「……聞こえているか、白い機体のパイロット」
「何の用だ。まさか今更、命乞いでもあるまい」
「俺を見逃がせ。ユーゼスを倒すのが目的なら他にやることがあるはずだ」
「……呆れた奴だな、ガルド・ゴア・ボーマンを殺したのはお前だろう」
「奴が俺を殺そうとしたから、正当防衛で反撃したまでだ。
……言っておくがこれは忠告だ。俺の敵はユーゼスのみ。
貴様らなんぞに関わっている暇は無いが、死にたいというなら容赦はせんぞ」
「貴様一人で何ができる。せいぜいが殺し合いに乗って勝ち残ることくらいではないのか」
「女、そこの奴やクォヴレーから聞いていないのか?首輪を外したのはこの俺だ。
そしてこの閉鎖空間からの脱出方法も、必ず見つけ出してみせる。
だが、問題はそこから……お前達はユーゼスと戦う際に必要な、貴重な駒だ。
死んでもらっては困るというのは事実なんだよ」
「そうか……お前は本気でそう考えているのだな……」
「そうだ。だから――――ッ!?」
ここで、大きな物音。
「女、貴様は何故、俺に襲い掛かってくるのか……ユーゼスを倒されたらまずいからか?
この殺し合いも佳境に入ってきた段階でその強力な機体、しかもほとんど無傷……。
そうか……貴様がユーゼスの犬かッ!ならば全て合点がいく!」
「…………ッッ!!」
「女、これが最後だ。死にたくなければ俺と一緒に来い」
「スパイの貴様を奴等と置いておくのもまずいのでな。
貴重な駒を減らされてはたまったものではない……。
それに俺も貴様に聞きたいことが山ほどある。残らず喋ってもらうぞ」
「……知らんな。私がスパイ?何の話だ」
「今更とぼけても無駄だ。だがもし貴様がそうでないというなら、どちらにしろここで死ね。
さっきの行動で貴様はユーゼスより俺を倒す事を優先した。利用価値の無いクズに用は無い」
「さあ答えろ!貴様も命が惜しいなら、イエスと言え!」
「……ノーだ。何故なら私は人形だからな」
「貴様……ならば死ぬしかないぞ!」
「ノーと言った!人形に死への恐れなど存在しない!」
………
すべての録音が流れきったあと、マサキがまた口を開く。
「と、いうわけだ、これで分かっただろう」
「……テープを改ざんしているかも知れんぞ?」
イキマの声に、マサキとエルマが否定の言葉を述べた。
「戦闘中、この短時間にか? 少しはものを考えてからしゃべったらどうだ、クズが」
「残念ですが、特に改ざんの跡はありません。おそらく……オリジナルのテープです」
「たしかに、そのようだ」
フォルカはうなずいた。
感づかれた時の域の乱れに加え、自己申告まで入っているこのテープは、決定的だった。
「次は、イキマの話を聞かせてほしい」
マイが言うと、今度はイキマが話し始めた。
あの後の、地獄の顛末を。こちらも、凄惨なものだった。
一体どれだけの血が流れたのか―――
「……そして、ガルドが殺された。それを追う形で、渦に巻き込まれて……」
「今に至るというわけか」
「あれは、正当防衛と言ったがな、聞こえなかったか?」
イキマの怒りの気配が膨れる。
「……あまり、煽るな。 ……俺も、似たようなものだ」
怒りをぐっと抑え、冷静に話を聞くことに努める。
なるほど、エルマの話と同じだ。ここで、エルマの言動が本当であることをフォルカは確認した。
……放送があってこの2時間で、一気に情報がそろっていた。
しかし、唯一そろわないのは、デビルガンダムの情報。あれが、今どうしているのか……
それが気掛かりだった。
「それで、どうする? もうこの女を生かしておく理由もあるまい」
マサキは、ラミアを指さして言った。
「……何か事情があるのかもしれん、起きたら彼女からも話を聞く」
フォルカが答えると、マサキは喉を鳴らした。
「自らを『人形』と言い切った女が……裏切るとは思えんがな。
それに、事情があったとして、どうする? お前に何ができる?」
言葉の端にあるのは、嘲り。
『お前に何ができる?』
そうマサキは言っていた。
「それでも、だ。 それに、『人形』では決して、ない。 Noと答えたあの、強い声は……
『人形』には無理だ。」
―――それに、無理だとしても救ってみせる。何としても。
口には出さない。
「く……うぅううううう……」
思ったよい話が長くなったのもあり、ラミアが眼を覚ました。
自分の失態に気付いたのか、飛び退くように機体を立ち上げる。
「よせッ!こちらに戦うつもりはない。 そちらの事情も分かっている。
何故ユーゼスにつく!? 事情を話してくれ」
フォルカは、咄嗟に戦闘態勢をとる3機に割って入る。
「……どうやら、すべて知ったようだな」
ラーゼフォンが、光の弓を構える。
「ああ、お前が、何故ユーゼスにつくのか、ということ以外は」
フォルカの言葉に、ラミアは冷たく言い放つ。
「私は、命令をこなすための人形だ。それ以上でも、それ以下でもない」
「それなら、木原マサキの提案をのみ、行動してもよかったはずだッ!
だが、あれほど頑なに拒否したのは、他でもない、自分の意思じゃないのか!」
「だから言ったろう? 無駄だとな」
木原マサキは、滑稽な喜劇を見るような眼で、ラミアとフォルカのやり取りを見ていた。
「あれは……あくまで自分の判断で行動しただけだ」
「それを『意志』というんだ!」
禅問答のような、やり取りだった。
ラミア態度は変わらないが……それでもフォルカは会話とはいえないような会話を続ける。
「ほう?」
マサキが、わずかに眉をあげた。
ラミアが、徐々に答えに窮しているのだ。
しかも、攻撃を仕掛けるようなそぶりもあれからしない。
………本当に人形というなら相手の話など聞かず攻撃を仕掛けたほうが早いのに。
「だからそれは………ッ!」
「それは………なんだ!?」
ほかのものは、口をはさまない。その二人のやり取りの最中………
「よくやった、W17.結果的にお前は『番人』たる奴に大きな傷を残した」
すべてをさえぎって、冷たい声が降る。
その場にいる全員によく響く声で通信が入った。それは……この戦いの元凶、ユーゼスの声。
「ユーゼス・ゴッツォ……ッ!何かが来る!」
フォルカが呟いた。
パチパチと何もない場所が瞬く。突然、渦状に空間が歪み、『門』が現れた。
「お前たちは、よくやってくれた」
重苦しい音を立てて、円形の『門』が横滑りして開いていく。
「本当に私の思ったとおりに動いてくれた」
中から現れたのは、100mを超す巨体。『ホワイトデスクロス』と地球で呼称されたマシン。
「故に、最期は私が相手をしてやろう。心残りなく逝けるようにな」
6本の腕を持ち、蛇の下半身を持つ邪神像。かつて、『α』の世界でユーゼスが乗り込んだモノ。
「あれは……」
マイが、震えた声でその巨体の名を告げた。
「……ジュデッカ……ッ!」
誰もが現状をつかみ切れていない最中、木原マサキが嘲笑をあげた。
「心残りなく、だと?あれだけ裏から手を回していたお前が意味もなく命をさらすはずがない。
大方……自分が出ていかなければならない事情ができた。 違うか!?」
ユーゼスは何一つ声のトーンを変えず、淡々と答えた。
「好きに受け取るがいい。仮にそうだとしてもそれが何か分からんお前は、私の掌から出ることはかなわん。
それに、私は役目を終えた道具を残す趣味はないのでな」
そう言うと、そっとジュデッカが2本の腕を上げる。
「第三地獄……トロメア」
ユーゼスが指を鳴らす。すると、何万という虫型ロボットと甲虫が這い出るように生まれた。
「お前の役目は、終わった。一足先にヘルモーズに戻れ。ヘルモーズ内は禁止エリアにしておいた。首輪をはずして入れ」
「しかし………」
「いいと言っている。 聞こえんのか? それならヘルモーズではなくここで分解してもいいが」
「………了解しました」
天使が、ふわりと、闇の空を舞う。そして、そのまま見えなくなった。
「分解、だと? 彼女を……いったいどうするつもりだ?」
「言ったろう、『私は役目を終えた道具を残す趣味はない』と。ラーゼフォンが敵にわたれば厄介なことになる。
せめてそのわずかに生まれた魂でゼストの糧になるようにひきつぶすだけだ」
「何故だ」
フォルカが目を閉じ、押し殺した声で言った。
「だから言っているだろう、『私は役目を終えた道具を残す趣味はない』と」
「その彼女は、お前のために命すら捨てると言った。……そのことに何も感じないのか」
「残念だが―――あれは目的を遂行するために作った人形だ。そのような感情は持ち合わせていない」
天を覆い尽くさんという勢いで虫は空を飛ぶ。そんな、世紀末の光景の中。
フォルカの頭の芯が、ふつふつと熱くなる。彼自身驚くほどに、怒りがこみ上げていた。
これまで、この地獄の中で戦い死した戦士たち。ただ死んでいった人々。
フォルカが閉じていた眼を開けた。
エスカフローネがジュデッカを見上げる。
「ほう……私の人形も気遣うか。大した余裕だ。だが……
言っておく。余計な事を考えるのもかまわんが、それで生き残れると思うな」
参加者たちにジュデッカが体を向ける。
「ユーゼス・ゴッツォ……天に還る刻が来たのだ!」
「クッハハハハ……私を前にしてその言葉を言いきるか。ならば見るがいい……最終地獄を!」
出力臨界。ジュデッカの瞳が大きな灯火のように燃え上がる。
「「「「「「「「「 」」」」」」」」」
巨体が発する圧倒的な音が、空間を激震させる。
目の前に立つだけで、魂を引きはがされてしまうのではと感じるほどの存在感を持って、ジュデッカは立ちふさがる。
しかし、誰一人として引くことはない。ここにいるのは、百戦錬磨の強者のみ。
木原マサキも、この敵を前にしてジュデッカから距離をとっているとはいえ、イキマとフォルカとともに戦おうとしている。
エスカフローネが跳んだ。グルンガストが最大ブーストで突っ込む。
ジュデッカの十分の一ほどしかないマシンが、ジュデッカに拳を打ち込む。
「受けろ!機神拳!!」
蒼い闘気に包まれた拳がジュデッカの右肩をとらえた。確かに装甲は貫く。
さらに、突き刺さった拳が内部から気を発し、波紋のように周囲の装甲を引きはがした。
しかし、あまりにも小さすぎる。それらを加えても、せいぜい5mばかりだ。
「計都!羅喉剣ッ!!」
グルンガストが、振り上げた剣を重力加速も加えて叩きつける。
しかし、それをジュデッカはオオバサミのような腕を使いつかむと、逆に押し返した。
パキリ、と計都羅喉剣にヒビが入る。
「エスカフローネでは火力が足らん、グルンガストは鈍過ぎる……」
ジュデッカの体が青白く光った。その光は、徐々に強くなり、白みを増していく。
次の瞬間、氷塊が溢れかえる。遠雷の如く、氷がぶつかり合う音が轟く!
「く……おおおおおぉぉ!!?」
グルンガストが氷塊の海にのみこまれ、流されるようにジュデッカから遠ざかっていく。
エスカフローネは、氷塊の上を八艘飛びもかくやというステップで踏み越え、さらに機神拳を叩き込むべく接近する。
「まだだ!」
長く戦っては不利、というのを体格差から悟ったフォルカは一気に攻勢を仕掛ける。
両手を打ち合わせると、両の拳が蒼く輝く。
「轟・覇・機・神・拳!」
先ほどと同じかたちで、胴に一発。それでは終わらない。見えぬほど数の拳が現れては消え、ジュデッカの装甲を叩く。
拳が速すぎて衝撃波<ソニックブーム>が十重二十重と巻き起こる。
「はぁぁあああああ!!」
とどめとばかりに、ねじ込まれた腕が一筋の光の柱を撃ち放つ。
見事にジュデッカを貫通し、胴の7割近くを吹き飛ばす。
すごい、と見ていたマイは驚嘆した。ジュデッカがどれだけ恐ろしい機体か彼女はその身をもって知っている。
それを、あれほど一方的に屠るフォルカの実力。端々から見て取れた彼の力は、紛うことない本物だったのだ。
「むんッ!」
拳を引き抜き、後方一回転宙返りまで鮮やかにきめて着地する。
「これほどとはな……なるほど予定通りだ」
涼やかなユーゼスの声。
「そんな……!ジュデッカのコクピットは胴体、今ので終わるはず……ッ!」
「それは、どうかな?」
吹き飛んだ部分に、メギロードとドビシが吸い込まれていく。それだけでは済まず、全身を虫が覆う。
虫が数秒してはなれた時、またジュデッカは元通りの姿を取り戻していた。
いや、それどころか一回りも二回りも大きくなっている。
「そんな……どう観測してもそんな現象起こるはずがありません!」
エルマが、目の前の現象を解析し、うなった。
ユーゼス以外知る由もないが、このジュデッカはCPSにより、因果をある程度ではあるが操作されている。
操作された因果律に比べれば、大きさも、強度も、取るに足らない瑣末なことにすぎない。
ただ、在る。絶対的なものとして在る。
世界そのものを相手にしているといっても、決して過言ではないのだから。
ジュデッカが身をふるい、動き出した。
次の瞬間、ジュデッカは消滅した。
「コクピットや一部を吹き飛ばしても無駄なら……全身ならどうだ?」
木原マサキの声。後ろに下がって、静かにしていたのはなにも戦う気がなかったのではない。
この男は、直接ブラックホールクラスターを、ワームホールを通してジュデッカに転移させたのだ。
結果、体内に発生した超重力を受けて、一見突然消えたように見えた……というわけだ。
「やはり、無駄だ」
何もなくなったはずの空間が、拡張される。
「単純な、事象を操作する……という意味ではCPSに勝るものはない。
グランゾンの重力操作といえど、CPSをもってすれば打ち消すのは造作もない」
ポップコーンが膨らむように、複雑怪奇な曲面を描きながらジュデッカは拡大し、もとにまた戻る。
ちっ、と木原マサキは舌打ちする。
「つまり、切るなりしなければ意味がないというわけか。次元連結システム並みの技術を持っているとはな」
グランワームソードを取り出すと、グランゾンが構えた。
吹き飛ばされたグルンガストも、ヨロヨロと起き上がる。先ほどの攻撃で、さらに装甲の亀裂は大きくなっていた。
「ということだが、いけるか? 寝ておいても別にかまわんがな」
「……黙れ、ユーゼスを倒した後は、お前の番だ」
ニィッと口の端を釣り上げマサキが笑う。
「やれるものならやってみろ」
グルンガストと、グランゾンが剣を構え、一人前衛のような恰好でエスカフローネが拳を構える。
「そうだ、それでいい。可能な限り運命に抗う……それが人の性(サガ)だ」
虫が集まり、60mほどの巨体を2体生み出した。腹部に輝く爬虫類のような一つ目。
その下についた丸い口と、頭頂にパックリ開いた口。片手は、カマ。虫なのか爬虫類なのか判然としない。
「メギロードを利用して強化したカイザードビシだ。破滅を呼ぶものとして、お似合いだろう?ゆっくりと楽しむといい」
(キュィイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!)
奇怪な鳴き声をあげる2体のカイザードビシ。
その両方が、前に出ていたフォルカを完全に無視し、グランゾンとグルンガストの前に降り立った。
「何ッ?」
カイザードビシが、両腕を振り上げグルルガストを押さえつける。
グランゾンに向かったほうは、触手のような下を伸ばし、絡めとろうとする。
倒そう、という攻撃には見えなかった。
あの巨体ならば、そのまま力に任せて暴れるだけでもそれなりの成果は上がるはずだ。
それらの攻撃は、あくまで足止め、と言わんばかり。
「くッ!?」
「おれたちにかまうな!行け!」
フォルカが後ろの二人を助けるか、ユーゼスへ突っ込むか悩む刹那、イキマの声が飛ぶ。
「おれたちではお前の足手まといにしかならん!お前がユーゼスを倒せ!」
グルンガストが、カイザードビシの一撃を受け、膝をつく。しかし、素早くガストランダーに変形。
「うおおおお!!」
ドリルアタックがカイザードビシの腹の口に突き刺さる。
(キュ……イイイイWEEEEEEEEEEイイイEEE!!?)
やはり生物なのか苦悶のような叫び声をあげるカイザードビシ。
しかし、その青黒い血を垂れ流す傷は、あっという間に新たなメギロードとドビシがふさいでしまう。
もしかしてPCの調子が悪い?
避難所でも言ったんですけど、代理投下しましょうか?
勝手に代理しといてあれですけどお願いします。
「長くは持たん、急げ!」
「……すまん、まかせろ!」
エスカフローネがジュデッカに駆けだす。
「そうだ、それでいい!修羅の力を見せてみろ!」
走りながらフォルカはまた力を貯める。
「受けろ!機神双獣撃ッ!!」
拳から放たれた二体の獣魔が、うねりとうなりを上げて3本まとめてジュデッカの腕に食いついた。
そのまままったく足を止めない。逆に加速をつけて、矢が突き刺さるように抉り込む!
拳、 拳、 蹴り、 蹴り、 拳、蹴り、拳、拳拳蹴り蹴り蹴り蹴り!!
どんどん加速していき、もはや次の一手が撃ち込まれた時には、その三発後が撃ち込まれている。
矛盾すらはらむありえない体感を与えるほどの速度で足と腕が飛ぶ。
「機神………猛撃拳!!」
フィニッシュに、地面を踏みしめ蹴り上げの回し蹴り。
地面をこすり、ジュデッカが吹き飛ぶ。
「ククク……本当に素晴らしい力だ。それでこそ、というものだ」
やはり、ジュデッカは再生。
「……まだ笑う余裕があるか、なら」
さらにフォルカが加速。白い光の尾を引いて、エスカフローネを攻め立てる。
「クッククク……」
どんどんどんどんフォルカがジュデッカを削り取る。
ジュデッカの攻撃をかいくぐり放っているにもかかわらず、その速度は徐々にジュデッカの再生速度を上回り始めていた。
「やった!マイさん、見てください!このままいけば、ユーゼスを倒せますよ!」
エルマのうれしそうな声。確かに、どこをどう見てもフォルカの勝ちは揺るぎそうにない。
それでも、マイの顔はうかなかった。
何か見落としているのではないか?
その想いが払拭できない。
―――ユーゼスは、意味もなくこんなことをしない。やつが動くのは、絶対の自信と終わりが見えたときだけだ。
手が汗ばむ。その疑念は、マイのなかで拡大していく。
それでも、マイは見ていることしかできない。コクピットしかないR-1では、何もできない。
このままでは、駄目だ。
そう思っていても、体を動かすこともできないし、口も挟むこともできない。
悪寒の中、時間のみがジリジリとたっていく。状況は、フォルカ優勢のままで。
「機神……猛撃拳!」
いったい何発目の機神拳だったろうか。数え切れないほどの拳が衝突した。
光一閃。
ついに、頭部を残し、ジュデッカが砕けた。
「クククク………ところで言ってやるが」
それでもユーゼスの笑いは止まらない。
「これで終わりだッ……!」
最後の一撃が放たれんと、フォルカが拳を振り吹いたとき………―――
「エスカフローネがお前の力に耐えられると思っているのか?」
ガラスが割れるような甲高い音。
「な……に?」
砕け散る。
ジュデッカの頭、ではなく。
エスカフローネの腕が。
ジュデッカに吸い込まれるように、甲が、手首が、肘が。
その芸術品のような右腕が破片と散った。
その光景を、マイは呆然と見ているしかなかった。
「ぐ……ああああああああああぁぁぁあああ!!!」
エスカフローネは、痛みをダイレクトに操縦者に伝える。
今のフォルカの痛みは、腕をばらばらに粉砕するのとまったく同量の痛みだった。
痛み慣れしていた修羅だからこそ意識を手放さないが、常人なら気がふれるほどの痛みだ。
その僅かの間に、ジュデッカはまた再生する。
地面に転がるエスカフローネを、尾でジュデッカは弾き飛ばす。
「というわけだ。全く残念だ。もし、お前が零影のような機体に乗っていれば話は変わっていただろう。
もっとも、決して手を抜いたわけではない。まさか本当に単騎でジュデッカを追い詰める力が想像以上だったのでな。
これは、次善策だったのだが」
とんだ三文芝居を、とフォルカは歯を食いしめた。
相手はこの会場すべてを牛耳る主なのだ。最初からこうなると予見してのことだったのだろう。
思えば、なぜ自分たちの目の前に現れたかを考えるべきだった。
あれは……わざと自分に今の機体で手を出させるための罠だったのか。
自分の不甲斐無さに、フォルカはどうしようもなく腹が立った。思慮も浅く怒りにかられて戦うなど……!
「さて……」
ユーゼスはもはやフォルカなど眼中にないというように、背を向けた。
今、ジュデッカが向いているのは、R-1のコクピットだ。
その巨体に似合わぬ速度でジュデッカは地面をこすりながら移動。光る腕を振り上げた。
「あ……あ……」
コクピットの中で、マイは息を呑んだ。
今のコクピットしかないマイでは……いやそうでなくてもどうにもならないだろう。
イキマ達も、カイザードビシを捌くので精一杯だ。
「待て……ッ!」
エスカフローネが、なお立ちあがる。そして、回り込んでジュデッカの腕に体をぶつけた。
そのため、腕はそれてコクピットの僅か横に、振り下ろされる。
「フォルカ……」
マイの前に立つのは、フォルカ。マイは、ここに着て何度この男の背中を見たことだろうか。
前に立って、なおも構えるエスカフローネを見て、ユーゼスは息を吐く。
「悪いが……戦えない修羅に興味がない。この状況を打破する力がない以上、脅威にならん。そこをどけ」
フォルカも、そのくらいは分かっている。残った左腕も、一度打てば砕けるだろう。
だが、引けない。引くわけにはいかない。
「よせ!フォルカなら新しいマシンさえあればユーゼスに勝てるんだ!」
「だからなんだッ! ……それではマイはどうなるッ!」
確固たる意志をもってフォルカは答えた。一切の迷いはないと、言外に言っていた。
「私は……リュウを……私なんかより、フォルカが生きるべきなんだ!だから……だから……」
最後はすぼむように小さくなっていくマイの声。すすり泣くような声が通信を通して伝わる。
「なら、二人とも……いや全員で生きればいい!」
けして、やけになっていっているのではない。誰も見捨てない。可能な限り、拳がある限り救う。
それは、散っていって修羅たちとの誓い。ゆえに……引けない。
「今のお前に何ができる、現状を変えられるというならやってみるがいい」
ユーゼスの不快な声がフォルカをなじる。
「なら、見せてやる」
アリオン、メイシス、フェルナンド、アルティス……兄さん……修羅王!
僅かでいい、俺に―――――――― 力を ! !
燐光を、エスカフローネが放つ。
白いエスカフローネの装甲が、さらに穢れのない純白の白へと変化する。
闘気を揺らめかせて、ほのかな光輝を放っていた。
「全てなくなっても……俺は諦めない! だから!」
いや、ほのか、などというものではない。陽炎のようにフォルカの周りだけ、歪んでいる。
周囲と温度が、密度が、気迫が違う。闘気で地面が音を立ててへこんでいく。亀裂となって広がる。
「俺が新たな修羅王というのならできるはずだッッ! 不朽の遺志よ! 刃となれ!!」
エスカフローネが残った腕を地面に叩きつける。
その瞬間、エスカフローネの腕は砕け散った。衝撃で、空へと舞い上がる破片たち。
その微細な破片は、陽光浴び、鏡面のように光りを照り返す。七色のプリズムを放ちながら、虚空へ解けていく。
「おおおおお……これが……修羅……魂すら喚び寄せる修羅の力……これが……」
「「 闘 鬼 転 生 ! ! 」」
粒子となった一粒一粒が、光りを放つ。
「え……?」
「何……だと?」
「これは……」
イキマ、マイ、マサキが三者三様に驚きの声をあげた。
なぜなら、ありえない現象が目の前で起こったのだから。
壮観な光景だった。
大きいロボットもいる。小さいロボットもいる。
SF小説に出るようなスタイリッシュで細身なロボットも、生物的な人間に近いロボットいる。
その数、約60。
そう、エスカフローネを中心に、60機以上のロボットが現れたのだ。
6機の修羅神だけのフォルカはつもりだった。しかし、現実使用した闘鬼転生は、60という異常な数の闘神を映し出した。
しかも、それだけではない。闘鬼転生は、あくまで自分が戦った相手を再現するもの。
なのに、戦うどころか見たことすらないものが多く……いやほとんどなのだ。
その中の一体が、マフラーをなびかせて空へと舞い上がる。
玉状の物体が燃えるように輝き、頭部の眼帯のようなものが展開する。
背部と脚部から放たれている光を翼のように羽ばたかせ、空を切り裂く。
その急降下の一撃は、動けなくなったグルンガストにとどめを刺そうとしていたカイザードビシを粉砕した。
……大雷鳳。
それを修復すべく、多量のメギロードとドビシが集結する。
その数えるのも嫌になるような数を……馬の顔を持つ影が割り込み、正確に一体ずつ打ち落とした。
合計、1000発。
……修羅神アガレス。
ジャベリンをふるい、さらに切り裂く者がいる。
青い翼を広げ、五色の光でドビシを飲み込む者もいる。
白い天使の翼をはためかせ、一筋の巨砲がドビシを打ち抜く者もいる。
12体の分身を飛ばし、爆発させる者もいる。
数多の伝説を作った黒歴史の勇者たち。ガンダムの名を連ねるもの達。
……RX-78 ガンダム。
……フリーダムガンダム。
……ウィングガンダムゼロカスタム。
……マスターガンダム。
二体のバルキリーがいた。二体の人型汎用決戦兵器がいた。二体のバーチャロンがいた。
DGGの1号機がいた。ビルトファルケンが。ビルトビルガーが。ザクVが。
「あれは……」
マイは見た。そのマシンの中に、R-1がいるのを。
エルマは見た。確かに、セレーナの姿がその中にあるのを。
イキマは見た。そのマシンの中に、鋼鉄ジーグ……司馬宙がいるのを。
すいません、自宅に帰ってきたんでまた投下しますが、また規制に引っかかったら代理投下お願いします
巨大な船影が、空を包む。エクセリヲンが、一斉に砲撃を始めた。
一言も言葉を発さぬ姿。
しかし、その身からあふれる生気が、彼らが黙する死者ではないことを雄弁に物語っていた。
――――しかし、その魂全てが清浄とは限らない
「外部からのシステム干渉だと……っ!どうした! 何が起こっている!? 動けグランゾン!」
グランゾンが機能を停止したように動きを止める。背面にエネルギーの放出を自動的に始めた。
コントロール画面にスクロールされていく膨大な数のヘブライ語。
マサキは見た。
グランゾンの内部データが、猛烈な勢いで書き換えられていくのを。
それに飽き足らず、機体の装甲や動力炉が作り替えられるのを。
グランゾンが完全なOUT OF CONTROL に入る。
「これは……なんだ!?」
珍しく焦ったマサキの声。
グランゾンはふわりと浮きあがると、巨大な重力波を形成した。
グランゾンの殻が、外れていく。
「いったいなんだ!何が――――――――
マサキの声の尾を引き、グランゾンから現れたモノは、重力波の中に消えた。
【木原マサキ 搭乗機体:グランゾン?(スーパーロボット大戦OG)
機体状況:???
パイロット状態:疲労、睡眠不足 、混乱、胸部と左腕打撲 、右腕出血(操縦には支障なし)
現在位置:???
第一行動方針: ???
最終行動方針:ユーゼスを殺す
備考:グランゾンのブラックボックスを解析(特異点についてはまだ把握していません)。
首輪を取り外しました。
首輪3つ保有。首輪100%解析済み。 クォヴレーの失われた記憶に興味を抱いています。
機体と首輪のGPS機能が念動力によって作動していると知りました】
ジュデッカの前に、ソウルゲインとツヴァイザーゲインが並び立つ。
一瞬の交錯とともに放たれる二奏・麒麟。
ジュデッカが腕を組み、防ごうとするが、それをいとも簡単に貫く。
空を埋め尽くしていたドビシとメギロードは、もうほとんど残っていなかった。
『彼ら』によって殲滅され、ジュデッカは再生のための素材を失った。
「クハハハハハハハハ……フハハハハハ……ハハハハハッ!」
しかし、ユーゼスの笑いはさらに高く大きくなっていく。
「我……成せり! 私の思惑通りだッ!」
ジュデッカが、破損せず残っていた腕を空に掲げた。
空気が鳴動を始める。…………ジュデッカが現れた時のように。
「お前たちが解放されたここでッ!闘鬼転生を使えば、寄ってくるのは目に見えていたのだ!
私という………極上の餌に釣られてな!」
光がひときわ輝いた後、顕れたのは、『門』。これもまた同じように横滑りして開いてく。
しかし、ここからが違った。
逆に、吸い込んでいくのだ。闘鬼転生で形を得た魂たちを。
『門』の吸引を受け、砂になるように崩れ、形を失っていく『魂』。
「闘鬼転生を……狙っていただと!?」
「そうだ!逃げた魂を集めるために……私に仇なすためとなれば、この愚か者たちは力を貸す!
まして、直接復讐できる器があるとなれば来ないはずがない、お前の闘鬼転生はその呼び水とさせてもらった!」
ジュデッカが、エスカフローネに突っ込んでいく。
よけようとしたフォルカは……後ろの舞のことを思い出し動きがわずかに遅れた。
ジュデッカは、その両手にエスカフローネと、R-1のコクピットをつかむ。
「待てッ!」
イキマが、グルンガストを動かそうとする。しかし、その動きはあまりにも鈍い。
フォルカが、逃れようと暴れるが、両でを失った今のエスカフローネではどうしようもない。
そうしている側でも、確実に『魂』は呑み込まれていく。
「すべては、私の手の上ということだ!何も変わりはしない!」
ジュデッカの出力が、臨界を超えて上昇を続ける。傍目から見ても、明らかに様子がおかしい。
「まさか、これがお前の目的!?」
おかしい、とイキマは思った。いくらなんでも、出力を上げすぎる。
自爆して生きていられるとは思えない。なのに、なぜそのような真似を……と思い、ついにたどり着いた。
そう、人魂をささげ、力を集め行うこと……それは、『死者の復活』か、『神の降臨』か……
大きく分けてこの二つに大別される。 そのイキマの様子を見て、ユーゼスは目を細めた。
「ついに気付いたか。 その通り、私は神を降臨させる! いや私が神になる!」
もう、7割近くが吸い込まれた。このままでは、結果的にユーゼスの思惑通りになってしまう……!
「そうは……させん!」
エスカフローネが、中空を蹴る。
「が……あああああああッ!!」
その勢いで、手の中から逃れるが、全身の装甲がはがれ、中身が見え隠れしている。
もちろん……その痛みはフォルカにも伝わるはずだ。
「これで最期だ……!」
両腕と、全身の装甲を破壊されたエスカフローネが、『門』へと突っ込んだ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
エスカフローネの突撃を受け、『門』がテレビのノイズのように乱れ始めた。
「馬鹿な、物理的な干渉をクロス・パラダイムゲートが受けるはずがない……!
この男、何をやっている!?」
ついに初めて、ユーゼスが焦りを見せた。
フォルカは、『次元の壁』に直接干渉しているのだ。
エルマを通して、ユーゼスが知りえなかったフォルカの切り札。
たった一度、それだけで人間よりはるかに強い生命力をもつ修羅の……
そのまた選ばれた存在ですら、長き眠りにつかねばならなくなる最終技。
「今が……その時だ!」
「完全な回収どころかそんなことをすればCPSが歪む!
そうなればどうなるかは完全にわからんのだぞ!貴様、因果地平の挟間を彷徨うつもりか!」
「この修羅の世界を作ったお前とともに逝けるというのなら、それも本望だッ!」
ジュデッカの腕は、2本だけではない。何本か欠損しても、まだあまりはある。
その腕を使い、『門』からエスカフローネを引き剥がそうと、ユーゼ巣が操縦桿を傾ける。
「させない……そんなことは絶対にさせない!」
ユーゼスのこめかみに、鋭い痛みが走る。R-1のコクピットが発光、というより明滅を繰り返している。
「馬鹿な……念動指数 36だと……レビ・トーラーでも強制出力で28のはず!何をやっているこの木偶人形が!」
「私は木偶人形なんかじゃない……
私は、フォルカやリュウ、アヤ……SRXチームとみんなと一緒にいれて変わったんだッ!」
ジュデッカのシステムが、マイに乗っ取られて動きを止めた。もはやユーゼスにはシステム停止もできない。
結果あふれ続ける神の降臨に回すはずだったエネルギーが、余計な弁により、暴走を始めた。
「空間の許容限界を突破ッ!」
エルマが現在の状況を知らせた。
『門』が、白む。世界が、白む。イキマの目の前で、すべてが白に塗りつぶされていく。
その中心で、ひときわ白くエスカフローネが、R-1のコクピットが在り続けた。
黒い邪神を塗りつぶす、白い神の力。ジュデッカの内部が、あらわになる。
終わる。終焉する。
「………美しい」
あまりにも場違いな一言だった。しかし、それはイキマ自体の本心から漏れた言葉だった。
今まで見てきた、悪夢的な意味で信じられない光景ではない。
神話を、眼の前でそのまま見ているような……幻想的な光景だった。
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
3つの声が入り混じる中……すべてが消えていった。
残ったのは、ただ流れるままの風。
【イキマ 搭乗機体:ウイングガスト(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:ゲームの終了を確信。戦闘でのダメージあり、応急手当済み。マサキを警戒。
機体状況:装甲に大程度のダメージ、メインカメラ破損。
ほとんどろくに動けませんが、移動は問題なく可能。詳細は次の人にお任せします。
コックピットの血は宗介のものです。
現在位置:???
第一行動方針:他者に、ユーゼスの死亡を伝える。
第二行動方針:トウマに代わり、クォヴレーを支える
第三行動方針:主催者打倒の為の仲間を探す
最終行動方針:仲間と共に主催者を打倒する】
備考:ディス・アストラナガンを特に警戒
ガイキングの持つ力(DG細胞)が空間操作と関係があると推測
ディス・アストラナガンがガイキングの力(DG細胞)と同種のものと推測
剣鉄也らの背後の力(デビルガンダム)が空間操作装置と関係があると推測
空間操作装置の存在を認識。D−3、E−7の地下に設置されていると推測
C−4、C−7の地下通路、及び蒼い渦を認識。空間操作装置と関係があると推測
【ラミア・ラヴレス 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)
パイロット状態:精神的動揺
機体状態:装甲に僅かなダメージ、EN 1/3ほど消費
現在位置:ヘルモーズ内
第1行動方針:特になし
最終行動方針:ゲームを進行させる】
【マイ・コバヤシ 消滅】
【フォルカ・アルバーグ 消滅】
【ユーゼス・ゴッツォ 消滅】
「が……はァッ!」
ユーゼスが、目覚めた。
今まで自分を満たしていた水分を、喉からかき出す。
「フォルカ・アルバーグ………まさかここまでやってくれるとは………」
自分の手を見る。そこにあるのは、老人の腕、ではない。
若々しい張りのある肌。それは……若者のそれだった。
運が、よかった。
いくら、記憶を封入したナノマシンがあるとはいえ……
自らの『魂』が還ってこないのでは、それはイングラムや、クォヴレーのような存在になってしまう。
元々、『あの世界』と同じようにゼストには、事前に調整、強化した完全な肉体で融合する予定だった。
これは、あくまでそのための器のつもりだったが……
「緊急用に、記憶の随時ダウンロードを行っていたのが、功を奏したな」
ふらふらと立ちあがり、そばに置いてあった仮面と衣服をつけようとする。
鏡は、ない。なぜなら……自分の姿を見てしまうからだ。
ユーゼスの顔は、イングラムと全く同じだった。
当然だ。イングラムは、元をたどれば……彼のクローンなのだから。
しかし。そのクローンはかっかとして暴走し……イングラムという自分の怨敵となった。
この顔は、自分の顔であると同時に……呪われた顔でもあるのだ
手慣れた――当然だ、中身は同じなのだから――手つきでキーを叩き、現状を表示させる。
『魂』は、十分な数値をたたき出していた。8割……いや9割がた再回収している。
しかし深刻な異常もあった。それは……CPSの破損。
空間転移などは可能だが、肝心の因果律操作に関してのプログラムが破損、消失している。
それ以前に調整したヴァルシオンは影響を受けないとはいえ……あまりよいとはいえない。
修繕は可能だが、1週間はかかるだろう。
とはいえ、ゼストを完成させるためのパーツはそろった。
それは、後々修理し組み込みなおせばいい。大局には、ほぼ影響はない。
「結果的に、成功……とはいえるか」
フォルカ・アルバーグの妨害もあったとはいえ、かなり良好だ。
……これで、ほぼゼストの降臨は確定。
そのためなら、早期にジュデッカとズフィルードを失ったことは、些細な問題だ。
最悪、CPSで強化したヴァルシオンは用意してある。CPSで強化してないとはいえ、幾ばくかのマシンはある。
会場は、さらに良い状態だ。
強念者と修羅、皇帝が落ちた。
ディス・アストラナガンは、クォヴレー以外ならいまさらあわてて乗ったところで力を引き出せるわけもなく。
脅威となりえるのは、姿を消したグランゾンと、ブライガー程度。
そう、良好のはずだ。だが、ユーゼスの頭には、こびりついて離れない。
あの時の戦いで、ウルトラ6兄弟の攻撃で同じ現象が起こった果てに…………
その不安を、頭を振って打ち消す。
ユーゼスから出るのは、安堵のため息だった。
「ついに……ここまで積み立てた」
もう、ヘルモーズにいる必要もない。ヘルモーズは……この肉体を守るための卵なのだから。
むしろ、今守るべきは、D-6にある地下施設―――アースクレイドル。
あそこには、ダイダルゲートの中枢がある。
あの外殻が、そうそう簡単に破壊されるとは思わないが、最悪の事態はあり得るのだ。
クォヴレーが、その側にいるのも、懸案事項となりえる。
ヴァルシオンで、ヘルモーズと、アースクレイドルの両方は守れない以上、至極当然の判断といえた。
さまざまな機能の本体は、異相空間に移してあるのだ。
ゼスト絡みも、すべてアースクレイドルでもできる。
周囲のパルシェムたちに、最低限要件を告げると、ユーゼスは、ヴァルシオンに乗り、転移装置に入る。
終わりを、告げるために。
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:ヴァルシオン(CPS強化)
パイロット状況:良好
機体状況:良好
現在位置:D-6 アースクレイドル内
第一行動方針:アースクレイドル内で、ゼストの調整
最終行動方針:ゼストの完成】
――――フォルカ!
(誰だ……俺を……呼ぶのは………)
―――――フォルカ!
耳を叩く、か細い……少女の声。
「マイ……か?」
言葉とともに、眼を開く。何も、ない。
文字通りなにもない。遮蔽物一つなく、空には太陽も星も存在しない。
ただ……白い平面が広がっている。
「ここがユーゼスの言っていた……因果地平の果て……か?」
(違う……ここは、残骸の世界。かつてユーゼスが生みだし、ほどけ、打ち捨てられた世界)
跳ね返るものが何もない世界で、反響した声が響く。
「お前は……どこにいる? 名前はなんだ?」
(わたしに……今、体はない。 かつて、神となったユーゼスと戦い、失われた
名は……ゾフィー。かつて、ユーゼスと同じ力を手にし、帰る術を失ったウルトラの戦士)
「ユーゼスと同じ力……?」
ウルトラの戦士を名乗る男の声が、厳かな声で言った。
(そうだ。それは……因果を操作する力。
わたしは、ヤプールを倒し、ユーゼスの力を中和するべくその力を使った。
しかし、それにより私は他の兄弟と違い、因果の糸により元の世界にたどり着くことなく、
ここにいる。 わたしは、待っていた。 いつか、また動きだしたユーゼスを止めるため……
誰かがここを訪れるのを)
ゾフィーの声には、悲哀がこもっていた。
(すべては、私たちウルトラ一族が招いたこと……君に伝えよう、ユーゼスの始まりと、
目的を)
ゆっくりとした口調で、ゾフィーは語った。
かつて、宇宙刑事と、人造人間と、光の戦士と、ガンダムがともにいる世界があったと。
そして……その世界で起こった悲劇を詳細に語っていった。
(ユーゼス、彼も決して真に邪悪な人間であったのではない……)
「……そうか」
フォルカは、何も言葉をはさまなかった。相槌を打つことすら忘れ、ゾフィーの話に耳を傾けた。
「つまり……やつは、完全な平和のための神となろうとした。そして、その為に永劫をさまよっているのか」
なんという皮肉だろう。
誰よりも、何よりも大きな規模で平和を守ろうとした男が、逆に手のつけられない邪悪となる。
大きな人々の命を救うために、とっている行動は正逆の人殺し。
フォルカは修羅王を思い出していた。
修羅王もまた、同じ思いで次元の壁を破ったのだ。……ありとあらゆる咎を受け入れる覚悟で。
(ユーゼスを……止めてほしい。 願わくば……彼に魂の救済を)
目の前に霞が集まり、銀と赤の巨人を作った。
身長は、40mか60mか………機体に乗っていないフォルカには途方もないほど大きなものに見えた。
(ここには、先ほど取り込まれず、残った魂がある。それと……私の力を君に預ける。
無論、因果律を操作する力以外を、だが)
靄が、フォルカの体に吸い込まれていく。見かけに、変化があるわけではない。
しかし……何か大きな力の塊が染み入るのを感じていた。それだけではない。
(君が光の巨人になれるわけではないが、君の移し身にそれに近い力を与えることはできる。
それと……君の体は君の体であって君の体ではない)
「おれの体ではない!?」
フォルカが自分の手を見る。しかし、それは間違いなく自分のものだ。
どう見ても、他人のそれとは思えない。
(君は、極度に消耗しており、その状態でここに来た。故に、因果が解けてしまったのだ。
それを補強し持ち直させたのは、私ではなく、ともにあった『魂』だ)
全身を、触ってみる。―――その時、気付いた。自分には、首輪がないことに。
まさかさっきの声は………
そっと、何かが手を触る。
――――フォルカ
「やはり……マイ……なのか?」
言葉には、力が宿るという。それが定かか知らないが……確かに舞いは、フォルカの前に姿を現した。
マイだけではない。リュウセイと呼ばれた青年や、手を合わせた赤髪の男もいる。
その後ろには、険しい顔つきの、ウェーブ状の髪の男もいた。
――――フォルカ
声は、聞こえなかった。けれど……口は確かにそう動いた。
全員が、フォルカに手を重ねた。
――――ワ・ズ・カ・ダ・ケ・ド
声は聞こえない。だが、フォルカには澄み切った声で彼らの声が聞こえる。
微細な声のトーンも感じ取れる。
――――イ・ッ・シ・ョ・ニ
「一緒に……」
――――タタカウ
フォルカの頬を、涙が伝う。
彼らは、言った。修羅たる彼に戦えと。
修羅に……他者を救うために戦えと。守るために戦えと。
――――そのために共に、ある
それが、どれだけ温かい言葉か……フォルカは改めて知った。
他者の想いは『背負う』ものではない。『共にある』ものなのだ。
手を通して、彼らの力が流れ込んでくる。一緒に彼らの願いも。
「………聞かせてくれ。なぜ、俺を選んだ?」
(あまり良くないこととわかっていたが……因果がほどけたさい、君の過去を見せてもらった。
そして、彼女たちから、君がどのような男かも)
フォルカは空を見上げた。何もない、空っぽの空。
そこに、青年の、若き修羅王の咆哮が響き渡った。
ゾフィーがその様子を見てうなずく。
(飛ばす場所は、ユーゼスの戦艦の内部。あせらず、戦う力を手に入れるのを心掛けてほしい。
君が望むものが、きっとあるはずだ)
ゾフィーの力で作られた『門』が開く。
フォルカは、その中に飛び込んで行った。
(頼むぞ……若き勇者……私にできることは……ここまでだ……
あとは、その世界の者が切り開かねばならない……『運命』を)
【フォルカ・アルバーク 搭乗機体:なし
パイロット状況:完治 、全快、首輪なし
機体状況:なし
現在位置:ヘルモーズ内部
第一行動方針:ユーゼスと会う
最終行動方針:殺し合いを止める
備考1:フォルカは念動力を会得しました。
備考2:ゾフィーの力により機体の神化が可能となりました
備考3:ユーゼスの目的を知りました】
【8時30】
規制喰らわず投下終了ッ!
とりあえず、ゼスト関係のフラグの前回収+フォルカ覚醒フラグを中心に書いてみました。
ジュデッカのモロさとフォルカの強さはαとコンパクト3の原作際限ということでw
ラミアをもっと掘り下げたかったんですが……フォルカ視点ということでこんな形になってしまいました
グランゾンは、いざって時の最終兵器ということで。
ごめんなさい、本当はもっと超展開でした
ラミアも死ぬし、復活するのはマイだし、シュウが復活してグランゾン勝手に動かすとか盛り込んで書いてたら、
収拾がつかなくなることになると思ったので、結構てん末書き換えてます。
GJ!
さあ、いよいよ大詰めですな!
いまだどちらになるかは定まっていませんが、決着間近!
次が楽しみです!
GJ!
なんかもう色々凄すぎてヤバイw
フォルカ格好良すぎるぜ……!
いよいよ最終決戦が近づいてるって感じがしてきたぞ!
さすがnc氏、俺たちに出来ない超展開を平然とやってのけるッ!
そこに痺れる憧れるゥ!
スパヒロとかやってればもっと楽しめたんだろうな、ちくしょう!
熱い展開だぜ
すげぇ・・・凄すぎるぜ
本格的に終盤、いや終焉に向かってやがるっ!!
全身全霊を賭けてGJと言わせてもらうぜっ
とりあえず、ここはやはりこれを一言言わせて貰おう
自重しろミスターファイヤーヘッドォォォォォォォ!!!!!!
つーか他の兄弟と違って一人元の世界に戻れず迷ってたのかwww
やっぱり隊長は隊長だなwwwwww
シュウ復活は流石に無理だろう常考……。
一気に展開を早めてくれたのは超GJですね。これでゴールも見えてきた!
あとゾフィーに吹いたwwww誰かギャバンも出してくれないだろうか。
ユーゼスの元同僚という美味しいポジなんだよな、あの人w
ところで新スレどうしようか…立てるだけならやってみるが、ラヴレス先生のはちみつ授業誰かよろ
>>987 ならば新スレ立ては任せるのも私だ
もう残り少ないし
新スレでは、ヴィンデル死亡話の本スレ投下もしたほうがいいかもしれんかな
ギャバンは・・・まあ出すにしてもロワ終了後の後日談くらいだろうな
しかし登場するだけで一気に笑い者にされるゾフィーって一体w
989 :
987:2007/11/04(日) 20:01:55 ID:UBtEDl38
>>989、nc氏、乙&GJです!
圧巻のストーリー!
中盤、このままユーゼス死亡でエピローグかと思ったのも私だ。
991 :
987:2007/11/04(日) 20:37:18 ID:UBtEDl38
新スレでヴィンデル死亡話の代理投下が規制くらいましたorz
誰か頼みます。あと、前半部分の修正忘れてまだ便宜が便座のままなので、そこの修正レスも投下お願いします
ラヴレス先生書いてます
多分明日には投下出来るはず
無念、さるさん食らったorz
最後の1レス、頼みます。あと修正レスも。
>「全てなくなっても……俺は諦めない! だから!」
>「俺が新たな修羅王というのならできるはずだッッ! 不朽の遺志よ! 刃となれ!!」
なんだろう、激しく覚えがあるセリフだw
とにかくGJ!フォルカかっこいいぜフォルカ
代理投下完全完了だぜメーーーーーーーーンッ!!
さっさと埋めなああああああああああッ!!
GJだっぜ!
戦鬼転生、次元の拳、フォルカがここに来て輝いてるよ!
正直言って、スパロワ開始当初はOGSに出演するなんて想像だにしてなかったよ!
……マイとエルマも、お疲れ様。
向こうでラーメンでも啜って、リュウセイとゆっくりしてらっしゃいな。
うめ
おお、フォルカ……スパロボ最強主人公の名は伊達じゃない活躍だ。
1000 :
FLA1Abe120.tky.mesh.ad.jp:2007/11/05(月) 00:21:55 ID:7XmpDlNT
゚∴。 。・∴
゚ ∴
・∴゚・∴。 ・∴゚ ・∴゚・∴。
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゚∴・。・。゚・,i!゚。・゚∴。 。・∴。・∴・゚。・゚。・゚∴
|ヽ、 , ‐''''T''''‐ 、 //|。・゚・∴・。 ・∴・・。゚∵・゚・・∴・゚∴・。
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ト、:.:.:.ヽ'、:::::::::|::::::::::/,:.:.:.:./:| ・∴。・∴・∴。・∴・∴ ・。∴・。゚ 。・
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ヽ ヽ!:::::',:.:.:.:.:<´ ̄'i' ̄`>:.:.:.:|::::/-.ヘ ///∴。∴゚・∴゚ ・゚∴゚・
ヽ ヽ:::::L:.:.:.:.:\ | ,:':.:.:.,.ノ:::|,ノ、 /-、!・∴。・∴゚ ∴・゚
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フ''´ ̄: :,...:': : : :., −',r.' :| | | | ヽ_ヽ_______人_ノ ・
∠-‐',..': : : : :/,...-.1' ⊆, っ とーっ
>>1000ならクソ汁大会開催!!
1001 :
1001:
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│ [インターミッション] │
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│ ユニット能力 ユニットの改造 武器改造 │
│ パイロット能力 パイロットのりかえ 妖精のりかえ │
│ 強化パーツ ユニット換装 オプション │
│ セーブ ロード ポケットステーション │
│〔次のスレッドへ〕 │
│ │
│次のスレへ進みます。 │
│──────────────────────│
│ 総ターン数_1000 資金___1000 │
│第1話『このスレッド』までクリア. │
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