2月上旬、NHKのラジオセンターに衝撃が走った。
「どうやら民放が、ネットでのサイマルに踏み切るらしい」「何だそれ、聞いてないぞ」――。
マスメディア産業の一角が、ついに生き残りをかけて、重い腰を上げた。NHK以外の
民放局である。受信料で成り立つNHKと民放とでは、それだけ危機感に雲泥の開きが
あるということだ。
AM、FM、短波の大手民放ラジオ局13社は、3月中旬から、地上波と同じ放送内容を
インターネットでもサイマル(同時)送信することを決めた。日本音楽著作権協会(JASRAC)
や日本レコード協会といった権利団体とも合意を得た。2月中にも正式発表する。
パソコンなどから「RADIKO(ラジコ)」のウェブサイトにアクセスすれば、無料で地上波と
同じラジオ放送を聴けるようになる。ただし、アクセス元のIPアドレスから住所を類推する
仕組みを用いて、当面は首都圏と大阪府の利用者に限定する。
大手放送局が、地上波と同一の放送を、同時に通信回線経由で再送信する本格的な
取り組みは、国内初。1925年のラジオ放送開始から85年、「通信と放送の融合」が極まった。
■地上波に手を加えない、事実上の「ネット解禁」
ネットでの同時送信に踏み切るのは、TBSラジオ、ニッポン放送、文化放送、エフエム
東京、J-WAVE、エフエムインターウェーヴ(InterFM)の在京キー局6社と、朝日放送、
毎日放送、エフエム大阪など在阪の準キー局6社、加えて短波の日経ラジオ社の合計13社。
民放各社は昨年12月、共同でインフラ整備や権利処理にあたるための組織
「IPサイマルラジオ協議会」を発足し、準備を進めていた。
「ネットで聞けるラジオ」は、今年3月から半年を試験期間とし、9月から本格運用とする
模様。試験期間とはいえ登録は不要で、特別なソフトも必要としない。配信方式は
「Adobe Flash Player」を選んだ。
地上波から数秒の遅れが生じるため、各社とも「時報」はカットすると見られ、権利処理が
相当に困難なオリンピックやサッカーのワールドカップなど一部のスポーツ中継は、
別番組に差し替えるなどの対応を取るようだ。
だが、それ以外は原則、各局ともに地上波の放送内容に手を加えず、すべての番組、
CMを再送信する方針。事実上の「ネット解禁」となる。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100210/212732/