スホン雪党…それが、今回の事件の黒幕。
『皆さん、今回の異常気象は我々が生じさせたものです。
そこで、現在この放送を聞いているであろう軍及びDOOMERSの皆さん、阻止に来てください。
まあ、阻止できるならの話ですが。場所は¥市の…』
つまり、宣戦布告。
『最後に、我々にはあなた方を出迎える準備ができていますので…そのつもりでいらして下さい。』
再び画面はブラックアウトし、ニュース映像に戻った。
「くっ…相手は本気で我々との戦闘を望んでいるのか…」
実際は体の良い宣伝役なのだが、「出迎える準備ができている」以上、戦いは避けられない。
そして食堂に、ロリータの号令が響き渡った。
「…総員第1種戦闘配置。この状況を止められるのは…我々しかいない!」
「それから…お前達も来てくれ」
ロリータが飛雄一と竜二に呼びかけた。
「戦えないならそれでいいが…」
「いえ、俺達も行きます!」
竜二が大声で言った。
「どっちにしろ、この状況を打開するためには俺達の力も必要なんでしょう?」
「そうですよ!」
飛雄一もそれに同意する。
「わかった…なら行くぞ!」
そして第1種戦闘配置に移行したボスロリが発進した。
…飛雄一と竜二の2人にとって、残酷な真実が待ち受けていることを彼らはまだ知らない…
続く
●サブタイトルNo.179【きっとくるぜ! 夏】
●戦艦No.01【胸焼き家のりすグレレレレレちんジ艦・ボスロリータタン乙・HTB】
●パイロットNo.01【星飛雄一竜二】
●パイロットNo.430【ネネ】
●パイロットNo.448【出だめ太】
●スタッフNo.36【イ子】
●スタッフNo.88【新聞御礼幽】
●犯罪組織No.04【スホン雪党】
●敵パイロットNo.147【典明 電】
●敵パイロットNo.156【岡本崎義人】
●敵パイロットNo.171【雪氷 苺】
正直【星飛雄一竜二】を出したのは残酷な真実用。
505 :
たろす式避難:2006/11/04(土) 22:22:08 ID:xGL/DJib
>>502-504 GJ!
受信したので晒してみる。
「DOOMERSの秘密基地?」
首を傾げて訊き返してきた山本ぉょょに、マモヌース卿は卓上の地図をとんとんと指で叩いてみせた。
「左様。蠅王ベルゼゼブゥの偵察でわかったことだ。
この基地、鬼Ωを叩けばDOOMERSの戦力を大幅に削ぐこともできるだろう」
「その基地をぉょょがぶっ潰せばいいの? 西洋かぶれのおじちゃん」
「…その呼び方はやめてくれると嬉しいんだが、そういうことだ。
ぉょょの持つ魔力は帝国の実力者の中でも秀でている」
「えっへん」
と、胸を反らしていばるぉょょ。
「その魔力を以って地灰雷公で地震を起こし、鬼Ωを壊滅…」
「地震ネタが続くね、おじちゃん」
「…何の話かね」
「ううん、何でもないよ。任せといておじちゃん。ぉょょの力でDOOMERSの奴らなんか
けちょんけちょんにのしちゃうから」
コレクションの一つである木槌をぶんぶん振り回しながら言うぉょょに、
マモヌース卿は少し困った顔をしてみせた。
「ああ、一応言っておくがね。ぉょょがすべきことは鬼Ωを叩くことだけだ。
くれぐれも余計なことをしないでくれたまえ」
「あー!」
ぉょょは、頬をぷうっと膨らませて西洋かぶれのおじちゃんを睨んだ。
「おじちゃん、ぉょょのこと信用してないんでしょ! ひどーい!」
「いや、そういうわけではないんだが力が強くてもぉょょはまだ子供だからな。
私は心配しているんだよ。そこで…」
と言って、マモヌース卿は背後にちらりと視線を向けた。
そこには先程からマモヌース卿の部下である五匹の狸が控えていた。
「彼らを君のサポートにつけよう。五狸よ、ぉょょのことは任せたぞ」
五匹の狸は任せてくれと言わんばかりにぽんぽこぽんと腹太鼓を打った。
「よろしくね! おじちゃんの家来のおじちゃん達!」
元気よく狸達に挨拶をしているぉょょを見て、マモヌース卿が笑みを浮かべる。
(さあ、存分に大暴れしてくれたまえ。ぉょょ)
506 :
たろす式避難:2006/11/04(土) 22:25:30 ID:xGL/DJib
《邪悪な気配を感じるぞ、先公》
書店で立ち読みをしていた嶋先公は「彼だけにしか聞こえない声」に顔を顰めた。
「何プリ○ュアシリーズの小動物みたいなこと言ってるんだよ」
本を書架に戻しながら先公は小声で言った。
《プ○キュアとは何のことだラピ》
「知ってるじゃねーか!」
先公に話しかけているのは、彼のバッグに入っている仮面、正確には仮面に宿った古代の戦士バンドリターである。
ちなみに、仮面に宿っているバンドリターは先代で、現役のバンドリターは(不本意ながら)先公だったりする。
考古学者の助手をしている姉が持ち帰った仮面を勝手に被ってしまった先公が悪いと言われればそれまでなのだが、
まさか仮面を被っただけで変身ヒーローになってしまうとは思っていなかった。
店内をうろつきながら先公は言った。
「邪悪な気配って具体的には何なんだ」
《詳しくはわからん。だが戦う覚悟はしておいた方がいい》
「やだなぁ。ん?」
気になる本を見つけ先公は足を止めた。気になったのは書名ではなく、著者名である。
「これ、バルンガーデさんの…」
その本に手を伸ばす先公。しかし、彼の手が触れたのは本ではなく、同じ本を手に取ろうとしていた客の手だった。
「あ、すいません」
慌てて手を引っ込め、相手の顔を見る。若い女性だった。
女性はぺこりと頭を下げ謝罪の言葉を告げると慌てて書架の前から離れていった。
《今の彼女妙に照れていたな。あれじゃないか。お前に気があるとか》
「いや初対面だよ? そもそも邪悪な気配の話はどうなったんだ」
先公は、そこでやっとその本の書名に気づいた。『全裸詩編』とある。
「…確かにこれを読もうとしてるとこを見られたら恥ずかしいかもしれない」
先公が改めて全裸詩編を手に取ると、店の外から車が急ブレーキをかけるような音と何かがぶつかるような音、
そしてほぼ同時に複数の悲鳴が聞こえてきた。
《先公、今の轟く叫びを耳にしたか!? 今こそバンドリターの出番だ。燃える町にあとわずかだ!》
「…あんた本当に古代人か?」
《ぐずぐずしている暇はないぞ、急げ!》
先公は全裸詩編を書架に戻すと、渋々といった感じで店の外に向かった。
507 :
たろす式避難:2006/11/04(土) 22:27:32 ID:xGL/DJib
横転した幼稚園バス。尋常じゃなくでかい青銅の肌を持つ巨人と、ドラゴン型のロボット。
そして、それらを遠巻きに取り囲む野次馬。
店の外に出た先公が目にしたのは、そんな光景だった。
ロボットからは「子供に傷をつけるなよたろす! そーっと優ーしく扱えよ!」とかいうわめき声が聞こえてくる。
《先公、今こそバンドリターに!》
「い、いや、これは無理でしょ。サイズ差ありすぎるって。軍とかDOOMERSに任せた方が懸命だよ」
《軍やDOOMERSとやらが来るまでには時間がかかるだろう。
それまで指を咥えて子供達が襲われるのを見ているつもりか?
今この場で奴らと戦える力を持っているのは先公、君だけだ》
「うう、そう言われるとなー」
《私が現役だった頃はこの程度の敵など物の数ではなかったが、君はまだ未熟。
あの幻獣どもを倒せとは言わん。だが、時間稼ぎくらいならばできるのではないか?》
「わかったよ。でもやばくなったら一目散に逃げるからな。
人目があるところで変身するのは恥ずかしいから店のトイレ借りよう」
先公が踵を返し店内に戻ると、店から出ようとしていた客にぶつかりそうになった。
「あ、すいません。――あ」
先程の女性だった。
508 :
たろす式避難:2006/11/04(土) 22:29:09 ID:xGL/DJib
眼下に街並みを見下ろして、妖神機地灰雷公が浮遊していた。
その手には妖神機サイズの巨大な木槌が握られている。
近くには翅を広げると6メートルにもなる十戒モネアゲハが羽ばたいていた。背中に五匹の狸がしがみついている。
「おじちゃん達、近くで幻獣共和国の人達が何かやってるよー?」
「俺達のやることはかわりゃしませんよ、魔王のお嬢様」
「幻獣共和国が活動しているとなれば鬼ΩからDOOMERSの連中が出て来るかもしれない。
それよりも前に叩きましょう」
「わかったー。オオイカズチ、ホノイカズチ、クロイカズチ、サクイカズチ、ワキイカズチ、ツチイカズチ、
ナルイカズチ、フシイカズチ! みんなよろしくねー!」
ぉょょの掛け声と共に、地灰雷公から八基の攻撃ユニットが展開した。
「…お嬢様、今のは?」
「あのね、ぉょょがユニットに名前つけたの。可愛いでしょ。
一番上のやつがオオイカズチでー、右側にいるのがツチイカズチでしょ。その隣が…」
「わ、わかりました! 説明はあとで聞きますから、今は攻撃を」
「おっけー! それじゃあ、いっくよー!」
地灰雷公から電撃が放たれ、八つのユニットによって増幅される。増幅された電撃は、
地灰雷公が持つ木槌に収束した。
「ちょっと眩しいよー。せーの…」
地灰雷公が木槌を振り上げ――
「せっ!!」
振り下ろした。
雷、というよりも光の柱とでも形容した方がわかりやすいかもしれない。
ともかく、木槌から迸った極太の稲妻は大気を焦がし、地上に向かって突き進んだ。
雷は巧妙にカモフラージュされた、鬼Ωの入り口にあたる建物に突き刺さった。
次の瞬間、落雷地点から半径数キロの区域を凄まじい揺れが襲った。
その威力を目の当たりにした狸達が息を呑む。
「すげぇ…!」
「こ、これが魔王の力…!」
509 :
たろす式避難:2006/11/04(土) 22:30:40 ID:xGL/DJib
「度々申し訳ありません」
再度頭を下げた女性に、先公はとんでもないとばかりに手を振った。
「いやいや、こっちの不注意のせいですから。あの、いらないお節介かもしれませんけど今外に出ると危険ですよ。
でも、店内にいたからって安全ってわけじゃないか」
「いえ、私は――え!?」
女性が小さく叫び、眩しさに顔を顰めた。
「は?」
街の一角に光の柱が突き刺さった。轟音と激震はほぼ同時に訪れた。
書店の建物は、その揺れに耐えることはできなかった。たちまちのうちに建物が倒壊を始める。
「や、やば――!」
先公は咄嗟に女性を庇うと、慌てて鞄の中に手を突っ込んだ。
女性が目を見張る。先公は女性に覆い被さり、背中で瓦礫を受け止めていた。
その顔は、奇妙の仮面に覆われていた。体も奇怪な紋様に覆われたものへと変化している。
「よっ…と」
先公は、いや、嶋バンドリター先公は女性に怪我をさせないよう注意を払いながら背中の瓦礫を跳ね除け、立ち上がった。
「あー……。怪我とかないですか」
服の埃を払いながら、女性も立ち上がる。
「私は大丈夫ですわ。…あなたは?」
その質問には、「あなたは大丈夫ですか」というよりも「あなたは何者なの?」というニュアンスが
多分に含まれていた。
「えーと、見ちゃいましたよねー。変身するとこ。どう説明すりゃいいのかなー」
「危ない!」
バンドリター先公が返答に窮していると、彼の頭上に落下しようとする瓦礫に気づいた女性が、
慌てて手を伸ばした。その手の甲から発射された針のようなものが、瓦礫を撃ち砕く。
「……へ?」
今度は、先公が困惑する番だった。
ブラウス姿だった女性の服装がゴスロリ調のものへと一瞬にして変わっていたのである。
しかも、どことなく蜂っぽい。
「私も…見られてしまいましたわね」
つづく
510 :
たろす式避難:2006/11/04(土) 22:31:26 ID:xGL/DJib
●サブタイトルNo.169【たろす式避難】
●機体No.435【嶋バンドリター先公】
●パイロットNo.346【嬢王蜂】
●敵兵器 No.55【コω竜(あξ潜】
●敵兵器 No.208【地灰雷公】
●敵兵器 No.247【十戒モネアゲハ】
●敵パイロットNo.26【ドラッポ】
●敵パイロットNo.73【マモヌース卿】
●敵パイロットNo.117【蠅王ベルゼゼブゥ】
●敵パイロットNo.334 【山本ぉょょ】
●施設No.04【〒壕 鬼Ω】
●書籍No.01【全裸詩編】
>>501-510 皆さん揃いも揃ってGJ! そして
>>504は俺かww
何か変な電波を受信したので書いてみた。
イルイVSDOOMERSのみなさん(主にSRCメンバーで)
ナナコ「イルイちゃん、聞こえる!? そんなに地球の外の人たちは信じられない!?」
イルイ「私は地球の守護神…地球に住まわぬ者達にはガンエデンの加護は不要です」
ロリータ「『井の中の蛙大海を知らず』…我々は井の中の蛙ではない。その目で見たんだ…地球の外を…大海を!」
王珍「それも見ずに地球を封印しようとするガンエデン、お前の方が大海を知らない井の中の蛙だ!」
イルイ「知っています…。現に地球は、異星人からの侵略を受け続けてきたのはないですか?」
盗撮姫「それって、宇宙人イコール悪人ってこと!? 一方的に決めつけないで!」
咲「そうッス! 咲っちたちが知ってる優しいイルイっちは、そんな考え方絶対にしなかったッス!」
イルイ「私はイルイです! 私は地球を守る存在…!」
ニート「みんなの言ってることはよく分かんねーけど、まあとにかく! イルイと過ごした時間を無駄にしたくはねえよ!!」
イルイ「私と…過ごした時間…!?」
クレモ改革公「まあ、彼の言うとおりだね。君はガンエデンなんかじゃない…我々と共に過ごした、小さなイルイのはずだよ?」
ナナコ「だから、ガンエデンさんには悪いけど…あなたを倒して、イルイちゃんは返してもらうから!!」
台詞妄想スレでは叩かれそうだったから(以前子供スレのキャラ出してた人が叩かれてた)こっちに書いたが…
こっちでよかったかな?
513 :
工場長:2006/11/05(日) 22:56:35 ID:9T8qCiro
まとめサイト更新しました。
今回はSS、ギャラリー、アイコンのみです。
>>512 パオーン級吹いたw
姫様は出そうかと考えてたんで、ひょっとしたら使わせていただくかも……
514 :
アキラ改さつ:2006/11/06(月) 02:03:31 ID:TCEW7+Z/
>>513 工場長乙彼様でし。(´∀`)
しかし、改めて見て見ると相当複雑な事になってますね…
工場長さんには手間をかけさせてしまい本当に申し訳ございませんでした。
515 :
175:2006/11/06(月) 17:13:10 ID:CNPKsVC0
SS&イラスト、皆さんGJです
そんなところに、自分が投下するのはとても勇気がいりましたorz
もしかしたら、省略されました、になるかもしれません。その辺お覚悟いただければと
では、次から参ります
516 :
子熊レミィ:2006/11/06(月) 17:16:26 ID:CNPKsVC0
季節は五月中旬。みんな五月病でやる気減退中のご時世であるはずだが、DOOMERS私設軍はあいかわらずである。
「遠足?」
そう声を発したのは、常に五月病にかかったようにやる気を出さない駄目パイロット筆頭、絶倫無職ニート・カスである。
だが彼は訓練以外の、しかも己の地位が上がるようなことなら、たとえどんなことでもやる気がフル稼働だったりするので、教官達からやる気を訓練に回せと、いつも怒られている。
「そうなんです、明日遠足で¥市の動物園に行くんですよ」
そう楽しげに話しているのは、ナナコ。咲も彼女の言葉に、「そういえば、あたしたちもそろそろ遠足ッスね」と続いて言う。
「そういや藻男の部屋にも、んなプリントが放り出されてたような……」
藻男とは、ニートの弟藻男リアル厨。彼もまたDOOMERS私設軍が誇りたくない駄目パイロットの一人である。
「たしか¥市って、さちこ河あるわよね?」
盗撮姫が話しに入って来る、ナナコも咲も彼女の問いに頷いて見せた。
「んじゃ〜さナナコ。さちこ河の水、拝借して来てもらえない?」
さちこ河の水で体を洗うと、胸が大きくなるとの噂があるため、それを求める女性は多い。
「え? するしないはともかく、どうやって?」
「ちょーっと荷物になっちゃうかもだけど、入れ物用意するからもってって」
「え〜」
不満の声を揚げるナナコだったが、すでに盗撮姫は行動を開始。2分ほどで戻って来た。
「えっ? い イットカン?! これ、もってくんですか?」
「お ね が い、ナナコ」
「うぅ、わかりました……」
「頑張れナナコっち〜」
「咲ちゃん、無責任だよぅ〜」
そんなこんなで、ナナコは妙なお願いを受けてしまい帰宅した。
翌日早朝、食事と準備を終えたナナコは、祖父に挨拶し家である神木神社を出る。
「鎧はいいのか?」
「うん、遠足行くのに鎧もってったら邪魔になっちゃうから。それじゃ、行って来るねおじいちゃん」
「ああ、いってらっしゃいナナコ。楽しんでおいで」
「うん!」
とても、鎧の代わりにイットカンを持って行くとはいえなかった。
「よし、揃ったな?」
ここは聖マリア女学院校門前。中等部生徒と数台のバスが並んでいる。今声を発したのは、ナナコの担任の教師だ。
生徒たちの返事を確認すると、教師が先導するようにバスに乗り込んだ。それに生徒たちも順次続く。
「このバスの運転手をしてもらうのは、星団暦さんと言って安全運転に定評のある人だ」
教師の紹介に、一斉に生徒の視線が星団暦に集まる。彼はてれくさそうに小さく会釈をする。
「ガイドをする岩田カバ夫Jrです。よろしく」
「あ、工場近くのコンビニのお兄さんだ」
「あれ? そういや何回か見たことあるな?」
流石バイトの鬼と呼ばれる男、こんなところにもバイトで顔を出している。
教師は、生徒全員が席についたのを確認している。そうこうしていると、他のバスが順々に発進し始めたので、それに習ってこのバスも¥市に向かって走行を開始した。
517 :
子熊レミィ:2006/11/06(月) 17:17:24 ID:CNPKsVC0
「今見えてるのがyz。 最近オープンしたレジャー施設で「Yesterday Zone」の略。
昔懐かしい物などが豊富に取り揃えてあり中々の人気スポットになっていましたが、GOGに襲撃を受け現在再建中。わたしも財布を暖めるのに手伝ったりしています」
そんなユーモアを交えつつのスポット開設は、生徒たちに好評を得ている。ナナコは岩田の解説に、そんなにバイトしてて体は大丈夫なんだろうかと心配になっていたりする。
「さて」と、再び岩田の伸ばされた腕と共に解説が始まった。
「ここにある並木道」
いいながら立ち並ぶ樹木は、次々と種類を変えて行く。
「ここをこのまま上って行くと、柿桃梅竹松ダムと言うなんの変哲も無いダムにつきますが、本当になんの変哲もないダムなので、特に行く価値もないでしょう」
そんな風に軽く毒も吐きつつ、岩田のバスガイドは好評のままに目的地へと到着した。
各自バスから降り点呼も終了、岩田曰く通称妖怪動物園と呼ばれているこの動物園を、順々に見て行くことになった。
ちなみに第二の目的地であるさちこ河は、ラッキーなことに動物園のすぐ近くにあったりする。ちなみにさちこ河に関して岩田は噂を言っただけにすぎず、またそちらを見ることもしなかった。
他のyzや柿桃梅竹松ダムの時は、その方角を見てはいたのだが、もしかしたらさちこ河の精霊である瀞ー恋と目が合うことを恐れてのことかもしれない。
滞りなく見学は進み、現在は昼食タイム。みんな一様に動物の話をしているが、その中でも子熊のレミィと変身イタチぴんくの話題がトップだった。
レミィはまだ小さくひじょうに可愛らしいため、みんなからきゃーきゃー言われていたが、黄色い声援を浴びたレミィ本熊の面食らった表情が、ナナコには印象深かった
「ねえナナコ?」
「なに?」
「さっき、ぴんく見た時知ってるっぽいリアクションしたでしょ? あれなんで?」
「うん、あれ工場でも何匹か見たことあったから」
ナナコの発言からわかるように、変身イタチぴんくとは、妖怪帝国の兵隊である爪舞ぴんく侍のことである。いったいただの動物園の誰が、妖怪帝国の兵士の顎をなでたと言うのか?
「へー、DOOMERSの工場って動物とかいるの?」
「うん、いっぱいいるよ、猫とかワニとか」
「わ ワニ?」
「うん、すごいワニなの」
「そうなんだ、見てみたいかも」
「見た目的には特にかわんないと思うんだけど。なんかスロリナンテさんから聞いた話だと、メロン顔した人を護っていろいろやったみたい」
「それ、すごいの? わたしはそのメロン顔の人の方がすごいと思うんだけど……で、そのメロン顔した人はどうなったんだって?」
「助かったみたい、ワニ アリゲー太って言うんだけど、アリゲー太に食べられるわけでもなく」
「それは、たしかにすごいワニだわね」
「でしょ〜」
「あれ? お姉ちゃん、工場で見かけたような?」
ナナコたちはレミィの檻の近くで食事をしている。そして今ナナコを覗き込むように、女の子が声を出している。
「ん?」
声に顔を上げると、女の子の言う通りたしかに見覚えのある顔だった。
「ええっと……?」
必死に名前を思い出そうとするナナコだが、どうも名前が出てこない。すると、その母親らしい女性が女の子に声をかけた。
「知? お姉さんたちの邪魔しちゃ駄目よ」
「はーい、それじゃーね〜」
少女 ーー 恵 知はそう言い残すと、母親のもとにかけて行った。結局ナナコは知の名前を思い出せずじまいになってしまった。
「え? あ、う……うん それじゃーね。ううん……あの子、名前なんだったかなああぁ?」
嵐のように走り去った少女に声をかけつつ、ナナコは真剣に考え込んでしまうのだった。
518 :
子熊レミィ:2006/11/06(月) 17:18:06 ID:CNPKsVC0
ナナコたちが動物園を見学しているのと同時刻、妖怪帝国某所。
「うむ! なに!? そうか、わかった!」
ガチャリと今時ダイヤル電話を叩きつけるようにおいた人物は、頷いて周りにいる人物に言い放った。
「これから我等てんぐまんは、¥市 獣姫abン殿が民禊を探索に行った場所だ。そこで”ヒーローショー”をやれとの神(スポンサー)からのお達しだ」
「ヒーローショー?! 人間に対してか?」
青い青年ことヒラブルーが、このやたらと態度のでかい赤いのに疑問を発する。
「それにより人間の子供達に、てんぐまんを正義の味方と印象付けることによって、後の妖怪帝国への被害の可能性を減らそうと言う神(スポンサー)のお考えらしい。流石は神(スポンサー)、そんなことまで考えているとは」
「でも、ほんとにそれだけなのかよ?」
赤いの感心に黒い青年ことクラマブラックも疑念は拭えない様子である。盲目的なのは、唯一神(スポンサー)と言う存在と交信可能な赤い奴だけのようだ。
「おのれらっ! 神(スポンサー)の御意志は絶対じゃ! そう言うておろうがっ! ええかげんに学習せんかっっ!! この青二才どもがっっ!!」
「リーダー、やっぱり……若くないんじゃ……」
白い女子ことシラミネホワイトが、小さく呟くように控えめに突っ込む。それを聞いたリーダーことアタゴレッドは、ものすごい勢いで動揺し始めた。
「わ……じゃ なかった、俺は若いの! 若いったら若いんだっ! そんな疑念しかない視線を向けるな! ……おほんっ。とにかくだ、我々てんぐまんは、動物園に行き、人間の子供達にヒーローショーを行う!」
若さに異常なまでに拘るレッドを、なんだかかわいそうに思いつつ、現在喋ってない黄色いの ーー イズナイエローを含めた四人は、彼の言う神(スポンサー)とやらの意志を実行することにした。
「でもさ。ヒーローショーって、普通動物園じゃやらないよなぁ?」
ぼそりと呟いたイズナイエローをレッドは睨み一つで黙らせる。その後、ひとこと言った。
「ホワイト。マスクは忘れるなよ?」
「は……はい」
なにを思い出したのか、ホワイトは顔を真っ赤にして頷いた。
つづく
519 :
子熊レミィ:2006/11/06(月) 17:21:36 ID:CNPKsVC0
●サブタイトルNo.60【子熊レミィ】
●パイロットNo.03【絶倫無職ニート・カス】
●パイロットNo.07【魁 盗撮姫】
●パイロットNo.21【桜 咲】
●パイロットNo.93【藻男リアル厨】
●パイロットNo.131【スロリナンテ姫】
●パイロットNo.323【恵 知】
●パイロットNo.401【星団暦】
●パイロットNo.---【ナナコ】(●機体No.35【超境内結合巫子巫女機ナナコSOXsm】参照)
●スタッフNo.12【アリゲー太】
●敵パイロットNo.08【岩田カバ夫Jr】
●敵パイロットNo.122【爪舞ぴんく侍】
●敵パイロットNo.173【てんぐまん】
●敵パイロットNo.235【獣姫abン】
●人物No.104【瀞ー恋】
●人物No.---【じじい】(●SRCシナリオ【超境内結合巫子巫女機ナナコ】参照)
●地名No.17【¥市】
●地名No.22【さちこ河】
●施設No.48【yz】
●施設No.62【柿桃梅竹松ダム】
登場エピソード
ニートがやる気を出したこと、SSNo.15【主人公 女嫌】
スロリナンテ姫の話、SSNo.9【走れメロン子孫悟】
獣姫abンの民禊探索、SSNo.14【と司会場みった?(SSでは「ネネと司会場みった?」)】
登場エピソードの皆さん、勝手に話をつなげてしまいました。すいません
520 :
子熊レミィ:2006/11/06(月) 17:33:38 ID:CNPKsVC0
すいません、登場エピソードが一つ抜けてましたorz
ホワイトのマスク消失、SRCシナリオ【超境内結合巫子巫女機ナナコ】
です、ああ 工場長の作った話までつなげてしまったorz
なんかそういうのがドンパチやってんの想像したら脳汁出てきた
523 :
それも名無しだ:2006/11/08(水) 12:34:53 ID:AA6FnKRj
ageときます
524 :
子熊レミィ:2006/11/08(水) 18:28:26 ID:htxwosSo
火薬庫GJです
さて、なかなかレミィの場面に行かないなぁorzと思いつつ続きです
昼食タイムから後、暫くは自由時間である。みんな思い思いに園内を見学していた。
そんな中ナナコは、こっそりと園から抜け出してさちこ河の水を拝借しようと試みている。しかし、持ち物がイットカンでは目立つため簡単には行かなそうだ。
「う〜ん、どうしよう。これじゃ外に出るの無理そうだよねぇ……」
自分の無駄に膨らんだリュックをみつめて考え込んでいるナナコ。そこに突然、園内放送が響く。迷子のお知らせかなにかと思ってはいるナナコだが、なんとなくそれを聞くことに下。
「ただいまから中央広場にて、てんぐ戦隊てんぐまんショーを行います。どこにも公開されていない謎のヒーロー、てんぐまんの活躍をどうぞごらんください」
なんだか妙に可愛らしい声で二度、そんなことを告げると放送は終わった。勿論この放送内容は人間たちにおいてであり、妖怪帝国の人間 ーー 特に子供達がこの場にいたら大変なことになっていたはずだ。
もしコン太郎と姫子がナナコからこの話を聞いたら、きっと見に行きたかったと暴れてしまうだろう。そして今、妙に宣伝くさいアナウンスをした可愛らしい声の正体は、妖怪帝国のアイドル歌手 天地何鬼である。
どうやら当面の目的であった、人間界への密航は成功したようだ。
「ヒーローショー? ……見に行ってみよっかな? 河の水のことは……、ショー見てればいい案思いつくかも」
と言うわけでナナコは、中央広場に向かうことにした。
「うわ〜、けっこう人いるなぁ」
その広場には、意外なことにけっこうな人だかりが出来ていた。戦隊ヒーローと聞いて、子供達が集まったのだろう。その中には恵 知もいたりする。
聞こえて来るのは、「なんで天狗なんだろう」と言う大人の声やら「天狗ってなに?」と言う子供の声。果ては「天狗を目の前で見られる、一生に一度のチャンスじゃ」と言うお年寄りの声までさまざまだ。
ナナコはさほど背が高くないとはいえ、幸い現在ここにいる子供よりは背が高かったので人だかりの後ろの方から見学することにした。
「あれ? ナナコ? ナナコも見に来たの?」
「うん、有香(ゆか)ちゃんも?」
「うん。なんか面白そうだったからさ、ナナコはなんで?」
「ん? わたしもだよ」
偶々友達に逢えたおかげで、ナナコはショー開始までの暇を潰すことができた。
「みなさ〜ん。こんにちは〜!」
今までなにを見てたのかなどを話していると、突然男性客がザワザワし始めた。なにかと人垣の先を見たら、そんな声が視線の先からした。その声は、さきほどアナウンスしていた天地何鬼の物であった。
どうやら彼女 ーー 観客にとってのイベント進行役の女の子の可愛さに、男性客がざわついた模様である。
控えめにこんにちはを返したお客たちに対して、何鬼は恒例とも言える返答をする。
「声が小さいなぁ。も〜いっかいっ! こ〜んにちはぁ〜!」
さらに元気よく発された彼女の声に、お客たちも元気よくこんにちは。なにか男性客のそれが、某種類のイベントを髣髴とさせたりさせなかったりしはするが。
ナナコは大声挨拶が恥ずかしかったので、有香共々そこは傍観している。
「今回司会振興させてもらいます、あまちなきで〜す。皆さんよろしく〜」
「ずいぶんかわった名前だね?」
「芸名とかなんじゃない?」
ナナコと有香は、何鬼の司会っぷりを見つつそんなことを話している。一方の何鬼は人間界発披露の、てんぐまんの解説を始めている。
彼女自身、人間界での自ら買って出たイベント司会で緊張しまくっていたりするのだが、そこをおくびにも出さないように努力している。
「てんぐまんは、妖怪帝国の平和を守るため いつも闘っているの」
その設定にざわつくお客達。あまりにも早い動揺に、何鬼はパニクってしまった。
「え? どうして? なんで驚くの??」
司会の彼女は、漆黒の大きな瞳を泳がせて、誰にでもなくマイクに声を乗せたまま混乱しているが、それはもっともな話である。人間に向けて放送されていると思い込んでいるこちら側からしてみれば、妖怪帝国のために日夜闘い続ける戦隊ヒーローなどありえない。
「そりゃー……ねー」
「う……うん……」
ナナコと有香も、てんぐまんの人間側に立たない設定に苦笑している。
525 :
子熊レミィ:2006/11/08(水) 18:29:36 ID:htxwosSo
「まてええええーい!!」
突然耳を劈かんばかりの大声が辺りに轟いた。なにごとかと周囲を見回すお客達。それは何鬼も動揺だ ーー と言うより、むしろ彼女のリアクションが一番でかい。
「えっ!? なに? どこからしてるの?! この声!?」
紅色のロングの髪を左右にぶん回しながら、紺色の学生服にしか見えない服を着た何鬼は、無駄にオーバーな動きで声の主を探す。しかし、どれだけ視線をめぐらせて見ても、声の主は発見できない。
「俺達の設定に異論を唱える奴は! たとえ俺が許しても、神(スポンサー)が断じて許さぁぁーんっっ!!」
「り、リーダー。それ 逆じゃないですか?」
せっかくの登場シーンをホワイトは見事に台無しにした。それにむくれつつ、リーダーのアタゴレッドは、以下四人を引き連れて煙を上げてシルエットだけの状態で現れる。
その演出にお客から歓声が上がる。その歓声に気を良くしたレッドは、今の膨れっ面はどこへやら、朗々と前口上を始めた。
「人間どもに蹂躙される、弱者の叫びが俺を呼ぶ!」
「い、いやー。これからなにかされる予定だったんですけど……」
何鬼の突っ込みも構わず、レッドは口上を続ける。
「愛宕の山のお里から、助け来たるは炎の戦士! アタゴレッド! 参上!」
「無力な妖の盾となれ、鞍馬天狗の心意気!」
鞍馬天狗と言う台詞に、お年よりたちが歓声を揚げる。
「クラマブラック! 見参!」
煙のせいで、まだてんぐまんの姿は見えない。そのことにいらだった一部の客がなにやら怒鳴り始めた。
「わ わーっ、お おちついてください おちついて!」
宥めようとする何鬼だが効果はなく、逆に何鬼に石が飛んで来た。しかし彼女に当たる一歩手前で、飛んで来た石ころは砕け散り、地面にパラパラと落下する。
「……え?」
「次郎坊譲りの神通力、持って砕くぞ悪の尖兵! ヒラブルー! 推参!」
「見事なタイミングだね〜」
「ナナコ。今の葉たぶん……演出じゃないと思う」
「飯綱の山で誓いし志、悪を許さぬ鋼の決意! イヅナイエロー! 参戦!」
それと同時に、さっきなにかを怒鳴り散らした青年はうめき、地面に倒れる。それを契機に観客がどよめき始めた。
「ちょ、ちょっと待ってください……! 今の葉あんまりですイエローさん! 不意打ちなんて、ヒーローのすることじゃないですよ」
煙の中から少女の声。残ったホワイトである。
「あっちが先だ。反撃するのはかまわないだろ?」
「でもわたし、口上終わってません。緊張するんですよ あれ!」
女の子の声がしたことで、男性客の怒りが一層激しくなる。
「ねえナナコ?」
「え?」
「なんか……殺伐として来たね」
「そう……だね」
聖マ女生徒二人は、この状況に、どうしようかと顔を見合わせているが、客が増えたせいでなかなか人並み掻き分けてここから出るのは骨が折れそうだった。
「ええい! ホワイトさっさと名乗れ、この煙そろそろ晴れるぞ。タイミングが合わなくなる!」
みかん箱を爆破した煙の中でてんぐまんがもめている間も、徐々に黒い煙は薄れている。そろそろ全貌が明らかになろうかと言う状態である。
「あ はいっ。白峰山より生まれし剣、悪を貫く正義の光! シラミネホワイト! 光臨です!」
ホワイトの口上が終わったのを菊や否や、ブラックが続きをかぶるようにして叫んだ。
「我ら5人揃いし天狗の末裔!」
続けてレッドの「天狗戦隊……!」を引き継いで、五人全員で「てんぐまん!」と名乗りを揚げた。
そこでちょうど煙が完全に晴れた。かと思ったら、用意したわけでもないのに、てんぐまんの背後の地面が名乗りと同時に派手に爆発した。
レッドはタイミングがギリギリセーフだったのを確認して、
「どうにか間に合ったか……よし、ハプニングも含めて掴みは上場だと神(スポンサー)もおっしゃられている!」
と言ったが、それに疑問を持ったのは、レッド以外全員だったことは言うまでもない。
526 :
子熊レミィ:2006/11/08(水) 18:30:46 ID:htxwosSo
レッドがいらんことを言った直後である。
「帰れ! 昭和クオリティ!」
「今更流行んねーんだよ! そんなん!」
「なんだよ天狗って。マニアックすぎんだよ!」
ついにお客が切れた。石やらペットボトルやらを乱雑にてんぐまんに向かって投げつけ出している。
当然ながら本物の天狗の彼らに、そんなものは……痛いかもしれないが当たる前に、反射的に爆砕している。
しかしホワイトと何鬼にはまったく飛んで行く様子がないところを見ると、投擲しているのは男性客であろう。この惨状に、何鬼もホワイトもあたふたするばかりである。
さらには、そこここから「鞍馬天狗に物を投げるとはなにごとじゃ!」「うっせえじじい!」と言うやりとりが繰り広げられており、ヒーローショーは一変してカオスなバトルロイヤルステージへと摩り替わってしまった。
当然ながらこの雰囲気に大概の子供は泣き出してしまい、動物園に文句を言いに行く親子連れまで現れ始めた。
「ふぇええ」
なんと半泣きになっているのはナナコも同様であった。有香はナナコの頭を、まるで子供をあやす母親のようになでながら彼女をひっぱり、むりやりにこの混沌とした地獄絵図から逃走した。
「はぁ。なんだったんだかなぁ、まったく」
「ほんとだよ〜」
すっかりへとへとのナナコは、自分の背中にしょわれているさちこ河の水への期待を思って深く溜息をつく。と、その時。
「なに……あれ?」
有香は、少し先からここに迫って来る複数のなにかを見て声を出した。
「あれって……巨大兵器? でも、どうしてここに?」
多少なりともDOOMERS私設軍メンバーとして戦っているナナコにとって、有香の指差したそれは明らかに兵器の類に見えた。
見たところ、数は3から4機しかいないようだ。黒い鎧のような鉄に身を包んだような姿をしている。妖怪帝国の汎用機体、鍛鉄である。
「はぁ、はぁ。し……しぬかとおもった〜」
「あれ? 司会やってたお姉さん?」
そこに走ってきたのは、戦場から辛うじて逃げ出せた何鬼だった。そして視線の先に見えた鍛鉄を見て「あっちゃー」と漏らす。
「どうしたの?」
「え? あ、ああ。その……」
ナナコに問われた何鬼、しかたなく事情を説明する。
「よ、妖怪帝国のアイドル歌手?!」
「しかも、仕事の合間に遊びにでかける癖あり、ねぇ」
「で、今回こうして人間界にようやっと密航できてね。てんぐまんがここに来るって小耳に挟んだもんだから、ヒーローショーの司会やってみよ〜ってことで、今にいたります、はい。まさかあんなことになろうとは……」
「妖怪帝国って、ほんとにあるんだ〜」
「うん、つい最近初進行したって聞いたよ? なんかそこにもてんぐまんがいたとかいないとか」
「え゛」
「ものすごい驚き方したわねナナコ。つまるところ、てんぐまんってのは、本当に闘ってる人たちってことなの?」
「そうなの、だからあそこ危ないよ。本気で惨状になりかねない」
「で、でも……あっちから起動兵器、こっちでは”あれ”。ど どうしたら……」
「それは俺に任せてもらおう」
「あ、バイトの鬼いさん」
「どうするつもり?」
有香に問われた岩田は、頷いてから答えた。
「君達は逃げるんだ。ここは……戦場とかす」
「「せ 戦場!?」」
驚いたのは有香とナナコ。何鬼は頷くと、ナナコと岩田に指示する。
「オッケー。じゃあみんなの先導やりましょ」
「わかった。しかし、ずいぶん冷静だな君は?」
「そうかなぁ?」
「(さちこ河の水、もって帰れるかなぁ?)」
それぞれの思いを胸に、それぞれ客の先導を開始する。バトルロイヤル中の人たちは現状ではどうしようもないので後回しにすることにした。
つづく
527 :
子熊レミィ:2006/11/08(水) 18:32:14 ID:htxwosSo
今回分登場のネタ
●サブタイトルNo.60【子熊レミィ】
●強化パーツNo.37【みかん箱】
●パイロットNo.323【恵 知】
●パイロットNo.---【ナナコ】(●機体No.35【超境内結合巫子巫女機ナナコSOXsm】参照)
●スタッフNo.83【コン太郎姫子】
●敵兵器No.249【鍛鉄】
●敵パイロットNo.08【岩田カバ夫Jr】
●敵パイロットNo.173【てんぐまん】
●人物No.73【天地何鬼】
●人物No.---【有香】(●SRCシナリオ【超境内結合巫子巫女機ナナコ】内、女友達1)
●地名No.22【さちこ河】
528 :
たろす式避難:2006/11/09(木) 01:08:24 ID:o6sNzkqA
>>524 GJです。ちょいと誤字が目立つような気もしますが。
女性はどこからか仮面を取り出し、顔を覆った。
怪しさが増したような気もしたが、先公も人のことは言えないので黙っていた。
「本当はこれをつけてから変身することにしているのですけれど」
「はあ。…助かりました」
とりあえず礼を述べておく。
「えーと、色々と複雑な事情がありそうな感じなので、とりあえずお互い詮索はしないでおいた方が
幸せなんじゃないかと思うわけですが」
「そう…ですわね」
《まさかバンドリター以外に仮面の戦士が存在するとは……。ここはバンドリター2号と》
「名づけるな。勝手に」
「…何か?」
先代の声は先公にしか聞こえていないので、はたから見ると一人でぶつぶつ言っている危ない人である。
「いえ、こっちの話です」
首を振り、先公が辺りを見回す。酷い地震だった。書店は半壊状態だが、
書店の前に集まっていた野次馬はほとんど無事のようだった。
倒壊しかかっている書店の真向かいのビルを、青銅の巨人――先代は幻獣と言っていたが――が、
支えていたのである。
529 :
たろす式避難:2006/11/09(木) 01:10:17 ID:o6sNzkqA
「よくやった、たろす!」
幻獣機コω竜(あξ潜に乗った幻獣共和国軍の司令官ドラッポが言った。
青銅の巨人たろすがビルを支えているおかげで、幼稚園バスは無事である。
「あのぅ、ドラッポ様。じゃあこのビル向こうの方に放り投げちゃっていいですかねぇ。重いんで」
「ば、馬鹿を言うな。そのビルの中にも子供がいるかもしれないではないか。
子は宝だぞたろす。幻獣共和国の未来を担うべき子供達を一人も死なせるわけにはいかん」
「しかし今の地震できっとそこかしこで人間死んでますよぉ。
追加で二十人や三十人死んでも大して変わらんじゃないですかぁ」
たろすが辺りの惨状を見渡して言う。
「馬鹿者。これ以上犠牲者を出してはならん。私がビルの中にいる子供達を助け出すまでそのまま支えていろ」
「それなら、私達も手伝わせていただきますわ」
ぉょょの力に暫し言葉を失っていた狸達が、ようやく口を開いた。
「お、お見事です。では地上に降りて確認作業を」
「それよりさー、幻獣共和国の人達まだいるみたいだから、ついでにやっつけていこうよ」
「は? いやしかしマモヌース卿からの命令は鬼Ωの破壊だけなんですがねお嬢様」
「どうせ下に降りたとこ見つかったら向こうから襲ってくるよ。
それに、相手はたった二人じゃん。ぉょょなら一分でやっつけられるよ」
一匹の狸が、ぉょょには聞こえないように「予定通りだな」と呟いた。十戒モネアゲハの頭にしがみついていた狸が頷く。
「わかりましたお嬢様。しかし決して無茶はしないで下さいよ」
「わかってるって! じゃあ、行くよー」
ぉょょが機体を降下させようとすると、攻撃ユニットのひとつがぼん、と音をたてて吹っ飛んだ。
「あれ? ホノイカズチが壊れちゃったよ? あれれぇ? オオイカズチとサクイカズチも調子悪いみたい。
ぉょょのつけた名前が気に入らなかったのかな?」
「魔王の力に地灰雷公が持たなかったというのか」
「末恐ろしいお嬢様だな」
「お嬢様、その機体で戦うのは危険です。すいませんが一度グバゲに戻って下さい」
十戒モネアゲハがばさりと羽ばたき、更に上空に待機している華艦グバゲに向かっていった。地灰雷公もその後に続く。
530 :
たろす式避難:2006/11/09(木) 01:11:25 ID:o6sNzkqA
「えー、ぉょょの乗る機体ないのー?」
ぉょょが、ぷうっと頬を膨らませて不満気に言った。
「器鷁じゃお嬢様の魔力に耐えられませんよ。地灰雷公の二の舞ですぜ」
「じゃあいいよ。モネちゃんに乗ってくから。妖神機なんか無くても幻獣くらいどうってことないしー」
強がりではなく、本気で言っているあたり恐ろしい。
「おじちゃん達が器鷁使うの?」
「器鷁に乗るのはタミタミブタ共です。俺達五狸には機体なんか必要ありません。まあ見ていて下さい」
そう言うと狸は四匹の仲間を見た。
「やるぞ」
「おう!」
「腹が鳴る…いや腕が鳴るぜ!」
狸達は口々に叫ぶと、ぴょんぴょんと仲間の上に飛び乗っていった。目を輝かせてその様子を見守るぉょょ。
どろん、という音とともに五段重ねになった狸達が煙に包まれた。
煙が晴れたあと、そこに現れたものを見て、ぉょょが歓声をあげた。
「おじちゃん達……すっごぉぉい!」
531 :
たろす式避難:2006/11/09(木) 01:13:11 ID:o6sNzkqA
「それなら、私達も手伝わせていただきますわ」
何やら言い合っていた幻獣達にそう言ったのは、ゴスロリ蜂に変身した女性だった。
先公は「私達」にちゃっかり自分もいれられていることに気づいた。
コω竜(あξ潜が首を巡らせ、先公達の方を見る。
「お前達、妙ななりをしているが…改造人間というやつか」
「私はそうですわ。彼も似たようなものです」
「似てるかなぁ」
「ビルの中の人達を助け出すのなら、私達の方が適役だと思いますけれど。あなたもそう思いません? ええと…」
女性は先公の方に首を向けて行った。
「嶋先公です。この姿の時はバンドリターってことになってるんでそう呼んで下さい」
本名を呼ばれて誰かに正体がばれでもしたら恥ずかしい。
「あら、ごめんなさい。私もまだ名乗っていませんでしたわね。私は蜂森和沙。
この姿の時は、嬢王蜂…嬢王でいいですわ。それで、どう思います?」
「はあ。まあでっかい敵と戦うよりはましですけど」
先代も《人命救助も立派なヒーローの仕事だ》とか言っている。
「待て。勝手に話を進めるな」
コω竜(あξ潜から、ドラッポの声が聞こえてくる。
「何を迷うことがあるというのです? あなたはビルの中の人達を助けたい。
私も見殺しにしたくはない。ならばするべきことは協力して救出活動にあたることでは?
ただし、助け出した人達をどうするかはあなたの一存で決めていただくわけにはいきませんけれど」
「どうするんですかドラッポ様ぁ。どっちにしろ私そう長くは持ちませんよぅ」
たろすが哀れっぽい表情で訴える。
「…わかった。今一番に考えるべきことは子供達を救出することだ。正直大人はどうなっても…
あ、いやいや人類も新たな幻獣であるからして見殺しにはできんな」
「話は決まりましたわね。行きましょう、嶋さ…いえ、バンドリター」
「行くのはいいんですが、どうやって? あそこまで登るんですか」
「心配いりませんわ。蜂が飛べない道理は無いでしょう?」
背中から四枚の翅を拡げながら嬢王蜂が言う。
「なるほど」
532 :
たろす式避難:2006/11/09(木) 01:14:37 ID:o6sNzkqA
二人がたろすが支えるビルに入っていくのを見届けたドラッポ。
「今のうちにバスの子供達を収容しておかねばな」
そう言ってコω竜(あξ潜の捕獲した人間(主に子供)用の収納スペースを開く。
が、幼稚園バスの中はいつの間にかもぬけのからとなっていた。
「あのですねぇ、ドラッポ様が人間と話している間に一目散に逃げたみたいですよぅ」
このままここにいてはろくなことが無いと判断したのか野次馬達も逃げ出すなり
怪我人を助けるなり各々動き始めている。
「そういうことは早く言え!」
とドラッポが怒鳴った瞬間、たろすの足元の地面が砕け散った。
上空から何かが撃ち込まれたのである。「うひゃあ」と悲鳴をあげるたろす。
「ど、ドラッポ様、あれ、あれ!」
「妖怪帝国! この地震も奴らの仕業か!?」
数機の妖神機器鷁が上空を旋回しながら攻撃の機会を窺っていた。
うち一機には何か白っぽいものがぶら下がっている。
一機の器鷁が急降下しながら、口を大きく開く。
「させん! 冥波フィールド展開!」
ドラッポはコω竜(あξ潜をたろすと器鷁の間に割り込ませた。
器鷁から放たれた超音波砲が冥波フィールドによって阻まれる。
ドラッポが咆哮した。コω竜(あξ潜の口から迸った熱線が超音波砲を放った一機を貫く。
落下し、爆発する器鷁の後ろに別の器鷁にぶら下がっていた白っぽい何かが降り立った。
それは、銀色の体毛に覆われた巨大な獣だった。
白銀の巨獣――五匹の狸が合体したギンタロウーリが、体毛を擦り合わせてコω竜(あξ潜を威嚇する。
「妖怪ども、お前達に子供達の未来を奪う権利は無い。このドラッポ、ここから一歩もさがりはせん!」
つづく
533 :
たろす式避難:2006/11/09(木) 01:15:10 ID:o6sNzkqA
●サブタイトルNo.169【たろす式避難】
●機体No.435【嶋バンドリター先公】
●パイロットNo.346【嬢王蜂】
●敵兵器 No.55【コω竜(あξ潜】
●敵兵器 No.94【器鷁】
●敵兵器 No.120【冥波】
●敵兵器 No.208【地灰雷公】
●敵兵器 No.247【十戒モネアゲハ】
●敵兵器 No.297【華艦グバゲ】
●敵兵器No.566 【ギンタロウーリ】
●敵パイロットNo.26【ドラッポ】
●敵パイロットNo.334 【山本ぉょょ】
●施設No.04【〒壕 鬼Ω】
534 :
175:2006/11/09(木) 12:28:31 ID:dDBU//FE
>>528 ぐっはーまじですか?! 気を付けてるんだけどなぁ、これだから目暗は不便だぜ(自分のこと)、ちなみにバイトの鬼いさんはわざとですよ
それはそれとしてGJです、なんかえらいどらっぽがかっこいいですね 守る物が子供限定ですがw
最近SS祭ですね〜
みなさんGJです!
ー PM11:30 ー
やはり訓練と言うか一元統括下のアルシンの機動兵器は性能の割に手強い。
先行していた機体はかのマーソ撃墜王シーマの機体にグフをカスタム化した機体。
最後に実体弾ガトリングガンを2機装備したガトザードリー。
その動きに既視感を覚える岩田。時を同じくしてその機体の方から岩田に向かって言葉が届く。
「最近は仕事(傭兵)日照りのようだな岩田。」
「その声は天!お前か。今回は珍しく同じ括りとは面白く成ってきた。」
「岩田!無駄口を叩いている暇が有ったら働け。」
天に急かされる形で岩田は動き出す。動き出せばやはり機械神、
周囲に居る機動兵器を口中から引っ張り出したハンマーで一掃する。
念動力で誘導できる巨大鉱石のハンマーはトリトットットットを粉砕してブルラブに迫る。
しかし突然手応えが無くなりハンマーを岩田が見上げると…
狙ったブルラブの隣りのブルラブが素早くロボット形態に変形してハンマーの鎖を引き千切っていた。
「プログラムの完成度が向上しているのか?面倒な。」
更に残りのブルラブのゲートからはトリトットットットでは無く宇宙戦車が出現し始めていた。
ボスは初回から数回の会敵とは明かに違う戦略性の向上に目をみはる。
「奴等遊ぶだけ遊んでから(運用試験)此方を潰す気らしい…。」
無尽蔵に繰り出される増援の弾幕?に阻まれ対空砲火はブルラブに全く届く様子は無い。
ー 同刻DOOMRES(株)工場上空12000m ー
「イプシロオオオオオオオンクラッシャアアアアアアアアアアア!!!」
強烈な蹴りの直撃で別動隊らしき部隊のブルラブが中央から真っ二つに割れた後に爆散する。
蹴りを放った存在はブルラブの約10分の1程の大きさの巨大な機体。
「まだ手子摺っているのか…?」
眼下で行われている戦闘の様子を見て機体のパイロットは溜息を吐く。
しかし戦力の相対数を比べるとその溜息が嘘のように男は目を輝かせた。
「数機で数千を超える敵相手に拮抗!燃える展開だ!」
しかし自分の機体が敵の攻撃を受け揺れている事にやっと気付くと、
「お痛が過ぎたようだな。消え去れ。正月合掌波!(しょうがつがっしょうは)」
ブルラブの護衛だったらしい部隊は見慣れない機体毎光の渦に呑まれ消え失せた。
ー PM11:31 ー
「まだ上にも居たのか!?しかし…何時もの監視役(おせっかい焼き)に潰されたらしい。」
ボスは上空から新たに部隊が降りて来るところだった事に肝を冷やしながらも警戒を怠らない。
「華憐?そう言えば人型ブルラブが持っていた筈のハンマーが確認できないのだが?
理由が分かるか?私はオカルト関連の知識には弱い。」
「アレですか?直に消えました。持ち手から離れると存在決定力とか、
シュレーディンガー波動関数やらの代入された数値が無くなるらしいです。」
華憐の言葉からして又聞きの又聞きらしく言葉や内容が激しく間違っていそうだが…。
見た目のやばさに反比例して機械神がかなり安全指向の物なのだなとボスは覚えておく事にした。
周囲を見れば例の兄弟だが、今回は敵機数が大過ぎたことで彼等の攻撃も面白い様に当たる。
「これを機に敵を撃ち落とす事の意義とかを学んでくれれば良いのだがな…。」
過度の期待はせずこれ以上は損害の蘭に彼等の機体と彼ら自身が乗らない事を祈るのみだ。
「太!砲チン!あの空飛ぶ戦車を狙え。何をしでかすか解った物ではない!」
空を飛ぶ不格好な戦車らしき物は自らの無限軌道を激しく動かし始める。
そしてそれはそのまま響のイマリヤに向かって突撃する。
「うわっ…キャタピラって物は地面を掴んで走るものだろ!」
ボウガンライフルが脇を擦り抜けて行った宇宙戦車を捉える。
嫌な音と共に左側半分が上空に打ち上げられ残りは地上に落ち虚しくキャタピラが惰性で回り続けている。
一応ガトザードリー等のシリーズが持ち歩く火器は打撃、若しくは斬撃を行う兵器として使用が可能だ。
今回のボウガンライフルは機体の全長程も有る巨大なもので、
言うなれば西欧で荒れ地の草刈りに使われていた大鎌を両刃にしたような状態に弓が成っている。
本来は弓の部分等要らないことは突っ込みたい所だがこう言う時には役に立つので声を大にして叫ぶ事は無理だ。
「こうなれば…重力弾で!」
「「待て!」」
響が虎の子のグラビトンアローを装填しようとするのを止める声…天と岩田2人の声だ。
「どう言う事で…すかって。ああ…そう言う事ですか。」
少し前方を見て響は少々自分の行為を後悔した。
そこには彼の二人の弟が白い木偶の坊。マーソに囲まれているのが見える。
「いや…あれだけ足が速いのにどうすればあんな事に?」
そう言い終わる前に彼等を囲んでいたマーソはシーマと天の機体に一網打尽にされている。
その一方で…後方はスフカの駆るグフカが宇宙戦車の群をヒートロッドで迎撃していた。
ー PM11:37 ー
「うぬぬぬぬ…ぐぅれいと!数だけは多いわい!」
上空迎撃斑的な役回りのエリマドは珍しく苦戦を強いられていた…。
敵の数や強さでは無く…弾切れである。
幻獣と言う事で冥波の影響を受けている砲弾やビーム、レーザーは基本エネルギー量を超える戦果を出している。
だがそれでも砲撃は必ず当たる訳では無い。
そもそも彼の火器は艦船の砲。そもそも狙撃なんて使い方が個人でできる筈も無い。
「ぬう。誰か砲の面倒を看てくれる者を連れてくれば良かったかのう…?」
今更何を言うと言いたくなるが緊急事態だった為責められたものでは無い。
結局主砲は既に沈黙し機銃もレーザーの物のみ。
今日は偶々艦橋や甲板部の定期点検、整備前なので弾薬が運び出されていて運の悪い事この上無い。
「おい!カバの操縦者!ちぃ〜とばかし時間を稼いでくれんかのう?」
そう言うが早いか前足を勢い良く地面に打ち付け反動で素早く直立姿勢をとる。
その腹部が怪しく輝くと甲羅が展開しいかにも大口径砲です!と言わんばかりの器官が露出していた。
「な…切り札とでも言うのか?そんな事をされては引っ込みが付かないじゃないか!!!」
岩田は焦り本来隠して置きたかった奥の手の一つを披露せざるを得なくなっていた。
…そんな状況の隣りでは聖戦エリマドの立ち上がる際の振動で、
ニート兄弟のガトザードリーが転倒していたのは秘密だ。
ー PM11:38 ー
「なあ?俺達なんで転んでいるんだ?」
ニートは藻男に状況の説明をして貰おうとする…が当然藻男にも状況が解る筈も無い。
しかし目の前でカバに起こっている変化に操縦をつい忘れてしまう。
確かそこにはカバの機械神が居た筈だ。
しかし今その場に居たのはかなり上半身と下半身のサイズが釣り合わない人型の機械神が居る。
背中にカバの巨大な顔が有ったから混乱したのだろう。
「「おお〜!!!流石は機械神!」」
そのカバだった機械神はハンマーを一度地面に打ち付ける。
「どわっ!?…やった!起き上がれたぞ。サンキュー!」
「ベリーマッチョメン!」
変な所で息の合っている兄弟が岩田に礼を言う。
「気にするな。今回は枠組みが一緒だから当然の事をしたまでだ。
後…球切れだぞ?そのガトリングガン。さっさと弾倉を交換するんだな。」
彼等が弾倉の取り替えを始めるのを確認すると、ハンマーを振り回して周囲の敵を一掃する。
パワータイプの機械神は一度動き出すとそうそう止められる事は無い。
特に魔力で無理矢理自重を軽減しているグランロックヒポパタマスの比重は通常物質の5倍程も有るらしい。
唯のパンチでさえMSクラスの兵器は掠っただけでその周囲は砕け散る事だろう…。
「釣りは要らん。全部持って逝け!ライジングプレート!」
ハンマーがもう一度地面を叩くとその周囲から突然岩盤が迫り出して結構な数の敵を串刺しにする。
岩盤の高さは約300m程。当然元々そこに有った建造物が軒並みくっ付いている。
しかしここは…DOOMERS(株)所有の私有地。
地域再建の恩恵を受けられず廃墟になったまま都市をそのまま買い取り演習場として使用している。
なので裏を通しての請求も無い筈である。そう信じたい岩田であった…。
ー PM11:41 ー
「やはり機械神はお便利な道具でもあるようだな。羨ましい限りだ。」
天はそんな言葉を呟きながら弾倉を取り替える暇が無いということで砲身を回転させてマーソの足を薙ぎ払う。
とても嫌な軋み音が聞え確かな手応えを感じる。ガトリングガンの銃身が通り抜けた後に、
それに倣うようには編が飛び散り足を破壊されたマーソは後方に倒れる。
しかもまだまだ作戦で生じた不都合に対する瞬間的な反応は鈍く味方を巻き込んでドミノ倒しが発生する。
通常の戦闘では絶対に見られない貴重な光景でも有った。
「不用意に背の低い相手に近付くとそう成るんだ。それに隊列の感覚が狭い。」
天はそう吐き捨てると弾倉を交換し空中の雑魚の始末を始めた。
ー 同刻工場内 ー
明かに数の差は歴然であるにも係わらず他の増援が全く無い。
おかしな話ではあるが…アルシンを相手にする際は大抵こう成るのが必定。
今回も同時に複数の地域で戦闘が発生しており同じ様な光景が見られている。
「もう少し時間が有れば特機連中も投入できたんだが…。」
工場長は整備を急がせながらも避難路の確保を各工員に指示している。
今回のドリーシリーズ一点投入はパーツ交換だけで事が済むから成せたもので、
ここにMSやらASが混じっていたならば今頃工場は完全に制圧されていた事だろう。
「主要物資及搬入終了しました。緊急時に自爆させる吸引ジュリ専足以外は大丈夫です。」
工場長が親指を立て響介に合図を送ると響介も頷きこう言う。
「よし!クォラーヴを仕上げたらネネを放り込んで合流させろ。
キャリコMを持たせておけばそれなりに働くだろう…って!ネネ!逃げるな!」
「ええ〜…折角今回は出番が無いと思ったのに…。」
「黙れ!今度はトラック50周を天と同じペースでやらせても良いんだぞ?
天はともかくお前が奴に付いていけるのか?見ものだな〜?」
鬼教官響介の略恫喝にとれる言葉にネネは黙って従う他無かった。
今回は脇役の主人公…やる気ゼロはどうしようもないのかも知れないかも?
つづく
主人公
●敵パイロットNo.08【岩田カバ夫Jr】
工場の人々(台詞の無い人含む)
●戦艦No.01【胸焼き家のりすグレレレレレちんジ艦・ボスロリータタン乙・HTB 】
今回はボスの名前で艦長が登場。
●パイロットNo.03【絶倫無職ニート・カス】
●パイロットNo.14【のび太太】
●パイロットNo.17【スフカ】
●パイロットNo.40【マーソ撃墜王シーマ】
●パイロットNo.93【藻男リアル厨】
●パイロットNo.179【桃月華憐】
●パイロットNo.282【絶倫無常 響】
●パイロットNo.421【天上天】
●パイロットNo.430【ネネ】
●パイロットNo.437【砲チン】
●スタッフNo.31【鬼響介】
●スタッフNo.08【工場長】
登場機体
●機体No.54【ガトザードリー】
●機体No.171【吸引ジュリ専足】
●機体No.202【クォラーヴ】(●武器No.235 【キャリコM】持ち)
●機体No.336【グフカ】
●機体No.340【イマリヤ】
●機体No.461【聖戦エリマド】
●機体No.479【撃滅】
●機体No.806 【ウィータース】
おせっかい焼き及び搭乗機体
●敵パイロットNo.37【新堂本兄貴】
●敵兵器 No.74【金正月】
登場機動兵器
●敵兵器No.338【アルシン】
●敵兵器No.353【トリトットット】
●敵兵器No.547 【宇宙戦車】
●敵兵器No.606 【ブルラブ】
ネタは略出し尽くした!後は一気にオチに向かって駆け抜けるのみ!
ネタ師の方々GJです!
540 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 14:05:19 ID:BTnGTmn6
なんとかまとめサイト一周年の明日までに仕上げたいと思いつつ続き投下
「ふぅ。こっちはこれでいいかな? さて、と」
何鬼と岩田は、てんぐまんと闘っている? 人たちの避難をさせると言うことで、ナナコは学院生徒の避難をさせることになり、それも大方完了したところだ。
この混乱を利用して、ナナコはさちこ河の水を拝借しようと考えている。で現在ナナコはさちこ河に向かっていたりする。
ほどなくしてナナコはさちこ河に到着、リュックからイット缶を取り出す。そこで、昨日盗撮姫の言っていたことを思い出す。
「さちこ河にはね、瀞ー恋って精霊がいてね。断らないで水を汲もうとすると水の中に引きずり込まれるんだって。覚えとかないと、大変なことになるから気を付けてね」
「えっと、瀞ー恋さん。お水もらいますよ?」
と声を発してみるが、答えが返って来ることは頭に無い。のでそのままイット缶を河に静めようとしたら、
「OKどうぞ」
と返事が返って来たものだから、ナナコは思わずイット缶を手放してしまいあたふた。
「あっ!? ど どうしよう……、って あれ?」
流れて行くとばかり思っていたイット缶だが、一向に流れて行く様子がない。それどころか、どんどん水が吸い込まれている。
「え? え?? ど、どーゆーこと?!」
「ずいぶん胸の成長具合が気になるのね。こんなおっきな物で、この河の水を汲もうって言うんだから」
声の主が、河の中に身体を浸した状態であらわれた。まるで3D映像でも透写したかのようにスーっと。
「あ……貴方は?」
驚きつつ尋ねるナナコに、声の主 ーー 瀞ー恋はクスリと笑いながら答える。
「やだなぁ。わたしが瀞ー恋よ」
「え?」
「あれ? お嬢さん、精霊なんていない。って思ってた?」
「あ え、あの……」
「ふふ、いいわよそう思ってたんならそう言って。でも偉いわね、ちゃんとわたしにことわってから水を汲もうとするなんて」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。近頃はいきなり水筒に入れようとしたりする人が多いから、ちょっとおしおきしたりするわ。礼儀知らずはちゃんと怒る人がいないとね」
「(姫さんが言ってたこと、ほんとだったんだ……)」
「はい、これで満杯になった。重たいから気を付けてね」
言うと彼女は、ナナコの前にイット缶をドスっと置く。本当にそんな音がするほど重たくなっていた。
「こ……これ、もって帰るのかぁ……」
見ただけで泣きそうになるナナコ。なにはともあれ恋にお礼をする。
「あの、ありがとうございました」
「いえいえ」
笑顔で答えた恋に自然と恵美を返すナナコ。問題のイット缶を持ち上げてみた。
「う、うう……お お〜も〜いい〜〜」
「あはは。んじゃ、頑張ってね〜」
陽気に告げると、恋は現れた時と同じようにスーっと消えてしまった。
541 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 14:07:12 ID:BTnGTmn6
「皆さんおちついて聞いてください! ここに機動兵器が迫っています」
「てんぐまんをいじめてる場合じゃないですよ!」
一方ナナコが生徒の避難をさせているのと同時刻、何鬼と岩田はバトルロイヤル中の人たちの避難を開始させようと会場にいた。
「む! 新手か?!」
岩田と何鬼の登場に、最初にレッドが反応した。
「えっと、君 名前は?」
「天地何鬼です」
「じゃあ何鬼さん、俺があの連中をひきつけます。その間にお客の避難を!」
「え? でも、てんぐまんは……」
「こう見えても名の通る用兵です。なんとかやって見せますよ」
「え……でも。そうですね、わかりました!」
岩田の自信たっぷりな表情を見た何鬼は、熟考している状況でないこともあり、岩田にてんぐまんを弾き付けてもらうことにした。
「なにをごちゃごちゃやっている!? そこな人間っ! 妖怪帝国アイドルの何鬼ちゃんを捕まえて、いったいなにを企んでいるっ!?」
それを発したのもさきほど同様にレッド。岩田は何鬼がなにものであるか知らなかったので少し面食らったがそれに構わず答えた。
「彼女にはそこらにいるお客の避難を頼んだ。お前達と戦う舞台を整えるために」
岩田の引き締まった表情が、てんぐまんに緊張を走らせる。
「こいつ……ただものじゃない!」
ブラックは岩田の眼光で、彼がただやたらに自分達に向かって来たのではないことを理解した。
「ふふふ、ザコ戦の次は怪人戦とは。神(スポンサー)もお喜びになるだろう!」
なにがそんなに嬉しいのか、レッドはテンションを上げてそういう。どういうわけだかレッドは、神(スポンサー)に関するコメントを必ず挟む。
その行動は常々他四人にあきれられているのは周知の事実だろう。
「(ここにはあの妙な女侍のイタチがいたな)期待に添わなくて悪いが、俺はGOGに改造なんてされてないぞ? そして生身の戦闘をするのは俺じゃない」
岩田は周りを見渡し何鬼が走ってくるのを確認すると声をかけた。
「何鬼さん! 非難の方は?」
「完了です。後は動物たちぐらいかな?」
「なっ、どこへ行く!? 逃げるつもりか!?」
何鬼の言葉に頷いて駆け出す岩田にレッドは声を投げつけるが、彼はそれに見向きもせず変身イタチぴんくの展示されている場所へと急いだ。
「あ……あの、何鬼さんっ! サインくださいっっ!」
「え? いいよ♪」
ホワイトが意を決して何鬼に声をかける。快く了解した何鬼を見たブルー イエロー ブラックもサインをねだる。
「はいはいまったまった〜、一人ずつ一人ずつ。でレッドさん? 貴方はいらないの?」
「なにを言っている? いるに決まってるじゃないかっ!」
てんぐまん、みんな揃ってミーハーなのであった。
542 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 14:08:08 ID:BTnGTmn6
「い、いきなりなんですか?!」
「どうしてもぴんくの力が必要なんだ!」
岩田は変身イタチぴんくの飼育員に頼んでいる。どうやら爪舞ぴんく侍とてんぐまんを闘わせるつもりのようだ。
「で、でも……」
「大丈夫だ、ちゃんと用事が済んだらあんたに顎の下をなでさせる。これならいいだろ? ぴんくの命は保障する」
「い 命って?!」
「そいつも妖怪帝国の兵士らしいからな。ちょっとやそっとじゃ死にはしない。頼む!」
「……そ、そこまで言うなら……」
飼育員は岩田の迫力に、しぶしぶぴんくの檻を開放する。するとイタチ状態のぴんくは、ぴょこっと飼育員の肩に乗っかった。
肩に乗っかったぴんくこと爪舞ぴんく侍を確認した岩田は、飼育員の背後から爪舞ぴんく侍に接近。
岩田の気配を感じた爪舞ぴんく侍は、飼育員の肩から飛び降りると岩田と向き合い女侍の姿へ変身する。
そして刀を構えた刹那。
「遅い!」
刀を振り上げたのとほぼ同時に岩田は、爪舞ぴんく侍の懐に入り顎の下をなでた。すると掌を返したように刀を納めた爪舞ぴんく侍は、岩田に擦り寄って来た。
「よ……予定通りとはいえ、こ これはなんとも……」
爪舞ぴんく侍の格好にたじろぐ岩田だったが、それも瞬間のこと。こんなところでこれ以上油を売るわけにはいかないので、逃げるようにして爪舞ぴんく侍の檻からてんぐまんの待つ中央広場へと急いだ。
「はい、これで全員分っと〜」
「あ あのっ、何鬼さん。ありがとう……ございますっ」
「いえいえ〜」
サインをてんぐまん全員に書き終えた何鬼は、そこに近付いてくる足音を二つ察知、その方向に顔を向ける。
すると驚くべき光景が、てんぐまんと何鬼の目に飛び込んできた。
「あれは?!」
「おのれ人間。妖怪帝国の民である爪舞ぴんく侍を手駒にしたのかっ! 卑怯なっ!!」
「なーに、すぐに飼育員に返すさ。いけ、ぴんく!」
指示を受けた爪舞ぴんく侍は、なんの迷いもなく刃をてんぐまんに向けながら襲い掛かって行く。
「くっ、相手が妖怪帝国の者では、迂闊に攻撃できんっ!」
とはいうもののレッドは自ら仲間の盾となるべく、進んでぴんくの的になるように立ちはだかっている。
さきほどからレッドの口調が、ひじょうに悪役くさいことは誰も突っ込まない。年相応とか言ってはもっといけない。
「さてと、何鬼さんは非難してくれ」
「でも、どうするの?」
「あくまでもぴんくは囮さ。こいつを召喚するためのな」
そういいながら岩田は、”タグナス岩伝”を懐から取り出す。
「その本は?」
「まあ見てればわかる」
タグナス岩伝を握り締めた岩田は、なにやら唱え始める。
「汝岩を束ねし者。汝我が声に答えその姿を顕現せよ。岩の巨獣、岩の化身。機神! グランロックヒポパタマス!」
その声に答えるように、何も無い空間に巨大な岩石の群が集まり、それが一塊になる。その固まった巨大な岩の表面が砕け飛ぶと、そこには異様な大理石模様の岩肌を持つ超巨大カバの姿が有った。
「か……カバ?!」
「ぴんく! こっちへ来い!」
てんぐまんに刃を振るっていた爪舞ぴんく侍が、岩田の声を受けて彼の元にやって来る。
「何鬼さん、こいつの顎の下をなでてくれ」
「え?」
「そして、あっちにある”変身イタチぴんく”って展示スペースに行ってくれ。飼育員がいるはずだから、岩田に言われて返しに来たと言えばことは済む。後は避難するなり好きにしてくれ」
「え。あ うん」
岩田がまくしたてたので、少々とまどいつつ頷く何鬼。近くにいる爪舞ぴんく侍の顎の下をなでると、二人? 揃って檻に向かった。
「さて、行くとするか!」
走って行く何鬼を見送ってから岩田は、グランロックヒポパタマスに乗り込んだ。
「なっ!? これは……巨大な相手?! ぬうう、こうなれば」
グランロックヒポパタマスを見上げたレッドは、すぐさま対抗策を行使する。
「みんな! ラウズァマシンを呼ぶぞ!」
レッドの号令に四人とも「了解!」と答える。
「我等が神、偉大なる神(スポンサー)よ! 今こそ我等に巨人を打つ剣をっ!! カアアアムオオオンッ!! ラウズァマッスィィィィンッッ!!」
レッドの声に答えるように、空の彼方から五つの力がてんぐまんへとやって来る。
543 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 14:08:55 ID:BTnGTmn6
「う……ううう、おもいよぅ」
一方のナナコは、重たいリュックを腕に抱えて、園内に戻ろうと歩いていた。
今更園内に戻るのは、何鬼と岩田、そしてバトルロイヤルをしていた客のことが気になっているからだ。
とりあえず園の入り口はくぐれたものの、そこでリュックを地面に置くしか手が無くなった。
「も、もうもって歩けない〜。恋さんってばめいっぱい入れすぎだよぅ」
イット缶に腕を置いてへたりこんでいるナナコ、ふと顔を上げると妙な物体が目に入った。
「……カバ……?」
それはまさしく、岩田の召喚したグランロックヒポパタマスであった。その巨大なカバの姿を見て、この動物園に鍛鉄が向かっていることも同時に思い出す。
「で、でも……今のわたしに、なにができるの? いったいなにが……?」
鎧のない現状では、ナナコはごく普通の女学生。みんなの平和を守る変身ヒロインではないのだ。
「レミィ? レミィ何処にいるの?!」
突然そんなことをいいながら、飼育員と思われる女性が顔を青くしながら走ってきた。
そのあまりにも必死な姿に、ナナコは声をかけずにいられなかった。
「どうしたんですか?!」
「あ、あら聖マリアの生徒さん。どうしてこんなところに?」
「それはいいんです。いったいどうしたんですか?!」
「それが……レミィが、レミィがいなくなっちゃったの!」
「えっ!? レミィちゃんが?!」
レミィとは、この動物園のマスコット的存在、子熊のレミィのことである。レミィ目当てにこの動物園に来る客は多く、さっきナナコもその愛らしい姿を見たばかりだった。
「ちょっと目を離した隙に檻から出ちゃったみたいで……ああ、どうしましょう……」
「お、おちついてください! わたしもいっしょに探しますから!」
「そう? じゃあ、おねがいしようかしら、わたしはこっちを探すから貴方はそっちを」
「はい!」
かくしてレミィの捜索をすることになったナナコ。イット缶の入ったリュックは考えた結果その場においておくことにした。
「あ、さっきの女の子? どうしてまだ園内にいるんだろう?」
ちょうどレッドがラウズァマシンを呼び出したのと同時刻。客の最終確認をしてくれと園長に頼まれた何鬼は、園内を走っていた。
すると「レミィちゃーん! レミィちゃーん!」といいながら、必死になって走っているナナコを発見。
「ねぇ、なにやってるの?」
「あ、司会のお姉さん」
「あまちなきだよ。それはともかく、なにしてるの?」
「こぐまのレミィちゃんが、檻から逃げちゃったから探してるの。おねえさ……じゃなくて、なきさんは?」
「わたしはお客さんが残ってないかチェックしてくれって頼まれたの」
「お客さんなら、もう残ってないですよ」
「そっかありがと」
「それからあ……あのぉ。入り口にわたしのリュックがおいてあるんだけど……もし大丈夫なようなら、持っててもらえますか?」
「なんで入り口に?」
「ちょっと、重たくって」
「ふむ、なるほどぉ。オッケ、大丈夫ならってのがよくわかんないけど了解。レミィちゃん捜索、できるようなら協力するよ」
「ありがとう!」
返事と同時にナナコは、何鬼の前から走り去っていった。
つづく
544 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 14:11:01 ID:BTnGTmn6
今回分のネタ
●サブタイトルNo.60【子熊レミィ】
●パイロットNo.---【ナナコ】(●機体No.35【超境内結合巫子巫女機ナナコSOXsm】参照)
●敵兵器No.249【鍛鉄】
●敵兵器No.---【グランロックヒポパタマス】(●敵パイロットNo.08【岩田カバ夫Jr】参照)
●敵兵器No.---【ラウズァマシン】()(●SRCシナリオ【超境内結合巫子巫女機ナナコ】参照)
●敵パイロットNo.08【岩田カバ夫Jr】
●敵パイロットNo.122【爪舞ぴんく侍】
●敵パイロットNo.173【てんぐまん】
●人物No.73【天地何鬼】
●人物No.104【瀞ー恋】
●地名No.22【さちこ河】
名前だけ出た物
●犯罪組織No.16【GOG】
後は落ちに向かって行くのみ、頑張らねば
>>536 GJです
545 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 20:26:57 ID:BTnGTmn6
ま……間に合った!! ということでラストまで投下
「はぁ……はぁ。どうでしたか?」
飼育員の女性と合流したナナコは、出会い頭に尋ねてみた。しかし返って来たのはゆっくりと横に振られる首であった。
「そうですか。まだ行ってない場所ないですか?」
「そういえば、機動兵器が来てる方はまだ調べてないわ」
「行きましょう! もしかしたら、そっちにいるかも!」
「そうね」
ここで言う機動兵器は鍛鉄のこと。二人は自分の危険も省みずレミィのいそうな地点へと再び走る。
「どうしよう、あの鍛鉄はわたしを探しに来た。けど、あの子にはリュック頼まれてるし……あ、あった。これね」
いろいろ考えをめぐらせつつ歩く何鬼はナナコのリュックを発見、持ち上げる、が……。
「ぐ。お 重い……いったいなにが入ってるの?!」
当然ながら水である。重いとはいいつつ何鬼は、ナナコのリュックを持って彼女を探し再び園内へと戻った。
「「いた!」」
飼育員の女性とナナコの声が綺麗にハモる。
「レミィちゃん!」
「っ!」
周りを確認した飼育員は、とんでもないことに気付いた。
「っ!」
同じくナナコも気が付く。レミィはあろうことか鍛鉄の足元にいるのだ。
「レミィちゃんっ!」
「あっ、ちょっと!?」
飼育員の女性がとめる声も構わずレミィに駆け寄るナナコ。呼ばれて振り向いたレミィは、黄色い声援を浴びた時のように面食らった表情を見せた。
「可愛いっ! ってそうじゃなくって、レミィちゃん。あぶないからこっち来て」
「まって、その役目はわたしがやるわ」
飼育員もナナコの近くに来る。そしてレミィに声をかけると、聞きなれた声にレミィはそちらへと体を向けた。
と ーー その時である!
「ナニカイルナ。フミツブス」
鍛鉄から声がした。その声と同時に、鍛鉄の足が振り上げられたのだ!
「「えっ!?」」
ビルのような足が振り上げられたことに驚いた二人。しかし直後、ナナコは叫んでいた。
「っ! 逃げてっ!」
「貴方も逃げないと!」
「わたしは後でいいですから! 早くレミィちゃんをつれて逃げてください!」
「え、で でも……」
「早くっっ!!」
「……わかったわ」
飼育員はレミィについてくるように促しながら、ナナコから離れていく。
「っ!」
気が付くと、鍛鉄の足はもうすぐそこだ。逃げる暇があるかどうかすら怪しいほどに迫っている。
「(もう……駄目なの?! ううん、あきらめちゃ駄目。ここでわたしが踏まれたら、みんなもあぶない目にあう。守りたい。レミィちゃんを、学校のみんなを。おねがい……! わたしに、みんなを守れる力を……っ!!)」
鍛鉄の足がナナコの司会を埋め尽くす。
「やっぱり……駄目なの……? おじいちゃん、みんな……っ!」
死を覚悟したナナコは、その恐怖を少しでも和らげようときつく目を閉じた。
546 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 20:28:02 ID:BTnGTmn6
「ミギャー!?」
聞こえたのは鍛鉄に乗っている、タミタミブタの悲鳴であった。
「……え?」
恐る恐る目を開けたナナコは、信じられない光景を目にすることになった。
「あれは……超境内剣?」
彼女は見た。
倒れた鍛鉄と、空中に浮遊している、変身したナナコ ーー 超境内結合巫子巫女機ナナコSOXの武器、超境内剣の姿を。
「どうして?! もしかして、わたしがねがったから? みんなを守りたいって。だから……超境内剣が助けにきてくれたの?」
そしてナナコには、超境内剣が自分を使ってくれと言っているように思えた。
「……よし! 来て! 超境内剣っ!」
主の声に答えた剣は、彼女のもとへと飛来する。彼女の頭上にやって来た超境内剣を見上げるナナコ。
彼女は頷き、今までで一番大きく そしてはっきりとした、澄んだ声色でその言葉を叫んだ。
「超……! 境! 内! 結! 合!!」
その言葉に答えた剣は光を放つ。そして光が収まると、そこに新たな力を得た巨大ナナコ ーー 超境内結合巫子巫女機ナナコSOXsm ーー が立っていた。
「これは?! 剣と……ミサイル? 超境内符?! どうしていっぺんに?
……そういえば、たしかおじいちゃん、今のわたしじゃどっちか片方ずつしか使えないって言ってた。でも、今は……違うの?」
「ぶ……ブギギギ」
思わぬ不意打ちを受けたタミタミブタが、ゆっくりと鍛鉄を起こす。そして敵の出現に、他の鍛鉄たちもナナコに向かって歩みを進めてくる。
「みんな……超境内剣、ありがとう! わたし、頑張る!」
新たな決意を胸に、ナナコは迫り来る四機の鍛鉄と対峙する。
「完成っ! 妖神合体ダークラウズァ!」
一方の岩田VSてんぐまん。てんぐまんも巨大ロボットにそれぞれのメカを合体させたところだった。
「戦隊ヒーローロボのわりに”ダーク”なんて名前をつけているとはな。お笑いだ」
「黙れ人間! 妖怪帝国住民を手駒にしたこと、後悔させてやるっ! ダークランサー!」
「このグランロックヒポパタマスの装甲をなめるな、そんな剣ごときでやれると思うなよ!」
二本の黒い剣 ーー ダークランサーを持って切りかかるダークラウズァ。だが、その腕は平行に構えられている。
「ふん。懐ががらあきだっ!」
その隙を見逃す岩田ではない。がらあきの懐に、その強力な拳を叩き込む。しかし。
「なっ、なんだ これは?! 拳が ーー 届かないだと?!」
「無駄だ! ダークラウズァの冥波フィールドを貫けるものか!」
「これが、冥波と言う奴か。ちっ、ちまちまとうっとおしく切り付けてくる! はぁーっ!!」
冥波フィールドを、岩田はむりやりに威力だけで貫こうとしている。
「ぐうっ! リーダー、ダークラウズァにダメージがないとはいえ」
「うぅ、そうです。わたしたちにあのパンチの余波が……!」
「ちっ。間合いをとるか……」
イエローとホワイトの報告に、レッドはしかたなく間合いを離す。
「なるほど、飛べるのか」
「どうだカバロボ! これでは手も足も出まい?!」
「さーて、それは どうかな?」
するとカバの口からチェーンつきのハンマーが出現する。
「これならば、肉弾戦でなくとも闘えるだろ?」
「おのれ! コテングミサイル!」
ダークラウズァから、無数のミサイルが発射されるが、岩田はそれをまったく無視してハンマーを空中へと放る。
「ボコボコにしてやる!」
いいながらグランロックヒポパタマスは回転を始める。それは即ち、ダークラウズァへの連続攻撃を意味していた。
「ぐっ、うっとおしい!」
ダークランサーでハンマーのチェーンを断ち切ったダークラウズァ。それと同時にハンマーはまるでそこに初めからなかったように消失した。
「リーダーっ、損傷率20%です!」
「やってくれるな……!」
「くっ、あの冥波フィールドをなんとかしないと、決定的な一撃は与えられないか。厄介だな」
547 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 20:28:59 ID:BTnGTmn6
「やーっ!」
「ビギャー!」
ナナコは超境内剣で、さっき剣自身が現れた時に切り付けていた鍛鉄と交戦中である。しかし、その実力差はどうやら歴然らしい。
「エンヤエンヤ!」
「オレ、ツヨイ、ナグル!」
「オレサマ、オマエ、マルカジリ!」
「きゃっ! ちょっとまって!? いっぺんにこないでよ〜!」
一つに気を取られるとうまくいかないのがナナコである。そして現状、四機の鍛鉄が一気に襲ってきたから、回避で手一杯だ。
「わわわっっ!? とりあえず距離を離さないと。しぃー! んー! きぃー! ほぉー! おおーっ!!」
己の掌に凝縮したエネルギーを、相手に向かって放つ。どこかで聞いたような発動の仕方だが、本人がそれっぽいと言ったのだから大目に見てあげよう。
「ギャアーッッ!!」
見事に吹き飛ぶ鍛鉄。最初に闘っていたのはもうかなりボロボロになっており、先頭続行は難しい。
しかし、それでも闘ってしまうのがタミタミブタだ。
「オレサマ、オマエ、マルカジリ!!」
「いや! 食べられたくない〜!」
迫り来るボロボロの鍛鉄に、ナナコは必死の表情でパンチを放った。見事命中し、正面の装甲部分がはじけ飛ぶ。
「もうやめよう、そんなにボロボロじゃもう闘えないでしょ?」
「……オ、オレニゲル! モウダメ!」
最初の一体は、そういいながら撤退して行く。
「ふぅ、後三つ……!」
「エンヤー!」
そんな声がしたかと思ったら、なにかがすごい勢いで飛んで来た。
「キャっ!」
慌てて盾で防ぐ。飛んで来た物体は、さきほど逃げた鍛鉄の破損箇所だった。
「ふ ふええ〜、今度はこっちの番だよ! 超境内ミサイル!」
今しがた攻撃をしかけた鍛鉄に、ミサイルが飛んでいく。なにを血迷ったのか、それを素手で掴もうとする鍛鉄。
「う、うそっ?!」
なんと、見事に掴めてしまった。鍛鉄の装甲は、思った以上に頑丈な作りをしているようだ。
「オカエシ!」
「いらないよぉぉ〜!」
どうにか回避、すると?
「ギャー!」
どうやら後ろにいたらしい鍛鉄に命中。怪我の功名である。
「へっ?! う、後ろにいたの?! も……もしかしてぇ……」
周りを見渡す。そしたら予想通り、前と後ろと右側に鍛鉄がいた。
「囲まれてる……それなら、えーい!」
超境内剣を持ったまま、くるりと一回点。それぞれに腕を切り飛ばすことに成功した。
「やったぁ〜」
「ブヒーッ!!」
喜んだのもつかのま、タミタミブタたちは激怒し突進してきた。
「ひゃっ!」
思わず上空へ。そしたら三機の鍛鉄は見事に仲間達で大激突してしまった。
「な……なんかズルしちゃったかも?」
下の光景を見て、ナナコは困ったように呟いた。
548 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 20:30:03 ID:BTnGTmn6
「超冥波ヨーヨー!」
「くそっ、削ってはいると思うんだが……」
「てんぐまんキイイイック!」
「調子に……乗るな!!」
急降下して来るダークラウズァを、突き出された足ごと掴むとそのまま地面へとたたきつける。
「ぐおっ!?」
「う、うう。損傷率が今の出50%に到達しましたリーダー」
「おのれ、こうなったらあれを使うぞ!」
と、そこに。
「もうやめてください!」
「これは……たしかデータで見たことがある。DOOMERSの兵器だな。しかし、データで見たのとは若干見た目が違うか……?」
「援軍だと?! おのれ人間どもめ! どこまで卑劣なんだ!」
「もう闘う必要はないんじゃないですか?」
「ん? この声、さっきの女子生徒……?」
「あれ? その声、バイトの鬼いさん?」
「岩田だ、それはともかく。なぜ君がそんなものに乗っている?」
「え? えっと、まあ……乗ってるのとはちょっと違うんですけど……そんなことはいいんです、もうやめましょうよ」
「散々暴れておいて、戦いをやめろだと! 少女の姿で俺達を惑わそうったってそうはいかないぞ!」
「この声……てんぐまんの人?」
「え? もしかして、ショー見てたんですか?!」
驚くホワイトに、ナナコはあっさりと頷く。
「ぬ、ぬぅ。敵の刺客に子供か……」
「ところで、どうしてわたしを悪者だって決め付けるんですか?」
「妖怪帝国の平和をおびやかすからだ」
「こっちだって、いろんな人たちに自分達の平和がおびやかされてるんです。どっちかを悪く言うのは変じゃないですか?」
「……正論だ」
「ブラックっ! 敵の口車に乗るな!」
「じじい! あんたは少し黙ってろ!」
「……ぬうう」
「それで、そういうがお嬢ちゃんはなんで戦いを止めようとしてるんだ?」
「岩田さんと貴方達の戦い、意味がないと思うからです」
「だが、こいつらを止めるにはこれしか方法がなかった」
「わたしたちは、そのカバさんに対抗するためにダークラウズァを呼び出したんです。おあいこです」
ホワイトに言われてナナコは、頷いてから言う。
「……元はと言えば、てんぐまんのことに文句を言った人が悪いんだから、わたしたちがいけないんですよね……ごめんなさい」
「そ、そんな泣きそうな顔しないでくれよ。なんか、こっちまで申し訳ない気分になるだろ?」
ブルーに言われるが、ナナコは涙目のままである。
「でも……今回はおあいこです。石を投げた人もいけないですけど、それに対して反撃しちゃったイエローさんにも問題ありますよ」
ビシっとホワイトに言われたイエローは、しょんぼりと「……そうだな」と溜息混じりに言うしかなかった。
「と言うことで、今回はこれで帰ることにします。ね、リーダー」
「う、うぐぐ……決着をつけないばかりか、また撤退するとは。神(スポンサー)に申し訳がたたん……」
「……こいつ、いっぺんボコボコにしてやろうか」
本気で殺気を放ち始めるブラックに、レッドは「ふん、ひよっこの貴様なんぞにわしが倒せるか」と切り替えして、その後にしまったと思ったそうだが最早遅すぎる。
「もし、これ以上闘うって言うならわたしも参加します」
表情を引き締めたナナコの言葉に、イエローがとどめを刺した。
「リーダー、ダークラウズァがこの状態でさらに援軍付きはむちゃだぜ」
「ぐぬぬぬぬ、しかたがない。また逢おう!」
「あ、あの。何鬼さんに、早く帰ってくださいって伝えてね」
「わかりました〜」
ホワイトの言葉のみに返事をして、ナナコは変身を解いた。すると鎧は以前とかわらない鎧になった。
同じく岩田も、グランロックヒポパタマスから降りると、それを消し去る。
「その本から、さっきのカバが?」
「そうだ。なるほど、君の方はその鎧がさっきの姿に変身させているのか?」
「そう……です。あの、秘密ですよ?」
「ん? あ、ああ……」
549 :
子熊レミィ:2006/11/11(土) 20:31:07 ID:BTnGTmn6
「ふぅ、ふぅ。これ、おもたすぎだよぅ〜」
「あ、なきさん。ごめんなさい、リュックもってもらっちゃって」
「う〜ん、でもまさか ここまで重たいなんて思わなかった〜」
「あの、そこにおいていいですから」
ズン、と音がするほど重たいリュックを地面においた何鬼は、深い溜息をついた。
「ところで、このリュック。なにが入ってるの?」
「……水、です。ここの近くの河の」
「ふぇ?」
「ここの近くのさちこ河の水で体を洗うと、胸が大きくなるって噂があってな。それでだろ?」
「はい、友達に頼まれちゃって……」
「なるほどねぇ、ってあれ? その鎧みたいなのは?」
「え、ええっと……鎧みたいなものです」
変な言い訳に怪訝な顔をしつつ、何鬼は言う。
「んじゃ貴方は荷物増えちゃったんだ?」
「そうですねぇ、どうしよう……」
疲労感たっぷりの溜息とともにナナコは答えた。
「あ、ホワイトさんが早く帰って来てくださいって」
「ん〜そーだなぁ。この水を届けたら帰るとするよ」
「ほんとですか?」
「うん」
「ありがとうございます」
「え〜てんぐまんきてたの〜、見たかったな〜」
「たかったな〜」
遠足を終えて工場に帰ったナナコ、みんなに食堂で話をした結果。コン太郎姫子に羨ましがられている状況だ。
「大変だったんですよ〜」
「水のこと?」
盗撮姫が、そのイット缶からさちこ河の水を、なにやら無数の容器に慎重に慎重に取り分けながら聞いてくる。
「それもですけど、わたし死にかけたんですから〜」
「もしかして、それってその鎧に関係あるの?」
咲に問われて頷くナナコ。
「鎧が来てくれなかったら、わたし今ごろぺしゃんこだったもん」
「そうだよね、鎧持ってかないって言ってたもんね。ってありゃ? 鎧にカームヒアーな能力なんてあったの?」
「わかんない、今回が初めてだったから」
「ふーん」
「んーで? その赤髪の女の子はなにもんなんだ?」
ニートに指を指された何鬼は、頷きつつ明るく答えた。
「あたしは天地何鬼。妖怪帝国のアイドル歌手でーす」
「よ、妖怪帝国?!」
臨海地区での戦闘に参加した面々が驚かないはずがない。
「スパイか! 俺達の情報を盗んで帰るつもりだな!?」
「ちょちょちょ、ちょっとまって? それは激しく誤解!」
「そうですよ、わたしたち協力して園内のお客さん避難させたんだから。それにイット缶入りのリュックももってもらっちゃったし」
「なるほど? コン太郎たちの例もある。一概に全部が全部悪いってわけでもないのか」
「そーゆーことそーゆーこと。で、ナナコちゃんのリュックを届けたら帰ることにしてたんだ。あ ついでだからサイン書いてきましょっか?」
「何鬼さん、やたらとサイン書きたがるなぁ」
実はナナコのリュックには、すでに何鬼のサインが書かれていたりする。
「妖怪帝国のとはいえ、アイドルに無償でサインもらえるなんてラッキー」
さきほどの疑念はどこへやら、ニートは一番手とばかりになにかサインを書いてもらえそうな物はないかと、自分を物色してみるが。
「……書いてもらえそーなもんねーなー」
そんな間にも、すでにサイン会は始まっており、ニートは一番手を逃した。
サインをもらおうとする中に咲やラッセたちはもとより、ロリータやらクレモ改革公やらも混ざっていたりするので、DOOMERSにもミーハーは多いらしい。
550 :
子熊レミィ:
「ふぅ〜終わった終わった〜」
「お疲れ様何鬼さん」
「サンキューナナコちゃん」
あれから凡そ2時間ばかりして、天地何鬼DOOMERS工場内サイン会は、無事に終了した。
「手首が痛いよぅ」
「腱鞘炎にならないように祈っておくよ」
「ありがと」
昼間の事以来、ナナコと何鬼はすっかり仲良しになっていたりする。
「さって、サインも書いたしリュックも届けたし。帰るとしますかね」
「もう行っちゃうの?」
「うん、そろそろ帰らないと流石にね。大丈夫、またうまいこと密航して遊びに来るから」
「う〜む、それより人間界ツアーとかやって見たらどーッスか?」
「っお、それいいかも! 帰ったら言ってみるよ」
「期待してていいッスか?」
「う〜ん、ま 期待はあんましないでおいた方がいいと思うよ?」
「そっかー、残念」
「うふふ、それじゃ、またね」
そんなこんなで、DOOMERS私設軍の皆さんに見送られ、天地何鬼は妖怪帝国へと帰っていった。
「さて、わたしも帰らなきゃ。おじいちゃん心配してるだろうし」
「そっか、じゃ ナナコッチもお疲れ様ッス」
「うん」
何鬼に続いてナナコも家路についた。
「おかえりナナコ!」
「ただいまおじいちゃん、遅くなっちゃってごめんね」
「なにをいっとる、無事に帰って来たんならそれでよしじゃ。ところでナナコ?」
「ん? なにおじいちゃん?」
「鎧……どこか知らんかの? 昼間にいきなりピカーっと光ったかと思ったら、どこかへ消えてしまってな?」
「それなら……」
リュックの中から、その鎧を取り出して「ここだよ」とナナコは見せた。
「おお!? なんと言うことじゃ!? ナナコの元に鎧がかっ飛んで行きおったと言うのか?!」
「うん、鎧のおかげでわたし、こうして帰って来れたんだもん」
「ん? それはいったい、どういうことじゃ?」
「えっとね……」
そしてナナコは、今日の遠足のことを、祖父に語って聞かせることになった。
話を聞き終えた祖父がそのあまりのことに驚いて、腰から破滅の音をさせたとかさせなかったとか。
おしまい