

と綴った。
ロジャーはバサラの決意が並々ならぬものであると悟る。何となれば、それはロジャー自身が交渉に臨む心構えに通じるものでもあった。

「なるほど君の信条は大したものだ。だが、実際問題として声が出ないのはどうするつもりだ? それでは歌うも何もないだろう」

というロジャーの問いかけに、バサラは懐から一錠の錠剤を取り出した。
しばらくそれを複雑そうな眼で眺め――やおら飲み込んだ。ロジャーがそれは何だと聞く間もない。
錠剤を嚥下する――そしてすぐ。
375それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:02:39 ID:gQba6BQw
 
376戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:03:59 ID:msYk6SUr

「……!? ガッ――ハァっ! あぐっ……あああっ!」

バサラは身を折り苦しみ出した。取り分け喉を押さえている――まるでそこが痛みの発生源とでも言うように。

「おい、どうした!? しっかりしたまえ!」

まさか毒でも飲んだのかと、軍警察時代に習った応急処置法を必死に思い出そうとして、

「――いや、何、でも……ない。気に、しないで……くれ」

と、バサラ本人が制止した。紛れもない、『バサラ本人の肉声』で。

「……喋れるのか?」
「……ああ、たった今から、な。まだ少し違和感があるが……大丈夫だ。これで歌える。
 あの薬、効果は本物だった、みてえだ。少しは、あの仮面野郎にも……感謝しないとな」

ロジャーにはいまいちよくわからない独り言をつぶやく。

「さあ……行こうぜ、ネゴシエイター。俺達の歌を、この戦場に響かせによ!」

バサラが先に騎士凰牙へと乗り込む。あの様子では機体を奪って行きかねないと、ロジャーも慌てて乗り込んだ。
その身がどれほど傷つこうとも、己の道を外れることないその生き様。
現実というしがらみに囚われるロジャーには、何よりも眩しいもの。
同時に、こうありたいと思う。いや、自分はこうであったはずだ。
ひたすらに己の法を追究し、言って分からぬ者には鉄の拳を叩き込む――それも、交渉の一側面。
行く先を変え、戦場へと舞い戻る騎士凰牙。
ロジャーの傍らで、バサラがギターを掻き鳴らす。

「行くぜぇ……! 俺の歌を聴けええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!」

狭いコクピットで歌い出したバサラ。

(これはドロシーのピアノよりも厄介だ……!)

当然騒音に耳をつんざかれるネゴシエイターは、そんなことを思ったとか思わなかったとか。
377それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:04:32 ID:gQba6BQw
378それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:05:20 ID:0b65PYD2
379戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:05:35 ID:msYk6SUr
     □


再び、戦場に歌が響く。
ただし発信源が違う――ネゴシエイターの駆る、騎士GEAR鳳牙だ。
ガロードだけでなくバサラまで生きていた。その事実は一層ユーゼスの神経を逆撫でする。
そもそもあの男は喉を痛め歌えなかったはずだ。気合や根性でどうにかなるものではない、だとするなら――

(そうか、飲んだのか、アレを! 貴様もテンカワと同じくナノマシンのキャリアになったという訳か!)

貴重なサンプルの一つ――だが、アキトだけでなく健常者が服用すればどうなるかという絶好のケースでもある。
惜しくはなかった。とにかく、ナデシコだけでなくやつも確保せねばならない。
接近してきた真ゲッターを蹴り飛ばす。資格から飛んできたプラズマ弾は五大剣で撃ち落とした。
バサラの登場は敵にも、そしてユーゼスにもなんら戦力という点では変化をもたらさなかった。
ネゴシエイターは同乗するバサラを気遣っているのか積極的に仕掛けては来ず、ストレーガも同様。
前に出すぎると真ゲッターの邪魔になるという理由もあったのだろうが。

何にしろアキト待ちの状況は変わらない。
しばらくこの苦境が続くとユーゼス自身予測していたが――

「戻って来いラーゼフォン! お前はそんなやつに使われるために生まれたんじゃねえ! また俺と一緒に歌おうぜ!」

バサラの声。歌の途中でラーゼフォンに呼びかける。
最初は鼻で笑った。この機体は既に死に体だ。そんなことをしたところで反応などするはずがないと。

だが、違った。

AI1の中で何かが激しく暴れ回っている――呼応するかのようにラーゼフォンの浸食し切れていない部位から続々とエラーが発生した。
抗っている――何かと、ラーゼフォンが。

「馬鹿な……AI1、何が起こっている!?」

Ai1の示す回答――解析不能。如何に希代の天才とスーパーAIとはいえ、理解不能の現象については有効な手段は持ち得ない。
その間も、バサラの歌は響き続ける。

「俺達、いいコンビだったじゃねえか! お前も戦いなんかより自由に歌いたい、そう思うだろ!?」

ラーゼフォンに意志があると疑いもしないバサラ。少しづつではあるが――AI1が征服した箇所が奪回されつつある。
湖から引き揚げたとき、ラーゼフォンは完全に死んでいた。メディウスと繋がることによりかろうじて息を吹き返したのだ。
そして今、ある程度力を取り戻したラーゼフォンは、今度はバサラによって意志を――魂を吹き込まれつつある。
一切の迷いない、純粋に歌いたいという意志のみを凝縮したバサラの言葉。
380それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:05:52 ID:0b65PYD2
381それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:06:16 ID:vjBTNDfy
支援
382戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:06:24 ID:C5ELLa/a
「……ええい、黙れッ!」

バサラを黙らせんと騎士凰牙へと突撃する。だが、その目前に真ゲッターが割り込み、腕を伸ばす。
左腕と、胴体――メディウス・ロクスのコクピットを直接を押さえられる。
そして瞬間、メディウスと真ゲッターが繋がる部分が輝きを放つ。
ドクン、ドクンと。まるで血流のようにエネルギーのラインが走る――接続した?
真ゲッターが放つゲッター線は先程から高まり続けている。その勢いは外部からでも観測できるほどだ。
溢れ出すゲッター線が、AI1にも流れ込んでくる。
呼応するようにラーゼフォンの制御が危うくなる。

そして――

(いかん……! このままではコントロールが――)

「何度だって言ってやる! 来い、ラーゼフォン! 歌おうぜ――俺と、お前の歌を! 世界を、銀河を――全てを変える歌を!」

騎士凰牙のコクピットをバサラが放つ光が満たす。
それは、正しき時空で発現すればアニマスピリチアと呼ばれた力。
観測したAI1が解析しきれず停止――その瞬間。
抑えのなくなったラーゼフォンが剣を放り出し――



     真理の目が、開いた。




『ラァ――――――――――――――――――――――――――――――――――――……!』
383戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:07:10 ID:C5ELLa/a


ラーゼフォンの左腕が勝手に伸び、真ゲッターの腹部へと押し当てられる。
ユーゼスは知らないことだが、そこは真ジャガー号のコクピット。今は誰もいないはずの。

AI1が警告を発する。
メディウス・ロクスのコア部分からエネルギーの流出が認められる――それは腕を伝い真ゲッターへと流れ込んでいく。
数秒ほどエネルギーの流出は続き、やがて唐突に消える。
ラーゼフォンは腕を戻し――メディウスを掴んだ。

(何だ……!? 一体何が起きた? ラーゼフォン、いやメディウスから何が出て行ったのだ!? )

ラーゼフォンが腕に力を込める――侵食した個所を砕きながら、バリバリとメディウスが剥がされていく。

(ラーゼフォンがメディウスを排除しようとしている!? 馬鹿な――)

ドン、とひときわ大きな衝撃の後、モニターが黒く染まる。
次いで浮遊感――もぎ取られたと直感する。
コクピットの外、ラーゼフォンが掴み取ったメディウスのコクピットを振りかぶり――大きく放り投げた。

「こんな馬鹿な事がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ――――!?」

あらぬ方向へと、メディウス・ロクスのコアはユーゼス諸共飛んで行った。
それきり、ラーゼフォンが動きを止める。
そして真ゲッターからガロードの声が漏れる。

「お姉さん! 真ジャガー号のコクピットに、誰かいる!」
「はあ!? 何を馬鹿なことを……!?」
「ほんとだって! 今、画像を……!」


「よう、しばらくだなガキども。中々楽しそうじゃねえか」


ガロードの声に割り込んだのは、この場にいるはずのない者の声。
ガロードは、そしてクインシィは知っている。その名は――







「まさか、貴様は――――――――流竜馬か!?」





【流竜馬 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態::蘇生】
384それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:07:13 ID:W0Jeja8J
支援
385それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:07:22 ID:0b65PYD2
386それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:08:05 ID:0b65PYD2
387世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:08:23 ID:C5ELLa/a
「こいつは……ふん、ゲッター2か。俺の性には合わねえが、仕方ねえな」
「貴様、馬鹿な――死んだはずではなかったのか!?」
「流竜馬ってあの首なしの機体の――いやいやいや! 放送で呼ばれたじゃんか! 何で真ゲッターに乗ってるのさ!?」

クインシィ、ガロード――竜馬が一度交戦した相手。
彼、流竜馬が再び生きた身体を手にして降り立った場所は真ゲッターの中。
必然というべきか。ゲッター線に魅入られた己が還る場所として、ここ以外に相応しい場所も思いつかない。

「ガロード、オープンゲットだ! こいつを叩き落とせ!」

クインシィの言葉とともに、真ゲッターが弾けた。
ゲットマシンが三機、天空へと駆け上がる。真ジャガー号の後方に、ピタリと真イーグル号が張り付く。

「喰らえ!」

機銃が火を噴く。だが、ゲットマシンの扱いに掛けて竜馬が他の誰かに後れを取ることなどあろうはずもない。
ヒラリとかわし、急減速。前に出た真イーグル号へと、強引に突っ込む。
合体機構が作動し、真イーグル号と真ジャガー号が接続された。

「貴様、何を……!」
「おう坊主、てめえも来い! ゲッター1だ!」

様子を伺っていたガロードに竜馬の声が飛ぶ。意図が掴めず、困惑するガロード。

「早くしろ! 今はあれこれ説明してる時間はねえ、俺を信用しろ! 急げ坊主!」
「ええい、何なんだよもう……! いっちゃえよ!」

クインシィが口を挟む暇もなく、ガロードが竜馬の剣幕に押され合体コースへと機体を移動させる。
真ベアー号も合体――そして変形。再び真ゲッター1となって、地上へと舞い降りる。

「上出来じゃねえか。よし――」
「ちょっと、アンタ! いろいろ説明して欲しいんだけど!」
「そうだ! 貴様は――」
「後にしろ!――来るぞ! 奴らだ!」

真ゲッターが空を睨みつける。
その視線の先――空中のある一点に、『ひび割れ』が出来ていた。
何もない空間に走る亀裂。その亀裂が瞬きする間に増え、広がり――耳をつんざくような音とともに砕け割れる。

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』

開いた次元断層から出てきたのは、いくつもの異形。
獣のような鋭い爪と牙。だが決まった形を持たず、一体一体が共通性を見いだせない形。
一匹だけではない。二匹、三匹……亀裂を押し広げ、後から後から湧いてくる。
あっという間もなく、廃墟の街を覆い尽くすほどにまで増殖した。

「な……なんだ!?」
「化け物……!?」

真ゲッターの中、竜馬以外の二人が驚きの声を上げる。
おそらく眼下の他の者も同じだろう。そう、こいつらを知っているのはこの場で流竜馬、唯一人。
388それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:09:10 ID:b7FwzWkq
shien
389世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:09:28 ID:C5ELLa/a
「来やがったな……インベーダーども!」

竜馬の、戦意に満ちた咆哮。
インベーダー……それは全ての生命の敵。ゲッター線を憎み、全ての存在を破壊する宇宙生命体。
それ以外は分からない――対話などできない。この流竜馬の世界の人類を、絶滅の淵にまで追いやったもの。
竜馬は通信機のスイッチを入れる。この戦場にいる全ての者に聞こえるように。

「インベーダー……? おい、奴らについて君は何か知っているのか!?」
「奴らは自分達以外の全ての生命を消滅させるためだけに存在する。
 元々は俺の世界に存在する化け物だが……あの主催者が異なる世界を繋げたとき、一緒に奴らの通る通路もできたんだろうよ」

ロジャーの問いかけ。

「いいか、奴らは知能なんざない。存在する全てのものに攻撃を仕掛けてくる。死にたくなかったら戦え!」

応えたその言葉を皮切りに、一斉にインベーダーが動き出す。
この街にいる全ての生命――ストレーガや騎士凰牙、ラーゼフォンなど無差別に突き進んでくる。
その中でも取り分け真ゲッター、ブラックゲッターへと向かっていく個体が多い。

「気をつけろ、奴らはゲッター線に吸い寄せられる性質がある! 俺達には特に多くかかって来るぞ!」

竜馬の警告。それを裏付けるように、多数のインベーダーが二機のゲッターロボへと突進していく。

「チッ――後で説明はしてもらうが、今は……! ゲッタァァァビィィィイイムッ!」

クインシィも、内輪で揉めている場合ではないと迎撃に専念する。
薙ぎ払うように放ったゲッタービーム。尋常ではなく高出力の炉心から供給されるビームは、容易くインベーダーの群れを消し飛ばした。
空いた空間へ潜り込み、両腕の刃を伸ばし当たるを幸い叩き斬る。手を出せば敵がいる、さして狙う手間もない。
操縦をクインシィに任せ、ガロードが仲間達の状況を確認する。
ストレーガ、騎士凰牙は背中合わせにインベーダーを迎撃している。
ユーゼスがいなくなったラーゼフォンの周りには何故かインベーダーが近づいていない――?

少し離れた所に、ブラックゲッター。この状況でもマスターガンダムを追い回している。
だが、纏わりつくインベーダーが多すぎてその刃は届かない。標的にもインベーダーが群がるので何とか逃さずに済んでいるようだ。

視線を巡らし、ナデシコの方へ。
動かないナデシコを守るべく、ガナドゥールとネリー・ブレン、そしてぺガスが奮戦している。
だが彼らは戦力的に不安があるから下がったのだ。図体の大きいナデシコを守り切るのは難しい。
ナデシコの船体を、いくつもの異形が取りついた。突破されたのだ。
真ゲッターは向かってくる敵が多すぎて動けない。だから、真下で戦うストレーガへと通信を繋ぐ。

「甲児! ナデシコを助けに行けないか!?」
「……ダメだ! こっちもロジャーさんを一人にはして行けない!」
「くそ――誰か、ナデシコを助けに行けないのかよ! このままじゃ……!」
「――その役目は私に任せてもらおう」
「……えっ?」

瞬間、真ゲッターの背後を取ろうとしていたインベーダーが真っ二つに切り裂かれた。
白い――いや、白銀の剣が駆け抜け、インベーダーの群れへと突き刺さる。

「――ブンドルさん!」

重なった声はガロードだけのものではなく。
その機体、サイバスターは真ゲッターの傍らを駆け抜け、一息にナデシコの方角へ飛びゆく。

「少年達よ、無事で何よりだ。だが再開の喜びを分かち合う――とは、いかないようだな」

ナデシコに取りついたインベーダーが、目にも止まらぬ動きで次々と切り捨てられた。
ネリー・ブレン、ガナドゥールもその隙に包囲を突破し、サイバスターの横に並ぶ。
390それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:09:59 ID:0b65PYD2
391それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:11:09 ID:b7FwzWkq
392世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:11:13 ID:C5ELLa/a
「ナデシコは任せろ。ガロード、君達はまずこの化け物の出てくる穴を塞ぐんだ!」
「穴を塞ぐって……どうやって?」
「私には事情は分からんが、この化け物どもは空間の歪みを通過してこの世界へと現出している。
 歪みを是正することができれば、通路も自然に閉じるはずだ!」
「だから、歪みを直すってどうすりゃいいのさ!」

あの穴ができた時の状況を思い出す。いや、なんか勝手にできたじゃないか。原因とかあったっけ?
いよいよ混乱してきたガロード。そこへキラの声が割り込む。

「――歌だ! ラーゼフォンが歌った後に穴は開いたよ!」
「歌――そうか! じゃあ、もう一度ラーゼフォンを歌わせれば――!」

それを聞いた者が一斉にラーゼフォンへと目を向ける。だがラーゼフォンは、コクピットらしきものを自ら放り投げた後動きを止めていた。
当然、もう歌ってもいない。
だとするなら、今のラーゼフォンは無人ということになる。

「――ネゴシエイターさんよ! 俺を、ラーゼフォンの所まで連れて行ってくれ! 俺があいつと一緒に、もう一度歌ってみるからよ!」
「む……了解だ。さすがに私もこういった手合いと交渉できるとは思えん。しっかり掴まっていたまえ!」
「頼むぜ!」

騎士凰牙がラーゼフォンへと走り出す。するとラーゼフォンを取り囲んでいたインベーダーが、大挙して迎え撃つ。

「あいつら、ラーゼフォンの所に近づけさせない気か!?」
「くっ……凰牙だけでは突破は困難だ! 近くにいる者は援護を頼む!」
「任せろ! 喰らえ――サンダァァァァクラァァァァァァッシュッッ!」

騎士凰牙の前にストレーガが躍り出る。
その拳にプラズマを纏わせ、突進の勢いのまま機体ごとインベーダーの群れに突入していった。
払い除けられるインベーダー。
騎士凰牙がその隙間に身体をねじ込ませる。
進路を塞ぐ異形を、タービンの一撃で蹴散らす――だが、敵を倒すより群がってくる速度の方が早い。

「坊主、ゲッター3だ!」
「わかってるよ! ――チェンジ、ゲッター3!」

凰牙の上空からゲットマシンが落ちてくる。一瞬にして合体をこなし、重戦車を思わせる真ゲッター3へ。

「ミサイルストームだ!」

その脚部が露出し、ハリネズミのようにミサイルの束が現れた。
発射――ミサイルの嵐。まさしくそうとしか形容できないほどの暴風が吹き荒れる。
爆風が収まった後、周囲のインベーダーは一掃されていた。

「ロジャーさん、今だ!」
「ありがたい……感謝する!」

一瞬の空白。その隙に騎士凰牙がラーゼフォンへと到達した。
コクピットを解放。何を言う間もなくバサラが飛び出していき、ラーゼフォンの胸部の空洞へと乗り込んでいく。

「どうだ、バサラ君! 動かせるか!?」
「駄目だ……操縦席も何もありゃしねえ! 全部なくなっちまってる!」

凰牙のカメラがラーゼフォンの内部を映し出す。
ヴァイサーガにより切り裂かれ炎上し、メディウス・ロクスに強引に接続されたそこは文字通りの空洞と化していた。
これでは操縦などできようはずもない。
393それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:11:40 ID:0b65PYD2
394それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:12:27 ID:b7FwzWkq
395世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:13:19 ID:C5ELLa/a

「万事休すか……!」
「……いや、まだだ!」

バサラが空洞の中心に立ち、ギターを掻き鳴らす。
ロジャーにはバサラがヤケになったように見えた。だが。

「そうとも――俺とお前はコイツで繋がってる。これだけが、俺とお前のたった一つ自慢できるもの、そうだろう!?
 だから、俺の歌で――お前の眼を覚まさせてやるぜ!」

ロジャーの視線の先、バサラが再び歌い始める。
その身体を燐光が包んでいるように見えたのは、ロジャーの目の錯覚だろうか。
だが、その内明らかにバサラが肩で息をし、疲弊していく。まるで魂を削って歌っているように。
ラーゼフォンへと殺到するインベーダーを蹴散らしながら、ロジャーは危険な兆候だと直感する。

「バサラ君、止めたまえ! 君の身体が保たん!」
「……へっ、止められるかよ。止められる訳がねぇ……俺はまだ燃え尽きちゃいねえ!」

放たれる歌声、そして光は一層激しさを増す。
やがてその光はラーゼフォンを包むほどに広がっていき――膝をついていたラーゼフォンがゆっくりと立ち上がる。
頭部の翅を羽ばたかせ、その身を空に押し上げていく。

「……ああ、歌おうぜラーゼフォン。俺達の歌を……」

ロジャーの耳に微かに届いたバサラの声は、先程までと違いとても弱々しい――
再び真理の目が開き、ラーゼフォンの歌声が響く。
先程の無秩序に放たれる波動と違い、今度はその声は空間の歪み唯一点に向いている。
割れたガラスのような空間が、少しずつ塞がっていく。
その隙間が閉じゆく中、ラーゼフォンへと何かが急速に接近してくるのをロジャーは目撃する。
その何かは飛び出してきたインベーダーを蹴散らしながらやがて停止した。

「角のある馬、獅子……それに、龍!?」

ドリルの角を掲げる青い一角獣。
丸鋸の如き頭部の白いライオン。
蛇のような竜ではなく、手足のある赤い龍。
鋭い刃の角を持つ橙色の雄牛。
伸縮自在の身体を持つ紫紺の蛇。
ガトリング砲の鼻を突き出す緑の猪。

機械の体躯を持つ、電脳の獣――データウェポン。
その姿を目にした瞬間、ギアコマンダーを握る手から脳裏に電撃のように情報が叩きこまれる。

「データ……ウェポン? ファイルセーブ……そうか! このギアコマンダーはそのために……!」

データウェポンは強大なエネルギーに惹かれる性質をもつ。
世界の壁に穴を穿つラーゼフォンの歌に引き寄せられたということだろう。
何にしろ、その実態を知った今、ロジャーがすることは一つ。インベーダーはあらかたが蹴散らされ、安全は確保されている。
ギアコマンダーを掲げ、契約を結ぶためにコクピットから出る。

「データウェポンよ! ロジャー・スミスの名の下に、私と契約を……!?」

だがコクピットから出たロジャーが見た物は、データウェポンが何処からともなく伸びた触手に絡め取られている様だった。
触手の根元を目で辿る。そこにあったのは、

「貴様――ユーゼスか!」
「遅いぞネゴシエイター! データウェポンは私が戴く!」

コア部分しかないメディウス・ロクスが、その四肢の断面から幾条もの触手を伸ばしている。
ただの触手ではないのか、データウェポンに突き刺さったそれは不気味に脈動――いや、データを吸い上げている。
396世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:14:02 ID:C5ELLa/a

やがて赤い龍の姿の電子生命体が色を失い霧散する。同時に、龍を掴んでいた触手が引き戻され、膨張――メディウス・ロクスの右腕となる。
雄牛も龍と同じく消滅し、メディウス・ロクスの左脚部が生成された。
データウェポンは実体を持たないとはいえ、その本質はエネルギー生命体。

「データウェポンを吸収しているのか……!? いかん!」

ストレーガ、真ゲッターは残存するインべーダーに阻まれ援護できない。
ロジャーは最も近場にいる紫の蛇――バイパーウィップに黒いギアコマンダーを向けた。
知らされた契約条件は自信。

(自信――自信か。フッ、今の私は見失っているとソシエ嬢は言ったな。たしかにその通りだ……私にはわからなくなった。
 だが、今なら……そう、あの男の歌を間近で聞いた今ならわかる!
 自信とは慢心や過信のことではない。そう、己の道をどこまでも疑いなく駆け抜けること!)

顔を上げ、胸を張る。これは宣言――そう、ここからがショウタイムだ。

「私には過去の記憶、メモリーなどない。自分が誰かということもわからない……だが、そんなことはどうでもいい。
 過去は所詮過ぎ去ったもの、それだけが人を形作るのではない。目を向けるべきは今、そしてこれからを生きていくことだ!
 だから私は自分を信じる。私の成してきたこと、これから成していくこと――何一つ間違ってなどいないと!
 ――私はロジャー。ロジャー・ザ・ネゴシエイター……この混沌の世界と交渉し、調停する者!
 来い、バイパーウィップ! 私こそが君の主、君とともに歩む者だ!」

ギアコマンダーからバイパーウィップへと光が走る――ロジャーと視線を合わせた蛇は、やがて抵抗を示すことなくその光を受け入れる。
バイパーウィップ――セーブ完了。

ギアコマンダーを回す。表示される蛇のアイコン。
振りかぶり、騎士凰牙へと叩きつける。

「バイパードライブ――インストールッ!」

騎士凰牙の左腕に、武器形態となったバイパーウィップが装着される。

「これ以上はやらせんぞ、ユーゼスッ!」

凰牙がいくつもの影を生み出す。イリュージョンフラッシュ――バイパーウィップの有する固有能力。
分身だけでなく、高速移動をも可能にするそれを用い、メディウス・ロクスへと一気に接近する。
鞭を伸ばし、振り回す。メディウス・ロクスの伸ばした触手を一気に断ち切った。

「よし――ソシエ嬢! こちらに来てデータウェポンをセーブするんだ!」

残るデータウェポンが解放されたのを見て、ソシエへと声を飛ばす。
自分がセーブするより、ユーゼスを阻みつつ彼女が残りを拾い上げる方が効率的との判断。
ガナドゥールが向かってくる。後は、彼女が到着するまでユーゼスを阻むのみ。
再び伸ばされた触手をバイパーウィップが払う。攻撃能力ではこちらが勝っているようだ。

「チッ……ならば!」

触手では埒が開かないと見たか、メディウス・ロクスが機体ごとデータウェポンへと肉薄する。
伸ばした鞭はメディウス・ロクスの腕から放たれる刃に阻まれ、その身へと届かない。
一角獣とライオン――ユニコーンドリルとレオサークルが、残る一匹のデータウェポンを庇うように前に出る。
その一匹、ガトリングボアは躊躇うように二匹を見るも、やがて飛び去っていく。その先にいるのはソシエのガナドゥールだ。

「! ――ソシエ嬢、そいつをセーブするんだ!」
「セーブって――あ、わかった! こうするのね!」

ガナドゥールから光が伸びるのを確認。
メディウス・ロクスへと目を戻すと、二匹のデータウェポンが捕食されているところだった。
二匹からの、悲しげな声――後を引くように耳に残り、そして消える。
397世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:15:18 ID:C5ELLa/a

「ブタ――じゃない、ボアはセーブしたわ!」

ソシエの声を聞きつつ、ユーゼスと睨み合う。
メディウス・ロクスは四肢を取り戻していた。向かい合うその全長は、凰牙の二倍近いものがある。
データウェポンを装備したとはいえ隻腕の凰牙は万全ではない。そしてそれはガナドゥールも同じ。
だがインベーダーは駆逐されつつある。
ストレーガ、真ゲッターが来れば戦況は逆転する。それはロジャー、ユーゼス共通の認識。
だからこそロジャーは動かない――そしてユーゼスは動く。

「空間の歪み、インベーダー、データウェポン……ククク、これだ! 私はこれを待っていたのだ!」

ヘブン・アクセレレイション――メディウス・ロクスの最大火力にして、空間を突き破る力。
何をする気か掴めないロジャーを尻目に、修復されつつある歪みへと暗黒球が放たれ、今にも閉じようとしていた歪みに飛び込んだ。
空間が震えるように揺れる――広がる歪み、そして。

『GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHH!!!!』

瞳。そう、瞳としか言えないようなものが歪みの先から咆哮とともにロジャーを睥睨する。
だがそのサイズが尋常ではない。
新たに広がった歪みはおよそ100m。その隙間いっぱいに、その瞳は存在を主張している。
眼だけでこの大きさ。ならば本体がこちらに来れば――

「――いかん! ユーゼス、貴様自分が何をしているかわかっているのか!?」
「わかっているとも……お前達は全力でこの事態を止めねばならん。私を追っている余裕はなかろう?」

振り向けば、ユーゼスは急速に離脱していくところだった。

「待て! ……いや、今は奴の言うとおり、こちらをなんとかせねばならんか。しかし、どうすれば――」
「俺達に任せな!」

ユーゼスの追跡を諦め、歪みへと向き直る。
打つ手の思いつかないロジャーに声をかけたのは真ゲッター、流竜馬だ。

「ちょ、ちょっとアンタ! 俺達って、俺とお姉さんも!?」
「あん? 当然だろ。何のためにゲッターに乗ってんだよ」
「いやいや……せめて何をするかくらい教えてよ。でなきゃお姉さんも賛成してくれないよ」
「そうだ、そろそろ説明してもらおう。何故貴様は生き返った? 何故一度は襲ってきた貴様が今は協力するのか。全て、今この瞬間に喋ってもらおうか」
「……説明している時間はねえ。だから、お前達にも見せてやる――ゲッターの意志を!」

突如、真ゲッターが光を放つ。
ロジャーが思わず眼を庇うほど強い光――

「この光は……!?」
398世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:16:40 ID:C5ELLa/a
     □


何もない虚無が広がる――ガロードとクインシィは無重力の世界にいた。

「あれ? え、何ここ……お姉さん! 何がどうなったの!?」
「わ、私に聞くな! お前こそわからないのか!?」
「わかる訳ないでしょ! つか、あの竜馬って人はどこ行ったのさ!」
「俺ならここだ」

唐突に、ガロードの背後に竜馬が現れた。いや、現れたというより――存在が確定したというほが正しい。

「ここ、何処なのさ。真ゲッターは、みんなは!?」
「落ち着け、坊主……いや、ガロードか。すぐにわかる。見ろ」

竜馬が指である一点を指し示す。そちらに目を向けたガロードとクインシィは、唐突にやってきた光の洪水に呑み込まれた。

「ちょっ――!?」
「これは――」

暴力的とさえいえる光の中、二人の頭の中に様々な光景が広がっていく。

インベーダーが跋扈する世界。
地球が消滅し、事態を打開するために宿敵同士が手を結び破滅の王へと立ち向かう。

ゲッター線を致命的な毒と知りつつ、その力に魅了された爬虫人類の将軍が操る真ゲッター。
その横にミケーネ帝国の七大将軍の力となった魔神皇帝が並ぶ。

地球へと巨大な人工の星が落ちていく。それを防がんとするいくつもの力が宇宙を駆ける――そして人の想いを受け取ったオルファンが浮上し、地球を救った。
人造の神が地球を守護せんと地球と宇宙との隔絶を目論み、それを良しとしない人間達に撃ち滅ぼされた。

世界を滅ぼす蝶の羽が戦場を覆う。その中で、禁じられた月の力を操り激突する三機のガンダム。
世界を呪う兄弟は、運命を凌駕しようとした男が最後の力で放った閃光の中に消えていった。
太極へと至る術を求めた放浪者は、自らが育てた悲しみを力とする乙女に敗れ去り、その次元から消滅した。



どの戦いの中にも共通してゲッターロボがいる。
そして、出てくる世界により多少の差異はあれどガンダムダブルエックス、クインシィ・バロンズゥ――ガロード、クインシィの機体とともに戦っている。


「何だよこれ……何なんだよこれは! 俺はここに来るまで真ゲッターと一緒に戦ったことないし、そもそもあんな戦いなんて俺は知らないぞ!」
「オルファンが浮上している……!? 馬鹿な、私がここに来るまでそんな兆候は一切なかったはずだ! 何故地球は壊滅していないのだ!」
「落ち着け。これはお前らであってお前らじゃあない世界の話だ。ゲッター線が見せる幻みたいなもんだと考えりゃいい」
「幻? 幻だって!? じゃあこれは本当は起こってないことなのか?」
「違う、そうじゃない。これは全て現実に起こったことだ。ただし、極めて近く限りなく遠い世界――多元世界ってやつのな」

竜馬が慣れない様子で説明する。もちろん、ガロードとクインシィに納得できるものではないが。

「お前らは俺ほどゲッター線に浸食されてないからわからねえか。つまりだ、流竜馬という人間は多元世界に無限に存在する。
 お前達も同じだ。その内のたまたま一人が、あそこでともに戦っていて、俺達のようにここでこうやって殺し合いに巻き込まれているってこった
 基本的には違う世界のことだ、お前らには関係がねえ。向こうの世界のことは、向こうの世界の俺やお前らがうまくやってくれるだろうよ」
「……じゃあ、何のためにこんなものを私達に見せた。関係がないなら意味もないだろう」
「それが、そうじゃねえ。あの主催者は、その関係ってやつを無理やり作っちまったんだ。本来出会うはずがない世界の人間を強引に結びつける……
 それは世界同士を接続することにも等しい。今、この箱庭の世界にはそれぞれの世界へと続く通路ができちまってるようなもんだ」
399それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:19:43 ID:b7FwzWkq
400それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:21:12 ID:vjBTNDfy
支援
401戦場に響く歌声 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:21:25 ID:C5ELLa/a
こともなげに言う竜馬。
ガロードが激しく反応する。

「……じゃあ、ティファやジャミル達もここにいるのか!?」
「いや、それはわからんが。あまり一つの世界から多く引っ張ってくるのもまずいんだろう。
 その世界に与える影響が大きすぎると、世界自体が崩壊しちまうからな」
「なんだ……じゃあティファは安全なんだな」
「そこだ。これからの俺達次第でそこが大きく変わってくるんだよ」

安堵したガロードに甘いと言わんばかりに竜馬が指を突きつける。

「おそらく主催者はこれ以上お前らの世界に手を出すつもりはねえだろう。だがインベーダーは違う。
 奴らは本能で生命を排除している。もし一匹でもお前らの世界に辿り着けば、あっという間に増殖して……」 
「……さっきの世界みたいになる!?」
「そういうこった。多分主催者もそれを止めるつもりはねえだろう。
 奴らが恐れるのは世界消滅による多元世界全体のゆらぎであって、一世界の情勢がどうなろうと知ったこっちゃねえだろうからな」

竜馬が二人に向き直った。そして、何を思ったか深く頭を下げる。
困惑する二人に、呂魔は顔を上げず言葉を続けた。

「お前達に頼みがある。俺はゲッター線に選ばれた者として、奴らと戦わなきゃならねえ。だが一人ではゲッターは扱えない……
 だから、俺と一緒に来てほしい。それがお前らの世界を守ることにも繋がるはずだ」
「……か、勝手な事を言うな! 一度は私達を襲ってきたくせに、今度は協力してほしいだと!?」
「あの時の俺と今の俺は違う――いや、どっちも同じ俺だが。やるべきことがわかった、っつーことだ。
 どの道今奴らを止められるのは俺達だけだ。自分の世界を守りたいのなら、選択肢は一つしかねえぞ」
「もし、アンタについていったとしてさ。無事に帰れる保証はあるの?」
「ガロード、お前正気か!? こんな奴の話を信じるなんて」
「俺だって怪しいとは思うよ。でも、ティファが危ないのなら……俺達の世界があんな奴らに荒らされるくらいなら、俺は戦うよ。黙って見ているなんて御免だ」
「ガロード……」
「済まねえが、いつ帰れるって保証はない。だが――俺はともかく、お前らは事が終わればゲッター線は解放するはずだ。
 なんせ元々ゲッター線に関係がない奴らだしな」
「そう――じゃあもう一つ。あそこで戦ってる仲間はどうなる? あの主催者はなんとかできないの?」
「それも済まねえが、無理だ。俺達ができるのは、インベーダーどもを連れてこの世界から出て、その狭間で戦うこと――
 つまり他の奴らを何とかする余裕はねえ。自力で戦ってもらうしかねえんだ」
「そんな……」
402それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:21:49 ID:xr/Dm9/r
最早ロワどころの騒ぎではないことになっているwwwww支援
403それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:22:32 ID:vjBTNDfy
支援
404世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:24:00 ID:C5ELLa/a
あそこで知り合った者達は、今やガロードに取ってフリーデンの仲間と遜色ないほどに大事な存在となっている。
アムロ、甲児、バサラ、直接会ってはいないがキラ、ソシエ、アイビス――そしてシャギア。
元々は敵だったのが、何故かここに来てから妙に性格が変わっていた。
ガロードの知るシャギアは弟以外に心を開くことのない、冷酷・冷淡、信用などできるはずもない男だ。
だが彼はここで比瑪、甲児という太陽のような子どもたちと出会った。
そして弟を失い、比瑪をその手で殺し――捨て鉢の抜け殻になった彼の様を見て、ガロードは思わず助けに入ったのだ。
今思い返せばあれはどうしてだろう。信用できないからこそ、傍で監視していたはずなのに。

仲間。

シャギアがその言葉にふさわしいとは今もって思えない。だが――

(信じてもいいのか、シャギア? お前がオルバを生き返らせるために最後の一人になることよりも、甲児やみんなを守って……あの主催者を倒す方を選ぶって)

本当なら自分がやるべきことだ。
おまけに彼はニュータイプを憎んでいる。アムロとの衝突は必至だろう。
自分が傍にいれば抑える、あるいは討つこともできる。だが甲児にはできない。それが心配だ。
行きたくはない。それでも今、自分が残ればティファや、ジャミル、カリス、フリーデンのみんなが危ない。
ならば――

「竜馬さん、俺……行くよ。ティファを、みんなを守る」
「ガロード……!」
「ごめん、お姉さん。勇と会わせるって約束……守れそうにないや。でもお姉さん、生きて帰ればきっとまた勇と会えるよ。だから――」
「私も行くぞ」
「甲児達と協力して――え? 何?」
「私も行くと言ったんだ!」
「そんな、どうしてさ? 帰れないかもしれないのに」
「だったら尚更、お前とこの凶暴な男を二人っきりにしておけるか」

竜馬を親指でぞんざいに刺すクインシィ。当の竜馬はどこ吹く風という顔だ。
彼女はそのままガロードの肩を掴む。

「いいか、ガロード。約束は守ってもらう――お前は、私と一緒に勇を探すんだ。今すぐじゃなくてもいい。でもきっと、二人で会いに行くんだ。いいな?」
「え……うん。俺はいいけど」
「話はまとまったか? じゃあ、そろそろ戻るぞ。もう時間がねえ」

竜馬が手を振り、ガロード、クインシィと視線を交わす。
誰にも迷いはない――今のところ。後は走り出すだけだ、戸惑うことなく。
光が消え、暗闇が世界を覆い――
405それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:24:26 ID:vjBTNDfy
支援
406世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:25:08 ID:C5ELLa/a
     □


「……ド! ……ンシィ! 応答したまえ! ガロード!」

気がつけばそこは無重力の世界などではなく、真ゲッターのコクピットだった。
ネゴシエイターが必死に呼びかけてきている。時間は――あの世界に行く前から10秒も経っていなかった。

「ロジャーさん?」
「ガロード! 一体どうしたのだ、急に黙り込んで。君達があれをなんとかするというのはどういうことだ!?」

あれ――そう、超巨大なインベーダーだ。
あれを何とかするのが流竜馬の、ひいてはゲッターに乗っているガロードとクインシィの役目。

「みんな、よく聞いてくれ。あのインベーダーは今から俺達が何とかする。
 他のみんなは、空間が閉じる寸前に各自の最大威力の攻撃で援護して欲しい。
 ここから動かせないラーゼフォンを、俺達の攻撃で発生する余波を相殺して守って欲しいんだ」
「……勝算はあるのか?」
「それなりに。頼んだよ、同時じゃなきゃ駄目なんだ」
「……了解だ。総員、真ゲッターの近くに移動するぞ。各自、周りの者の死角を補いつつ移動するんだ」

ブンドルの号令。
インベーダーはあらかた駆逐され、ユーゼスは後退しアキトとガウルンは未だ小競り合いを続けている。
とりあえずはここに集中できそうだ。
ラーゼフォンを中心に、真ゲッター、ストレーガ、ガナドゥール、ネリー・ブレン、騎士凰牙、サイバスターが円陣を組む。
バサラとラーゼフォンは今も全力で歌い続け、空間の修復を続けている。
その姿は無防備極まりない。だからこそガロードの言うように、衝撃の余波から守らねばならないのだ。
準備ができたことを確認し、ガロードは最後の言葉を遺すことにした。

「シャギア、少しいいか?」
「……何だ」
「頼みがあるんだ。お前にしか頼めない……大事なこと。
 ティファに伝えて欲しい。俺のことは忘れて――いや、違うな。絶対、絶対生きて帰るから待ってて欲しいって。
 どんなに時間がかかっても、ティファのいるところに会いに行くから――そう、伝えて欲しいんだ」
「伝える……ティファ・アディールにこの私が? 待て、どういうつもりだ。何故そんな遺言のようなことを」
「甲児。シャギアを頼むな。俺はやっぱりまだ信用できないけど、お前がいるなら安心だからさ」
「お、おいガロード。なんだってそんな……」
「キラ、ソシエ、アイビス。お姉さんが迷惑かけてごめんな。あんたらにはホント感謝してるよ。
 ロジャーさん、ブンドルさん。あんた達は大人なんだから、子どもの手本になるような生き方をしてくれよ。あのギンガナムって人みたいに悪い手本はダメだけどさ」

シャギア、甲児の声には応えず居並ぶ面々へと思いを伝える。
彼らもやはり誰何の声を挙げるが――応えない。今からすることを言えば必ず止められるから。

「バサラ……聞こえてないか。まあ、後で言っといてよ。良い歌だった、ってさ」
「ガロード、そこまでだ。そろそろ行くぞ」

名残は尽きないが、クインシィが出立の時間を告げる。

「あ、うん。じゃあみんな、元気でな。絶対に生きて帰ってくれよ!」
「そのブレンは勇のブレンだ。丁重に扱うんだぞ」
「……行くぞ、お前ら! ペダルを踏むタイミングを合わせろ!」

別れの言葉。そして竜馬の一声がトリガーとなる。
407それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:25:13 ID:0b65PYD2
408それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:26:06 ID:vjBTNDfy
支援
409世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:26:13 ID:C5ELLa/a

「ガロ――」

「ゲッタァァァァァァシャァァァァアアアアインッッッッ!!」

真ゲッターが、超新星の如き輝きを放つ。莫大なゲッター線の放出――周囲にいる仲間達の機体が、それだけで後退するほどの。
僅かに生き残っていたインベーダーが全て集まってきた。好都合、と真ゲッターに乗る三人は口の端を吊り上げる。
強力すぎるゲッター線はそれだけで毒となる。
機体に乗っている仲間達はともかく、元々ゲッター線に弱い性質をもつインベーダーなら、尚更のこと。
数匹の強力な個体が扉を守らんと行く手を遮る。
だがもはや止められはしない。
飛び立ち、目にも止まらぬ無軌道な動きで距離を取る。
三人の力を一つにし、極限まで高められたゲッター線のエネルギーを解放するこの力こそが――――――


「真……! シャイィィィィィィィィィィィンスパァァァァァァァァァァァァァァァァァクッッッッ!!」


刹那、超新星にすら比肩するエネルギーの塊となって――空間の歪み、その向こうに存在する超巨大インベーダーへと突入する!
輝きが世界を満たす。
それが収まった後……真ゲッターも、インベーダーも、空間の歪みも。
一切の痕跡を残さず、この世界から消え去った。



【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:消失】

【ガロード・ラン 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:消失】

【流竜馬 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ)ゲッターロボ〜世界最後の日)
 パイロット状態:消失】
410それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:26:24 ID:0b65PYD2
411それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:26:44 ID:vjBTNDfy
支援
412世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:28:06 ID:C5ELLa/a
【ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:下部に大きく裂傷が出来ていますが、機能に問題はありません。EN100%、ミサイル90%消耗
         右舷に破損大(装甲に大穴)、推進部異常  AIオモイカネがデリートされました
 現在位置:F-1市街地
 備考1:ナデシコの格納庫にプロトガーランドを収容
 備考2:ナデシコ甲板に旧ザクを係留中】

【シャギア・フロスト 搭乗機体:なし (ガナドゥールに同乗中)
 パイロット状態:疲労 戸惑い 意識朦朧
 機体状態:なし
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:???
 第二行動方針:ガウルン、テニアの殺害
 第三行動方針:首輪の解析を試みる
 第四行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
 第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
 最終行動方針:???
 備考1:首輪を所持】

【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN25%
       無数の微細な傷、装甲を損耗
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:???
 第二行動方針:協力者を集める
 第二行動方針:基地の確保
 最終行動方針:精一杯生き抜く
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】

【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:疲労
 機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:???
 第二行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
 最終行動方針:アインストたちを倒す 】

【キラ・ヤマト 搭乗機体:なし
 パイロット状態:健康、疲労(大) 全身に打撲
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:???
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:首輪の解析(&マシンセルの確保)
 第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】


413それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:28:36 ID:0b65PYD2
414世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:28:46 ID:C5ELLa/a
【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
 パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数 
 機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
       側面モニターにヒビ、EN60%
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:???
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第三行動方針:首輪解除に対して動き始める
 第四行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
 備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
 備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持
 備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
 備考4:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)携帯
 備考5:バイパーウィップと契約しました】

【ソシエ・ハイム 搭乗機体:ガナドゥール
 パイロット状況:右足を骨折
 機体状態:頭部全壊、全体に多大な損傷 駆動系に障害 機体出力の低下  EN40%
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:???
 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第四行動方針:この機械人形を修理したい
 最終行動方針:主催者を倒す
 備考1:右足は応急手当済み
 備考2:ギアコマンダー(白)を所持
 備考3:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)、騎士凰牙の左腕を携帯
 備考4:ガトリングボアと契約しました 】

※備考(無敵戦艦ダイ周辺)
 ・首輪(リリーナ)は艦橋の瓦礫に紛れています


【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
 パイロット状態:良好(主催者に対する怒りは沈静、精神面の疲労も持ち直している)
 機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:???
 第二行動方針:マシンセルの確保
 第四行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
 第五行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
 備考1:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
 備考2:空間の綻びを認識
 備考3:ガウルン、ユーゼスを危険人物として認識
 備考4:操者候補の一人としてカミーユ、甲児、キラに興味
 備考5:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】

415それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:29:14 ID:0b65PYD2
416世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:29:38 ID:C5ELLa/a
【ヴァイクラン(バンプレストオリジナル)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:EN5%、各部に損傷、ガン・スレイヴ残り一基  右腕切断 胸部装甲融解 装甲前面に深い損傷
 現在位置:F-1 市街地】

【マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状況:大破(上半身と下半身が両断)】

【マジンガーZ(マジンガーZ)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状況:頭部切断(パイルダーは無事)
 現在位置:F-1 市街地】


【旧ザク(機動戦士ガンダム)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:良好
 現在位置:F-1(ナデシコ甲板) 】

【プロトガーランド(メガゾーン23)
 機体状況:MS形態  装甲に凹み
      落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
 現在位置:F-1(ナデシコ格納庫内)】


【熱気バサラ 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)
 パイロット状況:DG細胞感染。喉の神経圧迫は完治
 機体状態:右腰から首の付け根にかけて欠落 胴体ほぼ全面の装甲損傷 EN残量20% 
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:???
 最終行動方針:自分の歌で殺し合いをやめさせる
 備考1:真理の目が開いています】
417それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:31:27 ID:0b65PYD2
418世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:31:39 ID:C5ELLa/a
     □


何が起こったのかわからなかった。
今、たしかにこの手は奴を切り裂いた。それは間違いない。
しかしこの手ごたえのなさは何だ?

歌声が響く中、共犯者が他の敵を引きつけようやくにして一対一の戦いに持ち込めた。
だが突如湧いて出た異形の化け物どもに邪魔をされ、決闘は水を差された。
執拗に自機を狙ってくる奴らには手を焼かされたものの、それは交戦していた敵手にも等しく襲いかかった。おかげで逃がさずに済んでいたのだが。
そして異形どもをあらかた片付け、本命を追撃しようとしたとき、奴は無防備な状態で佇んでいた。
奴にしては迂闊――そうは思ったが千載一遇のチャンスには違いなかった。
だからこそ全力を持ってその機体を破壊したのだ。
なのに、この胸の締まりの悪さは……

薬の時間はもうすぐ切れる。禁断症状が訪れる前に、確認しなくてはならない。

彼は腰から両断した敵機のコクピットハッチを剥ぎ取りにかかった。
そう、ここにあの男の死体があればそれでいい。予感は杞憂だったことになる。
だがもし、奴がいなければ――

ハッチが外れた。
覗き込む、その中に……ガウルンはいない。

逃げられた。

その一言が頭の中で像を結ぶ。

「……あ、あ……が、ああ……ガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!」

天を見上げ絶叫した。


【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭(回復傾向)、疲労状態  怒り
 機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)
 現在位置:F-1市街地
 第一行動方針:ガウルンの首を取る
 第二行動方針::キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を2錠所持 (内1錠はユーゼス処方)
 備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可
 備考4:ゲッタートマホークを所持
 備考5:謎の薬を一錠使用。残り2分】
419世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:33:46 ID:C5ELLa/a
     □


あの光はなんだったのだ? ユーゼスの脳裏を駆け巡るのはその一つの疑問のみ。
足止めとして仕掛けた空間の歪み、そこから垣間見えた巨大なインベーダー。
あれがこちらに出てこればさすがに危なかったが、どうにかネゴシエイター達が追い返すことに成功したようだ。
それはいい。むしろ喜ばしいことでもある。
だが問題はあの莫大なゲッター線の放射だ。
隣のエリアからでも観測できるほどに、F-1エリアはゲッター線の濃度が凄まじい。
己があの地を去った後、何が起こったのか。
距離のあるここでさえ衝撃の余波は届いた。

だとするなら、その爆心地では一体何が起きたというのか。
アキトともはぐれたままだ。
当初の目的であるナデシコも、AIをデリートして支配下に置いたとはいえ今だあの地にある。

(さて、どうするべきか……)

DG細胞のサンプルを弄びつつ、考える。
己の首に科せられた首輪。この首輪が宿す、アインスト細胞。
その活動が、熱気バサラの歌で一時の休眠状態にあることも――彼はまだ気付かなかった。


【ユーゼス・ゴッツォ   搭乗機体:メディウス・ロクス(バンプレストオリジナル)
 パイロット状態:疲労(中)
 機体状態:EN残量90%  ヴァイサーガの五大剣を所持  データウェポンを4体吸収したため四肢が再生しました
 現在位置:E-1 市街地
 第一行動方針:どうするか……
 第二行動方針:ナデシコ、バサラの確保、アキトと合流、AI1のデータ解析を基に首輪を解除
 第三行動方針:他参加者の機体からエネルギーを回収する
 第四行動方針:サイバスターとの接触
 第五行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
 第六行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
 第七行動方針:次の放送までにA-1に向かい統夜、テニアと合流
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
 備考1:アインストに関する情報を手に入れました
 備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
 備考3:DG細胞のサンプルを所持 】
420それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:34:30 ID:vjBTNDfy
支援
421世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:35:48 ID:C5ELLa/a
     □


トモロが観測していた空間の綻び。
小康状態にあったそれが突如加速度的に広がりだして間もなく。

「何だ、こいつら……!?」
『私のデータベースにはない生命反応だ。未知の生物……としか言いようがないな』

Jアークを、異形の化け物――インベーダーが取り囲んでいた。
すぐ南にある禁止エリア。この化け物達はそこから現れた。
その先頭に立っているのは――

「ガンダム……!?」
「ギム・ギンガナムが乗っていたガンダムだと!? しかし、あれは……!」

アムロ、そしてカミーユをして驚かせたのは敵がガンダムだったからではない。
片腕がなく、装甲は焼け爛れどう見ても大破しているとしか見えないその機体。人形のようにぎこちなく歩いてくるその姿が、徐々に露わになる。
そう――インベーダーと融合し、メタルビーストとなったシャイニングガンダムの姿が。

『GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

シャイニングガンダム――否、メタルビースト・シャイニングの口からおぞましい咆哮が上がる。
それを聞いた二人のガンダムパイロットは直感する。
アレはもうガンダムなどではなく、全ての命あるものの敵。何としても倒さねばならない邪悪だと。

「アムロさん!」
「ああ、わかっている。トモロ、自動操縦はいけそうか?」
『ああ。君達参加者に対しての攻撃は禁じられているが、あれらはその規制の範疇にはないようだ。私だけでもJアークの自衛は可能だ』
「よし……なら、俺達は出るぞ!」
「了解です――VF-22、カミーユ・ビダン! 行きます!」

カミーユのバルキリーが一足早く発艦する。
それを見送り、ブリッジから走ってきたアムロもF91へと乗り込んだ。

「ガンダムF91――アムロ・レイ! 出るぞッ!」

飛び出す――インベーダーの待つ、ガンダムと対峙する戦場へ。
ガンダムが腹部に突き刺さっていた剣を抜く。
その体内から這い出たインベーダーが失われた腕の代わりなのか。

Jアークの砲撃が始まる。
それを契機に、戦いの火蓋は切って落とされた。
422世界を止めて ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:38:37 ID:C5ELLa/a
【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、若干の疲労
 機体状態:EN40% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ  ビームサーベル一本破損
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾60% ビームライフル消失 ガンポッドを所持 
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:インベーダーへの対処
 第二行動方針:首輪の解析とD-4地区の空間観測
 第三行動方針:協力者を集める
 第四行動方針:マシンセルの確保
 第五行動方針:基地の確保
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考1:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
 備考2:ガウルン、ユーゼス、テニアを危険人物として認識
 備考3:首輪(エイジ)を一個所持
 備考4:空間の綻びを認識】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(大)
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN40%   左肩の装甲破損
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:インベーダーへの対処
 第二行動方針:首輪の解析を行ないつつしばらくJアークに同行
 第三行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第四行動方針:遭遇すればテニアを討つ(マシンセルを確保)
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】

【Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%  
 現在位置:D-3南部
 備考1:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復
 備考2:D-4の空間観測を実行中。またその為一時的に現在地を固定
 備考3:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】


【シャイニングガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状態:なし
 機体状況:右腕肘から先をインベーダーの腕が補っている、折れたブレンバー所持 EN10%
        各部装甲に多数の損傷、表面装甲の六割が融解して垂れ下がり凝固 インベーダーが取りつき、メタルビースト化
 現在位置:D-3南部
 行動方針:あらゆる生命の抹殺】



【二日目15:05】
423それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:38:59 ID:vjBTNDfy
支援
424眠れる基地の魔王、悪が振るう剣 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:40:37 ID:C5ELLa/a
「あら、お目覚めですの?」

覚醒した男の耳をくすぐったのは、あどけない少女の声。
身を起こす。そして己の身体を見回し、大事がないことを悟ると、一言。

「ふう、死ぬかと思ったぜ」
「よく言いますの。あんな無茶なことをする割にお軽い方ですのね」
「おや、お嬢ちゃんは……ってこたあ、ここは最初に集められた場所かい?」

男――ガウルンは、突如投げ出された場所、そして主催者たるアルフィミィを前にしても毛筋ほども動揺を見せない。
パンパン、と埃を払い泰然と立ち上がる。

「ええ、まあ……って、ここに来るつもりであの穴に飛び込んだんではないんですの?」
「いいや、とりあえずあそこからトンズラするには丁度いいと思っただけさ。さすがに俺も機体があれじゃあな」

振り向くガウルン。そこには大破したぺガスがあった。
巨大インベーダーが撃滅され戦況がほぼ決したあの瞬間、ガウルンは撤退を選んだ。
だが機体が機体、普通に逃げるのではアキトからは逃げ切れない。そう判断したガウルンは一芝居打った。
マスターガンダムをわざと損傷させ、身動きが取れないと見せかける。機体を目立つ位置へと露出させ、アキトに発見させる。
当然マスターガンダムは破壊される。
しかしその時ガウルンはとっくに脱出していて、乗り手がいなかったぺガスともども空間の穴に飛び込んだ――という訳だ。

しかしぺガスが近くに墜落していたのは運が良いとしか言いようがなかった。
そうでなければそのまま近くの廃墟に身を隠すしかなかったのだ。機体がなければここでは何もできない。
ぺガスはさすがに廃墟に入ることはできなかったので、咄嗟に空間に空いた穴へと目標を変える。
正直これだけは賭けだった。そもそも穴の向こうはどうなっているかわからない。
ともすれば宇宙空間に飛び出して一瞬でお陀仏だったかもしれないのだ。

「そこは、私に感謝してほしいですの。あなたをここに引っ張ったのは私なんですもの」
「へえ……お嬢ちゃんが俺を、ねぇ。もちろん礼は言うが、それだけでもないんだろう?」
「そうですの……あなたは傭兵と聞きましたの。そのあなたを見込んで、頼みたい仕事があるんですのよ」
「仕事ねぇ。いや、仕事を受けるのは吝かじゃないがな。それに見合う報酬はあるのかい?」
「あら、命を助けたことでは足りませんの?」
「……そこを突かれると辛いねぇ。まあ、まずは話を聞こうじゃねえか。どんな仕事なんだ?」
「あなたにお願いする仕事は大きく分けて三つありますの。一つ、今までどおりに殺し合いに参加すること。これはまあ、頼むまでもないと思いますの」
「おう、俺ぁ降りる気はねえぜ。まだまだ喰い足りないんだからよ」
「頼もしいことですの。……二つ、会場中に散らばったこれらの排除」

少女が手を振ると、何もない空間に映像が浮かびあがる。
そこに映し出されたのは先程大挙して現れた怪物、インベーダー。

「このインベーダー達は先程F-1エリアに出現したものがすべてではないですの。
 禁止エリア――ぶっちゃければ早期に小さな空間の綻びを確認したエリアの事ですが、ここにも少数ですが出現を確認しましたの。
 これらのエリアの穴は比較的小さいので出てくる数は少ないのですが、放置しておくのも気分が悪いですの。
 それと、インベーダーは機械と融合してメタルビーストというものになりますの。近い所に破壊された機体があるときは要注意! ですの。
 一応そのエリアのインベーダー全てを駆除すれば後続は出て来ないはずですから」
「ふむ……だが、禁止エリアってこたぁ俺には手が出せないんじゃねえか?」
「あなたの首輪だけは出血大サービスで爆破機能を解除して差し上げますの――まあ、代わりにペナルティを科しますけれど」
「ペナルティ、ね。まあいい、最後の仕事は?」

少女が再び手を振る。インベーダーの映像が消え、代わりに現れた映像は――
425それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:41:46 ID:0b65PYD2
426それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:42:12 ID:vjBTNDfy
支援
427眠れる基地の魔王、悪が振るう剣 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:43:07 ID:C5ELLa/a
     □


近距離指向性・近接戦闘用炸裂弾M180A3、通称スクエア・クレイモア。
爆裂する鉄鋼球が群がるインベーダーをズタズタに引き裂く。
消し飛んだ異形の命は50を軽く超える。それだけでは留まらず、僅かに原形を保っていた基地跡は完全に崩壊した。
陣形――といってもただ囲んでいただけのものだが――を崩され、異形達が悲鳴を上げる。

一際巨大な個体へと突進。右腕の杭が突き立てられ、火薬の弾ける音が連続する。
その間も突進は止まらない――インベーダーの頭から突入したゲシュペンストMk?は、やがてインベーダーの足元へと抜ける。
ステークの衝撃が強すぎて当たった瞬間にインベーダーの身体が弾け飛び、次の火薬が発火する頃には機体が前進してしまうのだ。

着地し、ゆっくりと自身を囲むインベーダーを睥睨する。
蒼い体躯から放たれる紅の眼光が、感情など持たないはずの宇宙生物達を威圧し、たじろがせる。
もう気付いているはずだ。彼らが相手にしているのは、あるいはゲッターロボに比肩し得るほどに危険な敵なのだと。

ゲシュペンストが足を踏み出す。
その一歩がまるで落雷のように、インベーダー達は後退する。

基地に隣接する禁止エリアから湧き出てきたインベーダーは、愚かにも基地で眠る男へと手を出してしまった。
それが自らを滅ぼす者だと気付きもせずに――

「ククク……ハハハハッ……これだ。闘争……これこそが」

ディバイデッドライフルを構える。エネルギーを注ぎ込む――解放。
莫大な熱波の奔流が直線状のインベーダーを消し飛ばす。

「もっとだ……もっと。さあ……俺に痛みをくれ。進化を促す……更なる力を、得る……ために」

リボルビングステークの薬莢が排出される。
空になった弾倉――だが胸の宝玉が発光し腕へと伝う。内側から盛り上がったアインスト細胞が、組成変化を起こし弾薬となる。

「さて――やろうか」

そして虐殺が始まった。
428それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:43:52 ID:vjBTNDfy
支援
429それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:43:55 ID:0b65PYD2
430眠れる基地の魔王、悪が振るう剣 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:44:19 ID:C5ELLa/a
     □


「――なんだ、あいつは。あれも参加者……なのかい?」
「そうですの。まあ、今はちょっと人間やめてますけれど……」

基地を埋め尽くさんばかりのインベーダーと、単騎で渡り合っている――押してすらいる蒼い機体。
巨大というほどでもない。だが内包する力は、あるいはガウルンが今までに見たどんな機体よりも強力だ。
傲岸不遜を地で行くこの男が、我知らず頬を伝う汗を拭う。
自分でも驚くほどに冷たい汗だった。

「まさかとは思うんだが、三つめの仕事ってのは……」
「ええ。アレを撃破して欲しいんですの」
「おいおい……勘弁してくれよ。正真正銘の化けもんじゃねえか。あれに空手で突っ込んでけって?」
「あら、言い忘れてましたの。当然、あなたには新しい機体を用意しますから安心して欲しいですの」

三度、アルフィミィが手を振る。
暗いホールに光が刺した。
暗闇の中浮かび上がった、一機の機体。

「ほう……こいつは?」
「元々はルール説明の時、首輪を爆発させた人に支給するはずだった機体ですの。
 あそこで爆発させちゃったのは予定になかったので、余ってたんですの。
 大抵の機体には当たり負けしないはず……これを進呈致しますの」
「ああ、あの姉ちゃんの分か。ふむ……ま、いいだろ。その仕事受けようじゃねえか」
「契約成立ですのね。ではこれを飲んで下さいな」

少女がガウルンに錠剤のようなものを手渡す。

「こいつは?」
「先程申しましたペナルティですの。それを飲めば、禁止エリアに入っても首輪は反応しません。
 代わりに……あ、やっぱり秘密ですの。どうせすぐわかりますの」
「おいおい。教えてくれてもいいじゃねえか」

不満を訴えるガウルン。その眼光は言い分を聞かなければ殺すと言わんばかりに鋭いが、人間でない少女には寸毫の怯みもない。

「ただでさえあなたにはサービスしてあげてるんですの。
 これ以上は公平さを欠く――と言いますか、こんな事態になってなければそもそも助けもしませんでしたの」
「つまりあんたがテコ入れしなけりゃならないほど事態は混乱しているってことか……なら贅沢は言えねえな」
「ご理解感謝致しますの。……さて、そろそろ舞台に戻ってもらいますの。どこかご希望の地域はありまして?」
「送ってくれるのかい?」
「ええ。私としては、今すぐ基地へ向かって欲しいんですけれど?」
「おいおい、それは勘弁してくれ。機体の慣らしもしてないのにあいつにぶつけられちゃ堪らん」
「それもそうですの。では、どこへ?」
「そうだな――」

とりあえずナデシコの辺りはもういい。
アキトとの戦いは中々楽しめたし、今も生き残っているかもしれないが同じ味ばかりでは飽きも来る。
同じ理由であそこにいた奴らも却下――どうせなら興味のある相手がいい。
さしあたって候補に挙がるのはアムロ・レイか――いや。

「――――のところがいい」
「ああ、あの人。構いませんけれど……あら。今、戦っているようですの。相手はインベーダーですわね」
「何、そりゃいけねえ。急いでくんな、お嬢ちゃん」
「はいはい。では、また会える時まで、ごきげんようですの――」

機体に乗ったガウルン。
ガクン、と震動が来て、機体が落ちていく感覚とともに、ガウルンは目を閉じた。
次に目を開けたとき、そこは――
431それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:47:33 ID:vjBTNDfy
支援
432それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:53:49 ID:DSHoKb8U
支援
433それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:55:26 ID:vjBTNDfy
支援
434眠れる基地の魔王、悪が振るう剣 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:55:30 ID:C5ELLa/a
     □


「統夜、大きいのが来たよ!」
「下がれテニア! 俺が行く!」

A-1、市街地。
ユーゼス・ゴッツォと別れてすぐここに向かった紫雲統夜、フェステニア・ミューズ。
誰もいない静寂の市街地で、二人だけの時間を過ごしていた恋人達の時間を邪魔をするは無数の侵略者――インベーダー。
警告も対話もなく、いきなり襲いかかってきた異形。
泡を喰い機体に乗り込んだ二人は事態を把握する暇もなく迎撃に追われている。

「畜生、剣があればこんな奴ら……!」

ヴァイサーガは腕の隠し武器である鉤爪を伸ばし、戦っている。ユーゼスに持ち逃げされた五大剣の代わりには成り得ないが、今はこれと烈火刃だけが頼りだ。
ベルゲルミルはようやっと再生したばかりのシックス・スレイヴを温存することなく操っている。
インベーダー一体一体の強さはそれほどでもない。
ヴァイサーガが本調子ならそれほどでもないのだが、現状では十分な脅威。

「はぁっ、はぁっ……! これで、止めだ!」

一際巨大な個体をシックス・スレイヴが固定。動きの止まったところに、駆け寄ったヴァイサーガの一撃が決まる。
断末魔とともに消えるインベーダー。

「……終わった、か」
「もう、なんなのこいつら! 訳わかんないよ!」
「俺だってわからないよ――いや、待て! また来るぞ!」

北の光壁を抜けて、新たなインベーダーが迫る。

「統夜、どうするの!? これじゃあ……」
「くそ……! どうすれば、」

押し寄せる壁のように群れ集まったインベーダー。
烈火刃とマシンナリーライフルで迎撃するも数が多すぎる。
飲み込まれる寸前――更に上空から何か、人型の影が落下してきた。
それは腕を伸ばし、剣のようなものを構える。剣は瞬く間にその質量を増し、巨大な刀――まさしく斬艦刀とでも言うべき姿に変わった。

「なっ……」
「……ィィィイイイッヤッッホォォォォォォオオオオオオオウウウゥゥゥッッ!!」

雄叫び――歓喜のそれとともに、斬艦刀が振り下ろされた。
インベーダーが軽々と薙ぎ払われる。まさしく、鎧袖一触。

何か――巨大な鎧武者がヴァイサーガの前に降り立つ。
ヴァイサーガよりも一回り大きい。ヴァイサーガを騎士と表現するなら、それはまさに武者。

「よう、統夜。それにテニアの嬢ちゃん……会いたかったぜぇ?」

その機体から聞こえてきた声は、インベーダーから助けてくれたこの状況とはいえ決して聞きたくなかった男のもの。

「ガウ……ルン!?」

統夜の、そしてテニアの喉から漏れたその呻きは友好的な成分は微塵もない。
ガウルンはその絶望感溢れる嘆きを聞き――沸き上がる歓喜とともに頬を吊り上げた。
435それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:55:56 ID:vjBTNDfy
支援
436それも名無しだ:2009/03/20(金) 00:57:05 ID:/EhUkzsW
このスレ埋まっちゃうんじゃないの?
支援
437眠れる基地の魔王、悪が振るう剣 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:57:08 ID:C5ELLa/a
【ガウルン 搭乗機体:ダイゼンガー(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:疲労(大)、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
 機体状況:万全
 現在位置:A-1 市街地
 第一行動方針:存分に楽しむ。
 第二行動方針:統夜&テニアの今からに興味深々。テンションあがってきた。
 第三行動方針:アキト、ブンドルを殺す
 第四行動方針:禁止エリアのインベーダー、基地のキョウスケの撃破
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考1:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました
 備考2:ダイゼンガーは内蔵された装備を全て使用できる状態です
 備考3:謎の薬を一錠所持。飲めば禁止エリアに入っても首輪が爆発しなくなる(飲んだ時のペナルティは未定)】


【紫雲統夜    登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状態:精神的に疲労 怒り
 機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN70% 五大剣紛失
 現在位置:A-1
 第一行動方針:インベーダー、ガウルンに対処
 第二行動方針:ユーゼスに協力。でも信用はしない 
 最終行動方針:テニアと生き残る】


【フェステニア・ミューズ   搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:焦り
 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) EN50%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
 現在位置:A-1
 第一行動方針:インベーダー、ガウルンに対処
 第二行動方針:ユーゼスに協力。不審な点があれば容赦しない
 最終行動方針:統夜と生き残る
 備考1:首輪を所持しています】

438眠れる基地の魔王、悪が振るう剣 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 00:58:29 ID:C5ELLa/a
【キョウスケ・ナンブ  搭乗機体:ゲシュペンストMkV(スーパーロボット大戦 OG2)
 パイロット状況:ノイ・レジセイアの欠片が憑依、アインスト化 。DG細胞感染。
 機体状況:アインスト化。ディバイデッド・ライフル所持。機体が初期の約1,2倍(=30mより少し小さいくらい) EN80%
 現在位置:G-6基地跡地、発電施設内
 第一行動方針:すべての存在を撃ち貫く
 第二行動方針:――――――――――――――――――――カミーユ、俺を……。
 最終行動方針:???
 備考1:機体・パイロットともにアインスト化。
 備考2:ゲシュペンストMkVの基本武装はアルトアイゼンとほぼ同一。
     ただしアインスト化および巨大化したため全般的にスペックアップ・強力な自己再生能力が付与。
     ビルトファルケンがベースのため飛行可能(TBSの使用は不可)。
     実弾装備はアインストの生体部品で生成可能(ENを消費)。
 備考3:戦闘などが行なわれた場合、さらに巨大化する可能性があります(どこまで巨大化するか不明)。
     直接機体とつながってない武器(ディバイデッド・ライフルなど手持ち武器)は巨大化しません。
     現在はギリギリディバイデッド・ライフルが使用できますが、これ以上巨大化した場合規格が合わなくなる恐れがあります。
     胸部中央に赤い宝玉が出現】


【アルフィミィ  搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:ネビーイーム
 第一行動方針:バトルロワイアルの進行
 最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】

※禁止エリアにインベーダーが出現しました。
  これ以上数が増えることはありませんが、操縦者のいない機体に取りつくとメタルビースト化します。
  また、F-1エリアにゲッター線が高濃度で残留しています。

【二日目15:30】
439それも名無しだ:2009/03/20(金) 01:00:05 ID:vjBTNDfy
支援
440 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 01:03:38 ID:C5ELLa/a
以上・・・投下終了です。
22時半からお付き合いしていただき、支援・代理投下ともに本当にありがとうございました。
約140kb、70超レス・・・アホかとしか思えない分量ですねごめんなさいorz

正直突っ込みどころでしか構成されてないと思うので、感想ご指摘お待ちしております。
あと>>398
>唐突に、ガロードの背後に竜馬が現れた。いや、現れたというより――存在が確定したというほが正しい。

唐突に、ガロードの背後に竜馬が現れた。いや、現れたというより――存在が確定したという方が正しい。
ですね。申し訳ない・・・
441それも名無しだ:2009/03/20(金) 01:08:23 ID:vjBTNDfy
>>440
乙でした
442それも名無しだ:2009/03/20(金) 01:10:00 ID:b7FwzWkq
乙。なんかもう色々超展開だな!

終わってから報告しようと思ってたんだけど、どこか、ロジャーのセリフで誤字があったような……
「だが敢、えて〜」と、『、』の位置がおかしかった気が。
443それも名無しだ:2009/03/20(金) 01:16:19 ID:/EhUkzsW
乙、超GJ!
やっぱり超展開がスパロワの華だねぇ!
初代とは違い、大人数パーティーになりそうで期待。

誤字関係だと、どこかで「竜馬」にスペルミスがあった記憶が。
444それも名無しだ:2009/03/20(金) 01:27:09 ID:gCA625Uk
こんな長作・傑作を一人で作るとは!?
もの凄く乙です。

誤字のことですが、戦闘中のどこかで「死角」が「資格」になっていましたよ。
シャギアとガウルンが戦っている時だと思いますが
445それも名無しだ:2009/03/20(金) 01:43:18 ID:0b65PYD2
まさかのインベーダー襲来w
なるほど、こういう形ならたしかに全員の予約が必要だw
しかしこれで一気に物語が進んだな、人数の割に動いてなかった主催側もぐっと近くなって、いろいろバランスが取れたかも。
これほどの大作、本当にGJでした!
446 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 11:50:51 ID:zw663Kqz
自分でざっと読んだ結果、

>>319
三十六時間以内……正確な時間は分からないが、急がねばならんことには変わりない。

三十六時間以内……正確な時間は分からないが、急がねばならないことには変わりない。

>>322
拳の延長線上から逃れたマスターガンダム。だがそこはまだの殺傷圏内。

拳の延長線上から逃れたマスターガンダム。だがそこはまだ刃の殺傷圏内。

>>326
「いかにも、私はロジャー・スミス。いかなる理由があって君らが戦っているのかは知らん。
 だが敢、えて言わせてもらおう――交渉の時間だ、諸君!」

「いかにも、私はロジャー・スミス。いかなる理由があって君らが戦っているのかは知らん。
 だが敢えて言わせてもらおう――交渉の時間だ、諸君!」

>>327
ここで踊るは騎士凰牙とガナドゥール、ロジャースミスとソシエ・ハイム。

ここで踊るは騎士凰牙とガナドゥール、ロジャー・スミスとソシエ・ハイム。

>>332
「貴様……フン、あのときも言ったはずだ。
 交渉の場に争いを持ち込もうとする者は、この私ロジャー=スミスの名にかけて許しはしない、と。

「貴様……フン、あのときも言ったはずだ。
 交渉の場に争いを持ち込もうとする者は、この私ロジャー・スミスの名にかけて許しはしない、と。

>>332
二の句が継げないロジャーに、アキトは続けていい放つ。

二の句が継げないロジャーに、アキトは続けて言い放つ。

>>338
驚き、男を凝視する。男は手振りで話せと伝えていた。とりあえず手を放す。

驚き、男を凝視する。男は手振りで放せと伝えていた。とりあえず手を放す。

>>351
巨体にモノを言わせ、身体ごと叩きつける力任せのパンチ。だがスピードが尋常ではない――ブレンなど、掠っただけで木端微塵。

巨体にモノを言わせ、機体ごと叩きつける力任せのパンチ。だがスピードが尋常ではない――ブレンなど、掠っただけで木端微塵。

>>357
「捕まってろ、バサラ――飛ぶぞ!」

「掴まってろ、バサラ――飛ぶぞ!」
447 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 11:52:22 ID:zw663Kqz
>>379
接近してきた真ゲッターを蹴り飛ばす。資格から飛んできたプラズマ弾は五大剣で撃ち落とした。

接近してきた真ゲッターを蹴り飛ばす。死角から飛んできたプラズマ弾は五大剣で撃ち落とした。

>>389
「少年達よ、無事で何よりだ。だが再開の喜びを分かち合う――とは、いかないようだな」

「少年達よ、無事で何よりだ。だが再会の喜びを分かち合う――とは、いかないようだな」

>>398
「お前らは俺ほどゲッター線に浸食されてないからわからねえか。つまりだ、流竜馬という人間は多元世界に無限に存在する。
 お前達も同じだ。その内のたまたま一人が、あそこでともに戦っていて、俺達のようにここでこうやって殺し合いに巻き込まれているってこった

「お前らは俺ほどゲッター線に浸食されてないからわからねえか。つまりだ、流竜馬という人間は多元世界に無限に存在する。
 お前達も同じだ。その内のたまたま一人が、あそこでともに戦っていて、俺達のようにここでこうやって殺し合いに巻き込まれているってこった 。

>>401
困惑する二人に、呂魔は顔を上げず言葉を続けた。

困惑する二人に、竜馬は顔を上げず言葉を続けた。

>>427
その間も突進は止まらない――インベーダーの頭から突入したゲシュペンストMk?は、やがてインベーダーの足元へと抜ける。

その間も突進は止まらない――インベーダーの頭から突入したゲシュペンストMkVは、やがてインベーダーの足元へと抜ける。



ストレーガの状態表に、
 機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)

 機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し)  EN40%

>>416
F-1エリアのどこかにゲッターサイトが放置されています。
を追加します。

>>437
【ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状態:パイロットなし
 機体状態:大破
 現在位置:ネビーイーム】
を追加します。

タイトルは
>>319>>352までが「怒れる瞳」
>>353〜>>>>383までが「戦場に響く歌声」
>>387>>422までが「世界を止めて」
>>424〜>>>>438までが「眠れる基地の魔王、悪が振るう剣」となっております。


いや・・・なんというかびっくりするくらい誤字が多いですね。お恥ずかしい・・・
引き続きご指摘お待ちしております。
448それも名無しだ:2009/03/20(金) 12:06:59 ID:oiMc5ikR
非常に乙だけど、ちょっと一人で書きすぎじゃないかなという気がする
べつにNG要請とかはしないけど、今後は自重して欲しいな
449 ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/03/20(金) 12:46:06 ID:0b65PYD2
メタルビースト・シャニング、アムロ、カミーユ 予約します!
テンション上がってきた
450それも名無しだ:2009/03/20(金) 21:29:53 ID:aJUA8rit
きたー!
451 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/20(金) 23:47:57 ID:2Y8PVnzu
>>448
いやはやおっしゃる通り・・・
当初のプロットではまだ死者が出たりJアーク組やゲッターの戦闘まで書こうとしてましたしね
些かリレーの度を越したと反省しております、はい

>>449
つ 期待
452それも名無しだ:2009/03/21(土) 01:34:53 ID:xkV1oLP+
えと、次スレお願いできますか?
現在6割程度ですが14kありました。20k超えると思うので、あと30kしかないため支援などを込むと超える恐れが……
453それも名無しだ:2009/03/21(土) 02:15:56 ID:Izr/t2qA
新スレ
第二次スパロボバトルロワイアル9
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1237569242/

観察日誌は誰かお願い
454それも名無しだ:2009/03/21(土) 02:31:10 ID:xkV1oLP+
おお、スレ立て乙です!今日中には投下できるように頑張ります
455 ◆VvWRRU0SzU :2009/03/21(土) 03:13:59 ID:Izr/t2qA
過去スレ見てたら壮大な矛盾に気づいてしまった・・・!
>>372
バルマー本星にいた頃、設計図を見たことがあるくらいだったヴァイクラン。まさか実用化されたモデルがあったとは驚きだ。
おそらくヴァイクルの発展型であるそれは、相性で言えば参加者に支給されたどんな機体よりもユーゼスに合うはず。

装甲に散見されるズフィルードクリスタル、そしてガンスレイヴ――カルケリア・パルス・ティルゲムを用い制御する自働砲塔。
ユーゼスの知らない、だが紛れもないバルマー製の機体。だが相性で言えば、参加者に支給されたどんな機体よりもユーゼスに合うはず。
このヴァイクランこそ、自らと同じ性を持つ科学者が建造し、その息子たる人工サイコドライバーが操る機体――つまりはゴッツォ家の怨念の結晶なのだから。

に修正します。
ユーゼスが死んだあとに地球のメカを研究して作られたヴァイクランに、存命の時点で設計図なんてある訳ないって・・・
456それも名無しだ:2009/03/21(土) 13:16:52 ID:xkV1oLP+
完成したので投下します。26,5Kbだけど足りるかな?
457見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:17:30 ID:xkV1oLP+






戦うための力――人はそれを、『ガンダム』と言った。





「シャアアアアアアアアッ!!!」

獣にも似た鋭い雄叫びをあげ、メタルビースト・シャイニングがVF-22Sに飛びかかる。
紙一重でカミーユは操縦を間に合わせ、回避する。しかし、続いて虚空を蹴り上げ、でたらめな軌道で空を走るメタルビースト・シャイニング。
圧倒的な脚力で空を蹴り飛ばし、形容しがたい言語を全身から嘯きながら、 VF-22Sに追走する。

「なんだこのざらついた感じ……!?」

回避をくり返しながらも、F-91から受け取ったガンポッドを牽制がわりに打ち込む。
メタルビースト・シャニングの背面からの攻撃――しかし、腕や装甲の隙間から覗く黄色い瞳が一斉に動き、そちらを向く。
ガンダムとしての顔は前を向いたまま、後ろの攻撃を完璧に察知し、空高く跳躍してメタル・ビースト・シャイニングは弾幕をよける。

滴るような悪意を垂れ流し、敵意と害意にまみれていながら、心を全く感じられない歪な生命体が、カミーユの目の前にいた。
どこからともなく溢れ、アムロとカミーユを追い立てる謎の生命体群。そのどれもが、既存の生命とはまるで別種の肉体と精神を持っていた。
観測された次元の狭間より来たる、外なる狂気を秘めたインベーダー。
多くはむき出しのタールと個体をいったりきたりする肉体であったが、一部は機械を取り込んでいた。
おそらく、周囲の砕け散ったマシンの破片か何かを取り込んでいるのだろう。

その中でも、完全に原形をとどめたものに寄生したのが、今大きな壁として立ちはだかるメタルビースト・シャイニング。

カミーユとアムロも、それを理解していた。
インベーダー自体はそこまで素早いわけでもなく、強固な肉体を保有しているわけではない。
しかし、欠けたインベーダー同士が融合し再生する。メタルビースト・シャイニングも例外ではなく、
削りえぐり与えたダメージの箇所にインベーダーが入り込み、再生させてしまう。
事実上、メタルビースト・シャイニングの周囲にいる無数のインベーダーは、すべてメタルビースト・シャイニングのサブタンクだ。
トモロによる大規模な艦砲射撃でまとめてインベーダーはけし飛んで行くが、数が多すぎる。
禁止エリアより次々補充されしまう。

「くっ!」

オクスタンライフル・Eモードが、メタルビースト・シャイニングを打つ。
しかし、メタルビースト・シャイニングがかざした腕から黒い粘液が幕のように広がり、メタルビースト・シャイニングの体を包みこむ盾となった。

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!」

汚れた涎をしたたたらせ、体から黒い触腕を伸ばすメタルビースト・シャイニング。
先端には、黒い歯肉と不揃いで黄色がかった牙が無数に並んでいる。
カミーユは怪奇な軌道を描き迫るそれらの悪意を、正確に追い撃ち落としていく。
ほぼすべて撃ち落とした直後、滑り出されるように撃ち放たれるオクスタンライフルのBモードの弾丸が、メタルビースト・シャイニングの腹部へ。
正確に装甲の狭間、ブレンバーが刺さり脱落していた部分に弾丸が飛びこんだ。
爆ぜる黒いタール状の肉。だが、相手は一歩たたらを踏むだけ。
即座に、空を飛んでいたインベーダーが傷に飛び込み補修、くぼんだ場所が元通りに。
458見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:18:38 ID:xkV1oLP+

カミーユが唇をかむ。
分かってはいるが、攻撃力が足らない。
一撃で、相手のガンダムの装甲ごと全身を吹き飛ばすか、内部だけに大量のエネルギーを流し込まない限り勝算はない。
それは分かってる。分かっているのだがだからはいそうですかでできるわけではないのだ。

VF-22Sも、F-91も、瞬間的な最大破壊力では、特機に比べるべくもない、圧倒的に劣る。
全身を吹き飛ばすなど、絶対に、と言っても過言ではないほど不可能だ。
通常のモビルスーツ相手でも正確に攻撃し爆発粉砕することはできても、跡形もなくとなるとサイコガンダム等でなければ難しい。
まして、今目の前の化け物相手ともなれば言わずもがな、だ。

「ゲヒャゲヒャゲヒャゲヒャ!!」

不快な笑い声にも似た音を放ち、全身から触腕を伸ばし、四肢を地面につけ暴れ狂うメタルビースト・シャイニング。
その姿に、モビルスーツらしさ、引いてはガンダムとしての気高さなど一片も残っていない。
多頭龍(ヒュドラ)を強引に人型に押し込めたようなフォルム。全身から見える爛々と輝く瞳。
全身にできた口で金属をはむためVF-22Sに追いすがる。人よりも獣に近いその動作。
その常軌を超えて偏ったアンバランスさ、怪奇さは人に畏怖を与えるには十分なものだ。

空中にいるインベーダーたちは、トモロが牽制し、ビームライフルなどを持たないため露払いに回ったアムロが撃破してくれている。
おかげで、カミーユはメタルビースト・シャイニングと一対一で戦えるわけだが、逆を言えば一切の支援は受けられないということ。
たった一人で、絶対に撃破しなくてはならない。
アムロの懸命の戦いで、こちらに乱入するインベーダーは少ない。
だが、僅かに防衛網をすり抜けたインベーダーはここで待機、メタルビースト・シャイニングの糧となる。
かなり、厳しいと言っていいだろう。

「いけっ……!」

距離をとっての戦いを続けていたが、徐々にメタルビースト・シャイニングが距離を詰める。
機械ではできない常識はずれの旋回速度が、ガンダムにバルキリー並みの速度を与えていた。
カミーユは、即座に武器を納め、拳にエネルギーを収束させる。
ピンポイントバリアパンチ――その空間ごと押し込む力を受けても、メタルビースト・シャイニングは全身を止めない。
全身ごとぶつける勢いで進撃するメタルビースト・シャイニング。
いくらバリアがあるとはいえ、突撃する巨大な質量を受け止められるはずがない。

バリアを全開にし、反発で距離を再度取り直す。
だが、相手の足をやっと止めたと思えば、再び全身よりわき出るインベーダーが盾となる。
弾丸が吸い込まれ、黒いタールに波紋が走ったかと思えば逆に矛となる大蛇に似たインベーダーが殺到する。

膂力が違う。
速度が違う。
耐久力が違う。
常識が――違う。
人間というくくりを超えた性能を発揮するメタルビースト・シャニング。
何もかも違い過ぎ、元となったシャイニングガンダムとの近似点を見つけることなど不可能。

「だからって……!」

だからってあきらめたら、何になるのか。
命を賭けて守ってくれたベガさん。自分が討った、あのどこかへ帰りたかった男。
正にしろ負にしろ、そういったものを今更かなぐり捨てられるはずがない。
459見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:19:11 ID:xkV1oLP+

果敢に何度もカミーユはメタルビースト・シャイニングに攻撃を繰り返す。
致命傷はなくとも、少しずつ摩耗していく装甲。残弾。エネルギー。
揺るがないメタルビースト・シャイニングを前に、カミーユは進む。

距離をとっての戦いが駄目ならば、逆に距離を詰めての打ち合い。これしか活路はない。
だが、これはあまりにも危険だ。元来、近接戦闘を最も得意とし、質量的にもVF-22Sの上を行くシャイニングガンダム。
それのなれの果てに近づいた上で、再生を超える破壊を叩き込もうというのだ。
虎の口に直接飛び込むに等しい行為だろう。

メタルビースト・シャイニングの拳が、VF-22Sの顔を掠める。
しかし、それをくぐり、クロス・カウンターにピンポイントバリアパンチを叩きこむ。
メタルビーストの腕が二つに割れ、両サイドから挟み込もうと迫る。
オクスタンライフルとガンポット。両手に持った火器が火を噴き、同時に叩き落とす。
メタルビースト・シャイニングから放たれるバルカン。
それをピンポイントバリアで防ぐ。

どれもがギリギリのタイミングでありながら、一撃でも受ければ中破以上は確実。
そんな攻撃を研ぎ澄まされた感覚でカミーユは避けている。

「ガアアアアアアアアアアッ!!」

攻撃に当たらないことに対しての怒りか、メタルビースト・シャイニングが雄叫びをあげる。

まるで子供のように折れたブレンバーをでたらめに振り回し、VF-22Sに叩きつける。
わし掴みにした棍棒か何かを振り落とすかのような隙だらけの攻撃。
回避はたやすい、はずだった。事実、ブレンバーは回避できた。
だが、同時に文字通り四方八方から襲い来る蛇に似た触手が、VF-22Sの装甲を食いあさる。
強引にだが戦闘機への変形を選択。変形による関節などの回転、可変の勢いによりその牙を引きはがす。
だが引きはがされるまでのラグで、空高くへ打ち上げられたのち、地面へと落ちて行くメタルビースト・シャイニング。

「まだっ!」

空高くまで昇った後、逆U字を描く軌跡で地面へ。その最中に変形、オクスタンライフルを構える。

「撃ち貫いてやる! ……ゼロ距離、取った!」

落下の最中にあるメタルビースト・シャイニングから黒い触手が伸びる。
だがそれらの直撃コースのみを避けての全速突撃(チャージ)。
オクスタンの意味通り刺突槍の如くオクスタンライフルライフルが肉を裂き装甲の亀裂に刺し込まれる。
どんどん加速地面へ向けて加速。加速度(ベロシティ)が限界点(クリティカル)を突破。
地面へと叩きつけられたメタルビースト・シャイニングの落下点が爆心地を作り出す。
460見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:20:17 ID:xkV1oLP+

「化け物は化け物の巣にいろ! お前たちは人のいる場所にいちゃいけないんだよ!」

そのまま引き金が引き絞られる。体内で爆ぜるBモ−ドの弾丸。Eモードの光波。
全身を砕くことはできずとも、VF-22Sでも可能な方法。すなわち内部からの破壊。
雷光を放ち炸裂を繰り返す。爆心地(グラウンド・ゼロ)の名にふさわしき爆発と衝撃を放ち続ける。
藁をも掴まんと何かにすがる腕に似た、蛇の頭たちのわななき。しかし、それも一時をおき、しなだれ、朽ちて行く。



完全なる沈黙――それをカミーユは確認し、荒い息を吐きながらやっとオクスタンライフルを引き抜いた。

度重なる酷い疲労で痛む頭痛をこらえ、カミーユはVF-22Sを立ち上がらせる。
まだ、空を見ればアムロさんが多くのインベーダーが戦っていた。自分だけ、疲れたからと言ってやめられるはずがない。
機体のチェックを軽く行い、そのままアムロの支援に向かおうとした。

その矢先。

「なんだ……!? ヤザン・ゲーブル……!?」

カミーユが、メタルビースト・シャイニングから熱狂にも似た気配を感じ、そちらへ機体を振り向かせる。
その瞬間、カメラに浮かんでいたのは……光弾だった。


      ◇       ◇        ◇

「カミーユ!」

アムロは、メタルビースト・シャイニングで吹き飛ばされたVF-22Sを通信を繋げる。
小さくを呻きをあげるカミーユ。起きる気配はないが……大きな外傷は見当たらない。
アムロ自身、多くのインベーダーを相手取るのに限界で、カミーユの援護に入れなかったわけだが……
それでもその意志力を感じ取る力でメタルビースト・シャイニングが機能を停止したことは理解していた。

だというのに、完全に機能を停止、つまり死んだはずのメタルビースト・シャイニングが再び牙をむいたのだ。

「何が起こっている!?」

メタルビースト・シャイニングの悪意に満ちた思念は死んだ。それは間違いない。
なら、今あれを動かしているのは何者なのか。ひどく既視感を感じる波長を前に、アムロの額に汗が流れた。
無資質でもあった化け物の気配とは対極にある、むせ返るほどの闘争心にまみれた人間らしいと言えば人間らしい存在の感覚。
メタルビースト・シャイニングになにが起こったのか。アムロがヴェスバーをメタルビースト・シャイニングに向ける。
それと同時のタイミング。

461見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:20:49 ID:xkV1oLP+


「一度は落とした命をまた拾えるとは……菊の季節に桜が満開! 我が世の春! 再びここに来たれりぃぃぃぃぃッ!」

立ち上がったメタルビースト・シャイニングから聞こえる、天をもつかんという声量の咆哮。
その声は―――

「ギム・ギンガナム!?」
「その通りだ! いかなる奇縁か冥府の淵から帰ってきたぞ! もちろん……」

メタルビースト・シャイニングが、F-91にブレンバーを投げつける。
もちろん、あっさりF-91に乗るアムロはそれを回避したが、ギム・ギンガナムの行動自体は理解できるものではない。

「何のつもりだ、ギム・ギンガナム!」
「もちろん、戦うつもりなんだよ! 心残りだった黒歴史の勇者たちとの戦い! ここで晴らさずしてしていつ晴らす!」

F-91に突撃してくるメタルビースト・シャイニング。
F-91はビームサーベルを抜き放ち、メタルビースト・シャイニングのビームソードを受け止めた。

「こんな時でも闘争を続ける気かお前は!?」
「無論! 黒歴史に名を残す貴様の言うことではないな!」

つばぜり合いのあと、F-91は後ろに飛び退る。

「また黒歴史か……それはなんだ!? いったい何の関係がある!?」
「いいだろう、教えてやる! 黒歴史はなあ、すべての戦いの過去の記憶だ!」
「過去の戦いの記憶……!?」
「そこには刻まれているんだよ! νガンダムに乗ったアムロ・レイ! ストライク・フリーダムガンダムに乗るキラ・ヤマト!
 Ζガンダムに乗るカミーユ・ビダン! ガンダムDXに乗るガロード・ラン! どれもが……ガンダムに乗り黒歴史でも特に名を残す武名!」

ギンガナムの言葉にアムロは驚愕する。
自分とカミーユだけでなく、キラもガロードも、同じ時間軸の未来か過去に位置する存在であったことを。

「そんな英傑たちと戦えるこの機会、捨てるには惜しいだろう!?」

メタルビースト・シャイニングの体が、金色に輝きだす。

「そしてこのシャイニングガンダムも! 黒歴史が英雄ドモン・カッシュが乗るモビルファイター!
 本来会うことのなかった黒歴史のガンダム同士の戦い、これに心を躍らせず、なにがある!」

両腕を広げ、荒ぶる声で叫ぶギンガナム。

「剋目せよ!これぞ!
 ス ー パ ー モ ー ド で あ る ! 』

ぶすぶすとメタルビーストが焼けていく。
メタルビーストと、生命や進化を司るエネルギーである『気』は相反するものであるために起こる現象である。
しかし、ギンガナムは満足そうに笑いを上げている。

メタルビースト・シャイニングとF-91の戦いがギンガナムの奇行で止まったことに業を煮やしたのか、一匹のメタルビーストがF-91に突撃する。

「この原生生物が! 小生とアムロ・レイの戦いに入ろうなんざ百年早いんだよ!」

それをあっさりと切り捨てるギンガナム。

メタルビースト達は、アムロとカミーユを倒すには、現状無理と判断した。
故に、かつてスティンガーがコーウィンや早乙女博士たちと同じようにギンガナムを蘇生……いや寄生し、機能を復活させたのだ。
運よく、肉体自体は首が吹き飛んだ程度で、ギンガナムの肉体自体は欠損していなかったことが幸いしたのだろう。
もっとも、どれだけ欠けていようと、メタルビースト・シャイニングのように強引に再生していた可能性もあるが。
462見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:21:59 ID:xkV1oLP+

だが、ここで予想外のことが起こった。
本来、性格の原型を僅かに持つだけでメタルビーストの傀儡と化すはずだったのに、
あろうことか生前の自分のメンタリティ、自意識をはっきり持ったままギンガナムは蘇ってしまったのだ。
ギンガナムがその闘争心含みメタルビーストが望む性格そのままだったのでいじる必要がなかった部分は大いにあるが、
一重に、我が道を爆走するその強固な意思が早乙女博士同様意識を残す結果にもなったのかもしれない。
メタルビーストがアムロとカミーユの攻撃で弱っていたのも一因だろう。

複数の条件が完璧なかたちで揃ったが故の奇跡――いや、悪夢。
ギンガナムはメタルビーストの影響を精神的にはまったくと言っていいほど受けずに再生した。してしまった。
肉体自体はメタルビーストに少なからず依存している以上、反発がつらくないわけがないのだが……
精神的にハイになりすぎているためそちらが上回っているのか。

変則的ではあるが、これもまたインベーダーを人の魂が凌駕するという証明の一つ。

足元に転がっていた、どこかのメタルビーストのつけていた三本指の腕――ラーズアングリフの腕――を、
溶けかけたインベーダーがいる腕の断面に押し付け強引に補強すると、メタルビースト・シャイニング……いや、シャイニングガンダムは構えを取る。
さしものメタルビースト達も、ギンガナムの勢いに押されてか、傍観する形になっていた。

「いざ行くぞぉ!」

金色に輝くシャイニングガンダムがF-91へ肘鉄を打ち込もうとする。
メタルビースト・シャニングだった時よりはるかに速い。
メタルビーストで補強することで得ていた力を失ったことで生まれたマイナスよりも、
ギンガナムの『気』でスーパーモードになったことによるパワーアップのプラスのほうが大きく上回っている証明。

F-91が木っ端のように吹っ飛ぶ。
どうにか機体を維持し、背面ブースターで姿勢を整えようとするが、ギンガナムはそれを許さない。

「っ……!」

反射的に横へ即座へ移動。
一瞬後に、大剣と化したビームソード、『シャイニングフィンガーソード』が大地を割った。
片手分の出力しか送られてないとはいえ、そのサイズはF-91のビームサーベルよりはるかに巨大で、受け止められる代物ではない。
牽制にメガマシンキャノンを撃つが、まったく異に介さずシャイニングガンダムは風を纏い突進してくる。

まるで爆発が起きたかのような轟音。
シャイニングフィンガーソードの剣戟を受けた大地から駆け抜ける烈風が、コントロールを根こそぎ奪う。
それでも、アムロは、ビームシールドを展開。羽虫に似た音を立ててぶつかり合うシールドとソード。
当然シャイニングフィンガーソードを受け止められるわけもない。ワンテンポ遅らせるだけだ。
だがそれで十分。すばやくF-91の体をねじり、踏み込んできたシャイニングガンダムの側面へ回らせる。

「そんな小細工でぇ!」

防御など関係無いと言わんばかりに、恐るべき威力を秘めた一刀を強引に横薙ぎに振り切るシャイニングガンダム。
直上へアムロは回避する。だが、下からの風のあおりを受け、10m以上ある機械の巨体が、凄まじい勢いで後方へと弾き飛ばされてゆく。
直ぐ様シャイニングガンダムは大地を蹴って、F-91に更なる追撃を仕掛けようとしている。
463見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:22:30 ID:xkV1oLP+

「まずい……!」

実態がないエネルギーソードは、当然重みもない。つまり、現実に大剣を振るうのと違い、振った反動などが手にほとんどないのだ。
まるで扇風機の如く振り回される剣は、確実に逃げ場を減らす。木の葉のように風にあおられ、翻弄されるF-91。
カミーユは気絶し、トモロはインベーダーがカミーユに近づかないようにするのが手いっぱいだ。
確実に狭まる行動範囲を的確にアムロは移動する。

だが、それも終わりは来る。

ついに、シャイニングフィンガーソードが、アムロを捕らえる。回避不能の直撃コース。

「まだだ!」

アムロは、ヴェスバーを抜き放ち、速射―貫通に調節した一撃の引き金を引いた。
長い間使用し、エネルギーを消耗していたこともあって、シャイニングフィンガーソードがついに砕ける。
だが、完全に動きを止めた致命的な隙。

「そらそらそらそらそらぁ!」

連続で放たれるシャイニングショットが、F-91を弾き飛ばす。
元々近接戦闘能力に特化したシャイニングガンダムの遠距離兵器、威力はそれほどでもないが、次々襲う衝撃は容赦なくコクピットを揺らす。
あっけなくF-91は地に伏した。

「噂ほどではないなぁ! それが伝説と言われたファーストニュータイプか!?」
「ぐっ………まだだ、ガロードから譲り受けたガンダムを、この箱庭の戦いを終わらせるまで壊すわけにはいかない!」
「戦いを終わらせるだと!? 闘争に次ぐ闘争が人間の歴史だ! 過去未来現在その心理はかわらなかったと黒歴史は教えてくれたぞ!
 ガンダムもなあ、そのための道具なんだよ!」
「……分かってるさ」

四肢に力を入れ、F-91が立ち上がる。
この男だけには負けてはいけない。この男に負ければ、人間が、未来永劫進化しない生き物であると認めるようなものだ。
アムロもまた、カミーユ同様決してあきらめない。

「だから、誰かが世界の人の心に光を見せなきゃならないんだろ……!」

自分がそうであるなどと傲慢なことはいわない。自分たちの世代ですべて終わらせるなどどは思わない。
それでも、遅遅とした歩みでも、やらなければならないことがある。
ガロード達のの世界がどの時間で発生したかは知らない。しかし、彼らのようにニュータイプは幻想であると受け入れる社会の訪れが見える時もあるのだ。
それを過去を垣間見たからと全て否定させるなど、一人の人間として許すわけにはいかない。

人の歴史は、円環ではないのだ。螺旋を描き、確かに少しずつ変化し昇って行く。
だからこそ、たどり着ける場所もある。

「それが……『永遠に争う世界』がお前の見た俺たちの未来なら! 俺たちはそれを変えてみせる!」

F-91の仮面が割れ、その下の装甲が露わになる。
それと同時に三枚の肩のフィンが黄金の粒子を大量に纏う。

F-91を包む金色の輝きが、シャイニングガンダムのシャイニングショットを次々と弾き飛ばす。
オリジナルニュータイプアムロの感応力とF-91のバイオコンピュータの完全なる融合。
質量のある幻影を超える、次なる段階――質量を持ったエネルギー。
乖離した大量の微細な装甲箔がさながらネットワークのようにエネルギーを伝達しあうことで発生する、
点と点を繋ぐエネルギー波を複雑かつ何重にも張りめぐらされた力場が生成する一種のバリアフィールド。
そう、つまり―――
464見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:23:13 ID:xkV1oLP+

「伝説のニュータイプバリアだとぉぉぉぉおおお!?」
「F-91は……いや、『ガンダム』は伊達じゃあないっ!」

数多の宇宙で、正義として、悪として、平和の使者として、混沌をもたらすものとして、生まれてきたガンダム。
その無限にも等しいガンダムと、そのパイロットの系譜の中の一人と一機。
『ガンダム』という名は、決して虚構でも嘘でもない。アムロの言うとおり――伊達ではないのだ。

「だがそうおいそれとぉ!」

シャイニングは鋭い回し蹴りをF-91に叩きこむ。しかし、その一撃はF-91の聖なる守りに阻まれ、弾かれる。
足を弾かれ軸がぶれた間に、F-91が拳をシャイニングガンダムの顔に叩き込んだ。
モビルスーツとはかけ離れたモビルファイターじみた一撃を受け、地面を削りながら後方へシャイニングガンダムは飛ばされる。
またたく間に距離を詰めるF-91が、シャイニングガンダムの隙間を縫ってさらに連続で追撃を加え続ける。

「これほどの格闘戦もこなすとは……さすがはアムロ・レイ!」
「昔取った杵柄だ!」

アムロは、元来格闘戦が得意なのだ。
ランバ・ラルのグフも、シャアのジオングを相討ちに持ち込んだ時も、始めてザクを撃破した時も、黒い三連星を倒したときも……
そのどれもが格闘戦だ。モビルスーツは、本来ミノフスキー粒子で半有視覚で戦闘を強いられた環境で戦うためのもの。
戦車や戦闘機とはまったく別種、人間と同等の機能を使用しての戦いを可能にする。近接した上での切り合い殴り合いはある意味正しいのだ。
その後は、技術の発達とともに、戦車や戦闘機同様に射程を延ばしての射撃戦に以降にしていくわけだが、
その最初期、格闘を基準とした時代をアムロはエースとして戦場を駆けたのである。
苦手であるはずもない。νガンダムが最期にサザビーに格闘を繰り出したのも、当然のこと。

だが、ギンガナムもやられ続けているわけではない。
多少のダメージは無視して攻撃を仕掛けている。
しかし、

「……!? 受けるのに当たらないだとぉ!?」

『ギンガナムの攻撃は当たらないがアムロの攻撃は当たる』のである。
無数の質量をもった分身が、シャイニングガンダムを取り囲む。完全に判別不能であるため、どれか正解か分からず、
シャニングガンダムは手あたり次第に攻撃を加えていく。当然、幻影であるそれらに攻撃は通らない。
だが、逆にF-91の攻撃はどうなっているか。
質量を半ば持つまで顕現したバリアフィールドは、幻影でありながら正確にシャニングガンダムを打つ、打つ。打つ!
一対無数にも似た状況が造られていく。

「ぬあああああ!?」

多重に重なり合い映りだされるF-91から、無数の拳が繰り出される。
さながら、拳だけが高速で撃ち出され、分裂したように。瞬きすらも許さぬ速度で繰り出される拳が、モビルファイターを押し倒す。

「ガロード、これがお前たちの世界のニュータイプか……?」

アムロは、一人静かに呟く。
このニュータイプの感応能力を使った人形とその操作は、
ガロードから聞いたガロードの世界……いや自分たち過去か未来の世界のニュータイプの戦闘活用法が発想の元になっている。
すなわち、ビットモビルスーツだ。伝動するエネルギーを人型にして意思を乗せて操作する。
ニュータイプの力を使った、ニュータイプの戦闘方法だ。
465見よ人の心の光! 輝き唸る神の掌!:2009/03/21(土) 13:24:16 ID:xkV1oLP+

「さすがはニュータイプということかぁ!?」
「……いや違う! これが、人間の力だ!」
「戯言を! 人間は戦うために進化した! その進化の先端を行くニュータイプが戦闘の力以外のわきゃねぇぇだろぉぉぉ!!」

F-91の分身が減っていく。システムのオーバーロード、積載エネルギーの限界……その両者を受けて。

「そうとしか考えられない人間が、その力を戦いに使うんだ! だから戦いの環が広がるのを知るんだよ!」

荒野に立つ、2つの金色の柱。
両者、同時に最終リミッターを解除――フェイス・オープン機能による冷却が、限界を超える。

「なら勝ったほうが正しいということでどうだ!」
「どこまでも闘争にこだわる男め……!」
「それの何が悪い!? 拳で決めることに異存はないだろう! シャイニングフィンガーのぶつけ合い、受けて見せるんだよ!」

シャニングガンダムが腕を引く。突き出す一瞬を求め、力を溜める。
F-91が残った力を拳に送る。争いを断つ刃へ変わる。マスターガンダムとの戦いの経験が、ここで生きる。

「いくぞぉ! 小生の! 闘争心が真っ赤に燃えるぅぅぅ! お前を倒せと輝き叫ぶ!」
「お前のような男につきあってられるか! これで終わりだ……!」
「これぞ真説っ! シャアアアアアアイィンング! フィンガァァァアアアアッ!」

両者の叫びとともに突き出された拳が、中空で激突した。
紫電を周囲に放ち、大地を蒸発させながら爆音轟かせ衝突、炸裂。
だが……膠着は、一瞬。









「馬鹿なぁぁああああ! 小生のシャイニングフィンガーが破れると言うのかあ!!?」
「これで終わりだ! お前の望む争った未来は来ない!」

拳を砕かれ、肩まで跡形もなく粉々にされるシャイニングガンダム。
それだけでなく、続けざまにシャイニングガンダムの胸へF-91は抜き手を放つ。
金色のシャイニングガンダムの装甲を貫通し、深く深くガンダムF-91のさらに強く輝く金色の拳が差し込まれる。
それは内部に巣食うインベーダーの肉もまとめて掘り進む。
シャイングガンダムの胸の中心へ差し込んだ腕を振り上げる。空高くシャイニングガンダムを掲げ、ガンダムF-9に乗るアムロは叫ぶ。
勝鬨を上げるのは、ただひとり。

「ヒィィィィトォッ! エンドォッ!!」

F-91の放つニュータイプとしての輝きがシャイニングガンダムの内部から漏れる。
生命エネルギーとインベーターは、対極にあるものであり反発しあう。
先ほどからギンガナムの気迫と根性でどうにか保っていたインベーダーも、直接その力を体内から叩きこまれればジ・エンドだ。
蒸発するインベーダーという筋肉。砕け散るガンダリウム合金スーパーセラミック複合材の装甲。

「シャイニングフィンガーを超えるフィンガー……
  ゴ ッ ド フ ィ ン ガ ー ! ?  これが『ガンダム・ザ・ガンダム』と言うものかあぁぁぁぁっ!!?」

燃え盛る焔のごとき魂が、黄泉帰った屍人に終末を与えた。
これすなわち、文字通り――ヒート・エンド。
次の瞬間、金色の爆炎が世界を包み込んだ。その輝きは、柱となり地平に、天に駆け抜け、周囲にいるインベーダーすらも貫いた。

戦いは、ここに終わったのだ。
466それも名無しだ:2009/03/21(土) 13:28:41 ID:4jF0m6+o
支援
467それも名無しだ:2009/03/21(土) 13:31:37 ID:KMwU6Zv/
sien
468代理投下:2009/03/21(土) 13:41:26 ID:4jF0m6+o
      ◇       ◇        ◇


「く……さすがに、無理をしすぎたか……」

酷い頭痛にこめかみをもみながらF-91のシートにアムロはもたれかかる。
あまりにも多大な消耗と引き換えに可能にした、限界突破の力。その反動で、アムロは静かに目を伏せた。

「しかし……ゴッドフィンガー、か……」

神の掌という意を持つ一撃。その威力は、確かに強力無比。
無論、自分が神のような力を持っているとは思わない。思いたくもない。
だが、この力なら、ブンドルの言っていた必要な力にも匹敵する。
殺し合いは現実起こり、数々の人が倒れ、マシンが朽ちてきた。
その中、超極大の力を複数集めるのは至難の業であることは理解している。
この力をもっと完璧に扱えるようになり、ほぼエネルギー最大の状態で発動させられれば、求めらる力の一つになることは可能かもしれない。

いや、かならずなってみせる。ガンダムには、それだけの可能性を秘めているのだ。

キラも、ガロードも、俺たちの世界のガンダムも……そうやって切り開くため戦ってきた。
確かに、ギンガナムの言う通り、人類は戦いの歴史を歩んでいるのかもしれない。
だが、ならばガンダムの歴史はそれへの反逆の歴史だ。兵器として生まれ、兵器の枠を超え、無限の想いをガンダムは背負って歩んできた。
このF-91もまた、終わらない戦いの歴史を止めるため作られた、νガンダムの未来――自分の未来――に生まれたガンダム。

必ず、世界をいつの日か変える日がくる。
そして、この偽りの箱庭も―――


最後に、こちらに接近するJアークが視界に入る。
そのまま、アムロは意識を失った。













ゴッドフィンガーをアムロは習得しました!



469それも名無しだ:2009/03/21(土) 13:47:02 ID:KMwU6Zv/
470代理投下
【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、疲労(大) 気絶
 機体状態:EN1,2% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ  ビームサーベル一本破損
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾60% ビームライフル消失 ガンポッドを所持 
 現在位置:D-3南部
 第一行動方針:インベーダーへの対処
 第二行動方針:首輪の解析とD-4地区の空間観測
 第三行動方針:協力者を集める
 第四行動方針:マシンセルの確保
 第五行動方針:基地の確保
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考1:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
 備考2:ガウルン、ユーゼス、テニアを危険人物として認識
 備考3:首輪(エイジ)を一個所持
 備考4:空間の綻びを認識】
 備考5:ゴッドフィンガーを習得しました。
    残存エネルギーのほぼすべてを発動すると使用します。
    また、冷却などの必要があるため、長時間維持は不可能です。
    発動、維持には気力(精神力)や集中力を必要とし、大幅に疲労します。
    ほぼ完全な質量をもった分身の精製、F-91を覆うバリアフィールドの精製、
    および四肢に収束させての攻撃への転嫁が可能です(これが俗にいうゴッドフィンガー)。